(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】グリッド単独運転を検出する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
H02J3/38 180
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535192
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2019087105
(87)【国際公開番号】W WO2021129944
(87)【国際公開日】2021-07-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】プリカンティ、スリダール
(72)【発明者】
【氏名】ウォルトン、サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、ニコラス・ジェームズ
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA11
5G066HB08
(57)【要約】
本開示の実施形態は、グリッドサポート電圧源コンバータにおけるグリッド単独運転を検出するための方法及び装置に関する。当該方法は、グリッドサポート電圧源コンバータの出力における出力電圧を変調することと、グリッドサポート電圧源コンバータへの入力における少なくも1つのグリッドパラメータを決定することと、当該少なくとも1つのグリッドパラメータに基づいて、グリッドサポート電圧源コンバータのグリッド単独運転を検出することと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッドサポート電圧源コンバータにおけるグリッド単独運転を検出する方法であって、
前記グリッドサポート電圧源コンバータの出力における出力電圧を変調することと、
前記グリッドサポート電圧源コンバータへの入力における少なくとも1つのグリッドパラメータを決定することと、
前記少なくとも1つのグリッドパラメータに基づいて、グリッドサポート電圧源コンバータのグリッド単独運転を検出することと、
を含む、
グリッドサポート電圧源コンバータにおけるグリッド単独運転を検出する方法。
【請求項2】
前記出力電圧を変調することは、
前記グリッドサポート電圧源コンバータのコントローラで使用される電圧基準を変調することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電圧基準を変調することは、
前記電圧基準に振幅変調項を一定期間、又は、連続的に加えることを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのグリッドパラメータを決定することは、
前記グリッドサポート電圧源コンバータへの前記入力における入力電圧及び入力電流を測定することと、
前記入力電圧及び前記入力電流に基づいて前記少なくとも1つのグリッドパラメータを決定することと、
を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記入力電圧及び前記入力電流に基づいて前記少なくとも1つのグリッドパラメータを決定することは、
前記入力電圧及び前記入力電流に基づいて、前記グリッドサポート電圧源コンバータの入力における入力インピーダンスを決定することを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記グリッドサポート電圧源コンバータは、並列に結合された複数のグリッドサポート電圧源コンバータユニットを備え、
前記出力電圧を変調することは、前記グリッドサポート電圧源コンバータの出力において、前記複数のグリッドサポート電圧源コンバータユニットの出力電圧を同期して変調することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記出力電圧を変調することは、
軽負荷条件下で前記グリッドサポート電圧源コンバータを動作させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
グリッドサポート電圧源コンバータシステムであって、
グリッドサポート電圧源コンバータと、
前記グリッドサポート電圧源コンバータに結合されるとともに、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実施するように設定されているコントローラと、
を備える、
グリッドサポート電圧源コンバータシステム。
【請求項9】
前記グリッドサポート電圧源コンバータは、
前記グリッドサポート電圧源コンバータの前記入力に結合された入力スイッチと、
前記グリッドサポート電圧源コンバータの前記出力に結合された出力スイッチと、
前記入力スイッチと前記出力スイッチとの間に結合された直列リアクトルと、
前記直列リアクトルと前記出力スイッチとの間のノードに結合された電力変換システムと、
前記電力変換システムに結合されたエネルギー貯蔵装置と、
を備える、
請求項8に記載のグリッドサポート電圧源コンバータシステム。
【請求項10】
前記グリッドサポート電圧源コンバータはさらに、
前記グリッドサポート電圧源コンバータの前記入力と前記出力との間に結合されたバイパススイッチ、又は
前記グリッドサポート電圧源コンバータの前記出力とリングバスとの間に結合されたリングバスリアクトル、及び、リングバスリアクトルに跨がって結合されたバイパススイッチ
のうち少なくとも1つを備える、
請求項8又は9に記載のグリッドサポート電圧源コンバータシステム。
【請求項11】
グリッドサポート電圧源コンバータであって、
前記グリッドサポート電圧源コンバータの入力に結合された入力スイッチと、
前記グリッドサポート電圧源コンバータの出力に結合された出力スイッチと、
前記入力スイッチと前記出力スイッチとの間に結合された直列リアクトルと、
前記直列リアクトルと前記出力スイッチとの間に結合された電力変換システムと、
前記電力変換システムに結合されたエネルギー貯蔵装置と、
前記入力スイッチ、前記出力スイッチ及び前記電力変換システムに通信可能に結合されるとともに、前記グリッドサポート電圧源コンバータの前記出力における出力電圧を変調することによって、前記グリッドサポート電圧源コンバータの前記入力における少なくとも1つのグリッドパラメータに基づいて、前記グリッドサポート電圧源コンバータのグリッド単独運転を検出するように設定されたコントローラと、
を備える、
グリッドサポート電圧源コンバータ。
【請求項12】
さらに、
前記グリッドサポート電圧源コンバータの前記入力と前記出力との間に結合されたバイパススイッチ、又は
前記グリッドサポート電圧源コンバータの出力とリングバスとの間に結合されたリングバスリアクトル、及び、前記リングバスリアクトルに跨がって結合されたバイパススイッチ
のうち少なくとも1つを備える、
請求項11に記載のグリッドサポート電圧源コンバータ。
【請求項13】
並列に結合された複数のグリッドサポート電圧源コンバータユニットを備え、
前記コントローラはさらに、前記複数のグリッドサポート電圧源コンバータユニットの各グリッドサポート電圧源コンバータユニットの前記出力電圧を同期して変調するように設定されている、
請求項11又は12に記載のグリッドサポート電圧源コンバータ。
【請求項14】
軽負荷条件下で動作するように設定されている、
請求項11~13のいずれか1項に記載のグリッドサポート電圧源コンバータ。
【請求項15】
前記コントローラはさらに、前記出力電圧の電圧基準に振幅変調項を一定期間、又は、連続的に加えるように設定されている、
請求項11~14のいずれか1項に記載のグリッドサポート電圧源コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、電力コンバータシステムの分野に関し、特に、電力コンバータシステム(特に、グリッドサポート電圧源コンバータシステム)におけるグリッド単独運転(grid islanding)を検出する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グリッド接続の電力コンバータは、主にグリッドフォロイングコンバータ、グリッドサポートコンバータ、グリッドフォーミングコンバータに分類することができる。
【0003】
グリッドフォロイングコンバータは、グリッドに高インピーダンスで並列接続された交流(AC)電流源として表すことができ、送電するように設計することができる。このタイプのコンバータは、グリッド接続モードにおいて他のグリッドフォロイング電力コンバータとの並列運転に適している。分散型グリッド(DG)システム(太陽光発電システム(PV)又は風力発電システム等)の多くは、グリッドフォロイングコンバータとして動作する。これらのコンバータシステムにおいて重要な要件の1つは、グリッドの一部に通電する計画外の単独運転(unintentional island)(特に高インピーダンスの単独運転、グリッド開路(gird open-circuit))を検出することである。単独運転の検出には、受動的又は能動的メカニズムの何れかが使用可能である。受動的な単独運転検出メカニズムの欠点を克服するために、能動的な単独運転検出メカニズムが開発されている。IEEE規格の要件に基づき、特定の品質ファクター(Q)を持つ抵抗・誘導・容量(RLC:resistive-inductive-capacitive)並列負荷を使用した場合(公共接続のPVシステムについては、IEEE規格929-2000の要件を考慮する)の性能を確立するために、能動的な単独運転検出方法に対しテストが行われている。
【0004】
グリッドフォーミングコンバータは、低出力インピーダンスを有するAC電圧源として表すことができ、当該低出力インピーダンスを有するAC電圧源は、所定の電圧振幅と周波数を有する出力を制御する。グリッド接続システム(PVや風力発電システム等)の多くは、グリッド接続モードではグリッドフォロイングコンバータシステムとして動作し、スタンドアロンモードではグリッドフォーミングコンバータシステムとして動作する。
【0005】
グリッドサポートコンバータシステムは、グリッドに接続された直列の低インピーダンスを有する電圧源、又は並列の高インピーダンスを有する電流源として制御される。グリッドサポートコンバータシステムの目的は、グリッドに供給される電力を調節することで、AC電圧の振幅と周波数を維持することである。電圧源として制御されるグリッドサポートコンバータシステムが供給する電力は、交流グリッド電圧、エミュレートされた電圧源の電圧、及びそれらの間のインピーダンスの関数である。
【0006】
グリッドサポート電圧源コンバータシステムの重要な要件の1つは、上流の計画外の単独運転(特に高インピーダンスの単独運転、グリッド開路の状況)を検出することにより、入力スイッチが接続を切断する前のグリッドの大きな位相角差での、グリッドサポート電圧源コンバータシステムとの再接続による負荷電圧の中断を回避することである。このような状況を打開するために、グリッドサポート電圧源コンバータシステムのための能動的な単独運転検出が求められている。
【発明の概要】
【0007】
概して、本開示の例示的な実施形態は、グリッドサポート電圧源コンバータシステムにおけるグリッド単独運転を検出する方法及び装置を提供する。
【0008】
第1の態様では、グリッドサポート電圧源コンバータのグリッド単独運転を検出する方法が提供される。当該方法は、グリッドサポート電圧源コンバータの出力における出力電圧を変調することと、グリッドサポート電圧源コンバータへの入力における少なくも1つのグリッドパラメータを決定することと、当該少なくとも1つのグリッドパラメータに基づいて、グリッドサポート電圧源コンバータのグリッド単独運転を検出することと、を備える。
【0009】
第2の態様では、グリッドサポート電圧源コンバータシステムが存在する。グリッドサポート電圧源コンバータシステムは、グリッドサポート電圧源コンバータと、グリッドサポート電圧源コンバータに結合されるとともに、第1の態様の方法を実施するように設定されているコントローラと、を備える。
【0010】
発明の概要部分は、本開示の実施形態の重要な又は必要な特徴を標記することを意図したものではなく、本開示の範囲を限定することも意図していないことは理解されるべきである。本開示のその他の特徴は、以下の説明により容易に理解できるはずである。
【0011】
図面において本開示のいくつかの実施形態をさらに詳細に説明することで、本開示の前述及びその他の目的、特徴、利点を、さらに明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態にかかる電力システムを示す模式図である。
【
図2】本開示の実施形態にかかるグリッドサポート電圧源コンバータシステムにおけるグリッド単独運転の方法を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の実施形態にかかる、グリッド接続モードで動作するグリッドサポート電圧源コンバータシステムの模式図である。
【
図4】単独運転モードで動作する、
図3のグリッドサポート電圧源コンバータシステムを示す模式図である。
【
図5】本開示の他の実施形態にかかるグリッドサポート電圧源コンバータシステムを示す模式図である。
【
図6】本開示の他の実施形態にかかるグリッドサポート電圧源コンバータシステムを示す模式図である。
【0013】
全ての図において、同一又は類似の図面符号は、同一又は類似の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、いくつかの例示的な実施形態を参照して、本開示の原理を説明する。理解すべき点として、これらの実施形態は、単に説明を目的として記述され、当業者が本開示を理解し実現するのを支援するものであり、本開示の範囲に対する何らかの限定を示すものではない。本明細書で説明する開示内容は、以下に説明する方法以外に、さまざまな方法で実現可能である。
【0015】
本明細書で用いられる用語「含む」及びその変形は、「…を含むが、これらに限定されない」という意味の、開放式の用語であると解釈されるべきである。用語「…に基づいて」は、「少なくとも部分的に基づく」と理解されるべきである。用語「1つの実施形態」及び「実施形態」は、「少なくとも1つの実施形態」と理解されるべきである。用語「他の実施形態」は、「少なくとも1つの他の実施形態」と理解されるべきである。以下の文中では、明示又は暗黙のその他の定義も含むことができる。
【0016】
グリッド接続モードにおけるインピーダンス隔離式シングルコンバージョン(ZISC:Impedance isolated single conversion)に基づく無停電電源装置(UPS)システムは、グリッド接続モードとスタンドアロンモードの両方で電圧源として動作するグリッドサポートコンバータシステムに似ている。グリッド接続モードにおけるZISCベースのUPSシステムの重要な要件の1つは、上流の計画外の単独運転(特に高インピーダンスの単独運転、グリッド開路の状況)を検出することにより、入力スイッチが接続を切断する前のグリッドの大きな位相角差での、UPSとの再接続による負荷電圧の中断を回避することである。このような状況を打開するために、グリッドサポート電圧源コンバータ(特にZISCベースのUPS)のための能動的な単独運転検出が求められている。
【0017】
図1は、本開示の実施形態にかかる電力システム10を示す模式図である。
図1に示すように、グリッド12はグリッドサポート電圧源コンバータシステム14に電気的に結合され、グリッドサポート電圧源コンバータシステム14は負荷16に電気的に結合されている。グリッドサポート電圧源コンバータシステム14は、グリッド12を、負荷16に電力を供給するための出力電圧に変換するように設定されている。
【0018】
上流での計画外の単独運転が発生した場合、グリッドサポート電圧源コンバータシステム14は上流ネットワークに通電するが、これは保守又はサービス要員の安全上の問題となる。この問題を解決するために、グリッドサポート電圧源コンバータシステム14の能動的な単独運転検出方法を提案する。
【0019】
図2は、本開示の実施形態にかかる、グリッドサポート電圧源コンバータシステム14におけるグリッド単独運転を検出する方法20を示すフローチャートである。方法20は、グリッドサポート電圧源コンバータシステム14のシステムコントローラで実施することができる。なお、方法20は、グリッドサポート電圧源コンバータシステム14のための別のコントローラで実施することもできる。
【0020】
ブロック22では、グリッドサポート電圧源コンバータ14の出力において、出力電圧を変調する。例えば、電圧基準に基づいてシステムコントローラによって出力電圧を制御してよい。この場合、例えば、電圧基準に変調(例えば振幅変調)項を連続的又は一定期間にわたって加えること等、電圧基準を変調することによって出力電圧を変調することができる。つまり、電圧基準に振幅変調項を一定期間、連続的に加えることで、出力電圧を変調することができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、グリッドサポート電圧源コンバータ14は、入力と出力との間に並列に結合された複数のグリッドサポート電圧源コンバータユニットを備えることができる。例えば、出力電圧を変調することは、グリッドサポート電圧源コンバータの出力において、複数のグリッドサポート電圧源コンバータユニットの出力電圧を同期して変調することを備える。
【0022】
いくつかの実施形態において、グリッドサポート電圧源コンバータは、必要な時間内にグリッド単独運転のイベントを検出するために、軽負荷条件下で動作するように設定される。
【0023】
ブロック24では、グリッドサポート電圧源コンバータへの入力において、少なくとも1つのグリッドパラメータを決定する。
【0024】
いくつかの実施形態において、ブロック24は、グリッドサポート電圧源コンバータへの入力における入力電圧及び入力電流を測定することと、入力電圧及び入力電流に基づいて少なくとも1つのグリッドパラメータを決定することと、を備える。例えば、少なくとも1つのグリッドパラメータは、グリッドサポート電圧源コンバータの入力における入力インピーダンスを含む。入力電圧と入力電流に基づいて入力インピーダンスを決定することができる。
【0025】
ブロック26では、少なくとも1つのグリッドパラメータに基づいて、グリッドサポート電圧源コンバータにおいてグリッド単独運転を検出する。例えば、入力インピーダンスが所定値を超えると、グリッドサポート電圧源コンバータにおいてグリッド単独運転が検出される。
【0026】
次に、ZISCベースのUPSシステムを参照しながら本開示について説明する。ZISCベースのUPSシステムは、
図3及び
図4にそれぞれ示すように、主にグリッド接続モード又は単独運転モードで動作する。
【0027】
図3は、グリッド接続モード時のZISCベースのUPSシステムの模式図である。
図4は、単独運転モード時の
図3のグリッドサポート電圧源コンバータシステムを示す模式図である。ZISCベースのUPSシステムは、オプションのデルタ-スター型変圧器122を介してグリッド102に電気的に結合される。ZISCベースのUPSシステムは、グリッド102又はデルタ-スター型変圧器122に結合される入力と、負荷124に結合される出力とを含む。
【0028】
図3に示すように、ZISCベースのUPSシステムは、ZISCベースのUPSシステムの入力に電気的に結合された入力スイッチ104、ZISCベースのUPSシステムの出力に電気的に結合された出力スイッチ106、及び、ZISCベースのUPSシステムの入力と出力との間に結合されたバイパススイッチ108を備える。
【0029】
直列リアクトル120が、入力スイッチ104と出力スイッチ106との間に電気的に結合されている。電力変換システム126が、直列リアクトル120と出力スイッチ106との間のノードに電気的に結合されている。ZISCベースのUPSシステムは、電力変換システム126に電気的に結合されたエネルギー貯蔵装置128を備える。オプションのデルタ-スター型変圧器140は、電力変換システム126と、リアクトル120ー出力スイッチ106間のノードとの間に結合されている。
【0030】
ZISCベースのUPSシステムは、入力スイッチ104、出力スイッチ106及びバイパススイッチ108に結合されたシステムコントローラ160を備える。システムコントローラ160は、スイッチ104、106及び108を操作することによってUPSとグリッドとの間の電力交換を調節するように設定されている。
【0031】
グリッド接続モード時、UPSは、UPSとグリッドとの間の電力交換を調節することで、出力電圧の振幅と周波数を制御する。定常な出力電圧を制御することで、接続された負荷に忠実な電圧源を実現する。グリッド接続モードのUPSシステムは、計画外の上流側の単独運転が発生したときに、上流側のネットワークに通電しているが、これは保守又はサービス要員の安全上の問題となる。この場合、UPSの出力電圧は短時間フレーム内での周波数ドリフトを引き起こし、入力スイッチ104を切断する前にグリッドを再閉路すると、グリッドの大きな位相角差により出力電圧Voutが歪んでしまう。
【0032】
UPSがグリッド接続されているときに計画外のグリッド単独運転が発生すると、保守又はサービス要員の安全、クライアントの負荷の保護及び製品自体の保護が懸念される。
【0033】
この問題を解決するために、ZISCベースのUPSシステムに適用可能な、グリッドサポート電圧源コンバータシステムのための能動的な単独運転検出方法を提案する。能動的な単独運転検出方法は、生成されるUPS出力電圧の修正基準として用いられるUPS電圧基準に変調項(例えば、振幅変調)を連続的に加えることに依存する。
【0034】
いくつかの実施形態において、UPSの重要な要件の1つは、負荷に対する忠実な出力電圧であり、これは励起信号の周波数とその振幅の選択の重要性を強調するものである。
【0035】
励起信号の選択は、適用される使用状況により左右され得る。例えば、グリッドインピーダンス又は開路グリッドインピーダンスが純粋なRLで、グリッド電圧が純粋な正弦波であれば、変調又は非線形UPS負荷により自然に発生する高調波を含む高周波励起を使用することができる。残念ながら、多くの産業プラントの負荷は複雑かつ非線形であり、前述の基準を満たしていない。
【0036】
グリッドに大きな容量(力率コンデンサ等)がある場合、高周波の励起は効果的でない。グリッド電圧が著しい「正常な」高調波歪みを有する場合、奇数高調波励起は有効でない。偶数高調波を使用してもよいが、非対称要素による一部の負荷への影響から、許容レベルには厳しい制限がある。例えば、単純な整流器ではDCが発生し、半相において過負荷が発生することがある。低周波変調(基本波のサイドバンド)は、1%レベルでも非常に有効であり得る。ここでのリスクは、フリッカーメータのレベルが非常に低い値において、5Hzから15Hzの周波数に敏感に反応することである(9Hzで0.4%まで)。
【0037】
いくつかの実施形態において、励起信号のスペクトルは、単一の周波数、同じ振幅の複数の周波数、異なる振幅の複数の周波数、及び周波数のランダムな拡張のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0038】
励起信号によるUPS出力電圧の変化により、グリッド電圧を変化させ、さらに、グリッド電源インピーダンスに基づきグリッド電流を変化させる。例えばインピーダンス、電圧振幅及び/又は位相角のような少なくとも1つのグリッドパラメータを推定するために、UPS入力電圧Vin及び入力電流Iinを測定することができる。上記グリッドパラメータに非常によく似た項であるグリッド電圧の高調波信号を含むノイズが多すぎると、パラメータの推定値が破綻する。ノイズによるパラメータ推定値の乱れを防ぐため、測定信号を、所望の励起信号の周辺の小さな信号群だけを通す狭帯域フィルタに通す。推定されたグリッドパラメータが所定の閾値の制限から乖離すると、UPSがグリッド単独運転を検出する。
【0039】
能動的な単独運転検出方法は、上流側の高インピーダンス単独運転、中インピーダンス単独運転、低インピーダンス単独運転の検出を区別することができる。計画外単独運転状態の検出に用いるグリッドパラメータ(特にインピーダンス、電圧振幅及び位相角)の推定には、任意の推定技術(特に最小二乗推定と再帰的最小二乗推定)が用いられる。推定技術は、三相量(three phase quantities)、静的基準フレームシステム(stationary reference frame system)又は回転基準フレームシステム(rotating reference frame system)で測定されたグリッド電圧及びグリッド電流を利用することで実現される。能動的な単独運転検出方法は、電圧源として制御される単相又は多相のグリッドサポートコンバータシステムのグリッド単独運転を検出するために用いられるべきものである。
【0040】
グリッド単独運転が検出されると、システムコントローラ160は入力スイッチ104の切断を指示する。入力スイッチ104が切断されると、UPSは所定の電圧振幅及び周波数基準で出力電圧Voutを制御することによりグリッドフォーミングコンバータシステムとして動作する。
【0041】
能動的なグリッド検出方法はUPSの出力電圧品質に影響を与えるため、上流の電力品質イベント検出協調メカニズムを実装することにより、さらに最適化することができる。提案した方法は、このメカニズムによって他の電力品質検出方法と協調することができる(例えば、システムが軽負荷で動作しているときは、この方法を有効にすべきである)。
【0042】
いくつかの実施形態において、並列に接続された複数のUPSシステムにおいて、他のUPSシステムが電源の見かけ上のインピーダンスを低下させるため、不適切なパラメータ推定が存在する可能性がある。この状況を避けるためには、並列に接続された複数のUPSシステムは、同期した励起信号を有する必要がある。例えば、N個の並列UPSシステムの励起信号が同期され、かつグリッドの単独運転が生じた場合,他の並列UPSシステムの助けにより、1つのUPSから見るとグリッドインピーダンス推定はN倍の大きさになる。励起信号が同期していない場合、グリッドインピーダンスの推定は、直列リアクトルインピーダンスの1/Nとなる。
図5~
図6は、グリッド接続モードでの並列接続の複数ユニットのシステムを示す。
【0043】
図5は、本開示の別の実施形態にかかるZISCベースのUPSシステムを示す模式図である。
図5に示すように、グリッドサポート電圧源コンバータシステムは複数のユニットを含む。各ユニットは
図3及び
図4に示すようなコンバータで実現することができる。
【0044】
図6は、本開示の別の実施形態にかかるZISCベースのUPSシステムを示す模式図である。
図6に示すように、グリッドサポート電圧源コンバータシステムは、グリッドサポート電圧源コンバータの入力に結合された入力スイッチ104、グリッドサポート電圧源コンバータシステムの出力に結合された出力スイッチ106、グリッドサポート電圧源コンバータシステムの出力に結合されたリングバスリアクトル164、リングバスリアクトルに跨がって結合されたバイパススイッチ162、入力スイッチ104と出力スイッチ106との間に結合された直列リアクトル120、直列リアクトル120に結合された電力変換システム126、及び、電力変換システム126に結合されたエネルギー貯蔵装置128を備える。
【0045】
図6は、ZISCベースのUPSシステムの複数のユニットのうちの1つを示している点に留意されたい。各ユニットは、入力及びバスループ166を跨いで結合されることで、並列に接続された複数ユニットのシステムを形成している。
【0046】
通常、本開示の各実施形態は、ハードウェア若しくは専用回路、ソフトウェア、論理又はそれらの任意の組合せにより実現することができる。いくつかの態様はハードウェアによって実現し、他の態様はコントローラ、マイクロプロセッサ又は他のコンピュータデバイスが実行するファームウェア又はソフトウェアによって実現してもよい。本開示の実施形態の各態様は、ブロック図、フローチャートとして示されて説明され、又は他のいくつかの図によって示されているが、理解すべき点として、本明細書に記載のブロック、装置、システム、技術又は方法は、例えば、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、専用回路若しくは論理、汎用ハードウェア若しくはコントローラ若しくは他のコンピュータデバイス、又はそれらの組合せによって実施することができるが、これらに限定されない。
【0047】
例示として、本開示の実施形態は、対象の実プロセッサ又は仮想プロセッサ上のデバイスに含まれて実行されるプログラムモジュールのような、マシン可読命令の一般的な文脈において記述することができる。通常、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行するか、又は特定の抽象データタイプを実現するルーチン、プログラム、ライブラリ、オブジェクト、クラス、コンポーネント、データ構造等を含む。各実施形態において、プログラムモジュールの機能は、必要に応じて、プログラムモジュール間で組み合わせるか、又は分割してもよい。プログラムモジュールのためのマシンが実行可能な命令は、ローカル又は分散型デバイスにおいて実行してもよい。分散型デバイスにおいて、プログラムモジュールはローカル及びリモートの記憶媒体に置いてもよい。
【0048】
本開示の方法を実行するためのプログラムコードは、1種類又は複数種類のプログラミング言語の任意の組合せにより記述してもよい。これらのプログラムコードは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ又はその他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ又はコントローラに提供してもよく、プログラムコードがプロセッサ又はコントローラによって実行されると、フローチャート及び/又はブロック図に指定された機能/操作を実現する。プログラムコードは全てマシン上で実行してもよいし、部分的にマシン上で実行してもよい。独立した1つのソフトウェアパッケージとしてマシン上で部分的に実行するとともに、リモートのマシン上で部分的に実行するか、又は全てリモートのマシン若しくはサーバ上で実行してもよい。
【0049】
本開示の文脈において、マシン可読媒体は、命令実行システム、装置若しくはデバイスにより使用されるプログラム、又は、それらと結合して使用されるプログラムを含むか又は格納することができる任意の有形媒体であり得る。マシン可読媒体は、マシン可読信号媒体又はマシン可読記憶媒体であり得る。マシン可読媒体は、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線若しくは半導体のシステム、装置又はデバイス、又は前述の任意の適切な組合せを含むことができるが、これらに限定されない。マシン可読記憶媒体のより具体的な例には、1つ若しくは複数のケーブルの電気的接続部品、携帯用コンピュータディスク、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去・書き込み可能なリードオンリーメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、携帯型コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、光学的記憶装置、磁気記憶装置、又は前述の任意の適切な組合せが含まれる。
【0050】
なお、操作について、特定の順序で説明を行ったが、所望の結果を得るために、こうした操作を示された特定の順序で実行するか若しくは順に実行するか、又は、図示された全ての操作を実行することが求められる、と理解されるべきではない。いくつかの状況では、複数のタスク及び並行処理が有利である可能性がある。同様に、前述の議論では、いくつかの特定の実施案の詳細が含まれるが、これらは本開示の範囲に対する限定であると解釈されるべきではなく、特定の実施形態に特定され得る特徴についての説明であると解釈されるべきである。個々の実施形態の文脈において説明したいくつかの特徴は、ある1つの実施形態において組み合わせて実現されてもよい。逆に、1つの実施形態の文脈において説明された各種特徴は、単独で、又は任意の適切なサブ的な組合せにより、複数の実施形態において実現されてもよい。
【0051】
本開示について、構造的特徴及び/又は方法・動作に特有の言葉で説明したが、添付の特許請求の範囲によって限定される本開示は、必ずしも前述の具体的な特徴又は動作に限定されないと理解されるべきである。より適切にいうと、前述の具体的な特徴や動作は、請求項を実現する例示的形態として開示されている。
【国際調査報告】