(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】GLP受容体アゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07K 7/04 20060101AFI20230419BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20230419BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230419BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230419BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20230419BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20230419BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230419BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230419BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230419BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230419BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230419BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C07K7/04 ZNA
A61K38/26
A61P43/00 111
A61P1/04
A61P1/12
A61P1/14
A61P3/10
A61P3/04
A61P37/08
A61P1/00
A61P9/10
A61P1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556026
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 GB2021050657
(87)【国際公開番号】W WO2021186166
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514120896
【氏名又は名称】ヘプタレス セラピューティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Heptares Therapeutics Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジャイルズ・アルバート
(72)【発明者】
【氏名】コングリーヴ,マイルズ・スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】スカリー,コナー
(72)【発明者】
【氏名】ポール,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ボルトラット,アンドレア
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA09
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA32
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA66
4C084ZA68
4C084ZA70
4C084ZA72
4C084ZA75
4C084ZB13
4C084ZC35
4C084ZC41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA50
4H045EA20
4H045FA20
4H045FA50
(57)【要約】
本明細書における開示は、式(1):
[式中、Q、W、X、Y、Z、AA
1、AA
2、AA
3、AA
4、AA
5、AA
6、AA
7、AA
8、AA
9、LysR、R
1、R
2及びnは本明細書中に定義の通り]の新規化合物、及びその塩、ならびにグルカゴン様ペプチド(GLP)受容体に関連する障害の治療、予防、改善、制御又はリスクの低減におけるそれらの使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の配列を含む化合物:
【化1】
[式中、
Qは、フェニル又は単環式ヘテロアリール環であって、そのそれぞれは一つ又は複数のR
q基で置換されていてもよく;
R
qは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、又は、O、N、もしくはSから選ばれる1個又は複数個のヘテロ原子を含有していてもよいアルキル鎖を有するC
1-6アルキルから選ばれ;
nは1~3であり;
R
1及びR
2は、水素又はC
1-6アルキル基から独立に選ばれるか、又はそれらが結合している炭素と一緒になってC
3-8シクロアルキル又はヘテロサイクリル基を形成し;
Wは、配列-Gly-Ser-、-Ala-Ser-、又は-DAla-Ser-であり;
Xは、配列-Ser-Asp-Glu-Nle-DPhe-Thr-又は-Ser-Asp-Glu-Nle-Asn-Thr-であり;
Yは、配列-Leu-Asp-であり;
Zは、配列-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-であり;
AA
1は、-NHCHR
3CO-であり;前記式中、R
3は、-(CH
2)
yCONH
2、-(CH
2)
yCOOH又は-(CH
2)
yテトラゾリルから選ばれ;ここでyは1又は2であり;
AA
2は、-NHCR
4aR
4bCO-であり;前記式中、R
4aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
4bは、一つ又は複数のハロゲン基、C
1-3アルキル基、又はC
1-3アルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基であり;
AA
3は、-Aib-又は-Ile-であり;
AA
4は、-NHCR
5aR
5bCO-であり;前記式中、R
5aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
5bは、置換されていてもよいC
1-6アルキル基、又は-(CH
2)
xCONH
2であり;ここでxは1又は2であり;
AA
5は、-Ala-又は-Aib-であり;
AA
6は、-Lys-、-Aib-又は基-LysR-であり;
AA
7は、-Lys-又は-Arg-であり;
AA
8は、-NHCR
6aR
6bCO-であり、前記式中、R
6aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
6bは、置換されていてもよいC
1-6アルキル基であり;
AA
9は、-NHCR
7aR
7bCO-であり;前記式中、R
7aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
7bは、-(CH
2)
zCOOH、又は、一つ又は複数のハロゲン基、C
1-3アルキル基、もしくはC
1-3アルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基であり;ここでzは1又は2であり;
LysRは、N-置換リシン残基であり;
ここで、AA
9のC末端は、カルボキシル基又はカルボキサミド基であるか、又は任意の天然もしくは非天然アミノ酸配列又は任意のその他の部分、官能基(一つ又は複数)に隣接している]、又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオン。
【請求項2】
Qが、
【化2】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが2である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R
1及びR
2が、水素又はC
1-6アルキル基から独立に選ばれる、請求項1~3のいずれか1項に定義の化合物。
【請求項5】
R
1及びR
2がどちらもメチルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R
3が、-CH
2テトラゾリルを表す、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R
4aが水素又はメチルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R
4bがフッ素で置換されていてもよいベンジルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
R
5aが水素又はメチルである、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R
5bがイソブチル又は-CH
2CONH
2である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R
6aが水素又はメチルである、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
R
6bがイソブチル又はsec-ブチルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
R
7aが水素又はメチルである、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
R
7bがベンジル又は-CH
2COOHである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
LysRがN-置換リシン残基であり、その場合のN-置換基は、-CO(CH
2)
qCH
3;-CO(CH
2)
qCO
2H;-CO(CH
2)
qCHCH
2;-COO(CH
2)
qCH
3;-COO(CH
2)
qCO
2H及び-COO(CH
2)
qCHCH
2から選ばれ、qは1~22である、請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
LysRがN-置換リシン残基であり、その場合のN-置換基は、基-L-Gであり;
Lは、
【化3】
からなる群から選ばれ、そしてGは、
【化4】
からなる群から選ばれ;
上記式中、
mは1~23であり;
pは1~3であり;
rは1~20であり;
sは0~3であり;
tは0~4であり;
そしてwは0~4である、請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
LysRが、
【化5】
から選ばれる、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
AA
9のC末端がカルボキサミド基である、請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
実施例1~23のいずれか一つから選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
【化6】
から選ばれる、請求項1に記載の化合物、又はその互変異性体、塩もしくは双性イオン。
【請求項21】
GLP-1及び/又はGLP-2受容体アゴニスト活性を有する、請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
GLP-1受容体アゴニスト活性と比べて高いGLP-2受容体アゴニスト活性を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に定義の化合物と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項24】
胃腸疾患及び代謝性疾患の治療に使用するための請求項1~23のいずれか1項に記載の化合物又は組成物であって、吸収不良障害、腸不全、腸機能不全、下痢症、慢性炎症性腸疾患を有する患者の腸回復及び栄養状態を促進し、粘膜バリア機能を改良し、腸炎症、炎症性障害、セリアック病、先天性及び後天性の消化吸収不良症候群、慢性下痢症、粘膜損傷(例えばがん治療)によって引き起こされる状態、腸不全、腸機能不全又は吸収不良障害の患者における経腸及び経静脈栄養療法中の高血糖、胃腸傷害、下痢症、腸機能不全、腸不全、酸誘導性腸管傷害、アルギニン欠乏症、肥満、セリアック病、化学療法誘発性腸炎、糖尿病、肥満、脂肪吸収不全症、脂肪便、自己免疫疾患、食物アレルギー、胃潰瘍、消化管バリア障害、パーキンソン病、敗血症、細菌性腹膜炎、炎症性腸疾患、化学療法関連組織損傷、腸外傷、腸虚血、腸間膜虚血、短腸症候群、栄養不良、壊死性腸炎、壊死性膵炎、新生児の哺乳不耐、NSAID起因性胃腸損傷、栄養不足、完全経静脈栄養による消化管への損傷、新生児栄養不足、放射線誘発性腸炎、腸に対する放射線誘発性傷害、粘膜炎、回腸嚢炎、虚血、肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン耐性、高血糖、インスリン耐性、耐糖能異常、刷子縁酵素欠乏症(先天性ラクターゼ欠乏症、先天性スクラーゼ-イソマルターゼ欠乏症、先天性マルターゼ-グルコアミラーゼ欠乏症)、膜担体の障害(グルコース-ガラクトース吸収不良、フルクトース吸収不良、Fanconi-Bickel症候群、腸性肢端皮膚炎、先天性塩化物/ナトリウム下痢、リジン尿性タンパク不耐症、原発性胆汁吸収不良、嚢胞性線維症)、酵素欠乏症(遺伝性膵炎、先天性膵リパーゼ欠乏症)、脂質/リポタンパク質代謝障害(カイロミクロン停滞病、低ベータリポタンパク血症、無ベータリポタンパク血症)、腸細胞分化又は細胞分極の障害(微絨毛萎縮症、Tufting腸症、毛髪肝腸症候群、家族性血球貪食性リンパ組織症5型)、腸内分泌細胞の障害(先天性吸収不良性下痢、無内分泌症、タンパク質転換酵素1/3欠乏症)、先天性下痢症を改善するための請求項1~23のいずれか1項に記載の化合物又は組成物の使用。
【請求項25】
障害がTufting腸症である、請求項24に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ペプチド化合物のクラス、それらの塩、それらを含有する医薬組成物、及び人体の治療におけるそれらの使用に関する。特に、本発明は、グルカゴン様ペプチド(GLP)受容体のアゴニストである化合物のクラスに向けられる。さらに詳しくは、本発明は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)及びグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)受容体のアゴニストである化合物に向けられる。さらに詳しくは、本発明は、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)受容体の選択的アゴニストである化合物に向けられる。本発明はまた、GLP受容体が関与するような疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の製造及び使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)及びグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)は、同じ前駆体タンパク質に由来する高度に保存されたアミノ酸ペプチドである。これらの生物活性ペプチドは、膵臓(アルファ細胞)、腸(L細胞)及び中枢神経系(CNS)において、組織特異的翻訳後プロセシングを受けるプログルカゴン遺伝子によってコードされている。消化管では、プロホルモン転換酵素1/3がプログルカゴンの切断を担い、GLP-1、GLP-2、IP2、オキシントモジュリン及びグリセンチンを含むいくつかの生物活性ペプチドを生成する。GLP-1及びGLP-2とも、遠位回腸及び結腸に局在する腸L細胞による栄養摂取に応答して分泌されるので、これらの消化管ペプチドの血漿中濃度はヒトが食物を摂取した後に上昇することが報告されている。
【0003】
GLP-1及びGLP-2の作用は、クラスBのGタンパク質共役型受容体であるGLP-1R及びGLP-2Rの活性化を通じて媒介される。これらの受容体は、Gsタンパク質に結合し、アデニル酸シクラーゼの活性化を通じてcAMP産生を刺激する。GLP-1Rは、脳、膵島細胞、心臓、腎臓及び消化管の筋層間神経叢ニューロンに発現していることが見出されている。他方、GLP-2Rの発現は、より限定的で、該受容体は主にCNS及び消化管に局在している。消化管でGLP-2Rを発現するいくつかの細胞タイプが報告されている。例えば、腸ニューロン、上皮下筋線維芽細胞及び腸内分泌細胞などであるが、正確な細胞分布はまだ明らかにされていない。
【0004】
GLP-2は、腸バリア機能、腸間膜の血流、胃運動性及び胃酸分泌を含む広範な生理学的機能に関与していることが報告されている。GLP-2を外から投与すると、腺窩細胞増殖が刺激され、腸絨毛の長さが増大し、小腸粘膜の増殖及び修復が促進される。GLP-2の強力な腸管栄養活性(intestinotrophic activity)は、ラット、ブタ及びヒトを含む種間で報告されている。GLP-2はさらに、腸管刷子縁酵素(intestinal brush border enzymes)及び溶質輸送体の調節を通じて腸の吸収能を高め、エネルギー恒常性の制御におけるこの消化管ホルモンの潜在的役割を顕示している。消化管での強力な腸管栄養作用促進能力を基に、GLP-2アナログであるTeduglutide(テデュグルチド)がPN依存性SBS患者のための薬物療法として承認されており、PNの必要性を低減するとともに腸の自律を促進することが示されている。
【0005】
GLP-1は、腸管栄養(炭水化物、脂肪、タンパク質)に応答してGLP-2と共放出される31アミノ酸ペプチドで、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)と協調して作用する消化管インクレチンホルモンとして働く。GLP-1は、膵島β細胞機能において重要な生理学的役割を演じ、β細胞の増殖ならびに食後のインスリン合成/放出を調節している。さらに研究によれば、GLP-1は、ソマトスタチン及びグルカゴンなどの他の消化管ペプチドの放出を制御していることも示されている。その放出後、ソマトスタチンはGLP-1及びGIP分泌を抑制するように作用することによって、腸内分泌細胞におけるフィードバック系を確立している。GLP-1は、満腹及び食欲制御の調節に関与する重要な食欲抑制ペプチドで、胃内容排出及び腸運動性に対する作用を通じてGI機能に影響を及ぼしている。いくつかのGLP-1剤が現在2型糖尿病の治療用として市販されており、糖尿病患者の血糖コントロールの改善に成功している。
【0006】
腸不全(IF)は、消化管が生存に必要な水分、電解質、主要栄養素及び微量栄養素を吸収できない重篤な機能障害状態を指す。IFの原因は様々で、閉塞、運動障害、外科的切除、先天的欠陥又は疾患関連の吸収喪失から起こりうる。
【0007】
短腸症候群は腸不全の最も一般的な原因で、腸部分の物理的又は機能的喪失から生じ、栄養不良、体重減少、脱水、下痢、脂肪便、疲労及び腹痛をもたらすことが多い。SBSの管理は、大量の体液喪失を補い、栄養バランス及び電解質バランスを回復するために、集学的なケアと経静脈栄養(PN)管理を必要とする。生存のために不可欠とは言え、経静脈栄養への長期依存は、患者の生活の質に悪影響を及ぼしうるほか、カテーテル関連敗血症、静脈血栓症及び肝障害(例えば、脂肪症、胆汁鬱滞)などの命に関わる合併症のリスクも増大しかねない。
【0008】
SBSの症状及び重症度は、残存している腸の位置及び長さに応じて様々でありうる。腸運動性は、典型的には回腸及び近位結腸のL細胞によって産生されるGLP-1、GLP-2及びPYYを含む多数の消化管ホルモンの影響を受けることが知られている。GLP-1などのホルモンは、効率的な栄養の消化吸収のためにGI通過速度を制御するための重要なフィードバック機構を提供する役割を果たしている。空腸瘻造設術を受けて回腸ブレーキを失った患者は、空腹時の血漿中GLP-1及びGLP-2濃度が低く、一般的に急速な胃内容排出とGI通過及び高ストーマ排液(high stoma output)に苦しむ。小規模パイロット研究で、エキセナチド又はリラグルチド(GLP-1アゴニスト)がSBS患者の下痢の症状を改善し、PNの必要性をさらに低減することが示されている。
【0009】
複雑な臨床像に加えて、腸切除を受けた患者においては、経口グルコース投与に応答するインスリン反応の障害をもたらす腸管膵島軸調節異常に関するエビデンスも存在する。さらに、高血糖は、経静脈栄養を受けている入院患者によく起こる合併症であり、死亡及び感染性合併症のリスクを増大させうる。特殊な栄養管理を受けている患者における高血糖の有病率は、経腸栄養を受けている患者で最大30%、経静脈栄養患者で50%と推定されている。高血糖の継続的な管理不良は、膵臓ベータ細胞の機能低下を招きうることや微小血管疾患、心血管イベント及び高血圧などの合併症の増悪に寄与しうることが認識されている。TPN中の高血糖患者は、高血糖のない患者と比べて、ICUに入院するリスクが高く、入院期間も長く、死亡率も高い。
【0010】
GLP-1アゴニストの知られたインスリン分泌刺激活性を基にすると、この機序の活性化は、それ故、術後にインスリン感受性の低下を発症した患者及び経静脈栄養を受けている患者に更なる利益を提供できる可能性がある。従って、これらの知見は、SBSを含む腸不全状態の管理にGLP-2/GLP-1を組み合わせた薬理学的アプローチが有望であることを強く示している。
【0011】
GLP-2/GLP-1アゴニストが利益を提供しうる他の腸不全状態は、空腹時に持続する早発性重症難治性下痢を呈するTufting腸症(タフティング腸症、房性腸症)などの稀な先天性下痢症などである。経静脈栄養、水分及び電解質補給による乳幼児の急性治療は、脱水、電解質不均衡、及び重度の栄養不良による成長障害を防止するために、決定的に必要である。
【0012】
上皮細胞接着分子EpCAMをコードする遺伝子は、Tufting腸症との関連を示しており、今日までに25を超えるEpCAMの変異が文献に記載されている。EpCAM遺伝子に変異があると、細胞表面発現の喪失を招き、腸上皮に腸細胞の局所的密集及び‘房(tufts)’の形成といった著明な組織学的特徴を生ずる。EpCAM遺伝子のエクソン4欠失を有するマウスは、Tufting患者と類似した形態学的欠陥を示し、著しく高い有病率及び死亡率を有する。EpCAMは、密着結合(タイトジャンクション)分子であるクローディン7に直接関連しており、この遺伝子の破壊は、おそらくは密着結合分子のダウンレギュレーションにより腸細胞の接着不良と腸バリア機能の障害をもたらす。
【0013】
Tufting腸症の乳幼児はIGF-1レベルが低く、減退した栄養吸収能力を補うために経静脈栄養に依存している。現在、この消耗性疾患に対する薬物治療はないため、腸機能を改善して非経口栄養法からの独立を促進できる薬剤が緊急に求められている。Tufting患者の長期転帰に関する最近の分析によれば、腸の自律は、専門家のケア環境で効果的に管理されれば、大部分の患者でうまく達成できることが明らかになった。早期離脱を促進する療法は、これらの患者においてより良好な長期転帰をもたらし、生活の質を改善することが期待される。GLP-2及びGLP-1受容体に作用する薬剤は、この先天性下痢症において、バリア機能を修復し、腸機能の回復を補助することが期待できる。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、GLP-2及びGLP-1受容体でアゴニスト活性を有する新規化合物、これらを含む医薬組成物、及び疾患の治療用医薬の製造のための該化合物の使用に関する。
【0015】
そこで、一態様において、本発明は、式(1)の化合物:
【0016】
【化1】
[式中、
Qは、フェニル又は単環式ヘテロアリール環であって、そのそれぞれは一つ又は複数のR
q基で置換されていてもよく;
R
qは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、又は、O、N、もしくはSから選ばれる1個又は複数個のヘテロ原子を含有していてもよいアルキル鎖を有するC
1-6アルキルから選ばれ;
nは1~3であり;
R
1及びR
2は、水素又はC
1-6アルキル基から独立に選ばれるか、又はそれらが結合している炭素と一緒になってC
3-8シクロアルキル又はヘテロサイクリル基を形成し;
Wは、配列-Gly-Ser-、-Ala-Ser-、又は-DAla-Ser-であり;
Xは、配列-Ser-Asp-Glu-Nle-DPhe-Thr-又は-Ser-Asp-Glu-Nle-Asn-Thr-であり;
Yは、配列-Leu-Asp-であり;
Zは、配列-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-であり;
AA
1は、-NHCHR
3CO-であり;前記式中、R
3は、-(CH
2)
yCONH
2、-(CH
2)
yCOOH又は-(CH
2)
yテトラゾリルから選ばれ;ここでyは1又は2であり;
AA
2は、-NHCR
4aR
4bCO-であり;前記式中、R
4aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
4bは、一つ又は複数のハロゲン基、C
1-3アルキル基、又はC
1-3アルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基であり;
AA
3は、-Aib-又は-Ile-であり;
AA
4は、-NHCR
5aR
5bCO-であり;前記式中、R
5aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
5bは、置換されていてもよいC
1-6アルキル基、又は-(CH
2)
xCONH
2であり;ここでxは1又は2であり;
AA
5は、-Ala-又は-Aib-であり;
AA
6は、-Lys-、-Aib-又は基-LysR-であり;
AA
7は、-Lys-又は-Arg-であり;
AA
8は、-NHCR
6aR
6bCO-であり、前記式中、R
6aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
6bは、置換されていてもよいC
1-6アルキル基であり;
AA
9は、-NHCR
7aR
7bCO-であり;前記式中、R
7aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
7bは、-(CH
2)
zCOOH、又は、一つ又は複数のハロゲン基、C
1-3アルキル基、もしくはC
1-3アルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基であり;ここでzは1又は2であり;
LysRは、N-置換リシン残基であり;
ここで、AA
9のC末端は、カルボキシル基又はカルボキサミド基であるか、又は任意の天然もしくは非天然アミノ酸配列又は任意のその他の部分、官能基(一つ又は複数)に隣接している]、又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンを提供する。
【0017】
本発明のGLP-2/GLP-1誘導体は、下記のような様々な疾患の治療に使用できる。
【0018】
一側面において、本発明は、小腸組織の増殖を、それを必要とする患者において促進するための方法を提供し、該方法は、腸管栄養量の本発明のGLP-2/GLP-1アナログを患者に送達する手順を含む。
【0019】
更なる側面において、本発明は、腸不全又は栄養吸収不良及び腸機能不全をもたらすその他の状態を含む胃腸疾患を治療するための医薬の製造法に関する。そのような疾患の例は、小腸症候群、下痢症、炎症性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、回腸嚢炎、放射線誘発性腸損傷、セリアック病(グルテン過敏性腸疾患)、NSAID起因性胃腸損傷、がん治療誘発性組織損傷(例えば化学療法誘発性腸炎)、パーキンソン病、経静脈栄養誘発性粘膜萎縮、胎児の腸不全、壊死性腸炎、新生児の哺乳不耐(feeding intolerance)、先天性下痢症、先天性又は後天性の消化吸収障害、血管閉塞、外傷又は虚血によって誘発される組織損傷などでありうる。
【0020】
本発明の更なる側面は、治療上有効な量の本発明のGLP-2/GLP-1アナログを送達することにより、稀な先天性下痢症の症状又は該疾患そのものを、それを必要とする患者において治療するための方法である。制御されない下痢の持続は、重度の脱水、電解質不均衡、栄養不良及び発育障害を引き起こしかねず、治療されないまま放置されると、死を含む命に関わる状態を招きうる。
【0021】
更なる側面において、本発明は、上に概要を示した化合物を、腸不全に至ることが多い早発性重症難治性下痢を特徴とする稀な先天性下痢症であるTufting腸症の治療のための医薬の製造に使用することを提供する。
【0022】
本発明の更なる側面は、治療上有効な量の本発明のGLP-2/GLP-1アナログを送達することにより、代謝性疾患及びメタボリックシンドロームを、それを必要とする患者において治療するための方法である。一態様において、代謝性疾患及びメタボリックシンドロームは、肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン耐性、高血糖、インスリン耐性、耐糖能異常などである。GLP-2/GLP-1アナログによる治療は、血糖コントロール及びインスリン感受性を回復できると想定される。このことは、腸不全、腸機能不全又は吸収不良障害の患者の経腸及び経静脈栄養療法中の高血糖の管理に有益でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、インビボにおける化合物の腸増殖活性を示すグラフを示す。マウスに1日1回、ビヒクル(PBS中0.1%Tween80)、テデュグルチド又は化合物(270nmol/kg)のいずれかを皮下注射した。リラグルチドは静脈内注射として毎日投与された(200ug/kg)。マウスを3日目に屠殺し、小腸の湿潤重量を定量した。GLP-2活性ペプチドは、小腸重量の顕著な増大を示している。これに対し、GLP-1化合物のリラグルチドは、モデルにおいて活性の証拠を示さなかった。実施例1及び3は、同じ用量でテデュグルチドと比べてそれに優る増大を示している。動物数N=6/群。ビヒクルに対し*p<0.05。
【
図2-1】
図2は、マウスに7日間投与後の腸質量増加に対する化合物の用量反応効果を示すグラフを示す。小腸湿潤重量の増加(対ビヒクル比)をペプチド用量の関数としてプロットする。A)Teduglutide、B)実施例1、C)実施例3。概して、実施例1及び3は、Teduglutideと比べて小腸湿潤重量のより大きい最大増加を示している。動物数N=6/群。
【
図2-2】
図2は、マウスに7日間投与後の腸質量増加に対する化合物の用量反応効果を示すグラフを示す。小腸湿潤重量の増加(対ビヒクル比)をペプチド用量の関数としてプロットする。A)Teduglutide、B)実施例1、C)実施例3。概して、実施例1及び3は、Teduglutideと比べて小腸湿潤重量のより大きい最大増加を示している。動物数N=6/群。
【
図3】
図3は、経口グルコース負荷試験(OGTT)に対する化合物又はビヒクル投与の効果を示す。グルコース負荷(glucose challenge)の1時間前に、実施例1又は3(270nmol/kg)又はビヒクル(PBS中0.1%Tween80)を1回の皮下注射として投与した。リラグルチドは、経口グルコースの30分前に静脈内ボーラスとして投与した(200ug/kg)。連続的な血糖測定をベースラインと経口グルコース負荷後の時点で実施した。(A)経時的な血糖値。動物数N=6/群。平均±SEM。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は新規化合物に関する。本発明はまた、GLP受容体のアゴニストとしての新規化合物の使用にも関する。本発明はさらに、GLP受容体アゴニストとして使用するため又は胃腸障害及び代謝障害を治療するための医薬の製造における新規化合物の使用にも関する。本発明はさらに、選択的GLP-2受容体アゴニストである化合物、組成物及び医薬にも関する。
【0025】
従って、一態様において、本発明は、式(1)の化合物:
【0026】
【化2】
[式中、
Qは、フェニル又は単環式ヘテロアリール環であって、そのそれぞれは一つ又は複数のR
q基で置換されていてもよく;
R
qは、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、又は、O、N、もしくはSから選ばれる1個又は複数個のヘテロ原子を含有していてもよいアルキル鎖を有するC
1-6アルキルから選ばれ;
nは1~3であり;
R
1及びR
2は、水素又はC
1-6アルキル基から独立に選ばれるか、又はそれらが結合している炭素と一緒になってC
3-8シクロアルキル又はヘテロサイクリル基を形成し;
Wは、配列-Gly-Ser-、-Ala-Ser-、又は-DAla-Ser-であり;
Xは、配列-Ser-Asp-Glu-Nle-DPhe-Thr-又は-Ser-Asp-Glu-Nle-Asn-Thr-であり;
Yは、配列-Leu-Asp-であり;
Zは、配列-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-であり;
AA
1は、-NHCHR
3CO-であり;前記式中、R
3は、-(CH
2)
yCONH
2、-(CH
2)
yCOOH又は-(CH
2)
yテトラゾリルから選ばれ;ここでyは1又は2であり;
AA
2は、-NHCR
4aR
4bCO-であり;前記式中、R
4aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
4bは、一つ又は複数のハロゲン基、C
1-3アルキル基、又はC
1-3アルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基であり;
AA
3は、-Aib-又は-Ile-であり;
AA
4は、-NHCR
5aR
5bCO-であり;前記式中、R
5aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
5bは、置換されていてもよいC
1-6アルキル基、又は-(CH
2)
xCONH
2であり;ここでxは1又は2であり;
AA
5は、-Ala-又は-Aib-であり;
AA
6は、-Lys-、-Aib-又は基-LysR-であり;
AA
7は、-Lys-又は-Arg-であり;
AA
8は、-NHCR
6aR
6bCO-であり、前記式中、R
6aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
6bは、置換されていてもよいC
1-6アルキル基であり;
AA
9は、-NHCR
7aR
7bCO-であり;前記式中、R
7aは、水素又はC
1-3アルキル基であり;そしてR
7bは、-(CH
2)
zCOOH、又は、一つ又は複数のハロゲン基、C
1-3アルキル基、もしくはC
1-3アルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基であり;ここでzは1又は2であり;
LysRは、N-置換リシン残基であり;
ここで、AA
9のC末端は、カルボキシル基又はカルボキサミド基であるか、又は任意の天然もしくは非天然アミノ酸配列又は任意のその他の部分、官能基(一つ又は複数)に隣接している]、又はその互変異性体もしくは立体化学的異性体、又はそのプロドラッグ、塩もしくは双性イオンを提供する。
【0027】
Qはイミダゾール環でありうる。Qは、
【0028】
【0029】
nは1でありうる。nは2でありうる。nは3でありうる。
【0030】
R1及びR2は、水素又はC1-6アルキル基から独立に選ぶことができる。R1は、水素又はC1-6アルキル基でありうる。R2は、水素又はC1-6アルキル基でありうる。R1及びR2はどちらもメチルでありうる。R1はメチルでありうる。R2はメチルでありうる。
【0031】
Wは、-Gly-Ser-でありうる。Wは-Ala-Ser-でありうる。Wは、-DAla-Ser-でありうる。
【0032】
Xは、-Ser-Asp-Glu-Nle-DPhe-Thr-でありうる。Xは、-Ser-Asp-Glu-Nle-Asn-Thr-でありうる。
【0033】
AA1は、-NHCHR3CO-でありうる[式中、R3は-(CH2)yテトラゾリルであり、yは1である]。
【0034】
AA1は、-NHCHR3CO-でありうる[式中、R3は-(CH2)yテトラゾリルであり、yは2である]。
【0035】
R3は-CH2テトラゾリルでありうる。
【0036】
AA1は、-NHCHR3CO-でありうる[式中、R3は-(CH2)yCOOHであり、yは1である]。
【0037】
AA1は、-NHCHR3CO-でありうる[式中、R3は-(CH2)yCOOHであり、yは2である]。
【0038】
R3は-CH2COOHでありうる。
【0039】
AA1は、
【0040】
【0041】
AA1は、-Asp-でありうる。 AA1は、アスパラギン酸残基でありうる。AA1は、
【0042】
【0043】
AA2は、-NHCR4aR4bCO-でありうる[式中、R4aは水素であり、R4bはベンジルである]。AA2は、-NHCR4aR4bCO-でありうる[式中、R4aはメチルであり、R4bはベンジルである]。AA2は、-NHCR4aR4bCO-でありうる[式中、R4aはメチルであり、R4bはフッ素で置換されていてもよいベンジルである]。AA2は、-NHCR4aR4bCO-でありうる[式中、R4aはメチルであり、R4bは2-フルオロベンジルである]。
【0044】
R4aは水素又はメチルでありうる。R4aは水素でありうる。R4aはメチルでありうる。R4bはベンジルでありうる。R4bはフッ素で置換されていてもよいベンジルでありうる。R4bは2-フルオロベンジルでありうる。
【0045】
AA2は、-Phe-でありうる。AA2は、フェニルアラニン残基でありうる。AA2は、
【0046】
【0047】
AA2は、α-メチルフェニルアラニン残基でありうる。AA2は、
【0048】
【0049】
AA2は、α-メチル 2-フルオロフェニルアラニン残基でありうる。AA2は、
【0050】
【0051】
AA3は、-Aib-でありうる。AA3は、-Ile-でありうる。
【0052】
AA4は、-NHCR5aR5bCO-でありうる[式中、R5aは水素であり、R5bはイソブチルである]。AA4は、-NHCR5aR5bCO-でありうる[式中、R5aはメチルであり、R5bはイソブチルである]。AA4は、-NHCR5aR5bCO-でありうる[式中、R5aは水素であり、R5bは-CH2CONH2である]。
【0053】
R5aは、水素又はメチルでありうる。R5aは、水素でありうる。R5aは、メチルでありうる。R5bは、イソブチル又はCH2CONH2でありうる。R5bは、イソブチルでありうる。R5bは、CH2CONH2でありうる。
【0054】
AA4は、-Leu-でありうる。AA4は、ロイシン残基でありうる。AA4は、
【0055】
【0056】
AA4は、α-メチルロイシン残基でありうる。AA4は、
【0057】
【0058】
AA4は、-Asn-でありうる。AA4は、アスパラギン残基でありうる。AA4は、
【0059】
【0060】
AA5は、-Ala-でありうる。AA5は、-Aib-でありうる。
【0061】
AA6は、-Lys-でありうる。AA6は、-Aib-でありうる。AA6は、基-LysR-でありうる。
【0062】
AA7は、-Lys-でありうる。AA7は、-Arg-でありうる。
【0063】
AA8は、-NHCR6aR6bCO-でありうる[式中、R6aは水素であり、R6bはsec-ブチルである]。
【0064】
AA8は、-NHCR6aR6bCO-でありうる[式中、R6aはメチルであり、R6bはイソブチルである]。
【0065】
R6aは、水素又はメチルでありうる。R6aは、水素でありうる。R6aは、メチルでありうる。
【0066】
R6bは、イソブチル又はsec-ブチルでありうる。R6bは、イソブチルでありうる。R6bは、イソブチルでありうる。
【0067】
AA8は、-Ile-でありうる。AA8は、イソロイシン残基でありうる。AA8は、
【0068】
【0069】
AA8は、α-メチルロイシン残基でありうる。AA8は、
【0070】
【0071】
AA9は、-NHCR7aR7bCO-でありうる[式中、R7aは水素であり、R7bは-CH2COOHである]。AA9は、-NHCR7aR7bCO-でありうる[式中、R7aは水素であり、R7bはベンジルである]。AA9は、-NHCR7aR7bCO-でありうる[式中、R7aはメチルであり、R7bは-CH2COOHである]。
【0072】
R7aは、水素又はメチルでありうる。R7aは、水素でありうる。R7aは、メチルでありうる。
【0073】
R7bは、ベンジル又は-CH2COOHでありうる。R7bは、ベンジルでありうる。R7bは、-CH2COOHでありうる。
【0074】
AA9は、-Asp-でありうる。AA9は、アスパラギン酸残基でありうる。AA9は、
【0075】
【0076】
AA9は、-Phe-でありうる。AA9は、フェニルアラニン残基でありうる。AA9は、
【0077】
【0078】
AA9は、α-メチルアスパラギン酸残基でありうる。AA9は、
【0079】
【0080】
LysRは、N-置換リシン残基であり得、その場合のN-置換基は、-CO(CH2)qCH3;-CO(CH2)qCO2H;-CO(CH2)qCHCH2;-COO(CH2)qCH3;-COO(CH2)qCO2H及び-COO(CH2)qCHCH2から選ばれ、qは1~22である。
【0081】
LysRは、N-置換リシン残基であり得、その場合のN-置換基は、-COO(CH2)qCHCH2であり、qは1~22である。LysRは、N-置換リシン残基であり得、その場合のN-置換基は、-COO(CH2)qCHCH2であり、qは1である。LysRは、N-置換リシン残基であり得、その場合のN-置換基は、-COOCH2CHCH2である。
【0082】
LysRは、
【0083】
【0084】
LysRは、N-置換リシン残基であり得、その場合のN-置換基は、基-L-Gであり、Lは、
【0085】
【0086】
【0087】
上記式中、
mは1~23であり;
pは1~3であり;
rは1~20であり;
sは0~3であり;
tは0~4であり;
そしてwは0~4である。
【0088】
LysRは、
【0089】
【0090】
LysRは、
【0091】
【0092】
AA9のC末端は、カルボキサミド基でありうる。AA9のC末端は、カルボキシル基でありうる。AA9のC末端は、任意の天然もしくは非天然アミノ酸配列又は任意のその他の部分、官能基(一つ又は複数)に隣接しうる。
【0093】
当該化合物は、表1に示されている実施例1~23のいずれか一つから選ばれうる。
【0094】
化合物の具体例は、GLP受容体アゴニスト活性を有する化合物を含む。
【0095】
化合物の具体例は、GLP-1及び/又はGLP-2受容体アゴニスト活性を有する化合物を含む。
【0096】
化合物の具体例は、GLP-1受容体アゴニスト活性と比べて高いGLP-2受容体アゴニスト活性を有する化合物を含む。
【0097】
本発明の化合物は、本発明の化合物と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物に使用することができる。
【0098】
本発明の化合物は医薬に使用できる。
【0099】
本発明は、胃腸疾患及び代謝性疾患の治療用医薬の製造のためのGLP-2/GLP-1アナログ化合物の使用を提供する。本明細書中に定義されているようなGLP-2/GLP-1アナログは、吸収不良障害、腸不全、腸機能不全、下痢症及び慢性炎症性腸疾患を有する患者の腸回復及び栄養状態を促進するために有用でありうる。さらに、GLP-2/GLP-1アナログによる治療は、粘膜バリア機能を改良し、消化管の炎症を改善し、そして腸透過性を低減できるので、炎症性障害、セリアック病、先天性及び後天性の消化吸収不良症候群、慢性下痢症、粘膜損傷(例えばがん治療)によって引き起こされる状態を有する患者の症状を改善できる。本発明のGLP-2/GLP-1アナログは、血糖コントロール及びインスリン感受性を回復することが期待される。このことは、腸不全、腸機能不全又は吸収不良障害の患者の経腸及び経静脈栄養療法中の高血糖の管理にも有益でありうる。
【0100】
更なる側面において、本発明は、胃腸傷害、下痢症、腸機能不全、腸不全、酸誘導性腸管傷害、アルギニン欠乏症、肥満、セリアック病、化学療法誘発性腸炎、糖尿病、肥満、脂肪吸収不全症、脂肪便、自己免疫疾患、食物アレルギー、胃潰瘍、消化管バリア障害、パーキンソン病、敗血症、細菌性腹膜炎、炎症性腸疾患、化学療法関連組織損傷、腸外傷、腸虚血、腸間膜虚血、短腸症候群、栄養不良、壊死性腸炎、壊死性膵炎、新生児の哺乳不耐、NSAID起因性胃腸損傷、栄養不足、完全経静脈栄養による消化管への損傷、新生児栄養不足、放射線誘発性腸炎、腸に対する放射線誘発性傷害、粘膜炎、回腸嚢炎、虚血、肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン耐性、高血糖、インスリン耐性、耐糖能異常からなる群の一つを治療する方法を提供する。
【0101】
具体的には、重度の下痢、体液及び電解質の喪失、吸収不良及び栄養輸送障害を特徴とする先天性下痢症は、本発明のGLP-2/及びGLP-1アナログによる治療によって改善できるであろうことが示唆される。特に、Tufting腸症は、絨毛の形態学的構造の破壊と関連する状態であるため、栄養吸収障害と腸透過性の亢進をもたらす。水分及び栄養の吸収を改良できるだけでなく、腸バリア障害も補正できる薬剤は、経静脈栄養からの早期離脱を促進するのに価値を提供できるであろう。
【0102】
本発明のペプチドで治療できる先天性下痢症のその他の例は、刷子縁酵素欠乏症(先天性ラクターゼ欠乏症、先天性スクラーゼ-イソマルターゼ欠乏症、先天性マルターゼ-グルコアミラーゼ欠乏症)、膜担体の障害(グルコース-ガラクトース吸収不良、フルクトース吸収不良、腸性肢端皮膚炎(Acrodermatitis enteropathica)、先天性塩化物/ナトリウム下痢、原発性胆汁吸収不良、嚢胞性線維症)、脂質/リポタンパク質代謝障害(カイロミクロン停滞病、無ベータリポタンパク血症)、腸細胞分化又は細胞分極の障害(微絨毛萎縮症、Tufting腸症、毛髪肝腸症候群)、及び腸内分泌細胞の障害(先天性吸収不良性下痢、無内分泌症(anendocrinosis)、タンパク質転換酵素1/3欠乏症)などである。
【0103】
本発明の化合物はTufting腸症の治療に使用できる。
【0104】
定義
本願においては、別段の指示がない限り、下記の定義が適用される。
【0105】
用語“アルキル”、“アリール”、“ハロゲン”、“アルコキシ”、“シクロアルキル”、“ヘテロサイクリル”及び“ヘテロアリール”は、別段の指示がない限り、それらの従来の意味で使用される(例えば、IUPAC Gold Bookに定義のような)。
【0106】
式(1)の化合物を含む本明細書中に記載の化合物のいずれかの使用に関連する用語“治療”は、問題の疾患又は障害に罹患している、又は罹患するリスクがある、又は潜在的に罹患するリスクがある対象に化合物を投与する何らかの形態の介入を記載するために使用される。従って、用語“治療”は予防的(preventative,prophylactic)治療と、疾患又は障害の測定可能な又は検出可能な症状が呈示されている場合の治療の両方をカバーする。
【0107】
本明細書中で使用されている用語“有効治療量”(例えば、障害、疾患又は状態の治療法との関連で)は、所望の治療効果を生ずるために有効な化合物の量のことを言う。例えば、状態が疼痛の場合、有効治療量は、所望レベルの疼痛緩和を提供するのに足る量である。所望レベルの疼痛緩和は、例えば、疼痛の完全除去又は疼痛の重症度の軽減でありうる。
【0108】
記載されている任意の化合物がキラル中心を有する限り、本発明は、そのような化合物のすべての光学異性体(ラセミ化合物の形態であるか又は分割されたエナンチオマーの形態であるかに関わらず)にまで及ぶ。本明細書中に記載されている発明は、任意の開示化合物のすべての結晶形、溶媒和物及び水和物(製造法を問わず)に関する。本明細書中に開示された任意の化合物がカルボン酸又はアミノ基などの酸又は塩基中心を有する限り、前記化合物のすべての塩形は本発明に包含される。製薬学的用途の場合、その塩は薬学的に許容可能な塩と見なされるべきである。
【0109】
言及されうる塩又は薬学的に許容可能な塩は、酸付加塩及び塩基付加塩を含む。そのような塩は従来手段によって形成できる。例えば、化合物の遊離酸又は遊離塩基形を、1当量又は複数当量の適当な酸又は塩基と、任意に溶媒中、又は塩が不溶性の媒体中で反応させた後、前記溶媒又は前記媒体を標準技術を用いて(例えば、真空下で、凍結乾燥により、又はろ過により)除去することによる。塩は、塩の形態の化合物の対イオンを、例えば適切なイオン交換樹脂を用いて、別の対イオンと交換することによって製造することもできる。
【0110】
薬学的に許容可能な塩の例は、鉱酸及び有機酸から誘導される酸付加塩、及びナトリウム、マグネシウム、カリウム及びカルシウムなどの金属から誘導される塩を含む。
【0111】
酸付加塩の例は、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸)、アスコルビン酸(例えばL-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)樟脳酸、樟脳-スルホン酸、(+)-(1S)-樟脳-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸(例えばD-グルコン酸)、グルクロン酸(例えばD-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えばL-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸(例えば(+)-L-乳酸及び(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸(例えば(-)-L-リンゴ酸)、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタリン酸、メタンスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸(例えば(+)-L-酒石酸)、チオシアン酸、ウンデシレン酸及び吉草酸と形成される酸付加塩を含む。
【0112】
化合物の任意の溶媒和物及びそれらの塩も包含される。好適な溶媒和物は、本発明の化合物の固体構造(例えば結晶構造)に、非毒性の薬学的に許容可能な溶媒(以下、溶媒和溶媒と呼ぶ)の分子を組み込むことによって形成される溶媒和物である。そのような溶媒の例は、水、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール及びブタノール)及びジメチルスルホキシドなどである。溶媒和物は、本発明の化合物を溶媒又は溶媒和溶媒を含有する溶媒の温合物で再結晶化することによって製造できる。溶媒和物が任意の所与の場合に形成されたかどうかは、化合物の結晶を、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)及びX線結晶構造解析などの周知の標準的な技術を用いて分析に付すことによって決定できる。
【0113】
溶媒和物は、化学量論的又は非化学量論的溶媒和物でありうる。特別な溶媒和物は水和物であり得、水和物の例は、半水和物、一水和物及び二水和物を含む。溶媒和物ならびにその製造及び特徴付けに使用される方法のより詳細な解説については、Brynら、Solid-State Chemistry of Drugs、第2版、出版SSCI,Inc,米国ウェストラファイエット、1999、ISBN 0-967-06710-3参照。
【0114】
本発明の文脈において、用語“医薬組成物”は、活性薬を含み、追加的に一つ又は複数の薬学的に許容可能な担体も含む組成物を意味する。前記組成物はさらに、投与様式及び剤形の性質に応じて、例えば、希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビヒクル、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、フレーバー剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌剤、滑沢剤及び分散剤から選ばれる成分も含有しうる。前記組成物は、例えば、錠剤、糖衣錠、散剤、エリキシル、シロップ、懸濁液を含む液体製剤、スプレー、吸入剤、錠剤、トローチ、エマルション、溶液、カシェ、顆粒剤、カプセル及び坐剤、ならびにリポソーム製剤を含む注射用液体製剤の形態をとりうる。
【0115】
本発明の化合物は一つ又は複数の同位体置換を含有していてもよく、特定の元素への言及は、その元素のすべての同位体をその範囲内に含む。例えば、水素への言及は、1H、2H(D)、及び3H(T)をその範囲内に含む。同様に、炭素及び酸素への言及は、それぞれ12C、13C及び14Cならびに16O及び18Oをそれらの範囲内に含む。似たように、特定の官能基への言及も、文脈上別の指示がない限り、同位体変化をその範囲内に含む。例えば、エチル基などのアルキル基又はメトキシ基などのアルコキシ基への言及も、例えば、全5個の水素原子がジュウテリウム同位体形であるエチル基(ペルジュウテロエチル基)又は全3個の水素原子がジュウテリウム同位体形であるメトキシ基(トリジュウテロメトキシ基)のように、基内の1個又は複数個の水素原子がジュウテリウム又はトリチウム同位体の形態である変化をカバーする。同位体は放射性でも又は非放射性でもよい。
【0116】
治療用量は、患者の要件、治療される状態の重症度、及び使用される化合物に応じて変動しうる。特定の状況に対する適正な用量は当該技術分野の技能の範囲内である。一般的に、治療は、化合物の最適用量より少ない用量で開始される。その後、用量は、状況下での最適効果に到達するまで少しずつ増量される。便宜上、総日用量は、所望であれば、その一日の中で分割し、分割量を投与してもよい。
【0117】
化合物の有効量の大きさは、当然ながら、治療される状態の重症度の性質、ならびに特定の化合物及びその投与経路に応じて変動する。適切な投与量の選択は、過度の負担なく当業者の能力の範囲内である。一般に、日用量範囲は、ヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約10μg~約30mg、好ましくはヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約50μg~約30mg、例えばヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約50μg~約10mg、例えばヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約100μg~約30mg、例えばヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約100μg~約10mg、最も好ましくはヒト及びヒト以外の動物の体重1kgあたり約100μg~約1mgでありうる。
【0118】
医薬製剤
活性化合物は、単独で投与することも可能であるが、医薬組成物(例えば製剤)として提供するのが好ましい。
【0119】
そこで、本発明の別の態様において、上記定義の式(1)の少なくとも一つの化合物と共に、少なくとも一つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0120】
当該組成物は注射に適切な組成物でありうる。注射は静脈内(IV)又は皮下でありうる。当該組成物は、無菌緩衝液中に入れて供給されても又は注射用の無菌緩衝液中に懸濁又は溶解できる固体として供給されてもよい。
【0121】
薬学的に許容可能な賦形剤(一つ又は複数)は、例えば、担体(例えば、固体、液体又は半固体の担体)、アジュバント、希釈剤(例えば、充填剤又は増量剤などの固体希釈剤;溶媒及び共溶媒などの液体希釈剤)、造粒剤、バインダ、流動助剤、コーティング剤、放出制御剤(例えば、放出遅延(retarding又はdelaying)ポリマー又はワックス)、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、滑沢剤、保存剤、抗真菌剤及び抗菌剤、抗酸化剤、緩衝剤、張度調整剤、増粘剤、フレーバー剤、甘味剤、色素、可塑剤、味マスキング剤、安定剤、又は医薬組成物に従来使用される任意のその他の賦形剤から選ぶことができる。
【0122】
本明細書中で使用されている用語“薬学的に許容可能な”とは、健全な医学的判断の範囲内で、過剰の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題もしくは合併症なしに対象(例えばヒト対象)の組織と接触させて使用するのに適切な、合理的な利益/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を意味する。各賦形剤は、製剤のその他の成分とも適合性があるという意味においても“許容可能”でなければならない。
【0123】
式(1)の化合物を含有する医薬組成物は公知技術に従って製剤化できる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company(米国ペンシルベニア州イーストン)参照。
【0124】
適切な製剤は、典型的には、0~20%(w/w)の緩衝液、0~50%(w/w)の共溶媒、及び/又は0~99%(w/w)の注射用水(WFI)(用量に応じて、及び凍結乾燥されている場合)を含有する。筋肉内デポ製剤は0~99%(w/w)のオイルも含有しうる。
【0125】
式(1)の化合物は、一般的に単一剤形中に提供され、従って典型的には所望の生物活性レベルを提供するのに足る化合物を含有する。例えば、製剤は、1ナノグラム~2グラムの活性成分、例えば1ナノグラム~2ミリグラムの活性成分を含有しうる。これらの範囲内で化合物の特定の部分範囲は、0.1ミリグラム~2グラムの活性成分(より通常的には10ミリグラム~1グラム、例えば50ミリグラム~500ミリグラム)、又は1マイクログラム~20ミリグラム(例えば1マイクログラム~10ミリグラム、例えば0.1ミリグラム~2ミリグラムの活性成分)である。
【0126】
活性化合物は、それを必要とする患者(例えばヒト又は動物患者)に、所望の治療効果を達成するのに足る量(有効量)で投与される。投与される化合物の正確な量は、標準的な手順に従って監督医師が決定できる。
【0127】
生物活性
表3及び4に、組換え細胞アッセイにおけるGLP-2R及びGLP-1Rに対するペプチドのインビトロ効力を示す。ペプチドの機能活性は、HTRF cAMPアッセイを用いて評価された。pEC50値を引用する。表1に示されている化合物についてのインビトロGLP-2アッセイの結果は、約0.001nM~約1nMの範囲であった。本発明のGLP-2アナログはGLP-2及びGLP-1受容体の両方で活性を示すが、GLP-2受容体の方でより高い活性が示された。
【実施例】
【0128】
次に、本発明を、以下の実施例に記載された特定の態様を参照することにより、非限定的に説明する。
【0129】
実施例1~23
以下の表1に示されている実施例1~23の化合物を調製した。それらのLCMS特性及びそれらの調製に使用された方法は表2に示す。各実施例の出発物質は、別段の指示がない限り市販品である。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【表1-8】
一般的手順
調製経路が含まれていない場合、当該中間体は市販品である。市販試薬は更なる精製をせずに利用した。室温(rt)はおよそ20~27℃を指す。
1H NMRスペクトルはBruker機器を用い、400MHzで記録した。化学シフト値は百万分率(ppm)、すなわち(δ)値で表す。NMRシグナルの多重度に対し、以下の略語が使用される:s=一重線、br=幅広線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、quint=五重線、td=二重線の三重線、tt=三重線の三重線、qd=二重線の四重線、ddd=二重線の二重線の二重線、ddt=三重線の二重線の二重線、m=多重線。結合定数はHzで測定されたJ値として記載する。NMR及び質量分析の結果は、バックグラウンドピークを考慮して補正された。クロマトグラフィーは、60~120メッシュのシリカゲルを用い、窒素圧(フラッシュクロマトグラフィー)条件下で実施されたカラムクロマトグラフィーを指す。
【0138】
分析法
化合物のLCMS分析はエレクトロスプレー条件下で実施した。
【0139】
LCMS法A
機器:Waters Acquity UPLC、Waters 3100 PDA検出器、SQD;カラム:Acquity HSS-T3、1.8ミクロン、2.1×100mm;グラジエント[時間(分)/溶媒A中B(%)]:0.00/10、1.00/10、2.00/15、4.50/55、6.00/90、8.00/90、9.00/10、10.00/10;溶媒:溶媒A=0.1%トリフルオロ酢酸水溶液;溶媒B=アセトニトリル;注入量1μL;検出波長214nm;カラム温度30℃;流速0.3mL/分。
【0140】
分析法B
MSイオンは、エレクトロスプレー条件下で下記のLCMS法を用いて決定し、HPLCのリテンションタイム(RT)は、下記のHPLC法を用いて決定し、純度は、特に明記されない限りHPLCにより>95%。
【0141】
LCMS:Agilent 1200 HPLC&6410B Triple Quad、カラム:Xbridge C18 3.5um 2.1*30mm。グラジエント[時間(分)/溶媒B(%)]:0.0/10、0.9/80、1.5/90、8.5/5、1.51/10。(溶媒A=1000mLの水中1mLのTFA;溶媒B=1000mLのMeCN中1mLのTFA);注入量5μL(変動あり);UV検出 220nm 254nm 210nm;カラム温度25℃;1.0mL/分。
【0142】
HPLC:Agilent Technologies 1200、カラム:Gemini-NX C18 5um 110A 150*4.6mm。グラジエント[時間(分)/溶媒B(%)]:0.0/30、20/60、20.1/90、23/90。(溶媒A=1000mLの水中1mLのTFA;溶媒B=1000mLのMeCN中1mLのTFA);注入量5μL(変動あり);UV検出 220nm 254nm;カラム温度25℃;1.0mL/分。
【0143】
分析法C
機器:Thermo Scientific Orbitrap Fusion;カラム:Phenomenex Kinetex Biphenyl 100Å、2.6μm、2.1×50mm;グラジエント[時間(分)/溶媒A中B(%)]:0.00/10、0.30/10、0.40/60、1.10/90、1.70/90、1.75/10、1.99/10、2.00/10;溶媒:溶媒A=0.1%ギ酸水溶液;溶媒B=アセトニトリル中0.1%ギ酸;注入量5μL;カラム温度25℃;流速0.8mL/分。
【0144】
中間体及び化合物の合成
下記実施例は、本発明の好適な側面を例示するために提供されるのであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0145】
中間体の合成
中間体1及び2を除き、すべてのFmoc-アミノ酸は市販品である。
【0146】
2,2-ジメチル-3-オキソ-3-((2-(1-トリチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル)アミノ)プロパン酸(中間体1)の合成
【0147】
【化22】
工程1:2,2,2-トリフルオロ-N-(2-(1-トリチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル)アセトアミド(2)の合成:
2-(1H-イミダゾール-4-イル)エタン-1-アミンジヒドロクロリド(
1、25.0g、136.6mmol)のMeOH(100mL)中溶液に、Et
3N(67mL、464.4mmol)を室温(rt)で加え、反応混合物を0℃に冷却した。トリフルオロ酢酸エチル(20mL、164.0mmol)のMeOH(50mL)中溶液を反応混合物に30分かけて0℃で加え、反応混合物を室温で4時間撹拌した。この反応混合物を乾燥DCM(200mL)とEt
3N(60mL、409.8mmol)で希釈し、反応混合物を0℃に冷却した。Tr-Cl(76g、273.2mmol)を少しずつ加え、得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。終了後、反応混合物を水(300mL)でクエンチングし、水性層をクロロホルム(3×150mL)で抽出した。有機層を合わせ、乾燥させ(Na
2SO
4)、真空下で濃縮した。粗残渣をn-ヘキサンで粉砕し、2,2,2-トリフルオロ-N-(2-(1-トリチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル)アセトアミド(
2、50.10g、81%)を白色固体として得た。
MS (ESI +ve): 450
1H-NMR (400 MHz; CDCl
3): δ2.75 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 3.60 - 3.65 (m, 2H), 6.61 (s, 1H), 7.08 - 7.15 (m, 6H), 7.31 - 7.38 (m, 9H), 7.40 (s, 1H), 8.41 (bs, 1H)。
【0148】
工程2:2-(1-トリチル-1H-イミダゾール-4-イル)エタン-1-アミン(3)の合成:
2,2,2-トリフルオロ-N-(2-(1-トリチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル)アセトアミド(2、50.0g、111.3mmol)のTHF(150mL)及びMeOH(180mL)中溶液に、水(100mL)中NaOH(22.0g、556.7mmol)を0℃で徐々に加え、反応混合物を室温で2時間撹拌した。終了後、反応混合物を水(300mL)でクエンチングし、水性層をクロロホルム(3×150mL)で抽出した。有機層を合わせ、乾燥させ(Na2SO4)、真空下で濃縮し、2-(1-トリチル-1H-イミダゾール-4-イル)エタン-1-アミン(3、34.0g、86%)を帯黄色粘着固体として得た。粗残渣はそれ以上精製せずに次の工程で使用した。
MS (ESI +ve): 354
1H-NMR (400 MHz; CDCl3): δ1.53 (bs, 2H), 2.65 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.95 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 6.58 (s, 1H), 7.11 - 7.16 (m, 6H), 7.28 - 7.38 (m, 10H)。
【0149】
工程3:2,2,5,5-テトラメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(5)の合成:
2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(4、20.0g、138.8mmol)のACN(200mL)中溶液に、K2CO3(96g、694.0mmol)及びMeI(26mL、416.6mmol)を室温で加え、反応混合物を10時間還流した。終了後、反応混合物を室温に冷却し、セライトのパッドに通してろ過し、EtOAc(3×50mL)で洗浄した。有機層を10%Na2S2O3水溶液(100mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空下で濃縮して2,2,5,5-テトラメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(5、21g、88%)を黄色固体として得た。粗残渣はそれ以上精製せずに次の工程で使用した。
1H-NMR (400 MHz; CDCl3): δ1.63 (s, 6H), 1.73 (s, 6H)。
【0150】
工程4:2,2-ジメチル-3-オキソ-3-((2-(1-トリチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル)アミノ)プロパン酸(中間体1)の合成:
2-(1-トリチル-1H-イミダゾール-4-イル)エタン-1-アミン(3、8.0g、22.6mmol)とEt3N(16.0mL、113.0mmol)のトルエン(100mL)中溶液を、60分かけて、2,2,5,5-テトラメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(5、5.8g、29.76mmol)のトルエン(50mL)中溶液に75℃で滴加した。反応混合物を同じ温度でさらに3時間撹拌した。終了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残渣をクロロホルム(100mL)中に溶解し、10%クエン酸水溶液(pH ~6-6.5)で洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、真空下で濃縮した。得られた粗残渣を熱クロロホルム(150mL)とn-ヘキサン(75mL)で粉砕し、該懸濁液を室温で16時間撹拌した。固体をろ過し、クロロホルム:n-ヘキサン(1:1、2×50mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、2,2-ジメチル-3-オキソ-3-((2-(1-トリチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル)アミノ)プロパン酸(中間体1、6.8g、64%)を白色固体として得た。
LCMS (方法A): m/z 468 [M+H]+ (ES+), 5.38分時, 99.31%
1H-NMR (400 MHz; DMSO-d6): δ1.21 (s, 6H), 2.57 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 3.22 - 3.27 (m, 2H), 6.66 (s, 1H), 7.06 - 7.11 (m, 6H), 7.28 (s, 1H), 7.35 - 7.42 (m, 8H), 7.64 (t, J = 5.4 Hz, 1H), 8.31 (s, 1H), 12.44 (bs, 1H)
(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2-トリチル-2H-テトラゾール-5-イル)プロパン酸(中間体2)の合成
【0151】
【化23】
工程1:(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-シアノプロパン酸(7)の合成:
(((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)-L-アスパラギン(
7、50.0g、423.7mmol)のピリジン(200mL)中懸濁液に、DCC(34.0g、466.1mmol)を0℃で加え、反応混合物を室温で5時間撹拌した。反応混合物をpHが酸性になるまで2N HCl水溶液で慎重にクエンチングし、ジエチルエーテル(3×500mL)で抽出した。有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、真空下で濃縮した。残渣をペンタンで粉砕して、(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-シアノプロパン酸(
7、96g、68%)を白色固体として得た。
MS (ESI -ve): 335。
1H-NMR (400 MHz; DMSO-d
6): δ2.85 - 3.05 (m, 2H), 4.22 - 4.39 (m, 4H), 7.33 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.42 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.72 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 8.09 (d, J = 8.4 Hz, 1H)。
【0152】
工程2:(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2H-テトラゾール-5-イル)プロパン酸(8)の合成:
(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-シアノプロパン酸(7、48.0g、142.8mmol)のトルエン(50mL)中懸濁液に、ジブチルスズオキシド(21.0g、85.6mmol)を加え、反応混合物を15分間撹拌した。この反応混合物に、トリメチルシリルアジド(61mL、422.8mmol)を加え、反応混合物を120℃で15分間還流した。反応混合物を室温に冷却後、形成された得られた固体をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄した。固体残渣を5%MeOH/DCM(500mL)で粉砕し、(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2H-テトラゾール-5-イル)プロパン酸(8、32.5g、60%)をオフホワイト色固体として得た。
MS (ESI +ve): 380
1H-NMR (400 MHz; DMSO-d6): δ3.22-3.41 (m, 2H), 4.18 - 4.28 (m, 3H), 4.41 - 4.48 (m, 1H), 7.31 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.41 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.65 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.88 (d, J = 7.6 Hz, 2H)。
【0153】
工程3:(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2-トリチル-2H-テトラゾール-5-イル)プロパン酸(中間体2)の合成:
(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2H-テトラゾール-5-イル)プロパン酸(8、12×5g、12×13.0mmol)のDCM(12×45mL)中溶液に、Et3N(12×5.6mL、12×39.0mmol)を0℃で加えた。5分間撹拌後、トリチルクロリド(12×4.0g、12×14.0mmol)を加え、反応混合物を同じ温度で2時間撹拌した。反応混合物を水(50mL)でクエンチングし、DCM(2×100mL)で抽出した(12回)。有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空下で濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し[順相、シリカゲル(100-200メッシュ)、DCM中1%~5%メタノールのグラジエント]、(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-3-(2-トリチル-2H-テトラゾール-5-イル)プロパン酸(中間体2、41g、41%)を白色固体として得た。
LCMS (方法A): m/z 620 [M-H]+ (ES-), 5.99分時, 86.85%
1H-NMR (400 MHz; CDCl3): δ3.44 - 3.62 (m, 2H), 4.12 - 4.20 (m, 1H), 4.25 - 4.32 (m, 1H), 4.36 - 4.44 (m, 1H), 4.82 - 4.88 (m, 1H), 7.02 - 7.12 (m, 6H), 7.24 - 7.32 (m, 11 H), 7.34 - 7.42 (m, 2H), 7.44 - 7.48 (m, 1H), 7.49 - 7.58 (m, 2H), 7.74 (d, J = 6.6 Hz, 2H)。
更なる精製をせずに固相ペプチド合成に使用
実施例1~23の合成
標準的なFmoc固相ペプチド合成(SPPS)を用いて直鎖ペプチドを合成した後、それらを樹脂から切断し、精製した。
【0154】
一般的なペプチド合成法:
ペプチドは標準的なFmoc化学を用いて合成された。
【0155】
1)DCMをRink Amide MBHA樹脂(sub:0.35mmol/g、0.2mmol、0.57g)入り容器に加え、2時間膨潤。
【0156】
2)排水後、DMFで洗浄(5回、洗浄ごとに排水)。
【0157】
3)DMF中20%ピペリジン溶液を加え、N2通気しながら30分間撹拌。
【0158】
4)排水し、DMFで洗浄(5回、洗浄ごとに排水)。
【0159】
5)Fmoc-アミノ酸溶液(DMF中3.0当量)を加え、30秒間混合後、活性化緩衝液(DMF中HBTU(2.85当量)及びDIEA(6当量))を加え、N2通気しながら1時間撹拌。
【0160】
6)カップリング反応はニンヒドリン試験によってモニターした。
【0161】
7)効率の悪いカップリングが発生した場合、必要であれば、同じアミノ酸カップリングについて工程4~6を繰り返す。
【0162】
8)次のアミノ酸カップリングについて工程2~6を繰り返す。
【0163】
注:以下の表中の酸については異なる当量及びカップリング剤が使用された。
【0164】
【表2】
ペプチドの切断と精製:
1)切断緩衝液(92.5%TFA/2.5%EDT/2.5%TIS/2.5%H
2O)を側鎖保護ペプチド入りフラスコに室温で加え、3時間撹拌。
【0165】
2)ペプチドを冷tert-ブチルメチルエーテルで沈殿させ、遠心分離する(3000rpmで3分間)。
【0166】
3)残渣をtert-ブチルメチルエーテルで洗浄(2回)。
【0167】
4)粗ペプチドを真空下で2時間乾燥。
【0168】
5)粗ペプチドを分取HPLCで精製した。分取HPLC条件:機器:Gilson 281。溶媒:A-H2O中0.1%TFA、B-アセトニトリル、カラム:Luna C18(200×25mm;10μm)及びGemini C18(150*30mm;5μm)を直列配置。グラジエント[時間(分)/溶媒B(%)]:20mL/分で、0.0/20、60.0/50、60.1/90、70/90、70.1/10、UV検出(波長=215nm)。次いで凍結乾燥し、実施例3(25.8mg、収率3.1%)を得た。
【0169】
【表3】
生物活性
下記実施例は、本発明の好適な側面を例示するために提供されるのであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0170】
実施例A.ペプチドのインビトロ薬理学的特性評価 - ヒトGLP2又はGLP1受容体の機能的アゴニズム、cAMP蓄積アッセイ
ヒトGLP2又はGLP1受容体のアゴニスト刺激によるcAMP産生を、HiRange cAMPキット(Cisbio)を利用して評価した。簡潔に述べると、HEK細胞に、ヒトGLP2又はGLP1受容体BacMamウイルスをそれぞれ24時間感染させ、後でアッセイに使用するために凍結した。当日、様々な濃度の化合物を、ECHO-555(LabCyte)を用いて総容量100nlになるまで低容量384ウェルProxiプレート(Perkin Elmer)に分注した後、10μlの細胞懸濁液を添加して、ウェルあたり800k個の細胞を分配した。細胞はアッセイ緩衝液(0.5mMのIBMX(Tocris)が補給されたHBSS(Lonza))中に用意されたものであった。37℃で45分間のインキュベーション後、キットに付いている溶解緩衝液中HTRF検出試薬を添加することにより反応を停止させた。室温で1時間のインキュベーション後、プレートをPherastar FS(BMG Labtech,Inc.)で読み取った。Dotmatics Studiesソフトウェアを用い、データを4パラメーター用量反応曲線にあてはめることによりpEC50値を計算した。
【0171】
Exendin-4及びリラグルチドをGLP-1受容体活性化の基準化合物として使用し、Teduglutide及びFE-203799をGLP-2受容体活性化の基準化合物として使用した。
【0172】
【表4】
実施例B.ペプチドのインビトロ薬理学的特性評価 - マウスGLP2又はGLP1受容体の機能的アゴニズム、cAMP蓄積アッセイ:
マウスGLP2又はGLP1受容体のアゴニスト刺激によるcAMP産生を、HiRange cAMPキット(Cisbio)を利用して評価した。簡潔に述べると、HEK細胞にcDNAを24時間、GeneJuiceトランスフェクション試薬(EMD Millipore)を用いて一過性にトランスフェクトし、後でアッセイに使用するために-80℃で凍結した。当日、様々な濃度の化合物を、ECHO-555(LabCyte)を用いて総容量100nlになるまで低容量384ウェルProxiプレート(Perkin Elmer)に分注した後、10μlの細胞懸濁液を添加して、ウェルあたり8000個の細胞を分配した。細胞はアッセイ緩衝液(0.5mMのIBMX(Tocris)が補給されたHBSS(Lonza))中に用意されたものであった。37℃で45分間のインキュベーション後、キットに付いている溶解緩衝液中HTRF検出試薬を添加することにより反応を停止させた。室温で1時間のインキュベーション後、プレートをPherastar FS(BMG Labtech,Inc.)で標準的なHTRF設定を用いて読み取った。Dotmatics Studiesソフトウェアを用い、データを4パラメーター濃度反応曲線にあてはめることによりpEC
50値を計算した。
【0173】
リラグルチドをGLP-1受容体活性化の基準化合物として使用し、Teduglutide及びFE-203799をGLP-2受容体活性化の基準化合物として使用した。
【0174】
【表5】
実施例C:正常マウスの腸湿潤重量に対する効果
C57BL/6J雄マウス(Charles River、イタリア、~8週齢)をベースライン体重に基づいて無作為に処置群に割り当てる。動物は研究の全期間を通じて自由に食物と水を摂取できる。マウスは皮下注射により試験化合物を毎日投与される。4日目に動物を屠殺し、発泡スチロールのパッド上に固定する。腹腔を開き、腸組織を穿孔しないように慎重に切除する。上部小腸からの組織(幽門から15cmのセグメント)を採取する。糞便を除去するために腸を氷冷PBSで洗い流すことによってきれいにする。
GLP-2活性ペプチド(テデュグルチド、実施例1及び3)による処置を受けた動物で腸湿潤重量の顕著な増大が見られたが、GLP-1ペプチドのリラグルチドは腸重量を増加しなかった(
図1)。
【0175】
実施例D:正常マウスの腸質量に対する化合物の用量反応効果
C57BL/6J雄マウス(Charles River、イタリア、~8週齢)をベースライン体重に基づいて無作為に処置群に割り当てる。動物は研究の全期間を通じて自由に食物と水を摂取できる。マウスは皮下注射によりビヒクル又は試験ペプチドを毎日投与される。7日目に動物を屠殺し、上部小腸からのセグメント(幽門から15cmのセグメント)を採取し、秤量する(実施例B参照)。
テデュグルチド又は実施例1及び3による処置を受けた動物は、小腸の湿潤重量に用量依存性の増大を示した(
図2)。
【0176】
実施例E.正常マウスの耐糖能に対する効果
C57BL/6J雄マウス(Charles River、イタリア、~8週齢)を試験当日、飲料水は自由に与えながら6時間絶食させる。薬物投与に先立ち、投与前の血糖測定を血糖測定器(ACCU-CHEK performa、Roche Diagnostic GmbH)を用いて行う。動物は皮下注射によりビヒクル(PBS中0.1%Tween80)か又は試験化合物(270nmol/kg)のいずれかを投与される。リラグルチド(200ug/kg)は静脈内注射として投与された。投与の1時間後、マウスに2g/kgのグルコースを強制経口投与し、血糖値分析のために血液を規定の時点で採取する。採取時点:t=0(グルコース投与前)、15分、30分、60分、120分及び180分。
ビヒクル処置マウスは、血糖値に急激な上昇を示し、最初の15分でピークに達した後、3時間でベースライン値に戻った。リラグルチド、実施例1及び3で処置された動物ではピーク血糖濃度が著しく低下した(
図3)。
【国際調査報告】