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特表2023-517344化粧表面被覆部材、表面被覆部材被覆材、およびこのような化粧表面被覆部材を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】化粧表面被覆部材、表面被覆部材被覆材、およびこのような化粧表面被覆部材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20230418BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20230418BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
E04F15/02 A
E04F15/02 G
E04F15/10 104A
E04F13/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022554841
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 IB2021052088
(87)【国際公開番号】W WO2021181359
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】2025115
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521446624
【氏名又は名称】ノーザン ビルディング ソリューションズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】NORTHANN BUILDING SOLUTIONS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】リ,リン
【テーマコード(参考)】
2E110
2E220
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB05
2E110AB23
2E110BA03
2E110BA12
2E110BB02
2E110BB04
2E110BB22
2E110BB23
2E110BB32
2E110BB33
2E110BB38
2E110CA03
2E110CB02
2E110DA03
2E110DA12
2E110DB23
2E110GA33W
2E110GA34W
2E110GB43W
2E110GB44W
2E110GB45W
2E110GB46W
2E110GB52W
2E220AA26
2E220AA33
2E220AA51
2E220AC01
2E220BA01
2E220BA12
2E220BA22
2E220BB02
2E220BB04
2E220BB05
2E220BB12
2E220BB16
2E220CA07
2E220DA12
2E220DA13
2E220DA14
2E220DB03
2E220DB19
2E220FA01
2E220FA02
2E220FA11
2E220GA22X
2E220GA25X
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB35X
2E220GB37X
(57)【要約】
本発明は、化粧表面被覆部材に関し、詳細には床パネル、天井パネル、または壁パネルに関する。本発明はまた、本発明による複数のパネルを含む、床被覆材、天井被覆材、または壁被覆材などのパネル被覆材にも関する。本発明はさらに、本発明による化粧表面被覆部材を製造する方法に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧表面被覆部材であって、特に、床パネル、天井パネルまたは壁パネルなどの化粧パネルであり、
- 上面および下面が与えられた芯材と、
- 前記芯材の前記上面に直接または間接的に貼り付けられた化粧上部構造物とを備え、前記化粧上部構造物が、
・ 少なくとも1つの化粧像を形成する、少なくとも1つの、好ましくはデジタル印刷された化粧層と、
・ 前記化粧層を少なくとも部分的に覆う、実質的に透明または半透明のデジタル印刷被覆構造物とを備え、前記印刷被覆構造物が、
○ 前記化粧層の好ましくは長方形の中心部分を覆う、好ましくは長方形のデジタル印刷中心部分と、
○ 前記中心部分に隣接し、前記中心部分の辺の長さに沿って延びる少なくとも1つのデジタル印刷周辺部分であって、前記少なくとも1つの周辺部分が前記化粧層の少なくとも1つの周辺部分を覆っている、デジタル印刷周辺部分とを含み、
前記被覆構造物の前記周辺部分が前記被覆構造物の前記中心部分に対して凹んでおり、前記被覆構造物の前記印刷周辺部分が周辺ベベルおよび/または周辺グラウト・ラインであり、特に周辺模倣グラウト・ラインである、化粧表面被覆部材。
【請求項2】
前記被覆構造物の前記印刷周辺部分の少なくとも一部の高さが、前記被覆構造物の前記印刷中心部分から離れる方向に減少する、請求項1に記載の表面被覆部材。
【請求項3】
前記被覆構造物の前記周辺部分の少なくとも一部が面取り上表面を有する、請求項1または2に記載の表面被覆部材。
【請求項4】
前記被覆構造物の前記周辺部分の少なくとも一部が実質的に平坦な上表面を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項5】
前記被覆構造物の前記周辺部分の少なくとも一部が湾曲上表面を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項6】
前記被覆構造物の前記周辺部分の少なくとも一部が、芯材によって画定された平面に実質的に平行な上表面を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項7】
前記被覆構造物の前記周辺部分の少なくとも一部がテクスチャ付きの上表面を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項8】
前記被覆構造物の前記周辺部分がチャネルを、好ましくは少なくとも部分的に凹形のチャネルを形成する、請求項1から7のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項9】
被覆構造物が、一体化して形成された被覆構造物であり、好ましくは、シングル・パス印刷ステップ中に形成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項10】
前記被覆構造物の前記中心部分と前記被覆構造物の前記周辺部分との間の変わり目が、鋭い縁部によって画定されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項11】
前記被覆構造物が、前記被覆構造物の前記中心部分に隣接する複数の、好ましくはデジタル印刷された周辺部分を含み、前記周辺部分が前記中心部分の別々の辺の長さに沿って延びており、少なくとも1つの、好ましくはそれぞれの周辺部分が、前記化粧層の少なくとも1つの周辺部分を覆う、請求項1から10のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項12】
前記被覆構造物の前記周辺部分の最も低い領域と前記被覆構造物の前記中心部分の最も高い領域との間の最大の高さの差が、200から800マイクロメートルまでの間、好ましくは200から500マイクロメートルまでの間にある、請求項1から11のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項13】
前記被覆構造物の前記印刷周辺部分が、
・ 前記周辺部分の長手方向に延びる少なくとも1つの凹み区域、特に化学的エンボス加工された凹み区域が設けられている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化した層、および/または
・ 前記周辺部分の長手方向に延びる少なくとも1つの隆起区域によって形成された、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化した隆起パターン層
によって形成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項14】
前記隆起区域が前記化粧層上に印刷される、請求項13に記載の表面被覆部材。
【請求項15】
前記隆起区域が、少なくとも1つの凹み区域が設けられている前記少なくとも部分的に硬化された層に印刷される、請求項13または14に記載の表面被覆部材。
【請求項16】
前記被覆構造物の前記印刷中心部分が、内側グラウト・ライン、特に内側模倣グラウト・ラインである少なくとも1つの陥凹チャネルを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項17】
前記内側グラウト・ラインの深さが前記周辺グラウト・ラインの深さに実質的に等しい、請求項16に記載の表面被覆部材。
【請求項18】
前記内側グラウト・ラインの幅が前記周辺グラウト・ラインの幅に実質的に等しい、請求項16または17に記載の表面被覆部材。
【請求項19】
前記被覆構造物の前記印刷中心部分が、複数の、好ましくは交差する陥凹チャネルを含み、各チャネルが内側グラウト・ライン、特に内側模倣グラウト・ラインである、請求項16から18のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項20】
前記化粧層の少なくとも1つの周辺部分には、前記化粧層の前記中心部分の印刷と比べて異なる印刷がされている、請求項1から19のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項21】
前記化粧層の少なくとも1つの周辺部分には、前記化粧層の前記中心部分の印刷と比べて暗い印刷がされている、請求項1から20のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項22】
前記被覆構造物の中心部分がエンボス加工された中心部分である、請求項1から21のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項23】
前記被覆構造物の前記印刷中心部分がエンボス加工された中心部分であり、
・ 複数の凹部が設けられている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化されたベース層、および/または
・ 複数の隆起によって形成された、好ましくは前記ベース層の上部に印刷された少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化した隆起パターン層
によって形成されている、請求項1から22のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項24】
前記ベース層の上面がエンボス・ベース・レベルを画定し、前記凹部と前記隆起部の少なくとも一部とが、前記エンボス・ベース・レベルの反対側に位置する、請求項23に記載の表面被覆部材。
【請求項25】
前記ベース層の上面がベース・レベルを画定し、前記凹部と前記隆起部の少なくとも一部とが、前記ベース・レベルと同じ側に位置する、請求項23または24に記載の表面被覆部材。
【請求項26】
前記ベース層の一部に前記複数の凹部が設けられており、前記ベース層の別の部分には凹部がない、請求項23から25のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項27】
前記隆起部の少なくとも一部が、前記ベース層のうちの凹部がない前記部分に印刷される、請求項26に記載の表面被覆部材。
【請求項28】
前記ベース層の前記複数の凹部が不連続凹部パターンを形成する、請求項23から27のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項29】
前記ベース層が印刷ベース層である、請求項23から28のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項30】
前記ベース層に設けられた前記凹部は、深さが2マイクロメートルから100マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから50マイクロメートルの間にある、請求項23から29のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項31】
前記隆起パターン層の前記隆起部は、高さが2マイクロメートルから500マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから300マイクロメートルの間にある、請求項23から30のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項32】
前記ベース層の前記凹部の少なくとも一部が、前記化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される、請求項23から31のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項33】
前記隆起パターン層の前記隆起部の少なくとも一部が、前記化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される、請求項23から32のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項34】
少なくとも1つの追加の化粧印刷層が、少なくとも1つのベース層および少なくとも1つの隆起パターン層に位置している、請求項23から33のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項35】
着色コーティングが前記凹部の中および前記ベース層の上に施される、請求項23から34のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項36】
前記凹部の少なくとも一部が、化学的にエンボス加工された凹部である、請求項23から35のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項37】
前記被覆構造物の上部表面の少なくとも一部に粗面化テクスチャが形成されており、前記粗面化テクスチャが好ましくは天然木目の外観を有する、請求項1から36のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項38】
前記被覆構造物の上部表面の少なくとも一部に機械粗面化テクスチャが形成されている、請求項1から37のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項39】
前記被覆構造物の少なくとも一部がアクリル樹脂を含む、請求項1から38のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項40】
前記被覆構造物の少なくとも一部が、エトキシル化されたプロピリジネトリメタノール、アクリル酸とのエステルを含む、請求項1から39のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項41】
前記被覆構造物の少なくとも一部が、少なくとも1つのエポキシ・アクリレート・オリゴマーを含む、請求項1から40のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項42】
前記被覆構造物が少なくとも部分的にラッカー層で覆われている、請求項1から41のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項43】
前記被覆層の少なくとも一部が前記ラッカー層によって覆われないままになっている、請求項42に記載の表面被覆部材。
【請求項44】
前記化粧層の少なくとも一部が前記芯材の前記上面に直接印刷されている、請求項1から43のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項45】
前記芯材の前記上面に、好ましくはプライマーまたはフィルムによって形成された支持体層が設けられ、前記化粧層の少なくとも一部が前記支持層に直接印刷される、請求項1から44のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項46】
前記印刷化粧層と前記被覆構造物の間に少なくとも1つの中間層が位置している、請求項1から45のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項47】
少なくとも1つの中間層が、透明または半透明で光反射性の熱可塑性層によって、好ましくはポリエステル層によって、より好ましくはポリエチレン・テレフタレート層によって形成される、請求項46に記載の表面被覆部材。
【請求項48】
前記光反射性の熱可塑性層が前記印刷化粧層に接着される、請求項47に記載の表面被覆部材。
【請求項49】
裏打ち層が前記芯材の下面に貼り付けられる、請求項1から48のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項50】
前記表面被覆部材の第1の縁部が第1の結合輪郭を備え、好ましくは前記第1の縁部と対向する、前記表面被覆部材の第2の縁部が、水平方向および垂直方向の両方で隣接する表面被覆部材の前記第1の結合輪郭とインターロック係合するように設計された第2の結合輪郭を備え、前記第1の結合輪郭と前記第2の結合輪郭が好ましくは、下げる動きによってこのような表面被覆部材の2つを互いに結合できるように構成される、請求項1から49のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項51】
前記表面被覆部材が、第3の縁部および第4の縁部にそれぞれ配置された、少なくとも1つの第3の結合輪郭および少なくとも1つの第4の結合輪郭を備え、前記第3の結合輪郭が、
・ 前記芯材の前記上面と実質的に平行な方向に延びる横向き舌部と、
・ 前記横向き舌部からある距離をおいたところにある少なくとも1つの第2の下向き側面と、
・ 前記横向き舌部と前記第2の下向き側面の間に形成された第2の下向き溝とを備え、
前記第4の結合輪郭が、
・ 隣接する表面被覆部材の前記第3の結合輪郭の前記横向き舌部の少なくとも一部を収容するように構成された第3の溝を備え、前記第3の溝が上方リップおよび下方リップによって画定され、前記下方リップに上向きロック要素が設けられ、
前記第3の結合輪郭および前記第4の結合輪郭は、このような表面被覆部材の2つが回転させる動きによって互いに結合できるように構成され、結合状態では、第1の表面被覆部材の前記横向き舌部の少なくとも一部が、隣接する第2の表面被覆部材の前記第3の溝に挿入され、前記第2の表面被覆部材の前記上向きロック要素の少なくとも一部が、前記第1の表面被覆部材の前記第2の下向き溝に挿入されている、請求項1から50のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項52】
前記芯材が実質的に剛性である、請求項1から51のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項53】
前記芯材が少なくとも部分的に発泡されている、請求項1から52のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項54】
前記芯材が、エチレン・ビニル・アセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリイソシアヌレート(PIR)、またはこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1から53のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項55】
前記芯材が少なくとも1つの木質材料を含む、請求項1から54のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項56】
前記芯材が、少なくとも1つのポリマー材料および少なくとも1つの非ポリマー材料からなる少なくとも1つの複合材料を含む、請求項1から55のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項57】
少なくとも1つの非ポリマー材料が、タルク、チョーク、木材、炭酸カルシウム、および無機充填剤からなる群から選択される、請求項56に記載の表面被覆部材。
【請求項58】
前記芯材が酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを含む、請求項1から57のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項59】
前記芯材の前記上面が実質的に平坦である、請求項1から58のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項60】
前記被覆構造物の前記中心部分の少なくとも一部のみに粗面化テクスチャが形成されている、請求項1から59のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項61】
請求項1から60のいずれか一項に記載の、相互結合した表面被覆部材で構成される、特に床被覆材、天井被覆材、または壁被覆材である、表面被覆部材被覆材。
【請求項62】
請求項1から60のいずれか一項に記載の化粧表面被覆部材を製造する方法であって、
A)少なくとも1つの化粧層を前記芯材の前記上面に印刷によって、好ましくはデジタル印刷によって形成するステップと、
B)液体ベース層を、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部に付着させて、前記被覆構造物の中心部分および少なくとも1つの周辺部分を形成し、複数のエンボス液滴を、前記依然として液体のベース層の上に、前記エンボス液滴が噴霧されている位置で前記ベース層の厚さが変化するようにして、これらの位置で凹部が前記液体ベース層に形成されるように、また、前記被覆構造物の前記中心部分の平均高さが前記被覆構造物の前記周辺部分の平均高さを上回るように、位置選択的に印刷するステップであって、前記被覆構造物の好ましくは前記デジタル印刷周辺部分が、周辺ベベルおよび/または周辺グラウト・ラインとして、特に周辺模倣グラウト・ラインとして形成される、ステップと、
C)前記凹部が設けられた前記ベース層を少なくとも部分的に硬化させるステップと、
D)任意選択で、好ましくは、ステップC)の間に前記被覆構造物を少なくとも部分的に硬化させた後に、前記被覆構造物の少なくとも一部に複数の隆起によって形成された隆起パターン層を位置選択的に印刷し、前記パターン層を部分的に硬化させるステップであって、前記ベース層と前記パターン層が一緒に付着されると、前記エンボス加工被覆構造物を形成する、ステップと、
E)任意選択で、前記エンボス加工被覆構造物の上部表面の少なくとも一部を機械的に処理して、前記エンボス加工構造物に粗面化テクスチャを形成するステップと
を含む方法。
【請求項63】
ステップC)の間に、前記ベース層の60から90%までが硬化される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
ステップD)の間に、前記パターン層の60から90%までが硬化される、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
ステップE)の間に前記エンボス構造物の前記上部表面の少なくとも一部が、少なくとも1つの軸方向に回転するブラシ・ローラ、好ましくは金属ブラシ・ローラ、特に鋼ブラシ・ローラを使用して処理される、請求項62から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記方法が、ステップE)を実行することに続いて、前記表面被覆部材、特に前記エンボス構造物を機械的にクリーニングする前記ステップを含むステップF)を含む、請求項62から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記方法が、前記表面被覆部材を複数の小さい表面被覆部材に切断する前記ステップを含むステップG)を含む、請求項62から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
ステップB)の間に、形成されるべき2つの表面部材の少なくとも2つの中心部分によって囲まれる、少なくとも1つの共有周辺部分が作り出され、ステップG)の間に、各共有周辺部分がその長さに沿って切断されて、その辺縁部に置かれた少なくとも1つの周辺部分をそれぞれが有する複数の表面被覆部材が形成される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記方法が、少なくとも1つの表面被覆部材の少なくとも1つの縁部を賦形することを含むステップH)を含む、請求項62から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
ステップC)の間に、前記エンボス液滴が、ステップA)の間に形成された化粧層の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第1のデジタルテンプレートに従って前記液体ベース層に印刷される、請求項62から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
ステップD)の間に、前記隆起パターンが、ステップA)の間に形成された前記化粧層の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第2のデジタルテンプレートに従って前記ベース層に印刷される、請求項62から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
ステップC)による前記ベース層の硬化、および/またはステップD)による前記パターン層の硬化が、好ましくはUV放射および/または電子放射および/またはIR放射および/または単色放射による放射線硬化で行われる、請求項62から71のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧表面被覆部材に関し、詳細には床表面被覆部材、天井表面被覆部材、または壁表面被覆部材に関する。本発明はまた、本発明による複数の表面被覆部材を含む、床被覆材、天井被覆材、または壁被覆材などの表面被覆部材被覆材にも関する。本発明はさらに、本発明による化粧表面被覆部材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、ビルまたは他の構造物の建設中には、ほとんどの場合に、コンクリートスラブ、木製基礎などの未仕上げの床面があり、この床面は、より見栄えのよい、および/または洗練された外観を呈するように仕上げる必要がある。これはまた、ほとんどの未仕上げの壁面についても同様である。多くの場合、床面または壁面を仕上げるのにタイルが使用され、これらのタイルはしばしば、本物の大理石もしくは石材で作られるか、または予算上の制約に応じて磁器もしくはセラミックで作られる。従来、このようなタイルは、セメント状の混合物を用いて未仕上げの床スラブまたは壁面に固定され、1つまたは複数のタイルが互いに密接して配置されており、隣り合うタイルの辺の間には小さな間隔が残されている。このタイル間の間隔を形成するのは面倒なことが多く、タイルが均一であり、かつ整列していることを確実にするにはスペーサを使用する必要がある。また、この間隔には、取り付け作業の一部としてグラウト混和剤が後で充填され、これによって、タイルの辺のまわりに「グラウト・ライン」が作り出される。一般に、タイルを取り付けてグラウト・ラインを作り出す作業にはかなりの時間を要するので、事業の労務費および全体費用が増加する。
【0003】
ここ数年、床材製品およびタイルは合成材料で作られ、本物の大理石、石材またはセラミックのタイルの外見を模倣するように構成されている。たとえば、ラミネートおよびビニルの床材製品が、本物の石材、大理石またはセラミックのタイルの外見を模倣するものを含めて、知られている。これらの床材製品では、タイルの表面が本物の石材、大理石またはセラミックに見えるように、さらには本物の木製床材に見えるように、光学的または視覚的な錯覚を生じさせる。しかし、従来、このような床材製品は、個々のタイルが互いにすぐ近くに、多くの場合は当接する関係で取り付けられる必要があるように製造されるが、これらの製品の一部は、凹凸のある床面に取り付けやすくするために、タイル間にわずかな間隔を置いて取り付けられる。このわずかな間隔は見えることがあり、場合によって小さな継ぎ目、さらには微細な溝として見えることがあり、これらの知られている種類のタイルは、本物のグラウト・ラインの外見および印象を表すべき、またはそれによく似ている、いかなる構造物も呈示しない。このことはまた、対応して配置される、タイルの辺に沿って形成された「舌」構造物および「溝」構造物などの、取り付けやすくするための相互連結機構を有するほとんどの既存の模造床材製品についても当てはまる。より最近の模造床材製品では、模倣(faux)グラウト・ラインとも呼ばれる模倣グラウト・ラインは、製造中にタイルの1つまたは複数の辺縁部を機械的に切削加工することによって作り出され、最上層およびその下の化粧層の材料が除去されて、模倣グラウト・ラインとして機能するコア層の縁部を露出する。しかし、このようにタイル端部の材料を切除することは、労力を要するとともに、経済上および健康上の観点から望ましくない粉塵廃物をもたらす。さらに、日常の使用中に芯材を大気にさらすことが、それゆえに湿度および温度の変化ならびに汚染にさらすことが、芯材に、したがってタイル(被覆材)にそのように容易に悪影響を及ぼすおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の目的は、改善されたベベルおよび/またはグラウト・ライン、特に模倣グラウト・ラインを有する、改善された表面被覆部材を提供することである。
【0005】
本発明の第2の目的は、代替のベベルおよび/またはグラウト・ライン、特に模倣グラウト・ラインを有する、改善された表面被覆部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的のうちの少なくとも1つは、上面および下面が与えられた芯材と、芯材の前記上面に直接または間接的に貼り付けられた化粧上部構造物とを備える、前文に記載の表面被覆部材を提供することによって達成することができ、前記化粧上部構造物は、少なくとも1つの化粧像を形成する少なくとも1つの化粧層と、前記化粧層を少なくとも部分的に覆う、実質的に透明または半透明の印刷被覆構造物とを含み、被覆構造物が、好ましくは少なくとも部分的にデジタル印刷され、印刷被覆構造物が、化粧層の好ましくは長方形の中心部分を覆う、好ましくは長方形の、好ましくは少なくとも部分的にデジタル印刷された中心部分と、前記中心部分に隣接し、中心部分の辺の長さに沿って延びる少なくとも1つの、好ましくは少なくとも部分的にデジタル印刷された周辺部分であって、前記少なくとも1つの周辺部分が化粧層の少なくとも1つの周辺部分を覆っている、印刷周辺部分とを含み、被覆構造物の周辺部分が被覆構造物の中心部分に対して凹んでおり、被覆構造物の印刷周辺部分が周辺ベベルおよび/または周辺グラウト・ラインであり、特に周辺模倣グラウト・ラインである。
【0007】
被覆構造物の周辺部分(縁部部分)を直接または間接的に化粧層の周辺部分(縁部部分)に印刷することにより、立体感のあるベベルおよび/またはグラウト・ライン構造物を作成することができ、デザインの自由度が向上し、製造工程中に材料を切除する必要がなく、そのため切除材料(粉塵)の無制御の分散を防ぐことになり、このことは、経済、物流、健康/安全の観点から有利である。化粧層への透明および/または半透明インク、樹脂、またはワニスの印刷プロセス中に利用できるデザインの自由度が増すので、ベベルおよび/または(模倣)グラウト・ラインの改善された、より本物に近いハプトニック(触感)特性を得ることができる。この目的のために、ベベル表面には、かなり滑らかな、または粗い(テクスチャ付きの)表面を形成することができる。さらに、ベベル構造物および/またはグラウト構造物(被覆構造物の周辺部分によって形成される)を化粧層の上に印刷することによって、化粧層は無傷のままになり、したがって、ベベルおよび/または(模倣)グラウト・ラインの外観に寄与することができ、それにより、ベベルおよび/または(模倣)グラウト・ラインの本物に近い外観が改善される。好ましくは、被覆構造物の少なくとも1つの周辺部分(縁部部分)は、少なくとも1つのパネル縁部に位置している。これにより、前記周辺部分(縁部部分)が、ベベルおよび/またはグラウト・ラインの形成に、特に、インターロック係合された2つのパネルによってこれらの間に形成される模倣グラウト・ラインの形成に寄与することが可能になる。この縁部部分は、パネルの辺縁部をパネルの上表面に、特に、パネルの被覆構造物の中心部分の上表面に連結する変わり目の部分を成している。
【0008】
被覆構造物の周辺部分は、被覆構造物の中心部分に対して少なくとも部分的に、好ましくは全体的に凹んでいる。それゆえに、化粧層から測定した被覆構造物の周辺部分の平均高さは、またしばしば最大高さも、被覆構造物の中心部分の平均高さよりも低く、また、しばしば最大高さよりも低い。この目的のために、好ましくは、被覆構造物全体が化粧層にデジタル印刷される。しかし、被覆構造物が部分的にデジタル印刷され、また部分的に、1つまたは複数の代替的な、通常はより従来的な、ローリングなどの印刷技法を用いて印刷されることもまた想定される。
【0009】
デジタル印刷は、デジタルベースの像から媒体に直接印刷する方法である。このデジタル像は化粧像とすることができるが、被覆構造物の少なくとも一部を表す像とすることもできる。デジタル像は、2D像でも3D像でもよい。被覆構造物をデジタル(3D)印刷することにより、被覆構造物(および化粧層)の無限のデザイン自由度を得ることができ、被覆構造物(および化粧層)を正確に、高レベルの精緻さで付着させることができるので、本物に近い外観および唯一無二の化粧パネルがもたらされる。この結果は、従来の機械的な型押し被覆構造物によっては得ることができない。印刷デバイスとしては、1つまたは複数のインクジェット・プリンタおよび/またはレーザー・プリンタを使用することができる。上に示したように、実質的に透明または半透明の被覆構造物は、部分的または全体的にデジタル印刷することができる。この目的のために、透明または半透明の色インクもしくは無色インクを使用することができる。これにより、印刷化粧像は明瞭に存続することができる。化粧層の印刷化粧像はCMYK色原理に基づくことができ、白色は通常、白ベース塗装面(塗布されている場合)によって得られる。CMYK色原理は、シアン、マゼンタ、黄色、黒を含む4色構成である。これらを一緒に混ぜ合わせると、比較的小さい色空間/範囲が得られる。特定の色範囲または全範囲を広げるために、スポット・カラーを追加することができる。スポット・カラーはどんな色でもよい。オレンジ、緑、青、赤、白、ライト・グレー、ライト・マゼンタ、およびライト・シアンからなる群から選択された少なくとも1つの追加色などの、1つまたは複数の追加色を適用することができる。これらの色は、別個に、または組み合わせて使用することができる。色は通常、ソフトウェアとハードウェア(印刷エンジン/印刷ヘッド)の組み合わせによって混合され制御される。
【0010】
被覆構造物の中心部分の(平均)高さは、被覆構造物の周辺部分の(平均)高さを上回り、被覆構造物の印刷周辺部分は、周辺ベベルおよび/または周辺グラウト・ラインであり、特に周辺模倣グラウト・ラインである。
【0011】
ベベルは通常、被覆表面の中心部分から離れる方向に下向きに伸びている傾斜した、および/または面取りされた縁部である。ベベルは通常、表面被覆部材間の継ぎ目を目立たなくするために用いられ、かつ/または表面被覆部材の化粧外観を改善するために用いられることもある。周辺グラウト・ライン、特に模倣グラウト・ラインは、ベベルを含むことができ、また、表面被覆部材の周辺縁部(上表面付近)に、実際のグラウト・ラインの外観および感触によく似ている凹部を、通常はチャネルまたは溝を形成しており、その下の化粧層を用いて、模倣グラウト・ラインの改善された奥行き効果、および模倣グラウト・ラインのより本物に近い外観を得ることができる。前記チャネルは、凹型の断面、長方形形の断面、またはより複雑な断面を有することもできる。これに加えて、被覆構造物の印刷中心部分はまた、内側グラウト・ライン、特に内側模倣グラウト・ラインである少なくとも1つの陥凹チャネルを含むこともできる。1つまたは複数の内側グラウト・ラインを使用すると、表面被覆部材を複数の表面被覆部材に光学的に切断することになる。内側グラウト・ラインの深さは、好ましくは周辺グラウト・ラインの深さと実質的に等しい。好ましくは、内側グラウト・ラインの幅は、周辺グラウト・ラインの幅と実質的に等しい。この場合、周辺グラウト・ライン(外側グラウト・ライン)と内側グラウト・ラインの間には、明確な目に見える相違がない。被覆構造物の印刷中心部分が、通常では陥凹チャネルによって形成された複数の内側グラウト・ラインを備える場合、これらのグラウト・ラインは別々の向きを持つこともでき、たとえば、互いに交差すること、および/または平行な向きを持つことができる。
【0012】
通常、被覆構造物の印刷周辺部分の少なくとも一部の高さは、被覆構造物の印刷中心部分から離れる方向において低減する。これは、たとえば、高さが緩やかに(連続的に)低減すること、および/または段階的に低減することであり得る。たとえば、被覆構造物の中心部分に直接連結されている被覆構造物の周辺部分の一部が、ベベルのように機能する面取りされた(傾斜した)上表面を有し、一方、被覆構造物の周辺部分のより遠い部分が湾曲形状を有することができ、かつ/または芯材によって画定された平面に平行および/または垂直である向きを持つことができると想定される。好ましくは、被覆構造物の周辺部分の少なくとも一部は、実質的に平坦な上表面を有する。好ましくは、被覆構造物の周辺部分の少なくとも一部は、湾曲した上表面を有する。好ましくは、被覆構造物の周辺部分の少なくとも一部は、芯材によって画定された平面に実質的に平行な上表面を有する。好ましくは、被覆構造物の周辺部分の少なくとも一部は、テクスチャ付きの上表面を有する。
【0013】
好ましくは、各周辺部分はチャネルまたは溝を画定し、前記チャネルまたは溝は、好ましくは、パネルの、通常は両側の2つの辺縁部に連結し、より好ましくはさらにまた、前記両側の辺縁部の間に位置するパネルの別の辺縁部にも連結する。ここで、溝のチャネルは、必ずしもではないが通常は2つのパネル縁部に垂直な向きであり、他の2つのパネル縁部に対しては平行な向きである。好ましくは、周辺部分によって画定された各チャネルまたは溝は、直線的な形状を有する。好ましくは、各周辺部分は、前記周辺部分の長さ方向に実質的に一定である断面形状を有する。これは、好ましくは、周辺部分の高さおよび幅が、前記周辺部分の全長にわたって実質的に変化しないことを意味する。好ましくは、各周辺部分は、前記周辺部分の長さ方向にわずかに変化する断面形状を有する。これは、好ましくは、周辺部分の高さおよび/または幅が、前記周辺部分の全長にわたってわずかに変化する/変動することを意味する。前記長さ方向にわたるこの高さおよび/または厚さの最大変化は、通常では2mmまでに制限され、好ましくは1mmまでに制限され、より好ましくは0.5mmまでに制限される。これにより、なおいっそう自然に見える(模倣)グラウト・ラインがもたらされる。別々の周辺部分によって画定された少なくとも2つの異なるチャネルまたは溝は、目に見えるようにパネルの上表面で交差することができる。別々の周辺部分によって画定された少なくとも2つの異なるチャネルまたは溝は、好ましくは、互いに平行に伸びる。パネル縁部に位置する少なくとも1つの周辺部分が、隣り合う(インターロック係合された)パネルの周辺部分の部分チャネルまたは部分溝と共働するように、好ましくは当接するように構成された部分チャネルまたは部分溝を画定することが想定され、好ましくもある。対向する部分チャネルまたは部分溝同士は、チャネル全体を画定する。
【0014】
周辺部分がベベルとして機能することが意図されている場合、最大幅および/または最大高さは、好ましくは4mm未満であり、好ましくは1から4mmまでの間にある。周辺部分がグラウト(ライン)として機能することが意図されている場合、周辺部分の幅は、好ましくは最大でも20mmであり、より好ましくは3mmから15mmまでの間にある。
【0015】
被覆構造物は、好ましくは一体化して形成された被覆構造物であり、好ましくはシングル・パス印刷ステップ中に形成される。これは、被覆構造物の周辺部分と中心部分の両方が、同じ層から作られることを意味する。これにより、脆弱で望ましくない継ぎ目が表面被覆部材の各周辺部分と中心部分の間に存在しないようにすることができる。
【0016】
被覆構造物の中心部分と被覆構造物の周辺部分との間の変わり目は、好ましくは、鋭い縁部によって画定される。この鋭い縁部は、たとえば、90度の角度、30度の角度、45度の角度、60度の角度、または0から90度までの他の任意の角度を囲むことができる。
【0017】
好ましくは、被覆構造物は、被覆構造物の中心部分に隣接する複数の印刷周辺部分を備え、この周辺部分は、中心部分の別々の辺の長さに沿って延び、少なくとも1つの、好ましくはそれぞれの周辺部分が、化粧層の少なくとも1つの周辺部分を覆う。ここで、表面被覆部材の隣り合う2つの縁部だけが印刷周辺部分を備えることが好ましい場合もある。しかし、表面被覆部材のすべての縁部、通常では4つすべての縁部が、被覆部材の印刷周辺部分を備えることもまた想定される。好ましくは、印刷周辺部分は、パネルの少なくとも1つの縁部全体に沿って、前記縁部に沿ったベベルまたはグラウト(の一部)になるように延びる。この目的のために、印刷周辺部分は、パネルの前記縁部に沿ってチャネル(または部分チャネル)を形成するように、好ましくは、パネルの縁部全体に隣接し、また、被覆構造物の中心部分に隣接している。
【0018】
被覆構造物の周辺部分の最も低い領域と被覆構造物の中心部分の最も高い領域との間の最大の高さの差は、好ましくは200から800マイクロメートルまでの間、好ましくは200から500マイクロメートルまでの間にある。このように深さ(高さ)が制限されるので、材料が節約され、使用中の陥凹周辺部分の清掃可能性が促進される。
【0019】
前記被覆構造物の印刷周辺部分は、好ましくは、周辺部分の長手方向に延びる少なくとも1つの凹み区域、特に化学的エンボス加工された凹み区域が設けられている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化した層、および/または周辺部分の長手方向に延びる少なくとも1つの隆起区域によって形成された、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化した隆起パターン層によって形成される。この印刷プロセスは、エンボス加工構造物が作り出されて最終的にベベルおよび/またはグラウト・ラインが形成される印刷プロセスと考えることもできる。少なくとも1つの凹み区域、特に化学的エンボス加工凹み区域が設けられた、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化した層を付着させることは、ネガティブ・エンボス加工ステップと考えられると言える。というのは、最初に(当初は液体の)ベース層が付着され、このベース層は機械的プレス、エッチングによって、および/または反応性化学物質によって、後続のステップで位置選択的に高さが低減されるからである。少なくとも1つの隆起区域によって形成された、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化した隆起パターン層を付着させることは、エンボス加工構造物が下から上へ、直接または間接的に化粧層の上に作成(構築)されるので、ポジティブ・エンボス加工ステップと考えられる。隆起区域は、化粧層に印刷することもできる。被覆構造物の周辺部分を形成するのに、このネガティブ・エンボス加工ステップと(連続する)ポジティブ・エンボス加工ステップとの組み合わせもまた想定される。隆起区域では、たとえば、少なくとも1つの凹み区域が設けられた前記少なくとも部分的に硬化した層に印刷することもできる。
【0020】
好ましくは、化粧層の少なくとも1つの周辺部分には、化粧層の中心部分の印刷と比べて異なる印刷が行われる。この異なる印刷は、たとえば、実際のグラウトを可能な限り本物に近く模造するために、異なる色、たとえば灰色とすることができる。しかし、化粧層の少なくとも1つの周辺部分に、化粧層の中心部分の(化粧)印刷と比べて暗い(化粧)印刷が行われることもまた想定される。この暗い印刷により奥行き効果が強調され、したがって、より本物に近いものがもたらされる。
【0021】
被覆構造物の中心部分は、好ましくは、エンボス加工中心部分である。これにより、エンボス構造物とも呼ばれる三次元構造物が中心部分に設けられる。三次元エンボス構造物は、好ましくは、1つまたは複数の印刷エンボス層を含み、各エンボス層は、より詳細に以下で説明するように、実質的に(エンボス加工)インクから成る。好ましくは、エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部のテクスチャ粗面化は、エンボス加工インクが部分的に硬化しており、それゆえに部分的に(まだ)柔らかく、エンボス加工インクを比較的容易に機械的に変形させること、および/または機械的に処理することが可能なときに行われている。通常、粗面化テクスチャは、前記上部表面との機械的相互作用によって、好ましくは、金属、特に鋼のブラシ・ローラなどの1つまたは複数の(回転)ブラシ・ローラを利用することによって、エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部に形成される。エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部のこの機械的処理の間に、材料が最初のエンボス構造物から除去および/または移されて、エンボス構造物のテクスチャ粗面化(研削)がもたらされることになる。この粗面化効果により、天然木目の外観および感触に近づく浮き彫りがもたらされ、通常ではまた、滑らかで丸みを帯びた縁部ではなく、鮮鋭な縁部もまた有しながらもたらされ、これにより、本発明による表面被覆部材の外観および/またはハプトニック(触感)特性が向上する。本明細書に関しては、印刷エンボス構造物が、所望のエンボス構造物を設計するための無限の可能性および柔軟性をもたらすが、この印刷エンボス構造物の欠点およびリスクは、このエンボス構造物が、印刷直後に(ある程度)比較的容易に流れる液体インクを使用して印刷されるので、意図したよりも滑らかな(丸みのある)テクスチャになることである、ということを考慮に入れなければならない。この欠点は、印刷エンボスを、好ましくは印刷のすぐ後/直後に機械的に粗面化して、より本物に近いエンボス構造物(エンボス・テクスチャ)、および/または当初意図された/望まれたエンボス構造物により合致しているエンボス構造物を得ることによって、克服することができる。通常、エンボス構造物の上部表面の粗面化テクスチャは、隣り合う(つながっている)、通常は実質的に平坦な、ある角度を相互に囲む複数の表面小平面を含む。これにより、1つまたは複数の鋭い縁部がもたらされ、そのため通常では、ユーザが経験する表面被覆部材の外観および感触が改善する。粗面化テクスチャは、複数のかき傷および/または溝を含む。これらは、たとえば機械ブラシ、特にブラシ・ローラによって実現することができる。被覆構造物の陥凹周辺部分は、(機械的に)粗面化された面が何もないことが好ましいこともある。
【0022】
表面被覆部材は、好ましくは、ボード、クラッディング、シート、タイル、または、床パネル、天井パネル、壁パネル、もしくは家具被覆パネルなどのパネルである。これらのパネルは、通常では正方形または長方形である。表面被覆部材は、ロールとして供給され前記ロールから繰り出すことによって配置されるストリップ(またはシート)であると考えられる。このようなストリップの長さは、通常4mから30mまでの間である。本明細書の文脈では、「表面被覆部材」という表現と「パネル」という表現は交換可能である。
【0023】
場合により、エンボス構造物(すなわち、被覆構造物のエンボス加工中心部分)は、少なくとも1つのチキソトロピー剤を含んでいることが好ましい。通常、このチキソトロピー剤は、印刷エンボス構造物を形成するためのインク組成物の一部を構成する。チキソトロピーとは、時間依存性のずり減粘特性のことである。これにより、エンボス構造物(の少なくとも一部)を構築するために使用されるエンボス加工インクは、静的な条件下で濃厚に、すなわち粘性になることができ、インクの粘性は、機械的圧力または力が作用すると減少して、インクがより容易に流れること、および変形することが可能になる。機械的な圧力または力が解除された後、インクはより粘性の状態に戻る。エンボス加工インクとして使用される可能性のあるインク組成物は、a)少なくとも1つの有機および/または水性のインク媒体と、(b)少なくとも1つのエタノールアミン化合物と、(c)顔料などの少なくとも1つの着色材料とを含み得る。エタノールアミン化合物は、十分な濃度の有機インク媒体および顔料と一緒にされて、所望のチキソトロピー特性、ならびに、意図する用途に適した物理的、化学的な特性、および視覚/色特性を示す組成物が得られる。本発明のインク組成物に使用可能な有機インク媒体には、様々な(a)インクオイル、および(b)有機樹脂、および/またはこれらの組み合わせが含まれる。本発明で使用されるのが好ましいインクオイルの例としては、ナフテン系インクオイルが挙げられる。本発明に使用できるエタノールアミンチキソトロピー剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、および/またはトリエタノールアミンがある。これらのうち、トリエタノールアミンが現在、油および/または樹脂ベースの印刷インク組成物中のチキソトロピー添加剤として使用するのに好ましい。望ましいレオロジー特性を付与するその能力に加えて、TEAなどのエタノールアミン化合物を本発明のインク組成物中に含むことは、利用される印刷インクの耐摩擦性の改善をもたらすことが判明している。耐摩擦性がこのように向上することは、こすれ落ちることが典型的な問題である用途に使用されるインク組成物に本発明のエタノールアミン化合物を混合することによって得られるべき、さらなる利点として明らかにされる。本発明のインク組成物に使用可能な着色添加剤には、様々な顔料および/または顔料含有ペーストが含まれる。予分散顔料ペーストは一般に、媒体および/または溶媒中に分散された1つまたは複数の着色顔料を含む。このような予分散顔料ペーストに使用される媒体は、本発明のインク組成物の基本成分として本明細書に記載された有機インク媒体のうちの1つ以上、および/または上記の有機インク媒体とは異なる他の媒体を含み得る。本発明による表面被覆部材を実現するのに使用できるエンボス加工インク組成物は、余分な熱を加えなくても室温で調製することができる。このような印刷インク組成物は、望ましいチキソトロピー性、ならびに耐摩擦性の向上を示すことが知られている。使用されるべきエンボス加工インク中に用いることができる他のチキソトロピー剤としては、たとえば、ヒュームドシリカおよび/または粘土型チキソトロピー剤がある。
【0024】
好ましくは、エンボス構造物の上部表面全体に粗面化テクスチャが形成される。好ましくは、エンボス構造物の上部表面の各粗面化部分は複数回粗面化され、より好ましくは、複数の連続した機械粗面化処置を施すことによって粗面化される。各粗面化処置では、エンボス構造物の表面を同じ方向に粗面化することができるが、少なくとも2つの粗面化処置によりエンボス構造物の上部表面を互いに異なる方向に処理することも考えられる。
【0025】
好ましくは、エンボス構造物(すなわち、被覆構造物のエンボス加工中心部分)は、複数の凹部が設けられている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化されたベース層、および/または、前記ベース層の上部に印刷された複数の隆起部によって形成されている、少なくとも1つの少なくとも部分的に硬化された隆起パターン層を含む。粗面化テクスチャは、ベース層の少なくとも一部とパターン層の少なくとも一部との両方に形成される。被覆構造物の周辺部分に同じタイプのエンボス加工が行われることもまた考えられる。
【0026】
本発明による表面被覆部材は、好ましくは、凹部(くぼみ)がベース層に付けられている少なくとも1つのネガティブ・エンボス層と、隆起部(突起)が前記ネガティブ・エンボス層の上部に設けられている少なくとも1つのポジティブ・エンボス層とを含む、多層エンボス構造物を備える。この結果、より明白な(粗く起伏に富む)エンボス構造物が得られ、相対的に深いエンボスを作り出すことができ、そのような表面被覆部材がより本物のように見えることになる。複数レベルの層状エンボス構造物を付着させることによって作り出せる相対的に深いエンボスの故に、より本物のような照明効果、ならびにより良い奥行き効果を得ることができ、化粧像の色が一般に、より望ましく知覚できる。一般に、ベース層の上面がエンボス・ベース・レベルを画定し、凹部と、隆起部の少なくとも一部および/または少なくともいくつかとが、前記エンボス・ベース・レベルの反対側に位置している。凹部と、隆起部の少なくとも一部および/または少なくともいくつかとが、前記ベース・レベルの同じ側に位置することもまた考えられる。
【0027】
通常では、ベース層の一部に前記複数の凹部が設けられ、ベース層の他の部分には凹部がない。それゆえに、この実施形態では、ベース層は部分的にしかエンボス加工されていない。隆起部は、少なくともその一部および/またはそのいくつかが、好ましくは、ベース層のうちの凹部がない部分に印刷され、こうすることにより、そのようなエンボス構造物の奥行き効果が増大することになる。
【0028】
ベース層の複数の凹部が不連続および/または連続の凹部パターンを形成することが考えられる。ベース層の複数の凹部が規則的な凹部パターンを形成することもまた考えられる。一般に、実現されるべき凹部パターンは、化粧層の少なくとも1つの化粧像に強く依存し、さらには完全に依存する。
【0029】
ベース層は、印刷されたベース層であることが好ましい。これは、最初は液体状態のベース層が、化粧層の上部に直接または間接的に印刷されることを意味する。ベース層がまだ液体状態にあるときに、1つまたは複数の凹部をベース層に設けることができ、かつ/または、ベース層を硬化(固化)させる間および/またはその後に、1つまたは複数の凹部をベース層に設けることができる。液体のベース層に1つまたは複数の凹部を設けることは、好ましくは化学的にエンボス加工することによって行われる。この目的のために、好ましくはエンボス液の(小さな)液滴が液体ベース層の上に、位置選択的に印刷(噴霧)されて、印刷液滴の材料と依然として液体のベース層との間で化学反応が起こり、その後の反応生成物が、この位置のベース層の構造を光学的および/または触覚的に変化させる。硬化中または硬化後にベース層に1つまたは複数の凹部を設けることは、(上述の)化学的エンボス加工によって、および/または機械的エンボス加工によって、たとえば、水ビームなどの、レーザーまたは粒子ビームを使用することによって行うことができる。
【0030】
好ましくは、ベース層に設けられた凹部は、深さが2マイクロメートルから100マイクロメートルの間にあり、好ましくは3マイクロメートルから50マイクロメートルの間にある。好ましくは、隆起パターン層の隆起部は、高さが2マイクロメートルから500マイクロメートルの間にあり、好ましくは3マイクロメートルから300マイクロメートルの間にある。全エンボス深さは、最大凹部深さと最大隆起部高さの合計によって決まる。複数のベース層および/または複数の隆起パターン層が付着される場合に、全エンボス深さの増大を達成することができる。
【0031】
好ましい実施形態において、また当てはまる場合に、被覆構造物の中心部分のベース層の凹部の少なくとも一部は、化粧層、特に印刷化粧層によって形成された、少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される。好ましくは、また当てはまる場合に、被覆構造物の中心部分の隆起パターン層の隆起部の少なくとも一部が、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される。より好ましくは、ベース層の凹部の少なくとも一部は、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整され、隆起パターン層の隆起部の少なくとも一部もまた、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される。こうすることにより、二重同期エンボスとも呼ばれる、位置合わせされた二重エンボスが得られる。このような位置合わせ調整を適用することによって、非常に本物に近い、かつ/または芸術的な表面被覆部材のデザインおよび外観、ならびに触感特性を実現することができる。化粧像は、オーク木目模様などの木目模様によって形成することができる。被覆構造物の周辺部分に、位置合わせされた同じタイプの(モノ同期またはデュアル同期された)エンボスが設けられることもまた考えられる。エンボス構造物は、特にその粗面化テクスチャにより、この木目模様と合致することができ、その結果、本発明による表面被覆部材が非常に本物に近い外観および見かけになる。しかし、木目模様の代わりに、化粧像が、たとえば、カスタマイズされた絵および/またはモザイクパターンもしくはタイルパターンなどの、別の種類のパターンであることも十分に考えられる。モザイクパターンまたはタイルパターンの場合、1つまたは複数のグラウトによって美的に分離されている人工的なタイルが描かれることもある。ここで、付着されるエンボス構造物は、人工タイルを覆う厚い層の部分と、1つまたは複数のグラウトを覆う薄い層の部分とを有するベース層を含み得る。ここで、隆起パターンの隆起部が、人工タイルを主に、またはただ単に覆い、また、人工タイルをあまり、または全く覆わないことも考えられる。このようにして、本物のタイルおよびグラウトを使用したときに得られる表面浮き彫りと実質的に同等の、本物のような表面浮き彫りを実現することができる。
【0032】
少なくとも1つの追加の化粧印刷層が、少なくとも1つのベース層および少なくとも1つの隆起パターン層に位置していることが考えられる。このようにして、多層化粧パターンを実現することができる。これにより、エンボス構造物および複数の化粧層を含む化粧上部構造物を作り出す設計の自由度がさらに高まり、これによりまた、たとえば、化粧像全体に立体効果を生じさせることも可能になる。凹部の中またはベース層の上に着色コーティングが施されることもまた考えられる。この着色コーティングは、追加の化粧印刷層と考えることができる。
【0033】
好ましくは、ベース層の坪量は、少なくとも40g/m、好ましくは少なくとも50g/mである。通常では、ベース層は放射線硬化材料で作られる。好ましくは、ベース層は、少なくとも初期の液体状態において、エポキシ・アクリレート、ポリエステル・アクリレート、ポリエーテル・アクリレート、アミノ・アクリレート、シリコーン・アクリレート、ウレタン・アクリレート、ポリイソプレン・アクリレート、ポリブタジエン・アクリレートおよびアクリレート・モノマーからなる群から選択された少なくとも1つの樹脂で作られる。用語のアクリレートは、アクリル樹脂とも呼ばれ、アクリレート樹脂とメタクリレート樹脂の両方を含む。先に説明した各樹脂は、たとえば、一般にはUVレーザーであるレーザー、赤外線源、および/または水銀(Hg)光源から照射される電磁エネルギーによって重合および硬化するという点で関連している。好ましい一実施形態では、(メタ)アクリレート樹脂は、樹脂の重量に対して、たとえば20~30重量%に等しい高い固形成分含有量を有しており、これにより一般に、ベース層の所望の体積増加がもたらされる。任意選択で、ベース層は、ベース層の硬化を促進するための1つまたは複数の光開始剤を含み得る。(透明および/または半透明の)ベース層は、(i)ベース層の耐摩耗性を向上させるための酸化アルミニウム、(ii)ベース層のレオロジーを修正するためのタルク、(iii)ベース層の光沢を低減するためのシリカ、炭酸カルシウム、および/または(iv)レオロジー修正剤などの他の添加剤、および/または着色剤などの、フィラーを含み得る。任意選択で、ベース層は、エンボスの深さを増大させることができるシリコーンを含み得る。一般には、シリコーンは、ベース層の0.01~20重量%の量で、好ましくは0.01%~10%の量で、より好ましくはベース層の0.01~2重量%の量で添加される。適切なシリコーンには、たとえば、シリコーン、シリコーン・ポリエーテル、シリコーン・アクリレート、およびシリコーン・ポリエーテル・アクリレートが含まれる。
【0034】
好ましくは、ベース層は、少なくとも初期の液体状態において、エトキシル化されたプロピリジネトリメタノール、アクリル酸とのエステル、および好ましくはさらにN-エチルアミン、より好ましくはN-エチルタナミンを含む。これらの生成物は一般に、互いに反応して、フリーラジカルによって重合することができるアミン修飾アクリル・オリゴマーになる。また、この後者の特性は、ベース層を放射線硬化させるのに利用される。
【0035】
ベース層は、少なくとも初期の液体状態では、好ましくはエポキシ・アクリレート・オリゴマーを含み、より好ましくはビスフェノールAエポキシ・ジアクリレートを含む。ビスフェノールA型エポキシ・ジアクリレートは、無色の液体である。このエポキシ・アクリレート・オリゴマーは、高い光沢をもたらし、優れた反応性を与え、放射線硬化性ベース層の突出した化学的および機械的に堅牢な特性を特徴として持つ。
【0036】
好ましくは、少なくとも液状のベース層は、少なくともジアクリレートを含み、好ましくは、トリシクロデカンジメタノール・ジアクリレート、1,6-ヘキサンジオール・ジアクリレート、ヘキサメチレン・ジアクリレート、オキシビス(メチル-2,1-エタンジイル)ジアクリレート、および3-メチル1,5-ペンタンジオール・ジアクリレートからなる群から選択された少なくとも1つのジアクリレートを含む。これらの2官能性アクリル・モノマーは非常に反応しやすく、通常は、ベース層に位置選択的に凹部を作り出すために元のベース層(液体状態)の上に、エンボス液(エンボスインク)として印刷および/またはスプレーされる。このエンボスインクの液滴は、ベース層に非常に正確に、通常は約500~1,000dpi(またはそれ以上)の解像度で付着させることができる。
【0037】
隆起パターン層の坪量は、少なくとも60g/m、好ましくは少なくとも70g/mである。隆起パターン層の坪量は、好ましくはベース層の坪量よりも大きい。隆起パターン層は、好ましくはアクリル樹脂を含む。より好ましくは、隆起パターン層は、少なくとも液体状態において、ビアクリレート、好ましくはトリプロピレン・グリコール・ビアクリレートを含む。隆起パターン層は、ベース層の上に位置選択的に印刷および/または噴霧することができる。この印刷プロセスはまた、好ましくは非常に正確に、通常では約500~1,000dpi(またはそれ以上)の解像度で実行される。
【0038】
被覆構造物は、好ましくは、ラッカー層(摩耗層)によって少なくとも部分的に覆われる。ラッカー層は、その下の層にコーティングされた耐摩耗性高分子材料などの任意の適切な既知の耐摩耗性材料、または知られているセラミック・ビーズ・コーティングを含み得る。摩耗層は、それが層の形で仕上げられている場合、その下の層に接着させることができる。摩耗層はまた、紫外線コーティングなどの有機ポリマー層および/もしくは無機材料層、または別の有機ポリマー層と紫外線コーティングの組み合わせを含むこともできる。たとえば、製品の表面かき傷耐性、光沢、抗菌性および他の特性を改善できる紫外線塗料がある。ポリ塩化ビニル樹脂を含む他の有機ポリマー、またはビニル樹脂などの他のポリマー、および適量の可塑化剤と他の処理添加剤が、必要に応じて含まれ得る。本発明による表面被覆部材の一実施形態では、ベース層の凹部の少なくとも一部がラッカー層で覆われないままになっている。このようにして、さらなるエンボス効果(浮き彫り効果)を達成することができ、さらに、光沢領域および無光沢領域をこのようにして作り出すことができ、これらの領域は、そのような表面被覆部材の所望の美的外観にさらに寄与し得る。ここで、たとえば、グラウトで分離された人工タイルによって化粧像が形成されている場合に、人工タイルは、ラッカー層で覆われて、これらのタイルに光沢効果をもたらすことができ、一方、グラウトは、実質的にラッカー層で覆われないままにされて、より無光沢な外観が維持される。
【0039】
好ましくは、化粧層は印刷化粧層であり、より好ましくは、デジタル印刷化粧層である。少なくとも1つの化粧層の少なくとも一部が、芯材の上面に直接印刷され、好ましくはデジタル印刷されることが考えられる。芯材の上面に、好ましくは少なくとも1つのプライマーまたはフィルムによって形成された少なくとも1つの支持体層が設けられることもまた考えられ、化粧層の少なくとも一部が支持体層の上に直接印刷され、好ましくはデジタル印刷される。支持体層は、芯材の上に直接または間接的に(1つまたは複数の中間層を介して)貼り付けることができる。プライマーが付けられる場合、光沢プライマーおよび無光沢プライマーなどの少なくとも2つの異なるプライマーを付けることが考えられ、これらのプライマーは、芯材の上に位置選択的に並べて(隣り合わせて)付けられ、好ましくは、前記プライマーの上部に付けられる化粧印刷層と位置合わせ調整されて付けられる。このようにしてまた、そのような表面被覆部材の所望の、本物のような、および/または人工的な外観(および感触)にさらに寄与できる光沢効果および無光沢効果が、位置選択された場所で実現され得る。あるいは、これは一般にあまり好ましくないが、化粧像が形成された紙層または熱可塑性フィルムが、化粧層として機能することができる。この別個の層は通常、直接または間接的に、まず芯材に付けられる必要があり、その後、被覆構造物を付着させる。
【0040】
本発明による表面被覆部材の一実施形態では、印刷化粧層と被覆構造物の間に少なくとも1つの中間層が位置している。この中間層は一般に透明であり、好ましくは非常に透明であり、および/または半透明である。好ましくは、少なくとも1つの中間層は、透明または半透明で光反射性の熱可塑性層によって、好ましくはポリエステル層によって、より好ましくはポリエチレン・テレフタレート層(PET層)によって形成される。この光反射性の熱可塑性樹脂層は、昼光(または人工光)の照射による劣化から化粧像を保護する保護層として機能する。さらに、この光反射性の熱可塑性層はまた、昼光(または人工光)にさらされることによる表面被覆部材の加熱を防止し、したがって、熱作用(膨張および収縮)を抑制し、このことは、そのような表面被覆部材と、複数の好ましくは相互に結合した表面被覆部材で構成される床被覆材との両方の耐久性および信頼性に有利である。光反射性の熱可塑性樹脂層は、好ましくは印刷化粧層の上に接着され、より好ましくはホットメルト接着剤を用いて接着される。ベース層は、光反射性の熱可塑性層の上部に直接付着されてもよい。
【0041】
通常では、裏打ち層が芯材の下面に貼り付けられる。裏打ち層の材料の非限定的な例には、ポリエチレン、コルク、ポリウレタン、エチレン・ビニル・アセテートで作ることができるものがある。ポリエチレン裏打ち層の厚さは、たとえば通常で2mm以下である。裏打ち層は一般に、そのような各タイルに付加的な堅牢性および耐衝撃性をもたらし、タイルの耐久性を向上させる。さらに、(可撓)裏打ち層は、表面被覆部材の音響(消音)特性を向上させることができる。
【0042】
好ましい実施形態では、第1のパネル縁部(第1の表面被覆部材縁部)は第1の結合輪郭を備え、好ましくは第1のパネル縁部と対向する第2のパネル縁部(第2の表面被覆部材縁部)は、水平方向および垂直方向の両方で隣接する表面被覆部材の前記第1の結合輪郭とインターロック係合するように設計された第2の結合輪郭を備え、第1の結合輪郭と第2の結合輪郭が好ましくは、下げる動き(折り畳む動き)によってこのような表面被覆部材の2つを互いに結合できるように構成される。表面被覆部材が長方形である場合、第1のパネル縁部および第2のパネル縁部は通常、表面被覆部材の対向する短辺に位置している。表面被覆部材は、好ましくはまた、第3のパネル縁部および第4のパネル縁部にそれぞれ配置された、少なくとも1つの第3の結合輪郭および少なくとも1つの第4の結合輪郭を備え、第3の結合輪郭は、芯材の上面と実質的に平行な方向に延びる横向き舌部と、横向き舌部からある距離をおいたところにある少なくとも1つの第2の下向き側面と、横向き舌部と第2の下向き側面の間に形成された第2の下向き溝とを備え、
第4の結合輪郭は、隣接する表面被覆部材の第3の結合輪郭の横向き舌部の少なくとも一部を収容するように構成された第3の溝を備え、前記第3の溝が上方リップおよび下方リップによって画定され、前記下方リップに上向きロック要素が設けられ、
第3の結合輪郭および第4の結合輪郭は、このような表面被覆部材の2つが回転させる動き(曲げる動き)によって互いに結合できるように構成され、結合状態では、第1の表面被覆部材の横向き舌部の少なくとも一部は、隣接する第2の表面被覆部材の第3の溝に挿入され、前記第2の表面被覆部材の上向きロック要素の少なくとも一部は、前記第1の表面被覆部材の第2の下向き溝に挿入されている。好ましくは、第3の溝および/または上方リップの幅は、前記第3の溝の上方に位置する周辺部分の幅を上回る(たとえば、図4b参照)。より好ましくは、第3の溝および/または上方リップの幅は、前記第3の溝の上方に位置する周辺部分の幅の少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍、最も好ましくは少なくとも2.5倍である(たとえば、図4bを参照)。
【0043】
芯材は、可撓性でも、半剛性でも、実質的に剛性でもよい。芯材は、固形でも、少なくとも部分的に発泡されていてもよい。芯材は、エチレン・ビニル・アセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリイソシアヌレート(PIR)、またはこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つのポリマーを含み得る。芯材は、少なくとも1つの木質材料を含み得る。芯材は、少なくとも1つのポリマー材料および少なくとも1つの非ポリマー材料からなる少なくとも1つの複合材料を含み得る。少なくとも1つの非ポリマー材料は、好ましくは、タルク、チョーク、木材、炭酸カルシウム、および無機充填剤からなる群から選択される。芯材は、酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを含み得る。芯材の上面は、好ましくは実質的に平坦である。
【0044】
本発明はまた、パネル被覆材などの表面被覆部材被覆材に関し、特に、本発明による、好ましくは相互結合した複数の表面被覆部材で構成される、床被覆材、天井被覆材、または壁被覆材に関する。ここで、少なくとも2つの表面被覆部材が別個の化粧像を有し、各化粧像が部分的な像であり、前記化粧像を組み合わせたものが単一の像(絵または写真)を形成することが考えられる。この単一の像は、被覆構造物の周辺部分内で存続することも、必要に応じて前記周辺部分内で中断することもできる。
【0045】
本発明はさらに、本発明による化粧表面被覆部材を製造する方法に関し、この方法は、A)少なくとも1つの化粧層を芯材の上面に印刷によって、好ましくはデジタル印刷によって形成するステップと、B)液体ベース層を、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部に付着させて、被覆構造物の中心部分および少なくとも1つの周辺部分を形成し、複数のエンボス液滴を、依然として液体のベース層の上に、エンボス液滴が噴霧されている位置でベース層の厚さが変化するようにして、これらの位置で凹部が液体ベース層に形成されるように、また、被覆構造物の中心部分の平均高さが被覆構造物の周辺部分の平均高さを上回るように、位置選択的に印刷するステップであって、被覆構造物の印刷周辺部分が、周辺ベベルおよび/または周辺グラウト・ラインとして、特に周辺模倣グラウト・ラインとして形成される、ステップと、C)前記凹部が設けられた前記ベース層を少なくとも部分的に硬化させるステップと、D)任意選択で、好ましくは、ステップC)の間に被覆構造物を少なくとも部分的に硬化させた後に、被覆構造物の少なくとも一部に複数の隆起によって形成された隆起パターン層を位置選択的に印刷し、前記パターン層を部分的に硬化させるステップであって、前記ベース層と前記パターン層が一緒に付着されると、エンボス加工被覆構造物を形成する、ステップと、E)任意選択で、エンボス加工被覆構造物の上部表面の少なくとも一部を機械的に処理して、エンボス加工構造物に粗面化テクスチャを形成するステップとを含む。
【0046】
ステップE)の間に材料が、好ましくはエンボス構造物から除去され、および/またはエンボス構造物により変形される。ベース層を十分に硬く(剛性に)保持して容易に流れることを防止し、ベース層を十分に柔らかく保持してベース層を粗面化しやすいようにするには、ステップC)および/またはステップD)の間にベース層の60%から90%が硬化される場合が有利である。同じことが、パターン層にも当てはまる。ステップE)の間に、好ましくは被覆構造物の上部表面の少なくとも一部は、軸方向に回転する少なくとも1つのブラシ・ローラ、好ましくは金属ブラシ・ローラ、特に鋼ブラシ・ローラを使用して処理される。これらのローラの回転速度は異なり得るが、好ましくは400から800回転/分までの間である。ローラの直径は異なり得るが、好ましくは20から40センチメートルまでの間である。好ましくは、ステップE)の間に、エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部は、軸方向に回転する少なくとも2つの連続するブラシ・ローラ、好ましくは金属ブラシ・ローラ、特に鋼ブラシ・ローラを使用して少なくとも2回処理される。好ましくは、ステップE)の間に、少なくとも2つのブラシ・ローラは互いに反対方向に回転する。好ましくは、各ローラは、切断された材料(ダスト)が無秩序に分散しないように個別または共有のケージまたはハウジングに収容され、より好ましくは、このケージまたはハウジングは、ブラッシング動作中に切断材料をできるだけ多く除去するために真空排気導管に連結される。
【0047】
この方法が、ステップE)を実行することに続いて表面被覆部材、特にエンボス構造物を機械的にクリーニングするステップを含むステップF)を含む場合には、有利である。ステップF)によるこのクリーニング動作は、たとえば、クリーニング・ブラシ、特に布ローラおよび/またはナイロン・ローラなどのクリーニング・ブラシ・ローラを用いて、機械的に行うことができる。このクリーニング動作は通常、ステップE)の間に、切断材料(ダスト)をエンボス構造物から除去(排出)するために主に適用される。
【0048】
好ましくは、この方法は、表面被覆部材をたとえば板またはパネルのような複数の小さい表面被覆部材に切断するステップを含むステップG)を含む。ステップB)の間に、好ましくは、形成されるべき2つの表面部材の少なくとも2つの中心部分によって囲まれる、少なくとも1つの共有周辺部分が作り出され、ステップG)の間に、各共有周辺部分がその長さに沿って切断されて、その辺縁部に置かれた少なくとも1つの周辺部分をそれぞれが有する複数の表面被覆部材が形成される。好ましくは、この方法は、ステップG)の間に形成された少なくとも1つの表面被覆部材、および/または少なくとも1つのパネルもしくは板の少なくとも1つの縁部を賦形することを含んでいるステップH)を含む。
【0049】
表面被覆部材のさらなる利点および実施形態について、すでに広範囲にわたって以上で論じた。ステップC)の間に、エンボス液滴は、好ましくは、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第1のデジタルテンプレートに従って、液体ベース層に印刷される。ステップD)の間に、隆起パターンは、好ましくは、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第2のデジタルテンプレートに従って、ベース層に印刷される。より好ましくは、第1のデジタルテンプレートは第2のデジタルテンプレートとは異なる。好ましくは、ステップC)による前記ベース層の硬化、および/またはステップD)による前記パターン層の硬化が、好ましくはUV放射および/または電子放射および/またはIR放射および/または単色放射による放射線硬化で行われる。ステップA)、および/またはステップB)、および/またはステップD)は、1つまたは複数のデジタル・プリンタ、特にインクジェット・プリンタを用いて実施することができる。
【0050】
本発明の好ましい実施形態について以下の非限定的な条項で説明する。
【0051】
条項
1.化粧表面被覆部材であって、特に、床パネル、天井パネルまたは壁パネルなどの化粧パネルであり、
- 上面および下面が与えられた芯材と、
- 芯材の前記上面に直接または間接的に貼り付けられた化粧上部構造物とを備え、前記化粧上部構造物が、
・ 少なくとも1つの化粧像を形成する少なくとも1つの化粧層と、
・ 前記化粧層を少なくとも部分的に覆う、実質的に透明または半透明の印刷被覆構造物とを備え、印刷被覆構造物が、
○ 化粧層の好ましくは長方形の中心部分を覆う、好ましくは長方形の印刷中心部分と、
○ 前記中心部分に隣接し、中心部分の辺の長さに沿って延びる少なくとも1つの印刷周辺部分であって、前記少なくとも1つの周辺部分が化粧層の少なくとも1つの周辺部分を覆っている、印刷周辺部分とを含み、
被覆構造物の周辺部分が被覆構造物の中心部分に対して凹んでおり、被覆構造物の印刷周辺部分が周辺ベベルおよび/または周辺グラウト・ラインであり、特に周辺模倣グラウト・ラインである、化粧表面被覆部材。
【0052】
2.被覆構造物の印刷周辺部分の少なくとも一部の高さが、被覆構造物の印刷中心部分から離れる方向に減少する、条項1に記載の表面被覆部材。
【0053】
3.被覆構造物の周辺部分の少なくとも一部が面取り上面を有する、条項1または2に記載の表面被覆部材。
【0054】
4.被覆構造物の周辺部分の少なくとも一部が実質的に平坦な上面を有する、条項1から3の一項に記載の表面被覆部材。
【0055】
5.被覆構造物の周辺部分の少なくとも一部が湾曲上面を有する、条項1から4の一項に記載の表面被覆部材。
【0056】
6.被覆構造物の周辺部分の少なくとも一部が、芯材によって画定された平面に実質的に平行な上面を有する、条項1から5の一項に記載の表面被覆部材。
【0057】
7.被覆構造物の周辺部分の少なくとも一部がテクスチャ付きの上面を有する、条項1から6の一項に記載の表面被覆部材。
【0058】
8.被覆構造物の周辺部分がチャネルを、好ましくは少なくとも部分的に凹形のチャネルを形成する、条項1から7の一項に記載の表面被覆部材。
【0059】
9.被覆構造物が、一体化して形成された被覆構造物であり、好ましくは、シングル・パス印刷ステップ中に形成される、条項1から8の一項に記載の表面被覆部材。
【0060】
10.被覆構造物の中心部分と被覆構造物の周辺部分との間の変わり目が、鋭い縁部によって画定されている、条項1から9の一項に記載の表面被覆部材。
【0061】
11.被覆構造物が、被覆構造物の中心部分に隣接する複数の印刷された周辺部分を含み、周辺部分が中心部分の別々の辺の長さに沿って延びており、少なくとも1つの、好ましくはそれぞれの周辺部分が、化粧層の少なくとも1つの周辺部分を覆う、条項1から10の一項に記載の表面被覆部材。
【0062】
12.被覆構造物の周辺部分の最も低い領域と被覆構造物の中心部分の最も高い領域との間の最大の高さの差が、200から800マイクロメートルまでの間、好ましくは200から500マイクロメートルまでの間にある、条項1から11の一項に記載の表面被覆部材。
【0063】
13.被覆構造物の印刷周辺部分が、
・ 周辺部分の長手方向に延びる少なくとも1つの凹み区域、特に化学的エンボス加工された凹み区域が設けられている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化した層、および/または
・ 周辺部分の長手方向に延びる少なくとも1つの隆起区域によって形成された、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化した隆起パターン層
によって形成される、条項1から12の一項に記載の表面被覆部材。
【0064】
14.隆起区域が化粧層上に印刷される、条項13に記載の表面被覆部材。
【0065】
15.隆起区域が、少なくとも1つの凹み区域が設けられている前記少なくとも部分的に硬化された層に印刷される、条項13または14に記載の表面被覆部材。
【0066】
16.被覆構造物の印刷中心部分が、内側グラウト・ライン、特に内側模倣グラウト・ラインである少なくとも1つの陥凹チャネルを含む、条項1から15の一項に記載の表面被覆部材。
【0067】
17.内側グラウト・ラインの深さが周辺グラウト・ラインの深さに実質的に等しい、条項16に記載の表面被覆部材。
【0068】
18.内側グラウト・ラインの幅が周辺グラウト・ラインの幅に実質的に等しい、条項16または17に記載の表面被覆部材。
【0069】
19.被覆構造物の印刷中心部分が、複数の、好ましくは交差する陥凹チャネルを含み、各チャネルが内側グラウト・ライン、特に内側模倣グラウト・ラインである、条項16から18の一項に記載の表面被覆部材。
【0070】
20.化粧層の少なくとも1つの周辺部分には、化粧層の中心部分の印刷と比べて異なる印刷がされている、条項1から19の一項に記載の表面被覆部材。
【0071】
21.化粧層の少なくとも1つの周辺部分には、化粧層の中心部分の印刷と比べて暗い印刷がされている、条項1から20の一項に記載の表面被覆部材。
【0072】
22.被覆構造物の中心部分がエンボス加工された中心部分である、条項1から21の一項に記載の表面被覆部材。
【0073】
23.被覆構造物の印刷中心部分がエンボス加工された中心部分であり、
・ 複数の凹部が設けられている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化されたベース層、および/または
・ 複数の隆起によって形成された、好ましくは前記ベース層の上部に印刷された少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化した隆起パターン層
によって形成されている、条項1から22の一項に記載の表面被覆部材。
【0074】
24.ベース層の上面がエンボス・ベース・レベルを画定し、凹部と隆起部の少なくとも一部とが、前記エンボス・ベース・レベルの反対側に位置する、条項23に記載の表面被覆部材。
【0075】
25.ベース層の上面がベース・レベルを画定し、凹部と隆起部の少なくとも一部とが、前記ベース・レベルと同じ側に位置する、条項23または24に記載の表面被覆部材。
【0076】
26.ベース層の一部に前記複数の凹部が設けられており、ベース層の別の部分には凹部がない、条項23から25の一項に記載の表面被覆部材。
【0077】
27.隆起部の少なくとも一部が、ベース層のうちの凹部がない部分に印刷される、条項26に記載の表面被覆部材。
【0078】
28.ベース層の複数の凹部が不連続凹部パターンを形成する、条項23から27の一項に記載の表面被覆部材。
【0079】
29.ベース層が印刷ベース層である、条項23から28の一項に記載の表面被覆部材。
【0080】
30.ベース層に設けられた凹部は、深さが2マイクロメートルから100マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから50マイクロメートルの間にある、条項23から29の一項に記載の表面被覆部材。
【0081】
31.隆起パターン層の隆起部は、高さが2マイクロメートルから500マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから300マイクロメートルの間にある、条項23から30の一項に記載の表面被覆部材。
【0082】
32.ベース層の凹部の少なくとも一部が、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される、条項23から31の一項に記載の表面被覆部材。
【0083】
33.隆起パターン層の隆起部の少なくとも一部が、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される、条項23から32の一項に記載の表面被覆部材。
【0084】
34.少なくとも1つの追加の化粧印刷層が、少なくとも1つのベース層および少なくとも1つの隆起パターン層に位置している、条項23から33の一項に記載の表面被覆部材。
【0085】
35.着色コーティングが凹部の中およびベース層の上に施される、条項23から34の一項に記載の表面被覆部材。
【0086】
36.凹部の少なくとも一部が、化学的にエンボス加工された凹部である、条項23から35の一項に記載の表面被覆部材。
【0087】
37.被覆構造物の上部表面の少なくとも一部に粗面化テクスチャが形成されており、粗面化テクスチャが好ましくは天然木目の外観を有する、条項1から36の一項に記載の表面被覆部材。
【0088】
38.被覆構造物の上部表面の少なくとも一部に機械粗面化テクスチャが形成されている、条項1から37の一項に記載の表面被覆部材。
【0089】
39.被覆構造物の少なくとも一部がアクリル樹脂を含む、条項1から38の一項に記載の表面被覆部材。
【0090】
40.被覆構造物の少なくとも一部が、エトキシル化されたプロピリジネトリメタノール、アクリル酸とのエステルを含む、条項1から39の一項に記載の表面被覆部材。
【0091】
41.被覆構造物の少なくとも一部が、少なくとも1つのエポキシ・アクリレート・オリゴマーを含む、条項1から40の一項に記載の表面被覆部材。
【0092】
42.被覆構造物が少なくとも部分的にラッカー層で覆われている、条項1から41の一項に記載の表面被覆部材。
【0093】
43.被覆層の少なくとも一部がラッカー層によって覆われないままになっている、条項42に記載の表面被覆部材。
【0094】
44.化粧層の少なくとも一部が芯材の上面に直接印刷されている、条項1から43の一項に記載の表面被覆部材。
【0095】
45.芯材の上面に、好ましくはプライマーまたはフィルムによって形成された支持体層が設けられ、化粧層の少なくとも一部が支持層に直接印刷される、条項1から44の一項に記載の表面被覆部材。
【0096】
46.印刷化粧層と被覆構造物の間に少なくとも1つの中間層が位置している、条項1から45の一項に記載の表面被覆部材。
【0097】
47.少なくとも1つの中間層が、透明または半透明で光反射性の熱可塑性層によって、好ましくはポリエステル層によって、より好ましくはポリエチレン・テレフタレート層によって形成される、条項46に記載の表面被覆部材。
【0098】
48.前記光反射性の熱可塑性層が印刷化粧層に接着される、条項47に記載の表面被覆部材。
【0099】
49.裏打ち層が芯材の下面に貼り付けられる、条項1から48の一項に記載の表面被覆部材。
【0100】
50.表面被覆部材の第1の縁部が第1の結合輪郭を備え、好ましくは第1の縁部と対向する、表面被覆部材の第2の縁部が、水平方向および垂直方向の両方で隣接する表面被覆部材の前記第1の結合輪郭とインターロック係合するように設計された第2の結合輪郭を備え、第1の結合輪郭と第2の結合輪郭が好ましくは、下げる動きによってこのような表面被覆部材の2つを互いに結合できるように構成される、条項1から49の一項に記載の表面被覆部材。
【0101】
51.表面被覆部材が、第3の縁部および第4の縁部にそれぞれ配置された、少なくとも1つの第3の結合輪郭および少なくとも1つの第4の結合輪郭を備え、第3の結合輪郭が、
・ 芯材の上面と実質的に平行な方向に延びる横向き舌部と、
・ 横向き舌部からある距離をおいたところにある少なくとも1つの第2の下向き側面と、
・ 横向き舌部と第2の下向き側面の間に形成された第2の下向き溝とを備え、
第4の結合輪郭が、
・ 隣接する表面被覆部材の第3の結合輪郭の横向き舌部の少なくとも一部を収容するように構成された第3の溝を備え、前記第3の溝が上方リップおよび下方リップによって画定され、前記下方リップに上向きロック要素が設けられ、
第3の結合輪郭および第4の結合輪郭は、このような表面被覆部材の2つが回転させる動きによって互いに結合できるように構成され、結合状態では、第1の表面被覆部材の横向き舌部の少なくとも一部が、隣接する第2の表面被覆部材の第3の溝に挿入され、前記第2の表面被覆部材の上向きロック要素の少なくとも一部が、前記第1の表面被覆部材の第2の下向き溝に挿入されている、条項1から50の一項に記載の表面被覆部材。
【0102】
52.芯材が実質的に剛性である、条項1から51の一項に記載の表面被覆部材。
【0103】
53.芯材が少なくとも部分的に発泡されている、条項1から52の一項に記載の表面被覆部材。
【0104】
54.芯材が、エチレン・ビニル・アセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリイソシアヌレート(PIR)、またはこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つのポリマーを含む、条項1から53の一項に記載の表面被覆部材。
【0105】
55.芯材が少なくとも1つの木質材料を含む、条項1から54の一項に記載の表面被覆部材。
【0106】
56.芯材が、少なくとも1つのポリマー材料および少なくとも1つの非ポリマー材料からなる少なくとも1つの複合材料を含む、条項1から55の一項に記載の表面被覆部材。
【0107】
57.少なくとも1つの非ポリマー材料が、タルク、チョーク、木材、炭酸カルシウム、および無機充填剤からなる群から選択される、条項56に記載の表面被覆部材。
【0108】
58.芯材が酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを含む、条項1から57の一項に記載の表面被覆部材。
【0109】
59.芯材の上面が実質的に平坦である、条項1から58の一項に記載の表面被覆部材。
【0110】
60.被覆構造物の中心部分の少なくとも一部のみに粗面化テクスチャが形成されている、条項1から59の一項に記載の表面被覆部材。
【0111】
61.条項1から60のいずれかに記載の、相互結合した表面被覆部材で構成される、特に床被覆材、天井被覆材、または壁被覆材である、表面被覆部材被覆材。
【0112】
62.条項1から60の一項に記載の化粧表面被覆部材を製造する方法であって、
A)少なくとも1つの化粧層を芯材の上面に印刷によって、好ましくはデジタル印刷によって形成するステップと、
B)液体ベース層を、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部に付着させて、被覆構造物の中心部分および少なくとも1つの周辺部分を形成し、複数のエンボス液滴を、依然として液体のベース層の上に、エンボス液滴が噴霧されている位置でベース層の厚さが変化するようにして、これらの位置で凹部が液体ベース層に形成されるように、また、被覆構造物の中心部分の平均高さが被覆構造物の周辺部分の平均高さを上回るように、位置選択的に印刷するステップであって、被覆構造物の印刷周辺部分が、周辺ベベルおよび/または周辺グラウト・ラインとして、特に周辺模倣グラウト・ラインとして形成される、ステップと、
C)前記凹部が設けられた前記ベース層を少なくとも部分的に硬化させるステップと、
D)任意選択で、好ましくは、ステップC)の間に被覆構造物を少なくとも部分的に硬化させた後に、被覆構造物の少なくとも一部に複数の隆起によって形成された隆起パターン層を位置選択的に印刷し、前記パターン層を部分的に硬化させるステップであって、前記ベース層と前記パターン層が一緒に付着されると、エンボス加工被覆構造物を形成する、ステップと、
E)任意選択で、エンボス加工被覆構造物の上部表面の少なくとも一部を機械的に処理して、エンボス加工構造物に粗面化テクスチャを形成するステップと
を含む方法。
【0113】
63.ステップC)の間に、ベース層の60から90%までが硬化される、条項62に記載の方法。
【0114】
64.ステップD)の間に、パターン層の60から90%までが硬化される、条項62または63に記載の方法。
【0115】
65.ステップE)の間にエンボス構造物の上部表面の少なくとも一部が、少なくとも1つの軸方向に回転するブラシ・ローラ、好ましくは金属ブラシ・ローラ、特に鋼ブラシ・ローラを使用して処理される、条項62から64の一項に記載の方法。
【0116】
66.方法が、ステップE)を実行することに続いて、表面被覆部材、特にエンボス構造物を機械的にクリーニングするステップを含むステップF)を含む、条項62から65の一項に記載の方法。
【0117】
67.方法が、表面被覆部材を複数の小さい表面被覆部材に切断するステップを含むステップG)を含む、条項62から66の一項に記載の方法。
【0118】
68.ステップB)の間に、形成されるべき2つの表面部材の少なくとも2つの中心部分によって囲まれる、少なくとも1つの共有周辺部分が作り出され、ステップG)の間に、各共有周辺部分がその長さに沿って切断されて、その辺縁部に置かれた少なくとも1つの周辺部分をそれぞれが有する複数の表面被覆部材が形成される、条項67に記載の方法。
【0119】
69.方法が、少なくとも1つの表面被覆部材の少なくとも1つの縁部を賦形することを含むステップH)を含む、条項62から68の一項に記載の方法。
【0120】
70.ステップC)の間に、エンボス液滴が、ステップA)の間に形成された化粧層の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第1のデジタルテンプレートに従って液体ベース層に印刷される、条項62から69の一項に記載の方法。
【0121】
71.ステップD)の間に、隆起パターンが、ステップA)の間に形成された化粧層の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第2のデジタルテンプレートに従ってベース層に印刷される、条項62から70の一項に記載の方法。
【0122】
72.ステップC)によるベース層の硬化、および/またはステップD)によるパターン層の硬化が、好ましくはUV放射および/または電子放射および/またはIR放射および/または単色放射による放射線硬化で行われる、条項62から71の一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1a】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1b】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1c】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1d】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1e】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1f】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1g】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図2a】本発明による化粧パネルの別の例の概略側面図である。
図2b】本発明による化粧パネルの上面図である。
図3】本発明による化粧パネルのさらなる例の概略図である。
図4a】本発明による化粧パネルに使用される結合輪郭を示す側面概略図である。
図4b】本発明による化粧パネルに使用される結合輪郭を示す側面概略図である。
図5a】本発明による相互連結された2つの化粧パネルを含む床被覆材を示す側面概略図である。
図5b】本発明による相互連結された2つの化粧パネルを含む床被覆材を示す側面概略図である。
図6a】本発明による複数の表面被覆部材を形成するために切断線(A)に従って小さいパネルに切断されるべき大きいパネルを示す平面図である。
図6b】本発明による複数の表面被覆部材を形成するために切断線(B)に従って小さいパネルに切断されるべき大きいパネルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0124】
本発明を、以下の図に示される非限定的な例示的実施形態に基づいて説明する。
【0125】
図1a~1gは、本発明による方法の順次ステップを示す。図1aは、本発明による表面被覆部材の一例としての化粧パネル(110)の断面の概略図を示す。この図は、パネル(110)の芯材(100)を示す。芯材(100)は通常、実質的に剛性であり、場合によっては少なくとも1つのポリマーおよび/または少なくとも1つの木質材料を含み得る。化粧層(107)、具体的には化粧像が、好ましくはデジタル印刷によって、印刷芯材(100)の上面(100A)に印刷によって、特にデジタル印刷によって形成されている。図1bは、パネル(110)の上面(100A)に形成された化粧像に液体ベース層(101)が塗布されていることを示す。液体ベース層(101)を形成する液体は、たとえば、UVシーラーである。液体ベース層(101)は一般に、液体ベース層(101)での正確なエンボス加工を可能にするために、表面張力が比較的高い。図1cは、複数のエンボス液滴(102)が、依然として液体のベース層(101)の上に、位置選択的に印刷されていることを示している。この印刷は、エンボス液滴(102)が噴霧されている各位置でベース層(101)の厚さが変化するように行われる。図1dは、この結果として位置凹部(103)が、エンボス液滴(102)が噴霧されている位置で液体ベース層(101)に形成されることを示す。ベース層(101)は、前記凹部(103)がベース層(101)に設けられた後に少なくとも部分的に硬化される。続いて隆起パターン層が、複数の隆起部をベース層(101)の上に位置選択的に印刷することによって形成される。パネル(110)の上に付着させる隆起液滴(104)が図1dに示されている。隆起部(105)を位置選択的に印刷することによって得られたパターン層は、続いて少なくとも部分的に硬化される。好ましくは、エンボス液滴(102)および/または隆起液滴(104)は、液体ベース層(101)の表面張力よりも高い表面張力を有する。任意選択で、1つまたは複数の仕上げ層(図示せず)をパネル(110)に付着させることができる。図1a~1eに示すステップによって、芯材(100)と、芯材(100)の上面(100A)に貼り付けられた化粧上部構造物とを備える化粧パネル(110)が得られる。化粧上部構造物は、少なくとも1つの化粧像を形成する化粧印刷層と、前記印刷層を少なくとも部分的に覆う実質的に透明または半透明の三次元エンボス構造物とを備える。このエンボス構造物は、複数の凹部(103)が設けられたベース層(101)と、前記ベース層(101)の上部に印刷された複数の隆起部(105)によって形成された隆起パターン層とを備える多層エンボス構造物である。高さが不規則な構造物を有するパネル(110)が得られるように、凹部(103)と隆起部(105)が重なり合えることが分かる。ベース層(101)の複数の凹部(103)は、不連続な凹部パターンを形成する。パネル(110)の少なくとも1つの辺縁部において、ベース層には、ベベル(106)を形成する傾斜した滑らかな、またはテクスチャ付きの面が設けられる。したがって、ベベル(106)は印刷ベース層(101)によって形成され、化粧層(107)は前記ベベル(106)の下に延びており、したがって無傷のままである。パネル(110)は、場合によっては、複数のパネル(110)を結合するための複数の結合輪郭を含み得る。パネル(110)はまた、芯材(100)の下面に貼り付けられた裏打ち層(図示せず)を備えることもある。図1fには、エンボス構造物が、複数の連続して配向された回転円筒形ブラシ・ローラ(120a、120b、120c)によって機械的に処理され、隣り合うブラシ・ローラ(120a、120b、120c)は軸方向に互いに反対方向に回転することが示されている。ブラシ・ローラ(120a、120b、120c)は通常、好ましくは少なくとも部分的に金属で作られた、より好ましくは鋼および/または鋼と炭素の複合体で作られた比較的堅牢な、および/または剛性のブラシ・ワイヤを有する。この例示的な実施形態のブラシ・ローラ(120a、120b、120c)の直径は、おおよそ30センチメートルである。ブラシ・ローラ(120a、120b、120c)の回転速度は、通常は550から650回転/分(rpm)の間であり、好ましくはおおよそ600rpmに等しい。ブラシ・ローラ(120a、120b、120c)は、最初は(完全に)滑らかなパネル(110)の上部表面のテクスチャを、より粗面化されたパネル(110)の上部表面のテクスチャに変えるために使用される。エンボス構造物のこの粗面化テクスチャは通常、より鋭い縁部を有し、図1gにより詳細に示すように、天然木目に近づく外観および見かけを有する。このことは、化粧像もまた木目模様を成しており、その化粧木目がエンボス加工木目と位置合わせされている場合に、特に有利である。この機械的動作の間、材料はエンボス構造物から、また任意選択でエンボス構造物と化粧像の間の中間透明層(該当する場合)の位置からも除去され、この材料はダスト粒子として放出される。この機械的なブラッシング動作(粗面化動作)中に生成されたダスト粒子の少なくとも一部を排出するために、各ブラシ・ローラ(120a、120b、120c)は、ハウジングまたはケージとも呼ばれるカバー(140a、140b、140c)で囲まれており、このカバー(140a、140b、140c)は真空システム(図示せず)に連結されている。ブラシ・ローラ(120a、120b、120c)がベベル(106)にもブラシ掛けすること、またはブラシ・ローラが、ベベル(106)をもとのままにしておくために、ベベル(106)から実質的に距離を保つことを選択することができる。パネル(110)が搬送方向Tへさらに移動する間、パネル(110)は、布および/またはナイロン・ワイヤなどのより柔らかいワイヤを有する、軸方向に回転する円筒形のクリーニング・ブラシ・ローラを通過して、パネル(110)からダスト粒子がさらに除去される。通常、粗面化およびクリーニングの後、パネル(110)は小さい複数のパネルに切断され、2つまたは4つのパネル縁部(図示せず)において賦形され、1つまたは複数のベベル(106)は、短くされる(すなわち、幅および/または長さが縮小される)こともされないこともある。
【0126】
図2aは、本発明による化粧パネル(220)の別の例の概略側面図を示す。パネル(220)は、上面および下面が与えられた芯材(200)と、芯材(200)の前記上面に直接または間接的に貼り付けられた化粧上部構造物(201)とを備える。化粧上部構造物(201)は、少なくとも1つの化粧像を形成する化粧印刷層を備える。パネル(220)はまた、実質的に透明または半透明の、前記印刷層(201)を覆う三次元エンボス構造物(202)も備える。図示の実施形態では、エンボス構造物(202)は、凹形状を有する1つまたは複数の内側グラウト(203)が設けられた連続印刷ベース層(204)と、前記連続ベース層(204)の上に印刷された複数の(不連続)隆起部(205)によって形成された隆起パターン層とを備える。図2bにも示されている、パネル(220)の2つの辺縁部には、周辺グラウト・ライン(210)とも呼ばれる外部グラウト(210)が設けられ、グラウト(210)の下方長方形部はベース層(204)によって形成され、グラウト(210)の上部に、印刷隆起部(205)のうちの1つによって形成されたベベル(211)を備える。前記隆起部は、ラッカー層(205)の一部を形成する。支持体層(206)が、特にプライマー層(206)が、上部構造物(201)とエンボス構造物(202)の間に密封されて存在する。図示の実施形態では、プライマー層(206)は、無光沢プライマー(206A)と光沢プライマー(206B)からなるパターンを備える。凹部(203)は、プライマー層(206)が無光沢プライマー(206A)で形成されているところに存在する。構造化隆起部(205)は、プライマー層(206)の光沢プライマー(206B)を覆う。エンボス構造物(202)が実質的に透明であるので、プライマー層(206)内の違いが見える。プライマー層(206)が芯材(200)の上面に貼り付けられ、化粧上部構造物(201)がプライマー層(206)の上に貼り付けられることもまた考えられる。図2bは、図2aに示されたパネル(220)の上面図を示す。ベース層の一部には前記複数の凹部(203)が設けられ、また、ベース層の一部には凹部がないために、視覚的に目に見えるパターンが得られていることが分かる。この効果は、エンボス構造物(202)と合致しているパターンで無光沢と光沢の両方のプライマー(206A、206B)を備えるプライマー層(206)によって、さらに強調される。
【0127】
図3は、本発明による化粧パネル(330)のさらなる例の概略図を示す。この図は、化粧パネル(330)、特に床パネル(330)の断面を示す。パネル(330)は、上面および下面が与えられた、剛直な、可撓性の、または半可撓性の芯材(300)を含む。化粧印刷層(301)が、芯材(300)の上面に間接的に貼り付けられている。プライマー(302)で形成された支持体層(302)が、化粧層(301)の接着性を良くするために芯材(300)と化粧層(301)の間に存在する。中間層(303)が、印刷化粧上部層(301)の上部に存在する。中間層(303)は、透明または半透明の、光反射性の熱可塑性層(303)で形成されている。光反射性の熱可塑性層(303)は、ホットメルト接着剤層(304)を用いて印刷化粧層(301)の上に接着されている。実質的に透明または半透明の三次元エンボス構造物(305)が、前述の層(300、301、302、303、304)の上部に配置されている。エンボス構造物(305)は、多層エンボス構造物(305)であり、複数の凹部が設けられた、少なくとも部分的に硬化されている2つのベース層(306A、306B)を備える。各ベース層(306A、306B)の一部には凹部がないが、上側ベース層(306b)には、パネル(330)の両側の縁部(310a、310b)に、ベベル(311a、311b)を形成するための面取り、つまり傾斜上部表面が設けられる。エンボス構造物(305)はまた、上側ベース層(306B)の上部に印刷された複数の隆起部によって形成された隆起パターン層(307)も備える。隆起部は、凹部がそれぞれ設けられているベース層(306B)の部分にも、凹部がない部分にも印刷されている。図示されていないが、エンボス層が下方ベース層(306A)の上部に存在することもまた考えられる。二次印刷化粧層(308)が、下部ベース層(306A)に貼り付けられている。この印刷化粧層(308)は、ベース層(306A)のうちの凹部がない部分に貼り付けられる。パネル(330)全体は、ベベル(311a、311b)の形状に追従する仕上げ層(309)で、具体的にはラッカー層(309)で覆われている。パネル(330)は、独特の視覚パターンが得られることになる2つの印刷化粧層(301、308)が存在するという利益を得る。ベース層(306A、306B)に設けられた凹部は通常、深さが2マイクロメートルから100マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから50マイクロメートルの間にある。隆起パターン層(307)の隆起部は通常、高さが2マイクロメートルから500マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから300マイクロメートルの間にある。エンボス構造物、特に一方または両方のベース層(306A、306B)および/またはパターン層(307)および/または仕上げ層(309)には、これらの1つまたは複数の層を付着後に(直接)機械的にブラッシングすることによって、粗面化テクスチャが形成される。ここで、前記粗面化層の上に1つまたは複数の別の層を付着させる前に、1つの層が機械的に粗面化される(また任意選択でクリーニングされる)ことが考えられる。固体または発泡させたものでよい芯材(300)は、隣り合うパネル(300)をインターロック係合するように意図された、単純な舌部および相補形の溝として概略的に図示されている相補形の結合輪郭(312、313)を両側の縁部に備える。明示的には図示されていないが、実際には、結合輪郭(312、313)の幅は、好ましくはベベル(311a、311b)の幅を上回り、一般にベベル幅は、結合輪郭幅よりもかなり小さいことが多い。
【0128】
図4aおよび図4bは、たとえば上記の図で議論および図示された、上部表面が機械的に粗面化されたエンボス構造物を有する、かつ、2つまたは4つの対向する縁部に印刷ベベル(410A、410B)を有する、本発明によるパネル(400A、400B)に使用される結合輪郭(401A、401B、402A、402B)の非限定的な例を示す。第1のパネル縁部(440A)が第1の結合輪郭(401A)を備え、第1のパネル縁部(440A)と対向する第2のパネル縁部(440B)が、水平方向および垂直方向の両方で隣接するパネルの前記第1の結合輪郭(401A)とインターロックして係合するように設計された第2の結合輪郭(401B)を備え、第1の結合輪郭(401A)と第2の結合輪郭(401B)は、下げる動きによってこのようなパネルの2つを互いに結合できるように構成されている。この構成は、図4aに示されている。図4bは、第3のパネル縁部(441A)および第4のパネル縁部(441B)にそれぞれ配置された第3の結合輪郭(402A)および結合輪郭(402B)を備えるパネルを示す。第3の結合輪郭(402A)および第4の結合輪郭(402B)は、このようなパネルの2つ(440A、440B)が回転させる動きによって互いに結合できるように構成され、結合状態では、第1のパネルの横向き舌部の少なくとも一部が、隣接する第2のパネルの第3の溝に挿入されており、前記第2のパネルの上向きロック要素の少なくとも一部が、前記第1のパネルの第2の下向き溝に挿入されている。
【0129】
図5aおよび5bは、本発明による相互連結された(少なくとも)2つの化粧パネル(500)を含む床被覆材の2つの異なる実施形態を示す。この図では、パネルは単に部分的に示されている。各化粧パネル(500)は、長方形の、好ましくは細長い芯材(501)を含み、この芯材(501)は、少なくとも一対の対向する辺に舌部(502)および相補形の溝(503)を含み、これらの舌部および溝は、水平方向(パネル(500)によって画定される平面に平行)と垂直方向(パネル(500)によって画定される前記平面に垂直)の両方で、これらのパネル(500)が互いにロックして互いに協働するように構成されている。舌部(502)は、曲げる動き(回転させる動き)によって溝(503)に結合されるように構成されている。舌部(502)および溝(503)は、芯材(501)と一体化して形成されている。芯材(501)の上に化粧層(504)が付着され、この化粧層は、化粧フィルムによって、または芯材に直接印刷される化粧印刷によって形成することができる。化粧層(504)の上に、前記化粧層(504)を全体的に覆う、実質的に透明または半透明の印刷被覆構造物(505)が付着されている。図5aに、パネル(500)の間の継ぎ目が垂直面Vを画定していることが示されている。この図には、被覆構造物(505)に、舌部(502)の上方と溝(503)の上方の両方に厚さが減少した区域(506A、506B)が設けられ、それにより、隣り合うパネル(500)の厚さが減少した前記区域(506A、506B)が互いに連結して、単一のグラウト・ライン(507)を形成していることも示されている。ここで、グラウト・ライン(507)は、垂直面Vの一方の側に部分的に位置しており、また、垂直面Vの反対側に部分的に位置している。グラウト・ライン(507)は、実質的に長方形の断面を有し、上面近くにベベル(508A、508B)を備える。図5bには、わずかに異なる実施形態が示されており、パネル(500)の間の継ぎ目が垂直面Vを画定しており、被覆構造物(505)には、溝(503)の上方ではなく、舌部(502)の上方にだけ、厚さが減少した区域(510)が設けられている。図示のように、2つのパネル(500)の相互連結状態において、隣り合う被覆構造物(505)は一緒にグラウト・ライン(511)を形成し、グラウト・ライン(511)の一方の縁端は垂直面Vと一致している。
【0130】
図6aは、本発明による複数(ここでは6つ)の表面被覆部材(602)を形成するために切断線(A)に従って小さいパネルに切断されるべき、大きいパネルすなわちスラブ(601)の第1の別の実施形態を示す。斜線領域は、各表面被覆部材(602)の、下にある化粧層の中心部分を被覆している印刷被覆構造物の平坦な、またはテクスチャ付きの中心部分(603)を示し、前記印刷被覆構造物の周辺部分(604)は被覆構造物の中心部分(603)に対して凹んでおり、被覆構造物の印刷周辺部分は周辺ベベルおよび/または周辺グラウト・ラインであり、特に周辺模倣グラウト・ラインである。周辺部分は、化粧層の少なくとも1つの周辺部分を覆う。図示のように、周辺部分は、表面被覆部材(602)の4つの縁部すべてに延びている。スラブ(601)を複数の表面被覆部材(602)に切断した後、化粧層の周辺部分および被覆構造物の周辺部分を含む表面被覆部材(602)の縁部は、インターロック可能な表面被覆部材(602)を作り出すために、通常は切削加工によって機械加工され、具体的には賦形される。この構造物は、たとえば、図5aに示された実施形態になり得る。
【0131】
図6bは、本発明による複数(ここでは6つ)の表面被覆部材(612)を形成するために切断線(B)に従って小さいパネルに切断されるべき、大きいパネルすなわちスラブ(611)の第2の別の実施形態を示す。この実施形態は、図6aに示された実施形態と非常に似ているが、印刷被覆構造物の陥凹周辺部分(613)が、各表面被覆部材(612)の隣り合う2つの縁部(長縁部および隣接する短縁部)だけにわたって延びている点が異なっている。この実施形態は、たとえば、図5bに示された実施形態になり得る。
【0132】
こうして、上述の本発明の概念は、いくつかの例示的な実施形態によって説明されている。個々の発明概念は、適用する際に、説明された例の他の細部もまた適用しなくても適用できると考えられる。当業者には、特定の適用例に到達するために多数の発明概念を(再)結合できることが理解されるので、上述の発明概念から成るすべての考えられる組み合わせの例を詳述する必要はない。
【0133】
本発明は、本明細書に示され記載された実施例に限定されず、当業者には明らかな多数の変形が添付の請求項の範囲内で可能であることが明らかであろう。
【0134】
本特許公開で使用される動詞「備える(comprise)」およびその活用型は、「備える」だけでなく、語句の「含む(contain)」、「から実質的に成る(substantially consist of)」、「によって形成された(formed by)」、およびこれらの活用型を意味するとも理解される。

図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
【国際調査報告】