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特表2023-5175462,3,5-置換されたチオフェン化合物の卵巣癌の予防、改善または治療用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】2,3,5-置換されたチオフェン化合物の卵巣癌の予防、改善または治療用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4535 20060101AFI20230419BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230419BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230419BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230419BHJP
【FI】
A61K31/4535
A61P15/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K33/24
A61K31/337
A61K31/4745
A23L33/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553164
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 KR2021002649
(87)【国際公開番号】W WO2021177728
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0027448
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0028261
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520470431
【氏名又は名称】ファロス・アイバイオ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヒョク・ユン
(72)【発明者】
【氏名】キィ・ヨブ・ナム
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD18
4B018ME08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC21
4C086CB22
4C086GA03
4C086GA07
4C086GA16
4C086HA12
4C086HA24
4C086HA26
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、2,3,5-置換されたチオフェン化合物を含む卵巣癌の予防、改善または治療用組成物に関し、卵巣癌に対する増殖抑制活性に優れ、卵巣癌の予防、改善または治療に有用に活用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む卵巣癌の予防または治療用薬学的組成物。
【化1】
【請求項2】
前記卵巣癌は、TP53突然変異卵巣癌、再発性上皮周辺腹膜癌(Recurrent Epithelial peritoneal)、卵管癌(fallopian)および高級漿液性卵巣癌(high grade serous ovarian cancer)のいずれか1つである、請求項1に記載の卵巣癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記組成物は、シスプラチン(Cisplatin)、パクリタキセル(Paclitaxel)およびトポテカン(Topotecan)からなる群より選択される1つ以上の抗癌剤をさらに含むものである、請求項1に記載の卵巣癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記組成物は、オラパリブ(Olaparib)をさらに含むものである、請求項1に記載の卵巣癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む卵巣癌の予防または改善用食品組成物。
【化2】
【請求項6】
前記卵巣癌は、TP53突然変異卵巣癌、再発性上皮周辺腹膜癌(Recurrent Epithelial peritoneal)、卵管癌(fallopian)および高級漿液性卵巣癌(high grade serous ovarian cancer)のいずれか1つである、請求項5に記載の卵巣癌の予防または改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,3,5-置換されたチオフェン化合物の卵巣癌の予防、改善または治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
卵巣癌は、米国で2008年22,000人が新しい患者に登録され、15,000人が死亡するという、婦人癌の中で最も致命的な癌腫であり(Jemal et al.,2008)、米国で2017年22,400人が新しい患者に登録されており、14,000人が死亡し、癌で死亡する患者の2.3%に相当する。欧州の28カ国で2002年から2012年の卵巣癌による死亡率が10%減少し、同期間、米国では16%減少した。
【0003】
卵巣癌の全病期(stage I-IV)で手術から治療が始まるが、少ない%だけが手術可能である。70%以上の患者がStage III期以上で広範囲な転移が進行した患者である。2014年、米国で卵巣癌の5年の全病期で生存率は46%であり、局所の場合に92%、転移段階で29%と急激に減少した。手術後、進行性患者にcisplatinまたはpaclitaxelのようなadjuvant化学療法が施され、初期に70%以上の場合、platinumとtaxaneの併用療法でserumのCA-125レベル、CT scanによる映像学的な方法で臨床的完全寛解の効能結果を得る。
【0004】
このような臨床的完全寛解にもかかわらず、Stage III期の場合に25%、Stage IV期の場合に10%未満で5年生存率が低く(McGuire et al.,1996)、化学療法の抵抗性によって大部分再発後死亡に至る。
【0005】
卵巣癌の治療において一般的な化学療法剤の限界によって、新生血管阻害のシグナル伝達体系を標的とするBevacitumabが臨床的効能の向上を示しており、再発卵巣癌患者の18%で反応率を報告した(Burger et al.,2007;Cannistra et al.,2007)。
【0006】
卵巣癌患者においてgemline BRCA1とBRCA2遺伝子の変異程度は8~18%程度であり、特異なユダヤ人の場合、より高いことが知られている。BRCA1/2突然変異の場合、BRCA1/2の機能とhomologous recombinationに影響を及ぼし、卵巣癌患者の5%でsomatic BRCA1/2突然変異が発見された。Advanced Serous ovarian cancerとTNBC患者群の46人を対象に進行したOlaparibの臨床2床で全体的な反応率は23.9%と観察された(Gelmon et al.,2010)。
【0007】
現在、既存の卵巣癌治療剤の場合、副作用が大きく、卵巣癌の転移による再発で5年生存率が低い状況で、既存の治療剤と併用治療時、追加毒性が少なく、卵巣癌の転移抑制による生存率の向上が可能な新たな新薬の開発が必要な状況である。したがって、新たな卵巣癌標的新薬の開発により2つの要素(追加毒性がなく、転移抑制効能優秀)を満たす医薬品の開発が急がれるのが現状である。
【0008】
そこで、本発明者らは、卵巣癌の治療に効果的な治療剤を発掘するための研究を行って、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】KR10-2006-0127127
【特許文献2】KR10-2017-0096599
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の卵巣癌の予防、改善または治療用途を提供することである。
【化1】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む卵巣癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【化2】
【0012】
本発明の一具体例として、前記卵巣癌は、TP53突然変異卵巣癌、再発性上皮周辺腹膜癌(Recurrent Epithelial peritoneal)、卵管癌(fallopian)および高級漿液性卵巣癌(high grade serous ovarian cancer)のいずれか1つであってもよい。
【0013】
本発明の一具体例として、前記組成物は、シスプラチン(Cisplatin)、パクリタキセル(Paclitaxel)およびトポテカン(Topotecan)からなる群より選択される1つ以上の抗癌剤をさらに含むものであってもよい。
【0014】
本発明の一具体例として、前記組成物は、オラパリブ(Olaparib)をさらに含むものであってもよい。
【0015】
本発明の他の態様は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む卵巣癌の予防または改善用食品組成物を提供する。
【化3】
【0016】
本発明の一具体例として、前記卵巣癌は、TP53突然変異卵巣癌、再発性上皮周辺腹膜癌(Recurrent Epithelial peritoneal)、卵管癌(fallopian)および高級漿液性卵巣癌(high grade serous ovarian cancer)のいずれか1つであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一具体例による2,3,5-置換されたチオフェン化合物を含む卵巣癌の予防、改善または治療用組成物は、卵巣癌に対する増殖抑制活性に優れ、卵巣癌の予防、改善または治療に有用に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)CAOV3、(B)OVCAR3、(C)SK-OV-3および(D)SW626卵巣癌細胞株に対するシスプラチン、およびシスプラチンとPHI-101の併用製剤に対するIC50値を示すグラフである。
図2】(A)CAOV3、(B)OVCAR3、(C)SK-OV-3および(D)SW626卵巣癌細胞株に対するパクリタキセル、およびパクリタキセルとPHI-101の併用製剤に対するIC50値を示すグラフである。
図3】(A)CAOV3、(B)OVCAR3、(C)SK-OV-3および(D)SW626卵巣癌細胞株に対するトポテカン、およびトポテカンとPHI-101の併用製剤に対するIC50値を示すグラフである。
図4】連続希釈したPHI-101の96-ウェルプレートの配列を示す図である。
図5】連続希釈したオラパリブの96-ウェルプレートの配列を示す図である。
図6】PHI-101およびオラパリブ連続希釈液の処理配列および濃度を示す図である。
図7】CAOV3卵巣癌細胞株に対する(A)オラパリブ、(B)PHI-101、および(C)オラパリブとPHI-101の併用製剤のIC50値を示すグラフである。
図8】OVCAR3卵巣癌細胞株に対する(A)オラパリブ、(B)PHI-101、および(C)オラパリブとPHI-101の併用製剤のIC50値を示すグラフである。
図9】SK-OV3卵巣癌細胞株に対する(A)オラパリブ、(B)PHI-101、および(C)オラパリブとPHI-101の併用製剤のIC50値を示すグラフである。
図10】CAOV3卵巣癌細胞株に対するオラパリブとPHI-101の併用製剤の相乗効果を示すグラフである。
図11】OVCAR3卵巣癌細胞株に対するオラパリブとPHI-101の併用製剤の相乗効果を示すグラフである。
図12】SK-OV3卵巣癌細胞株に対するオラパリブとPHI-101の併用製剤の相乗効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一態様は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む卵巣癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【化4】
【0020】
本発明の薬学的組成物に有効成分として含まれる、化学式1で表される化合物は、(S)-5-((3-フルオロフェニル)エチニル)-N-(ピペリジン-3-イル)-3-ウレイドチオフェン-2-カルボキサミド((S)-5-((3-fluorophenyl)ethynyl)-N-(piperidin-3-yl)-3-ureido thiophene-2-carboxamide)である。
【0021】
本発明の一具体例によれば、前記卵巣癌は、TP53突然変異卵巣癌、再発性上皮周辺腹膜癌(Recurrent Epithelial peritoneal)、卵管癌(fallopian)および高級漿液性卵巣癌(high grade serous ovarian cancer)のいずれか1つであってもよい。
【0022】
化学式1で表される化合物は、卵巣癌、特に卵巣癌の中でもTP53突然変異卵巣癌の抑制能力に優れる。
【0023】
本発明の一具体例によれば、前記組成物は、シスプラチン(Cisplatin)、パクリタキセル(Paclitaxel)およびトポテカン(Topotecan)からなる群より選択される1つ以上の抗癌剤をさらに含むことができる。
【0024】
本発明の一具体例によれば、前記組成物は、オラパリブ(Olaparib)をさらに含むことができる。
【0025】
この化合物は、単独で使用されるか、シスプラチン、パクリタキセル、トポテカンおよび/またはオラパリブなどの既存の抗癌剤と併用して使用可能であり、併用使用される場合、既存の抗癌剤の卵巣癌治療効果を著しく増進させることができる。
【0026】
シスプラチンは、睾丸癌、卵巣癌、肺癌、頭頸部癌、膀胱癌、胃癌および子宮頸癌などの治療に広く使用される抗癌剤であるが、貧血などの造血毒性、嘔吐、悪心などの消化器毒性、腎臓細尿管損傷などの腎臓毒性、難聴、体内電解質異常、ショックおよび末梢神経異常などのような副作用を伴う場合が多い。パクリタキセルは、卵巣癌に対する代表的な抗癌剤であるが、脱毛、胃腸障害、悪心、嘔吐、手足のしびれおよびアレルギー反応などのような副作用を伴う。トポテカンは、広範囲に広がった卵巣癌、小細胞肺癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病、進行子宮頸癌などに使用される抗癌剤であるが、骨髄抑制による白血球減少症、血小板減少症、脱毛症、呼吸障害などのような副作用を伴う。オラパリブは、PARPをターゲットとする標的抗癌剤であるが、悪心、貧血、疲労、嘔吐、好中球減少症、呼吸器感染、白血球減少症、下痢および頭痛などのような副作用を伴う。
【0027】
本発明の化学式1で表される化合物がシスプラチン、パクリタキセル、トポテカンおよび/または併用して使用される場合、それぞれ使用される時より卵巣癌の抑制効果が著しく上昇することが確認された。したがって、既存に卵巣癌の治療に使用されていた抗癌剤を単独で使用する時より低い濃度で投与可能で、前記のような各抗癌剤による副作用の発生を減少させることがあるので、本発明の化学式1で表される化合物は、卵巣癌の予防または治療に併用されて有用に活用できる。
【0028】
また、本発明の化学式1で表される化合物は、オラパリブと併用投与される場合、相乗効果を示すので、特にオラパリブと併用されて有用に活用できる。
【0029】
本発明の一具体例による薬学的組成物は、卵巣癌の治療のために、単独で、または手術、ホルモン治療、薬物治療、放射線治療および/または生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用できる。
【0030】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。本発明の薬学的組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、薬剤の製造に通常用いられるものとして、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬学的組成物は、前記成分のほか、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加的に含むことができる。好適な薬学的に許容される担体および製剤は、Remington:the science and practice of pharmacy 22nd edition(2013)に詳しく記載されている。
【0031】
本発明の薬学的組成物は、その剤形の製剤化に必要で適切な各種基剤および/または添加物を含むことができ、その効果を低下させない範囲内で非イオン界面活性剤、シリコーンポリマー、体質顔料、香料、防腐剤、殺菌剤、酸化安定化剤、有機溶媒、イオン性または非イオン性増粘剤、柔軟化剤、酸化防止剤、自由ラジカル破壊剤、不透明化剤、安定化剤、エモリエント(emollient)、シリコーン、α-ヒドロキシ酸、消泡剤、保湿剤、ビタミン、昆虫忌避剤、香料、保存剤、界面活性剤、消炎剤、物質P拮抗剤、充填剤、重合体、推進剤、塩基性化または酸性化剤、または着色剤など公知の化合物をさらに含んで製造できる。
【0032】
本発明の薬学的組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食物、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に処方可能である。本発明の薬学的組成物の投与量は、成人基準で0.001~1000mg/kgであってもよい。
【0033】
本発明の薬学的組成物は、経口または非経口投与することができる。
【0034】
本発明の薬学的組成物は、経口投与時に多様な剤形に投与されるが、錠剤、丸剤、硬質/軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤、顆粒剤、エリキシル剤、トローチ剤などの形態で投与可能であり、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などをさらに含むことができる。具体的には、本発明の組成物を経口投与剤形に剤形化する場合、その製造に通常使用する適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含むことができる。前記担体、賦形剤および希釈剤としては、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび/または鉱物油が使用できるが、これに限定されない。また、製剤化に一般的に使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を含んで調製されてもよいし、前記賦形剤のほか、マグネシウムステアレートまたはタルクのような潤滑剤をさらに含むことができる。
【0035】
本発明の薬学的組成物は、非経口投与可能であり、例えば、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射または胸部内注射などの方法により投与されるものであってもよいが、これに限定されない。
【0036】
非経口投与用剤形への製剤化は、例えば、本発明の薬学的組成物を安定剤または緩衝剤とともに水に混合して溶液または懸濁液で製造し、これをアンプルまたはバイアル単位投与型で製造するものであってもよい。また、前記組成物は滅菌され、防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、浸透圧調節のための塩および緩衝剤などの補助剤、およびその他の治療的に有用な物質を追加的に含むことができ、通常の方法によって製剤化できる。
【0037】
本発明の他の態様は、化学式1で表される化合物を有効成分として含む組成物を卵巣癌患者に投与するステップを含む卵巣癌の治療方法を提供する。
【0038】
本発明の一具体例による薬学的組成物は、化学式1で表される化合物を有効成分として含み、卵巣癌の中で、特にTP53突然変異卵巣癌に優れた抗癌効果を示す。したがって、本発明の薬学的組成物を投与する前、化学式1で表される化合物に効果を示す患者群を選別するコンパニオン診断(Companion Diagnosis)ステップをさらに含むことができ、これは当業界にて公知のTP53突然変異卵巣癌の診断方法によって行われる。
【0039】
本発明で使われる用語、「コンパニオン診断」は、患者の特定の薬物治療に対する反応性を予め予測するための診断をいう。
【0040】
本発明の他の態様は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む卵巣癌の予防または改善用食品組成物を提供する。
【化5】
【0041】
本発明の食品組成物は、当業界にて通常添加する原料および成分を添加して製造することができ、有効成分である化学式1で表される化合物を含有するほか、通常の食品組成物のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。
【0042】
本発明の一具体例によれば、天然炭水化物は、モノサッカライド(例えば、ブドウ糖、果糖など)、ジサッカライド(例えば、マルトース、スクロースなど)、およびポリサッカライド(例えば、デキストリン、シクロデキストリンなど)のような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってもよい。前記香味剤は、天然香味剤(タウマチン)、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど)および/または合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を含むことができる。
【0043】
本発明の食品組成物は、前記記載の有効成分のほか、追加的に食品学的に許容可能であるか薬学的に許容可能な担体を1種以上含んで食品組成物に製剤化される。前記食品組成物の製剤形態は、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、液状、丸、液剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、または点滴剤などであってもよい。例えば、錠剤またはカプセル剤の形態への製剤化のために、有効成分は、エタノール、グリセロール、水などのような経口、無毒性の薬剤学的に許容可能な不活性担体と結合できる。
【0044】
本発明の食品組成物は、ビタミンAアセテート、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビオチン、ニコチン酸アミド、葉酸、パントテン酸カルシウムからなるビタミン混合物、および硫酸第1鉄、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、第1リン酸カリウム、第2リン酸カリウム、クエン酸カリウム、炭酸カルシウムおよび塩化マグネシウムなど、当業界にて通常添加可能な1つ以上の無機質を含むことができる。
【0045】
必要な場合、適した結合剤、潤滑剤、崩壊剤および発色剤も混合物に含まれる。適した結合剤は、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはベータ-ラクトースのような天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガカントまたはソジウムオレエートのような天然および合成ガム、ソジウムステアレート、マグネシウムステアレート、ソジウムベンゾエート、ソジウムアセテート、ソジウムクロライドなどを含むことができる。崩壊剤は、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含むことができる。
【0046】
このような成分は、独立してまたは組み合わせて使用可能であり、このような添加剤の比率は、本発明の食品組成物100重量部あたり0~約20重量部の範囲から選択できるが、これに限定されるものではない。
【0047】
一方、本発明の食品組成物に通常の技術者に知られている多様な剤形の製造方法を適用して多様な食品を製造することができる。例えば、本発明の食品組成物は、飲料や丸、粉末などのような通常の健康機能食品剤形に製造できるが、これに限定されるものではない。
【0048】
本発明の一具体例によれば、前記卵巣癌は、TP53突然変異卵巣癌、再発性上皮周辺腹膜癌(Recurrent Epithelial peritoneal)、卵管癌(fallopian)および高級漿液性卵巣癌(high grade serous ovarian cancer)のいずれか1つであってもよい。
【0049】
本発明の食品組成物は、TP53突然変異卵巣癌細胞株の増殖抑制能力が特に優れているので、TP53突然変異卵巣癌の予防または改善に有用に活用できる。
【実施例
【0050】
以下、本発明を一つ以上の実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例1.卵巣癌細胞株の培養および希釈
5%COの37℃条件で100mm培養皿(culture dish)(SPL)で、CAOV3卵巣癌細胞株はDMEM(Dulbeco’s Modified Eagle Medium)培地を用いて培養し、OVCAR3、SK-OV-3およびSW626卵巣癌細胞株はRPMI1640培地を用いて培養した。その後、PBS(Phosphate-buffered saline)(Biosesang)を用いて各細胞株を3000cells/80μlで希釈して用意した。
【0052】
実施例2.卵巣癌細胞株に対するPHI-101の抑制活性の確認
1-1.卵巣癌細胞株に対する抑制活性評価
実施例1で希釈した各卵巣癌細胞株90μlに、1/2ずつ連続希釈(serial dilution)した化学式1で表される化合物(以下、「PHI-101」という)、シスプラチン(Cisplatin)、パクリタキセル(Paclitaxel)、プレキサセルチブ(Prexasertib)またはトポテカン(Topotecan)を10μlずつ処理して処理開始濃度が100μMとなるように処理し、5%COの37℃条件で72時間培養した。培養後、Celltiter glo assayキット(Promega)を用いて細胞数を測定し、これをPHI-101または抗癌剤を処理しない対照群に対する比率で表して細胞生存力を評価した。
【化6】
【0053】
PRIZMソフトウェアを用いてS字曲線(sigmoidal curve)でIC50を計算した結果、各卵巣癌細胞株に対する各単独製剤のIC50は下記表1のように確認されて、既存の抗癌剤に比べて卵巣癌細胞株に対するPHI-101の優れた抑制能力が確認された。
【表1】
【0054】
1-2.TP53突然変異卵巣癌細胞株に対する選択的な抑制活性の確認
PHI-101の選択的抑制活性を評価するために、各細胞株の特徴とPHI-101の卵巣癌細胞株の抑制活性を下記表2のように調べた。
【表2】
【0055】
その結果、PHI-101は、TP53突然変異卵巣癌細胞株に対してさらに優れた抑制活性を示すことが確認されて、P53突然変異卵巣癌細胞株に対するPHI-101の選択的な抑制活性を確認した。
【0056】
実施例3.卵巣癌細胞株に対する抗癌剤併用製剤の抑制活性の確認
実施例1で希釈した各卵巣癌細胞株90μlに、1/2ずつ連続希釈(serial dilution)したPHI-101を10μlずつ処理して最終濃度が最高100μMとなるように処理し、5%COの37℃条件で1時間培養した後、シスプラチン(Cisplatin)、パクリタキセル(Paclitaxel)またはトポテカン(Topotecan)を各細胞株に対するIC50の濃度で処理した。その後、5%COの37℃条件で72時間培養し、Celltiter glo assayキット(Promega)を用いて細胞数を測定し、これを併用製剤を処理しない対照群に対する比率で表して細胞生存力を評価した。
【0057】
PRIZMソフトウェアを用いてS字曲線でIC50を計算した結果、PHI-101は、シスプラチン(図1)、パクリタキセル(図2)またはトポテカン(図3)と併用される場合、単独使用に比べてより低いIC50を示すことが分かり、卵巣癌細胞株に対するPHI-101の優れた併用効果が確認された(表3)。
【表3】
【0058】
実施例4.卵巣癌細胞株に対するPHI-101およびオラパリブの相乗効果の確認
4-1.PHI-101およびオラパリブ処理開始濃度の確立
Combination index実験においてPHI-101およびオラパリブの整数比が成立する濃度を確立するために、IC50値が相対的に低いPHI-101のIC50の濃度1xを基準として、オラパリブのIC50の値に基づいてPHI-101およびオラパリブの整数比を表4のように求めた。
【表4】
【0059】
処理開始濃度はdose濃度勾配においてIC50値が中間にくるようにIC50の濃度の2倍にした濃度で表5のように定めた。
【表5】
【0060】
4-2.PHI-101およびオラパリブ連続希釈液の用意
PHI-101およびオラパリブは表5のような比率で物質stockと培地とを混合して10x solutionとして用意した。
【表6】
【0061】
用意した10x solutionを150μlの培地が入っている6つのE-tubeに150μlずつ1/2連続希釈(serial dilution)した後、PHI-101 96-ウェルプレート(図4)およびオラパリブ96-ウェルプレート(図5)をそれぞれ用意し、連続希釈したPHI-101またはオラパリブを当該プレートにウェルあたり30μlずつ分注した。物質が入らないウェルには培地を30μlずつ分注した。
【0062】
4-3.PHI-101およびオラパリブ連続希釈液の処理
実施例1で希釈した各卵巣癌細胞株80μlが分注された96-ウェルプレートに、実施例4-2で用意したPHI-101プレートおよびオラパリブプレートの連続希釈液を、JANUSを用いて図6のように当該位置のウェルにウェルあたり10μlずつ分注して最終体積が100μlとなるように処理した。その後、5%COの37℃条件で72時間培養し、3の繰り返しで進行させた。
【0063】
4-4.PHI-101およびオラパリブの相乗作用の確認
実施例4-3で連続希釈液処理した各卵巣癌細胞株に対して、Celltiter glo assayキットを用いて細胞数を測定した後、これをPHI-101およびオラパリブを処理しない対照群に対する比率で表して細胞生存力を測定した後、PRIZMソフトウェアを用いてS字曲線でIC50を計算した。
【0064】
その結果、CAOV3(図7)、OVCAR3(図8)およびSK-OV3(図9)の卵巣癌細胞株に対するPHI-101、オラパリブ、およびPHI-101およびオラパリブ併用のIC50は表7のように確認された。
【表7】
【0065】
その後、CalcuSyn softwareを用いて表8のCombination Index(CI)を基準として、PHI-101およびオラパリブの処理濃度による各卵巣癌細胞株に対するCIを求め、物質間の相乗作用(synergism)の有無を評価した。
【表8】
【0066】
その結果、CAOV3のCIは表9のように確認され、最も低濃度を除いて全般的な濃度区間でCoA PHI-101とオラパリブとの間に相乗効果が確認された(図10)。OVCAR3のCIは表10のように確認され、すべての濃度区間で大体CoA PHI-101とオラパリブとの間に相乗効果が確認された(図11)。また、SK-OV-3のCIは表10のように確認され、高濃度と低濃度区間で部分的に相乗効果が現れたことが確認された(図12)。
【表9】
【表10】
【0067】
このような結果により、PHI-101は、オラパリブとの相乗効果によって卵巣癌に効果的に適用できることが確認された。
【0068】
これまで本発明についてその実施例を中心に説明した。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で変形された形態で実現できることを理解するであろう。そのため、開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は上述した説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等範囲内にあるすべての差異は本発明に含まれていると解釈されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【図
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】