(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】補償エレメントを備えたバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 27/02 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
F16K27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554713
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 IB2021052047
(87)【国際公開番号】W WO2021181333
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】102020000005308
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518314084
【氏名又は名称】エルテック・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】ELTEK S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(72)【発明者】
【氏名】バルバーノ,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ダッフォンキオ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
3H051
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051BB10
3H051CC11
3H051DD07
(57)【要約】
流体の流れを制御するためのバルブ(1)であって、成形プラスチック材料で形成された少なくとも1つの第1本体部(2)を有する弁本体と、第1本体部(2)内に画定され、少なくとも1つの流体入口(6a)および少なくとも1つの流体出口(6b)を備える、流体の通過のためのチャンバ(6)と、流体の通路のためのチャンバ(6)内に画定された弁座(7)と、流体の流れを制御するために弁座(7)に対して変位可能な、流体を遮断するための手段(8~9)と、流体の体積および/または圧力の起こり得る増加を補償するために予め配置された補償エレメントと、を備え、補償エレメントは、弾性的に変形可能および/または弾性的に圧縮可能な材料で形成された補償本体(26)を有し、第1本体部(2)の成形プラスチック材料は、弾性的に変形可能および/または弾性的に圧縮可能な材料よりも固く、第1本体部(2)は、流体の通過のためのチャンバ(6)内で、弁座(7)と、入口(6a)および出口(6b)のうちの一方との間に延在する管状部分(23)を画定している。補償本体(26)は、管状部分(23)を少なくとも部分的に囲むように、流体の通過のためのチャンバ(6)内に取り付けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れを制御するためのバルブであって、
ポリマーまたはプラスチック材料で形成され、好ましくは成形体である少なくとも1つの第1本体部(2)を有する弁本体と、
前記第1本体部(2)内に画定され、少なくとも1つの流体入口(6a)および少なくとも1つの流体出口(6b)を有する、流体の通過のためのチャンバ(6)と、
流体の通過のための前記チャンバ(6)内に画定された弁座(7)と、
前記流体の流れを制御するために、前記弁座(7)に対して変位可能な、前記流体を遮断するためのシャットオフ手段(8、9)と、
前記流体の体積および/または圧力の起こり得る増加を補償するために予め配置された補償エレメント(25)と、を備え、
前記補償エレメント(25)は、弾性的に変形可能および/または弾性的に圧縮可能な材料で形成された補償本体(26)を備え、前記第1本体部(2)のポリマーまたはプラスチック材料は、前記補償本体(26)の前記弾性的に変形可能および/または前記弾性的に圧縮可能な材料よりも固く、
前記バルブ(1)において、前記第1本体部(2)は管状部分(23)を備え、
前記管状部分(23)は、前記弁座(7)と前記流体入口(6a)および前記流体出口(6b)の一方との間を、前記流体の通過のための前記チャンバ(6)中に延在し、
前記補償本体(26)は、前記管状部分(23)の少なくとも一部を囲むように前記流体の通過のための前記チャンバ(6)内に取り付けられている、バルブ。
【請求項2】
前記管状部分(23)の平均厚さは、前記流体の通過のための前記チャンバ(6)の周囲を区画する前記第1本体部(2)の周壁(2b)の平均厚さより小さい、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記補償本体(26)は実質的に軸方向に中空の円筒形状を有する、請求項1または請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記流体入口(6a)および前記流体出口(6b)の他方は、前記管状部分(23)に対して横方向に配置され、
前記補償本体(26)は、前記弁座(7)と、前記流体入口(6a)および前記流体出口(6b)の前記他方との間において、前記流体の通過を可能にする少なくとも1つの横方向通路(28)を画定している、請求項1から3のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記流体の通過のための前記チャンバ(6)内に、ポラリゼーションエレメント(30)およびポラリゼーションカウンタエレメント(29)のうちの一方が画定され、
前記補償本体(26)は、前記ポラリゼーションエレメント(30)および前記ポラリゼーションカウンタエレメント(29)のうちの他方を有し、
前記ポラリゼーションエレメント(30)および前記ポラリゼーションカウンタエレメント(29)は、前記補償本体(26)を、前記流体の通過のための前記チャンバ(6)内の実質的に所定の角度位置に保つために予め配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの横方向通路(28)および少なくとも1つの前記ポラリゼーションカウンタエレメント(29)が、前記補償本体(26)の概ね円筒形の壁(27)の実質的に対向する位置に画定されている、請求項4または5に記載のバルブ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの横方向通路(28)が、前記補償本体(26)の概ね円筒形の壁(27)の第1の長手方向端部(31)から延在する凹部から構成され、少なくとも1つの前記ポラリゼーションカウンタエレメント(29)が、前記概ね円筒形の壁(27)における、前記第1の長手方向端部(31)とは反対側の第2の長手方向端部(32)から延在する凹部から構成されている、請求項5または6に記載のバルブ。
【請求項8】
前記流体の通過のための前記チャンバ(6)および前記補償エレメント(25)の少なくとも一方が、前記補償本体(26)を前記流体の通過のための前記チャンバ(6)内の実質的に所定の軸方向位置に維持するために予め配置された係合手段(33、34)を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項9】
前記係合手段は、少なくとも1つのリブまたはレリーフ(33)を含み、前記少なくとも1つのリブまたはレリーフ(33)は、前記補償本体(26)の外周の少なくとも一部分にわたって、場合によっては、前記流体の通過のための前記チャンバ(6)の周囲を区画する表面において画定される対応する座部または凹部(34)と組み合わせて延在し、またはその逆の組み合わせで延在している、請求項8に記載のバルブ。
【請求項10】
前記シャットオフ手段(8、9)は、前記管状部分(23)および/または前記補償エレメント(25)の長手延在方向に概ね平行な方向において、少なくとも、前記流体が前記流体入口(6a)から前記流体出口(6b)へ通過することができない閉位置と、前記流体が前記流体入口(6a)から前記流体出口(6b)へ通過することが可能な開位置との間で、前記弁座(7)に対して変位可能である、請求項1から9のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項11】
前記シャットオフ手段(8、9)の変位を制御するように構成された作動システム(10~13)をさらに備え、前記作動システム(10~13)は、好ましくは電気アクチュエータ、非常に好ましくはソレノイドアクチュエータを有する、請求項1から10のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のバルブを備える、流体回路または流体装置。
【請求項13】
バルブ(1)のための補償エレメント(25)であって、
バルブ(1)は、好ましくは、流体の通過のためのチャンバ(6)、前記流体のための少なくとも1つの入口(6a)および1つの出口(6b)、並びに弁座(7)を備える少なくとも1つの第1本体部(2)を備え、
前記補償エレメント(25)は、前記流体の体積および/または圧力の起こり得る増加を補償するために予め配置されており、
前記補償エレメント(25)は、弾性的に変形可能および/または圧縮可能な材料で形成された補償本体(26)を含み、
前記補償本体(26)は、
前記流体の通過のための前記チャンバ(6)内に取り付けるため、および/または、弁座(7)を囲むために、予め設定された形状、
前記流体の通過を可能にするように構成された横方向通路(28)、
前記補償本体(26)を前記バルブ(1)の前記第1本体部(2)内の実質的に所定の位置に維持するために予め配置された、少なくとも1つの係合エレメント(33)、および、
前記補償本体(26)を前記バルブ(1)の前記第1本体部(2)内の実質的に所定の角度位置に維持するために予め配置された、少なくとも1つのポラリゼーションエレメント(29)
のうちの少なくとも1つを有する、補償エレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを制御するためのバルブに関し、特に自動車または家庭用電化製品の、流体回路、流体システム、または流体装置に搭載される電動式バルブに特に関連して開発されたものである。
【背景技術】
【0002】
流体の流れを制御するためのバルブは、以前から知られており、幅広い分野で使用するために販売されている。また、制御される流体の体積および/または圧力の起こり得る増加(possible increase)を補償し、バルブ自体の動作を損なう可能性のある構造的損傷の発生を防止するために、上述のタイプのバルブ内に補償(compensation)エレメントを設けることも同様に知られている。この種の解決策は、典型的には、自動車の場合、屋外(例えば、住宅のバルコニー)に設置された家庭用電化製品の場合、または灌漑システムの場合のように、多かれ少なかれ長期間にわたって周囲温度が低い条件で動作することになる油圧装置および流体システムにおいて採用されている。
【0003】
例えば、米国特許第7,891,370号には、プラスチック材料から形成された本体を有する灌漑用パイロットバルブが記載されている。このバルブは、弁座と協働可能な、エラストマー製の開閉部材が設けられたコアを有するソレノイドの設置用ハウジングを備えている。制御される液体の凍結に起因して起こり得る構造上の損傷を防ぐために、このバルブには、エラストマー材料で形成され、したがって弾性的に変形可能または圧縮可能な管状の補償エレメントが設けられている。このような補償エレメントは、弁本体(バルブボディ)に画定されて意図的に設けられたハウジングに取り付けられている。このハウジングは、弁座が配置されたチャンバとは別個である(分離されている)が、いずれにせよ、前述のチャンバと流体連通している。この方法では、流体(通常は水)の凍結に起因する体積の増加を、補償エレメントの弾性圧縮により、弁本体内で補償することができる。
【0004】
この文献に記載された解決策は、有効ではあるが、比較的複雑で面倒であり、またコストが高く、実用にはほど遠い。そのため、このような欠点がない、流体の流れを制御するためのバルブが必要である。
【発明の概要】
【0005】
以上述べたことに鑑み、本発明は、流体の流れを制御するためのバルブであって、上述した公知の解決策と比較しても、容易かつより効率的に使用することができるような構造的特徴を有する、バルブを提供することを目的とする。
【0006】
この概要において、本発明の一態様によれば、本発明の目的は、流体の体積および/または圧力の増加によって生じ得る損傷を防止するために適した補償エレメントを備え、シンプル、安価かつコンパクトな構造を有するようなバルブを提供することである。別の態様によれば、本発明の目的は、流体を遮断するための手段と対応する弁座との非効率な協働に起因する誤作動のリスクを防止するようなバルブを提供することである。さらに別の態様によれば、本発明の目的は、簡便かつ安価に製造されるようなバルブを提供することである。
【0007】
本発明によれば、前述の目的の1つ以上、および以下に明示される他の目的は、流体の流れを制御するためのバルブと、添付の特許請求の範囲に記載の特徴を有する対応する補償エレメントとによって達成される。特許請求の範囲は、本発明に関連して本明細書に提供される技術的教示の不可欠な部分を形成している。
【0008】
本発明のさらなる目的、特徴、および利点は、純粋に非限定的な例として提供される添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の可能な実施形態に係るバルブの概略斜視図である。
【
図2】本発明の可能な実施形態によるバルブの概略的な分解図である。
【
図3】本発明の可能な実施形態によるバルブの概略断面図であり、流体を遮断するための対応する手段が閉位置にある。
【
図4】本発明の可能な実施形態によるバルブの概略断面図であり、流体を遮断するための対応する手段が開位置にある。
【
図5】本発明の可能な実施形態によるバルブの断面概略斜視図であり、流体を遮断するための対応する手段が閉位置にある。
【
図6】本発明の可能な実施形態によるバルブの断面概略斜視図であり、流体を遮断するための対応する手段が閉位置にある。
【
図7】本発明の可能な実施形態における補償エレメントの概略斜視図である。
【
図8】本発明の可能な実施形態における補償エレメントの概略斜視図である。
【
図9】対応する補償エレメントが未装着の状態の、本発明の可能な実施形態によるバルブの本体の成形プラスチック材料で形成された部分の断面概略斜視図である。
【
図10】対応する補償エレメントが装着された状態の、本発明の可能な実施形態によるバルブの本体の成形プラスチック材料で形成された部分の断面概略斜視図である。
【
図11】本発明によって提供される補償エレメントの動作を例示するための、
図4と同様の断面図である。
【
図12】補償エレメントがない場合に、制御される流体の凍結によって弁本体の管状部分が受ける可能性がある変形を例示するための、バルブの一部の概略断面図である。
【
図13】補償エレメントがない場合に、制御される流体の凍結によって弁本体の管状部分が受ける可能性がある変形を例示するための、バルブの一部の概略断面図である。
【
図14】補償エレメントがない場合に、制御される流体の凍結によって弁本体の管状部分が受ける可能性がある変形を例示するための、バルブの一部の概略断面図である。
【
図16】可能な変形実施形態に関する、
図3と同様の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書の文中における「一実施形態」または「1つの実施形態」という記述は、実施形態に関連して記載される特定の構成、構造、または特徴が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを示すことを意図している。したがって、本明細書の様々な箇所に存在し得る「一実施形態において」、「1つの実施形態において」、「様々な実施形態において」等の表現は、必ずしも同一の実施形態を指すものではない。さらに、本明細書の文中で定義された特定のコンフォメーション、構造、または特徴は、示されたものとは異なるものであっても、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされ得る。本明細書で使用される参照符号および空間的な表記(「上(部)」、「下(部)」、「頂部」、「底部」、「上方に」、「下方に」等)は、単に便宜上提供されるものであり、保護範囲または実施形態の範囲を定義するものではない。本明細書および添付の特許請求の範囲において、一般的な用語「材料」は、多数の異なる材料の混合物、組成物、または組み合わせを含むものとして理解される(例えば、多層構造または複合材料)。図中では、互いに類似している(同様である)か、互いに技術的に同等である要素を指すために、同じ参照符号が使用されている。
【0011】
なお、添付の図において、ガスケットや開閉部材などの弾性変形可能な要素は、図示の必要上、いくつかの図(
図3~6、
図11、
図16など)において、変形していない状態で図示されている。
【0012】
図1を最初に参照すると、本発明の可能な実施形態による流体の流れを制御するためのバルブが、全体として参照符号1で示されている。様々な実施形態において、バルブ1は、電気的に作動する(電動の)バルブ、特にソレノイドバルブである。
【0013】
バルブ1は、弁本体(valve body)2を備える。弁本体2の少なくとも一部は、例えばポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、またはポリフタルアミドなどの熱可塑性材料のような成形プラスチック材料で形成されている。プラスチック材料には、場合によって充填剤が入れられ、例えばガラス繊維などの強化材料が付加されていてもよい。
【0014】
図示された実施形態では、弁本体2は全体的に成形プラスチック材料で形成されているが、この特徴は限定的な意味に理解されない。他の実施形態において、弁本体2が成形プラスチック材料で形成された部分に加えて、1つまたは複数の異なる材料、例えば金属で形成された1つ以上の部分を含んでいてもよい。
【0015】
図2~
図4も参照すると、様々な実施形態において、弁本体2のプラスチック材料は、金属インサート上にオーバーモールドされている。金属インサートは、ここではプレート3の形状を有している。他の実施形態では、インサートまたはプレート3は、本体2上に取り付けられるか、または係合されてもよい。好ましくは、金属プレート3は、実質的に正方形の断面を有するが、この特徴は限定的なものではない。他の実施形態(図示せず)において、プレート3は異なる断面、例えば長方形または円形の断面を有してもよい。
【0016】
図2~
図4に示されるような様々な実施形態では、プレート3は、弁本体2の第1の端部領域2’でプラスチック材料に部分的に包含され(englobe)、または埋め込まれている。インサートまたはプレート3の少なくとも一部であって、弁本体2のプラスチック材料に埋め込まれていない、すなわち弁本体2から突出している部分は、別の装置上のバルブの位置に設置する目的で、ポラリゼーションエレメント(polarization element)として構成されてもよい。インサートまたはプレート3は、必要であれば、他の目的、例えば、ねじ用の穴が開いたフランジ、またはバヨネットカップリングに属するレリーフなどの固定エレメントを提供する目的のために機能してもよい。
【0017】
後述するように、様々な実施形態において、プレート3は、バルブ1の作動コイルの電磁ヨークの一部である。
【0018】
プレート3のようなインサートを設けることは、後述する電気作動(electrical-actuation)アセンブリを弁本体2に固定する目的でも特に有利である。この目的のために、好ましくは、プレート3は、弁本体2を形成する材料の外側に出っ張っているプレート3の周面の1つ以上に、1つまたは複数の溝4を有している。溝4の機能は、以下に明示的に説明される。図示した実施形態では、プレート3は、その2つの対向する側面のそれぞれに少なくとも1つの溝4を有しているが、この特徴は限定的な意味で理解されるものではない。
【0019】
特に
図2を参照すると、弁本体2は、座部(seat)2a(
図9~
図10も参照)を画定している。座部2aは、対応する環状シールエレメント5、例えば例示したようなXリングタイプのガスケット、あるいは平らな表面を有するガスケット(例えば正方形または長方形の断面を有する)を受け入れるためのものである。図示された例では、座部2aは、弁本体2の第1の端部領域2’において、弁本体2におけるプレート3を越えて軸方向に突出する部分、すなわち弁本体2の近位端に配置されている。好ましくは、環状エレメント5および座部2aは、実質的に円形の形状を有する。しかしながら、他の実施形態(図示せず)において、座部2aおよび環状エレメント5が設けられていなくてもよいし、あるいは、
図2に示されているものとは異なる形状および寸法を有していてもよいことが理解される。
【0020】
特に
図3~
図4に示されるように、弁本体2は、成形プラスチック材料で形成された部分内に画定された、参照符号6で示される流体の通過のためのチャンバを備える。チャンバは、ほぼ円筒形の周壁2bによって区画されている。周壁2bは、チャンバ6の周囲を区画する(境界づける)内面6’を有する。
【0021】
チャンバ6は、少なくとも1つの流体入口と少なくとも1つの流体出口とを備える。図示する実施形態では、チャンバ6は、ただ1つの入口6aおよびただ1つの出口6bを備え、これらの相互配置は、本明細書の以下の記載でより詳細に説明される。しかしながら、他の実施形態(図示せず)において、チャンバ6は、2つ以上の流体入口および/または2つ以上の流体出口を有し得る。様々な実施形態において、入口6aは、弁本体2の軸方向端部において、ガスケット5用の座部2aによって囲まれた貫通口に対向する位置に画定され、一方、出口6bは、周壁2bに画定されている。
【0022】
流体の通過のためのチャンバ6内には、例えば
図3において参照符号7で示される弁座が画定されている。流体の流れを制御するために弁座7に対して変位可能なシャットオフ手段8、9は、この弁座と協働できるようになっている。好ましい実施形態では、シャットオフ手段8、9は、少なくとも、流体が入口6aから出口6bまで通過できない閉位置(
図3に示す)と、流体が入口6aから出口6bまで通過できる開位置、特に流体が最大流量または流速で通過できる最大開位置(
図4に示す)との間で、弁座7に対して変位可能である。
【0023】
好ましい実施形態では、バルブ1は、開閉型(常閉型または常開型)のバルブであり、すなわち、シャットオフ手段8、9が前述の開位置および閉位置の2つのみを取り得るタイプのものである。しかしながら、他の実施形態(図示せず)では、シャットオフ手段8、9および対応する作動アセンブリは、
図3および
図4に示した開位置および閉位置に対する1以上の中間の位置の間で、シャットオフ手段8、9を弁座7に対して変位可能に構成されている。これによって、チャンバ6の入口6aと出口6bとの間の流体の流れの速度を可変制御することが可能になる。
【0024】
好ましい実施形態では、流体のシャットオフ手段8、9は、好ましくは少なくとも一部がエラストマー材料などの弾性変形可能な材料で形成された開閉部材8(またはバルブ部材)を備える。図示されている例では、開閉部材8は、基本的に、特に実質的に円筒形のゴム要素またはチップとして構成されている。開閉部材8は、以下に説明するように、対応する駆動シャフトの軸方向一端に固定されている。ここでは、駆動シャフトはソレノイドの可動コア9によって構成されている。開閉部材8は、実施形態ごとに異なる形状および寸法を有してもよく、また用途に応じて異なる硬度(例えば50~80ShAの間の硬度)を有していてもよいことが理解される。場合によって、開閉部材8は、金属で形成されたものであり得、および/または、前述した流れまたは流量の可変制御を容易にするように設計された形状を有し得る。
【0025】
特に
図4~
図6を参照すると、バルブ1の閉位置(
図3)において、開閉部材8が弁座7上にあるとき、チャンバ6の入口6aと出口6bとの間の流体の循環が阻止される。このタイプの実施形態において、開閉部材8の断面の寸法は、弁座7の断面の寸法よりも大きいことが好ましい。
【0026】
しかしながら、他の実施形態(図示せず)においては、例えば、開閉部材が対応する閉位置および/または中間の調整位置にもたらされると、開閉部材8は、弁座7の中央通路に少なくとも部分的に侵入するように構成されていてもよい。従って、これらの実施形態では、開閉部材8の断面の寸法を、少なくとも部分的に弁座7の断面の寸法よりも小さくすることができる。開閉部材8の弁座への侵入深さは、異なる実施形態において可変であってよい。
【0027】
図2に戻り、既に述べたように、様々な実施形態において、開閉部材8は、駆動シャフトまたはコア9の端部に関連付けられている。駆動シャフトまたはコア9は、好ましくは実質的に円形の断面を有する。コア9は、適切な作動アセンブリによって、弁座7から離れるように、または弁座7に近づくように変位させられ得る。様々な実施形態において、バルブ1の作動アセンブリは、電気アクチュエータを有する。図示するような好ましい実施形態では、電気アクチュエータは、
図3および
図4において全体として参照符号10で示されているソレノイドである。ソレノイドは、ボビン12に巻かれた電気ワイヤを含む巻線11を有している。ボビン12は、キャビティ(図示せず)によって軸方向に横断されている。キャビティの少なくとも一部には、コア9が摺動可能(スライド可能)に係合している。コア9の少なくとも一部は、磁界によって引き寄せられ得る材料、すなわち強磁性材料で形成されている。ボビン12のキャビティは、コアの摺動を可能にするように、コア9の直径よりもわずかに大きい直径を有している。この目的のために、コア9のヘッド部分がスライドするチャンバ6の少なくとも一部であって、開閉部材8を備える部分は、ボビン12のキャビティの直径に実質的に対応する直径の円形断面を有している。
【0028】
ソレノイド10は、好ましくは、対応する筐体(ケーシング)13によって保護される。筐体13は、好ましくは電気絶縁材料、好ましくはポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、またはポリフタルアミドなどの成形プラスチック材料、場合によってはフィラー材料を含むタイプのもので形成されたオーバーモールドの筐体である。
【0029】
筐体13は、好ましくは、概して円筒形の外形を有し(
図2参照)、様々な実施形態においても同様に、径方向に突出する、参照符号15で示されるようなコネクタ本体を画定している。他の実施形態(図示されていない)では、コネクタ本体は、作動コイルと同じ(すなわち、ボビン12と巻線11とによって構成される集合体と同じ)軸方向に延在していてもよい。
【0030】
筐体13は、その頂部に、
図2において参照符号13aで示される座部を画定している。座部は、対応する環状エレメント14、好ましくはXリングタイプのガスケットまたはその他の平らな表面を有するガスケットを受け入れるためのものである。好ましくは、座部13aおよび対応する環状エレメント14は、実質的に円形の形状を有する。しかしながら、他の実施形態(図示せず)において、座部13aおよび環状エレメント14は、設けられていなくてもよいし、あるいは異なる形状および寸法を有してもよいことが理解される。
【0031】
図示された実施形態では、ソレノイド10は、コネクタ本体15によって、電力主供給部に接続され得る。コネクタ本体15内には、少なくとも2つの電気端子16(そのうちの1つだけが様々な図に示されている)が、ボビン12に巻かれた巻線11の電気ワイヤの各端に対して1つずつ配置されている。公知の技術に従って、電流が巻線11を通過することによって磁場を発生させ、これによって、好ましくはバネのような弾性要素の作用に抗して、ボビン12のキャビティ内でコア9を軸方向に変位させることができる。このように、ソレノイド10に電気的に供給することによって、コア9を、コア9の静止位置(resting position)、例えば油圧ダクト6a、6、6bの閉位置(この位置では、開閉部材8が弁座7に対応する位置に保持され、好ましくは開閉部材8が前述の弾性要素の作用によって弁座7の上に押圧される)に対して変位させることができる。このようにして得られたコア9の変位によって、結果的として、弁座7に対する開閉部材8の変位が引き起こされ、それによって、チャンバ6の入口6aと出口6bの間の流体の流れが可能になる。
【0032】
特に
図2~
図6を参照すると、様々な実施形態において、コア9は、開閉部材8とは反対側の端部に、好ましくは円筒状の部分(切込み部)を有するブラインドキャビティ(盲空洞)9aを画定する。キャビティ9aは、ばね17の第1の端部17’がキャビティ9aの底部にかかり、一方、ばね17の反対側の端部17’’が、全体を参照符号18で示されるカウンタコア部にかかるように予め設定(prearranged)されている。
【0033】
カウンタコア部18は、典型的には強磁性材料で形成され、実質的に円形の断面を有する部分18’有している。この部分は、ボビン12のキャビティの対応する部分内に固定的に挿入されるようになっている。図示されている例では、カウンタコア部18はさらに、参照符号18’’で示される広がったヘッド部分を有している。ヘッド部分の外周の寸法は、好ましくはボビン12の貫通キャビティよりも大きい。好ましくは、特に
図2に部分的に示されるように、カウンタコア部18の部分18’と部分18’’との間の境界(transition)領域には、Oリングタイプのガスケットのような環状シールエレメント20を配置するための座部または肩部18aが画定されている。さらに好ましくは、部分18’の周面に、歯部またはレリーフ18bが設けられている。歯部またはレリーフ18bは、ボビンの軸方向キャビティを画定する表面と機械的に協働し(例えば、
図3~
図4を参照)、基本的に、機械的干渉を介して、ボビン12内のカウンタコア部18の部分18’をブロックするためにくさび(wedge)の役割を果たす。
【0034】
図示された実施形態では、カウンタコア部18の部分18’は、ばね17の第2の端部17’’との接触面にいかなる空洞も有さない。しかしながら、他の実施形態(図示せず)では、ばね17の第2の端部17’’は、ヘッド部分18’’と反対側の位置にある上記部分18’に画定されたブラインドキャビティの底部にかかる(支承する)ことが可能である。
【0035】
ソレノイド10および筐体13を含むアクチュエータアセンブリは、
図3~
図4に明確に示され得るように、コア9のヘッド領域(コア9に関連する開閉部材8を有する)がチャンバ6内でアセンブリ自体から突出するように、弁本体2の領域2’に固定されている。この場合、ガスケット5で表されるシール手段が、アセンブリ10~13のフロント部分と弁本体2との間で動作する。
【0036】
特に
図1~
図6から分かるように、様々な実施形態において、内部にソレノイド10を有する筐体13は、特に強磁性材料で形成された金属アーマチュア21によって弁本体2に機械的に固定されている。ここでは、金属アーマチュア21は、実質的にU字形、すなわち横部分21bによって繋がれた2つの概ね平行な直立壁21aを有している。
【0037】
壁21bと反対側の壁21aの端部には、プレート3の上記溝4(
図2参照)と結合するために構成された突起(appendage)22が設けられていてもよい。例えば、各突起22の伸長部(stretch)は溝4のそれぞれに係合され得る。同じ突起22の末端伸長部は曲げられて、プレート3とアーマチュア21とを一緒に係合する。それによってソレノイド10の電磁ヨークを完成することができる。この例では、従って、ガスケット5が間に配置された弁本体2とアーマチュア21との間に、ソレノイド10と筐体13とから構成される集合体が詰められる。
【0038】
図示されているような様々な実施形態において、アーマチュア21は、横壁21bに穴21’を有している。これによって、カウンタコア部18の部分18’は、ボビン12のキャビティ内に、可能なシールエレメント20をボビン12のキャビティの内部肩にかけた状態で、ヘッド部分18’’によって決定される機械的移動端まで侵入することができる。好ましくは、組み立てられた構成において、アーマチュア21とカウンタコア部18とは、例えば相互の機械的干渉を伴って接触、すなわち、電磁レベルで結合している。
【0039】
ある重要な態様によれば、プラスチック材料で形成された弁本体2は、長手方向に延在する管状部分を画定するように成形されている。この管状部分は、流体の通路のためのチャンバ内において、弁座と、流体入口および流体出口のうちの一方との間に延在している。好ましくは、この管状部分は、弁座と前述した入口および出口のうちの少なくとも一方との間で、バルブの開閉手段の移動方向と同じ方向に長手方向または軸方向に延在している。さらに好ましくは、流体入口および流体出口のうちの他の一方は、上記管状部分に対して横方向に配置されている。
【0040】
図示された例を参照して、特に
図3~
図6および
図9~
図10に示されているように、弁本体2は、参照符号23で示される管状部分を画定している。ここでは、管状部分は、チャンバ6内において、弁座7と流体入口6aとの間を、好ましくはチャンバ6自体の円筒状の周面6’に対して実質的に同軸に延在している。好ましくは、管状部分は実質的に円筒形状である。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、管状部分23の平均厚さは、流体の通過のためのチャンバ6の周囲を画定する弁本体2の壁2bの平均厚さよりも小さい(管状部分23の平均厚さは、部分23の壁の最小厚さと最大厚さとの間の平均を意味し、壁2bの平均厚さは、壁2bの最小厚さと最大厚さとの間の平均を意味する)。
【0042】
成形されたプラスチック材料は、通常、成形工程の後にいわゆる「収縮」を起こす。この収縮は、実質的に、材料の冷却と硬化に伴って発生する材料の寸法の減少である。この収縮は、材料の種類(その特性は、原材料の製造業者ごとにある程度異なる場合がある)によって、および、他のプロセスパラメータに従って変化する。これらのプロセスパラメータは、広範な要因(例えば、周囲温度および/または金型の温度、摩耗、成形速度など)により変動する可能性がある。収縮の結果として、ここで検討されているタイプのバルブの場合、設計の最適な寸法に対して弁座の寸法変化が起こり、この寸法変化が開閉部材8と弁座7とが誤って協働する原因となり得る。この結果、バルブによる流体の流れの誤制御が生じる可能性がある。
【0043】
この欠点を克服するために、本発明の好ましい実施形態では、弁本体2の材料と同じ成形プラスチック材料を用いて、厚さの小さい管状部分23が画定され、この管状部分は端部に弁座7を画定している。すでに述べたように、管状壁の平均厚さは、チャンバ6の周囲を画定する(区画する)壁2bの平均厚さよりも小さい。例として、管状部分23の壁の平均厚さは、1.6~1.8mmの間であってもよく、周壁2bの平均厚さは、2.5~2.8mmの間であってもよい。
【0044】
この方法では、成形工程後のプラスチック材料の収縮が材料自体の厚さに実質的に比例することを考慮すると、管状部分23の収縮は極めて抑制され、どのような場合でも十分に精密な弁座7を画定でき、すなわち、開閉部材8との協働を損なわないようにすることができる。その一方で、チャンバ6を区画する弁本体2の周壁2bは、制御される流体の作動圧力およびアクチュエータアセンブリ10~13の機械的な固定(anchorage)を考慮して、最も適していると考えられる厚さで形成され得る。さらに理解されるように、弁座7はまた、管状部分23自体によって直接画定されてもよい。すなわち、弁座7は、弁本体2と一体的に作られ、例えば米国特許第7,891,370号のように、この目的のために専用の追加要素を使用する必要はない。
【0045】
これまで述べてきたように、好ましくは、流体入口および流体出口のうち管状部分23によって画定されていない方は、管状部分23に対して横方向に配置されている。その結果、(管状部分23が弁座7と流体入口6aとの間に延在している、図に示された非限定的な例を参照すると、)流体出口6bは、弁本体2において、管状部分23に対して横方向に、壁2bに画定される。他の実施形態では、図中、参照符号6aで示されたポートが流体出口に対応し、参照符号6bで示されたポートが流体入口に対応し得ることが分かる。そのような実施形態では、結果として、管状部分23は、弁座7と流体出口との間に延在し、流体入口は、管状部分23に対して横方向に配置されている。他の実施形態では、ポート6bはまた、ポート6aに対して実質的に平行に配置され得る。この目的のために、本体部分2は、適切な形状を有し得る。
【0046】
これまで述べてきたように、図に示された好ましい実施形態では、管状部分23は、実質的に円筒形の形状、すなわち、円形の断面を有している。しかしながら、この特徴は限定的な意味に理解されるべきではなく、特に使用される開閉部材8のタイプとも関連して、他の断面形状も可能である。
【0047】
本発明の一態様によれば、バルブ1は補償エレメントを備える。補償エレメントは、制御される流体の体積および/または流体の圧力の起こり得る増加を補償する(流体の体積および/または流体の圧力が増加した場合に、その増加を補償する)ために予め配置(prearranged)されている。補償エレメントは、チャンバ6内に取り付けられている。例えば
図2および
図7~8に示されるように、この補償エレメントは、全体として参照符号25で示され、弾性的に変形可能および/または弾性的に圧縮可能な材料、例えばエラストマー材料で形成された少なくとも1つの補償本体26を有している。例えば、本体26は、シリコーンエラストマー、液状シリコーンゴム(LSR)またはフルオロ液状シリコーンゴム(FLSR)のようなシリコーン材料で成形され得る。好ましくは、補償本体26の中に流体が浸透することを防ぐように、補償本体26は不浸透性のタイプの材料で形成されている。この目的のために、好ましくは、選択された材料は、独立気泡構造を有する。弁本体2の成形プラスチック材料は、いずれの場合も、補償本体26の弾性的に変形可能な材料および/または弾性的に圧縮可能な材料よりも固い(stiffer)。
【0048】
図に示された実施形態では、補償エレメント25の全体は、変形可能および/または圧縮可能な材料で形成された補償本体26によって構成されている。しかしながら、この特徴は、限定的な意味で理解されるべきではなく、他の実施形態(図示せず)において、補償エレメント25は、異なる材料で形成された他の部品を含み得る。例えば、補償エレメントは、比較的硬い材料で形成されたコアを含み、コアの上に補償本体26が固定(例えば、オーバーモールド)されていてもよい。例えば
図2~
図3から分かるように、補償エレメント25の本体26は、弁本体2に対して別個の部品として構成され、弁本体2の上に取り付けられるように設計されている。
【0049】
特に
図9~
図10に示されるように、補償本体26は、管状部分23を少なくとも部分的に囲むようにチャンバ6内に取り付けられている。この目的のために、好ましくは、補償本体26は、適切な形状の断面を有し、特に、実質的に円筒形の周壁27を有する。しかしながら、この特徴は限定されず、他の実施形態(図示せず)において補償本体26が円筒形とは異なる形状の断面を有してもよい。
【0050】
好ましくは、補償エレメント25は、チャンバ6および管状部分23のうちの一方の周面のプロファイルと少なくとも部分的に相補的なプロファイルを有する少なくとも1つの周面を有している。例えば、補償本体26の周壁27の外面は、チャンバ6の周囲を画定する本体2の表面6’と少なくとも部分的に相補的なプロファイルを有していてもよい。追加的にまたは代替的に、周壁27の内面は、管状部分23の外面に対して少なくとも部分的に相補的なプロファイルを有していてもよい。
【0051】
一方、可能な変形実施形態では、補償エレメント25は、チャンバ6を横方向に区切る表面6’に対して空間(例えば環状の隙間)を残して、管状部分23だけに、例えば弾性的に結合されている。代替的に、補償エレメント25は、壁27の外面のレリーフまたは突起を介してチャンバ6の周面6’と結合し得る。これらのレリーフまたは突起は、場合によって、エレメント25の軸方向に延在している。
【0052】
好ましくは、補償本体26の軸方向の延び(延在長さ)(extension)は、例えば
図3に示され得るように、チャンバ6内に配置されたとき、補償本体26の上端が弁座7よりも上方に位置するようになっている。いずれにしても、本体26は軸方向に中空なので、コア9によって運ばれる開閉部材8は弁座7に達することが可能である。
【0053】
特に
図7を参照すると、様々な実施形態において、補償本体26は、弁座7と出口6bとの間の流体の通過を可能にするために、補償本体26の周壁27に少なくとも1つの横方向通路28を有している。好ましくは、横方向通路28は、壁27の第1の長手方向端部31から延在する凹部から構成されている。
【0054】
通路28の形状および延在長さは、実施形態ごとに異なっていてもよい。図示された実施形態では、補償本体26は、ただ1つの横方向通路28を有している。しかしながら、他の実施形態(図示せず)においては、2つ以上の横方向通路28が設けられてもよい。この解決策は、例えば、流体の通過のためのチャンバ6が2つ以上の出口(または入口)6bを有するときに必要とされる。
【0055】
図示された実施形態では、横方向通路28は、第1の長手方向端部31から延在する凹部を含んで(凹部から構成されて)いる。しかしながら、他の実施形態(図示せず)においては、通路28は、他の形状、例えば、周壁27に設けられた穴または補償本体26に設けられた他の穴によって構成される形状を有することも可能である。
【0056】
様々な実施形態において、弁本体は、流体の通過のためのチャンバ内に、ポラリゼーションエレメントまたは位置決めエレメントを画定している。ポラリゼーションエレメントまたは位置決めエレメントは、弁本体および補償エレメントの正しい相互角度位置を確保するために、例えば組立段階において、補償エレメントのポラリゼーションカウンタエレメントまたは位置決めカウンタエレメントと協働する。好ましくは、上記ポラリゼーションエレメントは、弁座を画定する管状部分に対して横方向の位置に画定される。
【0057】
例えば、特に
図4および
図9を参照すると、ポラリゼーションエレメント30がチャンバ6内に画定されている。ポラリゼーションエレメント30は、ここでは実質的にチャンバ6の周面6’のリブまたはレリーフによって構成され、管状部分23に対して横方向の位置で延在している。
【0058】
他方、
図8から分かるように、補償本体の周壁27は、エレメント30を受け入れるために予め配置された、ポラリゼーションカウンタエレメント29を画定している。この例では、ポラリゼーションカウンタエレメント29は、補償本体26の円筒状の壁27の第2の長手方向端部32から延在する凹部から構成されている。またこの場合、凹部の形状および延び(延在長さ)は、実施形態ごとに異なっていてもよい。
【0059】
好ましいバージョンでは、ポラリゼーションカウンタエレメントまたは凹部29は、ポラリゼーションエレメントまたはレリーフ30の表面と結合するために設けられた向かい合う傾斜した表面を有し、これらの傾斜した表面も好ましくは少なくとも部分的に逆方向に傾いている。これらの表面の傾斜は、設置中に、特に補償本体26のわずかな自律的回転を介して、補償本体26が予め設定された位置に方向づけられるまで、自律的なポラリゼーションまたはセンタリングを行うのにも有利である。
【0060】
エレメント30およびカウンタエレメント29が設けられていることで、バルブ1の組み立て操作を単純化することに加えて、弁本体2に対する補償本体26の回転が抑えられる。このため、横方向通路28は、常に、弁座7と出口(または入口)6bとの間の流体の通過を可能にするための最適位置に設けられる。
【0061】
図示された実施形態では、補償本体26は、ただ1つのポラリゼーションカウンタエレメント29を有するが、他の実施形態(図示せず)では、本体26が2つ以上のカウンタエレメント29を有し、チャンバ6内に(カウンタエレメントと)同じ数のポラリゼーションエレメント30が設けられ得ることは明らかである。当然ながら、逆の構成、すなわち、少なくとも1つの座部または凹部を含むチャンバ6と、この凹部に係合する同じ数の対応するレリーフを有する補償本体26とを備える構成も可能である。
【0062】
図示された実施形態では、横方向通路28およびポラリゼーションカウンタエレメントは、本体26の円筒状の壁27の実質的に対向する位置に画定されている。しかしながら、この特徴さえも限定的な意味で理解されるべきではなく、他の実施形態(図示せず)において通路28およびカウンタエレメント29は異なる角度位置にあってもよい。
【0063】
様々な好ましい実施形態において、流体の通過のためのチャンバおよび補償エレメントの少なくとも一方は、係合手段を備える。係合手段は、補償エレメントを流体の通過のためのチャンバ内の実質的に予め設定された軸方向位置に維持するために予め配置されている。
【0064】
様々な実施形態において、前述の係合手段は、本体26の壁27の外面に設けられた少なくとも1つのレリーフまたはリブを含む。図示される実施形態では、
図7~
図8において、レリーフまたはリブは参照符号33で示されている。レリーフまたはリブは、補償本体26の外周の少なくとも一部にわたって延在している。リブ33は、結果的に環状形状を有していてもよく、弁本体2の表面6’と弾性的に結合するように構成される。追加的にまたは代替的に、係合手段は、例えば、表面6’に画定された1つ以上のレリーフまたはシートの形で本体2に設けられ、補償本体26は、特に補償本体26の壁27の外面上で、そのような係合手段に弾性的に干渉することが可能である。
【0065】
上記の係合手段はまた、相互係合手段、すなわち、互いに結合するために設けられたものであってもよい。例えば、図に例示した非限定的な場合において、チャンバ6の表面6’には、リブ33が係合可能な座部34が画定されていてもよい。
【0066】
他の実施形態(図示せず)において、補償本体26は、2つ以上の周辺リブ33を有してもよい。チャンバ6は、周辺リブ33と同じ数の対応する座部34を有し得る。当然ながら、逆の構成、すなわち、1つ以上の周辺リブを有するチャンバ6と、補償本体26の外周の少なくとも一部にわたって延在する同じ数の対応する座部を有し得る補償本体26とを備える構成も可能である。
【0067】
様々な実施形態において、バルブ1は、例えば液圧式または空気圧式などの、流体回路、流体システムまたは流体装置に設けられている。前述のように、そのような回路は、例えば、灌漑システムに属していてもよく、また、そのような装置は、家庭用電気機器であってもよい。好ましくは、バルブ1は、車両、特に自動車に搭載される回路、装置またはシステムに適用される。例えば、本発明の主題を形成するバルブは、車両内の水(または水溶液)の制御および/または供給のための回路、システムおよび装置、例えば、自動車のフロントガラスまたはヘッドランプを洗浄するためのシステム、または、例えばビデオカメラやLIDAR(Light Detection and Ranging)システムのセンサなどの自律走行システムに属するセンサを洗浄するためのシステム、内燃機関の排気ガスから窒素酸化物を除去するSCR(Selective Catalytic Reduction)システムに水-尿素溶液を制御および/または供給するシステム、ADI(Anti Detonant Injection)システムに属する水を注入するためのシステムなどにおいて有利に使用され得る。
【0068】
以下では、
図1~
図10に模式的に示されているようなバルブの好ましい実施形態の使用について詳細に説明する。この説明は、動作のメカニズムを理解することのみを目的としており、添付の特許請求の範囲によって規定される保護範囲をいかなる意味でも制限することを意図していないことが理解される。
【0069】
図示された好ましい実施形態では、バルブ1が静止状態、すなわち、アクチュエータアセンブリ10~13に電力供給されていない状態にあるとき、コア9によって運ばれた開閉部材8は、
図3および
図5~6に示されるように弁座7に対して閉位置にある。開閉部材8は、ばね17によってこの位置に付勢されている。この状態では、これまで述べてきたように、チャンバ6の入口6aと出口6bとの間に流体の通路が存在しない。バルブ1を開く必要があるとき、ソレノイド10に電気が供給される。これによって、ソレノイド10は、
図4に示されるように、コア9に引力を及ぼす磁界を発生させ、弁座7に対してコア9を後退させ、その結果、ばね17の圧縮を生じさせる。前述したように、プレート3、カウンタコア部18、およびアーマチュア21は、ボビン12上の巻線11によって形成された作動コイル用の固定電磁ヨーク(stationary electromagnetic yoke)を提供する。
【0070】
前述の作動コイルが給電されると、それ自体既知の技術によれば、磁気吸引力がヨークに発生し、カウンタコア部18は、その力をコア9に集中させて、コア9を後退させるようにする傾向がある。コア9の変位によって、それに対応して開閉部材8が弁座7に対して後退し、流体がチャンバ6の入口6aと出口6bの間を自由に循環する。次に、ソレノイド10への電力供給が中断されると、磁界が消失し、ばね17の弾性反応によりコア9が
図3の元の位置に戻され、開閉部材8は再び弁座7を閉鎖する。
【0071】
開閉部材8が閉位置にあるとき、残留流体がチャンバ6の内部に残ることがあり得る。このリスクは、バルブが挿入された油圧システムが空運転(operations of emptying)される場合にも発生する。空運転中は、入口6aと管状部分23の内部のみが空にされるが、チャンバ6内には何らかの形で流体が残留することになる。この残留流体が凍結すると、その結果として体積が増加し、開閉部材8およびコア9、ひいてはカウンタコア部18およびアクチュエータアセンブリ10~13全体を後退させるかなりの推進力が生じる可能性がある。この推進力は、弁本体2とアクチュエータアセンブリ10~13との間の固定および/または密閉を損なうような力を有し得る。チャンバ6内に補償本体26が存在することにより、チャンバ6内に残ることができる残留流体の量を制限することができるとともに、圧縮される本体26の容量により、流体の体積の増加の補償することが可能になる。
【0072】
図11は、バルブ1を備える油圧システムが空運転されず、チャンバ6内、およびチャンバ6の上流および下流に、凍結する流体Fが存在する場合を例示している。
図4と
図11とを比較すると、流体Fの体積が増加することによって、コア9がわずかに後退し、後退する量は、ソレノイド10に電気的に供給される通常の動作条件と同程度になることが分かる。この現象は、
図11で強調されているように、本体26の通常の(一般的な)軸方向の圧縮によって可能になる。これにより、流体Fの体積の増加に対して大幅に補償することができる。
【0073】
上述したように、
図11は、バルブ1が挿入される油圧回路内、すなわちバルブ1の上流および下流に流体が残留する場合に関する。このタイプの用途では、管状部分23内の残留流体の体積の増大は、チャンバ6および出口6b内の残留流体の体積の増大によって実質的に補償されるので、管状部分自体の大きな変形は生じない。
【0074】
しかし、他の用途では、バルブ1が挿入される油圧回路または装置は、上述のように、使用後にバルブ自体の上流および下流の回路のブランチが空にされるタイプのものであってもよい。例えば、SCRシステムのようないくつかの油圧システムでは、凍結の可能性に関連するリスクを確実に防止するため、あるいは少なくともそのリスクを抑えるために、意図的に液体を空にするステップが設けられていることが想定される。しかし、これは、そのような液体の残留物が、何らかの形でチャンバ6の内部に残る可能性を排除するものではない。
【0075】
このタイプの用途の場合、従って、管状部分23内には液体が存在せず、代わりにチャンバ6内に液体が存在する。チャンバ6内の残留液体の体積が増加すると、管状部分23が径方向へ著しく圧縮され、その結果、特に環状部分23の厚さが小さいことを考慮すると、部分23に同様に著しい変形をもたらす可能性がある。
【0076】
図12~
図14は、チャンバ6内に補償本体26が設けられていないバルブの場合におけるこのタイプの状態を示している。これらの図から、流体Fの体積の増加がどのようにして部分23に大きな変形をもたらすかが分かる。これは、限界において、開閉部材8と弁座7との間の適切な協働を損なうような永久的な破損または変形を引き起こし得る。
【0077】
図12~
図14は、凍結流体の体積の増大が、管状部分23を、その内側に向かって径方向に(放射状に)変形させ、その変形が実質的に部分全体に及ぶこともあれば、部分の中間、下部または上部の伸縮(stretch)のみに及ぶこともあり、場合によっては変形の影響が弁座7にも及ぶことを例示するものである。このような変形によって、場合によっては、流体のための通路の断面が変化したり、弁座7のシール面積(area of sealing)が変化したり、あるいは、管状部分23に破損のポイントを引き起こすことさえある。
【0078】
図15に示されるような補償本体26を備えることにより、上記のようなリスクを避けることができる。管状部分23の周囲に取り付けられた本体26によって、残留液体が占めることができる体積を減少させることが可能である。残留液体Fが凍結した場合、その結果生じる体積の増加は、本体26の圧縮容量(capacity of compression)によって補償され、特に管状部分23の径方向に応力がかかることを防止することができる。
【0079】
上記の説明から明らかなように、本発明の主題を形成するバルブは、従来技術で利用可能な解決策と比較して複数の利点を達成する。
【0080】
第一に、弁座7は、弁本体2の成形プラスチック材料で形成された部分と一体に作られた管状部分23によって画定される。この解決策により、弁座の機能を担うために意図的に専用の追加部品を使用する必要がなくなり、当該技術分野で知られている解決策よりも簡単かつ正確な構造的特徴を備えたバルブが得られる。また、管状部分23の厚さが小さいので、成形プラスチック材料の起こり得る収縮によって弁座7の精度が損なわれ、従って流体を遮断するための手段と弁座との間の効率的な協働が損なわれるリスクが、最小限に低減される。これに加えて、補償エレメント25の圧縮可能または変形可能な本体26は、有利には、管状部分23の周囲で、流体の通過のためのチャンバ6内に位置し、意図的に専用のハウジングを設ける必要がない。したがって、バルブの構造を単純化し、コンパクト性を向上させることができる。このため、本発明の主題を形成するバルブを、簡単かつ安価に製造することができる。
【0081】
管状部分23を囲む補償エレメント25を設けることにより、部分23および弁座7の変形のリスクが回避される。その結果、開閉部材8が誤って閉鎖されるリスクが回避され、同様に、誤作動または流体の通路の断面が狭められるリスクも回避される。
【0082】
当業者であれば、例として説明したバルブに対して、後述する特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、多数の変形を加えることができることは明らかである。
【0083】
図16は、ピン9bがコア9のキャビティ9a内に中心的に取り付けられ、ピン9bの周囲にばね17が配置されている変形実施形態を示す図である。ピン9bは、ばね17を圧縮時に案内する機能を果たすことに加えて、コア9とカウンタコア部18との間の領域に到達する可能性のある液体が満たし得るキャビティ9aの有用な体積を低減させることができる。このため、この液体の体積は減少し、それによって、凍結に起因する液体の体積増加によって生じ得る負の影響を抑えることが可能になる。ピン9bは、好ましくは、金属または他の剛性材料で形成されるが、有利には、弾性および/または圧縮性材料、例えばエレメント25の材料と同様の材料で形成され得る。これにより、流体の凍結が生じた場合に、ピン9bが変形および/または圧縮され得る。
【国際調査報告】