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▶ ケース ウエスタン リザーブ ユニバーシティの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ナノバブル標的療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/69 20170101AFI20230418BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 31/02 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230418BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230418BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20230418BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20230418BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230418BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K47/69
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61P31/00
A61K31/02
A61K45/00
A61P43/00 105
A61K47/24
A61K47/60
A61K47/10
A61K47/28
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K47/62
A61K47/59
A61K47/54
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554891
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 US2021022172
(87)【国際公開番号】W WO2021183931
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/988,832
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】597138069
【氏名又は名称】ケース ウエスタン リザーブ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】エクスナー,アガタ
(72)【発明者】
【氏名】バシリオン,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】コリオス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】デレオン,アル
(72)【発明者】
【氏名】ペレラ,レシャニ
(72)【発明者】
【氏名】ソジャーフッド,アミン ジャファリ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC41
4C076DD37
4C076DD37A
4C076DD38
4C076DD38A
4C076DD63
4C076DD63A
4C076DD70
4C076DD70A
4C076EE23
4C076EE23A
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZB352
4C084ZC751
4C085AA25
4C085AA26
4C085BB01
4C085EE03
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA07
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA58
4C206NA05
4C206NA13
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZB31
4C206ZC75
(57)【要約】
対象において細胞死を誘導する方法は、標的細胞によって内部移行した複数の細胞標的ナノバブルを対象に投与すること、及び内部移行したナノバブルの慣性キャビテーション並びに標的細胞のアポトーシス及び/又は壊死を促進するのに有効な超音波エネルギーを用いて標的細胞に内部移行したナノバブルを共振させることを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において細胞死を誘導する方法であって、各ナノバブルが、少なくとも1種のガスを含む少なくとも1つの内部空隙を画定する膜と、前記膜の外表面に連結された標的化部分とを有する複数のナノバブルを前記対象に投与すること、ここで、前記標的部分は、標的細胞の細胞表面分子に結合し、前記ナノバブルは、前記標的化部分の前記細胞表面分子への結合時に、前記標的細胞による前記ナノバブルの内部移行を促進するサイズ及び/又は直径を有し;かつ
内部移行したナノバブルの慣性キャビテーション並びに前記標的細胞のアポトーシス及び/又は壊死を促進するのに有効な超音波エネルギーを用いて、前記標的細胞に内部移行した前記ナノバブルを共振させること、
を含む方法。
【請求項2】
前記ナノバブルが、約50nm~約400nmの平均直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が癌細胞であり、前記標的化部分が癌細胞表面分子に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記標的化部分が、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子、元素化合物、抗体、及び抗体断片からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記癌細胞表面分子が癌細胞の表面上の癌細胞抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌細胞抗原が、5T4、α2β1インテグリン、AXL受容体チロシンキナーゼ(AXL)、B細胞成熟抗原(BCMA)、c-MET(肝細胞増殖因子受容体)、C4.4a、炭酸脱水酵素6(CA6)、炭酸脱水酵素9(CA9)、カドヘリン-6、CD19、CD22、CD25、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD44v6、CD56、CD70、CD74、CD79b、CD123、CD138、癌胚性抗原(CEA)、cKit、コラーゲン受容体、クリプトタンパク質、CS1、デルタ様カノニカルNotchリガンド3(DLL3)、エンドセリン受容体B型(EDNRB)、エフリンA4(EFNA4)、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRvIII、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ3(ENPP3)、EPH受容体A2(EPHA2)、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、葉酸受容体1(FOLR1)、非転移性糖タンパク質B(GPNMB)、グアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ヒト上皮成長因子受容体3(HER3)、インテグリンα、リソソーム関連膜タンパク質1(LAMP-1)、ルイスY、LIV-1、ロイシンリッチリピート含有15(LRRC15)、メソテリン(MSLN)、ムチン1(MUC1)、ムチン16(MUC16)、ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2B(NaPi2b)、ネクチン-4、NMB、NOTCH3、p-カドヘリン(p-CAD)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、プロテインチロシンキナーゼ7(PTK7)、プロテインチロシンホスファターゼμ(PTPμ)溶質担体ファミリー44メンバー4(SLC44A4)、SLIT様ファミリーメンバー6(SLITRK6)、STEAPファミリーメンバー1(STEAP1)、組織因子(TF)、T細胞免疫グロブリン及びムチンタンパク質-1(TIM-1)、又は栄養芽細胞表面抗原(TROP-2)のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記標的細胞が前立腺癌細胞であり、前記細胞表面分子がPSMAである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記膜が脂質膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記脂質膜が、前記バブル膜のモジュール及び/又は界面張力を変化させるグリセロール、プロピレングリコール、プルロニック(ポロキサマー)、アルコール又はコレステロールのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノバブルが、少なくとも約5mg/mlの脂質濃度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記脂質膜が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、又はそれらのPEG官能化脂質のうちの少なくとも2つの混合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記脂質の混合物が、少なくとも約50重量%のジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC)と、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、又はそれらのPEG官能化リン脂質からなる群から選択される約50重量%未満の追加のリン脂質の組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ガスが、パーフルオロカーボンガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記共振が正常な細胞及び組織に悪影響を及ぼすことなく細胞死を誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記共振が、約1%~約50%のデューティーサイクル、約1MHz~約12MHzの超音波周波数、約0.1W/cm~約3W/cmの強度、約50kPa~約1MPaの圧力振幅、及び約1分~約10分の時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記共振が、前記ナノバブルが投与される組織に送られる異なる圧力振幅のパルスを有する2つの超音波パルスシーケンスを含み、一方のパルスが、他方のパルスよりも大きい圧力振幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
一方のパルスが、他方のパルスの少なくとも2倍の圧力振幅を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つのパルスが慣性キャビテーションのためのナノバブル圧力閾値を下回り、続くもう1つのパルスが、慣性キャビテーションのための閾値の圧力閾値を上回る、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記超音波エネルギーが非集束超音波トランスデューサによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記標的細胞が前記対象における広範囲の癌微小転移を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞が微生物の原核細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノバブルが、各ナノバブルの膜内に含有されるか、又は前記膜とコンジュゲートしている少なくとも1つの治療剤をさらに含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記治療剤が、少なくとも1つの化学療法剤、抗増殖剤、殺生物剤、制生剤、又は抗菌剤をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
それを必要とする対象における癌を治療する方法であって、各ナノバブルが、少なくとも1種のガスを含む少なくとも1つの内部空隙を画定する膜と、前記膜の外表面に連結された標的化部分とを有する複数のナノバブルを前記対象に投与すること、ここで、前記標的部分は、標的癌細胞の細胞表面分子に結合し、前記ナノバブルは、前記標的化部分の前記細胞表面分子への結合時に、前記標的癌細胞による前記ナノバブルの内部移行を促進するサイズ及び/又は直径を有し;かつ
内部移行したナノバブルの慣性キャビテーション並びに前記標的癌細胞のアポトーシス及び/又は壊死を促進するのに有効な超音波エネルギーを用いて、前記標的癌細胞に内部移行した前記ナノバブルを共振させること、
を含む方法。
【請求項25】
前記ナノバブルが、約50nm~約400nmの平均直径を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記標的化部分が、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子、元素化合物、抗体、及び抗体断片からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記癌細胞表面分子が癌細胞の表面上の癌細胞抗原である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記癌細胞抗原が、5T4、α2β1インテグリン、AXL受容体チロシンキナーゼ(AXL)、B細胞成熟抗原(BCMA)、c-MET(肝細胞増殖因子受容体)、C4.4a、炭酸脱水酵素6(CA6)、炭酸脱水酵素9(CA9)、カドヘリン-6、CD19、CD22、CD25、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD44v6、CD56、CD70、CD74、CD79b、CD123、CD138、癌胚性抗原(CEA)、cKit、コラーゲン受容体、クリプトタンパク質、CS1、デルタ様カノニカルNotchリガンド3(DLL3)、エンドセリン受容体B型(EDNRB)、エフリンA4(EFNA4)、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRvIII、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ3(ENPP3)、EPH受容体A2(EPHA2)、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、葉酸受容体1(FOLR1)、非転移性糖タンパク質B(GPNMB)、グアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ヒト上皮成長因子受容体3(HER3)、インテグリンα、リソソーム関連膜タンパク質1(LAMP-1)、ルイスY、LIV-1、ロイシンリッチリピート含有15(LRRC15)、メソテリン(MSLN)、ムチン1(MUC1)、ムチン16(MUC16)、ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2B(NaPi2b)、ネクチン-4、NMB、NOTCH3、p-カドヘリン(p-CAD)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、プロテインチロシンキナーゼ7(PTK7)、プロテインチロシンホスファターゼμ(PTPμ)溶質担体ファミリー44メンバー4(SLC44A4)、SLIT様ファミリーメンバー6(SLITRK6)、STEAPファミリーメンバー1(STEAP1)、組織因子(TF)、T細胞免疫グロブリン及びムチンタンパク質-1(TIM-1)、又は栄養芽細胞表面抗原(TROP-2)のうちの少なくとも1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記標的細胞が前立腺癌細胞であり、前記細胞表面分子がPSMAである、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記膜が脂質膜である、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記脂質膜が、前記バブル膜のモジュール及び/又は界面張力を変化させるグリセロール、プロピレングリコール、プルロニック(ポロキサマー)、アルコール又はコレステロールのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ナノバブルが、少なくとも約5mg/mlの脂質濃度を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記脂質膜が、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)又はそれらのPEG官能化脂質のうちの少なくとも2つの混合物を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記脂質の混合物が、少なくとも約50重量%のジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC)と、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、又はそれらのPEG官能化リン脂質からなる群から選択される約50重量%未満の追加のリン脂質の組み合わせを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ガスが、パーフルオロカーボンガスを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記共振が正常な細胞及び組織に悪影響を及ぼすことなく細胞死を誘導する、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
前記共振が、約1%~約50%のデューティーサイクル、約1MHz~約12MHzの超音波周波数、約0.1W/cm~約3W/cmの強度、約50kPa~約1MPaの圧力振幅、及び約1分~約10分の時間である、請求項24に記載の方法。
【請求項38】
前記共振が、前記ナノバブルが投与される組織に送られる異なる圧力振幅のパルスを有する2つの超音波パルスシーケンスを含み、一方のパルスが、他方のパルスよりも大きい圧力振幅を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
一方のパルスが、他方のパルスの少なくとも2倍の圧力振幅を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
1つのパルスが慣性キャビテーションのためのナノバブル圧力閾値を下回り、続くもう1つのパルスが、慣性キャビテーションのための閾値の圧力閾値を上回る、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記超音波エネルギーが非集束超音波トランスデューサによって提供される、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
前記標的細胞が前記対象における広範囲の癌微小転移を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞が微生物の原核細胞を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項44】
前記ナノバブルが、各ナノバブルの膜内に含有されるか、又は前記膜とコンジュゲートしている少なくとも1つの治療剤をさらに含む、請求項24~43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記治療剤が、少なくとも1つの化学療法剤、抗増殖剤、殺生物剤、制生剤、又は抗菌剤をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
対象における癌を治療するためのシステムであって、
前記対象内の癌細胞に超音波エネルギーを非侵襲的に送達するように構成された超音波源;
各ナノバブルが、少なくとも1種の気体を含む少なくとも1つの内部空隙を画定する膜と、前記膜の外表面に連結された標的化部分とを有する複数のナノバブル、ここで、前記標的部分が、標的癌細胞の細胞表面分子に結合し、前記ナノバブルが、標的化部分が前記細胞表面分子に結合する際に、前記標的癌細胞による前記ナノバブルの内部移行を促進するサイズ及び/又は直径を有し;かつ
共振時間中に癌細胞の共振を引き起こし、前記癌細胞によって内部移行したナノバブルの慣性キャビテーションを促進するように構成された前記超音波源に結合されたコントローラ
を含むシステム。
【請求項47】
前記共振が、約1%~約50%のデューティーサイクル、約1MHz~約12MHzの超音波周波数、約0.1W/cm~約3W/cmの強度、約50kPa~約1MPaの圧力振幅、及び約1分~約10分の時間である、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記共振が、前記ナノバブルが投与される組織に送られる異なる圧力振幅のパルスを有する2つの超音波パルスシーケンスを含み、一方のパルスが、他方のパルスよりも大きい圧力振幅を有する、請求項46に記載のシステム。
【請求項49】
一方のパルスが、他方のパルスの少なくとも2倍の圧力振幅を有する、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
1つのパルスが、慣性キャビテーションのためのナノバブル圧力閾値を下回り、続くもう1つのパルスは、慣性キャビテーションのための閾値の圧力閾値を上回る、請求項48に記載のシステム。
【請求項51】
前記超音波エネルギーが非集束超音波トランスデューサによって提供される、請求項46に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年3月12日出願の米国仮出願第62/988,832号の優先権を主張するものであり、その主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府資金
本発明は、米国立衛生研究所の米国立生物医学画像・生物工学研究所から授与された助成金No.5R01EB025741-02及び1-R01-EB028144-01A1の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本願は、診断及び治療用組成物に関し、より特には、診断用途、治療用途、及びセラノスティック用途のためのナノバブルに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
超音波造影剤(UCA)は、ポリマー、タンパク質、又は脂質などの様々な材料から作られた安定化シェルを有する小さなガスが充填されたバブルである。診断超音波イメージングにおけるこれらの薬剤の従来の用途以外に、UCAは、標的遺伝子及び薬物送達を含む治療用途における関連性を見出した。これらの適応可能な粒子は、現在、保護治療担体として、及びソノポレーションによるペイロードの送達を増強するためのキャビテーション核として探求されている。これらの機能を組み合わせることで、ペイロード循環半減期及び放出プロファイル、並びに組織選択性及び細胞取り込みが改善される。作用機序にかかわらず、特に癌治療において所望の効果を得るために、バブルが血管系から溢出して、細胞標的部位に到達することが有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今日入手可能な市販のUCAは、一般的には、直径1~8μmの血液プール剤としてのみ機能するように設計されている。バブルサイズを小さくする方法が以前に開発されたが、これらの戦略のほとんどが、重力による又は物理的なろ過若しくは浮遊による勾配分離などの形成後のマイクロバブルの操作を伴う。ナノサイズのバブルの選択には効果的であるが、これらの方法は、労働集約的であることに加えて、試料混入の可能性をもたらし、バブルの収率と安定性を低下させ、ストック材料を浪費する。さらに、担体としての(例えば、癌治療における)マイクロバブルの適用性は、サイズが大きいことによって制限され、一般的にはそれらを血管系に閉じ込める。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載の実施形態は、対象において高度に選択的又は標的化された細胞死を誘導する薬物フリー、低毒性の方法を提供することができるナノバブル標的療法(TNT)に関する。いくつかの実施形態では、治療又は方法は、複数の細胞標的ナノバブルを対象に投与することを含み得る。細胞標的ナノバブルの各々は、少なくとも1種の気体を含む少なくとも1つの内部空隙を画定する膜と、膜の外表面に連結された標的化部分とを有することができる。標的化部分は、標的細胞の細胞表面分子に結合することができ、ナノバブルは、標的化部分の細胞表面分子への結合時に標的細胞による細胞標的ナノバブルの内部移行を促進するサイズ、直径、及び/又は組成を有することができる。対象への細胞標的ナノバブルの投与に続いて、標的細胞に内部移行した細胞標的ナノバブルは、内部移行したナノバブルの慣性キャビテーション並びに標的細胞のアポトーシス及び/又は壊死を促進するのに有効な超音波エネルギーと共振することができる。
【発明の効果】
【0007】
いくつかの実施形態では、細胞標的ナノバブルは、約50nm~約400nmの平均直径を有することができ、標的化部分は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子、元素化合物、抗体、及び抗体断片のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0008】
他の実施形態では、標的化細胞は、対象の癌細胞であり得、標的化部分は、癌細胞表面分子に結合することができる。癌細胞表面分子は、癌細胞の表面上の癌細胞抗原であり得る。例えば、癌細胞抗原は、5T4、α2β1インテグリン、AXL受容体チロシンキナーゼ(AXL)、B細胞成熟抗原(BCMA)、c-MET(肝細胞増殖因子受容体)、C4.4a、炭酸脱水酵素6(CA6)、炭酸脱水酵素9(CA9)、カドヘリン-6、CD19、CD22、CD25、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD44v6、CD56、CD70、CD74、CD79b、CD123、CD138、癌胚性抗原(CEA)、cKit、コラーゲン受容体、クリプトタンパク質、CS1、デルタ様カノニカルNotchリガンド3(DLL3)、エンドセリン受容体B型(EDNRB)、エフリンA4(EFNA4)、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRvIII、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ3(ENPP3)、EPH受容体A2(EPHA2)、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、葉酸受容体1(FOLR1)、非転移性糖タンパク質B(GPNMB)、グアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ヒト上皮成長因子受容体3(HER3)、インテグリンα、リソソーム関連膜タンパク質1(LAMP-1)、ルイスY、LIV-1、ロイシンリッチリピート含有15(LRRC15)、メソテリン(MSLN)、ムチン1(MUC1)、ムチン16(MUC16)、ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2B(NaPi2b)、ネクチン-4、NMB、NOTCH3、p-カドヘリン(p-CAD)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、プロテインチロシンキナーゼ7(PTK7)、プロテインチロシンホスファターゼμ(PTPμ)溶質担体ファミリー44メンバー4(SLC44A4)、SLIT様ファミリーメンバー6(SLITRK6)、STEAPファミリーメンバー1(STEAP1)、組織因子(TF)、T細胞免疫グロブリン及びムチンタンパク質-1(TIM-1)、又は栄養芽細胞表面抗原(TROP-2)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0009】
一例では、標的細胞は前立腺癌細胞であり、細胞表面分子はPSMAであり、標的化部分はPSMAリガンドである。
【0010】
いくつかの実施形態では、膜は脂質膜であり得る。細胞標的ナノバブルの脂質膜は、ナノバブル膜のモジュール及び/又は界面張力を変化させるのに有効な量でグリセロール、プロピレングリコール、プルロニック(ポロキサマー)、アルコール又はコレステロールのうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0011】
他の実施形態では、脂質膜は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)又はそれらのPEG官能化脂質のうちの少なくとも2つの混合物を含む。例えば、脂質の混合物は、少なくとも約50重量%のジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC)と、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、又はそれらのPEG官能化リン脂質からなる群から選択される約50重量%未満の追加のリン脂質の組み合わせを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、細胞標的ナノバブルの内部空隙内のガスは、オクタフルオロプロパン(C)などのパーフルオロカーボンガスを含むことができる。
【0013】
他の実施形態では、細胞標的ナノバブルは、各ナノバブルの膜内に含有されるか又は膜とコンジュゲートしている少なくとも1つの治療剤をさらに含むことができる。治療剤は、例えば、少なくとも1つの化学療法剤、抗増殖剤、殺生物剤、制生剤、又は抗菌剤を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、内部移行したナノバブルを共振させることは、対象における正常な細胞及び組織に悪影響を及ぼすことなく標的細胞の死を誘導する。
【0015】
いくつかの実施形態では、共振は、約1%~約50%のデューティーサイクル、約1MHz~約50MHz(例えば、約1MHz~約10MHz)の超音波周波数、約0.1W/cm~約3W/cmの強度、約50kPa~約1MPaの圧力振幅、及び約1分~約30分の時間であり得る。
【0016】
他の実施形態では、共振は、ナノバブルが細胞によって内部移行する組織に送られる異なる圧力振幅のパルスを有する2つの超音波パルスシーケンスを含むことができる。いくつかの実施形態では、一方のパルスは、他方のパルスよりも大きい圧力振幅を有することができる。例えば、一方のパルスは、他方のパルスの少なくとも2倍の圧力振幅を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、1つのパルスは慣性キャビテーションのためのナノバブル圧力閾値を下回り、続くもう1つのパルスは、慣性キャビテーションのための閾値の圧力閾値を上回ることができる。例えば、圧力閾値が200kPaのナノバブルの場合、最初のパルスは150kPaで、続くもう1つのパルスが250kPaである。別の例では、500kPaの圧力閾値を有するナノバブルの場合、1つのパルスは300kPaであり、第2のパルスは600kPaである。
【0018】
他の実施形態では、最大慣性キャビテーションを誘導するために、全体のパルス長は、典型的なイメージングパルス(3~6サイクル)よりも長く(10~30サイクル)てもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、パルスシーケンスは、非集束トランスデューサから提供することができ、これは、薬物送達及びヒストトリプシーなどの超音波治療に使用される典型的な集束超音波トランスデューサとは異なる。
【0020】
さらに他の実施形態では、本方法は、容易に視覚化することができず、集束超音波を使用することができない肝臓又は骨などの広範囲の癌微小転移を含む病変を治療するために使用することができる。
【0021】
さらに他の実施形態では、本方法及び治療は、微生物の原核細胞の死を誘導し、感染症を治療するために使用することができる。
【0022】
本明細書に記載の他の実施形態は、それを必要とする対象における癌を治療する方法に関する。本方法は、複数の癌細胞標的ナノバブルを対象に投与することを含むことができる。癌細胞標的ナノバブルの各々は、少なくとも1種の気体を含む少なくとも1つの内部空隙を画定する膜と、膜の外表面に連結された標的化部分とを有することができる。標的化部分は、標的癌細胞の癌細胞表面分子に結合することができる。癌細胞標的ナノバブルは、標的化部分を癌細胞表面分子に結合する際に、標的癌細胞によるナノバブルの内部移行を促進するサイズ及び/又は直径を有することができる。
【0023】
対象への癌細胞標的ナノバブルの投与及び癌細胞標的ナノバブルの癌細胞内への内部移行後に、内部移行したナノバブルは、内部移行したナノバブルの慣性キャビテーション並びに標的癌細胞のアポトーシス及び/又は壊死を促進するのに有効な超音波エネルギーと共振させることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、癌細胞表面分子は、癌細胞の表面上の癌細胞抗原であり得る。例えば、癌細胞抗原は、5T4、α2β1インテグリン、AXL受容体チロシンキナーゼ(AXL)、B細胞成熟抗原(BCMA)、c-MET(肝細胞増殖因子受容体)、C4.4a、炭酸脱水酵素6(CA6)、炭酸脱水酵素9(CA9)、カドヘリン-6、CD19、CD22、CD25、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD44v6、CD56、CD70、CD74、CD79b、CD123、CD138、癌胚性抗原(CEA)、cKit、コラーゲン受容体、クリプトタンパク質、CS1、デルタ様カノニカルNotchリガンド3(DLL3)、エンドセリン受容体B型(EDNRB)、エフリンA4(EFNA4)、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRvIII、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ3(ENPP3)、EPH受容体A2(EPHA2)、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、葉酸受容体1(FOLR1)、非転移性糖タンパク質B(GPNMB)、グアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ヒト上皮成長因子受容体3(HER3)、インテグリンα、リソソーム関連膜タンパク質1(LAMP-1)、ルイスY、LIV-1、ロイシンリッチリピート含有15(LRRC15)、メソテリン(MSLN)、ムチン1(MUC1)、ムチン16(MUC16)、ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2B(NaPi2b)、ネクチン-4、NMB、NOTCH3、p-カドヘリン(p-CAD)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、プロテインチロシンキナーゼ7(PTK7)、プロテインチロシンホスファターゼμ(PTPμ)溶質担体ファミリー44メンバー4(SLC44A4)、SLIT様ファミリーメンバー6(SLITRK6)、STEAPファミリーメンバー1(STEAP1)、組織因子(TF)、T細胞免疫グロブリン及びムチンタンパク質-1(TIM-1)、又は栄養芽細胞表面抗原(TROP-2)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0025】
一例では、標的癌細胞は前立腺癌細胞であり、癌細胞表面分子はPSMAであり、標的化部分はPSMAリガンドである。
【0026】
さらに他の実施形態は、対象における癌を治療するためのシステムに関する。該システムは、対象内の癌細胞に超音波エネルギーを非侵襲的に送達するように構成された超音波源と、複数の癌細胞標的ナノバブルと、超音波源に結合されたコントローラとを含むことができる。癌細胞標的ナノバブルの各々は、少なくとも1種の気体を含む少なくとも1つの内部空隙を画定する膜と、膜の外表面に連結された標的化部分を有することができる。標的化部分は、標的癌細胞の癌細胞表面分子に結合することができる。癌細胞標的ナノバブルは、標的化部分を癌細胞表面分子に結合する際に、標的癌細胞によるナノバブルの内部移行を促進するサイズ及び/又は直径を有することができる。超音波源に結合されたコントローラは、共振時間中に癌細胞の共振を引き起こし、癌細胞によって内部移行したナノバブルの慣性キャビテーションを促進するように構成することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、共振は、約1%~約50%のデューティーサイクル、約1MHz~約50MHz(例えば、約1MHz~約10MHz)の超音波周波数、約0.1W/cm~約3W/cmの強度、約50kPa~約1MPaの圧力振幅、及び約1分~約30分の時間であり得る。
【0028】
他の実施形態では、共振は、ナノバブルが細胞によって内部移行する組織に送られる異なる圧力振幅のパルスを有する2つの超音波パルスシーケンスを含むことができる。いくつかの実施形態では、一方のパルスは、他方のパルスよりも大きい圧力振幅を有することができる。例えば、一方のパルスは、他方のパルスの少なくとも2倍の圧力振幅を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、1つのパルスは慣性キャビテーションのためのナノバブル圧力閾値を下回り、続くもう1つのパルスは、慣性キャビテーションのための閾値の圧力閾値を上回ることができる。例えば、圧力閾値が200kPaのナノバブルの場合、最初のパルスは150kPaで、続くもう1つのパルスが250kPaである。別の例では、500kPaの圧力閾値を有するナノバブルの場合、1つのパルスは300kPaであり、第2のパルスは600kPaである。
【0030】
他の実施形態では、最大慣性キャビテーションを誘導するために、全体のパルス長は、典型的なイメージングパルス(3~6サイクル)よりも長く(10~30サイクル)てもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、パルスシーケンスは、非集束トランスデューサから提供することができ、これは、薬物送達及びヒストトリプシーなどの超音波治療に使用される典型的な集束超音波トランスデューサとは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1(A~E)は、A)TNTアプローチの考え方を示す概略図、B)有意により低いNB用量での細胞内の効果に匹敵する細胞外のNB+USの効果を示すデータ、C)インビボ及びインビトロでの高解像度での前立腺癌細胞におけるPSMA-NBの音響活性保持を示す実現可能性データ(D、E)である。細胞内のNBは、高い特異性と最小限の付随的損傷で細胞を死滅させるように配置することができる。
図2図2は、一実施形態による方法を示すフロー図である。
図3図3(B~C)は、(B)駆動圧力が増加するにつれてシグナルの有意かつ急速な増加を示す、剛性及び可撓性シェルを有するNBの代表的な超音波コントラスト画像及び対応する増強(C)を示す。最大のシグナル増加に隣接する圧力のみが示されている。
図4図4(A~E)は、インビボ非線形コントラストスキャンを示す画像及びプロットを示す。A)バブル注射、非線形及び3D USアプリケーションを示すタイムライン。B)PSMA-NBについて腫瘍縁と腫瘍コアにおける異なる時点でのバブル分布を示す代表的な腫瘍画像。C)プレーンNB。D)Lumasonのマイクロバブル。E)PSMA-NB(i)、プレーンNB(ii)、及びLumason MB(iii)の時間の関数としてプロットした腫瘍の縁及びコアにおける平均シグナル強度。腫瘍を18MHz、5フレーム/秒で3分、1フレーム/秒で、16分で画像化した。
図5図5(A~C)は、腫瘍全体におけるバブル分布を視覚化するための3D超音波スキャンを示す概略図及びプロットを示す。A)3D USスキャンポイントを示すタイムライン。B)ピーク時のPSMA-NB、NB、及びLumasonを示す腫瘍の代表的な3D US画像。C)ピーク時及びベースライン減算後のt=25分の時点での3D USシグナル強度の定量化。N=3、エラーバーは平均±s.d.を表す。P<0.05。
図6図6(A~C)は、腫瘍全体におけるバブル分布を視覚化するための3D超音波スキャンを示す概略図及びプロットを示す。A)3D USスキャンポイントを示すタイムライン。B)ベースライン、注射後25分、及び心臓穿刺後におけるPSMA-NB、NB、及びLumasonを示す腫瘍の代表的な3D US画像。C)ベースライン減算後のPSMA-NB、プレーンNb、及びLumasonの心臓穿刺前後の3D USシグナル強度の定量化。N=3、エラーバーは平均±s.d.を表す。P<0.05。
図7図7(A~B)は、心臓穿刺後の切除された腫瘍におけるCy5.5-PSMA-NBの蓄積及び溢出を示す組織診断画像を示す。A)PSMA発現(シアン)、血管系(CD31発現、赤色)、及びPSMA-NB又はプレーンNB分布(緑色)を示す腫瘍組織の代表的な画像。B)バブル、PSMA及び血管のシグナル強度は、腫瘍切片における全細胞蛍光の百分率としての発現である。腫瘍の縁とコアの両方におけるCy5.5-PSMA-NBシグナルは、腫瘍の縁とコアの両方におけるNBシグナルのシグナルよりも有意に高かった。N=3、エラーバーは平均±s.d.を表す。P<0.001。
図8図8(A~B)は、(A)最初の1時間のNB曝露後、異なる時点でPSMA-NBとインキュベートしたPSMA陽性PC3pip細胞の代表的なUS画像を示す。(B)処理後異なる時点でのPSMA-NBインキュベートPC3pip細胞及びNBインキュベートPC3pip細胞並びにPSMA陰性PC3flu細胞の音響活性。PSMA-NBインキュベートPC3pipは、他の全てのグループと比較して、t=0~t=24時間の時点で有意に高い音響活性を示す。n=3、エラーバーは平均±s.d.を表し、は各時点における他の全てのグループからの統計的有意差(p<0.05)を示す。
図9(】図9(A~E)は、(A)PC3pip細胞におけるPSMA-NB及びNB分布の代表的な共焦点画像;100倍(青-核、赤-NB、及び緑-後期エンドソーム/リソソーム)を示す。(B)PSMA-NB及び(C)プレーンNBインキュベートPC3pip細胞の拡大したマージ画像。(D)24時間曝露後のPC3pip細胞(青-核、赤-NB、緑-エンドソーム)におけるPSMA-NB分布の代表的な共焦点画像。(E)PSMA-NB及び(F)プレーンNBインキュベートPC3pip細胞のズームしたマージ画像。PSMA-NBは、後期エンドソーム/リソソーム小胞(黄色)において高い共局在を示す。
図10図10(A~C)は、(A)NBによって生成されたCガスのヘッドスペースGC/MS解析;3.37分で溶出、(B)バブルの様々な濃度対Cガスに対応するピーク面積についての検量線、(C)PSMA-NB及びプレーンNB内部移行PC3pip細胞懸濁液によって生成されたCガスのヘッドスペースGC/MS解析を示すプロットを示す。
図11図11(A~B)は、(A)標識細胞(PSMA-NBインキュベート細胞)及び非標識細胞を異なる時点で、0.1MI値で注射した後に得られた皮下組織の代表的なUS画像、(B)各時点における平均USシグナル強度を示す。
図11図11は、他の複製のPSMA-NBについての腫瘍縁及び腫瘍コアにおける異なる時点でのバブル分布を示す腫瘍画像を示す。
図12図12は、腫瘍モデルとPSMA標的NBと非標的NBの模式図である。
図13図13(A~C)は、PSMA標的NBがLUMASONと比較してより大きな腫瘍増強を提供することを示す。(A)PSMA標的NB及び臨床的に利用可能なMB(LUMASON)の注射後のPC3pip同所性腫瘍及び肝臓の代表的な超音波検査画像。第1行目及び第2行目には、UCA注射前の腫瘍及び肝臓のBモード及びCHIモード画像を示した。第3~第5行目には、UCA投与後の異なる時点におけるCHI画像を示した。PSMA標的NBを投与したマウスの腫瘍及び肝臓におけるイメージング強度は、異なる時点でLUMASONを投与した動物のそれよりも明らかに高かった。スケールバーは0.5cmである。(B1)PSMA標的NB(n=11)及びLUMASON(n=3)のi.v.投与後のPC3pip同所性腫瘍の時間強度曲線(TIC)。(B2)PSMA標的NB(n=4)及びLUMASON(n=3)のi.v.投与後の肝臓の時間強度曲線(TIC)。(C)腫瘍又は肝臓におけるPSMA標的NBとLUMASONとの間のUCA動態パラメータの比較。平均±標準偏差としてのデータ。p<0.05、PSMA標的NBグループ対LUMASONグループ。
図14図14(A~C)は、PSMA標的NBが非標的NBと比較してより大きな腫瘍増強を提供することを示す画像及びプロットを示す。(A)PSMA標的NB及び非標的NBの注射後のPC3pip同所性腫瘍の代表的な超音波検査画像(n=11)。第1及び第2カラムは、それぞれUCA注射前の腫瘍のBモード及びCHIモード画像を示した。第3~第5カラムは、UCA投与後の異なる時点におけるCHI画像を示した。スケールバーは0.5cmである。(B1)PSMA標的NB及び非標的NBのi.v.投与後のPC3pip同所性腫瘍の時間強度曲線(TIC)。(B2)非標的NB測定値から得られたUSシグナルを使用して、PSMA標的NBからのシグナルを正規化した。正規化したシグナル増強は(強度PSMA標的NB-強度非標的NB)を意味する。(C)腫瘍における標的NBと非標的NBの比較。データは偏差で表される(n=11)。p<0.05 標的NB対非標的NBの比較。
図15図15(A~B)は、PSMA標的NB及び非標的NBが、大きな腫瘍(グループB)におけるそれと比較して、小さな腫瘍(グループA)においてより高い腫瘍増強を提供することを示すプロットを示す。(A)グループA(n=7)及びグループB(n=4)におけるPSMA標的NB及び非標的NBのi.v.投与後の腫瘍の時間強度曲線(TIC)。(B)グループA(n=7)とグループB(n=4)の間のticパラメータ。データを標準偏差として提示する。p<0.05、グループA対グループB。
図16図16(A~B)は、PSMA標的NBが、循環からナノバブルを除去した後に、PSMA陽性PC3pip腫瘍において長期にわたるイメージング及びより大きなUSシグナルを可能にすることを示す画像及びプロットを示す。(A)最初の行は、注射前の腫瘍及び肝臓のBモード画像を示した。第2行は、バブル崩壊前の腫瘍及び肝臓のCHIを示した。第3行は、バブル崩壊後の腫瘍及び肝臓のCHIを示した。スケールバーは0.5cmである。(B)崩壊前後の腫瘍及び肝臓におけるバブルの平均シグナル強度。データは、平均±標準偏差として表され、p<0.05、標的グループ対非標的グループ、n=4。
図17図17(A~B)は、灌流後にPSMA標的NB又は非標的NBで処置した腫瘍におけるCy5.5及びCD31シグナルの組織学的画像を示す。(倍率:20倍)。(A)灌流後の腫瘍におけるCy5.5及びCD31シグナル。PSMA-1標的グループと非標的グループの両方についてN=3。(B1)蛍光比(フィールド当たりの総バブル蛍光/血管蛍光)の定量化。データを平均±標準偏差として提示する。p<0.05、標的グループ対非標的グループ、n=3。(B2)蛍光比(フィールド当たりの総バブル蛍光/細胞蛍光)の定量化。
図18図18は、マウスにPSMA-NBを投与し、共振させる手順の概略を示す。
図19図19は、PSMA-NB及びUSで処置したPSMA陽性腫瘍及びPSMA陰性腫瘍の画像を示す。
図20図20は、USのみ(PSMA-NBなし)で処置したPSMA陽性腫瘍及びPSMA陰性腫瘍の画像を示す。
図21図21は、PSMA-NB及びUSで処置したPSMA陽性腫瘍を示す画像を示す。
図22図22は、PSMA-NB及びUSで処置したPSMA陰性腫瘍を示す画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本願で使用される全ての科学用語及び技術用語は、特に断りのない限り、当技術分野において一般的に使用される意味を有する。本明細書に提供される定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、適用の範囲を制限することを意図したものではない。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「その」は、文脈が特に明確に指示をしない限り、複数形の参照を含む。さらに、用語「1つ(a)」(又は「1つ(an)」)、「1以上」及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」及び「から構築される」もまた、互換的に使用することができる。
【0035】
用語「安定キャビテーション」は、サイズが増大し、爆発することなく振動する傾向を有するナノバブルのガス空隙を指す。ガス空隙は、圧力場にさらされると振動するが、爆発しない。安定したキャビテーションでは、ナノバブルのガス空隙の集合は、整流拡散を生じさせることができる圧力場が存在する限り、比較的安定した方法で動作する傾向がある。
【0036】
用語「慣性キャビテーション」は、通常、ガス空隙の共振周波数で、印加された圧力場によって誘発されるナノバブルのガス空隙の振動及び激しい崩壊を指す。ガス空隙又はナノバブルが細胞内で爆発すると、それらは細胞に対して集中した高圧力を発揮し、細胞小器官、細胞骨格を破壊し、細胞内のタンパク質を変性させ得る。細胞損傷を引き起こすことに加えて、慣性キャビテーションはまた、フリーラジカルを生成し得る。
【0037】
用語「腫瘍性障害」は、異常に増殖する細胞及び/又は組織が存在する対象における疾患状態を指すことができる。腫瘍性障害には、癌、肉腫、腫瘍、白血病、リンパ腫などが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0038】
用語「腫瘍性細胞」は、増加した、制御されない細胞増殖などの異常な細胞増殖を示す細胞を指すことができる。腫瘍性細胞は、過形成細胞、インビトロで増殖させたときに接触阻害の欠如を示す細胞株由来の細胞、腫瘍細胞、又はインビボで転移することができる癌細胞であり得る。あるいは、腫瘍性細胞を「癌細胞」と呼ぶことができる。癌細胞の非限定的な例には、黒色腫、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肉腫、白血病性網膜芽細胞腫、肝腫、骨髄腫、神経膠腫、中皮腫、癌腫、白血病、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前骨髄球性白血病、リンパ芽腫、胸腺腫、リンパ腫細胞、黒色腫細胞、肉腫細胞、白血病細胞、網膜芽細胞腫細胞、肝腫細胞、骨髄腫細胞、グリオーマ細胞、中皮腫細胞、及び癌腫細胞が含まれ得る。
【0039】
用語「腫瘍」は、悪性か良性かにかかわらず、過剰な細胞分裂から生じる異常な細胞塊又は細胞集団、並びに全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指すことができる。
【0040】
疾患(例えば、腫瘍性障害)の「治療すること」又は「治療」という用語は、少なくとも1つの腫瘍性細胞を根絶するための治療プロトコルを実行することを指すことができる。そのため、「治療すること」又は「治療」は、腫瘍性細胞の完全な根絶を必要としない。
【0041】
用語「ポリマー」は、2以上の化学単位の化学結合によって形成される分子を指すことができる。化学単位は、共有結合によって互いに連結されてもよい。ポリマー中の2以上の結合単位は全て同じであり得、その場合には、ポリマーはホモポリマーと呼ばれることがある。化学単位はまた、異なることができ、そのため、ポリマーは、異なる単位の組み合わせであり得る。そのようなポリマーは、コポリマーと呼ばれることがある。
【0042】
用語「対象」は、特定の処置のレシピエントであるとされるヒト及び非ヒト動物(例えば、げっ歯類、節足動物、昆虫、魚類(例えば、ゼブラフィッシュ))、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ類、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類など)を含むがこれらに限定されない任意の動物を指すことができる。
【0043】
本明細書に記載の実施形態は、対象において高度に選択的又は標的化された細胞死を誘導する薬物フリー、低毒性アプローチを提供することができるナノバブル標的療法(TNT)に関する。TNTは、標的細胞の細胞表面分子を標的とし、標的細胞に内部移行するナノバブル(NB)を使用することができる。一旦標的細胞の内部に入るか又は内部移行すると、細胞標的NBを共振させて、ナノバブル特異的超音波パルスを用いて内部移行したNBの慣性キャビテーション及び/又は破壊を促進することができる。標的細胞内で超音波と相互作用するNBの特有の組み合わせは、高度に選択的又は標的化された細胞死につながり得る。TNTは、特異的細胞表面分子を発現する細胞にのみナノバブルの特異的標的化を利用し、次いで、超音波で慣性キャビテーションを誘発する。
【0044】
例として、NBは、高度に選択的なリガンドを介してPSMAに標的化することができる。PSMAレベルは、前立腺癌(PCa)の攻撃性と関連していると報告されているため、PSMAを標的とするNBは、PSMAを発現するか又は攻撃性の腫瘍に対して高度に選択的である(図1)。PSMA標的NBがPCa細胞によって内部移行し、残りのNB(単独で毒性がゼロ)が血流から一掃されると、一連の超音波パルスを使用して、癌細胞内のNBを慣性的にキャビテート又は崩壊させることができる。これにより、正常細胞には手つかずの状態のままで、高度に集中的な癌細胞治療がもたらされる。超音波は多くの癌診断及び生検手順で頻繁に利用されるため、すでに技術に精通している医師も同じ機器とワークフローを適用できるため、コストを削減し、臨床解釈を迅速化できる。
【0045】
図2は、本明細書に記載の実施形態に従って死を誘導する治療又は方法10を示すフローチャートである。癌細胞死又は微生物細胞死などの細胞死を誘導する治療法又は方法10において、ステップ12では、標的によって内部移行することができる複数の細胞標的ナノバブルを対象に投与することができる。
【0046】
細胞標的ナノバブルの各々は、少なくとも1種のガスを含む少なくとも1つの内部空隙を画定する脂質膜などの膜と、脂質膜の外表面に連結された標的化部分とを有することができる。標的部分は標的細胞の細胞表面分子に結合することができ、細胞標的ナノバブルは、標的化部分が細胞表面分子に結合する際に、標的細胞によって内部移行することができる。
【0047】
脂質膜は、既知の超音波圧に対する選択的活性化及び/又はキャビテーションを示すことができる。いくつかの実施形態では、脂質膜を、予測可能な圧力でキャビテーション及びナノバブル崩壊を惹起するように特異的に修飾することができる。これにより、他のナノスケールのガス核生成部位の付随的損傷及び活性化を回避することができる。細胞標的ナノバブルを形成するために使用される脂質膜の組成はまた、キャビテーション閾値を有意に低下させることを可能にする。
【0048】
いくつかの実施形態では、脂質膜は、例えば、複数の脂質、膜の脂質と脂質との間に組み込まれ、ナノバブルの柔軟性を高めるエッジ活性化剤、膜の外表面に組み込まれ、膜の引き裂きに対する耐性を高める膜スティフナー、並びにバブルのシェルの係数及び/又は界面張力を変えるプルロニック(ポロキサマー)、アルコール及びコレステロールなどの他の添加剤を含むことができる。
【0049】
他の実施形態では、ナノバブルの各々は、脂質の親水性頭部によって少なくとも部分的に画定される親水性外側ドメインと、脂質の疎水性テールによって少なくとも部分的に画定される疎水性内側ドメインとを含むことができる。プロピレングリコールなどのエッジ活性化剤は、外側ドメインから内側ドメインまで脂質の間を少なくとも部分的に伸長させることができる。グリセロールは、ナノバブルの外側ドメイン上に提供することができ、脂質の親水性ヘッドの間に部分的に延びる。膜によって封入されるガスは、水(例えば、疎水性ガス)に対する低い溶解度を有し、例えば、パーフルオロプロパン又はパーフルオロブタンなどのパーフルオロカーボン、六フッ化硫黄、二酸化炭素、窒素(N)、酸素(O)、及び空気を含むことができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、細胞標的ナノバブルの各々は、標的化部分の細胞表面分子への結合時に、細胞標的ナノバブルの溢出及び標的細胞による細胞標的ナノバブルの内部移行を促進するサイズを有することができる。例えば、ナノバブルの各々は、ナノバブルを形成するために使用される特定の脂質、エッジ活性化剤、及び膜スティフナー並びに方法(以下でより詳細に記載)に応じて、約30nm~約600nm又は約100nm~約500nm(例えば、約300nm)のサイズ(直径)を有することができる。
【0051】
細胞標的ナノバブルは、ナノバブルのインビボ循環安定性を増強する脂質濃度を有することができる。より高い脂質濃度は、対象への投与時の安定性の増加及びナノバブルのより長い循環と相関することが見出された。いくつかの実施形態では、細胞標的ナノバブルは、少なくとも約2mg/ml、少なくとも約3mg/ml、少なくとも約4mg/ml、少なくとも約5mg/ml、約6mg/ml、少なくとも約7mg/ml、少なくとも約8mg/ml、少なくとも約9mg/ml、少なくとも約10mg/ml、少なくとも約11mg/ml、少なくとも約12mg/ml又はそれ以上の脂質濃度を有することができる。他の実施形態では、細胞標的ナノバブルの脂質濃度は、約5mg/ml~約12mg/ml、約6mg/ml~約12mg/ml、約7mg/ml~約12mg/ml、約8mg/ml~約12mg/ml、約9mg/ml~約12mg/ml、約10mg/ml~約12mg/ml、又は少なくとも約10mg/mlであり得る。
【0052】
膜又はシェルを含む複数の脂質は、一般に両親媒性(amphipathic)又は両親媒性(amphiphilic)である(すなわち、親水性成分及び疎水性成分を含む)任意の天然、合成又は半合成(すなわち、修飾された天然の)部分を含むことができる。膜を形成するために使用され得る任意の1つの又は組み合わせた脂質の例には、1-アルキル-2-アセトイル-sn-グリセロ3-ホスホコリン、及び1-アルキル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ3-ホスホコリンなどのホスホコリン;ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、及びジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)を含む飽和脂質と不飽和脂質の両方を有するホスファチジルコリン;ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)などのホスファチジルエタノールアミン;ホスファチジルセリン;ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)を含むホスファチジルグリセロール;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質;ガングリオシドGM1及びGM2などの糖脂質;グルコ脂質;スルファチド;スフィンゴ糖脂質;ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)及びジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などのホスファチジン酸;パルミチン酸;ステアリン酸;アラキドン酸;オレイン酸;キチン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコール(PEG)などの脂質含有ポリマー;脂質含有スルホン化モノ-、ジ-、オリゴ-又はポリサッカライド;コレステロール、硫酸コレステロール、及びヘミコハク酸コレステロール;ヘミコハク酸トコフェロール;エーテル及びエステル結合脂肪酸を有する脂質;重合脂質(その多種多様なものは当技術分野において周知である);ジアセチルリン酸;ジセチルホスフェート;ステアリルアミン;カルジオリピン;約6~約8個の炭素長の短鎖脂肪酸を有するリン脂質;約10~約16個の炭素長の中鎖脂肪酸を有するリン脂質;約18~約24個の炭素長の長鎖脂肪酸を有するリン脂質;例えば、約6個の炭素の1つのアシル鎖及び約12個の炭素の別のアシル鎖などの不斉アシル鎖を有する合成リン脂質;セラミド;ポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン)脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン)脂肪アルコール、ポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン)脂肪アルコールエーテル、ポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン)ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、TWEEN(ICI Americas,Inc.,Wilmington,DEから市販されている)と称される化合物のクラスなどの)、グリセロールポリエチレングリコールオキシステアレート、グリセロールポリエチレングリコールリシノレート、アルキルオキシル化(例えば、エトキシル化)大豆ステロール、アルキルオキシル化(例えば、エトキシル化)ヒマシ油、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマー、及びポリオキシアルキレン(例えば、ポリオキシエチレン)脂肪酸ステアリン酸塩などのニオソームを含む非イオン性リポソーム;硫酸コレステロール、酪酸コレステロール、イソ酪酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、酢酸ラノステロール、パルミチン酸エルゴステロール、及びn-酪酸フィトステロールを含むステロール脂肪酸エステル;コレステロールグルクロニド、ラノステロールグルクロニド、7-デヒドロコレステロールグルクロニド、エルゴステロールグルクロニド、グルコン酸コレステロール、グルコン酸ラノステロール、及びグルコン酸エルゴステロールを含む糖酸のステロールエステル;ラウリルグルクロニド、ステアロイルグルクロニド、ミリストイルグルクロニド、ラウリルグルコン酸、ミリストイルグルコン酸、及びステアロイルグルコン酸を含む糖酸及びアルコールのエステル;スクロースラウレート、フルクトースラウレート、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、グルクロン酸、グルコン酸及びポリウロン酸を含む糖と脂肪族酸のエステル;サルササポゲニン、スミラゲニン、ヘデラゲニン、オレアノール酸、及びジギトキシゲニンを含むサポニン;グリセリンジラウレート、グリセリントリラウレート、グリセリンジパルミテート、グリセリントリパルミテート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンジミリスチン酸、グリセリントリミリステートを含むグリセリンとグリセリンエステル;n-デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、及びn-オクタデシルアルコールを含む長鎖アルコール;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;ジガラクトシルジグリセリド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシル-1-チオ-α-D-マンノピラノシド;12-(((7’-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチルアミノ)オクタデカン酸;N-[12-(((7’-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチルアミノ)オクタデカノイル]-2-アミノパルミチン酸;コレステリル(4'-トリメチルアンモニオ)ブタノエート;N-スクシニルジオレオイルホスファチジルエタノールアミン;1,2-ジオレオイル-sn-グリセロール;1,2-ジパルミトイル-sn-3-スクシニルグリセロール;1,3-ジパルミトイル-2-スクシニルグリセロール;1-ヘキサデシル-2-パルミトイルグリセロホスホエタノールアミン及びパルミトイルホモシステイン;及び/又はそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、膜を形成するために使用される複数の脂質には、様々なアシル鎖長を有するリン脂質の混合物が含まれ得る。例えば、脂質には、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、又はそれらのPEG官能化脂質のうちの少なくとも2つの混合物が含まれ得る。
【0054】
他の実施形態では、様々なアシル鎖長を有するリン脂質の混合物には、ジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC)と、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、又はそれらのPEG官能化リン脂質からなる群から選択される1以上の追加のリン脂質が含まれ得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、リン脂質の混合物には、重量基準で、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は約80%のジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC);重量基準で、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、又は約20%未満のジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、又はそれらのPEG官能化リン脂質からなる群から選択される追加のリン脂質の組み合わせが含まれ得る。PEGは、約1000~約5000Da、例えば、約2000Daの分子量を有することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、リン脂質の混合物には、重量基準で、約40%~約80%、約50%~約70%、又は約55%~約65%(例えば、約60%)のジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC);及び重量基準で、約20%~約60%、約30%~約50%、又は約35%~約45%(例えば、約40%)のジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドニルホスファチジルコリン(DAPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、又はそれらのPEG官能化リン脂質からなる群から選択される追加のリン脂質の組み合わせが含まれ得る。
【0057】
他の実施形態では、1以上のさらなるリン脂質は、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、及びPEG官能化ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)の組み合わせを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり得る。
【0058】
さらに他の実施形態では、リン脂質の混合物は、例えば、重量基準で約6:1:1:1の比率で、ジベヘノイルグリセロホスホコリン(DBPC)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、及びPEG官能化ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)を含むことができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、各ナノバブルの膜の脂質間に組み込まれ、ナノバブルの柔軟性を増強するエッジ活性化剤は、リン脂質界面活性剤の有効性を増強するプロピレングリコールなどの共界面活性剤を含むことができる。エッジ活性化剤は、ナノバブルの脂質ドメインの分離を引き起こし、脂質「ドメイン」の引き裂きを引き起こした可能性のある過剰な圧力を吸収する欠陥を形成するのに有効な量で、ナノバブルの各々に提供することができる。プロピレングリコールに置換することができるか、又はプロピレングリコールと組み合わせて使用することができる他のエッジ活性化剤は、コレステロール、コール酸ナトリウム、リモネン、オレイン酸、及び/又はスパン80を含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、ナノバブル中に提供されるプロピレングリコールの量は、水和脂質1ml当たり、約0.05ml~約0.5ml、約0.06ml~約0.4ml、約0.07ml~約0.3ml、約0.08ml~約0.2ml、又は約0.1mlであり得る。
【0061】
他の実施形態では、各ナノバブルの膜の外表面に組み込まれ、引き裂きに対する膜耐性を増強する膜スティフナーは、グリセロールを含む。グリセロールは、膜を硬化させ、脂質「ドメイン」引き裂きに対する膜の耐性を改善するのに有効な量で、ナノバブルの各々の膜上に提供することができる。ナノバブルの膜上に提供されるグリセロールの量は、水和脂質1ml当たり、約0.05ml~約0.5ml、約0.06ml~約0.4ml、約0.07ml~約0.3ml、約0.08ml~約0.2ml、又は約0.1mlであり得る。
【0062】
ナノバブルを画定する膜は、同心円状又はそれ以外であり、単層構造(すなわち、1つの単層又は二層で構成される)、オリゴラメラ構造(すなわち、約2つ若しくは約3つの単層又は二層で構成される)、又はマルチラメラ構造(すなわち、約4以上の単層又は二層で構成される)を有することができる。膜は、実質的に固体(均一)、多孔性、または半多孔性であり得る。
【0063】
膜によって画定される内部空隙空間は、少なくとも1種の気体を含むことができる。ガスは、水への溶解度が低い場合があり、例えば、パーフルオロプロパン(例えば、オクタフルオロプロパン)又はパーフルオロブタンなどのパーフルオロカーボンであり得る。内部空隙はまた、二酸化炭素、六フッ化硫黄、空気、窒素(N2)、酸素(O2)、及びヘリウムなどの他のガスを含むことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、ナノバブルは、標的化部分、及び任意に、治療剤を各ナノバブルの膜に連結するリンカーを含むことができる。リンカーは、任意の適切な長さであり得、任意の適切な数の原子及び/又はサブユニットを含有することができる。リンカーは、化学的及び/若しくは生物学的部分の1つ又は組み合わせを含むことができる。化学部分の例には、アルキル基、メチレン炭素鎖、エーテル、ポリエーテル、アルキルアミドリンカー、アルケニル鎖、アルキニル鎖、ジスルフィド基、及びポリ(エチレングリコール)(PEG)、官能化PEG、PEG-キラントポリマー、樹状ポリマー、及びそれらの組み合わせなどのポリマーが含まれ得る。生物学的部分の例には、ペプチド、修飾ペプチド、ストレプトアビジン-ビオチン又はアビジン-ビオチン、ポリアミノ酸(例えば、ポリリジン)、多糖類、グリコサミノグリカン、オリゴヌクレオチド、リン脂質誘導体、及びそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0065】
細胞標的ナノバブルはまた、液体、油、生理活性剤、診断剤、治療剤、光音響剤(例えば、スーダンブラック)、及び/又はナノ粒子(例えば、酸化鉄)などの他の材料を含むことができる。材料は、膜によってカプセル化され、かつ/又は膜に連結若しくはコンジュゲートされ得る。
【0066】
標的化部分は、標的細胞及び/又は組織の細胞表面分子に結合し、ナノバブルを興味のある標的細胞及び/若しくは組織に標的化並びに/又は接着させることができる。いくつかの実施形態では、標的化部分は、細胞表面又は細胞外分子若しくは細胞のバイオマーカーと相互作用することができる任意の分子、又は分子の複合体を含むことができる。細胞表面分子は、例えば、細胞プロテアーゼ、キナーゼ、タンパク質、細胞表面受容体、脂質、及び/又は脂肪酸を含むことができる。
【0067】
特定の実施形態では、標的化部分は、標的細胞の細胞表面分子に特異的に結合する。本明細書で使用される場合、第1の分子は、例えば、約10-1以上の親和性又はKa(すなわち、1/Mの単位での特定の結合相互作用の平衡結合定数)で第2の分子に結合するか、又は第2の分子と会合する場合に、第2の分子に「特異的に結合する」。特定の実施形態では、第1の分子は、約10-1、約10-1、約10-1、約10-1、約1010-1、約1011-1、約1012-1、又は約1013-1以上のKaで第2の分子に結合する。「高親和性」結合は、少なくとも10-1、約10-1、約10-1、約1010-1、約1011-1、約1012-1、約1013-1、又はそれ以上のKaでの結合を指す。あるいは、親和性は、M(例えば、(例えば、10-5M~10-13M、又はそれ以下)の単位での特定の結合相互作用の平衡解離定数(KD)として定義され得る。特定の態様では、特異的結合は、約10-5M以下、約10-6M以下、約10-7M以下、約10-8M以下、約10-9M、10-10M、10-11M、又は10-12M又はそれ以下のKDでの標的分子への結合を意味する。標的に対する第1の分子の結合親和性は、従来の技術を用いて、例えば、競合ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、平衡透析、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIAcore 2000装置、製造業者によって概説された一般的な手順を使用)によって;ラジオイムノアッセイなどにより容易に決定することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、標的化部分には、合成化合物、天然化合物又は生成物、高分子実体、生体工学分子(例えば、ポリペプチド、脂質、ポリヌクレオチド、抗体、抗体断片)、及び小実体(例えば、小分子、神経伝達物質、基質、リガンド、ホルモン及び元素化合物)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0069】
一例において、標的化部分には、Fv断片、単鎖Fv(scFv)断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、単一ドメイン抗体、ラクダ化抗体及び抗体断片、ヒト化抗体及び抗体断片、並びに前述の多価バージョン;一般的には共有結合しているか又はそうでなければ安定化されている(すなわち、ロイシンジッパー又はヘリックス安定化された)scFv断片であるジスルフィドFv断片、scFvタンデム((scFv)2断片)、ダイアボディ、トリボディ又はテトラボディなどの単一特異的又は二重特異性抗体を含むがそれらに限定されない多価標的化部分;及び所望の標的分子と自然に相互作用する受容体分子を含むが、これらに限定されないモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、又はヒト化抗体などの抗体が含まれ得る。
【0070】
抗体の調製は、抗体を生成するための任意の数の周知の方法によって達成され得る。これらの方法は、一般的には、動物、一般的にはマウスの所望の免疫原(例えば、所望の標的分子又はその断片)での免疫化の工程を含む。マウスを免疫し、所望の免疫原(複数可)で1回以上ブーストすると、抗体産生ハイブリドーマを調製し、周知の方法に従ってスクリーニングすることができる。モノクローナル抗体産生の一般的な概要については、例えば、Kuby,Janis,Immunology,第3版,pp.131-139,W.H.Freeman & Co.(1997)を参照されたく、その一部は参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
標的化部分は、生物学的供給源に由来する必要はない。標的化部分は、例えば、合成ペプチドのコンビナトリアルライブラリーからスクリーニングされ得る。そのような方法の1つは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,948,635号に記載されており、これはM13のpIII遺伝子におけるランダムなアミノ酸挿入を有するファージミドライブラリーの生成を説明している。このファージは、親和性選択によってクローン増幅され得る。
【0072】
所望の特異性を有する標的化部分を調製するために使用される免疫原は、一般に、標的分子、又はその断片若しくは誘導体である。そのような免疫原は、それらが天然に存在する供給源から単離されるか、又は当技術分野で公知の方法を用いて合成されてもよい。例えば、ペプチド鎖は、アミンとカルボキシル基の1-エチル-3-[ジメチルアミノプロプリ]カルボジイミド(EDC)触媒縮合によって合成され得る。特定の実施形態では、免疫原は、担体ビーズ又はタンパク質に連結され得る。例えば、担体は、Bachem,King of Prussia,PAから市販されているSASRIN樹脂などの官能化ビーズ、又はキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)若しくはウシ血清アルブミン(BSA)などのタンパク質であり得る。免疫原は、担体に直接結合してもよく、又は非免疫原性合成リンカー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)残基、アミノカプロン酸若しくはその誘導体)又はランダム若しくは半ランダムポリペプチドなどのリンカーを介して担体と結合させてもよい。
【0073】
特定の実施形態では、ポリペプチド標的化部分の結合領域を変異させ、変異していない標的化部分と比較して優れた結合特性を有する標的化部分を選択することが望ましい場合がある。これは、エラーを引き起こす条件下でのTaqポリメラーゼによるPCRなど、任意の標準的な変異誘発技術によって達成され得る。このような場合、PCRプライマーは、変異を引き起こす条件下でファージミドプラスミドのscFvコード配列を増幅するために使用することができる。次いで、PCR産物をファージミドベクターにクローニングし、上記のように所望の特異性についてスクリーニングしてよい。
【0074】
他の実施形態では、標的化部分は、プロテアーゼによる切断に対してより耐性にさせるように改変され得る。例えば、ポリペプチドを含む標的化部分の安定性は、(L)配置中の天然に存在するアミノ酸の1以上をD-アミノ酸で置換することによって増加させてよい。様々な実施形態では、標的化部分のアミノ酸残基の少なくとも1%、5%、10%、20%、50%、80%、90%又は100%がD配置のものであってよい。Lアミノ酸からDアミノ酸への切り替えは、消化管に見られる多くのユビキタスペプチダーゼの消化能力を中和する。あるいは、ペプチド結合を含む標的化部分の安定性の増強は、従来のペプチド結合の修飾の導入によって達成され得る。例えば、ポリペプチド骨格内に環状環を導入すると、胃又は他の消化器官及び血清中でポリペプチドを消化することが知られている多くのタンパク質分解酵素の効果を回避するために、増強された安定性が付与され得る。さらに他の実施形態では、標的化部分の安定性の増強は、標的化部分のアミノ酸間に1以上の右旋性アミノ酸(右旋性フェニルアラニン又は右旋性トリプトファンなど)をインターカレートすることによって達成され得る。例示的な実施形態では、そのような修飾は、所望の標的分子との相互作用の活性又は特異性に影響を与えることなく、標的化部分のプロテアーゼ耐性を増加させる。
【0075】
特定の実施形態では、抗体又はその変異体は、対象に投与されたときにそれらの免疫原性が低くなるように改変され得る。例えば、対象がヒトである場合、抗体は「ヒト化」されてよく、それは、例えば、Jones,P.ら(1986),Nature,321,522-525又はTempestら(1991),Biotechnology,9,266-273に記載されているように、ハイブリドーマ由来抗体の相補性決定領域(複数可)が、ヒトモノクローナル抗体に移植されている。また、トランスジェニックマウス、又は他の哺乳動物を用いて、ヒト化抗体を発現させてもよい。そのようなヒト化は、部分的又は完全であり得る。
【0076】
特定の実施形態では、本明細書に記載の標的化部分は、ナノバブルを標的細胞に選択的に導くホーミングペプチドを含んでもよい。標的細胞に対するホーミングペプチドは、当技術分野で周知の様々な方法を用いて同定することができる。多くの研究室で、脳、腎臓、肺、皮膚、膵臓、腸、子宮、副腎、網膜、筋肉、前立腺、又は腫瘍の血管系の細胞に選択的なホーミングペプチドが同定されている。例えば、Samoylovaら,1999,Muscle Nerve,22:460;Pasqualiniら,1996 Nature,380:364;Koivunenら,1995,Biotechnology,13:265;Pasqualiniら,1995,J.Cell Biol.,130:1189;Pasqualiniら,1996,Mole.Psych.,1:421,423;Rajotteら,1998,J.Clin.Invest.,102:430;Rajotteら,1999,J.Biol.Chem.,274:11593を参照されたい。米国特許第5,622,6999号;同第6,068,829号;同第6,174,687号;同第6,180,084号;同第6,232,287号;同第6,296,832号;同第6,303,573号;及び同第6,306,365も参照されたい。
【0077】
ファージディスプレイ技術は、ランダムペプチド又は選択的にランダム化されたペプチドの多様な集団を発現させるための手段を提供する。ファージディスプレイの様々な方法及びペプチドの多様な集団を生成する方法は、当技術分野において周知である。例えば、ファージの表面上の結合ドメインの多様な集団を調製する方法は、米国特許第5,223,409号に記載されている。特に、ファージディスプレイライブラリーを生成するのに有用なファージベクター、並びに潜在的な結合ドメインを選択し、ランダム又は選択的に変異した結合ドメインを生成する方法も、米国特許第5,223,409号に提供されている。同様に、ベクターを含むファージペプチドディスプレイライブラリーを生成する方法及び発現させるペプチドの集団を多様化する方法も、Smithら,1993,Meth.Enzymol.,217:228-257,Scottら,Science,249:386-390,及び2つのPCT公開WO 91/07141及びWO 91/07149に記載されている。ファージディスプレイ技術は、例えば、ランダムペプチド又はランダム若しくは望ましく偏ったペプチドを生成するために使用することができるコドンベースの変異誘発法と共に使用される場合、特に強力であり得る(例えば、米国特許第5,264,563号を参照)。それら又は他の周知の方法を用いて、ファージディスプレイライブラリーを生成することができ、それを、1つ又は少数の選択された組織に進むペプチドを同定するためにインビボファージディスプレイ法に供することができる。
【0078】
ファージライブラリーのインビトロスクリーニングは、抗体又は細胞表面受容体に結合するペプチドを同定するために以前に使用された(例えば、Smith,ら,1993,Meth.Enzymol.,217:228-257参照)。例えば、ファージペプチドディスプレイライブラリーのインビトロスクリーニングは、インテグリン接着受容体(例えば、Koivunenら,1994,J.Cell Biol.124:373-380参照)、及びヒトウロキナーゼ受容体(Goodsonら,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 91:7129-7133)に特異的に結合する新規ペプチドを同定するために使用されている。
【0079】
特定の実施形態では、標的化部分は、例えば、標的細胞の所望の特異的分子を自然に認識する受容体を含む受容体分子を含み得る。そのような受容体分子には、標的分子との相互作用の特異性を高めるように修飾された受容体、受容体によって自然に認識されない所望の標的分子と相互作用するように修飾された受容体、及びそのような受容体の断片が含まれる(例えば、Skerra,2000,J.Molecular Recognition,13:167-187参照)。好ましい受容体はケモカイン受容体である。例示的なケモカイン受容体は、例えば、Lapidotら,2002,Exp Hematol,30:973-81及びOnufferら,2002,Trends Pharmacol Sci,23:459-67に記載されている。
【0080】
他の実施形態では、標的化部分は、例えば、標的細胞の所望の特異的受容体を自然に認識するリガンドを含むリガンド分子を含み得る。そのようなリガンド分子には、標的受容体との相互作用の特異性を高めるように修飾されたリガンド、リガンドによって自然に認識されない所望の受容体と相互作用するように修飾されたリガンド、及びそのようなリガンドの断片が含まれる。
【0081】
さらに他の実施形態では、標的化部分はアプタマーを含んでよい。アプタマーは、標的細胞の所望の分子構造に特異的に結合するように選択されるオリゴヌクレオチドである。アプタマーは、一般的には、ファージディスプレイの親和性選択(インビトロ分子進化としても知られる)に類似した親和性選択プロセスの産物である。このプロセスでは、例えば、病気の免疫原が結合している固体支持体を使用して、親和性分離のいくつかのタンデム反復を行い、続いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実行して、免疫原に結合した核酸を増幅することを含む。そのため、アフィニティー分離の各ラウンドは、所望の免疫原に首尾よく結合する分子の核酸集団を富化させる。このようにして、核酸のランダムプールを「教育」して、標的分子に特異的に結合するアプタマーを生じさせてよい。アプタマーは、一般的にはRNAであるが、限定されないが、ペプチド核酸(PNA)及びホスホロチオエート核酸などのDNA又はその類似体若しくは誘導体であり得る。
【0082】
さらに他の実施形態では、標的化部分は、ペプチド模倣体であってよい。例えば、他のタンパク質の結合に関与するタンパク質のアミノ酸残基をマッピングするためにスキャニング変異誘発を採用することによって、それらの残基を模倣し、相互作用を促進するペプチド模倣化合物を作製することができる。次いで、そのような模倣体は、ナノバブルを標的細胞に送達するための標的化部分として使用してよい。例えば、そのような残基の非加水分解性ペプチド類似体は、ベンゾジアゼピン(例えば、Freidingerら.ペプチド:化学及び生物学(Peptides:Chemistry and Biology),G.R.Marshall(編),ESCOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988参照)、アゼピン(例えば、Huffmanら ペプチド:化学及び生物学(Peptides:Chemistry and Biology),G.R.Marshall(編),ESCOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988参照)、置換ガンマラクタム環(Garveyら ペプチド:化学及び生物学(Peptides:Chemistry and Biology),G.R.Marshall(編),ESCOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988)、ケトメチレンプソイドペプチド(Ewensonら,1986,J Med Chem 29:295;及びEwensonら,ペプチド:構造及び機能(Peptides:Structure and Function(第9回アメリカペプチドシンポジウム議事録(Proceedings of the 9th American Peptide Symposium)) Pierce Chemical Co. Rockland,Ill.,1985)、b-ターンジペプチドコア(Nagaiら,1985,Tetrahedron Lett 26:647;及びSatoら,1986,J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、並びにβ-アミノアルコール(Gordonら,1985,Biochem Biophys Res Cummun 126:419;及びDannら,1986,Biochem Biophys Res Commun 134:71)を用いて作製することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、標的細胞上の抗原に結合する。関心のある標的細胞には、細胞死を誘導することが望ましい特定の疾患又は状態に関連する細胞が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施形態によれば、標的細胞は、癌細胞、免疫細胞、内皮細胞、又は微生物の原核細胞であり得る。
【0084】
そのようなものとして、いくつかの実施形態では、標的細胞は癌細胞である。「癌細胞」とは、例えば、異常な細胞成長、異常な細胞増殖、密度依存的増殖阻害の喪失、足場非依存性増殖能、免疫不全非ヒト動物モデルにおける腫瘍成長及び/若しくは発達を促進する能力、並びに/又は細胞形質転換の任意の適切な指標のうちの1以上によって特徴付けられ得る、腫瘍性細胞表現型を示す細胞を意味する。「癌細胞」は、本明細書では「腫瘍細胞」、「悪性細胞」又は「癌腫細胞」と互換的に使用されてよく、固形腫瘍、半固形腫瘍、原発腫瘍、転移性腫瘍などの癌細胞を包含する。特定の態様では、癌細胞は癌腫細胞である。
【0085】
いくつかの実施形態では、癌細胞抗原は、5T4、α2β1インテグリン、AXL受容体チロシンキナーゼ(AXL)、B細胞成熟抗原(BCMA)、c-MET(肝細胞増殖因子受容体)、C4.4a、炭酸脱水酵素6(CA6)、炭酸脱水酵素9(CA9)、カドヘリン-6、CD19、CD22、CD25、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD44v6、CD56、CD70、CD74、CD79b、CD123、CD138、癌胚性抗原(CEA)、cKit、コラーゲン受容体、クリプトタンパク質、CS1、デルタ様カノニカルNotchリガンド3(DLL3)、エンドセリン受容体B型(EDNRB)、エフリンA4(EFNA4)、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRvIII、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ3(ENPP3)、EPH受容体A2(EPHA2)、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、葉酸受容体1(FOLR1)、非転移性糖タンパク質B(GPNMB)、グアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ヒト上皮成長因子受容体3(HER3)、インテグリンα、リソソーム関連膜タンパク質1(LAMP-1)、ルイスY、LIV-1、ロイシンリッチリピート含有15(LRRC15)、メソテリン(MSLN)、ムチン1(MUC1)、ムチン16(MUC16)、ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2B(NaPi2b)、ネクチン-4、NMB、NOTCH3、p-カドヘリン(p-CAD)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、プロテインチロシンキナーゼ7(PTK7)、プロテインチロシンホスファターゼμ(PTPμ)溶質担体ファミリー44メンバー4(SLC44A4)、SLIT様ファミリーメンバー6(SLITRK6)、STEAPファミリーメンバー1(STEAP1)、組織因子(TF)、T細胞免疫グロブリン及びムチンタンパク質-1(TIM-1)、又は栄養芽細胞表面抗原(TROP-2)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0086】
標的化部分として使用され得る腫瘍抗原に特異的に結合する抗体の非限定的な例には、アデカツムマブ、アスクリンバクマブ、チクスツムマブ、コナツムマブ、ダラツムマブ、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュルバルマブ、ドゥシギツマブ、エンフォルツマブ、エノチクマブ、フィギツムマブ、ガニツマブ、グレンバツムマブ、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、イクルクマブ、レクサツムマブ、ルカツムマブ、マパツムマブ、ナルナツマブ、ネシツムマブ、ネスバクマブ、オファツムマブ、オララツマブ、パニツムマブ、パトリツマブ、プリツムマブ、ラドレツマブ、ラムシルマブ、リロツムマブ、ロバツムマブ、セリバンツマブ、タレクツマブ、テプロツムマブ、トベツマブ、バンティクツマブ、ベセンクマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、フランボツマブ、アルツモマブ、アナツモマブ、アルチツモマブ(Arcitumomab)、ベクツモマブ、ブリナツモマブ、デツモマブ、イブリツモマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モキセツモマブ、ナプツモマブ、ノフェツモマブ、ペムツモマブ、ピンツモマブ、ラコツモマブ、サツモマブ、ソリトマブ、タプリツモマブ、テナツモマブ、トシツモマブ、トレメリムマブ、アバゴボマブ、イゴボマブ、オレゴボマブ、カプロマブ、エドレコロマブ、ナコロマブ、アマツキシマブ、バビツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、デルロツキシマブ、ジヌツキシマブ、エンシツキシマブ、フツキシマブ、ギレンツキシマブ、インダツキシマブ、イサツキシマブ、マルゲツキシマブ、リツキシマブ、シルツキシマブ、ウブリツキシマブ、エクロメキシマブ、アビツズマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ、ブロンチクツズマブ、カンツズマブ、カンツズマブ、チタツズマブ、クリバツズマブ、ダセツズマブ、デムシズマブ、ダロツズマブ、デニンツズマブ、エロツズマブ、エマクツズマブ、エミベツズマブ、エノブリツズマブ、エタラシズマブ、ファルレツズマブ、フィクラツズマブ、ゲムツズマブ、イムガツズマブ、イノツズマブ、ラベツズマブ、リファスツズマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブ、ルムレツズマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ニモツズマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オトレルツズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブ、パルサツズマブ、ペルツズマブ、ピナツズマブ、ポラツズマブ、シブロツズマブ、シムツズマブ、タカツズマブ、ティガツズマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブ、バンドルツズマブ、バヌシズマブ、ペルツズマブ、ボルセツズマブ、ソチツズマブ(Sotituzumab)、カツマキソマブ、エルツマクソマブ、デパツキシズマブ、オンツキシズマブ、ブロンツベトマブ、タムツベトマブ、又はそれらの腫瘍抗原結合変異体が含まれる。本明細書で使用する「変異体」は、特定の抗原に特異的に結合する(例えば、トラスツズマブに対するHER2)が、親抗体より少ない又はより多いアミノ酸を有する(例えば、親抗体の断片(例えば、scFv)である)抗体、親抗体に対して1以上のアミノ酸置換を有すること抗体、又はそれらの組み合わせを意味する。
【0087】
例として、標的化される細胞が卵巣癌細胞を含む場合、標的化部分は、ヒトCA-125Rに対する抗体又はペプチドを含むことができる。CA-125の過剰発現は、卵巣癌細胞において意義を有する。あるいは、標的化される細胞が膠芽腫などの悪性癌を含む場合、標的化部分は、細胞外成長因子受容体(EGFR)、ヒトトランスフェリン受容体(TfR)、及び/若しくは細胞外切断型PTPmuに対する抗体又はペプチドを含むことができる。EGFR及びTfRの過剰発現並びにPTPmuの細胞外切断は、腫瘍細胞の悪性表現型に関与している。
【0088】
他の標的化部分は、インビボでPSMA発現腫瘍、癌細胞、及び/又は癌血管新生を選択的に認識することができるPSMA標的化部分又はPSMAリガンドを含むことができる。PSMAは、ほとんど全ての前立腺癌(PC)腫瘍で高度に過剰発現(100~1000倍)している膜貫通タンパク質である。原発性PC病変のわずか5~10%がPSMA陰性であることが示されている。PSMA発現レベルは、腫瘍の病期及び悪性度が高いほど増加する。
【0089】
小分子PSMAリガンドは、PSMAの細胞外ドメイン内の活性部位に結合し、内部移行され、エンドソームでリサイクルされ、腫瘍の取り込み及び保持の増強並びに高画質をもたらす。PSMAリガンドの例は、Afshar-Oromieh A、Malcher A、Eder Mらの前立腺癌の診断用の[68Ga]ガリウム標識PSMAリガンドを用いたPETイメージング:ヒトにおける生体分布及び腫瘍の最初の評価(PET imaging with a [68Ga]gallium―labelled PSMA ligand for the diagnosis of prostate cancer:biodistribution in humans and first evaluation of tumor);Weineisen M,Schottelius M,Simecek J.ら 68Ga及び177Lu標識PSMA I&T:PSMA標的化セラノスティック概念の最適化並びに最初の概念実証のヒト研究(68Ga-and 177Lu-Labeled PSMA I&T: Optimization of A PSMA-Targeted Theranostic Concept and First Proof-of-Concept Human Studies) J Nucl Med.2015;56:1169-1176.lesions.Eur J Nucl Med Mol Imaging.2013;40:486-495;Cho SY,Gage KL,Mease RC,ら 前立腺特異的膜抗原の低分子量阻害剤である18F-DCFBCの転移性前立腺癌患者における生体分布、腫瘍検出、及び放射線量測定(Biodistribution,tumor detection,and radiation dosimetry of 18F-DCFBC,a low-molecular-weight inhibitor of prostate-specific membrane antigen,in patients with metastatic prostate cancer) J Nucl Med. 2012;53:1883-1891;及びRowe SP,Gage KL,Faraj SF,ら 原発性前立腺癌のPSMAベースの検出及び特徴付け用の(1)(8)F-DCFBC PET/CT((1)(8)F-DCFBC PET/CT for PSMA-Based Detection and Characterization of Primary Prostate Cancer) J Nucl Med. 2015;56:1003-1010に記載されている。
【0090】
PSMAリガンドの他の例は、米国特許第6,875,886号、米国特許第6,933,114号、及び米国特許第8,609,142号に記載されており、それらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。PSMAリガンドのさらに他の例は、米国特許出願公開第2015/0366968号、米国特許出願公開第2015/0366968号、同第2018/0064831号、同第2018/0369385号及び米国特許第9,889,199号に開示されており、それらの全ては参照によりその全体が組み込まれる。
【0091】
いくつかの実施形態では、PSMAリガンドは、一般式(I):
【化1】
(式中、
n及びnは、各々独立して1、2、3、又は4であり;
Lは、任意に置換された脂肪族又はヘテロ脂肪族連結基であり;
Bは、少なくとも1つの負に荷電したアミノ酸を含むペプチドリンカーなどのリンカーであり;
Yは、Bに直接的若しくは間接的に連結又は結合されたナノバブルの脂質であり、かつ
Zは、水素又はBに直接的若しくは間接的に連結又は結合されている検出可能な部分又は標識又は治療剤のうちの少なくとも1つである)
を有することができる。他の実施形態では、Zは、画像化剤、抗癌剤、又はそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。さらに他の実施形態では、Zは、ローダミン、IRDye700、IRDye800、Cy3、Cy5、及び/又はCy5.5などの蛍光標識である。
【0092】
任意に、細胞標的ナノバブルは、膜によって封入され、かつ/又は膜に連結された治療剤を含むことができる。治療剤の例には、化学療法剤、生物学的に活性のあるリガンド、小分子、DNA断片、DNAプラスミド、siRNAなどの干渉RNA分子、オリゴヌクレオチド、及びshRNAをコードするDNAが含まれ得るが、これらに限定されない。治療剤は、対象における病弊、苦悩、病態、疾患又は傷害の治療(予防、診断、緩和、又は治癒を含む)に使用される任意の治療剤又は予防剤を指すことができる。膜が、追加的に又は任意にタンパク質、炭水化物、ポリマー、界面活性剤、及び/又は他の膜安定化材料を含むことができ、それらの任意の1つ又は組み合わせは、天然、合成、又は半合成であり得ることは理解されよう。
【0093】
いくつかの実施形態では、治療剤は、化学療法剤、抗増殖剤、抗菌剤、殺生物剤、及び/又は制生剤のうちの少なくとも1つであり得る。治療剤は、ナノバブルの膜によって封入及び/又は連結され得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、細胞標的ナノバブルは、少なくとも1つの脂質及び標的化部分に連結された脂質をプロピレングリコールに溶解することによって形成することができる。例えば、PSMA標的ナノバブルは、脂質-プロピレングリコール溶液を生成するために、1,2-ジベヘノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC,Avanti Polar Lipids Inc.,Pelham,AL)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート;DPPA、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-蛍光体エタノールアミン;DPPE(Corden Pharma,Switzerland)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)(DSPE-mPEG 2000、Laysan Lipids,Arab,AL)を、DSPE-PEG-PSMA-1と共にプロピレングリコールに溶解することによって調製することができる。タンパク質、炭水化物、ポリマー、界面活性剤、及び/又は他の膜安定化材料などの他の物質をプロピレングリコールに溶解することができることは理解されよう。
【0095】
脂質プロピレングリコール溶液を生成した後、グリセロール及びリン酸緩衝溶液(PBS)溶液を脂質プロピレングリコール溶液に添加することができ、得られた溶液を、例えば超音波処理により混合することができる。混合溶液をバイアルに移すことができる。空気は、水和脂質溶液を含む密封されたバイアルから除去して、バイアルの圧力が均等になるまで、オクタフルオロプロパンなどのガスで置き換えることができる。次いで、得られた溶液は、ナノバブルを形成するのに十分な時間(例えば、約45秒)、振盪又は撹拌することができる。一例では、プロピレングリコールに溶解したDBPC/DPPA/DPPE/DSPE-PEG-PSMA-1を含む脂質-プロピレングリコール溶液を、水和PBS/グリセロール溶液と接触させ、バイアルに入れ、次いで、約37℃及び約120rpmでインキュベーターシェーカーに約60分間入れることができる。いくつかの実施形態では、ナノバブルを含む得られた溶液は、凍結乾燥して、貯蔵及び出荷のために再構成されるか、又は凍結され、使用前に解凍することができる。
【0096】
そのように形成された細胞標的ナノバブルは、静脈内注射などを介して任意の既知の経路を介して対象に投与することができる。例として、複数のオクタフルオロプロパン含有ナノバブルを含む組成物を、腫瘍を有することが知られているか又は疑われる対象に静脈内投与することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、ナノバブルは、固形腫瘍、例えば、固形癌腫、肉腫若しくはリンパ腫、及び/又は腫瘍性細胞の集合体などの腫瘍性疾患を治療するために対象に投与される。腫瘍は、悪性又は良性であり得、癌性細胞と前癌性細胞の両方を含むことができる。
【0098】
細胞標的ナノバブルを含む組成物は、少なくとも1つの腫瘍性障害と診断された対象への投与(例えば、注射)用に製剤化することができる。例えば、細胞標的ナノバブルは、これが前立腺癌細胞上で過剰発現しているPSMA抗原に特異的であるPSMAリガンドをコンジュゲートすることによって前立腺癌細胞に標的化され得る。細胞標的ナノバブルは、PEGにコンジュゲートされた少なくとも1つの脂質で製剤化することができる。次いで、ナノバブルをPSMAリガンドと組み合わせることができ、次いで、これは脂質のPEGにコンジュゲートするようになる。
【0099】
ナノバブル組成物が対象に投与される場所(複数可)は、腫瘍性細胞の場所(例えば、腫瘍の位置、腫瘍の大きさ、及び特定の器官上若しくはその近くの腫瘍の場所)などの、対象の個々の必要性に基づいて決定され得る。例えば、該組成物は、対象に静脈内注射され得る。例えば、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内経路を含む他の注射経路が使用され得ることは理解されよう。
【0100】
対象に投与された細胞標的ナノバブルは、対象内を循環し、標的化部分を標的細胞の細胞表面分子と結合及び/又は複合化することによって、標的細胞と結合及び/又は複合体形成することができる。一般的には、細胞標的ナノバブルは、約10分以内、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、又は約1時間若しくはそれ以内で標的細胞と結合及び/又は複合体形成することができる。
【0101】
細胞標的ナノバブルが標的細胞に結合及び/又は複合化されると、細胞標的ナノバブルのサイズ及び/又は直径は、ナノバブルが、例えばエンドサイトーシス及び/又は貪食作用によって内部移行するか、又は標的細胞に入ることを可能にする。細胞標的ナノバブルは、標的細胞内に蓄積し、長期間、例えば、少なくとも1時間、2時間、3時間、又はそれ以上の間、細胞内にとどまることができる。
【0102】
再び図1及び図2を参照すると、細胞標的ナノバブルの標的細胞への内部移行に続いて、方法10の工程14において、内部移行ナノバブルを、所与の周波数の超音波エネルギー、音圧、及び内部移行ナノバブルの激しい周期的変動、振動、及び急速な体積崩壊及び/又は慣性キャビテーションを促進するのに有効な時間共振させ、標的細胞のアポトーシス及び/又は壊死をもたらすことができる。
【0103】
内部移行ナノバブルの共振は、慣性キャビテーションを促進するのに有効な超音波エネルギーを生成する非侵襲的、低侵襲的、及び/又は外部の超音波源を使用することによって達成することができる。印加された超音波シグナルの強度及び周波数、並びに超音波源を活性化するためのデューティーサイクル及びパターンは、所与の用途に合わせて制御可能であり、構成される。ナノバブルのダイナミクスを監視し、慣性崩壊のシグネチャを治療パラメータと相関させることは、作用機序に関するさらなる洞察を得るための戦略と、臨床転帰を改善するための治療内モニタリングを提供する。
【0104】
超音波源は、正常な細胞及び組織を混乱させ、かつ/又は悪影響を及ぼすことなく、ナノバブル崩壊を促進することができる特異的音響シーケンスを提供することができる。これらの配列は、非集束トランスデューサから適用することができ、これは、薬物送達及びヒストトリプシーなどの超音波治療に使用される典型的な集束超音波トランスデューサとは異なる。非集束超音波の使用は、例えば、容易に視覚化することができないため、それ上で集束超音波を使用することができない肝臓又は骨における広範囲の癌微小転移のような病変を治療することを可能にさせる。集束トランスデューサも特定の用途に使用できることは理解されよう。
【0105】
いくつかの実施形態では、共振は、約1%~約50%、約1%~約40%、約1%~約30%、約1%~約25%、約1%~約20%、約1%~約15%、又は約5%~約15%のデューティーサイクル、約1MHz~約50MHz、約1MHz~約40MHz、約1MHz~約30MHz、約1MHz~約20MHz、約1MHz~約15MHz、又は約1MHz~約10MHzの超音波周波数、約0.1W/cm~約10W/cm、約0.1W/cm~約9W/cm、約0.1W/cm~約8W/cm、約0.1W/cm~約7W/cm、約0.1W/cm~約6W/cm、約0.1W/cm~約5W/cm、約0.1W/cm~約4W/cm、又は約1W/cm~約4W/cmの強度、約50kPa~約1MPa、約50kPa~約900KPa、約50kPa~約800KPa、約50kPa~約750KPa、約100kPa~約750KPa、又は約150kPa~約750KPaの圧力振幅、及び約1分~約30分、約1分~約25分、約1分~約20分、約1分~約15分、約1分~約10分、又は約1分~約5分の時間であり得る。
【0106】
他の実施形態では、共振は、ナノバブルが投与される組織に送られる異なる圧力振幅のパルスを有する2つの超音波パルスシーケンスを含むことができ、一方のパルスは、他方のパルスよりも大きい圧力振幅を有する。例えば、一方のパルスは、他方のパルスの少なくとも2倍の圧力振幅を有することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、1つのパルスは慣性キャビテーションのためのナノバブル圧力閾値を下回り、続くもう1つのパルスは、慣性キャビテーションのための閾値の圧力閾値を上回る。例えば、圧力閾値が200kPaのナノバブルの場合、最初のパルスは150kPaで、続くもう1つのパルスが250kPaである。別の例では、500kPaの圧力閾値を有するナノバブルの場合、1つのパルスは300kPaであり、第2のパルスは600kPaである。
【0108】
他の実施形態では、最大慣性キャビテーションを誘導するために、全体のパルス長は、典型的なイメージングパルス(3~6サイクル)よりも長く(10~30サイクル)てもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、超音波源を含むシステムは、超音波源(送信機)と、受動キャビテーション検出及びモニタリング音響センサ(受信機)の両方を備えてもよい。音響センサは、複数の素子のアレイ内のトランスデューサ素子として送信超音波源に一体化されるか、又は超音波源及び標的領域に対して適切に配置されるハイドロフォンなどのスタンドアロンセンサとして実装されてもよい。単に発生源周波数で反射超音波シグナルを検出する代わりに、このシステムは、標的細胞を選択的に蓄積する細胞標的ナノバブルの崩壊から生じる慣性キャビテーションシグナルの検出に依存し得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療及び/又は方法は、それを必要とする対象における癌を治療するために使用することができる。そのような方法には、複数の癌細胞標的ナノバブルを対象に投与することが含まれる。癌細胞標的ナノバブルの各々は、少なくとも1種のガスを含む少なくとも1つの内部空隙を画定する脂質膜と、脂質膜の外表面に連結された標的化部分とを有することができる。標的化部分は、標的癌細胞の癌細胞表面分子に結合することができる。癌細胞標的ナノバブルは、標的化部分を癌細胞表面分子に結合する際に標的癌細胞によるナノバブルの内部移行を促進するサイズ及び/又は直径を有することができる。対象への癌細胞標的ナノバブルの投与及び癌細胞標的ナノバブルの癌細胞への内部移行に続いて、内部移行ナノバブルは、内部移行ナノバブルの慣性キャビテーション並びに標的癌細胞のアポトーシス及び/又は壊死を促進するのに有効な超音波エネルギーで共振され得る。
【0111】
特定の実施形態では、対象は、固形腫瘍、半固形腫瘍、原発性腫瘍、転移性腫瘍、液体腫瘍(例えば、白血病又はリンパ腫)などの存在によって特徴付けられる癌を有する。本明細書に記載の方法を用いて治療することができる癌には、成人及び小児の急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌腫、エイズ関連癌、肛門癌、虫垂の癌、星状細胞腫、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、胆道癌、骨肉腫、線維性組織球腫、脳癌、脳幹グリオーマ、小脳星状細胞腫、悪性神経膠腫、膠芽腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視床下部神経膠島、乳癌、男性乳癌、気管支腺腫、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、出所不明の癌腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、悪性神経膠腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性及び骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外生殖細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、消化管間質腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、グリオーマ、有毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、視床下部及び視覚経路グリオーマ、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、腎細胞癌、喉頭癌、唇及び口腔癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、原発性中枢神経系リンパ腫、ウォルデンストローム・マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、扁平上皮癌、多発性内分泌腫瘍性症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性障害、慢性骨髄増殖性障害、鼻腔及び副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、中咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、非黒色腫皮膚癌、小腸癌、扁平上皮癌、扁平上皮頸部癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌、栄養膜腫瘍、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、絨毛癌、血液腫瘍、成人T細胞白血病、リンパ腫、リンパ球性リンパ腫、間質腫瘍及び生殖細胞腫瘍、又はウィルムス腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、癌は、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、脳及び中枢神経系癌、皮膚癌、卵巣癌、白血病、子宮内膜癌、骨、軟骨及び軟部組織肉腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、腎芽細胞腫、網膜芽細胞腫、又は生殖腺胚細胞腫瘍である。
【0112】
いくつかの実施形態では、対象は、乳癌、膠芽腫、神経芽細胞腫、頭頸部癌、胃癌、卵巣癌、皮膚癌(例えば、基底細胞癌、黒色腫など)、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、神経膠腫、膀胱癌、子宮内膜癌、腎臓癌、白血病(例えば、T細胞リンパ芽球性白血病(T-ALL)、急性骨髄性白血病(AML)など)、肝癌(例えば、肝細胞癌(HCC)、原発性又は再発HCCなど)、B細胞悪性腫瘍(例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫など)、膵臓癌、甲状腺癌、それらの任意の組み合わせ、及びそれらの任意のサブタイプから選択される癌を有する。
【0113】
本明細書に記載の癌細胞標的ナノバブルを含む医薬組成物は、治療有効量で対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、癌細胞標的ナノバブルの治療有効量は、1以上の用量で、単独で(例えば、単独療法において)又は1以上の追加の治療剤と組み合わせて(例えば、併用療法)投与された場合に、コンジュゲートによる治療の非存在下での個体における症状と比較して、個体における病理学的状態(例えば、癌)の症状を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又はそれ以上軽減するのに有効な量である。いくつかの実施形態によれば、対象が癌を有する場合、本明細書に記載の方法は、癌細胞標的ナノバブルが有効量で投与された場合に、癌のアポトーシス及び/又は壊死を促進する。
【0114】
投薬は、治療されるべき状態(例えば、癌)の重症度及び応答性に依存する。最適な投薬スケジュールは、個体の体内における薬物蓄積の測定から計算することができる。投与医師は、最適な投与量、投与方法及び繰り返し率を決定することができる。最適投与量は、個々の薬剤の相対効力に応じて変更してよく、一般に、インビトロ及びインビボ動物モデルにおいて有効であることが見出されたEC50などに基づいて推定することができる。一般に、投与量は、毎日、毎週、毎月、又は毎年1回以上与えられ得る。治療する医師は、測定された滞留時間及び体液又は組織中のコンジュゲートの濃度に基づいて、投薬の繰り返し率を推定することができる。治療の成功後に、疾患状態の再発を予防するための維持療法を対象に受けさせることが望ましい場合があり、その療法では、細胞標的ナノバブルは、維持用量で1日1回以上、数ヶ月に1回、6ヶ月に1回、年に1回、又は他の任意の適切な頻度で投与することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、薬物、及び/又は化学療法剤(例えば、ドキソルビシン)などの治療剤をナノバブル形成中にナノバブルに装填し、薬物を装填した細胞標的ナノバブルを提供することもできる。薬物を装填した細胞標的ナノバブルは、ナノバブルから治療薬を放出する超音波エネルギーに応答して、ナノバブルを対象に投与することができる。都合の良いことに、化学療法剤(例えば、ドキソルビシン)などの治療剤の遠隔放出を可能にする細胞標的ナノバブルは、対象への全身投与(例えば、静脈内、血管内、又は動脈内注射)によって腫瘍、癌、及び転移などの対象の特異的細胞若しくは組織を標的とするか又は標的化され、そしてもう一度、対象の標的細胞又は組織(例えば、腫瘍、癌、及び転移)を特異的に治療するために、遠隔放出される細胞又は組織に標的化することができる。標的化、ナノバブルの慣性キャビテーション、及び悪性癌転移に対する化学療法剤の選択的放出は、化学療法剤を用いるそのような転移の治療を可能にし、本明細書に記載のナノバブルを用いて標的化及び遠隔放出されなければ、特に無視できる程度の作用を提供する。
【0116】
細胞標的ナノバブルは、上述の治療剤及び治療法のいずれかの組み合わせが低用量で、すなわち、臨床状況において従来使用されてきた量よりも低い用量での投与を可能にすることができる。
【0117】
対象に投与される併用治療剤及び治療法の用量を低下させる利点は、より高い投与量と関連付けられる有害作用の発生の減少を含む。例えば、ドキソルビシンなどの化学療法剤の投与量を低下させることにより、吐き気及び嘔吐の頻度及び重症度の低下は、より高い投与量で観察されるものと比較したときに生じるであろう。ナノバブルと組み合わせた化合物、組成物、薬剤及び治療法についても同様の利点が企図される。
【0118】
有害作用の発生率を低下させることによって、癌の治療を受けている患者の生活の質の改善が企図される。有害作用の発生率を低下させるさらなる利点には、患者のコンプライアンスの改善、有害作用の治療に必要な入院数の減少、及び有害作用と関連付けられる疼痛を治療するために必要な鎮痛剤の投与の減少が含まれる。
【0119】
本明細書に記載の細胞標的ナノバブル及び方法は、上記の診断、治療、及びセラノスティックな用途以外の他の用途において使用することができることが理解されよう。例えば、細胞標的ナノバブルは、細菌及び真菌などの微生物の細胞を標的とし、ナノバブルの慣性キャビテーションを促進し、対象における感染症、及び特に抗菌剤に耐性のある感染症を治療するために、細胞の内部移行時に共振させることができる。都合の良いことに、細胞標的ナノバブルはまた、微生物を死滅させる殺生物剤及び/又は生物静止剤、並びに単にそれらの成長又は蓄積を阻害する薬剤を送達することができる。
【0120】
以下の実施例は、例示のみを目的としており、本明細書に添付されている特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0121】
実施例1
この実施例では、腫瘍体積全体にわたる高周波超音波によるPSMA標的NB分布の動態を調査し、腫瘍縁及び腫瘍コアにおける造影剤動態の違いを調べた。この実施例はまた、3次元(3D)USイメージングを用いて全腫瘍塊内のPSMA-NBの溢出及び蓄積をさらに示す。
【0122】
本発明者らは以前、PSMAへの能動的標的化が、保持が延長したインタクトなPSMA-NBの腫瘍取り込みを増強し、それが、臨床的非線形超音波で視覚化することができる25分以上の腫瘍における長期のUSシグナル増強をもたらすことを示した。延長した腫瘍増強の1つの仮説は、PSMA標的NBが標的癌細胞に内部移行して、内部移行がオクタフルオロプロパンガス溶解を遅らせることである。
【0123】
これらの実施例はまた、インビトロ細胞モデルを用いて、PSMA-NBの受容体媒介性エンドサイトーシスがそれらの音響活性及び細胞内持続性に及ぼす効果を示す。細胞レベルでのPSMA-NBの相互作用のメカニズムを解明することは、PCaの診断及び治療用途におけるPSMA-NBの臨床解釈への新しい道を提供することができる。
【0124】
実験の節/方法
NB製剤と特性評価
PSMA-1リガンドで官能化した脂質殻安定化C NBを、以前に報告されたように製剤化した。簡単に説明すると、DBPC、DPPE、DPPA、mPEG-DSPE、及びDSPE-PEG-PSMA-1を含む脂質のカクテルをプロピレングリコール、グリセロール及びPBSに溶解した。これに続いて、Cとのガス交換を行い、機械的撹拌、及び遠心分離を行い、その後NBを分離した。PSMA-NB及びNBを、前述のように特徴付けた。
【0125】
動物モデル
動物を、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の施設動物管理・使用委員会(IACUC)によって承認されたプロトコルに従って取り扱い、動物の使用に関して適用可能な全てのプロトコル及びガイドラインに従った。雄の胸腺欠損ヌードマウス(4~6週齢)を1L/分の酸素と共に3%イソフルランの吸入で麻酔し、100μLのマトリゲル中1×10のPSMA陰性PC3flu及びPSMA陽性PC3pip細胞を皮下移植した。腫瘍の直径が約8~10mmに達するまで、動物を1日おきに観察した。
【0126】
バブル動態解析のためのインビボNLCイメージング
インビボ実験を、FUJIFILM VisualSonic Vevo 3100を用いて行った。合計9匹の動物を実験に使用した。動物を、PSMA-NB、NB及びLumason MBグループの3つの群に分けた。インビボバブル分布を、2D非線形コントラストモードで画像化した。希釈されていないPSMA-NB又はNBのいずれかの全量200μlを、尾静脈を介して注射した。ウォッシュインバブル動態を取得するために、腫瘍を5fpsで約3分間スキャンした。スキャンパラメータは、MS250トランスデューサを用いて18MHzの周波数、4%の送信電力、30dBのコントラストゲイン、ミディアムビーム幅、40dBのダイナミックレンジに設定した。次いで、3D USスキャンをピークシグナルで実施し、続いて非線形コントラストイメージングを完了して、イメージングセッション中に上記のパラメータを維持しながら、約16分間、1fps及び1000フレームでのウォッシュアウト位相の動態を調べた。
【0127】
3D超音波による腫瘍全体のイメージング
超音波3D腫瘍イメージングを、Vevo 3100(FUJIFILM, Visual Sonics)スキャナーを用いて行った。トランスデューサを3Dモーター上にクリップで留め、腫瘍領域に配置した。プローブのX-Y軸位置を調整することにより、イメージングディスプレイとして腫瘍の中心にプローブを配置した。3Dセットアップは、383フレームで0.05mmサイズの厚さ2Dスライスを作成するように整えた。画像を取得して、腫瘍全体にバブルの分布を達成するための3D体積を取得するように一緒に構築した。動物を、PSMA-NB、NB及びLumasonMBグループの3つのグループに分けた。希釈していないPSMA-NB又はNBのいずれかの全量200μlを、尾静脈を介して注射した。ウォッシュインバブル動態を取得するために、上記と同じパラメータで、5fpsで約3分間腫瘍をスキャンした。次いで、3Dスキャンを適用して、腫瘍全体のバブル分布をピークコントラストシグナルで可視化した。バブルをUSスキャンなしで自由に循環させた後、3Dスキャンを注射後、再び25分間行った。腫瘍に溢出及び蓄積したインタクトなバブルを確認するために、3D崩壊シーケンスを腫瘍全体に適用し、再スキャンして、3D画像を得た。
【0128】
3D超音波による腫瘍の溢出研究
血管外試験のために、動物をPSMA-NB、NNB、及びLumasonの3つのグループに分け、各グループに3匹の動物(合計n=9)を使用した。200μlの造影剤を、尾静脈を介して注射した。マウスを、前述のように注射後25分間、3D USスキャンに供した。次いで、左心室を介して50mlのPBSで心臓灌流を行い、3D USスキャンを再び完了して、灌流腫瘍に蓄積したインタクトなバブルから生じたUSシグナルを検出した。
【0129】
組織分析
動物を、Cy5.5-PSMA-NB(n=3)、Cy5.5-NB(n=3)、及び非コントラスト対照の3つのグループに分けた。Cy5.5標識NBを、脂質溶液にDSPE-PEG-Cy5.5(100μl)を混合することによって調製した。マウスに、尾静脈を介して希釈していない200μlのUCA又はPBSのいずれかを投与した。注射後25分の時点で、USを用いて動物をスキャンして、シグナルを検出し、次いで、左心室を介して50mlのPBSでPBS灌流を行った。次いで、腫瘍を再びスキャンして、インタクト-NBから発生するUSシグナルを感知した。腫瘍及び腎臓を摘出し、パラホルムアルデヒドで固定して、最適切断温度化合物(OCT Sakura Finetek USA Inc.,Torrance,CA)に包埋した。組織を8μmスライスに切断し、PBSで洗浄(3回)し、0.5%TritonX-100(Fisher Scientific,Hampton,NH)を含むタンパク質ブロッキング溶液でインキュベートし、1:250希釈した一次抗体CD31(PECAM-1)モノクローナル抗体(Fisher Scientific,Hampton,NH)中で、4℃で24時間インキュベートした。次いで、PBSで洗浄し、Alexa-568タグ付き二次抗体(Fisher Scientific,Hampton,NH)と1時間インキュベートして、DAPI(Vector Laboratories,Burlingame,CA)で染色した。蛍光画像を取得し、Axio Vision V4.8.1.0,Carl Zeissソフトウェア(Thornwood,NY)を用いて(セグメンテーションと閾値の相互作用関数によって)分析した。PSMA免疫組織化学については、組織をPBSで3回洗浄し、ブロッキング溶液とインキュベートした後、1:150希釈したPSMA一次抗体(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)と4℃で24時間インキュベートし、CD31染色と同様に上記の工程を行った。
【0130】
造影剤の調製と特性評価
NBの調製及び特性評価は他の場所で報告されている。簡単に説明すると、DBPC(Avanti Polar Lipids Inc.,Pelham,AL)、DPPE、DPPA(Corden Pharma,Switzerland)、及びmPEG-DSPE2000(Laysan Lipids,Arab,AL)を含む脂質のカクテルをプロピレングリコール(PG,Sigma Aldrich,Milwaukee,WI)、グリセロール及びPBSに溶解した。次いで、ガスをC(Electronic Fluorocarbons,LLC,PA)と交換し、バイアルを機械的攪拌に供した。NBを遠心分離によって分離した。DSPE-PEG-PSMA-1を脂質カクテル混合物に組み込むことによって、PSMA標的NBを製剤化した。PSMA-NB及びNBを前述のように特徴付けた。
【0131】
細胞培養研究
レトロウイルス形質転換PSMA陽性PC3pip細胞及びPC3flu細胞(トランスフェクション対照)は、もともと、Michel Sadelain博士(Memorial-Sloan Kettering Cancer Center,New York,NY)から入手した。細胞株をチェックし、ウェスタンブロットにより認証した。完全RPMI1640培地(Invitrogen Life Technology,Grand Island,NY)中で、37℃及び5%CO環境で細胞を増殖させた。
【0132】
細胞取り込み研究
PC3pipとPC3flu細胞の両方(2×10細胞/ml)を、細胞培養ペトリ皿(60×15mm、Fisher Scientific)に約70%のコンフルエントで播種した。24時間後、細胞をPSMA-NB又はプレーンNB(約10,000バブル/細胞)と1時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄(3回)し、USスキャン時点まで37℃のRPMIで維持した。USスキャン細胞をトリプシン処理する前に、計数し、1×10細胞を用いた。
【0133】
インビトロでPC3pip細胞に内部移行したPSMA標的NBの音響評価
NB内部移行した細胞のインビトロ音響活性を、臨床USスキャナー(AplioXG SSA-790A,Toshiba Medical,現在のHitachi Healthcare America)を用いて評価した。測定を行うために、細胞(約2×10)を洗浄し、トリプシンを用いて剥離した。PBS中での剥離及び再懸濁の後、細胞懸濁液をカスタムメイドの1.5%(w/v)アガロースファントムに入れた [31] 。ファントムを、12MHzのリニアアレイトランスデューサに取り付け、0.1メカニカルインデックス(MI)、65ダイナミックレンジ、70dBゲイン、及び0.2フレーム/秒のイメージングフレームレートで、コントラストハーモニックイメージング(CHI)を用いて画像を取得した。搭載ソフトウェアを使用して、全ての試料にて関心領域(ROI)分析を実施し、各ROIの平均シグナル強度を測定した。次いで、データをさらに処理するためにマイクロソフトのエクセルにエクスポートした。実験は3連で行った。
【0134】
PSMA-NBに内部移行したPC3pip細胞の共焦点イメージング
PC3pip細胞を、ガラス底ペトリ皿(MetTek Corporation,Ashland,MA,USA)に10細胞/ウェルの密度で播種した。DSPE-ローダミン(50 l)を脂質溶液に混合することによって、ローダミン標識NBを調製した。24時間後、1:10希釈したローダミンタグ付きPSMA-NB(250μL)を細胞に1時間添加した。インキュベーション後に、細胞をPBSで洗浄し、次いで、RPMI中で、インキュベーターに3時間及び24時間置いた。3時間の時点を選択したのは、PSMA-NB内部移行PC3pip細胞で3時間時点の標準誤差が低く、有意に高い音響活性が以前に観察されたためである。インキュベーション終了の1時間前に、後期エンドソーム及びリソソームのマーカーである5μMのリソトラッカーレッド(ThermoFisher Scientific)24μLを、製造業者の指示に従って細胞に添加した。インキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで10分間固定した。細胞をPBSで洗浄し、DAPIマウント培地(Vecor Laboratories,Burlingame,CA)で染色した。次いで、適切なフィルターセットを備えた蛍光顕微鏡(Leica DMI 4000B,Wetzlar,Germany)を用いて細胞を観察した。リソトラッカーレッドは緑色蛍光(励起:577nm、発光:590nm)を示す。
【0135】
細胞内に閉じ込められたオクタフルオロプロパンガスのGC/MSを用いた分析
細胞内のオクタフルオロプロパン(C)ガスの存在を、前述のようにヘッドスペースガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)によって確認した。これらの実験では、細胞(1×10細胞/mL)を細胞培養フラスコ(75cmサイズ)で24時間増殖させた。再び、上記のように、細胞を1mLのPSMA-NB又はプレーンNB(約10000NB/細胞)のいずれかと1時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、培地中で3時間インキュベートした。インキュベーション後に、細胞をトリプシン処理し、PBSに再懸濁し、1000rpmで4分間遠心分離した。次いで、細胞を300μLの培地及び300μLの細胞溶解緩衝液を含むGCヘッドスペースバイアルに移し、PTFE/シリコンのセプタムで密封し、キャップした(Thermos Fisher Scientific)。Cガスをヘッドスペースバイアルに放出するために、50℃で超音波水浴(Branson Ultrasonics,Danbury,CT)で20分間バイアルを超音波処理した。GC/MS分析を、Agilent 7890BガスクロマトグラフGC/MSシステムを備えたAgilent 5977B-MSD搭載質量分析計を用いて前述のように実施した。DB5-MSキャピラリーカラム(30m×0.25mm×0.25μm)を1.5mL/分のヘリウムフローで使用した。1μLのヘッドスペース試料を1:10分割で注射した。使用したガスクロマトグラフィー条件は、以下のとおりであった:オーブン温度を60℃、1分間保持し、120℃まで40℃/分で傾斜をつけ、3.5分間保持した。パーフルオロプロパンを1.2分で溶出した。試料を、電子衝撃イオン化(EI)を用いて選択イオンモニタリング(SIM)モードで分析した。169(M-19)のM/zを、全ての分析で使用した。イオン滞留時間を10msに設定した。パーフルオロプロパンを、NIST MSスペクトルデータベースにより検証した。標準校正プロットを、NB濃度の関数としてGCピークのピーク面積を測定することによって得た(0~100×10NB/mL)。
【0136】
内部移行バブルのインビボUSイメージング
動物を、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の施設動物管理・使用委員会(IACUC)によって承認されたプロトコルに従って取り扱い、動物の使用に関して適用可能な全てのプロトコル及びガイドラインに従った。PC3pip細胞をPSMA-NBとインキュベートし、上記のように処理した。マウス(n=9、体重20gの4~6週齢の胸腺欠損(NCR nu/nu)マウス)を無作為に3つのグループに分け、1L/分の酸素と共に3%イソフルランの吸入で麻酔した。ベースラインUSシグナルを、0.1及び0.5の機械的指数(MI)で上記のパラメータを用いて、側腹部領域(永久マーカーでマークした)の左側と右側の両方で得た。PSMA-NBとのインキュベーション後、PC3pip細胞をマトリゲルとPBSの混合物(1:1のPBS/マトリゲル)に懸濁し、細胞懸濁液(100μL)をヌードマウスの側腹部に皮下注射した。対照として、NB曝露のない細胞をNB曝露細胞に隣接して注射した(図7A)。注射部位のUS画像を、注射直後又は3時間、24時間若しくは8日後にMI=0.1で上記と同じパラメータを用いて取得した。0.1 MIでのイメージング後、MI値を0.5に増加させ、全ての時点について領域を再度イメージングした。関心領域(ROI)を、皮膚を除く注射した細胞領域の周囲に描画した。次いで、各ROIの平均シグナル強度をCHIQソフトウェアから取得した。これらの測定値をエクセルにエクスポートし、各ROIにおけるシグナル増強からベースライン値(接種前のコントラスト)を差し引いた。
【0137】
結果
ナノバブル特性評価
ナノバブル調製物、PSMA-1リガンドによる官能化及び脂質リガンドコンジュゲーションの検証は、以前に報告されている。共鳴質量測定(RMM)によって特徴付けられたNB及びPSMA-NBの直径は、それぞれ281□2nm及び277□11nmであった。NB特性評価で使用するためのRMM分析とその最適化の検証は、以前に記載されている。重要なことに、結果は、平均サイズ及び濃度が官能化後に著しく変化しなかったことを示している(NB及びPSMA-NBの濃度は、それぞれ4E11□2.45E10及び3.9E11□2.82E10NB/mlであった)。
【0138】
腫瘍の縁及びコアにおける超音波シグナル
インビボ実験を、FUJIFILM VisualSonic Vevo 3100を用いて行った。合計9匹の腫瘍担持マウスを実験に使用した。動物を、PSMA-NB、NB及びLumasonMBグループの3つのグループに分けた。希釈していないPSMA-NB又はNBのいずれかの全量200μLを、尾静脈を介して注射した後に、2D非線形コントラストモードでインビボバブル分布を画像化した。図4Aは、超音波スキャンプロセスのタイムラインの模式図を示す。ベースラインスキャンを、バブル注射前に非線形コントラストモードと3Dモードの両方で行った。ウォッシュインバブル動態を取得するために、毎秒5フレーム(fps)で約3分間腫瘍をスキャンした。図4B、C、D。図4Eは、5fpsでの最初の1000フレームと1fpsでの2回目のスキャンの1000フレームで取得した腫瘍の縁とコアに対応するTIC曲線を示す。フレームレートを5fpsから1fpsに変更する前に、腫瘍塊全体におけるバブル分布を観察するために3D USスキャンを行った。
【0139】
PSMA-NB又はプレーンNBのいずれかで画像化した腫瘍において、迅速なシグナル増強がほぼ観察され、注射後1~2分でピーク強度に達した。PSMA-NB及びNBについて腫瘍全体のピーク増強(PE)に有意差はなく、これは標的バブルと非標的バブルが同様の形態を示す指標であった。バブル動態パラメータの変動性を、腫瘍の縁とコアを別々に分析することによってさらに調査した。腫瘍コアと区別するために、ループROIを腫瘍縁に別々に描画した(図4)。図4Eに示すように、注射直後、PSMA-NB及びプレーンNBは腫瘍縁を急速に満たした。対照的に、PSMA-NBは、腫瘍縁と比較して腫瘍コアへのより遅いウォッシュインを示した。動態パラメータを計算し、表1にまとめた。PSMA-NBの腫瘍コアについてのピークまでの時間(TTP)は、プレーンNBのそれよりも有意に大きかった(2.48□0.71分対1.21□0.15分、P<0.05)。しかし、PSMA-NB及びNBに対する腫瘍縁についてのピークまでの時間(TTP)は著しく異ならなかった。両グループとも、曲線下ウォッシュイン面積(WiAUC)に有意差はなかった。さらに、NBとPSMA-NBの両方を有する腫瘍縁についてのピーク増強(PE)は著しく異ならなかった。また、NBとPSMA-NBの両方を有する腫瘍コアについてのPEも著しく異ならなかった。両方のバブルについての比較可能なWiAUC及びPEは同様の動態を示した。しかし、腫瘍の縁及びコアについてのPEは、両方のNBグループについて有意に異なっていた(表1)。
【0140】
表1-時間強度曲線(TIC)から得られた腫瘍の縁及びコアの動態パラメータのまとめ
【表1】
全ての値は、平均 s.d.として表され、,各グループにおける統計的有意差;p<0.05。
【0141】
さらに、NB蓄積量を、市販のMB造影剤Lumasonと比較した。コントラストの増強はLumasonで急速に起こり(TTPは、縁については0.84□0.06分、コアについては0.77□0.11分)、両方の種類のNBのそれとは有意に異なっていた。さらに、LumasonのPEとWiAUCは、2つのNBグループと比較して有意に低かった。ピーク増強後、USシグナルは、PSMA-NBグループとNBグループの両方で時間とともに減衰した(図4E)。PSMA-NBを有する腫瘍縁のウォッシュアウトAUCは、NBグループのそれと比較して有意に高かった(表1)。同様に、PSMA-NBとNBを用いた腫瘍コアについてのAUCのウォッシュアウトも有意に異なる。さらに、腫瘍の縁及びコアについてのウォッシュアウトAUCは、両グループについて有意に異なっていた。重要なことに、バブル研究に使用した非線形コントラストイメージングパラメータは一定に保たれ、Lumasonを画像化するために使用した送信周波数は、この薬剤に対して一般的に利用される場合よりも高かった。これにより、検出感度が低下し、その後のシグナル増強が低下する可能性がある。しかし、相対造影剤動態は、比較的影響を受けないはずである。
【0142】
各腫瘍の縁とコアとの間のNB動態で観察される大きな差異は、血管新生に起因する腫瘍の縁とコアにおける血管分布の不一致に起因する可能性がある。血管新生は、腫瘍の発生及び進行における重要な工程の1つであり、既存の血管からの新しい毛細血管の形成に寄与するとともに、必須栄養素及び酸素を腫瘍に供給することによって腫瘍の成長及び転移を促進する。また、腫瘍塊におけるPSMAバイオマーカー分布も、腫瘍における標的バブル蓄積に重要な役割を果たしている。さらに、PSMA発現が新生血管系内皮細胞に存在することが報告されている。TTPの違いについての1つの仮定は、造影剤の流れを制御するバイオマーカーの存在である。PSMA標的NBは、腫瘍内のバイオマーカーに結合し、流速を遅くする傾向がある。したがって、PSMA-NBで腫瘍を充填するのに要する時間は、自由に流れるNBと比較して遅い。ピークシグナルに達した後、両方の種類のNBのコントラストは、腫瘍の縁とコアの両方で減少し始める。しかし、PSMA-NBのウォッシュアウトAUCはNBのそれよりも有意に高く、腫瘍における標的NBの保持が高いことを示した。NBシグナルの減少は、おそらく腫瘍間質圧(TIP)による腫瘍縁及び腫瘍マトリックスからのNBの消失によるものであった。異常な血管形成に加えて、腫瘍組織では正常組織と比較してリンパドレナージの不良が悪化しており、TIPが薬物及びナノ粒子送達を妨げる。PSMA標的NBのPSMAバイオマーカーへの結合により、TIPによる除去は、PSMA-NBについては最小限に抑えられ得る。
【0143】
3D超音波による腫瘍全体のイメージング
腫瘍塊全体におけるバブル分布をより良く理解するために、3D非線形コントラストUSを、2Dイメージングの延長としてPSMA-NB、NB、及びLumasonMBの投与後に実施した。腫瘍の0.05mmサイズの2D US画像スライスを一緒に構築し、腫瘍全体のバブル分布を得た。非線形コントラストスキャン後に、3D USを行い、腫瘍塊全体のピークにおけるコントラストシグナルを得た(図5)。3D解析は、イメージングボリューム内の非線形シグナルを示すボクセルの割合を計算する。2Dスキャンと一致して、3D解析はPSMA-NBとNBの両方についてピーク時に同様のシグナルを示した(図5BとC)。3分で、PSMA-NBとNBの両方が腫瘍縁の約90%をカバーした(それぞれ86.9±0.8%及び87.7±6.6%、p=0.6)。同様に、PSMA-NB及びNBは、腫瘍コアの約60%(それぞれ64.9±14.5%及び62.4±28.1%)に検出された。腫瘍縁内で検出されたLumasonの薬剤の割合は、PSMA-NB及びNBと比較して有意に低かった。3分で、Lumasonは腫瘍縁の10%(5.7±2.1%)に検出された。
【0144】
興味深いことに、腫瘍を連続非線形超音波(3D取得後16分間の1fps)で画像化した場合、PSMA-NBグループとNBグループとの間に薬剤カバレッジの有意差は認められなかった。また、腫瘍全体におけるPSMA-NBとNBシグナルの比率は、2Dスキャンによる以前の観察と比較して低かった。発明者らは、腫瘍組織内に固定したNBのUSへの継続的な曝露が、急速なバブル溶解をもたらした可能性があると推測している。この仮説を検証するために、NB、PSMA-NB又はLumasonをマウスに注射するが、その後、US曝露なしで30分間循環させたままにする別の一連の実験を行った。これらの実験において、PSMA-NBは、NBとLumasonの両方と比較して、腫瘍コアにおける非線形シグナルの割合が有意に高いことを示した(それぞれ25.2±1.5%、13.9±5.1%、及び0.4±0.4%、p<0.05)。シグナルの割合は、崩壊シーケンスを適用した後に約12%に有意に低下し、腫瘍内に蓄積したインタクトなバブルの破壊が確認された(データ示さず)。3D腫瘍解析によると、PSMA-NBも、NBと比較して腫瘍縁に多く蓄積したが、その差は統計的に有意ではなかった(それぞれ54.2±4.8%、38.7±14.4%)。
【0145】
3D超音波による腫瘍の溢出研究
インタクトな形態の腫瘍体積全体におけるNBの溢出及び蓄積を調べるために、心臓穿刺による全血灌流を注射後25分の時点で実施し、心臓穿刺前後に3D USスキャンを完了した(図6A)。全血灌流は、血管系内の血液を排除し、腫瘍血管系から自由に動くナノバブルを含むあらゆる物質を除去する。灌流後、腫瘍内の3D USシグナルは、腫瘍実質全体又は細胞内空間に残っている物質に対応する。灌流前の、注射後25分の時点で、腫瘍縁におけるPSMA-NBの割合はNBのそれよりも1.4倍高かった(図6B、C;46.8□21.3対33.2□25.4%、p=0.2)。腫瘍コアにおけるPSMA-NBの割合は、NBのそれよりも4.1倍高かった(37.7□20.1%対18.9□18.7%)。灌流後、USシグナルの百分率は両グループで低下した。PSMA-NB及びNBの百分率は、ピーク値と比較して、腫瘍縁においてそれぞれ67%及び92%低下した(それぞれ15.0□7.21%対2.45□3.4%)。さらに、灌流後、PSMA-NBは、NBのそれと比較して腫瘍コアにおいて有意に低下した(それぞれ12.2□2.3%及び3.2□2.2%)(p<0.05)。NBと比較して腫瘍コアにおけるPSMA-NBの有意により高い(約4倍の)3D USシグナルは、腫瘍コア環境におけるPSMA-NBの比較的高い蓄積及び溢出を示す。心臓灌流後のUSコントラストの存在は、腫瘍実質におけるインタクトなNBの蓄積及び溢出の証拠を提供した。予想通り、Lumasonの百分率は、注射後25分の時点及び灌流後に、腫瘍の縁とコアの両方において無視できるほど小さくなった。
【0146】
組織学的解析
USデータを確認するために、Cy5.5-PSMA-NB又はCY5.5-NBを腫瘍組織に注射した後に組織学的解析を進めた。PSMA発現、CD31発現、及びPSMA-NB及びNB分布を腫瘍の縁及びコアにおいて別々に評価した。注射前に、バブルを蛍光色素;Cy5.5でタグ付けした。溢出研究に記載されるように、注射後25分の時点で3D USスキャンを行い、次いで、動物を心臓穿刺によってPBSで灌流した。灌流後、上述のように腫瘍を3Dで再スキャンし、組織学的解析のために腫瘍を摘出した。腫瘍のコア及び縁を別々に画像化し、解析した。血管系を代表するCD31は、腫瘍コアと比較して腫瘍縁においてより高い百分率を示した。PSMA発現はまた、腫瘍コアと比較して腫瘍縁においても高かったが、有意差はなかった。Cy5.5-PSMA-NBシグナルは腫瘍内でより均等に分布し、標的NBが血管系から遊走し、腫瘍マトリックスに蓄積した証拠を提供した。組織学的シグナルの定量化は、腫瘍コアと縁の両方におけるCy5.5-PSMA-NBシグナルが、プレーンNBのシグナルと比較して有意に高かった(3倍)ことを明らかにする(p<0.001)(図7)。造影剤と腫瘍マトリックスの相互作用の増強は、溢出後のPSMA-NBの高い蓄積を説明する。
【0147】
インビトロでのPC3pip細胞におけるPSMA標的NBの持続性
この研究では、音響活性の持続性に対するナノバブル超音波造影剤の細胞内部移行の影響を調査した。具体的には、PSMA発現ヒト前立腺癌細胞におけるPSMA標的NBの受動的細胞取り込み対受容体媒介性エンドサイトーシスの効果を比較した。発明者らはまず、PSMA標的NB又は非標的NBと1時間インキュベーションした後のPSMA陽性PC3pipとPSMA陰性PC3flu細胞の両方の非線形音響特性の動態を調べた。図8に示すように、1時間のインキュベーション後、PSMA-NBとインキュベートしたPC3pip細胞は、プレーンNBインキュベートPC3pip細胞と比較して3.25倍高い音響活性を示した(図8;P<0.05;それぞれ9.69±対1.78dB対2.19±1.22dB)であり、他の全てのグループ(PC3pip細胞内のNB、PC3flu細胞内のPSMA-NB及びPC3flu細胞内のプレーンNB)及び陰性対照(細胞のみ)と比較してより高いシグナル強度を示した。さらに、内部移行したPSMA-NBの有意により高い音響活性は、48時間の時点を除いて試験した全ての時点について持続した(図8)。24時間後、PSMA-NBに曝露したPC3pip細胞は、他の全てのグループと比較して有意により高いUSシグナル強度(4.11±0.68dB;P<0.005)を示した。同じ条件下であるが細胞を含めずにインキュベートしたPSMA-NBは、PC3pip細胞とインキュベートしたPSMA-NBに匹敵する初期シグナル強度を示した。しかし、3時間の時点以降、PSMA-NBのみのグループのシグナル強度は、PC3pip細胞に内部移行したPSMA-NBと比較して有意により低く、細胞環境において遊離PSMA-NBよりも内部移行したPSMA-NBの高い安定性が示された。
【0148】
以前の研究では、内皮前駆細胞(EPC)上の遺伝子操作した細胞表面マーカーへのマイクロバブル(MB)の標的化を検討し、インビトロでEPCへの選択的結合を実証し、CEUで画像化することができた。また、内部移行したMB又は膜結合MBのいずれかが、遊離MBと比較して細胞によるはるかに大きな粘性減衰によって保護されることも以前に示されている。これらの知見と一致して、発明者らは、内部移行したNBが同じ条件下で遊離NBと比較して長期間にわたって有意により高い後方散乱を示すことも観察した。さらに、後の時点で、PC3pip細胞におけるPSMA-NBは、PC3pip又はPC3flu細胞のいずれかとインキュベートしたプレーンNB及びPSMA-NB陰性PC3flu細胞とインキュベートしたPSMA-NBよりも高いコントラストを示した。細胞によるNBの非特異的取り込みは、NBからのシグナル崩壊速度をわずかに低下させる。しかし、エンドソーム内に局在するPSMA-NBについては、はるかにより遅い崩壊が観察された。そのため、発明者らは、細胞におけるPSMA-NBの長期生存は、エンドソーム/リソソーム封入による安定化によるものである可能性があると仮定する。
【0149】
PC3pip細胞におけるPSMA-NB内部移行の共焦点イメージング
PSMAは細胞膜受容体として機能し、標的化剤に結合されているペイロードと共にPSMA標的化リガンドを内部移行させる。PSMAリガンドが細胞膜上のバイオマーカーに結合すると、細胞膜が陥入し、粒子全体が細胞に飲み込まれる。細胞内の内部移行したPSMA-NBの局在を、蛍光色素リソトラッカーレッドを用いた共焦点顕微鏡イメージングで調査した。リソトラッカーレッド染色は、後期エンドソーム及びリソソーム構造を染色する。
【0150】
発明者らの以前の蛍光イメージングデータは、PSMA標的NBがPC3pip細胞によって選択的に内部移行することを示した。ここでの共焦点イメージング結果は、PC3pip細胞によるPSMA-NBの内部移行、より具体的には受容体媒介性エンドサイトーシスを示す(図9、100倍、図18、40倍)。リソトラッカーレッド(緑)染色した後期エンドソーム/リソソーム及びローダミン標識PSMA-NB(赤色)の実質的な共局在が、全てのPSMA発現細胞において認められた。図9Aに示すように、プレーンNBはPC3pip細胞による非特異的取り込みをいくぶんか示したが、後期エンドソーム/リソソームの共局在化は限られていた。PC3pip細胞による非標的NBの取り込みは、PSMA-NBの取り込みと比較して実質的により低かった。また、PSMA-NBと後期エンドソーム/リソソーム小胞とのより高い程度の共局在化を図9B及びCに示した。
【0151】
バブル曝露後24時間の時点でのPC3pip細胞のイメージングは、以前の時点と比較してより低い蛍光シグナル量を明らかにした(図8D)。しかし、これらの画像はまた、後期エンドソーム/リソソーム小胞におけるPSMA-NBの高い程度の共局在を示した。24時間後に、NBインキュベート細胞の細胞質又は後期エンドソーム/リソソーム区画において蛍光シグナルが非常に低いか、又は全く現れなかった。さらに、画像は核付近に黄色の染色を示したことから、PSMA-NBの大部分が後期エンドソーム又はリソソームのいずれかと共局在して、細胞質に輸送されることが示唆された。
【0152】
PC3pip細胞を標的NBとインキュベートした場合に、非標的NBと比較して、より多量のリソトラッカー染色が観察され、これは、受容体に媒介され、後期エンドソーム/リソソーム経路に入る内部移行のメカニズムと相関する。PSMAは特有の内部移行モチーフを有し、2時間でその表面PSMAの60%の堅牢なベースライン内部移行率を有することが報告されている。膜貫通位置と内部移行により、PSMAはイメージングと治療に理想的な標的となる。全体として、PSMA媒介性エンドサイトーシスは、PSMA発現前立腺癌PC3pip細胞におけるPSMA標的ナノバブルの内部移行のための主要経路であると思われる。
【0153】
ヘッドスペースGC/MSを用いた細胞内のC の分析
インタクトなガス含有ナノバブルがPC3pip細胞内に内部移行し、PC3pip細胞内に留まることを確認するために、PSMA-NB又はNBへの曝露後3時間の時点で細胞を取集し、細胞内のCの存在をヘッドスペースGC/MSを用いて分析した。NBにおけるCガス濃度を定量するためにヘッドスペースGC/MSを使用することは、以前に報告され、検証された。Cに対応する169の質量電荷比(m/z)で観察されたピークの相対存在量を用いて分析を行った。異なる濃度のNBを使用して、GC/MSによる較正プロットを作成した(図10A及びB)。ピーク面積とバブル数との間に線形関係が観察された。GC/MSデータは、PSMA-NBインキュベートPC3pip細胞から得たピーク面積が、プレーンNBインキュベートPC3pip細胞懸濁液のそれと比較して3.5倍高い値を示したことを示した(図9C;PSMA-NB、NB、及び細胞のピーク面積は、それぞれ16778(a.u)、6274(a.u)、及び2172(a.u)であった。検量線に基づくと、これは細胞当たり約500の平均サイズのPSMA-NB対138の平均サイズのプレーンNBに相当する。発明者らの知る限りでは、これは細胞内のガス小胞の存在を確認するための絶対的に最も直接的な方法である。ピーク面積の比は、図10に示すように、細胞からの音響活性の差と一致している。それはまた、循環NBのクリアランス後のPC3pip腫瘍におけるPSMA-NB対プレーンNB蓄積から見られる超音波シグナルの差と著しく類似しており、インビボで標的NBが溢出し、インタクトな形態で腫瘍内に保持されることを示すデータを支持する。
【0154】
PSMA-NB内部移行した細胞のインビボ適用
細胞内保持の延長がインビボでも可視化できることを確認するために、発明者らは、マウスへの注射時に細胞内の内部移行バブルの音響活性を研究した。PSMA-NBとインキュベートしたPC3pip細胞をヌードマウスの側腹部領域に皮下注射し、12MHzで画像化した。対照として、NBに曝露しない細胞を標識細胞注射領域に隣接して注射した。図11Aは、細胞注射後0~24時間及び8日の時点で得たUS画像を示す。NBインキュベート細胞は、注射直後の非標識細胞と比較して有意に高いコントラストを示した(9.7±2.9、5.2±1.5:P<0.05)。対照細胞から見られる初期シグナルは、マトリゲルに閉じ込められた空気バブルの結果である可能性が最も高い。3時間後及び24時間後に、対照細胞と比較してNBインキュベート細胞を有する領域におけるコントラストは依然として有意に高かった(図11B)。
【0155】
PC3pip細胞における内部移行したPSMA-NBは、主に細胞内小胞と共局在し、インビトロでのインキュベーション後48時間、及びインビボで1週間、実質的な後方散乱活性を示した。発明者らの知る限りでは、この研究は、PSMA標的NBの取り込みと癌細胞における長期保持の直接的な証拠を初めて示し、NB音響活性の安定化におけるエンドソーム/リソソームの重要な役割を実証する。
【0156】
この実施例は、PSMAに対するNBの能動的標的化が、2D非線形コントラストモードと3D USモードの両方におけるPSMA発現腫瘍内での溢出及び蓄積を増加させることを実証した。データは、腫瘍のウォッシュインとPSMA-NBの保持の両方が、バイオマーカーの相互作用及び結合により遅延することを示した。腫瘍コアにおけるPSMA-NBシグナルのより長い保持はまた、標的化促進型バブル溢出をさらに支持する。さらに、インビトロ研究から、PSMAに対するNBの能動的標的化が、PSMA陽性PC3pip細胞における細胞内部移行を選択的に増強することが示唆された。USはPC3pip細胞において内部移行したPSMA-NBを検出することができ、おそらくエンドソーム小胞への封入により、内部移行したPSMA-NBは細胞環境において長期の安定性を示した。GC/MS分析はさらに、内部移行後の細胞におけるインタクトなNB持続性を確認する。この研究知見は、バイオマーカー発現腫瘍における標的ナノバブルの長期音響活性を示す先行研究を支持し、超音波を用いた新しい分子イメージング及び標的療法アプローチへの扉を開く。
【0157】
実施例2
この実施例では、ヌードマウスにおけるより臨床的に関連する同所性前立腺腫瘍モデルを用いて、インビボでのPCaのUSイメージングのためにPSMA標的NBを調査する(図12)。NB増強超音波の堅牢な性質を考慮して、発明者らはこの技術を用いて、同じモデルにおける腫瘍の進行及びサイズに対するPSMA標的化効率の効果も調べた。これは、標的超音波NBに関する関連研究のための方法を提供し得る。
【0158】
材料と方法
PSMA標的NB及び非標的NBの調製
PSMA標的NB(10mg/mL)は、1,2-ジベヘノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C22、Avanti Polar Lipids Inc.,Pelham,AL)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート(DPPA、Corden Pharma,Switzerland)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE、コーデンファーマ、スイス)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)(DSPE-mPEG 2000、Laysan Lipids,Arab,AL)を含む脂質の混合物を最初プロピレングリコール(0.1mL、Sigma Aldrich,Milwaukee,WI)に溶解し、全ての脂質が溶解するまで80℃で加熱及び超音波処理することによって以前に報告されたとおりに調製した。80℃に予熱したグリセロール(0.1mL,Acros Organics)とリン酸緩衝生理食塩水(0.8mL,Gibco,pH7.4)の混合物を脂質溶液に添加した。生じた溶液を室温で10分間超音波処理した。DSPE-mPEG-PSMA(1mg/mLのPBS中に25μL)を添加した。溶液を3mLのヘッドスペースバイアルに移し、ゴムセプタム及びアルミニウムシールで蓋をし、バイアルクリンパーで密封した。空気を30mLのシリンジを用いて手動で除去し、オクタフルオロプロパン(C、Electronic Fluorocarbons,LLC,PA)ガスを注射することによって置換した。次いで、リン脂質溶液を、45秒間のVialMixシェーカー(Bristol-Myers Squibb Medical Imaging Inc.,N.Billerica,MA)による機械的振盪によって活性化した。PSMA標的NBを、ヘッドスペースバイアルを反転させた状態で、50rcfで5分間遠心分離することにより、泡とマイクロバブルの混合物から分離し、次いで、200μLのPSMA標的NB溶液を、21G針で底部から5mmの固定距離から抜き出した。同様の調製を、DSPE-mPEG-PSMAを添加しなで、非標的NBについて行った。
【0159】
NBのサイズ、濃度、及び表面電荷
PSMA標的NB及び非標的NBのサイズ分布及び濃度を、50~2000nmの粒径を測定できるナノセンサ搭載の共鳴質量測定(ARCHIMEDES,Malvern Panalytical)で特徴づけた。許容可能な検出限界(<0.01Hz)を得るために、NB溶液をPBS(500×)で希釈し、2psiで120秒間ロードし、(500X)で分析して、Anton Paar Litesizer 500で測定した。
【0160】
動物モデル
動物を、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の施設動物管理・使用委員会(IACUC)によって承認されたプロトコルに従って取り扱い、動物の使用に関して適用可能な全てのプロトコル及びガイドラインに従った。4~6週齢の雄の胸腺欠損Balb/cヌードマウスをケース・ウェスタン・リザーブ大学動物研究センターから購入し、承認済み動物資源センターの小動物イメージングセンターに収容した。全ての動物に標準的なケアをした:食物と水への自由なアクセス;12/12の明暗サイクル;種に適切な温度と湿度;可能な限りの環境の豊かさとグループ収容;標準的なケージ消毒;及びソリッドボトムケージ。マウスを、0.5~1L/分の酸素と共に1~2%イソフルランの吸入で麻酔した。28 1/2ゲージのインスリン針を腹側前立腺に挿入し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)に懸濁したPSMA(+)PC3pip細胞10μLを送達した。注射した前立腺葉内の十分に局在化した小疱は、注射が技術的に満足のいくものであった印である。腫瘍が直径約3~5mmに達するまで、動物を1日おきに観察し、次いで、イメージング研究に使用した。
【0161】
薬物動態試験
動物を、腫瘍直径が3~5mmに達した接種後10日目に研究に使用した。NBの薬物動態は、超音波プローブPLT-1204BTを用いてAPLIXG SSA-790A Toshiba Medical Imaging Systems(Otawara-Shi,Japan)によって監視した。マウスを0.5~1L/分の酸素と共に1~2%イソフルランで麻酔した後、各マウスを仰向けに位置付け、超音波プローブ(PLT-1204BT)を動物の体の軸に対して縦方向に位置づけ、PC3pip同所性腫瘍の超音波画像を可視化した。コントラスト増強超音波画像を同じマウスの同じ腫瘍(n=11)と比較するために、PSMA標的NB(3.9±0.282X1011/mL)又は非標的NB(4.0±0.245X1011/mL)のいずれか200μLを、尾静脈を介して投与した。NB注射前に、5秒間の生データ形式で画像を取得した。NB注射後に、組織コントラスト密度の変化を画像化するために、コントラストハーモニックイメージング(CHI)を使用した(CHI、周波数12.0 MHz;MI,0.1;ダイナミックレンジ、65dB;ゲイン、70dB;イメージングフレームレート、0.2フレーム/秒)。マウスを30分間連続して画像化した。残りのNBを、フラッシュ補充を繰り返して崩壊させ、次いで30分後に、同じマウスに非標的NB又はPSMA標的NBを投与した。LUMASON(200μL、1~5X108/mL、六フッ化硫黄脂質型Aミクロスフェア、Bracco Diagnostics Inc.)を他の3匹のマウスで試験した。LUMASONを、製造業者によって提供されるプロトコルに従って調製した。生データは、スキャナーの製造元が提供するソフトウェアで処理した。取得した線形生データ画像をCHI-Q定量ソフトウェア(Toshiba Medical Imaging Systems,Otawara-Shi,Japan)で処理した。関心領域(ROI)の腫瘍及び肝臓の領域の輪郭を描いた。時間の関数としての各ROIのシグナル強度(時間-強度曲線-TIC)を計算し、エクセルにエクスポートした。超音波コントラストの減衰を分析するために、ベースラインをTICから差し引いた。
【0162】
バブル崩壊研究
マウスに、尾静脈注射を介して200μLのNB(3.9±0.282X1011/mL)を投与した。造影剤注射の5分後、同じ視野の中の腫瘍と肝臓を含む4つの異なる平面で画像を撮影し、次いで、肝臓平面から心臓面までの異なる位置で25回フラッシュし、循環中に残っている全てのNBを崩壊させた。その後、コントラストモードイメージングを用いて、同じ視野の中の腫瘍と肝臓を含む4つの異なる平面で再び画像を撮影した。平均強度をImage Jによって分析した。この実験を、PC3pip同所性腫瘍を担持する4匹のヌードマウスにおいて繰り返した。
【0163】
組織学的解析
動物を3つのグループ:PSMA-NB(n=3)、プレーン-NB(n=3)、及び非コントラスト対照(n=3)に分けた。方法は発明者らの以前の研究と同じであった。マウスに、200μLの造影剤又はPBS単独のいずれかを尾静脈を介して投与した。造影剤注射の10分後に、左心室を介して50mLのPBSでPBS灌流を行った。灌流後、腫瘍及び肝臓を摘出し、最適な切断温度化合物(OCT Sakura Finetek USA Inc.,Torrance,CA)に包埋した。組織を9μmのスライスに切断し、次いで、CD31染色を行い、腫瘍血管を可視化した。簡単に説明すると、組織をPBSで3回洗浄し、0.5%Triton X-100(Fisher Scientific,Hampton,NH)を含むタンパク質ブロッキング溶液とインキュベートした。次いで、組織を1:250希釈したCD31の一次抗体(Fisher Scientific,Hampton,NH)中で、4℃で24時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、組織をAlexa 568タグ付き二次抗体(Fisher Scientific,Hampton,NH)と1時間インキュベートし、標準的な技術を用いてDAPI(Vecor Laboratories,Burlingame,CA)で染色した。次いで、蛍光画像をLeica DM4000B蛍光顕微鏡(Leica Microsystem Inc,Buffalo Grove,IL)で観察し、次いで、Image Jで解析した。
【0164】
結果
PSMA標的NB及びLUMASONを用いた同所性前立腺腫瘍のコントラスト増強超音波イメージング
PSMA標的NB(200μLの3.9±0.282X1011/mLのPSMA標的NB)(n=11)又はLUMASON(200μLの1~5X108/mLのLUMASON MB)(n=3)の尾静脈注射後に、コントラストハーモニックイメージング(CHI)画像を連続的に取得し(受信周波数12MHz)、腫瘍及び肝臓におけるバブルの動態を決定した。使用したLUMASON用量、PSMA標的NB用量、及びイメージングパラメータは、以前の研究で最適化した。これらの研究における非線形コントラストイメージングパラメータは、LUMASON(3MHz)のために臨床的で一般的に使用されるものよりも高い周波数を利用したことは注目に値する。これらは、LUMASONの動態パラメータには影響しないが、全体的な画質に影響を与える可能性がある。CHIモードでは、PSMA標的NB又はLUMASONのいずれかの注射前に腫瘍及び肝臓は見えなかった(図13A)。急速な増強が、NB注射の約15~30秒後に始まり、最初に肝臓で観察され、続いて腫瘍で観察された。UCA動態パラメータ(図13C)を、時間強度曲線から得た(TIC)(図13B1、B2)。これらには、ピークまでの時間、ピーク強度、ハーフタイム、ウォッシュアウト面積及び曲線下面積(AUC)が含まれる。これらのパラメータを、腫瘍と肝臓の両方におけるPSMA標的NBとLUMASONとの間で比較した。LUMASONグループのグループサイズは比較的小さかったが、この試験で用いたイメージングパラメータにおけるLUMASONグループとPSMA標的NBグループとの差は大きく、両グループ間で統計的有意差が認められた。これはまた、以前に出版された文献とも一致している。結果から、ピークまでの時間、ピーク強度、ハーフタイム、ウォッシュアウト及びAUCの面積が、腫瘍内のPSMA標的NBとLUMASONとで有意に(p<0.05)異なり、最後の4つのパラメータは肝臓のPSMA標的NBとLUMASONで有意に(p<0.05)異なることが示された。上記の全ては、血流中のLUMASON MBよりも発明者らのPSMA標的NBの方がより高い安定性とより長い循環時間を示した。
【0165】
LUMASONグループにおける腫瘍サイズは、280~520mmであり、NBグループの腫瘍サイズは90~1100mmであった。LUMASONとPSMA標的NBの差が腫瘍サイズの結果ではないことを確実にするために、発明者らは、PSMA標的NBグループを腫瘍サイズに基づいて2つのグループ:腫瘍体積が90~670mmのグループA(小さな腫瘍)と、腫瘍体積が670~1100mmのグループB(大きな腫瘍)に分け、LUMASONグループをこれら2つのグループと別々に比較した。それにもかかわらず、グループAとグループBの両方のパラメータは、LUMASONグループのパラメータと有意に異なっていた。発明者らの結果から、LUMASONのより低いピーク増強が腫瘍サイズと関係がないことを確認された。
【0166】
PSMA標的NB及び非標的NBを用いた造影剤動態及び同所性前立腺腫瘍の比較
前立腺腫瘍に対するPSMA標的NBの選択的イメージング能を評価するために、非標的NBを比較として使用した。両方のバブル製剤を用いたUSスキャンを同一条件下で実施し、PC3pip同所性腫瘍を担持する11匹のヌードマウスの平均結果を報告した。最初に、PC3pip腫瘍をBモードで局在化させ、次いで、コントラストモードに切り替えた。腫瘍は、バブル注射前のコントラストモードでは見えなかった(図14A)。連続コントラストモードUSは、PSMA標的NB又は非標的NBの静脈注射後の腫瘍におけるバブル動態を監視するために実施した。ピークまでの時間、ピーク強度、ハーフタイム、ウォッシュアウト面積及び曲線下面積(AUC)を含む時間強度曲線(TIC)から得たバブル動態(図14B1)を、PSMA(+)PC3pip同所性腫瘍におけるPSMA標的NB及び非標的NBの間で比較した(図14C)。PSMA標的NBと非標的NBの間で、ピーク強度(p=0.0001)、ハーフタイム(p=0.0056)、ウォッシュアウト面積(p=0.0092)及び曲線下面積(p<0.0001)の有意差を測定した。非標的NB測定から得たUSシグナルを使用して、PSMA標的NBからのシグナルを正規化した。正規化したTICは、PSMA標的NBからの平均強度が、異なる時点で非標的NBよりも常に高いことを示した(図14B2)。この研究で使用した腫瘍サイズは90~1100mmと様々であったため、発明者らはまた、動物を2つのコホート:グループA(小さな腫瘍、90~670mm、n=7)及びグループB(大きな腫瘍、670~1100mm、n=4)に分け、PSMA標的NB及び非標的NBのパラメータを比較した。小さな腫瘍を有するグループAでは、ピーク強度及び曲線下面積に有意差が認められた。大きな腫瘍を有するグループBでは、ピーク強度、曲線下面積及びハーフタイムに有意差が見られた。個々のマウスのTICはまた、11匹中10匹のマウスにおいてPSMA標的NBと非標的NBとの間で差異を示した。動物間の生存率は観察されたが、2つのグループ間の全体的な結果は類似していた。全体として、発明者らのデータから、血流中の非標的NBのそれよりもPSMA標的NBの方が、安定性がより高く、循環時間がより長いことが示された。
【0167】
異なる腫瘍サイズに基づく造影剤の動態と比較
腫瘍の大きさに応じてPSMA標的NB及び非標的NBの動態に明らかな変動性があるため、腫瘍を2つのグループ:腫瘍体積が90~670mmのグループA(n=7)、腫瘍体積が670~1100mmのグループB(n=4)に分けた。UCA動態パラメータ(図15B)は、時間強度曲線(TIC)から得た(図15A)。腫瘍サイズが増加するにつれて、ピーク強度、ウォッシュアウト面積、及び曲線下の総面積は、グループAとグループBの間で有意に異なっていた(図15B)。図14Aに示すように、グループBではバブル注射後に腫瘍の一部が十分に満たされず、Bモードではシグナルが不均一であった。グループAでは、シグナルはBモードとコントラストモードの両方で比較的均一であった(図13A)。
【0168】
PSMA標的NBは循環からのバブルクリアランス後に同所性前立腺腫瘍に保持される
バブル崩壊研究を、300~800mmの大きさの同所性PC3pip腫瘍を担持する4匹の追加マウスにおいて実施し、平均結果を図16に報告した。図16Aの一連の画像は、肝臓に繰り返し加えられた高強度パルスによって循環中のバブルを崩壊させる前後のCHI画像を示した。増強の定量分析(図16B)は、標的NBを有するPC3pip腫瘍においてクリアランス後のシグナルが47.9±18.6%減少したのに対し、腫瘍における非標的NBでは74.8±8.9%、肝臓では92.2±2.4%であった。これらのデータは、PSMA標的NBを用いて増強させた腫瘍において、非標的NBと比較して有意に高いピーク増強を示した。最も重要なのは、関連する高強度パルスを介した循環NBのクリアランス後に、PSMA標的NBを用いて増強させた腫瘍におけるシグナル強度は、非標的NBと比較して有意に高いままであった。これは、PSMA発現PCa細胞における有意なNB保持を示唆している。腫瘍とは対照的に、肝臓におけるシグナル強度は、崩壊前のPSMA標的NBと非標的NBの両方と類似しており、両方の薬剤のクリアランス後にほぼ完全に排除された。これらの研究における腫瘍領域は、(TICを生成するために使用した腫瘍とは対照的に)一定の共振に曝されず、バブルエコー輝度をより長期間保持したことに留意することが重要である。これが、この実験で見られた標的NBと非標的NBの差を大きくさせた可能性が高い。このデータは、生きたマウスの循環からのNBのクリアランス後に、PSMA陽性PC3pip腫瘍実質(おそらく腫瘍細胞内)におけるPSMA標的NBの有意な血管外保持を初めて示す。
【0169】
免疫組織化学分析
PSMA標的NBが腫瘍マトリックスに溢出し得ることをさらに検証するために、バブルを蛍光色素Cy5.5で標識し、同所性PC3pip腫瘍を担持する動物の新しいセットに注射した。注射の10分後、循環バブル及び腫瘍を除去するために冷PBSによる心臓フラッシュ灌流手順をマウスに施し、組織分析のために腫瘍を摘出した。CD31染色は、腫瘍血管を可視化するために使用した。血管及び細胞における蛍光を、1視野当たりのバブルシグナルを正規化するために使用した。組織像は、PSMA標的NBグループのCy5.5シグナルが腫瘍毛細血管の外側及び実質の深部で見出されたことを示し(図17A)、これはバブルの溢出及びその後の間質浸透の強力な証拠を提供した。PSMA標的NBグループのNB蛍光比(1視野当たりの全バブル蛍光/血管蛍光及び全バブル蛍光/細胞蛍光からの蛍光比の定量化)は、非標的NBグループのそれよりも有意に高く(図24B1、B2)、PSMA標的NBが腫瘍に溢出できるだけでなく、腫瘍内に捕捉できることが確認された。
【0170】
この実施例の目標は、臨床的に関連する同所性モデルにおいてPSMA(+)PCaを検出するための新規標的化ナノスケール超音波造影剤を製剤化することであった。側腹部腫瘍モデルにおける発明者らの以前の研究は、すでにPSMA標的NB及び非標的NBの動態を調べており、組織学的所見はPSMA標的NBがPSMA発現を有する腫瘍を特異的に認識できることを確認した。この実施例では、同所性腫瘍のPSMA標的NBと非標的NBとの間のピーク強度、ハーフタイム、ウォッシュアウト面積及び曲線下面積に有意差が認められた(図14)。同所性腫瘍モデルから得られた結果を側腹部腫瘍モデルにおける以前の研究と比較すると、同所性PC3pip腫瘍におけるPSMA標的NBと非標的NBとの間のシグナル差は、側腹PC3pip腫瘍におけるシグナル差よりも明らかではなかった。より具体的には、2つのモデル間のPSMA-NBについては総AUCが同等であったが、非標的NB AUC及び特にウォッシュアウトAUCは同所性モデルで増加した。ウェスタンブロット研究は、側腹部PC3pip腫瘍及び同所性PC3pipが同様のレベルのPSMA発現を有することを示したので、その差はPSMA発現の異なるレベルによるものではない。発明者らは、この差が、1)2つの腫瘍モデルにおける血管密度及び血管透過性の変動、並びに2)全体的な腫瘍量及び3)細胞密度及び中枢壊死の差の3つの要因の結果であり得ると仮定する。側腹部腫瘍と同所性腫瘍との間の腫瘍微小環境の違いは、これらの要因に影響を及ぼすことが知られている。具体的には、同所性PC3腫瘍は側腹部PC3腫瘍よりも血管容積及び透過性が高いことが報告されている。同所性腫瘍のより高い血管透過性は、増強した透過性及び保持(EPR)効果によって、全てのナノバブルのより多くの溢出を可能にし得る。そのため、透過性の増強は、PSMA標的NB及び非標的NBの両方の取り込みの増加につながる可能性がある。したがって、PSMA標的NBと非標的NB蓄積との間の同所性腫瘍におけるNB蓄積の差は、側腹部腫瘍モデルにおけるそれよりも小さい。これはまた、このモデル対側腹部腫瘍で見られる、より高い時間強度曲線下の全体面積(同所性モデルで193.7±64.38dB分に対して、側腹部モデルでは130.4±50.11dB分)と、非標的NBのウォッシュアウトAUC(同所性モデルで149.5±52.19dB*分に対して、側腹部モデルでは116.51±25.61bB分)によって反映される。壊死及び細胞密度がより高い場合、これはまた、全てのバブルのより大きな保持をもたらし、そのため、標的化されていないバブルのウォッシュアウトを低下させる。一般に、これらのモデルの間には多くの潜在的な差があり、TICに特異的変化が生じる可能性がある。これは部分的には、NBコントラスト増強超音波を使用することが腫瘍におけるナノ粒子輸送に関するいくつかの洞察を提供する可能性がある理由である。側腹部腫瘍の平均腫瘍サイズは約125mmであるが、同所性腫瘍の平均腫瘍サイズは約500mmであった。大小のコホートへの腫瘍の層別化は、ピーク強度、ウォッシュアウト面積及び曲線下面積に有意差を示し(図15)、腫瘍量も動態に影響を与える要因であることを示している。動物間でのばらつきも動物において観察した。個々の動物に正規化すると(図14B2に示すように)、増強の差はより大きくなる。同所性腫瘍は側腹部腫瘍よりも異質である可能性が高いため、平均して差が低下する。
【0171】
この実施例では、バブル崩壊研究を用いて、循環バブルを崩壊させた後の腫瘍内のシグナルを検出し、PSMA標的NBが非標的NBよりも大きい程度に腫瘍内に保持されていることが示された(図16)。加えて、発明者らのNBの動態と腫瘍分布は腫瘍のサイズ/病期によって異なることも発見した。小さな腫瘍と大きな腫瘍の組織学研究から、大きな腫瘍の中心が小さな腫瘍の中心よりも壊死性であることが判明した。
【0172】
標的リガンドのPSMA-1は、ペプチドベースの高度に負に荷電したPSMAリガンドであり、臨床研究に使用でき、また容易に合成することができる。PSMAを標的としたNBの平均直径は277±11nmであった。発明者らのNBのサイズが小さいほど、より大きなサイズのバブルよりも優れた腫瘍浸透を達成するはずである。粒子のサイズが小さいほど、マウス異種移植片腫瘍モデルにおけるナノ粒子の生体分布並びに透過性及び保持効果の増強を改善することが示されている。全体として、現在のデータは、1)PSMAに対する高いアフィニティーリガンドで標識したエコー輝度ナノバブルは、インビボでかなり安定であり、臨床MBと非標的NBとの間の動態に大きな差を示すこと;2)NBは、異なるサイズの腫瘍において別個の動態及び保持を有するように見えることを示唆している。これは、同じ薬剤を使用して腫瘍を病期分類し、潜在的に等級付けする手段として、将来の研究の有望な領域であり得る。
【0173】
実施例3
この実施例は、膜及び/又はシェル組成の正確な調整を示し、ナノバブルサイズ及び音響パルスシーケンスは、所与の超音波周波数及び圧力において優れたナノバブル挙動を惹起することができる。サイズ分布範囲が狭いナノバブルの音響応答は、その膜殻構造によって変わり得ることが判明した(図2)。膜組成物を、グリセロール及びプロピレングリコール(PG)の含有によって調節した。PGは、脂質膜の流動性を増加させることが示されているが、グリセロールはシェルの硬化をもたらす。この実験を行うために、Cガスコアを有するNBを前述のように製剤化した。簡単に説明すると、DBPC、DSPE-PEG2000及びグリセロールを含む脂質のカクテルをPG及びPBSに溶解し、その後、機械的攪拌によるガス交換及び活性化を行った。多分散性が低いNBを、遠心分離による分離、及び400nm膜による濾過を介して調製した。PBS中のNB溶液の検出可能な非線形応答の開始のシェル依存性及び圧力依存性は、74kPa~857kPa(MI=0.03~0.35)の圧力で、コントラストハーモニックモード(Toshiba Aplio XG,12MHz)でUSを使用して決定した。図2に示すように、PGで構成されるより柔軟なシェルとリン脂質のカクテルを有するバブルは、活性の開始に必要な有意に低い圧力を示した(イメージング視野内のシグナル強度によって測定される)。これらのバブルは、より低い圧力(123kPa~245kPa)で検出可能な非線形応答の開始を示した。硬いNB分散液のUS画像は、圧力上昇が343kPaから465kPaに最小で6%のシグナル増加、及び465kPaから710kPaへの146%の大幅な増加を示した。
【0174】
制御可能な圧力閾値は、バブルの非線形応答に基づくコントラスト増強法に対する潜在的な利点を有する。これらの技術の1つは、圧力振幅の異なる2つのパルスが組織に送られる振幅変調である。一方のパルスは、通常、他方のパルスの2倍の振幅を有する。シグナルは受信時にスケーリングされ、減算される。組織の線形応答のために、組織からのシグナルはキャンセルされ、唯一の残りのシグナルはバブルからのものである。そのため、組織に対するコントラスト(CTR)が増す。圧力閾値未満のパルスを送り、増強の閾値を上回るパルスを送ると、CTRが大幅に増加する。フレキシブルシェルの適用は、増強のためのより小さな圧力を生じさせ、より高い散乱断面をもたらし、そのため、イメージング目的のためにより良い結果をもたらす。より硬いシェルの適用は、圧力をより高い値に歪ませるため、より高い圧力が要求される強化された加熱適用のような治療目的により適している。さらに、プレフォーカルNBの振動振幅はごくわずかであり、一部の超音波トランスデューサの急峻な圧力勾配を利用することで、プレフォーカルバブルの減衰を大幅に減らすことができる。そのため、標的の共振NBに十分なエネルギーを送達することは、増強した加熱効果により効率的に寄与する。さらに、オフ標的領域における望ましくない加熱は、オフ共振バブルのために最小限に抑えられる。最後に、このタイプのアプローチは、高強度集束超音波及びヒストトリプシーについて報告されているいわゆる「アブスコパル効果」を介して抗腫瘍誘発免疫を惹起するのにより効果的であることも期待される。
【0175】
要約すると、特異的シェル組成物を有するTNT適用バブルは、1)一般的な活性化圧力を低下させ、かつ2)必要な調整可能で予見可能な感圧挙動を示し、かつ3)細胞媒介性エンドサイトーシス及び細胞内小胞内での長期滞留を可能にする。これが、従来のマイクロバブル媒介性細胞破壊と比較して、この技術を特有にしている理由である。
【0176】
実施例4
この実施例は、PSMA-1リガンドを有するNBを標的とすることが、PSMA発現PC3pip細胞への結合及びPC3pip腫瘍における高い蓄積を選択的に増加させたことを実証するインビトロ細胞取り込み研究及びインビボ実験の結果を示す。発明者らは、蓄積したPSMA標的NBを治療的USと組み合わせると、細胞内爆発を介してPSMA陽性PC3pip腫瘍組織を選択的に損傷させると仮定する。
【0177】
NBの調製と特性評価
ナノバブル用の脂質溶液(10mg/mL)を、プロピレングリコール(PG、Sigma Aldrich,Milwaukee,WI)に6:1:2:1の比率で1,2-ジベヘノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC、Avanti Polar Lipids Inc.,Pelham,AL)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフェート;DPPA、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-蛍光体エタノールアミン;DPPE(Corden Pharma,Switzerland)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](アンモニウム塩)(DSPE-mPEG 2000、Laysan Lipids,Arab,AL)を溶解させ、80℃で加熱及び超音波処理することによって調製した。80℃に予熱したグリセロール(Gly,Acros Organics)とリン酸緩衝液(0.8mL、Gibco、pH7.4)の混合物を加え、室温で10分間超音波処理した。溶液(1mL)を3mLのヘッドスペースバイアルに移し、ゴムセプタム及びアルミニウムシールで蓋をした。空気をオクタフルオロプロパン(C、Electronic Fluorocarbons,LLC,PA)ガスに置換し、45秒間のVialMixシェーカー(Bristol-Myers Squibb Medical Imaging Inc.,N.Billerica,MA)による機械的振盪によって活性化した。ナノバブルを、ヘッドスペースバイアルを反転させた状態で、50rcfで5分間遠心分離することによってマイクロバブルから分離し、100μLのNB溶液を21G針で底部から5mmの固定距離から抜き出した。
【0178】
PSMA-NBを、初期脂質溶液にDSPE-PEG-PSMA-1(25μg/ml)を添加し、上記のプロトコルに従って調製した。DSPE-PEG-PSMA-1を調製するために、PSMA-1(James Basilion教授の研究室より)を、pH8.0のPBS中1:2の比率でDSPE-PEG-MAL(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000-マレイミド]、Laysan Bio,Arab,AL]と混合した。合わせた後、混合物を十分にボルテックスし、4℃で、バイアル回転板上で4時間反応させた。生成物を凍結乾燥し、得られた粉末をPBSに溶解し、DSPE-PEG-PSMA-1原液を得た。DSPE-PEG-PSMA-1のコンジュゲーションを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びMALDI TOF法によって確認した。HPLCを、SPD-20AプロミネンスUV/可視検出器を搭載したShimadzu HPLCシステムにて実施し、波長220nmで監視した。分析HPLCを、流速1.0mL/分で分析用Luna 5μ C18(2) 100Aカラム(250mm×4.6mm×5μm、Phenomenex)を用いて実施した。使用した勾配は、20分間にわたって0.1%TFAに対して10%~40%アセトニトリルであった。
【0179】
NBのサイズ分布及び濃度を、先の1~2に説明したように、共振質量測定(Archimedes(登録商標)、Malvern Panalytical)で特徴付けた。1000個の粒子を測定した後に測定を終了させた。データをArchimedesソフトウェア(バージョン1.2)からエクスポートし、正数と負数について分析した1。希釈したNB溶液(500X)の表面電荷をAnton Paar Litesizer 500で測定した。
【0180】
手順
図18は、マウスにPSMA-NBを投与し、共振させるための手順の概略を示す。手順には以下のものが含まれる。
【0181】
200μLの標的PSMA-NBを、マウスM1、M2及びM3、M4)の二重腫瘍マウスに尾静脈を介して注射する。
【0182】
30分後に、M1及びM3マウスのPC3pip腫瘍に対してTUSを適用する。
【0183】
また、30分後に、M2及びM4マウスのPC3flu腫瘍に対してTUSを適用する。
【0184】
対照マウスについて、PBSを注射し、30分後に、PC3pipとPC3flu腫瘍の両方に対してTUSを適用する。パラメータ:TUS治療;5分間、3MHz,2.2W/cm/10 DC(小型プローブ)。
【0185】
治療の24時間後に、腫瘍を切除し、組織診断に進む。
【0186】
TUNELアッセイを用いてアポトーシスを分析する。
【0187】
グループ1-PSMA-NB注射及び30分後に、PC3pip腫瘍(M1及びM3)に対してTUSを適用する。
【0188】
グループ2-PSMA-NB注射及び30分後に、PC3flu腫瘍(M2及びM4)に対してTUSを適用する。
【0189】
グループ3-PBS注射及び30分後に、PC3pip及びPC3flu腫瘍(M5)に対してTUSを適用する。
【0190】
図19は、PSMA発現腫瘍を、10%デューティーサイクル、3MHz、2.2W/cmでの5分間の超音波と組み合わせてPSMA標的ナノバブルで治療した場合に、治療後24時間で顕著なアポトーシスが見られたことを示す。同じ治療をPSMA陰性腫瘍に適用した場合に、アポトーシスはほとんど又はまったく見られなかった。これは、受容体媒介性エンドサイトーシスを介して腫瘍細胞に内部移行したナノバブルのみが顕著な毒性効果を有していたことを示唆している。
【0191】
図20は、PSMA陽性又はPSMA陰性腫瘍を、10%デューティーサイクル、3MHz、5分間の超音波のみ(バブルなし)で治療した場合に、アポトーシスがほとんど又は全く見られなかったことを示す。これは、超音波と組み合わせたナノバブルのみが毒性作用を有することを示唆している。バブルのみ(超音波なし)でも効果は見られなかった。このデータは示さず。
【0192】
図21及び図22は、PSMA-NBで治療したPSMA発現腫瘍を示し、TUSは、他の全てのグループと比較して細胞死で顕著なアポトーシスを示した。アポトーシスは、ROI選択のためのDAPIの約33(33.55±1.10)%である。
【0193】
本発明の上記の説明から、当業者は、改善、変更、及び修正を認めるであろう。当業者によるそのような改善、変更、及び修正は、添付の特許請求の範囲によってカバーされることが意図される。本願において引用される全ての参考文献、刊行物、及び特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3b
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B-9C】
図9D
図9E-F】
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
【国際調査報告】