(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】自己免疫状態に使用するための化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 11/02 20060101AFI20230418BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230418BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230418BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230418BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230418BHJP
A61K 38/15 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C07K11/02
A61P37/02
A61P19/02
A61P25/00
A61P17/00
A61P9/00
A61P3/10
A61P9/10
A61K38/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552947
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2021055142
(87)【国際公開番号】W WO2021175829
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトに公開された「PharmaMar reports positive results for Aplidin▲R▼ against coronavirus HCoV-229E」 (2)ウェブサイトに公開された「Communication to National Securities Market Commission(Registration No.82)」 (3)ウェブサイトに公開された「Communication to National Securities Market Commission(Registration No.90)」 (4)ウェブサイトに公開された「PharmaMar has submitted a Phase II clinical trial of Aplidin▲R▼(plitidepsin)for the treatment of COVID-19 to the Spanish Medicines Agency」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (5)ウェブサイトに公開された「Boryung Pharmaceutical,PharmaMar’s partner in South Korea,announces superior potent results for plitidepsin(Aplidin▲R▼)against SARS-CoV-2」 (6)ウェブサイトに公開された「PharmaMar has announced that the Spanish Medicines Agency has authorized the APLICOV-PC clinical trial with Aplidin▲R▼(plitidepsin)for the treatment of patients with COVID-19」 (7)データーベース上で公開された「APL-D-002-20 Estudio para evaluar el perfil de seguridad de plitidepsina en pacientes con COVID-19 que precisen ingreso hospitalario」と称する臨床試験の情報 (8)ウェブサイトに公開された「communication to National Securities Market Commission(Registration No.188)」 (9)データーベース上で公開された「clinical Trials Study:NCT04382066.Proof of Concept Study to Evaluate the Safety Profile of Plitidepsin in Patients With COVID-19(APLICOV-PC)」と称する臨床試験の情報
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (10)Nature Biotechnology|VOL 38| June 2020|655-664に公開された「Drug researchers pursue new lines of attack against COVID-19」 (11)Nat.Prod.Rep.,2020,37,752に公開された「Natural products targeting the elongation phase of eukaryotic protein biosynthesis」 (12)Natural Product Reports(2020),37(6),744-746に公開された「Targeting and extending the eukaryotic druggable genome with natural products」 (13)ウェブサイトに公開された「Boryung finds cancer drug has antiviral effect on Covid-19」 (14)ウェブサイトに公開された「Boryung has announced superior potent results for Aplidin▲R▼ against SARS-CoV-2」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (15)ウェブサイトに公開された「Boryung Pharmaceutical,PharmaMar’s partner in South Korea,presents the in vitro study results of plitidepsin(Aplidin▲R▼)on SARS-CoV-2」 (16)Mol.Inf.2021,40,2000115に公開された「Insilico Drug Repurposing for COVID-19 Targeting SARS CoV-2 Proteins through Docking and Consensus Ranking」 (17)ウェブサイトに公開された「Boryung Pharmaceutical Designates Orphan Drug for Small Cell Lung Cancer New Drug’Lurbinectedin’」 (18)European Journal of Cancer 141(2020)40-61に公開された「Repurposing anticancer drugs for the management of COVID-19」 (19)Viruses(2020),12(10),1092に公開された「Potential Anti-SARS-CoV-2 Therapeutics That Target the Post-Entry Stages of the Viral Life Cycle: A Comprehensive Review」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (20)Nature Cancer,(1 Oct 2020)Vol.1,No.10,pp.946-964に公開された「The immuno-oncological challenge of COVID-19」 (21)ウェブサイトに公開された「Repurposing of clinically-approved drugs for the treatment of COVID-19」 (22)ウェブサイトに公開された「PharmaMar announces positive results of its APLICOV trial against COVID-19」 (23)ウェブサイトに公開された「Communication to National Securities Market Commission(Registration No.496)」 (24)ウェブサイトに公開された「Preclinical search of SARS-CoV-2 inhibitors and their combinations within approved drugs to tackle COVID-19 pandemia」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (25)Frontiers in Pharmacology,(6 Nov 2020)Vol.11.arn.588654に公開された「Challenges for Drug Repurposing in the COVID-19 Pandemic Era」 (26)ウェブサイトに公開された「Communication to National Securities Market Commission(Registration No.565)」 (27)ウェブサイトに公開された「Marine-Derived Secondary Metabolites as Promising Epigenetic Bio-Compounds for Anticancer Therapy」 (28)ウェブサイトに公開された「Identification of Plitidepsin as Potent Inhibitor of SARS-CoV-2-Induced Cytopathic Effect after a Drug Repurposing Screen」 (29)Science,Vol.371,No.6532,pp.926-931に公開された「Plitidepsin has potent preclinical efficacy against SARS-CoV-2 by targeting the host protein eEF1A」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (30)ウェブサイトに公開された「The Peer Review journal Science confirms the potent activity of PharmaMar’s plitidepsin against SARS-CoV-2」 (31)CEN.ACS.ORG|FEBRUARY 1,2021に公開された「Plitidepsin could fight COVID-19」 (32)ウェブサイトに公開された「Host-directed therapies against early-lineage SARS-CoV-2 retain efficacy against B.1.1.7 variant」 (33)ウェブサイトに公開された「Plitidepsin:a Repurposed Drug for the Treatment of COVID-19」 (34)Molecules(2021),26(4),936に公開された「Field-Template,QSAR,Ensemble Molecular Docking,and 3D-RISM Solvation Studies Expose Potential of FDA-Approved Marine Drugs as SARS-CoVID-2 Main Protease Inhibitors」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (35)Marine Drugs(2021),19(2),104に公開された「New hopes for drugs against COVID-19 come from the sea」 (36)ウェブサイトに公開された「UK approves the initiation of the Phase III NEPTUNO clinical trial with PharmaMar’s Aplidin▲R▼(plitidepsin)for the treatment of patients with COVID-19」 (37)ウェブサイトに公開された「Drug Repurposing in the COVID-19 Era: Insights from Case Studies Showing Pharmaceutical Peculiarities」 (38)Science,2021,Vol.371,Issue 6532,pp.884-885に公開された「SARS-CoV-2 dependence on host pathways」
(71)【出願人】
【識別番号】505404208
【氏名又は名称】ファルマ、マール、ソシエダード、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】PHARMA MAR,S.A.
【住所又は居所原語表記】Poligono Industrial La Mina,Avda.de los Reyes,1,Colmenar Viejo,E-28770 Madrid,SPAIN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パブロ・アヴィレス・マリン
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドロ・ロサーダ・ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・マリア・フェルナンデス・ソウサ-ファロ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA16
4C084BA17
4C084BA27
4C084CA51
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA36
4C084ZA45
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB15
4C084ZC35
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA33
4H045EA22
(57)【要約】
本発明は、自己免疫状態の処置、特に関節リウマチの処置における化合物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫状態の処置に使用するための、一般式I
【化1】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体。
(式中、Xは、O及びNHから選択され;
Yは、CO及び-COCH(CH
3)CO-から選択され;
各n及びpは、0及び1から独立して選択され、qは0、1及び2から選択され;
各R
1、R
3、R
5、R
9、R
11、及びR
15は、水素、置換又は非置換C
1~C
6アルキル、置換又は非置換C
2~C
6アルケニル、及び置換又は非置換C
2~C
6アルキニルから独立して選択され;
R
2は、水素、COR
a、COOR
a、置換又は非置換C
1~C
6アルキル、置換又は非置換C
2~C
6アルケニル、及び置換又は非置換C
2~C
6アルキニルから選択され;
各R
4、R
8、R
10、R
12、及びR
16は、水素及び置換又は非置換C
1~C
6アルキルから独立して選択され;
各R
7及びR
13は、水素、置換若しくは非置換C
1~C
6アルキル、置換若しくは非置換C
2~C
6アルケニル、及び置換若しくは非置換C
2~C
6アルキニルから独立して選択され;各R
6及びR
14は、水素及び置換若しくは非置換C
1~C
6アルキルから独立して選択され;又はR
6及びR
7及び/若しくはR
13及びR
14は、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換若しくは非置換複素環式基を形成することができ;
R
17は、水素、COR
a、COOR
a、CONHR
b、COSR
c、(C=NR
b)OR
a、(C=NR
b)NHR
b、(C=NR
b)SR
c、(C=S)OR
a、(C=S)NHR
b、(C=S)SR
c、SO
2R
c、SO
3R
c、置換又は非置換C
1~C
12アルキル、置換又は非置換C
2~C
12アルケニル、置換又は非置換C
2~C
12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から選択され、ただし、n、p、及びqが0の場合、R
17は水素ではなく;
各R
a、R
b、及びR
cは、水素、置換又は非置換C
1~C
12アルキル、置換又は非置換C
2~C
12アルケニル、置換又は非置換C
2~C
12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される)
【請求項2】
前記自己免疫状態が、1つ又は複数のToll様受容体(TLR)の活性化によって引き起こされる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記自己免疫状態が、少なくとも1つ又は複数のToll様受容体(TLR)を介したシグナル伝達の増加を特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記自己免疫状態が、少なくとも1つの炎症誘発性サイトカインのレベルの増加を特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記自己免疫状態が、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、強皮症、シェーグレン症候群、自己免疫性心筋炎、1型糖尿病、及びアテローム性動脈硬化症から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記自己免疫状態がRAである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R
3及びR
4が、水素及び置換又は非置換C
1~C
6アルキルから独立して選択され;好ましくは、R
3がイソプロピルであり、R
4が水素である、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R
3及びR
4が、メチルである、一般式IIの請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R
11が、水素及び置換又は非置換C
1~C
6アルキルから選択され;好ましくは、R
11が、メチル又はイソブチルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R
11が、メチルであり、n=1である、一般式IIIの、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
R
1、R
5、R
9、及びR
15が、水素及び置換又は非置換C
1~C
6アルキルから独立して選択され;好ましくは、R
1が、sec-ブチル及びイソプロピルから選択され、R
5が、イソブチルであり、R
9が、p-メトキシベンジルであり、R
15が、メチル及びベンジルから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R
8、R
10、R
12、及びR
16が、水素及び置換又は非置換C
1~C
6アルキルから独立して選択され;好ましくは、R
8、R
10、及びR
12がメチルであり、R
16が水素である、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
R
6及びR
14が、水素及び置換又は非置換C
1~C
6アルキルから独立して選択され;好ましくは、R
6が水素及びメチルから選択され、R
14が水素である、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
R
7及びR
13が、水素及び置換又は非置換C
1~C
6アルキルから独立して選択され;好ましくは、R
7が、メチルであり、R
13が、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、及び3-アミノ-3-オキソプロピルから選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
R
6及びR
7及び/又はR
13及びR
14が、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換又は非置換ピロリジン基を形成する、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
R
2が、水素、置換又は非置換C
1~C
6アルキル、及びCOR
aから選択され、R
aが、置換又は非置換C
1~C
6アルキルであり;好ましくは、R
2が、水素である、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
R
17が、水素、COR
a、COOR
a、CONHR
b、(C=S)NHR
b、及びSO
2R
cから選択され、各R
a、R
b、及びR
cが、置換又は非置換C
1~C
6アルキル、置換又は非置換C
2~C
6アルケニル、置換又は非置換C
2~C
6アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択され;好ましくは、R
17が、水素、COOベンジル、COベンゾ[b]チオフェン-2-イル、SO
2(p-メチルフェニル)、COCOCH
3及びCOOC(CH
3)
3から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
XがNHである、請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
XがOである、請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
YがCOである、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
Yが-COCH(CH
3)CO-である、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
以下の構造:
【化2A】
【化2B】
又は
【化3】
を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体。
【請求項23】
前記化合物が、PLD又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物が、ジデムニンB又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
PLDである、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
ジデムニンBである、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体、及び薬学的に許容される担体を含む、自己免疫状態の処置に使用するための医薬組成物。
【請求項28】
自己免疫状態の処置のための医薬の製造における、請求項1から26のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体の使用。
【請求項29】
自己免疫状態の処置のための方法であって、請求項1から26のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体の治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法。
【請求項30】
請求項1から26のいずれか一項に記載の化合物を、自己免疫状態を処置するための使用説明書と共に含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫状態の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫状態は、Toll様受容体(TLR)経路の活性化に関与する慢性炎症を特徴とする。この経路では、損傷、感染、ストレス、低酸素症又は細胞死によって誘発される有害な刺激がすべて組織損傷を引き起こし、内因性TLRリガンド又は「自己抗原」の放出をもたらす。このような内因性TLRリガンドが自己免疫中にどのように生成されて炎症を引き起こすかについては複数の仮説があり、これらのプロセスの多く又はすべてが自己免疫疾患中に発生している可能性がある。
【0003】
1つの仮説は、通常は細胞内にあるため免疫系が認識できない抗原が、高レベルのアポトーシスにより細胞の膜に蓄積し、免疫系が認識できるになり、TLRリガンドとして作用する可能性があるというものである。別の仮説は、TLRリガンドとして作用することを含む免疫応答を誘導することができるネオエピトープが生成される場合があるというものである。ネオエピトープは、酵素的切断、翻訳後修飾、又は他の構造修飾による既存の分子の修飾によって生成される場合がある。これらの変化は、環境要因によって、又はインビボ変化によって、例えばアポトーシスによるグランザイムB活性の増加等、酵素活性の調節不全によって誘発される場合がある。
【0004】
DAMP(ダメージ関連分子パターン)としても知られるこれらのリガンドは、Toll様受容体(ヒトには10のサブタイプがあり、TLR1~10と呼ばれる)に結合し、炎症反応で最高潮に達するシグナル伝達カスケードの活性化をもたらす。内因性TLRリガンドは、少なくともTLR2、3、4、5、7、8、9、及び11に対して同定されており、多くの自己免疫疾患に関連している。加えて、既知のTLRリガンドである微生物産物も、自己免疫疾患に罹患している患者に見られ、内因性TLRリガンドに加えて、TLRシグナル伝達カスケードを駆動することができる。
【0005】
そのような1つのシグナル伝達カスケードにより、炎症の極めて重要なレギュレーターであり、炎症誘発性遺伝子誘導の中心的なメディエーターであり、したがって自己免疫病理の重要な原動力であるカノニカルなNF-κB経路が活性化される。
【0006】
NF-κB経路では、内因性リガンドのTLRへの結合が、受容体の二量体化を誘導する。下流では、TLRは、さまざまなシグナル伝達経路を媒介する一連のアダプタータンパク質と相互作用することができる。ミエロイド系分化一次応答タンパク質(Myeloid differentiation primary response protein)88(MyD88)は、最も広く利用されているTLRアダプタータンパク質であり、すべてのTLRを介してシグナル伝達を媒介する。MyD88は、スレオニン-セリンキナーゼインターロイキン(IL)-1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)と相互作用し、活性化されるとIRAK1をリン酸化する。その後、IRAKはユビキチンリガーゼである腫瘍壊死因子受容体関連因子6(TRAF-6)を動員し、TAK1キナーゼをポリユビキチン化して活性化する。TAK1キナーゼは、核因子κB(NF-κB)の阻害剤である阻害剤κB(I-κB)のタンパク質分解を誘発するIKK複合体を活性化し、これは、NF-κBの核局在化シグナルを明らかにし、これにより、細胞質から核へのこの転写複合体の移行、並びに適応免疫応答の活性化に必要な炎症誘発性サイトカイン及び共刺激分子をコードする遺伝子を含む、多種多様なNF-κB応答性遺伝子の活性化が可能になる。
【0007】
このように、NF-κB伝達の活性化は、さまざまなタイプの免疫細胞における炎症誘発性サイトカイン、ケモカイン、及び追加の炎症性メディエーターの転写誘導に関与している。これらの炎症性メディエーターは、炎症の誘導に直接関与することも、炎症性T細胞の分化を促進することによって間接的に作用することもできる。このように、TLRシグナル伝達の活性化又は調節不全は、自己免疫状態の病因の中心となる慢性炎症を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2011/020913
【特許文献2】WO02/02596
【特許文献3】WO01/76616
【特許文献4】WO2004/084812
【特許文献5】WO9942125
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Veraら、Med. Res. Rev. 2002年22(2), 102~145頁
【非特許文献2】E.W.Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」、1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、現在、罹患した大部分の患者において処置不可能である自己免疫状態を処置するための新しい治療法を開発する必要性が存在する。特に、TLRの活性化を停止するか、又はTLRの活性化から生じる自己免疫状態等の病状を予防することができる治療法を開発する必要がある。本発明は、これらの必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、本発明は、自己免疫状態の処置に使用するための、
一般式I
【0012】
【0013】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を対象とする。
(式中、Xは、O及びNHから選択され;
Yは、CO及び-COCH(CH3)CO-から選択され;
各n及びpは、0及び1から独立して選択され、qは0、1及び2から選択され;
各R1、R3、R5、R9、R11、及びR15は、水素、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、及び置換又は非置換C2~C6アルキニルから独立して選択され;
R2は、水素、CORa、COORa、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、及び置換又は非置換C2~C6アルキニルから選択され;
各R4、R8、R10、R12、及びR16は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;
各R7及びR13は、水素、置換若しくは非置換C1~C6アルキル、置換若しくは非置換C2~C6アルケニル、及び置換若しくは非置換C2~C6アルキニルから独立して選択され;各R6及びR14は、水素及び置換若しくは非置換C1~C6アルキルから独立して選択され;又はR6及びR7及び/若しくはR13及びR14は、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換若しくは非置換複素環式基を形成することができ;
R17は、水素、CORa、COORa、CONHRb、COSRc、(C=NRb)ORa、(C=NRb)NHRb、(C=NRb)SRc、(C=S)ORa、(C=S)NHRb、(C=S)SRc、SO2Rc、SO3Rc、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から選択され、ただし、n、p、及びqが0の場合、R17は水素ではなく;
各Ra、Rb、及びRcは、水素、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される)
【0014】
特定の態様では、一般式Iの化合物は、PLD、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である。
【0015】
別の態様では、本発明は、ジデムニンB、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を対象とする。
【0016】
別の態様では、本発明はまた、本明細書で定義される化合物及び薬学的に許容される担体を含む、本発明による使用のための医薬組成物に関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、自己免疫状態の処置のための医薬の製造における、本明細書で定義される化合物の使用に関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、自己免疫状態のための任意の哺乳動物、好ましくはヒトを処置する方法であって、本明細書で定義される化合物の治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法に関する。
【0019】
実施形態では、自己免疫状態は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、強皮症、シェーグレン症候群、自己免疫性心筋炎、1型糖尿病、及びアテローム性動脈硬化症から選択される。好ましい実施形態では、自己免疫状態はRAである。
【0020】
本発明の更なる態様では、自己免疫状態を処置するための使用説明書と共に、本明細書で定義される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を含むキットを提供する。
【0021】
以下の実施形態は、本発明のすべての態様に適用される。
【0022】
自己免疫状態は、1つ又は複数のToll様受容体(TLR)の活性化によって引き起こされる場合がある。
【0023】
自己免疫状態は、少なくとも1つ又は複数のToll様受容体(TLR)を介したシグナル伝達の増加を特徴とし得る。
【0024】
自己免疫状態は、少なくとも1つの炎症誘発性サイトカインのレベルの増加を特徴とし得る。
【0025】
自己免疫状態は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、強皮症、シェーグレン症候群、自己免疫性心筋炎、1型糖尿病、及びアテローム性動脈硬化症から選択することができる。好ましい実施形態では、自己免疫状態はRAである。
【0026】
R3及びR4は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択してもよい。R3はイソプロピルであってもよく、R4は水素であってもよい。R3及びR4は、メチルであってもよい(この化合物は一般式IIの化合物とも呼ばれる)。
【0027】
R11は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから選択してもよい。R11は、メチル又はイソブチルであってもよい。R11は、メチルであり、n=1であってもよい(この化合物は一般式IIIの化合物とも呼ばれる)。
【0028】
R1、R5、R9、及びR15は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択してもよい。R1は、sec-ブチル及びイソプロピルから選択してもよく、R5はイソブチルであってもよく、R9はp-メトキシベンジルであってもよく、R15はメチル及びベンジルから選択してもよい。
【0029】
R8、R10、R12、及びR16は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択してもよい。R8、R10、及びR12は、メチルであってもよく、R16は、水素であってもよい。
【0030】
R6及びR14は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択してもよい。R6は、水素及びメチルから選択してもよく、R14は、水素であってもよい。
【0031】
R7及びR13は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択してもよい。R7は、メチルであってもよく、R13は、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、及び3-アミノ-3-オキソプロピルから選択してもよい。
【0032】
R6及びR7及び/又はR13及びR14は、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換又は非置換ピロリジン基を形成することができる。
【0033】
R2は、水素、置換若しくは非置換C1~C6アルキル、及びCORaから選択してもよく、Raは、置換又は非置換C1~C6アルキルであってもよい。R2は水素であってもよい。
【0034】
R17は、水素、CORa、COORa、CONHRb、(C=S)NHRb、及びSO2Rcから選択してもよく、各Ra、Rb、及びRcは、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、置換又は非置換C2~C6アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択してもよい。R17は、水素、COOベンジル、COベンゾ[b]チオフェン-2-イル、SO2(p-メチルフェニル)、COCOCH3及びCOOC(CH3)3から選択してもよい。
【0035】
Xは、NHであってもよい。Xは、Oであってもよい。Yは、COであってもよい。Yは、-COCH(CH3)CO-であってもよい。
【0036】
化合物は、PLD、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体であり得る。化合物は、PLDであり得る。
【0037】
化合物は、ジデムニンB、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体であり得る。化合物は、ジデムニンBであり得る。
【0038】
本発明はまた、以下の非限定的な図で更に説明される:
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】Toll様受容体の活性化に応答したNF-κBトランス活性化が、PLDによって阻害されることを示す。ヒト単球細胞(THP-1)にNF-κB-Lucプラスミドを安定的にトランスフェクトし、(A)PLDの存在下及び非存在下で測定されたNF-κBトランス活性化のレベル。(B)MTT細胞増殖アッセイにより化合物誘発性細胞毒性を試験した。培養物を100nMのPLDに6時間曝露した。RQ-10μg/mLのレシキモド。LPS-B5-10μg/mLの大腸菌(Escherichia coli)055:B5由来のリポ多糖(LPS-B5)。ポリC-500μg/mLのポリイノシン・ポリシチジン酸。TNF-αを陽性対照として使用した。***p<0.001;**p<0.01
【
図2】Toll様受容体の活性化に応答したNF-κBトランス活性化は、炎症性サイトカイン:IL-1、IL-6、IL-8、及びTNF-αの分泌増加につながることを示す。培養物を100nMのDMSOに6時間曝露した。処置後6時間で、分泌されたサイトカインをELISAによって分析した。TNF-αを陽性対照として使用した。***p<0.001;**p<0.01
【
図3】PLDによるサイトカインIL-6、IL-10、及びTNF-αのエクスビボダウンレギュレーションを示す。
【
図4】LPSチャレンジマウスにおける古典的に活性化されたマクロファージの減少を示す。
【
図5】両側性肺炎の患者に対するPLD投与の効果を示しているX線を示す。
【
図6】片側性肺炎の患者に対するPLD投与の効果を示しているX線を示す。
【
図7】PLDで処置された患者のC反応性タンパク質試験を示す。
【
図8】PLDによる処置を伴う(PR8)又は伴わない(PC)インフルエンザウイルスに感染したマウスのBALFにおける炎症プロファイルを示す。
【
図9】炎症誘発性サイトカインIL6(a)、IL8(b)、IL1β(c)及びTNF-α(d)の分泌に対する1nM、10nM及び50nMでのプリチデプシン(APL)前処理の効果を示す。(e) は、細胞生存率に対する1nM、10nM、及び50nM PLD処理の効果を示す(対照のパーセントとして)。0時にTHP-1細胞を1nM、10nM又は50nM APL又はDMSO(0.2%)で処理し、8時間後に2.5又は5μg/mLのレシキモドで刺激した。24時間でサイトカイン及び細胞生存率を測定した。
【
図10】気管支肺胞洗浄液(BALF)から単離されたCD45
+細胞におけるLPS-B5によって媒介される炎症誘発性サイトカイン、IL-6(c)、IL-10(d)及びTNF-α(e)の産生に対するプリチデプシン処置の効果を示す。(a)は、対照、LPS-B5並びにLPS-B5及びPLD処理細胞における、CD45
+生細胞のパーセントを示す。(b)は、LPS-B5並びにLPS-B5及びPLD処理細胞における細胞生存率を対照のパーセントとして示す。
【
図11】レシキモドによって媒介される炎症誘発性サイトカインTNF-αの産生に対するプリチデプシン処置の効果を示す。
【
図12】LPS処理マウスにおける肺胞マクロファージ動員に対するプリチデプシンの効果を示す。それぞれ1.0、0.2及び0.2mg/kgでの単回静脈内投与後のマウス(a)、ラット(b)及びハムスター(c)の血漿及び肺におけるプリチデプシンの濃度-時間曲線(平均±SD)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の実施形態は、本発明のすべての態様に適用される。
【0041】
ここで、本発明を更に説明する。以下の節では、本発明の異なる態様をより詳細に定義する。そのように定義された各態様は、明確に反対の指示がない限り、任意の他の1つ若しくは複数の態様又は1つ若しくは複数の実施形態と組み合わせてもよい。特に、好ましいか又は有利であると示される任意の特徴は、好ましいか又は有利であると示される任意の他の1つ又は複数の特徴と組み合わせてもよい。
【0042】
本出願では、多くの一般的な用語及び語句が使用されており、これらは以下のように解釈されるべきである。
【0043】
本明細書で使用される「処置する」という用語は、別段の指示がない限り、そのような用語が適用される疾患若しくは状態、又はそのような障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状の進行を逆転させること、緩和させること、若しくは阻害することを意味する。本明細書で使用される処置するという用語は、自己免疫状態の発生を予防するか、又は自己免疫状態の発生の可能性を最小限に抑えるように設計された処置である予防的処置も含み得る。
【0044】
「患者」には、ヒト、非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、シカ等)及び非哺乳動物(例えば、鳥等)が含まれる。
【0045】
プリチデプシン(PLD)は、海洋被嚢動物であるアプリジウム アルビカンズ(Aplidium albicans)から元々単離された環状デプシペプチドである。PLDはAplidinとしても知られている。PLD類似体は、本明細書で定義される類似体である。好ましい実施形態では、本発明はPLDの使用に関する。
【0046】
PLDは、
(i)Toll様受容体の活性化によって誘導されるNF-κBのトランス活性化を阻害すること;
(ii)インビボとエクスビボとの両方で、IL-1、IL-6、IL-8、及びTNF-α等の炎症誘発性サイトカインの分泌を阻害すること;及び
(iii)マクロファージの活性化を阻害すること、が見出された。
【0047】
これらの特性は、PLDが自己免疫状態の処置に特に有効であることを意味する。本明細書におけるPLDへの言及は、本発明の化合物(他のPLD類似体)に適用可能であると考えることができる。実施例に示されるように、PLDは、炎症誘発性サイトカインの分泌を阻害し、それによって自己免疫状態の病因の主な要因である炎症のレベルを低下させることができることが見出された。特に、PLDは、Toll様受容体(TLR)を介したNF-κBのトランス活性化とそれに続く炎症誘発性サイトカインの分泌を阻害できることが見出された。例えば、PLDは、すべて内因性リガンドによって活性化されることが示されているTLR3、TLR4、TL7、及びTLR8の活性化を介したNF-κBのトランス活性化を阻害できることが示されている。
【0048】
本明細書で説明されるように、自己免疫状態では、Toll様受容体は、損傷した組織から放出される多数の内因性リガンドに応答して活性化される。Toll様受容体(TLR)へのTLRリガンドの結合(すなわち刺激)は、下流のシグナル伝達カスケードを誘発し、最終的に転写因子核因子-カッパB(NF-κB)の活性化につながり、これにより炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの誘導が制御される。PLDがこのカスケードを大幅にブロックし、その結果、炎症誘発性サイトカインの放出が減少することが見出された。結果として、一例では、PLDを使用して、Toll様受容体の活性化に続く自己免疫状態を予防することができる。
【0049】
また、PLDは、マクロファージの活性化及び/又はマクロファージの動員のレベルを大幅に低下させることも見出された。活性化マクロファージは炎症の重要なメディエーターであり、マクロファージ活性化の阻害は、炎症の処置、ひいては自己免疫状態の病理の中心である。
【0050】
したがって、本明細書で定義される化合物(PLD及びジデムニンBを含む)、特にPLDは、Toll様受容体の活性化後の自己免疫状態の処置に使用することができる。
【0051】
本発明は、以下の自己免疫状態に関して有用であり得る:
【0052】
関節リウマチ(RA)
関節リウマチ(RA)は、関節の進行性かつ不可逆的な破壊を特徴とする慢性炎症性自己免疫状態である。RAは、最も一般的な自己免疫状態であり、人口の約1%が罹患している。現在、治療法はなく、人口の最大40%が既存の治療法に応答しない。RAは、増殖する滑膜組織の線維芽細胞、並びにT細胞、B細胞、好中球、単球の関節への輸送によって促進される持続性炎症を特徴とする。フィブリノゲン、HSP60、HSP70、EDAフィブロネクチン、HMGB1、ヒアルロン酸塩、及びHSP22等のさまざまな内因性TLRリガンドが、RA患者の炎症を起こした関節内に存在することが実証されており、TLR:TLR2、TLR4、TLR5、及びTLR7の活性化につながることが示されている。これらのTLRの活性化はすべて、RA関節で観察される炎症誘発性サイトカイン及び活性化マクロファージの持続的な発現の原因であり、さまざまなTLRファミリーメンバーが疾患のさまざまなステージに関与していることが示唆されている。RAの病因におけるTLRの活性化と一致して、活性化NF-κBは疾患の初期ステージと後期ステージの両方でヒト滑膜組織でも検出されており、慢性炎症の開始と持続の両方に関与していると考えられている。特に、これらのリガンドの多くは、細胞損傷、細胞外マトリックスの分解、及びマクロファージ活性の活性化によって誘導されると考えられており、これらはすべてRAの顕著な特徴である。したがって、RAの微小環境は、これらのリガンドの更なる放出によって、疾患の持続及び悪化を促進する場合がある。興味深いことに、壊死細胞によって放出された二本鎖ウイルスRNAの断片は効果的なTLRリガンドであり、RA患者の滑液で見出されており、このことは、微生物感染がRAのTLR応答を誘発又は維持し、疾患の形成及び増悪を引き起こすという仮説を支持している。
【0053】
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデス(SLE)又は狼瘡は、関節疼痛、皮疹、及び疲労等、罹患した患者に多くの症状を引き起こす重度の再発性寛解性自己免疫状態である。場合によっては、疾患は、腎臓並びに他の臓器に影響を与える。患者の血清には、TLR、特にTLR7、TLR8、及びTLR9のリガンドが含まれていることが見出されている。末梢樹状細胞は、RA病理の主要な原動力として認識されており、これらの細胞はTLR7とTLR9の両方を発現しており、このことは、これらの細胞が、そのようなリガンドによって活性化され、疾患関連のシグナル伝達を引き起こすことができることを意味する。特に、SLE患者では、自己反応性細胞が自己核抗原に対する自己抗体を大量に産生し、血清中の自己核酸と免疫複合体を形成する。これらの複合体は、特にTLR7及びTLR9のTLRリガンドとして作用し、TLR経路を活性化し、慢性炎症を引き起こす。
【0054】
RAと同様に、一本鎖ウイルスRNAは、狼瘡患者、並びに強皮症及びシェーグレン症候群等の他の自己免疫疾患に罹患している患者でも検出されており、これは、TLR7及びTLR8の効果的なリガンドである。細菌又はHSV DNAも狼瘡患者において見出されており、これは、TLR9の効果的なリガンドである。多数の実験系により、微生物のTLRリガンドが関節炎、多発性硬化症、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、自己免疫性心筋炎、1型糖尿病、及びアテローム性動脈硬化症の実験モデルにおいて疾患を引き起こすことができることが現在実証されている。この場合も、これは、自己免疫疾患を促進するTLR活性化への微生物の関与を広く支持している。
【0055】
多発性硬化症(MS)
多発性硬化症(MS)は、CNS病変が、ミエリン、オリゴデンドロサイト、及びニューロンへの損傷に関連する血管周囲の免疫細胞浸潤に起因する自己免疫疾患である。臨床的に、症状としては、しびれ、脱力感、筋肉の協調運動の喪失、視力、発話、及び膀胱制御の問題が挙げられる。MSの病理は、2つの主な段階で構成され、第1には、自己免疫反応が誘発される初期の免疫活性化、及び第2には、組織破壊及び脱髄が起こるCNSへの免疫細胞の動員である。研究によると、TLRは、MSの調節、並びにMSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に重要な役割を果たしていることが示されている。興味深いことに、動員された免疫細胞と同様に、CNSの常在ミクログリアもさまざまなTLRを発現し、これらのTLRの発現は、炎症性メディエーターに応答して増加することが見出されている。これらの細胞は、MS中のCNSにおける炎症性プラークの確立及び悪化に不可欠であることが示されており、これらの受容体の漸進的な活性化を通じて疾患を伝播している可能性がある。
【0056】
強皮症
強皮症又は全身性硬化症は、自己免疫性リウマチ性疾患として一般的に分類される慢性結合組織疾患である。強皮症は、免疫系が皮膚の下や内臓及び血管の周りの結合組織を攻撃することによって引き起こされる。このことにより、これらの領域の組織の瘢痕化及び肥厚が引き起こされる。一部のタイプの強皮症は比較的軽度で、最終的には自然に改善する可能性があるが、他のタイプは、治療法がない重度の生命を脅かす問題をもたらす可能性がある。TLRは、強皮症の病因において重要であることが確認されており、損傷した細胞からの生成物、つまり内因性TLRリガンドが、炎症及び線維化活動を促進するTLRシグナル伝達を誘発する。特に、TLRシグナル伝達がTIMPの放出を促進して強皮症における線維症を引き起こすと考えられている。
【0057】
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は自己免疫疾患であり、RA及び/又は狼瘡と共存することが多く、主に唾液腺及び涙腺に影響を与える。これらの腺は、体が唾液及び涙の形態で目及び口に水分を作出するのを助ける。したがって、シェーグレン症候群を有する人では、体が十分な水分を生成することができない。TLRがこの障害の根底にあり得ると考えられており、シェーグレン症候群の患者又はこの疾患のマウスモデルには、ビグリカン、デコリン、バーシカン、及びフィブロネクチン等、多数の推定内因性TLRリガンドが見出されている。また、TLR発現がアップレギュレートされ、シェーグレン症候群に罹患している患者の末梢血細胞のライゲーションに過敏であることが見出されている。
【0058】
自己免疫性心筋炎
自己免疫性心筋炎は、心臓に影響を与える自己免疫疾患である。この状態は、心筋の炎症を特徴とし、他の臓器には影響を与えない。ここでも、TLRシグナル伝達は、心筋炎病理の重要な根底にあるメカニズムであるように見える。例えば、下流のTLRシグナル伝達を促進するカノニカルなアダプター分子であるMyD88のノックアウトマウスは、心筋炎の誘発モデルにおいて疾患から保護される。ヒト心臓ミオシンは、TLR2及びTLR8を介して下流の炎症誘発性応答を引き起こすために、内因性TLRリガンドとして作用する場合があると仮定されている。
【0059】
1型糖尿病
1型糖尿病、又はインスリン依存性糖尿病は、膵臓におけるインスリン産生ベータ細胞の破壊を引き起こす自己免疫疾患である。その結果、患者は、血糖値を効果的に制御するために必要なホルモンであるインスリンを非常に少量しか産生できないか、又はまったく産生できなくなる。ウイルス感染は、TLR9誘発性免疫活性化を介してこの細胞破壊を引き起こす場合があり、TLRのアップレギュレーションは疾患の浸透率を高める可能性があることが示されている。このことは、1型糖尿病の病因におけるTLRシグナル伝達の重要な役割を示している。
【0060】
アテローム性動脈硬化症
アテローム性動脈硬化症は、脂肪、コレステロール、及びその他の物質が動脈壁(プラーク)内及び上に蓄積し、血流が制限され得る状態である。これらのプラークは破裂し、血栓を誘発し、脳卒中や心筋梗塞等の関連する状態を引き起こし、特に心血管疾患(CVD)を促進する可能性がある。現在、アテローム性動脈硬化症は炎症性自己免疫状態であると考えられており、特に、TLRは疾患プロセスの重要なオーケストレーターであると考えられている。MyD88、TLR2、及びTLR4のノックアウトすべてにより、マウスモデルにおけるアテローム性動脈硬化症を軽減又は予防できる等、疾患モデルからこのことを支持する証拠が豊富にある。TLR2及びTLR4は疾患中に活性化され、さまざまなリポペプチドによって活性化される可能性があると考えられている(Falck-Hansenら、2013年)。
【0061】
上記を考慮すると、内因性TLRリガンド、微生物TLRリガンド、又は両方の組合せに応答するかどうかにかかわらず、TLRシグナル伝達が自己免疫の根底にある原動力であることは明らかであり、多くの場合、疾患の微小環境は、TLRシグナル伝達を維持するための正のフィードバックループを促進する可能性がある。
【0062】
したがって、本発明の化合物(PLDを含む)は、自己免疫状態の処置に使用することができる。
【0063】
これらの化合物では、基は、以下の指針に従って選択することができる:
【0064】
アルキル基は、分岐鎖であっても非分岐鎖であってもよく、好ましくは1~約12個の炭素原子を有する。アルキル基のより好ましいクラスの1つは、1~約6個の炭素原子を有する。更により好ましいのは、1、2、3又は4個の炭素原子を有するアルキル基である。メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル及びイソブチルを含むブチルは、本発明の化合物において特に好ましいアルキル基である。本明細書で使用される場合、アルキルという用語は、別段の記載がない限り、環状基と非環状基の両方を指すが、環状基は少なくとも3つの炭素環員を含む。
【0065】
本発明の化合物における好ましいアルケニル基及びアルキニル基は、分岐鎖であっても非分岐鎖であってもよく、1つ又は複数の不飽和結合及び2~約12個の炭素原子を有する。アルケニル基及びアルキニル基のより好ましいクラスの1つは、2~約6個の炭素原子を有する。更により好ましいのは、1、2、3又は4個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基である。本明細書で使用される場合、アルケニル基及びアルキニル基という用語は、別段の記載がない限り、環状基と非環状基の両方を指すが、環状基は少なくとも3つの炭素環員を含む。
【0066】
本発明の化合物における好適なアリール基には、単環及び多環化合物が含まれ、分離及び/又は縮合アリール基を含有する多環化合物が含まれる。典型的なアリール基は、1~3個の分離又は縮合環及び6~約18個の炭素環原子を含有する。好ましくは、アリール基は、6~約10個の炭素環原子を含有する。特に好ましいアリール基には、置換又は非置換フェニル、置換又は非置換ナフチル、置換又は非置換ビフェニル、置換又は非置換フェナントリル、及び置換又は非置換アントリルが含まれる。
【0067】
好適な複素環式基には、1~3個の分離又は縮合環及び5~約18個の環原子を含有する複素芳香族基及び複素脂環式基が含まれる。好ましくは、複素芳香族基及び複素脂環式基は、5~約10個の環原子、最も好ましくは5、6又は7個の環原子を含有する。本発明の化合物における好適な複素芳香族基は、N、O又はS原子から選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子を含有し、例えば、8-クマリニルを含むクマリニル、8-キノリルを含むキノリル、イソキノリル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾール-3-イル、ピラゾール-4-イル及びピラゾール-5-イルを含むピラゾリル、ピリミジニル、フラン-2-イル、フラン-3-イル、フラン-4-イル及びフラン-5-イルを含むフラニル、ピロリル、チエニル、チアゾール-2-イル、チアゾール-4-イル及びチアゾール-5-イルを含むチアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾール-4-イル及びチアジアゾール-5-イルを含むチアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾール-3-イル、イソオキサゾール-4-イル及びイソオキサゾール-5-イルを含むイソオキサゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ピリダジニル、トリアジニル、シンノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾ[b]チオフェン-2-イル及びベンゾ[b]チオフェン-3-イルを含むベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル及びイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルを含むイミダゾ[1,2-a]ピリジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びフロピリジルが含まれる。本発明の化合物における好適な複素脂環式基は、N、O又はS原子から選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子を含有し、例えば、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジン-3-イル、ピペリジン-4-イル及びピペリジン-5-イルを含むピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジル、オキセパニ
ル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、ジヒドロピロリル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキシル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプチル、3H-インドリル、及びキノリジニル、が挙げられる。
【0068】
上記の基において、1つ又は複数の水素原子は、1つ又は複数の好適な基、例えば、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基、によって置換されていてもよく、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。置換基が二重結合(=O及び=N-R'等)で終わる場合、それにより同じ炭素原子の2つの水素原子が置き換えられる。
【0069】
本発明の化合物における好適なハロゲン置換基には、F、Cl、Br及びIが含まれる。
【0070】
「薬学的に許容される塩」という用語は、患者への投与時に、本明細書に記載の化合物を(直接的又は間接的に)提供できる任意の塩を指す。薬学的に許容されない塩もまた、薬学的に許容される塩の調製において有用であり得るので、本発明の範囲内に入ることが理解されるであろう。塩の調製は、当技術分野で知られている方法によって行うことができる。例えば、本明細書で提供される化合物の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸形態又は遊離塩基形態を、水中若しくは有機溶媒中、又はその2つの混合物中で、化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることにより調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル等の非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、鉱酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等、及び有機酸付加塩、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等、が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、無機塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、及び有機アルカリ塩、例えばアンモニウム塩、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
【0071】
本発明の化合物は、遊離化合物又は溶媒和物(例えば、水和物、アルコレート、特にメタノレート)のいずれかの結晶形態であり得、両方の形態が本発明の範囲内であることが意図される。溶媒和の方法は、当技術分野で一般に知られている。本発明の化合物は、異なる多形形態を示すことができ、本発明はそのような形態をすべて包含することを意図している。
【0072】
本明細書で言及される任意の化合物は、そのような特定の化合物並びに特定の変形形態又は形態を表すことを意図している。特に、本明細書で言及される化合物は不斉中心を有してもよく、したがって、異なるエナンチオマー又はジアステレオマー形態で存在してもよい。したがって、本明細書で言及される任意の化合物は、ラセミ体、1つ又は複数のエナンチオマー形態、1つ又は複数のジアステレオマー形態、及びそれらの混合物のいずれかを表すことを意図している。同様に、二重結合に関する立体異性又は幾何異性も可能であり、したがって場合によっては、分子は(E)-異性体又は(Z)-異性体(トランス及びシス異性体)として存在する可能性がある。分子にいくつかの二重結合が含まれている場合、各二重結合には独自の立体異性があり、分子の他の二重結合の立体異性と同じか又は異なる可能性がある。更に、本明細書で言及される化合物は、アトロプ異性体として存在し得る。本明細書で言及される化合物のエナンチオマー、ジアステレオ異性体、幾何異性体及びアトロプ異性体を含むすべての立体異性体、並びにそれらの混合物は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0073】
一般式I及びIIの化合物において、特に好ましいR1、R5、R9、R11及びR15は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR1、R5、R9、R11及びR15は、水素、置換又は非置換メチル、置換又は非置換エチル、置換又は非置換n-プロピル、置換又は非置換イソプロピル、及び置換又は非置換ブチル、例として置換又は非置換n-ブチル、置換又は非置換tert-ブチル、置換又は非置換イソブチル、及び置換又は非置換sec-ブチルから独立して選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。水素、メチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、4-アミノブチル、3-アミノ-3-オキソプロピル、ベンジル、p-メトキシベンジル、p-ヒドロキシベンジル、及びシクロヘキシルメチルが最も好ましいR1、R5、R9、R11及びR15基である。具体的には、特に好ましいR1は、sec-ブチル及びイソプロピルから選択され、sec-ブチルが最も好ましい。特に好ましいR5は、イソブチル及び4-アミノブチルから選択され、イソブチルが最も好ましい。特に好ましいR11は、メチル及びイソブチルである。特に好ましいR9は、p-メトキシベンジル、p-ヒドロキシベンジル、及びシクロヘキシルメチルから選択され、p-メトキシベンジルが最も好ましい。特に好ましいR15は、メチル、n-プロピル、及びベンジルから選択され、メチル及びベンジルが最も好ましい。
【0074】
一般式IIIの化合物において、特に好ましいR1、R5、R9、及びR15は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR1、R5、R9、及びR15は、水素、置換又は非置換メチル、置換又は非置換エチル、置換又は非置換n-プロピル、置換又は非置換イソプロピル、及び置換又は非置換ブチル、例として置換又は非置換n-ブチル、置換又は非置換tert-ブチル、置換又は非置換イソブチル、及び置換又は非置換sec-ブチルから独立して選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。水素、メチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、4-アミノブチル、3-アミノ-3-オキソプロピル、ベンジル、p-メトキシベンジル、p-ヒドロキシベンジル、及びシクロヘキシルメチルが最も好ましいR1、R5、R9、及びR15基である。具体的には、特に好ましいR1は、sec-ブチル及びイソプロピルから選択され、sec-ブチルが最も好ましい。特に好ましいR5は、イソブチル及び4-アミノブチルから選択され、イソブチルが最も好ましい。特に好ましいR9は、p-メトキシベンジル、p-ヒドロキシベンジル、及びシクロヘキシルメチルから選択され、p-メトキシベンジルが最も好ましい。特に好ましいR15は、メチル、n-プロピル、及びベンジルから選択され、メチル及びベンジルが最も好ましい。
【0075】
一般式I、II及びIIIの化合物において、特に好ましいR8、R10、R12、及びR16は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR8、R10、R12、及びR16は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、及びsec-ブチルを含むブチルから独立して選択され、更により好ましくは、それらは独立して水素及びメチルから選択される。具体的には、特に好ましいR8、R10、及びR12はメチルであり、特に好ましいR16は水素である。
【0076】
一般式I及びIIIの化合物において、特に好ましいR3及びR4は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR3及びR4は、水素、置換又は非置換メチル、置換又は非置換エチル、置換又は非置換n-プロピル、置換又は非置換イソプロピル、及び置換又は非置換ブチル、例として置換又は非置換n-ブチル、置換又は非置換tert-ブチル、置換又は非置換イソブチル、及び置換又は非置換sec-ブチルから独立して選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。水素、メチル、イソプロピル、及びsec-ブチルが、最も好ましいR3及びR4基である。具体的には、特に好ましいR3はメチル及びイソプロピルから選択され、特に好ましいR4はメチル又は水素である。
【0077】
一般式I、II及びIIIの化合物の一実施形態では、特に好ましいR6及びR7は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR7は、水素、置換又は非置換メチル、置換又は非置換エチル、置換又は非置換n-プロピル、置換又は非置換イソプロピル、及び置換又は非置換ブチル、例として置換又は非置換n-ブチル、置換又は非置換tert-ブチル、置換又は非置換イソブチル、及び置換又は非置換sec-ブチルから選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。より好ましいR6は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、及びsec-ブチルを含むブチルから選択される。最も好ましいR6は水素及びメチルから選択され、最も好ましいR7はメチルである。
【0078】
一般式I、II及びIIIの化合物の別の実施形態では、R6及びR7が、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換又は非置換複素環基を形成することが特に好ましい。これに関して、好ましい複素環式基は、N、O又はS原子から選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子、最も好ましくは1個のN原子を含有し、5~約10個の環原子、最も好ましくは5、6又は7個の環原子を有する、複素脂環式基である。ピロリジン基が最も好ましい。
【0079】
一般式I、II及びIIIの化合物の一実施形態では、特に好ましいR13及びR14は、水素及び置換又は非置換C1~C6アルキルから独立して選択される。より好ましいR13は、水素、置換又は非置換メチル、置換又は非置換エチル、置換又は非置換n-プロピル、置換又は非置換イソプロピル、及び置換又は非置換ブチル、例として置換又は非置換n-ブチル、置換又は非置換tert-ブチル、置換又は非置換イソブチル、及び置換又は非置換sec-ブチルから選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。より好ましいR14は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、及びsec-ブチルを含むブチルから選択される。最も好ましいR13は、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、及び3-アミノ-3-オキソプロピルから選択され、最も好ましいR14は水素である。
【0080】
一般式I、II及びIIIの化合物の別の実施形態では、R13及びR14が、それらが結合している対応するN原子及びC原子と一緒になって、置換又は非置換複素環基を形成することが特に好ましい。これに関して、好ましい複素環式基は、N、O又はS原子から選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子、最も好ましくは1個のN原子を含有し、5~約10個の環原子、最も好ましくは5、6又は7個の環原子を有する、複素脂環式基である。ピロリジン基が最も好ましい。
【0081】
一般式I、II及びIIIの化合物において、特に好ましいR2は、水素、置換又は非置換C1~C6アルキル、及びCORaから選択され、Raは、置換又は非置換C1~C6アルキルであり、更により好ましいRaは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル及びイソブチルを含むブチルである。より好ましくは、R2は水素である。
【0082】
一般式I、II及びIIIの化合物において、特に好ましいR17は、水素、CORa、COORa、CONHRb、(C=S)NHRb、及びSO2Rcから選択され、各Ra、Rb、及びRcは、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C2~C6アルケニル、置換又は非置換C2~C6アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から好ましくは独立して選択される。前記基の好ましい置換基は、OR'、=O、SR'、SOR'、SO2R'、NO2、NHR'、NR'R'、=N-R'、NHCOR'、N(COR')2、NHSO2R'、NR'C(=NR')NR'R'、CN、ハロゲン、COR'、COOR'、OCOR'、OCONHR'、OCONR'R'、CONHR'、CONR'R'、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基であり、R'基のそれぞれは、水素、OH、NO2、NH2、SH、CN、ハロゲン、COH、COアルキル、CO2H、置換又は非置換C1~C12アルキル、置換又は非置換C2~C12アルケニル、置換又は非置換C2~C12アルキニル、置換又は非置換アリール、及び置換又は非置換複素環式基から独立して選択される。そのような基自体が置換されている場合、置換基は、前述のリストから選択することができる。水素、CORa、COORa、及びSO2Rcが最も好ましいR17基であり、水素、COOベンジル、COベンゾ[b]チオフェン-2-イル、SO2(p-メチルフェニル)、COCOCH3、及びCOOC(CH3)3が更に最も好ましい。
【0083】
一般式I、II及びIIIの化合物の別の実施形態では、Yは、COであることが特に好ましい。別の実施形態では、Yは、-COCH(CH3)CO-であることが特に好ましい。
【0084】
一般式I、II及びIIIの化合物の別の実施形態では、Xは、Oであることが特に好ましい。別の実施形態では、Xは、NHであることが特に好ましい。
【0085】
一般式I及びIIの化合物の別の実施形態では、n、p及びqは、0であることが特に好ましい。別の実施形態では、nは1であり、p及びqは0であることが特に好ましい。別の実施形態では、n及びpは1であり、qは0であることが特に好ましい。別の実施形態では、n、p及びqは1であることが特に好ましい。別の実施形態では、n及びpは1であり、qは2であることが特に好ましい。
【0086】
一般式IIIの化合物の別の実施形態では、p及びqは、0であることが特に好ましい。別の実施形態では、pは1であり、qは0であることが特に好ましい。別の実施形態では、p及びqは1であることが特に好ましい。別の実施形態では、pは1であり、qは2であることが特に好ましい。
【0087】
追加の好ましい実施形態では、異なる置換基について上述した選好が組み合わされる。本発明はまた、上記の式I、II及びIIIの好ましい置換のそのような組合せに関する。
【0088】
本明細書及び定義において、本発明の化合物にいくつかの基Ra、Rb、及びRcが存在する場合、明示的にそのように述べられていない限り、それらは所与の定義内でそれぞれ独立して異なっていてもよいことが理解されるべきであり、すなわち、Raは、本発明の所与の化合物において必ずしも同時に同じ基を表すわけではない。
【0089】
一般式I、II及びIIIの化合物において、qが2の値をとるとき、化合物中に2つの基R15及び2つの基R16が存在する。これにより、所与の化合物中の各R15及び各R16基は、そのような基について上に記載された異なる可能性の中から独立して選択され得ることが明らかにされる。
【0090】
一般式Iの化合物の特に好ましい立体化学は、
【0091】
【0092】
であり、
式中、X、Y、n、p、q、及びR1~R17は上記で定義したとおりであり、Yが-COCH(CH3)CO-である場合、以下の立体化学:
【0093】
【0094】
を有する。
【0095】
一般式IIの化合物の特に好ましい立体化学は、
【0096】
【0097】
であり、
式中、X、Y、n、p、q、R1、R2、及びR5~R17は上記で定義したとおりであり、Yが-COCH(CH3)CO-である場合、以下の立体化学:
【0098】
【0099】
を有する。
【0100】
一般式IIIの化合物の特に好ましい立体化学は、
【0101】
【0102】
であり、
式中、X、Y、p、q、R1~R10、及びR12~R17は上記で定義したとおりであり、Yが-COCH(CH3)CO-である場合、以下の立体化学:
【0103】
【0104】
を有する。
【0105】
本発明の特に好ましい化合物は、以下のもの:
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である。
【0110】
一般式I、II及びIIIの化合物は、参照により本明細書に組み込まれる、Veraら、Med. Res. Rev. 2002年22(2), 102~145頁、WO2011/020913((特に実施例1~5を参照のこと)、WO02/02596、WO01/76616、及びWO2004/084812に開示されている合成プロセスのいずれかに従って、調製することができる。
【0111】
好ましい化合物は、PLD又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体である。最も好ましいのはPLDである。
【0112】
プリチデプシンの化学名は(-)-(3S,6R,7S,10R,11S,15S,17S,20S,25aS)-11-ヒドロキシ-3-(4-メトキシベンジル)-2,6,17-トリメチル-15-(1-メチルエチル)-7-[[(2R)-4-メチル-2-[メチル[[(2S)-1-(2-オキソプロパノイル)ピロリジン-2-イル]カルボニル]アミノ]ペンタノイル]アミノ]-10-[(1S)-1-メチルプロピル]-20-(2-メチルプロピル)テトラデカヒドロ-15H-ピロロ[2,1-f]-[1,15,4,7,10,20]ジオキサテトラアザシクロトリコシン(dioxatetrazacyclotricosine)-1,4,8,13,16,18,21(17H)-ヘプトンであり、分子式C57H87N7O15に対応する。相対分子量は1110.34g/molであり、構造は次のとおりである:
【0113】
【0114】
一般式I、II、及びIIIへの言及には、PLD及びジデムニンBへの言及が含まれる。好ましい実施形態では、化合物はPLD又はジデムニンBである。最も好ましいのはPLDである。
【0115】
本発明は、自己免疫状態の処置における、本明細書で定義される化合物及びその薬学的に許容される塩又は立体異性体の使用を提供する。
【0116】
本発明の一態様では、自己免疫状態の処置に使用するための本発明の化合物を提供する。本発明の別の態様では、自己免疫状態の処置のための医薬の製造における、本明細書の化合物の使用を提供する。本発明の別の態様では、自己免疫状態の処置のための方法であって、本明細書の化合物の治療有効量を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0117】
一実施形態では、自己免疫状態は、1つ又は複数のToll様受容体(TLR)の活性化によって引き起こされ、及び/又は少なくとも1つのTLRを介したシグナル伝達の増加を特徴とする。TLRを介したシグナル伝達の増加は、少なくとも1つのTLRにおける発現の増加によって引き起こされる場合がある。更なる実施形態では、自己免疫状態は、TLR誘導性サイトカイン発現によって引き起こされるか、TLR誘導性サイトカイン発現がその要因である。一実施形態では、TLRは、TLR-3、TLR4、TLR7又はTLR8である。既知の又は可能性のあるTLRアゴニストに応答したTLRシグナル伝達の活性化を測定する方法は、当業者に周知であるが、一例では、TLR活性化の指標としてNF-κBトランス活性化のレベルを使用することができる。本明細書に記載されるように、NF-κBトランス活性化は、実施例に記載されるように、ルシフェラーゼタグ付きNF-κBトランス活性化を使用して測定することができる。別の例では、TLR活性化は、IRAK1(IL受容体関連キナーゼ)、IRAK4リン酸化及びTAK1活性化(トランスフォーミング増殖因子β活性化キナーゼ-1)のいずれか1つを測定することによって決定することができる。TLR活性化の他の指標は、当技術分野で知られている(例えば、TLR経路について説明しているKawai及びAkira、2007年を参照のこと)。
【0118】
別の実施形態では、自己免疫状態は、少なくとも1つの炎症誘発性サイトカイン、及び好ましくは、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12及びCCL-2のうちの少なくとも1つ、より好ましくはIL-1、IL-6、IL-8のうちの少なくとも1つのレベルの増加を特徴とする。
【0119】
更なる実施形態では、自己免疫状態は、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、シェーグレン症候群、自己免疫性心筋炎、1型糖尿病、又はアテローム性動脈硬化症から選択される。好ましい実施形態では、自己免疫状態はRAである。
【0120】
本発明の化合物は、上記の状態を処置するための生物学的/薬理学的活性を有する医薬組成物に使用することができる。これらの医薬組成物は、薬学的に許容される担体と共に本発明の化合物を含む。「担体」という用語は、活性成分が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルを指す。好適な薬学的担体は、E.W.Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」、1995年に記載されている。医薬組成物の例には、経口、局所又は非経口投与のための任意の固体(錠剤、丸薬、カプセル、顆粒等)又は液体(溶液、懸濁液、エマルジョン等)組成物が含まれる。本発明の化合物を含有する医薬組成物は、リポソーム又はナノスフェアカプセル化によって、持続放出製剤で、又は他の標準的な送達手段によって送達され得る。
【0121】
例示的な組成物は、注入用の溶液用粉末の形態である。例えば、WO9942125に記載の組成物。例えば、水溶性物質を含む本発明の化合物の凍結乾燥調製物、及び第二に、混合溶媒の再構成溶液。特定の例は、PLD及びマンニトールの凍結乾燥調製物並びに混合溶媒、例えばPEG-35ヒマシ油、エタノール及び注射用水の再構成溶液である。例えば、各バイアルには2mgのPLDが含まれる場合がある。再構成後、再構成された溶液の各mLには、0.5mgのPLD、158mgのPEG-35ヒマシ油、及び0.15mL/mLのエタノールが含まれる場合がある。
【0122】
任意の特定の患者に対する特定の投与量及び処置レジメンは変動し得、使用される特定の化合物の活性、使用される特定の製剤、適用様式、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組合せ、反応感受性、及び処置される特定の疾患又は状態の重症度、を含むさまざまな要因に依存する。
【0123】
更なる実施形態によれば、臨床パラメータ及び/又は患者の特徴に基づいて、本発明の化合物による処置のために患者を選択することができる。好適なパラメータは、本出願で開示される測定値であり得る。
【0124】
より簡潔な説明を提供するために、本明細書で与えられる量的表現のいくつかは、「約」という用語で修飾されていない。「約」という用語が明示的に使用されているかどうかにかかわらず、本明細書で与えられているすべての量は、実際の所与の値を指すことを意味し、それはまた、発明が属する技術分野の通常の知識に基づいて合理的に推論されるであろう所与の値への近似値を指すことを意味し、そのような所与の値の実験及び/又は測定条件による同等物及び近似値を含む。
【0125】
前述の開示は、本発明を作製及び使用する方法及びその最良の様式を含む、本発明の範囲内に包含される主題の一般的な説明を提供するが、以下の実施例は、当業者が本発明を実施し、その完全な書面による説明を提供することを更に可能にするために提供される。しかし、当業者は、これらの実施例の詳細が本発明を限定するものとして読まれるべきではなく、その範囲は、本開示に添付された特許請求の範囲及びその同等物から把握されるべきであることを理解するであろう。本発明の種々の更なる態様及び実施形態は、本開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0126】
本発明の化合物は、文献、例えば、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる、Vera et al. Med. Res. Rev. 2002, 22(2), 102-145、WO2011/020913(特に実施例1~5を参照のこと)、WO02/02596、WO01/76616、及びWO2004/084812、に示されているプロセスに従って得ることができる。
【0127】
本発明の特定の化合物は
【0128】
【0129】
【0130】
である。
【0131】
WO02/02596及び明細書に記載され、前の実施例で更に開示された手順に従って、以下:
【0132】
【0133】
の化合物が得られる
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
WO02/02596及び明細書に記載され、前の実施例で更に開示された手順に従って、以下:
【0140】
【0141】
の化合物が得られる
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
更なる化合物は化合物240であり、ジデムニンBとして知られ、以下の構造:
【0148】
【0149】
で示される。
【0150】
(実施例1)
図1に示すように、PLDはインビトロでNF-κBのトランス活性化を阻害する。
【0151】
NFκBの転写活性が、プリチデプシンによって調節されているかどうかを確認した。そのために、NFκBルシフェラーゼレポータープラスミドを安定してトランスフェクトしたTHP-1細胞を利用した。100ng/mL TNFα(NF-κBの活性化因子)、500μg/mL ポリI:C(TLR3リガンド)、10μg/mL LPS-B5(TLR4リガンド)、又は10μg/mLレシキモド(TLR-7/8リガンド)により、細胞を処理した。化合物を単独で(1A灰色のバー)、又は100nMのプリチデプシンと組み合わせて(1A黒色のバー)6時間使用し、各条件下でルシフェラーゼ活性を定量化した。TLRリガンドのそれぞれの存在下で、プリチデプシンは、ルシフェラーゼの産生を明らかに阻害し、このことは、薬剤の存在下で、NF-κBからのトランス活性化が阻害されたことを示している。生存率を、MTTアッセイで分析した(1B灰色のバー(活性剤)及び赤色のバー(100nMのプリチデプシンと組み合わせた活性剤))。細胞毒性効果は検出されなかった。
【0152】
図2に示すように、PLDはまた、ヒト単球における炎症誘発性サイトカインIL-1、IL-6、IL-8、及びTNF-αの分泌を、インビトロで阻害する。
【0153】
プリチデプシンがTLR誘発性サイトカイン分泌を阻害するかどうかを調査するために、100ng/mL TNFα(NF-κBの活性化因子)、500μg/mL ポリI:C(TLR3リガンド)、10μg/mL LPS-B5(TLR4リガンド)、又は10μg/mLレシキモド(TLR-7/8リガンド)により、THP-1細胞を処理した。化合物を、単独で(灰色のバー)、又は100nMのプリチデプシンと組み合わせて(赤色のバー)6時間使用した。ELISAアッセイにより、異なる処理間の細胞培養上清中のサイトカイン分泌の変動を比較した。
図2に見られるように、ポリI:C、LPS、及びレシキモドは、IL-1、IL-6、IL-8、及びTNFαの分泌を誘導する。更に、プリチデプシンは、IL-1、IL-6、IL-8、及びTNFαの産生を明らかに阻害した。TNFαは、IL-1及びIL-6の分泌を増加させることができなかった。THP-1細胞は、これらのサイトカインを分泌するために他のTNFα曝露時間を必要とする可能性がある。
【0154】
TLRリガンドのそれぞれの存在下で、プリチデプシンは、炎症誘発性サイトカインIL-1、IL-6、IL-8の分泌を明らかに阻害した。
【0155】
更なるインビトロ実験では、THP-1細胞に対するプリチデプシン(APL)前処理の効果を研究した。THP-1 NFκB luc株を使用して、1、10、又は50nMのAPL又はDMSO(0.2%)を、2.5又は5μg/mLのレシキモド(RQ)で刺激する8時間前に加えた。RQはTLR7/8アゴニストであり、ssRNAを模倣する。24時間でサイトカインのレベル又は細胞生存率を測定した。
図9に示すように、PLD前処理は、RQによって誘導される炎症誘発性サイトカイン:IL6、IL8、IL1β及びTNF-αの分泌を阻害した。
【0156】
(実施例2)
図3に示すように、PLDは、BALから単離されたマウスにおける炎症誘発性サイトカイン、IL-6、IL-8、及びTNF-αのエクスビボ分泌を阻害する。
【0157】
プリチデプシンが、肺胞マクロファージにおけるLPS誘発サイトカイン分泌を阻害するかどうかを確認した。その目的のために、マウスに、プリチデプシン(1mg/kg)又はビヒクルをi.v.注射し、投与から12時間後に気管支肺胞洗浄液(BAL)を収集した。細胞をプレーティングし、15μg/mLのLPS-B5を用いるか又は用いないで3時間又は6時間エクスビボで処理し、分泌されたサイトカインを測定した。LPSがIL-6、IL-10、及びTNFαの分泌を誘導する(灰色のバー)ことが分かる。更に、プリチデプシンで処置した動物では、この薬物により、LPSによって誘導されるIL-6の産生、及びTNFαの産生が明確に阻害され(赤いバー)、全体的な抗炎症効果がもたらされた。
【0158】
これは、
図10にも更に示されている。プリチデプシンで処理された動物では、プリチデプシンは、気管支肺胞洗浄液から単離されたCD45
+細胞において3時間目及び6時間目に、LPS-B5によって誘導されるIL-6、IL-10、及びTNFαの分泌を有意に減少させることができた。
図10(a、b)に示されるように、この効果は細胞生存率とは無関係であった。
【0159】
更に、プリチデプシンが、BALFにおけるレシキモド(RQ)誘発性サイトカイン分泌を阻害するかどうかを確認した。レシキモドによる50μg/マウスの鼻腔内接種の1時間前に、マウスに、プリチデプシン(1mg/kg)又はビヒクルをi.v.注射した。RQの鼻腔内投与の1時間又は3時間後に、気管支肺胞洗浄液(BALF)を収集した。細胞をプレーティングし、分泌されたサイトカインを測定した。
図11に見ることができるように、RQは投与後1時間目と3時間目の両方で、TNFαの分泌を誘導する。PLDのインビボ投与により、TNFαの産生の増加が防止された。
【0160】
また、肺胞マクロファージ動員に対するプリチデプシンの効果も確認する。活性化単球由来マクロファージは、大量の炎症誘発性サイトカインを放出することにより、COVID-19サイトカインストームの要因となっている。気管支肺胞洗浄細胞を染色し、フローサイトメトリーで分析した。プリチデプシンは、気管支肺胞洗浄液に存在するマクロファージのパーセンテージを、細胞毒性の影響を伴わずに減少させる。
【0161】
(実施例3)
図4に示すように、マウスに単回iv投与した後、PLDによりBALのマクロファージの数が減少する。
【0162】
プリチデプシンが急性炎症を伴う動物における肺胞マクロファージのパーセンテージを減少させるかどうかを調査するために、マウスを、プリチデプシン(1mg/kg)i.v.により、減菌生理食塩水中LPS(20μg/kg)i.pにより、又はLPS(20μg/kg、i.p.)と組み合わせたプリチデプシン(1mg/kg、i.v.)により、処理した。3時間後、気管支肺胞洗浄液を収集した。気管支肺胞洗浄細胞を遠心分離によって得て、フローサイトメトリーによって分析した(
図4b)。上部パネルは、試料に存在するマクロファージ集団の分析戦略を示している。右下のパネルは、細胞のパーセンテージで表された同じ結果を示している。左下のパネルは、CD45+(白血球マーカー)生存細胞のパーセンテージを示している。見て分かるように、LPSは肺胞マクロファージの動員を誘導する。プリチデプシンによる処理により、気管支肺胞洗浄液に存在するマクロファージのパーセンテージが、細胞毒性の影響を伴わずに減少する。
【0163】
(実施例4)
図12に示すように、PLDは非臨床種の肺に分布している。加えて、同様の血漿曝露が、マウス(薬理学的モデルで使用される非臨床種)及び患者において達成される。
【0164】
マウス、ラット、及びハムスターの肺対血漿比(lungAUC0-∞/plasmaAUC0-∞として計算)は、それぞれ、133、460、及び909であり、肺におけるプリチデプシンの濃度は、どのサンプリング時間でも一貫して血漿中の濃度よりも高く、このように肺へのプリチデプシンの分布が確認される。
【0165】
【0166】
材料及び方法
トランス活性化ルシフェラーゼアッセイ。
NF-κBトランス活性化は、Bright-Glo(商標)Luciferase Assay Systemを、製造元の指示に従って使用してアッセイした。NF-κB-Lucプラスミド(4つのNF-κB結合部位、最小プロモーター及びルシフェラーゼ遺伝子を含有する)で安定的にトランスフェクトされたNF-κBレポーター(Luc)-THP-1ヒト単球細胞を、100ng/mL TNFα(陽性対照)、500μg/mLポリ(I:C)(ポリイノシン-ポリシチジル)、10μg/mL LPS-B5(大腸菌055:B5由来リポ多糖)又は10μg/mLレシキモドに曝露した。化合物を、単独で、又は100nM プリチデプシンと組み合わせて、6時間使用した。発光は、Perkin-Elmer EnVisionリーダーで測定した。MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)細胞増殖アッセイを同時に実施して、化合物の細胞毒性を制御した。細胞生存率を、対照細胞増殖のパーセンテージとして表した。提示されたデータは、3回実施された3つの独立した実験の平均である。
【0167】
分泌されたサイトカインのELISAアッセイ
THP1-NFκB-LUC細胞培養物を、上記のように処理し、培養培地を、処理後6時間でサンプリングして、分泌されたサイトカインをELISAによってアッセイした。培地試料を、4℃で保存した。培養培地へのIL-8、IL-1β、IL-6、及びTNFαタンパク質の分泌を、特異度及び感度の高いELISAキットを使用して定量化した。ヒトIL-1b、ヒトIL-6、ヒトIL-8、及びヒトTNF OptEIA(商標)ELISAキットを、BD Biosciences社から入手し、製造元の説明に従って実施した。提示されたデータは、3回実施された3つの独立した実験の平均である。
【0168】
MTTアッセイ
細胞を、96ウェルマイクロタイタープレートに播種し、上記の処理前に37℃及び5%CO2で24時間静置した。6時間の連続処理後、MTTを、その着色反応生成物であるMTTホルマザンに変換したものを、溶解させて540nmでの吸光度を測定し、これにより細胞生存率を推定した。ここに提示されたデータは、3回実施された一連の3つの独立した実験からの代表的なものである。
【0169】
「インビボ」及び「エクスビボ」処置
マウスは、5匹の動物の群に無作為抽出され、処置を受けた。マウスに、プリチデプシン(1mg/kg)を静脈内(i.v.)注射し、投与の12時間後にマウスを安楽死させた。対照群は、生理食塩水で希釈したプリチデプシンビヒクル(Cremophor/エタノール/水)を受けた。各群の気管支肺胞洗浄液(BAL)を収集し、遠心分離して気管支肺胞洗浄細胞を得た。細胞を、赤血球溶解(Roche社)させ、細胞をプレーティングし、15μg/mLのLPS-B5を用いるか又は用いないで3時間又は6時間エクスビボで処理した。分泌されたサイトカインを、特異度及び感度の高いELISAキットを使用して定量化した。マウスIL-6、マウスIL-10、及びマウスTNF DuoSet ELISAキットを、R&D Systems社から入手し、製造元の説明に従って実施した。ここに提示されたデータは、一連の3つの独立した実験からの代表的なものである。
【0170】
動物の炎症モデル
マウスは、2匹の動物の群に無作為抽出され、処置を受けた。マウスを、プリチデプシン(1mg/kg)静脈内(i.v.)により、減菌生理食塩水中LPS(20μg/kg)静脈内(i.v.)により、又はLPS(20μg/kg、i.p.)と組み合わせたプリチデプシン(1mg/kg、i.v.)により、チャレンジした。対照群は、生理食塩水で希釈したプリチデプシンビヒクル(Cremophor/エタノール/水)を受けた。3時間後、動物を安楽死させ、気管支肺胞洗浄液を収集した(合計1.2ml、PBS)。気管支肺胞洗浄細胞を遠心分離によって得て、フローサイトメトリーによって分析した。ここに提示されたデータは、一連の3つの独立した実験からの代表的なものである。
【0171】
別の炎症モデルでは、マウスは、2匹の動物の群に無作為抽出され、処置を受けた。マウスを、プリチデプシン(1mg/kg)静脈内(iv)により、1時間後にレシキモド(50μg/マウス、鼻腔内)により、チャレンジした。対照群は、生理食塩水で希釈したプリチデプシンビヒクル(Cremophor/エタノール/水)を受けた。1時間後及び3時間後、動物を安楽死させ、気管支肺胞洗浄液を収集し(合計1.2ml、PBS)、次いで、ELISAキットによってTNFαを定量化した。ここに提示されたデータは、一連の3つの独立した実験からの代表的なものである。
【0172】
フローサイトメトリーによるマクロファージの分析。
気管支肺胞洗浄細胞を、抗F4/80-BV510、CD45-APC700、CD11b-BV650、CD11c-APC-Fire、CD24-PC7、及びLy6C-BV605モノクローナル抗体(Biolegend社)及びLIVE/DEAD(商標)Fixable Green Dead Cell染色キット、488nm励起用(Thermofisher社)で染色した。マクロファージ(F4/80+)を、生存免疫細胞(CD45+ LIVE/DEAD色素)でゲートし、肺胞マクロファージ(F4/80+ CD24-)を、生存免疫細胞からのCD11c+ CD11b-集団で特異的にゲートした。アイソタイプ対照及びコンペンセーション(compensation)ビーズを使用して、コンペンセーション及びゲーティング戦略を設定した。
【0173】
(実施例5)
入院を必要とするCOVID-19患者における3用量のプリチデプシンの安全性プロファイルを評価するために、多施設共同、無作為化、並行及び概念実証研究を実施した。研究の詳細は、ClinicalTrials.gov識別子:NCT04382066から入手可能である。
【0174】
研究に含まれる患者は、1:1:1の比率で無作為抽出され、以下を受けた。
- 群A)1.5mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与する(総用量は4.5mg)。
- 群B)2.0mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与する(総用量は6.0mg)。
- 群C)2.5mgのプリチデプシンを1.5時間の注入として1日1回、連続3日間投与する(総用量は7.5mg)。
【0175】
患者はすべて、プリチデプシンの注入の20~30分前に以下の予防薬を受けることができる:
- ジフェンヒドラミン塩酸塩25mg iv(又は同等物)。
- ラニチジン50mg iv又は同等物。
- デキサメタゾン6.6mg 静脈内投与.
- 15分間の緩徐な注入によるオンダンセトロン8mg i.v.又は同等物。
【0176】
研究に含まれる患者は、3日間処置を受ける。
【0177】
プリチデプシンは、2mg/バイアルの濃度で、注入用の濃縮液用の粉末として提供される。使用前に、バイアルを4mlの再構成溶液で再構成し、0.5mg/mlのプリチデプシン、25mg/mlのマンニトール、0.15ml/mlのマクロゴールグリセロールリシノレエート油、0.15ml/mlの注射用エタノール及び0.70ml/mlの水を含有する無色~わずかに黄色がかった溶液を得る。注入前に、任意の好適な静脈内溶液で追加の希釈を行う必要がある。
【0178】
プリチデプシン2mgは、アルミニウムシールで覆われたブロモブチルラバーストッパー付きのタイプI透明ガラスバイアルで提供される。各バイアルには2mgのプリチデプシンが含まれている。
【0179】
マクロゴールグリセロールリシノレエート(ポリオキシル35ヒマシ油)/無水エタノール/注射用水、15%/15%/70%(v/v/v)の再構成用溶媒は、タイプI無色ガラスバイアルで提供される。アンプルの容量は4mlである。
【0180】
プリチデプシンには、研究プロトコールコード、バッチ番号、内容物、有効期限、保存条件、研究者及びスポンサーの名称がラベル付けされる。治験薬は、欧州適正製造基準の付属書13に従ってラベル付けされる。プリチデプシンは2℃~8℃Cの間で保存する必要があり、バイアルは光から保護するために外箱に入れて保存する必要がある。これらの条件での薬物は、60か月間安定である。
【0181】
マクロゴールグリセロールリシノレエート/エタノール/注射用水の再構成用溶液4mlで2mgのプリチデプシンバイアルを再構成した後、再構成された溶液を希釈し、調製直後に使用する必要がある。直ちに使用しない場合、使用するまでの保存時間及び条件はユーザーの責任である。再構成された医薬品の濃縮溶液は、冷蔵条件(5℃±3℃)下で24時間、及び元のバイアル内で、室内光の下、室温で保存した場合は6時間、物理的、化学的及び微生物学的に安定であることが示されている。投与前に保存が必要な場合は、溶液を冷蔵して光から保護して保存する必要があり、再構成後24時間以内に使用する必要がある。
【0182】
中間結果
患者1- 50歳の男性、両側性肺炎。PLD1.5mg×3を受けた。PCR COVID19試験:ベースラインで陽性、4日目までに陰性(ウイルス量なし)に転じた。急激な臨床的改善。7日目までに退院。PLDによって、すべてのウイルス負荷を除去し、両側性肺炎を処置して7日目までに退院することができる等、急激な臨床的改善が達成された。
【0183】
患者2:40歳の男性、両側性肺炎。PLD1.5mg×3を受けた。6日目までに、改善が見られず、レムデシビル+TOL+コルチコイド+オピエートに切り替えた。PCRは15日目までに陰性に転じ、19日目までに退院した。
【0184】
患者3:53歳の男性、両側性肺炎。PLD1.5mg×3を受けた。PLDにより臨床的悪化を防いだ。10日目までに退院、31日目までにPCR陰性に転じた。
【0185】
患者4:42歳の男性、両側性肺炎。PLD2.0mg×3を受けた。コルチコイド療法が必要であった。PCR COVID19試験:ベースラインで陽性であり、7日目でもまだ陽性である15日目までに患者はPCR陰性であった。患者は、10日目までに退院する程度に回復した。
【0186】
患者5:33歳の女性、参加時に両側性肺炎。PLD1.5mg×3を受けた。PCR COVID19試験:ベースラインで陽性、4日目までに陰性(ウイルス量なし)に転じた。両側性肺炎は6日目までに解消した(正常なRx肺)。主要な臨床的改善。8日目までに退院。
図5a~cにおいて、X線が肺炎の消失を示していることが示されている。両側性肺炎は、
図5aでは明らかである。PLDによる処置後、6日目に改善が見られた。
図5bにおいて、層無気肺(Laminar atelectasis)が証明されている。
図5cにおいて、15日目のフォローアップX線は、正常に戻ったことを示した。PLD 1.5mg×3により、4日目までにウイルス量が除去された。PLDによって、すべてのウイルス負荷を除去し、両側性肺炎を処置して8日目までに退院することができる等、主要な臨床的改善が達成された。
【0187】
患者6:69歳の女性、症状の強いCOPD。参加時の片側性肺炎。PLD1.5mg×3を受けた。PCR COVID19試験:ベースラインで陽性、7日目までに陰性(ウイルス量なし)に転じた。主要な臨床的改善が見られた。患者は8日目までに退院した。
図6a~cにおいて、X線が肺炎の進行を示していることが示されている。
図6aでは片側性肺炎が明らかであり、
図6bでは両側性肺炎に進行している。
図6cでは、改善が見られる。
図6dに示すように、PLDによって、すべてのウイルス負荷を除去し、肺炎を処置して8日目までに退院することができる等、主要な臨床的改善が達成された。
【0188】
患者7:39歳の女性、肺浸潤。PLD2.0mg×3を受けた。PCR COVID19試験:ベースラインで陽性、7日目までに陰性(ウイルス量なし)に転じた。PLDによる処置後、主要な臨床的改善。8日目までに退院。
【0189】
患者8:32歳の男性。PLD1.5mg×3を受けた。有効性については評価できない、4日目までに退院。
【0190】
患者9:34歳の男性。PLD2.0mg×3を受けた。PCR COVID19試験:ベースラインで陽性であり、7日目でもまだ陽性である。しかし、8日目までに主要な臨床的改善があり退院。
【0191】
C反応性タンパク質試験
炎症性サイトカインに対するPLDの効果も患者5、7、9について測定し、C反応性タンパク質試験の結果を
図7に示す。患者5(
図7a)では、PLDの投与後、2日目までに急激な低下が見られる。患者7(
図7b)及び9(
図7c)では、PLDの投与後、3日目までに急激な低下が見られる。これらのデータは、PLDの抗炎症特性を示している。
【0192】
全体的に研究が完了すると、COVID19で入院した45人の患者を無作為抽出し、プリチデプシンを1.5、2.0、及び2.5mgの用量で毎日3日間投与した。処置は、3つの用量コホートすべてで忍容性が良好であった。退院率によって評価された処置転帰は、ベースラインでの疾患の重症度及びウイルス量によって決定された。投与コホート全体で、100%(9/9)の患者が軽症、82%(23/28)が中等症、及び57%(4/7)が重症で、15日目までに退院した。
【0193】
(実施例6)
ここでの目的は、マウス適応型A/H1N1インフルエンザウイルス感染(A/Puerto Rico/8/34)によって引き起こされる重度の肺炎の処置におけるプリチデプシンの効果をインビボで評価することであった。
【0194】
実験設定:この目的を達成するために、高用量のPR8インフルエンザウイルス(2x105pfu)の投与に基づき、肺に重度の感染が生じたウイルス病因のインビボモデルを採用した。次に、マウスの重度のインフルエンザウイルス感染に対するプリチデプシンの治療効果を評価した。ケタミン-キシラジン溶液の腹腔内注射により、9週齢の雌型マウスを麻酔にかけ、鼻孔当たり20μlのPBSウイルス溶液の鼻腔内投与により感染を実施した。
【0195】
処置を受けたマウスには、0.3mg/kg又は0.15mg/kgのプリチデプシンを皮下注射した。その後に、生存及び体重減少を感染後3日目まで監視した。処置期間中、死亡マウス又は開始体重の30%を超える体重減少を伴うマウスは、記録されなかった。
【0196】
気道におけるインフルエンザ感染の制御は、気管支肺胞洗浄液(BALF)における炎症の増強によって媒介される
図8は、プリチデプシンによる処置を伴うか又は伴わない感染マウスのBALFにおける炎症プロファイルを示す。主な炎症誘発性サイトカインの中で、プリチデプシンは、IL-6(
図8a)、CCL2(
図8b)、IL-1α(
図8c)、IFN-γ(
図8d)、及びTNF-α(
図8e)のレベルを大幅に低下させた。半量の薬物しか受けていなかったマウスは、防御力が低く、中間表現型を示した。
【0197】
BALF細胞組成は、肺免疫応答ウイルス感染のマーカーとして定義される。炎症性サイトカインレベルと相関する浸潤細胞の定量的測定を、インフルエンザ感染マウスで評価した。プリチデプシンによる処置は、BALFの総細胞組成を減少させなかった(CD45+x106)。
【0198】
全体として、これらの結果によって、インフルエンザ感染マウスにおけるプリチデプシンの(総用量0.9mg/kgの)3回のその後の投与により、処置による初期の炎症誘発性サイトカインの減少によって示されるように、炎症を積極的に軽減することができることが確認された。
【0199】
【国際調査報告】