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特表2023-517768MS療法のためのκオピオイド受容体リガンドと組み合わしてのシクロチド
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  • 特表-MS療法のためのκオピオイド受容体リガンドと組み合わしてのシクロチド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】MS療法のためのκオピオイド受容体リガンドと組み合わしてのシクロチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20230419BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/35 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230419BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20230419BHJP
   A61K 36/74 20060101ALN20230419BHJP
   A61K 36/86 20060101ALN20230419BHJP
【FI】
A61K38/16
C07K14/415
A61P25/00
A61P25/04
A61K45/00
A61P27/02
A61P7/00
A61P25/02
A61P43/00 111
A61K31/485
A61K31/35
A61K31/352
A61K31/137
C12N15/29 ZNA
A61K36/74
A61K36/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556053
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2021057094
(87)【国際公開番号】W WO2021186035
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】20164576.9
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508317424
【氏名又は名称】メディツィニシェ ウニベルジテート ウィーン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン グルーバー
(72)【発明者】
【氏名】エディン ムラトシュパヒク
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C088
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA26
4C084MA02
4C084ZA02
4C084ZA08
4C084ZA20
4C084ZA33
4C084ZA51
4C084ZC01
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086BA08
4C086CB23
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA20
4C086ZA33
4C086ZA51
4C086ZC01
4C086ZC41
4C088AB12
4C088AB14
4C088BA08
4C088BA16
4C088MA02
4C088NA05
4C088NA06
4C088ZA02
4C088ZA08
4C088ZA20
4C088ZA33
4C088ZA51
4C088ZC01
4C088ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZA02
4C206ZA08
4C206ZA20
4C206ZA33
4C206ZA51
4C206ZC01
4C206ZC41
4H045BA18
4H045CA30
4H045EA20
4H045EA21
4H045FA71
4H045FA74
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は、多発性硬化症(MS)の治療、再ミエリン化、CNS病変の改善、脱髄及び/又はCNS病変の予防又は軽減、及び/又は痛み、特に神経因性疼痛及び/又は MS に起因する/MS に付随する疼痛の治療への使用のための、シクロチド及びκオピオイド受容体(kOR)のリガンド、又はそれらの組み合わせを含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、シクロチドとkORのリガンドとの組合せ、及び前記組合せを含む医薬組成物に関する。 本発明はさらに、kORのリガンドの悪影響を軽減するため、及び/又はkORのリガンドの効力及び/又は有効性を高めるためのシクロチドの使用に関する。さらに、本発明は、シクロチド及びkORのリガンドを含むキットに関する。 本発明はさらに、キットの一部としての医薬組成物に関し、ここで含まれるシクロチド及びkORのリガンドは、MS及び関連する疾患及び/又は症状の治療に使用するためのものである。本発明はさらに、シクロチド及びkORのリガンドを含む医薬組成物を含むキットであって、前記医薬組成物及び/又は前記シクロチド及びkORのリガンドは、MS及び関連疾患及び/又は症状の治療に使用するためのものであるキットに関する。本発明はさらに、(a)新規ビオラ型シクロチドに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 多発性硬化症 (MS) の治療;
(ii)オリゴデンドロサイトの再ミエリン化及び/又はCNS病変の改善;
(iii) 脱髄及び/又はCNS病変の予防又は軽減; 及び/又は
(iv) 神経障害性疼痛及び/又はMSに起因する/付随する疼痛の治療への使用のための; 又は
(v) CNS病変の治療; 及び/又は
(vi) 脱髄疾患、神経障害及び/又は神経関連疾患の治療への使用のための、
(a)シクロチド;及び
(b)κオピオイド受容体(kOR)のリガンド(前記リガンドはシクロチド(cyclotide)ではない)を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物が、
(i) 多発性硬化症 (MS) の治療;
(ii)オリゴデンドロサイトの再ミエリン化及び/又はCNS病変の改善;
(iii) 脱髄及び/又はCNS病変の予防又は軽減; 及び/又は
(iv) 前記CNS病変、神経障害、神経関連疾患及び/又はMSに起因する/付随する神経因性疼痛及び/又は疼痛の治療への使用のためである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記脱髄疾患、神経疾患及び/又は神経関連疾患が、多発性硬化症、視神経炎、デビック病、炎症性脱髄疾患、中枢神経系ニューロパシー、ミエロパシー (背部田状筋など)、白質脳症及び白質ジストロフィーから成る群から選択されるか、又はギラン・バレー症候群及びその慢性対応物、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、抗-MAG (ミエリン関連糖タンパク質) 末梢神経障害、シャルコー・マリー・トゥース (CMT) 病、銅欠乏及び進行性炎症性神経障害から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記治療、再ミエリン化、改善、予防又は軽減は、MSエピソードの再発率及び/又は頻度を減少させることを含むか、又は減少させる結果となる、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記治療が、
(i)CNS病変の再ミエリン化及び/又は改善;
(ii)脱髄及び/又はCNS病変の予防又は軽減; 及び/又は
(iii) 神経障害性疼痛及び/又はMSに起因する/付随する疼痛の治療を含むか、又はもたらす、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
(a) 不快気分、鎮静、利尿及び/又は幻覚などのκOR依存性の副作用が軽減/改善又は回避されているか、又は軽減/改善又は回避されるべきである、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記kORがヒトkOR(hkOR)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
kORの前記リガンドが、前記kORのアゴニストであるか、又はアゴニストとして作用することができる、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記アゴニストが偏りのないアゴニストである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
kORの前記リガンドが、β-アレスチン2動員を誘導又は増加させることができる(前記シクロチドの非存在下で)、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記アゴニストが偏ったアゴニストである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
kORの前記リガンドが、β-アレスチン2動員を誘導又は増加させない(前記シクロチドの非存在下で)、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記シクロチドが、前記kORの(偏った)(オルソステリック)アゴニストであるか、又はそのように作用することができる、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記シクロチドが、β-アレスチン2動員を誘導又は増加することができない(kORの前記リガンドが存在しない場合)、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記シクロチドが、環状シスチンノット(CCK)モチーフに配置された3つのジスルフィド結合を形成することができる6つの保存されたシステイン残基をシクロチド鎖が含む頭尾環化ペプチドであるか、又はそれを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記シクロチドが非グラフトシクロチドである、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記シクロチドが、カラタ型、特にカラタB型シクロチド、カリペ型シクロチド又はビオラ型シクロチドである、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記シクロチドが、カラタB1又はカラタB1の突然変異体である、請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記シクロチドが、配列番号7、5、4、6、155又は86に示されるアミノ酸配列の(頭から尾への)環化形を含むか、又はそれらから成るシクロチドである、請求項1~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記シクロチドが、カラタB1(配列番号1)のT20K変異体、すなわち、配列番号7に示される変異シクロチドである、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
kORの前記リガンドが、小分子又はペプチドリガンドである、請求項1~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
kORの前記リガンドが、表6に列挙されるkORアゴニストから成る群から選択される、請求項1~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
kORの前記リガンドが、U50,488及びダイノルフィンA-(1-13)から成る群から、又はダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィンA-(1-8)、U69593、GR89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニルから成る群から選択される、請求項1~10及び13~22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
kORの前記リガンドが、ナルフラフィン(モルヒネ誘導体)、コリボリド(マッシュルームCollybia maculate)、ノリボガイン(植物イボガの代謝産物)、B-64(サルビノリンA誘導体)、トリアゾール1.1、6-GNTI、HS666、HS665及びメシルサルビノリンBから成る群から選択される、請求項1~8及び11~22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
(a)請求項1及び13~20のいずれか1項に記載のシクロチド; 及び
(b)請求項1、7~12及び22~24のいずれか1項に記載のkORのリガンドの組合せ。
【請求項26】
(a)前記シクロチドがT20K(配列番号7)であり、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル;
(b)前記シクロチドがN29K(配列番号5)であり、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル;
(c)前記シクロチドがG18K(配列番号4)であり、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル;
(d)前記シクロチドがT20K/G1K(配列番号6)であり、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル;又は
(e)前記シクロチドがビトリシクロチド(配列番号155)であり、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル;又は
(f)前記シクロチドがカリペ10(配列番号86)であり、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル、請求項1~24のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項25に記載の組合せ。
【請求項27】
(a)前記シクロチドがT20K(配列番号7)であり、そして前記リガンドがナルフラフィンであり;
(b)前記シクロチドがN29K(配列番号5)であり、そして前記リガンドがナルフラフィンであり;
(c)前記シクロチドがG18K(配列番号4)であり、そして前記リガンドがナルフラフィンであり;
(d)前記シクロチドがT20K/G1K(配列番号6)であり、そして前記リガンドがナルフラフィンであり;
(e)前記シクロチドがビトリ(配列番号155)であり、そして前記リガンドがナルフラフィンであり;
(f)前記シクロチドがカリペ10(配列番号86)であり、そして前記リガンドがナルフラフィンであり;
(g)前記シクロチドがT20K(配列番号7)であり、そして前記リガンドがU50,488であり;
(h)前記シクロチドがN29K(配列番号5)であり、そして前記リガンドがU50,488であり;
(i)前記シクロチドがG18K(配列番号4)であり、そして前記リガンドがU50,488であり;
(j)前記シクロチドがT20K/G1K(配列番号6)であり、そして前記リガンドがU50,488であり;
(k)前記シクロチドがビトリ(配列番号155)であり、そして前記リガンドがU50,488であり;
(l)前記シクロチドがカリペ10(配列番号86)であり、そして前記リガンドがU50,488であり;
(m)前記シクロチドがT20K(配列番号7)であり、そして前記リガンドがダイノルフィンA 1-13であり;
(n)前記シクロチドがN29K(配列番号5)であり、そして前記リガンドがダイノルフィンA 1-13であり;
(o)前記シクロチドがG18K(配列番号4)であり、そして前記リガンドがダイノルフィンA 1-13であり;
(p)前記シクロチドがT20K/G1K(配列番号6)であり、そして前記リガンドがダイノルフィンA 1-13であり;
(q)前記シクロチドがビトリ(配列番号155)であり、そして前記リガンドがダイノルフィンA 1-13であり;
(r)前記シクロチドがカリペ10(配列番号86)であり、そして前記リガンドがダイノルフィンA 1-13であり;
(s)前記シクロチドがT20K(配列番号7)であり、そして前記リガンドがジフェリケファリンであり;
(t)前記シクロチドがN29K(配列番号5)であり、そして前記リガンドがジフェリケファリンであり;
(u)前記シクロチドがG18K(配列番号4)であり、そして前記リガンドがジフェリケファリンであり;
(v)前記シクロチドがT20K/G1K(配列番号6)であり、そして前記リガンドがジフェリケファリンであり;
(w)前記シクロチドがビトリ(配列番号155)であり、そして前記リガンドがジフェリケファリンであり;
(x)前記シクロチドがカリペ10(配列番号86)であり、そして前記リガンドがジフェリケファリンであり;
(y)前記シクロチドがT20K(配列番号7)であり、そして前記リガンドがナルブフィンであり;
(z)前記シクロチドがN29K(配列番号5)であり、そして前記リガンドがナルブフィンであり;
(aa)前記シクロチドがG18K(配列番号4)であり、そして前記リガンドがナルブフィンであり;
(ab)前記シクロチドがT20K/G1K(配列番号6)であり、そして前記リガンドがナルブフィンであり;
(ac)前記シクロチドがビトリ(配列番号155)であり、そして前記リガンドがナルブフィンであり;
(ad)前記シクロチドがカリペ10(配列番号86)であり、そして前記リガンドがナルブフィンであり;
(ae)前記シクロチドがT20K(配列番号7)であり、そして前記リガンドがペンタソジンであり;
(af)前記シクロチドがN29K(配列番号5)であり、そして前記リガンドがペンタソジンであり;
(ag)前記シクロチドがG18K(配列番号4)であり、そして前記リガンドがペンタソジンであり;
(ah)前記シクロチドがT20K/G1K(配列番号6)であり、そして前記リガンドがペンタソジンであり;
(ai)前記シクロチドがビトリ(配列番号155)であり、そして前記リガンドがペンタソジンであり;
(aj)前記シクロチドがカリペ10(配列番号86)であり、そして前記リガンドがペンタソジンであり;
(ak)前記シクロチドがT20K(配列番号7)であり、そして前記リガンドがペチジンであり;
(a1)前記シクロチドがN29K(配列番号5)であり、そして前記リガンドがペチジンであり;
(am)前記シクロチドがG18K(配列番号4)であり、そして前記リガンドがペチジンであり;
(an)前記シクロチドがT20K/G1K(配列番号6)であり、そして前記リガンドがペチジンであり;
(ao)前記シクロチドがビトリ(配列番号155)であり、そして前記リガンドがペチジンであり;
(ap)前記シクロチドがカリペ10(配列番号86)であり、そして前記リガンドがペチジンであり;
(aq)前記シクロチドがT20K(配列番号7)であり、そして前記リガンドがスルフェンタニルであり;
(ar)前記シクロチドがN29K(配列番号5)であり、そして前記リガンドがスルフェンタニルであり、
(as)前記シクロチドがG18K(配列番号4)であり、そして前記リガンドがスルフェンタニルであり;
(at)前記シクロチドがT20K/G1K(配列番号6)であり、そして前記リガンドがスルフェンタニルであり;
(au)前記シクロチドがビトリ(配列番号155)であり、そして前記リガンドがスルフェンタニルであり;そして
(av)前記シクロチドがカリペ10(配列番号86)であり、そして前記リガンドがスルフェンタニルである、請求項1~24及び26のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項25又は26に記載の組合せ。
【請求項28】
請求項1及び13~20のいずれか1項に定義されたシクロチド、及び請求項1、7~12及び22~24のいずれか1項に定義されたkORのリガンド、又は請求項25~27のいずれか1項に定義された組み合わせ、及び任意には医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項29】
(i)請求項1、7~12及び22~24のいずれか1項に定義されたkORのリガンド、特に請求項5、6及び14のいずれか1項に定義されたkORのリガンドの悪影響の軽減; 及び/又は
(ii)請求項1、7~12及び22~24のいずれか1項に定義されたkORのリガンド、特に請求項9、10及び23のいずれか1項に定義されたkORのリガンドの効力の増大への使用のための、請求項1及び13~20のいずれか1項に記載のシクロチド、又はそれを含む医薬組成物。
【請求項30】
kORの前記リガンド及び/又は前記シクロチド又は医薬組成物が、治療方法で使用するためのものである、請求項29に記載のシクロチド又は医薬組成物。
【請求項31】
kORの前記リガンド及び/又は前記シクロチド又は医薬組成物が、請求項1~6のいずれか1項に従って使用するためのものである、請求項29又は30に記載のシクロチド又は医薬組成物。
【請求項32】
例えば、2つの異なるバイアルに、
(a)請求項1及び13~20のいずれか1項に記載のシクロチド;及び
(b)請求項1、7~12及び22~24のいずれか1項に記載のkORのリガンド、 又は (a) と (b) の組み合わせを含むキット(内容物のキット/パーツのキット)。
【請求項33】
前記
(a) シクロチド; 及び
(b) kORのリガンド、又は
前記組み合わせが、請求項1~6のいずれか1項に従って使用するためのものである、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記
(a) シクロチド; 及び
(b) kORのリガンド、又は
前記組み合わせ、又は前記医薬組成物が、請求項1~6のいずれか1項に従って使用するためのものである、請求項32又は33に記載のキット(内容物のキット/パーツのキット)の一部としての医薬組成物。
【請求項35】
(a)請求項1及び13~20のいずれか1項に記載のシクロチド;及び
(b)請求項1、7~12及び22~24のいずれか1項に記載のkORのリガンドを含む医薬組成物又は (a) 及び (b) の組み合わせを含むキット(内容物のキット/パーツのキット)であって、
前記
(a) シクロチド; 及び
(b) kORのリガンド、
又は前記組み合わせ又は前記医薬組成物が請求項1~6のいずれか1項に従って使用するためのものである、キット。
【請求項36】
請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のためである、請求項32、33及び35のいずれか1項に記載のキット。
【請求項37】
請求項25~28のいずれか1項に記載の組合せ又は医薬組成物の製造方法であって、前記請求項のいずれかに定義されたシクロチド及びkORリガンドを混合する工程、及び任意には、医薬的に許容される担体を混合するさらなる工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多発性硬化症(MS)などの脱髄疾患、神経障害及び/又は神経関連疾患の治療, 再ミエリン化、CNS病変の治療/改善、脱髄及び/又はCNS病変の予防又は軽減、及び/又は疼痛、特に神経因性疼痛、及び/又はMSに起因する/MSに伴う又は付随する疼痛の治療への使用のための、シクロチド(cyclotide)及びκオピオイド受容体(kOR)のリガンド、又はそれらの組み合わせを含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、シクロチドとkORのリガンドとの組合せ、及び前記組合せを含む医薬組成物に関する。 本発明はさらに、kORのリガンドの悪影響を軽減するため、及び/又はkORのリガンドの効力及び/又は有効性を高めるためのシクロチドの使用に関する。 さらに、本発明は、シクロチド及びkORのリガンドを含むキットに関する。本発明はさらに、キットの一部としての医薬組成物に関し、ここで含まれるシクロチド及びkORのリガンドは、MS及び関連する疾患及び/又は症状の治療に使用するためのものである。本発明はさらに、シクロチド及びkORのリガンドを含む医薬組成物を含むキットに関し、 ここで、前記医薬組成物及び/又は前記シクロチド及びkORのリガンドは、脱髄疾患、神経障害及び/又はMSなどの神経関連疾患、並びに関連疾患及び/又は症状の治療に使用するためのものである。 本発明はさらに、(a)新規ビオラ型シクロチドに関する。
【背景技術】
【0002】
MS は、中枢神経系 (CNS) に炎症性損傷を引き起こし、若年成人に障害を引き起こす T 細胞媒介性自己免疫疾患である。MSの病因は、免疫系の活性化、リンパ球の浸潤、ミクログリアの活性化、限局性炎症性脱髄及び軸索損傷を含む、一連の病理学的事象によって特徴付けられる(Ciccarelli, Lancet Neurol 13 (8), 2014, 807-22)。CD4T 細胞、特に Th17 及び Th1サブグループは、この疾患を開始することが示唆されている(Sospedra, Annu Rev Immunol 23, 2005, 683-747)。
【0003】
現在利用可能な MS の治療法はすべて、ベータ インターフェロン、フィンゴリモド、フマル酸ジメチルなどの一般的な免疫抑制/免疫調節、及びナタリズマブなどの中枢神経系への免疫細胞浸潤の遮断を含む作用機序で免疫系を標的としている(Haghikia, Trends Mol Med 19 (5), 2013, 309-19)。これらの薬は、再発率と新しい病変の形成を減らすのに効果的であり;ただし、障害の進行を防ぐ効果は非常に限られている。オリゴデンドロ サイト前駆細胞 (OPC) の分化、再ミエリン化、及びその後のニューロンの機能回復の促進は、MS 療法の新しい方向性であると提案されている(Plemel, Nat Rev Drug Discov 16 (9), 2017, 617-634; Franklin, Nat Rev Neurosci 18 (12), 2017, 753-769)。
【0004】
さらに、一般的に、天然物は創薬と開発の最も価値のある情報源の 1 つであり続けている(Muratspahic, Trends Pharmacol Sci 40 (5), 2019, 309-326)。ペプチドベースの医薬品に対する関心の高まりにより、治療用途向けの天然由来ペプチドの開発が強化されている(Muratspahic, Trends Pharmacol Sci 40 (5), 2019, 309-326)。最近、環状植物ペプチドであるカラタ B1が、IL-2 依存性メカニズムでインビトロ で T 細胞増殖を抑制することが示されている(Grundemann, PLoS One 8 (6), 2013, e68016)。さらに、MS EAEマウスモデルを用いた突然変異シクロチド[T20K]-カラタB1のインビボ活性が示された(Thell, Proc Natl Acad Sci U S A 113 (15), 2016, 3960-5; 国際公開第2013/093045号)。この突然変異シクロチドでのマウスの処置は、経口投与によるEAEの有意な遅延及び症状の減少をもたらした(Thell、前記)。サイクロタイドは、リンパ球増殖の阻害と炎症誘発性サイトカイン、特に IL-2 の減少により、他の市販薬と区別される(Thell、前記)。
【0005】
さらに、内因性オピオイド システムは、MS の病因に役割を果たすことが示唆されている。 MS の Theiler マウス脳脊髄炎ウイルスモデルでは、3 つのオピオイド受容体すべて、つまりミュー、デルタ、カッパオピオイド受容体 (mOR、dOR、kOR) の mRNA レベルが脊髄で有意に減少した(Lynch, Brain Res 1191, 2008, 180-91)。特に、GPCR kOR は最近、MS の病因に関与することが示唆されている(Du, Nat Commun 7, 2016, 11120; Mei, J Neurosci, 2016, 36 (30), 7925-35)。オピオイド受容体の喪失は、MS患者に一般的に観察される中枢性神経因性疼痛を部分的に説明する可能性がある(Baron, Nat Clin Pract Neurol 2 (2), 2006, 95-106)。妊娠中の女性は、より高いレベルの内因性オピオイドを発現することが報告されている(Akil, Annu Rev Neurosci 7, 1984, 223-55)。妊娠中のMS患者は、病気の寛解を経験し、再発が少ない。 しかし、分娩後 3 か月で、内因性オピオイド レベルの低下とは対照的に、これらの女性は再発率の著しい増加を示す(Roullet, J Neurol Neurosurg Psychiatry 56 (10), 1993, 1062-5; Lutton, Exp Biol Med (Maywood) 229 (1), 2004, 12-20)。さらに、研究は最近、kORの遺伝子欠失がEAEの有意に深刻な表現型を誘発することを実証した(Du, 前記; Mei, Nat Med 20 (8), 2014, 954-960; Mei, 2016, 前記)。kOR は T 細胞の分化と機能に影響を与えず、代わりに、有髄オリゴデンドロ サイト (OL) へのOPC の分化に大きく関与している(Du 前記)。従って、U50,488などのアゴニストによるkORの標的化はOPCの分化と再ミエリン化を促進するが、kORノックアウトはアゴニストを介した有益な効果を防ぐ(Du, 前記; Mei, 2014, loc. cit.; Mei, 2016, 前記)。いくつかの研究は、おそらく軸索に物理的および代謝的サポートを提供することにより、軸索の完全性を維持するためのミエリンの重要な役割を報告した(Lee, Nature, 2012, 487 (7408), 443-8; Mei, 2014, 前記)。最近の高処理スクリーニングの取り組みにより、再ミエリン化を促進する多数の化合物が特定されている(Mei, 2014, loc. cit.; Najm, Nature, 2015, 522 (7555), 216-20)。国際公開第2019/171333号では、脱髄疾患の治療におけるkOR アゴニスト ナルフラフィンの使用が予見されている。Denny (Clinical & Translational Immunology 10(1), e1234, 2021, 1-19) は、CNS 脱髄疾患のモデルにおける神経炎症の減少と再ミエリン化の促進を考慮して、MS 治療におけるナルフラフィンの臨床使用の可能性について論じている。さらに、Tangherlini (J. Med. Chem. 62, 2019, 893-907) は、神経炎症の治療のためのキノキサリンベースのkOR アゴニストの開発について説明している。さらに、[T20K]カラタB1 は hkOR に結合して活性化することが示されている(Muratspahic and Gruber, 2018, “Nature-derived peptides as molecular tools to study GPCR signaling” JOURNAL OF PEPTIDE SCIENCE 24, S137-S137, 2018)。
【0006】
ただし、U50,488 などの kOR アゴニストの臨床的可能性は、有害な副作用とオフターゲット受容体のために制限されている。 特に、U50,488などの kOR アゴニストがあり、必要な薬学的に有効な用量/濃度で、不快感、鎮静、利尿、及び/又は幻覚などの副作用を示す(Lalanne, Front Psychiatry, 2014, 5, 170)。細胞質タンパク質ベータアレスチン2(β-アレスチン 2) の動員は、この点で関連するメカニズムであることが知られている (Lalanne 前記)。 従って、MS 及び関連する疾患/欠陥/症状の治療において、副作用の軽減と効能の改善に関連する新規化合物の継続的な同定が強く求められている。さらに、利用可能な MS 薬の多様性にもかかわらず、MS患者の身体障害の進行を防ぐ有効性が改善された新しいMS薬を開発するという満たされていない臨床的必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の根底にある問題は、悪影響がないか、少ないか、又は改善された副作用を伴って、MS及び関連する疾患、欠陥及び/又は症状における改善された医療介入、特にMS及び関連する疾患、欠陥及び/又は症状における医療介入のための手段及び方法の提供である。
【0008】
技術的問題は、特許請求の範囲で特徴付けられる実施形態の提供によって解決される。
【0009】
本発明は、脱髄疾患、神経障害及び/又はMSなどの神経関連疾患、並びに関連疾患、欠陥及び/又は症状の併用治療に関し、前記併用治療は、シクロチド及びkORのリガンドの投与/医学的使用を含む。これに関連して、神経炎症の治療も想定される。
【0010】
本発明は、MS及び関連する疾患、欠陥及び/又は症状の併用治療に関し、前記併用治療は、シクロチド及びkORのリガンドの投与/医学的使用を含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はさらに、
(i) MSの治療(例えば、療法による治療又は予防的/予防的治療);
(ii) 特にオリゴデンドロサイトの再ミエリン化 (すなわち、その誘導又は増加)、及び/又は CNS 病変 (例えば、脳病変) の改善 (例えば、減少又は養生/治癒);
(iii)脱髄(特にオリゴデンドロサイトの)の防止又は低減、及び/又は(新しい)CNS病変(例えば、脳病変)の形成の防止、及び/又は既存のCNS病変(例えば、脳病変)の低減; 及び/又は
(iv) 疼痛、特に神経因性疼痛 (例えば、中枢性又は末梢性神経因性疼痛) 及び/又は MS に起因する/付随する疼痛の治療 (例えば、治療又は予防/予防治療による治療)への使用のための、
(a)シクロチド;及び
(b)kORのリガンド、
又は (a) と (b) の組み合わせ、
を含む医薬組成物に関する。
【0012】
本発明はさらに、
(v) CNS病変の治療; 及び/又は
(vi) 脱髄疾患、神経障害及び/又は神経関連疾患の治療への使用のための、
(a)シクロチド;及び
(b)kORのリガンド、
又は (a) と (b) の組み合わせ、
を含む医薬組成物に関する。
【0013】
本発明はまた、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び/又は(vi)、上記において、kORのリガンド(を含む医薬組成物)と組み合わせて使用するシクロチド(を含む医薬組成物)にも関する。
【0014】
本発明はまた、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び/又は(vi)、上記において、シクロチド(を含む医薬組成物)と組み合わせて使用するkORのリガンド(を含む医薬組成物)にも関する。
【0015】
本発明はさらに、
(i) MSの治療(例えば、療法による治療又は予防的/予防的治療);
(ii) 特にオリゴデンドロサイトの再ミエリン化 (すなわち、その誘導又は増加)、及び/又は CNS 病変 (例えば、脳病変) の改善 (例えば、減少又は養生/治癒);
(iii)脱髄(特にオリゴデンドロサイトの)の防止又は低減、及び/又は(新しい)CNS病変(例えば、脳病変)の形成の防止、及び/又は既存のCNS病変(例えば、脳病変)の低減; 及び/又は
(iv) 疼痛、特に神経因性疼痛 (例えば、中枢性又は末梢性神経因性疼痛) 及び/又は MS に起因する/付随する疼痛の治療 (例えば、治療又は予防/予防治療による治療)方法に関し、
前記方法は、それを必要とする対象に薬学的に有効な量の
(a)シクロチド;及び
(b) kORのリガンド、
又は(a)及び(b)の組合せ、又は(a)及び(b)を含む医薬組成物、又は前記組合せを投与する工程を含む。
【0016】
本発明はさらに、
(v) CNS病変の治療; 及び/又は
(vi) 脱髄疾患、神経障害及び/又は神経関連疾患の治療方法に関し、
前記方法は、それを必要とする対象に薬学的に有効な量の
(a)シクロチド;及び
(b) kORのリガンド、
又は(a)及び(b)の組合せ、又は(a)及び(b)を含む医薬組成物、又は前記組合せを投与する工程を含む。
【0017】
本明細書の以下及び添付の実施例に記載されているように、シクロチドがkORに結合することができ、特にkORのリガンドとして作用することが驚くべきことに見出されたため、本発明は上記で特定された技術的問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、kORに対するシステインに富む植物抽出物の結合効果を示す。データは、試験濃度 300μg/mL での結合率を示している。 提示されたデータは、それぞれが重複して実行された2つの独立した実験から取得される。 特異的結合は、全結合から非特異的結合を差し引いて計算し、1.0 に標準化した (1nMの [H]-ジプレノルフィン)。 ダイノルフィンA1-13 (10nM) を陽性対照として使用した。 赤で着色された植物抽出物は、最も顕著な結合効果を示した。
【0019】
図2図2は、kOR での C. ipecacuanha及び V. tricolor の植物抽出物の受容体薬理学を示す。A) 結合データは、C. ipecacuanha (300 μg/mL) 及び対照ダイノルフィン A1-13 (10nM) のペプチド濃縮画分による放射性 [H]-ジプレノルフィン (1nM) の置換を測定することによって得られた(n=2)。 B) 分離されたカリペ ペプチド (10 μ M) とダイノルフィンA1-13(10 nM)の置換結合 (n=2)、及び C) kOR を安定して発現するHEK293細胞膜におけるカリペ10 の濃度応答曲線 (n=3)。カリペ10 及びダイノルフィン A1-13 の Ki値は、それぞれ 1 μM 及び280pM と計算された。D) V. tricolor(300 μg/mL) 及び陽性対照ダイノルフィンA1-13(10nM)のペプチド濃縮画分による、放射性標識 [H]-ジプレノルフィンの置換結合(n=2)。 E) V. tricolor から分離されたビトリペプチドの分析用 RP-HPLCクロマトグラムと MALDI 質量スペクトル。 ペプチド質量(3431.87)は、モノアイソトピック質量 ([MH]) としてラベル付けされる。 F) 分離されたビトリ ペプチド (100 μg/mL) は、競合する 1nM の放射性リガンドについて試験された。 ダイノルフィンA1-13(10nM)は陽性対照として機能した(n=2)。特異的結合は、総結合から非特異的結合を差し引くことによって計算され、1.0 (分数) 又は 100% (パーセンテージ) に正規化された。 1.0 又は 100% は、膜 2mg当たり約5~7ピコモルのリガンドが結合していることを示す。 データは平均 ±SDとして示され、濃度応答曲線は非線形回帰(シグモイド、3パラメーター、1のヒル勾配)によって適合された。
【0020】
図3図3は、kORにおける[T20K]-カラタB1の受容体薬理学を示す。A)kOR を安定して発現するHEK293 細胞膜における [T20K]-カラタ B1 による放射性ジプレノルフィン (1 nM) の置換放射性リガンド結合 (n =2)。 全結合から非特異的結合を差し引くことによって特異的結合を計算し、100%に標準化した(5~7pmol/mgタンパク質)。B) kOR を安定して発現する HEK293 細胞における[T20K]-カラタB1の機能的cAMPアッセイ(n=4)。 細胞を指示濃度の[T20K]-カラタB1で37℃で30分間処理した。 データは、最高の内因性リガンド濃度で検出された最大活性化のパーセンテージに正規化された。C) ナノルシフェラーゼ (NLuc)と kOR の C 末端に導入されたEGFP(kOR-EGFP) 及び β-アレスチン2 (β-アレスチン 2-NLuc) の間で BRET をモニターした。 kOR-EGFPとβ-アレスチン2-NLucを共発現するHEK293細胞は、ルシフェラーゼ基質(フリマジン)の添加5分後に、ダイノルフィンA1-13(10μM)とT20K(10及び100μM)によって刺激された。 結果は、アゴニストの存在下と非存在下での BRETシグナルの差として示され、平均値±SD (n=3) として表される。D) ダイノルフィンA1-13及びT20Kの濃度応答曲線 (n=3)。 リガンドを5分間インキュベートし、終点に続いて生物発光の測定を行った。 リガンド促進 BRET は、(発光 EGFPリガンド/発光NLucリガンド)-(発光EGFP HBSS/発光 NLuc HBSS) として計算された。 データは、ダイノルフィン1-13 の最大活性化に対して正規化された。 データは平均 ±SD として表示され、非線形回帰 (シグモイド、3つのパラメーター、ヒル勾配 1) によって適合される。
【0021】
図4図4は、[T20K]-カラタB1が、kOR のアロステリック モジュレーターとして機能することを示す。A) さまざまな濃度の[T20K]-カラタ B1とダイノルフィン A1-13 又はB) kOR を安定して発現するHEK293細胞膜におけるU50,488 の共培養による放射性ジプレノルフィン (1nM) の置換放射性リガンド結合 (n=2)。 全結合から非特異的結合を差し引くことによって特異的結合を計算し、100%に標準化した(5~7pmol/mgタンパク質)。C) ダイノルフィンA1-13又は D) kOR を安定して発現するHEK293細胞におけるU50,488と組み合わせた [T20K]-カラタB1 の機能的cAMP アッセイ(n=5)。 細胞を [T20K]-カラタB1と共に37℃で30分間インキュベートした後、ダイノルフィンA1-13 又はU50,488 と 37℃でさらに 30 分間インキュベートした。 データは、最高の内因性リガンド濃度で検出された最大活性化のパーセンテージに正規化された。E) BRET は、ナノルシフェラーゼ (NLuc)と、kOR のC 末端に導入されたEGFP(kOR-EGFP) 及び β-アレスチン2 (β-アレスチン2-NLuc) の間でモニターされた。 kOR-EGFP と β-アレスチン2-NLucを共発現する HEK293 細胞は、ルシフェラーゼ基質 (フリマジン) の添加の5分後に、U50,488(10μM) と T20K (10 μM) によって刺激された。 結果は、アゴニストの存在下と非存在下での BRET シグナルの差として示され、平均値 ± SD(n=3) として表される。F) U50,488 及び T20Kの濃度応答曲線 (n=4)。 リガンドを5分間インキュベートし、終点に続いて生物発光の測定を行った。 リガンド促進BRETは、(発光EGFPリガンド/発光NLucリガンド) - (発光EGFP HBSS/発光NLuc HBSS) として計算された。 データは、U50,488 の最大活性化に対して正規化された。 データは平均 ±SD として表示され、非線形回帰 (シグモイド、3つのパラメーター、ヒル勾配1) によって適合される。
【0022】
図5図5は、VivoTag 標識[T20K]-カラタB1の体内分布を示す。[T20K-VivoTag]-kB1 (5mg/kg) をEAEマウスに腹腔内注射した。標識ペプチドの体内分布は、IVIS を使用して、示された疾患スコア (0.5 及び 1.75) でモニターされた。注射後4時間の器官を蛍光強度についてスキャンした。A) [T20K-VivoTag]-kB1 及び B)エバンブルー 色素は脊椎における C)、D)と同様に脳にも蓄積する。E) [T20K-VivoTag]-kB1 及び F) エバンブルー色素の定量化は、IVIS Living Imageソフトウェアを使用して実行された。
【0023】
図6図6は、シクロチドの配列多様性を示す。A) O.affinis、B) C.ipecacuanha及びC)V.tricolorで同定されたシクロチドは、MS の潜在的な治療法として新規の kOR リガンドを発見するための成長する適所を構成する。配列 アラインメント及び配列多様性ホイールは、http://www.cybase.org.au/ で入手できるツールを使用して生成された。
【0024】
図7図7は、シクロチドの合成を示す。シクロチドは、Fmoc化学を使用して線状前駆体として組み立てられ、天然化学連結を使用して環化された。 (1) ジ-Fmoc-3,4-ジアミノ安息香酸 (Dbz) をリンカーとして含むドーソン樹脂が出発点である。 (2) カップリングは、マイクロ波支援Fmoc合成を使用して実行される (星印は最初のアミノ酸をマークし、最後のアミノ酸は BOC 保護システインである)。(3) 樹脂結合Dbz前駆体のアシル化と活性化により、N-アシル尿素ペプチド (Nbz-ペプチド) が得られる。 (4) 1 工程での Nbz-ペプチドの完全な脱保護と樹脂切断 (Ar、Aryl)。 (5a) チオエステル化によるペプチド環化、(5b) S,N-分子内アシル シフト及び天然化学連結、及び (5c) 天然の折りたたみを持つシクロチドを生成するための酸化的折りたたみ。 シクロチド (カラタB1、PDB ID コード 1NB1) のリボン表現と [T20K]カラタB1の配列が示されている。 システイン、ジスルフィド結合 (黄色)、及びシステイン間ループが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
最初の実験(詳細については添付の実施例を参照)において、いくつかの植物種からのペプチドに富む画分が、kORに対して親和性を示すことが示された。 重要なことに、Carapichea ipecacuanha 及び Viola tricolor から分離されたシクロチドは、低μM 範囲の親和性で kOR に結合できた。特に、突然変異シクロチド[T20K]-カラタB1(本明細書では「T20K」、「[T20K]」、又は「T20K自体/それ自体」とも呼ばれる;元はOldenlandia affinisで同定された;例えば、国際公開第2013/093045号を参照)は、kORに結合して完全に活性化し、オルソステリックkORリガンドとして作用できることが本明細書で示された。 さらに、重要なことに、[T20K]-カラタB1 は、本発明との関連で、kOR のアロステリック モジュレーターとして作用し、それによって (正のアロステリック モジュレーター、PAM として) 定義された (他の) オルトステリックkORリガンドの有効性/効力を高めることが示されました。特に、[T20K]-カラタB1は、ダイノルフィンA1-13及びU50,488などのkORリガンドの効力/有効性に影響を与えることができることが、本発明の文脈で示された。 さらに、驚くべきことに、[T20K]-カラタB1自体はβ-アレスチン2を動員せず、β-アレスチン2の動員における U50,488 のようなkORリガンドの有効性を低下させることさえあることが、本発明の文脈で示された。従って、シクロチドはkOR依存性及び中枢媒介性の副作用を欠いており、ダイノルフィンA1-13及びU50、488などのkORアゴニストのそのような効果を減少させる可能性さえあるという確かな証拠が、本発明の文脈において提供される。
【0026】
従って、驚くべきことには、シクロチド、特に[T20K]-カラタB1が、オルソステリックリガンド及びアロステリックモジュレーターとして作用し、そしてそれらの作用が、kOR依存性及び中枢性を介した悪影響の減少を伴うという点で、kORでバイトピック作用機序を示すことができることが本発明の文脈で実証された。換言すれば、驚くべきことには、シクロチド、特に[T20K]-カラタB1は、kORにおいてオルソステリックリガンドであり得るだけでなく、アロステリックな方法でkORを結合することができるバイトピックリガンドとしても作用し得ることが、本発明の文脈において実証された。
【0027】
最後に、[T20K]-カラタB1がEAEモデルで CNS に浸透する能力は、本明細書及び添付の実施例で実証された。
【0028】
従って、(a) シクロチド、特に [T20K]-カラタB1、及び (a) kOR リガンド、特にダイノルフィン A 1-13 又は U50,488のようなオルソステリックkOR アゴニストの組み合わせによるkORの標的化が、再ミエリン化及び/又は疼痛療法、さらに具体的にはMS(再ミエリン化及び/又は疼痛)療法などの脱髄疾患、神経障害及び/又は神経関連疾患の治療(これらはさらに有益な免疫抑制効果を約束する)に高い可能性を秘めていることが本発明の文脈において提供される証拠がある。さらに、それらの配列の多様性により、シクロチドは、kORリガンドと組み合わせた場合、再ミエリン化及び/又は疼痛治療、より具体的にはMS(再ミエリン化及び/又は疼痛)治療のような、脱髄疾患、神経障害及び/又は神経関連疾患の治療のための理想的な候補となる(添付の図6A、B、及びCも参照のこと)。
【0029】
本発明に関連して適用される治療、特にMS治療及び関連する疾患、欠陥及び/又は症状の治療は、 再燃率及び/又はMSエピソードの頻度の減少、及び/又は(関係する患者の)障害の進行の予防又は減少を含むか、又はそれらをもたらす可能性がある。
【0030】
さらに、本発明に関連して適用される治療、特にMS及び関連する疾患、欠損及び/又は症状の治療は、以下を含むか、又は結果として生じることがある:
(ii) 特にオリゴデンドロサイトの再ミエリン化 (すなわち、その誘導又は増加)、及び/又は CNS 病変 (例えば、脳病変) の改善 (例えば、減少又は治癒/治癒);
(iii)脱髄(特にオリゴデンドロサイトの)の防止又は低減、及び/又はCNS病変(例えば、脳病変)の形成の防止、及び/又は既存のCNS病変(例えば、脳病変)の低減; 及び/又は
(iv) 疼痛、特に神経因性疼痛 (例えば、中枢神経因性又は末梢神経因性疼痛) 及び/又は MS に起因する/MS に伴う疼痛の治療 (例えば、治療又は予防/予防治療による治療)。
【0031】
さらに、本発明の治療、特にMS及び関連する疾患、欠損及び/又は症状の治療に関して、
(i) 特にオリゴデンドロサイトの再ミエリン化が誘導又は増加され、及び/又は CNS 病変 (例えば、脳病変) が改善され(例えば、減少又は治癒/治癒され);
(ii)特にオリゴデンドロサイトの脱髄が防止又は低減されるべきであり、及び/又はCNS病変(例えば脳病変)の形成が防止されるべきであり、及び/又は既存のCNS病変(例えば脳病変)が低減されるべきであり; 及び/又は
(iii) 疼痛、特に神経障害性疼痛 (例えば、中枢性又は末梢性神経障害性疼痛) 及び/又は MS に起因する/MS に付随する疼痛が治療されるべきである。
【0032】
本発明の文脈において、特にMS関連疾患、欠陥及び/又は症状の治療は、例えば、以下を意味すると考えられる:(形成) (新しい) CNS 病変 (例えば、脳病変)、(オリゴデンドロ サイトの) 脱髄、(中枢性又は末梢性の) 神経因性疼痛、MSに起因する/付随する疼痛、障害 (の進行) など。
【0033】
治療、特にMS及び関連する疾患、欠陥及び/又は症状の治療はまた、OPC分化、再ミエリン化及び/又はニューロンの(その後の)機能回復の促進を含み得るか、又は促進し得る。
【0034】
脱髄疾患、神経障害及び/又は神経関連疾患、特にMS及び関連疾患、欠損及び症状の意味は、当業者に周知である。 それらは、例えば、Ciccarelli (前記) 及び Sospedra (前記) に記載されている。
【0035】
本発明に従って治療される脱髄疾患、神経障害及び/又は神経関連疾患の例は、以下から成る群から選択される:MS、視神経炎、デビック病、炎症性脱髄疾患、中枢神経系ニューロパシー、ミエロパシー(背部垂葉など)、白質脳症及び白質ジストロフィー、又は以下から成る群から選択される:ギラン・バレー症候群とその慢性対応物、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、抗MAG(ミエリン関連糖タンパク質)末梢神経障害、シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病、銅欠乏症、及び進行性炎症性神経障害。
【0036】
本発明の1つの側面に関連して、有害作用、特にkOR依存性有害作用(中枢媒介性又は末梢媒介性)、より具体的にはβ-アレスチン2動員から生じる有害作用は、低減/改善叉は回避されるべきである。そのような有害作用は、例えば、(関連する有害作用)オピオイドクライシス/耐性及び/又は不快気分、鎮静、利尿及び/又は幻覚である(Lalanne 前記を参照のこと)。 従って、本発明によるMS及び関連する疾患、欠損及び/又は症状の治療の一態様との関連で、そのような副作用の1つ又は複数は、低減/改善又は回避されるべきである。
【0037】
本発明の文脈において標的とされるkORは、ヒトkOR(hkOR)であることが好ましい。 従って、好ましいkORリガンドはhkORリガンドである。 一般的に、標的とされるkORは、治療される患者のkORであることが好ましい。 例えば、治療される患者がヒトである場合、標的とされるkORは好ましくはhkORである。
【0038】
kOR、特にhkORは、当技術分野で周知である(例えば、Lalanne, 前記 及び Du, 前記に記載される)。 hkOR の詳細な特徴付け、特にアミノ酸配列情報は、データベース エントリ https://www.uniprot.org/uniprot/P41145 から取得できる。
【0039】
「(h)kORリガンド/アゴニスト」および「(h)kORのリガンド/アゴニスト」の意味は当技術分野で公知であり、それぞれの用語は本明細書において適宜使用される(例えば、https://www.guidetopharmacology.org/GRAC /ObjectDisplayForward?objectId=318&familyId=50&familyType=GPCR)。
【0040】
本発明の文脈において、kORのリガンドは、kORのアゴニスト(「偏りのない」リガンド/kORの「偏りのない」アゴニスト」)、kORの部分アゴニスト、又はkORの偏りのあるアゴニストであり得る。
【0041】
本発明の文脈において、それぞれkORの「アゴニスト」であること、及びkORに対して「アゴニスト」機能を示すことは、kORが活性化されること、すなわち、その関連する生物学的機能が誘導又は増加されることを意味する。特に、それぞれkORの「アゴニスト」であること、及びkORに対して「アゴニスト」機能を示すことは、本発明の文脈において、オピオイド刺激に対する kOR の応答、例えば細胞内 cAMP の減少が誘導又は増加し、RAF/MEK1/2/ERK1/2 又は JAK2/STAT3 シグナル伝達カスケードの活性化につながることを意味する(https://pubmed.ncbi .nlm.nih.gov/27881770-enhancing-remyelination-through-a-novel-opioid-receptor-pathway/?from_single_result=borniger+and+hesp; Borniger, J Neurosci 36(47), 2016, 3)。kORの関連する生物学的機能を試験するためのアッセイは、当技術分野で知られており、例えば、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27881770-enhancing-remyelination-through-a-novel-opioid-receptor-pathway/?from_single_result=borniger+and+hespに記載されている。さらに、そのようなアッセイは、添付の実施例(例えば、実施例2及び3)に記載されている。kORの複数のアゴニストが当技術分野で知られているhttps://www.guidetopharmacology.org/GRAC/ObjectDisplayForward?objectId=318&familyId=50&familyType=GPCR。kORアゴニストのいくつかの非限定的な例を添付の表6に示す。
【0042】
通常、kOR のアゴニストは完全なリガンド/アゴニスト、つまり「偏りのない」リガンド/アゴニストである。 これは、それらがkORシグナル伝達経路、例えば特定の経路、すなわちGタンパク質経路、及び/又はアレスチン経路のいずれかを完全に活性化することを意味する。例えば、本発明の文脈において、kORの「偏りのない」リガンド/アゴニストは、アレスチン動員、特にβ-アレスチン2動員を誘導する、または誘導することができるリガンド/アゴニストであるか 又は、特に関連する内因性または薬学的に有効な濃度/用量で、アレスチン動員、特にβ-アレスチン2動員を増加させる、又は増加させることができるリガンド/アゴニストである。理論に拘束されるわけではないが、アレスチン動員、特にβ-アレスチン2 動員は、kOR のより高い (及び/又はより速い) 内在化と関連している可能性がある。 これにより、例えば耐性の可能性が高まる可能性がある(オピオイド危機を参照)。 アレスチン動員、特にβ-アレスチン2動員は、オピオイドクライシス/耐性及び/又は不快感、鎮静、利尿及び/又は幻覚などの悪影響と関連しているため (Lalanne 前記)、 完全にアゴニストで「偏りのない」kORリガンドは通常、特に必要な医薬的に有効な濃度/用量で、オピオイドクライシス/耐性及び/又は不快感、鎮静、利尿及び/又は幻覚などの悪影響を示す (Lalanne 前記)。
【0043】
複数の完全アゴニストで「偏りのない」kORリガンドは当技術分野で知られている。 そのようなkORアゴニストのいくつかの非限定的な例を添付の表6に示し、単に「アゴニスト」と呼ぶ。
【0044】
完全にアゴニストの「偏りのない」kORリガンド/アゴニストに加えて、kORのリガンド/アゴニストは「偏った」リガンド/アゴニストでもあり得る。 これは、それらがkORシグナル伝達経路、例えば特定の経路、すなわちGタンパク質経路、又はアレスチン経路を活性化しない(または程度が低い)ことを意味する。例えば、本発明の文脈において、kORの「偏った」リガンド/アゴニストは、アレスチン動員、特にβ-アレスチン2動員を誘発しない(又はより低い程度で)、又は誘発することができない(又はより低い程度で)リガンド/アゴニストであるか、又は、アレスチン動員、特にβ-アレスチン2 動員、特に、関連する内因性又は薬学的に有効な濃度/用量で、アレスチン動員を増加させない (又はより低い程度まで)、又は増加させることができない (又はより低い程度まで) リガンド/アゴニストである。本発明の文脈において、「偏った」kORリガンド/アゴニストは、特に必要とされる医薬的に有効な濃度/用量で、オピオイドクライシス/耐性及び/又は不快感、鎮静、利尿及び/又は幻覚などの悪影響をほとんど示さないか、または全く示さない。例えば、本発明の文脈において、Gタンパク質に偏ったリガンド/アゴニストは、副作用の減少を示す。 複数の「偏った」kORリガンド/アゴニストは当技術分野で知られている。 そのようなkORアゴニストのいくつかの非限定的な例は、添付の表6に示され、「偏ったアゴニスト」と呼ばれる。
【0045】
kORリガンド/アゴニストの「偏り」及びそれらの「偏り係数」は、それぞれ、絶対的な特徴ではなく、ある範囲内で変化し得ることが当業者によって認識されている。 特に、「偏りのない」kORリガンド/アゴニストから「偏った」kORリガンド/アゴニストへの「スムーズな移行」がある。しかし、kORシグナル伝達経路に関して典型的な「偏った」kORリガンド/アゴニストが存在する。 典型的な「偏った」kORリガンド/アゴニストの例は、当技術分野で知られており、添付の表6に示されている(「偏ったアゴニスト」)。 「偏った」kORリガンド/アゴニストは、天然に存在する「偏った」kORリガンド/アゴニストであることが好ましい。本発明に従って使用される典型的な「偏った」kORリガンド/アゴニストの特定の非限定的な例は、 コリボリド(きのこCollybia maculate)、ノリボガイン(植物イボガの代謝物)、B-64(サルビノリンA誘導体)、ナルフラフィン(モルヒネ誘導体)、トリアゾール1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリンBである。
【0046】
同様に、kOR シグナル伝達経路に関して典型的な「偏りのない」kOR リガンド/アゴニストがある。 典型的な「偏りのない」kORリガンド/アゴニストの例は、当技術分野で知られており、添付の表6に示されている(「アゴニスト」)。 本発明に従って使用される典型的な「偏りのない」kORリガンド/アゴニストの特定の非限定的な例は、ダイノルフィンA-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィンA-(1-8)、U50488、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン(CR845、FE- 202845)(D-Phe-D-Phe-D-Leu-D-Lys-[γ-(4-N-ピペリジニル)アミノカルボン酸としても知られている)、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン、及びスルフェンタニルである。
【0047】
当業者は、所与のkORリガンド/アゴニストの「バイアス因子」を知っているか、又は少なくとも容易に試験することができる。 それぞれのアッセイは、添付の実施例に記載されており、当技術分野で知られている(例えば、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3868907 (White, Mol Pharmacol 85(1), 2014, 83-90) 及びhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25320048 (White, J Pharmacol Exp Ther 352(1), 2015, 98-109)を参照のこと)。
【0048】
完全アゴニストの「偏りのない」kORリガンド/アゴニストに加えて、kORのリガンド/アゴニストは「部分的」リガンド/アゴニストでもあり得る。「部分的な」kORリガンド/アゴニストであるということは、リガンド/アゴニストが、内因性比較/標準リガンドと比較して、有効性が低いことを意味する(特定の経路、例えば、Gタンパク質又はアレスチン又は他の経路、典型的にはGタンパク質経路)。非限定的な例として、Emax は 1 ~ 99% の間で減少し;0% はアンタゴニストであり、そして100% は内因性完全アゴニストである。 実際には、「部分的」kORリガンド/アゴニストは、内因性完全リガンド/アゴニストの有効性の約20~80%を有し得る。複数の「部分的」kORリガンド/アゴニストは当技術分野で知られている。 そのようなkORアゴニストのいくつかの非限定的な例は、添付の表6に与えられ、「部分アゴニスト」と呼ばれる。 典型的な「部分的」kORリガンド/アゴニストの特定の非限定的な例は、ダイノルフィンB、DAMGO、及びエンドモルフィン-1-Amo2である。
【0049】
一般的に、本発明に従って使用されるkORのリガンドは、kORの小分子又はペプチドリガンド、例えばkORの内因性ペプチドリガンドであり得る。 それぞれのリガンドは当技術分野で知られている。 それぞれの例を添付の表6に示し、それぞれ「小分子」、「ペプチド」又は「内因性」と呼ぶ。 kORのリガンド、特にアゴニストである小分子の特定の、しかし非限定的な例は、以下にも記載されている:Tangherlini (loc. cit.), Bourgeois (J. Med. Chem. 57, 2014, 6845-60), Molenveld (Bioorg. Med. Chem. Lett. 25, 2015, 5326-30) and Soeberdt (J. Med. Chem. 60, 2017, 2526-51)。1つの側面では、キノキサリンベースのkORアゴニストを本発明に従って使用することができる(Tangherlini(前記)、Bourgeois(前記)、Molenveld(前記)に記載のものなど)。 そのようなキノキサリンベースのkORアゴニストの例は、化合物12及び化合物14である(例えば、Tangherlini(前記)及びそのセクション4.2.1.及び4.2.3.、並びに下記の表6も参照のこと)。
【0050】
本発明に関して使用されるkORのリガンドの特定の非限定的な例は、U50,488又はダイノルフィンA-(1-13)である。
【0051】
使用される(h)kORリガンド/アゴニストはオルソステリック(h)kORリガンド/アゴニストであることが好ましい。 これは、それが内因性リガンドとして (h)kOR の同じ部位に結合するか、又は内因性リガンドであることを意味する。
【0052】
本発明の文脈において、使用される(h)kORリガンド/アゴニスト(項目(b))は、使用されるシクロチド(項目(a))ではないことが想定される。 従って、使用される(h)kORリガンド/アゴニストは、(本発明の医薬組成物、キット又は組み合わせなどにおける)異なる追加の活性成分であると想定される。 使用される(h)kORリガンド/アゴニストはシクロチドではないことが好ましい。
【0053】
一般的に、「シクロチド」という用語の意味は当技術分野で知られており、本明細書ではそれに応じて「シクロチド」という用語を使用する(例えば、http://www.cybase.org.au/index.phpのCyBaseを参照のこと)。特に、本発明の文脈で使用される「シクロチド」は、頭尾環化ペプチドであり、このシクロチド鎖には、環状シスチンノット(CCK)モチーフに配置された3つのジスルフィド結合を形成できる6つの保存されたシステイン残基が含まれている(シクロチド鎖;図7を参照のこと)。シクロチドのシステイン間配列は、広範囲の残基置換に耐えることができる(例えば、Clark, 2006, Biochem J, 394, 85-93及び図6及び7を参照のこと)。1つの側面では、本明細書で使用される「シクロチド」という用語は、Craik (1999, J Mol Biol, 294, 1327-1336)、 Clark (2006, 前記)、及び特に米国特許第 7,592,533 B1号に記載されているシクロチドを指す。
【0054】
本発明の文脈で使用される「シクロチド」は、ループ1に典型的なGlu(E)残基を含み得る(図7を参照のこと)。 しかしながら、他の「シクロチド」も使用することができる。 例えば、カリペ型のシクロチドの中には、ループ 1 に典型的な E を含まないものがある (Fahradpour Front Pharmacol 8, 2017, 616 を参照のこと)。それにもかかわらず、それらは、本発明による用語「シクロチド」に包含されると考えられる。 「シクロチド」という用語の意味には、ループ 1 に典型的な E を含まない前述のカリペ型環状ノッチンのような「環状ノッチン」も含まれる。
【0055】
特に、本発明の文脈で使用されるsイクロチドは、環状骨格を形成することができるアミノ酸配列を含み、ここで前記環状骨格は、構造(式I)を含む:
Cyclo(C[X1 … Xa]C[XI 1 … XI b]C[XII 1 … XII c]C[XIII 1 … XIII d]C[XIV 1 … XIV e]C[XV 1 … XV f])
式中、
(i) Cはシステインであり;
(ii) [X1 … Xa]、 [XI 1 … XI b]、 [XII 1 … XII c]、 [XIII 1 … XIII d]、 [XIV 1 … XIV e]及び [XV 1 … XV f]のそれぞれは、1つ又は複数のアミノ酸残基を表し、 配列残基内又は配列残基間の各1つ又は複数のアミノ酸残基は、同じであっても異なっていてもよく;そして
(iii)a、b、c、d、e、及びfは、それぞれの配列中のアミノ酸残基の数を表し、aからfのそれぞれは、同じであっても異なっていてもよく、1から約20までの範囲であり得る。
【0056】
好ましくは、aは3~6、bは4~8、cは3~10、dは1、eは4~8、そして/又はfは5~13である。
【0057】
本発明に関連して使用/投与できる特定のシクロチドは、以下である:カラタ型シクロチド(例えば、カラタB1又はその突然変異体又はカラタB2又はその突然変異体のようなカラタB型シクロチド;表3及び図6Aも参照のこと)、 カリペ型シクロチド(例えば、カリペ1からカリペ13のいずれか又はその変異体、又はPsyle E又はその変異体;表4及び図6Bも参照のこと)、又はビオラ型シクロチド(例えば、表5に列挙されたビオラ型シクロチドのいずれか又はその変異体、特に、本発明に関連して同定された新規な「ビトリ」シクロチド(「ビトリペプチド100」とも呼ばれる)(GDPIPCGETCFTGKCYSETIGCTCEWPICTKN)又はその変異体; 表5 及び図 6Cも参照のこと)。
【0058】
さらに、本発明に従って使用/投与される特定のシクロチドは、Oldenlandia affinis、Viola tricolor、Carapichea ipecacuanha、Psychotria solitudinum、Viola odorata、Momordica charantia 又はBeta vulgarisの抽出物に由来するか、又はその抽出物に含まれ得る。Oldenlandia affinis、Viola tricolor、及び Carapichea ipecacuanha の抽出物が好ましい。カラタB型シクロチドの非限定的な例を表3及び図6Aに示す。 カリペ型シクロチドの非限定的な例を表4及び図6Bに示す。 ビオラ型シクロチドの非限定的な例を表5及び図6Cに示す。カラタB型シクロチドは当技術分野で知られており、そして例えば、国際公開第2013/093045号、Grundemann (JNatProt 75(2), 2012, 167-74; 2013 前記)、Hellinger (J Ethnopharmacol 151(1), 2014, 299-306) 及び Thell (前記)に記載される。カリペ型シクロチドは当技術分野で知られており、そして例えば、Fahradpour (前記)に記載される。ビオラ型シクロチドも当技術分野で知られており、そして例えば、Hellinger (J Proteome Res 14(11), 2015, 4851-62)に記載される。
【0059】
本発明の文脈において使用/投与されるシクロチド、特にカラタB型シクロチドは、下記式II(配列番号17)のアミノ酸ストレッチを含み得る:
Xxx1-Leu-Pro-Val-Cys-Gly-Glu-Xxx2-Cys-Xxx3-Gly-Gly-Thr-Cys-Asn-
Thr-Pro-Xxx1-Cys-Xxx1-Cys-Xxx1-Trp-Pro-Xxx1-Cys-Thr-Arg-Xxx1 (II)
式中、
Xxx、Xxx及びXxxは、任意のアミノ酸、非天然アミノ酸又はペプチド模倣の、好ましくは脂肪族アミノ酸であり得る。 特に、Xxxは、任意のアミノ酸、非天然アミノ酸又はペプチド模倣体であるがLysではなく、及び/又はXxxは、任意のアミノ酸、非天然アミノ酸又はペプチド模倣体であり得るが、Ala又はLysではない。好ましくは、式IIのXxx及び/又はXxxは全く変異していない。 より具体的には、XxxはGly、Thr、Ser、Val、Ile、Asn、Asp、又は好ましくはLysであってもよく、XxxはThrであってもよく、及び/又はXxxはVal又はPheであってもよい。さらにより具体的には、式IIの1位のXxxはGlyであり得、 式IIの18位のXxxは、Lys又は、好ましくは、Glyであり得、 式IIの20位のXxxは、Thr、Ser、又は好ましくはLysであり得、 式IIの22位のXxxは、Ser又はThrであり得、 式IIの25位のXxxは、Val又はIleであり得、 式IIの29位のXxxは、Asn、Asp、又は好ましくはLysであり得、 式IIのXxxはThrであり得、そして/又は式IIのXxxはVal又はPheであり得る。
【0060】
式IIの具体的に定義されたアミノ酸残基はまた、特定の(タイプの)シクロチドに依存して変化し得る。 従って、Xxx、Xxx及び/又はXxxに関して述べたことは、式IIだけでなく、式IIの特定のアミノ酸ストレッチを含まない他のシクロチドの対応するアミノ酸残基にも当てはまる。 この文脈において、「対応する」は、特に、同じ又は類似の位置にあるアミノ酸残基を意味する。 より具体的には、「対応する」とは、相同であることを意味する。他のシクロチドの例は、本明細書で定義されるカリペ型シクロチド、特に、式III(配列番号18)のアミノ酸ストレッチを含む以下で定義されるシクロチド;及び本明細書で定義されるビオラ型シクロチド、特に式III(配列番号19)のアミノ酸ストレッチを含む以下で定義されるシクロチドである。
【0061】
本発明の文脈において使用/投与されるシクロチド、特にカリペ型シクロチドは、下記式III(配列番号18)のアミノ酸ストレッチを含み得る:
Gly-Xxx1-Ile-Pro-Cys-Xxx2-Xxx3-Xxx4-Cys-Xxx5-Xxx6-Xxx7-
Xxx8-Cys-Xxx9-Xxx10-Xxx11-Ala-Xxx12-Xxx13-Xxx14-Cys-
Xxx15-Cys-Xxx16 or-Xxx17-Xxx18-Xxx19-Cys-Tyr-Xxx20-Xxx21
(配列番号18)
式中、
Xxx1~Xxx21のいずれか又はすべては、任意のアミノ酸、非天然アミノ酸またはペプチドミメティックであり得る。 特に、Xxx1 は、Val、Ala、又は Leuであり得、Xxx は Gly、Ser、又は Thr であり得、 Xxxは Glu、Gly、又は Ser であり得、 Xxx は Ser 又は Thr であり得、 Xxx は、Val、Leu、又は Phe であり得、 Xxx は Ph 又は Arg であり得、 Xxx は Ile 又は Asn であり得、Xxx は Pro 又は Arg であり得、 Xxx は、Ile、Phe、Thr、又は Leuであり得、 Xxx10 は、Ser、Thr、Ile、又は Val であり得、 Xxx11 は、Thr、Ser、Ala、Arg、又は Pro であり得、Xxx12 は、Val、Leu、又は Ala であり得、 Xxx13 は Ile、Leu、Phe、又は Val であり得、 Xxx14 は Gly 又は Argであり得、 Xxx15はSer又はThrであり得、 Xxx16 は Lys、Ser、又は Arg であり得、 Xxx17 は Asn、Asp、His、又は Lys であり得、Xxx18 は、Lys、Asn、His、又は Tyr であり得、 Xxx19 は Val 又は Ile であり得、 Xxx20 は、Arg、Leu、Lys 又は Asnであり得、 及び/又は Xxx21 は Asn 又は Aspであり得る。
【0062】
本発明の文脈において使用/投与されるシクロチド、特にビオラ型シクロチドは、下記式III(配列番号19)のアミノ酸ストレッチを含み得る:
Gly-Xxx1- Xxx2- Xxx3-Cys-Gly-Glu-Xxx4-Cys-Xxx5-Xxx6-Xxx7-
Xxx8-Cys-Xxx9-Xxx10-Xxx11-Xxx12-Cys-
Xxx13-Cys-Xxx14-Xxx15-Xxx16-Xxx17-Cys- Xxx18-Xxx19-Xxx20
(配列番号19)
式中、
Xxx~Xxx20のいずれか又はすべては、任意のアミノ酸、非天然アミノ酸またはペプチド模倣性であり得る。 好ましくは、Xxx~Xxx20のいずれか又はすべては、(a)配列番号155に示される「ビトリ」シクロチドの対応するアミノ酸残基の保存的アミノ酸交換であり得る。
【0063】
本発明の文脈で使用/投与されるシクロチドは、天然のシクロチドの変異型であり得る。
【0064】
一般的に、本発明の文脈における「突然変異」は、(天然型又は野生型)シクロチドの構造、特にその一次アミノ酸配列における任意の変化を意味する。 より具体的には、「突然変異」は、(天然型又は野生型)シクロチドの1つ又は複数のアミノ酸残基が交換、置換、又は付加されることを意味する。 1つの特定の側面において、「突然変異」は、点突然変異、すなわち、1つのアミノ酸残基の交換、置換又は付加を指す。 より具体的な側面において、「突然変異」は、1つのアミノ酸残基の交換を指す。本発明に従って使用されるシクロチドの変異型/バリアント型に関して、及び本明細書の他の箇所のそれぞれの変異に関して述べたことは、「突然変異」という用語の意味に準じて適用される。
【0065】
本発明による(天然の)シクロチドの突然変異形は、式IIのXxx及びXxx4-8に対応する(例えば相同である)、好ましくは異なるアミノ酸残基によって置換される、式IIの20位のXxxに対応する(例えば相同である)アミノ酸残基の少なくとも1つを有し得る。そのような突然変異形態の非限定的な例は、配列番号1又は2のアミノ酸位置1、18、20及び/又は29に対応する(例えば相同である)、 好ましくは、配列番号1又は2のアミノ酸位置18、20及び/又は29に対応する(例えば相同である)、 より好ましくは、配列番号1又は2のアミノ酸位置20及び/又は29に対応する(例えば相同である)、 最も好ましくは、異なるアミノ酸残基によって置換される、配列番号1又は2のアミノ酸位置20に対応する(例えば、相同である)、アミノ酸残基の1つ(好ましい)、2つ又はそれ以上を有するシクロチドである。
【0066】
本発明に関連して使用/投与されるシクロチドの突然変異形における特定の突然変異は、Thr(T)、Asn(N)、Gly(G)及び/又はVal(V)の突然変異であり得る。 これは、置換されるアミノ酸残基が、Thr(T)、Asn(N)、Gly(G)及び/又はVal(V)であってもよいことを意味する。 好ましくは、変異はLys(K)への変異である。 これは、好ましくは置換されるアミノ酸残基を置換する別のアミノ酸残基がLys(K)であり得ることを意味する。 しかしながら、本発明に関連して使用/投与されるシクロチド、特に本発明に関連して使用/投与されるシクロチドの変異形の最も好ましい非限定的な例は、T20K(配列番号7)である。
【0067】
1つの側面によれば、本発明の文脈で使用/投与されるシクロチドは、以下から成る群から選択され得る:
(i)配列番号7、5、4、6又は155のいずれか1つに示されるアミノ酸配列の頭尾環化形を含むか、又はそれらから成るシクロチド;
(ii)それぞれ、配列番号7、5、4又は6に示すアミノ酸配列のいずれか1つと同じ変異を有するか、又はそれぞれ、配列番号7、5、4又は6に示すアミノ酸配列のいずれか1つに変異しているアミノ酸位置に対応するアミノ酸位置に突然変異を有するカラタB型シクロチド、カリペ型シクロチド又はビオラ型シクロチド;
(iii)表3、4又は5に示すシクロチドのアミノ酸配列を含むか、又はその頭尾環化形から成るシクロチド、ここで前記アミノ酸配列は、それぞれ、配列番号7、5、4又は6に示すアミノ酸配列のいずれか1つと同じ変異を有するか、又はそれぞれ、配列番号7、5、4又は6に示すアミノ酸配列のいずれか1つに変異しているアミノ酸位置に対応するアミノ酸位置に突然変異を有し;
(iv)少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%、配列番号7、5、4、6又は155のいずれか1つに示される(又は表 3、4、及び 5のいずれか1つに示される)アミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列の頭尾環化形を含むか、又はそれらから成るシクロチド、ここで前記アミノ酸配列は、それぞれ、配列番号7、5、4又は6に示すアミノ酸配列のいずれか1つと同じ変異を有するか、又はそれぞれ、配列番号7、5、4又は6に示すアミノ酸配列のいずれか1つに変異しているアミノ酸位置に対応するアミノ酸位置に突然変異を有し;及び
(v)下記アミノ酸配列の頭尾環化形を含むか、又はから成るシクロチド、
アミノ酸配列:
Xxx1-Leu-Pro-Val-Cys-Gly-Glu-Xxx2-Cys-Xxx3-Gly-Gly-Thr-Cys-Asn-
Thr-Pro-Xxx1-Cys-Xxx1-Cys-Xxx1-Trp-Pro-Xxx1-Cys-Thr-Arg-Xxx1
(式II;配列番号17)
式中、
Xxx は任意のアミノ酸、非天然アミノ酸またはペプチド模倣体である。 Xxxは任意のアミノ酸、非天然アミノ酸またはペプチド模倣体であり、好ましくはThrであり; Xxxは任意のアミノ酸、非天然アミノ酸又はペプチド模倣体であり、好ましくはVal又はPheであり;
アミノ酸配列:
Gly-Xxx1-Ile-Pro-Cys-Xxx2-Xxx3-Xxx4-Cys-Xxx5-Xxx6-Xxx7-
Xxx8-Cys-Xxx9-Xxx10-Xxx11-Ala-Xxx12-Xxx13-Xxx14-Cys-
Xxx15-Cys-Xxx16-Xxx17-Xxx18-Xxx19-Cys-Tyr-Xxx20-Xxx21
(式III; 配列番号18)
式中、
Xxx は Val、Ala、又は Leu であり; Xxx は Gly、Ser 又は Thr、 Xxx は Glu、Gly、又は Ser であり;XxxはSer又はThrであり;、 Xxx は、Val、Leu、又は Phe であり; Xxx は Ph 又は Argであり; Xxx は Ile 又は Asn であり; Xxx は Pro 又は Arg であり; Xxx は Ile、Phe、Thr 又は Leuであり; Xxx10 は Ser、Thr、Ile、又は Val であり; Xxx11 は、Thr、Ser、Ala、Arg、又は Pro であり; Xxx12 は Val、Leu、又は Ala であり; Xxx13 は Ile、Leu、Phe、又は Val であり; Xxx14 は Gly 又は Arg であり; Xxx15はSer又はThrであり; Xxx16は Lys、Ser 又は Argであり; Xxx17 は Asn、Asp、His 又は Lys であり; Xxx18 は Lys、Asn、His、又は Tyrであり;Xxx19 はVal又はIleであり;、 Xxx20 は、Arg、Leu、Lys 又は Asn であり、そして/又は Xxx21 は Asn 又は Aspであり;又は
アミノ酸配列:
Gly-Xxx1- Xxx2- Xxx3-Cys-Gly-Glu-Xxx4-Cys-Xxx5-Xxx6-Xxx7-
Xxx8-Cys-Xxx9-Xxx10-Xxx11-Xxx12-Cys-
Xxx13-Cys-Xxx14-Xxx15-Xxx16-Xxx17-Cys- Xxx18-Xxx19-Xxx20
(式IIII; 配列番号19)
式中、
Xxx~Xxx20のすべては、任意のアミノ酸、非天然アミノ酸又はペプチド模倣体であってもよく、好ましくは、Xxx~Xxx20のいずれか又はすべては、配列番号155に示される「ビトリ」シクロチドの対応するアミノ酸残基の対応するアミノ酸残基の保存的アミノ酸交換であってもよく、そして
前記アミノ酸配列は、それぞれ、配列番号7、5、4又は6に示すアミノ酸配列のいずれか1つと同じ変異を有するか、又はそれぞれ、配列番号7、5、4又は6に示すアミノ酸配列のいずれか1つに変異しているアミノ酸位置に対応するアミノ酸位置に突然変異を有する。
【0068】
また、この態様の文脈において、好ましいシクロチドは、特にT20Kシクロチドの20位に対応する(例えば、相同である)位置で、Lys(K)への変異、より具体的にはT20K変異自体又は対応する突然変異を有するシクロチドである。
【0069】
本発明の文脈で使用/投与されるシクロチドの好ましいが非限定的な例は、上記の(i)~(v)のいずれかに定義されるアミノ酸配列の頭尾環状化形から成るシクロチドである。
【0070】
好ましい実施形態によれば、本発明に関連して使用/投与されるシクロチドは、カラタB型シクロチドである。 カラタB型シクロチドは、カラタB2又はカラタB2型シクロチドであってもよく、より好ましくは、カラタB1又はカラタB1型シクロチドであってもよい。シクロチド カラタB 及び B2は、5つのアミノ酸位置(配列番号1及び 2;国際公開第2013/093045号の図6; 添付の表3を参照のこと)、すなわち、Val~ Phe (ループ2) 、及びカラタ B2における Thr~Ser (ループ 4)、Ser~Thr (ループ5)、Val~Ile (ループ 5)、及び Asn~Asp (ループ6) の保存性置換のみが異なる。これらの置換は、重要な構造上の結果を持たず (RMSDbackbone kB1/kB2 = 0.599Å、国際公開第2013/093045号の図6を参照)、そして2つのペプチドは同様の生物活性プロファイルを有する (Gruber, Toxicon 49, 2007, 561-575)。しかしながら、本発明の文脈において使用/投与される最も好ましいシクロチドは、T20K自体(配列番号7)である。
【0071】
本発明に関連して使用/投与されるシクロチドの特定の非限定的な例は、配列番号7、5、4、6又は155に示されるアミノ酸配列の頭尾環化形を含むか、又はから成るシクロチドである。
【0072】
本発明の文脈において、使用されるシクロチドはグラフトされていない、すなわちグラフトされていないシクロチドであることが想定される。
【0073】
「グラフトされていない」又は「グラフトされていないシクロチド」という用語は、 シクロチドが、グラフトテンプレート又はグラフトフレームワークとしてシクロチド足場にグラフトされた、(医薬的に)活性なペプチド又はペプチドエピトープのような、別の/さらなる(医薬的に)活性な成分を含まないことを意味する。
【0074】
従って、本発明の文脈において使用/投与されるシクロチドは、(天然に存在する、天然の、又は変異した)グラフトされていないシクロチド、すなわち、さらなる(医薬的)活性成分を含まないシクロチド「それ自体」/「それ自体」であることが、最も好ましい。
【0075】
シクロチドは、他の治療用ペプチドのように、他の(薬学的に)活性成分の足場として作用できることが当技術分野で知られている(例えば、Gunasekera, 2008, J Med Chem, 51, 7697-704; Wang, ACS Chemical Biology 9, 2014, 156-63; 米国特許第2010/0298528号を参照のこと)。このようなグラフトされたシクロチドは、「シクロチドのグラフトされた類似体」(例えば、Gunasekera 前記)、「生物工学による環状ペプチド」(例えば、Wang 2014 前記)などとしても知られおり、すなわち、さらなる(医薬的)活性成分を含むシクロチドは、本発明の文脈ではあまり好ましくない。グラフトされたシクロチドの特定の例は、さらなる(医薬的に)活性成分によって置換される、2つのシステイン残基間の少なくとも1つの(+/-完全な)ループを有するシクロチドであることが知られている(例えば、Gunasekera前記; Wang 2014 前記; 米国特許第2010/0298528号を参照のこと)。グラフトされたシクロチドの「さらなる(医薬的)活性成分」は、当技術分野では、「生物学的に活性な配列」(例えば、Gunasekera前記)、「生物活性」エピトープ」/「(ペプチド)エピトープ」(Gunasekera 前記)、「(潜在的に) 治療用アミノ酸配列」(Wang 2014 前記)、「(抗原性) ペプチド」(Wang 2014 前記)、「移植片」(米国特許第2010/0298528号) などとも呼ばれる。そのような「さらなる(医薬的)活性成分」の例は、MOG35-55エピトープ(Wang 2014 前記)、RGDエピトープ(米国特許第2010/0298528号)、及び例えば、米国特許第2010/0298528号又はGunasekera 前記の文脈においてシクロチド足場にグラフトされた他のエピトープである。
【0076】
これは、本発明の文脈において好ましく使用されるシクロチド及びシクロチド突然変異体/変種と対照的に見られるべきである。 具体的には、本発明の文脈で使用されるシクロチド変異体/変種は、さらなる(医薬的)活性成分、すなわち移植片が導入されないように変異されていることが想定される。
【0077】
従って、本発明の文脈において、用語「シクロチド」は、シクロチド自体又は変異シクロチド自体、すなわち、グラフトされていないシクロチド又はグラフトされていない変異シクロチドを指すが、シクロチドのグラフト類似体、生物工学による環状ペプチドなど、すなわちグラフトされたシクロチドを除外することを特に想定している。従って、「シクロチド」という用語は、当技術分野でも使用される。
【0078】
本発明の文脈で使用/投与されるシクロチド変異体/変種に関して、2つのシステイン残基間の1つまたは複数の(+/-完全な)ループが、さらなる(医薬的)活性成分が導入されない限り、さらなるアミノ酸残基(のストレッチ)によって置換されることが可能である。当業者は、グラフトされたシクロチドとグラフトされていないシクロチドとの間、及びグラフトされたシクロチドとグラフトされていないシクロチド変異体/変種をそれぞれ容易に区別できる立場にある。
【0079】
しかしながら、原則として、グラフトされたシクロチドも本発明の文脈で使用/投与することができる。 例えば、グラフトされたシクロチドは、開示されたkORリガンド及び/又はグラフトされていないシクロチドと組み合わせて使用/投与され得る。
【0080】
本発明の文脈で使用/投与される様々なシクロチドについて、一次配列、すなわちアミノ酸配列主鎖における特定の柔軟性及び可変性は、少なくともいくつかの固定されたアミノ酸残基及びそれらの空間配置によって定義される、それぞれのペプチドの全体的な二次構造及び三次構造が保証される限り、可能であることが理解されるであろう(例えば、上記の式I、II、III及びIIIIを参照のこと)。
【0081】
本明細書で提供される教示に基づいて、当業者は、一方で、本発明に従って作用するシクロチドの対応する変異体/変種を容易に発見/同定する立場にある。 一方、当業者は、所定のシクロチド変異体/変種が、所望の機能、例えば、本明細書の他の箇所に記載されている機能の少なくとも1つを依然として有するかどうかを試験することができる。 そのような試験、すなわちそれぞれのアッセイのための対応する実験指針は、当技術分野で知られており、本明細書および添付の実施例において例示的に提供及び記載されている。
【0082】
従って、1つの側面によれば、本発明はまた、本明細書で定義される(天然の)シクロチドの変異体又は変種の使用/投与、特に表3、4及び5に示されるシクロチドの変異体又は変種の使用/投与、より具体的にはカラタB2、又は好ましくはカラタB1の変異体又は変種の使用/投与にも関する。変異体又は変種型は、(合成的に) 最適化され得、すなわち、それらは、非変異型/非変種型と比較して、MS 及び関連する疾患及び/又は症状の治療により適している可能性がある。 シクロチドの変異体/変種形の非限定的な例は、表3、4及び5に示されるシクロチドであり;ここで配列番号4~7のいずれか1つと同じ突全変異の1つ又は複数が行われているか、 又は、配列番号4~7のいずれか1つにおいて突然変異したアミノ酸位置に対応する(例えば、相同である)アミノ酸位置での対応する(例えば、相同な)突然変異の1つ又は複数が行われている。別段の記載がない限り、本明細書で使用される用語「シクロチド」は、「シクロチド変異体/変種」も包含すると想定される。
【0083】
本発明による変異体/変種/改変シクロチドの非限定的な例は、上記のセクション(iv)に示されているか、又は上記セクション(iv)で定義されたアミノ酸配列の頭尾環化形から成るシクロチドである。変異体/変種/改変シクロチドのさらなる例は、配列番号4~7から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むシクロチド、又は配列番号4~7から成る群から選択されるアミノ酸配列の頭尾環化形から成るシクロチドである。
【0084】
シクロチドの変異体/変種に関しては、例えば、それぞれの天然又は天然シクロチドの1つ又は複数のアミノ酸が、それぞれ他の1つ又は複数の天然又は合成アミノ酸によって置換されることが想定される。これに関連して、この/これらのアミノ酸置換は保存的アミノ酸置換であり、すなわち置換アミノ酸が、置換されるアミノ酸と同じカテゴリーのアミノ酸に属することが好ましい。例えば、酸性アミノ酸は別の酸性アミノ酸によって置換され得、塩基性アミノ酸は別の塩基性アミノ酸によって置換され得、脂肪族アミノ酸は別の脂肪族アミノ酸によって置換され得、 そして/又は極性アミノ酸は、別の極性アミノ酸によって置換され得る。
【0085】
開示されたシクロチドの変異体/変種をもたらすアミノ酸置換は、結果として得られる変異体/変種の三次構造内の極性及び電荷のパターンが依然として(実質的に)それぞれのシクロチドの三次元構造を模倣/対応するようなものである。
【0086】
変異シクロチド又は変種シクロチドのさらなる例は、以下である:カラタB型シクロチド(例えば、カラタB1又はその変異体/変種、又はカラタB2又はその変異体;表3も参照のこと);又はカリペ型シクロチド(例えば、カリペ1~13のいずれか又はその変異体/変種、又はPsyleE又はその変異体/変種;表4も参照のこと);又はビオラ型シクロチド(例えば、表5に示されるようなビオラ型シクロチドのいずれか、又はその変異体/変種;表5も参照のこと);又は配列番号1もしくは2のアミノ酸配列又は配列番号20~187のいずれか1つのアミノ酸配列の頭尾環化形から成るシクロチド、ここで前記アミノ酸配列は、以下を有する:
(i) 酸性アミノ酸残基から成る群から選択される、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の異なるアミノ酸残基により置換されるその酸性アミノ酸残基の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個;
(i i) 塩基性アミノ酸残基から成る群から選択される、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の異なるアミノ酸残基により置換されるその塩基性アミノ酸残基の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個;
(i i i) 脂肪族アミノ酸残基から成る群から選択される、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の異なるアミノ酸残基により置換されるその脂肪族アミノ酸残基の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個。
【0087】
他の変異体/変種シクロチドは、式II、III又はIIIIのアミノ酸ストレッチを含むが、しかし以下を有する:
(i) 酸性アミノ酸残基から成る群から選択される、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の異なるアミノ酸残基により置換される(残りの特定の)酸性アミノ酸残基の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個;
(i i) 塩基性アミノ酸残基から成る群から選択される、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の異なるアミノ酸残基により置換される(残りの特定の)塩基性アミノ酸残基の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個;
(i i i) 脂肪族アミノ酸残基から成る群から選択される、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の異なるアミノ酸残基により置換される(残りの特定の)脂肪族アミノ酸残基の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個。
【0088】
一般的に、「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」という用語の意味は当技術分野で知られており、本明細書ではそれに従って使用される。 従って、「アミノ酸」がペプチド/タンパク質の成分である場合、「アミノ酸」という用語は、本明細書では「アミノ酸残基」と同じ意味で使用されることに留意されたい。
【0089】
特に、本明細書で言及される「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」は、天然に存在するアミノ酸、より好ましくは天然に存在するL-アミノ酸であると想定される。 しかし、あまり好ましくないが、本発明の文脈における「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」は、D-アミノ酸又は非天然(つまり合成)アミノ酸、例えば、 ノルロイシン、β-アラニン、又はセレノシステインであっても良い。
【0090】
「酸性アミノ酸」、「塩基性アミノ酸」、「脂肪族アミノ酸」及び「極性アミノ酸」という用語の意味も当技術分野で知られている(例えば、Stryer, Biochemie, Spectrum Akad. Verlag, 1991, Item I. 2.を参照のこと)。これらの用語は、本発明全体で対応して使用される。 それにより、本発明のシクロチドに関して本明細書に与えられた特定の条件も適用される。
【0091】
特に、本明細書で使用される「酸性アミノ酸」という用語は、Asp、Asn、Glu、及びGlnを含む群から選択されるアミノ酸を意味することを意図しており; 本明細書で使用される「塩基性アミノ酸」という用語は、Arg、Lys、及びHisを含む群から選択されるアミノ酸を意味することを意図し、 本明細書で使用される用語「脂肪族アミノ酸」は、Gly、Ala、Ser、Thr、Val、Leu、Ile、Asp、Asn、Glu、Gln、Arg、Lys、Cys、及びMetを含む群から選択される任意のアミノ酸を意味することを意図し、そして 本明細書で使用される「極性アミノ酸」という用語は、Cys、Met、Ser、Tyr、Gln、Asn及びTrpを含む群から選択される任意のアミノ酸を意味することを意図している。
【0092】
好ましい実施形態によれば、本発明に従って使用/投与されるシクロチド及び変異体/変種シクロチドは、異なるアミノ酸残基で置換されている、式IIの20位及び/又は29位のXxx1に対応する(例えば、相同である)それらのアミノ酸残基の少なくとも1つを有するシクロチドである。同様に、本発明に従って使用/投与されるシクロチド及び変異体/変種シクロチドはまた、アミノ酸位置1、18、20、1、18、20、1、18、20に対応する(例えば、相同である)、好ましくは、異なるアミノ酸残基で置換されている、アミノ酸位置20及び/又は29に対応するそれらのアミノ酸残基の少なくとも1つを有するシクロチドであり得る。この文脈において、「に対応する」は、特に、同じアミノ酸又はアミノ酸残基及び/又は同じ又は類似の位置を意味する。 より具体的には、「対応する」とは、相同であることを意味する。 このような異なるアミノ酸残基は、例えば、それぞれの変異体/変種シクロチドを標識するのに有用であり得る。このような異なるアミノ酸残基の非限定的な例は、Lysである。 それぞれの変異体/変種シクロチドの非限定的な例は、配列番号4~7のアミノ酸配列(の頭尾環化形)を含むか、又はそれらからなる変異体/変種シクロチドであり、ここで配列番号5 又は 7が好ましく; 配列番号7が最も好ましい。
【0093】
特定の側面において、本発明に従って使用される変異体/変種シクロチドは、「第1」及び「第2」Cys(上記の式Iに示されるように、それぞれ「第1」及び「第2」Cysに対応する)の間、及び/又は「第2の」Cysと「第3の」Cysとの間(上記の式Iに示される「第2の」Cys及び「第3の」Cysにそれぞれ対応する)
にある1つ以上のアミノ酸残基を置換していないシクロチドである。
【0094】
好ましくは、そのような突然変異体/変種シクロチドにおいて、「第2」のCysに隣接するアミノ酸残基はなく、特に式IのN末端方向で「第2の」Cysの隣のアミノ酸残基も、式IのC末端方向の「第2の」Cysの次のアミノ酸残基も、別のアミノ酸残基によって置換されず、特にLys又はAla残基によって置換されない。
【0095】
使用/投与されるシクロチド及びその突然変異体/変種は、加水分解又は例えば血清プロテアーゼのようなプロテアーゼの切断を受けやすい部位を欠いていることが好ましい。 「加水分解」及び「(血清)プロテアーゼ」という用語の意味及び部位の構造は、当技術分野で周知である。
【0096】
好ましい側面では、本発明に従って使用/投与される変異体/変種シクロチドにおいて、特に、本明細書の他の場所でより具体的に定義される変異体/変種シクロチ(例えば、上記項目(iv)及び(i)~(iii)、又は下記項目(i)~(v)で定義される突然変異体/変種シクロチド)において、 (6)Cys 残基のいずれも別のアミノ酸残基により置換されない。
【0097】
しかしながら、シクロチドの変異体/変種に関して、(6)Cys残基の1つ以上、特に本明細書で定義されるCysはまた、置換がシクロペプチド内のジスルフィド結合のような個々の分子内結合、すなわち天然シクロチドの正しいドルディング/模倣につながる限り、(1つの)他のアミノ酸によって置換されても良い。そのようなアミノ酸は、とりわけ、ジスルフィド結合を形成することができる-SH基を有する非天然アミノ酸のような非天然アミノ酸であり得る。 しかしながら、本明細書では、Cys、特に上記式Iで与えられるCysは、天然に存在するアミノ酸、好ましくはCys自体であることが好ましい。
【0098】
本発明に従って使用されるシクロチドを形成するアミノ酸の1つ又はいくつかが修飾され得ることも、当業者によって認識されるであろう。 それに従って、本明細書で使用される/定義される任意のアミノ酸は、その改変された形態を表すこともできる。 例えば、本明細書で使用されるアラニン残基は、修飾されたアラニン残基を含み得る。そのような修飾は、とりわけ、メチル化又はアシル化などであり得、それにより、そのような修飾又は修飾されたアミノ酸は、このように修飾されたアミノ酸、より具体的には、このように修飾されたアミノ酸を含むシクロチドが、本明細書で定義されるように依然として機能的に活性である限り、好ましい。そのようなシクロチド、すなわち1つ又はいくつかの修飾アミノ酸を含むシクロチドがこの要件を満たすかどうかを決定するためのそれぞれのアッセイは、当業者に知られており、とりわけ、本明細書、特に実施例の部分にも記載されている。
【0099】
本発明はまた、HCl、HSO 、HPO 、リンゴ酸、フマル酸、シトロン酸、酒石酸、酢酸などの生理的有機酸及び無機酸との塩など、開示されたシクロチドの誘導体の使用を提供する。
【0100】
本明細書で定義されるシクロチド、並びに本明細書で定義される変異シクロチド及び変種シクロチド(例えば、上記の項目(iv)又は項目(i)~(iii)を参照のこと)は、本発明による所望の機能の少なくとも1つ、特に、以下の項目(i)~(v)で述べた機能の1つ(又はそれ以上)を有する。 この/これらの機能は、シクロチド及びシクロチド変異体/変種を、本発明によるMS及び関連する疾患、欠損及び/又は症状の治療に十分に適したシクロチドにする。
【0101】
本発明に従って(すなわち、kORのリガンドと組み合わせて)使用/投与され、本明細書で定義されるシクロチド又はシクロチド変異体/変種は、下記であると想定される:
(i)本明細書で定義されるkORのリガンドのバイアス因子を(インビトロ及び/又はインビボで)増加させることができる(例えば、≧5%、≧10%、≧15%、≧20%、≧30%、≧50%、≧75%、≧100%、≧1.5 倍、≧2 倍、≧3 倍、又は≧5 倍);
(ii)本明細書で定義されるkORに結合(インビトロ及び/又はインビボ)及び/又は活性化(インビトロ及び/又はインビボ)できる(「活性化する」は、例えば、細胞内cAMPの減少、又は本明細書で定義されるベータアレスチナの動員を減少させることを意味する);
(iii)本明細書で定義されるkORのオルソステリックアゴニストとして(インビトロ及び/又はインビボで)作用することができ、例えば、低μM親和性及び/又は低μM効力を有する本明細書で定義されるkORのオルソステリックアゴニストとして作用することができる (例えば、約 0.5μM ~ 20μM の範囲);
(iv) 本明細書で定義されるkORのリガンドの、特に、kORの内因性リガンドの(例えば、本明細書で定義されるkORの内因性リガンドの)アロステリックモジュレーター(負又は好ましくは正のアロステリックモジュレーター)として(インビトロ及び/又はインビボで)作用することができ;そして/又は
(v) β-アレスチン2動員、及び/又は(として作用することができる)本明細書で定義されるkORの偏ったリガンド(例えば、アレスチン動員なし/減少、例えばβ-アレスチン2動員; kORの内在化が少ない、及び/又は遅い、又はない; 寛容の機会の減少(オピオイド危機を参照のこと); 及び/又はオピオイド危機/耐性及び/又は不快気分、鎮静、利尿及び/又は幻覚などの副作用がない/軽減されている)を誘導できない。
【0102】
特に、本発明に従って(すなわち、kORのリガンドと組み合わせて)使用/投与され、そして本明細書で定義されるようなシクロチド又はシクロチド変異体/変種は、上記(i)又は(v)、好ましくは上記(i)及び(v)の機能を示すことが想定される。
【0103】
血液脳関門を介して脳に入ることができる当技術分野で知られているノッチンの例がある(例えば、サソリ由来クロロトキシン)。 さらに、特定の状況下(例えば、本明細書で定義される疾患のような疾患(例えば、特定の炎症性又は自己免疫状態)に関連する可能性のある漏れやすい血液脳関門がある場合)では、シクロチドが、血液脳関門を介して脳に入る可能性がある。従って、本発明に従って(すなわち、kORのリガンドと組み合わせて)使用/投与され、本明細書で定義されるシクロチド又はシクロチド変異体/変種は、例えば、上記の機能の 1 つ以上に加えて、CNS(例えば、脳又は脊髄)を透過することができる。さらに、本発明に従って(すなわち、kORのリガンドと組み合わせて)使用/投与され、本明細書で定義されるシクロチド又はシクロチド変異体/変種は、例えば、上記の機能の 1 つ以上に加えて、血液脳関門を通過することができる。
【0104】
しかしながら、シクロチドは、通常、血液脳関門を通過することができない(または低いか又はわずかな程度に過ぎない)と当技術分野で考えられている。従って、CNS(例えば、脳又は脊髄)に浸透することも、血液脳関門を通過することもできないシクロチド又はシクロチド変異体/変種は、本発明に従って(すなわち、kORのリガンドと組み合わせて)、本明細書で定義されるように、優先的に使用/投与される。 そのようなシクロチド又はシクロチド変異体/変種は、本発明に従って末梢的に作用し得る。 換言すれば、そのようなシクロチド又はシクロチド変異体/変種は、末梢作用によって本発明に従って機能し得る。末梢作用は、末梢免疫細胞の浸潤及び/又は末梢免疫応答(例えば、CD4+及び/又はCD8+T細胞によるCNS(例えば、脳又は脊髄)への浸潤など)を低減又は阻害し得る。
【0105】
当業者は、所定のシクロチドが、本明細書で定義されるシクロチドのように(例えば、構造によって)、本発明による関連する特徴、特に上記項目 (i)、(ii)、(iii)、(iv)、及び/又は (v)に定義される特徴を示すかどうかを容易に試験することができる。それぞれの手段及び方法は当技術分野で知られており、本明細書、例えば添付の実施例にも記載されている。これに関連して、当業者は、関連する条件、例えば(シクロチド及び/又はkORリガンド及び/又はkORの)濃度を選択及び/又は最適化することができる。 例えば、低マイクロモル範囲(例えば、0.5~20μM)のシクロチド濃度は、この点で適切であり得る。
【0106】
kORのリガンドのアロステリックモジュレーター(負又は、好ましくは正)として作用することができるシクロチド(上記項目(iv)を参照のこと)は、 (i)kORリガンドの効力を(約)≧1.1--、1.2-、1.3-、1.5-、1.8-、2-、3、5-、10-、 20倍又は30倍; 及び/又は(ii)(約)5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、75%、100%、150%又は200%以上のkORリガンドの有効性を調節する可能性がある(低めるか、又は、好ましくは高める)。シクロチドがkORのリガンドのアロステリックモジュレーターとして作用する能力は、(測定可能な)アレスチン動員を伴わないことが特に想定される(上記項目(v)も参照のこと)。
【0107】
本明細書で定義されるkORに結合及び/又は活性化することができるシクロチド(インビトロ及び/又はインビボ)(上記項目(ii)を参照のこと)は、例えば、(約)0.5~10、1~5、2~4、2.4~3又は2.7±0.01~0.25μMの範囲のKiでkORに結合し得;そして/又は例えば(約)1~50、5~30、10~25、14~20又は17±0.11~2.2μMの範囲のEC50でkORを活性化する(例えば、細胞内cAMP減少を減少させる)ことができる。
【0108】
本明細書の他の場所で別様に示されない場合、本発明の文脈において、「阻害する」、「減少させる」、「遮断する」、「抑制する」又は「減少させる」などは、 初期状態(例えば、脱髄、特にオリゴデンドロサイトの状態、既存のCNS病変(脳病変など)、kORリガンドの効力及び/又は有効性、シクロチドの活性、kORの活性など)が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも 95%、少なくとも 99%、さらには 100% (原則として、パーセンテージの値が高いほど優先される) 低められる(インビトロ及び/又はインビボ)という意味であると考えられる。当業者は、「阻害」、「減少」、「遮断」、「抑制」または「低減」のそれぞれの程度(例えば、特にオリゴデンドロサイトの脱髄の状態、既存のCNS病変(例えば、脳病変)、kORリガンドの効力および/または有効性、シクロチドの活性などを決定することによる)を容易に試験できる立場にある。さらに、当業者は、所定の薬物(例えば、本明細書に開示されるシクロチド又はkORリガンド)について、それぞれの「阻害」、「減少」、「遮断」、「抑制」又は「低減」効果/活動に対するIC 50 を容易に決定できる立場にある。
【0109】
同様に、本明細書の他の場所で別様に示されない場合、本発明の文脈において、「増加する」、「誘導する」または「改善する」などは、初期状態(例えば、特にオリゴデンドロサイトの(再)有髄化の状態、kORリガンドの効力および/または有効性、シクロチドの活性、kORの活性など)が、 例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は 少なくとも 100% (原則として、パーセンテージの値が高いほど好ましい)、高められる(インビトロ及び/又はインビボ)ことを意味する。特に、「増加する」とは、さらに「増加する」活性/状態(例えば、(再)髄鞘形成、kORリガンドの効力および/または有効性、シクロチドの活性など)の初期程度がすでに存在することを意味する。 特に、「誘導する」とは、その後「誘導される」活性/状態の初期の程度が(実質的に)存在しないことを意味する。当業者は、「増加」、「誘導」又は「改善」のそれぞれの程度を容易に試験できる立場にある(例えば、特にオリゴデンドロサイトの(再)有髄化の状態、kORリガンドの効力および/または有効性、シクロチドの活性などを決定することによる)。さらに、当業者は、所定の薬物(例えば、本明細書に開示されるシクロチド又はkORリガンド)について、それぞれの「増加」、「誘導」又は「改善」効果/活性についてのIC50を容易に決定する立場にある。
【0110】
別段の指定がない限り、本発明の文脈における「誘導」、「誘導する」又は「誘導される」は、実質的にゼロであるベースラインから開始することを意味する。 「増加」/「増加される」又は「強化」/「強化される」は、必ずしも実質的にゼロのベースラインから開始することを意味するわけではなく、すでにゼロを超えるレベルから開始することを意味する場合もある。 例えば、誘導された再ミエリン化は、最初は再ミエリン化活性又は発現がまったくなかった場合を意味し;再ミエリン化の強化/増加は、最初にすでにいくらかの再ミエリン化活動があり、その後さらに強化/増加した場合を意味する。
【0111】
当業者は、所定のシクロチドまたはシクロチド変異体/変種又はkORリガンドが本発明に従って機能することができるかどうか、例えば、本明細書に記載の機能の1つ又は複数、例えば上記のセクション (i) ~ (iv) で定義された機能1つ又は複数を有するかどうかを容易に試験できる立場にある。この目的のために、当業者は、例えば、本明細書の他の場所及び添付の実施例に記載されているアッセイ、並びに当該技術分野(例えば、Du loc. cit.)に記載され、そして本明細書の他の場所及び 追加の例に言及されるようなそれぞれのアッセイに依存する場合がある。例えば、kORの活性化を試験するためのアッセイは、Du(前記)に開示されている。 特に、再ミエリン化(再ミエリン化の促進)並びにオリゴデンドロサイト分化及びミエリン化の刺激に対するkOR活性化の効果を試験するためのアッセイは、Duに記載されている(前記;その図3、4、及び5を参照のこと)。 マウスモデルのようなそれぞれの動物モデルも当技術分野で知られている。 これらは、例えば、EAEマウスモデル及びクプリゾン誘発性脱髄マウスモデルである(Du、前出文献も参照のこと)。
【0112】
本明細書に記載された手段及び方法並びに彼らの共通の一般知識に依存することにより、当業者は、例えば(植物)抽出物中/から、適切なシクロチド又はシクロチド変異体/変種を同定及び単離する立場にある。 従って、当業者は、本発明に従って使用することができる、まだ知られていないシクロチド/シクロチド変異体/変種を同定及び単離することもできる。 本発明によるそのような新たに同定された/単離されたシクロチドの使用も想定される。
【0113】
そのような新たに単離/同定されたシクロチドの例は、本発明に関連して同定された「ビトリ」シクロチドである(V. tricolorから単離、実施例2及び図2参照のこと)。 「ビトリ」シクロチドは、分析用 RP-HPLC クロマトグラムと MALDI 質量スペクトルによって特徴付けられている。 そのペプチド質量は約 3431.87 [m/z] である(図2Eではモノアイソトピック質量 ([M+H]) としてラベル付けされている)。特に、「ビトリ」シクロチドは、例えば、それぞれ3mL/分及び1mL/分の流速で、例えば、0.1 ~ 1%/分の 溶媒Bの線形勾配 [例: 90%(vol/vol)アセトニトリル、水中0.1%(vol/vol)TFA]を用いる、例えば、セミ分取(例えば、詳細については以下を参照のこと)及び分析(例えば、250mm×4.6mm) Kromasil C18 カラム (例えば、5μm、100Å)を用いて、例えば、Dionex Ultimate 3000 HPLC ユニット (Thermo-Fisher Dionex) での RP-HPLC によって精製された。
【0114】
当業者は、本発明に従って、すなわち、本明細書で定義されるkORのリガンドと組み合わせて使用することができる、まだ知られていないさらなるシクロチド/シクロチド変異体/変種を、同じ又は類似の分離/識別手段及び方法に依存することによって容易に同定及び単離することができる。
【0115】
本発明はさらに、本明細書に記載の同一又は類似の単離/同定手段及び方法によって単離/同定でき、そして本発明に従って使用できるシクロチドに関する。 そのような単離/同定されたシクロチドの例は、本明細書に開示される「ビトリ」シクロチドである。 本発明はまた、この特定の「ビトリ」シクロチド及びその変異体/変種にも関する。 シクロチド変異体/変種に関して本明細書の他の箇所で述べられていることは、変更を加えてここに適用される。
【0116】
本発明はさらに、本発明の文脈において開示及び/又は単離/同定されたシクロチドのアミノ酸骨格/一次アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子;及びそのような核酸分子のそれぞれの使用に関連する。例えば、そのような核酸分子は、配列番号11、12、15及び16のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、又は配列番号11、12、15及び16のいずれか1つに含まれ、 そして成熟シクロチド又は遺伝コードの縮重のためにそれとは異なるヌクレオチド配列を含む。
【0117】
「核酸分子」、「核酸配列」及び「ヌクレオチド配列」という用語の意味は、当技術分野で周知であり、本発明の文脈において適宜使用される。例えば、本発明を通して使用される場合、これらの用語は、天然に存在する、又は組み換えによって生成されたタイプのヌクレオチド配列及び/又は核酸配列/分子の全ての形態、並びに化学的に合成されたヌクレオチド配列及び/又は核酸配列/分子を指す。これらの用語は、例えばロックされたDNA、PNA、オリゴヌクレオチドチオホスフェート及び置換リボオリゴヌクレオチドなどの核酸類似体及び核酸誘導体も包含する。 さらに、これらの用語は、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含む任意の分子も指す。
【0118】
好ましくは、用語「核酸分子」、「核酸配列」及び「ヌクレオチド配列」などは、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)を指す。 「核酸分子」、「核酸配列」及び「ヌクレオチド配列」は、当業者に知られている合成化学的方法論によって、又は組換え技術の使用によって作製することができ、又は天然源から、又はそれらの組み合わせによって単離され得る。DNA及びRNAは場合により非天然ヌクレオチドを含んでもよく、一本鎖又は二本鎖であってもよい。 「核酸分子」、「核酸配列」及び「ヌクレオチド配列」はまた、センス及びアンチセンスDNA及びRNA、すなわちDNA及び/又はRNAの特定の配列ヌクレオチドに対して相補的なヌクレオチド配列を指す。
【0119】
さらに、「核酸分子」、「核酸配列」及び「ヌクレオチド配列」などの用語は、DNA又はRNA又はそれらのハイブリッド、または最新技術分野で知られているそれらの任意の修飾を指す場合がある(例えば、修正の例については、米国特許第5525711号、米国特許第4711955号、米国特許第5792608号又は欧州特許第302175号を参照のこと)。本発明のこれらの分子は、一本鎖又は二本鎖、線状又は環状、天然又は合成であり、サイズの制限はない。 例えば、「核酸分子」、「核酸配列」及び/又は「ヌクレオチド配列」は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、又はそのようなRNAをコードするDNA、又はキメラプラストであり得る(Cole-Strauss Science 1996 273(5280) 1386-9)。それらは、プラスミド又はウイルスDNA又はRNAの形態であり得る。 「核酸分子」、「核酸配列」及び「ヌクレオチド配列」などは、オリゴヌクレオチドを指すこともあり、ここで、ホスホチオエート又はペプチド核酸(PNA)などの任意の最先端の修飾が含まれる。
【0120】
本明細書で提供される核酸分子は、例えば本明細書で開示される対応する方法によって、本発明の環状ペプチドを産生するのに特に有用である。
【0121】
本明細書に開示され、そして本明細書に記載される核酸分子は、ベクターに含まれ得る。前記ベクターは、クローニングベクター又は発現ベクター、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス又はレトロウイルスベクターであり得る。 レトロウイルスベクターは、複製能力があるか、複製に欠陥がある可能性がある。 後者の場合、ウイルスの増殖は一般的に、相補的な宿主/細胞でのみ発生する。 本明細書に開示される核酸分子は、宿主における増殖のための選択マーカーを含む特定のベクターに結合され得る。一般的に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物又は塩化ルビジウム沈殿物などの沈殿物、または荷電脂質との複合体、又はフラーレンなどの炭素ベースのクラスターに導入される。 ベクターがウイルスである場合、宿主細胞に適用する前に、適切なパッケージング細胞系を使用してインビトロでパッケージ化することができる。
【0122】
好ましくは、開示された核酸分子は、原核又は真核細胞又はそれらの単離された画分における発現を可能にする発現制御配列(例えば、本明細書に開示されたベクター内)に作動可能に連結される。 前記ポリヌクレオチドの発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの核酸分子の転写を含む。 真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を確実にする調節要素は、当業者に周知である。 それらは通常、転写の開始を保証する調節配列と、任意に転写の終結及び転写物の安定化を保証するポリAシグナルを含む。 追加の調節エレメントには、転写及び翻訳エンハンサーが含まれる場合がある。原核宿主細胞での発現を可能にする可能な調節エレメントは、例えば、大腸菌のlac、trp、又はtacプロモーターを含み、真核宿主細胞での発現を可能にする調節エレメントの例は、酵母のAOX1又はGAL1プロモーター又はCMV、SV40- ,RSV-プロモーター (ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサー、又は哺乳動物及び他の動物細胞におけるグロビンイントロンである。 転写の開始に関与するエレメントに加えて、そのような調節エレメントは、ポリヌクレオチドの下流にあるSV40-ポリA部位又はtk-ポリA部位などの転写終結シグナルも含み得る。 これに関連して、適切な発現ベクターは、Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、pSPORT1(GIBCO BRL)などの当技術分野で知られている。好ましくは、前記ベクターは発現ベクターおよび/または遺伝子導入ベクターである。 レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスなどのウイルスに由来する発現ベクターを、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを標的細胞集団に送達するために使用することができる。 当業者に周知の方法を使用して、本発明に従ってベクターを構築することができる; 例えば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y. and Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)に記載される技法を参照のこと。 あるいは、開示されたポリヌクレオチド及びベクターは、標的細胞への送達のためにリポソームに再構成することができる。
【0123】
「その単離された画分」という用語は、ベクターからRNAを転写又は転写及び翻訳することができる真核細胞又は原核細胞又は組織の画分を指す。 前記画分は、RNAの転写又はRNAの転写及び前記RNAのポリペプチドへの翻訳に必要なタンパク質を含む。 前記単離された画分は、例えば、網状赤血球などの真核細胞の核及び細胞質画分であり得る。 細胞又は組織の前記単離された画分を包含するRNAを転写及び翻訳するためのキットは、例えば、TNTレチクロライセート(Promega)として市販されている。
【0124】
再び、開示された核酸分子と同様に、開示されたベクターも、例えば本明細書に開示された対応する方法によって、本発明の環状ペプチドを産生するのに特に有用である。
【0125】
さらなる側面によれば、本明細書に開示される核酸分子及び/又はベクター及び/又はコードされたシクロチドを含む組換え宿主細胞が本明細書に開示される。 この側面に関連して、宿主細胞を遺伝子操作するために、例えば、本明細書に開示されるシクロチドのアミノ酸骨格/一次アミノ酸配列を発現及び単離するために使用することができる。
【0126】
前記宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であり得る。 宿主細胞に存在する核酸分子又はベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれているか、又は染色体外に維持されているかのいずれかである。宿主細胞は、細菌、昆虫、真菌、植物、動物、哺乳動物、又は好ましくはヒト細胞などの任意の原核細胞又は真核細胞であり得る。 好ましい真菌細胞は、例えば、サッカロミセス属のもの、特にS.セレビシエ種のもの、又は菌糸真菌の群に属するもの、例えばいくつかのペニシリア又はアスペルギラ株である。 「原核生物」という用語は、本明細書に開示されるシクロチドのアミノ酸骨格/一次アミノ酸配列の発現のために核酸分子で形質転換又はトランスフェクトできる全ての細菌を含むことを意味する。原核宿主には、グラム陰性菌及びグラム陽性菌、例えば、大腸菌、ネズミチフス菌、セラチア菌、及び枯草菌が含まれる。 本明細書に開示される環状シクロチドのアミノ酸骨格/一次アミノ酸配列をコードする核酸分子は、当業者に一般的に知られている技術のいずれかを使用して宿主を形質転換又はトランスフェクトするために使用することができる。機能的に連結された融合遺伝子を調製し、それらを細菌又は動物細胞で発現させる方法は、当技術分野で周知である(Sambrook、上記)。 そこに記載されている遺伝子構築物及び方法は、例えば原核生物宿主における上記アミノ酸骨格/一次アミノ酸配列の発現に利用することができる。一般的に、挿入されたポリヌクレオチドの効率的な転写を促進するプロモーター配列を含む発現ベクターが宿主と関連して使用される。 発現ベクターは、典型的には、複製起点、プロモーター、及びターミネーター、並びに形質転換細胞の表現型選択を提供できる特定の遺伝子を含む。 形質転換された原核生物宿主は、最適な細胞増殖を達成するために、当技術分野で知られている技術に従って発酵槽で増殖させ、培養することができる。 次いで、発現したペプチドを増殖培地、細胞溶解物、又は細胞膜画分から単離することができる。微生物又は他の方法で発現されたペプチドの単離及び精製は、例えば、分取クロマトグラフィー分離及びモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体の使用を伴うものなどの免疫学的分離などの任意の従来の手段によるものであり得る(Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994))。
【0127】
本明細書に開示及び記載される核酸分子及びベクターと同様に、対応する宿主細胞も、例えば本明細書に開示される対応する方法によって、本明細書に開示されるシクロチドを産生するのに特に有用である。
【0128】
当業者は、本発明に従って使用/投与されるシクロチドを容易に提供、すなわち合成するか、又は例えば抽出物(例えば、植物、真菌、動物又は微生物抽出物のような生物学的抽出物)からそれらを単離/同定することができ; 例えば、添付の実施例及び本明細書に引用されたそれぞれの文献を参照のこと。
【0129】
特に、(生)化学的に合成するアプローチ又は組換え技術によるシクロチドの生成を使用することができる。 例えば、シクロチドを生成する方法は、下記工程を含むことができる:
a)(i)本明細書に開示されるシクロチドのアミノ酸骨格が発現されるような条件下で本明細書に開示される組換え宿主細胞を培養し、前記アミノ酸骨格を回収する工程; 又は
(ii)本明細書に開示されるシクロチドのアミノ酸主鎖を化学的に合成する工程(例えば、固相ペプチド合成によって);及び
b)本明細書に開示されるシクロチドを形成するための前記アミノ酸骨格の環化工程(例えば、(天然の)化学的連結による)。
【0130】
シクロチドを生成する方法は、(頭から尾への)環化の工程をさらに含んでもよい(例えば、Grundemann, 2013 前記; Thell, 前記を参照のこと)。 シクロチドを生成する方法はまた、(さらに)酸化的折り畳みの工程を含んでもよい(例えば、Grundemann, 2013 前記; Thell, 前記を参照のこと)。
【0131】
上述のように、産生されるシクロチドの線状ペプチド/アミノ酸主鎖は、組換え工学技術によって産生することもできる。 そのような技術は、当技術分野で周知である(例えば、Sambrook、上記)。 また上記のように、前記直鎖状ペプチド/アミノ酸骨格のこの種の産生により、本明細書に開示及び記載された核酸分子、ベクター及び/又は宿主細胞から特定の利点を得ることができる。 対応する上記の定義は、必要な変更を加えてここに適用される。
【0132】
ペプチド合成のいくつかのアプローチ、特に環状ペプチドの合成アプローチが当技術分野で知られている(例えば、Williams, Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides, CRC-Press 1997; Benoiton: Chemistry of Peptide Synthesis. CRC-Press, 2005)。当業者は、本明細書で提供される教示に基づいて、環状ペプチドを製造するための開示された方法の特定の要件に先行技術の知識を容易に適用する立場にある。
【0133】
本発明はまた、本明細書で提供される開示に従って、上記のアプローチ又は方法によって取得可能又は取得されるシクロチドの使用/投与にも関する。
【0134】
本発明はさらに、以下の組み合わせに関する:
(a)本明細書で定義されるシクロチド;及び
(b)本明細書で定義されるkORのリガンド。
【0135】
前記シクロチド及びリガンドに関して本明細書の他の箇所で述べられていることは、必要な変更を加えて本明細書に適用される。
【0136】
しかしながら、本発明によるシクロチド及kORのリガンドとの組み合わせの特定の非限定的な例は、以下から成る群から選択される:
(a)T20K(配列番号7)、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル;
(b)N29K(配列番号5)、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル;
(c)G18K(配列番号4)、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル;
(d)T20K/G1K(配列番号6)、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル;又は
(e)ビトリシクロチド(配列番号155)、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル;又は
(f)カリペ10(配列番号86)、そして前記リガンドが以下から成る群から選択される:
(i) ナルフラフィン、コリボリド、ノリボガイン、サルビノリン A 誘導体 B-64、トリアゾール 1.1、6-GNTI、HS666、HS665、及びメシルサルビノリン B; 又は
(ii) U50,488、ダイノルフィン A-(1-13)、ダイノルフィン-(1-11)、ダイノルフィンA、ダイノルフィン A-(1-8)、U69593、GR 89696、スピラドリン、BRL-52537、JT09、ジフェリケファリン 、ダイノルフィン、ナルブフィン、ペンタソジン、ペチジン及びスルフェンタニル。
【0137】
しかしながら、本発明によるシクロチド及びkORのリガンドのより具体的な非限定的な組み合わせの例は、以下からなる群から選択される:
(a)T20K(配列番号7)及びナルフラフィン;
(b)N29K(配列番号5)及びナルフラフィン;
(cG18K(配列番号4)及びナルフラフィン;
(d)T20K/G1K(配列番号6)及びナルフラフィン;
(e)ビトリ(配列番号155)及びナルフラフィン;
(f)カリペ10(配列番号86)及びナルフラフィンであ;
(g)T20K(配列番号7)及びU50,488;
(h)N29K(配列番号5)及びU50,488;
(i)G18K(配列番号4)及びU50,488;
(jT20K/G1K(配列番号6)及びU50,488;
(k)ビトリ(配列番号155)及びU50,488;
(l)カリペ10(配列番号86)及びU50,488;
(m)T20K(配列番号7)及びダイノルフィンA 1-13;
(n)N29K(配列番号5)及びダイノルフィンA 1-13;
(o)G18K(配列番号4)及びダイノルフィンA 1-13;
(p)T20K/G1K(配列番号6)及びダイノルフィンA 1-13;
(q)ビトリ(配列番号155)及びダイノルフィンA 1-13;
(r)カリペ10(配列番号86)及びダイノルフィンA 1-13;
(s)T20K(配列番号7)及びジフェリケファリン;
(t)N29K(配列番号5)及びジフェリケファリン;
(u)G18K(配列番号4)及びジフェリケファリン;
(v)T20K/G1K(配列番号6)及びジフェリケファリン;
(w)ビトリ(配列番号155)及びジフェリケファリン;
(x)カリペ10(配列番号86)及びジフェリケファリン;
(y)T20K(配列番号7)及びナルブフィン;
(z)N29K(配列番号5)及びナルブフィン;
(aa)G18K(配列番号4)及びナルブフィン;
(ab)T20K/G1K(配列番号6)及びナルブフィン;
(ac)ビトリ(配列番号155) 及びナルブフィン;
(ad)カリペ10(配列番号86)及びナルブフィン;
(ae)T20K(配列番号7)及びペンタソジン;
(af)N29K(配列番号5)及びペンタソジン;
(ag)G18K(配列番号4)及びペンタソジン;
(ah)T20K/G1K(配列番号6)及びペンタソジン;
(ai)ビトリ(配列番号155)及びペンタソジン;
(aj)カリペ10(配列番号86)及びペンタソジン;
(ak)T20K(配列番号7)及びペチジン;
(a1)N29K(配列番号5)及びペチジン;
(am)G18K(配列番号4)及びペチジン;
(an)T20K/G1K(配列番号6)及びペチジン;
(ao)ビトリ(配列番号155)及びペチジン;
(ap)カリペ10(配列番号86)及びペチジン;
(aq)T20K(配列番号7)及びスルフェンタニル;
(ar)N29K(配列番号5) 及びスルフェンタニル、
(as)G18K(配列番号4)及びスルフェンタニル;
(at)T20K/G1K(配列番号6) 及びスルフェンタニル;
(au)ビトリ(配列番号155)及びスルフェンタニル;及び
(av)カリペ10(配列番号86)及びスルフェンタニル。
【0138】
本発明はさらに、本発明又は本明細書に記載のシクロチドとkORリガンドとの組合せ、及び場合により薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0139】
本発明はさらに、本明細書で定義されるシクロチドの下記への使用に関する:
(i)本明細書で定義されるkORのリガンド(特に、本明細書で定義される完全な(「偏りのない」)kORアゴニスト)の悪影響の低減; 及び/又は
(ii)本明細書で定義されるkORのリガンド(特に、本明細書で定義される完全な(「偏りのない」)kORアゴニスト)の有効性及び/又は効力の増大。
【0140】
本発明はさらに、キット/内容物のキット/部品のキットに関し、前記キットは、下記の組み合わせを含む:
(a)本明細書で定義されるシクロチド;及び
(b)本明細書で定義されるkORのリガンド。
【0141】
さらに、本発明のキット/内容物のキット/部品のキットの文脈において、前記(a) シクロチド; 及び (b) kORのリガンドの組み合わせは、 (前記キットとは別に独立して)、
(i) MSの治療(例えば、療法による治療又は予防的/予防的治療);
(ii) 特にオリゴデンドロサイトの再ミエリン化 (すなわち、その誘導又は増加)、及び/又は CNS 病変 (例えば、脳病変) の改善 (例えば、減少又は養生/治癒); (iii)脱髄(特にオリゴデンドロサイトの)の予防又は軽減、及び/又はCNS病変(例えば、脳病変)の形成の予防、及び/又は既存のCNS病変(例えば、脳病変)の軽減; 及び/又は
(iv) 疼痛、特に神経因性疼痛 (例えば、中枢、又は末梢神経因性又は末梢神経因性疼痛) 及び/又は MS に起因する/MS に伴う疼痛の治療 (例えば、治療又は予防/予防的治療による治療)への使用のためであり得る。
【0142】
本発明はさらに、本発明のキット/内容物のキット/部品のキットの一部としての医薬組成物に関し、 ここで、前記組み合わせ(a) 本明細書で定義されるシクロチド; 及び(b) 本明細書で定義されるkORのリガンド 又は前記医薬組成物は、 (前記キットとは別個に独立して)、
(i) MSの治療(例えば、療法による治療又は予防的/予防的治療);
(ii) 特にオリゴデンドロサイトの再ミエリン化 (すなわち、その誘導又は増加)、及び/又は CNS 病変 (例えば、脳病変) の改善 (例えば、減少又は養生/治癒); (iii)脱髄(特にオリゴデンドロサイトの)の予防又は軽減、及び/又はCNS病変(例えば、脳病変)の形成の予防、及び/又は既存のCNS病変(例えば、脳病変)の軽減; 及び/又は
(iv) 疼痛、特に神経因性疼痛 (例えば、中枢神経因性又は末梢神経因性疼痛) 及び/又は MS に起因する/MS に伴う疼痛の治療 (例えば、治療又は予防/予防的治療による治療)への使用のためであり得る。
【0143】
本発明はさらに、下記の組合せを含む医薬組成物を含むキット/内容物のキット/部品のキットに関し:
(a)本明細書で定義されるシクロチド;及び
(b)本明細書で定義されるkORのリガンド、
ここで前記医薬組成物及び/又は前記下記:
(a) シクロチド; 及び
(b)kORのリガンド
の組み合わせは、(キットとは別に独立して)、
(i) MSの治療(例えば、療法による治療又は予防的/予防的治療);
(ii) 特にオリゴデンドロサイトの再ミエリン化 (すなわち、その誘導又は増加)、及び/又は CNS 病変 (例えば、脳病変) の改善 (例えば、減少又は養生/治癒); (iii)脱髄(特にオリゴデンドロサイトの)の予防又は軽減、及び/又はCNS病変(例えば、脳病変)の形成の予防、及び/又は既存のCNS病変(例えば、脳病変)の軽減; 及び/又は
(iv) 疼痛、特に神経因性疼痛 (例えば、中枢、又は末梢神経因性又は末梢神経因性疼痛) 及び/又は MS に起因する/MS に伴う疼痛の治療 (例えば、治療又は予防/予防的治療による治療)への使用のためであり得る。
【0144】
本発明によるキット/内容物のキット/部品のキット又は医薬組成物は、
(i) MSの治療(例えば、療法による治療又は予防的/予防的治療);
(ii) 特にオリゴデンドロサイトの再ミエリン化 (すなわち、その誘導又は増加)、及び/又は CNS 病変 (例えば、脳病変) の改善 (例えば、減少又は養生/治癒); (iii)脱髄(特にオリゴデンドロサイトの)の予防又は軽減、及び/又はCNS病変(例えば、脳病変)の形成の予防、及び/又は既存のCNS病変(例えば、脳病変)の軽減; 及び/又は
(iv) 疼痛、特に神経因性疼痛 (例えば、中枢、又は末梢神経因性又は末梢神経因性疼痛) 及び/又は MS に起因する/MS に伴う疼痛の治療 (例えば、治療又は予防/予防的治療による治療)への使用のためであり得る。
【0145】
本発明のキット/内容物のキット/部品のキット、及びそれぞれの医薬組成物の文脈において、また本明細書に記載の一般的な医薬組成物の文脈において、シクロチド及びkORリガンド、又はそれらの組み合わせは、 単一の容器又はバイアル、又は好ましくは 2つの異なる容器又はバイアルに含まれる。
【0146】
本発明によれば、開示された医薬組成物又はシクロチド及びkORリガンド、又はそれらの組み合わせは、医薬的/治療的に有効な用量で投与することができる/投与されるであろう。 これは、投与される各化合物(活性成分)の医薬的/治療的に有効な量に達することを意味する。 好ましくは、医薬的/治療的に有効な用量は、例えば、対象の疾患の(症状の)改善、状態の改善及び/又は生存の延長をもたらす、投与される化合物の量を指す。 これは、日常的な試験を行う当業者によって決定することができる。
【0147】
本発明に従って投与される化合物の投与計画は、主治医及び臨床要因によって決定される。 医学分野でよく知られているように、1 人の患者に対する投与量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与する特定の化合物、性別、投与の時間と経路、一般的な健康状態、及び/又は 同時に投与されている他の薬物にに依存する。 当業者は、本発明に従って医学的に適用される化合物の適切な用量を認識しており、試験することができる。
【0148】
本発明によれば、シクロチド及び/又はkORリガンドは、例えば、10μg/kgBW ~100mg/kgBWの範囲、 好ましくは200 μg/kgBW ~60 mg/kgBWの範囲、 より好ましくは、400μg/kgBW~40mg/kg BWの範囲、 より好ましくは、600μg/kgBW~20mg/kgBWの範囲、 さらにより好ましくは、800μg/kgBW~10mg/kgBWの範囲の用量で投与され得る。他の好ましい用量は、20mg/kg BWまでの範囲である。
【0149】
もちろん、用量は、投与スキーム及び/又は投与経路に応じて変動し得る。 例えば、静脈内投与の場合、通常、経口投与に比べて用量が少なくなる。経口投与の文脈における可能な用量の非限定的な例は、10μg/kgBW~100mg/kgBWの範囲、好ましくは200μg/kgBW~60mg/kgBWの範囲、より好ましくは400 μg/kgBW~ 40 mg/kgBW の範囲の用量である。 静脈内投与の文脈における可能な用量の非限定的な例は、600μg/kgBW~20mg/kgBWの範囲、好ましくは800μg/kgBW~10mg/kgBWの範囲の用量である。 例えば、最大 20 mg/kgBW の範囲の用量は、経口、腹腔内及び静脈内投与の3つすべての状況において適切且つ安全である可能性がある。
【0150】
本発明による用量は、毎日、毎週、又は毎月投与することができる。 シクロチド及び/又はkORリガンドは、1回又は複数回の単回投与、特に、1回、2 回、3 回、4回、又は 5 回の単回投与 (例えば 1 日、1 週間、1 か月当たり)の形態で投与することができる。 特定の、しかし非限定的な例は、単回用量(最大)を週3回投与することである。 連続投与もまた、本発明の文脈において想定される。 シクロチド及び/又はkORリガンドは、例えば、腹腔内又は経口投与することができる。 従って、好ましいが非限定的な実施形態の文脈において、シクロチド及び/又はkORリガンド、又はそれらを含む医薬組成物は、静脈内、腹腔内又は経口投与され、又は経口投与され、そして/又腹腔内又は経口投与のための医薬的に許容される担体を含む。 特定の投与スキームの非限定的な例は、週間隔で、例えばPBS中で最大10mg/kg BWの3回の単回腹腔内注射である。 特定の投与スキームの別の非限定的な例は、週間隔で、例えばPBS中で最大50mg/kg BWの3回の単回経口投与である。 さらなる可能な投与スキームは、本明細書の別の場所に記載されている。
【0151】
本発明に従って使用されるシクロチド及びkORリガンドの用量/投薬計画は、同じであっても類似していても異なっていてもよい。 特に、シクロチドの用量は、kORリガンドの用量と同じであってもよい。 シクロチドの用量(例えば、上記の用量)はまた、kORリガンドの用量(例えば、上記の用量)よりも高くても低くてもよい。例えば、シクロチドの用量(例えば、上記の用量)は、kORリガンドの用量(例えば、上記の用量)よりも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、又は3倍以上高くても低くてもよい。同様の用量は、最大で50%、40%、30%、20%、10%、5%又は3%異なる用量であり得る。
【0152】
本明細書に記載の医薬組成物又は組み合わせはまた、シクロチド及び/又はkORリガンドのそれぞれの1つ又は複数を含んでもよい。 従って、さらなる特定の実施形態によれば、本明細書に記載の医薬組成物又は組み合わせは、シクロチド及び/又はkORリガンドのそれぞれを少なくとも2、3、4又は5個含み得る。
【0153】
本明細書に記載のシクロチド及びkORリガンドは、一緒に、すなわち同時に投与することができるが、同じ又は異なる投与部位で、又は同じ又は異なる投与経路によって投与することができ、又はそれらは、同じ又は異なる投与部位で、又は同じ又は異なる投与経路によって、引き続いて投与されてもよい。 後者の場合、シクロチドを最初に投与し、続いてkORリガンドを投与するか、又はkORリガンドを最初に投与し、続いてシクロチドを投与することができる。
【0154】
1つの特定の実施形態によれば、本明細書に記載の医薬組成物は、(シクロチド及びkORリガンドに加えて)1つ又は複数の追加の活性剤をさらに含み得る。 同様に、本明細書に記載の(医薬組成物/組み合わせを含む)シクロチド及びkORリガンドは、1つ又は複数の追加の活性剤と共投与することができる。 本明細書に記載のシクロチド及びkORリガンドはまた、例えば1つ又は複数の追加の活性剤の有無にかかわらず、併用療法又は併用療法の文脈で使用/投与することができる。 好ましくは、この(これらの)追加の活性剤は、「グラフト」ではなく、すなわちシクロチドのグラフト形態の一部ではないが、独立して医薬組成物に含まれる。別の特定の実施形態によれば、追加の活性剤は、一時的及び/又は空間的に別々に投与される。 本明細書に記載のシクロチド及びkORリガンド(を含む医薬組成物/組み合わせ)は、1つ又は複数の追加の活性剤と共に、すなわち、追加の活性剤の投与に関して、前に、同時に又はその後に投与することができる。 1つ又は複数の追加の活性剤の非限定的な例は、KORリガンド(例えば、https://www.guidetopharmacology.org/GRAC/ObjectDisplayForward?objectId=318&familyId=50&familyType=GPCR)又はMS治療薬(例えば、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30315270-treatment-of-multiple-sclerosis-success-from-bench-to-bedside/?from_term=tintore+2019&from_pos=1; Tintore, Nat Rev Neurol, 15(1), 2019, 53-8)から成る群から選択され得る。
【0155】
1つの実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、(天然の)抽出物、特にシクロチド含有(天然の)植物抽出物を含むか、又はその形態であり得る。 そのような抽出物が得られる植物の非限定的な例は、以下である:Oldenlandia affinis、Carapichea ipecacuanha (特に Radix Ipecacuanhae)、Violaceae科の植物 (例えば、Viola sp.、好ましくは V.odorata 及び V.tricolor)、Squash種 (Cucurbitaceae 科、例えば Cucurbita pepo)、Ecballium 種、legume種 (Fabaceae科)、Psychotria 種 (Rubiaceae 科; 例えばPsychotria polyphlebia, P. poeppigiana, P. chiapensis, P. borucana, P. buchtienii, P. pillosa, P. mortomiana, P. deflexa, P. makrophylla, P. elata, P. solitudinum, P. capitata)、Bryonia alba, Momordica charantia, Strophantus kombe, Helianthus annuus, Sambuca nigra, Amaranthus sp. Amaranthus caudatusなど、Beta vulgaris, Rauwolfia serpentina, Morinda citrifolia, Moringa oleifera, Salix alba, Salix purpurea及びCajanus cajan。kORリガンドは、(そのような)シクロチド含有抽出物に添加することができ、又は(そのような)シクロチド含有抽出物と同時投与することができる。
【0156】
それらのアミノ酸主鎖に加えて、本発明に従って使用されるシクロチドは、さらに、(a)標識のようなさらなる置換基、さらなる活性剤、アンカー(タンパク質性膜アンカーなど)、タグ (HIS タグなど)を含むか、又は結合することができる(例えば、共有結合している)。置換基は、シクロチドに共有結合又は非共有結合で、直接又はリンカーを介して結合することができる。 更なる置換基をシクロチドに結合させることができる1つの特定の部位は、K残基、例えば、特定のシクロチドT20Kの20K残基に対応する(例えば、相同である)K残基である。 当業者は、この文脈で使用される適切なリンカーを容易に見出す立場にある。 さらに、適切な置換基及びそれらをシクロチドに付加する方法は、当業者に知られているか、又は確立することができる。
【0157】
標識の例には、とりわけ、以下を含む:蛍光色素(フッ素-18、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッドなど)、酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、 放射性/放射性同位元素 (32P、33P、35S、125I 又は 123I、135I、124I、11C、15Oなど)、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド金属、化学又は生物発光化合物 (ジオキセタン、ルミノール、アクリジニウムなど)。 シクロチドに結合することができる標識の非限定的な一例は、FRET蛍光色素のような蛍光色素、例えばGFP、YFP又はCFP変異体(例えば、GFP、YFP、CFP、eGFP、EYFP又はECFP)である。 生体分子を標識するために様々な技術が利用可能であり、とりわけ、酵素又はビオチニル基の共有結合、リン酸化、ビオチン化、ランダムプライミング、ニックトランスレーション、テーリング(ターミナルトランスフェラーゼの使用)を含む。そのような技法は、以下に記載される:Tijssen, "Practice and theory of enzyme immunoassays", Burden and von Knippenburg (Eds), Volume 15 (1985); "Basic methods in molecular biology", Davis LG, Dibmer MD, Battey Elsevier (1990); Mayer, (Eds) "Immunochemical methods in cell and molecular biology" Academic Press, London (1987);又は the series "Methods in Enzymology", Academic Press, Inc.。対応する検出方法には、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡法、直接的及び間接的な酵素反応などが含まれるが、これらに限定されない。
【0158】
本明細書に記載及び定義されるシクロチド、特に上記の標識シクロチドは、生体内分布研究、すなわち、例えば動物、又は好ましくはヒト対象/患者におけるシクロチドの分布パターンをもたらす研究に使用することができる。 例えば、そのような生体内分布研究は、単一光子又はPETイメージング装置によるイメージングを含み得る。 それぞれの手段及び方法は、当技術分野で知られている(例えば、PerkinElmerのIVIS(登録商標)Spectrum In Vivo Imaging System)。使用/投与されるシクロチドに結合され得るさらなる(活性)薬剤の例には、とりわけ、特定の細胞透過性ペプチド(例えば、細胞、組織など、例えば脳への指向性標的化のためのシャトルペプチド)としての抗体が含まれる。
【0159】
本発明の文脈において、「治療する」/「治療」は、一般的に、療法及び予防/予防的治療の両方を包含すると想定される。 療法は、改善又は養生/治癒さえももたらす可能性がある。
【0160】
本発明に従って使用/投与されるシクロチド及びkORリガンドは、(a)医薬組成物に含まれ得る。 それらは、同一の医薬組成物に含まれてもよい(すなわち、組み合わせて)。 それらの各々はまた、異なる医薬組成物中に別々に独立して含まれていてもよい。 さらに、シクロチド及びkORリガンドのそれぞれ、又はその両方を、単独の有効成分として、又は他の有効成分とともに、それぞれの医薬組成物に含めることもできる。
【0161】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含み得る。
【0162】
本発明の医薬組成物に任意に含まれる、又は医薬組成物と共に、又は本発明のシクロチド及びkORリガンドと共に投与される担体は、特に、医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤であり得る。 そのような担体は、当技術分野で周知である。 当業者は、本発明に従って使用するのに適したそのような担体を容易に見出す立場にある。
【0163】
本明細書で定義される活性化合物(又はその塩)を含む医薬的組成物の処方に使用され得る医薬的に許容される担体/賦形剤/希釈剤は、一般液に、以下を含む:担体、ビヒクル、希釈剤、溶剤、例えば一価アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、多価アルコール、例えばグリコール及び食用油、例えば大豆油、ヤシ油、オリーブ油、ベニバナ油、綿実油、油性エステル、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル; 結合剤、補助剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、崩壊剤、流動促進剤、潤滑剤、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤、懸濁剤、甘味料、着色料、香料、コーティング剤、防腐剤、酸化防止剤、加工剤、薬物送達修飾剤及びエンハンサー、例えばリン酸カルシウム、マグネシウムステート、タルク、単糖類、二糖類、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ブドウ糖、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン、低融点ワックス、イオン交換樹脂。これら及び他の適切な医薬的に許容される担体/賦形剤は、Remington`s Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publishing Co., New Jersey (1991)に記載される。
【0164】
本発明による医薬組成物又はシクロチドの投与は、さまざまな方法で行うことができる。 これは、例えば、経口、静脈内、動脈内、腹腔内、膀胱内、結節内、皮下投与、吸入による投与並びに経皮投与であり得る。 他の例は、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、結節内、くも膜下腔内、経皮、経粘膜、経肺硬膜下投与、局所または局所投与およびイオントフェレーシスによる投与、舌下投与、吸入スプレー又はエアロゾル又は直腸投与による投与などの非経口投与である。
【0165】
特に、患者及び/又は特定の医療用途のために、輸血(例えば、静脈内注入)、直腸投与(例えば、浣腸又は座薬の形で)又は局所投与経路のような特定の投与経路が示され得る。
【0166】
以下では、いくつかの非限定的な投与スキーム及び対応する適切な医薬的に許容される担体の使用が記載される。
【0167】
皮下(s.c.)または静脈内(i.v.)/動脈内(i.a.)注射による本発明による医薬組成物又はシクロチド及びkORリガンドの投与については、シクロチド(又はコード配列)は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液で製剤化することができる。経粘膜及び経肺投与の場合、浸透されるバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、当技術分野で一般に知られている。
【0168】
シクロチド及びkORリガンドを全身、すなわち静脈内/動脈内、結節内又は皮下投与に適した投薬量又は医薬組成物に処方するための医薬的に許容される担体の使用は、本発明の範囲内である。 担体の適切な選択及び適切な製造方法により、本発明の組成物、特に溶液として処方されたものは、静脈内注射などにより非経口的に投与することができる。化合物は、当技術分野で周知の医薬的に許容される担体を使用して、皮下又は経口投与に適した用量に容易に製剤化することができる。 このような担体は、本発明による化合物を、特に治療対象による経口摂取のために、錠剤、丸薬、カプセル、糖衣錠、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方することを可能にする。
【0169】
体内/細胞内投与を目的とする本発明による化合物、又はそれらを含む医薬もしくは医薬組成物は、当業者に周知の技術を用いて投与することができる。 例えば、そのような薬剤は、リポソームにカプセル化され、次いで上記のように投与され得る。 リポソームは、内部が水性の球状の脂質二重層である。 リポソーム形成時に水溶液中に存在するすべての分子は、水性内部に取り込まれる。 リポソームの内容物は、外部の微小環境から保護されており、リポソームは細胞膜と融合するため、細胞表面近くに効率的に送達される。 リポソームを含む送達システムは、Janoffらの米国特許第4,880,635号に開示されている。 刊行物及び特許は、リポソーム薬物送達のための技術の有用な説明を提供する。
【0170】
非経口及び/又は皮下投与のための本発明による化合物を含む医薬組成物は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。 さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。 適切な親油性溶媒又はビヒクルには、ゴマ油又はヒマシ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル又はトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。 水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる化合物を含んでもよい。 任意には、懸濁液は、化合物の溶解度を高めて高濃度溶液の調製を可能にし、生体内での物質の持続的な徐放を可能にする適切な安定剤又は薬剤も含み得る。
【0171】
本発明の目的のための「患者」/「対象」、すなわち、(a)本発明による医薬組成物又はシクロチド及びkORそしてリガンドが投与される対象であり、 そして/又は本明細書に定義及び記載されている疾患又は障害及び/又は症状に苦しんでいる人には、ヒト及び動物の両方、並びに他の生物が含まれる。 従って、本発明の組成物及び方法は、手順及び方法の治療及び予防を含む、ヒト療法及び獣医学的適用の両方に適用可能であるか、又はそれらに関連して適用可能である。 好ましい実施形態では、患者/対象は哺乳動物であり、最も好ましい実施形態では、患者/対象はヒトである。
【0172】
本発明の医薬組成物、活性成分、組み合わせ、キット/内容物のキット/部品のキットなどは、医療機器、医薬品包装又は医薬組成物包装に含まれてもよく、その一部であってもよく、又はそれらであってもよい。 このような装置又は包装は、例えば、バイアル/容器、注射器、又はブリスターパックを含むか、又はそれらであり得る。 活性成分及び医薬組成物は、それぞれ、装置又はパッケージングに別々かつ独立して(例えば、異なるバイアル/容器又は注射器又はブリスターに)含まれてもよく、又はそれらは組み合わせて含まれてもよい(例えば、同じバイアル/容器又は注射器又はブリスターに)。
【0173】
本発明はさらに、例えばMS及び/又は関連疾患及び/又は症状を治療するための医薬組成物の製造方法に関し、前記方法は、
(i)本明細書で定義されるシクロチド及び/又はkORリガンド; 又は
(ii)本明細書に記載のようにスクリーニング、選択、生成、単離又は同定されたシクロチド及び/又はkORリガンドを、
医薬的に許容される担体、例えば、本明細書の他の箇所で定義される医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に混合する工程を含む。
【0174】
医薬組成物の製造方法は、
(i)本明細書で定義されるシクロチド;
(ii)本明細書で定義されるkORリガンド;及び
(iii)医薬的に許容される担体、例えば、本明細書の他の箇所で定義される医薬的に許容される担体/賦形剤/希釈剤を混合する工程を吹くことができる。
【0175】
本発明の医薬組成物、活性成分、組み合わせ、キットなどのいずれも、取扱説明書又は取扱説明書と一緒に提供され得る。 取扱説明書/リーフレットは、本発明に従って本明細書に記載の疾患、障害又は症状、特にMS及び関連する疾患、欠損及び/又は症状をどのように治療又は予防するかについて、当業者/主治医のためのガイダンスを含んでもよい。特に、取扱説明書/リーフレットは、本明細書に記載の投与様式/投与レジメン(例えば、投与経路、投薬レジメン、投与時間、投与頻度)に関するガイダンスを含み得る。 原則として、投与様式/投与レジメンに関して本明細書の他の箇所で述べられていることは、取扱説明書/リーフレットに含まれ得る。
【0176】
以下の非限定的な図及び実施例を参照して、本発明をさらに説明する。
【0177】
本明細書では、特許出願を含む多数の文献が引用されている。 これらの文書の開示は、本発明の特許性に関連するとは考えられていないが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。 より具体的には、すべての参照文書は、個々の文書が具体的かつ個別に参照により組み込まれるように示されている場合と同じ程度に、参照により組み込まれる。
【0178】
以下の実施例を参照して本発明を説明するが、これらは単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0179】
実施例1:材料及び方法
植物抽出
植物材料は Alfred Galke GmbH (Bad Grund、Germany) から購入し、そして25℃ で恒久的に攪拌しながら、メタノールとジクロロメタンの 1:1 (vol/vol) 混合物で一晩抽出した。 濾紙で濾過した後、0.5容量の水を加え、10%未満のメタノール濃度に達するまで水相を蒸発させた。抽出物をさらにC18シリカゲルカラム(40~63μm、Zeoprep 60; Zeochem)に適用した。 100% 溶媒 B [水中90% (vol/vol) アセトニトリル、0.1% (vol/vol) TFA] での洗浄、及び100% 溶媒 A [100% (vol/vol) 水、0.1% (vol/ vol)TFA]による平衡化の後、溶媒Bの20%~80%の間の画分を集めた。 次に、抽出物を凍結乾燥し、さらに使用するまで-20℃で保存した。
【0180】
RP-HPLC分画及びペプチド分離
粗抽出物または画分を 、5% 溶媒B に溶解し、そして分取 (10 μm、300 Å、250mm×21.2mm; Phenomenex Jupiter) 又はセミ分取 (5μm、100 Å、250mm×10mm; Kromasil) RP C18シリカゲルカラム (5% 溶媒 B で平衡化された)に負荷した。 分取分画は、Perkin Elmer Series 200 システムで、5 ~ 80% の溶媒 B の勾配を使用して、流速 8mL/分(分取スケール) 又は3mL/分 (セミ分取スケール) で実行された。UV吸光度は、分析目的及び調製目的で、それぞれ214nm及び280nmで記録された。カリペ及びビトリペプチドは、それぞれ、流速 3mL/分及び 1mL/分で、0.1-1%の溶媒 B [水中90% (vol/vol)アセトニトリル、0.1%(vol/vol)TFA]の直線勾配を用いて、Dionex Ultimate 3000 HPLC ユニット (Thermo-Fisher Dionex) での RP-HPLC によって精製された。
【0181】
MALDI MS 及びタンデムMS分析とペプチド同定
粗抽出物及び全ての画分の分析は、リフレクター ポジティブ モードで動作し、3,500~4,000 (任意単位) に設定されたレーザー強度でスペクトル当たり 2,000 ~5,000 の合計ショットを取得する、MALDI-TOF/TOF 4800 アナライザー (AB Sciex) で実行された。 MS 及びタンデム MS 実験は、マトリックスとして50%(vol/vol)アセトニトリル中の 10mg/mLのα-シアノヒドロキシル桂皮酸を使用して実行された。 各サンプルのアリコート (0.5μL) を3μLのマトリックスと混合し、プレートにスポットした。スペクトルは、4800 Analyzer ソフトウェア (AB Sciex) を使用して取得及び処理された。 次に、データベース検索又は DataExplorer ソフトウェア (AB Sciex) を使用した手動配列決定によって、シクロチドを同定した。
【0182】
酵素消化及びペプチド配列決定
粗抽出物内の全てのシステイン残基を減らすために、新たに調製した 0.2Mの DTT(2μL; Sigma Aldrich) をサンプル アリコート (20μL) に加え、暗所で 60℃で30分間インキュベートした。 各還元サンプルをアルキル化するために、新たに調製した0.5Mの ヨードアセトアミド (4μL; Sigma Aldrich) を加え、25℃ で 10 分間インキュベートした。消化が行われた場合、還元及びアルキル化されたサンプルは、それ以上の精製工程なしで、2μL の0.5μg/μLのエンドプロテイナーゼ Glu-C (Sigma Aldrich) 又は0.1μg/μLのトリプシン ( Sigma Aldrich) のいずれかを添加することにより酵素消化にゆだね、そして37℃ で 3 時間インキュベートした。 希釈TFA(1μL)を添加することにより、反応をクエンチした。 MS 分析の前に、C18 ZipTips (Millipore) を使用してサンプルを脱塩し、4℃で保存した。
【0183】
クローニング、細胞培養、トランスフェクション、及び膜の調製
kOR配列を、BamHI及びHindIII制限部位を使用してpEGFP-N1プラスミド(Clontech)に挿入した(C末端GFP融合タンパク質を生成するため)。 HEK293細胞の増殖及び安定してトランスフェクトされた細胞株の作製のための条件は、以前に記載されたものと同様であった(Hicks, J Neuroendocrinol 24 (7), 2012, 1012-29)。 細胞を採取し、以前に記載されたように膜を調製した(Hicks、前記)。
【0184】
放射性リガンド結合アッセイ
マウス kOR を安定して発現する HEK293 細胞からの膜 (アッセイ当たり5~10μg) を、50mMのTris・HCl、5mMのMgCl、0.1%(wt/vol)の BSA (pH 7.4)、競合するリガンド及び [3H]-ジプレノルフィン (競合結合の場合は 1nM) を含む最終用量 300μLでインキュベートした。 [3H]-ジプレノルフィンは PerkinElmer Life Sciences から購入した。 37℃で60分後、ガラス繊維フィルターマット[Skatron FilterMAT 11731 (Molecular Devices, Sunnyvale, CA)]上で急速濾過することにより、反応を停止させた。非特異的結合は、10 μM のナロキソン (Sigma Aldrich) の存在下で測定された。 特異的結合は、総結合と非特異的結合の違いを表し、正規化されたデータとして表示される。 IC50 値と Hill 係数は、Levenberg-Marquardt アルゴリズムを使用してデータを 3パラメーターのロジスティック方程式 (Hill 方程式) に適合させることによって得られた。
【0185】
機能的cAMPアッセイ
細胞のcAMPレベルは、kORを安定して発現するHEK293細胞で、Cisbio cAMP Gi キット (62AM9PEC) を使用して測定された。 細胞を 800rpm で遠心分離し、上清液を吸引し、細胞ペレットを 0.5mMのIBMXを含む 1x 刺激緩衝液に再懸濁した。 2000個の細胞/ウェルを白色の384ウェルプレートに播種し、1×刺激緩衝液で希釈したリガンドで示されているように処理した後、37℃で30分間インキュベートした。 刺激は、5 μL/ウェルのクリプテート標識cAMP 及び 5 μL/ウェルの抗 cAMP d2 コンジュゲートを順次添加することによって終了させ、それぞれ溶解検出緩衝液で希釈 (1:20)した。室温で1 時間インキュベーションした後、Flexstation 3(Molecular Devices, San Jose, USA) を使用して、遅延時間 100 μs、積分時間 300 μs で時間分解蛍光エネルギー移動 (TR-FRET) を測定した。 得られた 620/665nm 蛍光比の値は、GraphPad Prism 5.0 (GraphPad Software、La Jolla、CA) でプロットされた。
【0186】
βアレスチン動員アッセイ
受容体刺激時のβ-アレスチン2の動員は、β-アレスチン-ルシフェラーゼとEGFPタグ付きkORとの間の生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)のリアルタイム測定によって測定された。 細胞は、β-アレスチン2-Nluc(限定使用ラベルライセンス(NanoLuc、Promega、Madison、USA)の下でKevin Pflegerからの贈り物として入手)とkOR-EGFPをコードするプラスミドを1:10の比率で同時トランスフェクトした。 トランスフェクション後 6時間で、10% ウシ胎児血清を含むフェノールレッドを含まないDMEM 中、50,000個の 細胞/ウェルで、細胞を白く透明な底の 96 ウェルプレートに移した。翌日、細胞をフェノールを含まないDMEMで1 時間血清飢餓状態にした。 ハンクス平衡塩類溶液で 1:50 に希釈したフリマジン (Promega, Madison, USA) を、1:1 の比率でモニタリングする 5分前に細胞に添加した。 発光は、Flexstation 3 (Molecular Devices, San Jose, USA) で 460nm (Nluc) 及び 510nm(EGFP)で測定された。 5 分間ベースラインを確立した後、HBSS で希釈したリガンドを添加し、応答を35 分間測定した。リガンド誘導 BRET シグナルは、(発光 EGFPligand / 発光 Nlucligand)-(発光 EGFPHBSS / 発光 NlucHBSS) として計算された。 kOR での濃度応答曲線は、さまざまなリガンド濃度の添加後 5分でのBRETシグナルから生成された。 [T20K]-カラタ B1及び U50,488 の kOR でのアロステリック変調は、37℃で5 分間の共インキュベーションによって測定された。
【0187】
ペプチド結合
ペプチド結合は、以前に記載されたものと同様に行った(Thell, 前記)。 [T20K]-カラタ B1 を 0.1MのNaHCO 緩衝液、pH 8.5 に溶解した。 20倍モル過剰のVivoTag 680 XL(PerkinElmer)を無水DMSO中で調製し、反応を25℃で4時間進行させた。 0.1%TFAで反応を停止した。過剰な試薬からの標識ペプチドの精製は、diChrom Kromasil C18 カラム (250×10mm、5μm) 及び直線勾配 5 ~ 80% 溶媒B [2 回蒸留 H2O/CH3CN/TFA、10/90 /0.1%(vol/vol/vol)、溶媒A 0.1%TFA水溶液]を用いてセミ分取HPLCにより達成された。HPLC分画は、ネガティブリフレクターモードでのMALDI-TOF質量分析によって分析した。 分析用 HPLC 及び A280UVトレースでの VivoTag 標識の検出に基づいて、ペプチドサンプルの純度は 95% 以上であると決定された。
【0188】
EAE及びインビボイメージング
C57BL/6 マウスを、0 日目に75μLの等量のMOG(MOG35-55、1mg/mL; Charite Berlin) と10mg/mLの結核菌H37Ra (Difco)により補充された不完全フロイト アジュバント (Sigma-Aldrich)とを、左右の脇腹に皮下注射することにより免疫化した。さらに、マウスは、0日目及び2日目に、100μLのPBSに溶解された200ngの百日咳毒素(Millipore)を腔内投与された。C57BL/6マウスは、(Thell, 前記)に最近記載されたプロトコルに従って、0日目に免疫化された。EAE の進行は以下の5つの臨床段階に分けられた;スコア 0、兆候なし;スコア 1、完全な尾麻痺;スコア2、部分麻痺;スコア3、重度の対麻痺; スコア 4、四肢不全麻痺;スコア5、瀕死状態。マウスが除外基準 (スコア > 4、体重減少 > 20%、水と食物の摂取なし、毛づくろいなし) を満たす場合、瀕死と見なされる。 マウスは、倫理的ガイドラインにより3~4のスコアに達するとケタミンで深く麻酔することにより安楽死させられた。病期0.5及び1.75で、結合[T20K]-カラタB1(5mg/kg)を腹腔内注射した。注射後4時間で臓器を採取し、シグナル応答を IVIS でモニターした。
【0189】
実施例2: Carapichea ipecacuanha及びViola tricolor から分離されたシクロチドは、kOR のリガンドである
kOR は最近、多発性硬化症の再ミエリン化療法を開発するための魅力的なターゲットとして、またより安全で効果的な鎮痛薬を開発するための代替手段として浮上してきた(Du, loc. cit.; Mei, 2014, loc. cit.; Che, Cell 172 (1-2), 2018, 55-67 e15)。植物ライブラリーを用いた結合スクリーニングの取り組みにより、kORに結合するシステインに富むペプチドを含むいくつかの植物抽出物が特定された(図1)。 これらの植物の中で、Psychotria solitudinum、Viola tricolor、Carapichea ipecacuanha、Violaodorata、Momordica charantia、及び Beta vulgaris からの植物抽出物が、最も顕著な結合効果を示した。kOR に対する親和性を考慮して、これらの抽出物に存在するシステインに富むペプチドを特定することが求められた。 いくつかのシステインに富むペプチド、いわゆるシクロチドがこの植物から以前に分離されていたため、それは C. ipecacuanha (トコンの根) から始まった。 トコン抽出物は、最初にペプチドからアルカロイド(例えば、エメチン、セファエリン)を分離するためにHPLCベースの精製にかけられた。 次に、ペプチドが豊富な画分を放射性リガンド結合アッセイで分析したところ、実際に、それらはkORに結合する能力を示した(図2A)。続いて、トコンの根の抽出物(Fahradpour、前出)から以前に単離された6つのシクロチドを、放射性リガンド結合についてアッセイした。 興味深いことに、6 つのシクロチドすべてが kOR に結合できた (図2B)。 その後、カリぺ10 を使用して濃度反応曲線を作成した。 ダイノルフィンA1-13 (内因性の kOR ペプチド リガンド) と比較すると、カリペ 10 はトリチウム化されたジプレノルフィンを 1 μM のKi値で濃度依存的に置換した (図 2C)。 トコンの根の抽出物からのシクロチドは kOR のリガンドとして作用するため、シクロチドに富む植物抽出物 V. tricolor をさらに生物活性誘導分画にかけた。 ペプチドが豊富な画分はkORに対する親和性を示し、それによって画分9が最も活性的であった(図2D)。このペプチドに富む画分をさらに精製して、結合親和性の原因となるシクロチドを単離した。 興味深いことに、最も活性な画分から新規シクロチドが単離され、配列決定され(図2E)、その後、この新規ビトリシクロチドがkORに結合できることが実証された(図2F)。 全体として、これらのデータは、C. ipecacuanha 及び V. tricolor から分離されたシクロチドが低 μM 範囲の親和性でkORに結合するという証拠を提供する。
【0190】
実施例3:[T20K]-カラタB1はkO に結合して活性化する
C. ipecacuanha 及び V. tricolor から分離されたシクロチドが kOR に結合する能力は、放射性リガンド結合及び機能研究において [T20K]-カラタB1を薬理学的に特徴付けるよう促した。 結合及び機能データは、[T20K]-カラタB1がそれぞれ 2.7μM のKi 及び 17μM のEC50で kOR に結合して活性化することを明らかにした (図 3A 及びB)。ダイノルフィンA1-13は、280 pM の Ki 値と14nMのEC50を示す陽性対照として使用された。 kOR は、中枢神経系 (CNS) 全体に広く発現している。 kOR の選択的活性化は、身体依存や呼吸不全のリスクなしに、動物モデルで抗侵害受容をもたらす。 ただし、鎮痛効果に加えて、kOR の活性化には不快感や鎮静などの望ましくない副作用があることが示されていることは注目に値する(Darcq, Nat Rev Neurosci 19 (8), 2018, 499-514)。これらの副作用は、脱髄疾患の治療におけるkORアゴニストの治療可能性を弱める可能性がある。 興味深いことに、GPCR シグナル伝達を調節するサイトゾルタンパク質であるベータ アレスチンは、オピオイド受容体の活性化に関連する副作用の発生に関連付けられている (Darcq, 前記)。従って、[T20K]-カラタB1 がβ アレスチン動員を誘発する能力を BRET ベースのアッセイで調べることに着手した。 その結果、[T20K]-カラタB1を、NanoLuc-β-アレスチン2と EGFP-kOR を一時的に共発現する HEK293 細胞とインキュベートした場合、β アレスチンの動員は検出されなかった (図 3C 及びD)。 対照的に、ダイノルフィン A 1-13 は、183nM の EC50 でβ アレスチンを動員することができた。 これらのデータは、[T20K]-カラタB1が kOR の完全なアゴニストであり、中枢を介した kOR の副作用を発症する可能性が低いことを示唆している。
【0191】
実施例 4: [T20K]-カラタB1は kOR のアロステリックモジュレーターである
ここ数年、アロステリック調節の概念は、GPCR の分野で科学的な勢いを増している (Conn, Nat Rev Drug Discov 8 (1), 2009, 41-54]。 オルトステリック部位とは異なる受容体部位に結合するいくつかのアロステリック調節因子が、CNS障害の治療の新規アプローチとして同定されている(Conn, 前記)。 アロステリックな作用機序を有する化合物は、潜在的な治療薬として、オルソステリック リガンドよりもさまざまな理論上の利点を示すことができる。 例えば、アゴニズムを示さないアロステリックモジュレーターは、内因性オルソステリック活性の非存在下では静止しており、放出されたオルソステリックアゴニストの存在下でのみ効果を発揮する(Conn,前記)。従って、そのようなアロステリックモジュレーターは、活動依存性と、内因性生理学的シグナル伝達の時間的及び空間的側面の両方を維持する可能性がある。 アロステリック リガンドの2番目の潜在的な利点は、保存されたオルソステリック ドメインと比較して、受容体サブタイプ全体のアロステリック部位でのより高い配列分岐による、又は特定のサブタイプでの選択的協同性による他のサブタイプの排除による、より高い受容体選択性である (Conn, 前記)。 あるいは、オルソステリックとアロステリックの両方のファーマコフォアを同じ分子内で組み合わせて、新しいクラスの「バイトピック」GPCR リガンドを生成することにより、選択性を生み出すことができる (Conn, 前記; Valant, Annu Rev Pharmacol Toxicol 52, 2012, 153-78)。 従って、放射性リガンド及び機能アッセイを使用して、kORでの[T20K]-カラタ B1のアロステリック効果を調査することが求められた。放射性リガンド結合研究は、kOR を安定して発現し、さまざまな濃度の [T20K]-カラタ B1を、選択的なkORアゴニストであるダイノルフィン A1-13又はU50,488 と共培養した HEK293 細胞で実施された。 ここで、[T20K]-カラタB1 がトリチウム化ジプレノルフィンを負に調節し、内因性ダイノルフィンA1-13 の親和性にわずかに影響を与えるだけであることが明らかになった (図4A、表1)。 [T20K]-カラタB1を U50,488 と共培養した場合にも、同様の効果が誘発された (図 3B、表2)。驚くべきことに、細胞の cAMP レベルを測定することによって機能研究を行ったところ、[T20K]-カラタB1はダイノルフィンA1-13 の効力に影響を与えず、代わりにその有効性の増加につながることが観察された (図 4C、 表1)。 しかし、U50,488 との共インキュベーションは、逆のアロステリック効果をもたらした。つまり、[T20K]-カラタB1は効力の9倍の左シフトを誘発し、オルソステリック リガンドの有効性にわずかな影響しか与えなかった (図 4D、 表2)。 この観察結果は、kOR でのアロステリック相互作用のプローブ依存性の古典的な例と一致していた。 明らかなように、アロステリック変調の方向及び/又は大きさの変化は、オルソステリック プローブ リガンドの性質に大きく依存する。U50,488 がβ アレスチン動員を誘導できることを考えると、[T20K]-カラタB1を U50,488 とさらに共培養して、[T20K]-カラタB1が U50,488 のβアレスチン動員能力に影響を与えるかどうかを確認した。実際のところ、[T20K]-カラタB1 による kOR の共刺激は、U50,488 の有効性の顕著な緩和をもたらし、その効力に影響を与えなかった (図4E及び F、表 2)。
【0192】
これらのデータは、[T20K]-カラタB1がkORのオルソステリック リガンドであるだけでなく、kOR をアロステリックに結合できるバイトピック リガンドとしても機能することを示している。 従って、kOR での [T20K]-カラタB1 のアロステリック調節のこの現象は、MS の治療においてさらに有益な効果を発揮する可能性がある。
【0193】
実施例 5: [T20K]-カラタB1が MS の EAE モデルの脳に蓄積する
[T20K]-カラタB1と kOR を MS の治療候補として検討するには、[T20K]-カラタB1が血液脳関門 (BBB) を通過する能力を調べる必要がある。 この目的のために、最先端の MS のインビボモデルであるマウス EAE アッセイを使用した。 注射前に、[T20K]-カラタB1をVivoTag 680 XL Fluorochromeに結合し、続いて以前に記載されたようにそのHPLCベースの精製を行った(Thell、前記)。マウスが疾患を発症すると、結合[T20K]-カラタB1が異なる疾患段階 (0.5 及び 1.75) で腹腔内注射され、注射後4 時間の臓器が採取され、IVIS を使用して体内分布が監視された。 標識シクロチドは脳と脊椎に蓄積されたが、その程度ははるかに低かった(図5A、C、D)。 EvansBlue 色素を陽性対照として使用し、脳と脊椎で強いシグナルを示した (図 5B、E、F)。
【0194】
最後に、これらのデータは、[T20K]-カラタB1が EAE モデルで CNS に浸透する能力を確認し、それによって[T20K]-カラタB1 を U50,488 と組み合わせた MS 治療に関するさらなる調査に非常に適したものにする。
【0195】
実施例6:U50,488/ダイノルフィンA1-13と組み合わせた[T20K]-カラタB1によるEAEマウスのエクスビボ/インビボ処置は、再ミエリン化の増加/脱髄の減少及びEAE臨床スコアの増加をもたらす
kOR は、オリゴデンドロ サイトの分化と髄鞘形成を促進する有望なターゲットとして識別されている。 オリゴデンドロ サイトは、ミエリンを形成する CNS の支持グリア細胞の 1 つである。 ミエリンは、CNS の必須成分であり、基礎となる軸索への電気伝導と代謝サポートをサポートする。 多発性硬化症 (MS) などの神経変性状態では、ミエリン鞘が損傷している。 成人の脳には幹細胞様のオリゴデンドロ サイト前駆細胞 (OPC) の集団が含まれており、これが新しいオリゴデンドロ サイトに分化し、露出した軸索を再ミエリン化し、それによって内因性修復プロセスを示す。
【0196】
kORアゴニストのナルフラフィンと U50,488 は、インビトロ と インビボの両方で活性であることが示されている (Denny, 前記; Du 、前記)。 従って、たとえば T20K と OPC 分化及び再ミエリン化の促進に関するこれらのリガンドとの比較、並びにそれらの組み合わせによる改善された有効性を可能にする研究が設計されている。
【0197】
1. エクスビボ研究プロトコル:
ラットの新生児の脳を解剖し、小脳と髄膜を取り除く。 脳は 1時間の酵素消化を介して解離し、その後、培地 (ダルベッコ改変イーグル培地、DMEM)、10% ウシ胎児血清 (FBS)、1% ペニシリン-ストレプトマイシン (Pen/Strep) を細胞に添加して消化を停止する。解離した細胞を遠心分離し、上清を除去する。 細胞を、18 ゲージ及び 23 ゲージの針で粉砕することにより培地に懸濁し、フラスコ当たり約 1.5 皮質で T75 フラスコに添加する。細胞を 10 日間培養し、2 ~ 3 日ごとに培地を交換する。 10 日目に、フラスコを 250rpm で 1 時間振盪することにより、緩く付着したミクログリアを除去する。 次に、フラスコに培地を補充し、230rpmで 18.20 時間、一晩振盪する。翌日、OPCを含む培地を各フラスコから取り出す。 収集された細胞は、未処理の TC ペトリ皿に 20 分間プレートされ、それらの差動接着によって混入している星状細胞を除去する。残りの精製された OPC を遠心分離し、カウントし、そして10 ng/mL の成長因子 PDGFAA 及び FGF を含む、SATO 培地(DMEM、5mLの100x SATO、5mLのPen/Strep、5 mLの インスリン、トランスフェリン、セレナイト (ITS)補足)でポリ-D-リジンでコーティングされた96ウェルプレートに1ウェル当たり7,000細胞でプレートする(0日目)。OPC は、アッセイを開始する前に 48 時間培養で維持される。2 日目に、培地を除去し、新鮮な培地 (試験物質 (T20K 及び/又は U50,488 及び/又はナルフラフィンを含む) 又は適切な参照物質 (T3、3,3‘,5-トリヨード-L-サイロニンなど))を添加した。これらの物質のインキュベーション期間は最適化されている。 元のプロトコルでは 72 時間のインキュベーションが推奨されていたが、これは細胞毒性のために決定的な結果につながる可能性がある (これらの初代神経細胞は T20K などの生体異物に非常に敏感であるため)。従って、インキュベーション プロトコルは、より短い時間 (30 分、1 時間、4 時間、8 時間、又は 24 時間など) に最適化されている。 その後、細胞を PFA (4%、10 分) で固定し、Olig2 (Merck など; MABN50)、NG2 (Merck; AB5320)、及び MBP (Biorad; MCA409S) に対する抗体を投与する。 プレートは、適切な高コンテンツ イメージング システムを使用して画像化され、細胞計数が実行され、各マーカーに対して陽性の細胞数が定量化される。 培養中に観察された形態学的変化を強調するために、低出力位相コントラスト画像が定期的に撮影される。免疫染色後、ウェルは 10 倍の倍率で画像化される。 画像は自動画像解析を使用して処理され、細胞数が計算されry。 5つの視野が各ウェルからイメージされ、各マーカーに陽性の細胞がカウントされる。 異なる濃度の試験化合物と参照化合物が評価され; 治療は 3 つの技術的なレプリケートで培養され、実験は複数のラットの子からプールされた細胞に対して少なくとも 3回 (N = 3) 独立して実行される。
【0198】
この研究は、T20K 単独及び既知のKORアゴニストと組み合わせた場合の再ミエリン化効果を定量化するように設計されている。 この目的のために、MBP 陽性であるオリゴデンドログリアのパーセンテージを条件ごとに計算して、分化の影響を明らかにする。MBP陽性オリゴデンドログリアの増加は、そのような効果を示している。 Olig2は未分化OPCのマーカーであり、NG2は多くの多様な細胞タイプの原形質膜に見られる内在性膜プロテオグリカンであり、細胞の全体的な細胞生存状態を提供する。
【0199】
2. インビボ研究プロトコル:
インビボでKORアゴニストと組み合わせたT20Kの再ミエリン化活性は、多発性硬化症のEAEマウスモデルで決定される。 EAEが誘発され、マウスは以前に確立されたように処理される(Thell et al.)。 対照処置と比較した髄鞘形成の程度は、組織学によって実施される。 マウスの脊髄を分離し、4% 緩衝ホルマリンで固定し、組織学的評価のために処理する。 切片が、標準的なプロトコルを使用してH&Eと LFB で染色される。 さらに、切片は、ラット抗 CD3 (例えば、AbD Serotech) 及びヤギ抗ラット (例えば、Vector Laboratories) 抗体を用いた免疫組織化学を使用して、CD3 表面発現について分析される。各動物の最低 3つの断面を組織学的に評価する。 炎症指数は次のように計算される: 脊髄断面における血管周囲浸潤の数を、各動物の使用断面の数で割る。 う、炎症指数が高いほど、炎症性浸潤が多いことを示す。 脱髄領域の程度を評価するために、各断面の総脱髄領域をKLB染色で測定する。 次に、脱髄領域が計算され、全断面積のパーセントとしてプロットされる。 例えば、画像Jは全ての組織学的評価に使用される。
【0200】
さらに、末梢からCNSへのT細胞浸潤の程度が決定される。これは、末梢T細胞での KOR 活性化がその CNS 再ミエリン化活性にとって重要であると考えられているためである(REF ニュージーランドの論文)。免疫細胞は、適切な動物の脳を5mLのコラゲナーゼD (0.233U/mg; Roche) と DNase (Roche) (臓器当たり0.17U/mLのコラゲナーゼDと 0.01 mg/mLの DNaseI)の混合物による消化によりCNSから単離された。振盪インキュベーターで脳を37℃で30分間インキュベートする。組織をさらに破壊するために、EDTA (PBS 中 pH8.0) を加えて最終濃度 2mM にし、懸濁液を23℃で5分間ピペッティングしてから、70 μm 細胞こし器で濾過する。 細胞をPBSで400×g、4℃で8分間洗浄してから、RPMI培地に再懸濁する。 細胞をFACS分析に使用するか、3×10/mL の濃度で播種し、30μg/mLのMOGでエクスビボで刺激した。 刺激された細胞の上清は、ELISA を使用したサイトカイン分泌の検出に使用される(詳細については、Thell et al. を参照のこと)。
【0201】
KORアゴニストと組み合わせたT20KによるEAE疾患マウスの治療は、EAE誘発対照治療マウスと比較して、炎症指数の低下と軸索脱髄領域の減少につながると予想される。さらに、処置されたマウスの脳からの CD3、CD4、又はCD8陽性細胞の定量化は、CNSのCD3+、CD4+細胞の数の減少をもたらすと予想され、CD3の減少は脊髄細胞の指標になると予想される。
【0202】
本発明は、以下の表を参照する:
【0203】
【表1】
【0204】
【表2】
【0205】
【表3-1】
【表3-2】
【0206】
【表4】
【0207】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【0208】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0209】
本発明は、以下のヌクレオチド及びアミノ酸配列を指す:
配列番号1:
カラタ B1のアミノ酸配列: GLPVCGETCVGGTCNTPGCTCSWPVCTRN
【0210】
配列番号2:
カラタ B2 のアミノ酸配列: GLPVCGETCFGGTCNTPGCSCTWPICTRD
【0211】
配列番号3:
D-カラタB2の参照アミノ酸配列: all-DGLPVCGETCFGGTCNTPGCSCTWPICTRD
【0212】
配列番号4:
カラタG18Kのアミノ酸配列: GLPVCGETCVGGTCNTPKCTCSWPVCTRN
【0213】
配列番号5:
カラタN29Kのアミノ酸配列: GLPVCGETCVGGTCNTPGCTCSWPVCTRK
【0214】
配列番号6:
カラタ T20K、G1Kのアミノ酸配列: KLPVCGETCVGGTCNTPGCKCSWPVCTRN
【0215】
配列番号7:
カラタ T20Kのアミノ酸配列: GLPVCGETCVGGTCNTPGCKCSWPVCTRN
【0216】

配列番号8:
カラタT8のアミノ酸配列: GLPVCGEKCVGGTCNTPGCTCSWPVCTRN
【0217】
配列番号9:
カラタV10A のアミノ酸配列: GLPVCGETCAGGTCNTPGCTCSWPVCTRN
【0218】
配列番号10:
カラタV10Kのアミノ酸配列: GLPVCGETCKGGTCNTPGCTCSWPVCTRN
【0219】
配列番号11:
カラタB1 をコードするヌクレオチド配列: GGACTTCCAGTATGCGGTGAGACTTGTGTTGGGGGAACTTGCAACACTCCAGGCTGCACTTGCTCCTGGCCTGTTTGCACACGCAAT
【0220】
配列番号12:
カラタB2をコードするヌクレオチド配列: GGTCTTCCAGTATGCGGCGAGACTTGCTTTGGGGGAACTTGCAACACTCCAGGCTGCTCTTGCACCTGGCCTATCTGCACACGCGAT
【0221】
配列番号13:
カラタB1前駆体タンパク質のアミノ酸配列。 成熟したカラタB1ドメインには下線が引かれている。 P56254、カラタ-B1、Oldenlandia affinis
MAKFTVCLLLCLLLAAFVGAFGSELSDSHKTTLVNEIAEKMLQRKILDGVEATLVTDVAEKMFLRKMKAEAKTSETADQVFLKQLQLKGLPVCGETCVGGTCNTPGCTCSWPVCTRNGLPSLAA
【0222】
配列番号14:
カラタB2 前駆体タンパク質のアミノ酸配列。 3つの成熟した カラタB2ドメインには下線が引かれている。 P58454、カラタ-B2、Oldenlandia affinis
MAKFTNCLVLSLLLAAFVGAFGAEFSEADKATLVNDIAENIQKEILGEVKTSETVLTMFLKEMQLKGLPVCGETCFGGTCNTPGCSCTWPICTRDSLPMRAGGKTSETTLHMFLKEMQLKGLPVCGETCFGGTCNTPGCSCTWPICTRDSLPMSAGGKTSETTLHMFLKEMQLKGLPVCGETCFGGTCNTPGCSCTWPICTRDSLPLVAA
【0223】
配列番号15:
カラタ B1前駆体タンパク質をコードするヌクレオチド配列。 成熟カラタB1ドメインに対応するヌクレオチド配列には下線が引かれている。 >gi|15667740|gb|AF393825.1| Oldenlandia affinis カラタ B1前駆体、mRNA、完全cds
GGCACCAGCACTTTCTTAAAATTTACTGCTTTTTCTTATTTCTTGTTCTGTGCTTGCTTCTTCCATGGCTAAGTTCACCGTCTGTCTCCTCCTGTGCTTGCTTCTTGCAGCATTTGTTGGGGCGTTTGGATCTGAGCTTTCTGACTCCCACAAGACCACCTTGGTCAATGAAATCGCTGAGAAGATGCTACAAAGAAAGATATTGGATGGAGTGGAAGCTACTTTGGTCACTGATGTCGCCGAGAAGATGTTCCTAAGAAAGATGAAGGCTGAAGCGAAAACTTCTGAAACCGCCGATCAGGTGTTCCTGAAACAGTTGCAGCTCAAAGGACTTCCAGTATGCGGTGAGACTTGTGTTGGGGGAACTTGCAACACTCCAGGCTGCACTTGCTCCTGGCCTGTTTGCACACGCAATGGCCTTCCTAGTTTGGCCGCATAATTTGCTTGATCAAACTGCAAAAATGAATGAGAAGGCCGACACCAATAAAGCTATCAATGTAGTTGGTCCCTGTACTTAATTTGGTTGGCTCCAAACCATGTGTGCTGCTCTTGTTTTTGTTTTTTCTTTTTTCTTCTCTCTTTCGGGCACTCTTCAGGACATGAAGTGATGATCAGTACTCTTTGCTATCATGTTTTCTGTGCACACCTTCTATTGTAGGTGTTGTTGTGATGTTGATGCCCAATTGGAATAAACTGTTGTCGTTGTTAAAAAAAAAAAAAAAAA
【0224】
配列番号16:
カラタ B2前駆体タンパク質をコードするヌクレオチド配列。 3つの成熟カラタB2ドメインに対応するヌクレオチド配列には下線が引かれている。 >gi|15667746|gb|AF393828.1| Oldenlandia affinis カラタ B2前駆体、mRNA、完全cds
GGCACCAGATACAACCCCTTTCTTATAATTTATTGCTTTTCTTATTCCTTGAAAAAGGAGAAATAATATTGGATCTTCCATGGCTAAGTTCACCAACTGTCTCGTCCTGAGCTTGCTTCTAGCAGCATTTGTTGGGGCTTTCGGAGCTGAGTTTTCTGAAGCCGACAAGGCCACCTTGGTCAATGATATCGCTGAGAATATCCAAAAAGAGATACTGGGCGAAGTGAAGACTTCTGAAACCGTCCTTACGATGTTCCTGAAAGAGATGCAGCTCAAAGGTCTTCCAGTATGCGGCGAGACTTGCTTTGGGGGAACTTGCAACACTCCAGGCTGCTCTTGCACCTGGCCTATCTGCACACGCGATAGCCTTCCTATGAGGGCTGGAGGAAAAACATCTGAAACCACCCTTCATATGTTCCTGAAAGAGATGCAGCTCAAGGGTCTTCCAGTTTGCGGCGAGACTTGCTTTGGGGGAACTTGCAACACTCCAGGCTGCTCGTGCACCTGGCCTATCTGCACACGCGATAGCCTTCCTATGAGTGCTGGAGGAAAAACATCTGAAACCACCCTTCATATGTTCCTGAAAGAGATGCAGCTCAAGGGTCTTCCAGTTTGCGGCGAGACTTGCTTTGGGGGAACTTGCAACACTCCAGGCTGCTCGTGCACCTGGCCTATATGCACACGTGATAGCCTTCCTCTTGTGGCTGCATAATTTGCTTCATCAAACTGCAAAATGAATAAGAAGGGACACTAAATTAGCTATGAATTTTGTTGGCCCTTGTGTCTGGTAATTTGGTTCCCGCCAAATTAACCATATGTATGCATTGCTCCTTTTTTCTTTCTTTTTTTTCCCCCTCATTTGGGCACTCTTCATTACATGAAGAGATCATGACGCTTTGTTACTCTGAGCACCCCCTGTTGGTGTTGTTCACATGTTGATGCCCATGTTGGAATAAACTCTTGTTTTTGTTACCAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
【0225】
配列番号17:
活性シクロチド、特にカラタ型シクロチドのコンセンサスアミノ酸配列(Xxxは任意のアミノ酸、非天然アミノ酸又はペプチド模倣物であり、Xxxは任意のアミノ酸、非天然アミノ酸又はペプチド模倣物であるが、Lysは含まない;及びXxxは は任意のアミノ酸、非天然アミノ酸又はペプチド模倣体であるが、Ala 又は Lys は除く):
Xxx1-Leu-Pro-Val-Cys-Gly-Glu-Xxx2-Cys-Xxx3-Gly-Gly-Thr-Cys-Asn-Thr-Pro-Xxx1-Cys-Xxx1-Cys-Xxx1-Trp-Pro-Xxx1-Cys-Thr-Arg-Xxx1
【0226】
配列番号18:
活性シクロチド、特にカリペ型シクロチドのコンセンサスアミノ酸配列(Xxx は Val、Ala、又はLeuであり、Xxx は Gly、Ser 又はThrであり、Xxx はGlu、Gly、又はSer であり、XxxはSer又はThrであり、 Xxx は、Val、Leu、又はPhe であり、Xxx は Ph 又は Arg、 Xxx は Ile 又は Asn であり、Xxx は Pro 又は Argであり、Xxx は Ile、Phe、Thr又は Leuであり、Xxx10 は Ser、Thr、Ile、又はValであり、Xxx11 は、Thr、Ser、Ala、Arg、又は Pro であり、Xxx12 は Val、Leu、又はAlaであり、Xxx13 は Ile、Leu、Phe、又はValであり、Xxx14 は Gly 又は Argであり、Xxx15はSer又はThrであり、Xxx16 は Lys、Ser 又は Arg であり、Xxx17は Asn、Asp、His 又はLysであり、Xxx18 はLys、Asn、His、又は Tyrであり、Xxx19 はVal 又は Ileであり、Xxx20 は、Arg、Leu、Lys又はAsnであり、そして/又は Xxx21はAsn 又はAspである):
Gly-Xxx1-Ile-Pro-Cys-Xxx2-Xxx3-Xxx4-Cys-Xxx5-Xxx6-Xxx7-Xxx8-Cys-Xxx9-Xxx10-Xxx11-Ala-Xxx12-Xxx13-Xxx14-Cys-Xxx15-Cys-Xxx16-Xxx17-Xxx18-Xxx19-Cys-Tyr-Xxx20-Xxx21
【0227】
配列番号19:
活性シクロチド、特にビオラ型シクロチドのコンセンサスアミノ酸配列(Xxx~Xxx20のいずれか すべては、任意のアミノ酸、非天然アミノ酸又はペプチド模倣体であってもよい;好ましくは、Xxx~Xxx20のいずれか又はすべては、配列番号155に示されるような「ビトリ」シクロチドの対応するアミノ酸残基の保存的アミノ酸交換であり得る):
Gly-Xxx1- Xxx2- Xxx3-Cys-Gly-Glu-Xxx4-Cys-Xxx5-Xxx6-Xxx7-
Xxx8-Cys-Xxx9-Xxx10-Xxx11-Xxx12-Cys-
Xxx13-Cys-Xxx14-Xxx15-Xxx16-Xxx17-Cys- Xxx18-Xxx19-Xxx20
(配列番号19)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
【配列表】
2023517768000001.app
【国際調査報告】