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特表2023-517330破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/08 20060101AFI20230418BHJP
   A61K 39/05 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 39/10 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K39/08
A61K39/05
A61K39/10
A61K39/39
A61K31/7088
A61K48/00
A61P43/00 121
A61P37/04
A61P31/04
A61K39/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554378
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 US2021021532
(87)【国際公開番号】W WO2021183533
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】202011010025
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】202011055399
(32)【優先日】2020-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522354344
【氏名又は名称】ダイナヴァックス テクノロジーズ コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】519067909
【氏名又は名称】セラム インスティテュート オブ インディア プライベート リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ジョン ディ.
(72)【発明者】
【氏名】コフマン,ロバート エル.
(72)【発明者】
【氏名】ハイアー,ランダル エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャンセン,ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ゴルケ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】アーバン,マウリーン
(72)【発明者】
【氏名】ガイロラ,スニル
(72)【発明者】
【氏名】シャリグラム,ウメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ガウタム,マニシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラオ,ハリシュ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB09
4C084ZB35
4C084ZC75
4C085AA03
4C085BA10
4C085BA12
4C085BA17
4C085BA41
4C085BB11
4C085EE03
4C085EE05
4C085FF02
4C085GG03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB09
4C086ZB35
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、toll様受容体9(TLR9)アゴニスト、例えば、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpG)モチーフを含むオリゴヌクレオチドとを含む、免疫原性組成物に関する。免疫原性組成物は、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントをさらに含み得る。免疫原性組成物は、それを必要とする個体における破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与に好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与のための方法であって、
ヒト対象に、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、前記Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントと、toll様受容体9(TLR9)アゴニストとを含む、免疫原性組成物を投与すること
を含み、
前記TLR9アゴニストが、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpG)モチーフを含む、10~35ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドであり、
前記ヒト対象が、3歳またはそれ以上の年齢であり、
前記Tdap抗原が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、百日咳トキソイド(PT)、百日咳繊維状ヘマグルチニン(FHA)、および百日咳パータクチン(PRN)を含み、
前記Tdap抗原および前記オリゴヌクレオチドが、前記Tdap抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で、前記免疫原性組成物中に存在する、
方法。
【請求項2】
オリゴヌクレオチドが、配列5’-AACGTTCGAG-3’(配列番号3)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オリゴヌクレオチドが、配列5’-TGACTGTGAA CGTTCGAGAT GA-3’(配列番号1)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オリゴヌクレオチドが、改変されたヌクレオシドを含み、任意選択で、前記改変されたヌクレオシドが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシン、2’-デオキシ-6-チオグアノシン、アラビノグアノシン、2’-デオキシ-2’置換-アラビノグアノシン、および2’-O-置換-アラビノグアノシンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドが、配列5’-TCGAACGTTCG-3’(配列番号2)を含み、ここでGが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンであり、任意選択で、オリゴヌクレオチドが、配列5’-TCGAACGTTCG-X-GCTTGCAAGCT-5’、ここでGが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンであり、Xが、グリセロールである(5’-配列番号2-3’-X-3’-配列番号2-5’)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含む、またはすべてのヌクレオチド連結が、ホスホロチオエート連結である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
オリゴヌクレオチドが、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約375μg~約6000μgのオリゴヌクレオチド、もしくは約750μg~約3000μgのオリゴヌクレオチドを含むか、または0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約375μg、約750μg、約1500μg、約3000μg、もしくは約6000μgのオリゴヌクレオチドを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
アルミニウム塩アジュバントが、非晶質硫酸ヒドロキシリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、および硫酸アルミニウムカリウムからなる群のうちの1つまたは複数を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アルミニウム塩アジュバントが、水酸化アルミニウムを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約0.25~約0.50mgのAl3+を含む、または0.5mlの用量の前記免疫原性組成物が、約0.30~約0.40mgのAl3+を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約5LfのTT、約2.5LfのDT、約8μgのPT、約8μgのFHA、および約2.5μgのPRNを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
免疫原性組成物が、少なくとも1つの追加の抗原をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの追加の抗原が、百日咳線毛(FIM)抗原および百日咳アデニル酸シクラーゼ(AC)抗原のうちの一方または両方を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの追加の抗原が、不活性化ポリオウイルスを含み、任意選択で、前記不活性化ポリオウイルスが、1型ウイルス、2型ウイルス、および3型ウイルスのうちの1つまたは複数を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ヒト対象が、少なくとも10歳またはそれ以上の年齢である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ヒト対象が、過去3年以内に小児ワクチンも追加免疫ワクチンも受けておらず、
前記小児ワクチンが、ジフテリア、破傷風、および非細胞性百日咳(DTaP)抗原、またはジフテリア、破傷風、および全細胞性百日咳(DTwP)抗原を含み、
前記追加免疫ワクチンが、破傷風およびジフテリア(Td)抗原、または破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原を含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ヒト対象が、10~18歳の年齢である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ヒト対象が、19歳もしくはそれ以上の年齢であるか、またはヒト対象が、19~64歳の年齢であるか、または65歳もしくはそれ以上の年齢である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
Tdap抗原およびオリゴヌクレオチドが、投与の1ヶ月後までにTdap抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で、免疫原性組成物中に存在し、前記免疫応答が、
少なくとも0.4国際単位/ml(IU/ml)の濃度の抗TT抗体および抗DT抗体、ならびに
投与前のレベルまたは定量限界レベルよりも国際単位/ml(IU/ml)で少なくとも2倍高い濃度の抗PT抗体、抗FHA抗体、および抗PRN抗体
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
免疫応答が、
(i)投与の1ヶ月後までに、少なくとも1.0IU/mlの抗TT抗体濃度および抗DT抗体濃度のうちの一方もしくは両方、ならびに/または
(ii)投与の1ヶ月後までに、少なくとも4倍高い抗PT抗体濃度、抗FHA抗体濃度、および抗PRN抗体濃度のうちの1つもしくは複数を含み、
前記抗体濃度が、国際単位/ml(IU/ml)での投与前のレベルまたは定量限界レベルのいずれかと比べたものである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
免疫応答が、
投与後約6ヶ月もしくは約12ヶ月の時点における、投与前のレベルの少なくとも1.5倍、2.0倍、もしくは2.5倍の抗TT抗体濃度および抗DT抗体濃度のうちの一方もしくは両方を含むか、または抗TT抗体濃度および抗DT抗体濃度のうちの一方もしくは両方が、投与後約6ヶ月もしくは約12ヶ月の時点において、投与前の少なくとも2倍、3倍、もしくは4倍である、持続型破傷風および/またはジフテリア免疫応答を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
免疫応答が、
投与後約6ヶ月もしくは約12ヶ月の時点における、投与前のレベルの少なくとも1.5倍、2.0倍、もしくは2.5倍の抗PT抗体濃度、抗FHA抗体濃度、および抗PRN抗体濃度のうちの1つもしくは複数を含むか、または抗PT抗体濃度、抗FHA抗体濃度、および抗PRN抗体濃度のうちの1つもしくは複数が、投与後約6ヶ月もしくは約12ヶ月の時点において、投与前のレベルの少なくとも2倍、3倍、もしくは4倍である、持続型百日咳免疫応答を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
免疫原性組成物が、満足できる安全性プロファイルを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与のための免疫原性組成物であって、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントと、toll様受容体9(TLR9)アゴニストとを含み、
前記TLR9アゴニストが、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpG)モチーフを含む、10~35ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドであり、
前記Tdap抗原が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、百日咳トキソイド(PT)、百日咳繊維状ヘマグルチニン(FHA)、および百日咳パータクチン(PRN)を含み、
前記Tdap抗原および前記オリゴヌクレオチドが、ヒト対象において前記Tdap抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で、前記免疫原性組成物中に存在する、
免疫原性組成物。
【請求項26】
オリゴヌクレオチドが、配列5’-AACGTTCGAG-3’(配列番号3)を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
オリゴヌクレオチドが、5’-TGACTGTGAA CGTTCGAGAT GA-3’(配列番号1)の配列を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
オリゴヌクレオチドが、改変されたヌクレオシドを含み、任意選択で、前記改変されたヌクレオシドが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシン、2’-デオキシ-6-チオグアノシン、アラビノグアノシン、2’-デオキシ-2’置換-アラビノグアノシン、および2’-O-置換-アラビノグアノシンからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
オリゴヌクレオチドが、配列5’-TCGAACGTTCG-3’(配列番号2)を含み、ここでGが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンであるか、またはオリゴヌクレオチドが、配列5’-TCGAACGTTCG-X-GCTTGCAAGCT-5’、ここでGが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンであり、Xが、グリセロールである(5’-配列番号2-3’-X-3’-配列番号2-5’)を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含む、またはすべてのヌクレオチド連結が、ホスホロチオエート連結である、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
オリゴヌクレオチドが、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約375μg~約6000μgのオリゴヌクレオチド、もしくは約750μg~約3000μgのオリゴヌクレオチドを含むか、または0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約375μg、約750μg、約1500μg、約3000μg、もしくは約6000μgのオリゴヌクレオチドを含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
アルミニウム塩アジュバントが、非晶質硫酸ヒドロキシリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、および硫酸アルミニウムカリウムからなる群のうちの1つまたは複数を含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
アルミニウム塩アジュバントが、水酸化アルミニウムを含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約0.25~約0.50mgのAl3+を含むか、または0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約0.30~約0.40mgのAl3+を含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項36】
0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約5LfのTT、約2.5LfのDT、約8μgのPT、約8μgのFHA、および約2.5μgのPRNを含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
免疫原性組成物が、少なくとも1つの追加の抗原をさらに含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
少なくとも1つの追加の抗原が、百日咳線毛(FIM)抗原および百日咳アデニル酸シクラーゼ(AC)抗原のうちの一方または両方を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
少なくとも1つの追加の抗原が、不活性化ポリオウイルスを含み、任意選択で、不活性化ポリオウイルスが、1型ウイルス、2型ウイルス、および3型ウイルスのうちの1つまたは複数を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
請求項25から39のいずれか一項に記載の組成物と、ヒト対象においてTdap抗原に対する免疫応答を刺激するための組成物の投与のための説明書とを含む、キット。
【請求項41】
i)破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントとを含む、第1の組成物と、
ii)TLR9アゴニストを含む第2の組成物と、
iii)前記第1の組成物を前記第2の組成物と混合して、請求項25から39のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を調製するための説明書と、
を含む、キット。
【請求項42】
iv)ヒト対象においてTdap抗原に対する免疫応答を刺激するための免疫原性組成物の投与のためのさらなる説明書のセット
をさらに含む、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
免疫原性組成物の筋肉内注射のためのシリンジおよびニードルをさらに含む、請求項42に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月9日に出願されたインド仮出願第202011010025号および2020年12月19日に出願されたインド仮出願第202011055399号に対する優先権およびその利益を主張し、これらのそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルとしての配列表の提出
以下のASCIIテキストファイルでの提出の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名称:377882006842SEQLIST.TXT、記録日:2021年3月8日、サイズ:2KB)。
【0003】
本開示は、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、toll様受容体9(TLR9)アゴニスト、例えば、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpG)モチーフを含むオリゴヌクレオチドとを含む、免疫原性組成物に関する。免疫原性組成物は、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントをさらに含み得る。免疫原性組成物は、それを必要とする個体における破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与に好適である。
【背景技術】
【0004】
百日咳は、高度に感染性の疾患であり、高いワクチン接種率を維持している国々においてさえも、重要な世界的公衆衛生上の問題のままである。幼児期の免疫付与プログラムが確立されているにもかかわらず、百日咳は、主として小児期以降の免疫の減少、ならびに青年および成人から無防備な幼児への疾患伝播に起因して、流布し続けている。ジフテリア、破傷風、および全細胞性百日咳(DTwP)の混合ワクチンの全細胞性百日咳成分に関する安全上の懸念により、1990年代に、ジフテリア、破傷風、および非細胞性百日咳(DTaP)の混合ワクチンへの切り替えが進められた。しかしながら、小児DTaPワクチンレジメンが完了している個体における百日咳に対する免疫の低下により、2000年代中期から百日咳の発症の増加が生じている(Liang et al.,MMWR Recomm Rep,67(2):1-43,2018)。同様に、破傷風およびジフテリア抗毒素のレベルは、小児DTaPワクチンレジメンを完了している個体において、時間とともに低下する。
【0005】
Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)は、現在、10歳を上回る年齢の個体への破傷風トキソイド、弱毒化ジフテリアトキソイド、および非細胞性百日咳(Tdap)ワクチンの単回追加免疫用量、ならびに10年間隔または創傷管理の必要性に応じてTdapワクチンまたは破傷風およびジフテリア(Td)ワクチンのいずれかの追加免疫用量の投与を推奨している(Liangら、上記、2018)。Tdapの2回の用量は、安全であり、免疫原性であるが、抗百日咳抗体力価は、急速に低下し、一般に、2~3年以内に百日咳感染に対する保護の喪失をもたらすことが、臨床試験により示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、現在のワクチンレジメンにおける全細胞性から非細胞性への百日咳抗原の切り替えの結果として観察される免疫の低下に対処するのを補助するために、より高い力価およびより長期間続く百日咳抗原に対する抗体応答を提供するための改善された追加免疫ワクチンが、必要とされている。満足できる安全性プロファイルを有し、破傷風およびジフテリアトキソイド免疫原性に関して現在のワクチンに劣ることのない、改善されたTdap追加免疫ワクチンが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、toll様受容体9(TLR9)アゴニスト、例えば、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpG)モチーフを含むオリゴヌクレオチドとを含む、免疫原性組成物に関する。免疫原性組成物は、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントをさらに含み得る。免疫原性組成物は、それを必要とする個体における破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1A~Cは、Tdap抗原での再刺激後のインビトロにおける脾臓細胞によるサイトカイン分泌のレベルを示す。IFN-γ(図1A)、IL-5(図1B)、およびIL-17(図1C)のレベルが、示されている。
図1B】同上
図1C】同上
図2A図2A~Bは、TdapワクチンにCpG 1018を含めることにより、ワクチン接種したマウスの鼻腔内チャレンジの3日後の肺および気管におけるB.パータシス負荷量に実質的な低減が生じることを示す。
図2B】同上
図3A図3A~Cは、TdapワクチンにCpG 1018を含めることにより、鼻腔内チャレンジ前の血清抗体力価に増加が生じることを示す。図3Aは、B.パータシス反応性力価を示し、図3Bは、PT反応性力価を示し、図3Cは、FHA反応性力価を示す。
図3B】同上
図3C】同上
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般的な技法および定義
本開示の実施には、別途示されない限り、分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来的な技法が用いられることになり、これらは、当業者の技能の範囲内である。
【0010】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別途示されない限り、複数形の参照物を含む。例えば、「1つの」賦形剤は、1つまたは複数の賦形剤を含む。
【0011】
「含む」という語句は、本明細書において使用される場合、オープンエンドであり、かかる実施形態が追加の要素を含んでもよいことを示す。対照的に、「からなる」という語句は、クローズドであり、かかる実施形態が、追加の要素を含まないことを示す(微量の不純物を除く)。「から本質的になる」という語句は、部分的にクローズドであり、かかる実施形態が、かかる実施形態の基本的な特徴を実質的に変化させない要素をさらに含んでもよいことを示す。
【0012】
「約」という用語は、値を参照して本明細書に使用される場合、その値の90%から110%までを包含する(例えば、約3000μgのCpG 1018は、2700μg~3300μgのCpG 1018を指す)。
【0013】
本明細書において互換可能に使用されるように、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、および二本鎖RNA(dsRNA)、改変されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシド、またはそれらの組合せを含む。オリゴヌクレオチドは、線状もしくは環状で構成されてもよく、またはオリゴヌクレオチドは、線状および環状の両方のセグメントを含み得る。オリゴヌクレオチドは、ヌクレオシドのポリマーが、一般にはホスホジエステル連結によって結合されたものであるが、代替的な連結、例えば、ホスホロチオエートエステルもまた、オリゴヌクレオチドにおいて使用され得る。ヌクレオシドは、プリン(アデニン(A)もしくはグアニン(G)、またはこれらの誘導体)、またはピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)、もしくはウラシル(U)、またはこれらの誘導体)塩基が糖に結合したものからなる。DNAにおける4つのヌクレオシド単位(または塩基)は、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、およびデオキシシチジンと称される。ヌクレオチドは、ヌクレオシドのリン酸エステルである。
【0014】
「CpG」、「CpGモチーフ」、および「シトシン-ホスフェート-グアノシン」という用語は、本明細書において使用される場合、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシンジヌクレオチドを指し、これは、オリゴヌクレオチド中に存在する場合、インビトロ、インビボ、および/またはエキソビボにおける測定可能な免疫応答に寄与する。測定可能な免疫応答の例としては、抗原特異的抗体産生、サイトカインの分泌、リンパ球集団、例えば、NK細胞、CD4+ Tリンパ球、CD8+ Tリンパ球、Bリンパ球などの活性化または拡大が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、Th1型応答を優先的に活性化する。
【0015】
物質の「有効量」または「十分量」は、臨床結果を含め、有益または所望される結果を達成するのに十分な量であり、したがって、「有効量」は、それが適用される状況に依存する。免疫原性組成物を投与する状況において、有効量は、免疫応答(好ましくは、抗原に対する血清保護的レベルの抗体)を刺激するのに十分な抗原およびTLR9アゴニストを含む。
【0016】
「個体」および「対象」という用語は、哺乳動物を指す。「哺乳動物」としては、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、家畜動物、競技動物、げっ歯動物(例えば、マウスおよびラット)、ならびに愛玩動物(例えば、イヌおよびネコ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
「用量」という用語は、免疫原性組成物を参照して本明細書において使用される場合、任意の一時点において、対象によって摂取される(それに投与される、またはそれによって受容される)、免疫原性組成物の測定された部分を指す。
【0018】
「単離された」および「精製された」という用語は、本明細書において使用される場合、ある材料が天然に関連している少なくとも1つの成分から取り出されている(例えば、その本来の環境から取り出されている)材料を指す。「単離された」という用語は、組換えタンパク質を参照して使用される場合、そのタンパク質を産生した宿主細胞の培養培地から取り出されている、タンパク質を指す。
【0019】
応答またはパラメーターの「刺激」には、その応答またはパラメーターを、目的のパラメーターを除いてその他は同じ条件と比較して、または代替的には別の条件と比較して、誘起および/または増強することが含まれる(例えば、TLRアゴニストの不在下と比較して、TLRアゴニストの存在下におけるTLRシグナル伝達の増加)。例えば、免疫応答の「刺激」は、応答の増加を意味する。測定されるパラメーターに応じて、増加は、5倍~500倍もしくはそれ以上、または5倍、10倍、50倍、もしくは100倍から、500倍、1,000倍、5,000倍、もしくは10,000倍までであり得る。
【0020】
本明細書において使用される場合、「免疫付与」という用語は、抗原に対する哺乳動物対象の反応を増加させ、したがって、感染に抵抗するかまたはそれを克服するその能力を向上させる、プロセスを指す。
【0021】
「ワクチン接種」という用語は、本明細書において使用される場合、哺乳動物対象の身体へのワクチンの導入を指す。
【0022】
「アジュバント」は、抗原を含む組成物に添加された場合に、曝露時に哺乳動物レシピエントにおける抗原に対する免疫応答を非特異的に増強または強化する、物質を指す。
【0023】
本開示は、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、toll様受容体9(TLR9)アゴニスト、例えば、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpG)モチーフを含むオリゴヌクレオチドとを含む、免疫原性組成物に関する。免疫原性組成物は、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントをさらに含み得る。免疫原性組成物は、それを必要とする個体における破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与に好適である。
【0024】
I.免疫原性組成物およびキット
本開示は、破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与のための免疫原性組成物であって、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、toll様受容体9(TLR9)アゴニストとを含み、TLR9アゴニストが、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpGまたはシトシン-ホスフェート-グアノシンとも称される)モチーフを含む、8~35ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドであり、Tdap抗原が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、百日咳トキソイド(PT)、百日咳繊維状ヘマグルチニン(FHA)、および百日咳パータクチン(PRN)を含み、Tdap抗原およびオリゴヌクレオチドが、ヒト対象においてTdap抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で、免疫原性組成物中に存在する、組成物に関する。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントをさらに含む。
【0025】
A.Toll様受容体9(TLR9)アゴニスト
Toll様受容体(TLR)は、樹状細胞および他の自然免疫細胞に発現され、とりわけ、侵襲する病原体の存在に対する応答を刺激するためのもっとも重要な受容体である。ヒトは、構造が類似しているが、ウイルスまたは細菌の異なる部分を認識する、複数種類のTLRを有する。特定のTLRを活性化することにより、適応応答を増強させるために利用することができる特定の種類の自然免疫応答を刺激および制御することが可能である。
【0026】
TLR9(CD289)は、微生物DNAにおいて見出される非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpG)モチーフを認識し、これは、合成のCpG含有オリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)を使用して模倣することができる。CpG-ODNは、抗体産生を増強させ、ヘルパーT1(Th1)細胞応答を刺激することが知られている(Coffman et al., Immunity,33:492-503,2010)。構造および生物学的機能に基づいて、CpG-ODNは、3つの一般的なクラスに分割されている:CpG-A、CpG-B、およびCpG-C(Campbell, Methods Mol Biol, 1494:15-27,2017)。B細胞活性化の程度は、クラス間で変動し、CpG-A ODNは弱い、CpG-C ODNは良好な、およびCpG-B ODNは強力なB細胞活性化因子である。本開示のオリゴヌクレオチドTLR9アゴニストは、好ましくは、良好なB細胞活性化因子(CpG-C ODN)であるか、またはより好ましくは、強力な(CpG-B ODN)B細胞活性化因子である。
【0027】
最適なオリゴヌクレオチドTLR9アゴニストは、一般式:5’-プリン-プリン-CG-ピリミジン-ピリミジン-3’、または5’-プリン-プリン-CG-ピリミジン-ピリミジン-CG-3’(米国特許第6,589,940号)に従う回文構造配列を含むことが多い。TLR9アゴニズムは、ある特定の非回文構造CpG濃縮型ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドでも観察されるが、ヌクレオチド配列における変化によって影響を受け得る。加えて、TLR9アゴニズムは、CpGジヌクレオチド内のシトシンのメチル化によって破壊される。したがって、いくつかの実施形態において、TLR9アゴニストは、配列5’-AACGTTCG-3’を含む、8~35ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、8ヌクレオチドを上回る、9ヌクレオチドを上回る、10ヌクレオチドを上回る、11ヌクレオチドを上回る、12ヌクレオチドを上回る、13ヌクレオチドを上回る、14ヌクレオチドを上回る、15ヌクレオチドを上回る、16ヌクレオチドを上回る、17ヌクレオチドを上回る、18ヌクレオチドを上回る、19ヌクレオチドを上回る、または20ヌクレオチドを上回る長さであり、オリゴヌクレオチドは、35ヌクレオチドを下回る、34ヌクレオチドを下回る、33ヌクレオチドを下回る、32ヌクレオチドを下回る、31ヌクレオチドを下回る、30ヌクレオチドを下回る、29ヌクレオチドを下回る、28ヌクレオチドを下回る、27ヌクレオチドを下回る、26ヌクレオチドを下回る、25ヌクレオチドを下回る、または24ヌクレオチドを下回る長さである。いくつかの実施形態において、TLR9アゴニストは、配列5’-AACGTTCGAG-3’(配列番号3)を含む、10~35ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、10ヌクレオチドを上回る、11ヌクレオチドを上回る、12ヌクレオチドを上回る、13ヌクレオチドを上回る、14ヌクレオチドを上回る、15ヌクレオチドを上回る、16ヌクレオチドを上回る、17ヌクレオチドを上回る、18ヌクレオチドを上回る、19ヌクレオチドを上回る、または20ヌクレオチドを上回る長さであり、オリゴヌクレオチドは、35ヌクレオチドを下回る、34ヌクレオチドを下回る、33ヌクレオチドを下回る、32ヌクレオチドを下回る、31ヌクレオチドを下回る、30ヌクレオチドを下回る、29ヌクレオチドを下回る、28ヌクレオチドを下回る、27ヌクレオチドを下回る、26ヌクレオチドを下回る、25ヌクレオチドを下回る、または24ヌクレオチドを下回る長さである。
【0028】
Dynavax Technologies Corporation(Emeryville、CA)の研究者らは、22量体のホスホロチオエートに連結されたオリゴデオキシヌクレオチド、CpG 1018を特定し、これは、種にまたがって共投与される抗原に対する免疫応答を実質的に増強することができる特定の配列を含む(Campbell,Methods Mol Biol,1494:15-27,2017)。CpG 1018(5’-TGACTGTGAA CGTTCGAGAT GA-3’、配列番号1として記載される)を、インビトロおよびインビボでの免疫刺激活性についてオリゴヌクレオチドの広範なパネルをスクリーニングした後に、選択した。CpG 1018は、マウス、ウサギ、イヌ、ヒヒ、カニクイザル、およびヒトにおいて活性であるCpG-B ODNである。したがって、いくつかの好ましい実施形態において、TLR9アゴニストは、配列番号1の配列を含むオリゴヌクレオチドである。
【0029】
例示的なオリゴヌクレオチドTLR9アゴニストであるCpG 1018は、CpG-ODNであるが、本開示は、完全DNA分子に制限されるものではない。すなわち、いくつかの実施形態において、TLR9アゴニストは、CpGおよび回文構造配列が、デオキシリボ核酸であり、これらの領域の外側の1つまたは複数の核酸が、リボ核酸である、DNA/RNAキメラ分子である。いくつかの実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、線状である。他の実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、環状であるか、またはヘアピンループを含む。CpGオリゴヌクレオチドは、一本鎖であってもよく、または二本鎖であってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、改変を含み得る。改変としては、3’OHまたは5’OH基の改変、ヌクレオチド塩基の改変、糖成分の改変、およびリン酸基の改変が挙げられるが、これらに限定されない。改変された塩基は、改変された塩基が、ワトソン-クリック塩基対合を通じて、その天然の相補体に対する同じ特異性を維持する限り(例えば、回文構造部分は、依然として、自己相補性である)、CpGオリゴヌクレオチドの回文構造配列に含まれてもよい。いくつかの実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、非カノニカル塩基を含む。いくつかの実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、改変されたヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、改変されたヌクレオシドは、2’-デオキシ-7-デアザグアノシン、2’-デオキシ-6-チオグアノシン、アラビノグアノシン、2’-デオキシ-2’置換-アラビノグアノシン、および2’-O-置換-アラビノグアノシンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、TLR9アゴニストは、配列5’-TCGAACGTTCG-3’(配列番号2)を含むオリゴヌクレオチドであり、ここで、Gは、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、配列5’-TCGAACGTTCG-X-GCTTGCAAGCT-5’、ここで、Gは、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンであり、Xは、グリセロールである(5’-配列番号2-3’-X-3’-配列番号2-5’)を含む。
【0031】
CpGオリゴヌクレオチドは、リン酸基の改変を含み得る。例えば、ホスホジエステル連結に加えて、リン酸改変としては、メチルホスフェート、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート(架橋または非架橋)、ホスホトリエステル、およびホスホロジチオエートが挙げられるがこれらに限定されず、任意の組合せで使用され得る。他の非ホスフェート連結もまた、使用され得る。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格のみを含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格のみを含む。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ホスフェート骨格においてホスフェート連結の組合せ、例えば、ホスホジエステル連結およびホスホロチオエート連結の組合せを含む。ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル骨格を有するものよりも免疫原性が高くあり得、宿主に注射した後の分解に対する耐性が高いと考えられる(Braun et al., J Immunol,141:2084-2089,1988およびLatimer et al., Mol Immunol,32:1057-1064,1995)。本開示のCpGオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つ、2つ、または3つのヌクレオチド間ホスホロチオエートエステル連結を含む。いくつかの実施形態において、複数のCpGオリゴヌクレオチド分子が、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物中に存在する場合、ホスホロチオエートエステル連結の両方の立体異性体が、複数のCpGオリゴヌクレオチド分子に存在する。いくつかの実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間連結のすべてが、ホスホロチオエート連結であるか、または換言すると、CpGオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格を有する。
【0032】
典型的には0.5mlの用量である免疫原性組成物の単位用量は、約375μg~約6000μgのCpGオリゴヌクレオチド、好ましくは、約750μg~約3000μgのCpGオリゴヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態において、0.5mlの用量の免疫原性組成物は、約250μgを上回る、500μgを上回る、750μgを上回る、1000μgを上回る、または1250μgを上回るCpGオリゴヌクレオチド、かつ約6000μgを下回る、5000μgを下回る、4000μgを下回る、3000μgを下回る、または2000μgを下回るCpGオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、0.5mlの用量の免疫原性組成物は、約375、750、1500、3000、または6000μgのCpGオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、0.5mlの用量の免疫原性組成物は、約750μgのCpGオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、0.5mlの用量の免疫原性組成物は、約1500μgのCpGオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、0.5mlの用量の免疫原性組成物は、約3000μgのCpGオリゴヌクレオチドを含む。
【0033】
本明細書に記載されるCpGオリゴヌクレオチドは、別途示されない限り、それらの薬学的に許容される塩の形態にある。例示的な塩基性塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、リチウム、およびカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩、亜鉛塩、有機塩基(例えば、有機アミン)を用いた塩、例えば、N-Me-D-グルカミン、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、コリン、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、t-ブチルアミン、ならびにアミノ酸、例えば、アルギニン、リジンなどを用いた塩が挙げられる。いくつかの実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、アンモニウム、ナトリウム、リチウム、またはカリウム塩の形態にある。1つの好ましい実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、ナトリウム塩の形態にある。
【0034】
B.破傷風、ジフテリア、および百日咳抗原
破傷風は、急性の、致命的となることも多い疾患であり、クロストリジウム・テタニという細菌によって産生される神経毒素によって引き起こされる神経筋機能不全を特徴とする。破傷風には、細菌の胞子への曝露を通じて罹患するが、これは、土壌、粉塵、および肥料中に一般に見出される。破傷風神経毒素に対する免疫は、自然に獲得されることは珍しいが、疾患からの保護は、破傷風トキソイド(TT)含有ワクチンの投与によって付与することができる(Liang et al., MMWR Recomm Rep,67(2):1-43,2018)。中和アッセイにおいて測定される少なくとも0.01IU/mlの血清破傷風抗毒素レベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定された少なくとも0.1IU/mlの血清破傷風抗毒素レベルと同様に、保護的であると考えられる。本開示の免疫原性組成物は、C.テタニによって産生される破傷風毒素の化学的無毒化によって得られるTTを含む。いくつかの実施形態において、単位用量(例えば、約0.5ml)の免疫原性組成物は、約5~10凝集限界単位(Lf)のTT、好ましくは、約5.0LfのTTを含む。
【0035】
ジフテリアは、コリネバクテリウム・ジフテリエという細菌の毒素産生株によって引き起こされる急性疾患である。ジフテリアは、主として、C.ジフテリエに感染した個体からのエアロゾル化された細菌との直接的な接触またはその吸入により、罹患する。疾患は、咽頭痛および発熱を特徴とし、重症症例では、気道閉塞を引き起こし得る。加えて、ジフテリア毒素の全身への拡がりにより、心臓および神経学的併発症を引き起こし得る。ジフテリア感染は、保護免疫を付与しない場合がある。しかしながら、疾患からの保護は、ジフテリアトキソイド(DT)含有ワクチンにより付与することができる(Liang et al.,MMWR Recomm Rep,67(2):1-43,2018)。中和アッセイにおいて測定される少なくとも0.01IU/mlの血清ジフテリア抗毒素レベルは、いくらかの保護を提供し得、一方でELISAによって測定される少なくとも0.1IU/mlの血清ジフテリア抗毒素レベルは、保護的であると考えられ、少なくとも1.0IU/mlのジフテリア抗毒素レベルは、長期保護と関連付けられる。本開示の免疫原性組成物は、C.ジフテリエによって産生されるジフテリア毒素の化学的無毒化によって得られるDTを含む。いくつかの実施形態において、単位用量(例えば、約0.5ml)の免疫原性組成物は、2.0~2.5LfのDT、好ましくは、約2.5LfのDTという低減された量のDTを含む。
【0036】
百日咳(whooping cough)としても知られる百日咳(Pertussis)は、ボルデテラ・パータシスという細菌によって引き起こされる急性呼吸器疾患である。百日咳は、B.パータシスに感染した個体からのエアロゾル化された細菌の吸入を通じて拡がる、伝染性の高い疾患である。疾患の重症度は、感染した対象の年齢に逆相関し、乳児および幼児(例えば、出生から2歳まで)は、入院および死亡につながる重症症状の危険性がもっとも高い。小児ワクチンレジメンの導入により、百日咳の発症は減少しており、抗百日咳抗体の存在と疾患からの保護との間の相関性が、ワクチン有効性研究において観察されている(Liang et al.,MMWR Recomm Rep,67(2):1-43,2018)。しかしながら、百日咳に対する保護の血清学的または臨床検査的相関性は、依然として定義されていない。したがって、新しいワクチンの有効性は、それらの安全性プロファイル、および同様に製造された抗原を使用した既存のFederal Drug Administration(FDA)に承認されているワクチンに劣らない免疫原性に基づく。本開示の免疫原性組成物は、いくつかのB.パータシス抗原、すなわち、百日咳トキソイド(PT)、百日咳繊維状ヘマグルチニン(FHA)、および百日咳パータクチン(PRN)を含む。免疫原性組成物は、1つまたは複数の追加の百日咳抗原、例えば、1つまたは複数の百日咳線毛(FIM)2型、百日咳FIM3型、および百日咳アデニル酸シクラーゼ(AC)をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、単位用量(例えば、約0.5ml)の免疫原性組成物は、低減された量の1つまたは複数の百日咳抗原、例えば、約2.5~8.0μgのPT、約5.0~8.0μgのFHA、および約2.5~3.0μgのPRN、好ましくは、約8μgのPT、約8μgのFHA、および約2.5μgのPRNを含む。
【0037】
C.追加の成分
本開示の免疫原性組成物は、1つまたは複数の追加の成分、例えば、1つまたは複数の賦形剤、別のアジュバント、および/または追加の抗原を含み得る。
【0038】
1.賦形剤
本開示の薬学的に許容される賦形剤としては、例えば、溶媒、増量剤、緩衝剤、等張化剤、および保存剤が挙げられる(Pramanick et al., Pharma Times,45:65-77,2013)。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、溶媒、増量剤、緩衝剤、および等張化剤のうちの1つまたは複数としての機能を果たす賦形剤を含み得る(例えば、生理食塩水中の塩化ナトリウムは、水性ビヒクルおよび等張化剤の両方としての機能を果たし得る)。
【0039】
いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、溶媒として、水性ビヒクルを含む。好適なビヒクルとしては、例えば、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、およびリンガー溶液が挙げられる。いくつかの実施形態において、組成物は、等張性である。
【0040】
免疫原性組成物は、緩衝剤を含み得る。緩衝剤は、処理、保管、および任意選択で再構成の際の活性薬剤の分解を阻害するようにpHを制御する。好適な緩衝剤としては、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、または硫酸塩を含む塩が挙げられる。他の好適な緩衝剤としては、例えば、アミノ酸、例えば、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、およびリジンが挙げられる。緩衝剤は、塩酸または水酸化ナトリウムをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、組成物のpHを、6~9の範囲内に維持する。いくつかの実施形態において、pHは、(下限)6を上回る、7を上回る、または8を上回る。いくつかの実施形態において、pHは、(上限)9を下回る、8を下回る、または7を下回る。すなわち、pHは、約6~9の範囲内であり、下限は上限よりも低い。
【0041】
免疫原性組成物は、等張化剤を含み得る。好適な等張化剤としては、例えば、デキストロース、グリセロール、塩化ナトリウム、グリセリン、およびマンニトールが挙げられる。
【0042】
免疫原性組成物は、増量剤を含み得る。増量剤は、医薬組成物を投与前に凍結乾燥させようとする場合に、特に有用である。いくつかの実施形態において、増量剤は、凍結もしくはスプレー乾燥の間、および/または保管の間、活性薬剤の安定化およびその分解の予防を補助する、保護剤である。好適な増量剤は、糖(単糖、二糖、および多糖)、例えば、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、グルコース、およびラフィノースである。
【0043】
免疫原性組成物は、保存剤を含み得る。好適な保存剤としては、例えば、抗酸化剤および抗菌剤が挙げられる。しかしながら、好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、滅菌条件下において調製され、単回使用容器に入っており、したがって、保存剤を含めることは必要ない。
【0044】
2.追加のアジュバント
アジュバントは、当該技術分野において公知であり、ミョウバン(アルミニウム塩)、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、リポソーム、およびマイクロ粒子、例えば、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)マイクロ粒子が挙げられるが、これらに限定されない(Shah et al.,Methods Mol Biol,1494:1-14,2017)。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントをさらに含む。いくつかの実施形態において、アルミニウム塩アジュバントは、非晶質硫酸ヒドロキシリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、および硫酸アルミニウムカリウムからなる群のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態において、アルミニウム塩アジュバントは、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムのうちの一方または両方を含む。いくつかの実施形態において、アルミニウム塩アジュバントは、水酸化アルミニウムからなる。いくつかの実施形態において、単位用量(例えば、約0.5ml)の免疫原性組成物は、約0.25~約0.50mgのAl3+、好ましくは、約0.30~約0.40mgのAl3+を含む。
【0045】
他の実施形態において、免疫原性組成物は、追加のアジュバントをさらに含む。追加の好適なアジュバントとしては、水中スクアレン型エマルジョン(例えば、MF59またはAS03)、TLR3アゴニスト(例えば、ポリ-ICまたはポリ-ICLC)、TLR4アゴニスト(例えば、細菌性リポ多糖誘導体、例えば、モノホスホリルリピドA(MPL)、および/またはサポニン、例えば、AS01もしくはAS02にあるようなQuil AもしくはQS-21)、TLR5アゴニスト(細菌性フラジェリン)、ならびにTLR7および/またはTLR8アゴニスト(イミダゾキノリン誘導体、例えば、イミキモド、およびレシキモド)が挙げられるが、これらに限定されない(Coffman et al., Immunity,33:492-503,2010)。いくつかの実施形態において、追加のアジュバントは、MPLおよびミョウバン(例えば、AS04)を含む。獣医学的使用および非ヒト動物における抗体の産生については、フロイントアジュバント(完全および不完全の両方)の分裂促進性成分を、使用することができる。
【0046】
3.追加の抗原
本開示の免疫原性組成物は、少なくとも1つの追加の抗原、例えば、別のヒト疾患の素因となる病原体に由来する抗原をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、病原体は、ポリオウイルス、B型肝炎ウイルス、およびヘモフィルス・インフルエンザエB型(HiB)のうちの1つまたは複数から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗原は、不活性化ポリオウイルスを含み、これは、1型ウイルス、2型ウイルス、および3型ウイルスのうちの1つまたは複数を含み得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗原は、B型肝炎ウイルス表面抗原を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗原は、肺炎球菌抗原および/または髄膜炎菌抗原を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗原は、ヘモフィルスb莢膜多糖類(ポリリボシル-リビトール-ホスフェート)を含み得る。いくつかの実施形態において、ヘモフィルスb莢膜多糖類は、破傷風トキソイドまたは髄膜炎菌タンパク質にコンジュゲートされる。
【0047】
D.キット
本開示はまた、i)破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、toll様受容体9(TLR9)アゴニスト、例えば、CpGオリゴヌクレオチドとを含む、免疫原性組成物、ならびにii)ヒト対象においてTdap抗原に対する免疫応答を刺激するために免疫原性組成物を投与するための説明書のセットを含む、キットも提供する。加えて、本開示は、i)破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントとを含む、第1の組成物と、ii)TLR9アゴニスト、例えば、CpGオリゴヌクレオチドを含む、第2の組成物と、iii)第1の組成物を第2の組成物と混合して、免疫原性組成物を調製するための説明書と、任意選択で、iv)ヒト対象においてTdap抗原に対する免疫応答を刺激するために免疫原性組成物を投与するためのさらなる説明書のセットとを含む、キットを提供する。いくつかの実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、配列5’-AACGTTCG-3’を含む。いくつかの実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、配列5’-AACGTTCGAG-3’(配列番号3)を含む。いくつかの好ましい実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、5’-TGACTGTGAA CGTTCGAGAT GA-3’(配列番号1)の配列を含む。
【0048】
キットは、適切に包装された免疫原性組成物を含み得る。例えば、免疫原性組成物が、凍結乾燥粉末である場合、弾性ストッパを通じて流体(例えば、滅菌水、生理食塩水など)を注入することによって粉末を容易に再懸濁させることができるように、通常、弾性ストッパを有するバイアルが使用される。いくつかの実施形態において、キットは、投与のためのデバイス(例えば、シリンジおよびニードル)を含む。免疫原性組成物の使用に関する説明書は、一般に、意図される使用方法のための投薬量、投与のスケジュールおよび経路に関する情報を含む。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与のためのものである。
【0049】
II.使用の方法
本開示は、破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与のための方法であって、ヒト対象に、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、Toll様受容体9(TLR9)アゴニストとを含む、免疫原性組成物を投与することを含み、TLR9アゴニストが、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpGまたはシトシン-ホスフェート-グアノシン)モチーフを含む、8~35ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドであり、ヒト対象が、3歳またはそれ以上の年齢であり、Tdap抗原が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、百日咳トキソイド(PT)、百日咳繊維状ヘマグルチニン(FHA)、および百日咳パータクチン(PRN)を含み、Tdap抗原およびオリゴヌクレオチドが、Tdap抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で、免疫原性組成物中に存在する、方法に関する。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントをさらに含む。
【0050】
本開示はまた、破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与のための方法であって、ヒト対象に、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントと、toll様受容体9(TLR9)アゴニストとを含む、免疫原性組成物を投与することを含み、TLR9アゴニストが、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpG)モチーフを含む、10~35ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドであり、ヒト対象が、3歳またはそれ以上の年齢であり、Tdap抗原が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、百日咳トキソイド(PT)、百日咳繊維状ヘマグルチニン(FHA)、および百日咳パータクチン(PRN)を含み、Tdap抗原およびオリゴヌクレオチドが、Tdap抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で、免疫原性組成物中に存在する、方法に関する。Tdap抗原は、単離された抗原または組換え抗原であり、全破傷風、ジフテリア、または百日咳菌を含まない。いくつかの実施形態において、本方法は、百日咳に曝露されているワクチン接種済みの対象の鼻および/または肺組織の百日咳コロニー形成を低減するのに有効である。
【0051】
A.対象
本開示の免疫原性組成物の意図されるレシピエントは、少なくとも3歳の年齢のヒト対象であり、ジフテリア、破傷風、および非細胞性百日咳(DTaP)抗原、またはジフテリア、破傷風、および全細胞性百日咳(DTwP)抗原を含む小児ワクチンの少なくとも2回または3回の投薬を受けていてもよい。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、4~6歳の年齢であり、1歳の間に小児DTaPワクチンの投薬を受けていてもよい。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、少なくとも7~10歳またはそれ以上の年齢であり、不完全または不明な小児ワクチン歴を有していてもよい。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、11~18歳の年齢である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、19歳もしくはそれ以上の年齢、19~64歳の年齢、または65歳もしくはそれ以上の年齢である。いくつかの好ましい実施形態において、ヒト対象は、少なくとも10歳の年齢であり、過去3年、4年、または5年以内に小児ワクチンも追加免疫ワクチンも投薬を受けておらず、ここで、小児ワクチンは、ジフテリア、破傷風、および非細胞性百日咳(DTaP)抗原、またはジフテリア、破傷風、および全細胞性百日咳(DTwP)抗原を含み、追加免疫ワクチンは、破傷風およびジフテリアトキソイド(Td)抗原、または破傷風、ジフテリアおよび非細胞性百日咳(Tdap)抗原を含む。
【0052】
本開示の免疫原性組成物は、母体の免疫付与を通じて新生児における百日咳を予防するのに好適であることが予測される。具体的には、妊娠の第1三半期における妊娠中の女性への免疫原性組成物の投与は、母体抗体の胎児への受動的伝達をもたらすことが予測される。このようにして、乳児は、小児ワクチンレジメンの開始前に、百日咳からのある程度の保護を受容し得る。また、免疫原性組成物を医療従事者に投与することは、医療従事者自身の利益のため、および医療従事者がケアする個体への百日咳の伝播の危険性を減少させるための両方に関して、有利であり得る。
【0053】
B.用量および投与形態
本開示の免疫原性組成物は、破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与が意図されている。免疫原性組成物は、約0.5mLの体積(例えば、単位用量)で、単回用量として筋肉内注射によって投与されるものである。いくつかの実施形態において、筋肉内注射は、上腕の三角筋に行われる。免疫原性組成物は、静脈内にも、皮内にも、皮下にも投与すべきではない。
【0054】
C.免疫応答の刺激のための方法
本開示は、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原に対する免疫応答を刺激するための方法であって、本明細書に記載される免疫原性組成物を、哺乳動物対象(例えば、ヒト対象)においてTdap抗原に対する免疫応答を刺激するために、哺乳動物対象に投与することを含む、方法に関する。好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、任意選択で約0.5mLの体積(例えば、単位用量)で、筋肉内注射によって投与されるものである。いくつかの実施形態において、筋肉内注射は、それを必要とするヒト対象の上腕の三角筋に行われる。
【0055】
免疫応答を「刺激する」とは、免疫応答を増加させることを意味し、これは、デノボ免疫応答を誘起すること(例えば、初期ワクチン接種レジメンの結果として)、または既存の免疫応答を増強させること(例えば、追加免疫ワクチン接種レジメンの結果として)により生じ得る。いくつかの実施形態において、免疫応答を刺激することとしては、サイトカイン産生を刺激すること、Bリンパ球増殖を刺激すること、抗体産生を刺激すること、インターフェロン経路に関連する遺伝子の発現を刺激すること、化学誘引物質に関連する遺伝子の発現を刺激すること、および形質細胞様樹状細胞の成熟を刺激することからなる群のうちの1つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態において、免疫応答を刺激することは、対象における抗原特異的抗体応答を増加させることを含む。好ましくは、抗原特異的抗体応答を増加させることは、投与後1ヶ月の時点において、投与前のレベルよりも少なくとも2倍、3倍、もしくは4倍高く、および/または投与後6ヶ月の時点において、投与前のレベルを少なくとも1.5倍、2.0倍、もしくは2.5倍上回って、抗原特異的抗体の濃度を増加させることを含む。好ましくは、抗原特異的抗体応答を増加させることは、投与後1ヶ月の時点において、閾値レベル(例えば、IU/mlでのELISAによる検出のレベル)を少なくとも2倍、3倍、もしくは4倍上回って、および/または投与後6ヶ月の点において、閾値レベルを少なくとも1.5倍、2.0倍、もしくは2.5倍上回って、抗原特異的抗体の濃度を増加させることを含む。好ましくは、抗原特異的抗体応答を増加させることは、最小血清保護レベル(例えば、破傷風については、中和アッセイによって測定した場合に少なくとも0.01IU/ml、またはELISAによって測定した場合に少なくとも0.1IU/ml)を上回って、抗原特異的抗体の濃度を増加させることを含む。
【0056】
実施形態の列挙
1.破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与のための方法であって、
ヒト対象に、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントと、toll様受容体9(TLR9)アゴニストとを含む、免疫原性組成物を投与することを含み、
TLR9アゴニストが、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpG)モチーフを含む、10~35ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドであり、
ヒト対象が、3歳またはそれ以上の年齢であり、
Tdap抗原が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、百日咳トキソイド(PT)、百日咳繊維状ヘマグルチニン(FHA)、および百日咳パータクチン(PRN)を含み、
Tdap抗原およびオリゴヌクレオチドが、Tdap抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で、免疫原性組成物中に存在する、
方法。
2.オリゴヌクレオチドが、配列5’-AACGTTCGAG-3’(配列番号3)を含む、実施形態1に記載の方法。
3.オリゴヌクレオチドが、配列5’-TGACTGTGAA CGTTCGAGAT GA-3’(配列番号1)を含む、実施形態1に記載の方法。
4.オリゴヌクレオチドが、改変されたヌクレオシドを含み、任意選択で、改変されたヌクレオシドが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシン、2’-デオキシ-6-チオグアノシン、アラビノグアノシン、2’-デオキシ-2’置換-アラビノグアノシン、および2’-O-置換-アラビノグアノシンからなる群から選択される、実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法。
5.オリゴヌクレオチドが、配列5’-TCGAACGTTCG-3’(配列番号2)を含み、ここでGが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンであり、任意選択で、オリゴヌクレオチドが、配列5’-TCGAACGTTCG-X-GCTTGCAAGCT-5’、ここでGが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンであり、Xが、グリセロールである(5’-配列番号2-3’-X-3’-配列番号2-5’)を含む、実施形態4に記載の方法。
6.オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含み、任意選択で、すべてのヌクレオチド連結が、ホスホロチオエート連結である、実施形態1から5のいずれか1つに記載の方法。
7.オリゴヌクレオチドが、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドである、実施形態1から6のいずれか1つに記載の方法。
8. 0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約375μg~約6000μgのオリゴヌクレオチド、または約750μg~約3000μgのオリゴヌクレオチドを含み、任意選択で、0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約375μg~約750μg、約1500μg、約3000μg、または約6000μgのオリゴヌクレオチドを含む、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
9.アルミニウム塩アジュバントが、非晶質硫酸ヒドロキシリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、および硫酸アルミニウムカリウムからなる群のうちの1つまたは複数を含む、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
10.アルミニウム塩アジュバントが、水酸化アルミニウムを含む、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
11. 0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約0.25~約0.50mgのAl3+を含み、任意選択で、0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約0.30~約0.40mgのAl3+を含む、実施形態9または実施形態10に記載の方法。
12. 0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約5LfのTT、約2.0~2.5LfのDT、約2.5~8.0μgのPT、約5.0~8.0μgのFHA、および約2.5~3.0μgのPRNを含み、任意選択で、0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約5LfのTT、約2.5LfのDT、約8μgのPT、約8μgのFHA、および約2.5μgのPRNを含む、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
13.免疫原性組成物が、少なくとも1つの追加の抗原をさらに含む、実施形態1から12のいずれか1つに記載の方法。
14.少なくとも1つの追加の抗原が、百日咳線毛(FIM)抗原および百日咳アデニル酸シクラーゼ(AC)抗原のうちの一方または両方を含む、実施形態13に記載の方法。
15.少なくとも1つの追加の抗原が、不活性化ポリオウイルスを含み、任意選択で、不活性化ポリオウイルスが、1型ウイルス、2型ウイルス、および3型ウイルスのうちの1つまたは複数を含む、実施形態13または実施形態14に記載の方法。
16.ヒト対象が、少なくとも10歳またはそれ以上の年齢である、実施形態1から15のいずれか1つに記載の方法。
17.ヒト対象が、過去3年以内に小児ワクチンも追加免疫ワクチンも受けておらず、
小児ワクチンが、ジフテリア、破傷風、および非細胞性百日咳(DTaP)抗原、またはジフテリア、破傷風、および全細胞性百日咳(DTwP)抗原を含み、
追加免疫ワクチンが、破傷風およびジフテリア(Td)抗原、または破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原を含む、
実施形態1から16のいずれか1つに記載の方法。
18.ヒト対象が、10~18歳の年齢である、実施形態17に記載の方法。
19.ヒト対象が、19歳もしくはそれ以上の年齢であり、任意選択で、ヒト対象が、19~64歳の年齢であるか、または65歳もしくはそれ以上の年齢である、実施形態17に記載の方法。
20.Tdap抗原およびオリゴヌクレオチドが、投与の1ヶ月後までにTdap抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で、免疫原性組成物中に存在し、免疫応答が、
少なくとも0.4国際単位/ml(IU/ml)の濃度の抗TT抗体および抗DT抗体、ならびに
投与前のレベルまたは定量限界レベルよりも国際単位/ml(IU/ml)で少なくとも2倍高い濃度の抗PT抗体、抗FHA抗体、および抗PRN抗体
を含む、実施形態1から19のいずれか1つに記載の方法。
21.免疫応答が、
(i)投与の1ヶ月後までに、少なくとも1.0IU/mlの抗TT抗体濃度および抗DT抗体濃度のうちの一方もしくは両方、ならびに/または
(ii)投与の1ヶ月後までに、少なくとも4倍高い抗PT抗体濃度、抗FHA抗体濃度、および抗PRN抗体濃度のうちの1つもしくは複数を含み、
抗体濃度が、国際単位/ml(IU/ml)での投与前のレベルまたは定量限界レベルのいずれかと比べたものである、
実施形態20に記載の方法。
22.免疫応答が、
投与後約6ヶ月もしくは約12ヶ月の時点における、投与前のレベルの少なくとも1.5倍、2.0倍、もしくは2.5倍の抗TT抗体濃度および抗DT抗体濃度のうちの一方もしくは両方を含み、任意選択で、抗TT抗体濃度および抗DT抗体濃度のうちの一方もしくは両方が、投与後約6ヶ月もしくは約12ヶ月の時点において、投与前のレベルの少なくとも2倍、3倍、もしくは4倍である、持続型破傷風および/またはジフテリア免疫応答を含む、実施形態20から21のいずれか1つに記載の方法。
23.免疫応答が、
投与後約6ヶ月もしくは約12ヶ月の時点における、投与前のレベルの少なくとも1.5倍、2.0倍、もしくは2.5倍の抗PT抗体濃度、抗FHA抗体濃度、および抗PRN抗体濃度のうちの1つもしくは複数を含み、任意選択で、抗PT抗体濃度、抗FHA抗体濃度、および抗PRN抗体濃度のうちの1つもしくは複数が、投与後約6ヶ月もしくは約12ヶ月の時点において、投与前のレベルの少なくとも2倍、3倍、もしくは4倍である、持続型百日咳免疫応答を含む、実施形態20から22のいずれか1つに記載の方法。
24.免疫原性組成物が、満足できる安全性プロファイルを有する、実施形態1から23のいずれか1つに記載の方法。
25.破傷風、ジフテリア、および百日咳に対する能動的追加免疫付与のための免疫原性組成物であって、破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントと、toll様受容体9(TLR9)アゴニストとを含み、
TLR9アゴニストが、非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン(CpG)モチーフを含む、10~35ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドであり、
Tdap抗原が、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、百日咳トキソイド(PT)、百日咳繊維状ヘマグルチニン(FHA)、および百日咳パータクチン(PRN)を含み、
Tdap抗原およびオリゴヌクレオチドが、ヒト対象においてTdap抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量で、免疫原性組成物中に存在する、
免疫原性組成物。
26.オリゴヌクレオチドが、配列5’-AACGTTCGAG-3’(配列番号3)を含む、実施形態25に記載の組成物。
27.オリゴヌクレオチドが、5’-TGACTGTGAA CGTTCGAGAT GA-3’(配列番号1)の配列を含む、実施形態25に記載の組成物。
28.オリゴヌクレオチドが、改変されたヌクレオシドを含み、任意選択で、改変されたヌクレオシドが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシン、2’-デオキシ-6-チオグアノシン、アラビノグアノシン、2’-デオキシ-2’置換-アラビノグアノシン、および2’-O-置換-アラビノグアノシンからなる群から選択される、実施形態25から27のいずれか1つに記載の組成物。
29.オリゴヌクレオチドが、配列5’-TCGAACGTTCG-3’(配列番号2)を含み、ここでGが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンであり、任意選択で、オリゴヌクレオチドが、配列5’-TCGAACGTTCG-X-GCTTGCAAGCT-5’、ここでGが、2’-デオキシ-7-デアザグアノシンであり、Xが、グリセロールである(5’-配列番号2-3’-X-3’-配列番号2-5’)を含む、実施形態28に記載の組成物。
30.オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つのホスホロチオエート連結を含み、任意選択で、すべてのヌクレオチド連結が、ホスホロチオエート連結である、実施形態25から29のいずれか1つに記載の組成物。
31.オリゴヌクレオチドが、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドである、実施形態25から30のいずれか1つに記載の組成物。
32. 0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約375μg~約6000μgのオリゴヌクレオチド、または約750μg~約3000μgのオリゴヌクレオチドを含み、任意選択で、0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約375μg、約750μg、約1500μg、約3000μg、または約6000μgのオリゴヌクレオチドを含む、実施形態25から31のいずれか1つに記載の組成物。
33.アルミニウム塩アジュバントが、非晶質硫酸ヒドロキシリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、および硫酸アルミニウムカリウムからなる群のうちの1つまたは複数を含む、実施形態25から32のいずれか1つに記載の組成物。
34.アルミニウム塩アジュバントが、水酸化アルミニウムを含む、実施形態25から32のいずれか1つに記載の組成物。
35. 0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約0.25~約0.50mgのAl3+を含み、任意選択で、0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約0.30~約0.40mgのAl3+を含む、実施形態25から34のいずれか1つに記載の組成物。
36. 0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約5LfのTT、約2.0~2.5LfのDT、約2.5~8.0μgのPT、約5.0~8.0μgのFHA、および約2.5~3.0μgのPRNを含み、任意選択で、0.5mlの用量の免疫原性組成物が、約5LfのTT、約2.5LfのDT、約8μgのPT、約8μgのFHA、および約2.5μgのPRNを含む、実施形態25から35のいずれか1つに記載の組成物。
37.免疫原性組成物が、少なくとも1つの追加の抗原をさらに含む、実施形態25から36のいずれか1つに記載の組成物。
38.少なくとも1つの追加の抗原が、百日咳線毛(FIM)抗原および百日咳アデニル酸シクラーゼ(AC)抗原のうちの一方または両方を含む、実施形態37に記載の組成物。
39.少なくとも1つの追加の抗原が、不活性化ポリオウイルスを含み、任意選択で、不活性化ポリオウイルスが、1型ウイルス、2型ウイルス、および3型ウイルスのうちの1つまたは複数を含む、実施形態37または実施形態38に記載の組成物。
40.実施形態25から39のいずれか1つに記載の組成物と、ヒト対象におけるTdap抗原に対する免疫応答を刺激するための組成物の投与のための説明書とを含む、キット。
41.i)破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原と、Tdap抗原を吸着させたアルミニウム塩アジュバントとを含む、第1の組成物と、
ii)TLR9アゴニストを含む第2の組成物と、
iii)第1の組成物を第2の組成物と混合して、免疫原性組成物を調製するための説明書を含み、
任意選択で、免疫原性組成物が、実施形態25から39のいずれか1つに記載の組成物である、
キット。
42.iv)ヒト対象においてTdap抗原に対する免疫応答を刺激するための免疫原性組成物の投与のためのさらなる説明書のセット
をさらに含む、実施形態41に記載のキット。
43.免疫原性組成物の筋肉内注射のためのシリンジおよびニードルをさらに含む、実施形態40から42のいずれか1つに記載のキット。
44.ヒト対象において破傷風、ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原に対する免疫応答を刺激するための、実施形態25から39のいずれか1つに記載の組成物の使用であって、方法が、有効量の組成物を対象に投与することを含む、使用。
45.B.パータシスによる感染からヒト対象を保護するための実施形態25から39のいずれか1つに記載の組成物の使用であって、方法が、有効量の組成物を対象に投与することを含む、使用。
46.ヒト対象が百日咳に罹患するのを予防するための実施形態25から39のいずれか1つに記載の組成物の使用であって、方法が、有効量の組成物を対象に投与することを含む、使用。
47.組成物が、筋肉内注射によって投与される、実施形態44から46のいずれか1つに記載の使用。
【0057】
実施例
略語:CpG(非メチル化シチジン-ホスホ-グアノシン)、DT(ジフテリアトキソイド)、DTaP(ジフテリア、破傷風、および非細胞性百日咳)、DTwP(ジフテリア、破傷風、および全細胞性百日咳)、FHA(繊維状ヘマグルチニン)、GMC(幾何平均濃度)、HD(ヒト用量)、Lf(凝集単位)、mcg(マイクログラム)、MVC(疑似ワクチン接種、チャレンジ)、NALT(鼻関連リンパ組織)、NVNC(非ワクチン接種、非チャレンジ)、Tdap(破傷風、弱毒化ジフテリア、および非細胞性百日咳)、IU/mL(国際単位/ミリリットル)、OOR(範囲外)、PRN(パータクチン)、PT(不活性化百日咳毒素)、TLR9(Toll様受容体9)、TT(破傷風トキソイド)、ならびにwP(全細胞性百日咳)。
【0058】
抗原:破傷風、弱毒化ジフテリア、および非細胞性百日咳(Tdap)抗原を、独立して、4つの異なる細菌株の発酵中に産生させる:クロストリジウム・テタニHarvard 49025(破傷風毒素)、コリネバクテリウム・ジフテリアPW8(ジフテリア毒素)、ボルデテラ・パータシス165(百日咳毒素)、ならびにボルデテラ・パータシスTohama I(FHAおよびPRN)。発酵槽産物を回収し、続いて、抗原を単離し、不活性化し、濾過滅菌して、個々の抗原を得る。ミョウバンを含有する調査用ワクチンの産生については、それぞれの抗原を、さらに、Al(OH)に個別に吸着させた後、ブレンドして、Tdap-ミョウバン産物にする。
【0059】
破傷風トキソイド(TT)は、C.テタニ株Harvard 49205によって産生される破傷風毒素のホルマリン無毒化によって産生される。ジフテリアトキソイド(DT)は、C.ジフテリエPW8(CN2000)によって産生されるジフテリア毒素のホルマリン無毒化によって得られる。百日咳トキソイド(PT)は、B.パータシス165によって産生される百日咳毒素のホルマリン無毒化によって産生される。繊維状ヘマグルチニン(FHA)は、B.パータシスTohama Iによって産生されるFHAのホルマリン処理によって産生される。パータクチン(PRN)は、PRNを含有するB.パータシスTohama I細胞塊の熱不活性化によって産生される。
【実施例1】
【0060】
マウスにおけるCpGアジュバント付加した破傷風、弱毒化ジフテリア、非細胞性百日咳(Tdap)ワクチンの免疫原性
この実施例は、同種初回免疫/追加免疫レジメンにおける様々なTdapワクチンの2回の投薬の免疫原性を評価するためにHarlanマウスにおいて行われる前臨床研究の説明を提供する。
【0061】
ワクチン。Tdap単独(アジュバントなし)、Tdap-ミョウバン、Tdap-CpG、およびTdap-ミョウバン-CpGを含む、4種類のワクチンを、2つの異なる抗原希釈(未希釈および1:4希釈)で、試験した。Tdap単独のワクチンは、Tdap抗原を含有していたが、ミョウバンまたはCpGのいずれも含有していなかった。Tdap-ミョウバンワクチンは、39mcgのAl(OH)(水酸化アルミニウム、本明細書において「ミョウバン」と称される)に吸着させたTdap抗原を含有していた。Tdap-CpGワクチンは、10mcgのCpG 1018(5’-TGACTGTGAA CGTTCGAGAT GA-3’、配列番号1として記載される)と混合したTdap抗原を含有していた。Tdap-ミョウバン-CpGワクチンは、39mcgのAl(OH)に吸着させ、続いて、10mcgのCpG 1018と混合した、Tdap抗原を含有していた。それぞれの50μlのワクチン用量は、以下の表1-1に示されるように、5つの異なる抗原を含有していた。1:4希釈群については、抗原のみを希釈し、CpG 1018およびミョウバン(含まれる場合)は、それぞれ、10mcgおよび39mcgで投薬した。
【0062】
【表1】
【0063】
マウスに、50μlのTdapワクチンを、0日目に皮下注射し、28日目に追加免疫した。21日目および42日目に、ELISAによる抗体レベルの測定のために、採血を行った。それぞれの群には、6~10匹のマウスが存在していた。それぞれの群について、それぞれ2匹のマウスから得られた血清を使用して、最大で5つの血清部分プールを作製した。応答を測定し、最大4つの部分プール/群について平均し、5つ目の部分プールは、バックアップサンプルとして残した。それぞれの群から得られた部分的にプールした血清の平均の抗PT、FHA、PRN、DT、およびTT IgGレベルを、以下の表1-2に示す。個々のマウスの血清応答もまた、未希釈抗原を受容したマウス群について測定した。IgGレベルは、参照血清を用いて構築したアッセイ標準曲線を使用して、IU/mLで表す。
【0064】
【表2】
【0065】
未希釈Tdap単独群において、6匹のマウスすべてが、21日目の時点で、いずれのTdap抗原に対しても測定可能な抗体応答を有さなかった。未希釈Tdap-ミョウバン群においては、10匹中5匹のマウスが、21日目の時点で、3つすべての百日咳抗原(PT、FHA、およびPRN)に対する測定可能な抗体応答を有し、10匹中3匹のマウスは、21日目の時点で、TTに対する測定可能な抗体応答を有した。対照的に、未希釈Tdap-ミョウバン-CpG群においては、10匹中9匹のマウスが、21日目の時点で、3つすべての百日咳抗原(PT、FHA、およびPRN)ならびにTTに対する測定可能な抗体応答を有した。さらに、21日目の時点(すなわち、初回免疫注射後)の時点における3つの百日咳抗原のそれぞれに対する未希釈Tdap-ミョウバン-CpG群の抗体応答は、未希釈Tdap-ミョウバン群(すなわち、1018 CpGが欠如したTdapワクチン)よりも約8~10倍高く、TT抗体応答については約11倍高かった。
【0066】
未希釈Tdap単独群において、6匹中1匹のマウスが、42日目の時点で、PT、FHA、PRN、およびTTに対する測定可能な抗体応答を有し、この外れ値に起因して、測定可能な抗体応答が、この群について、42日目に観察された(表1-2)。未希釈Tdap-ミョウバン群において、8匹中6匹のマウスが、42日目の時点で、PT、FHA、PRN、およびTTに対する測定可能な抗体応答を有した。注目すべきことに、未希釈Tdap-ミョウバン-CpG群においては、8匹中8匹のマウスが、42日目の時点で、PT、FHA、PRN、およびTTに対する測定可能な抗体応答を有した。さらに、未希釈Tdap-ミョウバン-CpG群における3つの百日咳抗原のそれぞれに対する抗体応答は、42日目(すなわち、追加免疫注射後)の時点で、未希釈Tdap-ミョウバン群(すなわち、1018 CpGが欠如したTdapワクチン)よりも9倍を上回って高かった。Tdap-ミョウバンおよびTdap-ミョウバン-CpGの両方の群について、2回目の注射の明確な追加免疫効果が、PT、FHA、PRN、およびTTについて観察された(表1-2)。
【0067】
参照血清と比較してELISAアッセイにおいて応答が検出されなかったため、DTに対する抗体応答を、エンドポイント力価アッセイにおいて、未希釈抗原群の個々のマウスの血清において測定した(表1-2)。Tdap単独群またはTdap-ミョウバン群のいずれにおいても、21日目の時点で、DTに対する測定可能な抗体応答を有したマウスはいなかった。42日目までに、Tdap単独群における10匹中1匹のマウスおよびTdap-ミョウバン群における10匹中1匹のマウスが、DTに対する測定可能な抗体応答を有した。対照的に、21日目(すなわち、初回免疫注射後)の時点において、Tdap-ミョウバン-CpG群における10匹中5匹のマウスが、ならびに42日目(すなわち、追加免疫注射後)の時点においては、Tdap-ミョウバン-CpG群における8匹中8匹のマウスが、DTに対する測定可能な抗体応答を有した。
【0068】
まとめると、Tdap-ミョウバン-CpGワクチンは、1回および2回の投薬後に、Tdap抗原に対して、比較ワクチンよりも高い抗体応答を誘起した。
【実施例2】
【0069】
同種または異種Tdap初回免疫/追加免疫レジメンに供したマウスにおける百日咳抗原応答のTh1/Th2/Th17バランス
この実施例は、異種初回免疫/追加免疫レジメンにおける様々なTdapワクチンの3回の投薬の免疫原性を評価するためにHarlanマウスにおいて行われる前臨床研究の説明を提供する。
【0070】
ワクチン。すべてのミョウバン配合物は、9.8または39mcgのいずれかのAl(OH)(水酸化アルミニウム、本明細書において「ミョウバン」と称される)に吸着させたTdap抗原を含有していた。それぞれ、1回の初回免疫および2回の追加免疫を含む、4つのワクチンレジメンを試験した:Tdap-ミョウバン(初回免疫および2回の追加免疫)、Tdap-ミョウバン初回免疫+Tdap-CpG(2回の追加免疫)、Tdapミョウバン初回免疫+Tdap-ミョウバン-CpG(2回の追加免疫)、およびTdap-ミョウバン-CpG(初回免疫および2回の追加免疫)。Tdap-ミョウバンワクチンは、39mcgのAl(OH)に吸着させたTdap抗原を含有していた。Tdap-CpGワクチンは、10mcgのCpG 1018(5’-TGACTGTGAA CGTTCGAGAT GA-3’、配列番号1として記載される)と混合したTdap抗原を含有していた。Tdap-ミョウバン-CpGワクチンは、39mcgのAl(OH)に吸着させ、続いて、10mcgのCpG 1018と混合した、Tdap抗原を含有していた。それぞれの50μlのワクチン用量は、以下の表2-1に示されるように、5つの異なる抗原を含有していた。初回免疫群については、抗原およびミョウバンを、後続の追加免疫用量の1:4で投与した。CpG(含まれる場合)は、初回免疫および追加免疫の両方の用量において、10mcgで投薬した。
【0071】
【表3】
【0072】
マウスに、50μlのTdapワクチンを、以下の表2-2に示されるように、0日目に皮下注射し、28日目および56日目に追加免疫した。21日目、42日目、および68日目に、ELISAによる抗体レベルの測定のために、採血を行った。それぞれの群には、10匹のマウスが存在していた。血清を、3つのプール(マウス1~3、4~6、および7~8)において分析し、マウス9~10から得られたサンプルは、バックアップとして保持した。総IgG、ならびにIgG1およびIgG2a抗原特異的抗体応答を、判明している量のIgG(IU/mL)を使用して構築した標準曲線を参照して、ELISAによって測定した。この標準曲線はまた、IgG1およびIgG2aアイソタイプの特定の標準物が利用可能でなかったため、それらを定量するための代理物としての機能も果たした。68日目(すなわち、初回免疫および2回の追加免疫投薬後)の時点においてサンプル採取したそれぞれの群から得られた総平均抗PT、FHA、およびPRN IgG結果、ならびにIgG1およびIgG2aレベルを、以下の表2-3に示す。Tdap抗原再刺激に対するインビトロリコール応答を、培養した脾臓細胞(96時間)の上清において、すべてpg/mLでのIFN-γ、IL-5、およびIL-17の標準曲線を参照して、Luminex多重検体プラットフォームを使用して、殺処分(68日目)の時点で測定した。
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】
【0075】
初回免疫および追加免疫、または追加免疫のみのいずれかで、ワクチン接種にCpGを含めることにより、Tdap-ミョウバンの初回免疫および追加免疫群と比較して、高い総IgGレベルがもたらされた。Tdap-ミョウバンおよびTdap-ミョウバン-CpGでの同種初回免疫/追加免疫レジメンは、それぞれ、2回の追加免疫後に測定した場合、百日咳抗原(PT、FHA、またはPRN)に対して、Th2とTh1との対比が偏った抗体応答を誘導した。Tdap-ミョウバンの初回免疫および追加免疫群のIgG2a/IgG1比(Th1/Th2比)は、0.3(PTについて)、0.2(FHAについて)、および1.0(PRNについて)であった。対照的に、Tdap-ミョウバン-CpGの初回免疫/追加免疫は、応答を、Th1へと強くシフトさせ、IgG2a/IgG1の比は29(PTについて)、136(FHAについて)、および155(PRNについて)であった。Tdap-ミョウバン/Tdap-CpG(追加免疫ではミョウバンなし)の異種初回免疫/追加免疫レジメンでは、3.0(PTについて)、1.2(FHAについて)、および55(PRNについて)のIgG2a/IgG1の比によって示されるように、Th1シフトが生じた。Tdap-ミョウバン/Tdap-ミョウバン-CpGでの異種初回免疫/追加免疫は、より顕著なTh2からTh1へのシフトを誘導し、IgG2a/IgG1比は、9.2(PTについて)、28(FHAについて)、および57(PRNについて)であった。
【0076】
図1A~Cに示されるように、Tdap抗原で再刺激したTdap-ミョウバンの初回免疫/追加免疫したマウスから得られた脾臓細胞は、96時間のインビトロ培養後に、IL-5(Th2)を産生したが、IFN-γ(Th1)またはIL-17(Th17)は、ほとんど産生しなかった。対照的に、Tdap-ミョウバン-CpGの初回免疫追加免疫したマウスから得られた脾臓細胞は、インビトロで再刺激すると、Th1(IFN-γ)およびTh17(IL-17)サイトカイン産生へのシフトを示した。Tdap-ミョウバンで初回免疫したマウスを、Tdap-CpGまたはTdap-ミョウバン-CpGのいずれかで2回追加免疫することにより、Tdap-ミョウバンで初回免疫および追加免疫したマウスと比較して、さらにTh1/Th17表現型(低いIL-5、高いIFN-γおよびIL-17)へのシフトを示した。Tdap-CpGと比べてTdap-ミョウバン-CpGで追加免疫したマウスでは、わずかに多いIFN-γおよびIL-17となる傾向があり、Tdap-ミョウバン-CpGで追加免疫したマウスにおけるTh抗体応答への強いシフトと一致する。
【0077】
まとめると、Tdapミョウバンで初回免疫し、Tdap-ミョウバン-CpGで追加免疫したマウスは、Tdap-ミョウバンで初回免疫/追加免疫した対照と比較して、より高いレベルの百日咳抗原特異的総IgG抗体応答を示した。加えて、Tdap-ミョウバン-CpGで追加免疫したマウスは、Th1抗体応答への顕著なシフト(上昇したIgG2a、高いIgG2a/IgG1比と関連)、ならびにインビトロにおいてTdap抗原で再刺激した脾臓細胞からのIFN-γおよびIL-17産生の増加、ならびにIL-5産生の低減を示した。Th2からTh1へのシフトは、Tdap-CpG(ミョウバンなし)で追加免疫したマウスにおいても、顕著であった。
【実施例3】
【0078】
マウスにおけるCpGアジュバント付加した破傷風、弱毒化ジフテリア、非細胞性百日咳(Tdap)ワクチンの有効性
この実施例は、同種および異種初回免疫/追加免疫レジメンにおける様々なTdapワクチンの2回の投薬の有効性を評価するためにCD1マウスにおいて行われる前臨床研究の説明を提供する。この研究には14個の群が含まれ、表3-1に列挙されるように、1つの処置群当たり4~6匹のマウスであった。
【0079】
【表6】
【0080】
研究デザイン。非近交系の雌性CD1マウスに、5週間の時点で免疫付与し、8週間の時点で追加免疫し、10週間の時点でチャレンジした。マウスに、50μlのワクチンまたは生理食塩水対照(0.9% NaCl)の筋肉内注射によって免疫付与した。マウスを、約2600万個の細菌B.パータシス、UT25株(PRN+)の鼻腔内投与によってチャレンジした:群1~7は、マウス1匹当たり2.55×10個(用量CFU/ml=1.28×10個)を受容し、群8~13は、マウス1匹当たり2.65×10個(用量CFU/ml=1.33×10個)を受容し、群14は、マウス1匹当たり1.47×10個(用量CFU/ml=7.33×10個)を受容した。細菌は、麻酔したマウスの鼻孔に直接的にピペッティングした。チャレンジの2もしくは3日前、および/またはチャレンジの3日後に、採血を行った。
【0081】
ワクチン。Serum Institute DTwP(SI DTwP)、National Institute for Biological Standards wP(NIBSC wP)、Tdap-ミョウバン(実施例4においてTdapと称される)、およびTdap-ミョウバン-CpG(実施例4においてTdap CpG 1018と称される)を含む、4つのワクチンを試験した。全細胞性百日咳ワクチン(wP)を、ヒト用量(HD)の1/20で投与し、一方でTdapおよびTdap-CpG 1018ワクチンは、HDの1/10、1/20、1/40、または1/80で投与した。
【0082】
有効性。ワクチンの有効性を、百日咳感染および百日咳特異的免疫原性の様々なパラメーターの測定によって、評価した。含まれる測定値:
1.チャレンジしたマウスの鼻関連リンパ組織(NALT)における細菌負荷量、
2.チャレンジしたマウスの鼻洗浄液における細菌負荷量、
3.チャレンジしたマウスの肺および気管における細菌負荷量、
4.CpG 1018を含めることに起因する細菌負荷量の変化パーセンテージ、
5.肺重量、
6.血中好中球数、
7.肺ホモジネートから得られたIL-6レベル、
8.肺ホモジネートから得られたIFN-γレベル、
9.チャレンジ前およびチャレンジ後のPT、FHA、PRN、および全細菌に対する血清IgGレベル、
10.肺への食細胞動員。
【0083】
【表7】
【0084】
NALT、鼻洗浄液(1mlのPBSフラッシュ)、および肺+気管における細菌負荷量を、B.パータシスチャレンジの3日後に測定した。表3-2および図2Aに示されるように、TdapワクチンにCpG 1018を含めることにより、試験した4つすべてのTdap抗原濃度において、B.パータシスでチャレンジしたレシピエントの鼻および肺組織における細菌負荷量が低減された。注目すべきことに、CpG 1018を含めることにより、肺+気管におけるCFUが、それぞれ、99.6%(1/10)、98.8%(1/20)、93.8%(1/40)、および84.3%(1/80)低減された(図2B)。実際に、HDの1/10または1/20のTdapを含むCpG 1018を含有するワクチンは、2つのwP含有ワクチンのレシピエントに匹敵する細菌負荷量を有した。異種Tdap 1/20/Tdap 1/20+1018免疫付与レジメンにより、同種Tdap 1/20とTdap 1/20+1018レジメンとの間の中間的なチャレンジ後細菌負荷量データが得られた。
【0085】
肺を、B.パータシスでのチャレンジの3日後に、肺の炎症を評価する手段としてホモジナイズする前に、計量した。疑似ワクチン接種群および2つのwPワクチン接種群のマウスの肺は、非ワクチン接種非チャレンジ(NCNV)群、およびCpG 1018を含むかどうかにかかわらず9つのTdapワクチン接種群のマウスの肺よりも実質的に重く計量された。これらの結果は、CpG 1018を含めることが、細菌負荷量を低減させるために高いレベルの炎症を引き起こすことはないことを示す。
【0086】
全血中の好中球数を、B.パータシスでのチャレンジの3日後に測定した。疑似ワクチン接種、および2つのwPワクチン接種群のマウスの好中球数は、非ワクチン接種非チャレンジ(NCNV)群のマウスの好中球数より著しく高かった。9つのTdapワクチン接種群のマウスの好中球数は、2つのwPワクチン接種群の好中球数よりも低く、CpG 1018を含有するTdapワクチンのレシピエントにおいて、いくらか高い計数が観察された。
【0087】
肺ホモジネートのIL-6およびIFN-γのレベルを、B.パータシスでのチャレンジの3日後に測定した。9つのTdapワクチン接種群のマウスのIL-6レベルは、2つのwPワクチン接種群のIL-6レベルよりも低かった。CpG 1018を含有するTdapワクチンのレシピエントのIL-6レベルを、SII DTwPワクチンのレシピエントと比較すると、IL-6レベルに84~95%の低減が観察された。Tdapワクチン接種群のマウスのIFN-γレベルは、2つのwPワクチン接種群のIFN-γレベルよりも低かった。しかしながら、IFN-γレベルは、CpG 1018を含有するTdapワクチンのレシピエントにおいて、CpG 1018の不在下で同等の抗原用量を含有するTdapワクチンのレシピエントよりも高く、CpG 1018アジュバント付加したTdapワクチンに応答したTh1応答の増加が示唆される。
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】
【0090】
百日咳特異的血清IgG抗体力価を、ELISAによって、チャレンジの2もしくは3日前(表3-3)、および/またはチャレンジの3日後(表3-4)に採血した血液から測定した。一般に、CpG 1018を含有するTdapワクチンのレシピエントは、PT、FHA、PRN、および全細菌に対して、CpG 1018の不在下で同等の抗原用量を含有するTdapワクチンのレシピエントよりも、高いチャレンジ前およびチャレンジ後の血清IgG力価を有していた。抗体力価に対するCpG 1018の肯定的な影響は、図3A~Cに示されるように、高い抗原用量(TdapがHDの1/10および1/20)を受容した群において、もっとも顕著であった。
【0091】
肺ホモジネートにおける差次的細胞計数を、B.パータシスでのチャレンジの3日後に測定した。疑似ワクチン接種および2つのwPワクチン接種群のマウスの肺好中球、樹状細胞、マクロファージ、および単球の数は、非ワクチン接種非チャレンジ(NCNV)群のマウスにおけるこれらの細胞集団の数よりも著しく高かった。9つのTdapワクチン接種群のマウスの細胞数は、2つのwPワクチン接種群の細胞数よりも低い傾向にあり、CpG 1018を含有するTdapでワクチン接種した動物のいくつかの群において、いくらか高い計数が観察された。
【実施例4】
【0092】
ヒトにおけるCpGアジュバント付加した破傷風、弱毒化ジフテリア、非細胞性百日咳(Tdap)ワクチンの免疫原性
この実施例では、試験Tdapワクチンの安全性、寛容性、および免疫原性をFDAに承認されているTdapワクチンと比較して評価するために健常対象において行おうとする臨床研究の説明を提供する。
【0093】
ワクチン。Tdap-ミョウバン-1018が、Dynavax Technologies Corporation(Emeryville、CA)によって開発されている試験ワクチンである。それぞれ0.5mLの用量の試験ワクチンは、Tdap抗原(5LfのTT、2.5LfのDT、8mcgのPT、8mcgのFHA、および2.5mcgのPRN)、0.39mgのミョウバン、ならびに1500mcgまたは3000mcgのいずれかのCpG 1018を含有する。Tdap-ミョウバン-1018ワクチンは、水酸化アルミニウム(0.39mgを上回らないAl3+)に吸着させたTdap抗原を、CpG 1018(5’-TGACTGTGAA CGTTCGAGAT GA-3’、配列番号1として記載される)と混合することによって、使用の直前に調製する。BOOSTRIX(登録商標)(破傷風トキソイド、弱毒化ジフテリアトキソイド、および非細胞性百日咳)は、GlaxoSmithKline(Research Triangle Park、NC)によって市販されているFDAに承認されているワクチンである。それぞれ0.5mLの用量のBOOSTRIX(登録商標)は、水酸化アルミニウム(0.39mgを上回らないAl3+)に個別に吸着させたTdap抗原(5LfのTT、2.5LfのDT、8mcgのPT、8mcgのFHA、および2.5mcgのPRN)、4.5mgの塩化ナトリウム、100mcg以下の残留ホルムアルデヒド、ならびに100mcg以下のポリソルベート80を含有する。プラセボは、保存剤を含まない0.9%塩化ナトリウム注射液、USP(滅菌等張食塩水)である。
【0094】
目的:1)Tdap-ミョウバン-1018の安全性および寛容性を評価すること、2)単回追加免疫ワクチン接種の1ヶ月後(4週目)の時点で、Tdap-ミョウバン-1018の非細胞性百日咳抗原に対する免疫原性を、BOOSTRIX(登録商標)と比較して評価すること、ならびに、3)単回追加免疫ワクチン接種の1ヶ月後(4週目)の時点で、Tdap-ミョウバン-1018の破傷風およびジフテリアに対する免疫原性を、BOOSTRIX(登録商標)と比較して評価すること。さらなる目的は、4)単回追加免疫ワクチン接種後6ヶ月および12ヶ月の時点で、Tdap-ミョウバン-1018の百日咳に対する抗体応答の持続期間を、BOOSTRIX(登録商標)と比較して評価することである。
【0095】
安全性および寛容性は、局所および全身の注射後反応、臨床および研究室的有害事象、ならびに重篤な有害事象をモニタリングすることによって、評価する。ワクチン抗原に対する免疫原性は、ベースライン(1日目)および4週目(29日目±5日)において、研究対象から得られたサンプルから行われる測定によって評価する。追加の免疫原性評価は、8週目、12週目、6ヶ月目(24~26週目)、および12ヶ月目(48~52週目)のうちの1つまたは複数の時点で行われる。血清における破傷風、ジフテリア、および百日咳抗原に対する抗体のレベルを、ELISAによって判定する。PBMCの百日咳抗原に対するTおよびB細胞応答もまた、測定する。加えて、血清または血漿における、百日咳毒素中和抗体、オプソニン化抗体、および他の機能性抗体応答のレベルを、測定する。研究対象から得られた鼻スワブを、B.パータシスコロニー形成を評価するために、マイクロRNA試験に供する。
【0096】
百日咳抗原に対する免疫原性を、PT、FHA、およびPRNに対する抗体応答率を別個に測定することによって、評価する。PT、FHA、およびPRN抗体応答は、それぞれ、以下のうちの1つとして定義される:1)当初血清陰性の対象におけるワクチン接種後の測定可能な抗体濃度、例えば、閾値レベル(例えば、検出限界)の2倍を上回るかもしくはそれに等しい、3倍を上回るかもしくはそれに等しい、または4倍を上回るかもしくはそれに等しいワクチン接種後の抗体濃度、2)当初血清陽性の対象における、ワクチン接種前の抗体濃度の少なくとも2倍、3倍、または4倍の増加。
【0097】
百日咳抗原に対する免疫原性はまた、抗PT、抗FHA、および抗PRN抗体のそれぞれについて、幾何平均濃度(GMC)を判定することによっても評価する。破傷風およびジフテリア抗原に対する免疫原性を、TTおよびDTに対する抗体応答率を別個に測定することによって、評価する。TTおよびDT抗体応答は、それぞれ、以下のうちの1つとして定義される:1)ワクチン接種前の抗体レベルが0.1IU/mL未満である対象においては、ワクチン接種後の抗体レベルが0.4IU/mL以上であること、および、2)ワクチン接種前の抗体レベルが0.1IU/mL以上である対象においては、ワクチン接種前のレベルの少なくとも4倍の増加。百日咳に対する抗体応答の持続期間は、PT、FHA、およびPRNの抗体力価を測定することによって、測定される。
【0098】
研究デザイン。研究は、10~22歳の年齢の健常対象におけるTdap追加免疫ワクチンの無作為化非盲検2部試験として行う。第1部は、18~22歳の年齢の健常な成人対象において行う。第2部は、10~17歳の年齢の健常な青年対象において行う。スクリーニング後に、対象を、以下の処置群に無作為化した:処置A:Tdap-ミョウバン-1018(用量1または用量2)、ならびに処置B:BOOSTRIX(登録商標)。対象は、1日目に、ワクチン接種前の抗体レベルを判定するために、無作為化した処置ワクチンを受容する前にベースライン採血を受けるであろう。ワクチンは、三角筋への単回の0.5mL筋肉内注射として投与される。ワクチン接種後の抗体レベルの測定のための採血は、4週目(約29日目)に行われ、任意選択で、12週間、24週間、および52週間、または4週間、8週間、および12週間で行われる。
【0099】
成人参加者は、1用量の割り当てられた処置(Tdap-1018 1500mcg、Tdap-1018 3000mcg、またはBOOSTRIX(登録商標))を、1日目に受け、1用量(Tdap-1018 1500mcg、Tdap-1018 3000mcg、またはプラセボ)を、8週目に受ける。青年参加者は、1用量の割り当てられた処置(Tdap-1018 1500mcg、Tdap-1018 3000mcg、またはBOOSTRIX(登録商標))を、1日目に受ける。成人において、ワクチン接種後の抗体レベルを測定するための採血は、4週目、8週目、および12週目に行い、試験評価を、4週目および12週目に行う。青年において、ワクチン接種後の抗体レベルを測定するための採血は、4週目に行う。安全性の評価は、成人においては4週目、12週目、および20週目に行い、青年においては4週目および12週目に行う。
【0100】
研究集団。研究対象の登用基準および除外基準としては、以下に提供されるリストのものが含まれるが、これらに限定されない。登用基準には、以下のすべてが含まれる:18~22歳(第1部)または10~17歳(第2部)の年齢の男性または女性であること、これまでのすべての百日咳免疫付与(例えば、これまでの2回またはそれ以上の非細胞性百日咳ワクチン接種)に関する書類を有すること、病歴、身体検査、および研究室評価に基づいて良好な健康状態にあること、ならびにヒト免疫不全ウイルスについて血清陰性であること。除外基準には、以下のうちのいずれか1つが含まれる:過去3年以内に非細胞性Tdap追加免疫を受けていること、ジフテリア、破傷風、もしくは百日咳の疾患歴、自己免疫疾患の病歴、ならびに/または研究の結果と混同し得る状態、治療、もしくは研究室の異常を有すること。混同する可能性のある治療としては、以下のうちのいずれかを受けることが挙げられる:研究ワクチン注射の21日以内の任意の不活性化ワクチン、研究ワクチン注射の28日以内の任意の生ウイルスワクチン、全身性コルチコステロイドもしくは他の免疫抑制医薬、顆粒球もしくは顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、または他の試験医薬、研究ワクチン注射の3ヶ月以内の免疫グロブリンまたは任意の血液製剤、あるいは任意の時点におけるデオキシリボ核酸プラスミドまたはオリゴヌクレオチドの注射。
【0101】
結果。Tdap-ミョウバン-1018のレシピエントは、追加免疫ワクチン接種の4週間後の時点において、PT、FHA、およびPRN抗原のうちの1つまたは複数に対して、BOOSTRIX(登録商標)のレシピエントよりも高い濃度の抗体を有することが企図される。同様に、Tdap-ミョウバン-1018のレシピエントは、追加免疫ワクチン接種の4週間後の時点において、TTおよびDT抗原のうちの一方または両方に対して、BOOSTRIX(登録商標)のレシピエントよりも高い濃度の抗体を有することが企図される。加えて、Tdap-ミョウバン-1018を受容した対象のうち高いパーセンテージで、0.1IU/mL以上もしくは1.0IU/mL以上の抗TT抗体、および/または0.1IU/mL以上もしくは1.0IU/mL以上の抗DT抗体を有することが企図される。
【実施例5】
【0102】
B.パータシスでチャレンジしたヒトにおける鼻腔内コロニー形成の低減に関するCpGアジュバント付加した破傷風、弱毒化ジフテリア、非細胞性百日咳(Tdap)ワクチンの有効性
この実施例では、試験Tdapワクチンの安全性、寛容性、免疫原性、および保護作用をFDAに承認されているTdapワクチンと比較して評価するために健常対象において行おうとする臨床研究の説明を提供する。具体的には、ヒト対象に、Tdapワクチンの0回、1回、または2回の投薬を受けさせた後に、野生型B.パータシスでの制御された鼻腔内チャレンジを受けさせる。チャレンジした対象を、記載されるように、アジスロマイシンで処置して、細菌コロニー形成を根絶させた(de Graafら、Clinical Infectious Diseases,71(2):403-411,2020)。
【0103】
ワクチン。Tdap-ミョウバン-1018が、Dynavax Technologies Corporation(Emeryville、CA)によって開発されている試験ワクチンである。それぞれ0.5mLの用量の試験ワクチンは、Tdap抗原(5LfのTT、2.5LfのDT、8mcgのPT、8mcgのFHA、および2.5mcgのPRN)、0.39mgのミョウバン、ならびに1500mcgまたは3000mcgのいずれかのCpG 1018を含有する。Tdap-ミョウバン-1018ワクチンは、水酸化アルミニウム(0.39mgを上回らないAl3+)に吸着させたTdap抗原を、CpG 1018(5’-TGACTGTGAA CGTTCGAGAT GA-3’、配列番号1として記載される)と混合することによって、使用の直前に調製する。BOOSTRIX(登録商標)(破傷風トキソイド、弱毒化ジフテリアトキソイド、および非細胞性百日咳)は、GlaxoSmithKline(Research Triangle Park、NC)によって市販されているFDAに承認されているワクチンである。それぞれ0.5mLの用量のBOOSTRIX(登録商標)は、水酸化アルミニウム(0.39mgを上回らないAl3+)に個別に吸着させたTdap抗原(5LfのTT、2.5LfのDT、8mcgのPT、8mcgのFHA、および2.5mcgのPRN)、4.5mgの塩化ナトリウム、100mcg以下の残留ホルムアルデヒド、ならびに100mcg以下のポリソルベート80を含有する。
【0104】
目的:1)チャレンジ後の鼻腔内コロニー形成の低減に関するTdap-ミョウバン-1018の有効性(鼻洗浄液における低い細菌力価および/または細菌のより急速なクリアランス)を、非細胞性ワクチンと比較して評価すること、2)チャレンジした対象における早期臨床症状に対する保護を評価すること、3)Tdap-ミョウバン-1018の安全性および寛容性を評価すること、ならびに、4)B.パータシスでの鼻腔内チャレンジ前に、単回ワクチン接種の4週間後または2回のワクチン接種の8週間後のTdap-ミョウバン-1018の非細胞性百日咳抗原に対する免疫原性を、BOOSTRIX(登録商標)と比較して評価すること。
【0105】
安全性および寛容性は、局所および全身の注射後反応、臨床および研究室的有害事象、ならびに重篤な有害事象をモニタリングすることによって、評価する。ワクチン抗原に対する免疫原性は、ベースライン(1日目)、4週目(29日目±5日)/チャレンジ前、または2回の投薬を受容する対象の場合には、8週目(60日目±5日)/チャレンジ前において、研究対象から得られたサンプルから行われる測定によって評価する。また、免疫応答は、チャレンジの2週間後の時点において評価する。血清における破傷風、ジフテリア、および百日咳抗原に対する抗体のレベルを、ELISAによって判定する。PBMCの百日咳抗原に対するT細胞応答もまた、測定する。加えて、血清における、百日咳毒素中和抗体、オプソニン化抗体、および他の機能性抗体応答のレベルを、測定する。
【0106】
百日咳抗原に対する免疫原性を、PT、FHA、およびPRNに対する抗体応答率を別個に測定することによって、評価する。PT、FHA、およびPRN抗体応答は、それぞれ、以下のうちの1つとして定義される:1)当初血清陰性の対象におけるワクチン接種後の測定可能な抗体濃度、例えば、閾値レベル(例えば、検出限界)の2倍を上回るかもしくはそれに等しい、3倍を上回るかもしくはそれに等しい、または4倍を上回るかもしくはそれに等しいワクチン接種後の抗体濃度、2)当初血清陽性の対象における、ワクチン接種前の抗体濃度の少なくとも2倍、3倍、または4倍の増加。
【0107】
百日咳抗原に対する免疫原性はまた、抗PT、抗FHA、および抗PRN抗体のそれぞれについて、幾何平均濃度(GMC)を判定することによっても評価する。破傷風およびジフテリア抗原に対する免疫原性を、TTおよびDTに対する抗体応答率を別個に測定することによって、評価する。TTおよびDT抗体応答は、それぞれ、以下のうちの1つとして定義される:1)ワクチン接種前の抗体レベルが0.1IU/mL未満である対象においては、ワクチン接種後の抗体レベルが0.4IU/mL以上であること、および、2)ワクチン接種前の抗体レベルが0.1IU/mL以上である対象においては、ワクチン接種前のレベルの少なくとも4倍の増加。
【0108】
百日咳抗原に対する免疫原性を、抗体特徴付けアッセイおよび機能性抗体応答の評価によって、さらに評価する。機能性抗体応答を、血清に基づくアッセイによって、抗体による百日咳毒素の中和を測定することおよびオプソニン化ファゴサイトーシスアッセイにおいて抗体オプソニン化活性を測定することによって、評価する。加えて、抗体のアイソタイプ決定、Fc受容体結合、および追加の抗体機能性リードアウトを、Systems Serology分析において評価する。
【0109】
さらに、百日咳抗原に対する免疫原性はまた、T細胞における抗原リコール応答を測定することによって、評価される。対象から得られたPBMCを、インビトロにおいて、百日咳抗原(PT、FHA、およびPRN)で再刺激し、細胞内サイトカイン発現を、フローサイトメトリーによって測定する。
【0110】
研究デザイン。研究は、B.パータシスでの鼻腔内チャレンジに対する健常対象の応答に対するTdap追加免疫ワクチンの作用に関する無作為化非盲検研究として行う。健常成人対象は、非細胞性初回免疫(18~22歳の年齢)または全細胞性ワクチン初回免疫(23~50歳の年齢)のいずれかを受けるが、過去3年以内に追加免疫を受けておらず、百日咳毒素に対する血清抗体応答が陰性である。スクリーニングの後に、対象を、以下の処置群に無作為化する(n=50人/群):1)ワクチンなし、2)BOOSTRIX(登録商標)、3)非細胞性または全細胞性ワクチンを以前に受けている対象においては、1回の投薬のTdap-ミョウバン-1018(1500もしくは3000mcgの1018)、ならびに、4)非細胞性ワクチンを以前に受けている対象においては、2回の投薬のTdap-ミョウバン-1018(1500または3000mcgの1018)。対象は、1日目に、ワクチン接種前の抗体レベル、ならびにベースライン機能性抗体応答およびT細胞応答(PBMC)を判定するために、処置ワクチンを受ける前にベースライン採血を受ける。ワクチンは、三角筋への単回の0.5mL筋肉内注射として投与される。ワクチン接種後の抗体レベル、機能性抗体応答、およびT細胞応答のためのPBMCの測定のための採血は、4週目(単回のチャレンジ前ワクチン投薬を受けた対象において、約29日目)または8週目(2回のチャレンジ前ワクチン投薬を受けた対象において、約60日目)に行う。採血後、対象に、B.パータシスD420株(およそ10コロニー形成単位)を鼻腔内に接種した。採血はまた、異なる研究群において免疫応答に対する百日咳コロニー形成の差次的作用の可能性を評価するために、B.パータシスでのチャレンジ後2週目にも行う。安全性、コロニー形成、および細菌排出を、入院施設において21日間にわたってモニタリングする。コロニー形成は、培養および定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって評価する。アジスロマイシンを、21日目に投与して、B.パータシスによる鼻腔内コロニー形成を除去した。
【0111】
研究集団。研究対象の登用基準および除外基準としては、以下に提供されるリストのものが含まれるが、これらに限定されない。登用基準には、以下のすべてが含まれる:18~50歳の年齢の男性または女性であること、これまでのすべての百日咳免疫付与(例えば、これまでの2回またはそれ以上の非細胞性または全細胞性百日咳ワクチン接種)に関する書類を有すること、病歴、身体検査、および研究室評価に基づいて良好な健康状態にあること、ならびにヒト免疫不全ウイルスについて血清陰性であること。除外基準には、以下のうちのいずれか1つが含まれる:過去3年以内に非細胞性Tdap追加免疫を受けていること、ジフテリア、破傷風、もしくは百日咳の疾患歴、自己免疫疾患の病歴、ならびに/または研究の結果と混同し得る状態、治療、もしくは研究室の異常を有すること。混同する可能性のある治療としては、以下のうちのいずれかを受けることが挙げられる:研究ワクチン注射の21日以内の任意の不活性化ワクチン、研究ワクチン注射の28日以内の任意の生ウイルスワクチン、全身性コルチコステロイドもしくは他の免疫抑制医薬、顆粒球もしくは顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、または他の試験医薬、研究ワクチン注射の3ヶ月以内の免疫グロブリンまたは任意の血液製剤、あるいは任意の時点におけるデオキシリボ核酸プラスミドまたはオリゴヌクレオチドの注射。
【0112】
結果。Tdap-ミョウバン-1018のレシピエントは、鼻腔内接種後に低い細菌負荷量および/または早い細菌クリアランス、ならびに低いおよび/または軽度の疾患関連症状を有することが企図される。Tdap-ミョウバン-1018でワクチン接種した対象は、追加免疫ワクチン接種の4または8週間後の時点において、PT、FHA、およびPRN抗原のうちの1つまたは複数に対して、BOOSTRIX(登録商標)のレシピエントよりも高い濃度の抗体を示すことが企図される。同様に、Tdap-ミョウバン-1018のレシピエントは、追加免疫ワクチン接種の4または8週間後の時点において、TTおよびDT抗原のうちの一方または両方に対して、BOOSTRIX(登録商標)のレシピエントよりも高い濃度の抗体を有することが企図される。加えて、Tdap-ミョウバン-1018を受容した対象のうち高いパーセンテージで、0.1IU/mL以上もしくは1.0IU/mL以上の抗TT抗体、および/または0.1IU/mL以上もしくは1.0IU/mL以上の抗DT抗体を有することが企図される。また、BOOSTRIX(登録商標)と比べたTdap-ミョウバン-1018のワクチン接種の想定される作用としては、差次的抗体アイソタイプ決定およびFc受容体結合プロファイル、ならびに機能的抗体応答の増加が挙げられる。Tdap-ミョウバン-1018とBOOSTRIX(登録商標)とのワクチン接種の対比は、T細胞サイトカイン発現プロファイルに対して差次的作用を有することが企図され、Tdap-ミョウバン-1018でワクチン接種した対象は、よりTh1およびTh17に偏った応答(IFN-γ、IL-17発現)を示すことが予測され、BOOSTRIX(登録商標)でワクチン接種した対象は、よりTh2に偏った応答(IL-4、IL-5、またはIL-13)を示すことが予測される。
【0113】
前述の開示は、明確さおよび理解の目的で、例示および実施例によっていくらか詳細に記載されているが、当業者であれば、ある特定の変更および改変を実施してもよいことが明らかであろう。したがって、実施例は、添付の特許請求の範囲によって記述される本開示の範囲を制限するものとして解釈されるものではない。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
【配列表】
2023517330000001.app
【国際調査報告】