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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】摩擦撹拌接合プロセス
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
B23K20/12 340
B23K20/12 360
B23K20/12 344
B23K20/12 310
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542932
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 GB2021050066
(87)【国際公開番号】W WO2021144561
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】2000516.1
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】20275008.9
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390038014
【氏名又は名称】ビ-エイイ- システムズ パブリック リミテッド カンパニ-
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】プライス、ハワード・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】チッペンデール、ジョン
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA02
4E167AA06
4E167AA08
4E167AA13
4E167BG01
4E167BG04
4E167BG21
(57)【要約】
摩擦撹拌接合プロセス
第1のワークピースW1と第2のワークピースW2との間のジョイントJ、例えばTジョイントJの摩擦撹拌接合(FSW)の方法が記載される。方法は、第1のワークピースW1及び第2のワークピースW2を配置することと、第1の回転方向RD1に回転し、第1のワークピースW1及び/又は第2のワークピースW2に第1の深さD1まで挿入される第1のプローブ100を備える第1のツール10を、ジョイントJの第1の側S1で、第1のラインL1を規定する第1の移動方向MD1に沿って移動させることによって、ジョイントJのFSWの第1のパスP1を実行し、それによって、第1の溶接領域WR1を提供することと、第2の回転方向RD2に回転し、第1のワークピースW1及び/又は第2のワークピースW2に第2の深さD2まで挿入される第2のプローブ200を備える第2のツール20を、ジョイントJの第2の側S2で、第2のラインL2を規定する第2の移動方向MD2に沿って移動させることによって、ジョイントJのFSWの第2のパスP2を実行し、それによって第2の溶接領域WR2を提供することとを含み、第1のツール10及び第2のツール20は、相互に対向しており、FSWの第1のパスP1を実行することと、FSWの第2のパスP2を実行することとは少なくとも部分的に同時に行われる。
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のワークピースと第2のワークピースとの間のTジョイントの摩擦撹拌溶接、FSW、の方法であって、
前記第1のワークピース及び前記第2のワークピースを配置することと、
第1の回転方向に回転し、前記第1のワークピース及び/又は前記第2のワークピースに第1の深さまで挿入される第1のプローブを備える第1のツールを、前記ジョイントの第1の側で、第1のラインを規定する第1の移動方向に沿って移動させることによって、前記ジョイントのFSWの第1のパスを実行し、それによって、第1の溶接領域を提供することと、
第2の回転方向に回転し、前記第1のワークピース及び/又は前記第2のワークピースに第2の深さまで挿入される第2のプローブを備える第2のツールを、前記ジョイントの第2の側で、第2のラインを規定する第2の移動方向に沿って移動させることによって、前記ジョイントのFSWの第2のパスを実行し、それによって第2の溶接領域を提供することとを含み、
前記第1のツール及び前記第2のツールは、相互に対向しており、前記第1のツール及び前記第2のツールは、前記第1のワークピース及び前記第2のワークピースに対して角度が付けられており、前記角度は、15°から75°の範囲であり、
前記FSWの第1のパスを実行することと、前記FSWの第2のパスを実行することとは同時に行われ、
前記第1のツール及び前記第2のツールは、面取りされた前縁及び丸みを帯びた後縁を備える固定ショルダを備える、方法。
【請求項2】
前記面取りされた前縁が、40°から50°の範囲の面取り角度を有し、及び/又は前記面取りされた前縁が、10mmから20mmの範囲の長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の移動方向及び前記第2の移動方向が相互に整列される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のプローブ及び前記第2のプローブの衝突又は干渉を回避するように、前記第1のツール及び前記第2のツールは、それぞれ、前記第1の移動方向及び前記第2の移動方向において相互にオフセットされ、及び/又は、前記第1のプローブ及び前記第2のプローブは、例えば、前記ジョイント、前記第1のライン及び/又は前記第2のラインに対して横方向、好ましくは直交する間隔だけ相互に離間される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のワークピースは雄部材を含み、前記第2のワークピースは対応する雌部材を含み、前記第1のワークピース及び前記第2のワークピースを配置することは、前記雄部材を前記雌部材内に受け入れることを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のワークピースが第1のフィレットを含み、前記ジョイントのFSWの第1のパスを実行することは、前記第1のプローブを前記第1のフィレットに少なくとも部分的に挿入することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の回転方向及び前記第2の回転方向は反対である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のライン及び前記第2のラインは、相互に離間している、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
例えば、前記FSWの第1のパス及び/又は前記FSWの前記第2のパスを実行している間に、前記第1のワークピース及び/又は前記第2のワークピースにクランプ力を印加することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記丸みを帯びた後縁は、10mmから20mmの範囲の半径を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のワークピース及び/又は前記第2のワークピースは、アルミニウム合金、例えば、2XXX、5XXX、6XXX、7XXX、及び/又は8XXXアルミニウム合金、好ましくは2XXX及び/又は7XXXアルミニウム合金、チタン合金、銅合金、及び/又は鋼を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のワークピース及び/又は前記第2のワークピースが、0.5mmから25mmの範囲、好ましくは1.6mmから20mmの範囲、より好ましくは2mmから15mmの範囲の厚さを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
コンポーネントを製造する方法であって、
請求項1から12のいずれかに記載の、第1のワークピースと第2のワークピースとの間のTジョイントの摩擦撹拌溶接、FSW、の方法を含む、方法。
【請求項14】
回転方向に回転可能なプローブを備える摩擦撹拌溶接、FSW、ツールであって、
前記ツールは、面取りされた前縁及び/又は丸みを帯びた後縁を備える固定ショルダを備える、ツール。
【請求項15】
前記面取りされた前縁は、40°から50°の範囲の面取り角度を有し、前記面取りされた前縁は、10mmから20mmの範囲の長さを有し、及び/又は前記丸みを帯びた後縁は、10mmから20mmの範囲の半径を有する、請求項15に記載のツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦撹拌接合に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦撹拌接合(FSW)(ステーク摩擦撹拌接合及び摩擦撹拌ステーク接合としても知られる)は、非消耗回転ツールを使用して、2つの対向するワークピースを、ワークピースを溶かすことなく接合する個体接合プロセスである。回転ツールはワークピースと接触しており、機械的圧力が回転ツールを介してワークピースに加えられる。したがって、回転ツールとワークピースとの間の摩擦によって熱が発生し、結果として回転ツールに近接するワークピースの材料の軟化領域をもたらす。回転ツールがワークピース間のジョイントに沿って横断するとき、回転ツールは、ワークピースの高温軟化材料を機械的に混合し、回転ツールによって加えられる機械的圧力によってこの材料を鍛造する。
【0003】
FSWは、溶接された状態での溶接部の良好な機械的特性、改善された溶接安全性、低減された消耗品使用量、自動化に適していること、すべての位置(すなわち、平坦、水平、垂直、及び頭上)での溶接に適していること、良好な溶接外観、より薄いジョイント、及び/又はより低い環境影響を含む、いくつかの利点と関係付けられてもよい。
【0004】
しかしながら、FSWはまた、回転ツールが引き抜かれる出口孔、印加される機械的圧力のための大きな力の必要性、異なるワークピース厚さ及び/又は非線形溶接にあまり適さないこと、より遅い溶接速度、ならびに/または特定のジョイントタイプ及び/もしくはジオメトリに制限されることを含む、いくつかの不利点に関係付けられるかもしれない。
【0005】
したがって、FSWを改善する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの目的は、とりわけ、摩擦撹拌接合の方法、コンポーネントを製造する方法、摩擦撹拌接合されたジョイント、コンポーネント、及びジョイントを摩擦撹拌接合するための装置を提供することであり、それは、本明細書で特定されるか他の場所で特定されるかにかかわらず、先行技術の欠点のうちの少なくともいくつかを少なくとも部分的に除去又は軽減する。例えば、本発明の実施形態の目的は、特定のジョイントタイプ及び/又はジオメトリに対する従来の制限を克服する摩擦撹拌接合の方法を提供することである。例えば、本発明の実施形態の目的は、低減された支持構造を必要とするコンポーネントを製造する方法を提供することである。例えば、本発明の実施形態の目的は、改善された機械的特性を有する摩擦撹拌接合ジョイントを含むコンポーネントを提供することである。例えば、本発明の実施形態の目的は、改善された摩擦撹拌接合を提供するジョイントを摩擦撹拌接合するための装置を提供することである。
【0007】
第1の態様は、第1のワークピースと第2のワークピースとの間のTジョイントの摩擦撹拌接合、FSWの方法を提供し、方法は、
第1のワークピース及び第2のワークピースを配置することと、
第1の回転方向に回転し、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに第1の深さまで挿入される第1のプローブを備える第1のツールを、ジョイントの第1の側で、第1のラインを規定する第1の移動方向に沿って移動させることによって、ジョイントのFSWの第1のパスを実行し、それによって、第1の溶接領域を提供することと、
第2の回転方向に回転し、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに第2の深さまで挿入される第2のプローブを備える第2のツールを、ジョイントの第2の側で、第2のラインを規定する第2の移動方向に沿って移動させることによって、ジョイントのFSWの第2のパスを実行し、それによって第2の溶接領域を提供することとを含み、
第1のツール及び第2のツールは、相互に対向しており、第1のツール及び第2のツールは、第1のワークピース及び第2のワークピースに対して角度が付けられており、角度は、15°から75°の範囲であり、
FSWの第1のパスを実行することと、FSWの第2のパスを実行することとは同時に行われ、
第1のツール及び第2のツールは、固定ショルダを備え、第1のプローブ及び第2のプローブは、面取りされた前縁及び丸みを帯びた後縁を備えている。
【0008】
第2の態様は、コンポーネント、好ましくは航空機コンポーネントを製造する方法を提供し、第1の態様の方法による、第1のワークピースと第2のワークピースとの間の摩擦撹拌接合、FSW、ジョイント、例えばTジョイント及び/又は重ねジョイントの方法を含む。
【0009】
第3の態様は、第1の態様の方法に従って提供される、第1のワークピースと第2のワークピースとの間の摩擦撹拌接合、FSW、ジョイント、例えばTジョイント及び/又は重ねジョイントを提供する。
【0010】
第4の態様は、第3の態様による摩擦撹拌接合、FSW、ジョイントを含むコンポーネント、好ましくは航空機コンポーネントを提供する。
【0011】
第5の態様は、第1のワークピースと第2のワークピースとの間のジョイント、好ましくはTジョイントを摩擦撹拌接合、FSW、するための装置を提供し、装置は、
第1の回転方向に回転可能であり、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに第1の深さまで少なくとも部分的に挿入可能であり、第1のラインを規定する第1の移動方向に移動可能であり、それに沿って移動することによってジョイントのFSWの第1のパスを実行し、それによって第1の溶接領域を提供する、第1のプローブを備える第1のツールと、
第1の回転方向に回転可能であり、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに第2の深さまで少なくとも部分的に挿入可能であり、第2のラインを規定する第2の移動方向に移動可能であり、それに沿って移動することによってFSWの第2のパスを実行し、それによって第2の溶接領域を提供する、第2のプローブを備える第2のツールとを含み、
第1ツールと第2ツールとは、相互に対向しており、
装置は、FSWの第1のパスを実行することと、FSWの第2のパスを実行することとが少なくとも部分的に同時に行われるように構成されている。
【0012】
第6の態様は、回転方向に回転可能なプローブを備える摩擦撹拌接合、FSW、ツールを提供し、ツールは、面取りされた前縁及び/又は丸みを帯びた後縁を備える固定ショルダを備える。
【発明の詳細な説明】
【0013】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲において記載されたような摩擦撹拌接合の方法が提供される。また、コンポーネントの製造方法、摩擦撹拌接合ジョイント、コンポーネント、及びジョイントを摩擦撹拌接合するための装置が提供される。本発明の他の特徴は、従属請求項、及び、以下の説明から明らかになる。
【0014】
摩擦撹拌接合の方法
第1の態様は、第1のワークピースと第2のワークピースとの間のTジョイントを摩擦撹拌接合、FSWする方法を提供し、方法は、
第1のワークピース及び第2のワークピースを配置することと、
第1の回転方向に回転し、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに第1の深さまで挿入される第1のプローブを備える第1のツールを、ジョイントの第1の側で、第1のラインを規定する第1の移動方向に沿って移動させることによって、ジョイントのFSWの第1のパスを実行し、それによって、第1の溶接領域を提供することと、
第2の回転方向に回転し、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに第2の深さまで挿入される第2のプローブを備える第2のツールを、ジョイントの第2の側で、第2のラインを規定する第2の移動方向に沿って移動させることによって、前記ジョイントのFSWの第2のパスを実行し、それによって第2の溶接領域を提供することと、
第1のツール及び第2のツールは、相互に対向しており、第1のツール及び第2のツールは、第1のワークピース及び第2のワークピースに対して角度が付けられており、角度は、15°から75°の範囲であり、
FSWの第1のパスを実行することと、FSWの第2のパスを実行することとは同時に行われ、
第1のツール及び第2のツールは、固定ショルダを備え、第1のプローブ及び第2のプローブは、面取りされた前縁及び丸みを帯びた後縁を備えている。
【0015】
すなわち、第1及び第2のツールは、第1及び第2の溶接領域がジョイントの両側で相互に近接して一緒に提供されるように、ジョイントの両側で協力して一緒に移動する。
【0016】
このようにして、特定のジョイントタイプ及び/又はジオメトリに対する従来の制限が克服される。特に、第1のツール及び第2のツールが相互に対向しており、FSWの第1のパスを実行すること及びFSWの第2のパスを実行することが同時であるため、ジョイントの第1の側及びジョイントの第2の側は、相互に対向するツールによって同時に溶接される。このようにして、ワークピースのそれぞれの表面又はその下にそれぞれのショルダを維持するために相互に対向するツールによって加えられる軸方向の力が対向する。これらの対向する力は、少なくとも部分的に均衡し、それによって、正味の力を低減する及び/又は排除することができる。このようにして、第1のツール又は第2のツールによって個々に加えられる力に抵抗するために従来必要とされていた支持構造及び/又はクランプ力が低減及び/又は排除される。
【0017】
換言すれば、第1の態様による方法は、補強材などの第1のワークピースを外板などの第2のワークピースにFSWすることを伴い、高品質の溶接を達成しながら、低減された支持ツールを必要とするか、又は支持ツールを必要としないように行う。FSWは、ストリンガフランジの各側から同時に実行されて、例えば、それぞれが溶接部の反対側に支持を提供する一対の固定ショルダツールを使用して、交差二重コーナー溶接部を生成することができる。このようにして、専用の高価な支持ツールを必要としない。以下でより詳細に説明するように、補剛材のウェブは、(翼)外板内の予め機械加工されたスロット内に配置されてもよく、機械加工されたスロットはまた、任意選択で、最小応力集中特徴部として挙動するフィレット半径を形成するために溶接プロセス中に消費される面取り特徴部を提供する。
【0018】
摩擦撹拌接合
一般に、プロファイルされたプローブピンを有する回転する円筒形ツールは、ピンよりも大きな直径を有するツールのショルダがワークピースの表面に接触するまで、2つのクランプされたワークピース間のジョイントに送り込まれる(すなわち、挿入される)。プローブピンは、ツールショルダがワークピースの表面に接触するときに必要とされる溶接深さ(すなわち、第1の深さ及び/又は第2の深さ)よりもわずかに短い。必要な加熱を達成するための短い滞留時間の後、回転ツールは、予め設定された溶接速度で接合線に沿って前方に移動される。
【0019】
摩擦熱は、回転する移動ツールとワークピースとの間で発生する。この熱は、機械的混合プロセス及び材料内の断熱加熱によって発生する熱と共に、撹拌された材料を溶かすことなく軟化させる。回転ツールが前方に移動されると、プローブピンの特定のプロファイルが可塑化された材料を前面から後部に押しやり、そこで強い力が溶接部の鍛造固化を助ける。
【0020】
金属の可塑化された管状シャフト内の溶接線に沿って移動する回転ツールのこのプロセスは、結果として材料の動的再結晶化を伴う、ワークピースの固体状態変形をもたらす。
【0021】
より詳細には、回転ツールは、2つの隣接又は重なり合うワークピースの表面に押し付けられる。回転ツールが横断方向と同じ方向に移動する溶接部の側は、一般に「前進側」として知られており、ツールの回転が横断方向に対向する他方の側は、「後退側」として知られている。ツールの重要な特徴は、ツールのベース(ショルダ)から突出し、ワークピースの厚さよりわずかに短い長さのプローブ(ピンとしても知られる)である。摩擦熱は、主に高い標準圧力及びショルダの剪断作用によって発生する。摩擦撹拌接合は、ツールの作用下で強いられた押出しのプロセスと考えることができる。摩擦加熱は、プローブの周囲に材料の軟化ゾーンを形成させる。この軟化した材料は、ツールショルダによって強いられるので、逃げることができない。ツールが接合線に沿って横断すると、材料は、ツールの後退側(回転による局所運動が前方運動に対抗する)と周囲の変形されていない材料との間でツールプローブの周りを掃引される。押し出された材料は、ツールの背後に固相接合を形成するように堆積される。変形された材料の大部分がツールの後退側を通過して押し出されるので、このプロセスは定義上非対称である。このプロセスは、非常に高いひずみ及びひずみ速度を生じさせ、これらは両方とも、他の個体状態金属加工プロセス(押出、圧延、鍛造など)において見出されるよりも実質的に高い。
【0022】
従来のFSW(CFSW)では、ツールは回転ショルダを含む。回転ショルダは、比較的大量の熱を表面に加え、これは、次に、比較的広い熱影響ゾーン(HAZ)をもたらす。
【0023】
固定ショルダ摩擦撹拌接合(SSFSW)では、プローブが回転し、固定ショルダ/スライドコンポーネントの孔を通って突出する。固定ショルダは、(ショルダが表面をこする摩擦により)表面にいくらかの熱を加えるが、熱の大部分はプローブによって提供され、溶接は本質的に線形の入熱プロファイルで行われ、これは次に比較的狭いHAZをもたらす。キー溶接機構は、非回転(すなわち固定)ショルダコンポーネントを通る回転ピンを備え、ショルダコンポーネントは、溶接中に材料の表面上を摺動する。溶接面は非常に滑らかであり、ほとんど研磨されており、断面の減少はないか又は最小限である。
【0024】
微細構造
FSWの固体状態の性質は、回転ツールの特定の形状及び非対称速度プロファイルと組み合わされて、結果として非常に特徴的な微細構造をもたらす。
【0025】
微細構造は、以下のゾーンに分割することができる:
撹拌ゾーン(動的再結晶化ゾーンとしても知られている)は、溶接中のプローブピンの位置にほぼ対応する大きく変形した材料の領域である。撹拌ゾーン内の粒子はほぼ等軸であり、ワークピースの母材中の粒子よりも1桁小さいことが多い。撹拌ゾーンの独特の特徴は、「オニオンリング」構造と呼ばれているいくつかの同心リングが共通して存在することである。これらのリングの正確な起源はしっかりと確立されていないが、粒子数密度、粒径及び組織の変動がすべて示唆されている。
【0026】
フローアームゾーンは、溶接部の上面にあり、ツールの後部の周りで、溶接部の後退側からショルダによって引きずられ、前進側に堆積される材料を含む。
【0027】
熱機械的影響ゾーン(TMAZ)は、撹拌ゾーンのいずれかの側に生じる。この領域では、ひずみ及び温度はより低く、微細構造に対する溶接の影響はそれに対応してより小さい。撹拌ゾーンとは異なり、微細構造は、変形及び回転していても、母材の微細構造であることが認識できる。TMAZという用語は変形領域全体を指すが、撹拌ゾーン及びフローアームという用語によってカバーされない任意の領域を説明するために使用されることが多い。
【0028】
熱影響ゾーン(HAZ)は、全ての溶接プロセスに共通である。HAZは熱サイクルを受けるが、溶接中に変形しない。温度は、TMAZにおける温度よりも低いが、微細構造が熱的に不安定である場合、依然として有意な影響を有するかもしれない。時効硬化されたアルミニウム合金において、例えば、この領域は、一般に、最も劣った機械的特性を示す。
【0029】

溶接中、複数の力がツールに作用する:
【0030】
1.ツールに対する軸方向の力は、ツールショルダの位置を材料表面又はその下に維持するために必要である。いくつかの摩擦撹拌接合機は、負荷制御下で動作するが、多くの場合、ツールの垂直位置は事前設定され、したがって、負荷は溶接中に変動する。
【0031】
2.横方向の力は、ツール運動に平行に作用し、横方向において正である。この力はツールの動きに対する材料の抵抗の結果として生じるので、ツールの周りの材料の温度が上昇するにつれてこの力が減少することが予想される。
【0032】
3.横方向の力は、ツール横方向に対して垂直に作用することができ、本明細書では、溶接部の前進側に向かう正として定義される。
【0033】
4.ツールを回転させるためにトルクが必要とされ、その量は、軸方向の力及び摩擦係数(摺動摩擦)ならびに/又は周囲領域における材料の流動強度(スティクション)に依存する。
【0034】
摩擦撹拌接合の方法
方法は、第1のワークピースと第2のワークピースとの間のTジョイントを摩擦撹拌接合、FSW、するものである。FSWは公知である。ジョイントは、第1のワークピースと第2のワークピースとを相互に接合することを理解されたい。第1のワークピース及び第2のワークピースは、一般に異なるワークピース、すなわちFSW前であることを理解されたい。しかしながら、FSWの方法は、例えば、非溶接領域と比較して異なる特性を有する溶接領域をその中に提供するために、単一のワークピースに適用されてもよい。これは、一般に「摩擦撹拌処理」として知られている。
【0035】
ジョイントは、第1のワークピースと第2のワークピースとの間の交差部に形成されることを理解されたい。一例では、ジョイントは、TバットジョイントもしくはTラップジョイントを含む、及び/又はTバットジョイントもしくはTラップジョイントである。一例では、FSWの位置、例えばFSWの第1のパス及び/又はFSWの第2のパスの位置は、平坦、水平、垂直、及び/又は頭上である。
【0036】
この方法は、第1のワークピース及び第2のワークピースを配置することを含む。第1のワークピース及び第2のワークピースを配置することは、例えば、必要とされるジョイントセットアップに従って、第1のワークピース及び第2のワークピースを物理的に配置することを含むことを理解されたい。一例において、本方法は、第1のワークピース及び第2のワークピースを提供することを含む。一例では、第1のワークピースを提供することは、例えば、鋳造、機械加工、及び/又は積層造形によって、その中に雄部材(凸部など)を含むことを含み、及び/又は第2のワークピースを提供することは、例えば、鋳造、機械加工、及び/又は積層造形によって、その中に対応する雌部材(溝又は切込みなど)を含むことを含む。このようにして、第1のワークピース及び第2のワークピースは、相対的に配置され、この相対的な位置は、例えば、第1のワークピース及び/又は第2のワークピース対して第1のツール及び第2のツールによって加えられる軸方向力などの力によって、FSWの間維持されてもよい。すなわち、軸方向力は、雄部材の雌部材への挿入及び/又は雄部材と雌部材との間の係合を促す。このように、第1のワークピース及び第2のワークピースの配置は、自己支持型である。さらに、雌部材の深さならびに第1のプローブ及び/又は第2のプローブの第1の深さ及び/又は第2の深さをそれぞれ変化させることによって、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースにおける第1の溶接領域及び/又は第2の溶接領域のそれぞれの溶け込みの程度を制御することができる。一例では、第1のワークピースを提供することは、例えば、鋳造、機械加工、及び/もしくは積層造形によって、その中に雌部材を含むことを含み、ならびに/又は第2のワークピースを提供することは、例えば、鋳造、機械加工、及び/もしくは積層造形によって、その中に対応する雄部材を含むことを含む。一例では、第1のワークピース及び第2のワークピースを配置することは、雄部材を雌部材内に受け入れることを含む。
【0037】
一例では、第1のワークピースは雄部材を含み、第2のワークピースは対応する雌部材を含むか、又はその逆であり、第1のワークピース及び第2のワークピースを配置することは、雄部材を雌部材内に受け入れることを含む。
【0038】
この方法は、第1の回転方向に回転し、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに第1の深さまで挿入された第1のプローブを備える第1のツールを、ジョイントの第1の側で第1のラインを規定する第1の移動方向に沿って移動させることによって、ジョイントのFSWの第1のパスを実行することを含む。FSWの第1のパスは、第1のワークピースと第2のワークピースとの間のジョイントの第1の側の最初のパス(ランとしても知られている)であることを理解されたい。第1のツールの移動は、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに対するものであることを理解されたい。例えば、第1のワークピース及び第2のワークピースは、固定的にクランプされるなど、静的であってもよく(すなわち、固定しており、移動していない)、第1のツールは、2つのプレート間の重ねジョイントのFSWのような、第1の移動方向に移動する。例えば、第1のワークピース及び第2のワークピースは、移動ベッド上又は回転子上等で第1の移動方向に移動してもよく、第1のツールは、2つのパイプ間の円周ジョイントのFSWのように、固定されている。第1のツールは、第1のプローブが第1の移動方向に回転している間にジョイントに沿って移動することを理解されたい。ジョイントの第1の側は、第1のプローブが挿入される側であることを理解されたい。例えば、重ねジョイント又は多重重ねジョイントは、ワークピースを反転させることによって、第1の側又は対向する第2の側からFSWされてもよい。しかしながら、一般的に、T重ねジョイントは、第2のワークピースが第1の深さと比較して比較的薄くない限り、第1の側からのみ溶接されることができる。
【0039】
一例では、第1の回転方向は、第1のツールの上から見て時計回り又は反時計回りである。一例では、第1の移動方向は、第1の並進方向を含み、及び/又は第1の並進方向である。一例では、第1のラインは、弓形(すなわち曲線)又は線形(すなわち直線)であり、好ましくは線形である。一例では、第1のラインは、ジョイントと実質的に平行、平行、交差、及び/又は一致し、好ましくはジョイントと一致又は平行である。
【0040】
FSWの第1のパスを実行することにより、ジョイントの第1の側に第1の溶接領域が提供される。第1のプローブを挿入することは、結果として第1の入口孔をもたらし、第1の入口孔は、次いで、第1のツールが第1の移動方向に移動すると、FSWによって「修復」されることを理解されたい。第1のプローブを第1の深さまで挿入することは、概して、第1のプローブが第1の方向に移動し始める前であることを理解されたい。第1の深さは、第1の溶接領域(すなわち、第1のワークピースと第2のワークピースとの間のジョイント)を提供するのに十分であり、したがって、例えば、当業者に知られているように、第1のワークピースの厚さに少なくとも部分的に依存することを理解されたい。一例において、第1の溶接領域は、第1のラインの第1の距離に沿って延在する。
【0041】
一例では、FSWの第1のパスを実行することは、第1のプローブを第1の深さまで挿入し、結果として第1の入口孔をもたらすことを含む。一例では、本方法は、例えば第1の軸方向力を加えながら、例えば第1の速度で、第1の入口孔から第1の出口孔に向かって及び/又は第1の出口孔へと第1の移動方向に第1のツールを移動させることを含む。
【0042】
一例では、FSWの第1パスを実行することは、第1プローブを少なくとも部分的に引き抜くことを含む。一例では、第1のプローブを少なくとも部分的に引き抜くことは、徐々に、例えば距離及び/又は時間に応じて直線的に、第1のプローブを少なくとも部分的に引き抜くことを含む。一例では、第1のプローブを少なくとも部分的に引き抜くことは、第1の深さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%の量だけ第1のプローブを引き抜くことを含む。一例では、第1のプローブを少なくとも部分的に引き抜くことは、第1のツールを第1の移動方向に移動させながら、第1のプローブを第1の深さから引き抜くことを含む。一例では、FSWの第1のパスを実行することは、第1のプローブを完全に引き抜き、それによって結果として第1の出口孔をもたらすことを含む。第1のプローブを完全に引き抜くことは、一般に、第1のプローブが第1の方向への移動を停止した後であることを理解されたい。
【0043】
一例では、FSWの第1のパスを実行することは、第1のプローブを第1のワークピースに、例えば第1の深さまで挿入して、結果として第1の入口孔をもたらすことと、第1のプローブを第1の移動方向に移動させ、それによって第1の入口孔を「修復」することを含む第1の溶接領域を提供することと、次いで第1のプローブを完全に引き抜き、それによって、結果として第1の出口孔をもたらすこととを含む。
【0044】
本方法は、第2の回転方向に回転し、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに第2の深さまで挿入される第2のプローブを含む第2のツールを、ジョイントの第2の側で第2のラインを規定する第2の移動方向に沿って移動させることによって、ジョイントのFSWの第2のパスを実行することを含む。FSWの第2のパスは、FSWの第1のパスと同時の、第1のワークピースと第2のワークピースとの間のジョイントの第2の側の初期パス(ランとしても知られる)であることを理解されたい。第2のツールの移動は、第1のツールに関して説明したように、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに対するものであることを理解されたい。第2のツールは、第2のプローブが第2の移動方向に回転している間にジョイントに沿って移動することを理解されたい。ジョイントの第1の側は、第2のプローブ及び第1のプローブが挿入される側(すなわち、同じ側)であることを理解されたい。一例では、第2のラインは、ジョイントと実質的に平行、平行、交差、及び/又は一致し、好ましくはジョイントと一致又は平行である。一例では、第2のラインは、第1のラインと実質的に平行、平行、交差及び/又は一致し、好ましくは第1のラインと平行である。一例では、第1のライン及び第2のラインは、相互に離間している。
【0045】
FSWの第2のパスを実行することは、ジョイントの第2の側に第2の溶接領域を提供する。第2のプローブを挿入することは、結果として第2の入口孔をもたらし、第2の入口孔は、次いで、第2のツールが第2の移動方向に移動させられると、FSWによって「修復」されることを理解されたい。第2のプローブを第2の深さまで挿入することは、概して、第2のプローブが第2の方向に移動し始める前であることを理解されたい。第2の深さは、第2の溶接領域(すなわち、第2のワークピースと第2のワークピースとの間のジョイント)を提供するのに十分であり、したがって、例えば、当業者に知られているように、第2のワークピースの厚さに少なくとも部分的に依存することを理解されたい。一例では、第2の溶接領域は、第2のラインの第2の距離に沿って延在する。
【0046】
一例では、第2の回転方向は、第2のツールの上から見て時計回り又は反時計回りである。一例では、第2の移動方向は、第2の並進方向を含み、及び/又は第2の並進方向である。一例では、第2のラインは、弓形(すなわち曲線)又は線形(すなわち直線)であり、好ましくは線形である。一例では、第1の回転方向及び第2の回転方向は、同じ回転方向であり、例えば、両方とも時計回り又は両方とも反時計回りである。一例では、第1の回転方向及び第2の回転方向は、相互に反対であり、例えば、一方は時計回りであり、他方は反時計回りである。
【0047】
一例において、FSWの第2のパスを実行することは、第2のプローブを第2の深さまで挿入し、それによって第2の溶接領域を提供することを含む。第2のプローブを挿入することは、結果として第2の入口孔をもたらし、第2の入口孔は、次いで、第2のツールが第2の移動方向に移動させられると、FSWによって「修復」されることを理解されたい。第2のプローブを第2の深さまで挿入することは、概して、第2のプローブが第2の方向に移動し始める前であることを理解されたい。第2の深さは、第2の溶接領域(すなわち、第2のワークピースと第2のワークピースとの間のジョイント)を提供するのに十分であり、したがって、例えば、当業者に知られているように、第1のワークピースの厚さに少なくとも部分的に依存することを理解されたい。一例では、第2の溶接領域は、第2のラインの第1の距離に沿って延びる。一例では、第2のラインの第1の距離は、第1のラインの第2の距離に沿って、完全に沿って、及び/又はそれを超えて延在する。
【0048】
一例では、第2のプローブを第2の深さまで挿入するこは、結果として第2の入口孔をもたらす。一例では、本方法は、例えば第2の軸方向力を加えながら、例えば第2の速度で、第2の入口孔から第2の出口孔に向かって及び/又は第2の出口孔へと第2の移動方向に第2のツールを移動させることを含む。一例では、第2の速度は、第1の速度と等しい。
【0049】
一例では、FSWの第2のパスを実行することは、任意選択で、第2のプローブを少なくとも部分的に引き抜くことを含む。第2のプローブは、任意選択で、第2のツールを第2の移動方向に移動させている間に引き抜かれることを理解されたい。第2のプローブは、第2の深さから比較的浅い深さ(すなわち、例えば、第1のワークピースの表面に比較的より近接する)まで引き抜かれることを理解されたい。比較的浅い深さは、第2のワークピースと第2のワークピースとの間に溶接領域を提供するのに不十分であり、むしろ、部分的及び/又は非溶接領域が代わりに提供される。一例では、第2のプローブを少なくとも部分的に引き抜くことは、徐々に、例えば距離及び/又は時間に応じて直線的に、第2のプローブを少なくとも部分的に引き抜くことを含む。一例では、第2のプローブを少なくとも部分的に引き抜くことは、第2の深さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%の量だけ第2のプローブを引き抜くことを含む。一例において、第2のプローブを少なくとも部分的に引き抜くことは、第2のツールを第2の移動方向に移動させながら、第2のプローブを第2の深さから引き抜くことを含む。
【0050】
一例では、第1の深さと第2の深さは類似しており、例えば同じである。
【0051】
一例では、FSWの第2のパスを実行することは、第2のプローブを完全に引き抜き、それによって結果として第2の出口孔をもたらすことを含む。第2のプローブを完全に引き抜くことは、一般に、第2のプローブが第2の方向への移動を停止した後であることを理解されたい。
【0052】
第1のツール及び第2のツール、例えば、第1のプローブ及び第2のプローブは、相互に対向している、すなわち、ジョイントの向こう側である。すなわち、第1のツールと第2のツールとの間に第1ワークピース及び/又は第2ワークピースが配置されているにも関わらず、第1のツールは第2のツールに面している。換言すれば、第1のツール及び第2のツールは、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースによって離間される。一例では、第1のツール及び第2のツールは、相互に直接対向している。一例では、第1のツール及び/又は第2のツールは、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに対して角度が付けられ、角度は、15°から75°の範囲、好ましくは30°から60°の範囲、例えば45°である。一例では、第1のツール及び/又は第2のツールは、第1のワークピースと第2のワークピースとの間の角度を二等分する。一例では、第1のツール及び第2のツールは、1mmから50mmの範囲内、好ましくは5mmから40mmの範囲内、より好ましくは10mmから30mmの範囲内、例えば15mm、20mm又は30mmで相互に対向している。一例では、第1のツール及び第2のツールは、1dから25dの範囲内、好ましくは2dから15dの範囲内、より好ましくは3dから10dの範囲内、例えば5d、7d又は9dで相互に対向しており、dは第1のプローブ及び/又は第2のプローブの直径である。一例では、第1のプローブ及び/又は第2のプローブの直径dは、2mmから50mmの範囲内、好ましくは3mmから30mmの範囲内、より好ましくは4mmから5mmの範囲内である。
【0053】
FSWの第1のパスの実行及びFSWの第2のパスの実行は、同時(すなわち、準同時(concurrent)又は準同時(simultaneous))である。このようにして、前述したように、第1のツール及び第2のツールによって第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに加えられるそれぞれの軸方向の力が対向する。一例では、第1のプローブ及び第2のプローブは、それぞれ第1の移動方向及び第2の移動方向に(すなわち、ジョイントに沿って)相互にオフセットされる。一例では、第1のプローブ及び第2のプローブは、第1のプローブと第2のプローブとの衝突又は干渉を回避するように、例えばジョイント、第1のライン及び/又は第2のラインに沿ったオフセット又は変位によって、相互にオフセットされる。一例では、オフセットは、1mmから50mmの範囲内、好ましくは5mmから40mmの範囲内、より好ましくは10mmから30mmの範囲内、例えば15mm、20mm又は30mmである。 一例では、オフセットは、1dから50dの範囲、好ましくは5dから40dの範囲、より好ましくは10dから30dの範囲、例えば15d、20d、又は30dであり、ここでdは、第1のプローブ及び/又は第2のプローブの直径である。一例において、第1のプローブ及び第2のプローブは、第1のプローブ及び第2のプローブの衝突又は干渉を回避するように、例えば、ジョイント、第1のライン及び/又は第2のラインに対して横方向、好ましくは直交する間隔によって、相互に離間される。このような横方向間隔は、例えば、第1の溶接領域と第2の溶接領域との間に、非溶接領域及び/又は部分的に溶接された領域を結果としてもたらすことができる。好ましくは、そのような非溶接領域及び/又は部分的に溶接された領域は、低減されるべきであり、例えば、排除されるべきである。一例では、間隔は、1mmから50mmの範囲内、好ましくは5mmから40mmの範囲内、より好ましくは10mmから30mmの範囲内、例えば15mm、20mm又は30mmである。 一例では、間隔は、第1の深さ及び/又は第2の深さの5%から100%の範囲、好ましくは10%から75%の範囲、より好ましくは15%から50%の範囲、例えば20%、30%又は40%である。換言すれば、第1のプローブ及び第2のプローブは、例えば、ジョイント、第1のライン及び/又は第2のラインに沿ったオフセット又は変位によって相互にオフセットされないが、これらのプローブのぶつかり又は衝突又は干渉は、プローブによって直接溶接されないが、撹拌ゾーン内にあってもよく、許容可能な溶接を達成するか、又は設計において許容される非溶接材料の小領域を含んでもよい、プローブ先端間の中心ゾーンを有することによって回避される。一例では、第1のプローブ及び第2のプローブの衝突又は干渉を回避するように、第1のプローブ及び第2のプローブは、例えば、上述したように、ジョイント、第1のライン及び/又は第2のラインに沿ったオフセット又は変位によって相互にオフセットされ、第1のプローブ及び第2のプローブは、例えば、ジョイント、第1のライン及び/又は第2の長さ(すなわち、負の間隔)に対して横方向、好ましくは直交する重なりによって重なり合う。一例では、重なりは、第1の深さ及び/又は第2の深さの1%から75%の範囲、好ましくは5%から50%の範囲、より好ましくは10%から40%の範囲、例えば20%又は30%である。
【0054】
一例では、FSWの第1パスの実行及びFSWの第2パスの実行は同時であり、例えば、第1プローブ及び第2プローブの衝突又は干渉を回避するように、第1プローブ及び第2プローブは、それぞれ第1移動方向及び第2移動方向に相互にオフセットされ、及び/又は第1プローブ及び第2プローブは、例えば、ジョイント、第1線及び/又は第2線に対して横方向、好ましくは直交する間隔だけ相互に離間される。
【0055】
一例では、第1の溶接領域及び第2の溶接領域は交差する。すなわち、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースの少なくとも一部が、第1のプローブ及び第2のプローブによって(すなわち、FSWの第1のパスを実行し、FSWの第2のパスを実行することによって)FSWされる。一例では、第1の溶接領域及び第2の溶接領域は、第1の溶接領域及び/又は第2の溶接領域の体積で、1%から50%の範囲、好ましくは5%から40%の範囲、より好ましくは10%から30%の範囲の量だけ交差する。第1の溶接領域及び/又は第2の溶接領域の体積は、それぞれの撹拌ゾーン及び/又はTMAZの体積によって規定されることを理解されたい。
【0056】
換言すれば、FSWの第1のパス及びFSWの第2のパスは、例えば、ツール(すなわち、プローブ)のぶつかりを回避するために小さい並進オフセットを伴う準同時様式、又は第1の領域と第2の領域との間に許容可能なレベルの非溶接及び/又は部分的に溶接された材料があるような同時様式のいずれかで行われる。
【0057】
一例では、第1の移動方向及び第2の移動方向は同じ方向である。すなわち、第1の移動方向及び第2の移動方向は、例えば、第1の入口孔と第1の出口孔との間、第2の入口孔と第2の出口孔との間、及び/又は第1の出口孔と第2の出口孔との間などの第1のライン及び/又は第2のラインに沿って同じ方向であるが、それにもかかわらず第1のライン及び第2のラインは弓形及び/又は線形であってもよい。一例では、第2の移動方向は、第1の移動方向と整列される。一例では、第2の移動方向は、30°以内、好ましくは20°以内、より好ましくは10°以内で第1の移動方向と整列される。一例では、第2のラインは、第1のラインと平行又は実質的に平行である。すなわち、第2の移動方向は、第1の移動方向と良好に又は密接に整列されてもよい。一例では、第1の移動方向と第2の移動方向とは相互に整列している。
【0058】
一例では、本方法は、例えば、FSWの第1のパス及び/又はFSWの第2のパスを実行している間に、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースにクランプ力を加えることを含む。このようにして、第1のワークピースと第2のワークピースとの間の接触がより良好に維持され、及び/又は第1のワークピース及び第2のワークピースの配置の正確性及び/又は精度がより良好に保たれる。一例では、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースにクランプ力を加えることは、フレームなどの静的な(すなわち固定した)支持体を用いて第1のワークピース及び/又は第2のワークピースにクランプ力を加えることを含む。一例では、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースにクランプ力を加えることは、第1のワークピース及び/又は第2のワークピース上で転がるように配置されたローラなどの動的(すなわち移動)支持体を使用して第1のワークピース及び/又は第2のワークピースにクランプ力を加えることを含み、例えば、第1のツール及び/又は第2のツールに沿って第1の移動方向及び/又は同じ移動方向に、例えば同じ速度で移動する。このようにして、動的支持体は、例えばジョイント、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースの形状に従って、第1のツール及び/又は第2のツールと共に移動する。追加的に及び/又は代替的に、動的支持体は、そうでなければ同様のサイズの静的支持体を必要とするであろう、航空機翼などの長い溶接部のFSWを可能にする。一例では、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースにクランプ力を加えることは、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースにかかるクランプ力を制御することを含む。このようにして、クランプ力の大きさ及び/又は方向は、ジョイントジオメトリ、第1のツール及び/もしくは第2のツールによって加えられる力、ならびに/又は第1のワークピース及び/もしくは第2のワークピースのサイズ及び/もしくは材料を考慮するように制御される。
【0059】
一例では、第1のワークピースは第1のフィレットを含み、ジョイントのFSWの第1のパスを実行することは、第1のプローブを第1のフィレットに少なくとも部分的に挿入することを含む。
【0060】
一例では、第1の回転方向と第2の回転方向とは対向している。一例では、第1の回転方向及び第2の回転方向は同じ方向である。
【0061】
一例では、FSWの第2のパスを実行することは、第2のプローブを第1のワークピース内に、例えば第2の深さまで挿入して、結果として第2の入口孔をもたらすことと、第2のプローブを第2の移動方向に移動させて、それによって第2の溶接領域を提供することと、任意選択的に先に第2のプローブを部分的に引き出し、次いで第2のプローブを完全に引き出して、それによって結果として第2の出口孔をもたらすこととを含む。
【0062】
一例では、第1のライン及び第2のラインは、例えば予め定められた間隔だけ相互に離間され、それによって、第1の溶接領域及び第2の溶接領域は少なくとも部分的に重なる。
一例では、予め定められた間隔は、最大で第1の溶接領域の第1の幅、第2の溶接領域の第2の幅、及び/又は第1の幅と第2の幅との平均である。第1の溶接領域の幅、例えばTMAZの幅は、第1のライン及び/又はジョイントに対して横方向、例えば直交することを理解されたい。一例では、第1の溶接領域及び第2の溶接領域は、第1の溶接領域の第1の幅、第2の溶接領域の第2の幅、及び/又は第1の幅と第2の幅の平均の10%から90%の範囲、好ましくは20%から80%の範囲、より好ましくは30%から70%の範囲、最も好ましくは40%から60%の範囲の量だけ少なくとも部分的に重なり合う。換言すれば、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースの領域は、第1のプローブ及び第2のプローブによって溶接されてもよい。
【0063】
一例では、第2のツールは第1のツールとは異なり、好ましくは、第1の回転方向及び第2の回転方向は相互に対向しており、好ましくは、第1の移動方向及び第2の移動方向は同じである。
【0064】
第1のツール及び第2のツールは、上述したように、固定ショルダを備える。一例では、第1のプローブは、直円筒形プローブ、ねじ付き円筒形プローブ、テーパ付き円筒形プローブ、正方形プローブ、三角形プローブ、whorlプローブ、MX trifluteプローブ、flared trifluteプローブ、A-skewプローブ、及び/又はre-stirプローブを含む、及び/又はそれらである。他のプローブも知られている。
【0065】
一例では、第1のツール、例えばその固定ショルダなどのそのショルダは、例えば面取り部もしくはベベルを有する面取りされた前縁、及び/又は丸みを帯びた後縁を備える。このようにして、第1のパスは、丸みを帯びたフィレット溶接を提供することができ、それによって、例えば、応力集中を低減する。より詳細には、面取りされた前縁は、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースの材料の体積を、面取りされたフィレットに鍛造し、面取りされたフィレットは、丸みを付けられた後縁によって、丸みを付けられたフィレットに平滑化される。代替として、第1のツールは、面取りされた前縁及び/又は面取りされた後縁を備えてもよい。材料の体積は、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースの第1のフィレットなどの縁部によって提供されてもよい。一例では、面取りされた前縁は、15°から75°の範囲、好ましくは30°から60°の範囲、より好ましくは40°から50°の範囲、例えば45°の面取り角を有する。一例では、面取りされた前縁は、1mmから50mmの範囲、好ましくは5mmから30mmの範囲、より好ましくは10mmから20mmの範囲、例えば15mmの長さを有する。 一例では、丸みを帯びた後縁は、1mmから50mmの範囲、好ましくは5mmから30mmの範囲、より好ましくは10mmから20mmの範囲、例えば15 mmの半径を有する。第2のツールは、必要な変更を加えて、第1のツールに関して説明した通りであってもよい。
【0066】
一例では、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースは、アルミニウム合金、例えば2XXX、5XXX、6XXX、7XXX及び/又は8XXXアルミニウム合金、好ましくは2XXX及び/又は7XXXアルミニウム合金、チタン合金、銅合金及び/又は鋼を含む。すなわち、第1のワークピース及び第2のワークピースは、類似又は非類似であってもよい。
【0067】
一例では、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースは、0.5mmから25mmの範囲、好ましくは1.6mmから20mmの範囲、より好ましくは2mmから15mmの範囲の厚さを有する。 例えば、第1のワークピースは航空機の外板であってもよく、第2のワークピースはスパー又はリブであってもよい。
【0068】
製造の方法
第2の態様は、コンポーネント、好ましくは航空機コンポーネントを製造する方法を提供し、第1の態様による、第1のワークピースと第2のワークピースとの間のジョイント、例えばTジョイント及び/又は重ねジョイントを摩擦撹拌接合、FSW、する方法を含む。
【0069】
FSW、ジョイント、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースは、第1の態様に関して説明した通りであってもよい。
【0070】
一例では、コンポーネントは、機体コンポーネント、例えば、胴体、翼、尾部、及び/又はそれらの一部である。
【0071】
摩擦撹拌接合ジョイント
第3の態様は、第1の態様の方法に従って提供される、第1のワークピースと第2のワークピースとの間の摩擦撹拌接合、FSW、ジョイント、例えばTジョイント及び/又は重ねジョイントを提供する。
【0072】
FSW、ジョイント、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースは、第1の態様に関して説明した通りであってもよい。
【0073】
コンポーネント
第4の態様は、第3の態様による摩擦撹拌接合、FSW、ジョイントを含むコンポーネント、好ましくは航空機コンポーネントを提供する。
【0074】
一例では、コンポーネントは、機体コンポーネント、例えば、胴体、翼、尾部、及び/又はそれらの一部である。
【0075】
摩擦撹拌接合のための装置
第5の態様は、第1のワークピースと第2のワークピースとの間のジョイント、好ましくはTジョイントを摩擦撹拌接合、FSW、するための装置を提供し、装置は、
第1の回転方向に回転可能であり、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに第1の深さまで少なくとも部分的に挿入可能であり、第1のラインを規定する第1の移動方向に移動可能であり、それに沿って移動することによってジョイントのFSWの第1のパスを実行し、それによって第1の溶接領域を提供する第1のプローブを備える第1のツールと、
第1の回転方向に回転可能であり、第1のワークピース及び/又は第2のワークピースに第2の深さまで少なくとも部分的に挿入可能であり、第2のラインを規定する第2の移動方向に移動可能であり、それに沿って移動することによってFSWの第2のパスを実行し、それによって第2の溶接領域を提供する第2のプローブを備える第2のツールとを備え、
第1ツールと第2ツールとは、相互に対向しており、
装置は、FSWの第1のパスを実行することと、FSWの第2のパスを実行することとが少なくとも部分的に同時に行われるように構成されている。
【0076】
FSW、ジョイント、第1のワークピース、第2のワークピース、第1のツール、第1のプローブ、第1の回転方向、第1の深さ、第1の移動方向、第1のライン、FSWの第1のパス、第1の溶接領域、第2のツール、第2のプローブ、第2の回転方向、第2の深さ、第2の移動方向、第2のライン、FSWの第2のパス、及び/又は第2の溶接領域は、第1態様に関して説明した通りであってもよい。
【0077】
摩擦撹拌接合ツール
第6の態様は、回転方向に回転可能なプローブを備える摩擦撹拌接合、FSW、ツールを提供し、ツールは、面取りされた前縁及び/又は丸みを帯びたもしくは面取りされた後縁を備える固定ショルダを備える。
【0078】
FSWツール、プローブ、回転方向、面取りされた前縁及び/又は丸みを帯びた後縁は、第1の態様に関して説明した通りであってもよい。
【0079】
定義
本明細書全体を通して、「備えている(comprising)」又は「備える(comprises)」という用語は、指定されたコンポーネントを含むが、他のコンポーネントの存在を排除しないことを意味する。「から本質的になっている(consisting essentially of)」又は「から本質的になる(consists essentially of)」という用語は、指定されたコンポーネントを含むが、不純物として存在する材料、コンポーネントを提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材料、及び着色剤及びこれに類するもののような本発明の技術的効果を達成する以外の目的のために添加されるコンポーネントを除く他のコンポーネントを除外することを意味する。
【0080】
「からなっている(consisting of)」又は「からなる(consists of)」という用語は、指定されたコンポーネントを含むが、他のコンポーネントを除外することを意味する。
【0081】
適切な場合はいつでも、文脈に応じて、用語「備える(comprises)」又は「備えている(comprising)」の使用は、「から本質的になる(consists essentially of)」又は「から本質的になっている(consisting essentially of)」という意味を含むと解釈されてもよく、「からなる(consists of)」または「からなっている(consisting of)」という意味を含むと解釈されてもよい。
【0082】
本明細書に記載される任意選択の特徴は、個別に、又は適切な場合には互いに組み合わせて、特に添付の特許請求の範囲に記載される組み合わせで使用することができる。本明細書に記載される本発明の各態様又は例示的な実施形態の任意選択の特徴は、適切な場合、本発明の他のすべての態様又は例示的な実施形態にも適用可能である。言い換えれば、本明細書を読んでいる当業者は、本発明の各態様又は例示的な実施形態についての任意選択の特徴を、異なる態様及び例示的な実施形態の間で交換可能及び組み合わせ可能であると考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
本発明をより良く理解するために、及び、本発明の例示的な実施形態がどのように実行に移されるかを示すために、例として、添付の図への参照がなされる。
図1図1は、摩擦撹拌接合の方法を概略的に描いている。
図2図2は、摩擦撹拌接合の方法を概略的に描いている。
図3図3は、摩擦撹拌接合の方法を概略的に描いている。
図4図4は、FSWに対するジョイント構成:(a)スクエアバット、(b)エッジバット、(c)Tバットジョイント、(d)ラップジョイント、(e)マルチプルラップジョイント、(f)Tラップジョイント、及び(g)フィレットジョイントを概略的に描いている。
図5A図5Aは、例示的な実施形態による摩擦撹拌接合の方法を概略的に描いている。
図5B図5Bは、例示的な実施形態による摩擦撹拌接合の方法を概略的に描いている。
図5C図5Cは、例示的な実施形態による摩擦撹拌接合の方法を概略的に描いている。
図6図6は、例示的な実施形態によるツールを概略的に描いている。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1から図3は、摩擦撹拌接合の方法を概略的に描いている。
【0085】
図1に示すように、FSWツールの反時計回りに回転するプローブは、ツールのショルダが第1及び第2のワークピースと接触するように、第1の深さまで、第1と第2のワークピース間との突合せジョイントに最初に挿入される(タッチダウン)。
【0086】
図2に示すように、ツールは、図示のようにツールの移動方向に移動しており、溶接ゾーンを提供する。溶接部の前進側は、図示のようにツールの移動方向とプローブの回転方向とが概ね同じ方向であるところである。溶接部の後退側は、ツールの移動方向とプローブの回転方向とが概ね反対方向である場所である。
【0087】
図3に示すように、ツールは停止部で引き抜かれ、結果として出口孔をもたらす。
【0088】
FSWに適したプローブは、(a)直円筒形プローブ、(b)ねじ付き円筒形プローブ、(c)テーパ付き円筒形プローブ、(d)正方形プローブ、(e)三角形プローブ、(f)whorl(登録商標)プローブ、(g)MX triflute(登録商標)プローブ、(h)flared triflute(登録商標)プローブ、(i)A-skew(登録商標)プローブ、及び(j)re-stir(登録商標)プローブを含む。
【0089】
図4は、FSWに対するジョイント構成:(a)スクエアバット、(b)エッジバット、(c)Tバットジョイント、(d)ラップジョイント、(e)マルチプルラップジョイント、(f)Tラップジョイント、及び(g)フィレットジョイントを概略的に描いている。
【0090】
図5A図5B及び図5Cは、例示的な実施形態による摩擦撹拌接合の方法を概略的に描いている。簡単に言えば、図5Aは、FSW前のジョイントJのセットアップを示し、図5Bは、FSW中のジョイントJを示し、図5Cは、FSW後のジョイントJを示す。
【0091】
この方法は、ジョイントJ、例えば第1のワークピースW1と第2のワークピースW2との間のTジョイントJを摩擦撹拌接合、FSW、するものである。方法は、第1のワークピースW1及び第2のワークピースW2を配置することと、第1の回転方向RD1に回転し、第1のワークピースW1及び/又は第2のワークピースW2に第1の深さD1まで挿入される第1のプローブ100を備える第1のツール10を、ジョイントJの第1の側S1で、第1のラインL1(図示せず)を規定する第1の移動方向MD1(図示せず、例えばページに)に沿って移動させることによって、ジョイントJのFSWの第1のパスP1を実行し、それによって、第1の溶接領域WR1(図示せず)を提供することと、第2の回転方向RD2に回転し、第1のワークピースW1及び/又は第2のワークピースW2に第2の深さD2まで挿入される第2のプローブ200を備える第2のツール20を、ジョイントJの第2の側S2で、第2のラインL2(図示せず)を規定する第2の移動方向MD2(図示せず、例えばページに)に沿って移動させることによって、ジョイントJのFSWの第2のパスP2を実行し、それによって第2の溶接領域WR2(図示せず)を提供することとを含み、第1のツール10及び第2のツール20は、相互に対向しており、FSWの第1のパスP1を実行することと、FSWの第2のパスP2を実行することとは同時に行われる。
【0092】
この例では、第1のワークピースW1は、外板内に、特にそこに形成された(ストリンガの下端に対応する)矩形スロット内に配置された(T字形断面プロファイルを有する)ストリンガであり、スロットは、そこから離れるように延びる斜めの縁部(すなわち、第1のフィレット及び第2のフィレット)を有する。一対の固定ショルダツール(すなわち、第1のツール10及び第2のツール20)は、ストリンガを両側から支持し、摩擦撹拌ツールピン(すなわち、第1のプローブ100及び第2のプローブ200)は、それぞれのツールショルダを通して外板の斜めの縁部に打ち込まれる。第1のプローブ100及び第2のプローブ200は、ぶつかりを回避するためにページ内に相互にオフセットされるが、支持ブロックは、局所的な支持を提供するために十分なリーチを有する。特に、ピンのぶつかりを回避するために、2つの対向するプローブが部分的に(ページの内外に)オフセットされているケースでは、ジョイントの一方の側のプローブは、他方の側のブロックによって「対向」され、したがって、ブロックは、この支持を提供するために十分な長さ(ページの内外)を有さなければならない。これは「リーチ」によって意味されるものである。
【0093】
この例では、ジョイントJはTジョイントである。
この例では、FSW、例えばFSWの第1のパスP1及び/又はFSWの第2のパスP2の位置は平坦である。
【0094】
この例では、方法は、第1のワークピースW1及び第2のワークピースW2を提供することを含む。この例では、第1のワークピースW1を提供することは、機械加工によって、その中に雄部材M(例えば、凸部)を含むことを含み、第2のワークピースW2を提供することは、機械加工によって、その中に、対応する雌部材F(例えば、溝又は切込み)を含むことを含む。この例では、第1のワークピースW1及び第2のワークピースW2を配置することは、雄部材Mを雌部材Fに受け入れることを含む。
【0095】
この例では、第1のワークピースW1は雄部材Mを含み、第2のワークピースW2は対応する雌部材Fを含み、第1のワークピースW1及び第2のワークピースW2を配置することは、雄部材Mを雌部材Fに受け入れることを含む。
【0096】
この例では、第1回転方向RD1は、第1ツール10の上方から見て反時計回りである。この例では、第1の移動方向MD1は、第1の並進方向である。この例では、第1のラインL1は、線形である。この例では、第1のラインL1は、ジョイントJと平行である。
【0097】
この例では、FSWの第1のパスP1を実行することは、第1のプローブ100を第1の深さD1まで挿入し、結果として第1の入口孔ENH1(図示せず)をもたらすことを含む。この例では、本方法は、第1の軸方向力F1を加えながら、第1のツール10を第1の入口孔ENH1から第1の出口孔EXH1(図示せず)に向かって及び/又は第1の出口孔EXH1まで第1の移動方向MD1に、例えば第1の速度で移動させることを含む。
【0098】
この例では、FSWの第1パスP1を実行することは、第1プローブ100を少なくとも部分的に引き抜くことを含む。この例では、第1のプローブ100を少なくとも部分的に引き抜くことは、徐々に、例えば距離及び/又は時間に応じて直線的に、第1のプローブ100を少なくとも部分的に引き抜くことを含む。この例では、第1のプローブ100を少なくとも部分的に引き抜くことは、第1の深さD1の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%の量だけ第1のプローブ100を引き抜くことを含む。この例では、第1プローブ100を少なくとも部分的に引き抜くことは、第1ツール10を第1移動方向MD1に移動させながら、第1プローブ100を第1深さD1から引き抜くことを含む。この例では、FSWの第1のパスP1を実行することは、第1のプローブ100を完全に引き抜くことを含み、それによって結果として第1の出口孔EXH1がもたらされる。
【0099】
この例では、FSWの第1のパスP1を実行することは、第1のプローブ100を第1のワークピースW1に、例えば第1の深さD1まで挿入して結果として第1の入口孔ENH1をもたらすことと、第1のプローブ100を第1の移動方向MD1に移動させて、それにより第1の入口孔ENH1を「修復」することを含む第1の溶接領域WR1を提供することと、第1のプローブ100を完全に引き抜き、それによって結果として第1の出口孔EXH1をもたらすこととを含む。
【0100】
この例では、第2のラインL2は、ジョイントJと平行である。この例では、第2のラインL2は、第1のラインL1と平行である。この例では、第1のラインL1と第2のラインL2とは、相互に離間している。
【0101】
この例では、第2の回転方向RD2は、第2ツール20の上方から見て時計回りである。この例では、第2の移動方向MD2は、第2の並進方向である。この例では、第2のラインL2は、線形である。この例では、第1の回転方向RD1と第2の回転方向RD2とは同じ回転方向であり、例えば、いずれも反時計回りである。
【0102】
この例では、FSWの第2パスP2を実行することは、第2プローブ200を第2深さD2まで挿入し、それによって第2溶接領域WR2を提供することを含む。この例では、第2の溶接領域は第2のラインL2の第1の距離に沿って延びる。この例では、第2のラインL2の第1の距離は、第1のラインL1の第1の距離に完全に沿って延びる。
【0103】
この例では、第2のプローブ200を第2の深さD2まで挿入することは、結果として第2の入口孔ENH2をもたらす。この例では、本方法は、第2の軸方向力F2を加えながら、第2のツール20を第2の入口孔ENH2から第2の出口孔EXH2に向かって、及び/又は第2の出口孔EXH2まで第2の移動方向MD2に、例えば第2の速度で移動させることを含む。この例では、第2の速度は第1の速度に等しい。
【0104】
この例では、FSWの第2のパスP2を実行することは、任意選択で、第2のプローブ200を少なくとも部分的に引き抜くことを含む。この例では、第2のプローブ200を少なくとも部分的に引き抜くことは、徐々に、例えば距離及び/又は時間に応じて直線的に、第2のプローブ200を少なくとも部分的に引き抜くことを含む。この例では、第2のプローブ200を少なくとも部分的に引き抜くことは、第2の深さD2の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%の量だけ第2のプローブ200を引き抜くことを含む。この例では、第2のプローブ200を少なくとも部分的に引き抜くことは、第2のツール20を第2の移動方向MD2に移動させながら第2のプローブ200を第2の深さD2から引き抜くことを含む。
【0105】
この例では、第1の深さD1及び第2の深さD2は類似しており、例えば同じである。
【0106】
この例では、FSWの第2のパスP2を実行することは、第2のプローブ200を完全に引き抜くことを含み、それによって結果として第2の出口孔EXH2がもたらされる。
【0107】
この例では、第1プローブ100及び第2プローブ200は、それぞれ第1移動方向MD1及び第2移動方向MD2に相互にオフセットされている。この例では、第1のプローブ100及び第2のプローブ200は、第1のプローブ100と第2のプローブ200との衝突又は干渉を回避するように、例えば、ジョイントJ、第1のライン及び/若しくは第2のラインに沿ったオフセット又は変位によって、相互にオフセットされている。この例では、オフセットは1mmから50mmの範囲内である。
【0108】
この例では、FSWの第1のパスP1の実行及びFSWの第2パスP2の実行は同時であり、例えば、第1のプローブ100及び第2プローブ200は、第1のプローブ100及び第2のプローブ200の衝突又は干渉を回避するように、それぞれ第1の移動方向MD1及び第2の移動方向MD2において相互にオフセットされる。
【0109】
この例では、第1の溶接領域WR1と第2の溶接領域WR2とが交差している。この例では、第1の溶接領域WR1と第2の溶接領域WR2とは、1%から50%の範囲の量だけ交差している。
【0110】
この例では、第1の移動方向MD1と第2の移動方向MD2とは同じ方向である。この例では、第1の移動方向MD1と第2の移動方向MD2とは、相互に整列している。
【0111】
この例では、第1のワークピースW1は第1のフィレットを含み、ジョイントJのFSWの第1のパスP1を実行することは、第1のプローブ100を第1のフィレットに挿入することを含む。
【0112】
この例では、FSWの第2のパスP2を実行することは、第2のプローブ200を第1のワークピースW1に、例えば第2の深さD2まで挿入して、結果として第2の入口孔ENH2をもたらすことと、第2のプローブ200を第2の移動方向MD2に移動させて、それによって第2の溶接領域WR2を提供することと、任意選択的に先に第2のプローブ200を部分的に引き抜き、次いで第2のプローブ200を完全に引き抜き、それによって結果として第2の出口孔EXH2をもたらすこととを含む。
【0113】
この例では、第1のラインL1と第2のラインL2とは、例えば予め定められた間隔だけ相互に離間しており、これにより、第1の溶接領域WR1と第2の溶接領域WR2とは、少なくとも部分的に重なっている。この例では、予め定められた間隔は、最大で第1の溶接領域WR1の第1の幅、第2の溶接領域WR2の第2の幅、及び/又は第1の幅と第2の幅との平均である。この例では、第1の溶接領域WR1と第2の溶接領域WR2とは、第1の溶接領域WR1の第1の幅、第2の溶接領域WR2の第2の幅、及び/又は第1の幅と第2の幅との平均の10%から90%の範囲の量だけ少なくとも部分的に重なる。
【0114】
この例では、第1のツール10及び第2のツール20は、第1のワークピースW1及び第2のワークピースW2に対して角度が付けられており、角度は約45°である。この例では、第1ツール10及び第2ツール20は、第1ワークピースW1と第2ワークピースW2との間の角度を二等分する。
【0115】
この例では、方法は、例えば、FSWの第1のパス及び/又はFSWの第2のパスを実行している間に、第1のワークピースW1及び/又は第2のワークピースW2にクランプ力F3を加えることを含む。この例では、クランプ力F3を第1のワークピースW1及び/又は第2のワークピースW2に加えることは、例えば、第1の移動方向MD1及び/又は第1のツール10及び/又は第2のツール20に沿った同じ移動方向に、例えば同じ速度で移動する、第1のワークピースW1上で転がるように配置されたローラなどの動的(すなわち移動)支持体を使用して、第1のワークピースW1及び/又は第2のワークピースW2にクランプ力F3を加えることを含む。
【0116】
この例では、第1のツール10及び/又は第2のツール20は、上述したような、固定ショルダを備える。この例では、第1のプローブ100は、直円筒形プローブ、ねじ付き円筒形プローブ、テーパ付き円筒形プローブ、正方形プローブ、三角形プローブ、whorlプローブ、MX trifluteプローブ、flared trifluteプローブ、A-skewプローブ、及び/又はre-stirプローブを含む、及び/又はそれらである。他のプローブも知られている。
【0117】
この例では、第1のワークピースW1及び第2のワークピースW2は、2XXXアルミニウム合金を含む。
【0118】
この例では、第1のワークピースW1及び/又は第2のワークピースW2は、0.5mmから25mmの範囲、好ましくは1.6mmから20mmの範囲、より好ましくは2mmから15mmの範囲の厚さを有する。この例では、第1のワークピースW1は航空機の外板であり、第2のワークピースW2はスパー又はリブである。
【0119】
図5A図5B、及び図5Cはまた、例示的な実施形態による摩擦撹拌接合のための装置を概略的に描いている。
【0120】
装置は、第1のワークピースW1と第2のワークピースW2との間のジョイントJ、好ましくはTジョイントJを摩擦撹拌接合、FSW、するためのものであり、装置は、
第1のツール10であって、第1の回転方向RD1に回転可能であり、第1のワークピースW1及び/又は第2のワークピースW2に第1の深さD1まで少なくとも部分的に挿入可能であり、第1のラインL1を規定する第1の移動方向MD1に移動可能であり、それに沿って移動することによってジョイントJのFSWの第1のパスP1を実行し、それによって第1の溶接領域WR1を提供する、第1のプローブ100を備える、第1のツール10と、
第2のツール20であって、第1の回転方向RD1に回転可能であり、第1のワークピースW1及び/又は第2のワークピースW2に第2の深さD2まで少なくとも部分的に挿入可能であり、第2のラインL2を規定する第2の移動方向MD2に移動可能であり、それに沿って移動することによってFSWの第2のパスP2を実行し、それによって第2の溶接領域WR2を提供する、第2のプローブ200を備える、第2のツール20とを備え、
第1ツール10と第2ツール20とは相互に対向しており、
装置は、FSWの第1のパスP1を実行することと、FSWの第2のパスP2を実行することとが少なくとも部分的に同時に行われるように構成されている。
【0121】
図6は、例示的な実施形態によるツール、例えば第1のツール10及び/又は第2のツール20を概略的に描いている。
【0122】
この例では、ツール10は、固定ショルダ11を備える。
【0123】
この例では、固定ショルダ11は、面取りされた前縁110と丸みを帯びた後縁120とを備える。
この例では、面取りされた前縁110は、45°の面取り角度を有する。
この例では、面取りされた前縁110は、15mm×15mmの長さを有する。この例では、丸みを帯びた後縁120は、15mmの半径を有する。
【0124】
いくつかの好ましい実施形態が示され、説明されているが、さまざまな変更や修正が、添付の特許請求の範囲において規定されるような本発明の範囲から逸脱することなくなされてもよいことが、当業者によって認識される。
【0125】
本願に関連した本明細書と同時に、又は、それ以前に提出された、本明細書とともに公衆の閲覧に公開されるすべての文献や文書に注意が向けられ、そのような文献や文書のすべての内容が、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0126】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、及び、図面を含む)に開示された特徴のすべて、及び/又は、このように開示されたすべての方法又はプロセスのステップのすべては、そのような特徴及び/又はステップのうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わされてよい。
【0127】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、及び、図面を含む)に開示された各特徴は、そうではないと明示的に述べられない限り、同じ、均等な、又は、類似する目的に役立つ代替の特徴によって置き換えられてもよい。したがって、そうではないと明示的に述べられない限り、開示された各特徴は、均等物又は類似した特徴からなる共通の一連のもの1つの例にすぎない。
【0128】
本発明は、前述の実施形態の細部に制限されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、及び、図面を含む)に開示された特徴の、任意の新規の1つ、もしくは、任意の新規の組み合わせに及び、または、このように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規の1つ、又は、任意の新規の組み合わせに及ぶ。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図4(e)】
図4(f)】
図4(g)】
図5A
図5B
図5C
図6
【国際調査報告】