IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オーシャン ディーエックスの特許一覧

特表2023-517464微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用
<>
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図1
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図2A
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図2B
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図2C
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図3A
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図3B
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図3C
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図4
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図5
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図6
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図7
  • 特表-微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】微生物を検出するためのマルチプレックスPCR方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20230419BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20230419BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20230419BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546074
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2021052115
(87)【国際公開番号】W WO2021152096
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】2000902
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522300787
【氏名又は名称】オーシャン ディーエックス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】タレンドゥ,フランク
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QQ54
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、プライマー対(1)およびプライマー対(2)を使用して試料中に存在する少なくとも2つの異なる核酸配列を増幅するための方法に関する。特に、プライマー対(2)の第1のプライマーはまた、(5’)位に、プライマー対(1)の第1のプライマーの配列を含み、プライマー対(2)の第2のプライマーはまた、(5’)位に、プライマー対(1)の第2のプライマーの配列を含む。本発明はまた、当該方法を実施することができるキットおよび検出キットならびにそれらの使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に存在する少なくとも2つの異なる目的の核酸配列を、目的の第1の核酸配列(A)を増幅することができるプライマー対1と、目的の第2の核酸配列(B)を増幅することができる少なくとも1つのプライマー対2とを使用して増幅するための方法であって、以下、
a.前記試料を、前記核酸配列(A)を増幅することができる前記プライマー対1および前記第2の核酸配列(B)を増幅することができる前記プライマー対2と接触させるステップであって、
i.前記プライマー対1が、前記第1の配列(A)に対応する核酸を増幅することができる第1のプライマーおよび第2のプライマーから形成され、
ii.前記プライマー対2が、前記第2の配列(B)に対応する核酸を増幅することができる第1のプライマーおよび第2のプライマーから形成される、接触させるステップと、
b.選択した試薬、およびPCR増幅を可能にする条件を加えるステップと、
c.前記第1および第2の核酸配列(AおよびB)を増幅するステップと、を含み、
前記プライマー対2の前記第1のプライマーの配列が、5’に、前記プライマー対1の前記第1または前記第2のプライマーの配列をさらに含み、前記プライマー対2の前記第2のプライマーの配列が、5’に、前記プライマー対1の前記第1または前記第2のプライマーの前記配列をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記プライマー対2の前記第1のプライマーの前記配列および前記プライマー対1の前記第1または前記第2のプライマーの前記配列が隣接しており、前記プライマー対2の前記第2のプライマーの前記配列および前記プライマー対1の前記第1または前記第2のプライマーの前記配列が隣接していることを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項3】
前記対1の前記第2のプライマーが、5’に、前記対1の前記第1のプライマーの前記配列を含むハイブリッドプライマーであり、前記配列が隣接していることを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記プライマー対2の濃度が、前記プライマー対1の濃度以下であることを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プライマー対1と前記プライマー対2との濃度比が、1:1~1000:1であることを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プライマー対1と前記プライマー対2との前記濃度比が、1:1~100:1、好ましくは25:1であることを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料を、第3の核酸配列(C)に対応する核酸配列を増幅することができるプライマー対3と接触させることをさらに含み、前記プライマー対3の第1のプライマーの配列が、5’に、前記プライマー対1の前記第1または前記第2のプライマーの前記配列をさらに含み、前記プライマー対3の第2のプライマーの配列が、5’に、前記プライマー対1の前記第1または前記第2のプライマーの前記配列をさらに含むことを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プライマー対1の前記濃度が、第2および/または第3の対の前記濃度よりも大きい、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プライマー対2の前記濃度が、前記プライマー対3の濃度に等しい、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試料を、第4の核酸配列(D)を増幅することができるプライマー対4と接触させることをさらに含み、前記プライマー対4の第1のプライマーの配列が、5’に、前記プライマー対1の前記第1または前記第2のプライマーの前記配列をさらに含み、前記プライマー対4の第2のプライマーの配列が、5’に、前記プライマー対1の前記第1または前記第2のプライマーの前記配列をさらに含むことを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プライマー対4の濃度が、前記プライマー対1の濃度未満である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プライマー対2、前記プライマー対3、および前記プライマー対4の前記濃度が、同一である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記増幅された核酸を配列決定するステップをさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記目的の核酸配列の増幅が、少なくとも1つの感染症に関与する少なくとも1つの微生物を検出および特定することを可能にする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記微生物が、蛍光プローブ、蛍光マーキング、融解曲線、ネステッドPCR、定量的PCR、逆転写PCR、またはDNA配列決定によって特定されることを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
キットであって、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とするプライマー対1:
■配列番号14または配列番号15のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27、
-以下で構成される前記遺伝子16Sの可変領域V4~V6を標的とするプライマー対2:
■配列番号28または配列番号29または配列番号30のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号31または配列番号32または配列番号33、を含む、キット。
【請求項17】
キットであって、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とするプライマー対1:
■配列番号14または配列番号15のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27、
-以下で構成される前記遺伝子16Sの可変領域V7~V9を標的とするプライマー対2:
■配列番号34または配列番号35のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号36または配列番号37または配列番号38、を含む、キット。
【請求項18】
キットであって、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とするプライマー対1:
■配列番号14または配列番号15のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27、
-以下で構成される前記遺伝子16Sの可変領域V4~V6を標的とするプライマー対2:
■配列番号28または配列番号29または配列番号30のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号31または配列番号32または配列番号33、
-以下で構成される前記遺伝子16Sの可変領域V7~V9を標的とするプライマー対3:
■配列番号34または配列番号35のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号36または配列番号37または配列番号38、を含む、キット。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法を実施し、少なくとも1つの感染症の場合に存在する少なくとも1つの微生物を検出するための、請求項16~18のいずれか一項に記載のキットの、使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に感染診断における、少なくとも1つの目的の核酸の検出および増幅の分野に関する。したがって、本発明は、試料中に存在する少なくとも2つの異なる核酸配列を、第1の核酸配列(A)を増幅するプライマー対1と、第2の核酸配列(B)を増幅する少なくとも1つのハイブリッドまたはキメラプライマー対2とを使用して増幅するための方法に関する。特に、プライマー対2のセンスプライマーなどの第1のプライマーは、5’に、プライマー対1の第1のプライマーの配列をさらに含み、プライマー対2の第2のプライマーは、5’に、プライマー対1の第1または第2のプライマーの配列をさらに含む。本発明はまた、当該方法を実施することができるプライマー、キット、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染診断は、特にゲノム増幅またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの分子生物学の方法を使用することによって、著しい発展を遂げている。PCRは、細菌の培養またはELISA試験などの従来の血清学的および微生物学的方法にますます取って代わっている。PCRには、試験が迅速で、感度が高く、特異的であるといういくつかの利点がある。依然として比較的高価であり、したがって、困難な分析または特定の分析研究所のために確保されているにもかかわらず、PCRによる診断の特異性および感度は、最終的に、まず第1に実施される従来の分析に取って代わるだろう。
【0003】
標準的なPCRは、特定のプライマー対から目的の核酸を増幅することを可能にする。感染診断の場合、例えば、E.Coli感染の疑いのある場合、E.Coliに特異的な核酸の増幅を可能にするプライマー対が使用され得る。感染の起源が知られていない場合、検出されるように意図されている各病原体に特異的なプライマー対を使用する必要がある。「シンプレックス」と称されるPCRアプローチでは、単一のプライマー対が使用され、感染の原因として特定されることが意図されるウイルス、細菌、または酵母の数に関して、PCR反応は、必要に応じて何度でも再現されなければならない。「マルチプレックス」と称されるPCRアプローチでは、すべてのプライマー対が1つの単一反応で添加され、求められるすべての病原体が同時に特定される。
【0004】
マルチプレックスPCRは、同じ生体試料から複数の異なる核酸配列を同時に特定することを可能にするPCRである。これにより、1つの同一の反応において複数の標的化増幅を実施することが可能となる。したがって、マルチプレックスPCRは、感染診断において特に好適である。感染診断の間、異なるプライマー対が、標的生体試料の存在下で、同じPCR反応中に複数の細菌、ウイルス、または酵母を標的化するために使用される。
【0005】
しかしながら、マルチプレックスPCRで使用されるプライマー対は、PCR中にすべてのプライマーが同じ温度で機能することができるように顕著に最適化される必要があり、特に交差反応の現象を防止することが可能である。
【0006】
例として、マルチプレックスPCRは、地域感染型肺炎の場合、培養物による39%と比較して、入院患者の77%において少なくとも1つの病原体を明らかにすることができる(NJ Gadsby CD Russell MP McHugh Comprehensive molecular testing for respiratory pathogens in community-acquired pneumonia.Clin Infect Dis 2016)。下痢の場合、従来の方法よりも最大3倍多くの病原体を便中で検出することが可能である(CR Stensvold HV Nielsen Comparison of microscopy and PCR for detection of intestinal parasites in Danish patients supports an incentive for molecular screening platforms.J Clin Microbiol 2012)。したがって、1つの単一テキストが、2時間未満で、試料中の複数の感染性因子の存在を示すことができる。今日では、髄膜炎、性感染症、呼吸器感染症、および感染性腸炎のパネルがすでに臨床医に提案されている。
【0007】
それにもかかわらず、マルチプレックスPCRは、所定量の病原体の検出に限定され、当該病原体の特定の遺伝子の少なくとも1つの断片を標的とするプライマー対がパネルに含まれる。検出パネルを拡張するために、検出キットは非常に多数のプライマーを含んでもよいため、大量の微生物を検出することが可能である。したがって、パネルにおいて標的化される病原体の数を増加させることが望ましいほど、プライマー対の数を増加させる傾向がある。一般的な方法では、病原体は、プライマー対によって検出され、そのアンプリコンは、当該病原体に特異的である。
【0008】
しかしながら、1つの単一試験における高濃度の異なるプライマーは、有害な矛盾する効果をもたらす。したがって、プライマー間の競合現象が現れ、プライマーの阻害をもたらす。さらに、使用される複数のプライマーのため、非特異的増幅の可能性がはるかに高い。したがって、高すぎる多重化は、検出感度が非常に低いことにつながる。
【0009】
2007年のI.Afoninaらによる研究(5’フラップを有するプライマーは、リアルタイムPCRを向上させる)から、5’にプライマーの標的に相補的でない配列を付加することで、PCR増幅の有効性が向上することも知られている。しかしながら、これらの配列付加は、マルチプレックスPCR中に典型的に使用される高濃度のプライマーに関連する、非特異的増幅または感受性の喪失の問題に対処するものではない。
【0010】
本発明は、問題を解決し、従来技術の欠点を克服すること、特に、プライマーが大きすぎる量で同じ試験に存在するときのプライマー間の競合現象のため、標的化核酸の増幅の欠如または不十分な増幅をもたらし得るマルチプレックスPCRの感度の劣化を防止または制限すること、ならびに望ましくない方法で増幅試薬を消費する非特異的増幅に関連するマルチプレックスPCRの感度の劣化を抑制または制限することを目的としている。
【発明の概要】
【0011】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、試料中に存在する少なくとも2つの異なる目的の核酸配列を、目的の第1の核酸配列(A)を増幅することができるプライマー対1と、目的の第2の核酸配列(B)を増幅することができる少なくとも1つのハイブリッドプライマー対2とを使用して増幅するための方法に関し、当該方法は、以下、
a.試料を、第1の核酸配列(A)を増幅することができるプライマー対1および第2の核酸配列(B)を増幅することができるプライマー対2と接触させるステップであって、
■プライマー対1が、第1の核酸配列(A)に対応する核酸を増幅することができる第1のプライマーおよび第2のプライマーから形成され、
■プライマー対2が、第2の核酸配列(B)に対応する核酸を増幅することができる第1のプライマーおよび第2のプライマーから形成される、接触させるステップと、
b.選択した試薬、およびPCR増幅を可能にする条件を加えるステップと、
c.第1および第2の核酸配列(AおよびB)を、試料中に存在する核酸配列(A)および核酸配列(B)の特異的転写に基づいて増幅反応を実施することにより増幅するステップと、を含み、
プライマー対2の第1のプライマーの配列が、5’に、プライマー対1の第1のプライマーの配列をさらに含み、プライマー対2の第2のプライマーの配列が、5’に、プライマー対1の第2のプライマーの配列をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
変異形によれば、プライマー対2(キメラまたはハイブリッドと称される)の第1のプライマーの配列は、5’に、プライマー対1の第1または第2のプライマーの配列をさらに含み、プライマー対2の第2のプライマーの配列は、5’に、プライマー対1の第1または第2のプライマーの配列をさらに含む。
【0013】
プライマー対2の濃度は、好ましくはプライマー対1の濃度以下であり、より好ましくはそれ未満である。
【0014】
本発明による方法はまた、第3のプライマー対3、第4のプライマー対4などを含んでもよく、各々、第1のプライマー(その配列は、5’に、プライマー対1の第1または第2のプライマーの配列をさらに含む)、および第2のプライマー(その配列は、5’に、プライマー対1の第1または第2のプライマーの配列をさらに含む)を含む。
【0015】
別の変異形によれば、第1の核酸配列(A)を標的とする第2のプライマーは、同様に、その5’の領域において、この同じ核酸(A)を標的とする第1のプライマーの配列も含有することができる。
【0016】
例えば、プライマー対1、2、3、または4の第1のオリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスプライマーであり得、プライマー対1、2、3、または4の第2のオリゴヌクレオチドは、アンチセンスまたはセンスプライマーであり得る。
【0017】
好ましくは、本発明による方法は、マルチプレックスPCRであり、差分定量的増幅を実施する、すなわち、標的が同じ方法で増幅されないことを可能にし、標的間の同じのサイクル数に対して産生される量において差をもたらすことができる。本発明による当該PCRは、本明細書の残りの部分では、リレーPCRまたは本発明によるPCRとも称される。
【0018】
本発明によるPCRは特に、感染症に関与する細菌、ウイルス、酵母などの微生物を検出および特定することを可能にする。疾患は、動物もしくはヒトなどの対象において、または植物において検出され得る。
【0019】
第2の態様によれば、本発明はさらに、特定のプライマーを含むプライマーおよびキット、本発明の方法を実施することができる検出キット、ならびに感染症の場合に存在する微生物を検出するためのそれらの使用に関する。
【0020】
本発明は、以下で説明する図面を参照して詳細に説明される。図面は、本発明のいくつかの実施形態の単なる例示であり、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明によるリレーPCRの原理を示す。
図2A】Staphylococcus aureusを標的とするプライマー対1、およびEscherichia coliを標的とするプライマー対2を含む、標準的なデュプレックスPCR試験(2つの標的を有するマルチプレックス)を示す。プライマー対1:プライマー対2の比は1:1である。黒色:Escherichia coliの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。灰色:Staphylococcus aureusの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。
図2B】Staphylococcus aureusを標的とするプライマー対1、およびEscherichia coliを標的とするプライマー対2を含む、本発明によるリレーPCR試験を示す。プライマー対1:プライマー対2の比は10:1である。黒色:Escherichia coliの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。灰色:Staphylococcus aureusの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。
図2C】Staphylococcus aureusを標的とするプライマー対1、およびEscherichia coliを標的とするプライマー対2を含む、本発明によるリレーPCR試験を示す。プライマー対1:プライマー対2の比は1:1である。黒色:Escherichia coliの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。灰色:Staphylococcus aureusの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。
図3A】Klebsiella pneumoniaeを標的とするプライマー対1、およびStaphylococcus aureusを標的とするプライマー対2を含む、標準的なデュプレックスPCR試験を示す。プライマー対1:プライマー対2の比は1:1である。黒色:Klebsiella pneumoniaeの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。灰色:Staphylococcus aureusの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。
図3B】Klebsiella pneumoniaeを標的とするプライマー対1、およびStaphylococcus aureusを標的とするプライマー対2を含む、本発明によるリレーPCR試験を示す。プライマー対1:プライマー対2の比は10:1である。黒色:Klebsiella pneumoniaeの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。灰色:Staphylococcus aureusの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。
図3C】Klebsiella pneumoniaeを標的とするプライマー対1、およびStaphylococcus aureusを標的とするプライマー対2を含む、本発明によるリレーPCR試験を示す。プライマー対1:プライマー対2の比は1:1である。黒色:Klebsiella pneumoniaeの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。灰色:Staphylococcus aureusの特定の遺伝子を標的とする増幅曲線。
図4】センス配列FW1のセンスプライマーおよび配列RT1のアンチセンスプライマーを含む、標的配列、例えばAを増幅することができる標準的なPCRで使用されるプライマー対の構造、ならびに標的配列、例えばBを増幅することができるリレーPCTで使用される本発明によるハイブリッドまたはキメラプライマー対の構造を示す。ハイブリッドまたはキメラプライマー対は、配列FW1+FW2のセンスプライマーおよび配列RT1+RT2のアンチセンスプライマーを含む。配列FW2は、標的配列Bの領域とハイブリダイズすることができ、配列FW1は、混合物中により高い濃度で存在するプライマー対1のセンスプライマーの配列に対応し、当該配列FW1およびFW2は、12~140ヌクレオチドの長さの単一のセンスプライマーを形成するように隣接している。ハイブリッドまたはキメラプライマー対はまた、配列RT1+RT2のアンチセンスプライマーを含み、配列RT2は、標的配列Bの領域に相補的であり、配列RT1は、混合物中により高い濃度で存在するプライマー対1のアンチセンスプライマーの配列に対応し、当該配列FW1およびFW2は、12~140ヌクレオチドの長さの単一のプライマーを形成するように隣接している。第2のPCRサイクルの効果により、混合物中により高い濃度で存在するプライマー対1は、第1のサイクル中にプライマー対2によって生成されたアンプリコンを増幅し、したがって、標的配列Bも増幅することができる。したがって、プライマー対1は、第2のPCRサイクルから標的配列Aだけでなく標的配列Bも増幅することができる。
図5】細菌遺伝子16Sの配列を示す。当該配列は、各種に特異的な9つの可変領域、および当該可変領域に隣接する種間の10の保存領域を含む。可変領域には、V1~V9の番号が付けられている。保存領域は、当業者の知識に応じて、少なくとも1つの目的の可変領域(例えば、V1~V2)を囲むこれらの保存領域上でハイブリダイズすることができるセンスおよびアンチセンスプライマーのヌクレオチド配列を定義することを可能にする。
図6】標準的なデュプレックス方法(2つの標的を有するマルチプレックス)または本発明のデュプレックスリレー方法によるPCRの結果を表すアガロースゲルである。すべての条件下で、100コピーのKlebsiella pneumoniaeのゲノムを添加した。ライン1:当該可変域に隣接する保存域を標的とする高濃度のプライマーを使用して得られた、遺伝子16Sの5’の領域のアンプリコン(可変域V1~V2を網羅するアンプリコン)(対照PCR)。2:当該可変域に隣接する保存域を標的とする高濃度のプライマーを使用して得られた、遺伝子16Sの中央領域のアンプリコン(可変域V4~V6を網羅するアンプリコン)(対照PCR)。3:各可変域を標的とする2つのプライマー対を使用して、遺伝子16Sの5’の領域(V1~V2)および中央領域(V4~V6)の標準的なマルチプレックスPCRにおけるアンプリコン、それぞれ、プライマーは高濃度である。4:デュプレックスリレーにおける、本発明の方法の遺伝子16Sの2つの領域のアンプリコン、ここで、第1のプライマー対は5′の領域(V1~V2)を標的とし、第2のハイブリッドまたはキメラプライマー対は、中央領域(V4~V6)だけでなく、第1のプライマー対の配列も標的とすることができる配列を含み、当該プライマーは、それぞれ、高濃度(第1のプライマー対)および低濃度(第2のプライマー対)で使用される。矢印は、目的のアンプリコン(この場合、遺伝子16Sの領域V1~V2)の増幅または増幅の欠如を示す。
図7】標準的なトリプレックス方法(3つの標的を有するマルチプレックス)または本発明の方法(トリプレックスリレー)によるPCRの結果を表すアガロースゲルである。すべての条件下で、100コピーのKlebsiella pneumoniaeのゲノムを添加した。1:標準的なトリプレックスPCRを使用して得られたアンプリコン、プライマーは各々1mMである。2 :キメラまたはハイブリッドプライマーを0.04mMの低濃度で使用した、トリプレックスリレーPCRを使用して得られたアンプリコン。トリプレックスリレーのアンプリコンV4~V6およびV7~V9は、重合後にサイズが増加するキメラプライマーの長さのため、標準的なトリプレックスにおける同等物よりもわずかに大きい。
図8】1つの単一プライマーを高濃度で含む、マルチプレックスリレーPCR方法によるPCRの結果を表すアガロースゲルである。すべての条件下で、100コピーのKlebsiella pneumoniaeのゲノムを添加した。1:遺伝子16Sの領域V1~V2を標的とする高濃度のプライマー対1、および遺伝子16SのV7~V9の領域を標的とする低濃度のハイブリッドまたはキメラプライマー対2を含む、デュプレックスリレーPCRによって得られたアンプリコン。2:高濃度のセンスプライマーおよび5’にセンスプライマー配列を含む低濃度のハイブリッドまたはキメラアンチセンスプライマーで構成される、遺伝子16S領域のV1~V2を標的とするプライマー対1、ならびに遺伝子16Sの領域V7~V9を標的とする低濃度のハイブリッドまたはキメラプライマー対2を含む、デュプレックスリレーPCRによって得られたアンプリコン。したがって、第1の対のアンチセンスプライマー、ならびに第2の対のセンスおよびアンチセンスプライマーは、ハイブリッドまたはキメラプライマーである。プライマー対1のセンスプライマーのみが高濃度で存在する。
【0022】
定義
本発明の意味の範囲内で、「患者」は、ヒトまたは動物、好ましくはヒトまたは哺乳動物であり得る対象を意味する。対象は、好ましくは、年齢または性別に関わらず、ヒト患者である。新生児、乳幼児、および小児も含まれる。
【0023】
本発明の意味の範囲内で、「診断」は、対象または植物に、病理に対応する治療を施すことができるように、1つ以上の病理(pathology)/病理(pathologies)を検出および特定すること、特に対象または植物における感染症を検出および特定することを目的とする試験を意味する。
【0024】
本発明の意味の範囲内で、「プライマー対」または「オリゴヌクレオチド対」は、PCRの文脈内で標的配列を増幅することを可能にする2つのオリゴヌクレオチドを意味する。
【0025】
本発明の意味の範囲内で、「プライマー」または「オリゴヌクレオチド」は、1~数十のヌクレオチドの核酸の短いセグメントを意味する。当該プライマーは、相補配列とハイブリダイズすることができる。本発明の文脈内では、それらは標的配列の断片とハイブリダイズすることができる。標的配列は、核酸配列(DNAまたはRNA)であり得る。
【0026】
本発明の意味の範囲内で、「配列FW1」は、1~数十のヌクレオチドのオリゴヌクレオチドの配列、特に、目的の配列の相補配列とハイブリダイズすることができるセンスプライマーの配列を意味する。
【0027】
本発明の意味の範囲内で、「配列RT1」は、1~数十のヌクレオチドのオリゴヌクレオチドの配列、特に、目的の配列の相補配列とハイブリダイズすることができるアンチセンスプライマーの配列を意味する。
【0028】
本発明の意味の範囲内で、「目的の核酸配列を増幅することができるプライマー対」は、PCRによって特定の目的の配列を増幅することができるセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーを含むプライマー対を意味する。例として、目的の核酸配列は、細菌の遺伝子16Sの可変部に存在する配列であってもよい。当該プライマーは、当業者の一般的な知識に従って、目的の当該配列を標的にするように設計される。
【0029】
本発明の意味の範囲内で、「増幅」は、PCR反応中の標的配列の増幅、したがって、標的配列のコピー数の増加を意味する。プライマーは、ポリメラーゼの作用により、鎖の伸長によって、以前に変性した相補配列とハイブリダイズする。反応は複数の連続したサイクルで進行し、アンプリコンのコピー数を増加させることを可能にする。
【0030】
本発明の意味の範囲内で、「アンプリコン」は、PRC中に増幅され、使用される2つのプライマーによって区切られる配列に対応する核酸断片を意味する。したがって、アンプリコンは、標的配列のコピーである。
【0031】
本発明の意味の範囲内で、「ハイブリッドプライマー」または「キメラプライマー」は、標的配列の相補鎖とハイブリダイズすることができる核酸配列、および5’に、別のプライマー対に属するプライマーの配列、例えば別のプライマー対のセンスまたはアンチセンスプライマーの配列に対応する核酸配列を含むプライマーを意味する。本発明の文脈内では、プライマー対2、3、および4は、ハイブリッドまたはキメラプライマーから形成される。本発明の変異形によると、プライマー対1は、1つの「標準的な」プライマーおよび1つのハイブリッドまたはキメラプライマーを含む。例えば、プライマー対2の第1のオリゴヌクレオチドは、特異的核酸配列(標的B)とハイブリダイズすることができる配列、および5’に、別の特異的核酸配列(標的A)とハイブリダイズすることができるプライマー対1の第1のオリゴヌクレオチドの配列に対応する核酸配列を含む。
【0032】
本発明の意味の範囲内で、「濃度比」は、プライマー対1の濃度の、プライマー対2などの第2のプライマー対に対する比を意味する。例えば、1:1の比は、第1の対および第2の対の同一の濃度に対応し、10:1の比は、第2の対と比較して10倍大きい第1の対の濃度に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
したがって、本発明は、マルチプレックスと称される、新しいPCR方法に関する。非常に多数の標的配列を特定することが可能である「標準的な」マルチプレックスPCRが知られている。この種の標準的なマルチプレックスPCRは、特定の核酸を標的とする、高濃度の各プライマー対の存在を必要とする。したがって、標準的なマルチプレックスPCRでは、各プライマー対は、マルチプレックスPCR反応中に同じ高濃度で存在する。少なくとも4または5つの異なるプライマー対を超えると、反応条件が損なわれ始める。さらに、プライマー間の競合現象の出現は、プライマーの特異的ハイブリダイゼーションの阻害をもたらす。さらに、使用される複数のプライマーは、非特異的増幅をもたらし得る。これにより、標準的なマルチプレックスPCRは、検出感度が非常に低い。
【0034】
本発明は、マルチプレックスリレーPCR(またはリレーPCR)と称される新しいマルチプレックスPCR方法に関する。マルチプレックスリレーPCR、すなわち本発明による方法の場合、1つの単一のプライマー対または1つの単一のプライマーが高濃度で使用され、他のすべてのプライマーは非常に低い濃度のものである。本発明により、標的化されたすべての核酸に対して非常に高い感度を保持することが可能である。
【0035】
いくつかの核酸の増幅を他のものよりも促進する(定量的増幅非対称または差分定量的増幅)、特に標的Aの核酸の増幅を他のものよりも促進することも可能である。したがって、優先的に増幅される当該核酸は、より大量に存在する。診断において、いくつかの核酸を好むことは、いくつかの核酸が他より多くの情報を提供するという事実のため、医学的利点を有する。
【0036】
したがって、本発明は、試料中に存在する少なくとも2つの異なる目的の核酸配列を、目的の第1の核酸配列(A)を増幅することができるプライマー対1と、目的の第2の核酸配列(B)を増幅することができる少なくとも1つのプライマー対2とを使用して増幅するための方法に関し、当該方法は、以下、
a.試料を、第1の核酸配列(A)を増幅することができるプライマー対1および第2の核酸配列(B)を増幅することができるプライマー対2と接触させるステップであって、
i.プライマー対1が、第1の核酸配列(A)に対応する核酸を増幅することができる第1のプライマーおよび第2のプライマーから形成され、
ii.プライマー対2が、第2の核酸配列(B)に対応する核酸を増幅することができる第1のプライマーおよび第2のプライマーから形成される、接触させるステップと、
b.選択した試薬、およびPCR増幅を可能にする条件を加えるステップと、
c.第1および第2の核酸配列(AおよびB)を増幅するステップと、を含み、
プライマー対2の第1のプライマーの配列が、5’に、プライマー対1の第1のプライマーの配列をさらに含み、プライマー対2の第2のプライマーの配列が、5’に、プライマー対1の第2のプライマーの配列をさらに含むことを特徴とする。
【0037】
ステップcの間、第1および第2の核酸配列(AおよびB)の増幅は、試料中に存在する核酸配列(A)および核酸配列(B)の重合(伸長)に基づく増幅反応によって実施される。
【0038】
変異形によれば、プライマー対2の第1のプライマーの配列は、5’に、プライマー対1の第1のプライマーまたは第2のプライマーの配列をさらに含み、プライマー対2の第2のプライマーの配列は、5’に、プライマー対1の第1または第2のプライマーの配列をさらに含む。
【0039】
好ましくは、プライマー対2の第1のプライマーの配列およびプライマー対1の第1または第2のプライマーの配列は隣接しており、プライマー対2の第2のプライマーの配列およびプライマー対1の第1または第2のプライマーの配列は隣接している。変異形によれば、当該配列は隣接していないが、1~12ヌクレオチドのサイズのスペーサー(または「リンカー」)によって、いくつかのヌクレオチドだけ離れている。
【0040】
別の変異形によれば、本発明による方法は、
-プライマー対1の第2のプライマーの配列が、5’に、当該プライマー対1の第1のプライマーの配列をさらに含み、当該配列が隣接しており、
-プライマー対2の第1のプライマーの配列が、5’に、プライマー1対の第1のプライマーの配列をさらに含み、プライマー対2の第2のプライマーの配列が、5’に、プライマー対1の第1のプライマーの配列をさらに含み、当該配列が隣接していることを特徴とする。
【0041】
別の変異形によれば、プライマー対1の第2のプライマーの配列は、5’に、当該プライマー対1の第1のプライマーの配列をさらに含み、かつ/またはプライマー対2の第1のプライマーの配列は、5’に、プライマー対1の第1のプライマーの配列をさらに含み、プライマー対2の第2のプライマーの配列は、5’に、プライマー対1の第1のプライマーの配列をさらに含み、当該配列は、3~12ヌクレオチドのサイズのスペーサー(または「リンカー」)によって、いくつかのヌクレオチドだけ離れている。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、方法は、以下を使用する:
-標的配列Aを増幅することができる少なくとも1つのプライマー対1であって、
-標的配列Aの断片に相補的である配列FW1のセンスプライマーであって、当該プライマーが、6~70ヌクレオチドのサイズである、センスプライマーと、
-標的配列Aの断片に相補的である配列RT1のアンチセンスプライマーであって、当該プライマーが、6~70ヌクレオチドのサイズである、アンチセンスプライマーとを含む、少なくとも1つのプライマー対1、ならびに
-標的配列Bを増幅することができる少なくとも1つのプライマー対2であって、
-配列FW1またはRT1および配列FW2のセンスプライマーであって、配列FW2が、標的配列Bの断片に相補的であり、当該配列FW1またはRT1およびFW2が、12~140ヌクレオチドのサイズの単一プライマーを形成するために隣接している、センスプライマーと、
-配列FW1またはRT1および配列RT2のアンチセンスプライマーであって、配列RT2が、標的配列Bの断片に相補的であり、当該配列FW1またはRT1およびRT2が、12~140ヌクレオチドのサイズの単一プライマーを形成するために隣接している、アンチセンスプライマーとを含む、少なくとも1つのプライマー対2。
【0043】
したがって、本発明はまた、ハイブリッドまたはキメラプライマー対であって、
-配列FW1またはRT1および配列FW2のセンスプライマー(または第1のオリゴヌクレオチド)であって、配列FW2が、標的配列Bの断片に相補的であり、配列FW1またはRT1が、それぞれ、混合物中により高い濃度で存在するプライマー対1のセンスまたはアンチセンスプライマーの配列に対応し、当該配列FW1またはRT1およびFW2が、12~140ヌクレオチドの長さの単一のセンスプライマーを形成するように隣接している、センスプライマーと、
-配列FW1またはRT1および配列RT2のアンチセンスプライマー(または第2のオリゴヌクレオチド)であって、配列RT2が、標的配列Bの断片に相補的であり、配列RT1またはFW1が、それぞれ、混合物中に等しいまたはより高い濃度で存在するプライマー対1のアンチセンスまたはセンスプライマーの配列に対応し、当該配列FW1またはRT1およびFW2が、12~140ヌクレオチドの長さの単一のセンスプライマーを形成するように隣接している、アンチセンスプライマーとを含む、ハイブリッドまたはキメラプライマー対に関する。
【0044】
変異形によれば、本発明はまた、ハイブリッドまたはキメラプライマー対であって、
-配列FW1またはRT1のセンスまたはアンチセンスプライマー(または第1のオリゴヌクレオチド)であって、配列FW1またはRT1が、混合物中により高い濃度で存在する標的配列Aの断片に相補的であり、当該配列が、6~70ヌクレオチドの長さのものである、センスまたはアンチセンスプライマーと、
-配列FW1および配列RT1、または配列RT1および配列FW1のハイブリッドもしくはキメラセンスまたはアンチセンスプライマー(または第2のオリゴヌクレオチド)であって、当該プライマーが、配列FW1もしくはRT1の第1のオリゴヌクレオチドと比較して低い濃度で混合物中に存在し、当該配列FW1およびRT1、またはRT1およびFW1が、12~140ヌクレオチドの長さの単一プライマーを形成するように隣接している、ハイブリッドまたはキメラセンスまたはアンチセンスプライマーとを含む、ハイブリッドまたはキメラプライマー対に関する。
【0045】
デュプレックスリレーPCRの間、本発明によれば、PCR反応は、標準的なデュプレックスPCRの場合と同様に、第1の核酸配列(A)をハイブリダイズおよび増幅することができるプライマー対1と、第2の核酸配列(B)をハイブリダイズおよび増幅することができるプライマー対2とを含む混合物中で起こる。しかしながら、デュプレックスリレーPCRは、第2のプライマー対のハイブリッドまたはキメラプライマー、および任意選択で第1のプライマー対のセンスまたはアンチセンスプライマーの使用において、標準的なデュプレックスPCRとは異なる。
【0046】
したがって、第2のPCRサイクルの効果により、プライマー対1は、プライマー対2によって生成されたアンプリコン、したがって、標的配列Bも増幅することができる。
【0047】
デュプレックスリレーPCRは特に、試料を、核酸配列(A)を増幅することができるプライマー対1および第2の核酸配列(B)を増幅することができるプライマー対2を含む反応混合物と接触させることを含む。
【0048】
プライマー対1は、各々、核酸(A)の鎖のうちの1つの相補配列にハイブリダイズし、2つのプライマー間の鎖の相補配列に対応する配列を増幅することができる、第1のセンスプライマー(例えば、配列FW1)および第2のアンチセンスプライマー(例えば、配列RT1)で構成される。当該相補配列は、標的配列(A)である。
【0049】
プライマー対2は、各々、核酸(B)の鎖のうちの1つの相補配列にハイブリダイズし、2つのプライマー間の鎖の相補配列に対応する配列を増幅することができる、第1のセンスプライマー(例えば、配列FW1-FW2)および第2のアンチセンスプライマー(例えば、配列RT1-RT2)で構成される。当該相補配列は、標的配列(B)である。
【0050】
さらに、反応混合物は、PCR増幅を実施するために必要なすべての試薬および条件を含む。当該試薬は、最初に反応混合物中に存在するか、または試料の接触後に添加され得る。必要な試薬としては、特に、PCRおよび反応の条件に応じて当業者が選択することができるdNTPおよびポリメラーゼが挙げられる。ポリメラーゼは、好ましくは、Thermophilus aquaticusのポリメラーゼ、または当該ポリメラーゼの「クレノウ」断片である。
【0051】
すべての構成要素が反応混合物中に存在すると、増幅を開始することができる。
【0052】
PCR反応の様々なステップは、当業者に既知である。PCRサイクルは、2つの一本鎖を得るために二本鎖を分離することを目的とする変性ステップ、続いてハイブリダイゼーションステップを含む。このステップの間、プライマーは、以前に変性された一本鎖のうちの1つに存在する相補配列を認識し、次いでハイブリダイズする。続いて伸長ステップが行われ、ポリメラーゼが一本鎖に相補的な鎖を合成することが可能となる。当該鎖は、反応混合物中に存在する遊離dNTPから合成される。このステップの持続時間は、増幅される配列の長さに依存する。
【0053】
PCR反応は、各々が同じステップを含む第2のサイクル、第3のサイクルなどを続ける。したがって、PCRの終了時に、プライマー間に含有される配列の増幅が達成される。当該配列は、アンプリコンに対応する。
【0054】
したがって、第1および第2の核酸配列の増幅は、試料中に存在する標的核酸配列(A)および標的核酸配列(B)の増幅、好ましくは、試料中に存在する標的核酸配列(A)および標的核酸配列(B)の同時増幅に基づく。
【0055】
本発明による方法は、プライマー対2の第1のプライマーが、5’に、プライマー対1の第1のプライマーの配列をさらに含み、プライマー対2の第2のプライマーが、5’に、プライマー対1の第2のプライマーの配列をさらに含むことを特徴とする。対2の第1のプライマーおよび対1の第1のプライマーの配列は隣接しており、対2の第2のプライマーおよび対1の第2のプライマーの配列も隣接している。
【0056】
変異形によれば、プライマー対2の第2のプライマーは、5’に、プライマー対1の第1または第2のプライマーの配列をさらに含む。対2の第1のプライマーおよび対1の第1のプライマーの配列は隣接しており、対2の第1または第2のプライマーおよび対1の第2のプライマーの配列も隣接している。
【0057】
好ましくは、プライマー対2の第1のプライマーは、標的配列(B)などの増幅される配列の相補配列とハイブリダイズすることができる核酸配列、さらに、5’に、プライマー対1の第1または第2のプライマーの配列を含み、プライマー対2の第2のプライマーは、標的配列(B)などの増幅される配列の相補配列とハイブリダイズすることができる核酸配列、さらに、5’に、プライマー対1の第1または第2のプライマーの配列を含む。標的配列(B)などの増幅される相補配列とハイブリダイズすることができる核酸配列は、プライマー1およびプライマー2によって異なる。特に、プライマー1はセンスプライマーであってもよく、プライマー2はアンチセンスプライマーであってもよい。
【0058】
好ましくは、第1のプライマー対は、第2のPCRサイクルの効果により、第1の配列(A)および第2の配列(B)を増幅することができる。実際、第1のPCRサイクルの間、第1のプライマー対は、第1の配列(A)を増幅することができ、第2のプライマー対は、第2の配列(B)を増幅することができる。第1のPCRサイクルの終了時に、第1の対の第1のプライマーの配列および配列(A)の相補配列を含む核酸配列、第1の対の第2のプライマーの配列および配列(A)の相補配列を含む核酸配列、第2の対の第1のプライマーの配列および配列(B)の相補配列を含む核酸配列、ならびに第2の対の第2のプライマーの配列および配列(B)の相補配列を含む核酸配列を生成する。
【0059】
実際に、第2の対の第1のプライマーは、第1の対の第1のプライマーの配列と、配列(B)とハイブリダイズすることができる配列とを含み、第2の対の第2のプライマーは、第1の対の第2のプライマーの配列と、配列(B)とハイブリダイズすることができる配列とを含む。したがって、第2のサイクル中に、プライマー対1は、第1のサイクル中に生成された核酸配列を増幅することができる(図1)。
【0060】
一実施形態によれば、第1の対の第1のプライマーの配列は、配列番号1、配列番号3、または配列番号5から選択され、第1の対の第2のプライマーの配列は、配列番号2、配列番号4、または配列番号6から選択され、第2の対の第1のプライマーの配列は、配列番号7または配列番号9から選択され、第2の対の第2のプライマーの配列は、配列番号8または配列番号10から選択される。当該配列は、以下の表1に列挙される。
【表1】
【0061】
診断の目的のために、すべての細菌に存在する遺伝子16Sの可変領域を標的化することが目的のものである。
【0062】
遺伝子16Sは、保存領域および可変領域、特に9つの可変領域および10の保存領域を含む(図5を参照)。可変領域は、V1~V9の番号が付けられており、すべて保存領域に囲まれている。当業者は、一般的な知識に基づいて、遺伝子16S上の当該領域を完全に決定することができる。Tremblayら、 2015(Frontiers in Microbiology)は、例えば、試料中に存在する細菌を特定するために、当該領域を増幅および配列決定するためのこれらの多数の方法のうちの1つを記載している。
【0063】
したがって、好ましい実施形態によれば、目的の配列は、単一の遺伝子または少なくとも2つの別個の遺伝子の可変配列に対応し、より好ましくは、目的の配列は、遺伝子16Sの可変配列に対応し、当該プライマーは、遺伝子16Sの保存配列の少なくとも12ヌクレオチドとハイブリダイズすることができる。好ましくは、センスプライマーは、遺伝子16Sの可変配列の5’位で当該遺伝子16Sの保存配列の少なくとも12ヌクレオチドとハイブリダイズすることができ、アンチセンスプライマーは、遺伝子16Sの可変配列の3’位で当該遺伝子16Sの保存配列の少なくとも12ヌクレオチドとハイブリダイズすることができる。
【0064】
本発明の文脈内では、発明者らは、V1~V2、V3、V4~V6、およびV7~V9などの目的の可変領域に隣接する保存領域上で特異的にハイブリダイズすることを可能にするプライマーを設計した。したがって、生成されたアンプリコンは、可変領域V1~V2またはV3またはV4~V6またはV7~V9の配列に対応し、その配列は、1つの病原体に特異的である。
【0065】
好ましい実施形態によれば、第1の対の第1のプライマー(センスプライマー)の配列は、配列番号14、配列番号15、配列番号18、配列番号20、配列番号21、および配列番号24から選択され、第1の対の第2のプライマー(アンチセンスプライマー)の配列は、配列番号16、配列番号17、配列番号19、配列番号22、配列番号23、配列番号25、配列番号26、および配列番号27から選択される。
【0066】
好ましくは、第1の対の第1のプライマー(センスプライマー)の配列は、配列番号14または配列番号15から選択され、第1の対の第2のプライマー(アンチセンスプライマー)の配列は、配列番号16、配列番号17、配列番号26、および配列番号27から選択される。
【0067】
第2の対の第1のプライマー(センスプライマー)の配列は、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号S4、または配列番号35から選択され、第2の対の第2のプライマーの配列は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号36、配列番号37、または配列番号38から選択される。当該配列は、以下の表1Bに列挙される。
【表2】
【0068】
遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とする第1のプライマー対は、好ましくは、以下で構成される:
-配列番号14または配列番号15と少なくとも70%の配列相同性を有するセンスプライマー、および
-配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27と少なくとも70%の配列相同性を有するアンチセンスプライマー。
【0069】
遺伝子16Sの可変領域V4~V6を標的とするハイブリッドまたはキメラプライマーの第2の対は、好ましくは、以下で構成される:
-配列番号28または配列番号29または配列番号30と少なくとも70%の配列相同性を有するセンスプライマー、および
-配列番号31または配列番号32または配列番号33と少なくとも70%の配列相同性を有するアンチセンスプライマー。
【0070】
遺伝子16Sの可変領域V7~V9を標的とする第2のプライマー対または第3のプライマー対は、好ましくは、以下で構成される:
-配列番号34または配列番号35と少なくとも70%の配列相同性を有するセンスプライマー、および
-配列番号36または配列番号37または配列番号38と少なくとも70%の配列相同性を有するアンチセンスプライマー。
【0071】
70%の配列相同性は、特に、当該配列の3’位の最初の10ヌクレオチドに関することが好ましい。
【0072】
より好ましくは、遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とする第1のプライマー対は、以下で構成される:
-配列番号14または配列番号15のセンスプライマー、および
-配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27のアンチセンスプライマー。
【0073】
遺伝子16Sの可変領域V4~V6を標的とするハイブリッドまたはキメラプライマーの第2の対は、好ましくは、以下で構成される:
-配列番号28または配列番号29または配列番号30のセンスプライマー、および
-アンチセンスプライマー配列番号31または配列番号32または配列番号33。
【0074】
遺伝子16Sの可変領域V7~V9を標的とする第2のプライマー対または第3のプライマー対は、好ましくは、以下で構成される:
-配列番号34または配列番号35のセンスプライマー、および
-アンチセンスプライマー配列番号36または配列番号37または配列番号38。
【0075】
本発明による方法の間、プライマー対2の濃度は、プライマー対1の濃度未満、それより大きい、またはそれと等しくてもよい。したがって、1つのプライマー対を別のプライマー対と比較して促進するか、または促進せず、したがって、目的の1つの配列の増幅を促進することが可能である。
【0076】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、プライマー対2の濃度は、プライマー対1の濃度以下であり、より好ましくはそれ未満である。プライマー対2の濃度がプライマー対1の濃度よりも低い場合、プライマー対2は、第1の対に対して不利である。したがって、プライマー対1によって生成されたアンプリコンは、より多くの量で存在する。次いで配列決定が行われる場合、標的Aのアンプリコンは過剰に提示されるため、優先的に配列決定される。したがって、その配列をより迅速に得ることができる。
【0077】
本発明による方法は、プライマー対1によって、プライマー対2によって生成されるアンプリコンの少なくとも4倍の量のアンプリコンを生成することを可能にする。したがって、第2の対によって生成されたアンプリコンは、より少ない量で存在し、配列決定中にあまり速く除去されない。
【0078】
プライマー1対とプライマー2対の濃度比は、好ましくは1:1~1000:1、さらにより好ましくは1:1~100:1である。特に有利な実施形態によれば、プライマー対1とプライマー対2の濃度比は、10:1、より好ましくは25:1の間である。この種の比は、例えば、1mMのプライマー対1の濃度、および0.1mMまたは0.04mMのプライマー対2の濃度に対応し得る。
【0079】
別の実施形態によれば、本発明による方法は、さらに、試料を、第3の核酸配列(C)を増幅することができる第3のプライマー対と接触させることを含み得る。プライマー対3の第1のプライマーは、相補配列(C)とハイブリダイズすることができる核酸配列、さらに、5’に、プライマー対1の第1のプライマーまたは第2のプライマーの配列に対応する配列を含む。プライマー対3の第2のプライマーは、相補配列(C)とハイブリダイズすることができる核酸配列、さらに、5’に、プライマー対1の第1または第2のプライマーの配列に対応する配列を含む。
【0080】
したがって、本発明による方法は、3つの異なる標的核酸配列、特に配列A、配列B、および配列Cを増幅することを可能にする3つの異なるプライマー対を含む。当該方法は、トリプレックスリレーと称されるPCRである。
【0081】
配列BおよびCは、各々、より高い濃度で存在するプライマー対1のセンスプライマーの配列、およびより高い濃度で存在するプライマー対1のセンスまたはアンチセンスプライマーの配列を含む、ハイブリッドまたはキメラセンスおよびアンチセンスプライマーによって増幅されることが好ましい。
【0082】
したがって、本発明による方法は、以下を使用する:
-標的配列Aを増幅することができる少なくとも1つのプライマー対1であって、
-標的配列Aの断片に相補的である配列FW1のセンスプライマーであって、当該プライマーが、6~70ヌクレオチドのサイズである、センスプライマーと、
■標的配列Aの断片に相補的である配列RT1のアンチセンスプライマーであって、当該プライマーが、6~70ヌクレオチドのサイズである、アンチセンスプライマーとを含む、少なくとも1つのプライマー対1、ならびに
-標的配列Bを増幅することができる少なくとも1つのハイブリッドまたはキメラプライマー対2であって、
■配列FW1またはRT1および配列FW2のセンスプライマーであって、配列FW2が、標的配列Bの断片に相補的であり、当該配列FW1またはRT1およびFW2が、12~140ヌクレオチドのサイズの単一プライマーを形成するために隣接している、センスプライマーと、
■配列FW1またはRT1および配列RT2のアンチセンスプライマーであって、配列RT2が、標的配列Bの断片に相補的であり、当該配列FW1またはRT1およびRT2が、12~140ヌクレオチドのサイズの単一プライマーを形成するために隣接している、アンチセンスプライマーとを含む、少なくとも1つのハイブリッドまたはキメラプライマー対2、ならびに
-標的配列Cを増幅することができる少なくとも1つのプライマー対3であって、
■配列FW1および配列FW3のセンスプライマーであって、配列FW3が、標的配列Cの断片に相補的であり、当該配列FW1およびFW3が、12~140ヌクレオチドのサイズの単一プライマーを形成するために隣接している、センスプライマーと、
■配列FW1またはRT1および配列RT3のアンチセンスプライマーであって、配列RT3が、標的配列Cの断片に相補的であり、当該配列FW1またはRT1およびRT3が、12~140ヌクレオチドのサイズの単一プライマーを形成するために隣接している、アンチセンスプライマーとを含む、少なくとも1つのプライマー対3。
【0083】
方法の間、プライマー対3の濃度は、プライマー対1の濃度未満、もしくはそれより大きい、もしくはそれと等しく、かつ/またはプライマー対2の濃度は、プライマー対1の濃度未満、もしくはそれより大きい、もしくはそれと等しい。したがって、1つのプライマー対を別のプライマー対と比較して促進するか、または促進しないことが可能である。好ましくは、プライマー対3の濃度は、プライマー対1の濃度未満であり、かつ/またはプライマー対2の濃度は、プライマー対1の濃度未満である。
【0084】
好ましくは、プライマー対1の濃度は、第2および/または第3のプライマー対の濃度よりも高く、プライマー対2の濃度は、プライマー対3の濃度と等しい。
【0085】
一実施形態によれば、プライマー対1の濃度は、第2および第3のプライマー対の濃度よりも大きく、プライマー対2の濃度は、プライマー対3の濃度よりも大きい。したがって、第1の対は第2の対と比較して促進され、第2の対も第3の対と比較して促進される。
【0086】
別の実施形態によれば、本発明による方法は、さらに、試料を、第4の核酸配列(D)を増幅することができる、ハイブリッドまたはキメラと称される第4のプライマー対と接触させることを含み得る。プライマー対4の第1のプライマーは、相補配列(D)とハイブリダイズすることができる核酸配列、さらに、5’に、プライマー対1の第1のプライマーまたは第2のプライマーの配列に対応する配列を含む。プライマー対4の第2のプライマーは、相補配列(D)とハイブリダイズすることができる核酸配列、さらに、5’に、プライマー対1の第1のプライマーまたは第2のプライマーの配列に対応する配列を含む。
【0087】
好ましくは、第4のプライマー対の濃度は、プライマー対1の濃度以下であり、第2、第3、および第4の対の濃度は同一である。
【0088】
別の実施形態によれば、本発明による方法は、さらに、試料を、第nの核酸配列を増幅することができる第nのプライマー対と接触させることを含み得る。プライマー対nの第1のプライマーは、標的相補配列とハイブリダイズすることができる核酸配列、さらに、5’に、プライマー対1の第1のプライマーまたは第2のプライマーの配列に対応する配列を含む。プライマー対nの第2のプライマーは、標的相補配列とハイブリダイズすることができる核酸配列、さらに5’に、プライマー対1の第1のプライマーまたは第2のプライマーの配列に対応する配列を含む。
【0089】
好ましくは、第nのプライマー対の濃度は、プライマー対1の濃度以下であり、第2、第3、第4、および第nの対の濃度は同一である。
【0090】
本発明の意味の範囲内で、「n」は、正の数である自然数を意味し、各々を1としてカウントすることで、物体を列挙することが可能である。したがって、単一の後継としての整数、すなわち、それよりも直ちに大きい整数であり、自然数のリストは無限である。
【0091】
さらに、本発明による方法を実施することを可能にする反応媒体は、フルオロフォアに結合された1つ以上の特定のプローブを含んでよく、その発光スペクトルは他のものとは異なる。したがって、PCR反応の各生成物は、当該特異的プローブによってリアルタイムで測定される。
【0092】
したがって、一実施形態によれば、本発明による方法は、フルオロフォア、好ましくは「TaqMan」プローブに結合したプローブを使用することによるアンプリコンの定量化のステップをさらに含む。
【0093】
本発明によるこの種のプローブは、以下の表2に列挙される。
【表3】
【0094】
別の実施形態によれば、本発明による方法は、蛍光プローブ、蛍光マーキング、融解曲線、ネステッドPCR、定量的PCR、逆転写PCR、またはDNA配列決定による、アンプリコン、したがって微生物の検出ステップを含む。
【0095】
アンプリコンの検出が配列決定によって実施される場合、方法は、増幅された核酸またはアンプリコンを配列決定するステップをさらに含む。
【0096】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、少なくとも1つの感染症、好ましくは細菌に関与する微生物(細菌、酵母、ウイルスなど)の検出および特定することを可能にする。
【0097】
本発明による方法はまた、腫瘍学で遺伝子疾患の診断に、および分子生物学で一般的な方法で使用することができる。
【0098】
別の態様によれば、本発明は、配列番号1および配列番号2、または配列番号3および配列番号4、または配列番号5および配列番号6を含むプライマー対1と、配列番号7および配列番号8、または配列番号9および配列番号10を含むプライマー対2とを含むキットに関する。
【0099】
好ましい実施形態によれば、本発明は、以下を含むキットに関する:
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とするプライマー対1:
■配列番号14または配列番号15と少なくとも70%の配列相同性を有するセンスプライマー、および
■配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27と少なくとも70%の配列相同性を有するアンチセンスプライマー、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V4~V6を標的とするプライマー対2:
■配列番号28または配列番号29または配列番号30と少なくとも70%の配列相同性を有するセンスプライマー、および
■配列番号31または配列番号32または配列番号33と少なくとも70%の配列相同性を有するアンチセンスプライマー。
【0100】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、以下を含むキットに関する:
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とするプライマー対1:
■配列番号14または配列番号15と少なくとも70%の配列相同性を有するセンスプライマー、および
■配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27と少なくとも70%の配列相同性を有するアンチセンスプライマー、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V7~V9を標的とするプライマー対2:
■配列番号34または配列番号35と少なくとも70%の配列相同性を有するセンスプライマー、および
■配列番号36または配列番号37または配列番号38と少なくとも70%の配列相同性を有するアンチセンスプライマー。
【0101】
別の実施形態によれば、本発明は、以下を含むキットに関する:
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とするプライマー対1:
■配列番号14または配列番号15と少なくとも70%の配列相同性を有するセンスプライマー、および
■配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27と少なくとも70%の配列相同性を有するアンチセンスプライマー、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V4~V6を標的とするプライマー対2:
■配列番号28または配列番号29または配列番号30と少なくとも70%の配列相同性を有するセンスプライマー、および
■配列番号31または配列番号32または配列番号33と少なくとも70%の配列相同性を有するアンチセンスプライマー、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V7~V9を標的とするプライマー対3:
■配列番号34または配列番号35と少なくとも70%の配列相同性を有するセンスプライマー、および
■配列番号36または配列番号37または配列番号38と少なくとも70%の配列相同性を有するアンチセンスプライマー。
【0102】
上記実施形態のいずれかに記載のキットは、好ましくは、70%の配列相同性が、特に、当該配列の3’位の最初の10ヌクレオチドに関するプライマーを含む。
【0103】
特に好ましい実施形態によれば、本発明は、以下を含むキットに関する:
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とするプライマー対1:
■配列番号14または配列番号15のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V4~V6を標的とするプライマー対2:
■配列番号28または配列番号29または配列番号30のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号31または配列番号32または配列番号33。
【0104】
特に好ましい実施形態によれば、本発明は、以下を含むキットに関する:
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とするプライマー対1:
■配列番号14または配列番号15のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V7~V9を標的とするプライマー対2:
■配列番号34または配列番号35のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号36または配列番号37または配列番号38。
【0105】
別の特に好ましい実施形態によれば、本発明は、以下を含むキットに関する:
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V1~V2を標的とするプライマー対1:
■配列番号14または配列番号15のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号16または配列番号17または配列番号26または配列番号27、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V4~V6を標的とするプライマー対2:
■配列番号28または配列番号29または配列番号30のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号31または配列番号32または配列番号33、
-以下で構成される遺伝子16Sの可変領域V7~V9を標的とするプライマー対3:
■配列番号34または配列番号35のセンスプライマー、および
■アンチセンスプライマー配列番号36または配列番号37または配列番号38。
【0106】
本発明によるキットは、好ましくは、本発明の方法を実施することができる。
【0107】
本発明はまた、細菌、ウイルス、または酵母などの感染症の場合に存在する微生物を検出するための本発明によるキットの使用にも関する。本発明は、好ましくは、対象または植物における感染症を診断するためのキットの使用に関する。
【0108】
本発明はまた、少なくとも1つの遺伝子疾患または少なくとも1つのがんを検出するための本発明によるキットの使用に関する。
【実施例
【0109】
Staphylococcus aureusおよびEscherichia coliの特異的遺伝子の2つの配列を増幅するための本発明による方法の実施例1(図2A/2B/2C)
材料および方法
リレーPCR反応は、以下の方法で実施された:供給業者の条件に従って、0.2mMのdNTP、4mMのMgCl2、0.05のFastStartポリメラーゼ(Roche)の単位、および緩衝液。プライマー対1のTaqManプローブは0.25mMであり、プライマー対2のプローブは0.1mMであった。プライマー対を異なる濃度で設定した:標準的なデュプレックスに関しては1mM、デュプレックス-リレーでのプライマー対1に関しては1mM、およびデュプレックスリレーでのプライマー対2に関しては0.1mMまたは1mM。サイクルは以下の通りであった:95℃で10分間変性し、次いで95℃で15秒/55℃で15秒/68℃で15秒で55サイクル。増幅を実施するために、試験した各細菌のおよそ100当量のゲノムコピーをミックスに添加した。
【0110】
結果
目的の2つの配列の増幅は、標準的なデュプレックスPCR、10:1のプライマー対1:プライマー対2の比を有する本発明によるリレーPCR、および1:1のプライマー対1:プライマー対2の比を有する本発明によるリレーPCRによって実施した。
【0111】
標準的なデュプレックスPCRの文脈内では、2つのプライマー対を高濃度で使用した。遺伝子Staphylococcus aureusの特異的配列の増幅を可能にするプライマー対は、配列番号3および配列番号4の配列のプライマーから形成され、Escherichia coliの増幅を可能にする対は配列番号1および配列番号2の配列のプライマーで構成される。結果を図2Aおよび表3に示す。したがって、発明者らは、Cq(蛍光シグナルの検出を開始するサイクルの数)の重なりを観察しており、これは、同一量の細菌ゲノムが実際にPCRミックスに添加されていることを意味する。さらに、同じ量のEscherichia coliおよびStaphylococcus aureusのアンプリコンが生成された。
【0112】
10:1の比を有するデュプレックスリレーPCR中に、プライマー対1は配列番号2および配列番号3の配列のプライマーから形成され、プライマー対2は配列番号7および配列番号8の配列のプライマーで構成される。第1のプライマー対は、遺伝子Staphylococcus aureusの特異的配列を増幅することを可能にし、第2のハイブリッドまたはキメラプライマー対は、Escherichia coliの遺伝子の特異的配列を増幅することを可能にする。結果を図2Bおよび表3に示す。したがって、発明者らは、Staphylococcus aureusとEscherichia coliアンプリコンとの間に曲線のCqオフセットを観察した。デュプレックスリレーPCRによってもたらされたこの遅延は、10:1のプライマー比に関して2.09サイクル(35.27~33.18)、すなわちおよそ因子4(2^1.99)であった。これは、Staphylococcus aureusのアンプリコンと比較して、遺伝子Escherichia coliに関しておよそ4倍少ないアンプリコンの差異量につながる。
【0113】
1:1の比を有するリレーPCRの間、使用されるプライマー対は、リレーPCRで使用されるものと同一である(比10:1)。結果を図2Cおよび表3に示す。したがって、発明者らはまた、Staphylococcus aureusとEscherichia coliアンプリコンとの間に曲線のCqオフセットを観察した。デュプレックスリレーPCRによってもたらされたこの遅延は、1.79サイクル(35.68~33.89)、すなわち、およそ因子3.5(2^1.79)であった。アンプリコンの差異量は、同様の因子に関して、ここでも観察された。
【表4】
【0114】
Klebsiella pneumoniaeおよびStaphylococcus aureusの特異的遺伝子の2つの配列を増幅するための本発明による方法の実施例2(図3A/3B/3C)
材料および方法は、実施例1に記載されているものと同一である。
【0115】
結果
目的の2つの配列の増幅は、標準的なデュプレックスPCR、10:1のプライマー対1:プライマー対2の比を有する本発明によるデュプレックスリレーPCR、および1:1のプライマー対1:プライマー対2の比を有する本発明によるデュプレックスリレーPCRによって実施した。
【0116】
標準的なデュプレックスPCRの文脈内では、2つのプライマー対を高濃度で使用した。遺伝子Klebsiella pneumoniaeの特異的配列の増幅を可能にするプライマー対は、配列番号5および配列番号6の配列のプライマーから形成され、Staphylococcus aureusの増幅を可能にする対は配列番号3および配列番号4の配列のプライマーで構成される。結果を図3Aおよび表4に示す。したがって、発明者らは、Cq(蛍光シグナルの検出を開始するサイクルの数)の重なりを観察しており、これは、同一量の細菌ゲノムが実際にPCRミックスに添加されていることを意味する。さらに、同じ量のKlebsiella pneumoniaeおよびStaphylococcus aureusのアンプリコンが生成された。
【0117】
10:1の比を有するリレーPCR中に、プライマー対1は配列番号5および配列番号6の配列のプライマーから形成され、プライマー対2は配列番号9および配列番号10の配列のプライマーで構成される。第1のプライマー対は、遺伝子Klebsiella pneumoniaeの特異的配列を増幅することを可能にし、第2のキメラプライマー対は、遺伝子Staphylococcus aureusの特異的配列を増幅することを可能にする。結果を図3Bおよび表4に示す。したがって、発明者らは、Klebsiella pneumoniaeとStaphylococcus aureusアンプリコンとの間に曲線のCqオフセットを観察した。デュプレックスリレーPCRによってもたらされたこの遅延は、10:1のプライマー比に関して1.99サイクル(35.35~33.36)、すなわち、およそ因子4(2^1.99)であった。これは、Klebsiella pneumoniaeのアンプリコンと比較して、遺伝子Staphylococcus aureusに関しておよそ4倍少ないアンプリコンの差異量につながる。
【0118】
1:1の比を有するリレーPCRの間、使用されるプライマー対は、リレーPCRで使用されるものと同一である(比10:1)。結果を図3Cおよび表4に示す。発明者らはまた、Klebsiella pneumoniaeとStaphylococcus aureusアンプリコンとの間に曲線のCqオフセットを観察した。デュプレックスリレーPCRによってもたらされたこの遅延は、2.59サイクル(36.43~33.84)、すなわち、およそ因子6(2^2.59)であった。これは、Klebsiella pneumoniaeのアンプリコンと比較して、遺伝子Staphylococcus aureusに関しておよそ6倍少ないアンプリコンの差異量につながる。
【表5】
【0119】
Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの2つの配列の増幅のための標準的なマルチプレックスPCRと比較した本発明による方法の実施例3(図6
材料および方法
リレーPCR反応は、以下の方法で実施された:供給業者の条件に従って、0.2mMのdNTP、4mMのMgCl2、0.05のFastStartポリメラーゼ(Roche)の単位、および緩衝液。プライマー対を異なる濃度で設定した:標準的なシンプレックスに関しては1mM、標準的なデュプレックスに関しては1mM、デュプレックス-リレーでのプライマー対1に関しては1mM、およびデュプレックスリレーでのプライマー対2に関しては0.04mM。サイクルは以下の通りであった:95℃で10分間変性し、次いで95℃で15秒/55℃で15秒/68℃で30秒で65サイクル。増幅を実施するために、Klebsiella pneumoniaeのおよそ100当量のゲノムコピーをミックスに添加した。
【0120】
結果
目的の2つの配列の増幅は、25:1のプライマー対1:プライマー対2の比を有する、本発明による標準的なデュプレックスPCR(図6、ライン3)およびデュプレックスリレーPCR(図6、ライン4)によって実施した。
【0121】
ライン1は、遺伝子16Sの5’の領域のアンプリコン(可変域V1~V2を網羅する)を表す(対照PCR)。
【0122】
ライン2は、遺伝子16Sの中央領域のアンプリコン(可変域V4~V6を網羅する)を表す(対照PCR)。
【0123】
ライン3は、遺伝子16SのV1~V2およびV4~V6の領域の標準的なマルチプレックスPCRにおけるアンプリコンを表す。
【0124】
ライン4は、本発明による方法(マルチプレックスリレーPCR)を用いた遺伝子16Sの領域V1~V2およびV4~のアンプリコンを表す。
【0125】
標準的なデュプレックスPCRの文脈内では、2つのプライマー対を高濃度で使用した(ライン3)。Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの配列V1V2の増幅を可能にするプライマー対は、配列番号14および配列番号16の配列のプライマーから形成され、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの配列V4~V6の増幅を可能にする対は、配列番号20および配列番号23の配列のプライマーで構成される。結果を図6に示す。発明者らは、遺伝子16Sの領域V1~V2のアンプリコンが存在しないことを観察し(ライン3および左側の矢印)、マルチプレックスPCRの標準的な条件が、遺伝子16Sの2つの領域の同時増幅と互換性がないことを示した。
【0126】
25:1の比を有するリレーPCR中に、プライマー対1は配列番号14および配列番号16の配列のプライマーから形成され、プライマー対2は配列番号28および配列番号33の配列のプライマーで構成される。第1のプライマー対は、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの領域V1~V2を増幅することができ、第2のキメラプライマー対は、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの領域V4~V6を増幅することができる。結果を図6に示す。したがって、発明者らは、リレーPCRの条件により、遺伝子16Sの2つの領域を同時に共増幅することが可能であり(ライン4)、領域V1~V2のアンプリコンは、中央領域よりも大きい量で存在する(サイズが小さいにもかかわらず、アンプリコンV1~V2のシグナルがより強い)ことを観察した。
【0127】
したがって、本発明による方法は、標準的なマルチプレックスPCRに反して、2つの標的化領域を共増幅することを可能にする。したがって、本発明によるキメラプライマーの特定の構造は、従来技術の問題、特にマルチプレックスPCRの問題を克服することを可能にする。
【0128】
Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの3つの配列の増幅のための標準的なマルチプレックスPCRと比較した本発明による方法の実施例4(図7
材料および方法
リレーPCR反応は、以下の方法で実施された:供給業者の条件に従って、0.2mMのdNTP、4mMのMgCl2、0.05のFastStartポリメラーゼ(Roche)の単位、および緩衝液。プライマー対を異なる濃度で設定した:標準的なトリプレックスに関しては1mM、トリプレックスリレーでのプライマー対1に関しては1mM、ならびにトリプレックスリレーでのプライマー対2およびプライマー対3に関しては0.04mM。サイクルは以下の通りであった:95℃で10分間変性し、次いで95℃で15秒/55℃で15秒/68℃で18秒で65サイクル。増幅を実施するために、Klebsiella pneumoniaeのおよそ100当量のゲノムコピーをミックスに添加した。
【0129】
結果
標準的なトリプレックスPCRの文脈内では、3つのプライマー対を高濃度で使用した(ライン1)。Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの特異的配列(V1~V2)の増幅を可能にするプライマー対は、配列番号14および配列番号16の配列のプライマーから形成され、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの特異的配列(V4~V6)の増幅を可能にする対は、配列番号20および配列番号23の配列のプライマーで構成され、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの特異的配列(V7~V9)の増幅を可能にする対は、配列番号24および配列番号25の配列のプライマーで構成される。
【0130】
トリプレックスリレーPCR(ライン2)の文脈内では、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの特異的配列(V1V2)の増幅を可能にするプライマー対は、配列番号14および配列番号16の配列のプライマーから形成され、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの特異的配列(V4~V6)の増幅を可能にする対は、配列番号28および配列番号33の配列のプライマーで構成され、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの特異的配列(V7~V9)の増幅を可能にする対は、配列番号34および配列番号36の配列のプライマーで構成される。領域V1~V2を標的とするプライマー対は高濃度で設定され、他のハイブリッドまたはキメラプライマー対は低濃度で設定される。結果を図7に示す。
【0131】
発明者らは、標的化領域、特にKlebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの可変領域V1およびV2が、標準的なトリプレックスによって十分に増幅されなかったことを観察した。対照的に、トリプレックスリレーは、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの3つの領域、すなわち、領域V1~V2(343pb)、領域V7~V9(標準的なデュプレックスPCRでは413bp、およびデュプレックスリレーPCRでは447bp)、および領域V4~V6(標準的なデュプレックスPCRでは509bp、およびデュプレックスリレーPCRでは543bp)を増幅することができる。
【0132】
したがって、本発明による方法は、3つの標的化領域を共増幅することを可能にする。
【0133】
高濃度の1つのプライマー、および低濃度の1つのハイブリッドまたはキメラプライマーを含むプライマー対1を用いた本発明による方法の実施例5(図8)。
材料および方法
2つのリレーPCR反応は、以下の方法で実施された:供給業者の条件に従って、0.2mMのdNTP、4mMのMgCl2、0.05のFastStartポリメラーゼ(Roche)の単位、および緩衝液。デュプレックスリレーの第1の条件下で、プライマーを異なる濃度に設定した:対1の2つのプライマーに関しては1mM、およびプライマー対2については0.04mM。デュプレックスリレーの第2の条件下で、プライマーを異なる濃度に設定した:対1の第1の標準的なプライマーに関しては1mM、対1の第2のキメラプライマーに関しては0.04mM、および対2のキメラプライマーに関しては0.04mM。サイクルは以下の通りであった:95℃で10分間変性し、次いで95℃で15秒/55℃で15秒/68℃で45秒で55サイクル。増幅を実施するために、Klebsiella pneumoniaeのおよそ100当量のゲノムコピーをミックスに添加した。
【0134】
結果
第1のデュプレックスリレーPCR(ライン1)の文脈内では、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの配列V1~V2の増幅を可能にするプライマー対は、高濃度の配列番号14および配列番号16の配列のプライマーから形成され、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの領域V7~V9の増幅を可能にする対は、低濃度の配列番号34および配列番号36の配列のキメラプライマーで構成される。
【0135】
第2のデュプレックスリレーPCR(ライン2)の文脈内では、対1の一方の単一プライマー(配列番号14)を高濃度に設定し、ハイブリッドプライマーである他方のプライマー(配列番号26)を低濃度に設定した。Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの配列V1V2の増幅を可能にするプライマー対は、配列番号14および配列番号26の配列のプライマーから形成され、Klebsiella pneumoniaeの遺伝子16Sの領域V7~V9の増幅を可能にする対は、配列番号34および配列番号37の配列のプライマーで構成される。結果を図8に示す。
【0136】
発明者らは、2つの条件下で、領域V1~V2(第1のデュプレックスリレーPCRに関しては343bp(ライン1)、および第2のデュプレックスリレーPCRに関しては349pb(ライン2))、およびV7~V9(第1のデュプレックスリレーPCRに関しては447bp(ライン1)、および第2のデュプレックスリレーPCRに関しては453pb(ライン2)に対応するアンプリコンが正常に増幅されることを観察した。しかしながら、高濃度の対1の単一プライマーを使用する事実は、本発明によるリレーPCRをさらに容易にするように思われることに留意する。さらに、V7~V9片と同一のアンプリコンV1~V2片の輝度は、アンプリコンV1~V2の量がアンプリコンV7~V9よりもはるかに大きく、アンプリコンV1~V2がより小さいことを示唆する。したがって、発明の方法のこの変異形は、高濃度のプライマーが使用される領域の好ましい増幅を保持する。

図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2023517464000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2022-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023517464000001.app
【国際調査報告】