(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-24
(54)【発明の名称】供給デバイス
(51)【国際特許分類】
B28B 11/08 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
B28B11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022554461
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 IB2021051994
(87)【国際公開番号】W WO2021181302
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522355880
【氏名又は名称】マーカムソン,デイビッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーカムソン,デイビッド
【テーマコード(参考)】
4G055
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055BA76
(57)【要約】
フィルム(1)内に組み込まれたコンクリート混和剤を有する、水溶性材料のフィルム(1)の形態のコンクリート混和剤のための供給デバイス。フィルムは、たとえば接着剤(2A)などによってコンクリート用の型枠に取り付けることができ、かつ保護ライナー(4)を有し、保護ライナー(4)はコンクリート中の水がフィルム(1)を溶解して混和剤をコンクリート中に放出することを可能にするために除去可能である。フィルム(1)は、必要量の混和剤を含有し、かつ耐候性であり、実質的に時間に影響されない。この供給デバイスを使用することによってコンクリートの表面部分の凝結を遅延させるためのプロセスも特許請求されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート混和剤のための供給デバイスであって、前記デバイスは、フィルム内に組み込まれたコンクリート混和剤を有する水溶性材料の供給フィルムを含み、前記フィルムは第1の表面および第2の表面を有し、前記第1の表面はコンクリート用の型枠に前記フィルムを取り付けるための手段を有し、前記第2の表面は、前記コンクリート中の水が前記フィルムを溶解して前記混和剤を前記コンクリート中に放出することを可能にするために除去可能である保護ライナーを有し、前記供給フィルムを前記型枠に取り付けるための前記手段は、接着剤支持フィルムに適用された接着剤層を含む、供給デバイス。
【請求項2】
前記水溶性材料がポリビニルアルコールである、請求項1に記載の供給デバイス。
【請求項3】
前記接着剤層が感圧接着剤を含む、請求項1または請求項2に記載の供給デバイス。
【請求項4】
前記接着剤層には接着剤放出ライナーが設けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の供給デバイス。
【請求項5】
前記接着剤放出ライナーが、前記接着剤層の長さまたは側部を越えて延在して、前記接着剤放出ライナーの除去を補助するための把持部分を形成する、請求項4に記載の供給デバイス。
【請求項6】
前記フィルム保護ライナーが、前記供給フィルムの長さまたは側部を越えて延在して、前記フィルム保護ライナーの除去を補助するための把持部分を形成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の供給デバイス。
【請求項7】
前記混和剤が遅延剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の供給デバイス。
【請求項8】
前記遅延剤がリグノスルホン酸塩である、請求項7に記載の供給デバイス。
【請求項9】
前記混和剤が、可塑剤および遅延剤の混合物である、請求項7または請求項8に記載の供給デバイス。
【請求項10】
前記混合物が、可塑剤としてのポリエチレングリコールと遅延剤としてのリグノスルホン酸塩との混合物である、請求項9に記載の供給デバイス。
【請求項11】
コンクリートの表面部分の凝結を遅延させるためのプロセスであって、前記プロセスは、請求項7~10のいずれか一項に記載の供給デバイスを型枠に取り付け、前記保護ライナーを前記供給フィルムから除去して、前記コンクリート中の水が前記フィルムを溶解して前記遅延剤を前記コンクリート中に放出することを可能にすることを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は供給デバイスに関し、特に、混和剤を含有する水溶性フィルムの形態でコンクリートに混和剤を供給するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
強化コンクリートは、建設業界で頻繁に使用される建築材料である。強化コンクリートは、乾燥するにつれて硬化する流体セメントと一緒に結合された骨材で構成される。たとえば鋼などの他の建築材料と比較して、強化コンクリートが有する利点の1つは、コンクリートが建設プロセス中に造形され得ることである。これは通常、コンクリートに所望の形状を与えるように設計された容器または型である型枠に湿潤コンクリートを注入することによって達成される。型枠は通常は一時的なものであり、コンクリートが十分に硬化したら除去される。
【0003】
混和剤は、コンクリートに添加されて、その品質、扱いやすさ、凝結時間を改善するか、または付加的な特徴を提供する材料である。
【0004】
本発明は、具体的には、コンクリートの表面部分への混和剤の供給に関する。たとえば、2つのコンクリート片を接合するとき、あるいは表面がバルクコンクリートとは異なる、たとえば追加の硬度、防水、または装飾もしくは成形された表面などの特性を必要とするときなどに、混和剤がコンクリートの表面部分のみに影響を及ぼすことがしばしば必要である。こうした表面効果を達成するために、従来の方法は、塗装、ローリング、または噴霧による型枠への混和剤の適用を含む。
【0005】
コンクリートに混和剤を使用するときに考慮すべき2つの問題がある。第1に、比較的少量の混和剤が使用されることであり、典型的な量は最大でセメントの5質量%である。そのため、混和剤がその所望の効果を発揮することを確実にするために、正確に測定された量の混和剤をコンクリート混合物に供給することが重要である。
【0006】
第2に、コンクリート製造は時間に影響される。一旦成分が混合されると、コンクリートは硬化する前に適所に置かれる必要がある。よって、通常混和剤は、混合プロセスの直前または最中にコンクリートに添加される。
【0007】
予備測定された量の混和剤をコンクリートに供給するための方法は公知である。たとえば、特許文献1は、容器およびその内容物が湿式ミキサーに導入されてある期間撹拌されると、水溶性容器が溶解して内容物が湿式ミキサー中に放出されるように、水溶性容器中に含有される混和物を記載している。
【0008】
しかし、その文書は、コンクリートのバッチ全体に影響を与える混和剤の供給を記載している。これは、コンクリートの表面部分が残りのコンクリートとは異なる方式で処理される必要があるときの混和剤の適用には適していない。
【0009】
特許文献2は、水溶性材料から形成されたシートを含む、コンクリート混和剤の標的化された供給のための手段を開示しており、このシートは、両方の横方向寸法においてシートの表面にわたって延在する複数のシールされたポケットを有し、各ポケットはある量の混和剤を含有する。
【0010】
それらの従来の方法は、上述の問題を部分的にしか解決しない。第1に、これらの方法は、所定量の混和剤の供給を可能にするが、依然として別個の予備測定ステップを必要とする。さらに、水溶性容器またはポケットの従来の方法は、容器またはポケット自体が時間に影響され、コンクリートに注入する前の貯蔵中、輸送中、または型枠に取り付けられたときに溶解または劣化するため、混和剤供給の時間の影響の問題を完全には解決しない。実際に特許文献1は、混和剤の水溶性容器を収容し保護するために別個の水不溶性容器を使用できることを示唆することによって、その問題を認識している。それは、混和剤供給プロセスにさらなるステップ、したがってさらなるコストを追加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5120367号
【特許文献2】欧州特許第3512677号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、除去可能な保護ライナーを有する水溶性材料のフィルム内に混和剤を組み込むことによって、既存の問題に取り組むものである。このやり方で、別個の予備測定ステップが必要なくなり、フィルムは耐候性かつ実質的に時間に影響されないものとなる。
【0013】
したがって、本発明はコンクリート混和剤のための供給デバイスを提供し、このデバイスは、フィルム内に組み込まれたコンクリート混和剤を有する水溶性材料の供給フィルムを含み、このフィルムは第1の表面および第2の表面を有し、第1の表面はコンクリート用の型枠にフィルムを取り付けるための手段を有し、第2の表面は、コンクリート中の水がフィルムを溶解して混和剤をコンクリート中に放出することを可能にするために除去可能である保護ライナーを有する。
【0014】
水溶性材料は、好適には水溶性ポリマーフィルム形成材料である。好ましい水溶性材料はポリビニルアルコールである。他のポリマーフィルム形成材料としては、ポリエチレンオキシドが挙げられる。加えて水溶性材料は、セルロースまたは発泡体であってもよい。
【0015】
供給フィルムの第1の表面は、型枠に取り付けられる表面である。取り付け手段は、好適には接着剤層であり、接着剤層は好ましくは、型枠との結合を確実にするために軽い圧力を必要とする接着剤である感圧接着剤を含む。感圧接着剤は、典型的には、アクリレートポリマー、天然ゴム、合成熱可塑性エラストマー、またはシリコーンゴムを含み得る粘弾性ポリマーから作製される。
【0016】
接着剤層は、供給フィルムの第1の表面上に直接コーティングされてもよい。しかし、好ましくは、接着剤層は接着剤支持フィルムに適用され、接着剤支持フィルムの上に供給フィルムがコーティングされる。たとえば、供給フィルムの構成要素を溶液中で組み合わせて、この溶液を接着剤支持フィルムの非接着性表面上に噴霧してもよい。
【0017】
使用前の接着を防止するために、接着剤層の上に接着剤放出ライナーを設けてもよい。接着剤放出ライナーは、必要なときに接着剤層を露出させる剥離可能なシートであってもよい。
【0018】
供給フィルムの第2の表面は、フィルムの水溶性材料が時期尚早に水と接触することを防止するためのフィルム保護ライナーを有する。供給フィルムを形成する水溶性材料の接着特性に応じて、フィルム保護ライナーは、片側に自己接着層を有するかまたは有さないプラスチックシートであってもよい。
【0019】
水溶性材料の供給フィルムは、混和剤を組み込んでいる。好適には、混和剤は粉末または微粉化形態に細かく分割され、フィルムの材料全体に、好ましくは均一に分配される。そのやり方で、フィルムを所望の長さに切断することによって必要量の混和剤を適用することができ、よって混和剤の成分を計量または容量測定する必要性が回避される。
【0020】
水溶性材料および混和剤の供給フィルムは、型枠の形状に適合するために十分に可撓性である。
【0021】
本発明の供給フィルムによって処理されるコンクリートの表面部分は、好適には表面から3mm~5mm、好ましくは表面から3mm~4mmの深さである。
【0022】
供給フィルムは、コンクリートの残りの部分に影響を及ぼすことなく、コンクリートの表面部分に影響を及ぼすのに十分な厚さである。好適には、フィルムは50~500ミクロン、好ましくは100~300ミクロン、たとえば約200ミクロンなどの厚さであってもよい。
【0023】
供給フィルムの第2の表面上のフィルム保護ライナーおよび供給フィルムの第1の表面上の接着剤層上の接着剤放出ライナーは、好適には100~300ミクロンの厚さ、たとえば約200ミクロンなどの厚さである。好ましくは、フィルム保護ライナーおよび接着剤放出ライナーは、フィルムまたは接着剤層の長さまたは側部を越えて延在して把持部分を形成し、この部分は非接着性であり、任意選択で補強されており、フィルムおよび接着剤層からライナーを除去するのを補助する。
【0024】
供給フィルムは、自身が取り付けられる型枠の部分に対して適切な形状を有する予め切断された長さで提供されてもよい。たとえば、供給フィルムは細長い長さの形態であってもよいし、正方形、矩形、円形、またはその他の適切な形状を有するタイルの形態であってもよい。予め切断された長さのフィルム保護ライナーおよび接着剤放出ライナーは、上述のとおりの非接着性把持延長部を備えてもよい。
【0025】
代替的に、フィルムはロールの形態で提供されてもよい。この場合、把持延長部は、供給フィルムよりも幅広であるフィルム保護ライナーおよび/または接着剤放出ライナーによって提供されてもよく、それによって、フィルムの各部分が切断される際に把持延長部は横方向延長部を形成する。フィルムがロールの形態で提供されるとき、接着剤層はフィルム保護ライナーの外表面に隣接することとなるので、接着剤層上に接着剤放出ライナーが存在しなくてもよい。この場合、供給フィルムの第1の表面への接着剤層の接着は、フィルム保護ライナーの外表面への接着剤層の接着よりも強くすべきである。そのやり方で、供給フィルムをロールから広げたときに、供給フィルム上の適所にフィルム保護ライナーがあり、かつ型枠への取り付けのために接着剤層が露出されるようにできる。
【0026】
必要とされる特徴に従って、本発明のデバイスにおいて任意のタイプの混和剤が使用されてもよい。最も一般的に使用され、したがって本発明における使用に最も適切である2つの混和剤は、遅延剤および促進剤である。好ましくは、使用される混和剤は遅延剤である。
【0027】
本発明における使用のための混和剤はコンクリートの表面部分にのみ供給されるため、コンクリートのバッチ全体に通常適用されるよりも少量の混和剤が必要である。たとえば、1立方メートルのコンクリートまたは1平方メートルのコンクリート表面を処理するために使用される本発明の供給フィルム中の混和剤の重量は、好適には5g~30g、好ましくは10g~20gである。
【0028】
遅延剤は、コンクリートが凝結プロセスを開始するときに起こる水和反応を遅延させるために使用される。好適な遅延剤としては、スクロース、グルコース、ヒドロキシル化カルボン酸、たとえばグルコン酸、クエン酸、および酒石酸、ならびにそれらの塩など、リグノスルホン酸塩、ホスホン酸塩、リグニン、たとえばホウ砂などのホウ酸塩が挙げられる。好ましい遅延剤はリグノスルホン酸塩、特にリグノスルホン酸ナトリウムである。
【0029】
促進剤はコンクリートの水和を加速させる。好適な促進剤としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、ギ酸カルシウム、トリエタノールアミン、およびチオシアン酸ナトリウムが挙げられる。
【0030】
硬化剤または緻密化剤は、コンクリートをさらに硬化させるのを助け、これはフルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸カリウム、フルオロケイ酸リチウム、またはフルオロケイ酸マグネシウムなどのフルオロケイ酸塩を含む。
【0031】
可塑剤は、コンクリートの施工性および圧縮強度を改善する。可塑剤はコンクリートの保水能力を増加させ、表面からの水の蒸発速度を低下させる。可塑剤は、一般的にセメントの約1重量%にて使用される。これより多い量は強度を低下させ、コンクリートの過剰な分離をもたらす。好適な可塑剤としては、ポリエチレングリコール、特にその低分子量グレード、たとえばポリエチレングリコール400などが挙げられ、これは380~420g/molの分子質量を有する。
【0032】
他の混和剤としては、たとえば空気連行剤、結合剤、腐食防止剤、結晶性混和剤、顔料、およびポンピング助剤などが挙げられる。
【0033】
好適には、本発明の供給フィルム中に2つ以上の混和剤が存在してもよい。混和剤の好ましい組み合わせは、可塑剤と促進剤との混合物、および可塑剤と遅延剤との混合物、たとえば可塑剤としてのポリエチレングリコールと遅延剤としてのリグノスルホン酸塩との混合物などである。
【0034】
本発明の供給フィルムは、たとえば押出しなどの従来のフィルム形成方法によって製造されてもよい。フィルム保護ライナーおよび接着剤放出ライナーは、商業的に入手可能である。
【0035】
本発明の供給デバイスを調製するために、デバイスの構成要素を任意の好適な順序で組み合わせることができる。好ましい方法において、接着剤層は、接着剤支持フィルムの1つの表面に適用される。供給フィルムは、供給フィルム成分の溶液を調製し、非接着性表面接着剤支持フィルムを前記溶液でコーティングすることによって形成される。次いで、接着剤放出ライナーを接着剤層の反対側の表面に適用する。最後に、フィルム保護ライナーを供給フィルムの露出表面に適用する。
【0036】
使用の際に、供給フィルムの第1の表面は、好ましくは接着剤放出ライナーを有する接着剤層によって型枠に取り付けられる。接着剤放出ライナーを剥がして接着剤層を露出させ、次いでこの接着剤層を使用して、強い手の圧力を使用することによって、供給フィルムおよび保護ライナーを型枠に取り付ける。供給フィルムは、型枠が組み立てられる前または後に取り付けられてもよく、実施される建設作業に柔軟性を提供する。
【0037】
供給フィルムの長さおよび形状は、型枠の形状に適合するように調節されることで、コンクリートの表面部分上の必要とされる混和剤の分布を達成する。これは均一な分布であってもよいし、所望のパターンまたは顔料または装飾的特徴によって決定されてもよい。
【0038】
適所にフィルム保護ライナーを有する状態で、供給フィルムが型枠に取り付けられるとき、これは耐候性であり、かつ実質的に時間の影響を受けない。コンクリートを注入するときに、供給フィルムの第2の表面からフィルム保護ライナーが剥がされ、次いで供給フィルムはコンクリートに露出される。セメント中の水が供給フィルムを溶解して混和剤を放出させ、コンクリート表面の混和剤の効果を発揮させる。
【0039】
本発明の供給フィルムを使用してコンクリートの表面部分に特定的に混和剤を供給することによる利点は、使用される混和剤のタイプによって変わる。
【0040】
本供給フィルムにおいて促進剤を使用することにより、コンクリートの表面を最初に硬化させることができ、よって格子として知られる骨材のすぐ上のより繊細な材料の損傷が低減し、建設が完了したときに見えるようになるたとえばコーナー、リベートアングル、およびボルト穴などの重要な表面特徴が保護される。もし促進剤がコンクリートのバッチ全体に添加されれば、それはコンクリート混合物の強度を弱め得る。しかし、もし最初に重要な特徴を保護するために促進剤が表面にのみ添加されれば、残りのコンクリートが完全に硬化する前に型枠を除去することができる。
【0041】
硬化剤を表面のみの適用に使用することによって、風化に対して表面が保護される。促進剤と同様に、硬化剤をコンクリートのバッチ全体に添加すると、コンクリート混合物の強度に対して一貫性のない効果が得られる。
【0042】
防錆剤は、通常コンクリートの表面のみに必要であり、コンクリートがたとえば水処理施設などにおいて使用されるときに有益であり得る。
【0043】
顔料および染料も、一般的にコンクリートの表面部分にのみ必要とされる。これらを表面に適用することによって、コンクリートの表面全体にわたって一定の色を生じさせること、またはバッチ全体に顔料もしくは染料を添加してもできないであろう着色表面パターンを生じさせることが可能である。
【0044】
供給フィルム内の混和剤としての遅延剤の使用は、本発明の好ましい実施形態である。コンクリートの表面部分を処理するために遅延剤を使用することの主要な利益は、表面部分の凝結時間を遅くして表面セメントペーストの手動除去を可能にし、下にあるコンクリートの凝結時間に影響を及ぼすことなくコンクリートの骨材を露出させ得ることである。それは、建築接合部を作製すること、ならびに装飾的な表面効果、レタリング、およびナンバリングを生成することのために有用である。
【0045】
混和剤として遅延剤を含有する本発明の供給デバイスは、予期せぬ有利な特性を示しており、他の方法によって可能であるよりもかなり長い遅延時間を提供する。
【0046】
本発明は特定の機構に限定されないが、供給フィルムが溶解して遅延剤を放出するとき、それはコンクリートの表面部分から水を吸収すると考えられる。硬化プロセスには水が必要であるため、表面部分に水が存在しないことによって、大気中の水分が表面を硬化させるまで、最大72時間にわたって凝結プロセスが効果的に完全に停止される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の供給デバイスを示す断面側面図である。
【
図2】横方向の把持部分を示す、供給デバイスの断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下の供給フィルムおよび供給デバイスの特定の実施例によって、本発明がさらに示される。
【実施例1】
【0049】
供給フィルム
以下の構成要素を用いて供給フィルムを調製した。
ポリビニルアルコールPVA-205 64.75グラム
リグノスルホン酸ナトリウム遅延剤 43.75グラム
ポリエチレングリコール可塑剤PEG400 10.25ml
脱イオン水 131.25ml
【0050】
構成要素を組み合わせ、溶融し、押出機に導入して、厚さ200ミクロンのプラスチックフィルムを形成した。
【実施例2】
【0051】
供給デバイス
ここで、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0052】
図1を参照すると、供給デバイスは、第1の表面1Aおよび第2の表面1Bを有する水溶性供給フィルム1を含む。このフィルムは、遅延剤および可塑剤を含む、実施例1に記載されるとおりの構成要素を含有する。供給フィルム1は、実施例1に記載された溶液を接着剤支持フィルム2の表面上にコーティングすることによって形成され、接着剤支持フィルム2は、他方の表面上にコーティングされた接着剤層2Aを有する。このやり方で、供給フィルムの第1の表面1Aは接着剤層2Aに結合され、接着剤層2Aは供給フィルム1を型枠に取り付けるための手段を提供する。接着剤層2Aは感圧接着剤を含み、かつ接着剤放出ライナー3によって覆われている。供給フィルム1の第2の表面1Bには、除去可能なフィルム保護ライナー4が設けられている。
【0053】
図2において、デバイスの(if)端面図は、フィルム保護ライナー4が供給フィルム1の端縁を越えて横方向に延在する把持部分4Aを有することを示す。同様に、接着剤放出ライナー3は、接着剤支持フィルム2および接着剤層2Aの反対側の端縁を越えて横方向に延在する把持部分3Aを有する。把持部分3Aおよび4Aは、それぞれライナー3および4の除去を補助するために設けられている。
【0054】
操作において、接着剤放出ライナー3は、接着剤層2Aを露出させるために把持部分3Aを用いて剥がされる。これによって、強い手の圧力を使用して供給デバイスを型枠に取り付けることが可能になる。ここで遅延剤を含有する供給フィルム1は、保護ライナー4によって風化から保護され、コンクリートが添加される準備ができるまで型枠上にとどまっていてもよい。コンクリートを注入するときには、把持部4Aを用いてフィルム保護ライナー4が剥がされて、供給フィルム1がコンクリートに露出される。セメント中の水が供給フィルム1を溶解して構成要素を放出させ、遅延剤がコンクリートの表面部分に対して自身の効果を発揮できるようにする。
【0055】
供給デバイスは、コンクリートの凝結を約72時間遅延させ、これは、たとえば遅延剤ゲルの使用などの公知のコンクリート遅延方法よりも少なくとも3倍長い。この増加した期間によって、建設プロセスにおけるより多くの柔軟性が可能となり、したがって結果が改善される。たとえば、下にあるコンクリートの凝結時間に影響を与えることなく、表面セメントペーストを除去し、コンクリートの骨材を露出させて、堅固な建築物を作製するための時間がある。
【0056】
さらに、残余コンクリート表面を水で軟化させ、それを最大3週間後に除去することが可能である。
【0057】
遅延剤供給デバイスは、個体を化学物質、煙霧、粉塵、および蒸気に曝露する高圧ジェット洗浄または振動「スクラビング」ツールを使用する必要性を回避することによる、健康上の利益を有する。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は供給デバイスに関し、特に、混和剤を含有する水溶性フィルムの形態でコンクリートに混和剤を供給するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
強化コンクリートは、建設業界で頻繁に使用される建築材料である。強化コンクリートは、乾燥するにつれて硬化する流体セメントと一緒に結合された骨材で構成される。たとえば鋼などの他の建築材料と比較して、強化コンクリートが有する利点の1つは、コンクリートが建設プロセス中に造形され得ることである。これは通常、コンクリートに所望の形状を与えるように設計された容器または型である型枠に湿潤コンクリートを注入することによって達成される。型枠は通常は一時的なものであり、コンクリートが十分に硬化したら除去される。
【0003】
混和剤は、コンクリートに添加されて、その品質、扱いやすさ、凝結時間を改善するか、または付加的な特徴を提供する材料である。
【0004】
本発明は、具体的には、コンクリートの表面部分への混和剤の供給に関する。たとえば、2つのコンクリート片を接合するとき、あるいは表面がバルクコンクリートとは異なる、たとえば追加の硬度、防水、または装飾もしくは成形された表面などの特性を必要とするときなどに、混和剤がコンクリートの表面部分のみに影響を及ぼすことがしばしば必要である。こうした表面効果を達成するために、従来の方法は、塗装、ローリング、または噴霧による型枠への混和剤の適用を含む。
【0005】
コンクリートに混和剤を使用するときに考慮すべき2つの問題がある。第1に、比較的少量の混和剤が使用されることであり、典型的な量は最大でセメントの5質量%である。そのため、混和剤がその所望の効果を発揮することを確実にするために、正確に測定された量の混和剤をコンクリート混合物に供給することが重要である。
【0006】
第2に、コンクリート製造は時間に影響される。一旦成分が混合されると、コンクリートは硬化する前に適所に置かれる必要がある。よって、通常混和剤は、混合プロセスの直前または最中にコンクリートに添加される。
【0007】
予備測定された量の混和剤をコンクリートに供給するための方法は公知である。たとえば、特許文献1は、容器およびその内容物が湿式ミキサーに導入されてある期間撹拌されると、水溶性容器が溶解して内容物が湿式ミキサー中に放出されるように、水溶性容器中に含有される混和物を記載している。
【0008】
しかし、その文書は、コンクリートのバッチ全体に影響を与える混和剤の供給を記載している。これは、コンクリートの表面部分が残りのコンクリートとは異なる方式で処理される必要があるときの混和剤の適用には適していない。
【0009】
特許文献2は、水溶性材料から形成されたシートを含む、コンクリート混和剤の標的化された供給のための手段を開示しており、このシートは、両方の横方向寸法においてシートの表面にわたって延在する複数のシールされたポケットを有し、各ポケットはある量の混和剤を含有する。
【0010】
それらの従来の方法は、上述の問題を部分的にしか解決しない。第1に、これらの方法は、所定量の混和剤の供給を可能にするが、依然として別個の予備測定ステップを必要とする。さらに、水溶性容器またはポケットの従来の方法は、容器またはポケット自体が時間に影響され、コンクリートに注入する前の貯蔵中、輸送中、または型枠に取り付けられたときに溶解または劣化するため、混和剤供給の時間の影響の問題を完全には解決しない。実際に特許文献1は、混和剤の水溶性容器を収容し保護するために別個の水不溶性容器を使用できることを示唆することによって、その問題を認識している。それは、混和剤供給プロセスにさらなるステップ、したがってさらなるコストを追加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5120367号
【特許文献2】欧州特許第3512677号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、除去可能な保護ライナーを有する水溶性材料のフィルム内に混和剤を組み込むことによって、既存の問題に取り組むものである。このやり方で、別個の予備測定ステップが必要なくなり、フィルムは耐候性かつ実質的に時間に影響されないものとなる。
【0013】
特開平1045992号および特開2000167815号は、接着剤も含有する水溶性フィルム内に組み込まれた遅延剤を有する供給デバイスを記載している。特開平11127721号は、フィルムによって包囲された金属塩を記載している。したがって、本発明はコンクリート混和剤のための供給デバイスを提供し、このデバイスは、フィルム内に組み込まれたコンクリート混和剤を有する水溶性材料の供給フィルムを含み、このフィルムは第1の表面および第2の表面を有し、第1の表面はコンクリート用の型枠にフィルムを取り付けるための手段を有し、第2の表面は、コンクリート中の水がフィルムを溶解して混和剤をコンクリート中に放出することを可能にするために除去可能である保護ライナーを有し、供給フィルムを型枠に取り付けるための手段は、接着剤支持フィルムに適用された接着剤層を含む。
【0014】
水溶性材料は、好適には水溶性ポリマーフィルム形成材料である。好ましい水溶性材料はポリビニルアルコールである。他のポリマーフィルム形成材料としては、ポリエチレンオキシドが挙げられる。加えて水溶性材料は、セルロースまたは発泡体であってもよい。
【0015】
供給フィルムの第1の表面は、型枠に取り付けられる表面である。取り付け手段は、好適には接着剤層であり、接着剤層は好ましくは、型枠との結合を確実にするために軽い圧力を必要とする接着剤である感圧接着剤を含む。感圧接着剤は、典型的には、アクリレートポリマー、天然ゴム、合成熱可塑性エラストマー、またはシリコーンゴムを含み得る粘弾性ポリマーから作製される。
【0016】
接着剤層は接着剤支持フィルムに適用され、接着剤支持フィルムの上に供給フィルムがコーティングされる。たとえば、供給フィルムの構成要素を溶液中で組み合わせて、この溶液を接着剤支持フィルムの非接着性表面上に噴霧してもよい。
【0017】
使用前の接着を防止するために、接着剤層の上に接着剤放出ライナーを設けてもよい。接着剤放出ライナーは、必要なときに接着剤層を露出させる剥離可能なシートであってもよい。
【0018】
供給フィルムの第2の表面は、フィルムの水溶性材料が時期尚早に水と接触することを防止するためのフィルム保護ライナーを有する。供給フィルムを形成する水溶性材料の接着特性に応じて、フィルム保護ライナーは、片側に自己接着層を有するかまたは有さないプラスチックシートであってもよい。
【0019】
水溶性材料の供給フィルムは、混和剤を組み込んでいる。好適には、混和剤は粉末または微粉化形態に細かく分割され、フィルムの材料全体に、好ましくは均一に分配される。そのやり方で、フィルムを所望の長さに切断することによって必要量の混和剤を適用することができ、よって混和剤の成分を計量または容量測定する必要性が回避される。
【0020】
水溶性材料および混和剤の供給フィルムは、型枠の形状に適合するために十分に可撓性である。
【0021】
本発明の供給フィルムによって処理されるコンクリートの表面部分は、好適には表面から3mm~5mm、好ましくは表面から3mm~4mmの深さである。
【0022】
供給フィルムは、コンクリートの残りの部分に影響を及ぼすことなく、コンクリートの表面部分に影響を及ぼすのに十分な厚さである。好適には、フィルムは50~500ミクロン、好ましくは100~300ミクロン、たとえば約200ミクロンなどの厚さであってもよい。
【0023】
供給フィルムの第2の表面上のフィルム保護ライナーおよび供給フィルムの第1の表面上の接着剤層上の接着剤放出ライナーは、好適には100~300ミクロンの厚さ、たとえば約200ミクロンなどの厚さである。好ましくは、フィルム保護ライナーおよび接着剤放出ライナーは、フィルムまたは接着剤層の長さまたは側部を越えて延在して把持部分を形成し、この部分は非接着性であり、任意選択で補強されており、フィルムおよび接着剤層からライナーを除去するのを補助する。
【0024】
供給フィルムは、自身が取り付けられる型枠の部分に対して適切な形状を有する予め切断された長さで提供されてもよい。たとえば、供給フィルムは細長い長さの形態であってもよいし、正方形、矩形、円形、またはその他の適切な形状を有するタイルの形態であってもよい。予め切断された長さのフィルム保護ライナーおよび接着剤放出ライナーは、上述のとおりの非接着性把持延長部を備えてもよい。
【0025】
代替的に、フィルムはロールの形態で提供されてもよい。この場合、把持延長部は、供給フィルムよりも幅広であるフィルム保護ライナーおよび/または接着剤放出ライナーによって提供されてもよく、それによって、フィルムの各部分が切断される際に把持延長部は横方向延長部を形成する。フィルムがロールの形態で提供されるとき、接着剤層はフィルム保護ライナーの外表面に隣接することとなるので、接着剤層上に接着剤放出ライナーが存在しなくてもよい。この場合、供給フィルムの第1の表面への接着剤層の接着は、フィルム保護ライナーの外表面への接着剤層の接着よりも強くすべきである。そのやり方で、供給フィルムをロールから広げたときに、供給フィルム上の適所にフィルム保護ライナーがあり、かつ型枠への取り付けのために接着剤層が露出されるようにできる。
【0026】
必要とされる特徴に従って、本発明のデバイスにおいて任意のタイプの混和剤が使用されてもよい。最も一般的に使用され、したがって本発明における使用に最も適切である2つの混和剤は、遅延剤および促進剤である。好ましくは、使用される混和剤は遅延剤である。
【0027】
本発明における使用のための混和剤はコンクリートの表面部分にのみ供給されるため、コンクリートのバッチ全体に通常適用されるよりも少量の混和剤が必要である。たとえば、1立方メートルのコンクリートまたは1平方メートルのコンクリート表面を処理するために使用される本発明の供給フィルム中の混和剤の重量は、好適には5g~30g、好ましくは10g~20gである。
【0028】
遅延剤は、コンクリートが凝結プロセスを開始するときに起こる水和反応を遅延させるために使用される。好適な遅延剤としては、スクロース、グルコース、ヒドロキシル化カルボン酸、たとえばグルコン酸、クエン酸、および酒石酸、ならびにそれらの塩など、リグノスルホン酸塩、ホスホン酸塩、リグニン、たとえばホウ砂などのホウ酸塩が挙げられる。好ましい遅延剤はリグノスルホン酸塩、特にリグノスルホン酸ナトリウムである。
【0029】
促進剤はコンクリートの水和を加速させる。好適な促進剤としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、ギ酸カルシウム、トリエタノールアミン、およびチオシアン酸ナトリウムが挙げられる。
【0030】
硬化剤または緻密化剤は、コンクリートをさらに硬化させるのを助け、これはフルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸カリウム、フルオロケイ酸リチウム、またはフルオロケイ酸マグネシウムなどのフルオロケイ酸塩を含む。
【0031】
可塑剤は、コンクリートの施工性および圧縮強度を改善する。可塑剤はコンクリートの保水能力を増加させ、表面からの水の蒸発速度を低下させる。可塑剤は、一般的にセメントの約1重量%にて使用される。これより多い量は強度を低下させ、コンクリートの過剰な分離をもたらす。好適な可塑剤としては、ポリエチレングリコール、特にその低分子量グレード、たとえばポリエチレングリコール400などが挙げられ、これは380~420g/molの分子質量を有する。
【0032】
他の混和剤としては、たとえば空気連行剤、結合剤、腐食防止剤、結晶性混和剤、顔料、およびポンピング助剤などが挙げられる。
【0033】
好適には、本発明の供給フィルム中に2つ以上の混和剤が存在してもよい。混和剤の好ましい組み合わせは、可塑剤と促進剤との混合物、および可塑剤と遅延剤との混合物、たとえば可塑剤としてのポリエチレングリコールと遅延剤としてのリグノスルホン酸塩との混合物などである。
【0034】
本発明の供給フィルムは、たとえば押出しなどの従来のフィルム形成方法によって製造されてもよい。フィルム保護ライナーおよび接着剤放出ライナーは、商業的に入手可能である。
【0035】
本発明の供給デバイスを調製するために、デバイスの構成要素を任意の好適な順序で組み合わせることができる。好ましい方法において、接着剤層は、接着剤支持フィルムの1つの表面に適用される。供給フィルムは、供給フィルム成分の溶液を調製し、非接着性表面接着剤支持フィルムを前記溶液でコーティングすることによって形成される。次いで、接着剤放出ライナーを接着剤層の反対側の表面に適用する。最後に、フィルム保護ライナーを供給フィルムの露出表面に適用する。
【0036】
使用の際に、供給フィルムの第1の表面は、好ましくは接着剤放出ライナーを有する接着剤層によって型枠に取り付けられる。接着剤放出ライナーを剥がして接着剤層を露出させ、次いでこの接着剤層を使用して、強い手の圧力を使用することによって、供給フィルムおよび保護ライナーを型枠に取り付ける。供給フィルムは、型枠が組み立てられる前または後に取り付けられてもよく、実施される建設作業に柔軟性を提供する。
【0037】
供給フィルムの長さおよび形状は、型枠の形状に適合するように調節されることで、コンクリートの表面部分上の必要とされる混和剤の分布を達成する。これは均一な分布であってもよいし、所望のパターンまたは顔料または装飾的特徴によって決定されてもよい。
【0038】
適所にフィルム保護ライナーを有する状態で、供給フィルムが型枠に取り付けられるとき、これは耐候性であり、かつ実質的に時間の影響を受けない。コンクリートを注入するときに、供給フィルムの第2の表面からフィルム保護ライナーが剥がされ、次いで供給フィルムはコンクリートに露出される。コンクリート中の水が供給フィルムを溶解して混和剤を放出させ、コンクリート表面の混和剤の効果を発揮させる。
【0039】
本発明の供給フィルムを使用してコンクリートの表面部分に特定的に混和剤を供給することによる利点は、使用される混和剤のタイプによって変わる。
【0040】
本供給フィルムにおいて促進剤を使用することにより、コンクリートの表面を最初に硬化させることができ、よって格子として知られる骨材のすぐ上のより繊細な材料の損傷が低減し、建設が完了したときに見えるようになるたとえばコーナー、リベートアングル、およびボルト穴などの重要な表面特徴が保護される。もし促進剤がコンクリートのバッチ全体に添加されれば、それはコンクリート混合物の強度を弱め得る。しかし、もし最初に重要な特徴を保護するために促進剤が表面にのみ添加されれば、残りのコンクリートが完全に硬化する前に型枠を除去することができる。
【0041】
硬化剤を表面のみの適用に使用することによって、風化に対して表面が保護される。促進剤と同様に、硬化剤をコンクリートのバッチ全体に添加すると、コンクリート混合物の強度に対して一貫性のない効果が得られる。
【0042】
防錆剤は、通常コンクリートの表面のみに必要であり、コンクリートがたとえば水処理施設などにおいて使用されるときに有益であり得る。
【0043】
顔料および染料も、一般的にコンクリートの表面部分にのみ必要とされる。これらを表面に適用することによって、コンクリートの表面全体にわたって一定の色を生じさせること、またはバッチ全体に顔料もしくは染料を添加してもできないであろう着色表面パターンを生じさせることが可能である。
【0044】
供給フィルム内の混和剤としての遅延剤の使用は、本発明の好ましい実施形態である。コンクリートの表面部分を処理するために遅延剤を使用することの主要な利益は、表面部分の凝結時間を遅くして表面セメントペーストの手動除去を可能にし、下にあるコンクリートの凝結時間に影響を及ぼすことなくコンクリートの骨材を露出させ得ることである。それは、建築接合部を作製すること、ならびに装飾的な表面効果、レタリング、およびナンバリングを生成することのために有用である。
【0045】
混和剤として遅延剤を含有する本発明の供給デバイスは、予期せぬ有利な特性を示しており、他の方法によって可能であるよりもかなり長い遅延時間を提供する。
【0046】
本発明は特定の機構に限定されないが、供給フィルムが溶解して遅延剤を放出するとき、それはコンクリートの表面部分から水を吸収すると考えられる。硬化プロセスには水が必要であるため、表面部分に水が存在しないことによって、大気中の水分が表面を硬化させるまで、最大72時間にわたって凝結プロセスが効果的に完全に停止される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の供給デバイスを示す断面側面図である。
【
図2】横方向の把持部分を示す、供給デバイスの断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下の供給フィルムおよび供給デバイスの特定の実施例によって、本発明がさらに示される。
【実施例1】
【0049】
供給フィルム
以下の構成要素を用いて供給フィルムを調製した。
ポリビニルアルコールPVA-205 64.75グラム
リグノスルホン酸ナトリウム遅延剤 43.75グラム
ポリエチレングリコール可塑剤PEG400 10.25ml
脱イオン水 131.25ml
【0050】
構成要素を組み合わせ、溶融し、押出機に導入して、厚さ200ミクロンのプラスチックフィルムを形成した。
【実施例2】
【0051】
供給デバイス
ここで、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0052】
図1を参照すると、供給デバイスは、第1の表面1Aおよび第2の表面1Bを有する水溶性供給フィルム1を含む。このフィルムは、遅延剤および可塑剤を含む、実施例1に記載されるとおりの構成要素を含有する。供給フィルム1は、実施例1に記載された溶液を接着剤支持フィルム2の表面上にコーティングすることによって形成され、接着剤支持フィルム2は、他方の表面上にコーティングされた接着剤層2Aを有する。このやり方で、供給フィルムの第1の表面1Aは接着剤層2Aに結合され、接着剤層2Aは供給フィルム1を型枠に取り付けるための手段を提供する。接着剤層2Aは感圧接着剤を含み、かつ接着剤放出ライナー3によって覆われている。供給フィルム1の第2の表面1Bには、除去可能なフィルム保護ライナー4が設けられている。
【0053】
図2において、デバイスの(if)端面図は、フィルム保護ライナー4が供給フィルム1の端縁を越えて横方向に延在する把持部分4Aを有することを示す。同様に、接着剤放出ライナー3は、接着剤支持フィルム2および接着剤層2Aの反対側の端縁を越えて横方向に延在する把持部分3Aを有する。把持部分3Aおよび4Aは、それぞれライナー3および4の除去を補助するために設けられている。
【0054】
操作において、接着剤放出ライナー3は、接着剤層2Aを露出させるために把持部分3Aを用いて剥がされる。これによって、強い手の圧力を使用して供給デバイスを型枠に取り付けることが可能になる。ここで遅延剤を含有する供給フィルム1は、保護ライナー4によって風化から保護され、コンクリートが添加される準備ができるまで型枠上にとどまっていてもよい。コンクリートを注入するときには、把持部分4Aを用いてフィルム保護ライナー4が剥がされて、供給フィルム1がコンクリートに露出される。コンクリート中の水が供給フィルム1を溶解して構成要素を放出させ、遅延剤がコンクリートの表面部分に対して自身の効果を発揮できるようにする。
【0055】
供給デバイスは、コンクリートの凝結を約72時間遅延させ、これは、たとえば遅延剤ゲルの使用などの公知のコンクリート遅延方法よりも少なくとも3倍長い。この増加した期間によって、建設プロセスにおけるより多くの柔軟性が可能となり、したがって結果が改善される。たとえば、下にあるコンクリートの凝結時間に影響を与えることなく、表面セメントペーストを除去し、コンクリートの骨材を露出させて、堅固な建築物を作製するための時間がある。
【0056】
さらに、残余コンクリート表面を水で軟化させ、それを最大3週間後に除去することが可能である。
【0057】
遅延剤供給デバイスは、個体を化学物質、煙霧、粉塵、および蒸気に曝露する高圧ジェット洗浄または振動「スクラビング」ツールを使用する必要性を回避することによる、健康上の利益を有する。
【国際調査報告】