(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】鳥の有精卵における卵内性別判定装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543438
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2021050806
(87)【国際公開番号】W WO2021144420
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】102020000214.5
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522283158
【氏名又は名称】テクニッシュ ホーホシューレ オストヴェストファーレン-リッペ ユニバーシティ オブ アプライド サイエンス アンド アーツ
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デルクゼン ヘーレネ
(72)【発明者】
【氏名】クラール ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シュタウフェンビール イェンス
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA03
2G043CA05
2G043EA01
2G043GA01
2G043HA05
2G043JA01
2G043KA03
2G043LA01
2G043NA01
(57)【要約】
本発明は、- 鳥の卵(10)内領域(16)で蛍光を励起するための励起光を送出する光源(14)と、- 鳥の卵(10)内の領域(16)から放出された蛍光を時間-および/または分光分解分析するための分光器(18)と、- 分光器(18)を用いて求められたデータから性別を判定する評価ユニット(20)と、- 励起光の鳥の卵(10)内への送出と鳥の卵(10)からの蛍光を共に受光する測定ヘッド(22)とを備える、鳥の有精卵(10)における卵内性別判定装置(12)に関する。測定ヘッド(22)は、励起光を送出して蛍光を受光するヘッド端部(30)を備える光ガイドシステム(28)を有する。本発明はさらに、対応する測定ヘッド(22)および鳥の有精卵(10)における卵内性別判定のための対応する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥の有精卵(10)における卵内性別判定装置(12)であり、
- 鳥の卵(10)内の領域(16)で蛍光を励起するために励起光を放出する光源(14)と、
- 前記鳥の卵(10)内の前記領域(16)から放出された蛍光を時間-および/または分光分解分析するための分光器(18)と、
- 該分光器(18)を用いて前記求められたデータから性別を判定する評価ユニット(20)と、
- 前記励起光を前記鳥の卵(10)内へ共同送出して前記鳥の卵(10)から前記蛍光を受光する測定ヘッド(22)とを備え、
前記測定ヘッド(22)は前記励起光を送出して前記蛍光を受光するヘッド端部(30)を備える光ガイドシステム(28)を有する、卵内性別判定装置(12)。
【請求項2】
前記光ガイドシステムが、前記ヘッド端部(30)側でまとめられた2つの光ガイド束(32、34)を有するY字形の光ガイドシステム(28)であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光ガイド束(32、34)が、その個々の光ガイドが前記ヘッド端部(30)側で互いに絡み合う光ガイド線束(36、38)として形成されることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記分光器(18)が、蛍光を時間分解分析または時間-および分光分解分析する装置であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記評価ユニット(20)が、機械学習に基づく評価ユニットであることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記評価ユニット(20)が、いわゆる特徴エンジニアリングに基づく評価ユニットであることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
鳥の有精卵(10)における卵内性別判定装置(12)、特に請求項1~6の何れか一項に記載の装置(12)のための測定ヘッド(22)であって、
励起光の前記鳥の卵(10)内への送出と前記鳥の卵(10)からの蛍光受光とを共に行うように構成され、
前記測定ヘッド(22)が前記励起光を送出して前記蛍光を受光するヘッド端部(30)を備える光ガイドシステム(28)を有する、測定ヘッド(22)。
【請求項8】
- 光源(14)を用いて、鳥の卵(10)の内側領域(16)で蛍光を励起するための励起光を送出するステップと、
- 分光器(18)を用いて、前記鳥の卵(10)の内側の前記領域(16)から放出された蛍光を時間-および/または分光分解蛍光分析するステップと、
- 前記分光器(18)を用いて求められたデータから性別を判定するステップとを含み、
測定ヘッド(22)を用いて、共に前記励起光が前記鳥の卵(10)内へ送出され、前記蛍光が前記鳥の卵(10)から受光される、鳥の有精卵(10)における卵内性別判定方法において、
前記測定ヘッド(22)が光ガイドシステム(28)を有し、前記鳥の卵(10)内への前記励起光の送出および前記鳥の卵(10)からの前記蛍光の受光が、前記鳥の卵(10)に通じる前記光ガイドシステム(28)のヘッド端部(30)を介して行われる、方法。
【請求項9】
前記測定ヘッド(22)を用い、前記鳥の卵(10)の卵殻(26)の単一の孔(24)を通して、共に前記励起光が前記鳥の卵(10)内へ送出され、前記蛍光が前記鳥の卵(10)から受光される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
- 前記卵殻(26)の内側の卵膜を切開することなく前記卵殻(26)に前記孔(24)を作成する前置ステップをさらに有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記鳥の卵の内側の前記領域(16)が、胚盤葉領域および/または血路領域および/または胚構造領域である、請求項8~10の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥の有精卵における卵内性別判定装置に関し、この装置は、(i)鳥の卵内領域で蛍光を励起するための励起光を放出する光源、(ii)鳥の卵内領域から放出された蛍光を時間-および/または分光分解分析するための分光器、(iii)分光器を用いて求められたデータから性別を判定する評価ユニット、および(iv)好ましくは鳥の卵の卵殻の単一の孔を通して、励起光の鳥の卵内への送出と鳥の卵からの蛍光の受光とを共に行う測定ヘッドを備える。
【0002】
本発明は、さらに鳥の有精卵における卵内性別判定装置に対応する測定ヘッドに関し、これは好ましくは鳥の卵の卵殻の単一の孔を通して、励起光の鳥の卵内への送出と鳥の卵内からの蛍光受光とを共に行うように設定される。
【0003】
本発明は、さらに、鳥の有精卵における卵内性別判定方法に関し、この方法は、(a)光源を用いて鳥の卵内領域で蛍光を励起するために励起光を放出するステップ、(b)分光器を用いて鳥の卵内領域から放出された蛍光を時間-および/または分光分解蛍光分析を行うステップ、および(c)分光器を用いて求められたデータから性別を判定するステップを含み、ここで測定ヘッドを用い、好ましくは鳥の卵の卵殻の単一の孔を通して、励起光の鳥の卵内への送出と蛍光の鳥の卵からの受光とが共に行われる。
【背景技術】
【0004】
現在、受精卵にすでに存在するひよこの性別を判定できるようにする努力がなされている。
【0005】
鳥の卵内では、成長の経過において雄の雛と雌の雛では異なる蛍光物質、特にホルモンが生じる。それに対応する分子は、その構造が複雑であるために予測不能の蛍光能力を有する。蛍光においては、励起状態から基底状態への電子の遷移が観測される。この過程は時間に依存する。
【0006】
特許文献1は、鳥の有精卵において光学的に卵内性別判定を行う装置および方法を記載する。この方法は、(a)光源を用いて鳥の卵内領域で蛍光を励起するために励起光を放出するステップ、(b)分光器を用いて鳥の卵内領域から放出された蛍光を時間-および/または分光分解蛍光分析するステップ、および(c)分光器を用いて求められたデータから性別を判定するステップを含む。ビームスプリッタと光学系を含む測定ヘッドを用いて、鳥の卵の卵殻の単一の孔を通して、励起光が鳥の卵内へ送出されて蛍光が鳥の卵から受光される。そこに記載されている方法では、孔は比較的大きくならざるを得ず、このことが汚染の危険を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公告第102016004051(B3)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、卵内性別判定を、汚染の危険を大きく低減して的確かつ確実に実施できる装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明に従って独立請求項の特徴によって実現される。本発明の好ましい実施態様は従属請求項に提供され、それらは、それぞれ個別に、または組み合わせて本発明の観点を表すことができる。
【発明の効果】
【0010】
(i)鳥の卵内領域で蛍光を励起するために励起光を放出する光源、(ii)鳥の卵内領域から放出された蛍光を時間-および/または分光分解分析するための分光器、(iii)分光器を用いて求められたデータから性別を判定する評価ユニット、および(iv)好ましくは鳥の卵の卵殻の単一の孔を通して、励起光の鳥の卵内への送出と鳥の卵からの蛍光の受光とを共に行う測定ヘッドを備え、本発明による鳥の有精卵における卵内性別判定装置では、測定ヘッドが励起光を送出し蛍光を受光するヘッド端部を有する光ガイドシステムを備える。このようにして、送出と受光とに対応する光線の送受を非常に小さい孔を介して実現できる。特に、前述の装置によって卵殻上で蛍光を受光できる。
【0011】
この孔は、好ましくは0.5mm≦D≦3mmの範囲のサイズあるいは直径Dを有する。
【0012】
本発明の好ましい一実施態様によると、光ガイドシステムはヘッド端部側でまとめられた2つの光ガイド束を備えたY字形の光ガイドシステムが提供される。
【0013】
このとき特に、光ガイド束は個々の光ガイドがヘッド端部側で互いに絡み合った光ガイド線束として形成される。これは本発明の意味において、光ガイドが、例えば捩れて互いに絡み合っていると理解される。そのような絡み合いは、互いに巻き付いていると表すこともでき、このときこの巻き付きにおいて必ずしも規則性は存在しない。
【0014】
本発明のさらなる好ましい一実施態様によると、鳥の卵内領域は胚盤葉領域および/または血路領域および/または胚構造領域である。これらの領域の何れが選択されるかは、特に鳥の有精卵内の成長段階に依存する。
【0015】
本発明のさらに別の好ましい一実施態様によると、分光器は蛍光の時間分解分析または時間-および分光分解分析のための装置である。性別に関する情報が得られる周波数が周知である場合には、分光分解分析はしばしば必要ではなくなる。
【0016】
本発明のさらに別の好ましい一実施態様によると、光源はパルスレーザ光源である。好ましくは、光源がレーザパルスを生成するレーザを有するようになっている。さらに好ましくは、レーザパルスを生成するレーザに周波数逓倍装置、例えば周波数二倍装置、周波数三倍装置または周波数四倍装置を後置させるようになっている。
【0017】
本発明のさらに別の好ましい一実施態様によると、励起光は100nm以上380nm以下、好ましくは200nm以上280nm以下の範囲の波長、例えば266nmの波長の光線である。
【0018】
本発明の尚、さらに好ましい一実施態様によると、励起光はパルス状であり、0.1ns以上1μs以下、好ましくは1ns以上200ns以下、特に好ましくは2ns以上20ns以下の範囲のパルス幅を有する。
【0019】
本発明のさらに別の好ましい一実施態様によると、励起光はパルス状であり、フェムト秒範囲またはピコ秒範囲のパルス幅を有する。
【0020】
本発明のさらに別の好ましい一実施態様によると、分光器は分光計(スペクトログラフ)を有し、この分光計は好ましくは200nm以上600nm以下の範囲の波長の蛍光を受光するように構成される。
【0021】
好ましくは、分光器がマルチチャネル検出器と、分光計とマルチチャネル検出器との間に接続されたシャッタとを有する。さらに好ましくは、一方のレーザと他方のマルチチャネル検出器およびシャッタとのQスイッチを介した連結が提供される。
【0022】
本発明の好ましい一実施態様によると、評価ユニットが機械学習に依拠する評価ユニットが提供される。機械学習は、(現在のウィキペディア記載事項によると)経験から知識を「人工的」に生成する一般概念である。人工システムは、類例から学習し、学習段階終了後にこれを普遍化する。そのために機械学習のアルゴリズムがトレーニングデータに基づく統計モデルを構築する。
【0023】
本発明のさらなる好ましい一実施態様によると、評価ユニットがいわゆる特徴エンジニアリングに起因する評価ユニットを提供する。特徴エンジニアリングは、データ編集の一形式であり、特徴の選択および編集を記述し、それが機械学習モデルの作成に用いられる。
【0024】
好ましくは、評価ユニットは、特徴エンジニアリングにおいて2次の中心モーメント(標準偏差)と3次の中心モーメント(歪度)とを考慮して構成が提供される。評価ユニットがデータ行列から特徴を形成するように構成が提供されても良い。このとき評価ユニットは、特徴を行ごとにも列ごとにも形成するように構成が提供され得る。好ましくは、評価ユニットは、好ましくはフィッシャーの線形判別分析(LDA)の助けを借りて、弱い分離特性をもつ特徴を除去するような構成が提供され得る。好ましくは、評価ユニットは、分類子の妥当性を決定するような構成が提供され得、ここで、好ましくは5×2の交差検証方法のために構成され得る。
【0025】
好ましくは鳥の卵の卵殻の単一の孔を通して、励起光の鳥の卵内への送出と鳥の卵からの蛍光の受光とを共に行うように構成された鳥の有精卵における卵内性別判定装置のための本発明による測定ヘッドでは、測定ヘッドが励起光を送出して蛍光を受光するヘッド端部を備える光ガイドシステムを備えることが提供される。鳥の有精卵における卵内性別判定のための対応する装置は、特に前述の装置である。
【0026】
受精した鳥の卵の卵内性決定のための本発明による方法において、ステップは
(a)光源を用いて鳥の卵内領域で蛍光を励起するために励起光を送出するステップ、
(b)分光器を用いて鳥の卵内領域から放出された蛍光を時間-および/または分光分解蛍光分析するステップ、および
(c)分光器を用いて求められたデータから性別を判定するステップを含み、ここで、測定ヘッドを用い、好ましくは鳥の卵の卵殻の単一の孔を通して励起光の鳥の卵内への送出と蛍光の鳥の卵からの受光とが共に行われ、測定ヘッドは光ガイドシステムを備え、鳥の卵の中への励起光の送出および鳥の卵からの蛍光の受光が、鳥の卵、好ましくは孔へ通じる光ガイドシステムのヘッド端部を介して行われることが提供される。
【0027】
本発明の方法の好ましい一実施態様によると、測定ヘッドを用いて、鳥の卵の卵殻の単一の孔を通して励起光の鳥の卵内への送出と蛍光の鳥の卵からの受光とが共に行われる。
【0028】
この方法の実施の前には通常、卵殻に孔を作成するステップが置かれる。このとき特に、この孔が卵殻の内側の卵膜を切開せずに作成される。蛍光測定は、この卵膜あるいはこれらの卵膜を通して行うことができる。
【0029】
本発明の方法の代替の一実施態様によると、卵殻が孔を有することなく、測定ヘッドを用いて鳥の卵内へ励起光を送出して鳥の卵から蛍光を受光することが提供されても良い。従って、励起光および蛍光は、それぞれ卵殻を透過する。驚くべきことに、前述の方法によっても、鳥の有精卵における卵内性別判定が可能であることが示された。
【0030】
本発明の方法のさらなる代替の一実施態様によると、鳥の卵の内部領域が卵から取り出され、それに応じてステップ(a)、(b)および(c)の方法が卵の外側で実施されることが提供される。
【0031】
鳥の有精卵における卵内性別判定のための本発明によるこの代替方法は、
(a)光源を用いて鳥の卵の内側からの試料領域で蛍光を励起するために励起光を送出するステップ、
(b)分光器を用いて鳥の卵内側の試料領域から放出された蛍光を時間-および/または分光分解蛍光分析するステップ、および
(c)分光器を用いて求められたデータから性別を判定するステップを含み、ここで、測定ヘッドを用いて、共に励起光が鳥の卵内側の試料内へ送出されて蛍光が鳥の卵の内側の試料から受光され、測定ヘッドは光ガイドシステムを有し、鳥の卵内側の試料内への励起光の送出および鳥の卵内側の試料からの蛍光の受光が、試料に通じる光ガイドシステムのヘッド端部を介して行われる。
【0032】
以下に、本発明を添付図面に関連付けて好ましい実施例に基づいて例により説明され、ここで、以下に示した特徴がそれぞれ個別でも、組み合わされても本発明の観点を表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】鳥の卵と、本発明の好ましい一実施形態によるこの鳥の有精卵における卵内性別判定装置とを有する構成を示す。
【
図2】雄あるいは雌の鶏卵に関する波長λ=500、89nmに対応する(a
j1、…、a
jn)の対応するスペクトルを表す値a
jkのグラフを示す。
【
図3】第1のシナリオの分類子(黒線)のグラフおよび実験2(6日、卵膜を通して)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、複数の鳥の卵10と、この鳥の卵10における光学的卵内性別判定装置12とを有する測定構成の略図である。装置12は、鳥の卵10の内部領域16で蛍光を励起するためのパルス状の励起光を放出する光源14、鳥の卵10の内部領域から放出された蛍光を時間-および/または分光分解分析するための分光器18、分光器18を用いて求められたデータから性別を判定するコンピュータベースの評価ユニット20、および鳥の卵10の卵殻26の唯一の孔24を通して励起光を鳥の卵10内へ共同送出して鳥の卵10からの蛍光を受光する測定ヘッド22を有する。測定ヘッド22は、励起光を送出して蛍光を受光するヘッド端部30を備えた光ガイドシステム28を有する。このヘッド端部30は測定ヘッド22のヘッド端部でもあり、測定のため卵殻26の孔24に保持される。
【0035】
測定ヘッド22の光ガイドシステム28はY字形に形成され、2つの光ガイド束32、34、励起光用光ガイド束32および蛍光用光ガイド束34を含む。両光のガイド束32、34は、ヘッド端部30側でまとめられる。光ガイド束32、34は、それぞれ光ガイド線束36、38として形成され、それらの個々の光ガイド(詳細には示していない)は、ヘッド端部30側で互いに絡み合っている。
【0036】
光源14は、示した例ではレーザパルスを生成するレーザ40と、このレーザ40に後置された周波数逓倍装置42とを有する。光源14は、則ちパルスレーザ光源である。
【0037】
分光器18は、示した例では分光計(分光写真機)44、ICCDカメラとして形成されたマルチチャネル検出器46、および分光計44とマルチチャネル検出器46との間に接続されたシャッタ48を有する。一方のレーザ40と他方のマルチチャネル検出器46およびシャッタ48との間の連結は、いわゆるQスイッチ50と検出器側のパルス生成器52を介して行われる。評価ユニット20としてコンピュータが用いられる。
【0038】
レーザは、この例では波長1064nmのND:YAGレーザである。周波数ダブリングによって、励起光の波長は266nmに達する。レーザ誘導蛍光信号は、マルチチャネル検出器-ICCDカメラ46により記録される。光ガイドシステム28のファイバ線束は、レーザ光を試料、則ち鳥の卵10の内部へ導くだけではなく、生成した蛍光を検出器46へも導く。測定の際、それぞれの時点で全スペクトルが記録される。そのようにして、ZLIF測定を直接表面上で行うことができる。発光レンジは、300~600nmである。
【0039】
蛍光が励起される鳥の卵10の内部の重要領域は、胚盤葉領域、血路領域および/または胚構造領域である。
【0040】
以下に、3日から6日暖められた鶏卵における、装置12を用いた時間分解蛍光分光(ZLIF)による卵内性別判定の一例が議論される。
【0041】
全試験では、胚構造の(略:胚の)領域16の測定ヘッド22への配向が重要である。胚の位置は、選別によって決定できる。この例は、3日あるいは6日暖められた卵の試験に関する。測定システムによって鶏卵を3方式、則ち
1.卵殻26を通した測定、
2.卵殻26無しの無傷の卵膜を通した測定、
3.直接胚への測定
で試験できる。
【0042】
3日あるいは6日暖められた卵10の試験に関して、鶏卵が並べられ、その後上方から卵殻26を通して測定された。代替の2方式では、卵殻26を慎重に取り除くことによって、無傷の卵膜を通して測定を行うことができた。この両試験方式では、胚の向きを誤り無く確定することができない。このことから第3の代替方式では、卵膜を取り除いて、直接胚および静脈への測定を繰り返した。
【0043】
ZLIF測定は、固定のnに関する等間隔で増大する時刻τ1、…、τnに関連付けて、一連の値として、または同じ意味のシグナル列またはベクトルa=(a1,…,an)∈Rnとして検出され得る。各時刻τj、j=1、…、nに対して完全なスペクトルが記録されるので、一連の値を(数学の)行列A∈Rm×nとして定義することができる。
【0044】
【0045】
ここで、Aの列(a1j,…,amj)T∈Rmは、時刻τjにおける上述のスペクトルである。したがってそれぞれ個々の鳥の卵におけるZLIF測定の結果は、属する測定値から成る行列に対応する。それぞれZLIF測定の方式ならびに3日あるいは6日暖められた卵の性別に応じてその行列は以下のクラスの1つに割り当てられる。
{性別(雄/雌)、日数(3/6)、方式(卵殻無し、無傷の卵膜、胚による)}
このとき、性別を誤り無く割り当てるために、胚試料を遺伝子ラボ内で定量実時間ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)および相応のプライマーセットを用いて分析した。
【0046】
機械学習(ML)方法により、ZLIF測定から直接性別判定を可能にするシステムを習得できる。このとき古典的なML方法も、この特許申請に関与した発明者の関連する学術的出版物も重要である。
【0047】
このシステムの習得のためには、異なる性別とさらに同じ孵化期と同じ方式のクラスが興味深い。通常、孵化期も測定方式も周知であるので、これは制限ではない。この論述は、2つのクラス、
CX(雌に関する)およびCY(雄に関する)
に関する二元分類問題につながる。
同じ孵化期の鶏卵量に対しては、同じ方式のZLIF測定が行われる。さらに鶏卵をqPCRによってクラスCXまたはクラスCYに割り当てる。そのようにして我々は、上述の行列Aに相当する構造を有するAX∈CXまたはAY∈CYを含む対象を獲得する。
【0048】
直接性別判定のためのシステムを習得するために、対象Aの以下の特徴抽出が行われる。このときAの個々の行の値、則ち(a
j1、…、a
jn)、j=1、…、mは、統計分布によって表される。物理的には、行は特定の固定波長に関する時間分解測定を表す。
図2は、雄(m)あるいは雌(w)の鶏卵での測定のための波長λ=500.89nmに対応する固定のjに関する行(a
j1、…、a
jn)の例を表す。このグラフから、測定列の異なる形状によって分類が原理的に可能であることが分かる。
【0049】
aj=(aj1、…、ajn)、j=1、…、mの中心モーメントは、ajの統計的特性を表す。最初の3つのモーメントは、平均値μ、標準偏差σおよび傾斜度Sである。
【0050】
【0051】
それぞれの対象に関してそれぞれm個の特徴(aj)とm個の特徴S(aj)、j=1、…、mが抽出される。各対象の特徴ベクトルf∈R2・mは、したがって
f=(σ(a1)、…、σ(am)、S(a1)、…、S(am))
となる。
CXおよびCYのクラスの妥当性を満足させるために特徴選択を行う。ここでは「フィッシャーの線形判別」(LDA)を用い、弱い分離特性をもつ特徴は排除される。何故ならこれは分類への寄与が小さく、結果を悪化させ得るからである。強い分離特性をもつ特徴は、LDAによる分類超平面設計のために使用される。
【0052】
複数のデータセットが生成され、学習と直接性別判定システムの有効性を確認した。それに関して、12+13の量M1の鶏卵が取り出されて測定された。合計ではおよそ30の鶏卵であったが、実際にはqPCRによる性別は全てに関しては決定できなかった。後の時点で次のZLIF測定が15+10の別の量M2の鶏卵で行われた。ここでは当初40の鶏卵であったが、第1の試験と同様に性別は全てに関しては決定できなかった。これらの両試験は、記載された直接性別判定方法が適切であることを示している。少なくとも2つの測定が結果の有効性を確認するために必要である。
【0053】
値M1での第1試験では、12の鶏卵(6雄+6雌、3日の胚で)ならびに13の鶏卵(6雄+7雌、6日齢で初めは卵殻無しのインタクトな卵膜を通して、その後胚で)がZLIFで測定された。値M2での第2試験では、15の鶏卵(3雄+12雌、3日の胚で)ならびに18の鶏卵(14雄+4雌、6日齢で初めは卵殻無しのインタクトな卵膜を通し、その後胚で)が測定された。鶏卵のそれぞれにおいてZLIF測定が15回繰り返された。そのようにして鶏卵は、クラスの1つに対してそれぞれ15対象を提供する。それぞれ3実験を含む2試験を表1にまとめる。
表1:システムの学習と有効性確認のための各3実験を含む2試験
#対象 雄/雌(試験1.) #対象 雄/雌(試験2.) 日齢 方式
1. 90/90 45/180 3 胚
2. 90/105 210/60 6 経卵膜
3. 90/105 210/60 6 胚
記号#対象は、対象の数を表す。
【0054】
選択時間分解能に対してn=20であり、スペクトルはλ≒200.08nmに始まりλ≒596.75nmまで等間隔で記録され、m=1024が適用される。対象のそれぞれの特徴ベクトルはしたがって、
f=(σ(a1)、…、σ(a1024)、S(a1)、…、S(a1024))
に対応し、長さ2・m=2048を有する。
【0055】
システムの習得と有効性確認とのために、2つのシナリオがテストされた。第1では、クラスCXおよびCYは両試験M1およびM2の対象から構成され、システムの習得とテストのための試験の間に違いはない。実験1.のCYでは135対象、実験2.では300対象、実験3.でも300対象である。実験1.のCXでは270対象、実験2.では165対象、実験3.では165対象である。
【0056】
続いてクラスCXおよびCYが、それぞれトレーニング対象とテスト対象にランダムに分けられた。クラシファイアーがトレーニング対象のために設計され、テスト対象でその妥当性が調べられる。クラシファイアーの妥当性を決定するために、発明者らは5×2の交差検証を用いた。これはクラシファイアーの妥当性を決定するために構築された方法である。5×2の交差検証の着想はトレーニング対象数とテスト対象数を等しいとしているので、トレーニング量をテスト量へ、またはその逆に変換できる。5×2の交差検証の結果は、妥当性のための信頼できる平均値を提供する。表2に結果をまとめる。
表2:両試験からの対象の5×2交差検証の結果
実験 妥当性(トレーニング) 妥当性(テスト)
1. 3日、胚 88.89% 84.69%
2. 6日、経卵膜 96.46% 92.27%
3. 6日、胚 96.13% 90.51%
【0057】
図3は、第1シナリオおよび実験2(6日、卵膜)に関する対応するクラシファイアー(黒線)のグラフを示す。
【0058】
第2シナリオでは、試験は習得とテストの間に違いがある。第2試験では、第1試験より対象が多い。ここでは、トレーニング対象が多ければ多いほどシステムがより安定的に使用されることが期待される。このことから、分類子は試験2.からの対象でトレーニングされ、試験1.からの対象でテストされる。結果は、次に挙げた表3により判明する。
表3:M2からの対象のトレーニングとM1でのテストにおける妥当性の結果
実験 妥当性(トレーニング) 妥当性(テスト)
1. 3日、胚 90.67% 76.67%
2. 6日、経卵膜 95.56% 89.23%
3. 6日、胚 95.56% 87.69%
【0059】
結論:行った実験は、ZLIFによる、有精鶏卵における直接性別判定が可能であることを示す。このとき、孵化期は3日齢から6日齢である。76.67%から92.27%の信頼できる妥当性が達成され得る。この方法は、妥当性の改善に対する大きな可能性を有する。この可能性は、ZLIF実験の最適化にも、特徴抽出、特徴選択および分類子設計の最適化にも基づく。
【符号の説明】
【0060】
10 鳥の卵
12 卵内性別判定装置
14 光源
16 領域(鳥の卵内)
18 分光器
20 評価ユニット
22 測定ヘッド
24 孔(卵殻内)
26 卵殻
28 光ガイドシステム
30 ヘッド端部
32 光ガイド束
34 光ガイド束
36 光ガイド線束
38 光ガイド線束
40 レーザ
42 周波数ダブリング装置
44 分光計
46 マルチチャネル検出器
48 シャッタ
50 Qスイッチ
52 パルス発生器
【国際調査報告】