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特表2023-517284異常な生物学的リズムのターゲットへの方向をガイドし及びターゲットを治療するシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】異常な生物学的リズムのターゲットへの方向をガイドし及びターゲットを治療するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230418BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20230418BHJP
   A61B 18/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B5/367
A61B18/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549427
(86)(22)【出願日】2021-02-20
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 US2021018940
(87)【国際公開番号】W WO2021168380
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/979,367
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SWIFT
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤン,サンジヴ エム.
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG15
4C127HH16
4C127HH18
4C127LL08
4C160JJ02
4C160KK37
4C160MM33
(57)【要約】
電気リズム障害を治療するアブレーションカテーテルは、治療用のターゲット領域の場所を判定するために電気信号を検出するためのセンサ電極のアレイを含む。カテーテルがターゲット領域において最適に位置決めされていない場合に、コントローラは、ターゲット領域に向かってカテーテルの運動をガイドするために、検出された信号を使用する。適切な位置決めが確認されたら、コントローラは、ターゲット領域において組織を変更するために、エネルギーを供給するようにカテーテル内においてアブレーションコンポーネントを起動する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓リズム障害を治療するシステムであって、前記装置は、
組織表面との接触状態において配置されるように構成されたカテーテルであって、前記カテーテルは、
接触表面を有する柔軟なボディ、
前記柔軟なボディ内において配置されたセンサ電極のアレイであって、それぞれのセンサ電極は、前記接触表面と実質的に同一平面上に位置する導電性表面を有し、それぞれのセンサ電極は、前記組織表面から電気信号を検出するように構成される、センサ電極のアレイ、及び、
前記組織表面にエネルギーを供給するように構成された1つ又は複数の治療要素、
を有する、カテーテルと、
複数のコンダクタであって、それぞれのコンダクタは、センサ電極及び前記1つ又は複数の治療要素の1つに接続された遠端を有する、複数のコンダクタと、
前記複数のコンダクタの近端との通信状態にあるコントローラと、
を有し、
前記コントローラは、プロセッサを有し、
前記プロセッサは、
前記検出された電気信号を受け取り、
心臓リズム障害のターゲット領域の場所を判定し、
前記カテーテルが前記ターゲット領域において最適に位置決めされるかどうかを判定し、且つ、最適に位置決めされていない場合に、前記ターゲット領域への方向性を演算し、且つ、前記カテーテルを前記ターゲット領域に向かって運動させるための運動命令を生成し、且つ、
前記カテーテルが最適に位置決めされると判定した後に、前記ターゲット領域内において組織を変更するために前記1つ又は複数の治療要素を起動するための治療信号を生成する、
ように構成される、システム。
【請求項2】
前記柔軟な層は、ほぼ平面であり、且つ、矩形、楕円、及び環帯から構成された群から選択された形状を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
遠端、近端、及び長さを有する細長い中空のシャフトを更に有し、前記カテーテルは、前記遠端において配設されており、前記コントローラは、前記近端において配設されており、且つ、前記複数のコンダクタは、シャフト内において保持され、且つ、その長さだけ延在し、前記シャフトの前記遠端は、前記近端から操作可能である請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラによって生成された運動命令に応答して前記シャフトの前記遠端を操向するように構成されたシャフトモーターを更に有する請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記シャフト上において摺動自在に配設されたシースを更に有し、前記シースは、前記カテーテルが前記シャフトの前記遠端から離れるように前記シースを摺動することによって配備される時点まで、折り畳まれた状態において前記カテーテルを保持するように構成された内部容積を有する請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項6】
前記柔軟なボディ内において形成された灌注液孔を更に有し、前記灌注液孔は、前記コントローラ及び関連する灌注液ソースと流体連通しており、前記灌注液ソースは、前記治療要素のアレイの起動との関連において前記ターゲット領域において前記灌注液ポアを通じて灌注液を組織に供給するように構成される請求項2乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ又は複数の治療要素は、アブレーション電極のアレイを有し、且つ、前記1つ又は複数の治療要素に接続された前記複数のコンダクタのサブセットは、電磁エネルギーをそれぞれのアブレーション電極に供給するように構成された導電体である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサ電極のアレイ及び前記アブレーション電極のアレイは、前記接触表面の周りにおいて均一に分散される請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記アブレーション電極のアレイのアブレーション電極は、前記センサ電極のアレイのうちにおいて均等に散在する請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記検出された電気信号に基づいて前記ターゲット領域のサイズを判定し、
前記ターゲット領域の前記サイズ及び前記場所に少なくとも基づいて前記アブレーション電極のアレイの1つ又は複数のアブレーション電極を識別し、且つ、
前記識別されたアブレーション電極を起動する、
ように更に構成される請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記検出された電気信号に基づいて心臓リズムの方向性マップを生成し、前記方向性マップは、心臓リズムの伝導路を記述しており、
前記柔軟なボディを前記ターゲット領域に向かって運動させるためのガイダンス方向を生成し、且つ、
前記ターゲット領域の前記場所を判定するために前記方向性マップを統合する、
ことにより、前記ターゲット領域の前記場所を判定する請求項1乃至10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記方向性マップは、トレーニング済みの機械学習モデルを前記電気信号に適用することによって生成されており、前記機械学習モデルは、人間の心臓の電気信号及び前記心臓リズム障害の既知のターゲット領域を有するトレーニング例に基づいてトレーニングされる請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
それぞれのアブレーション電極は、別個の波形を放出するように構成される請求項7乃至10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記アレイのアブレーション電極の1つ又は複数のサブセットを別個にアドレス指定するように構成されており、且つ、前記治療信号は、第1波形を放出するためのアブレーション電極の第1サブセットへの第1信号と、第2波形を放出するためのアブレーション電極の第2サブセットへの第2信号と、を有する請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記センサ電極のアレイは、少なくとも4つの電極を有する請求項1乃至14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記センサ電極は、前記1つ又は複数の治療要素が前記センサ電極のアレイを有するようにアブレーションエネルギーを供給するように構成される請求項1乃至15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記1つ又は複数の治療要素は、前記柔軟なボディ内において形成された且つクーラントを保持するように構成された1つ又は複数のクーラントチャンバを有し、且つ、前記複数のコンダクタは、凍結エネルギーを前記ターゲット領域において組織に供給するためにクーラントソースから前記1つ又は複数のクーラントチャンバにクーラント流体を導くように構成されたコンダクタのサブセットを有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記柔軟なボディは、前記接触表面との接触状態にある組織への凍結エネルギーの伝導を改善するためにその内部に内蔵された熱伝導性材料を有する請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つ又は複数の治療要素は、前記柔軟なボディ内において形成された冷凍アブレーションローカスのアレイを有し、且つ、前記複数のコンダクタは、凍結エネルギーを前記ターゲット領域において組織に供給するための前記コントローラからの治療信号に応答してクーラントソースから前記冷凍アブレーションローカスにクーラント流体を導くように構成されたコンダクタのサブセットを有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記1つ又は複数の治療要素は、前記柔軟なボディ内において分散したターゲティングフィデュシャルのアレイを有し、前記ターゲティングフィデュシャルは、1つ又は複数の外部アブレーションエネルギーソースからのアブレーションエネルギーの供給をガイドするように構成される請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記接触表面と前記組織表面が十分な接触状態にあるかどうかを判定するように、且つ、そうでない場合には、改善された接触を提供するために前記柔軟なボディの運動をガイドするように前記コントローラに信号を提供するように、構成された接触センサを更に有する請求項1乃至20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
心臓リズム障害を治療する方法であって、
請求項1乃至21のいずれか1項に記載の前記システムの前記センサ電極のアレイを使用して心臓の電気信号を検出することと、
前記検出された電気信号に基づいて心臓リズムの伝導路を記述する方向性マップを生成するここと、
(i)前記方向性マップ内の前記心臓リズム障害のターゲット領域の場所、及び、
(ii)前記方向性マップの外側の前記心臓リズム障害の前記ターゲット領域へのガイダンス方向、
の1つを判定するために前記方向性マップを統合することと、
前記柔軟なボディが前記方向性マップに従って前記ターゲット領域において最適に位置決めされるかどうかを判定することと、
最適な位置決めの判定に応答して、前記ターゲット領域の前記判定された場所において組織を変更するためにエネルギーを供給するように前記システムの前記1つ又は複数の治療要素を起動することと、
を有する方法。
【請求項23】
前記方向性マップを生成することは、トレーニング済みの機械学習モデルを前記検出された電気信号に適用することを有し、前記機械学習モデルは、人間の心臓の電気信号及び心臓リズム障害の1つ又は複数のターゲット領域の既知の場所を有するトレーニング例に基づいてトレーニングされる請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方向性マップの外側の前記ターゲット領域への前記ガイダンス方向の判定に応答して、前記ターゲット領域への前記ガイダンス方向において後続の位置まで前記装置を操向することを更に有する請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記装置を前記後続の位置まで操向した後に、前記複数の検知電極によって前記心臓の後続の電気信号を検出することと、
前記後続の電気信号に基づいて心臓リズムの伝導路を記述する後続の方向性マップを生成することと、
(i)前記後続の方向性マップ内の前記心臓リズム障害のターゲット領域の前記場所、及び、
(ii)前記後続の方向性マップの外側の前記心臓リズム障害の前記ターゲット領域への後続のガイダンス方向、
の1つを判定するために前記後続の方向性マップを統合することと、
前記方向性マップの外側の前記ソース領域への前記後続のガイダンス方向の判定に応答して、前記ターゲット領域への前記後続のガイダンス方向において第3位置まで前記柔軟なボディを操向することと、
を更に有する請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記方向性マップの外側の前記ターゲット領域の前記方向の判定に応答して、装置を前記ターゲット領域の前記方向において運動させるために電子ディスプレイ上において通知を提供することを更に有する請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記ターゲット領域の前記場所の判定に応答して、前記ターゲット領域の前記場所に対する閾値近接性内において前記1つ又は複数のアブレーションコンポーネントを識別することを更に有する請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記ターゲット領域の前記場所の判定に応答して、前記方向性マップに基づいて前記ターゲット領域のサイズを判定することを更に有し、前記1つ又は複数のアブレーションコンポーネントを識別することは、前記ターゲット領域の前記サイズに少なくとも更に基づいている請求項27に記載の方法。
【請求項29】
それぞれのアブレーションコンポーネントは、アブレーション電極であり、前記1つ又は複数のアブレーションコンポーネントに命令することは、前記心臓リズム障害の前記ターゲット領域において組織を変更する1つ又は複数の電磁波を放出するために1つ又は複数のアブレーション電極を起動することを有する請求項22に記載の方法。
【請求項30】
それぞれのアブレーション電極は、別個の波形を生成するように調節可能であり、前記1つ又は複数のアブレーション電極を起動することは、
第1波形を生成するように第1アブレーション電極に命令することと、
第2波形を生成するように第2アブレーション電極に命令することと、
を含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
それぞれのアブレーションコンポーネントは、冷凍アブレーションローカスであり、前記1つ又は複数のアブレーションコンポーネントに命令することは、前記心臓リズム障害の前記ターゲット領域において組織を変更する1つ又は複数の冷凍アブレーションローカスにクーラントを導くことを有する請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記ターゲット領域の前記場所の判定に応答して、前記ターゲット領域を含む前記心臓の一部分を冷却する前記装置上のチャンバ内にクーラントを導くことを更に有する請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記ターゲット領域の前記場所の判定に応答して、前記ターゲット領域を含む前記心臓の一部分を冷却するために前記心臓上に前記装置上の1つ又は複数の灌注孔から灌注液を放出することを更に有する請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記ターゲット領域のアブレーションの後に前記複数の検知電極によって前記心臓の後続の電気信号を検出することと、
前記後続の電気信号に基づいて前記心臓リズム障害が持続するかどうかを判定することと、
を更に有する請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記心臓リズム障害が持続すると判定することに応答して、
前記後続の電気信号に基づいて心臓リズムの伝導路を記述する後続の方向性マップを生成することと、
前記後続の方向性マップ内の前記心臓リズム障害の第2ターゲット領域の場所、及び、
前記後続の方向性マップの外側の前記心臓リズム障害の前記第2ターゲット領域へのガイダンス方向、
の1つを判定するために前記後続の方向性マップを統合することと、
前記第2ターゲット領域の前記場所の判定に応答して、前記第2ターゲット領域の前記判定された場所における前記第2ターゲット領域において組織を変更するように前記装置上の複数のアブレーションコンポーネントの1つ又は複数のアブレーションコンポーネントに命令することと、
を更に有する請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月20日付で出願された米国仮特許出願第62/979,367号の優先権の利益を主張するものであり、この特許出願の内容は、引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0002】
政府の権利
本発明は、国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)によって付与された認可番号第HL83359号及び第HL103800号の下に、政府の支援によって実施されたものである。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般に、電気リズム障害用のパーソナライズされた識別及び治療に関し、更に詳しくは、パーソナライズされた治療を促進するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
医学的療法は、パーソナライズによって改善することができる。一般的に機能する、受け入れられている療法は、多くの場合、ほとんど機能しないか又はまったく機能することができない。療法が機能する患者においても、しばしば、個人間で応答に差が存在する。通常、特定の療法が所与の患者において機能し得る又は機能し得ないということの先験的な手掛かりは、ほとんど存在しない。応答又は失敗の「予測子」は、しばしば、事後の観察に基づいており、且つ、現時点の先見性のある予測子は、控えめな増分利益しか提供しない。
【0005】
現時点の医学的戦略は、記述された状態によって個人のマジョリティを明示的に優先順位付けするが、統計的なマイノリティを黙示的に無視している。見落とされた、但し、重要な課題は、同一の診断を下された、個人のこのマイノリティが、マジョリティに使用されるものとは異なる療法に応答し得るという点にある。このマイノリティは多数の個人を有し得る一方で、それら個人は(フェノタイプを)識別するのが困難であり得るが、その理由は、それでなくとも彼らは、その他の者とは異なるサブカテゴリに既に分離されている場合があるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
療法が機能する可能性が高い患者、療法が機能する可能性が低い患者を先験的に識別するために、且つ、これにより、個人のために療法を適合させるために、療法をパーソナライズするというニーズが存在する。これらの目的を充足するために、パーソナライズされた医療が益々研究されている。
【0007】
個人をフェノタイプ化するために、次いで、相応して療法を適合させるために、遺伝的原因の結果として得られる状態(「メカニズム」)について、パーソナライズされた医療がしばしば支持される。残念ながら、多くの非常に一般的な疾病には、明白な遺伝的原因がない。心臓においては、例えば、遺伝性の家族性高コレステロール血症又は遺伝性の心房細動(AF)の心臓リズム障害に起因して、遺伝的な症例が冠状疾患において識別され得るが、これらの症例はマイノリティである。大部分の心臓状態の症例は、明瞭な遺伝的原因を有しておらず、且つ、複数の要因の結果としてもたらされるもの(多因子性)と見なされる。実際に、最近の研究は、若年における遺伝性の突然の心停止、即ち、突然不整脈死シンドローム(「SADS」)を含む、遺伝的であると従来から見なされていた状態においても、遺伝的な異常性を示すことに失敗している。
【0008】
その他の状態は、部分的に遺伝性であるものとして現れ得る、或いは、「不完全な浸透度」を有する遺伝性の原因を有し得る。疾病発現又は療法に対する応答における、このような可変性の原因は、未知であり、且つ、例えば、心房細動用の多くの療法に伴って、発生する。このような可変性は、しばしば、「環境」に帰せられており、且つ、細胞「プロテオーム」又は「メタボローム」における変動として表され得るが、識別が困難であり得ると共に、しばしば証明されてはおらず、且つ、療法をガイドするために使用されることはめったにない。
【0009】
正常な心臓リズムにおいては、洞結節が心臓をサイナスリズムにおいて維持している。心臓リズム障害は、一般的であり、且つ、世界の全体を通じて病的状態及び死亡の重要な原因となっている。心臓リズム障害の最も一般的な形態は、明瞭な遺伝的原因を有してはいない。
【0010】
電気システムの誤動作又は電波の異常な伝播は、心臓、脳、及び電気的インパルスを生成するその他の臓器(「励起可能な組織」)内におけるリズム障害の近因である。心臓リズム障害は、単純なもの又は複雑なものとして分類することができる。単純なリズムは、分析の大部分の方法によって検出される時間に伴って安定した明確に定義された回路を有する。例は、サイナスリズム(SR)、不適切な洞性頻脈(IST)又は洞結節リエントリを引き起こす正常な洞結節の迅速なアクティベーション、心房性頻脈(AT)又は粗動(AFL)、心房-心室結節リエントリ頻脈(AVNRT)、及び心房-心室回帰頻脈(AVRT)を含む。複雑なリズム障害は、心房細動(AF)、心室細動(VF)、又は多形性心室頻拍(PMVT)などの時間に伴って変化し得る相対的に明瞭ではない回路を有する。その他のリズム障害は、単純なアクティベーションパターンを有し得ると共に治療が困難となり得るが、その理由は、心房性期外収縮(PAC)又は複数の心室性期外収縮(PVC)などのように、これらが一時的なものであるからであり、或いは、アブレートすることが困難であるからであり、これには、心房粗動又は心室頻脈(VT)の非定型の形態が含まれる。
【0011】
心臓リズム障害の治療は、特にAF、VF、及びVTの場合には、困難となり得る。複雑なリズム障害用の薬理療法は、最適なものではなく、中期から長期において、わずかに40~60%の成功率である。心臓リズム障害用のアブレーションは、益々使用されており、且つ、血管を介して又は手術において直接的に心臓までセンサ/プローブを操作することと、リズム障害を軽減又は除去するためにソース領域にエネルギーを供給することと、を伴っている。複雑なリズム障害の場合には、アブレーションはしばしば困難であり、その理由は、原因(ソース)を識別及び特定するための従来システムが不十分であり、正確性、精度、及び/又は時間効率性を欠いており、この結果、障害を除去するためにエネルギーを供給する試みが妨げられているからである。例えば、最も単純な形態であると見なされる「発作性」AFに対する単一アブレーション手順の成功率は、1年半においてわずかに65%であり、時間に伴って更に低下する。相対的に複雑な持続性AFを有する患者の場合には、「絶対的基準」技法による単一手順の成功率は、治療後の一年において約40~50%である。
【0012】
対処された場合に療法の成功を改善し得る、いくつかの充足されていないニーズが存在する。第1に、何人かの患者においては同一のアブレーション方式が機能するが、その他の場合には、複数回試みた後も機能しない理由は何か。第2に、個人間における類似した又は異なるリズム障害のメカニズムは何か、且つ、これらは事前に識別可能であるのか。現時点の疾病分類は、この目的のために理想的なものではなく、その理由は、肺静脈隔離術は、いずれも1~2年のうちに、「単純な」発作性AFの症例の35~50%において失敗するが、「進行した」持続性AFの症例では、40~50%において機能するからである。
【0013】
AF用の1つの提案されたメカニズム(原因)は、取り囲んでいる無秩序な活動を駆動し得る局所化されたソース領域又はドライバである(ローター、回転活動、反復活動、又は焦点のサイトと呼称される)。前記ソースがどれだけ最良に識別されるかが明瞭ではない。何人かの患者がAFソースのアブレーションの後に健康を回復する一方で、その他の者がそうではない理由が明瞭ではない。何人かの個人が複雑なAFにおいても小さな数のソース領域を有する一方で、その他の者がいくつかを有する理由が明瞭ではない。ソース領域が、いくつかの人物においては低電圧又は磁気共鳴撮像異常などの構造的異常性に関係するが、その他の者ではそうではない理由が定義されていない。
【0014】
電気リズム障害は、電気パターンによって分類される。これは、しばしば、患者の血管を通じた複数のセンサ/プローブを有するカテーテルの心臓内への導入を伴っている。これらのセンサは、複数の場所において心臓の電気的活動(心電図)を検出しており、これが、AVRT又はAVNRTなどの状態の原因を識別するために且つ別個の療法を定義するために使用されるが、ECGの外観は類似する。心房頻脈などの単純な不整脈の場合には、ソースは、最も早期の場所までアクティベーションを追跡して戻ることにより、識別することが可能であり、これが、次いで、障害を治療するために焼灼される(アブレートされる)。これは、単純な心臓リズム障害の場合にも、困難であり得る。
【0015】
複雑なリズム障害を治療するためにソース又はその他のターゲット領域を識別することは、相対的に困難である。第1に、それぞれのセンサにおける信号は、形状及び偏向の数においてビートごとに遷移し得る。AFにおける信号が5個、7個、11個、又はこれ超の偏向を有する際には、ローカルである(即ち、センサの下方)であるものを識別することが困難であり、これらは、しばしば、隣接領域(即ち、ファーフィールド活動)又はノイズからのものである。第2に、隣接するセンササイトの間のアクティベーションの相対的経路は、AF又はVFにおけるように、時間に伴って変化し得る。全体として、これは、そのソースを識別するために複雑な不整脈における活動を正しくマッピングすることを困難にする。
【0016】
心臓リズム障害の原因は、いくつかの方法によって識別することが可能であるが、未だ、そのいずれもが完全なものではない。局所化されたソースを有する及び有していない患者を先験的に識別することは困難である。識別されたいくつかのソースは、(ソースが光学撮像によって検証された場合にも)治療を必要としていない擬陽性であり得る。不格好な低分解能の方式の使用を含むソースを識別するための方法は、使用が面倒であり且つ時間を所要する。ソースは、任意の場所において位置し得ることから、従来の方法は、しばしば、マルチポーラカテーテルにより、或いは、身体表面から非侵襲的に、チャンバ全体をマッピングする。これらのタイプのグローバルマッピングシステムは使用が困難であり、且つ、空間分解能は低く、且つ変動する。
【0017】
複雑な不整脈に対する、更なる従来の治療方法は、しばしば、不整脈をマッピングするための異なるツールと、療法を供給するための別個のツールと、を必要としており、これにより、ツールの切り替えの際に実際的な切断を導入する。システムが重要な領域を治療するために重要な領域を検出するように使用されるシステムをスワップした際には、見当合わせの誤差が同一のサイトを正確に治療する精度を低減する場合があり、且つ時間を追加する場合がある。また、従来の方式では、最も重要である、どのソース領域がいつ検出されるのかが明瞭ではない。従って、すべてのソースが共通的に治療されるが、これらのサイトのいくつかは、任意の所与の患者においては重要ではない場合があり、更には、このすべてのソースの治療は、時間、困難、及び潜在的なリスクを手順に追加する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明のシステム及び方法は、パーソナライズされたデジタル医療方式を使用して生物学的リズム障害を治療するために、ソース領域又はその他のターゲット領域を識別及び特定する。本発明のシステムは、生物学的組織から電気信号を検出するためにプローブ又はカテーテルを使用しており、且つ、検出された電気信号に基づいてリズムのソース又はターゲット領域に向かうナビゲーションガイダンスを提供する。次いで、本発明のシステムは、プローブ又はカテーテルを運動又は置換することなしに、これらの領域を直接的に治療することができる。すべてのステップは、類似のデータパターンを有する患者が治療に応答する方式の、定量化された人工知能に基づくアルゴリズムに基づいて、自動的に個人に対して適合させることができる。
【0019】
本明細書に記述されるシステム及び方法は、ライフスタイルの変化、投薬、電気又は機械的療法、手術的又は最小限に侵襲的なアブレーション、遺伝又は幹細胞療法の1つ又はその組合せを介して定量的なパーソナライズされた療法の方式を提供する。本明細書に開示される発明は、2019年7月22日付けで出願された国際特許出願第PCT/US2019/029004号の主題に部分的に関係しており、この特許文献の開示内容は、引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0020】
例示的な一実施形態は、複雑なリズム障害用のアブレーション療法が成功する可能性が高い個人を識別するためのツールを使用する。これらのツールは、非侵襲的又は侵襲的なものであってよい。アブレーション療法に適した患者においては、別の実施形態は、心臓内の電気パターンを記録するための、及び療法のための最適な場所に向かって生物学的臓器内において3次元で装置を運動させるための方向ガイダンスを提供する装置を含む。別の実施形態は、この場所において組織に対して直接的に療法を供給する能力を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態においては、本発明のシステムは、複雑なリズム障害のパーソナライズされた診断、リズム障害の対象のターゲットサイトまでのナビゲーションガイダンス、及び前記リズム障害用の「単一ショット」検出及び療法ツールを提供する。
【0022】
本発明の利点は、クラウドソーシングなどの戦略を利用して更新され得るデジタルタクソノミーを使用して、現時点の個人からのデータのストリームを類似の又は非類似のプロファイルを有するその他の個人からのストリームと比較することにより、療法をパーソナライズするその能力にある。
【0023】
本明細書において記述される例は、心臓リズムの障害、機械的収縮、又は心不全を対象とするが、本発明の方式のその他の例示的な用途は、脳の発作性疾患、過敏性腸症候群などの胃腸リズムの疾病、及び排尿筋の不安定性を含む膀胱疾患を含む。一般に、本発明の方式は、心臓内の心房細動又は脳内の一般化された発作のみならず、単純なリズム障害などの臓器内の無秩序な障害に適用可能である。従って、本明細書において提供される例は、限定することを意図するものではない。本発明のパーソナライズ態様は、単純な疾病エンティティではなく、異質的なシンドロームである障害に適する。
【0024】
本発明は、療法用のターゲットがリズム障害用の局所化されたソースである患者とソースが存在していない患者を識別する。この実施形態の一例は、肺静脈隔離アブレーションのみから受益する可能性が高い心房細動を有する患者を識別するというものである。その他の患者は、成功のために局所化されたソースのアブレーションを必要とし得る。その他の者は、メイズ手術によってターゲットされるものなどの、その他のターゲットのアブレーションを必要とし得る。同様に、本発明の方式は、アブレーションが成功する又は成功しない心室頻脈を有する患者を識別することもできる。
【0025】
ソース領域は、リズム障害用のターゲットのサブセットであり、且つ、(a)心臓内の心房細動などの無秩序な障害内における、或いは、(b)アクティベーションが心房頻脈又は心室頻脈などの組織的な障害を駆動するようにそれから発せられる、組織的な活動のパッチ又は領域として識別される。本発明の方式は、組織的なパッチを検出するために機械学習を含む分析ツールを使用する。心房細動における肺静脈、心室頻脈の瘢痕峡部、或いは、発作性疾患の局所脳病変、などの標準的療法によってターゲットとされる領域の近傍に位置するソースは、特定の更なる療法を必要としない場合がある。この情報は、操作者に伝達される。
【0026】
また、本発明の方式は、リズム障害用の最も重要なターゲットを通知する。この情報がなければ、方式は、心房細動におけるすべての検出されたターゲットの治療をしばしば含み、これは、複数のソース、瘢痕の組織領域、又は複雑な信号の検出及び療法を伴う。但し、これらの領域のいくつかは、重要でない場合があり、且つ、この方式は、時間を所要する可能性があり、手順を困難にし、悪影響を有し得る。従って、本発明は、標準的療法によって既に治療された領域に位置する、或いは、あまり明瞭ではない、ターゲットを有する患者を識別するが、これらはいずれも、更なる治療を必要としていない。
【0027】
一実施形態において、本発明は、心臓内の心房細動又は脳内の一般化された持続的/慢性的発作などの障害を有する活動の、組織的な領域又はパッチのサイズ又はエリアを定量化することにより、対象の領域の重要性を定量化する。最も支配的なものから最もそうでないものまでのターゲットヒエラルキーが操作者に伝達され、これは、治療計画のために使用することができる。
【0028】
本発明の方式は、ワイドエリアグローバルマッピングに対するニーズを伴うことなしに、局所化されたソースなどの生物学的リズム障害用の治療ターゲットを一意に検出する。グローバルマッピングは、面倒である可能性があり、臓器の全体をカバーしていない場合があり、且つ、通常は、治療に理想的に適していないか、又は療法を供給不能である、大きなプローブ又はカテーテルの使用を必要とし、従って、検知及び療法には別個のプローブの使用が必要である。一実施形態において、本発明のシステムは、単純な若しくは複雑なリズム障害用のソース領域をカバーするために、又は高密度記録を提供するために十分に小さい線維性領域内の生存組織のチャネルなどのその他のターゲットをカバーするために、十分に物理的に大きなマッピングスペードを使用する。
【0029】
マッピングツール又はスペードは、4~256個程度の電極に付番され得る複数の電極を含む。それぞれの電極のサイズは、0.1~4.0mmの範囲を有し、この場合に、サイズの選択は、疑われている障害の特性に少なくとも部分的に依存する。心房細動などの複雑なリズムの場合には、通常の電極は、良好な信号忠実性を提供するために且つ療法用のターゲットであり得る複雑な信号タイプを検出するために0.5~1.0mmのサイズの範囲を有する。心室頻脈の場合には、通常の電極は、1~2mmのサイズの範囲を有する。副伝導路によって仲介された頻脈などの単純なリズムの場合には、通常の電極サイズは、副伝導路の電位を認識するために、0.5~1mmとなる。その他の用途用の適切な電極サイズの選択は、当技術分野の技術のレベルに属することとなる。
【0030】
電極の間の間隔は、0.5~5.0mmの範囲において変化する。心房細動の場合には、通常の電極間隔は、1~2mmとなる。心室頻脈の場合には、通常の電極間隔は、2~4mmとなる。非常に微細な詳細が解明されなければならない際には、通常の電極間隔は、0.5~0.75mmとなる。
【0031】
スペードのサイズは、電極の数及びその間隔のみならず、リズムのタイプ及び患者のプロファイルに対してパーソナライズされる。パーソナライズは、類似のタイプ及びデータの患者に対して較正された機械学習などのツールを使用して実行される(パーソナライズされたデジタルフェノタイプ、PDP)。スペード療法ツールは、ターゲット又はソースが記録された同一の複数の場所においてその表面に準拠することにより、臓器と接触する。
【0032】
接触は、対象の臓器内の意図された場所に応じて、構造における様々な準拠材料を使用して改善することができる。例えば、34~36ゲージなどのニチノール(ニッケルチタニウム合金)は、十分な構造的安定性及び柔軟性を提供し得るこのような材料の1つである。これは、高周波又は発光ダイオードなどの加熱アブレーション用の、冷凍アブレーションなどの冷凍用の、或いは、パルスフィールドアブレーションなどの非加熱アブレーション用の、装置を構築するために使用することができる。一実施形態は、マッピング及び冷凍アブレーションための準拠可能なチャンバを使用しており、この場合に、療法装置は、迅速、正確、且つ、安全なアブレーションのためにエネルギー供給の際に組織に接着する。これは、心臓内の心房細動及び心房頻脈のソースの場合に且つ脳内の発作焦点の場合に効果的なものになり得る。
【0033】
一実施形態において、同一の物理的装置内に検出器及び治療要素の両方を有することにより、それぞれに別個のツールを使用するニーズが除去される。これは、時間及び複雑性を低減し、更には正確性を改善し得るが、その理由は、望ましいターゲット領域の場所が保存されるか又は記録され、その後は別個のツールを使用して再度見出される必要がないからである。
【0034】
一実施形態において、本発明は、面倒な大きなカテーテルを使用してグローバルにデータを収集しておくことなしに、センサツール用のナビゲーションガイダンスを提供する。本発明は、現時点のセンササイトにおいてデータを処理し、且つ、ソースまでナビゲートするためにセンサを運動させる方向を算出する。これは、地球のマップ全体を調査することなしに、望ましい場所までナビゲートするために現時点の位置を使用する、自動車の全地球測位システムに類似する。この方式は、心臓内でワイドエリア又はグローバルマッピングシステムにおいて現時点で使用されているものよりも、ターゲット領域の近傍における、相対的に高い分解能のマッピングを可能にする。
【0035】
本発明は、健康及び疾病のパーソナルデジタルフェノタイプ(PDP)を使用して検出及び療法をパーソナライズする。PDPは、細胞又は遺伝データを伴って又は伴うことなしに「パーソナライズされた医療」又は「高精度の医療」をデジタル的に実装する。一般に、-omicデータは、多くの個人について利用不能であり得るか、或いは、エージング又は環境の疾病に対してその寄与度が相対的に低くなり得る。入力データ(例えば、センサからのデータストリーム、電子健康記録からの保存されたデータ、撮像データ)は、代替マーカーにおける変化又は特定の療法による疾病の除去などの観察されたラベルにリンクされる。次いで、PDPは、その個人について、入力を健康と関連するものと逸脱(可能な疾病)と関連するものにパーティション化する。従って、本発明は、個人の統計的マジョリティに対してのみ対処するものではない。
【0036】
PDPは、様々なセンサ、医療装置、又は消費者装置からデータストリームを別個に又は(例えば、ネットワークされた)組合せにおいて組み合わせることができる。データストリームは、クラウドソースされた母集団データのために、撮像システムなどの専用の機器から、又は新規のウェアラブルセンサから、又は複数の人々から、到来し得る。既存のシステムからのデータは、識別されていないデータ、寄与する多様な患者、プラクティスパターン、及び異なる療法からの結果データの大きなデジタルレジストリ内において複数の病院からのデータを含み得る。このような方式は、データセキュリティ、データトランザクションの追跡可能なログ、及び複数の物理的ストレージシステムに跨るデータアクセスを保証するためにブロックチェーン技術を必要とし得る。
【0037】
PDPは、その個人内のリズム障害用の生物学的且つ臨床的データの関連性を通知しており、これは、特定の療法が成功であった又は成功ではなかったという予めラベル付与されたデータセットに基づいてトレーニングされたシステム及び方法を使用する専門家には明瞭でない場合がある。これは、生物学的リズム障害用のソースの場所の予測、前記ソースまでのナビゲーションをガイドするための支援、前記ソースのタイプ及びサイズの予測、及びその個人に対してパーソナライズされた療法に対する可能性の高い応答などの障害の治療可能な形態を有する及び有していない個人の識別を可能にする。
【0038】
PDPは、所与の疾病又は健康の状態を有する患者のデジタルタクソノミーから生成される。タクソノミーは、複数のデータストリームから構築されており、且つ、好ましい又は好ましくない結果によって階層化される。入力データは、心拍数、体重、及びその他の容易にアクセス可能なデータ、電子健康記録の保存される要素、などのように、単純であることが可能であり、及び/又は時間に伴って劇的に変化し得る(例えば、プロテオミクス及びバイオマーカーなどの)又は時間に伴って変化し得ない(例えば、遺伝データなどの)複雑な又は高度なデータであってよい。その他のフェノタイプは、バイオマーカーによって追跡されない臨床ラベルであってもよく、或いは、人種又は人種的感受性などの緩い統計的定義を有するものであってもよい。母集団データ要素が、更に詳細に且つ広範に、即ち、「更に豊富」に、なるほど、デジタルタクソノミーも更に広範なものとなる。
【0039】
パーソナルデジタルフェノタイプ(PDP)は、信号処理、連想アルゴリズム、教師なし機械学習からのものを含むデータクラスタ、並びに、類似の及び非類似の個人におけるラベル付与されたイベントによってトレーニングされた教師付きネットワークからのインデックスを表す定量化された病態生理学的ネットワークである。データは、教師付き機械学習、ニューラルネットワーク、教師なし機械学習、クラスタ分析、相関分析、ロジスティック回帰分析、決定木、時間ドメイン分析、周波数ドメイン分析、三角法変換、及び対数変換の1つ又は複数によって分析された「健康対疾病」又は「療法に対する応答対非応答」としてラベル付与されたデータにパーティション化される。
【0040】
患者の組織は、心臓、心臓の領域に供給する神経、神経を制御する脳の領域、心臓の領域に供給する血管、及び心臓に隣接する組織であってよい。いくつかの実施形態において、疾病は、心房細動、心室細動、心房頻脈、心房粗動、多形性又は単形性心室頻脈、心室粗動、又は心臓内のその他の電気的異常の1つ又は複数を有する心臓リズム障害であってよい。
【0041】
PDPに基づいた分析は、専門家による理解が困難である心臓リズム障害のパターンを解読し得る。これは、回転回路、焦点回路、反復パターン、部分回転又は焦点回路、「ランダム」活動、瘢痕のエリアの周りの電気伝播、或いは、個人内の特定の解剖学的サイトを含み得る複雑な障害の場合に特に当て嵌まる。これらのパターンは、ソートすることが困難である。デジタルタクソノミーは、所与のPDPの患者について、特定のパターンを、薬剤療法、アブレーション、メイズ手術、又はその他の療法の成功又は失敗とリンクする。患者の電気的な、構造的な、且つ、臨床的なデータに基づいた現時点の患者用のPDPは、療法用の適合されたターゲットを識別するためにタクソノミーに「フィット」される。このパーソナライズされた診断又は療法用のターゲットの識別は、新規のものであり、且つ、生物学的スケールに跨るデータの統合に基づいている。
【0042】
心臓リズム用のPDPは、電気活動(心電図)、血流及び血圧(血行動態)、壁張力(心収縮及び弛緩)、及び関係するインデックスの侵襲的記録のデータストリームを含み得る。更に詳細なデータは、3次元の解剖学的且つ構造的異常性を含む。臨床データは、履歴及び物理的検査、病態生理学的併存症のインデックス、血液及び組織バイオマーカー、及び個人の遺伝及び細胞構成から抽出され得る。非侵襲的に、センサは、心電図、神経活動の皮膚反応尺度、及び皮膚反射率を記録し得る。使用され得るその他のタイプの検知信号については、当業者に明らかとなろう。
【0043】
複雑な心臓リズム障害の場合に、炎症は、可能性の高い寄与因子であるが、しばしば、患者フェノタイピングに含まれてはいない。炎症は、手術後のいくつかの不整脈又は心筋炎などのその他の状態を引き起こし得る。そして、心房細動との間の肥満のリンクは、心膜外脂肪内の炎症を通じて、反応性酸素種に起因して動作し得る。炎症の発見は、一時点において、又は時間に伴って、或いは、人々の間において、任意の所与の人物内において定義されていない重要性を有し得る。「インフラマソーム」は、細胞又は組織レベルにおいて様々な病的障害からの炎症の影響を計測し得るが、一般には実行されておらず、日周変動を評価することができず、身体全体の炎症に対する明瞭な関係を有することができず、且つ、個人の間において異なり得る。従って、正常な又は異常な状態の「ノモグラム」を確立する方法が明瞭ではない。
【0044】
炎症のバイオマーカーは、1つのデータストリームである。炎症のパーソナライズされた状態は、炎症を有する臓器システム内の、或いは、血液、尿、又は脳脊髄液などの体液中の、炎症細胞によって検出することができる。炎症の副産物は、インターロイキン6、神経成長因子、マトリックスメタロプロテアーゼなどのバイオマーカー及びサイトカインの上昇した濃度によって検出することができる。逆に、いくつかの生理学的マーカーは、炎症において異常である(所謂「急性期反応物質」)。炎症は、上昇した白血球数に加えて、赤血球数、ヘモグロビン濃度、並びに、C-反応性タンパク質、赤血球沈降速度、或いは、白血球数などの多数の急性期反応物質における異常を引き起こす。心臓内においては、心臓細胞破壊のマーカーである血清トロポニンが、そのレベルが炎症に伴って降下する急性期反応物質であることが周知である(「逆急性期反応物質」)。
【0045】
炎症性の原因を有する患者のサブグループ内の不整脈は、心房細動などの複雑な不整脈用の療法のこれまで認識されていない形態であるタクロリムスなどの物質を使用して免疫抑制を含む抗炎症療法を使用してターゲットとすることができる。ステロイド又は非ステロイド物質などのその他の免疫抑制療法又は細胞療法は、効果的であり得る。1つの論理的説明は、心臓移植の後に免疫抑制物質を受け取った患者は、めったにAFを起こさないという点にある。利益は、移植の際の肺静脈の手術的隔離に帰されるが、その他の母集団におけるこのような隔離は、50~70%未満のAFからの解放を提供する。AFを含む複雑なリズム障害用の免疫抑制の使用は、めったに使用されていない。本発明におけるデジタルタクソノミー及びPDPは、免疫抑制を含む抗炎症療法が有用であり得る炎症に仲介された不整脈を有する個人を識別することになる。
【0046】
その他の臓器系の場合には、計測可能な体組織からの検知信号は、中枢及び末梢神経系又は頭皮上において計測された脳波図(EEG)、侵襲的電極記録、又は周辺センサを含み得る。また、計測は、呼吸器系、骨格筋及び皮膚、電気信号の任意のインデックス、血行動態、臨床因子、神経信号、遺伝子プロファイル、代謝状態のバイオマーカー、及び患者の運動を含み得る。その他の入力データ要素は、撮像、核、遺伝、研究室、又はその他のソースから到来し得ると共に、更には、ストリームとして検知されてもよく(即ち、システムに送信されてもよく)、或いは、特定の時点において値として入力されてもよい。
【0047】
一般に、センサは、患者の身体との物理的接触状態にあってもよく、且つ、センサデータストリームは、有線又は無線送信の1つによって取得される。センサは、電極、光学センサ、圧電センサ、音響センサ、電気抵抗値センサ、熱センサ、加速度計、圧力センサ、フローセンサ、及び電気化学センサの1つ又は複数であってよい。
【0048】
パーソナライズされた療法は、接触装置を介したエネルギー配給、非接触装置を介したエネルギー配給によるアブレーション、電気療法、熱療法、機械療法、薬剤療法の配給、免疫抑制の配給、幹細胞療法の配給、及び遺伝子療法の配給のうちの1つ又は複数により、患者の組織の少なくとも一部分を変更するステップを含み得る。演算装置は、PDP、分類された1つ又は複数の定性的疾病分類、パーソナライズされた介入、及び介入結果を有する更新されたパーソナル履歴データを生成するように更に構成することができる。
【0049】
一態様において、本発明のシステムは、プロセッサと、プロセッサによって実行された際に、人間の身体と関連する1つ又は複数のセンサにおいて1つ又は複数の身体的機能と関連する身体信号を検出するステップ、1つ又は複数の検知されたシグネチャを生成すべく身体信号を処理するステップ、エフェクタ応答を判定するべくデジタルオブジェクトを使用してシグネチャを処理するステップ、身体タスクを制御するべく1つ又は複数のエフェクタ応答を配給するステップ、及び前記応答を監視するステップを含む動作を実行する命令を保存したメモリと、を含む。
【0050】
本発明の別の態様においては、電気リズム障害を治療するアブレーションカテーテルは、治療用のターゲット領域の場所を判定するために電気信号を検出するためのセンサ電極のアレイを含む。カテーテルがターゲット領域において最適に位置決めされていない場合には、コントローラは、ターゲット領域に向かうカテーテルの運動をガイドするために検出信号を使用する。適切な位置決めが特定されたら、コントローラは、ターゲット領域において組織を変更するためのエネルギーを供給するためにカテーテル内のアブレーションコンポーネントを起動する。
【0051】
要約すれば、本発明は、複雑なリズム障害用の療法に適した個人を識別することが可能であり、療法用の最適な場所に向かって新規のセンサ装置を運動させるために3次元において方向ガイダンスを提供しており、且つ、この場所において組織に対して直接的に療法を供給するための能力を提供することができる。従って、一実施形態は、複雑なリズム障害のパーソナライズされた診断を提供するシステムと、「単一ショット」センサ/療法ツールと、である。限定を意図していないいくつかの実施形態は、心臓リズム障害における、虚血性心疾患における、且つ、心不全における心臓用途を含む。
【0052】
本発明の一態様において、心臓リズム障害を治療するシステムは、組織表面との接触状態において配置されるように構成されたカテーテルであって、接触表面を有する柔軟なボディを有するカテーテルと、柔軟なボディ内において配置されたセンサ電極のアレイであって、それぞれのセンサ電極は、接触表面と実質的に同一平面上に位置した導電性表面を有し、それぞれのセンサ電極は、組織表面から電気信号を検出するように構成される、センサ電極のアレイと、組織表面にエネルギーを供給するように構成された1つ又は複数の治療要素と、を含む。複数のコンダクタのそれぞれのコンダクタは、センサ電極及び1つ又は複数の治療要素の1つに接続された遠端を有する。複数のコンダクタの近端との間における通信状態にあるコントローラは、検出された電気信号を受け取るように、心臓リズム障害のターゲット領域の場所を判定するように、カテーテルがターゲット領域において最適に位置決めされるかどうかを判定するように、且つ、最適に位置決めされていない場合にターゲット領域への方向性を演算し且つターゲット領域に向かってカテーテルを運動させるための運動命令を生成するように、且つ、カテーテルが最適に位置決めされるという判定の後にターゲット領域内の組織を変更するために1つ又は複数の治療要素を起動するための治療信号を生成するように、構成されたプロセッサを含む。いくつかの実施形態において、柔軟な層は、一般に、平面的であり、且つ、矩形、楕円、及び環帯から構成された群から選択された形状を有する。遠端、近端、及び長さを有する細長い中空シャフトには、遠端において配設されたカテーテルが提供され、コントローラは、近端において配設され、且つ、その結果、複数のコンダクタは、シャフト内において保持され、且つ、その長さだけ延在しており、この場合に、シャフトの遠端は、近端から操作可能である。シャフトモーターは、コントローラによって生成された運動命令に応答してシャフトの遠端を操向するように構成することができる。
【0053】
シャフト上において摺動自在に配設されたシースは、カテーテルがシャフトの遠端から離れるようにシースを摺動することによって配備される時点まで折り畳まれた状態においてカテーテルを保持するように構成された内部容積を有する。
【0054】
いくつかの実施形態において、カテーテルは、柔軟なボディ内において形成された灌注液孔を更に含んでいてもよく、灌注液孔は、コントローラと関連する灌注液ソースとの流体連通状態にあり、この場合に、灌注液ソースは、治療要素のアレイの起動との関連においてターゲット領域において組織に灌注液孔を通じて灌注液を供給するように構成される。
【0055】
いくつかの実施形態においては、1つ又は複数の治療要素は、アブレーション電極のアレイを有し、且つ、この場合に、1つ又は複数の治療要素に接続された複数のコンダクタのサブセットは、それぞれのアブレーション電極に電磁エネルギーを供給するように構成された導電体である。センサ電極のアレイ及びアブレーション電極のアレイは、接触表面の周りにおいて均一に分散されていてもよく、或いは、アブレーション電極のアレイは、センサ電極のアレイの間において均等に散在していてもよい。
【0056】
プロセッサは、検出された電気信号に基づいてターゲット領域のサイズを判定するように、ターゲット領域のサイズ及び場所に少なくとも基づいてアブレーション電極のアレイの1つ又は複数のアブレーション電極を識別するように、且つ、識別されたアブレーション電極を起動するように、更に構成することができる。
【0057】
プロセッサは、検出された電気信号に基づいて心臓リズムの方向性マップを生成し、柔軟なボディをターゲット領域に向かって運動させるためのガイダンス方向を生成し、且つ、ターゲット領域の場所を判定するために方向性マップを統合することにより、ターゲット領域の場所を判定してもよく、この場合に、方向性マップは、心臓リズムの伝導路を記述する。方向性マップは、トレーニング済みの機械学習モデルを電気信号に適用することにより、生成することが可能であり、この場合に、機械学習モデルは、人間の心臓の電気信号及び心臓リズム障害の既知のターゲット領域を有するトレーニング例に基づいてトレーニングされる。
【0058】
いくつかの実施形態において、それぞれのアブレーション電極は、別個の波形を放出するように構成される。コントローラは、アレイのアブレーション電極の1つ又は複数のサブセットを別個にアドレス指定するように構成することが可能であり、且つ、この場合に、治療信号は、第1波形を放出するためのアブレーション電極の第1サブセットへの第1信号と、第2波形を放出するためのアブレーション電極の第2サブセットへの第2信号と、を有する。センサ電極のアレイは、少なくとも4つの電極を有する。いくつかの実施形態においては、センサ電極は、1つ又は複数の治療要素がセンサ電極のアレイを有するように、アブレーションエネルギーを供給するように構成することができる。
【0059】
特定の実施形態においては、1つ又は複数の治療要素は、柔軟なボディ内において形成された且つクーラントを保持するように構成された1つ又は複数のクーラントチャンバを有し、且つ、この場合に、複数のコンダクタは、凍結エネルギーをターゲット領域において組織に供給するために1つ又は複数のクーラントチャンバにクーラントソースからクーラント流体を導くように構成されたコンダクタのサブセットを有する。柔軟なボディは、接触表面との接触状態にある組織への凍結エネルギーの伝導を改善するためにその内部において内蔵された熱伝導性材料を有することができる。或いは、この代わりに、1つ又は複数の治療要素は、柔軟なボディ内において形成された冷凍アブレーションローカスのアレイであってもよく、且つ、この場合に、複数のコンダクタは、凍結エネルギーをターゲット領域において組織に供給するためのコントローラからの治療信号に応答して冷凍アブレーションローカスにクーラントソースからのクーラント流体を導くように構成されたコンダクタのサブセットを有する。更にその他の実施形態においては、1つ又は複数の治療要素は、柔軟なボディ内において分散されたターゲティングフィデュシャルのアレイであってもよく、この場合に、ターゲティングフィデュシャルは、1つ又は複数の外部アブレーションエネルギーソースからのアブレーションエネルギーの供給をガイドするように構成される。
【0060】
本発明の更に別の態様においては、心臓リズム障害を治療する方法は、センサ電極のアレイを使用して心臓の電気信号を検出することと、検出された電気信号に基づいて心臓リズムの伝導路を記述する方向性マップを生成することと、(i)方向性マップ内の心臓リズム障害のターゲット領域の場所及び(ii)方向性マップの外側の心臓リズム障害のターゲット領域へのガイダンス方向の1つを判定するために方向性マップを統合することと、柔軟なボディが方向性マップに従ってターゲット領域において最適に位置決めされるかどうかを判定することと、最適な位置決めの判定に応答してターゲット領域の判定された場所において組織を変更するためのエネルギーを供給するためにシステムの1つ又は複数の治療要素を起動することと、を含む。方向性マップを生成することは、トレーニングされた機械学習モデルを検出された電気信号に適用することを伴ってもよく、この場合に、機械学習モデルは、人間の心臓の電気信号及び心臓リズム障害の1つ又は複数のターゲット領域の既知の場所を有するトレーニング例に基づいてトレーニングされる。
【0061】
いくつかの実施形態においては、方法は、方向性マップの外側のターゲット領域へのガイダンス方向の判定に応答して、ターゲット領域へのガイダンス方向における後続の位置に装置を操向することを更に含むことができる。また、更には、方法は、装置を後続の位置に操向した後に複数の検知電極によって心臓の後続の電気信号を検出することと、後続の電気信号に基づいて心臓リズムの伝導路を記述する後続の方向性マップを生成することと、(i)後続の方向性マップ内の心臓リズム障害のターゲット領域の場所及び(ii)後続の方向性マップの外側の心臓リズム障害のターゲット領域への後続のガイダンス方向の1つを判定するために後続の方向性マップを統合することと、方向性マップの外側のソース領域への後続のガイダンス方向の判定に応答して柔軟なボディをターゲット領域への後続のガイダンス方向において第3位置に操向することと、を伴うことができる。これに加えて、方法は、方向性マップの外側におけるターゲット領域の方向の判定に応答して、ターゲット領域の方向において装置を運動させるために電子ディスプレイ上において通知を提供することを含むことができる。その他の方式は、ターゲット領域の場所の判定に応答してターゲット領域の場所までの閾値近接性内において1つ又は複数のアブレーションコンポーネントを識別すること及び方向性マップに基づいてターゲット領域のサイズを判定することの1つ又は複数を含んでいてもよく、この場合に、1つ又は複数のアブレーションコンポーネントの識別は、ターゲット領域のサイズに少なくとも更に基づいている。
【0062】
更にその他の実施形態においては、方法は、心臓リズム障害が持続するという判定に応答して、後続の電気信号に基づいて心臓リズムの伝導路を記述する後続の方向性マップを生成することと、後続の方向性マップ内の心臓リズム障害の第2ターゲット領域の場所及び後続の方向性マップの外側の心臓リズム障害の第2ターゲット領域へのガイダンス方向の1つを判定するために後続の方向性マップを統合することと、第2ターゲット領域の場所の判定に応答して第2ターゲット領域の判定された場所における第2ターゲット領域において組織を変更するように装置上の複数のアブレーションコンポーネントの1つ又は複数のアブレーションコンポーネントに命令することと、を含むことができる。
【0063】
図面の簡単な説明
いくつかの実施形態は、以下の添付図面の図において、限定としてではなく、例として示される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】1つ又は複数の実施形態による、パーソナライズされた診断を可能にするための且つパーソナライズされた療法を供給するためのデジタルタクソノミーとの比較のための個人における臨床目的のためのパーソナルデジタルフェノタイプ(PDP)の使用を描くブロック図である。
図2】1つ又は複数の実施形態による、心臓の領域を診断又は治療するように設計された出力を有する、心臓又はその他の臓器からのストリーミングデータを入力データと統合する、心臓のための本発明のシステムにおけるパーソナルデジタルフェノタイプの使用を示す。
図3】1つ又は複数の実施形態による、診断を実施するための、療法を供給するための、且つ、個人用の療法応答を追跡/表示しているための、パーソナルデジタルフェノタイプの一般的な使用を示す。
図4】1つ又は複数の実施形態による、デジタルタクソノミーとの比較におけるパーソナルデジタルフェノタイプの生成を示すフロー図である。
図5】1つ又は複数の実施形態による、健康又は疾病を通知するために、パーソナルデジタルフェノタイプが、個人用の保存される正常値と、或いは、母集団値と、比較される方式を示す。
図6】1つ又は複数の実施形態による、パーソナルデジタルフェノタイプにおいて健康又は疾病を区別するために重要であるデータ要素を説明するためのプロセスフローを要約する。
図7】1つ又は複数の実施形態による、PDPに基づいて複雑な不整脈を管理するためのフローチャートである。
図8】1つ又は複数の実施形態による、センサが対象のソース領域に向かって運動するための方向性ガイダンスを通知する検知された信号の表示ユニットによって心臓の不整脈をマッピングするための且つこの領域に到達した時点を通知するためのシステムの一実施形態を示す。
図9】リズム障害の療法用のターゲットとなり得る対象のサンプル領域(ROI)を示す。
図10】1つ又は複数の実施形態による、その個人内の検知されたデータを使用したリズム障害用の対象のターゲット領域に向かう本発明における方向性ガイダンスの概要を提供する。
図11A】1つ又は複数の実施形態による方向性分析用のステップを示すフロー図である。
図11B】1つ又は複数の実施形態による方向性分析及び治療用のステップを示すフロー図である。
図12】1つ又は複数の実施形態による電気リズム障害を治療するプロセスを示すフローチャートである。
図13】1つ又は複数の実施形態による電気リズム障害を治療するための例示的なアブレーションカテーテルを示す。
図14A】代替スペード構成の例を示す。
図14B】電気リズム障害におけるソース又はその他のターゲット領域へのスペード構成の適合を示す。
図15A】電磁エネルギーを組織に供給するように構成されたアブレーションカテーテルの一実施形態の斜視図である。
図15B】電磁エネルギーを組織に供給するように構成されたアブレーションカテーテルの一実施形態の断面図である。
図16A】灌注液を組織に提供するように構成されたアブレーションカテーテルの一実施形態の斜視図である。
図16B】灌注液を組織に提供するように構成されたアブレーションカテーテルの一実施形態の断面図である。
図17A】凍結エネルギーを適用するように構成された1つ又は複数の冷凍アブレーションコンポーネントを有するアブレーションカテーテルの一実施形態の斜視図である。
図17B】凍結エネルギーを適用するように構成された1つ又は複数の冷凍アブレーションコンポーネントを有するアブレーションカテーテルの一実施形態の断面図である。
図17C】凍結エネルギーを適用するように構成された1つ又は複数の冷凍アブレーションコンポーネントを有するアブレーションカテーテルの一実施形態の代替断面図である。
図18A】凍結エネルギーを適用するように構成された1つ又は複数の冷凍アブレーションコンポーネントを有するアブレーションカテーテルの一実施形態の斜視図である。
図18B】凍結エネルギーを適用するように構成された1つ又は複数の冷凍アブレーションコンポーネントを有するアブレーションカテーテルの一実施形態の断面図である。
図19】ターゲティングフィデュシャルを有するアブレーションカテーテルの一実施形態の斜視図である。
図20】本発明の実施形態を実装するための例示的な演算環境のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
例示的な実施形態の詳細な説明
本開示を目的として、以下の定義が適用される。
【0066】
「アブレーションエネルギー」は、組織を変更するために使用されるエネルギーを意味する。変更される組織は、電気リズム障害用のソース領域又はその他のターゲット領域に対応し得る。組織の変更は、ソース領域において生成される1つ又は複数の電気リズムに影響を及ぼす。ターゲット領域へのアブレーションエネルギーの提供における意図された効果は、電気リズム障害を治療するというものである。アブレーションエネルギーは、(例えば、アブレーション電極によって提供される高周波の形態における)電磁エネルギー、凍結エネルギー(例えば、一般には迅速除去又は迅速冷却であるクーラントによる組織からの熱の除去)、組織を変更する能力を有するなんらかのその他の形態のエネルギーを含む。
【0067】
「連合学習」は、入力データを計測可能な生理学又は臨床結果とリンクするプロセスを意味する。連合学習は、反復的であってもよく、これにより、関連付けが、入力と計測された出力(生理学的又は臨床エンドポイント)との間の変化のパターンに基づいて、変更(「学習」)されることを可能にする。
【0068】
「生物学的信号」は、身体によって生成される信号であり、且つ、1つ又は複数の身体系を反映し得る。例えば、心拍数は、心臓機能、自律神経系の緊張、及びその他の因子を反映する。また、非生物学的信号も、参照されたい。
【0069】
「バイオメトリック信号」は、人間の特性のメトリックを提供する信号を意味する。バイオメトリック識別子は、生理学的なものであってもよく、或いは、振る舞い的なものであってもよい。生理学的バイオメトリックは、限定を伴うことなしに、個人の、DNA、指紋又は掌紋、口腔スワブ、組織又は尿サンプル、網膜画像、顔面認識、手又は足の形状、虹彩の認識、或いは、匂い/香りを含む。また、これは、バイタルサイン、ECG、EEG、EMGなどのような、信号にも適用され得る。振る舞い的バイオメトリックは、歩行の歩調又はタイピングリズムなどのパターンを含む。本発明の実施形態は、時間に伴う組み合わせられた生理学的且つ振る舞い的バイオメトリックの動的なパターンを使用しており、これらは、個人内の変化に適合しており、且つ、従って、人物のシグネチャの以前の「バージョン」からの偽造に対して安定する。
【0070】
「身体」は、単細胞の生物、多細胞の生物、ウイルス、及びプリオンの物理的構造を意味する。生物は、(限定を伴うことなしに、人間及びその他の哺乳動物などの)動物、植物、バクテリア、などを含む。
【0071】
「消費者装置」は、医療処方を伴うことなしに消費者が直接的に利用可能である装置を意味する。過去においては、このような装置は、通常、米国食品医薬品局又はその他の国の類似の規制当局などの、医療規制当局又は組織によって規制されてはいなかったが、最近では、いくつかの装置がFDAの承認を受けている。消費者装置は、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組合せを含み得る。これは、通常、医療装置ではなく、医療装置は、人間又はその他の動物内の、疾病又はその他の状態の診断、或いは、疾病の治癒、軽減、治療、又は防止において、使用されるべく意図された、コンポーネント部分又はアクセサリを含む、インスツルメント、装置、実装、機械、工夫、埋植物、体内試薬、或いは、その他の類似の又は関係する物品として定義される。医療装置の定義は、医療決定サポートソフトウェアを除外する。
【0072】
「エフェクタ」は、物理的アプライアンス、人工補綴物、機械的又は電気的装置などの身体タスクを実行する手段である。物理的アプライアンスは、睡眠の際に呼吸を改善するべく四肢を運動させる又はダイアフラムを運動させるための装置、睡眠の際に気道を開放した状態において維持するためのスプリント、睡眠の際に呼吸を改善するための横隔神経の電気刺激などの、身体機能を刺激するための1つ又は複数の信号、或いは、サイバネティック四肢、或いは、末梢又は中枢神経系用の埋め込まれた回路、などの人工補綴物などのように、身体機能を改善することができる。
【0073】
「データストリーム」又は「データのストリーム」は、検知されている生物学的プロセスに関するリアルタイム又はほぼリアルタイムの情報を提供し得る、1つ又は複数のセンサによって検知された生物学的データを意味する。心臓内のセンサは、心電図(ECG)、心拍数、脈動波形、並びに、従って、心臓血行動態を有するストリームを提供し得る。その他のデータストリームは、心臓音、心雑音の分析、及び心臓に関係する血行動態の高度な分析を含む、心臓音を含み得る。肺機能は、胸運動、聴診音、及び呼吸と関連する神経発火として検知することができる。胃腸疾病は、音(腹鳴)、腹壁上の運動、及び内臓の滑らかな筋肉活動に関係する電気信号として、検知することができる。中枢及び末梢神経系活動は、頭皮上の(エレクトロエンセファログラム、EEG)、頭皮から離れた、但し、依然として、EEGを反映する、且つ、末梢神経発火からの、神経活動として検知することができる。
【0074】
本明細書において使用されている「人口統計」は、限定を伴うことなしに、年齢、性別、疾病の家族履歴、民族性、及び併存疾患の存在を含み得る且つ臨床的に適切であり得るパーソナル情報を意味している。
【0075】
「デジタルタクソノミー」は、定量的インデックスに基づいた疾病又は健康の異なる状態のパーティションを意味している。従来の疾病分類は、定性的であり、例えば、「心房細動は、相対的に高齢の個人において相対的に一般的であって、弁障害又は心不全などの心臓の併存疾患を有する者、メタボリックシンドロームを有する者」である。デジタルタクソノミーは、定量的であり、定量化可能なプライマリ及びセカンダリデータ要素(データベクトル)の観点において個人の健康又は特定の疾病のリスクを記述する。疾病エンティティDが特定の個人内に存在する尤度は、確率p(D)によって近似され、
【数1】
ここで、mは、利用可能なデータ入力タイプの数であり、nは、検討対象の疾病であり、且つ、p(Vn,i)は、データベクトルVn,iが入力iについて疾病nに寄与する確率であり、且つ、kは、疾病n用の重み付け定数である。これらの要素は、特定のデータ入力が疾病に寄与する特定の確率を演算する、デジタルタクソノミーにおいて統合されている。確率は、母集団データから取得することが可能であり、この場合に、特定の人物は、その母集団内の最も類似した個人にマッチングされる。また、確率は、(自己報告又は裁定された)健康の時点において且つ(自己報告又は裁定された)疾病の時点において、この特定の個人のみから直接的に取得することもできる。また、これらの計算は、従来の推定式によって実行することができるが、統計的技法及び機械学習によって実行することもできる。デジタルタクソノミーは、複数の関係するデータ入力における異常の集合により、確率論的に疾病エンティティを表す。このプロセスは、動的であり、その理由は、疾病を反映する式が、データが変化した際に且つ健康又は疾病の状態が更新された場合に、更なるデータ入力に伴って変化することになるからである。デジタルタクソノミーは、個人内のウェアラブル装置からの大量のデータ又はクラウドソーシングされたパラダイムとしてのいくつかの個人からの大量のデータを分析するのに非常に適している。
【0076】
「履歴データ」は保存されているデータを意味しており、これは、例えば、臓器の磁気共鳴撮像(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、放射線、又はその他のスキャンなどの、医療撮像からの報告、遺伝性な試験分析からのデータ(例えば、1つ又は複数のゲノム変形の存在)、予め取得されたECG報告、病理学、細胞学、及びその他の研究室報告のみならず、年齢、性別、疾病の家族履歴、及び併存症の存在などの、臨床人口統計を含み得る。履歴データは、例えば、精神病、ストレスの多い職業における雇用、妊娠の回数(女性の場合)、喫煙、薬物又はアルコールの乱用などのようなハイリスクな振る舞いの実行などのような、PDPの生成に関連し得る、更なるパーソナル履歴詳細を更に含み得る。
【0077】
「入力データ」又は「データ入力」は、システムの物理的コンポーネントに直接検知されないデータ、但し、PDP及びデジタルタクソノミーを生成するべく、検知されたデータとの関連において処理ユニットによって利用されるデータ、を意味する。データソースからの入力データは、例えば、外部ECG又はEEGシステムなどの、その他のシステムを使用して検出されたデータのストリーム、臨床、研究室、病理学、化学、又はその他のデータ、或いは、医療撮像装置からのデータ、を含んでいてもよく、このデータは処理ユニットに送信される。
【0078】
「指標個人」は、パーソナルデジタルフェノタイプが生成され得る患者又は研究若しくは評価のターゲットを意味する。
【0079】
「機械学習」は、静的なプログラミング命令に従うのではなくモデルを構築することによりデータから学習することが可能であり、且つ、データに基づいて予測を実施することができる、一連の分析方法及びアルゴリズムを意味する。機械学習は、しばしば、人工知能の1つのブランチとして分類されており、且つ、新しいデータに曝露された際に変化し得るコンピュータプログラムの開発に焦点を合わせている。本発明において、機械学習は、それぞれの個人におけるタスクと検知されたデータをリンクするデジタルネットワークを生成するべく使用される1つのツールである。数学的に、機械学習のいくつかの形態は、統計的方式によって近似することができる。機械学習技法は、教師付き学習、転位学習、教師なし学習、又は強化学習を含む。いくつかのその他の分類が存在し得るが、大部分は以下の概念を実施し得る。
【0080】
「教師なし機械学習」は、潜在的には、臨床データ(心房細動の診断)などの、データの間の内部リンク、家族履歴、物理的検査からのデータ(不規則に不規則な脈動)、センサからのデータ、電気データ(ECG上の不規則な心房信号)、構造的撮像データ(肥大した左心房)、バイオマーカー、遺伝性及び組織データの間におけるリンクを識別するべく使用され得る、クラスタ分析などの方法を含む。
【0081】
「教師付き機械学習」は、明示的に入力をモデル化することなしに、即ち、潜在的に不正確な(「バイアスされた」)機構仮説を採用することなしに、一連の関係する又は関係していないと思われる入力を1つ又は複数の出力クラスに分類し得る方法を含む。
【0082】
「強化学習」は、心理学に関係する機械学習の一形態であり、これは、ソフトウェアエージェントが、累積報酬を極大化するべく特定の環境においてアクションを実行する方式に焦点を合わせている。強化学習は、しばしば、ゲーム理論、オペレーションリサーチ、群知能、及び遺伝的アルゴリズムにおいて使用されており、且つ、近似ダイナミックプログラミングなどの、その他の名称を有する。機械学習における1つの実装形態は、マルコフ決定プロセス(MDP:Markov Decision Process)としての定式化を介したものである。強化学習は、マッチングされた入力及びラベル付与された出力を必要としてはいない、並びに、(例えば、パーセプトロンにおける逆伝播アルゴリズムなどを介して、次善の報酬を補正し得る教師付き学習とは異なって)次善の報酬を結果的にもたらすアクションが明示的に補正されてはいない、という点において、教師付き機械学習とは異なっている。
【0083】
「医療装置」は、人間又はその他の動物内の、疾病又はその他の状態の診断において、或いは、疾病の治癒、軽減、治療、又は防止において、使用されるべく意図された、コンポーネント部分又はアクセサリを含む、インスツルメント、装置、実装、機械、工夫、埋植物、生体内試薬、又はその他の類似の又は関係する物品を意味する。
【0084】
「ニューラルネットワーク」は、パターンを認識するために使用され得る人間の脳に従って緩やかにモデル化された相互接続されたノードの自己学習ネットワークを意味する。人工ニューラルネットワークは、経験則、決定論的法則、及び詳細なデータベースと組み合わせることができる。
【0085】
「パーソナルデジタルフェノタイプ(「PDP」)は、個人における健康又は疾病のデジタル表現であり、これは、個人用の療法に対する観察された応答に対して較正された細胞、遺伝、又はその他の-omicデータを含んでいてもよく或いは含んでいなくてもよい。個人用のPDPは、大きなグループからのデータのデジタルタクソノミーからのこの個人に最も類似したものにマッチングされる。従って、PDPは、個人の統計的マジョリティのみを考慮したものではない、パーソナライズされた医療を可能にする。PDPを生成するために使用されるデータ要素は、類似の年齢、性別、及び生存疾患の個人用の疾病又は健康に対するその可能性が高い寄与によって重み付けられた個人の健康状態を表すことができる。PDPは、健康又は疾病に対する影響の算出された又は文書化された確率を考慮したアルゴリズム分析によってマッチングされる。これは、決定論的アルゴリズム又は機械学習を使用することができる。例えば、心拍リズムフェノタイプは、主には、心拍数及び(表面ECG及び心臓内の)エレクトログラフィック信号を考慮することになる。相対的に大きな数学的重み付けが、これらのデータ要素に付与されることになる。その他の(間接的な)臓器系からのデータストリームは、心拍数に伴う呼吸数の変化(即ち、肺センサ)、心拍数に伴う神経発火(即ち、神経機能)の変化を含み得る。その他のデータ要素は、異常な心臓駆出率、心臓の構造的異常性の場所及び存在を含む。また、年齢、性別、及び家族履歴を含む、履歴データは、デジタルパーソナルフェノタイプの全体に影響を及ぼし得る。
【0086】
本明細書において使用される「母集団データ」は、本発明の方式の精度の決定因である。指標個人が基準母集団とは非常に異なっている場合には、デジタルタクソノミーは、この個人を十分に表していない場合がある。この事例では、データは、主には、理想的には裁定された健康及び裁定された病気の時点における個人における従来のデータから導出されることになる。明確にフェノタイプ化されていない、或いは、明確にラベル付与されたデータ要素を有していない、などのように、基準母集団が広範であるがその他の制限を有する場合には、この場合にも、タクソノミーは、有用とはならない。従って、理想的なデータセットは、明確にラベル付与されたデータストリームを有し、且つ、デジタルタクソノミーを生成するためにパーティション化され得る指標個人のような個人を有する。「大規模な」又は「大きな」データを単純に提供することで十分ではない。
【0087】
「センサ」は、個人の身体から生物学的信号を検出し得る装置を含む。センサは、身体との直接的な接触状態にあってもよく、或いは、離れていてもよい。個人のグループに適用された際に、センサは、定義された母集団のすべて又は一部分を表し得る。電磁センサは、筋電図(EMG)、脳電図(EEG)、心電図(ECG)、神経発火、又はその他のエミッタに関係する電磁信号を検知し得る。「センサ」という用語は、特に、電気情報が検出される本発明の特定の心臓用途について記述する際には、「電極」、「電極カテーテル」、又は「カテーテル」との間において相互交換可能に使用され得る。また、電気センサは、交感神経系が優勢である時点において発生し得る、人物が発汗した際に減少する皮膚に跨るコンダクタンスなどの、生体インピーダンスを検出することもできる。また、センサは、電流フローを介してその他の化学的変化を検出することもできる。また、センサは、サーミスタ又はその他の熱検出器などの、温度を検出する装置をも含む。センサは、拍動する心臓活動(フォトプレチスモグラフィ)からの反射光の色の変化、周辺酸素化(例えば、チアノーゼ、貧血、皮膚における血管拡張など)などの、光を検出することができる。センサは、マイクロフォンを介して音を検出し得る。これは、心臓、肺、又はその他の臓器からサウンドを検知するために使用することができる。センサは、圧電要素を介してその他の振動又は運動を検出することができる。センサは、通常は装置上において電気信号に変換されるホルモン、薬剤、バクテリア、及びその他の要素用の専門的なセンサを使用して化学物質を直接的に検出することができる。例は、呼吸又は心拍からの胸壁運動、特定のタイプの呼吸からの胸壁振動(例えば、大きな閉塞性呼吸音)のモーション検知、又は心臓のサウンド(例えば、医療文献における所謂「スリル」)を含む。呼吸センサは、胸壁、腹、又は換気と関連するその他の身体部分の運動、呼吸と関連する音響データ(サウンド)、又は呼吸と関連する酸素化を検出し得る。化学センサは、生物化学の技術分野における当業者には馴染みのある酸素化及び脱酸素、代謝性アシドーシス、ストレス、又はその他の状態、などの生体化学反応を反映した皮膚又はその他のメンブレイン上の化学信号を検出し得る。また、センサは、指紋又はその他の身体部分から接触を必要とするカメラ又はレンズを使用して画像を検出することも可能であり、或いは、特定の筋肉から運動を検知することも可能であり、或いは、接触レンズ内のフォトセンサから虹彩の拡張又は振動を検知し得る。位置センサは、身体の各部分の位置及び時間に伴う変化(足取りを含む)又は一時点における又は時間に伴う特定の身体部分の位置の接触検知(例えば、顔面下垂、顔面チック、又はその他の特異な動き)を識別することができる。本発明のシステムの例示的な実施形態において、複数のセンサは、中央演算装置との通信状態において使用されていてもよく、或いは、生物学的センサのIoT(internet of things)を形成するべく、BLUETOOTH(登録商標)、WiFi(商標)、又はその他のプロトコルを介してリンクされたネットワークを形成していてもよい。
【0088】
「信号」は、検知又は取得され得る、電子、電磁、デジタル、又はその他の情報を含む。検知された信号は、変換を伴うことなしに、その自然な形態から不変の状態において検出される(即ち、記録される)。検知される信号は、通常、生物学的信号である。検知される信号は、人間により、検出され得るが(例えば、音、視覚、温度)、マイクロフォン、オーディオレコーダ、カメラ、温度計などの機械によっても、検出され得る。取得される信号は、ECG記録などの、変換された状態において検出される。このような信号は、生物学的なものであってもよく、その理由は、心臓生体電気は、ECGを生成し、或いは、例えば、音又は超音波エネルギーの適用の後に検知される振動、或いは、検知された電気、音、又はその他の信号から変換された触覚信号などの、非生物学的信号をも生成するからである。信号は、センサとの物理的接触を介して検知することができる。
【0089】
「スマートデータ」は、用途における正常又は異常な機能を識別するべく、及び/又は、これに基づいて機能するべく、使用され得る、ソースから取得された用途固有の情報を意味する。従って、スマートデータは、「ビッグデータ」という用語とは異なっている。「スマートデータ」は、個人に適合されていると共に、健康及び敏捷性を維持するため、或いは、睡眠呼吸障害などの疾病を検出及び治療するため、などのように、特定のタスク又は要素に対処するべく適合されている。適合は、システムが対象のタスクに影響を及ぼし得るものに関する知識に基づいている。このような知識は、心理学、工学、又はその他の原理に基づいたものであってよい。対照的に「ビッグデータ」は、しばしば、個別に適合されたリンクを伴うことなしに統計的パターン又は傾向を識別することを目的として、極めて大きなデータセットに焦点を合わせている。機械学習の用語法において、スマートデータは既知の出力に対するデータセットの教師付き学習から結果的に得られ得る一方で、ビッグデータは、特定のデータセットの重要性のなんらの知識をも必ずしも意味することなしに、単にデータの量について言及する。
【0090】
心臓リズム障害用の「ソース」は、本明細書においては、療法用のターゲットを通知するために使用される。生物学の文献においては、電気ソース又は電気ドライバは、電波が外側に発せられる焦点又はアクティベーションが発せられるリエントラントな、回転的な、又はローター様の回路を通知する。これらの電気ソースは、局所的心房頻脈、心室頻脈におけるリエントリ、又は心房粗動などのリズムを駆動する。また、ソースは、心房細動又は心室粗動又は心室細動をも駆動し得る。臨床文献においては、異なる定義が適用されることが可能であり、且つ、心臓リズム障害用の療法用の有効なターゲットであるその他のターゲットが識別され得る。これは、低電圧の線維症又は瘢痕領域内の生存組織の小さなチャネル、複雑な信号の領域、高周波数又はアクティベーションの高レートの領域を含む(高優位周波数を含む)。その他の電気ターゲットは、サイナスリズムにおいて又はペーシングの際を含む相対的に迅速なレートにおいて検出され得るアクティベーションの外形ライン(「イソクローン」)が存在する伝導低速化の領域を含む。
【0091】
心不全、一回換気量、睡眠時無呼吸症候群、肥満、などのその他の生物学的用語は、その標準的定義を有する。
【0092】
以下の説明及び添付の図は、生物学的リズム障害用の対象の領域を検出するために且つこのような対象の領域を治療するためにパーソナライズされた方式を可能にするようにデジタルタクソノミーとの比較において健康及び疾病のパーソナルデジタルフェノタイプ(PDP)を生成するための本発明のシステム及び方法の用途の例を提供する。本明細書において記述される例は、例示を意図したものに過ぎない。当業者には明らかとなるように、本明細書において開示される本発明の原理を利用することにより、更なる変形及び組合せを形成することができる。
【0093】
図1は、電気リズム障害用の対象の領域の識別と、その後のパーソナライズされた療法のそのような領域への供給と、を含む、個人用の健康又は疾病の判定をパーソナライズするためにデジタルタクソノミーとの比較においてパーソナルデジタルフェノタイプ(PDP)を定義するための例示的なシステムを示す。入力/出力(I/O)データ100は、身体の外部及び/又は内部において配置され得る1つ又は複数のセンサ105によって生成された、個人に関係する入力信号を含む。治療カテーテルなどの療法装置110は、一時的に挿入されてもよく、或いは、埋植されてもよい。埋植型の装置は、PDPを生成/維持するために、健康の維持を提供するために、或いは、連続的な療法を提供するために、明示的に挿入することができる。更なる入力125は、臨床データ、患者履歴、物理的データ、及び/又は電子医療レコードシステムからのデータを含む。装置は、タイムスタンプを有するデータが有線又は無線手段を介して入力ユニット130に送信される状態において、もののインターネット(IoT)によって通信することができる。データは、連続的に、ほぼ連続的に、リアルタイムで、ほぼリアルタイムで、又はなんらかのその他のフォーマットにおいて、或いは、時間に伴って取得された信号の組合せにおいて、伝達することができる。
【0094】
フォトセンサ、圧電、音響、電気抵抗値、熱、加速度計、圧力、フロー、電気化学的、又はその他のセンサタイプを含むいくつかのタイプのセンサが使用されてもよく、これらのセンサは、化学、光、皮膚活動/湿気レベル、圧力、運動、及びPDPの生成に関係するその他のパラメータを計測するために使用することができる。適切なセンサの選択については、当業者には明らかとなろう。センサは、それぞれの実施形態において、相互交換可能であることも可能であり、或いは、固定することもできる。適切なコンポーネント値(抵抗器、コンデンサ、など)及び回路性能特性の選択のみならず、サポーティングコンポーネント/回路(フィルタ、増幅器、など)の追加は、当技術分野の技術のレベルに含まれており、従って、本明細書における説明はこれを省略する。
【0095】
システムのこの例示的な実装形態においては、信号は、心臓から検知されており、且つ、いくつかのタイプを有し得る。心臓の電気的活動は、心臓の電気的活動によって生成された磁界を検知する心臓上において且つ接触状態又は非接触状態において配置され得るセンサ、その他の身体領域(例えば、食道、気管支及び気道、縦隔)の近傍の、身体表面上の、或いは、例えば心磁図などの身体に接触していない、センサを使用して直接的に検知することができる。また、センサは、心臓のモーション又はそれを通じた血液の運動を検出することにより、心臓のモーション又は虚血領域の存在を計測することもできる。心臓のモーションは、例えば、心エコー図又は超音波などの非電気的装置を使用することにより、心腔容積の変化に起因して、身体の領域上の運動から、心臓のモーションから(弾道心電図)、電気インピーダンスの変化から、検知することができる。血流は、ドップラー心エコー検査、4DフローMRI、又は赤血球などのキャリアをタグ付けする撮像方法などの既知の方法を使用して検出することができる。様々な実施形態においては、これらのセンサは、別個に又は異なる組合せにおいて使用することが可能であり、且つ、更には、更なるこれらの別個の又は異なる組合せを患者の心臓内に挿入されたセンサとの組合せにおいて使用することもできる。信号は、センサとの物理的接触を伴うことなしに検知することができる。このような方法の例は、心磁図(MCG)からの放出電磁界から、或いは、心臓のモーションの赤外線シグネチャから、心拍を検知することを含む。その他の非侵襲的な検知信号は、高感度な外部マイクロフォンからの聴覚呼吸音又心臓サウンドを含み得る。記述されるセンサの1つ又は組合せからの信号は、有線又は無線通信を介して入力ユニット130に送信される。
【0096】
神経活動は、本発明において、発火のレート及び周期、日中の且つ日と日の間の周期、神経発火のタイプ及びパターン、並びに、これらの尺度の空間的分布などのインデックスと共に使用され得る、別の検知信号である。一実施形態において、非侵襲的記録が皮膚パッチから生成されるが、その他の実施形態は、電極が、近傍の神経組織から記録するべく、皮膚内に突き刺される、神経電気記録図(ENG:electroneurogram)を使用し得るであろう。侵襲的な方式は、入院治療には適し得るが、連続的記録又は消費者用途には、あまり適し得ない。センサは、異なる領域内において配置された場合に、異なる領域の神経から記録することが可能であり、例えば、胸部上の電極は、心臓又はその神経に関係する神経活動を計測してもよく、首又は頭部上の電極は、心臓又は当業者には馴染み深いその他の場所を制御するものを含むニューラル信号を計測し得る。
【0097】
肺臓(肺)機能活動は、検知される信号の別のタイプであり、且つ、心臓とは独立的に、或いは、心臓内の変化の結果として、変化し得る。これは、呼吸音、胸壁運動、酸素化、横隔神経の電気活動のセンサ、又はその他のセンサにより、計測することができる。
【0098】
療法ツール又はエフェクタ110は、健康の維持又は疾病の治療を可能にする。これは、電気スティミュレータ、熱スティミュレータ、光学スティミュレータ、(注入ポンプなどの薬物療法用などの)化学物質放出装置、又はその他のスティミュレータを有することができる。一実施形態において、これは、120としてラベル付与された血管アクセスを介して導入される心臓リズム障害を治療するためのアブレーションカテーテルである。
【0099】
入力データ125は、パーソナライズのために、且つ、指標個人を疾病タクソノミーとして表された母集団データに関連付けるために、使用される。入力データ125は、人口統計、研究室、化学反応、及び画像データを含み得る。例えば、人物用のいくつかのデータ入力は、生年月日(年齢)、性別、及び人種などの「静的」な保存データを含むことができる。また、入力データは、別個の装置(例えば、建物内のトレッドミル、モーションセンサ)からの患者の運動、別個の装置(例えば、病院テレメトリ、ICUベッドモニタ)からの患者のECG又は心臓情報、呼吸センサ、別個の装置からの時間経過又は時系列データ(例えば、グルコメータからの血糖の周期的数値)、或いは、その他のデータ入力、などのほぼリアルタイムのデータを含むことができる。また、入力データは、疾病の家族性傾向のインデックス(メンデル又は非メンデル)、識別可能な遺伝子座、体重の変化、又はたばこ又はアルコールなどの毒素に対する感度を含み得る。入力データは、タイムスタンプと共に、有線又は無線接続を介して入力ユニット130に送信される。
【0100】
入力ユニット130は、データハブであり、これは、自身に対して送信される複数のデジタルデータストリーム用の物理的装置又はクラウドに基づいたインターフェイスであってよい。データは、タイムスタンプが付与され、且つ、リアルタイムのもの(ストリーミング)又は保存されたもの(履歴)として別個に維持することができる。
【0101】
従来のクラウドに基づいた演算/ストレージ135は、任意選択により、105又は130において装置上において保存されるものに対する追加又はバックアップとしてデータを保存するために及び/又はデータの処理を実行するために使用することができる。クラウドに基づいた演算/ストレージ内において保存又は生成された未加工データ及び分析結果は、インターネットを介して接続された外部サーバーに別個に伝達することができる。例えば、独立した受信者は、研究施設、臨床トライアルアドミニストレータ、又は患者によって認可されたその他の受信者を含み得る。
【0102】
母集団データベース140は、この指標個人からのデータ用の基準を提供しており、且つ、母集団からの保存データ、時変ストリーミングデータ、クラウドソーシングされ得る任意選択のストリームを含み得る。
【0103】
プロセスコントローラ145は、母集団データベース140に基づいて指標個人用の先行する時点からのデータを分類するデジタルタクソノミー155との比較においてパーソナルデジタルフェノタイプ(PDP)150を生成するために、決定論的な数式のみならず、ニューラルネットワーク(或いは、その他の学習機械)及びその他の分散表現を含むアルゴリズムを実行するようにプログラミングされる。一実施形態においては、機械学習は、入力データを処理するために、患者レベルにおける結果に複雑な生理学的且つ臨床的入力をリンクする分類を生成及び学習するために(即ち、PDPを生成するために)、これらを関連する母集団内の量的形質(健康又は疾病のデジタルタクソノミー)と比較するために、その個人における先行する観察、比較母集団における先行する観察、又は数学的に推定された予測との関係における特定の個人特性に基づいて「最適な」又は「パーソナライズされた」療法を先を見越して設計するために、使用される。
【0104】
PDP150とデジタルタクソノミー155の間の比較は、患者の状態、即ち、健康又は疾病、を識別及び/又は追跡する。これは、予め規定された「許容範囲限度」と比較された状態において指標個人における正常からの逸脱を演算し且つ異なる母集団と比較することにより、実行される。一実施形態において、これは、センサ105からのデータストリーム又は反復的に更新されたデータを検知することにより、実現される。データは、その人物内のその臓器系用の裁定された「健康」の期間において又は裁定された「疾病」の期間において入力することができる。蓄積されたデータは、PDPを検証するための将来の学習を支援する。個人の間の健康又は疾病の変化する状態又はグレード(例えば、運動対休息)について異なる状態を検出することができる。この方式は、現時点の医療的実践とは異なっており、従来の医療的実践においては、「正常」及び「疾病」の「母集団」範囲は、それらを個人に適合させるための範囲がほとんど存在してない状態において、複数の患者に跨って適用される。「パーソナライズされた医療」又は「高精度の医療」を提供するのは、本発明の方式のこの態様である。
【0105】
PDP150とデジタルタクソノミーの間の比較を通じて識別された状態は、後から診断及び報告ユニット165に伝達される疾病及び健康管理をパーソナライズすること160と、療法をガイドすること170と、をもたらす。診断/報告ユニット165は、スマートフォンアプリ、専用の装置、又は既存の医療装置であってよい。図3を簡単に参照すれば、カスタム設計されたスマートフォンアプリ470は、撮像/マッピングシステムからのデジタル的に取得されたパーソナルデータから終了のサイトを示すことができる。サンプルディスプレイパネルは、スマートフォンアプリ内において稼働する自由に利用可能であるオンライン方法によって生成されたAFマップのパーソナルストリーミングデータを示すことができる。ディスプレイパネルは、パーソナライズされた療法用の重要なサイトの識別を支援するために医師との間の対話型入力を提供することができる。
【0106】
心臓リズム障害において使用される一実施形態において、療法ユニットは、電気的介入(ペーシング)又は破壊的エネルギー(アブレーション)を制御する。図1に示されるエフェクタ装置110は、パーソナルフェノタイプに対して適合された方式で生物学的障害を治療するために組織をアブレートするように起動することができる。代替実施形態において、療法ユニットは、注入ポンプによって抗不整脈薬物又は抗炎症薬物を供給してもよく、或いは、遺伝子又は幹細胞療法を供給してもよい。別の実施形態において、療法は、機械的制約であることが可能であり、これは、不整脈をトリガし得るストレッチを改善するために供給することができる。
【0107】
図2は、心臓リズム障害の治療のための一実施形態におけるパーソナルデジタルフェノタイプ(PDP)を使用する例示的なシステムを図式的に示している。検知された又は保存されたデータ200は、臨床、研究室、遺伝子、又はその他のデータを含み得る。データの例は、身体の異常な炎症又は免疫学的状態のマーカー及び心房細動又は心室細動の生物学的マーカーを含むことができる。炎症/免疫学的平衡の直接的な尺度は、限定を伴うことなしに、体液中の又は影響を受けた臓器内の炎症細胞の数又はサイトカインの濃度を含む。炎症/免疫学的平衡の間接的な尺度は、体温、体液組成、心臓リズム、神経発火レート、及び脳波の静的且つ昼間尺度における様々な臓器系異常に対する炎症の変幻自在の影響を表している。更なるデータは、心房細動又は心室細動を含む生物学的リズムを維持、改善、又は補正するためにこのような状態の変調を可能にする心臓及び身体の異常な神経制御の検出を含むことができる。
【0108】
入力データは、その個人のみならず母集団の正常及び異常値との比較において、且つ、正常な平衡を維持するために介入及び療法を制御することにより、反復的に評価される。この文脈において、信号の「検知」は、検出装置からの未加工信号の従来の収集を超えており、且つ、例えば、臨床、研究室、化学物質、などのようなその他の試験手順から生成されたデータを含むことができる。図2に示されるように、データ200は、例えば、有線又は無線送信によって検出信号をプロセスコントローラ285に伝達するためのトランスミッタと組み合わせられたECG又は生体インピーダンスセンサなどの電気信号を検知する装置によって生成することができる。また、その他のリポジトリ或いは臨床システム、病院データベース、病院装置、又は研究室機器から得られたストリーミング又は入力データのリポジトリは、プロセスコントローラ285とインターフェイスすることができる。
【0109】
心臓210は、身体表面に適用されたECG電極250を含む多くの方法で計測することができる。食道225内の電極カテーテル、右心房230内、心房中隔又は左心房220内の、或いは、冠状静脈洞への大心静脈を介した(電極235、240、245)、前心静脈への(電極215)、の電極、などの電気又は電磁信号センサは、左又は右心室に又は直接的にこれらの心腔の任意のものにアクセスする。また、センサ215~245は、心臓のその他の領域からアクティベーションを検出することもできる。
【0110】
心臓センサは、外部に位置してもよく或いは内部に位置していてもよい。いくつかの実施形態においては、センサの1つ又は複数は、患者の心臓の外部に位置していてもよい。例えば、センサ250は、患者の表面を介して心臓アクティベーションを検出する(例えば、心電図-ECG)。センサ(図示されてはいない)は、患者との接触を伴うことなしに、リモートで心臓アクティベーションを検出することができる(例えば、心磁図)。また、別の例として、いくつかのセンサは、非電気的検知装置(例えば、心エコー図、血流のドップラー信号、赤血球でタグ付けされたスキャン)の心臓モーションからカーディアックアクティベーション情報を導出することができる。このようなセンサは、患者の身体内に、心臓(或いは、その他の臓器)内に、又はその近傍において、挿入されるカテーテル及び電極、即ち、「内部センサ」、から自身を弁別するように、「外部センサ」として分類することができる。様々な実施形態においては、様々な外部センサは、別個に又は異なる組合せにおいて使用することができる。また、更には、外部センサのこれらの別個の又は異なる組合せは、1つ又は複数の内部センサとの組合せにおいて使用することもできる。
【0111】
プロセスコントローラ285は、検知及び入力データを受け付けている。いくつかの実施形態においては、プロセスコントローラ285は、ユニポーラ信号を分析するように構成されており、その他の実施形態においては、これは、バイポーラ信号を分析する。プロセスコントローラ285は、個人用のパーソナルデジタルフェノタイプ(PDP)を生成するために、これらの検知データストリームを使用する。これは、関連する予め保存されるデータ265、即ち、不整脈、のデジタルタクソノミーと比較される。プロセスコントローラ285は、デジタルタクソノミーを生成するために、母集団データベース262(これは、また、図1においてデータベース140としても示される)内の母集団データに対するアクセスを有することができる。この結果、介入は、その個人のパーソナルデジタルフェノタイプ270に基づいてその個人を診断又は治療するように設計される。
【0112】
いくつかの実施形態において、プロセスコントローラ285は、心臓リズム障害のソース又はその他のターゲットを表すマップを生成するために入力電気データを分析し、これは、次いで、出力装置上において表示していることができる。母集団データベース262は、中間データを保存するために使用することができる。母集団データ262は、信号分析をサポート又は支援することが可能であり、且つ、デジタルタクソノミーの一部分として既知のパーソナルデジタルフェノタイプと共にその他の個人用の潜在的なターゲット領域又はソース場所のマップを保存することができる。
【0113】
内部的に、プロセスコントローラ285は、通常、デジタル信号プロセッサを有する。また、これは、療法をガイドするためにデジタルタクソノミーに照らして比較するようにPDPの機械学習アルゴリズム又はその他の演算を実行するためのグラフィカル又はその他の処理ユニットを含むことができる。その他の要素は、従来の演算装置、クラウド演算、生物学的演算、又は生物学的-人工的(サイバネティック)装置を含むことができる。図1を簡潔に参照すれば、入力ユニット130及びプロセスコントローラ145に対応する機能は、プロセスコントローラ285内において実行される演算動作のうちに含まれることになろう。
【0114】
プロセスコントローラ285は、個人内の心臓(リズム)のパーソナライズされたデジタルフェノタイプを生成するための機能モジュール(図1の要素150に対応するPDPモジュール260)を実装するように、母集団データベース262からのデータを使用してデジタルタクソノミー(図1のステップ155に対応するタクソノミーモジュール265)とPDPをマッチング又はアライメントするように、パーソナライズされた介入を設計するように(設計モジュール270)、且つ、介入の供給275をガイドするように、プログラミングされる。
【0115】
次いで、モジュール270内において設計されたパーソナライズされた療法が供給要素275において供給される。供給要素275は、検知/アブレートマルチ電極カテーテル290又は外部エネルギーソース295などのいくつかのエフェクタ装置を利用することができる。その他の療法装置は、直接的電気出力、圧電装置、視覚/赤外線又はその他の刺激システム、神経刺激電極、或いは、場合によっては、仮想世界インターフェイス内のアバター又は問い合わせされ得る大きなデータベース内の要素などの仮想化されたデータのみならず、当業者には明らかであるその他のエフェクタ要素を含むことができる。
【0116】
図示の実施形態において、療法は、ペーシングを含み得る。例えば、モジュール270内において生成された命令は、プロセスコントローラ285がペーシングモジュール255からペーシングするようにする。ペーシングは、電極250、215、230~245、290、又は295を通じて適用することができる。療法は、組織を変更するためにエネルギー生成器280によって生成されたエネルギーを使用するアブレーションであってよい。内部電極(例えば、215、230~245)、専用のアブレーションカテーテル290、又は外部エネルギーソース295は、エネルギー生成器280からアブレートすることができる。その他の形態のエネルギーは、例えば、プロセスコントローラ285及びその他のモジュールによって制御された適切な装置を使用する加熱、冷却、超音波、レーザーを含む。療法は、PDPによって判定された電気的及び/又は構造的ターゲットの境界を示す組織への供給によってパーソナライズされる。その他の療法ユニットは、注入ポンプ、(炎症は、細動を含む不整脈の近因であり得ることから)抗炎症療法、遺伝子、又は幹細胞療法を使用して抗不整脈薬剤を提供することができる。別の実施形態においては、不整脈をトリガし得るストレッチを改善するように、機械的制約を供給する療法を供給することができる。外部エネルギーソース295を使用する療法は、不整脈用の重要なターゲットが侵襲的方式を伴うことなしに識別され、次いで、治療される完全に非侵襲的な療法を可能にすることができる。
【0117】
図3は、療法をガイド及び監視するためのPDPを使用した例示的なワークフローを要約する。パーソナル入力では、時間に伴って更新され得るデータストリーム400と、パーソナルな保存データ420との2つの形態が使用される。データストリーム400は、ウェアラブル装置又は消費者製品からなどの新規の又は既存のセンサ402からの、埋植された装置404からの、皮膚、鼻、角膜、頬、肛門、又は聴覚プローブなどの最小限に侵襲的な製品を含む既存の又は専用の装置からの侵襲的な検知信号406からの、モーション及び赤外線プローブからの温度を含むデータを提供し得る非侵襲的センサ408からの、並びに、既存の医療機器からのテレメトリなどの送信されたデータ410からの、検知されたデータを含み得る。
【0118】
パーソナル保存データ420は、理想的には、瘢痕の領域、線維症、虚血、低減された収縮機能、及び潜在的なボーダーゾーン組織の詳細な座標を含む撮像データ422、血清生化学のみならず、遺伝、プロテオーム、及び代謝データ(利用可能な際)を含む研究室値424、人口統計データ426、及び、糖尿病又は高血圧の存在、心エコー検査からの左心房サイズ、などの患者履歴からの要素などの静的データを含むことができる。更なるパーソナル保存データは、例えば、「健康である」又は「あまり健康ではない」などの患者が快適に感じているかどうかの自覚症状などの結果データを含むことができる。また、結果データは、抗生物質による解熱などの、或いは、一実施形態においては、アブレーションによる心房細動の終了などの、療法の急性エンドポイントなどの、客観的なデータも含み得る。客観的なエビデンスは、感染の不存在又は長期フォローアップにおける心房細動の再発の欠如などの、慢性エンドポイントを含むこともできる。本発明の方式は、健康及び病気を識別するべく、健康状態に基づいてデータクラスをパーティション化するべく、且つ、母集団クラスを個人と比較するべく、疾病タクソノミー446を定義するべく、母集団保存データ449、母集団データストリーム452、及びドメイン知識455を含む、母集団データの組合せをも使用し得る。
【0119】
ステップ440は、データストリーム400及び保存データ420からのパーソナルデジタルフェノタイプを連続的に更新する。これは、既定の時点において周期的に、或いは、連続的に、実行することができる。ステップ443は、母集団保存データ449、母集団データストリーム452、及びドメイン知識455のうちの1つ又は複数から生成された、外部的に判定されたデジタル疾病タクソノミー446に対するパーソナルデジタルフェノタイプの比較を実行する。これらのステップについては、図5において更に詳述する。
【0120】
ステップ460においては、療法が、パーソナルデジタルフェノタイプに対して適合されており、且つ、ステップ463において、療法の効果が、以前のステップ440において既に保存されるデータの文脈において、データストリームを使用することにより、反復的に監視される。本発明の方式によれば、フェノタイプは、患者が病気であるかどうか、彼らが病気である様相、及び健康を維持するために又は病気を治療するために彼らを治療する最良の方法のグラウンドトルス(ラベル)に基づいている。これらの臨床又は生物学的に関連する動作は、ステップ426、446~455において含まれている。本発明は、その個人(420~426)の又は比較母集団446~455の保存データ内のデータタイプに常に対応するわけではないデータタイプを使用することにより、パーソナライズされたフェノタイプを生成するべく、ステップ402~410において新規のデータを取得する。このようなデータタイプは、パーソナルフェノタイプが療法を相対的に良好にガイドすることができるように、且つ、電気情報又は心臓構造を含むデータタイプを含むように、システムによって能動的に取得される。
【0121】
最後に、ステップ466において、データを報告するための対話型のインターフェイスが提供される。ディスプレイ470は、コンピュータ又はモバイル装置上のアプリケーションを介して表示され得る多くのタイプのデータの一例を提供する(図示の例においては、スマートフォンが示される)。Xcodeを介してSwiftにおいて記述されたアプリの一実装形態がAPPLE(登録商標)iPhone(登録商標)のために生成される。画像470は、アブレーションターゲットを有する不整脈のサンプルマップを示しており、且つ、これに加えて、3D心臓画像、多数の座標、テキスト記述、及び定量的スコアの1つ又は複数を含むことができる。本発明は、パーソナライズされた管理及び療法決定のなんからの通知を伴って、それぞれの個人ごとのパーソナルデジタルフェノタイプの特徴を表示する。ステップ466は、スマートフォンアプリとしてのイラストと共に、これらのデータのスマートフォン表示470を生成する。
【0122】
図4は、PDP及びデジタルタクソノミーを生成するための且つこれらを比較するための更に詳細なワークフローを提供する。ステップ500は、1つ又は複数の時点を有する時間ベクトル[T]においてパーソナルデータを取得する。これは、(図3のステップ400に対応する)データストリーム502と、図3のパーソナル保存データ420に類似したチャート504からのパーソナル保存データと、を含む。このデータは、急性又は慢性的結果などの生物学的又は臨床的重要性の尺度を含む。
【0123】
母集団データストリーム506(図3のブロック452)は、益々利用可能であるデータセットを活用するように設計される。このようなストリームは、指標個人との関係において類似した又は異なるフェノタイプを有する個人からのデータを含むことができる。いくつかの例を提供すれば、このデータは、集中治療病棟内の患者、類似のウェアラブル装置を使用する個人、又は様々なバイタルサインについて監視される戦場における兵士からのテレメトリデータを含むことができる。
【0124】
保存される母集団データベース508(図3のデータベース449)からのデータは、類似のデジタルフェノタイプに基づいて、所定の細かさのレベルで内蔵される。これは、AFを発症する痩せた個人又は発症しない肥満した個人を説明することに失敗している、AFと肥満の間の有意な関連付けなどの弱化する傾向を有する従来の統計的関連付けを使用した方式とは異なっている。痩せていてもよく或いは肥満していてもよいAFを有する患者における心臓疾病又は高血圧などのように、その他の細かさのレベルの患者特徴も、このような異なる患者の間において共通し得る。同様に、撮像における心房瘢痕は、AFと関連付けられているが、AFを有する多くの個人は、最小限の瘢痕を有する一方で、AFを有していない個人も、相当の瘢痕を有する。PDP特徴に基づいた患者の多数のマッチングは、類似の患者における既知の結果に基づいて個人用の療法を適合させるための本発明の能力を改善する。また、統計的関連付けも、多変量解析を使用して実行される。
【0125】
図3のステップ446に類似した)ステップ510において、診断又は治療の有用性のための基準として機能する急性又は慢性的結果などの生物学的又は臨床的重要性のインデックスを含むデータベース508からの母集団データが統合される。第1ステップは、機械学習における次元の呪いに対処するために、ステップ514においてデータをフィーチャライズするというものである。特徴縮小及び特徴抽出技法は、当技術分野において周知であり、且つ、使用される学習機械のタイプに応じて変化してもよく、或いは、学習機械又はその他のアルゴリズムの異なるタイプ又は組合せを使用して実装されてもよい。ステップ526における特徴抽出用の可能な動作は、主成分分析、平均化、統合、エリア分析、及び相関を含む時間ドメインの数学的演算を含む。周波数ドメイン分析は、基本周波数、調波、又はその他の周波数成分のフーリエ分析、ウェーブレット変換、及び時間-周波数分析を含む。また、多項式フィッティングも、多項式係数としてデータを表すために使用することができる。TSFresh(Time Series FeatuRe Extraction)などの広く利用可能なライブラリを使用する、その他の一般的な特徴化ステップを使用することができる。並行して、母集団データは、類似の又は異なる動作を使用することにより、ステップ534においてパラメータ化される。
【0126】
ステップ518は、データを個人内のデジタル「疾病フェノタイプ」を表すクラス又は母集団内のデジタル「疾病タクソノミー」にパーティション化する。目的は、データ - 臨床データであるが、きめの細かい侵襲的データポイント及び研究室試験でもある - を、所与の療法(成功対不成功)からの、類似すると見え得るが異なる結果を有する個人のパーティションに、相対的に良好に分離する、というものである。数学的に、これは、1つの結果を有する患者をそうではない者から分離する「ハイパープレーン」をk-パラメータ空間内において構築することにより実行される。例えば、不整脈の実施形態の場合に、類似のプロファイルを有する2つの患者内の「発作性」AFが、薬剤治療又は肺静脈アブレーションに対してまったく異なる方式で応答し得る理由は、不明なままである。パーソナルフェノタイプは、何人かの患者におけるAFが、ソース又はドライバ領域、構造的異常性、神経成分、及び肥満を含む代謝併存症を反映するが、そうでない者もいる理由についてのクラウドソーシングされたパーティション(「デジタルタクソノミー」)に、複数の患者からの観察をコード化する。これらの因子は、「発作性」又は「持続性」のAFの従来のタクソノミーによっては、予測されていない。PDPを使用することにより、最良の管理を推定するためにデータを基準母集団と比較するべく、統計及び機械学習を含む推定方法を使用することができる。
【0127】
ステップ530は、データを分類方式としてパーティション化する。パーティション化は、限定を伴うことなしに、クラスタ分析、並びに、サポートベクトルマシン(SVM:support vector machine)、ロジスティック回帰、ナイーブベイズ、決定木、又はその他の方式を含む、その他のタイプの教師なし学習又は教師付き学習方法を含む、当技術分野において既知の多くの技法により、実行することができる。このパーティション化は、パーソナルデータ(ステップ518)と、並行して、母集団データ(ステップ538)と、のために実行される。使用されるパーティション化技法は、それぞれのステップごとに異なり得ることに留意されたい。
【0128】
既知の教師なし学習技法である、クラスタ分析は、ラベル付与されていないデータ(例えば、複数のセンサからのデータストリーム、入力データ、その他のもの)を、1つのクラスタには馴染み深いが、その他の者には馴染み深くない、項目の集合体としてグループ化するべく、ステップ530において使用することができる。これは、明らかな自然なグループ化が伴わない場合にも、発生することが可能であり、これは、しばしば、これらの用途において真であって、その理由は、通常のフェノタイプは、臨床データ、撮像及び連続データストリームをめったに含んでいないからである。クラスタ化は、本発明において、強力なツールであるが、最終的なクラスタパターンは、初期クラスタに依存することから、初期クラスタパターンを識別する際の任意の曖昧さは、バイアスに結び付き得るであろう。クラスタ化の結果については、ステップ558において、後から検証される。
【0129】
ステップ546は、母集団からのデータストリーム及び保存データ(データベース508)、データ低減方式(ステップ534)、及びデータパーティション(ステップ538)を統合するべく、数学的モデルを使用することにより、母集団データから疾病タクソノミーを生成する。数学的関係をフィルタリングするべく、ドメイン知識データベース574からのデータが内蔵される。例えば、数学的重み付けは、一般的である、冠状動脈疾病を有する高齢の男性の場合には増大させるが、めったにない、男性における乳がんの場合には、或いは、めったにない、若い子供におけるAFの場合には、最小化することができる。このような従来のドメイン知識は、疫学的データ及び母集団統計から入手可能であり、また、保存される母集団データからも入手可能であってもよく、且つ、容易に数学的重み付けに変換される。
【0130】
ステップ550は、疾病タクソノミーから母集団のデジタルフェノタイプを生成する。換言すれば、母集団デジタルフェノタイプは、定量的データから自己一貫性を有する疾病クラスを形成するデータのパーティションに対応する。例えば、いくつかの研究における低マグネシウムレベルと心房細動との間のリンクなどのように、これらは、臨床的に明らかである場合もあり、或いは、臨床的に曖昧である場合もある。これらのパーティションは、それぞれ、コンフィデンスインターバルにより、統計的に表現され、且つ、パーソナルデジタルフェノタイプに照らした比較のために使用されることになる。
【0131】
ステップ522は、ステップ518からのパーソナル疾病パーティションを基礎として使用することにより、プロトタイプパーソナルデジタルフェノタイプを生成する。ステップ542は、最良にマッチングする母集団のデジタルフェノタイプを見出すべく、パーソナルデジタルフェノタイプ(PDP)を比較する。候補パーソナルフェノタイプは、ステップ554において、ベクトル[P]の行列により、付与される。これは、複数のデータ要素、データタイプ、なんらかの序数、なんらかのベクトル性、及びなんらかの時間依存性を有する。
【0132】
いくつかの実施形態においては、定義された結果を予測するためにデジタルフェノタイプを高度化するべく、教師付き学習が使用される。これは、特徴の選択、ネットワークアーキテクチャの選択、及びトレーニング及び試験用の適切なデータを必要とする。
【0133】
特徴は、疎入力「ベクトル」を意図的に生成することにより、機械学習がオーバーフィッティング(即ち、将来において観察されない入力に対する乏しい一般化)を回避するように、識別及び「チューニング」されることになる。本発明は、基礎をなす入力データを広範なものにするべく、冗長な特徴を除去し、且つ、入力特徴の多様性を極大化させている。
【0134】
一実施形態において、特徴は、(a)従来の臨床変数(人口統計、併存症、バイオマーク)、(b)電気信号(その信号処理済みのパラメータがAFフェノタイプを分離し得る、12-リードECG及び心臓内信号)、及び(c)限定を伴うことなしに、2-D心エコー図画像(心房形状)、3-D CTデータ(形状)、3-D MRIデータ(線維症エリア、形状)、及びEP研究において生成された電圧及び複合的なエレクトログラム分布の3-D電気解剖学的シェル、という、3つのタイプにグループ化される。クラスタ(教師なし学習)は、データ低減の支援に使用することができ、及び更なる入力特徴として使用することができる。特徴の重要性を理解するべく、フィルタリング及び正則化が使用される。本発明による方式は、トレーニングにおいて、応答クラスと関連してはいない変数を除去する。1つの方式は、予測誤りを最小化するべく、フィルタ及びラッパ方法の利点を組み合わせた、LASSO(least ablolute shrinkage and selection operator)を使用しており、且つ、最終的なモデルにおける回帰分析に寄与する変数を含んでいる。
【0135】
それぞれの特徴グループ内の消失データは、a)中央値、b)複数の帰属を使用した予測値(統計学の技法)、c)文献からのそのデータタイプの予測値、及びd)消失データを意味する定数、を挿入(入力)することにより、処理されることになる。それぞれの方式は、様々なネットワークモデルのトレーニングの際に比較されることになる。
【0136】
入力画像及び信号のフォーマッティング。本発明は、それぞれの3D MRI、CT、又は疑似着色された心房電気解剖学的画像(解剖構造を表記する、例えば、電圧などの、特定のタイプのエレクトログラムの分布)を3D行列としてフォーマットすることになる。時系列データ(12-リードECG、バイポーラ冠状静脈洞エレクトログラム、ユニポーラ心臓内エレクトログラム)は、特徴抽出、クラスタ分析、事前処理ネットワークを使用することにより、最終的なネットワークに入力する前に、処理されることになる。
【0137】
フェノタイプをトレーニングするべく使用される結果は、それぞれの用途に伴って変化することになる。心拍リズム障害の実施形態の場合には、フェノタイプをトレーニングするべく、いくつかの結果を使用することができる。1つの結果は、高電圧対低電圧(<0.1mVなどの)のエレクトログラム信号であってよく、高電圧信号と関連するフェノタイプは、相対的に高度な治療結果を有し得る。別の潜在的な結果は、一貫性を有するローター又は局所ソース/ドライバを示す、AFのクリーンな空間的マップの存在であり、これらのサイトは、効果的な治療ターゲットであり得る。別の望ましい結果は、薬剤療法又はアブレーションによるAFの終了、或いは、薬剤療法又はアブレーションからの長期にわたる成功である。これらは、いずれも、デジタルタクソノミーを形成するべく、基準母集団内において過去に遡って判定することが可能であり、且つ、次いで、マッチングするパーソナルフェノタイプを識別するべく、使用することができる。
【0138】
一実施形態において、個々の人物及び母集団用の多様な入力データ及びデータストリームを表すべく、通常は、人工ニューラルネットワーク(「ANN」)として実装される、教師付き学習が使用される。ANNは、通常、3つの要素を有する。第1に、それぞれが複数のノード/層を含む可変数の層のネットワークを形成する、ノードの異なる層の間の接続パターン(人工ニューロン)である。実装形態は、パーセプトロン、適応型線形ネットワーク、或いは、深層学習ネットワークを含む多くのその他の設計と同じ程度に単純であり得る。実際のネットワーク設計は、特定のタスク及びデータパーティションの複雑さに対して適応的なものであってよい。第2に、ノードの間の接続重みは、変化することが可能であり、且つ、複数の学習規則に従って更新することができる。第3に、それぞれの重み付けされた入力がその出力に変換される方式を判定する、アクティベーション関数である。通常、アクティベーション関数f(x)は、その他の関数g(x)の複合体であり、これらのその他の関数g(x)も、その他の関数の複合体として表現され得る。非線形の重み付けされた合計、即ち、f(x)=K(Σ(x)、が使用されてもよく、この場合に、K(アクティベーション関数)は、シグモイド、双曲線、又はその他の関数であってよい。
【0139】
様々な接続パターン、重み、及び数学的アクティベーション関数を選択することが可能であり、且つ、様々な更新関数が任意の実施形態について可能である。特定の形態が、異なる疾病状態及びタスクのために最適である。例えば、既知の心房細動において異常な心拍数を検出するための装置は、心房細動の開始を予測するべく、心不全の悪化を予測するべく、或いは、冠状動脈虚血の開始を予測するべく、心房細動におけるアブレーション用のサイトを識別するための装置ほどには、複雑にならないであろう。
【0140】
学習の代替形態は、線形ロジスティック回帰、サポートベクトルマシン、「if-then-else」記述における決定木、ランダムフォレスト、及びk-最近隣者分析を含む、教師付き及び教師なし方法を含む。このような定式化は、心房細動のソースの存在(又は不存在)、或いは、入力データを個人用の臨床又は生理学的結果とリンクするその他の関連付け、などの、望ましい決定の間の境界を増強又は生成するべく、独立的に、或いは、機械学習の一部分として、適用することができる。いくつかのその他の形態の機械学習を適用することが可能であり、これらについては、当業者には、明らかとなろう。
【0141】
様々な接続パターン、重み付け、ノードアクティベーション関数、及び更新方式を選択することが可能であり、且つ、特定の形態が、データ入力に応じて、異なるアプリケーションについて最適である。例えば、撮像入力及び連続的な一連のデータ(例えば、エレクトログラム信号)は、異なるネットワークにより、表されてもよく、大きなトレーニングデータを有する実施形態においては、所与の基準母集団内のそれぞれのデータセットに対して最適化されてもよい。従って、用途に応じて、本発明は、EEGデータ、心臓及び呼吸シグネチャ、重み、皮膚インピーダンス、呼吸数、及び心臓出力を最良に表すべく、適合させることができる。回帰型ニューラルネットワークは、ネットワークがそのトレーニングされた結論を保管する方式の分析を可能にするデータ構造である。手動的に設計されたスカラー特徴(例えば、臨床データ要素)は、全結合層を使用することにより、内蔵することができる。特徴化された時系列(即ち、12-リードECG、或いは、心臓の内側からの所謂「エレクトログラム」)は、畳み込みニューラルネットワークを介して処理される。オーバーフィッティングを回避するべく、ドロップアウト、バッチ正規化、及びハイパーパラメータチューニングの標準的な技法が使用される。
【0142】
機械学習方式の特徴は、人間の病理生理学の詳細に関する先験的な知識を必要としておらず、その代わりに、健康における検知された信号及び入力データのパターン及び疾病における逸脱を学習する、というものである。従って、これらは、現時点の機構仮説が最適ではないパーソナライズされた医療に非常に適する。
【0143】
ステップ558は、検証され得る、即ち、任意の信頼性の高い結果尺度を予測する、1つ又は複数の候補フェノタイプを判定する。AFの場合には、これは、アブレーションがAFを終了させたサイトであってよい。冠状疾病の場合には、これは、心外膜冠状血管の深刻な狭窄、即ち、進行した冠状リスクスコア、を予測する臨床コンステレーションであってよい。拡張により、このような候補を非心臓疾病のために定義することができる。マッチングが実現されない場合には、PDP522を生成するプロセスは、反復されるか、或いは、受け入れ可能な許容範囲X(ブロック562)が拡幅される。マッチングが受け入れ可能な許容範囲(ベクトルX)内において実現される場合には、候補は、ステップ566において、時点Tにおける許容範囲X内のパーソナルデジタルフェノタイプPになる。次いで、フェノタイプは、フェノタイプを検証するべく使用されるラベル付与された結果に照らして、データベース570内のその個人のパーソナル履歴データを更新するべく、使用される。このステップは、先行するステップにおいて定義されたクラスタを検証するため、のみならず、教師付きレーニングについても、使用される。
【0144】
図5は、パーソナルデジタルフェノタイプが健康と疾病の間のインターフェイスを定義する方式を示する。ステップ600は、時点TにおいてそれぞれのPDPを取得しており、且つ、フェノタイプ内の主要信号タイプを検査する603。数学及びネットワーク分析606は、まずは、例えば、個人が、快適に感じている、或いは、不快に感じている(症状)、或いは、例えば、AFの発現の有無などの疾病の客観的な証拠を有する際の裁定された時点からのデータなどの、データベース609内の保存されるパーソナルフェノタイプと比較された状態において、異常を識別するために使用される。ステップ612は、この分析に基づいた個人的な健康又は疾病のポートレートを生成する。
【0145】
ステップ615は、ステップ612からのポートレートが、受け入れられる許容範囲内において個人についての健康618を表するかどうかを判定する。結果が個人の健康の「範囲外」である場合には、個人は、ステップ621において潜在的な疾病状態に進入していてもよく、且つ、数学及びネットワーク分析624が実行され、且つ、同様に、個人の異常が母集団の「健康範囲外」内に含まれているかどうかを判定するために、母集団疾病タクソノミー627と比較される。統計的に定義された異常の母集団の固定及び可変定義に照らした比較の際に(ステップ630)、本発明は、いまや、疾病が存在するかどうかをステップ633において問うている。「はい」の場合には、疾病639が宣言され、そうでない場合には、観察ステップ636において、患者の慎重な観察が継続する。いずれの場合にも、プロセスは、継続した監視のために反復されることになる。
【0146】
図6は、特定の疾病又は健康の側面のために最も適切なデータコンポーネントの識別を狙いとする本発明の方法用の説明可能性分析の概略を示す。これは、「疾病固有のPDP」を可能にする。また、説明可能性は、機械学習を含むいくつかのデータサイエンス技法が「ブラックボックス」となり得るという批判に対処する。後述するように、LIME及びGrad-CAMなどのデータ及び技法をフィーチャライズするためのエキスパートドメイン知識を含む説明可能性のためのいくつかの方式が使用される。ステップ700は、PDPにおいて多様なデータタイプを分析する。そして、ステップ703、706...709は、ステップ712におけるその疾病プロセス又は健康の側面についての意思決定に寄与するものを判定するために、それぞれのデータ要素(入力データ又はデータストリーム)を検討する。「疾病」対「健康」の分類を支配した又はその他の方法でこれに寄与した1つ又は複数のコンポーネントを判定するために、いくつかの方式(ステップ715)を使用することができる。
【0147】
当業者には馴染み深いいくつかの説明可能性(或いは、解釈可能性)技法を使用することができる。1つは、リカレントニューラルネットワークにおける注意層の使用を含む。或いは、この代わりに、解釈可能なモデルを近似することによって予測を説明するべく、LIME(Local Interpretable Model-agnostic Explanation)を使用することができる。LIMEは、心臓内からのECG又は電気信号(エレクトログラム)、数値特徴、又は画像などの、1次元データのために使用される。別の方式は、Grad-CAM(Gradient-weighted Class Activation Mapping)であり、これは、最も重要なノードを最終的な畳み込み層の下流の逆伝播されたプーリング済みの勾配によって乗算された最大重みとして識別する。別の実施形態は、モデルが、無関係の概念において収束しないことを保証するべく、ドメイン電気生理学的「概念」に対する適合された解釈を可能にする、画像内の空間ドメインを含む、モデルの一部分であることを要する又は要さない特徴(例えば、心房ドライバ領域のサイズ、又は心室伝導速度、又は人間心臓内の線維症の空間的な広がり)を規定する。その一例が、TCAV(Testing with Concept Activation Vector)方式である。これは、モデルの一部分であることを要する又は要さない、特定の特徴(例えば、AFドライバ領域のサイズ)を検査し、これにより、本発明が、受け入れられた「概念」に対する説明可能性を適合させることを可能にすることができる。別の例として、例えば、右心房近傍の線維症の存在などの、解釈可能モデルにより、AF結果の予測(例えば、アブレーションの成功又は失敗)を試験することができる。この方式は、数値モデルが予測に適する、且つ、モデルが無関係の概念において収束しない、ことを保証するべく、試みている。従って、結果を予測する説明可能な特徴が定量的に識別されることになる。例えば、肥満がアブレーション又は薬剤療法からの否定的な結果を予測する一方で、肯定的な結果を予測する髪の色は、そうでない場合がある、という判定などの、ドメイン知識を介して、臨床の理論的説明を後から追加することができる574。また、クラスICの抗不整脈薬(AAD:Anti-Arrhythmic Drug)が使用され得る母集団に関するデータを含むことができる。
【0148】
デジタルタクソノミーの特徴は、調和しない事例、即ち、ニューラルネットワークが実際の結果を予測することに失敗する場合、をコーディングする、というものである。例えば、そのプロファイルがMRI上において心房の傷を含む、失敗したアブレーション療法を有する患者においては、本発明は、傷の場所をアブレーション損傷の場所と、結果と、リンクするべく、トレーニングされることになる。トレーニング済みのネットワークからの1つの潜在的な出力は、傷の領域を逃したアブレーションは、乏しい結果を生成し得る、というものである。ドメイン知識(生理学的解釈)は、信じがたい(又は、不可能な)リンクが構築されないことを数学的に保証するために、且つ、従って、ネットワークを修正するために、任意のトレーニング済みのネットワークのもっともらしさを提供するべく、使用される。この組み合わせられた機構/機械学習方式は、既知のドメイン知識に照らしてデータ表現をチェックしてはいない機械学習システムからしばしば省略される、本発明の新規の強みである。回避を要するエラーは、敵対的な例を含んでおり、画像認識においては、1つのピクセルの変更が分類を「猫」から「犬」に変更し得る用途である。本発明は、このようなトレーニング済みのネットワークが、エラーが極小化されなければならないこの医療空間において発生することを防止する。
【0149】
従って、本発明の方式は、益々解釈可能なデータ構造の開発、試験、及び修正を対象とする。モデルが、統計分析を失敗/成功の事例の専門家解釈と組み合わせることになる。単純な統計試験及び線形モデルは、システム内の異なる変数の間の相関の識別を支援し得るが、これらの研究された複合的な臨床問題の基礎をなす複雑さ及び非線形性をキャプチャ可能ではない場合がある。CARTなどの決定木は、ネットワークの層からのそれぞれの抽出された特徴の重要性の相対的に大きな解釈可能性を許容することができる。決定木に対する入力は、画像及び時系列信号からの抽出された特徴となる。
【0150】
本発明における別の方式は、「ネットワーククランピング」と呼称される。ステップ715において、ネットワークのトレーニング済みのベースライン「健康」バージョンから、入力が、1つずつ又はバッチにおいて、範囲を逸脱しており、従って、ネットワークが最も近接して「疾病状態」を要約するようにする異常な入力の組合せを識別するべく、ネットワーク712が再実行される。
【0151】
これらのステップは、特定の疾病又は健康の側面の存在又は進捗に関する決定に寄与する、即ち、ステップ721におけるこのプロセスに最も適した、データ要素のコンステレーションを識別するために、ステップ718において評価される。この「疾病固有のPDP」は、それぞれの特定の実施形態について使用されており、且つ、パーソナルデータベース724内において更新される。
【0152】
図7は、心房細動を管理及び治療するためにPDPを使用するための例示的なワークフローを示している。ステップ800、810、及び820は、第1トリアージレベルを構成しており、特定の患者についてパーソナライズしている。ステップ830~870は、AFマッピング、マップ解釈、及びアブレーションをパーソナライズする。
【0153】
ステップ800は、AFの非侵襲的信号を入力する。これらは、標準12リードECGからのECGデータ、最大で200個の身体表面リードを使用し得る身体表面電位マッピング(ECG撮像、即ち、ECGIとも呼称される)、心磁図(MCG)非侵襲的構造撮像、及び侵襲的検討の前に取得され得るその他の特徴を有することができる。ステップ810は、これらの非侵襲的データをこの個人におけるこの不整脈に関連するPDPの要素、即ち、図6において概要が示されるように判定された「不整脈PDP」ステップ805と比較する。ステップ820は、この分析からの決定を出力する。
【0154】
ステップ800は、疾病予測用の選択肢を提供し、ここで、本発明の技法は、AFを明示していないが、低電圧によってマーキングされた構造的異常性の特定のパターン、或いは、遅延された改善済みの磁気共鳴撮像における潜在的な異常、に起因してリスク状態にあり得る、フェノタイプを識別する。この事例において、本発明は、AF予測を提供する。この事例における理想的な入力データは、ネットワークによる構造的リスクプロファイルの非侵襲的な検出が予測又は療法用の潜在的なターゲットを提供することを可能にするべく、MRI異常性を示すきめの細かい撮像データ又は低電圧の領域に関するきめの細かいデータを有し得る。治療は、これらの傷又は線維症の領域を接続するためのアブレーションを含み得る。
【0155】
ステップ820の出力は、ステップ800からの非侵襲的データ、疾病固有のPDP(ここでは、不整脈用のもの)、及びデジタルタクソノミーにより、個人内において定量的に判定される。AF療法の特定の実施形態の場合には、出力は、ライフスタイルの変化、薬剤療法、及びアブレーションを有する。本発明のシステムは、図4図5において示されるシーケンスにおいて以上において概説されたステップを使用してそれぞれの出力に対してスコアを定量的に割り当てている。ライフスタイルの変化出力には、大きなボディマスインデックス、不十分に治療された糖尿病、体を動かさないライフスタイル、及び過剰なアルコール消費、などのような矯正可能なファクタを有する患者においては、相対的に大きなスコアが割り当てられている。薬物療法の出力には、心不全を有していないが以前の失敗したAFアブレーションを有する相対的に高齢の患者においては、相対的に大きなスコアが割り当てられることになる。これらの特徴は、疫学的データに基づいており、そのいくつかのその他の特徴は、AF用のPDP及びデジタルタクソノミーによって適合された状態において、当業者には既知である。例えば、非侵襲的データが肺静脈近傍の又はアブレーションに適したその他の領域内の重要なAF領域を示す場合には、アブレーションには、相対的に大きなスコアが割り当てられる。PDPが良好な候補(小さなBMI、発作性AF、先行するアブレーションなし)を示すが、非侵襲的データがPVの近傍において又はデジタルタクソノミーからのアブレーションに適したその他の領域内において重要な領域を示していない場合には、アブレーションには、相対的に小さなスコアが割り当てられる。
【0156】
ステップ810が、アブレーションが機能する可能性が高いと識別した場合には、ステップ830における侵襲的レコーディングが起動される。ここで、第1ステップは、心臓の内側からデータを取得するというものであり、これは、通常、後述するカテーテルなどの侵襲的カテーテルを使用してAFの際に実行される。或いは、この代わりに、非侵襲的データ800は、これらのデータを提供するためにも使用され得るであろう。ステップ840は、機能する可能性が高いアブレーションタイプを判定する。対象の特定のソース領域に対するPDPによって適合されたアブレーションに対して大きなスコアが割り当てられていない場合には、ステップ845において、本発明は、解剖学的アブレーションのみを考慮するためのスコアを増大させている。これは、肺静脈隔離、並びに、めったにはないが、後部左心房壁隔離を含むその他の解剖学的ターゲット、或いは、特定の患者においては、PDPによって適合された僧帽、上部、下大静脈、又はその他のラインを含むことになろう。
【0157】
PDPによって適合されたアブレーションが、既定の閾値超の成功の確率を有するものとステップ840において判定された場合には、療法をガイド及び供給するために、ステップ850~870が実行される。
【0158】
まず、ステップ850は、対象のそれぞれの領域を検討する。PDPに基づいた電気信号の分析は、回転又は局所活動、瘢痕を示唆する低電圧の領域、又は対象のその他の領域を有するドライバであり得る対象の領域の識別に合焦する。また、これらの領域のサイズは、マッピングツール及び療法ツールのサイズを適切に適合させるために(侵襲的又は非侵襲的)心臓内レコーディングから識別される。
【0159】
いくつかの実施形態においては、領域は、高分解能レコーディングを提供する小さなマッピングカテーテルから1つずつ識別される。ステップ855において、検知ツール(AFマッピングカテーテル)からの信号は、対象のターゲット領域に向かって(例えば、ソースに向かって)運動するべき方向を判定するために分析される。
【0160】
ステップ860は、AFマッピングカテーテルが対象の重要な領域にオーバーレイするどうかを判定する。カテーテルサイズは、適切な位置決めを評価するために重要であり、且つ、患者用の1つ又は複数の予想されたサイズに対して手順を適合させるように、PDPを使用して選択される。マッピングカテーテルが重要な領域にオーバーレイしていない場合には、プロセスは、ナビゲーションをガイドするように実行される。
【0161】
ステップ865において、マッピングツールが重要な領域にオーバーレイする場合には、この領域は、いまや、療法のためにターゲットとされることになる。また、いくつかの実施形態においては、マッピングカテーテルは、これがシームレスに実行されるように、アブレーションエネルギーを供給するための能力を有する。その他の実施形態においては、別個のアブレーションツールの配備が必要とされることになる。
【0162】
ステップ870は、療法に対する応答、特に、対象の領域が除去されたかどうか、を評価する。そうではない場合には、療法が反復される。
【0163】
プロセスは、ステップ850に戻り、これにより、対象の領域にナビゲートし、且つ、これらがすべて除去される時点までアブレートする。治療される領域の合計数は、PDPに基づいた領域の予想数と共に、リアルタイムで、ステップ800及び/又は830から得られた電気信号により、判定される。
【0164】
別の実施形態においては、対象のすべての領域は、バスケットカテーテル又は逆解法からのグローバルマッピングを使用して同時に識別されており、且つ、ナビゲーションは、ワイドエリアマッピングカテーテルではなく治療ツールにのみ適用される。
【0165】
図8は、アブレーション療法の一実施形態用のパーソナライズされた療法を要約する。図の左側においては、検知ツール(マッピングカテーテル)880が、対象の領域からある程度の距離において示される。システムは、マッピングカテーテルが対象の領域とオーバーレイしているかどうかを判定するために電波を分析しており、且つ、この事例においては、そのような状態ではないと判定する。次いで、システムは、カテーテルを対象の最も近接した領域に向かって導くためのナビゲーション情報を提供する。これは、転用されたスマートフォン又はスマートフォンアプリなどの携帯型ディスプレイ890上において又は専用の医療ディスプレイユニット上において表示していることができる。ディスプレイユニットのそれぞれは、適切なデータセキュリティ及びプライバシーセーフガードを定位置において含むことになる。ナビゲーションプロセスは、矢印892によって示されるように反復される。図の右側においては、マッピングツール895が対象の領域にオーバーレイするように示される。これは、「治療位置」と呼称される。ディスプレイ898は、「最適位置、アブレート」をいまや通知する。いまや、マッピングカテーテルがアブレーションツールを含んでいる場合には、アブレーションを実行することができる。そうでない場合には、別個のアブレーションカテーテルを挿入することができる。プロセスは、操作者が対象の十分な領域が治療されたと判定する時点まで反復される。治療対象の領域の数は、領域の場所及びサイズとの関係において、このタイプの患者用のPDPによって判定されることになる。
【0166】
図9は、本発明によって識別及び分類され得る心臓リズム障害用の対象の領域(ROI)のいくつかのタイプを図式的に示している。これらのパターンは、電気リズムのマジョリティをカバーする。ROI900は、細動を有していない回転アクティベーションを通知しており、これは、局所サイトからのマイクロリエントリにおいて観察することができる。ROI905は、細動内の回転アクティベーションに対応しており、これは、心房細動又は心室細動の際に観察することができる。これは、方向性分析のために本明細書において記述されている手順を使用して検出することができる。ROI920は、細動を有していない局所アクティベーションを表しており、且つ、心房又は心室からの局所頻脈又はエクストラビートにおいて観察することができる。細動の中央(ROI925)における局所アクティベーションは、心房細動又は心室細動の際に観察することができると共に、方向性分析を使用して検出することができる。いくつかのアクティベーションパターンは、従来の電気回転(ローター)又は局所ソースを示さない場合がある。この事例においては、遅延型の改善磁気共鳴撮像上における低電圧又は異常のサイトの近傍の、例えば、進行した疾病を有する、特定の併存疾患を有する患者において見出され得る部分回転又は反復アクティベーションなどのように、非定型パターン(ROI940)が依然として療法用のターゲットとなり得る。このようなターゲットパターンは、低い又はボーダーライン電圧の領域内の組織の低電圧ゾーン又は生存チャネルとして識別することができる。このようなパターンが見出された際には、本発明のシステムは、この検出されたターゲットタイプに向かうナビゲーションを示唆することになる。ROI900、920、及び940は、組織の小さな領域をカバーしており、且つ、小さなマッピングツールによってカバーされ得る一方で、ROI905及び925は、(細動内の)組織の相対的に大きな領域をカバーしており、且つ、相対的に大きな検知ツールを必要とし得ることに留意されたい。ROI960は、明瞭なパターンを有していない障害を有する活動を表している。ROI960が識別された場合には、特定のナビゲーションガイダンスは、提供されず、且つ、システムは、対象の別の領域が検出され得る時点まで、システマティックマッピングを推奨する。
【0167】
図10は、例示的な方向性分析シーケンスの概要を提供する。ステップ1000において、AFにおける複雑な心電図(ユニポーラ信号)が取得される。複雑な不整脈における信号のオンセット及びオフセット1005は、しばしば、明瞭ではなく、且つ、成分は、アクティベーション、リカバリ(リポラリゼーション)、ノイズ、又はその他の特徴を含み得ることに留意されたい。本発明の方式は、ステップ1020において、単相性活動電位(MAP)に対して較正された多数の方法を使用する。MAPは、人間の心臓内の複雑なリズムにおける実際のアクティベーション時点(オンセット)及びリカバリ時点(オフセット)を識別するためのいくつかの方法の1つを提供する。組織内の任意の電気リズムにおいて、MAPのフェーズ0(1022)は、オンセット時点を通知し、且つ、MAPのフェーズ3(1024)は、オフセット時点を通知する。連続的なビードのMAPオンセットは、通常、心房細動又は心室細動においては、100ms~250msの、且つ、心房頻脈、心房粗動、又は心室頻脈の場合には、200~500msの、持続時間によって分離される。逆に、複雑なリズム障害における従来の電気信号1030は、しばしば、アクティベーションオンセット(デポラリゼーション)又はオフセット(リポラリゼーション)をそれから識別することが困難であり得る複数の偏向を含む。このような信号は、従来、鋭い変曲点又はデポラリゼーションの大きなスロープなどの特徴を使用して分析される。但し、信号1030は、このような規則が、しばしば、明瞭ではない重要性の偏向にアクティベーションオンセットとして誤ってラベル付与することを示している。本発明の方式は、ライン1028として示されたMAPレコーディングにおいて注釈が付与されたグラウンドトルスに対して較正された心電図からアクティベーションオンセット及びオフセット時点を識別するために機械学習などの分析技法を利用する。従って、本発明の方法において利用される分析ツールは、MAPがもはや存在していない際に、例えば、信号1030などの従来のノイズの多い心電図から、オンセット(「О」)、オフセット(終了「E」とも呼称される)、及びその他のファーフィールドノイズ成分(「F」)を弁別することができる。
【0168】
電極の任意の所与のアレイの場合に、トレーニング済みのシステムは、アクティベーションオンセット及びオフセットを正確に識別することが可能であり、これにより、複雑なリズムの事例においても、ステップ1040においてアクティベーション経路を正確にマッピングすることを可能にすることができる。電極のアレイは、アレイ上の電極から電気信号を計測する。これらの心電図は、ノイズを含む多くの特徴を有する。機械学習モデルは、それぞれのサイクル(或いは、拍動)のオンセット及びオフセット時点と、ファーフィールドノイズと、を識別するために、それぞれの心電図に適用される。分析は、それぞれの電極における正確なアクティベーション(オンセット及びオフセット)時点のシーケンスを結果的にもたらす。これらのアクティベーション時点は、次式によって定義されたアクティベーションフロントとして記述することが可能であり、
【数2】
この場合に、アクティベーションフロントΦには、リスケーリングされた時刻tにおいてそのポイント(x,y)においてアクティベーション時点イベントが存在する場合には、「1」が割り当てられ、且つ、さもなければ、「0」が割り当てられている。後続のモーションの方向を推定するために、電極アレイ全体上における空間勾配を使用して時間においてアクティベーションフロントのフローを追跡するために、ストリームラインが使用される。ステップ1040においては、例えば、反対方向に運動するシーケンシャルなアクティベーション経路1044及び1052と、シーケンシャルではない複雑な経路1048と、を含む異なる経路を生成することができる。
【0169】
ステップ1060における伝播フローの分析は、方向性に関する情報を提供する。リズムにおける電気フローの方向は、マルチセンサアレイツール1064に跨って算出することができる。電気フローの方向のリトレーシングは、検出された場合にはリズム障害のソースに、或いは、その他の電気ターゲットに、向かう経路を提供する。ステップ1080においては、複雑な細動リズムの際にも、アクティベーションが外側に発せられる場所と、経路が向かうことになる方向と、を識別するために、例えば、局所ソース1084及び回転ソース1088などのソースのタイプが判定される。この結果の取得は、チャンバ全体のグローバルマッピングを必要としてはおらず、これは、しばしば、可能ではなく、且つ、可能な場合にも、低分解能マッピングしか提供しない。時間に伴って伝導のフローをマッピングする本発明の方式は、細動などの複雑なリズムに適用することが可能であり、これは、波が空間及び時間において迅速に変化する傾向を有するという事実に起因して、標準ベクトル分析によって解釈することが困難であり得る。
【0170】
図11Aは、ステップを方向ガイダンス用のシーケンスにおいて示す。アルゴリズムフローは、時間ステップ1120において始まっており、これは、tにおいて始まっている。ステップ1124においては、隣接電極が既知の電極間隔を伴って物理的に隣接するものとして識別される。隣接電極を有する検知装置は、多くの形態を有し得る。図に示されるいくつかの例は、マルチポール装置1104-高分解能マルチポーラスペードカテーテルと、バスケット装置1108-マルチポーラバスケットカテーテルと、を含む。その他のマルチ電極装置が既知であり、既知の電極間隔を有する適切なセンサの選択については、当業者には明らかとなろう。ステップ1128において、(図10において以前に示される)時間ステップtにおいて統合された電極信号を使用してフローが演算される。まず、システムは、アレイ上の既知の間隔における電極により、ウェーブフロントΦを空間的に補間する。時刻tにおけるこの補間されたウェーブフロントΦに沿ったそれぞれのポイントiごとに、システムは、最も類似した勾配を有する次の時間ステップにおけるポイントjについて円内においてサーチする。システムは、アクティベーションウェーブフロントがこの時点においてポイントiからポイントjまで移動したと推定しており、且つ、瞬間的なフローベクトル(時間に伴う伝播)により、このフローをマーキングする。ステップ1132は、心電図の集合体を生成するために150msのウィンドウ上において複数の心電図を生成するように、電極アレイの領域に跨ってフロー(方向性)の演算を反復する。例示的な一例として、アレイ1145が示されており、この場合に、パターンとして構成されたウィンドウは、マルチ電極カテーテル内の電極の位置に対応する。方向性は、ステップ1136において、「統合された方向」というラベルが付与された大きな矢印によって示される電気フローの平均方向を判定するために、アレイ上の電極の利用可能な数の全体にわたって統合される。破線1148は、平均方向を判定するために使用されるフローを通知しており、これは、複雑な時空間的に変化する細動を記述する能力を有する。平均方向から逆にセンサをガイドすることにより、最も近接したソース領域又はその他のターゲット領域に近接するように運動することになる。この方式は、これまで細動用の対象の重要な領域を見出すことができなかった単一電極を使用した際に得られ得る精度を改善する。タイムステップは、ステップ1140において増分されており(+t)、且つ、プロセスは、既定の数のタイムステップにわたって、或いは、ユーザーによって終了される時点まで継続的に、1つ又は複数の後のタイムステップについて反復される。
【0171】
図11Bは、可能な不整脈の識別用のプロセスフローの概要を提供する。ステップ1150において、例えば、心臓内信号などの身体信号を含む患者データが、ECGデータ及び年齢、性別などの臨床変数と統合される。ステップ1165において、患者データ信号を統合するために、多変量回帰又はAFの終了又はアルゴリズム開発における長期結果の特定の出力ラベルに対してトレーニングされた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)又はサポートベクトルマシン(SVM)などの教師付き機械学習モデルからの相関係数を含む複数の数学的方式を使用することができる。ステップ1170において、統合された信号は、ソース領域を推定するために、PDPに基づいた不整脈予測に入力される。ステップ1175において、例えば、不整脈のソースなどの対象のターゲット領域までアブレーションカテーテルをガイドするために方向性分析が使用される。次いで、ステップ1180において対象の領域によってカバーされる電極の数の比率(百分率)を判定するために、アブレーションカテーテルが分析される。これは、対象の予測された領域をカバーするセンサのエリアを判定することにより、実現される。ステップ1185において、予測された比率をエリア比率が超過するかどうかが判定される。超過する場合には、ステップ1190において、療法はこのサイトに適用される。超過していない場合には、ステップ1188において、カテーテルは、ステップ1185において予測された比率を充足又は超過する時点まで所定の位置に向かってカテーテルを運動させるために、利用可能なコントロールを使用することにより、例えば、右、左、前方、などのような方向に向かってガイドされる。
【0172】
AFアブレーションターゲットの候補は、心電図の特徴及び併存疾患(例えば、ボディマスインデックス、糖尿病、高血圧)、人口統計(例えば、年齢、性別、先行するアブレーションの有無)、並びに、利用可能な場合に、遺伝、代謝、及びバイオマーカー情報の数学的組合せを含む。新規の心電図ターゲットは、「従来の」ターゲットを超えて分析する。例えば、研究は、反復的なパターン、又は一時的な回転又は局所パターン、又は妨害された回転又は局所パターンなどの、ターゲットは、いくつかの個人において不整脈を維持するべく重要であり得る、ことを示唆する。本発明のこの実施形態は、個々の患者内において、好ましい結果に関係付けられ得るものを判定することにより、これらのエレクトログラム特徴を定義する。その結果、相対的に多くの個人からのデータが、ラベル付与され、且つ、蓄積されるのに伴って、これが、デジタルタクソノミー内の数値分類となる。
【0173】
患者に応じて、療法ターゲットは、構造とは無関係に、回転又は局所ソース/ドライバ又はその他の電気ターゲットであってよい。中間フェノタイプが、特定の個人におけるフェノタイプにおいて存在し得る(電気的且つ構造的なものであり、これは、例えば、健康状態の変化に伴って動的に変化し得る)。この場合にも、複数の形態の電気パターンがこのような構造的要素と共存し得ると共に、本発明は、パーソナル及び母集団データベースを更新するために、これらのサイトと関連する電気信号を保存することになる。療法は、手術的な又は最小限に侵襲的なアブレーションによる、電気ペーシング又は機械ペーシングを介して変調するための、或いは、遺伝子、幹細胞、又は薬物療法を使用した、組織の破壊を含み得る。投薬は、心房伝導速度を減少させるためのクラスI物質と、耐火性を引き延ばすためのクラスIII物質と、を含み得る。AFアブレーションは、組織のみならず、ターゲットエリアの境界性線維症又は電気脆弱性のエリアを除去し得る。また、療法は、これらの領域の関係する組織、その神経供給、又はその他の変調生物学系をも対象とすることができる。
【0174】
図12は、1つ又は複数の実施形態による電気リズム障害を治療するプロセス1200を示すフローチャートである。プロセス1200は、電気リズム障害を検知及び治療するための装置を使用して実行される。いくつかの実施形態においては、装置は、図13図19を参照して後述するもの、例えば、図11Aのバスケットカテーテル1108などのバスケットカテーテル、又はその他のマルチ電極カテーテルなどのアブレーションカテーテルである。アブレーションカテーテルは、組織の電気信号の検知及びアブレーションエネルギーによる電気リズム障害の治療の両方を実行するように構成される。アブレーションカテーテルは、例えば、電磁エネルギー、凍結エネルギー、などのような1つ又は複数の形態においてアブレーションエネルギーを提供することができる。
【0175】
ステップ1210において、装置は、アブレーションカテーテル上の複数の検知電極を使用して組織の複数の信号を検出する。ステップ1220において、電極から検出された電気信号は、電気リズムの伝導路を記述する方向性マップを生成するために使用される。方向性マップは、検出された電気信号をトレーニング済みの機械学習モデルに入力することにより、生成することができる。いくつかの実施形態においては、教師付きトレーニング方式が使用されており、この場合には、学習機械は、人間の心臓の電気信号及び心臓リズム障害の1つ又は複数のソース又はその他のターゲット領域の既知の場所を有するトレーニング例に基づいてトレーニングされることになる。
【0176】
ステップ1230において、(a)方向性マップ内の心臓リズム障害のソース又はその他のターゲット領域の場所及び(b)方向性マップの外側に位置した心臓リズム障害のソース又はその他のターゲット領域へのガイダンス方向の1つを判定するべく、方向性マップが統合される。
【0177】
モデルがソース又はその他のターゲット領域の場所の判定において成功した、即ち、方向性マップがターゲットと実質的にアライメントされる、場合には、ステップ1240において、判定されたターゲット場所において組織を変更するために、カテーテル上の1つ又は複数のアブレーションコンポーネントが起動される。起動されるアブレーションコンポーネントの数は、アブレーションエネルギーを供給するために使用されるソース領域の場所までの閾値近接性に基づいたものであってよい。方向性マップは、アブレートされるターゲット領域のサイズを判定するために且つターゲットの判定されたサイズを変更するために使用されるアブレーションコンポーネントの適切な組合せを選択するために、使用することができる。いくつかの実施形態においては、アブレーション電極は、ターゲットにおいて組織を変更する電磁波を生成するように構成することができる。電極に適用されるアブレーションエネルギーは、別個の波形を生成するように変調することができる。その他のアブレーション信号特性と共に、特定のアブレーション波形の選択は、一般に、医師の技術分野における技術のレベルに含まれることになる。選択は、ルックアップテーブルによって支援されてもよく、或いは、母集団データから取得されたデータに基づいてトレーニングされた機械学習モデルの使用を通じて得られる知識によってガイドされてもよい。装置は、変更が意図されてはいない取り囲んでいる組織又は組織のその他の部分の過熱を防止するために、装置上の1つ又は複数の灌注孔から灌注液を組織上に更に放出することができる。
【0178】
電極グリッドの灌注は、電極の数、そのサイズ及び電極間隔、並びに、予期されるパワー供給及び使用の際に生成される熱に従って調節することができる。灌注液の主要な目的は、エネルギー供給の際に組織を冷却し且つ熱の上昇を制限するというものである。冷却は、ガスの発生を伴って組織又は血液を蒸発させ得る又は炭化物又は凝塊を形成し得る温度レベルに接近することなしに、増大されたパワーの供給を許容する。また、灌注液は、密集し得る前に小さな凝塊又は炭化物の塊を直接的に洗い流す。従って、灌注は、これらの問題の尤度を低減することにより、安全性を改善する。適切な灌注液は、プラズマ(即ち、「生理食塩水」)に類似した浸透圧、その浸透圧の半分(「2分の1生理食塩水」)、その浸透圧よりも高いもの(「超生理食塩水」)を有する生理食塩水を含むことができる。代替肢は、ブドウ糖(グルコース)溶液又は当業者には馴染みのあるその他の電解質溶液を含む。灌注液のフローレートは、通常、アブレーションの際にカテーテル上において2~50ml/分の範囲である。レートを増大させることは、冷却を増大させることになり、且つ、相対的に大きなパワー供給を可能にすることになる一方で、フローの低減は、相対的に大きな加熱をもたらすことになる。本発明の装置及び方法用の通常のフローレート範囲は、心臓の心房の場合に5~10ml/分であり、心臓の心室を治療するためには、15~30ml/分である。
【0179】
更にその他の実施形態においては、アブレーションコンポーネントは、適切なクーラントによって充填するように構成された複数の冷凍アブレーションチャンバであってよい。クーラントが充填されたチャンバの外側表面が組織との接触状態とされた際に、これは、心臓リズム障害用のターゲット領域を迅速に冷却することができる。冷凍アブレーションの実施形態において使用され得るクーラントは、-89℃の沸点を有する酸化窒素(NO)、-79℃の沸点を有する二酸化炭素(CO)、及び-188℃の沸点を有する液体窒素(N)を含む。使用され得るその他の冷媒については、当業者には明らかとなろう。心臓及び神経組織は、通常、約-100℃において死滅しており、且つ、従って、これよりも低い温度は、更に完全な組織アブレーションを保証することができる。液体窒素などの非常に低い温度の欠点は、灌注液を冷却された状態において維持する技術的な難しさと、心臓に隣接した構造を含む取り囲んでいる領域に対する意図しない損傷のリスクと、である。
【0180】
ステップ1230において、プロセスが実際のターゲット場所を判定していないが方向性マップの外側においてターゲットまでのガイダンス方向を判定する場合には、ステップ1250において、カテーテルは、ガイダンス方向に沿って後続の位置に向かって操向される。カテーテルが次の位置に運動したら、複数の検知電極によって組織の後続の電気信号を検出するために、ステップ1210が反復される。ステップ1220及び1230は、ガイダンス方向を連続的に判定するために反復される。場所が未だステップ1230において判定されていない場合には、カテーテルは、ターゲットが見出されたという通知が提供される時点まで、ステップ1250におけるソース又はその他のターゲット領域に向かう増分的な操向を継続する。いくつかの実施形態においては、カテーテルの位置決めは、医師によって制御されることになり、この場合には、システムは、ターゲットに向かってガイダンス方向を移動するようにカテーテルを運動させるための場所を医師に通知するように、例えば、表示装置上の視覚的表示、可聴トーン、又はこれらの組合せなどのなんらかの形態の通知を提供することができる。
【0181】
本発明のシステムは、電気リズム障害が成功裏に治療されたかどうかを確認するために使用することができる。成功した治療は、電気リズムの補正と、電気リズムに影響を及ぼすことになるターゲット領域の除去と、を必然的に伴っている。動作ステップ1260において、システムは、ソース又はターゲット領域のアブレーションの後に複数の検知電極を使用して治療されたエリア内の電気信号を検出するために使用することができる。成功の確認の際には、手順は、医師によって終了されてもよく、或いは、心臓リズム障害の更なるインジケータが存在していないことの確認に基づいてシステムによって自動的に終了されてもよい。システムは、後続の電気信号に基づいて心臓リズム障害が持続するかどうかを判定するために使用することができる。障害が持続する場合には、持続する障害に寄与し得る第2のソース又はターゲット領域を見出すために、ステップ1210~1250を反復することができる。いくつかの事例においては、アブレーションがターゲットの治療において成功しなかった場合に、後からキャプチャされた電気信号に基づいて障害の持続を判定することができる。システムは、成功裏の治療を保証するために、更なるアブレーションエネルギーを同一の領域に適用するように使用することができる。
【0182】
図13は、電気リズム障害を治療するためのアブレーションカテーテル1300の一実施形態を示す。アブレーションカテーテル1300は、スペード1310、シャフト1320、及びコントローラ1360を含む1つのツール内において検知機能と療法供給機能を組み合わせている。スペード1310は、アブレーションカテーテル1300を1つ又は複数のソース又はその他のターゲット領域までガイドするために検知電極1340のアレイを支持する薄い柔軟なボディ1302を含む。また、大部分の実施形態において、ボディ1302は、図13を参照して更に後述するように、(例えば、電磁的又は熱的な)組織変更エネルギーの供給のために構成された1つ又は複数のアブレーションコンポーネント1350を支持する。ボディ1302は、一般に、その緩和された(配備されていない)状態において平面的であって、保持容積内にボディが潰れ且つ折り畳まれるように、のみならず、配備されたらカテーテルの接触表面を隣接する組織表面に対して準拠させるように、十分に曲がりやすい弾性材料から形成される。スペード1310は、灌注液を取り囲んでいる組織又は撮像まで導くための1つ又は複数の灌注孔などのコンポーネントを更に含むことができる。スペード1310の近端は、シャフト1320に結合されており、これは、コントローラ1360によって操向可能である。シャフト1320は、例えば、クーラント、灌注液、などのような流体をスペード1310に供給するためのチャネルと共に、スペード1310上の様々な電極までの配線を収容する。シャフト1320は、折り畳まれた際にスペード1310を保持するように構成された内側容積を有するシース1330を通じて同心状に延在する。また、シャフト1320は、スペード1310が組織との接触状態にあるかどうかを検知するための1つ又は複数の接触センサ1325を含むことができる。コントローラ1360は、シャフト1320の近端に結合される。スペード1310は、その周囲の周りの任意の地点においてシャフト1320に装着されていてもよい。換言すれば、これは、図示のようにスペードの中心線と対称的にアライメントされる必要はなく、中心からオフセットされていてもよい。
【0183】
コントローラ1360は、不整脈用のソース又はその他のターゲット領域の場所及び/又はこれまでのガイダンス方向を判定するために、検知電極1340によって検出された電気信号を受け取り且つ分析するように構成される。コントローラ1360は、ターゲット領域に向かってガイダンス方向においてスペード1310の運動を導くために制御信号をシャフト1320に提供する。コントローラ1360は、ターゲット領域において組織を変更するために、信号をアブレーションコンポーネント1350に提供する。いくつかの実施形態においては、アブレーションカテーテル1300の様々なコンポーネントの機能は、さもなければ、コンポーネントの間において分散させることもできる。更なる実施形態においては、アブレーションカテーテル1300は、本明細書において列挙されるものよりも多くの又は少ない数のコンポーネントを含んでいる。
【0184】
スペード1310は、電気リズム障害を治療するために組織に接触するように位置決めされる。通常のスペード寸法は、幅(W)が5mm~50mmであり、長さ(L)が5mm~50mmであり、且つ、厚さ(H)が1mm~5mmである。心臓用の共通的な一実施形態においては、寸法は、幅が25mmであり、長さが30mmであり、且つ、厚さが2mmである。いくつかの実施形態においては、スペードボディ1302は、スペードがシース1330の内側容積内に容易に潰れ又は折り畳まれることを許容するために、シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、又は類似の生体適合性ポリマーなどの薄い柔軟なポリマーから形成される。例示的な製造プロセスは、ワイヤ1305、電極1340、1350、及びその他のコンポーネントがモールド内において予め配置された状態において、液体ポリマーがモールド内に導入されることを伴うことになろう。次いで、モールド及び液体は、ポリマー材料を望ましい仕上げ及び柔軟性に硬化させるように、適切な状態(例えば、熱、雰囲気、光、など)に曝露される。ワイヤは、モールド内においてレイアウト用に予め形成され得る一方で、いくつかの実施形態においては、ワイヤ1305は、電極に電気的に接続するように、ポリマー材料内のチャネル内に、例えば、厚膜、薄膜、インクジェット、又はその他の印刷方法などの既知のパターニング技法を使用して印刷又は堆積された導電性ペースト又は薄膜を使用して形成された相互接続であってよい。モールド内において位置決めされた電極及びアブレーションコンポーネントの詳細をもう少し提供すれば、次いで、コンポーネントの背部上のコネクタを露出した且つ部分的に又は完全に硬化した状態のままで、ポリマーの第1層がモールドに追加されることになろう。次に、相互接続が第1ポリマー層の上部においてパターン化されることになろう。次いで、コントローラ1360と接続するためにシャフト1320の長さだけ延在するワイヤに印刷されたワイヤを接続するように、標準接合方法を使用することができる。次いで、スペード構造を完成及び封止するために、第2ポリマー層が形成されることになろう。材料は、折り畳みと配備の間における複数回の遷移を許容するために十分に丈夫であることを要する。ポリマー材料は、好ましくは、高周波エネルギー供給による加熱に適したものであることを要する。その他の実施形態においては、スペード1310は、異なる材料の組合せ又は複合体から、或いは、例えば、変化する柔軟性の程度などの異なる特性を付与するように異なる方式で処理された同一の材料から、製造することができる。いくつかの実施形態においては、スペード1310の厚さは、スペードのその長さに沿って又は異なるエリアにおいて変化することができる。
【0185】
検知電極1340は、接触表面1315と同一平面上に位置する又はこれからわずかに突出するように、ボディ1302内においてアレイとして構成される。アレイ内の電極は、任意の数のパターンにおいて構成することができる。例えば、検知電極1340は、図13に示されるように単純な矩形グリッドとして均等に配置されていてもよく、或いは、その他の構成(例えば、分散及び/又は密度)が使用されてもよい。検知電極1340の数は、4~256個の電極の範囲を有することができる。
【0186】
検知電極のサイズ及び間隔は、カテーテルの分解能を決定する。電極サイズは、0.1mm~4.0mmの範囲を有していてもよく、この場合に、電極サイズの選択は、用途に依存する。例えば、密接に離隔した小さなサイズの検知電極は、高分解能を実現することになるが、小さな及び大きな電極の両方との間には、トレードオフが存在する。最も小さな実際的な電極サイズは、小さな領域を統合することができるが、アーチファクト(例えば、運動アーチファクト)の傾向を有し得る一方で、最も大きな電極サイズは、相対的に広い領域にわたって統合することができるが、小さな振幅の信号を喪失し得る。心房細動などの複雑なリズムの場合には、良好な信号忠実性を提供するために且つ療法用のターゲットであり得る複雑な信号タイプを検出するために、通常の検知電極は、0.5~1.0mmのサイズの範囲を有することができる。心室頻脈の場合には、通常の検知電極は、サイズが1~2mmの範囲を有することができる。副伝導路によって仲介された頻脈などの単純なリズムの場合には、通常の電極サイズ範囲は、副伝導路電位を識別するために0.5~1mmであってよい。適切な検知電極サイズの選択は、当技術分野の技術のレベルに含まれることになる。いくつかの実施形態においては、スペードは、グループとして又はスペード上の特定の場所において配置された、いくつかの異なる方式でサイズ設定された検知電極を含むことができる。また、検知電極1340は、例えば、楕円、丸、正方形、矩形、などのような様々な異なる形状を有することができる。
【0187】
検知電極1340の間の(エッジからエッジまで計測された)間隔は、0.5~5.0mmの範囲において変化し得る。心房細動の場合には、通常の検知電極の間隔は、1~2mmとなる。心室頻脈の場合には、通常の電極間隔は、2~4mmとなる。非常に微細な詳細を解明しなければならない際には、通常の検知電極間隔は、0.5~0.75mmとなる。いくつかの実施形態においては、電極の異なるグループについて、或いは、スペースボディ上の異なる場所において、異なる間隔を使用することができる。
【0188】
図13に示される実施形態においては、アブレーションコンポーネント1350は、接触表面1315と同一平面上に位置する又はこれからわずかに突出するように、スペードボディ1302内においてアレイとして配置されたアブレーション電極である。アブレーション電極1350の数は、4~36のレベルであってよいが、スペードのサイズに依存することになる。それぞれのアブレーション電極のサイズは、0.5~4.0mmの範囲を有する。心房細動などの複雑なリズムの場合には、通常のアブレーション電極は、サイズが0.5~2.0mmの範囲を有する。心室頻脈の場合には、通常のアブレーション電極は、サイズが2.0~3.0mmの範囲を有する。副伝導路によって仲介された頻脈などの単純なリズムの場合には、通常のアブレーション電極サイズ範囲は、0.5~1.0mmとなる。いくつかの実施形態においては、スペードは、グループとして又はスペード上の特定の場所において配置された、いくつかの異なる方式でサイズ設定されたアブレーション電極を含むことができる。また、アブレーション電極1350は、例えば、楕円、丸、正方形、矩形、などのような異なる形状であってもよい。
【0189】
アブレーション電極1350の間の(エッジからエッジまで計測された)間隔は、0.5~10.0mmの範囲において変化し得る。心房細動の場合には、通常のアブレーション電極間隔は、2.0~3.0mmとなる。心室頻脈の場合には、通常のアブレーション電極間隔は、3.0~6.0mmとなる。通常、アブレーション電極の密度は、検知電極の密度未満となる。但し、いくつかの用途においては、密度は、対象のリズム及びチャンバに応じて、アブレーション電極について相対的に大きくなり得るであろう。
【0190】
アブレーションカテーテル1300が、個人内における位置決めの準備完了状態となった際に、スペード1310は、例えば、血管アクセスを介した個人の身体内への挿入を促進するために、シース1330の内部容積内において保持された状態においてその折り畳まれた構成となる。アブレーションカテーテル1300が適切な場所までガイドされたら、スペード1310は、上述のように検出及び/又は治療のプロセスを開始するために、シース1330から放出されることになる。スペードボディ1302の柔軟性は、スペード1310が組織表面のトポグラフィに実質的に準拠することを許容する。任意選択により、シースから放出されたらスペードの展開を促進するために、製造の際に、更なる微細なゲージのスプリングワイヤをスペードの周囲の近傍において配置することができる。これらのスプリングワイヤは、スペードを硬化させるほどの剛性を有してはおらず、展開された、即ち、緩和された、構成に対する弾性を改善するのみである。いくつかの実装形態においては、スペード1310は、例えば、熱電抵抗性材料をボディを形成するために又はボディ材料との間において複合体を形成するために使用されるポリマー材料内において埋め込むことにより、このような材料を更に含んでもよい。スペードボディ内の電気抵抗性材料の内蔵は、検知電極1340によって検出された電気信号における高忠実性の維持にとって有益であり得る。1つ又は複数の熱伝導性材料の内蔵は、アブレーションコンポーネントの場所における直接的な濃縮供給を回避するためにエネルギー/液体を拡散又は分散することを支援するように、組織、即ち、電磁アブレーション、冷凍アブレーション、などを変更する際に有用であり得る。アブレーションカテーテル1300は、本明細書においては、「スペード」として記述されるが、これは、また、パドル、グリッド、アレイ、マトリックス、又はメッシュとも呼称され得ることに留意されたい。
【0191】
上述のように、スペード1310は、接触表面1315が組織に接触し且つこれに準拠するように、薄い、柔軟な、準拠可能な材料から形成される。スペード1310の形状は、図13において矩形として描かれているが、これは、例示を目的としたものに過ぎず、且つ、その他の形状を使用することができる。潜在的な変形は、柔軟な材料をシース容積内に引き込む(或いは、押し込む)ことを容易にするためにスペードのコーナーを切断する又は丸めることを含み得る。図14Aには、その他の形状のいくつかの例が提供されており、これについては、更に詳しく後述する。カテーテルの折り畳み/展開又はその他の機能を促進し得るその他の形状の選択については、当業者には容易に明らかとなろう。また、スペード1310のサイズも、その機能に影響を及ぼす。例えば、相対的に大きなスペード1310は、相対的に大きな表面積をカバーするという利点を有することを通じて、相対的に嵩張る容積を表すことになり、且つ、従って、配備及び/又は抽出が相対的に困難になり得るであろう。相対的に嵩張る容積は、最大幅におけるアブレーションカテーテルの増大した断面表面積に対応することになり、これにより、個人のボディ内への挿入のために必要とされる開口部及び伝導路寸法を増大させる。スペードのサイズは、既知の臨床プロファイルを有する個人用の対象の領域の予測サイズに基づいてPDPによって個別化することができる。心不整脈用途用の例示的な寸法範囲は、1.5cm×1.5cm~3cm×3cm(W×L)のレベルである。スペードの厚さは、シース内に潰れ且つ折り畳まれるために十分に柔軟でありつつ、組織の外形にセンサのアレイを支持するために十分であることを要する。例示的な厚さの範囲は、0.10mm~4.0mmのレベルとなるが、装置内に内蔵されたコンポーネント及び特徴に応じて変化し得る。一実施形態において、0.75mm~1.0mmの範囲は、電極材料用の十分な支持を提供しつつ、心腔に準拠するために十分に柔軟なものになる。別の実施形態においては、2~3mmの範囲は、心臓手術用途の場合又は収縮モーションの相対的に大きな範囲を有する心室の場合などのように、心臓の外側において使用されるための相対的に大きな構造的安定性を提供することになる。
【0192】
シャフト1320は、半剛性材料から形成された細長い中空シリンダ又はチューブであり、この場合に、遠端は、スペード1310に結合されており、且つ、近端は、コントローラ1360に結合される。シャフト1320の中空の中心は、カテーテル電極への電気的接続を提供するワイヤの1つ又は複数の束1322、カテーテルを操作するための操向ワイヤ、並びに、適用可能な場合には、液体チューブを取り囲んでおり、これらは、いずれも、スペード1310とコントローラ1360の間の通信を提供するためにシャフトの長さ全体にわたって延在することを要する。シャフト1320は、カテーテルの挿入及び除去を促進するために且つ挿入伝導路への損傷のリスクを低減するために、低摩擦の生体適合性外側表面を提供するように形成及び被覆される。また、中空カテーテルの内部表面も、シャフトの中心内のワイヤ及びチューブの束1322の自由運動を許容するために、低摩擦被覆を有することができる。適切なシャフト及びシャフト材料は、当技術分野において既知であり、且つ、広く市販されている。シャフト1320は、スペード1310を操作するために、コントローラ1360によって操向可能である。シャフト1320は、個人内のエントリポイントから評価/治療対象の組織まで延在するように、十分な長さを有することを要する。例えば、心不整脈の治療の場合には、アブレーションカテーテル1300は、個人の脚又は鼠径部内の開口部を通じて挿入され、且つ、大腿動脈を通じて心臓までガイドされることになる。従って、シャフト1320は、エントリポイントから個人の心臓までの長さ全体にわたって延在するように、十分に長いものであることを要する。シャフトの部分的な剛性は、シャフトの中心内において収容されたコンポーネントを保護しており、且つ、スペード1310の運動に影響を及ぼし得るシャフト内の偏向の防止を支援する。
【0193】
組織表面との間のスペード1310の接触表面の適切な接触の検出を許容するために、接触センサ1325をシャフトの遠端上において配置することができる。その他の実施形態においては、接触センサ1325は、例えば、接触表面1315上のなんらかの地点において、などのように、アブレーションカテーテル1300上の別の場所に配置することができる。接触センサ1325のために、いくつかの異なるセンサタイプを使用することができる。例えば、接触センサ1325は、フォースセンサに適用された力を計測するように構成されたセンサであってよい。フォースセンサが、例えば、0.25パスカルなどの閾値超の力を検出した際に、組織表面との間の十分な接触を見出すことができる。使用され得るその他のタイプのセンサは、静電容量性検知を介して別の表面までの距離を計測する能力を有する近接性センサである。組織表面と近接性センサ内のコンデンサの間の距離を算出するために、静電容量の変化が使用される。計測された距離が、例えば、0.1ミリメートルなどの閾値距離内である場合に、組織表面との間の十分な接触を見出すことができる。
【0194】
シース1330は、潰れた又は折り畳まれた構成においてスペード1310を保持するように構成された剛性で中空のほぼ円筒形のボディである。わかりやすさを目的として、シース1330は、そのベースが側部に対して直角に位置した状態において、標準的なシリンダとして示されているが、実際の用途においては、シースボディは、その外側表面が滑らかであり且つエッジフリーとなり、これにより、挿入/抽出伝導路に沿った特徴上において捕捉され得る角を有するコンポーネントを極小化するように、面取り、丸め、又はテーパー化することができる。例えば、卵形又は部分的に卵形の形状を使用することができよう。シース1330は、シャフト1320を中心として同心状に保持されており、且つ、スペード1310を放出するべく、シャフトの遠端から引き戻すためにシャフト1320に沿って長手方向において摺動するように構成される。具体的には、その初期位置において、シース1330は、カテーテルが組織までガイドされることを許容するために、折り畳まれた構成においてスペード1310を保持及びカバーする。カテーテルが組織において定位置に位置したら、シース1330は、シャフトの遠端から第2位置に離れるように移動され、これにより、スペード1310を放出し、且つ、これがその展開された構成に戻ることを許容する。シース1330は、第1位置と第2位置の間においてシースをガイドする1つ又は複数のワイヤを介してコントローラ1360に接続することができる。一実施形態において、これらのワイヤは、コントローラ内のマイクロモーター1326によって起動することができる。いくつかの実施形態においては、シース1330は、シース内に構築されたマイクロモーター及び/又はコントローラまでシャフトを通じて延在するワイヤによってコントローラ1360に電子的に接続されたシースを使用して変位させることができる。
【0195】
異なる臓器は、異なるサイズの推奨を有してもよく、これは、例えば、脳内においては、或いは、神経マッピングの場合には、相対的に小さくてもよく、且つ、一般的には、所与の用途及び/又は生物学的チャンバについて変化することになる。例えば、心臓内のアブレーションは、瘢痕などの領域を取り囲んでいることが重要であり得る一方で、検知は、相対的に均一なグリッドであり得る。別の例として、脳内のアブレーションは、深い、但し、狭い、貫通を許容するために、相対的に高密度であり且つ合焦されることが重要であり得る一方で、検知は、相対的に広いエリア内においてカバーし得る。カテーテル内の検知電極の数に対する別の制約は、シャフト内にフィットし得るワイヤの束1322のサイズである。図13に示される例においては、24個の検知電極1340が矩形グリッドとして構成される。
【0196】
検知電極1340は、組織との接触状態にある際には、組織の電気信号を検出する能力を有する。検知電極1340を目的として、様々なタイプの電極を実装することができる。電極は、組織表面から電気信号を検出する能力を有する半導体又は導電性材料から構築することができる。検知電極1340は、コントローラによって個別にアドレス指定可能であってもよく、及び/又は、対象の不整脈領域の予想特性に対して適合されたカスタムパターンにおいて構成することもできる。複数の電極は、例えば、それぞれが複数のセンサを有する、1つ又は複数のセンサチップなどの、導電性物質の1つ又は複数の連続的シート内において形成することが可能であり、或いは、別個のセンサをスペードボディ1302内において個々に配置することもできる。例えば、熱(赤外線)、機械的モーション(圧電又はその他のセンサ)、化学組成、又は診断的価値を有し得るその他のインデックスを計測するために、その他のタイプのセンサをカテーテル内において含むことができる。検知電極1340を支持する回路は、好ましくは、アブレーションの際に発生し得るエネルギー及び圧力に耐えるように、丈夫であり且つショック耐性を有する。電気信号は、組織の電位を計測する心電図の形態であってよい。電気信号は、少なくとも部分的に組織の電気リズムに関するものであってよい。検知電極1340の配置は、例えば、図11A及び図11Bを参照して記述される原理に従って電気リズム障害のソース又はその他のターゲット領域の場所又はこれへのガイダンス方向を分析するために有用である電気信号のマッピングを生成するために使用される。
【0197】
図13を更に参照すれば、1つ又は複数のアブレーションコンポーネント1350は、アブレーションエネルギーを組織に供給しており、或いは、組織へのアブレーションエネルギーの供給を支援する。1つ又は複数の実施形態において、アブレーションコンポーネント1350は、スペード1310の接触表面1315内において配設される。図示のように、1つの可能な構成は、1つのコンポーネントが中心に位置した且つ2つのコンポーネントがそれぞれ接触表面の遠位及び近位側に位置した状態において、5つのアブレーションコンポーネントが構成されることを伴っている。このパターンは、一例に過ぎず、例えば、ソース又はその他のターゲット領域の判定されたサイズ及び/又は形状に対応するアブレーション治療を適合させるために、異なる間隔又はパターン及び異なる数の要素を有するその他の変形を使用することができる。アブレーションコンポーネント1350の1つ又は複数のものの起動は、コントローラ1360によって制御されており、これにより、アブレーションエネルギーの範囲から選択されたアブレーションエネルギーの量を提供するために、それぞれのアブレーションコンポーネントが選択的に制御されることを許容する。
【0198】
いくつかの実施形態においては、アブレーションコンポーネント1350は、アブレーションエネルギーとして電磁エネルギーを供給するために組織に接触するアブレーション電極である。アブレーション電極は、通常、十分な電磁エネルギーを表面に供給するために、検知電極1340のものよりも大きな接触エリアを有する。電磁エネルギーは、高周波電磁波を含んでいてもよく、或いは、電磁波のその他の周波数を含んでいてもよい。本発明のカテーテルに対する更なる特徴及び変形については、図14A図19を参照して後述する。
【0199】
コントローラ1360は、ソース又はその他のターゲット領域の場所又はこれへのガイダンス方向を判定するために、検知電極1340から受け取られた電気信号を分析する。スペード1310上のそれぞれの検知電極1340の物理的位置の知識は、コントローラがその他のものとの関係においてそれぞれの検知電極1340に対応する電気信号の場所を判定することを許容する。コントローラ1360は、ソース又はその他のターゲット領域の場所及び/又はこれへのガイダンス方向の1つを判定するために、図11A図11B、及び図12に示されるステップを使用しており、次いで、シャフト1320がターゲットに向かってスペード1310を運動させるようにする信号を生成する。ターゲットにおける到達の確認の際に(例えば、ステップ1185、1230)、コントローラ1360は、組織に対するアブレーションエネルギーの供給を命令する(ステップ1190、1240)。コントローラ1360は、適切な組織接触を検証するために、装置のその他のコンポーネント、即ち、接触センサ1325、と更にやり取りしてもよく、且つ、接触が不十分であると考えられた場合には、組織との十分な接触のためにスペード1310を適切に位置決めするようにシャフト1320の運動を命令することができる。図11A図11B、及び図12に示されるシーケンスを実行することにより、コントローラ1360は、すべてのものの治療のための検討が完了する時点まで、存在する場合には、その他の検出されたターゲット領域を検知及び治療することを継続することができる。
【0200】
1つ又は複数の実施形態において、アブレーションカテーテル1300は、半自律的に動作することができる。これらの実施形態においては、コントローラ1360は、ソース又はその他のターゲット領域を見出す、スペード1310をターゲットまで運動させる、アブレーションコンポーネント1350によって組織を変更することによってターゲット領域を治療する、且つ、成功裏の治療の確認の際に手順を終了する、動作を実行する。これらの実施形態においては、アブレーションカテーテル1300を動作させるために、医師による最小限の介入が必要されることになろう。
【0201】
その他の実施形態においては、アブレーションカテーテル1300は、医師が動作させている。コントローラ1360は、ソース又はその他のターゲット領域の場所及び/又はこれへのガイダンス方向を検出及び判定し、次いで、場所及び/又はガイダンス方向の1つ又は複数のインジケータ(例えば、視覚及び/又はオーディオ)を医師に対して生成する。コントローラ1360は、エネルギーソースに、入力システムに、且つ、視覚的表示システムに、カテーテルを接続する。また、コントローラは、カテーテルを直接的に運動させ得る或いはその運動を支援し得るモーター1326にも接続することができる。一実施形態において、医師は、通知された方向においてスペード1310を運動させるためにシャフト1320を物理的に操作することができる。その他の実施形態においては、医師は、コントローラ(並びに、モーター1326)との通信状態にあるユーザーインターフェイス1365を介してシャフト1320の運動を制御し、これにより、医師がスペード1310の運動を制御することを許容することができる。実施形態において含まれ得るユーザーインターフェイスの例は、ハンドル、ジョイスティック、マウス、又はコンピュータ上のトラックボールを含む。一代替実施形態において、治療する医師であり得る操作者は、検知又は治療ツールの運動をガイドするために、仮想、拡張、又は混合現実ヘッドセット又は仮想、拡張、又は混合現実ゴーグルを使用することができる。
【0202】
図14Aは、代替スペード構成の3つの例を示す。スペード1410は、丸くなったコーナーを有する形状の矩形であり、これにより、検知電極の矩形グリッドの実装を許容する。この構成は、左心房の後部壁などの大きな平面的な構造物内における安定性を提供することができる。スペード1420は、形状が楕円であり、これは、肺静脈の近傍などの極端な曲がりの近傍の装置の位置決めを促進し得るが、その周辺の近傍において相対的に少ない数の電極を含んでいる。スペード1430は、リングとして構成された検知電極を有する環体である。この構成は、例えば、エネルギー供給を極小化するために且つ領域の中心における高感度な構造に対する損傷を回避するために、必ずしも完全にアブレーズすることなしに対象の領域を「隔離」するのに最も効果的であり得る。これらの図示されるスペード構成は、例として提供されるものに過ぎない。当業者には明らかとなるように、個人の特定のニーズにカテーテルを適合させるために、その他の形状及びアスペクト比を使用することができる。
【0203】
図14Bは、電気リズム障害においてソース又はその他のターゲット領域にスペード構成を適合させることの一例を提供する。図示の例は、心房細動用であり、これは、ポイントではなく、むしろ、「大きなドメイン」1440をカバーするサイズの対象の領域によって支持することができる。或いは、この代わりに、エリア1450は、アクティベーションの遠心的伝播を有する局所領域であり得る、但し、回転、部分的回転、反復的サイト、並びに、図9に示されるタイプのその他のパターンでもあり得る、対象の領域を表す。(破線内の)エリア1460は、概略的な「ドメインサイズ」、或いは、生物学的リズム障害を治療するためにターゲットとしなければならない組織の領域、を描いている。図示のように、これは、低電圧を呈し得る、対象の解剖学的領域であり得る、或いは、心房細動用の局所化されたソース(図9における局所、回転、ローター、部分的リエントリ、反復的サイト)であり得る、望ましいターゲット領域のドメインサイズである。生物学的リズムの治療は、例えば、1440、1450、又は1460などの通知されたドメインサイズをターゲットとするために様々な形状及び構成のスペードをマッチングさせることにより、可能になっている。
【0204】
図15A及び図15Bは、ターゲット領域において組織を変更するために電磁エネルギーを適用するように構成された本発明のアブレーションカテーテルの一実施形態を示す。アブレーションカテーテル1500は、電気穿孔法用の電磁エネルギーの供給を許容するために、小さな高分解能検知電極1340よりも大きなエリアを有する複数のアブレーション電極1520を含む。アブレーション電極1520の間の間隔は、実質的に連続的な組織病変を保証するために十分に小さいものであってよい。アブレーション電極1520は、図示のように、検知電極1340の間において散在していてもよく、或いは、その他のパターンを使用することもできる。アブレーション電極1520は、一緒に起動することも可能であり、或いは、これらは、例えば、象限に電極を分割することにより、1つ又は複数のサブ領域内において起動することもできる。アブレーション電極1520は、様々なエネルギー信号形状(波形)においてエネルギーを供給するように更に構成することができる。
【0205】
当技術分野において既知のように、波形は、アブレーション電極によって生成された電圧、電流、周波数、波形状、持続時間、位相、又はその他の波プロパティなどの可変パラメータの組合せを有する電気エネルギー信号を記述する。例えば、1つの波形は、例えば、数ミリ秒などの規定された持続時間にわたって適用される規定された振幅及び周波数を有する正弦波であってよい。変化する波形によるアブレーションの一例は、第1アブレーション電極が第1の規定された振幅、形状、周波数、及び持続時間を有する正弦波を放出するようにする且つ第2アブレーション電極が第2の規定された振幅、形状、周波数、及び持続時間を有する鋸歯波を放出するようにするコントローラを必要とし得る。波形の様々な組合せ及びシーケンスを利用することができる。
【0206】
図15Bに示されるスペード1510の幅方向の断面図は、その外側表面が接触表面1515と同一平面上において位置する状態において位置決めされた検知電極1340及びアブレーション電極1520を有するスペードボディ1302の単一層を示す。それぞれの電極(検知電極1340及びアブレーション電極1520)は、スペードボディから外に延在する且つシャフト1320を通じてコントローラ1360まで継続する、対応するワイヤ1530を介して接続される。
【0207】
図16A及び図16Bは、例えば、生理食塩水又は化学的緩衝剤などの灌注液を1つ又は複数の灌注孔1620を介して組織に提供するように構成されたアブレーションカテーテルの一実施形態を示す。灌注液は、アブレーション電極先端の過熱及び可能なパワーのシャットダウンを回避し、これにより、相対的に深いエネルギー供給を許容するために、組織表面を冷却する。灌注孔1620は、スペード1610の全体を通じて均等に分散された状態において示されるが、異なる構成を使用することもできる。例えば、灌注孔1620は、アブレーション電極1520の近傍において集中させることもできる。1つ又は複数の灌注液チャネルは、灌注孔を孔への灌注液の供給を制御するコントローラ1360と関連する及び/又はこれによって制御される灌注液リザーバ1650に接続するために(束1322の一部として)シャフト1320を通じて延在する。
【0208】
図16Bのスペード1610の幅方向の(横断方向)断面図は、接触表面1615上において構成された検知電極1340、アブレーション電極1520、及び灌注孔1620を有する単一の柔軟な層を示している。いくつかの実装形態においては、それぞれの灌注孔は、灌注液チャネルから灌注孔1620までのフローを機械的にゲート処理するために、孔ゲート1625によって更に制御することができる。1つ又は複数の孔ゲート1625は、コントローラ1360によって更に制御されていてもよい。いくつかの実施形態においては、複数の灌注孔1620は、単一の孔ゲート1625によって制御することができる。孔ゲート1625は、例えば、数分間ごとに灌注液の5mLを周期的に放出するなどのように、異なるフローレートにおいて灌注液を放出するように更に制御することができる。
【0209】
図17A図17Cは、ソース又はその他のターゲット領域において組織を変更するために凍結エネルギーを供給するように構成された本発明のアブレーションカテーテルの一実施形態の変形を示している。アブレーションカテーテル1700は、スペード1705のボディ内に内蔵された封止されたクーラント層1720を含む。クーラント層1720は、単一クーラントチャンバ1740(図17B)、1つ又は複数のクーラントスプライン1780(図17C)、クーラントチャンバのその他の構成、などであってよい。クーラント層1720は、スペード1705の一部分又はすべてを迅速に冷却するクーラントを保持するように構成される。冷却されたスペード1705は、組織表面に凍結エネルギーを提供するのに有用である。クーラントチャンバ1720は、シャフト1320を通じて延在する1つ又は複数のクーラントチャネルを介してコントローラ1360に結合される。
【0210】
図17Bに示されるスペード1705の横断方向断面図は、この実施形態の2層構造を示しており、この場合に、第1層1710は、接触表面1715内において配置された検知電極1340を保持する。第2層1720は、チャンバ壁1745内において封入されたクーラントチャンバ1740によって定義される。チャンバ壁1745が形成される材料は、クーラントに対する複数回の曝露の後にその封止を保持するための十分な耐久性を有することを要するのみならず、クーラントによって膨張するように十分に薄く且つ柔軟であることを要する。チャンバ1740がしぼんだ際に、組み合わせられた第1及び第2層は、スペード1705がシース1330内に潰れる/折り畳まれることを許容するために、十分に柔軟でなければならない。クーラントチャンバ1740は、シャフト1320を通じて延在するクーラントチャネルに接続される。1つ又は複数のクーラントチャネルは、クーラントチャンバ1740を(図示されていないポンプを介して)チャンバへのクーラントの供給を制御するコントローラ1360と関連する及び/又はこれによって制御されるクーラントリザーバ1750に接続するために、(束1322の一部として)シャフト1320を通じて延在する。クーラントチャンバ1740から接触表面1715への凍結エネルギーの熱伝達を改善するために、熱伝導性材料が、第1層1710内において埋め込まれていてもよく、或いは、その他の方法でその内部に内蔵されていてもよい。
【0211】
図17Cは、第2層1720が、図17Bの単一のクーラントチャンバ1740ではなく、1つ又は複数のクーラントスプライン1780を含む、スペード1705の代替横断方向断面図を示している。検知電極1340は、第1層1710の接触表面1715内において構成される。クーラントスプライン1780は、スプラインに対応する接触表面1715の部分を迅速に冷却するために、クーラントによって充填するように構成される。いくつかの実施形態においては、クーラントスプライン1780は、類似のサイズ及び形状を有することができる。図17Cに示されるように、クーラントスプライン1780は、スペード1705内において長手方向において延在するが、例えば、サイズ及び形状などの異なる構成を使用することができる。コントローラ1360は、治療対象の組織の領域をターゲットとするために凍結エネルギーを選択されたスプラインに別個に供給することができる。例えば、中間の2つのクーラントスプラインは、スペードの中間の第3部分のみを冷却するように、クーラントによって充填することができる。上述のように、第1層1710は、熱伝導性材料を内蔵することができる。
【0212】
図18A及び図18Bは、冷凍アブレーションを実現するための本発明のアブレーションカテーテルの別の実施形態を示している。アブレーションカテーテル1800は、凍結エネルギーを組織表面に供給するために接触表面1815上において配置された検知電極1340及び1つ又は複数の冷凍アブレーションローカス1820を有するスペード1810を有する。
【0213】
図18Bに示される幅方向の断面図は、スペード1810の2層構成を示している。第1層1830は、接触表面1815内において検知電極1340及び冷凍アブレーションローカス1820を支持する。第2層1840は、クーラントチャンバ1850を封入しており、これは、構造において、スペード1705のクーラントチャンバ1740に類似する。冷凍アブレーションローカス1820は、第1層1830を通じて部分的に延在する且つクーラントチャンバ1850に接続するチャネルである。これらのチャネルは、クーラントが装置から放出されないように、接触表面1815において封止される。冷凍アブレーションローカス1820は、クーラントチャンバ1850からのクーラントによって充填されるように構成される。クーラントによって充填された際に、冷凍アブレーションローカス1820に対応する接触表面1815上のエリアは、隣接組織に凍結エネルギーを提供するように迅速に冷却される。いくつかの実施形態においては、冷凍アブレーションローカス1820は、クーラントがクーラントチャンバ1850から冷凍アブレーションローカス1820まで流れることを選択的に許容するためにローカスゲート1825を有する。ローカスゲート1825は、コントローラ1360によって制御することができる。その他の実施形態において、冷凍アブレーションローカス1820は、クーラントチャンバ1850を伴うことなしに、クーラントチャネルに直接的に接続することができる。トレードオフは、クーラントチャンバ1850を有することにより、凍結エネルギーの最大量が増大する、即ち、冷却の速度に影響が及ぶが、スペード1810の厚さが犠牲になる、というものである。1つ又は複数のクーラントチャネルは、クーラントローカス1820を(図示されてはいないポンプを介して)ローカスへのクーラントの供給を制御するコントローラ1360と関連する及び/又はこれによって制御されるクーラントリザーバ1850に接続するために、(束1322の一部として)シャフト1320を通じて延在する。
【0214】
図19は、ターゲティングフィデュシャルが外部エネルギーソースを介した治療を促進するために含まれている本発明のアブレーションカテーテルの更に別の実施形態を示している。アブレーションカテーテル1900は、1つ又は複数の外部アブレーションコンポーネントからのアブレーションエネルギーの供給をガイドするために、スペード1910内において位置決めされた複数のターゲティングフィデュシャル1920を含む。ターゲティングフィデュシャル1920は、当技術分野において既知のようにX線透視法を使用して視覚化することが可能であり、或いは、その他の技法によって検出することができる。この実施形態において、心臓リズム用の治療ターゲットが検出されたら、エネルギーは、X線の外部ソース、又はその他の電磁放射、又はプロトンビームから供給することができる。このようなエネルギーソースは、腫瘍用の放射線療法のために使用されるものに類似し得る。ターゲティングフィデュシャル1920の間の間隔は、連続的な組織病変を保証するために十分に小さい。フィデュシャルは、一緒にターゲットとすることが可能であり、或いは、これらは、センサの象限に対応するサブ領域内においてターゲットとすることもできる。
【0215】
図20は、パーソナルコンピュータ(PC:personal computer)、タブレットPC、パーソナルデジタルアシスタント(PDA:personal digital assistant)、モバイル装置、パームトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、通信装置、制御システム、ウェブアプライアンス、或いは、その機械によって実行されるべきアクションを規定する命令の組を(順番に又はその他の方法で)実行する能力を有する任意のその他の機械などの、様々な装置に内蔵され得る、本発明の方法を実装するべく使用され得るコンピュータシステムを図式的に示す。更には、単一のコンピュータシステム2300が示されるが、「システム」という用語はまた、1つ又は複数の演算機能を実行するべく命令の1つの組又は複数の組を個々に又は協働して実行し得る、システム又はサブシステムの任意の集合体を含むべく、解釈することを要する。
【0216】
図20に示されるように、コンピュータシステム2300は、例えば、中央処理ユニット(CPU:central processing unit)、グラフィクス処理ユニット(GPU:graphics-processing unit)、或いは、これらの両方などの、コンピュータプロセッサ2302を含み得る。コンピュータシステムは、バス2326を介して互いに通信し得る、メインメモリ2304及びスタティックメモリ2306を含み得る。図示されるように、コンピュータシステム2300は、液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、フラットパネルディスプレイ、半導体ディスプレイ、又は陰極線管(CRT:cathode ray tube)などの、ビデオ表示ユニット2310を更に含み得る。これに加えて、コンピュータシステム2300は、キーボードなどの入力装置2312と、マウスなどのカーソル制御装置2314と、を含み得る。また、コンピュータシステム2300は、ドライブユニット2316、スピーカ又は遠隔制御装置などの信号生成装置2322、並びに、ネットワークインターフェイス装置2308を含み得る。
【0217】
いくつかの実施形態において、ドライブユニット2316は、例えば、ソフトウェアなどの、命令の1つ又は複数の組2320が保存される、コンピュータ可読媒体2318を含み得る。ドライブユニット2316は、ディスクドライブ、サムドライブ(USBフラッシュ装置)、或いは、その他のストレージ装置であってよい。更には、命令2320は、本明細書において記述される方法又はロジックの1つ又は複数をも実施することができる。特定の一実施形態において、命令2320は、コンピュータシステム2300による実行の際に、完全に、或いは、少なくとも部分的に、メインメモリ2304、スタティックメモリ2306、及び/又はプロセッサ2302内において存在し得る。また、メインメモリ2304及びプロセッサ2302は、コンピュータ可読媒体をも含み得る。
【0218】
一代替実施形態においては、本明細書において記述される方法のうちの1つ又は複数を実装するべく、アプリケーション固有の集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、プログラム可能なロジックアレイ(PLA:programmable logic array)、及びその他のハードウェア装置などの、専用のハードウェア実装形態を構築することができる。様々な実施形態の装置又はシステムを含み得る用途は、様々な電子及びコンピュータシステムを広範に含み得る。本明細書において記述される1つ又は複数の実施形態は、モジュールの間において且つモジュールを通じて、或いは、用途固有の集積回路の一部分として、伝達され得る、関係する制御及びデータ信号を有する、2つ以上の特定の相互接続されたハードウェアモジュール又は装置を使用することにより、機能を実装することができる。従って、本システムは、ソフトウェア、ファームウェア、及びハードウェア実装形態を包含する。
【0219】
様々な実施形態によれば、本明細書において記述される方法は、プロセッサ可読媒体内において有体的に実施されたソフトウェアプログラムによって実装することができると共に、プロセッサによって実行することができる。更には、例示的な非限定的な実施形態において、実装形態は、分散処理、コンポーネント/オブジェクト分散処理、及びパラレル処理を含み得る。或いは、この代わりに、本明細書において記述される方法又は機能のうちの1つ又は複数を実装するべく、仮想コンピュータシステム処理を構築することもできる。
【0220】
また、コンピュータ可読媒体は、ネットワーク2324に接続された装置が、ネットワーク2324上において、音声、ビデオ、又はデータを伝達し得るように、命令2320を含み、且つ、命令2320を受け取り、且つ、伝播された信号に応答して実行するものと想定される。更には、命令2320は、ネットワークインターフェイス装置2308を介して、ネットワーク2324上において送信又は受信することもできる。
【0221】
以上の内容は、疾病のパーソナライズされたデジタルフェノタイプを生成するためのシステム及び方法の実施形態について記述しており、これらのフェノタイプは、療法をパーソナライズするべく、デジタルタクソノミーと比較される。特定の例示的な実施形態について記述されるが、本発明の相対的に広い範囲を逸脱することなしに、様々な変更及び変形が、これらの実施形態に対して実施され得る、ことが明らかであろう。従って、詳細な説明は、限定の意味において解釈されてはならず、且つ、様々な実施形態の範囲は、添付の請求項によってのみ定義されており、これには、添付の請求項に付与されるものの均等物の全範囲を伴っている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図19
図20
【国際調査報告】