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▶ プルーラル ダイナミクス インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】自動胸膜・腹膜ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20230419BHJP
   A61M 39/24 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
A61M1/00 135
A61M1/00 150
A61M39/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556025
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 US2021021643
(87)【国際公開番号】W WO2021188331
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】16/819,352
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522367241
【氏名又は名称】プルーラル ダイナミクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PLEURAL DYNAMICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】メイズ、マーティン エル.
【テーマコード(参考)】
4C066
4C077
【Fターム(参考)】
4C066QQ15
4C066QQ27
4C066QQ82
4C066QQ92
4C077AA18
4C077BB10
4C077DD10
4C077DD26
4C077EE04
4C077HH06
4C077HH15
4C077JJ08
4C077JJ19
4C077JJ24
4C077KK25
(57)【要約】
本明細書に記載の、自動ポンプを用いた体液管理システムは、大略的に、入口と出口とを有する弾力的な可撓性弁を有する肋間ポンプを含む。入口は、肋間ポンプから患者の体の第1領域、たとえば患者の胸膜腔まで延びている第1チューブに取り付けられる。出口は、肋間ポンプから患者の体の第2領域、たとえば患者の腹膜腔まで延びている第2チューブに接続される。使用時には、肋間ポンプは患者の第1肋骨と第2肋骨との間に配置される。肋間ポンプは、患者が呼吸する際に、第1肋骨と第2肋骨との間で継続的に圧縮および減圧されることによって動作する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口および出口と流体連通している内部チャンバを有するポンプ本体と、
前記入口から前記内部チャンバへの体液の移動を可能にし、前記内部チャンバから前記入口への体液の移動を少なくとも実質的に妨げるように構成されている、前記入口に略近接している入口一方向弁と、
前記内部チャンバから前記出口への体液の移動を可能にし、前記出口から前記内部チャンバへの体液の移動を少なくとも実質的に妨げるように構成されている、前記出口に略近接している出口一方向弁と、
前記入口から延びており、患者の体の第1領域から前記入口への体液の移動を可能にするように構成されている第1チューブと、
前記出口から延びており、前記出口から患者の体の第2領域への体液の移動を可能にするように構成されている第2チューブと
を備える、ポンプを用いた体液管理システムであって、
前記入口一方向弁および出口一方向弁のうちの少なくとも1つが、約15cmH0未満の背圧差で再シールするように構成されている、ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項2】
前記入口一方向弁および出口一方向弁のうちの少なくとも1つを再シールするための背圧差が約5cmH0未満である、請求項1に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項3】
前記入口一方向弁および出口一方向弁の両方が、再シールされると、加えられた背圧による変形に抵抗するように構成されている、請求項1または2のいずれか一項に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項4】
前記入口一方向弁または出口一方向弁に加えられた50cmHOの背圧に応じて、前記入口一方向弁または出口一方向弁が200マイクロリットル未満の変形を生じる、請求項1に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項5】
前記ポンプ本体の少なくとも一部が、約4mm~10mmの内径および約6mm~12mmの外径を有する略円形断面を含む、請求項1に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項6】
前記ポンプ本体の前記少なくとも一部が、約6mm~7mmの内径および約8mm~10mmの外径を有する略円形断面を含む、請求項5に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項7】
前記ポンプ本体の前記少なくとも一部が、約0.7mm~1.0mmの壁厚を含む、請求項1、2または4~6のいずれか一項に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項8】
前記ポンプ本体が、前記ポンプ本体の壁と一体化されるかまたはそれに取り付けられ、かつ前記壁の長さに沿って前記壁に加えられる力を分配するように構成された少なくとも1つの補強材を含む、請求項1、2または4~6のいずれか一項に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項9】
前記ポンプ本体の少なくとも一部がセルフシール材料で構成されている、請求項1、2または4~6のいずれか一項に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項10】
前記内部チャンバと流体連通し、セルフシール材料で構成されているアクセサリアクセスポートをさらに含む、請求項1、2または4~6のいずれか一項に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項11】
前記ポンプ本体が、
前記ポンプ本体が患者ユーザの隣接肋骨間に埋め込まれるとき、前記患者ユーザの少なくとも1本の肋骨と連結するように構成され、前記少なくとも1本の肋骨に対して所望の角度で前記ポンプ本体を配向するように構成されている配向機構と、
前記出口を含む前記ポンプ本体の第2部分に対して、前記入口を含む前記ポンプ本体の第1部分に角度を付ける移行部と
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1、2または4~6のいずれか一項に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項12】
前記ポンプ本体、前記第1チューブまたは前記第2チューブのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が、抗凝固因子または線維素溶解因子のうちの少なくとも1つでコーティングされている、請求項1、2または4~6のいずれか一項に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項13】
前記ポンプ本体、前記第1チューブまたは前記第2チューブのうちの少なくとも1つの少なくとも一部がヘパリンでコーティングされている、請求項12に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項14】
前記ポンプ本体の少なくとも一部がヘパリンでコーティングされている、請求項13に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項15】
入口および出口と流体連通している内部チャンバを有するポンプ本体と、
前記入口から前記内部チャンバへの体液の移動を可能にし、前記内部チャンバから前記入口への体液の移動を少なくとも実質的に妨げるように構成されている、前記入口に略近接している入口一方向弁と、
前記内部チャンバから前記出口への体液の移動を可能にし、前記出口から前記内部チャンバへの体液の移動を少なくとも実質的に妨げるように構成されている、前記出口に略近接している出口一方向弁と
を備える、ポンプを用いた体液管理システムであって、
前記ポンプ本体が、患者ユーザの隣接肋骨間に埋め込まれるとき、前記患者ユーザの骨性胸郭の拡張および収縮が、それぞれ前記ポンプ本体の減圧および圧縮と、ポンプ本体を通して前記入口で受け取り前記出口から出す体液の自動ポンピングとを引き起こすように選択される弾力性のある可撓性材料で構成されており、
前記ポンプ本体が、変形後にその元の形状に戻る変形可能な材料で構成されている、手動押し下げ可能部分であって、前記ポンプ本体が前記患者ユーザの隣接肋骨間に埋め込まれるときに前記患者ユーザの骨性胸郭から外に向くように構成されている前記手動押し下げ可能部分において、前記内部チャンバから前記出口に体液を圧送するようにさらに構成されている、前記手動押し下げ可能部分をさらに含む、ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項16】
前記手動押し下げ可能部分が、前記ポンプ本体の略ドーム形状部分を含む、請求項15に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項17】
前記略ドーム形状部分がセルフシール材料で構成されている、請求項16に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項18】
前記ポンプ本体の少なくとも一部が抗凝固因子または線維素溶解因子のうちの少なくとも1つでコーティングされている、請求項15~17のいずれか一項に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項19】
前記ポンプ本体の少なくとも一部がヘパリンでコーティングされている、請求項18に記載のポンプを用いた体液管理システム。
【請求項20】
入口および出口と流体連通している電気機械式ポンプと、
前記入口から延びており、患者の体の第1領域から前記入口への体液の移動を可能にするように構成されている第1チューブと、
前記出口から延びており、前記出口から患者の体の第2領域への体液の移動を可能にするように構成されている第2チューブと
を備える、電気機械式ポンプを用いた体液管理システムであって、
前記電気機械式ポンプが、
前記入口から前記出口へ体液を移動させることが可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータに動作可能に連結され、前記アクチュエータを制御することが可能なコントローラと、
前記コントローラに動作可能に連結され、前記コントローラおよび前記アクチュエータにエネルギーを提供する電池と
を含む、電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項21】
一方向弁が、前記入口または前記出口のうちの1つに略近接して位置し、前記出口から前記入口への逆流を防止するように構成されている、請求項20に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項22】
前記電池が、前記電気機械式ポンプが前記入口から前記出口まで少なくとも27リットルの体液を移動させるのに十分なエネルギーを含むように構成されている、請求項20または21のいずれか一項に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項23】
前記コントローラが、第1期間にわたって、複数回のそれぞれで前記アクチュエータを動作させ、前記第1期間よりも短い特定の期間、前記複数回のそれぞれについて、前記アクチュエータを動作させ続けるようにプログラムされている、請求項20または21のいずれか一項に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項24】
患者ユーザへの前記電気機械式ポンプを用いた体液管理システムの植え込み後1日目に体液の必要量を圧送するためにある時間前記アクチュエータを動作させ、次いで、植え込み後の少なくとも1日間、前記ポンプが前記アクチュエータを動作させる時間を減少させるように前記コントローラがプログラムされている、請求項20または21のいずれか一項に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項25】
前記電気機械式ポンプを通って流れる体液を検知するセンサをさらに含み、前記コントローラが、ある時間にわたって、複数回のそれぞれで前記アクチュエータを動作させ、前記複数回のそれぞれについて、感知された体液の流れが所定値を下回るまで、前記アクチュエータを動作させ続けるようにプログラムされている、請求項20または21のいずれか一項に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項26】
前記電気機械式ポンプの内部の圧力を検知するセンサをさらに含み、前記コントローラが、ある時間にわたって、複数回のそれぞれで前記アクチュエータを動作させ、前記複数回のそれぞれについて、感知された圧力が所定値を下回るまで、前記アクチュエータを動作させ続けるようにプログラムされている、請求項20または21のいずれか一項に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項27】
前記電気機械式ポンプが、
前記入口および前記出口と流体連通している内部チャンバを有するポンプ本体と、
前記入口から前記内部チャンバへの体液の移動を可能にし、前記内部チャンバから前記入口への体液の移動を少なくとも実質的に妨げるように構成されている、前記入口に略近接している入口一方向弁と、
前記内部チャンバから前記出口への体液の移動を可能にし、前記出口から前記内部チャンバへの体液の移動を少なくとも実質的に妨げるように構成されている、前記出口に略近接している出口一方向弁と、
前記アクチュエータ、コントローラおよび電池を含む収納区画から前記内部チャンバを分離する液体不透過性膜と
を含み、
前記アクチュエータが、前記液体不透過性膜と動作可能に連結されており、前記液体不透過性膜を変形させることが可能な、請求項20に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項28】
前記電気機械式ポンプ、前記入口、前記出口、前記第1チューブまたは前記第2チューブのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が抗凝固因子または線維素溶解因子のうちの少なくとも1つでコーティングされている、請求項20、21または27のいずれか一項に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項29】
前記電気機械式ポンプ、前記入口、前記出口、前記第1チューブまたは前記第2チューブのうちの少なくとも1つの少なくとも一部がヘパリンでコーティングされている、請求項28に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項30】
前記電気機械式ポンプの少なくとも一部がヘパリンでコーティングされている、請求項29に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項31】
入口および出口と流体連通している電気機械式ポンプであって、
前記入口から前記出口へ体液を移動させることが可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータに動作可能に連結されて前記アクチュエータにエネルギーを提供する電池と
を含む電気機械式ポンプ
を備える、電気機械式ポンプを用いた体液管理システムであって、
前記電気機械式ポンプの少なくとも一部がヘパリンでコーティングされている、電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【請求項32】
前記入口から延びており、患者の体の第1領域から前記入口への体液の移動を可能にするように構成されている第1チューブと、
前記出口から延びており、前記出口から患者の体の第2領域への体液の移動を可能にするように構成されている第2チューブと
をさらに含む、請求項31に記載の電気機械式ポンプを用いた体液管理システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
体液を排出するための多くの方法には、シャントまたはカテーテルと組み合わせてポンプを用い、人体内の1つの空洞から別の空洞または体外のリザーバのいずれかに体液を排出することが含まれる。このような方法は、とりわけ、たとえば、患者の血液、尿、唾液、脳脊髄液、腹膜液および/または胸膜液の排出を含む目的で利用してもよい。
【0002】
排液技術の応用の1つは、胸水の治療のための胸膜液の排液である。胸膜液は、通常、患者の胸膜腔のそれぞれにおいて比較的少量(通常10~20ミリリットル)見られる低タンパク質の液体である。胸膜腔は、臓側胸膜(すなわち、各肺の外面全体に位置する膜)と壁側胸膜(すなわち、各半胸郭の胸壁の内部を覆う膜)との間の空間である。各胸膜腔内の少量の胸膜液は、臓側胸膜と壁側胸膜との間に非常に薄く広がっており、それによって、肺を胸壁に機械的に連結する大きな表面張力を提供すると同時に、これらの表面を潤滑し、呼吸プロセス中に肺が胸壁上を滑ることを可能にする。通常の健康な人では、胸膜水は、肺の外面を覆っている臓側胸膜内で主として血管およびリンパ管からの体液の漏れから常に生じ、胸壁を覆っている壁側胸膜中に位置するリンパ管によって本質的に同じ速度で再吸収される。この動的平衡によって体液は1日に複数回交換され、10~20ミリリットルの範囲の少ない総量が維持される。しかしながら、とりわけ感染症、炎症、悪性腫瘍、心不全、肝不全または腎不全などの特定の異常な状態では、胸膜腔内の胸膜水の正味の流れは、体液産生の増加、再吸収の減少またはその両方によって不均衡を生じ、胸膜腔内の体液の過剰な蓄積(たとえば数百ミリリットルから数リットルのオーダー)をもたらす。
【0003】
胸水の過剰な蓄積は胸水として知られ、呼吸のたびに移動させなければならないさらなる質量を追加し、肺組織の病的圧迫を引き起こす場合がある。これによって、呼吸プロセスが著しく困難になるかまたは妨げられる。胸水は、たとえば、呼吸困難、息切れ、胸痛および/または慢性咳嗽をもたらす場合があり、患者の生活の質(クォリティ・オブ・ライフ)を大きく損なう場合がある。
【0004】
現在、米国では、毎年およそ150万人の新たな患者が胸水に苦しんでいる。これらの滲出液の多くは慢性であり、排出しても再発し、極めて症候性が高く、患者を衰弱させる可能性がある。再発性症候性の胸水の一般的なタイプの1つは悪性腫瘍に起因する。米国では毎年、200,000件超の悪性胸水が発生しており、これらの悪性胸水患者の半数以上に、患者の滲出液によって直接に引き起こされる再発症状が認められる。
【0005】
再発性症候性の胸水の治療の選択肢は、1)胸水の繰り返し排液と2)胸膜腔の除去とに分けることができる。
再発性症候性の胸水の治療へのアプローチの1つは、治療的胸腔穿刺を繰り返すことである。胸腔穿刺は、針およびカテーテル装置を胸膜腔に挿入し、その時点で針を取り外し、胸膜腔内にカテーテルを残すことを含む。カテーテルは所定の位置に留まり、それによって、体外の回収リザーバに胸膜腔から過剰な胸水を移動させることを可能にする排液チューブとして機能する。この手技は、通常は、症状を著しく改善する。残念なことに、悪性滲出液は、排液後に再発する可能性が高く、症状を抑制するためには治療的胸腔穿刺を頻繁に繰り返さなくてはならない。しかしながら、症状が再発したことを患者が医師に知らせることが遅れることにより、また繰り返し胸腔穿刺の構築および提供が遅れることにより、患者は、患者の生活のかなりの部分を滲出液関連症状とともに過ごすことが多い。さらに、胸腔穿刺は痛みを伴い不快であり、それ以外では多くが、頻繁に気胸(すなわち、胸膜腔内の空気の蓄積による肺の虚脱)および重度の出血または感染症などの合併症を伴う。
【0006】
別の治療の選択肢は胸膜癒着術である。胸膜癒着術は、胸膜腔への硬化剤の注入による胸膜腔の閉塞および、臓側胸膜表面と壁側胸膜表面との癒着である。アプローチの1つでは、硬化剤は、胸腔穿刺で達成される排液と同様に、胸水の排液のために中等度鎮静または全身麻酔下で患者に挿入された胸腔チューブを通して導入される。胸水の排液後、チューブを通して胸膜腔に硬化剤を注入し、これらの膜を完全にコーティングして、臓側膜および壁側膜を互いに永久的に付着させ、胸膜腔を閉鎖して除去する。胸腔チューブ胸膜癒着術は、滲出液関連症状の長期コントロールにつながる場合がある。残念なことに、胸腔チューブ胸膜癒着術は、通常は少なくとも2日、最長で7日の入院を必要とし、かなりの痛みを伴う場合があり、胸膜癒着術に関連した呼吸困難につながる場合があり、最大で患者の3分の1が数週間超にわたって症状の緩和を得ることができない。
【0007】
胸膜癒着術の別のバリエーションは、患者の側の肋間切開によって患者の胸部にテレスコープを挿入することを含む胸腔鏡下胸膜癒着術である。胸膜液を排出し、胸膜腔の詳細な検査を行って、より注意深く識別して異常な領域に硬化剤を塗布する。場合によって、胸腔鏡下胸膜癒着術は、胸腔チューブ胸膜癒着術よりも良い結果を得ることができる。残念なことに、胸腔鏡下胸膜癒着術も、通常4~7日間の長期入院を必要とし、かなりの痛みも伴う場合があり、胸膜癒着術に関連した呼吸困難につながる場合があり、多くの患者が数週間超にわたって症状の緩和を得ることができない。
【0008】
さらに別の治療の選択肢は、慢性留置胸膜カテーテルである。このような留置カテーテルは、患者内に恒久的に配置され、間欠的ではあるが継続的に外部リザーバに患者が胸膜液を排出できるようにする。すなわち、胸膜カテーテルは、一端が患者の体内の罹患胸膜腔に配置され、カテーテルの他端は患者の体外に延びており、長時間外部に露出されたままとなる。慢性留置カテーテルは、滲出液関連症状の管理において比較的高い成功率をもたらすことが示されており、これに伴う患者入院期間は約1日と比較的短い。しかしながら、カテーテルは、一部が体内にあり一部が体外にある状態で患者の皮膚を通過するため、かなりの割合の患者(約8パーセント)が感染症に侵される。さらに、患者は、露出した留置カテーテルの不快感、刺激および煩わしさを受ける。最後に、滲出液関連症状を緩和するために、患者または患者の介護者は、カテーテルの外側部分に能動的にアクセスし、カテーテルを外部リザーバに接続し、胸膜腔からリザーバに滲出液を排出しなければならない。
【0009】
さらに別のアプローチは、胸膜腹膜シャントである。胸膜腹膜シャントは、胸膜腔と、腹膜腔または腹部との間に恒久的な導管を設け、外部リザーバとは対照的に胸膜腔から腹膜腔に体液を移動させることができるようにする。腹膜腔に入ると、体液は、腹部に位置する血管およびリンパ管を通して患者の血流に再吸収される。一般的な胸膜腹膜シャントでは、シャントに、胸膜液を移動させるために患者または介護者が手動で作動させなければならないポンピングチャンバがある。胸膜腹膜シャントは、骨性胸郭を覆っている皮下ポケットにあるポンピングチャンバとともに胸部から腹部まで皮膚下を通り抜けている。胸膜腹膜シャントは、慢性留置カテーテルと同様に、滲出液関連症状の管理において比較的高い成功率をもたらすことが示されており、これに伴う患者入院期間は約1日と比較的短い。しかしながら、やはり慢性留置カテーテルと同様に、かなりの割合の患者(約4パーセント)が感染症に侵される。従来の胸膜腹膜シャントのさらなる欠点には、シャント内での体液の凝固などの比較的高率のシャント特有の合併症が含まれる。最後に、滲出液関連症状を緩和するために、患者または患者の介護者は、胸膜腔から腹膜腔に滲出液を移すために複数回繰り返してポンピングチャンバを能動的に圧縮しなければならず、これは、かなりの不快感と不便さの原因となる。
【0010】
排液技術の他の応用が存在する。これらには、限定するものではないが、心膜液、脳脊髄液、腹膜液、尿、胆汁およびリンパ液の排液が含まれる。これらの体液を排出することができる腔には、限定するものではないが、胸膜腔、腹膜腔、胆管、胃、胸管を含むリンパ管、大静脈を含む静脈および膀胱が含まれる。
【0011】
本明細書で提供される背景説明は、本開示の文脈を一般的に提示することを目的としている。現時点において名前を挙げた発明者の研究は、この背景技術の項で説明されている範囲で、出願時点で先行技術と認められない本明細書の態様とともに、本開示に対して明示的にも黙示的にも先行技術として認められない。
【発明の概要】
【0012】
胸水の治療において高い成功率を提供し、高率の感染症および他の合併症を回避し、長い患者入院期間および繰り返しの通院の両方または一方を必要とせず、症状を緩和するための、ポンピングチャンバを毎日複数回手動で圧縮するという不便な必要性、または、外部リザーバにカテーテルを物理的に接続するという不便な必要性を回避するための、胸膜液を排出する新規の技術が必要とされている。本明細書に記載の、自動ポンプに基づく体液管理システムは、このような新規で有益な排液技術を提供する。
【0013】
本明細書に記載の、自動ポンプを用いた体液管理システムは、大略的に、ポンピングチャンバへの入口に配置された第1一方向弁と、ポンピングチャンバからの出口にある第1弁と直列に配置された第2一方向弁と、を有するポンピングチャンバであるポンプを含む。体液に接触するポンピングチャンバの容量は増減が可能である。入口は、自動ポンプから患者の体の第1領域、たとえば患者の胸膜腔まで延びている第1チューブに取り付けられる。出口は、自動ポンプから患者の体の第2領域まで延びている第2チューブに接続される。患者の体の第2領域は、たとえば患者の腹膜腔であってもよい。自動ポンプの動作によって、体液は、患者の体の第1領域から第2領域に移される。
【0014】
一実施形態では、自動ポンプのポンピングチャンバは弾力性のある可撓性チューブであり、ポンピングチャンバは、患者の第1肋骨と第2肋骨との間に配置される。(このような使用が、必ずしも特定の2本の肋骨、たとえば解剖学的文脈で患者の頭蓋に最も近い2本の肋骨として通常言及される「第1」および「第2」肋骨を指すものではないことが理解されるべきであることに注意されたい。)自動ポンプは、患者が呼吸する際に、ポンピングチャンバが第1肋骨と第2肋骨との間で継続的に圧縮および減圧されることによって動作する。患者が息を吸うとき、患者の骨性胸郭は拡張し、肋間腔(すなわち、第1肋骨と第2肋骨との間の腔)は増加し、ポンピングチャンバは減圧される。患者が息を吐き出すとき、患者の骨性胸郭は収縮し、肋間腔は狭くなり、ポンピングチャンバが圧縮される。1分間に12回呼吸する人にとって、これは、1日に17,280回ポンピングチャンバが圧縮および減圧されることを意味する。
【0015】
別の実施形態では、自動ポンプのポンピングチャンバは、ポンピングチャンバの一部が患者の第1肋骨と第2肋骨との間に配置され、細長いポンピングチャンバの第2部分が、骨性胸郭と皮膚との間の患者の皮下組織に配置された、弾力性のある細長い可撓性チューブである。それによって、自動ポンプは2つの方法で動作させることができる。1つは、患者が呼吸する際に、ポンピングチャンバが第1肋骨と第2肋骨との間で継続的に圧縮および減圧され、それによってポンピングチャンバの容量を周期的に変化させることによる。もう1つは、患者の骨性胸郭と患者の皮膚との間に配置された細長いポンピングチャンバの一部を患者または介護者が手動で圧縮することによる。したがって、患者が息を吸うとき、第1肋骨と第2肋骨との間に配置されたポンピングチャンバの一部が減圧され、患者が息を吐き出すとき、ポンピングチャンバの一部が圧縮され、それによって自動ポンピングが提供される。さらに、患者の症状、X線撮影または超音波検査法に基づいて、胸膜腔に過剰な滲出液が存在すると判断された場合、患者または患者の介護者は、可能性としては繰り返して、彼らの指または手と骨性胸郭との間のポンピングチャンバの一部を手動で圧縮して、追加のポンピング動作を提供することができる。
【0016】
さらに別の実施形態では、自動ポンプのポンピングチャンバは、患者の第1肋骨と第2肋骨との間に配置された弾力性のある可撓性チューブで構成されている第1部分と、第1部分によって提供されるポンピング動作を支援することができる電気機械式ポンプを備えた半剛性チャンバで構成されている第2部分とを有する。それによって、自動ポンプは、第1に、患者が呼吸する際に、ポンピングチャンバの第1部分が、第1肋骨と第2肋骨との間で継続的に圧縮および減圧され、それによってポンピングチャンバの容量を周期的に変化させることによって動作することができるだけでなく、第2部分の電気機械式ポンプによって生じるポンピングチャンバの容量の周期的変化によって動作することもできる。したがって、患者が息を吸うとき、第1肋骨と第2肋骨との間に配置されたポンピングチャンバの第1部分は減圧され、胸膜腔からの滲出液で満たされ、患者が息を吐き出すとき、ポンピングチャンバの第1部分は圧縮され、ポンピングチャンバから腹膜腔へ体液を押し出す。第2部分の電気機械式ポンプは、第1肋骨と第2肋骨との間に配置されたポンピングチャンバの動作とは独立して、胸膜腔から腹膜腔に体液を圧送することもできる
本明細書に記載の自動ポンプの使用は、公知の体液排液技術の特定の欠点を回避する。たとえば、肋間ポンプは、患者が手を用いてポンプを手動で圧縮することを必要とせず、または患者が患者の体外に体液を排出することを必要とせず、定期的、継続的および自動的に体液を排出するために動作する。さらに、肋間ポンプの連続動作により、長期間非作動のままである場合がある他の体液排液システムで認められる凝固の発生を減少させることによって、改善された性能が実現されてもよい。
【0017】
前記は、1つまたは複数の本開示の実施形態の基本的理解を提供するために、このような実施形態の簡略化された概要を提供するものである。この概要は、すべての企図される実施形態の広範な全体像ではなく、また、すべての実施形態の鍵となるまたは重要な要素を明らかにするものではなく、実施形態の全部または一部の範囲を詳細に説明するものでもない。本開示の他の実施形態は、本発明の例示的な実施形態を示して説明する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。理解されるように、本開示の様々な実施形態は、すべて、本開示から逸脱することなく、様々な自明の態様において変更が可能である。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に例示であって、限定するものではないとみなされる。
【0018】
本明細書に開示される発明は、明細書の一部を形成する添付の図面を参照して明細書を読むことによってより容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ポンプを含み、入口および出口チューブも含む、自動ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)。
図2A】患者に埋め込まれた、自動ポンプを用いた体液管理システムである。
図2B】患者に埋め込まれた、自動ポンプを用いた体液管理システムである。
図2C】患者に埋め込まれた、自動ポンプを用いた体液管理システムである。
図3】吸気および呼気中に変化する典型的な胸膜内圧および腹膜内圧を示す。
図4】ポンプを含み、閉塞を防止して体液の流れを改善するように設計された穿孔または開窓を有する入口および出口チューブも含む、自動ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)。
図5】ポンプを含み、カテーテルおよびポンプへのフィブリン鎖および微粒子の進入を防止することによってシステムの閉塞を防止するように設計された丸みを帯びた閉鎖端および小さな開窓を備えた入口チューブと出口チューブと、も含む、自動ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)。
図6】フィブリン形成および凝塊形成の両方または一方を防止し、それによってシステムの閉塞を防止するための、ポンプと、穿孔されたまたは有窓の入口および出口チューブ(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)と、入口チューブ上の線維素溶解剤および抗凝固剤の両方または一方のバンドとを含む、自動ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図7】開窓から離れた限局性のフィブリン形成および凝塊形成の両方または一方を誘発し、それによってシステムの閉塞を防止するための、ポンプと、穿孔されたまたは有窓の入口および出口チューブ(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)と、入口チューブ上の線維化誘導物質のバンドとを含む、自動ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図8A】ポンピングチャンバを含み、穿孔されたまたは有窓の入口および出口チューブ(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)を含む、肋間使用のための自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図8B】ポンピングチャンバと、直線体液チャネルを備えた入口チューブと、穿孔されたまたは有窓の出口チューブ(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)とを含む、肋間使用のための自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図9】患者に埋め込まれた、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムである。
図10A】一方向入口弁および一方向出口弁を備えたポンピングチャンバと、ポンピングチャンバが圧縮されたときの、入口および出口の一方向弁の様々な位置または状態の断面模式図である。
図10B】一方向入口弁および一方向出口弁を備えたポンピングチャンバと、ポンピングチャンバが圧縮されたときの、入口および出口の一方向弁の様々な位置または状態の断面模式図である。
図10C】一方向入口弁および一方向出口弁を備えたポンピングチャンバと、ポンピングチャンバが圧縮されたときの、入口および出口の一方向弁の様々な位置または状態の断面模式図である。
図10D】一方向入口弁および一方向出口弁を備えたポンピングチャンバと、ポンピングチャンバが圧縮されたときの、入口および出口の一方向弁の様々な位置または状態の断面模式図である。
図10E】一方向入口弁および一方向出口弁を備えたポンピングチャンバ、および、ポンピングチャンバ内の、所与の力の適用に対してポンプチャンバへのより大きな容量変化を提供するように設計された補強材の断面模式図である。
図10F】一方向入口弁および一方向出口弁を備えたポンピングチャンバ、および、ポンピングチャンバ内の、所与の力の適用に対してポンプチャンバへのより大きな容量変化を提供するように設計された補強材の断面模式図である。
図11A】自動肋間ポンプを用いた体液管理システムと、吸気および呼気中の患者の肋骨に対するポンピングチャンバの関係の斜視図である。
図11B】自動肋間ポンプを用いた体液管理システムと、吸気および呼気中の患者の肋骨に対するポンピングチャンバの関係の斜視図である。
図12】閉状態および開状態の一方向入口弁の断面模式図と、閉状態および開状態の一方向出口弁の断面模式図である。
図13】ポンピングチャンバと、丸みを帯びた閉鎖端を備えた入口チューブと、入口弁および出口弁に対応するサイズの入口穴と、出口チューブ(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)とを含む、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図14A】ポンピングチャンバと、入口チューブと、出口チューブと、安定性および配向機構とを含む、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)。
図14B】安定性および配向機構を備えた自動肋間ポンプを用いた体液管理システムと、患者の肋骨に対するポンピングチャンバの関係の斜視図である。
図15A】胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合するように成形されたポンプを含み、穿孔されたまたは有窓の入口および出口チューブ(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)を含む、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図15B図15Aに示す自動肋間ポンプを用いた体液管理システムのポンプの断面模式図である。
図16A】胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合し、配置された後の変位をよりよく防止するように成形されたポンプを含み、穿孔されたまたは有窓の入口および出口チューブ(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)を含む、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図16B図16Aに示す自動肋間ポンプを用いた体液管理システムのポンプの断面模式図である。
図17】胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合し、配置された後の変位をよりよく防止するように成形されたポンプを含む、代替自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)。
図18】胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合し、胸壁に対するポンプの任意の配向角度を提供し、配置された後の変位をよりよく防止するように成形されたポンプを含む、代替自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)。
図19】胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合し、胸壁に対するポンプの任意の配向角度を提供し、所定の位置に自動肋間ポンプを用いた体液管理システムを固定するための追加の機構を提供し、配置された後の変位をよりよく防止するように成形されたポンプを含む、代替自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である(入口および出口チューブは、例示の目的で模式的に短縮して示されている)。
図20A】肋間腔に配置するためのポンプと、ポンプシステムの全体的な機能を改善するために手動で作動させることができるドーム形状のダイヤフラムとを含む、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図20B図20Aに示す自動肋間ポンプを用いた体液管理システムのポンプの断面模式図である。
図21】肋間腔に配置するためのポンプと、ポンプシステムの全体的な機能を改善するために手動で作動させることができるドーム形状のダイヤフラムと、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの内部へのアクセスを可能にするために穴をあけることができるドーム形状の隔壁を備えたアクセスポートとを含む、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図22】肋間腔に配置するためのポンプと、菱形の安定性および配向機構と、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの内部の様々な領域へのアクセスを可能にするために穴をあけることができるドーム形状の隔壁を備えた2つのアクセスポートとを含む、代替自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図23A】圧電ダイヤフラムを用いた、電気機械式自動ポンプを用いた体液管理の斜視図である。
図23B図23Aに示す電気機械式自動ポンプを用いた体液管理システムのポンプの断面模式図である。
図23C図23Aに示す電気機械式自動ポンプを用いた体液管理システムのポンプの断面模式図である。
図23D図23Aに示す電気機械式自動ポンプを用いた体液管理システムのポンプの断面模式図である。
図24A】肋間腔に配置するためのポンプと、ポンプシステムの全体的な機能を改善するために作動させることができる電気機械式ポンプとを含む、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。
図24B図24Aに示す自動肋間ポンプを用いた体液管理システムのポンプの断面模式図である。
図25】患者に埋め込まれ、外部リザーバに連結された、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムである。
図26A】自動肋間ポンプを用いた体液管理システムを使用して体液を排出するための方法を示す図である。
図26B】自動肋間ポンプを用いた体液管理システムを使用して体液を排出するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に記載の装置、システムおよび方法は、人体内のある空洞から別の空洞に体液を排出および移動または排出もしくは移動する目的で使用してもよい。特に、本明細書に記載の装置、システムおよび方法は、自動ポンプを用いた体液管理システムにおいて一般的なポンピング機能を提供する自動ポンプを含む。
【0021】
説明のために、本明細書の開示は、胸水の治療のための胸水の排液の目的での自動ポンプを用いた体液管理システムの使用に関する議論を含む。しかしながら、このような用途は、自動ポンプを用いた体液管理システムの特定の一実施形態の特定の一用途に過ぎず、他の実施形態および用途が可能であることは理解されるべきである。
【0022】
同様に、本明細書の開示は、説明のために、特定の自動ポンプを用いた体液管理システムの一部として自動ポンプを説明する。しかしながら、本明細書に開示される任意のこのような自動ポンプを用いた体液管理システムは、本明細書に記載の、自動ポンプを使用する自動ポンプを用いた体液管理システムの特定の実施形態に過ぎず、自動ポンプの他の使用が可能であることは理解されるべきである。
【0023】
自動ポンプを用いた体液管理システムは、体液の定期的、継続的および自動的排液を提供することができる。それによって、体液を排出するための他の技術の欠点の多くが回避されてもよい。
【0024】
1.自動ポンプを用いた体液管理システム
図1は、自動ポンプと、入口および出口チューブ(これらの描写は、例示の目的で、長さを短くして模式的に示してある)とを含む、自動ポンプを用いた体液管理システムの斜視図である。図1は、説明のために自動ポンプを用いた体液管理システムの一実施形態を示しており、他の実施形態が可能であることは理解されるべきである。
【0025】
a.自動ポンプを用いた体液管理システム全般
図1を参照すると、第1身体区画から第2身体区画への体液の移動のための自動ポンプを用いた体液管理システム100は、大略的に、入口130および出口132を有し、入口130と出口132との間での体液移動が可能なポンプ110を含む。
【0026】
自動ポンプを用いた体液管理システム100は、第1チューブ120および第2チューブ122も含む。入口130および出口132は、それぞれ、ポンプ110の内部と外部との間で連通しており、それぞれ、第1チューブ120および第2チューブ122に連結されている。言い換えれば、入口130および出口132は、それぞれ第1チューブ120および第2チューブ122とポンプ110の内部空間との間の流体連通を提供するように構成される。
【0027】
さらに、第1チューブ120は、チューブ入口端150およびポンプ入口端140を含む。大略的に、第1チューブ120は、自動ポンプを用いた体液管理システム100を使用するときに、チューブ入口端150が、体液がそこから排出される人体の領域に配置されるように構成される。一方で、ポンプ入口端140は、ポンプ110の入口130に連結される。そのため、長さ延長部160で示されているように、第1チューブ120の長さは変化してもよい。
【0028】
同様に、第2チューブ122は、ポンプ出口端142およびチューブ出口端152を含む。大略的に、第2チューブ122は、自動ポンプを用いた体液管理システム100を使用するときに、チューブ出口端152が、体液がそこへ排出される人体の領域に配置されるように構成される。一方で、ポンプ出口端142は、ポンプ110の出口132に連結される。そのため、長さ延長部162で示されているように、第2チューブ122の長さは変化してもよい。
【0029】
第1チューブ120および第2チューブ122は、実質的に直線状に(すなわち、ポンプ110の壁に直角に)ポンプ110に入るように示されているが、第1チューブ120および第2チューブ122は、任意の所望の角度でポンプ110入るように構成されてもよい。たとえば、ポンプ110がより有利に位置することができるように、第1チューブ120および第2チューブ122が、それぞれ、約90度の角度でポンプ110に出入りすることが望ましい場合がある。また、第1チューブ120および第2チューブ122が、他の角度で出入りすることが望ましい場合もある。
【0030】
チューブ120および122は、大略的に、任意の形態または方向となるように操作および成形または操作もしくは成形が容易な可撓性チューブとして示されているが、いくつかの実施形態では、チューブの所望の形状または方向が維持されるように、チューブ120および122が、ある程度は剛性的または半剛性的に設定されることが望ましい場合がある。たとえば、チューブのうちの1本が、肋間ポンプ110を離れる際に90度の屈曲を有するように、少なくとも一部が剛性的または半剛性的に構成、成形または鋳造されてもよい。チューブ120および122は、それぞれ、同様な90度の屈曲で構成されてもよい。あるいは、チューブは、同様な屈曲を有さなくてもよい。さらに別の代替手段として、チューブは、それぞれ、他の程度の屈曲を有してもよい。
【0031】
自動ポンプを用いた体液の移動を実現するために、ポンプ110は、通常の呼吸時の肋骨の動きを利用して、隣接肋骨間の弾力性のある可撓性チャンバを自動的かつ周期的に圧縮および減圧し、それによってポンピング動作を提供する、入口に一方向弁、出口に一方向弁を備えた実質的に弾力性のある可撓性チャンバで構成されている、以下でより詳細に説明する自動肋間ポンプであってもよい。あるいは、ポンプ110は、以下でより詳細に説明する、ギヤポンプ、スクリューポンプ、ロータリーベーンポンプ、ダイヤフラムポンプ、圧電ダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプ、蠕動ポンプ、ローブポンプ、ピストンポンプまたは遠心ポンプなどの電気機械式ポンプであってもよい。他の種類のポンプも可能である。
【0032】
b.胸膜腹膜自動ポンプを用いた体液管理システム
図2Aを参照すると、患者の体内の第1領域220から第2領域230への体液の排液を提供するための、患者200に埋め込まれた、自動ポンプを用いた体液管理システム100が示されている。一実施形態では、図2Aに示されている実施形態と同様に、体液は、患者の胸膜腔から患者の腹膜腔に排出される。したがって、このような実施形態では、第1領域220は患者の胸膜腔であり、第2領域230は患者の腹膜腔である。
【0033】
一実施形態では、自動ポンプ110は、患者の皮膚の下の患者の骨性胸郭400の外側に配置されるように構成される。患者の胸膜腔220にアクセスするために、第1チューブ120はポンプ入口130から、隣接肋骨間の骨性胸郭400を横断し、第1チューブ120のチューブ入口端150は、体液がそこから排出される人の胸膜腔220に配置される。第2チューブ122は、ポンプ出口132から、腹壁に沿って皮膚の下を横断し、第2チューブ122のチューブ出口端152は、体液がそこへ排出される人の腹膜腔230に配置される。腹膜腔230は、胸膜腔220から移された過剰な体液が、たとえば、患者の間質組織、リンパ管および血管内に吸収され、それによって腹膜腔230内の体液の蓄積を最小限に抑える体液吸収能力を有する。
【0034】
他の実施形態では、図2Bに示すように、自動ポンプ110は、患者の胸膜腔220内に配置されるように構成することができる。第1チューブ120のチューブ入口端150および第1チューブ120は、体液がそこから排出される人の胸膜腔220に配置することができる。第2チューブ122は、第2チューブ122のチューブ出口端152が、体液がそこへ排出される人の腹膜腔230に配置されるように、胸膜腔120内に位置する自動ポンプ110のポンプ出口132から腹膜腔に入る。第2チューブ122は、第2チューブ122のチューブ出口端152が、体液がそこへ排出される人の腹膜腔230に配置されるように、隣接肋骨間の骨性胸郭400を横断し、皮膚の下を骨性胸郭400に沿って移動してもよく、腹壁を横断する。あるいは、第2チューブ122の通路は、患者の胸膜腔220から、横隔膜240を通って患者の腹膜腔230に直接入ってもよい。
【0035】
他の実施形態では、図2Cに示すように、自動ポンプ110および出口第2チューブ230は、第1チューブが、ポンプ入口130から腹壁を通して皮膚の下の骨性胸郭400に沿って通り、隣接肋骨間の骨性胸郭400を横断して、第1チューブ120のチューブ入口端150が胸膜腔内に位置するように胸膜腔220に侵入して、患者の腹膜腔230内に配置されるように構成することができる。あるいは、第1チューブ120の通路は、患者の胸膜腔220から、横隔膜240を通って患者の腹膜腔230に直接入ってもよい。
【0036】
c.胸膜腔内圧および腹膜腔内圧
胸膜腔220および腹膜腔230内の圧力は同じではなく、静的ではなく、また一般に通常の呼吸中に変化する。吸気は、筋収縮を必要とする能動的プロセスである。吸気中、外肋間筋は収縮して肋骨および胸骨は隆起し、横隔膜は収縮し、腹部内容物を平らにし、押し下げる。この複合動作は、弾性のある肺を拡張する胸膜内圧(Ppleural)の低下と、腹膜内圧(Pperitoneal)の増加による腹部内容物の同時の圧縮とにより胸腔の拡張をもたらす。正常な呼吸中の呼気は、主として弾性収縮力に依存する受動的プロセスである。呼気中、外肋間筋および横隔膜は単に弛緩する。外肋間筋の弛緩により、膨らんだ肺の弾性は、肺を収縮させて元の位置に戻す。同時に、横隔膜は弛緩し、圧縮された腹部内容物が横隔膜を押し上げる。この複合動作は、胸膜内圧(Ppleural)の増加による胸腔のサイズの減少と、腹膜内圧(Pperitoneal)の同時の低下とをもたらす。
【0037】
図3に見られるように、胸水がほとんどまたはまったくない患者の通常の安静時呼吸中に、胸膜内圧(Ppleural)は、呼気の終わりの約+3cmHOから吸気の終わりの約-2cmHOまで変化し、腹膜内圧(Pperitoneal)は、呼気の終わりの約+5cmHOから吸気の終わりの約+13cmHOまで変化する。全体的な胸膜内圧は、平均して呼気の終わりの約-2cmHOから吸気の終わりの約-15cmHOまで変化する勾配を伴う全呼吸周期中の腹膜内圧よりも低い。[ミラー・JD(Miller JD)、Skeletal muscle pump versus respiratory muscle pump: modulation of venous return from the locomotor limb in humans、J Physiol、第563巻、第3号、925~943ページ(2005年)]。胸膜内圧、腹膜内圧および、胸膜内と腹膜内との圧力勾配は、患者によって異なり、労作、咳、くしゃみ、深呼吸、体位、胸部または腹部の疾患、胸部または腹部の過去の手術および胸水の存在によって変化する。実際、胸水の存在によって、胸膜腔内圧にかなりの静水圧要素が追加され、胸膜内圧が、低い値または負の値から正の値まで変化する場合がある。実際、胸水のある患者では、胸膜内圧(Ppleural)は、滲出液が存在すると、約+10~約+15cmHOまで増加する場合があり、滲出液を排出すると、約-10~約-15cmHOまで低下する場合がある。[フェラー-コプマン D(Feller-Kopman D)、Large-volume thoracentesis and the risk of re-expansion pulmonary edema、Ann Thor Surg、第84巻、1656~1662ページ(2007年)]。胸水の影響が、正常な呼吸中に生じる変動に追加されるとき、胸膜内圧は、滲出液が存在する状態では、約-5cmHO~約+13cmHOの範囲にわたる勾配を有する呼吸周期中に腹膜内圧よりも高くなる場合がある。
【0038】
胸膜腔220から腹膜腔230に体液を移すための自動ポンプを用いた体液管理システム100に対して、自動ポンプ110は、胸膜腔220から腹膜腔230に存在する圧力勾配に打ち勝つことができる。上記で概説したように、この圧力勾配は呼吸周期中に変化し、胸水の場合、存在する滲出液の量も変化する。自動ポンプを用いた体液管理システム100が最初に配置され、滲出液が胸膜腔220に存在する場合、自動ポンプ110内の弁が胸膜内と腹膜内との圧力勾配よりも低い複合開放圧力を有するときに、体液は胸膜腔220から腹膜腔230の間を自由に流れることができる。
【0039】
胸水が胸膜腔220からほぼ排出されたとき、図3に示すように、胸膜内と腹膜内との圧力勾配がより低くなる。この圧力勾配に起因して、呼気の終わりに、自動ポンプ110は、少なくとも約2cmHOのヘッド圧力を生成して、この圧力勾配に打ち勝ち、胸膜腔220から腹膜腔230に体液を圧送することができる。同様に、吸気の終わりに、自動ポンプ110は、少なくとも約15cmHOのヘッド圧力を生成して腹膜腔230と胸膜腔220との間の圧力勾配に打ち勝ち、それによって胸膜腔220から腹膜腔230に体液を圧送することができる。ポンプが一定のヘッド圧力を生成する場合、胸膜腔220と腹膜腔230との間の流れは、腹膜腔230と胸膜腔220との間の圧力勾配が変化するため、呼吸サイクル中に変化することに留意されたい。上記の値は、平均的な観察に基づく。場合によっては、ポンプは、正常な呼吸の全周期に存在する圧力勾配の変動に打ち勝つために少なくとも約25cmHOのヘッド圧力を生成してもよく、それによって任意の時点で胸膜腔220および腹膜腔230から体液を圧送することができ、さらには患者間の変動に打ち勝つために、35cmHOから50cmHOまでのヘッド圧力を生成してもよい。さらに、自動ポンプ110は、呼気中に優先的に動作するように設計することができ、理想的には、腹膜腔230と胸膜腔220との間の圧力勾配がより低い呼気の終了位置で動作するように設計することができることに留意できるだろう。この状況では、患者間の変動に打ち勝って、胸膜腔220から膜腔230に体液を圧送するために、自動ポンプ110は、約5cmHOの最小ヘッド圧力、または好ましくは約10cmHO~15cmHOのヘッド圧力を生成するだけでよい。より低いこのヘッド圧力は、全呼吸周期、呼気の開始位置または吸気の終了位置の自動ポンプ110の動作と比較して、自動ポンプ110についての、より低い率の電力消費量と、圧送する滲出液の単位体積あたりのより少ない合計作業時間とにつながる。
【0040】
d.胸膜液屑(pleural fluid debris)および凝固タンパク質
胸膜液は、健康であっても病気であっても、本質的に、再吸収によって改変された血液の濾液である。濾過は、臓側胸膜および壁側胸膜の表面の両方の血管壁、間質組織および中皮細胞膜を通して行われ、改変は、体液、溶質、タンパク質および細胞の再吸収によって行われる。他の臓器の間質液と同様に、健常人では、胸膜液にはタンパク質および少数の細胞が含まれる。胸膜液のタンパク質は、約1.0g/dlの総濃度(6.0g/dl以上の血漿総タンパク質濃度)を有し、アルブミンは最も豊富であり、総タンパク質の約50%を占め、グロブリンは2番目に豊富であり、総タンパク質の約35%を占め、フィブリノゲンは3番目に豊富であり、タンパク質の20%未満を占める。細胞濃度は、約2,000細胞/mm胸膜液量であり、主に中皮細胞、単球およびリンパ球からなる。
【0041】
悪性腫瘍では、この濾過と再吸収のシステムのバランスが崩れている。血液を濾過するのに役立つ細胞、膜および組織は、選択性がより低い傾向にあり、再吸収機構は変化しており、通常は効率が低い。したがって、悪性腫瘍で生じる胸膜液は、容量が増加し、組成が異常であり、体液はタンパク質および細胞の両方が豊富であり、存在するタンパク質および細胞の種類が異なる。実際、胸膜液の総タンパク質濃度は通常は2.9g/dlを超え、細胞濃度は何倍にもなる場合がある。
【0042】
フィブリノゲンは、胸膜液の重要なタンパク質である。フィブリノゲンは、線維素形成と呼ばれるプロセスでトロンビンによってフィブリンに変換される。フィブリンは、線維素溶解と呼ばれるプロセスでプラスミノゲンの作用によって分解される。一方、プラスミノゲンは、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA:tissue plasminogen activator)によって活性化され、tPAは、プラスミノゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1:plasminogen activator inhibitor-1)によって阻害される。生成されるフィブリンの正味量は、線維素形成と線維素溶解との間の不均衡の結果である。
【0043】
胸膜液のフィブリノゲン濃度は、通常、血漿濃度に比べて低い。悪性腫瘍患者であっても、総タンパク質濃度が上昇傾向にある場合、胸膜液のフィブリノゲン濃度はより低い傾向にあり、tPAの胸膜液レベルは上昇傾向にあり、PAI-1は減少傾向にある。これらはすべて、フィブリンの正味産生を低くする傾向にある。
【0044】
それにもかかわらず、悪性胸水患者では、線維素形成と線維素溶解との間の不均衡が発生し、フィブリンの形成をもたらす可能性が依然としてある。フィブリンは、小さな凝塊、鎖、膜および隔壁へと組織化することが可能である。フィブリンの膜および隔壁は、胸膜腔からの体液の排液を困難にする可能性のある胸膜液の小房またはポケットの原因であり、フィブリンの凝塊および鎖は排液チューブを塞ぐ可能性がある。
【0045】
実際、胸膜腔の経胸壁超音波検査によって明らかにされた悪性胸水における肉眼解剖学的所見は、患者の8.7%における複雑な中隔滲出液、患者の15.4%における均一エコー源性滲出液および患者の65.4%における複雑な非中隔滲出液を示しており、そのどちらもが血液と細胞および線維素性屑との何らかの組み合わせである可能性が高く、無エコー(透明な体液)は患者のわずか10.6%であった。
【0046】
自動ポンプを用いた体液管理システムの閉塞または目詰まりを防止し、システムを通る流れを維持するために、複数の戦略を単独または組み合わせで使用してもよい。戦略の1つは、複数の体液入口通路を提供することである。図4を参照すると、第1チューブ120は、1つまたは複数の体液入口穿孔170を含んでもよい。体液入口穿孔170は、チューブ入口端150だけでなく体液入口穿孔170を通して第1チューブ120に体液を吸い込むことができるようにするための、第1チューブ120の壁の穴の形態をとってもよい。体液入口穿孔170によって、第1チューブ120への流れの妨害を防止してもよく、第1チューブ120への体液吸い込みの容量または効率を改善してもよく、それによって、自動ポンプを用いた体液管理システム101によって排出される体液量または効率を改善してもよい。体液入口穿孔170は、また、チューブ入口端150または他の穿孔170が、たとえばフィブリン凝塊、フィブリン鎖もしくは他の屑、または胸壁もしくは肺に対する第1チューブ120の並置によって塞がれる場合に代替体液入口位置を可能にすることにより有益な場合がある。第2チューブ122は、体液出口穿孔180も含んでもよい。
【0047】
追加または代替の戦略は、自動ポンプを用いた体液管理システムに入る体液用の濾過機構を提供するための第1チューブ120を構築することである。図5を参照すると、第1チューブ120は、1つまたは複数の体液濾過入口穿孔173を含んでもよい。体液濾過入口穿孔173は、第1チューブ120に体液を吸い込むことができるようにするための、第1チューブ120の壁の穴の形態をとってもよい。体液濾過入口穿孔173は、濾過穿孔173を通過することができる任意の線維素性凝塊、線維素性鎖または他の屑が、体液の流れを塞ぐかまたは著しく妨げることなく、自動ポンプを用いた濾過体液管理システム102の体液通路全体を通過することができるようなサイズおよび形状である。あるいは、体液濾過入口穿孔173は、ありとあらゆるこのような穿孔が、自動ポンプを用いた濾過体液管理システム102の体液通路全体に沿って存在する最小開口部よりも小さいようなサイズおよび形状である。したがって、体液濾過入口穿孔173を通過することができる任意の線維素性凝塊、線維素性鎖または他の屑は、自動ポンプを用いた濾過体液管理システム102の体液通路の最小開口部よりも小さく、そのため自動ポンプを用いた濾過体液管理システム102の体液通路を通過することができるはずである。図5に示すように、第1チューブ120のチューブ入口端150は閉鎖端を含んでもよく、場合によっては、第1チューブ120の配置を助けるために、丸みを帯びるかまたは滑らかにされてもよい。
【0048】
別の追加または代替の潜在的な戦略では、図6に示すように、線維素溶解剤コーティング190が、胸水に暴露される第1チューブ120の少なくとも一部に提供される。このような線維素溶解剤コーティング190は、体液中のフィブリン、フィブリン凝塊、フィブリン鎖、フィブリン膜、線維素性隔壁および任意の他の線維素性屑を分解するのに役立つことができ、自動ポンプを用いた濾過体液管理システム102を体液が通過することを可能にする。線維素溶解剤コーティング190の線維素溶解因子の例には、プラスミン、組織プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、プラスミノゲン活性化因子阻害剤1阻害剤およびプラスミノゲン活性化因子阻害剤2阻害剤が含まれる。線維素溶解剤の他の例を使用してもよい。
【0049】
別の追加または代替戦略では、図7に示すように、フィブリンスカベンジャー192は、胸水に暴露される第1チューブ120の少なくとも一部に提供される。フィブリンスカベンジャーは、フィブリノゲンをフィブリンに変換し、胸水内で、自動ポンプを用いた体液管理システム102の体液通路に自由に入ることができなくなるように、カテーテルの先端部に着けるように設計されている。フィブリンスカベンジャーの例には、トロンビン、第XIIIa因子、表面粗さ、表面性状、マイクロファイバーおよびダクロンが含まれる。フィブリノゲンをフィブリンに変換するための他のフィブリンスカベンジャーまたは他のアプローチは、胸水中で、自動ポンプを用いた体液管理システム102の体液通路を自由に詰まらせることができなくなるように、胸水からフィブリンを除去するために用いることもできる。
【0050】
目詰まりを防止するための追加または代替戦略では、自動ポンプを用いた体液管理システムの体液入口、体液出口、第1チューブ、第2チューブまたは任意の他の態様は、抗凝固因子または線維素溶解因子でコーティングされてもよい。たとえば、ポンプ110、第1チューブ120または第2チューブ122の構成要素または表面は、少なくとも一部分において抗凝固因子または線維素溶解因子でコーティングされてもよい。抗凝固因子の存在によって、(抗凝固因子が存在しなければ発生するであろう)凝固の量を低減させてもよい。抗凝固因子の例には、ヘパリン、低分子量ヘパリン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、イドラビオタパリヌクス、ディアビガトラン、リバロキサバン、アピキサン、ベトリキサバン、エドキサバン、ダレキサバン、レタキサバン、エリバキサバン、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、ヘメンチン、ビタミンE、クマリン、ワルファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アトロメンチン、フェニンジオン、ブロジファクムおよびジフェナクムが含まれる。線維素溶解因子の例には、プラスミン、組織プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、プラスミノゲン活性化因子阻害剤1阻害剤およびプラスミノゲン活性化因子阻害剤2阻害剤が含まれる。抗凝固因子または線維素溶解の他の例を使用してもよい。
【0051】
別の追加または代替の潜在的な戦略では、目詰まりを防止するために、または目詰まりが発生した場合に対処するために、自動ポンプ110の壁は、自動ポンプを用いた体液管理システム100の内部へのたとえば、抗凝固薬、線維素溶解剤または他の適切な材料の注入のために、針または類似の物体で穴をあけることができる材料を用いて構成されてもよい。あるいは、かつ以下でさらに説明するように、自動ポンプを用いた体液管理システム100の内部にたとえば抗凝固薬、線維素溶解剤または他の適切な材料を注入することも可能にするアクセスポートを自動ポンプ110に追加してもよい。
【0052】
目詰まりを防止するための追加または代替戦略では、胸膜腔220の経胸壁超音波検査によって明らかにされた、システムを詰まらせる可能性が低い好ましい胸水特性に基づいて患者が選択されてもよい。たとえば、自動ポンプを用いた体液管理システムの使用は、胸膜腔220の経胸壁超音波検査によって明らかにされた無エコー(透明な体液)を呈する患者に限定してもよい。複雑な中隔滲出液、均一エコー源性滲出液および複雑な非中隔滲出液、または特性の組み合わせなどの他の胸水特性も好ましい場合がある。
【0053】
2.自動肋間ポンプを用いた体液管理システム
図8Aを参照すると、第1肋骨と第2肋骨との間に配置するための自動肋間ポンプを用いた体液管理システム103は、大略的に、内部空間を取り囲み入口130および出口132を有する弾力のある可撓性構造であるポンプ111を含む。自動肋間ポンプ111は、ポンプ111が圧縮され、次いで元の状態に自由に戻るのを可能にする任意の適切な材料で作られてもよい。たとえば、ポンプ111は、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニルまたはラテックスゴムで作られる弾力のある可撓性チューブまたは円筒であってもよい。あるいは、ポンプ111は、構成材料のうちの少なくとも1つが弾力性を提供し、構成材料のうちの少なくとも1つが体液の封じ込めを提供する、2つ以上の材料の組み合わせで作られてもよい。たとえば、ポンプ111は、弾力性を提供するための、弾性のあるニチノール、鋼、ポリエステルまたは他の弾性のある構成要素と、ポンプ111内への体液の封じ込めを提供するための、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ラテックスゴム、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、PEBAX(登録商標:第1703062号)などの第2の体液封じ込め構成要素とで構成されてもよい。
【0054】
ポンプ111は略円筒形で示されているが、他の構成も可能である。要するに、ポンプ111は、適切な圧縮/減圧と肋間領域における配置とを提供するための任意の形状であってもよい。特に、ポンプ111を特定の領域の特性(すなわち、形状および腔の両方または一方)に、ある程度適合させることが望ましい場合がある。一実施形態では、ポンプ111は可撓性シリコーンチューブを含んでもよい。しかしながら、ポンプ111は、他の形態をとってもよい。
【0055】
自動肋間ポンプを用いた体液管理システム103は、第1チューブ120および第2チューブ122も含む。入口130および出口132は、それぞれ、肋間ポンプ111の内部と外部との間で連通しており、それぞれ第1チューブ120および第2チューブ122に連結されている。言い換えれば、入口130および出口132は、それぞれ第1チューブ120および第2チューブ122と、肋間ポンプ111の内部空間との間の流体連通を提供するように構成される。
【0056】
第1チューブ120は、チューブ入口端150およびポンプ入口端140を含む。大略的に、第1チューブ120は、自動肋間ポンプを用いた体液管理システム103を使用するときに、チューブ入口端150が、体液がそこから排出される人体の領域に配置されるように構成される。一方で、ポンプ入口端140は、肋間ポンプ111の入口130に連結される。そのため、長さ延長部160で示されているように、第1チューブ120の長さは変化してもよい。
【0057】
同様に、第2チューブ122は、ポンプ出口端142およびチューブ出口端152を含む。大略的に、第2チューブ122は、自動肋間ポンプを用いた体液管理システム103を使用するときに、チューブ出口端152が、体液がそこへ排出される人体の領域に配置されるように構成される。一方で、ポンプ出口端142は肋間ポンプ111の出口132に連結される。そのため、長さ延長部162で示されているように、第2チューブ122の長さは変化してもよい。
【0058】
第1チューブ120および第2チューブ122は、実質的に直線状に(すなわち、ポンプ111の壁に直角に)肋間ポンプ111に入るように示されているが、第1チューブ120および第2チューブ122は、任意の所望の角度で肋間ポンプ111に入るように構成されてもよい。たとえば、肋間ポンプ111をより有利に肋間領域内に位置させることができるように、第1チューブ120および第2チューブ122が、それぞれ、約90度の角度で肋間ポンプ111を出入りすることが望ましい場合がある。第1チューブ120および第2チューブ122が、他の角度で出入りすることが望ましい場合もある。
【0059】
チューブ120および122は、大略的に、任意の形態または方向となるように操作および成形または操作もしくは成形が容易な可撓性チューブとして示されているが、いくつかの実施形態では、チューブの所望の形状または方向が維持されるように、チューブ120および122が、ある程度は剛性的または半剛性的に設定されることが望ましい場合がある。たとえば、チューブのうちの1本が、肋間ポンプ111を離れる際に90度の屈曲を有するように、少なくとも一部が剛性的または半剛性的に構成、成形または鋳造されてもよい。チューブ120および122は、それぞれ、同様な90度の屈曲で構成されてもよい。あるいは、チューブは、同様な屈曲を有さなくてもよい。さらに別の代替手段として、チューブは、それぞれ、他の程度の屈曲を有してもよい。
【0060】
図8Aを参照すると、第1チューブ120は、1つまたは複数の体液入口穿孔170を含んでもよい。体液入口穿孔170は、チューブ入口端150だけでなく、体液入口穿孔170を通して第1チューブ120に体液を吸い込むことができるようにするための、第1チューブ120の表面の穴の形態をとってもよい。体液入口穿孔170によって、第1チューブ120への体液吸い込みの容量または効率を改善してもよく、それによって、肋間ポンプを用いた体液管理システム103によって排出される体液量または効率を改善してもよい。体液入口穿孔170は、特に、チューブ入口端150または他の穿孔が、たとえばフィブリン凝塊、フィブリン鎖もしくは他の屑、または胸壁もしくは肺に対する第1チューブ120の並置によって塞がれる場合に代替の体液入口位置を可能にするので特に有益な場合がある。第2チューブ122は、体液出口穿孔180も含んでもよい。
【0061】
図8Bおよびそこに示される挿入断面図Cを参照すると、第1チューブ120は1つまたは複数の直線体液チャネル175を含んでもよい。第1チューブ120の表面のライナー体液入口スリット174は、直線体液チャネル175に開口し、第1チューブ120の直線体液チャネル175への体液の吸い込みを可能にする。組み合わせることで、これらの機構は第1チューブ120の目詰まりに対する冗長性を提供する。直線体液入口スリット174は、単一のスリットまたは複数のスリットの一部が、たとえば、フィブリン凝塊、フィブリン鎖もしくは他の屑によって、または胸壁もしくは肺に対する第1チューブ120の並置によって塞がれる場合、第1チューブ120全体は、その内部およびその長手方向に沿って体液を通過できるようにすることがなお可能であるように、その長さのかなりの部分に沿って第1チューブ120の内部へのほぼ継続的なアクセスを可能にすることによって特に有利な場合がある。さらに、直線体液吸い込みスリット174は、直線体液チャネル175に入る微粒子または屑のサイズを制限するようなサイズにすることができる。このサイズは、直線体液チャネル175の内腔を詰まらせるのに十分な大きさの微粒子または屑の進入または、自動肋間ポンプを用いた体液管理システム103内での任意の他の狭小化を防止するように選択することができる。
【0062】
図8Aおよび図8Bに関して説明した自動肋間ポンプを用いた体液管理システム103は、図4図7の自動ポンプを用いた体液管理システムに関して説明した任意の他の機構、材料または特性を追加的または代替的に含んでもよい。
【0063】
3.胸膜腹膜肋間ポンプを用いた体液管理システム
図9を参照すると、患者の体内の第1領域220から第2領域230への体液の排液を提供するための、自動肋間ポンプを用いた体液管理システム103が示されている。一実施形態では、図9に示されている実施形態と同様に、体液は、患者の胸膜腔から患者の腹膜腔に排出される。したがって、このような実施形態では、第1領域220は患者の胸膜腔であり、第2領域230は患者の腹膜腔である。
【0064】
一実施形態では、自動肋間ポンプ111は、2本の肋骨間の肋間領域に少なくとも一部が配置されるように構成される。言い換えれば、埋め込まれたときに、肋間ポンプ111は、患者の肋間腔、またはその一部を通って延びている。したがって、第1チューブ120およびそれに応じてポンプ入口130は、患者の骨性胸郭の内部に配置される。第2チューブ122およびそれに応じてポンプ出口132は、患者の骨性胸郭の外部に配置される。このように、呼吸および対応する骨性胸郭の圧縮/減圧によって、患者210は自動的に肋間ポンプ111を動作させる(たとえば「圧送する」)ことになる。肋間ポンプ111の動作については、以下でさらに説明する。
【0065】
4.自動肋間ポンプ
a.自動肋間ポンプの設計
図10Aは、入口一方向弁320および出口一方向弁322(以下でさらに詳細に説明する)の両方が閉鎖された、大略的または実質的に非圧縮状態にある自動肋間ポンプ111の断面模式図を示す。上記のように、自動肋間ポンプ111は、大略的に、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ラテックスゴムまたは他の適切な弾力性のある材料で作られる、弾力性のある可撓性チューブまたは円筒であってもよい。あるいは、ポンプ111は、構成材料のうちの少なくとも1つが弾力性を提供し、構成材料のうちの少なくとも1つが体液の封じ込めを提供する、2つ以上の材料の組み合わせで作られてもよい。たとえば、ポンプ111は、弾性のあるニチノール、鋼、ポリエステルまたは他の弾性のある構成要素などの第1の弾力性のある構成要素と、肋間ポンプ111内からの漏れを最小限に抑えるための、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ラテックスゴム、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、PEBAX(登録商標:第1703062号)などの第2の体液封じ込め構成要素とで構成されてもよい。
【0066】
自動肋間ポンプ111は、内部空間330を囲むポンプ壁を含む。説明のために、ポンプ壁は、上壁310および下壁312を含むものとして示されている。上壁と下壁との間の区別は、肋間ポンプ111の圧縮/減圧を説明する際の明確さを目的としてなされたもので、肋間ポンプ111が2つの異なるポンプ壁を含むと限定するものとして解釈すべきではない。
【0067】
大略的に、ポンプ壁310(312)は、肋間ポンプ111の所望の可撓性および弾力性を実現するのに適した任意の材料および任意の厚さで構成されてもよい。所与の実施形態でのポンプ壁310(312)の特定の厚さは、たとえば、ポンプ壁310(312)の材料および肋間ポンプ111の使用目的(たとえば排液機能)に依存してもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ壁310(312)は、約30~約70(ヤング率約1.15~約5.5MPa)、好ましくは約40~約60(ヤング率約1.7~約3.6MPa)、より好ましくは約45~約50(ヤング率約2.0~約2.5MPa)のASTM D2240タイプAのデュロメータを有するシリコーンで作られてもよい。いくつかの実施形態では、肋間ポンプ111は、実質的に円形の断面を有する大略的または実質的に円筒形のシリコーン構造を含んでもよい。実質的に円筒形のシリコーン構造は、約2~約14mm、好ましくは約4~約10mm、より好ましくは約6~約7mmの内径と、約3~約16mm、好ましくは約6~約12mm、より好ましくは約8~約10mmの外径と、約0.3~約3mm、好ましくは約0.5~約2mm、より好ましくは約0.7~約1.0mmの壁厚とを有してもよい。一実施形態では、実質的に円筒形の構造は、約6.4mmの内径と約8mmの外径とを有し、対応する壁厚は約0.8mmであってもよい。他の実施形態では、肋間ポンプ111は、実質的に楕円形の断面または実質的に長方形の断面を有するシリコーン構造を含んでもよい。他の形状および寸法が望ましい場合もある。
【0068】
肋間ポンプ111は、入口一方向弁320および出口一方向弁322をさらに含む。入口弁320は、入口130に略近接してポンプ本体の内部空間330内に位置してもよい。入口一方向弁320は、任意の適切な一方向弁であってもよく、たとえば、シリコーンまたは他の適切な材料で作られてもよい。入口一方向弁320は、肋間ポンプ111の内部空間330から入口130への体液の移動を妨げるかまたは実質的に妨げるように構成される。同時に、入口一方向弁320は、入口130から肋間ポンプ111の内部空間330への体液の移動を可能にするように構成される。言い換えれば、入口一方向弁320は、大略的に、入口130から肋間ポンプ110の内部空間330への一方向の体液の移動を提供するように入口130と流体連通している。
【0069】
それに応じて、出口一方向弁322は、出口132に略近接しているポンプ本体の内部空間330内に位置してもよい。出口一方向弁322は任意の適切な一方向弁であってもよく、たとえば、シリコーンまたは他の適切な材料で作られてもよい。出口一方向弁322は、肋間ポンプ111の内部空間330から出口132への体液の移動を可能にするように構成される。同時に、出口一方向弁322は、出口132から肋間ポンプ111の内部空間330への体液の移動を妨げるかまたは実質的に妨げるように構成される。言い換えれば、出口一方向弁322は、肋間ポンプ111の内部空間330から出口132への一方向の体液の移動を提供するように出口132と流体連通している。
【0070】
肋間ポンプ111の一実施形態では、肋間ポンプ111の圧縮/減圧が、入口一方向弁320および出口一方向弁322に著しい圧縮、変形または望ましくない摩耗を引き起こさないように、入口一方向弁フレーム340および出口一方向弁フレーム342が、それぞれ、入口一方向弁320および出口一方向弁322の外周に追加されている。入口一方向弁フレーム340および出口一方向弁フレーム342はそれぞれ、入口一方向弁320および出口一方向弁322の外周用に、任意の比較的剛性または非可撓性の材料でそれぞれ構成されてもよい。さらに、入口一方向弁フレーム340および出口一方向弁フレーム342のそれぞれのサイズおよび形状は、第1チューブ120および第2チューブ122と、肋間ポンプ111の上壁310および下壁312との間の継ぎ目または相互接続可能な継手を提供するように選択することができる。肋間ポンプ111の圧縮/減圧が、入口一方向弁320および出口一方向弁322に著しい圧縮、変形、または望ましくない摩耗を引き起こさないように機能することができる、他の種類の弁フレームを使用してもよい。
【0071】
入口一方向弁320および出口一方向弁322は、肋間ポンプ111の内部空間330内に位置するように示されているが、弁の代替配置が望ましい場合もあることに留意されたい。たとえば、入口一方向弁320および出口一方向弁322の一方または両方は、それぞれポンプ本体の外部に、または可能性としては入口チューブ120および出口チューブ122内に位置してもよく、またはそれぞれ入口チューブ120とポンプ本体との間、または出口チューブ122とポンプ本体との間に位置してもよい。弁の特定の配置は、肋間ポンプ111に出入りする一方向の体液の流れを実質的に十分に提供する限りは必ずしも重要ではない。
【0072】
b.ポンプ動作
図10Bは、大略的または実質的に圧縮状態にある肋間ポンプ111の断面模式図を示す。一実施形態では、示されているように、第1力350を上壁310に作用させて、上壁310を内部空間330に向けて凹ませてもよい。それに応じて、第2力352を追加的または代替的に下壁312に作用して、内部空間330に向けて下壁312を凹ませてもよい。上壁310および下壁312または上壁310もしくは下壁312の凹みは、内部空間330の容量を減少させ、内部空間330の圧力を増加させるのに役立つ。この圧力の増加によって、入口一方向弁320は閉鎖されたままとなり、出口一方向弁322は開放され、内部空間330内に位置する体液は、内部空間330から、出口一方向弁322を通って第2チューブ122に流れる。非圧縮性の体液の場合、上壁310および下壁312または上壁310もしくは下壁312の凹みに応じて内部空間が受ける容量の変化は、内部空間330から出口一方向弁322を通って移動する体液量にほぼ等しい。内部空間330から出口一方向弁322を通って体液が移動すると、内部空間の圧力が低下する。内部圧力がポンプ出口132の圧力とほぼ等しいかまたは実質的に等しくなると、流れは停止し、図10Cに示すように、出口一方向弁322は閉じる。
【0073】
上記のように、肋間ポンプ111は実質的に弾力のある可撓性であり、したがって、図10Bおよび図10Cに示すように、圧縮状態に置かれた後、第1力350および第2力352のうちの少なくとも1つが取り除かれると、肋間ポンプ111は、図10Dに示すように、非圧縮状態に戻る。第1力350が取り除かれるのに伴い上壁310が非圧縮状態に戻るため、および第2力352が取り除かれるのに伴い下壁312が非圧縮状態に戻るため、またはそのいずれかのため、内部空間330の容量が増加し、内部空間330の圧力が減少する。内部空間330の内部の圧力は、最終的に入口の内部の圧力を下回り、入口一方向弁320を開放し、入口に位置する体液を内部空間330に流入させる。このように、肋間ポンプ111は、大略的に、入口130から体液を引き込み、出口132まで体液を届けるポンプとして動作する。
【0074】
さらに、図10Eおよび図10Fに示すように、肋間ポンプ111は、図10Aおよび図10Bに示すように、補強材333が存在しないときの内部空間330の容量変化と比較して、第1力350および第2力352のうちの少なくとも1つが加えられたときに内部空間330でより大きな容量変化が生じるように、壁と一体化されるかまたは壁に取り付けられた補強材333を備えて構成されてもよい。これが起きる理由は、ポンプの上壁310および下壁312のより長い長さに沿って比較的狭く加えられた第1力350および第2力352を分配するのに補強材333が役立つことによって、ポンプの内部容量330のより大きな変化が引きこされるからである。補強材333は、補強材333の両端が一緒に移動するように上壁310および下壁312の長手方向に沿って中間に位置するように示されているが、補強材が、今度は、第1力350および第2力352のうちの少なくとも1つが加えられたときに、より大きな容量変化を内部空間330にもたらすレバーアームとして機能するように、各部材の一端が入口一方向弁フレーム340または出口一方向弁フレーム342のすぐ近くに配置されるかまたはさらにはそれらに取り付けられるように補強材333を配置することも可能である。補強材333は、大略的に、任意の適切なサイズおよび形状にすることができ、任意の適切な材料で製造することができ、場合によっては、上壁310および下壁312を形成する材料よりも一般的により剛性である任意の適切な材料で製造することができる。
【0075】
肋間ポンプ111は、使用中に、患者の呼吸の結果として圧縮されてもよい。より詳細には、肋間ポンプ111は、呼吸サイクル中の患者の肋骨の自然な動きの結果として圧縮されてもよい。さらに、肋間ポンプ111は、内部空間330が外肋間筋または内肋間筋の線維の間を通過するように配置されてもよく、これらの筋線維の収縮の結果として圧縮されてもよい。
【0076】
図11Aに示すように、肋間ポンプ111は、使用時に、胸壁の肋骨から選択される第1肋骨412と第2肋骨414との間に配置される。本明細書における第1肋骨および第2肋骨への言及は、必ずしも解剖学的に第1肋骨および第2肋骨を指すわけではないが、その場合もある。骨性胸郭が(吸気時に)拡張すると、個々の肋骨410、412、414および416は離れ、肋骨のこの構成では、比較的小さな力が肋間ポンプ111に加えられる。したがって、肋間ポンプ111は大略的または実質的に非圧縮状態にある。
【0077】
図11Bに示すように、骨性胸郭が(呼気時に)収縮すると、個々の肋骨410、412、414および416は互いに向かって移動する。その結果、第1力350および第2力352または第1力350もしくは第2力352が、それぞれ、第1肋骨412および第2肋骨414または第1肋骨412もしくは第2肋骨414によって肋間ポンプ110に加えられる。したがって、肋間ポンプ111は、大略的または実質的に圧縮状態にある。
【0078】
平均的な成人は、1分間に約16回呼吸する。したがって、使用時に、肋間ポンプ111は、1分間に約16回、または1日に約23,040回圧縮される可能性がある。もちろんこれは単なる概算であり、大きく異なる可能性がある。特定の圧縮速度は肋間ポンプ111の機能に必ずしも重要ではないが、体液が圧送される速度は、圧縮速度および圧縮の大きさ(すなわち、肋骨の動きの程度)によって変化する。
【0079】
平均的な成人は、呼吸サイクルを通じて第1肋骨412と第2肋骨414との間で約0.25~3ミリメートルの相対運動を示す。したがって、肋間ポンプ111の壁は、各呼吸中に約0.25~3ミリメートル圧縮される可能性がある。これももちろん単なる概算であり、患者ごとに大きく異なる可能性があり、特定の患者にとっては、特定の解剖学的な第1肋骨412および第2肋骨414と、脊椎および胸骨の両方または一方に対する第1肋骨412および第2肋骨414の長手方向に沿った特定の位置とに応じて異なる場合がある。
【0080】
関連する考慮事項は、肋骨が軟組織によって被覆されていることである。軟組織はそれ自体が圧縮可能であり、したがって、肋間ポンプ111と第1肋骨412または第2肋骨414のいずれかとの間に軟組織がそのまま残っていると、肋間ポンプ111の圧縮可能な全範囲が影響を受ける可能性がある。したがって、場合によっては、肋間ポンプ111と第1肋骨412または第2肋骨414のいずれかとが接触する部分で軟組織を除去することが望ましい場合がある。
【0081】
別の関連する考慮事項は、肋骨が、一般的に比較的軟骨性の部分を示し、その部分それ自体が比較的圧縮可能である場合があることである。その結果、場合によっては、比較的少量の軟骨を示している第1肋骨412および第2肋骨414の部分(すなわち、軟骨とは対照的に、露出した骨の量が比較的多い部分)に接触するように肋間ポンプ111を配置することが望ましい場合がある。
【0082】
さらに別の関連する考慮事項は、それぞれ第1肋骨412および第2肋骨414に接触する肋間ポンプ111の表面積の量を著しく増加するかまたは実質的に最大化するように肋間ポンプ111を配置することが望ましい場合があることである。このようにして、肋間ポンプ111は、より大きな圧縮を受ける可能性がある。したがって、図11Aおよび図11Bに大略的に示されている実質的に垂直な配置とは対照的に、肋間ポンプ111を、第1肋骨412および第2肋骨414に対して実質的に平行に、または実質的に垂直と実質的に平行との間の任意の角度に配置することが望ましい場合がある。
【0083】
さらに別の関連する考慮事項は、第1肋骨412と第2肋骨414とが相対的に離されている場合であっても肋間ポンプ111が少なくとも一部圧縮されるように、吸気終了時に第1肋骨412と第2肋骨414との間の距離に対して肋間ポンプ111を一定のサイズにすることが望ましい場合があることである。このように、呼吸中に生じる第1肋骨412と第2肋骨414との間の距離の変化は、肋間ポンプ111内のより大きな容量変化に変換してもよい。
【0084】
さらに別の関連する考慮事項は、第1肋骨412、第2肋骨414、胸壁の他の組織および/または肺の相対運動によって、肋間ポンプ111が呼吸中に周期的に変化し、それによって肋間ポンプ111の内部空間330の容量が呼吸によって周期的に変化することで体液が圧送されるように、第1肋骨412および第2肋骨414に対して肋間ポンプ111を配置することが望ましい場合があることである。
【0085】
c.弁の構造
図12は、閉状態および開状態の一方向入口弁の断面図と、閉状態および開状態の一方向出口弁の断面図とを示す。パネルAでは、入口一方向弁フレーム340が、入口一方向弁320を取り囲んで構造および支持を提供する、閉状態の入口一方向弁320を示す。パネルBでは、開状態の入口一方向弁320を示す。入口一方向弁フレーム340のサイズおよび形状は、第1チューブ120に対する継ぎ目または相互接続可能な継手を提供するように選択することができる。パネルCでは、出口一方向弁フレーム342が、出口一方向弁322を取り囲んで構造および支持を提供する、閉状態の出口一方向弁322を示す。パネルDでは、開状態の出口一方向弁322を示す。入口一方向弁フレーム342のサイズおよび形状は、第1チューブ122に対して継ぎ目または相互接続可能な継手を提供するように選択することができる。
【0086】
入口一方向弁320については、図12のパネルAに示すように閉位置にあるとき、弁を横切る圧力差は、圧力P≦P+P(式中、PおよびPは、パネルAで示した位置での圧力であり、Pは弁のクラッキング圧力である)である。同様に、入口一方向弁320が図12のパネルBに示すように開位置にあるとき、弁を横切る圧力差は、圧力P>P+P(式中、PおよびPは、パネルBで示した位置での圧力であり、Pは、同様に弁のクラッキング圧力である)である。
【0087】
出口一方向弁322については、図12のパネルCに示す閉位置にあるとき、弁を横切る圧力差は、圧力P≦P+P(式中、PおよびPはパネルCで示した位置での圧力であり、Pは、弁のクラッキング圧力である)である。同様に、出口一方向弁322は、図12のパネルDに示す開位置にある場合、弁を横切る圧力差は、圧力P>P+P(式中、PおよびPは、パネルDで示した位置での圧力であり、Pは、同様に弁のクラッキング圧力である)である。
【0088】
一実施形態では、入口一方向弁320および出口一方向弁322は、閉位置から開位置に移動することができるスリットを画定する、薄くて実質的に平坦なリップを有するダックビル弁として形成される。一実施形態では、入口一方向弁320および出口一方向弁322は、弁を横切る比較的小さい圧力差で弁が閉状態から開状態に移行するように、低いクラッキング圧力Pを有してもよい。このクラッキング圧力Pは、大部分の患者で動作するためには約25cmH0未満に、好ましくは約15cmH0未満に、より好ましくは約10cmH0未満に、さらには約5cmH0未満にまですることもできる。一実施形態では、弁を横切る小さい圧力差で弁が開状態から閉状態に移行するように、入口一方向弁320および出口一方向弁322は、低い再シール圧力を有してもよい。この再シール圧力は、大部分の患者で動作するためには約15cmH0未満に、好ましくは約10cmH0未満に、より好ましくは約5cmH0未満に、さらには約2cmH0未満にまですることもできる。
【0089】
さらに、一実施形態では、入口一方向弁320および出口一方向弁322は、閉鎖されてそれらの一方向の反対側に弁を横切って圧力勾配が存在するときに、最小限の変形を受けるように構成される。具体的には、入口一方向弁は、弁を横切って背圧が存在するとき、すなわちP≦P+Pのとき、最小限の変形を受け、出口一方向弁は、弁を横切って背圧が存在するとき、すなわちP≦P+Pのとき、最小限の変形を受ける。このような設計により、ポンプ本体の内部空間330で生じる容量変化は、自動肋間ポンプ111を通る順流にほぼまたは実質的に1対1に変換される。変形に対するこの抵抗性は、シールまたは閉鎖された入口一方向弁320および出口一方向弁322を横切って背圧が加えられるときに生じる逆流容量として評価することができる。50cmHO以下の背圧が加えられた場合、逆流は、大部分の患者で動作するためには約200マイクロリットル未満で、好ましくは約100マイクロリットル未満で、より好ましくは約50マイクロリットル未満で、さらには約25マイクロリットル未満であってもよい。このように、各サイクルで順方向に圧送される容量(Vforward)は、ポンプの内部空間330の容量変化(ΔVinternal space)から弁を再シールするのに必要な弁の変形容量を引いたもの(Vreseal volume)に近いか、実質的に等しいか、または等しい。一般的には、別の言い方をすれば次のようになる。
【0090】
forward=ΔVinternal space-Vreseal volume
一方向弁320、322に使用してもよい弁の非限定的な例は、その全体が参照によって本願に組み込まれる、「低クラッキング圧及び高流量を有する小型ダックビル弁(Miniature Duckbill Valve Having a Low Cracking Pressure and High Flow Rate)」と題された米国特許第5261459号明細書に記載されているタイプである。
【0091】
d.胸膜腹膜自動肋間ポンプの代替設計
図1図7に記載されている自動ポンプを用いた体液管理システムの任意の態様、機構、特性など、またはそれらの組み合わせは、図8図12の自動肋間ポンプを用いた体液管理システムに組み込まれてもよい。例として、自動肋間ポンプを用いた体液管理システムの閉塞または目詰まりを防止し、システムを通る流れを維持するために、第1チューブ120は、自動肋間ポンプを用いた体液管理システム104に入る体液の濾過機構を提供するように構成することができる。
図13を参照すると、第1チューブ120は、1つまたは複数の体液濾過入口穿孔173を含んでもよい。体液濾過入口穿孔173は、第1チューブ120に体液を吸い込むことができるようにするための、第1チューブ120の壁の穴の形態をとってもよい。体液濾過入口穿孔173は、濾過穿孔173を通過することができる任意の線維素性凝塊、線維素性鎖または他の屑が、体液の流れを塞ぐかまたは著しく妨げることなく、自動肋間ポンプを用いた濾過体液管理システム104の体液通路全体も通過することができるようなサイズおよび形状である。あるいは、体液濾過入口穿孔173は、ありとあらゆるこのような穿孔が、自動肋間ポンプを用いた濾過体液管理システム104の体液通路全体に沿って存在する最小開口部よりも小さいようなサイズおよび形状である。たとえば、体液濾過入口穿孔173は、入口一方向弁320および出口一方向弁322の開口部よりも小さいようなサイズおよび形状であってもよい。したがって、体液濾過入口穿孔173を通過することができる任意の線維素性凝塊、線維素性鎖または他の屑は、自動ポンプを用いた濾過体液管理システム104の体液通路の最小開口部よりも小さく、そのため自動ポンプを用いた濾過体液管理システム102の体液通路を通過することができるはずである。図13に示すように、第1チューブ120のチューブ入口端は閉鎖端を含んでもよく、場合によっては、第1チューブ120の配置を助けるために、丸みを帯びるかまたは滑らかにされてもよい。
【0092】
ポンプの第1肋骨と第2肋骨との間の肋間腔における肋間ポンプ111の安定した位置および配向を提供することは有益な場合がある。図14Aに示すように、安定性および配向機構200が、場合によっては肋間ポンプの周りに、たとえば肋間ポンプ111の出口部分に近接して提供される。安定性および配向機構200は、図14Aでは、肋間ポンプ111本体に対して環状または部分的に環状の比較的平坦な表面201を有し、肋間ポンプ111の長軸に対して適切な角度203で配向された比較的丸みを帯びた略円錐形の機構として示されている。使用時に、図14Bに示すように、肋間ポンプ111が第1肋骨414と第2肋骨416との間に配置されると、安定性および配向機構200の平坦な表面201は、第1肋骨414および第2肋骨416ならびに間にある任意の軟組織と相互作用して、胸壁に対して大略的に角度203によって決定される所望の角度で肋間ポンプ111を配向し、この角度での安定性と、胸壁に対する肋間ポンプの軸に沿った肋間ポンプの移動に対する安定性とを提供する。大略的に丸みを帯びた円錐形で示されているが、安定性および配向機構200の全体形状は、胸壁に対して肋間ポンプ111を配向すること、および/または、胸壁に対するその配向と肋間ポンプ111の軸方向位置の安定性との両方もしくは一方を提供すること、に本質的に役立つ任意の形状にすることができる。
【0093】
胸膜腔と、皮膚と胸郭との間の皮下組織と、の間の移行によりよく適合するために、さらなる実施形態を構築することができる。図15Aに示すように、取り付けられた自動肋間ポンプを用いた体液管理システム105は、胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合するために、ほぼまたは実質的に「L字型」である取り付けられたポンプ112を含む。より一般的には、取り付けられたポンプ112は、約1度~179度、好ましくは約45度~135度、より好ましくは約75度~105度、場合によってはおよそ約90度のポンプ112の傾斜移行を提供する傾斜部または移行部(たとえば下記のように、部分112’と部分112’’との間)のある形状であってもよい。患者に配置されるとき、取り付けられたポンプ112の肋間部分112’は第1肋骨と第2肋骨との間の肋間腔に配置され、ポンプ112の皮下部分112’’は、皮膚の下かつ骨性胸郭の外側部分の皮下組織に配置される。この構成および配置では、患者の呼吸に伴って、ポンプ112の肋間部分112’は、たとえば図11Aおよび図11Bについて説明したように、第1肋骨および第2肋骨によって周期的に圧縮および減圧され、それによって、ポンプへの継続的なポンピング動作と、胸膜腔から腹膜腔への体液の流れとを自動的に提供する。さらに、この構成および配置では、ポンプ112の皮下部分112’’は、骨性胸郭の外側に配置され、胸膜腔から腹膜腔への体液の流れを補うために必要に応じてポンプ112の追加のポンピング動作を提供することができる、皮膚と胸郭との間の周期的(または非周期的)手動圧縮を利用可能である。図15Bは、取り付けられた自動肋間ポンプを用いた体液管理システム105のポンプ112の断面模式図である。
【0094】
胸膜腔と胸壁の皮下組織との間の移行によりよく適合し、安定した位置決めを提供するための別の代替手段を図16Aに示す。自動肋間ポンプを用いた移行体液管理システム106は、胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合するために移行チャンバ701に接続された肋間ポンプ113を含む。移行チャンバ701は、円筒の平坦な第1端710、平坦な第1端710から円筒の反対側にある平坦な第2端711および、円筒の壁に一体化されるかまたはそれに取り付けられた出口一方向弁フレーム342、に肋間ポンプ113が接続された円筒として示されている。患者に配置されるとき、肋間ポンプ113は第1肋骨と第2肋骨との間の肋間腔に配置され、自動肋間ポンプを用いた移行体液管理システム106の移行チャンバ701は、皮膚の下かつ骨性胸郭の外側部分の皮下組織に配置される。この構成および配置では、患者の呼吸に伴って、肋間ポンプ113は、たとえば図11Aおよび図11Bについて説明したように、第1肋骨および第2肋骨によって周期的に圧縮および減圧され、それによって、ポンプへの継続的なポンピング動作と、胸膜腔から腹膜腔への体液の流れとを自動的に提供する。さらに、この構成および配置では、移行チャンバ701は、骨性胸郭の外側に配置され、胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合するために、第1チューブ120のポンプ入口端140から第2チューブ122のポンプ出口端142へのほぼまたは実質的に90度(または他の適切な角度)の移行を提供する。円筒の平坦な第1端710は、移行チャンバ701と骨性胸郭との安定したインターフェースを提供し、第1肋骨と第2肋骨との間の肋間腔における肋間ポンプ113の安定した位置決めを維持するのに役立つ。移行チャンバ701は、端が平坦な円筒として示されているが、第1チューブ120のポンプ入口端140から第2チューブ122のポンプ出口端142への最大90度(または他の適切な角度)の移行と、肋間ポンプの安定性とを提供する任意の適切な形状とをとることができる。移行チャンバ701は、ナイロン、アクリル、ポリカーボネート、PEEK、ABS、PET、ステンレス鋼または他の適切な材料などの任意の比較的剛性または非可撓性の材料で構築されてもよい。しかしながら、必要に応じて、比較的より可撓性の材料で作ることもできる。図16Bは、移行自動肋間ポンプを用いた体液管理システム106のポンプ113および移行チャンバ701の断面模式図を示す。
【0095】
胸膜腔と皮下組織との間の移行によりよく適合し、安定した位置決めを提供するための別の解決策を図17に示す。本実施形態では、移行チャンバ701は骨性胸郭と係合するように構成され、それが可能であり、第1肋骨と第2肋骨との間の肋間腔における肋間ポンプ113の安定した位置決めと、胸壁に対する肋間ポンプ113の配向と、を維持するのに役立つ丸みを帯びた菱形の機構であり、この場合、移行チャンバ701は、第1チューブ120のポンプ入口端140から第2チューブ122のポンプ出口端142へのおよそ90度(または他の適切な角度)の移行と、肋間ポンプの安定性とを提供する。図17に示すおよそ90度の移行が望ましい場合があるが、代替の移行角度も可能であり、このような代替の1つを図18に示す。さらに、移行チャンバ701の略形状は、図19に示すフランジ付きマッシュルーム形状の例によって示されるように多様な可能性がある。自動肋間ポンプを用いた移行体液管理システム106を所定の位置に固定するために、組織内殖または縫合糸の通過を可能にするフランジ付きマッシュルーム形状移行チャンバ内の穴191などの追加の安定性機構を提供してもよい。このような場合には、マッシュルーム形状のフランジ部または少なくともその一部は、フランジ部の穴191が、内部空間330を貫通しないように構成されてもよい。
【0096】
e.手動補助装置付き胸膜腹膜自動肋間ポンプ
胸膜腔と皮下組織との間の移行に適合し、ポンピング動作への手動による補助を提供するための別の自動肋間ポンプを図20Aに示す。手動補助装置付き自動肋間ポンプを用いた移行体液管理システム107は、胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合するために、移行チャンバ702に接続された肋間ポンプ113を含む。移行チャンバ702は、円筒の平坦な第1端710、平坦な第1端710から円筒の反対側にあるドーム型第2端712および、円筒の壁に一体化されるかまたはそれに取り付けられた出口一方向弁フレーム342に肋間ポンプ113が接続されたドーム型円筒として示されている。本実施形態では、移行チャンバ702本体および第1平坦端710は、ナイロン、アクリル、ポリカーボネート、PEEK、ABS、PET、ステンレス鋼、または他の適切な材料などの任意の比較的剛性または非可撓性の材料で構築されてもよく、ドーム型第2端712は、変形可能であるが元の形状に戻るポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ラテックスゴム、または他の適切な弾力性のある材料で構築されてもよい。患者に配置されるとき、肋間ポンプ113は第1肋骨と第2肋骨との間の肋間腔に配置され、移行チャンバ702は、皮膚の下かつ骨性胸郭の外側部分の皮下組織に配置される。この構成および配置では、患者の呼吸に伴って、肋間ポンプ113は、たとえば図11Aおよび図11Bについて説明したように、第1肋骨および第2肋骨によって周期的に圧縮および減圧され、それによって、ポンプへの継続的なポンピング動作と、胸膜腔から腹膜腔への体液の流れとを自動的に提供する。さらに、この構成および配置では、移行チャンバ702は骨性胸郭の外側に配置され、胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合するために、第1チューブ120のポンプ入口端140から第2チューブ122のポンプ出口端142への最大90度の移行を提供する。円筒の平坦な第1端710は、移行チャンバ702と骨性胸郭との安定したインターフェースを提供し、弾力性のあるドーム型端712は骨性胸郭から外方に臨み、皮膚の下の皮下組織に配置される。したがって、皮下の弾力性のあるドーム型端712は、胸膜腔から腹膜腔への体液の流れを補うために必要に応じて追加のポンピング動作を提供することができる周期的(または非周期的)手動圧縮を利用可能である。さらに、移行チャンバ702の弾力性のあるドーム型端712を作るために用いる材料が、穿刺後にセルフシール可能である場合、手動補助装置付き自動肋間ポンプを用いた移行体液管理システム107の内部330は、体液を吸引するかまたは抗凝固薬、線維素溶解剤および/または他の薬剤を注入するために、たとえば、ドーム型端712の弾力性のあるセルフシール材料を通して針を通過させることによってアクセスすることができる。移行チャンバ702の本体および第1平坦端は、任意の比較的剛性または非可撓性の材料で構築されてもよいが、追加的または代替的に、必要に応じて、より可撓性の材料で作ることもできる。図20Bは、自動肋間ポンプを用いた移行体液管理システム107のポンプ113および移行チャンバ702の断面模式図である。
【0097】
f.アクセスポート付き胸膜腹膜自動肋間ポンプ
胸膜腔と皮下組織との間の移行に適合し、アクセサリアクセスポート721を提供する別の自動肋間ポンプを図20Aに示す。アクセスポート付き自動肋間ポンプを用いた移行体液管理システム107’は、胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合するための移行チャンバ702に接続された肋間ポンプ113を含む。移行チャンバ702は、円筒の平坦な第1端710、平坦な第1端710から円筒の反対側にあるドーム型第2端712および、円筒の壁に一体化されるかまたはそれに取り付けられた出口一方向弁フレーム342に肋間ポンプ113が接続されたドーム型円筒として示されている。アクセサリアクセスポート721は、移行チャンバ702に隣接するドーム型端722付き第2ドーム型円筒として示されている。本実施形態では、アクセサリアクセスポート721の内部は、移行チャンバの内部330と流体連通しており、その結果、移行チャンバ702と流体連通している。本実施形態では、移行チャンバ702の本体、移行チャンバの第1平坦端710およびアクセサリアクセスポート721の円筒は、ナイロン、アクリル、ポリカーボネート、PEEK、ABS、PET、ステンレス鋼、または他の適切な材料などの任意の比較的剛性または非可撓性の材料で構築されてもよい。移行チャンバ702のドーム型第2端712は、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ラテックスゴム、または、変形可能であり元の形状に戻る他の適切に弾力性のある材料で構築されてもよい。アクセサリアクセスポート721のドーム型隔壁722は、特定のタイプのポリウレタン、シリコーン、ラテックスゴム、または、アクセスのために鋭く穴を開けることができるが、穿刺をシールすることが可能な他の適切なセルフシール材料で構築されてもよい。患者に配置されるとき、肋間ポンプ113は第1肋骨と第2肋骨との間の肋間腔に配置され、移行チャンバ702は、皮膚の下かつ骨性胸郭の外側部分の皮下組織に配置される。この構成および配置では、患者の呼吸に伴って、肋間ポンプ113は、たとえば図11Aおよび図11Bについて説明したように、第1肋骨および第2肋骨によって周期的に圧縮および減圧され、それによって、ポンプへの継続的なポンピング動作と、胸膜腔から腹膜腔への体液の流れとを自動的に提供する。さらに、この構成および配置では、移行チャンバ702は骨性胸郭の外側に配置され、胸膜腔から皮下組織への移行によりよく適合するために、第1チューブ120のポンプ入口端140から第2チューブ122のポンプ出口端142への最大90度の移行を提供する。円筒の平坦な第1端710は、移行チャンバ702と骨性胸郭との安定したインターフェースを提供し、弾力性のあるドーム型端712は骨性胸郭から外方に臨み、皮膚の下の皮下組織に配置される。したがって、皮下の弾力性のあるドーム型端712は、胸膜腔から腹膜腔への体液の流れを補うために必要に応じて追加のポンピング動作を提供することができる周期的(または非周期的)手動圧縮を利用可能である。さらに、アクセサリアクセスチャンバ721のセルフシールドーム型隔壁722は、針で穿刺することによって患者の皮膚の下でアクセス可能であり、それによって、内部空間330内で内容物を採取するために、または抗凝固薬、線維素溶解剤および/または他の薬剤を移行チャンバ702の内部空間330に注入するために、移行チャンバ702の内部空間330に、かつ入口弁320の出口側および出口弁322の入口側に直接接続する。内部空間330からの採取時に、採取プロセス中に陰圧が生じる場合があり、それによって入口弁320が開き、第1チューブ120のポンプ入口端140から体液が流れて、第1チューブ120内の内容物の間接的な採取も可能になることに留意されたい。同様に、抗凝固薬、線維素溶解剤および/または他の薬剤の内部空間330への注入時に、注入プロセス中に陽圧が生じる場合があり、それによって出口弁322が開き、第2チューブ122のポンプ出口端142に体液が流れ込んで、第2チューブ122の内部の内容物に抗凝固薬、線維素溶解剤および/または他の薬剤を送達することも可能にしてもよい。移行チャンバ702の本体および第1平坦端は、任意の比較的剛性または非可撓性の材料で構築されてもよいが、追加的または代替的に、必要に応じて、より可撓性の材料で作ることもできる。
【0098】
アクセスポート付き自動肋間ポンプを用いた移行体液管理システム107’の内部にアクセスするためにアクセサリアクセスポートを使用するというこの概念は、複数のアクセスポートを提供することによってさらに用いることができる。図22に示すように、たとえば、移行チャンバ701は、丸みを帯びた菱形の機構または、骨性胸郭と係合することが可能な他の適切な形状の機構であり、それによって、第1肋骨と第2肋骨との間の肋間腔における肋間ポンプ113の安定した位置決めと、胸壁に対する肋間ポンプ113の配向と、を維持するのに役立つ。移行チャンバ701の内部330と流体連通しているセルフシールドーム型隔壁722’を備えた第1アクセサリアクセスチャンバ721’と、第1チューブ120のポンプ入口端140の内部と流体連通している第2セルフシールドーム型隔壁722’’を備えた第2アクセサリアクセスチャンバ(図22では見えない)とがある。したがって、上にある皮膚を横断し、次いで第1アクセサリアクセスチャンバ721’の第1セルフシールドーム型隔壁722’を横断することによって、体液を採取することができ、または、抗凝固薬、線維素溶解剤および/または他の薬剤を移行チャンバ702の内部空間330に選択的に注入することができる。同様に、上にある皮膚を横断し、次いで第2アクセサリアクセスチャンバの第2セルフシールドーム型隔壁722’を横断することによって、体液を選択的に採取することができ、または抗凝固薬、線維素溶解剤および/または他の薬剤を、第1チューブ120のポンプ入口端140の内部に注入することができる。
【0099】
g.胸膜腹膜電気機械式自動ポンプの設計
図23Aを参照すると、第1身体区画から第2身体区画への体液の移動のための電気機械式自動ポンプを用いた体液管理システム108は、大略的に入口130および出口132を有するポンプ118を含み、入口130と出口132との間での体液移動が可能である。電気機械式自動ポンプを用いた体液管理システム108は、第1チューブ120および第2チューブ122も含む。入口130および出口132は、それぞれポンプ115の内部と外部との間を連通して、それぞれ第1チューブ120および第2チューブ122に連結される。言い換えれば、入口130および出口132は、第1チューブ120および第2チューブ122のそれぞれと、ポンプ118の内部空間との間の流体連通を提供するように構成される。
【0100】
さらに、第1チューブ120は、第1チューブ120およびポンプ入口端140への体液の流入を可能にする複数の穿孔または開窓170を含んでもよい。大略的に、第1チューブ120は、使用するときに、穿孔170が、体液がそこから排出される人体の領域に配置されるように構成される。一方で、ポンプ入口端140は、ポンプ118の入口130に連結される。第1チューブ120の長さは、長さ延長部160で示されているように、変化してもよい。
【0101】
同様に、第2チューブ122は、ポンプ出口端142およびチューブ出口端152を含む。大略的に、第2チューブ122は、自動ポンプを用いた体液管理システム108を使用するときに、チューブ出口端152が、体液がそこへ排出される人体の領域に配置されるように構成される。一方で、ポンプ出口端142は、ポンプ118の出口132に連結される。第2チューブ122の長さは、長さ延長部162で示されているように、変化してもよい。
【0102】
図23Bは、入口一方向弁320および出口一方向弁322の両方が閉鎖された、非作動状態の、電気機械式自動ポンプを用いた体液管理システム108の断面模式図である。電気機械式ポンプ118は、入口一方向弁320および出口一方向弁322を備えた内部空間330を囲むポンプ壁を含む。
【0103】
入口弁320は、入口130に略近接しているポンプ本体の内部空間330に位置してもよい。入口一方向弁320は、本明細書に記載の任意の一方向弁などの任意の適切な一方向弁であってもよく、たとえばシリコーンで作られてもよい。入口一方向弁320は、ポンプ118の内部空間330から入口130への体液の移動を妨げるように構成される。同時に、入口一方向弁320は、入口130から電気機械式ポンプ118の内部空間330への体液の移動を可能にするように構成される。言い換えれば、入口一方向弁320は、大略的に、入口130から電気機械式ポンプ118の内部空間330への一方向の体液の移動を提供するように入口130と流体連通している。
【0104】
それに応じて、出口一方向弁322は、出口132に略近接しているポンプ本体の内部空間330に位置してもよい。出口一方向弁322は、本明細書に記載の任意の一方向弁などの任意の適切な一方向弁であってもよく、たとえば、シリコーンで作られてもよい。出口一方向弁322は、電気機械式ポンプ118の内部空間330から出口132への体液の移動を可能にするように構成される。同時に、出口一方向弁322は、出口132から電気機械式ポンプ118の内部空間330への体液の移動を妨げるかまたは実質的に妨げるように構成される。言い換えれば、出口一方向弁322は、大略的に、電気機械式ポンプ118の内部空間330から出口132への一方向の体液の移動を提供するように出口132と流体連通している。
【0105】
入口一方向弁フレーム340および出口一方向弁フレーム342は、電気機械式ポンプ118の本体に一体化されるかまたはそれに取り付けられ、かつ入口一方向弁320および出口一方向弁322の外周にあってもよい。さらに、入口一方向弁フレーム340および出口一方向弁フレーム342のサイズおよび形状は、第1チューブ120と第2チューブ122との間の継ぎ目または相互接続可能な継手を提供するように選択することができる。
【0106】
入口一方向弁320および出口一方向弁322は、肋間ポンプ118の内部空間330内に位置するように示されているが、弁の代替配置が望ましい場合もあることに留意されたい。たとえば、入口一方向弁320および出口一方向弁322の一方または両方は、それぞれポンプ本体の外部に、または可能性としては入口チューブ120および出口チューブ122内に位置してもよく、またはそれぞれ入口チューブ120とポンプ本体との間、または出口チューブ122とポンプ本体との間に位置してもよい。弁の特定の配置は、肋間ポンプ111に出入りする一方向の体液の流れを実質的に十分に提供する限りは必ずしも重要ではない。
【0107】
電気機械式ポンプ118では、液体不透過性膜550は、電池510、コントローラ530および電気機械式アクチュエータ540を含む区画から、入口一方向弁320および出口一方向弁322と流体連通している内部330を分離する。電気機械式ポンプ118では、電気機械式アクチュエータ540は、膜550に接続され、コントローラ530によって作動および非作動にされる圧電ダイヤフラムにすることができ、圧電ダイヤフラム540およびコントローラ530はいずれも電池510を動力源としてもよい。図23Bに示すように、圧電ダイヤフラム540は非作動状態にあり、入口一方向弁320および出口一方向弁322は両方とも閉鎖されている。図23Cに示すように、コントローラ530が圧電ダイヤフラム540を作動させると、圧電ダイヤフラム540は、それが電気機械式ポンプ118の内部330を打つように形状を変化させて膜550を変形させる。これによって内部330の体液に利用可能な容量が減少し、内部330内の圧力が増加し、出口一方向弁322を開き、電気機械式ポンプ118の内部330から第2チューブ122のポンプ出口端142に、そして最終的に第2チューブ122のチューブ出口端152に体液を移動させる。コントローラ530が圧電ダイヤフラム540を非作動にすると、図23Dに示すように、圧電ダイヤフラム540は元の形状に戻り、膜550は元の形状に戻る。これによって、電気機械式ポンプ118の内部330の体液に利用可能な容量が増加し、内部330内の圧力が低下し、それによって出口一方向弁322が閉鎖し、入口一方向弁320が開き、第1チューブ120のポンプ入口端140の内部から電気機械式ポンプ118の内部330に体液が移動する。このように、圧電ダイヤフラム540の周期的な作動化および非作動化によって体液が圧送される。
【0108】
症状を抑える治療が必要な再発性悪性胸水という特定の状況では、12週間の毎日の排液の終了時に、患者の25%が死亡しており、患者の50%が、繰り返しの排液に次いで胸膜腔に胸膜癒着術を実現しているため、体液の排出を停止している[ワヒディ・MW(Wahidi MW)、Randomized trial of pleural fluid drainage frequency in patients with malignant pleural effusions、AJRCCM、第195巻、1050~1057ページ(2017年)]。別の言い方をすれば、胸膜腔からの滲出液を毎日除去することができるシステムは、悪性胸水患者の75%に適切な治療を提供する。胸膜腔から排出しなければならない胸水量は、患者ごとに、また日ごとに大きく異なる可能性があり、また一般に、滲出液の排液量は、その後の排液のたびに減少する。12週間にわたる典型的な滲出液の排液量は、1日当たり約500mlで始まり、1日当たり約0mlまで減少する可能性がある。排液量の減少が、次の一次微分方程式
dV/dt=-λV
(式中、
dVは微小時間間隔dtの間の排液量であり、
Vは排液量であり、
λは減衰定数である)
で表されると仮定し、この方程式を解くと、次の形式の排液の指数関数的減衰
V(t)=V-λt
(式中、
V(t)は、特定の日tの排液量であり、
は、0日目の排液量である)
が得られる。0日目の開始排液量が500mlであり、減衰定数が1/28であると仮定すると、12週間後に排液は1日当たり25ml未満になり、排出総量は13.5リットルになる。同様に、0日目に開始排液が1000mlで過剰であった場合、同じ減衰定数1/28を仮定すれば、排液は12週間後に1日当たり50ml未満になり、排出総量は27.1リットルになる。したがって、12週間にわたって体液27リットルを圧送することが可能なシステムを設計すれば、その12週間における悪性胸水患者の大多数の排液要件を満たし、少なくとも患者の75%はさらなる介入を必要としないであろう。この関係式または任意の他の所望の関係式に基づく所望の毎日の排液値は、電気機械式ポンプの制御に用いられるルックアップテーブルに入れることができる。毎日圧送される容量を経時的に減少させることによって、電源の寿命を延ばすことができる。
【0109】
第1位置から第2位置までチューブを通して体液を移動させるためにポンプが行わなければならない仕事量は、ベルヌーイの方程式から導くことができ、次のように示される。
【0110】
【数1】
(式中、
pumpは、ポンプが体液に与える単位質量あたりのエネルギーであり、
は、位置1での圧力であり、
は、位置2での圧力であり、
ρは、体液の密度であり、
【0111】
【数2】
は、位置1での体液の平均速度であり、
【0112】
【数3】
は、位置2での体液の平均速度であり、
gは、体液に作用する重力であり、
は、位置1での体液の高さであり、
は、位置2での体液の高さであり、
frictionは、体液がチューブを通って流れるときの摩擦によるエネルギー損失である。)
第1位置から第2位置にチューブを通して体液を移動させるための主な摩擦損失は次のように導くことができる。
【0113】
【数4】
(式中、
frictionは、体液がチューブを通って流れるときの摩擦による主なエネルギー損失であり、
fは、チューブの摩擦係数であり、
【0114】
【数5】
は、体液がチューブを通過するときの体液の平均速度であり、
Lは、チューブの長さであり、
dは、チューブの直径である。)
これらの2つの方程式を組み合わせると、次が得られる。
【0115】
【数6】
患者の胸膜腔である第1領域220から患者の腹膜腔である第2領域230に滲出液を移動させるために電気機械式ポンプ118が必要とするエネルギーを決定するために、第1位置および第2位置はいずれも同じ高さにあり、体液は第1位置にあって静的であり、第2位置での圧力は第1位置での圧力よりも大きい、という簡略化された状態を考えることができる。この状態では、ポンプのエネルギー方程式は、次のように簡略化される。
【0116】
【数7】
次の関係式
【0117】
【数8】
(式中、
は、チューブを通る体液の体積流量であり、
kは、速度プロファイルを考慮に入れた補正計数である)
でチューブ内の平均速度を体積流量に置き換えると、ポンプのエネルギー方程式は次のようになる。
【0118】
【数9】
上記の方程式を調べると、チューブの直径が比較的小さいとき、ポンプのエネルギーはチューブの直径に大きく依存していることがわかる。胸膜腔、腹膜腔および潜在的な設計特性についてのこれらの項に関して、以下の代表的な値の例を考慮してもよい。
【0119】
(胸膜腔内圧)=-5cmH0=490Pa、
(腹膜腔内圧)=+20cmH0=1961Pa、
ρ(滲出液の密度)=1,000kg/m
(位置2の100ml/分での体液の平均体積流量)=1.667×10-6/秒、
f(シリコーンチューブの摩擦係数)=0.5、
k(乱流の補正計数)=1、
L(第1位置と第2位置とを接続しているチューブの長さ)=30cm=0.3m、および
d(チューブの直径)=3mm=0.003m。
【0120】
これらの代表的な値の例を方程式に代入すると、次が得られる。
【0121】
【数10】
pump=2.451+0.0278+5.562=8.041 Nm/kg
したがって、上述の仮定を用いると、患者の第1領域220から患者の第2領域230に移動する滲出液の質量1キログラムに対して、この簡略化したモデルに基づいて、8.041Jのエネルギーが消費される。
【0122】
このモデルをさらに精密化するために、長さ1cm、直径1mmの狭い接続部を考慮に入れて上記方程式に第2摩擦項を追加すると、次のようになる。
pump=2.451+0.0278+5.562+45.05=53.09 Nm/kg
興味深いことに、長さ1cm、直径1mmの接続部は、長さ30cm、直径3mmのチューブの8倍(8X)の摩擦エネルギーに寄与する。このことから、1cmのチューブと1mmの狭窄とを含む上記で概説した修正された仮定を用いると、患者の第1領域220から患者の第2領域230に移動する滲出液の質量1キログラムに対して、53.09Jのエネルギーが消費されることがわかる。さらに、50%の効率で動作している電気機械式ポンプ118に対しては、滲出液1kgを移動させるために106.2Jのエネルギーが供給されなければならない。したがって、27リットルの滲出液を移動しなければならないことが想定される最初の3ヶ月間にわたって、電源は、最小2,866.9Jを供給することができることが望ましい。さらに、チューブのより高い摩擦損失に対して(特にチューブの直径を考慮して)、またより低い効率に対して、患者の第1領域220と第2領域230との間のより大きな圧力勾配を可能にするために、動力源は、好ましくは、最小約5,000Jのエネルギーを供給することができるのが望ましく、より好ましくは最小約10,000Jのエネルギー、さらには約15,000Jのエネルギーを供給することができるのが望ましい。参考のために、定格が2800mAHで1.5Vで動作する単3電池には、15,120Jのエネルギーが含まれる。
【0123】
さらに、第1領域220と第2領域230との間で体液を移すのに必要なチューブおよび接続部の直径にEPumpが強く依存するため、電気機械式自動ポンプを用いた体液管理システム108は、すべてのチューブ径、接続径および開口径が(一方向弁の動作(たとえば開閉)に関係なく)、1mm以上、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、さらには4mm以上であることが望ましい場合がある。あるいは、1mm未満の接続部および開口部の長さを、1cm以下の長さに、好ましくは0.5cm以下の長さに、より好ましくは0.2cm以下の長さに制限することが望ましい場合がある。
【0124】
電気機械式ポンプ118の起動および動作は、患者の第1領域220と第2領域230との間での体液移動の要件に基づいて最適化することができる。上記で概説した胸膜腔から腹膜腔については、滲出液移動の要件は、1日目に500mlであり、経時的に84日目までに25ml未満に減少させるか、または1日目に1リットルであり、経時的に84日目までに50ml未満に減少させることであってもよい。このような状況では、1日目に体液の必要量を圧送し、次いで、たとえば次の関係式
V(t)=V-λt
(式中、
は、(1例として)1リットルであり、
λは1/28であり、
tは植え込み後の日数である)
に従ってそれ以降の毎日にポンプがオンになる時間を減少させるポンプの処理能力に基づいてある期間ポンプをオンにするようにコントローラ530をプログラムすることができる。
【0125】
あるいは、ポンプオン時間は、所望の1日排液量を用いて実装されるルックアップテーブルに基づかせることができる。電気機械式ポンプ118は、一度に体液の全必要量を圧送するために1日1回オンにしてもよく、または1日を通して全ポンプオン時間を分割してもよい。たとえば、電気機械式ポンプ118は、1時間に1回オンにして、所望の全1日排液量の約1/24を圧送してもよい。他のパターンのポンプオン時間およびポンプオフ時間も使用してもよい。
【0126】
さらに、コントローラ530は、電気機械式ポンプ118がオンの時の体液の流れを監視することができる検知機構を備えて設計することができ、体液の流れが停止すると電気機械式ポンプ118をオフにすることができる。たとえば、1日目の最初の推定量または所望量は1リットルであるが体液が550ml圧送された後に流れが停止した場合、コントローラ530は、電気機械式ポンプ118を停止するようにプログラムすることができる。あるいは、電気機械式ポンプ118は、単に1時間ごと、または他の適切な時間ごとにオンにし、体液の流れが所定の値、たとえば限定するものではないが1ml/分または5ml/分を下回るまでオンのままにしておくことができる。さらに、コントローラ530は、電気機械式ポンプ118がオンにされている間ポンプの内部の圧力を監視することができる検知機構を備えて設計することができ、ポンプの内部の圧力が所定の値を下回ると電気機械式ポンプ118をオフにするようにプログラムすることができる。たとえば、コントローラは、約5cmHO未満、約0cmHO未満、約-5cmHO未満、約-10cmHO未満、または約-20cmHO未満に圧力が低下したとき、電気機械式ポンプ118をオフにしてもよい。
【0127】
電気機械式ポンプ118では、電気機械式アクチュエータ540を圧電ダイヤフラムとして説明したが、同様な動作を実現するために、限定するものではないが、他の代替手段の中でも、電動機およびカムなどのダイヤフラムポンプのための代替アクチュエータを使用することができる。実際、電気機械式ポンプ118は、ギヤポンプ、スクリューポンプ、ロータリーベーンポンプ、ダイヤフラムポンプ、圧電ダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプ、蠕動ポンプ、ローブポンプ、ピストンポンプ、遠心ポンプ、または任意の他のタイプのポンプにすることができる。
【0128】
h.胸膜腹膜電気機械式自動肋間ポンプの設計
図24Aおよび図24Bを参照すると、たとえば図11Aおよび図11Bに関して説明されているように動作する肋間ポンプ113と、たとえば図23A図23Dに関して説明されている電気機械式ポンプ118とを組み込んだ、組み合わせの電気機械式自動肋間ポンプを用いた体液管理システム109が示されている。これらのポンプは、共通の内部330、入口一方向弁320および出口一方向弁322を共用してもよい。動作中、肋間ポンプ113は、第1肋骨と第2肋骨との間で周期的に圧縮および減圧されて、ポンプ入口130とポンプ出口132との間の継続的な体液の流れを生じさせてもよい。電気機械式ポンプ118は、必要に応じて体液の流れを補うように構成することができる。
【0129】
5.他の自動ポンプを用いた体液管理システム
自動ポンプ110を含む体液管理システムは、患者の体の様々な領域において体液を運んで排出するために使用してもよい。すなわち、本明細書に記載の肋間ポンプを含む体液管理システムは、患者の胸膜腔から患者の腹膜腔に体液を排出することに関する使用に限定されない。
【0130】
本明細書に記載の肋間ポンプを組み込んだ体液管理システムの代替使用の1例は、患者の脳脊髄領域からの体液の排出である。この代替使用に基づいて、チューブ120は、チューブ入口端150が患者の脳脊髄領域に配置されるように、自動ポンプ110から患者の脳脊髄領域まで延びるように構成されてもよい。このようにして、過剰な脳脊髄液を排出してもよい。
【0131】
本明細書に記載の肋間ポンプを組み込んだ体液管理システムの代替使用の別の例は、患者の心膜領域からの体液の排出である。
他の代替使用はもちろん可能である。一般に、本明細書に記載の肋間ポンプを組み込んだ体液管理システムは、本明細書に記載の任意の自動肋間ポンプを用いた体液管理システム100で流体連通を十分に確立することができる、患者の体内の領域の任意の組み合わせにおいて体液を運んで排出するために使用してもよい。
【0132】
6.自動ポンプを用いたリザーバ付き体液管理システム
図25を参照すると、患者の体内の第1領域220から患者の体外に位置する外部リザーバ1020への体液の排液を提供する、ポンプ1010の少なくとも一部と患者の体200内の第1チューブ120と患者の体外に位置する第2チューブ122の少なくとも一部とが埋め込まれた、自動肋間ポンプを用いた体液管理システム1000が示されている。一実施形態では、図25に示されている実施形態の例と同様に、体液は、患者の胸膜腔220から外部リザーバ1020に排出される。
【0133】
一実施形態では、自動肋間ポンプ1010は、2本の肋骨間の肋間領域に少なくとも一部が配置されるように構成される。言い換えれば、埋め込まれたときに、肋間ポンプ1010は、患者の肋間腔、またはその一部を通って延びている。したがって、第1チューブ120およびそれに応じてポンプ入口130は、患者の骨性胸郭の内部に配置される。第2チューブ122およびそれに応じてポンプ出口132は、患者の骨性胸郭の外部に配置される。このように、呼吸および対応する骨性胸郭の圧縮/減圧によって、患者210は自動的に肋間ポンプ1010を動作させる(たとえば「圧送する」)ことになる。この構成によって、胸膜腔内の体液が能動的に排出されている間、患者は、最小限のハードウェアを身に着けて動き回ることができる。
【0134】
7.自動ポンプを用いた体液管理システムを使用して患者の体内の体液を排出するための方法
患者または人体の第1領域から患者または人体の第2領域に体液を排出する方法は、一般に、本明細書に記載の様々な自動ポンプを用いた体液管理システムのいずれかを埋め込みそれを使用して実施してもよい。図26Aおよび方法800を参照すると、胸水を排出するための方法の例に関して、ステップ802で、自動ポンプを用いた体液管理システムの肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)、たとえば本明細書に記載の様々な実施形態のいずれかは、そのポンプが、第1肋骨(たとえば412)と第2肋骨(たとえば414)との間で圧縮されるように患者の肋間腔に埋め込まれる。肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)は、任意の適切な既知または未知の手術手技を用いて埋め込まれてもよい。ステップ804で、患者の第1領域と、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)の入口130との間に流体連通が確立される。たとえば、第1チューブ(たとえば120)は、患者の胸膜腔から入口130まで延ばされてもよい。ステップ806で、患者の第2領域と、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)の出口132との間で流体連通が確立される。たとえば、第2チューブ(たとえば122)は、出口132から患者の腹膜腔まで延ばされてもよい。ステップ808で、肋間ポンプ(たとえば、110、111、112など)は、上記の様々な実施形態のどれが使用されるかに応じて、肋間ポンプを通して、第1チューブを介して患者の第1領域から第2チューブを介して患者の第2領域内に体液を移動させるために、定期的に圧縮されるとともに電気機械式に圧送されるかまたは定期的に圧縮されるかもしくは電気機械式に圧送される。
【0135】
たとえば、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)は、患者の呼吸サイクル中に第1肋骨(たとえば412)と第2肋骨(たとえば414)との間で圧縮されてもよい。具体的には、図26Bおよび方法850を参照すると、ステップ852で、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)が減圧される。たとえば、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)は、患者の肋骨が収縮状態にある(すなわち、患者がすでに息を吐き出している)間に、最初に第1肋骨412と第2肋骨414との間で圧縮される。患者が息を吸うとき、骨性胸郭は拡張され、第1肋骨412と第2肋骨414とは互いに離れて移動する。その結果、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)が減圧される。ステップ854で、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)が体液を吸い込む。すなわち、ステップ852で肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)を減圧した結果として、圧送力によって体液が肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)の内部空間(たとえば330)に引き込まれる。ステップ856で、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)が圧縮される。たとえば、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)は、患者の骨性胸郭が収縮している(すなわち、患者が息を吐き出す)結果として、第1肋骨412と第2肋骨414との間で圧縮される。患者が息を吐き出すとき、骨性胸郭は収縮し、第1肋骨412および第2肋骨414は互いに向かって移動する。その結果、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)が圧縮される。ステップ858で、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)が体液を排出する。すなわち、ステップ856で、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)を圧縮した結果として、圧送力によって、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)の内部空間(たとえば330)の外へ体液が追い出される。方法によっては、肋間ポンプ(たとえば110、111、112など)の代わりにまたはそれに追加して電気機械式ポンプ(たとえば118)を使用してもよい。
【0136】
8.その他
本明細書で用いる場合、用語「実質的に」または「大略的に」は、動作、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果の完全なまたはほぼ完全な範囲または程度を指す。たとえば、「実質的に」または「大略的に」囲まれている物体は、完全に囲まれているかまたはほぼ完全に囲まれている物体を意味する。絶対的な完全性からの正確な許容度は特定の文脈によって異なってもよい。しかしながら、一般的に言って、完全性への近さは、あたかも絶対的かつ全体的な完全性が得られたかのように大略的に同じ全体的な効果または結果をもたらすということである。「実質的に」または「大略的に」の使用は、動作、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果の完全なまたはほぼ完全な欠如を指すために否定的な意味合いで用いられる場合にも同様に適用される。
【0137】
特に記載のない限り、本明細書で用いる場合、「[X]および[Y]のうちの少なくとも1つ」または「[X]または[Y]のうちの少なくとも1つ」という語句は、[X]および[Y]が本開示の実施形態に含まれ得る異なる構成要素である場合、その実施形態が構成要素[Y]なしで構成要素[X]を含むことができること、その実施形態が構成要素[X]なしに構成要素[Y]を含むことができること、またはその実施形態が構成要素[X]および[Y]の両方を含むことができることを意味する。同様に、「[X]、[Y]および[Z]のうちの少なくとも1つ」または「[X]、[Y]、または[Z]のうちの少なくとも1つ」といった、3つ以上の構成要素に対して使用される場合、これらの語句は、その実施形態が、それら3つ以上の構成要素のいずれか1つ、該構成要素のいずれかの組み合わせもしくは部分的組み合わせ、または該構成要素のすべてを含むことができることを意味する。
【0138】
自動ポンプを用いた体液管理システムの実施形態の例は、上で説明した。それらは、網羅的であること、または開示された正確な形態に本発明を限定することを意図していない。上記の教示を考慮すれば、明らかな修正または変形が可能である。様々な実施形態は、本開示の原理およびそれらの実際的適用の最良の例示を提供するために、かつ、当業者が、企図される特定の使用に適した様々な変更を加えて様々な実施形態を利用できるようにするために選択され説明された。すべてのそのような修正および変更は、公正に、法的におよび公平に権利を与えられた範囲に従って解釈される場合、添付の特許請求の範囲によって決定される本開示の範囲内にある。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図24A
図24B
図25
図26A
図26B
【国際調査報告】