(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】厚さの異なる溶接された車両用構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/00 20060101AFI20230420BHJP
C21D 9/08 20060101ALI20230420BHJP
C21D 9/50 20060101ALI20230420BHJP
B21D 53/88 20060101ALI20230420BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20230420BHJP
B23K 9/173 20060101ALI20230420BHJP
B62D 25/06 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B62D21/00 Z
C21D9/08 102
C21D9/50 101Z
B21D53/88 Z
B21J5/06 F
B23K9/173 A
B62D25/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022550243
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 CA2021050211
(87)【国際公開番号】W WO2021168554
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597005820
【氏名又は名称】マルティマティック インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】サリヴァン、マーク
【テーマコード(参考)】
3D203
4E001
4E087
4K042
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB54
3D203BB55
3D203BB56
3D203CA02
3D203CB03
4E001AA03
4E001BB08
4E001CA01
4E001DG04
4E087AA05
4E087CA46
4E087HA82
4E087HB01
4K042AA06
4K042AA09
4K042AA24
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA02
4K042DA01
4K042DB07
4K042DC02
4K042DD02
4K042DE02
(57)【要約】
厚さの異なる溶接された鋼の車両用レールを調製する方法であって、当該方法は:(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを形成するステップ;(b)第一の外径、第二の内径および第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを形成するステップ;(c)第一のチューブの第一の端部を第二のチューブの第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングするステップ;(d)第一のチューブのスエージングされた第一の端部を第二のチューブの端部の中へと挿入して接合部を形成するステップ;(e)第一のチューブおよび第二のチューブを溶接して接合部において溶接部を形成して、溶接部の領域に金属強度がいっそう低い熱影響ゾーンを有するチューブブランクを形成するステップ;(f)チューブブランクを予め加熱してチューブブランクの長さに沿って共通の結晶マイクロ構造を作り出すステップ;(g)チューブブランクを、内側の成形壁を有するブロー成形ツールの中へと導入するステップ;(h)加圧された媒体をチューブブランクの内側キャビティの中に注入することにより成形ツールの内側の成形壁に対してチューブブランクを拡張させることによって、上昇した温度にてチューブブランクを成形するステップ;ならびに(i)成形ツールおよびチューブブランクを通して加圧された媒体を冷却媒体と置換することによってチューブブランクをクエンチングして、チューブブランクに対する急冷効果を得、かつ、溶接部の至るところで本質的に均一な金属強度を有する完成した車両用レールを作り出すステップを有する。完成した車両用レールは、レールの長さに沿って重ね合わされ溶接された構造および均一なマイクロ結晶構造を有する。【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さの異なる溶接された鋼の車両用レールを調製する方法であって、当該方法は:(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを形成するステップ;(b)前記の第一の外径、第二の内径、前記の第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを形成するステップ;(c)前記の第一のチューブの第一の端部を前記の第二のチューブの前記の第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングするステップ;(d)前記の第一のチューブの前記のスエージングされた第一の端部を前記の第二のチューブの端部の中へと挿入して接合部を形成するステップ;(e)前記の第一のチューブおよび前記の第二のチューブを溶接して前記接合部において溶接部を形成して、前記溶接部の領域にいっそう低い金属強度の熱影響ゾーンを有するチューブブランクを形成するステップ;(f)前記チューブブランクを予め加熱して前記チューブブランクの長さに沿って共通の結晶マイクロ構造を作り出すステップ;(g)前記チューブブランクを内側の成形壁を有するブロー成形ツールの中へと導入するステップ;(h)加圧された媒体を前記チューブブランクの内側キャビティの中へと注入することにより前記成形ツールの前記の内側の成形壁に対して前記チューブブランクを拡張させることによって上昇した温度にて前記チューブブランクを成形するステップ;ならびに(i)前記成形ツールおよび前記チューブブランクを通して前記の加圧された媒体を冷却媒体と置換することによって前記チューブブランクをクエンチングして、前記チューブブランクに対する急冷効果を得、かつ、前記溶接部の至るところで本質的に均一な材料強度を有する完成した車両用レールを作り出すステップを含む、
前記方法。
【請求項2】
前記チューブブランクが、前記チューブブランクの内側を通って循環する前記の加圧された加熱媒体および前記冷却媒体を各々給送ならびに除去するための少なくとも二つの開口部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の加圧された加熱媒体が気体状であり、かつ、前記冷却媒体が液体状である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記の加圧された気体状の加熱媒体が空気および窒素から選択され、かつ、前記冷却媒体が水である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記の溶接することがMAG溶接を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記チューブブランクの材料が鋼であり、該鋼は、予熱後および成形の最中はオーステナイト結晶マイクロ構造を有し、かつ、クエンチング後はマルテンサイト結晶マイクロ構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記の第二の壁厚が前記の第一の壁厚より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記の第一の壁厚が前記の第二の壁厚より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のレールであって:(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを有し;(b)前記の第一の外径、第二の内径および前記の第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを有し;(c)前記第一のチューブの第一の端部が前記の第二のチューブの前記の第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングされており;(d)前記の第一のチューブの前記のスエージングされた第一の端部は、前記の第二のチューブの端部の中へと挿入され、かつ、接合部を形成しており;(e)前記の第一のチューブおよび前記の第二のチューブは、前記の接合部において溶接されてチューブブランクを形成しており;(f)前記チューブブランクは、予熱、ブロー成形およびクエンチングを有する熱機械的処理に曝されていた、
前記のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、構造的レールの分野に属し、とりわけ、レールであって、それに対して自動車のピラーまたはその他の車両コンポーネントが設置されてもよい前記レールの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
特定の応用例(とりわけ、自動車の分野における)は、構造的要素として金属チューブを必要とする。かかる応用例は、レールであって、それに対して自動車のA、BおよびCピラーが設置されてもよい前記レールである。自動車が曝される異なる力(例えば、衝突の最中に)を考慮すると、レールに取り付けられてもよいコンポーネントまたは構造の特徴の結果として、レールの特定の部分が、レールのその他の部分とは異なる強度要件を有するであろう。例えば、典型的な車両用レールでは、AピラーとBピラーとの間の領域は、典型的にはレールのその他のセクションより大きい強度を必要とするであろう。レールを製造するときには、単一の金属チューブが用いられてもよいが、一様にいっそう厚いチューブは車両の重量を増加させるであろうし、一方で一様にいっそう薄いチューブは必要とされる場合に十分な強度を提供しないであろう。さらに、レールに沿う異なる強度要件を満たすために、単一のチューブであって、その長さに沿って変化する壁厚の部分を有する前記の単一のチューブを作成することは、比較的高価である。異なる壁厚を有するが同じ外径を有する二つ(以上)のチューブを溶接することは、安価であろう。このことは、製造が比較的安価である異なる壁厚のチューブセクションを用いてレールを提供し、該レールは、いっそう厚い材料を必要な場合にのみ有することによって重量および費用を削減するであろう。
米国特許第5,333,775号明細書(Bruggemannら)には、変化する壁厚を有する直線状のチューブを端と端とで溶接することによって、変化する壁厚を有するパーツを構築する方法が記載されている。特に、チューブブランクを形成するための鋼チューブのレーザー突き合わせ溶接が記載されている。通常、共通の外径を有するチューブが接合される。異なる外径のチューブが接合されるべきであれば、相対するチューブの外径と対応するために、一方または両方のチューブの端部がフレア加工またはテーパー加工される。その後、今や共通の外径を有するチューブの端部が突き合わせ接合される。直線状のチューブの溶接に続いて、外面上にある余分な溶接金属が、その面を滑らかにしてさらなる処理のためにブランクを調製するために除去される。その後、溶接されたチューブブランクは、従来の手段を用いてその長手方向軸に沿ってU字形(ダイであって、その中にブランクが配置される前記ダイの形状に対応する)へと曲げられる。その後、U字形パーツの液圧成形が起こる。液圧成形は典型的には、室温のような比較的低温にて9000p.s.i.の範囲の高い液圧下で起こる。液圧成形のために用いられる金属は、加熱を伴わずにそのように成形されるように、室温にて十分に延性があるか、または、成形可能でなければならない。
突き合わせ接合溶接は、特定のデメリットを呈する。重複なしで、溶接部におけるあらゆる不連続が、溶接部における強度の喪失、潜在的な腐食および破砕の可能性をもたらすであろう。したがって、厚さは異なるが外径が共通するチューブを接合し、MAG溶接などを用いて該チューブを重ね合わせていっそう強く安全な接合部を作り出すことは有利であろう。しかしながら、重ね合わせたチューブを溶接することの問題が、典型的には溶接部の領域における熱影響ゾーン(HAZ)の形成である。HAZは、溶接部の両側においてチューブの中へと幾分延びる。HAZにおけるマイクロ構造および特性は、母材金属のものとは異なる。粒子成長およびマルテンサイト鋼の場合の焼き戻しのような熱活性化軟化現象が、HAZにおける材料の低い機械的特性の要因である。HAZにおける金属の変化した機械的特性は通常望ましくなく、かつ、HAZにおける材料は通常、溶接後には母材金属より強度が低い。
【発明の概要】
【0003】
我々は、先行技術における特定の制限を回避しながら、異なる壁厚であるが同じ外径の二つ以上の金属チューブを溶接する方法を発明した。とりわけ、当該方法は、個別のチューブ自体の部分に増大した壁厚を作り出すことを必要とすることなく、多数の、典型的にはロール成形されたチューブ(個別の均一な壁厚を有する)の使用を可能にする。異なる壁厚の二つのチューブを溶接する場合、厚い方のチューブは、その厚い壁のためにいっそう多くの材料を必要とするので、単位長さ当たりの価格が高い。このことは、溶接された構造(ここでは、チューブブランクという)が、強度が必要とされる領域では厚い壁のチューブの大きい強度を有し、かつ、強度があまり必要でない領域では薄い壁のチューブの低価格および軽量を有することを可能にする。さらに、溶接の効果についての特定のデメリットが克服される。当該方法に採用される金属チューブは、典型的には鋼からなる。これらのチューブを接合部において溶接することは、熱影響ゾーンまたはHAZとして知られる溶接部に隣接する微結晶構造を作り出し、これは、チューブブランクの材料の残部の微結晶構造とは異なる。溶接されたチューブブランクをオーブンにて予め加熱することによって、チューブブランク全体がオーステナイト微結晶構造を呈する。その後、溶接されたチューブブランクは、加圧された気体状媒体を用いて型にてその最終形状へとブロー成形され、最終的に液状冷却媒体を用いてクエンチングされる。クエンチングに続いて、完成したレール全体は、溶接ワイヤ由来の材料を除いては、今や所望のマルテンサイト微結晶構造を有する。結果物は、車両への搭載に適した完成した車両用レールである。
本発明の原理的態様では、厚さの異なる溶接された鋼の車両用レールを調製する方法であって、当該方法は:(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを形成するステップ;(b)第一の外径、第二の内径および第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを形成するステップ;(c)第一のチューブの第一の端部を第二のチューブの第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングするステップ;(d)第一のチューブのスエージングされた第一の端部を第二のチューブの端部の中へと挿入して接合部を形成するステップ;(e)第一のチューブおよび第二のチューブを溶接して接合部において溶接部を形成して、溶接部の領域に金属強度がいっそう低い熱影響ゾーンを有するチューブブランクを形成するステップ;(f)チューブブランクを予め加熱してチューブブランクの長さに沿って共通の結晶マイクロ構造を作り出すステップ;(g)チューブブランクを、内側の成形壁を有するブロー成形ツールの中へと導入するステップ;(h)加圧された媒体をチューブブランクの内側キャビティの中に注入することにより成形ツールの内側の成形壁に対してチューブブランクを拡張させることによって、上昇した温度にてチューブブランクを成形するステップ;ならびに(i)成形ツールおよびチューブブランクを通して加圧された媒体を冷却媒体と置換することによってチューブブランクをクエンチングして、チューブブランクに対する急冷効果を得、かつ、溶接部の至るところで本質的に均一な金属強度を有する完成した車両用レールを作り出すステップを有する。
本発明のさらなる態様では、チューブブランクは、チューブブランクの内側を循環する加圧された媒体および冷却媒体を各々給送ならびに除去するための少なくとも二つの開口部を含む。
本発明のさらなる態様では、加圧された媒体は気体状であり、かつ、冷却媒体は液状である。
本発明のさらなる態様では、加圧された気体状の媒体は空気および窒素から選択され、かつ、冷却媒体は水である。
本発明のさらなる態様では、溶接はMAG溶接を有する。
本発明のさらなる態様では、チューブブランクの材料は鋼であり、該鋼は、予熱の後および成形の最中はオーステナイト結晶マイクロ構造を有し、かつ、クエンチングの後はマルテンサイト結晶マイクロ構造を有する。
本発明のさらなる態様では、第二の壁厚は第一の壁厚より大きい。
本発明のさらなる態様では、第一の壁厚は第二の壁厚より大きい。
本発明のさらなる態様では、ブロー成形された厚さの異なる車両用の鋼レールが:(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを有し;(b)第一の外径、第二の内径および第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを有し;(c)第一のチューブの第一の端部は、第二のチューブの第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングされ;(d)第一のチューブのスエージングされた第一の端部は、第二のチューブの端部の中へと挿入されて接合部を形成し;(e)第一のチューブおよび第二のチューブは、接合部にて溶接されてチューブブランクを形成し;(f)チューブブランクは、予熱、ブロー成形およびクエンチングを有する熱機械的処理に曝されていた。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】
図1は、車両用レールが取り付けられた車両のA、BおよびCピラーの立面図である。
【
図2】
図2は、いっそう大きい強度を必要とするゾーン、および、いっそう小さい強度を必要とするゾーンを示す車両用レールの立面図である。
【
図3A】
図3Aは、異なる壁厚を有するチューブで形成された車両用レールの立面図である。
【
図3B】
図3Bは、壁厚は変化するが外径は均一であるチューブの接合部を示す断面立面図である。
【
図4】
図4は、予熱およびブロー成形の準備ができているチューブブランクの立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
発明の詳細な説明
図1には、典型的な車両用レール構造(この場合、カントレール)が示されている。カントレールが描かれているが、本発明はその他の適切なレールに適用可能である。
図1は、車両のCピラー2、Bピラー4およびAピラー6のそれぞれに接続されたレールを示している。
図2にも示されているゾーンXにおけるレール部分は、ゾーンYにおけるレール部分より低い強度および剛性を必要とする。このことは、ゾーンXにおいて軽量のチューブを用いて、レールの重量および材料コストを下げることを助け、かつ、車両全体の軽量化に貢献することによって達成され得る。対照的に、ゾーンYにおけるレール部分は、好ましくはいっそう高い強度および剛性のものであって、側方衝撃衝突強度を提供する。このことは、ゾーンYにおいて重い金属チューブを用いることによって達成され得る。図示されている実施例はゾーンXにおいて薄い壁の方のチューブを描いており、かつ、ゾーンYにおいては厚い壁の方のチューブを描いているが、これらは逆転してもよい。
例示的な実施形態では、ゾーンXにおける第一のチューブ1は壁厚が1.8mmであり、ゾーンYにおける第二のチューブ3は壁厚が2.2mmである。
図3Bに最もよく示されているように、第一のチューブ1は、第一の外径A、内径Bおよび第一の壁厚Cを有する。第二のチューブ3は、同じ第一の外径A、第二の内径Fおよび第一の壁厚Cより大きい第二の壁厚Dを有する。
最大の強度および最小の処理で重なり合う接合部を作り出すために、薄い方の第一のチューブ1の第一の端部5が、その外径を第二の外径E(第二のチューブ3の第二の内径Fより小さい)まで小さくするためにスエージングされ、したがって、スエージングされた第一の端部5が、最小限の空隙で、ほぼスエージングされた部分の程度で厚い方の第二のチューブ3の端部7の中へとスライドすることを可能にする。この重なり合った領域は、接合部9を形成する。第一のチューブ1および第二のチューブ3はその後、典型的にはMAG溶接または同様の方法を用いて、溶接部11において周方向に溶接されて強い重なり合った接合部を作り出す。しかしながら、溶接工程は、接合部9の近傍にいっそう低い強度の熱影響ゾーンまたはHAZ13を作り出す。溶接後、接合されたチューブ1,3を、さらなる処理のための準備ができたチューブブランク15という。我々は、チューブブランク15をその最終形状へとさらに処理することによって、HAZ13が事実上削除され得ることを発見した。
注目されるように、図示されている実施形態は薄い方のチューブの端部がスエージングされ、かつ、厚い方のチューブの端部の中へと挿入されることを提供するが、このことは、厚い方のチューブの端部がスエージングされ、かつ、薄い方のチューブの端部の中へと挿入される状態で逆転され得る。
溶接後、チューブブランク15は、成形前に典型的にはオーブンまたは炉にて加熱される。この予熱工程は、上昇した温度における改善された成形性を有する全パーツのほぼ均一な結晶マイクロ構造を作り出す。均質化工程(加熱および「均熱」段階を有する)の最初の二段階と同様であるこの加熱処理の最中、材料は十分に加熱され(鋼の場合、オーステナイト化温度まで)、かつ、その後で一定期間均質化温度にて保持される。完全な均質化のための「均熱」時間は本質的に長いので、この加熱処理は通常、材料の部分的な均質化をもたらす。チューブブランクは、この予熱後、溶接されていない金属チューブの初期の結晶マイクロ構造と完成したレールの最終のマルテンサイト結晶マイクロ構造との中間である、オーステナイト結晶マイクロ構造を有する。この段階では、予熱後、HAZ13およびチューブブランク15の残部は、ほぼ同じ結晶マイクロ構造を有するが、適切な熱機械的工程(典型的には熱変形)および後に続くクエンチングによって得られ得る完成したレールの最終の所望される結晶マイクロ構造ではない。
次に、予め加熱されたチューブブランクは、型の中に直接配置され、かつ、ブロー成形の性質の加圧気体工程が実行されて、本技術分野で知られているように、チューブブランクの直径が拡張し、かつ、その長さに沿ってその形状が適宜変更される。例えば、円形のチューブブランクは、所望されるように、A、BおよびCピラーがそれに溶接されなければならない領域において、または、その全長に沿って、長方形にされ得る。それは、その長さに沿って変化する外周を有していてもよい。最終レールの特定の形状は、確定的ではない。
任意の適切な方法が採用されてもよいが、例示的なブロー成形方法は概して米国特許第6,261,392号明細書(Sundgrenら)に記載されている。この方法は、高圧下で圧縮された空気または窒素のような気体(液体ではない)を、チューブブランクの内側へと注入することを伴い、該気体は、加熱されたチューブブランクのパーツを成形ツールの内側プロファイルへと拡張させて、パーツを成形する。典型的には、予熱処理は、チューブブランクの温度がブロー成形工程の開始時においてオーステナイト温度範囲にあるように設計される。したがって、これは熱変形工程と考えられてもよい。しかしながら、典型的には1220~1500p.s.i.の範囲であり、かつ、最大8700p.s.i.である必要とされる圧力は、加熱されていないチューブを液圧成形するのに必要とされるものより相当低い。チューブブランクは典型的には両端において開いているので、加圧された気体はチューブブランクの両端において導入または除去されてもよい。代替的には、チューブブランクの端部以外に開口部が提供されてもよい。
最終的に、まだ型にある間に、いまやその所望の形状であるパーツは、水のような冷却媒体を用いて室温付近までそれを冷却するためにクエンチングされる。この場合もまた、冷却媒体は、チューブブランクにおける適切な開口部にて導入および除去されてもよい。クエンチング工程は、今や完成したレールとなったチューブブランクのマイクロ結晶構造を変更する。したがって、鋼のパーツの場合、変形温度におけるチューブブランクまたはレール材料のオーステナイト相は、クエンチングの最中に材料の硬化したマルテンサイト相へと変換される。我々は、たとえ溶接ワイヤ由来の材料自体が同じ構造のものではなくても、この熱機械的処理後、レールがその全長に沿って比較的均一であり、かつ、望ましい最終の結晶マイクロ構造を有することを発見した。この点に関し、溶接部分(元は熱影響ゾーンまたはHAZ)とパーツの残部との間には、最小限の差しか存在せず、したがって溶接部において硬度および強度の最小限の喪失しか存在しない。均質化されたマイクロ構造および硬度(母材、熱影響ゾーン13および溶接部11全体の強度の指標である)は、異なる壁厚を有する溶接されたチューブが、変化する壁厚を有する単一のチューブの代わりに用いられることを可能にする。このことは、材料および/または処理におけるコストを有意に節約する。それはまた、突き合わせ溶接された接合部の特定の問題を回避する。
図示されている実施形態には特定のコンポーネントの配置構成が開示されているが、その他の配置構成が本発明から利益を得るであろうことは理解されるべきである。特定のステップの順番が示され、かつ、記載されているが、そうでないことが示されていなければステップは任意の順番で別々に、または、組み合わされて実行されてもよく、かつ、まだ本発明から利益を得るであろうことが理解されるべきである。
異なる例が図面に示されている特定のコンポーネントを有するが、本発明の実施形態はそれらの特定の組み合わせに限定されない。例のうちの一つからのコンポーネントまたは特徴のいくつかを、例のうちの別のものからの特徴またはコンポーネントと組み合わせて用いることが可能である。
例示的な実施形態が開示されてきたが、当業者であれば、特定の修正が請求の範囲内に入ることを理解するであろう。そのため、以下の請求の範囲は、それらの真実の範囲および内容を決定するために検討されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、構造的レールの分野に属し、とりわけ、レールであって、それに対して自動車のピラーまたはその他の車両コンポーネントが設置されてもよい前記レールの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
特定の応用例(とりわけ、自動車の分野における)は、構造的要素として金属チューブを必要とする。かかる応用例は、レールであって、それに対して自動車のA、BおよびCピラーが設置されてもよい前記レールである。自動車が曝される異なる力(例えば、衝突の最中に)を考慮すると、レールに取り付けられてもよいコンポーネントまたは構造の特徴の結果として、レールの特定の部分が、レールのその他の部分とは異なる強度要件を有するであろう。例えば、典型的な車両用レールでは、AピラーとBピラーとの間の領域は、典型的にはレールのその他のセクションより大きい強度を必要とするであろう。レールを製造するときには、単一の金属チューブが用いられてもよいが、一様にいっそう厚いチューブは車両の重量を増加させるであろうし、一方で一様にいっそう薄いチューブは必要とされる場合に十分な強度を提供しないであろう。さらに、レールに沿う異なる強度要件を満たすために、単一のチューブであって、その長さに沿って変化する壁厚の部分を有する前記の単一のチューブを作成することは、比較的高価である。異なる壁厚を有するが同じ外径を有する二つ(以上)のチューブを溶接することは、安価であろう。このことは、製造が比較的安価である異なる壁厚のチューブセクションを用いてレールを提供し、該レールは、いっそう厚い材料を必要な場合にのみ有することによって重量および費用を削減するであろう。
【0003】
米国特許第5,333,775号明細書(Bruggemannら)には、変化する壁厚を有する直線状のチューブを端と端とで溶接することによって、変化する壁厚を有するパーツを構築する方法が記載されている。特に、チューブブランクを形成するための鋼チューブのレーザー突き合わせ溶接が記載されている。通常、共通の外径を有するチューブが接合される。異なる外径のチューブが接合されるべきであれば、相対するチューブの外径と対応するために、一方または両方のチューブの端部がフレア加工またはテーパー加工される。その後、今や共通の外径を有するチューブの端部が突き合わせ接合される。直線状のチューブの溶接に続いて、外面上にある余分な溶接金属が、その面を滑らかにしてさらなる処理のためにブランクを調製するために除去される。その後、溶接されたチューブブランクは、従来の手段を用いてその長手方向軸に沿ってU字形(ダイであって、その中にブランクが配置される前記ダイの形状に対応する)へと曲げられる。その後、U字形パーツの液圧成形が起こる。液圧成形は典型的には、室温のような比較的低温にて9000p.s.i.の範囲の高い液圧下で起こる。液圧成形のために用いられる金属は、加熱を伴わずにそのように成形されるように、室温にて十分に延性があるか、または、成形可能でなければならない。
【0004】
突き合わせ接合溶接は、特定のデメリットを呈する。重複なしで、溶接部におけるあらゆる不連続が、溶接部における強度の喪失、潜在的な腐食および破砕の可能性をもたらすであろう。したがって、厚さは異なるが外径が共通するチューブを接合し、MAG溶接などを用いて該チューブを重ね合わせていっそう強く安全な接合部を作り出すことは有利であろう。しかしながら、重ね合わせたチューブを溶接することの問題が、典型的には溶接部の領域における熱影響ゾーン(HAZ)の形成である。HAZは、溶接部の両側においてチューブの中へと幾分延びる。HAZにおけるマイクロ構造および特性は、母材金属のものとは異なる。粒子成長およびマルテンサイト鋼の場合の焼き戻しのような熱活性化軟化現象が、HAZにおける材料の低い機械的特性の要因である。HAZにおける金属の変化した機械的特性は通常望ましくなく、かつ、HAZにおける材料は通常、溶接後には母材金属より強度が低い。
【発明の概要】
【0005】
我々は、先行技術における特定の制限を回避しながら、異なる壁厚であるが同じ外径の二つ以上の金属チューブを溶接する方法を発明した。とりわけ、当該方法は、個別のチューブ自体の部分に増大した壁厚を作り出すことを必要とすることなく、多数の、典型的にはロール成形されたチューブ(個別の均一な壁厚を有する)の使用を可能にする。異なる壁厚の二つのチューブを溶接する場合、厚い方のチューブは、その厚い壁のためにいっそう多くの材料を必要とするので、単位長さ当たりの価格が高い。このことは、溶接された構造(ここでは、チューブブランクという)が、強度が必要とされる領域では厚い壁のチューブの大きい強度を有し、かつ、強度があまり必要でない領域では薄い壁のチューブの低価格および軽量を有することを可能にする。さらに、溶接の効果についての特定のデメリットが克服される。当該方法に採用される金属チューブは、典型的には鋼からなる。これらのチューブを接合部において溶接することは、熱影響ゾーンまたはHAZとして知られる溶接部に隣接する微結晶構造を作り出し、これは、チューブブランクの材料の残部の微結晶構造とは異なる。溶接されたチューブブランクをオーブンにて予め加熱することによって、チューブブランク全体がオーステナイト微結晶構造を呈する。その後、溶接されたチューブブランクは、加圧された気体状媒体を用いて型にてその最終形状へとブロー成形され、最終的に液状冷却媒体を用いてクエンチングされる。クエンチングに続いて、完成したレール全体は、溶接ワイヤ由来の材料を除いては、今や所望のマルテンサイト微結晶構造を有する。結果物は、車両への搭載に適した完成した車両用レールである。
【0006】
本発明の主たる態様では、厚さの異なる溶接された鋼の車両用レールを調製する方法であって、当該方法は:(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを形成するステップ;(b)第一の外径、第二の内径および第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを形成するステップ;(c)第一のチューブの第一の端部を第二のチューブの第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングするステップ;(d)第一のチューブのスエージングされた第一の端部を第二のチューブの端部の中へと挿入して接合部を形成するステップ;(e)第一のチューブおよび第二のチューブを溶接して接合部において溶接部を形成して、溶接部の領域に金属強度がいっそう低い熱影響ゾーンを有するチューブブランクを形成するステップ;(f)チューブブランクを予め加熱してチューブブランクの長さに沿って共通の結晶マイクロ構造を作り出すステップ;(g)チューブブランクを、内側の成形壁を有するブロー成形ツールの中へと導入するステップ;(h)加圧された媒体をチューブブランクの内側キャビティの中に注入することにより成形ツールの内側の成形壁に対してチューブブランクを拡張させることによって、上昇した温度にてチューブブランクを成形するステップ;ならびに(i)成形ツールおよびチューブブランクを通して加圧された媒体を冷却媒体と置換することによってチューブブランクをクエンチングして、チューブブランクに対する急冷効果を得、かつ、溶接部の至るところで本質的に均一な金属強度を有する完成した車両用レールを作り出すステップを有する。
【0007】
本発明のさらなる態様では、チューブブランクは、チューブブランクの内側を循環する加圧された媒体および冷却媒体を各々給送ならびに除去するための少なくとも二つの開口部を含む。
【0008】
本発明のさらなる態様では、加圧された媒体は気体状であり、かつ、冷却媒体は液状である。
【0009】
本発明のさらなる態様では、加圧された気体状の媒体は空気および窒素から選択され、かつ、冷却媒体は水である。
【0010】
本発明のさらなる態様では、溶接はMAG溶接を有する。
【0011】
本発明のさらなる態様では、チューブブランクの材料は鋼であり、該鋼は、予熱の後および成形の最中はオーステナイト結晶マイクロ構造を有し、かつ、クエンチングの後はマルテンサイト結晶マイクロ構造を有する。
【0012】
本発明のさらなる態様では、第二の壁厚は第一の壁厚より大きい。
【0013】
本発明のさらなる態様では、第一の壁厚は第二の壁厚より大きい。
【0014】
本発明のさらなる態様では、ブロー成形された厚さの異なる車両用の鋼レールが:(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを有し;(b)第一の外径、第二の内径および第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを有し;(c)第一のチューブの第一の端部は、第二のチューブの第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングされ;(d)第一のチューブのスエージングされた第一の端部は、第二のチューブの端部の中へと挿入されて接合部を形成し;(e)第一のチューブおよび第二のチューブは、接合部にて溶接されてチューブブランクを形成し;(f)チューブブランクは、予熱、ブロー成形およびクエンチングを有する熱機械的処理に曝されていた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は
、車両のA、BおよびCピラー
に取り付けられた車両用レールの立面図である。
【
図2】
図2は、いっそう大きい強度を必要とするゾーン、および、いっそう小さい強度を必要とするゾーンを示す車両用レールの立面図である。
【
図3A】
図3Aは、異なる壁厚を有するチューブで形成された車両用レールの立面図である。
【
図3B】
図3Bは、壁厚は変化するが外径は均一であるチューブの接合部を示す断面立面図である。
【
図4】
図4は、予熱およびブロー成形の準備ができているチューブブランクの立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
図1には、典型的な車両用レール構造(この場合、カントレール)が示されている。カントレールが描かれているが、本発明はその他の適切なレールに適用可能である。
【0017】
図1は、車両のCピラー2、Bピラー4およびAピラー6のそれぞれに接続されたレールを示している。
図2にも示されているゾーンXにおけるレール部分は、ゾーンYにおけるレール部分より低い強度および剛性を必要とする。このことは、ゾーンXにおいて軽量のチューブを用いて、レールの重量および材料コストを下げることを助け、かつ、車両全体の軽量化に貢献することによって達成され得る。対照的に、ゾーンYにおけるレール部分は、好ましくはいっそう高い強度および剛性のものであって、側方衝撃衝突強度を提供する。このことは、ゾーンYにおいて重い金属チューブを用いることによって達成され得る。図示されている実施例はゾーンXにおいて薄い壁の方のチューブを描いており、かつ、ゾーンYにおいては厚い壁の方のチューブを描いているが、これらは逆転してもよい。
【0018】
例示的な実施形態では、ゾーンXにおける第一のチューブ1は壁厚が1.8mmであり、ゾーンYにおける第二のチューブ3は壁厚が2.2mmである。
図3Bに最もよく示されているように、第一のチューブ1は、第一の外径A、内径Bおよび第一の壁厚Cを有する。第二のチューブ3は、同じ第一の外径A、第二の内径Fおよび第一の壁厚Cより大きい第二の壁厚Dを有する。
【0019】
最大の強度および最小の処理で重なり合う接合部を作り出すために、薄い方の第一のチューブ1の第一の端部5が、その外径を第二の外径E(第二のチューブ3の第二の内径Fよりわずかに小さい)まで小さくするためにスエージングされ、したがって、スエージングされた第一の端部5が、最小限の空隙で、ほぼスエージングされた部分の程度で厚い方の第二のチューブ3の端部7の中へとスライドすることを可能にする。この重なり合った領域は、接合部9を形成する。第一のチューブ1および第二のチューブ3はその後、典型的にはMAG溶接または同様の方法を用いて、溶接部11において周方向に溶接されて強い重なり合った接合部を作り出す。しかしながら、溶接工程は、接合部9の近傍にいっそう低い強度の熱影響ゾーンまたはHAZ13を作り出す。溶接後、接合されたチューブ1,3を、さらなる処理のための準備ができたチューブブランク15という。我々は、チューブブランク15をその最終形状へとさらに処理することによって、HAZ13が事実上削除され得ることを発見した。
【0020】
注目されるように、図示されている実施形態は薄い方のチューブの端部がスエージングされ、かつ、厚い方のチューブの端部の中へと挿入されることを提供するが、このことは、厚い方のチューブの端部がスエージングされ、かつ、薄い方のチューブの端部の中へと挿入される状態で逆転され得る。
【0021】
溶接後、チューブブランク15は、成形前に典型的にはオーブンまたは炉にて加熱される。この予熱工程は、上昇した温度における改善された成形性を有する全パーツのほぼ均一な結晶マイクロ構造を作り出す。均質化工程(加熱および「均熱」段階を有する)の最初の二段階と同様であるこの加熱処理の最中、材料は十分に加熱され(鋼の場合、オーステナイト化温度まで)、かつ、その後で一定期間均質化温度にて保持される。完全な均質化のための「均熱」時間は本質的に長いので、この加熱処理は通常、材料の部分的な均質化をもたらす。チューブブランクは、この予熱後、溶接されていない金属チューブの初期の結晶マイクロ構造と完成したレールの最終のマルテンサイト結晶マイクロ構造との中間である、オーステナイト結晶マイクロ構造を有する。この段階では、予熱後、HAZ13およびチューブブランク15の残部は、ほぼ同じ結晶マイクロ構造を有するが、適切な熱機械的工程(典型的には熱変形)および後に続くクエンチングによって得られ得る完成したレールの最終の所望される結晶マイクロ構造ではない。
【0022】
次に、予め加熱されたチューブブランクは、型の中に直接配置され、かつ、ブロー成形の性質の加圧気体工程が実行されて、本技術分野で知られているように、チューブブランクの直径が拡張し、かつ、その長さに沿ってその形状が適宜変更される。例えば、円形のチューブブランクは、所望されるように、A、BおよびCピラーがそれに溶接されなければならない領域において、または、その全長に沿って、長方形にされ得る。それは、その長さに沿って変化する外周を有していてもよい。最終レールの特定の形状は、確定的ではない。
【0023】
任意の適切な方法が採用されてもよいが、例示的なブロー成形方法は概して米国特許第6,261,392号明細書(Sundgrenら)に記載されている。この方法は、高圧下で圧縮された空気または窒素のような気体(液体ではない)を、チューブブランクの内側へと注入することを伴い、該気体は、加熱されたチューブブランクのパーツを成形ツールの内側プロファイルへと拡張させて、パーツを成形する。典型的には、予熱処理は、チューブブランクの温度がブロー成形工程の開始時においてオーステナイト温度範囲にあるように設計される。したがって、これは熱変形工程と考えられてもよい。しかしながら、典型的には1220~1500p.s.i.の範囲であり、かつ、最大8700p.s.i.である必要とされる圧力は、加熱されていないチューブを液圧成形するのに必要とされるものより相当低い。チューブブランクは典型的には両端において開いているので、加圧された気体はチューブブランクの両端において導入または除去されてもよい。代替的には、チューブブランクの端部以外に開口部が提供されてもよい。
【0024】
最終的に、まだ型にある間に、いまやその所望の形状であるパーツは、水のような冷却媒体を用いて室温付近までそれを冷却するためにクエンチングされる。この場合もまた、冷却媒体は、チューブブランクにおける適切な開口部にて導入および除去されてもよい。クエンチング工程は、今や完成したレールとなったチューブブランクのマイクロ結晶構造を変更する。したがって、鋼のパーツの場合、変形温度におけるチューブブランクまたはレール材料のオーステナイト相は、クエンチングの最中に材料の硬化したマルテンサイト相へと変換される。我々は、たとえ溶接ワイヤ由来の材料自体が同じ構造のものではなくても、この熱機械的処理後、レールがその全長に沿って比較的均一であり、かつ、望ましい最終の結晶マイクロ構造を有することを発見した。この点に関し、溶接部分(元は熱影響ゾーンまたはHAZ)とパーツの残部との間には、最小限の差しか存在せず、したがって溶接部において硬度および強度の最小限の喪失しか存在しない。均質化されたマイクロ構造および硬度(母材、熱影響ゾーン13および溶接部11全体の強度の指標である)は、異なる壁厚を有する溶接されたチューブが、変化する壁厚を有する単一のチューブの代わりに用いられることを可能にする。このことは、材料および/または処理におけるコストを有意に節約する。それはまた、突き合わせ溶接された接合部の特定の問題を回避する。
【0025】
図示されている実施形態には特定のコンポーネントの配置構成が開示されているが、その他の配置構成が本発明から利益を得るであろうことは理解されるべきである。特定のステップの順番が示され、かつ、記載されているが、そうでないことが示されていなければステップは任意の順番で別々に、または、組み合わされて実行されてもよく、かつ、まだ本発明から利益を得るであろうことが理解されるべきである。
【0026】
異なる例が図面に示されている特定のコンポーネントを有するが、本発明の実施形態はそれらの特定の組み合わせに限定されない。例のうちの一つからのコンポーネントまたは特徴のいくつかを、例のうちの別のものからの特徴またはコンポーネントと組み合わせて用いることが可能である。
【0027】
例示的な実施形態が開示されてきたが、当業者であれば、特定の修正が請求の範囲内に入ることを理解するであろう。そのため、以下の請求の範囲は、それらの真実の範囲および内容を決定するために検討されるべきである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼の
チューブ状構造であって:(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを有し;(b)前記の第一の外径、第二の内径および前記の第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを有し;(c)前記第一のチューブの第一の端部が前記の第二のチューブの前記の第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングされており;(d)前記の第一のチューブの前記のスエージングされた第一の端部は、前記の第二のチューブの端部の中へと挿入され、かつ、接合部を形成しており;(e)前記の第一のチューブおよび前記の第二のチューブは、前記の接合部において溶接されてチューブブランクを形成しており;(f)前記チューブブランクは、予熱、ブロー成形およびクエンチングを有する熱機械的処理に曝されていた、
前記のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼の
チューブ状構造。
【請求項2】
前記の第二の壁厚が前記の第一の壁厚より大きい、請求項1に記載のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項3】
前記の第一の壁厚が前記の第二の壁厚より大きい、請求項1に記載のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項4】
当該チューブ状構造がレールである、請求項1~3のいずれか一項に記載のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項5】
方法であって、
(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを形成すること;
(b)前記の第一の外径、第二の内径、前記の第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを形成すること;
(c)前記の第一のチューブの第一の端部を前記の第二のチューブの前記の第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングすること;
(d)前記の第一のチューブの前記のスエージングされた第一の端部を前記の第二のチューブの端部の中へと挿入して接合部を形成すること;
(e)前記の第一のチューブおよび前記の第二のチューブを溶接して前記接合部において溶接部を形成して、前記溶接部の領域にいっそう低い金属強度の熱影響ゾーンを有するチューブブランクを形成すること;
(f)前記チューブブランクを予め加熱して前記チューブブランクの長さに沿って共通の結晶マイクロ構造を作り出すこと;
(g)前記チューブブランクを内側の成形壁を有するブロー成形ツールの中へと導入すること;
(h)加圧された媒体を前記チューブブランクの内側キャビティの中へと注入することにより前記成形ツールの前記の内側の成形壁に対して前記チューブブランクを拡張させることによって上昇した温度にて前記チューブブランクを成形すること;ならびに、
(i)前記成形ツールおよび前記チューブブランクを通して前記の加圧された媒体を冷却媒体と置換することによって前記チューブブランクをクエンチングして、前記チューブブランクに対する急冷効果を得、かつ、前記溶接部の至るところで本質的に均一な材料強度を有する完成した車両用の異なる厚さの溶接されたチューブ状構造を作り出すことを有する、
前記方法。
【請求項6】
前記チューブブランクが、前記チューブブランクの内側を通って循環する前記の加圧された加熱媒体および前記冷却媒体を各々給送ならびに除去するための少なくとも二つの開口部を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の加圧された加熱媒体が気体状であり、かつ、前記冷却媒体が液体状である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記の加圧された気体状の加熱媒体が空気および窒素から選択され、かつ、前記冷却媒体が水である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記の溶接することがMAG溶接を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記チューブブランクの材料が鋼であり、該鋼は、予熱後および成形の最中はオーステナイト結晶マイクロ構造を有し、かつ、クエンチング後はマルテンサイト結晶マイクロ構造を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記の第二の壁厚が前記の第一の壁厚より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記の第一の壁厚が前記の第二の壁厚より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記チューブ状構造がレールである、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2022-05-25
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造であって:
(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを有し;
(b)前記の第一の外径、第二の内径および前記の第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを有し;
(c)前記第一のチューブの第一の端部が前記の第二のチューブの前記の第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングされており;
(d)前記の第一のチューブの前記のスエージングされた第一の端部は、前記の第二のチューブの端部の中へと挿入され、かつ、接合部を形成しており;
(e)前記の第一のチューブおよび前記の第二のチューブは、
MAG溶接または同様の工程を用いて前記の接合部において溶接されてチューブブランクを形成しており;
(f)前記チューブブランクは、予熱、ブロー成形およびクエンチングを有する熱機械的処理に曝されていた、
前記のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項2】
前記の第二の壁厚が前記の第一の壁厚より大きい、請求項1に記載のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項3】
前記の第一の壁厚が前記の第二の壁厚より大きい、請求項1に記載のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項4】
当該チューブ状構造がレールである、請求項1~3のいずれか一項に記載のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項5】
方法であって、
(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを形成すること;
(b)前記の第一の外径、第二の内径、前記の第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを形成すること;
(c)前記の第一のチューブの第一の端部を前記の第二のチューブの前記の第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングすること;
(d)前記の第一のチューブの前記のスエージングされた第一の端部を前記の第二のチューブの端部の中へと挿入して接合部を形成すること;
(e)
MAG溶接または同様の工程を用いて前記の第一のチューブおよび前記の第二のチューブを溶接して前記接合部において溶接部を形成して、前記溶接部の領域にいっそう低い金属強度の熱影響ゾーンを有するチューブブランクを形成すること;
(f)前記チューブブランクを予め加熱して前記チューブブランクの長さに沿って共通の結晶マイクロ構造を作り出すこと;
(g)前記チューブブランクを内側の成形壁を有するブロー成形ツールの中へと導入すること;
(h)加圧された媒体を前記チューブブランクの内側キャビティの中へと注入することにより前記成形ツールの前記の内側の成形壁に対して前記チューブブランクを拡張させることによって上昇した温度にて前記チューブブランクを成形すること;ならびに、
(i)前記成形ツールおよび前記チューブブランクを通して前記の加圧された媒体を冷却媒体と置換することによって前記チューブブランクをクエンチングして、前記チューブブランクに対する急冷効果を得、かつ、前記溶接部の至るところで本質的に均一な材料強度を有する完成した車両用の異なる厚さの溶接されたチューブ状構造を作り出すことを有する、
前記方法。
【請求項6】
前記チューブブランクが、前記チューブブランクの内側を通って循環する前記の加圧された加熱媒体および前記冷却媒体を各々給送ならびに除去するための少なくとも二つの開口部を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の加圧された加熱媒体が気体状であり、かつ、前記冷却媒体が液体状である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記の加圧された気体状の加熱媒体が空気および窒素から選択され、かつ、前記冷却媒体が水である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記の溶接することがMAG溶接を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記チューブブランクの材料が鋼であり、該鋼は、予熱後および成形の最中はオーステナイト結晶マイクロ構造を有し、かつ、クエンチング後はマルテンサイト結晶マイクロ構造を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記の第二の壁厚が前記の第一の壁厚より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記の第一の壁厚が前記の第二の壁厚より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記チューブ状構造がレールである、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造であって:
(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを有し;
(b)前記の第一の外径、第二の内径および前記の第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを有し;
(c)前記第一のチューブの第一の端部が前記の第二のチューブの前記の第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングされており;
(d)前記の第一のチューブの前記のスエージングされた第一の端部は、前記の第二のチューブの端部の中へと挿入され、かつ、接合部を形成しており;
(e)前記の第一のチューブおよび前記の第二のチューブは、MAG溶接または同様の工程を用いて前記の接合部において溶接されてチューブブランクを形成しており;
(f)前記チューブブランクは、予熱、ブロー成形およびクエンチングを有する熱機械的処理に曝されていた、
前記のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項2】
前記の第二の壁厚が前記の第一の壁厚より大きい、請求項1に記載のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項3】
前記の第一の壁厚が前記の第二の壁厚より大きい、請求項1に記載のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項4】
当該チューブ状構造がレールである、請求項1~3のいずれか一項に記載のブロー成形された異なる厚さの溶接された車両用の鋼のチューブ状構造。
【請求項5】
方法であって、
(a)第一の外径、内径および第一の壁厚を有する第一のチューブを形成すること;
(b)前記の第一の外径、第二の内径、前記の第一の壁厚とは異なる第二の壁厚を有する第二のチューブを形成すること;
(c)前記の第一のチューブの第一の端部を前記の第二のチューブの前記の第二の内径より小さい第二の外径へとスエージングすること;
(d)前記の第一のチューブの前記のスエージングされた第一の端部を前記の第二のチューブの端部の中へと挿入して接合部を形成すること;
(e)MAG溶接または同様の工程を用いて前記の第一のチューブおよび前記の第二のチューブを溶接して前記接合部において溶接部を形成して、前記溶接部の領域にいっそう低い金属強度の熱影響ゾーンを有するチューブブランクを形成すること;
(f)前記チューブブランクを予め加熱して前記チューブブランクの長さに沿って共通の結晶マイクロ構造を作り出すこと;
(g)前記チューブブランクを内側の成形壁を有するブロー成形ツールの中へと導入すること;
(h)加圧された媒体を前記チューブブランクの内側キャビティの中へと注入することにより前記成形ツールの前記の内側の成形壁に対して前記チューブブランクを拡張させることによって上昇した温度にて前記チューブブランクを成形すること;ならびに、
(i)前記成形ツールおよび前記チューブブランクを通して前記の加圧された媒体を冷却媒体と置換することによって前記チューブブランクをクエンチングして、前記チューブブランクに対する急冷効果を得、かつ、前記溶接部の至るところで本質的に均一な材料強度を有する完成した車両用の異なる厚さの溶接されたチューブ状構造を作り出すことを有する、
前記方法。
【請求項6】
前記チューブブランクが、前記チューブブランクの内側を通って循環する前記の加圧された加熱媒体および前記冷却媒体を各々給送ならびに除去するための少なくとも二つの開口部を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の加圧された加熱媒体が気体状であり、かつ、前記冷却媒体が液体状である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記の加圧された気体状の加熱媒体が空気および窒素から選択され、かつ、前記冷却媒体が水である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記チューブブランクの材料が鋼であり、該鋼は、予熱後および成形の最中はオーステナイト結晶マイクロ構造を有し、かつ、クエンチング後はマルテンサイト結晶マイクロ構造を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記の第二の壁厚が前記の第一の壁厚より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記の第一の壁厚が前記の第二の壁厚より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記チューブ状構造がレールである、請求項5~11のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】