(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】液体及び層状シリケートの存在下での金属物体の精製
(51)【国際特許分類】
C23G 1/00 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
C23G1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552952
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2021055261
(87)【国際公開番号】W WO2021175891
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウド・ホフマン
【テーマコード(参考)】
4K053
【Fターム(参考)】
4K053PA01
4K053PA02
4K053PA03
4K053PA06
4K053PA07
4K053PA08
4K053PA10
4K053QA01
4K053QA04
4K053RA08
4K053RA27
4K053SA04
4K053SA06
4K053SA07
4K053SA12
4K053YA02
4K053YA03
(57)【要約】
本発明は、金属物体の精製のための方法であって、液体及び層状シリケート成分の存在下での油吸着工程を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属物体の精製の方法であって、
- 液体、及び
- 層状シリケート成分
の存在下での油吸着工程を含む、方法。
【請求項2】
液体が水を含む、好ましくは水からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
層状シリケート成分が、モンモリロナイトを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
界面活性剤の非存在下で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
4から10.6、好ましくは5から9のpHで行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
10℃から50℃、好ましくは20℃から40℃の温度で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
浸漬若しくはバレル装置、回転ドラム洗浄装置、スプリンクラー装置及び/又はスプレー装置で行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
研磨材を使用する研磨工程を更に含み、両工程が別々に、又は同時に、好ましくは同時に行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
油吸着工程の上澄み液が、研磨工程に部分的に移送される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1つ又は複数のその後の洗浄工程を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
スラリーが、油吸着工程に少なくとも部分的に移送される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
研磨材が、酸化アルミニウム、好ましくはコランダムを含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
層状シリケート成分及び研磨材が、酸化アルミニウムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
層状シリケート成分が、二酸化ケイ素及び二酸化アルミニウムを含み、好ましくは、層状シリケート成分において、二酸化ケイ素及び二酸化アルミニウムが、層状シリケート成分の総質量に対して、合わせて85質量%以上、好ましくは87質量%以上、より好ましくは89質量%以上、更により好ましくは91質量%以上、最も好ましくは93質量%以上である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
- 層状シリケート成分が、液体、層状シリケート成分、及び研磨材の合計質量に対して、10質量%から40質量%の範囲、好ましくは14質量%から35質量%の範囲、より好ましくは18質量%から31質量%の範囲、更により好ましくは21質量%から28質量%の範囲、最も好ましくは23質量%から26質量%の範囲の総量を有し、
並びに/又は
- 研磨材が、液体、層状シリケート成分、及び研磨材の合計質量に対して、0.5質量%から15質量%の範囲、好ましくは1質量%から12質量%の範囲、より好ましくは2質量%から10質量%の範囲、更により好ましくは3質量%から8質量%の範囲、最も好ましくは4質量%から6質量%の範囲の総量を有する、
請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
金属物体の精製のための方法であって、方法が、
- 液体、及び
- 層状シリケート成分
の存在下での油吸着工程を含み、
- 方法を、界面活性剤の非存在下で行い、
- 層状シリケート成分及び液体が、それぞれ質量を基準にして、0.05:1から0.6:1の比率を有する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属物体の精製のための方法であって、
- 液体、及び
- 層状シリケート成分
の存在下での油吸着工程を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばネジ、ナット又はボルトのような金属物体の製造後に、これらの金属物体は不純物を含んでいる。典型的な不純物は、錆やスケールのような酸化物層、及び金属物体の表面にある油/グリースである。不純物を除去しないと、金属物体は標準以下の機能を持つ。性能と腐食防止等の特性を改善するために、金属物体の更なる金属化又はコーティングのような更なるワークアップ工程が必要である。しかし、最良の結果を得るためには、このようなワークアップを行う前に金属物体から不純物を除去する必要がある。
【0003】
文献には、前記不純物を除去するための方法が記載されている。
【0004】
油、脂肪、グリース等の除去は、しばしば脱脂と呼ばれる。代わりに脱油という言葉を使うこともある。
【0005】
錆やスケールのような金属酸化物は、化学的又は機械的な方法で除去することができる。通常、塩酸や硫酸等の酸によって行われる化学的処理は、酸洗(pickling)と呼ばれる。機械的な除去は通常、サンドブラスト、ショットブラスト、ウェットブラスト等の研磨方法によって行われる。
【0006】
脱脂及び酸洗の工程は同時に又は連続して行うことができる。
【0007】
DE2507059は、鉄からなる、或いは鉄を含む金属物品を、酸、湿潤剤及び/又は乳化剤に加えて、酸化剤として水溶性芳香族ニトロ化合物を含む水溶液で処理することにより、一浴で脱脂及び酸洗する方法を記載している。この方法は、例えばネジやシート材の表面を、油、脂肪、樹脂、及びコークス残渣から洗浄するために使用される。表面は更に直接、例えば電気メッキによって処理することができる。
【0008】
実用新案CN203700531Uは、ねじ/ナットの除錆及び洗浄システムを開示している。このシステムは、酸洗除錆装置及びアルカリ洗浄脱脂装置のような異なる装置から構成されている。廃棄物の流れを中和することに焦点が当てられている。
【0009】
CN110270797は、スプリングコンプレッサを処理するための方法を開示している。この方法は、スクリューを製造する工程と、それに続く洗浄、脱脂、酸洗、及び黒化の工程を含む。
【0010】
KR20190072768は、ボルト、ねじ、ナット等の車両用留め金具のねじ部のスケールを除去し、表面の清浄度を向上させる方法であって、アルカリ濃度が15~25ppm、温度が60~80℃に維持された留め金具脱脂液に5~15分間浸漬し、表面に付着した有機物、無機物及び塩化ビニリデン樹脂の被膜を速やかに除去して表面清浄度を向上させる表面洗浄工程と、第1のFeイオン(Fe2+)及び水を生成する負極反応によって、車両用留め金具のスケール及びバリが最初に溶解され得るように、30~180秒間、スケールの酸洗溶液に浸漬することによる第1酸洗工程と、第2酸洗工程とを含む方法を開示する。
【0011】
WO2011020540は、金属ストリップを洗浄/脱スケールする方法であって、最初に水、次に寒剤、例えば液体窒素が適用される方法を開示している。
【0012】
更に、先行技術は、いくつかの成分の1つとして粘土を有する組成物及び/又は多くのプロセス工程を含む多くの方法を開示している。
【0013】
実験編では、WO2017197665が、水酸化ナトリウム、塩素酸ナトリウム、トリエチレントリアミン、塩酸、リン酸及び少量の不特定の粘土を含む脱脂防食防錆剤を開示している。CN105331992は、硝酸セリウム、ポリビニルアルコール、二硫化モリブデン及び微量の不特定の粘土等の16以上の成分を含むアルミニウム表面脱脂剤を開示している。DE2022763は、有機溶媒又はアルカリ乳化剤を含む混合廃棄物の流れを、不特定の粘土(<20μm)及び無機塩によって精製する方法を開示している。
【0014】
US2003/0119689A1は、調理器具及び食器から調理済み、焼き付き、又は焦げ付きの食品汚れを除去するための硬質表面洗浄の、場合によってはシリケートを含む組成物であって、スメクタイト型粘土増粘剤及び疎水性修飾ポリアクリレートポリマーを含む組成物に言及している。
【0015】
US3,966,432は、家庭用又は工業用の硬い表面を洗浄するための液状の研磨剤組成物に関する。
【0016】
US9,782,804B1は、表面汚染物質を除去することによって基板表面を不動態化する方法に言及している。
【0017】
DE0117599A1は、ベントナイトを含む前処理浴を含む、金属表面の前処理方法に言及している。
【0018】
JP2015110760Aは、フルボ酸含有腐植物質及び粘土を含む、洗浄及び清浄用組成物を言及している。
【0019】
CN107059028Bは、腐食抑制効果を有するアルミニウム合金洗浄剤に言及している。
【0020】
JPH10130691Aは、洗浄剤組成物に言及している。
【0021】
ワークピースを成形又は仕上げるために研磨剤を使用することは知られている。例として、ウィーンライム(ウィーン石灰)が粉末研磨剤、すなわち更なる洗浄剤を含まない研磨剤として挙げられる。ウィーン石灰は、粉砕されたドロマイト、すなわち炭酸カルシウムマグネシウム岩石、CaMg(CO3)2を含む。ワークピースはウィーン石灰で擦られ、錆やスケールが除去される。層状シリケート等とは異なり、ウィーン石灰は、内部構造をごくわずかしか含まない固体材料である。例えば有機分子を吸着するその能力はかなり限られている。したがって、処理は主に機械的研磨に基づく。
【0022】
ベントナイトは、その吸着特性で知られている。そのため、ベントナイトは、白ワインから過剰な量のタンパク質を除去するために、ワイン醸造プロセスで使用されている。
【0023】
また、ベントナイトは、猫砂等様々なペットケア用品に使用され、臭いを吸着し、糞を囲い込むために使用される。また、油やグリースを吸着するためにも使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】DE2507059
【特許文献2】CN203700531U
【特許文献3】CN110270797
【特許文献4】KR20190072768
【特許文献5】WO2011020540
【特許文献6】WO2017197665
【特許文献7】CN105331992
【特許文献8】DE2022763
【特許文献9】US2003/0119689A1
【特許文献10】US3,966,432
【特許文献11】US9,782,804B1
【特許文献12】DE0117599A1
【特許文献13】JP2015110760A
【特許文献14】CN107059028B
【特許文献15】JPH10130691A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、金属物体を脱脂するための方法を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、金属物体から酸化物層を除去するための方法を提供することである。
【0027】
更に別の目的は、廃水の量を減少させる方法を提供することである。
【0028】
更に別の目的は、プロセス工程の数が制限された方法を提供することである。
【0029】
更に別の目的は、不要な酸化を避けるために、工程の中断/物理的な分離を最小限にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記の目的は、金属物体の精製のための方法であって、
- 液体、及び
- 層状シリケート成分
の存在下での油吸着工程を含む、方法を提供することにより解決される。
【0031】
また、上記の目的は、金属物体の精製のための方法であって、研磨工程を更に含み、
両工程を別々に又は同時に、好ましくは同時に行い、好ましくは、
研磨材を利用する研磨工程を更に含み、
両工程は別々に又は同時に、好ましくは同時に行う、
方法を提供することにより解決される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】本発明の方法の一実施形態の例を示す図である。(1):液体/層状シリケート成分の混合物(2):装入(金属物体用)(3):回転ドラム洗浄装置(4):(金属物体の)除去(5):撹拌(ここでは、エアバブリング)(6):噴霧器(研磨工程用)(7):液/層状シリケート成分の混合物の噴霧器(6)への移送ライン
【
図3】
図1による本発明の方法の実施形態とその後の洗浄工程を合わせた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
精製
本発明の枠内での最も広い意味での精製は、
- 錆又はスケールのような酸化物層及び/又は
- 油
の1つ又は複数を金属物体の表面から除去することを記載する。
【0034】
除去は、部分的であっても完全であってもよい。
【0035】
不純物は、それぞれの製造工程の結果である。不純物を除去しないと、金属物体は標準以下の機能を持つ。性能や腐食防止等の特性を改善するために、金属物体の金属化又はコーティングのような更なるワークアップ工程が必要である。しかし、最良の結果を得るためには、このようなワークアップを行う前に、金属物体から不純物を除去しなければならない。
【0036】
錆/スケールの除去
最新技術によれば、錆やスケールのような金属酸化物は、化学的又は機械的な方法で除去することができる。通常、塩酸や硫酸等の酸によって行われる化学的処理は、酸洗と呼ばれる。機械的除去は通常、サンドブラスト、ショットブラスト、又はウェットブラスト等の研磨方法によって行われる。
【0037】
油の除去
本明細書で使用される「油」という用語は、脂肪油、脂肪、合成油、鉱油、シリコン油、半合成油、置換油、グリース、又はそれらの混合物を含む。
【0038】
「脂肪油」という用語は、通常、室温で液体である短い及び/又は不飽和の脂肪酸鎖を有する脂質を指し、「脂肪」は、特に、室温で固体である脂質を指す。
【0039】
「合成油」という用語は、人工的に作られた化学化合物からなる潤滑油を表す。合成潤滑油は、原油全体ではなく、化学的に改質された石油成分を用いて製造することができるが、他の原料から合成することもできる。しかし、ベースとなる原料は依然として圧倒的に原油であり、蒸留後に物理的及び化学的に改質されている。
【0040】
「鉱油」という用語は、鉱物資源、特に石油の蒸留物から得られる無色、無臭、軽質の様々な高級アルカンの混合物のどれかを表す。
【0041】
用語「シリコン油」は、有機側鎖を有する任意の液体重合シロキサンを表す。
【0042】
用語「半合成油」は、鉱油と合成油の混合物を表す。
【0043】
「置換油」という用語は、例えば塩素化油のような炭素、酸素及び/又は水素以外の原子を含む油を表す。
【0044】
「グリース」という用語は、一般に、油と混合(例えば乳化)された増粘石鹸を含む固体又は半固体の潤滑剤を指す。
【0045】
金属物体
金属物体は金属でできており、すなわち、金属物体は主に、すなわち80質量%超、好ましくは90質量%超の金属からなる。
【0046】
金属は、好ましくは、鉄、銅、亜鉛、チタン、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、及び鋼、特にステンレス鋼、真鍮、青銅、モネル等のそれぞれの混合物/合金から選択される。
【0047】
金属物体のサイズは、0.005mから2m、好ましくは0.01mから1m、より好ましくは0.02mから0.5m、更に好ましくは0.05mから0.25m、特に好ましくは0.05mから0.20mである。
【0048】
ここで、サイズは、定義された数の金属物体の最大寸法の平均長さとして定義される。
【0049】
好ましい金属物体は、ネジ、ボルト、ナット、釘等の留め金具である。より好ましくは、ネジ又はナットである。
【0050】
油吸着工程
油吸着工程は、金属物体の油を、液体に溶けない固体物質に油を吸着させる手段で除去する工程として行われる。したがって、好ましくは、層状シリケート成分は固体である。
【0051】
液体が水を含むことが好ましい。より好ましくは、液体は、少なくとも50質量%(水の質量:全液体の質量)の量で水を含み、更により好ましくは、液体は、少なくとも80質量%の量で水を含み、更により好ましくは、液体は、少なくとも90質量%の量で水を含み、更により好ましくは、液体は、少なくとも95質量%の量で水を含む。液体が水からなることが最も好ましい。
【0052】
好ましくは、水は、油吸着工程全体において唯一の溶媒である。
【0053】
本発明によれば、固体油吸着物質は、層状シリケート成分である。したがって、油吸着工程は、好ましくは、前記液体及び前記シリケート成分を含む、金属物体の精製用分散液を利用する。
【0054】
層状シリケート成分
層状シリケートは、代替用語としてシート状シリケート又はフィロシリケートがあり、Si2O5を有するシリケート四面体の平行なシートによって形成されているシリケートである。
【0055】
例として、サーペンタイン(Serpentine)サブグループ、例えば、アンチゴライト-Mg3Si2O5(OH)4、クリソタイル-Mg3Si2O5(OH)4、リザルダイト-Mg3Si2O5(OH)4;粘土鉱物グループ、例えば、ハロイサイト-Al2Si2O5(OH)4、カオリナイト-Al2Si2O5(OH)4、イライト-(K,H3O)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10[(OH)2,(H2O)]、モンモリロナイト-(Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si4O10(OH)2-nH2O、バーミキュライト-(MgFe,Al)3(Al,Si)4O10(OH)2-4H2O、タルク-Mg3Si4O10(OH)2、セピオライト-Mg4Si6O15(OH)2-6H2O、パリゴルスカイト(又はアタパルジャイト)-(Mg,Al)2Si4O10(OH)-4(H2O)、パイロフィライト-Al2Si4O10(OH)2;マイカグループ、例えば、黒雲母-K(Mg,Fe)3(AlSi3)O10(OH)2、クロム雲母-K(Al,Cr)2(AlSi3O10)(OH)2、白雲母-KAl2(AlSi3)O10(OH)2、金雲母-KMg3(AlSi3)O10(OH)2、レピドライト-K(Li,Al)2-3(AlSi3)O10(OH)2、マーガライト-CaAl2(Al2Si2)O10(OH)2、グラウコナイト-(K,Na)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10(OH)2;クロライトグループ、例えば、クロライト-(Mg,Fe)3(Si,Al)4O10(OH)2-(Mg,Fe)3(OH)6が挙げられる。
【0056】
好ましい層状シリケートは、粘土鉱物グループのものであり、例えば、ハロイサイト-Al2Si2O5(OH)4、カオリナイト-Al2Si2O5(OH)4、イライト-(K,H3O)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10[(OH)2,(H2O)]、モンモリロナイト-(Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si4O10(OH)2-nH2O、バーミキュライト-(MgFe,Al)3(Al,Si)4O10(OH)2-4H2O、タルク-Mg3Si4O10(OH)2、セピオライト-Mg4Si6O15(OH)2-6H2O、パリゴルスカイト(又はアタパルジャイト)-(Mg,Al)2Si4O10(OH)-4(H2O)、パイロフィライト-Al2Si4O10(OH)2が挙げられる。
【0057】
好ましくは、本発明の方法で、層状シリケート成分は、モンモリロナイトを含む。
【0058】
より好ましい本発明の方法では、層状シリケート成分が二酸化ケイ素及び二酸化アルミニウムを含み、好ましくは、層状シリケート成分において、二酸化ケイ素及び二酸化アルミニウムは合計で、層状シリケート成分の総質量に対して、85質量%以上、好ましくは87質量%以上、より好ましくは89質量%以上、更により好ましくは91質量%以上、最も好ましくは93質量%以上である。
【0059】
粘土鉱物は1:1又は2:1に分類されるが、これは粘土鉱物が四面体のシリケートシートと八面体の水酸化物シートで基本的に構成されていることに由来している。1:1の粘土は、1つの四面体シートと1つの八面体シートからなり、カオリナイトやサーペンタインがその例である。2:1の粘土は、2つの四面体シートの間に八面体シートが挟まれたもので、タルク、バーミキュライト、モンモリロナイトがその例である。
【0060】
粘土鉱物は以下のグループを含む。
- 鉱物カオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト、及びナクライト(Al2Si2O5(OH)4の多形体)を含むカオリングループ。
構造的な類似性から、いくつかの源は、カオリナイト-サーペンタイングループを含む。
- モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト等のジオクタヘドラルスメクタイトとサポナイト等のトリオクタヘドラルスメクタイトを含むスメクタイトグループ。
- 粘土雲母を含むイライトグループ。イライトは唯一の一般的な鉱物である。
- クロライトグループは、かなりの化学的変化を有する多様な類似の鉱物を含んでいる。
- セピオライトやアタパルジャイト等の他の2:1粘土タイプが存在し、それらの構造の内部に長い水路を有する粘土である。
【0061】
特に好ましいのは、モンモリロナイトと、天然由来のフィロシリケートであるベントナイト等の他の層状シリケートとの混合物である。モンモリロナイトに加えて、ベントナイトは、石英、雲母、長石、黄鉄鉱、方解石、イライト及び/又はカオリナイトを含むこともできる。
【0062】
ベントナイトは、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、カリウムベントナイト、又はこれらの2種以上の混合物から選択されることが好ましい。
【0063】
異なる土壌は、粒子径に関して分類することもできる。
【0064】
粘土は2マイクロメートル未満の粒径を有し、シルトは2マイクロメートル超で63マイクロメートル未満の粒径を有し、砂は63マイクロメートル超の粒径を有する。
【0065】
これらの種の混合物が知られており、例えばロームがある。組成により、これらは、粘土ローム、砂質ローム、砂質粘土ローム、シルトローム、シルト質粘土ロームに指定されている。
【0066】
量と比率
金属物体の典型的な量は、4kgから400kg、好ましくは20kgから150kgである。
【0067】
液体の典型的な量は、100kgから5000kg、好ましくは150kgから2000kgである。
【0068】
通常、金属物体の量と液体の量は、ある比率の範囲内にある。
【0069】
好ましい(金属物):(液体)の比率は、0.005:1(質量比)から0.1:1(質量比)であり、より好ましくは0.01:1(質量比)から0.06:1(質量比)である。
【0070】
層状シリケート成分の量は、精製する金属物体の量に依存する。適用される層状シリケート成分の量が少なすぎると、油吸着能力にあまりに早く到達してしまう。
【0071】
また、層状シリケート成分の量は、液体の量に更に依存する。適用される層状シリケート成分の量が多すぎると、取り扱いに問題が生じる可能性がある。
【0072】
結果として、層状シリケート成分の好ましい量は、5kgから1500kg、より好ましくは100kgから400kgである。
【0073】
好ましい(シリケート層成分):(金属物体)の比率は、0.05:1(質量比)から5:1(質量比)、より好ましくは0.2:1(質量比)から1:1(質量比)である。
【0074】
好ましい(層状シリケート成分):(液体)の比率は、0.05:1(質量比)から0.6:1(質量比)、より好ましくは0.1:1(質量比)から0.4:1(質量比)である。
【0075】
非常に好ましい本発明の方法では、
- 層状シリケート成分は、液体、層状シリケート成分、及び研磨材の合計質量に対して、10質量%から40質量%の範囲、好ましくは14質量%から35質量%の範囲、より好ましくは18質量%から31質量%の範囲、更に好ましくは21質量%から28質量%の範囲、最も好ましくは23質量%から26質量%の範囲の総量を有し、
並びに/又は
- 研磨材は、液体、層状シリケート成分、及び研磨材の合計質量に対して、0.5質量%から15質量%の範囲、好ましくは1質量%から12質量%の範囲、より好ましくは2質量%から10質量%の範囲、更に好ましくは3質量%から8質量%の範囲、最も好ましくは4質量%から6質量%の範囲の総量を有する。
【0076】
層状シリケート成分での油の吸着は、界面活性剤なしでも、親油性液相の形成を減少させる。したがって、界面活性剤によるミセル化/エマルション形成の先行技術プロセスは、本発明の方法によって完全に置き換えることができる。それにもかかわらず、金属物体の精製を容易にするために、本発明の方法において界面活性剤が使用されるかもしれない。しかし、界面活性剤が存在すると、例えば水質汚染のような問題を引き起こすので、好ましくは、本発明の方法は、界面活性剤の非存在下で行われる。
【0077】
好ましい実施形態では、方法は、超音波場において行われる。
【0078】
好ましい実施形態では、油吸着工程は、非研磨的な方法で行われる。「非研磨性」という用語は、金属物体の表面の摩耗が、あったとしても、わずかな程度しか生じないような方法で、金属物体が層状シリケート成分と接触していることを意味する。
【0079】
吸着方法は、いくつかのパラメータの影響を受ける可能性がある。
【0080】
原則として、方法は様々なpH値で行うことができる。しかし、この方法は、強酸や強塩基が存在しない場合に最も効果的であることが分かっている。好ましくは、方法は4から10.6のpHで行われ、より好ましくは、方法は5から9のpHで行われる。
【0081】
同様に、方法は、様々な温度で行うことができる。好ましくは、方法は、10℃から50℃の温度で行われ、20℃から40℃の温度で行われるのが好ましい。
【0082】
方法は、金属物体、液体及び層状シリケート成分の混合物を攪拌することによって支援することができる。これは、混合物に空気をバブリングすることによって、又は適切な機械的混合によって、又は循環ポンプによって達成することができる。
【0083】
好ましくは、本発明の方法は、浸漬若しくはバレル装置、回転ドラム洗浄装置、スプリンクラー装置及び/又はスプレー装置で行われる。
【0084】
金属物体からの油の除去は、以下のように試験することができる。
- 洗浄された金属物体を弱酸性の硫酸銅溶液に浸し、銅浸漬堆積物の規則性/均質性を決定する(硫酸銅試験)
- 表面張力は、例えば、Dyne社から市販されているテストペンを用いて測定する(http://www.dynetechnology.co.uk/measurement-equipment/dyne-test-pens/)。
- 表面蛍光試験:蛍光を利用した試験方法(https://www.sita-process.com/products/fluorescence-measuring-and-testing-devices/sita-cleanospector/)
【0085】
硫酸銅試験が好ましい。銅層が視覚的に密である場合、試料は試験に合格となる。これは特に、0.1mm2を超える欠陥を特定できないことを意味する。
【0086】
本方法を初めて実施する場合、金属物体を定期的に方法から取り出して試験する。これにより、メッキ、後処理、又はその他の適用(これらに限定されない)から選択される任意の処理に必要な仕様を満たすために、金属物体が十分に油を含まなくなるまでに必要な時間を決定できる。
【0087】
典型的な時間は、5分から60分の範囲、好ましくは10分から20分の範囲である。
【0088】
研磨工程を更に含む方法
本発明の好ましい実施形態では、方法は、研磨工程を更に含み、両工程は、別々に又は同時に、好ましくは同時に行われる。研磨工程では、研磨材が利用される。
【0089】
「同時に」とは、特に、両工程が同じ装置で行われることを意味するが、必ずしも前記装置の同じ位置で行われる必要はない。
【0090】
研磨工程では、金属物体は、好ましくはスラリーとして提供される研磨材と接触する。
【0091】
原則として、研磨材は、スケールを除去するために十分な硬度を示す任意の材料とすることができる。既知の研磨材は、例えば炭化ケイ素、酸化ケイ素、炭化タングステン、ガーネット、コランダム(α-Al2O3、酸化アルミニウムの結晶相)、石英、及びケイ砂である。より好ましい本発明の方法では、研磨材が酸化アルミニウム、最も好ましくはコランダムを含む。
【0092】
更に好ましい本発明の方法では、層状シリケート成分及び研磨材は、酸化アルミニウムを含む。
【0093】
好ましいのは、スケールを除去するが、同時に、金属物体自体の金属に影響を与えないか、又はわずかしか与えない、すなわち、ノッチング効果を与えないか、又はわずかしか持たない研磨材料である。したがって、好ましい研磨材は、ガラス、ガーネット及び鋼、特に好ましいステンレス鋼、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは小さなビーズ(「ショットビー(shot bees)」)として適用される。
【0094】
好ましくは、研磨材は、500μm未満、好ましくは300μm未満、より好ましくは150μm未満、最も好ましくは100μm未満の粒径を有する粒子を少なくとも含む。より好ましくは、研磨材は、10μmから100μm、好ましくは25μmから90μm、最も好ましくは40μmから80μmの範囲の粒径を有する粒子を少なくとも含む。最も好ましくは、研磨工程で利用される研磨材の総量の50質量%超が、10μmから100μm、好ましくは25μmから90μm、最も好ましくは40μmから80μmの範囲の粒径を有する粒子を含む。
【0095】
ショットブラストが研磨工程の方法として選択される場合、ガス流量は、好ましくは300L/分から1000L/分の範囲である。
【0096】
ウェットブラストが研磨工程の方法として選択される場合、それぞれのスラリーの流量は、好ましくは500L/時間から10000L/時間の範囲である。
【0097】
研磨工程は、好ましくは液体の存在下で、好ましくは少なくとも部分的に油吸着工程で利用される液体の存在下で行われる。これは、最も好ましくは、前記スラリーを提供する。
【0098】
研磨工程における液体の使用は、粉塵の低減及び/又は金属物体の穏やかな処理等のいくつかの利点を有する。
【0099】
油吸着工程の上澄み液は、部分的に研磨工程に移送されることが特に好ましい。これは、好ましくは、油吸着工程で利用された液体の少なくとも一部が研磨工程に移送される(すなわち、研磨工程でも利用される)ことを意味する。
【0100】
このような移送の利点は、例えば淡水の使用を避けることができるため、この方法が環境的及び経済的に一層穏やかなものになることである。
【0101】
油吸着工程と研磨工程が別々に行われる場合
油吸着工程と研磨工程を別々に行う場合、研磨工程でのスケールの金属物体からの除去を試験しなければならない。これは、上記と同じ方法で行うことができまる。好ましいのは硫酸銅試験である。
【0102】
本方法を初めて実施する場合、金属物体を定期的に方法から取り出して試験する。これにより、メッキ、後処理、又はその他の適用(これらに限定されない)から選択される任意の処理に必要な仕様を満たすために、金属物体がスケールを十分に含まないようになるまでの所要時間を決定することができる。
【0103】
典型的な時間は、0.5分から15分の範囲、好ましくは5分から10分の範囲である。
【0104】
油吸着工程と研磨工程が同時に行われる場合
油吸着工程と研磨工程を同時に行う場合、油吸着工程は時間的に制限される。
【0105】
したがって、同時に行う場合、典型的な時間は5分から60分の範囲、好ましくは10分から20分の範囲である。
【0106】
精製後の除去(場合によっては研磨工程を伴う)
十分な精製の後、精製された金属物体は除去される。
【0107】
本発明の更なる実施形態では、方法は、1つ又は複数のその後の洗浄工程を含む。
【0108】
より好ましい実施形態では、スラリーは、少なくとも部分的に油吸着工程に移送される。
【0109】
最も好ましくは、本発明は、金属物体の精製のための方法であって、方法が、
- 液体、及び
- 層状シリケート成分
の存在下での油吸着工程を含み、
- 方法を、界面活性剤の非存在下で行い、
- 層状シリケート成分と液体が、それぞれ質量を基準にして、0.05:1から0.6:1の比率を有する、
方法に関係する。
【0110】
一般に、しかし特に本発明のこの好ましい方法では、層状シリケート成分が、有意な程度に油吸着成分として機能するのに十分な総量で存在することが重要である。したがって、層状シリケート成分は、油吸着のための十分な容量を有意に提供する量で存在する。言い換えれば、層状シリケート成分の量は、一般的に、レオロジー特性を変更するためにしばしば使用される単なる少量を超えているだけである。このことはまた、本発明の文脈において、層状シリケート成分が、油吸着工程において油吸着剤として合理的に機能することができるような量で存在することを意味する。このことは、更に、本発明の方法において、好ましくは、界面活性剤の利用を省略することができるという利点の効果につながる。油吸着能力が十分に高いので、金属物体から発生する油、グリース等は、典型的には界面活性剤の助けを借りずに、層状シリケート成分に効率的に吸着される。それは、界面活性剤で可溶化する必要がなく、層状シリケート成分上に残る。これは、使用後の層状シリケート成分のリサイクル/廃棄に大きな影響を与える。油(及び油状物質)は層状シリケート成分に完全に吸着しているため、液体から容易に分離することができる。前記液体は、最も好ましくは再使用又は廃棄される。界面活性剤を含まないため、高価で高度な廃水処理を必要としない。含油層状シリケート成分は、非常にコンパクトでありながら、大量の油を含んでいる。これは、同量の油を含む界面活性剤含有液体と比較して、貯蔵容量の点で大きな利点となる。
【実施例】
【0111】
(実施例1)
油吸着能力
以下の表に従って、5gの粘土(cray)(W05-25 Sibelco)、20gの水、及び異なる量の油(15W-40モーターオイル)の混合物を調製した(試料1a~1e)。蓋を閉め、次に、混合物を10分間手動で十分に振盪した。混合物を沈降させた。写真を撮影した。これらは
図1で見ることができる。すべての場合に、1つの液相のみが得られた。
【0112】
【符号の説明】
【0113】
1 液体/層状シリケート成分の混合物
2 装入
3 回転ドラム洗浄装置
4 除去
5 撹拌
6 噴霧器
7 液/層状シリケート成分の混合物の噴霧器6への移送ライン
【国際調査報告】