(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】補強ポリマーコンクリートおよびそれを製作するための方法
(51)【国際特許分類】
C04B 26/18 20060101AFI20230420BHJP
C04B 14/38 20060101ALI20230420BHJP
C04B 14/42 20060101ALI20230420BHJP
C04B 14/40 20060101ALI20230420BHJP
C04B 16/06 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
C04B26/18 Z
C04B14/38 A
C04B14/42 Z
C04B14/40
C04B16/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542701
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 US2021021814
(87)【国際公開番号】W WO2021188345
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522226591
【氏名又は名称】ウィーヴスリーディー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オベルステ、クリストファー
(57)【要約】
シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」)を含有する骨格を有するポリマーを有する補強用材料と接触しながら硬化されているポリマーコンクリートを備える補強ポリマーコンクリート組成物が本明細書に記載される。ポリマーコンクリートは不飽和ポリマー樹脂(「UPR」)を結合剤として有することができる。補強用材料とポリマーコンクリート混合物とはポリマーコンクリート硬化前に互いに接触し得る。架橋剤およびフリーラジカル開始剤はCHDM含有ポリマーとUPRとの反応を惹起するために挿入され得る。ポリマーは、ポリウレタン、またはポリエチレンテレフタレートグリコール(「PETG」)などの共重合ポリエステルであり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂(「UPR」)と、骨材と、硬化剤とを有する、ポリマーコンクリート混合物と、
シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」)を含む骨格を有するポリマーと補強繊維とを有する、補強用材料と
を備える組成物であって、
前記ポリマーコンクリート混合物がCHDMを含む骨格を有する前記ポリマーと直接接触しながら硬化されている、
組成物。
【請求項2】
前記補強用材料の前記ポリマーがポリウレタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記補強用材料の前記ポリマーが共重合ポリエステルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記補強用材料の前記ポリマーが、ポリエチレンテレフタレートグリコール(「PETG」)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール(「PCTG」)、およびポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート酸(「PCTA」)の群から選択されるポリマーである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記硬化剤が架橋試薬とフリーラジカル開始剤とを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記硬化剤と前記UPRとの相互作用は、前記UPRにおいて反応を惹起する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記架橋試薬がスチレンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記フリーラジカル開始剤が過酸化メチルエチルケトンまたは過酸化ベンゾイルである、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記UPRが、無水マレイン酸および無水フタル酸をプロピレングリコールと組み合わせることによって作製される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記補強用材料の前記補強繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、およびアラミド繊維の群から選択される繊維である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
不飽和ポリエステル樹脂(「UPR」)と、骨材と、硬化剤とを有する、ポリマーコンクリート混合物と、
互いに平行で互いに経糸1本分の間隔で離れている、第1の組の2本またはそれよりも多い経糸テープと、
互いに平行で互いに緯糸1本分の間隔で離れている、第1の組の2本またはそれよりも多い緯糸テープと
を有し、
前記経糸テープの少なくとも一部分が、交絡する位置において、前記第1の組の緯糸テープの少なくとも一部分と交絡し、結合している、
交絡複合材部材と、
を備える組成物であって、
前記ポリマーコンクリート混合物が前記交絡複合材部材と直接接触して硬化されている、
組成物。
【請求項12】
前記交絡複合材部材の前記経糸テープの少なくとも1本がCHDM含有ポリマーを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記交絡複合材部材の前記緯糸テープの少なくとも1本がCHDM含有ポリマーを含む、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
補強コンクリート組成物を製造するための方法であって、
補強用材料を型枠に挿入する段階であって、前記補強用材料がポリマーと補強繊維とを有し、前記ポリマーがシクロヘキサンジメタノール(「CHDM」)を含む骨格を有する、段階と、
ポリマーコンクリート混合物を前記型枠に挿入する段階であって、前記ポリマーコンクリート混合物が不飽和ポリエステル樹脂(「UPR」)と、骨材と、硬化剤とを有する、段階と、
前記ポリマーコンクリート混合物を硬化させる段階と
を備える、製造方法。
【請求項15】
前記補強用材料が交絡複合材部材である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記交絡複合材部材が、前記ポリマーコンクリート混合物が前記交絡複合材部材の内側および外側を流れることを可能にする1つまたは複数の開口部を含有する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
補強材料の前記ポリマーが、ポリウレタンおよび共重合ポリエステルの群から選択されるポリマーである、請求項14から16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記硬化剤が架橋試薬とフリーラジカル開始剤とを含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記ポリマーコンクリート混合物が密閉型枠において熱および圧力の印加によって硬化される、請求項14から18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記ポリマーコンクリート混合物が開放型枠において大気圧で硬化される、請求項14から18のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照および優先権の主張)
本出願は、2014年8月8日に出願された米国仮出願第62/034,930号の優先権を主張する2015年8月07日に出願された米国特許第9,809,926号の分割出願である2017年10月19日に出願された米国出願第15/788,061号(係属中)の一部継続出願である2019年12月12日に出願された米国出願第16/711,668号(係属中)の一部継続出願である。本出願はまた、2016年5月16日に出願された米国仮出願第62/336,974号の優先権を主張する2017年5月15日に出願された国際出願第WO2017/200935号の優先権を主張する米国出願第16/301,883号の一部継続出願でもある。上記出願のそれぞれの全内容および主題は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
これまで、コンクリートはポルトランドセメントと骨材(多くの場合、細骨材と粗骨材との混合物)とを含む混合物から形成されてきた。引張強度を改善し、ひびの伝播を限定するために、コンクリートは多くの場合、鉄骨鉄筋またはワイヤケージで補強される。鉄骨はそのコストの低さのため、ならびに加工性、具体的には熱間成形および溶接して複雑な形状を達成可能であることのために選択される。しかしながら、鉄骨は腐食しやすく、これにより鉄骨の膨張が引き起こされ、コンクリートの剥落および亀裂が誘発される。従来のコンクリートの空隙率は腐食性液体および気体(例えば塩水または硫化水素)が鉄骨鉄筋を腐食することを可能にしており、そのため、この問題を軽減する多くの新技術がもたらされている。
【0003】
複合鉄筋は、鉄骨鉄筋を不適当とする環境制約を伴う建設用途において、鉄骨鉄筋の代替として一般的に使用される。これには、腐食のリスクが高い用途(例えば、橋、水処理施設、もしくは工場排水施設)、または磁気干渉に対する感度のリスクが高い用途(例えば、核磁気共鳴画像装置もしくは無線放送設備を収容する建物)が含まれ得る。これらの材料は繊維補強熱硬化性樹脂の引抜成形によって慣例的に製造されるが、他の製造方法は当業者によく知られているだろう。大半の複合マトリクス材料は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、またはアクリル樹脂のカテゴリから選択される熱硬化性樹脂である。繊維補強材は通例、繊維ガラス、炭素繊維、またはバサルト繊維である。繊維およびマトリクス材料の選択は、性能要件、環境要件、および費用制約条件の組合せに基づく。
【0004】
ポリマーコンクリートは、ポリマーが従来のコンクリートにおいて使用される石灰系セメントの代わりとなるポリマーセメントコンクリートと、ポリマーが石灰系セメントに加えて使用されるポリマー改質コンクリートとの両方を含むように定義される。ポリマーコンクリートはポリマーと骨材とを含む混合物から形成される。最も一般的に使用されるポリマーは、エポキシ、ラテックス、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル、フラン、およびアクリレートである。ポリマーコンクリートは、従来のコンクリートと比較していくつかの利点、例えば、優れた強度および耐衝撃性、低い透過性、高い耐薬品性、良好な制振性、ならびに速硬性を有する。その低い透過性および高い耐薬品性のために、ポリマーコンクリートは、高感度の電子制御装置を保護するための筐体、および産業化学物質のための排水システムにおける使用に特に好適となる。ポリマーコンクリートはまた、鉄骨鉄筋およびワイヤケージを腐食から保護する。
【0005】
補強コンクリートの破壊は多くの場合、剪断滑り、または材料間の荷重伝達を分断するコンクリートと補強材料との分離に起因して生じる。鉄骨は、従来のコンクリートまたはポリマーコンクリートに使用されるバインダに対して高度の付着を呈しない。塗料を鉄骨に塗布して付着を達成することが可能であるが、好ましい代替手段は鉄筋のテクスチャリング(異形鉄筋)またはワイヤケージ構造の使用を伴い、どちらの方法もコンクリートと接触する荷重伝達面積を増加させ、剪断滑りに抵抗する。従来のコンクリートに使用される複合鉄筋は、多くの場合、この効果を再現するためにテクスチャまたはケージ構造を再現するが、ポリマーコンクリートの空間における最適化はほとんど行われていない。
【0006】
ポリエステルは二塩基酸とジオール分子との反応から形成される。これらは、重合プロセス後にそれらが二重結合を保持するか否かに基づいて、不飽和ポリエステル(熱硬化性材料である)および飽和ポリエステル(通例、熱可塑性物質)のいずれかに分類することができる(不飽和とは、二重結合が保持されていることを意味する)。非ベンゼン二重結合の存在は、不飽和ポリエステルが架橋されてその最終熱硬化性形態になることを可能にする。
【0007】
不飽和ポリエステル樹脂(「UPR」)は、主要な結合剤として、ポリマーコンクリートの製造に使用され得る。大半のUPRは、無水マレイン酸および無水フタル酸(二塩基酸)とプロピレングリコール(ジオール)との組合せを使用して、不飽和ポリエステル構造を形成する。架橋試薬(多くの場合スチレン)およびフリーラジカル開始剤(多くの場合、過酸化メチルエチルケトン(「MEKP」)または過酸化ベンゾイル(「BPO」)によって提供される)の導入は、二重結合を開裂してスチレン分子を介した隣接ポリエステル分子間の架橋の形成を可能にする反応を惹起する。この架橋構造はUPRに良好な耐薬品性を付与するため、これはポリマーコンクリート用途に使用される。しかしながら、UPRの付着に関する特性はエポキシ(より高価な熱硬化性物質)よりも低く、このことは好適な補強材料の選択を困難にする。
【0008】
したがって、UPRと適合性であり、補強材料として役立ち得るポリマー材料を同定する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
補強ポリマーコンクリートを作製する組成物および方法が本明細書に記載される。補強ポリマーコンクリートの組成物はポリマーコンクリート混合物と補強用材料とを備え得る。ポリマーコンクリート混合物はUPRを有し得る。ある例では、UPRは、無水マレイン酸および無水フタル酸(二塩基酸)をプロピレングリコール(ジオール)と組み合わせることによって形成することができる。補強用材料はポリマーと補強繊維とを有し得る。
【0010】
補強用材料に使用されるポリマーは、シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」)を含む骨格を有する任意のポリマーであり得る。例えば、ポリマーは、CHDM含有ポリウレタン、またはPETG、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール(「PCTG」)、およびポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート酸(「PCTA」)などのポリエステルであり得る。ポリマーは、それがCHDM骨格を含有する限り、熱硬化性であっても熱可塑性であってもよい。補強繊維は、ポリマーと比較して向上した強度、剛性、または機能性を実現する任意の種類の繊維材料であり得る。例えば、補強繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維、または金属繊維であり得る。
【0011】
ある例では、補強ポリマーコンクリートは、ポリマーコンクリート混合物と補強用材料とを型枠に挿入することによって形成することができる。ポリマーコンクリートは、UPRと、骨材と、硬化剤とを混合することによって調製され得る。硬化剤は、架橋試薬とフリーラジカル開始剤とからなり得る。補強用材料は、ポリマーコンクリートが依然として液体または半液体状態である間に導入される前に、型枠に入れることができる。硬化剤とUPRとの相互作用は、UPRにおいて、二重結合を開裂して架橋試薬分子を介した隣接ポリエステル分子間の架橋を可能にする反応を惹起する。ある例では、フリーラジカル開始剤はMEKPまたはBPOであり得る。次いで、混合物は硬化させることができる。ある例では、混合物は、ポリマーコンクリートの少なくとも一部を空気に曝露する開放型枠において室温および室圧で硬化され得る。別の例では、混合物は、硬化プロセスの間ポリマーコンクリートを完全に密閉する密閉型枠において熱および/または圧力を印加することによって硬化され得る。別の例では、混合物は、加熱される開放型枠において硬化され得る。
【0012】
CHDM含有ポリマーを有する交絡複合材を作製し、それを補強用材料としてポリマーコンクリート混合物に導入するための方法も本明細書に記載される。交絡複合材は、作製して型枠に挿入することができる。UPRと、骨材と、硬化剤とを含有するポリマーコンクリート混合物は、ポリマーコンクリート混合物とCHDM含有交絡複合材とが直接接触するように型枠に挿入することができる。次いで、コンクリート混合物は硬化させることができる。
【0013】
前述の全般的な説明と以下の詳細な説明との両方は、例示および説明のためのものに過ぎず、特許請求される例に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】補強ポリマーコンクリートの側面図を示す。
【0015】
【
図1B】補強ポリマーコンクリートの上面図を示す。
【0016】
【
図2】補強ポリマーコンクリートのサンプルを取り付けた重ね剪断試験装置を示す。
【0017】
【
図3】本開示に従った経糸および緯糸テープの交絡を示す平織の図である。
【0018】
【
図4】交絡複合材を補強剤としてポリマーコンクリート混合物に組み込むための方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付の図面に示される例を含む実施例について詳細に述べる。可能である限り、同じ参照符号は、図面全体にわたって、同じまたは同様の部分を指すために使用される。
(試験材料)
【0020】
6つの熱可塑性材料を、開放型枠ポリマーコンクリートミックスと密閉型枠ポリマーコンクリートミックスとの両方に対する付着について試験した。選択した可塑性物質のうち5つは、ポリマーコンクリートに使用される不飽和ポリエステルとの結合に対する潜在的な適合性に基づいて選択し、1つの可塑性物質(ポリプロピレン)は、公知の非極性対照として選択した。潜在的な適合性を有する全ての可塑性物質は極性カルボニル基(炭素に二重結合した酸素)を含有し、いくつかは骨格主鎖内に存在するかまたは骨格主鎖に結合している環構造を保有する。選択したポリマーは、UPRの分子構造を近似させ、硬化剤の存在によって引き起こされるUPR架橋反応に関与する可能性を高めるために選択した。試験された熱可塑性材料は、
【0021】
【化1】
の反復サブユニットを有するポリプロピレン(「PP」)、
【0022】
【化2】
の反復サブユニットを有するポリアミド6(「ナイロン6」)、
【0023】
【化3】
の反復サブユニットを有するポリアミド6,6(「ナイロン6,6」)、
【0024】
【化4】
の反復サブユニットを有するポリエチレンテレフタレート(「PET」)、
【0025】
CHDMがポリマー骨格に、エチレングリコール(「EG」)よりも低いレベルで付加される、PETのコポリマーであるPETG:
【化5】
【0026】
および
【化6】
の反復サブユニットを有するポリカーボネート(「PC」)であった。
【0027】
以下の図はPETGの重合プロセスの例を示す。
【化7】
(調製)
【0028】
候補となる熱可塑性ポリマーとUPR系ポリマーコンクリートとの付着を検討するために、修正重ね剪断試験を実施した。この試験の準備として、候補となる熱可塑性ポリマーのそれぞれに関して、一貫したサイズの長方形のストリップを切り出した。必要とされる場合、各材料間で類似した表面粗度を達成するために、ストリップを紙やすりで軽く磨いて粗度を増加させた。付着の挙動に対する成形の種類の任意の潜在的な影響を同定するために、開放型枠硬化プロセスと密閉型枠硬化プロセスとの両方において各材料のストリップを調製し、熱可塑性ストリップがポリマーコンクリートの表面とほぼ同一平面となるようにそれらをポリマーコンクリートと組み合わせた。開放型枠プロセスでは、ポリマーコンクリートを室温および室圧で硬化させた。密閉型枠成形プロセスでは、ポリマーコンクリートを昇温および昇圧で硬化させた。昇温は、摂氏150度から最大で材料の分解温度までの範囲であり得るが、典型的にはそれは摂氏150度により近い。圧力は、大気圧よりも大きい圧力から最大で材料の圧縮強度までの範囲であり得るが、典型的にはそれは100~300psi(0.689MPa~2.068MPa)まで上昇させる。
【0029】
ポリマーコンクリートを完全に硬化させた(密閉型枠プロセスの場合はおよそ24時間、開放型枠成形プロセスの場合はおよそ72時間)後、ウォータージェットを使用して試験片をポリマーコンクリートから切り出した。
図1Aおよび1Bは、ウォータージェット切断後の試験片100の例を示す。120は熱可塑性ストリップであり、110はポリマーコンクリートである。ノッチ130および140は、試片を切り抜いて必要な重ね剪断領域150を作出する際に作製された。
(試験)
【0030】
上に記載した方法を使用して調製した試験片は、試片のサイズに適切なグリップおよび荷重制限がある任意の種類の万能試験機を使用して試験することができる。
図2は、試片の縦が機械の引張荷重方向(矢印215によって示される)と一致し、ノッチ130および140の平面が引張荷重方向と垂直になるように万能試験機200のグリップ内に配向された試験片100を示す。グリップ210は、試験片100を損傷してグリップの位置で破壊を誘発するほど大きな力を加えることなく、試験片100をしっかりと保持し、滑りを回避するのに十分な力(矢印205によって示される)を提供するように構成されるべきである。
【0031】
グリップ210のうちの1つの引張荷重方向に沿った変位による引張荷重の印加は、試験片100に引張ひずみを誘発する。ノッチ130および140はそれらの間に応力集中領域を生じさせ、これにより熱可塑性ストリップ120とポリマーコンクリート110との接触面に剪断応力が生じる。熱可塑性ストリップ120とポリマーコンクリート110との間の付着力は、分離破壊時の剪断応力を算出することによって決定することができる。低付着力を有する熱可塑性材料の場合、剪断強度は構成材料のいずれかの引張強度よりも小さく、分離破壊が生じることになる。高付着力を有する熱可塑性材料の場合、付着強度は熱可塑性ストリップまたはポリマーコンクリートのいずれかの引張強度を上回ることがあり、結果的に、より弱い材料において引張破壊が生じる。
【0032】
グリップによって誘発される一貫性のない予応力に起因する試験結果の偏りを回避するために、グリップが開放している(いかなる試験片も有しない)間、ロードセルの値をゼロに調節し、50Nの予荷重を各試片に対して指定した。予荷重は、試片がグリップに取り付けられた後に生じ、それによって試片に50Nまで徐々に荷重を加え、その時点でのロードセルの変位をゼロとし、試験を開始する。
(結果)
(ポリプロピレン)
【0033】
PP試片は密閉型枠プロセスの加熱硬化に耐えることができなかった。それらは開放型枠プロセスの硬化には耐えることができたが、PPは上に記載したウォータージェット切断中にコンクリートから離層した。したがって、PPのUPRコンクリートに対する結合強度は、付着剪断強度を試験することができないほど弱かった。
(ナイロン6,6)
【0034】
ナイロン6,6試片は、開放型枠硬化プロセスと密閉型枠硬化プロセスとの両方に耐えることができた。しかしながら、PPと同様に、ナイロン6,6サンプルのいずれもウォータージェット切断処理に耐えなかった。したがって、ナイロン6,6のUPRコンクリートに対する結合強度は非常に弱く、付着剪断強度を試験することができなかった。
(ナイロン6)
【0035】
ナイロン6試片もまた硬化プロセスに耐えた。密閉型枠ナイロン6試片はウォータージェット切断処理プロセスにおいて脱落したが、開放型枠サンプルは耐えた。4つの開放型枠ナイロン6サンプルについて、それらのうちの2つは50Nの予荷重において脱落した。残りの2つのサンプルを試験し、これらは100N~275Nの荷重で重ね剪断領域150における破壊を経験した。換言すれば、ナイロン6とポリマーコンクリートとは、引張荷重が100N~275Nに達した場合、重ね剪断領域150において互いから離れる。2つのサンプルの算出された付着剪断強度は0.21MPaおよび0.47MPaであった。
(ポリカーボネート)
【0036】
PC試片は密閉型枠での硬化プロセスに耐えなかったが、4つの開放型枠PCサンプルの全ては、開放型枠での硬化、ウォータージェット切断、および50Nの予荷重閾値に耐えた。PCサンプルは、可塑性サンプルが
図1Aにおけるノッチ130の重ね剪断領域150と反対側の端部において最初に分離する特有の破壊様式を呈した。次いで、この分離現象は、試験機のグリップに達するまで界面に沿って伝播した。4つのPCサンプルの全てはこの破壊様式を呈し、1つのサンプルは重ね剪断領域150における後続の破壊も呈した。荷重を除去した後、熱可塑性ストリップ120とポリマーコンクリート110とは接触しているように見えたが、サンプルに少量の引張力をその長手方向において再び印加した場合、分離界面が視認可能となった。通常とは異なる破壊様式のため、付着剪断強度を算出することは不可能であったが、試験の力-変位曲線の分析は、分離が2つのサンプルでは200N~250N、1つのサンプルでは400N~425N、および1つのサンプルでは800N前後で最初に生じることを示した。
(ポリエチレンテレフタレート)
【0037】
ナイロン6サンプルと同様に、PET試片は開放型枠硬化プロセスと密閉型枠硬化プロセスとの両方に耐えたが、密閉型枠サンプルはウォータージェット切断中に脱落した。4つの開放型枠PETサンプルのうちの2つもまた50Nの予荷重閾値において脱落した。残りの2つの試片を試験し、これらは150N~250Nの荷重で重ね剪断領域150における破壊を経験した。2つの試片の算出された付着剪断強度は0.49MPaおよび0.26MPaであった。
(ポリエチレンテレフタレートグリコール)
【0038】
PETG試片の結果は、他の全てのサンプルと比較して予期せぬものであった。試験された他の全てのサンプルと異なり、全てのPETG試片は開放型枠硬化プロセスと密閉型枠硬化プロセスとの両方、ウォータージェット切断、および50Nの予荷重閾値に耐えた。PETGは、密閉型枠での打設および硬化プロセス中に、ある軟化/圧縮流動挙動を呈したが、それは材料を弱化しなかった。それどころか、これは、ポリマーコンクリート混合物を適応させるのにふさわしい表面を提供するようにポリマーコンクリートとの界面を改善し、2つの材料間の接触面積を増加させた。
【0039】
4つの開放型枠PETG試片の全てにおいては、任意の分離現象が重ね剪断領域150において生じる前に、引張荷重下でPETGそれ自体に亀裂が入った。亀裂は一貫してノッチ130(
図2に示す)において生じ、次いで熱可塑性層の厚さ方向に伝播し、可塑性ストリップの露出面に蝶番状の接触を残した。開放型枠成形PETG試片のうちの2つは575N~625Nの荷重で亀裂が生じ、これは、PETGとPETの2つの材料が同じポリマーファミリーに由来するにもかかわらず、PETの場合に観察された破壊荷重の約3倍の大きさである。一方の開放型枠成形PETG試片は300N~350Nの間で破壊され、他方のものは500N~550Nの間で破壊された。更に、観察された破壊様式は純粋に引張性であり、このことは、PETGとPCの2つの材料が同様の荷重下で破壊されるにもかかわらず、PETGとポリマーコンクリートとの間の実際の付着剪断強度がPCの場合に観察されたものよりも遥かに高いことを示す。
【0040】
密閉型枠PETG試片のうちの2つを試験した。両方の試片において、任意の分離現象が重ね剪断領域150において生じる前に、引張下でノッチ140(
図1Aおよび
図1Bに示す)においてポリマーコンクリートに亀裂が入った。ポリマーコンクリート破壊は350N~500Nの荷重で生じた。開放型枠成形PETGに関する観察と同様、サンプルの引張破壊のために付着剪断強度は算出することができない。
【0041】
密閉型枠ポリマーコンクリート試片は、1.5インチ(38.1mm)厚の開放型枠サンプルに対して、わずか3/4インチ(19.05mm)の厚みであったため、ポリマーコンクリートはおそらくPETGの前に破壊された。この厚みの差は、密閉型枠ミックスがより高い骨材割合を有することと相まって、ポリマーコンクリートに集中するより大きい荷重を引き起こす。この破壊様式のために、結果としてPETG-ポリマーコンクリート界面の付着強度は密閉型枠ポリマーコンクリートミックスの引張強度よりも高くなる。付着試験は無補強可塑性ストリップを使用して行ったが、特許請求される発明のうちの1つは、ポリマーと補強繊維との両方を含有する補強用材料を利用することを伴う。補強用繊維、特に補強長繊維の追加は、補強用材料の引張強度を劇的に向上させ、破壊様式をポリマーコンクリート破壊または付着破壊のいずれかに変化させ得る。
(分析)
【0042】
ポリプロピレンは、極性および反応性官能基の欠如のためにUPR重合反応に関与し得ないことを本発明者らが認識している材料として、ベンチマークを提供および確立するために選択された。ナイロン6およびナイロン6,6は、UPRとある程度の極性相互作用を呈することが予期されたが、本発明者らは、驚いたことに、その化学構造がほとんど同一であるこれらの2つの材料の間で異なる挙動を観察した。特に、ナイロン6,6はポリプロピレンと同様にウォータージェット切断に対する耐久性が良好ではなかったが、ナイロン6はウォータージェット切断に耐えただけでなく、4つのうち2つのサンプルが50Nの予荷重に合格したという観察は予期せぬものであった。
【0043】
ポリカーボネート、PET、およびPETGは、それらの構造が環構造、酸素、および炭素をカルボニル(二重結合した酸素)官能性と組み合わせた骨格鎖に基づいているため、UPRに対して比較的類似した付着挙動を呈すると予期された。特に、PETとPETGとの密接に関連する性質のため、本発明者らはこれらの材料が非常に類似した付着の挙動を有すると予期するに至り、費用の柔軟性と供給業者の選択肢とを本発明者らに提供するためにのみ両方の材料を含めた。この最初の仮説にもかかわらず、これらの3つの材料は劇的に異なる付着挙動を呈し、PETは最も悪い付着を示し、PCは中等度の付着を示し、PETGは並外れた付着を示した。引張中に観察された付着のレベルは、PETGがポリマーコンクリートにおいてUPRと化学結合を形成することを示す。
【0044】
最初の重ね剪断試験後、PCおよびPETG試片を急激な衝撃力に供して亀裂を誘発し、材料間の付着の挙動を比較した。PC材料は、打撃されたのが可塑性面であるか、ポリマーコンクリート面であるか、界面付近の端部であるかにかかわらず、可塑性ストリップとポリマーコンクリートとの界面の分離を受けた。PETGサンプルでは、亀裂経路がポリマーコンクリートとPETG材料との界面にわたり観察されたが、低角度亀裂経路と高角度亀裂経路の両方に関して、視認される分離は存在しなかった。このことは、材料間の付着における強度が界面にわたる凝集エネルギ散逸を生じるほど十分に高いことを示す。
【0045】
ガラス長繊維補強PETGシートをUPRポリマーコンクリートスラブ構造体に打設し、硬化させ、次いでハンマーで繰り返し打撃する最終試験は、ポリマーコンクリートとPETGとの高レベルの付着を更に確認した。ガラス/PETGシートはスラブよりも小さいサイズで作製されており、シート補強領域外への衝撃は1~2回以内の打撃で亀裂を引き起こしたが、シート補強領域内への衝撃は任意の亀裂が生じる前に3~4回の衝撃を必要とし、一度ポリマーコンクリートの表面層にひびが入ったとしても、シート全体に衝撃を伝播するためには更に数回の衝撃が必要であった。亀裂にもかかわらず、ガラス/PETGシートはポリマーコンクリート断片にしっかりと付着したままであり、ガラス/PETGテープ内のガラス糸を引き離すことによってのみ、本発明者らは断片を離すことができた。
【0046】
テレフタル酸(「TPA」)およびEGはPETとPETGとの両方に共通するが、PETGはCHDMを含んでいる点で特有である。ベンゼン環骨格を含有するTPAと異なり、CHDMはシクロヘキサン環(炭素-炭素単結合を有する)を有するのみであり、(ベンゼンの非局在化共鳴構造のために)ベンゼン構造よりも可撓性かつ反応性である。また、重合後、このシクロヘキサン環は保護カルボニル官能基から更に遠くに位置し、これにより、シクロヘキサンが後続の反応に関与することがより容易になる。
【0047】
CHDMのシクロヘキサン環は、硬化剤がポリマーコンクリート打設中に液体UPRに添加される場合に生じる、フリーラジカルによって開始される架橋反応に関与していると考えられる。
(実施形態)
【0048】
ここに記載される補強ポリマーコンクリートの一実施形態は、ポリマーコンクリートと補強用材料とを備え得る。補強用材料はポリマーと補強繊維とを有し得る。CHDM架橋反応に基づくと、補強材料におけるポリマーは任意のCHDM含有ポリマーであり得る。ポリマーは、それがCHDM骨格を含有する限り、熱硬化性であっても熱可塑性であってもよい。例えば、イソシアネートとポリオールとを反応させることによって形成されるポリウレタンは、CHDMをポリオール成分の一部として使用して合成することができる。そのようなCHDM含有ポリウレタンの全てはポリマーコンクリート硬化プロセス中に同様の結合を経験し得ると考えられる。CHDM含有ポリエステルの一部の例としては、共重合ポリエステルであるPETG、PCTG、およびPCTAが挙げられる。PCT、PCTG、およびPCTAの重合のためのモノマーは:
【化8】
である。
【0049】
ポリマーコンクリートに使用することができる結合剤の一例はUPRである。ビニルエステルおよびエポキシなどの、CHDM含有ポリマーと同様の架橋機構を生成する他の結合剤を使用してもよい。しかしながら、UPRは利用可能な代替手段よりも著しく廉価であり、より幅広く利用可能である。そのため、UPRを主要な結合剤として使用することが好ましいと考えられる。UPRは、無水マレイン酸および無水フタル酸(二塩基酸)をプロピレングリコール(ジオール)と組み合わせて、以下に示す不飽和ポリエステル構造を形成することによって形成することができる。
【化9】
【0050】
ポリマーコンクリートは、使用される結合剤の点で、より従来的なコンクリートと異なる。ポルトランドセメントは従来のコンクリートに使用される最も一般的な結合剤である。水と混合すると、ポルトランドセメントは砂および小石と結合して固まるペーストを生じる。ポルトランドセメントは通例、石灰石に由来するが、ポリマーコンクリートは、上で説明したように、ポリマーを結合剤として使用する。ポルトランドセメント系コンクリートはポリマー系結合剤ではなく石灰石系結合剤を使用するため、異なる材料に対するその付着特性は大きく異なり得る。例えば、以下の段落では、CHDM含有ポリエステルとUPRポリマーコンクリートとの化学結合を生じる場合に活性となり得る架橋機構が記載される。この架橋機構は、ポルトランドセメント系コンクリートの場合には存在し得ず、したがってPETGを用いたとしても同じ付着強度を経験し得ない。
【0051】
架橋試薬(例えばスチレン)およびフリーラジカル(多くの場合、MEKPまたはBPOを添加することによって行われる)を導入することは、二重結合を開裂してスチレン分子を介した隣接ポリエステル分子間の架橋の形成を可能にする反応を惹起する。この反応の化学構造を以下に示す。
【化10】
【0052】
CHDM含有ポリエステルとUPRポリマーコンクリートとの化学結合を生じる場合に活性となり得ると考えられる架橋機構は2つ存在する。第1に、これまでに議論されたように、CHDMのシクロヘキサン環は、MEKPがポリマーコンクリート打設中に液体UPRに添加される場合に生じる、フリーラジカルによって開始される架橋反応に関与すると考えられる。シクロヘキサンはフリーラジカルによって開始される開環を受けやすいと考えられる。結果として、ラジカル化UPR分子またはラジカル化スチレンがCHDMを攻撃し、それを開裂し、開放環の一方の腕と結合を形成するため、シクロヘキサンはUPR架橋反応に積極的に関与することができると考えられる。環が開裂した後、残りの腕は、それが第1の腕に結合したUPRからの干渉を受けずに追加のスチレン分子と反応することを可能にし得るより低いエネルギ配座(第1の腕と反対側)まで回転することができる。
【0053】
別の架橋機構では、PETG内のシクロヘキサンは、環分離ではなく炭素-水素結合のうちの1つのラジカル置換を介して架橋反応に関与すると考えられる。この種類のラジカル置換反応に関する先行研究は、フタル酸系CHDM含有ポリエステルを利用し、シクロヘキサン環の保護カルボニル基に対する位置を変化させるが、PETGはどちらもテレフタル酸を利用するため、この機構は好ましくないと考えられる。
(実施例の応用)
【0054】
本明細書に記載される方法を使用したPETGおよびポリマーコンクリートによって呈された予期せぬ結果は、交絡複合材をポリマーコンクリートにおける補強構造として使用する場合、好都合であり得る。
図3は、上で言及された、参照によって本出願に組み込まれる関連出願に記載されている交絡複合材300の例示的な実施形態を示す。交絡複合材300は、第1の組の2本またはそれよりも多い経糸テープ310(互いに実質的に平行)と、第1の組の2本またはそれよりも多い緯糸テープ320(互いに実質的に平行)とを有することができ、第1の組の経糸テープ310の少なくとも一部分は、第1の組の緯糸テープ320の少なくとも一部分と交絡し、結合している。
本明細書において使用される場合、「テープ」とは、幅または厚みよりも遥かに大きい長さを有する要素を指す。好ましい実施形態では、テープ310および320は、ポリマーと、炭素、バサルト、ガラス、金属、もしくはアラミド、またはポリマーと比較して向上した強度、剛性、もしくは機能性を実現することが当業者によって公知であり得る任意の他の繊維補強材などの補強繊維とを含むことができる。
【0055】
ある実施形態では、1本または複数本のテープ310および/または320はCHDM含有ポリマーを含むことができる。一部の実施形態では、全てのテープがCHDM含有ポリマーを含む交絡部材を製造して、ポリマーコンクリートと交絡複合材との付着を最大化することが好ましい場合がある。他の実施形態では、いくつかの本数のテープがCHDM含有ポリマーを含み、他のテープが交絡複合材の1本または複数本のテープに依然として結合可能である非CHDM含有ポリマーを含む(PETGとPETとがそのような例の1つであり得る)交絡複合材を設計することが好ましい場合がある。この混合材料交絡複合材は、単一材料設計よりも安価であり得るか、または一部の領域に分離破壊を誘発する一方で他の領域においては高レベルの付着を保持して、材料内に偽塑性破壊様式を生成するのに好都合であり得る。
【0056】
ポリマーコンクリートは従来、混合デバイスから型枠に直接打ち込まれるかまたは打設されるため、ポリマーコンクリートで型枠を支障なく充填することを交絡複合材が可能とすることを保証することが重要である。したがって、経糸テープ310と緯糸テープ320とは、開口部330を作成するように間隔を空けることができる。したがって、ポリマーコンクリートが成形プロセス中に交絡複合材の内側および外側を流れることを可能にする1つまたは複数の開口部330を有する交絡複合材を設計することができる。一部の実施形態では、交絡複合材内の複数の開口部330は、交絡複合材とポリマーコンクリートとが接触する表面積を増加させるために使用され得る。他の実施形態では、複数の開口部330は、交絡複合材の交絡点340を包含することによって機械的結合を生成し得る。ポリマーコンクリートが交絡複合材の内側および外側を流れることを可能にすることは、交絡複合材の上側のポリマーコンクリートと下側のポリマーコンクリートとに連続性をもたらすことによって、材料間の差分ひずみにより引き起こされる界面剪断応力を低減するという利益も有する。
【0057】
一方向テープまたは押出成形/引抜成形ロッドと異なり、交絡複合材の使用は、コンクリート部材内における格子の取扱いおよび位置に関する更なる利益を提供する。一方向テープは、丸まるかまたは巻き付く傾向のために、型枠内において取り扱うことおよび位置付けることが困難であり、打込み作業中に動きやすく、不良品を生み出すおそれがある。押出成形/引抜成形複合ロッド、特に熱硬化性ポリマーから使用して製造されたものは、補強ケージ構造の形成が各鉄筋を各交差する鉄筋に手作業で連結することを必要とするため、設置が労働集約的であることが建設業界内で周知である。これらの連結点はまた、構造内において荷重伝達が不良な領域でもある。交絡複合材は、構造設計による必要に応じてテープの間隔を空けて製造することができ、テープにおける熱可塑性ポリマーの使用は、交絡複合材を任意の形状に熱形成することを可能にし、交絡複合材のそれ自体および他の適合性熱可塑性物質(例えば追加の交絡複合材または熱可塑性アンカー)への接合も可能にする。交絡複合材はまた、格子を経糸および緯糸方向に張った後に打設を行うことができるため、プレストレストコンクリートの製造にも資する。
【0058】
一部の実施形態では、伝送材料(例えば光ファイバまたは金属リボン)を交絡複合材内の経糸または緯糸テープとして利用することができる。この伝送材料を含むことで、硬化コンクリート部材の構造ヘルスモニタリングが可能となり得る。伝送材料を交絡複合材内に埋め込むことで、それをコンクリート部材の既知の深さに正確に位置付けることが可能となり、またこの位置は、偶然にも最大予想引張応力と同じ位置でもある。構造ヘルスモニタリングのための光ファイバをコンクリート内に配置する既存の方法は材料の手作業での配置に依存し、これは、ファイバを損傷する可能性を高めるか、または打込みプロセス中にファイバを固定する困難さによって引き起こされる準最適配置をもたらす。
【0059】
図4は、交絡複合材を補強用材料としてポリマーコンクリート混合物に組み込むための方法の例を示す。工程400において、CHDM含有ポリマーを有する交絡複合材を作製することができる。ある例として、CHDM含有ポリマーはPETGであり得る。ある例では、交絡複合材は、本明細書にこれまでに記載した方法、例えば
図3に関してこれまでに記載した方法を使用して作製され得る。どこに何本のCHDM含有ポリマーテープを使用するかということに関する交絡複合材の組成は、具体的なニーズに応じて変動し得る。例えば、CHDM含有ポリマーを含むテープは含まないものよりも高価であり得るため、ポリマーを含むテープはより少なく使用される可能性がある。一例では、交絡複合材はCHDM含有ポリマーを含むテープを1本のみ有し得る。別の例では、全てのテープがCHDM含有ポリマーを含み得る。本明細書にこれまでに記載した理由のため、交絡複合材におけるより多くの数のCHDM含有ポリマーを含むテープは、ポリマーコンクリートに対するより強力な結合を生じ得る。
【0060】
工程410において、交絡複合材を型枠に挿入することができる。型枠は開放であっても密閉であってもよい。交絡複合材は、交絡複合材の少なくとも一部分が型枠に打ち込まれる任意のポリマーコンクリートと直接接触する限り、型枠に所望通りに置くことができる。
【0061】
工程420において、ポリマーコンクリート混合物を型枠に挿入することができる。ある例では、ポリマーコンクリート混合物は結合剤としてUPRを有するコンクリート混合物であり得る。他の結合剤の例としては、エポキシおよびビニルエステルを挙げることができる。工程410および420は、反対の順序で実施しても、同時に実施しても、部分的に重なるように実施してもよいことに留意するべきである。ポリマーコンクリート混合物は架橋剤とフリーラジカル開始剤とを有し得る。スチレンは含まれ得る架橋剤の例である。MEKPおよびBPOは含まれ得るフリーラジカル開始剤の例である。本明細書にこれまでに記載した理由のため、架橋剤およびフリーラジカル開始剤は、交絡複合材テープにおけるCHDM含有ポリマーとの結合のために結合剤の分子を開裂し得る。
【0062】
一部の例では、交絡複合材およびポリマーコンクリート混合物は積層技法を使用して型枠に挿入され得る。例えば、最初に、型枠の一部分がポリマーコンクリート混合物で充填され得る。次いで、交絡複合材がポリマーコンクリート混合物の露出面に押し込まれ得る。最後に、交絡複合材がポリマーコンクリート混合物内に密閉されるように、追加のポリマーコンクリート混合物が上部に打ち込まれ得る。他の例では、最初に交絡複合材が型枠に挿入され得る。次いで、ポリマーコンクリート混合物が型枠に打ち込まれ、そのようにして交絡複合材を密閉し得る。
【0063】
工程430において、ポリマーコンクリート混合物を硬化させることができる。開放型枠が使用されるある例では、ポリマーコンクリート混合物は室温および室圧で硬化し得る。密閉型枠が使用される別の例では、ポリマーコンクリート混合物は昇温および昇圧で硬化され得る。例えば、密閉型枠では、ポリマーコンクリート混合物は、温度が摂氏150度超であり圧力が100~300psi(0.689MPa~2.068MPa)の間である場合、硬化し得る。
【0064】
本明細書においてポリマーコンクリートに対して数多くの言及がなされているが、任意の熱硬化性混合物において、結合剤としてUPR、またはビニルエステルおよびエポキシなどの類似した結合剤を使用し、硬化剤を混合物に導入し、混合物をPETGなどのCHDM含有ポリマーと直接接触させながら硬化させる場合、同様の結果が予期され得ることが企図される。
【0065】
本開示の他の例は、本明細書の検討および本明細書に開示される例の実施から当業者には明らかとなるだろう。記載された方法の一部は一連の段階として提示したが、1つまたは複数の段階が同時に行われても、部分的に重なるように行われても、異なる順序で行われてもよいことは理解されるべきである。提示される段階の順序は可能性を例示したものに過ぎず、それらの段階は任意の好適な方法で実行または実施することができる。更に、ここに記載された例の様々な特徴は相互に排他的ではない。むしろ、ここに記載された任意の例の任意の特徴は任意の他の好適な例に組み込むことができる。本明細書および例は例示的なものに過ぎないと考えられ、本開示の真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【国際調査報告】