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特表2023-517541不整脈の治療のためのニコチンアミドモノヌクレオチド誘導体
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  • 特表-不整脈の治療のためのニコチンアミドモノヌクレオチド誘導体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】不整脈の治療のためのニコチンアミドモノヌクレオチド誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/048 20060101AFI20230419BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C07H19/048 CSP
A61K31/706
A61P9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553059
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2021055676
(87)【国際公開番号】W WO2021176093
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】2002267
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522245178
【氏名又は名称】ヌバミッド エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ギャルソン,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ベルモンド,ギヨーム
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057CC03
4C057CC10
4C057DD03
4C057LL05
4C057LL18
4C057LL21
4C057LL22
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA38
(57)【要約】
本発明は、不整脈の治療におけるその使用のための式(I)の化合物:
【化1】
(式中、X、R、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化2】
および
【化3】
は特許請求の範囲に記載されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不整脈の治療におけるその使用のための、式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
-XはO、CH、S、Se、CHF、CFおよびC=CHから選択され、
-RはH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
-R、R、RおよびRは互いに独立してH、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C~C12アルキル、C~C12チオアルキル、C~C12ヘテロアルキル、C~C12ハロアルキルおよびORから選択され、式中、RはH、C~C12アルキル、C(O)(C~C12)-アルキル、C(O)NH(C~C12)-アルキル、C(O)O(C~C12)-アルキル、C(O)-アリール、C(O)(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)NH(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)O(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリールおよびC(O)CHRAANHから選択され、式中、RAAはタンパク質を構成するアミノ酸から選択される側鎖であり、
-RはH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
-RはP(O)R10、P(S)R10および
【化2】
から選択され、式中、
およびR10は互いに独立してOH、OR11、NHR13、NR1314、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C12アリール、(C~C12)-アリール-(C~C)-アルキル、(C~C)-アルキル-(C~C12)-アリール、(C~C)-ヘテロアルキル、(C~C)-ヘテロシクロアルキル、(C~C12)-ヘテロアリールおよびNHCRαα’C(O)R12から選択され、式中、
-R11はC~C10アルキル、C~C10シクロアルキル、C~C12アリール、(C~C10)-アルキル-(C~C12)-アリール、C~C12置換アリール、C~C10ヘテロアルキル、C~C10ハロアルキル、-(CHC(O)(C~C15)-アルキル、-(CHOC(O)(C~C15)-アルキル、-(CHOC(O)O(C~C15)-アルキル、-(CHSC(O)(C~C15)-アルキル、-(CHC(O)O(C~C15)-アルキル、-(CHC(O)O(C~C15)-アルキル-アリールおよびP(O)(OH)OP(O)(OH)、内部もしくは外部対イオンから選択され、式中、mは1~8から選択される整数であり、
-R12は水素、C~C10アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10ハロアルキル、C~C10シクロアルキル、C~C10ヘテロシクロアルキル、C~C12アリール、(C~C)-アルキル-(C~C12)-アリールおよびC~C12ヘテロアリールから選択され、ここでは前記アリールもしくはヘテロアリール基はハロゲン、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシおよびシアノから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されており、
-R13およびR14は独立してH、C~Cアルキルおよび(C~C)-アルキル-(C~C12)-アリールから選択され、
-RαおよびRα’は独立して、水素、C~C10アルキル、C~C10アルケニル、C~C10アルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10チオアルキル、C~C10ヒドロキシルアルキル、(C~C10)-アルキル-(C~C12)-アリール、C~C12アリール、-(CHNHC(=NH)NH、(1H-インドール-3-イル)-メチル、(1H-イミダゾール-4-イル)-メチル、およびタンパク質を構成するかタンパク質を構成しないアミノ酸から選択される側鎖から選択され、ここでは前記アリール基はヒドロキシル、C~C10アルキル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、ニトロおよびシアノから選択される基によって任意に置換されており、
あるいはRおよびR10はそれらが結合しているリン原子と共に6員環を形成し、ここでは-R-R10は-CH-CH-CHR-または-O-CH-CH-CHR-O-を表し、式中、Rは水素、C~CアリールおよびC~Cヘテロアリールから選択され、ここでは前記アリールもしくはヘテロアリール基はハロゲン、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシおよびシアノから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されており、
X’はO、CH、S、Se、CHF、CFおよびC=CHから選択され、
1’はH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
2’、R3’、R4’およびR5’は互いに独立してH、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C~C12アルキル、C~C12チオアルキル、C~C12ヘテロアルキル、C~C12ハロアルキルおよびORから選択され、式中、RはH、C~C12アルキル、C(O)(C~C12)-アルキル、C(O)NH(C~C12)-アルキル、C(O)O(C~C12)-アルキル、C(O)-アリール、C(O)(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)NH(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)O(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリールおよびC(O)CHRAANHから選択され、式中、RAAはタンパク質を構成するアミノ酸から選択される側鎖であり、
6’はH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
8’はH、OR、NHR15’、NR15’16’、NH-NHR15’、SH、CN、Nおよびハロゲンから選択され、式中、R15’およびR16’は互いに独立してH、C~CアルキルおよびC~Cアルキル-アリールから選択され、
Y’はCH、CH、C(CHおよびCCHから選択され、
nは1~3から選択される整数であり、
【化3】
はY’に従って単結合または二重結合を表し、かつ
【化4】
はR1’の位置に従ってαもしくはβアノマーを表し、
-RはH、OR、NHR15、NR1516、NH-NHR15、SH、CN、Nおよびハロゲンから選択され、式中、RはHおよびC~C、アルキルから選択され、かつR15およびR16は互いに独立してH、C~CアルキルおよびC~Cアルキル-アリールおよび-CHRAACOHから選択され、式中、RAAはタンパク質を構成するかタンパク質を構成しないアミノ酸から選択される側鎖であり、
-YはCH、CH、C(CHおよびCCHから選択され、
【化5】
はYに従って単結合または二重結合を表し、かつ
【化6】
はRの位置に従ってαもしくはβアノマーを表す)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物。
【請求項2】
Xは酸素を表す、請求項1に記載のその使用のための化合物。
【請求項3】
およびRはそれぞれ水素を表す、請求項1または請求項2に記載のその使用のための化合物。
【請求項4】
、R、RおよびRはそれぞれ互いに独立して水素またはOHを表す、請求項1~3のいずれか1項に記載のその使用のための化合物。
【請求項5】
YはCHを表す、請求項1~4のいずれか1項に記載のその使用のための化合物。
【請求項6】
YはCHを表す、請求項1~4のいずれか1項に記載のその使用のための化合物。
【請求項7】
はP(O)R10または
【化7】
を表し、式中、
およびR10は請求項1に定義されているとおりであり、
X’は酸素であり、
1’およびR6’はそれぞれ水素を表し、
2’、R3’、R4’およびR5’は独立して水素およびOHから選択され、
8’はNHであり、
Y’はCHおよびCHから選択され、
nは2に等しく、
【化8】
はY’に従って単結合または二重結合を表し、かつ
【化9】
はR1’の位置に従ってαもしくはβアノマーを表す、
請求項1~6のいずれか1項に記載のその使用のための化合物。
【請求項8】
はP(O)(OH)を表す、請求項1~7のいずれか1項に記載のその使用のための化合物。
【請求項9】
以下から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載のその使用のための化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物。
【表1】
【請求項10】
不整脈の種類は徐脈、頻脈、心房細動、心室頻拍および/または心室細動から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載のその使用のための化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整脈の治療および/または予防に使用するための式(I)の化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。
【背景技術】
【0002】
突然の心停止は、通常は心臓の正常な電気的活動の中断によって引き起こされる心機能、呼吸および意識の突然の喪失を特徴とする。
【0003】
突然の心停止(SCD)による死亡の大多数は、致命的な心不整脈および心臓のポンプ機能の喪失、最も頻繁には心室頻拍(VT)および心室細動(VF)によって引き起こされる。結果として心臓は突然停止し(心臓突然死)、即時の緊急蘇生を必要とする場合がある。
【0004】
心室頻拍および心室細動は、心臓が体の残りの部分に血液を送るのを妨げる心臓の心室に起因する速くかつ無秩序なリズムを特徴とする。
【0005】
不整脈状態は一般に、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の酸化型(NAD+)と還元型(NADH)との不均衡および主要な細胞内抗酸化物質の枯渇を生じさせる活性酸素種(「ROS」)によって引き起こされる全身性酸化および心臓ストレスに関連づけられている。
【0006】
ROSの高い細胞内レベルは、心臓のナトリウムチャネル(Nav1.5)の変化を引き起こす可能性がある。NADHの細胞内レベルの上昇は、Na+電流(iNa)を臨床的に有意である程にかなりの程度まで急激に減少させ得ることが分かっている。実際に、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの酸化型(NAD+)はナトリウムチャネルの電流およびナトリウムチャネルのレベルを上昇させ、NADH(還元型)はナトリウムチャネルの電流およびナトリウムチャネルのレベルを低下させるようである。
【0007】
現在のところ不整脈の治療は、本質的にアテノロール、メトプロロールなどのβ遮断薬またはさらにはベラパミルなどのカルシウム阻害剤により速すぎる心拍数を減速させることを目的とした薬物治療を必要とする。例えばジゴキシンなどのジギタリスに由来する薬物も心不整脈の治療のためによく使用されている。他方、規則的な心拍を回復させることを目的として抗不整脈薬を処方することができる。これらは例えばアミオダロン、プロパフェノンまたはソタロールである。
【0008】
特定の症例では、心不整脈は高周波での異常組織の焼灼によって治療し、この方法は心臓リズムを回復させるのを可能にする。
【0009】
しかしこれらの薬物の有効性は、患者および観察される不整脈の原因によって異なる。これらの薬物のいくつかは心房もしくは心室細動を減少させるためにも使用される(「薬理学的除細動」)。
【0010】
それらの使用はデリケートであるため、心臓リズム障害のための薬物は、これらの障害がかなりの日常的な不快感を引き起こすか深刻な結果をもたらすリスクがある場合にのみ処方される。
【0011】
心臓リズム障害の予防は、バランスのとれた食事、禁煙、適度なアルコール消費および定期的な身体運動などの、心臓の健康のために推奨される一般的な衛生対策に基づいている。
【0012】
故に、どんな種類の心不整脈であっても多くの患者のために有効かつ忍容性が良好な治療もしくは予防手段が必要とされている。
【0013】
本発明の目的は、不整脈の治療および予防のためにニコチンアミドモノヌクレオチド誘導体を提供することにより電流治療に代わる手段を提案することにある。
【0014】
本出願人は、本発明に係るニコチンアミドモノヌクレオチドの誘導体は忍容性が良好であり、かつ再灌流した虚血ラットモデルにおいて不整脈の頻度を下げることができることを観察した。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、不整脈の治療におけるその使用のための、式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
-XはO、CH、S、Se、CHF、CFおよびC=CHから選択され、
-RはH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
-R、R、RおよびRは互いに独立して、H、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C~C12アルキル、C~C12チオアルキル、C~C12ヘテロアルキル、C~C12ハロアルキルおよびORから選択され、式中、RはH、C~C12アルキル、C(O)(C~C12)-アルキル、C(O)NH(C~C12)-アルキル、C(O)O(C~C12)-アルキル、C(O)-アリール、C(O)(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)NH(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)O(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリールおよびC(O)CHRAANHから選択され、式中、RAAはタンパク質を構成するアミノ酸から選択される側鎖であり、
-RはH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
-RはP(O)R10、P(S)R10および
【化2】
から選択され、式中、
およびR10は互いに独立してOH、OR11、NHR13、NR1314、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C12アリール、(C~C12)-アリール-(C~C)-アルキル、(C~C)-アルキル-(C~C12)-アリール、(C~C)-ヘテロアルキル、(C~C)-ヘテロシクロアルキル、(C~C12)-ヘテロアリールおよびNHCRαα’C(O)R12から選択され、式中、
-R11はC~C10アルキル、C~C10シクロアルキル、C~C12アリール、(C~C10)-アルキル-(C~C12)-アリール、C~C12置換アリール、C~C10ヘテロアルキル、C~C10ハロアルキル、-(CHC(O)(C~C15)-アルキル、-(CHOC(O)(C~C15)-アルキル、-(CHOC(O)O(C~C15)-アルキル、-(CHSC(O)(C~C15)-アルキル、-(CHC(O)O(C~C15)-アルキル、-(CHC(O)O(C~C15)-アルキル-アリールおよびP(O)(OH)OP(O)(OH)、内部もしくは外部対イオンから選択され、式中、mは1~8から選択される整数であり、
-R12は水素、C~C10アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10ハロアルキル、C~C10シクロアルキル、C~C10ヘテロシクロアルキル、C~C12アリール、(C~C)-アルキル-(C~C12)-アリールおよびC~C12ヘテロアリールから選択され、ここでは前記アリールもしくはヘテロアリール基はハロゲン、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシおよびシアノから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されており、
-R13およびR14は独立してH、C~Cアルキルおよび(C~C)-アルキル-(C~C12)-アリールから選択され、
-RαおよびRα’は独立して水素、C~C10アルキル、C~C10アルケニル、C~C10アルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10チオアルキル、C~C10ヒドロキシルアルキル、(C~C10)-アルキル-(C~C12)-アリール、C~C12アリール、-(CHNHC(=NH)NH、(1H-インドール-3-イル)-メチル、(1H-イミダゾール-4-イル)-メチル、およびタンパク質を構成するかタンパク質を構成しないアミノ酸から選択される側鎖から選択され、ここでは前記アリール基はヒドロキシル、C~C10アルキル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、ニトロおよびシアノから選択される基によって任意に置換されており、
あるいはRおよびR10はそれらが結合しているリン原子と共に6員環を形成し、ここでは-R-R10は-CH-CH-CHR-または-O-CH-CH-CHR-O-を表し、式中、Rは水素、C~CアリールおよびC~Cヘテロアリールから選択され、ここでは前記アリールもしくはヘテロアリール基はハロゲン、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシおよびシアノから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されており、
X’はO、CH、S、Se、CHF、CFおよびC=CHから選択され、
1’はH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
2’、R3’、R4’およびR5’は互いに独立してH、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C~C12アルキル、C~C12チオアルキル、C~C12ヘテロアルキル、C~C12ハロアルキルおよびORから選択され、式中、RはH、C~C12アルキル、C(O)(C~C12)-アルキル、C(O)NH(C~C12)-アルキル、C(O)O(C~C12)-アルキル、C(O)-アリール、C(O)(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)NH(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)O(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリールおよびC(O)CHRAANHから選択され、式中、RAAはタンパク質を構成するアミノ酸から選択される側鎖であり
6’はH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
8’はH、OR、NHR15’、NR15’16’、NH-NHR15’、SH、CN、Nおよびハロゲンから選択され、式中、R15’およびR16’は互いに独立してH、C~CアルキルおよびC~Cアルキル-アリールから選択され、
Y’はCH、CH、C(CHおよびCCHから選択され、
nは1~3から選択される整数であり、
【化3】
はY’に従って単結合または二重結合を表し、かつ
【化4】
はR1’の位置に従ってαもしくはβアノマーを表し、
-RはH、OR、NHR15、NR1516、NH-NHR15、SH、CN、Nおよびハロゲンから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、かつR15およびR16は互いに独立してH、C~CアルキルおよびC~Cアルキル-アリールおよび-CHRAACOHから選択され、式中、RAAはタンパク質を構成するかタンパク質を構成しないアミノ酸から選択される側鎖であり、
-YはCH、CH、C(CHおよびCCHから選択され、
【化5】
はYに従って単結合または二重結合を表し、かつ
【化6】
はRの位置に従ってαもしくはβアノマーを表す)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。
【0016】
一実施形態では、Xは酸素を表す。
【0017】
一実施形態では、RおよびRはそれぞれ水素を表す。
【0018】
一実施形態では、R、R、RおよびRはそれぞれ互いに独立して水素またはOHを表す。
【0019】
一実施形態では、YはCHを表す。
【0020】
一実施形態では、YはCHを表す。
【0021】
一実施形態では、RはP(O)R10または
【化7】
を表し、式中、
およびR10は式(I)において定められているとおりであり、かつ
X’は酸素であり、
1’およびR6’はそれぞれ水素を表し、
2’、R3’、R4’およびR5’は独立して水素およびOHから選択され、
8’はNHであり、
Y’はCHおよびCHから選択され、
nは2に等しく、
【化8】
はY’に従って単結合または二重結合を表し、かつ
【化9】
はR1’の位置に従ってαもしくはβアノマーを表す。
【0022】
一実施形態では、RはP(O)(OH)を表す。
【0023】
一実施形態では、本発明の化合物は、以下の化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物から選択される。
【表1】
【0024】
一実施形態では、不整脈の種類は徐脈、頻脈、心房細動、心室頻拍および/または心室細動から選択される。
【0025】
定義
本発明では以下の用語は以下の意味を有する。
【0026】
特に明記しない限り、本発明において明示的に定義されていない置換基の命名は、官能基の末端部の後に結合点に向かって隣接する官能基を命名することにより得られる。
【0027】
「アルキル」はそれのみまたは別の置換基の一部として、式CnH2n+1(式中、nは1以上の数である)のヒドロカルビルラジカルを意味する。一般に本発明のアルキル基は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは1~2個の炭素原子を含む。アルキル基は直鎖状または分岐鎖状であってもよく、本発明において示されているように置換されていてもよい。好適なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチルおよびt-ブチル、ペンチルおよびその異性体(例えば、n-ペンチル、イソペンチル)、ヘキシルおよびその異性体(例えば、n-ヘキシル、イソヘキシル)、ヘプチルおよびその異性体(例えば、n-ヘプチル、イソヘプチル)、オクチルおよびその異性体(例えばn-オクチル、イソオクチル)、ノニルおよびその異性体(例えば、n-ノニル、イソノニル)、デシルおよびその異性体(例えばn-デシル、イソデシル)、ウンデシルおよびその異性体、ドデシルおよびその異性体が挙げられる。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチルおよびt-ブチルである。Cx~Cyアルキルはx~y個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。
【0028】
「アルケニル」はそれのみまたは別の置換基の一部として、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む直鎖状または分岐鎖状であってもよい不飽和のヒドロカルビル基を意味する。好適なアルケニル基は、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子、さらにより好ましくは2~6個の炭素原子を含む。アルケニル基の非限定的な例としては、エテニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニルおよびその異性体、2-ヘキセニルおよびその異性体、2,4-ペンタジエニルが挙げられる。
【0029】
「アルキニル」はそれのみまたは別の置換基の一部として、その不飽和が1つ以上の炭素-炭素三重結合の存在により生じる不飽和の一価の基のクラスを意味する。アルキニル基は一般に、かつ好ましくはアルケニル基について上に記載されている同じ数の炭素原子を有する。アルキニル基の非限定的な例としては、エチニル、2-プロピニル、2-ブチニル、3-ブチニル、2-ペンチニルおよびその異性体、2-ヘキシニルおよびその異性体が挙げられる。
【0030】
「アルコキシ」は、酸素原子によって別の部分に結合される上に定義されているアルキル基を意味する。アルコキシ基の例としては、メトキシ、イソプロポキシ、エトキシ、tert-ブトキシおよび他の基が挙げられる。アルコキシ基は1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。本発明の化合物に含まれているアルコキシ基は可溶化基で任意に置換されていてもよい。
【0031】
「アリール」は本明細書において使用されている場合、その少なくとも1つの環が芳香族である一般に5~12個、好ましくは6~10個の原子を含む単環(例えばフェニル)または互いに縮合された(例えばナフチル)か共有結合された複数の芳香族環を有する芳香族の多価不飽和のヒドロカルビル基を意味する。芳香族環は任意に、そこに縮合された1つもしくは2つのさらなる環(シクロアルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリール)を含んでいてもよい。アリールはここに列挙されている炭素環系の部分的に水素化された誘導体を含むことも意図されている。アリールの例は、フェニル、ビフェニル、ビフェニレニル、5-もしくは6-テトラリニル、ナフタレン-1-もしくは-2-イル、4-、5-、6もしくは7-インデニル、1-2-、3-、4-もしくは5-アセナフチレニル(acenaphtylenyl)、3-、4-もしくは5-アセナフテニル(acenaphtenyl)、1-もしくは2-ペンタレニル、4-もしくは5-インダニル、5-、6-、7-もしくは8-テトラヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル、1-、2-、3-、4-もしくは5-ピレニルを含む。
【0032】
「アルキルアリール」は、アルキル基で置換されたアリール基を意味する。
【0033】
「アミノ酸」は、αアミノ化カルボン酸、言い換えるとカルボン酸基のα位に官能性カルボン酸基および官能性アミン基を含む分子、例えばタンパク質を構成するアミノ酸または2-アミノイソ酪酸などのタンパク質を構成しないアミノ酸を意味する。
【0034】
「タンパク質を構成するアミノ酸」は、生きている生物におけるリボソームによるメッセンジャーRNAの翻訳中にタンパク質に組み込まれるアミノ酸、言い換えるとアラニン(ALA)、アルギニン(ARG)、アスパラギン(ASN)、アスパラギン酸(ASP)、システイン(CYS)、グルタミン酸(GLU)、グルタミン(GLN)、グリシン(GLY)、ヒスチジン(HIS)、イソロイシン(ILE)、ロイシン(LEU)、リジン(LYS)、メチオニン(MET)、フェニルアラニン(PHE)、プロリン(PRO)、ピロリシン(PYL)、セレノシステイン(SEL)、セリン(SER)、トレオニン(THR)、トリプトファン(TRP)、チロシン(TYR)またはバリン(VAL)を意味する。
【0035】
「タンパク質を構成しないアミノ酸」は、天然にコードされないアミノ酸すなわち生きている生物の遺伝暗号に存在しないアミノ酸を意味する。タンパク質を構成しないアミノ酸の非限定的な例としては、オルニチン、シトルリン、アルギニノコハク酸、ホモセリン、ホモシステイン、システインスルフィン酸、2-アミノムコン酸、δ-アミノレブリン酸、β-アラニン、シスタチオニン、γ-アミノ酪酸、DOPA、5-ヒドロキシトリプトファン、D-セリン、イボテン酸、α-アミノ酪酸、2-アミノイソ酪酸、D-ロイシン、D-バリン、D-アラニンまたはD-グルタミン酸が挙げられる。
【0036】
「シクロアルキル」はそれのみまたは別の置換基の一部として、環式アルキル、環式アルケニルまたは環式アルキニル基、言い換えると1もしくは2の環式構造を有する飽和もしくは不飽和の一価ヒドロカルビル基を意味する。シクロアルキルとしては、単環式もしくは二環式ヒドロカルビル基が挙げられる。シクロアルキル基は、環中に3個またはそれ以上の炭素原子を含んでいてもよく、一般に本発明によれば3~10個、好ましくは3~8個、さらにより好ましくは3~6個の炭素原子を含む。シクロアルキル基の非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられ、シクロプロピルが特に好ましい。
【0037】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、溶媒または希釈液として使用され、その中に入れて薬学的に活性な薬剤が製剤化され、かつ/または投与され、動物、好ましくは人間に投与された場合に望ましくないアレルギーまたは他の反応を生じさせない不活性な担体または支持体を指す。これは全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤および他の同様の成分を含む。ヒトへの投与のための製剤は、例えばFDAまたはEMAなどの規制当局によって要求される無菌性、一般的な安全性および純度基準を満たすものでなければならない。本発明の意味の範囲内では「薬学的に許容される賦形剤」は、全ての薬学的に許容される賦形剤ならびに全ての薬学的に許容される支持体、希釈液および/または添加剤を含む。
【0038】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。好ましいハロ基はフルオロおよびクロロである。
【0039】
「ハロアルキル」は単独または組み合わせで、その中の1つ以上の水素原子が上に定義されているハロゲンで置換された、上に定義されている意味を有するアルキルラジカルを意味する。そのようなハロゲノアルキルラジカルの例としては、クロロメチル、1-ブロモエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1,1,1-トリフルオロエチルおよび同様のラジカルが挙げられる。Cx~CyハロアルキルおよびCx~Cyアルキルは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。好ましいハロゲノアルキル基はジフルオロメチルおよびトリフルオロメチルである。
【0040】
「ヘテロアルキル」は、その中の1つ以上の炭素原子が酸素、窒素および硫黄原子から選択されるヘテロ原子で置換された上に定義されているアルキル基を意味する。ヘテロアルキル基において、ヘテロ原子はアルキル鎖に沿った炭素原子にのみ結合されており、言い換えると各ヘテロ原子は任意の他のヘテロ原子から少なくとも1つの炭素原子だけ分離されている。但し、窒素および硫黄のヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、窒素のヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい。ヘテロアルキルは炭素原子のみを介して別の基または別の分子に結合されており、言い換えると結合原子はヘテロアルキル基に含まれているヘテロ原子から選択されない。
【0041】
「ヘテロアリール」はそれのみまたは別の置換基の一部として、5~12個の炭素原子を有する芳香族環またはその環の少なくとも1つが芳香族である典型的には5~6個の原子を含む縮合されたか共有結合された1~2個の環を含む系を意味し、ここでは1つ以上の環の中の1つ以上の炭素原子は酸素、窒素および/または硫黄原子によって置換されており、窒素および硫黄のヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、ヘテロ原子の窒素は任意に四級化されていてもよい。そのような環はアリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル環に縮合されていてもよい。ヘテロアリールの非限定的な例としては、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾリル、チエノ[3,2-b]フラニル、チエノ[3,2-b]チオフェニル、チエノ[2,3-d][1,3]チアゾリル、チエノ[2,3-d]イミダゾリル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、1,3-ベンゾオキサゾリル、1,2-ベンゾイソオキサゾリル、2,1-ベンゾイソオキサゾリル、1,3-ベンゾチアゾリル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、2,1-ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-ベンゾオキサジアゾリル、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル、1,2,3-ベンゾチアジアゾリル、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル、チエノピリジニル、プリニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、1,3-ベンゾジオキソリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニルが挙げられる。
【0042】
シクロアルキル基の中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されている場合、得られた環を「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクリル」と呼ぶ。
【0043】
「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクロ」はそれのみまたは別の置換基の一部として、炭素原子を含む少なくとも1つの環の中に少なくとも1つのヘテロ原子を有する完全飽和もしくは部分不飽和の環式非芳香族基(例えば、3~7員環の単環、7~11員環の二環、または環の中に全部で3~10個の原子を含む)を意味する。ヘテロ原子を含むヘテロシクリル基の各環は、窒素、酸素および/または硫黄原子から選択される1、2、3もしくは4個のヘテロ原子を有していてもよく、窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、かつ窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい。複素環の各炭素原子はオキソで置換されていてもよい(例えばピペリドン、ピロリジノン)。複素環基は価数が許せば、環または環系の任意の炭素原子またはヘテロ原子に結合されていてもよい。多環式複素環の環は縮合、架橋されていてもよく、かつ/または1つ以上のスピロ原子によって結合されていてもよい。複素環基の非限定的な例としては、オキセタニル、ピペリジニル、アゼチジニル、2-イミダゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、イソオキサゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピペリジニル、3H-インドリル、インドリニル、イソインドリニル、2-オキソピペラジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、2-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、3,4-ジヒドロ-2H-ピラニル、3-ジオキソラニル、1,4-ジオキサニル、2,5-ジオキソイミダゾリジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロロジニル(oxopyrrolodinyl)、インドリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリン-1-イル、テトラヒドロイソキノリン-2-イル、テトラヒドロイソキノリン-3-イル、テトラヒドロイソキノリン-4-イル、チオモルホリン-4-イル、チオモルホリン-4-イルスルホキシド、チオモルホリン-4-イルスルホン、1,3-ジオキソラニル、1,4-オキサチアニル、1H-ピロリジニル、テトラヒドロ-1,1-ジオキソチオフェニル、N-ホルミルピペラジニル、およびモルホリン-4-イルが挙げられる。
【0044】
「薬学的に許容される塩」は、これらの塩の酸および塩基付加塩を含む。好適な酸付加塩は非毒性塩を形成する酸から形成されている。これとしては、例えば、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、クロル水和物/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩およびキシノホ酸塩が挙げられる。好適な塩基性塩は非毒性塩を形成する塩基から形成されている。これらとしては、例えばアルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、塩素、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、モルホリン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリンおよび亜鉛の塩が挙げられる。酸および塩基の半塩、例えばヘミ硫酸塩および化学的カルシウム塩も形成することができる。好ましい薬学的に許容される塩はクロル水和物/塩化物、臭化物/臭化水素酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩および酢酸塩である。
【0045】
薬学的に許容される塩は、以下の方法:
(i)当該化合物を所望の酸と反応させること、
(ii)当該化合物を所望の塩基と反応させること、
(iii)当該化合物の好適な前駆体の酸もしくは塩基媒体中の保護不安定基を除去すること、または所望の酸を用いて好適な環式前駆体、例えばラクトンまたはラクタムの環を開くこと、あるいは
iv)好適な酸との反応により、あるいは好適なイオン交換カラムを用いて当該化合物のある塩を別の塩に変換すること
の1つ以上によって調製することができる。
【0046】
これらの反応は全て一般に溶液中で行う。当該塩は溶液から沈殿させて濾過によって回収することができ、あるいは溶媒の蒸発により回収することができる。当該塩のイオン化の程度は、完全にイオン化されている状態からほぼイオン化されていない状態までさまざまであってもよい。
【0047】
「薬学的に許容される」は、規制主体によって認可されているか認可可能であること、あるいは動物(より好ましくはヒト)に使用するための公知の薬局方に含まれていることを意味する。それは生物学的またはそれ以外に望ましくないものでない物質であってもよく、言い換えると当該物質は、望ましくない生物学的効果またはその中に含有されている組成物の成分のうちの1つとの有害な相互作用を生じることなく個体に投与することができる。
【0048】
「溶媒和物」は、本発明の化合物および薬学的に許容される溶媒(例えばエタノール)の1種以上の分子を含む分子複合体を記述するために本明細書では使用されている。
【0049】
「置換基」または「置換された」という用語は、化合物または基上の水素ラジカルが保護されていない形態で反応条件下で実質的に安定であるか、あるいは保護基によって保護されている場合に任意の所望の基で置換されていることを意味する。好ましい置換基の例は、本明細書において提供されている化合物および実施形態中に存在するもの、ならびにハロゲノ、上に定義されているアルキルまたはアリール基、ヒドロキシル、上に定義されているアルコキシ基、ニトロ、チオール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、シアノ、上に定義されているシクロアルキル基、ならびに可溶化基、-NRR’、-NR-CO-R’、-CONRR’、-SONRR’(式中、RおよびR’はそれぞれ独立して水素および上に定義されているアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール基から選択される)である。
【0050】
不斉炭素結合は本明細書では、黒塗りの三角形
【化10】
点線の三角形
【化11】
またはジグザグ線
【化12】
によって表わすことができる。
【0051】
「投与」という用語またはこの用語の変形(例えば、「投与すること」)は、症状または疾患を治療または予防しなければならない患者に活性薬剤または活性物質を単独または薬学的に許容される組成物として送達することを意味する。
【0052】
「不整脈」は心臓リズム障害、言い換えると心臓の正常なリズムの乱れに関し、これは良性であっても好適な治療を必要とするものであってもよい。心拍の速度に応じて、当業者であれば不整脈の種類を決定することができるであろう。一実施形態ではそれは徐脈である。一実施形態ではそれは頻脈である。一実施形態ではそれは心房細動である。一実施形態ではそれは心室頻拍である。一実施形態ではそれは心室細動である。
【0053】
「対象」という用語は哺乳類、好ましくはヒトを指す。本発明によれば、対象は不整脈に罹患している哺乳類、好ましくはヒトである。一実施形態によれば、対象は「患者」、すなわち医療を受けるために待っているか受けている、または過去に医療処置の対象であったか現在対象であるか今後対象になる、あるいは不整脈の発生について監視されている哺乳類、好ましくはヒトである。
【0054】
「ヒト」という用語は、両性別の任意の成長段階にある対象(言い換えると新生児、乳幼児、少年少女、青年、成人)を指す。
【0055】
本明細書で使用される「治療的に有効な量」という用語(またはより単純に「有効量」)は、不整脈の1つ以上の症状または発現の治療、予防、減少、軽減または減速(減衰)を必要としている対象にとって重大なマイナスすなわち望ましくない副作用を引き起こさない、ターゲットとなる活性薬剤または活性成分の量を指す。
【0056】
本明細書で使用される「治療すること」または「治療」という用語は、治療処置、予防的治療、または治療処置および予防的治療の両方を意味し、その目的はそれを必要としている対象における不整脈の1つ以上の症状または発現を予防、減少、軽減および/または減速(減衰)することである。不整脈の症状および発現としては、限定されるものではないが、心臓リズムの変化、息切れおよび疲労が挙げられる。一実施形態では、「治療すること」または「治療」は治療処置を指す。別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は予防的治療を指す。さらに別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、予防的治療および治療処置の両方を意味する。一実施形態では、本発明に係る治療の目的は、以下の要素:
(a)患者の臨床的状態の改善、特に動悸、息切れおよび/または疲労の減少または消失、
(b)心臓リズムの正常化
のうちの少なくとも1つをもたらすことである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
従って本発明は、不整脈の治療のためのニコチンアミドモノヌクレオチド誘導体の使用に関する。
【0058】
不整脈を治療するための化合物
本発明は、不整脈の治療におけるその使用のための式(I)の化合物:
【化13】
(式中、
-XはO、CH、S、Se、CHF、CFおよびC=CHから選択され、
-RはH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
-R、R、RおよびRは互いに独立してH、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C~C12アルキル、C~C12チオアルキル、C~C12ヘテロアルキル、C~C12ハロアルキルおよびORから選択され、式中、RはH、C~C12アルキル、C(O)(C~C12)-アルキル、C(O)NH(C~C12)-アルキル、C(O)O(C~C12)-アルキル、C(O)-アリール、C(O)(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)NH(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)O(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリールおよびC(O)CHRAANHから選択され、式中、RAAはタンパク質を構成するアミノ酸から選択される側鎖であり、
-RはH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
-RはP(O)R10、P(S)R10および
【化14】
から選択され、式中、
およびR10は互いに独立してOH、OR11、NHR13、NR1314、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C12アリール、(C~C12)-アリール-(C~C)-アルキル、(C~C)-アルキル-(C~C12)-アリール、(C~C)-ヘテロアルキル、(C~C)-ヘテロシクロアルキル、(C~C12)-ヘテロアリールおよびNHCRαα’C(O)R12から選択され、式中、
-R11はC~C10アルキル、C~C10シクロアルキル、C~C12アリール、(C~C10)-アルキル-(C~C12)-アリール、C~C12置換アリール、C~C10ヘテロアルキル、C~C10ハロアルキル、-(CHC(O)(C~C15)-アルキル、-(CHOC(O)(C~C15)-アルキル、-(CHOC(O)O(C~C15)-アルキル、-(CHSC(O)(C~C15)-アルキル、-(CHC(O)O(C~C15)-アルキル、-(CHC(O)O(C~C15)-アルキル-アリールおよびP(O)(OH)OP(O)(OH)、内部もしくは外部対イオンから選択され、式中、mは1~8から選択される整数であり、
-R12は水素、C~C10アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10ハロアルキル、C~C10シクロアルキル、C~C10ヘテロシクロアルキル、C~C12アリール、(C~C)-アルキル-(C~C12)-アリールおよびC~C12ヘテロアリールから選択され、ここでは前記アリールもしくはヘテロアリール基はハロゲン、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシおよびシアノから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されており、
-R13およびR14は独立してH、C~Cアルキルおよび(C~C)-アルキル-(C~C12)-アリールから選択され、
-RαおよびRα’は独立して水素、C~C10アルキル、C~C10アルケニル、C~C10アルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C10チオアルキル、C~C10ヒドロキシルアルキル、(C~C10)-アルキル-(C~C12)-アリール、C~C12アリール、-(CHNHC(=NH)NH、(1H-インドール-3-イル)-メチル、(1H-イミダゾール-4-イル)-メチル、およびタンパク質を構成するかタンパク質を構成しないアミノ酸から選択される側鎖から選択され、ここでは前記アリール基はヒドロキシル、C~C10アルキル、C~Cアルコキシ、ハロゲン、ニトロおよびシアノから選択される基によって任意に置換されており、
あるいはRおよびR10はそれらが結合しているリン原子と共に6員環を形成し、-R-R10は-CH-CH-CHR-または-O-CH-CH-CHR-O-を表し、式中、Rは水素、C~CアリールおよびC~Cヘテロアリールから選択され、ここでは前記アリールもしくはヘテロアリール基はハロゲン、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシおよびシアノから選択される1つもしくは2つの基によって任意に置換されており、
X’はO、CH、S、Se、CHF、CFおよびC=CHから選択され、
はH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
2’、R3’、R4’およびR5’は互いに独立してH、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C~C12アルキル、C~C12チオアルキル、C~C12ヘテロアルキル、C~C12ハロアルキルおよびORから選択され、式中、RはH、C~C12アルキル、C(O)(C~C12)-アルキル、C(O)NH(C~C12)-アルキル、C(O)O(C~C12)-アルキル、C(O)-アリール、C(O)(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)NH(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリール、C(O)O(C~C12)-アルキル-(C~C12)-アリールおよびC(O)CHRAANHから選択され、式中、RAAはタンパク質を構成するアミノ酸から選択される側鎖であり、
6’はH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
8’はH、OR、NHR15’、NR15’16’、NH-NHR15’、SH、CN、Nおよびハロゲンから選択され、式中、R15’およびR16’は互いに独立してH、C~CアルキルおよびC~Cアルキル-アリールから選択され、
Y’はCH、CH、C(CHおよびCCHから選択され、
nは1~3から選択される整数であり、
【化15】
はY’に従って単結合または二重結合を表し、かつ
【化16】
はR1’の位置に従ってαもしくはβアノマーを表し、
-RはH、OR、NHR15、NR1516、NH-NHR15、SH、CN、Nおよびハロゲンから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、かつR15およびR16は互いに独立してH、C~CアルキルおよびC~Cアルキル-アリールおよび-CHRAACOHから選択され、式中、RAAはタンパク質を構成するかタンパク質を構成しないアミノ酸から選択される側鎖であり
-YはCH、CH、C(CHおよびCCHから選択され、
【化17】
はYに従って単結合または二重結合を表し、かつ
【化18】
はRの位置に従ってαもしくはβアノマーを表す)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。
【0059】
一実施形態によれば、式(I)において
-XはO、CH、S、Se、CHF、CFおよびC=CHから選択され、
-RはH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
-R、R、RおよびRは互いに独立してH、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C~C12アルキル、C~C12チオアルキル、C~C12ヘテロアルキル、C~C12ハロアルキルおよびORから選択され、式中、RはH、C~C12アルキル、C(O)(C~C12)-アルキル、C(O)NH(C~C12)-アルキル、C(O)O(C~C12)-アルキル、C(O)-アリール、C(O)(C~C12)-アルキルアリール、C(O)NH(C~C12)-アルキルアリール、C(O)O(C~C12)-アルキルアリールおよびC(O)CHRAANHから選択され、式中、RAAはタンパク質を構成するアミノ酸から選択される側鎖であり、
-RはH、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C~Cチオアルキル、C~CヘテロアルキルおよびORから選択され、式中、RはHおよびC~Cアルキルから選択され、
-RはH、P(O)R10およびP(S)R10から選択され、式中、RおよびR10は互いに独立してOH、OR11、C~Cアルキル、C~C12アリールおよびNHCHRAAC(O)R12から選択され、式中、
-R11はC~Cアルキル、C~C12アリールおよびP(O)(OH)OP(O)(OH)から選択され、
-R12はC~Cアルキルであり、かつ
-RAAはタンパク質を構成するアミノ酸から選択される側鎖であり、
-RはH、OR、NHR13’、NR13’14’、NH-NHR13’、SH、CN、Nおよびハロゲンから選択され、式中、R13’およびR14’は互いに独立してH、C~CアルキルおよびC~Cアルキル-アリールから選択され、
-YはCH、CH、C(CHおよびCCHから選択され、
【化19】
はYに従って単結合または二重結合を表し、かつ
【化20】
はRの位置に従ってαもしくはβアノマーを表す。
【0060】
一実施形態によれば、XはO、CHおよびSから選択される。好ましい実施形態では、Xは酸素である。
【0061】
一実施形態によれば、RおよびRはそれぞれ互いに独立して水素またはOHを表す。一実施形態では、RおよびRはそれぞれ水素を表す。
【0062】
一実施形態によれば、Rは水素またはOHから選択される。一実施形態では、RはOHである。一実施形態では、Rは水素である。
【0063】
一実施形態によれば、R、R、RおよびRは互いに独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、C~C12アルキルおよびORから選択され、式中、Rは上に定義されているとおりである。好ましい実施形態では、R、R、RおよびRは互いに独立してH、ヒドロキシルおよびORから選択され、式中、Rは上に定義されているとおりである。より好ましい実施形態では、R、R、RおよびRは互いに独立して水素またはOHから選択される。
【0064】
一実施形態によれば、RおよびRは同一である。一実施形態では、RおよびRは同一であり、かつOHを表す。一実施形態では、RおよびRは同一であり、かつ水素を表す。
【0065】
一実施形態によれば、RおよびRは異なる。好ましい実施形態では、Rは水素であり、かつRはOHである。より好ましい実施形態では、RはOHであり、かつRは水素である。
【0066】
一実施形態によれば、RおよびRは同一である。一実施形態では、RおよびRは同一であり、かつOHを表す。一実施形態では、RおよびRは同一であり、かつ水素を表す。
【0067】
一実施形態によれば、RおよびRは異なる。好ましい実施形態では、RはOHであり、かつRは水素である。より好ましい実施形態では、Rは水素であり、かつRはOHである。
【0068】
一実施形態によれば、RおよびRは異なる。一実施形態では、RはOHであり、かつRは水素である。一実施形態では、Rは水素であり、かつRはOHである。
【0069】
一実施形態によれば、RおよびRは同一である。好ましい実施形態では、RおよびRは同一であり、かつOHを表す。より好ましい実施形態では、RおよびRは同一であり、かつ水素を表す。
【0070】
一実施形態によれば、RおよびRは異なる。一実施形態では、Rは水素であり、かつRはOHである。一実施形態では、RはOHであり、かつRは水素である。
【0071】
一実施形態によれば、RおよびRは同一である。好ましい実施形態では、RおよびRは同一であり、かつ水素を表す。より好ましい実施形態では、RおよびRは同一であり、かつOHを表す。
【0072】
一実施形態によれば、Rは水素またはOHから選択される。一実施形態では、RはOHである。好ましい実施形態では、Rは水素である。
【0073】
一実施形態によれば、Rは水素、P(O)R10および
【化21】
から選択され、式中、
、R10、R1’~R6’、R8’、X’、Y’、n、
【化22】
および
【化23】
は上に記載されているとおりである。
【0074】
一実施形態によれば、Rは水素またはP(O)R10から選択され、式中、RおよびR10は上に定義されているとおりである。一実施形態では、Rは水素またはP(O)(OH)から選択される。
【0075】
一実施形態では、Rは水素である。別の実施形態では、Rは水素ではない。
【0076】
一実施形態では、RはP(O)R10であり、式中、RおよびR10は上に定義されているとおりである。好ましい実施形態では、RはP(O)(OH)である。
【0077】
別の実施形態では、Rは、
【化24】
であり、式中、
1’、R2’、R3’、R4’、R5’、R6’、R8’、R、X’、Y’、n、
【化25】
および
【化26】
は上に定義されているとおりである。
【0078】
特定の実施形態では、Rは、
【化27】
であり、式中、
X’はO、CHおよびSから選択され、好ましくはX’は酸素であり、
1’はHおよびOHから選択され、好ましくはR1’はHであり、
2’、R3’、R4’およびR5’は互いに独立してH、ハロゲン、ヒドロキシル、C~C12アルキルおよびORから選択され、式中、Rは上に定義されているとおりであり、好ましくはR2’、R3’、R4’およびR5’は互いに独立してHおよびOHから選択され、
6’はHまたはOHから選択され、好ましくはR6’はHであり、
8’はH、OR、NHR15’またはNR15’16’から選択され、式中、R15’およびR16’は上に記載されているとおりであり、好ましくはR8’はNHであり、
Y’はCHまたはCHから選択され、
nは1~3から選択される整数であり、好ましくはnは2に等しく、
【化28】
はY’に従って単結合または二重結合を表し、かつ
【化29】
はR1’の位置に従ってαもしくはβアノマーを表す。
【0079】
一実施形態によれば、nは1に等しい。一実施形態によれば、nは2に等しい。一実施形態によれば、nは3に等しい。
【0080】
一実施形態では、RはH、OR、NHR15およびNR1516から選択され、式中、R15およびR16は上に定義されているとおりである。好ましい実施形態では、RはNHR15であり、式中、R15は上に定義されているとおりである。好ましい実施形態では、RはNHである。
【0081】
一実施形態では、YはCHである。一実施形態では、YはCHである。
【0082】
好ましい実施形態によれば、本出願の式および特に以下に詳述されている式において、Rは水素ではない。
【0083】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-1)の化合物:
【化30】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、X、Y、
【化31】
および
【化32】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0084】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-2)の化合物:
【化33】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、X、Y、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、X’、Y’、
【化34】
および
【化35】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0085】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物はXが酸素を表す化合物である。
【0086】
好ましい実施形態では式(I)の化合物のうち、本発明は式(II)の化合物:
【化36】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化37】
および
【化38】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物にも関する。
【0087】
好ましい実施形態では、式(II)の化合物は、式(II-1)の化合物:
【化39】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化40】
および
【化41】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0088】
好ましい実施形態では、式(II)の化合物は、式(II-2)の化合物:
【化42】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、Y、R’、R’、R’、R’、R’、R’、R’、Y’、
【化43】
および
【化44】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0089】
好ましい実施形態では、式Iの化合物はRが水素である化合物である。
【0090】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物のうち、本発明は式(III)の化合物:
【化45】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化46】
および
【化47】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物にも関する。
【0091】
好ましい実施形態では、式(III)の化合物は、式(III-1)の化合物:
【化48】
(式中、R、R、R、R、R、R、Y、
【化49】
および
【化50】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0092】
好ましい実施形態では、式(III)の化合物は、式(III-2)の化合物:
【化51】
(式中、R、R、R、R、R、R、Y、R’、R’、R’、R’、R’、R’、Y’、
【化52】
および
【化53】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0093】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物はRがOHであり、かつRが水素である化合物である。
【0094】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物はRが水素であり、かつRがOHである化合物である。
【0095】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物はRおよびRが同一であり、かつ水素を表す化合物である。
【0096】
好ましい実施形態では式(I)の化合物のうち、本発明は式(IV)の化合物:
【化54】
(式中、R、R、R、R、R、Y、
【化55】
および
【化56】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物にも関する。
【0097】
好ましい実施形態では、式(IV)の化合物は、式(IV-1)の化合物:
【化57】
(式中、R、R、R、R、Y、
【化58】
および
【化59】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0098】
好ましい実施形態では、式(IV)の化合物は、式(IV-2)の化合物:
【化60】
(式中、R、R、R、R、Y、R’、R’、R’、R’、Y’、
【化61】
および
【化62】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0099】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、RおよびRが同一であり、かつOHを表す化合物である。
【0100】
好ましい実施形態では式(I)の化合物のうち、本発明は、式(V)の化合物:
【化63】
(式中、R、R、R、Y、
【化64】
および
【化65】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物にも関する。
【0101】
好ましい実施形態では、式(V)の化合物は、式(V-1)の化合物:
【化66】
(式中、R、R、Y、
【化67】
および
【化68】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0102】
好ましい実施形態では、式(V)の化合物は、式(V-2)の化合物:
【化69】
(式中、R、R、Y、R’、R’、Y’、
【化70】
および
【化71】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0103】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物はRが水素である化合物である。
【0104】
好ましい実施形態では式(I)の化合物のうち、本発明は、式(VI)の化合物:
【化72】
(式中、R、R、Y、
【化73】
および
【化74】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物にも関する。
【0105】
好ましい実施形態では、式(VI)の化合物は、式(VI-1)の化合物:
【化75】
(式中、R、Y、
【化76】
および
【化77】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0106】
好ましい実施形態では、式(VI)の化合物は、式(VI-2)の化合物:
【化78】
(式中、R、Y、R’、Y’、
【化79】
および
【化80】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0107】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、RがNHである化合物である。
【0108】
好ましい実施形態では式(I)の化合物のうち、本発明は式(VII)の化合物:
【化81】
(式中、R、Y,
【化82】
および
【化83】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物にも関する。
【0109】
好ましい実施形態では、式(VII)の化合物は、式(VII-1)の化合物:
【化84】
(式中、Y、
【化85】
および
【化86】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0110】
好ましい実施形態では、式(VII)の化合物は、式(VII-2)の化合物:
【化87】
(式中、Y、Y’、
【化88】
および
【化89】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0111】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物はYがCHである化合物である。
【0112】
好ましい実施形態では式(I)の化合物のうち、本発明は、式(VIII)の化合物:
【化90】
(式中、Rおよび
【化91】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物にも関する。
【0113】
好ましい実施形態では、式(VIII)の化合物は、式(VIII-1)の化合物:
【化92】
(式中、
【化93】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0114】
好ましい実施形態では、式(VIII)の化合物は、式(VIII-2)の化合物:
【化94】
(式中、
【化95】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0115】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物はYがCHである化合物である。
【0116】
好ましい実施形態では式(I)の化合物のうち、本発明は、式(IX)の化合物:
【化96】
(式中、Rおよび
【化97】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物にも関する。
【0117】
好ましい実施形態では、式(IX)の化合物は、式(IX-1)の化合物:
【化98】
(式中、
【化99】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0118】
好ましい実施形態では、式(IX)の化合物は、式(IX-2)の化合物:
【化100】
(式中、
【化101】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0119】
特定の実施形態では、式(I)の化合物はRが水素である化合物である。
【0120】
好ましい実施形態では式(I)の化合物のうち、本発明は、式(X)の化合物:
【化102】
(式中、Y、
【化103】
および
【化104】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物にも関する。
【0121】
一実施形態によれば、本発明の化合物は以下の表2の化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物から選択される。
【表2】
【0122】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、上の表2の式I-A、I-C、I-EおよびI-Gの化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0123】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、上の表2の式I-CおよびI-Gの化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0124】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、上の表2の式I-CおよびI-Dの化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0125】
より好ましい実施形態では、本発明の化合物は、式I-Cの化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0126】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、上の表2の式I-I、I-J、I-K、I-L、I-MおよびI-Nの化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。好ましい実施形態では、本発明の化合物は、上の表2の式I-I、I-JおよびI-Kの化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0127】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、上の表2の式I-C、I-D、I-I、I-JおよびI-Kの化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0128】
不整脈を治療するための医薬組成物
別の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種の本発明の化合物および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0129】
別の実施形態によれば、本発明は少なくとも1種の本発明の化合物を含む薬物に関する。
【0130】
一実施形態では、本発明の医薬組成物または本発明の薬物は追加として、活性物質、治療薬および/またはさらなる活性物質として少なくとも1種の本発明の化合物を含む。治療薬および/またはさらなる活性物質の非限定的な例は、カリポリド、ゾニポリドまたはアミロライドなどのNa/H交換選択阻害剤、アテノロール、メトプロロールなどのβ遮断薬、ベラパミルなどのカルシウム阻害剤または抗凝固薬を含む。
【0131】
方法
別の態様によれば、本発明は上に記載されている式(I)の化合物を調製する方法に関する。
【0132】
特に本明細書に開示されている式(I)の化合物は、以下に記載するように基材A~Eから調製することができる。当業者であれば、これらの反応スキームは決して限定的なものではなく、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく変形を行うことができることを理解しているであろう。
【0133】
一実施形態によれば、本発明は、上に記載されている式(I)の化合物を調製する方法に関する。
【0134】
本方法は第1の工程において、塩化ホスホリルおよびリン酸トリアルキルの存在下で式(A)の化合物の一リン酸化を行って、式(B)のホスホロジクロリダートを得ることを含む:
【化105】
(式中、X、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化106】
および
【化107】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)。
【0135】
第2の工程では、式(B)のホスホロジクロリダートを加水分解して式(C)のホスフェートを得る:
【化108】
(式中、X、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化109】
および
【化110】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)。
【0136】
一実施形態によれば、式(A)の化合物は当業者に知られている各種方法を用いて合成する。
【0137】
一実施形態によれば、式(A)の化合物は、式(D)の五炭糖を式(E)の窒素性誘導体と反応させることにより合成し(式中、R、R、R、R、R、R、R、Yは式Iの化合物について上に記載されているとおりである)、式(A-1)の化合物:
【化111】
(式中、X、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化112】
および
【化113】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである)
を得、次いでこれを式(A)の化合物を得るために選択的に脱保護する。
【0138】
一実施形態によれば、Rは当業者に知られている好適な保護基である。一実施形態では、保護基はトリアリールメチルおよび/またはシリルから選択される。トリアリールメチルの非限定的な例としては、トリチル、モノメトキシトリチル、4,4’-ジメトキシトリチルおよび4,4’,4’’-トリメトキシトリチル基が挙げられる。シリル基の非限定的な例としては、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリルオキシメチルおよび[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル基が挙げられる。
【0139】
一実施形態によれば、五炭糖に結合される任意のヒドロキシル基は当業者に知られている好適な保護基によって保護されている。
【0140】
保護基の選択および交換は当業者の技量の範囲内である。保護基は当業者によく知られている方法によって、例えば酸(例えば、無機もしくは有機酸)、塩基またはフッ化物源により除去することもできる。
【0141】
好ましい実施形態では、式(E)の窒素性誘導体をルイス酸の存在下での反応により式(D)の五炭糖に結合させ、式(A-1)の化合物を得る。ルイス酸の非限定的な例としては、TMSOTf、BF・OEt、TiClおよびFeClが挙げられる。
【0142】
一実施形態では、本発明の方法は、式(A)の化合物を当業者によく知られている各種方法により還元させてCHを含む式(A’)の化合物を得ることをさらに含み、式中、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化114】
および
【化115】
は式(I)の化合物について上に定義されているとおりである。
【0143】
特定の実施形態では、本発明は式I-A、I-C、I-E、I-Gの化合物を調製する方法に関する。
【0144】
第1の工程では、式Eのニコチンアミドをルイス酸の存在下でのカップリング反応により式Dのリボーステトラアセタートに結合させ、式A-1の化合物を得る。
【化116】
【0145】
第2の工程では、式A-1の化合物のアンモニア処理を行い、式I-Aの化合物を得る。
【化117】
【0146】
第3工程では、塩化ホスホリルおよびリン酸トリアルキルの存在下での式I-Aの化合物の一リン酸化により、式I-A’のホスホロジクロリダートを得る。
【化118】
【0147】
第4工程では、式I-Cの化合物を得るために式Bのホスホロジクロリダートを加水分解する。
【化119】
【0148】
一実施形態では、式I-Aの化合物を還元する工程を行い、式I-Eの化合物を得る。
【0149】
次いで式I-Eの化合物を第4の工程について記載されているように一リン酸化し、式I-Gの化合物を得るために加水分解する。
【0150】
一実施形態によれば、本発明の化合物は任意の好適な方法、特に欧州特許出願公開第19218817.5号、第20190010.7号および第20215832.5号に記載されている方法により調製することができる。
【0151】
使用
従って、本発明は不整脈の治療におけるその使用のための本発明の化合物に関する。
【0152】
一実施形態によれば、本発明は、不整脈の治療におけるその使用のための上に記載されている式(I)~(XI)の化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。
【0153】
一実施形態では、本発明は、不整脈の予防的治療におけるその使用のための上に記載されている式(I)~(XI)の化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。
【0154】
一実施形態では、本発明は、心室頻拍の治療におけるその使用のための上に記載されている式(I)~(XI)の化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。
【0155】
一実施形態では、本発明は、心室頻拍の予防的治療におけるその使用のための上に記載されている式(I)~(XI)の化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。
【0156】
一実施形態では、本発明は、心室細動の治療におけるその使用のための上に記載されている式(I)~(XI)の化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。
【0157】
一実施形態では、本発明は、心室細動の予防的治療におけるその使用のための上に記載されている式(I)~(XI)の化合物あるいはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。
【0158】
別の実施形態によれば、本発明は、不整脈の治療におけるその使用のための少なくとも1種の本発明の化合物および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0159】
別の実施形態によれば、本発明は、不整脈の治療におけるその使用のための少なくとも1種の本発明の化合物を含む薬物に関する。
【0160】
一実施形態では、本発明の医薬組成物または本発明の薬物は追加として、活性物質、治療薬および/またはさらなる活性物質として少なくとも1種の本発明の化合物を含む。治療薬および/またはさらなる活性物質の非限定的な例としては、カリポリド、ゾニポリドおよびアミロライドなどのNa/H交換の選択的阻害剤が挙げられる。
【0161】
一実施形態によれば、本発明は、不整脈の治療のための上に記載されている本発明の化合物の使用に関する。一実施形態では、本発明は、不整脈の予防的治療のための上に記載されている本発明の化合物の使用に関する。
【0162】
別の実施形態によれば、本発明は、不整脈の治療のための少なくとも1種の本発明の化合物および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の使用に関する。
【0163】
別の実施形態によれば、本発明は、不整脈の治療のための少なくとも1種の本発明の化合物を含む薬物の使用に関する。
【0164】
一実施形態では、本発明は、不整脈の治療のための薬物の製造のための上に記載されている本発明の化合物の使用に関する。
【0165】
本発明は、それを必要とする対象における不整脈を治療するための方法であって、治療的に有効な量の上に記載されている少なくとも1種の本発明の化合物または組成物を前記対象に投与することを含む方法にも関する。
【0166】
一実施形態では、治療的もしくは予防的治療を必要としている対象は医療専門家によって診断されている。実際に不整脈は、医学的環境において日常的に行われている任意の検査、特に心電図、ストレス試験または電気生理学的検査によって診断される。
【0167】
好ましくは対象は温血動物、より好ましくはヒトである。
【0168】
一実施形態によれば、本発明の化合物は、1種以上の本発明の化合物あるいは活性物質として本発明の化合物を含む組成物または薬物が、治療薬および/またはさらなる活性物質との組み合わせで同時投与される併用療法の枠組みの中で投与することができる。
【0169】
一実施形態では、本発明の化合物、本発明の医薬組成物または本発明の薬物は、異常組織の焼灼への補完として使用される。
【0170】
一実施形態では、本発明の化合物は血漿、NADおよび/またはNAD促進因子の投与を含む併用療法の枠組みの中で投与されない。「NAD」は、補酵素のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを指す。「NAD促進因子」は、特にNAMPTの正調節因子、NADaseの負調節因子、NNMT(ニコチンアミドN-メチルトランスフェラーゼ)の負調節因子、NMN AT1~3(ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ)の正調節因子、Cx43(コネキシン43)阻害因子、CD73の正調節因子、CD157の負調節因子、AMP5’(AMPK)によって活性化されるキナーゼタンパク質の正調節因子、NRキナーゼ1/2(NRK1/2)の正調節因子、NARPTの正調節因子、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRT)の正調節因子、NAD合成酵素1(NADSyn1)の正調節因子、miARN-34aの負調節因子、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)の正調節因子およびNQO1の正調節因子ならびにそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を指す。「負調節因子」という用語は阻害因子または抑制因子を意味し、「正調節因子」という用語は活性化因子または促進因子を意味する。
【0171】
上記実施形態において、本発明の化合物および他の治療用活性剤は剤形の点で別々にまたは互いに組み合わせて、投与時間の点で連続的または同時に投与することができる。
【0172】
一般に医薬用途のために、本発明の化合物は少なくとも1種の本発明の化合物および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と、任意に1種以上の他の薬学的に活性な化合物とを含む医薬品の形態で製剤化することができる。
【0173】
非限定的な例として、そのような製剤は経口投与、非経口投与(例えば静脈内、筋肉内もしくは皮下注射または静脈内灌流)、局所投与(眼投与を含む)、吸入による投与、皮膚パッチによる投与、植込錠による投与、坐薬による投与などに適した形態であってもよい。投与方法およびそれらの調製のために使用される方法ならびに支持体、希釈液および賦形剤に応じて固体、半固体または液体であってもよいこれらの好適な投与形態は当業者に明らかであり、レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)の最新版を参照されたい。
【0174】
限定されるものではないが好ましいそのような製剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セルロース、(無菌)水、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、食用油、植物油および鉱油または好適なそれらの混合物などの、そのような製剤のためにそれ自体好適な支持体、賦形剤および希釈液と共に製剤化することができる錠剤、丸剤、粉末、トローチ剤、小袋、ウェーハカプセル、エリキシル剤、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、軟膏、クリーム、ローション剤、軟および硬ゼラチンカプセル、無菌注射溶液ならびにボーラス投与および/または連続投与のための無菌包装粉末(一般に使用前に再構成される)が挙げられる。当該製剤は任意に、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、分散剤、崩壊剤、増量剤、充填剤、防腐剤、甘味料、香料、流量調整剤、離型剤などの医薬製剤によく使用される他の物質を含有していてもよい。当該組成物は、それらが含有する1種以上の活性な化合物の迅速、持続もしくは遅延放出を保証するように製剤化することもできる。
【0175】
本発明の医薬品は好ましくは単位用量の形態であり、例えば箱、ブリスター、瓶、小袋、アンプルまたは任意の他の好適な単回用量もしくは複数回用量用の支持体または容器(正確にラベル付けすることができる)に、任意に製品に関する情報および/または使用のための説明書を含む1枚以上のリーフレットと共に好適に包装することができる。一般にこれらの単位用量は、1~1000mg、一般に1~500mg、好ましくは250~500mgの少なくとも1種の本発明の化合物を含有する。
【0176】
実際に投与される有効用量は、特に投与のために使用される機器、年齢、性別、身長、体重、身体的状態および治療される障害の重症度を含む1つ以上のパラメータによって決まる。
【0177】
一般に本発明の活性化合物は単回1日用量として、1回以上の1日用量に分けて、あるいは本質的に連続的に、例えば点滴を用いて投与することができる1日当たりヒト患者の体重1キログラム当たり0.1mg~5000mg、より多くの場合に体重1キログラム当たり1mg~2000mg、好ましくは体重1キログラム当たり1~100mg、例えば体重1キログラム当たり約1、10、100mgで投与する。
【図面の簡単な説明】
【0178】
図1図1は虚血中に分析された心室頻拍の発生率(図1A)および持続期間(図1B)を示すヒストグラムである。
図2図2は虚血中に分析された心室細動の発生率(図2A)および持続期間(図2B)を示すヒストグラムである。
図3図3は再灌流中に分析された心室頻拍の発生率(図3A)および持続期間(図3B)を示すヒストグラムである。
図4図4は再灌流中に分析された心室細動の発生率(図4A)および持続期間(図4B)ならびにこの期間中の心室細動の数(図4C)を示すヒストグラムである。
図5図5は生理食塩水、式I-Cの化合物およびカリポリドで治療されたラットの死亡率を示すヒストグラムである。
図6図6は担体またはDOX(20mg/kg)の注射から5日後の心拍数を示すヒストグラムである。***p<0.001:t-検定またはマンホイットニー検定(対照マウスに対して担体で治療したDOXマウス)、$$$p<0.001:一元配置分散分析およびその後の事後ダネット検定またはクラスカル・ワリス検定およびその後の事後ダン検定(担体で治療したDOXマウスに対してNMN類似体(180mg/kg)または担体で治療したDOXマウス)。
【実施例
【0179】
本発明は、非限定的な方法で本発明を例示する以下の実施例を読めばよりよく理解されるであろう。
【0180】
I.本発明の化合物の合成
1.材料および方法
全ての化学物質は市販の供給業者から得て、さらに精製することなく使用した。薄層クロマトグラフィをMerck社からのTLCシリカゲル60 F254のプラスチックシート(厚さ0.2mmの層)に対して行った。カラムクロマトグラフィによる精製をシリカゲル60(70~230メッシュのASTM、Merck社)に対して行った。融点は、デジタル装置(Electrothermal IA 8103)で決定して補正しないか、WME Koflerベンチ(Wagner&Munz社)で決定した。IR、H、19Fおよび13C NMRスペクトルにより全ての化合物の構造を確認した。IRスペクトルをPerkin Elmer Spectrum 100 FT-IR分光計により記録し、H スペクトルのために300もしくは400MHz、13Cスペクトルのために75もしくは100MHzおよび19Fスペクトルのために282もしくは377MHzで、溶媒としてCDCl、CDCN、DOまたはDMSO-dを用いてBRUKER AC 300もしくは400分光計によりNMRスペクトルを記録した。化学シフト(δ)は、(i)HのためにCHCl(δ7.27)および(ii)13CのためにCDCl(δ77.2)に対して間接的に、(iii)19FのためにCFCl(内部標準)(δ0)に対して直接的に、シグナルに関して100万分の1で表した。化学シフトはppmで示し、ピークの多重度は、s:一重線、br s:幅広い一重線、d:二重線、dd:二重線の二重線、t:三重線、q:四重線、quint:五重線、m:多重線で表わす。高分解能質量スペクトル(HRMS)は「Service central d’analyse de Solaize」(Centre national de la recherche scientifique)から得て、エレクトロスプレーイオン化-TOF(ESI-TOF)を用いてWaters社製分光計で記録した。
【0181】
一般的な手順
工程1:式A-1の化合物の合成
式Dの化合物(1.0当量)をジクロロメタンに溶解する。式Eのニコチンアミド(1.50当量)およびTMSOTf(1.55当量)を周囲温度で添加した。混合物を還流しながら加熱し、反応が達成されるまで撹拌する。混合物を周囲温度まで冷却し、濾過する。濾液を濃縮乾固してテトラアセタートA-1を得る。
【0182】
工程2:式I-Aの化合物の合成
テトラアセタートA-1をメタノールに溶解し、-10℃まで冷却する。4.6Mのアンモニアのメタノール(3.0当量)溶液を-10℃で添加し、混合物をこの温度で反応が完了するまで撹拌する。Dowex HCR(H+)樹脂を6~7のpHになるまで添加する。反応混合物を0℃まで加熱し、濾過する。この樹脂をメタノールおよびアセトニトリルの混合物で洗浄する。濾液を濃縮乾固する。残留物をアセトニトリルに溶解し、濃縮乾固する。残留物をアセトニトリルに溶解して式I-Aの化合物の溶液を得る。
【0183】
工程3:式I-A’の化合物の合成
式I-Aの化合物のアセトニトリル粗製溶液をリン酸トリメチル(10.0当量)で希釈する。このアセトニトリルを真空下で蒸留し、混合物を-10℃まで冷却する。オキシ塩化リン(4.0当量)を-10℃で添加し、混合物を-10℃で反応が終了するまで撹拌する。
【0184】
工程4および5:式I-Cの化合物の合成
アセトニトリルおよび水の50/50混合物の添加により混合物を加水分解し、次いでtert-ブチルメチルエーテルを添加する。混合物を濾過し、固体を水に溶解する。この水溶液を炭酸水素ナトリウムの添加により中和し、ジクロロメタンで抽出する。式I-Cの粗製化合物を得るために水層を濃縮乾固し、これを水での溶出を用いるDOWEX 50wx8カラム、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する。
【0185】
II.虚血-再灌流によって誘発させた不整脈のモデルにおける本発明の化合物の評価
この研究の目的は、NAD前駆体の投与により虚血-再灌流ラットにおける不整脈の出現を減衰させることができるか否かを評価することであった。
【0186】
全ての手順は実験動物の管理と使用のためのガイドライン(1996および2011年に改訂、2010/63/UE)およびフランスの法律に従って行った。
【0187】
1.材料および方法
1.1.材料
1.1.1.試験した製品
【表3】
【0188】
1.1.2.参照製品
【表4】
【0189】
1.1.3.担体
生理食塩水
【0190】
1.1.4.使用した動物
【表5】
【0191】
これらの動物は、順化期間および実験段階全体を通してGR900エンリッチケージ(905CM2、Tecniplast社)である換気された飼育ケージに収容した。動物ケージには動物を完全に覆うのに十分なネスティング材料(Sizzle-Nest:Bio-service社製の漂白してない褐色クラフト紙)、木棒(Bio-service社製のポプラ木片)が備え付けられていた。動物ケージ敷料(化学処理をしていないポプラ材の粒子、SDS DIETEX社製の化学処理をしていない粉砕され、防塵処理され、篩にかけられ、かつ脱水された一般的な木材)は少なくとも1週間に1回交換した。それらを2匹の動物の群に分けて、標準的な12時間の明サイクル(20:00に明かりを消す)により22±2℃および55±10%の相対湿度で収容した。
【0192】
少なくとも5日間の順化期間を適用した。
【0193】
この段階全体を通して、SDS水および水道水を自由に与えた。
【0194】
ラットの中の虚血-再灌流の急性モデルにおいて不整脈を得た。
【0195】
1.1.5.治療
投与計画および試験群:
【表6】
【0196】
1.2.方法
1.2.1.静脈カテーテル法および血圧/ECG記録
【0197】
最初にラットを麻酔し、次いで挿管して機械的に換気した後、外科手術のために準備をした。
【0198】
次いでカテーテルを動脈圧を測定するために頸動脈に配置し、かつ薬物の灌流のために尾静脈に配置した。動脈カテーテルは、近くに位置するトランスデューサに圧力を送る流体で満たされたカテーテルからなる。平均動脈圧を電子的に計算し、連続的に記録する。
【0199】
3誘導心電図(ECG)を、肢に取り付けられた針電極を用いて当該手順全体を通して記録した。
【0200】
ECGの変化は、動脈圧(MAP)および心拍数を閉塞-再灌流期間の前および間に測定したことを意味する。不整脈の定義は、Lambeth conventions(Walkerら,Lambeth conventions:虚血梗塞および再灌流における不整脈の研究のためのガイドライン(guidelines for the study of arrhythmias in ischaemia infarction, and reperfusion),Cardiovascular Research,1988,22(7),447-455)に記載されている定義に基づく。異所性活動は、単発の心室性期外収縮(VPB)、心室頻拍(VT、4回以上の連続的VPB)または心室細動(VF、個々のQRS群を区別し、かつレートを測定することができない)として分類されている。動脈圧トレースは、どの種類の異所性活動が生じたかを確認するため、特に多形性VTとVFとを区別するために参照した。1つ目のものが生じた場合、動脈圧は一般にまだ拍動性であるがVFを有し、動脈圧はゼロに向かって急速に低下し、もはや拍動性ではなくなる。VFはラットにおいて持続性であったり自然に正常な正弦波リズムに戻ったりする可能性がある。全ての実験において、TVおよびVFの発生率ならびに心室頻拍の持続期間に注目した。
【0201】
1.2.2.麻酔したラットにおいて虚血-再灌流によって誘発させた不整脈
次いで左肋間開胸によって心臓を露出させた。心膜を開いた後、襟状部を形成するために6.0絹縫合糸をポリプロピレンチューブ上の左冠動脈の周りに配置した。処置から5分後に縫合糸をしっかりと結ぶことにより心臓を7分間の虚血に供した。最後に10分間の心筋組織の再灌流を可能にするために襟状部のオクルーダーを解放した。再灌流期間の最後に、ラットをなお麻酔した状態のまま頸椎脱臼によって安楽死させた。
【0202】
1.2.3.データ分析
平均±その平均に対する標準誤差が示されている。
【0203】
GraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて統計分析を行った。フィッシャー検定を使用して不整脈の発生率の差を分析し、カイ二乗検定を使用して死亡の発生率を比較した。クラスカル・ウォリス検定を使用して頻脈の持続期間と心室細動との差および心室細動の数の差を分析した。
【0204】
全ての試験についてp<0.05を有意であるとみなす。
【0205】
2.結果および考察
ラットを静脈内経路により生理食塩水、185mg/kgの式I-Cの化合物(虚血の30分前)または0.3mg/kgのカリポリド(虚血の5分前)で治療した。これらの動物を7分間の虚血および10分間の再灌流に供した。実験段階全体を通して、動脈圧およびECGプロファイルを連続的に記録した。再灌流の終了から5分後に血液を採取し、心臓の重量を測った。
【0206】
図1は虚血中の心室頻拍の発生率(図1A)および持続期間(図1B)を示す。
【0207】
図2は虚血中に分析された細動の発生率(図2A)および持続期間(図2B)を示す。
【0208】
図3は再灌流中の心室頻拍の発生率(図3A)および持続期間(図3B)を示す。
【0209】
図4は再灌流中の細動の発生率(図4A)および持続期間(図4B)ならびにこの期間中の心室細動の数(図4C)を示す。
【0210】
担体の群において、虚血は動物の半数において心室頻拍を引き起こし(持続期間:4.7±2.4s)、1匹のラットにおいて心室細動が観察され、再灌流は全ての動物において心室頻拍を引き起こし(持続期間:再灌流持続期間の8.9±3.1%)、動物の75%において心室細動を引き起こした(持続期間:再灌流期間の17.8±8.4%、1匹の動物当たり約2回の事象を有する)。
【0211】
さらに図5に示すように、動物の25%において再灌流中の心室性不整脈は不可逆的であり、死に至った。
【0212】
予測されるように、カリポリドによる予防的治療は虚血中の心室頻拍および細動を消失させた。再灌流中にカリポリドは心室頻拍の発生率に対して有益な効果を有しなかったが、持続期間は担体群に関してより短くなる傾向があった。カリポリドは再灌流期間中の心室細動および死亡を消失させた。
【0213】
虚血中の式I-Cの化合物による予防的治療は、心室頻拍の発生率および持続期間を有意に減少させ(発生率:約9%、持続期間:0.2±0.2s)、かつ心室細動を消失させるのを可能にした。カリポリドと同様に、式I-Cの化合物は再灌流中に心室頻拍の発生率に効果を有しなかったが、持続期間を減少させるように見えた。統計的に有意ではないが、担体と比較して式I-Cの化合物によって治療された群において再灌流中に心室細動の発生率を低下させる傾向が観察された(発生率:再灌流持続期間の約55%および持続期間:4.0±2.3%、1匹の動物あたり約1回の事象を有する)。最後に、特に式I-Cの化合物は再灌流期間中に死亡を消失させた。
【0214】
心臓の重量は群間で同様であった。
【0215】
3.結論
梗塞を生じさせ、この梗塞に対するニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の保護効果を研究するために虚血-再灌流は以前に使用されたことがある(Journal of Cardiovascular Pharmacology and Therapeutics,2019,pp.1-11;J.Mol Cell Cardiol.2018,Vol.121,pp.155-162)。
【0216】
このモデルにおいて、少なくとも30分間の虚血および少なくとも60分間の再灌流によって梗塞を誘発させた。これらの深刻な状態により、心臓に血液を供給し、従って酸素を供給する動脈の閉塞により一般に引き起こされ、多少は拡大された領域にわたって心臓の筋肉細胞の死をもたらす梗塞をモデル化することが可能になる。NMNは心臓を保護し、かつ患者が梗塞後により良好に回復するのを可能にすることが分かった。
【0217】
ここでは、あまり深刻でない状態、言い換えると7分間の虚血およびその後の10分間の再灌流は、心室頻拍および(非致命的および致命的)細動を誘発することができる。カリポリドは虚血期間中の不整脈を消失させ、かつ再灌流中の心室細動および死亡を消失させた。式I-Cの化合物は虚血期間中の頻脈および心室細動を消失させ、再灌流中に心室細動を予防する傾向があり、再灌流中の死亡を消失させた。
【0218】
III.ドキソルビシンによって誘発された不整脈のモデルにおける本発明の化合物の評価
この研究の目的は、ドキソルビシンによって誘発された不整脈に対する180mg/kgでの化合物I-C、I-JおよびI-Kの腹腔内投与の効果を評価することであった。
【0219】
1.材料および方法
1.1.材料
1.1.1.動物
到着時に8週齢の76匹の雄のマウスをJanvier Labs(Le Genest St Isle、53941 St Berthevin、フランス)から得た。各動物を電子チップで識別した。
【0220】
1.1.2.製品
化合物I-C、I-JおよびI-Kを試験し、使用前に+4℃で貯蔵した。担体は生理的緩衝液であった。
【0221】
1.2.方法
1.2.1.製剤の調製
化合物I-C、I-JおよびI-K(180mg/kg)の粉末を担体に溶解した(この溶液は最長1日で周囲温度で使用した)。
【0222】
1.2.2.ドキソルビシンによって誘発された不整脈
心毒性による不整脈を20mg/kgでのドキソルビシン(DOX)の単回腹膜内注射によって誘発させた。ドキソルビシンを2mg/mLで調製し、投与体積は10mL/kgであった。対照群には生理食塩水の注射を与えた。
【0223】
1.2.3.実験群
群の説明:
群1:生理食塩水+担体
群2:ドキソルビシン(20mg/kg)+担体
群3:ドキソルビシン(20mg/kg)+化合物I-C(180mg/kg)
群4:ドキソルビシン(20mg/kg)+化合物I-J(180mg/kg)
群5:ドキソルビシン(20mg/kg)+化合物I-K(180mg/kg)
【0224】
群の分布:
各群は14~24匹のマウスを含む。非臨床的実施室研究に関する規定に示されているように、試験群および対照動物を同一条件下に維持した。研究の予測される持続期間は11日間であった。
【0225】
1.2.4.ドキソルビシンによる誘発
0日目にマウスに腹膜内経路によりDOX(20mg/kg)の投与を与えた。
【0226】
1.2.5.治療
化合物I-C、I-JおよびI-Kによる治療はDOXの注射の5日前に開始し、5日目から0日目まで1日1回で行った。
【0227】
マウスをDOXの注射の30分前に、化合物I-C、I-JおよびI-Kにより腹腔内治療した。
【0228】
マウスを実験の持続期間(J0~J5)の間に、化合物I-C、I-JおよびI-Kにより1日1回腹腔内治療した。屠殺の24時間前に最後の注射を行った。
【0229】
1.2.6.心電図による心機能の評価
非侵襲的な2次元心エコー検査(VF16-5プローブ、Siemens社、Acuson NX3 Elite)により、麻酔した動物(イソフルラン1.5~2%)においてドキソルビシンの注射から5日後に心電図(ECG)を作成した。
【0230】
特にECG中に心拍数を評価した。
【0231】
2.結果および考察
図6は、生理食塩水またはDOX(20mg/kg)の注射から5日後の心拍数を示す。
【0232】
ドキソルビシンは対照マウスと比較して心拍数をかなり低下させた(それぞれ365.1±23.9bpm対525.6±19.8bpm)。化合物I-C、I-JおよびI-Kによる治療は心拍数の上昇を引き起こし、化合物I-Jはこのパラメータを有意に向上させた(470.1±18.8bpm(p<.0.001))。
【0233】
故にドキソルビシンによって誘発される心拍数の低下は、化合物I-C、I-JおよびI-Kによる治療によって有意に減衰した。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】