(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】少なくとも1つの物体の位置判定のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20230419BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20230419BHJP
【FI】
G01S5/14
G01S5/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553067
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021050446
(87)【国際公開番号】W WO2021175502
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】102020202642.4
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522350221
【氏名又は名称】フォルシュングスツィントルム ユーリッヒ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Forschungszentrum Julich GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】グリューイング,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ロート,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ローベンス,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】レイ,アレッサンドラ
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC11
5J062DD03
5J062DD23
5J062GG01
5J062GG02
(57)【要約】
本発明は、特に建物の内部の、少なくとも1つの物体の位置判定のための方法およびシステムに関する。少なくとも1つの物体の位置判定のための方法において、少なくとも4つの送信機は、円偏波信号を送信し、位置特定されるための受信機は、円偏波信号を受信する。少なくとも2つ、特にすべての送信機は、異なる周波数の周期信号を送信し、これら周波数は、密に隣接する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に建物の内部の、少なくとも1つの物体の位置判定のための方法であって、少なくとも4つの送信機が、円偏波信号を送信し、位置特定されるための受信機が、前記円偏波信号を受信する、方法において、少なくとも2つ、特にすべての送信機が、異なる周波数の周期信号を送信し、前記周波数が、密に隣接することを特徴とする、方法。
【請求項2】
密に隣接する前記周波数が、離れて送信される前記信号の、1つの帯域幅未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
密に隣接する前記周波数が、離れて送信される前記信号の、周期の逆数未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
密に隣接する前記周波数が、離れて送信される前記信号の、前記周期の逆数の、特に8分の1である4分の1未満であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つ、特にすべての送信機が、3GHz~9GHz、特に4.5GHz~7.5GHz、例えば5.5GHz~6.5GHzの周波数範囲で信号を送信することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つ、特にすべての送信機が、相互的に規定された時間間隔で、前記信号を送信することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つ、特にすべての送信機が、少なくとも期間内に、同時に前記信号を送信することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
特に建物の内部の、少なくとも1つの物体の位置判定のためのシステムであって、円偏波アンテナ(1)を各々有する少なくとも4つの送信機と、円偏波アンテナ(1)を有する位置特定されるための受信機と、を備える、システムにおいて、少なくとも2つ、特にすべての送信機が、異なる周波数の周期信号を送信するように構成されており、それぞれの前記送信機の前記周波数が、密に隣接することを特徴とする、システム。
【請求項9】
少なくとも1つの送信機および/または受信機の前記円偏波アンテナ(1)が、プリント回路板上に配置されていることを特徴とする、請求項8に記載の位置判定のためのシステム。
【請求項10】
少なくとも1つの円偏波アンテナ(1)が、誘電体材料(2)、特にセラミック材料と、前記誘電体材料(2)上に配置された環状導体(3)と、を備え、前記環状導体(3)の半径方向内側には、平面導体(4)が配置されており、前記平面導体(4)が、前記環状導体(3)から離れるように離間して前記誘電体材料(2)上に配置されていることを特徴とする、請求項8または9に記載の位置判定のためのシステム。
【請求項11】
前記受信機が、各送信機に対して、別個の受信セクションを備え、前記受信セクションが、それぞれの前記送信機の前記信号を受信するように構成されていることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の位置判定のためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に建物の内部の、少なくとも1つの物体の位置判定のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の位置判定のための多数の方法が知られており、それら方法の大部分は、無線による電磁波の送信および受信に基づく。これらは、屋外で物体または人の位置を判定するのに適していることが多い。例えば、信号の伝播時間または伝播時間差に基づいて送信機と受信機との間の距離を判定し、そのようにして、いくつかの送信機および/または受信機を使用するときに位置判定を可能にする、方法が知られている。
【0003】
他方、建物の内部での位置判定では、干渉信号が、はるかにより大きな程度に発生して、記載された手順をより困難または不可能にする。信号は、表面からの反射および物体との相互作用によって、増加、減衰、および遅延させられる。送信機と受信機との間の直接の見通し線に沿って送信される単一の信号の代わりに、ここでは多数の重なり合う信号成分が受信され、その解釈は困難または不可能である。これは、多重経路の影響、またはマルチチャネル伝播と呼ばれる。例えば、刊行物「Recommendation ITU-R P.1238-5;Propagation data and prediction methods for the planning of indoor radiocommunication systems and radio local area networks in the frequency range 900 MHz to 100 GHz,02/2007」から、屋内で反射する信号が無線通信に干渉し得ることが、知られている。これらの追加の信号は、システム内の追加のノイズのように作用する。そのノイズは、所望の受信信号、すなわち直接経路で送信される信号とのその類似性のために、フィルタリングして除去することができない。
【0004】
符号分割多重化は、従来の測位システムにおいて一般的に使用される。この方法は、共通の周波数範囲で異なるユーザ・データ・ストリームの同時送信を可能にし、周波数拡散のためおよび異なるデータストリームを区別するためにいわゆる拡散符号を使用する。言い換えれば、互いに直交する異なる符号を使用して、データを互いから分離する。周波数拡散は、使用される周波数スペクトルを広げ、そのことは、一方では、例えばフィルタおよびアンテナ構成要素によって引き起こされる、伝播時間の差を増加させる。他方、広帯域受信機は、増大した消費電力を有する。
【0005】
独国特許出願公開第102016012101号明細書および米国特許出願公開第20190187237号明細書は、移動局を装備された、基地局と共に少なくとも4つの基準物体を使用する、物体の位置判定のための方法を記載している。これは、建物の内部の位置判定に使用することができるが、すべての条件下で満足な精度を有するわけではない。
【0006】
本発明の目的は、少なくとも1つの物体の位置判定のための、さらに発展させた方法およびシステムを提供することである。
【0007】
この任務は、請求項1に記載の少なくとも1つの物体の位置判定のための方法によって、さらには追加の請求項に記載の少なくとも1つの物体の位置判定のためのシステムによって解決される。実施形態は、従属請求項から生じる。
【0008】
特に建物の内部の、少なくとも1つの物体の位置判定のための方法は、任務を解決するのに役立ち、当該方法において、少なくとも4つの送信機は、円偏波信号を送信し、位置特定されるための受信機は、円偏波信号を受信する。少なくとも2つ、特にすべての送信機は、異なる周波数の周期信号を送信し、これら周波数は、互いに密に隣接する(密であるように離間されている)。本発明による方法は、特に精密な位置判定を可能にする。
【0009】
信号は、電磁波を含む。信号は、電磁波および/または無線信号、すなわち電磁波によって送信される文字もしくは対応する文字列であってもよい。後者の場合、送信されるための文字または文字列は、搬送信号として機能する電磁波上に変調される。電磁波は、特に高周波のものである。特に、信号は、継続的にまたは期間内に送信される、周期信号である。周期信号は、規則的な時間間隔で繰り返すパターン、すなわち周期パターンを有する信号である。これは、送信される信号が離散フーリエスペクトルを有し当該離散フーリエスペクトルが狭いはっきりと形成された極大点を有するという利点を有する。特に、すべての送信機は、周期信号を送信する。送信機はまた、測定点とも呼ばれる。測定点の位置は、典型的には既知である。特に、それは、規定された測位システムの一部である。厳密な位置判定には少なくとも4つの送信機が必要である。
【0010】
円偏波信号は、円偏波電場成分を有する信号である。特に、円偏波電磁波、すなわち円偏波電場成分を有する電磁波を意味する。円偏波信号では、直線偏波とは対照的に、磁場および電場成分の方向は、空間においてだけでなく、経時的に継続的に変化する。場の強さベクトルは、伝播の方向に対して垂直に時計回りまたは反時計回りに回転する。円偏波信号は、ヘリカルアンテナなどの円偏波アンテナによって送信および/または受信することができる。90°だけオフセットされて90°の位相シフトを与えられる2つの直線偏波アンテナを有する、装置もまた、円偏波信号を送信および/または受信することができる。その場合には、送信される信号の2つの線形成分の振幅は、本質的に等しい。もしそうでなければ楕円偏波が生じるからである。円偏波アンテナは、広帯域ではなく、したがって、異なる密に隣接する周波数を使用する狭帯域方式に適している。送信機および受信機における偏波回転方向は、典型的には同じである。もしそうでなければ信号のかなりの減衰が生じるためである。
【0011】
受信機はまた、測定物体とも呼ばれる。受信機の位置は、既知ではなく、本発明による方法によって判定されることとなる。この目的のために、個々の信号の伝播時間または伝播時間差は、通常、使用される。
【0012】
受信機は、円偏波信号を受信する。しかしながら、多重経路の影響がある場合、特に建物の内部では、その受信機は、変化していないそれら円偏波信号を受信するのではなく、増加、減衰、および/または遅延させられた形式で受信する。したがって、受信信号は、直接経路を介して送信された信号と比較して、シフトされた位相、伝播時間、および/または変更された振幅を有する。したがって、単一の信号の代わりに、多数の重なり合う信号成分が、各々の個々の送信機から受信される。
【0013】
受信機は、個々の送信機によって送信された、異なる周波数の周期信号を受信する。受信機は、信号を、それら信号を評価することができ、かつ評価された信号に基づいて受信機の位置を判定することができるように、受信する。特に、受信機は、信号を評価する。特に、受信機は、評価された信号に基づいてその受信機の位置を判定する。
【0014】
本発明の意味における物体は、品目、人間、動物またはその一部を意味する。位置判定は、物体の位置に関する情報の判定、特に、規定された固定点および/または規定された測位システムに対する物体の位置の判定を意味する。位置判定の実際のプロセスが物体の位置で行われるか、固定点の位置で行われるか、または他の所で行われるかは、問題とされない。特に、本方法は、建物の内部に位置する物体の位置の判定のために構成される。この場合、位置特定されるための受信機は、建物の内部に位置する。特に、少なくとも1つの送信機、典型的にはすべての送信機もまた、建物の内部に位置する。
【0015】
密に隣接する周波数は、短い測定距離および比較的小さいスペクトルを可能にする。したがって、例えばフィルタおよびアンテナ構成要素による、伝播時間挙動の差は、最小であり、受信機の消費電力もまた、小さい帯域幅に起因して、低い。短い測定距離および同じ伝播時間は、高い分解能、したがって精密な位置判定を可能にする。
【0016】
ノイズ、干渉信号、および表面での信号の反射は、送信機と受信機との間のチャネル伝播中に、信号に影響を及ぼす。反射によって引き起こされる影響は、特に重大である。これらは、直接信号と同じ周波数を有し、したがってフィルタリングして除去することはできない。その場合には、受信機は、多数の受信信号から正しい信号を選択することができず、位置判定は、不正確、不良、または不可能になる。
【0017】
円偏波信号が表面から反射されるとき、典型的には、信号の減衰および場合によっては楕円偏波への信号の変化に加えて、表面の性質および材料に応じて、回転の方向が反転する。言い換えれば、180度の位相回転が生じる。この効果は、周波数に依存しない。したがって、送信機および受信機の異なる偏波回転方向に起因する上述の顕著な減衰を使用して、反射信号を無視または抑制し、このようにして多重経路の影響を最小化することができる。特に、受信機は、そのような減衰させられた信号を無視するように構成される。この目的のために、その受信機は、例えば、振幅が特定の閾値を上回る信号のみをその受信機が考慮に入れるように、設計することができる。既に反射された信号が、例えば反対側の壁で、再度反射される場合、回転の方向が再度反転させられることによって、回転の最初の方向が復元される。しかしながら、複数の反射による、信号の減衰は、この信号成分が顕著な干渉を引き起こさないぐらいに、高い。したがって、円偏波により、回転の方向が反転させられることに起因して反射信号成分を抑制することが可能になる。
【0018】
異なる密に隣接する周波数を使用する場合、振幅の変化の始めにおける振幅の「溝」とも呼ばれる窪みに現れるひずみが生じる。言い換えれば、例えば、方形波信号の完全な立ち上がりは、すぐには現れない。したがって、信号の到着時間(time of arrival:ToA)を厳密に判定することはできない。これは、減衰および/または遅延された信号成分が直接信号の受信に重畳され遅延の継続時間は無関係である、という真実に起因する。驚くことに、この現象は、円偏波信号を使用することによって防止できることが示されている。このようにして、精度をさらに高めることができる。
【0019】
本発明による方法により、建物または部屋の、内部の物体の位置を、高い正確性で判定することが可能である。これはまた、従来の方法が位置判定を実現できないか、または多重経路の影響のために低い精度でしか実現できない、建物が密集したエリア、および地下にも当てはまる。位置判定は、非常に高い測定レートで実行することができる。
【0020】
異なる周波数が使用されるため、通常はCDMAと略される符号分割多重化は、必要ない。これは、CDMAの場合のような、チャネル細分化または周波数拡散なしでいくつかの測定点を同時に使用できることを意味する。これにより、方法が簡素化され、より精密な位置判定が可能になる。
【0021】
一実施形態では、送信機の第1の群は、密に隣接する異なる周波数の信号を送信し、送信機の第2の群は、密に隣接する異なる周波数の信号を送信し、第1の群の周波数と第2の群の周波数は、広く離間されている。一実施形態では、少なくとも2つの送信機は、周波数が広く離間された信号を、送信する。広く離間された信号は、使用される信号の帯域幅よりも大きい周波数差を有する。このようにして、異なる送信機を容易に互いから区別することができる。
【0022】
一構成では、密に隣接する周波数は、離れて送信される信号の、1つの帯域幅未満である。密に隣接する周波数は、少なくとも1つの送信される信号、特にすべての離れて送信される信号の帯域幅未満である。したがって、信号の位相が、位置判定の改良のためにより容易に使用されることができ、利用可能な周波数範囲が、効率的に利用される。
【0023】
一実施形態では、信号は、5.8GHz周波数帯域で送信される。信号は、4つの異なる周波数で送信される。これら周波数は、各々100kHzの間隔を有する。これら周波数はまた、搬送周波数であって、送信されるための信号が当該搬送周波数上に変調される、搬送周波数とも呼ばれることができる。
【0024】
一構成では、密に隣接する周波数は、離れて送信される信号の、周期の逆数未満である。密に隣接する周波数は、少なくとも1つの送信される信号、特にすべての離れて送信される信号の周期の逆数未満である。言い換えれば、変調周波数は、チャネル周波数の間隔の倍数である。特に密に隣接する周波数は、特に短い測定距離および特に小さいスペクトルを可能にし、その結果、伝播時間挙動の差、さらには消費電力は、特に小さくなり、特に精密な位置判定が、可能になる。
【0025】
特に、密に隣接する周波数は、以下の式に従って挙動する。
|fn-fm| mod Δf≠0。
【0026】
ここで、fnは、任意の基地局の送信機の周波数であり、fmは、任意の他の基地局の送信機の周波数であり、Δfは、使用される信号のフーリエスペクトルの極大点間の周波数間隔である。特に、信号の周期、または信号の周期パターンの周期は、密に隣接する周波数の送信機について周波数間隔Δfが同じになるように、選択される。有利には、同じ周期パターンを有する信号は、密に隣接する周波数上で送信される信号を、送信するために選択され、その結果、異なる送信機からの信号の比較は、より容易になる。
【0027】
一構成では、密に隣接する周波数は、離れて送信される信号の、周期の逆数の、特に8分の1である4分の1未満である。それらは、離れて送信される信号の、周期の逆数の、厳密に8分の1であるかまたは8分の1未満であり得る。異なる周波数の、そのような密に隣接する範囲は、特に精密な位置判定を可能にする。
【0028】
一構成では、少なくとも2つ、特にすべての送信機は、3GHz~9GHz、好ましくは4GHz~8GHz、特に4.5GHz~7.5GHz、例えば5.5GHz~6.5GHzの周波数範囲で信号を送信する。
【0029】
これらの周波数は、位置を判定されることとなる物体に取り付けることができおよび/または位置を判定されることとなる人が容易に持ち運ぶことができる、特に小さい受信機を可能にする。さらに、それらは、精密な位置判定を可能にする。一実施形態では、送信機は、5.8GHz範囲で送信する。
【0030】
一構成では、少なくとも2つ、特にすべての送信機が、相互的に規定された時間間隔で、信号を送信する。例えば、送信される信号は、規定されたタイミングでパルス化することができ、ここでパルス継続時間、およびパルスの間隔は、自由に選択することができる。
【0031】
さらなる構成では、少なくとも2つ、特にすべての送信機が、少なくとも期間内に、同時に信号を送信する。それら送信機はまた、固定の時間間隔で信号を送信することもでき、それは、部分的に同時であり得る。
【0032】
信号を同時に送信し、および必要な場合に同時に受信することによって、さらに精密な位置判定を行うことができる。すべての送信機の評価された信号がいつでも同時に利用可能であり、したがって測定レートが向上するからである。
一実施形態では、少なくとも2つの送信機は各々、時間シフトされた信号を送信する。これらは、同じかまたは異なる周波数を有してもよい。
【0033】
密に隣接する周波数の使用は、システム全体の帯域制限につながる。これにより円偏波信号を利用することが可能になることが、示されている。円偏波信号に起因する回転の方向の反転は、必要な信号を分離すること、および/または反射を抑制することを可能にするが、それ自体では最初は精度を改善しない。他方、狭帯域方式に起因する最小化された伝播時間差と、回転の方向の反転との相互作用は、顕著に改善された精度での位置判定を可能にする。
【0034】
特に建物の内部の、少なくとも1つの物体の位置判定のためのシステムもまた、任務を解決するのに役立つ。このシステムは、円偏波アンテナを各々有する少なくとも4つの送信機と、円偏波アンテナを有する位置特定されるための受信機とを備える。少なくとも2つ、特にすべての送信機は、異なる周波数の周期信号を送信するように構成され、それぞれの送信機の周波数は、密に隣接する。
【0035】
円偏波アンテナは、円偏波信号を送信および/または受信することができるアンテナである。円偏波アンテナの場は、継続的に回転する。円偏波アンテナは、小さく安価であり、帯域幅が小さい。それら円偏波アンテナは、上述の反射信号の抑制を可能にする。対照的に、広帯域信号は、部分的にひずんで受信され、反射信号の抑制は、低減される。
【0036】
送信機および受信機の各々は、円偏波アンテナを備える。送信機は、円偏波信号を送信するための円偏波アンテナを備える。受信機は、円偏波信号を受信するための円偏波アンテナを備える。送信機の円偏波アンテナは、異なる密に隣接する周波数の、周期信号を送信するように構成される。
【0037】
例えば、円偏波アンテナは、ヘリカルもしくはヘリックスアンテナ、円偏波パッチアンテナ、クロスダイポール、スパイラルアンテナ、スロットアンテナ、誘電体共振器アンテナ、円偏波パッチアレイ、および/または円偏波スロットアレイであってもよい。90°だけオフセットされて90°の位相シフトを与えられる2つの直線偏波アンテナを備える、装置を使用することも可能である。送信機および受信機のアンテナは、同じ偏波回転方向を有する。
【0038】
円偏波アンテナは、特に、狭帯域円偏波信号を送信および/または受信する狭帯域アンテナである。これにより、帯域全体において、ほとんど一定の周波数応答、および一定の群伝播時間がもたらされる。チャネル等化は、必要ない。
【0039】
システムが、屋内空間内の物体の位置判定のために構成される場合、そのシステムは、「屋内測位システム」またはIPSとも呼ばれる。
【0040】
一実施形態では、受信機は、受信信号を評価するための手段を備える。特に、受信機は、受信信号に基づいてその受信機の位置を判定するように構成される。
【0041】
一構成では、少なくとも1つの送信機の、および/または受信機の円偏波アンテナは、プリント回路板上に配置され、および/またはプリント回路板に一体化される。例えば、その円偏波アンテナは、プリント回路板上の中央に配置される。この場合、その円偏波アンテナは、特に従来のパッチアンテナと比較して、特に空間を節約する態様で配置されて安価に製造されることができる。それにもかかわらず、その円偏波アンテナは、その平坦な設計に起因して、その空間要件に関しておよびその簡素で安価な製造に関してパッチアンテナの顕著な利点を示す。特に、円偏波環状リング・パッチ・アンテナを意味している。
【0042】
一構成では、少なくとも1つの円偏波アンテナは、誘電体材料、特にセラミック材料と、誘電体材料上に配置された環状導体とを備える。環状導体の半径方向内側には、環状導体から離れるように離間して誘電体材料上に配置された平面導体が配置されている。
【0043】
導体は、導電性の品目である。導体は、導体トラックとして、それがプリント回路板上で通常使用される通りに、設計することができる。特に、導体は、平面の広がりと比較して、非常に小さい高さを有する。導体は、典型的には、金属および/または合金を含む材料から、製造される。特に、それは、金属または合金からなる。導体は、銅および/もしくは銀を含んでもよく、または銅および/もしくは銀からなってもよい。
【0044】
特に、環状導体は、環状リングの形状を有する。それは、そのリング幅、すなわち外径と内径との間の差と比較して、非常に小さい高さを有する。例えば、それは、0.5mmのリング幅を有し、高さは、0.05mm未満である。
【0045】
平面導体は、例えば扇形であり、特に4分の1円の形状を有する。その平面導体は、環状導体と同じ平面内に配置されてもよい。典型的には、その平面導体は、プリント回路板に平行に配置され、ここで円偏波アンテナは、当該プリント回路板上に位置する。その平面導体は、円柱状の誘電体材料の中心軸に対して、垂直に配置することができる。
【0046】
誘電体材料は、特に、形状において円柱状であり、例えば、環状導体の外径に対応する直径を有する。誘電体材料は、特にプリント回路板上に配置される。環状導体は、典型的には、プリント回路板の平面に平行な平面内に配置される。これによって、誘電体材料は、環状導体とプリント回路板との間の距離を規定する。
【0047】
環状導体および平面導体は、誘電体材料上に配置される。これは、それら環状導体および平面導体が誘電体材料の表面上に配置されて特に誘電体材料と接触することを、意味する。誘電体材料は、環状導体および平面導体と、円偏波アンテナを接続するためのマイクロストリップとの間の電気絶縁として機能する。環状導体および平面導体は、誘電体材料から別の方へ面する側で露出されていてもよい、すなわち誘電体材料によって覆われていなくてもよい。
【0048】
誘電体としても知られる誘電体材料は、弱導電性または非導電性の物質であり、当該物質内において、存在する電荷キャリアは、自由に移動可能ではない。他方、電場は、誘電体材料を通過する。誘電体材料は、固体、典型的にはセラミック材料である。セラミック材料は、無機、非金属、水に難溶性、および部分的に結晶質、特に少なくとも30%結晶質である。非金属とは、化学的な金属が、金属の、すなわち元素の形態で存在しなくて、存在する場合には例えば酸化物として存在することを意味する。特に、セラミック材料は、700℃を超える焼成プロセスで硬質の耐久性のある品目に焼成されたものであり、特に焼成中に焼結が起こる。
【0049】
本発明のこの構成は、小さい安価なアンテナを使用して、純粋な円偏波を提供する。
【0050】
一構成では、受信機は、それぞれの送信機から信号を受信するように構成された、各送信機のための別個の受信セクションを備える。
【0051】
言い換えれば、受信機は、信号を受信するための複数の受信セクションを備え、各送信機は、受信機の受信セクションに関連付けられる。各受信セクションは、異なる周波数の信号を受信するように構成される。
【0052】
受信セクションは、電磁信号を受信するための独立したユニットである。独立は、電磁信号の受信に当てはまる。対照的に、電力供給、またはいくつかの受信セクションの受信信号および/もしくは評価された信号の転送は、例えば、各場合において共通の装置によって実現されてもよい。各受信セクションは、異なる周波数の信号を受信するように構成され、周波数のうちの少なくともいくつかは、密に隣接する。受信機は、少なくとも4つの受信セクションを備える。
【0053】
以下では、本発明のさらなる例示的な実施形態もまた、図を参照してより詳細に説明される。
【0054】
図は以下のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】円偏波アンテナの第1の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図3】円偏波アンテナの第2の例示的な実施形態の斜視図である。
【0056】
図1は、4GHz~8GHzの周波数のために設計された、本発明によるシステムの送信機または受信機の一部としての円偏波アンテナ1を示す。これは、プリント回路板(図示せず)上に配置される。円偏波アンテナ1は、プリンティングおよび/またはエッチングによってプリント回路板に付けられる、銅で作られたマイクロストリップ5を備える。マイクロストリップ5は、1mmの幅、35μmの高さ、および50オームの電気抵抗を有する。プリント回路板は、0.5mmまたは0.6mmの高さを有し、特にFR-4クラスの引火性がほとんどない難燃性の複合材料から製造される。
【0057】
プリント回路板上にあるのみならず、右側に示すマイクロストリップ5の前部エリア上に、円柱の形状を有する誘電体材料2がある。頂部から底部まで延びる、円柱形状の誘電体材料2の長手方向軸は、プリント回路板に対して垂直に位置合わせされている。誘電体導体2は、2.5mmの高さおよび6mmまたは6.5mmの直径を有する、Al2O3を含むセラミック材料から製造される。それは、30の誘電率を有する。
【0058】
誘電体材料2の上側には、35μmの高さの銅層からなる、環状導体3が配置されている。それは、環状リング形状であり、環状リングの外径は、誘電体材料2の円柱の直径に対応する。
【0059】
平面導体4は、環状導体3の平面内、かつ環状導体3の半径方向内側に配置されている。その平面導体4は、4分の1円の形状を有し、かつまた35μmの高さの銅層としても設計されている。軸方向に見る方向において、それは、関連する円の中心に対応するその直角のコーナー点が円柱状の誘電体材料2の長手方向軸上に位置するように、マイクロストリップ5からそれて面して、誘電体材料2の領域内に配置されている。軸方向に見る方向とは、誘電体材料および/または環状導体の長手方向軸のことを指す。この配置は、円偏波アンテナ1の所望の偏波回転方向を規定する。
【0060】
別の構成では、同じく円柱状である誘電体材料2の、直径は、10mmであってもよい。誘電体材料2の高さは、3mmであってもよい。誘電体材料2は、10の誘電率を有してもよい。別の構成では、誘電体材料2は、2.3mmの高さおよび6.1mmの直径を有してもよい。
【0061】
図2は、同じ円偏波アンテナを、軸方向に見る方向の部分的に切り欠いた上面図で示す。環状導体3であって、誘電体材料2が、当該環状導体3の半径方向内側に見える、環状導体3と、平面導体4と、環状導体3の外側にあるマイクロストリップ5の一部とが示されている。切り欠いていない上面図では通常は誘電体材料2によって隠されている、環状導体3の内側にあるマイクロストリップ5の一部は、この部分切欠き図では、より細かいハッチングで示されている。したがって、マイクロストリップ5が、誘電体材料2の下に連続することと、軸方向に見たときに環状導体3を越えて突出することと、マイクロストリップ5の端が平面導体4から約0.5mmの距離になる程度まで、延ばされていることとを見ることができる。
【0062】
平面導体4の円弧は、環状導体3の内部側によって画定される、隣接する円弧に平行である。言い換えれば、それら2つの円弧は、平行な曲線である。これは、半径方向に延びる直線上に位置する2つの点であって、当該2つの点のうちの一方の点が平面導体4の円弧上にあり、他方の点が環状導体3の内側の円弧上にある、2つの点が各場合において同じ距離を有することを意味する。平面導体4の円弧と環状導体3の内側によって画定される円弧との間の半径方向に測った距離は、0.5mmである。
【0063】
図3は、
図1および
図2に示す円偏波アンテナ1と同じ要素を有する、円偏波アンテナ1を示す。唯一の違いは、環状導体3の半径方向内側にある平面導体4の配置にある。この平面導体4は、
図1および
図2に示す構成におけるその配置と比較して、軸方向に見たときに軸対称にミラーリングされている態様で、配置されている。軸であって、当該軸に沿ってミラーリングが行われる軸は、マイクロストリップ5の広がりの長手方向である。このようにして、反対の偏波回転方向がもたらされる。
【符号の説明】
【0064】
円偏波アンテナ 1
誘電体材料 2
環状導体 3
平面導体 4
マイクロストリップ 5
【国際調査報告】