(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】積層グレージング
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20230419BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20230419BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20230419BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C19/00 A
C03C15/00 A
B60J1/00 H
B60J1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554651
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2021056397
(87)【国際公開番号】W WO2021180954
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】ペーター パウルス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス テレガ
【テーマコード(参考)】
3D127
4G059
4G061
【Fターム(参考)】
3D127AA04
3D127BB01
3D127CB10
3D127CC02
3D127DD25
3D127EE12
4G059AA01
4G059AC01
4G059BB01
4G061AA04
4G061BA02
4G061CB16
4G061CB19
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
接着性中間層材料のシートによって接合されたグレージング材料の第1および第2のシートを備える車両フロントガラス用積層グレージングを記載する。積層グレージングは、外向き表面と、粗面化プロセスの前に第1の処理領域が第1の表面粗さを有し、且つ、粗面化プロセスの後に第1の処理領域が第2の表面粗さを有するように粗面化プロセスに供された第1の処理領域を備える内向き表面と、を有する。第2の表面粗さを有する第1の処理領域は、外向き表面に衝撃を受けたときに積層グレージングが破損するのを助ける。積層グレージングが衝突体によって衝突されたときに破損するのにかかる時間を短縮するための、粗面化領域の使用をも記載する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着性中間層材料の少なくとも1つのシートによってグレージング材料の第2のシートに接合されたグレージング材料の第1のシートを備える、車両フロントガラス用の積層グレージングであって、前記グレージング材料の第1および第2のシートの各々は、それぞれ第1の主表面および第2の主表面を有し、前記グレージング材料の第1のシートの前記第2の主表面は、前記グレージング材料の第2のシートの前記第1の主表面に面し、さらに、前記グレージング材料の第2のシートの前記第2の主表面は、少なくとも第1の処理領域を備え、前記第1の処理領域は、粗面化プロセス前に第1の表面粗さを有し、且つ、粗面化プロセスの後に第2の表面粗さを有するように粗面化プロセスに供されたものである、車両フロントガラス用の積層グレージング。
【請求項2】
前記第1の処理領域は、可視光に対して半透明である、請求項1に記載の積層グレージング。
【請求項3】
前記第1の処理領域は、1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10の側面を有する外周を有する、請求項1または2に記載の積層グレージング。
【請求項4】
前記粗面化プロセスは、前記グレージング材料の第2のシートの前記第2の表面の前記第1の処理領域の中に1つ以上のスクラッチを設けることを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項5】
前記スクラッチは、機械的に生成される、請求項4に記載の積層グレージング。
【請求項6】
前記粗面化プロセスは、前記グレージング材料の第2のシートの前記第2の表面の前記第1の処理領域を研磨することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項7】
前記第1の処理領域は、サンドブラスト領域または酸エッチング領域を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項8】
前記粗面化プロセス後の前記第1の処理領域は、少なくとも20μmのサンドブラスト深さを有するサンドブラストされた領域である、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項9】
前記サンドブラスト深さは、500μm未満である、請求項8に記載の積層グレージング。
【請求項10】
前記第1の処理領域は、複数の処理領域のうちの1つであり、前記複数の処理領域の総面積は、好ましくは、前記グレージング材料の第2のシートの前記第2の主表面の面積の10%未満、または9%未満、または8%未満、または7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、または1%未満である、請求項1から9のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項11】
前記第1の処理領域は、複数の処理領域のうちの1つであり、前記複数の処理領域の面積は、0.01cm
2~200cm
2、好ましくは0.01cm
2~100cm
2、より好ましくは0.01cm
2~10cm
2、さらにより好ましくは0.01cm
2~5cm
2、さらにより好ましくは0.01cm
2~0.5cm
2である、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項12】
前記複数の処理領域における1つ以上の他の処理領域は、0.01cm
2~200cm
2、好ましくは0.01cm
2~100cm
2、より好ましくは0.01cm
2~10cm
2、さらにより好ましくは0.01cm
2~5cm
2、さらにより好ましくは0.01cm
2~0.5cm
2の面積を有する、請求項11に記載の積層グレージング。
【請求項13】
前記第1の処理領域は、複数の処理領域のうちの1つであり、前記処理領域のうちの2つ以上は、同じ面積を有し、好ましくは、前記複数の処理領域のすべての処理領域は、同じ面積を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項14】
前記第1の処理領域は、第2の処理領域から第1の間隔で離隔し、前記第1の間隔は、0.5cm~50cm、より好ましくは0.5cm~40cm、より好ましくは0.5cm~30cm、より好ましくは0.5cm~20cm、より好ましくは0.5cm~10cmである、請求項1から13のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項15】
前記第1の処理領域は、前記積層グレージングの周縁から離隔する、請求項1から14のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項16】
前記第1の処理領域は、前記積層グレージングの前記周縁から1cm~20cm、より好ましくは1cm~15cm、より好ましくは1cm~10cm、より好ましくは、1cm~9cm、または1cm~8cm、または1cm~7cm、または、1cm~6cm、または1cm~5cm離隔する、請求項15に記載の積層グレージング。
【請求項17】
前記第1の処理領域は、車両に取り付けられたときに前記積層グレージングの下縁となるように構成された前記積層グレージングの周縁から離隔する、請求項15または16に記載の積層グレージング。
【請求項18】
前記グレージング材料の第1のシートは、1mm~5mm、好ましくは、1.3mm~3mmの厚さを有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項19】
前記グレージング材料の第2のシートは、1mm~5mm、好ましくは1.3mm~3mmの厚さを有し、または前記グレージング材料の第2のシートは、化学強化され、1.2mm未満の厚さを有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項20】
前記グレージング材料の第2のシートは、前記グレージング材料の第1のシートよりも薄く、および/または、前記積層グレージングは、3mm~10mmの厚さを有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項21】
前記第1の処理領域は、その上に不明瞭化バンドを有する前記積層グレージングの領域内にある、請求項1から20のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項22】
前記粗面化プロセスは、処理される第1の領域の少なくとも一部をレーザーで照射して、前記第1の処理領域内の前記グレージング材料の第2のシートの前記第2の主表面をレーザーエッチングすることを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項23】
前記第1の処理領域によって境界付けられた前記グレージング材料の第2のシートの体積において、欠陥は、前記レーザーによる照射に続いて形成される、請求項22に記載の積層グレージング。
【請求項24】
前記レーザーは、炭酸ガスレーザーである、請求項22または請求項23に記載の積層グレージング。
【請求項25】
前記第2の表面粗さは、20μm超のRzを有する、請求項1から24のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項26】
前記第2の表面粗さは、3μm~6μmの範囲のRaを有する、請求項1から25のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項27】
前記第2の表面粗さは、20μm~50μmの範囲のRmaxを有する、請求項1から26のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項28】
前記第2の表面粗さは、10μm~20μmの範囲のRvを有する、請求項1から27のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項29】
前記積層グレージングは、前記グレージング材料の第1のシートの前記第1の主表面上の衝突位置での適切な衝突体による衝突に続いて、衝突位置の周辺に2ms未満の時間で亀裂を進展させ、ここで、好ましくは、前記衝突体は、(i)UN規則第127号(E/ECE/324/Rev.2/Add.126/Rev.2)に記載のとおりであり、または、(ii)前記衝突体は、3kg~6kgの質量を有し、および/または前記衝突体は、球体または回転楕円体である、および/または前記衝突体は、衝突位置に衝突し、その速度は、20km/h~50km/hである、請求項1から28のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項30】
請求項1から29のいずれか一項に記載の積層グレージングを備える車両フロントガラス。
【請求項31】
積層グレージングの第2の露出面上の衝撃領域で適切な衝突体によって衝突されたときに前記積層グレージングが破損するのにかかる時間を短縮するための、積層グレージングの第1の露出面の上の1つ以上の粗面化領域の使用であって、好ましくは、前記粗面化領域は、サンドブラスト領域および/またはレーザーエッチング領域を備える、積層グレージングの第1の露出面上の1つ以上の粗面化領域の使用。
【請求項32】
前記第1の露出面は、前記積層グレージングの表面4であり、前記第2の露出面は、前記積層グレージングの表面1である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記衝突体は、3kg~6kg、好ましくは4kg~5kg、より好ましくは4.5kgの質量を有し、および/または前記衝突体は、球体または回転楕円体であり、好ましくは、15cm~20cm、より好ましくは16cm~17cmの直径を有し、および/または前記衝突体が前記衝突位置に衝突するとき、その速度は、20km/h~50km/h、好ましくは35km/h~45km/h、より好ましくは40km/hである、請求項31または請求項32に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に使用するための、特に自動車のフロントガラスとして使用するための、積層グレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラス用の従来の積層グレージングは、ポリビニルブチラール(PVB)のシートで接合されたソーダ石灰ケイ酸ガラスの2つのプライを備える。通常、各ガラスシートは、厚さ2.1mmであり、PVBシートは、通常、厚さ0.76mmである。
【0003】
当技術分野で知られているように、自動車用積層フロントガラスは、改善された安全上の利点を車両の運転者に提供する。しかしながら、自動車メーカーは、歩行者との前方衝突が発生した場合の自動車の安全性にも取り組んでいる。
【0004】
歩行者と衝突した場合、歩行者が車両のフロントガラスに衝突し、それによって歩行者のさらなる負傷が生じ得る。
【0005】
国際公開第2013181505号は、厚さが2.0mmを超えない少なくとも1つの化学強化ガラスシートと、ガラスシート間のポリマー中間層と、を備えるガラス積層体を記載する。積層体の第1の側への衝撃時に、ガラス積層体を弱め、一方で反対側の積層体の第2の側への衝撃時に積層体の強度を保持するために、ガラスシートの一方の表面に疵が作られる。
【0006】
欧州特許出願公開第2062862号明細書は、1mm未満の厚さを各々有する少なくとも3つの板ガラスを、2つの隣接する板ガラスの間の中間層を介して積層することによって製造される板ガラス積層構造を記載する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、車両が歩行者と衝突した場合に歩行者が重傷を負うリスクを低減するように配置された車両フロントガラスを提供することを目的とする。
【0008】
したがって、第1の態様では、本発明は、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートによってグレージング材料の第2のシートに接合されたグレージング材料の第1のシートを備える、車両フロントガラス用の積層グレージングであって、グレージング材料の第1および第2のシートの各々は、それぞれ第1の主表面および第2の主表面を有し、グレージング材料の第1のシートの第2の主表面は、グレージング材料の第2のシートの第1の主表面に面し、さらに、グレージング材料の第2のシートの第2の主表面は、少なくとも第1の処理領域を備え、第1の処理領域は、粗面化プロセス前に第1の表面粗さを有し、且つ、粗面化プロセスの後に第2の表面粗さを有するように粗面化プロセスに供されたものである、車両フロントガラス用の積層グレージングを提供する。
【0009】
グレージング材料の第2のシートの第2の主表面に第2の粗さを有する第1の処理領域を提供するために粗面化プロセスを使用することによって、グレージング材料の第2のシートは、グレージング材料の第1のシートの第1の主表面との衝突の場合に、容易に破損し得ることがわかった。
【0010】
グレージング材料の第2のシートの第2の主表面は、第1の面積を有し、第1の処理領域は、第2の面積を有し、好ましくは第2の面積は、第1の面積より小さい。
【0011】
好ましくは、粗面化プロセスの後、第1の処理領域は、半透明である。
【0012】
好ましくは、第1の処理領域は、1つ、または2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10の側面を有する外周を有する。
【0013】
好ましくは、第1の処理領域は、4つの側面を有する。
【0014】
好ましくは、第1の処理領域は、長方形、ひし形、平行四辺形または正方形の形状である。
【0015】
好ましくは、第1の処理領域は、グレージング材料の第2のシートの外縁の少なくとも一部に対して平行または実質的に平行な外縁を有する。
【0016】
好ましくは、第1の処理領域は、少なくとも第1の部分と第2の部分とを備え、第1の部分は、第2の部分に対して傾斜している。
【0017】
いくつかの実施形態では、粗面化プロセスは、処理される第1の領域の少なくとも一部をレーザーで照射して、第1の処理領域のグレージング材料の第2のシートの第2の主表面をレーザーエッチングすることを含む。レーザーによる照射の後、第1の領域の少なくとも一部は、レーザーエッチングされる。
【0018】
好ましくは、レーザーの照射後、第1の処理領域は、グレージング材料の第2のシートの体積内に欠陥を備え、体積は、第1の処理領域によって一方の側面で境界付けられる。
【0019】
好ましくは、レーザーは、炭酸ガスレーザーである。
【0020】
いくつかの実施形態では、粗面化プロセスは、グレージング材料の第2のシートの第2の表面の第1の処理領域に1つ以上のスクラッチを設けることを含む。
【0021】
好ましくは、スクラッチは、ランダムに並ぶ。
【0022】
好ましくは、スクラッチは、機械的に生成される。
【0023】
好ましくは、スクラッチは、研磨材を用いて形成される。
【0024】
好ましくは、スクラッチは、サンドペーパーを使用して形成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、粗面化プロセスは、グレージング材料の第2のシートの第2の表面の第1の処理領域を研磨することを含む。
【0026】
好ましくは、研磨は、少なくとも1回のサンドブラストステップを含む。誤解を避けるために記すと、そのような実施形態では、粗面化プロセスは、少なくとも1つのサンドブラストステップを含む。
【0027】
好ましくは、第1の処理領域は、少なくとも20μmの深さ、好ましくは500μm未満の最大深さまでサンドブラストされる。
【0028】
好ましくは、第1の処理領域は、Aμm~Bμmの深さまでサンドブラストされ、Aは、好ましくは、20、または25、または30、または35、または40、または45、または50、または55、または60、または65、または70であり、Bは、好ましくは、500、または450、または400、または350、または300、または250、または200、または150、または100である。
【0029】
いくつかの実施形態では、粗面化プロセスは、酸エッチングステップを使用してグレージング材料の第2のシートの第2の表面の第1の処理領域を研磨することを含む。
【0030】
誤解を避けるために記すと、そのような実施形態では、粗面化プロセスは、少なくとも1つの酸エッチングステップを含む。
【0031】
好ましくは、第1の処理領域は、少なくとも20μmの深さ、好ましくは500μm未満の最大深さまで酸エッチングされる。
【0032】
好ましくは、第1の処理領域は、Aμm~Bμmの深さまで酸エッチングされ、Aは、好ましくは、20、または25、または30、または35、または40、または45、または50、または55、または60、または65、または70であり、Bは、好ましくは、500、または450、または400、または350、または300、または250、または200、または150、または100である。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1の処理領域は、グレージング材料の第2のシートの第2の主表面の面積の10%未満の面積を有する。第1の処理領域の面積は、積層グレージングの視界に影響を与えないように、可能な限り小さく保たれる。
【0034】
好ましくは、第1の処理領域は、グレージング材料の第2のシートの第2の主表面の面積の5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、または1%未満の面積を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1の処理領域は、複数の処理領域のうちの1つであり、複数の処理領域の総面積は、好ましくは、グレージング材料の第2のシートの第2の主表面の面積の10%未満、または9%未満、または8%未満、または7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、または1%未満である。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1の処理領域は、複数の処理領域のうちの1つであり、第1の処理領域の面積は、0.01cm2~200cm2、好ましくは0.01cm2~100cm2、より好ましくは0.01cm2~10cm2、さらにより好ましくは0.01cm2~5cm2、さらにより好ましくは0.01cm2~0.5cm2である。
【0037】
好ましくは、複数の処理領域における1つ以上の他の処理領域は、0.01cm2~200cm2、好ましくは0.01cm2~100cm2、より好ましくは0.01cm2~10cm2、さらにより好ましくは0.01cm2~5cm2、さらにより好ましくは0.01cm2~0.5cm2の面積を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の処理領域は、複数の処理領域のうちの1つであり、処理領域のうちの2つ以上は、同じ面積を有する。
【0039】
好ましくは、複数の処理領域におけるすべての処理領域は、同じ面積を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1の処理領域は、第2の処理領域から第1の間隔で離隔し、第1の間隔は、0.5cm~50cm、より好ましくは0.5cm~40cm、より好ましくは0.5cm~30cm、より好ましくは0.5cm~20cm、より好ましくは0.5cm~10cmである。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1の処理領域は、積層グレージングの周縁から離隔する。
【0042】
好ましくは、第1の処理領域は、積層グレージングの周縁から1cm~20cm、より好ましくは1cm~15cm、より好ましくは1cm~10cm、より好ましくは、1cm~9cm、または1cm~8cm、または1cm~7cm、または1cm~6cm、または1cm~5cm離隔する。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1の処理領域は、車両に設置されたときに積層グレージングの下縁となるように構成された積層グレージングの周縁から離隔する。
【0044】
好ましくは、第1の処理領域は、車両に設置されたときに積層グレージングの下縁となるように構成された積層グレージングの周縁から離隔した複数の処理領域のうちの1つである。
【0045】
好ましくは、車両に取り付けられたときに積層グレージングの下縁となるように構成された積層グレージングの周縁から離隔した複数の処理領域における処理領域は、一列に配置され、好ましくは、列は、車両に取り付けられたときに積層グレージングの下縁になるように構成された積層グレージングの周縁に平行である。
【0046】
第1の処理領域が複数の処理領域のうちの1つの領域であるとき、各処理領域は、同じ面積から±20%以内の面積を有することが好ましい。
【0047】
第1の処理領域が複数の処理領域のうちの1つの領域であるとき、各処理領域は、同じ面積を有することが好ましい。
【0048】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第1のシートは、1mm~5mmの厚さを有し、好ましくは1.3mm~3mmの厚さを有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシートは、1mm~5mmの厚さを有し、好ましくは1.3mm~3mmの厚さを有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシートは、グレージング材料の第1のシートよりも薄い。
【0051】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第1のシートの第1の主表面は、凸面であり、グレージング材料の第2のシートの第2の主表面は、凸面である。
【0052】
いくつかの実施形態では、第2の表面粗さは、20μm超のRzであり、好ましくは、Rzは、20μm~40μmである。当業者に既知であるように、Rzは、プロファイルの最大高さであり、サンプル長さ内の最大プロファイル山高さと最大プロファイル谷深さとの合計である。サンプル長さは、5cm未満、好ましくは0.5cm~4cm、または0.5cm~3cm、または0.5cm~2cm、または0.5cm~1cmであり得る。サンプル長さは、1cm以上であり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、第2の表面粗さは、3μm~6μmの領域のRaを有する。Raは、サンプル長さ内のプロファイルの算術平均偏差である。サンプル長さは、5cm未満、好ましくは0.5cm~4cm、または0.5cm~3cm、または0.5cm~2cm、または0.5cm~1cmであり得る。サンプル長さは、1cm以上であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、第2の表面粗さは、20μm~50μmの範囲のRmaxを有する。Rmaxは、サンプル長さ内の最大単一粗さ深さである。サンプル長さは、5cm未満、好ましくは0.5cm~4cm、または0.5cm~3cm、または0.5cm~2cm、または0.5cm~1cmであり得る。サンプル長さは、1cm以上であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、第2の表面粗さは、10μm~20μmの範囲のRvを有する。Rvは、サンプル長さ内の最大プロファイル谷深さ(Rv)である。サンプル長さは、5cm未満、好ましくは0.5cm~4cm、または0.5cm~3cm、または0.5cm~2cm、または0.5cm~1cmであり得る。サンプル長さは、1cm以上であり得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、第2の表面粗さは、20μm超のサンプル長さRzを有し、好ましくは、Rzは、20μm~40μmであり、および/または3μm~6μmの領域のRaを有し、および/または20μm~50μmの範囲のRmaxを有し、および/または10μm~20μmの範囲のRvを有する。サンプル長さは、5cm未満、好ましくは0.5cm~4cm、または0.5cm~3cm、または0.5cm~2cm、または0.5cm~1cmであり得る。サンプル長さは、1cm以上であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第1のシートの第1の主表面上の衝突位置での適切な衝突体による衝突の後、積層グレージングは、衝突位置の近くにおいて2ms未満で亀裂を進展させる。
【0058】
そのような実施形態では、積層グレージングは、亀裂が進展するのにかかる時間である2ms以内、好ましくは1ms以内に完全に破損する。
【0059】
好ましくは、衝突体は、UN規則第127号(E/ECE/324/Rev.2/Add.126/Rev.2)に記載されている通りである。
【0060】
好ましくは、衝突体は、3kg~6kg、より好ましくは4kg~5kg、さらにより好ましくは4.5kgの質量を有する。
【0061】
好ましくは、衝突体は、球体または回転楕円体であり、好ましくは、15cm~20cm、より好ましくは16cm~17cmの直径を有する。
【0062】
衝突体が衝突位置に衝突するとき、好ましくは、その速度は20km/h~50km/h、より好ましくは35km/h~45km/h、さらに好ましくは40km/hである。
【0063】
好ましくは、衝突体は、重力のみの影響下で落下することによって衝突位置に衝突する。
【0064】
積層グレージングは、他の好ましい特徴を有する。
【0065】
好ましくは、積層グレージングは、車両フロントガラスである。
【0066】
好ましくは、積層グレージングは、少なくとも一方向に湾曲する。好ましくは、少なくとも一方向の曲率半径は、500mm~20000mm、より好ましくは、1000mm~8000mmである。
【0067】
好ましくは、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、ポリビニルブチラール(PVB)、吸音性改質(acoustic modified)PVB、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)などのエチレンのコポリマー、エチレンおよびメタクリル酸(EMA)のコポリマーまたはUvekol(液体硬化性樹脂)を備える。
【0068】
好ましくは、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、ポリビニルブチラール(PVB)、EVA、PVC、EMA、ポリウレタン、吸音性改質PVBまたはUvekol(液体硬化性樹脂)のシートである。
【0069】
好ましくは、接着性中間層材料の少なくとも1つのシートは、0.3mm~2.3mm、より好ましくは0.3mm~1.6mm、最も好ましくは0.3mm~0.8mmの厚さを有する。
【0070】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のシートは、1mm~3mmの間の厚さを有する。
【0071】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のシートは、1.4mm~2.8mm、より好ましくは1.6mm~2.3mmの厚さを有する。
【0072】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のシートは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスのシートである。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、しばしばソーダ石灰シリカガラス、または単にシート状の「ソーダ石灰」ガラスと呼ばれる。
【0073】
好ましくは、グレージング材料の第1および/または第2のシートは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスのシート、特にフロートガラスのシートである。
【0074】
好ましくは、グレージング材料の第1および第2のシートは、化学強化(chemically strengthened)されていない。グレージング材料のシートがイオン交換プロセスに供されていないとき、またはその後の層の深さが0μm~DOLμmである(DOLは、1または2または3または4または5である)イオン交換プロセスに供されるとき、グレージング材料のシートは、化学強化されていないと分類され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシートは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスのシートである。
【0076】
好ましくは、グレージング材料の第2のシートは、少なくとも約6wt%(重量パーセント)の酸化アルミニウム(Al2O3)を備える。
【0077】
いくつかの実施形態では、グレージング材料の第2のシートは、化学強化されたもの、すなわち化学強化ガラスである。グレージング材料の第2のシートが化学強化されるとき、好ましくは、グレージング材料の第2のシートは、1.2mm未満、より好ましくは0.3mm~1mm、さらにより好ましくは0.4mm~0.9mmの厚さを有する。
【0078】
本発明はまた、積層グレージングの第2の露出面上の衝突領域で適切な衝突体によって衝突されたときに積層グレージングが破損するのにかかる時間を短縮するために、積層グレージングの第1の露出面上の1つ以上の粗面化領域の使用をも提供する。
【0079】
好ましくは、粗面化領域は、サンドブラスト領域および/またはレーザーエッチング領域を備え得る。
【0080】
好ましくは、積層グレージングの第1の露出面は、積層グレージングの表面4であり、第2の露出面は、積層グレージングの表面1である。
【0081】
当技術分野で慣例であるように、積層グレージングの表面1は、積層グレージングの最外面であり、積層グレージングの表面4は、積層グレージングが設置される車両内部について画定される内向き表面である。積層グレージングの内向き表面は、積層グレージングが設置される車両の内部に面する。最外面(しばしば外表面と呼ばれる)は、積層グレージングが設置される車両の外部に面する。
【0082】
好ましくは、衝突体は、UN規則第127号(E/ECE/324/Rev.2/Add.126/Rev.2)に記載されている通りである。
【0083】
好ましくは、衝突体は、3kg~6kg、より好ましくは4kg~5kg、さらにより好ましくは4.5kgの質量を有する。
【0084】
好ましくは、衝突体は、球体または回転楕円体であり、好ましくは、15cm~20cm、より好ましくは、16cm~17cmの直径を有する。
【0085】
衝突体が衝突位置に衝突するとき、好ましくは、その速度は、20km/h~50km/h、より好ましくは35km/h~45km/h、さらに好ましくは40km/hである。
【0086】
好ましくは、衝突体は、重力のみの影響下において落下することによって衝突位置に衝突する。
【0087】
好ましくは、積層グレージングが衝突体によって衝突されたときに破損するのにかかる時間は、第1の露出面上に1つ以上のサンドブラスト領域を有しない積層グレージングが破損するのにかかる時間より少なくとも50%、または60%、または70%または80%短い。
【0088】
以下の図を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】本発明による積層グレージングの断面図である。
【
図2】本発明による積層グレージングの平面図である。
【
図3】本発明によるフロントガラスを有する車両の内側からの視野の図である。
【
図4】
図2と同様の、本発明による別の積層グレージングの平面図である。
【
図5】
図2と同様の、本発明による別の積層グレージングの平面図である。
【
図6】
図1を参照して記載したタイプのフロントガラスの概略等角図である。
【
図7】
図6に示されるタイプの車両フロントガラスの破損特性を試験する方法の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図1は、本発明による湾曲積層グレージングの断面を示す。
【0091】
積層グレージング1は、透明フロートガラスなどの組成を有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第1のシート3を有し、通常、積層グレージングに何らかの形で太陽光制御を提供するために着色剤として酸化鉄が添加される。第1のシート3は、2.3mmの厚さを有するが、厚さは、1.4mmから2.5mmの範囲または1.6mmから2.3mmの範囲であり得る。
【0092】
通常のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの組成(重量)は、SiO2 69~74%、Al2O3 0~3%、Na2O 10~16%、K2O 0~5%、MgO 0~6%、CaO 5~14%、SO3 0~2 %、Fe2O3 0.005~2%である。ガラス組成物はまた、他の添加剤、例えば、通常最大2%の量で存在し得る精製助剤を含有し得る。ソーダ石灰シリカガラス組成物は、Co3O4、NiOおよびSeなどの他の着色剤を含有して、透過光を通して見たときに所望の色をガラスに与え得る。ガラスの透過色は、BS EN410などの認識されている規格に基づいて測定され得る。
【0093】
積層グレージング1はまた、1.6mmの厚さを有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第2のシート7を有するが、第2のシートは、1.4mm~2.5mmの範囲内の厚さを有し得、好ましくは、第1のシート3ほど厚くない。
【0094】
第1のシート3は、接着性中間層5によって第2のシート7に接合される。接着性中間層5は、厚さ0.76mmのPVBのシートである。接着性中間層5は、0.3mm~1.8mmの厚さを有し得る。
【0095】
他の適切な接着性中間層は、PVC、EVA、EMAおよびポリウレタンを含む。
【0096】
積層グレージング1は、1つ以上の方向に湾曲する。1つ以上の方向のうちの1つの曲率半径は、1000mm~8000mmである。
【0097】
積層グレージングが2つの方向に湾曲するとき、適切には、各湾曲方向は、互いに直交する。適切には、湾曲の一方または両方の方向の曲率半径は、1000mm~8000mmである。
【0098】
第1のシート3は、第1の凸面9と反対側の第2の凹面11とを有する。第2のシート7は、第1の凸面13と反対側の第2の凹面15とを有する。第1のシート3の凹面11は、接着性中間層5と接触し、第2のシート7の凸面13は、接着性中間層5と接触する。従来の命名法を使用すると、第1のシート3の凸面9は、積層グレージング1の「表面1」(またはS1)であり、第1のシート3の凹面11は、積層グレージング1の「表面2」(またはS2)であり、第2のシート7の凸面13は、積層グレージング1の「表面3」(またはS3)であり、第2のシート7の凹面15は、積層グレージング1の「表面4」(またはS4)である。
【0099】
表面4(第2のシート7の凹面15)上に処理領域のアレイ17がある。
【0100】
図2は、
図1の矢印10の方向における積層グレージング1の平面図である。
【0101】
図2では、積層グレージングの周囲は、車両フロントガラスに典型的なものである。積層グレージングは、下側周縁19を有し、下側周縁19の内側には、処理領域のアレイ17を形成する、6つのサンドブラスト領域17a、17b、17c、17c、17e、17fがある。サンドブラスト領域17a、17b、17c、17c、17e、17fは、それらを取り囲む未処理表面15の粗さと比較して異なる粗さを有する。
【0102】
各サンドブラスト領域17a、17b、17c、17c、17e、17fは、一辺が2cmの正方形であり、その結果、各サンドブラスト領域17a、17b、17c、17c、17e、17fの面積は、4cm2である。
【0103】
サンドブラスト領域17a、17b、17c、17c、17e、17fは、サンドブラスト領域17aと17bとの間の空間がサンドブラスト領域17bと17cとの間の空間と同じになるように等間隔に配置され、他もまた同様である。
【0104】
サンドブラスト領域17a、17b、17c、17c、17e、17fは、下側周縁19に平行な一列に並ぶ。
【0105】
サンドブラスト領域は、第2のシート7の凹面15上に不明瞭化バンドが存在する、積層グレージングの領域に存在し得る。
【0106】
サンドブラスト領域17a、17b、17c、17c、17e、17fを設けることによって、第1のシート3の第1の凸面9に衝撃が加わった場合、第2のシート7は、より破損しやすくなり得、積層グレージング1の剛性が低下する。積層グレージング1がフロントガラスとして車両に取り付けられるとき、歩行者が車両との衝突に巻き込まれた場合、第1の凸面9との衝突時のフロントガラスの剛性の低下によって、歩行者の負傷の重傷度が軽減される。
【0107】
図1および2は6つのサンドブラスト処理領域のみを有するが、6つ超のサンドブラスト処理領域または6つ未満のサンドブラスト処理領域が存在し得る。いくつかの実施形態では、7つまたは8つまたは9つまたは10またはそれ以上のサンドブラスト領域が存在する。いくつかの実施形態では、1つまたは2つまたは3つまたは4つまたは5つのサンドブラスト領域が存在する。互いに等間隔にサンドブラストされた領域を有することが好ましい。各サンドブラスト領域が同じ深さまでサンドブラストされるおよび/または同じ寸法および幾何学的形状を有することもまた好ましいが、しかしながら、いくつかの実施形態では、1つ以上のサンドブラスト領域は、1つ以上の他のサンドブラスト領域と比較して異なる深さまでサンドブラストされる。
【0108】
【0109】
図3は、本発明によるフロントガラス100を有する車両の内側からの図を示す。
【0110】
フロントガラス100は、前述の積層グレージング1と実質的に同じである。車両フロントガラスは、点Eと点Fとの間に延在する下側周縁を有する。車両フロントガラスは、点Dと点Gとの間に延在する上側周縁を有する。
【0111】
フロントガラス100の表面4(内向き表面)には、複数のサンドブラスト領域がある。20個の正方形領域を有する第1のサンドブラスト領域のアレイ174が存在する(そのうちの1つのみが175と表示される)。各正方形領域175は、1×1cm~3×3cmの寸法を有する。すべての正方形175は、同じサイズおよび/または面積を有することが好ましい。正方形175は、下側周縁E-Fに平行に延びる列に配置される、すなわち、正方形175の下側は、下側周縁E-Fに整列され、これに平行である。正方形175は、異なる方向に向けられ得る。
【0112】
この実施形態では、フロントガラス100の表面4にも、フロントガラス100の左側の周縁D-Eに沿って延びる第2のサンドブラスト領域のアレイ172および右側の周縁に沿って延びる第3のサンドブラスト領域のアレイ176が存在する。第2のサンドブラスト領域のアレイ172は、その下側が左側の周縁D-Eに平行である7つの正方形領域(そのうちの1つのみが173と表示される)を有する。第3のサンドブラスト領域のアレイ176もまた、その下側が右側の周縁F-Gに平行である7つの正方形領域(そのうちの1つのみが177と表示される)を有する。
【0113】
第2および第3のアレイにおけるサンドブラスト領域の各々は、同じサイズおよび/または同じ面積を有する。
【0114】
図2を参照すると、サンドブラスト領域は、ガラスシートの表面をサンドブラストするために使用されるタイプの従来のサンドブラスト装置を使用して作製される。各領域17a、17b、17c、17c、17e、17fは、50μm~150μmの深さまでサンドブラストされるが、より深い場合、例えば250μm~400μmの深さ、もあり得る。
【0115】
サンドブラスト前に、処理される領域17a、17b、17c、17c、17e、17fは、ガラスシートと同じ粗さを有し、滑らかである。サンドブラストに続いて、処理領域17a、17b、17c、17c、17e、17fはより粗くなる。「Glass Processing Days」、1997年9月13~15日、40~44ページによると、フロートガラスの表面粗さは、0.1μm未満のRzを有する。処理領域は、処理プロセス、すなわちサンドブラスト、スクラッチ、酸エッチングの後、半透明であることが好ましい。
【0116】
スタイラスまたは共焦点変位センサなどの適切なプロファイリングセンサーを使用して、サンドブラストされたフロートガラスシートの粗さパラメータを決定し得る。共焦点変位センサを使用して表面プロファイルパラメータを評価する方法については、「Procedia Materials Science」、5(2014)p.1385-1391に記載されている。
【0117】
Hommelwerke GmbH(Alte Tuttlinger Strasse 20, D-78056 VS- Schwenningen、ドイツ)から入手可能なHommel Tester T500表面粗さ計を使用して、フロートガラスのシート上の20mm×20mmの正方形領域の表面粗さを20μm超のRz、通常は、20μm~40μmのRzを有するように調整するためにサンドブラストを使用できることがわかった。当業者に既知であるように、Rzは、プロファイルの最大高さであり、サンプル長さ内の最大プロファイル山高さと最大プロファイル谷深さとの合計である。
【0118】
表面の粗さを定義するためによく使用される別のパラメータは、サンプル長さ内のプロファイルの算術平均偏差である(通常、当技術分野ではRaと略される)。フロートガラス表面の20mm×20mmの領域をサンドブラストすると、3μm~6μmの領域におけるRaを生成することが可能であることがわかった。
【0119】
表面粗さを定義する他のパラメータ、例えば、サンプル長さ内の最大単一粗さ深さ(Rmax)またはサンプル長さ内の最大プロファイル谷深さ(Rv)が使用され得る。フロートガラス表面の20mm×20mmの領域をサンドブラストすることによって、20μm~50μmの範囲のRmaxと10μm~20μmの範囲のRvとを生成することが可能であった。
【0120】
Hommel Tester T500表面粗さ計で測定された、フロートガラスシート上の20mm×20mmの4つの異なるサンドブラスト領域の特定の例は次のとおりであった。
(i)Ra=3.768μm、Rz=22.159μm、Rmax=26.173μm、Rv=11.811μm、
(ii)Ra=3.775μm、Rz=20.441μm、Rmax=23.417μm、Rv=10.405μm、
(iii)Ra=5.017μm、Rz=35.720μm、Rmax=47.800μm、Rv=18.100μm、
(iv)Ra=5.093μm、Rz=33.666μm、Rmax=37.109μm、Rv=19.213μm。
【0121】
図4は、積層グレージング1と同様の構造を有する別の積層グレージング30の表面4(S4)に向かう平面図である。
図4は、
図2の図と類似し、その視野は、
図1の矢印10の方向である。
【0122】
積層グレージング30は、0.76mmの厚さを有するPVBのシートによって、1.6mmの厚さを有する第2のガラスシート32に接合された、2.1mmの厚さを有する第1のガラスシートを有する。
【0123】
図4において、積層グレージング30の周囲は、典型的な車両フロントガラスである。積層グレージング30は、下側周縁34を有し、表面4の下側周縁34の内側部分はサンドブラストされ、長方形のサンドブラスト領域36を提供する。長方形のサンドブラスト領域36は、約5mmの幅を有するが、その幅は、2mm~50mmであり得る。長方形のサンドブラスト領域36は、積層グレージングの下側周縁34に平行な下縁38を有する。
【0124】
サンドブラスト領域36は、積層グレージングの領域内にあり得、そこでは不明瞭化バンドが存在し、不明瞭化バンドには、サンドブラスト領域が位置する窓が設けられ得る。
【0125】
図4に示される例の代替として、互いに離隔された少なくとも第1および第2の長方形のサンドブラスト領域が存在し得る。第1および第2の長方形のサンドブラスト領域は、各々、それぞれの下縁を有し、好ましくは第1の長方形のサンドブラスト領域の下縁は、第2の長方形のサンドブラスト領域の下縁と平行である。また、第1および第2のサンドブラスト領域の下縁は、下側周縁34と平行であることが好ましい。各々が同じ幅または異なる幅を有し、同じ間隔または異なる間隔だけ互いに離隔する、複数のそのような離隔したサンドブラスト長方形領域があり得る。
【0126】
図5は、積層グレージング1と同様の構造を有する別の積層グレージング40の表面4の平面図である(
図1の矢印10の方向から見た図も同様である)。
【0127】
積層グレージング40は、0.76mmの厚さを有するPVBシートによって、1.8mmの厚さを有するソーダ石灰ケイ酸ガラスの第2のシート42に接合された1.8mmの厚さを有するソーダ石灰ケイ酸ガラスの第1のシートを備える。
【0128】
積層グレージング40は、湾曲した下側周縁44を有し、表面4の下側周縁44の内側部分は、サンドブラスト領域46を提供するためにサンドブラストされる。サンドブラスト領域46は、連続サンドブラスト領域46を形成する3つの部分46a、46bおよび46cを有する。
【0129】
各部分46a、46b、46cは長方形であり、これらの部分は、下縁44の輪郭に実質的に沿うように配置される。
【0130】
積層グレージング40の表面4には、第2のサンドブラスト領域48も設けられる。
【0131】
第2のサンドブラスト領域48は、湾曲し、積層グレージング40の下側周縁44と実質的に平行な下縁49を有する。第2のサンドブラスト領域48はまた、好ましくは下縁49と平行である、上縁49’を有する。上縁49’と下縁49との間隔は、2mm~50mmであり、すなわち2mm~10mm、約5mmであり得る。
【0132】
積層グレージング40は、サンドブラスト領域46、48のいずれかまたは両方を設け得る。2つのサンドブラスト領域46、48がある場合(
図5に示されるように)、それらの相対位置は、第2のサンドブラスト領域48が下縁44とサンドブラスト領域46との間にあるように切り替えられ得る。
【0133】
サンドブラスト領域46、48は、積層グレージング40の中心線である軸m-m’に対して対称である。
【0134】
サンドブラスト領域46、48は各々、連続サンドブラスト領域として示されるが、本発明の他の例では、サンドブラスト領域46、48の一方または両方は、実質的にサンドブラスト領域46、48と同じ全体形状を有する複数の切断されたサンドブラスト領域によって形成され得る。
【0135】
例えばサンドブラストによって、積層グレージングの表面4の部分を粗面化する効果を試験するために、積層グレージングの壊れやすさを測定した。
【0136】
図6および
図7を参照すると、試験される積層グレージングは、従来の積層条件を使用して構築された。試験される積層グレージングは、PVBのシート55によってソーダ石灰ケイ酸ガラスの第2のシート57に接合されたソーダ石灰ケイ酸ガラスの第1のシート53を備える。積層グレージングは、車両フロントガラスの形態であった。積層グレージングは、当技術分野で慣用されているように、その上に不明瞭化バンドを有し得る。第1または第2のシート53、55のいずれも化学強化されていなかった。
【0137】
第1のシート53は、露出した主表面59を有し、これは積層グレージング51の「表面1」(またはS1)である。主表面59は、凸面である。
【0138】
第2のシート57は、露出した主表面61を有し、これは積層グレージング51の「表面4」(またはS4)である。主表面61は、凹面である。
【0139】
主表面61の部分は、サンドブラストされた。
図6では、9つのサンドブラストされた正方形の領域77(そのうちの1つのみが符号を標されている)があるので、積層グレージング51の矢印60の方向の平面図は、
図2に示されたものと同様である(6つではなく9つの正方形が存在することを除く)。
【0140】
図6では、各正方形は、2cm×2cmであり、隣接する正方形から約10cm~15cm離れており、間隔は、均等であり得る。各正方形の中心は、積層グレージング51の下縁54から60mm~100mmである。各正方形の下縁は、下縁54の輪郭に沿うように配置され、その結果、9つの正方形が直線ではなく、下縁54の曲率に類似(または同一)の曲線で配置される。しかしながら、正方形は、直線上に配置され得る。
【0141】
サンドブラスト領域の配置に関係なく、
図6および
図7を参照して、積層グレージングを次のように試験した。
【0142】
積層グレージング51は、最初に水平に位置するフレーム(図示せず)内に配置され、周囲をその中にクランプされた。主表面59(「表面1」)は上向きであり、自由に接触可能であった。すなわち、フレームは主表面59との接触を妨げない。
【0143】
次に、衝突体67は、2つの位置のうちの1つで表面59上に落とされる。試験の破壊性質のため、1つの衝撃位置で1つの積層グレージングのみを試験可能である。
【0144】
第1の衝撃位置63は、中央位置にあり、積層グレージングの下縁54’から約15cm~30cm離れた、積層グレージングの中心線n-n’上に実質的に位置し、積層グレージングの下縁54’から離れた実際の距離は試験において同じに保たれる。
【0145】
第2の衝撃位置65は、積層グレージングの側面に向いており、積層グレージング51が設置される車両の運転者の真正面にある積層グレージングの部分を表す。積層グレージングは、中心線n-n’に対して対称であるため、2回目の衝突位置は、積層グレージング51が取り付けられる車両の助手席の真正面の積層グレージングの部分と実質的に同じである。
【0146】
第2の衝撃位置は、積層グレージングの側面54’’から約15~30cm離れており、下縁54’から約15cm~30cmであり、積層グレージングの側面54’’および下縁54’からの実際の距離は、試験において同じに保たれる。
【0147】
試験において使用された衝突体67は、スチールショットが充填され、フェルトで覆われたプラスチック中空回転楕円体である。衝突体67の総重量は、4.5kgであり、全体の直径は、165mmである。
【0148】
試験で使用される衝突体は、UN規則第127号(E/ECE/324/Rev.2/Add.126/Rev.2)で指定されているものと同様である。
【0149】
衝突体67は、衝突体が選択された衝突位置で40km/hの速度に到達する(位置エネルギーを取得した運動エネルギーと等しくすることによって)のに十分な高さで、第1または第2の衝突位置の真上に位置した。
図7を参照すると、衝突体67は、第1の衝突位置63の真上にあり、重力下で解放されて矢印68の方向に落下し、第1の衝突位置63で主表面59に衝突する。
【0150】
各サンプルに同じ衝撃位置を確保するために、落下時にガラス表面と接触するための所望の位置に衝突体67を位置させるために鉛直線を使用し得る。
【0151】
上述のように衝突体67が積層グレージング51上に落下したときに積層グレージングがどのように破損するかを評価するために、積層グレージング51の上に位置するビデオカメラ70を使用して試験を記録する。ビデオカメラ70は、例えば毎秒1000フレーム(1000fps)のような高いフレームレートで作動する。
【0152】
積層グレージング51の破損のしやすさを分類するために、試験中に行われたビデオ記録を調べることによって、2つの破損基準を特定した。
【0153】
第1の破損基準は、「初期破損時間」と呼ばれ、選択された衝撃位置で衝突体67が主表面59と接触した後、積層グレージングに第1の亀裂が見られるまでにかかる時間である。
【0154】
第2の破損基準は、「完全破損時間」と呼ばれ、選択された衝撃位置で衝突体67が主表面59と接触した後、積層グレージング51が壊滅的な破損を受けるのにかかる時間である。
【0155】
初期破損時間および/または完全破損時間を特定するのを助けるために、主表面59上に、特に選択された衝撃位置の領域に、1つ以上の参照マークを設け得る。参照マークは、グリッドの形であり得、適切なペンなどを使用して主表面59に適用され得る。
【0156】
多数の積層グレージングサンプルを上記のように評価した。各積層グレージングは、実質的に同程度の曲率を有した。結果を表1に示す。
【0157】
表1中のサンプルは、外側ガラス板および内側ガラス板の観点から定義される。
図6および7を参照すると、第1のシート53は、積層グレージング51が車両に設置されるとき、第1のシート53が車両の外部に面するため、「外側ガラス板」と呼ばれる。したがって、第2のシート57は、積層グレージング51が車両に設置されたとき、第2のシート57が車両の内部に面するため、「内側ガラス板」と呼ばれる。そのため、積層グレージング51が取り付けられた車両との前方衝突に関与し得る歩行者との衝突をシミュレートするために、衝突体67は、外側ガラス板に衝突する。
【0158】
サンプルの詳細および結果を表1に示す。内側および外側の各ガラス板は、示された厚さのソーダ石灰ケイ酸ガラスのシートである。内側および外側ガラス板は、厚さ0.76mmのPVBシートで接合される。これらのサンプルでは、内側および外側ガラス板のどちらも化学強化されていなかった。
【0159】
サンプルの表面4上の2つの異なるタイプのサンドブラスト領域を評価した。第1のタイプのサンドブラスト領域は、
図6および7を参照して説明したように、2cm×2cmの9つの正方形であった。評価した第2のタイプのサンドブラスト領域は、
図5における領域46に関して記載されたものであり、約1.4mの全長および約5mmの幅を有した。
図5を参照すると、実行された試験では、2つの側方部分46a、46cは両方とも長方形で長さ約40cmであり、中央部分46bもまた長方形で長さ約60cmであり、積層グレージングを車両に取り付けたとき水平線に対して実質的に水平であった。側方部分46a、46cは、中心部分46bに対して約20°~30°の角度で傾斜しており、これは実質的にサンプルの下側周縁の曲率によって決定された。
【0160】
以下の表1では、サンドブラストされた領域の第1のタイプは、「正方形」と表示され、サンドブラストされた領域の第2のタイプは、「ストライプ」と表示される。第1の衝突位置は、「中央」、第2の衝突位置は、「運転者」と呼ぶ。
【0161】
表には、各サンプルについて、Hommel Tester T500表面粗さ計を使用して測定されたサンドブラスト領域の平均深さもまた示される。
【0162】
初期破損時間および完全破損時間は、各々ミリ秒(ms)で示される。
【0163】
以下の表1では、比較サンプル1~4は、0.76mmのPVBシートで接合された厚さ1.8mmのソーダ石灰ケイ酸ガラスの内側ガラス板および外側ガラス板を有する。比較サンプル5~8は、0.76mmのPVBシートでそれぞれ接合された厚さ1.4mmおよび1.8mmのソーダ石灰ケイ酸ガラスの内側ガラス板および外側ガラス板を有する。比較サンプル1~8にはサンドブラスト領域は存在しない。
【0164】
表1の結果は、サンドブラスト領域を有しない場合(比較例1~8)、選択された衝突領域で表面59が衝突体67によって衝突された後、積層グレージングが4~6msの初期破損時間を有することを示す。比較サンプルの大部分は、5msの初期破損時間を有する。
【0165】
表1から分かるように、最終破損時間は、初期破損時間の直後、通常はそのミリ秒以内に発生する。
【0166】
表1の結果は、積層グレージングの表面4にサンドブラスト領域(前述のタイプ)を提供すると、初期破損時間が4msから約1ms以下に短縮されることを示す。最終破損時間もまた、短縮される。
【0167】
これは、例えば歩行者との前方衝突によるフロントガラスの表面1との衝突時に、サンドブラスト領域を有するフロントガラスがより破損しやすいことを示している。破損時のフロントガラスの剛性の低下によって、歩行者への重大な傷害が軽減され得る。
【0168】
図2、3および6を参照して説明したようなサンドブラストされた正方形領域のアレイの代わりに、他の形状領域、例えばひし形、円、台形、または他の不規則な形状が同様に挙動することが予想される。対称領域および/または同じ形状の領域は、フロントガラスの表面1上の2つ以上の複数の衝撃位置において、表1に詳述される利点を積層グレージングに提供し得る。
【0169】
また、積層グレージングの破損特性を決定するために他の同様の試験、例えば、UN規則第127号(E/ECE/324/Rev.2/Add.126/Rev.2)を使用する場合にも、同様の利点が観察されることが期待され得る。
【0170】
【0171】
【0172】
積層フロントガラスの内向き表面の領域を処理することによって、積層フロントガラスの外向き表面と歩行者が衝突した場合に、内向きガラスシートがより破損しやすくなることが見出された。処理領域は、車両ドライバーの視界を妨げないように位置し、飛石衝突試験でフロントガラスの性能を低下させない。
【国際調査報告】