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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】搾乳制御装置および乳抽出システム
(51)【国際特許分類】
   A01J 5/007 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
A01J5/007
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555931
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 SE2021050237
(87)【国際公開番号】W WO2021188035
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】2050295-1
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521499848
【氏名又は名称】デラバル ホールディング アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パウルラッド、カール オスカル
(72)【発明者】
【氏名】シュステル、アンデルス
(57)【要約】
搾乳される動物(110)の少なくとも1つの乳頭(220a)の乳頭サイズデータを取得することと、取得された乳頭(220a)の乳頭サイズデータに基づいて、乳頭(220a)から乳を抽出するときに乳抽出ユニット(120)の搾乳パラメータを調整することと、を行うように構成されている、搾乳制御装置(130)および乳抽出システム(100)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳制御装置(130)であって、
搾乳される動物(110)の少なくとも1つの乳頭(220a)の乳頭サイズデータを取得することと、
前記乳頭(220a)の前記取得された乳頭サイズデータに基づいて、前記乳頭(220a)から乳を抽出するときの乳抽出ユニット(120)の搾乳パラメータを調整することと、を行うように構成されている、搾乳制御装置(130)。
【請求項2】
乳が前記乳頭(220a)から抽出されるときの前記乳頭(220a)の乳流値を取得することと、
前記乳頭(220a)の前記取得された乳流値に基づいて、乳が前記乳頭(220a)から抽出されるときの前記乳抽出ユニット(120)の前記搾乳パラメータを調整することと、を行うように構成されている、請求項1に記載の搾乳制御装置(130)。
【請求項3】
前記乳頭(220a)に適用された前記乳抽出ユニット(120)のライナ(161a、162a、163a、164a)のライナデータを取得することと、
前記乳頭(220a)に適用される前記ライナ(161a、162a、163a、164a)の前記取得されたライナデータに基づいて、乳が前記乳頭(220a)から抽出されるときの前記乳抽出ユニット(120)の搾乳パラメータを調整することと、を行うように構成されている、請求項1または請求項2に記載の搾乳制御装置(130)。
【請求項4】
前記調整された搾乳パラメータが、前記乳頭(220a)に適用される搾乳真空、適用される脈動圧力の脈動比、脈動圧力レベル、固定したDフェーズ/調整可能なBフェーズ、のうちのいずれか、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の搾乳制御装置(130)。
【請求項5】
前記乳頭(220a)に適用される前記脈動圧力レベルが、脈動サイクル中に、2つの別個の圧力レベルの間で調整され、その両方とも前記搾乳真空よりも高い、請求項4に記載の搾乳制御装置(130)。
【請求項6】
前記動物(110)の複数の乳頭(220a、220b、220c、220d)の乳頭サイズデータを取得することと、乳が抽出される各それぞれの乳頭(220a、220b、220c、220d)に対して個別に前記乳抽出ユニット(120)の前記搾乳パラメータを調整することと、を行うように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の搾乳制御装置(130)。
【請求項7】
前記取得された乳頭サイズデータに基づいて、2つの乳頭(220a、220b、220c、220d)間のサイズの差異を判定することと、
前記2つの乳頭間の前記判定されたサイズの差異に基づいて、前記それぞれの乳頭(220a、220b、220c、220d)に適用される前記搾乳真空を調整するための異なる乳流切替ポイント(510、520)を適用することによって、前記乳抽出ユニット(120)の前記搾乳パラメータを調整することと、を行うように構成されている、請求項6に記載の搾乳制御装置(130)。
【請求項8】
前記取得された乳頭サイズデータに基づいて、2つの乳頭(220a、220b、220c、220d)間のサイズの差異を判定することと、
前記2つの乳頭間のサイズの前記判定された差異に基づいて、
前記適用される脈動圧力の異なる脈動比、または
脈動圧力レベル、または
Bフェーズ長、または
前記乳頭(220a、220b、220c、220d)に適用される搾乳真空を適用することによって、前記乳抽出ユニット(120)の前記搾乳パラメータを調整することと、を行うように構成されている、請求項6または7のいずれか一項に記載の搾乳制御装置(130)。
【請求項9】
動物(110)の乳を抽出するように構成された乳抽出ユニット(120)と、
請求項1~8のいずれか一項に記載の搾乳制御装置(130)と、を備える、乳抽出システム(100)。
【請求項10】
搾乳される前記動物(110)の少なくとも1つの乳頭(220a、220b、220c、220d)の乳頭サイズを判定するように構成されたセンサ(140)を備える、請求項9に記載の乳抽出システム(100)。
【請求項11】
前記動物(110)を識別するように構成された動物識別デバイス(170)と、
前記動物(110)のアイデンティティ基準に関連付けて、
前記動物(110)の乳頭(220a、220b、220c、220d)の乳頭サイズデータ、および/または
前記動物(110)の乳頭(220a、220b、220c、220d)から乳を抽出するときに適用される少なくとも1つの搾乳パラメータ、を記憶するように構成されたメモリデバイス(150)と、を備える、請求項9または請求項10のいずれか一項に記載の乳抽出システム(100)。
【請求項12】
前記乳抽出ユニット(120)が、少なくとも1つの第1の乳頭カップ(161、162)および少なくとも1つの第2の乳頭カップ(163、164)を備える、一組の乳頭カップ(160)を備え、前記第1の乳頭カップ(161、162)が、前記第2の乳頭カップ(163、164)のライナ(163a、164a)とは異なる寸法を有するライナ(161a、162a)を備える、請求項9~11のいずれか一項に記載の乳抽出システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文書は、搾乳制御装置および乳抽出システムを開示する。より具体的には、乳抽出ユニットの搾乳パラメータを調整し、それによって群れの乳頭の平均サイズ/形状から逸脱するサイズまたは形状を有する乳頭からの乳抽出を改善するための搾乳制御装置および乳抽出システムを記載する。
【背景技術】
【0002】
酪農場では、乳は典型的には、ライナ付きの乳頭カップを動物の乳頭に置き、乳頭の先端の下に搾乳真空および脈動真空を適用することによって動物から抽出される。これにより、搾乳真空による吸引が、脈動真空によって引き起こされるライナの開閉というリズミカルな動きによって中断されるように、子牛のリズミカルな授乳が模倣される。その結果、乳頭は、マッサージにさらされ、これは動物のオキシトシン放出を刺激し、ひいては射乳反射を活性化する。また、マッサージを施すことで、乳頭端のうっ血が防止される。
【0003】
しかしながら、乳頭は、例えば、血統、動物の年齢、出生数、泌乳周期の状況、遺伝的変異、ホルモン変異、事故、提供される飼料の質/量、温度などによって、群れ内のサイズおよび形状の両方が異なることがよくある。乳頭のサイズ/形状は、動物によって異なり得るだけでなく、1頭の動物の乳頭のサイズ/形状も異なり得る。ある特定の動物の乳首のサイズ/形状も、例えば、ホルモンの変動により、時間の経過とともに変化し得る。搾乳中に血液およびリンパ液が乳頭に蓄積するため、乳頭は、搾乳プロセス自体の間にサイズおよび/または形状が変化することさえあり得る。
【0004】
乳頭のうっ血を低減し、乳頭の損傷を避けながら、動物から乳を速く、可能な限り完全に排出することが所望される。これらの目標を達成するために、乳頭とライナとの間に気密フィッティングが必要であり、ライナのスリップおよび/または脈動中に乳頭カップ/ライナが乳頭から滑り落ちるリスクを回避または少なくとも最小限に抑える。
【0005】
従来のアプローチは、農場での群れの乳頭の平均サイズ/形状を推定し、乳頭のサイズ/形状の差異を無視して、すべての動物/乳頭に同じライナを適用することである。しかしながら、その結果は、平均的な乳頭形態から逸脱する乳頭には最適ではない搾乳プロセスになる。
【0006】
市場には膨大な数と範囲のライナデザインがあり、それらはすべて上記の目標を達成しようとしている。一例として、ライナのマウスピースリップの直径は、18~27mmの範囲であり、ボアの直径は、20~28mmの範囲である。その理由は主に、品種間の乳頭サイズと乳頭形態の違いによるものである。
【0007】
ライナが短かすぎると、乳頭の下でバレルが崩壊するのに十分なスペースがなくなり、搾乳が非効率になる一方、ライナが大きすぎると、頻繁にスリップすることがある。ライナが群れの平均的な乳頭よりも小さい直径の乳頭に適用される場合、搾乳を最適化するためにライナが選択されると、ライナと乳頭との間の不十分な適合に起因して、搾乳真空が適用されるときに深刻なエアスリップが生じ得る。エアスリップにより、搾乳の真空度が低減し(すなわち、所望の低圧/真空と比較して、適用される低圧が増加し)、乳頭の搾乳が非効率的になり、乳頭カップ/ライナが乳首のスリップを引き起こす可能性さえある。
【0008】
最近開発された搾乳方法は、ブーストと呼ばれている。ブーストとは、第1のレベルで搾乳真空を適用し、乳頭の乳量が閾値を超えて増加したときに乳抽出を開始し、その後、搾乳真空を増加させる(すなわち、低圧を低下させる)ことを意味する。ライナ/乳頭の適合が良好な場合、これは正常に機能するが、適合が不良の場合、代わりにエアスリップにより搾乳真空度の上昇が妨げられる。したがって、ブーストが適用されると、乳頭とライナとの間の適合不良の問題が増す。
【0009】
上記の問題の少なくともいくつかに対する潜在的な解決策は、文書WO00/04768に提示されている。この解決策は、搾乳装置/ロボットに異なるサイズのライナを備えた乳頭カップの複数のセットを提供することを含む。搾乳される動物の乳頭のサイズ/形状が分析され、乳抽出中に一致する乳頭カップ/ライナがそれに適用される。
【0010】
開示された解決策は、ある程度、上記の問題を少なくとも部分的に解決し得るが、その解決策は、大量の追加の乳頭カップ/ライナを必要とし、従来のフリーサイズの乳頭カップ/ライナの概念と比較した場合、ハードウェアの追加およびメンテナンスコストの追加の点の両方で、搾乳装置へのコストの追加となる。ライナのゴムは、乳と接触すると時間の経過とともに劣化し、ライナは定期的に交換する必要があり、これは、コストの追加と農家の作業量の増大の両方をもたらす。より深刻な欠点は、異なるライナ間の絶え間ない交換には時間がかかり、各動物が搾乳ロボット/装置に費やす必要のある時間が長くなり、それによって、従来の概念と比較して、搾乳ロボット/装置によって提供できる動物の数が低減することである。
【0011】
逸脱した乳頭形態を有する動物の射乳を改善するには、さらなる調査と開発が必要であると思われる。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、上記の問題の少なくともいくつかを解決し、動物の搾乳を改善することである。
【0013】
発明の第1の態様によれば、この目的は、搾乳される動物の少なくとも1つの乳頭の乳頭サイズデータを取得するように構成された搾乳制御装置によって達成される。また、搾乳制御装置は、乳頭の取得された乳頭サイズデータに基づいて、乳頭から乳を抽出するときの乳抽出ユニットの搾乳パラメータを調整するように構成されている。
【0014】
これにより、搾乳プロセスを個々の乳頭の形態に適応させることにより、平均的な乳頭ではなく、乳頭に合わせて搾乳を最適化することができる。提供された解決策のおかげで、乳頭のサイズの差異、およびそれによるライナに対する適応の差異を補償することは、主に、調整された搾乳パラメータの制御によって行うことができ、開示された解決策を容易に実施する。これにより、乳の抽出が改善される。
【0015】
第1の態様による搾乳制御装置の実装態様では、搾乳制御装置はまた、乳頭から乳が抽出されるときの乳頭の乳流値を取得するように構成され得る。さらに、搾乳制御装置は、乳頭の取得された乳流値に基づいて、乳頭から乳が抽出されるときの乳抽出ユニットの搾乳パラメータを調整するように構成され得る。
【0016】
乳頭の乳流値を測定し、乳抽出ユニットの1つ以上の搾乳パラメータを測定された乳流に適応させることにより、個々の乳頭の制約に乳抽出を適応させ、搾乳の改善につながる。
【0017】
第1の態様による搾乳制御装置のさらなる実装態様では、搾乳制御装置は、乳頭に適用される乳抽出ユニットのライナのライナデータを取得するように追加的に構成され得る。また、搾乳制御装置は、乳頭に適用されたライナの取得されたライナデータに基づいて、乳頭から乳が抽出されるときの乳抽出ユニットの搾乳パラメータを調整するように構成され得る。ライナは、搾乳中に動物の乳頭と接触するライナの一部であるバレルを備える。ライナデータは、バレルの寸法、好ましくは、バレルの長手方向軸に沿った1つ以上の断面におけるバレルの直径、および/または、バレルの長手方向軸に沿った1つ以上の断面におけるバレルの壁厚に関連する。
【0018】
これにより、乳頭形態の差異は、異なる形状のそれぞれのライナを適用することによって補償され、ライナと乳頭との間のより良い適合および搾乳プロセスをより効率的にするスリップの低減につながり得る。
【0019】
第1の態様による搾乳制御装置の別の実装態様では、調整された搾乳パラメータは、乳頭に適用される搾乳真空、適用される脈動圧力の脈動比、脈動圧力レベル、固定したDフェーズ/調整可能なBフェーズのうちの、いずれか、またはそれらの組み合わせを含む。
【0020】
第1の態様による搾乳制御装置の別の実装態様では、搾乳制御装置はまた、動物の複数の乳頭の乳頭サイズデータを取得し、乳が抽出されたそれぞれの乳頭ごとに個別に乳抽出ユニットの搾乳パラメータを調整するように構成され得る。
【0021】
第1の態様による搾乳制御装置のさらに別の実装態様では、搾乳制御装置は、取得された乳頭サイズデータに基づいて、2つの乳頭間のサイズの差異を判定するように構成され得る。また、搾乳制御装置は、2つの乳頭間の判定されたサイズの差異に基づいて、それぞれの乳頭に適用される搾乳真空を調整するための異なる乳流切替ポイントを適用することによって、乳抽出ユニットの搾乳パラメータを調整するように構成され得る。
【0022】
したがって、各乳頭の状態および能力に個別に適応する乳流切替ポイントを持つことが可能になり、搾乳プロセスがより効率的になる。
【0023】
第1の態様による搾乳制御装置の別の実装態様では、搾乳制御装置は、取得された乳頭サイズデータに基づいて、2つの乳頭間のサイズの差異を判定するように構成され得る。搾乳制御装置はまた、2つの乳頭間のサイズの判定された差異に基づいて、適用される脈動圧力の異なる脈動比、または脈動圧力レベル、またはBフェーズ長、または乳頭に適用される搾乳真空を適用することによって、乳抽出ユニットの搾乳パラメータを調整するように構成され得る。
【0024】
発明の第2の態様によれば、この目的は、乳抽出システムによって達成される。乳抽出システムは、動物の乳を抽出するように構成された乳抽出ユニットを備える。乳抽出システムはまた、第1の態様またはその任意の実装態様による搾乳制御装置を備える。
【0025】
これにより、搾乳プロセスを個々の乳頭の形態に適応させることにより、平均的な乳頭ではなく、乳頭に合わせて搾乳を最適化することができる。提供された解決策のおかげで、乳頭のサイズの差異、およびそれによるライナに対する適合の差異を補償することは、主に、調整された搾乳パラメータの制御によって行うことができ、開示された解決策を容易に実施する。これにより、乳の抽出が改善される。
【0026】
第2の態様による乳抽出システムの実装態様では、乳抽出システムはまた、搾乳される動物の少なくとも1つの乳頭の乳頭サイズを判定するように構成されたセンサを備え得る。
【0027】
第2の態様による乳抽出システムの別の実装態様では、乳抽出システムは、動物を識別するように構成された動物識別デバイスを備え得る。乳抽出システムはまた、動物の識別基準に関連付けて、動物の乳頭の乳頭サイズデータ、および/または動物の乳頭から乳が抽出されるときに適用される少なくとも1つの搾乳パラメータを記憶するように構成されたメモリデバイスを備え得る。
【0028】
第2の態様による乳抽出システムのさらに別の実装態様では、乳抽出システムは、少なくとも1つの第1の乳頭カップおよび少なくとも1つの第2の乳頭カップを備える、一組の乳頭カップを備え得、第1の乳頭カップが、第2の乳頭カップのライナとは寸法が異なるライナを備える。
【0029】
他の利点および追加の新規機能が、次の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
ここで、発明の実施形態を、添付の図を参照してさらに詳細に説明する。
【0031】
図1A】動物から乳を抽出するシナリオにおいて、一実施形態による乳抽出システムを示す。
図1B】動物から乳を抽出するシナリオにおいて、別の実施形態による乳抽出システムを示す。
図2A】1つの乳頭が他の乳頭とサイズおよび形状が逸脱している、動物と乳房の識別手段を示す。
図2B】乳頭サイズデータを判定し、それによってサイズおよび形状が他の乳頭から逸脱している乳頭を検出するためのデバイスを示す。
図3】基準乳頭として使用される、特定の乳頭と群れとの平均的な乳頭のサイズおよび形状の検出された差異の任意の例を示す。
図4】乳頭カップクラスタとその中に含まれる構成要素を概略的に示す。
図5】いくつかの例による、乳抽出中の時間単位当たりの乳流の例を示す図である。
図6】脈動サイクルをA、B、C、Dの4つのフェーズに分けた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、搾乳制御装置および乳抽出システムとして定義され、これらは、以下に記載される実施形態において実施され得る。しかしながら、これらの実施形態は、多くの異なる形態で例示および実現され得、本明細書に記載の実施例に限定され得ず、むしろ、これらの例示的な実施形態の例は、本開示が徹底的かつ完全になるように提供される。
【0033】
さらに他の目的および特徴が、添付の図面と併せて検討される以下の詳細な説明から明らかとなり得る。しかしながら、図面は、例示のみを目的として策定されており、本明細書に開示される実施形態の限度の定義としては策定されておらず、それについては、添付の特許請求の範囲が参照されることを理解されたい。さらに、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、別様に示されない限り、それらは単に、本明細書に記載の構造および手順を概念的に示すことを意図されている。
【0034】
図1Aは、乳が動物110から抽出されるシナリオにおける乳抽出システム100を示している。動物110は、農場105での酪農のための動物の群れに含まれている。
【0035】
「動物」は、例えば、乳牛、山羊、羊、ラクダ、馬、酪農バッファロー、ロバ、ヤクなどの任意の種類の飼いならされた雌の哺乳動物であり得る。
【0036】
動物110の乳は、いくつかの任意の例に言及するだけで、回転式搾乳パーラ、自動ロボット搾乳システム、バケツ搾乳装置、パイプライン搾乳プラントなどに含まれる乳抽出ユニット120によって抽出され得る。
【0037】
乳抽出システム100の図示の例では、乳抽出ユニット120、および乳抽出ユニット120の様々な搾乳パラメータは、搾乳制御装置130によって、この場合、それぞれのトランシーバ125、135を介した無線通信インターフェースを介して制御される。
【0038】
乳抽出システム100はまた、搾乳される動物110の乳頭の画像またはいくつかの画像を撮像し得るセンサ140を備え得る。これらの画像は、動物110の乳頭の乳頭サイズ/形状を推定するために画像を利用し得、また、判定された乳頭サイズと農場の群れの平均的な動物の平均的な乳頭の基準乳頭サイズ/形状との間の偏差サイズを推定し得る、搾乳制御装置130に提供され得る。
【0039】
搾乳される動物110の乳頭の取得された乳頭サイズデータに基づいて、搾乳制御装置130は、それぞれの乳頭から乳が抽出されるときに適用する乳抽出ユニット120の適切な搾乳パラメータを判定し得る。
【0040】
調整された搾乳パラメータは、例えば、乳頭に適用される搾乳真空、適用される脈動圧力の脈動比、脈動圧力レベル、および/または固定したDフェーズ/調整可能なBフェーズのうちの、いずれか、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0041】
ここでの文脈における「搾乳真空」とは、乳頭から乳を抽出するために使用される真空または低圧を指す。
【0042】
いくつかの実施形態では、乳抽出システム100は、データベース150を含み得、ひいては、搾乳制御装置130に含まれるか、またはそれに取り付けられ得る。乳頭データ、すなわち乳頭の直径、乳頭の長さ、および/または乳頭の形状などの乳頭のサイズに関連付けて、異なる乳頭に乳頭抽出ユニット120によって適用する適切な搾乳パラメータなどの様々なデータを記憶し得る。搾乳制御装置130は、乳頭の形態を判定したときに、乳頭データをデータベース150の入力値として使用し、見返りに適切な搾乳パラメータを達成することができ、これはその後、無線トランシーバ125、135を介して乳頭抽出ユニット120に送信され得る。
【0043】
他の実施形態では、データベース150は、動物110のアイデンティティ基準、および/または動物110の特定の乳頭に関連付けられた適切な搾乳パラメータを含み得る。搾乳される動物110のアイデンティティを、センサ140または他の動物識別デバイスによって判定することにより、搾乳制御装置130は、適用する適切な搾乳パラメータを達成するための、その後、乳抽出ユニット120に提供され得る、入力値として動物110のアイデンティティ基準を使用し得る。
【0044】
全体的な発明概念は、例えば、センサ140によるセンサ検出に基づいて、動物110のアイデンティティを判定し、データベース150の動物識別基準に関連付けられて記憶された乳頭サイズデータの取得と、農業管理者によって作成された乳頭サイズの推定値を取得することなどによって、搾乳される動物110の少なくとも1つの乳頭の乳頭サイズデータを取得することである。
【0045】
取得された乳頭の乳頭サイズデータに基づいて、乳頭から乳を抽出するときの乳抽出ユニット120の搾乳パラメータを調整する。
【0046】
調整される搾乳パラメータは、乳頭に適用される搾乳真空レベル、適用される脈動圧力の脈動比、脈動圧力レベル、固定したDフェーズ/調整可能なBフェーズのうちの1つ以上を含み得る。
【0047】
乳頭のサイズおよび形状に応じて乳抽出中に搾乳パラメータを調整することにより、背景のセクションに列挙されている前述の欠点を排除するか、少なくとも低減することができる。例えば、(平均的な乳頭の搾乳と比較して)適用される搾乳真空を低下させることは、エアスリップの回避、および/または乳頭の乳頭カップのスリップの回避につながり、それによって搾乳プロセスがより効率的になる。
【0048】
平均的な乳頭の概念は、農場での群れの乳頭の推定平均サイズ/形状と見なされ得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、脈動圧力レベルは、乳頭のサイズおよび形状、ならびに乳頭から乳が抽出されるときの乳頭の乳流値に基づいて調整され得る。
【0050】
提供された解決策のおかげで、乳頭のサイズデータに応じて各乳頭の搾乳真空を動的に調整することが可能であるため、ライナと乳頭との間の適合が良好な場合、またはその逆の場合に、搾乳真空の増加が適用され得る。これにより、動物110当たりの搾乳時間を低減し、またライナと乳頭との間のエアスリップのリスクを低減することにより、搾乳効率が改善される。動物110の乳頭状態が向上していることもまた、推定される。
【0051】
図1Bはまた、乳が動物110から抽出されるシナリオにおける乳抽出システム100を示している。動物110は、農場105での酪農のための動物の群れに含まれている。
【0052】
動物110は、典型的には、一組の乳頭を含む乳房210を有する。乳房210上の乳頭の数は、動物110の種類ごとに異なる。例えば、雌豚には通常16個の乳頭があり、乳牛には4個の乳頭があり、一方、羊または山羊には2個の乳頭がある。
【0053】
図示の実施形態では、乳抽出ユニット120は、搾乳ロボットとして具体化され、これは、自動搾乳システム(Automatic Milking System、AMS)の一部であり得、時には自発搾乳システム(Voluntary Milking System、VMS)とも称される。乳抽出ユニット120は、乳頭カップ160のクラスタを備え得、ひいては、それぞれがライナ161a、162a、163a、164aを保持するように構成されている複数の乳頭カップ161、162、163、164を備える。
【0054】
ライナ161a、162a、163a、164aは、乳頭と直接接触している乳抽出ユニット120の唯一の部分である。したがって、ライナ161a、162a、163a、164aの設計/選択は、最適な搾乳および乳頭処置にとって重要である。ライナの選択は、群れの平均的な乳頭サイズ/形状を推定することによって行い得る。選択されたすべてのライナ161a、162a、163a、164aは、同じサイズであり得るか、または異なる実施形態において異なるサイズであり得る。
【0055】
動物110がホルスタインフリージアン種の牛である場合、2つの前部乳頭は2つの後部乳頭よりも長くて厚いことが多いことが観察されている(観察の約70%で)。したがって、2つの前部乳頭カップ161、162に適用される2つのライナ161a、162aは、2つの後部乳頭カップ163、164に適用される2つのライナ163a、164aよりも大きな寸法を有し得、ホルスタインフリージアン牛の実際の乳頭によりよく適応される。
【0056】
したがって、ライナ161a、162a、163a、164aは、農場105の群れの平均的な乳頭に適合するように選択され得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、農場105は、異なるライナサイズを有し得るいくつかの乳抽出ユニット120(搾乳ロボット)を有し得る。したがって、異なる乳抽出ユニット120は、異なるサイズの乳頭を有する動物110に専用であり得、すなわち、小さな乳頭動物は、第1の乳抽出ユニット120でのみ歓迎され得、一方、大きな乳頭動物は、第2の乳抽出ユニット120に向けられる。これにより、ライナ161a、162a、163a、164aと乳頭との間の適合の改善が達成され、乳抽出中の適合が不良である場合の問題、すなわち、ストリップ収量、ライナスリップ、搾乳時間、乳頭処置および乳房の健康といった問題を低減させる。
【0058】
乳の抽出中の乳流は、例えば、各個々の乳頭からの乳流を測定する乳流メータ180a、180b、180c、180d、または代替的に乳房210のすべての乳頭の乳流を測定する、クラスタユニット用の1つの一般的な乳流メータによって測定され得る。
【0059】
動物110は、いくつかの実施形態では、例えば、動物110の首の周りのネックレスにおいて、耳タグとして動物110の皮の下で、動物110の尾の周りおよび/または動物110の脚のいずれか、一部または全部の周りなどにおいて、動物110に取り付けられ得る動物識別デバイス170によって識別され得る。
【0060】
動物識別デバイス170は、いくつかの実施形態では、無線周波数識別(RFID)デバイスなどのトランスポンダを備え得る。トランスポンダは、動物110を一意に識別するための電子的に記憶された情報を含む。そのようなトランスポンダは、アクティブまたはパッシブであり得る。アクティブトランスポンダは、バッテリなどのローカル電源を備えるか、またはそれに取り付けられており、リーダ135から数百メートルで動作し得る。パッシブトランスポンダは、近くのリーダ135の問い合わせ電波からエネルギーを収集する。このため、パッシブトランスポンダにローカル電源は必要ない。
【0061】
次に、リーダ135は、識別デバイス170から取得した動物110のアイデンティティを、有線または無線の通信インターフェースを介して搾乳制御装置130に提供し得る。
【0062】
いくつかの代替的な実施形態では、動物識別デバイス170は、図2Aに示されるように、搾乳制御装置130の画像認識プログラムと協力して、センサ140、または可能であれば別個のカメラもしくはスキャナによって認識され得る、識別番号を含み得る。いくつかのさらなる実施形態では、動物識別デバイス170は、例えば、バーコード、European Article Number(EAN)コード、データマトリックス、Quick Response(QR)コードなどのグラフィックエンコーディングでエンコードされた識別番号を含み得る。いくつかの実施形態では、識別のための他の便利な方法を利用し得る。
【0063】
さらにいくつかの実施形態では、動物110は、農場105のセンサ/カメラ140(または別のセンサ)によって判定されるように、動物の皮膚のマーキングまたは入れ墨のパターンに基づいて識別され得、比較は、群れの動物の事前に記憶されたパターンに対して登録簿で行われ得る。代替的に、動物110は、搾乳制御装置130の画像認識プログラムによって分析された、皮のカラーマーキングによって識別され得る。
【0064】
図2Bは、センサ140が携帯電話として具体化される実施形態を概略的に示している。農家は、自分の携帯電話にアプリをダウンロードし、携帯電話/センサ140を動物110の乳房210に向けることができる。アプリの画像認識プログラムは、乳頭220a、220b、220c、220dのサイズ(長さおよび直径)および形状などの乳頭サイズデータを推定し得る。このデータは、データベース150に記憶するために、動物110のアイデンティティ基準に関連付けられた搾乳制御装置130に提供され得る。
【0065】
代替的に、アプリの画像認識プログラムは、平均的な乳頭サイズ220b、220c、220dから逸脱している乳頭220aについてのみ動物乳頭に関する情報を提供し得る。次に、コメントされていない乳頭は、いくつかの実施形態では、平均的なサイズ/形状のものとして分類され、それによって、情報送信およびデータ記憶要件を節約すると仮定することができる。
【0066】
図3は、群れの平均的な乳頭サイズを表す、基準乳頭サイズ220refよりも逸脱した寸法を持つ検出された乳頭220aを示している。
【0067】
ライナ161a、162a、163a、164aは、基準乳頭サイズ220refの平均的な乳頭に適合するように選択され得る。これにより、農場の動物110の乳頭220a、220b、220c、220dの大部分でエアスリップが回避される。開示された解決策の目標は、形態、すなわち乳頭220a、220b、220c、220dのサイズおよび/または形状が逸脱している乳頭のエアスリップを回避するか、または少なくとも最小限に抑えることである。
【0068】
図4は、乳頭カップ161、162、163、164およびその中に含まれるいくつかの構成要素を備える乳頭カップクラスタ160の断面図を示している。乳頭カップクラスタ160は、乳抽出ユニット120の一部を形成する。乳頭カップクラスタ160は、密閉されたマウスピースチャンバを備えたマウスピース410を備える。それぞれの乳頭220a、220cの実質的に気密シールを確実にするライナ161a、162a、163a、164aを選択することが所望される。図4の左側は、乳抽出中、すなわち、動物110のBフェーズのライナ161a、162a、163a、164aの形状を概略的に示し、および図4の右側は、休止フェーズD中のつぶれているときのライナ161a、162a、163a、164aの形状を概略的に示している。
【0069】
そうでなければ、乳頭220a、220cの下で搾乳真空が適用されると、乳抽出中(すなわち、エアスリップ415)に空気がライナ161a、162a、163a、164aに入る結果となり得る。空気は、マウスピース410を介してライナ161a、162a、163a、164aに入ることができ、それによって、乳頭220a、220cの下の低圧(搾乳真空)を低減させる。乳頭カップ161、162、163、164は、ライナ161a、162a、163a、164aを保持するように構成された乳頭カップ161、162、163、164の外部構造を形成するそれぞれのシェル420a、420cを備える。
【0070】
搾乳真空は、それぞれの乳頭カップ161、162、163、164の短い乳チューブ450を介して乳頭220a、220cに適用され、これは、乳をさらに長い乳チューブ460に伝播させ、ひいては、乳を、乳タンクに送る。乳流は、乳流メータ180を介して測定され得、ここでは、長い乳チューブ460に適用され、動物110のすべての乳頭220a、220b、220c、220dからの乳流を測定する。
【0071】
乳頭カップクラスタ160は、制御された空気取り入れの方法、例えば、爪、短いパルスチューブ440、または他の任意の便利な場所に適用され得る、通気孔を備え得る。
【0072】
脈動圧力レベルは、短いパルスチューブ440を介して脈動チャンバ430に適用され、それによって、図4の左/右のそれぞれの部分に示されるように、乳抽出/Bフェーズと休止フェーズDとの間でリズミカルに交互になる。これにより、ライナ161a、162a、163a、164aは定期的に(少なくともある程度は)開いて、つぶれる。短いパルスチューブ440を介して脈動チャンバ430に適用される脈動圧力レベルは、いくつかの実施形態では、休止フェーズD中の、搾乳真空よりも高い圧力、例えば、大気圧などの間で変化し得る一方で、搾乳フェーズB中の圧力レベルは、異なる実施形態では、搾乳真空と同等か、それよりも高く(すなわち、より低い低圧)なり得る。
【0073】
搾乳フェーズB中の搾乳真空よりも高い脈動圧力レベルを選択することによる利点は、ライナ161aが、搾乳フェーズB中も乳頭220に半径方向の圧力をかけているが、ライナ161aが乳頭220の下でつぶれていることが許されるときの休止フェーズD中ほど大きくないことである。乳頭220への半径方向の圧力は、シールとして機能し、エアスリップ415を排除するか、または少なくとも低減し、また、選択されたライナ161aが最適ではない逸脱している乳頭220aに対しても機能する。
【0074】
いくつかの実施形態では、脈動チャンバ430内の脈動圧力レベルのうちの1つは、乳頭のサイズ/形状が逸脱している乳頭の場合、搾乳真空の、例えば、60~80%であり得る。搾乳真空が45kPaの場合、脈動圧力レベルは、それぞれ大気圧35kPaであり得る。
【0075】
したがって、吸引は、ライナ161a、162a、163a、164aのリズミカルな動き、開閉によって中断される。つぶれたライナ161a、162a、163a、164aによって加えられる力は、乳頭にマッサージを引き起こす。その結果、乳頭220a、220b、220c、220dは、マッサージにさらされ、乳頭端のうっ血(例えば、血液の)が防止される一方で、オキシトシンの放出および射乳は、適用される搾乳真空と組み合わせて、つぶれたおよび開いたライナの戦術的な動きによって刺激され、子牛の授乳を模倣する。
【0076】
ライナ161a、162a、163a、164aは、異なる特性を有する、天然もしくは合成ゴムまたはシリコーン、またはTPE(熱可塑性エラストマー)などの異なる弾性材料で作製され得る。ライナ161a、162a、163a、164aで使用される材料は、適用される搾乳真空に基づいて選択され得、ひいては、乳頭サイズデータに依存し得る。
【0077】
主に、乳頭220a、220b、220c、220dが、ライナ161a、162a、163a、164aに入ると、搾乳真空の影響下で、搾乳前の長さの約100~200%まで垂直に伸びる。
【0078】
図5は、流れ制御された搾乳のいくつかの例を示している。乳頭220a、220b、220c、220dを適切に刺激しながら、乳頭220a、220b、220c、220dを害したり傷つけたりすることなく、可能な限り短い時間(時間単位当たりより多くの動物が乳頭抽出ユニット120によって提供されることを可能にするため)中に、動物110の乳房210を可能な限り効率的に、時には完全に空にすることが所望される。これらの要求を満たすために開発された方法論は、「ブースト」と称され、一種の乳流制御搾乳である。
【0079】
図5のグラフは、乳抽出流の3つの例、すなわち、ブーストなしの乳抽出、ブーストありの乳抽出、および増加した乳流レベルから開始するブーストありの乳抽出、を示している。また、ブーストをトリガするための切替ポイントレベル510と、ブーストをトリガするための増加した切替ポイントレベル520と、がグラフに示されている。乳房搾乳では、切替ポイントレベル510を毎分約2kgの乳に設定し得、増加した切替ポイントレベル520を毎分約3kgの乳に設定し得る。
【0080】
乳房搾乳は、乳房210のすべての乳頭220a、220b、220c、220dからの乳抽出の合計に関係し、これは、乳頭カップクラスタ160から農場の乳槽に、抽出された乳を導く長い乳チューブ460の中/上の流量計によって測定され得る。
【0081】
対照的に、いくつかの実施形態では、実施され得る4分の1の搾乳は、動物110の各個々の乳頭220a、220b、220c、220dからの乳流に関係する。4分の1の搾乳の乳流は、それぞれの乳頭カップ161、162、163、164の各短い乳チューブ450の中/上の流量計によって測定される。
【0082】
搾乳の最初の数秒間は、乳流は少なく、例えば、1分当たり数百グラムの乳の値に到達し得る。これは、動物110の射乳反射の刺激(時には前刺激と称される)が不十分であること、および/または乳頭刺激の開始から経過した時間が短かすぎること、すなわち腺房乳が流れ始めていないことが原因であり得る。
【0083】
乳頭の皮膚の神経受容体は圧力に敏感である。乳頭の機械的刺激は、動物110の脳の下垂体へのインパルス伝達を引き起こし、それによってホルモンのオキシトシンが放出される。ホルモンは、血液を介して乳房に運ばれる。乳頭の最初の刺激から乳の減少までにかかる時間は約30~60秒であり得るが、動物によって異なり得る。
【0084】
オキシトシン分泌を含む射乳反射は、子牛の存在、視認、匂い、および/もしくは声などの心理的要因によって、ならびに/または搾乳機器および/もしくは搾乳の手順(例えば、濃縮物の供給)をコンディショニングまたは「パブロフの犬の効果」によるに射乳と関連付けることによって、また/さらに刺激され得る。
【0085】
高流量フェーズ、すなわちグラフの中央のピークの間、乳流は、例えば、乳房搾乳中、1分当たり3~6kgの乳などのはるかに高い値に達する。
【0086】
搾乳の最後に、抽出により乳房210の腺房乳が減少するため、乳流は減少する。
【0087】
ブーストなしの乳抽出中、搾乳真空レベルは、搾乳動物110の時間単位当たりの乳流とは無関係に、腺房乳が放出されるまで、搾乳中一定レベルに、または搾乳真空よりも低い入口真空を適用することによって、保たれる。後者の真空レベルの調整の利点は、入口真空が乳頭カップ161、162、163、164のスリップを防止し、乳頭220a、220b、220c、220dがさらに刺激される(オキシトシン放出をトリガする)ことである。搾乳真空レベルは、例えば、約45kPaであり得る一方、入口真空レベルは、約35kPaであり得る(非限定的な例)。搾乳真空レベルは、主な搾乳フェーズ中、すなわち腺房乳が流れているとき、一定に保たれる。
【0088】
ブーストありで搾乳を行う場合、腺房乳が流れているときの主な搾乳フェーズ中に、搾乳真空レベルなどの搾乳パラメータを適応させる。完全な搾乳中の乳流の変化に適応し、場合によっては4分の1の異なる乳房、すなわち乳頭220a、220b、220c、220dにも適応する。次に、搾乳の開始時に、乳流が切替ポイントレベル510を下回るときに、より低い真空、例えば、約40~44kPaを適用し得る。
【0089】
動物110の乳流が増加し、切替ポイントレベル510に達すると、搾乳真空は、例えば、10%から46~50kPaまで(すなわち、より大きな低圧で)増加され得る。これにより、ブーストなしで抽出する場合よりも短時間で、より合理的に乳を抽出し得る。切替ポイントレベル510は、乳房搾乳において毎分例えば、2kgの乳に設定され得る。これは、4分の1搾乳の乳頭当たり、毎分約0.8kgの乳に相当し得る。
【0090】
乳頭の乳流が高いことが、乳頭に害を及ぼすことなく搾乳真空度を上げることができる理由である。
【0091】
ブーストは、いくつかの実施形態では、乳房搾乳における乳房レベルでの乳流に基づいて適用され得る。それによる利点は、1つのフローセンサと1つのセンサ読み取り値のみが必要なことである。
【0092】
他の実施形態では、ブーストは、4分の1搾乳レベルでの乳流に基づいて適用され得る。次に、切替ポイントレベル510は、乳頭当たり、例えば、毎分0.5kgの乳に設定され得、増加した切替ポイントレベル520は、乳頭当たり、毎分約0.8kgの乳に設定され得る。
【0093】
それによる利点は、特定の乳頭220a、220b、220c、220dの乳流が、搾乳真空を増加させて乳を抽出することを可能にするために、その乳頭220a、220b、220c、220dに適切なレベルにあるときに、ブーストの増加した搾乳真空を適用することである。
【0094】
平均/基準乳頭220refから逸脱する形態(サイズおよび/または形状)を有する乳頭220a、220b、220c、220dの場合、増加した搾乳真空度を切替ポイントレベル510で適用することは、エアスリップ415などの前述の不便につながることがあるため、実行不可能な場合がある。その後、ブーストは、代わりに、増加した切替ポイントレベル520で適用され得、および/または異なる実施形態によれば、全く適用されない。増加した切替ポイントレベル520は、乳房搾乳では例えば、毎分3kgの乳に設定され得、これは、4分の1搾乳では乳頭当たり毎分約1.2kgの乳にほぼ対応する。これにより、ブースト適用は、個々の乳頭の乳頭偏差の性質と程度に応じて選択的に適用され得、効率的でありながら乳頭に優しい乳抽出につながる。
【0095】
いくつかの実施形態では、増加した切替ポイントレベル520は、適用された脈動圧力の脈動比を変え得る。脈動サイクルの4つの異なるフェーズA、B、C、およびDを図6に示す。
【0096】
フェーズA、すなわち、開放フェーズの間、ライナ161a、162a、163a、164aが開き始め、乳頭220a、220b、220c、220dから乳が流れることになる。フェーズB、すなわち、搾乳フェーズの間、乳は流れ続ける。次のフェーズCでは、乳頭カップライナがつぶれ始め、乳が乳頭220a、220b、220c、220dから流れることが防止される。最後のフェーズ、D、すなわち、マッサージフェーズまたは休止フェーズでは、ライナ161a、162a、163a、164aはつぶれている。脈動サイクル中のライナの動きは、乳抽出と乳房マッサージをもたらし、腺房乳の流れを刺激する。
【0097】
それぞれのフェーズA~Dの比率は、異なる実装態様において異なり得、また、いくつかの実施形態では、搾乳される乳頭220a、220b、220c、220dの乳頭サイズ/形状に応じて異なり得る。
【0098】
フェーズA~Dの比率、特に休止フェーズDと乳抽出フェーズBの間の割合は、取得された乳頭サイズデータと乳頭220a、220b、220c、220dの時間単位当たりの乳流とに適応され得る。したがって、この比率は、乳頭の乳流が、増加した切替ポイントレベル520よりも低い場合、拡張フェーズD、すなわち、休止フェーズを含み得る。乳頭の乳流が、増加した切替ポイントレベル520を超えると、乳抽出フェーズBは、比例して延長され得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、休止フェーズ、すなわち、フェーズDは、固定されたままであり得、一方、乳抽出フェーズBは、乳頭220aの乳流に基づいて調整され得る。
【0100】
さらにいくつかの実施形態では、脈動圧力レベルは、乳頭220aの取得された乳頭サイズデータに基づいて、乳頭220aに対して調整され得る。
【0101】
乳頭220aの形態が逸脱している場合、すなわち、サイズおよび/または形状が平均/基準乳頭220refから閾値制限を超えている場合、図4の説明と併せてすでに簡単に論じたように、脈動圧力レベルを調整し得る。
【0102】
例えば、乳頭220aが平均/基準乳頭220refの直径にほぼ対応する直径を有する場合、すなわち、逸脱する形態を有しない場合、脈動圧力レベルは、Bフェーズ中には搾乳真空に設定され、Dフェーズ中には大気圧に設定され得る。
【0103】
しかしながら、乳頭220aが平均/基準乳頭220refの直径よりも、例えば、6mm(または他の所定のもしくは設定可能な閾値限界)よりも小さい直径を有する場合、脈動圧力レベルは、とりわけライナ161aの柔軟性/剛性および他の特性に応じて、Bフェーズ中には約60~80%の搾乳真空に設定され、Dフェーズ中には大気圧に設定され得る。これにより、ライナ161aは、脈動サイクルにわたって乳頭220aに一定の半径方向の圧力を継続的に加え、搾乳フェーズB中も、エアスリップ415の回避につながる。乳頭カップ161、162、163、164が乳頭220aからスリップすることも回避される。搾乳真空は約40~45kPaに設定され得る。
【0104】
乳頭220aに適用される脈動圧力レベルは、これらの実施形態によれば、脈動サイクル中の、両方とも搾乳真空よりも高い、例えば、Bフェーズ中の約60~80%の搾乳真空とDフェーズ中の大気圧との間で変動する、2つの別個の圧力レベルの間で調整され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、脈動圧力レベルは、乳頭220aの取得された乳頭サイズデータおよび乳頭220aの時間単位当たりの乳流との両方に基づいて、乳頭220aに対して調整され得る。
【0106】
乳頭220aが、逸脱している形態、すなわちサイズおよび/または形状を有すると判定される場合、脈動圧力レベルは、Bフェーズ中には約60~80%の搾乳真空に設定され、Dフェーズ中には大気圧に設定され得る。乳頭220aの乳流が、増加した切替ポイントレベル520に達すると、ブーストがトリガされ、搾乳真空が約5~20%、例えば、約48~55kPaまで増加する。次に、脈動圧力レベルは、Bフェーズ中に対応して約5~20%増加され得、その結果、脈動圧力レベルは、Bフェーズ中の約60~80%の搾乳真空のままである。Dフェーズ中の脈動圧力レベルは、大気圧に設定され得る。
【0107】
添付の図面に示されているように、実施形態の説明で使用される用語は、説明されている搾乳制御装置130、乳抽出システム100、および/または搾乳方法を限定することを意図するものではない。様々な変更、置換、および/または変更を、添付の特許請求の範囲によって定義されるような発明の実施形態から逸脱することなく、行い得る。説明の対応するそれぞれのセクションで論じられている図1~6に示されている様々な図解された実施形態は、例えば、説明された実施形態のいくつかまたはすべての特徴を混合およびコンパイルすることによって互いに有利に組み合わせることができ、それによって追加の利点を達成する。
【0108】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連付けて列挙されたアイテムのうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。本明細書で使用される「または」という用語は、特に明記されていない限り、数学的排他的OR(XOR)としてではなく、数学的OR、すなわち、包含的論理和として解釈されるべきである。さらに、単数形「a」、「an」、および「the」は、「少なくとも1つ」として解釈されるべきであり、したがって場合によっては、特に明記しない限り、同じ種類の複数の実体を含む。「含む(includes)」、「備える(comprises)」、「含む(including)」および/または「備える(comprising)」という用語は、述べられた特徴、動作、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、動作、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことがさらに理解される。例えばプロセッサなどの単一ユニットが、特許請求の範囲に記載されたいくつかのアイテムの機能を果たし得る。特定の手段または特徴が、相互に異なる従属請求項に記載されている、異なる図に示されている、または異なる実施形態と併せて議論されているという単なる事実は、これらの手段または特徴の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】