(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ロータリエンジン
(51)【国際特許分類】
F01B 9/06 20060101AFI20230419BHJP
F02B 53/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
F01B9/06
F02B53/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554619
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 IB2021051935
(87)【国際公開番号】W WO2021181256
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522357426
【氏名又は名称】ヴォロシュチュク ミコラ
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100197996
【氏名又は名称】中村 武彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴォロシュチュク ミコラ
(57)【要約】
本発明のロータリエンジンは、ステータと、前記ステータ上に、自身の回転軸周りを回転可能に装着される第1ロータと、前記ステータ上に、前記第1ロータの前記回転軸に平行である自身の回転軸周りを回転可能に装着され、前記第1ロータに対して偏心しかつこれを囲むように装着される第2ロータと、を備える。前記第1ロータは、並進変位可能な第1ピストンにより制限されるピストンチャンバを有する第1シリンダを備え、一端で前記第2ロータの外面に固定される第1ロッドが、前記第1シリンダから前記第2ロータの外面に向けて外方に突出し、前記第1ロッドはその他端で前記第1ピストンに固定される。前記第1ロータはさらに、少なくとも1つの第2シリンダを有し、前記少なくとも1つの第2シリンダそれぞれは、並進変位可能な第2ピストンにより制限されるピストンチャンバを備え、前記第2ロータの外面に、対応する第2ロッドの一端が連結され、第2ロッドは、前記各第2シリンダから前記第2ロータの外面に向けて外方に突出し、前記対応する第2ロッドはその他端で対応する前記第2ピストンに固定される。前記第2ロータの前記外面に連結された前記各第2ロッドの前記一端は、前記第2ロータ内の限定された曲線ガイド経路に沿って回転変位可能に支持されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(1)と、
前記ステータ(1)上に、自身の回転軸(2a)周りを回転可能に装着される第1ロータ(2)と、
前記ステータ(1)上に、前記第1ロータ(2)の前記回転軸に平行な自身の回転軸(3a)周りを回転可能に装着され、前記第1ロータ(2)に対して偏心しかつこれを囲むように装着される第2ロータ(3)と、を備え、
前記第1ロータ(2)は、並進変位可能な第1ピストン(8a)により制限されるピストンチャンバを有する第1シリンダ(4)を備え、一端で前記第2ロータ(3)の外面に固定される第1ロッド(9a)が、前記第1シリンダ(4)から前記第2ロータ(3)の外面に向けて外方に突出し、前記第1ロッド(9a)はその他端で前記第1ピストン(8a)に固定され、
前記第1ロータ(2)はさらに、少なくとも1つの第2シリンダ(5、6)を有し、前記少なくとも1つの第2シリンダ(5、6)はそれぞれ、並進変位可能な第2ピストン(8b、8c)により制限されるピストンチャンバを備え、一端で前記第2ロータ(3)の外面に連結される対応する第2ロッド(9b、9c)が、前記各第2シリンダ(5、6)から前記第2ロータ(3)の外面に向けて外方に突出し、前記対応する第2ロッド(9b、9c)はその他端で対応する前記第2ピストン(8b、8c)に固定される
ロータリエンジンであって、
前記第2ロータ(3)の前記外面に連結された前記各第2ロッド(9b、9c)の前記一端は、前記第2ロータ(3)内の限定された曲線ガイド経路に沿って回転変位可能に支持されていることを特徴とするロータリエンジン。
【請求項2】
前記第1シリンダ(4)および前記少なくとも1つの第2シリンダ(5、6)は、前記第1ロータ(2)の前記回転軸周りの径方向に配される、請求項1に記載のロータリエンジン。
【請求項3】
前記第1シリンダ(4)および前記少なくとも1つの第2シリンダ(5、6)は、前記第1ロータ(2)の前記回転軸(2a)周りの径方向に等角間隔で配される、請求項2に記載のロータリエンジン。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2シリンダ(5、6)は、2つのシリンダである、請求項1~3のいずれか一項に記載のロータリエンジン。
【請求項5】
前記第2ロータ(3)の前記外面上に装着される少なくとも1つのレールガイド(13)をさらに備え、前記少なくとも1つのレールガイド(13)それぞれにより前記各第2ロッド(9b、9c)に前記曲線ガイド経路が設けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のロータリエンジン。
【請求項6】
前記少なくとも1つのレールガイド(13)がそれぞれ曲線レールからなり、前記各第2ロッド(9b、9c)がころ軸受(14)によって対応する前記曲線レールに連結されている、請求項5に記載のロータリエンジン。
【請求項7】
前記第1シリンダ(4)は、前記第1ピストン(8a)への圧力が印加または解放されると、前記第1ロッド(9a)に沿う限定された並進運動が行われるよう構成され、これにより前記第1ロッド(9a)が前記第1ロータ(2)の前記回転軸(2a)周りを回転する、請求項1~6のいずれか一項に記載のロータリエンジン。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第2シリンダ(5、6)はそれぞれ、前記各第2シリンダ(5、6)の前記第2ピストン(8b、8c)への圧力が印加または解放されると、前記対応する第2ロッド(9b、9c)に沿う限定された並進運動が行われるよう構成され、これにより前記対応する第2ロッド(9b、9c)が限定された回転運動を行う、請求項1~7のいずれか一項に記載のロータリエンジン。
【請求項9】
前記限定された回転運動は、前記対応する第2ロッド(9b、9c)の前記第1ロータ(2)に対する並進運動と、前記第1ロータ(2)の回転軸(2a)周りの回転運動とにより定義される瞬間的回転中心周りに行われ、各第2ロッド(9b、9c)の前記並進運動は、前記各第2ロッド(9b、9c)を前記第2ロータ(3)の前記外面に連結することにより行われる、請求項8に記載のロータリエンジン。
【請求項10】
リニア軸受(10)をさらに備え、これに沿って、前記第1ロッド(9a)および前記第2ロッド(9a、9b)のうち少なくとも1つが、対応する前記シリンダ(4、5、6)内に摺動する、請求項1~9のいずれか一項に記載のロータリエンジン。
【請求項11】
いずれかの対応するシリンダ(4、5、6)のピストンに印加する圧力は、前記対応するシリンダ(4、5、6)の前記ピストンチャンバ内に圧縮流体を注入または放出することにより印加され、前記対応するシリンダ(4、5、6)は空気圧シリンダである、請求項1~10のいずれか一項に記載のロータリエンジン。
【請求項12】
対応する前記ピストン(8a、8b、8c)が、前記各シリンダ(4、5、6)の前記ピストンチャンバ容積が最小となる上死点を通過する際に、前記第1シリンダ(4)および前記少なくとも1つの第2シリンダ(5、6)のいずれか1つに圧縮流体が注入される、請求項11に記載のロータリエンジン。
【請求項13】
前記圧縮流体は、対応する前記ピストン(8a、8b、8c)が、前記各シリンダ(4、5、6)の前記ピストンチャンバ容積が最大となる下死点を通過する際に、前記第1シリンダ(4)および前記少なくとも1つの第2シリンダ(5、6)のいずれか1つから放出される、請求項11または12に記載のロータリエンジン。
【請求項14】
前記圧縮流体は一定流量で供給され、前記第1ロータ(2)をその回転軸(2a)周りに一定に回転させる、請求項11~13のいずれか一項に記載のロータリエンジン。
【請求項15】
前記圧縮流体は圧縮空気または蒸気である、請求項11~14のいずれか一項に記載のロータリエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気エンジン、空気圧エンジン、ポンプ、およびコンプレッサに関し、特にロータリエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリエンジンは、往復動ピストン機械に代わるものとしてよく知られている。ロータリエンジンは、クランク機構を要することなく回転運動を直接発生させる。クランク機構に基づくエンジンの主な欠点は、往復運動を回転運動に変換するために、エンジンの全体効率が著しく低下することである。また、クランク駆動機で用いられる軸受は滑り軸受として設計されることが多く、ころ軸受に比べて軸受にかかる摩擦力がかなり高いことも、効率が比較的低い原因である。クランク機構を有するエンジンの欠点としてはさらに、ピストンをシリンダ壁に押しつける強い横向きの力の作用により、機械的摩擦損失が大きいこともある。
【0003】
米国特許出願公開第2007/062469A1号に開示のエンジンは、ハウジングと、被駆動軸が固定されたロータとを備える。ロータはハウジングの両側に同軸上に離間して設けられた軸受上に装着され、自身の回転軸周りを回転し、ロータ本体内に、径方向に対向する一対のシリンダを備える。一対のシリンダはロータ回転軸に対して偏心し等距離で離間している。各シリンダの径方向外端は壁により閉じられ、他端はシリンダ内を摺動するピストンにより閉じられている。ロータ本体内で各シリンダから被駆動軸の内筒口に延びるダクトを通して気体を吸入、吐出することができる。ハウジングの両側には同軸上に離間して設けられた軸受上に装着された回転リングが設けられている。回転リングは、ロータ軸から所定の偏心量で離間した回転軸周りを回転し、ロータのピンによって、ロータと同方向に同速度で回転するよう駆動される。ピストンは接続ロッドにより回転リングに接続されている。
【0004】
ロシア特許第2088762C1号に開示のピストンロータリエンジンは、ハウジングと、出力軸に固着されるロータと、ハウジング孔内に設置される支持ローラと、ロータに対し偏心した回転リングとを備える。
【0005】
ドイツ特許出願公開公報第3730558A1号に開示の昇降係合部を備える内燃ロータリエンジンは、少なくとも1つのシリンダからなるシリンダユニットを備え、駆動軸が、これに対し偏心して装着されるシリンダユニットを囲んでいる。閉じられたハウジング内で双方が同一方向に回転比1:1で回転し、駆動軸の回転運動が歯車またはレバー機構によりシリンダユニットに伝達される。シリンダ内に位置するピストンが、接続ロッドにより駆動軸上に揺動可能に装着されている。シリンダユニットの中心に位置する中空軸により、空気、燃料、および排気ガスが移送される。回転時には、中空軸、シリンダユニット、ピストンピン、および駆動軸の接続ロッド軸受のそれぞれの中心が、上死点および下死点において一直線上に並ぶ。
【0006】
米国特許第988938A号に開示のロータリエンジンは、流体圧作動式の複数のピストンおよび内端側でピストンに揺動可能に接続されるピストンロッド、を有する主部材と、前記主部材を貫通しその両側から突出する軸と、前記軸の突出端を受ける軸受と、主部材の軸に対し平行かつ偏心した軸を有して主部材を囲み、前記ピストンロッドの外端が揺動可能に接続されている環状部材と、端部がそれぞれ主部材と環状部材とに接続され重なり、前記ピストンロッドから独立して、環状部材の主部材に対する固定軸周りの同期回転を確保するよう配されたリンクと、環状部材の両側に当接し、前記環状部材軸の前記主部材軸周りの回転を防ぐよう配される摩擦低減装置と、を備える。該摩擦低減装置は、前記環状部材を、前記リンクの長手方向に直交する二方向における前記ピストンのスラスト面内に限定している。
【発明の目的および概要】
【0007】
特に火力発電所、地熱発電所、および原子力発電所における電力の発生に適し、簡易、安価で耐久性があり、様々な熱源により駆動される改良ロータリエンジンを提供することが望まれる。このようなロータリエンジンは、ポンプおよびコンプレッサにおいても使用することができる。
【0008】
本発明はこの課題を解決するものである。本発明によれば、ステータと、前記ステータ上に、自身の回転軸周りを回転可能に装着される第1ロータと、前記ステータ上に、前記第1ロータの前記回転軸に平行である自身の回転軸周りを回転可能に装着され、前記第1ロータに対して偏心しかつこれを囲むように装着される第2ロータと、を備えるロータリエンジンが提供される。前記第1ロータは、並進変位可能な第1ピストンにより制限されるピストンチャンバを有する第1シリンダを備え、一端で前記第2ロータの外面に固定される第1ロッドが、前記第1シリンダから前記第2ロータの外面に向けて外方に突出し、前記第1ロッドはその他端で前記第1ピストンに固定される。前記第1ロータはさらに、少なくとも1つの第2シリンダを備え、前記少なくとも1つの第2シリンダそれぞれは、並進変位可能な第2ピストンにより制限されるピストンチャンバを備え、前記第2ロータの外面に、対応する第2ロッドの一端が連結され、第2ロッドは、前記各第2シリンダから前記第2ロータの外面に向けて外方に突出し、前記対応する第2ロッドはその他端で対応する前記第2ピストンに固定される。第1シリンダの第1ロッドは第2ロータの外面に固定される一方、対応する第2シリンダの第2ロッドは、ロータリエンジンの動作維持のために、第2ロータ内で特定量の回転運動を必要とする。前記第2ロータの前記外面に連結された前記各第2ロッドの前記一端は、前記第2ロータ内の限定された曲線ガイド経路に沿って回転変位可能に支持されている。
【0009】
発明の好ましい実施形態において、前記第1シリンダおよび前記少なくとも1つの第2シリンダは、前記第1ロータの前記回転軸周りの径方向に配される。
【0010】
発明の好ましい実施形態において、前記第1シリンダおよび前記少なくとも1つの第2シリンダは、前記第1ロータの前記回転軸周りの径方向に等角間隔で配される。
【0011】
発明の好ましい実施形態において、ロータリエンジンはさらに、前記第2ロータの前記外面上に装着される少なくとも1つのレールガイドを備え、前記少なくとも1つのレールガイドそれぞれにより前記各第2ロッドに前記曲線ガイド経路が設けられる。
【0012】
発明の好ましい実施形態において、前記少なくとも1つのレールガイドがそれぞれ曲線レールからなり、前記各第2ロッドがころ軸受によって対応する前記曲線レールに連結される。
【0013】
発明の好ましい実施形態において、前記第1シリンダは、前記第1ピストンへの圧力が印加または解放されると、前記第1ロッドに沿う限定された並進運動が行われるよう構成され、これにより前記第1ロッドが前記第1ロータの前記回転軸周りを回転する。
【0014】
発明の好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの第2シリンダはそれぞれ、前記各第2シリンダの前記第2ピストンへの圧力が印加または解放されると、前記対応する第2ロッドに沿う限定された並進運動が行われるよう構成され、これにより前記対応する第2ロッドが限定された回転運動を行う。
【0015】
発明の好ましい実施形態において、前記限定された回転運動は、前記対応する第2ロッドの前記第1ロータに対する並進運動と、前記第1ロータの回転軸周りの回転運動とにより規定される瞬間的回転中心周りに行われ、各第2ロッドの前記並進運動は、前記各第2ロッドを前記第2ロータの前記外面に連結することにより行われる。
【0016】
発明の好ましい実施形態において、ロータリエンジンはリニア軸受をさらに備え、これに沿って、前記第1ロッドおよび前記第2ロッドのうち少なくとも1つが、対応する前記シリンダ内に摺動する。
【0017】
発明の好ましい実施形態において、いずれかの対応するシリンダのピストンに印加する圧力は、前記対応するシリンダの前記ピストンチャンバ内に流体を注入または放出することにより印加され、前記対応するシリンダは空気圧シリンダである。
【0018】
発明の好ましい実施形態において、ロータリエンジンは、対応する前記ピストンが、前記各シリンダの前記ピストンチャンバ容積が最小となる上死点を通過する際に、前記第1シリンダおよび前記少なくとも1つの第2シリンダのいずれか一方に流体が注入されるよう構成される。
【0019】
発明の好ましい実施形態において、ロータリエンジンは、対応する前記ピストンが、前記各シリンダの前記ピストンチャンバ容積が最大となる下死点を通過する際に、前記第1シリンダおよび前記少なくとも1つの第2シリンダのいずれか1つから前記流体が放出されるよう構成される。
【0020】
発明の好ましい実施形態において、ロータリエンジンは、前記流体が一定流で供給され、前記第1ロータをその回転軸周りに一定に回転させるよう構成される。
【0021】
いくつかの実施形態において、ロータリエンジンはさらに、前記第1ロータの前記回転軸と一致する回転軸を有するロータ軸を備える。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記第1ロータの前記回転軸は前記第1ロータの中心軸である。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記第2ロータの前記回転軸は前記第2ロータの中心軸である。
【0024】
いくつかの実施形態において、ロータリエンジンは、前記第1ロータに接続され、圧縮流体を前記第1空気圧シリンダおよび前記少なくとも1つの第2空気圧シリンダに分配するよう構成された空気圧分配ユニットをさらに備える。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記ころ軸受は、前記対応する曲線レールの両側に配される少なくとも2つのラジアル玉軸受ローラを備える。
【0026】
発明の好ましい実施形態において、前記流体は圧縮気体である。
【0027】
好ましい実施形態において、前記流体は圧縮空気または蒸気である。
【0028】
好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの第2シリンダは、2つのシリンダである。好ましい実施形態において、前記第1シリンダおよび前記2つの第2シリンダは、前記第1ロータの前記回転軸周りの径方向に120°の等角間隔で配され、前記第2ロータの前記外面に連結された各第2ロッドの前記一端は、前記第2ロータ内の限定された曲線ガイド経路に沿って回転変位可能に支持されている。
【0029】
いくつかの実施形態は、前記第1ロータの前記回転軸周りに好ましくは360°/(n+1)の等角間隔で配される、n個の第2シリンダを備える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明のさらなる特徴、目的、および利点は、添付の概略図面と併せた以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
【
図1】本発明の一実施形態に係るロータリエンジンの1-1断面図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るロータリエンジンの2-2断面図。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る第2ロータの外面に固定される第1ロッドの2-2断面図。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る第2ロータの外面に連結される第2ロッドの2-2断面図。
【
図4A】本発明の一実施形態に係るロータリエンジンの空気圧分配ユニットの3-3断面図。
【
図4B】本発明の一実施形態に係るロータリエンジンの空気圧分配ユニットの4-4断面図。
【
図4C】本発明の一実施形態に係るロータリエンジンの空気圧分配ユニットの5-5断面図。
【
図5】レールガイドの寸法を設定するための、本発明の一実施形態に係るロータリエンジンの2-2断面図。
【
図6A】長手方向ピストン行程b
1(φ)を計算するための幾何学図。
【
図6B】長手方向ピストン行程b
2(φ)を計算するための幾何学図。
【
図6C】レールガイドに沿った回転方向ピストン行程xを計算するための幾何学図(三角法計算用の三角形設定)。
【
図6D】レールガイドに沿った回転方向ピストン行程xを計算するための別の幾何学図(三角法計算用の三角形設定)。
【0031】
[ロータリエンジンの寸法設定]
ロータリエンジンの寸法設定には、第2ロータが第1ロータ周りを回転する際の各シリンダの長手方向および回転方向のピストン行程に関する知識を要する。
【0032】
以下の入力パラメータが与えられる。
【0033】
【0034】
与えられた入力パラメータに基づき以下の出力パラメータを算出することができる。
【0035】
【0036】
点ABCを結ぶと、辺a、bn(φ)、cおよび角度α、β、γを有する三角形となる。
【0037】
三角法の関係を用いて、ロータリエンジンの、特に第1ピストン8aおよび第2ピストン8b、8cの経路の寸法設定を行う。各ピストン8a、8b、8cの経路は、第1ピストン8aについてはピストン行程が長手方向成分のみからなり、第2ピストン8b、8cについてはピストン行程が長手方向成分と回転方向成分とからなる。
【0038】
ピストン8aの長手方向ピストン行程b
1
(φ)
第2ロータ3外面に固定されていることから、ピストン8aの移動は長手方向のピストン位置変化に限定される。このピストン8aの長手方向ピストン行程b1の計算は、第2シリンダを有さないロータリエンジン構成と、任意の数の第2シリンダを有するロータリエンジン構成の両方に適用できる。
【0039】
図6Aは長手方向ピストン行程b
1(φ)を計算するための幾何学図である。b
1の計算には、辺a、b
1、c、辺aに対向する角度α、および辺b
1に対向する角度β、を有する三角形を用いる。
【0040】
角度βはピストン8aが現在位置している象限に依存する。
ピストン8aが第1または第2象限にあるとき、β=180°-φ
ピストン8aが第3または第4象限にあるとき、β=φ-180°
【0041】
b1は、三角形の角度βに対向し、辺aを辺cと結ぶ辺である。余弦定理より、
【0042】
【数1】
これより、回転角度φによって決まるピストン8aのピストン行程b
1は、
【0043】
【0044】
b1およびβの計算から、残りの角度αおよびγを求めることができる。これらの角度はφに依存する。
αは三角形の辺b1とcとの間の角度である。正弦定理より、
【0045】
【0046】
【0047】
【数5】
は一定ではないため、この運動は加速回転、つまり、等速ではない。
αはピストン8aが現在位置している象限に依存する。
ピストン8aが第1または第4象限にあるとき、
【0048】
【数6】
ピストン8aが第2または第3象限にあるとき、
【0049】
【数7】
γは三角形の辺aとb
1との間の角度である。
γ=180°-α-β
【0050】
ピストン8bの長手方向ピストン行程b
2
(φ)
第2ピストン8bの長手方向ピストン行程の計算は、第1ロータ2の回転軸2a周りの径方向にそれぞれ120°の等角間隔で配される3つのピストン8a、8b、8cの配置に基づく。本発明は等角間隔に限られず、いかなる数のピストンがいかなる角度間隔で配されていても同配置を採用することができる。ピストン8b、8cは、第2ロータ3外面に接続された対応するレールガイド13に沿ってその一端が移動するよう設置される。この回転運動によってもピストン行程が変化する。
【0051】
図6Bは長手方向ピストン行程b
2(φ)を計算するための幾何学図である。C
2はロータ3の外面に位置し、第2ロータ3外面に向け突出する各曲線ガイド経路に沿った運動の中心点を表す。
【0052】
b2の計算には、辺a、b2、c、辺aに対向する角度α(φ)+120°、および辺b2に対向する角度β2、を有する三角形を用いる。
【0053】
120°を加算するのは、等角間隔で配される3つのピストンを使用する設定のためである。一般に、上記の計算は、ピストン数が3つより多いまたは少ない設定にも実施することができる。この場合、3つのピストンに対する120°という値を、360°を等角分割するピストン数nで割った値360°/nに置き換える必要がある。等角間隔でない場合は、各ピストンとその次のピストンとの間の角度をα(φ)に加算しそれぞれについて計算を行う必要がある。
【0054】
現時点の角度αは、上述のように長手方向ピストン行程b1に関して算出される。αは現時点の回転角度φに依存する。
aは、三角形の角度α(φ)+120°に対向し、辺b2を辺cと結ぶ辺である。余弦定理より、
α∈[0°,<120°]のとき、
【0055】
【0056】
【数9】
これらの式はb
2では二次方程式となり
α∈[0°,<120°]のとき、
【0057】
【0058】
【0059】
【数12】
となる。ただし、
x
2+px+q=0
α∈[0°,<120°]のとき、p=-2c cos(α+120°)
α∈[120°,<360°]のとき、p=-2c cos(α-120°)
q=c
2-a
2
である。
【0060】
ピストン8bの回転方向ピストン行程xの計算
ロッド9bを介しピストン8bに接続されたキャリッジ14の、レールガイド13に沿った行程距離xは、角度δに依存する。δは、第2ロータ3の半径aとの交点に設けられるレールガイド上のゼロ位置(中心位置)と、第2ロータ3外面に向け突出するレールガイド13上の点C2におけるキャリッジ14位置との間の角度である。
【0061】
図6Cと
図6Dは、レールガイドに沿った回転方向ピストン行程xを計算するための幾何学図(三角法計算用の三角形設定)である。第2ロータ3外面に突出する第2ピストン8bの位置変化xは、辺a、b
2、c、辺aに対向する角度α(φ)+120°、および辺b
2に対向する角度β
2、を有する三角形から導かれる。ただし、
図4に示すように、その他の角依存性を考慮する必要がある。
【0062】
第2ロータ3外面に突出する回転方向ピストン行程xは、角度δ周りのピストン8bの回転に依存し、角度δは回転角度φに依存する。3つのピストン8a、8b、8cが等角間隔で配されるロータリエンジンでは、
σ=180°-120°-φおよびδ + β2 = σ から、
δmax = maxδ(φ)
x=a.δmax
が導かれる。
【発明の実施例の詳細な説明】
【0063】
図1は本発明の一実施形態に係るロータリエンジンの1-1断面図である。ロータリエンジンは、ステータ1と、ステータ1上に、自身の回転軸2a周りを回転可能に装着される第1ロータ2と、ステータ1上に、第1ロータ2の回転軸2aと平行な回転軸3a周りを回転可能に、第1ロータ2から距離c偏心して装着される第2ロータ3とを備える。第1ロータ2は第2ロータ3に囲まれている。
【0064】
第1ロータ2は、並進変位可能な第1ピストン8aにより制限されるピストンチャンバを有する第1シリンダ4を備え、一端で第2ロータ3の外面に固定される第1ロッド9aが、第1シリンダ4から第2ロータ3の外面に向けて外方に突出し、第1ロッド9aはその他端で第1ピストン8aに固定される。
【0065】
第1ロータ2はさらに、2つの第2シリンダ5、6を備える。第2シリンダ5、6はそれぞれ、並進変位可能な第2ピストン8b、8cにより制限されるピストンチャンバを備え、一端で第2ロータ3の外面に連結される対応する第2ロッド9b、9cが、各第2シリンダ5、6から第2ロータ3の外面に向けて外方に突出し、対応する第2ロッド9b、9cはその他端で対応する第2ピストン8b、8cに固定される。
【0066】
第1および第2シリンダ4、5、6は、第1ロータ2の回転軸2a周りの径方向に等角間隔で配される結果、シリンダ間は互いにそれぞれ120°の角度で離れている。
【0067】
第2ロータ3の外面に連結された各第2ロッド9b、9cの一端は、第2ロータ3内の限定された曲線ガイド経路に沿って回転変位可能に支持されている。曲線ガイド経路は第2ロータ3の外面上に装着され第2ロータ3の内部側に位置するレールガイド13によって実現される。レールガイド13は曲線レールを有することができる。各第2ロッド9b、9cは、ころ軸受14によって、対応する曲線レールに連結される。
【0068】
パワーテイクオフ(PTO)軸を第1回転軸2aの一端に装着することができる。
第1ロータ2が第2ロータ3に対して偏心した配置のため、ピストン8a、8b、8cは仕事をする、すなわち上死点から下死点まで移動することができ、これにより第1ロータ2および第2ロータ3の両方がそれぞれの回転軸2a、3a周りを180°回転する。
【0069】
ロータリエンジンは、各シリンダ4、5、6のピストンチャンバ容積が最小となる上死点を、対応するピストン8a、8b、8cが通過する際に、第1および第2シリンダ4、5、6のいずれか1つに圧縮流体を注入することにより作動される。圧縮流体は、各シリンダ4、5、6のピストンチャンバ容積が最大となる下死点を、対応するピストン8a、8b、8cが通過する際に、第1および第2シリンダ4、5、6のいずれか1つから放出される。圧縮流体は一定流量で供給され、第1ロータ2をその回転軸2a周りに一定に回転させる。
【0070】
図2は、
図1のロータリエンジンの2-2断面図を示す。回転軸2a、3aの偏心によって、ロータリエンジンの作動時にロッド9b、9cがレールガイド13に沿って回転運動する。
【0071】
図3Aは、ロータリエンジン作動時の横方向振動を支えるために軸受ハウジング11を介して第2ロータ3の外面に固定された第1ロッド9aの、4-4断面図を示す。第1ロッド9aは、第1シリンダ4のシリンダヘッド内のロッド孔に装着されたリニア軸受10に沿って第1シリンダ4外に進出する。
【0072】
図3Bは、レールガイド13の曲線レールに沿って移動するころ軸受14を介して第2ロータ3の外面に連結された第2ロッド9b、9cの、3-3断面図を示す。ころ軸受14はキャリッジとして実現することができる。
【0073】
図4A~
図4Cは、本発明の一実施形態に係るロータリエンジンの空気圧分配ユニットの3-3、4-4、5-5断面図を示す。空気圧分配ユニットは、第1回転軸2aの一端、たとえばPTO軸が設けられる一端とは反対側に装着され、圧縮流体を、エンジン回転の適切な瞬間に順次第1および第2シリンダ4、5、6に流路を通じて分配し、また排出流体を放出することができる。圧縮流体はそれぞれのシリンダ4、5、6の作動部に進入する。したがって圧力が上昇し、これが、第2ロータ3の外面に連結されたロッド9a、9b、9cに取り付けられた対応するピストン8a、8b、8cを加圧する。
【0074】
図5は、第1ロータ2および第2ロータ3の偏心によって行われる第2シリンダ5、6の第2ピストン8b、8cの回転運動を支持するレールガイド13が必要とする長さを計算するための幾何学図を示す。第2ピストン8b、8cは対応するロッド9b、9cに接続され、ロッドにそれぞれ、レールガイド13の曲線経路に沿って案内されるキャリッジ14が装着される。キャリッジ14は、第2ロータ3の第1ロータ2に対する回転位置に従ってレールガイド13に沿って移動する。
【0075】
図5は、第2ロッド9b、9cとこれらの各キャリッジ14とが対応するレールガイド13の頂点位置にあるときのロータリエンジンの部品位置を示している。レールガイド13の曲線経路の長さは、キャリッジ14の長手方向軸とレールガイド13の接線との間の角度に基づいて求めることができる。必要となる計算を行うために、
図5では、以下のように4つの点およびその間の距離を採用している。
【0076】
・各第2ピストン8b、8cに対応するロッド9b、9cの長手方向軸を、キャリッジ軸と呼ぶ。
・Aは第1ロータ2の回転軸2aを指す。
・Bは第2ロータ3の回転軸3aを指す。
・Cは各ロッド9b、9cのキャリッジ軸と、対応するレールガイド13との交点を指す。
・Dは点Cを通るレールガイド13の接線上の一点を指す。
・ACはキャリッジ軸を表し、交点Cにおける第1ロータ2の回転軸2aからレールガイド13までの距離を指す。
・ABは第1ロータ2の回転軸2aと第2ロータ3の回転軸3aとの間の偏心度を指す。
・BCは交点Cにおける第2ロータ3の回転軸3aからレールガイド13までの距離を指す。
・CDはレールガイド13の接線を指す。
【0077】
以上の定義から、角∠BCDは直角(90°)であり、∠ACDは、レールガイド13の接線CDと、キャリッジ軸ACの間の角を指し、この角度がレールガイドの寸法設定に関わる角度である。
【0078】
∠ACDを求めるために、i)交点Cにおける第2ロータ3の回転軸3aとレールガイド13との間の距離BCと、ii)交点C周りのBCとACとの間の∠ACBを計算する必要がある。ACは与えられている。
【0079】
交点Cにおける第2ロータ3の回転軸3aとレールガイド13との間の距離BCを求めるために、任意の三角形の余弦定理を用いる。ここでは三角形ABCである。
【0080】
【0081】
BCとACとの間の∠ACBを計算するために、任意の三角形の正弦定理を用いる。ここでは三角形ABCである。
【0082】
【0083】
【0084】
結論として、求めた∠ACBを、90°である∠BCDから引くことで、レールガイド13の接線とキャリッジ14の長手方向軸との間の角として∠ACDを求めることができる。
【0085】
【0086】
以上の実施形態の説明に含まれる詳細は、発明の範囲を限定するものではなく、いくつかの実施形態の例示を表すものと捉えるべきである。多様な変形が可能であり、当業者には明らかである。特に、本明細書に開示の個々の実施形態の特徴を組み合わせることによる変形例が挙げられる。したがって、本発明の範囲は例示の実施形態ではなく添付の請求の範囲およびその法的な均等物によって定義されるべきである。
【国際調査報告】