(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】機能性エクソソーム調製のためのクロスフロー濾過装置の新たな用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/07 20100101AFI20230418BHJP
C12M 3/06 20060101ALN20230418BHJP
【FI】
C12N5/07
C12M3/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555153
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2021003265
(87)【国際公開番号】W WO2021187880
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0032225
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517146460
【氏名又は名称】株式会社エキソステムテック
【氏名又は名称原語表記】EXOSTEMTECH CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】512293921
【氏名又は名称】インダストリー-ユニバーシティー コーペレイション ファンデーション ハンヤン ユニバーシティー エリカ キャンパス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨン ウ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジ スク
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,スン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ビンナ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BD18
4B065BD39
4B065CA44
4B065CA50
(57)【要約】
本発明は、機能性エクソソーム調製のためのクロスフロー濾過装置の新たな用途及び超高濃度エクソソーム溶液の調製のための連続濃縮システムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスフロー濾過(tangential flow flifition;TFF)装置を用いてエクソソームを機能性物質で改質することを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法。
【請求項2】
前記機能性物質は、生体適合性高分子、タンパク質薬物、化学薬物及び標識分子からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の機能性エクソソームの調製方法。
【請求項3】
前記方法は
エクソソームと機能性物質とを混合する反応ステップ;
未反応機能性物質を除去する濾過及び濃縮ステップ;及び
エクソソーム溶液の溶媒を置換する洗浄ステップ;を含み、
前記反応ステップ、濾過及び濃縮ステップ、及び洗浄ステップは、1つのクロスフロー濾過装置(第1TFF装置)を用いて行われることを特徴とする、請求項1に記載の機能性エクソソームの調製方法。
【請求項4】
前記反応ステップは、エクソソームと機能性物質との混合液をTFF装置のポンプにより循環させる過程で行われることを特徴とする、請求項3に記載の機能性エクソソームの調製方法。
【請求項5】
前記方法は、エクソソームと機能性物質とを反応させるための別途のバッチリアクター(Batch reactor)を使用しないことを特徴とする、請求項3に記載の機能性エクソソームの調製方法。
【請求項6】
前記方法は、TFF装置以外の別途の攪拌設備及び洗浄設備を使用しないことを特徴とする、請求項3に記載の機能性エクソソームの調製方法。
【請求項7】
前記方法は、TFF装置を用いて前記反応ステップ、濾過及び濃縮ステップ、及び洗浄ステップを同時に行うことを特徴とする、請求項3に記載の機能性エクソソームの調製方法。
【請求項8】
前記方法は、機能性エクソソームの大量生産(large-scale production)のためのものである、請求項1に記載の機能性エクソソームの調製方法。
【請求項9】
前記方法は、前記第1TFF装置から得られた濃縮機能性エクソソームを多重TFF連続濃縮装置に注入してエクソソームをさらに濃縮するステップをさらに含み、
前記多重TFF連続濃縮装置はn個のTFF装置を含み、n個のTFF装置が外部から隔離された1つのシステムとして接続され、n個の濃縮工程を1つの閉鎖系(closed system)内で連続的に行うことを特徴とする、請求項3に記載の機能性エクソソームの調製方法(ここで、前記nは1~10の整数である)。
【請求項10】
エクソソームを含む原料溶液を、n個のTFF装置が外部から隔離された1つのシステムとして接続された多重TFF連続濃縮装置に注入するステップ;及び
前記多重TFF連続濃縮装置を用いてn個の濃縮工程を1つの閉鎖系内で連続的に行うステップ;
を含む、超高濃度エクソソーム溶液の調製方法(ここで、前記nは1~10の整数である)。
【請求項11】
前記n個の連続濃縮工程後に得られた最終エクソソームの濃度は、原料溶液中のエクソソームの濃度の25~50
n倍であることを特徴とする、請求項10に記載の超高濃度エクソソーム溶液の調製方法。
【請求項12】
前記n個の連続濃縮工程後に得られた最終エクソソームの濃度は、10
7~10
13粒子/mLであることを特徴とする、請求項10に記載の超高濃度エクソソーム溶液の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスフロー濾過装置の新たな用途及び超高濃度医療用エクソソーム溶液の調製のための連続濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含む多細胞生物内に存在する様々な細胞では、「エクソソーム」というナノサイズの小胞体を分泌することが知られている。エクソソームは細胞膜と同じ膜構造を持つ小嚢体で、膜成分、タンパク質、RNAなどを他の細胞や組織に伝達する役割を担っていることが知られている。特に、幹細胞から分泌されるエクソソームは、幹細胞が分泌する多様な成長因子やサイトカインを含有しており、細胞の接着、増殖、分化などの挙動を制御すると知られている。また、エクソソームは、分離過程で細胞培養液中の細胞老廃物、抗生物質、血清などの不純物が除去されるため、細胞培養液と同等の効果で安全に使用できる。
【0003】
エクソソームは約100nmのサイズを有し、細胞と細胞間のシグナル伝達を行う。特に細胞間のタンパク質や遺伝物質など交換の移動媒介手段としての役割が明らかになり、エクソソームを用いて細胞を含む組織の挙動を制御するための研究が脚光を浴びている。
【0004】
エクソソームは、親細胞に由来するタンパク質と遺伝物質を特定の細胞に伝達する能力を最大限に発揮させる物質として知られている。このようなエクソソーム治療剤は、病変組織周囲の細胞に治療効能を有するタンパク質や遺伝物質を伝達して組織を治療する効能においては、従来の細胞治療剤が有する「サイトカイン効果(Cytokine effect)」を上回る治療効能を有すると判断される。エクソソームの特性を制御あるいは分析するために、エクソソームの脂質二重膜もしくは内部に特定の物質を反応させて機能性を持たせる研究が行われて射る。
【0005】
本明細書全体にわたって多数の文献が参照され、その引用が示されている。引用された文献の開示内容はその全体が参照として本明細書に組み込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、濃縮、精製及びバッファー交換方法に限られていた従来のクロスフロー濾過装置の新たな用途を提供することであり、クロスフロー濾過装置のみを用いて機能性エクソソームを調製する方法を提供するところにある。
【0007】
また、本発明の目的は、エクソソームを含む溶液(例えば、幹細胞培養液)からエクソソーム成分を超高濃度に濃縮する多重TFF連続濃縮装置及びそれを用いた超高濃度エクソソーム溶液の調製方法を提供するところにある。
【0008】
さらに詳しくは、本発明の目的は、以下の具現例を提供するところにある。
【0009】
具現例1.クロスフロー濾過(tangential flow flifition;TFF)装置を用いてエクソソームを機能性物質で改質することを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法。
【0010】
具現例2.具現例1において、前記機能性物質は、生体適合性高分子、タンパク質薬物、化学薬物及び標識分子からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法。
【0011】
具現例3.先行する具現例のいずれか一つにおいて、前記方法は、エクソソームと機能性物質とを混合する反応ステップ;未反応機能性物質を除去する濾過及び濃縮ステップ;及びエクソソーム溶液の溶媒を置換する洗浄ステップ;を含み、前記反応ステップ、濾過及び濃縮ステップ、及び洗浄ステップは、1つのクロスフロー濾過装置(第1TFF装置)を用いて行われることを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法。
【0012】
具現例4.先行する具現例のいずれか一つにおいて、前記反応ステップは、エクソソームと機能性物質との混合液をTFF装置のポンプにより循環させる過程で行われることを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法。
【0013】
具現例5.先行する具現例のいずれか一つにおいて、前記方法は、エクソソームと機能性物質とを反応させるための別途のバッチリアクター(Batch reactor)
を使用しないことを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法
具現例6.先行する具現例のいずれか一つにおいて、前記方法は、TFF装置以外の別途の攪拌設備及び洗浄設備を使用しないことを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法。
【0014】
具現例7.先行する具現例のいずれか一つにおいて、前記方法は、TFF装置を用いて前記反応ステップ、濾過及び濃縮ステップ、及び洗浄ステップを同時に行うことを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法。
【0015】
具現例8.先行する具現例のいずれか一つにおいて、前記方法は、機能性エクソソームの大量生産のためのものである、機能性エクソソームの調製方法。
【0016】
具現例9.先行する具現例のいずれか一つにおいて、前記方法は、前記第1のTFF装置から得られたエクソソームを多重TFF連続濃縮装置に注入してエクソソームを濃縮するステップをさらに含み、前記多重TFF連続濃縮装置はn個のTFF装置を含み、n個のTFF装置が外部から隔離された1つのシステムとして接続され、n個の濃縮工程を1つの閉鎖系内で連続的に行うことを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法(ここで、前記nは1~10の整数である)。
【0017】
具現例10.先行する具現例のいずれか一つにおいて、エクソソームを含む原料溶液を、n個のTFF装置が外部から隔離された1つのシステムとして接続された多重TFF連続濃縮装置に注入するステップ;及び前記多重TFF連続濃縮装置を用いてn個の濃縮工程を1つの閉鎖系内で連続的に行うステップ;を含む、超高濃度エクソソーム溶液の調製方法(ここで、前記nは1~10の整数である)。
【0018】
具現例11.先行する具現例のいずれか一つにおいて、前記n個の連続濃縮工程後に得られた最終エクソソームの濃度は、原料溶液中のエクソソームの濃度の25~50n倍であることを特徴とする。とする、超高濃度エクソソーム溶液の調製方法。
【0019】
具現例12.先行する具現例のいずれか一つにおいて、前記n個の連続濃縮工程後に得られた最終エクソソームの濃度は、107~1013粒子/mLであることを特徴とする、超高濃度エクソソーム溶液の調製方法。
【0020】
本発明の他の目的及び利点は、以下の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
機能性エクソソーム調製のためのクロスフロー濾過装置の新たな用途
本発明の1つの態様は、クロスフロー濾過(tangential flow fillition;TFF)装置を用いてエクソソームを機能性物質で改質することを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法を提供することである。
【0022】
「機能性エクソソーム」とは、エクソソームの脂質二重膜の内外部またはエクソソームの内部に生化学的分子などの機能性物質を担持したり架橋させたりして生化学的機能を持たせるエクソソームをいい、機能性物質の種類や機能によってエクソソーム標識技術、エクソソーム薬物担持技術、エクソソーム治療技術などの1種以上の技術を選択的に適用することができる。
【0023】
従来の機能性エクソソーム調製技術は、1.エクソソームと機能性物質との反応工程、2.機能性エクソソーム分離及び精製工程、3.更なる濃縮又は希釈による完成品調製工程を含む段階的な工程を経る。
【0024】
前記反応工程では、エクソソームと機能性物質とを反応器又は容器に入れた後、攪拌環境下で機能性物質とエクソソームとを反応させる。このとき、移し替える過程で外部物質が混入する可能性がある。また、撹拌環境を形成するためには、マグネティックスターラーまたはプロペラ撹拌システムなどの追加の装置が必要である。
【0025】
前記分離及び精製工程では、超遠心分離法又は透析法(Dialysis)を用いて未反応残留物を除去する。超遠心分離法の場合、未反応物質を除去するために多量のバッファーを反応物に希釈し、超遠心分離して純粋な特性改質エクソソームを得る方法をいう。残留反応物は、1回の工程で完全に除去することはできず、3回以上の洗浄を繰り返すことで残留反応物を完全に除去することができる。超遠心分離を繰り返す必要があるため、エクソソームの収率は非常に低くなる可能性がある。さらに、150,000xg以上の高い回転速度と、1回あたり1時間以上の工程時間を必要とする。透析法の場合、エクソソームよりも小さく、反応物よりも濾過機能が大きい透析膜により残留反応物を除去する方法を指す。透析チューブに入られたエクソソーム反応物を大量のバッファー溶液に浸漬し、透析チューブの外に残留反応物を除去する方式であり、純粋なエクソソームを得るためには長い洗浄時間が必要である。
【0026】
このように、従来のエクソソーム特性改質技術では、共通的に、1)反応過程、分離及び精製過程、及び洗浄過程を同時に行うことができず、2)残留反応物を除去するために反復的で時間のかかる洗浄過程を必要としている。
【0027】
また、従来の機能性エクソソーム調製技術では、一度に100mL未満のエクソソームを改質するのに適しているだけであり、商業化レベルにスケールアップすると、工程時間及びコストが大幅に増加するだけでなく、エクソソームの損失が発生する可能性もある。
【0028】
このような状況下で本発明は、クロスフロー濾過装置を用いて機能性エクソソームの反応過程、分離及び精製過程、及び洗浄過程を同時に行うだけでなく、機能性エクソソームを短期間で大量に生産し、商用化レベルにスケールアップされたエクソソームの調製方法を提供する。
【0029】
一般に、クロスフロー濾過方法は、1)生物学的溶液を循環させる過程、2)濾過フィルターよりも小さいサイズのタンパク質及び不純物を除去する過程、及び3)溶液の溶媒を置換する過程などを含む。
【0030】
本発明の一具現例によれば、前記1)の過程でエクソソームと機能性物質とを混合して反応させながらエクソソーム表面改質を行う。このとき、エクソソームと機能性物質との混合液はポンプにより循環するため、別途の攪拌過程を追加する必要はない。
【0031】
前記2)過程で反応に参加していないタンパク質、染料、高分子などの未反応の機能性物質を濾過により除去し、反応したエクソソームを含む溶液を得ることができる。前記反応したエクソソームを含む溶液を再循環させて所望の濃度まで濃縮する過程を含み得る。
【0032】
前記3)工程では、残留反応不純物を除去するために、バッファー溶液または注射用水への溶媒置換を行うことができ、例えば、前記溶媒は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝生理食塩水(TBS)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝生理食塩水(HBS)生理食塩水、蒸留水、培養培地及び注射用水から選ばれる少なくとも1つであり得る。
【0033】
したがって、本発明は、エクソソームと機能性物質とを混合する反応ステップ;未反応の機能性物質を除去する濾過及び濃縮ステップ;およびエクソソーム溶液の溶媒を置換する洗浄ステップ;を含み、前記反応ステップ、濾過及び濃縮ステップ、及び洗浄ステップを一つのクロスフロー濾過装置を用いて行うことを特徴とする、機能性エクソソームの調製方法を提供する。
【0034】
前記一連の過程を通じて表面改質したエクソソームを生産する際に、別途のバッチリアクター(Batch reactor)、攪拌設備、及び洗浄設備が不要であり、反応時間を除く追加の濃縮及び洗浄を短時間で行うことができる。
【0035】
このように、本発明は、従来の分離及び濾過、濃縮を含む限定的な用途に利用されるクロスフロー濾過方法を使用して機能性エクソソームを調製する新たな方法を提供し、別途の洗浄及び撹拌工程を必要としない反応ステップ(エクソソームの生化学的改質)、濾過及び濃縮ステップ、及び洗浄ステップを同時に行うので、従来技術よりも高い生産性及び収率を得ることができる。
【0036】
本発明の一具現例で使用されるクロスフロー濾過装置は限外濾過システムであり、TFF装置を用いて前記反応ステップ、濾過及び濃縮ステップ、及び洗浄ステップを行った結果、エクソソーム溶液が1/10~1/100の容積まで効率よく濃縮できる。
【0037】
限外濾過とは、精密濾過(microfiltration)と逆浸透膜の中間領域に位置するもので、膜の細孔と溶質との大きさの違いによって特定の物質を分離する方法を指す。限外濾過膜は、膜により90%以上の排除度を示す溶質の最小分子量で定義される分画分子量(molecular weight cutoff:MWCO)によりその分離性能を示すことができる。
【0038】
本発明に用いられる前記接線流濾過は、限外濾過を行うことができる中空繊維(Hollow fiber)TFF及び膜(membrane)TFFからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよいし、好ましくは、分画分子量(Molecular weight cutfoff:MWCO)が100,000Da~500,000DaであるTFFフィルターを使用するものであり得る。
【0039】
本発明における用語「改質」とは、エクソソームの脂質二重膜表面または脂質二重膜の内部あるいはエクソソームの内部に機能性物質(例えば、生化学的物質)を担持または架橋させることを意味する。
【0040】
一具現例において、前記機能性物質は、生体適合性高分子、タンパク質薬物、化学薬物及び標識分子からなる群から選ばれる少なくとも1つであり得る。
【0041】
前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(hyaluronic acid:HA)、ゼラチン(gelatin)、キトサン(chitosan)、コラーゲン(collagen)、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、デキストラン硫酸、ポリリジン、カルボキシメチルキチン、フィブリン、アガロース、プルラン、セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアルコール、ガム、アラビアガム、アルギネート、シクロデキストリン、デキストリン、ブドウ糖、果糖、でん粉、トレハロース、グルコース、マルトース、ラクトース、ラクツロース、フルクトース、ツラノース、メリトース、メレジトース、デキストラン、ソルビトール、キシリトール、パラチニット、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸、及びポリマレイン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つであり得る。
【0042】
前記タンパク質薬物は、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質及び受容体、細胞表面抗原、受容体拮抗物質、及び毒素からなる群から選ばれる少なくとも1つであり得る。
【0043】
前記化学薬物は、アルキル化剤、代謝拮抗剤(抗代謝剤)、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、及び抗がん剤(シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ビノレルビン、ドキソルビシン、ドセタキセル、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、マスタング、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、エトポシド、エピルビシンなど)からなる群から選ばれる少なくとも1つであり得る。
【0044】
前記標識分子は、蛍光団(フルオレセイン、フィコエリスリン、ローダミン、リサミン、及びCy3とCy5(ファルマシア)等)、発色団、化学発光団、磁性粒子、放射性同位元素(C14、I125、P32及びS35など)、質量標識、電子密集粒子、酵素(アルカリンホスファターゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼ等)、助因子、酵素に対する基質、重金属(例えば、金)、そして抗体、ストレプトアビジン、ビオチン、ジゴキシゲニンとキレート基などの特定結合パートナーを有するハプテンからなる群から選ばれる少なくとも1つであり得る。
【0045】
本発明の一具現例では、機能性物質で改質されるエクソソームは、幹細胞、がん細胞、組織細胞などの初代細胞(primary cells)、幹細胞株、がん細胞株などの細胞株が培養中に分泌されるエクソソームであり得る。
【0046】
前記幹細胞株は、胚性幹細胞株、成体幹細胞株及び誘導万能幹細胞(iPSC)株からなる群から選ばれる少なくとも1つであり得、前記癌細胞株は、膀胱癌細胞株、血液癌(白血病、骨髄腫)細胞株、骨癌細胞株、脳腫瘍細胞株、乳癌細胞株、子宮頸癌細胞株、結腸直腸癌細胞株、子宮内膜癌細胞株、食道癌細胞株、線維肉腫癌細胞株、腎臓癌細胞株、肝臓癌細胞株、肺癌細胞株、リンパ腫細胞株、神経癌細胞株、口腔癌細胞株、卵巣癌細胞株、膵臓癌細胞株、前立腺癌細胞株、皮膚癌細胞株、脾臓癌細胞株、胃癌細胞株、精巣癌細胞株、甲状腺癌細胞株、及び子宮癌細胞株からなる群から選ばれる少なくとも1つであり得る。
【0047】
このような本発明の調製方法により改質された機能性エクソソームは、大量生産されて医療用途または化粧品用途に有用に使用することができる。
【0048】
超高濃度医療用エクソソーム溶液の調製のための連続濃縮システム
本発明の他の態様は、超高濃度医療用エクソソーム溶液を調製するための連続濃縮システムを提供することである。
【0049】
エクソソームを濃縮するための従来技術には、現在の細胞培養過程中に得られた培養液から細胞から分泌されたエクソソームの超遠心分離(ultracentrifugation)、限外濾過(ultrafiltration)、クロマトグラフィー(chromatography)、沈殿(precipitation)方法などがある。
【0050】
しかしながら、現在報告されているエクソソーム生産の従来技術は、初期容量と比較して25~100倍の濃縮しか達成できず、最大2.0×1010粒子/mLの濃度でエクソソームを生産することが可能である。これは、低濃度でも効果を発揮する化粧品などの用途には適しているが、高濃度や低用量の臨床適用(容積が非常に小さい関節腔への局部注射など)では更なる濃縮作業が必要となる場合がある。具体的には、例えば、1.0×1012個のエクソソームが治療に有効な用量である場合、効果を得るには現在は50mLを投与する必要があり、このような大きな容積を投与可能な方法は静脈注射でのみ可能である。また、エクソソーム治療剤の濃度が低いと、局所注射時に適用部位から外れる可能性が非常に高く、エクソソーム治療効果が低下するというデメリットが生じる可能性がある。
【0051】
現在、高濃度のエクソソーム溶液を調製するためには更なる濃縮過程が必要であり、これに伴う工程数や工程時間が長くなってしまう。工程数や工程時間は、生産人員及び生産コストに絶対的な影響を与える工程要因であり、すなわち、工程の追加は生産性の低下につながる。また、工程追加による中間製品の移動や外部暴露により、外的要因によるサンプル汚染など治療剤の安定性を低下させる要因が発生する可能性がある。
【0052】
本発明は、このような従来の問題を解決し、エクソソームを含む溶液(例えば、幹細胞培養液)を原料物質として連続式濃縮システムに投入することにより、連続工程として超高濃度エクソソーム溶液を調製する方法を提供する。
【0053】
具体的には、本発明は、エクソソームを含む原料溶液を、n個のTFF装置が外部から隔離された1つのシステムとして接続された多重TFF連続濃縮装置に注入するステップ;及び前記多重TFF連続濃縮装置を用いてn個の濃縮工程を1つの閉鎖系内で連続的に行うステップ;を含む、超高濃度エクソソーム溶液の調製方法を提供する(ここで、前記nは1~10の整数である)。
【0054】
「連続濃縮システム」とは、
図12から
図14に示すように、2つまたは多数のTFF濃縮工程において、中間製品回収及び原料注入過程を省略し、多数の濃縮工程を1つの閉鎖系(closed system)内で連続的に行うことを意味する。
【0055】
詳細には、二重及び多重TFF連続濃縮システムは外部から隔離された単一のシステムとして構築され、初期注入された原料培養液は、一次濃縮後の製品回収なしに二次または多回次濃縮過程を同時に経て最終原料を生産する。
【0056】
前記システムは、中間製品の移動などにより引き起こされる外部要因による汚染を最小限に抑えることで、エクソソーム溶液の安定性及び品質改善を図る。
【0057】
従来のエクソソーム抽出技術においても、高濃度エクソソームを抽出するために二次TFF濃縮を追加する実施形態があるが、本発明では、二重または多重の濃縮工程を同時に行うことにより工程時間を短縮できるだけでなく最終製品の濃度を多くは25倍以上高めることができる。そのため、従来の濃縮過程を単純に加えるのとは異なると言える。
【0058】
また、本発明は、システムのスケールアップが可能であり、濃縮工程中に培養液が全く外部に露出されず、医薬品の安定性を確保することができ、医薬用GMPの適用に適している。特に、本システムは、GMP適用時に生物学的安全キャビネット(BSC)内の工程運転を強制する必要がなく、これは作業性や作業難易度を下げる要因となる。ただし、本システムは、APV認証取得後、BSC外部の作業が可能である。
【0059】
前記本発明は、1つの濃縮パーツ当たり、1つのTFFフィルター、1つ以上の原料投入容器、1つの回収容器、及びマニホールドで構成されている。
【0060】
前記本発明は、二重または多重の濃縮パーツが連続的に行われる。
【0061】
1)1次TFFフィルターパーツでは、スケールに合わせてフィルター容量が選択される。
【0062】
2)2次TFFフィルターパーツは、1次フィルターパーツの1/10~1/50倍のスケールを有し、スケールに合わせてフィルター容量が選択される。
【0063】
3)(n)次TFFフィルターパーツは、(n-1)次フィルターパーツの1/10~1/50倍のスケールを有し、スケールに合わせてフィルター容量が選択される。
【0064】
前記フィルターパーツは、用途やスケールに合わせて2~5個適用可能であるが、好ましくは2~3個適用する。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0065】
前記単一フィルターパーツは、初期重量に対して5~50倍に濃縮されるが、好ましくは10~30倍の濃縮を行う。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0066】
前記TFFフィルターは、シート(sheet)状及び中空繊維(hollow fiber)状の両方とも使用可能であるが、好ましくはホ中空繊維状TFFフィルターを使用する。
【0067】
前記TFFフィルターは容量に合わせて選択可能であるが、運転時のせん断速度(shear rate)が1000~6,000s-1のフィルターを選択しなければならず、好ましくは3,000~5,000s-1のフィルターを選択しなければならない。
【0068】
前記本発明において、(n)次連続濃縮時に最終的に得られるエクソソームの濃度は、理論上、初期原料重量に対して25~50n倍の濃縮となるが、好ましくは25~2500倍の濃縮となり、より好ましくは50~100倍の濃縮となる。
【0069】
具体的には、本発明で得られる最終エクソソーム製品は、107~1013分子/mLのエクソソーム濃度、好ましくは2.0×1010~5.0×1010分子/mLのエクソソーム濃度で産生される。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0070】
一方、本発明で得られる最終エクソソーム製品のタンパク質濃度は、1~1000μg/mLであり、好ましくは100~500μg/mL、より好ましくは300~400μg/mLである。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0071】
本発明の具現例では、前記システムは、高濃度の幹細胞エクソソームを含む局所注入用注射剤を提供する。
【0072】
前記注射剤は、1.0×107~1.0×1013分子/mLのエクソソーム濃度を有し、0.1~100mLの用量を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図3】機能性エクソソーム反応過程中のクロスフロー濾過の模式図である。
【
図4】機能性エクソソーム濾過及び濃縮過程と洗浄過程中のクロスフロー濾過の模式図である。
【
図5】DiD蛍光標識機能性エクソソームの形態及び蛍光発現試験の結果を示すものである。
【
図6】クロスフロー濾過、超高速遠心分離及びメンブレンフィルター濾過工程により最終的に得られた粒子のうちの50~200nmのサイズを有する粒子数の割合を示すグラフである。
【
図7】クロスフロー濾過、超高速遠心分離及びメンブレンフィルター濾過工程により調製された蛍光標識エクソソームを1.5mLチューブに回収した結果を示すものである。
【
図8】共焦点蛍光顕微鏡(Confocal fluorescence microscope)を用いて蛍光標識エクソソームの細胞内浸透を確認した結果を示すものである。
【
図9】クロスフロー濾過工程により調製したPEG化エクソソームの物理的特性変化をゼータ電位で確認した結果を示すものである。
【
図10】クロスフロー濾過工程により調製したPEG化エクソソームの物理的特性変化をDLSで確認した結果を示すものである。
【
図11】10
8~10
10個のエクソソームが分散したDPBS 1mLを紫外可視分光光度計(UV-Visible Spectrophotometer)を用いてエクソソーム内部への薬物担持を確認した結果を示すものである。
【
図12】連続的なTFF工程を用いて細胞培養液から機能性エクソソームを調製する工程を示す模式図である。
【
図13】連続的なTFF工程を用いて細胞培養液から機能性エクソソームを調製する工程を示す模式図である。
【
図14】連続的なTFF工程を用いて高濃度の機能性エクソソームを調製する工程を示す模式図である。
【
図15】連続的なTFF工程により得られたエクソソームの収率を、初期CM量に対するエクソソーム及びタンパク質の生産量として確認した結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、本発明を下記の実施例においてより詳細に記述する。ただし、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものに過ぎず、本発明の権利範囲を制限または限定するものではない。本発明の詳細な説明及び実施例から、本発明が属する技術分野の通常の技術者が容易に類推できることは、本発明の権利範囲に属するものと解釈される。
【実施例】
【0075】
1.ヒト脂肪由来幹細胞培養
ヒト脂肪由来幹細胞からエクソソームを抽出するために、3~7継代まで継代培養したヒト脂肪由来幹細胞を6時間~3日間培養しながら細胞培養液を回収した。前記回収した細胞培養上清から、0.2μmフィルターを用いて細胞残渣(cell debris)及び不純物を除去した。
【0076】
2.ヒト脂肪由来幹細胞エクソソームの抽出
前記1で得られたヒト脂肪由来幹細胞培養液から、クロスフロー濾過方式(Tangential Flow Filtration System)を用いてエクソソームを抽出及び精製した。クロスフロー濾過方式には100または500KDaの濾過能を有するフィルターを使用し、細胞培養液を10倍または100倍に濃縮してエクソソームを回収した。エクソソームの純度を高めるために、回収したエクソソームを10倍~100倍容積のダルベッコリン酸緩衝液(DPBS)で希釈し、再び100または500KDaの濾過能を有するフィルターを用いて濃縮した。抽出工程を
図3及び
図4に示した。
【0077】
3.ヒト脂肪由来幹細胞エクソソームの特性分析
前記2により、ヒト脂肪由来幹細胞から抽出されたエクソソームの物理的及び生化学的特性を、ナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle tracking analysis:NTA)及びビシンコニン酸(Bicinchoninic acid:BCA)アッセイ法を用いたタンパク質定量により確認した。前記2で抽出したエクソソーム粒子の大きさは50~200nmであることが確認された。
【0078】
4.蛍光標識機能性エクソソームの調製
(1)クロスフロー濾過方式を用いた蛍光標識機能性エクソソームの調製(実施例)
蛍光標識機能性エクソソームを調製するためのTFF装置を
図3及び
図4に示した。濃度5.0×10
9粒子/mLのエクソソーム1mLと100uLの蛍光標識物質(Vybrant(商標)DiD Cell-Labeling Solution,ThermoFisher Scientific,V22887)とを、1.5mLチューブに移した。混合物を10倍~100倍容積のDPBSで希釈し、TFF装置内のリザーバーにそれぞれ注ぎ、混合した。
【0079】
図3に示すTFF装置を用いてエクソソームと蛍光標識物質を循環させて反応する過程を施した。TFFフィルターのP(パーミエイト)方向に接続されたチューブ及び洗浄用PBSが、リザーバーに流入するチューブをクランプで塞ぎ、反応物が外部に漏れたり、外部バッファーが混入したりすることを防止した。ポンプ1を10~100cc/分の速度で10秒~1時間作動させ、リザーバー内のエクソソームと蛍光標識物質との混合溶液がTFFフィルター内部を循環するようにした。前記過程でエクソソーム膜に蛍光標識物質が担持され、エクソソーム表面が蛍光標識された。
【0080】
前記工程の後、残留蛍光標識物質を除去するために洗浄工程を行った。
図4に示すように、すべてのクランプを取り外した。ポンプ1を10~250cc/分の速度で1分~10分間作動させ、ポンプ2を5~10~50cc/分の速度で1分~10分間作動させた。ポンプ1は、混合溶液がTFFとリザーバーを循環させる用途に使用され、ポンプ2は、それぞれ洗浄(ウォッシング)用のPBSをリザーバーに送達する用途、及び残留蛍光標識物質を含む廃棄溶液を回収する用途に使用された。前記工程中に、TFFフィルターのメンブレン孔よりも大きなエクソソームはフィルターに濾過されないが、メンブレン孔よりも小さな蛍光標識物質は濾過されて、エクソソームと反応しない未反応蛍光標識物質は除去され、蛍光標識されたエクソソームのみが得られた。洗浄効果を確認するために、リザーバーから1分毎に1mLずつサンプルを採取し、UV可視分光光度計を用いて450nmでの吸光度を測定した。最終的に分離されたエクソソーム、廃棄物、PBSの各単位容積を採取し、同様に450nmでの吸光度を測定した(
図5)。
【0081】
(2)超高速遠心分離方式を用いた蛍光標識機能性エクソソームの調製(比較例1)
前記(1)と同様の方法でエクソソームと蛍光標識物質との混合物を調製した。具体的には、濃度5.0×109粒子/mLのエクソソーム1mLと10uLの蛍光標識物質(Vybrant(商標)DiD Cell-Labeling Solution,ThermoFisher Scientific,V22887)とを、1.5mLチューブに移した。混合物を10倍~100倍容積のDPBSで希釈し、TFF装置内のリザーバーにそれぞれ注ぎ、混合した。
【0082】
次に、混合物を80,000~150,000Хgの速度で遠心分離して、蛍光標識エクソソームをスピンダウンした。蛍光標識エクソソームを1mLのDPBSに分散させ、蛍光標識エクソソーム溶液を得た(
図6及び
図7)。
【0083】
(3)メンブレンフィルター濾過法を用いた蛍光標識機能性エクソソームの調製(比較例2)
前記(1)と同様の方法でエクソソームと蛍光標識物質との混合物を調製した。具体的には、濃度5.0×109粒子/mLのエクソソーム1mLと100uLの蛍光標識物質(Vybrant(商標)DiD Cell-Labeling Solution,ThermoFisher Scientific, V22887)を、1.5mLチューブに移した。混合物を10倍~100倍容積のDPBSで希釈し、TFF装置内のリザーバーにそれぞれ注ぎ、混合した。
【0084】
次に、混合物を、3~50KDaの濾過能を有するメンブレンフィルター(Amicon(登録商標)Ultra-15 Centrifugal Filter Units,Merck)を用いて30分間、1,000×g~4,000×gの速度で遠心分離し、蛍光標識エクソソームを濃縮精製した。蛍光標識エクソソームを1.5mLチューブで回収し、蛍光標識エクソソーム溶液を得た(
図6及び
図7)。
【0085】
5.蛍光標識機能性エクソソームの特性分析
前記4(1)で調製した蛍光標識機能性エクソソームの蛍光標識能を確認するために、10
8~10
10個のエクソソームが分散したDPBS1mLと細胞培養液9mLとを混合し、ヒト角質形成細胞(HaCaT cell)に1時間処理した。エクソソーム処理されたヒト角質形成細胞において、共焦点蛍光顕微鏡を用いて蛍光標識エクソソームの細胞内浸透を確認した(
図8)。
【0086】
6.クロスフロー濾過方式を用いたPEG化機能性エクソソームの調製
前記4(1)と類似する方法でPEG化エクソソームを調製した。濃度5.0×109粒子/mLのエクソソーム1mLと10μLの1~1,000mg/mLのポリエチレングリコール(PEG)とを、1.5mLチューブに移した。混合物を10倍~100倍容積のDPBSで希釈し、TFF装置内のリザーバーにそれぞれ注ぎ、混合した。エクソソームとPEGとの化学的結合を誘導するために、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)/N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)架橋過程を行った。1~100mMのEDC500μLと同じ濃度のNHS500μLとをエクソソーム/PEG混合物に添加し、約1~30分間リザーバーで反応させた。
【0087】
前記過程の後、残留化学物質及びPEGを除去するために洗浄工程を行った。
図4に示すように、すべてのクランプを取り外した。ポンプ1を10~250cc/分の速度で30分~3時間作動させ、ポンプ2及び3を5~10~50cc/分の速度で30分~3時間作動させた。ポンプ1は、混合溶液がTFFとリザーバーを循環させる用途に使用され、ポンプ2及び3は、それぞれ洗浄(ウォッシング)用のPBSをリザーバーに送達する用途、及び残留蛍光標識物質を含む廃棄溶液を回収する用途に使用された。前記工程中に、TFFフィルターのメンブレン孔よりも大きなエクソソームはフィルターに濾過されないが、メンブレン孔よりも小さな化学物質等は濾過されて、エクソソームと反応しない未反応物質は除去され、表面改質されたエクソソームのみが得られた。
【0088】
7.PEG化機能性エクソソームの特性分析
前記6により、ヒト脂肪由来幹細胞から抽出されたエクソソームの物理的特性変化をDLS及びゼータ電位で確認することにより、エクソソーム粒子の表面改質の有無を確認した。PEG化機能性エクソソームは、未処理のエクソソームと比較して粒径分布が大きくなることが確認された(
図9及び
図10)。
【0089】
8.クロスフロー濾過方式を用いた薬物担持機能性エクソソームの調製
前記4(1)と類似する方法で薬物担持エクソソームを調製及び精製した。濃度5.0×109粒子/mLのエクソソーム1mLに1~1,000μgのドキソルビシンを100μL添加した。混合物を10倍~100倍容積のDPBSで希釈し、TFF装置内のシングルユースバッグ(Single-use bag)にそれぞれ注ぎ、混合した。薬物のエクソソーム内への担持のために、混合物が入っているシングルユースバッグを、4℃以下に維持する超音波処理水浴(sonication water bath)に浸した状態で工程を行った。
【0090】
図3に示すTFF装置を用いてエクソソームと薬物との混合物を循環させて反応させる過程を施した。このとき、シングルユースバッグは、弱い超音波処理(sonication)が行われている水浴(water bath)に浸されたまま維持された。TFFフィルターのP(パーミエイト)方向に接続されたチューブ及び洗浄用PBSが、リザーバーに流入するチューブをクランプで塞ぎ、反応物が外部に漏れたり、外部バッファーが混入したりすることを防止した。ポンプ1を10~100cc/分の速度で10秒~1時間作動させ、溶液中のエクソソームと蛍光標識物質との混合溶液がTFFフィルター内部を循環するようにした。前記過程でエクソソームに薬物が担持された。
【0091】
前記過程の後、残留薬物を除去するために洗浄工程を行った。
図4に示すように、すべてのクランプを取り外した。ポンプ1を10~250cc/分の速度で30分~3時間作動させ、ポンプ2及び3を5~10~50cc/分の速度で30分~3時間作動させた。ポンプ1は、混合溶液がTFF及びリザーバーを循環させる用途に使用され、ポンプ2及び3は、それぞれ洗浄(ウォッシング)用のPBSをリザーバーに送達する用途、及び残留薬物を含む廃棄溶液を回収する用途に使用された。前記工程中に、TFFフィルターのメンブレン孔よりも大きなエクソソームはフィルターに濾過されないが、メンブレン孔よりも小さな薬物は濾過されて、エクソソームに担持されていない薬物は除去され、蛍光標識されたエクソソームのみが得られた。
【0092】
9.薬物担持機能性エクソソームの特性分析
薬物が担持されたエクソソームの薬物担持量を確認するために、10
8~10
10個のエクソソームが分散したDPBS1mLにおいて、紫外可視分光光度計を用いてエクソソーム内部の薬物担持を確認した(
図11)。
図11によれば、エクソソーム5×10
9粒子に約20μgのドキソルビシンが担持されていることを確認した。
【0093】
10.連続的なTFF工程を用いた高濃度のヒト脂肪由来幹細胞エクソソーム抽出
前記1で得られたヒト脂肪由来幹細胞培養液から、連続的なクロスフロー濾過方式(Tangential Flow Filtration System)を用いてエクソソームを抽出及び精製した。一次クロスフロー濾過方式に100または500KDaの濾過能を有するフィルターを使用し、細胞培養液を10倍または100倍濃縮してエクソソームを回収した。回収されたエクソソームを直ちに二次クロスフロー濾過方式のフィルターに適用し、一次クロスフロー濾過フィルターの0.5倍~0.01倍の大きさを有する二次クロスフロー濾過フィルターを用いて、細胞培養液を10倍又は100倍さらに濃縮して高濃度のエクソソームを回収した。エクソソーム純度を高めるために、回収されたエクソソームを10倍~100倍容積のDPBSに希釈し、100または500KDaの濾過能を有するフィルターを用いて再び濃縮した。抽出工程を
図12、
図13及び
図14に示した。連続的なTFF工程により得られたエクソソームの収率は、初期CM量に対して、生産されたエクソソーム及びタンパク質量で確認した(
図15)。
【国際調査報告】