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特表2023-517777バイオリアクターにおける治療用細胞のスケーラブルな製造のためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(54)【発明の名称】バイオリアクターにおける治療用細胞のスケーラブルな製造のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/02 20060101AFI20230419BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230419BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230419BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230419BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20230419BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230419BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20230419BHJP
【FI】
C12M3/02
C12M3/00 Z
C12M1/34 A
C12N5/07
C12N5/0735
C12N5/10
C12N5/0775
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572259
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 US2021015256
(87)【国際公開番号】W WO2021154832
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/966,441
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】520052994
【氏名又は名称】ピービーエス バイオテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,チャンヨン・ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ボリス,ブレアナ・シャリン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029CC13
4B029DB01
4B029DB06
4B029DF08
4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC20
4B065BA01
4B065BC09
4B065BC42
4B065CA44
(57)【要約】
バイオリアクターにおける治療用細胞のスケーラブルな製造のためのシステムおよび方法が開示される。実施態様によるスケールに対する流体力学的考慮には、懸濁液ベースのバイオリアクターにおいて、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した治療用細胞を産生する方法であって、ある体積の培養液中に懸濁された細胞を含む懸濁液を、バイオリアクター内に沈積させることと、バイオリアクター内に配置されたミキサーの撹拌速度を設定することと、を含む、方法が含まれる。この方法は、設定された撹拌速度でミキサーを作動させて、バイオリアクター内の懸濁液を混合することを含む。懸濁液は、ミキサーによって生成された複数の乱流渦を含む。乱流渦のうちの少なくとも約60%のエネルギー散逸率(EDR)の大きさは、約0.0015m2/s3未満であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液ベースのバイオリアクターにおいて、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した治療用細胞の産生をスケーリングする方法であって、前記方法が、
小規模バイオリアクター内に配置された細胞を含む懸濁液中の乱流渦の目標平均エネルギー散逸率(EDR)を決定することと、
前記小規模バイオリアクター内で前記目標平均EDRを達成する小規模撹拌速度を決定することと、
大規模バイオリアクター内で前記目標平均EDRを達成する大規模撹拌速度を決定することであって、前記大規模撹拌速度が、前記小規模撹拌速度に直接依存する、決定することと、
ある体積の培養液中に懸濁された複数の細胞を含む懸濁液を、前記大規模バイオリアクター内に沈積させることと、
前記大規模バイオリアクター内に配置されたミキサーの撹拌速度を、前記大規模撹拌速度に設定することと、
前記大規模撹拌速度で前記大規模バイオリアクター内の前記ミキサーを作動させて、前記懸濁液を、前記目標平均EDRとほぼ等しい平均EDRで混合することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記平均EDRが、前記大規模バイオリアクター内の前記懸濁液の前記体積内の複数の実際のEDRデータ点の平均を含み、前記複数の実際のEDRデータ点のうちの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%の大きさが、約0.0015m/s未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小規模および大規模撹拌速度のうちの少なくとも1つが、約0rpm~約120rpmの範囲にある、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記小規模および大規模撹拌速度のうちの少なくとも1つが、約12rpm~約77rpmの範囲にある、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記目標平均EDRが、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記目標平均EDRが、約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記大規模バイオリアクター内の前記ミキサーを作動させることが、水平回転軸を有する垂直ホイールミキサーを作動させることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記大規模バイオリアクター内の前記ミキサーを作動させることが、垂直回転軸を有するミキサーを作動させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
細胞を含む懸濁液を前記大規模バイオリアクター内に沈積させることが、多能性幹細胞(PSC)を前記大規模バイオリアクター内に沈積させることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
マイクロ担体を前記大規模バイオリアクター内に沈積させることをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記大規模バイオリアクターが、前記小規模バイオリアクターの容積よりも大きい容積を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した細胞を産生するための大規模な懸濁液ベースのバイオリアクターを操作する方法であって、前記方法が、
マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した細胞を産生するための大規模バイオリアクターを選択することであって、前記大規模バイオリアクターが、大規模容器内に大規模ミキサーを有する、選択すること、
前記大規模ミキサーについての大規模撹拌速度を決定することであって、前記大規模撹拌速度が、小規模バイオリアクター内の懸濁液中の乱流渦の目標平均エネルギー散逸率(EDR)を達成する、前記小規模バイオリアクターの小規模容器中の小規模ミキサーの小規模撹拌速度に基づいて決定される、決定すること、
ある体積の培養液中に懸濁された細胞を含む懸濁液を、前記大規模バイオリアクター内に沈積させること、
前記大規模ミキサーの前記撹拌速度を、前記大規模撹拌速度に設定すること、
前記大規模ミキサーを、前記大規模撹拌速度で作動させて、前記懸濁液中の前記細胞を、前記目標平均EDRとほぼ等しい平均EDRで混合すること、を含む、方法。
【請求項13】
前記平均EDRが、前記大規模バイオリアクター内の前記懸濁液の前記体積内の複数の実際のEDRデータ点の平均を含み、前記複数の実際のEDRデータ点のうちの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%の大きさが、約0.0015m/s未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記小規模および大規模撹拌速度のうちの少なくとも1つが、約0rpm~約120rpmの範囲にある、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記小規模および大規模撹拌速度のうちの少なくとも1つが、約12rpm~約77rpmの範囲にある、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記目標平均EDRが、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記目標平均EDRが、約0.003m/s~約0.0015m/sの範囲にある、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記大規模ミキサーを作動させることが、水平回転軸を有する垂直ホイールミキサーを含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記大規模ミキサーを作動させることが、垂直回転軸を有するミキサーを作動させることを含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
細胞を含む懸濁液を前記大規模バイオリアクター内に沈積させることが、多能性幹細胞(PSC)を前記大規模バイオリアクター内に沈積させることを含む、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
マイクロ担体を前記大規模バイオリアクター内に沈積させることをさらに含む、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
大規模バイオリアクターを選択することが、前記小規模バイオリアクターの容積よりも大きい容積を有するバイオリアクターを選択することを含む、請求項12~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した細胞を産生するための大規模な懸濁液ベースのシステムであって、前記システムが、
容器と、前記容器内に配置されたミキサーと、を含む、バイオリアクターであって、前記ミキサーが、駆動機構に動作可能に結合され、撹拌速度で動作する、バイオリアクター、
前記容器内に配置され、前記ミキサーによって混合される、ある体積の培養液中に懸濁された細胞を含む懸濁液であって、前記懸濁液が、前記ミキサーによって生成された複数の乱流渦を含み、前記複数の乱流渦が、各々、エネルギー散逸率(EDR)を有し、前記乱流渦のうちの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%の前記EDRの大きさが、約0.0015m/s未満である、懸濁液、を含む、システム。
【請求項24】
前記目標平均EDRが、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記目標平均EDRが、約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある、請求項23または24に記載のシステム。
【請求項26】
前記容器が、約0.1L~約500L、または約0.1L~約2000Lのうちの少なくとも1つの容積を有する、請求項23~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記ミキサーが、水平回転軸を有する垂直ホイールミキサーを含む、請求項23~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記容器が、湾曲した底壁を含む、請求項23~27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記ミキサーが、垂直回転軸を含む、請求項23~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記細胞が、多能性幹細胞(PSC)を含む、請求項23~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記懸濁液中のマイクロ担体をさらに含む、請求項23~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
懸濁液ベースのバイオリアクターにおいてマイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した治療用細胞を産生する方法であって、前記方法が、
ある体積の培養液中に懸濁された細胞を含む懸濁液を、バイオリアクター内に沈積させること、
前記バイオリアクター内に配置されたミキサーの撹拌速度を設定すること、
前記ミキサーを前記設定された撹拌速度で作動させて、前記懸濁液を前記バイオリアクター内で混合することであって、前記懸濁液が、前記ミキサーによって生成された複数の乱流渦を含み、前記乱流渦のうちの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%のエネルギー散逸率(EDR)の大きさが、約0.0015m/s未満である、混合すること、を含む、方法。
【請求項33】
前記目標平均EDRが、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記目標平均EDRが、約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記バイオリアクターを複数の利用可能なバイオリアクターから選択することをさらに含み、各々が、約0.1L~約500L、または約0.1L~約2000Lのうちの少なくとも1つの容積を含む、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ミキサーが、水平回転軸を有する垂直ホイールミキサーを含む、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記容器が、湾曲した底壁を含む、請求項32~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ミキサーが、垂直回転軸を含む、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ある体積の培養液中に懸濁された細胞を含む懸濁液を、前記バイオリアクター内に沈積させることが、多能性幹細胞(PSC)を前記バイオリアクター内に沈積させることを含む、請求項32~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
マイクロ担体を前記バイオリアクター内に沈積させることをさらに含む、請求項32~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
バイオリアクターシステムであって、
第1の作業容積を画定する格納容器と、
前記格納容器の内容物を撹拌するように軸の周りを回転するように構成された前記格納容器内のミキサーと、
プロセッサであって、
第2の作業容積を有する第2のバイオリアクターのミキサーが動作する第1の撹拌速度にアクセスすることであって、前記第2のバイオリアクターの前記ミキサーを、前記第1の撹拌速度で動作させることが、前記第2のバイオリアクター内に配置された細胞を含む懸濁液内の乱流渦の平均エネルギー散逸率(平均EDR)を達成する、アクセスすることと、
前記第1の撹拌速度に基づいて、前記格納容器内の前記ミキサーが、前記格納容器内の細胞を含む懸濁液内の乱流渦の目標平均EDRを実質的に達成するように動作するように構成された第2の撹拌速度を決定することであって、前記目標平均EDRが、前記平均EDRとほぼ等しい、決定することと、
前記格納容器の前記ミキサーを、前記第2の撹拌速度で回転させることと、を行うように適合されたプロセッサと、を含む、バイオリアクターシステム。
【請求項42】
前記第1の撹拌速度に関連付けられた入力を受信するように適合されたユーザインターフェースをさらに含み、前記ユーザインターフェースが、前記プロセッサに動作可能に結合される、請求項41に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項43】
前記第1の作業容積が、前記第2の作業容積よりも大きい、請求項41または42に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項44】
前記格納容器が、約0.1L~約500L、または約0.1L~約2000Lのうちの少なくとも1つの作業容積を有する、請求項41~43のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項45】
前記格納容器が、前記容器の下端に位置する下部の湾曲した壁を含む壁を有する、請求項41~44のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項46】
前記ミキサーが、水平軸の周りを回転するように構成された、請求項41~45のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項47】
前記ミキサーが、垂直軸の周りを回転するように構成された、請求項41~44のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項48】
前記目標平均EDRが、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある、請求項41~47のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項49】
前記目標平均EDRが、約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある、請求項41~48のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項50】
前記目標平均EDRが、前記大規模バイオリアクター内の前記懸濁液の前記体積内の複数の実際のEDRデータ点の平均を含み、前記実際のEDRデータ点のうちの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%の大きさが、約0.0015m/s未満である、請求項41~49のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項51】
前記格納容器内に配置された細胞を含む前記懸濁液をさらに含む、請求項41~50のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項52】
前記細胞が、多能性幹細胞(PSC)を含む、請求項51に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項53】
前記懸濁液中にマイクロ担体をさらに含む、請求項51に記載のバイオリアクターシステム。
【請求項54】
前記目標平均EDRが、前記大規模バイオリアクター内の前記懸濁液の前記体積内の複数の実際のEDRデータ点の平均を含み、前記複数の実際のEDRデータ点のうちの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%の大きさが、約0.002m/s未満、約0.0025m/s未満、または約0.003m/s未満のエネルギー散逸率の値を有する、請求項41~53のいずれか一項に記載のバイオリアクターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
優先権は、2020年1月27日に出願された、米国仮特許出願第62/966,441号に対して主張され、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、バイオリアクターにおける治療用細胞の産生に関し、より具体的には、バイオリアクターにおける治療用細胞のスケーラブルな製造のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多数の種類の重篤な疾患の適応症を治癒する可能性がある細胞療法は、バイオ医薬品業界に革命を起こす態勢にある。現在開発中、または臨床試験の初期段階に入っている、同種異系治療用細胞候補の数が増加している。しかしながら、将来の商業的需要を満たすのに十分なこれらの治療用細胞生成物の大規模な製造は、まだ開発されておらず、実証されていない。
【0004】
治療用細胞の商業的生産のために2D製造プラットフォームを使用することの制限は、バイオ医薬品業界によって十分に認識されている。2D製造のための商品の主なコスト、すなわち高価な設備投資および人件費は、商業的規模では、非常に高額になる。代わりに、3D製造プラットフォームとしての単回使用バイオリアクターは、スケーラブルな治療用細胞製造のために使用される技術であると広く考えられている。
【発明の概要】
【0005】
第1の実施態様によれば、懸濁液ベースのバイオリアクターにおいて、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した治療用細胞の産生をスケーリングする方法は、小規模バイオリアクター内に配置された細胞を含む懸濁液中の乱流渦の目標平均エネルギー散逸率(EDR)を決定することを含む。この方法は、小規模バイオリアクター内で目標平均EDRを達成する小規模撹拌速度を決定することと、大規模バイオリアクター内で目標平均EDRを達成する大規模撹拌速度を決定することと、を含む。大規模撹拌速度は、小規模撹拌速度に直接依存する。この方法は、ある体積の培養液中に懸濁された複数の細胞を含む懸濁液を、大規模バイオリアクター内に沈積させることと、大規模バイオリアクター内に配置されたミキサーの撹拌速度を、大規模撹拌速度に設定することと、を含む。この方法は、大規模撹拌速度で大規模バイオリアクター内のミキサーを作動させて、懸濁液を、目標平均EDRとほぼ等しい平均EDRで混合することを含む。
【0006】
第2の実施態様によれば、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した細胞を産生するための大規模な懸濁液ベースのバイオリアクターを操作する方法は、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した細胞を産生するための大規模バイオリアクターを選択することを含む。大規模バイオリアクターは、大規模容器内に大規模ミキサーを有する。この方法は、大規模ミキサーについての大規模撹拌速度を決定することを含む。大規模撹拌速度は、小規模バイオリアクター内の懸濁液中の乱流渦の目標平均エネルギー散逸率(EDR)を達成する、小規模バイオリアクターの小規模容器中の小規模ミキサーの小規模撹拌速度に基づいて決定される。この方法は、ある体積の培養液中に懸濁された細胞を含む懸濁液を、大規模バイオリアクター内に沈積させることと、大規模ミキサーの撹拌速度を、大規模撹拌速度に設定することと、を含む。この方法は、大規模ミキサーを、大規模撹拌速度で作動させて、懸濁液中の細胞を、目標平均EDRとほぼ等しい平均EDRで混合することを含む。
【0007】
第3の実施態様によれば、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した細胞を産生するための大規模な懸濁液ベースのシステムは、バイオリアクターと、懸濁液と、を含む。バイオリアクターは、容器と、容器内に配置されたミキサーと、を含む。ミキサーは、駆動機構に動作可能に結合され、撹拌速度で動作する。懸濁液は、容器内に配置され、ミキサーによって混合される、ある体積の培養液中に懸濁された細胞を含む。懸濁液は、ミキサーによって生成された複数の乱流渦を含む。複数の乱流渦は、各々、エネルギー散逸率(EDR)を有する。乱流渦のうちの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%のEDRの大きさは、約0.0015m/s未満である。
【0008】
第4の実施態様によれば、懸濁液ベースのバイオリアクターにおいて、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した治療用細胞を産生する方法は、ある体積の培養液中に懸濁された細胞を含む懸濁液を、バイオリアクター内に沈積させることと、バイオリアクター内に配置されたミキサーの撹拌速度を設定することと、を含む。この方法は、ミキサーを設定された撹拌速度で作動させて、懸濁液をバイオリアクター内で混合することを含む。懸濁液は、ミキサーによって生成された複数の乱流渦を含む。乱流渦のうちの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%のエネルギー散逸率(EDR)の大きさは、約0.0015m/s未満である。
【0009】
第5の実施態様によれば、バイオリアクターシステムは、格納容器と、ミキサーと、プロセッサと、を含む。格納容器は、第1の作業容積を画定し、ミキサーは、格納容器内にあり、格納容器の内容物を撹拌するように軸の周りを回転するように構成される。プロセッサは、第2の作業容積を有する第2のバイオリアクターのミキサーが動作する第1の撹拌速度にアクセスするように適合される。第2のバイオリアクターのミキサーを、第1の撹拌速度で動作させることは、第2のバイオリアクター内に配置された細胞を含む懸濁液内の乱流渦の平均エネルギー散逸率(平均EDR)を達成する。第1の撹拌速度に基づいて、プロセッサは、格納容器内のミキサーが、格納容器内の細胞を含む懸濁液内の乱流渦の目標平均EDRを実質的に達成するように動作するように構成された第2の撹拌速度を決定するように適合される。目標平均EDRは、平均EDRとほぼ等しい。プロセッサは、格納容器のミキサーを、第2の撹拌速度で回転させるように適合される。
【0010】
第6の実施態様によれば、ヒトまたは動物に由来する治療用多能性幹細胞を、マイクロ担体上および/または集合体中で増殖させるためのバイオリアクター。マイクロ担体および/または集合体は、3.5cm/sec以下の質量レベル当たりの平均動力入力を使用して培養液中に懸濁される。
【0011】
さらに、前述の第1、第2、第3、第4、第5、および/または第6の実施態様によれば、装置および/または方法は、以下のうちのいずれか1つ以上をさらに包含するか、または含むことができる。
【0012】
一実施態様によれば、平均EDRは、大規模バイオリアクター内の懸濁液の体積内の複数の実際のEDRデータ点の平均を含む。複数の実際のEDRデータ点のうちの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%の大きさは、約0.0015m/s未満である。
【0013】
別の実施態様によれば、小規模および大規模撹拌速度のうちの少なくとも1つは、約0rpm~約120rpmの範囲にある。
【0014】
別の実施態様によれば、小規模および大規模撹拌速度のうちの少なくとも1つは、約12rpm~約77rpmの範囲にある。
【0015】
別の実施態様によれば、目標平均EDRは、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある。
【0016】
別の実施態様によれば、目標平均EDRは、約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある。
【0017】
別の実施態様によれば、大規模バイオリアクター内のミキサーを作動させることは、水平回転軸を有する垂直ホイールミキサーを作動させることを含む。
【0018】
別の実施態様によれば、大規模バイオリアクター内のミキサーを作動させることは、垂直回転軸を有するミキサーを作動させることを含む。
【0019】
別の実施態様によれば、細胞を含む懸濁液を大規模バイオリアクター内に沈積させることは、多能性幹細胞(PSC)を大規模バイオリアクター内に沈積させることを含む。
【0020】
別の実施態様によれば、方法は、マイクロ担体を大規模バイオリアクター内に沈積させることをさらに含む。
【0021】
別の実施態様によれば、大規模バイオリアクターは、小規模バイオリアクターの容積よりも大きい容積を有する。
【0022】
別の実施態様によれば、平均EDRは、大規模バイオリアクター内の懸濁液の体積内の複数の実際のEDRデータ点の平均を含む。複数の実際のEDRデータ点のうちの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約97%の大きさは、約0.0015m/s未満である。
【0023】
別の実施態様によれば、小規模および大規模撹拌速度のうちの少なくとも1つは、約0rpm~約120rpmの範囲にある。
【0024】
別の実施態様によれば、小規模および大規模撹拌速度のうちの少なくとも1つは、約12rpm~約77rpmの範囲にある。
【0025】
別の実施態様によれば、目標平均EDRは、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある。
【0026】
別の実施態様によれば、目標平均EDRは、約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある。
【0027】
別の実施態様によれば、大規模ミキサーを作動させることは、水平回転軸を有する垂直ホイールミキサーを含む。
【0028】
別の実施態様によれば、大規模ミキサーを作動させることは、垂直回転軸を有するミキサーを作動させることを含む。
【0029】
別の実施態様によれば、細胞を含む懸濁液を大規模バイオリアクター内に沈積させることは、多能性幹細胞(PSC)を大規模バイオリアクター内に沈積させることを含む。
【0030】
別の実施態様によれば、この方法は、マイクロ担体を大規模バイオリアクター内に沈積させることをさらに含む。
【0031】
別の実施態様によれば、大規模バイオリアクターを選択することは、小規模バイオリアクターの容積よりも大きい容積を有するバイオリアクターを選択することを含む。
【0032】
別の実施態様によれば、目標平均EDRは、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある。
【0033】
別の実施態様によれば、目標平均EDRは、約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある。
【0034】
別の実施態様によれば、容器は、約0.1L~約500L、または約0.1L~約2000Lのうちの少なくとも1つの容積を有する。
【0035】
別の実施態様によれば、ミキサーは、水平回転軸を有する垂直ホイールミキサーを含む。
【0036】
別の実施態様によれば、容器は、湾曲した底壁を含む。
【0037】
別の実施態様によれば、ミキサーは、垂直回転軸を含む。
【0038】
別の実施態様によれば、細胞は、多能性幹細胞(PSC)を含む。
【0039】
別の実施態様によれば、システムは、懸濁液中にマイクロ担体をさらに含む。
【0040】
別の実施態様によれば、目標平均EDRは、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある。
【0041】
別の実施態様によれば、目標平均EDRは、約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある。
【0042】
別の実施態様によれば、この方法は、バイオリアクターを複数の利用可能なバイオリアクターから選択することをさらに含み、各々は、約0.1L~約500L、または約0.1L~約2000Lのうちの少なくとも1つの容積を含む。
【0043】
別の実施態様によれば、ミキサーは、水平回転軸を有する垂直ホイールミキサーを含む。
【0044】
別の実施態様によれば、容器は、湾曲した底壁を含む。
【0045】
別の実施態様によれば、ミキサーは、垂直回転軸を含む。
【0046】
別の実施態様によれば、ある体積の培養液中に懸濁された細胞を含む懸濁液を、バイオリアクター内に沈積させることは、多能性幹細胞(PSC)をバイオリアクター内に沈積させることを含む。
【0047】
別の実施態様によれば、この方法は、マイクロ担体をバイオリアクターに沈積させることを含む。
【0048】
別の実施態様によれば、バイオリアクターシステムは、第1の撹拌速度と関連付けられた入力を受信するように適合されたユーザインターフェースをさらに含む。ユーザインターフェースは、プロセッサに動作可能に結合されている。
【0049】
別の実施態様によれば、第1の作業容積は、第2の作業容積よりも大きい。
【0050】
別の実施態様によれば、格納容器は、約0.1L~約500L、または約0.1L~約2000Lのうちの少なくとも1つの作業容積を有する。
【0051】
別の実施態様によれば、格納容器は、容器の下端に位置する下部の湾曲した壁を含む壁を有する。
【0052】
別の実施態様によれば、ミキサーは、水平軸の周りを回転するように構成される。
【0053】
別の実施態様によれば、ミキサーは、垂直軸の周りを回転するように構成される。
【0054】
別の実施態様によれば、目標平均EDRは、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある。
【0055】
別の実施態様によれば、目標平均EDRは、約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある。
【0056】
別の実施態様によれば、バイオリアクターシステムは、格納容器に配置された細胞を含む懸濁液をさらに含む。
【0057】
別の実施態様によれば、細胞は、多能性幹細胞(PSC)を含む。
【0058】
別の実施態様によれば、バイオリアクターシステムは、懸濁液中にマイクロ担体をさらに含む。
【0059】
別の実施態様では、マイクロ担体または集合体は、100ミクロン以上の平均直径を有する。
【0060】
別の実施態様では、バイオリアクター容積の90%超は、目標平均エネルギー散逸率(EDR)を下回り、EDRは、流体流を受ける培養液について、典型的には、m/sまたはcm/sの単位で測定または予測される単位質量当たりのエネルギー散逸率である。
【0061】
別の実施態様では、バイオリアクター容積の99%超は、目標平均EDRを下回る。
【0062】
別の実施態様では、バイオリアクター容積の90%超は、1.30E-2m/sの目標平均EDRを下回る。
【0063】
別の実施態様では、バイオリアクター容積の99%超は、1.30E-2m/sの目標平均EDRを下回る。
【0064】
別の実施態様では、この特性は、一連のますます大規模なバイオリアクターにおいてスケールアップして維持される。
【0065】
別の実施態様では、バイオリアクター作業容積のスケールの増加は、100ml~最大3リットル、100ml~最大15リットル、100ml~最大80リットル、100ml~最大500リットル、または最大2000リットルである。
【0066】
別の実施態様では、マイクロ担体または集合体は、100ミクロン以上の平均直径を有する。
【0067】
別の実施態様では、上記および/または下記に開示された実施態様からの特性を有するバイオリアクターは、ともに、同一または同様の直径の均一な球状細胞集合体の形成をもたらす。
【0068】
別の実施態様では、混合機構の撹拌速度を変更することによって、球状細胞集合体直径を正確に制御する方法。
【0069】
別の実施態様では、特性は、上記および/または下記の実施態様に記載されるように、より大きな容積へのスケールアップの間に維持される。
【0070】
別の実施態様では、この方法は、細胞集合体のサイズ/直径の均一性が、細胞集合体の増殖効率を向上させることを含む。
【0071】
別の実施態様では、最適な集合体直径は、細胞型によって変化し得る。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】異なる蛍光染色法を使用して、懸濁マイクロ担体の表面に付着したMSCの画像を例示する。
図2】垂直ホイールバイオリアクターにおける懸濁細胞集合体としてのPSCの増殖を示す。
図3】約0.1リットル(L)のスケールを有する垂直ホイールバイオリアクターにおける、ヒトiPSCの小脳オルガノイドへの分化に向けられた撮像結果を示す。
図4】本開示の教示に従う、システムの実装の概略図を例示する。
図5図4のバイオリアクターとともに使用することができるミキサーの等角図である。
図6図4または本明細書に開示される他の実施態様のうちのいずれかのシステム、第1のバイオリアクター、および/または第2のバイオリアクターを使用して、懸濁液ベースのバイオリアクターにおいて、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した治療用細胞の産生をスケーリングする方法についてのフローチャートを例示する。
図7図4または本明細書に開示される他の実施態様のうちのいずれかのシステム、第1のバイオリアクター、および/または第2のバイオリアクターを使用して、懸濁液ベースのバイオリアクターにおいて、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した治療用細胞の産生をスケーリングする方法についての別のフローチャートを例示する。
図8図4または本明細書に開示される他の実施態様のうちのいずれかのシステム、第1のバイオリアクター、および/または第2のバイオリアクターを使用して、懸濁液ベースのバイオリアクターにおいて、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した治療用細胞の産生をスケーリングする方法についての別のフローチャートを例示する。
図9A】渦流がマイクロ担体よりも大きいときの、渦流および付着した生存細胞を有するマイクロ担体の概略図を例示する。
図9B】付着した生存細胞を有するマイクロ担体のうちの1つおよびマイクロ担体よりも小さい渦流の概略図を示す。
図10図4の第2のバイオリアクター、および第2のバイオリアクターに結合され、インペラ動力入力を測定するように構成されたジグの概略図である。
図11】第2のバイオリアクターのホイールの撹拌を表すX軸と、質量当たりの動力を表すY軸と、を含むグラフである。
図12】レイノルズ数を表すX軸と、インペラ動力を表すY軸と、を含むグラフである。
図13】コルモゴロフ長さスケール(μm)を表すX軸と、相対純増殖率を表すY軸と、を含むグラフである。
図14】x軸が毎分回転数(RPM)を表す、マイクロ担体懸濁試験からの一連の結果を恨むグラフである。
図15】異なるバイオリアクターおよび関連する撹拌速度(rpm)を示すX軸と、種々のバイオリアクターにおけるマイクロ担体懸濁に必要な質量レベル当たりの平均動力を表すY軸と、を含むグラフである
図16】約3Lの容積を有する第1のバイオリアクター上で行われた計算流体力学(CFD)分析の結果を示す。
図17図4の第1のバイオリアクターおよび/または第2のバイオリアクターを使用した計算流体力学(CFD)分析から得られた追加の結果を示す。
図18】細胞集合体のサイズを表すX軸と、細胞集合体の数を表すY軸と、を含むグラフである。
図19】PSC集合体のサイズを表すX軸と、細胞集合体の数を表すY軸と、を含むグラフである。
図20A】第2のバイオリアクターについてのレムニスケート液体流パターンおよび速度ストリームラインについての計算流体力学(CFD)分析結果の上面図を示す。
図20B】第2のバイオリアクターについてのレムニスケート液体流パターンおよび速度ストリームラインについての計算流体力学(CFD)分析結果の側面等角図を示す。
図21A】流れ時間を秒単位で表すX軸と、速度を表すY軸と、を含むグラフである。
図21B】流れ時間を秒単位で表すX軸と、シア応力を表すY軸と、を含むグラフである。
図21C】流れ時間を秒単位で表すX軸と、EDRを表すY軸と、を含むグラフである。
図22A】速度に関連する計算流体力学(CFD)分析結果を示す。
図22B】シア応力に関連する計算流体力学(CFD)分析結果を示す。
図22C】エネルギー散逸に関連する計算流体力学(CFD)分析結果を示す。
図23】垂直ホイールを含むバイオリアクターおよび水平ブレードを含むバイオリアクターにおいて、異なる撹拌速度で細胞を増殖させたときに得られた結果を例示する。
図24】エネルギー散逸率(EDR)を表すX軸と、容積パーセントを表すY軸と、を含むグラフである。
図25A】約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクターを使用したときのスケールアップ傾向線方程式のグラフを示す。
図25B】第2のバイオリアクターを使用して得られた結果に関連付けられた第1のライン、水平ブレードスピナーを有するNDSバイオリアクターを使用して得られた結果に関連付けられた第2のライン、および水平ブレードスピナーを有するDasGip(登録商標)バイオリアクターを使用して得られた結果に関連付けられた第3のラインを含むグラフを示す。
図26A】エネルギー散逸率(EDR)を表すX軸と、容積平均エネルギー散逸率を表すY軸と、を含むグラフである。
図26B】格納容器の容積を表すX軸と、撹拌速度(RPM)を表すY軸と、を含むグラフである。
図26C】撹拌速度を表すX軸と、平均シア応力を表すY軸と、を含むグラフである。
図26D】撹拌速度を表すX軸と、容積平均速度を表すY軸と、含むグラフである。
図26E】撹拌速度を表すX軸と、容積パーセントを表すY軸と、を含むグラフである。
図26F図26Eのグラフの一部分のより詳細な図を示す。
図27】撹拌速度を表すX軸と、容積パーセントを表すY軸と、を含むグラフである。
図28】閾値範囲内の目標容積平均EDRを有すること、ならびに約1.5E-03m/sの上限閾値を下回るEDR値の大部分または少なくとも一部を有することの組み合わせによって得られた生物学的結果を示す。
図29A】時間を日数で表すX軸と、生存細胞をmLで表すY軸と、を含むグラフである。
図29B図29Aと関連して行われた実験からの結果を表すグラフであり、第2のバイオリアクターのホイールが動作した撹拌速度を表すX軸と、平均7日目の集合体直径を表すy軸とを含む。
図29C図29Aおよび29Bに関連して行われた実験からの結果を表す画像結果である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下の文章は、方法、装置および/または製造物品の実装の詳細な説明を開示しているが、財産権の法的範囲は、本特許の最後に記載される特許請求の範囲の文言によって定義されることが理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は、例としてのみ解釈されるべきであり、あらゆる可能な実施態様を説明することは、不可能ではないが、非現実的であろうため、あらゆる可能な実施態様を説明するものではない。現在の技術または本特許の出願日以降に開発された技術のいずれかを使用して、多くの代替の実施態様を実施することができる。このような代替の実施態様は、依然として特許請求の範囲内にあることが想定される。
【0074】
マイクロ担体上で、または集合体として増殖した細胞を含む懸濁細胞培養プロセスを最適化するために、バイオリアクターにおける流体力学的条件を制御するための例示的なシステムおよび方法が開示される。これらの例示的なシステムおよび方法は、小規模なR&D使用のための約0.1Lの作業容積から大規模な臨床または商業的製造のための約500Lの作業容積まで、幅広い範囲のバイオリアクターサイズにわたって適用可能である。しかしながら、任意のサイズのバイオリアクターを、本開示の教示に従って使用することができる。例えば、本開示の教示に従って作製および/または動作する大規模バイオリアクターは、約2000Lの作業容積を有し得る。しかしながら、本開示の教示は、例えば、約200Lの作業容積を有するバイオリアクター、約300Lの作業容積を有するバイオリアクター、約400Lの作業容積を有するバイオリアクター、約600Lの作業容積を有するバイオリアクター、約700Lの作業容積を有するバイオリアクター、約800Lの作業容積を有するバイオリアクター、約900Lの作業容積を有するバイオリアクター、約1000Lの作業容積を有するバイオリアクター、約1100Lの作業容積を有するバイオリアクター、約1200Lの作業容積を有するバイオリアクター、約1300Lの作業容積を有するバイオリアクター、約1400Lの作業容積を有するバイオリアクター、約1500Lの作業容積を有するバイオリアクター、約1600Lの作業容積を有するバイオリアクター、約1700Lの作業容積を有するバイオリアクター、約1800Lの作業容積を有するバイオリアクター、約1900Lの作業容積を有するバイオリアクター、約2100Lの作業容積を有するバイオリアクターなどを含む、任意のサイズのバイオリアクターに関連して使用され得る。
【0075】
バイオリアクターが治療用細胞についての標準的な製造プラットフォームになるために、小規模バイオリアクターにおいて開発された懸濁液ベースの細胞培養プロセスは、本開示の教示に従って、より大規模で反復可能な方法で実証されるべきである。バイオリアクター内部の細胞のための閾値増殖環境の提供は、閾値品質属性を維持しながら細胞収量を増加させ、治療用細胞生成物についての商業的規模の産生の実現可能性を実証するために行われ得る。
【0076】
ほとんどの同種異系治療用細胞は、接着依存性であり、したがって、増殖するために表面に付着する。異なる接着依存性細胞型は、バイオリアクターベースの懸濁培養物内で、それらの要件および挙動において著しく変化する。これらの細胞型のいくつかの例には、典型的には、バイオリアクター内で懸濁されるプラスチックマイクロ担体の表面上で増殖するヒト初代細胞および間葉系幹細胞(MSC)が含まれる(図4)。関連する細胞生成物は、マイクロ担体上のMSCから生成することができるエクソソームなどの細胞外小胞を含む。
【0077】
図1は、異なる蛍光染色法を使用して、懸濁マイクロ担体の表面に付着したMSCの画像を例示する。
【0078】
胚幹細胞(ESC)または人工多能性幹細胞(iPSC)などの種類を包含する多能性幹細胞(PSC)は、細胞増殖および指向性分化プロセスの両方の間に、自然に凝集して球状細胞集合体を形成し、したがって、マイクロ担体を必要としない。
【0079】
図2は、垂直ホイールバイオリアクターにおける懸濁細胞集合体としてのPSCの増殖を示す。
【0080】
PSCの別の特徴は、細胞増殖期の後、細胞集合体が、典型的には、多能性細胞を強制して、小脳細胞などの最終標的治療用細胞型にするために、指向性分化の多段階プロセスを経て、次いで、懸濁液中にオルガノイドを形成することができることである(図3)。
【0081】
図3は、約0.1リットル(L)のスケールを有する垂直ホイールバイオリアクター(図4)における小脳オルガノイドに対するヒトiPSCの分化に向けられた撮像結果を示す。図3は、35日間の生成後、約100マイクロメートル(μm)のスケールバーを使用して、iPSC由来のオルガノイドが、PBS-0.1中のGABAergicおよびグルタミン酸作動性ニューロン(図示せず)に効率的に成熟したことを示す。
【0082】
ほとんどの市販のマイクロ担体は、典型的には、直径が平均で約150ミクロン~約250ミクロン(μ)であるが、種々の細胞型のPSC集合体は、典型的には、平均で約100ミクロン~約400ミクロンである。マイクロ担体および細胞集合体の両方は、バイオリアクター内に実質的に均一に懸濁され、マイクロ担体が、同じまたは同様の増殖条件および他の生物学的要件に曝露されることを可能にする。さらに、これらの粒子は単一の細胞よりも大きいため、インペラなどのバイオリアクターの混合機構へのより大きな動力入力を使用して、培養培地中に完全かつ均一に懸濁される。バイオリアクター内の混合環境が最適以下である場合、またはそれ以外で、種々のプロセスステップ中に細胞についての閾値レベルを満たさない場合、一貫性のない収量および細胞の不十分な生成物品質が生じる。
【0083】
栄養素の利用可能性および廃棄物の除去などの、懸濁細胞の生物学的必要性は、閾値細胞培養性能を達成するための既知の態様であるが、流体混合環境もまた、考慮され得る。したがって、バイオリアクターが、マイクロ担体または細胞集合体を懸濁および混合する方法は、本開示の教示に基づいて教示されるように、治療用細胞生成物の大規模な産生を可能にするために、スケールアップ中に実質的に一貫性があり、実質的に予測可能であるままのように混合環境が理解され、最適化されるべきである。
【0084】
本開示の教示は、概して、バイオリアクター内の培養培地の閾値流体力学的条件および混合特性の予測を含む、種々の種類の細胞増殖技術の生理学的要件のキュレーションを含む。これらのパラメータは、細胞が経験し、最終的に細胞培養プロセス全体を通じて細胞収量および品質に影響を与える流体混合環境と関連している。
【0085】
本開示の教示はまた、懸濁液ベースのバイオリアクターにおいて、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した治療用細胞の最適かつスケーラブルな産生のための、物理的混合研究、動力測定、および計算流体力学(CFD)分析によって決定される、システムおよび方法に関する。閾値産生条件は、特定の流体力学的混合条件を監視および制御することによって達成することができ、これは、次いで、マイクロ担体ベースのプロセスについての細胞増殖、ならびにPSC集合体ベースのプロセスについての増殖および分化プロセスの両方の効率に影響を及ぼし得る。これらのプロセスの種類の両方について、本開示の教示に従った方法を使用して、最終的な細胞生成物の収量および品質を最適化することができる。
【0086】
本開示の教示はまた、流体力学的条件を制御することによって、バイオリアクターにおいて、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖したものを含む、治療用細胞の産生のためのシステムおよび方法に関する。
【0087】
バイオリアクターにおける懸濁液ベースの細胞培養プロセスは、すべての細胞(または実質的には細胞である)が液体培地中で実質的に連続的に懸濁されるように適合され得る。液体培地中で懸濁される細胞は、細胞が生物学的および流体力学的パラメータの実質的に一貫した環境に曝露され得ることを保証または少なくとも可能にし、バイオリアクター容器の底部における細胞の望ましくない沈降を抑止および/または回避し得る。回転するインペラなどのバイオリアクターの混合機構の撹拌速度は、インペラへの動力入力を通じて直接制御される。
【0088】
図4は、本開示の教示に従う、システム100の実装の概略図を例示する。システム100は、バイオ医薬品業界のための治療用細胞の生産を拡大するために使用され得る。示される実施態様では、システム100は、第1の作業容積105を画定する第1の格納容器104を含む第1のバイオリアクター102と、第2の作業容積107を画定する第2の格納容器108を含む第2のバイオリアクター106と、を含む。第1のバイオリアクター102は、大規模バイオリアクターと称され得、第2のバイオリアクター106は、小規模バイオリアクターと称され得る。したがって、示されるように、第1の作業容積105は、第2の作業容積107よりも大きい。しかしながら、第1の作業容積105は、第2の作業容積107よりも小さくてもよく、またはそれと同様であってもよく、またはそれと同じであってもよい。
【0089】
いくつかの実施態様では、第1の作業容積105は、約250リットル(L)~約500L、約45L~約80L、約9L~約15L、および/または約1.8L~約3.0Lであり得、第2の作業容積107は、約60ミリリットル(mL)~約100mL、および/または約300mL~約500mLであり得る。より一般的には、第1の作業容積105および/または第2の作業容積107は、約0.1L~約500Lのうちの少なくとも1つ、または約0.0L~約2000Lのうちの少なくとも1つであってもよい。しかしながら、第1の作業容積105および/または第2の作業容積107は、任意の容積であってもよい。
【0090】
ここで第1のバイオリアクター102を詳細に参照すると、示される実施態様では、第1のバイオリアクター102は、格納容器104の下端114に位置する下部の湾曲した壁112を含む壁110を有する格納容器104を含む。第1のバイオリアクター102はまた、格納容器104内に配置され、格納容器104の内容物を撹拌するように軸118の周りを回転するように構成されたミキサー116を含む。下部の湾曲した壁112は、湾曲した底壁と称され得、軸118は、中心軸または水平軸と称され得る。示されるように、ミキサー116は、水平軸118の周りを回転するように構成される。しかしながら、ミキサー116は、異なって配置されてもよい。例えば、ミキサー116は、垂直軸の周りに、または水平軸および/もしくは垂直軸に対してある角度で回転するように構成され得る。
【0091】
システム100はまた、ミキサー116を動作/回転させるように適合されたミキサー116に動作可能に結合された駆動アセンブリ122と、プロセッサ125を有するコントローラ124と、を含む。コントローラ124は、駆動アセンブリ122に電気的および/または通信可能に結合されて、駆動アセンブリ122に本明細書に開示される種々の機能を実行させる。第2のバイオリアクター106は、第1のバイオリアクター102と同様の構造を有することができる。例えば、第2のバイオリアクター106は、第1のバイオリアクター102と同じもしくは同様の寸法、アスペクト比、および/またはバイオリアクター機能を有する、壁110、下部の湾曲した壁112、およびミキサー116を有することができる。
【0092】
動作中、第2のバイオリアクター106は、実質的に均一であり、かつ/または閾値標準を満たす形状および/またはサイズを有する治療用細胞を増殖させるために、第2のバイオリアクター106を動作させるための値(例えば、撹拌速度、EDR値)を決定するために、より小さい容積で実験を行うために使用される。有利には、第2のバイオリアクター106が動作する動作値に基づいて、第1のバイオリアクター106は、第2のバイオリアクター106内で増殖した細胞の同様または同じ所望の特性を有する、より大きな容積の第1のバイオリアクター102内で治療用細胞を増殖させるために動作する動作値を決定することができる。別の言い方をすると、第1のバイオリアクター102(より大規模なバイオリアクター)は、例えば、同様のサイズおよび/または形状を有するなどの所望の属性を有する治療用細胞を増殖させるために、第2のバイオリアクター106(より小規模なバイオリアクター)の動作値に基づいて動作する。
【0093】
いくつかの実施態様では、パラメータ値のうちの少なくとも1つは、第2のバイオリアクター106のミキサー116が動作する撹拌速度を含む。撹拌速度は、第2のバイオリアクター106のミキサー116が回転する、毎分回転数(RPM)に関連付けられ得る。ミキサー116は、第2のバイオリアクター106内に配置された治療用細胞を含む懸濁液内の乱流渦の平均エネルギー散逸率(平均EDR)を達成する速度で回転し得る。別の言い方をすると、ミキサー116は、バイオリアクター容積全体に分布するエネルギー散逸率を達成する速度で回転し得る。懸濁液は、マイクロ担体を含んでもよく、治療用細胞は、多能性幹細胞(PSC)を含んでもよい。しかしながら、懸濁液および/または治療用細胞は、異なっていてもよい。懸濁液自体は、種々の栄養素、増殖因子、化学物質、および/または細胞の増殖、分化、もしくは他の生物学的性能を改善することを意図する他の添加物を含有する液体培地を含み得る。培地は、典型的には、水と同様の密度を有し、特定の細胞型およびプロセスの必要性に合わせた市販の培地が存在するが、カスタマイズされた培地が作製されてもよい。他の治療用細胞型としては、間葉系幹細胞または遺伝子組換え単一細胞、例えば、T細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。治療用細胞の大部分はヒト由来であるが、また、動物由来、昆虫由来、ウイルス由来、または細菌由来である可能性もあり得る。
【0094】
このような実施態様では、コントローラ124のプロセッサ125は、第2のバイオリアクター106のミキサー116が動作する撹拌速度にアクセスし、第1の撹拌速度に基づいて第1のバイオリアクター102の格納容器104内のミキサー116が動作する第2の撹拌速度を決定し、第1のバイオリアクター102のミキサー116を第2の撹拌速度で回転させる。他の実施態様では、第1のバイオリアクター102の撹拌速度は、異なる方法で決定され得る。例えば、第2の撹拌速度は、(例えば、ペンおよび紙を使用して、計算機を使用して)ならびに/または第1および第2の撹拌速度を関連付けるチャートまたはグラフ(図26Aを参照のこと)を使用して手動で決定することができる。第1の撹拌速度および/または第2の撹拌速度は、約0回転/分(RPM)~約120RPMおよび/または約12RPM~約77RPMの範囲であり得る。しかしながら、第1のバイオリアクターリアクター102および/または第2のバイオリアクター106のミキサー116は、例えば、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞に関連する閾値を満たすように治療用細胞を産生することができる任意の撹拌速度で動作し得る。
【0095】
プロセッサ125はまた、追加入力または代替入力に基づいて撹拌速度を決定し得る。例えば、プロセッサ125は、使用される培地、細胞株の種類、接種条件、ならびに第1のバイオリアクター102および/または第2のバイオリアクター106の作業容積に関連付けられた入力に基づいて、第1のバイオリアクター102の撹拌速度を決定し得る。プロセッサ125で受信された入力値に基づいて、またはそれ以外の場合、プロセッサ125によってアクセスされた入力値に基づいて、プロセッサ125は、コントローラ124のメモリ138などのデータベースにアクセスし、受信された入力を、メモリ138に記憶された参照データ(例えば、履歴データ)と比較し得る。参照データは、異なる培地、異なる撹拌速度、異なる細胞株の種類、異なる接種条件、および/または異なる作業容積を使用して他のバイオリアクターで行われた実験からのデータを含み得、例えば、通信インターフェース136を使用してコントローラ124によってアクセスされ得る。有利には、そのような例では、プロセッサ125は、受信された入力値を参照データと比較することができ、次いでプロセッサ125は、特定の条件(例えば、作業容積、細胞株の種類、培地)に合わせられた同様のサイズおよび/または形状を有する細胞をより増殖させる可能性が高い第1のバイオリアクター102を動作させるための撹拌速度を決定することができる。別の言い方をすると、一例として、第1の作業容積が第1のバイオリアクター102とともに使用される場合、プロセッサ125は、第1のバイオリアクター102を第1の撹拌速度で動作させるための第1のフィードバックをユーザに動的に提供し、第2の作業容積が第1のバイオリアクター102とともに使用される場合、プロセッサ125は、第1のバイオリアクター102を第2の撹拌速度で動作させるための第2のフィードバックをユーザに動的に提供する。
【0096】
第1の撹拌速度で第2のバイオリアクター106を動作させると、第2のバイオリアクター106内に配置された細胞を含む懸濁液内の乱流渦の平均エネルギー散逸率(平均EDR)を達成し、第2の撹拌速度で第1のバイオリアクター102のミキサー116を動作させると、格納容器104内の細胞を含む懸濁液内の乱流渦の目標平均EDRを実質的に達成する。いくつかの実施態様では、目標平均EDRは、平均EDRとほぼ等しい。第2の撹拌速度でミキサー116を動作させることによって生成された乱流渦。乱流渦の少なくとも約60%、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または約97%のEDRの大きさは、約0.0015m/s未満である。本明細書に記載されるように、約0.0015m/sは、+/-50%であるか、または0.0015m/sに等しい。
【0097】
いくつかの実施態様では、目標平均EDRは、約0m/s~約0.006m/sの範囲にある。他の実施態様では、目標平均EDRは、約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある。しかしながら、異なる目標平均EDRが、例えば、産生される治療用細胞、格納容器104、108の容積などに応じて好適であり得る。
【0098】
乱流の運動エネルギー(流体流における乱流渦に関連するエネルギー)の散逸は、渦が粘性力によって最終的に熱に変換されるまで、渦を徐々に小さくなる渦に分解することによって乱流エネルギーが吸収される割合である。EDRは、毎秒速度の二乗の単位(m/s)で、毎秒単位質量当たりの運動エネルギーとして表され得る。狭い範囲のEDRは、サイズが実質的に変化しない渦を有する均質な流体流環境に関連し得る。十分に小さなコルモゴロフ渦は、付着した細胞に物理的な剪断効果ももたらすことができる。
【0099】
さらに図4を参照すると、示される実施態様では、第1のバイオリアクター102は、格納容器104内に実質的に均一な混合環境を作り出すための混合機構として使用される垂直ホイールバイオリアクター102である。駆動アセンブリ122は、ホイール120が回転してホイール120の周囲128の周りに接線流体流を生成する磁気駆動127などの駆動機構126を含む。磁気駆動127は、磁気結合部と称され得る。
【0100】
ホイール120は、軸118を通る流体の切断および折り畳み作用を生み出すことができ、例えば、駆動アセンブリ122および/またはホイール120への比較的低い動力入力で比較的効率的な混合を提供することができる、反対方向の軸方向ベーン130を含む。さらに、示される実施態様では、ホイール120は、比較的低いエネルギー散逸率(EDR)および穏やかな混合を生成するようにサイズ決めされるインペラゾーン132を含む。例えば、インペラゾーン132は、比較的大きな行程容積を生成するために比較的大きくてもよい。ホイール120および格納容器104は、水平インペラ混合を伴う従来の撹拌型バイオリアクター(STR)と比較して、比較的低い動力入力で、格納容器104内のプラスチックマイクロ担体または細胞集合体などの大きな粒子を完全に懸濁させることができる強力でスイープする流れを作り出すようにともに動作する。
【0101】
他の実施態様では、駆動アセンブリ122を省略することができ、格納容器104は、空気をコンテナ容器104に流して、浮上し、ホイール120と相互作用し、ホイール120を空気圧で回転させる、浮遊気泡を生成する空気入力ポート(図示せず)を含み得る。気泡を使用してホイール120を回転させることは、上記に開示される駆動アセンブリ122を使用することと同様に、マイクロ担体または細胞集合体の低動力懸濁に十分な同じまたは同様の流体流特性をもたらし得る。しかしながら、格納容器104内の液体表面で飛び出す気泡の作用は、接着依存性細胞への剪断損傷の潜在的な原因であり、したがって、磁気駆動混合が、MSCまたはPSCなどの細胞型に好ましい。
【0102】
動作中、第1のバイオリアクター102および/または第2のバイオリアクター106のミキサー116が、格納容器104、108内に含まれる懸濁液中で回転するとき、ミキサー116は、種々のサイズのコルモゴロフ渦を含む乱流を生成する。より大きな渦は、最小の渦が散逸して熱に変換されるまで、粘性力のために徐々に小さくなる渦に分解される。EDRは、渦が運動エネルギーから熱エネルギーに変換され、狭い範囲のEDRは、サイズが大きく変動しない渦を伴う均質な流体流環境に関連付けられるため、このエネルギー損失の割合である。十分に小さいコルモゴロフ渦はまた、マイクロ担体の表面に付着した細胞に物理的な剪断効果をもたらし得る。マイクロ担体ベースのプロセスの文脈において、剪断力は、懸濁されたマイクロ担体の表面に付着した細胞に潜在的に有害な影響を与える可能性がある。
【0103】
EDRは、格納容器104内の混合環境に影響を及ぼすとして上述されているが、他のパラメータが関連し得る。例えば、これらのパラメータのうちのいくつかには、インペラへの最小限の動力入力、実質的に均質なエネルギー散逸率(EDR)、および比較的低い流体力学的剪断応力レベルが含まれる。駆動アセンブリ122からのミキサー116への動力入力の変更は、格納容器104内の撹拌速度を変更し、EDRおよび剪断応力のレベルの両方に直接影響を与える。EDRは、剪断応力が直線的にスケールする間、撹拌の増加とともに指数関数的にスケールすることができる。
【0104】
バイオリアクター102および/または106が、懸濁されたマイクロ担体の直径よりも大きい渦を作り出すように動作するとき、波状の渦の流線は、流体流路に沿って付着された細胞を有するマイクロ担体をスイープする。対照的に、バイオリアクター102および/または106が、マイクロ担体の直径よりも著しく小さくなる渦を作り出すように動作するとき、より小さな渦は、細胞損傷またはさらに細胞の死を引き起こすマイクロ担体の表面上の細胞に剪断作用をもたらす。したがって、駆動アセンブリ122を使用したホイール120への動力入力は、ミキサー116がより速い速度で回転するとき、容器104および/または108の内部の渦のサイズに直接影響を与える。より高い動力入力は、より小さな渦を作り出す混合作用を生じる。
【0105】
コントローラ124を参照すると、示される実施態様では、コントローラ124は、ユーザインターフェース134、通信インターフェース136、1つ以上のプロセッサ125、および開示された実施態様を含む種々の機能を実行するために1つ以上のプロセッサ125によって実行可能な命令を記憶するメモリ138を含む。ユーザインターフェース134、通信インターフェース136、およびメモリ138は、1つ以上のプロセッサ125に電気的および/または通信的に結合される。
【0106】
一実施態様では、ユーザインターフェース134は、ユーザからの入力を受信し、システム100の動作および/または発生する分析に関連付けられた情報をユーザに提供するように適合される。入力は、例えば、第2のバイオリアクター106が動作する第1の撹拌速度値、第2のバイオリアクター106が第1の撹拌速度値で動作することによって達成される平均EDR値、第1のバイオリアクター102が動作する第2の撹拌速度値、および/または第1のバイオリアクター102が第2の撹拌速度値で動作することによって達成される平均EDR率の値を含み得る。しかしながら、ユーザインターフェース134、またはより一般的には、コントローラ124は、他の入力を受信することができる。これらの入力のうちのいくつかは、ミキサー116および/もしくは駆動アセンブリ122に最小限の動力入力を提供すること、実質的に均質なエネルギー散逸率(EDR)を達成すること、ならびに/または比較的低い流体力学的剪断応力レベルを達成することに関連付けられ得る。加えてまたは代替として、入力は、例えば、培地、細胞株の種類、接種条件、バイオリアクター102、106の作業容積を含み得る。ユーザインターフェース134は、タッチスクリーン、ディスプレイ、キーボード、スピーカ、マウス、トラックボール、および/または音声認識システムを含み得る。タッチスクリーンおよび/またはディスプレイは、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を表示し得る。
【0107】
一実施態様では、通信インターフェース136は、ネットワークを介して、第1のバイオリアクター102および第2のバイオリアクター106ならびに/または遠隔システム(例えば、コンピュータ)の間の通信を可能にするように適合される。ネットワークには、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、同軸ケーブルネットワーク、無線ネットワーク、有線ネットワーク、衛星ネットワーク、デジタル加入者線(DSL)ネットワーク、セルラーネットワーク、Bluetooth接続、近距離無線通信(NFC)接続などが含まれ得る。遠隔システムに提供される通信のうちの一部は、第1のバイオリアクター102によって生成されるか、またはそうでなければ取得される、分析結果などに関連付けられ得る。第1のバイオリアクター102に提供される通信のうちの一部は、第1のバイオリアクター102によって実行される混合動作、および/または撹拌速度、平均EDR、および/または目標平均EDRと関連付けられ得る。
【0108】
1つ以上のプロセッサ125および/またはシステム100は、プロセッサベースのシステムまたはマイクロプロセッサベースのシステムのうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施態様では、1つ以上のプロセッサ125および/またはシステム100は、プログラマブルプロセッサ、プログラマブルコントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、フィールドプログラマブルロジックデバイス(FPLD)、論理回路および/または本明細書に記載のものを含む種々の機能を実行する別の論理ベースのデバイスのうちの1つ以上を含む。
【0109】
メモリ138は、半導体メモリ、磁気可読メモリ、光学メモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、光学記憶ドライブ、ソリッドステート記憶デバイス、ソリッドステートドライブ(SSD)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性RAM(NVRAM)メモリ、コンパクトディスク(CD)、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイディスク、独立ディスク冗長アレイ(RAID)システム、キャッシュおよび/または任意の他の記憶デバイスもしくは記憶ディスクのうちの1つ以上を含み得、情報は、任意の期間(例えば、永久的、一時的、長期間、バッファリングのため、キャッシングのため)、記憶される。
【0110】
図5は、図4のバイオリアクター102、106とともに使用することができるミキサー116の等角図である。示される実施態様では、ミキサー116は、2つの軸流ベーン140および4つの半径方向流ブレード142を含むホイール120を含む。ミキサー116は、2つの軸流ベーン140および4つの半径方向流ブレード142を含むが、任意の数の軸流ブレードが含まれてもよく(例えば、1つ、3つ、4つ)、かつ/または任意の数の半径方向流ブレード142が含まれてもよい(例えば、1つ、2つ、3つ)。他の実施態様では、軸流ベーン140および/または半径方向流ブレード142は省略され得る。
【0111】
図6~8は、図4のシステム100、第1のバイオリアクター102、および/もしくは第2のバイオリアクター106、または本明細書に開示される他の実施態様のうちのいずれかを使用して、懸濁液ベースのバイオリアクターにおいて、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した治療用細胞の産生をスケーリングする方法についてのフローチャートを例示する。ブロックの実行順序は、変更されてもよく、かつ/または記載されるブロックのうちのいくつかは、変更されてもよく、排除されてもよく、組み合わされてもよく、かつ/もしくは複数のブロックに細分化されてもよい。
【0112】
図6のプロセス600は、小規模バイオリアクター106内に配置された細胞を含む懸濁液内の乱流渦の目標平均エネルギー散逸率(EDR)が決定されることから開始する(ブロック602)。いくつかの実施態様では、目標平均EDRは、プロセッサ125を使用して、別のコンピュータを使用して、またはチャートもしくはグラフを参照することによって、手動(例えば、ペンおよび紙)で決定される(図26Aを参照のこと)。目標平均EDRは、約0m/s~約0.006m/sの範囲、および/または約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にあり得る。小規模バイオリアクター106内で目標平均EDRを達成する小規模撹拌速度が決定され(ブロック604)、大規模バイオリアクター102内で目標平均EDRを達成する大規模撹拌速度が決定される(ブロック606)。大規模撹拌速度は、小規模撹拌速度に直接依存する。大規模バイオリアクター102は、小規模バイオリアクター106の容積よりも大きい容積を有し、いくつかの実施態様では、小規模および大規模撹拌速度のうちの少なくとも1つは、約0rpm~約120rpmの範囲、および/または約12rpm~約77rpmの範囲にある。
【0113】
ある体積の培養液中に懸濁された複数の細胞を含む懸濁液を、大規模バイオリアクター102内に沈積させる(ブロック608)。細胞を含む懸濁液を大規模バイオリアクター102に沈積させることは、多能性幹細胞(PSC)または間葉系幹細胞(MSC)を大規模バイオリアクター102内に沈積させることを含み得る。マイクロ担体は、任意選択で、例えば、MSCと組み合わせて、大規模バイオリアクター内に沈積される(ブロック610)。マイクロ担体および懸濁液は、大規模バイオリアクター102内に、同時に、順番に異なる時間で、および/または同様の時間で(例えば、順々におよび/または一定の時間内に)沈積され得る。
【0114】
大規模バイオリアクター102内に配置されたミキサー115の撹拌速度を、大規模撹拌速度に設定し(ブロック612)、大規模バイオリアクター102内のミキサー116を、大規模撹拌速度で作動させて、懸濁液を、目標平均EDRとほぼ等しい平均EDRで混合する(ブロック614)。平均EDRは、大規模バイオリアクター102内の懸濁液の体積内の複数の実際のEDRデータ点の平均を含み得、複数の実際のEDRデータ点の少なくとも約60%、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または約97%の大きさは、約0.0015m/s未満である。
【0115】
いくつかの実施態様では、大規模バイオリアクター102内のミキサー116を作動させることは、回転の水平軸118を有する垂直ホイールミキサー116を作動させることを含む。他の実施態様では、大規模バイオリアクター102内でミキサー116を作動させることは、スピナー型ミキサーなどの垂直回転軸を有するミキサー116を作動させることを含む。しかしながら、ミキサー116は、例えば、格納容器104内に異なって構成および/または配置されてもよく、空気圧(例えば、気泡ミキサー)および/または他の機構を含む撹拌のための異なる手段を含んでもよい。
【0116】
図7のプロセス700は、マイクロ担体上で、または細胞集合体として増殖した細胞を産生するために選択される大規模バイオリアクター102から開始する(ブロック702)。大規模バイオリアクター102を選択することは、小規模バイオリアクター106の容積よりも大きい容積を有するバイオリアクター102を選択することを含む。大規模バイオリアクター102は、大規模容器104内に大規模ミキサー116を有する。大規模ミキサー116について、大規模撹拌速度が決定される。(ブロック704)大規模撹拌速度は、小規模バイオリアクター106内の懸濁液中の乱流渦の目標平均エネルギー散逸率(EDR)を達成する、小規模バイオリアクター106の小規模容器108中の小規模ミキサー116の小規模撹拌速度に基づいて決定される。いくつかの実施態様では、小規模および大規模撹拌速度のうちの少なくとも1つは、約0rpm~約120rpmの範囲、および/または約12rpm~約77rpmの範囲にある。いくつかの実施態様では、目標平均EDRは、約0m/s~約0.006m/sの範囲、および/または約0.003m/s~約0.0015m/sの範囲にあり得る。
【0117】
ある体積の培養液中に懸濁された細胞を含む懸濁液は、大規模バイオリアクター102内に沈積される(ブロック706)。細胞を含む懸濁液を大規模バイオリアクター内に沈積させることは、多能性幹細胞(PSC)または間葉系幹細胞(MSC)を大規模バイオリアクター内に沈積させることを含み得る。次いで、例えば、MSCとともに使用される場合、マイクロ担体は、任意選択で、大規模バイオリアクター内に沈積され得る(ブロック708)。マイクロ担体および懸濁液は、大規模バイオリアクター102内に、同時に、順番に異なる時間で、および/または同様の時間で(例えば、順々におよび/または一定の時間内に)沈積され得る。
【0118】
大規模ミキサー116の撹拌速度を大規模撹拌速度に設定し(ブロック710)、大規模ミキサー116を大規模撹拌速度で作動させて、目標平均EDRとほぼ等しい平均EDRで懸濁液中の細胞を混合する(ブロック712)。いくつかの実施態様では、平均EDRは、大規模バイオリアクター102内の懸濁液の体積内の複数の実際のEDRデータ点の平均を含み、複数の実際のEDRデータ点の少なくとも約60%、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または約97%の大きさは、約0.0015m/s未満である。いくつかの実施態様では、大規模ミキサー116を作動させることは、回転の水平軸118を有する垂直ホイールミキサー116を含むことを含む。他の実施態様では、大規模ミキサー116を作動させることは、スピナー型ミキサーなどの垂直回転軸を有するミキサー116を作動させることを含む。他のミキサーが可能であり、空気圧(例えば、気泡ミキサー)および/または他の機構を含む、撹拌のための異なる手段を含んでもよい。
【0119】
図8のプロセス8は、バイオリアクター102、106を、複数の利用可能なバイオリアクター102、106から選択することから開始する(ブロック802)。バイオリアクター102、106の各々は、約0.1L~約500L、または約0.1L~約2000Lの容積を有する。バイオリアクター102、106は、ミキサー116を含む。ミキサー116は、回転の水平軸118を有する垂直ホイールミキサー116であってもよく、または回転の垂直軸を有してもよい。バイオリアクター102、106は、湾曲した底壁112を有し得る格納容器104、108を含む。
【0120】
ある体積の培養液中に懸濁した細胞を含む懸濁液を、バイオリアクターに沈積させる(ブロック804)。ある体積の培養液中に懸濁した細胞を含む懸濁液をバイオリアクター内に沈積させることは、多能性幹細胞(PSC)または間葉系幹細胞(MSC)をバイオリアクター102内に沈積させることを含み得る。次いで、マイクロ担体を、任意選択で、例えばMSCとともに、バイオリアクター内に沈積させることができ(ブロック806)、バイオリアクター102内に配置されたミキサー116の撹拌速度を設定する(ブロック808)。ミキサー116を、設定された撹拌速度で作動させて、懸濁液をバイオリアクター内で混合する(ブロック810)。懸濁液は、ミキサーによって生成された乱流渦を含み、乱流渦は各々、エネルギー散逸率(EDR)を有する。乱流渦の少なくとも約60%、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、または約97%のEDRの大きさは、約0.0015m/s未満である。いくつかの実施態様では、目標平均EDRは、約0m/s~約0.006m/sの範囲、および/または約0.0003m/s~約0.0015m/sの範囲にある。
【0121】
図9Aは、渦流902がマイクロ担体904よりも大きいときの、渦流902および付着した生存細胞を有するマイクロ担体904の概略図を例示する。図9Bは、付着した生存細胞906を有するマイクロ担体904のうちの1つおよびマイクロ担体904よりも小さい渦流902の概略図を例示する。図9Bに示すように、いくつかの死滅細胞908は分離されている。
【0122】
図9Aを参照すると、渦902が、懸濁されたマイクロ担体904の直径よりも大きいとき、波状渦流線902は、流体流路に沿って付着された細胞を有するマイクロ担体904全体をスイープする。対照的に、図9Bを参照すると、渦902が、マイクロ担体904の直径よりも著しく小さくなると、マイクロ担体904の表面上の細胞に対して剪断効果が生じ、これにより、細胞損傷またはさらに死滅が引き起こされ得る。バイオリアクターのインペラ116への動力入力は、容器104内の渦のサイズに直接影響を与え、より高速な回転または混合作用のためのより高い動力入力は、より小さい渦を生成する。
【0123】
均一なEDRは、液体中のマイクロ担体および栄養素の均等な分布に有益であるが、マイクロ担体ベースの細胞培養プロセスについての別の要因は、細胞を損傷する閾値を下回る剪断応力レベルを維持することである。より大きな渦の形成を促進するインペラ設計は、剪断力が特に関心がある場合に有益であり得るが、依然としてマイクロ担体の完全な底部外懸濁を達成しながら、インペラ120への動力入力を最小限に抑えることが望ましい場合がある。
【0124】
対照的に、PSCなどの細胞の集合体形成についての因子は、主に、狭い変動を伴うすべてまたは少なくともいくつかのEDR値の均質な分布を通じて作り出される均一な混合環境である。これは、均一な形状およびサイズを有する球状細胞集合体の形成を促進し、多くの場合、増殖および分化プロセスステップの両方の間の生物学的要件に有用である。動力入力、したがって撹拌速度を調整することは、比較的一貫した剪断応力レベルを維持することとともに、細胞集合体のサイズの制御にも直接的な影響を与える。
【0125】
マイクロ担体を用いた研究を通じて示されているように、このような粒子の完全な懸濁に使用される撹拌動力は、撹拌器およびバイオリアクターの形状に強く依存する。完全な懸濁に使用される動力は、撹拌器およびバイオリアクターの形状、ならびにマイクロ担体の直径、ならびにマイクロ担体と培養液との間の密度差に依存する。典型的なマイクロ担体は、約150~約200ミクロンの直径、および約1.03~約1.04の比重を有し、培養液よりも0.03~0.04g/ml高い密度差をもたらす。
【0126】
典型的なPSC集合体は、約100~約400ミクロンの直径を有する。集合体は、細胞型に応じて、以下のように異なる比重を有することができる細胞から構成される:肝細胞については1.05~1.15、Hela細胞については1.04~1.08、線維芽細胞については1.03~1.05、および脂肪細胞については0.92。これらの密度に基づいて、PSC集合体は、懸濁細胞培養プロセスに典型的に使用されるマイクロ担体と同様の直径および密度を有すると考慮され得る。したがって、所与のバイオリアクターについて、マイクロ担体を首尾良く懸濁する動力入力および撹拌速度は、ほとんどの細胞集合体の懸濁に対しても良好に作用する。
【0127】
垂直ホイールバイオリアクター内のマイクロ担体懸濁に使用される撹拌動力を決定するために、垂直ホイールシステムについての動力数とレイノルズ数との関係を特徴付けた。レイノルズ数は、流体流が層流か乱流かを決定するために使用され、流体流のパターンを予測することができる。動力数とレイノルズ数との関係の特徴付けは、水平インペラシステムに何度も使用されてきた十分に確立されたアプローチである。いくつかの実施態様では、0.5Lの垂直ホイール単回使用容器を有する第2のバイオリアクター106を使用した。第2のバイオリアクター106のホイール120は、約7.24センチメートル(cm)の直径を有し得、下部の湾曲した壁112は、約4.25cmの半径を有し得る。しかしながら、異なるサイズのホイール120および/または下部の湾曲した壁112が使用されてもよい。
【0128】
図10は、第2のバイオリアクター106、および第2のバイオリアクター106に結合され、インペラ動力入力を測定するように構成されたジグ1002の概略図である。示される実施態様では、ジグ1002は、基部1004と、ボールベアリング1008によって支持されたシャフト/車軸1006上に装着された磁気駆動ホイール1005と、を含む。示される実施態様では、中空スピンドル1010は、シャフト1006上に取り付けられ、細いねじ1012は、スピンドル1010上の単一の層に巻かれる。小ボックス1014は、ねじ1012の緩い端部1016に取り付けられる。ジグ1002は、地面から約2.2メートル(m)上に設置することができる。
【0129】
第2のバイオリアクター106は、駆動磁石1018および容器インペラ磁石1020が結合され得る(磁気的に結合され得る)ように、磁気駆動ホイール1005に隣接して取り付けられて示される。デジタルタコメーターに接続されたホール効果センサーを使用して撹拌を測定することができる。既知の重りが、ボックス1014内に配置され得、ボックス1014は、重力の影響下で落下させることができる。システムの総摩擦(流体抗力+ジグベアリングの摩擦+ホイールベアリングの摩擦)は、ボックス1014の加速度を阻止し、ボックス1014は、ほぼ一定の(最終)速度で落下する。ボックス1014の速度は、スピンドル1010の周囲を通る撹拌に直接関連する。システムを駆動する総動力は、落下物質の速度、物質そのもの、および重力加速度定数gの積に等しい。
【0130】
第2のバイオリアクター106および/またはジグ1002を使用して実験を行うために、撹拌器(ホイール120)に動力を入力し、注意深く測定した。ダイナモメーターまたは伝達トルクメーターを使用した従来の測定は、関係する非常に低い動力レベル、および回転するホイール120の磁気的に結合された性質の両方のために、実用的ではないとみなされた。その他は、低動力シナリオ下でのこれらの測定の課題に留意すべきである。さらに、この場合、従来の器具を取り付けるシステムを通して実行する垂直軸は存在しない。したがって、「重量測定」アプローチを定着させた。
【0131】
図11は、第2のバイオリアクター106のホイール120の撹拌を表すX軸1102と、質量当たりの動力を表すY軸1104と、を含むグラフ1100である。より具体的には、図11は、約26℃で脱イオン(DI)水を用いた0.5Lの容積および300-mlの作業容積を有する第2のバイオリアクター106の撹拌の関数としての質量当たりのインペラ動力入力を示す。グラフ1100に示されるように、ミキサー116が、より高い撹拌速度で回転するとき、質量当たりの動力も増加する。試験した最低速度である13rpmでは、質量当たりの動力入力は、約4.1cm/secであり、試験した最高速度である180rpmでは、質量当たりの動力入力は、約1360cm/secであった。
【0132】
グラフ1100上にプロットされたデータを得るために、測定は、ジグベアリング1008の動的摩擦を測定するためにジグ1002単独で、ジグ1002および空の格納容器108で(ジグベアリング1008+容器ベアリングの動的摩擦を測定するために)、ならびに水を含有する格納容器108で(ベアリングの摩擦+インペラ抗力の両方を測定するために)行われた。各測定を複数の加重で行い、動力対撹拌曲線をグラフ1100上にプロットした。格納容器108が空であるときの状態について動力または多項式曲線の適合を行い、これらの適合を使用して、任意の撹拌速度または少なくともいくつかの撹拌速度についての動力を補間した。このデータを使用して、格納容器108が、全システム摩擦(水を含有する格納容器108で測定された)から空になっているときの摩擦を差し引き、正味の動力を得た。正味の動力は、インペラ抗力または正味の混合動力に等しい。これらの実験は、マイクロ担体なしで水を使用して、約26℃で実施した。固体を有しない無気体のニュートン流体についての標準方程式を使用して、インペラのレイノルズ数および動力数を決定した。水の密度および粘度は、それぞれ1.00g/mlおよび0.0085g/(cm-sec)と仮定した。
【0133】
ジグ1002および上記を用いて実施した測定は、標準的なインペラ/バイオリアクター形状を用いてこれを試験することによって検証され、動力数とレイノルズ数との関係が十分に確立されている。次いで、実験結果を、十分に確立された結果(すなわち、予想される結果)に対して比較することができる。選択した標準的なインペラ/バイオリアクター形状は、標準的な(水平)ラシュトン(Rushton)インペラを備えた標準的なバッフル撹拌タンクであった。乱流レジームで動作されるこの標準的な形状に関して、予想される動力数は5~6であり、予想される対数P対対数Nのグラフ上の予想される指数は3であり、Pは動力であり、Nは撹拌速度である。上記の測定システムを使用して、90度回転させて、乱流レジームで動作するこの標準的な形状で作用させると、測定された動力数は5.55で、予想される5~6の範囲の中央にあり、測定された対数P対対数N指数は3.1で、予想される3の数字にかなり近かった。したがって、測定システムは検証されたものと考慮され、0.5L垂直ホイールバイオリアクターの動力を測定するために使用された。
【0134】
図12は、レイノルズ数を表すX軸1202と、インペラ動力を表すY軸1204と、を含むグラフ1200である。具体的には、図12は、約0.5Lの容積を有し、約26°のDI水で約300-mlの作業容積を有する第2のバイオリアクター106についてのインペラ動力数対レイノルズ数を示す。図12に示すように、レイノルズ数が増加するにつれて、インペラ動力数は減少する。
【0135】
図12は、インペラ動力数対レイノルズ数としてプロットした、図11に含まれるものと同じ結果を示す。この相関関係は、固定された螺旋リボン、二重螺旋、および非常に大きいインペラ直径対タンク直径(Di/T)比を有する他のインペラについて見出されるものと類似している。このようなインペラについて、動力数がレイノルズ数に反比例する層状レジームは、多くの場合、およそ100までレイノルズ数に対して観察される。これは、典型的なタービンおよびプロペラとは対照的であり、典型的なDi/T比は0.25~0.5であり、層状レジームは、10未満のレイノルズ数に対して観察される。約0.5Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用すると、Di/T比が0.85であり、通常ではない垂直ホイールを使用すると、層状レジームは、約4000のレイノルズ数まで持続するように見える。10,000を超えるレイノルズ数では、平均0.78の一定の動力数で、完全に乱流レジームに到達する。フラットパドルまたは他のインペラを備えた非バッフル容器とは異なり、動力数は、約10,000のレイノルズ数を超えてゆっくりと減少し続けることはない。これは、垂直インペラ構成による渦巻きの欠如に起因し得る。図12の2番目と3番目の点の間で、それぞれ、1850と4214のレイノルズ数において、べき法則適合の傾きは-1.3である。最初の3点を通る傾きが、層状レジームについて他の場合に予想されるように、マイナス1.0よりも急であるという事実は、これらの非常に低いレベルでの動力測定に関する実験的課題に起因する可能性が高い。この傾き、および中程度に高いレイノルズ数での層状レジームの持続性は、本明細書で提示されているプロトコルの下で再現可能である。
【0136】
図13は、コルモゴロフ長さスケール(μm)を表すX軸1302と、相対純増殖率を表すY軸1304と、を含むグラフ1300である。具体的には、グラフ1300は、種々の粘度でスピナーSTRを撹拌したときのサイトデックス(cytodex)1マイクロ担体上で増殖したFS-4細胞、ならびに約0.5L(層流レジームを含む)の容積を有する第2のバイオリアクター106内のSolohillプラスチックプラスマイクロ担体上のMSCに対する、コルモゴロフ渦長さの相対増殖度への影響を例示する。図13に示すように、コルモゴロフ長さスケール数が増加するにつれて、相対純増殖率も増加し、次いで相対純増殖率が約1.0になった後に相対的に一貫したものとなる。
【0137】
図13のグラフ1300にプロットされたデータを得るために、図12に以前に示された相関を使用し、コルモゴロフ長さスケールを介した動力入力の観点から、垂直ホイールバイオリアクターにおけるマイクロ担体培養物に関する公開されたデータを分析した。その結果を図13に示し、以前に公開された結果と一致する。細胞が、水平インペラまたは垂直ホイールインペラバイオリアクターのいずれかで、約150~約200ミクロンの直径を有するマイクロ担体上で増殖するとき、コルモゴロフ長さスケール(平均動力/質量に基づく)が130ミクロン以下に達すると、流体力学的損傷が明らかになる。0.0071cm/secの動粘度で、これは、12.5cm/secの質量当たりの平均動力に変換される。
【0138】
図13に示される相関はまた、例えば、第2のバイオリアクター106などの一連の異なるスケールの垂直ホイールバイオリアクターにわたって、マイクロ担体懸濁液に使用される動力を決定するために使用した。図14は、X軸1402が毎分回転数(RPM)を表す、マイクロ担体懸濁液試験からの結果のセットを提示するグラフ1400である。異なるバイオリアクターに使用される動力を決定するために、マイクロ担体を、バイオリアクター102、106内のリン酸緩衝生理食塩水中の低濃度で懸濁した。種々の撹拌レベルで、各バイオリアクター102、106の表面付近から小さな試料を引き出し、試料1ml当たりのマイクロ担体の数を倒立顕微鏡によりカウントした。カウントの明確なプラトーが得られるまで、ミキサー116および/またはホイール120を使用して撹拌を増加させた。図14は、約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用して得られた結果を表す。15~20RPM以上の撹拌でのカウントのプラトーは、マイクロ担体が懸濁中であること、ならびに/またはマイクロ担体のすべてもしくは少なくとも一部が、上記のいずれかもしくは少なくとも一部の撹拌速度、15~20RPMの範囲内および/もしくはその範囲で完全に懸濁していることを示す。これも目視で確認した。
【0139】
図15は、異なるバイオリアクターおよび関連する撹拌速度(rpm)を示すX軸1502と、種々のバイオリアクターにおけるマイクロ担体懸濁に必要な質量レベル当たりの平均動力を表すY軸1504と、を含むグラフ1500である。図14に示すような相関を使用して、マイクロ担体懸濁に使用される最小毎分回転数(RPM)を動力レベルに変換すると、種々のバイオリアクター内でマイクロ担体を懸濁するために使用される質量当たりの平均動力を計算することができる。異なるスケールにわたる垂直ホイールバイオリアクターは、水平インペラ混合を使用する、より高品質の撹拌タンクリアクター(STR)よりも、FS-4細胞およびMSCを含む多くの他の細胞株についての12.5cm/secの損傷閾値をはるかに下回る、約2cm/sec~約3.5cm/secの範囲内で、質量当たり非常に低いレベルの動力でマイクロ担体を懸濁することができる。CorningスピナーSTRおよび様々な20-L STRとともに、種々のサイズの垂直ホイールバイオリアクターについてのデータが示される。前述のように、12.5cm/secにおいて、渦は、表面付着細胞に対して剪断効果を有するのに十分に小さい(マイクロ担体の直径の約3分の2以下)、約130ミクロンのサイズで接近する。
【0140】
以前に説明したように、種々の細胞型の細胞集合体は、図13~15に示される懸濁研究で使用されるSolohillマイクロ担体などのプラスチックマイクロ担体と同様の直径および密度を有する。したがって、約2cm/sec~約3.5cm/secの質量当たりの動力範囲は、0.1L~80Lの同じ範囲の垂直ホイールバイオリアクターにわたって細胞集合体も懸濁することができる最小ベースラインであると推測され得る。しかしながら、質量当たりの他の動力範囲を使用してもよい。しかしながら、質量当たりの他の動力範囲が好適であることが証明され得る。
【0141】
図16は、約3Lの容積を有する第1のバイオリアクター102上で実施された計算流体力学(CFD)分析の結果1600を示す。図16の結果1600は、3Lスケールでの液体混合中に、ホイール120(空気圧駆動インペラ)の表面上に比較的一貫して、低レベルの流体力学的剪断応力が存在することを示す。示されるように、ホイール120の側面1602は、シア応力の約0.0パスカル(Pa)を経験し、一方、ホイール120の半径方向流ブレード142は、シア応力の約0.0パスカル(Pa)~シア応力の約2.0パスカルを経験する。
【0142】
さらに、垂直ホイールバイオリアクターの種々のスケールで試験が実施され、その結果は、ホイール120の表面上の低い流体力学的剪断応力レベルを示す。図16の結果1600を提供する分析は、磁気結合とは対照的に、流動気泡の浮力を通して空気圧的に回転されるインペラバージョンを使用して、垂直ホイールバイオリアクター102、106に対して実行された。しかしながら、ホイール120およびU字形容器の寸法、アスペクト比、ならびにバイオリアクター機能は、第1のバイオリアクター102と第2のバイオリアクター106との間で類似または同一であるため、インペラの表面上の剪断応力レベルは、磁気または空気混合にかかわらず比較的低いであろう。
【0143】
約2cm/sec~約3.5cm/secの質量当たりの動力範囲は、細胞集合体を懸濁するのに十分であり、また、垂直ホイールバイオリアクター内に均質なEDRを作り出すことができる最小撹拌速度にも変換される。均質なEDRは、均一な混合環境の前提条件であり、これは、均一な形状の細胞集合体の形成を促進する。PSC集合体のサイズおよび形状は、細胞増殖およびその後の指向性分化の効率に直接影響を及ぼす。集合体が大きくなりすぎるか、または奇形になった場合、栄養素または分化因子は、その中心に拡散することができず、望ましくない細胞死または不均一な分化につながる可能性がある。均質な混合環境は、等しいサイズの球状細胞集合体の形成を促す。細胞集合体についての狭い範囲の直径および均一な球状形状を達成することで、PSCの増殖および分化の両方の生産性、ならびに最終生成物としての標的細胞の収量および品質が向上する。
【0144】
図17は、図4の第1のバイオリアクター102および/または第2のバイオリアクター106を使用した計算流体力学(CFD)分析から得られたさらなる結果1700を示し、U字型格納容器104、108内の垂直ホイール混合(空気圧駆動インペラ120)のために、乱流エネルギー散逸率の実質的に均質な分布を得ることができることを示す。結果は、乱流エネルギー散逸率(EDR)の範囲が比較的狭く、スペクトルの中央に向かって(約10E-02~約10E-06)、散逸率が、極端に異なるゾーンを伴わずに格納容器104、108全体に均一に分布していること、およびその率が、イプシロン(m-3)の単位で示されていることを示す。
【0145】
図17の結果1700はまた、第1のバイオリアクター102および/または第2のバイオリアクター106によって提供されるようなU字形容器と組み合わせた垂直ホイール混合が、格納容器104、108内の狭い範囲のEDRで均質な混合環境をもたらす方法を示す(ホイール120を取り囲む領域1702によって示されるように、いくつかの領域1704は、図17において、約10E-08のEDR率を有する)。結果1700および関連するモデルは、空気圧駆動バージョンの垂直ホイールバイオリアクター102、106を使用して得られたが、同一または類似の考慮事項が適用され得る。例えば、空気圧駆動混合と磁気駆動混合との間には、CFDモデルについての均質性に類似点があるだろう。
【0146】
空気圧駆動インペラ混合は、約0.1Lから約500Lの作業容積にスケーリングされ得る均質性およびEDRを示し、同じU字形格納容器104、108内での磁気駆動インペラ混合は、類似または同一の均質性およびスケーラビリティを達成することができることが予測される。
【0147】
垂直ホイールインペラ120およびU字形格納容器104、108の組み合わせに基づいて、流体混合の第1のバイオリアクター102および/または第2のバイオリアクター106を使用した計算流体力学(CFD)分析は、格納容器104、108全体にわたる均質な乱流エネルギー散逸率の狭い範囲、およびインペラ120の表面上の一貫した流体力学的剪断応力を示し、PSC集合体のための閾値均一混合環境を作り出す。これは、小規模の垂直ホイールバイオリアクター内で増殖したPSC集合体の均一なサイズおよび形状分布を観察することによって確認された。
【0148】
図18は、細胞集合体のサイズを表すX軸1802と、細胞集合体の数を表すY軸1804と、を含むグラフ1800である。グラフ1800は、エネルギーの散逸率の広範囲の勾配ならびに不整合なサイズおよび/または形状を有する産生された細胞集合体を有するバイオリアクターと関連付けられた第1の曲線1806と、散逸エネルギー率の均質な分布ならびに同様のサイズおよび/または形状を有する細胞集合体を有するバイオリアクターと関連付けられた第2の曲線1808と、を含む。図18のグラフ1800は、急な釣鐘曲線によって表される、均質な乱流EDRを有するバイオリアクター内で増殖したPSC集合体サイズの変動が、緩やかな釣鐘曲線によって表される、広い勾配の乱流EDRを有するバイオリアクター内で増殖したPSC集合体サイズの変動よりも、はるかに狭いことを示す。
【0149】
PSC集合体のサイズおよび形状は、細胞培養プロセス中に、バイオリアクター内の流体混合環境によって著しく影響を受ける。特に、EDRと、得られた細胞集合体の平均直径との間には逆相関がある:EDRが高いと、細胞集合体の平均直径が小さくなるが、EDRが低いと、直径が大きくなる。一貫した直径の球状PSC集合体を達成するために、狭い範囲の乱流EDRが使用される。バイオリアクター格納容器104、108全体にわたって広範囲の乱流EDRをもたらす混合機構(ミキサー116)を有する第1のバイオリアクター102および/または第2のバイオリアクター106などのバイオリアクターは、細胞集合体のサイズの広範な変動を生じ、これにより、細胞の増殖および分化の効率に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0150】
図19は、PSC集合体のサイズを表すX軸1902と、細胞集合体の数を表すY軸1904と、を含むグラフ1900である。具体的には、グラフ1900は、撹拌速度を変化させることによる、バイオリアクターにおけるPSC集合体のサイズの制御可能性を例示する。示されるように、RPM速度を増加させることによって、PSC集合体のサイズは減少し、RPM速度を減少させることによって、PSC集合体のサイズは増加する。PSC集合体の平均直径は、均質なEDRを有するバイオリアクターにおける撹拌速度を調整することによって制御することができる。異なる種類のPSCは、細胞の増殖または分化の効率を増加させるために必要な異なる閾値の集合体直径を有することができるので、望ましい。
【0151】
図20Aは、約0.1Lの容積を有する垂直インペラホイール120を含む、第2のバイオリアクター106についてのレムニスケート液体流パターンおよび速度ストリームラインに関する計算流体力学(CFD)分析結果2000の上面図を示し、試験のいくつかは、ホイール120が約40rpmで回転して行われ、また、試験のいくつかは、ホイール120が約100rpmで回転して行われる。
【0152】
図20Bは、約0.1Lの容積を有する垂直インペラホイール120を含む第2のバイオリアクター106についてのレムニスケート液体流パターンおよび速度流線に関する計算流体力学(CFD)分析結果2002の側面等角図を示し、試験は、ホイール120が約60rpmで回転して行われる。
【0153】
図20Aおよび20Bの両方を参照すると、結果2000、2002は、レムニスケートまたは「図8」パターンである、U字形格納容器108の容積全体にわたる液体流のパターンを示す。これは、STRにおける液体の流れの典型的な漏斗または「竜巻」パターンと比較して特有の流線流パターンであり、垂直ホイールインペラ120とU字形格納容器108との組み合わせに起因して発生し得、均質なエネルギー散逸率および一貫して低いシア応力レベルを有する均一かつスケーラブルな混合環境を可能にし得る。図20Aに示すように、乱流渦2004は、ホイール120を通って、格納容器104、108全体に流れる。いくつかの実施態様では、集合体のすべてまたは実質的にすべては、格納容器104、108全体に移動し、同一または少なくとも類似の流体力学的条件(例えば、EDRおよびシア応力)を経験する。したがって、集合体は、実質的に等しいまたは類似のサイズおよび/または形状を有する。図20Aに示すように、40RPMで動作する第2のバイオリアクター106の渦2004は、約0.03m/s~約0.06m/sで移動しており、渦2004の速度は、約0.06で移動するブレード142により近い。図20Aに示すように、100RPMで動作する第2のバイオリアクター106の渦2004は、約0.03m/s~約0.15m/sで移動しており、渦2004の速度は、約0.012m/s~約0.015m/sで移動するブレード142により近い。図20Bに示すように、ホイール120からより遠い渦2006は、約0.0m/s~約0.06m/sで移動しているが、ホイール120により近い渦2008は、約0.06m/s~約0.11m/sで移動している。
【0154】
図21Aは、流れ時間を秒単位で表すX軸2102と、速度を表すY軸2104と、を含むグラフ2100である。グラフ2100は、20rpmで動作するホイール120に関連付けられた第1のライン2106、40rpmで動作するホイール120に関連付けられた第2のライン2108、60rpmで動作するホイール120に関連付けられた第3のライン2110、80rpmで動作するホイール120に関連付けられた第4のライン2112、および100rpmで動作するホイール120に関連付けられた第5のライン2114を含む。示されるように、速度値は、流れ時間の約1秒後に比較的一貫している。
【0155】
図21Bは、流れ時間を秒単位で表すX軸2118と、シア応力を表すY軸2120と、を含むグラフ2116であり、図21Cは、流れ時間を秒単位で表すX軸2124と、EDRを表すY軸2126と、を含むグラフ2122である。図21Bに示すように、剪断応力値は、流れ時間の約1秒半後に比較的一貫している。図21Cに示すように、EDR値は、流れ時間の約2秒後に比較的一貫している。
【0156】
図21A、21B、および21Cを参照すると、これらのグラフ2100、2116、2122は、インペラ120が静止位置または停止位置から初期回転を開始すると、流体流線速度、剪断応力、およびEDRが、どのくらい速くそれらの閾値(例えば、最大)の定常状態値に達するかを示す。3つすべての流体力学的特性についての定常状態は、使用したRPMに関係なく、約3秒で達成された。これは、培地交換などの細胞培養プロセスステップ中に定着した可能性のある任意の細胞集合体を迅速に再懸濁するのに有用である。約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106は、グラフ2100、2116、2122に表示されるデータを取得するための試験を実施するときに使用した。
【0157】
図22Aは、ホイール120が約40rpmおよび約100rpmで回転する速度に関連する計算流体力学(CFD)分析結果2202を示し、図22Bは、ホイール120が約40RPMおよび約100RPMで回転するシア応力に関連する計算流体力学(CFD)分析結果2204を示し、図22Cは、ホイール120が約40RPMおよび約100RPMで回転するエネルギー散逸に関連する計算流体力学(CFD)分析結果2206を示す。したがって、図22A、22B、および22Cは、40および100RPMにおける速度、剪断応力、およびEDRの関係を示し、約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用して試験が実施されている。
【0158】
図22A、22B、および22Cを参照すると、40RPMおよび100RPMの両方で(ならびにすべてのRPM、実質的にすべてのRPM、および/またはいくつかのRPMについて推測することができる)、剪断応力およびEDRの変動は、速度と同じ割合で増加しない(インペラへの動力入力が増加する場合)。実際、40RPMにおいて、EDRは、ほぼ完全に均質である(領域2208および2210を参照のこと)。参照番号2208において、速度は、約0.0m/s~約0.03m/sであり、参照番号2210において、速度は、約0.03m/s~約0.09m/sである。図22Bの参照番号2112では、約40RPMで動作しているホイール120の周りのシア応力は、約1E-2~約3E-2であり、図22Cの参照番号2114では、エネルギー散逸値は、約0.0m/mであり、格納容器108全体で実質的に一貫している。
【0159】
100RPMで、図22Aの参照番号2116に示されるように、ホイール120の周りの速度は、約0.09m/s~約0.15m/sである。図22Bに示すように、ホイール120が100RPMで動作したときには、ホイール120が40RPMで動作したときと比較してはるかに大きな速度の変動があるが、比較的高い剪断応力またはEDRの最小のゾーンが存在する(シア応力が約3E-2Pa~約4E-2Paの領域2218を参照のこと)。したがって、インペラホイール120への動力入力を増加させることは、速度により影響を与えるが、実質的に均一な混合環境は、より高いRPMでも維持される。また、これらの3つの流体条件、速度、シア応力、およびエネルギー散逸の間の同様の関係/挙動は、例えば、第1のバイオリアクター102などのより大きなバイオリアクター容積へのスケールアップ中に実質的に一致することが予測され得る。さらに、図22Cに示されるように、第2のバイオリアクター106が約100RPMで動作するとき、エネルギー散逸値は、約4.0E-3m/s~約2.0E-2m/sである。
【0160】
動力入力が増加するにつれて、速度、剪断応力、およびEDR(特に速度)についての最大値と最小値との間に大きな差が生じ得る。最大値および最小値は、実際には、バイオリアクター環境に多くの入力を提供しない。なぜなら、バイオリアクターのわずかな部分が、今までにこれらの条件を経験したことがあるからである。典型的には、バイオリアクター環境に影響を与えるのは、平均値であり、バイオリアクター102、106の高い多数のパーセントが、細胞集合体形成に悪影響を及ぼさない妥当な平均値で動作しているかどうかである。
【0161】
PSC集合体直径および対応する優れた生物学的性能に対する撹拌速度の効果は、第2のバイオリアクター106などの小規模(0.1L)の垂直ホイールバイオリアクターで実証されており、STRと比較されている。垂直ホイールインペラ120によって作り出される均質な混合環境は、撹拌型バイオリアクター(STR)における少なくとも一部の水平インペラ混合によって作り出される非均一な環境と顕著に対照的である。
【0162】
図23は、異なる撹拌速度、40RPM、60RPM、および80RPMで、図4のバイオリアクター102、106などの垂直ホイールを含むバイオリアクター、ならびに水平ブレードを含むバイオリアクターにおいて細胞を増殖させたときに得られた結果2300を例示する。より具体的には、結果2300は、約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106、および水平ブレードを有するバイオリアクターにおいて異なる撹拌速度でiPSC集合体直径および形態の比較を可能にする。
【0163】
iPSCを単一の細胞として播種し、5日間増殖させた例では、開示されたバイオリアクター102、106によって提供されるものなどの垂直ホイール混合は、水平ブレードを使用したときと比較して、集合体直径の範囲が狭く、非常により均一な集合体をもたらすことが示された。インペラホイール120のRPMと細胞集合体直径との間のこの逆相関をまた、約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用して確認した。
【0164】
図24は、エネルギー散逸率(EDR)を表すX軸2402と、容積パーセントを表すY軸2404と、を含むグラフ2400である。より具体的には、図24は、40および100rpmでの、0.1L垂直ホイールバイオリアクターおよび水平ブレードスピナーについてのこのEDR閾値リアクター下の容積パーセンテージの差を示す。
【0165】
グラフ2400は、約40RPMで約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106の動作に関連付けられた第1のライン2406、約100RPMで約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106の動作に関連付けられた第2のライン2408、約40RPMで約0.5Lの容積を有する水平ホイールバイオリアクターの動作に関連付けられた第3のライン2410、約100RPMで約0.5Lの容積を有する水平ホイールバイオリアクターの動作に関連付けられた第4のライン2412を含む。第1のライン2406は、有意な隆起(例えば、外れ値)を伴わない比較的滑らかで急な傾きの分布を有し、EDR値の大部分は、2.0E-3の前に生じ、したがって、EDR値は比較的類似しており、増殖した細胞は、類似した形状および/またはサイズを有し得る。第2、第3、および第4のライン2408、2410、2412は、より浅いラインを有し、したがって、より広い範囲のEDR値を有する。
【0166】
結果は、0.1Lバイオリアクターにおける成功したPSC集合体の増殖および一貫性が、作業容積のうちの少なくとも90%が、1.30E-2m/s以下のエネルギー散逸率を維持するときに生じることが測定されたことを示す。
【0167】
さらに図24を参照すると、40rpmにおいて、0.1Lの垂直ホイールバイオリアクター容積の約100%は、1.30E-2m/s未満であり、0.5Lの水平ブレードスピナーは、そのEDR未満で同様の99%を有する。しかしながら、100rpmでは有意差がある:垂直ホイールバイオリアクター容積の90%は、依然として1.30E-2m/s未満であるが、水平ブレードスピナーは、1.30E-2m/sEDR値未満で約28.5%を有する。これは、水平ブレードスピナーが、より高いRPMで著しく不均一なEDRを有し、PSC集合体の不均一なサイズおよび形状につながることを意味する。一例では、U字形容器内の垂直ホイール混合は、好ましい90%容積の均質なEDRを依然として維持しながら、幅広い範囲のRPMを可能にする流体力学を有する。別の言い方をすると、水平ブレードは、「複数のピーク」を伴う比較的「広範な」分布を有し、これは、集合体のサイズおよび形状の不均一な分布をもたらす(図23を参照のこと)。
【0168】
40RPMは、マイクロ担体および細胞集合体を完全に懸濁するための最小要件であり得る、約2cm/sec~約3.5cm/secの質量当たりの動力範囲よりもわずかに多くに対応する。100RPMは、典型的には、細胞培養プロセスに使用されるものの上端にあるが、それでも、水平インペラ混合が同じ撹拌速度で達成するものと比較して、非常により均質なEDR、および一貫して低い剪断応力を有する混合環境を達成する。
【0169】
図25Aは、約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用した場合のスケールアップ傾向線方程式のグラフ2502、2504、2506を示す。グラフ2502、2504、2506の各々は、撹拌速度(RPM)を表すX軸2508を有し、グラフ2502は速度を表すY軸2510を有し、グラフ2504は剪断応力を表すY軸2512を有し、グラフ2506はEDRを表すY軸2514を有する。グラフ2502、2504、2506の各々に示すように、速度、剪断応力、EDR値は、撹拌速度が増加するにつれて増加する。
【0170】
図25Bは、第2のバイオリアクター102を使用して得られた結果に関連付けられた第1のライン2522、水平ブレードスピナーを有するNDSバイオリアクターを使用して得られた結果に関連付けられた第2のライン2524、および水平ブレードスピナーを有するDasGip(登録商標)バイオリアクターを使用して得られた結果に関連付けられた第3のライン2526を含む、グラフ2516、2518、2520を示す。
【0171】
図25Aおよび25Bに示すように、剪断応力は、撹拌速度(速度)とともに直線的に増加することが確認され、一方、EDRは、速度とともに指数関数的に増加する。2種類の水平ブレードスピナーと比較すると(ライン2522をライン2524および2526と比較する)、垂直ホイールバイオリアクター106は、0.1Lスケールにおける広範囲の撹拌速度にわたって、同様またはより低い平均速度、剪断応力、およびEDRを有する。しかしながら、垂直ホイールバイオリアクター106の均一な混合環境、およびその後の均一な細胞集合体形成の優位性は、容積が規模を増大するにつれて、はるかに顕著になる。
【0172】
EDRについての容積平均値を使用して、特定の細胞培養物についての動作撹拌速度を定義することが可能である。例えば、約40rpm~約80rpmの動作を0.1Lスケールで定義することを望む場合、約5.67E-5m/s~約1.59E-3m/sの容積平均EDRで動作する。垂直ホイールバイオリアクター106内で小規模の実験を行うことにより、所与のPSC型についての閾値直径の所望の集合体を産生するEDR範囲を決定することができ、次いで、より大きなスケールでそのEDR範囲を再生成するために使用される撹拌速度を、例えば、コントローラ124を使用して計算することができる。これにより、PSC集合体が任意のサイズの垂直ホイールバイオリアクターにおいて同様または同一の混合環境を経験することが可能となり、これは、標的細胞の高い収量および品質を生じるスケーラブルなPSC製造プロセスに重要である。垂直ホイールバイオリアクターの均一な混合環境は、均一な球状細胞集合体のスケーラブルな形成を促進し、これにより、不均一な分化を回避または抑止することができる。したがって、垂直ホイールバイオリアクター102、106は、PSC集合体を高品質の標的細胞に大規模に分化させるための実行可能なツールである。
【0173】
図26Aは、エネルギー散逸率(EDR)を表すX軸2602と、容積平均エネルギー散逸率を表すY軸2604と、を含むグラフ2600である。第1のライン2606は、約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用することに関連付けられた結果を表し、第2のライン2608は、約0.5Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用することに関連付けられた結果を表し、第3のライン2610は、約3Lの容積を有する第1のバイオリアクター102を使用した結果を表し、第4のライン2612は、約15Lの容積を有する第1のバイオリアクター102を使用した結果を表す。示されるように、撹拌速度が増加するにつれて、容積平均EDR値も増加する。ライン2606、2608、2610、2612は、実験中に得られたデータ点を適合することによって生成された。したがって、各撹拌速度値および各容積平均エネルギー散逸率値についてのライン2606、2608、2610は、各サイズ格納容器104、108についての各撹拌速度が対応する容積平均EDR値を有することを可能にするために、最適適合方程式を使用して決定された。
【0174】
有利には、開示された例を使用して、異なるサイズのバイオリアクター102、106を動作させて、同様のサイズおよび/または直径を有する細胞を増殖させることができる、上位平均EDR値2614および下位平均EDR値2616を決定することができる。示される例では、ボックス2618は、閾値特性(サイズおよび/または形状)を有する細胞を増殖させ、閾値特性を有する細胞増殖を達成する異なる容積について、ボックス2618内および対応するライン2606、2608、2610、2612において撹拌速度を選択することを可能にする上位および下位EDR値2614、2616を境界とするグラフ2600に示される。
【0175】
図26Bは、格納容器104、108の容積を表すX軸2622と、撹拌速度(RPM)を表すY軸2624と、を含むグラフ2620である。示されるように、容積が増加するにつれて、撹拌速度は減少する。図26Bにおいて、第1のライン2680は、約40RPMの撹拌で開始して得られた結果を表し、第2のライン2682は、約50RPMの撹拌で開始して得られた結果を表し、第3のライン2684は、約60RPMの撹拌で開始して得られた結果を表し、第4のライン2686は、約60RPMの撹拌で開始して得られた結果を表し、第5のライン2668は、約80RPMの撹拌で開始して得られた結果を表す。
【0176】
図26Cは、撹拌速度を表すX軸2628と、平均シア応力を表すY軸2630と、を含むグラフ2626である。グラフ2626は、約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用することに関連付けられた結果を表す第1のライン2606を含み、第2のライン2608は、約0.5Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用することに関連付けられた結果を表し、第3のライン2610は、約3Lの容積を有する第1のバイオリアクター102を使用した結果を表し、第4のライン2612は、約15Lの容積を有する第1のバイオリアクター102を使用した結果を表す。示されるように、撹拌速度が増加するにつれて、剪断応力も増加する。
【0177】
図26Dは、撹拌速度を表すX軸2634と、容積平均速度を表すY軸2636と、を含むグラフ2632である。グラフ2626は、約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用することに関連付けられた結果を表す第1のライン2606を含み、第2のライン2608は、約0.5Lの容積を有する第2のバイオリアクター106を使用することに関連付けられた結果を表し、第3のライン2610は、約3Lの容積を有する第1のバイオリアクター102を使用した結果を表し、第4のライン2612は、約15Lの容積を有する第1のバイオリアクター102を使用した結果を表す。示されるように、撹拌速度が増加するにつれて、平均速度も増加する。
【0178】
図26Eは、撹拌速度を表すX軸2640と、容積パーセントを表すY軸2636と、を含むグラフ2638である。図26Fは、図26Eのグラフ2638の一部分のより詳細な図を示す。グラフ2638は、ホイール120が約60RPMで回転するときに約0.1Lの容積を有するバイオリアクター102、106を使用することに関連付けられた結果を表す第1のライン2644、ホイール120が約30RPMで回転するときに約0.5Lの容積を有するバイオリアクター102、106を使用することに関連付けられた結果を表す第2のライン2646、ホイール120が約20RPMで回転するときに約3Lの容積を有するバイオリアクター102を使用した結果を表す第3のライン2648、およびホイール120が約13RPMで回転するときに約15Lの容積を有するバイオリアクター102、106を使用した結果を表す第4のライン2650を含む。グラフ2638はまた、ホイール120が約40RPMで回転するときに約0.5Lの容積を有するバイオリアクター102、106を使用した結果を表す第5のライン2655も含む。
【0179】
示される例では、ライン2644、2646、2648、2650の各々は、バイオリアクター102、106における懸濁液の体積内の実際のEDRデータ点を含み、ライン2644、2646、2648、2650の急な負の傾きに基づいて、実際のEDR点の大部分の大きさは、約0.0015m/s未満のEDR値を有する(参照番号2650を参照のこと)。例えば、第1のライン2644について、EDR値の約97.57%は、約6.1E-04m/s(参照番号2652を参照のこと)~約1.5E-03m/s(参照番号2654を参照のこと)に配置される。97.57%の値は、約6.1E-04m/sでの91.51容積パーセント値と、約1.5E-03m/sでの6.06%値を加えることによって決定される。第1のライン2644について、EDR値の約97.57%は、約6.1E-04m/s(参照番号2652を参照のこと)~約1.5E-03m/s(参照番号2654を参照のこと)に配置される。第2のライン2646について、EDR値の約80.78%は、約6.1E-04m/s~約1.5E-03m/sに配置される。第3のライン2648について、EDR値の約91.98%は、約6.1E-04m/s~約1.5E-03m/sに配置される。第4のライン2650について、EDR値の約87.18%は、約6.1E-04m/s~約1.5E-03m/sに配置される。
【0180】
以下の表1は、開示された実施態様を使用した実験から得られたデータを含む。表に示すように、約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106が約60RPMで動作するとき、EDR値の約97.57%が、約0.0m/s~約1.5E-03m/sに配置され、約0.5Lの容積を有する第2のバイオリアクター106が約30RPMで動作するとき、EDR値の約80.78%が、約0.0m/s~約1.5E-03m/sに配置され、約0.5Lの容積を有する第2のバイオリアクター106が約40RPMで動作するとき、EDR値の約62.21%が、約0.0m/s~約1.5E-03m/sに配置され、約3.0Lの容積を有する第1のバイオリアクター102が約20RPMで動作するとき、EDR値の約91.98%が、約0.0m/s~約1.5E-03m/sに配置され、約15Lの容積を有する第1のバイオリアクター102が約13RPMで動作するとき、EDR値の約87.18%が、約0.0m/s~約1.5E-03m/sに配置される。
【0181】
さらに、表に示すように、約0.1Lの容積を有する第2のバイオリアクター106が約60RPMで動作するとき、EDR値の約99.80%が、約0.0m/s~約1.0E-02m/sに配置され、約0.5Lの容積を有する第2のバイオリアクター106が約30RPMで動作するとき、EDR値の約95.38%が、約0.0m/s~約1.5E-03m/sに配置され、約0.5Lの容積を有する第2のバイオリアクター106が約40RPMで動作するとき、EDR値の約87.72%が、約0.0m/s~約1.5E-03m/sに配置され、約3.0Lの容積を有する第1のバイオリアクター102が約20RPMで動作するとき、EDR値の約99.14%が、約0.0m/s~約1.5E-03m/sに配置され、約15Lの容積を有する第1のバイオリアクター102が約13RPMで動作するとき、EDR値の約96.88%が、約0.0m/s~約1.5E-03m/sに配置され、約0.5Lの容積を有する第2のバイオリアクター106が約40RPMで動作するとき、EDR値の約62.21%が、約0.0m/s~約1.5E-03m/sに配置される。
【表1】
【0182】
いくつかの実施態様では、第2のバイオリアクター106が、例えば、約40RPMで動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約60%は、約1.5E-03m/s未満であり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。例えば、1つのバージョンでは、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、EDR値のうちの約62.21%は、約1.5E-03m/s未満であり、より具体的には、約3.0E-04m2/s3~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約20%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約20%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約25%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約25%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約30%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約30%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約35%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約35%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約40%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約40%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約45%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約45%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約50%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約50%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約55%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約55%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約60%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約60%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約65%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約65%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約70%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約70%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約75%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約75%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約80%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約80%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約85%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約85%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約90%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約99%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約95%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約95%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約97%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、約97%~約99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。他の実施態様では、第2のバイオリアクターが動作するとき、EDR値のうちの少なくとも約99%は、約1.5E-03m/s未満であるか、または例えば、第2のバイオリアクター106が、約40RPMで動作するとき、EDR値のうちの少なくとも99%は、約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/sであり、その間、同様のサイズおよび/または形状を有する細胞を増殖させることができる。
【0183】
より一般的に、複数の実際のEDRデータ点のうちの少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の大きさは、約0.0015m/s未満である。他の実施態様では、第2のバイオリアクターの動作中の第2のバイオリアクターにおける、(a)約0.0015m/s未満、(b)約0.002m/s未満、(c)約0.0025m/s未満、または(d)約0.003m/s未満である実際のEDRデータ点のパーセンテージは、約60%~約99%、約60%~約97%、約60%~約95%、約60%~約90%、約60%~約85%、約60%~約80%、約60%~約75%、約60%~約70%、約60%~約65%、約65%~約99%、約65%~約97%、約65%~約95%、約65%~約90%、約65%~約85%、約65%~約80%、約65%~約75%、約65%~約70%、約70%~約99%、約70%~約97%、約70%~約95%、約70%~約90%、約70%~約85%、約70%~約80%、約70%~約75%、約75%~約99%、約75%~約97%、約75%~約95%、約75%~約90%、約75%~約85%、約75%~約80%、約80%~約99%、約80%~約97%、約80%~約95%、約80%~約90%、約80%~約85%、約85%~約99%、約85%~約97%、約85%~約95%、約85%~約90%、約90%~約99%、約90%~約97%、約90%~約95%、約95%~約99%、または約95%~約97%の範囲である。
【0184】
他の実施態様では、第2のバイオリアクターの動作中の第2のバイオリアクターにおける、(a)約3.0E-04m/s~約1.5E-03m/s、(b)約3.0E-04m/s~約0.002m/s、(c)約3.0E-04m/s~0.0025m/s3、または(d)約3.0E-04m/s~約0.003m/sである実際のEDRデータ点のパーセンテージは、約60%~約99%、約60%~約97%、約60%~約95%、約60%~約90%、約60%~約85%、約60%~約80%、約60%~約75%、約60%~約70%、約60%~約65%、約65%~約99%、約65%~約97%、約65%~約95%、約65%~約90%、約65%~約85%、約65%~約80%、約65%~約75%、約65%~約70%、約70%~約99%、約70%~約97%、約70%~約95%、約70%~約90%、約70%~約85%、約70%~約80%、約70%~約75%、約75%~約99%、約75%~約97%、約75%~約95%、約75%~約90%、約75%~約85%、約75%~約80%、約80%~約99%、約80%~約97%、約80%~約95%、約80%~約90%、約80%~約85%、約85%~約99%、約85%~約97%、約85%~約95%、約85%~約90%、約90%~約99%、約90%~約97%、約90%~約95%、約95%~約99%、または約95%~約97%の範囲である。
【0185】
他の実施態様では、複数の実際のEDRデータ点のうちの少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の大きさは、約0.002m/s未満、約0.0025m/s未満、または約0.003m/s未満のエネルギー散逸率の値を有する。
【0186】
図27は、撹拌速度を表すX軸2656と、容積パーセントを表すY軸2658と、を含むグラフ2654である。グラフ2638は、約60RPMで回転するホイールとともに約0.5Lの容積を有するバイオリアクターを使用することに関連付けられた結果を表す第1のライン2660を含む。バイオリアクターは、水平バイオリアクターまたは垂直バイオリアクターであってもよい。示されるように、第1のライン2660の傾きは、図26Eのライン2644、2646、2648、2650の傾きと比較して比較的緩やかであり、ボックス2614の外側にある撹拌速度(図26Aを参照のこと)に関連付けられる。したがって、60RPMの撹拌速度で、このようなバイオリアクター内で増殖した細胞は、同様の形状および/またはサイズを有しない場合がある。
【0187】
図28は、閾値範囲内の目標VA EDRを有すること、ならびに約1.5E-03m/sの上限閾値を下回るEDR値の大部分または少なくとも一部を有することの組み合わせによって得られた生物学的結果3100を示す。この結果では、第1の行3102および第2の行3102は、第2のバイオリアクター106を使用する2つの異なる容積で約6.1E-04m/sの所望の目標VA EDRを達成するための撹拌速度を示す。視覚的に、1日目からでも、集合体のサイズおよび形状の分布が類似している。第3の行3106は、約1.4E-03m/sの異なる目標VA EDR、および0.5Lバイオリアクター内の対応して、より高い撹拌速度を表す。最初は、1日目に、集合体は比較的小さいサイズであるが、3日目以降に、集合体は、より低い目標VA EDRで形成されたもの(それは依然として閾値範囲内である)に類似するように見える。第4の行3108は、閾値範囲の外側(未満)にある、約1.4E-04m/sの目標VA EDRの例である。閾値範囲の外側にある結果として、集合体は、サイズおよび/または形状においてより多くの変動を有し、7日目以降、集合体は、液体中で懸濁することができないか、または懸濁する傾向がより少ないほど一緒に凝集している。また、バイオリアクター容積および撹拌速度の各組み合わせについて、閾値範囲内に収まるすべてのEDR値について対応する%が存在する(それぞれ、行1、2、3について、約98%、81%、62%)。同様のサイズおよび形状の集合体の均一または実質的に均一な分布は、これらの3つすべての流体力学的条件を使用して達成した。
【0188】
図29Aは、時間を日数で表すX軸2802と、生存細胞をmLで表すY軸2804と、を含むグラフ2800である。グラフ2800は、ホイール120が約60RPMで回転するときに約0.1Lの容積を有するバイオリアクター102、106を使用することに関連付けられた結果を表す第1のライン2806、ホイール120が約30RPMで回転するときに約0.5Lの容積を有するバイオリアクター102、106を使用することに関連付けられた結果を表す第2のライン2808、およびホイール120が約40RPMで回転するときに約0.5Lの容積を有するバイオリアクター102、106を使用することに関連付けられた結果を表す第3のライン2810を含む。示されるように、日数が増加するにつれて、生存細胞の数も増加する。
【0189】
図29Bは、図29Aと関連して行われた実験からの結果を表すグラフ2850であり、第2のバイオリアクター106のホイール120が動作した撹拌速度を表すX軸2852と、平均7日目の集合体直径を表すy軸2854と、を含む。有利には、示されるように、異なる撹拌速度で第2のバイオリアクター106を使用して増殖した細胞の直径は、比較的類似しており、約270ミクロン~約320ミクロンである。
【0190】
図29Cは、図28Aおよび28Bに関連して行われた実験からの結果を表す画像結果2900である。示されるように、画像2902、2904、および2906は、各々、細胞が7日間増殖した後に実質的に類似した形状および/またはサイズを有する細胞2908を有する。結果2900は、集合体が平均直径において統計的に類似しており、単一の標準偏差のエラーバーが重複していることを示す。
【0191】
上述の概念および以下でより詳細に論じられる追加の概念のすべての組み合わせ(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件とする)は、本明細書に開示される主題の一部として企図されることを理解されたい。特に、本開示の最後に現れる特許請求される主題のすべての組み合わせは、本明細書に開示される主題の一部として企図される。
図1
図2
図3
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図9A
図9B
図10
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図18
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図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図22C
図23
図24
図25A
図25B
図26A
図26B
図26C
図26D
図26E
図26F
図27
図28
図29A
図29B
図29C
【国際調査報告】