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特表2023-517771抗新型コロナウイルス感染症の医薬品、食品、及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】抗新型コロナウイルス感染症の医薬品、食品、及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/47 20060101AFI20230419BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230419BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230419BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230419BHJP
【FI】
A61K38/47
A61P43/00 121
A61K31/19
A61P31/14
A61P37/02
A61P11/00
A61P1/00
A61P13/00
A61P15/00
A61P9/00
A61P25/00
A23L33/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556662
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2020133898
(87)【国際公開番号】W WO2021218154
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】202010341811.3
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521387833
【氏名又は名称】広州新創憶薬物臨床研究有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521387844
【氏名又は名称】広州新創意生物医薬有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522166286
【氏名又は名称】広州新創翼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520253328
【氏名又は名称】湘北威爾曼制薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519144509
【氏名又は名称】南京康福順薬業有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING KANGFUSHUN PHARMACEUTICAL CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】E3 Building,No.9,Weidi Road,Xianlin Street,Qixia District Nanjing,Jiangsu 210046,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】孫明傑
(72)【発明者】
【氏名】孫天宇
(72)【発明者】
【氏名】李萇清
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD10
4B018MD90
4B018MD94
4B018ME14
4C084AA02
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4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA361
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4C084ZA662
4C084ZA811
4C084ZB111
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA14
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA07
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZB11
4C206ZB33
(57)【要約】
抗新型コロナウイルス感染症の医薬品、食品及び使用であって、前記医薬品又は食品は、リゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせを含み、前記リゾチーム又はその組み合わせは、抗新型コロナウイルス感染症及び新型コロナウイルスに関連する疾患若しくは症状を予防又は治療する医薬品、又は、抗新型コロナウイルス感染症及び新型コロナウイルスに関連する疾患若しくは症状の予防又は治療を補助する食品の製造に有用である。リゾチーム又はその組み合わせは、新型コロナウイルスに引き起こされる細胞損傷及び炎症反応を効果的に阻害し、消化器系の症状を緩和し、気道閉塞、呼気量低下や腸管バリア機能を改善し、新型コロナウイルス感染症又はそれに関連する疾患若しくは症状に対して良好な予防、治療効果を有し、ウイルスの体内での除去を促進し、体内の新型コロナウイルス核酸検査による陰性化速度を速め、患者の疾患のコースを短縮し、新型コロナウイルスの拡散を効果的に予防、低減し、社会的効果や将来性が期待できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗新型コロナウイルス感染症の医薬品、又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防/治療する医薬品の製造における、リゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせの使用。
【請求項2】
前記新型コロナウイルス感染症は呼吸器系及び/又は消化器系の新型コロナウイルス感染症である、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状は、呼吸器系の疾患若しくは症状、免疫系の疾患若しくは症状、及び消化器系の疾患若しくは症状のうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記免疫系の疾患若しくは症状は発熱又はサイトカインストーム症候群から選ばれる、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記消化器系の疾患若しくは症状は腸管バリア機能不全又は消化機能障害から選ばれる、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記呼吸器系の疾患若しくは症状は気道抵抗増加、呼気量低下、肺炎又は急性呼吸促拍症候群から選ばれる、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項7】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状はCOVID-19新型コロナウイルスによる肺炎である、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記組み合わせにはグリチルリチン酸又はその塩がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項1又は7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記組み合わせには、リゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1である、ことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記組み合わせには、新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項1、7、8又は9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分は、COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分及び/又は消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分を含む、ことを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分は、インターフェロン、オセルタミビル又はその塩、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、リバビリン、レムデシビル、クロロキン又はその塩、ヒドロキシクロロキン又はその塩、アービドール又はその塩、インターロイキン阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤、糖質コルチコイド又はプロテアーゼ阻害剤、腸内細菌叢調整剤から選ばれる1種又は複数種であり、
前記消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分は、腸内細菌叢調整剤、胃腸粘膜保護剤、制吐薬、止瀉薬、胃腸運動薬、鎮痙薬、消化性潰瘍治療薬、及び消化補助薬から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記組み合わせ中のリゾチームと、グリチルリチン酸又はその塩、COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分、及び消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分のうちの少なくとも1種とは、それぞれ異なる薬剤に存在するか、又は同一薬剤に存在する、ことを特徴とする請求項8又は11に記載の使用。
【請求項14】
前記医薬品の剤形は経口剤形、注射剤形、吸入剤形、経腸投与剤形を含む、ことを特徴とする請求項1又は7に記載の使用。
【請求項15】
前記医薬品の放出形態は通常放出、持続放出、徐放又は制御放出である、ことを特徴とする請求項1又は7に記載の使用。
【請求項16】
前記医薬品には、薬学的に許容される補助材料がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項1又は7に記載の使用。
【請求項17】
リゾチームを含有し、
抗新型コロナウイルス感染症用いられる、又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防/治療に用いられる、ことを特徴とする医薬品。
【請求項18】
前記新型コロナウイルス感染症は呼吸器系及び/又は消化器系の新型コロナウイルス感染症である、ことを特徴とする請求項17に記載の医薬品。
【請求項19】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状は、免疫系の疾患若しくは症状、呼吸器系の疾患若しくは症状、消化器系の疾患若しくは症状から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項17に記載の医薬品。
【請求項20】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状はCOVID-19新型コロナウイルスによる肺炎である、ことを特徴とする請求項17に記載の医薬品。
【請求項21】
前記医薬品にはグリチルリチン酸又はその塩がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項17又は20に記載の医薬品。
【請求項22】
前記医薬品にはリゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1である、ことを特徴とする請求項21に記載の医薬品。
【請求項23】
前記医薬品には新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項17、20、21又は22のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項24】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分は、COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分及び/又は消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分を含む、ことを特徴とする請求項23に記載の医薬品。
【請求項25】
前記COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分は、インターフェロン、オセルタミビル又はその塩、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、リバビリン、レムデシビル、クロロキン又はその塩、ヒドロキシクロロキン又はその塩、アービドール又はその塩、インターロイキン阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤、糖質コルチコイド又はプロテアーゼ阻害剤、腸内細菌叢調整剤から選ばれる1種又は複数種であり、
前記消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分は、腸内細菌叢調整剤、胃腸粘膜保護剤、制吐薬、止瀉薬、胃腸運動薬、鎮痙薬、消化性潰瘍治療薬、及び消化補助薬から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項24に記載の医薬品。
【請求項26】
前記組み合わせ中のリゾチームと、グリチルリチン酸又はその塩、COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分、及び消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分のうちの少なくとも1種とは、それぞれ異なる薬剤に存在するか、又は同一薬剤に存在する、ことを特徴とする請求項21又は24に記載の医薬品。
【請求項27】
前記医薬品の剤形は経口剤形、注射剤形、吸入剤形、経腸投与剤形を含む、ことを特徴とする請求項17又は20に記載の医薬品。
【請求項28】
前記医薬品の放出形態は通常放出、持続放出、徐放又は制御放出である、ことを特徴とする請求項17又は20に記載の医薬品。
【請求項29】
前記医薬品は腸溶性製剤である、ことを特徴とする請求項17又は20に記載の医薬品。
【請求項30】
前記医薬品には、薬学的に許容される補助材料がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項17又は20に記載の医薬品。
【請求項31】
リゾチームを含有し、
抗新型コロナウイルス感染症を補助する、又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防又は治療を補助する、ことを特徴とする食品。
【請求項32】
前記新型コロナウイルス感染症は呼吸器系の新型コロナウイルス感染症及び/又は消化器系の新型コロナウイルス感染症である、ことを特徴とする請求項31に記載の食品。
【請求項33】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状はCOVID-19新型コロナウイルスによる肺炎である、ことを特徴とする請求項31に記載の食品。
【請求項34】
前記食品は健康食品又は特別医療目的用食品である、ことを特徴とする請求項31又は33に記載の食品。
【請求項35】
前記食品にはグリチルリチン酸又はその塩がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項31又は33に記載の食品。
【請求項36】
前記食品にはリゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1である、ことを特徴とする請求項35に記載の食品。
【請求項37】
前記食品にはリゾチームとグリチルリチン酸又はその塩はそれぞれ独立して異なる食品に存在するか、又は同一食品に存在する、ことを特徴とする請求項35に記載の食品。
【請求項38】
前記食品には、食品上許容される添加剤がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項31又は33に記載の食品。
【請求項39】
食品の製造におけるリゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせの使用であって、
前記食品は抗新型コロナウイルス感染症の食品又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防/治療を補助する食品である、ことを特徴とする使用。
【請求項40】
前記新型コロナウイルス感染症は呼吸器系の新型コロナウイルス感染症及び/又は消化器系の新型コロナウイルス感染症である、ことを特徴とする請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状はCOVID-19新型コロナウイルスによる肺炎である、ことを特徴とする請求項39に記載の使用。
【請求項42】
前記食品は健康食品又は特別医療目的用食品である、ことを特徴とする請求項39又は41に記載の使用。
【請求項43】
前記食品にはグリチルリチン酸又はその塩がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項39又は41に記載の使用。
【請求項44】
前記組み合わせ中のリゾチームとグリチルリチン酸又はその塩とは、それぞれ異なる食品に存在するか、又は同一食品に存在する、ことを特徴とする請求項43に記載の使用。
【請求項45】
前記食品中、リゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1である、ことを特徴とする請求項43に記載の使用。
【請求項46】
前記食品には、食品上許容される添加剤がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項39、41又は43に記載の使用。
【請求項47】
前記添加剤は防腐剤、着色剤、調味剤、香料、保存剤、酸化防止剤、乳化剤、増粘剤、炭水化物、脂肪、ビタミン、アミノ酸、微量元素又はタンパク質から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項46に記載の使用。
【請求項48】
抗新型コロナウイルス感染症又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防/治療方法であって、
これを必要とする対象に、リゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせを有効量で含む医薬品を投与することを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項49】
前記新型コロナウイルス感染症は呼吸器系の新型コロナウイルス感染症及び/又は消化器系の新型コロナウイルス感染症である、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状は、免疫系の疾患若しくは症状、呼吸器系の疾患若しくは症状、消化器系の疾患若しくは症状から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記免疫系の疾患若しくは症状は発熱又はサイトカインストーム症候群から選ばれ、
前記消化器系の疾患若しくは症状は腸管バリア機能不全又は消化機能障害から選ばれ、
前記呼吸器系の疾患若しくは症状は気道抵抗増加、呼気量低下、肺炎又は急性呼吸促拍症候群から選ばれる、ことを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状はCOVID-19新型コロナウイルスによる肺炎である、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記対象は新型コロナウイルス核酸検査により陽性である、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記組み合わせにはグリチルリチン酸又はその塩がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項48又は52に記載の方法。
【請求項55】
前記組み合わせには、リゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1である、ことを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記組み合わせには、新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項48、52又は54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分は、COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分及び/又は消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分を含む、ことを特徴とする請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分は、インターフェロン、オセルタミビル又はその塩、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、リバビリン、レムデシビル、クロロキン又はその塩、ヒドロキシクロロキン又はその塩、アービドール又はその塩、インターロイキン阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤、糖質コルチコイド又はプロテアーゼ阻害剤、腸内細菌叢調整剤から選ばれる1種又は複数種であり、
前記消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分は、腸内細菌叢調整剤、胃腸粘膜保護剤、制吐薬、止瀉薬、胃腸運動薬、鎮痙薬、消化性潰瘍治療薬、及び消化補助薬から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記組み合わせ中のリゾチームと、グリチルリチン酸又はその塩、COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分、及び消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分のうちの少なくとも1種とは、それぞれ異なる薬剤に存在するか、又は同一薬剤に存在する、ことを特徴とする請求項54又は57に記載の方法。
【請求項60】
前記医薬品の投与方式は経口、注射、吸入又は経腸投与である、請求項48又は52に記載の方法。
【請求項61】
前記医薬品の放出形態は通常放出、持続放出、徐放又は制御放出である、請求項48又は52に記載の方法。
【請求項62】
前記リゾチームの1日量は0.5g~20gである、請求項48又は52に記載の方法。
【請求項63】
前記医薬品の服用回数は、非睡眠時に、1時間~24時間毎に1回、好ましくは1時間毎、2時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎又は24時間毎に1回服用する、請求項48又は52に記載の方法。
【請求項64】
抗新型コロナウイルス感染症、又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防/治療、の補助方法であって、
これを必要とする対象に、リゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせを有効量で含む食品を投与することを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項65】
前記対象は新型コロナウイルス核酸検査により陽性である、ことを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記新型コロナウイルス感染症は呼吸器系の新型コロナウイルス感染症及び/又は消化器系の新型コロナウイルス感染症である、ことを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状は、気道抵抗増加、呼気量低下、肺炎又は急性呼吸促拍症候群、腸管バリア機能不全、消化機能障害、発熱又はサイトカインストーム症候群から選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状はCOVID-19新型コロナウイルスによる肺炎である、ことを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記食品は健康食品又は特別医療目的用食品である、ことを特徴とする請求項64又は68に記載の方法。
【請求項70】
前記組み合わせにはグリチルリチン酸又はその塩がさらに含まれる、請求項64又は68に記載の方法。
【請求項71】
前記組み合わせ中のリゾチームとグリチルリチン酸又はその塩とは、それぞれ異なる食品に存在するか、又は同一食品に存在する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記組み合わせには、リゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記食品の投与方式は経口、経鼻摂食、注射又は吸入である、請求項64又は68に記載の方法。
【請求項74】
前記食品の放出形態は通常放出、持続放出、徐放又は制御放出である、請求項64又は68に記載の方法。
【請求項75】
前記リゾチームの1日量は0.5g~20gである、請求項64又は68に記載の方法。
【請求項76】
前記食品の服用回数は、非睡眠時に、1時間~24時間毎に1回、好ましくは1時間毎、2時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎又は24時間毎に1回服用する、請求項64又は68に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に関し、具体的には、抗新型コロナウイルス感染症及び新型コロナウイルスに関連する疾患若しくは症状を予防又は治療する医薬品、食品、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関は2020年3月に、新型コロナウイルス感染症による肺炎のエピデミックはすでに世界的な大流行となっており、現在も世界の公衆健康分野における大きな負担と脅威であると発表した。現在に至るまで、世界中の感染者数はターニングポイントに到達しておらず、一部の地域では、さまざまな対策でエピデミックの拡大を食い止めることに成功した後、2回目、3回目のエピデミックのアウトブレイクが起きるなど、世界では新型コロナウイルスのエピデミックの拡大が続いている。世界保健機関のデータによると、現在、世界の累積確診患者は5100万人を超え、127万人以上が死亡している。
【0003】
新型コロナウイルスはコロナウイルス科に属する新種のウイルスであり、SARSウイルスと一定の類似性があるが、特にウイルス遺伝子配列、無症状キャリア、臨床症状、組織病理学などの面で明らかな違いも存在する。病理学的観察により、新型コロナウイルスによる肺炎の患者では、肺繊維化程度はSARS非典型性肺炎より低いが、肺増殖や閉塞の状況はSARS非典型性肺炎より深刻である。
【0004】
SARSウイルスと比べ、新型コロナウイルスは感染率が高く、潜伏期間が長く、隠蔽性が高く、連続間隔が短く、ウイルスのデトックス時間が長い。新型コロナウイルスはそのスパイクタンパク質(Sタンパク質)を介してヒトアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)と結合し、ウイルスの宿主細胞への侵入を媒介する。新型コロナウイルスはACE2との結合親和性が高く、SARSウイルスの10~20倍である。新型コロナウイルスの死亡率はSARSウイルスより低いが、エピデミックの規模が大きいから、新型コロナウイルスによる肺炎に起因する世界中の死亡症例は2003年のSARSエピデミックによる死亡症例を4桁上回っている。新型コロナウイルスによる肺炎のエピデミックの複雑さに鑑み、世界経済が回復するには5年以上かかる可能性があると考えられ、さらには新型コロナウイルスが人間と長期的に共存する可能性があるという考えもある。
【0005】
新型コロナウイルスによる肺炎は発熱と呼吸器症状を主な表現とするが、新型コロナウイルスの研究が進むにつれ、肺が新型コロナウイルスの標的器官であるほか、新型コロナウイルスが人体の免疫系、泌尿器系、心血管系、消化系、さらには神経系を攻撃していることが分かった。例えば、症例をレビューした研究では、12~61%の患者に消化器系の症状がみられた。新型コロナウイルスによる肺炎患者の一部では症状は呼吸器系や発熱ではなく消化器系で始まり、さらに10%の患者は疾患のコースにわたって消化器系の症状しか現れず、一部の子ども、新生児の症状は主に嘔吐や下痢などがみられる。
【0006】
現在、インターフェロン、オセルタミビル、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、リバビリン、レムデシビル、クロロキン、アービドールなどの抗ウイルス薬が緊急承認又は推奨されているが、しかし、既存の医薬品の多くは異なる程度の副作用が存在し、特に無症状感染者や軽症患者に対して、その臨床収益リスク比は非常に低い。そのほか、患者の新型コロナウイルス核酸検査により陰性化した後に再び陽性化するケースがしばしば発生しており、一部の患者の呼吸器サンプルのウイルス核酸検査により陰性化した後にも、比較的長い時間内に糞便サンプルは依然として陽性であることも報告されており、現在の抗ウイルス薬は新型コロナウイルスの消化器感染をうまく制御できないことを示している。新型コロナウイルスの持続感染は患者の回復を阻害する重要な要素であり、無症状感染者や新型コロナウイルスによる肺炎回復期にある臨床症状が比較的軽い患者にとって、もしウイルスが終始陰性化できなければ、持続的な集中隔離と医学観察が必要であり、正常な仕事と生活に深刻な影響を与える。感染者の体内の残留ウイルスを迅速に除去することは、新型コロナウイルス核酸検査の陰性化を実現するカギとなる。
【0007】
生体に対して基本的に無害であり、新型コロナウイルスの複製と伝播を阻害し、体内のウイルス除去効率を高め、新型コロナウイルス感染症の症状を緩和する医薬品を提供することができれば、間違いなく巨大な社会的利益がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的の1つは、医薬品又は食品の製造におけるリゾチームの使用を提供することである。この目的を達成させるために、本発明で使用される技術的解決手段は以下のとおりである。
【0009】
抗新型コロナウイルス感染症の医薬品の製造におけるリゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせの使用である。
【0010】
抗新型コロナウイルス感染症を補助する食品の製造におけるリゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせの使用である。
【0011】
新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療する医薬品の製造におけるリゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせの使用である。
【0012】
新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防又は治療を補助する食品の製造におけるリゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせの使用である。
【0013】
いくつかの例では、前記新型コロナウイルス感染症は、呼吸器系、消化器系、泌尿器系、生殖器系、心血管系のうちの1つ又は複数の系の新型コロナウイルス感染症を含む。例えば肺、上気道、下気道、胃、腸、肝臓、腎臓、精巣、胎盤、心臓などの組織又は器官である。好ましくは呼吸器系及び/又は消化器系の新型コロナウイルス感染症、例えば肺感染及び/又は腸感染である。
【0014】
いくつかの例では、前記新型コロナウイルス感染症とは、新型コロナウイルス核酸検査により陽性であることを指す。
【0015】
いくつかの例では、前記新型コロナウイルス核酸検査は臨床サンプルに基づいて行われてもよく、前記臨床サンプルは気道サンプル及び/又は消化管サンプルを含む。いくつかの例では、前記気道サンプルは上気道サンプル又は下気道サンプルであってもよい。いくつかの例では、前記上気道サンプルは中咽頭スワブ、鼻咽頭スワブなどであってもよく、いくつかの例では、前記下気道サンプルは気道吸引物、気管支洗浄液、肺胞洗浄液、喀痰などであってもよい。いくつかの例では、前記消化管サンプルは食道、胃、小腸(例えば十二指腸、回腸)、大腸(例えば結腸、直腸)、肛門管又は便を採取したものであってもよく、具体的には、例えば肛門スワブ、直腸スワブなどであってもよい。いくつかの例では、消化管サンプルだけは新型コロナウイルス核酸検査により陽性であり、別の例では、消化管サンプル及び気道サンプルの両方は新型コロナウイルス核酸検査により陽性である。
【0016】
いくつかの例では、前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状とは、新型コロナウイルス感染症に加えて臨床疾患や臨床症状が現れることを指す。いくつかの例では、これらの臨床疾患又は臨床症状は新型コロナウイルス感染症によるものである。
【0017】
いくつかの例では、前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状は、免疫系の疾患若しくは症状、呼吸器系の疾患若しくは症状、消化器系の疾患若しくは症状、泌尿器系の疾患若しくは症状、生殖器系の疾患若しくは症状、心血管系の疾患若しくは症状、神経系の疾患若しくは症状から選ばれる1種又は複数種である。いくつかの例では、前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状は、1種以上の疾患若しくは症状、例えば呼吸器系の疾患若しくは症状及び消化器系の疾患若しくは症状を含む。
【0018】
いくつかの例では、前記免疫系の疾患若しくは症状は発熱又はサイトカインストーム症候群から選ばれる。
【0019】
いくつかの例では、前記消化器系の疾患若しくは症状は腸管バリア機能不全又は消化機能障害から選ばれる。いくつかの例では、前記消化器系の疾患若しくは症状は下痢、悪心、嘔吐、食欲不振、腹痛、消化管出血、便秘及び鼓腸のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0020】
いくつかの例では、前記呼吸器系の疾患若しくは症状は気道抵抗増加、呼気量低下、肺炎又は急性呼吸促拍症候群から選ばれる。
【0021】
いくつかの例では、前記呼吸器系の疾患若しくは症状はCOVID-19新型コロナウイルスによる肺炎であり、前記COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎とは、臨床診断によりCOVID-19新型コロナウイルスによる肺炎に罹患していると確診したことを意味する。
【0022】
いくつかの例では、前記リゾチームを含む組み合わせには、グリチルリチン酸又はその塩がさらに含有される。例えばグリチルリチン酸モノアンモニウム及び/又はグリチルリチン酸二カリウムである。
【0023】
いくつかの例では、前記組み合わせには、リゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1である。いくつかの好ましい態様では、両方は顕著な相乗作用を果たす。
【0024】
本発明で提供されるリゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせは、新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分と併合するか、又は復方製剤に製造されてもよく、これらの成分は抗新型コロナウイルス感染症の潜在力を有する活性成分であってもよいし、前記疾患若しくは症状を特異的に治療できる活性成分であってもよい。
【0025】
いくつかの例では、前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分は、COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分を含んでもよいし、消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分を含んでもよい。
【0026】
いくつかの例では、前記COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分は、インターフェロン、オセルタミビル又はその塩、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、リバビリン、レムデシビル、クロロキン又はその塩、ヒドロキシクロロキン又はその塩、アービドール又はその塩、インターロイキン阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤、糖質コルチコイド、プロテアーゼ阻害剤、腸内細菌叢調整剤から選ばれる1種又は複数種であってもよい。いくつかの例では、前記プロテアーゼ阻害剤は、ウリナスタチン、シベレスタット、ナファモスタット又はトラネキサム酸から選ばれてもよい。いくつかの例では、前記インターロイキン阻害剤はトシリズマブから選ばれてもよい。いくつかの例では、前記腫瘍壊死因子阻害剤はアダリムマブ、インフリキシマブ又はエタネルセプトから選ばれてもよい。いくつかの例では、前記ヤヌスキナーゼ阻害剤は、トファシチニブ又はバリシチニブから選ばれてもよい。いくつかの例では、前記腸内細菌叢調整剤はプレバイオティクス又はプロバイオティクスから選ばれてもよい。
【0027】
いくつかの例では、前記消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分は、腸内細菌叢調整剤、胃腸粘膜保護剤、制吐薬、止瀉薬、胃腸運動薬、鎮痙薬、消化性潰瘍治療薬、及び消化補助薬から選ばれる1種又は複数種である。
【0028】
いくつかの例では、前記組み合わせにおいて、リゾチームと、グリチルリチン酸又はその塩、COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎を予防又は治療し得る他の成分及び消化器系の疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分のうちの少なくとも1種とは、さまざまな方式で組み合わせられてもよい。いくつかの実施例では、リゾチームとグリチルリチン酸又は他の成分とは、それぞれ異なる薬剤に存在することによって組み合わせられてもよく(例えば組み合わせ包装、薬剤併用)、いくつかの別の例では、リゾチームとグリチルリチン酸又は他の成分とは、同一薬剤に存在することによって組み合わせられてもよい(例えば復方製剤)。
【0029】
いくつかの例では、前記医薬品の剤形は経口剤形、注射剤形、吸入剤形、経腸投与剤形である。
【0030】
いくつかの例では、前記医薬品の放出形態は通常放出、持続放出、徐放又は制御放出である。
【0031】
いくつかの例では、前記医薬品には、薬学的に許容される補助材料がさらに含まれる。
【0032】
いくつかの例では、前記食品は健康食品又は特別医療目的用食品である。
【0033】
いくつかの例では、前記食品には、食品上許容される添加剤がさらに含まれる。いくつかの例では、前記添加剤は、防腐剤、着色剤、調味剤、香料、保存剤、酸化防止剤、乳化剤、増粘剤、炭水化物、脂肪、ビタミン、アミノ酸、微量元素、タンパク質などであってもよい。
【0034】
いくつかの例では、前記組み合わせにおいて、リゾチームとグリチルリチン酸又はその塩とは、さまざまな方式によって組み合わせられてもよい。それぞれ独立して異なる食品に存在する方式、例えば組み合わせ包装、併用などの方式によって組み合わせられてもよいし、同一食品に存在する方式、例えば配合食品の方式などによって組み合わせられてもよい。
【0035】
本発明の別の目的は、新型コロナウイルス感染症に関連する医薬品又は食品を提供することであり、この目的を達成させるために、本発明で使用される技術的解決手段は以下のとおりである。
【0036】
リゾチームを含有し、抗新型コロナウイルス感染症に用いられる、又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防/治療する、医薬品である。
【0037】
リゾチームを含有し、抗新型コロナウイルス感染症を補助する、又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防又は治療を補助する、食品である。
【0038】
いくつかの例では、前記新型コロナウイルス感染症は、本発明の目的の1つである「医薬品又は食品の製造におけるリゾチームの使用」部分に記載のとおりである。
【0039】
いくつかの例では、前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状は、本発明の目的の1つである「医薬品又は食品の製造におけるリゾチームの使用」部分に記載のとおりである。
【0040】
いくつかの例では、前記医薬品又は前記食品にはグリチルリチン酸又はその塩がさらに含有される。例えばグリチルリチン酸モノアンモニウム及び/又はグリチルリチン酸二カリウムである。
【0041】
いくつかの例では、前記医薬品又は前記食品中、リゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1であってもよい。いくつかの好ましい態様では、両方は顕著な相乗作用を果たす。
【0042】
いくつかの例では、前記医薬品には、新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分がさらに含まれてもよい。具体的な成分は、本発明の目的の1つである「医薬品又は食品の製造におけるリゾチームの使用」部分に記載のとおりである。
【0043】
いくつかの例では、前記医薬品中のリゾチームとグリチルリチン酸又はその塩や他の成分とは、又は、前記食品中のリゾチームとグリチルリチン酸又はその塩とは、いずれも、さまざまな方式によって組み合わせられてもよく、具体的な組み合わせ方式は、本発明の目的の1つである「医薬品又は食品の製造におけるリゾチームの使用」部分に記載のとおりである。
【0044】
いくつかの例では、前記医薬品の製剤形態は薬用に適しているさまざまな剤形、例えば経口剤形、注射剤形、吸入剤形、経腸投与剤形などであってもよい。
【0045】
いくつかの例では、前記医薬品は、さまざまな放出形態の製剤、例えば通常放出製剤、持続放出製剤、徐放製剤又は制御放出製剤などとしてもよい。
【0046】
いくつかの例では、前記医薬品は腸溶性製剤であり、該製剤は活性成分を主に腸で放出させ得る。腸溶性製剤は、物理的な形態によっては、例えば腸溶性錠剤、腸溶性カプセル、腸溶性顆粒、腸溶性ペレットなどに分けられ、活性成分を放出させる具体的な部位によっては、例えば十二指腸腸溶性製剤、空腸腸溶性製剤、回腸腸溶性製剤、盲腸腸溶性製剤、結腸腸溶性製剤又は直腸腸溶性製剤に分けられる。
【0047】
いくつかの例では、前記医薬品には、薬学的に許容される補助材料がさらに含有されてもよい。
【0048】
いくつかの例では、前記食品は健康食品又は特別医療目的用食品である。
【0049】
いくつかの例では、前記食品には、食品上許容される添加剤が含有される。いくつかの例では、前記添加剤は、防腐剤、着色剤、調味剤、香料、保存剤、酸化防止剤、乳化剤、増粘剤、炭水化物、脂肪、ビタミン、アミノ酸、微量元素、タンパク質などであってもよい。
【0050】
本発明のさらに別の目的は、抗新型コロナウイルス感染症の方法、抗新型コロナウイルスの補助方法、新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防又は治療方法、新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防又は治療の補助方法を含む、方法を提供することである。
【0051】
前記目的を達成させるために、本発明で使用される技術的解決手段は以下のとおりである。
【0052】
これを必要とする対象に、リゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせを有効量で含む医薬品を投与することを含む、抗新型コロナウイルス感染症又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防/治療方法である。
【0053】
これを必要とする対象に、リゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせを有効量で含む食品を投与することを含む、抗新型コロナウイルス感染症又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防/治療の補助方法である。
【0054】
いくつかの例では、前記新型コロナウイルス感染症は、本発明の目的の1つである「医薬品又は食品の製造におけるリゾチームの使用」部分に記載のとおりである。
【0055】
いくつかの例では、前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状は、本発明の目的の1つである「医薬品又は食品の製造におけるリゾチームの使用」部分に記載のとおりである。
【0056】
いくつかの例では、前記医薬品又は食品にはグリチルリチン酸又はその塩がさらに含有される。例えばグリチルリチン酸モノアンモニウム及び/又はグリチルリチン酸二カリウムである。
【0057】
いくつかの例では、前記医薬品又は食品中、リゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1である。いくつかの好ましい態様では、両方は顕著な相乗作用を果たす。
【0058】
いくつかの例では、前記医薬品には、新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分がさらに含まれてもよい。具体的な成分は、本発明の目的の1つである「医薬品又は食品の製造におけるリゾチームの使用」部分に記載のとおりである。
【0059】
いくつかの実施例では、前記対象は新型コロナウイルス核酸検査により陽性であるか、又は臨床診断によりCOVID-19新型コロナウイルスによる肺炎に罹患していると確診される。
【0060】
いくつかの例では、前記医薬品又は食品中のリゾチームとグリチルリチン酸又はその塩や他の成分とは、又は、前記食品中のリゾチームとグリチルリチン酸又はその塩とは、いずれも、さまざまな方式によって組み合わせられてもく、具体的な組み合わせ方式は、本発明の目的の1つである「医薬品又は食品の製造におけるリゾチームの使用」部分に記載のとおりである。
【0061】
いくつかの例では、前記医薬品の投与方式は、さまざまな方式、例えば経口、注射、吸入、経腸投与などであってもよい。
【0062】
いくつかの例では、前記医薬品は、さまざまな放出形態の製剤、例えば通常放出製剤、持続放出製剤、徐放製剤又は制御放出製剤などとしてもよい。
【0063】
いくつかの例では、前記医薬品は腸溶性製剤であり、該製剤は活性成分を主に腸で放出させ得る。腸溶性製剤は、物理的な形態によっては、例えば腸溶性錠剤、腸溶性カプセル、腸溶性顆粒、腸溶性ペレットなどに分けられ、活性成分を放出させる具体的な部位によっては、例えば十二指腸腸溶性製剤、空腸腸溶性製剤、回腸腸溶性製剤、盲腸腸溶性製剤、結腸腸溶性製剤又は直腸腸溶性製剤に分けられる。
【0064】
いくつかの例では、前記医薬品には、薬学的に許容される補助材料がさらに含有されてもよい。
【0065】
いくつかの例では、前記食品は健康食品又は特別医療目的用食品である。
【0066】
いくつかの例では、前記食品は、さまざまな方式、例えば経口投与、経鼻摂食投与、注射投与、吸入投与などで投与されてもよい。
【0067】
いくつかの例では、前記食品には、食品上許容される添加剤が含有される。いくつかの例では、前記添加剤は、防腐剤、着色剤、調味剤、香料、保存剤、酸化防止剤、乳化剤、増粘剤、炭水化物、脂肪、ビタミン、アミノ酸、微量元素、タンパク質などであってもよい。
【0068】
いくつかの例では、前記リゾチームの1日量は0.5g~20gであってもよい。
【0069】
いくつかの例では、前記医薬品の服用回数は、非睡眠時に、1~24時間毎に1回、例えば1時間毎、2時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎、24時間毎に1回服用してもよい。
【発明の効果】
【0070】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
1.本発明のリゾチーム又はその組み合わせは、新型コロナウイルスによる細胞損傷を効果的に阻害し、新型コロナウイルスによる炎症反応を阻害し、新型コロナウイルスの体内での除去を促進し、デトックス時間を短縮し、体内の新型コロナウイルス核酸検査による陰性化速度(消化管サンプルを含む)を速め、新型コロナウイルス伝播のリスクを効果的に予防、低減し、新型コロナウイルス感染率と新型コロナウイルスによる肺炎重症率を低下させる。
2.本発明のリゾチーム又はその組み合わせは、新型コロナウイルス感染症患者の肺病変による気道閉塞及び呼気量低下を改善し、新型コロナウイルスによる肺炎患者の高ウイルス量、呼吸窮迫などに対して優れた治療効果を有する。
3.研究によると、消化器系の症状が現れた新型コロナウイルス感染症患者は重症に進行しやすいか、疾患の経過が延びやすいことがわかった。本発明のリゾチーム又はその組み合わせは、患者の消化器症状を緩和し、腸管バリア機能を改善し、患者の消化管サンプルの新型コロナウイルス核酸検査の陰性化を促進し、患者の疾患のコースを短縮し、消化器系の新型コロナウイルス感染症に対して優れた治療効果を示し、消化器系の症状が現れた患者の重症化率を低減する。
4.本発明のリゾチーム又はその組み合わせは、安全性が高く、新型コロナウイルスの潜伏期にウイルスの攻撃及び損傷から細胞及び生体を保護し、体内での新型コロナウイルスの複製を阻害し、新型コロナウイルス感染率を低下させる予防薬又は予防補助食品として有用である。症状が典型的ではない新型コロナウイルスによる肺炎患者(特に、比較的潜行性の新型コロナウイルス消化器感染症の患者など、確診されていない患者)が速やかに治療を受けられ、無症状感染者のウイルス伝播のリスクを下げることに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、具体的な実施形態を用いて本発明を詳細に説明する。なお、発明を実施するための形態の部分の内容は、限定的なものではなく、説明的なものであり、すなわち、本発明の内容を限定するものではない。
【0072】
定義:
「リゾチーム」:lysozyme。本発明のリゾチームは、動物、植物、微生物由来のリゾチームであってもよいし、天然のリゾチームの組換え体であってもよい。例えば、卵清リゾチーム、ヒトリゾチーム、組換えヒトリゾチーム、ファージリゾチームなどであってもよい。本発明のリゾチームは、塩酸塩、塩化物、硫酸塩やアミノ酸塩などの薬用塩を含む。リゾチームはフレミング氏によって最初に発見された、生体内に広く存在する内因性酵素である。リゾチームは世界的に食用や薬用として承認されている。米国では安全に使用できる物質として認められている。WHO、欧州の多くの国、日本や中国は食品添加物としての使用を認めている。中国、日本、シンガポールなどの国では薬用が承認されている。現在、リゾチームはヘルペスウイルスに対して比較的に強い抗ウイルス能力を有することが知られている。
【0073】
「新型コロナウイルス」、すなわち2019の新型コロナウイルスは、2019年に発見されたウイルスであり、コロナウイルス科の中の新しいウイルスであり、2020年2月にWHOはこのウイルスをCOVID-19と命名した。本発明におけるCOVID-19は2019新型コロナウイルスを指す。
【0074】
「COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎」とは、新型コロナウイルス感染症による肺炎のことである。国家衛生健康委員会が発表した「新型コロナウイルスによる肺炎診療案」には、COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎の病理的特徴、臨床所見、診断基準について詳細に説明されている。COVID-19新型コロナウイルスによる肺炎の多くの特徴は、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、非典型性肺炎と明らかに異なる。
【0075】
腸溶性製剤:腸溶性製剤とは、胃の中では医薬品を放出しない又はほとんど放出しないが、腸の中に入り、腸の一部の部位で大部分又は全部の医薬品を放出することができる製剤である。人体の腸には小腸と大腸があり、小腸は十二指腸、空腸、回腸に分けられ、大腸は盲腸、結腸、直腸に分けられる。消化管の異なる部位は異なるpH値を有し、例えば、胃では約1~3、小腸では約4~7、大腸では約7~8である。製剤補助材料としてpH依存性分解材料を使用することにより、小腸腸溶性製剤や大腸腸溶性製剤など、消化管の特定部位に医薬品を指向的に放出する製剤を製造することができる。具体的には、十二指腸腸溶性製剤、空腸腸溶性製剤、回腸腸溶性製剤、盲腸腸溶性製剤、結腸腸溶性製剤又は直腸腸溶性製剤などを含んでもよい。
【0076】
以下では、実施例を使用して本発明をさらに説明するが、本発明の態様及び効果を限定するものではない。
【0077】
実施例1:新型コロナウイルスによる肺炎患者及び高感染リスク集団におけるリゾチームの使用
中国の新型コロナウイルスによる肺炎のエピデミックの期間中、わが社は湖北省に2回寄贈し、合わせて200万元以上の薬剤を寄贈し、その中にはリゾチームトローチ剤、リゾチーム腸溶性錠剤などの抗菌薬が含まれている。これらの薬剤は新型コロナウイルスのエピデミックとの闘いで積極的な役割を果たした。その後、複数の患者が当社のリゾチーム製品を自発的に服用した。
新型コロナウイルスによる肺炎の確診患者9名は前記リゾチームトローチ剤及び/又はリゾチーム腸溶性錠剤を服用し、服用量の範囲は1日に0.5g~2gであり、ほぼ毎日服用し、その結果、1名のみが重症に進行し、残りの8名はすべて軽症で、その後全快した。計算した結果、重症化率は11.1%であった。
エピデミックの期間中に、リスクの高い地域に居住したり、出張していたり3名は、毎日1g~1.5gのリゾチームトローチ剤及び/又はリゾチーム腸溶性錠剤を服用し、業務再開期間中に核酸検査を行ったところ、新型コロナウイルス感染症は認められず、感染率は0%であった。
『新型コロナウイルスによる肺炎の疫学特徴分析』の報道によると、新型コロナウイルスによる肺炎患者のうち重症・重篤患者の割合は18.5%に達し、重症・重篤に進行した後の死亡率はさらに50%に近づくことがある。比較の結果、リゾチーム製剤を服用することで重症率が大幅に低下し、さらに死亡率が低下し、新型コロナウイルスエピデミックの予防・治療に非常に積極的な効果があることが分かった。また、リゾチーム製剤は新型コロナウイルスの感染リスクが高い集団に対しては予防感染の役割も果たしている。これはエピデミックの拡大や再発を阻害する上で重要な価値がある。
【0078】
実施例2:リゾチームを用いた抗新型コロナウイルスの生体外試験
アフリカングリーンモンキー腎臓細胞を用いてリゾチームによる抗COVID-19新型コロナウイルス効果を検討した。
医薬品:リゾチーム、グリチルリチン酸モノアンモニウム。
細胞:アフリカングリーンモンキー腎臓細胞(Vero E6細胞)。
ウイルス:COVID-19、広州税関技術センターにより保存、使用力価100TCID50
培養:無菌96ウェル培養板に対して、ウェルごとに濃度2×10cells/mLのVero E6細胞を100μL加えて、37℃で24時間培養した。ウェル別に、1群に3ウェルで、培養板を空白対照群、ウイルス対照群、リゾチーム低用量群、リゾチーム中用量群、リゾチーム高用量群、グリチルリチン酸モノアンモニウム低用量群、グリチルリチン酸モノアンモニウム高用量群に分けた。空白対照群以外、群ごとに100TCID50ウイルス液100μL/ウェルを加えて、37℃で5%COインキュベータに2時間吸着させた後、培養板内の細胞培養液を捨てた。
薬剤添加:所定の用量で医薬品溶液を以下の各群のウェルに添加した。リゾチーム低用量群(500μg/mL)、リゾチーム中用量群(1000μg/mL)、リゾチーム高用量群(2000μg/mL)、グリチルリチン酸モノアンモニウム低用量群(1000μg/mL)、グリチルリチン酸モノアンモニウム高用量群(2000μg/mL)。1ウェルあたり100μLとした。次に37℃で4日間インキュベーションした。
細胞病変の観察:インキュベーションが完了した後、光学顕微鏡下で細胞病変(CPE)を観察した。細胞に見られた病変の程度は以下の6級の基準に従って記録した。「-」:病変なし。「±」:細胞病変は10%未満である。「+」:細胞病変は約25%である。「++」:細胞病変は約50%である。「+++」:約75%の細胞に病変が見られる。「++++」:病変は75%以上である。CCK8キッド及びマイクロプレートリーダを用いて各ウェルについてOD値を測定し、各群の医薬品のウイルスによる細胞病変への阻害率を算出した。阻害率=(As-Av)/(Ac-Av)、ここで、Asは各医薬品群のOD値であり、Avはウイルス対照群のOD値であり、Acは空白対照群のOD値である。阻害率が高いほど、効果が優れることを示す。
結果:試験の主な結果は表1に示される。試験の結果、リゾチームは新型コロナウイルスに起因する細胞病変を顕著に阻害できることが明らかになる。グリチルリチン酸塩の新型コロナウイルスへの阻害作用が低い。
【0079】
実施例3:リゾチームを含む組み合わせによる、抗新型コロナウイルス及び新型コロナウイルスにより引き起こされる炎症についての生体外試験
リゾチームを含む組み合わせによる新型コロナウイルスにより引き起こされる細胞病変への阻害作用、及び新型コロナウイルスにより引き起こされる炎症への阻害効果を検討した。
医薬品、細胞、ウイルスなどは全て実施例2と同様である。
培養板の群分け及び薬剤添加量:空白対照群、ウイルス対照群、リゾチーム群(350μg/ml)、リゾチームグリチルリチン酸モノアンモニウムI群(100μg/ml+1μg/ml)、リゾチームグリチルリチン酸モノアンモニウムII群(100μg/ml+5μg/ml)、リゾチームグリチルリチン酸モノアンモニウムIII群(100μg/ml+10μg/ml)、リゾチームグリチルリチン酸モノアンモニウムIV群(100μg/ml+50μg/ml)。
細胞病変を観察する方法は実施例2と同様であり、試験結果は表2に示される。また、病変無し細胞を採取して、RNAを抽出し、定量PCR法によりTNF-α、IL-6などの炎症性因子の相対発現レベルを測定し、試験結果を表3に示す。
表2及び表3から分かるように、リゾチーム及びリゾチームを含む医薬品組み合わせは、新型コロナウイルスに起因する細胞病変に対して優れた阻害作用を有し、しかも、新型コロナウイルスに起因する細胞炎症性因子の上昇を顕著に低下させることができる。リゾチーム単独の場合に比べて、医薬品組み合わせの方は効果が明らかに優れており、阻害率が明らかに向上し、炎症性因子レベルが明らかに低下し、投与量が大幅に減少することが示されている。グリチルリチン酸塩は、リゾチームに対して強い相乗作用があり、特にグリチルリチン酸塩の用量が少ない場合、相乗作用が高まることが示唆された。
【0080】
実施例4:リゾチーム及びその組み合わせ物による、煙を吸入したモルモットの気道抵抗及び肺機能への影響
喫煙モデルは、慢性閉塞性肺疾患の古典的な動物モデリング手法である。動物が煙を長期間吸入すると、粘液分泌が増加し、気道が閉塞し、肺機能が低下したりする。本試験では、このモデリング手法によってリゾチームの気道閉塞への影響を評価した。
1、試験医薬品
リゾチーム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸モノカリウム。
2、動物及び群分け
体重400~500gの雄Hartleyモルモットを、1群に8匹で、空白群、モデル群、リゾチーム経口群(200mg/kg)、リゾチーム吸入群(2mg/kg)、リゾチーム+グリチルリチン酸モノアンモニウム吸入群(2mg/kg+0.1mg/kg)、リゾチーム+グリチルリチン酸モノカリウム経口I群(200mg/kg+20mg/kg)、リゾチーム+グリチルリチン酸モノカリウム経口II群(200mg/kg+40mg/kg)に、ランダムに群分けた。
3、モデリング
口鼻を介してのみ吸入させる煙暴露システムを用いて、空白群以外の各群の動物をタバコの煙に暴露させ、1日に40分間以内でタバコ5本分の煙を動物に吸入させ、1週に5日間暴露させ、12週間持続した。
4、医薬品の調製及び投与
吸入投与用のリゾチーム及びグリチルリチン酸モノアンモニウムは、それぞれ粒度<10μmの粉末に粉砕された。経口投与用のリゾチーム及びグリチルリチン酸モノカリウムは、それぞれ生理食塩水に溶解した。
空白群及びモデル群以外の各群の動物は、モデリングして8週目から、1日に1回、4週間持続して投与した。吸入投与群は、口鼻吸入暴露システムを用いて投与され、経口投与群は胃内投与を用いた。空白群及びモデル群は、毎日生理食塩水を胃内投与した。
5、テスト
投与完了後、気道抵抗及び100ミリ秒の強制呼気量を測定した。
動物をダブルチャンバープレチスモグラフ(double chamber plethysmography)に入れて、動物が静かになってから10分間後、特殊気道抵抗(sRaw:specific airway resistance)を測定した。動物にケタミンを筋内注射して麻酔した後、気管にカテーテルを挿入して、肺機能検出システムを用いて動物の100ミリ秒の強制呼気量(FEV100:force dexpiratory volume in 100ms)を測定した。
6、試験結果及び評価
動物気道抵抗及び100ミリ秒の強制呼気量の測定結果を表4に示す。
本試験では、煙の長期間の吸入により動物の肺気道抵抗を明らかに増加し、肺機能を顕著に低下させた(呼気量を減少させた)。試験結果から明らかなように、各投与群は、程度が異なるが、動物の肺気道抵抗を低下させ、呼気量を増加させた。医薬品組み合わせ群とリゾチーム単独群を比較した結果、グリチルリチン酸系物質はリゾチームの効果を高め、特にグリチルリチン酸系物質の用量が少ない場合、相乗効果が顕著であった。
【0081】
実施例5:リゾチーム及びその組み合わせによる、リポ多糖により誘発されたマウスの腸管バリア機能不全への保護作用
リポ多糖は動物の腸機能障害を引き起こすことができる。本実験では、リゾチーム及びその組み合わせによるリポ多糖により誘発されたマウス腸管バリア機能不全からの保護作用を検討した。
試験医薬品:リゾチーム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム。
試験動物:クリーングレードの雄C57BL/6マウス、体重20~25g。
動物群分け及び投与:動物を、1群に8匹で、空白群、モデル群、リゾチーム群(100mg/kg)、リゾチーム+グリチルリチン酸モノアンモニウムA群(100mg/kg+2mg/kg)、リゾチーム+グリチルリチン酸モノアンモニウムB群(100mg/kg+10mg/kg)、リゾチーム+グリチルリチン酸モノアンモニウムC群(100mg/kg+20mg/kg)、リゾチーム+グリチルリチン酸二カリウム群(100mg/kg+2mg/kg)にランダムに分けた。各医薬品群は、毎日、それぞれ所定の用量で胃内投与し、空白群及びモデル群は生理食塩水を投与した。30日間持続して投与した。
モデリング:投与完了後、空白群以外の各群の動物は、リポ多糖15mg/kgを腹腔内注射し、空白群は生理食塩水を注射した。注射完了後、動物は12時間断食させた。
腸透過性測定:各群の動物に、600mg/kgのFITC-デキストラン(リン酸塩緩衝液に溶解したもの)を胃内投与し、4時間後に眼球から採血し、蛍光分光法(励起波長480nm、発光波長520nm)により血清中のFITC-デキストランの含有量を測定し、結果を表5に示す。
腸組織密着タンパク質の発現の測定:動物を殺した後、空腸組織検体を取り、RNAを抽出し、定量PCR法によって組織中のOccludinタンパク質、Claudin-1タンパク質の相対発現レベルを検出し、結果を表6に示す。
本実験では、リゾチーム及びその組み合わせ物によるリポ多糖により誘発されたマウス腸管バリア機能不全からの保護作用を検討した。モデル群は、リポ多糖を注射したところ、空白群に比べて、血清のデキストラン含有量が明らかに上昇し、このことから、大量のデキストランが腸を通じて血に入り、即ち腸透過性が向上することが示唆され、モデル群では、腸中の2種類の密着タンパク質の発現が低下し、このことから、腸管バリア機能が損なわれることが示された。本実験では、リゾチーム及びその組み合わせ物はリポ多糖により誘発された腸透過性の上昇を明らかに低下させ、腸組織密着タンパク質の発現を明らかに向上させ、腸管バリア機能不全に対して、明らかな保護作用があり、また、医薬品組み合わせ群の効果はリゾチーム単独の場合よりも明らかに優れたことを見出した。
【0082】
実施例6:新型コロナウイルス腸感染集団へのリゾチームの使用
回復期にある10例の新型コロナウイルスによる肺炎患者では、呼吸器サンプルは新型コロナウイルス核酸検査により陰性であり、呼吸器の臨床症状はなかったが、糞便サンプルは新型コロナウイルス核酸検査で陽性であり、腸管感染者であり、医学的隔離を受けた。その中の7例は下痢、腹痛、膨満感などの消化管症状を伴い、3例は明らかな消化管症状を認めなかった。実施例1のリゾチーム腸溶性錠剤4~6gを毎日服用し、隔離が行われた他の呼吸器サンプルについての新型コロナウイルス核酸検査により陰性であったが、糞便サンプルについての新型コロナウイルス核酸検査により陽性でった同一バッチの患者(消化器症状を示した患者を含む)と比較して、リゾチームを服用した患者では、消化管症状はより早く消失し、3日以上より早く腸管サンプルの新型コロナウイルス核酸検査による陰性化が実現された。
比較研究の結果、リゾチーム製剤は患者の体内での新型コロナウイルスの除去を促進し、ウイルスのデトックス時間を短縮し、新型コロナウイルスの腸内感染による消化管症状を改善し、患者の消化管サンプルのウイルス核酸検査による陰性化速度を速めることが分かった。
以上のように、本発明のリゾチーム及びその組み合わせは、新型コロナウイルスによる細胞損傷を効果的に阻害し、新型コロナウイルスにより誘発された炎症性因子の発現を阻害し、ウイルスの体内での除去を促進し、デトックス時間を短縮し、新型コロナウイルス核酸検査による陰性化速度を速め、消化管の症状を緩和し、腸管バリア機能障害を改善し、肺の気道閉塞を改善し、呼気量を増やすことができ、新型コロナウイルス感染率と新型コロナウイルスによる肺炎重症化率を下げることができる。現在の臨床的知見によると、新型コロナウイルス感染症はさまざまな疾患を引き起こす可能性があり、早期では、患者のウイルス量は非常に多く、呼吸器系では、中後期に呼吸窮迫の症状が顕著であり、免疫系では深刻なサイトカインストーム症候群を引き起こす可能性があり、消化器系では腸管バリア機能障害を引き起こすことがあり、さらに患者の持続的及び二次的感染、回復困難、感染性の増加、重症患者の死亡率の上昇をもたらすことから、本発明のリゾチーム及びその組み合わせは、さまざまな方式で新型コロナウイルス感染症及びそれに関連する疾患若しくは症状を予防及び治療することが期待され、また、その安全性が高いため、用量を増加することができ、新型コロナウイルス感染症に関連する疾患又は症状を予防又は治療する良い選択になることが期待されている。また、研究が進むに伴い、新型コロナウイルスは消化管で活動や生存の時間が長く、臨床症状より早く出現し、消化管サンプルは呼吸器サンプルの核酸検査により陰性化した後でも依然として陽性であることを発見し、症状が典型的でない患者や無症状の感染者が次々と発見されていることは新型コロナウイルスエピデミックの複雑さをさらに反映しており、予防・制御は相変わらず厳しく持続する必要がある。新型コロナウイルスは感染率が高く、潜伏期間が長く、隠蔽性が高く、連続間隔が短く、ウイルスのデトックス時間が長く、本発明のリゾチーム及びその組み合わせは、新型コロナウイルス感染症(消化器感染症を含む)を有するが、臨床症状が典型的でない患者に適時に治療を提供し、消化器症状を有する患者の疾患のコースを短縮し、新型コロナウイルスの伝播を効果的に予防することが期待でき、応用性が期待できる。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗新型コロナウイルス感染症の医薬品、又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防/治療する医薬品の製造における、リゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせの使用。
【請求項2】
前記新型コロナウイルス感染症は呼吸器系、消化器系、泌尿器系、生殖器系及び/又は心血管系の新型コロナウイルス感染症であり、
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状は、免疫系の疾患若しくは症状、呼吸器系の疾患若しくは症状、消化器系の疾患若しくは症状、泌尿器系の疾患若しくは症状、生殖器系の疾患若しくは症状、心血管系の疾患若しくは症状、神経系の疾患若しくは症状のうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組み合わせにはグリチルリチン酸又はその塩がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記組み合わせには、リゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1である、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記組み合わせ中のリゾチームと、グリチルリチン酸又はその塩とは、それぞれ異なる薬剤に存在するか、又は同一薬剤に存在する、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記組み合わせには、新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状を予防又は治療し得る他の成分がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項1、3又は4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬品の剤形は経口剤形、注射剤形、吸入剤形、経腸投与剤形を含み、
前記医薬品の放出形態は通常放出、持続放出、徐放又は制御放出である、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項8】
リゾチームを含有し、
抗新型コロナウイルス感染症用いられる、又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防/治療に用いられる、ことを特徴とする医薬品。
【請求項9】
リゾチームを含有し、
抗新型コロナウイルス感染症を補助する、又は新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状の予防又は治療を補助する、ことを特徴とする食品。
【請求項10】
前記新型コロナウイルス感染症は呼吸器系、消化器系、泌尿器系、生殖器系及び/又は心血管系の新型コロナウイルス感染症であり、
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状は、免疫系の疾患若しくは症状、呼吸器系の疾患若しくは症状、消化器系の疾患若しくは症状、泌尿器系の疾患若しくは症状、生殖器系の疾患若しくは症状、心血管系の疾患若しくは症状、神経系の疾患若しくは症状から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項8に記載の医薬品又は請求項9に記載の食品。
【請求項11】
前記新型コロナウイルス感染症に関連する疾患若しくは症状はCOVID-19新型コロナウイルスによる肺炎である、ことを特徴とする請求項8に記載の医薬品又は請求項9に記載の食品。
【請求項12】
前記医薬品又は前記食品にはグリチルリチン酸又はその塩がさらに含まれる、ことを特徴とする請求項8に記載の医薬品又は請求項9に記載の食品。
【請求項13】
前記医薬品又は前記食品にはリゾチームとグリチルリチン酸又はその塩との重量比が、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1である、ことを特徴とする請求項12に記載の医薬品又は食品。
【請求項14】
前記医薬品又は前記食品中のリゾチームと、グリチルリチン酸又はその塩とは、それぞれ異なる医薬品又は食品に存在するか、又は同一医薬品又は食品に存在する、ことを特徴とする請求項12に記載の医薬品又は食品。
【請求項15】
前記医薬品の剤形は経口剤形、注射剤形、吸入剤形、経腸投与剤形を含み、
前記医薬品の放出形態は通常放出、持続放出、徐放又は制御放出であり、
前記食品の投与方式は経口、経鼻摂食、注射又は吸入であり、
前記食品は健康食品又は特別医療目的用食品である、ことを特徴とする請求項8に記載の医薬品又は請求項9に記載の食品。
【国際調査報告】