(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】リン酸塩含有防錆顔料
(51)【国際特許分類】
C09C 1/02 20060101AFI20230420BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
C09C1/02
C01B25/45 D
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022534347
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2020084914
(87)【国際公開番号】W WO2021116030
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】102019134205.8
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020107797.1
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504098118
【氏名又は名称】ケミッシュ ファブリーク ブーデンハイム カーゲー
【氏名又は名称原語表記】CHEMISCHE FABRIK BUDENHEIM KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】フッテラー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッセムボルスキー、リーディガー
(72)【発明者】
【氏名】モスケル、セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】メンゲル、ジーグフリート
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア マティネズ、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】リテルシェイト、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バッハ、スベン
(72)【発明者】
【氏名】マルマン、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】エアバッハ、ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ショーラー、ミケル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルムター、ヘンドリク
(72)【発明者】
【氏名】ファスベンダー、バージット
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA09
4J037AA10
4J037AA30
4J037CA11
4J037CA22
4J037DD05
4J037DD27
4J037EE35
4J037EE43
4J037EE46
4J037EE47
4J037FF24
(57)【要約】
本発明は、リン酸塩含有防錆顔料の製造方法と、この方法により得られるリン酸塩含有防錆顔料と、腐食に対するパッシブ保護のためのリン酸塩含有防錆顔料の使用とに関する。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ヒドロキシアパタイト又はリン酸カルシウム-マグネシウムの粒子又はそれらの混合物を、出発粒子として水性溶媒又は分散剤中に加える工程と、
b)石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を前記水性溶媒又は分散剤に添加して、反応混合物を生成する工程と、
c)前記反応混合物を、20℃~105℃の範囲内の温度且つ6.0~13.0の範囲内のpH値で反応させて、リン酸塩含有防錆顔料を形成する工程と、
d)前記リン酸塩含有防錆顔料の少なくとも一部を、前記水性溶媒又は分散剤から分離する工程と、
e)任意選択的に:前記リン酸塩含有防錆顔料を乾燥させる工程と
を含む、リン酸塩含有防錆顔料の製造方法。
【請求項2】
方法サイクルが作られるように、前記方法工程a)~d)を少なくとも一度、好適には少なくとも三度繰り返し、
方法工程a)において、前記ヒドロキシアパタイト粒子の代わりに、
1)方法工程d)において前記水性溶媒又は分散剤から分離された一部の前記リン酸塩含有防錆顔料、又は
2)方法工程d)において前記水性溶媒又は分散剤中に残った一部の前記リン酸塩含有防錆顔料
を前記出発粒子として使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マグネシウム化合物が、マグネシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はリン酸塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)の前に、前記マグネシウム化合物を前記リン酸中に溶解又は分散させることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程c)における前記反応が、≧90℃、好適には≧100℃の範囲内の温度で行われることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヒドロキシアパタイト出発粒子、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を介して添加される塩素及び/又は硫酸塩の含有量が≦500ppmであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、
f
1)半連続的なオペレーションで実施され、方法工程d)において分離され乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部の前記リン酸塩含有防錆顔料が常にプロセスから除外され、一方でその残りが再び方法工程a)において前記水性溶媒又は分散剤中に懸濁される、又は、
f
2)完全に連続的なオペレーションで実施され、方法工程d)において、乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部の前記リン酸塩含有防錆顔料が連続的に分離されて前記方法サイクルから除外され、一方でその残りが前記方法サイクルに残り続けることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)において、前記石灰乳、前記マグネシウム化合物、及び前記リン酸が、少なくとも部分的に同時に添加されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リン酸が、5-25vol.%の濃度を有する含水希リン酸であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酸化物系石灰乳(CaO)が、前記石灰乳の総重量に対して、2-20wt%の濃度を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1-10のいずれか一項に記載の方法により得られるリン酸塩含有防錆顔料において、密度が>5g/cm
3の金属を≦1原子%含むことを特徴とする、リン酸塩含有防錆顔料。
【請求項12】
乾燥させた前記リン酸塩含有防錆顔料の酸化物系マグネシウムの割合(MgO)が2-15wt%であり、「乾燥させた」とは、残留含水量が≦1wt%であることを意味すると理解されることを特徴とする、請求項11に記載のリン酸塩含有防錆顔料。
【請求項13】
比表面積が≦50m
2/g、好適には≦30m
2/gであることを特徴とする、請求項11又は12に記載のリン酸塩含有防錆顔料。
【請求項14】
DIN EN ISO 787-5に従って算出されるオイル吸収値が≦40g/100g、好適には≦30g/100gであることを特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載のリン酸塩含有防錆顔料。
【請求項15】
比表面積が≦50m
2/g、好適には≦30m
2/gであるリン酸カルシウム-マグネシウム粒子を含むリン酸塩含有防錆顔料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸塩含有防錆顔料の製造方法と、この方法により得られるリン酸塩含有防錆顔料と、パッシブ腐食防止のためのリン酸塩含有防錆顔料の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品の大気中腐食を防止するために、金属部品を塗装するためのコーティング剤には、防錆顔料が通常添加される。現在、亜鉛末及びリン酸亜鉛が、最も重要な防錆顔料である。
【0003】
しかしながら、これらの重金属含有防錆顔料の使用は、生態系への懸念、特にその化合物の水毒性のためにますます制限されており、重金属の量がより少ない、あるいは重金属を全く含まない防錆顔料を提供する初期の試みが既になされている。
【0004】
例えば、特開平05-43212号公報は、腐食防止用のリン酸塩含有顔料であって、アパタイトと他の難溶性金属リン酸塩とを含み、難溶性金属リン酸塩が、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、セリウム、ニッケル、錫、銅、又はアルミニウムのリン酸塩又はピロリン酸塩からなる群から選択される、顔料に関する。その顔料を製造するために、まず、アパタイトを、石灰乳及びリン酸の混合物から析出させることにより、サブμmの範囲内の一次粒子径を有するアパタイト粉体を得る。続いて、そのアパタイト粉体を、ヘンシェルミキサー内で、難溶性金属リン酸塩と物理的に混合する。
【0005】
アパタイト粉体及び難溶性金属リン酸塩は、単に物理的に混合されるだけなので、顔料における難溶性金属リン酸塩の分布が不均一となる。従って、様々な金属リン酸塩の協働により得られる相乗効果の程度が限定される。更に、アパタイト粉体及び難溶性金属リン酸塩は溶解度が異なるため、顔料の個々の領域が水と反応してより早く溶解することにより、顔料を含むコーティング層が急速に多孔質化しうる。
【0006】
他の例として、独国特許出願公開第19807808号明細書には、Ca(OH)2、Mg(OH)2、及びリン酸を原料とする防錆顔料の製造が記載されている。これら3つの成分は、水中に懸濁されて60℃で1.5時間攪拌され、それにより得られた生成物をろ過する。同時に析出させることによって、様々な金属イオンの均質な分布をもつ混合金属リン酸塩が得られる。
【0007】
しかしながら、混合金属リン酸塩含有防錆顔料の使用には様々な金属の均一な分布が必要なだけではなく、リン酸塩含有防錆顔料を可能な限り高い濃度でコーティング中に導入できることが更に望ましい。そのために、防錆顔料は、そのオイル吸収値が、可能な限り低くなくてはならない。
【0008】
オイル吸収値又はオイル吸収は、重要な顔料特性であり、分散時の顔料の挙動を示すものである。要求オイル量は、固い非流動性のパテ状ペーストを実現するために試験される規定量の粉体を湿らせるためのオイルの量を示す。オイル吸収値が高いほど、コーティング中に防錆顔料を均一に分散させるために必要となるオイルが多くなる。これは、オイル吸収値が高い場合、少量の防錆顔料しかコーティングに導入できないことを意味する。オイル吸収値は、DIN EN ISO 787-5に従って算出される。原則として、比表面積が増加するにつれて、同量の防錆顔料を分散させるためにより多くのオイルが必要となる。すなわち、オイル吸収値が増加する。
【0009】
しかしながら、従来の析出反応によって生成される上記リン酸塩含有防錆顔料は、サブμmの範囲内の、非常に微細な、針形状の一次粒子を含むため、その比表面積は、10m2/gを大きく超える。その結果、それにより得られるリン酸塩含有防錆顔料は、>30g/100g、通常は有意に>40g/100gという比較的高いオイル吸収値を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平05-43212号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第19807808号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記に鑑み、本発明の目的は、先行技術において既知の防錆顔料よりも低いオイル吸収値を有するリン酸塩含有防錆顔料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、
a)ヒドロキシアパタイト又はリン酸カルシウム-マグネシウムの粒子又はそれらの混合物を、出発粒子として水性溶媒又は分散剤中に加える工程と、
b)石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を前記水性溶媒又は分散剤に添加して、反応混合物を生成する工程と、
c)前記反応混合物を、20℃~105℃の範囲内の温度且つ6.0~13.0の範囲内のpH値で反応させて、リン酸塩含有防錆顔料を形成する工程と、
d)前記リン酸塩含有防錆顔料の少なくとも一部を、前記水性溶媒又は分散剤から分離する工程と、
e)任意選択的に:前記リン酸塩含有防錆顔料を乾燥させる工程と
を含む、リン酸塩含有防錆顔料の製造方法を提供することによって実現される。
【0013】
工程a)
前記反応の第一工程において、ヒドロキシアパタイト粒子又はリン酸カルシウム-マグネシウム粒子又はそれらの混合物を、出発粒子として水性溶媒又は分散剤中に加える。「ヒドロキシアパタイト」という用語は、少なくとも95wt%のCa5(PO4)3OH並びにカルシウム欠乏ヒドロキシルアパタイトを含む粉体材料、すなわち、式Ca10-x(PO4)6-x(HPO4)x(OH)2-x(式中、0<x≦2)の材料を少なくとも95wt%含む粉体材料を含む。従って、この用語は、その粒子が100wt%の純粋なヒドロキシアパタイト及び/又は純粋なカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイトからなる粉体だけではなく、例えば、Ca5(PO4)3OH及び/又はCa10-x(PO4)6-x(HPO4)x(OH)2-x(式中、0<x≦2)の総割合が粉体の少なくとも95wt%である限りにおいて、例えばドロマイトを有しつつ純粋なヒドロキシアパタイト又は純粋なカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイト固体結晶を所定の割合で含む粉体も含む。
【0014】
本発明に係る好適なヒドロキシアパタイト粉体は、少なくとも95wt%、好適には少なくとも97wt%、より好適には少なくとも98wt%、最も好適には少なくとも99wt%のCa5(PO4)3OH及び/又はCa10-x(PO4)6-x(HPO4)x(OH)2-x(式中、0<x≦2)からなる。
【0015】
出発粒子は、反応工程c)の反応生成物がその上にリン酸カルシウム-マグネシウム層として成長する結晶核として働く。成長前に、出発粒子は、概して、<0.1μmの粒径中央値、200~350g/Lの範囲内のバルク密度、>5のアスペクト比、及び15~50m2/gの範囲内の比表面積を有する。成長することにより、中央値がより高く且つアスペクト比がより低い一次粒子が得られる。
【0016】
粒径中央値は、DIN ISO 13320-1に従って、レーザー散乱分析を用いて算出しうる。第一寸法における粒子の最大平均度の、第二寸法における粒子の最小平均度に対する比率を表すアスペクト比は、光学分析により算出しうる。この場合、第一寸法における粒子の最大度及び第二寸法における粒子の最小度を、走査型電子顕微鏡の下で粉体の一部に対して測定し、それらの値の統計平均(算術平均)を用いて比率を得る。
【0017】
本発明の好適な実施形態において、出発粒子は、>10wt%、より好適には>15wt%、更により好適には>20wt%、最も好適には>25wt%の濃度で溶媒又は分散剤に加えられる。出発粒子が高い濃度であると、工程c)において、溶媒又は分散剤中に析出することなく出発粒子上に成長することで生じるリン酸塩含有防錆顔料の割合を出来るだけ高くできる。その結果、本発明に伴う利点を最大化できる。
【0018】
アスペクト比を好適には<5の範囲内に減少させ且つ/又は粒径中央値を好適には>0.1μmの範囲内に大きくすることによって、リン酸塩含有防錆顔料の比表面積を大きく減少させられる。リン酸塩含有防錆顔料の比表面積は、好適には≦10m2/g、より好適には≦8m2/g、最も好適には≦7m2/gである。
【0019】
その総重量に対して、水性溶媒又は分散剤は、水を少なくとも20%、好適には少なくとも40%、特に好適には少なくとも50%、より好適には少なくとも70%、最も好適には少なくとも90%含む。更なる実施形態において、水性溶媒又は分散剤は、水からなる。溶媒又は分散剤は、更なる構成要素として、(多価)アルコール類又はアミン類等の極性有機溶媒を含んでもよい。更なる構成要素として特に好適なのは、多価アルコール類である。
【0020】
比表面積は、DIN ISO 9277に従って、窒素の吸収に基づくBET測定によって算出される。既に述べたように、本発明に係るリン酸塩含有防錆顔料において、可能な限り比表面積が小さい方が、オイル吸収値を出来るだけ低く維持するために望ましく有利である。
【0021】
工程b)
本発明によれば、方法工程b)において、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を連続的に添加してもよいが、反応物を添加する時間間隔は出来るだけ短くすべきである。
好適には、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸は、水性溶媒又は分散剤に対して少なくとも部分的に同時に添加され、マグネシウム化合物は好適には、水性溶媒又は分散剤中に溶解又は懸濁されるように添加される。これにより、ヒドロキシアパタイト出発粒子上に成長させたリン酸カルシウム-マグネシウム層においてカルシウム及びマグネシウムを均一に分布させられる。特に好適なのは、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を略完全に同時に添加することである。これは、工程b)において添加される各成分の質量の≧95%が同時に添加されることを意味する。
【0022】
本発明の一実施形態において、工程b)における添加は、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸がそれぞれ別々に出発粒子の懸濁液に添加されることによって行うことができる。この場合、マグネシウム化合物は、特に好適には水性分散系として添加される。添加は、好適には少なくとも部分的に又は略完全に同時に行われる。この文脈において、略完全に同時にとは、各成分の添加質量の≧95%が同時に添加されることを意味する。
【0023】
本発明の更なる実施形態において、マグネシウム化合物は、出発粒子の懸濁液への添加前に、石灰乳中に溶解又は懸濁させて、石灰乳及びマグネシウム化合物が一緒に出発粒子の懸濁液に添加されるようにする。これによって、防錆顔料において、出発粒子上に成長させたリン酸カルシウム-マグネシウム層におけるカルシウム及びマグネシウムを均一に分布させられる。
【0024】
本発明の更なる実施形態において、マグネシウム化合物は、出発粒子の懸濁液への添加前に、リン酸中に溶解又は懸濁させて、マグネシウム化合物及びリン酸が一緒に出発粒子の懸濁液に添加されるようにする。これは、マグネシウム化合物が、出発粒子の懸濁液への添加中既に均一に分布しているため、出発粒子上に成長させたリン酸カルシウム-マグネシウム層においてカルシウム及びマグネシウムが均一に分布するという利点がある。
【0025】
本発明の更なる実施形態において、石灰乳は、出発粒子の懸濁液への添加前に、リン酸中に溶解又は懸濁させて、石灰乳及びリン酸が一緒に出発粒子の懸濁液に添加されるようにする。この実施形態では、マグネシウム化合物が、出発粒子の懸濁液への添加中に既に均一に分布しているため、出発粒子上に成長させたリン酸カルシウム-マグネシウム層においてカルシウム及びマグネシウムが均一に分布するという利点がある。
【0026】
工程c)
石灰乳のリン酸との反応は、均一且つ可能な限り制御されるべきである。従って、本発明の実現のために、反応混合物における温度が20℃から105℃までの温度であることが非常に重要である。本発明の好適な実施形態において、工程c)における反応は、60~105℃の範囲内、好適には80~105℃の範囲内、より好適には90~105℃の範囲内、最も好適には100~105℃の範囲内の温度で行われる。
【0027】
本発明の実現のために、pH値が6.0~13.0の範囲内にあることも非常に重要である。pH値<6.0で、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)又はリン酸水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)が析出する。本発明の好適な実施形態において、工程c)におけるpH値は、pH11.0を超える所定の条件下ではCa(OH)2がマイナー相として増えるため、7.0~11.0の範囲内である。本発明の他の実施形態において、工程c)は、pH9.0を超える所定の条件下ではCa(OH)2の含有が少なくとも部分的に生じうるため、7.0~9.0の範囲内のpH値で行われる。
【0028】
本発明の所定の実施形態において、工程c)における反応は、大気圧下で実施される。しかしながら、望ましい場合には、その作業は、好適には1バールの正圧までの、わずかに増圧した圧力で行われてもよい。
【0029】
工程d)
本発明に係る方法の工程d)において、リン酸塩含有防錆顔料の少なくとも一部を、懸濁液から分離する。これは、一般的な分離方法を用いて行うことができる。特に好適には、分離方法は、ろ過、蒸留、遠心分離、沈殿、及び浮上からなる群から選択される。
【0030】
本発明の好適な実施形態において、分離されたリン酸塩含有防錆顔料を、水又は水性溶媒で洗浄する。
【0031】
工程e)
工程e)において、懸濁液から分離されたリン酸塩含有防錆顔料を乾燥させる。これは、好適には対流乾燥、マイクロ波乾燥、噴霧乾燥、又は真空乾燥からなる群から選択される一般的な乾燥方法を用いて行われる。
【0032】
本発明で主張される利点は、方法工程a)~d)又はa)~e)を一度繰り返すだけで既に実現される。しかしながら、これらの方法工程を、少なくとも二回、好適には少なくとも三回、最も好適には少なくとも五回繰り返すことで、より良好な結果が実現できる。その結果、出発粒子上での成長の度合いが増し、中央値がより高い且つ/又はアスペクト比がより低いリン酸塩含有防錆顔料が得られる。これにより、リン酸塩含有防錆顔料は、より低い比表面積、ひいてはより低いオイル吸収値を有することになる。成長プロセスを繰り返すことによって、当業者であれば、顔料の比表面積及びオイル吸収値を更に低減することができる。
【0033】
本発明の好適な実施形態において、リン酸塩含有防錆顔料の一次粒子の中央値は、>0.10μm、好適には>0.15μm、特に好適には>0.20μm、最も好適には>0.25μmである。
【0034】
本発明の好適な実施形態において、リン酸塩含有防錆顔料の一次粒子のアスペクト比は、<5、好適には<4、特に好適には<3、最も好適には<2である。
【0035】
成長工程を数回繰り返すことによって、より高い程度の成長が実現される。すなわち、リン酸塩含有防錆顔料の総割合における出発粒子の割合が減り、本発明による利点が高められる。
【0036】
本発明の好適な実施形態において、方法工程a)~d)又はa)~e)は、リン酸塩含有防錆顔料における出発粒子の割合が<50wt%、好適には<40wt%、より好適には<30wt%、最も好適には<25wt%となるまで繰り返される。この繰り返しは、出発粒子がヒドロキシアパタイトからなる、又は、出発粒子中のヒドロキシアパタイトの重量割合が>50%、好適には>70%、より好適には>80%、最も好適には>90%である場合、特に好適である。
【0037】
本発明の好適な実施形態において、マグネシウム化合物は、マグネシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はリン酸塩からなる群から選択され、リン酸塩は、縮合リン酸塩、ピロリン酸塩、及び縮合ピロリン酸塩も含む。
【0038】
本発明の好適な実施形態において、ヒドロキシアパタイト出発粒子、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸の添加される塩素及び/又は硫酸塩の含有量は、≦1000ppm、好適には≦500ppmである。塩素イオン及び硫酸塩イオンは、金属部品の腐食プロセスを促進するため、腐食防止の効果を弱める。従って、リン酸塩含有防錆顔料中の塩素イオン及び硫酸塩イオンの含有量は、可能な限り低く保つべきである。
【0039】
本発明の一実施形態において、この方法は、半連続的なオペレーションで実施され、方法工程d)において分離され乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部のリン酸塩含有防錆顔料が常にプロセスから除外され、一方でその残りが再び方法工程a)において水性溶媒又は分散剤中に懸濁される。
【0040】
本発明の他の実施形態において、この方法は、完全に連続的なオペレーションで実施され、方法工程d)において、乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部のリン酸塩含有防錆顔料が連続的に分離されて方法サイクルから除外され、一方でその残りが方法サイクルに残り続ける。その連続的な分離及び除外は、好適にはラメラシックナー(lamella thickener)又は遠心分離機(例えば:反転型遠心分離機又は押出排出型遠心分離機)により行われる。
【0041】
所定の実施形態において、中央値が<0.1μmの出発粒子が方法工程a)において使用され、その一次粒子の中央値が>0.10μmであり且つアスペクト比が<5であるリン酸塩含有防錆顔料を得るために、方法工程a)~d)又はa)~e)は少なくとも一度繰り返され、リン酸塩含有防錆顔料の比表面積は≦10m2/gであり、バルク密度は>550g/Lである。
【0042】
本発明の特定の実施形態において、この方法は、連続的なオペレーションで実施され、方法工程d)において分離され、その一次粒子の中央値が>0.10μmであり且つアスペクト比が<5であると共に比表面積が≦10m2/gであり且つバルク密度が>550g/Lである一部のリン酸塩含有防錆顔料がプロセスから除外され、一方でその残りが、その後の繰り返される方法工程b)~e)が実施されるように、再び方法工程a)において水性溶媒又は分散剤中に懸濁される。
【0043】
本発明に係る方法の反応物の一つは、リン酸(H3PO4)である。所定の実施形態において、使用されるリン酸は、水中のリン酸の濃度が5~25vol.%である希リン酸である。リン酸濃度が低いと、出発粒子上での成長に好ましいが、同時に反応混合物の内容量がより多くなる。従って、所定の実施形態において、使用されるリン酸の濃度は、水中のリン酸が10~25vol.%の範囲内、より好適には水中のリン酸が15~25vol.%の範囲内である。
【0044】
本発明に係る方法の第二の反応物は、石灰乳(水中にCa(OH)2を含む懸濁液)である。本発明の所定の実施形態において、酸化物系石灰乳が、Ca(OH)2及び水の総重量に対して、2~20wt%の濃度を有する。より好適には、石灰乳は、8~12wt%の濃度を有する。
【0045】
本発明に係る方法の第三の反応物は、マグネシウム化合物である。マグネシウム化合物が溶媒又は分散剤に添加される場合、酸化物系化合物が、マグネシウム化合物及び溶媒又は分散剤の総重量に対して2~20wt%の濃度を有する。より好適には、マグネシウム化合物は、8~12wt%の濃度を有する。
【0046】
本発明はまた、本発明に係る方法により得ることができるリン酸塩含有防錆顔料であって、密度が>5g/cm3の金属を≦1原子%未満有するリン酸塩含有防錆顔料に関する。このような金属は、「Fachkundebuch Metall」,56th edition,Europa Lehrmittel,p.268:Table 1:Classification of non-ferrous metalsによる「重金属」の定義に該当する。このような金属は、例えば、銅、鉄、又は亜鉛を含む。環境的側面のために、リン酸塩含有防錆顔料におけるそのような金属の含有量は可能な限り低く保たれねばならない。
【0047】
本発明の好適な実施形態において、密度が>5g/cm3の金属の含有量は、≦0.5原子%、特に好適には≦0.2原子%、最も好適には≦0.1原子%である。
【0048】
既に述べたように、塩素イオン及び硫酸塩イオンは金属部品の腐食プロセスを促進するため、リン酸塩含有防錆顔料中のこれらのイオンの含有量も可能な限り低く保たれねばならない。
【0049】
従って、本発明の好適な実施形態において、リン酸塩含有防錆顔料の塩素の重量割合は、≦1000ppm、好適には≦500ppm、より好適には≦300ppm、最も好適には≦150ppmである。
【0050】
本発明の好適な実施形態において、リン酸塩含有防錆顔料の硫酸塩の重量割合は、≦1000ppm、好適には≦500ppm、より好適には≦300ppm、最も好適には≦150ppmである。
【0051】
本発明の好適な実施形態において、リン酸塩含有防錆顔料の塩素及び硫酸塩の重量割合は、≦1000ppm、好適には≦500ppm、より好適には≦300ppm、最も好適には≦150ppmである。
【0052】
リン酸塩含有防錆顔料の塩素及び硫酸塩の重量割合は、出発粒子、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸の添加される塩素及び/又は硫酸塩の含有量により制御することができる。塩素及び硫酸塩の含有量は、原子吸光分析(AAS)やX線蛍光分析(XRF)等の一般的な元素分析技術により検出できる。
【0053】
本発明の好適な実施形態において、乾燥させたリン酸塩含有酸化物系防錆顔料のマグネシウムの総割合は、2-15wt%、より好適には2-9wt%、更により好適には3-8wt%、最も好適には4-7wt%である。この場合、「乾燥させた」とは、残留含水量が≦1wt%であることを意味する。リン酸塩含有防錆顔料中のマグネシウムは、カルシウムよりも高い水溶性を有するため、部品を保護するリン酸塩層が、より速くコーティング層となることができる。従って、有利には、リン酸塩含有防錆顔料のマグネシウムの総割合は、少なくとも2wt%、好適には少なくとも3wt%、更により好適には少なくとも4wt%、最も好適には少なくとも5wt%である。
【0054】
本発明の好適な実施形態において、出発粒子は、<2wt%、好適には<1wt%の割合でMgOで表されるマグネシウムを有し、リン酸塩含有酸化物系防錆顔料のマグネシウム(MgO)の総割合は、2-15wt%である。最終的に成長したリン酸カルシウム-マグネシウム層は、出発粒子コアよりも高い割合でマグネシウムを有する。この結果、粒子のコア内部にマグネシウムの均一な分布も有する顔料の場合よりも、水との反応による多孔質化が遅い顔料となる。
【0055】
しかしながら、金属部品の可能な限り最も長期間の保護を可能とするためには、マグネシウムの割合は高すぎても好ましくない。理由は、リン酸塩含有防錆顔料の大部分が高すぎる水溶性を有することになり、リン酸塩含有防錆顔料の効果のかなりの部分が急速に低下しうるためである。
【0056】
従って、リン酸塩含有防錆顔料のマグネシウムの総割合は、多くても10wt%、好適には多くても8wt%、より好適には多くても7wt%、最も好適には多くても5wt%である。
【0057】
リン酸塩含有防錆顔料の溶解又は分散プロセスの間、溶媒又は分散剤の分子は、表面に吸着される。従って、比表面積が増加すると、溶媒又は分散剤に同量のリン酸塩含有防錆顔料を溶解又は分散させるために、より多くの溶媒又は分散剤が必要となる。すなわち、リン酸塩含有防錆顔料の比表面積が増加すると、オイル吸収値が増加する。
【0058】
リン酸塩含有防錆顔料の使用のためには低いオイル吸収値が望ましいため、本発明の好適な実施形態におけるリン酸塩含有防錆顔料の比表面積は、≦50m2/g、好適には≦40m2/g、より好適には≦30m2/g、最も好適には≦20m2/gである。
【0059】
本発明の好適な実施形態において、DIN EN ISO 787-5に従って算出されるオイル吸収値は、≦40g/100g、好適には≦30g/100g、より好適には≦25g/100g、最も好適には≦20g/100gである。
【0060】
DIN EN ISO 787-5に従った顔料及びフィラーのための一般的な試験手順を実施して、オイル吸収値を算出した。
【0061】
本発明は更に、金属部品のパッシブ腐食防止のための、請求項11~14に記載のリン酸塩含有防錆顔料の使用に関する。本発明によれば、「パッシブ腐食防止」とは、腐食性媒体に対する防護効果を実現する全ての手法を指す。本発明の範囲内において、これは特に、この文脈内において、リン酸塩含有防錆顔料を含む被覆用材料による、材料の仕上げ又はコーティングを指す。
【0062】
本発明の好適な実施形態において、リン酸塩含有防錆顔料は、自動車、船舶、又は橋梁の構成要素のパッシブ腐食防止のために使用される。
【0063】
本発明は更に、比表面積が≦50m2/g、好適には≦30m2/gのリン酸カルシウム-マグネシウム粒子を含むリン酸塩含有防錆顔料の使用に関する。このリン酸カルシウム-マグネシウムの一次粒子は、好適には>0.10μm、更により好適には>0.15μm、特に好適には>0.20μm、最も好適には>0.25μmの中央値を有する。好適には、一次粒子は、<5のアスペクト比及び/又は>550g/Lのバルク密度を有する。
【0064】
乾燥させたリン酸塩含有防錆顔料におけるリン酸塩含有酸化物系防錆顔料中のマグネシウムの割合は、>10wt%、好適には>11wt%、より好適には12wt%、最も好適には13wt%であり、「乾燥させた」とは、残留含水量が≦1wt%であることを意味すると理解される。
【0065】
本発明はまた、リン酸塩含有防錆顔料としてのヒドロキシアパタイトの使用に関する。
【0066】
本発明は更に、リン酸カルシウム-マグネシウム粒子を含むリン酸塩含有防錆顔料であって、リン酸塩含有防錆顔料中の酸化物系マグネシウムの割合が、乾燥させたリン酸塩含有防錆顔料において、>10wt%、好適には>11wt%、より好適には12wt%、最も好適には13wt%であり、「乾燥させた」とは、残留含水量が≦1wt%であることを意味すると理解される、リン酸塩含有防錆顔料の使用に関する。
【0067】
本発明はまた、リン酸塩含有プラスチック添加物の製造方法と、この方法により得られるリン酸塩含有プラスチック添加物と、プラスチック材料における表面欠陥を低減するためのリン酸塩含有プラスチック添加物の使用とに関する。
【0068】
添加剤は通常、とりわけ高分子の機械的特性及び表面特性を向上するために、プラスチック材料に添加される。例えば、いわゆるシルバーストリークといった、射出成形後に生じる表面欠陥を、金属リン酸塩、特にリン酸亜鉛の添加により低減できることが知られている。
【0069】
シルバーストリークは、プラスチック粒剤の浸入時に空気によって、溶融時に化学的反応または物理的反応によって、又は湿った材料によって生じるプラスチック溶融体中の少量の気体によって生じる。射出成形中、気泡は、流路の中心においてプラスチックの流頭に達する。圧力が流頭に向かってますます低下するにつれて、気泡はより大きくなる。流頭それ自体において、最初は正常な圧力が優勢だが、そこで気泡が破裂し、低温の治具の壁から離れて広がる。これが(プラスチックの色に応じて)、流れ方向に対して形成された銀色且つU字状の条痕の原因となる。
【0070】
しかしながら、これらの重金属含有プラスチック添加剤の使用は、生態系への懸念、特にその化合物の水毒性のためにますます制限されており、含まれる重金属の量がより少ない、あるいは重金属を全く含まないプラスチック添加剤を提供する初期の試みが既になされている。更に、重金属化合物は、時に触媒として働いて、高いプラスチック処理温度での高分子材料の分解を促進する。これが、平均モル質量の大きな低下及び機械的特性の劣化に繋がる。
【0071】
上記に鑑み、本発明の目的は、リン酸塩含有プラスチック添加物を含み、且つ、より良好な機械的特性及び/又は表面特性を有する、特に処理後の表面欠陥が少ない組成物であって、先行技術で知られている組成物とは対照的に処理中のプラスチック材料の分解が生じない又はより低い程度で生じる組成物を提供することである。
【0072】
本発明の目的は、態様13に記載の組成物によって実現される。この組成物に含まれるリン酸カルシウム-マグネシウムが、表面欠陥の数、特にいわゆるシルバーストリークの数を低減する。この理論にとらわれるものではないが、本発明者らは、この組成物に含まれるリン酸カルシウム-マグネシウムが、プラスチック溶融体中の気泡と特によく結合することによって、より大きな気泡の形成を防止するため、シルバーストリークが生じないものと推測する。この効果は、リン酸カルシウム-マグネシウムを、
A)ヒドロキシアパタイト又はリン酸カルシウム-マグネシウムの粒子又はそれらの混合物を、出発粒子として水性溶媒又は分散剤に加える工程と、
B)石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を前記水性溶媒又は分散剤に添加して、反応混合物を生成する工程と、
C)前記反応混合物を、20℃~105℃の範囲内の温度且つ5.0~13.0、好適には6.0~13.0の範囲内のpH値で反応させて、リン酸塩含有プラスチック添加物を形成する工程と、
D)前記リン酸塩含有プラスチック添加物の少なくとも一部を、前記水性溶媒又は分散剤から分離する工程と、
E)任意選択的に:前記リン酸塩含有プラスチック添加物を乾燥させる工程と
を含む、方法で製造したときに、特に発揮される。
【0073】
本発明者らは、本発明に係る方法により製造された粒子中におけるマグネシウム及びカルシウムの特に均一な分布が、この有利な特性に貢献していると推定する。特に、プラスチック溶融体中のより大きな気泡の形成を避けるために、カルシウム及びマグネシウムの相互作用が特に効果的であると推定する。
【0074】
更に、本発明に係るリン酸塩含有プラスチック添加物は重金属を含まないため、プラスチック処理時に観察されうる分子量の変化及び/又は分解が生じないか、より少ない。ちなみに、リン酸塩含有プラスチック添加物は、生態系への懸念がより低い。
【0075】
工程A)
前記反応の第一工程において、ヒドロキシアパタイト粒子又はリン酸カルシウム-マグネシウム粒子又はそれらの混合物を、出発粒子として水性溶媒又は分散剤中に加える。「ヒドロキシアパタイト」という用語は、Ca5(PO4)3OH並びにカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイトを少なくとも95wt%含む粉体材料、すなわち、式Ca10-x(PO4)6-x(HPO4)x(OH)2-x(式中、0<x≦2)の材料を少なくとも95wt%含む粉体材料を含む。従って、この用語は、その粒子が100wt%の純粋なヒドロキシアパタイト及び/又は純粋なカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイトからなる粉体だけではなく、例えば、Ca5(PO4)3OH及び/又はCa10-x(PO4)6-x(HPO4)x(OH)2-x(式中、0<x≦2)の総割合が粉体の少なくとも95wt%である限りにおいて、例えば、ドロマイトを有しつつ純粋なヒドロキシアパタイト又は純粋なカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイトの混合結晶をある割合で含む粉体も含む。
【0076】
本発明に係る好適なヒドロキシアパタイト粉体は、少なくとも95wt%、好適には少なくとも97wt%、より好適には少なくとも98wt%、最も好適には少なくとも99wt%のCa5(PO4)3OH及び/又はCa10-x(PO4)6-x(HPO4)x(OH)2-x(式中、0<x≦2)からなる。
【0077】
出発粒子は、反応工程C)の反応生成物がその上にリン酸カルシウム-マグネシウム層として成長する結晶核として働く。成長前において、出発粒子は、概して、<0.1μmの粒径中央値、200~350g/Lの範囲内のバルク密度、>5のアスペクト比、及び15~50m2/gの範囲内の比表面積を有する。
【0078】
粒径中央値は、DIN ISO 13320-1に従って、レーザー散乱分析を用いて算出しうる。第一寸法における粒子の最大平均度の、第二寸法における粒子の最小平均度に対する比率を表すアスペクト比は、光学分析により算出しうる。この場合、第一寸法における粒子の最大度及び第二寸法における粒子の最小度を、走査型電子顕微鏡の下で粉体の一部に対して測定し、それらの値の統計平均(算術平均)を用いて比率を得る。
【0079】
本発明の好適な実施形態において、出発粒子は、>10wt%、より好適には>15wt%、更により好適には>20wt%、最も好適には>25wt%の濃度で溶媒又は分散剤に加えられる。出発粒子の高い濃度によって、工程C)において、溶媒又は分散剤中に析出することなく出発粒子上に成長することで生じるリン酸塩含有プラスチック添加物の割合を出来るだけ高くすることが確実となる。その結果、本発明に伴う利点を最大化できる。
【0080】
その総重量に対して、水性溶媒又は分散剤は、水を少なくとも20%、好適には少なくとも40%、特に好適には少なくとも50%、より好適には少なくとも70%、最も好適には少なくとも90%含む。更なる実施形態において、水性溶媒又は分散剤は、水からなる。溶媒又は分散剤は、更なる構成要素として、(多価)アルコール類又はアミン類等の極性有機溶媒を含んでもよい。更なる構成要素として特に好適なのは、多価アルコール類である。
【0081】
比表面積は、DIN ISO 9277に従って、窒素の吸収に基づくBET測定によって算出できる。
【0082】
工程B)
本発明によれば、方法工程B)において、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を連続的に添加してもよいが、反応物を添加する時間間隔は出来るだけ短くすべきである。
【0083】
好適には、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸は、水性溶媒又は分散剤に対して少なくとも部分的に同時に添加され、マグネシウム化合物は好適には、水性溶媒又は分散剤中に溶解又は懸濁されるように添加される。これにより、ヒドロキシアパタイト出発粒子上に成長させたリン酸カルシウム-マグネシウム層においてカルシウム及びマグネシウムの均一な分布が可能となる。特に好適なのは、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を略完全に同時に添加することである。これは、工程B)において添加される各成分の質量の≧95%が同時に添加されることを意味する。
【0084】
本発明の一実施形態において、工程B)における添加は、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸がそれぞれ別々に出発粒子の懸濁液に添加されることによって行うことができる。この場合、マグネシウム化合物は、特に好適には水性分散系として添加される。添加は、好適には少なくとも部分的に又は略完全に同時に行われる。この文脈において、略完全に同時にとは、各成分の添加質量の≧95%が同時に添加されることを意味する。
【0085】
本発明の更なる実施形態において、マグネシウム化合物は、出発粒子の懸濁液への添加前に、石灰乳中に溶解又は懸濁させて、石灰乳及びマグネシウム化合物が一緒に出発粒子の懸濁液に添加されるようにする。これによって、プラスチック添加剤において、出発粒子上に成長させたリン酸カルシウム-マグネシウム層におけるカルシウム及びマグネシウムの均一な分布が確実となる。
【0086】
本発明の更なる実施形態において、マグネシウム化合物は、出発粒子の懸濁液への添加前に、リン酸中に溶解又は懸濁させて、マグネシウム化合物及びリン酸が一緒に出発粒子の懸濁液に添加されるようにする。これは、マグネシウム化合物が、出発粒子の懸濁液への添加中既に均一に分布しているため、出発粒子上に成長させたリン酸カルシウム-マグネシウム層においてカルシウム及びマグネシウムが均一に分布するという利点がある。
【0087】
本発明の更なる実施形態において、石灰乳は、出発粒子の懸濁液への添加前に、リン酸中に溶解又は懸濁させて、石灰乳及びリン酸が一緒に出発粒子の懸濁液に添加されるようにする。これは、マグネシウム化合物が、出発粒子の懸濁液への添加中既に均一に分布しているため、出発粒子上に成長させたリン酸カルシウム-マグネシウム層においてカルシウム及びマグネシウムが均一に分布するという利点がある。
【0088】
工程C)
石灰乳のリン酸との反応は、均一且つ可能な限り制御されるべきである。従って、本発明の実現のために、反応混合物における温度が20℃から105℃までの温度であることが非常に重要である。本発明の好適な実施形態において、工程C)における反応は、60~105℃の範囲内、好適には80~105℃の範囲内、より好適には90~105℃の範囲内、最も好適には100~105℃の範囲内の温度で行われる。
【0089】
本発明の実現のために、pH値が5.0~13.0、好適には6.0~13.0の範囲内にあることも非常に重要である。pH値<5.0で、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)又はリン酸水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O)が析出する。本発明の好適な実施形態において、工程C)におけるpH値は、pH11.0を超える所定の条件下ではCa(OH)2がマイナー相として増えるため、pH値は7.0~11.0の範囲内である。本発明の他の実施形態において、工程C)は、pH9.0を超える所定の条件下ではCa(OH)2の含有が少なくとも部分的に生じうるため、7.0~9.0の範囲内のpH値で実施される。
【0090】
本発明の所定の実施形態において、工程C)における反応は、大気圧下で実施される。しかしながら、望ましい場合には、その作業は、好適には1バールの正圧までの、わずかに増圧した圧力で行われてもよい。
【0091】
工程D)
本発明に係る方法の工程D)において、リン酸塩含有プラスチック添加物の少なくとも一部を、懸濁液から分離する。これは、一般的な分離方法を用いて行うことができる。特に好適には、分離方法は、ろ過、蒸留、遠心分離、沈殿、及び浮上からなる群から選択される。
【0092】
本発明の好適な実施形態において、分離されたリン酸塩含有プラスチック添加物を、水又は水性溶媒で洗浄する。
【0093】
工程E)
工程E)において、懸濁液から分離されたリン酸塩含有プラスチック添加物を乾燥させる。これは、好適には、対流乾燥、マイクロ波乾燥、噴霧乾燥、又は真空乾燥からなる群から選択される一般的な乾燥方法を用いて行われる。
【0094】
本発明で主張される利点は、方法工程A)~D)又はA)~E)を一度繰り返すだけで既に実現される。しかしながら、これらの方法工程を、少なくとも二回、好適には少なくとも三回、最も好適には少なくとも五回繰り返すことで、より良好な結果を実現できる。
【0095】
本発明の好適な実施形態において、リン酸塩含有プラスチック添加物の一次粒子のアスペクト比は、<5、好適には<4、特に好適には<3、最も好適には<2である。
【0096】
成長工程を数回繰り返すことによって、より高い程度の成長が実現される。すなわち、リン酸塩含有プラスチック添加物の総割合における出発粒子の割合が低減され、本発明による利点が高められる。
【0097】
本発明の好適な実施形態において、方法工程A)~D)又はA)~E)は、リン酸塩含有プラスチック添加物における出発粒子の割合が<50wt%、好適には<40wt%、より好適には<30wt%、最も好適には<25wt%となるまで繰り返される。この繰り返しは、出発粒子がヒドロキシアパタイトからなる、又は、>50%、好適には>70%、より好適には>80%、最も好適には>90%のヒドロキシアパタイトの重量割合を有する場合、特に好適である。
【0098】
本発明の好適な実施形態において、マグネシウム化合物は、マグネシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はリン酸塩からなる群から選択され、リン酸塩は、縮合リン酸塩、ピロリン酸塩、及び縮合ピロリン酸塩も含む。
【0099】
本発明の好適な実施形態において、ヒドロキシアパタイト出発粒子、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸の添加される塩素及び/又は硫酸塩の含有量は、≦1000ppm、好適には≦500ppmである。塩素イオン及び硫酸塩イオンは、例えば半結晶熱可塑性高分子の結晶化を阻害することによって、機械用プラスチック材料に悪影響を及ぼしうる。従って、リン酸塩含有プラスチック添加物における塩素イオン及び硫酸塩イオンの含有量は、可能な限り低く保つべきである。
【0100】
本発明の一実施形態において、この方法は、半連続的なオペレーションで実施され、方法工程D)において分離され乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部のリン酸塩含有プラスチック添加物が常にプロセスから除去され、一方でその残りが再び方法工程A)において水性溶媒又は分散剤中に懸濁される。
【0101】
本発明の他の実施形態において、この方法は、完全に連続的なオペレーションで実施され、方法工程D)において、乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部のリン酸塩含有プラスチック添加物が連続的に分離されて方法サイクルから除去され、一方でその残りが方法サイクルに残り続ける。その連続的な分離及び除外は、好適にはラメラシックナー(lamella thickener)又は遠心分離機(例えば:反転型遠心分離機又は押出排出型遠心分離機)により行われる。
【0102】
所定の実施形態において、中央値が<0.1μmの出発粒子が方法工程A)において使用され、その一次粒子の中央値が>0.10μmであり且つアスペクト比が<5であるリン酸塩含有プラスチック添加物を得るために、方法工程A)~D)又はA)~E)が少なくとも一度繰り返される。
【0103】
本発明の所定の実施形態において、この方法は、連続的なオペレーションで実施され、方法工程D)において分離され、その一次粒子の中央値が>0.10μmであり且つアスペクト比が<5である一部のリン酸塩含有プラスチック添加物がプロセスから除外され、一方でその残りが、その後の繰り返される方法工程B)~E)を施されるように、再び方法工程A)において水性溶媒又は分散剤中に懸濁される。
【0104】
本発明に係る方法の反応物の一つは、リン酸(H3PO4)である。所定の実施形態において、使用されるリン酸は、水中のリン酸の濃度が5~25vol.%である希リン酸である。低いリン酸濃度は、出発粒子上での成長に好ましいが、同時に反応混合物の内容量がより多くなる。従って、所定の実施形態において、使用されるリン酸の濃度は、水中のリン酸が10~25vol.%の範囲内、より好適には水中のリン酸が15~25vol.%の範囲内である。
【0105】
本発明に係る方法の第二の反応物は、石灰乳(水中にCa(OH)2を含む懸濁液)である。本発明の所定の実施形態において、酸化物系石灰乳が、Ca(OH)2及び水の総重量に対して2~20wt%の濃度を有する。より好適には、石灰乳は、8~12wt%の濃度を有する。
【0106】
本発明に係る方法の第三の反応物は、マグネシウム化合物である。マグネシウム化合物が溶媒又は分散剤に添加される場合、酸化物系化合物が、マグネシウム化合物及び溶媒又は分散剤の総重量に対して2~20wt%の濃度を有する。より好適には、マグネシウム化合物は、8~12wt%の濃度を有する。
【0107】
本発明はまた、本発明に係る方法により得ることができるリン酸塩含有プラスチック添加物であって、密度が>5g/cm3の金属を≦1原子%未満有するリン酸塩含有プラスチック添加物に関する。この金属は、「Fachkundebuch Metall」,56th edition,Europa Lehrmittel,p.268:Table 1:Classification of non-ferrous metalsによる「重金属」の定義に該当する。この金属は、例えば、銅、鉄、又は亜鉛を含む。環境的側面のために、リン酸塩含有プラスチック添加物におけるそのような金属の含有量は可能な限り低く保たれねばならない。
【0108】
本発明の好適な実施形態において、密度が>5g/cm3の金属の含有量は、≦0.5原子%、特に好適には≦0.2原子%、最も好適には≦0.1原子%である。
【0109】
既に述べたように、塩素イオン及び硫酸塩イオンはプラスチック材料の機械的特性を阻害しうるため、リン酸塩含有プラスチック添加物中のこれらのイオンの含有量も可能な限り低く保たれねばならない。
【0110】
従って、本発明の好適な実施形態において、リン酸塩含有プラスチック添加物の塩素の重量割合は、≦1000ppm、好適には≦500ppm、より好適には≦300ppm、最も好適には≦150ppmである。
【0111】
本発明の好適な実施形態において、リン酸塩含有プラスチック添加物の硫酸塩の重量割合は、≦1000ppm、好適には≦500ppm、より好適には≦300ppm、最も好適には≦150ppmである。
【0112】
本発明の好適な実施形態において、リン酸塩含有プラスチック添加物の塩素及び硫酸塩の添加される重量割合は、≦1000ppm、好適には≦500ppm、より好適には≦300ppm、最も好適には≦150ppmである。
【0113】
リン酸塩含有プラスチック添加物中の塩素及び硫酸塩の重量割合は、出発粒子、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を介して添加される塩素及び/又は硫酸塩の含有量により制御することができる。塩素及び硫酸塩の含有量は、原子吸光分析(AAS)やX線蛍光分析(XRF)等の一般的な元素分析技術により算出できる。
【0114】
本発明の好適な実施形態において、乾燥させたリン酸塩含有酸化物系プラスチック添加剤中のマグネシウムの総割合は、2-15wt%、より好適には2-9wt%、更により好適には3-8wt%、最も好適には4-7wt%である。この場合、「乾燥させた」とは、残留含水量が≦1wt%であることを意味する。リン酸塩含有プラスチック添加物中のマグネシウムは、カルシウムよりも高い水溶性を有するため、部品を保護するリン酸塩層が、より速くコーティング層となることができる。従って、有利には、リン酸塩含有プラスチック添加物のマグネシウムの総割合は、少なくとも2wt%、好適には少なくとも3wt%、より好適には少なくとも4wt%、最も好適には少なくとも5wt%である。
【0115】
本発明の好適な実施形態において、出発粒子は、<2wt%、好適には<1wt%の割合でMgOで表されるマグネシウムを有し、リン酸塩含有酸化物系プラスチック添加剤のマグネシウムの総割合(MgO)は、2-15wt%である。最終的に成長したリン酸カルシウム-マグネシウム層は、出発粒子コアよりも高い割合でマグネシウムを有する。この結果、粒子のコア内部にマグネシウムの均一な分布も有する顔料の場合よりも、水との反応による多孔質化が遅い顔料となる。
【0116】
しかしながら、金属部品の可能な限り最も長期間の保護を可能とするためには、マグネシウムの割合は高すぎても好ましくない。理由は、リン酸塩含有プラスチック添加物の大部分が高すぎる水溶性を有することになり、リン酸塩含有プラスチック添加物の効果のかなりの部分が急速に低下しうるためである。
【0117】
従って、リン酸塩含有プラスチック添加物のマグネシウムの総割合は、多くても10wt%、好適には多くても8wt%、より好適には多くても7wt%、最も好適には多くても5wt%である。
【0118】
乾燥させたリン酸塩含有プラスチック添加物におけるリン酸塩含有酸化物系プラスチック添加剤中のマグネシウムの割合は、>10wt%、好適には>11wt%、より好適には12wt%、最も好適には13wt%であり、「乾燥させた」とは、残留含水量が≦1wt%であることを意味すると理解される。
【0119】
本発明はまた、高分子材料と、リン酸カルシウム-マグネシウム粒子を含むリン酸塩含有プラスチック添加物とを含む組成物であって、リン酸塩含有プラスチック添加物を、組成物の多くても10wt%、好適には多くても5wt%、より好適には多くても2wt%、更により好適には多くても1wt%、最も好適には多くても0.5wt%含む組成物に関する。特に好適には、組成物は、リン酸塩含有プラスチック添加物を、組成物全体の重量に対して、10~0.01wt%、好適には5~0.05wt%、より好適には2~0.1wt%、最も好適には1~0.1wt%含む。リン酸塩含有プラスチック添加物の割合がより少ないことは、プラスチックの機械的特性がリン酸塩含有プラスチック添加物によってほとんど影響されないという利点がある。
【0120】
高分子材料は、好適には、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリウレタン(PU)、ポリウレア、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、アクリル-ブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル(ASA)、ポリオキシメチレン(POM)等のポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレア、ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリシロキサン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ(イミド)、ビスマレイミドトリアジン、熱可塑性ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、共重合物、及び/又は前述の高分子の混合物からなる群から選択される。
【0121】
特に好適には、高分子材料は、ポリアセタールであり、特に強く好適にはポリオキシメチレン(POM)である。
【0122】
本発明はまた、リン酸塩含有プラスチック添加物としてのヒドロキシアパタイトの使用に関する。
【0123】
リン酸塩含有プラスチック添加物は、様々な方法により高分子材料に導入することができる。まず初めに、リン酸塩含有プラスチック添加物は、成形プロセス中に高分子材料に組み込むことができる。高分子材料を押出成形で処理する場合、例えば、リン酸塩含有プラスチック添加物は、押出成形プロセス中に、例えばマスターバッチを用いて添加できる。本発明で意味するところのマスターバッチとは、リン酸塩含有プラスチック添加物I及び可能な更なる添加剤を、顆粒又は粉体の形態で、最終的な塗布時よりも高い濃度で含む高分子材料である。本発明に係る高分子材料を製造するために、マスターバッチ又は様々なマスターバッチを、そのマスターバッチに含まれるリン酸塩含有プラスチック添加物を含まない更なる高分子材料と、最終製品における難燃剤の所望の濃度に対応する量又は比率で組み合わせる。ペースト、粉体、又は液体の形態の様々な物質の添加と比較して、マスターバッチは、高いレベルのプロセス安全性を確実にし、且つ、処理及び注入に非常に良好に適しているという利点を有する。押出成形の結果、リン酸塩含有プラスチック添加物は、高分子材料中に均一に分布する。
【0124】
本発明は更に、プラスチック処理方法により得られるプラスチック材料における表面欠陥を低減するための、リン酸カルシウム-マグネシウム粒子を含むリン酸塩含有プラスチック添加物の使用に関する。
【0125】
態様1: A)ヒドロキシアパタイト又はリン酸カルシウム-マグネシウムの粒子又はそれらの混合物を、出発粒子として水性溶媒又は分散剤中に加える工程と、
B)石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を前記水性溶媒又は分散剤に添加して、反応混合物を生成する工程と、
C)前記反応混合物を、20℃~105℃の範囲内の温度且つ5.0~13.0、好適には6.0~13.0の範囲内のpH値で反応させて、リン酸塩含有プラスチック添加物を形成する工程と、
D)前記リン酸塩含有プラスチック添加物の少なくとも一部を、前記水性溶媒又は分散剤から分離する工程と、
E)任意選択的に:前記リン酸塩含有プラスチック添加物を乾燥させる工程と
を含む、リン酸塩含有プラスチック添加物の製造方法。
【0126】
態様2:方法サイクルが作られるように、前記方法工程A)~D)を少なくとも一度、好適には少なくとも三度繰り返し、
方法工程A)において、前記ヒドロキシアパタイト粒子の代わりに
1)方法工程D)において前記水性溶媒又は分散剤から分離された一部の前記リン酸塩含有プラスチック添加物、又は
2)方法工程D)において前記水性溶媒又は分散剤中に残った一部の前記リン酸塩含有プラスチック添加物
を前記出発粒子として使用することを特徴とする、前記第一の態様に係る方法。
【0127】
態様3:前記マグネシウム化合物が、マグネシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はリン酸塩からなる群から選択されることを特徴とする、前述の態様のいずれか一項に記載の方法。
【0128】
態様4:工程B)の前に、前記マグネシウム化合物を前記リン酸中に溶解又は分散させることを特徴とする、前述の態様のいずれか一項に記載の方法。
【0129】
態様5:工程C)における前記反応が、≧90℃、好適には≧100℃の範囲内の温度でおこなわれることを特徴とする、前述の態様のいずれか一項に記載の方法。
【0130】
態様6:ヒドロキシアパタイト出発粒子、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を介して添加される塩素及び/又は硫酸塩の含有量が≦500ppmであることを特徴とする、前述の態様のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
態様7:前記方法が、
F1)半連続的なオペレーションで実施され、方法工程D)において分離され乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部の前記リン酸塩含有プラスチック添加物が常にプロセスから除外され、一方でその残りが再び方法工程A)において前記水性溶媒又は分散剤中に懸濁される、又は
F2)完全に連続的なオペレーションで実施され、方法工程D)において、乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部の前記リン酸塩含有プラスチック添加物が連続的に分離されて前記方法サイクルから除外され、一方でその残りが前記方法サイクルに残り続けることを特徴とする、前述の態様のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
態様8:工程C)において、前記石灰乳、前記マグネシウム化合物、及び前記リン酸が、少なくとも部分的に同時に添加されることを特徴とする、前述の態様のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
態様9:前記リン酸が、5-25vol.%の濃度を有する含水希リン酸であることを特徴とする、前述の態様のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
態様10:酸化物系石灰乳(CaO)が、前記石灰乳の総重量に対して、2-20wt%の濃度を有することを特徴とする、前述の態様のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
態様11:態様1-10のいずれか一項に記載の方法により得られるリン酸塩含有プラスチック添加物において、好適には、密度が>5g/cm3の金属を≦1原子%含むリン酸塩含有プラスチック添加物。
【0136】
態様12:乾燥させた前記リン酸塩含有プラスチック添加物の酸化物系マグネシウム(MgO)の割合が2-15wt%であり、「乾燥させた」とは、残留含水量が≦1wt%であることを意味すると理解されることを特徴とする、態様11に記載のリン酸塩含有プラスチック添加物。
【0137】
態様13:a)高分子材料と、
b)リン酸カルシウム-マグネシウム粒子を含むリン酸塩含有プラスチック添加物とを含む組成物であって、
前記リン酸塩含有プラスチック添加物を、前記組成物全体の重量に対して、多くても10wt%、好適には多くても5wt%含む組成物。
【0138】
態様14:前記高分子材料を、前記組成物全体の前記重量に対して、少なくとも50wt%、好適には少なくとも70wt%、特に好適には少なくとも80wt%、最も好適には少なくとも90wt%含むことを特徴とする、態様13に記載の組成物。
【0139】
態様15:前記高分子材料が熱可塑性高分子又は熱硬化性高分子であることを特徴とする、態様13-14に記載の組成物。
【0140】
態様16:前記高分子材料が、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリウレタン(PU)、ポリウレア、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、アクリル-ブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル(ASA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレア、ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリシロキサン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ(イミド)、ビスマレイミドトリアジン、熱可塑性ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、共重合物、及び/又は前述の高分子の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、態様13-15に記載の組成物。
【0141】
態様17:前記リン酸塩含有プラスチック添加物が、態様11-12に係るものである、態様13-16のいずれか一項に記載の組成物。
【0142】
態様18:プラスチック処理方法により得られるプラスチック材料における表面欠陥を低減するための、リン酸塩含有プラスチック添加物の使用であって、前記リン酸塩含有プラスチック添加物が、ヒドロキシアパタイト又はリン酸カルシウム-マグネシウム粒子を含む、使用。
【0143】
態様19:前記プラスチック処理方法が、マスター発泡(master foaming)又は発泡プロセス、好適には射出成形である、態様18に記載の使用。
【0144】
態様20:前記リン酸塩含有プラスチック添加物が、態様18-19に係るものである、態様11-12に記載の使用。
【0145】
態様1-20に係る本発明の要約:
リン酸塩含有プラスチック添加物
【0146】
本発明は、リン酸塩含有プラスチック添加物の製造方法と、この方法により得られるリン酸塩含有プラスチック添加物と、リン酸塩含有プラスチック添加物の使用とに関する。
【図面の簡単な説明】
【0147】
[
図1a]:試料1の電子顕微鏡像(加速電圧1kV)。
[
図1b]::試料1の電子顕微鏡像(加速電圧10kV)。
[
図2]:カルシウム元素についての
図1bの電子顕微鏡像のマッピング(エネルギー分散型X線分析により判定した元素分布)。
[
図3]:マグネシウム元素についての
図1bの電子顕微鏡像のマッピング(エネルギー分散型X線分析により判定した元素分布)。
[
図4]:比較試料VM1の電子顕微鏡像。
[
図5]:カルシウム元素についての
図4の電子顕微鏡像のマッピング(エネルギー分散型X線分析により判定した元素分布)。
[
図6]:マグネシウム元素についての
図4の電子顕微鏡像のマッピング(エネルギー分散型X線分析により判定した元素分布)。
【発明を実施するための形態】
【0148】
実施例
以下、請求項1-15に係る本発明を、本発明に係る製造例の特定の実施形態に基づき説明する。
【0149】
【0150】
測定方法:
粒径の判定、中央値、D10、D90
粒径分布を、Horiba Partica LA-950V(堀場製作所;京都;日本)を使用して、内容量及び粒径の両方に基づき、動的光散乱により算出した。
【0151】
比表面積
比表面積を、BEL社のBELSORP-Mini装置を使用し、N2吸収(DIN ISO 9277)によるBET法に従って算出した。純度99.999%の窒素を使用した。
【0152】
オイル吸収値
DIN EN ISO 787-5に従った顔料及びフィラーのための一般的な試験手順を実施して、オイル吸収値を算出した。
【0153】
走査電子顕微鏡法(SEM)及びエネルギー分散型X線分析(EDX)
試料中の元素の分布の算出は、走査電子顕微鏡法(SEM)画像及び特徴的X線放射(エネルギー分散型X線分析、EDX)の並行評価により行った。Zeiss社のSigma EVO SEM分光計を、Oxford社のINCA Energy350 EDX検出器と組み合わせて使用した。個々の画像から表面の断面像を形成した(マッピング)。
【0154】
強熱減量
強熱減量は、開始基材の乾燥質量に対する強熱中の質量減として算出した。
算出は、DIN 18128に従って行われた。
【0155】
実験の概略説明
大規模実験
4,000Lの水及び500kgのヒドロキシアパタイトを、反応容器Aに投入し、攪拌しながら70℃まで加熱した。第二の容器Bにおいて、654kgのリン酸及び1,500Lの水を混合した。更なる容器Cにおいて、4,200kgの石灰乳、500Lの水及びMg(OH)2を混合した。ここで、Mg(OH)2の量は、Mgに対するCaのモル比がおよそ6:1となるように選択した。容器B及びCの内容物を、攪拌しながら反応容器Aに同時に添加した。添加が完了した後の待ち時間は、30分とし、このとき反応混合物を更に撹拌した。続いて、得られた固体を、母液から移し、フィルタープレスを使用して、液体をろ過した。続いて、その固体を、強熱減量が<6%となるまで乾燥させ、そして、中央値が3μm未満の粒径となるまで粉砕した。得られた粒子は、その後の実験における出発粒子として使用することができる。
【0156】
Heubach社の市販のリン酸カルシウム-マグネシウム系防錆顔料Heucophos(登録商標)を、比較材料VM1として使用した。
【0157】
【0158】
この結果から分かるように、本発明に係る試料の粒径分布は、より大きな粒径に大きくシフトしている。
【0159】
【0160】
この結果から分かるように、本発明に係る材料の試料は、比較材料よりも強熱減量が小さい。
【0161】
【0162】
良好な比較可能性を得るために、オイル吸収値を、比較材料に対して算出した。
【0163】
図面の詳細な説明:
図1a:本発明の試料1の電子顕微鏡像を示す。図から分かるように、その粒子は、球形状を有し、その直径は、6~10μmの範囲内である。続く全ての画像(
図1b-
図6)は、同じ倍率(6,000X)で記録したため、この画像と同じスケールを有する。
図1b:本発明の試料1の電子顕微鏡像を示す。
図1aと同じ画像詳細であるが、加速電圧を10kVとした。この加速電圧はまた、続く全ての電子顕微鏡像で使用している。
図2:カルシウム元素についての
図1bの電子顕微鏡像のマッピングが、粒子全体に亘るカルシウムの均一な分布を示している。
図3:マグネシウム元素についての
図1bの電子顕微鏡像のマッピングが、粒子全体に亘るマグネシウムの均一な分布を示している。
図4:比較試料VM1の電子顕微鏡像を示す。図から分かるように、粒子が、微細な結晶状の葉状構造を有している。
図5:カルシウム元素についての
図4の電子顕微鏡像のマッピングが、粒子全体に亘るカルシウムの均一な分布を示している。
図6:マグネシウム元素についての
図4の電子顕微鏡像のマッピングが、マグネシウム濃度の局所的なクラスターを示している(特に、マッピングの明るく目立つ領域)。
【0164】
上述の製造例から得られ、図に示した粒子は、プラスチック添加剤、すなわち、態様1-20に係る本発明の例示的な実施形態としても使用しうる。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ヒドロキシアパタイト又はリン酸カルシウム-マグネシウムの粒子又はそれらの混合物を出発粒子として水性溶媒又は分散剤中に加える工程と、
b)石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を前記水性溶媒又は分散剤に添加して、反応混合物を生成する工程と、
c)前記反応混合物を、20℃~105℃の範囲内の温度且つ6.0~13.0の範囲内のpH値で反応させて、リン酸塩含有防錆顔料を形成する工程と、
d)前記リン酸塩含有防錆顔料の少なくとも一部を、前記水性溶媒又は分散剤から分離する工程と、
e)任意選択的に:前記リン酸塩含有防錆顔料を乾燥させる工程と
を含む、リン酸塩含有防錆顔料の製造方法。
【請求項2】
方法サイクルが作られるように前記方法工程a)~d)を少なくとも一度、好適には少なくとも三度繰り返し、
方法工程a)において、前記ヒドロキシアパタイト粒子の代わりに、
1)方法工程d)において前記水性溶媒又は分散剤から分離された一部の前記リン酸塩含有防錆顔料、又は
2)方法工程d)において前記水性溶媒又は分散剤中に残った一部の前記リン酸塩含有防錆顔料
を前記出発粒子として使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マグネシウム化合物が、マグネシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はリン酸塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)の前に、前記マグネシウム化合物を前記リン酸中に溶解又は分散させることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程c)における前記反応が、≧90℃、好適には≧100℃の範囲内の温度で行われることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヒドロキシアパタイト出発粒子、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を介して添加される塩素及び/又は硫酸塩の含有量が≦500ppmであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、
f
1)半連続的なオペレーションで実施され、方法工程d)において分離され乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部の前記リン酸塩含有防錆顔料が常にプロセスから除外され、一方でその残りが再び方法工程a)において前記水性溶媒又は分散剤中に懸濁される、又は、
f
2)完全に連続的なオペレーションで実施され、方法工程d)において、乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部の前記リン酸塩含有防錆顔料が連続的に分離されて前記方法サイクルから除外され、一方でその残りが前記方法サイクルに残り続けることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)において、前記石灰乳、前記マグネシウム化合物、及び前記リン酸が、少なくとも部分的に同時に添加されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リン酸が、5-25vol.%の濃度を有する含水希リン酸であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酸化物系石灰乳(CaO)が、前記石灰乳の総重量に対して、2-20wt%の濃度を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1-10のいずれか一項に記載の方法により得られるリン酸塩含有防錆顔料において、密度が>5g/cm
3の金属を≦1原子%
有し、且つDIN EN ISO 787-5に従って判断されるオイル吸収値が≦40g/100g、好適には≦30g/100gであることを特徴とする、リン酸塩含有防錆顔料。
【請求項12】
乾燥させた前記リン酸塩含有防錆顔料の酸化物系マグネシウムの割合(MgO)が2-15wt%であり、「乾燥させた」とは、残留含水量が≦1wt%であることを意味すると理解されることを特徴とする、請求項11に記載のリン酸塩含有防錆顔料。
【請求項13】
比表面積が≦50m
2/g、好適には≦30m
2/gであることを特徴とする、請求項11又は12に記載のリン酸塩含有防錆顔料。
【請求項14】
比表面積が≦50m
2/g、好適には≦30m
2/gであり且つ一次粒子のアスペクト比が<5であるリン酸カルシウム-マグネシウム粒子の、リン酸塩含有防錆顔料としての使用。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ヒドロキシアパタイト又はリン酸カルシウム-マグネシウムの粒子又はそれらの混合物を、出発粒子として水性溶媒又は分散剤中に加える工程と、
b)石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を前記水性溶媒又は分散剤に添加して、反応混合物を生成する工程と、
c)前記反応混合物を、20℃~105℃の範囲内の温度且つ6.0~13.0の範囲内のpH値で反応させて、リン酸塩含有防錆顔料を形成する工程と、
d)前記リン酸塩含有防錆顔料の少なくとも一部を、前記水性溶媒又は分散剤から分離する工程と、
e)任意選択的に:前記リン酸塩含有防錆顔料を乾燥させる工程と
を含む、リン酸塩含有防錆顔料の製造方法。
【請求項2】
方法サイクルが作られるように前記方法工程a)~d)を少なくとも一度、好適には少なくとも三度繰り返し、
方法工程a)において、前記ヒドロキシアパタイト粒子の代わりに、
1)方法工程d)において前記水性溶媒又は分散剤から分離された一部の前記リン酸塩含有防錆顔料、又は
2)方法工程d)において前記水性溶媒又は分散剤中に残った一部の前記リン酸塩含有防錆顔料
を前記出発粒子として使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マグネシウム化合物が、マグネシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、又はリン酸塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)の前に、前記マグネシウム化合物を前記リン酸中に溶解又は分散させることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程c)における前記反応が、≧90℃、好適には≧100℃の範囲内の温度で行われることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヒドロキシアパタイト出発粒子、石灰乳、マグネシウム化合物、及びリン酸を介して添加される塩素及び/又は硫酸塩の含有量が≦500ppmであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、
f
1)半連続的なオペレーションで実施され、方法工程d)において分離され乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部の前記リン酸塩含有防錆顔料が常にプロセスから除外され、一方でその残りが再び方法工程a)において前記水性溶媒又は分散剤中に懸濁される、又は、
f
2)完全に連続的なオペレーションで実施され、方法工程d)において、乾燥状態でのその一次粒子の中央値が>0.10μmである一部の前記リン酸塩含有防錆顔料が連続的に分離されて前記方法サイクルから除外され、一方でその残りが前記方法サイクルに残り続けることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)において、前記石灰乳、前記マグネシウム化合物、及び前記リン酸が、少なくとも部分的に同時に添加されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リン酸が、5-25vol.%の濃度を有する含水希リン酸であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酸化物系石灰乳(CaO)が、前記石灰乳の総重量に対して、2-20wt%の濃度を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1-10のいずれか一項に記載の方法により得られるリン酸塩含有防錆顔料において、密度が>5g/cm
3の金属を≦1原子%含むことを特徴とする、リン酸塩含有防錆顔料。
【請求項12】
乾燥させた前記リン酸塩含有防錆顔料の酸化物系マグネシウムの割合(MgO)が2-15wt%であり、「乾燥させた」とは、残留含水量が≦1wt%であることを意味すると理解されることを特徴とする、請求項11に記載のリン酸塩含有防錆顔料。
【請求項13】
比表面積が≦50m
2/g、好適には≦30m
2/gであることを特徴とする、請求項11又は12に記載のリン酸塩含有防錆顔料。
【請求項14】
DIN EN ISO 787-5に従って算出されるオイル吸収値が≦40g/100g、好適には≦30g/100gであることを特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載のリン酸塩含有防錆顔料。
【請求項15】
比表面積が≦50m
2/g、好適には≦30m
2/g
であり且つ一次粒子のアスペクト比が<5であるリン酸カルシウム-マグネシウム粒子
の、リン酸塩含有防錆顔料としての使用。
【国際調査報告】