(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】風力タービンサーマルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F03D 80/60 20160101AFI20230419BHJP
【FI】
F03D80/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554656
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(85)【翻訳文提出日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2021055244
(87)【国際公開番号】W WO2021180525
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519081710
【氏名又は名称】シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Siemens Gamesa Renewable Energy A/S
【住所又は居所原語表記】Borupvej 16, 7330 Brande, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク ブラームンク メラー
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB52
3H178CC25
3H178DD01Z
3H178DD11X
3H178DD63X
(57)【要約】
本発明は、風力タービン(2)のサーマルアセンブリ(1)であって、サーマルアセンブリ(1)が、冷媒回路(10)内の液体冷媒の温度を下げるように構成された液体-空気外部熱交換器(11)であって、冷媒回路(10)が、風力タービン(2)の運転中に幾つかの放熱部品(23,24)に液体冷媒を輸送するように構成されている、液体-空気外部熱交換器(11)と、風力タービン(2)のオフグリッドモード(Mself,Mwait)中に液体-空気外部熱交換器(11)を冷媒回路(10)から除外するように実現されたサーマルアセンブリ制御装置(18)と、を備えるサーマルアセンブリ(1)を記載する。本発明はさらに、風力タービン(2)をオフグリッドモード(Mself,Mwait)で運転する方法であって、風力タービン(2)がこのようなサーマルアセンブリ(1)の一実施形態である方法を説明する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(2)をオフグリッドモード(M
self,M
wait)で運転する方法であって、前記風力タービン(2)が、冷媒回路(10)内の液体冷媒の温度を下げるように構成された液体-空気外部熱交換器(11)を有するサーマルアセンブリ(1)を備え、前記冷媒回路(10)が、前記風力タービン(2)の運転中にナセル内部(20_int)の幾つかの放熱部品(23,24)に前記液体冷媒を輸送するように構成されており、前記方法が、
前記液体-空気外部熱交換器(11)を前記冷媒回路(10)から除外するステップと、
前記風力タービン(2)がそれ自体の消費のための電力を発生させるように運転される第1のオフグリッドモード(M
self)中に、前記幾つかの放熱部品(23,24)によって放散された熱エネルギ(H)を蓄えるステップと、
前記風力タービン(2)が電力を発生させない第2のオフグリッドモード(M
wait)中に、蓄えられた前記熱エネルギ(H)を前記ナセル内部(20_int)に放出するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1のオフグリッドモード(M
self)中、前記放熱部品の温度が、通常モード上側閾値(T
max)を超えて上昇可能である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、放熱部品(23,24)の温度がオフグリッドモード上側閾値(T
max_self)を超えている間、前記第1のオフグリッドモード(M
self)中に前記液体-空気外部熱交換器(11)を前記冷媒回路(10)に組み込むステップを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記放熱部品(23,24)の温度が前記オフグリッドモード上側閾値(T
max_self)を下回って低下したとき、前記液体-空気外部熱交換器(11)が前記冷媒回路(10)から再び除外される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、ナセル環境値(181V,182V)を監視し、前記環境値(181V,182V)が閾値レベルに近づくときに、前記冷媒を加熱するために加熱器(19)を動作させるステップを含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ナセル環境値が、ナセル内部温度(181V)および/またはナセル内部相対湿度(182V)を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記加熱器(19)を動作させるために、前記第1のオフグリッドモード(M
self)中に発生した余剰電力を使用するステップを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
風力タービン(2)のサーマルアセンブリ(1)であって、
冷媒回路(10)内の液体冷媒の温度を下げるように構成された液体-空気外部熱交換器(11)であって、前記冷媒回路(10)が、前記風力タービン(2)の運転中にナセル内部(20_int)の幾つかの放熱部品(23,24)に前記液体冷媒を輸送するように構成されている、液体-空気外部熱交換器(11)と、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法を使用して前記風力タービン(2)が運転されているときに、オフグリッドモード(M
self,M
wait)中に前記液体-空気外部熱交換器(11)を前記冷媒回路(10)から除外するように実現されたサーマルアセンブリ制御装置(18)と
を備える、サーマルアセンブリ(1)。
【請求項9】
前記サーマルアセンブリ制御装置(18)が、前記液体-空気外部熱交換器(11)を通る主経路(P1)によって前記冷媒回路(10)を完成させるデフォルト位置(V1)と、バイパス経路(P2)によって前記冷媒回路(10)を完成させるバイパス位置(V2)とを有する3ポート弁(3PV)を備える、請求項8記載のサーマルアセンブリ。
【請求項10】
前記サーマルアセンブリ制御装置(18)が、前記風力タービン(2)がオフグリッド運転モード(M
self,M
wait)に入るときに、前記3ポート弁(3PV)をそのバイパス位置(V2)に作動させるコントローラ(180)を備える、請求項8または9記載のサーマルアセンブリ。
【請求項11】
前記サーマルアセンブリ制御装置(18)が、放熱部品(23,24)の温度を監視するための温度センサ(181)を備える、請求項8から10までのいずれか1項記載のサーマルアセンブリ。
【請求項12】
前記冷媒回路(10)内の前記液体冷媒の温度を上昇させるように構成された電気加熱器(19)を有する加熱装置を備える、請求項8から11までのいずれか1項記載のサーマルアセンブリ。
【請求項13】
請求項8から12までのいずれか1項記載のサーマルアセンブリ(1)を備える風力タービン(2)。
【請求項14】
前記液体-空気外部熱交換器(11)が、前記ナセル(20)の外部(20_ext)に配置されている、請求項13記載の風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンのサーマルアセンブリ、および風力タービンをオフグリッドモードで運転する方法について説明する。
【0002】
風力タービンの目的は、風による運動エネルギを電力に変換することであり、電力は通常、グリッドに送出される。風力タービンが発電可能であるには、風速が一定閾値を超える必要がある。
【0003】
風力タービンは、幾つかの理由でグリッドから切り離されたり、グリッドに接続されたままであるが電力を送出しない運転モードになったりすることがある。このような「オフグリッド」状態の期間は、切り離しの理由に応じて、例えば数時間から数日間と様々となりうる。
【0004】
風力タービン運用者が直面する問題は、風力タービンがオフグリッドであるときに、様々な部品が損傷する場合があることである。これは、ナセル内の温度が非常に低いレベルに低下することがあり、これに応じて相対湿度が高まるためである。電気部品の結露が腐食損傷に繋がることもある。
【0005】
この問題に対処する1つの方法として、風力タービンの通常運転中に充電されるバッテリやディーゼル発電機など、別のバックアップ電源で動作する加熱器を設けることが挙げられる。しかし、この手法にも、大容量バッテリを設けるにはコストがかかるなどの問題がある。また、洋上ウインドパークの場合、各風力タービンへの十分なディーゼル供給を確保するにはコストがかかる。さらに、いずれの場合も、オフグリッド状況が解消されるまで電力供給の持続を保証することは不可能である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、風力タービンをオフグリッド状態中に運転する改良された方法を提供することである。
【0007】
この目的は、風力タービンをオフグリッドモードで運転する、請求項1記載の方法および請求項8記載の風力タービンサーマルアセンブリによって達成される。
【0008】
本発明によれば、風力タービンサーマルアセンブリは、風力タービンの運転中に液体冷媒を幾つかの放熱部品に輸送するように構成されている冷媒回路内の液体冷媒の温度を下げるように構成された液体-空気熱交換器を備える。本発明のサーマルアセンブリは、風力タービンのオフグリッドモード中に熱交換器を冷媒回路から除外するように実現されたサーマルアセンブリ制御装置をさらに備える。オフグリッドモードは、風力タービンがグリッドに電気を送出していない運転モードを意味するものと理解されたい。熱交換器を除外することにより、本発明のサーマルアセンブリは、熱交換器による能動的な冷却が行われずに、液体冷媒の温度が徐々に上昇するので、部品からの熱を液体冷媒に蓄えることを保証する。
【0009】
本発明によれば、本発明のサーマルアセンブリの一実施形態を備える風力タービンが、風力タービンがそれ自体の消費のために電力を発生させるように運転される第1のオフグリッドモード中に、幾つかの放熱部品によって放散された熱エネルギを蓄えるステップと、風力タービンが電力を発生させない第2のオフグリッドモード中に、蓄えられた熱エネルギをナセル内部に放出するステップとを行うことにより、オフグリッドモードで運転される。
【0010】
本発明のサーマルアセンブリおよび風力タービンの運転方法の利点は、ナセル内側の環境条件を維持することにより、風力タービンがオフグリッド状態をより良好に「乗り切る」ことができることである。オフグリッド期間がそれほど長くなかった場合、ナセル内側の環境は、再接続の条件を満たすことができる。こうした条件として、例えば、ナセル内部の相対湿度や温度を挙げることができる。その結果、風力タービンは、より小さな遅延でグリッドに再接続し、その風力タービンの生産性に好ましい影響を与えることができる。
【0011】
本発明の特に有利な実施形態および特徴は、以下の説明で明らかにされるように、各従属請求項によって与えられる。本明細書で説明しないさらなる実施形態を提供するために、異なる請求項カテゴリの特徴を適宜組み合わせることができる。
【0012】
本発明の文脈では、液体冷媒回路が、ダクトまたはホースのシステム内で液体冷媒を循環させるポンプを備えることを理解されたい。このようなダクトまたはホースが電力変換器、変圧器、発電機などの放熱部品に近接して敷設されていることも仮定されうる。当業者は液体冷媒回路を風力タービン設計に組み込む方法を認識しており、その詳細についてはここで詳しく説明しない。
【0013】
以下では、風力タービンが、運転中に風力タービンの様々な部品から熱を奪うために液体冷媒を使用する液体冷却システムと、外部熱交換器などの能動式冷却装置とを備えていると仮定することができる。外部熱交換器は、ナセル外部まで延びることができ、これを通り越す空気が暖かい冷媒の温度を下げるように機能する。通常、このような熱交換器は、例えば空気との熱伝達率を高めるためにフィンまたは層板を含むことにより、表面積が拡大されるように構成されている。このような熱交換器は、熱交換器上を移動する空気流によって冷媒温度が低減されるので、「能動式冷却器」としばしば称される。
【0014】
ある種の風力タービンは、風力タービンの放熱部品を冷却するための液体冷媒回路と、ナセルの外部にある液体-空気熱交換器とを既に含む場合がある。このような風力タービンの冷媒回路は、比較的少ない労力で本発明のサーマルアセンブリの一実施形態に到達するように適合させることができる。
【0015】
本発明のサーマルアセンブリは、能動式冷却器の除外を可能にする任意の適切な方法で構成することができる。本発明の特に好ましい実施形態では、サーマルアセンブリ制御装置は、熱交換器を通る主経路によって冷媒回路を完成させるデフォルト位置と、バイパス経路によって冷媒回路を完成させるバイパス位置とを有する3ポート弁を備える。
【0016】
風力タービンがグリッドに接続され、グリッドに電力を送出している限り、風力タービンは、運転の「通常モード」にある。風速が発電には大きすぎたり小さすぎたりする場合、風力タービンは、グリッドに接続されたままであるが、「アイドリング」運転モードに置かれる。しかし、上述したように、グリッドから風力タービンを切り離す理由は様々であってよい。グリッドの故障以外に、メンテナンス作業のためにグリッドから風力タービンをオフグリッドにする必要がある場合もある。これらの条件のいずれかにより、風力タービンはオフグリッドモードに置かれる。
【0017】
風速が一定のカットイン速度を上回る限り、風力タービンは発電することができる。「自立モード」という表現は、オフグリッドであるがそれ自体の消費のために発電を続ける、風力タービンの運転モードを記述するために使用することができる。
【0018】
風速がカットイン風速を下回るとき、または安全閾値風速よりも大きいとき、風力タービンは発電することができない。「待機モード」という表現は、オフグリッドであって運転を再開できる条件を待機している、風力タービンの運転モードを記述するために使用することができる。
【0019】
3ポート弁は、例えばモータによって作動させることができる。モータは、風力タービンコントローラから発信される制御信号によって制御することができる。本発明の好ましい実施形態では、コントローラは、風力タービンがオフグリッド運転モードに入るときに、3ポート弁をそのバイパス位置に作動させる。3ポート弁がそのバイパス位置になると、冷媒液は、能動式冷却器によってもはや冷却されない。これは、自立モード中に、高温部品が冷媒液を意図的に加熱し、冷媒液が能動式冷却器を回避するように意図的に導かれることを意味する。この制御手法の目的は、風力タービンがオフグリッドだが稼働している間に、高温部品から放出される熱エネルギを「回収」することである。加熱された冷媒は、実質的にある種の「熱電池」として機能する。この場合、風力タービンがもはや発電できなくなり、「待機モード」に入らざるを得なくなると、冷媒液に蓄えられた熱エネルギを再び放出することができる。この熱エネルギ回収と、その後の熱エネルギ放出の効果により、より長い時間にわたって満足のいくナセル環境を維持することができる。
【0020】
自立モード中、放熱部品は冷却されない。結果として、これらの部品は、通常運転中に通常許容されるレベルを超えて加熱し、すなわち、放熱部品の温度は、第1のオフグリッドモード中に通常モード上側閾値を超えて上昇可能である。高温の部品と高温の冷媒液が組み合わさって、熱電池として機能する。しかし、部品の損傷を避けるために、本発明の方法は、さらなる温度上昇を止めるために、熱エネルギ回収を中断するステップを含む。このために、本発明のサーマルアセンブリ制御装置は、自立モード中に放熱部品の温度を監視するための温度センサを備え、温度がオフグリッドモード上側閾値に近づいたり、これを超えたりするときに、サーマルアセンブリ制御装置は、温度が許容可能レベルに低下するまで、能動式冷却器を冷媒回路に一時的に組み込むように作動される。その後、サーマルアセンブリ制御装置は、能動式冷却器を冷媒回路から再び除外するように作動する。能動式冷却器のこの「スイッチイン」および「スイッチアウト」は、部品の温度が過度に高まることを避けながら、なるべく多くの熱エネルギを回収するために、自立モード中に必要なだけ繰り返すことができる。
【0021】
休止時間または静置状態が延長され、自立モード中に「回収」された放出される熱エネルギによりナセル内部を暖めることができる時間を超える場合がある。風力タービンが後の時間に運転を再開可能になる前に、例えば、ナセル内部の相対湿度を低減させる目的で、ナセル内側の温度を上昇させる必要がある場合がある。これは、冷媒の温度を上昇させ、加熱された冷媒を回路を通して圧送することによって行うことができる。このために、サーマルアセンブリは、好ましくは、冷媒回路に熱を誘導するように構成された、電気加熱器などの加熱器を備える。加熱器は、バックアップ電池、ディーゼル発電機、または任意の他の適切な電源によって給電することができる。風力タービンは一般に、このような加熱装置を含むように設計されている。本発明のサーマルアセンブリは、このような加熱装置の機能を利用することができる。好ましい実施形態では、本発明の方法は、冷媒の温度をさらに上昇させるために自立モード中に加熱器を作動させるステップを含む。好ましくは、自立モード中に、加熱器は、風力タービンの他の消費機器負荷に供給した後に利用可能な十分な電力がある場合にのみオンにされる。ローカル消費機器は、風力タービンのコンピュータおよび制御システム、パークコントローラに接続された通信システムなどのいずれかでありうる。
【0022】
熱エネルギを「回収」し、これを後でナセル内部に放出する可能性は、補助加熱器およびその電源が、より小さな仕様を有しうること、すなわち、その容量が同等の風力タービンの補助加熱器よりも小さくてすむことを意味しうる。例えば、比較的大容量の加熱器および対応するバックアップ電池を設ける必要がある代わりに、これらをより小さな容量を有するように実現することができる。
【0023】
このために、本発明の方法は、好ましくは、ナセル環境値を監視し、環境値が閾値レベルに近づくときに、冷媒を加熱するために加熱器を作動させるステップを含む。ナセル環境値は、ナセルの内部の温度とすることができる。代替的または付加的に、ナセル環境値は、ナセル内部の相対湿度とすることができる。
【0024】
本発明の他の目的および特徴は、添付の図面と併せて考慮される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。なお、図面は、単なる例示を目的としてデザインされており、本発明の限定の定義としてデザインされていないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】風力タービンの様々な運転モードを示す図である。
【
図2】通常運転モード中の本発明のサーマルアセンブリの一実施形態を示す図である。
【
図3】オフグリッド運転モード中の
図2のサーマルアセンブリを示す図である。
【
図4】別のオフグリッド運転モード中の
図2のサーマルアセンブリを示す図である。
【
図5】本発明のサーマルアセンブリの一実施形態の制御装置を示す図である。
【
図6】本発明のサーマルアセンブリの一実施形態を備えた風力タービンを示す図である。
【
図7】
図6の風力タービンの温度推移を示す図である。
【
図8】先行技術の冷却装置を備えた風力タービンを示す図である。
【0026】
図中、同様の番号が全体を通して同様の対象を指す。図中の対象は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【0027】
図1は、本明細書で説明するタイプの風力タービンの様々な運転モードを示す図である。風速が(下限v
minと上限v
maxとの間の)一定範囲内にあるとき、風力タービンは発電することができる。風力タービンは、グリッドに接続されている場合に、その電力をグリッドに送出することができる。両方の条件が当てはまるとき、風力タービンは、オングリッドモードまたは「通常」運転モードM
expにある。
【0028】
風速が上限vmaxよりも大きい場合、風力タービンは、損傷を避けるためにアイドリングモードにされ、天候の回復を待機する。
【0029】
風速がvmin~vmaxの範囲内にあるにもかかわらず、風力タービンがグリッドから切り離されている場合、または風力タービンがアイドリングしている場合、風力タービンは、それ自体の必要性のために発電するモードMselfにある。このモードでは、風力タービンは、「自立タービン(self-sustaining turbine)」またはSSTと称され、この運転モードは「自立モード」と称される。
【0030】
風速が下限vmin未満である場合、風力タービンは、風の再開を待機するモードMwaitにされる。
【0031】
本発明の方法は、風速が最低カットイン速度を下回って低下した場合の問題を避ける対策をとることにより、風力タービンがオフグリッドにありまたはアイドリングしているときのナセル内側の状態を改善する方法を提供する。方法について、風力タービンのための本発明のサーマルアセンブリ1の一実施形態を示す以下の図を用いて説明する。
【0032】
図2に示すように、サーマルアセンブリ1は、様々な部品内または付近に配置された冷媒回路10のパイプまたはダクトを通して液体冷媒を循環させるモータ駆動式冷媒ポンプ10Pを含む。高温部品間の熱伝達は、これらに受動式熱交換器23X,24Xを装備し、これらを冷媒回路10に組み込むことによって行われる。この場合、冷媒液(例えば水/グリコール混合液)は、ナセルの外側20_extに配置された能動式冷却器11、例えば液体-空気熱交換器11に送られる。能動式冷却器11から、液体冷媒は、ポンプ10Pに戻されて回路10を完成させる。
【0033】
サーマルアセンブリ1は、コントローラ(図示せず)によって作動可能な3ポート弁3PVを含む。3ポート弁3PVが第1の位置V1にあるとき、能動式冷却器11は冷媒回路10に組み込まれ、冷媒は、冷媒ポンプ10Pによってこの主経路P1内で循環される。主経路P1は、風力タービンが稼働し、グリッドに電気を送出しているときの通常モードMexp中のデフォルトの冷媒経路である。
【0034】
図3は、風力タービンがそれ自体の要求のために発電しているオフグリッド運転モードM
self中のサーマルアセンブリ1を示す。この状態では、3ポート弁3PVは、能動式冷却器11を冷媒回路10から除外する第2の位置V2に置かれている。ここで、液体冷媒は、バイパス経路P2に沿って冷媒ポンプ10Pに戻される。この状態では、冷媒は、能動式冷却器11を通過せず、その温度を能動式冷却器11によって低減させることができない。放熱部品を冷却する代わりに、放散された熱Hは、サーマルアセンブリ1の冷媒回路10に蓄えられる。ポンプ10Pがまだ作動しているので、冷媒液は、高温部品によって徐々に加熱される。冷媒液は、熱エネルギHを蓄えるために有効に使用される。部品の温度は、通常モード上側閾値を超えて上昇する。しかし、部品の温度はオフグリッドモード上側閾値に達することがあり、その場合、能動式冷却器11を通って冷媒液を導くことが必要となりうる。
図5に示すように、幾つかの温度センサ181の1つが、放熱部品の温度値181V、例えば電力変換器内の温度を報告することができる。通常運転モードM
exp中、サーマルアセンブリ1は、部品の温度が通常モード上側閾値T
maxを超えないことを保証するように調節される。自立運転モードM
self中、部品の温度は、通常モード上側閾値T
maxを超えて、オフグリッドモード上側閾値T
max_selfに向かって上昇する。報告された温度181Vがこうしたオフグリッドモード上側閾値T
max_selfよりも高い場合、3ポート弁3PVをその第1の位置V1に戻すことにより、熱交換器11が冷媒回路10に一時的に組み込まれる。このようにして、冷媒液の温度(および高温部品の温度)を能動式冷却器11によって下げることができる。部品の温度が十分に下がったとき、3ポート弁3PVをそのバイパス位置V2に置くことにより、熱交換器11は冷媒回路10から再び除外される。これらの調節は、風力タービンがこの自立オフグリッドモードM
selfで運転されている限り、必要に応じて繰り返し行うことができる。放熱部品ごとに適切な閾値温度値を定義することができる。代替的に、風力タービンの放熱部品の許容可能な温度レベルを最もよく表す、単一の「通常モード」上側閾値および単一のオフグリッドモード上側閾値T
max_selfを指定してもよい。
【0035】
図は、電気加熱器19も示している。これは、自立運転モードMself中に、冷媒液の温度をさらに上昇させるためにオンにすることができる。上で説明したように、加熱器19は、風力タービンがそれ自体の要求のために必要とするよりも多くの電力を発生させている場合にのみオンにされる。
【0036】
図4は、風力タービンがそれ自体の要求のために発電できないオフグリッド運転モードM
wait中のサーマルアセンブリ1を示す。この状態では、風力タービンのバックアップ電源の不要な消耗を避けるために、内部電力消費が最小限に減少される。冷媒ポンプはこの状態で必要とされないので、オフにされる。この状態は、
図3で上述したような、サーマルアセンブリ1が稼働部品からの熱エネルギHを蓄えた状態M
selfに続く。この「蓄えられた熱エネルギ」Hは、冷媒温度が低下するにつれて徐々に放出される。ナセル内部20_intに熱Hが徐々に放出されることで、ナセルの温度が低下する速度が低減し、また相対湿度が上がる速度が低減する。
【0037】
図5に示すように、ナセル内部20_intの温度を継続的に報告するために、幾つかの温度センサ181の1つを使用することができる。当該温度が最小閾値まで低下した場合、冷媒液の温度を上昇させるために、電気加熱器19をオンにすることができる。加熱された流体を循環させるために、冷媒ポンプは再びオンにされる。コントローラ180は、サーマルアセンブリ1の専用コントローラであってよく、または風力タービンコントローラであってもよい。この例示的な実施形態では、コントローラ180は、湿度計182によって報告された相対湿度182Vを監視することもでき、これに応じて、制御信号、例えば風力タービンをグリッドに再接続する前に相対湿度182Vが高すぎる場合に加熱器を作動させる制御信号を生成することもできる。
【0038】
図6は、タワー22の頂上にナセル20が取り付けられた風力タービン2の簡略化された概略図を示す。風力タービン2の様々な部品23,24は、運転中に大量の熱を発生させる。図は、例として、電力変換器23および変圧器24を示している。これらおよび/または他の放熱部品は、冷媒回路によって冷却される。このために、モータ駆動式ポンプ10Pが、放熱部品23,24の熱交換器23X,24Xに接続されたパイプまたはダクトを通して液体冷媒を循環させることを保証する。加熱された液体は、ナセル外部20_extまで延び、かつナセル20上を移動する空気流Wによって、加熱された冷媒を冷却するように形作られた能動式冷却器11に進む。冷却された液体は、ポンプ10Pに戻されて回路を完成させる。自立運転モードM
self中、能動式冷却器11は冷媒回路10から除外されるので、高温部品23,24によって発せられる熱エネルギは、廃熱として外部20_extに放出される代わりに、回収されて冷媒に蓄えられる。自立モードM
self中、部品23,24の温度は、風力タービンが稼働しておりグリッドに電気を送出しているときに通常であれば通常モードM
exp中に適用される上限を上回って上昇する。
【0039】
図7は、先行技術の風力タービン冷却回路5を示す。上の
図6と同様に、図は、風力タービン2の運転中に冷却回路5によって冷却される、電力変換器23および変圧器24を示している。風力タービン2が(グリッドに電気を送出している)通常運転モードM
expにあるとき、冷却回路5は、全ての放熱部品23,24を冷却するように機能する。これらの放熱部品23,24は、風力タービン2が(グリッドから切り離されている間に発電している)自立モードM
selfにあるとき、同様に冷却される。後の使用のために熱を蓄えようとする試みはなされない。したがって、風力タービン2が発電できないとき、ナセル20の内側の温度は、非常に低いレベル、例えば氷点を下回って低下する場合がある。ある時点で、風力タービン2をグリッドに再び接続することが可能になる。全ての内部部品が極寒および高湿に対応している場合、初期の加熱および乾燥段階なしにタービンを始動させることができる。そうでない場合には、風力タービンが通常運転を再開できるようになる前に、ナセル内部20_intの温度を上昇させるために加熱器をオンにする必要がある。かなりの時間を取りうるこの場合、風力タービン2は、電気を送出することができない。
【0040】
図8は、
図6の風力タービンの(本発明のサーマルアセンブリ1によって冷却される)ナセル内部における例示的な温度推移T1と、
図8の風力タービンの(先行技術の冷却装置5によって冷却される)ナセル内部における例示的な温度推移T5とを示す。時間t
0まで、風力タービンは通常運転モードM
expにあり、グリッドに電力を送出している。各ケースにおいて、サーマルアセンブリ1および先行技術の冷却装置5は、部品が冷却されることを保証し、ナセル内部の温度を公称レベルT
20_OKにすることができる。時間t0で、風力タービンはオフグリッドになり、自立モードM
selfに入る。時間t
2で、風力タービンは自立モードM
selfから離脱して、待機モードM
waitに入る。先行技術の冷却装置によって冷却される風力タービンのナセル内部における温度推移T5は、自立モードM
self中に低レベルT
20_OKに維持され、待機モードM
wait中に着実に低下する。温度が最小閾値T
20_minを下回って低下すると、風力タービンをグリッドに再接続する前に、ナセル内部を能動的に加熱する必要がある。これには長い時間を要することがあり、風力タービンはその間グリッドに電力を送出することができない。
【0041】
対照的に、(本発明のサーマルアセンブリを装備した風力タービンのナセル内部における)温度推移T1は、能動式冷却器を除外して冷媒液に熱を蓄積させることにより、自立モードMself中に上昇する。風力タービンが待機モードMwaitに入ったとき、回収された熱が、ナセル内部に放出される。ナセル温度が最小閾値T20_minまで低下するには、著しく長い時間を要する。この時点よりも前に風力タービンのグリッドへの再接続が可能になる場合もあり、その場合、ナセル内部を加熱する必要がないので、風力タービンは運転を直ぐに再開することができる。
【0042】
図は、さらなる制御ステップも説明している。時間t1で、上で説明したように部品の温度が上側閾値に達することがあり、ナセル内部は温度T20_maxまで暖められている。部品の温度がさらに高まることを回避するために、3ポート弁3PVが作動されて、冷媒回路10に能動式冷却器11が組み込まれる。
【0043】
本発明は、好ましい実施形態およびその変形例の形で開示されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、これらに対する幾つかの追加の修正および変形を行えることが理解されるであろう。
【0044】
明確化のために、本出願を通して、“a”または“an”の使用が複数を除外しておらず、「備える(comprising)」が他のステップまたは要素を除外していないことを理解されたい。
【国際調査報告】