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特表2023-517315材料を分析するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】材料を分析するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553584
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2021055690
(87)【国際公開番号】W WO2021176097
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】2003344.5
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】522351859
【氏名又は名称】テイラーラックス ジーエムビーエイチ
【氏名又は名称原語表記】TAILORLUX GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツォグ トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ドリーバー ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】ロルソ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】マリサ ベアタ
(72)【発明者】
【氏名】ウスマン ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ポルケッタ ダリオ
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA01
2G043BA14
2G043CA05
2G043EA01
2G043EA02
2G043FA01
2G043FA06
2G043FA07
2G043JA01
2G043KA01
2G043KA02
2G043KA03
2G043LA03
2G043NA01
2G043NA06
(57)【要約】
標識材料を含む製品を分析し、且つこのような材料を標識及び追跡するための方法及びシステムが提供される。製品中におけるルミネッセントマーカを含む標識材料の割合を定量化する方法は、(i)製品に関連付けられた合成信号を取得するステップであって、合成信号は、製品から収集された分光データ及びイメージングデータを含み、分光及びイメージングデータは、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる、ステップ、(ii)標識材料を、1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定するステップ、(iii)製品中に存在する標識材料の割合を合成信号の前記イメージングデータに少なくとも部分的に基づいて定量化するステップであって、製品の各画像内で検出されるルミネッセントマーカの相対位置及び/又は数に少なくとも部分的に基づくステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品中に存在する標識材料の割合を定量化する方法であって、前記製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び前記標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、前記方法は、
(i)前記製品に関連付けられた合成信号を取得するステップであって、前記合成信号は、前記製品から収集された分光データ及びイメージングデータを含み、前記分光及びイメージングデータは、前記標識材料中の前記1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる、ステップ、
(ii)前記標識材料を、前記1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定するステップ、
(iii)前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を前記合成信号の前記イメージングデータに少なくとも部分的に基づいて定量化するステップであって、前記製品の各画像中で検出されたルミネッセントマーカの相対位置及び/又は数に少なくとも部分的に基づくステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記製品中に存在する標識材料の前記定量化された割合に対応する情報を、前記製品に関連付けられた分散型台帳へのエントリとして自動的にアップロードするステップ及び/又は前記定量化された割合が予想値と異なる場合、警告信号をユーザに提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成信号は、前記製品の複数の異なる部分から収集された分光及び/又はイメージングデータを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記製品に関連付けられた合成信号を取得するステップは、前記製品をスキャンして、前記標識材料中の前記1つ又は複数のルミネッセントマーカの前記ルミネッセント信号に関連付けられた分光及び/又はイメージングデータを収集するステップを含む、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記製品のプロセスフローをスキャンするように配置されたインライン検出器を使用して、又は移動式検出器、例えばハンドヘルド検出器若しくは前記製品の表面の上で検出器を移動させるように構成されたシステムを使用して前記製品をスキャンするステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記製品に関連付けられた合成信号を取得するステップは、前記製品をスキャンするために使用されるリモート検出器から前記合成信号を受信するステップ、例えば前記検出器と通信するサーバから前記合成信号を受信するステップを含む、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ又は複数のルミネッセントマーカは、1つ又は複数の無機ルミネッセント化合物、好ましくは1つ若しくは複数の金属イオン又は量子ドット材料がドープされた無機担体材料、例えばIn、In3+、Sn2+、Pb2+、Sb3+、Bi、Bi2+、Bi3+、As3+、Ce3+、Ce+4、Pt3+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm2+、Tm3+、Ti、Yb2+、Yb3+、Ti、Ti3+、V2+、V3+、V+4、Cr2+、Cr3+、Cr4+、Cr5+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Fe3+、Fe4+、Fe5+、Co3+、Co4+、Ni2+、Cu、Ru2+、Ru3+、Pd2+、Ag、Ir3+、Pt2+、Zn2+及びAuからなる群から選択される1つ又は複数のイオンがドープされた無機担体材料を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ又は複数の無機ルミネッセント化合物は、任意選択により、請求項7に記載の1つ又は複数の金属イオンがドープされている、元素Li、Na、K、Ba、Rb、Mg、Ca、Cd、Ce、Cs、Sc、Sr、Se、Y、La、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Tb、Zn、Gd、Lu、Al、Ga又はInの1つ又は複数のハロゲン化物、酸化物、オキシハロゲン化物、硫化物、オキシ硫化物、硫酸塩、オキシ硫酸塩、窒化物、珪窒化物、セレン化物、オキシ窒化物、硝酸塩、オキシ硝酸塩、ヒ酸塩、ホウ酸塩、リン化物、リン酸塩、ハロリン酸塩、炭酸塩、アルミン酸塩、珪酸塩、ハロ珪酸塩、オキシ珪酸塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、ゲルマニウム酸塩、オキシゲルマニウム酸塩、スズ酸塩又はその組合せを含む、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記製品から収集された分光データを使用して、前記標識材料と混合された前記1つ又は複数の材料の特定名及び/又は量を特定するステップをさらに含む、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記特定名及び/又は量を特定する前記ステップで使用される前記分光データは、パート(i)で取得された前記合成信号の分光データを含み、例えば、前記特定名及び/又は量を特定する前記ステップで使用される前記分光データは、前記合成信号の分光データ内の背景信号を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記特定名及び/又は量を特定する前記ステップで使用される前記分光データは、前記合成信号の分光データと異なる追加の分光データを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記定量化ステップは、前記製品に関連付けられた前記合成信号の特徴を1つ又は複数の参照信号と比較し、且つ前記比較に基づいて、前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を定量化するステップを含む、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記定量化ステップは、1つ又は複数のそれぞれの参照材料から収集された1つ又は複数の参照信号に関連付けられたパターン認識又は機械学習要素を前記合成信号に適用して、前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を定量化するステップを含む、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記製品は、天然若しくは合成繊維、ヤーン、合成若しくは天然繊維から作られる織布若しくは不織布、ペレット、粉末、顆粒、フィラメント等の押出し材料ストリーム、成形材料、発泡体又は紙若しくはボール紙等のパルプから形成される材料或いは前記製品又は前記製品から形成される加工材料を形成するための製品ストリーム、例えば破砕若しくは粉砕材料又は布から得られる繊維若しくはヤーンの形態である、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記標識材料は、天然繊維、例えば綿、カポック、亜麻、麻、ジュート、ラムス、サイザル麻、ココヤシ、竹等の植物ベースの繊維、又は羊毛、山羊毛(モヘア)、カシミア、チベットウール、アルパカ、ラマ、ビクーニャウール、キャメルヘア、アンゴラ、ホースヘア由来等の動物由来の繊維、マルベリーシルク若しくは天蚕シルク(タッサシルク)を含むシルク、又はダウン若しくはダックフェザー等の羽毛、又はガラスウール若しくは鉱物ウール等の無機繊維を含み、好ましくは、前記標識材料は、再生利用材料を含む、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記標識材料は、プラスチック、例えばポリエチレンテレフタレート若しくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂又はこれらの混合物を含み、好ましくは、前記標識材料は、再生利用プラスチックを含む、請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を定量化するステップは、前記割合が数値の範囲内に入ることを示すステップ、例えば前記製品が、閾値割合より少ない前記標識材料を含むことを示すステップを含む、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
製品中に存在する標識材料の割合を定量化するためのシステムであって、前記製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び前記標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、前記システムは、
前記製品に関連付けられた合成信号を取得するように構成されたコントローラであって、前記合成信号は、前記製品から収集された分光データ及びイメージングデータを含み、前記分光及びイメージングデータは、前記標識材料中の前記1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる、コントローラ
を含み、前記コントローラは、
(i)前記標識材料を、前記1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定することと、
(ii)前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を前記合成信号の前記イメージングデータに少なくとも部分的に基づいて定量化することであって、前記製品の各画像中で検出されたルミネッセントマーカの相対位置及び/又は数に少なくとも部分的に基づく、定量化することと
を行うようにさらに構成される、システム。
【請求項19】
前記コントローラに通信可能に連結された検出器をさらに含み、前記検出器は、前記製品の複数の異なる部分をスキャンして、前記標識材料に関連付けられた前記1つ又は複数のルミネッセントマーカを検出することにより、前記合成信号を提供するように構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記検出器は、前記製品のプロセスフローをスキャンするためのインライン検出器又は移動式検出器、例えばハンドヘルド検出器若しくは前記製品の表面の上で検出器を移動させるように構成されたシステムである、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記コントローラは、請求項2~17の何れか一項に記載の方法を実行するように構成される、請求項18~20の何れか一項に記載のシステム。
【請求項22】
製品から分光テータ及びイメージングデータを取得するためのスキャニングシステムであって、
前記製品中に存在する1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号を検出するための第一の分光計と、
前記製品中の前記ルミネッセントマーカの画像を収集するためのカメラと、
標識材料と混合された1つ又は複数の材料の特定名及び/又は量を特定するための、近IR分光計等の第二の分光計と
を含むスキャニングシステム。
【請求項23】
製品フローのインラインスキャンのために構成されるか、又は前記第一の分光器、前記カメラ及び前記第二の分光計を製品の表面にわたって移動させて、前記製品の複数の部分をスキャンするように構成される、請求項22に記載のスキャニングシステム。
【請求項24】
前記分光計及びカメラを前記製品の前記表面にわたって移動させるように構成された運動制御フレームを含む、請求項23に記載のスキャニングシステム。
【請求項25】
前記製品中に存在する標識材料の割合を、請求項1~17の何れか一項に記載の方法に従って定量化するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項22~24の何れか一項に記載のスキャニングシステム。
【請求項26】
製品中に存在する標識材料の割合を定量化する方法であって、前記製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び前記標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、前記方法は、
(i)前記製品に関連付けられた合成信号を取得するステップであって、前記合成信号は、前記製品から収集された分光及び/又はイメージングデータを含み、前記分光及び/又はイメージングデータは、前記標識材料中の前記1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる、ステップと、
(ii)前記標識材料を、前記1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定するステップと、
(iii)前記製品から収集された分光データに基づいて、前記標識材料を含む1つ又は複数の参照材料に関連付けられた参照データを自動的に選択するステップと、
(iv)前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を前記合成信号及び前記参照データに基づいて定量化するステップと
を含む、方法。
【請求項27】
請求項1~17の何れか一項にさらに記載されるようなものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
パート(iii)で使用される前記分光データは、パート(i)で取得された前記合成信号の分光データを含み、例えば、パート(iii)で使用される前記分光データは、前記合成信号の分光データ内の背景信号を含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
パート(iii)で使用される前記分光データは、前記合成信号の分光データと異なる追加の分光データを含む、請求項26~28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記参照データは、1つ又は複数のそれぞれの参照材料から収集された1つ又は複数の参照信号を含み、及び前記定量化ステップは、前記製品に関連付けられた前記合成信号の特徴を前記1つ又は複数の参照信号と比較し、且つ前記比較に基づいて、前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を定量化するステップを含む、請求項26~29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記参照データは、1つ又は複数のそれぞれの参照材料から収集された1つ又は複数の参照信号に関連付けられたパターン認識又は機械学習要素を含み、及び前記定量化ステップは、前記パターン認識又は機械学習要素を前記合成信号に適用して、前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を定量化するステップを含む、請求項26~30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
製品中に存在する標識材料の割合を定量化するためのシステムであって、前記製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び前記標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、前記システムは、
前記製品に関連付けられた合成信号を取得するように構成されたコントローラであって、前記合成信号は、前記製品から収集された分光及び/又はイメージングデータを含み、前記分光及び/又はイメージングデータは、前記標識材料中の前記1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる、コントローラ
を含み、前記コントローラは、
(i)前記標識材料を、前記1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定することと、
(ii)前記製品から収集された分光データに基づいて、前記標識材料を含む1つ又は複数の参照材料に関連付けられた参照データを自動的に選択することと、
(iii)前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を前記合成信号及び前記参照データに基づいて定量化することと
を行うようにさらに構成される、システム。
【請求項33】
請求項19若しくは20に記載の検出器をさらに含み、及び/又は前記コントローラは、請求項26~31の何れか一項に記載の方法を実行するように構成される、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
製品中に存在する標識材料の割合を定量化する方法であって、前記製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び前記標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、前記方法は、
前記製品に関連付けられた合成信号を取得するステップであって、前記合成信号は、前記製品の複数の異なる部分から収集された分光及び/又はイメージングデータを含み、前記分光及び/又はイメージングデータは、前記標識材料中の前記1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられる、ステップ、
前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を、前記合成信号と、前記標識材料を含む1つ又は複数のそれぞれの参照材料の複数の異なる部分から収集された分光及び/又はイメージングデータを含む1つ又は複数の合成参照信号とに基づいて定量化するステップ
を含む、方法。
【請求項35】
標識材料に関連付けられた1つ又は複数の合成参照信号を、製品中に存在する前記標識材料の割合を定量化するために生成する方法であって、
(i)既知の割合の標識材料を含む参照材料を提供するステップであって、前記標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有する、ステップ、
(ii)前記参照材料の複数の異なる部分をスキャンして、前記1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光及び/又はイメージングデータを取得するステップ、
(iii)前記参照材料の複数の異なる部分からの前記分光及び/又はイメージングデータを共通の識別子に関連付けて、前記参照材料に関連付けられた合成参照信号を提供するステップ、
前記標識材料を含む1つ又は複数のさらなる参照材料について、ステップ(i)~(iii)を繰り返して、前記さらなる参照材料に関連付けられた複数の合成参照信号を取得するステップ
を含む方法。
【請求項36】
標識材料を追跡し、且つ製品中に存在する標識材料の割合を定量化する方法であって、前記製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び前記標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、前記方法は、
前記製品に関連付けられた合成信号を取得するステップであって、前記合成信号は、前記製品から収集された分光及び/又はイメージングデータを含み、前記分光及び/又はイメージングデータは、前記標識材料中の前記1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられる、ステップと、
前記製品中に存在する前記標識材料の前記割合を、前記合成信号と、前記標識材料を含む1つ又は複数のそれぞれの参照材料に関連付けられた参照データとに基づいて定量化するステップと、
前記製品中に存在する前記標識材料の前記定量化された割合に対応する情報を、前記製品及び/又は前記標識材料に関連付けられた分散型台帳へのエントリとして自動的にアップロードするステップと
を含む、方法。
【請求項37】
後の識別のために再生利用材料に標識する方法であって、再生プロセス中に無機ルミネッセントマーカを前記再生利用材料に分散させるステップを含む方法。
【請求項38】
前記再生利用材料は、再生利用プラスチック又は再生利用綿である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
後の識別のために再生利用プラスチックに標識するためのシステムであって、1つ又は複数のルミネッセントマーカを再生利用プラスチックの流れ中に継続的に組み込むように構成され、好ましくは、前記再生利用プラスチックを押し出すか又は成形する前に前記ルミネッセントマーカが前記再生利用プラスチック中に組み込まれるように、前記再生利用プラスチックを加熱し、且つ押し出すか又は成形するように構成されるシステム。
【請求項40】
プロセッサに、請求項1~17、26~31又は34~38の何れか一項に記載の方法を実行させるプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルミネッセントマーカを含有する材料の混合物を分析することに関する。特に、本発明は、1つ又は複数の材料の混合物を含む製品中に存在する標識材料の割合を定量化することに関する。
【背景技術】
【0002】
最終製品又は生産プロセスの下流で用いられる材料が、外部の供給源から入手される材料に依存する業界では、提供された材料が指定通りの品質のものであるか、又は特定の指定された供給源からのものであることを監視し、検証することは、重要な問題である。これは、材料の物理的品質を管理することだけでなく、材料自体が実質的に物理的に同じであるとしても、倫理的な方法で調達された材料であるか否かを知ることに対する要求の高まりに応えることにも関係する。例えば、布をはじめとする天然繊維材料等の材料がオーガニックの供給源から得られたこと又は原材料が労働及び環境の観点から倫理的に栽培され、加工されたことを知り得ることが望ましい場合がある。同様に、再生利用プラスチック等の再生利用材料を使用し、使い捨て材料の使用を回避するという消費者、したがってサプライヤの希望も高まりつつある。しかしながら、詳細な科学的分析又はサプライチェーン全体の継続的な監視を行わなければ、最終消費者又は小売店が、製品中に使用されている原材料の供給源又は使用されていると報告されている材料が明記された量だけ実際に存在するか否かを物理的に検証することは、不可能であり得る。例えば、材料がより安価又は低品質の材料とブレンドされた場合、詳細な分析を行わなければ、それは、直ちにわからない場合がある。さらに、他には物理的に同じである材料が特定の供給源から得られたものか否かを検証することにおいて、例えば倫理上の点を考えた場合、材料自体を物理的に見分けることは、完全に不可能であり得る。したがって、サプライチェーンが複数の異なる国にまたがる場合、非現実的であり得るサプライチェーンの継続的監視に労力及び費用を投入することなく、材料の供給源の検証を可能にすることが求められている。
【0003】
材料の供給源を管理する1つの方法は、材料に、後の段階で検出し、その材料の原産地を検証するために使用できるマーカを付すことである。例えば、固有のスペクトルシグネチャを有するルミネッセントマーカを加工の早い段階で材料に付加し得、材料の特性に影響を与えないような十分に低濃度で付加できる。したがって、このようなマーカは、後の段階で検出して、標識材料の存在を検証できる。しかしながら、これは、特定の原産地の材料の存在の検証に使用され得るものの、ブレンドは、所望の材料の量をより安価で低品質の又は他に望ましくない材料で希釈するために使用され得る。したがって、標識材料の存在を特定するだけでなく、存在する標識材料の割合を検証することも望ましい。
【0004】
材料中のルミネッセントマーカから検出されるルミネッセント信号の強度から、ルミネッセントマーカの濃度の指標が提供され得、これを使用して標識材料の濃度を推測し得る。しかしながら、例えば標識材料を希釈するか、又は色等のその材料の特性を変化させるために標識材料が他の材料とブレンドされた場合、材料の吸収又は反射による背景スペクトルの変化により、そのマーカが材料中にどの程度存在するかを特定する際、重複信号によるエラーを生じさせ得る。例えば、製品が、標識材料と、その標識材料とすでにブレンドされている別の材料との混合物を含む場合、標識材料を希釈するために使用された別の材料の特定名は、直ちにわからない場合があるものの、その別の材料の特定名及びその背景スペクトルに応じて測定の信頼性に悪影響が及びかねない。例えば、標識された綿繊維等の繊維材料が、標識されていない綿とブレンドされているか、又はPETのようなポリエステル繊維等の物理的に異なる材料とブレンドされているかにより、異なるスペクトルが得られ得る。同様に、標識材料が、例えば、材料を着色するための染料又は他の機能的添加物を添加することによってその特性を変化させるように加工された場合、このような添加物は、製品から得られるスペクトルに大きい影響を与え得る。加えて、特定のルミネッセントマーカに関連する波長の絶対強度は、使用される分光計の具体的な設定及び配置、例えば検出器の試料からの距離に基づいて変化し得る。
【0005】
測定中に製品の画像内のマーカの位置に関するイメージングデータを使用することにより、標識材料と混合されている未知の材料又は絶対強度の差が分析に与える影響を軽減又は回避し得ることがわかっており、なぜなら、そのような差は、分光学的データの背景に影響を与え得るものの、ルミネッセントマーカの位置と量は、ほとんど影響を受けないからである。このようにして、イメージングデータ並びに検出されたルミネッセントマーカの相対位置及び/又は数を用いて、製品の各画像自体が測定の精度を向上させる方法を提供することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、ある態様は、製品中に存在する標識材料の割合を定量化する方法を提供し、製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、方法は、
(i)製品に関連付けられた合成信号を取得するステップであって、合成信号は、製品から収集された分光データ及びイメージングデータを含み、分光及びイメージングデータは、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる、ステップ、
(ii)標識材料を、1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定するステップ、
(iii)製品中に存在する標識材料の割合を合成信号の前記イメージングデータに少なくとも部分的に基づいて定量化するステップであって、製品の各画像中で検出されたルミネッセントマーカの相対位置及び/又は数に少なくとも部分的に基づく、ステップ
を含む。
【0007】
標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカで標識された何れの適当な材料でもあり得る。例えば、サプライチェーンの下流の材料の供給源を検証して、偽の又は希釈された材料が純正と表示されるのを防止することが望まれる何れかの材料である。
【0008】
実施形態において、標識材料は、天然繊維、例えば綿、カポック、亜麻、麻、ジュート、ラムス、サイザル麻、ココヤシ、竹等の植物ベースの繊維、又は羊毛、山羊毛(モヘア)、カシミア、チベットウール、アルパカ、ラマ、ビクーニャウール、キャメルヘア、アンゴラ、ホースヘア若しくは他のあらゆる動物の毛等の動物由来の繊維、又はマルベリーシルク、天蚕シルク(タッサシルク)、ダウン若しくはダックフェザー等の羽毛等の天然繊維を含むか又は基本的にそれらからなる。標識材料は、合成繊維、例えばポリエステル、ポリアミド、アラミド、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセテート等のポリマー又はモダクリル、ポリウレタン若しくはスパンテックス等のコポリマーを含むポリマー繊維を含むか又は基本的にそれらからなり得る。実施形態において、標識材料は、上記の繊維の2つ以上の混合物を含み得る。好ましい実施形態において、標的材料は、綿繊維を含むか又は基本的にそれからなる。
【0009】
標識材料は、特定の供給源から得られた天然繊維、例えばオーガニックコットン等のオーガニックの天然繊維を含むか若しくは基本的にそれからなり得るか、又は特定の公認の供給源又は国からの繊維を含み得る。
【0010】
標識材料は、ガラス繊維、金属繊維又は鉱物繊維等の無機繊維を含むか又は基本的にそれからなり得る。例えば、標識材料は、ガラスウール等の断熱材を含み得、これは、布の形状であり得る。
【0011】
標識材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)若しくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂又はこれらの混合物を含むが、これらに限定されないプラスチック材料を含むか又は基本的にそれからなり得る。好ましい実施形態において、プラスチック材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むか又は基本的にそれからなる。
【0012】
幾つかの好ましい実施形態において、標識材料は、再生利用材料を含む。したがって、マーカは、再生利用プロセス中に添加して、製品が再生利用材料に由来することを検証するために後に使用することもできる。再生利用材料は、再加工若しくは処理又は単純に過去に使用した材料を再使用若しくは用途変更することによって再生利用される何れの適当な材料も含み得る。例えば、再生利用材料は、本明細書中で前述した材料、例えば綿等の再生利用天然繊維、成形又は繊維形態のPET等の再生利用プラスチック、ガラスウール等の再生利用ガラス、再生利用紙又はボール紙、鉱物ウール等の再生利用鉱物繊維を含むか又は基本的にそれからなり得る。好ましい実施形態において、標識材料は、再生利用綿又は再生利用PETを含むか又は基本的にそれからなる。
【0013】
したがって、幾つかの好ましい実施形態において、標識材料は、再生利用プラスチック、例えば上述のプラスチックを含み、これは、繊維の形態でも、成形プラスチック製品、例えばプラスチック瓶、破砕プラスチック、フレーク又はペレット等の他の形態でもあり得る。再生利用プラスチックは、プラスチックの加工中の製品ストリームの形態、例えばプラスチックの溶融ストリーム若しくは押出しストリーム或いは微粒子材料又は破砕若しくはフレーク状材料の流れでもあり得る。再生プラスチック又は他の標識材料は、3D印刷材料又は3D印刷で使用される材料を含み得る。
【0014】
標識材料を含む製品は、標識材料を含む何れの適当な製品でもあり得る。幾つかの実施形態において、製品は、天然若しくは合成繊維、ヤーン、合成若しくは天然繊維から作られる織布若しくは不織布、ペレット、粉末、粒、フィラメント等の押出し材料ストリーム、成形材料、発泡体又は紙若しくはボール紙等のパルプから形成される材料或いはかかる製品又はかかる製品から形成される加工材料を形成するための製品ストリーム、例えば破砕若しくは粉砕材料又は布から得られる繊維若しくはヤーンの形態である。
【0015】
プラスチック及び繊維材料を上で挙げたが、他の材料も、本明細書に記載の方法においてルミネッセントマーカで標識され得、これは、例えば、レザー、ガラス、塗料、ニス、インク、金属、ゴム、オイル、シンナー若しくは溶剤等の液体又は木材、コンクリート、ガラスウール、窓、断熱材料等の建設資材及びその他である。
【0016】
標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有する。ルミネッセントマーカは、分光計により識別可能であり、標識すべき材料に組み込まれるときに化学的及び物理的に安定な何れの適当なルミネッセント化合物でもあり得る。異なるルミネッセント化合物は、分析時に電磁スペクトルの異なる波長で応答を示すことがわかるであろう。ルミネッセントマーカは、ルミネッセント有機化合物、金属有機複合体及び/又は無機化合物を含み得る。ルミネッセントマーカは、蛍光及び/又は燐光化合物であれば適当であり得る。
【0017】
好ましくは、1つ又は複数のルミネッセントマーカは、1つ又は複数の無機ルミネッセント化合物を含む。無機ルミネッセント化合物は、1つ又は複数のイオンがドープされた無機担体材料、例えば1つ又は複数のレアアース及び/又は遷移金属イオンがドープされたセラミック材料を含み得るか、又は無機ルミネッセント化合物は、量子ドット材料を含み得る。このような材料は、特に化学的に不活性であり、マーカとして柔軟であることがわかっており、例えば高温及び材料の物理的加工に耐え、有効なマーカとしての機能を保持することができる。
【0018】
好ましい実施形態において、1つ又は複数のルミネッセントマーカは無機担体材料、例えばIn、In3+、Sn2+、Pb2+、Sb3+、Bi、Bi2+、Bi3+、As3+、Ce3+、Ce+4、Pt3+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm2+、Tm3+、Ti、Yb2+、Yb3+、Ti、Ti3+、V2+、V3+、V+4、Cr2+、Cr3+、Cr4+、Cr5+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Fe3+、Fe4+、Fe5+、Co3+、Co4+、Ni2+、Cu、Ru2+、Ru3+、Pd2+、Ag、Ir3+、Pt2+、Zn2+及びAuからなる群から選択される1つ又は複数のイオンがドープされたセラミック材料等を含む。
【0019】
好ましい実施形態において、1つ又は複数の無機ルミネッセント化合物は、1つ又は複数の追加の金属イオン、例えば前述の金属イオンがドープされ得る、元素Li、Na、K、Ba、Rb、Mg、Ca、Cd、Ce、Cs、Sc、Sr、Se、Y、La、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Tb、Zn、Gd、Lu、Al、Ga又はInの1つ又は複数のハロゲン化物、酸化物、オキシハロゲン化物、硫化物、オキシ硫化物、硫酸塩、オキシ硫酸塩、窒化物、珪窒化物、セレン化物、オキシ窒化物、硝酸塩、オキシ硝酸塩、ヒ酸塩、ホウ酸塩、リン化物、リン酸塩、ハロリン酸塩、炭酸塩、アルミン酸塩、珪酸塩、ハロ珪酸塩、オキシ珪酸塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、ゲルマニウム酸塩、オキシゲルマニウム酸塩、スズ酸塩又はその組合せを含み得る。
【0020】
ルミネッセント有機化合物は、フルオロセイン誘導体、クマリン誘導体、オキサジン誘導体、ローダミン誘導体、ルモゲン、ピロメテン色素誘導体又は適当なルミネッセンスを示す他の有機化合物等、共役系を有する有機化合物から選択され得る。金属有機錯化合物は、Eu、Tb、Sm、Nd、Ce、Pr、Dy、Ho、Er、Tm若しくはYbとの有機配位子の錯体又はRu、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Tb若しくはCu等の他の金属との有機配位子の錯体等の希土類錯体を含み得る。有機配位子は、アセチルアセトン(ACAC)、ジベンゾイルメタン(DBM)、4,4,4-トリフルオロ-1-(2-ナフチル)-1,3-ブタンジオン(TFNB)、テノイルトリフルオロアセトン(TTFA)、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体又は他の有機錯体形成配位子等の共役系を有する配位子を含み得る。
【0021】
好ましくは、ルミネッセントマーカは、本明細書中で定義される1つ又は複数の無機ルミネッセント化合物を含む。このようなマーカは、材料の加工中、例えば機械的応力下及び高温時でも標識材料中で安定であることがわかっている。したがって、無機ルミネッセントマーカは、再生利用材料等の製品中で特に有効であり得、これらは、標識され、後に再加工、押出し又は成形プロセス中に高温及び高ストレス下で加工され、その際、無機ルミネッセントマーカは、材料中でマーカとして安定な状態を保つ。このようにして、無機ルミネッセントマーカの使用と、再生利用材料、特に後に押出し又は成形プロセスを受ける再生利用プラスチック材料の標識との相乗効果がある。
【0022】
幾つかの例において、製品は、複数の標識材料及びしたがって複数の固有のルミネッセントマーカ又はマーカの組合せを含み得る。例えば、製品は、標識された再生利用綿と、標識された再生利用PETとの混合物を含み得る。したがって、方法は、製品中に存在する第一の標識材料及び第二の標識材料の割合を定量化するステップをさらに含み得、その製品は、少なくとも第一及び第二の標識材料と、それぞれ1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有する第一及び第二の標識材料との混合物を含む。
【0023】
本発明の方法は、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられた分光データを取得するステップを含む。本明細書中で言及される分光データは、その製品から収集されたルミネッセンススペクトル、例えば蛍光又は燐光スペクトルを含み得る。1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられた分光データは、1つ又は複数のルミネッセントマーカからの応答を示す分光データを指すと理解されたい。好ましくは、分光データは、200~約3000nm、例えば約280~1100nmの波長範囲及び/又は約780nm~2500nmの近IR範囲の収集された発光又は吸収スペクトルに関係する。好ましくは、分光データは、780nm~2500nmの波長範囲の収集された発光又は吸収スペクトルに関する。分光データは、スペクトル自体を含み得るか、又はスペクトルの特徴に関する情報、例えばスペクトル及びそれらの強度における特定のピークの存在を表す情報を含み得る。例えば、分光データは、ルミネッセンススペクトルの特徴を表すマトリクスを含み得る。幾つかの好ましい実施形態において、分光データは、ルミネッセントマーカの時間依存応答に関する情報、例えばマーカからのルミネッセント信号について観察されるルミネッセンス寿命を含み得る。幾つかの例において、背景干渉を最小にするために、ルミネッセントマーカは、電磁スペクトルのうち、標識された材料が強力な信号を示さない領域内のルミネッセント応答を提供するように選択され得るか、又は標識材料について下流での特定のブレンドが予想されるか、又は特定の添加物が標識材料に添加されることが予想される場合、ルミネッセントマーカは、電磁スペクトルのうち、ブレンド又は添加物が強力な信号を示さない領域内のルミネッセント応答を提供するように選択され得る。
【0024】
1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられたイメージングデータは、材料全体を通したルミネッセントマーカの分布を示す画像を含むことが適当である。例えば、イメージングデータは、蛍光又は燐光画像を含み得、その中で1つ又は複数のルミネッセントマーカを画像の背景に関する所定のスポットとして区別することができる。イメージングデータは、画像自体を含み得、且つ/又は画像内のマーカの位置に関する情報、例えば画像内で検出されるマーカの座標若しくは相対位置及び/又は数、例えば単位面積若しくは単位体積当たり(例えば、物理的単位面積若しくは体積当たり又はそれが特定の領域に関係することがわかっている場合の画像ピクセルとしての単位面積当たり)のマーカの数を含み得る。定量測定において製品の画像中のマーカの位置及び/又は数に関係するイメージングデータを使用することにより、標識材料と混ぜられた未知の材料が分析に与える影響を低減させるか又は回避し得、なぜなら、このような材料は、分光データの背景に影響を与え得るが、ルミネッセントマーカの位置及び量は、それほど影響を受けないことがわかっているからである。
【0025】
製品が、標識材料中にあるもの及びルミネッセント化合物又はマーカを含む場合、ハイパスペクトルカメラからの分光データを使用して、標識材料に関連付けられた画像中の特定のマーカを特定することができる。
【0026】
本明細書で定義される無機ルミネッセントマーカは、本発明の方法におけるイメージングデータの使用に関して特に有効であり得ることがわかっており、これは、このようなマーカにより、背景の上方で観察可能である、輪郭が明確なルミネッセンスのスポットが生成されるからである。したがって、本明細書で定義される無機ルミネッセントマーカの使用と、本明細書に記載の定量化方法のためのイメージングデータの使用との相乗効果がある。
【0027】
分光及び/又はイメージングデータは、何れの適当な検出器によっても収集され得、ルミネッセンスを測定することは、当業者に一般的に知られていることがわかるであろう。例えば、フォトダイオード又は他の検出器を使用して、ある波長範囲にわたる、電磁エネルギによる励起に応答したサンプルからの発光を測定し得る。分光データは、幾つかの実施形態において、蛍光分光計により取集され得る。ハイパスペクトルカメラは、画像と、ある波長範囲にわたる分光データとの両方を同時に収集し得る。
【0028】
方法のパート(i)は、製品に関連付けられた合成信号を取得するステップを含み、合成信号は、製品から収集された分光及びイメージングデータを含む。好ましくは、本方法のパート(i)は、製品に関連付けられた合成信号を取得するステップを含み、合成信号は、製品の複数の異なる部分から収集された分光及び/又はイメージングデータを含む。したがって、本明細書で言及される合成信号は、好ましくは、分析中の製品の複数の異なる部分に関する分光データ及び/又はイメージングデータの集収に関し得る。合成信号は、生スペクトル及び/又は画像、複数の生スペクトル及び/又は画像の集合の形態であり得るか、又は前述のようにスペクトル及び/又は画像から得られる情報の形態でもあり得る。例えば、合成信号は、製品及び好ましくは製品の複数の異なる部分から収集されたスペクトル及び/又は画像の特徴を表す多次元データセットを含み得る。合成信号、分光データ及び/又はイメージングデータは、変形データセット、例えば次元削減されたデータセットの形態であり得、これは、統計分析及びパターン認識に使用され得る。例えば、合成信号は、分光及び/又はイメージングデータを表す多次元データアレイを含み得、これは、多次元データ処理及び分類方法を使用して処理され得、これには、主成分分析、線形判別分析、多重線形回避、クラスタ分析又は部分的最小二乗法、ランダムフォレスト、勾配ブースティング、サポートベクタマシン又はニューラルネットワーク等の教師付き若しくは教師なし多変量解析が含まれ得る。データを処理し、分析するための統計的方法は、例えば、Gautam et al.,EPJ Techniques and Instrumentation,2,8(2015)及びZhou et al.,AUTEX Research Journl,Vol 19,No.2,June 2019に記載されている。
【0029】
製品の複数の部分に関するデータを含む合成信号を使用することにより、個々のスペクトル又は画像中の(例えば、マーカの強度又は分布における)変動を分析するだけでなく、例えば参照データとの比較により、定量化ステップのためのまた別の変数を追加することになる、同じ製品の複数の部分から得られた一連のスペクトル及び画像間の変化を考慮に入れることによって分析が改良され得る。
【0030】
特に、製品の複数の部分に関するデータを含む合成信号は、製造中に完全には均質化されない製品について使用され得る。例えば、断熱材等、製品が繊維及び他の繊維状材料を含む場合、個々の繊維は、製造中にある位置に固定され、標識繊維が常に製品中に均等に分散することは、確実ではない。それに対して、成形又は押出しプラスチック製品等のメイトから形成される製品は、加工中に均質化され、場合により、製造プロセスにより製品全体を代表すると仮定される1回の測定からのデータを使用することにより分析され得る。したがって、一般に、本明細書に記載の方法は、好ましくは、製品中に存在する標識材料の割合を定量化する方法を含み得、製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び標識材料は、製品全体にわたり不均質に分散された1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、これは、例えば、製品中のルミネッセントマーカのスペクトル及び/又は画像が製品の異なる部分間で異なる場合である。
【0031】
好ましい実施形態において、合成信号は、製品の少なくとも3つの異なる部分、好ましくは製品の少なくとも10の部分、例えば製品の少なくとも50の部分若しくは製品の少なくとも100の部分又はさらに製品の少なくとも500若しくは少なくとも1000の部分に関する分光及び/又はイメージングデータを含む。
【0032】
材料をルミネッセントマーカで例えば均一化プロセス前にマーカを材料中に均一に導入することにより、できるだけ均一に標識することが望ましい場合、実際には、それでも依然として標識材料全体にわたるマーカの分布にばらつきがある。これは、特に、材料のさらなる加工又はブレンドが第三者により行われ、したがって材料を標識する当事者が直接管理できない場合に当てはまる。製品の複数の異なる部分からのデータを含む合成信号を取得し、その合成信号を存在する標識材料の割合の定量化に使用することにより、製品中のルミネッセントマーカの分布のばらつきがよりよく説明され得、より信頼できる定量測定が実現成され得る。
【0033】
製品に関連付けられた合成信号を取得するステップは、分光データ及び/又はイメージングデータを収集する何れの適当なステップも含み得る。したがって、取得するステップは、製品をスキャンしてスペクトル及び/又は画像を取得するステップを含むことが適当であり得るか、又はそれ以前に収集された製品のスペクトル及び画像に関する分光及び/又はイメージングデータを取得するステップを含み得る。
【0034】
したがって、幾つかの好ましい実施形態において、製品に関連付けられた合成信号を取得するステップは、製品をスキャンして、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられた分光及び/又はイメージングデータを収集するステップを含む。
【0035】
製品をスキャンするステップは、何れの適当な方法でも実行され得る。幾つかの好ましい実施形態において、方法は、製品のプロセスフローをスキャンするように配置されたインライン検出器を使用して、又は移動式検出器、例えばハンドヘルド検出器若しくは製品の表面の上で検出器を移動させるように構成されたシステムを使用して製品をスキャンするステップを含む。
【0036】
インライン検出器は、静止検出器であり得、これは、検出器を通過するプロセスフローをスキャンするように構成され、例えば、これは、検出器が、ある期間にわたり、例えば所定の時間間隔でデータを収集して、製品が検出器を通過する際に製品の異なる部分に関するデータを収集するように構成される場合である。プロセスフローの形態は、様々な異なる形態であり得、標識材料及び製品の性質に依存し得ることがわかるであろう。例えば、製品及び/又は標識材料は、プラスチックを含み得、プロセスストリームは、製品の溶融ストリーム又は押出し機を通るか若しくはそこからのストリームを含み得る。プロセスストリームは、フィラメントを含み得るか、又は天然若しくは合成繊維を含み得、これらは、原形態或いはヤーン又は織布若しくは不織布の形態であり得る。幾つかの例において、プロセスストリームは、粒子の流れ、例えばペレット、粉末、フレーク又は顆粒の形態の材料の流れであり得る。幾つかの例において、プロセスストリームは、流体中の材料の懸濁の形態、例えば気体ストリーム又は液体ストリームにより運ばれる材料であり得る。
【0037】
移動式検出器は、例えば、布等のシート状材料又は衣類等の特定の製品の形態の材料又はボトル若しくは包装材等の成形プラスチック製品のような静的製品又は静的製品の複数の部分をスキャンするために使用され得る。移動式検出器は、例えば、検出器を製品上で移動させて、製品の複数の部分をスキャンするための何れの適当な形成でもあり得る。例えば、ハンドヘルド検出器は、手動で製品をスキャンし、その表面上で検出器を移動させるために使用され得、例えば衣類又は成形プラスチック製品等、消費者に提供されるための製品のスキャニングにおいて使用される。代替的に、移動式検出器は、例えば、ロボット工学を利用して検出器をシート材料(例えば、布シート又はプラスチックシート)等の製品の表面の上で検出器を移動させることによって自動化され得る。例えば、ハンドヘルド又は自動検出器を使用する製品のスキャニングは、工場の生産ラインの一部として実行されるか、又は製造プロセス若しくはサプライチェーンから抽出されるサンプルに対して何れの段階でも実行され得る。移動式検出器は、前述のように移動する製品又は製品ストリームをスキャンするためにも使用され得、この場合、移動式検出器は、静止状態に保持されるか又は製品に加えて移動され得る。
【0038】
他の好ましい実施形態において、製品に関連付けられた合成信号を取得するステップは、製品をスキャンするために使用されるリモート検出器から合成信号を受信するステップを含む。合成信号を取得するステップは、リモート検出器から直接又は間接に電子通信として合成信号を受信するステップ、例えばリモート検出器から合成信号を受信するか、又は検出器と通信するサーバから合成信号を受信するステップを含み得る。合成信号を取得するステップは、ローカル又はリモート(例えば、サーバ上に保存)コンピュータメモリ内に保存された合成信号を取得するステップを含み得る。幾つかの例において、合成信号を取得するステップは、分光及び/又はイメージングデータを受信し、データを処理して合成信号を取得する、例えばデータを処理して前述のように次元削減されたデータセットを生成するステップを含み得る。他の実施形態では、合成信号を取得するステップは、すでに処理された分光及び/又はイメージングデータに関するデータセットを受信するステップを含み得る。
【0039】
合成信号は、前述のような分光及びイメージングデータを含み得、これらは、直接相関し得るか、又は少なくとも部分的に独立し得る。例えば、合成信号が関係する各画像は、例えば、ハイパスペクトルカメラを使用して両方が同時に収集される場合、同様にその合成信号に含まれる対応するスペクトルも有し得る。代替的に、画像及びスペクトルは、少なくとも部分的に独立し得、それにより、例えばスペクトル及び画像が異なる周波数で独立して収集される場合、スペクトルの幾つか又は全部が対応する画像を有しないか又はその逆である。好ましくは、定量化ステップで使用される合成信号は、分光及びイメージングの両方のデータを含む。分光データ及びイメージングデータの両方を合成信号中で使用することにより、混合製品中の標識材料の定量化の精度と信頼性が改善され得る。
【0040】
方法は、製品中に存在する標的材料の割合を合成信号の前記イメージングデータに少なくとも部分的に基づいて定量化するステップを含み、前記定量化は、前述のように、製品の各画像中で検出されるルミネッセントマーカの相対位置及び/又はその数に少なくとも部分的に基づく。好適には、ルミネッセントマーカの位置が背景又はマーカのルミネッセント信号の絶対強度によりほとんど影響を受けないイメージングデータが使用され得る。したがって、製品中のルミネッセントマーカの分布を示すイメージングデータを使用することにより、他の材料とブレンドされる標識材料の割合の定量化の精度及び信頼性が改善され得る。
【0041】
方法は、製品中に存在する標識材料の割合を合成信号及び参照データに基づいて定量化するステップを含み得る。参照データは、標識材料を含む1つ又は複数の参照材料に関連付けられ得、各種の他の非標識材料と異なる割合でブレンドされた標識材料を含む参照材料から収集される参照データだけでなく、100%標識材料に関する参照データのデータベースを含み得る。例えば、参照データは、異なる既知の量で標識材料とブレンドされた第一の材料から作られる一連の参照材料から収集された参照データを含み得る。このようにして、合成信号を参照データと比較することにより、製品中の標識材料の割合が定量化され得る。参照データは、各々が異なる量で標識材料とブレンドされた複数の異なる材料から収集された参照データを含み得、この複数の材料の各々は、その複数の材料のうちの他の材料と異なり得るか、又は材料のルミネッセントスペクトルに影響を与え得る既知の添加物と混合された材料でもあり得る。例えば、参照データは、各種の染料又は他の添加物がそれとブレンドされた参照材料から収集された参照データを含み得、参照データは、既知の量で標識材料とブレンドされたこのような材料に関する参照データを含む。参照データは、本明細書で前述したように標識材料とブレンドされて、異なる物理的形態の製品を形成する材料に関する参照データ、例えば原繊維、ヤーン若しくは布の形態又はフィラメント等の押出物の形態或いはプラスチックボトル等の成形形態又は破砕若しくは粉砕物等の加工済みストリームの同じ材料に関する参照データも含み得る。
【0042】
参照材料は、標的材料と、標的材料と分析的に同じ材料であるが、標識されていない点のみが異なる材料との混合物を含み得る。加えて、参照材料は、異なる材料とブレンドされた標識材料を含み得る。例えば、標識材料は、綿を含み得、参照データは、異なる量の非標識綿、他の異なる天然繊維、ポリエステル製等の合成繊維などとブレンドされた綿に関する参照データを含み得る。同様に、標識材料は、再生利用PET等の特定の再生利用プラスチックを含み得、参照データは、異なる量の非標識PET又は他のプラスチックとブレンドされた標識再生利用PETに関する参照データを含み得る。
【0043】
参照データは、1つ又は複数のそれぞれの参照材料から収集された1つ又は複数の参照信号を含み得、この場合、参照信号は、合成信号と直接又は間接に比較可能であり、例えば、参照データは、分光データ及び/又はイメージングデータを含み得、製品の複数の部分から収集されたデータを含む合成信号に関して前述したように、参照材料の複数の部分から収集された分光データ及び/又はイメージングデータを含む合成参照信号の形態であり得る。参照製品の複数の部分から収集された分光データ及び/又はイメージングデータを含む合成参照信号が使用される場合、標識製品の複数の部分にまたがる分光又はイメージングデータの不均質性を説明できる。例えば、参照材料の複数の部分から収集される参照データは、製品中の標識材料の割合に関する範囲を画定するために使用でき、この場合、1つのスペクトル又は画像は、材料全体にわたるばらつきに関係なく、標識材料の特定の量に属するものとして分類することができる。好ましい実施形態において、製品の複数の部分から収集されたデータを含む合成信号は、定量化のために合成参照信号データに加えて使用され、それにより、定量化は、製品にわたる変動に少なくとも部分的に基づくものであり得る。
【0044】
したがって、定量化ステップは、製品に関連付けられた前記合成信号の特徴を前記1つ又は複数の参照データと比較し、比較に基づいて、製品中に存在する標識材料の割合を定量化するステップを含み得る。参照データは、前述のように、収集された参照信号に基づいて次元削減されたデータセット等の処理済みデータを含み得る。
【0045】
製品に関連付けられた前記合成信号の特徴を前記1つ又は複数の参照信号と比較することは、何れの適当な方法でも行われ得、例えば前述のような多変量データ処理技法又は共分散分析による。好適には、合成信号の1つ又は複数の参照信号との比較は、製品の各画像内で検出されたルミネッセントマーカの相対位置及び/又は数に少なくとも部分的に基づく。したがって、比較は、ルミネッセントマーカから得られた1つ又は複数の信号の強度以上のものに基づく。幾つかの例において、比較においてルミネッセントマーカから得られた1つ又は複数の信号と何れのルミネッセントマーカにも関連付けられない背景スペクトルの両方が使用される。特定のルミネッセントマーカに関連付けられた波長での絶対強度は、使用される分光計の特定の設定及び配置、例えば検出器のサンプルからの距離に基づいて変化し得、また背景スペクトル内の重複信号に基づいて変化し得る。このように、イメージングデータと、任意選択により背景信号をルミネッセントマーカ信号に追加して使用することにより、このような効果が説明され得、より正確で信頼性の高い定量化が行われ得る。背景信号は、有利には、例えば前述のように多次元データ処理及び分類方法によってルミネッセント信号に関する分光データ及び背景を変換してその特性を統計的に特定することによって説明され得る。
【0046】
好適には、イメージングデータが使用され得、この場合、ルミネッセントマーカの位置は背景又はマーカルミネッセント信号の絶対強度によりほとんど影響を受けない。したがって、製品内のルミネッセントマーカの分布を示すイメージングデータを使用することにより、他の材料とブレンドされた標識材料割合の定量化の精度と信頼性が改善され得る。
【0047】
ルミネッセントマーカは標識材料中に、標識材料の特定名に関連付けられる既知の濃度で存在し、それにより製品中の標識材料の量は製品中で検出されたルミネッセントマーカの量から導出され得ることがわかるであろう。
【0048】
参照データは分光データ又はイメージングデータ自体等の参照信号を含まず、合成信号を認識し、分類して製品中の標的材料の割合を定量化するように構成されたデータ分析モデルを含み得る。したがって、参照データは、1つ又は複数のそれぞれの参照材料から収集された1つ又は複数の参照信号に関連付けられたパターン認識要素又は機械学習要素、例えば前記参照信号に基づいて訓練されたパターン認識又は機械学習要素を含み得、定量化ステップは、このパターン認識又は機械学習要素を合成信号に適用して、製品中に存在する標識材料の割合を定量化するステップを含み得る。パターン認識又は機械学習要素は、前述のような参照データ又は信号の訓練セットを使用して訓練又は開発され得る。パターン認識又は機械学習要素は、人工ニューラルネットワークに基づき得、これは、例えば、既知の参照データに関連して合成信号内の分光及び/又はイメージングデータを分類するように構成された深層学習ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク又はサポートベクタマシンである。このようにして、方法は、合成信号を参照材料からの分光データ又はイメージングデータ等の参照データと直接比較するステップを含まず、参照データに基づいてパターン認識又は機械学習要素を合成信号に適用することにより間接的にそれを行い得る。
【0049】
本明細書に記載の機械学習又はパターン認識要素は、様々な形態で提供され得る。これには、コンピュータプロセッサを命令通りに動作するようにプログラムするように構成されたコンピュータプログラム命令を含み得る。命令は、ユーザが要素に関連付けられる特性を変更又は識別できないように完成された機械学習要素を含み得るか、又は命令は、機械学習要素の継続的使用によってコードの更新(要素をさらに発達させるため)を可能にし得るように上書きされ得る。本開示の内容に関してわかるように、パターン認識又は機械学習要素の具体的な性質は限定的とは考えられず、処理されるデータの性質に応じて変化し得る。パターン認識又は機械学習要素の提供に適した何れのシステムでも利用され得る。
【0050】
機械学習要素は、例えば、ニューラルネットワークを含み得る。ニューラルネットワークは複数の層のニューロンを含み得、各ニューロンは入力データを処理して出力データを提供するように構成される。何れの適当なプロセスも何れのニューロンによっても提供され得、これらは入力データの種類に応じて変化し得ることがわかるであろう。ネットワークの各層は、複数のニューロンを含み得る。1つの層内の各ニューロンの出力は、後続の層中のニューロンの1つ又は複数(例えば、全部)への入力として提供され得る。各ニューロンは、関連する重みセットを有し得、これは、そのニューロンに提供された入力テータの各ストリームへのそれぞれの重みを提供する。あるニューロンからあるニューロンまでの各経路は、「エッジ」と呼ばれ得る。重みは、各ニューロンにおいて及び/又は各エッジに記憶され得る。
【0051】
このようなニューラルネットワークは少なくとも2つの変数を有し得、これらを変更してデータの改良された処理を提供できる。第一に、ニューロンの機能が選択又は更新され得る。ニューラルアーキテクチャ検索のシステム及び方法を使用して、ネットワーク内のニューロンの適当な機能性を特定するために使用され得る。第二に、ネットワーク内の重み付けは、例えば、ネットワーク全体を通した入力及び出力データの異なるストリームの優先順位を変更するために更新され得る。
【0052】
機械学習要素は、訓練され得る。例えば、機械学習要素の訓練は、重みを更新することを含み得る。重みをどのように更新するかを特定するために、複数の方法が使用され得る。例えば、教師付き学習方法が使用され得、この場合、要素は、それに関して既知の正しい出力のある入力データに基づいて動作され得る。この入力/出力は、このデータに基づいて動作した後の機械学習要素に提供され、それにより、機械学習要素は、それ自体を更新できる(例えば、その重みを変更する)。これは、逆行性伝播等の方法を使用して行われ得る。このプロセスを何度も繰り返すことにより、要素は訓練済みの状態となり得、それにより関連するデータを処理し、関連する出力を提供できる。機械学習要素を訓練するための他の例には強化学習の使用が含まれ、この場合、要素を探索及び活用行動間のバランスを特定し、利用することによって訓練できるようにするための1つ又は複数の報酬が定義される。例えば、このような方法は、バンディットアルゴリズムを利用し得る。他の例として、機械学習要素を訓練するために教師なし学習が利用され得る。教師なし学習方法は、主成分分析及び/又はクラスタ分析を利用して、出力のための確率分布を入力データの特性(例えば、既知の/特定済み出力に関連付けられ得る)に基づいて推測することを試み得る。
【0053】
機械学習要素の詳細及びそれをどのように訓練するかは、処理される入力データの種類を説明するように変化し得る。異なる種類の機械学習要素は、異なるタスク又は異なる種類のデータの処理に適し得ることがわかるであろう。また、データは、異なる機械学習要素を利用するために異なる形態にキャストし得ることもわかるであろう。例えば、標準ニューラルネットワークは、例えば、得られた測定値からの経験値等、数値入力データを処理するために使用可能である。画像を処理するために、畳み込みニューラルネットワークが使用され得、これは、1つ又は複数の畳み込み層を含む。数値データは、例えば、画像の形態で数値データを表現するラスタライゼーションの形態を使用することにより、画像の形態にキャストされ得る。結果として得られた画像が適合しなければならない標準的ファイルフォーマットが使用され得、その後、畳み込みニューラルネットワークは測定値を表す画像(測定値自体の数値ではない)を分析するように訓練され(使用され)得る。その結果、特定の種類の機械学習要素は限定的とみなされるべきではない。機械学習要素は、特定の種類の入力データを処理して所望の形態の出力データを提供するようになされた何れの要素(例えば、その指定されたタスクにおいて改良されたパフォーマンスを提供するように訓練/改良された要素)でもあり得る。
【0054】
製品中に存在する標識材料の割合の定量化により、存在する標識材料の量の特定の値が提供され得、これはその値における推定信頼レベル又は誤差を含み得る。幾つかの好ましい実施形態において、製品中に存在する標的材料の割合を定量化するステップは、その割合が数値の範囲内に入ることを示すステップを含み得る。例えば、定量化ステップは、製品が標的材料の閾値割合未満、例えば標的材料の100%未満を含むことを示すステップを含み得る。
【0055】
参照データは、例えば、合成信号の取得に関連して前述したように、参照材料から何れの適当な方法でも収集され得る。幾つかの実施形態において、参照データは材料の標識中に収集され得、この場合、材料ストリームはルミネッセントマーカで標識され、その後、標識プロセス中、例えば標識プロセスの下流で材料をスキャンするように構成されたインライン検出器を使用してスキャンされて、参照データが収集される。参照データは、材料にルミネッセントマーカで標識し、材料の加工に追従して、他の材料とブレンドすること又は材料を異なる形態に、例えば原繊維をヤーン若しくは布に、又は溶融プラスチックストリームをフィラメント、繊維、布若しくは成形製品に加工することにより加工した後にそれをスキャンすることによって収集され得る。
【0056】
本発明の方法は、標識材料を1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて、且つ標識材料を含む1つ又は複数の参照材料に関連付けられた参照データを自動的に選択して、製品から収集された分光データに基づいて特定するステップを含み得る。標識材料の割合の定量化が参照信号との直接的な比較によって行われるか、又はパターン認識若しくは機械学習要素により間接的に行われるかを問わず、定量化は、分析中の特定の製品に関する適切な参照データを特定することによって改善できる。例えば、これは、分析中の特定の材料に関する、合成信号との比較のための分光及び/又はイメージングデータを含む参照データを選択することを含み得る。合成信号にパターン認識又は機械学習要素が適用される場合、これは、パターン認識又は機械学習要素への入力として別の可変値又は特定の標識材料及び/若しくは標識材料が混合される材料に関する特定のパターン認識又は機械学習要素を選択させるプロンプトを含めることを含み得る。
【0057】
標識材料を同定するステップは、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた特定のスペクトルシグネチャを特定すること、例えば照射後の特定の波長でのルミネッセント応答及び任意選択的にルミネッセンス寿命を検出することによる1つ又は複数のルミネッセントマーカの特定名に基づくことが適当であり得る。特に、標識材料は、標識材料に固有のルミネッセントマーカ又はルミネッセントマーカの組合せの存在により同定され得る。広い範囲の異なるルミネッセントマーカを使用し、且つ異なるマーカを相互に異なる割合で組み合わせて使用することにより、多数の固有のシグネチャを特定のルミネッセント化合物の群から生成され得る。
【0058】
ルミネッセントマーカの異なる組合せにより、標識材料の各種の特性を特定し得る。特に、特定のルミネッセントマーカの存在は、標識された材料、例えばオーガニックコットン又は再生利用PETを同定し得る。追加的なマーカの存在及び割合は、したがって、標識時間、国、製造者若しくは工場の点での原産地等の別の上方を示し得るか、又はルミネッセントマーカは、特定の時間フレーム内に特定の場所で製作された材料の特定のバッチを示し得る。法医学的鑑定に用いられるマーカも添加され得、これは、分光法では検出できず、研究室環境中で材料を物理的に処理すること、例えば材料を燃焼させるが又は他に破壊して、ごく低濃度で存在するマーカを検出することによってのみ検出することができる。このようにして、標識材料が不正な方法でブレンドされていたことが発覚した場合、特定のサプライチェーンを特定し、調査し得る。
【0059】
したがって、方法は、1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データを使用して製品を標識材料の所定の部分に関連付けるステップを含み得、この場合、所定の部分は、特定の時間フレーム内に特定の場所で製造された材料の特定のバッチからの材料を含み得るか、又は一般に特定の場所、製造者若しくは時間フレームからの材料を含み得る。
【0060】
幾つかの例において、分光データは、追加的に、ルミネッセントマーカに関連付けられた情報以外に、標識材料の原産地等の別の特性を特定するために使用され得る。例えば、マーカは、標識材料がオーガニックコットンか再生利用綿であると同定し得るものの、製品からの分光データは、例えば、その化学的組成の違いからその供給源を特定することにより、標識材料をさらに特徴付けるために使用され得る。
【0061】
パート(ii)の分光データは、合成信号の一部を形成する分光データであり得るか、又は例えば定量化ステップに使用される合成信号がイメージングデータを使用する場合、1つ又は複数のルミネッセントマーカを特定する分光データは、合成信号とは関係なく取得され得る。例えば、好ましくは製品の複数の部分から得られる合成信号の分光データは、存在するルミネッセントマーカを特定する(及びその結果、標的材料を同定する)ためと、定量化ステップのための両方に使用され得る。代替的に、定量化が、好ましくは製品の複数の部分に関係するイメージングデータを含む合成信号に基づいて行われる場合、分光データは、標的材料を、定量化のためではなく、1つ又は複数のルミネッセントマーカのスペクトルに基づいて同定するために取得され、使用され得る。
【0062】
方法は、製品から収集された分光データに基づいて標識材料を含む1つ又は複数の参照材料に関連付けられた参照データを自動的に選択するステップを含み得、定量化ステップは、合成信号及び前記参照データに基づく。したがって、特定されたルミネッセントマーカで標識された材料を含む参照材料に対応する参照データが自動的に選択され得、例えば標識材料が綿であると同定された場合、標識綿と他の材料、例えば非標識綿又は他の合成若しくは非合成繊維との混合物に関する参照データが選択される。このようにして、定量化に使用される参照データを改良して、定量化の精度及び/又は効率を改善でき、またユーザ入力を不要にすることが可能であり、これは、定量化がサプライチェーン内の技術系以外のユーザにより行われる場合に有利である。
【0063】
組成のばらつきは、これらが存在する材料の種類に対応する参照データを使用することによって特定できれば説明され得ることがわかっている。しかしながら、製品のサプライチェーン内の各種の地点で訓練されていないユーザがこのようなばらつきを説明するか、又は適当な参照データを特定できることは、現実的ではない。したがって、特定の標識材料は、単純な検査ではわからない場合がある性質を有する他の材料とブレンドされた場合の定量化方法を改善することが有利となる可能性がある。製品中に存在する標識材料の割合を定量化するために使用される参照データを、製品から収集された分光データに基づいて選択することにより、ルミネッセント信号内のばらつき、例えば変化する背景スペクトル又はマーカ分布のばらつき等に関連付けられる問題が回避され得る。製品中に存在する標的材料の割合を定量化する際に用いられる参照データを製品から収集された分光データに基づいて選択することにより、定量測定の精度と信頼性が改善され得る。何れの特定の理論にも拘束されることは望まないが、収集されたデータのばらつき、例えば異なる材料が標識材料と混合された場合の背景スペクトル又は材料の加工後のマーカの分布のばらつきを説明し、適当な参照データを特定することにより、定量化を幅広い加工済み製品について実行することができ、製品の組成及び特性を手作業で特定する必要がない。
【0064】
好ましい実施形態において、参照データを自動的に選択するステップは、標識材料と混合された1つ又は複数の材料の特定名及び/又は量を特定し、その1つ又は複数の材料に関連付けられた参照データを選択するステップを含む。前記1つ又は複数の材料の特定名を特定するステップは、材料の化学的組成に関する情報を特定するステップを含み得る。例えば、製品から収集された分光データは、製品が主として標識材料と同じ材料を含むことを特定するために使用され得、このような混合物、例えば非標識綿と混合された標識綿又は対応する非標的プラスチックと混合された標識再生利用プラスチックに対応する参照データが選択され得る。他の例において、製品から収集された分光データは、製品が標識材料と別の材料との混合物を含むことを特定するために使用され得、これは、例えば、綿等の天然繊維材料がポリエステル等の合成繊維と混合される場合である。製品中の異なる材料の相対量も特定され得、例えば材料がPETのように50%の綿と50%のポリエステルであることを特定する。これは製品中の成分の指標を示し得るものの、これは供給源又はそのうちのどの程度の量が標識されているかを特定しない。例えば、標識材料と実質的に物理的に同じ材料を特定の割合で含むことが特定され得るが、ルミネッセントマーカを使用する定量化が行われなければ、その材料の全部が明示された通りの品質又は原産地のものであるか否かはわからないであろう。
【0065】
製品から収集された分光データは、代替的又は追加的に、製品が特定の特性を有する添加物、例えば製品上の染料若しくは顔料又は機能的コーティング、抗菌剤及びその他を含むことを特定するために使用され得る。このような添加物は、比較的少量で存在し得るが、有意なスペクトルシグネチャを有し得、例えば、衣類において日常的に使用される染料又は顔料は、有意なスペクトル応答を示し得るが、これは、定量化を行う前にスペクトルシグネチャを特定することにより説明できる。このような添加物又は顔料の例には、ポリレン系添加物/顔料、酸化チタン、カーボンブラック及び有意なスペクトル応答を有する他のあらゆる材料が含まれる。特に、光学的に非常に吸収率の高いカーボンブラックが製品に添加されると、これはルミネッセントマーカの信号と干渉することがわかっている。したがって、製品から収集された分光データは、製品がカーボンブラックを含むことを特定し、カーボンブラックの存在に関連する参照データを選択するために使用され得る。
【0066】
幾つかの例において、製品は、複数の標識材料と、その結果、複数の固有のルミネッセントマーカ又はマーカの組合せを含み得る。例えば、製品は、標識された再生利用綿と標識された再生利用PETの混合物を含み得る。したがって、製品から収集された分光データは、製品中の第二の標識材料を同定するために使用され得、第二の標識材料の特定名は関連する参照データを選択するために使用される。
【0067】
したがって、製品中に存在する標識材料の割合を定量化する際に使用される参照データを製品から収集した分光データに基づいて自動的に選択することにより、定量測定の精度と信頼性が改善され得る。これにより、製品のサプライチェーン内の様々な地点の訓練を受けていないユーザが、特に何れの材料が一緒にブランドされ得るかを直ちに知り得ない場合、製品組成中のばらつきを説明し、適当な参照データを特定する必要性を回避できる。例えば、製品が標識されたオーガニックコットンと合成繊維又は非オーガニックのコットンとのブレンドであるが、製品が100%オーガニックコットンであるとして報告されている場合、サプライチェーンの上流の当事者が、何れの材料が製品中にブレンドされ得るかを認識することは、不可能であり得る。
【0068】
参照データを自動的に選択する際に使用するための、製品から収集された分光データは、合成信号の一部を形成する分光データであり得るか、又は例えば定量化ステップに使用される合成信号がイメージングデータを使用する場合、参照データを自動的に選択するために使用される分光データは、合成信号とは別に取得され得る。例えば、参照データを自動的に選択する中での使用のために使用される分光データは、パート(ii)で標識材料をルミネッセントマーカに基づいて同定するために使用されるものと同じ分光データを含み得るか、又は好ましくは製品の複数の部分から得られた合成信号の分光データは、定量化ステップのため及び参照データの自動的選択での使用の両方のために使用され得、またステップ(ii)で標識材料を同定するためにも使用され得る。代替的に、定量化が、好ましくは製品の複数の部分に関するイメージングデータを含む合成信号に基づいて行われる場合、分光データは取得され、パート(ii)のため及び参照データを自動的に選択するために使用され得、定量化のためには使用されない。
【0069】
したがって、幾つかの好ましい実施形態において、参照データを自動的に選択する際に使用するための分光データは、合成信号の分光データにおける背景信号を含み得る。参照データを自動的に選択する際の使用に使用される分光データ好ましくは、電磁スペクトルの赤外領域、例えば約780nm~2500nmの近IR波長から収集されるデータを含み得る。その結果、合成信号は電磁スペクトルの赤外領域から収集された分光データを含み得、これは、その後、参照データを自動的に選択するため及び任意選択的にパート(ii)にも使用される。赤外分光法を用いた材料の同定は、当技術分野で知られており、例えばAUTEX Research Journal,Vol.19.No.2,June 2019に記載されている。
【0070】
参照データを自動的に選択するため及びパート(ii)に使用される分光データが合成信号の分光データを含む場合、パターン認識プロセスにより標識材料を同定し、参照データを選択し、製品中の標的材料の割合を定量化し得る。例えば、参照データを選択するステップは、パターン認識又は機械学習要素がルミネッセントマーカのルミネッセント信号を含む背景スペクトルの特徴を特定し、存在する材料をそのスペクトルに基づいて分類してから、標識材料の割合をルミネッセントマーカの信号に基づいて定量化するステップを含み得る。
【0071】
他の好ましい実施形態において、参照データを自動的に選択するために使用される分光データは、合成信号の分光データと異なる追加の分光データを含む。例えば、方法は、第一の分光及び/又はイメージングデータを合成信号の一部として取得するステップ及び参照データを自動的に選択する際に使用するための第二の分光データをさらに取得するステップを含み得る。例えば、方法は、標識材料内の1つ又は複数のルミネッセントマーカの1つの波長範囲のルミネッセント信号に関連付けられた分光及び/又はイメージングデータを取得するステップと、異なる波長範囲内の分光データを取得するか、又は参照データを自動的に選択する際の使用に異なる技術を使用するステップを含み得る。特に、方法は、参照データを自動的に選択する際に使用するための製品からの近IR又はラマン分光データを取得するステップを含み得る一方、合成信号の分光及び/又はイメージングデータは、電磁スペクトルの可視領域(例えば、280~1100nm)から収集されたルミネッセンススペクトルに関係し得る。したがって、参照データを自動的に選択する際に使用する分光データを取得するステップは、合成信号のためのデータの収集に使用され得る検出器とは別の第二の検出器で製品をスキャンするステップを含み得る。例えば、第二の検出器は、当技術分野で知られているような赤外線又はラマン分光計を含み得る。
【0072】
好ましい実施形態において、方法は、パート(ii)で使用された分光データと異なる第二の分光データを製品から取得し、前記第二の分光データを製品の全体的な材料組成を特定するため、又は標識材料と混合される1つ又は複数の材料の特定名及び/又は量を特定するために使用するステップを含み得る。第二の分光データは、したがって、定量化又は参照データ選択に使用されなくてよい。例えば、近IR又はラマン分光データ、好ましくは近IR分光データを製品から取得し、前記データを標識材料と混合される1つ又は複数の材料の特定名及び/又は量を特定するために使用するステップである。例えば、1つ又は複数のルミネッセントマーカは、標識材料を同定するために使用され得、第二の分光計、例えば赤外線又はラマン分光計からの第二の分光データは、製品中に存在する追加の材料を同定するために使用され得る。理解されるように、このように第二の分光データを使用することにより、好適には、製品の全体的組成、すなわち標識された材料の存在だけでなく、追加の材料があり、これらの材料が標識材料と異なる場合、その存在が特定される。
【0073】
製品中に存在する標識材料の割合を定量化することに加えて、製品中に存在する材料を同定することにより、標識材料の割合が予想より少ない場合、標識材料とブレンドされた材料の特定名が特定され得る。例えば、製品が基本的に綿からなるとして特定されているものの、存在する標識綿が予想より少ない場合、ブレンドの根源が同定され得る。同様に、製品がPETと標識綿の混合物を含むと予想され、標識綿の含有量が予想より低い例では、存在する綿が過剰か、PETが過剰かは、プロセスのどの段階で不正なブレンドが行われたか(すなわち、ブレンドが追加のPETと行われたか、又は追加の標識されていない綿と行われたか)を特定するのに役立ち得る。
【0074】
したがって、幾つかの好ましい実施形態において、合成信号は(i)1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号を検出するための第一の分光計を使用して収集された分光データ、(ii)ルミネッセントマーカのイメージングのためのカメラを使用して収集されたイメージングデータ、及び(iii)標識材料と混合された1つ又は複数の材料の特定名及び/又は量を特定するための、近IR分光計等の第二の分光計を使用して収集された分光データを含み得る。例えば、合成信号は、第一の分光計、カメラ及び第二の分光計を含む、前述のような固定又はインライン装置を使用して収集され得る。移動式装置において、各分光計/カメラは、独立して移動されるか、又は一緒に移動され得、例えば、分光計及びカメラは、製品上で同時に移動するために相互に固定され得る(又は固定された装置において同時にスキャンする場合も同様)。
【0075】
参照データを自動的に選択する際の使用のための分光データを製品の具体的な材料及び対応する参照データを特定するために使用できない場合、例えば対応する参照データが入手できない場合、参照データを自動的に選択するステップは、分析中の製品に最も密接に適合する参照データを選択するステップを含み得る。例えば、異なる顔料又は染料は、異なる全体的スペクトル応答を有するが、それでも、同じ色の顔料又は染料は、十分に類似したスペクトルを有し得るため、一方に関係する参照データを他方にも使用して、定量測定を改善し得る。幾つかの実施形態において、参照データを自動的に選択するための分光データを製品の具体的な材料及びそれに関連する参照データの特定に使用できず、合成信号がイメージングデータを含む場合、このイメージングデータのみを使用し得るか、又は定量化ステップでより高い重みをそのイメージングデータに適用し得る。このようにして、変化する背景スペクトルが定量化に与える影響が軽減され得る。
【0076】
参照データは、パート(ii)における、標識材料が例えば特定の供給源、例えばサプライヤ、地域、工場又はバッチに関連付けられる標識材料の所定の部分を含むとの判断に基づいて選択され得、その供給源又はバッチからの参照材料で行われた測定に対応する参照データが定量化で使用され得る。代替的に、参照データは、製品中の材料の組成のみに関連付けられ、標識材料の所定の部分に特に関連付けられない参照データであり得る。参照データは、標識材料の所定の部分に基づくデータと、分光データに基づいて選択される一般的データとの組合せを含み得る。例えば、参照データは、分光データに基づいて選択され、標識材料の供給源又はバッチに関連する情報に基づいて精製され得る。特定のバッチが標準的材料と異なる特性、例えば材材料組成又はルミネッセントマーカの濃度の違いを有することが知られている場合、これは、定量化で使用される参照データをより改良するために使用され得る。
【0077】
幾つかの例において、定量化で使用される参照データは、材料の異なる形態間、例えば材料のサプライチェーンの異なる段階間の既知の関係の推定に基づくモデルデータを含み得る。したがって、参照データは、幾つかの形態の材料に関して収集された分光データにのみ関係し得、材料のさらに加工された又はより加工されていない形態との既知の関係(例えば、パターン認識による)に基づいて外挿法により推定され得る。このようにして、追加的な参照データは材料に標識する時点で1回収集されて、その材料の下流の形態に、例えば原綿からヤーン、さらに布に又はプラスチックの押出し機からのストリームからフィラメント、さらに布又は特定の成形製品に外挿法によって推定され得る。同様に、定量化において使用される参照データは、分光及び/又はイメージングデータを収集するために使用される異なる器具間の既知の関係の外挿法に依る推定に基づくモデルデータを含み得る。例えば、インライン検出器は、第一の分解能及び/又はスペクトル範囲を有するスペクトル又は画像を収集し得る一方、ハンドヘルド検出器等の異なる検出器は、第二のより低い分解能及び/又はより狭いスペクトル範囲を有するスペクトル又は画像を収集し得る。モデル参照データは、したがって、1つの検出器からのデータを外挿法により推測して、それを第二の異なる検出器からのデータと比較するために使用され得、例えば、参照データは、インライン又はロボット検出器によって自律的に収集され得るが、ハンドヘルド検出器は、小売店等のユーザが製品を分析するために利用し得る。
【0078】
本明細書に記載されているように、標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、マーカは、標識材料中に何れの適当な方法でも組み込まれ得、マーカを組み込む方法は、標識材料の性質に基づいて様々であり得ると理解されたい。例えば、ルミネッセントマーカを取り込むステップは、繊維中への組込み、事前標識された繊維のばら繊維への混合、繊維のコーティング、マーカ物質の糸、ヤーン又はフィラメントへの組込み、糸、ヤーン又はフィラメントへのコーティング、織布又は不織布のコーティング、塗布又は染色等による材料のコーティング、ラッカリング、回転塗装、噴霧塗装、熱溶射、可塑化、陽極又は陰極浸漬塗装等の浸漬塗装、溶融めっき、ほうろう加工、スロットノズルコーティング、ナイフコーティング、スプレイコーティング、ローラコーティング、カスケード又はカーテンキャスティングによる多層コーティング、ゾルゲル、粉末コーティング、ドラムコーティング、シンタリング、インク、ニス、プライマ又は他の印刷媒質を介した組込み等による印刷、3D印刷用送給材料中への組込みを含み得る。
【0079】
マーカは、製造プロセス中に標識対象の材料に組み込まれ得、この場合、プロセス中の固有の材料均質化がマーカの分散を支援する。例えば、天然繊維の場合、マーカは、生の段階で繊維に組み込まれ得、開俵等のその後のプロセスがマーカを材料中に分散させることを促進するか、又はマーカは、紡織中に追加されて、標識ヤーンが提供され得る。プラスチック材料の場合等の他の例では、マーカは溶融ストリームに、例えばプラスチックのペレット又はフィラメントがそこから押し出され得る押出し機内にマーカを投入する(例えば、液体マスタバッチ投入システムを使用)ことにより添加され得る。
【0080】
ルミネッセントマーカは、材料に直接添加され得るか、又は担体材料に組み込まれて、それが後に材料に組み込まれ得る。例えば、繊維材料の場合、ルミネッセントマーカは、標識される材料と同じ又は実質的に同じ材料の銀中に組み込まれ、銀は、その後、製造プロセス中に標識対象の材料の繊維に組み込まれる。プラスチック材料の場合、マスタバッチ投入が使用され得、マーカは、同じプラスチック又は他の樹脂の粒子中に封入されるか若しくはその上に被覆されるか、又は適当な溶剤(液体マスタバッチ)中に分散されて、標識対象の材料の溶融ストリーム中に組み込まれる。
【0081】
マーカは、検出を可能にするのに適する一方、標識材料の特性を保持するのに適した何れの濃度でも標識対象の材料に添加され得る。幾つかの好ましい実施形態では、1000ppm以下の濃度、例えば500ppm以下又は100ppm以下の濃度におけるものである。材料に低濃度マーカで標識することにより、その存在を知らないか又は適当な分光装置がない状態でマーカが分析又は検出されることがより困難となり得る。このようにして、標識のセキュリティが向上され得る。マーカの濃度は標識される材料及び/又は例えばサプライチェーン後の段階で添加されることが予想され得る添加物又は他のブレント材料と共により容易に特定可能であるより強力な信号を提供するため等、その所期の用途によって変化し得る。したがって、幾つかの実施形態において、例えば、2000ppmまで又は5000ppmまでのより高いマーカ濃度が使用され得る。
【0082】
ルミネッセントマーカは、例えば、前述のように担体内に配置されるか又は担体を用いずに標的材料に直接添加される等、何れの適当な形態でもあり得る。幾つかの好ましい実施形態において、標識材料中のルミネッセントマーカの粒径分布は、1,000μm以下、好ましくは100μm、例えば10μm以下のD90であり、及び/又は幾つかの実施形態では、ルミネッセントマーカの粒径分布は、少なくとも0.1μm、好ましくは少なくとも1μm、例えば少なくとも10μmのD10である。D90/D10は、明示された測定値より低い分布中の粒子の割合を指すことがわかるであろう。粒径分布は、何れの適当な方法でも、例えばふるい分け又は光散乱によって(例えば、ISO 13320:2020による)測定され得る。マーカは、何れの適当な形状でも存在し得、幾つかの例では実質的に球形粒子の形態であり得る。
【0083】
ルミネッセントマーカは、製造中に標識材料に例えば自動投入システムによって継続的に添加され得、それにより標識材料中のマーカの濃度が制御される。幾つかの好ましい実施形態において、標識対象の材料へのマーカの添加は、マーカのルミネッセント信号を分析するように配置された下流の検出器からのフィードバックに少なくとも部分的に基づいて行われ得る。このようにして、標的材料中のマーカの一定の濃度が実現される。
【0084】
好ましい実施形態において、方法は、製品中に存在する標識材料の定量化された割合に対応する情報を、製品に関連付けられた分散型台帳へのエントリとして自動的にアップロードするステップをさらに含み得る。例えば、この情報は、製品中で特定された標的材料の割合の値又は範囲を含み得るか、又は情報は標識材料の割合が、サプライヤにより明示された値と一致するか否か、又は標識材料の割合が閾値より低いか否かの指標を含み得る。
【0085】
分散型台帳により、複数の位置及び/又は当事者に分散された情報の記録が提供される。本明細書に記載のルミネッセントマーカを使用することにより、標識材料が特定され、サプライチェーン及び材料の加工中に追跡され得る。したがって、分散型台帳は、標識材料の移動及び加工を、何れの単独の当事者によってもコントロールされない方法で追跡するために使用され得る。分散型台帳は安全な分散型台帳であり得、その場合、台帳に保存されたデータは情報をアップロードする当事者が編集できないか、又はこのような変更の全履歴が台帳に記録される。分散型台帳は、好ましい実施形態において、プライベート又はパブリックであり得るブロックチェーンシステムであり得る。
【0086】
材料に関する情報は、サプライチェーン内の様々な段階の当事者によってアップロードされ得、これは、例えば、材料が添加物と何れかの方法でブレンドされるか、又は材料の物理的変形、例えば紡績、布の形成、プラスチックの押出し及びフィラメント及び布の形成若しくは成形等によって材料に加工されたか否か等である。しかしながら、安全な分散型台帳が使用される場合でも、アップロードされる情報はその情報源でのレベルと同等に信頼できるものにすぎず、情報がアップロードされたことがさらに検証されない場合又は間欠的な検証のみが行わる場合、情報は、例えば、サプライチェーンのさらに下流の当事者にそれを報告することなく、材料をより安価な材料と混合しようとして偽って報告され得る。
【0087】
このように、材料をスキャンし、標識材料の割合を定量化し、定量化情報を分散型台帳に自動的にアップロードすることにより、製品に関する情報の偽装を防止することが可能となるが、これは分散型台帳にアクセスできる各当事者には、標識材料を含む製品が明記された通りであるか否かがわかるからである。これをサプライチェーンの複数の時点で繰り返し、標識材料の他の材料とのあらゆる混合及びどの割合かの詳細な記録を提供することができる。アップロードは自動的であるため、定量化に関する情報は、台帳にアクセスできる他の当事者にその情報が提供される前は操作できない。したがって、定量化情報を分散型台帳に自動的にアップロードすることは、好ましくは、情報の操作を防止する機械対機械の通信である。例えば、製品内の標識材料の割合を本発明の方法により定量化するシステムは、インタネット接続等の電子通信能力を有し、定量化情報を自動的にアップロードするように構成され得る。
【0088】
好ましい実施形態において、分散型台帳への自動アップロードは、製品のプロセスフローのインラインスキャニングと共に使用され得る。このようにして、製品の品質と特定名が継続的に検証され、報告され得、訓練を受けていないユーザがそれらの材料の分析を行う必要がなく、これは、そのように行う希望があったとしても、不経済であるか又は技術的に不可能であり得る。
【0089】
定量化情報が分散型台帳にアップロードされるか否かを問わず、標識材料の定量化は、サプライチェーンの各段階で実行でき、定量化情報を自動的に分析し、記録することができる。これは、訓練を受けていないユーザが材料を分析する必要も、時間のかかる研究室での試験も必要とせずに行うことができ、したがってより効率的に継続的に実行できる。
【0090】
定量化情報を分散型台帳にアップロードするステップは、標識材料又は製品に関連付けられたトークンを生成するか、又はそこに情報を追加するステップを含み得る。標識材料は、標識プロセス中又はその下流において、分散型台帳に関連付けられる複数のトークン、例えばブロックチェーントークンに関連付けられ得る。トークンは、したがって、前述のような定量化情報を含むように自動的に生成されるか又はそれにより更新され得る。例えば、標識される材料又はすでに標識された材料は、スキャンされ、材料の定義された各部分(例えば、各トン)がトークンに関連付けられ得る。材料が第三者の販売又は譲渡されるとき、関連するトークンも同時に譲渡できる。第三者は、したがって、材料をスキャンして、存在する標識材料の割合を定量化でき、人が介入せずに、標識材料に関連付けられたトークンを定量化情報で自動的に更新できる。このようにして、ある当事者が材料及び関連するトークンを受け取ると、サプライチェーン内の材料の履歴を確認できる。
【0091】
トークンは、サプライチェーンの各段階で更新可能である、例えば供給源及びサプライチェーンに関する追加情報、例えば前サプライヤ、地域、工場又はバッチだけでなく、各段階で使用されたエネルギ若しくは資源の量又は使用された労働力の種類等の関連情報(例えば、児童労働等の非倫理的労働慣行が受け取った材料のサプライチェーンで回避されていることを確認するため)も含み得る。トークンか関連付けられる情報は、最終消費者にとっても、例えば標識材料を含む製品を購入する消費者をその製品中の材料のサプライチェーンに関する情報に案内するために使用できるQRコード等のスキャン可能な識別子を含めることにより、アクセスできるようにされ得る。材料がスキャンされたときにトークンの情報を自動的に更新することにより、材料の組成の情報の偽装を回避でき、材料の受領者は、その材料が製造中に不明な供給源からの材料とブレンドされていないことについてより強く確信できる。
【0092】
幾つかの好ましい実施形態において、標識材料の定量化された割合が予想値、例えば分析前に製品について規定されていた値と一致しない場合、警告信号が使用者に提供され得る。例えば、電子メール、モバイルデバイスの通知、SMS又はこれと同様のもの等の電子通信を所定の受信者又は受信者のリストに送信し得る。このようにして、標識材料の予想割合との不一致が特定されると、さらに調査するためにこれに標識することができる。
【0093】
また別の態様は、製品中に存在する標識材料の割合を定量化するためのシステムを提供し、製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、システムは、
製品に関連付けられた合成信号を取得するように構成されたコントローラであって、合成信号は、製品から収集された分光データ及びイメージングデータを含み、分光及びイメージングデータは、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる、コントローラ
を含み、コントローラは、
(i)標識材料を、1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定することと、
(ii)製品中に存在する標識材料の割合を合成信号の前記イメージングデータに少なくとも部分的に基づいて定量化することであって、製品の各画像内で検出されるルミネッセントマーカの相対位置及び/又は数に少なくとも部分的に基づく、定量化することと
を行うようにさらに構成される。
【0094】
前述のように前記システムの要素は、実質的に本明細書中で定義したものであり得ると理解されたい。
【0095】
コントローラは、実質的に本明細書中で定義した方法を実行するように構成され得、製品、標識材料、ルミネッセントマーカ、合成信号、分光及び/又はイメージングデータ、参照データ及び前記システムの他の全ての要素は、実質的に本明細書中で前述したものであり得ると理解されたい。
【0096】
特に、システムは、コントローラに通信可能に連結された検出器をさらに含み得、検出器は、好ましくは、製品の複数の異なる部分をスキャンして、標識材料に関連付けられた1つ又は複数のルミネッセントマーカを検出することにより、合成信号を提供するように構成される。検出器は、本明細書中で前述した何れの適当な検出器も含み得る。例えば、検出器は、製品のプロセスフローをスキャンするためのインライン検出器又は移動式検出器、例えばハンドヘルド検出器若しくはロボティックシステム等、製品の表面の上で検出器を移動させるように構成されたシステムを含み得る。
【0097】
好ましい実施形態において、検出器は、1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号を検出するための第一の分光計、材料中のルミネッセントマーカの画像を収集するためのカメラ及び標識材料と混合された1つ又は複数の材料の特定名及び/又は量を特定するための第二の分光計、例えば近IR分光計を含む移動式又はインライン装置を含み得る。移動式装置の一部として、各分光計/カメラは、独立して移動され得るか又は一緒に移動され得、例えば、分光計及びカメラは、製品上で同時に移動させるために相互に固定され得る(又は固定された配置において同時にスキャンするために同様に配置される)。
【0098】
代替的に、システムは、分光及び/又はイメージングデータ及び/又は合成信号をリモート検出器又は前記データを記憶するメモリから受信するための通信手段を含み得る。システムは、参照データのデータベースを記憶するメモリ又はサーバ等のリモートシステムから参照データにアクセスするための手段をさらに含み得る。
【0099】
別の態様は、製品から分光テータ及びイメージングデータを取得するためのスキャニングシステムを提供し、システムは、
製品中に存在する1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号を検出するための第一の分光計と、
製品中のルミネッセントマーカの画像を収集するためのカメラと、
標識材料と混合された1つ又は複数の材料の特定名及び/又は量を特定するための、近IR分光計等の第二の分光計と
を含む。
【0100】
スキャニングシステムは、製品のインラインスキャンのために構成されるか、又は第一の分光計、カメラ及び第二の分光計を製品の表面にわたって移動させて、製品の複数の部分をスキャンするように構成され得る。好ましくは、スキャニングシステムは、第一の分光計、カメラ及び第二の分光計を製品の表面にわたって移動させるように構成される。例えば、スキャニングシステムは、運動制御システム、例えば分光計及びカメラを製品の表面の上で移動させるように構成された運動制御フレームを含み得る。スキャニングシステムは、スキャン対象の製品を固定するためのサンプルホルダも含み得る。
【0101】
スキャニングシステムは、幾つかの例において、前述のように製品中に存在する標識材料の割合を定量化するように構成されたコントローラをさらに含み得る。
【0102】
前述のように、組成のばらつきは、存在する材料の種類に対応する参照データを使用することによりこれらが同定されれば説明され得ることがわかっている。しかしながら、製品のサプライチェーンの様々な時点で訓練を受けていないユーザがこのようなばらつきを説明するか、又は適当な参照データを特定できることは、現実的ではない。そのため、したがって、特定の標識材料が、単純な検査からではわからない場合がある性質を有する他の材料とブレンドされるときの定量化方法を改良する方法が求められている。
【0103】
製品中に存在する標識材料の割合を定量化する際に使用される参照データを製品から収集された分光データに基づいて選択することにより、ルミネッセント信号のばらつき、例えば可変的な背景スペクトル又はマーカの分布のばらつきに関連する問題が回避され得ることがわかっている。
【0104】
したがって、また別の態様は、製品中に存在する標識材料の割合を定量化する方法を提供し、製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、方法は、
(i)製品に関連付けられた合成信号を取得するステップであって、合成信号は、製品から収集された分光及び/又はイメージングデータを含み、分光及び/又はイメージングデータは、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる、ステップと、
(ii)標識材料を、1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定するステップと、
(iii)製品から収集された分光データに基づいて、標識材料を含む1つ又は複数の参照材料に関連付けられた参照データを自動的に選択するステップと、
(iv)製品中に存在する標識材料の割合を前記合成信号及び前記参照データに基づいて定量化するステップと
を含む。
【0105】
製品中に存在する標識材料の割合を定量化する際に使用される参照データを製品から収集された分光データに基づいて選択することにより、定量測定の精度と信頼性が改善され得る。何れの特定の理論にも拘束することは望まないが、収集されたデータのばらつき、例えば異なる材料が標識材料と混合される場合の背景スペクトルの違い又は材料を加工した後のマーカの分布のばらつきを説明し、適当な参照データを特定することにより、定量化を広い範囲の加工済み製品について実行でき、製品の組成及び特性を手作業で特定する必要がないと考えられている。
【0106】
使用される合成信号は、前述のように分光及び/又はイメージングデータを含み得る。例えば、幾つかの実施形態において、合成信号は、分光データのみを含むか、イメージングデータを含まないか又はイメージングデータのみを含み、分光データを含まなくてもよい。幾つかの実施形態において、前述のように、合成信号は分光及びイメージングデータの両方を含み得、これらは、直接相関し得るか又は少なくとも部分的に独立し得る。
【0107】
別の態様は、製品中に存在する標識材料の割合を定量化するためのシステムを提供し、製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、システムは、
製品に関連付けられた合成信号を取得するように構成されたコントローラであって、合成信号は、製品から収集された分光及び/又はイメージングデータを含み、分光及び/又はイメージングデータは、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる、コントローラ
を含み、コントローラは、
(i)標識材料を、1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定することと、
(ii)製品から収集された分光データに基づいて、標識材料を含む1つ又は複数の参照材料に関連付けられた参照データを自動的に選択することと、
(iii)製品中に存在する標識材料の割合を前記合成信号及び前記参照データに基づいて定量化することと
を行うようにさらに構成される。
【0108】
前記システムの要素は実質的に本明細書中ですでに定義したものであり得ると理解されたい。
【0109】
加えて、前述のように、製品の複数の部分に関するデータを含む合成信号を使用することにより、分析は、個々のスペクトル又は画像内のばらつき(例えば、マーカの強度又は分布における)を分析するだけでなく、参照データとの比較のためのさらに多くの可変値を追加することになる、同じ製品の複数の部分から取得した一連のスペクトル及び画像間のばらつきを考慮することにより、改善され得る。
【0110】
したがって、また別の態様は、製品中に存在する標識材料の割合を定量化する方法を提供し、製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、方法は、
製品に関連付けられた合成信号を取得するステップであって、合成信号は、製品の複数の異なる部分から収集された分光及び/又はイメージングデータを含み、分光及び/又はイメージングデータは、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる、ステップ、
製品中に存在する標識材料の割合を、前記合成信号と、標識材料を含む1つ又は複数のそれぞれの参照材料の複数の異なる部分から収集された分光及び/又はイメージングデータを含む1つ又は複数の合成参照信号とに基づいて定量化するステップ
を含む。
【0111】
前述のように、マーカの分布を制御して、マーカを標識材料中に均一に分散させることが意図される場合でも、分散のばらつきが残り得る。加えて、標識材料が別の材料と混合されるか又は物理的にさらに加工されると、当初の均一な分布は、崩壊し得る。合成参照信号を使用して製品中に存在する標識材料の割合を定量化することにより、データ内のさらに多くのばらつきの次元が分析に含められ得、それにより定量化の精度が改善され、製品全体を通したマーカの分布のばらつきがよりよく説明され得る。
【0112】
したがって、また別の態様は、標識材料に関連付けられた1つ又は複数の合成参照信号を、製品中に存在する標識材料の割合を定量化するために生成する方法を提供し、方法は、
(i)既知の割合の標識材料を含む参照材料を提供するステップであって、標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有する、ステップ、
(ii)参照材料の複数の異なる部分をスキャンして、前記1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光及び/又はイメージングデータを取得するステップ、
(iii)参照材料の複数の異なる部分からの分光及び/又はイメージングデータを共通の識別子に関連付けて、参照材料に関連付けられた合成参照信号を提供するステップ、
標識材料を含む1つ又は複数のさらなる参照材料について、ステップ(i)~(iii)を繰り返して、さらなる参照材料に関連付けられた複数の合成参照信号を取得するステップ
を含む。
【0113】
本明細書中で前述したように、1つ又は複数の参照材料は、標識材料と他の材料との且つ/又は標識材料が異なる割合で存在する異なる混合物を含み得る。
【0114】
1つ又は複数の合成参照信号を生成するステップは、材料がルミネッセントマーカで標識される標識プロセスとも組み合わせられ得、合成参照信号は、1つ又は複数のマーカの組み込みの下流の材料のために記録される。
【0115】
加えて、前述のように、製品中の標識材料の割合を定量化して、定量化情報を分散型台帳に自動的にアップロードすることにより、製品に関する情報の偽装を防止することが可能となり、それは、サプライチェーン内の分散型台帳にアクセスできる何れの当事者であっても、標識材料を含む製品が明示された通りのものであるか否かを知ることができるからである。
【0116】
したがって、別の態様は、標識材料を追跡し、且つ製品中に存在する標識材料の割合を定量化する方法を提供し、製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有し、方法は、
製品に関連付けられた合成信号を取得するステップであって、合成信号は、製品から収集された分光及び/又はイメージングデータを含み、分光及び/又はイメージングデータは、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられる、ステップと、
製品中に存在する標識材料の割合を、前記合成信号と、標識材料を含む1つ又は複数のそれぞれの参照材料に関連付けられた参照データとに基づいて定量化するステップと、
製品中に存在する標識材料の定量化された割合に対応する情報を、製品及び/又は標識材料に関連付けられた分散型台帳へのエントリとして自動的にアップロードするステップと
を含む。
【0117】
前述のように、無機ルミネッセントマーカは、再加工中に熾烈な化学条件を使用して又は高温及び高ストレスで加工され得る再生利用材料等の製品において特に有効であり得、その際、無機ルミネッセントマーカは驚くべきことに、材料中のマーカとして安定したままである。このように、無機ルミネッセントマーカの使用と再生利用材料の標識との相乗効果がある。
【0118】
したがって、別の態様は、後の識別のために再生利用材料に標識する方法を提供し、方法は、再生プロセス中に無機ルミネッセントマーカを再生利用材料中に分散させるステップを含む。
【0119】
無機ルミネッセントマーカは、実質的に本明細書中ですでに定義したものであり得る。特定のマーカは、特定の材料及び再生方法にとって適当であり得ると理解されたい。例えば、マーカは、耐熱性を有するか、又は化学的に安定している、例えば特定のpHであるものとして選択され得る。
【0120】
例えば、窒化物、珪窒化物、酸化物、珪酸塩、アルミン酸塩又はゲルマニウム酸塩に基づくマーカは、高温において特に安定であり、材料を溶融し、成形するために高温が使用され得る、再生利用プラスチック又はガラスウール若しくは鉱物綿等の断熱繊維を標識するのに適当であり得る。
【0121】
モリブデン酸塩、酸化物、窒化物、オキシ硫化物、ホウ酸塩、リン酸塩、ゲルマニウム酸塩に基づくマーカは、例えば、塩基性条件下で安定なマーカを提供するために使用され得、タングステン酸塩、窒化物、珪窒化物、珪酸塩、ホウ酸塩又はリン酸塩に基づくマーカは、酸性条件下で安定なマーカを提供するために使用され得る。
【0122】
無機ルミネッセントマーカを再生利用材料中に分散させるステップは、本明細書中で前述したように、例えばマスタバッチ投入システム又は他の何れかの適当な手段を使用して実行され得る。再生利用される材料がすでにマーカを含む場合、これらは、材料に標識し、これを再生する前に例えば遠心分離、フィルタ処理又は他の適当な分離手段によって除去され得る。
【0123】
好ましい実施形態において、方法は無機ルミネッセントマーカを再生利用プラスチック中に分散させるステップを含む。再生利用プラスチックに標識する方法は、したがって、モノマーに脱重合する前及び/又は新たなプラスチックに再重合する前にプラスチックに標識するステップをさらに含み得、例えばマーカをプラスチックの脱重合から得られたモノマーに添加してから再重合され得る。方法は、標識された再生利用プラスチックを加熱し、標識された再生利用プラスチックを押し出し又は成形して、製品を形成するステップをさらに含み得る。幾つかの例において、マーカは、再重合後且つ加熱前に添加され得る。
【0124】
他の好ましい実施形態において、方法は、無機ルミネッセントマーカを再生利用綿中に分散させるステップを含み、その中でマーカが添加され、綿がパルプに破砕又は溶解されて、そこから再生利用セルロース繊維が抽出されるか又は紡ぎ出される。
【0125】
別の態様は、後の識別のために再生利用プラスチックに標識するためのシステムを提供し、システムは、1つ又は複数のルミネッセントマーカを再生利用プラスチックの流れ中に継続的に組み込むように構成され、特に、システムは、再生利用プラスチックを押し出すか又は成形する前にルミネッセントマーカが再生利用プラスチック中に組み込まれるように、再生利用プラスチックを加熱し、且つ押し出すか又は成形するように構成される。
【0126】
システムは、好適には、1つ又は複数のルミネッセントマーカを再生利用プラスチックの流れ中に何れの適当な方法でも、例えばマスタバッチ投入システム、ホッパ又は他の何れかの適当な装置を使用して継続的に組み込むように構成され得る。マーカは、押出し機の場合のように再生利用プラスチックの溶融流れに組み込まれ得るか、又は再生利用プラスチックと混合されてから、再生利用プラスチックが溶融され、押し出されるか又は成形され得る。
【0127】
システムは、標識された再生利用プラスチックのルミネッセンススペクトル及び/又は画像を収集するためのハイパスペクトルカメラ又は他の検出器等のインライン検出器も含み得る。
【0128】
別の態様は、本明細書に記載の無機ルミネッセントマーカの、再生利用プラスチック材料を標識するための使用を提供する。
【0129】
別の態様において、コンピュータシステムを、本明細書に記載の方法を実行するようにプログラムするように構成されたプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品と、プロセッサと、そのプログラム命令を含むコンピュータメモリとを含む検出システムのための制御システムが提供される。
【0130】
本発明の態様は、相互に組み合わせて提供され得、1つの態様の特徴は、他の態様にも適用され得る。
【0131】
ここで、本発明を、以下の非限定的な例及び図面を参照することによって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0132】
図1】製品中に存在する標識材料の割合を定量化する方法のフロー図を示す。
図2】製品中に存在する標識材料の割合を定量化する代替的方法のフロー図を示す。
図3】ルミネッセントマーカを含む2つの材料に関して得られたイメージングデータの比較を示す図表を示す。
図4】製品中に存在する標識材料の割合を定量化するためのシステムの概略図を示す。
図5】製品中に存在する標識材料の割合を定量化するためのスキャニングシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0133】
図1のフロー図は、製品中に存在する標識材料の割合を定量化する例示的な方法を示し、製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有する。ステップ101で合成信号が得られ、この合成信号は、製品から収集された分光及び/又はイメージングデータを含み、分光及び/又はイメージングデータは、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる。ステップ102は、標識材料を1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定するステップを含む。ステップ103は、標識材料を含む1つ又は複数の参照材料に関連付けられた参照データを製品から収集された分光データに基づいて自動的に選択するステップを含む。ステップ104は、製品中に存在する標識材料の割合を前記合成信号及び前記参照データに基づいて定量化するステップを含む。
【0134】
具体的な例として、ステップ101は、例えば、ハイパスペクトルカメラで製品を複数回スキャンして、製品の異なる部分からの複数の画像及び関連するスペクトルを生成することにより収集される、分光及び画像データを表す多次元データを受信するステップを含み得る。多次元データは、したがって、製品の異なる部分から収集された複数の画像及び関連するスペクトルの特徴を表す合成信号を形成する。分光データの測定周波数が十分に速い場合、ある時間にわたるルミネッセントマーカのルミネッセント応答/寿命が測定されて、さらに別の可変値/次元として多次元データ内に含められ得る。他の例において、ハイパスペクトルカメラの代わりに、別のイメージング及び分光装置が多次元データの収集に使用され得る。
【0135】
具体的な例において、多次元データは、ハイパスペクトルカメラを含むスキャナを布又は衣類の上で移動させて、布の複数の部分をスキャンするか、又は布を固定されたインラインハイパスペクトルカメラを通過するように移動させて、カメラを通過する布の移動スピードと調整され得る所定の間隔で読み取りを行うことによって収集されたものであり得る。他の例では、製品は、ハイパスペクトルカメラ等の検出器を通過するように移動されるヤーン又は糸等、他の形態の材料を含み得る。
【0136】
ステップ102は、したがって、多次元データを、例えば特定の波長でのルミネッセントマーカの応答により、分光データ内のルミネッセントマーカの固有のスペクトル応答を特定することによって分析するステップを含み得る。マーカの特定名は、その後、特定のマーカが例えば特定の生産業者からのオーガニックコットン等の特定の材料の以前の標識に結び付けられているデータベースと比較される。複数の異なる供給源を一意的に特定するための範囲を広げるために、固有のスペクトル応答は材料中の2つ以上の異なるルミネッセントマーカの特定の比率での存在に関係し得る。その後、検出されたルミネッセントマーカで標識された材料の特定名は、多次元データに関連付けられる。
【0137】
ステップ103では、次に多次元データの分光データが分析されて、製品中に存在する材料の特定名が特定され得る。例えば、分光データの近IR領域又は近IR分光データ等の別の分光データは、製品が主として綿、綿とPET繊維の混合物若しくは主としてPET繊維であることを特定するために使用され得るか、又は分光データの可視領域は、特定の色の染料が存在することを特定するために使用され得、これは、パターン認識を使用して分光データを処理し、製品をそれ以前に測定された材料に基づいて分類することによって行われ得る。存在する材料の特定名及び相対的割合は、したがって、多次元データにも関連付けられて、後に使用されることになる参照データが改良され得るが、これは、例えば、存在する材料を表す別の可変値/次元をその多次元データを割り当てることによる。代替的に又は加えて、存在し、分光分析により同定された材料の特定名は、定量測定によりブレンドが特定された場合のその性質を特定するために使用され得、例えば標識材料の量が予想より少ないとき、標識材料以外の材料の性質を特定する。このようにして、サプライチェーン内のどこでブレンドが行われるか、又はエラーが発生したかが特定され得る。
【0138】
ある例において、製品は分光データから綿のみ又はほぼ排他的に綿を含むものと特定される。したがって、標識されていない綿とブレンドされた異なる量の標識されたオーガニックコットンに関する参照データセットが比較するのに妥当な参照データとして選択され得、これは、別の可変値を綿の存在を表す多次元データを割り当てることを含み得る。他の例では、製品は分光データからPETと綿の混合物を含むものと特定される。したがって、標識されていないPET繊維とブレンドされた異なる量の標識されたオーガニックコットンに関する参照データセットが比較するのに妥当な参照データとして選択され得る。このようにして、綿のみが存在する場合と比べて、分光データ内のPETに関する信号の、ルミネッセントマーカからのルミネッセント信号の強度と干渉があれば、これが定量化において説明され得、信頼性が改良される。
【0139】
次に、ステップ104では、選択された参照データセットを使用して、例えば標識材料をオーガニックコットンとして、且つ存在する他の材料を綿又はPET繊維として同定する多次元データ内の追加の可変値を使用して、多次元データが参照データと比較されて、標識されたオーガニックコットンがどの程度存在するかを、異なる量の標識されたオーガニックコットンを含む、それ以前に測定されたブレンドに基づいて特定される。特に、次元削減を利用してデータの重要な特徴を特定するパターン認識プロセスが使用されて、存在するルミネッセントマーカで標識された材料の量が分類され得る。
【0140】
異なる例では、製品は、布又は成形プラスチック製品であり得、ステップ102では、ルミネッセントマーカは、それ以前に標識された再生利用PETに関すると特定される。ステップ101では、前述のような合成信号に対応する多次元データは、PETの溶融流れをスキャンするプロセスから又はPETフィラメント、PETを含む繊維若しくは布又は成形PET製品等の製品をスキャンすることによって得られ得る。
【0141】
ステップ103は、したがって、多次元データの分光データから製品が基本的にPETのみを含むと特定するステップを含み得る。例えば、製品は、PET又は成形製品から製作された布であり得る。したがって、標識されていないPETとブレンドされた異なる量の標識されたPETに関する参照データセットが妥当な参照データとして選択され得る。次に、ステップ104はスキャンされた製品のための多次元データを参照データと比較して、例えば前述のように、どの程度の標識された再生利用PETが存在するかを、異なる量の標識された再生利用PETを含む、それ以前に測定されたブレンドに基づいて特定するステップを含む。
【0142】
標識材料を同定するステップ、参照データを選択するステップ及び存在する標識材料の割合を定量化するステップを含む上記のステップは、多次元データを、データを処理するパターン認識プロセスに提供してその特徴を特定することによって同時に実現され得、これは、例えば、主成分分析等の次元削減技術を使用することによって行われ、その場合、パターン認識プロセスは、その後、製品を特定の標識材料を特定の量で含むものとして、対応する量の第二の材料、例えばPET繊維とブレンドされた、同じ標識材料、例えばオーガニックコットンに関するエントリを含む参照データと例えば共分散分析により比較することに基づいて分類する。この比較は、場合により、異なる材料に関する記録されたデータの明示的リストとの比較ではなく、単に製品を分類する人工ニューラルネットワーク等の訓練された機械学習要素の「知識」との比較を含み得る。
【0143】
方法は、任意選択により、製品中に存在する標識材料の定量化された割合に対応する情報を分散型台帳へのエントリとして自動的にアップロードする別のステップ105も含み得、これは、例えば、製品及び/又は標識材料に関連付けられたブロックチェーンへのエントリを自動的にアップロードすることである。
【0144】
布、綿及びPET等の特定の材料及びハイパスペクトルカメラ等の特定の器具が上で述べられているが、これらは説明のための例にすぎず、方法は本明細書に記載されているように他の手段を使用して他の材料にも適用され得ると理解されたい。
【0145】
図2のフロー図は、製品中に存在する標識材料の割合を定量化する例示的な方法を示し、製品は、1つ又は複数の材料の混合物を含み、及び標識材料は、1つ又は複数のルミネッセントマーカを含有する。ステップ201は、製品に関連付けられた合成信号を取得するステップを含み、合成信号は、製品から収集された分光データ及びイメージングデータを含み、分光及びイメージングデータは、標識材料中の1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号に関連付けられる。ステップ202は、標識材料を、1つ又は複数のルミネッセントマーカに関連付けられた分光データに基づいて同定するステップを含む。ステップ203は、製品中に存在する標識材料の割合を合成信号の前記イメージングデータに少なくとも部分的に基づいて定量化するステップを含み、前記定量化ステップは、製品の各画像中で検出されるルミネッセントマーカの相対位置及び/又は数に少なくとも部分的に基づいて行われる。
【0146】
具体的な例として、ステップ201は、例えば、製品をハイパスペクトルカメラで何度もスキャンして製品の異なる部分からの複数の画像及び関連するスペクトルを生成することによって収集された分光及び画像データを表す多次元データを受信するステップを含み得る。多次元データは、ルミネッセントマーカのスペクトル及び製品の異なる部分から収集された複数の画像の特徴を表す合成信号を形成する。他の例では、ハイパスペクトルカメラの代わりに、別のイメージング及び分光分析装置を使用して、ルミネッセントマーカを特定するための製品からの複数の画像及び少なくとも1つのスペクトルが収集され得る。
【0147】
特定の例において、多次元データは、ハイパスペクトルカメラを含むスキャナを布又は衣類の上で移動させて、布の複数の部分をスキャンするか、又は布を固定されたインラインハイパスペクトルカメラを通過するように移動させ、カメラを通過する布の移動スピードと調整され得る所定の間隔で読み取りを行うことによって収集されたものであり得る。他の例では、製品はヤーン又は糸等の他の形態の材料を含み得、それがハイパスペクトルカメラ等の検出器を通過するように移動される。
【0148】
ステップ202は、したがって、例えば図1に関して説明したように、分光データ内のルミネッセントマーカの固有のスペクトル応答を特定することによって多次元データを分析するステップを含み得る。その後、検出されたルミネッセントマーカで標識された材料の特定名が多次元データに関連付けられる。例えば、マーカは、オーガニックコットン又は再生利用PETに関連付けられ得る。
【0149】
したがって、ステップ203では、イメージングデータは、製品の各画像内で検出されたルミネッセントマーカの相対位置及び/又は数に基づいて分析され、それ以前に測定されたブレンドからの既知の結果と比較され、標識されたオーガニックコットン又は再生利用PETの量が特定される。特に、次元削減を使用して画像データの重要な特徴を特定するパターン認識プロセスは、存在するルミネッセントマーカで標識された材料の量を分類するために使用され得る。パターン認識は、例えば、画像中のマーカの相対位置を表す削減された多次元データに基づき得るか、又は例えば畳み込みニューラルネットワーク等の人工ニューラルネットワークを使用して画像を分析し、製品を特定の割合の標識材料を含むものとして分類するパターン認識に基づく画像処理に基づき得る。定量化に関する情報は、任意選択により、前述のように分散型台帳に自動的にアップロードされ得る。
【0150】
図3は、標識材料から得られたイメージングデータの例を示す。挿入図301は、第一の割合の標識材料を含む第一の材料中で検出されたルミネッセントマーカの位置を表す画像を示す。挿入図302は、図301に示される第一の材料中の第一の割合の標識材料より少ない第二の割合の標識材料を含む第二の材料中で検出されたルミネッセントマーカの位置を表す画像を示す。
【0151】
挿入図303に示されるように、イメージングデータは、多次元データであり得、これは、例えば、ハイパスペクトルカメラを使用して得られる画像全体にわたるスペクトルデータを含む。挿入図303は、画像301の1つの点に関するスペクトルを示すが、スペクトルデータは、画像全体又はルミネッセントスポットが観察される場所等、画像の選択された部分のみから記録され得ると理解されたい。挿入図303は、画像301内のある点に関する時間依存スペクトル信号も示し、標識材料中に存在するルミネッセントマーカのルミネッセント応答が記録されて、ルミネッセントマーカがさらに特徴付けられる。
【0152】
図4の概略図は、製品中に存在する標識材料の割合を定量化するためのシステムを示す。401では、カメラは、材料中のルミネッセントマーカの存在を示す画像を収集する。402では、第一の分光計は、1つ又は複数のルミネッセントマーカのルミネッセント信号を検出するための分光データを収集する。403では、第二の分光計は、例えば、近IR分光計を使用して、材料の組成を特定するための第二の分光データを収集する。
【0153】
401、402及び403からのデータは、その後、パターン認識又は機械学習要素404に伝えられ、それにより、存在する標識材料の割合の定量化は、例えば、主要成分分析等の次元削減技術を使用して、401、402及び403からのデータを処理してその特徴を特定することによって同時に実現され得、そこで、パターン認識又は機械学習要素404は、その後、出力405を提供する。出力は、特定の標識材料を特定の量だけ含むものとして製品を分類し得、且つ材料組成を特定し、そこから標識材料の不足の原因が特定され得る。出力は、追加の情報も含み得、これは、入力データ401、402及び403からパターン認識又は機械学習要素404によって特定でき、例えば布の場合、番手又は織り方の種類等、材料の色又は物理的形態である。
【0154】
図5は、製品中に存在する標識材料の割合を定量化するためのスキャニングシステム500を示す。システムは、材料サンプル504、例えば布の一部を支持するように配置されたサンプル材料ホルダ505を含む。システムは、材料サンプル504中に存在するルミネッセントマーカを画像化するためのカメラ501並びに材料サンプル504中に存在するルミネッセントマーカのルミネッセント信号を検出するための第一の分光計502及び材料504の全体的組成を特定するための例えば近IR分光計等の第二の分光計503も含む。分光計/カメラ501、502及び503は、サンプル材料ホルダ505上の材料サンプル504の表面上で分光計/カメラ501、502、503を移動させて、材料サンプル504の異なる部分をスキャンするように構成された運動制御フレーム505に固定される。このようにして、システム500は分光計/カメラ501、502及び503を表面上で同時に移動させて、時間/材料504上の位置と共に変化する、分光計/カメラからのデータを含む合成信号を取得することができる。
【0155】
特定の例において、本明細書に記載のコントローラは、本明細書に記載の方法の何れか又は前記方法の特定のステップを実行するように構成され得る。本明細書に記載のコントローラとは、単独のコントローラ及び/又はプロセッサを指し得るか、又は制御は、複数のコントローラ及び/又はプロセッサ間で分散され得る。本明細書で概説した行動及び装置は、ロジックゲートのアセンブリ等の固定ロジック又はプロセッサによって実行されるソフトウェア及び/又はコンピュータプログラム命令等、プログラマブルロジックによって提供され得るコントローラ及び/又はプロセッサを使用して実装され得る。他の種類のプログラマブルロジックには、プログラマブルプロセッサ、プログラマブルデジタルロジック(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、イレーサブルプログラマブルリードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM))、特定用途集積回路、ASIC若しくは他のあらゆる種類のデジタルロジック、ソフトウェア、コード、電子命令、フラッシュメモリ、光ディスク、CD-ROM、DVD ROM、磁気若しくは光カード、電子命令を記憶するのに適した他の種類の機械可読媒体又はそれらのあらゆる適当な組合せが含まれる。
【0156】
上述の実施形態は、説明のための例として理解されるものとする。さらに別の実施形態も想定される。何れか1つの実施形態に関して説明した何れの特徴も、単独で又は説明されている他の特徴と組み合わせて使用され得、実施形態の他の何れか又は実施形態の他の何れかの任意の組合せの1つ又は複数の特徴と組み合わせても使用され得ることが理解されるものとする。さらに、上述されていない均等物及び改良形態も、付属の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱せずに用いられ得る。
【0157】
本開示の内容から装置の他の変形形態及び改良形態が当業者に明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】