(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】抗薬物抗体アッセイにおける標的干渉の軽減方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230419BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230419BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20230419BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/543 501A
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555946
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 US2021022623
(87)【国際公開番号】W WO2021188587
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジフア
(72)【発明者】
【氏名】ケンドラ キンバリー
(72)【発明者】
【氏名】トーリ アルバート
(72)【発明者】
【氏名】サムナー オリヴェイラ ジアーニ
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、医薬の投与によって誘導される抗薬物抗体を、検出、定量化または特徴付けるための方法およびシステムを提供する。方法およびシステムは、競合標的結合に基づく、可溶性標的の存在下での血清試料中の抗薬物抗体の検出を改善するための、標的の結合パートナーおよび/または補助因子の使用を含む。方法およびシステムには、検出を改善するための免疫枯渇の使用も含まれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の抗薬物抗体を同定する方法であって、以下:
前記試料を第1の標識された薬物と接触させることと;
前記試料を第2の標識された薬物と接触させることと;
前記試料を標的の結合パートナーと接触させることと;
前記第1の標識された薬物と前記抗薬物抗体と前記第2の標識された薬物とを含む複合体の存在を検出することと
を含み、
前記試料が、前記抗薬物抗体および前記標的を含み、
前記標的が、前記薬物の結合パートナーである、方法。
【請求項2】
前記標的と前記標的の前記結合パートナーとの間の結合を強化するために、前記試料を補助因子と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
弱酸性アッセイpH下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗標的抗体を使用して前記標的を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗標的抗体が、固体支持体に付着している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の標識された薬物が、ルテニウム標識された薬物またはビオチン化薬物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の標識された薬物が、ルテニウム標識された薬物またはビオチン化薬物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記標的の前記結合パートナーが、天然の結合パートナーである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記標的の前記結合パートナーが、前記標的の受容体である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記標的が、可溶性多量体標的である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記弱酸性アッセイpHが、約pH4.5~約pH6.5の範囲にある、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記弱酸性アッセイpHが、約pH6.0である、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記弱酸性アッセイpHが、約pH5.0である、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記薬物が、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、または医薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記薬物が、抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が、血清試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
試料中の抗薬物抗体を同定するためのシステムであって、以下:
第1の標識された薬物と;
第2の標識された薬物と;
標的の結合パートナーと;
前記第1の標識された薬物と前記抗薬物抗体と前記第2の標識された薬物とを含む複合体の存在を検出するためのアッセイシステムと
を含み、
前記試料が、前記抗薬物抗体および前記標的を含み、
前記標的が、前記薬物の結合パートナーである、システム。
【請求項18】
前記標的と前記標的の前記結合パートナーとの間の結合を強化することができる補助因子をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記試料が、弱酸性アッセイpHを有する溶液で処理される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
抗標的抗体をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記抗標的抗体が、固体支持体に付着している、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記第1の標識された薬物が、ルテニウム標識された薬物またはビオチン化薬物である、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
前記第2の標識された薬物が、ルテニウム標識された薬物またはビオチン化薬物である、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
前記標的の前記結合パートナーが、天然の結合パートナーである、請求項17に記載のシステム。
【請求項25】
前記標的の前記結合パートナーが、前記標的の受容体である、請求項17に記載のシステム。
【請求項26】
前記標的が、可溶性多量体標的である、請求項17に記載のシステム。
【請求項27】
前記弱酸性のアッセイpHが、約pH4.5~約pH6.5の範囲にある、請求項19に記載のシステム。
【請求項28】
前記弱酸性のアッセイpHが、約pH6.0である、請求項19に記載のシステム。
【請求項29】
前記弱酸性のアッセイpHが、約pH5.0である、請求項19に記載のシステム。
【請求項30】
前記薬物が、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、または医薬である、請求項17に記載のシステム。
【請求項31】
前記薬物が、抗体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項32】
前記試料が、血清試料である、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、概して、医薬の投与によって誘導される抗薬物抗体を、特徴付け、同定し、かつ/または測定するための方法およびシステムに関する。これらの方法およびシステムは、競合リガンド結合に基づいている。
【背景技術】
【0002】
背景
抗薬物抗体(ADA)は、薬物有効性の低減、内因性タンパク質への交差反応、または治療用タンパク質の薬物動態の変化などのいくつかの臨床的結果に寄与する可能性があるため、医薬の投与によって、例えば、ADAの誘導によって誘導される抗体の存在に起因する、薬物有効性および患者の安全性について懸念がある。FDAは、安全性および有効性に影響する、治療用タンパク質製品と関連する有害な免疫学的関連応答に関する免疫応答を、評価および軽減するためのリスクベースのアプローチを採用することを推奨している。(Guidance for Industry:Immunogenicity Assessment for Therapeutic Protein Products,August 2014,U.S.Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration(非特許文献1))
【0003】
モノクローナル抗体、酵素製品、サイトカイン、成長因子および毒素を含む免疫原性データを評価および報告するために、121品目のFDA承認生物製剤の処方情報およびFDAの臨床薬理学的レビューが再検討された。最も報告頻度が高かったのは、免疫原性の発生についてであった。ADAの臨床的意義は不明であった。全体的に、製品の全身クリアランスの増加とADAと関連する有効性の低減との間に、顕著な一致があった。(Wang et al.,Evaluating and Reporting the Immunogenicity Impacts for Biological Products-a Clinical Pharmacology Perspective.The AAPS Journal.2016;18(2):395-403(非特許文献2))
【0004】
免疫応答の生物学的複雑性は、ADAの薬物動態への影響を評価する際の課題を提示するが、これは、薬物動態曝露が、ADA効果を評価するための有効性エンドポイントよりも感度が高くなり得るためである。ADAを特徴付け、識別し、かつ/または測定するための方法およびシステム、例えば、ADA検出の方法およびシステムを改善するための必要性が存在することが、認識されるであろう。これらの方法およびシステムは、薬物投与、例えば生物製剤の投与のための薬物動態、有効性、および安全性に関連する臨床薬理学における免疫原性影響に関する貴重な情報を提供することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Guidance for Industry:Immunogenicity Assessment for Therapeutic Protein Products,August 2014,U.S.Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration
【非特許文献2】Wang et al.,Evaluating and Reporting the Immunogenicity Impacts for Biological Products-a Clinical Pharmacology Perspective.The AAPS Journal.2016;18(2):395-403
【発明の概要】
【0006】
概要
モノクローナル抗体などの生物学的製剤は、がん、心血管疾患、感染症または自己免疫障害などの広範囲の病態にわたって臨床応用を有する治療用タンパク質である。タンパク質医薬の免疫原性の発生は、タンパク質医薬の投与によって誘導される抗体、例えば、抗薬物抗体(ADA)の存在を特徴付けることに対する需要の増加をもたらした。ADAの特徴付けおよび測定データは、薬物の安全性を向上させるための医薬の免疫原性の理解を提供することができる。
【0007】
本明細書に開示される例示的な実施形態は、医薬の投与によって誘導されるADAを特徴付け、同定し、かつ/または測定するための方法およびシステムを提供することによって、前述の需要を満たす。本開示は、試料中の抗薬物抗体を同定する方法であって、以下:
試料を第1の標識された薬物と接触させることと;
試料を第2の標識された薬物と接触させることと;
試料を標的の結合パートナーと接触させることと;
第1の標識された薬物と抗薬物抗体と第2の標識された薬物とを含む複合体の存在を検出することと
を含み、試料が抗薬物抗体および標的を含み、標的が薬物の結合パートナーである、方法を提供する。
【0008】
いくつかの例示的な実施形態において、試料中の抗薬物抗体を同定する方法は、標的と標的の結合パートナーとの間の結合を強化するために、試料を補助因子と接触させることをさらに含む。いくつかの態様において、試料中の抗薬物抗体を同定する方法は、弱酸性のアッセイpH下で実施される。
【0009】
いくつかの態様において、試料中の抗薬物抗体を同定する方法は、抗標的抗体を使用して標的を除去することをさらに含み、抗標的抗体は、固体支持体に結合される。
【0010】
いくつかの態様において、本方法の第1の標識された薬物または第2の標識された薬物は、ルテニウム標識された薬物またはビオチン化薬物である。いくつかの態様において、本方法の標的の結合パートナーは、天然結合パートナーまたは標的の受容体であり、標的は、可溶性多量体標的である。
【0011】
いくつかの態様において、本方法の弱酸性のアッセイpHは、約pH4.5~約pH6.5の範囲にあり、約pH6.0であるか、または約pH5.0である。
【0012】
いくつかの態様において、本方法の薬物は、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、または医薬である。いくつかの態様では、本方法の薬物は、抗体であり、試料は、血清試料である。
【0013】
本開示は、少なくとも部分的に、試料中の抗薬物抗体を同定するためのシステムであって、以下:
第1の標識された薬物と;
第2の標識された薬物と;
標的の結合パートナーと;
第1の標識された薬物と抗薬物抗体と第2の標識された薬物とを含む複合体の存在を検出するためのアッセイシステムと
を含み、試料が、抗薬物抗体および標的を含み、標的が、薬物の結合パートナーである、システムを提供する。
【0014】
いくつかの例示的な実施形態において、本システムは、標的と標的の結合パートナーとの間の結合を強化することができる補助因子をさらに含む。いくつかの態様において、本システムの試料は、弱酸性のアッセイpHを有する溶液で処理される。いくつかの態様において、本システムは、抗標的抗体をさらに含み、抗標的抗体は、固体支持体に付着している。
【0015】
いくつかの態様において、本システムの第1の標識された薬物または第2の標識された薬物は、ルテニウム標識された薬物またはビオチン化薬物である。いくつかの他の態様において、本システムの標的の結合パートナーは、天然結合パートナーまたは標的の受容体であり、標的は、可溶性多量体標的である。
【0016】
いくつかの態様において、本システムの弱酸性のアッセイpHは、約pH4.5~約pH6.5の範囲にあり、約pH6.0であるか、または約pH5.0である。
【0017】
いくつかの態様において、本システムの薬物は、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、または医薬である。他の態様において、本システムの薬物は抗体であり、本システムの試料は血清試料である。
【0018】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の説明および添付の図面と併せて考慮される場合に、よりよく認識され、理解されるであろう。以下の説明は、その様々な実施形態および多数の具体的な詳細を示すが、例証として与えられ得るものであり、限定するものではない。多くの置換、修正、追加、または再配置は、本発明の範囲内で行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】例示的な実施形態により、架橋ADAアッセイを実施するための中性のアッセイpH下では、多量体標的タンパク質が、ルテニウム標識された薬物およびビオチン化薬物に同時に結合することができるため、血清試料中の可溶性多量体標的の存在に起因する標的媒介性シグナルの存在を示す。例示的な実施形態により、架橋ADAアッセイへの、薬物標的の天然結合パートナーおよび補助因子の組み込みは、弱酸性のアッセイpHの下で、標的媒介性シグナルを軽減することができる。
【
図2】
図2Aは、例示的な実施形態により、サルナイーブ血清試料における標的干渉を軽減するための、対照(Ctrl)と比較した、100μg/mLでのいくつかの抗標的抗体、例えば、Ab1-Ab9のスクリーニングを示す。
図2Bは、例示的な実施形態により、サルのナイーブ血清試料における標的干渉を軽減するための、市販のポリクローナル抗標的抗体の使用を示す。
【
図3】例示的な実施形態により、標的媒介性シグナルを軽減することによってADAの検出を改善するための、架橋ADAアッセイへの標的受容体の組み込みを示す。
【
図4】
図4Aは、例示的な実施形態により、標的媒介性シグナルを軽減することによってADAの検出を改善するための、架橋ADAアッセイへの標的受容体および補助因子の組み込みを示す。例示的な実施形態により、架橋ADAアッセイを実施するための、50μg/mLの可溶性標的受容体を含有する溶液に、異なる濃度の補助因子タンパク質を添加した。
図4Bは、例示的な実施形態により、8つのナイーブサル血清試料(対照)において任意のブロッカータンパク質の非存在下で、広範囲の様々な範囲の標的媒介性アッセイシグナルが検出されたことを示す。標的受容体(50μg/mL)および補助因子(50μg/mL)の存在は、例示的な実施形態により、すべてのサル血清試料における標的媒介性アッセイシグナルの効果的な軽減を示す。
【
図5】例示的な実施形態により、4つの実験設計を使用した架橋ADAアッセイにおける、標的干渉を軽減するためのアッセイpHの最適化を示す。例示的な実施形態により、4つの実験設計は、(1)中性pH(対照)での、4つのサルナイーブ血清試料、(2)中性pHでの、50μg/mLの受容体および50μg/mLの補助因子を有する、4つのサルナイーブ血清試料、(3)弱酸性pH(約pH6.0)での、4つのサルナイーブ血清試料、ならびに(4)約pH6.0での、50μg/mLの受容体および50μg/mLの補助因子を有する、4つのサルナイーブ血清試料であった。
【
図6】
図6Aは、例示的な実施形態により、50μg/mLの受容体および補助因子タンパク質の両方を使用してADAアッセイを実行したときの、異なるアッセイpH条件下での、組換え標的タンパク質を使用した標的許容レベルの決定を示す。
図6Bは、例示的な実施形態により、MAB-Y Fab免疫化ウサギからの早期出血を使用した、異なるアッセイpH条件下での、ADAシグナルの検出を示す。
【
図7】
図7Aは、例示的な実施形態により、単回用量の薬物、例えば、MAB-Yを投与された、2匹のサルの血清試料中の薬物濃度を示す。LLOQは定量下限を示す。
図7Bは、例示的な実施形態により、投与後サル試料を使用した、ADA検出を改善するための、架橋ADAアッセイへの標的受容体、補助因子、および弱酸性アッセイpHの組み込みを含む、異なるアッセイ条件を有する、0日目、28日目および52日目の試料における、標的濃度およびADAシグナルを示す。
【
図8】例示的な実施形態により、MAB-Yの単回用量が与えられた3名の対象の、血清試料中の薬物濃度を示す。LLOQは定量下限を示す。
【
図9】例示的な実施形態により、ADA検出を改善するための、架橋ADAアッセイへの標的受容体、補助因子、および弱酸性アッセイpHの組み込みを含む、異なるアッセイ条件を有する、0日目、29日目、および64日目の試料における、標的濃度およびADAシグナルを示す。
【
図10】
図10Aは、例示的な実施形態により、薬物の無いナイーブヒト血清試料中の標的媒介性シグナルを排除するための、中性アッセイpHでの、MAB-Aコンジュゲート磁気ビーズによる、標的タンパク質の免疫枯渇を示す。
図10Bは、例示的な実施形態により、ベースライン血清試料中の標的媒介性シグナルを排除するための、中性アッセイpHでの、MAB-Aコンジュゲート磁気ビーズによる、標的タンパク質の免疫枯渇を示す。
【
図11】例示的な実施形態により、異なるアッセイ条件下、例えば、中性アッセイpH下でブロッカーなし、中性アッセイpH下で100μg/mLのMAB-Aあり、弱酸性pH(pH約6.0)下でブロッカーなし、および弱酸性pH(pH約6.0)下で100μg/mLのMAB-Aあり、で測定した、4匹のサル由来の1日目、15日目、29日目、および57日目の試料における、ADAアッセイシグナルを示す。
【
図12】例示的な実施形態により、弱酸性アッセイpH下での、MAB-Aコンジュゲート磁気ビーズによる免疫枯渇の前後の、1日目、15日目、29日目、および57日目の試料における、標的濃度およびADAアッセイシグナルを示す。
【
図13】例示的な実施形態により、異なるpH条件下での、ベースライン試料および投与後試料における、MAB-Aコンジュゲート磁気ビーズを使用した、免疫枯渇を示す。
【
図14】例示的な実施形態により、弱酸性アッセイpH下での、可溶性受容体(50μg/mL)および補助因子(50μg/mL)を含む競合ブロッカーADA法および修飾免疫枯渇法を使用した、ADA陽性対象由来の、1日目、15日目、29日目および57日目の試料における、真のADAシグナルの検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
タンパク質医薬の免疫原性の発生に起因する薬物有効性および患者安全性についての懸念の増加は、抗薬物抗体(ADA)を特徴付けることに対する需要の増加をもたらした。ADAを特徴付けることの需要は、例えば、薬物有効性の低減、内因性タンパク質への交差反応、または医薬の薬物動態の改変に対するADAの影響を理解する必要性によって推進される。ADAの特徴付けデータは、医薬の免疫原性に関する貴重な情報を提供することができ、したがって、薬物投与の安全性を強化することができる。
【0021】
モノクローナル抗体などの生物学的製剤の投与は、動物対象およびヒト患者において、抗薬物抗体(ADA)の発達などの免疫応答を誘導し得る。治療用タンパク質によって誘導される免疫原性応答は、臨床的意義を有しない一過性のADAから、薬物曝露の低減、有効性の欠如または喪失、および過敏反応、アナフィラキシー、および注射部位反応などの有害事象につながり得る、高力価、持続性のADAの生成までの範囲であり得る(Koren et al.,Recommendations on risk-based strategies for detection and characterization of antibodies against biotechnology products.J Immunol Methods,2008.333(1-2):p.1-9)。薬物動態、有効性、および安全性に関連する臨床薬理学における免疫原性の影響などの、ADAの中和活性に関する発生が報告された。薬物処置中のADAの形成は、患者の体内の薬物濃度の低下を引き起こし得、これは、有効性の低減に寄与し得る。中和ADAまたは非中和ADAなどの、薬物の異なる部位に結合することができる様々なADAが、患者の体内に存在し得る。中和ADAは、薬物標的への結合のための薬物分子内の結合部位などの、薬物分子の活性部位、または抗体薬物の可変領域に結合することができる。中和ADAが薬物の活性部位に結合すると、薬物を不活性化する。非中和ADAは、抗体薬物分子の定常領域または骨格などの、薬物分子の非活性部位に結合することが可能であり得る。薬物は、非中和ADAの結合を受けても活性であり得るにもかかわらず、非中和ADAの存在は、臨床薬理学における特定の変化に寄与し得る。
【0022】
免疫原性とは、免疫学的に関連する有害臨床事象を誘発するなどの、それ自体および関連するタンパク質に対する免疫応答を生成する、治療用産物の性質を指す。関連する免疫原性情報には、結合抗体の誘導、中和抗体の誘導、薬物動態の改変、有効性の低減、および安全性の懸念が含まれる。しかしながら、ADAの臨床的意義は不明であった。加えて、利用可能データが限定されているために、ADAの影響の決定が妨げられる場合がある。ADAは、医薬の全身クリアランスの増加と有効性の低減との間の一致性と関連付けられ得る。いくつかの製剤は、薬物を維持するADAを有し、これは、薬物のADA結合などのADA-薬物複合体の形成に起因する可能性のあるクリアランスの低減をもたらした。(Wang et al.,Evaluating and Reporting the Immunogenicity Impacts for Biological Products-a Clinical Pharmacology Perspective.The AAPS Journal.2016;18(2):395-403)。
【0023】
したがって、製品の安全性の一部として、免疫原性評価が規制当局によって必要とされる場合があり、ADAおよび中和抗体(NAb)の発生率は、処方情報の一部である(US Department of Health and Human Services,U.F.C.,CBER,Guidance for Industry-Assay Development for Immunogenicity Testing of Therapeutic Proteins(Draft).US Department of Health and Human Services,Washington,DC,USA,2009;European Medicines Agency,C.f.M.P.f.H.U.,Guideline on Immunogenicity Assessment of Biotechnology-Drived Therapeutic Proteins.European Medicines Agency,London,UK,2007)。したがって、ADAの正確な検出は、任意の生物学的薬物開発プログラムの重要な態様である(Mire-Sluis,et al.,Recommendations for the design and optimization of immunoassays used in the detection of host antibodies against biotechnology products.J Immunol Methods,2004.289(1-2):p.1-16;Shankar,G.,et al.,Recommendations for the validation of immunoassays used for detection of host antibodies against biotechnology products.J Pharm Biomed Anal,2008.48(5):p.1267-81)。
【0024】
ADAを同定または測定するためのアッセイは、通常、架橋成分としてビオチン化薬物(Bio-薬物)およびルテニウム標識された薬物(Ru-薬物)を組み込むことによる、例えば、ビオチン化薬物とADAとルテニウム標識薬物とを含むADA-薬物複合体の形成である、架橋免疫アッセイである。架橋ADAアッセイは、高いスループットおよび感度、ならびにほとんどのADA抗体アイソタイプを検出する能力を提供する。しかしながら、架橋ADAアッセイは、いくつかの干渉を受けやすい可能性がある。血清試料中の遊離薬物、可溶性薬物標的および他のマトリックスタンパク質の存在などの、試料中の特定の分子の存在は、干渉を引き起こし得る。可溶性薬物標的は、二量体または多量体ペプチドまたはタンパク質であり得る。特に、標的と薬物との間の非常に特異的な結合により、可溶性二量体または多量体標的が寄与する干渉を克服することは困難である。各標的タンパク質の非常に多様な生物学的特性を考慮するとさらに困難である。(Zhong,et al.,Drug Target Interference in Immunogenicity Assays:Recommendations and Mitigation Strategies.AAPS J,2017.19(6):p.1564-1575.)
【0025】
架橋ADAアッセイにおける標的特異的抗体の組み込みを使用して、干渉シグナルを遮断することにより標的干渉を軽減した(Liao,K.,et al.,Inhibition of interleukin-5 induced false positive anti-drug antibody responses against mepolizumab through the use of a competitive blocking antibody.J Immunol Methods,2017.441:p.15-23.;Zhong,et al.,Identification and inhibition of drug target interference in immunogenicity assays.J Immunol Methods,et al.,2010.355(1-2):p.21-8.)。しかしながら、好適な遮断抗体は、多くのモノクローナル抗体薬物に対して容易に利用可能ではない場合がある。好適な遮断抗体は、ADAと、標識された薬物分子との間の、架橋相互作用に影響を与えることなく、標的に競合的に結合することができるべきである。標的干渉を軽減する他の戦略としては、標的結合タンパク質、標的免疫枯渇、および特定のタイプのレクチンを使用して、高度にグリコシル化された標的タンパク質からの干渉を阻害することが挙げられる(Carrasco-Triguero,et al.,Overcoming soluble target interference in an anti-therapeutic antibody screening assay for an antibody-drug conjugate therapeutic.Bioanalysis,2012.4(16):p.2013-26.)。
【0026】
酸性での前処理、または弱い酸性もしくは塩基性pH条件下での試料インキュベーションを介した架橋ADAアッセイのpH条件の調整は、薬物、ADA、薬物標的、または標識された薬物分子が寄与する様々な相互作用を破壊または強化するための追加の戦略である。pH条件における変化はまた、標的薬物複合体からの遊離薬物の放出、または偽陽性シグナルを増加させ得る単量体薬物標的の二量体化などの意図されない結果をもたらす可能性があるため、各個々のADAアッセイに対する特定のpH条件を慎重に評価する必要がある。(Dai,et al.,Development of a method that eliminates false-positive results due to nerve growth factor interference in the assessment of fulranumab immunogenicity.AAPS J,2014.16(3):p.464-77;Zoghbi,et al.,A breakthrough novel method to resolve the drug and target interference problem in immunogenicity assays.J Immunol Methods,2015.426:p.62-9)
【0027】
試験試料中の薬物標的の存在は、薬物標的、特に、二量体または多量体標的タンパク質が、捕捉分子と検出分子との間に架橋複合体を形成し、偽陽性のADAシグナルを生じさせ得るため、信頼性の高い架橋ADAアッセイの開発に課題をもたらし得る。個々の抗標的抗体またはそのような抗体のカクテルのいずれかの添加は、標的干渉シグナルを軽減することへの一般的なアプローチである。これらの抗体は、通常、高い特異性および標的親和性を提供し、大量に産生することが比較的容易である。しかしながら、抗標的抗体は、有効であるように特定の基準を満たす必要がある。これらの抗体とADAとの間の交差反応性を回避するために、抗標的抗体は、類似または重複したCDRまたはフレームワーク配列を薬物分子と共有してはならない。加えて、ブロッカー抗体は、ヒトIgG定常領域配列を含有してはならず、これは、これらの配列が、標識された薬物分子上の類似の配列のADA検出と競合し、偽陰性ADA結果をもたらし得るからである。
【0028】
本開示は、医薬の投与によって誘導されるADAを、特徴付け、同定し、かつ測定するための方法およびシステムを提供することによって、前述の要件を満たす方法およびシステムを提供する。特に、本出願の方法およびシステムは、架橋ADAアッセイに、薬物標的の天然結合パートナー、例えば薬物標的の受容体を組み込むことによって、標的干渉を軽減するための改善を提供する。いくつかの例示的な実施形態において、薬物標的の結合補助因子が、標的干渉を軽減するために架橋ADAアッセイに組み込まれ、この薬物標的の結合補助因子は、薬物標的と天然結合パートナーとの間の結合を促進することができる。いくつかの態様において、薬物標的の天然結合パートナーは、薬物標的に高い親和性を有し、標的結合について薬物と競合することができる標的受容体である。いくつかの態様において、標的受容体および補助因子は、ADA検出を改善するために架橋ADAアッセイに組み込まれる。標的の天然結合パートナーとして、受容体は標的に対して高い親和性を有し、標的結合について薬物に勝ることができる。内因的に、補助因子分子は、多くの受容体タンパク質の構造を維持し、標的受容体結合を改善するのに役立つ。
【0029】
本出願は、標的干渉の阻害のための、それらの必要な補助因子の有りまたは無しでの可溶性標的受容体などの標的結合タンパク質を提供する。これらのタンパク質は、標的の天然結合パートナーであり、通常、高い標的親和性を示す。可溶性標的タンパク質のグリコシル化特性およびレクチンのグリカン結合特異性に基づいて、特定のレクチンを使用して、高度にグリコシル化された標的タンパク質からの標的干渉を軽減することもできる(Carrasco-Triguero,M.,et al.,Overcoming soluble target interference in an anti-therapeutic antibody screening assay for an antibody-drug conjugate therapeutic.Bioanalysis,2012.4(16):p.2013-26)。
【0030】
本出願はまた、二量体もしくは多量体標的タンパク質形成に直接影響を与えることによる、または標的への薬物結合親和性を変更することによる、アッセイpHを変更して標的干渉を軽減する戦略を提供する。本出願は、弱酸性のアッセイpHだけで、おそらく標的の、標識された薬物への結合を低減することによって、標的媒介性シグナルを少なくとも部分的に軽減することができることを提供する。
【0031】
一態様において、本開示は、弱酸性アッセイpH下で、架橋ADAアッセイに、薬物標的の天然結合パートナーおよび補助因子を組み込むことによって、標的干渉を軽減する方法およびシステムを提供する。いくつかの態様において、架橋ADAアッセイを実施するための、弱酸性アッセイpH下での、受容体および補助因子タンパク質の存在下では、2つの異なる活性が存在しこれらの活性が相乗的であるため、薬物標的は、標識された薬物(例えば、ルテニウム標識された薬物およびビオチン化薬物)をもはや架橋することができない。例えば、
図1に示すように、血清試料中に可溶性多量体標的が存在するため、この多量体標的タンパク質は、標的媒介性シグナルを生成することができる架橋ADAアッセイを実施するための中性アッセイpH下では、ルテニウム標識された薬物およびビオチン化薬物(例えば、Bio-MAB-YおよびRu-MAB-Y)に同時に結合することができる。架橋ADAアッセイを実施するための弱酸性アッセイpH下で、標的受容体および補助因子タンパク質の存在下では、薬物標的が、
図1に示すように、薬物受容体および補助因子と複合体を形成することができるため、標的媒介性シグナルを軽減することができる。架橋ADAアッセイを実施するための弱酸性のアッセイpHの使用は、利用可能な薬物標的と、標識された薬物との間の結合を低減する利点を提供する。これらの競合的ブロッカー、例えば受容体および/または補助因子は、特に、アッセイが弱酸性条件下で実行される場合、標的干渉を相乗的に阻害し、標的の許容レベルを増加させる。
【0032】
いくつかの例示的な実施形態において、薬物標的は、血清中に存在する多量体タンパク質であり、薬物標的は、ADAの定量を妨げ得る標的媒介性偽陽性シグナルを生成し得る。例えば、血清試料中のMAB-Y(例えば、薬物)のADAは、例えば、Ru-MAB-YおよびBio-MAB-Yを架橋するためのADAを使用して、Ru-MAB-YとADAとBio-MAB-Yとを含む複合体を形成することによって、Ru-MAB-Y(ルテニウム標識されたMAB-Y)およびBio-MAB-Y(ビオチン化MAB-Y)を使用して検出することができる。しかしながら、MAB-Yの標的は、サルおよびヒトナイーブ血清試料中で異なるレベルで発現される多量体タンパク質であるため、例えば、標的媒介性偽陽性シグナルに寄与する、Ru-MAB-YおよびBio-MAB-Yを架橋するための標的を使用して、血清中の標的は、Ru-MAB-YおよびBio-MAB-Yと複合体を形成することができる。いくつかの例示的な実施形態において、免疫枯渇を通じて薬物標的を除去することによって、薬物標的の架橋効果によって引き起こされる偽陽性シグナルの干渉を軽減するために、抗標的抗体が使用される。標的タンパク質の免疫枯渇は、抗標的抗体とコンジュゲートされた磁気ビーズを使用して実施することができ、これは、弱酸性アッセイpHと組み合わせて標的媒介性シグナルを軽減することにおいて有効である。これらの方法は、サルおよびヒトの投与後血清試料における真のADAシグナルの検出を可能にする。
【0033】
本出願は、可溶性標的受容体および補助因子タンパク質による標的結合の競合、ならびに抗標的抗体コンジュゲート磁気ビーズを使用した免疫枯渇を含む、サルおよびヒト血清試料における多量体標的干渉を軽減するための2つの異なるアプローチを提供する。両方のアプローチについて、弱酸性アッセイ条件(pH約6.0など)は、標識された薬物分子への標的結合を選択的に阻害するか、または標的の抗標的抗体への結合を増強することができる。弱酸性アッセイpH下での標的受容体および補助因子タンパク質の組み合わせは、投与後のサル血清試料およびヒト臨床試験試料中の標的媒介性シグナルを、バックグラウンドレベルまで顕著に低減することができる。弱酸性アッセイ条件での免疫枯渇は、標的レベルの50倍以上の低減をもたらし、真の陽性ADA検出を維持しながら、臨床研究試料中の標的干渉を排除することができる。
【0034】
一態様において、試料中の抗薬物抗体を、特徴付け、同定し、かつ/または測定するための方法およびシステムが提供される。これらは、前臨床または臨床の毒性学および薬物動態学を研究するために使用することができる薬物または医薬の投与によって誘導される抗体を特徴付けるための、長い間の切実な要求を満たす。これらの方法およびシステムは、医薬の投与後に経時的にADAをモニタリングするために、前臨床での毒性学または薬物動態学試験に適用され得る。
【0035】
別段記載されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明されるものと類似のまたは同等の任意の方法および材料を実施または試験において使用することができるが、特定の方法および材料をこれから説明する。言及されているすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
「1つの(a)」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきであり、「約」および「およそ」という用語は、当業者によって理解されるように標準的な変動を可能にすると理解されるべきであり、範囲が提供される場合、エンドポイントが含まれる。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」は、非限定的であることが意図され、それぞれ「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」を意味することが理解される。
【0038】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は、試料中の抗薬物抗体を同定する方法であって、以下:
試料を第1の標識された薬物と接触させることと;
試料を第2の標識された薬物と接触させることと;
試料を標的の結合パートナーと接触させることと;
第1の標識された薬物と抗薬物抗体と第2の標識された薬物とを含む複合体の存在を検出することと
を含み、試料が抗薬物抗体および標的を含み、標的が薬物の結合パートナーである、方法を提供する。いくつかの例示的な実施形態において、本方法の薬物は、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、または医薬である。
【0039】
本明細書で使用する場合、「ペプチド」または「タンパク質」という用語は、共有結合で連結されたアミド結合を有する、任意のアミノ酸ポリマーを含む。タンパク質は、一般に「ペプチド」または「ポリペプチド」として当該技術分野において既知である、1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖を含む。タンパク質は、単一の機能的な生体分子を形成するために、1つ以上のポリペプチドを含み得る。いくつかの例示的な実施形態において、タンパク質は、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、宿主細胞由来タンパク質またはそれらの組み合わせであり得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「医薬」という用語は、本質的に完全にまたは部分的に生物学的であり得るか、または医薬活性を有する活性成分を含む。いくつかの例示的な実施形態において、医薬は、薬物、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、ペプチド-薬物コンジュゲート、抗体のFc領域、酵素製品、サイトカイン、成長因子、医薬、毒素、核酸、DNA、RNA、化学化合物、細胞、組織、抗原、ワクチン、または対象において抗体を誘導することができ得る任意の医薬成分を含み得る。いくつかの他の例示的な実施形態において、医薬は、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗原、ワクチン、ペプチド-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲート、タンパク質-薬物コンジュゲート、またはそれらの組み合わせの、組換え、操作、修飾、変異、または切断バージョンを含み得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域などの、完全なままの抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fc断片、scFv断片、Fv断片、dsFvダイアボディ、dAb断片、Fd’断片、Fd断片、および単離された相補性決定領域(CDR)領域、ならびにトリアボディ、テトラボディ、直線状抗体、単鎖抗体分子、および抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。Fv断片は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域の組み合わせであり、ScFvタンパク質は、免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって接続された組換え単鎖ポリペプチド分子である。抗体断片は、様々な手段によって産生され得る。例えば、抗体断片は、完全なままの抗体の断片化によって酵素的または化学的に産生され得、かつ/または、それは、部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に産生され得る。代替的または追加的に、抗体断片は、完全にまたは部分的に合成的に産生され得る。抗体断片は、任意選択で単鎖抗体断片を含み得る。代替的または追加的に、抗体断片は、例えば、ジスルフィド連結によって一緒に連結される複数の鎖を含み得る。抗体断片は、任意選択で多分子複合体を含み得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「抗体-薬物コンジュゲート」または「ADC」という用語は、不安定な結合を有するリンカーによって生物活性薬物に結合された抗体を指す場合がある。ADCは、抗体のアミノ酸残基の側鎖に共有結合することができる生物学的に活性な薬物(またはペイロード)のいくつかの分子を含み得る(Siler Panowski et al.,Site-specific antibody drug conjugates for cancer therapy,6 mAbs 34-45(2013))。ADCに使用される抗体は、標的部位における選択的蓄積および持続的保持に十分な親和性で結合することができ得る。ほとんどのADCは、ナノモル範囲のKd値を有することができる。ペイロードは、ナノモル/ピコモル範囲内の効力を有することができ、標的組織へのADCの分布に続いて達成可能な細胞内濃度に到達することができ得る。最後に、ペイロードと抗体との間の接続を形成するリンカーは、抗体部分の薬物動態特性(例えば、長い半減期)を利用し、ペイロードが組織内に分布するにつれて抗体に結合したままであることを可能にするが、ADCが標的細胞内に取り込まれ得ると生物学的活性薬物の効率的な放出を可能にするように、循環において十分に安定であることができ得る。リンカーは、細胞プロセシング中に開裂不可能であるもの、およびADCが標的部位に到達すると開裂可能であるものであり得る。開裂不可能なリンカーでは、要求に応じて放出される生物学的活性薬物は、ペイロードと、リソソーム内のADCの完全なタンパク質分解後に、抗体のアミノ酸残基、典型的にはリジンまたはシステイン残基に依然として結合しているリンカーのすべての要素と、を含む。開裂可能なリンカーは、その構造が、ペイロードと抗体上のアミノ酸結合部位との間の開裂部位を含むものである。開裂機構は、酸性の細胞内区画内での酸不安定結合の加水分解、細胞内プロテアーゼまたはエステラーゼによるアミドまたはエステル結合の酵素開裂、および細胞内の還元環境によるジスルフィド結合の還元開裂を含み得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4本のポリペプチド鎖、つまり2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖からなる、免疫グロブリン分子を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVRまたはVH)および重鎖定常領域を有する。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含有する。各軽鎖は、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を有する。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。VH領域およびVL領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される高頻度可変性の領域にさらに細分化され得る。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並んだ、3つのCDRおよび4つのFRからなり得る。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプまたはサブクラスの、グリコシル化免疫グロブリンおよび非グリコシル化免疫グロブリンの両方への言及を含む。「抗体」という用語は、抗体を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体などの、組換え手段によって調製、発現、作製、または単離されたものを含むが、これらに限定されない。IgGは、抗体のサブセットを含む。
【0044】
例示的な実施形態
本明細書に開示される実施形態は、試料中の抗薬物抗体を同定するための組成物、方法、およびシステムを提供する。
【0045】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は、試料中の抗薬物抗体を同定する方法であって、以下:
試料を第1の標識された薬物と接触させることと;
試料を第2の標識された薬物と接触させることと;
試料を標的の結合パートナーと接触させることと;
第1の標識された薬物と抗薬物抗体と第2の標識された薬物とを含む複合体の存在を検出することと
を含み、試料が抗薬物抗体および標的を含み、標的が薬物の結合パートナーである、方法を提供する。いくつかの態様において、試料中の抗薬物抗体を同定する方法は、弱酸性のアッセイpH下で実施される。
【0046】
いくつかの態様において、本方法の弱酸性のアッセイpHは、約pH4.5~6.5、約pH3~6.9、約pH4~6.5、約pH4.5~6.5、約pH5~6.5、約pH5.5~6.5、約5.9~6.2、約pH5.0、または好ましくは約pH6.0の範囲にある。
【0047】
いくつかの態様において、試料中の抗薬物抗体を同定する方法は、抗標的抗体を使用して標的を除去することをさらに含み、抗標的抗体は、固体支持体に結合される。
【0048】
いくつかの態様において、本出願の方法またはシステムにおける固体支持体は、ビーズ、磁気ビーズ、クロマトグラフィー樹脂、ポリマー、またはクロマトグラフィーマトリックスであり得る。
【0049】
本システムは、前述の医薬、ペプチド、タンパク質、抗体、抗薬物抗体、タンパク質複合体、または医薬のうちのいずれかに限定されないことが理解される。
【0050】
本明細書で提供される方法ステップの、数字および/または文字での連続した標識は、方法またはその任意の実施形態を特定の指示された順序に限定することを意味しない。特許、特許出願、公開特許出願、受入番号、技術論文、および学術論文を含む、様々な刊行物が、本明細書全体を通して引用される。これらの引用された文献の各々は、参照により、その全体がすべての目的のために、本明細書に組み込まれる。本開示は、本開示をより詳細に説明するために提供される以下の実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。それらは、例示することを意図しており、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0051】
試薬調製
全薬物アッセイおよび全標的アッセイに使用した溶液を、アッセイ希釈緩衝液(ADB:0.5%のBSA、0.05%のTween-20、1×PBS)で調製した。ADAアッセイで使用した溶液を、1%のBSA、1×PBSで調製した。(ADBはアッセイ希釈緩衝液であり、BSAはウシ血清アルブミンであり、PBSはリン酸緩衝生理食塩水である)。PBSは、Gibco(Grand Island、NY)から購入した。1.5MのTrizma baseは、Sigma(St Louis、MO)から購入した。氷酢酸は、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)から購入した。サルおよびヒト血清は、Bioreclamation(Westbury、NY)から購入した。ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロプレートは、Meso Scale Discovery(Rockville、MD)から購入した。Dynabeads Antibody Coupling Kitは、Thermo Fisher Scientific(Vilnius、Lithuania)から購入した。組換えヒト標的タンパク質、ラット抗標的モノクローナル抗体、ビオチン化ヒツジ抗標的ポリクローナル抗体、およびホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジンは、R&D Systems(Minneapolis、MN )から購入した。可溶性標的受容体および補助因子タンパク質は、Sigma(St Louis、MO)から購入した。黒色のマイクロウェルプレート、ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートNeutrAvidinおよびSuperSignal ELISA Pico chemiluminescent substrateは、Thermo Fisher Scientific(Rockford、IL)から購入した。MAB-Yは、完全ヒトモノクローナル抗体薬物である。
【0052】
方法
1.pH測定
pH測定を、InLab Expert Pro-ISM電極を備えた較正済みMettler Toledoメーター(Columbus、Ohio)を使用して実行した。プールヒト血清を、300mMの酢酸で10倍に希釈した。次いで、この酸性化した試料を、50μg/mLの受容体および50μg/mLの補助因子を用いて、異なる濃度のトリス塩基溶液で5倍に希釈した。表1に示す最終的なアッセイ溶液で、pH測定を実行した。
【0053】
(表1)抗MAB-Y ADAを検出するためのpH条件の評価
【0054】
2.磁気ビーズの、抗標的抗体とのカップリング
標的タンパク質、例えば、抗体薬物によって認識され得る標的タンパク質を枯渇させるために、抗標的抗体を、免疫枯渇を実行するための磁気ビーズにカップリングさせた。抗標的抗体MAB-Aを、製造業者の取扱説明書に従ってDynabeadsにカップリングした。適切な量のDynabeadsを、キットからの1mLのC1溶液で洗浄し、次いで、C1溶液で希釈した適切な体積の抗標的抗体MAB-Aで再懸濁した。次いで、等体積のC2溶液をこの混合物に添加し、続いて37℃で16~24時間インキュベートした。カップリングされたビーズを、キットからのHB、LB、およびSB緩衝液で順次洗浄した。次いで、カップリングされたビーズをSB緩衝液で再懸濁し、室温で約15分間インキュベートした。上清を除去した。MAB-AコンジュゲートDynabeadsを、10mg/mLの濃度で、SB緩衝液で再懸濁し、使用するまで4℃で保存した。
【0055】
3.架橋ADAアッセイ
イムノアッセイを開発して、血清試料中のADAの存在を検出した。サルおよびヒト血清試料中の抗MAB-Y抗体などのADAの存在を、架橋イムノアッセイ、例えば、架橋ADAアッセイを使用して検出した。マウス抗MAB-Y抗体などのマウス抗薬物モノクローナル抗体を、陽性対照として使用した。ビオチン化薬物(Bio-薬物)およびルテニウム標識された薬物(Ru-薬物)、例えば、ビオチン化MAB-Y(Bio-MAB-Y)およびルテニウム標識されたMAB-Y(Ru-MAB-Y)を成分として使用して、ブリッジ複合体、例えば、ADAとBio-薬物とRu-薬物とを含むブリッジ複合体(例えば、抗MAB-Y抗体とBio-MAB-YとRu-MAB-Yとを含む架橋複合体)を確立した。
【0056】
抗MAB-Y抗体を含有する血清試料を、300mMの酢酸で10倍希釈を実施し、その後室温で少なくとも10分間インキュベーションするなどして、架橋ADAアッセイを実施する前に酢酸を使用して酸性化した。中性pHを有する架橋ADAアッセイを達成するために、Bio-MAB-Y(1.0μg/mL)およびRu-MAB-Y(1.0μg/mL)を、75mMのトリス塩基を含有するアッセイ緩衝液で調製した後、それらを血清試料に組み込んだ。
【0057】
酸処理した血清試料を、標識された薬物溶液、例えば、Bio-MAB-Yおよび/またはRu-MAB-Yを含有する溶液で5倍に希釈し、その後、試料を室温で約60分間インキュベートした。インキュベート後、(5%のBSA)ブロッキングした、ストレプトアビジンMulti-Array(登録商標)96ウェルプレート(MSD、すなわち、Meso Scale Discovery、LLC製)に、試料を移し、室温で約60分間インキュベートした。プレートを洗浄した。MSDプレートリーダーを使用してプレートを読み取るために、Read Bufferをプレートに添加した。
【0058】
4.総薬物アッセイ
アッセイ方法を開発し、血清試料中の薬物の存在を検出した。サル血清試料中の薬物の存在、例えば、血清試料中の薬物の総量を分析するために、マイクロタイタープレートをマウス抗ヒトIgG4抗体(2μg/mL)でコーティングした。MAB-Yを、総薬物アッセイの標準として使用した。酢酸を使用して可溶性標的薬物複合体を解離させる、酸性化を使用した。サル血清試料、標準物質、および対照を、30mMの酢酸で処理して、血清試料中に存在する可溶性標的薬物複合体を解離させた。加えて、酸性化処理を用いて、血清中の可溶性標的の存在下での薬物の検出を改善した。MAB-Yをマイクロタイタープレートに捕捉した後、NeutrAvidinコンジュゲートホースラディッシュペルオキシダーゼ(NeutrAvidin-HRP、50ng/mL)と組み合わせたカッパ軽鎖特異的モノクローナル抗体(100ng/mL)であるビオチン化マウス抗ヒトIgを使用して、MAB-Yを検出した。すべてのインキュベーションを、室温で約60分間実行した。その後、検出信号を生成するために、ペルオキシダーゼ特異的基質であるルミノール系基質を使用した。総MAB-Y濃度に比例する信号強度を得た。プレートをマイクロプレートルミノメーターで読み取った。
【0059】
ヒト血清試料中の薬物の存在、例えば、血清試料中の薬物の総量を分析するために、マイクロタイタープレートをマウス抗MAB-Yモノクローナル抗体(2μg/mL)でコーティングした。MAB-Yを、総薬物アッセイの標準として使用した。酢酸を使用して可溶性標的薬物複合体を解離させる、酸性化を使用した。ヒト血清試料を30mMの酢酸で処理して、血清試料中に存在する可溶性標的薬物複合体を解離させた。MAB-Yをマイクロタイタープレートに捕捉した後、異なるビオチン化マウス抗MAB-Y特異的モノクローナル抗体(100ng/mL)を、NeutrAvidinコンジュゲートホースラディッシュペルオキシダーゼ(NeutrAvidin-HRP、50ng/mL)と併用して使用して、MAB-Yを検出した。すべてのインキュベーションを、室温で約60分間実行した。その後、検出信号を生成するために、ペルオキシダーゼ特異的基質であるルミノール系基質を使用した。総MAB-Y濃度に比例する信号強度を得た。プレートをマイクロプレートルミノメーターで読み取った。
【0060】
5.総標的アッセイ
アッセイ方法を開発して、血清試料中の標的タンパク質の存在を検出した。血清試料中の標的タンパク質の存在、例えば、血清試料中の標的タンパク質の総量を分析するために、マイクロタイタープレートをラット抗標的モノクローナル抗体(4μg/mL)でコーティングした。組換え標的タンパク質を標準として使用した。酢酸を使用して可溶性標的薬物複合体を解離させる、酸性化を使用した。血清試料、標準物質、および対照を300mMの酢酸で1:10の比で希釈して、血清試料中に存在し得る可溶性標的薬物複合体を解離させ、続いて、75mMのトリス溶液で1:5の希釈で中和した。次いで、中和された標準物質、対照および試料をマイクロタイタープレートに添加した。プレートに捕捉された標的タンパク質を、ビオチン化ヒツジ抗標的ポリクローナル抗体(100ng/mL)とストレプトアビジンコンジュゲートホースラディッシュペルオキシダーゼ(ストレプトアビジン-HRP、ADB中1:200の希釈)との組み合わせで検出した。すべてのインキュベーションを室温で約60分間実行した。その後、検出信号を生成するために、ペルオキシダーゼについての特定の基質であるルミノールベースの基質を添加した。総標的の濃度に比例した信号強度が得られた。プレートをマイクロプレートルミノメーターで読み取った。
【0061】
6.標的タンパク質の免疫枯渇
血清試料中の標的タンパク質の免疫枯渇のために、2つの方法、例えば、方法AおよびBを開発した。標的タンパク質の免疫枯渇の方法Aにおいて、血清試料を300mMの酢酸で10倍に希釈し、室温で少なくとも10分間インキュベートした。次いで、この酸性化試料を、150mMのトリス溶液で1:3の希釈で中和した。抗標的抗体MAB-Aとコンジュゲートした磁気ビーズを、1×PBSで1回洗浄した後、中和した血清試料で再懸濁した。室温で約60分間インキュベートした後、上清を収集し、次いで、2μg/mLのBio-MAB-Yおよび2μg/mLのRu-MAB-Yを含有する溶液と混合した。室温で約60分間インキュベートした後、(5%のBSA)ブロッキングした、ストレプトアビジンMulti-Array(登録商標)96ウェルプレート(MSD製)に試料を移し、室温で約60分間さらにインキュベートした。プレートを洗浄し、Read Bufferを添加した。MSDプレートリーダーを使用して、プレートを読み取った。
【0062】
標的タンパク質の免疫枯渇の方法Bにおいて、血清試料を30mMの酢酸で10倍に希釈し、次いで、抗標的抗体MAB-Aと室温で約30分間コンジュゲートした磁気ビーズと、インキュベートした。上清を収集し、次いで、1μg/mLのBio-MAB-Yおよび1μg/mLのRu-MAB-Yを含有する10mMのトリス溶液で3倍に希釈した。室温で約60分間インキュベートした後、(5%のBSA)ブロッキングした、ストレプトアビジンMulti-Array(登録商標)96ウェルプレート(MSD製)に試料を移し、室温で約60分間さらにインキュベートした。プレートを洗浄し、Read Bufferを添加した。MSDプレートリーダーを使用して、プレートを読み取った。
【0063】
実施例1.ADA検出を改善するための抗標的抗体の使用
薬物標的が血清中に存在する多量体タンパク質である場合、薬物標的は、ADA検出を妨げ得る標的媒介性偽陽性シグナルを生成し得る。血清試料中のMAB-YのADAは、例えば、Ru-MAB-YとBio-MAB-Yとを架橋するADAを使用して、Ru-MAB-YとBio-MAB-Yとを含む複合体を形成することによって、Ru-MAB-YおよびBio-MAB-Yを使用して検出することができる。しかしながら、MAB-Y(例えば、薬物)の標的は、サルおよびヒトナイーブ血清試料において異なるレベルで発現される多量体タンパク質であるため、例えば、Ru-MAB-YおよびBio-MAB-Yを架橋する標的を使用して、血清中の標的はRu-MAB-YおよびBio-MAB-Yと複合体を形成し得、これは標的媒介性偽陽性シグナルに寄与する。抗標的抗体を使用して、薬物標的の架橋効果によって引き起こされる偽陽性シグナルの干渉を軽減した。
【0064】
抗標的抗体は、架橋ADAアッセイにおける標的干渉を軽減するために頻繁に使用される(Liao,et al.,Inhibition of interleukin-5 induced false positive anti-drug antibody responses against mepolizumab through the use of a competitive blocking antibody.J Immunol Methods,2017.441:p.15-23;Zhong,et al.,Identification and inhibition of drug target interference in immunogenicity assays.J Immunol Methods,2010.355(1-2):p.21-8;Dai,et al.;Weeraratne,et al.,Development of a biosensor-based immunogenicity assay capable of blocking soluble drug target interference.J Immunol Methods,2013.396(1-2):p.44-55;Maria,et al.,A novel strategy for elimination of soluble-ligand interference in immunogenicity assays.AAPS National Biotechnology Conference.Seattle,WA,USA,2009)。
図2Aに示されるように、サルナイーブ血清試料における標的干渉を軽減するために、いくつかの抗標的抗体、例えば、Ab1-Ab9を、100μg/mLで、対照(Ctrl)と比較してスクリーニングした。
図2Aに示されるように、スクリーニングされた抗標的抗体のうち、1つの抗標的抗体、例えば、Ab4のみが、標的媒介性偽陽性シグナルを部分的に阻害することができた。試験した抗体のうちの2つ、例えば、Ab8およびAb9が、標的媒介性偽陽性シグナルを実際に増強(増加)させた。これらの抗体の様々な組み合わせも評価したが、サル血清試料における標的干渉を十分に阻害することはできなかった(データは示さず)。
【0065】
数ラウンドの免疫化をさらに実行して、より多くの抗標的抗体を生成した。しかしながら、スクリーニングされた抗標的抗体はいずれも、MAB-Yと十分に競合し得る。1つの市販のポリクローナル抗標的抗体を使用して、標的干渉を軽減した。
図2Bに示されるように、このポリクローナル抗標的抗体は、用量依存的な方法で標的干渉を軽減する特定の効果を示した。しかしながら、ポリクローナル抗体は、標的干渉軽減に関してアッセイ開発に負の影響を及ぼし得るバッチ間変動を示す場合がある。
【0066】
実施例2.ADA検出を改善するための標的受容体の使用
標的受容体を架橋ADAアッセイに組み込んで、標的媒介性シグナルを軽減することによってADA定量を改善した。可溶性標的受容体(例えば、50μg/mL)を、標識された薬物の溶液に含めた。標識された薬物の溶液を50mMのトリス溶液で調製して、アッセイpHを、約pH6.0の弱酸性状態に調整した。弱酸性状態はまた、標的の、Bio-MAB-YおよびRu-MAB-Yの両方への結合を最小限に抑えることができる。可溶性標的受容体の添加が、ナイーブサル血清試料中の標的媒介性シグナルを著しく低減するという結果が示された。
図3に示されるように、可溶性標的受容体は、用量依存的な方法で標的媒介性シグナルを軽減することができた。
図3において、Y軸は、ADA平均カウントを示し、X軸は、標的受容体の濃度(μg/mL)を示す。可溶性標的受容体は、100μg/mLでナイーブサル血清試料において標的干渉を効果的に遮断した。
【0067】
実施例3.ADA検出を改善するための標的受容体および補助因子の使用
標的受容体および補助因子を架橋ADAアッセイに組み込んで、標的媒介性シグナルを軽減することによってADA検出を改善した。可溶性標的受容体(例えば、50μg/mL)および補助因子タンパク質(例えば、50μg/mL)を標識された薬物の溶液に含めた。標識された薬物の溶液を50mMのトリス溶液で調製して、アッセイpHを、約pH6.0の弱酸性状態に調整した。弱酸性状態はまた、標的の、Bio-MAB-YおよびRu-MAB-Yの両方への結合を最小限に抑えることができる。
図4Aに示されるように、異なる濃度の補助因子タンパク質を、架橋ADAアッセイを実施するための50μg/mLの可溶性標的受容体を含有する溶液に添加した。
図4Aにおいて、Y軸は、ADA平均カウントを示し、X軸は、標的受容体および/または補助因子の濃度をμg/mLで示す。可溶性標的受容体および補助因子タンパク質の組み合わせが、ナイーブサル血清試料における標的媒介性シグナルを顕著に低減させることができるという結果が示された。2つのタンパク質、例えば、標的受容体および補助因子は、サルナイーブ試料におけるバックグラウンドシグナルを効果的に低減させるように、相乗的に一緒に機能した。
図4Aに示されるように、50μg/mLの受容体と50μg/mLの補助因子との組み合わせが最も効果的であるという結果が示された。
【0068】
図4B(対照)に示されるように、8つのナイーブサル血清試料における、任意のブロッカータンパク質の不在下で、広範囲の標的媒介性アッセイシグナルが検出され、これは、内因性標的レベルの自然変動を反映する可能性があり得る。
図4Bに示すように、標的受容体および補助因子、例えば、50μg/mLの受容体と50μg/mLの補助因子との組み合わせの存在は、すべてのサル血清試料において標的媒介性アッセイシグナルの効果的な軽減を示した。しかし、1つの血清試料は依然として、平均カウント約400のシグナルを有していた。
【0069】
実施例4.標的干渉を軽減するためのアッセイpHの最適化
その標的に対するMAB-Y結合親和性は、中性pHと比較した場合、酸性条件下(約pH6.0)で大幅に低減された。弱酸性のアッセイpHが、架橋ADAアッセイにおける標的媒介性シグナルを阻害し得るかどうかを試験するために、アッセイpHを最適化するための4つの実験設計を行った。4つの実験設計は、(1)中性pH(対照)での、いずれのブロッカーも有しない、4つのサルナイーブ血清試料、(2)中性pHでの、50μg/mLの受容体および50μg/mLの補助因子を有する、4つのサルナイーブ血清試料、(3)弱酸性pH(約pH6.0)での、いずれのブロッカーも有しない、4つのサルナイーブ血清試料、および(4)弱酸性pH(約pH6.0)での、50μg/mLの受容体および50μg/mLの補助因子を有する、4つのサルナイーブ血清試料であった。
【0070】
図5に示されるように、ナイーブサル血清試料からの高いバックグラウンドシグナルは、弱酸性pHのみ(pH約6.0)によって部分的に阻害されるという結果が示された。pH最適化の結果は、弱酸性アッセイpHが、サル血清試料において標的干渉を阻害することができることを示した。受容体および補助因子タンパク質の組み合わせは、両方のpH条件、例えば、中性pHおよび弱酸性pHで、標的媒介性シグナルを顕著に低減することができた。特に、受容体、補助因子、および弱酸性アッセイ条件(pH約6.0)の組み合わせは、
図5に示されるように、標的媒介性シグナルを完全に阻害する相乗効果を提供した。
【0071】
50μg/mLの受容体および補助因子タンパク質の両方を使用してADAアッセイを実行した場合、異なるアッセイpH条件下で組換え標的タンパク質を使用して、標的許容レベルを決定した。標的許容レベルは、プレートカットポイントを超えるアッセイシグナルを得るために必要な標的の量として定義された。
図6Aに示されるように、中性アッセイpH条件下で、50μg/mLの受容体および補助因子タンパク質の両方を使用してADAアッセイを実行した場合、標的許容レベルは約94ng/mLであると判定した。アッセイpHが約6.5であったとき、標的許容レベルは、同じ濃度の受容体および補助因子を用いて、約380ng/mLに増加した。アッセイpHが約6.0であったとき、標的許容レベルはさらに高く、約5.0μg/mLであった。弱酸性アッセイpHが標的媒介性シグナルの軽減を著しく改善することができるという結果が示された。
【0072】
弱酸性pHが真のADAシグナルの安定性および/または検出に対して最小限の影響を有することを確実にするために、MAB-Y Fab免疫化ウサギからの早期出血を、異なるアッセイpH条件で分析した。免疫化から約30日後に出血1を収集し、この出血における誘導性抗体応答は、典型的には、低親和性ポリクローナルADAを含み、これの検出は、厳しいアッセイ条件によって、より影響を受ける可能性がある。
図6Bに示されるように、ADA平均カウント値は、アッセイpH条件に関係なく、各アッセイ条件で類似していた。弱酸性pHがこれらの試料における真のADAの安定性および/または検出に対して最小限の影響を有するかまたはまったく影響を有しないという結果が示された。弱酸性アッセイpHが標的許容レベルを改善し、真のADA検出に及ぼす影響は最小限であるという結果が示された。
【0073】
実施例5.標的受容体、補助因子、および弱酸性アッセイpHの組み合わせ
標的受容体、補助因子、および弱酸性アッセイpHの組み合わせを、標的媒介性シグナルを軽減することによってADA検出を改善するために、架橋ADAアッセイに組み込んだ。通常、より高いレベルの標的タンパク質を含有する投与後サル試料を、架橋ADAアッセイを実施するために使用した。薬物(例えば、MAB-Y)の単回投与から0日、28日および52日後の2匹のサル由来の血清試料を、架橋ADAアッセイを使用して試験した。これらの2匹のサルの薬物動態(PK)プロファイルを示す血清試料中の薬物濃度を
図7Aに示す(LLOQは、定量の下限を示す)。サル1は直線的なPKプロファイルを示した。サル2は、21日目から始まる、薬物レベルの顕著な減少、例えば、薬物クリアランスの加速を示し、これは、サル2における顕著なADA応答を示す可能性がある。
【0074】
サル血清試料中の標的およびADAの濃度を測定した。
図7Bは、例示的な実施形態により、投与後サル試料を使用した、異なるアッセイ条件を有する、0日目、28日目および52日目の標的濃度およびADAシグナルを示す。ベースラインと比較して、両方のサル由来の28日目の試料で標的レベルが約10~15倍増加し、標的濃度は、サル1由来の52日目の試料で高く維持されていた。架橋ADAアッセイを、中性アッセイpHで、いずれの競合ブロッカーの存在もない対照条件下で投与後試料を使用して実行したとき、
図7Bに示されるように、強力なアッセイシグナルがこれらの血清試料から得られた。中性アッセイpHでの架橋ADAアッセイにおける受容体および補助因子分子の添加は、これらの試料におけるアッセイシグナルを部分的に阻害した。ベースライン試料は、シグナルにおいて、より顕著な減少を示した。しかしながら、ADA平均カウントは、これらの条件下ではすべての試料のプレートカットポイントをはるかに上回ったままであったため、標的媒介性偽陽性シグナルから、真のADAシグナルを区別することは困難であった。
【0075】
サル血清試料を、50μg/mLの受容体および50μg/mLの補助因子の存在下で、弱酸性アッセイpH(例えば、約pH6.0)下で、架橋ADAアッセイで試験したとき、
図7Bに示されるように、サル1由来のすべての試料について低いバックグラウンドシグナルを検出した。サル2について、ADAシグナルの約2倍および200倍の増加が、
図7Bに示されるように、ベースラインと比較して、それぞれ28日目および52日目の試料について観察された。可溶性受容体、補助因子、および弱酸性アッセイpHの組み合わせが、標的干渉を軽減し、投与後サル試料中の真のADAを検出し得るという結果が示された。サル1の血清試料がADAを有さず、かつサル2の血清試料がADA応答を有し、
図7Aに示されるように、これらの2つのサルの薬物濃度プロファイルが支持されるという結果も示された。
【0076】
第I相臨床研究の3名の対象由来の臨床研究試料(0日目、29日目、および64日目)も、標的受容体、補助因子、および弱酸性アッセイpHの組み合わせを組み込んで、標的媒介性シグナルを軽減することによってADA検出を改善することにより、架橋ADAを使用して試験した。これらの臨床研究試料中の薬物濃度を測定した。
図8に示されるように、MAB-Yの単回投与による3名の対象の血清試料中の薬物濃度を測定した。LLOQは、定量下限を示す。これらの試料のPKプロファイルは、顕著なADA応答を示唆しなかった。しかしながら、
図9に示されるように、これらの試料を、中性アッセイpH下で、ブロッカー分子の存在なしで、架橋ADAアッセイにおいて試験したときに、高いアッセイシグナルがすべての試料について観察された。
図9は、例示的な実施形態による、ADA検出を改善するための、架橋ADAアッセイへの標的受容体、補助因子、および弱酸性アッセイpHの組み込みを含む、異なるアッセイ条件を有する、0日目、29日目、および64日目の試料における、標的濃度およびADAシグナルを示す。
【0077】
これらのアッセイシグナルは、これらの試料における標的レベルと相関するように現れた。すべての3名の対象における投与後試料で標的濃度が増加した。中性アッセイpH下、ブロッカーの存在なしで、高い標的媒介性シグナルをすべての試料で検出した。これらの臨床試験試料を、可溶性受容体(50μg/mL)および補助因子(50μg/mL)の存在下、弱酸性アッセイpH(約pH6.0)下で再度試験したとき、
図9に示されるように、バックグラウンドシグナルのみが検出された。その後、臨床試験試料の大規模なセット(11名の対象由来の0日目、29日目、および64日目の試料)を試験し、すべての試料がバックグラウンドシグナルのみを示した(データを示さず)。弱酸性アッセイ条件下で、2つの競合ブロッカータンパク質(例えば、標的受容体および補助因子)を組み込むアッセイフォーマットが、投与後ヒト血清試料における標的干渉を効果的に軽減し得るという結果が示された。この結果はまた、ADAの陽性応答を示唆しないPKプロファイルを支持した。
【0078】
実施例6.中性アッセイpH下での標的タンパク質の免疫枯渇
免疫枯渇は、標的媒介性アッセイシグナルを阻害するために、血清試料から様々な標的タンパク質を除去するために使用されている(Dai,et al.)。多量体標的タンパク質をヒト血清試料から除去するために、類似するアプローチが探索された。中性アッセイpHでの標的結合について、薬物MAB-Yと競合することができなかった免疫枯渇を実施するために、抗標的抗体であるMAB-Aを使用した。代わりに、MAB-Aは、ヒト血清試料における標的媒介性シグナルを増強し得る(データを示さず)。
【0079】
免疫枯渇のためのMAB-Aコンジュゲート磁気ビーズを使用して、異なるアプローチを実施し、これは、5つのヒトナイーブ血清試料から標的タンパク質を除去するのに成功し、それによって、
図10Aに示されるように、標的媒介性シグナルを阻害することができた。中性アッセイpHでの、MAB-Aコンジュゲート磁気ビーズによる標的タンパク質の免疫枯渇によって、薬物の無いナイーブヒト血清試料において標的媒介性シグナルを排除した。しかしながら、1つの試料は依然として、標的除去後も、平均カウント約450のシグナルを示した。MAB-Aコンジュゲート磁気ビーズをまた、臨床研究試料から、例えば、MAB-Yの単回用量の2名の対象からの、1日目、15日目、29日目および57日目の試料から、標的タンパク質を除去するために使用した。ベースライン試料のみがバックグラウンドシグナルへの低減を示すという結果が示された。顕著なレベルの標的媒介性シグナルが、
図10Bに示されるように、投与後の試料において依然として検出された。これらの投与後の試料は、高濃度の薬物MAB-Yを含有していた。MAB-Aは、中性アッセイpHでは、標的結合についてMAB-Yと競合しないため、抗標的抗体カップリングビーズは、高濃度のMAB-Yの存在下では、血清試料から標的タンパク質を完全に枯渇させることができない可能性がある。投与後の試料では、薬物が依然として高濃度で存在しているとき、標的媒介性アッセイシグナルは完全には阻害されなかった。中性アッセイpH条件下でのMAB-Aコンジュゲート磁気ビーズによる免疫枯渇は、投与後ヒト試料における標的干渉を軽減するのには十分ではないという結果が示された。
【0080】
実施例7.弱酸性アッセイpH下での標的タンパク質の免疫枯渇
抗標的抗体(MAB-A)および薬物MAB-Yは、中性アッセイpHで同様のK
D値を示すが、MAB-Aのt1/2は、表2に示されるように、MAB-Yのt1/2よりもわずかに大きい。しかしながら、pH約6.0では、この抗標的抗体は、はるかに長いt1/2を有する標的への、はるかに良好な結合を示す(表2)。MAB-Aが、弱酸性pH(pH約6.0)での標的結合についてMAB-Yと競合できるかどうかを試験するために、1日目、15日目、29日目、および57日目の臨床試験試料を、中性または弱酸性(pH約6.0)のアッセイpHのいずれかで、MAB-Aを用いてまたは用いずに試験した。中性アッセイpHでは、MAB-Aの添加は、標的媒介性シグナルを阻害することに失敗した。代わりに、この抗体は、
図11に示されるように、試験試料における観察された標的干渉をわずかに増強した。弱酸性pH単独では、特に、ベースライン試料において、アッセイシグナルが減少した。MAB-Aを弱酸性アッセイ溶液に添加する場合、
図11に示されるように、MAB-Yが依然として高濃度で存在する試料であっても、投与後試料では、標的媒介性シグナルの阻害が観察された。
図11は、中性アッセイpH下でのブロッカーなし、中性アッセイpH下での100μg/mLのMAB-Aあり、弱酸性pH(pH約6.0)下でのブロッカーなし、および弱酸性pH(pH約6.0)下での100μg/mLのMAB-Aありの、1日目、15日目、29日目および57日目試料におけるADAアッセイシグナルを示す。アッセイpHが弱酸性である場合に、MAB-AがMAB-Yと競合することができるという結果が示された。
【0081】
(表2)MAB-YおよびMAB-AのK
D値およびt1/2値
【0082】
ベースライン試料と比較して、15日目、29日目および57日目の試料における標的濃度は、
図12に示されるように、183日目にベースラインレベルに戻る前に、約3~5倍増加した。
図12は、例示的な実施形態による、弱酸性アッセイpH下でのMAB-Aコンジュゲート磁気ビーズによる免疫枯渇の前および後の、1日目、15日目、29日目、および57日目の試料における標的濃度およびADAアッセイシグナルを示す。改変免疫枯渇法がこれらの試料中の標的タンパク質を枯渇させることができることを確実にするために、標的濃度を、免疫枯渇を実施する前後に測定した。免疫枯渇を実施する前に、標的レベルは150ng/mL~750ng/mLの範囲にあったが、標的濃度は、免疫枯渇後に約2~5ng/mLのみであった。
図12に示されるように、標的タンパク質が効率的に除去されるという結果が示された。改変免疫枯渇ADAアッセイにおいて臨床試験試料を試験した場合、
図12に示されるように、免疫枯渇なしで観察された1500~2300の平均カウントと比較して、バックグラウンドシグナル(平均カウント約200)のみが検出された。これらの結果は、アッセイpHが約5.0であるときに、MAB-Aが標的結合についてMAB-Yと効果的に競合することができ、したがって、
図13に示されるように、分析された臨床試験試料由来の標的タンパク質を完全に枯渇させることができたことを示した。MAB-Aコンジュゲート磁気ビーズを用いた臨床試験試料由来の多量体標的タンパク質の免疫枯渇を、弱酸性のアッセイpH下で実施した。
【0083】
弱酸性アッセイ条件下でのMAB-Aコンジュゲート磁気ビーズによる免疫枯渇が、投与後ヒト試料における標的干渉を軽減することができるという結果が示された。
図13に示されるように、ベースライン試料について、MAB-Aコンジュゲート磁気ビーズは、標的タンパク質を効果的に除去することができた。投与後サンプルについては、MAB-Yが高濃度で存在する場合でさえ、300mMの酢酸での酸処理により、標的薬物複合体を解離することができた。中和およびMAB-Aコンジュゲート磁気ビーズの添加後、MAB-Aは中性アッセイpH下でMAB-Yと競合することができなかったため、標的タンパク質の一部は、ビーズ上のMAB-Aに結合することができ、それらの一部は、MAB-Yと再会合することができた。したがって、上清中には、標的媒介性シグナルを生成することができる十分な量の再形成された標的薬物複合体が依然として存在していた。同じ投与後サンプルについて、30mMの酢酸での酸処理は、標的薬物複合体を解離することができた。この酸性条件下で、酸性化試料をMAB-Aコンジュゲート磁気ビーズとインキュベートする場合、アッセイpHが5~6でありt1/2がはるかに大きい場合には、MAB-Yと比較してMAB-Aが標的結合に対してはるかに良好な親和性を有するため、遊離標的タンパク質は、好ましくは、上清中のMAB-Yにではなく、ビーズ上のMAB-Aに結合することができた。したがって、非結合REGN-Yのみが上清中に存在していた。
【0084】
弱酸性pH下で競合的ブロッカーADA法を使用して、例えば、可溶性受容体(50μg/mL)および補助因子(50μg/mL)による競合的ブロックを用いて同定されたADA陽性対象由来の1日目、15日目、29日目、および57日目の試料を試験した。競合的ブロッカーADA法では、ADAシグナルは、
図14に示されるように、1日目の試料と比較して、15日目の試料では約8倍、29日目の試料では約3倍増加することが見出された。免疫枯渇法では、ADAシグナルの同様の増加が、15日目および29日目の試料について観察された。
図14に示すように、この方法が真のADAシグナルの検出も可能にするという結果が示された。57日目のサンプルについては、血清標的濃度が約450ng/mLであったにもかかわらず、アッセイシグナルはバックグラウンドレベルに留まっていた。両方の方法が標的干渉シグナルを阻害するのに成功することができるという結果もまた示された。これらの結果は、改変免疫枯渇法が真のADA応答を検出することができることを示した。
【国際調査報告】