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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】治療の新しい使用及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/77 20060101AFI20230418BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 31/225 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K31/77
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P27/02
A61K9/06
A61K31/225
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553599
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2021056314
(87)【国際公開番号】W WO2021180913
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】20162821.1
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522352144
【氏名又は名称】レッドウッド ファーマ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ビデーウス
(72)【発明者】
【氏名】ハンス アーゲランド
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ビョルクルンド
(72)【発明者】
【氏名】イェルハルド ガーヘーフェル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD23Z
4C076DD26Z
4C076DD30Z
4C076FF35
4C084AA19
4C084MA28
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA28
4C086MA58
4C086ZA33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB29
4C206DB43
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA48
4C206MA78
4C206NA14
4C206ZA33
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、可逆的熱可逆性ヒドロゲルを有効成分として含む医薬組成物であって、哺乳動物対象の眼への投与に関する。特に、ドライアイ疾患の眼科治療に用いるための医薬組成物、及びその方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、前記医薬組成物は、可逆的熱可逆性ヒドロゲルを有効成分として含み、前記ヒドロゲルは、組成物全体の重量%で:
― 約5~25%の、少なくとも2つのポリエチレンオキシドのブロック及び少なくとも1つのポリプロピレンオキシドのブロックを含む水溶性ブロックコポリマー;及び
― 約0.05~10%の、20℃で0.5g/100ml未満の水溶性を有し、かつ、水中で前記水溶性ブロックコポリマーと共に水溶性分子間錯体を形成することができる少なくとも1種の会合性ゲル化剤;
を含み、
前記組成物が、任意の追加の活性成分を含まず、治療を必要とする哺乳動物対象の眼における、局所投与によるドライアイ疾患の治療における使用のためである、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記水溶性ブロックコポリマーが、一般式HO-(EO)a-(PO)b-(EO)a-Hを有するトリブロックコポリマーであり、(EO)aがポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)bがポリプロピレンオキシドブロックであり、aが50~150の範囲であり、bが35~70の範囲である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
aが約101であり、bが約56である、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の会合性ゲル化剤が、オキシアルキル化脂肪アルコール、オキシアルキル化脂肪アルコールのエステル、オキシアルキル化アルキルアルコール、オキシアルキル化アルキルアルコールのエステル、オキシアルキル化アルキルアリールアルコール、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸のエステル、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸のエステル、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、オキシアルキル化ソルビタンエステル、オキシアルキル化トリグリセリド、オキシアルキル化グリセリルエステル、オキシアルキル化ソルビトールのエステル、ポリオールエステル、ソルビタンエステル、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~3のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の会合性ゲル化剤が、オキシアルキル化脂肪アルコールのエステルである、請求項4に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記オキシアルキル化脂肪アルコールが、ジ-PPG-2ミレス-9アジペート、ジ-PPG-2ミレス-10アジペート及びジ-PPG-2ミレス-11アジペートからなる群より選択される、請求項5に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記オキシアルキル化脂肪アルコールがジ-PPG-2ミレス-10アジペートである、請求項6に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記哺乳動物対象がヒト患者である、請求項1~7のいずれかに記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記患者が女性である、請求項8に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記女性が、閉経期にある女性及び閉経後の女性からなる群より選択される、請求項9に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
ドライアイ疾患の治療方法であって、前記方法は、前記治療を必要とする哺乳動物対象の眼における医薬組成物の局所投与のステップを含み、前記医薬組成物は、可逆的熱可逆性ヒドロゲルを有効成分として含み、前記ヒドロゲルは、組成物全体の重量%で:
― 約5~25%の、少なくとも2つのポリエチレンオキシドのブロック及び少なくとも1つのポリプロピレンオキシドのブロックを含む水溶性ブロックコポリマー;及び
― 約0.05~10%の、20℃で0.5g/100ml未満の水溶性を有し、かつ、水中で前記水溶性ブロックコポリマーと共に水溶性分子間錯体を形成することができる少なくとも1種の会合性ゲル化剤;
を含み、前記組成物が、任意の追加の活性成分を含まない、前記方法。
【請求項12】
前記水溶性ブロックコポリマーが、一般式HO-(EO)a-(PO)b-(EO)a-Hを有するトリブロックコポリマーであり、(EO)aがポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)bがポリプロピレンオキシドブロックであり、aが50~150の範囲であり、bが35~70の範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
aが約101であり、bが約56である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種の会合性ゲル化剤が、オキシアルキル化脂肪アルコール、オキシアルキル化脂肪アルコールのエステル、オキシアルキル化アルキルアルコール、オキシアルキル化アルキルアルコールのエステル、オキシアルキル化アルキルアリールアルコール、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸のエステル、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸のエステル、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、オキシアルキル化ソルビタンエステル、オキシアルキル化トリグリセリド、オキシアルキル化グリセリルエステル、オキシアルキル化ソルビトールのエステル、ポリオールエステル、ソルビタンエステル、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の会合性ゲル化剤が、オキシアルキル化脂肪アルコールのエステルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記オキシアルキル化脂肪アルコールが、ジ-PPG-2ミレス-9アジペート、ジ-PPG-2ミレス-10アジペート及びジ-PPG-2ミレス-11アジペートからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記オキシアルキル化脂肪アルコールがジ-PPG-2ミレス-10アジペートである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳動物対象がヒト患者である、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が女性である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記女性が、閉経期にある女性及び閉経後の女性からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物対象の眼に投与するための医薬組成物の分野にある。特に、ドライアイ疾患の眼科治療に用いるための医薬組成物、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非営利団体Tear Film & Ocular Surface Societyによると、ドライアイ疾患(DED)は、交換可能に「ドライアイ症候群」と表記され、涙液層の恒常性の喪失を特徴とする眼表面の多因子疾患であり、涙液層の不安定性および高浸透圧、眼表面の炎症および損傷、ならびに神経感覚異常が病因学的役割を果たす眼表面の多因子疾患である(Craig et al(2017), The Ocular Surface 15:802-812)。
【0003】
DEDは世界中の人類に広がっているが、主に定義および患者に含む基準が異なるため、有病率は国によって異なる(Stapleton et al (2017), The Ocular Surface 15:334-365)。
【0004】
ドライアイ疾患のための利用可能な治療は、Gomes and Santo (2019), The Ocular Surface 17:9-19において、レビューされている(表1参照)。
【0005】
ブロックコポリマーおよび会合性ゲル化剤の可逆的熱可逆性ゲルを基にした緩効性製剤は、例えば米国特許US9592295に開示されている。開示されたヒドロゲルに関する多くの異なる用途および使用がUS9592295に与えられるが、これらの用途および使用の全ては、活性成分の送達および放出のための担体またはビヒクルとしてのヒドロゲルの使用に依存しており、実際のヒドロゲルの外部として開示されている。US9592295において、活性成分としてのゲル自体の任意の使用の開示はされておらず、及びそれ自体が治療効果を有し得るという指標も存在しない。
【0006】
NCT03821415として同定された第II相臨床試験では、ドライアイ疾患の治療における、US9592295に開示されている、活性成分17β-エストラジオール-3-リン酸の薬剤送達ビヒクル又は担体としてのヒドロゲルの使用を調査した。この臨床試験の構成において、活性成分を含まないヒドロゲルをプラセボとして用いた、すなわちヒドロゲル製剤自体が任意の治療効果を有しないという理解に基づく使用である。問題の臨床試験結果は報告されていない。
【0007】
当技術分野では、治療を必要とする哺乳動物対象におけるドライアイ疾患の治療のための便利及び効果的な製剤、並びにそのような状態を治療するための新規な方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
このニーズを満たすことが本発明の目的である。その他の目的は、本開示から当業者には明らかである。
【0009】
第一の態様において、本開示は医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、可逆的熱可逆性ヒドロゲルを有効成分として含み、前記ヒドロゲルは、組成物全体の重量%で:
【0010】
― 約5~25%の、少なくとも2つのポリエチレンオキシドのブロック及び少なくとも1つのポリプロピレンオキシドのブロックを含む水溶性ブロックコポリマー;及び
【0011】
― 約0.05~10%の、20℃で0.5g/100ml未満の水溶性を有し、かつ、水中で前記水溶性ブロックコポリマーと共に水溶性分子間錯体を形成することができる少なくとも1種の会合性ゲル化剤;
を含み、
【0012】
前記組成物は、任意の追加の活性成分を含まず、
【0013】
治療を必要とする哺乳動物対象の眼における、局所投与によるドライアイ疾患の治療における使用のためである。
【0014】
本明細書で定義される可逆的熱可逆性ヒドロゲルの使用により、通常の室温では液体であるが、哺乳動物の身体のより高い温度、例えば32℃以上でゲルを形成する医薬組成物を提供することができる。医薬組成物の有益なゲル化特性は、対象の所望の眼環境における適用を容易にする。特に、これらの特性は、室温で液体形態での組成物の便利な貯蔵、取り扱いおよび投与を可能にするが、眼に関してより高い温度に対面すると有益な特性を有するヒドロゲルを形成する。
【0015】
ドライアイ疾患における症状および客観的なエンドポイントに対するヒドロゲル自体の効果の証拠は、以下の実施例によって提供される。添加された活性成分についての担体としてのヒドロゲルを試験するために設計された臨床試験の状況において、追加の活性成分が存在しない場合でも、ヒドロゲル自体が有効であることが予想外に示された。
【0016】
さらに、本試験においてヒドロゲルプラセボで観察された効果は、わずか30日間での急速な発生を有した。これは、発生が有効成分を添加した治験薬ほど迅速ではなかったものの、大きな利益をもたらす。本試験はまた、ヒドロゲルが使用について安全であることを示した。
【0017】
好適なヒドロゲル組成物は、参照により本明細書に組み込まれるUS9592295に記載されているものである。一実施形態において、ヒドロゲルの水溶性ブロックコポリマーは、一般式HO-(EO)a-(PO)b-(EO)a-Hを有するトリブロックコポリマーであり、ここで、(EO)aはポリエチレンオキシドブロックであり、(PO)bはポリプロピレンオキシドブロックであり、aは50~150の範囲であり、bは35~70の範囲である。特定の実施形態において、前記トリブロックコポリマーにおいてaは約101であり、bは約56である。本明細書およびUS9592295に開示されているようなコポリマーは、一般に「ポロキサマー」として知られており、aが約101であり、bが約56であるという特定の実施形態は、ポロキサマー407として知られている。
【0018】
ヒドロゲル組成物はまた、少なくとも1種の会合性ゲル化剤を含む。一実施形態において、少なくとも1種の会合性ゲル化剤は、オキシアルキル化脂肪アルコール、オキシアルキル化脂肪アルコールのエステル、オキシアルキル化アルキルアルコール、オキシアルキル化アルキルアルコールのエステル、オキシアルキル化アルキルアリールアルコール、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸のエステル、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸のエステル、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、オキシアルキル化ソルビタンエステル、オキシアルキル化トリグリセリド、オキシアルキル化グリセリルエステル、オキシアルキル化ソルビトールのエステル、ポリオールエステル、ソルビタンエステル、及びそれらの混合物からなる群より選択される。より特定の実施形態において、少なくとも1種の会合性ゲル化剤は、オキシアルキル化脂肪アルコールのエステルである。前記オキシアルキル化脂肪アルコールの企図される実施形態は、例えば、ジ-PPG-2ミレス-9アジペート、ジ-PPG-2ミレス-10アジペート及びジ-PPG-2ミレス-11アジペートからなる群から選択される。特定の実施形態において、前記オキシアルキル化脂肪アルコールは、ジ-PPG-2ミレス-10アジペートである。
【0019】
ヒドロゲルの適切な製剤は、医薬製剤における当業者によって確認され得る。適切には、本明細書に開示される医薬組成物は、哺乳動物対象の眼への局所投与が容易になるように製剤化される。一実施形態において、組成物は、点眼剤の形態で投与される。そのような一実施形態において、前記点眼剤は、単一ドロップアプリケータ、ディスペンサー又はボトル中に提供される。別のそのような実施形態において、前記点眼剤は、多滴アプリケータ、ディスペンサー又はボトル中に提供される。別の実施形態において、組成物はスプレーとして提供される。さらに別の実施形態において、組成物は、眼洗剤、または眼環境への任意の他の適切な投与手段として提供される。一実施形態において、組成物は、点眼剤として製剤化および投与される。上で説明したように、組成物の可逆的熱可逆特性は、冷蔵中または室温で液体形態であることを確実にする。これにより、例えば、眼への液滴の投与が可能になる。このようにして投与した後、組成物は、眼内のより高い温度に達するとゲル化する。
【0020】
続く実施例で報告される臨床試験において、ヒドロゲル自体の効果は1日2回投与した場合に認められた。本開示の使用および方法態様の一実施形態において、組成物は、1日2回以上投与されることはめったになく、例えば1日1回以上投与されることはめったにない。特定の一実施形態において、組成物は、1日2回投与される。別の特定の実施形態において、組成物は、1日1回投与される。
【0021】
本開示全体を通して、ドライアイ疾患という用語の使用は、涙液流の減少によって引き起こされるかどうかにかかわらず、および根底にある原因にかかわらず、ドライアイ病理を示す任意の状態の形態を広く包含することを意図する。本開示の範囲内ですべての考えられる様々な状態および根底にある原因の概要については、Craig et al(2017、前出)の図1を参照されたい。本開示の最も一般的な意味において、治療される対象の哺乳動物は、任意の特定の種、性別、年齢層またはその他のカテゴリーに限定されない。一実施形態において、哺乳動物対象は男性である。別の実施形態において、哺乳動物対象は女性である。一実施形態において、対象はヒトである。特定のそのような実施形態において、対象は男性である。別の特定のそのような実施形態において、対象は女性である。好ましい態様において、ドライアイ疾患は、女性における更年期障害に関連するホルモン変化の結果である。したがって、そのような一実施形態において、治療される哺乳動物対象は、閉経期にある女性である。別のそのような実施形態において、治療される哺乳動物対象は、閉経後の女性である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例2に記載の臨床試験の経過に伴う研究グループ1~4に対するシルマーII型試験スコア(「シルマーFAS」)の推移を示す図である。グループ1:実線。グループ2:点線。グループ3:短いダッシュ。グループ4:長いダッシュ。
図2図2は、実施例2に記載の臨床試験の経過にわたる研究グループ1~4に対するTFBUT(「tBUT」)試験スコアの推移を示す図である。グループ1:実線。グループ2:点線。グループ3:短いダッシュ。グループ4:長いダッシュ。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0023】
実施例1
【0024】
可逆的熱可逆性ヒドロゲルの調製
【0025】
可逆的熱可逆性ヒドロゲルを、下記の成分を用いて、記載された重量%で調製した。この熱ゲル化製剤は、熱ゲル化剤としてポロキサマー407及びジ-PPG-2ミレス-10アジペートに基づいた。
【0026】
成分・・・%(w/w)
ポロキサマー407・・・12.9
ジ-PPG-2 ミレス-10 アジペート・・・3.61
リン酸ナトリウム一塩基二水和物・・・0.008
リン酸ナトリウム二塩基二水和物・・・0.140
HCl、1M・・・Qs pH 7.4
NaOH、1M・・・Qs pH 7.4
注射用水・・・Qs 100%
【0027】
ポロキサマー407を低温条件下でリン酸緩衝液に溶解し、室温まで昇温した後、ジ-PPG-2ミレス-10アジペートを加え、重量比78.1:21.9のものを作成した。次いで、pHを、1M HCl及び/又は1M NaOHの添加によって7.2~7.6の範囲内に調整した。得られた製剤は粘膜付着性ヒドロゲルであり、眼への局所投与によるドライアイ疾患の治療に適している。上記で調製したヒドロゲルを、以下の実施例では「インテリゲル」と表記し、有効成分として意図している追加成分の担体又はビヒクルとして用いた。
【0028】
実施例2
【0029】
担体としてのインテリゲル中の有効成分17β-エストラジオール-3-リン酸の臨床試験の設計
【0030】
実施例1において担体として調製したインテリゲルヒドロゲルから緩やかな放出を介して送達した場合の、ドライアイ疾患に対する0.05%及び0.1% 17β-エストラジオール-3-リン酸(「E3P」)の効果を試験する目的で臨床試験を実施した。インテリゲル中のE3Pを含む試験を受けた医薬品はRP101と表記され、及び臨床試験設計は識別子NCT03821415で clinicaltrials.gov に記載されている。
【0031】
簡単に言うと、この試験は、多施設、無作為化、ダブルマスク、パラレルグループ、プラセボ対照第II相試験であり、眼科用製剤RP101は、プラセボとしてインテルゲルに対してのみ試験された。
【0032】
試験対象集団
【0033】
試験対象集団は、以下を含む包含基準のリストを満たす104人の参加者で構成された。
― 性別及び更年期障害:閉経後の女性;閉経後の状態は、スクリーニングの少なくとも3年前である最終月経期間として定義した。
― ドライアイ疾患:中等度から重度のドライアイ症候群の患者、
― 悪い目における5分間で7mm以下の麻酔によるシルマー試験(試験対象眼)、
― 涙液層破壊時間:悪い目における10秒以下のTFBUT(試験対象眼)、
― 視力:それぞれの眼における20/200以上の矯正視力、
― 症状:スクリーニングの少なくとも3ヶ月前からの少なくとも2つの典型的なドライアイ疾患症状:異物感、灼熱感/刺痛、発赤、引き裂き、痛み、かゆみ、視力障害、光恐怖症、まぶたの腫れ、湿気および粘液分泌物。
【0034】
登録された104人の参加者のうち、77人が試験全体を完了した。
【0035】
治験薬
【0036】
試験でテストされた製品は次のとおりである。
【0037】
テスト1(T1): RP101 0.05 %
インテリゲル中の0.05 % w/wのE3P
【0038】
テスト2(T2): RP101 0.1 %
インテリゲル中の0.1 % w/wのE3P
【0039】
プラセボ(P):実施例1に記載のインテリゲル、E3Pなし
【0040】
処置グループ
【0041】
被験者は以下の処置グループに4等分で無作為に割り付けられ、以下の表1に示す処置の1つを90日間連続して受けた。
【0042】
【表1】
【0043】
目的
【0044】
本試験の主な目的は、RP101点眼科用滅菌溶液または一致するプラセボ(ビヒクル)を1日1回(q.d.)または1日2回(b.i.d.)、3ヶ月間適用する中等度から重度のドライアイ疾患を有する閉経後の女性におけるRP101の有効量/用量レジメンを確立することであった。
【0045】
本試験の第二の目的は、治療の安全性と忍容性を評価することであり、特定のサブスタディにおける涙液層浸透圧および角膜厚を探索的変数として評価することであり;並びに最初及び最後の投与後の血清17-β-エストラジオールの薬物動態(PK)を評価することである(PKサブスタディ)。
【0046】
エンドポイント
【0047】
主要エンドポイントは、RP101または一致するプラセボによる治療中および治療終了時に、シルマー試験II型(麻酔を伴う)の測定値に基づいて臨床的有効性を評価することであった。有効性を評価するための二次エンドポイントパラメータには、以下が含まれる:
― 眼の忍容性(異物感、灼熱感/刺すような痛み、かゆみ、痛み、粘着感、視力障害、発赤、裂け目、まぶたの腫れ、光恐怖症)についてのビジュアルアナログスケール(VAS)
― ドライアイの症状評価(SANDE)
― 視力(早期治療糖尿病性網膜症試験[ETDRS]チャート)
― 細隙灯検査(SLE)
― 涙液層浸透圧(特定のサブスタディのみ)
― 涙液層破壊時間(TFBUT)
― 眼底眼科検査
― 角膜フルオレセイン染色
― 角膜パキメトリー(特定のサブスタディのみ)
― 治療段階中の人工涙液(レスキュー薬剤)の点眼頻度(すなわち、毎日点眼される滴数)
【0048】
シルマー試験II型
【0049】
本試験は、防腐剤非含有麻酔点眼剤の点眼後の基礎水性涙液分泌を測定するために行った。両方の目が同時にテストされてもよい。シルマーのプラス(登録商標)ストリップが使用された。試験は薄暗い部屋で行った。患者が上を見ている間に、下蓋は穏やかに下方にそして一時的に引っ張られた。滅菌ストリップの丸みを帯びた屈曲端部を、下眼瞼縁の側頭3分の1にわたって下結膜嚢に挿入した。試験は、皮膚油による汚染を避けるために、シルマーのテストストリップに指で直接触れることなく行われた。患者は静かに目を閉じるように指示された。5分後、テストストリップを除去し、ストリップ上の涙液吸収の長さを測定した(mm/5分)。それぞれの眼について5分後の濡れた距離を記録した。
【0050】
涙液層破壊時間(TFBUT)
【0051】
TFBUTは、涙液崩壊までの時間を求めることにより測定して、各眼の下結膜袋小嚢にフルオレセインナトリウム溶液を点眼した後に行った。患者は、フルオレセインを涙液層と完全に混合するために数回まばたきするように指示された。最大蛍光を達成するために、試験官はTFBUTを評価する前に点眼後約30秒待機した。コバルトブルー照明を用いた倍率10倍の細隙灯を用いて、検査官は涙液層の保全性をモニターし、最後のまばたきの後に目が開いている時点から空隙(涙液層内の透明な空間)を形成するのにかかる時間に注目した。TFBUTをフルオレセインの点眼後最初の1分間に2回測定した。2つの読み取り値が2秒以上異なる場合、3度目の読み取り値を測定した。2または3回の測定値の平均をTFBUT値として記録した。
【0052】
実施例3
【0053】
プラセボ群で示された予期せぬ有効性
【0054】
実施例2に記載の臨床試験を実施し、その結果を評価した。結果を解析したところ、プラセボのみで治療したグループ4の被験者が、プラセボそのもの、すなわち実施例1のように調製したインテリゲルヒドロゲルが、有効成分としてE3Pを添加しなくても、それ自体が臨床的有効性を有することを示す客観的エンドポイントの結果を示したことが予想外に見出された。さらに、有効性は急速な発生によって特徴付けられ、研究のわずか30日後に明確な効果を示した。
【0055】
シルマー試験II型
【0056】
4つの研究グループすべてについてシルマー検定を行った結果を図1に示す。この図からわかるように、インテリゲルプラセボのみを投与された試験グループ4は、異なる濃度のE3Pを有する治験薬を投与されたグループと同等のスコアを示した。
【0057】
涙液層破壊時間(TFBUT)
【0058】
4つの研究グループすべてについてTFBUT試験を行った結果を図2に示す。この図からわかるように、インテリゲルプラセボのみを投与された試験グループ4は、異なる濃度のE3Pを有する治験薬を投与されたグループと同等のスコアを示した。実際、試験の90日目までに、プラセボを投与された群は、すべての研究群の中で最も高いTFBUTスコアを示した。
【0059】
結論
【0060】
実施例2に記載の臨床試験の結果は、治験薬RP101がドライアイ疾患の客観的尺度において一貫して顕著な利益を示しただけでなく、そのような利益がプラセボ群においても見られたことを示している。また、治験薬とプラセボの両方が安全に使用できた。結論として、観察された利益は、ヒドロゲル自体のみをそれ自体が「活性成分」として使用することで達成されることが示された。
図1
図2
【国際調査報告】