IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファルマ、マール、ソシエダード、アノニマの特許一覧

特表2023-517535ウイルス感染に使用するための化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ウイルス感染に使用するための化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/15 20060101AFI20230418BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230418BHJP
   C07K 11/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K38/15
A61P31/14
A61K31/573
A61K31/341
A61K31/4178
A61K31/135
A61P29/00
C07K11/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552937
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2021055147
(87)【国際公開番号】W WO2021175831
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】20382152.5
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20382192.1
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20382266.3
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20382339.8
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20382816.5
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20382815.7
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21382059.0
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトに公開された「PharmaMar reports positive results for Aplidin▲R▼ against coronavirus HCoV-229E」 (2)ウェブサイトに公開された「Communication to National Securities Market Commission (Registration No.82)」 (3)ウェブサイトに公開された「Communication to National Securities Market Commission (Registration No.90)」 (4)ウェブサイトに公開された「PharmaMar has submitted a Phase II clinical trial of Aplidin▲R▼ (plitidepsin) for the treatment of COVID-19 to the Spanish Medicines Agency」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (5)ウェブサイトに公開された「Boryung Pharmaceutical,PharmaMar’ s partner in South Korea, announces superior potent results for plitidepsin (Aplidin▲R▼) against SARS-CoV-2」 (6)ウェブサイトに公開された「PharmaMar has announced that the Spanish Medicines Agency has authorized the APLICOV-PC clinical trial with Aplidin▲R▼ (plitidepsin) for the treatment of patients with COVID-19」 (7)データーベース上で公開された「APL-D-002-20Estudio para evaluar el perfil de seguridad deplitidepsina en pacientes con COVID-19 que precisen ingreso hospitalario」 と称する臨床試験の情報 (8)ウェブサイトに公開された「Communication to National Securities Market Commission (Registration No.188)」 (9)データーベース上で公開された「Clinical Trials Study: NCT04382066. Proof of Concept Study to Evaluate the Safety Profile of Plitidepsin in Patients With COVID-19(APLICOV-PC)」 と称する臨床試験の情報
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (10)Nature Biotechnology | VOL 38 | June 2020 |655-664に公開された「Drug researchers pursue new lines of attack against COVID-19」 (11)Nat.Prod.Rep.,2020,37,752に公開された「Natural products targeting the elongation phase of eukaryotic protein biosynthesis」 (12)Natural Product Reports(2020),37(6),744-746に公開された「Targeting and extending the eukaryotic druggable genome with natural products」 (13)ウェブサイトに公開された「Boryung finds cancer drug has antiviral effect on Covid-19」 (14)ウェブサイトに公開された「Boryung has announced superior potent results for Aplidin▲R▼ against SARS-CoV-2」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (15)ウェブサイトに公開された「Boryung Pharmaceutical, PharmaMar’ s partner in South Korea,presents the in vitro study results of plitidepsin(Aplidin▲R▼) on SARS-CoV-2」 (16)Mol.Inf.2021,40,2000115に公開された「In silico Drug Repurposing for COVID-19 Targeting SARS CoV-2 Proteins through Docking and Consensus Ranking」 (17)ウェブサイトに公開された「Boryung Pharmaceutical Designates Orphan Drug for Small Cell Lung Cancer New Drug ’Lurbinectedin’」 (18)European Journal of Cancer 141 (2020)40-61に公開された「Repurposing anticancer drugs for the management of COVID-19」 (19)Viruses(2020),12(10),1092に公開された「Potential Anti-SARS-CoV-2 Therapeutics That Target the Post-Entry Stages of the Viral Life Cycle: A Comprehensive Review」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (20)Nature Cancer,(1 Oct 2020)Vol.1,No.10,pp.946-964に公開された「The immuno-oncological challenge of COVID-19」 (21)ウェブサイトに公開された「Repurposing of clinically-approved drugs for the treatment of COVID-19」 (22)ウェブサイトに公開された「PharmaMar announces positive results of its APLICOV trial against COVID-19」 (23)ウェブサイトに公開された「Communication to National Securities Market Commission (Registration No.496)」 (24)ウェブサイトに公開された「Preclinical search of SARS-CoV-2 inhibitors and their combinations within approved drugs to tackle COVID-19 pandemia」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (25)Frontiers in Pharmacology,(6 Nov 2020)Vol.11.arn.588654に公開された「Challenges for Drug Repurposing in the COVID-19 Pandemic Era」 (26)ウェブサイトに公開された「Communication to National Securities Market Commission (Registration No.565)」 (27)ウェブサイトに公開された「Marine-Derived Secondary Metabolites as Promising Epigenetic Bio-Compounds for Anticancer Therapy」 (28)ウェブサイトに公開された「Identification of Plitidepsin as Potent Inhibitor of SARS-CoV-2-Induced Cytopathic Effect after a Drug Repurposing Screen」 (29)Science,Vol.371,No.6532,pp.926-931に公開された「Plitidepsin has potent preclinical efficacy against SARS-CoV-2 by targeting the host protein eEF1A」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (30)ウェブサイトに公開された「The Peer Review journal Science confirms the potent activity of PharmaMar’s plitidepsin against SARS-CoV-2」 (31)CEN.ACS.ORG | FEBRUARY 1,2021に公開された「Plitidepsin could fight COVID-19」 (32)ウェブサイトに公開された「Host-directed therapies against early-lineage SARS-CoV-2 retain efficacy against B.1.1.7 variant」 (33)ウェブサイトに公開された「Plitidepsin: a Repurposed Drug for the Treatment of COVID-19」 (34)Molecules(2021),26(4),936に公開された「Field-Template, QSAR, Ensemble Molecular Docking, and 3D-RISM Solvation Studies Expose Potential of FDA-Approved Marine Drugs as SARS-CoVID-2 Main Protease Inhibitors」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (35)Marine Drugs(2021),19(2),104に公開された「New hopes for drugs against COVID-19 come from the sea」 (36)ウェブサイトに公開された「UK approves the initiation of the Phase III NEPTUNO clinical trial with PharmaMar’s Aplidin▲R▼ (plitidepsin) for the treatment of patients with COVID-19」 (37)ウェブサイトに公開された「Drug Repurposing in the COVID-19 Era: Insights from Case Studies Showing Pharmaceutical Peculiarities」 (38)Science,2021,Vol.371, Issue 6532,pp.884-885に公開された「SARS-CoV-2 dependence on host pathways」
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.Excel
(71)【出願人】
【識別番号】505404208
【氏名又は名称】ファルマ、マール、ソシエダード、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】PHARMA MAR,S.A.
【住所又は居所原語表記】Poligono Industrial La Mina,Avda.de los Reyes,1,Colmenar Viejo,E-28770 Madrid,SPAIN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パブロ・アヴィレス・マリン
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドロ・ロサーダ・ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・マリア・フェルナンデス・ソウサ-ファロ
(72)【発明者】
【氏名】サルヴァドール・フュディオ・ムニョス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA16
4C084BA27
4C084BA28
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB331
4C084ZB332
4C086AA01
4C086BA03
4C086BC38
4C086DA10
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA06
4C086ZA66
4C086ZA71
4C086ZB11
4C206AA01
4C206FA05
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA06
4C206ZB11
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045CA50
4H045EA29
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、ウイルス感染の処置における化合物の使用であって、前記ウイルスが、オルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスが、西ナイルウイルスである、使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染の処置に使用するためのものであり、前記ウイルスがオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスが西ナイルウイルスである、一般式I
【化1】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体。
(式中、Xは、O及びNHから選択され;
Yは、CO及び-COCH(CH3)CO-から選択され;
各n及びpは、0及び1から独立して選択され、qは0、1及び2から選択され;
各R1、R3、R5、R9、R11、及びR15は、水素、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、及び置換又は非置換C2~C6アルキニルから独立して選択され;
R2は、水素、CORa、COORa、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、及び置換又は非置換C2~C6アルキニルから選択され;
各R4、R8、R10、R12、及びR16は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;
各R7及びR13は、水素、置換若しく非置換C1~C6アルキル、置換若しく非置換C2~C6アルケニル、及び置換若しく非置換C2~C6アルキニルから独立して選択され;各R6及びR14は、水素及び置換若しくは非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;又はR6及びR7及び/又はR13及びR14は、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換若しく非置換の複素環式基を形成することができ;
R17は、水素、CORa、COORa、CONHRb、COSRc、(C=NRb)ORa、(C=NRb)NHRb、(C=NRb)SRc、(C=S)ORa、(C=S)NHRb、(C=S)SRc、SO2Rc、SO3Rc、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から選択され、ただし、n、p、及びqが0の場合、R17は水素ではなく;
各Ra、Rb、及びRcは、水素、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される)
【請求項2】
R3及びR4が、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;好ましくは、R3がイソプロピルであり、R4が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R3及びR4が、メチルである、一般式IIの請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R11が、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから選択され;好ましくは、R11が、メチル又はイソブチルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R11が、メチルであり、n=1である、一般式IIIの、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R1、R5、R9、及びR15が、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;好ましくは、R1が、sec-ブチル及びイソプロピルから選択され、R5が、イソブチルであり、R9が、p-メトキシベンジルであり、R15が、メチル及びベンジルから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R8、R10、R12、及びR16が、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;好ましくは、R8、R10、及びR12がメチルであり、R16が水素である、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R6及びR14が、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;好ましくは、R6が水素及びメチルから選択され、R14が水素である、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R7及びR13が、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;好ましくは、R7が、メチルであり、R13が、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、及び3-アミノ-3-オキソプロピルから選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R6及びR7及び/又はR13及びR14が、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換又は非置換ピロリジン基を形成する、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
R2が、水素、置換又は非置換C1~C6アルキル、及びCORaから選択され、Raが、置換又は非置換C1~C6アルキルであり;好ましくは、R2が、水素である、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R17が、水素、CORa、COORa、CONHRb、(C=S)NHRb、及びSO2Rcから選択され、各Ra、Rb、及びRcが、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、置換又は非置換C2~C6アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択され;好ましくは、R17が、水素、COOベンジル、COベンゾ[b]チオフェン-2-イル、SO2(p-メチルフェニル)、COCOCH3及びCOOC(CH3)3から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
XがNHである、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
XがOである、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
YがCOである、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
Yが-COCH(CH3)CO-である、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
以下の構造:
【化2A】
【化2B】
を有する、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体。
【請求項18】
前記化合物が、PLD又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
前記化合物が、ジデムニンB又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
前記ウイルスが、オルトミクソウイルス科ウイルスである、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
前記オルトミクソウイルス科ウイルスが、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、クアランジャウイルス、及びイサウイルスから選択される、請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
前記オルトミクソウイルス科ウイルスが、インフルエンザA型であり、好ましくはH1N1、H1N2及びH3N2から選択され;又は、前記オルトミクソウイルス科ウイルスが、インフルエンザB型であり、好ましくはヤマガタ系統若しくはビクトリア系統から選択される、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記ウイルスが西ナイルウイルスである、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
コルチコステロイド、好ましくはデキサメタゾンと組み合わせて投与される、請求項1から23のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項25】
前記化合物及びコルチコステロイドを、同時に、別々に、又は順次に投与する、請求項24に記載の使用のための化合物。
【請求項26】
10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、又は1日間、好ましくは2~5日、3~5日、又は3、4若しくは5日間;最も好ましくは3日又は5日間;最も望ましくは3日間、1日用量のレジメンに従って投与される、請求項1から25のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項27】
1日5mg以下、1日4.5mg以下、1日4mg以下、1日3.5mg以下、1日3mg以下、1日2.5mg以下、又は1日2mg以下;0.5mg/日、1mg/日、1.5mg/日、2mg/日、2.5mg/日、3mg/日、3.5mg/日、4mg/日、4.5mg/日、又は5mg/日;好ましくは1mg/日、1.5mg/日、2mg/日又は2.5mg/日;より好ましくは1.5~2.5mg/日;最も好ましくは、1.5mg/日、20mg/日又は2.5mg/日の用量で投与される、請求項1から26のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項28】
1~50mg、1~40mg、1~30mg、1~20mg、1~15mg、3~15mg、3~12mg、4~12mg、4~10mg、又は4.5~10mg;4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg又は10mg;好ましくは4.5mg、5mg、6mg、7.5mg、8mg、9mg又は10mg;より好ましくは4.5~7.5mg/日の総用量で投与される、請求項1から27のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項29】
注入によって投与される、請求項1から28のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
前記注入が、1時間注入、1.5時間注入、2時間注入、又は3時間注入;好ましくは、1.5時間注入である、請求項29に記載の使用のための化合物。
【請求項31】
1.5mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与し;又は2mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与し;2.5mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与し;又は1mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続5日間投与し;又は2mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続5日間投与する、請求項1から30のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項32】
負荷用量及び維持用量を使用して投与される、請求項1から31のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項33】
投薬レジメンが、
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には2mg/日の維持用量;
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には1.5mg/日の維持用量;
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には1mg/日の維持用量;
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量;
1日目は2mgの負荷用量、その後の日には1.5mg/日の維持用量;
1日目は2mgの負荷用量、その後の日には1mg/日の維持用量;
1日目は2mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量;
1日目は1.5mgの負荷用量、その後の日には1mg/日の維持用量;
1日目は1.5mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量;又は
1日目は1mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量である、請求項32に記載の使用のための化合物。
【請求項34】
前記化合物がコルチコステロイドと組み合わせて投与され、前記コルチコステロイドが請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物の投与と同じ日に投与される、請求項1から33のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項35】
前記コルチコステロイドをまた、その後の日の1又は複数に投与することができ;好ましくは、前記コルチコステロイドを前記化合物と共に1~3日目に投与し、前記コルチコステロイドを4~10日目のうちの1又は複数に更に投与する、請求項34に記載の使用のための化合物。
【請求項36】
前記コルチコステロイドを、前記化合物を投与する日に静脈内投与するが、その後の日に経口投与又はIVにより投与する、請求項35に記載の使用のための化合物。
【請求項37】
前記コルチコステロイドがデキサメタゾンであり、好ましくは、デキサメタゾンを、請求項1から19のいずれか一項による前記化合物が投与される日に6.6mg/日の用量でIV投与する、請求項34から36のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項38】
前記デキサメタゾンを、その後の日、好ましくは4、5、6、7、8、9、及び10日目のうちの1又は複数に6mg/日の用量で経口投与するか、又はIVで投与する、請求項37に記載の使用のための化合物。
【請求項39】
PLDを、1日目~3日目にデキサメタゾン6.6mg/日静脈内IVと組み合わせて、1.5mg/日で静脈内(IV)投与し、続いて、4日目から最長10日目まで(患者の臨床状態及び進展に応じた医師の判断に従って)、デキサメタゾン6mg/日を経口投与(PO)/IVするか;又は
PLDを、1日目~3日目にデキサメタゾン6.6mg/日静脈内IVと組み合わせて、2.0mg/日で静脈内(IV)投与し、続いて、4日目から最長10日目まで(患者の臨床状態及び進展に応じた医師の判断に従って)、デキサメタゾン6mg/日を経口投与(PO)/IVするか;又は
PLDを、1日目~3日目にデキサメタゾン6.6mg/日静脈内IVと組み合わせて、2.5mg/日で静脈内(IV)投与し、続いて、4日目から最長10日目まで(患者の臨床状態及び進展に応じた医師の判断に従って)、デキサメタゾン6mg/日を経口投与(PO)/IVする、請求項1から38のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項40】
前記コルチコステロイドを、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物による処置を開始する20~30分前に投与する、請求項34から39のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項41】
前記患者が、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物による処置を開始する前に、好ましくは20~30分前に、以下の薬物:
オンダンセトロン8mg IV(又は同等物);
ジフェンヒドラミン塩酸塩25mg IV(又は同等物);及び
ラニチジン50mg IV(又は同等物)
を受ける、請求項1から40のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項42】
4日目及び5日目に、患者はオンダンセトロン(又は同等物)4mgを1日2回POで受ける、請求項1から41のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項43】
(1日目に)単回用量として投与される、請求項1から30のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項44】
前記単回用量が、1~10mg、4~10mg、4.5~10mg;4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg又は10mg;好ましくは4.5mg、5mg、6mg、7.5mg、8mg、9mg又は10mg;より好ましくは、5~9mg、6.5~8.5mg、7~8mg又は最も好ましくは、7.5mgである、請求項43に記載の使用のための化合物。
【請求項45】
1.5時間の注入として投与される、請求項43又は44に記載の使用のための化合物。
【請求項46】
コルチコステロイドを、請求項34から40のいずれか一項に記載のレジメンに従って投与する、請求項43から45のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項47】
本発明の化合物の投与の20~30分前に、以下の予防薬:
オンダンセトロン8mg IV(又は同等物)、特に15分間の緩徐な注入による;
ジフェンヒドラミン塩酸塩25mg IV(又は同等物);
ラニチジン50mg IV(又は同等物)
を投与する、請求項43から46のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項48】
本発明の化合物の投与後、オンダンセトロン4mgを12時間ごとに3日間経口的に与える、請求項43から47のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項49】
デキサメタゾンがリン酸デキサメタゾンであり、本発明の化合物が投与される日に投与される場合、8mgの用量で投与され(6.6mg塩基の用量に等しい)、その後投与する場合は、7.2mgの用量で投与される(6.6mg塩基の用量に等しい)、請求項1から48のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項50】
ウイルス感染の処置に使用するための、請求項1から49のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物であって、前記ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスは西ナイルウイルスである、医薬組成物。
【請求項51】
ウイルス感染の処置のための医薬の製造における、請求項1から49のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体の使用であって、前記ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスは西ナイルウイルスである、使用。
【請求項52】
ウイルス感染を処置するための方法であって、前記ウイルスが、オルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスが、西ナイルウイルスであり、請求項1から49のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体の治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法。
【請求項53】
請求項1から49のいずれか一項に記載の化合物を、ウイルス感染を処置するための使用説明書と共に含む、キットであって、前記ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスは西ナイルウイルスである、キット。
【請求項54】
ウイルス感染の処置における使用のためのコルチコステロイドであって、前記ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスは西ナイルウイルスであり、請求項1から49のいずれか一項に記載の化合物と組み合わせて投与される、前記コルチコステロイド。
【請求項55】
ウイルス感染の処置に使用するための請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物及びコルチコステロイドであって、前記ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスは西ナイルウイルスであり;前記使用は、請求項1から49のいずれか一項に従うものである、化合物及びコルチコステロイド。
【請求項56】
ウイルス感染を処置するための方法であって、前記ウイルスが、オルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスが、西ナイルウイルスであり、前記方法が、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩とコルチコステロイドの併用療法を、それを必要とする患者に投与し、それによって前記感染を処置することを含み;請求項1から49のいずれか一項に記載のとおりである、方法。
【請求項57】
ウイルス感染の処置のための医薬の製造における、請求項1から49のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体の使用であって、前記ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスは西ナイルウイルスであり;前記処置には、コルチコステロイドの投与が含まれる、使用。
【請求項58】
ウイルス感染の処置のための医薬の製造における、コルチコステロイドの使用であって、前記ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスは西ナイルウイルスであり;前記処置は、請求項1から49のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体の投与を含む、使用。
【請求項59】
ウイルス感染の処置のための医薬の製造における、請求項1から49のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体、及びコルチコステロイドの使用であって、前記ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又は前記ウイルスは西ナイルウイルスである、使用。
【請求項60】
請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物、及びコルチコステロイドを含み、任意選択で請求項1から49のいずれか一項に記載の使用説明書を更に含む、医薬パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルトミクソウイルス科ファミリー(Orthomyxoviridae family)に由来するウイルス感染の処置、又はウイルスが西ナイルウイルスであるウイルス感染の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染を処置することは、疾患の重症度を軽減するだけでなく、疾患を予防し、ウイルス感染を最小限に抑えるためにも重要である。例えば、多数のウイルスは、処置によって効果的に管理又は治癒できる生涯にわたる感染をもたらす。ほとんどすべてのウイルスは、脆弱な患者に、ウイルス血症、肺炎、及び敗血症等の合併症を引き起こすことができるが、ある特定のウイルスは重度の感染を引き起こす可能性があり、いかなる個体においても処置せずに放置すると、臓器損傷、臓器不全、更には死亡に至る可能性がある。これらの症状はウイルス自体が原因で発生するが、過剰な免疫反応によって引き起こされる可能性もある。一部のウイルスは潜伏性があり、感染直後には症候性の病気を引き起こすことはない。潜伏性ウイルスは、他の個体への不注意なウイルスの拡散につながる可能性があるが、最初の感染から数年後に再活性化し、多くの場合致命的であり、以前の処置で回避できた可能性のある重度の症状を引き起こす場合がある。
【0003】
特に西ナイルウイルス(WNV)は、非流行地域で報告された新しい感染の数が増加しているため、最近大きな注目を集めている。例えば、過去10年間で、米国では約40,000人がWNVに感染しており、そのうち約20%が神経侵襲性疾患(すなわち、脳炎及び髄膜炎)を発症し、致死率は12%である。
【0004】
インフルエンザウイルスは、「インフルエンザ」として知られる一般的な病気を引き起こし、特に冬季に集団で蔓延している。インフルエンザに感染したほとんどの個体は軽度の呼吸器疾患を発症するが、年齢と共に疾患負荷が増加し、免疫系が弱体化した個体はより重度の病気を発症するリスクがある。インフルエンザの死亡率は、米国では0.1~0.5%の間と報告されているが、死亡率は特定のインフルエンザ株及び国によって異なる。世界保健機関(The World Health Organisation)は、季節性インフルエンザの流行により、毎年世界規模で300万~500万の重症例がもたらされ、291,000~646,000人が死亡していると推定している。インフルエンザウイルスは遺伝子変化を起こす能力があるため、特定のインフルエンザ株は死亡率が大幅に高くなる可能性があり、パンデミックを引き起こすことができる。特に、1900年以来4つのインフルエンザのパンデミックが発生している(H1N1スペインインフルエンザ、H2N2アジアインフルエンザ、H3N2ホンコンインフルエンザ、H1N1豚インフルエンザ)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、西ナイルウイルス及びインフルエンザ等のウイルス感染に対する新しい処置法を提供する必要がある。本発明は、この必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、ウイルス感染の処置に使用するためのものであり、ウイルスがオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又はウイルスが西ナイルウイルスである、一般式I
【0007】
【化1】
【0008】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体に関する
(式中、Xは、O及びNHから選択され;
Yは、CO及び-COCH(CH3)CO-から選択され、
各n及びpは、0及び1から独立して選択され、qは0、1及び2から選択され;
各R1、R3、R5、R9、R11、及びR15は、水素、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、及び置換又は非置換C2~C6アルキニルから独立して選択され;
R2は、水素、CORa、COORa、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、及び置換又は非置換C2~C6アルキニルから選択され;
各R4、R8、R10、R12、及びR16は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;
各R7及びR13は、水素、置換若しく非置換C1~C6アルキル、置換若しく非置換C2~C6アルケニル、及び置換若しく非置換C2~C6アルキニルから独立して選択され;各R6及びR14は、水素及び置換若しくは非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;又はR6及びR7及び/又はR13及びR14は、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換若しくは非置換の複素環基を形成することができ;
R17は、水素、CORa、COORa、CONHRb、COSRc、(C=NRb)ORa、(C=NRb)NHRb、(C=NRb)SRc、(C=S)ORa、(C=S)NHRb、(C=S)SRc、SO2Rc、SO3Rc、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から選択され、ただし、n、p、及びqが0の場合、R17は水素ではなく;
各Ra、Rb、及びRcは、水素、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される)。一実施形態では、ウイルスは、オルトミクソウイルス科ファミリーから選択される。別の実施形態では、ウイルスは、西ナイルウイルスである。
【0009】
特定の態様では、一般式Iの化合物は、PLD、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である。
【0010】
特定の態様では、一般式Iの化合物は、ジデムニンB、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である。
【0011】
別の態様では、本発明はまた、本明細書で定義される化合物及び薬学的に許容される担体を含む、本発明に従って使用するための医薬組成物に関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、ウイルス感染の処置のための医薬の製造における、本明細書で定義される化合物の使用であって、ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又はウイルスは西ナイルウイルスである、使用に関する。
【0013】
別の態様では、本発明は、任意の哺乳動物、好ましくはヒトにおけるウイルス感染を処置するための方法であって、本明細書で定義される化合物の治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含み、ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又はウイルスは西ナイルウイルスである、方法に関する。
【0014】
本発明の更なる態様では、本明細書で定義される化合物を、ウイルス感染を処置するための使用説明書と共に含むキットであって、ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又はウイルスは西ナイルウイルスである、キットを提供する。
【0015】
以下の実施形態は、本発明のすべての態様に適用される。
【0016】
一実施形態では、オルトミクソウイルス科は、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、クアランジャウイルス、及びイサウイルスから選択される別の実施形態では、オルトミクソウイルス科ウイルスは、インフルエンザA型であり、好ましくはH1N1、H1N2及びH3N2から選択される。別の実施形態では、オルトミクソウイルス科ウイルスは、インフルエンザB型であり、好ましくはヤマガタ系統又はビクトリア系統から選択される。
【0017】
一実施形態では、西ナイルウイルスは、系統1、2、3、4、5、6、7又は8から選択される。好ましくは、ウイルスは、系統1又は2(WNV-1又はWNV-2)である。一実施形態では、西ナイルウイルスは西ナイル-NY99である。
【0018】
R3及びR4は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択してもよい。R3はイソプロピルであってもよく、R4は水素であってもよい。R3及びR4は、メチルであってもよい(この化合物は一般式IIの化合物とも呼ばれる)。
【0019】
R11は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから選択してもよい。R11は、メチル又はイソブチルであってもよい。R11は、メチルであり、n=1であってもよい(この化合物は一般式IIIの化合物とも呼ばれる)。
【0020】
R1、R5、R9、及びR15は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択してもよい。R1は、sec-ブチル及びイソプロピルから選択してもよく、R5はイソブチルであってもよく、R9はp-メトキシベンジルであってもよく、R15はメチル及びベンジルから選択してもよい。
【0021】
R8、R10、R12、及びR16は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択してもよい。R8、R10、及びR12は、メチルであってもよく、R16は、水素であってもよい。
【0022】
R6及びR14は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択してもよい。R6は、水素及びメチルから選択してもよく、R14は、水素であってもよい。
【0023】
R7及びR13は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択してもよい。R7は、メチルであってもよく、R13は、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、及び3-アミノ-3-オキソプロピルから選択してもよい。
【0024】
R6及びR7及び/又はR13及びR14は、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換又は非置換ピロリジン基を形成することができる。
【0025】
R2は、水素、置換若しくは非置換C1~C6アルキル、及びCORaから選択してもよく、Raは、置換又は非置換C1~C6アルキルであってもよい。R2は水素であってもよい。
【0026】
R17は、水素、CORa、COORa、CONHRb、(C=S)NHRb、及びSO2Rcから選択してもよく、各Ra、Rb、及びRcは、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、置換又は非置換C2~C6アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択してもよい。R17は、水素、COOベンジル、COベンゾ[b]チオフェン-2-イル、SO2(p-メチルフェニル)、COCOCH3及びCOOC(CH3)3から選択してもよい。
【0027】
Xは、NHであってもよい。Xは、Oであってもよい。Yは、COであってもよい。Yは、-COCH(CH3)CO-であってもよい。
【0028】
化合物は、PLD、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体であり得る。化合物は、PLDであり得る。
【0029】
化合物は、ジデムニンB、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体であり得る。化合物は、ジデムニンBであり得る。
【0030】
ウイルス感染は、軽度の感染;及び/又は中等度の感染;及び/又は重度の感染であり得る。
【0031】
最長4週間;及び/又は4週間~12週間;及び/又は12週超の間の、ウイルス感染の徴候及び症状を有する患者の処置における使用を含めてもよい。
【0032】
使用は、持続性のウイルス症状の予防、軽減又は処置における使用を含んでもよい。
【0033】
この使用により、感染患者の感染性が低下する場合があり;患者が無症候性であるか、又はあまり症状がないが、ウイルス量が多い場合を含む。使用により、スーパーコンタゲーター(supercontagator)(ウイルス量が多い(例えば、CT<25)無症候性又はあまり症状のない患者)の発生が減少することがある。本発明は、ウイルス負荷の迅速かつ有意な減少を達成する。ウイルス負荷が減少すると、患者の感染力を低下させる場合がある。これは、無症候性であるか、又はあまり症状がないがウイルス量が高い患者(例えば、CT<25)に特に有益である。そのような患者は、スーパーコンタゲーター(supercontagator)又はスーパースプレッダー(superspreader)であり得る。感染の検出時に本発明による化合物を投与すると、ウイルス負荷が減少し、したがって患者の感染性が低下する。
【0034】
この処置により、ウイルス量が減少し得る。これは、投与後6日目における30を超える複製サイクル閾値(Ct)値(Ct>30)として表すことができる。この処置により、ウイルス量がベースラインから減少し得る。これは、投与後に入院を必要とする患者のパーセンテージの減少として表すことができる。これは、投与後に侵襲的人工呼吸管理及び/又は投与後のICUへの入院を必要とする患者のパーセンテージの減少として表すことができる。これは、持続性疾患に関連する後遺症を発症する患者の減少として表すことができる。これは、予後不良の基準として選択された分析パラメータ(例えば、リンパ球減少症、LDH、D-ダイマー、又はPCRを含む)が正常化された患者のパーセンテージの増加として表すことができる。これは、例えば、頭痛、発熱、咳、疲労、呼吸困難(息切れ)、関節痛又は下痢を含む、臨床基準の正常化(症状の消失)を伴う患者のパーセンテージの増加として表すことができる。
【0035】
化合物は、コルチコステロイド、好ましくはデキサメタゾンと組み合わせて投与することができる。化合物及びコルチコステロイドは、同時に、別々に、又は順次に投与することができる。
【0036】
化合物は、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、又は1日間、好ましくは2~5日、3~5日、又は3、4若しくは5日間;最も好ましくは3日又は5日間;最も望ましくは3日間、1日1回投与のレジメンに従って投与することができる。
【0037】
化合物は、1日5mg以下、1日4.5mg以下、1日4mg以下、1日3.5mg以下、1日3mg以下、1日2.5mg以下、又は1日2mg以下;0.5mg/日、1mg/日、1.5mg/日、2mg/日、2.5mg/日、3mg/日、3.5mg/日、4mg/日、4.5mg/日、又は5mg/日;好ましくは1mg/日、1.5mg/日、2mg/日又は2.5mg/日;好ましくは1.5~2.5mg/日;更に好ましくは、1.5mg/日、2mg/日又は2.5mg/日の用量で投与され得る。
【0038】
化合物は、1~50mg、1~40mg、1~30mg、1~20mg、1~15mg、3~15mg、3~12mg、4~12mg、4~10mg、又は4.5~10mg;4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg又は10mg;好ましくは4.5mg、5mg、6mg、7.5mg、8mg、9mg又は10mg;より好ましくは4.5~7.5mg/日の総用量で投与することができる。総用量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10日間、好ましくは3日間又は5日間、最も好ましくは3日間に分割することができる。
【0039】
化合物は、1.5~2.5mg/日の用量で3日間、1日1回の用量で投与することができる。用量は、1.5mg/日であってもよい。用量は、2.5mg/日であってもよい。
【0040】
化合物を、1日1回、連続3日間、1.5時間の注入としてPLD投与することができる。1.5mgのPLDを、1日1回、連続3日間、1.5時間の注入として投与することができる。2mgのPLDを、1日1回、連続3日間、1.5時間の注入として投与することができる。2.5mgのPLDを、1日1回、連続3日間、1.5時間の注入として投与することができる。1mgのPLDを、1日1回、連続5日間、1.5時間の注入として投与することができる。2mgのPLDを、1日1回、連続5日間、1.5時間の注入として投与することができる。
【0041】
レジメンは、単回投与(1日)であってもよい。化合物は、1~10mg、4~10mg、4.5~10mg;4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg又は10mg;好ましくは4.5mg、5mg、6mg、7.5mg、8mg、9mg又は10mg;より好ましくは、5~9mg、6.5~8.5mg、7~8mg又は7.5mgの単回用量として投与することができる。化合物を、単回用量、1.5時間の注入としてPLD投与することができる。
【0042】
単回投与レジメンは、本発明で提示されるすべての療法で利用することができる。コルチコステロイドとの組合せ使用(その後のコルチコステロイド投与を含む)は、実施形態において、単回投与レジメンで使用することができる。複数日レジメンは、本発明で提示されるすべての療法で利用することができる。
【0043】
コルチコステロイドは、本発明による化合物を投与するのと同じ日に毎日投与することができる。コルチコステロイドは、その後の日の1又は複数に投与することができる。コルチコステロイドは、その後の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日又はそれ以上の日に投与することができる。コルチコステロイドは、本発明による化合物と同じ日に投与する場合は高用量で投与し、その後の日に低用量で投与することができる。コルチコステロイドは、デキサメタゾンであってもよい。
【0044】
本発明による化合物は、投薬レジメンの1~3日目に、本発明による用量で投与することができる。本発明による化合物は、投薬レジメンの1~3日目に、静脈内投与することができる。その後、コルチコステロイドは、4日目から最長10日目まで(患者の臨床状態及び進展に応じた医師の判断に従って)、経口投与又はIVにより投与することができる。コルチコステロイドは、デキサメタゾンであってもよい。用量は、1日目から3日目に6.6mg/日のIV(例えば、リン酸デキサメタゾン8mg)、続いて4日目から最長10日目まで6mg/日のデキサメタゾン(例えば、リン酸デキサメタゾン7.2mg又はデキサメタゾン塩基6mg)の経口投与又はIVであり得る。
【0045】
実施形態では、デキサメタゾンはリン酸デキサメタゾンであり、1日目から3日目に8mg/日の用量でIV投与され、続いて4日目から最長10日目まで7.2mg/日のデキサメタゾンの経口投与又はIV投与がなされる。
【0046】
本発明による化合物は、注入、好ましくは1時間注入、1.5時間注入、2時間注入、3時間注入又はそれより長い注入として投与することができ;特に好ましくは、1.5時間注入として投与することができる。
【0047】
レジメンでは、1.5mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与することができ;又は2mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与することができ;又は2.5mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与することができ;又は1mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続5日間投与することができ;又は2mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続5日間投与することができる。
【0048】
レジメンでは、7.5mgのプリチデプシンを、1日目に単回投与として、1.5時間の注入として投与することができる。
【0049】
本発明による化合物は、負荷用量及び維持用量を使用して投与することができる。
【0050】
本発明によるレジメンは:
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には2mg/日の維持用量;
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には1.5mg/日の維持用量;
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には1mg/日の維持用量;
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量;
1日目は2mgの負荷用量、その後の日には1.5mg/日の維持用量;
1日目は2mgの負荷用量、その後の日には1mg/日の維持用量;
1日目は2mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量;
1日目は1.5mgの負荷用量、その後の日には1mg/日の維持用量;
1日目は1.5mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量;又は
1日目は1mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量であり得る。
【0051】
本発明による化合物は、コルチコステロイドと組み合わせて投与することができる。コルチコステロイドは、化合物の投与と同じ日に投与することができる。
【0052】
コルチコステロイドはまた、その後の日の1又は複数に投与することができる。例えば、コルチコステロイドを化合物と共に1~3日目に投与し、コルチコステロイドを4~10日目のうちの1又は複数に更に投与する。
【0053】
コルチコステロイドは、化合物を投与する日に静脈内投与することができるが、その後の日に経口投与又はIVにより投与することができる。
【0054】
コルチコステロイドは、デキサメタゾンであってもよい。デキサメタゾンは、化合物を投与する日に、6.6mg/日の用量でIV投与することができる。
【0055】
デキサメタゾンは、その後の日、好ましくは4、5、6、7、8、9、及び10日目のうちの1又は複数に6mg/日の用量で経口投与してもよく、又はIVで投与してもよい。
【0056】
本明細書で定義されるデキサメタゾン用量は、塩基質量を指す。したがって、塩形態で使用する場合、用量を調整することができる。例えば、デキサメタゾンは、8mg/日が6.6mgのデキサメタゾン塩基に相当し、7.2mg/日が6mgのデキサメタゾン塩基に相当するようなリン酸デキサメタゾンであってもよい。
【0057】
本発明による化合物、特にPLDは、1日目~3日目にデキサメタゾン6.6mg/日静脈内(IV)投与と組み合わせて1.5mg/日IV投与し、続いて、4日目から最長10日目まで(患者の臨床状態及び進展に応じた医師の判断に従って)、デキサメタゾン6mg/日経口投与(PO)/IVをすることができる。
【0058】
本発明による化合物、特にPLDは、1日目~3日目にデキサメタゾン6.6mg/日静脈内(IV)投与と組み合わせて2.0mg/日IV投与し、続いて、4日目から最長10日目まで(患者の臨床状態及び進展に応じた医師の判断に従って)、デキサメタゾン6mg/日経口投与(PO)/IVをすることができる。
【0059】
本発明による化合物、特にPLDは、1日目~3日目にデキサメタゾン6.6mg/日静脈内(IV)投与と組み合わせて2.5mg/日IV投与し、続いて、4日目から最長10日目まで(患者の臨床状態及び進展に応じた医師の判断に従って)、デキサメタゾン6mg/日経口投与(PO)/IVをすることができる。
【0060】
コルチコステロイドは、本明細書で定義される化合物による処置を開始する20~30分前に投与することができる。
【0061】
本発明によるレジメンでは、患者は、好ましくは本発明による化合物による処置を開始する20~30分前に、以下の薬物を更に受けることができる:
オンダンセトロン8mg IV(又は同等物);
ジフェンヒドラミン塩酸塩25mg IV(又は同等物);及び
ラニチジン50mg IV(又は同等物)。
【0062】
本発明によるレジメンでは、4日目及び5日目に、患者はオンダンセトロン(又は同等物)4mgを1日2回POで受けることができる。
【0063】
単回投与の場合、患者はプリチデプシン注入の20~30分前に、以下の予防薬を受けることができる:
- ジフェンヒドラミン塩酸塩25mg i.v;
- ラニチジン50mg i.v;
- デキサメタゾン6.6mg 静脈内投与;
- オンダンセトロン8mg i.v.15分間の緩徐な注入。
【0064】
オンダンセトロン4mgを、プリチデプシン投与後3日間、12時間ごとに経口で与えて、薬物誘発性の悪心及び嘔吐を緩和することができる。プリチデプシンを午前中に投与する場合、患者は午後にオンダンセトロンの初回投与を受けることができる。
【0065】
本発明はまた、以下の非限定的な図で更に説明される:
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】Toll様受容体の活性化に応答したNF-κBトランス活性化が、PLDによって阻害されることを示す。ヒト単球細胞(THP-1)にNF-κB-Lucプラスミドを安定的にトランスフェクトし、(A)PLDの存在下及び非存在下で測定されたNF-κBトランス活性化のレベル。(B)MTT細胞増殖アッセイにより化合物誘発性細胞毒性を試験した。培養物を100nMのPLDに6時間曝露した。RQ- 10μg/mLのレシキモド。LPS-B5- 10μg/mLの大腸菌(Escherichia coli)055:B5由来のリポ多糖(LPS-B5)。ポリC- 500μg/mLのポリイノシン・ポリシチジン酸。TNF-αを陽性対照として使用した。***p<0.001;**p<0.01
図2】プリチデプシンが、TLR誘発サイトカイン分泌を負に調節することを示す。Toll様受容体の活性化に応答したNF-κBトランス活性化は、炎症誘発性サイトカイン:IL-1(a)、IL-6(b)、IL-8(c)、及びTNF-α(d)の分泌増加につながる。培養物を100nMのDMSOに6時間曝露した。処置後6時間で、分泌されたサイトカインをELISAによって分析した。TNF-αを陽性対照として使用した。***p<0.001;**p<0.01
図3】PLDによるサイトカインIL-6、IL-10、及びTNF-αのエクスビボダウンレギュレーションを示す。
図4】LPSチャレンジマウスにおける古典的に活性化されたマクロファージの減少を示す。
図5】LPS処理マウスにおける肺胞マクロファージ動員に対するプリチデプシンの効果を示す。それぞれ1.0、0.2及び0.2mg/kgでの単回静脈内投与後のマウス(a)、ラット(b)及びハムスター(c)の血漿及び肺におけるプリチデプシンの濃度-時間曲線(平均±SD)。
図6】PLDによる処置を伴う(PR8)又は伴わない(PC)インフルエンザウイルスに感染したマウスのBALFにおける炎症プロファイルを示す。
図7】PLDによる処置を伴うか又は伴わないマウスの肺におけるインフルエンザウイルスの力価を示す。PLDの抗ウイルス活性は、ウイルスNP(NP-PR8)のmRNAレベルを測定するqPCRによって定量化された。
図8】PLDを用いて(PR8)又は用いないで(PC)処置されたインフルエンザ感染マウスのBALFにおける免疫細胞浸潤、特にAM(肺胞マクロファージ)のレベルの定量的測定を示す。
図9】VeroE6細胞におけるWNV-GFP感染効率を示す。感染効率(GFP;緑色の線)及び細胞バイオマス(DAPI;青色の線)のプリチデプシン用量反応曲線。データは、4つの生物学的複製(n=8)で実施された2つの独立した実験の平均及びSEMとして示されている。
図10】Huh-7細胞におけるWNV-GFP感染効率を示す。感染効率(GFP;緑色の線)及び細胞バイオマス(DAPI;青色の線)のプリチデプシン用量反応曲線。データは、4つの生物学的複製(n=8)で実施された2つの独立した実験の平均及びSEMとして示されている。
図11】WNV細胞外感染力価に対するプリチデプシンの影響を示す。Vero-E6(a)又はHuh-7細胞(b)に、WNV/NY99をMOI0.01で接種した。48時間後、細胞上清を回収し、終点希釈及び免疫蛍光顕微鏡法により、細胞外感染力価を決定した。データは、対数スケールで上清の容量あたりの感染単位(焦点形成単位(FFU)/ml)で表され、平均及びSEM(N=4)として示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA及びダネットの事後検定を使用して試験した(*p<0.05)。
図12】細胞内WNV RNAレベルに対するプリチデプシンの影響を示す。Vero-E6(a)又はHuh-7(b)細胞に、WNV/NY99をMOI 0.01で接種した。48時間後、全細胞RNAをRT-qPCRにかけた。データを、ハウスキーピング遺伝子として28S RNAを使用して対数スケールで正規化されたゲノムコピー数/60ngの全RNAとして表し、平均及びSEM(N=4)として示す。統計的有意性は、一元配置ANOVA及びダネットの事後検定を使用して試験した(*p<0.05)。n.d.、すなわち非検出(<1000コピー/反応)。
図13】炎症誘発性サイトカインIL6(a)、IL8(b)、IL1β(c)及びTNF-α(d)の分泌に対する1nM、10nM及び50nMでのプリチデプシン(APL)前処理の効果を示す。(e)は、細胞生存率に対する1nM、10nM、及び50nM PLD処理の効果を示す(対照のパーセントとして)。0時にTHP-1細胞を1nM、10nM又は50nM APL又はDMSO(0.2%)で処理し、8時間後に2.5又は5μg/mLのレシキモドで刺激した。24時間でサイトカイン又は細胞生存率を測定した。
図14】気管支肺胞洗浄液(BALF)から単離されたCD45+細胞におけるLPS-B5によって媒介される炎症誘発性サイトカイン、IL-6(c)、IL-10(d)及びTNF-α(e)の産生に対するプリチデプシン処置の効果を示す。(a)は、対照、LPS-B5並びにLPS-B5及びPLD処理細胞における、CD45+生細胞のパーセントを示す。(b)は、LPS-B5並びにLPS-B5及びPLD処理細胞における細胞生存率を対照のパーセントとして示す。
図15】レシキモドによって媒介される炎症誘発性サイトカインTNF-αの産生に対するプリチデプシン処置の効果を示す。
図16】本発明による投薬スケジュール及び投与について予測された総血漿濃度プロファイル 対 時間を示す。
図17】[図16]参照。
図18】本発明による更なる投薬スケジュール及び投与について予測された総血漿濃度プロファイル 対 時間を示す。
図19】1.5時間の注入を使用した、1日目から3日目までのプリチデプシン7.5mg及び1.5、2.0、及び2.5mgの単回投与についての対総血漿濃度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下の実施形態は、本発明のすべての態様に適用される。
【0068】
ここで、本発明を更に説明する。以下の節では、本発明の異なる態様をより詳細に定義する。そのように定義された各態様は、明確に反対の指示がない限り、任意の他の1つ若しくは複数の態様又は1つ若しくは複数の実施形態と組み合わせてもよい。特に、好ましいか又は有利であると示される任意の特徴は、好ましいか又は有利であると示される任意の他の1つ又は複数の特徴と組み合わせてもよい。
【0069】
本出願では、多くの一般的な用語及び語句が使用されており、これらは以下のように解釈されるべきである。
【0070】
本明細書で使用される「処置する」という用語は、別段の指示がない限り、そのような用語が適用される疾患若しくは状態、又はそのような障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状の進行を逆転させること、緩和させること、若しくは阻害することを意味する。本明細書で使用される処置するという用語は、予防的処置も含み得る。
【0071】
ウイルス感染との関係における「処置する」、「処置すること」、及び「処置」は、以下のうちの1つ又は複数を指す場合がある:1)感染細胞数の減少;2)ウイルス力価の減少を含む、血清中に存在するビリオン数の減少(qPCRで測定可能);3)ウイルス複製速度の阻害(すなわち、ある程度遅延させる、できれば停止させる);4)ウイルスRNA負荷の減少;5)ウイルス感染力価(宿主細胞に侵入できるウイルス粒子の数)の減少;及び6)ウイルス感染に関連する1つ又は複数の症状のある程度の緩和又は軽減。これには、ウイルス感染に伴う炎症が含まれる場合がある。
【0072】
「患者」には、ヒト、非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、シカ等)及び非哺乳動物(例えば、鳥等)が含まれる。患者は、感染の管理のために入院を必要とする場合がある。
【0073】
プリチデプシン(PLD)は、海洋被嚢動物であるアプリジウム アルビカンズ(Aplidium albicans)から元々単離された環状デプシペプチドである。PLDはAplidin又はAplidineとしても知られている。本明細書では、そのような用語は、交換可能に使用される。PLD類似体は、式I、II又はIIIの化合物として本明細書で定義される類似体である。好ましい実施形態では、本発明はPLDの使用に関する。
【0074】
西ナイルウイルス(WNV)は、重要な新興の向神経性ウイルスであり、世界中でヒト及びウマにおいてますます重度の脳炎の大流行を引き起こしている。WNVは、約1~11kbのプラスセンス一本鎖RNA(ssRNA)ゲノムによってコードされている。ゲノムは単一のポリタンパク質として翻訳され、ウイルス及び宿主プロテアーゼによるこのポリタンパク質のその後の切断により、10個のウイルスタンパク質が生成される。WNVの病因は、初期段階の初期感染及び拡散(初期段階)、末梢ウイルス増幅(内臓播種段階)、及び神経浸潤(中枢神経系(CNS)段階)の3つの段階に従う。
【0075】
皮下感染後の初期段階は、ケラチノサイト及び皮膚常在DCでのWNV複製によって定義され、その後、流入領域リンパ節内でウイルスが増幅され、ウイルス血症が発生し、内臓に広がる。WNV感染の特定の標的細胞は十分明確には定義されていないが、DC、マクロファージ、及びおそらく好中球のサブセットであると考えられている。CNS組織(脳や脊髄等)へのWNVの浸潤は、感染の第3段階を構成する。WNVは、血液脳関門(BBB)の破壊を伴うか又は伴わない場合の直接感染及び/又は末梢ニューロンに沿ったウイルス輸送等、ウイルスの神経侵入を促進するメカニズムの組合せを介して脳に侵入する場合がある。
【0076】
WNV病因の主要な特徴は神経炎症であり、これは自然免疫及び獲得免疫応答の過剰によって引き起こされる。非致死性WNV感染のマウスモデルで示されているように、脳への炎症性単球の蓄積並びにそれらのマクロファージ及びミクログリアへの分化も、神経炎症及びCNS損傷を悪化させる可能性がある。TLRによる単球/ミクログリアのWNV核酸の認識は、TNF-αの産生につながる場合があり、その結果、タイトジャンクションが失われ、WNV及び免疫細胞がマウスの脳の血管周囲腔に侵入することが可能になる。したがって、WNVによる単球/マクロファージ系の細胞の活性化は、重要な神経病理学的結果をもたらすようであり、過剰な自然反応により炎症が引き起こされ、血液脳関門の透過性が変化し、ウイルスがCNSに侵入することが可能になり得る。実際、感染神経細胞をTNF-α及びその他の炎症誘発性メディエーターをブロックする抗体で処理すると、WNV媒介性神経細胞死が大幅に減少し、このことは、そのようなメディエーターがCNSにおけるWNV感染の病因に主要な役割を果たしていることを示唆している。
【0077】
オルトミクソウイルス科ファミリーは、マイナスセンスRNAウイルスのファミリーであり、ヒトと動物の両方の重要な病原体を含有する。このファミリーには、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、クアランジャウイルス、及びイサウイルスを含む7つの属がある。
【0078】
インフルエンザウイルスには、A、B、C、及びDの4つのクラスがあり、特にインフルエンザウイルスA及びBは、インフルエンザの冬の流行を引き起こし、年間約30万~65万の死亡を引き起こしている。インフルエンザAウイルスは、多くの国で大流行の影響を受けている多くのインフルエンザパンデミックの原因となっているため、特に臨床的に重要である。インフルエンザAウイルスは、ウイルスの表面にあるヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)の2つのタンパク質に基づいてサブタイプに分類される、マイナスセンス一本鎖セグメント化RNAウイルスである。18の異なるヘマグルチニンサブタイプ及び11の異なるノイラミニダーゼサブタイプ(それぞれH1~H18及びN1~N11)があるため、インフルエンザウイルスには多くのサブタイプが存在し、これらは、いつでも集団内で循環している場合があり、インフルエンザとして知られる疾患を引き起こす場合がある。しかし、一実施形態では、本発明は、ヒトインフルエンザウイルス、特にインフルエンザAのH1N1、H1N2及びH3N2サブタイプ並びにインフルエンザBのビクトリア及びヤマガタ系統に関する。
【0079】
インフルエンザは、その症状が、高熱、鼻水、咽頭炎、筋肉及び関節疼痛、頭痛、咳嗽、及び疲労感を含む軽度から重度の疾患を特徴とするが、ウイルスに感染した小児にも嘔吐及び下痢が起こる場合がある。これらの症状は通常、曝露後1~4日で現れ、通常は自然治癒性であるが、場合によっては、特に免疫系が弱い人では、肺炎及び敗血症等の合併症が発生する可能性がある。
【0080】
重度のインフルエンザ感染は、炎症性サイトカイン及びケモカインのレベルの上昇に関連する肺組織の重大な病理学的変化と関連している。サイトカインストームとして知られるこの過剰な免疫応答は、高レベルの炎症誘発性サイトカイン及び広範な組織損傷に関連している。実際、「サイトカインストーム」という用語は、インフルエンザ関連脳症に対する免疫応答を説明する際に最初に造られた。気道の上皮細胞のインフルエンザ感染は、これらの細胞から炎症性サイトカイン産生の波を引き起こし、重症の場合、進行して組織の損傷及び慢性炎症を引き起こす可能性がある、マクロファージ、好中球、及び樹状細胞等の自然免疫細胞の活性化を通じて更に下流のサイトカイン産生を引き起こし続ける種々のインターフェロン調節遺伝子を駆動すると考えられている。インフルエンザ感染に関連する合併症をもたらす可能性があり、最終的に最も深刻な影響を受けた患者が死亡に至る可能性があるのは、炎症のこの正のフィードバックループである。
【0081】
本発明の化合物では、基は、以下の指針に従って選択することができる:
アルキル基は、分岐鎖であっても非分岐鎖であってもよく、好ましくは1~約12個の炭素原子を有する。アルキル基のより好ましいクラスの1つは、1~約6個の炭素原子を有する。更により好ましいのは、1、2、3又は4個の炭素原子を有するアルキル基である。メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル及びイソブチルを含むブチルは、本発明の化合物において特に好ましいアルキル基である。本明細書で使用される場合、アルキルという用語は、別段の記載がない限り、環状基と非環状基の両方を指すが、環状基は少なくとも3つの炭素環員を含む。
【0082】
本発明の化合物における好ましいアルケニル基及びアルキニル基は、分岐鎖であっても非分岐鎖であってもよく、1つ又は複数の不飽和結合及び2~約12個の炭素原子を有する。アルケニル基及びアルキニル基のより好ましいクラスの1つは、2~約6個の炭素原子を有する。更により好ましいのは、1、2、3又は4個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基である。本明細書で使用される場合、アルケニル基及びアルキニル基という用語は、別段の記載がない限り、環状基と非環状基の両方を指すが、環状基は少なくとも3つの炭素環員を含む。
【0083】
本発明の化合物における好適なアリール基には、単環及び多環化合物が含まれ、分離及び/又は縮合アリール基を含有する多環化合物が含まれる。典型的なアリール基は、1~3個の分離又は縮合環及び6~約18個の炭素環原子を含有する。好ましくは、アリール基は、6~約10個の炭素環原子を含有する。特に好ましいアリール基には、置換又は非置換フェニル、置換又は非置換ナフチル、置換又は非置換ビフェニル、置換又は非置換フェナントリル、及び置換又は非置換アントリルが含まれる。
【0084】
好適な複素環式基には、1~3個の分離又は縮合環及び5~約18個の環原子を含有する複素芳香族基及び複素脂環式基が含まれる。好ましくは、複素芳香族基及び複素脂環式基は、5~約10個の環原子、最も好ましくは5、6又は7個の環原子を含有する。本発明の化合物における好適な複素芳香族基は、N、O又はS原子から選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子を含有し、例えば、8-クマリニルを含むクマリニル、8-キノリルを含むキノリル、イソキノリル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾール-3-イル、ピラゾール-4-イル及びピラゾール-5-イルを含むピラゾリル、ピリミジニル、フラン-2-イル、フラン-3-イル、フラン-4-イル及びフラン-5-イルを含むフラニル、ピロリル、チエニル、チアゾール-2-イル、チアゾール-4-イル及びチアゾール-5-イルを含むチアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾール-4-イル及びチアジアゾール-5-イルを含むチアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾール-3-イル、イソオキサゾール-4-イル及びイソオキサゾール-5-イルを含むイソオキサゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ピリダジニル、トリアジニル、シンノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾ[b]チオフェン-2-イル及びベンゾ[b]チオフェン-3-イルを含むベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル及びイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルを含むイミダゾ[1,2-a]ピリジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びフロピリジルが含まれる。本発明の化合物における好適な複素脂環式基は、N、O又はS原子から選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子を含有し、例えば、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジン-3-イル、ピペリジン-4-イル及びピペリジン-5-イルを含むピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジル、オキセパニ
ル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、ジヒドロピロリル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキシル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプチル、3H-インドリル、及びキノリジニル、が挙げられる。
【0085】
上記の基において、1つ又は複数の水素原子は、1つ又は複数の好適な基、例えば、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基、によって置換されていてもよく、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。置換基が二重結合(=O及び=N-R'等)で終わる場合、それにより同じ炭素原子の2つの水素原子が置き換えられる。
【0086】
本発明の化合物における好適なハロゲン置換基には、F、Cl、Br及びIが含まれる。
【0087】
「薬学的に許容される塩」という用語は、患者への投与時に、本明細書に記載の化合物を(直接的又は間接的に)提供できる任意の塩を指す。薬学的に許容されない塩もまた、薬学的に許容される塩の調製において有用であり得るので、本発明の範囲内に入ることが理解されるであろう。塩の調製は、当技術分野で知られている方法によって行うことができる。例えば、本明細書で提供される化合物の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸形態又は遊離塩基形態を、水中若しくは有機溶媒中、又はその2つの混合物中で、化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることにより調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル等の非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、鉱酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等、及び有機酸付加塩、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等、が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、無機塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及び有機アルカリ塩、例えばアンモニウム塩、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
【0088】
本発明の化合物は、遊離化合物又は溶媒和物(例えば、水和物、アルコレート、特にメタノレート)のいずれかの結晶形態であり得、両方の形態が本発明の範囲内であることが意図される。溶媒和の方法は、当技術分野で一般に知られている。本発明の化合物は、異なる多形形態を示すことができ、本発明はそのような形態をすべて包含することを意図している。
【0089】
本明細書で言及される任意の化合物は、そのような特定の化合物並びに特定の変形形態又は形態を表すことを意図している。特に、本明細書で言及される化合物は不斉中心を有してもよく、したがって、異なるエナンチオマー又はジアステレオマー形態で存在してもよい。したがって、本明細書で言及される任意の化合物は、ラセミ体、1つ又は複数のエナンチオマー形態、1つ又は複数のジアステレオマー形態、及びそれらの混合物のいずれかを表すことを意図している。同様に、二重結合に関する立体異性又は幾何異性も可能であり、したがって場合によっては、分子は(E)-異性体又は(Z)-異性体(トランス及びシス異性体)として存在する可能性がある。分子にいくつかの二重結合が含まれている場合、各二重結合には独自の立体異性があり、分子の他の二重結合の立体異性と同じか又は異なる可能性がある。更に、本明細書で言及される化合物は、アトロプ異性体として存在し得る。本明細書で言及される化合物のエナンチオマー、ジアステレオ異性体、幾何異性体及びアトロプ異性体を含むすべての立体異性体、並びにそれらの混合物は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0090】
一般式I及びIIの化合物において、特に好ましいR1、R5、R9、R11及びR15は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR1、R5、R9、R11及びR15は、水素、置換又は非置換メチル、置換又は非置換エチル、置換又は非置換n-プロピル、置換又は非置換イソプロピル、及び置換又は非置換ブチル、例として置換又は非置換n-ブチル、置換又は非置換tert-ブチル、置換又は非置換イソブチル、及び置換又は非置換sec-ブチルから独立して選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。水素、メチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、4-アミノブチル、3-アミノ-3-オキソプロピル、ベンジル、p-メトキシベンジル、p-ヒドロキシベンジル、及びシクロヘキシルメチルが最も好ましいR1、R5、R9、R11及びR15基である。具体的には、特に好ましいR1は、sec-ブチル及びイソプロピルから選択され、sec-ブチルが最も好ましい。特に好ましいR5は、イソブチル及び4-アミノブチルから選択され、イソブチルが最も好ましい。特に好ましいR11は、メチル及びイソブチルである。特に好ましいR9は、p-メトキシベンジル、p-ヒドロキシベンジル、及びシクロヘキシルメチルから選択され、p-メトキシベンジルが最も好ましい。特に好ましいR15は、メチル、n-プロピル、及びベンジルから選択され、メチル及びベンジルが最も好ましい。
【0091】
一般式IIIの化合物において、特に好ましいR1、R5、R9、及びR15は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR1、R5、R9、及びR15は、水素、置換又は非置換メチル、置換又は非置換エチル、置換又は非置換n-プロピル、置換又は非置換イソプロピル、及び置換又は非置換ブチル、例として置換又は非置換n-ブチル、置換又は非置換tert-ブチル、置換又は非置換イソブチル、及び置換又は非置換sec-ブチルから独立して選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。水素、メチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、4-アミノブチル、3-アミノ-3-オキソプロピル、ベンジル、p-メトキシベンジル、p-ヒドロキシベンジル、及びシクロヘキシルメチルが最も好ましいR1、R5、R9、及びR15基である。具体的には、特に好ましいR1は、sec-ブチル及びイソプロピルから選択され、sec-ブチルが最も好ましい。特に好ましいR5は、イソブチル及び4-アミノブチルから選択され、イソブチルが最も好ましい。特に好ましいR9は、p-メトキシベンジル、p-ヒドロキシベンジル、及びシクロヘキシルメチルから選択され、p-メトキシベンジルが最も好ましい。特に好ましいR15は、メチル、n-プロピル、及びベンジルから選択され、メチル及びベンジルが最も好ましい。
【0092】
一般式I、II及びIIIの化合物において、特に好ましいR8、R10、R12、及びR16は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR8、R10、R12、及びR16は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、及びsec-ブチルを含むブチルから独立して選択され、更により好ましくは、それらは独立して水素及びメチルから選択される。具体的には、特に好ましいR8、R10、及びR12はメチルであり、特に好ましいR16は水素である。
【0093】
一般式I及びIIIの化合物において、特に好ましいR3及びR4は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR3及びR4は、水素、置換又は非置換メチル、置換又は非置換エチル、置換又は非置換n-プロピル、置換又は非置換イソプロピル、及び置換又は非置換ブチル、例として置換又は非置換n-ブチル、置換又は非置換tert-ブチル、置換又は非置換イソブチル、及び置換又は非置換sec-ブチルから独立して選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。水素、メチル、イソプロピル、及びsec-ブチルが、最も好ましいR3及びR4基である。具体的には、特に好ましいR3はメチル及びイソプロピルから選択され、特に好ましいR4はメチル又は水素である。
【0094】
一般式I、II及びIIIの化合物の一実施形態では、特に好ましいR6及びR7は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR7は、水素、置換又は非置換メチル、置換又は非置換エチル、置換又は非置換n-プロピル、置換又は非置換イソプロピル、及び置換又は非置換ブチル、例として置換又は非置換n-ブチル、置換又は非置換tert-ブチル、置換又は非置換イソブチル、及び置換又は非置換sec-ブチルから選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。より好ましいR6は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、及びsec-ブチルを含むブチルから選択される。最も好ましいR6は水素及びメチルから選択され、最も好ましいR7はメチルである。
【0095】
一般式I、II及びIIIの化合物の別の実施形態では、R6及びR7が、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換又は非置換複素環基を形成することが特に好ましい。これに関して、好ましい複素環式基は、N、O又はS原子から選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子、最も好ましくは1個のN原子を含有し、5~約10個の環原子、最も好ましくは5、6又は7個の環原子を有する、複素脂環式基である。ピロリジン基が最も好ましい。
【0096】
一般式I、II及びIIIの化合物の一実施形態では、特に好ましいR13及びR14は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR13は、水素、置換又は非置換メチル、置換又は非置換エチル、置換又は非置換n-プロピル、置換又は非置換イソプロピル、及び置換又は非置換ブチル、例として置換又は非置換n-ブチル、置換又は非置換tert-ブチル、置換又は非置換イソブチル、及び置換又は非置換sec-ブチルから選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。より好ましいR14は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、及びsec-ブチルを含むブチルから選択される。最も好ましいR13は、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、及び3-アミノ-3-オキソプロピルから選択され、最も好ましいR14は水素である。
【0097】
一般式I、II及びIIIの化合物の別の実施形態では、R13及びR14が、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換又は非置換複素環基を形成することが特に好ましい。これに関して、好ましい複素環式基は、N、O又はS原子から選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子、最も好ましくは1個のN原子を含有し、5~約10個の環原子、最も好ましくは5、6又は7個の環原子を有する、複素脂環式基である。ピロリジン基が最も好ましい。
【0098】
一般式I、II及びIIIの化合物において、特に好ましいR2は、水素、置換又は非置換C1~C6アルキル、及びCORaから選択され、Raは、置換又は非置換C1~C6アルキルであり、更により好ましいRaは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル及びイソブチルを含むブチルである。より好ましくは、R2は水素である。
【0099】
一般式I、II及びIIIの化合物において、特に好ましいR17は、水素、CORa、COORa、CONHRb、(C=S)NHRb、及びSO2Rcから選択され、各Ra、Rb、及びRcは、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、置換又は非置換C2~C6アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から好ましくは独立して選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。水素、CORa、COORa、及びSO2Rcが最も好ましいR17基であり、水素、COOベンジル、COベンゾ[b]チオフェン-2-イル、SO2(p-メチルフェニル)、COCOCH3、及びCOOC(CH3)3が更に最も好ましい。
【0100】
一般式I、II及びIIIの化合物の別の実施形態では、Yは、COであることが特に好ましい。別の実施形態では、Yは、-COCH(CH3)CO-であることが特に好ましい。
【0101】
一般式I、II及びIIIの化合物の別の実施形態では、Xは、Oであることが特に好ましい。別の実施形態では、Xは、NHであることが特に好ましい。
【0102】
一般式I及びIIの化合物の別の実施形態では、n、p及びqは、0であることが特に好ましい。別の実施形態では、nは1であり、p及びqは0であることが特に好ましい。別の実施形態では、n及びpは1であり、qは0であることが特に好ましい。別の実施形態では、n、p及びqは1であることが特に好ましい。別の実施形態では、n及びpは1であり、qは2であることが特に好ましい。
【0103】
一般式IIIの化合物の別の実施形態では、p及びqは、0であることが特に好ましい。別の実施形態では、pは1であり、qは0であることが特に好ましい。別の実施形態では、p及びqは1であることが特に好ましい。別の実施形態では、pは1であり、qは2であることが特に好ましい。
【0104】
追加の好ましい実施形態では、異なる置換基について上述した選好が組み合わされる。本発明はまた、上記の式I、II及びIIIの好ましい置換のそのような組合せに関する。
【0105】
本明細書及び定義において、本発明の化合物にいくつかの基Ra、Rb、及びRcが存在する場合、明示的にそのように述べられていない限り、それらは所与の定義内でそれぞれ独立して異なっていてもよいことが理解されるべきであり、すなわち、Raは、本発明の所与の化合物において必ずしも同時に同じ基を表すわけではない。
【0106】
一般式I、II及びIIIの化合物において、qが2の値をとるとき、化合物中に2つの基R15及び2つの基R16が存在する。これにより、所与の化合物中の各R15及び各R16基は、そのような基について上に記載された異なる可能性の中から独立して選択され得ることが明らかにされる。
【0107】
一般式Iの化合物の特に好ましい立体化学は、
【0108】
【化2】
【0109】
であり、
式中、X、Y、n、p、q、及びR1~R17は上記で定義したとおりであり、Yが-COCH(CH3)CO-である場合、以下の立体化学:
【0110】
【化3】
【0111】
を有する。
【0112】
一般式IIの化合物の特に好ましい立体化学は、
【0113】
【化4】
【0114】
であり、
式中、X、Y、n、p、q、R1、R2、及びR5~R17は上記で定義したとおりであり、Yが-COCH(CH3)CO-である場合、以下の立体化学:
【0115】
【化5】
【0116】
を有する。
【0117】
一般式IIIの化合物の特に好ましい立体化学は、
【0118】
【化6】
【0119】
であり、
式中、X、Y、p、q、R1~R10、及びR12~R17は上記で定義したとおりであり、Yが-COCH(CH3)CO-である場合、以下の立体化学:
【0120】
【化7】
【0121】
を有する。
【0122】
本発明の特に好ましい化合物は、以下のもの:
【0123】
【化8A】
【0124】
【化8B】
【0125】
【化8C】
【0126】
又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である。
【0127】
一般式I、II及びIIIの化合物は、参照により本明細書に組み込まれる、Veraら、Med. Res. Rev. 2002年22(2), 102~145頁、WO2011/020913(特に実施例1~5を参照のこと)、WO02/02596、WO01/76616、及びWO2004/084812に開示されている合成プロセスのいずれかに従って、調製することができる。
【0128】
好ましい化合物は、PLD又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である。最も好ましいのはPLDである。
【0129】
プリチデプシンの化学名は(-)-(3S,6R,7S,10R,11S,15S,17S,20S,25aS)-11-ヒドロキシ-3-(4-メトキシベンジル)-2,6,17-トリメチル-15-(1-メチルエチル)-7-[[(2R)-4-メチル-2-[メチル[[(2S)-1-(2-オキソプロパノイル)ピロリジン-2-イル]カルボニル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]-10-[(1S)-1-メチルプロピル]-20-(2-メチルプロピル)テトラデカヒドロ-15H-ピロロ[2,1-f]-[1,15,4,7,10,20]ジオキサテトラアザシクロトリコシン(dioxatetrazacyclotricosine)-1,4,8,13,16,18,21(17H)-ヘプトンであり、分子式C57H87N7O15に対応する。相対分子量は1110.34g/molであり、構造は次のとおりである:
【0130】
【化9】
【0131】
プリチデプシンは、地中海海洋被嚢動物であるアプリジウム アルビカンズ(Aplidium albicans)から元々単離された環状デプシペプチドであり、現在は完全な化学合成によって製造されている。オーストラリアでは、多発性骨髄腫の処置のために、プリチデプシンの商標名で認可され、販売されている。
【0132】
本発明は、ウイルス感染の処置における本発明の化合物の使用であって、ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又はウイルスは西ナイルウイルスである、使用を提供する。
【0133】
本発明の一態様では、ウイルス感染の処置に使用するための本発明の化合物であって、ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又はウイルスは西ナイルウイルスである、化合物を提供する。
【0134】
本発明の別の態様では、ウイルス感染の処置のための医薬の製造における、本明細書の化合物の使用であって、ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又はウイルスは西ナイルウイルスである、使用を提供する。
【0135】
本発明の別の態様では、ウイルス感染の処置のための方法であって、ウイルスはオルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるか、又はウイルスは西ナイルウイルスであり、本明細書の化合物の治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0136】
感染は、1つ又は複数の炎症誘発性サイトカイン、好ましくはIL-12、IL-10、IL-1、IL-6、IL-8、CCL-2、及びTNF-αのうちの少なくとも1つ、より好ましくはIL-1、IL-6、IL-8及びTNF-αのうちの少なくとも1つの産生又は分泌の過剰又は増加を特徴とする。
【0137】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、(異なる)抗ウイルス剤と組み合わせて更に投与することができる。抗ウイルス剤は、本発明の化合物の投与と同時に、連続して、又は別々に投与することができる。この例では、本発明の化合物は、ウイルス感染に関連する、又はその結果としての炎症又は過炎症を処置するための抗炎症剤として使用することができる。
【0138】
本発明の別の態様では、オルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるウイルスによって引き起こされる障害、又はウイルスが西ナイルウイルスである障害の処置に使用するための、本明細書で定義される化合物であって、障害は、神経炎症、肺炎及び免疫病理、特に高サイトカイン血症(サイトカインストーム症候群)、及び敗血症から選択される、化合物を提供する。本発明の別の態様では、オルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるウイルスによって引き起こされる障害、又はウイルスが西ナイルウイルスである障害の処置のための医薬の製造における、本明細書で定義される化合物の使用であって、障害は、神経炎症、肺炎及び免疫病理、特に高サイトカイン血症(サイトカインストーム症候群)、及び敗血症から選択される、化合物の使用を提供する。本発明の別の態様では、オルトミクソウイルス科ファミリーから選択されるウイルスによって引き起こされる障害、又はウイルスが西ナイルウイルスである障害の処置のための方法であって、障害は、神経炎症、肺炎及び免疫病理、特に高サイトカイン血症(サイトカインストーム症候群)、及び敗血症から選択され、本明細書で定義される化合物の治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法を提供する。特に好ましい実施形態では、障害は免疫病理であり、特に高サイトカイン血症である。
【0139】
本発明の別の態様では、インフルエンザ、特に高サイトカイン血症(サイトカインストーム症候群)及び敗血症によって引き起こされる、肺炎及び免疫病理の処置に使用するための、本明細書で定義される化合物を提供する。本発明の別の態様では、インフルエンザ、特に高サイトカイン血症(サイトカインストーム症候群)及び敗血症によって引き起こされる、肺炎及び免疫病理の処置のための医薬の製造における、本明細書で定義される化合物の使用を提供する。本発明の別の態様では、インフルエンザ、特に高サイトカイン血症(サイトカインストーム症候群)及び敗血症によって引き起こされる、肺炎及び免疫病理の処置のための方法であって、本明細書で定義される化合物の治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法を提供する。特に好ましい実施形態では、障害は免疫病理であり、特に高サイトカイン血症である。
【0140】
本発明の別の態様では、西ナイルウイルス、特に高サイトカイン血症(サイトカインストーム症候群)又は敗血症によって引き起こされる、神経炎症又は免疫病理の処置に使用するための、本明細書で定義される化合物を提供する。本発明の別の態様では、西ナイルウイルス、特に高サイトカイン血症(サイトカインストーム症候群)及び敗血症によって引き起こされる、神経炎症又は免疫病理の処置のための医薬の製造における、本明細書で定義される化合物の使用を提供する。本発明の別の態様では、西ナイルウイルス、特に高サイトカイン血症(サイトカインストーム症候群)又は敗血症によって引き起こされる、神経炎症又は免疫病理の処置のための方法であって、本明細書で定義される化合物の治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法を提供する。特に好ましい実施形態では、障害は免疫病理であり、特に高サイトカイン血症である。
【0141】
一実施形態では、オルトミクソウイルス科は、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、クアランジャウイルス、及びイサウイルスから選択される別の実施形態では、オルトミクソウイルス科ウイルスは、インフルエンザA型であり、好ましくはH1N1、H1N2及びH3N2サブタイプから選択される。別の実施形態では、オルトミクソウイルス科ウイルスは、インフルエンザB型であり、好ましくはヤマガタ系統又はビクトリア系統から選択される。
【0142】
一実施形態では、西ナイルウイルスは、系統1、2、3、4、5、6、7又は8から選択される。好ましくは、ウイルスは、系統1又は2(WNV-1又はWNV-2)である。
【0143】
本発明の化合物は、上記の状態を処置するための生物学的/薬理学的活性を有する医薬組成物に使用することができる。これらの医薬組成物は、薬学的に許容される担体と共に本発明の化合物を含む。「担体」という用語は、活性成分が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルを指す。好適な薬学的担体は、E.W.Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」、1995年に記載されている。医薬組成物の例には、経口、局所又は非経口投与のための任意の固体(錠剤、丸薬、カプセル、顆粒等)又は液体(溶液、懸濁液、エマルジョン等)組成物が含まれる。本発明の化合物を含有する医薬組成物は、リポソーム又はナノスフェアカプセル化によって、持続放出製剤で、又は他の標準的な送達手段によって送達され得る。
【0144】
例示的な組成物は、注入用の溶液用粉末の形態である。例えば、WO9942125に記載の組成物。例えば、水溶性物質を含む本発明の化合物の凍結乾燥調製物、及び第二に、混合溶媒の再構成溶液。特定の例は、PLD及びマンニトールの凍結乾燥調製物並びに混合溶媒、例えばPEG-35ヒマシ油、エタノール及び注射用水の再構成溶液である。例えば、各バイアルには2mgのPLDが含まれる場合がある。再構成後、再構成された溶液の各mLには、0.5mgのPLD、158mgのPEG-35ヒマシ油、及び0.15mL/mLのエタノールが含まれる場合がある。
【0145】
任意の特定の患者に対する特定の投与量及び処置レジメンは変動し得、使用される特定の化合物の活性、使用される特定の製剤、適用様式、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組合せ、反応感受性、及び処置される特定の疾患又は状態の重症度、を含むさまざまな要因に依存する。
【0146】
本発明の実施形態では、本発明の化合物は、1日用量の投薬レジメンに従って投与することができる。
【0147】
本発明の実施形態では、本発明の化合物は、1日1回用量の投薬レジメンに従って投与することができる。
【0148】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、又は1日間、1日用量の投薬レジメンに従って投与することができる。好ましいレジメンは、2~5日、又は3~5日、又は3、4若しくは5日であり、最も好ましくは3日又は5日である。
【0149】
用量は、1日5mg以下、1日4.5mg以下、1日4mg以下、1日3.5mg以下、1日3mg以下、1日2.5mg以下、又は1日2mg以下の用量であってもよい。
【0150】
特定の用量には、0.5mg/日、1mg/日、1.5mg/日、2mg/日、2.5mg/日、3mg/日、3.5mg/日、4mg/日、4.5mg/日、又は5mg/日が含まれる。好ましい用量は、1mg/日、1.5mg/日、2mg/日及び2.5mg/日である。
【0151】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、1~50mg、1~40mg、1~30mg、1~20mg、1~15mg、3~15mg、3~12mg、4~12mg、4~10mg、又は4.5~10mgの総用量に従って投与することができる。総用量は、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、又は10mgであり得る。好ましい総用量は、4.5mg、5mg、6mg、7.5mg、8mg、9mg、又は10mgである。総用量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10日間、好ましくは3日間又は5日間に分割することができる。
【0152】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、1日2.5mg以下の用量で、1日1回の用量を5日間投与する投薬レジメンに従って投与することができる。
【0153】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、1日2mg以下の用量で、1日1回の用量を5日間投与する投薬レジメンに従って投与することができる。
【0154】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、1日1.5mg以下の用量で、1日1回の用量を3日間投与する投薬レジメンに従って投与することができる。
【0155】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、1日2mg以下の用量で、1日1回の用量を3日間投与する投薬レジメンに従って投与することができる。
【0156】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、1日2.5mg以下の用量で、1日1回の用量を3日間投与する投薬レジメンに従って投与することができる。
【0157】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、1日1.5mgの用量で、1日1回の用量を3日間投与する投薬レジメンに従って投与することができる。
【0158】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、1日2.0mgの用量で、1日1回の用量を3日間投与する投薬レジメンに従って投与することができる。
【0159】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、1日2.5mgの用量で、1日1回の用量を3日間投与する投薬レジメンに従って投与することができる。
【0160】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、1日1.5~2.5mgの用量で、1日1回の用量を3日間投与する投薬レジメンに従って投与することができる。
【0161】
代替のレジメンは、1日目における単回投与である。単回用量は、1~10mg、4~10mg、4.5~10mg;4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg又は10mg;好ましくは4.5mg、5mg、6mg、7.5mg、8mg、9mg又は10mg;より好ましくは、5~9mg、6.5~8.5mg、7~8mg又は7.5mgであり得る。
【0162】
更なる実施形態では、本発明の化合物は、本発明に従って投与することができ、本発明の化合物は、コルチコステロイドと共に投与される。好ましくは、コルチコステロイドはデキサメタゾンである。
【0163】
コルチコステロイドは、本発明の化合物と共に毎日投与することができる。投与は、逐次的、同時的、又は連続的であり得る。コルチコステロイドは、本発明による化合物の投与の翌日に更に投与することができる。例として、3日間の投薬レジメンでは、コルチコステロイドを1~3日目に投与し、その後3、4、5、6、7、8、9、又は10日以上、毎日更に投与することができる。
【0164】
特定の実施形態では、コルチコステロイドを、静脈内投与として1~3日目に投与し、次いで経口投与として6~10日目に投与することができる。更なる実施形態では、コルチコステロイドの投与量は、本発明の化合物との同時投与段階ではより高くてもよく、その後の数日間は低くする。
【0165】
特定の投薬スケジュールには以下が含まれる:
・1日目~3日目にデキサメタゾン6.6mg/日静脈内IVと組み合わせた、プリチデプシン1.5mg/日の静脈内(IV)、続いて、4日目から最長10日目まで(患者の臨床状態及び進展に応じた医師の判断に従って)、デキサメタゾン6mg/日経口投与(PO)/IV。
・1日目~3日目にデキサメタゾン6.6mg/日静脈内IVと組み合わせた、プリチデプシン2.0mg/日の静脈内(IV)、続いて、4日目から最長10日目まで(患者の臨床状態及び進展に応じた医師の判断に従って)、デキサメタゾン6mg/日経口投与(PO)/IV。
・1日目~3日目にデキサメタゾン6.6mg/日静脈内IVと組み合わせた、プリチデプシン2.5mg/日の静脈内(IV)、続いて、4日目から最長10日目まで(患者の臨床状態及び進展に応じた医師の判断に従って)、デキサメタゾン6mg/日経口投与(PO)/IVをすることができる。
【0166】
一実施形態では、投与関連の注入に伴う反応を回避するために、患者は、本発明による化合物の注入を開始する20~30分前に、以下の薬物を受けることができる:
・オンダンセトロン8mg IV(又は同等物);
・ジフェンヒドラミン塩酸塩25mg IV(又は同等物)
・ラニチジン50mg IV(又は同等物)
・デキサメタゾン6.6mg IV(上記のスケジュールに含まれている)
更に、4日目及び5日目に、本発明による化合物で処置された患者は、1日2回POでオンダンセトロン4mgを受けることができる。
【0167】
デキサメタゾン、オンダンセトロン、及びラニチジンの用量は、本明細書では塩基形態に基づいて定義される。ジフェンヒドラミン塩酸塩の用量は、塩酸塩に基づいて与えられる。本発明の化合物の用量は、塩基形態に基づいて与えられる。
【0168】
1日用量は、注入として投与することができる。注入は、1時間注入、1.5時間注入、2時間注入、3時間注入又はそれ以上であり得る。好ましくは、注入は1.5時間である。
【0169】
ある特定の実施形態では、用量は、負荷用量及び維持用量を使用するレジメンに従って投与され得る。本発明による負荷/維持用量には以下が含まれる:
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には2mg/日の維持用量;
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には1.5mg/日の維持用量;
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には1mg/日の維持用量;
1日目は2.5mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量;
1日目は2mgの負荷用量、その後の日には1.5mg/日の維持用量;
1日目は2mgの負荷用量、その後の日には1mg/日の維持用量;
1日目は2mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量;
1日目は1.5mgの負荷用量、その後の日には1mg/日の維持用量;
1日目は1.5mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量;及び
1日目は1mgの負荷用量、その後の日には0.5mg/日の維持用量であり得る。
【0170】
更なる実施形態によれば、日用量は、レジメンの最終日又は数日間に減少させることができる。
【0171】
更なる実施形態によれば、1日用量が2mgである場合、用量は、4日目及び5日目に1mgに減少させることができる。
【0172】
特定のレジメンには以下が含まれる:
- 1mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続5日間投与する(総用量は5mg);
- 2mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続5日間投与する。研究者の裁量により、4日目と5日目には1mg/日まで用量を減少させることができる(総用量は8~10mg)。
- 1.5mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与する(総用量は4.5mg);
- 2mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与する(総用量は6mg);及び
- 2.5mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与する(総用量は7.5mg)。
【0173】
単回投与レジメンには以下が含まれる:
・プリチデプシンを、1日目に1回、1.5時間の注入として、1~10mg、4~10mg、4.5~10mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg又は10mg、好ましくは4.5mg、5mg、6mg、7.5mg、8mg、9mg又は10mg、より好ましくは、5~9mg、6.5~8.5mg、7~8mg又は最も好ましくは7.5mgの用量で投与する。
・単回投与レジメンには、プリチデプシン注入の20~30分前に、以下の予防薬を更に含めることができる:
- ジフェンヒドラミン塩酸塩25mg i.v、
- ラニチジン50mg i.v.
- デキサメタゾン6.6mg 静脈内投与。
- オンダンセトロン8mg i.v.15分間の緩徐な注入。
・オンダンセトロン4mgを、プリチデプシン投与後3日間、12時間ごとに経口で与えて、薬物誘発性の悪心及び嘔吐を緩和することができる。プリチデプシンを午前中に投与する場合、患者は午後にオンダンセトロンの初回投与を受けることができる。
【0174】
更なる実施形態によれば、臨床パラメータ及び/又は患者の特徴に基づいて、本発明の化合物による処置のために患者を選択することができる。好適なパラメータは、本出願で開示される測定値であり得る。
【0175】
上で概説したレジメン及び用量は、本発明による処置方法、使用、及び本明細書で定義した医薬の製造における本明細書で定義した化合物の使用の両方に適用される。
【0176】
実施形態では、本発明は、本発明に従って使用するための化合物に関し、化合物は、以下の予防薬、すなわちジフェンヒドラミン塩酸塩、ラニチジン、デキサメタゾン、オンダンセトロンの1つ又は複数と組み合わせて投与される。特に、ジフェンヒドラミン塩酸塩25mgのiv又は同等物;ラニチジン50mgのiv又は同等物;デキサメタゾン8mgの静脈内投与;15分間の緩徐な注入によるオンダンセトロン8mg i.v.又は同等物。患者は、プリチデプシンの注入の20~30分前に前記予防薬を受けることができる。デキサメタゾン8mgの静脈内投与は、リン酸デキサメタゾンであってもよく、デキサメタゾン塩基は6.6mgになる。
【0177】
より簡潔な説明を提供するために、本明細書で与えられる量的表現のいくつかは、「約」という用語で修飾されていない。「約」という用語が明示的に使用されているかどうかにかかわらず、本明細書で与えられているすべての量は、実際の所与の値を指すことを意味し、それはまた、発明が属する技術分野の通常の知識に基づいて合理的に推論されるであろう所与の値への近似値を指すことを意味し、そのような所与の値の実験及び/又は測定条件による同等物及び近似値を含む。
【0178】
前述の開示は、本発明を作製及び使用する方法及びその最良の様式を含む、本発明の範囲内に包含される主題の一般的な説明を提供するが、以下の実施例は、当業者が本発明を実施し、その完全な書面による説明を提供することを更に可能にするために提供される。しかし、当業者は、これらの実施例の詳細が本発明を限定するものとして読まれるべきではなく、その範囲は、本開示に添付された特許請求の範囲及びその同等物から把握されるべきであることを理解するであろう。本発明の種々の更なる態様及び実施形態は、本開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
【実施例
【0179】
本発明の化合物は、文献、例えば、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる、Vera et al. Med. Res. Rev. 2002, 22(2), 102-145、WO2011/020913(特に実施例1~5を参照のこと)、WO02/02596、WO01/76616、及びWO2004/084812、に示されているプロセスに従って得ることができる。
【0180】
本発明の実験で使用される特定の化合物は
【0181】
【表1A】
【0182】
【表1B】
【0183】
である。
【0184】
WO02/02596及び明細書に記載され、前の実施例で更に開示された手順に従って、以下:
【0185】
【化10】
【0186】
の化合物が得られる
【0187】
【表2A】
【0188】
【表2B】
【0189】
【表2C】
【0190】
【表2D】
【0191】
【表2E】
【0192】
【表2F】
【0193】
WO02/02596及び明細書に記載され、前の実施例で更に開示された手順に従って、以下:
【0194】
【化11】
【0195】
の化合物が得られる
【0196】
【表3A】
【0197】
【表3B】
【0198】
【表3C】
【0199】
【表3D】
【0200】
【表3E】
【0201】
更なる化合物は化合物240であり、ジデムニンBとして知られ、以下の構造:
【0202】
【化12】
【0203】
で示される。
【0204】
(実施例1)
図1に示すように、PLDはインビトロでNF-κBのトランス活性化を阻害する。
【0205】
NFκBの転写活性が、プリチデプシンによって調節されているかどうかを確認した。そのために、NFκBルシフェラーゼレポータープラスミドを安定してトランスフェクトしたTHP-1細胞を利用した。100ng/mL TNFα(NF-κBの活性化因子)、500μg/mL ポリI:C(TLR3リガンド)、10μg/mL LPS-B5(TLR4リガンド)、又は10μg/mLレシキモド(TLR-7/8リガンド)により、細胞を処理した。化合物を単独で(図1A灰色のバー)、又は100nMのプリチデプシンと組み合わせて(図1A黒色のバー)6時間使用し、各条件下でルシフェラーゼ活性を定量化した。TLRリガンドのそれぞれの存在下で、プリチデプシンは、ルシフェラーゼの産生を明らかに阻害し、このことは、薬剤の存在下で、NF-κBからのトランス活性化が阻害されたことを示している。生存率を、MTTアッセイで分析した(図1B灰色のバー(活性剤)及び赤色のバー(100nMのプリチデプシンと組み合わせた活性剤))。細胞毒性効果は検出されなかった。
【0206】
図2に示すように、PLDはまた、ヒト単球における炎症誘発性サイトカインIL-1、IL-6、IL-8、及びTNF-αの分泌を、インビトロで阻害する。
【0207】
プリチデプシンがTLR誘発サイトカイン分泌を阻害するかどうかを調べるために、100ng/mL TNFα(NF-κBの活性化因子)、500μg/mL ポリI:C(TLR3リガンド)、10μg/mL LPS-B5(TLR4リガンド)、又は10μg/mLレシキモド(TLR-7/8リガンド)により、THP-1細胞を処理した。化合物を、単独で(灰色のバー)、又は100nMのプリチデプシンと組み合わせて(赤色のバー)6時間使用した。ELISAアッセイにより、異なる処理間の細胞培養上清中のサイトカイン分泌の変動を比較した。図2に見られるように、ポリI:C、LPS、及びレシキモドは、IL-1、IL-6、IL-8、及びTNF-αの分泌を誘導する。更に、プリチデプシンは、IL-1、IL-6、IL-8、及びTNF-αの産生を明らかに阻害した。TNF-αは、IL-1及びIL-6の分泌を増加させることができなかった。THP-1細胞は、これらのサイトカインを分泌するために他のTNF-α曝露時間を必要とする可能性がある。
【0208】
TLRリガンドのそれぞれの存在下で、プリチデプシンは、炎症誘発性サイトカインIL-1、IL-6、IL-8の分泌を明らかに阻害した。
【0209】
更なるインビトロ実験では、THP-1細胞に対するプリチデプシン(APL)前処理の効果を研究した。THP-1 NFκB luc株を使用して、1、10、又は50nMのAPL又はDMSO(0.2%)を、2.5又は5μg/mLのレシキモド(RQ)で刺激する8時間前に加えた。RQはTLR7/8アゴニストであり、ssRNAを模倣する。24時間でサイトカインのレベル又は細胞生存率を測定した。図13に示されるように、PLD前処理は、RQによって誘導される炎症誘発性サイトカイン:IL6、IL8、IL1β及びTNF-αの分泌を阻害した。注目すべきは、PLDの添加により、アッセイされた2つのRQ濃度のいずれにおいても、非処理対照よりも生存率は低下しない(図13e)。RQ自体がある程度の用量関連毒性を示すことは事実であるが、この効果は培養物中のPLDの存在によって増加することはなく、したがって、サイトカイン産生の変化はこのRQによって誘発されるわずかな細胞毒性とは無関係である。
【0210】
(実施例2)
図3に示すように、PLDは、BAL(気管支肺胞洗浄液)から単離されたマウスにおける炎症誘発性サイトカイン、IL-6、IL-8、及びTNF-αのエクスビボ分泌を阻害する。
【0211】
プリチデプシンが、肺胞マクロファージにおけるLPS誘発サイトカイン分泌を阻害するかどうかを確認した。その目的のために、マウスに、プリチデプシン(1mg/kg)又はビヒクルをi.v.注射し、投与から12時間後に気管支肺胞洗浄液(BAL)を収集した。細胞をプレーティングし、15μg/mLのLPS-B5を用いるか又は用いないで3時間又は6時間エクスビボで処理し、分泌されたサイトカインを測定した。LPSがIL-6、IL-10、及びTNF-αの分泌を誘導する(灰色のバー)ことが分かる。更に、プリチデプシンで処置した動物では、この薬物により、炎症誘発性サイトカインIL-6の産生、及びLPSによって誘導されるTNF-αの産生が明確に阻害され(赤いバー)、全体的な抗炎症効果がもたらされた。
【0212】
これは、図14にも示されている。プリチデプシンで処理された動物では、プリチデプシンは、気管支肺胞洗浄液から単離されたCD45+細胞において3時間目及び6時間目に、LPS-B5によって誘導されるIL-6、IL-10、及びTNFαの分泌が有意に減少させることができた。図14(a, b)に示されるように、この効果は細胞生存率とは無関係であった。
【0213】
更に、プリチデプシンが、BALFにおけるレシキモド(RQ)誘発性サイトカイン分泌を阻害するかどうかを確認した。レシキモドによる50μg/マウスの鼻腔内接種の1時間前に、マウスに、プリチデプシン(1mg/kg)又はビヒクルをi.v.注射した。RQの鼻腔内投与の1時間又は3時間後に、気管支肺胞洗浄液(BALF)を収集した。細胞をプレーティングし、分泌されたサイトカインを測定した。RQは投与後1時間目と3時間目の両方で、TNFαの分泌を誘導することが分かる。PLDのインビボ投与により、TNFαの産生の増加が防止された。図15に見ることができるように、RQは投与後1時間目と3時間目の両方で、TNFαの分泌を誘導する。PLDのインビボ投与により、TNFαの産生の増加が防止された。
【0214】
また、肺胞マクロファージ動員に対するプリチデプシンの効果も確認した。ウイルス感染はマクロファージの活性化にもつながる。活性化マクロファージは、静止型マクロファージの2倍のサイズで、より「攻撃的」であり、これによりリソソームタンパク質のレベルが増加し、貪食能力が高くなる。古典的な活性化マクロファージは、プロテアーゼ、好中球走化性因子、活性酸素種、及び炎症誘発性サイトカイン(IL-1ベータ/IL-1F2、IL-6、及びTNF-アルファ/TNFSF1A等)も放出し、炎症及び組織破壊を引き起こす。気管支肺胞洗浄細胞を染色し、フローサイトメトリーで分析した。プリチデプシンは、気管支肺胞洗浄液に存在するマクロファージのパーセンテージを、細胞毒性の影響を伴わずに減少させた。
【0215】
(実施例3)
図4に示すように、マウスに単回iv投与した後、PLDによりBALのマクロファージの数が減少する。
【0216】
プリチデプシンが急性炎症を伴う動物における肺胞マクロファージの割合を減少させるかどうかを調べるために、マウスを、プリチデプシン(1mg/kg)i.v.により、減菌生理食塩水中LPS(20μg/kg)i.pにより、又はLPS(20μg/kg、i.p.)と組み合わせたプリチデプシン(1mg/kg、i.v.)により、処理した。3時間後、気管支肺胞洗浄液を収集した。気管支肺胞洗浄細胞を遠心分離によって得て、フローサイトメトリーによって分析した(図4b)。上部パネルは、試料に存在するマクロファージ集団の分析戦略を示している。右下のパネルは、細胞のパーセンテージで表された同じ結果を示している。左下のパネルは、CD45+(白血球マーカー)生存細胞のパーセンテージを示している。見て分かるように、LPSは肺胞マクロファージの動員を誘導する。プリチデプシンによる処理により、気管支肺胞洗浄液に存在するマクロファージのパーセンテージが、細胞毒性の影響を伴わずに減少する。
【0217】
(実施例4)
図5に示すように、PLDは非臨床種の肺に分布している。加えて、同様の血漿曝露が、非臨床マウス(薬理学的モデルで使用される非臨床種)及び患者において達成される。
【0218】
マウス、ラット、及びハムスターの肺対血漿比(lungAUC0-∞/plasmaAUC0-∞として計算)は、それぞれ、133、460、及び909であり、肺におけるプリチデプシンの濃度は、どのサンプリング時間でも一貫して血漿中の濃度よりも高く、このように肺へのプリチデプシンの分布が確認される。
【0219】
【表4】
【0220】
材料及び方法
トランス活性化ルシフェラーゼアッセイ。
NF-κBトランス活性化は、Bright-Glo(商標)LuciferaseAssaySystemを、製造元の指示に従って使用してアッセイした。NF-κB-Lucプラスミド(4つのNF-κB結合部位、最小プロモーター及びルシフェラーゼ遺伝子を含有する)で安定的にトランスフェクトされたNF-κBレポーター(Luc)-THP-1ヒト単球細胞を、100ng/mL TNFα(陽性対照)、500μg/mLポリ(I:C)(ポリイノシン-ポリシチジル)、10μg/mL LPS-B5(大腸菌055:B5由来リポ多糖)又は10μg/mLレシキモドに曝露した。化合物を、単独で、又は100nM プリチデプシンと組み合わせて、6時間使用した。発光は、Perkin-Elmer EnVisionリーダーで測定した。MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)細胞増殖アッセイを同時に実施して、化合物の細胞毒性を制御した。細胞生存率を、対照細胞増殖のパーセンテージとして表した。提示されたデータは、3回実施された3つの独立した実験の平均である。
【0221】
分泌されたサイトカインのELISAアッセイ
THP1-NFκB-LUC細胞培養物を、上記のように処理し、培養培地を、処理後6時間でサンプリングして、分泌されたサイトカインをELISAによってアッセイした。培地試料を、4°Cで保存した。培養培地へのIL-8、IL-1β、IL-6、及びTNF タンパク質の分泌を、特異度及び感度の高いELISAキットを使用して定量化した。ヒトIL-1b、ヒトIL-6、ヒトIL-8、及びヒトTNF OptEIA(商標)ELISAキットを、BD Biosciences社から入手し、製造元の説明に従って実施した。提示されたデータは、3回実施された3つの独立した実験の平均である。
【0222】
MTTアッセイ
細胞を、96ウェルマイクロタイタープレートにプレーティングし、上記の処理前に37℃及び5%CO2で24時間静置した。6時間の連続処理後、MTTを、その着色反応生成物であるMTTホルマザンに変換したものを、溶解させて540nmでの吸光度を測定し、これにより細胞生存率を推定した。ここに提示されたデータは、3回実施された一連の3つの独立した実験からの代表的なものである。
【0223】
「インビボ」及び「エクスビボ」処置
マウスは、5匹の動物の群に無作為抽出され、処置を受けた。マウスに、プリチデプシン(1mg/kg)を静脈内(i.v.)注射し、投与の12時間後にマウスを安楽死させた。対照群は、生理食塩水で希釈したプリチデプシンビヒクル(Cremophor/エタノール/水)を受けた。各群の気管支肺胞洗浄液(BAL)を収集し、遠心分離して気管支肺胞洗浄細胞を得た。細胞を、赤血球溶解(Roche社)させ、細胞をプレーティングし、15μg/mLのLPS-B5を用いるか又は用いないで3時間又は6時間エクスビボで処理した。分泌されたサイトカインを、特異度及び感度の高いELISAキットを使用して定量化した。マウスIL-6、マウスIL-10、及びマウスTNF DuoSet ELISAキットを、R&D Systems社から入手し、製造元の説明に従って実施した。ここに提示されたデータは、一連の3つの独立した実験からの代表的なものである。
【0224】
動物の炎症モデル
マウスは、2匹の動物の群に無作為抽出され、処置を受けた。マウスを、プリチデプシン(1mg/kg)静脈内(i.v.)により、減菌生理食塩水中LPS(20μg/kg)静脈内(i.v.)により、又はLPS(20μg/kg、i.p.)と組み合わせたプリチデプシン(1mg/kg、i.v.)により、チャレンジした。対照群は、生理食塩水で希釈したプリチデプシンビヒクル(Cremophor/エタノール/水)を受けた。3時間後、動物を安楽死させ、気管支肺胞洗浄液を収集した(合計1.2ml、PBS)。気管支肺胞洗浄細胞を遠心分離によって得て、フローサイトメトリーによって分析した。ここに提示されたデータは、一連の3つの独立した実験からの代表的なものである。
【0225】
別の炎症モデルでは、マウスは、2匹の動物の群に無作為抽出され、処置を受けた。マウスにプリチデプシン(1mg/kg)静脈内(iv)により、1時間後にレシキモド(50μg/マウス、鼻腔内)により、チャレンジした。対照群は、生理食塩水で希釈したプリチデプシンビヒクル(Cremophor/エタノール/水)を受けた。1時間後及び3時間後、動物を安楽死させ、気管支肺胞洗浄液を収集し(合計1.2ml、PBS)、次いで、ELISAキットによってTNFαを定量化した。ここに提示されたデータは、一連の3つの独立した実験からの代表的なものである。
【0226】
フローサイトメトリーによるマクロファージの分析。
気管支肺胞洗浄細胞を、抗F4/80-BV510、CD45-APC700、CD11b-BV650、CD11c-APC-Fire、CD24-PC7、及びLy6C-BV605モノクローナル抗体(Biolegend社)及びLIVE/DEAD(商標)Fixable Green Dead Cell染色キット、488nm励起用(Thermofisher社)で染色した。マクロファージ(F4/80+)を、生存免疫細胞(CD45+ LIVE/DEAD色素)でゲートし、肺胞マクロファージ(F4/80+CD24-)を、生存免疫細胞からのCD11c+CD11b-集団で特異的にゲートした。アイソタイプ対照及びコンペンセーション(compensation)ビーズを使用して、コンペンセーション及びゲーティング戦略を設定した。
【0227】
(実施例5)
ここでの目的は、マウス適応型A/H1N1インフルエンザウイルス感染(A/PuertoRico/8/34)によって引き起こされる重度の肺炎の処置におけるプリチデプシンの効果、及びウイルス力価レベルに対するプリチデプシンの効果をインビボで評価することであった。
【0228】
実験設定:この目的を達成するために、高用量のPR8インフルエンザウイルス(2x105pfu)の投与に基づき、肺に重度の感染が生じたウイルス病因のインビボモデルを採用した。次に、マウスの重度のインフルエンザウイルス感染に対するプリチデプシンの治療効果を評価した。ケタミン-キシラジン溶液の腹腔内注射により、9週齢の雌型マウスを麻酔にかけ、鼻孔当たり20μlのPBSウイルス溶液の鼻腔内投与により感染を実施した。
【0229】
処置を受けたマウスには、0.3mg/kg又は0.15mg/kgのプリチデプシンを皮下注射した。その後に、生存及び体重減少を感染後3日目まで監視した。処置期間中、死亡マウス又は開始体重の30%を超える体重減少を伴うマウスは、記録されなかった。
【0230】
気道におけるインフルエンザ感染の制御は、気管支肺胞洗浄液(BALF)における炎症の増強によって媒介される図6は、プリチデプシンによる処置を伴うか又は伴わない感染マウスのBALFにおける炎症プロファイルを示す。主な炎症誘発性サイトカインの中で、プリチデプシンは、IL-6、CCL2、IL-1α、IFN-γ、及びTNF-αのレベルを大幅に低下させた。半量の薬物しか受けていなかったマウスは、防御力が低く、中間表現型を示した。
【0231】
肺のウイルス力価も評価した。図7に示すように、プリチデプシンは、0.3mg/kgと0.15mg/kgの両方において、肺のウイルス力価を低下させた。
【0232】
BALF細胞組成は、肺免疫応答ウイルス感染のマーカーとして定義される。炎症性サイトカインレベルと相関する浸潤細胞の定量的測定を、インフルエンザ感染マウスで評価した。プリチデプシンによる処置は、BALFの総細胞組成を減少させなかった(CD45+x106)。図8に示すように、肺胞マクロファージ(AM)浸潤の増加も見られ、AMがウイルスクリアランスの要因であることを示唆している。
【0233】
全体として、これらの結果によって、インフルエンザ感染マウスにおけるプリチデプシンの(総用量0.9mg/kgの)3回のその後の投与により、処置による初期の炎症誘発性サイトカインの減少によって示されるように、炎症を積極的に軽減することができることが確認された。加えて、肺胞マクロファージの絶対数の増加が検出され、これは、AMがウイルスの拡散及び保護に重要な役割を果たしていることを示唆している可能性がある。また、プリチデプシン高用量処置マウスの肺において、ウイルス力価の低下が見られた。
【0234】
(実施例6)
この実施例では、細胞培養における西ナイルウイルスの拡散に対するプリチデプシンの抗ウイルス活性を研究した。
【0235】
(a)ヒト肝癌細胞(Huh7)及びアフリカミドリザル腎臓細胞(Vero-E6)における組換えウイルスWNV-GFP(系統2;分子クローンWN956)。
WNV-GFPに対するプリチデプシンの抗ウイルス能を測定するために、標的細胞株Vero-E6及びHuh7に、感染性ウイルスストック希釈液を接種し、2.3pM又は2.5pg/mlから開始してプリチデプシンの濃度を増加させながら、最高濃度として4.5μM又は5μg/mlを使用した。ビヒクル処理培養物中の標的細胞のかなりの部分にウイルスが広がった後、感染効率を48時間目に評価した。
【0236】
相対感染効率を、緑色チャネルで自動蛍光顕微鏡によって評価し、細胞バイオマス全体/ウェルを、化合物の有効用量及び化合物全体の細胞毒性の予備評価として、青色チャネルでDAPIを使用した核染色により推定した。
【0237】
図9に示すように、WNV-GFP感染効率は、VeroE6細胞では約5nMの用量で急速に低下し、36nM以上でバックグラウンド蛍光レベルに達した。細胞数は36nMまで変化しなかったが、高濃度では有意に減少し(180nM;p<0.05)、プリチデプシンが36nMを超える濃度で細胞複製能力を妨害することを示唆している。VeroE6細胞におけるプリチデプシンの推定EC50値は4.9nMであり、EC90は9.5nMである。細胞バイオマスに基づくと、CC50値は2330nMである。したがって、VeroE6細胞のCC50/EC50比として表される治療指数は475である。
【0238】
図10に示すように、Huh7細胞では、感染効率が用量依存的に低下し、EC50及びEC90値はそれぞれ0.665及び3.86nMである。この低下は、ウェル内の細胞バイオマスの並行損失と関連しており、7.2nM(p<0.05)で統計的に有意であり、CC50値は14.7、治療指数は22である。
【0239】
上記のデータは、Vero-E6細胞とHuh-7細胞の両方の細胞培養感染モデルにおいて、プリチデプシンが、WNV-GFPの伝播を妨害することを示している。一例では、細胞生存率に対する測定可能な妨害がない場合の抗ウイルス活性は、Huh-7細胞では1.5nM(p<0.05)、Vero-E6細胞では7.2nM(p<0.05)で観察され得る。
【0240】
(b)Huh7ヒト肝癌細胞及びアフリカミドリザル腎臓細胞(Vero-E6)における野生型WNV-NY99ゲノム(系統1;分子クローンNY99)を含む組換えウイルス。
本実施例では、感染効率の読み出しとしてウイルスRNA量を使用して、WNV-NY99伝播に対するプリチデプシンの影響を評価した。Vero-E6又はHuh-7細胞に、NY99WNV株に基づく組換えウイルスを接種した(MOI0.01)。感染を、ビヒクルの存在下、又はWNV-GFPモデルにおける生物活性を示す用量範囲のプリチデプシン(45、15、5、1.5nM、上記を参照のこと)の存在下で実施した。接種した細胞を48時間インキュベートし、その時点で上清の試料を処理して、細胞外感染力価測定(infectivity titration)によって感染効率を決定した。更に、対照及びプリチデプシン処理細胞から全RNAを抽出して、ウイルスRNA量を決定し、ウイルス全体の感染効率を個別に評価した。
【0241】
細胞外感染力価は、図11に示されるように、プリチデプシンの存在がWNV増殖を強く妨害し、VeroE6及びHuh-7細胞において45nMで>3桁減少したことを示している。この現象は、両方の細胞株において、用量依存的である。
【0242】
細胞内WNV RNA量を、対照及びプリチデプシン処理細胞においてRT-qPCRによって決定した。驚くべきことに、図12に示すように、45nMプリチデプシンで処理したHuh-7細胞からはRNAを回収することができなかった。それにもかかわらず、ウイルスRNA量を、両方の細胞株の残りの試料群において決定した。細胞外感染力価によって示された傾向と一致して、Vero-E6細胞では15nM及び45nMで、ウイルスRNA量が用量依存的に有意に減少したが、5nM及び1.5nMでのウイルス量は対照のものと区別できなかった。(図12)。同様に、Huh-7は、15nMでウイルス量の顕著な減少を示し、その規模は用量依存的に減少した。
【0243】
WNV感染伝播効率データは、Vero-E6細胞とHuh-7細胞の両方において、プリチデプシンは、5nMを超える用量でウイルス複製を妨害するが、Huh-7細胞では低濃度である程度の妨害が観察される可能性があることを示唆している。機能(感染性)アプローチ及び分子(RT-qPCR)アプローチを使用して伝播効率全体を測定した結果では、WNV-GFPで得られたデータに基づいて、プリチデプシンが予想される濃度範囲でウイルス伝播効率を低下させることが確認される。
【0244】
要約すると、プリチデプシンの用量を増加させて細胞培養培地を補充すると、2つの感染(WNV-GFP及びWNV/NY99)モデルにおいて、及びVero-E6細胞とHuh-7細胞の両方において、WNVの伝播効率が大幅に低下した。
【0245】
(c)方法
化合物の調製:あらかじめ秤量した固体を、ジメチルスルホキシド(DMSO)で最終1mg/ml溶液に希釈し、更に使用するまで-20℃で等分した。細胞培養:サブコンフルエントなVero-E6細胞及びHuh-7細胞培養物を、完全培地[(10mM HEPES、1x非必須アミノ酸(Gibco社)、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco社)及び10%ウシ胎児血清(56℃で30分間熱不活化)で補充されたDMEM]にて維持した。
【0246】
ウイルス:WNV(NY99)及びWNV-GFP組換えウイルスを、前述のようにクローン化cDNAからレスキューした。ストック感染力価を、以前に記載されたように、Vero-E6細胞でのプラークアッセイによって決定した。
【0247】
パート1:WNV-GFPモデル
感染実験:細胞を、96ウェルプレートに播種した(2×104細胞/ウェル)。翌日、プリチデプシンの連続5倍希釈物を2%FCS含有完全培地で調製して、示された最終濃度を達成した。WNV-GFPストックを、2%FCSを含有する完全培地で希釈して、必要な感染多重度(MOI0.01)を達成した。化合物とウイルスの希釈液を1:1で混合し、標的細胞に加えた。細胞を、37℃;5%CO2及び湿度95%で、48時間インキュベートした。
【0248】
細胞を、室温で30分間、4%の最終濃度を達成するために、5Xホルムアルデヒド溶液の添加によって固定した。細胞をPBSで洗浄し、製造元の推奨に従ってDAPI(4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)で染色した。相対感染効率を、自動顕微鏡装置(Tecan Spark Cyto)での画像解析によって推定した。非感染細胞及びビヒクル処理対照を、各プレートに含めた。
【0249】
パート2:WNV(NY99)モデル
1.2×105細胞/ウェルを使用して、細胞を24ウェルプレートに播種した。翌日、細胞にWNV/NY99ストックを接種して、感染多重度0.01(MOI 0.01)及び最終体積1ml中の示されたプリチデプシン濃度を達成した。培養物を37℃にて48時間維持し、その時点で上清を収集して-80℃にて保存した。TrizolTM試薬を細胞に直接加え、製造元の指示に従って、細胞から全RNAを収集した。
【0250】
感染力価測定:感染力価を、終点希釈及びフラビウイルスEタンパク質に対するモノクローナル抗体(4G2;ATCC(登録商標)HB-112(商標))を使用した免疫蛍光顕微鏡法を使用して決定した。要約すると、Huh-7細胞に96ウェル形式の上清希釈物を接種した。感染後48時間目に、細胞をPBS中の4%ホルムアルデヒド溶液で室温にて30分間固定し、PBSで2回洗浄し、結合バッファー(PBS中の0.3%Triton×100、3%BSA)を用いて1時間インキュベートした。一次抗体を、結合バッファーで希釈し、細胞と1時間インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄し、続いてAlexa488(ThermoFisher)にコンジュゲートしたヤギ抗マウスの1:500希釈液とインキュベートした。細胞数を評価するための核染色試薬として、DAPI(4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール;ThermoFisher社)を使用した。細胞をPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡下で感染病巣数を判定した。
【0251】
逆転写及びqPCR:60ngの全細胞RNAを、製造元の推奨事項及びプライマーを使用して、NZYSpeedy One-Step qPCRプローブマスターミックスを使用してRT-qPCRにかけた。
【0252】
統計分析:Excelを使用して、平均値及びSEMを計算した。平均値を、一元配置ANOVA及びIBM-SPSSを使用したダネットの事後検定(両側;アルファ=0.05)を使用して比較した。
【0253】
(実施例7)
【0254】
図16は、1.0mg及び2.0mgの1日用量(D1~D5)後の総血漿プリチデプシン濃度プロファイル対時間のシミュレーションを示す。水平の黒い線は、インビトロでの例示的なIC50、IC90、及び3xIC90値に相当する肺内濃度に関連する総血漿濃度を表す。更なる投薬レジメンは、5日間、1日1.5mgである。更なるレジメンを図17に示し、これは、1時間のi.v.注入として与えられる1mg(1日目)の初期固定用量、その後、1日0.5mgの用量(D2~D5)に関連するプリチデプシンの総血漿濃度をシミュレートしている。
【0255】
図18は、1.5mg、2.0mg及び2.5mgの1日用量(D1~D3)後の総血漿プリチデプシン濃度プロファイル対時間のシミュレーションを示す。水平の黒い線は、インビトロでの例示的なIC50、IC90、及び3xIC90値に相当する肺内濃度に関連する総血漿濃度を表す。
【0256】
図19は、単回投与での総血漿濃度を確認するための、検証済みのプリチデプシン集団薬物動態モデル(Nalda-Molina Rら、Population pharmacokinetics meta-analysis of plitidepsin (Aplidin) in cancer subjects. Cancer Chemother Pharmacol。2009年6月;64(1):97-108. doi: 10.1007/s00280-008-0841-4)を示す。
【0257】
(参考文献)
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13(a)】
図13(b)】
図13(c)】
図13(d)】
図13(e)】
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】