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特表2023-517374肝硬変の治療のための銅クラスター及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-25
(54)【発明の名称】肝硬変の治療のための銅クラスター及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/34 20060101AFI20230418BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230418BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20230418BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K33/34
A61P1/16
A61K47/54
A61K47/61
A61K47/62
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555679
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 CN2020130028
(87)【国際公開番号】W WO2021184807
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/079505
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521313935
【氏名又は名称】武漢広行科学研究有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN VAST CONDUCT SCIENCE FOUNDATION CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 506, Building 1, Optics Valley International Biomedical Enterprise Accelerator, No. 388 Gaoxin 2nd Road, Donghu New Technology Development Zone Wuhan, Hubei 430070 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】スゥン、タオレイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076BB11
4C076CC21
4C076CC41
4C076DD56
4C076DD60
4C076EE37
4C076EE41
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA01
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA21
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA75
(57)【要約】
本発明は、対象における肝硬変を治療するためのリガンド結合銅クラスター(CuC)および前記リガンド結合CuCを含む組成物の使用を提供する。本発明は、さらに対象における肝硬変を治療するための医薬の製造のためのリガンド結合銅クラスター(CuC)の使用を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝硬変を有する対象を治療するためのリガンド結合銅クラスター(CuC)の使用であって、前記リガンド結合CuCが、
銅コアと、
前記銅コアに結合して前記リガンド結合銅クラスター(CuC)を形成するリガンドと、
を含む、使用。
【請求項2】
前記銅コアは、直径が0.5~5nmである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記銅コアは、直径が0.5~3nmである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記リガンドが、チミン、チミン修飾ヒアルロン酸(TMHA)、L-システインとその誘導体、D-システインとその誘導体、システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体、およびその他のチオール含有化合物からなる群より選ばれる一つである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記L-システインとその誘導体は、L-システイン、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、およびN-アセチル-L-システイン(L-NAC)からなる群より選ばれ、そして前記D-システインとその誘導体は、D-システイン、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、およびN-アセチル-D-システイン(D-NAC)からなる群より選ばれる、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体は、システイン含有ジペプチド、システイン含有トリペプチド、またはシステイン含有テトラペプチドである、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記システイン含有ジペプチドは、L(D)-システイン-L(D)-アルギニンジペプチド(CR)、L(D)-アルギニン-L(D)-システインジペプチド(RC)、L(D)-ヒスチジン-L(D)-システインジペプチド(HC)、およびL(D)-システイン-L(D)-ヒスチジンジペプチド(CH)からなる群より選ばれる、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記システイン含有トリペプチドは、グリシン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(GCR)、L(D)-プロリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(PCR)、L(D)-リシン-L(D)-システイン-L(D)-プロリントリペプチド(KCP)、およびL(D)-グルタチオン(GSH)からなる群より選ばれる、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記システイン含有テトラペプチドは、グリシン-L(D)-セリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GSCR)、およびグリシン-L(D)-システイン-L(D)-セリン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GCSR)からなる群より選ばれる、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
前記その他のチオール含有化合物は、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L(D)-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、およびドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる、請求項4に記載の使用。
【請求項11】
対象における肝硬変を治療するための医薬の製造におけるリガンド結合銅クラスター(CuC)の使用であって、前記リガンド結合CuCが、
銅コアと、
前記銅コアに結合して前記リガンド結合銅クラスター(CuC)を形成するリガンドと、
を含む、使用。
【請求項12】
前記銅コアは、直径が0.5~5nmである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記銅コアは、直径が0.5~3nmである、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記リガンドは、チミン、チミン修飾ヒアルロン酸(TMHA)、L-システインとその誘導体、D-システインとその誘導体、システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体、およびその他のチオール含有化合物からなる群より選ばれる一つである、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記L-システインとその誘導体は、L-システイン、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、およびN-アセチル-L-システイン(L-NAC)からなる群より選ばれ、そして前記D-システインとその誘導体は、D-システイン、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、およびN-アセチル-D-システイン(D-NAC)からなる群より選ばれる、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体は、システイン含有ジペプチド、システイン含有トリペプチド、またはシステイン含有テトラペプチドである、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記システイン含有ジペプチドは、L(D)-システイン-L(D)-アルギニンジペプチド(CR)、L(D)-アルギニン-L(D)-システインジペプチド(RC)、L(D)-ヒスチジン-L(D)-システインジペプチド(HC)、およびL(D)-システイン-L(D)-ヒスチジンジペプチド(CH)からなる群より選ばれる、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記システイン含有トリペプチドは、グリシン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(GCR)、L(D)-プロリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(PCR)、L(D)-リシン-L(D)-システイン-L(D)-プロリントリペプチド(KCP)、およびL(D)-グルタチオン(GSH)からなる群より選ばれる、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記システイン含有テトラペプチドは、グリシン-L(D)-セリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GSCR)、およびグリシン-L(D)-システイン-L(D)-セリン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GCSR)からなる群より選ばれる、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記その他のチオール含有化合物が、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L(D)-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、およびドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンド結合銅クラスター(CuCs)、リガンド結合CuCsを含む組成物、およびそれらの肝硬変の治療のための使用に関する。本発明は、さらに、肝硬変の治療のためのリガンド結合CuCsおよび組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、ヒト体内の最大の固形臓器であり、凝固、酸素輸送、および免疫系を補助する血液タンパク質の製造、過剰の栄養素の貯蔵および一部の栄養素の血流への返送、食品を消化するための胆汁の製造、グリコーゲンとしての糖(グルコース)の体における蓄積の補助、薬物およびアルコールを含む血流中の有害物質からの生体保護、および飽和脂肪の分解とコレステロールの生成、を含む多くの重要な機能を実行する。
【0003】
肝硬変は、肝臓に対する長期間の連続的損傷により長年にわたって進行していく、緩徐進行性疾患である。肝硬変の進行と共に、健康な肝臓組織は徐々に破壊され、瘢痕組織に置き換われる。瘢痕組織は、肝臓を通過する血液の流れを遮断し、栄養、ホルモン、薬物および天然毒素を処理する肝臓の能力を低下させる。また、肝臓によって作られたタンパク質および他の物質の生成を減少させる。肝硬変は、最終的に、肝臓移植が必要とする肝不全および/または肝臓癌につながる可能性がある。
【0004】
肝硬変の初期段階では、肝臓補償機能が強いため、明らかな症状はない。後期において、症状は、肝臓機能障害、門脈圧亢進、上部消化管出血、肝性脳症、二次感染、脾臓機能亢進、腹水、癌化および他の合併症を含む。肝硬変は、漸進的な肝臓の変形および硬化から生じる。組織病理学的には、肝硬変は、広範な肝細胞壊死、残留肝細胞の結節状再生、結合組織の過形成および線維性中隔の生成を特徴とし、肝小葉構造の破壊および偽小葉の形成をもたらす。
【0005】
肝硬変にはさまざまな原因がある。肝硬変を有する一部の人々の肝臓損傷は1つ以上の原因によるものである。肝硬変の一般的な原因は、長期間のアルコール乱用、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの重複感染、脂肪性肝疾患、毒性金属、遺伝子疾患、栄養障害、工業性毒物、麻薬、循環障害、代謝障害、胆汁うつ滞、住血吸虫症などを含む。
【0006】
肝硬変は、多くの検査/技術により診断することができる。例えば、血液検査において、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアルカリホスファターゼ(ALP)を含む肝臓酵素及びビリルビンのレベルが増加し、血液タンパク質のレベルが減少する場合、肝硬変を示唆し得る。
【0007】
現在、治療は、その原因に対処することによって肝硬変の進行を遅延させることができるが、肝硬変のための特定の処置は存在しない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、肝硬変を有する対象の治療のためのリガンド結合銅クラスター(CuC)の使用であって、前記リガンド結合CuCが、銅コアと、前記銅コアに結合して前記リガンド結合銅クラスター(CuC)を形成するリガンドと、を含む、使用を提供する。
【0009】
前記治療用途の特定の実施形態では、前記銅コアは、直径が0.5~5nmである。特定の実施形態では、前記銅コアは、直径が0.5~3nmである。
【0010】
前記治療用途の特定の実施形態では、前記リガンドは、チミン、チミン修飾ヒアルロン酸(TMHA)、L-システインとその誘導体、D-システインとその誘導体、システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体、およびその他のチオール含有化合物からなる群より選ばれる一つである。
【0011】
前記治療用途の特定の実施形態では、前記L-システインとその誘導体は、L-システイン、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、およびN-アセチル-L-システイン(L-NAC)からなる群より選ばれ、そして前記D-システインとその誘導体は、D-システイン、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、およびN-アセチル-D-システイン(D-NAC)からなる群より選ばれる。
【0012】
前記治療用途の特定の実施形態では、前記システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体は、システイン含有ジペプチド、システイン含有トリペプチド、またはシステイン含有テトラペプチドである。
【0013】
前記治療用途の特定の実施形態では、前記システイン含有ジペプチドは、L(D)-システイン-L(D)-アルギニンジペプチド(CR)、L(D)-アルギニン-(D)L-システインジペプチド(RC)、L(D)-ヒスチジン-L(D)-システインジペプチド(HC)、およびL(D)-システイン-L(D)-ヒスチジンジペプチド(CH)からなる群より選ばれる。
【0014】
前記治療用途の特定の実施形態では、前記システイン含有トリペプチドは、グリシン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(GCR)、L(D)-プロリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(PCR)、L(D)-リシン-L(D)-システイン-L(D)-プロリントリペプチド(KCP)、およびL(D)-グルタチオン(GSH)からなる群より選ばれる。
【0015】
前記治療用途の特定の実施形態では、前記システイン含有テトラペプチドは、グリシン-L(D)-セリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GSCR)、およびグリシン-L(D)-システイン-L(D)-セリン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GCSR)からなる群より選ばれる。
【0016】
前記治療用途の特定の実施形態では、前記その他のチオール含有化合物は、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L(D)-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、およびドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる。
【0017】
本発明は、また、対象における肝硬変を治療するための医薬の製造におけるリガンド結合銅クラスター(CuC)の使用であって、前記リガンド結合CuCが、銅コアと、前記銅コアに結合して前記リガンド結合銅クラスター(CuC)を形成するリガンドと、を含む、使用を提供する。
【0018】
前記製造用途の特定の実施形態では、前記銅コアは、直径が0.5~5nmである。特定の実施形態では、前記銅コアは、直径が0.5~3nmである。
【0019】
前記製造用途の特定の実施形態では、前記リガンドは、チミン、チミン修飾ヒアルロン酸(TMHA)、L-システインとその誘導体、D-システインとその誘導体、システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体、およびその他のチオール含有化合物からなる群より選ばれる一つである。
【0020】
前記製造用途の特定の実施形態では、前記L-システインとその誘導体は、L-システイン、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、およびN-アセチル-L-システイン(L-NAC)からなる群より選ばれ、そして前記D-システインとその誘導体が、D-システイン、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、およびN-アセチル-D-システイン(D-NAC)からなる群より選ばれる。
【0021】
前記製造用途の特定の実施形態では、前記システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体は、システイン含有ジペプチド、システイン含有トリペプチド、またはシステイン含有テトラペプチドである。
【0022】
前記製造用途の特定の実施形態では、前記システイン含有ジペプチドは、L(D)-システイン-L(D)-アルギニンジペプチド(CR)、L(D)-アルギニン-L(D)-システインジペプチド(RC)、L(D)-ヒスチジン-L(D)-システインジペプチド(HC)、およびL(D)-システイン-L(D)-ヒスチジンジペプチド(CH)からなる群より選ばれる。
【0023】
前記製造用途の特定の実施形態では、前記システイン含有トリペプチドは、グリシン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(GCR)、L(D)-プロリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(PCR)、L(D)-リシン-L(D)-システイン-L(D)-プロリントリペプチド(KCP)、およびL(D)-グルタチオン(GSH)からなる群より選ばれる。
【0024】
前記製造用途の特定の実施形態では、前記システイン含有テトラペプチドは、グリシン-L(D)-セリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GSCR)、およびグリシン-L(D)-システイン-L(D)-セリン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GCSR)からなる群より選ばれる。
【0025】
前記製造用途の特定の実施形態では、前記その他のチオール含有化合物は、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L(D)-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、およびドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる。
【0026】
本発明の目的および利点は、添付の図面に関連するその好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
次に、本発明による好ましい実施形態を、同様の参照番号が同様の要素を示す図を参照して説明する。
【0028】
図1】L-GSH-CuCの同定データを示す。(A)GSH-CuCの典型的な透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。(B)TEM画像から算出されたGSH-CuCのサイズ分布である。(C)GSH-CuCにおけるCu(0)の2p3/2および2p1/2電子のX線光電子分光(XPS)スペクトルである。(D)GSH-CuC(上)とGSH(下)とのフーリエ変換赤外線(FT-IR)分光の比較である。(E)GSH-CuCの蛍光励起(左)および発光スペクトル(右)である。
【0029】
図2】1)空白対照群、2)モデル群、3)ソラフェニブで治療した陽性群、4)Cu-1低用量群、5)Cu-1高用量群、6)Cu-2低用量群、および7)Cu-2高用量群を示す、肝硬変モデルマウスにおける血清中の(A)ALT、(B)AST、(C)TBIL、(D)MAOおよび(E)ALBレベルに対する様々な用量のB-01およびB-02の効果を示す棒グラフである。
【0030】
図3】(A)空白対照群、(B)モデル群、(C)陽性対照群、(D)Cu-1低用量群、(E)Cu-1高用量群のHE染色画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、以下の本発明の特定の実施形態に対する詳細な説明を参照することによって、より容易に理解することができる。
【0032】
本出願全体において、刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本発明が適用する技術の現状をより十分に説明するために、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0033】
リガンド結合銅クラスターは、二つから数百の銅原子からなる銅コアと、リガンドとから構成される。前記リガンドは、前記リガンド結合銅クラスター分子の一部として、銅コアに結合し、溶液において安定的なリガンド結合銅クラスターを形成する。銅原子の低いコントラストのため、TEMにより極めて正確な銅コアのサイズを提供することが困難である。一般的には、TEMにより測定されたリガンド結合銅クラスターにおける銅コアのサイズが、0.5~5nmの範囲にあると思われる。
【0034】
本発明は、一つまたは複数のリガンドが銅コアに結合した、リガンド結合銅クラスター(CuCs)を提供する。前記リガンドと銅コアとの結合とは、リガンドが、共有結合、水素結合、静電気力、疎水性力(hydrophobic force)、ファンデルワールス力等を介して銅コアと溶液中で安定している複合体を形成することを意味する。特定の実施形態では、前記銅コアの直径が、0.5~5 nmであり、好ましくは0.5~3 nmの範囲にあり、より好ましくは0.5~2.5nmの範囲にある。
【0035】
特定の実施形態では、前記リガンドは、チミン、チミン修飾ヒアルロン酸(TMHA)、L-システイン、D-システイン、及び、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-L-システイン、及びN-アセチル-D-システイン等のその他のシステイン誘導体;システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体(L(D)-システイン-L(D)-アルギニンジペプチド(CR)、L(D)-アルギニン-L(D)-システインジペプチド(RC)、L(D)-システイン-L(D)-ヒスチジン(CH)、グリシン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(GCR)、L(D)-プロリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(PCR)、L(D)-グルタチオン(GSH)、グリシン-L(D)-セリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GSCR)及びグリシン-L(D)-システイン-L(D)-セリン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GCSR)等の、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド及びその他のシステイン含有ペプチドを含むが、これらに限定されない);及び1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L(D)-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン及びドデシルメルカプタンのうちの一つ又は複数等のその他のチオール含有化合物を含むが、これらに限定されない。
【0036】
異なるサイズを有するリガンド結合CuCsは、文献に記載の方法により製造されることができる(Deng 2018、Jia 2013;Wang 2013)。
【0037】
本発明は、肝硬変を有する対象を治療するための組成物を提供する。特定の実施形態では、前記組成物は、リガンド結合銅クラスター(CuCs)と、薬理学的に許容される賦形剤と、を含む。特定の実施形態では、前記賦形剤は、リン酸緩衝液、または、生理食塩水である。特定の実施形態では、前記対象は、人である。特定の実施形態では、前記対象は、犬のようなペット動物である。
【0038】
本発明は、対象における肝硬変の治療のための医薬の製造における上文で開示されたリガンド結合CuCsの使用を提供する。
【0039】
本発明は、対象における肝硬変の治療のための上文で開示されたリガンド結合CuCsの使用、または上文で開示されたリガンド結合CuCsを使用して対象における肝硬変を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、前記治療方法は、前記対象に薬学的に有効な量のリガンド結合CuCsを投与することを含む。前記薬学的に有効な量は、通常の体内研究によって確認することができる。
【0040】
以下の実施例は、本発明の原理を説明することのみを目的として提供されている。それらは、決して本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0041】
実施形態
【0042】
実施形態1. TMHAを有するTMHA修飾CuCsの合成
【0043】
10mLのTMHA(DSが10.5%)溶液(0.1mM、pH7.0)を徐々に37℃まで加熱して、TMHAを溶解した。2mLのCuSO(20mM、pH7.0)溶液を滴下し、遮光しながらさらに37℃で20分間反応させた。UV光照射(365nm)で、明るいオレンジ色の発光がはっきりと見られ、発光TMHA修飾CuCsの合成に成功したことを示した。最後に、使用まで、得られた溶液を4℃で遮光保存した。球形TMHA修飾CuCsの銅コアは、直径が0.5~3nmの範囲にあり、平均直径が1.64±0.48nmであった。
【0044】
実施形態2. 異なるリガンドを有するリガンド結合CuCsの合成および同定
【0045】
2.1 L-グルタチオン(GSH)結合銅クラスター(L-GSH-CuCs)の合成
【0046】
50mLの水にグルタチオン(GSH)500mgを加え、ゆっくり攪拌しながら5mMのCu(NO溶液20mLをGSH溶液に加え、速やかに白色懸濁液が形成された。混合液を50~60℃に徐々に加熱し、20分間加熱し続け、溶液が淡黄色で透明になるまで1MのNaOH溶液を滴下した。生成物を室温まで冷却し、数倍の体積のエタノールを加えることで生成物を沈殿させ、3回繰り返した。
【0047】
2.2 L-システイン結合銅クラスターの合成
【0048】
50mLの10mMのCuClを、新鮮に調製したL-システイン(50mL、10mM)溶液に、激しく撹拌しながら、1滴ずつ徐々に加えた。約30分後、0.5mLのNaOH(1M)を1滴ずつ徐々に上記溶液に加えた。2時間反応を続けた。生成物は8000rpmで20分間遠心され、上澄み液を採取して4℃で遮光保存した。
【0049】
2.3 PEG結合銅クラスターの合成
【0050】
室温で2.5gのPEG-SH(分子量2000または5000)を100mlの超純水に溶解させ、激しく攪拌しながら、4mLの0.5MのCu(NO溶液を1滴ずつ滴下して加えた。混合液を色が引いて徐々に乳白色になるまで室温で一時攪拌した。上記ゲルを徐々に80℃に加熱し、15分間保持した。溶液が透明になるまで3MのNaOH溶液を滴下した。生成物を8000rpmで20分間遠心され、最終的に得られた生成物を凍結乾燥機で凍結乾燥して固体サンプルを得た。
【0051】
2.4 その他のリガンドを有するリガンド結合銅クラスターの合成
【0052】
その他のリガンドを有するリガンド結合銅クラスターも、上記方法により合成されることができ、その具体的な合成方法は、いくつかの溶媒と操作を少し変更する必要がある。その他のリガンドは、チミン、L(D)-システイン、及び、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-L-システイン、及びN-アセチル-D-システイン等のその他のシステイン誘導体;システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体(L(D)-システイン-L(D)-アルギニンジペプチド(CR)、L(D)-アルギニン-L(D)-システインジペプチド(RC)、L(D)-システイン-L(D)-ヒスチジン(CH)、グリシン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(GCR)、L(D)-プロリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(PCR)、L(D)-グルタチオン(GSH)、グリシン-L(D)-セリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GSCR)及びグリシン-L(D)-システイン-L(D)-セリン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GCSR)等の、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド及びその他のシステイン含有ペプチドを含むが、これらに限定されない);及び1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L(D)-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン及びドデシルメルカプタンのうちの一つ又は複数等のその他のチオール含有化合物を含むが、これらに限定されない。
【0053】
2.5 リガンド結合銅クラスターの同定
【0054】
以下、L-GSH-CuCsの同定データを例として示す。
【0055】
1)透過型電子顕微鏡(TEM)によるモーフォロジーの観察
【0056】
試験粉末(GSH-CuCsサンプル)を超純水に2mg/Lになるまで溶解してサンプルとし、そして懸滴法により試験サンプルを製造した。より具体的に、5μLのサンプルを銅メッシュに滴下し、水滴がなくなるまで自然蒸発させ、そしてJEM-2100F STEM/EDS電界放出形高分解能TEMによりサンプルのモーフォロジーを観察した。
【0057】
図1のパネルAとパネルBはGSH-CuCsの典型的なSEM画像を示し、異なるTEM画像からそれらのサイズ分布を算出した。その結果、GSH-CuCsは良好な分散性を有し、そのサイズは0.5~5.0nmの範囲にあった。
【0058】
2)X線光電子分光法
【0059】
ESCALAB 250Xi X線光電子分光器でX線光電子分光(XPS)を測定した。両面導電接着テープ(3mm×3mm)をアルミ箔に貼り付け、試験粉末を両面テープに均一に塗布し、アルミ箔で覆った。サンプルは圧力8MPaで1分間保持した。表面の残留粉末を除去した後、中心サンプル(1mm×1mm)を切り出してXPSテストを行った。
【0060】
図1のパネルCは、GSH-CuCs中の銅元素のXPSスペクトルである。二つのピークはそれぞれ931.98eVと951.88eVに現れ、これは銅の2p3/2と2p1/2電子の結合エネルギーに起因する。942.0eV付近にCuの2p3/2サテライトピークがなかったため、Cu(II)電子が存在しないことが証明された。Cu(0)の結合エネルギーとCu(I)の結合エネルギーとの差は0.1eVしかないため、Cu(I)の形成を排除することはできず、また、得られたGSH-CuCsでは銅の価数が0と+1の間にある可能性が高い。
【0061】
3) フーリエ変換赤外線(FT-IR)分光法
【0062】
PerkinElemer LS 55蛍光分光器でFT-IRスペクトルを測定した。試験粉末を超純水に溶解し、室温で測定した。スキャン範囲は200-800nmで、サンプルセルは標準石英試験管で、光路は1cmであった。
【0063】
図1のパネルDはGSH-CuCs(上)とGSH(下)のFT-IRスペクトルの比較を示している。GSHはCOOH(1390と1500cm-1)、NH基のN-H伸縮(3410cm-1)、N-H屈曲(1610cm-1)という複数の特徴的な赤外波長域を示す。2503cm-1で観察されたピークはS-H伸縮振動モードに帰属できる。S-H伸縮振動帯(2503cm-1)を除いて、GSH-CuCsはすべて対応する赤外特性を持っている。その結果から、S-H結合が切断され、GSH分子はCu-S結合の形成によって銅コアの表面に結合することが分かった。
【0064】
4)蛍光分光法
【0065】
試験粉末を超純水に溶解し、室温で蛍光分光法により測定した。
【0066】
図1のE図に示すように、365nmでの励起ピーク下で、GSH-CuCは、595nmでピークがあり、対応する半値全幅(FWHM)が約80nmである赤色発光を示した。なお、凝集誘起発光が増強されるため、エタノールを溶液に加えるとGSH-CuCsのFL強度が著しく向上した。また、大きなストークス変位(230nm)は蛍光プローブ及びバイオグラフィーのための良好な見込みを示した。
【0067】
実施形態3
【0068】
3.1 材料および動物
【0069】
3.1.1 試験サンプル
【0070】
Cu-01: GSH修飾銅クラスター(L-GSH-CuCs)、0.5~5nmである。
【0071】
Cu-02: システイン修飾銅クラスター(L-Cys-CuCs)、0.5~5nmである。
【0072】
全ての試験サンプルは、上記の方法に従って調製されたがわずかな変更を加えた。それらの品質は上記の方法を使用して特徴づけられた。
【0073】
3.1.2 陽性対照サンプル
【0074】
ソラフェニブ(Sorafenib)。
【0075】
3.1.3 実験用動物および群分け
【0076】
70匹の、6~8週齢で、体重16~20gのSPF雄C57BL/6Nマウスは、Beijing Huafukang Experimental Animal Technology社(生産ライセンス番号:SCXK(Jing)2019-0008)から購入された。体重によって、それらを7の群(n=10)(空白対照群、モデル群、陽性対照群、Cu-1低用量群、Cu-1高用量群、Cu-2低用量群、Cu-2高用量群)にランダムに分けた。
【0077】
3.2 モデリング・プロトコル
【0078】
空白対照群を除いて、その他の群におけるマウスの肝硬変モデルは、四塩化炭素(CCl)誘導処理の方法により製造された。モデリング・プロトコルは、以下の通りであった。(1)それぞれのマウスは、週2回、合計8週間で、体重1gあたり7μLの10% CCl(オリーブ油で希釈したもの)を腹腔内注射し、空白対照群のマウスは、同じ量のオリーブ油溶媒を腹腔内注射した。(2)6週目から、2匹のマウスを選択し、そして毎週の最後の注射48時間後に処刑した。肝臓の外観を観察した。外観が肝硬変の特性と一致した後(8週目)、肝臓組織をホルマリンで固定した。HE染色およびマッソン染色(Masson staining)を使用して、肝硬変のモデルを評価した。
【0079】
3.3 投与
【0080】
モデリングが成功した後、陽性対照群におけるマウスに、胃内で25mg/kgソラフェニブを投与し、低用量または高用量の群のCu-1およびCu-2におけるマウスに、腹腔内注射により、それぞれ、2.5または10mg/kgの対応の試験材を投与した。そして、空白対照群およびモデル群におけるマウスに、腹腔内注射により、10mL/kgで生理食塩水を投与した。前記投与は、1日1回、20日間連続した。
【0081】
3.4 生化学的検査
【0082】
投与が完了した後、血液をマウスの眼窩から採取し、そして、Zhongsheng Beikongキットおよび生化学分析装置(Siemens)を用いて、アルブミン(ALbumin、ALB)、全ビリルビン(TBil)、アラニンアラニンアミノトランスフェラ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびモノアミンオキシダー(MAO)の生化学的検査のために、血清を得た。検出方法は、キットの指示に従って厳密に行った。
【0083】
【0084】
3.5 病理学的検査
【0085】
3.5.1 HE染色
【0086】
安楽死後、マウス肝臓組織サンプルを4%パラホルムアルデヒド固定剤で48時間以上固定した。固定後、肝臓サンプルをアルコール系列で脱水し、キシレンおよびエタノールで処理した。次いで、肝臓組織をワックス中に浸漬し、包埋した。包埋した材料がトリミングされ、付着、修復された後、パラフィンミクロトームで肝臓組織を4μmの厚さで薄切した。HE染色の主な過程は以下の通りであった。オーブン中で65℃でベーキングした後、切片をキシレンで処理し、エタノール系列で脱水した。切片をヘマトキシリン、青色発色性溶液(blue color-enhancing solution)および0.5%エオシンで順次染色し、次いでエタノール系列およびキシレンで処理し、中性ガムで密封した。顕微鏡で肝臓組織の線維症を観察した。
【0087】
3.5.2 マッソン染色
【0088】
ベーキング後、マウス肝臓組織切片を脱ロウし、脱水した。染色後、核をRegaud氏ヘマトキシリン染色溶液で染色した。水で洗浄した後、切片をMasson氏ポンソー赤色酸性フクシン(Masson's Ponceau Red Acidic Fuchsin)で染色し、切片を2%氷酢酸水溶液に浸漬し、1%ホスホモリブデン酸溶液で分化させた。アニリンブルーまたは淡緑色溶液で直接染色した後、切片を0.2%氷酢酸水溶液に少し浸漬し、その後95%アルコール、無水アルコールおよびキシレンで透明化させ、次いで中性ガムで密封した。顕微鏡で肝臓組織を観察した。
【0089】
3.6 実験結果
【0090】
3.6.1 成功したモデリング
【0091】
モデル群におけるマウスの肝臓は、増殖した繊維性隔壁により、異なるサイズの丸形または楕円形の塊に分割した。血清中のALT、TBil、およびAST指数は空白対照群のものと比較して有意に増加し、血清中のALBは空白対照群と比較して有意に減少し、MAO指数は対照群と有意差はなかったが、その値も増加した。上記すべての結果は、この実験モデルが成功したことを示唆している。
【0092】
3.6.2 アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、全ビリルビン(TBil)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、モノアミンオキシダーゼ(MAO)およびアルブミン(ALB)に対する試験薬物の効果
【0093】
図2Aに示すように、空白対照群と比較して、モデル群のALT活性が極めて有意に増加し(43.5±8.1U/Lから188.5±4.9U/Lに増加した;P<0.01)、モデル群マウスの肝臓機能が病理学的変化を有していることを示す。モデル群と比較して、低用量および高用量のCu-1およびCu-2(最低値は37.0±5.7U/L、最高値は38.6±5.6U/Lであった)、並びに陽性対照群(42.8±5.4U/L)は、ALT活性を空白対照群のレベルに有意に減少した(P<0.01)。
【0094】
図2Bに示すように、空白対照群と比較して、モデル群のAST活性が有意に増加した(141.8±13.5U/Lから192.0±11.3U/Lに増加した;P<0.05)。高用量のCu-1およびCu-2の投与は、それぞれ、AST活性を146.3±8.4U/Lまたは144.3±8.1U/Lに有意に減少することができ、これらが空白対照群と同様のレベル(141.8±13.5U/L)であるが、モデル群よりも有意に低い(P<0.01)。陽性対照群も、AST活性を減少することもできるが(165.5±11.6U/L;P<0.05)、減少幅が高用量群のCu-1およびCu-2よりも低い。
【0095】
図2Cに示すように、モデル群のTBil濃度は、空白対照群よりも有意に高くなった(1.02±0.20μmol/Lから2.91±0.39μmol/Lに増加した;P<0.01)。モデル群と比較して、低用量および高用量のCu-1およびCu-2の投与は、血清中のTBILレベルを有意に減少することができ(最高値は1.16±0.30μmol/L、最低値は1.08±0.08μmol/Lであった;P<0.01)、これらは、空白対照群に近い(1.02±0.20μmol/L;P<0.01)。
【0096】
図2Dに示すように、モデル群のMAO活性(21.5±0.7U/L)は、空白対照群(18.8±2.9U/L)よりも高いが、統計学的に有意な差がなく、四塩化炭素により誘導された肝硬変マウスにおけるMAO活性指標の変化が明らかでなかったと示した。しかしながら、モデル群と比較して、高用量のCu-1およびCu-2は、血清中のMAO活性を17.3±1.5U/L(P<0.01)または(18.3±2.1U/L;P<0.05)に有意に減少し、その効果が陽性対照群よりも優れた。
【0097】
図2Eに示すように、モデル群のALBレベル(24.2±0.6 g/L)は、空白対照群(22.1±1.3 g/L)よりも有意に低くなり(P<0.05)、四塩化炭素処理が血清中のALBレベルを有意に減少できることを示した。しかしながら、Cu-1およびCu-2は、血清中のALBレベルに有意な影響を与えなかった。
【0098】
以上の結果から、銅クラスター(CuCs)は用量依存的にALT、AST、TBILおよびMAOレベルを低下させ、マウスの肝機能が回復されたことが示唆され、その効果は少なくともある指標において陽性対照薬物より優れた。
【0099】
3.6.3 病理学的分析
【0100】
肝硬変は、肝臓組織の線維症および偽小葉の形成を病理学的な特徴とする。HE染色病理学的分析の結果は、図3Aに示すように、明瞭な構造を有し、肝小葉が完全で、肝細胞がきれいに配列され、中心静脈を中心として放射状に配列され、肝細胞の核が正常で、門脈域(catchment area)中の少量の繊維状組織のみを有していたことを示した。図3Bに示すように、モデル群の肝臓組織では、肝細胞が乱れ、バルーン状の構造が現れ、肝小葉がほとんど消失し、偽小葉(図3Bには右向きの矢印で示す)が多く生成され、肝組織に多くの増殖した原線維が存在し、丸型または楕円形の繊維性隔壁(図3Bには左向きの矢印で示す)が形成された。図3Cに示すように、モデル対照群と比較して、陽性対照群は肝臓損傷の有意な減少を示し、肝細胞は明らかに整然な配列を有し、線維過形成は明らかに減少し、繊維性隔壁を形成することなく、偽小葉が消失したが、正常な肝臓組織と比較して、陽性対照群の肝臓組織は細胞間ギャップの明らかな増加を示した(下向きの矢印によって示されている)。モデル対照群と比較して、銅クラスター薬物(Cu-1およびCu-2)を投与した2つの群は、線維過形成および偽小葉の明らかな減少により証明されるように、肝細胞が肝臓損傷から有意に回復したこと、および回復がある程度の用量依存性を示すことを示した。
【0101】
図3Dおよび図3Eは、肝臓損傷の回復について、例示的なCu-1の低用量および高用量薬物投与の効果をそれぞれ示したHE画像を示す。図3Dに示すように、Cu-1低用量薬物投与群は、肝細胞が比較的整然に配列され、偽小葉がほとんど消失し、線維過形成が明らかに減少したが、正常な肝臓組織と比較して、ある程度の肝細胞間ギャップの増加を示した(図3Dの下向きの矢印で示す)。図3Eに示されるように、Cu-1の低用量薬物投与群と比較して、Cu-1の高用量薬物投与群では、肝臓損傷が減少し、偽小葉が完全に消失し、線維過形成が確認されることなく、肝細胞間ギャップの識別可能な増加がなく、正常な肝臓組織と明らかな差異がないという点においてより良い効果を示した。結論として、A-01薬物は、陽性対照薬物よりも肝臓損傷の回復に優れた効果を示した。
【0102】
マッソン染色の結果は、HE染色の結果と同じ結論を提供した。
【0103】
Cu-2薬物もCu-1薬物と同様の効果を示し、詳細な説明は必要ではない。
【0104】
以上をまとめると、Cu-1およびCu-2試験薬物は、肝臓の繊維および肝臓の偽小葉を有意に減少させた。肝臓機能指標の試験結果はまた、肝臓機能の回復を示した。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および全ビリルビン(TBil)の変化は最も明らかであった。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびモノアミノオキシダーゼ(MAO)も有意に回復され、一方、アルブミン(ALB)に有意な変化はなかった。2つの試験薬物は、肝硬変マウスにおいて肝臓機能および肝臓の病理学的構造を有意に改善することができ、そして銅クラスターの全体的な効果は、陽性対照薬物ソラフェニブよりも優れた。将来のさらなる適用のための実験的根拠を提供する。
【0105】
その他のサイズのL-Cys-CuCsおよびL-GSH-CuCs、および異なるサイズのその他のリガンド結合CuCsも同様の効果を有し、一方、それらの効果はある程度ことなる。ここでは詳細に説明しない。
【0106】
本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、実施形態は例示的なものであり、本発明の範囲はそのように限定されないことが理解されるであろう。本発明の別の実施形態は、本発明が関係する当業者には明らかになるであろう。このような代替実施形態は、本発明の範囲内に包含されると考えられる。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定され、前述の説明によって支持される。

参照文献
Deng H.H. et al. An ammonia-based etchant for attaining copper nanoclusters with green fluorescence emission. Nanoscale, 2018, 10, 6467.
Jia X. et al. Cu Nanoclusters with Aggregation Induced Emission Enhancement. Small, 2013, DOI: 10.1002/smll.201300896.
Wang C. and Huang Y. GREEN ROUTE TO PREPARE BIOCOMPATIBLE AND NEAR INFRARED THIOLATE-PROTECTED COPPER NANOCLUSTERS FOR CELLULAR IMAGING. NANO: Brief Reports and Reviews. 2013, 8(5): 1350054 (10 pages).
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝硬変を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、リガンド結合銅クラスター(CuC)を含み、前記リガンド結合CuCが、
銅コアと、
前記銅コアに結合して前記リガンド結合銅クラスター(CuC)を形成するリガンドと、
を含む、医薬組成物
【請求項2】
前記銅コアは、直径が0.5~5nmである、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
前記銅コアは、直径が0.5~3nmである、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項4】
前記リガンドが、チミン、チミン修飾ヒアルロン酸(TMHA)、L-システインとその誘導体、D-システインとその誘導体、システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体、およびその他のチオール含有化合物からなる群より選ばれる一つである、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項5】
前記L-システインとその誘導体は、L-システイン、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、およびN-アセチル-L-システイン(L-NAC)からなる群より選ばれ、そして前記D-システインとその誘導体は、D-システイン、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、およびN-アセチル-D-システイン(D-NAC)からなる群より選ばれる、請求項4に記載の医薬組成物
【請求項6】
前記システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体は、システイン含有ジペプチド、システイン含有トリペプチド、またはシステイン含有テトラペプチドである、請求項4に記載の医薬組成物
【請求項7】
前記システイン含有ジペプチドは、L(D)-システイン-L(D)-アルギニンジペプチド(CR)、L(D)-アルギニン-L(D)-システインジペプチド(RC)、L(D)-ヒスチジン-L(D)-システインジペプチド(HC)、およびL(D)-システイン-L(D)-ヒスチジンジペプチド(CH)からなる群より選ばれる、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記システイン含有トリペプチドは、グリシン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(GCR)、L(D)-プロリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(PCR)、L(D)-リシン-L(D)-システイン-L(D)-プロリントリペプチド(KCP)、およびL(D)-グルタチオン(GSH)からなる群より選ばれる、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項9】
前記システイン含有テトラペプチドは、グリシン-L(D)-セリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GSCR)、およびグリシン-L(D)-システイン-L(D)-セリン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GCSR)からなる群より選ばれる、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記その他のチオール含有化合物は、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L(D)-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、およびドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる、請求項4に記載の医薬組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンド結合銅クラスター(CuCs)、リガンド結合CuCsを含む組成物、およびそれらの肝硬変の治療のための使用に関する
【背景技術】
【0002】
肝臓は、ヒト体内の最大の固形臓器であり、凝固、酸素輸送、および免疫系を補助する血液タンパク質の製造、過剰の栄養素の貯蔵および一部の栄養素の血流への返送、食品を消化するための胆汁の製造、グリコーゲンとしての糖(グルコース)の体における蓄積の補助、薬物およびアルコールを含む血流中の有害物質からの生体保護、および飽和脂肪の分解とコレステロールの生成、を含む多くの重要な機能を実行する。
【0003】
肝硬変は、肝臓に対する長期間の連続的損傷により長年にわたって進行していく、緩徐進行性疾患である。肝硬変の進行と共に、健康な肝臓組織は徐々に破壊され、瘢痕組織に置き換われる。瘢痕組織は、肝臓を通過する血液の流れを遮断し、栄養、ホルモン、薬物および天然毒素を処理する肝臓の能力を低下させる。また、肝臓によって作られたタンパク質および他の物質の生成を減少させる。肝硬変は、最終的に、肝臓移植が必要とする肝不全および/または肝臓癌につながる可能性がある。
【0004】
肝硬変の初期段階では、肝臓補償機能が強いため、明らかな症状はない。後期において、症状は、肝臓機能障害、門脈圧亢進、上部消化管出血、肝性脳症、二次感染、脾臓機能亢進、腹水、癌化および他の合併症を含む。肝硬変は、漸進的な肝臓の変形および硬化から生じる。組織病理学的には、肝硬変は、広範な肝細胞壊死、残留肝細胞の結節状再生、結合組織の過形成および線維性中隔の生成を特徴とし、肝小葉構造の破壊および偽小葉の形成をもたらす。
【0005】
肝硬変にはさまざまな原因がある。肝硬変を有する一部の人々の肝臓損傷は1つ以上の原因によるものである。肝硬変の一般的な原因は、長期間のアルコール乱用、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの重複感染、脂肪性肝疾患、毒性金属、遺伝子疾患、栄養障害、工業性毒物、麻薬、循環障害、代謝障害、胆汁うつ滞、住血吸虫症などを含む。
【0006】
肝硬変は、多くの検査/技術により診断することができる。例えば、血液検査において、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアルカリホスファターゼ(ALP)を含む肝臓酵素及びビリルビンのレベルが増加し、血液タンパク質のレベルが減少する場合、肝硬変を示唆し得る。
【0007】
現在、治療は、その原因に対処することによって肝硬変の進行を遅延させることができるが、肝硬変のための特定の処置は存在しない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、肝硬変を治するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、リガンド結合銅クラスター(CuC)を含み、前記リガンド結合CuCが、銅コアと、前記銅コアに結合して前記リガンド結合銅クラスター(CuC)を形成するリガンドと、を含む、医薬組成物を提供する。
【0009】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記銅コアは、直径が0.5~5nmである。特定の実施形態では、前記銅コアは、直径が0.5~3nmである。
【0010】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記リガンドは、チミン、チミン修飾ヒアルロン酸(TMHA)、L-システインとその誘導体、D-システインとその誘導体、システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体、およびその他のチオール含有化合物からなる群より選ばれる一つである。
【0011】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記L-システインとその誘導体は、L-システイン、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、およびN-アセチル-L-システイン(L-NAC)からなる群より選ばれ、そして前記D-システインとその誘導体は、D-システイン、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、およびN-アセチル-D-システイン(D-NAC)からなる群より選ばれる。
【0012】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体は、システイン含有ジペプチド、システイン含有トリペプチド、またはシステイン含有テトラペプチドである。
【0013】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記システイン含有ジペプチドは、L(D)-システイン-L(D)-アルギニンジペプチド(CR)、L(D)-アルギニン-(D)L-システインジペプチド(RC)、L(D)-ヒスチジン-L(D)-システインジペプチド(HC)、およびL(D)-システイン-L(D)-ヒスチジンジペプチド(CH)からなる群より選ばれる。
【0014】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記システイン含有トリペプチドは、グリシン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(GCR)、L(D)-プロリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(PCR)、L(D)-リシン-L(D)-システイン-L(D)-プロリントリペプチド(KCP)、およびL(D)-グルタチオン(GSH)からなる群より選ばれる。
【0015】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記システイン含有テトラペプチドは、グリシン-L(D)-セリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GSCR)、およびグリシン-L(D)-システイン-L(D)-セリン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GCSR)からなる群より選ばれる。
【0016】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記その他のチオール含有化合物は、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L(D)-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、およびドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる。
【0017】
本発明の目的および利点は、添付の図面に関連するその好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
次に、本発明による好ましい実施形態を、同様の参照番号が同様の要素を示す図を参照して説明する。
【0019】
図1】L-GSH-CuCの同定データを示す。(A)GSH-CuCの典型的な透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。(B)TEM画像から算出されたGSH-CuCのサイズ分布である。(C)GSH-CuCにおけるCu(0)の2p3/2および2p1/2電子のX線光電子分光(XPS)スペクトルである。(D)GSH-CuC(上)とGSH(下)とのフーリエ変換赤外線(FT-IR)分光の比較である。(E)GSH-CuCの蛍光励起(左)および発光スペクトル(右)である。
【0020】
図2】1)空白対照群、2)モデル群、3)ソラフェニブで治療した陽性群、4)Cu-1低用量群、5)Cu-1高用量群、6)Cu-2低用量群、および7)Cu-2高用量群を示す、肝硬変モデルマウスにおける血清中の(A)ALT、(B)AST、(C)TBIL、(D)MAOおよび(E)ALBレベルに対する様々な用量のB-01およびB-02の効果を示す棒グラフである。
【0021】
図3】(A)空白対照群、(B)モデル群、(C)陽性対照群、(D)Cu-1低用量群、(E)Cu-1高用量群のHE染色画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、以下の本発明の特定の実施形態に対する詳細な説明を参照することによって、より容易に理解することができる。
【0023】
本出願全体において、刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本発明が適用する技術の現状をより十分に説明するために、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0024】
リガンド結合銅クラスターは、二つから数百の銅原子からなる銅コアと、リガンドとから構成される。前記リガンドは、前記リガンド結合銅クラスター分子の一部として、銅コアに結合し、溶液において安定的なリガンド結合銅クラスターを形成する。銅原子の低いコントラストのため、TEMにより極めて正確な銅コアのサイズを提供することが困難である。一般的には、TEMにより測定されたリガンド結合銅クラスターにおける銅コアのサイズが、0.5~5nmの範囲にあると思われる。
【0025】
本発明は、一つまたは複数のリガンドが銅コアに結合した、リガンド結合銅クラスター(CuCs)を提供する。前記リガンドと銅コアとの結合とは、リガンドが、共有結合、水素結合、静電気力、疎水性力(hydrophobic force)、ファンデルワールス力等を介して銅コアと溶液中で安定している複合体を形成することを意味する。特定の実施形態では、前記銅コアの直径が、0.5~5 nmであり、好ましくは0.5~3 nmの範囲にあり、より好ましくは0.5~2.5nmの範囲にある。
【0026】
特定の実施形態では、前記リガンドは、チミン、チミン修飾ヒアルロン酸(TMHA)、L-システイン、D-システイン、及び、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-L-システイン、及びN-アセチル-D-システイン等のその他のシステイン誘導体;システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体(L(D)-システイン-L(D)-アルギニンジペプチド(CR)、L(D)-アルギニン-L(D)-システインジペプチド(RC)、L(D)-システイン-L(D)-ヒスチジン(CH)、グリシン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(GCR)、L(D)-プロリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(PCR)、L(D)-グルタチオン(GSH)、グリシン-L(D)-セリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GSCR)及びグリシン-L(D)-システイン-L(D)-セリン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GCSR)等の、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド及びその他のシステイン含有ペプチドを含むが、これらに限定されない);及び1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L(D)-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン及びドデシルメルカプタンのうちの一つ又は複数等のその他のチオール含有化合物を含むが、これらに限定されない。
【0027】
異なるサイズを有するリガンド結合CuCsは、文献に記載の方法により製造されることができる(Deng 2018、Jia 2013;Wang 2013)。
【0028】
本発明は、肝硬変を有する対象を治療するための組成物を提供する。特定の実施形態では、前記組成物は、リガンド結合銅クラスター(CuCs)と、薬理学的に許容される賦形剤と、を含む。特定の実施形態では、前記賦形剤は、リン酸緩衝液、または、生理食塩水である。特定の実施形態では、前記対象は、人である。特定の実施形態では、前記対象は、犬のようなペット動物である。
【0029】
本発明は、対象における肝硬変の治療のための医薬の製造における上文で開示されたリガンド結合CuCsの使用を提供する。
【0030】
本発明は、対象における肝硬変の治療のための上文で開示されたリガンド結合CuCsの使用、または上文で開示されたリガンド結合CuCsを使用して対象における肝硬変を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、前記治療方法は、前記対象に薬学的に有効な量のリガンド結合CuCsを投与することを含む。前記薬学的に有効な量は、通常の体内研究によって確認することができる。
【0031】
以下の実施例は、本発明の原理を説明することのみを目的として提供されている。それらは、決して本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0032】
実施形態
【0033】
実施形態1. TMHAを有するTMHA修飾CuCsの合成
【0034】
10mLのTMHA(DSが10.5%)溶液(0.1mM、pH7.0)を徐々に37℃まで加熱して、TMHAを溶解した。2mLのCuSO(20mM、pH7.0)溶液を滴下し、遮光しながらさらに37℃で20分間反応させた。UV光照射(365nm)で、明るいオレンジ色の発光がはっきりと見られ、発光TMHA修飾CuCsの合成に成功したことを示した。最後に、使用まで、得られた溶液を4℃で遮光保存した。球形TMHA修飾CuCsの銅コアは、直径が0.5~3nmの範囲にあり、平均直径が1.64±0.48nmであった。
【0035】
実施形態2. 異なるリガンドを有するリガンド結合CuCsの合成および同定
【0036】
2.1 L-グルタチオン(GSH)結合銅クラスター(L-GSH-CuCs)の合成
【0037】
50mLの水にグルタチオン(GSH)500mgを加え、ゆっくり攪拌しながら5mMのCu(NO溶液20mLをGSH溶液に加え、速やかに白色懸濁液が形成された。混合液を50~60℃に徐々に加熱し、20分間加熱し続け、溶液が淡黄色で透明になるまで1MのNaOH溶液を滴下した。生成物を室温まで冷却し、数倍の体積のエタノールを加えることで生成物を沈殿させ、3回繰り返した。
【0038】
2.2 L-システイン結合銅クラスターの合成
【0039】
50mLの10mMのCuClを、新鮮に調製したL-システイン(50mL、10mM)溶液に、激しく撹拌しながら、1滴ずつ徐々に加えた。約30分後、0.5mLのNaOH(1M)を1滴ずつ徐々に上記溶液に加えた。2時間反応を続けた。生成物は8000rpmで20分間遠心され、上澄み液を採取して4℃で遮光保存した。
【0040】
2.3 PEG結合銅クラスターの合成
【0041】
室温で2.5gのPEG-SH(分子量2000または5000)を100mlの超純水に溶解させ、激しく攪拌しながら、4mLの0.5MのCu(NO溶液を1滴ずつ滴下して加えた。混合液を色が引いて徐々に乳白色になるまで室温で一時攪拌した。上記ゲルを徐々に80℃に加熱し、15分間保持した。溶液が透明になるまで3MのNaOH溶液を滴下した。生成物を8000rpmで20分間遠心され、最終的に得られた生成物を凍結乾燥機で凍結乾燥して固体サンプルを得た。
【0042】
2.4 その他のリガンドを有するリガンド結合銅クラスターの合成
【0043】
その他のリガンドを有するリガンド結合銅クラスターも、上記方法により合成されることができ、その具体的な合成方法は、いくつかの溶媒と操作を少し変更する必要がある。その他のリガンドは、チミン、L(D)-システイン、及び、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-L-システイン、及びN-アセチル-D-システイン等のその他のシステイン誘導体;システイン含有オリゴペプチドとそれらの誘導体(L(D)-システイン-L(D)-アルギニンジペプチド(CR)、L(D)-アルギニン-L(D)-システインジペプチド(RC)、L(D)-システイン-L(D)-ヒスチジン(CH)、グリシン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(GCR)、L(D)-プロリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニントリペプチド(PCR)、L(D)-グルタチオン(GSH)、グリシン-L(D)-セリン-L(D)-システイン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GSCR)及びグリシン-L(D)-システイン-L(D)-セリン-L(D)-アルギニンテトラペプチド(GCSR)等の、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド及びその他のシステイン含有ペプチドを含むが、これらに限定されない);及び1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L(D)-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン及びドデシルメルカプタンのうちの一つ又は複数等のその他のチオール含有化合物を含むが、これらに限定されない。
【0044】
2.5 リガンド結合銅クラスターの同定
【0045】
以下、L-GSH-CuCsの同定データを例として示す。
【0046】
1)透過型電子顕微鏡(TEM)によるモーフォロジーの観察
【0047】
試験粉末(GSH-CuCsサンプル)を超純水に2mg/Lになるまで溶解してサンプルとし、そして懸滴法により試験サンプルを製造した。より具体的に、5μLのサンプルを銅メッシュに滴下し、水滴がなくなるまで自然蒸発させ、そしてJEM-2100F STEM/EDS電界放出形高分解能TEMによりサンプルのモーフォロジーを観察した。
【0048】
図1のパネルAとパネルBはGSH-CuCsの典型的なSEM画像を示し、異なるTEM画像からそれらのサイズ分布を算出した。その結果、GSH-CuCsは良好な分散性を有し、そのサイズは0.5~5.0nmの範囲にあった。
【0049】
2)X線光電子分光法
【0050】
ESCALAB 250Xi X線光電子分光器でX線光電子分光(XPS)を測定した。両面導電接着テープ(3mm×3mm)をアルミ箔に貼り付け、試験粉末を両面テープに均一に塗布し、アルミ箔で覆った。サンプルは圧力8MPaで1分間保持した。表面の残留粉末を除去した後、中心サンプル(1mm×1mm)を切り出してXPSテストを行った。
【0051】
図1のパネルCは、GSH-CuCs中の銅元素のXPSスペクトルである。二つのピークはそれぞれ931.98eVと951.88eVに現れ、これは銅の2p3/2と2p1/2電子の結合エネルギーに起因する。942.0eV付近にCuの2p3/2サテライトピークがなかったため、Cu(II)電子が存在しないことが証明された。Cu(0)の結合エネルギーとCu(I)の結合エネルギーとの差は0.1eVしかないため、Cu(I)の形成を排除することはできず、また、得られたGSH-CuCsでは銅の価数が0と+1の間にある可能性が高い。
【0052】
3) フーリエ変換赤外線(FT-IR)分光法
【0053】
PerkinElemer LS 55蛍光分光器でFT-IRスペクトルを測定した。試験粉末を超純水に溶解し、室温で測定した。スキャン範囲は200-800nmで、サンプルセルは標準石英試験管で、光路は1cmであった。
【0054】
図1のパネルDはGSH-CuCs(上)とGSH(下)のFT-IRスペクトルの比較を示している。GSHはCOOH(1390と1500cm-1)、NH基のN-H伸縮(3410cm-1)、N-H屈曲(1610cm-1)という複数の特徴的な赤外波長域を示す。2503cm-1で観察されたピークはS-H伸縮振動モードに帰属できる。S-H伸縮振動帯(2503cm-1)を除いて、GSH-CuCsはすべて対応する赤外特性を持っている。その結果から、S-H結合が切断され、GSH分子はCu-S結合の形成によって銅コアの表面に結合することが分かった。
【0055】
4)蛍光分光法
【0056】
試験粉末を超純水に溶解し、室温で蛍光分光法により測定した。
【0057】
図1のE図に示すように、365nmでの励起ピーク下で、GSH-CuCは、595nmでピークがあり、対応する半値全幅(FWHM)が約80nmである赤色発光を示した。なお、凝集誘起発光が増強されるため、エタノールを溶液に加えるとGSH-CuCsのFL強度が著しく向上した。また、大きなストークス変位(230nm)は蛍光プローブ及びバイオグラフィーのための良好な見込みを示した。
【0058】
実施形態3
【0059】
3.1 材料および動物
【0060】
3.1.1 試験サンプル
【0061】
Cu-01: GSH修飾銅クラスター(L-GSH-CuCs)、0.5~5nmである。
【0062】
Cu-02: システイン修飾銅クラスター(L-Cys-CuCs)、0.5~5nmである。
【0063】
全ての試験サンプルは、上記の方法に従って調製されたがわずかな変更を加えた。それらの品質は上記の方法を使用して特徴づけられた。
【0064】
3.1.2 陽性対照サンプル
【0065】
ソラフェニブ(Sorafenib)。
【0066】
3.1.3 実験用動物および群分け
【0067】
70匹の、6~8週齢で、体重16~20gのSPF雄C57BL/6Nマウスは、Beijing Huafukang Experimental Animal Technology社(生産ライセンス番号:SCXK(Jing)2019-0008)から購入された。体重によって、それらを7の群(n=10)(空白対照群、モデル群、陽性対照群、Cu-1低用量群、Cu-1高用量群、Cu-2低用量群、Cu-2高用量群)にランダムに分けた。
【0068】
3.2 モデリング・プロトコル
【0069】
空白対照群を除いて、その他の群におけるマウスの肝硬変モデルは、四塩化炭素(CCl)誘導処理の方法により製造された。モデリング・プロトコルは、以下の通りであった。(1)それぞれのマウスは、週2回、合計8週間で、体重1gあたり7μLの10% CCl(オリーブ油で希釈したもの)を腹腔内注射し、空白対照群のマウスは、同じ量のオリーブ油溶媒を腹腔内注射した。(2)6週目から、2匹のマウスを選択し、そして毎週の最後の注射48時間後に処刑した。肝臓の外観を観察した。外観が肝硬変の特性と一致した後(8週目)、肝臓組織をホルマリンで固定した。HE染色およびマッソン染色(Masson staining)を使用して、肝硬変のモデルを評価した。
【0070】
3.3 投与
【0071】
モデリングが成功した後、陽性対照群におけるマウスに、胃内で25mg/kgソラフェニブを投与し、低用量または高用量の群のCu-1およびCu-2におけるマウスに、腹腔内注射により、それぞれ、2.5または10mg/kgの対応の試験材を投与した。そして、空白対照群およびモデル群におけるマウスに、腹腔内注射により、10mL/kgで生理食塩水を投与した。前記投与は、1日1回、20日間連続した。
【0072】
3.4 生化学的検査
【0073】
投与が完了した後、血液をマウスの眼窩から採取し、そして、Zhongsheng Beikongキットおよび生化学分析装置(Siemens)を用いて、アルブミン(ALbumin、ALB)、全ビリルビン(TBil)、アラニンアラニンアミノトランスフェラ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびモノアミンオキシダー(MAO)の生化学的検査のために、血清を得た。検出方法は、キットの指示に従って厳密に行った。
【0074】
【0075】
3.5 病理学的検査
【0076】
3.5.1 HE染色
【0077】
安楽死後、マウス肝臓組織サンプルを4%パラホルムアルデヒド固定剤で48時間以上固定した。固定後、肝臓サンプルをアルコール系列で脱水し、キシレンおよびエタノールで処理した。次いで、肝臓組織をワックス中に浸漬し、包埋した。包埋した材料がトリミングされ、付着、修復された後、パラフィンミクロトームで肝臓組織を4μmの厚さで薄切した。HE染色の主な過程は以下の通りであった。オーブン中で65℃でベーキングした後、切片をキシレンで処理し、エタノール系列で脱水した。切片をヘマトキシリン、青色発色性溶液(blue color-enhancing solution)および0.5%エオシンで順次染色し、次いでエタノール系列およびキシレンで処理し、中性ガムで密封した。顕微鏡で肝臓組織の線維症を観察した。
【0078】
3.5.2 マッソン染色
【0079】
ベーキング後、マウス肝臓組織切片を脱ロウし、脱水した。染色後、核をRegaud氏ヘマトキシリン染色溶液で染色した。水で洗浄した後、切片をMasson氏ポンソー赤色酸性フクシン(Masson's Ponceau Red Acidic Fuchsin)で染色し、切片を2%氷酢酸水溶液に浸漬し、1%ホスホモリブデン酸溶液で分化させた。アニリンブルーまたは淡緑色溶液で直接染色した後、切片を0.2%氷酢酸水溶液に少し浸漬し、その後95%アルコール、無水アルコールおよびキシレンで透明化させ、次いで中性ガムで密封した。顕微鏡で肝臓組織を観察した。
【0080】
3.6 実験結果
【0081】
3.6.1 成功したモデリング
【0082】
モデル群におけるマウスの肝臓は、増殖した繊維性隔壁により、異なるサイズの丸形または楕円形の塊に分割した。血清中のALT、TBil、およびAST指数は空白対照群のものと比較して有意に増加し、血清中のALBは空白対照群と比較して有意に減少し、MAO指数は対照群と有意差はなかったが、その値も増加した。上記すべての結果は、この実験モデルが成功したことを示唆している。
【0083】
3.6.2 アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、全ビリルビン(TBil)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、モノアミンオキシダーゼ(MAO)およびアルブミン(ALB)に対する試験薬物の効果
【0084】
図2Aに示すように、空白対照群と比較して、モデル群のALT活性が極めて有意に増加し(43.5±8.1U/Lから188.5±4.9U/Lに増加した;P<0.01)、モデル群マウスの肝臓機能が病理学的変化を有していることを示す。モデル群と比較して、低用量および高用量のCu-1およびCu-2(最低値は37.0±5.7U/L、最高値は38.6±5.6U/Lであった)、並びに陽性対照群(42.8±5.4U/L)は、ALT活性を空白対照群のレベルに有意に減少した(P<0.01)。
【0085】
図2Bに示すように、空白対照群と比較して、モデル群のAST活性が有意に増加した(141.8±13.5U/Lから192.0±11.3U/Lに増加した;P<0.05)。高用量のCu-1およびCu-2の投与は、それぞれ、AST活性を146.3±8.4U/Lまたは144.3±8.1U/Lに有意に減少することができ、これらが空白対照群と同様のレベル(141.8±13.5U/L)であるが、モデル群よりも有意に低い(P<0.01)。陽性対照群も、AST活性を減少することもできるが(165.5±11.6U/L;P<0.05)、減少幅が高用量群のCu-1およびCu-2よりも低い。
【0086】
図2Cに示すように、モデル群のTBil濃度は、空白対照群よりも有意に高くなった(1.02±0.20μmol/Lから2.91±0.39μmol/Lに増加した;P<0.01)。モデル群と比較して、低用量および高用量のCu-1およびCu-2の投与は、血清中のTBILレベルを有意に減少することができ(最高値は1.16±0.30μmol/L、最低値は1.08±0.08μmol/Lであった;P<0.01)、これらは、空白対照群に近い(1.02±0.20μmol/L;P<0.01)。
【0087】
図2Dに示すように、モデル群のMAO活性(21.5±0.7U/L)は、空白対照群(18.8±2.9U/L)よりも高いが、統計学的に有意な差がなく、四塩化炭素により誘導された肝硬変マウスにおけるMAO活性指標の変化が明らかでなかったと示した。しかしながら、モデル群と比較して、高用量のCu-1およびCu-2は、血清中のMAO活性を17.3±1.5U/L(P<0.01)または(18.3±2.1U/L;P<0.05)に有意に減少し、その効果が陽性対照群よりも優れた。
【0088】
図2Eに示すように、モデル群のALBレベル(24.2±0.6 g/L)は、空白対照群(22.1±1.3 g/L)よりも有意に低くなり(P<0.05)、四塩化炭素処理が血清中のALBレベルを有意に減少できることを示した。しかしながら、Cu-1およびCu-2は、血清中のALBレベルに有意な影響を与えなかった。
【0089】
以上の結果から、銅クラスター(CuCs)は用量依存的にALT、AST、TBILおよびMAOレベルを低下させ、マウスの肝機能が回復されたことが示唆され、その効果は少なくともある指標において陽性対照薬物より優れた。
【0090】
3.6.3 病理学的分析
【0091】
肝硬変は、肝臓組織の線維症および偽小葉の形成を病理学的な特徴とする。HE染色病理学的分析の結果は、図3Aに示すように、明瞭な構造を有し、肝小葉が完全で、肝細胞がきれいに配列され、中心静脈を中心として放射状に配列され、肝細胞の核が正常で、門脈域(catchment area)中の少量の繊維状組織のみを有していたことを示した。図3Bに示すように、モデル群の肝臓組織では、肝細胞が乱れ、バルーン状の構造が現れ、肝小葉がほとんど消失し、偽小葉(図3Bには右向きの矢印で示す)が多く生成され、肝組織に多くの増殖した原線維が存在し、丸型または楕円形の繊維性隔壁(図3Bには左向きの矢印で示す)が形成された。図3Cに示すように、モデル対照群と比較して、陽性対照群は肝臓損傷の有意な減少を示し、肝細胞は明らかに整然な配列を有し、線維過形成は明らかに減少し、繊維性隔壁を形成することなく、偽小葉が消失したが、正常な肝臓組織と比較して、陽性対照群の肝臓組織は細胞間ギャップの明らかな増加を示した(下向きの矢印によって示されている)。モデル対照群と比較して、銅クラスター薬物(Cu-1およびCu-2)を投与した2つの群は、線維過形成および偽小葉の明らかな減少により証明されるように、肝細胞が肝臓損傷から有意に回復したこと、および回復がある程度の用量依存性を示すことを示した。
【0092】
図3Dおよび図3Eは、肝臓損傷の回復について、例示的なCu-1の低用量および高用量薬物投与の効果をそれぞれ示したHE画像を示す。図3Dに示すように、Cu-1低用量薬物投与群は、肝細胞が比較的整然に配列され、偽小葉がほとんど消失し、線維過形成が明らかに減少したが、正常な肝臓組織と比較して、ある程度の肝細胞間ギャップの増加を示した(図3Dの下向きの矢印で示す)。図3Eに示されるように、Cu-1の低用量薬物投与群と比較して、Cu-1の高用量薬物投与群では、肝臓損傷が減少し、偽小葉が完全に消失し、線維過形成が確認されることなく、肝細胞間ギャップの識別可能な増加がなく、正常な肝臓組織と明らかな差異がないという点においてより良い効果を示した。結論として、A-01薬物は、陽性対照薬物よりも肝臓損傷の回復に優れた効果を示した。
【0093】
マッソン染色の結果は、HE染色の結果と同じ結論を提供した。
【0094】
Cu-2薬物もCu-1薬物と同様の効果を示し、詳細な説明は必要ではない。
【0095】
以上をまとめると、Cu-1およびCu-2試験薬物は、肝臓の繊維および肝臓の偽小葉を有意に減少させた。肝臓機能指標の試験結果はまた、肝臓機能の回復を示した。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および全ビリルビン(TBil)の変化は最も明らかであった。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびモノアミノオキシダーゼ(MAO)も有意に回復され、一方、アルブミン(ALB)に有意な変化はなかった。2つの試験薬物は、肝硬変マウスにおいて肝臓機能および肝臓の病理学的構造を有意に改善することができ、そして銅クラスターの全体的な効果は、陽性対照薬物ソラフェニブよりも優れた。将来のさらなる適用のための実験的根拠を提供する。
【0096】
その他のサイズのL-Cys-CuCsおよびL-GSH-CuCs、および異なるサイズのその他のリガンド結合CuCsも同様の効果を有し、一方、それらの効果はある程度ことなる。ここでは詳細に説明しない。
【0097】
本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、実施形態は例示的なものであり、本発明の範囲はそのように限定されないことが理解されるであろう。本発明の別の実施形態は、本発明が関係する当業者には明らかになるであろう。このような代替実施形態は、本発明の範囲内に包含されると考えられる。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定され、前述の説明によって支持される。

参照文献
Deng H.H. et al. An ammonia-based etchant for attaining copper nanoclusters with green fluorescence emission. Nanoscale, 2018, 10, 6467.
Jia X. et al. Cu Nanoclusters with Aggregation Induced Emission Enhancement. Small, 2013, DOI: 10.1002/smll.201300896.
Wang C. and Huang Y. GREEN ROUTE TO PREPARE BIOCOMPATIBLE AND NEAR INFRARED THIOLATE-PROTECTED COPPER NANOCLUSTERS FOR CELLULAR IMAGING. NANO: Brief Reports and Reviews. 2013, 8(5): 1350054 (10 pages).
【国際調査報告】