(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値を判定するためのシステム及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20230419BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20230419BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
A61B3/028
G06N20/00
G06N3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552620
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(85)【翻訳文提出日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2021056837
(87)【国際公開番号】W WO2021185917
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジルダ・マリン
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・エルナンデス-カスタニェーダ
(72)【発明者】
【氏名】アデール・ロンゴ
(72)【発明者】
【氏名】オーレリー・ル・カイン
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AA14
4C316AA15
4C316AA16
4C316FB07
4C316FC21
(57)【要約】
本発明は、可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、対象者が複数の実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求められる主観テストを実施することによって、対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値に関連する大きさの値を判定するためのシステムに関し、システムは、1つ以上のメモリと1つ以上のプロセッサとを有するコンピュータを備え、
- 複数の理論的光学条件の各理論的光学条件に対する説明的回答のセットの各説明的回答の確率を与える初期モデルが、前記コンピュータの前記1つ以上のメモリのうちの1つに記憶され、
- 前記コンピュータの前記1つ以上のプロセッサは、
a)各実際の光学条件に対して、前記可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、対象者に前記複数の実際の光学条件の各実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求めることによって実行される、前記主観テストの結果を収集し(500)、前記結果が、選択された各説明的回答及び対応する実際の光学条件を含み、
b)前記初期モデル及び収集された各説明的回答を考慮することによって、前記大きさの値を判定する(800、900)、
ように、プログラムされている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、対象者が複数の実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求められる主観テストを実施することによって、前記対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値に関連する大きさの値を判定するためのシステムであって、1つ以上のメモリと1つ以上のプロセッサとを有するコンピュータを備え、
- 複数の理論的光学条件の各理論的光学条件に対する前記説明的回答のセットの各説明的回答の確率を与える初期モデルが、前記コンピュータの前記1つ以上のメモリのうちの1つに記憶され、
- 前記コンピュータの前記1つ以上のプロセッサが、
a)各実際の光学条件に対して、前記可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、前記対象者に前記複数の実際の光学条件の各実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求めることによって実行される、前記主観テストの結果を収集し(500)、前記結果が、選択された各説明的回答及び対応する実際の光学条件を含み、
b)前記初期モデル及び収集された各説明的回答を考慮することによって、前記大きさの前記値を判定する(800、900)、
ように、プログラムされている、システム。
【請求項2】
ステップb)において、前記コンピュータが、前記初期モデルと収集された少なくとも1つの説明的回答とを比較し、この比較に基づいて前記大きさの前記値を判定するようにプログラムされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記初期モデルが、初期モデル曲線を含み、前記コンピュータが、ステップb)において、
- 前記対応する実際の光学条件に対して前記対象者によって選択された少なくとも1つの収集された説明的回答をプロットし、前記初期モデル曲線が前記プロットにフィットするように、得られた前記プロット上に前記初期モデル曲線を重ね合わせることと、
- 前記初期モデル曲線と前記プロットとの相対位置を考慮して、前記大きさの前記値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記初期モデルが、初期データセットを含み、前記コンピュータが、ステップb)において、
- 前記初期データセット及び前記収集された説明的回答を統計的に処理することと、
- この統計プロセスを考慮して、前記大きさの前記値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記コンピュータが、ステップb)において、
- 前記初期モデルを修正して、前記対象者の各説明的回答及び前記対応する実際の光学条件を考慮して修正モデルを取得することと、
- 前記修正モデルと収集された各説明的回答とを比較し、この比較に基づいて前記大きさの前記値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記修正モデルが、修正モデル曲線を含み、前記コンピュータが、ステップb)において、
- 前記対応する実際の光学条件に対して前記対象者によって選択された各収集された説明的回答をプロットし、前記修正モデル曲線が前記プロットにフィットするように、得られた前記プロット上に前記修正モデル曲線を重ね合わせることと、
- 前記修正モデル曲線と前記プロットとの相対位置を考慮して、前記大きさの前記値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記修正モデルが、修正データセットを含み、前記コンピュータが、ステップb)において、
- 前記修正データセット及び前記収集された説明的回答を統計的に処理することと、
- この統計プロセスを考慮して、前記大きさの前記値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされている、請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
前記初期モデル及び/又は修正モデルが、前記対象者の1つ以上の個人的特徴を考慮に入れる、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記説明的回答のセットが、
- 第1の実際の光学条件で視覚的パフォーマンスがより良好、
- 第2の実際の光学条件で視覚的パフォーマンスがより良好、
- 第1の実際の光学条件と第2の実際の光学条件の間で差は知覚されない、
からなる回答を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記初期モデルが、複数の参照対象者に対して前記主観テストを実行している間に、以前に収集された参照データセットに基づいて統計的に判定され、前記参照データセットが、
- 各参照対象者の個人的特徴、
- 各参照対象者の実際の光学条件及び対応する回答、
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記初期モデルが、前記参照対象者の1つ以上の個人的特徴に基づいて選択された前記参照データセットの一部の平均値若しくは加重平均値に基づいて判定され、並びに/又は前記初期モデルが、機械学習アルゴリズム及び/若しくはニューラルネットワークアルゴリズムを使用して判定される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の参照対象者が、前記対象者の前記対応する個人的特徴と同一又は類似の1つ以上の個人的特徴を有するものとして参照対象者のグループから選択される、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コンピュータが、前記プロットに対する前記初期モデル曲線又は修正モデル曲線の位置が所定回数のトライアル後に判定されるときに、又はこの位置が前記主観テストの2回の連続するトライアル間で所定の量よりも大きく修正されないときに、前記位置に基づいて前記大きさの前記値を判定するようにプログラムされている、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記コンピュータが、実際の光学条件に対応する前記収集された説明的回答の各々を前記初期モデル又は修正モデルと比較するようにプログラムされており、この比較が、特定の実際の光学条件に対応する特定の収集された説明的回答と、それぞれ修正された前記初期モデルとの間の差が所定の閾値を超えていることを示す場合、この特定の収集された説明的回答は矛盾していると識別され、任意選択的に、矛盾している回答の数が所定の閾値を超えている場合、前記初期モデル又は修正モデルが、前記矛盾している回答の数を低減するために修正される、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、対象者が複数の実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求められる主観テストを介して、前記対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値に関連する大きさの値を判定するための方法であって、
i)複数の理論的光学条件の各理論的光学条件に対して、前記説明的回答のセットの各説明的回答の確率を与える初期モデルを提供すること(300)と、
j)各実際の光学条件に対して、前記可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、前記対象者に前記複数の実際の光学条件の各実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求めることによって、前記主観テストを実行することと、
k)前記対象者の各説明的回答及び対応する実際の光学条件を収集すること(500)と、
l)前記初期モデル及び収集された各説明的回答を考慮することによって、前記大きさの前記値を判定すること(800、900)と、
からなるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値を判定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象者の視覚障害に適合した視覚機器を提供するために、この視覚障害を推定する必要がある。
【0003】
第1の可能性は、対象者の眼の光学的特徴の客観値を測定することである。
【0004】
また、対象者が必要とする補正レンズの光学的特徴の主観値を主観テストによって判定することも知られている。
【0005】
実際には、対象者の視覚は、光学的特徴の値が異なるレンズを対象者の眼の前に連続して配置することを可能にするフォロプタを使用して、テストプロトコル中にテストされる。
【0006】
このテストプロトコルは、古典的なフォロプタ又は可変度数の2つの複合レンズを有するフォロプタを使用して達成され得る。
【0007】
古典的なフォロプタでは、固定された所定の度数を有する異なるレンズが対象者の各眼の前に連続して配置され得る。例えば、異なる球面を有するレンズが、連続するトライアル中に対象者の一方の眼の前に連続して配置される。球面は、1つのトライアルから次のトライアルに所定のステップ値だけ増大される。このステップ値は、通常、0.25ジオプタ(D)又は0.125Dである。
【0008】
主観テストプロトコルはまた、可変度数のレンズを含む改良されたフォロプタを使用してもよい。そのようなフォロプタ/可変レンズは、例えば、特許文献1、特許文献2、又は、特許文献3に記載されている。
【0009】
主観テストの各トライアルにおいて、眼の前に配置された現在のレンズに対応して、対象者は、提示された2つの視覚状態の中からの好ましい視覚状態の指標に対応することの視覚評価、又は2つの視覚状態間で決定できないかどうかを表すように求められる。2つの視覚状態は、例えば、現在のレンズを通した2つの異なる画像の対象者の視覚に対応し得るか、又は以前のレンズを通した対象者の視覚及び現在のレンズを通した対象者の視覚に対応し得る。
【0010】
実際には、主観テストプロトコルの各トライアルは、例えば、デュオクロームテスト中に対象者によって与えられた評価に対応し得る。このデュオクロームテスト中、対象者には、一方で赤色の背景に表示された視標及び他方で緑色の背景に表示された視標を含む画像が提示される。対象者が現在のレンズを通して赤色の背景上の視標に、より良好な視覚を有する場合、提示された次のレンズにおいて球面を低減すべきであり、対象者が現在のレンズを通して緑色の背景上に示されている視標に、より良好な視覚を有する場合、提示された次のレンズにおいて球面を増大すべきである。
【0011】
変形例として、各トライアルにおいて、対象者の眼の前に配置された現在のレンズに対して、対象者は、以前のレンズと比較して、現在のレンズを通して自身の視覚品質を評価するように求められ、現在のレンズが以前のレンズよりも良く見えるか若しくは悪く見えるかどうか、又は2つの間で決定できないかどうかを尋ねられる。この最後の場合、2つのレンズは、対象者に同様の視覚品質を提供する。
【0012】
したがって、最新技術の主観テストは、所定の標準化されたプロトコルに依存する。このプロトコルは、例えば、対象者の前に第1に配置されたテストレンズの光学的特徴を判定するために、プロトコルの第1のトライアルのエントリとして対象者の特徴を使用することができる。それ以外の場合、他のカスタマイズは提供されない。
【0013】
結果として、プロトコルは、実行に時間がかかるか、又は例えば子供などの特定の対象者の場合に不正確になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0331226号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/027435号明細書
【特許文献3】国際公開第2017/021663号パンフレット
【特許文献4】国際出願第PCT/EP2018/061207号
【特許文献5】米国特許出願公開第2016/0331226号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2017/027435号明細書
【特許文献7】国際公開第2017/021663号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明の1つの目的は、より効率的なテストプロトコルを可能にする、対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値に関連する大きさの主観値を判定し、主観テストを実行するために必要な時間を短縮し、主観テストの信頼性を高めるためのシステムを提供することである。
【0016】
信頼できるとは、光学的特徴の主観値が、正確且つ再現可能であることを意味する。
【0017】
上記の目的は、本発明によれば、可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、対象者が複数の実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求められる主観テストを実施することによって、対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値に関連する大きさの値を判定するためのシステムを提供することにより達成され、システムは、1つ以上のメモリと1つ以上のプロセッサとを有するコンピュータを備え、
- 複数の理論的光学条件の各理論的光学条件に対する説明的回答のセットの各説明的回答の確率を与える初期モデルが、コンピュータの1つ以上のメモリのうちの1つに記憶され、
- コンピュータの1つ以上のプロセッサは、
a)各実際の光学条件に対して、可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、対象者に複数の実際の光学条件の各実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求めることによって実行される、主観テストの結果を収集し、その結果は、選択された各説明的回答及び対応する実際の光学条件を含み、
b)初期モデル及び収集された各説明的回答を考慮することによって、大きさの値を判定する、
ように、プログラムされている。
【0018】
対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値に関連する大きさは、任意の種類の大きさであってもよく、特に、
- 光学的特徴の値自体、
- 平均、加重平均、標準偏差などの、光学的特徴の複数の値に基づいて統計的に判定された大きさ、
- 光学的特徴の測定値に関連する信頼レベルの指標、
であってもよい。
【0019】
ステップb)では、値は、初期モデルを考慮して判定され、これは、主観テストの少なくとも1回のトライアルが初期モデルを使用して実行される限りあてはまる。初期モデルは、例えば、更なるトライアルで使用される修正モデルを判定するために、対象者の眼の前に配置された光学構成要素の光学的特徴を増大/減少させるためのステップ値などの、主観テストのパラメータの値を判定するために、及び/又は大きさの値を直接判定するために使用され得る。
【0020】
本発明によるシステムにより、大きさの判定では、複数の理論的光学条件の各理論的光学条件に対する説明的回答のセットの各説明的回答の確率を与える初期モデルを考慮する。したがって、実際の光学条件を理論的条件と比較することによって、実際の光学条件における対象者の最も可能性の高い回答を判定することが可能である。更に、この最も可能性の高い回答に基づいて、主観テストプロトコルは、主観テストの実行に必要な時間を短縮し、主観テストの信頼性を高めることによって、より効率的に修正され得る。
【0021】
対象者の個人的特徴に基づいて初期モデルを判定することによって、主観テストを対象者に適合させることが更に可能になる。
【0022】
本発明によるシステムの他の有利な非限定的な特徴を以下に列挙する。
- ステップb)において、コンピュータは、初期モデルと収集された少なくとも1つの説明的回答とを比較し、この比較に基づいて大きさの値を判定するようにプログラムされており、特にコンピュータは、初期モデルと収集された各説明的回答とを比較し、この比較に基づいて大きさの値を判定するようにプログラムされており、
- 初期モデルは、初期モデル曲線、初期モデル式、及び初期モデルデータセット、
のうちの少なくとも1つを含み、
- 初期モデルは初期モデル曲線を含み、コンピュータは、ステップb)において、
- 対応する実際の光学条件に対して対象者によって選択された少なくとも1つの収集された説明的回答をプロットし、初期モデル曲線がプロットにフィットするように、得られたプロット上に初期モデル曲線を重ね合わせることと、
- 初期モデル曲線とプロットとの相対位置を考慮して、大きさの値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされており、
- 初期モデルは初期データセットを含み、コンピュータは、ステップb)において、
- 初期データセット及び収集された説明的回答を統計的に処理することと、
- この統計プロセスを考慮して、大きさの値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされており、
- コンピュータは、ステップb)において、
- 初期モデルを修正して、対象者の少なくとも1つの説明的回答及び対応する実際の光学条件を考慮して修正モデルを取得することと、
- 修正モデルと収集された説明的回答とを比較し、この比較に基づいて大きさの値を判定し、特に、初期モデルを修正して、対象者の各説明的回答及び対応する実際の光学条件を考慮して修正モデルを取得し、修正モデルと収集された各説明的回答とを比較し、この比較に基づいて大きさの値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされており、
- 修正モデルは、修正モデル曲線、修正された式、及び修正モデルデータセット、
のうちの少なくとも1つを含み、
- 修正モデルは修正モデル曲線を含み、コンピュータは、ステップb)において、
- 対応する実際の光学条件に対して対象者によって選択された少なくとも1つの、場合によっては各々の、収集された説明的回答をプロットし、修正モデル曲線がプロットにフィットするように、得られたプロット上に修正モデル曲線を重ね合わせることと、
- 修正モデル曲線とプロットとの相対位置を考慮して、大きさの値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされており、
- 修正モデルは初期データセットを含み、コンピュータは、ステップb)において、
- 修正データセット及び収集された説明的回答を統計的に処理することと、
- この統計プロセスを考慮して、大きさの値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされており、
- 初期モデルは、対象者の1つ以上の個人的特徴を考慮し、
- 個人的特徴は、少なくとも、
-年齢、性別、出身地、眼科ケア歴、などの社会的パラメータ、
-瞳孔サイズ、瞳孔間距離、などの形態パラメータ、
-屈折異常のタイプ及び/又は値、非点収差、眼とレンズとの間の距離、などの光学パラメータ、
-主観テストの開始点、刺激のタイプ、遠方視覚又は近方視覚をテストするための距離、フォロプタと眼との間の距離、などの設定パラメータ、
-視力、主観テストに対する以前の回答、利き眼、両眼視覚、眼球運動、などの視覚パラメータ、
-主観テストに対する以前の回答の迅速さ、少なくとも眼科用レンズの少なくとも光学的特徴の変動に対する感度、などの行動パラメータ、
の値を含み、
- コンピュータは、対象者の個人的特徴に基づいて主観テストの少なくとも初期パラメータ値を判定するように更にプログラムされており、
- コンピュータは、主観テストの少なくとも初期パラメータ値を判定するために、初期モデルを考慮するようにプログラムされており、
- 対象者に適合された補正レンズの光学的特徴は、
- 遠方視覚及び/又は近方視覚に対するゾーンにおける球面度数、
- 遠方視覚及び/又は近方視覚に対するゾーンにおける、円柱度数及び/又は軸又はそれらの組み合わせ、
- 遠方視覚及び/又は近方視覚に対するゾーンにおける、プリズム度数及び/又は軸又はそれらの組み合わせ、
- 遠方視覚及び/又は近方視覚に対するゾーンにおけるフィルタ透過率、
のうちの少なくとも1つを含み、
- 説明的回答のセットは、
- 第1の実際の光学条件で視覚的パフォーマンスがより良好、
- 第2の実際の光学条件で視覚的パフォーマンスがより良好、
- 第1の実際の光学条件と第2の実際の光学条件の間で差は知覚されない、
からなる回答を含み、
- 初期モデルは、複数の参照対象者に対して主観テストを実行している間に、以前に収集された参照データセットに基づいて統計的に判定され、参照データセットは、
- 各参照対象者の個人的特徴、
- 各参照対象者の実際の光学条件及び対応する回答、
を含み、
- 初期モデルは、この参照データセットの平均値又は加重平均値に基づいて判定され、
- 初期モデルは、参照対象者の1つ以上の個人的特徴に基づいて選択された参照データセットの一部の平均値若しくは加重平均値に基づいて判定され、並びに/又は初期モデルは、機械学習アルゴリズム及び/若しくはニューラルネットワークアルゴリズムを使用して判定され、
- 参照回答のプロットは、対応する実際の光学条件に対して各参照対象者の回答をプロットすることによって得られ、初期モデルは、参照回答のプロットの分布の特徴に基づいて判定され、
- 複数の参照対象者は、対象者の対応する個人的特徴と同一又は類似の1つ以上の個人的特徴を有するものとして参照対象者のグループから選択され、
- コンピュータは、主観テストを実行し、初期モデルを考慮して主観テストを実行するために連続的に使用される実際の光学条件を判定するようにプログラムされており、
- コンピュータは、主観テストを実行し、修正モデルを考慮して主観テストを実行するために連続して使用される実際の光学条件を判定するようにプログラムされており、
- コンピュータは、プロットに対する初期モデル曲線又は修正モデル曲線の位置が所定回数のトライアル後に判定されるときに、又はこの位置が主観テストの2回の連続するトライアル間で所定の量よりも大きく修正されないときに、この位置に基づいて大きさの値を判定するようにプログラムされており、
- コンピュータは、実際の光学条件に対応する収集された説明的回答の各々を初期モデル又は修正モデルと比較するようにプログラムされており、この比較が、特定の実際の光学条件に対応する特定の収集された説明的回答と、それぞれ修正された初期モデルとの間の差が所定の閾値を超えていることを示す場合、この特定の収集された説明的回答は矛盾していると識別され、
- 矛盾している回答の数が所定の閾値を超えている場合、初期モデル又は修正モデルが矛盾している回答の数を低減するために修正される。
【0023】
本発明はまた、可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、対象者が複数の実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求められる主観テストを介して、対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値に関連する大きさの値を判定するための方法に関し、方法は、
i)複数の理論的光学条件の各理論的光学条件に対して、説明的回答のセットの各説明的回答の確率を与える初期モデルを提供することと、
j)各実際の光学条件に対して、可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、対象者に複数の実際の光学条件の各実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求めることによって、主観テストを実行することと、
k)対象者の各説明的回答及び対応する実際の光学条件を収集することと、
l)初期モデル及び収集された各説明的回答を考慮することによって、大きさの値を判定することと、
からなるステップを含む。
【0024】
方法は、通常、本発明によるシステムによって実施される。
【0025】
実施例の詳細な説明
添付図面を参照する以下の説明により、本発明を構成するもの、及びそれを達成し得る方法が明らかになるであろう。本発明は、図面に示される実施形態に限定されるものではない。したがって、請求項で言及された特徴に参照符号が続く場合、かかる符号は、請求項の理解レベルを高める目的でのみ含まれ、請求項の範囲を限定するものではないと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明によるデバイスを使用する本発明による方法の一実施形態の概略ブロック図である。
【
図2】各対象者の実際の屈折に基づいて補正された主観テストの対応する各トライアルにおいて、各対象者の眼の前に配置されたレンズの球面にリンクする理論的光学条件に対してプロットされた、対応する主観テスト中に得られた複数の対象者の回答の概略プロット(正方形)であり、これらのデータに基づいて判定された3つの異なる初期モデルのグラフ(実線及び破線)との比較を伴う(後で説明するように、値「0」で表される回答は、対象者がテストされた2つの実際の光学条件間に差がないと区別する回答に対応する)。
【
図3】初期モデル曲線(実線)によってフィットされた、実際の光学条件(ここではテストレンズのジオプタ単位の球面)に対応する、主観テストの連続トライアルで得られた対象者の回答の概略プロット(正方形)である。
【
図4】初期モデル曲線(実線)によってフィットされた、実際の光学条件(ここではテストレンズのジオプタ単位の球面)に対応する、主観テストの連続トライアルで得られた対象者の回答の概略プロット(正方形)である。
【
図5】初期モデル曲線(実線)によってフィットされた、実際の光学条件(ここではテストレンズのジオプタ単位の球面)に対応する、主観テストの連続トライアルで得られた対象者の回答の概略プロット(正方形)である。
【
図6】初期モデル曲線(実線)によってフィットされた、実際の光学条件(ここではテストレンズのジオプタ単位の球面)に対応する、主観テストの連続トライアルで得られた対象者の回答の概略プロット(正方形)である。
【
図7】初期モデル曲線(実線)によってフィットされた、実際の光学条件(ここではテストレンズのジオプタ単位の球面)に対応する、主観テストの連続トライアルで得られた対象者の回答の概略プロット(正方形)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、対象者の眼の視覚障害を補償することによって視覚を改善するために、対象者の少なくとも一方の眼の光学的特徴に適合された視覚機器の構想及び製造の分野に属する。
【0028】
図1は、本発明による対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値に関連する大きさの値を判定するための方法での一実施形態のステップの概略図を示している。
【0029】
大きさの値は、主観テストによって判定される。
【0030】
対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値に関連する大きさは、特に、
- 光学的特徴の主観値自体、
- 平均、加重平均、標準偏差などの、光学的特徴の複数の主観値に基づいて統計的に判定された大きさ、
- 光学的特徴の主観値に関連する信頼レベルの指標、
であり得る。
【0031】
補正レンズの光学的特徴は、対象者の任意の種類の視覚障害を補償するために有用な任意の光学的特徴であり得る。
【0032】
特に、対象者に適合された補正レンズの光学的特徴は、
- レンズの遠方視覚及び/又は近方視覚に対するゾーンにおける球面度数、
- 加入度、
- レンズの遠方視覚及び/又は近方視覚に対するゾーンにおける、円柱度数及び/又は軸又はそれらの組み合わせ、
- レンズの遠方視覚及び/又は近方視覚に対するゾーンにおける、プリズム度数及び/又は軸又はそれらの組み合わせ、
- レンズの遠方視覚及び/又は近方視覚に対するゾーンにおける、フィルタ透過率、
のうちの少なくとも1つを含む。
【0033】
球面は、レンズの前面及び後面の形状の球面成分により、ジオプタで与えられるレンズの屈折度数に対応する。
【0034】
円柱は、レンズの前面及び後面の形状の円柱成分により、ジオプタで与えられるレンズの屈折度数に対応する。
【0035】
軸は、レンズの形状の円柱成分の向きに対応する。
【0036】
円柱度数及び軸は、対象者の眼の非点収差を補償するために判定された眼科用レンズの円柱成分を表す。本出願人の特許文献4に記載されているように、大きさ及び配向分解を伴う標準極形態で判定される代わりに、円柱成分のベクトル分解が使用され得る。
【0037】
円柱成分のベクトル分解は、2つの直交する方向J0、J45に従って行うことができる。
【0038】
例えば、2つのJ0、J45方向に沿った分解は、古典的な球面円柱表記(球面S、円柱C、軸)を、極形態の非点収差(C、軸)の非点収差分解として、度数M=S+C/2の等価球面レンズ並びに一方が軸0°で度数J0=(-C/2)*cos(2*axis)及び他方が軸45°で度数J45=(-C/2)*sin(2*axis)の2つのジャクソンクロスシリンダレンズとして定義された直交値(M、J0、J45)のトリプレットによって置き換えることに対応する。
【0039】
標準のジャクソンクロスシリンダ手順により近づけるために、2つの直交する方向は、初期の非点収差方向及びその垂直方向に対応し得る。
【0040】
加入度は、遠方視覚と近方視覚との間、例えば累進焦点レンズの遠方視覚ゾーンと近方視覚ゾーンとの間の球面の差として定義することができる。
【0041】
プリズムとは、くさび形の光学構成要素を指す。光線がプリズムを通過すると、光線は、プリズムの底部、すなわちプリズムの大きい側面に向かって逸脱する。
【0042】
通常、補正レンズは不均一な厚さを有するため、それはプリズムのように挙動する。レンズを通して物体を見ている対象者は、見られる画像が逸脱した光線の方向から生じているように見えるため、この物体がわずかに逸脱しているように見える。
【0043】
プリズム度数は、プリズムジオプタ単位の画像のプリズム変位に対応し、1プリズムジオプタは、1メートルの距離にわたる1センチメートルの変位に等しい。
【0044】
フィルタ透過率は、補正レンズから出てくる光の強度、及び入射光の強度の比率に対応する。
【0045】
更に、両眼バランス、非点収差、加入度、又は両眼球面に対する主観値もまた、主観テスト中に追加的に判定され得る。
【0046】
対象者が必要とする補正の球面及び円柱の成分を判定した後、眼の両眼バランスを調整する必要があり得ることが知られている。対象者の眼の快適な補正を達成するために、判定された適合された球面で適合されたレンズを通して見える画像の品質が両眼上で同様であることを保証することは、確かに有用である。
【0047】
対象者の各眼に適合したレンズの球面の値の判定は、実際には、両眼に対して正確に実行されない場合がある。次いで、これらの偏光子の1つがそれぞれの眼の前に配置されている、90°に配向された2つの偏光子を使用するなど、それぞれの眼で見える画像の分離を可能にする既知の方法により、それぞれの眼で見える画像の品質を、適合された球面を有する対応する適合レンズと比較することは、有用である。判定された適合レンズの一方が他方よりも良好な画像を提供する場合、対象者が見える画像の品質を同様にするために、このレンズの球面を修正することができる。
【0048】
こうして、対応する光学的特徴は、両方のレンズの球面間の差に等しくなり得る。
【0049】
それはまた、両眼バランステスト前に最初に判定された両方のレンズの球面間の間隔と、両眼バランステスト後の両方のレンズの球面間の間隔との間の差に等しくなり得る。
【0050】
両眼バランスを調整した後、両眼球面が調整され得る。以前に判定された球面の値に基づいて、例えば両眼バランステスト後、両方のレンズの球面を同じ増分で同時に変化させて、両眼視覚品質が対象者によって評価される。次いで、対象者は、両方の球面を変化させたときに見える画像の品質を比較するように求められる。
【0051】
より正確には、本発明の方法によれば、方法は、
i)複数の理論的光学条件の各理論的光学条件に対して、説明的回答のセットの各説明的回答の確率を与える初期モデルを提供することと、
j)各実際の光学条件に対して、可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、対象者に複数の実際の光学条件の各実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求めることによって、主観テストを実行することと、
k)対象者の各説明的回答及び対応する実際の光学条件を収集することと、
l)初期モデル及び収集された各説明的回答を考慮することによって、大きさの値を判定することと、
からなるステップを含む。
【0052】
方法は、本発明による対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値に関連する大きさの値を判定するためのシステムによって実施される。
【0053】
このシステムは、1つ以上のメモリと1つ以上のプロセッサとを有するコンピュータを備える。
【0054】
本発明によれば、複数の理論的光学条件の各理論的光学条件に対する説明的回答のセットの各説明的回答の確率を与える初期モデルが、コンピュータの1つ以上のメモリのうちの1つに記憶される。
【0055】
コンピュータの1つ以上のメモリは、永久メモリ又は一時メモリを含み得る。
【0056】
このメモリは、局所的又は遠隔的であってもよい。メモリは、プロセッサと共に収容されてもよく、又はネットワークケーブル(有線)又は無線接続により遠隔的にアクセスされてもよい。したがって、初期モデルは、コンピュータの局所的メモリに記憶されてもよく、又はサーバ/クラウドから取得されてもよい。
【0057】
本発明による方法の予備ステップでは、初期モデルが判定される(
図1のブロック300)。
【0058】
初期モデルは、複数の理論的光学条件の各理論的光学条件に対して、説明的回答のセットの各説明的回答の確率を与える。
【0059】
初期モデルは、初期モデル曲線、回答と理論的光学条件との間の初期モデル式、及び初期モデルデータセット、
のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0060】
特に、初期モデルは、曲線又は式の場合には連続的であり、データセットの場合には不連続的であり得る。
【0061】
初期モデル曲線は、回答と理論的光学条件又は初期モデルデータセットとをリンクする対応する初期モデル式のグラフ表示に対応してもよく、又はそのような初期モデルデータセットに基づいて判定されてもよい。
【0062】
初期モデル曲線又は式又はデータセットは、例えば、複数の参照対象者に対して主観テストを実行している間に、以前に収集された参照データセットに基づいて統計的に判定され、参照データセットは、実際の光学条件、及び各参照対象者で実行された各主観テストの対応する回答を含む。
【0063】
本発明による方法の予備ステップでは、データセットが取得される(
図1のブロック100)。
【0064】
好ましくは、古典的屈折テスト、デュオクロームテスト、ジャクソンクロス円柱テスト、両眼バランステストなど、実施された全てのテストに対して、テストされた全ての補正値に対する各回答が収集され、初期モデルを判定するために考慮され得る。
【0065】
参照データセットはまた、好ましくは、各参照対象者の少なくとも1つの個人的特徴を含み、この参照対象者に対する他のデータに関して保存される。
【0066】
個人的特徴は、少なくとも、
- 年齢、性別、出身地などの、社会的パラメータ、
- アイケア履歴(過去の処方、眼の病気/問題など)、
- 瞳孔サイズ、瞳孔間距離などの、形態パラメータ、
- 屈折異常のタイプ及び/又は値、特に球面屈折値、円柱屈折値、円柱軸、非点収差、眼とレンズとの間の距離、などの光学パラメータ、
- 主観テストの開始点、刺激のタイプ、遠方視覚又は近方視覚をテストするための距離、フォロプタと眼との間の距離、などの設定パラメータ、
- 視力、主観テストに対する以前の回答、利き眼、両眼視覚、又は眼球運動、などの視覚パラメータ、
- 主観テストに対する以前の回答の迅速さ、少なくとも眼科用レンズの少なくとも光学的特徴の変動に対する感度、などの行動パラメータ、
の値を含む。
【0067】
参照対象者に関する他の情報は、好ましくは、実行された各テストを介して判定された最終的な屈折又は最終的な光学的特徴などの、参照データセットに収集される。
【0068】
参照データセットは、例えば、実行された各主観テストの後に各参照対象者の上記のデータを保存することによって収集される。
【0069】
データは、世界中のどこでも主観テストを実行するために使用されるデバイスから自動的に収集され、これらのデータをコンピュータに送信するようにプログラムされ得る。
【0070】
一実施形態では、初期モデルは、参照データセットの統計的特徴に基づいて判定される。
【0071】
特に、初期モデルは、参照データセットの平均値又は加重平均値に基づいて判定される。
【0072】
これは、参照データセットの平均値又は加重平均値を含む修正されたデータセットをフィッティングすることによって、初期モデル曲線又は式又はデータセットが判定されることを意味する。
【0073】
例えば、実行された主観テストの3つの異なる可能な回答は、数値に関連付けられ、これらの値は、固定された実際の光学条件に対して平均化され得る。
【0074】
可能な回答は、例えば、
- 例えば「1」としてコード化された、すなわち縦座標値1で
図2に表された、第1の実際の光学条件で視覚的パフォーマンスがより良好、
- 例えば「-1」としてコード化された、すなわち縦座標値-1で
図2に表された、第2の実際の光学条件で視覚的パフォーマンスがより良好、
- 例えば「0」としてコード化された、すなわち縦座標値0で
図2に表された、第1の実際の光学条件と第2の実際の光学条件との間で差は知覚されない、
からなる。
【0075】
初期モデル曲線又は式又はデータセットが、参照データセットの平均値又は加重平均値を含む修正データセットをフィッティングすることによって判定されるケースでは、所与の球面値に対して、値-1に対応する10個の回答、値0に対応する8個の回答、及び値+1に対応する2個の回答が取得される場合、所与の球面値に関連することになる回答の平均値は、-0.4(パーセンテージスケールに対して-40%)である。平均化された回答は、同じ対象者によって与えられてもよく、異なる対象者によって与えられてもよい。最後に、データセットの平均値はアプリオリに-1、0、又は1に等しい訳ではなく、1、0、又は-1の回答を得る確率を表している。
【0076】
また、参照データセットの分布エンベロープに基づいて、初期モデルを判定することが可能である。例えば、参照回答のプロットは、対応する実際の光学条件に対して各参照対象者の回答をプロットすることによって得られ、初期モデルは、参照回答のプロットの分布の特徴に基づいて判定される。
【0077】
分布エンベロープは、例えば、所与のパーセンタイル内のデータ、又は平均データから所与の距離に位置するデータを含むものとして定義され得る。例えば、参照データセットに対して、特定の実際の光学条件で収集された全てのデータは、平均値又は中央値の周りに分布している。中央値は、50%の分布に対応している。この実際の光学条件で収集された値の50%は、中央値を上回り、50%は、中央値を下回る。
【0078】
他の統計的に興味深い値は、例えば、分布の10%及び90%の値によって定義され得る。この実際の光学条件で収集された値の90%は、分布の10%の値を上回り、且つ10%は下回り、この実際の光学条件で収集された値の10%は、分布の90%の値を上回り、且つ90%は下回る。
【0079】
参照データセットの分布の異なる部分を使用して得られた異なる初期モデルの例を、
図2を示す。
【0080】
実線の曲線は、分布の50%のデータを考慮することによって得られた初期モデルを表している。
【0081】
破線の2つの曲線は、データの分布の10%の値(曲線M10)及び90%の値(曲線M90)を考慮することによって得られた初期モデルを表している。
図2の場合、表されたデータは、以下の記載に従って補正される。
【0082】
補正されているか否かにかかわらず、参照データセットの任意の他の分布もまた、使用され得る。例えば、25%のパーセンテージ(第1の四分位)における値、又は75%のパーセンテージ(第3の四分位)における値が使用され得る。
【0083】
一実施形態では、初期モデルは、参照対象者の個人的特徴に基づいて参照対象者を選択することなく、全ての参照対象者によって与えられた説明的回答を考慮する。
【0084】
この場合、参照対象者の個人的特徴間の差を考慮するために、参照データセットを補正する必要がある場合がある。次いで、補正された参照データセットに基づいて初期モデルが判定される。
【0085】
例えば、初期モデルの理論的光学条件は、縦座標にプロットされた回答が参照対象者によって与えられると、対象者の前に配置された光学構成要素にリンクされる。これらの理論的光学条件は、対象者の前に配置されたレンズの光学的特徴の値であってもよく、又はこの光学的特徴の値から、例えばオフセット若しくは倍数係数を適用することによって、推定されてもよい。
【0086】
異なる実際の球面屈折を有する参照対象者の参照データが初期モデルを判定するためにどのように考慮され得るかに関して、一例を以下に説明する。
【0087】
そうするために、初期モデルの理論的光学条件が、各参照対象者の実際の屈折に対して定義される。例えば、理論的光学条件は、オフセットを有する参照データセットの実際の光学条件に対応し得る。オフセットは、データを所定の屈折値に集中させるように計算される。次いで、初期モデルは、オフセットを有する実際の光学条件に対応する補正された実際の光学条件に基づいて判定される。
【0088】
例えば、実際には、当業者に既知の方法に従って、通常の場合のように、参照対象者に対する主観テストが第1に実行される。参照対象者の屈折の実際値は、このテストによって判定される。
【0089】
次いで、屈折の実際値に対する理論的光学条件における参照対象者の回答を得るために、屈折の実際値が、主観テストの各トライアルで使用されたレンズの光学的特徴の値から差し引かれる。次に、各参照対象者に対して得られた参照データを比較し、特にそれらを平均化することが可能である。
【0090】
本明細書に記載の実施形態はもちろん組み合わせることができ、初期モデルは、比較するために修正される対象者の選択されたグループのデータに基づいて判定され得る。
【0091】
そのようなプロトコルで得られた初期モデルの例を、
図2に示す。
【0092】
図2は、屈折の実際値を中心に、-0.5Dを中心として重ね合わせられた、異なる参照対象者の回答の値を示している。
【0093】
より正確には、縦座標は、実行された主観テストの3つの異なる可能な回答を示している。
【0094】
これらの可能な回答は、例えば、前述のように、
- 第1の選択又は回答、すなわち、「1」としてコード化された、第1の実際の光学条件で視覚的パフォーマンスがより良好、
- 第2の選択又は回答、すなわち、「-1」としてコード化された、第2の実際の光学条件で視覚的パフォーマンスがより良好、
- 第3の選択又は回答、すなわち、「0」としてコード化された、第1の実際の光学条件と第2の実際の光学条件との間で差は知覚されない、
からなる。
【0095】
横座標は、理論的光学条件を示している。
【0096】
図2の例では、以下に説明されるように、理論的光学条件は、参照対象者の前に配置されたレンズの球面の値に基づいて判定される。
【0097】
-0.5Dプラス又はマイナス0.2Dの屈折を有する参照対象者のグループが考慮される。
【0098】
この例では、このグループの全ての参照対象者の回答は、約-0.5Dに集中している。これは、屈折が最終的に-0.53Dであると判定されたこのグループの参照対象者に対して、取得された回答の値が、主観テスト中に使用された実際の光学条件に対応する理論的光学条件の値、+0.03Dに対応してプロット又は保存され、それによって結果が-0.5Dに集中することを意味する。
【0099】
それにより、回答及び対応する理論的光学条件を含む、補正された参照データセットが生成される。
【0100】
補正された参照データセットは、
図2上にプロットされた四角形で表されている。ここで、複数の理論的光学条件の各理論的光学条件に対する説明的回答のセットの各説明的回答の確率を与える初期モデルは、補正された参照データセットに基づいて、補正された参照データセットにフィットする曲線又は式を判定することによって取得される。
【0101】
ここで説明され、図に示されている例では、フィッティングのために使用される一般式は、RMS最小化を使用する、一般式のシグモイドの1つ、(1-2/(1+e(-s*(x-x0)))である。
【0102】
上記のシグモイドの一般式において、Sはシグモイドの最大勾配、x0はシグモイドの相対位置、xはフィットされたデータの横座標(実際の光学条件値)である。RMSは、データからの回答によって与えられた縦座標と、フィットしようとされている式によって与えられた縦座標との差の二乗平均平方根として定義される。
【0103】
参照データをフィッティング又は補間することによって初期モデルを判定するために、他の一般式、例えば、ステップ関数、線形、多項式、又は他の種類の関数を使用することができる。
【0104】
示されている初期モデルの例では、初期モデルは、第1の選択又は回答の100%の確率に対応する1と、第2の選択又は回答の100%の確率に対応する-1との間で変化するようにスケーリングされる。
【0105】
一般に、縦座標が1~-1で構成され、横座標と交差する初期モデル曲線の一部の勾配は、例えば、眼の前に配置されたレンズの屈折力の変動、及び感度の低い対象者に対する屈折力の低下など、実際の光学条件の変動に対する感度が高い対象者ほど大きい。
【0106】
或いは、初期モデルはまた、対応する理論的光学条件に関連する回答の平均/加重平均値を含むモデルデータセットを含み得る。
【0107】
好ましくは、初期モデルは、対象者の少なくとも個人的特徴を考慮して判定される。
【0108】
図1に示される本発明による方法の実施形態では、予備ステップ中に、対象者の少なくとも個人的特徴が取得される(
図1のブロック200)。
【0109】
対象者の個人的特徴は、上記で列挙した個人的特徴のいずれかであり得る。
【0110】
好ましくは、この個人的特徴は、対象者の視覚障害のタイプに関連する。
【0111】
また、対象者の年齢に関連する場合がある。
【0112】
個人的特徴は、例えば、年齢、及び/又は屈折異常のタイプ/値、及び/又は眼とアイウェアのレンズとの間の距離を含み得る。実行された主観テストのタイプもまた、考慮され得る。
【0113】
例えば、近視、遠視を有する対象者、所定の範囲内の年齢の対象者などに対して、異なる初期モデルが判定される。
【0114】
好ましくは、初期モデルは、対象者の複数の個人的特徴を考慮して判定される。初期モデルは、例えば、各ステップが1つの個人的特徴を考慮する、連続するステップを介して判定される。
【0115】
次いで、初期モデルは、学習フェーズを構築するために、参照対象者に対して収集された全てのデータ、すなわち、
- エントリに対して、主観テスト(球面、円柱、軸など)の対応するトライアルにおける個人の特徴及び光学的特徴の値、
- 出力に対して、各トライアルに関連する応答(又は回答における確率)、
を用いて、教師あり学習(例えば、判定木又はニューラルネットワーク)を使用して取得され得る。例えば、確実の選択1(100%の確率)、たぶんの選択1(60%の確率)、選択なし(0%の確率)、たぶんの選択2(-60%の確率)、確実の選択2(-100%の確率)である。出力は、離散変数又は連続変数であり得る。
【0116】
特に、対象者の個人的特徴を考慮して、特に、使用される実際の光学条件の変動に対する対象者の感度を考慮して、対象者の年齢並びに/又は予期される屈折異常(性質及び/若しくは値)を考慮して、各初期モデルに関連する確率で、各個人的特徴に関連する初期モデル、又は異なる初期モデルのセットを判定することが可能である。
【0117】
例えば、参照データをシグモイド一般式でフィッティングして得られた初期モデルの場合、横座標と交差する初期モデル曲線の一部の勾配は、例えば、少なくとも眼科用レンズの少なくとも光学的特徴の変動に対して、実際の光学条件の変動に対する対象者の感度に応じて調整することができる。
【0118】
ここで、光学的特徴は、主観テストの実際の光学条件に対応している。
【0119】
光学的特徴の変動に対してより高い感度を有する対象者は、主観テストをより迅速に実行できるようになるため、実際に、初期モデルにおけるより高い勾配の恩恵を受けることになる。
【0120】
初期モデルの勾配はまた、対象者の年齢、テストの理解レベル(例えば、対象者がテストの言語を流暢に話すかどうかに依存する)、又はテストの現時点での疲労度に応じて調整することができる。年長者や年少者の対象者、又は理解不足で一般的に疲れている対象者は、勾配の低い初期モデルを使用することにより、得られた回答を確認することを可能にするより多くのトライアルを与えるより漸進的なテストを導入することからの利益を受けることになる。
【0121】
最後に、初期モデルの勾配はまた、対象者の屈折異常に応じて調整されてもよい。例えば、近視及び/又は乱視を有する対象者に対して、対象者が必要とする補正の値が高いほど、初期モデルの勾配は低くなる。
【0122】
更に、主観テスト中の対象者の回答の進展もまた、考慮することができる。
【0123】
いくつかの対象者は実際に、実際の光学条件の進展が一方向又は他の方向にある場合、異なる回答を提供する。より正確には、レンズの屈折力を変化させる場合、屈折力を減少させている間の対象者の回答は、屈折力を増大させている間の回答とは異なる場合がある。
【0124】
トレーニング効果により、主観テストの終了時の回答は、主観テストの開始時の回答よりも初期モデルに従って予期される回答により近くなる場合がある。
【0125】
反対に、いくつかの対象者の場合、対象者の疲労により、主観テストの終了時の回答は、主観テストの開始時の回答よりも初期モデルに従って予期される回答から遠くなる場合がある。
【0126】
主観テスト中のトレーニング効果/疲労に対する対象者の行動もまた個人的な特徴であり、回答が収集されたときの主観テストの期間に基づいて、参照データで収集された回答に異なる重みを与えることによって、初期モデル(又は更に修正されたモデル)を判定する際に考慮することができる。もちろん、(トレーニング後に疲労がない)より信頼性の高い回答には、より高い重みが割り当てられることになる。
【0127】
初期モデルを判定するためのこのプロセスは、考慮される個人の特徴が多数ある場合に特に有用である。
【0128】
また、全ての個人的特徴の中からの選択及び各個人的特徴の重みは、機械学習アルゴリズム及び/又はニューラルネットワーク方法を使用して判定することができる。
【0129】
このプロセスは、参照対象者の選択されたグループに対して使用することが可能である。
【0130】
一実施形態では、初期モデルは、参照データセットの一部の値、平均値、又は加重平均値に基づいて判定される。
【0131】
考慮される参照データセットの一部は、好ましくは、参照対象者の1つ以上の参照個人的特徴に基づいて選択される。
【0132】
より正確には、考慮される参照データセットの一部は、1つ以上の参照個人的特徴が現在眼をテストされている対象者の対応する個人的特徴と一致する参照対象者に対して、得られたデータを保持するために選択される。
【0133】
参照対象者の参照個人的特徴は、対象者の個人的特徴と同じであってもよく、又は対象者の個人的特徴に関して所定の範囲内にあってもよい。
【0134】
言い換えると、複数の参照対象者は、対象者の対応する個人的特徴と同一又は類似の1つ以上の個人的特徴を有する参照対象者のグループから選択される。
【0135】
例えば、近視対象者の場合、初期モデルは、選択された近視参照対象者から収集された参照データセットを考慮することによって判定される。-1Dの既知の屈折を有する近視対象者の場合、初期モデルは、-1Dであると判定された最終的な屈折、又は-0.9D~-1.1D若しくは-0.5D~-1.5D若しくは0D~-2Dであると判定された最終的な屈折を有する、選択された近視参照対象者から収集された参照データセットを考慮することによって判定される。選択された参照対象者のデータは、各参照対象者の実際の屈折又は視覚障害を中心とするように、前述のように補正することができる。
【0136】
次いで、初期モデルは、対象者に対して実施された主観テスト中に収集されたデータと共に直接使用されて、大きさを判定することができる。
【0137】
しかしながら、好ましい実施形態では、主観テストは、初期モデルに基づいて調整される(
図1のブロック400)。
【0138】
実際には、コンピュータは、対象者の個人的特徴に基づいて主観テストの少なくとも初期パラメータ値を判定するようにプログラムされている。
【0139】
年齢、レンズの光学的特徴の変動に対する対象者の感度、理解レベル及び/又は疲労度、屈折異常の性質及び値などの個人的特徴は、特に考慮され得る。
【0140】
対象者が順応する可能性が低いと判定された場合、例えば高齢の対象者(大人)に対して、例えば自動屈折計を用いて客観的に測定された、対象者の眼の屈折の初期値が、主観テストの開始値として、任意の修正なしで使用される。
【0141】
対象者が順応する傾向があると判定された場合、例えば若い対象者(子供)、遠視の対象者又は疲れた対象者に対して、対象者の屈折の初期値は、加算値によって増大される。対象者の順応傾向がより高く判定されるほど、屈折の初期値に対する加算値はより高く判定される。
【0142】
例えば、対象者の眼の前に配置された光学構成要素の光学的特徴の初期値、又はこの光学的特徴を増大又は減少させるためのステップ値の初期値は、初期モデルを考慮して判定され得る。
【0143】
例えば、
図2の平均データに基づく初期モデルが考慮される状況では、第1のトライアルで屈折度数が-0.375Dに等しい光学レンズを使用する場合、初期モデルに基づいて回答2が予期される。第2のトライアルは、-0.75Dの光学レンズで実行され、回答1が予期される。対象者により与えられた回答が予期される回答と一致する場合、初期モデルが確認され、それ以外の場合は、例えば対象者の回答を考慮して修正されるなど、調整されることになる。
【0144】
一般に、初期モデル及び初期パラメータ値(例えば、過去の処方の値)に基づいて、コンピュータは、実際の光学条件の値で2回の第1のトライアルを実行するようにプログラムされており、その結果、2回の連続する第1のトライアルを実行している間に、1つの回答1及び1つの回答2が得られる。これにより、必要となるトライアルの総数を低減することが可能になる。
【0145】
コンピュータは、主観テストの少なくとも初期パラメータ値を判定するために、初期モデルを考慮するようにプログラムされている。
【0146】
次いで、主観テストが、対象者に対して実行される。
【0147】
本発明によれば、コンピュータの1つ以上のプロセッサは、
a)各実際の光学条件に対して、可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することにより、対象者に複数の実際の光学条件の各実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求めることによって実行される、主観テストの結果を収集し、その結果は、選択された各説明的回答及び対応する実際の光学条件を含み(
図1のブロック500)、
b)初期モデル及び収集された各説明的回答を考慮することによって、大きさの値を判定する(
図1のブロック800、900)、
ように、プログラムされている。
【0148】
ステップa)
主観テストの間、対象者は、可能な説明的回答のセットの中から1つの説明的回答を選択することによって、複数の実際の光学条件における自身の視覚的パフォーマンスを説明するように求められる。
【0149】
この主観テストは、本発明による方法内で、又はそれとは独立して実行され得る。
【0150】
複数の実際の光学条件の各々の実際の光学条件は、通常、被写体の眼の前に配置されたテストフィルタ又はテストレンズなどの光学構成要素の、球面、円柱、軸、又は透過係数などの光学的特徴の所与の値に対応する。
【0151】
主観テストは、通常、「フォロプタ」として知られる特定のデバイスを使用して実行される。このフォロプタは、可変光学度数を有するテストレンズなどの可変光学的特徴を備えた少なくとも1つのテスト光学構成要素、又は異なる固定された所定の光学度数を有する複数のレンズなどの異なる固定された所定の光学的特徴を備えた複数のテスト光学構成要素のいずれか、及びテスト光学構成要素若しくは複数のテスト光学構成要素のうちの1つを支持するように適合された少なくとも1つの支持体、を備える。支持体は、支持体によって支持されたテスト光学構成要素をテストされる対象者の眼の前に配置するために、対象者の頭の前に配置されるように適合されている。
【0152】
可変レンズは、例えば、以下の文献、特許文献5、特許文献6、又は、特許文献7に記載されている。
【0153】
デバイスはまた、球面レンズ、円柱レンズ、プリズム、線形又は円偏光フィルタ、色フィルタ、透過フィルタ、狭窄孔、バダルシステム、ミラー、アクティブレンズ、変形可能ミラー、SLM(空間光変調器)、アルバレスレンズなどの、異なる光学的特徴を有する他のテスト光学構成要素を備え得る。
【0154】
実際には、対象者の視覚は、主観テストプロトコル中に、対象者の少なくとも一方の眼の前に光学的特徴の異なる値を有するレンズなどのテスト光学構成要素を連続的に配置するフォロプタを使用して、テストされる。
【0155】
テストレンズの場合、屈折度数は、主観テストの1つのステップから次のステップまで、所定のステップ値だけ増大又は減少する。ステップ値は通常、0.25ジオプタ(D)又は0.125Dである。主観テストの連続するステップは、ここでは「トライアル」と呼ばれる。
【0156】
眼の前に配置された各テストレンズに対して、対象者は、提示された2つの視覚状態の中からの好ましい視覚状態の指標に対応することの視覚評価、又は2つの視覚状態間で決定できないかどうかを表すように求められる。2つの視覚状態は、例えば、以前のレンズを通した対象者の視覚及び現在のレンズを通した対象者の視覚に対応するか、又は現在のレンズを通した2つの異なる画像の対象者の視覚に対応することができる。
【0157】
実際には、テストプロトコルのこの部分は、例えば、デュオクロームテスト中に対象者によって与えられた評価に対応することができる。このデュオクロームテスト中、対象者には、一方で赤色の背景に表示された視標及び他方で緑色の背景に表示された視標を含む画像が提示される。対象者が現在のレンズを通して赤色の背景上の視標により良好な視覚を有する場合、提示された次のレンズにおいて球面を低減すべきであり、対象者が現在のレンズを通して緑色の背景上に示されている視標により良好な視覚を有する場合、提示された次のレンズにおいて球面を増大すべきである。
【0158】
変形例として、対象者の眼の前に配置されたそれぞれの現在のレンズに対して、対象者は、以前のレンズと比較して、現在のレンズを通して自身の視覚品質を評価するように求められ、現在のレンズが以前のレンズよりも良く見えるか若しくは悪く見えるかどうか、又は2つの間で決定できないかどうかを尋ねられる。この最後の場合、2つのレンズは、対象者に同様の視覚品質を提供する。
【0159】
フォロプタは、本明細書に記載の本発明によるデバイスの一部であってもよく、又はそれとは別個のものであってもよい。この最後のケースでは、本発明によるデバイスとの通信手段を備えてもよい。
【0160】
前述のように、一般に、説明的回答のセットは、例えば、
- 第1の実際の光学条件で視覚的パフォーマンスがより良好、
- 第2の実際の光学条件で視覚的パフォーマンスがより良好、
- 第1の実際の光学条件と第2の実際の光学条件の間で差は知覚されない、
からなる回答を含む。
【0161】
第1及び第2の実際の光学条件は、光学的特徴の異なる値を有する異なるテスト光学構成要素を用いた同じ画像の観察、又は一方の赤色の背景上に表示された視標及び緑色の背景上に表示された視標を含む画像などの、同じテスト光学構成要素を用いた異なる画像の観察に対応することができる。
【0162】
ステップb)
ステップb)では、コンピュータは、例えば、初期モデルと収集された各説明的回答とを比較し、この比較に基づいて大きさの値を判定するようにプログラムされている。
【0163】
初期モデルが初期モデル曲線を含む場合、コンピュータは、ステップb)において、
b1)対応する実際の光学条件に対して対象者によって選択された各収集された説明的回答をプロットし、初期モデル曲線がプロットにフィットするように、得られたプロット上に初期モデル曲線を重ね合わせることと、
b2)初期モデル曲線とプロットとの相対位置を考慮して、大きさの値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされている。
【0164】
収集された説明的回答をプロットするステップは、このプロットが何らかの方法で表示されることを含意するものではない。プロット及び/又は他の曲線は、ユーザ及び/又は対象者が見るために表示されてもされなくてもよい。
【0165】
一実施形態では、対象者の眼に適合された少なくとも補正レンズの光学的特徴の主観値は、対象者に対して収集された回答を初期モデルと比較することによって直接判定される。
【0166】
ステップb1)では、初期モデルはプロットにフィットするように修正されないが、モデル曲線とプロットの間の距離を全体的に最小化するために、モデル曲線及びプロットの相対位置が修正される。その距離は、例えば二次最適化を使用して最小化される。
【0167】
図2の例で判定された初期モデルを用いて、対象者に対して収集されたデータに関する初期モデルの配置は、初期モデルと横座標との間の交点において対象者の実際の屈折を与え得る。
【0168】
変形例として、コンピュータは、主観テストを実行するようにプログラムされている。
図1の実施形態では、ブロック500は、主観テストを実行し、対応するデータを収集することに対応する。
【0169】
この場合、コンピュータは、初期モデルを考慮して主観テストのパラメータを調整するようにプログラムされている(
図1のブロック400)。例えば、初期モデルを考慮して主観テストを実行するために連続して使用される実際の光学条件を判定するようにプログラムされている。
【0170】
有利には、ステップb1)は、主観テストの各トライアルにおいて、言い換えると、対象者によって与えられた各回答に対して実行される。対象者によって与えられた新しい各回答に対して、この回答がプロットに追加され、モデル曲線とプロットの間の距離が全体的に最小化されるように、モデル曲線及びプロットの相対位置が修正される。次いで、各トライアルにおいて、大きさの中間値を判定することができ、次のトライアルを実行する前に主観テストのパラメータを修正することができる。特に、テスト中に使用されるテストレンズの光学的特徴の2つの連続する値の間のステップ値を調整することができる。或いは、テストレンズの光学的特徴の次の値を、直接判定することができる。
【0171】
次に、主観テストは、対象者に対して既に収集されたデータを考慮して調整される(
図1の矢印501)。
【0172】
このプロセスの例を、
図3~
図7に示す。これらの図では、四角形は、対象者のプロットされたデータの位置、すなわち、対応する実際の光学条件において与えられた回答、ここではテストレンズのジオプタ単位の球面を示している。初期モデルは、曲線によって表されている。
【0173】
図3は、対象者の回答が1つのみの第1のトライアルの結果を示している。初期モデルは、この単一の点を通過するように配置される。したがって、初期モデル曲線の位置は不確実である。
【0174】
第2のトライアルの後、第2の回答がプロットされ、初期モデル曲線がプロットにフィットするように移動される(
図4)。
【0175】
第3のトライアルの後、第3の回答がプロットされ、それに応じて初期モデル曲線が移動される。
【0176】
図6及び
図7は、対応する次の2回のトライアルを示している。
【0177】
横座標との初期モデル曲線の交点PVは、眼の球面屈折の予測値を与える(
図7)。
【0178】
したがって、次のテストレンズが眼の球面屈折の予測値に近い球面を有するように、テストレンズのジオプタ変動ステップ値を調整することが可能である。
【0179】
コンピュータは、プロットに対する初期モデル曲線の位置が所定回数のトライアルで判定されるときに、又はこの位置が所定の量よりも多い主観テストの2回の連続するトライアル間で修正されない場合に、この位置に基づいて大きさの値を判定するようにプログラムされ得る。例えば、この位置が少なくとも4回、10回、又は20回のトライアル後に判定されるときに、又はこの位置が、主観テストの2回の連続するトライアル間で、0.25D、0.12D、又は0.06Dよりも大きく修正されないときに。
【0180】
初期モデルを使用することにより、曲線の正確な位置を迅速に取得することが可能になる。
【0181】
初期モデルが初期データセットを含む場合、コンピュータは、ステップb)において、
- 初期データセット及び収集された説明的回答を統計的に処理することと、
- この統計プロセスを考慮して、大きさの値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされている。実際には、参照データセットの変動を説明する法則が、統計プロセスによって判定され、次いで、この法則が主観テスト中の対象者の回答に適用される。
【0182】
本発明によるデバイス及び方法の有利な特徴によれば、初期モデルは、主観テストの任意のトライアルにおいて、すなわち対象者に提案される全ての新しいテスト光学構成要素で修正され得る(
図1のブロック600)。
【0183】
特に、初期モデルは、対象者に対して収集された以前の回答の少なくとも1つに基づいて、主観テストの任意のトライアルにおいて修正され得る(
図1の矢印502)。
【0184】
一実施形態では、初期モデルは、対象者の第1の個人的特徴を考慮することによって判定され得る。主観テストのいずれのトライアルにおいても、第1の個人的特徴とは異なる、対象者の第2の個人的特徴を考慮するように修正することができる。第2の個人的特徴は、第1の個人的特徴に加えて、又は第1の個人的特徴の代わりに考慮され得る。
【0185】
例えば、応答中の対象者の行動、すなわち、顔の特徴、顔の表情、声、ためらい、各々の新しい実際の光学条件の提示と対象者の回答との間に経過した時間、
を考慮して、リアルタイムで初期モデルを修正することができる。
【0186】
各々の新しい実際の光学条件の提示と対象者の回答との間に経過した時間に関して、閾値と比較することができ、経過時間が閾値を超えている場合、その回答は考慮されない。
【0187】
一実施形態では、初期モデルは、対象者に対して収集された回答を考慮するために修正され得る。次いで、対象者は参照対象者に含まれ、その回答は、モデルを判定するために使用される。
【0188】
得られた修正モデルは、次いで、大きさを判定するために使用される。
【0189】
この場合、コンピュータは、ステップb)において、
- 初期モデルを修正して、対象者の各説明的回答及び対応する実際の光学条件を考慮して修正モデルを取得することと、
- 修正モデルと収集された各説明的回答とを比較し(
図1のブロック700)、この比較に基づいて大きさの値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされている。
【0190】
修正モデルは、前述の初期モデルと同様に判定され、使用される。修正モデルは、修正モデル曲線、回答と理論的光学条件の間の修正されたモデル式、及び修正モデルデータセット、
のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0191】
修正モデルが修正モデル曲線を含む場合、コンピュータは、ステップb)において、
- 対応する実際の光学条件に対して対象者によって選択された各収集された説明的回答をプロットし、修正モデル曲線がプロットにフィットするように、得られたプロット上に修正モデル曲線を重ね合わせることと、
- 修正モデル曲線とプロットとの相対位置を考慮して、大きさの値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされている。
【0192】
或いは、修正モデルが修正データセットを含む場合、コンピュータは、ステップb)において、
- 修正データセット及び収集された説明的回答を統計的に処理することと、
- この統計プロセスを考慮して、大きさの値を判定することと、
からなるサブステップを実行するようにプログラムされている。
【0193】
実際には、コンピュータは、修正モデルを考慮することによって、主観テストを実行するために使用される実際の光学条件のうちの少なくとも1つを判定するようにプログラムされている。特に、コンピュータは、修正モデルを考慮することによって、主観テストの事後トライアルを実施するために使用される実際の光学条件の各々を判定するようにプログラムされ得る。
【0194】
コンピュータは、プロットに対する修正モデル曲線の位置が所定回数のトライアルで判定されるときに、又はこの位置が主観テストの2回の連続するトライアル間で所定の量よりも大きく修正されないときに、この位置に基づいて大きさの値を判定するようにプログラムされている(
図1のブロック800)。
【0195】
更に、コンピュータは、実際の光学条件に対応する収集された説明的回答の各々を初期モデル又は修正モデルと比較するようにプログラムされており、この比較が、特定の実際の光学条件に対応する特定の収集された説明的回答と、それぞれ修正された初期モデルとの間の差が所定の閾値を超えていることを示す場合、この特定の収集された説明的回答は矛盾していると識別される(
図1のブロック900)。
【0196】
特に、初期モデル又は修正モデルの曲線からの距離を計算する基準を使用して、偽の回答又は不確実な回答を検出することができる。回答のプロットと初期モデル又は修正モデルの曲線との間の距離が所定の閾値よりも大きいか、又はそれが「わからない」回答であった場合よりも大きい場合、回答は矛盾していると識別される。
【0197】
したがって、光学的特徴の測定された各主観値に関連する信頼レベルの指標は、回答のプロットと初期モデル又は修正モデルの曲線との間のこの距離に基づいて判定され得る。例えば、指標は、モデルにより近いプロットに対応する回答の信頼レベルがより高い指標を与える。
【0198】
このように矛盾している回答が検出された場合、主観テストのオペレータの宛先にアラートが発せられてもよい。矛盾している回答は、好ましくは、大きさを判定するために考慮されない。
【0199】
好ましくは、矛盾している回答が収集された主観テストのトライアルが繰り返され、別の回答が収集されて、考慮されなかった矛盾している回答が置き換えられる(
図1の矢印901)。
【0200】
好ましくは、主観テスト中に検出された矛盾している回答の数が所定の閾値を超えている場合、初期モデル又は修正モデルは、矛盾している回答の数を低減するために修正される(
図1の矢印902)。
【0201】
次いで、初期モデル又は修正モデルが変更される。例えば、データの平均参照セットに基づくモデルを、参照データセットの分布に基づくモデルに変更することができ、又は対象者の個人的特徴に基づくモデルを、全ての参照データに基づくより一般的なモデルに変更することができる。
【0202】
異常な行動が検出される場合がある。例えば、若い対象者は、年長の対象者よりも早く回答する傾向がある。若い対象者がより遅い場合、特定の問題又はこの対象者の誤解に起因し得る。
【0203】
一般に、主観テスト中、実際の光学条件の初期値は、もしあれば過去の処方などの対象者の個人的特徴を考慮して判定され、この対象者に対して選択又は判定された初期モデルを考慮して判定される。実際の光学条件の次の値は、コンピュータによって初期モデルに基づいて判定される。
【0204】
例えば、既に述べたように、コンピュータは、実際の光学条件の値で第1の2回のトライアルを実行するようにプログラムされており、その結果、第1の2回のトライアルを連続して実行する間に、1つの回答1及び1つの回答2が得られる。
【0205】
初期モデルによる実際の回答と予期される回答との間の対応が監視される。与えられた実際の光学条件に対する対象者の実際の回答は、対応する理論的光学条件に対する初期モデルに基づく予期される回答と比較される。
【0206】
実際の回答が予期される回答と一致する場合、初期モデルを保持するか、又は更なる改善のために修正され得る。予期される回答とは異なる実際の回答の数が第1の不一致閾値を下回る場合、実際の回答が予期される回答と一致するとみなすことができる。
【0207】
実際の回答が予期される回答とは異なる場合、初期モデルの使用を停止して従来の方法で主観ステップを再開するか、又は初期モデルが修正される。予期される回答とは異なる実際の回答の数が第2の不一致閾値を上回る場合、実際の回答は予期される回答と異なるとみなすことができる。
【0208】
第1の可能性によれば、別の所定のモデルを試すことができる。
【0209】
第2の可能性によれば、対象者に対して現在収集されているデータを参照データに追加することができ、修正モデルは、対象者に対して収集されたデータを含むこの更新された参照データに基づいて判定される。
【0210】
第3の可能性によれば、新しいモデルが、対象者に対して収集されたデータ、現在及び過去のデータに基づいて判定され得る。この最後の解決策は、過去のデータが利用可能な場合に特に有用である。
【0211】
実際に、本発明はまた、過去の眼科検査のデータを考慮することを可能にし、行動の進展をより良く理解することを可能にする。これは、白内障の進行の予防及び/若しくは検出、又は他の進化的屈折異常(近視)又は病態(加齢による黄斑の変性など)の予防及び/若しくは検出に使用することができる。例えば、成功した対象者に対して使用された過去の初期モデルが、後でこの対象者にまったく適合していないと判定することは、白内障などの新しい問題の兆候である場合がある。
【国際調査報告】