(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】光子計数X線検出器のためのスペクトル・パイルアップ補正
(51)【国際特許分類】
G01T 1/24 20060101AFI20230418BHJP
G01T 1/17 20060101ALI20230418BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20230418BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20230418BHJP
H04N 25/30 20230101ALI20230418BHJP
H04N 25/773 20230101ALI20230418BHJP
【FI】
G01T1/24
G01T1/17 F
A61B6/03 320R
A61B6/00 300S
A61B6/00 333
A61B6/03 373
H04N25/30
H04N25/773
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552131
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 SE2020050230
(87)【国際公開番号】W WO2021177865
(87)【国際公開日】2021-09-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512120638
【氏名又は名称】プリズマティック、センサーズ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】PRISMATIC SENSORS AB
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】カーボンヌ・ディット・レイシェル・ガレンヌ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】グロンベルグ,フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】フレデンベルグ,エリック
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
5C024
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188AA27
2G188BB02
2G188BB15
2G188CC28
2G188CC34
2G188DD05
2G188EE01
2G188EE06
2G188EE07
2G188EE12
2G188EE17
2G188EE36
4C093AA01
4C093AA07
4C093AA22
4C093CA04
4C093CA13
4C093DA06
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4C093EB20
4C093FD09
5C024AX11
5C024CX11
(57)【要約】
エネルギ弁別光子計数検出器におけるパイルアップの影響の補正のための方法及び対応するシステムが提供される。パイルアップを補正すると、検出器の線形性及びスペクトル応答が改善して、光子計数検出器の多くの応用にとって極めて重要である。これらの方法及び対応するシステムは、複雑さが小さく、撮像系統の早期に、可能性としては検出器ファームウェアに直接実装されて、X線イメージング・システムの速度及びデータ処理性能を改善することができる。第一の観点によれば、所定数のエネルギ・ビンに基づいて動作する非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器におけるパイルアップ補正のための方法が提供される。この方法は、所定数のエネルギ・ビンの各々について、当該エネルギ・ビンの検出(された)信号に補正項を加算するステップを含んでおり、前記補正項は、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積であり、二つのパラメータ表示関数の各々が少なくとも一つのパラメータを含んでおり、第一のパラメータ表示関数は、検出信号のエネルギ・ビンにわたる重み付き和に依存し、第二のパラメータ表示関数は、1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける検出信号に依存する。分離可能性を仮定し、且つあらゆる相互相関を無視することにより、パイルアップ補正アルゴリズムのパラメータの数及び複雑さが実質的に減少する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定数のエネルギ・ビンに基づいて動作する非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器(20)におけるパイルアップ補正のための方法であって、所定数のエネルギ・ビンの各々について、当該エネルギ・ビンの検出(された)信号に補正項を加算するステップを含んでおり、前記補正項は、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積であり、該パラメータ表示関数の各々が少なくとも一つのパラメータを含んでおり、第一のパラメータ表示関数は、前記検出信号の前記エネルギ・ビンにわたる重み付き和に依存し、第二のパラメータ表示関数は、1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける前記検出信号に依存する、方法。
【請求項2】
前記第一のパラメータ表示関数は、補正されているピクセル及び/又は深さ区画及び/又はビンに特有の少なくとも一つのパラメータを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二のパラメータ表示関数は、補正されている前記ピクセル及び/又は深さ区画及び/又はビンに特有の少なくとも一つのパラメータを含んでいる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記X線検出器(20)は深さ分割式エッジ・オン検出器であり、前記第二のパラメータ表示関数は、各々の検出器ピクセルの2以上の深さ区画(22)からの1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける前記検出信号及び/又は前記補正後の信号にさらに依存する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記X線検出器(20)は深さ分割式エッジ・オン検出器であり、当該方法は、1又は幾つかの倍率を、各々の検出器ピクセルの2以上の深さ区画(22)からの前記検出信号及び/又は前記補正後の計数率に適用する付加的なステップをさらに含んでおり、前記倍率は前記検出計数率及び/又は前記補正後の計数率に依存し、また前記倍率は、前記深さ区画からの前記信号が組み合わされて一つのピクセルとなるときに、各々の計数率におけるコントラスト対ノイズ比を最適化するように選択される、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の関数は有理関数である、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の関数は指数関数である、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の関数は、全てのビンからの前記信号の線形結合すなわちビンの数の自乗に対応する寸法の行列演算子である、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第一のパラメータ表示関数及び/若しくは前記第二のパラメータ表示関数の前記パラメータ、並びに/又は前記重み付き和の前記パラメータの少なくとも部分集合の較正を行なうステップをさらに含んでいる請求項1から請求項8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一のパラメータ表示関数及び/若しくは前記第二のパラメータ表示関数の前記パラメータ、並びに/又は前記重み付き和の前記パラメータの少なくとも部分集合は、所定範囲の光子率で前記X線検出器を曝射して異なるレベルのパイルアップを生ずることにより決定され且つ/又は較正される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記所定範囲の光子率は、X線管電流を変化させることにより生成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定範囲の光子率は、ビーム経路における所定範囲の物質の組み合わせにより生成される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
任意の計数率においてパイルアップを含まない期待計数率は、低計数率からの補外により決定され、前記パラメータは、前記二つの分離可能なパラメータ表示関数の前記積を反転させることにより解析的に且つ/又は繰り返し的に決定される、請求項10から請求項12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
任意の計数率においてパイルアップを含まない前記期待計数率は、各々の平均光子率における2以上の実現形態にわたる統計により決定され、前記パラメータは、前記二つの分離可能なパラメータ表示関数の前記積を反転させることにより解析的に且つ/又は繰り返し的に決定される、請求項10から請求項12の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
所定数のエネルギ・ビンに基づいて動作する非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器におけるパイルアップ補正のためのシステム(25、30、40、50、200)であって、所定数のエネルギ・ビンの各々について、当該エネルギ・ビンの検出(された)信号に補正項を加算するように構成されており、前記項は、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積であり、該パラメータ表示関数の各々が少なくとも一つのパラメータを含んでおり、第一のパラメータ表示関数は、前記検出信号の前記エネルギ・ビンにわたる和に依存し、第二のパラメータ表示関数は、1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける前記検出信号に依存する、システム(25、30、40、50、200)。
【請求項16】
ハードウェア及び/又はファームウェアにおいて実装される請求項15に記載のシステム(25、30、40、50、200)。
【請求項17】
フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)技術に基づいて実装される請求項15又は請求項16に記載のシステム(25、30、40、50、200)。
【請求項18】
請求項15から請求項17の何れか一項に記載のパイルアップ補正のためのシステム(25、30、40、50、200)を備えたX線撮像のためのシステム(100)。
【請求項19】
計算機式断層写真法用に構成された請求項18に記載のX線イメージング・システム(100)。
【請求項20】
マンモグラフィ用に構成された請求項18に記載のX線イメージング・システム(100)。
【請求項21】
命令を含むコンピュータ・プログラム(225、235)であって、前記命令は、プロセッサ(210)により実行されると、請求項1から請求項14の何れか一項に記載の方法を実行することを前記プロセッサ(210)に行なわせる、コンピュータ・プログラム(225、235)。
【請求項22】
請求項21に記載のコンピュータ・プログラム(225、235)を記憶した非一過性のコンピュータ可読の媒体(220、230)を含むコンピュータ・プログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案される技術は、X線撮像及びX線検出器に関し、さらに具体的には、光子計数X線検出器におけるパルス・パイルアップの補正のための方法及び対応するシステム、X線イメージング・システム、並びに対応するコンピュータ・プログラム及びコンピュータ・プログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮像のような放射線撮像は、医療応用及び非破壊試験において多年にわたり用いられている。
【0003】
通常、X線イメージング・システムは、X線源と、X線検出器システムとを含んでいる。X線源はX線を放出し、X線は被検体又は被撮像体を通過した後に、X線検出器システムによって記録される。幾つかの物質は、他の物質よりも大きい画分のX線を吸収するので、被検体又は物体の画像が形成される。
【0004】
光子計数X線検出器は、幾つかの応用において実行可能な代替手段として登場した。かかる光子計数X線検出器は、原則として各々のX線光子のエネルギを測定することができ、物体の組成についての付加的な情報を与えるので有利である。この情報を用いて、画質を高め、且つ/又は放射線量を減少させることができる。
【0005】
しかしながら、光子計数X線検出器では、電子回路においてパルス幅によって設定される時間枠(所謂不感時間)内に1よりも多い光子が検出器に入射するときに、所謂パルス・パイルアップ(多重追突状態[pileup])が発生する。パイルアップは、2以上の光子が結局単一のパルスしか発生しないことになるため、計数損を招く。パイルアップはまたスペクトル歪みを招く。というのは、不感時間内のパルスが足し合わさってより大きいパルス波高になり、より高いエネルギを有する1個の光子と解釈されたり、パルスが足し合わさってより広いパルスになり、このパルスの尾が第二の低エネルギ・パルスとして検出されたり、次に後続のパルスと共にパイルアップを生じたりし得るからである。放射線画像に対するパイルアップの影響には次のものがある。
・コントラスト対ノイズ比の低下。計数率が高いほど計数損が増大して、放射線学的な目標物のように計数率が異なっている区域同士の間のコントラストが低下するため。
・物質分解画像におけるバイアス。検出器のスペクトル応答が計数率と共に変化し、X線管電流が較正時と異なると、スペクトル応答が較正後のスペクトル応答と異なるものになるため。
・散乱補正のような標準的なX線撮像補正工程、及びピクセル又は深さ区画のビン仕分けのようなデータ整理演算の効率の低下。これらの工程及び演算は典型的には、線形検出器応答を想定しているため。
【0006】
従って、パイルアップの影響の確定的部分を補正する手順を適用することが望ましい。また、このパイルアップ補正手順は、X線イメージング・システムの画像処理系統の早期に、他のあらゆる補正工程(例えば散乱補正)又はデータ整理演算(例えば検出器ピクセル又は深さ区画のビン仕分け)の前に、適用される必要があることは明らかである。
【0007】
光子計数検出器によるパイルアップ応答は主に、麻痺型挙動及び非麻痺型挙動という二つの範疇に分けられ得る[1]。
【0008】
麻痺型検出器は、新たな事象毎にリセットされる不感時間を有しているため、事象発生率が十分に高い場合には不感時間が無限長になる。結果的に、何らかの事象発生率について最大検出計数率に達した後には検出計数率は減少を開始する。故に、事象発生率の関数としての検出計数率は、単射で且つ可逆の関数ではなくなり、失われた計数を補正するのは困難である。
【0009】
一方、非麻痺型検出器は延長不可の(又は幾分延長可能な)不感時間を有しているため、事象計数率の関数としての単調増加(且つ一般に可逆)の検出計数率が得られる。検出計数率は、不感時間の逆数によって決定される最大計数率において平坦部に達する。
【0010】
エネルギ弁別型でない非麻痺型光子計数検出器については、パイルアップによる計数損を高精度で記述する十分に確立されたモデルが利用可能である[1][2]。これらのモデルを反転して(逆写像を求めて)失われた計数の補正を図ることができる。
【0011】
エネルギ弁別型の光子計数検出器については、スペクトル歪み、すなわちエネルギ・ビン同士の間の係数の移行を補償することも必要である。次いで、この補正問題は、特にビン応答関数が、非麻痺型検出器であっても一般に真のビン計数率の単射関数でないため、さらに複雑化する。低エネルギ・ビンについては、比較的高いエネルギのビンでの方がビン計数率の増加よりも早く計数が失われ得るため、最大計数率に達して、より高計数率に向かって下落する。この挙動のせいで、検出計数率と真の計数率との間に一対一写像が存在しなくなるため反転(逆写像)を決定することが困難になる。
【0012】
所謂スペクトル・パイルアップ補正のための一アプローチは、パイルアップ過程を解析的にモデル化するものである[3][4]。モデルを解析的に又は繰り返し的に反転させて、パイルアップの影響を補正することができる。このアプローチの一つの欠点は、多少なりとも詳細なシステムの知識(入射スペクトル及びパルス形状等)が要求され、これらの知識は常に入手可能という訳ではないことである。もう一つのアプローチは、ニューラル・ネットワーク又は機械学習に基づくデータ駆動型方法を用いるものであり[5][6]、この方法は高レベルのシステム知識を何ら必要としない。
【0013】
しかしながら、従来技術の全てのアプローチに共通しているのは高レベルの複雑さであり、解析的方法の場合であればアルゴリズム自体の複雑さであり、データ駆動型方法の場合であればパラメータの数における複雑さである。一般に方法がオフラインであるか、限定された規模であるか、或いは時間的制約もメモリ制約もなく実装されているのであればこの複雑さは問題とはならない。しかしながら、現実の臨床環境での医用イメージング・システムについてはデータの量は膨大で、時間は明らかに問題となる。さらに、アルゴリズムが、他の補正アルゴリズム及びデータ整理演算の前で撮像系統の早期に位置すべき場合には、例えばFPGAでのファームウェア実装が必要となる可能性があり、このためアルゴリズムが利用し得る演算数及びパラメータ数に対して強い制約が加わる。従って、従来技術において利用可能な方法は、医用イメージング・システムでの実用については明らかに最適とは言えない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】[1] Knoll GF. Radiation Detection and Measurement. 3rd ed. John Wiley & Sons; 2000.
【非特許文献2】[2] Gronberg F, Danielsson M, Sjolin M. Count statistics of nonparalyzable photon-counting detectors with nonzero pulse length. Med Phys. 2018;45(8):3800-3811.
【非特許文献3】[3] Sabbatucci L, Fernandez JE. First principles pulse pile-up balance equation and fast deterministic solution. Radiat Phys Chem. 2017;137:12-17.
【非特許文献4】[4] Cammin J, Kappler S, Weidinger T, Taguchi K. Evaluation of models of spectral distortions in photon-counting detectors. J Med Imaging. 2016;3(2).
【非特許文献5】[5] Feng R, Rundle D, Wang G. Neural-networks-based Photon-Counting Data Correction: Pulse Pileup Effect. In: IEEE. ; 2018:1-14.
【非特許文献6】[6] Alvarez RE. Near optimal neural network estimator for spectral x-ray photon counting data with pileup. ArXiv. 2017:1-11.
【非特許文献7】[7] Alvarez RE, Macovski A. Energy-selective reconstructions in X-ray computerized tomography. Phys Med Biol. 1976;21(5):733-744.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
一般的な目的は、光子計数X線検出器に関する改良を提供することである。
【0016】
具体的には、かかるX線検出器におけるパイルアップの影響を補正することが望ましい。パイルアップを補正すると、検出器の線形性及びスペクトル応答が改善する。
【0017】
一つの具体的な目的は、非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器におけるパイルアップ補正のための方法を提供することである。
【0018】
もう一つの目的は、非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器におけるパイルアップ補正のためのシステムを提供することである。
【0019】
さらにもう一つの目的は、パイルアップ補正のためのかかるシステムを備えたX線撮像のためのシステムを提供することである。
【0020】
また、一つの目的は、プロセッサによって実行されるとパイルアップ補正のための方法を実行することをプロセッサに行なわせる命令を含むコンピュータ・プログラムを提供することである。
【0021】
さらにもう一つの目的は、かかるコンピュータ・プログラムを記憶した非一過性のコンピュータ可読の媒体を含むコンピュータ・プログラム製品を提供することである。
【0022】
一つの具体的な目的は、X線イメージング・システムの速度及びデータ処理性能を改善するために、複雑さが小さく、撮像系統の早期に、可能性としては検出器ファームウェアに直接実装され得るスペクトル・パイルアップ補正のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
これらの及び他の目的は、本書に記載される実施形態の少なくとも一つによって達成され得る。
【0024】
第一の観点によれば、所定数のエネルギ・ビンに基づいて動作する非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器におけるパイルアップ補正のための方法が提供される。この方法は、所定数のエネルギ・ビンの各々について、当該エネルギ・ビンの検出(された)信号に補正項を加算するステップを含んでおり、前記補正項は、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積であり、二つのパラメータ表示関数の各々が少なくとも一つのパラメータを含んでおり、第一のパラメータ表示関数は、検出信号のエネルギ・ビンにわたる重み付き和に依存し、第二のパラメータ表示関数は、1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける検出信号に依存する。
【0025】
第二の観点によれば、所定数のエネルギ・ビンに基づいて動作する非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器におけるパイルアップ補正のためのシステムが提供される。このシステムは、所定数のエネルギ・ビンの各々について、当該エネルギ・ビンの検出(された)信号に補正項を加算するように構成されており、前記項は、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積であり、二つのパラメータ表示関数の各々が少なくとも一つのパラメータを含んでおり、第一のパラメータ表示関数は、検出信号のエネルギ・ビンにわたる和に依存し、第二のパラメータ表示関数は、1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける検出信号に依存する。
【0026】
例として述べると、パイルアップ補正のための手順は、このように二つの分離可能な関数に分割されることができ、第一の関数は、非スペクトル信号に本質的に依存し、第二の関数は、非スペクトル信号によって正規化されたスペクトル応答に本質的に依存する。
【0027】
分離可能性を仮定し、且つあらゆる相互相関を無視することにより、パイルアップ補正アルゴリズムのパラメータの数及び複雑さが実質的に減少する。
【0028】
第三の観点によれば、パイルアップ補正のためのかかるシステムを備えたX線撮像のためのシステムが提供される。
【0029】
第四の観点によれば、プロセッサによって実行されると本書に開示される方法を実行することをプロセッサに行なわせる命令を含むコンピュータ・プログラムが提供される。
【0030】
第五の観点によれば、かかるコンピュータ・プログラムを記憶した非一過性のコンピュータ可読の媒体を含むコンピュータ・プログラム製品が提供される。
【0031】
他の利点は詳細な説明を読むと認められよう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
これらの実施形態は、それらのさらなる目的及び利点と共に、以下の記載を添付図面と共に参照することにより最も十分に理解されよう。
【0033】
【
図1】全体的なX線イメージング・システムの一例を示す模式図である。
【
図2】X線イメージング・システムのもう一つの例を示す模式図である。
【
図3】X線イメージング・システムの説明例としてのCTシステムの概略ブロック図である。
【
図4】エネルギ弁別光子計数検出器を実装するための概念的な構造の一例を示す模式図である。
【
図5】実施形態の一例による半導体検出器小モジュールの一例を示す模式図である。
【
図6】実施形態のもう一つの例による半導体検出器小モジュールの一例を示す模式図である。
【
図7】各々の検出器小モジュールが深さ分割式検出器小モジュールであり、ASIC又は対応する回路が、入射するX線の方向から見て検出器素子の下方に配置されているような一組のタイル型検出器小モジュールの一例を示す模式図である。
【
図8A】非麻痺型光子計数検出器におけるパルス検出に対するパイルアップの影響の一例を示す模式図である。
【
図8B】非麻痺型光子計数検出器におけるパルス検出に対するパイルアップの影響の一例を示す模式図である。
【
図8C】非麻痺型光子計数検出器におけるパルス検出に対するパイルアップの影響の一例を示す模式図である。
【
図9A】エネルギ弁別非麻痺型光子計数検出器における多くの光子の検出に対するパイルアップの影響の一例を示す模式図である。
【
図9B】エネルギ弁別非麻痺型光子計数検出器における多くの光子の検出に対するパイルアップの影響の一例を示す模式図である。
【
図10】N個のエネルギ・ビンのパイルアップ補正のための方法の具体的な非限定的例を示す模式的な流れ図である。
【
図11】実施形態によるコンピュータ実装の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に関連して、説明のための全体的なX線イメージング・システムの簡単な概要から始めることが有用であろう。この非限定的な例では、X線イメージング・システム100は基本的には、X線源10と、X線検出器システム20と、付設された画像処理装置30とを含んでいる。一般的には、X線検出器システム20は、X線源10からの放射線であって、物体若しくは被検体、又はこれらの一部を通過し得た放射線を記録するために構成されている。X線検出器システム20は、適当なアナログの処理及び読み出し用電子回路(当該X線検出器システム20と一体化されている場合もある)を介して画像処理システム30に接続可能であり、画像処理システム30による画像処理及び/又は画像再構成を可能にしている。
【0035】
図2は、X線イメージング・システム100の一例を示す模式図であって、X線イメージング・システム100は、X線を放出するX線源10と、物体を通過した後のX線を検出するX線検出器システム20と、X線検出器からの生の電気信号を処理してディジタル化するアナログ処理回路25と、測定データに補正を加える、測定データを一時的に記憶する、又はフィルタ処理を行なう等のようなさらなる処理演算を行ない得るディジタル処理回路40と、処理されたデータを記憶し、またさらなる後処理及び/又は画像再構成を実行し得るコンピュータ50とを含んでいる。
【0036】
検出器全体をX線検出器システム20と見做してもよいし、付設されたアナログ処理回路25と組み合わされたX線検出器システム20と見做してもよい。
【0037】
ディジタル処理回路40及び/又はコンピュータ50を含めたディジタル部分をディジタル画像処理システム30と見做すことができ、この部分がX線検出器からの画像データに基づいて画像再構成を行なう。このように、画像処理システム30は、コンピュータ50と見做されてもよいし、或いはディジタル処理回路40とコンピュータ50との結合システムと見做されてもよいし、或いはディジタル処理回路がさらに画像処理及び/若しくは画像再構成にも特化されている場合には可能性としてディジタル処理回路40自体と見做されてもよい。
【0038】
一般に用いられているX線イメージング・システムの一例が計算機式断層写真法(CT)システムであり、このシステムは、X線のファン・ビーム又はコーン・ビームを発生するX線源と、患者又は物体を透過したX線の部分を記録する対向するX線検出器システムとを含み得る。X線源及び検出器システムは通常、被撮像体を中心として回転するガントリに装着されている。
【0039】
従って、
図1及び
図2に示すX線源10及びX線検出器システム20は、例えばCTガントリに装着可能なCTシステムの部分としてこのように構成され得る。
【0040】
図3は、X線イメージング・システムの説明例としてのCTシステムの概略ブロック図である。CTシステムはコンピュータ50を含んでおり、コンピュータ50は、表示器と、例えばキーボード及びマウスのような何らかの形態の操作者インタフェイスとを有し得る操作者コンソール60を介して操作者から命令及び走査パラメータを受け取る。次いで、操作者が供給した命令及びパラメータはコンピュータ50によって用いられて、X線制御器41、ガントリ制御器42、及びテーブル制御器43に制御信号を与える。具体的には、X線制御器41は電力及びタイミング信号をX線源10に与え、テーブル12に位置した物体又は患者へのX線の放出を制御する。ガントリ制御器42は、X線源10及びエッジ・オン光子計数検出器20を含むガントリ11の回転速度及び位置を制御する。テーブル制御器43は、患者テーブル12の位置及び患者の走査範囲を制御して決定する。また、検出器20を制御し且つ/又は検出器20からデータを受け取るために構成された検出器制御器44も存在している。
【0041】
一実施形態では、コンピュータ50はまた、エッジ・オン光子計数X線検出器から出力される画像データの後処理及び画像再構成を実行する。これにより、コンピュータは
図1及び
図2に示すような画像処理システム30に対応する。付設された表示器は、再構成された画像及びコンピュータからの他のデータを操作者が観察することを可能にする。
【0042】
ガントリ11に配置されたX線源10はX線を放出する。例えばエッジ・オン光子計数検出器の形態のX線検出器20が、患者を通過した後のX線を検出する。エッジ・オン光子計数検出器20は例えば、センサ又は検出器素子とも呼ばれる複数のピクセルと、検出器モジュールに配置されたASICのような付設された処理回路とによって形成され得る。アナログ処理部の少なくとも一部はピクセルにおいて実装され得るが、残りのあらゆる処理部は、例えばASICにおいて実装される。一実施形態では、処理回路(ASIC)はピクセルからのアナログ信号をディジタル化する。処理回路(ASIC)はまた、測定データに補正を加える、測定データを一時的に記憶する、及び/又はフィルタ処理を行なう等のようなさらなる処理演算を行ない得るディジタル処理部を含み得る。X線投影データを取得する走査中に、ガントリ及びガントリに装着された構成要素はアイソセンタを中心として回転する。
【0043】
X線撮像検出器の一つの課題は、物体又は被検体が密度、組成、及び構造に関して描写されるような物体又は被検体の画像に入力を提供するために、検出されたX線から最大の情報を引き出すことである。検出器としてフィルム・スクリーンを用いることは依然一般的であるが、最も一般的には、今日の検出器はディジタル画像を提供する。
【0044】
最新のX線検出器は通常、入射したX線を電子へ変換する必要があり、このことは典型的には、光吸収又はコンプトン相互作用を通じて生じ、結果として生ずる電子は通常、エネルギが失われるまで二次の可視光を生成し、次にこの光が感光物質によって検出される。また、半導体に基づく検出器も存在しており、この場合にはX線によって生成される電子が電子正孔対によって電荷を生じて、これらの対が、印加された電場を通じて収集される。
【0045】
従来のX線検出器はエネルギ積算型であり、従って、検出された信号への各々の検出された光子からの寄与は該光子のエネルギに比例しており、従来のCTでは、単一のエネルギ分布として測定が取得される。従って、従来のCTシステムによって形成される画像は、異なる組織及び物質が所定の範囲の典型的な値を示しているような一定の見掛けを有する。
【0046】
多数のX線からの積算信号を提供するという意味で積算モードで動作する検出器が存在し、信号は、ピクセルにおける入射X線の数の最良の推定を復元するように、後になって初めてディジタル化される。
【0047】
しかしながら、光子計数X線検出器が、幾つかの応用において実行可能な代替手段として登場した。光子計数X線検出器は、原則として各々のX線光子のエネルギを測定することができ、物体の組成についての付加的な情報を与えるので有利である。かかる検出器をエネルギ弁別光子計数検出器と呼び、例えば
図4に概略図示している。この形式のX線検出器では、各々の記録された光子が電流パルスを発生し、この電流パルスが一組の閾値と比較され、これにより所定数の所謂エネルギ・ビンの各々において入射した光子の数を数える。このX線検出器は画像再構成工程において極めて有用である場合があり、画質を高め、且つ/又は放射線量の減少を可能にすることができる。尚、エネルギ弁別光子計数検出器を多重ビン検出器と呼ぶ場合もある。
【0048】
一般的には、エネルギ情報は新たな種類の画像を作成することを可能にし、この画像では新たな情報が利用可能となって、従来の技術に固有の画像アーティファクトを除去することができる。
【0049】
換言すると、エネルギ弁別検出器については、パルス波高が比較器において所定数のプログラム可能な閾値と比較されて、パルス波高に応じて分類されると、分類されたパルス波高はエネルギに比例する。
【0050】
しかしながら、あらゆる(電荷感受型の)増幅器における固有の問題は、増幅器が検出される電流に対して電子ノイズを加えるということである。従って、実際のX線光子の代わりにノイズを検出するのを回避するために、ノイズ値が閾値を上回る回数を十分に少なくしてX線光子の検出を妨げないように、十分に高い最低閾値を設定することが重要である。
【0051】
ノイズ・フロアよりも高い最低閾値を設定することにより、X線イメージング・システムの放射線量を減少させる際に主な障害となる電子ノイズを著しく減少させることができる。
【0052】
(整形)フィルタは、整形時間の値が大きければ、フィルタ後にはX線光子に起因するパルスが長くなり且つノイズ振幅が小さくなるというという一般的な性質を有する。整形時間の値が小さければパルスは短くなり、ノイズ振幅は大きくなる。従って、可能な限り多くのX線光子を数えるためには、ノイズを最小限に抑えて相対的に小さい閾値レベルの利用を図るように、整形時間が大きいことが望まれる。
【0053】
あらゆる光子計数X線検出器におけるもう一つの問題は、所謂パイルアップ問題である。X線光子束率(フラックス・レート)が高いときには、二つの連続する電荷パルスの間を識別するのに問題が生じ得る。上で触れたように、フィルタ後のパルス長は整形時間に依存する。このパルス長が、二つのX線光子誘導電荷パルスの間の時間よりも大きい場合には、これらのパルスは結合して、2個の光子が識別可能でなくなり、1個のパルスとして数えられ得る。このことをパイルアップと呼ぶ。高光子束においてパイルアップを回避する一つの方法は、小さい整形時間を用いることである。
【0054】
吸収効率を高めるために、検出器をエッジ・オンに構成することができ、この場合には吸収深さは任意の長さに選択されることができ、且つ検出器は依然として、極めて高い電圧に至ることなく完全空乏化し得る。
【0055】
このように、エッジ・オンは光子計数検出器の特別な非限定的設計であり、X線検出器素子又はピクセルのようなX線センサが、入射するX線に対してエッジ・オン(垂直)に配向され得る。
【0056】
例えば、かかるエッジ・オン光子計数検出器は、少なくとも二つの方向にピクセルを有することができ、エッジ・オン光子計数検出器の方向の一つはX線の方向の成分を有する。かかるエッジ・オン光子計数検出器を深さ分割式(depth-segmented)光子計数検出器とも呼び、入射するX線の方向に2以上の深さ区画のピクセルが設けられる。
【0057】
代替的には、ピクセルは、入射するX線の方向に実質的に直交する方向にアレイ(非深さ分割式)として配列されることもでき、ピクセルの各々が、入射するX線に対してエッジ・オンに配向され得る。換言すると、この光子計数検出器は、入射するX線に対して依然エッジ・オンに配列されつつ、非深さ分割式であると言える。
【0058】
図5は、実施形態の一例によるエッジ・オン検出器小モジュールの一例を示す模式図である。同図は、センサ部が検出器素子又はピクセルに分割されている検出器小モジュールの一例であって、各々の検出器素子(又はピクセル)は、電荷収集電極を主要構成要素として有するダイオードに基づくのが通例である。X線は半導体センサのエッジを通して入射する。
【0059】
図6は、実施形態のもう一つの例によるエッジ・オン検出器小モジュールの一例を示す模式図である。この例では、半導体センサ部は、所謂深さ区画として深さ方向にさらに分割されており、この場合にもX線はエッジを通して入射するものと想定する。
【0060】
通常、検出器素子は、検出器の個別のX線感受性小素子である。一般的には、光子相互作用は検出器素子において生じ、このようにして発生された電荷が検出器素子の対応する電極によって収集される。
【0061】
各々の検出器素子は典型的には、入射X線束を一連のフレームとして測定する。一つのフレームは、フレーム時間と呼ばれる所定の時間区間での測定データである。
【0062】
検出器の位相学的形態に依存して、特に検出器がフラット・パネル型の検出器であるときには検出器素子がピクセルに対応し得る。深さ分割式検出器は、所定数の検出器ストリップを有し、各々のストリップが所定数の深さ区画を有すると見做され得る。かかる深さ分割式検出器の場合には、特に深さ区画の各々に自身の個別の電荷収集電極が付設されている場合には各々の深さ区画を個別の検出器素子と見做すことができる。
【0063】
深さ分割式検出器の検出器ストリップは通例は、普通のフラット・パネル型検出器のピクセルに対応し、従って、ピクセル・ストリップとも呼ばれる。しかしながら、深さ分割式検出器を三次元ピクセル・アレイと見做すことも可能であり、この場合には、各々のピクセル(ボクセルとも呼ぶ)が個々の深さ区画/検出器素子に対応する。
【0064】
センサは、半導体センサが、電気的配線のための基材として、また好ましくは所謂フリップ・チップ手法を通じて取り付けられる所定数の特定応用向け集積回路(ASIC)のための基材として用いられるという意味で、所謂マルチ・チップ・モジュール(MCM)として実装され得る。配線は、各々のピクセル又は検出器素子からASIC入力までの信号のための接続、及びASICから外部のメモリ及び/又はディジタル・データ処理までの接続を含む。ASICへの電力は、これらの接続における大電流のために必要とされる断面増を考慮に入れた同様の配線を通じて提供され得るが、電力は別個の接続を通じて提供されてもよい。
【0065】
図7は、一組のタイル型検出器小モジュールの一例を示す模式図であり、各々の検出器小モジュールが深さ分割式検出器小モジュールであり、ASIC又は対応する回路24は、検出器素子22同士の間の空間での検出器素子22からASIC23までの配線経路を考慮して、入射するX線の方向から見て検出器素子22の下方に配置されている。
【0066】
上で触れたように、パイルアップは光子計数X線検出器に関連する一般的な問題であり、放射線画像に極度に影響する。パイルアップは、光子計数検出器において、電子回路のパルス幅によって設定される時間枠(所謂不感時間)内に1よりも多い光子が検出器に入射するときに生ずる。パイルアップは、幾つかの光子が単一のパルスしか発生しないため計数損を招く。パイルアップはまたスペクトル歪みを招く。というのは、不感時間内のパルスが足し合わさってより大きいパルス波高になり、より高いエネルギを有する1個の光子と解釈されたり、パルスが足し合わさってより広いパルスになり、このパルスの尾が第二の低エネルギ・パルスとして検出されたりし得るからである。
【0067】
図8(A)から
図8(C)は、非麻痺型光子計数検出器におけるパルス検出に対するパイルアップの影響の一例を示す模式図である。2個の光子が別々の不感時間枠に検出器において相互作用するときには、パイルアップは生じない。同じ不感時間枠内で時間的に近接して相互作用する2個の光子は、より高いパルス波高の単一のパルスと計数される。時間的にさらに僅かに離隔しているが依然同じ不感時間枠内で相互作用する2個の光子は2個数を発生し、1個は重なり合ったより高いパルス波高からとなり、もう1個は後続の不感時間内まで延在する第二のパルスの尾部からとなる。
【0068】
図9(A)及び
図9(B)は、エネルギ弁別非麻痺型光子計数検出器における多くの光子の検出に対するパイルアップの影響の一例を示す模式図である。計数損が全エネルギ・ビンの和について生じており、この計数損はまた非エネルギ弁別検出器における影響にも対応している。検出計数率は単調増加関数であり、横這い状態に達すると不感時間枠当たり1個数が記録される。ビン・レベルでは、スペクトル歪みが生じ、計数がビン同士の間で移行する。検出パルス波高は、パルスが互いの上に積み上げられるにつれて上下に押され、また同時に、より低い波高のパルス尾部が検出される。一般的には、前者の影響の方が強く、高エネルギ・ビンは、検出計数率が入射光子率(photon rate)に対して線形よりも速く増大するような個数を得る傾向にある一方で、低エネルギ・ビン及び中エネルギ・ビンは、検出計数率が最大に達した後には、入射光子率と共に下降するように計数を失う。
【0069】
「背景技術」で議論したように、従来利用可能なスペクトル・パイルアップ補正のための方法は、医用イメージング・システムでの実用については明らかに最適でない。
【0070】
第一の観点によれば、提案される技術は、所定数のエネルギ・ビンに基づいて動作する非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器におけるパイルアップ補正のための方法を提供する。この方法は基本的には、所定数のエネルギ・ビンの各々について、当該エネルギ・ビンの検出(された)信号に補正項を加算するステップを含んでいる。この補正項は、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積であり、二つのパラメータ表示関数の各々が少なくとも一つのパラメータを含んでおり、
第一のパラメータ表示関数は、検出信号のエネルギ・ビンにわたる重み付き和に依存し、
第二のパラメータ表示関数は、1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける検出信号に依存する。
【0071】
このように、この新規のパイルアップ手順は、所定数のエネルギ・ビンの各々について、検出信号を提供すること、及びそれぞれのエネルギ・ビンの検出信号への補正項の加算に基づき得る。
【0072】
例として述べると、第一のパラメータ表示関数は、補正されているピクセル及び/又は深さ区画及び/又はビンに特有の少なくとも一つのパラメータを含み得る。
【0073】
同様に、第二のパラメータ表示関数は、補正されているピクセル及び/又は深さ区画及び/又はビンに特有の少なくとも一つのパラメータを含み得る。
【0074】
一具体例では、X線検出器は深さ分割式エッジ・オン検出器であって、第二のパラメータ表示関数はさらに、各々の検出器ピクセルの2以上の深さ区画からの1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける検出信号及び/又は補正後の信号に依存する。
【0075】
例えば、X線検出器は深さ分割式エッジ・オン検出器であって、次いで、この方法はさらに、1又は幾つかの倍率を、各々の検出器ピクセルの2以上の深さ区画からの検出信号及び/又は補正後の計数率に適用する付加的なステップを含んでおり、前記倍率は検出計数率及び/又は補正後の計数率に依存し、また前記倍率は、前記深さ区画からの信号が組み合わされて一つのピクセル信号となるときに、各々の計数率におけるコントラスト対ノイズ比を最適化するように選択される。
【0076】
選択随意で、第一の関数は、例えば有理関数であってよい。代替的には、第一の関数は、例えば指数関数であってよい。
【0077】
選択随意で、第二の関数は、全てのビンからの信号の線形結合すなわちビンの数の自乗に対応する寸法の行列演算子であってよい。
【0078】
一具体例では、方法はさらに、第一のパラメータ表示関数及び/若しくは第二のパラメータ表示関数のパラメータ、並びに/又は重み付き和のパラメータの少なくとも部分集合の較正を行なうステップを含んでいる。
【0079】
例として述べると、第一のパラメータ表示関数及び/若しくは第二のパラメータ表示関数のパラメータ、並びに/又は重み付き和のパラメータの少なくとも部分集合は、所定範囲の光子率でX線検出器を曝射して異なるレベルのパイルアップを生ずることにより決定され且つ/又は較正され得る。
【0080】
例えば、所定範囲の光子率は、X線管電流を変化させることにより生成され得る。
【0081】
代替的には、所定範囲の光子率は、ビーム経路における所定範囲の物質の組み合わせによって生成され得る。
【0082】
一例として、任意の計数率においてパイルアップを含まない期待計数率は、低計数率からの補外によって決定されることができ、パラメータは、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積を反転させることにより解析的に且つ/又は繰り返し的に決定され得る。
【0083】
もう一つの例では、任意の計数率においてパイルアップを含まない期待計数率は、各々の平均光子率における2以上の実現形態にわたる統計によって決定されることができ、パラメータは、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積を反転させることにより解析的に且つ/又は繰り返し的に決定され得る。
【0084】
換言すると、提案される技術は、各々の考察されるエネルギ・ビン毎に別個に補正項を加算することに基づくパイルアップの影響の補正のための手順に関する。
【0085】
さらに分かりやすくするために、以下、非限定的な例に関して、提案される技術を説明する。
【0086】
提案される発明が従来技術を凌ぐ主な利点は、アルゴリズム及び/又は計算の複雑さを、例えばパラメータの数及び計算負荷に関して低レベルにして、スペクトル・パイルアップを補正する能力である。
【0087】
例として述べると、この利点は、手順/アルゴリズムを二つの分離可能な関数に分割することにより得ることができ、第一の関数は検出信号のエネルギ・ビンにわたる重み付き和又は重みなし和すなわち本質的に非スペクトル信号に依存し、第二の部分はエネルギ・ビンにおける信号の分布すなわち本質的に非スペクトル信号によって正規化されたスペクトル応答の分布に依存する。
【0088】
例えば、総数N個のエネルギ・ビンからのエネルギ・ビンiにおける検出信号S
iについてエネルギ弁別光子計数検出器を考える。検出信号S
iは、エネルギ区間E
i≦E<E
i+1における検出されたX線光子の数に緊密に関係しており、ここでE
i及びE
i+1はエネルギ・ビンを画定する下限閾値エネルギ及び上限閾値エネルギである。すると、パイルアップ補正後の信号を次式のように定義することが可能である。
【数1】
N×1ベクトルSはビン応答すなわちエネルギ・ビン当たりの検出信号であり、Aはパラメータの1×Nベクトルである。ドット積A・Sから、入力計数率の可逆(一対一)関数であるスカラS
wが得られる。関数αは一組のK個のパラメータa
i=[a
i,1…a
i,K]を有し、関数βは一組のL個のパラメータb
i=[b
i,1…b
i,L]を有する。関数のパラメータ・セットa
i及びb
iはエネルギ・ビン番号iに依存し得るが、関数α及びβは他については全てのN個のエネルギ・ビンにわたり同一であり、両者ともエネルギ・ビン当たり一つのスカラを与える。
【0089】
式(1)の背景となる原理は、α(Sw)が平均的な挙動を補正する一方、β(S,Sw)が平均を中心としたばらつきを補正するということである。これら二つの現象が分離可能であると仮定することにより、あらゆる相互相関を無視すると、パラメータの数及びパイルアップ補正アルゴリズムの複雑さが実質的に小さくなる。複雑さが小さくなると、ファームウェアの実装を強力に助け、画像処理系統の早期段階でのデータ整理が可能となり、これによりX線イメージング・システムの速度及びデータ処理性能を改善する。
【0090】
一つの考え得るシナリオは、何らかのAについての非スペクトル信号Swは真の計数率の単射(一対一)関数であるので、関数αがビン当たりの計数損を補償するというものである。同じシナリオにおいて、関数βは代わりにエネルギ・ビン同士の間での相関すなわち計数の移行を扱い、この相関は、計数率に実質的に独立である。
【0091】
検出器ピクセルに深さ区画が設けられている場合には、幾つかの区画が、最上層での吸収のため且つ/又は各層の吸収長さの選択のため、相対的に低い計数率を観測する場合がある。各深さ区画においてより低い計数率で検出されるスペクトルは一般的には、「真の」スペクトルすなわちパイルアップがなければ検出された筈のスペクトルにより近い。式(1)を、総数でN個のエネルギ・ビン及びM個の深さ区画を有する検出器のビンi及び区画jでの信号に一般化すれば、上述の事実を関数βによって利用して、エネルギ・ビン同士の間の計数の移行を補正することができる。
【数2】
式(2)では、N×M行列Sは区画依存型のビン応答であり、すなわちエネルギ・ビン及び深さ区画当たりの検出信号であり、S
jは区画jについてのビン応答であり、A
jは区画jについてのパラメータの1×Nベクトルである。関数α
j及びβ
j、並びに関数パラメータ・セット
【数3】
は深さ区画に依存し得る。但し、関数α
j及びβ
jは、何らかの深さ区画jについては一定であり得るが、パラメータ・セット
【数4】
はエネルギ・ビン番号iに依存し得る。
【0092】
深さ区画同士の間での計数率の差を利用するもう一つの方法は、計数率に応じた各層の重み付けであってコントラスト対ノイズ比の観点から最適となり得る重み付けであり、すなわち低計数の層は計数率が高いほど大きい重みを割り当てられる。式(1)及び式(2)によって定義されるパイルアップ補正アルゴリズムは区画重み付けに一般化され、式(1)のSが既に区画重み付きビン応答
【数5】
となっているか、或いはSが区画の関数であり、重み付けがパイルアップ補正後の補正済みビン応答
【数6】
に適用されているすなわち
【数7】
となっているか、の何れかとなる。
【0093】
図10は、総数でM個の深さ区画を有する検出器における深さ区画jでのN個のエネルギ・ビンのパイルアップ補正のための方法の具体的な非限定的例を示す模式的な流れ図である。細い矢印は、様々なステップの間でのスカラの伝達を示し、太線はベクトルすなわち多数のスカラを示す。同様に、太字記号はベクトルを示し、太字でない記号はスカラを示す。方法の各々のステップが、N=8個のエネルギ・ビン及び典型的なパイルアップ・レベルの例についてのプロットによって示されている。検出信号(S
j)が示されており、エネルギ・ビン当たりの「真の」信号すなわちパイルアップがなければ検出された筈の信号と比較されている。また、加算的計数補正、すなわち関数α及びβの積は、正値と負値との間を変化する係数として示されている。というのは、個数はエネルギ・ビンに依存して加算されたり減算されたりするからである。また、エネルギ・ビン当たりの補正後の信号
【数8】
が示されており、エネルギ・ビン当たりの「真の」信号と比較されている。この例では、補正後の信号と「真の」信号との間の対応が優れている。
【0094】
関数α及びβに固有のパラメータ・セットa及びbは、エネルギ・ビンと共に変化し得る。なぜなら、異なるエネルギ・ビンはパイルアップの影響に対して異なる応答を有するからである。具体的には、パイルアップは、パルスが互いの上に積み上げられるにつれて検出パルス波高を上下に押す傾向にあり、また同時に、より低い波高のパルス尾部が検出される。一般的には、前者の影響の方が強く、高エネルギ・ビンはパイルアップが進むにつれて低エネルギ・ビンを代償としてより多くの計数を収集する傾向にある。さらに、パラメータ・セットa及びb、並びにベクトルAのパラメータは、検出器の非一様性のため、ピクセル及び/又は深さ区画と共に変化し得る。
【0095】
関数α及びβに固有のパラメータ・セットa及びb、並びにベクトルAは完全に又は部分的に、理論的には検出器の既知の特性に基づいて決定され得る。それでも、パラメータの少なくとも部分集合は、較正手順によって優先的に決定されるのが適当である。較正手順は、例えば検出器が当該検出器に所定範囲の計数率を生ずる範囲のX線光子率に曝露されるように、設定され得る。この範囲の光子率は、X線管を様々な管電流において動作させ、且つ/又はビームに濾波物質を様々な厚みで導入することにより生成され得る。このシナリオでは、エネルギ・ビン当たりの「真の」信号すなわちパイルアップがなければ検出された筈の信号を、管電流による線形性、並びに/又は管電流及び物質厚みについての他の任意の既知の関数を仮定して、低計数率で検出された信号を補外することにより、推定することができる。「真の」計数率を決定するもう一つの選択肢は、各々の平均光子率における幾つかの実現形態にわたる統計、例えば分散を、統計が計数損と共に如何に変化してパイルアップに到るかについての文献[2]に記載された関係のような既知の関数を用いて測定するものである。一旦、「真の」計数率が既知となったら、式(1)及び/又は式(2)を、任意の周知の最適化方法を用いて解析的に又は繰り返し的にの何れかで反転させることにより、パラメータ・セットを決定することができる。
【0096】
補正後の検出器応答
【数9】
は、撮像系統を通じて最終画像まで伝播し続け得る。エネルギ弁別光子計数検出器については、撮像系統の主な段階は、検出器信号を2以上の物質基底に伝達する物質分解であり得る[7]。物質基底を組み合わせて、体内の何らかの物質を強調したり、全体的なコントラスト対ノイズ比を最大化したりすることができる。CTシステムの場合には、撮像系統のもう一つの主な段階は、フィルタ補正逆投影又は繰り返し式再構成のような方法を用いた所定範囲のビュー角度での投影からの画像の再構成である。
【0097】
本書に記載された方法及び装置は、多様な方法で組み合わされ、また再編成され得ることが認められよう。
【0098】
例えば、具体的な関数は、ハードウェアとして、若しくは適当な処理回路による実行のためのソフトウェアとして、又はこれらの組み合わせで実装され得る。
【0099】
本書に記載されるステップ、関数、手続き、モジュール、及び/又はブロックは、汎用電子回路及び特定応用向け回路の両方を含めた半導体技術、個別回路技術、又は集積回路技術のような任意の従来の技術を用いたハードウェアにおいて実装され得る。
【0100】
具体例としては、1又は複数の適当に構成されたディジタル信号プロセッサ及び他の公知の電子回路、例えば特殊化された作用を果たすために相互接続された個別論理ゲート、又は特定応用向け集積回路(ASIC)がある。
【0101】
代替的には、本書に記載されているステップ、関数、手続き、モジュール、及び/又はブロックの少なくとも幾つかは、1又は複数のプロセッサ又は処理ユニットのような適当な処理回路による実行のためのコンピュータ・プログラムのようなソフトウェアにおいて実装され得る。
【0102】
処理回路の例としては、限定しないが、1若しくは複数のマイクロプロセッサ、1若しくは複数のディジタル信号プロセッサ(DSP)、1若しくは複数の中央処理ユニット(CPU)、ビデオ・アクセラレーション・ハードウェア、及び/又は1若しくは複数のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)や1若しくは複数のプログラマブル論理制御器(PLC)のような任意の適当なプログラム可能な論理回路がある。
【0103】
例として述べると、FPGAにパイルアップ補正手順/アルゴリズムを実装することが可能である。
【0104】
また、任意の従来の装置又はユニットの一般的な処理能力を再利用し、ここに提案される技術を実装することが可能であり得ることも理解されたい。また、例えば既存のソフトウェアの再プログラミング又は新たなソフトウェア構成要素の追加によって、既存のソフトウェアを再利用することも可能であり得る。
【0105】
具体的な一観点によれば、所定数のエネルギ・ビンに基づいて動作する非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器におけるパイルアップ補正のためのシステムが提供される。このシステムは、所定数のエネルギ・ビンの各々について、当該エネルギ・ビンの検出(された)信号に補正項を加算するように構成されており、前記補正項は、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積であり、二つのパラメータ表示関数の各々が少なくとも一つのパラメータを含んでおり、第一のパラメータ表示関数は、検出信号のエネルギ・ビンにわたる和に依存し、第二のパラメータ表示関数は、1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける検出信号に依存する。
【0106】
例として述べると、このシステムは、ハードウェア及び/又はファームウェアにおいて実装され得る。
【0107】
例えば、このシステムは、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)技術に基づいて実装され得る。
【0108】
もう一つの観点によれば、前述のように、本書に記載されているようなパイルアップ補正のためのシステムを備えたX線撮像のためのシステムが提供される。
【0109】
例として述べると、X線イメージング・システムは計算機式断層写真法用に構成され得る。
【0110】
もう一つの例として、X線イメージング・システムはマンモグラフィ用に構成され得る。
【0111】
図19は、一実施形態によるコンピュータ実装の一例を示す模式図である。この具体例では、システム200はプロセッサ210とメモリ220とを含んでおり、メモリはプロセッサによって実行可能な命令を含んでおり、これによりプロセッサは、本書に記載されているステップ及び/又は動作を実行するように動作する。命令は典型的には、コンピュータ・プログラム225、235として編成され、これらのプログラムは、メモリ220に予め構成されていてもよいし、外部メモリ装置230からダウンロードされてもよい。選択随意で、システム200は入出力インタフェイス240を含んでおり、インタフェイス240は、プロセッサ210及び/又はメモリ220と相互接続されて、入力パラメータ及び/又は結果として得られる出力パラメータのような関連データの入出力を可能にし得る。
【0112】
「プロセッサ」との用語は、特定の処理を実行するようにプログラム・コード若しくはコンピュータ・プログラム命令を実行すること、又はタスクを決定する若しくは計算することを可能にする任意のシステム又は装置という一般的な意味で解釈されるものとする。
【0113】
このように、1又は複数のプロセッサを含む処理回路は、コンピュータ・プログラムを実行すると、本書に記載されているもののような明確に定義された処理タスクを行なうように構成されている。
【0114】
処理回路は、上述のステップ、関数、手続き、及び/又はブロックを実行するのみの専用でなくてもよく、他のタスクを実行してもよい。
【0115】
具体的には、提案される技術はまた、プロセッサによって実行されると、本書に記載されているようなパイルアップ補正のための方法を実行することをプロセッサに行なわせる命令を含むコンピュータ・プログラムを提供する。
【0116】
提案される技術はまた、かかるコンピュータ・プログラムを記憶した非一過性のコンピュータ可読の媒体220、230を含むコンピュータ・プログラム製品を提供する。
【0117】
例として述べると、ソフトウェア又はコンピュータ・プログラム225、235はコンピュータ・プログラム製品として実現されることができ、これらの製品は通常、コンピュータ可読の媒体220、230、具体的には不揮発性媒体に担持され又は記憶される。コンピュータ可読の媒体は、限定しないが読み出し専用メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、コンパクト・ディスク(CD)、ディジタル汎用ディスク(DVD)、ブルーレイ・ディスク、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)メモリ、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)記憶装置、フラッシュ・メモリ、磁気テープ、又は他の任意の従来のメモリ装置を含めた1又は複数の着脱型又は非着脱型のメモリ装置を含み得る。このように、コンピュータ・プログラムはコンピュータの動作するメモリの内部に読み込まれてもよいし、コンピュータの処理回路による実行のために同等の処理装置に読み込まれてもよい。
【0118】
方法のフローは、1又は複数のプロセッサによって実行されるとコンピュータ動作フローとして見做され得る。対応するデバイス、システム、及び/又は装置は一群の機能モジュールとして定義されることができ、プロセッサによって実行される各々のステップが、機能モジュールに対応する。この場合には、機能モジュールはプロセッサで実行されるコンピュータ・プログラムとして実装される。故に、デバイス、システム、及び/又は装置は代替的には、一群の機能モジュールとして定義されてよく、これらの機能モジュールは、少なくとも一つのプロセッサで実行されるコンピュータ・プログラムとして実装される。
【0119】
このように、メモリに常駐するコンピュータ・プログラムは、プロセッサによって実行されると、本書に記載されているステップ及び/又はタスクの少なくとも部分を実行するように構成されている適当な機能モジュールとして編成され得る。
【0120】
代替的には、主にハードウェア・モジュールによって、又は代替的にはハードウェアによって、モジュールを実現することが可能である。ソフトウェア対ハードウェアの範囲は単に実装の選択による。
【0121】
以上に記載された実施形態は、単に例として掲げられており、提案される技術はこれらの実施形態に限定されないことを理解されたい。当業者は、特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲から逸脱することなく各実施形態に様々な改変、組み合わせ、及び変形を施し得ることが理解されよう。具体的には、異なる実施形態の異なる部分の解を、技術的に可能であれば他の構成と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0122】
22 検出器素子
23 ASIC又は対応する回路
24 ASIC
100 X線イメージング・システム
230 外部メモリ装置
【手続補正書】
【提出日】2022-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定数のエネルギ・ビンに基づいて動作する非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器(20)におけるパイルアップ補正のための方法であって、所定数のエネルギ・ビンの各々について、当該エネルギ・ビンの検出(された)信号に補正項を加算するステップを含んでおり、前記補正項は、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積であり、該パラメータ表示関数の各々が少なくとも一つのパラメータを含んでおり、第一のパラメータ表示関数は、前記検出信号の前記エネルギ・ビンにわたる重み付き和に依存し、第二のパラメータ表示関数は、1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける前記検出信号に依存する、方法。
【請求項2】
前記第一のパラメータ表示関数は、補正されているピクセル及び/又は深さ区画及び/又はビンに特有の少なくとも一つのパラメータを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二のパラメータ表示関数は、補正されている前記ピクセル及び/又は深さ区画及び/又はビンに特有の少なくとも一つのパラメータを含んでいる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記X線検出器(20)は深さ分割式エッジ・オン検出器であり、前記第二のパラメータ表示関数は、各々の検出器ピクセルの2以上の深さ区画(22)からの1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける前記検出信号及び/又は前記補正後の信号にさらに依存する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記X線検出器(20)は深さ分割式エッジ・オン検出器であり、当該方法は、1又は幾つかの倍率を、各々の検出器ピクセルの2以上の深さ区画(22)からの前記検出信号及び/又は前記補正後の計数率に適用する付加的なステップをさらに含んでおり、前記倍率は前記検出計数率及び/又は前記補正後の計数率に依存し、また前記倍率は、前記深さ区画からの前記信号が組み合わされて一つのピクセルとなるときに、各々の計数率におけるコントラスト対ノイズ比を最適化するように選択される、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の関数は、有理関数又は指数関数である、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第二の関数は、全てのビンからの前記信号の線形結合すなわちビンの数の自乗に対応する寸法の行列演算子である、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一のパラメータ表示関数及び/若しくは前記第二のパラメータ表示関数の前記パラメータ、並びに/又は前記重み付き和の前記パラメータの少なくとも部分集合の較正を行なうステップをさらに含んでいる請求項1から請求項7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第一のパラメータ表示関数及び/若しくは前記第二のパラメータ表示関数の前記パラメータ、並びに/又は前記重み付き和の前記パラメータの少なくとも部分集合は、所定範囲の光子率で前記X線検出器を曝射して異なるレベルのパイルアップを生ずることにより決定され且つ/又は較正される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定範囲の光子率は、X線管電流を変化させることにより生成されるか、又はビーム経路における所定範囲の物質の組み合わせにより生成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
任意の計数率においてパイルアップを含まない期待計数率は、低計数率からの補外により決定され、前記パラメータは、前記二つの分離可能なパラメータ表示関数の前記積を反転させることにより解析的に且つ/又は繰り返し的に決定される、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
任意の計数率においてパイルアップを含まない前記期待計数率は、各々の平均光子率における2以上の実現形態にわたる統計により決定され、前記パラメータは、前記二つの分離可能なパラメータ表示関数の前記積を反転させることにより解析的に且つ/又は繰り返し的に決定される、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項13】
所定数のエネルギ・ビンに基づいて動作する非麻痺型エネルギ弁別光子計数X線検出器におけるパイルアップ補正のためのシステム(25、30、40、50、200)であって、所定数のエネルギ・ビンの各々について、当該エネルギ・ビンの検出(された)信号に補正項を加算するように構成されており、前記項は、二つの分離可能なパラメータ表示関数の積であり、該パラメータ表示関数の各々が少なくとも一つのパラメータを含んでおり、第一のパラメータ表示関数は、前記検出信号の前記エネルギ・ビンにわたる和に依存し、第二のパラメータ表示関数は、1又は幾つかのエネルギ・ビンにおける前記検出信号に依存する、システム(25、30、40、50、200)
【請求項14】
ハードウェア及び/又はファームウェアにおいて実装される請求項13に記載のシステム(25、30、40、50、200)。
【請求項15】
フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)技術に基づいて実装される請求項13又は請求項14に記載のシステム(25、30、40、50、200)。
【請求項16】
請求項13から請求項15の何れか一項に記載のパイルアップ補正のためのシステム(25、30、40、50、200)を備えたX線撮像のためのシステム(100)。
【請求項17】
計算機式断層写真法用に構成された請求項16に記載のX線イメージング・システム(100)。
【請求項18】
マンモグラフィ用に構成された請求項17に記載のX線イメージング・システム(100)。
【請求項19】
命令を含むコンピュータ・プログラム(225、235)であって、前記命令は、プロセッサ(210)により実行されると、請求項1から請求項12の何れか一項に記載の方法を実行することを前記プロセッサ(210)に行なわせる、コンピュータ・プログラム(225、235)。
【請求項20】
請求項19に記載のコンピュータ・プログラム(225、235)を記憶した非一過性のコンピュータ可読の媒体(220、230)を含むコンピュータ・プログラム製品。
【国際調査報告】