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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-24
(54)【発明の名称】溶融塩高速炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/02 20060101AFI20230417BHJP
   G21C 3/54 20060101ALI20230417BHJP
   G21C 15/02 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
G21C1/02 230
G21C3/54
G21C15/02 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553676
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 RU2020000495
(87)【国際公開番号】W WO2021177849
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】2020109954
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522353347
【氏名又は名称】ステート アトミック エナジー コーポレーション“ロスアトム”
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ペトルニン,ヴィタリー ウラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】コドチゴフ,ニコライ グリゴリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】アブロシモフ,ニコライ ゲンナジエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】リャザーノフ,ドミトリ セルゲーエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】スハレフ,ユーリー ペトローヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】カラセフ,セルゲイ ヴャチェスラーヴォヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ビリン,ドミトリ セルゲーエヴィチ
(57)【要約】
本発明は原子力の分野に関し、特に溶融塩原子炉に関する。関連する問題を解決することによって達成される技術的結果は、原子炉の運転中における実効遅延中性子分率における損失を低減し、マイナーアクチニドの燃焼の高効率を提供することを可能にし、また、一次回路の漏れ止め完全性及び原子炉の信頼性を増加させることである。上述の技術的結果は、循環する燃料組成物を有する一体型溶融塩高速炉において達成され、二次回路へのパイプラインの入口及び出口と、溶融塩冷却材を初期充填及び補充するための接続パイプとを有する容器と、一次/二次回路の複数の熱交換器と、側部反射体、上部反射体、及び下部反射体と、シェルを有する炉心と、主循環パイプとを備え、側部反射体が、一次/二次回路の複数の熱交換器の間における複数のセクションから構成されることで、炉心のシェルに対して同一平面上に位置するように配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環する燃料組成物を有する一体型溶融塩高速炉であって、
二次回路のパイプラインの入口及び出口と、溶融塩冷却材を初期充填及び補充するための接続パイプとを有する容器と、
一次/二次回路の複数の熱交換器と、
側部反射体、上部反射体、及び下部反射体と、
シェルを有する炉心と、
主循環ポンプとを備え、
前記側部反射体は、前記一次/二次回路の複数の熱交換器が設置された間における複数のセクションで構成されることで、前記炉心の前記シェルに対して同一平面上に位置することを特徴とする一体型溶融塩高速炉。
【請求項2】
前記下部反射体は、
前記一次/二次回路の複数の熱交換器を設置するための側部切欠きと、
前記炉心内の燃料組成物の使用量の分布プロファイルを整列させるための開口部がその上に設けられた管板とを有し、
前記炉心の前記上部反射体には、前記制御及び防護システムの前記操作要素、並びに中性子源をその中に設置するための開口部が設けられ、
前記側部反射体の前記上部には、前記炉心と、前記主循環ポンプの前記収集チャンバとを接続するように設けられた管に属する開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の溶融塩高速炉。
【請求項3】
前記一次/二次回路の複数の熱交換器が、それらの上部において、前記主循環ポンプの前記加圧チャンバに接続され、その下部において、それらが炉心のマニホルドに接続され、前記一次/二次回路のそれぞれの熱交換器の上部において、溶融塩冷却材を供給及び除去するための二次回路のパイプラインの入口及び出口があることを特徴とする請求項1に記載の溶融塩高速炉。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は原子力工学の分野に関し、特に溶融塩原子炉に関する。
【0002】
〔従来技術〕
溶融塩原子炉の主な問題の1つは、実効遅延中性子分率の大きな損失であり、それが、制御された核分裂連鎖反応のプロセスにおけるマイナーアクチニドの燃焼中の原子炉の制御性が劣ることにつながる。原子炉の寿命時間の始まりにおいて、βeff(S)=0.0023である。寿命の終わりにおける、βeffはマイナーアクチニドのみによって決定され、βeff(E)=0.0009に低下する。原子炉周期Trは少なくとも10秒であるべきである。これが、0.0004以下であるべき挿入リアクタンス(insertion reactance)Δk/kに制限を課す。それにもかかわらず、挿入リアクタンスはβeffよりも大きくなければならず、そわなければ、即発の中性子炉の暴走(runway)が生じる。このため、βeff(S)-Δβeff>0.0004、βeff(E)-Δβeff>0.0004という、実効遅延中性子分率の損失値Δβeffを確保しなければならない。
【0003】
米国で設計されたMSRE原子炉は、一次冷却材設備のモジュール構成を有し、燃料塩排水弁、渦巻き防止ブレード、原子炉容器、炉心容器、燃料入口接続パイプ、グラファイトロッド、センタリンググリッド、吸収ロッド、燃料出口接続パイプ、グラファイトサンプルを下降させるためのチャネル、制御ロッドを駆動するための可撓性ケーブル、空気冷却システム、冷却ジャケット、吸収ロッド用チャネル、出口フィルタ、燃料分配器、グラファイトロッド支持グリッドを備えていることが知られている(V. L. Blimkin, V. N. NNovikov. Molten salt nuclear reactors(ロシア語) - M: Atomizdat, 1978, p. 23)。
【0004】
その欠点は、熱中性子スペクトルの存在であり、その結果、マイナーアクチニド利用のためのこの原子炉の使用効率が極めて低いことである。
【0005】
また、米国で設計されたТАР MSR原子炉は、一次ループポンプ、ドレンシステム、一次ループ熱交換器、中間ループポンプ、蒸気発生器、ニッケル基合金製配管を備えていることが知られている(Nuclear island rendering and Schematic. Figure 1. Rendering of the TAP MSR. TRANSATOMIC Journ. Technical white paper. November 2016, v2.1, f.2)。
【0006】
この原子炉の欠点は、マイナーアクチニドの「燃焼」の可能性を著しく減少させる熱中性子スペクトルの使用、十分な量のマイナーアクチニド及びシード燃料を装填することを妨げるマイナーアクチニドフッ化物の低い溶解度を有するLiF‐BeF型担体塩の使用である。
【0007】
フランスで設計されたMSFR原子炉(MSFR and the European project EVOL, Molten Salt Reactor. Workshop - PSL - January 2017 Rrans - MSFR Presentation, p. 11)は、原子炉容器内に統合された一次ループ装置と、横方向反射体の周りの一次ループ及び二次ループの高温熱交換器とを有し、ほとんどの特徴において現在の解決策に最も近く、最も近い先行技術として選択される。
【0008】
その欠点は、燃料組成物の循環中、炉心の外側に配置された高温熱交換器を通過するときに、遅延中性子の発生源である核分裂生成物がかなりの時間、炉心の外側に置かれ、遅延中性子の有効分率を低減し、原子炉の安全特徴を損なうことである。
【0009】
〔発明の概要〕
技術的な目的は、少量のフッ化アクチニドの高い溶解度を有するLiF+NaF+KF(FLiNaK)担体塩に基づく燃料組成物を使用する一体型溶融塩高速炉(MSFR)を開発することであり、放射性燃料組成物の容量を最小寸法内に定めることを可能にし、一次回路からの実質的な直径の長い循環配管を排除することを可能にする。
【0010】
関連する問題を解決することによって達成される技術的結果は、原子炉の運転中の実効遅延中性子分率の損失を低減し、マイナーアクチニドの燃焼の高効率を提供することを可能することであり、また、一次回路の漏れ止め完全性及び原子炉の信頼性を増大させることである。
【0011】
この技術的結果は、循環する燃料組成物を有する一体型溶融塩高速炉において達成され、二次回路のパイプラインの入口及び出口と、溶融塩冷却材を初期充填及び補充するための接続パイプとを有する容器と、一次/二次回路の複数の熱交換器と、側部反射体、上部反射体、及び下部反射体と、シェルを有する炉心と、主循環ポンプとを備え、側部反射体は、一次/二次回路の複数の熱交換器が設置された間における複数のセクションで構成されることで、炉心のシェルに対して同一平面上に位置する。
【0012】
下部反射体は、一次/二次回路の複数の熱交換器を設置するための側部切欠きと、その上に、炉心内の燃料組成物の使用量の分布プロファイルを整列させることを目的とする複数の開口部がその上に設けられた管板を有し、炉心の上部反射体には、制御及び防護システムの複数の操作要素及び中性子源をその中に設置するための複数の開口部が設けられ、側部反射体の上部には、炉心と主循環ポンプの収集チャンバとを接続するように設けられた管に属する開口部が形成される。
【0013】
それらの上部において、一次/二次回路の複数の熱交換器は、主循環ポンプの複数の加圧チャンバに接続され、下部において、それらは炉心のマニホルドに接続され、一次/二次回路のそれぞれの熱交換器の上部において、溶融塩冷却材を供給及び除去するための二次回路のパイプラインの入口及び出口がある。
【0014】
一次/二次回路の熱交換器を、炉心のシェルと同一平面の側部反射体の複数のセクションの間に配置することにより、一次回路のパイプラインの長さが短縮され、燃料循環時間の短縮により、実効遅延中性子分率の損失が低減され、それにより、マイナーアクチニドの燃焼の実質的な効率を達成することが可能になる。
【0015】
側部反射体のセクション間の一次/二次回路の熱交換器の配置は原子炉直径の低下をもたらし、その結果、原子炉及び原子炉建造物全体の重量、サイズ、及びコスト特性の低下をもたらす。
【0016】
原子炉の一体概念は、装置が容器の内側にあり、容器の外側で破損する可能性のある、一次回路の大径パイプラインがなく、一次回路の漏れ止め完全性の程度及び原子炉の信頼性を高める。
【0017】
〔発明の実施形態〕
本発明の本質を図1~5に説明する:
図1は、原子炉の3Dモデルを示す;
図2は、原子炉の上面図の3Dモデルを示す(原子炉の蓋は示されていない);
図3は、MSFRの構成を示す;
図4は、原子炉のA-A断面図を示す;
図5は、原子炉のB-B断面を示す。
【0018】
提案された原子炉の技術的解決策では、一体型構成(図3)が使用され、反射体:側部(2)、下部(17)、上部(18)を有する炉心(1)と、制御及び保護システム(OE CPS)(3)という操作要素と、一次/二次回路の熱交換器(4)と、中性子源(NS)(5)と、容器内金属構造体(IMS)(6)と、複合保護システム(7)と、主循環ポンプ(MCP)の収集チャンバ(8)と、マニホルド(9)とが低圧原子炉の縦型容器(10)内に配置される。原子炉の物理的境界は、次に続く、接合部分を備える設備の結合する点:二次回路のパイプラインの入口及び出口(11)、溶融塩冷却材の初期充填及び補充のための接続パイプ(12)、バブリング及びシールドガスを供給及び除去するためのパイプライン(13)、CPS駆動装置(14)、MCP駆動装置(15)及びNS駆動装置(16)の電気端子、外部電力及び測定回路のための接点及び端子である。
【0019】
炉心(1)は、高速中性子スペクトルを有するキャビティ型均質炉心である。
【0020】
原子炉容器(10)内では、溶接された炉心シェル(19)を有するマニホルド(9)が、溶融塩冷却材の初期充填及び補充のためのシステムの接続パイプ(12)上に設置される。下部反射体(17)及び側部反射体(2)がシェル(19)に取り付けられている。炉心(1)のシェル(19)は、原子炉容器(10)に溶接された支持リブ(20)上に配置される。
【0021】
炉心(1)の下部には開口部を有する管板(21)が下部反射体(17)に設置され、これは炉心内の燃料組成物の消費の分布プロファイルを調整させるためのものである。
【0022】
反射体は、炉心の上端部、底部、及び側部に配置される。側部反射体(2)は、複数のセクションから作製される。下部反射体(17)は、熱交換器(4)を設置するための側部切欠きを有する。CPS OE(3)を内部に配置するために、炉心(1)のシェル(19)の上部反射体(18)とキャップ(22)とに開口が形成される。上部反射体(18)は、燃料組成物の流れを熱交換ループに分割するように意図された形状を有する。側部反射体(2)の上部には、炉心(1)をMCP収集チャンバ(8)に接続する配管(25)を収容するための開口が形成されている。
【0023】
側部反射体(2)の複数のセクション間の間隔において、一次/二次回路のための「塩-塩」タイプの複数の熱交換器(4)が配置される。複数の熱交換器(4)は、その上部において、MCP圧力チャンバ(23)に接続され、その下部において、管によって炉心(1)のマニホルド(9)に接続される。各熱交換器(4)の上部には、二次回路の溶融塩冷却材を供給及び除去するためのパイプラインの入口及び出口(11)が配置され、原子炉容器(10)内の接続パイプを通過する。
【0024】
複合保護システム(7)は、原子炉の蓋(24)の下に配置される。複合保護システム(7)は、金属及び断熱材料から構成され、CPS駆動装置(14)、MCP駆動装置(15)、NS駆動装置(16)、及び原子炉蓋(24)の締結要素を、熱及び放射性放射線から保護することを目的とする。
【0025】
CPS OE(3)は、炉心(1)内に配置される。各操作要素は、高度に濃縮された炭化ホウ素に基づく吸収体を含む。
【0026】
上部反射板(18)及びIMS板(6)の中央には、中性子源(5)を配置するための配管が設置されている。
【0027】
制御手段は、中性子束のための一次測定トランスデューサ、エネルギ分配、炉心入口及び出口、並びに原子炉要素における燃料組成物温度、原子炉内の燃料組成物の圧力及び水準の制御を含む。
【0028】
原子炉の運転中に炉心(1)内において放出される実質的に全ての熱は、一次/二次回路の「塩-塩」熱交換器(4)内の二次回路の溶融塩冷却材によって除去される。
【0029】
原子炉は、以下のように操作される。
【0030】
一次/二次回路の熱交換器(4)からの~650℃の温度を有する燃料組成物は、管を介して炉心(1)の下方に位置するマニホルド(9)に入る。次いで、燃料組成物は有孔チューブシート(21)を通過し、炉心(1)に入る。炉心(1)を底部から上に通過しながら、燃料組成物は~700℃の温度まで加熱される。炉心(1)を通過した後、燃料組成物は、上部反射体(18)によっていくつかの流れ-熱交換ループに分割され、側部反射体(2)の開口部を通ってMCP収集チャンバ(8)に入る。次いで、燃料組成物は、MCP圧力チャンバ(23)に入り、その圧力を受けて熱交換器(4)の入口に入り、それを通過した後、650℃に冷却され、二次回路(図示せず)の溶融塩冷却材に熱が伝達される。
【0031】
〔産業上の利用可能性〕
したがって、提案された原子炉の構成は、放射と熱との保護、制御及び保護システムのアセンブリを有し、駆動部、及び操作要素、中性子源、部分的な側部反射体を含み、一次/二次回路の熱交換器が、炉心のシェルに対して同一平面上に位置する側部反射体のセクション間に配置され、以下のことを可能にする:
1.炉心外での燃料循環時間の短縮に寄与する遅延中性子の実効分率の低減;
2.遅延中性子の実効分率の損失を減らすことによる原子炉の柔軟性の改善;
3.FLiNaK担体塩の選択及び炉心における高速中性子スペクトルの実装により、使用済み核燃料からの大量のマイナーアクチニドの燃焼をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、原子炉の3Dモデルを示す。
図2図2は、原子炉の上面図の3Dモデルを示す(原子炉の蓋は示されていない)。
図3図3は、MSFRの構成を示す。
図4図4は、原子炉のA-A断面図を示す。
図5図5は、原子炉のB-B断面を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】