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特表2023-517441インピーダンス分離型スタティックコンバーター(ZISC)によるUPSシステムにおける磁束管理のための装置及び方法
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  • 特表-インピーダンス分離型スタティックコンバーター(ZISC)によるUPSシステムにおける磁束管理のための装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】インピーダンス分離型スタティックコンバーター(ZISC)によるUPSシステムにおける磁束管理のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230419BHJP
【FI】
H02M7/48 N
H02M7/48 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540887
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2020050459
(87)【国際公開番号】W WO2021139891
(87)【国際公開日】2021-07-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】プリカンティ、スリダール
(72)【発明者】
【氏名】ウォルトン、サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、ニコラス・ジェームズ
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA11
5H770BA15
5H770DA03
5H770DA11
5H770EA01
5H770HA02Z
5H770HA03Z
5H770JA13Z
5H770JA16Y
5H770JA17Z
5H770LA01Z
5H770LA03Z
(57)【要約】
本開示の実施例はZISCによるUPSシステムにおける磁束管理のための装置及び方法に関している。当該装置は第1決定ユニットと第1リセットユニットとを備え、第1決定ユニットは、ZISCによるUPSシステムに接続されたグリッドには電力品質イベントが生じて、ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モードで操作すると、ZISCによるUPSシステムにおける直列リアクトルでの第1オフセット磁束を決定するように配置され、第1リセットユニットは合成したインピーダンスダンピングを直列リアクトルに提供することで、第1オフセット磁束をリセットするように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インピーダンス分離型スタティックコンバーター(ZISC)による無停電電源装置(UPS)システムにおける磁束管理のための装置であって、
前記ZISCによるUPSシステムに接続されたグリッドには電力品質イベントが生じて、前記ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モードで操作すると、前記ZISCによるUPSシステムにおける直列リアクトルでの第1オフセット磁束を決定するように配置される第1決定ユニットと、
合成したインピーダンスダンピングを前記直列リアクトルに提供することで、前記第1オフセット磁束をリセットするように配置される第1リセットユニットと、を備える装置。
【請求項2】
前記ZISCによるUPSシステムが前記グリッド接続モード又は単独モードで操作すると、前記ZISCによるUPSシステムにおける変圧器での第2オフセット磁束を決定するように配置される第2決定ユニットと、
前記第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、前記第2オフセット磁束をリセットするように配置される第2リセットユニットと、を備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記変圧器は結合変圧器又は下流変圧器である請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2決定ユニットは、
前記変圧器での電圧を決定するように配置される電圧オブザーバと、
前記決定された変圧器での電圧、及び前記変圧器に特定された固有時定数項に基づいて、前記第2オフセット磁束を推定するように配置される磁束推定器と、を備える請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記電圧オブザーバはさらに、
前記ZISCによるUPSシステムにおける電力変換システムの端子での電圧、又は前記ZISCによるUPSシステムの出力電圧に基づいて、前記変圧器での前記電圧を決定するように配置される請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2リセットユニットは、
前記第2オフセット磁束の大きさを抽出するように配置される磁束大きさ抽出器と、
前記第2オフセット磁束の大きさと前記磁束の大きさの限界とを比較するように配置される比較器と、
前記第2オフセット磁束の大きさが前記磁束の大きさの限界を超えることに応答し、前記第2オフセット磁束に補正係数を乗算して、補償電圧を提供するように配置される乗算器と、
目的電圧基準から前記補償電圧を減算して、補正された電圧基準を取得するように配置される減算器と、を備える請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
インピーダンス分離型スタティックコンバーター(ZISC)による無停電電源装置(UPS)システムにおける磁束管理のための方法であって、
前記ZISCによるUPSシステムに接続されたグリッドには電力品質イベントが生じて、前記ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モードで操作すると、前記ZISCによるUPSシステムにおける直列リアクトルでの第1オフセット磁束を決定することと、
合成したインピーダンスダンピングを前記直列リアクトルに提供することで、前記第1オフセット磁束をリセットすることと、を備える方法。
【請求項8】
前記ZISCによるUPSシステムが前記グリッド接続モード又は単独モードで操作すると、前記ZISCによるUPSシステムにおける変圧器での第2オフセット磁束を決定することと、
前記第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、前記第2オフセット磁束をリセットすることと、をさらに備える請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記変圧器は結合変圧器又は下流変圧器である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2オフセット磁束を決定することは、
前記変圧器での電圧を決定することと、
前記決定された変圧器での電圧、及び前記変圧器に特定された固有時定数項に基づいて、前記第2オフセット磁束を推定することと、を備える請求項8又は9に記載の方法、
【請求項11】
前記変圧器での前記電圧を決定することは、
前記ZISCによるUPSシステムにおける電力変換システムの端子での電圧、又は前記ZISCによるUPSシステムの出力電圧に基づいて、前記変圧器での前記電圧を決定することを備える請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2オフセット磁束の大きさが前記磁束の大きさの限界を超えることに応答し、前記第2オフセット磁束をリセットすることは、
前記第2オフセット磁束の大きさを抽出することと、
前記第2オフセット磁束の大きさと前記磁束の大きさの限界とを比較することと、
前記第2オフセット磁束の大きさが前記磁束の大きさの限界を超えることに応答し、前記第2オフセット磁束に補正係数を乗算して、補償電圧を提供することと、
目的電圧基準から前記補償電圧を減算して、補正された電圧基準を取得することと、を備える請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施例は概して、電力変換器システムの分野に関して、より具体的に、インピーダンス分離型スタティックコンバーター(ZISC)による無停電電源装置(UPS)システムにおける磁束管理のための装置及び方法に関している。
【背景技術】
【0002】
全ての種類の産業過程で使用される電気または電子機器は、グリッドにおける電力品質イベントの影響を受けやすい。グリッドの電力品質は瞬断、電圧サグ又はうねり、過渡、高調波歪み、電気ノイズ及び点滅灯などの形式でのグリッドの電圧変化と関係がある。電力品質イベントの影響を軽減して、ユーザー連続プロセスアプリケーションの全体的なコストを低減させ、生産性、効率、及び安全性を高めるために、最も通常の解决策の1つとして、無停電電源装置(UPS)がある。異なるユーザーについて、異なるUPSシステムを開発する。例えば、産業ユーザーへのPCS100 UPSは、オフライン単一変換UPSシステムであり、スタティックスイッチ、電力変換システム及びエネルギー貯蔵システムから構成される。最近、ZISCによるUPSシステムと呼ばれる新たなUPSシステムアーキテクチャを開発する。ZISCによるUPSシステムはオフライン単一変換UPSと回転UPSシステムとのコンポーネントの組み合わせである。
【0003】
安定グリッド接続(grid―connected)モードで、グリッドが健全である場合、ZISCによるUPSシステムはグリッドと電力を交換して、その出力電圧を調節することで、直列リアクトルに跨っている電圧降下を補償する。一方の場合、ZISCによるUPSシステムはグリッド接続モードで操作する期間、電圧サグイベントが発生すると、直列リアクトルに跨っている増分電圧はオフセット磁束を招致する。直列リアクトルでのオフセット磁束は、直列リアクトルの磁気飽和を招致する恐れがあるため、電力変換システムにおける電流が非常に高くなり、そして、ZISCによるUPSシステムの出力電圧には大きな歪みが生じる。他方の場合、ZISCによるUPSシステムはグリッド接続モード又は単独モードで操作する場合、下流変圧器を有するネットワークフィードが通電されると、高サージ電流の流動を招致し、結合変圧器の磁束に干渉する恐れがある。上記2つの場合は何れも、結合変圧器と下流変圧器の間の交感飽和現象を招致し、出力電圧の歪みに繋がる。従って、ZISCによるUPSシステムの、ユーザー負荷を保護する面の信頼性は悪影響を受ける。
【0004】
従って、上記の場合、ZISCによるUPSシステムの信頼性及び安定性を高めるためのオフセット磁束リセットメカニズムを必要とする。
【発明の概要】
【0005】
上記問題に鑑みると、ZISCによるUPSシステムにおける磁気飽和を回避するために、本開示の各例示的な実施例はZISCによるUPSシステムにおける磁束管理のための装置及び方法を提供する。
【0006】
本開示の第1態様によれば、本開示の例示的な実施例は、ZISCによるUPSシステムにおける磁束管理のための装置を提供する。当該装置は第1決定ユニットと第1リセットユニットとを備え、第1決定ユニットは、ZISCによるUPSシステムに接続されたグリッドには電力品質イベントが生じて、ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モードで操作すると、ZISCによるUPSシステムにおける直列リアクトルでの第1オフセット磁束を決定するように配置され、第1リセットユニットは合成したインピーダンスダンピング(impedance damping)を直列リアクトルに提供することで、第1オフセット磁束をリセットするように配置される。
【0007】
いくつかの実施例において、当該装置は第2決定ユニットと第2リセットユニットとをさらに備え、第2決定ユニットは、ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モード又は単独モードで操作すると、ZISCによるUPSシステムにおける変圧器での第2オフセット磁束を決定するように配置され、第2リセットユニットは、第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、第2オフセット磁束をリセットするように配置される。
【0008】
いくつかの実施例において、変圧器は結合変圧器又は下流変圧器である。
【0009】
いくつかの実施例において、第2決定ユニットは、変圧器での電圧を決定するように配置される電圧オブザーバと、決定された変圧器での電圧、及び変圧器に特定された固有時定数項に基づいて、第2オフセット磁束を推定するように配置される磁束推定器と、を備える。
【0010】
いくつかの実施例において、電圧オブザーバはさらに、ZISCによるUPSシステムにおける電力変換システムの端子での電圧、又はZISCによるUPSシステムの出力電圧に基づいて、変圧器での電圧を決定するように配置される。
【0011】
いくつかの実施例において、第2リセットユニットは、第2オフセット磁束の大きさを抽出するように配置される磁束大きさ抽出器と、第2オフセット磁束の大きさと磁束の大きさの限界とを比較するように配置される比較器と、第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、第2オフセット磁束に補正係数を乗算して、補償電圧を提供するように配置される乗算器と、目的電圧基準から補償電圧を減算して、補正された電圧基準を取得するように配置される減算器と、を備える。
【0012】
本開示の第2態様によれば、本開示の例示的な実施例は、ZISCによるUPSシステムにおける磁束管理のための方法を提供する。当該方法は、ZISCによるUPSシステムに接続されたグリッドには電力品質イベントが生じて、ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モードで操作すると、ZISCによるUPSシステムにおける直列リアクトルでの第1オフセット磁束を決定することと、合成したインピーダンスダンピングを直列リアクトルに提供することで、第1オフセット磁束をリセットすることと、を備える。
【0013】
いくつかの実施例において、当該方法は、ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モード又は単独モードで操作すると、ZISCによるUPSシステムにおける変圧器での第2オフセット磁束を決定することと、第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、第2オフセット磁束をリセットすることと、をさらに備える。
【0014】
いくつかの実施例において、変圧器は結合変圧器又は下流変圧器である。
【0015】
いくつかの実施例において、第2オフセット磁束を決定することは、変圧器での電圧を決定することと、決定された変圧器での電圧、及び変圧器に特定された固有時定数項に基づいて、第2オフセット磁束を推定することと、を備える。
【0016】
いくつかの実施例において、変圧器での電圧を決定することは、ZISCによるUPSシステムにおける電力変換システムの端子での電圧、又はZISCによるUPSシステムの出力電圧に基づいて、変圧器での電圧を決定することを備える。
【0017】
いくつかの実施例において、第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、第2オフセット磁束をリセットすることは、第2オフセット磁束の大きさを抽出することと、第2オフセット磁束の大きさと磁束の大きさの限界とを比較することと、第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、第2オフセット磁束に補正係数を乗算して、補償電圧を提供することと、目的電圧基準から補償電圧を減算して、補正された電圧基準を取得することと、を備える。
【0018】
ここで、「発明の概要」部分は、本開示の実施例の重要又は基本的な特徴を決定していなく、且つ本開示の範囲を限定していない。以下の記載によって、本開示の他の特徴は分かりやすくなる。
【0019】
以下、図面を参照して、詳しく記載することで、本明細書が開示した例示的な実施例の上記及び他の目的、特徴、利点はより分かりやすくなる。図面において、本明細書が開示したいくつかの例示的な実施例は、例示的且つ非限定的に示される
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の実施例による、ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モードで操作する模式図である。
図2】本開示の実施例による、ZISCによるUPSシステムにおける磁束管理のための装置の模式図である。
図3】本開示の実施例による、第2決定ユニット及び第2リセットユニットの模式図である。
図4】本開示の実施例による、ZISCによるUPSシステムにおいて直列リアクトルでの第1オフセット磁束を制御するための方法のフローチャートである。
図5】本開示の実施例による、ZISCによるUPSシステムにおいて変圧器での第2オフセット磁束を制御するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面全体において、同様又は類似の符号は同様又は類似の素子を指示する。
【0022】
これから、図面におけるいくつかの例示的な実施例を参照して、本開示の原理を記載する。図面において、本開示の例示的な実施例を示すが、ここで、これらの実施例の記載は何れかの方式で本開示の範囲を限定していなく、ただ、当業者が本開示をよりよく理解して、実現するためのものである。
【0023】
用語である「含む(comprises)」又は「包含(includes)」及びその変体は、「含むが、限定されていない」を示すための開放用語として理解される。明細書に明記されていない限り、用語である「又は」は、「及び/又は」として理解される。「基づく」という単語は、「少なくとも部分的に基づく」として理解される。用語である「……ように操作する」は、ユーザー又は外部メカニズムによって誘発された操作を利用して、機能、動作、運動又は状態を実現することを指す。用語である「1つの実施例」、及び「実施例」は「少なくとも1つの実施例」として理解される。用語である「他の実施例」は、「少なくとも1つの他の実施例」として理解される。用語である「第1」、「第2」などは、異なる又は同一の対象を指す。以下、他の定義(明示的および暗黙的)を含んでもよい。明細書に明記されていない限り、用語の定義は記載全体において一致する。
【0024】
図1は、本開示の実施例による、ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モードで操作する模式図である。ZISCによるUPSシステムは好適な三角形状のスター変圧器122によって、グリッド102に電気結合される。ZISCによるUPSシステムは、グリッド102又は三角形状のスター変圧器122に結合された入力、及び負荷124に結合された出力を備える。入力電圧Vin及び入力電流Iinはグリッド102からUPSシステムに提供される。出力電圧Vout及び出力電流IoutはUPSシステムから負荷124に提供される。また、ZISCによるUPSシステムは、下流変圧器141を有するネットワークフィードを備える。
【0025】
図1に示すように、ZISCによるUPSシステムは、ZISCによるUPSシステムの入力に電気結合された入力スイッチ104、ZISCによるUPSシステムの出力に電気結合された出力スイッチ106、及びZISCによるUPSシステムの入力と出力の間に結合されたバイパススイッチ108を備える。
【0026】
ZISCによるUPSシステムは、直列リアクトル120、結合変圧器140、電力変換システム126及びエネルギー貯蔵器128をさらに備える。直列リアクトル120は入力スイッチ104と出力スイッチ106の間に電気結合される。結合変圧器140は直列リアクトル120と出力スイッチ106の間のノードに電気結合される。電力変換システム126は結合変圧器140に電気結合される。エネルギー貯蔵器128は電力変換システム126に電気結合される。
【0027】
ZISCによるUPSシステムは入力スイッチ104、出力スイッチ106及びバイパススイッチ108に結合されたシステムコントローラー160をさらに備える。システムコントローラー160は、スイッチ104、106及び108を操作することで、UPSシステムとグリッド102の間の電力交換を調節する。ZISCによるUPSシステムはグリッド接続モード又は単独モードで操作してもよい。
【0028】
グリッド接続モード期間、入力スイッチ104及び出力スイッチ106は閉じられ、バイパススイッチ108は開かれる。UPSシステムはUPSシステムとグリッド102の間の電力交換を調節することで、出力電圧の大きさ及び周波数を制御する。安定出力電圧は制御され、負荷124に接続されるハイファイ電圧源を実現する。
【0029】
電圧サグの大きさ及び持続時間が著しいと、UPSシステムは単独モードに変換される。単独モードで、入力スイッチ104及びバイパススイッチ108は開かれ、出力スイッチ106は閉じられる。従って、UPSシステムは、所定電圧の大きさ及び周波数基準を有する出力電圧Voutを制御することで、グリッド形成コンバーターシステムとして操作する。
【0030】
電圧サグイベント期間、UPSシステムはグリッド接続モードで操作すると、直列リアクトル120に跨っている増分電圧は直列リアクトル120での第1オフセット磁束を招致する。第1オフセット磁束の程度はシステムダンピング特性の関数である。電圧サグイベント期間、直列リアクトル120のピーク磁束は飽和限界を超えるべきではない。直列リアクトル120での第1オフセット磁束をリセットするために、システムコントローラー160は合成したインピーダンスダンピングを提供して、直列リアクトル120の第1オフセット磁束をゼロにリセットする。
【0031】
図2は本開示の実施例による、ZISCによるUPSシステムにおける磁束管理のための装置の模式図である。当該装置は、UPSシステムのシステムコントローラー160、又はUPSシステムの他のコントローラーとして体現される。図2に示すように、システムコントローラー160は第1決定ユニット161と第1リセットユニット162とを備える。グリッド102には電力品質イベントが生じて、ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モードで操作すると、第1決定ユニット161は直列リアクトル120での第1オフセット磁束を決定する。ここで、第1決定ユニット161は第1オフセット磁束の値ではなく、直列リアクトル120での第1オフセット磁束の出現のみを決定してもよい。そして、第1リセットユニット162は合成したインピーダンスダンピングを直列リアクトル120に提供して、第1オフセット磁束をリセットする。
【0032】
直列リアクトル120での第1オフセット磁束をゼロにリセットする過程で、結合変圧器140のオフセット磁束はその中心から移行して離れる。結果として、結合変圧器140のピーク磁束はその飽和レベルを超えると、電力変換システム126の電流限界を招致する。変圧器飽和は、他のグリッド又は負荷イベント際にも生じて、例えば、グリッド移相イベント、大負荷ステップ(例えば、モーターが始動する)、並列操作及び故障期間のクラッシュ回復などである。
【0033】
結合変圧器140の飽和行為を最小化するための解决策としては、磁束殘量を高めることである。当該解决策には、結合変圧器140に付加的な鉄を追加することは、UPSシステム全体のコストを増やす。また、結合変圧器140の磁束殘量を高めることは解决策ではなく、なぜならば、下流変圧器141(配電変圧器)は同じ行為を有し、それらの設計はユーザー電力システム要求(UPSメーカーの範囲を超える)に基づくためである。第2の解决策は、上流電圧サグ期間、UPS出力電圧の大きさ基準を最小化することで、結合変圧器140の磁束殘量を高めることである。上流電力品質イベント期間、UPS出力電圧の大きさの低下は、UPSシステムパフォーマンス基準によって駆動される。当該解决策を実現するために、主な挑戦の1つとして、非常に短い時間で電力品質イベントを決定する。第3の解决策は、オフ入力スイッチ104をより迅速にオフにすることで、結合変圧器140の磁気飽和を防止することである。ただし、市販で、利用可能な解决策は非常に有限である。
【0034】
結合変圧器140のオフセット磁束はその中心から移行するため、結合変圧器140の磁気飽和が生じた場合、UPS出力電圧Voutは歪む可能性があり、さらに交感飽和現象を招致する。図2に示すように、交感飽和現象を回避するために、システムコントローラー160は第2決定ユニット163と第2リセットユニット164とをさらに備える。ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モード又は単独モードで操作すると、第2決定ユニット163は結合変圧器140での第2オフセット磁束を決定する。第2リセットユニット164は第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、第2オフセット磁束をリセットする。
【0035】
結合変圧器140での電圧に基づいて、結合変圧器140の磁気コアの磁束を制御することで、磁気飽和を回避するための、コスト効率の良く、安定及び確実である解决策を取得する。
【0036】
図3は本開示の実施例による、第2決定ユニット163及び第2リセットユニット164の模式図である。図3に示すように、システムコントローラー160は、測定又は推定された結合変圧器140での電圧Vmeasを配慮して、結合変圧器140での第2オフセット磁束を推定する。第2決定ユニット163は電圧オブザーバ1631と磁束推定器1632とを備える。
【0037】
電圧オブザーバ1631は、測定又は推定された電圧Vmeasに基づいて、結合変圧器140での電圧を決定するのに適する。電圧Vmeasは、電力変換システム126の端子電圧、又はZISCによるUPSシステムの出力電圧Voutであってもよく、具体的に、UPSシステムの操作モード及び変圧器磁束の最適化に依存する。例えば、始動モード期間、電圧オブザーバ1631は、出力スイッチ106が開かれた場合、内部電圧推定を選択する。電圧オブザーバ1631は、UPSシステムの測定された出力電圧Vout、及び結合変圧器140に跨っている、推定された電圧降下によって、電力変換システム126の端子電圧を推定する。電力変換システム126の端子電圧又はUPS出力電圧Voutの選択は、磁束モデルへのよりよい磁束推定に依存する。
【0038】
磁束推定器1632は、決定された結合変圧器140での電圧、及び変圧器140に特定された固有時定数項に基づいて、第2オフセット磁束を推定するのに適する。例えば、回転変圧器磁束ベクトルは、第1原理に基づいて推定され、第1原理は、磁束が既知値(例えば、ゼロ又は他の値)から始まると仮定する場合、観測器電圧の時間積分を含む。回転変圧器磁束ベクトルは、結合変圧器140での第2オフセット磁束として作用する。
【0039】
図3に示すように、第2リセットユニット164は、第2オフセット磁束のベクトル成分から第2オフセット磁束の大きさを抽出するのに適する磁束大きさ抽出器1641を備える。変圧器磁束の大きさの限界は、結合変圧器140の指定又は公称定格磁束値に基づいて定義され、公称磁束ベクトルの大きさは一般的に、公称又はピーク操作電圧に対応する。磁束大きさ比較器1643において、第2オフセット磁束の大きさと指定磁束の大きさの限界とを比較し、第2オフセット磁束の大きさは磁束の大きさの限界を超えると、過剰磁束大きさに基づく補正係数(例えば、利得Kであり、1644と記する)が乗算器1645に提供される。乗算器1645において、第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、第2オフセット磁束と補正係数とを乗算して、補償電圧を提供する。そして、減算器1646において、目的電圧基準Vref'から補償電圧を減算して、補正された電圧基準Vrefを取得する。補正された電圧基準Vrefは、対応するパルス幅変調(PWM)信号を生成する。
【0040】
ここで、類似の方式で、下流変圧器141の磁気飽和を除去してもよい。提出された考え方はさらに、下流変圧器141の通電期間、システムの出力電圧の性能を改良する。提出された考え方は飽和を効果的に管理し、UPS変圧器の磁束殘量を増やすことで、よりよい結果を取得でき(以上のように、変圧器磁束殘量を高めて、又はUPS出力電圧の大きさ基準を最小化する)、なぜならば、上流電圧サグ期間、より多くの電圧を経験するためである。
【0041】
三相3線式システムについて、電圧補償及び磁束レベル項は静止座標系又は回転座標系に示されてもよいし、又は時間領域において位相量又は他の非直交軸を利用して個別に示されてもよい。
【0042】
ここで、提出された考え方は、並列グリッド電圧源システムをサポートする他の磁束管理に適用される。
【0043】
本開示の例示的な実施例は、ZISCによるUPSシステムにおける磁束管理のための方法をさらに提供する。当該方法は、図1図3を参照して記載された以上の装置によって実現される。
【0044】
図4は、本開示の実施例による、直列リアクトルでの第1オフセット磁束を制御するための方法のフローチャートである。図4に示すように、方法400は、402で、ZISCによるUPSシステムに接続されたグリッドには電力品質イベントが生じて、ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モードで操作すると、ZISCによるUPSシステムにおける直列リアクトルでの第1オフセット磁束を決定することと、404で、合成したインピーダンスダンピングを直列リアクトルに提供することで、第1オフセット磁束をリセットすることと、を備える。
【0045】
図5は、本開示の実施例による、ZISCによるUPSシステムにおいて変圧器での第2オフセット磁束を制御するための方法のフローチャートである。いくつかの実施例において、図5に示すように、方法500は、502で、ZISCによるUPSシステムがグリッド接続モード又は単独モードで操作すると、ZISCによるUPSシステムにおける変圧器での第2オフセット磁束を決定することと、504で、第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、第2オフセット磁束をリセットすることと、をさらに備える。
【0046】
いくつかの実施例において、変圧器は結合変圧器又は下流変圧器である。
【0047】
いくつかの実施例において、第2オフセット磁束を決定することは、変圧器での電圧を決定することと、決定された変圧器での電圧、及び変圧器に特定された固有時定数項に基づいて、第2オフセット磁束を推定することと、を備える。
【0048】
いくつかの実施例において、変圧器での電圧を決定することは、ZISCによるUPSシステムにおける電力変換システムの端子での電圧、又はZISCによるUPSシステムの出力電圧に基づいて、変圧器での電圧を決定することを備える。
【0049】
いくつかの実施例において、第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、第2オフセット磁束をリセットすることは、第2オフセット磁束の大きさを抽出することと、第2オフセット磁束の大きさと磁束の大きさの限界とを比較することと、第2オフセット磁束の大きさが磁束の大きさの限界を超えることに応答し、第2オフセット磁束に補正係数を乗算して、補償電圧を提供することと、目的電圧基準から補償電圧を減算して、補正された電圧基準を取得することを備える。
【0050】
本明細書は、いくつかの進歩性を有する実施例を記載して説明したが、機能を実行し、及び/又は結果、及び/又は本明細書に記載の利点のうちの1つ又は複数を取得するための他の各種の装置及び/又は構成は、当業者にとって容易に想到し得て、これらの変化及び/又は補正のうちの各々は何れも、本明細書に記載の本発明の実施例の範囲内に該当すると見なされる。より一般的に、当業者であれば理解できるように、本明細書に記載の全てのパラメータ、サイズ、材料及び配置は何れも例示的なものであり、実際のパラメータ、サイズ、材料及び/又は配置は、本発明によって教示された1つ又は複数の具体的な応用の使用に依存する。当業者であれば認識でき、又は通常の実験のみを利用して、本明細書に記載の本発明の実施例の固有のいろんな等価物を決定できる。従って、ここで、上記実施例はただ例示として表現され、添付の請求項及その等価物の範囲内で、本発明の実施例は、具体的な記載及び保護を請求する形態と異なっている形態で実践されてもよい。本開示の発明の実施例は、本明細書に記載のそれぞれの個別の特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法を対象とする。また、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組み合わせ(このような特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法は互いに矛盾しなければ)は本開示の発明範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】