(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】吸入のためのGM-CSFの液体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20230419BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230419BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230419BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230419BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230419BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230419BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230419BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230419BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230419BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230419BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230419BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230419BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230419BHJP
C07K 14/535 20060101ALN20230419BHJP
C07K 14/765 20060101ALN20230419BHJP
C12N 15/14 20060101ALN20230419BHJP
C12N 15/27 20060101ALN20230419BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
A61P11/00
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61K9/72
A61K47/26
A61K9/08
A61K47/42
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/12
C07K14/535
C07K14/765
C12N15/14
C12N15/27
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548034
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2021056851
(87)【国際公開番号】W WO2021185921
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522312539
【氏名又は名称】ドラッグリキュア エーピーエス
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】スクリバー,ラース
(72)【発明者】
【氏名】ワット,アラン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076CC31
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4C076EE41Q
4C076FF36
4C076FF61
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4C084AA01
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4C084MA13
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4C084ZA592
4C084ZB321
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4C084ZB352
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA12
4H045DA70
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
【解決手段】本明細書には、噴霧化による吸入のための組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rhGM-CSF)を含む液体製剤が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入による投与に使用するための組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rhGM-CSF)の液体製剤であって、ここで、前記液体製剤は、rhGM-CSF、糖アルコールまたは糖、アルブミンおよび水を含む、液体製剤。
【請求項2】
前記rhGM-CSFは、モルグラモスチム(配列番号:1)、サルグラモスチム(配列番号:2)、またはレグラモスチムである、請求項1に記載の液体製剤。
【請求項3】
前記糖は、マルトース、トレハロース、スクロース、マンノース、ラクトース、またはガラクトース、あるいは前記糖アルコールは、マンニトールまたはソルビトールである、請求項1または2に記載の液体製剤。
【請求項4】
前記アルブミンは、組換えヒトアルブミンである、請求項1~3のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項5】
前記液体製剤は、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含み、ここで、前記PEGは、PEG1000、PEG1550、PEG2000、PEG3000、PEG3350、PEG4000、またはPEG8000、好ましくはPEG-4000からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項6】
rhGM-CSFの濃度は、少なくとも150μg/mLである、請求項1~5のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項7】
rhGM-CSFの濃度は、150~500μg/mL、好ましくは200~300μg/mLの範囲内にある、請求項6に記載の液体製剤。
【請求項8】
糖アルコールの濃度は、少なくとも25mg/mLである、請求項1~7のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項9】
糖アルコールの濃度は、45~100mg/mL好ましくは45~55mg/mLの範囲内にある、請求項8に記載の液体製剤。
【請求項10】
アルブミンの濃度は、少なくとも0.2mg/mLである、請求項1~9のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項11】
アルブミンの濃度は、0.5~1.5mg/mLの範囲内にある、請求項1~10のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項12】
前記PEGの濃度は、最大50、例えば、最大40、例えば、最大30、例えば、最大20、例えば、最大10、例えば、最大1mg/mLである、請求項1~11のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項13】
前記PEGの濃度は、0.05~0.15mg/mLの範囲内にある、請求項1~12のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項14】
前記rhGM-CSFは、モルグラモスチム(配列番号:1)であり、前記糖アルコールはマンニトールであり、前記アルブミンは組換えヒトアルブミンであり、前記PEGはPEG-4000である、請求項1~13のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項15】
rhGM-CSFの濃度は、少なくとも150μg/mLであり、マンニトールの濃度は少なくとも25mg/mLであり、組換えヒトアルブミンの濃度は少なくとも0.2mg/mLにあり、およびPEG-4000の濃度は最大1mg/mLである、請求項1に記載液体製剤。
【請求項16】
rhGM-CSFの濃度は、200~300μg/mLであり、マンニトールの濃度は45~100mg/mLであり、組換えヒトアルブミンの濃度は0.5~1.50mg/mLであり、およびPEG-4000の濃度は0.05~0.15mg/mLである、請求項15に記載の液体製剤。
【請求項17】
クエン酸一水和物またはNa
2HPO
4などの緩衝液をさらに含む、請求項1~16のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項18】
前記液体製剤の重量モル浸透圧濃度は、250~375mOsm/L、好ましくは325~335mOsm/Lである、請求項1~17のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項19】
40℃で3ヶ月保存した後に残存するrhGM-CSFの%は60%を超え、および/または25℃で6ヶ月後の不純物形成のレベルは5%未満である、請求項1~18のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項20】
rhGM-CSFの生物学的効力の少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、例えば、少なくとも98%、例えば、少なくとも99%は噴霧化後に保持される、請求項1~19のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項21】
前記液体製剤は、25℃で少なくとも18ヶ月間の保存で安定する、請求項1~20のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項22】
吸入のための前記液体製剤が噴霧化される、請求項1~21のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項23】
前記液体製剤は経肺投与に使用するためのものである、請求項1~22のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項24】
前記使用が肺感染症の処置のための使用である、請求項1~23のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項25】
前記使用が肺における細菌、ウイルス、または真菌の感染症の処置のための使用である、請求項1~24のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項26】
前記使用が、自己免疫性肺胞たんぱく症(aPAP)または非結核性抗酸菌(NTM)感染症の処置のための使用である、請求項1~25のいずれか1つに記載の液体製剤。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか1つに記載の液体製剤を含む吸入器。
【請求項28】
前記吸入器が噴霧器である、請求項27に記載の吸入器。
【請求項29】
rhGM-CSF、糖アルコールまたは糖、アルブミンおよび水を含む、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rhGM-CSF)の肺用製剤。
【請求項30】
rhGM-CSFの液体製剤の噴霧化を含む、rhGM-CSFを肺に送達する方法であって、ここで、前記液体製剤はrhGM-CSF、糖アルコールまたは糖、アルブミンおよび水を含み、前記方法により前記rhGM-CSFが送達される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rhGM-CSF)を含む吸入のための液体製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、もともと造血成長因子として同定されていた。ヒトGM-CSFは、インビトロの骨髄球ならびに赤血球前駆細胞の成長を刺激し、いくつかの免疫および炎症性のプロセスにおいて単球、マクロファージならびに顆粒球を活性化する(Gasson JC et al.Prog Clin Biol Res.1990;352:375-384.;Gasson JC et al.Prog Clin Biol Res.1990;338:27-41;Hart SP et al.Biochem Soc Trans.1998;26(4):650-652;Rapoport AP et al.Blood Rev.1992;6(1):43-57.)。それは、リンパ球、単球、内皮細胞、線維芽細胞および一部の悪性細胞を含む多くの細胞型によって産生される(Metcalf D.Blood.1986;67(2):257-267;Clark SC,Kamen R.Science.1987;236(4806):1229-1237;Hart PH et al.J Immunol.1988;141(5):1516-1521;Metcalf D et al.Blood.1986;67(1):37-45)。造血前駆細胞上の成長刺激および分化の機能を有することに加えて、GM-CSFは、GM-CSF受容体を発現する免疫系の細胞に様々な作用を及ぼすことも発見された(概説としてはHamilton JA.Trends Immunol.2002;23(8):403-408;de Groot RP et al.Cell Signal.1998;10(9):619-628を参照)。
【0003】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子吸入療法は、自己免疫性肺胞たんぱく症(aPAP)(Tazawa R et al.N Engl J Med.2019;381(10):923-932)非結核性抗酸菌(NTM)の感染(Scott JP et al.Eur Respir J.2018;51(4):1702127)、急性放射線症候群(Singh VK et al.Cytokine.2015;71(1):22-37)、急性呼吸窮迫症候群(Herold S et al.Am J Respir Crit Care Med.2014;189(5):609-611)および嚢胞性線維症(Heslet L et al.J Inflamm Res.2012;5:19-27.)に苦しむ患者を噴霧化によって処置するために開示されてきた。
【0004】
吸入療法は、全身性副作用を軽減するとともに肺への最適に送達する最良の可能性を提供する。吸入処置は、最適な有効性に必要な薬物の量を低下させて、気道を標的とする。さらに、通常、薬物の急速な作用発現に伴って、全身性副作用の発生率が低くなる。噴霧器は、肺のすべての部位で堆積させ得る呼吸可能な液滴の非常に微細なミストで空気を満たすため、真菌類または細菌の肺感染に非常に適切な処置方法である。
【0005】
しかしながら、吸入療法用の液体としてのタンパク質製剤は、噴霧器への添加が可能、かつエアロゾル生成中に安定した状態を維持できる製品が必要となるため、非常に複雑なプロセスである。製剤は、長期間保存の際に安定性を維持し、タンパク質の完全性に対する噴霧化の影響を最小限に抑え、経肺送達に適切な張性を有するべきである。したがって、安定性と、潜在的毒性を含む肺での耐容性と等張性との間の微妙なバランスが、吸入療法のための有効なタンパク質製剤を達成する秘訣である。
【0006】
タンパク質が、再懸濁のための凍結乾燥された製品として製剤される時、再懸濁の際に等張性が達成できる長期安定性が確保されるため、同じ課題は発生しない。したがって、同じ賦形剤組成物は、必ずしも2つの異なる製剤に適用可能とは限らない。
【0007】
GM-CSFの液体製剤(LEUKINE(登録商標))は、以前静脈内投与のために開示された(US2002141970A1)。US2002141970A1は、化合物の安定性を増大させるため、賦形剤としてキレート化剤の添加を示唆する。
【0008】
噴霧化のための薬液の製剤は、薬物の溶解性および安定性を最適化することを目指しており、製剤のわずかな変化が、吸入量、粒度分布および処置時間にも影響する場合がある。
【0009】
噴霧化は、タンパク質を不安定にする固有のリスクを内在する。噴霧化の際のタンパク質不安定性の主な原因は、気液界面でのアンフォールディングおよび凝集であるため、噴霧化のためのGM-CSFの使用には、吸入のために使用準備ができており、かつ噴霧化の際に有意な変化をもたらさない安定した液体製剤が必要とされる。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、吸入のために使用準備ができており、かつ噴霧化の際、妥当な不安定性を示さないrhGM-CSFの安定した液体製剤を開示する。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、糖アルコールまたは糖、アルブミン、およびポリエチレングリコール(PEG)と水の組み合わせは、高度に安定したrhGM-CSFの液体製剤を提供する。
【0012】
1つの実施形態では、上記に記載された液体製剤は、噴霧化のために薬剤として使用されるものである。
【0013】
1つの実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、aPAPまたはNTM感染の処置に使用するものである。
【0014】
1つの実施形態では、rhGM-CSF、糖アルコール、アルブミンおよびPEGを噴霧化する工程を含む組換えrhGM-CSFを経肺送達するための方法が開示される。
【0015】
さらなる実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤を含む噴霧器が、aPAPまたはNTM感染の処置に使用するために開示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、40℃で3ヶ月後に残存するrhGM-CSF%に対するマンニトールの影響。3ヶ月にわたって加速条件でrhGM-CSFの液体製剤の安定性に対するマンニトール濃度の影響が評価された。マンニトールの濃度は、薬物安定性に影響を及ぼすことが発見された。マンニトールのより高い濃度(50mg/mL)によって、rhGM-CSFの安定性が改善した。Y軸は、T0と比較して、残存するrhGM-CSF含有量%である。
【
図2】
図2は、マンニトールの濃度の群化内のrhGM-CSFレベルの40℃で3ヶ月後に残存するGM-CSFに対する影響。3ヶ月にわたる加速条件で液体製剤の安定性へrhGM-CSFの濃度の影響も評価された。rhGM-CSFの濃度は、薬物安定性に影響を及ぼすことが発見された。特定のマンニトールの濃度でのrhGM-CSFのより高い濃度(400μg/mL)によって、液体製剤中のrhGM-CSFの安定性が改善した。Y軸は、T0と比較して、残存する%rhGM-CSF含有量%である。
【
図3】
図3は、rhGM-CSF不純物形成へのrHAおよびPEG4000の影響。安定化剤としてrHAとPEG4000を含む製剤では、6ヶ月にわたる冷却状態と加速条件でより少ないrhGM-CSF不純物が形成された。簡易型製剤(白丸)は、rHAまたはPEG4000を含有していない。複合型体製剤(黒丸)は1.0mg/mLのrHAおよび0.1mg/mLのPEG4000を含有している。
【
図4A】
図4Aは、rhGM-CSF複合型体製剤の18ヶ月間の性能の安定性。噴霧化の際の複合型rhGM-CSF製剤の性能の安定性は、5℃と25℃で18ヶ月間の保存まで評価された。以下の3つのパラメータ:DD=シミュレートされた呼吸での送達量(USP<1601>、成人による)、FPF=微粒子フラクション(5μm未満の液滴)およびMMAD=空気動力学的質量中央径が評価された。噴霧化の際、18ヶ月間までの時点で性能の安定性の変動は、ほとんどまたはまったく発見されなかった。
【
図4B】
図4Bは、rhGM-CSF複合型体製剤の18ヶ月間の性能の安定性。噴霧化の際の複合型rhGM-CSF製剤の性能の安定性は、5℃と25℃で18ヶ月間の保存まで評価された。以下の3つのパラメータ:DD=シミュレートされた呼吸での送達量(USP<1601>、成人による)、FPF=微粒子フラクション(5μm未満の液滴)およびMMAD=空気動力学的質量中央径が評価された。噴霧化の際、18ヶ月間までの時点で性能の安定性の変動は、ほとんどまたはまったく発見されなかった。
図4Aおよび4Bは2つの別個のバッチを示す。
【
図5】
図5は、rHA低濃度の製剤の3ヶ月間の安定性。rHA低濃度(0.2mg/mL)を有する複合型のrhGM-CSFのバージョンは、評価され、およびrHAまたはPEG4000を含まなかった簡易型製剤より、改善された安定性を示した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、吸入による投与に使用するための組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rhGM-CSF)の液体製剤であって、ここで、液体製剤は、rhGM-CSF、糖アルコールまたは糖、アルブミンおよび水を含む、液体製剤に関する。
【0018】
特定の賦形剤の組み合わせによって、吸入療法に使用する準備ができている液体製剤中のrhGM-CSFの高安定性が保証される。
【0019】
1つの実施形態では、前記rhGM-CSFは、モルグラモスチム(配列番号:1)、サルグラモスチム(配列番号:2)、またはレガラモスチム(Regramostim)である。
【0020】
モルグラモスチムのアミノ酸配列は、内在性ヒトGM-CSFのアミノ酸配列と同一である。サルグラモスチムのアミノ酸配列は、位置23でのロイシンの置換で天然のGM-CSFと異なる。好ましい実施形態では、前記rhGM-CSFはモルグラモスチム(配列番号:1)である。モルグラモスチムは、大腸菌中で発現された非グリコシル化rhGM-CSFである。
【0021】
1つの実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は糖を含み、ここで、前記糖は、マルトース、トレハロース、スクロース、マンノース、ラクトースまたはガラクトースからなる群から選択される。
【0022】
本発明の別の実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、マンニトールまたはソルビトールからなる群から選択された糖アルコールを含む。rhGM-CSFの液体製剤へのポリオール糖の添加によって、安定性が上昇する。さらに、ポリオール糖は、製剤がヒト血漿と等張であることを保証するための等張化剤として使用される。好ましい実施形態では、前記糖アルコールはマンニトールである。
【0023】
アルブミンは、球状タンパク質のファミリーであり、最も一般的なのは血清アルブミンである。ヒト血清アルブミン(HSA)は、ヒト血漿に含まれる最も一般的なタンパク質である。HSAの添加は、rhGM-CSF液体製剤の安定性に貢献する。また、存在量およびアルブミンへの天然の自己寛容によって、ある患者集団においてHSAが免疫応答を誘発する可能性を最小限に抑えることができる。したがって、本発明の1つの実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤はアルブミンを含む。好ましい実施形態では、前記アルブミンはHSAである。本発明の別の実施形態では、アルブミンが組換えヒトアルブミン(rHA)である。
【0024】
本発明の1つの実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、PEGをさらに含む。
そのようなPEGは、PEG1000、PEG1550、PEG2000、PEG3000、PEG3350、PEG4000、またはPEG8000を含むが、それらに限定されない。したがって、1つの実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、PEG1000、PEG1550、PEG2000、PEG3000、PEG3350、PEG4000またはPEG8000からなる群から選択されたPEGをさらに含む。好ましい実施形態では、前記PEGはPEG-4000である。
【0025】
タンパク質の濃度は、安定的かつ使用する準備ができた製剤を保証するために決定的である。rhGM-CSFの濃度を増加させると、rhGM-CSFの液体製剤の安定性を上昇させ得る。本発明の1つの実施形態では、rhGM-CSFの濃度は少なくとも150μg/mLである。本発明のさらなる実施形態では、開示された液体製剤中のrhGM-CSFの濃度は、少なくとも150~500μg/mLの範囲にある。本発明の別の実施形態では、開示された液体製剤中のrhGM-CSFの濃度は、200~300μg/mLの範囲にある。本開示は、糖アルコールのマンニトールの存在下において、rhGM-CSFの濃度を増加させると、液体製剤を安定化させることを示す(
図2)。
【0026】
吸入用のrhGM-CSFの液体製剤の等張性と安定性との間のバランスを保証するために、本発明の実施形態は、rhGM-CSFの液体製剤を開示し、ここで、糖アルコールの濃度は、少なくとも25mg/mLである。本発明のさらなる実施形態では、糖アルコールの濃度は、45~100mg/mLの範囲にある。本発明の別の実施形態では、糖アルコールの濃度は、45~55mg/mLの範囲にある。本開示の
図1で見えるように、糖アルコールのマンニトールの濃度を増加させると、rhGM-CSFの安定性が改善する。マンニトールの安定化効果は、25mg/mLの糖アルコールの濃度で確認される。この効果は、50mg/mLの濃度で大幅に増加する。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、少なくとも0.2mg/mLの濃度でのアルブミンを含む。さらなる実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、0.2~10mg/mLの濃度範囲内、例えば、0.3~5mg/mL、例えば、0.5~1.5mg/mLのアルブミンを含む。本開示の
図3では、冷却状態および加速条件の両方において安定化剤としてのrHAおよびPEG4000を含有しているrhGM-CSF液体製剤(複合型体製剤)でrhGM-CSFはほとんど含まれていない不純物は形成されることが示される。さらに、
図5は、0.2mg/mLの濃度でアルブミンの安定化効果が既に確認され得、安定化効果は濃度を増加させることで増加することを示す。
【0028】
本発明の1つの実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、PEGを含み、例えば、PEGの濃度は、最大50、例えば、最大40、例えば、最大30、例えば、最大20、例えば、最大10、例えば、最大1mg/mLである。本発明の別の実施形態では、PEGの濃度は、例えば、0.05~0.5mg/mL、例えば、0.05~0.3mg/mL、例えば、0.05~0.2mg/mLの濃度範囲にある。本発明のさらなる実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、0.05~0.15mg/mLの濃度範囲内のPEGを含む。
【0029】
賦形剤と生化学的製剤(biotherapeutic)の最適な組み合わせおよび濃度の選択は、非常に特異的で複雑なプロセスであり、個々のタンパク質製剤に特有である。本発明は、rhGM-CSFの液体製剤の1つの実施形態を開示し、ここで、rhGM-CSFは、モルグラモスチム(配列番号:1)であり、前記糖アルコールはマンニトールであり、前記アルブミンは組換えヒトアルブミンであり、前記PEGはPEG-4000である。
【0030】
1つの実施形態では、rhGM-CSFの濃度は、少なくとも150μg/mLであり、マンニトールの濃度は少なくとも25mg/mLであり、組換えヒトアルブミンの濃度は少なくとも0.2mg/mLであり、およびPEG-4000の濃度は最大1mg/mLである。
【0031】
本発明の別の実施形態では、rhGM-CSFの濃度は、150~500μg/mLであり、マンニトールの濃度は45~100mg/mLであり、組換えヒトアルブミンの濃度は0.5~1.5mg/mLであり、およびPEG-4000の濃度は0.05~0.15mg/mLである。
【0032】
好ましい実施形態では、rhGM-CSFの濃度は200~300μg/mLの範囲にあり、マンニトールの濃度は50mg/mLであり、組換えヒトアルブミンの濃度は1mg/mLであり、およびPEG-4000の濃度は0.1mg/mLである。
【0033】
緩衝液は、pHを調節し、安定化させ、および薬物溶解性および安定性を最適化するために製剤に添加された。吸入用の薬物については、生成物のpHが生理的なpHに接近していることが望ましい。本発明の1つの実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は緩衝液をさらに含む。好ましい実施形態では、前記緩衝液がクエン酸一水和物またはNa2HPO4を含む。
【0034】
液体製剤の重量モル浸透圧濃度は、液体製剤が吸入に適しているための重要なパラメータである。好ましくは、液体製剤は本質的に等張である。したがって、本発明の1つの実施形態では、製剤の重量モル浸透圧濃度は、250~375mOsm/L、好ましくは325~335mOsm/Lである。
【0035】
本発明の1つの実施形態では、40℃で3ヶ月保存した後に残存するrhGM-CSFの%が60%を超えるrhGM-CSFの液体製剤が開示される。本発明のさらなる実施形態では、25℃で6ヶ月後の不純物形成のレベルが5%未満であるrhGM-CSFの液体製剤が開示される。
【0036】
本発明は、1つの実施形態では、rhGM-CSF、糖アルコール、アルブミンおよびPEGの噴霧化を含む、rhGM-CSFを肺に送達する方法をさらに開示する。
【0037】
本明細書に提示されるrhGM-CSFの液体製剤は、特に噴霧化によく適している。本開示のデータは、rhGM-CSF、糖アルコールまたは糖、アルブミン、PEGおよび水を含む液体製剤に対するモルグラモスチムの効力が、噴霧化時にrhGM-CSFの生物学的効力の99.4%を保持することを実証する。さらに、rhGM-CSFのこの液体製剤の噴霧化の後で、rhGM-CSFが噴霧化プロセスの後に大部分は元の状態のままであることが見出された。最後に、最大18ヶ月の時点で本明細書に提示される液体製剤を噴霧化しても、性能安定性の変化はほとんど見られないか、またはまったく見られない。
【0038】
本発明の1つの実施形態では、rhGM-CSFの生物学的効力の少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、例えば、少なくとも98%、例えば、少なくとも99%は噴霧化後に保持される。
【0039】
本発明のさらなる実施形態では、製剤は、25℃で少なくとも18ヶ月間の保存安定性である。
【0040】
本発明の別の実施形態では、液体製剤は経肺投与に使用するためのものである。経肺投与を容易にするために、製剤は小さな呼吸可能な液滴にエアロゾル化されなければならず、その液滴の大部分は直径5μm未満である。生物学的調製物の場合、製剤はエアロゾル化プロセス中に安定性を維持しなければならず、このプロセスでは、高レベルの機械エネルギーおよび気液界面の面積の増加によって、タンパク質の変性および/または凝集が引き起こされる可能性がある。製剤は、肺への投与に安全、かつ適切な範囲のpH及び等張性の賦形剤も含む必要がある。
【0041】
本発明の別の実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は肺感染症の処置で使用するためのものである。
【0042】
さらなる実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、肺における細菌、ウイルス、または真菌類の感染症の処置で使用するためのものである。1つの実施形態では、細菌感染症は、肺炎球菌、ヘモフィルス属種、黄色ブドウ球菌および結核菌から成る群から選択される。別の実施形態では、ウイルス感染症は気管支炎、肺炎および毛細気管支炎からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、真菌感染症は、アスペルギルス、クリプトコックス、ニューモシスティスおよび地方病性の真菌類から成る群から選択される。
【0043】
好ましい実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、自己免疫性肺胞たんぱく症(aPAP)または非結核性抗酸菌(NTM)感染症の処置、結核、ARDS、インフルエンザ感染症、コロナウイルス感染症、急性および慢性の放射線症候群、気管支喘息、COPD、肺線維症、肺癌および呼吸器系の炎症性障害の処置で使用するためのものである。製剤はさらに、免疫学的反応を刺激し、肺感染症から保護するために予防的に使用されてもよい。
【0044】
本発明の実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、噴霧化のための薬物として使用するために開示される。別の実施形態では、rhGM-CSFの液体製剤は、aPAPまたはNTM感染症の処置で使用するために開示される。
【0045】
1つの実施形態では、病状を治療する方法であって、対象に噴霧化によってrhGM-CSFの液体製剤を投与することを含む。別の実施形態では、aPAPまたはNTM感染症を処置する方法が提供され、該方法は対象にrhGM-CSFの液体製剤を投与することを含む。
【0046】
APAPはまれな自己免疫性の肺疾患である。それは、肺胞たんぱく症(PAP)の最も一般的な形態(症例の90%)である。ほとんどの症例は、20~50歳の成人が発症する。症状を示さない人もいれば、呼吸困難が進行し、労作時に息切れがする人もいる。他の徴候や症状は、乾燥した慢性咳、疲労、体重減少、胸痛、および不定愁訴を含む場合がある。まれな症例では、喀血、指先の丸みかつ腫れ、およびチアノーゼが存在することがある。自己免疫性PAPは、GM-CSF効果を遮断するIgG抗体による免疫系の機能不全によって引き起こされる。GM-CSFは、肺胞マクロファージによるサーファクタント(タンパク質と脂肪の混合物)の排除を調節する。サーファクタントは肺(肺胞)の気嚢に蓄積し、および最終的には呼吸が不可能になる。標準処置は、肺洗浄と呼ばれる手技である。
【0047】
NTMは、結核やハンセン病を引き起こさないマイコバクテリアである。NTMは、結核に似た肺疾患を引き起こす。NTM疾患の最も一般的な臨床症状は肺疾患であるが、リンパ、皮膚/軟部組織、および播種性の疾患も重要である。NTMによって引き起こされる肺疾患は、閉経後の女性、および嚢胞性線維症、気管支拡張症、および結核の前などの基礎肺疾患を有する患者に最もよく見られる。アルファ1-アンチトリプシン欠乏症、マルファン症候群、および原発性線毛機能不全の患者が、肺のNTMコロニー形成および/または感染症を発症することは珍しくない。肺性NTMはさらに、AIDSおよび悪性疾患の個体にも発見され得る。
【0048】
臨床症状の範囲および強度は変動するが、一般的に化膿性痰を伴う慢性咳を含む。喀血がみられることもある。全身症状は、進行した疾患における倦怠感、疲労、および体重減少を含む。マイコバクテリウム・アブセサス(M.abscessus)肺感染症の診断には、症状の存在、放射線学的異常、および微生物培養が必要とされる。
【0049】
本開示に係るrhGM-CSFの液体製剤を含む吸入器。好ましい実施形態では、吸入器は噴霧器である。噴霧器のタイプは、ジェット噴霧器、超音波および振動メッシュを含む。他の実施形態は、ソフトミスト吸入器、表面音響波噴霧化、および毛細管エアロゾル発生器を含む。
【0050】
1つの実施形態では、本発明は、rhGM-CSFの液体製剤の噴霧化を含む、rhGM-CSFを肺に送達するための方法を開示し、ここで、液体製剤はrhGM-CSF、糖アルコールまたは糖、アルブミンおよび水を含み、該方法により前記rhGM-CSFが肺に送達される。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、aPAPまたはNTM感染症の処置で使用されるためのrhGM-CSFの液体製剤を含む噴霧器を開示する。これはジェット噴霧器、超音波および振動メッシュ噴霧器を含む。
【実施例】
【0052】
rhGM-CSFの安定性に対する異なる製剤の効果を、HPLCを使用して研究した。各製剤の含有量と純度は、逆相高圧クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって評価された。高次構造(凝集体)およびrhGM-CSFの分解生成物の決定は、サイズ排除高圧クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって評価された。
【0053】
実施例1(
図1)―マンニトール濃度の効果
モルグラモスチムの3つの製剤パラメータは、下記の表(表1)に従って変更された。
1.マンニトールレベル(0~50mg/mL):製剤が等張性を維持するように、緩衝液濃度も同時に調整した。
2.安定化剤(4つのオプションのうちの1つ):rHAおよびPEG、rHA単独で、安定化剤不在、およびTween80単独で
3.モルグラモスチムレベル(0.1~0.4mg/ml)
【0054】
【0055】
データをRP-HPLC方法によって収集した。バイアルを40°Cで3ヶ月保存した。上の表の15の製剤の各々に2つの調製物があった。この研究の主な発見は、
図1に示されるものであった。マンニトールのレベルは3ヶ月で加速条件での安定性に顕著な影響を及ぼした。
【0056】
実施例2(
図2)―rhGM-CSF濃度の効果
実施例1で記載されているように収集されたデータから、rhGM-CSF濃度が増加すると、マンニトールの特定の濃度でのrhGM-CSF製剤の安定性にも顕著な効果が見られることをさらに観察した。
【0057】
実施例3―rHAおよびPEG-4000の効果(
図3)
噴霧化のためのモルグラモスチム製剤の安定性に対するrHAおよびPEG-4000の効果を、以下の条件で研究した。
【0058】
【0059】
製剤調製
以下に記載するように、モルグラモスチム製剤のバージョン(複合型および簡易型)を使用して、安定性試験を実施した。
【0060】
モルグラモスチム複合型製剤
複合型製剤を、以下の記載に従って重量ベースで調製した。除菌は、最終的に製剤された産物に対してのみ行った。最終的に製剤された産物の内容は下記の表の通りである。
【0061】
【0062】
複合型rhGM-CSF製剤を製造するために、最初に下記の手順に従って緩衝液を調製した。
【0063】
クエン酸/リン酸/HSA緩衝液(例バッチサイズは=2000g)の調製
【0064】
【0065】
rHSAを2~8℃の貯蔵庫から取り出し、室温に平衡化させた。必要とされた量のマンニトール、PEG4000、クエン酸一水和物、リン酸水素二ナトリウム(無水)およびrHSAを適切な容器に事前に秤量した。清潔なビーカー/ボトルと攪拌棒をトップローディング天秤の上に置き、ビーカーと攪拌棒の重量を記録して風袋を計った。約800gの注射用水(WFI)をビーカーに添加した。必要量のクエン酸一水和物、リン酸水素二ナトリウム(無水)、マンニトールおよびPEG4000をWFIに加え、ビーカーを攪拌プレートに移し、すべての固体が溶解するまで混合物を攪拌した。ビーカーをトップローディング天秤に戻し、必要量のrHSAをビーカーに添加した。その後、ビーカーを撹拌プレートに移し、約5分間または溶液が均質になるまで穏やかに撹拌した。発泡は回避するべきである。最後に、WFIを目標量2000gまで添加し、発泡を避けながら再び約10分間溶液を穏やかに攪拌した。緩衝液にラベル付けし、さらに処理するまで2-8℃で保存した。緩衝液は2~8℃で100時間まで保存することができる。
【0066】
rhGM-CSFの製剤化産物の調製(実施例のバッチサイズ=1000g)
緩衝液の調製後、下記の手順でrhGM-CSF複合型製剤を調製する。
rhGM-CSF溶液の重量(g)=A
製剤化産物の重量(g)=A+(10.1507×A)
【0067】
【0068】
rhGM-CSFを、2~8℃で24時間±4時間解凍した。この時間内にバルク材が解凍されない場合は、室温でボトルを静かに回して解凍を継続する。ボトルを振るべきでなく、発泡を回避するべきである。必要量のrhGM-CSFを適切な大きさの容器に事前に秤量した。清潔なボトルと攪拌棒をトップローディング天秤の上に置いた。ビーカーと攪拌棒の重量を記録して風袋を計った。約800gのクエン酸/リン酸/rHA緩衝液をビーカーに添加し、その後、事前に秤量された量のrhGM-CSFもビーカーに添加した。rhGM-CSFの容器をクエン酸/リン酸/HSA緩衝液ですすぎ、すすぎ液をビーカーに移した。その後、ビーカーを撹拌プレートの上に置き、発泡を避けながら約5分間穏やかに撹拌した。混合物が完全に均質であることを確認した。クエン酸/リン酸/HSA緩衝液を最終重量が1000gになるように添加し、続いて発泡を避けながら約10分間穏やかに攪拌した。製剤化産物は、Millipore Stericupフィルタユニット(PVDF膜(Durapore)、非常に低いタンパク質結合、孔径0.22μm)を使用して濾過し、光から保護し2~8℃で保存した。
【0069】
モルグラモスチム簡易型製剤
rhGM-CSFの簡易型製剤は、簡易型製剤用緩衝液の密度が不明なため、容量ベースで調製している。最終的な製剤化産物の1バイアルあたりの成分濃度および配合量は下記の表に示される。
【0070】
【0071】
rhGM-CSFの製剤化産物の調製(実施例バッチサイズ=1000mL)
【0072】
【0073】
必要量のマンニトール、クエン酸一水和物、リン酸水素二ナトリウム(無水)を適切な容器に事前に秤量した。約800mLの注射用水(WFI)は撹拌棒を備えたビーカーに添加した。クエン酸一水和物、リン酸水素二ナトリウム(無水)およびマンニトールをWFIに添加した。その混合物を、すべての固体が溶解するまで攪拌した。必要量のrhGM-CSFをビーカーに添加し、rhGM-CSFの容器をWFIですすぎ、すすぎ液をビーカーに移した。ビーカーを撹拌プレートの上に置き、発泡を避けながら混合物を約5分間穏やかに撹拌した。完全に均質であることをチェックする。ビーカーの内容物を1Lメスフラスコに移した。ビーカーをWFIですすぎ、すすぎ液はメスフラスコに移した。移動中に泡が立たないように注意するべきである。WFIは1LまでQSへのメスフラスコに添加された。また、内容物はフラスコを軽ひっくり返すことによって混合された。製剤化産物を、Millipore Stericupフィルタユニット(PVDF膜(Durapore)、非常に低いタンパク質結合、孔径0.22μm)を使用して濾過した。最終的な製剤化産物を、光から保護し2~8℃で保存した。
【0074】
本研究の主な発見は、
図2に示すようなものである。rHAおよび安定剤としてPEG4000を含む製剤(複合型製剤)では、冷蔵と加速条件下の両方で、rhGM-CSFの不純物の形成が少なかった。さらに、下記の表では、複合型製剤は、40℃で12日間保存した場合の純度が、簡易型製剤と比較して明らかに高いことが示される。
【0075】
【0076】
【0077】
実施例4―噴霧化後の安定性
噴霧化後のrhGM-CSF複合型製剤の安定性は、非噴霧化製剤と濃縮噴霧化製剤とを比較し、検出された不純物およびタンパク質凝集体を比較することによって評価した。振動メッシュによって生成されたエアロゾルを、メッシュに対して配置されたポリプロピレンチューブに収集することにより、噴霧化の直後に収集した。不純物およびたんぱく質凝集体は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)それぞれによって検出された。本研究で評価された製剤は、rhGM-CSF濃度が250μg/mLではなく300μg/mLであることを除いて、上記のrhGM-CSF複合型製剤と同一であった。高濃度のモルグラモスチムは不安定性を示す可能性が高く、最悪のシナリオを表している。
【0078】
HPLCによって決定された未知不純物の検出は、下記の表2に表記される。主ピークに対するこれらのピークの相対保持時間(RRT)は、0.87、0.96、1.07であった。Head type30装置を使用して噴霧化を行った後、噴霧化サンプルでRRT0.87の微上昇(0.26%)、リザーバーでの残留(0.32%)が検出された。これらの結果は、rhGM-CSFが噴霧化プロセスの後に大部分は元の状態のままであることを実証する。
【0079】
【0080】
噴霧化による不純物や凝集物の発生を、振動メッシュ式噴霧器(PARI eFlow)で産生されたエアロゾルを捕集して分析し、初期検討した。SECによる凝集の評価では、HMW1およびHMW2として表示されるアルブミン関連凝集体に観察可能な違いが認められた。このデータから、噴霧化プロセスでアルブミンのある程度の凝集が起こるが、製剤中のタンパク質の大部分は凝集しないままであることが推測される。
【0081】
【0082】
【0083】
表4に収集したデータは、振動メッシュ式噴霧器による噴霧化前後の複合型製剤のrhGM-CSF濃度である。含有量をRP-HPLCで測定した。
【0084】
最後に、モルグラモスチムの効力の噴霧化前後での評価も行い、複合型製剤の場合、噴霧化に際して、GM-CSFの生物学的効力の99.4%が保持されていることを確認した。生物学的効力をTF-1細胞株アッセイによって測定した。
【0085】
実施例5―rhGM-CSF複合型製剤の性能安定性。
噴霧化の際のrhGM-CSF複合型製剤の性能安定性を、5℃および25℃で最大18ヶ月間の保存で評価した。以下の3つのパラメータを評価した:DD=シミュレートされた呼吸下での投与量(USPによる<1601>、成人)、FPF=微粒子フラクション(5μm未満の液滴)、およびMMAD=空気動力学的質量中央径。最大18ヶ月の時点では、噴霧化による性能安定性にほとんど変化は見られなかったか、または全く見られなかった。性能データは、USP<601>に準拠した医薬品カスケードインパクションによって生成された。
【0086】
実施例6―rHA低濃度製剤の安定性
低濃度(0.2mg/mL)のrHAを含む複合型rhGM-CSFのバージョンが評価され、rHAまたはPEG4000を含まない簡易型製剤よりも安定性が改善されていることが示された。rhGM-CSFの含有量をRP-HPLCで測定した。
【配列表】
【国際調査報告】