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特表2023-517265ルテニウム前駆体、それを用いたアンモニア反応触媒及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ルテニウム前駆体、それを用いたアンモニア反応触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20230418BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20230418BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B01J23/63 M
C01B3/04 B
B01J37/04 102
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540806
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 KR2020019461
(87)【国際公開番号】W WO2021137643
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0177727
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509214447
【氏名又は名称】株式会社 圓▲益▼マテリアルズ
【氏名又は名称原語表記】WONIK Materials Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】30, Yangcheong 3-gil, Ochang-eup, Cheongwon-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do 28116 korea
(71)【出願人】
【識別番号】505474810
【氏名又は名称】韓國科學技術研究院
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】(Hawolgok-dong)5, Hwarang-ro 14-gil, Seongbuk-gu, Seoul 02792 Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョ ビョンオク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンレ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ソクヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】パク セミ
(72)【発明者】
【氏名】パク ミョンゴン
(72)【発明者】
【氏名】カン ミンス
(72)【発明者】
【氏名】ユン チャンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヒョンテ
(72)【発明者】
【氏名】チャ ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ テホ
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA21C
4G169BA26C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BE08C
4G169BE09C
4G169BE14C
4G169BE18C
4G169BE42C
4G169BE47C
4G169CB81
4G169DA05
4G169FB06
4G169FB14
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、ルテニウム前駆体化合物に関する。特に、アンモニア分解反応触媒にルテニウムを提供するためのルテニウム前駆体化合物であって、下記式(1)
【化1】
(式中、xは3~20の整数であり、yは0~32の整数であり、zは0~20の整数であり、mは0~10の整数であり、nは1~3の整数である。)で示されるルテニウム前駆体化合物に関するものである。また、本発明は、前記ルテニウム前駆体を用いたアンモニア反応触媒及びその製造方法に関し、低温でアンモニア転化率に優れ、効率的な水素生産が可能なアンモニア反応触媒を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア分解反応触媒にルテニウムを提供するためのルテニウム前駆体化合物であって、
前記ルテニウム前駆体は、下記式(1)
【化1】
(式中、xは3~20の整数であり、yは0~32の整数であり、zは0~20の整数であり、mは0~10の整数であり、nは1~3の整数である。)で示されることを特徴とするルテニウム前駆体化合物。
【請求項2】
前記ルテニウム前駆体が、カルボニル基、エステル基、カルボキシル基、ニトリル、ニトロ基、アミン基、又はカルボン酸塩を含むことを特徴とする請求項1に記載のルテニウム前駆体化合物。
【請求項3】
前記ルテニウム前駆体は、ルテニウムが不飽和化合物、芳香族化合物、及び窒素酸化物の少なくとも1以上の化合物と配位結合を形成していることを特徴とする請求項1に記載のルテニウム前駆体化合物。
【請求項4】
前記アンモニア分解反応触媒は、ランタノイド族元素がドープされた支持体を含むことを特徴とする請求項1に記載のルテニウム前駆体化合物。
【請求項5】
(A)下記式(1)
【化2】
(式中、xは3~20の整数であり、yは0~32の整数であり、zは0~20の整数であり、mは0~10の整数であり、nは1~3の整数である。)で示されるルテニウム前駆体を溶媒に溶解して、ルテニウム前駆体溶液を製造する工程;及び
(B)触媒支持体と前記ルテニウム前駆体溶液を混合し、触媒支持体にルテニウムを提供する工程;
を含む、ルテニウム系アンモニア分解反応触媒の製造方法。
【請求項6】
前記工程(B)の後、(C)湯煎して液相成分を除去する工程;をさらに含む請求項5に記載のルテニウム系アンモニア分解反応触媒の製造方法。
【請求項7】
前記ルテニウム系アンモニア分解反応触媒は、
ルテニウム系アンモニア分解反応触媒100モル部;及び
ランタン0.1~100モル部;
を含むことを特徴とする請求項5に記載のルテニウム系アンモニア分解反応触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたルテニウム系アンモニア分解反応触媒。
【請求項9】
前記ルテニウム系アンモニア分解反応触媒は、
ルテニウム系アンモニア分解反応触媒100重量部;及び
ルテニウム0.01~5重量部;
を含むことを特徴とする請求項8に記載のルテニウム系アンモニア分解反応触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム前駆体化合物に関し、特に、アンモニア分解反応触媒にルテニウムを提供するためのルテニウム前駆体化合物及びそれを用いたルテニウム系アンモニア反応触媒の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石燃料は、現在、最も広く使用されている資源であるが、その無分別な使用による地球温暖化問題が台頭している。そのため、クリーンエネルギー源の研究開発が重要とされており、特に水素の生産及び活用に関する様々な研究が行われている。
【0003】
水素を活用して燃料電池を運転する場合、環境にやさしいだけでなく、従来の内燃機関の2~3倍に達するエネルギー転換効率を期待することができる。従って、今後の水素は、燃料電池による電気生産、自動車分野、船舶分野など様々な分野に適用されると予想される。
【0004】
現在、水素生産技術による水素は、化石燃料基盤の副生水素、抽出水素、再生エネルギー基盤の水電解水素が代表的である。化石燃料をもとに得られる抽出水素の代表的な生産方法は、水蒸気改質反応を活用して水素と一酸化炭素の混合ガスを生産し、これを分離精製して水素を生産する方法があるが、長期的な観点から脱炭素化政策に適合しない。
【0005】
一方、アンモニアは、下記反応スキームのように窒素と水素だけで分解が可能であり、化石燃料の分解による水素生産と異なり、環境問題を引き起こさず、積極的な研究が必要な実状である。
<反応スキーム>
【化1】
【0006】
特許文献1は、アンモニアを分解して水素を製造するに際に、コバルト又はニッケル、及び金属化合物を含む触媒を用いる方法を開示し、特許文献2は、アンモニア酸化反応用触媒として正方形白金ナノ粒子を開示している。また、特許文献3は、ルテニウムなどの金属を含むアンモニアから水素を生成するための触媒を開示しているが、このようなルテニウム含有触媒の製造において必須のルテニウム前駆体については研究が不十分な実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本 特許 第5778309号
【特許文献2】韓国 特許 第1938333号
【特許文献3】韓国 特許 第1924952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明のルテニウム前駆体化合物は、前記のような問題点を解決するために案出されたものであり、アンモニア分解反応触媒にルテニウムを提供するためのルテニウム前駆体化合物を提示することをその目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記ルテニウム前駆体化合物を用いたアンモニア分解反応触媒の製造方法を提供することを別の目的とする。
【0010】
本発明はまた、前記の明確な目的に加えて、そのような目的及び本明細書の全般的な技術からこの分野の通常の者によって容易に導出され得る他の目的を達成することをその目的とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のルテニウム前駆体化合物は、前記のような問題点を解決するために案出されたものであり、アンモニア分解反応触媒にルテニウムを提供するためのルテニウム前駆体化合物であって、前記ルテニウム前駆体は下記式(1)
【化2】
(式中、xは3~20の整数であり、yは0~32の整数であり、zは0~20の整数であり、mは0~10の整数であり、nは1~3の整数である。)で示されることを特徴とする。
【0012】
また、前記ルテニウム前駆体は、カルボニル基、エステル基、カルボキシル基、ニトリル、ニトロ基、アミン基、又はカルボン酸塩を含むことができる。
【0013】
さらに、前記ルテニウム前駆体は、ハロゲン元素を含まなくてもよい。
【0014】
また、前記ルテニウム前駆体は、ルテニウムにカルボニルが少なくとも1以上直接結合されていてもよい。
【0015】
さらに、前記y及びmが0の場合には、x=zを満たすことができる。
【0016】
また、前記ルテニウム前駆体は、ルテニウムペンタカルボニル、トリルテニウムトデカカルボニル、ルテニウム(III)ニトロシルニトラート、ルテニウム(III)アセチルアセトネート、及びこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0017】
さらに、前記ルテニウム前駆体は、ルテニウムが不飽和化合物、芳香族化合物、及び窒素酸化物の少なくとも1以上の化合物と配位結合を形成していることができる。
【0018】
また、前記ルテニウム前駆体は、ルテノセン、ルテニウム(III)ニトロシルニトラート溶液、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)(、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(2,4-ジメチルペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(シクロペンタジエニルルテニウムジカルボニル)二量体、オクタメチルルテノセン、ルテニウムホルメート、ルテニウムアセテート、ルテニウムプロピオネート、ルテニウムブチレート、トリス(アセチルアセトネート)ルテニウム及びこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0019】
さらに、前記アンモニア分解反応触媒は、ランタノイド族元素がドープされた支持体を含むことができる。
【0020】
また、前記ランタノイド族元素は、ランタン、セリウム、及びこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0021】
さらに、前記支持体は、SiO2、CeO2、ZrO2、TiO2、MgO、Al23、V25、Fe23、Co34、Ce-ZrO、MgO-Al23、及びこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0022】
また、前記アンモニア分解反応触媒は、ランタンアルミネートであってもよい。
【0023】
一方、本発明のルテニウム系アンモニア分解反応触媒の製造方法は、
(A)下記式(1)で
【化3】
(式中、xは3~20の整数であり、yは0~32の整数であり、zは0~20の整数であり、mは0~10の整数であり、nは1~3の整数である。)
示されるルテニウム前駆体を溶媒に溶解させてルテニウム前駆体溶液を製造する工程;及び
(B)触媒支持体と前記ルテニウム前駆体溶液を混合して触媒支持体にルテニウムを提供する工程;
を含むことを特徴とする。
【0024】
また、前記ルテニウム前駆体は、カルボニル基、エステル基、カルボキシル基、ニトリル、ニトロ基、アミン基、又はカルボン酸塩を含むことができる。
【0025】
さらに、前記ルテニウム前駆体は、ルテニウムにカルボニルが少なくとも1以上直接結合されていてもよい。
【0026】
また、前記y及びmが0の場合には、x=zであってもよい。
【0027】
さらに、前記ルテニウム前駆体は、ルテニウムペンタカルボニル、トリルテニウムトデカカルボニル、ルテノセン、ルテニウム(III)ニトロシルニトラート溶液、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(2,4-ジメチルペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(シクロペンタジエニルルテニウムジカルボニル)二量体、オクタメチルルテノセン、ルテニウム(III)ニトロシルニトラート、ルテニウム(III)アセチルアセトネート及びこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0028】
また、前記ルテニウム前駆体は、ルテニウムが不飽和化合物、芳香族化合物、及び窒素酸化物の少なくとも1以上の化合物と配位結合を形成していてもよい。
【0029】
さらに、前記ルテニウム前駆体は、ルテニウムホルメート、ルテニウムアセテート、ルテニウムプロピオネート、ルテニウムブチレート、トリス(アセチルアセトネート)ルテニウム及びこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0030】
また、前記溶媒は、水、ヘキサン、トルエン、及びこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0031】
さらに、前記触媒支持体は、ランタノイド族元素を含むことができる。
【0032】
また、前記ランタノイド族元素は、ランタン、セリウム、及びこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0033】
また、前記触媒支持体は、SiO2、CeO2、ZrO2、TiO2、MgO、Al23、V25、Fe23、Co34、Ce-ZrO、MgO-Al23、及びこれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0034】
さらに、前記触媒支持体は、ランタンアルミネートであってもよい。
【0035】
また、前記触媒支持体は、パウダータイプ、ペレットタイプ、又はモノリスタイプであってもよい。
【0036】
さらに、前記工程(B)の後、
(C)湯煎して液相成分を除去する工程;をさらに含むことができる。
【0037】
また、前記工程(C)は、10~100℃、好ましくは30~90℃、より好ましくは40~80℃の条件で行うことができる。
【0038】
さらに、前記工程(C)の後、
(D)乾燥する工程;をさらに含むことができる。
【0039】
また、前記工程(D)は、50~200℃、好ましくは80~150℃、より好ましくは100~120℃の条件で行うことができる。
【0040】
さらに、前記ルテニウム系アンモニア分解反応触媒は、
ルテニウム系アンモニア分解反応触媒100モル部;及び
ランタン0.1~100モル部、好ましくは2~60モル部、より好ましくは5~30モル部;を含むことができる。
【0041】
一方、本発明のアンモニア分解反応触媒は、前記ルテニウム系アンモニア分解反応触媒の製造方法により製造されることを特徴とする。
【0042】
また、前記ルテニウム系アンモニア分解反応触媒は、
ルテニウム系アンモニア分解反応触媒100重量部;及び
ルテニウム0.01~5重量部、好ましくは0.02~3重量部、より好ましくは0.1~2重量部;を含むことができる。
【0043】
さらに、前記ルテニウム系アンモニア分解反応触媒は、下記の反応条件でアンモニア転化率が65~100%、好ましくは72~100%、より好ましくは76.5~100%を示すことができる。
【0044】
[反応条件]
実験温度(℃):350~650℃
還元ガス:4~50% H2/N2
GHSV(mL/h・gcat):1,000~100,000
【発明の効果】
【0045】
本発明によるルテニウム前駆体化合物は、ルテニウム前駆体の還元処理時に塩化水素が生成されず、反応器内部の腐食及び装置の耐久性低下を防止することができる。
【0046】
また、本発明によるアンモニア分解反応触媒は、熱安定性に優れ、高温で焼結現象を抑制し、ルテニウム金属の成長を阻害して広い表面積を維持することができ、触媒としての性能が非常に優れている。
【0047】
さらに、本発明によるアンモニア分解反応触媒の製造方法は、前記ルテニウム前駆体を用いてルテニウムをアンモニア分解反応触媒に導入する方法であって、これにより製造されたアンモニア分解反応触媒は、アンモニア転化率が非常に優れて水素生成に有意に向上された性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施例及び比較例による触媒性能の評価結果である。
図2】従来ルテニウム前駆体の還元処理によりガスケット及び反応器内部が汚染された様相を示す画像である。
図3】本発明の実施例及び比較例による触媒のアンモニア反応前の画像である。
図4】本発明の実施例及び比較例による触媒のアンモニア反応後の画像である。
図5】本発明の比較例による触媒の還元温度に応じたRu金属焼結(sintering)の観察結果である。
図6】本発明の実施例による触媒の還元温度に応じたRu金属焼結の観察結果である。
図7】本発明の比較例による触媒の還元温度に応じたRu金属焼結のTEM-EDS観察結果である。
図8】本発明の実施例による触媒の還元温度に応じたRu金属焼結のTEM-EDS観察結果である。
図9】本発明の比較例である触媒の還元に応じたRu金属焼結の観察結果である。
図10】本発明の比較例である触媒の還元に応じたRu金属焼結の観察結果である。
図11】本発明の比較例である触媒の還元に応じたRu金属焼結のTEM-EDS観察結果である。
図12】本発明の比較例である触媒の還元に応じたRu金属焼結のTEM-EDS観察結果である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の好ましい実施例について詳細に説明する。
但し、以下は、特定の実施例を例示して詳細に説明するものであり、本発明は様々に変更することができ、様々な形態を有することができるので、例示された特定の実施例に本発明が限定されるものではない。本発明は、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0050】
また、以下の説明では、具体的な構成要素などのような多くの特定事項が説明されており、これは、本発明のより全体的な理解を助けるために提供されるものであり、これらの特定事項なしで本発明が実施できることは、この技術分野において通常の知識を有する者には自明であろう。そして、本発明の説明において、関連する公知の機能又は構成の具体的な説明が本発明の要旨を不要に曇らせると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0051】
そして、本出願で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定することを意図するものではない。他に定義されない限り、技術的又は科学的な用語を含む本明細書で使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同じ意味を有している。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本出願で明確に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されない。
【0052】
本出願において、単数の表現は、文脈上明らかに別段の意味を持たない限り、複数の表現を含む。
【0053】
本出願において、「含む」、「含有する」又は「有する」等の用語は、明細書に記載された特徴、構成要素(又は構成成分)等が存在することを指すものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴や構成要素などが存在しないか、付加できないことを意味するものではない。
【0054】
本発明のルテニウム前駆体化合物は、アンモニア分解反応触媒にルテニウムを提供するためのルテニウム前駆体化合物であって、前記ルテニウム前駆体は、下記式(1)
【化4】
(式中、xは3~20の整数であり、yは0~32の整数であり、zは0~20の整数であり、mは0~10の整数であり、nは1~3の整数である。)で示されることを特徴とする。
【0055】
従来のルテニウムクロリドのようなルテニウム前駆体の場合には、還元処理時に塩化水素が発生することが問題になっており、下記反応スキーム1に従って生成された塩化水素が反応器内部を腐食させて装置の耐久性を低下させたためである。
【0056】
<反応スキーム1>
【化5】
【0057】
【表1】
【0058】
前記表1に、前記Cl-成分の触媒相の有無及びH2還元処理によるCl-成分の減少の有無を確認するため、IC(イオン・クロマトグラフィ)分析を行った結果を示した。結果からわかるように、RuCl3前駆体を用いて製造された触媒は、製造過程で触媒相に5%ほどのCl-成分が担持されたことを確認でき、H2還元処理によりその量が減少することを示した。図2は、還元後に発生した塩化水素によって汚染されたガスケット及び反応器内部の画像である。したがって、前記の問題を解決するために、従来のルテニウム前駆体を代替する必要があった。
【0059】
一方、本発明のルテニウム前駆体化合物は、前記式(1)で示される化合物であって、ハロゲン元素を含まないことを特徴とし、特に塩素を含まないため、ルテニウムクロリドのようなルテニウム前駆体とは異なり、還元処理時にも塩化水素が発生しない。したがって、本発明によるルテニウム前駆体化合物は、反応器に影響を及ぼす副産物の生成を防止して、従来の装置耐久性低下問題を解決し、高い経済性を達成することができる。
【0060】
また、本発明のルテニウム前駆体は、カルボニル基、エステル基、ニトリル、ニトロ基、アミン基、又はカルボキシル基を含むことができ、前記ルテニウム前駆体は、ルテニウム(III)ニトロシルニトラート、ルテニウム(III)ホルメート、ルテニウム(III)アセテート、ルテニウム(III)プロピオネート、ルテニウム(III)ブチレート、ルテニウム(III)ニトロシルニトラート溶液、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(2,4-ジメチルペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(シクロペンタジエニルルテニウムジカルボニル)二量体であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0061】
特に、ルテニウムにカルボニルが1以上直接結合していてもよく、好ましくは2~4個のカルボニルが結合していてもよい。このようなルテニウム前駆体化合物は、ルテニウムペンタカルボニル、トリルテニウムトデカカルボニル、及びこれらの混合物から選ばれることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0062】
前記式(1)において、前記y及びmが0の場合には、x=zを満たすことができる。すなわち、Run(CO)xの式を有することができる。前記式を有するルテニウム前駆体の場合、アンモニア分解触媒にルテニウムを効率的に提供し、高い性能を発揮することができた。
【0063】
また、本発明によるルテニウム前駆体は、ルテニウムが不飽和化合物、芳香族化合物、及び窒素酸化物の少なくとも1つ以上の化合物と配位結合を形成していてもよい。特に、塩素などのハロゲンを含まず、前記のような結合からなるルテニウム前駆体の場合、副産物なしで触媒の性能を向上させることができる。
【0064】
前記不飽和化合物は、カルボニル化合物、エノール合物、エステル化合物、カルボン酸化合物であってもよく、芳香族化合物は、芳香族環状炭化水素、置換基を裕数r芳香族環状炭化水素であってもよい。このようなルテニウム前駆体として、ルテノセン、オクタメチルルテノセン、ルテニウムホルメート、ルテニウムアセテート、ルテニウムプロピオネート、ルテニウムブチレート、トリス(アセチルアセトネート)ルテニウム及びそれらの混合物から選ばれることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
従来のルテニウム前駆体であるRuCl3の場合、触媒の製造後に塩素が触媒に残り、塩素がルテニウムの被毒物質として作用できるという研究結果がある([Appl. Catal., A, 1992, 82, 1-12] Removal of chlorine ions from Ru_MgO catalysts for ammonia synthesis)。本発明者らは、触媒の還元温度を600~700℃に上げて実験した結果、触媒の性能が向上されることを確認した。これは、前記論文でRuCl3を前駆体として触媒を製造する場合、還元体温の上昇に伴って残留する塩素成分が減少し、これは触媒性能向上につながるという結果と一致するものである。これに対し、本発明は、塩素成分を有さないルテニウム前駆体を用いて塩素によるルテニウムの被毒がないため、従来物質を用いるよりも触媒の性能w著しく向上することができる。
【0066】
そして、本発明のルテニウム前駆体を通じてルテニウムが提供される前記アンモニア分解反応触媒は、支持体にランタノイド族がドープされた触媒であってもよい。前記ランタノイド族は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びそれらの混合物からなる群から選ばれるが、ランタン(La)が好ましい。また、前記支持体は、アルミナ、SiO2、CeO2、ZrO2、TiO2、MgO、Al23、V25、Fe23、Co34、Ce-ZrOx、MgO-Al23、及びそれらの混合物であってもよい。特に、アルミナにランタンをドープしたランタンアルミネート(LaAlO3)に本発明によるランタン前駆体を用いてルテニウムを導入する場合、優れたアンモニア転化率を示すことができる。
【0067】
本発明によるルテニウム前駆体を用いて形成したアンモニア反応触媒は、650~1000℃、700~900℃、又は800~900℃、60~100時間、70~90時間、75~85時間の還元条件下でルテニウム粒径が10nm以下、8nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、又は1nm以下であることを特徴とすることができる。粒径の下限は、特に限定されないが、0.01nm以上、0.1nm以上、0.5nm以上であってもよい。すなわち、本発明によるアンモニア反応触媒は、650~1000℃、700~900℃、又は800~900℃でルテニウム金属の焼結による成長が非常に抑制されることを特徴とする。これにより、金属の表面積を最大化し、触媒の機能を効率的に発揮することができる。また、このような特徴は、本発明によるルテニウム前駆体により形成されたルテニウム系触媒が有する特徴であり、ルテニウムクロリドなど塩素を含むルテニウム前駆体により形成されたアンモニア反応触媒が、前記還元条件下で焼結によるルテニウム金属の成長により高温運転が不利になるのと対照される点である。
【0068】
一方、本発明のアンモニア反応触媒の製造方法は、
(A)下記式(1)
【化6】
(式中、xは3~20の整数であり、yは0~32の整数であり、zは0~20の整数であり、mは0~10の整数であり、nは1~3の整数である。)で示されるルテニウム前駆体を溶媒に溶解して、ルテニウム前駆体溶液を製造する工程;及び
(B)触媒支持体と前記ルテニウム前駆体溶液を混合し、触媒支持体にルテニウムを提供する工程;を含むことを特徴とする。
【0069】
本発明によるアンモニア分解反応触媒の製造方法は、前述した式(1)で示される本発明によるルテニウム前駆体を用いることに技術的特徴がある。ルテニウムを含むアンモニア分解反応触媒において、同じルテニウムを導入してもルテニウム導入時に使用されるルテニウム前駆体により触媒の性能が著しく高まるか、又は低くなる可能性があることを確認した。以下、各工程を詳細に説明する。
【0070】
まず、前記式(1)で示されるルテニウム前駆体を溶媒に溶解してルテニウム前駆体溶液を製造する。前記溶媒は、水、ヘキサン、トルエン、及びこれらの混合物よるなる群から選ばれてもよく、前記水は、純水であることが好ましい。
【0071】
次に、触媒支持体と前記ルテニウム前駆体溶液を混合して、触媒支持体にルテニウムを提供する。ルテニウム前駆体は、前述したように、塩素などのハロゲンを含まず、カルボニル基、エステル基、カルボキシル基、ニトリル、ニトロ基、アミン基、又はカルボン酸塩を含んでもよく、そのうちの2つ以上の官能基を含むことができる。また、前記ルテニウム前駆体は、各ルテニウム元素にカルボニルが少なくとも1つ以上直接結合されていてもよく、好ましくは2~5個、より好ましくは4又は5個のカルボニルが結合されていてもよい。
【0072】
また、前記触媒支持体は、ランタノイド族元素を含むことができ、好ましくはランタン(La)を含むことができる。前記ランタノイド族がドープされた触媒支持体は、粉末タイプ、ペレットタイプ、又はモノリスタイプであることが触媒の性能の側面から好ましい。
【0073】
また、本発明のアンモニア分解反応触媒製造方法は、前記工程(B)の後、
(C)湯煎して液相成分を除去する工程;をさらに含むことができ、これは10~100℃、好ましくは30~90℃、より好ましくは40~80℃の条件で1時間~6時間、好ましくは1時間~4時間、より好ましくは1時間~3時間行われることができ、蒸発器を使用することができる。反応温度が前記範囲を超えると、溶媒が過度に急速に揮発し、前駆体に含まれた成分が不均一に担持され得ることがあり、一方、前記範囲未満の場合、前駆体が溶媒に十分に溶解せず、これもまた前駆体に含まれた成分が不均一に担持される原因となる恐れがある。
【0074】
また、本発明のアンモニア分解反応触媒製造方法は、前記工程(C)の後、 (D)乾燥する工程;をさらに含むことができ、これは50~200℃、好ましくは80~150℃、より好ましくは100~120℃の条件で8時間~16時間、好ましくは9時間~15時間、より好ましくは10時間~12時間行うことができる。乾燥温度が前記範囲を超えると、過度に速い乾燥による触媒表面の不均一な乾燥によって部分的に担持されたRuの消失が進むことがある。
本発明によるルテニウム系アンモニア分解反応触媒は、
ルテニウム系アンモニア分解反応触媒100モル部;及び
ランタン0.1~100モル部、好ましくは2~60モル部、より好ましくは5~30モル部;を含むことを特徴とする。ランタンの含量が前記範囲を超えると、比表面積が大幅に減少し、これは活性金属であるRuの分散度を低下させる結果を招く可能性がある。
【0075】
一方、本発明によるアンモニア分解反応触媒は、前記本発明のルテニウム前駆体を用いて製造され、ルテニウムを含むことを特徴とし、前記本発明によるアンモニア分解反応触媒の製造方法によって製造することができる。
【0076】
また、本発明によるアンモニア分解反応触媒は、
ルテニウム系アンモニア分解反応触媒100重量部;及び
ルテニウム0.01~5重量部、好ましくは0.02~3重量部、より好ましくは0.1~2重量部を含むことができる。ルテニウムの重量部が前記範囲未満の場合、触媒性能向上効果が微小であり、前記範囲を超えると、効率が低下し、高コストの問題が生じる。
【0077】
このように製造されたアンモニア分解反応触媒は、下記の反応条件でアンモニア転化率が65~100%、好ましくは72~100%、より好ましくは76.5~100%を示すことができる。
【0078】
[反応条件]
実験温度(℃):350~650℃、好ましくは400~600℃、より好ましくは450~600℃
還元ガス:4~50% H2/N2
GHSV(mL/h・gcat):1,000~100,000、好ましくは1,000~50,000、より好ましくは1,000~10,000
前記アンモニア転化率は、アンモニア気体投入量と比較して、分解されたアンモニア気体量を指す。
【0079】
これは、従来のルテニウム前駆体としてルテニウムクロリドを用いて製造されたルテニウム系アンモニア分解反応触媒に比べて、非常に向上したアンモニア転化率を示すものであり、本発明のアンモニア分解反応触媒は、装置を腐食させる副産物の生成を遮断すると同時に、触媒としての性能も著しく改善された触媒である。
【0080】
図3は、ルテニウム前駆体を異にして製造した触媒の反応前の画像であり、外部(上)及び内部(下)の様子であり、図4は、前記触媒の反応後の画像であり、外部(上)及び内部の様子であり、左側からそれぞれ、RuCl3、Ru3(CO)12、C16222Ru、及びC1826Ruをルテニウム前駆体にしたときである。特に、トリルテニウムトデカカルボニルをルテニウム前駆体として用いて製造した触媒の場合、ペレット外側にルテニウム前駆体が担持され、触媒の表面に大量のルテニウムが存在することがあり、これらがアンモニアの反応に積極的に関与してアンモニアの転化率を大きく向上させたと考えられる。
【0081】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例
製造例1:ランタンアルミネートの製造
硝酸ランタン(III)水和物98.0%(SAMCHUN社製)63.72gを純水200mLと混合して溶液を製造した後、60℃で湯煎した。その後、ペレットタイプのγアルミナ(Al23)支持体(Alfa Aesar社製)60gを前記溶液に投入し、80℃で2時間蒸発器を使用して溶液の液相成分を除去した。サンプルを回収し、これを100℃で12時間乾燥した後、900℃で5時間焼成して、ランタンアルミネート(LaAlO3)を製造した。
【0082】
実施例1:アンモニア分解反応触媒1の製造
ルテニウム前駆体として、Ru3(CO)12(トリルテニウムドデカカルボニル、DCR)2.130gをヘキサンに十分に溶解した後、前記製造例1で製造されたペレットタイプのランタンアルミネート49gを投入した。その後、湯煎温度80℃で蒸発期を使用して2時間溶液内の液相成分を除去した。サンプル50gを回収し、100℃で12時間乾燥させた。
【0083】
比較例1:RuCl3を用いたアンモニア分解反応触媒の製造
ルテニウム前駆体としてRuCl3を用いたことを除いて、前記実施例1と同じ方法でアンモニア分解反応触媒を製造した。
【0084】
比較例2:Ru(C5723を用いたアンモニア分解反応触媒の製造
ルテニウム前駆体としてRu(C5723を用いたことを除いて、前記実施例1と同じ方法でアンモニア分解反応触媒を製造した。
【0085】
比較例3:C79RuC79を用いたアンモニア分解反応触媒の製造
ルテニウム前駆体としてC79RuC79を用いたことを除いて、前記実施例1と同じ方法でアンモニア分解反応触媒を製造した。
【0086】
試験例1:アンモニア分解反応触媒のアンモニア転化率の評価
実施例1及び比較例1~3で製造されたアンモニア分解反応触媒(Ru/LaAlO3)を管型反応器に充填した後、4~50%のH2/N2ガスを供給しながら600~700℃範囲内で4時間還元し、触媒の前処理を行った。その後、4~50%のH2/N2ガスを供給しながら触媒層の温度を450℃に下げ、これを維持して準備した。
【0087】
そこにアンモニアガスを流量100~500sccmで供給し、GHSV1,000~5000mL/h・gcatの条件で450~550℃範囲でのアンモニア転化率を測定した(図1)。特に、平衡状態である対照例とともに実施例1及び比較例1のアンモニア転化率の測定結果は下記表2の通りである。
【表2】
【0088】
実施例1によるアンモニア分解反応触媒、すなわち、Ru3(CO)12化合物を用いて製造された触媒の場合、前記温度区間全体で優れた転化率を示し、特に450℃でアンモニア転化率が76.5%で、ルテニウムクロリド(RuCl3)を前駆体として用いて製造された比較例1のアンモニア分解反応触媒を用いた場合の転化率65.1%に比べて著しく優れた性能を示すことが確認できた。
【0089】
試験例2:還元温度に応じた焼結(sintering)の観察(1)
前記実施例1及び比較例1によって製造されたRu/LaAlO3触媒の還元温度及び滞留時間に応じたRu金属の焼結を観察した。図5及び図6は、それぞれ比較例1及び実施例1で製造された触媒を観察した結果であり、左からそれぞれ、700℃(2H)、800℃(80H)、900℃(80H)の条件下で還元処理されたものであり、様々なスケールバー及び位置でRu金属の成長を観察した。
【0090】
図5では、RuCl3を前駆体として活用した触媒の場合、700℃、2H還元サンプルの場合、5~21nm範囲にRu金属が成長し、800℃、80H還元は、時30~65nmまでRu金属の粒子成長が観察され、900℃、80H還元時は、ほとんどの粒子が16~31nmに成長したことが観察された。
【0091】
一方、図6では、Ru3(CO)12を前駆体として活用した触媒の場合、700℃、2H還元サンプルの場合、0.9~1.1nm範囲にRu金属が成長し、800℃、80H還元時は、1.4~1.7nmまでRu金属の粒子成長が観察され、900℃、80H還元時は、ほとんどの粒子が2.3~2.9nmに成長したことが観察された。
【0092】
以上の結果から、本発明により、Ru3(CO)12で製造された触媒が高温の焼結が誘発される条件下でRu金属の成長が抑制されることを確認でき、高温の条件で安定的に運転可能であることを予想することができる。
【0093】
試験例3:還元温度に応じた焼結の観察(2)
前記実施例1及び比較例1によって製造されたRu/LaAlO3触媒の還元温度に応じたRu金属の焼結をTEM-EDS分析によって観察した。図7及び図8は、それぞれ比較例1及び実施例1で製造された触媒を観察した結果であり、左からそれぞれ還元前、700℃、800℃、及び900℃の条件で還元処理されたものである。
【0094】
比較例1の場合、還元前に比べて還元温度が上がるにつれて焼結現象によりRu金属の成長が行われたが(図7)、実施例1の場合、高温の焼結が誘発される条件下でも、Ru金属の成長が抑制されることを確認することができた。これにより、本発明によるRu触媒は熱安定性に優れ、高温運転条件で焼結による性能低下を防止し、広い表面積を維持して触媒として優れた性能を発揮できることがわかる。
【0095】
試験例4:還元温度に応じて焼結の観察(3)
前記比較例1により、RuCl3を前駆体として製造されたRu/LaAlO3触媒の還元及び運転温度(700℃及び1000℃)に応じたRu金属の焼結を観察した(図9及び図10)。図9は、700℃で2時間還元処理し、図10は、1000℃で2時間還元処理した後、観察した結果であり、左からそれぞれ下段のスケールバー単位が100nm、50nm、20nm範囲に拡大しながらRu金属の焼結を観察した。図9の左側の画像の大きな点線ボックスで示された部分は、図9の中央の画像に、図9の左側の画像の小さな点線ボックスは、図9の右側の画像に対応される。また、図10の左側の画像の大きな点線ボックスで示された部分は、図10の中央の画像に、図10の左側の画像の小さな点線ボックスは、図10の右側の画像に対応される。
【0096】
700℃還元運転サンプルの場合、5~21nm範囲にRu金属が成長し、1000℃以上で運転されたサンプルの場合、9~58nm範囲にRu金属が成長した。このような金属直径の増加は金属表面領域の減少を引き起こし、触媒性能低下の直接的な原因となる恐れがある。
【0097】
試験例5:還元温度に応じた焼結の観察(4)
前記比較例1により、RuCl3を前駆体として製造されたRu/LaAlO3触媒の還元及び運転温度(700℃及び1000℃)に応じたRu金属の焼結をTEM-EDS分析により観察した(図11及び図12)。図11は、700℃で2時間還元処理し、図12は、1000℃で2時間還元処理したものであり、左からそれぞれAl、La、Ru、及びClについて観察した結果である。
【0098】
700℃還元運転サンプルと比較して、1000℃以上で運転されたサンプルにおいて、特にRu金属が明確な成長をすることを確認した。また、RuとClの場合、類似の位置に分布していることを確認し、これにより、Ruの成長にClの存在が直間接的な影響を及ぼすと判断された。
【0099】
以上では、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、前述した特定の実施例に限定されなく、当該技術分野で通常の知識を有するものであれば、本願発明の要旨から逸脱することなく様々な変形実施が可能であることはもちろんである。したがって、本発明の範囲は前記の実施例に限定して解釈されるべきではなく、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等のものによって定まるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】