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特表2023-517902複合部品を形成するために炭素撚糸を含む強化材料、その方法および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】複合部品を形成するために炭素撚糸を含む強化材料、その方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/06 20060101AFI20230420BHJP
   D02G 3/16 20060101ALI20230420BHJP
   B32B 5/22 20060101ALI20230420BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
C08J5/06
D02G3/16
B32B5/22
B32B5/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554187
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 FR2021050419
(87)【国際公開番号】W WO2021181050
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】2002411
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515306965
【氏名又は名称】ヘクセル ランフォルセマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアール、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ベロ―、ジャン - マルク
(72)【発明者】
【氏名】ティール、ジャン - ベノワ
(72)【発明者】
【氏名】フォレステロ、フランソワ
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4L036
【Fターム(参考)】
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB22
4F072AD44
4F072AG02
4F072AH04
4F072AH21
4F072AL02
4F100AD11B
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK53
4F100AL05A
4F100AL05C
4F100BA03
4F100DG07B
4F100DG15A
4F100DG15C
4F100DH02
4F100EH36
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JA13C
4F100JB13A
4F100JB13C
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JK01B
4F100JL12A
4F100JL12C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4L036MA04
4L036MA37
4L036PA21
4L036PA26
4L036UA07
4L036UA21
(57)【要約】
本発明は、1本以上の炭素強化糸(3)で形成され、各面で不織布材料の中から選択されるポリマー繊維(4、5)のベールが結合した一方向強化ウェブ(2)からなる強化材料(1)に関し、強化材料のポリマー部分は、強化材料(1)の総重量の0.5%~10%、好ましくは総重量の2%~6%を占め、一方向強化ウェブ(2)は、個々に撚られた1本または一連の強化糸(3)を含み、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本以上の炭素強化糸(3)で形成され、各面で不織布材料であるポリマー繊維(4、5)の層と結合する一方向強化ウェブ(2)からなる強化材料(1)であって、前記強化材料のポリマー部分が、その総重量の0.5%~10%、好ましくはその総重量の2~6%を占め、前記一方向強化ウェブ(2)が、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有する1本または一連の個々に撚られた強化糸(3)を含むことを特徴とする、強化材料(1)。
【請求項2】
前記一方向強化ウェブ(2)が、複数の強化糸(3)から形成され、少なくとも5本おきの強化糸、好ましくは少なくとも2本おきまたは3本おきの強化糸、好ましくはすべての強化糸が、個々に、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6~12ターン/mの撚りで撚られていることを特徴とする、請求項1に記載の強化材料(1)。
【請求項3】
前記一方向強化ウェブ(2)が、126g/m~280g/m、特に126~210g/mの範囲内の目付を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の強化材料(1)。
【請求項4】
前記一方向強化ウェブ(2)が、3~24K、好ましくは6~12Kの力価を有する1本以上の炭素強化糸(3)で形成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の強化材料(1)。
【請求項5】
前記一方向強化ウェブ(2)を形成するすべての前記炭素強化糸(3)が、個々に撚られて、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有し、前記一方向強化ウェブ(2)が、こうして少なくとも1本のS撚り強化糸および少なくとも1本のZ撚り強化糸で撚られた少なくとも3本の炭素強化糸(3)を含むことを特徴とし、
- 前記一方向強化ウェブ(2)を形成する撚り炭素強化糸(3)の総数が、偶数である場合、平面Δの一方の側の撚り炭素強化S撚糸(3)の数および前記平面Δの他方の側の撚り炭素強化S撚糸(3)の数が、それぞれ独立して、範囲{[(糸の総数)/4]-35%;[(糸の総数)/4]+35%}の整数であり、前記範囲を定義する式が整数となるように、前記範囲の各端点が最も近い整数に丸められ(四捨五入され)、他の撚り炭素強化糸(3)が、Z撚糸であり;
- 前記一方向強化ウェブ(2)を形成する撚り炭素強化糸(3)の総数が、奇数である場合、前記平面Δの一方の側の撚り炭素強化S撚糸(3)の数および前記平面Δの他方の側の撚り炭素強化S撚糸(3)の数が、2つの整数またはその整数プラス0.5のいずれかであり、それぞれ独立して、前記範囲{[(糸の総数)/4]-35%;[(糸の総数)/4]+35%}にあり、前記範囲を定義する式が整数または整数プラス0.5となるように、前記範囲の各端点が最も近い整数または整数プラス0.5に丸められ、他の炭素強化撚糸(3)が、Z撚糸であり;
前記平面Δが、前記一方向ウェブ(2)の全体的な延在方向に平行な平面であり、前記一方向ウェブ(2)をその表面に対して垂直に2等分する、請求項1~4のいずれか一項に記載の強化材料(1)。
【請求項6】
7mm超、好ましくは12mm超、好ましくは12mm~51mmの範囲内の幅、および好ましくは2m~5000m、好ましくは100m~2000mの長さを有することを特徴とする、請求項5に記載の強化材料(1)。
【請求項7】
前記ポリマー繊維層(4、5)が、熱可塑性を有し、特に、熱可塑性ポリマー、部分的に架橋された熱可塑性ポリマー、このようなポリマーの混合物、または熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーの混合物からなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の強化材料(1)。
【請求項8】
前記ポリマー繊維層(4、5)がホットタック特性を有し、前記一方向強化ウェブとの結合が、これらのホットタック特性により達成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の強化材料(1)。
【請求項9】
前記ポリマー繊維層(4、5)が、同一の不織布材料であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の強化材料(1)。
【請求項10】
前記不織布材料が、0.2g/m~20g/mの範囲内の目付および/または0.5ミクロン~50ミクロン、好ましくは3ミクロン~35ミクロンの厚みを有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の強化材料(1)。
【請求項11】
穿孔されておらず、縫われておらず、編まれておらず、織られていないことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の強化材料(1)。
【請求項12】
以下の連続工程:
a1)個々に撚られ、3ターン/m~15ターン/mの撚りを有する1本以上の強化糸(3)から形成された一方向強化ウェブ(2)を提供する工程と、
a2)不織布材料である少なくとも2つのポリマー繊維の層(4、5)を提供する工程と、
a3)前記ポリマー繊維の各層を前記一方向強化ウェブの各面と結合する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の強化材料(1)を調製する方法。
【請求項13】
工程a1)の上流に、強化糸または一連の糸に3ターン/m~15ターン/mの撚りを加えることを含む、前記一方向強化ウェブ(2)の製造のための工程を含み、前記撚りが、各糸に個別に加えられることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記一方向強化ウェブ(2)が、複数の強化糸(3)から形成されること、ならびに前記方法が、工程a1)の上流に、i)一連の強化糸に3~15ターン/mの撚りを加えることであって、前記撚りが、各糸に個別に加えられることと、ii)それによって得られた撚糸を、任意選択で他の強化糸と整列させ、特に請求項5で規定されるように、一方向強化ウェブを形成するよう前記糸を並置することと、を含むことを特徴とする、請求項12または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
不織布材料である前記ポリマー繊維の層(4、5)が、ホットタック特性を有し、工程a3)の前記結合が、前記ポリマー繊維の各層を前記一方向強化ウェブの各面に適用することによって得られ、前記適用が、前記ポリマー繊維の加熱を伴うか、またはそれに続いて行われ、前記ポリマー繊維を軟化または溶融させ、続いて冷却することを特徴とする、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載される材料のうちの1つ以上から少なくとも部分的になるプリフォーム。
【請求項17】
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物が、前記強化材料、請求項1~11のいずれか一項に記載の複数の強化材料のスタック、または請求項16に記載のプリフォーム内に射出または注入されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの強化材料(1)から複合部品を製造するための方法。
【請求項18】
前記樹脂の前記注入または射出の前に、請求項1~11のいずれか一項に記載の複数の強化材料(1)を含むプライまたはスタックを形成する工程を含み、その間、前記強化材料(1)が、所望のプライまたはスタックを得るためにレイダウンされる際に、その位置決めを確実にするために、ガイド部材内で搬送され、連続的に循環することを特徴とする、請求項17に記載の複合部品の製造方法。
【請求項19】
前記樹脂の前記注入または射出の前に、好ましくは前記の1つまたは複数の強化材料(1)中に存在する前記不織布材料(4、5)のホットタック特性を利用する適用または成形を含むことを特徴とする、請求項17または請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物と結合したプリフォームまたは複合部品を製造するための、請求項1~11のいずれか一項に記載される1つ以上の強化材料(1)の使用。
【請求項21】
熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂が、射出または注入されることを特徴とする、請求項17~19のいずれか一項に記載の製造方法、または請求項20に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部品を形成するのに適した強化材料の技術分野に関する。より具体的には、本発明は、射出または注入された樹脂と結合して複合部品を製造するのに適した材料に関し、該材料は、1つ以上の個々に撚られた強化糸を用いて少なくとも部分的に作製された一方向ウェブを含み、複合部品の製造中に射出または注入された樹脂の拡散を確実にするのに適した撚りを有する。
【背景技術】
【0002】
複合部品または複合品、すなわち、第1に、特に一方向繊維ウェブ型の1つ以上の繊維強化材、および第2に、マトリックス(これは、通常、主に熱硬化型であり、1つ以上の熱可塑性物質を含むことができる。)を含む複合部品または物品の製造は、例えば、いわゆる直接法またはLCM(液体複合成形)法によって製造することができる。直接法は、1つ以上の繊維強化材が、「乾燥」状態で(すなわち、最終マトリックスを用いずに)使用されるという事実によって定義され、樹脂またはマトリックスは、例えば、繊維強化材を含む金型への射出によって(樹脂トランスファー成形(RTM)法)、繊維強化材の厚みを介した注入によって(液体樹脂注入(LRI)法または樹脂フィルム注入(RFI)法)、またはフォーム(form)に連続的に適用されるローラもしくはブラシによる繊維強化材の各層のそれぞれへの手動コーティング/含浸によって、個別に製造される。複合部品を製造する範囲内で、特に航空宇宙分野では、大量生産速度が高くなり得る。例えば、単通路型航空機の製造のために、航空宇宙の顧客は、月に数十機の航空機を製造できることを望んでいる。注入または射出などの直接法は、この要件を満たすことができる特に関連する方法である。
【0003】
RTM、LRI、またはRFI法では、一般に、所望する完成品の形状の繊維プリフォームまたはスタックを最初に作製し、次いでそのプリフォームまたはスタックに樹脂を含浸させてマトリックスを形成することが必要である。樹脂は、温度圧力差によって射出または注入され、次いで、必要量の樹脂がすべてプリフォームに含まれた後、集合体をより高い温度にして、重合/架橋サイクルを行うことによって硬化させる。
【0004】
特に自動車、航空宇宙、または造船産業で使用される複合部品は、特に機械特性に関して非常に厳しい要件を受ける。燃料を節約し、部品のメンテナンスを容易にするために、航空宇宙産業は、多くの金属材料をより軽量の複合材料に置き換えてきた。
【0005】
部品の製造中に、特に射出または注入によって、繊維強化材とその後結合する樹脂は、例えばエポキシ型の熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂が繊維強化材の様々な層のスタックから作製されたプリフォームを通って正確に流動することを可能にするために、この樹脂は、通常、非常に流動性であり、注入/射出温度で、例えば50mPa.s~200mPa.s程度、またはさらに低い粘度を有する。この種の樹脂の主な欠点は、重合/架橋後の脆性であり、その結果、製造された複合部品の耐衝撃性が低くなる。
【0006】
この問題を解決するために、従来技術の文献では、多孔質熱可塑性ポリマーベール、特に熱可塑性繊維不織布材料(プライとも呼ばれる)と結合した繊維強化層、特に強化糸の一方向ウェブが提案されている。そのような解決策は、特に、特許出願または特許EP第1125728号、US第6,828,016号、WO第00/58083号、WO第2007/015706号、WO第2006/121961号、US第6,503,856号、US第2008/7435693号、WO第2010/046609号、WO第2010/061114号およびEP第2547816号、US第2008/0289743号、US第2007/8361262号、US第2011/9371604号、WO第2011/048340号に記載されている。この多孔質熱可塑性層、特に不織布型の多孔質熱可塑性層の追加により、構造体の耐衝撃性を特徴付けるために一般に使用される試験である衝撃後圧縮(CAI)試験で得られる複合部品の機械特性を改善することが可能になる。不織布材料の使用により、特に、航空宇宙分野に適合した機械的性能を得ることが可能になる。
【0007】
複合部品の十分な製造速度を達成するために、乾式強化材料を適用し、得られる乾式強化材料のスタックまたはプリフォームに樹脂を含浸または注入する時間は、可能な限り短くすべきである。
【0008】
さらに、航空学の分野では、飛行中および地上の航空機の電気的環境に関連する応力、特に雷の場合、この分野で高レベルの基準を満たす材料を提供することが必要になる。
【0009】
この目的のために、従来技術では以下の解決策が提案されている。
- 射出または注入される液体樹脂に対する乾式強化材料の透過性を高めること;
- 十分な横方向電気伝導率を提供すること。
【0010】
本出願人は、前述材料の微穿孔を提案し、これは、材料の横方向透過性を改善し(国際公開第2010/046609号)、その横方向凝集性を改善し、したがって自動適用によるその加工を容易にし(国際公開第2014/076433号)、製造された複合部品の横方向電気伝導率を改善する(国際公開第2013/160604号)。
【0011】
それにもかかわらず、工業的観点から、この技術は、微穿孔を作製するために特別な工具を必要とし、微穿孔材料のための、特に高目付を有する微穿孔材料のための複雑な適用操作をもたらす。
【0012】
さらに、出願人名義の出願である国際公開第2008/155504号には、少なくとも1本の撚糸が適用面に適用され、適用面上に少なくとも1つの湾曲ゾーンを有する軌道を有し、強化糸がポリマー結合剤によって適用面に結合される複合材料の製造方法が記載されている。この方法は、湾曲ゾーンへの糸の適用が必要なプリフォームまたは複雑な形状の部品を製造するために使用され、適用面に平行に測定された幅の両側の糸の最遠経路によって提示される長さの差を少なくとも埋め合わせるように選択された撚りを、適用の上流で、糸に適用することを提案する。
【0013】
国際公開第2013/133437号には、5ターン/m~50ターン/mの撚りを有して撚られ、重なり合わないように同じ方向に配列された50,000~60,000本のフィラメントを含む炭素糸から作製された非常に特殊な材料が記載され、RTM法に適した800g/m超で26,000g/m以下の目付を有する炭素シートが提供される。提案された材料は、風力タービンブレード、車両またはボートの設計を意図しているが、航空宇宙分野には適していない。
【0014】
したがって、本発明の目的は、射出または注入された樹脂と結合して複合部品を製造するための新しい強化材料を提供することを目指して、航空学の分野に適合した既知の先行技術に対する代替的な解決策を提案することであり、これらの新しい強化材料は、高い横方向透過性を保持しながら、改善された適用特性、適用後のオーバーランの減少、および改善された横方向導電率を有する。
【発明の概要】
【0015】
これに関連して、本発明は、1本以上の炭素強化糸から形成され、各面で不織布材料の中から選択されるポリマー繊維の層と結合した一方向強化ウェブからなる強化材料に関し、強化材料のポリマー部分は、その総重量の0.5%~10%、好ましくはその総重量の2%~6%を占め、前記一方向強化ウェブは、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有する1本または一連の個々に撚られた炭素強化糸を含む。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、一方向強化ウェブは、複数の炭素強化糸から形成され、少なくとも5本おきの強化糸、好ましくは少なくとも2本おきまたは3本おきの強化糸、好ましくはすべての強化糸は、個々に撚られて、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有する。
【0017】
特に、一方向強化ウェブは、126g/m~280g/mの範囲内、好ましくは126g/m~210g/mまたは210g/m~280g/mの範囲内の目付を有する。
【0018】
本発明の範囲内で、ポリマー繊維の層は、本質的に熱可塑性であり、特に、熱可塑性ポリマー、部分的に架橋された熱可塑性ポリマー、そのようなポリマーの混合物、または熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーの混合物からなる。
【0019】
ポリマー繊維層は、ホットタックを有する。また、一方向強化ウェブとの結合は、このホットタックによって達成される。
【0020】
ポリマー繊維の層は、同一の不織布材料であることが有利である。
【0021】
典型的には、該不織布材料は、0.2g/m~20g/mの範囲内の目付および/または0.5ミクロン~50ミクロン、好ましくは3ミクロン~35ミクロンの厚みを有する。
【0022】
本発明による強化材料は、穿孔されておらず、縫われておらず、編まれておらず、織られていないという特徴を有することが有利である。
【0023】
本発明の範囲内で、本発明による強化材料内に3t/m~15t/mの撚りを有する一連の強化糸を有するように、予め撚り操作を受けた炭素強化糸を使用することにより、以下が可能になる。
- 一方向ウェブの上面と下面の間の結合を得て、横方向の凝集(cohesion)を増大させること;
- 一方向ウェブの2つの面の間に、撚り強化糸によって、複合部品の製造中に射出または注入される樹脂の拡散連続性を作り出すこと。一方向ウェブの2つの面を接合する撚り強化糸のフィラメントの連続性は、横方向透過性に寄与する。さらに、撚り強化糸は、一方向ウェブの2つの面を接合する撚り強化糸のフィラメントに沿って延在するチャネルを作り出すことができる。したがって、一方向シートの一方の面から他方の面まで延在するフィラメントに続いて、撚り強化糸のレベルで延在する多数の透過性によって横方向透過性が得られる。
- 導電体である炭素強化糸によって、一方向シートの2つの面を接合する撚り強化糸のフィラメントに沿って導電性の連続性を作り出すこと。
【0024】
本発明は、直接法による複合部品の製造のための強化材料に関する。すなわち、複合部品を製造するために、本発明による強化材料は、該強化材料または当該強化材料のスタック内に射出または注入されるポリマー樹脂と結合されるべきである。また、従来、本発明による強化材料のポリマー部分の重量は、本発明による強化材料の総重量の最大10%を占める。典型的には、強化材料のポリマー部分は、強化材料の総重量の0.5%~10%、好ましくはその総重量の2%~6%を占める。このポリマー部分は、本発明による強化材料内に存在するポリマー(1つまたは複数)の全部分に相当し、したがって、本発明による強化材料内に存在する不織布材料を含むか、またはそれからなる。本発明の利点は、材料のポリマー部分、すなわち、一方向ウェブの両側に存在する不織布材料から形成されたポリマー繊維の層に存在するポリマー材料の量を増やす必要なく得られる。
【0025】
撚り強化糸の使用を除いて、強化材料のポリマー繊維層は、微穿孔工程の前に、先行技術、特に国際公開第2010/046609号に記載されているものに対応する。
【0026】
一方向強化ウェブが炭素強化糸の集合体から形成される場合、炭素強化糸は並んで配置される。撚り強化糸は、互いに隣接して配置されてもよく、無撚強化糸または複数の無撚強化糸が、2つの連続した撚り強化糸間に介在してもよい。一方向ウェブが形成された後、それは、特に各面に積層することによって、不織布材料の中から選択されたポリマー繊維の層と結合することができる。
【0027】
混合S/Zと呼ばれる一方向強化ウェブを使用する代替の実施形態によれば、強化材料は、一方向強化ウェブを形成するすべての炭素強化糸が、個々に撚られて、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有し、一方向強化ウェブが、このように少なくとも1つの撚り炭素強化S撚糸および少なくとも1つの撚り炭素強化Z撚糸で撚られた少なくとも3つの炭素強化糸を含むという事実によって特徴付けられ、
- 一方向強化ウェブを形成する撚り炭素強化糸の総数(糸の総数と呼ぶ)が偶数の場合、平面Δの一方の側の撚り炭素強化S撚糸の数および平面Δの他方の側の撚り炭素強化S撚糸の数は、それぞれ独立して、範囲{[(糸の総数)/4]-35%;[(糸の総数)/4]+35%}内の整数であり、この範囲を定義する式が整数となるように、範囲の各端点が最も近い整数に丸められ(四捨五入され)、他の撚り炭素強化糸がZ撚糸であり;
- 一方向強化糸を形成する撚り炭素強化糸の総数(糸の総数と呼ぶ)が奇数の場合、平面Δの一方の側の撚り炭素強化S撚糸の数および平面Δの他方の側の撚り炭素強化S撚糸の数は、2つの整数、またはその整数プラス0.5のいずれかであり、それぞれ独立して、この範囲{[(糸の総数)/4]-35%;[(糸の総数)/4]+35%}内にあり、この範囲を定義する式が整数または整数プラス0.5となるように、範囲の各端点が最も近い整数または整数プラス0.5に丸められ、残りの炭素強化撚糸がZ撚糸であり;
平面Δは、該一方向ウェブの全体的な延在方向に平行な平面であり、該一方向ウェブをその表面に対して垂直に2等分する。
【0028】
言い換えれば、一方向強化ウェブを形成する撚り炭素強化糸の数(簡略化のため、一方向のいわゆる混合S/Zウェブの範囲の定義において「糸の総数」と呼ばれる)は、平面Δの両側で等しく、この平面は一方向強化ウェブの中間の繊維のレベルにある。したがって、一方向強化ウェブがn本(nは、混合S/Zと呼ばれる一方向強化ウェブの場合、3より大きい整数である)の撚り炭素強化糸からなるならば、平面Δの両側にn/2本の撚り炭素強化糸が存在する。
【0029】
さらに、混合S/Z一方向強化ウェブは、整数mの撚り炭素強化S撚糸を含み、平面Δの一方の側にある撚り炭素強化S撚糸の数m1と、平面Δの他方の側にある撚り炭素強化S撚糸の数m2との和は整数である。同様に、一方向強化ウェブは、整数pの撚り炭素強化Z撚糸を含み、平面Δの一方の側にある撚り炭素強化Z撚糸の数p1と、平面Δの他方の側にある撚り炭素強化Z撚糸Zの数p2との和は整数である。したがって、例えば、定義I1を満たす一連の撚り炭素強化SZSZSZS糸(並置された糸の撚り)で形成された一方向強化ウェブの場合、平面Δのいずれかの側の糸の数n/2は3.5であり、m1=m2=2であり、p1=p2=1.5である。
【0030】
特に、混合S/Zウェブと呼ばれる一方向強化ウェブを含む本発明による当該材料は、それらを大きい長さにわたって高速で製造することができるという利点を有する。一方向、いわゆる混合S/Z強化ウェブの当該実施形態では、本発明による材料は、7mm超、好ましくは12mm超、好ましくは12mm~51mmの範囲内の幅、好ましくは2m~5000m、好ましくは100m~2000mの長さを有することが有利である。
【0031】
別の態様によれば、本発明は、以下の連続工程を含む強化材料を調製する方法に関し、以下の連続工程:
a1)個々に撚られ、3ターン/m~15ターン/mの撚りを有する1本以上の補強糸から形成された一方向強化ウェブを提供する工程と、
a2)不織材料の中から選択された少なくとも2つのポリマー繊維層を提供する工程と、
a3)ポリマー繊維の各層を一方向強化ウェブの各面と結合させる工程と、
を含む。
【0032】
例えば、調製方法は、工程a1)の上流で、強化糸または一連の糸に3ターン/m~15ターン/mの撚りを加えることを含む一方向強化ウェブを作製する工程を含み、該撚りは各糸に個別に加えられる。
【0033】
一実施形態によれば、一方向強化ウェブは、複数の強化糸から形成され、調製方法は、工程a1)の上流に、
i)一連の強化糸に3ターン/m~15ターン/mの撚りを加える工程であって、該撚りが、各糸に個別に加えられる工程と、
ii)それによって得られた撚糸を、任意選択で他の強化糸と共に整列させ、一方向強化ウェブを形成するように、該糸を並置する工程と、
を含む。
【0034】
そのような方法では、ポリマー繊維の層は、ホットタック特性を有し、工程a3)の結合は、ポリマー繊維の各層を一方向強化ウェブの各面に適用することによって得られることが有利であり、該適用は、ポリマー繊維の加熱を伴うか、またはそれに続いて行われ、ポリマー繊維を軟化または溶融させ、続いて冷却する。
【0035】
本発明はまた、その目的として、本発明による1つ以上の強化材料から少なくとも部分的になるプリフォームを有する。
【0036】
本発明の別の目的は、本発明による少なくとも1つの強化材料から複合部品を製造するための方法に関する。この製造方法によれば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物が、該強化材料、本発明によるいくつかの強化材料のスタック、または本発明によるプリフォーム内に射出または注入される。
【0037】
特に、そのような方法は、樹脂の注入または射出の前に、本発明によるいくつかの強化材料を含むプライまたはスタックを形成する工程を含み、その間、該強化材料は、所望のプライまたはスタックに至るその適用中にその位置決めを確実にするために、ガイド部材内で連続的に搬送され循環する。従来、本発明による材料は、製造される折畳みまたはスタックを形成するために、所望の寸法、特に所望の長さに切断される。
【0038】
複合部品を製造するためのこの方法は、樹脂の注入または射出の前に、好ましくは強化材料(1つまたは複数)中に存在するポリマー繊維層のホットタック特性を利用する適用または成形を含むことが有利である。
【0039】
本発明の別の目的は、熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物と結合したプリフォームまたは複合部品の製造のために、本発明による1つ以上の強化材料を使用することに関する。
【0040】
本発明による強化材料の製造方法または使用を実施するために、熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂が射出または注入されることが有利である。
【0041】
本発明は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1A】本発明による強化材料の部分概略断面図である。
【0043】
図1B】部分的に切り取られた概略斜視図であり、一連の撚糸で形成された一方向ウェブを有する本発明の強化材料を示す。
【0044】
図1C】部分的に切り取られた概略斜視図であり、SZSZSZ構成の一連の撚り強化糸3から形成された一方向ウェブを有する本発明の強化材料を示し、図を右から左に読むと、すなわち、S撚糸がZ撚糸の隣接して置かれ、次にZ撚糸がS撚糸の隣接して置かれ、以下同様である。
【0045】
図2】本発明による撚り強化糸の撚りを示す概略図である。
【0046】
図3】強化糸に撚りを加えるために使用される撚糸機の原理を説明する概略図である。
【0047】
図4】強化糸、特に撚糸の幅を測定するように適合されたステーションの概略図である。
【0048】
図5】様々な強化糸について、撚り(tpm)の関数としての強化糸の平均幅(mm)を示すグラフである。
【0049】
図6】様々な強化糸について、撚りの関数としての強化糸の平均幅(mm)の標準偏差を示すグラフである。
【0050】
図7】140g/mの重量について、様々な強化糸の撚りの関数として、強化糸の幅の目標値を上回る値の割合を示すグラフである。
【0051】
図8】210g/mの目付について、様々な強化糸の撚りの関数として、強化糸の幅の目標値を上回る値の割合を示すグラフである。
【0052】
図9】280g/mの目付について、様々な強化糸の撚りの関数として、強化糸の幅の目標値を上回る値の割合を示すグラフである。
【0053】
図10】252g/mの目付について、様々な強化糸の撚りの関数として、強化糸の幅の目標値を上回る値の割合を示すグラフである。
【0054】
図11】350g/mの目付について、様々な強化糸の撚りの関数として、強化糸の幅の目標値を上回る値の割合を示すグラフである。
【0055】
図12】プリフォーム上の測定点の位置を示す図である。
【0056】
図13】強化糸プリフォームの厚みを測定する原理を示す概略図である。
【0057】
図14】本発明による材料8および比較材料3について、適用されたプライの数の関数としてオーバーランの変化を示すグラフである。
【0058】
図15】本発明による材料4および比較材料3について、適用されたプライの数の関数としてオーバーランの変化を示すグラフである。
【0059】
図16】比較材料および本発明材料の横方向透過率(m)対繊維体積率(FVR)のプロットである。
【0060】
図17】本発明による幅6.35mmの強化材料で作製されたプライであって、目付280g/mで10ターン/mで撚られた4本の糸で作製されるが、3つの構成:SSSS、SZZS、およびSZSZを有する炭素糸の一方向ウェブで作られたプライの形成において観察された差異を示す。右側には、使用される強化材料内にいずれの場合も存在する一方向層の上部の部分概略図が提示され、各部分概略図の上に、各一方向層の強化糸のSまたはZ撚り方向が、該糸の断面に沿って提示されている。
【0061】
図18】目付210g/mおよび幅38.1mmで、SSSSSSSZZZZZSSSSSS構成(S撚糸7本、次いでZ撚糸5本、次いでS撚糸6本)で作製された一方向炭素糸ウェブが製造される場合の7本のS撚り強化糸と5本のZ撚り強化糸の撚り間の接合部で得られた間隙を示す。実際、一方向ウェブの製造中、S撚糸の群は左に駆動される一方、Z撚糸の群は右に駆動され、7本のS撚糸/5本のZ撚糸の接合部に間隙が生じる。
【0062】
図19】実施例で使用される生産ラインの概略図である。
【0063】
実施方法の説明
本発明の目的は、図1Aに示すように、一方向強化ウェブ2の各面で、不織布材料を形成するポリマー繊維の層4、5に対応するベールと結合した1つ以上の炭素強化糸3から形成された一方向強化ウェブ2からなる強化材料1に関する。より正確には、以下の説明で詳細に記載するように、炭素強化糸3の少なくとも一部は、個々に撚られている。
【0064】
「一方向強化ウェブ」とは、排他的にまたはほぼ排他的に、互いに平行に配置された炭素強化糸からなるウェブを意味する。
【0065】
図1Bは、一方向ウェブ2の各面で、ベール4、5と結合したいくつかの個々に撚られた炭素強化糸3からなる一方向ウェブ2を示す。それぞれの撚り強化糸3は、一方向シートの延在面で直線的である全体的な延在方向Dを有する(糸の中心軸に対応する)。それぞれの撚り強化糸3は、図1Bでは平面であるベール4、5の延在面S4およびS5に平行して直線的に延在する全体的な延在方向Dを有する。一方向ウェブでは、強化糸の全体的な延在方向Dはすべて互いに平行であるか、または互いに実質的に平行である。3°以下、好ましくは2°以下、好ましくは1°以下の2本の強化糸の特定の全体的な延在方向D間の偏向は、ウェブの一方向特性を変更しないことが当業者によって一般的に認められている。一方向ウェブの全体的な延在方向は、これらがすべて互いに平行である場合は強化糸の全体的な延在方向Dに対応し、または一方向ウェブ2を形成する強化糸3のすべての延在方向D間に厳密な平行性がない稀な場合については、これらの全体的な延在方向の平均に対応する。
【0066】
一方向ウェブでは、表面の最適な被覆率を確保するために強化糸が並んで配置される。特に、10cm超の長さにわたって(すなわち、一方向ウェブの延在方向に平行して)、一方向ウェブの延在方向に垂直な1mm超の局所的な間隙を回避することが望ましい。
【0067】
特に、ポリアミド、コポリアミド、ポリエステル、コポリエステル、エステル/エーテルブロックコポリアミド、ポリアセタール、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、またはフェノキシ型の熱可塑性接結糸を提供して、必要に応じて、ポリマー繊維ベールとの結合前のウェブの取扱いを容易にすることができる。これらの接結糸は、通常、炭素糸に対して横方向に延在する。「一方向ウェブ」という用語は一方向織物も含み、間隔をあけた緯糸は、互いに平行に延びて一方向織物の経糸を形成する炭素糸と織り合わされる。このような接結、ステッチ、または緯糸が存在するこれらの異なる場合でも、互いに平行な炭素糸は、ウェブの少なくとも95%の重量を占め、したがって「一方向」として分類される。それにもかかわらず、本発明の特定の実施形態によれば、一方向ウェブは、いかなる波形も回避するように、炭素糸を織り合わすいかなる緯糸も含まない。特に、本発明による強化材料は、穿孔、製織、縫製、または編物を含まない。一方向ウェブでは、炭素強化糸は、好ましくはポリマー結合剤と結合しておらず、したがって乾式と分類され、すなわち、ポリマー繊維ベール4、5と結合する前に含浸、コーティング、または任意のポリマー結合剤と結合していない。しかしながら、炭素強化糸は、通常、それらの重量の最大2%の標準的なサイジング率を特徴とする。
【0068】
炭素強化糸(より単純に本発明の範囲内で強化糸または炭素糸と呼ばれ得る)は、一般に繊維またはフィラメントの集合体から構成され、一般に1,000~320,000フィラメント、有利には12,000~24,000フィラメントを含む。本発明の範囲内で使用される強化糸は、炭素で作られる。特に好ましい様式では、本発明の範囲内で、1K~24Kの炭素糸が使用される。構成繊維は連続していることが好ましい。使用される糸は、一般に、実質的に円形の断面(丸糸として分類される)、または好ましくは、実質的に平行六面体または楕円形の断面(扁平糸として分類される)を有する。これらの糸は、一定の幅および厚みを有する。物理的要素と接触しない弛み糸の例としては、一般的に、200texの力価を有する炭素扁平糸は、1mm~3mmの幅を有し、446texの力価を有する12K炭素扁平糸は、2mm~5mmの幅を有し、800texの力価を有する12K炭素扁平糸は、3mm~7mmの幅を有し、1600texの力価を有する24K炭素扁平糸は、5mm~12mmの幅を有し、1040texの力価を有する24K炭素扁平糸は、5mm~10mmの幅を有する。したがって、3,000~24,000フィラメントの炭素扁平糸は、通常、1mm~12mmの幅を有する。炭素糸の中には、220GPa~241GPaの引張弾性率を有し、3450MPa~4830MPaの降伏強度を有する高抵抗(HR)糸、290GPa~297GPaの引張弾性率および3450MPa~6200MPaの降伏強度を有する中間弾性率(IM)糸、345GPa~448GPaの引張弾性率および3450~5520Paの降伏強度を有する高弾性率(HM)糸がある(「ASMハンドブック」、ISBN0-87170-703-9、ASM International 2001に準拠)。特に、本発明の範囲内で、一方向強化ウェブ2は、3K~24K、好ましくは6K~12Kの力価を有する1つ以上の炭素強化糸3から形成されてもよい。
【0069】
本発明によれば、一方向強化ウェブ2は、個々に撚られた1つまたは一連の炭素強化糸3を含み、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有する。本発明によれば、撚りが加えられた炭素強化糸3、すなわち、その中間の繊維(糸の中心軸に対応する)を中心とした糸の外縁の相対回転が使用され、それにより、これらは螺旋軌道をたどり、すなわち、各点における接線は所与の方向に対して実質的に一定の角度を成す。図2に示すように、撚られた炭素強化糸3は、その芯に、強化糸3の長手方向X(全体的な延在方向Dとも呼ばれる)に対応する全体的な方向を有する中間の繊維を有し、一方、フィラメントは、この全体的な方向を中心にして螺旋経路をたどる。図2は、長手方向X(全体的な延在方向Dとも呼ばれる)に沿った直線距離dにわたって1ターンの撚りを有する撚り強化糸3の母線hの螺旋形状を概略的に示す。
【0070】
それぞれの炭素強化糸3は、個別に撚られている。このような撚りは、例えば、Kamitsu Seisakusho Ltd.型式UT-1000で販売されている機械等の撚糸機を用いて得ることができる。図3は、本発明による撚り強化糸3を得ることを可能にする撚糸機によって実施される撚り加工を示す図である。撚られる強化糸が巻き付けられたスプール7が、その軸Aを中心に回転できるように取り付けられ、撚り強化糸3を巻き取るためのスプール9に対して、糸ガイド8を介して、強化糸を巻き戻せる。強化糸が撚られたスプール7は、スプール7の軸に垂直な軸Bに沿ってモータ12によって回転駆動される支持部11に取り付けられている。強化糸3の撚りは、強化糸の巻き戻しの線速度、およびスプール7の支持部11の回転速度に依存する。
【0071】
撚りは、撚り強化糸の幅の変化をもたらすことを理解されたい。
【0072】
以下の記載は、撚り強化糸の幅に及ぼす撚り加工の影響について説明する。
【0073】
図4は、上記で説明したような撚り操作が行われる前後の強化糸の幅を測定するための方法を示す。測定される幅を有する強化糸は、巻取りスプール17によって巻き取られる前に、第一の固定円筒棒14の上、第二の固定円筒棒15の下、および第三の固定円筒棒16の上を連続して通過することを確実にするために、スプール13から巻き戻される。典型的には、スプール13から出てくる強化糸の張力は、150g~300gである。円筒棒14~16は、再現性のある所定の張力条件下で強化糸の幅を測定することを可能にするように取り付けられる。強化糸は、第一の固定円筒棒14および第二の固定円筒棒15の上を通過する際に張力をかけられた後、第三の円筒棒16で展開し、その上方にマトリックスカメラ18が配置される。例えば、第一、第二および第三の円筒棒14~16は、それぞれ40mm、20mmおよび30mmの直径を有し、一方での第一および第二の円筒棒間の中心距離および他方での第二および第三の円筒棒間の中心距離は、それぞれ、水平方向において50mmおよび20mm、垂直方向において15mmおよび10mmである。強化糸の幅の測定は、100ml(直線メートル)の長さにわたって、約5mmごとに強化糸の走行中にカメラ18によって行われる。
【0074】
測定は、以下の表1に示すように、異なる線密度、異なるフィラメント数および異なる撚りを有する、米国コネチカット州スタンフォードのHEXCEL Corporation製の炭素繊維で行われる。
【0075】
【表1】
【0076】
表1の炭素強化糸について行われた測定を図5に示し、図5は、様々な強化糸について、撚りの関数として強化糸の平均幅を示す。図5は、撚りが増加するにつれて強化糸の平均幅が減少することを明確に示しており、これは、撚りが撚り強化糸のフィラメントを締め付けるためと予想される。
【0077】
表1の様々な強化糸について、撚りの関数としての平均幅の標準偏差を示す図6を調べると、撚りが増加するにつれて幅の標準偏差が減少することが明らかである。換言すれば、撚りが増加するほど、撚り強化糸がより均一に締まる傾向がある。そのため、撚りが増加するにつれて、断面が平行六面体の強化糸は、標準偏差の低い丸形の強化糸に向かう傾向がある。無撚の強化糸は、撚り強化糸と比較して標準偏差が低く、このような幅のばらつきを小さくするためには、メートル当たり14ターン(tpm)超の撚りを達成する必要があることに留意されたい。
【0078】
炭素強化糸の幅の分布が、所与の目付を有するウェブを製造するために炭素強化糸を使用する可能性に影響を及ぼすことを理解することが重要である。
【0079】
例えば、210グラム/平方メートルのウェブは、ウェブが理論的に完全に覆われるように、2.12mmごとに12K IMA糸の並置を必要とする。計算は以下の通りである。
【0080】
所与の目付に必要な幅[mm]=使用糸の力価[Tex]/目付[g/m]。糸の測定単位はTexであり、これは1000mの糸のグラム重量である。
【0081】
実際には、強化糸がこのいわゆる「目標」幅値の少なくとも75%の平均幅を有する場合、満足のいく品質のウェブを製造することが可能である。当業者であれば、この目標幅値を試行錯誤によって決定することができる。
【0082】
以下の表2は、目付ごとに、および使用した炭素強化糸ごとに目標幅の値を列挙している。
【0083】
【表2】
【0084】
図7図11は、様々な目付について、様々な炭素強化糸の撚りの関数として目標幅値を上回る値の割合を示すグラフである。
【0085】
図7は、140g/mのウェブについて、
- IMA-12K繊維の場合、ウェブは、無撚強化糸のみで作製できること;
- IM7-6K繊維の場合、ウェブは、1メートル当たり8ターン以下の撚りを有する強化糸からのみで作製できること
を示す。
【0086】
図8は、210g/mのウェブについて、
- IMA-12K繊維の場合、ウェブは、1メートル当たり8ターン以下の撚りを有する強化糸で作製できること;
- IM7-6K繊維の場合、ウェブは、1メートル当たり最高14ターンの撚りを有する強化糸で作製できること
を示す。
【0087】
図9は、280g/mのウェブの場合、目付が該範囲のすべての撚り値を有する強化糸を使用するのに十分な高さになることを示している。
【0088】
図10は、AS7-12K繊維で作製された252g/mウェブの場合、-ウェブは、1メートル当たり6ターン以下の撚りを有する強化糸で作製できることを示す。
【0089】
図11は、350g/mのウェブの場合、目付が該範囲のすべての撚り値を有する強化糸を使用するのに十分な高さになることを示している。
【0090】
したがって、所与の目付に対して、強化糸の各タイプに使用できる撚り限界を規定することが可能であると思われ、これにより、特に所望する一方向ウェブの目付に応じて、使用される糸だけでなく、適用される撚りも選択することが可能になる。
【0091】
本発明の保護対象の別の特徴によれば、一方向強化ウェブ2は、S撚り、Z撚り、または両方の混合物のいずれかを有する少なくとも1つの撚り炭素強化糸3から形成される。撚られた炭素強化のS撚糸およびZ撚糸3は、図17の右側に示されるように、撚り方向が異なる。S撚りまたはZ撚りが意味するものの定義については、書籍の’’Handbook of Weaving’’,p16-17 by Sabit Adanur,Professor,Department of Textile Engineering,Auburn,USA,ISBN 1-58716-013-7を参照されたい。
【0092】
表示するように、一方向強化ウェブ2は、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有する強化糸3によって形成することができる。この場合、図2に示すように、単一の強化糸3は、強化糸3の長手方向Xに対応する全体的な方向を有する中間の繊維(糸の中心軸に対応する)を有し、一方、フィラメントはこの全体的な方向を中心にして螺旋軌道をたどるため、ウェブは一方向として分類される。代替の実施形態によれば、一方向強化ウェブ2は、複数の強化糸3から形成され、その少なくとも一部は、それぞれ3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有する。各糸は、糸の中心線に対応する延在方向Dを有する。一方向強化ウェブ2を形成する撚り強化糸3は並置され、撚り強化糸3の延在方向は互いに平行であるため、一方向ウェブを構成する。後者の実施形態によれば、少なくとも5本おきの強化糸3、好ましくは少なくとも2本おきまたは3本おきの強化糸3、好ましくはすべての強化糸3は、個々に撚られて、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有する。有利な実施形態によれば、一方向強化ウェブ2を形成するすべての強化糸3は個々に撚られて、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有することを理解されたい。一方向強化ウェブ2が撚り強化糸のみを含まない場合には、一方向強化ウェブ2は、本発明の撚りを受けて使用される強化糸と同じ無撚の強化糸を含むことが有利である。
【0093】
一方向ウェブ2を形成するすべての強化糸3が撚られている代替の実施形態によれば、1つまたは複数の撚られた強化S撚糸3および1つまたは複数の撚られた強化Z撚糸3の両方を同じウェブ内で使用することも可能である。すなわち、一方向ウェブ2は、異なる撚り方向を有する撚り強化糸3を含み、したがって、一方向ウェブ2は、強化Z撚糸3または強化S撚糸3のみから形成されるのではなく、1つ以上の強化S撚糸3に隣接して延在する少なくとも1つの強化Z撚糸3を含むか、または1つ以上の強化Z撚糸3に隣接して延在する少なくとも1つの強化S撚糸3を含む。対照的に、各糸は、同じS撚りまたは同じZ撚りを有し、したがってその全長にわたって同じ撚り方向、ならびに同じ撚り値を有する。
【0094】
一方向強化ウェブ2のこれらの代替の実施形態は、本明細書では簡略化のために「混合S/Z一方向ウェブ2」と呼ばれる。図3に示すような撚糸機において、S撚りの撚り強化糸3またはZ撚りの撚り強化糸3を得ることは、B軸を中心にしてボビン7に加えられる回転方向の影響を受ける。同じ一方向強化ウェブ2内で様々な種類の撚り強化糸3、すなわち、S撚りを有する少なくとも1つおよびZ撚りを有する少なくとも1つを使用することによって、得られた一方向強化ウェブ2内に現れる欠陥のリスク、特に並置された糸間の間隙または重なりのリスク、ならびに波形のリスクを制限することが可能である。同じ一方向ウェブ内で2種類の撚り(S撚りおよびZ撚り)を使用すると、異なる方向を有するZ撚りおよびS撚りによって誘発される局所的な波形が均一になる傾向がある。これらの2種類の糸を同じ一方向ウェブで組み合わせることにより、S撚りおよびZ撚りの混合糸の製造および使用がより簡単になり、以下の例に示すように、製造されたウェブで観察される間隙および重なりに関して、より許容できる品質をもたらす傾向がある。
【0095】
混合S/Z一方向ウェブ2を形成するために並置された特に適切な撚り強化糸3の例には、以下の配列が含まれる:SZ、SZS、ZSZ、SZZS、SZSZ、SZSZS、SSZZSS、SZSSZS、SZSZSZ、SSZZSSZZ。
【0096】
図1Bおよび図1Cに示すように、複数の炭素強化糸3から形成された一方向ウェブ2(または2a)は、2等分され、それぞれ平面Δのいずれかの側に延在し、平面Δは、該一方向ウェブ2の表面に垂直に延在し(したがって、ウェブが2つのベール4、5と結合する場合、2つのベール4、5の表面S4およびS5に対して垂直に延在する)、かつ一方向ウェブ2の全体的な延在方向に平行に延在する。本発明による強化材料の特に有利な実施形態によれば、(混合S/Z型の)一方向ウェブ2は、3ターン/m~15ターン/m、好ましくは6ターン/m~12ターン/mの撚りを有する3本超の個々に撚られた炭素強化糸3を含み、
- 一方向ウェブ2を形成する撚り炭素強化糸3の総数が偶数の場合:
・平面Δの一方の側の撚り炭素強化S撚糸3の数および平面Δの他方の側の撚り炭素強化S撚糸3の数は、それぞれ独立して、範囲{[(糸の総数)/4]-35%;[(糸の総数)/4]+35%}内の整数であり、範囲の各端点は、それを定義する式が整数となるように、最も近い整数に丸められ(四捨五入され)、他の撚り炭素強化糸3は、Z撚糸であり(定義P1);
・これは、平面Δの一方の側の撚り炭素強化Z撚糸3の数および平面Δの他方の側の撚り炭素強化Z撚糸3の数に相当し、それぞれ独立して、範囲{[(糸の総数)/4]-35%;[(糸の総数)/4]+35%}内の整数であり、範囲の各端点は、それを定義する式が整数となるように、最も近い整数に丸められ(四捨五入され)、他の撚り炭素強化糸3は、S撚糸であり(定義P2);
- 一方向ウェブ2を形成する撚り炭素強化糸3の総数が奇数の場合:
・平面Δの一方の側の撚り炭素強化S撚糸3の数および平面Δの他方の側の撚り炭素強化S撚糸3の数は、2つの整数またはその整数プラス0.5のいずれかであり、それぞれ独立して、範囲{[(糸の総数)/4]-35%;[(糸の総数)/4]+35%}内にあり、範囲の各端点は、それを定義する式が整数または整数プラス0.5となるように、最も近い整数または整数プラス0.5に丸められ(四捨五入され)、残りの撚り炭素強化撚糸3は、Z撚糸であり(定義I1);
・これは、平面Δの一方の側の撚り炭素強化Z撚糸3の数および平面Δの他方の側の撚り炭素強化Z撚糸3の数に相当し、2つの整数またはその整数プラス0.5のいずれかであり、それぞれ独立して、範囲{[(糸の総数)/4]-35%;[(糸の総数)/4]+35%}内にあり、範囲の各端点は、それを定義する式が整数または整数プラス0.5となるように、最も近い整数または整数プラス0.5に丸められ(四捨五入され)、残りの撚り炭素強化撚糸3は、S撚糸である(定義I2)。
平面Δは、該一方向ウェブ2の全体的な延在方向に平行な平面であり、該一方向ウェブをその表面に対して垂直に2等分する。図1Cは、一連の撚り強化SZSZSZ糸3から形成された一方向ウェブ2aを含む本発明の材料を例示し、その上に平面Δが示されている。
定義P1、P2、I1およびI2における「それぞれ独立して、範囲である」とは、関連する2つの数が範囲内にあるが、同一であっても異なっていてもよいことを意味する。
【0097】
一方向ウェブ2を形成する撚り強化糸3の総数が奇数である場合の可能な構成例として、この撚り強化糸3の総数が17である(つまり、平面Δの各側に8.5本の糸がある)場合には、
- 定義I1によれば、範囲{[(糸の総数)/4]-35%;[(糸の総数)/4]+35%}は、{[(17/4)-35%];[(17)/4]+35%}={4.25-35%(4.25);4.25+35%(4.25)}に等しく、端点を丸めた後、{3;5.5}を得る。したがって、平面Δの各側に3~5.5本のS糸、または合計6~11本のS撚糸が存在してもよく、残りの糸はZ撚糸、または合計6~11本のZ撚糸であり、平面Δの各側に3~5.5本のZ撚糸が存在してもよい。
- 定義I2によれば、平面Δの各側で同数の可能なS糸およびZ糸に到達する。
【0098】
このような構成により、一方向強化ウェブ2内の撚られた強化S撚糸およびZ撚糸3の数がより釣り合って、製造がより容易になり、高品質の一方向ウェブ2が得られる。実際、そのような場合、例で説明したように、一方向強化ウェブ2の形成中に、撚り強化糸3間の整列が容易になり、平行に並置された撚り強化糸3間の間隙、リップル(凹凸)および/または重なりが減少する。さらに、並行して、いくつかの強化材料1の自動製造中に、国際公開第2010/061114号に記載されているように、並行して製造された2つの強化材料1間の接合部で不織布材料を切断すると、この場合、より鋭い縁部およびより均質な材料が得られる。
【0099】
さらに、このような混合S/Zウェブから製造された強化材料1は、結果として、より良好な品質でもあり、したがって製造される複合部品も同様である。さらに、欧州特許第2376276号に記載されているような自動適用装置による適用は、そのような強化材料を用いてより正確に行うことができる。例で説明するように、このような強化材料1は、自動適用装置のヘッドまたは適用フィンガの高さに存在する(特に溝またはコーム型の)ガイドまたはガイド部材に良好にセンタリングされたままであり、一方、強化S撚糸3のみまたは強化Z撚糸3のみを含む、またはより一般的には定義P1、P2、I1およびI2を満たさない一方向強化ウェブ2から作製された強化材料1は、偏心し、それらが移動するガイドまたはガイド部材の縁部に当接する傾向がある。
【0100】
特に、完全に交互に繰り返されるS撚りおよびZ撚りの強化糸3の配列を含む一方向強化ウェブ2が好ましく、すなわち、構成(並置された糸の配列)(SZ)i、S(ZS)j、Z(SZ)jに対応するものが好ましく、iおよびjは、特に1~20の範囲内、好ましくは1~10の範囲内の整数である。特に、iおよびjは、2~20の範囲内、好ましくは2~10の範囲内にある。
【0101】
特に満足できる他の混合S/Z一方向ウェブ構成は、平面Δの両側に、同数のS撚糸を有するものであり、したがって、黙示的に、同数のZ撚糸も有する。以下の構成はいくつかの例である:SZZS、SZSZ、SZSZS、SZSSZS。
【0102】
特に満足できる他の混合S/Z一方向ウェブ構成は、平面Δに関して対称であるものである。これらの構成のいくつかの例は、SZZS、SZSZS、SZSSZS、SZSSZSSZSである。
【0103】
したがって、混合S/Z一方向ウェブ、特に本発明の範囲内でより正確に記載されるものの使用は、製造中および得られる強化材料1の適用中の両方において、2倍の技術的問題を解決する。これらの材料は、特に、工業的方法に従って製造および適用される可能性を提供する。
【0104】
混合S/Z一方向ウェブ、特に本発明の範囲内でより正確に記載されるものの使用は、一方向ウェブ2の製造、したがって7mm超、好ましくは12mm超、好ましくは12mm~51mmの範囲内の幅を有する強化材料1の製造に特に適している。さらに、混合S/Z一方向ウェブを使用する本発明は、2m超の長さ、特に2m~5000m、好ましくは100m~2000mの長さを有する強化材料にも特に適している。したがって、本発明の範囲内のそのような好ましい実施形態によれば、本発明による強化材料は、7mm超の幅および2m超の長さ、有利には12mm~51mmの範囲内の幅および2m~5000m、好ましくは100m~2000mの範囲内の長さを有する。材料の幅は、一方向シートの全体的な延在方向に対して垂直にとられた平均幅であり、この幅は、任意の適切な手段、特にカメラを使用して、材料の全長にわたって10cmごとに測定を行い、得られた測定値の算術平均をとることによって測定することができる。材料の長さは、好ましくは、平面Δ上で測定される。特に、強化材料1の幅は、200cN~400cNの一定の張力で、毎分1.2mの一定の速度で走行させ、265mmの距離で、この時点で支持なしで、カメラ、例えば、Baumer Optronic Type FWX 20、焦点距離20mm、1624×1236ピクセル(Baumer Optronic Gmbh、ドイツ-カメラの較正は以下の通りである:1ピクセルは0.05mmに相当する)、または強化材料のより広い幅に適した別のカメラの前を通過させることによって測定することができる。特に、6.35mm、12.7mm、38.1mm、および50.8mmの幅を有する材料を適用するための自動適用装置が存在し、本発明の範囲内で実施することができる。
【0105】
さらに、混合S/Z一方向ウェブを使用する本発明のこの実施形態は、電動搬送システムまたは装置を用いた、不織布材料を一方向強化ウェブの各面に連続的に結合することによる強化材料1の製造、および、作製中に強化材料を通過させることによる製造に特に適している。
【0106】
有利には、一方向強化ウェブ2の形成に入る各撚り強化糸3は、その全長にわたって実質的に同一の撚り値を有する。一方向強化ウェブ2を形成するすべての撚り強化糸3は、同一または異なる撚り値を有することができることに留意すべきである。好ましくは、一方向強化ウェブ2を形成するすべての撚り強化糸3は、同じ撚り値を有する。
【0107】
本発明の範囲内で、一方向強化ウェブ2は、126g/m~280g/m、特に126g/m~210g/m、好ましくは210g/m~280g/mの範囲内の目付を有する。
【0108】
強化材料内の一方向ウェブの目付は、一方向ウェブがベールと結合する前の一方向ウェブの目付に対応するが、一方向ウェブがベール4、5と結合する前の一方向ウェブの重量を測定することは、強化糸がそれらの間で凝集しないため不可能である。炭素繊維強化ウェブの目付は、強化材料1の目付(一方向ウェブ2および2つのベール4、5)から求めることができる。ベールの目付が既知である場合、一方向ウェブの目付を推定することが可能である。有利には、目付は、ベールの化学的攻撃によって(任意選択で熱分解によっても)強化材料から決定される。この種の方法は、織物または複合構造の炭素繊維含有量を決定するために当業者によって古典的に使用される。
【0109】
強化材料1の目付の測定方法について以下に説明する。強化材料の目付は、100cm(すなわち、直径113mm)の切断試料を秤量することによって測定される。可撓性である強化材料の試料の切断を容易にするために、強化材料は、Cartonnage Roset(Saint Julien en Genevois、フランス)からの447g/mおよび厚み0.450mmの2枚の光沢のある厚紙間に配置され、全体の一定の剛性を確保する。Novi Profibre(フランス、ユーベンス)の空気圧円形ダイを使用して集合体を切断する;製造された強化製品の種類ごとに10個の試料を採取する。
【0110】
前述の説明から、強化材料1は、一方向強化ウェブ2の各面で、不織布材料から選択されたポリマー繊維4、5のベールまたは層と結合した一方向強化ウェブ2からなることが有利であるのは明らかである。一般的に言えば、本発明による強化材料1を調製する方法は、以下の連続する工程:
a1)3ターン/m~15ターン/mの撚りを有する1本または複数本の個々に撚られた強化糸3から形成された一方向強化ウェブを提供する工程と、
a2)不織布材料から選択されるポリマー繊維4、5の少なくとも2つの層を提供する工程と、
a3)ポリマー繊維の各層を一方向強化ウェブの各面と結合する工程と、
を含む。
【0111】
一般に、工程a1)の一方向強化ウェブ2は、最終強化材料1の所望の目付に等しい目付および最終強化材料1の所望の幅に等しい幅を有する。
【0112】
調製方法は、工程a1)の上流で、強化糸または一連の強化糸3に3ターン/m~15ターン/mの撚りを加えることを含む一方向強化ウェブ2を作製する工程を含むことが有利であり、該撚りは各強化糸3に個別に加えられる。
【0113】
調製方法の代替実施形態によれば、一方向強化ウェブ2は、複数の強化糸から形成され、本方法は、工程a1)の上流に、
i)一連の強化糸に3ターン/m~15ターン/mの撚りを加え、該撚りは各糸に個別に加えられる工程と、
ii)このようにして得られた撚糸を、任意選択で他の強化糸と共に整列させ、一方向強化ウェブを形成するように該糸を並置する工程と、
を含む。
【0114】
撚り強化糸3のみからなるウェブの場合、すべてが同じS撚りまたはZ撚り型ではない糸の使用は、工程ii)中の糸の整列および配置を容易にする。したがって、工程ii)において、有利には、整列した糸の選択は、本発明に記載の混合S/Z一方向ウェブのうちの1つを得るように行われる。
【0115】
したがって、一実施形態によれば、本発明による強化材料1を調製する方法は、以下の連続する工程:
a1)混合一方向ウェブS/Zと呼ばれる、本発明の範囲内で定義される一方向強化ウェブを提供する工程と、
a2)不織布材料4、5である2つのポリマー層を提供する工程と、
a3)不織布材料の各々を一方向強化ウェブの面の1つと結合することを進めることと、
を含む。
【0116】
調製方法は、工程a1)の上流に、一方向強化ウェブ2を製造するための工程を含むことが有利であり、該工程は、第1に、3ターン/m~15ターン/mの撚りを糸または一連の炭素S撚り糸3に加えること(該撚りが各炭素糸3に個別に加えられる)と、第2に、3ターン/m~15ターン/mの撚りをZ撚り糸炭素糸3または一連のZ撚り炭素糸3に加えること(該撚りが各炭素糸3に個別に加えられる)とを含む。
【0117】
有利な特徴によれば、不織布材料であるポリマー繊維の層4、5は、ホットタック特性を有し、工程a3)の結び付きは、ポリマー繊維の各層を一方向強化ウェブの各面に適用することによって得られ、この適用は、ポリマー繊維の加熱を伴うか、またはそれに続いて行われ、ポリマー繊維を軟化または溶融させ、続いて冷却することを特徴とする。
【0118】
一方向ウェブ2は、図1Aに示すように、強化材料1を製造するために、各面で、ポリマー繊維4、5のベールと結合する。対称的な強化材料の使用は、複合部品を形成するための手動または自動レイダウン(敷設)中の積層誤差を回避することを可能にし、したがって欠陥の発生、特にベールのない層間での欠陥の発生を制限することを可能にする。これは、有利には、一方向ウェブ2が、各面において、ポリマー繊維ベール4、5と結合し、2つのベール4、5が同一である理由である。
【0119】
「多孔質ポリマー層」は、プリフォームまたは複合部品の形成中に、樹脂などの液体が材料を通過し材料を通して射出または注入されることを可能にする透過層を意味する。特に、国際公開第2011/086266号に記載される方法に従って決定されたそのような層の開放因子(openness factor)は、30%~99%の範囲内、好ましくは40%~70%の範囲内である。そのような層の特に有利な例は、不織布材料またはウェブである。
【0120】
本発明の範囲内で、「ポリマー繊維層」はベールまたは不織布材料を意味する。
【0121】
「不織布材料」または「プライ」とは、従来、任意選択でランダムに配置された連続繊維または短繊維のセットを意味する。これらの不織布材料またはベールは、例えば、乾式、湿式またはスパンレイド法によって、例えば押出(「スパンボンド」)、メルトブロー押出(「メルトブロー」)、繊維化スプレーアプリケータまたは溶剤紡糸(「エレクトロスピニング」、「フラッシュスピニング」、「フォースピニング」)によって製造することができ、これらはすべて当業者に周知である。特に、不織布材料の構成繊維は、0.5μm~70μm、好ましくは0.5μm~20μmの範囲内の平均直径を有し得る。不織布材料は、短繊維、または好ましくは連続繊維で作ることができる。短繊維から形成された不織布材料の場合、繊維は、例えば、1mm~100mmの長さを有し得る。好ましくは、使用される不織布材料は、ランダムかつ好ましくは等方性の被覆を提供する。
【0122】
本発明の範囲内で、強化材料は乾式として分類されるため、不織布材料4および5によって表される総重量は、本発明による強化材料1の総重量の10%を超えず、典型的には、強化材料1の総重量の0.5%~10%、好ましくは、その総重量の2%~6%を占める。
【0123】
本発明の範囲内で、使用される不織布材料またはベールは、本質的に熱可塑性であることが有利であり、特に、熱可塑性ポリマー、部分的に架橋された熱可塑性ポリマー、そのようなポリマーの混合物、または、熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーの混合物からなる。熱可塑性または熱硬化性の不織布材料またはベールは、好ましくは、ポリアミド(PA:PA6、PA12、PA11、PA6,6、PA6,10、PA6,12など)、コポリアミド(CoPA)、ポリアミド-ブロックエーテルまたはエステル(PEBAX,PEBA)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート-PET-、ポリブチレンテレフタレート-PBT-など)、コポリエステル(CoPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアセタール(POM)、ポリオレフィン(PP、HDPE、LDPE、LLDPEなど)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、またはポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フェノキシ、スチレン-ブタジエン-メチルメタクリラート(SBM)コポリマー、メチルメタクリラート-ブチルメタクリラート(MAM)コポリマー等のブロックコポリマーから選択される熱可塑性材料、またはこれらの熱可塑性材料から作製される繊維の混合物から作製される。当該材料は、当然ながら、複合部品のその後の製造中にマトリックス形成用に使用される様々な種類の熱硬化性システムに適している。
【0124】
一方向ウェブとの結合前のベールの厚みは、それらが一方向ウェブとどのように結合するかに応じて選択される。ほとんどの場合、それらの厚みは、所望する強化材料の厚みに非常に近い。所望の厚みが得られるように、結合段階中に所定の温度下で積層されるより厚いベールを選択することも可能である。好ましくは、一方向ウェブは、完全に対称的な強化材料を得るために、その大きな各面で、2つの実質的に同一のベールと結合する。一方向炭素ウェブ上で結合する前のベールの厚みは、特に、0.5μm~200μm、好ましくは10μm~170μmである。本発明による強化材料1では、一方向ウェブとの結合後の各ベール4、5の厚みは、0.5ミクロン~50ミクロンの範囲内、好ましくは3ミクロン~35ミクロンの範囲内である。結合前の様々な不織布材料の厚みは、NF EN ISO9073-2によって、2827mm(直径60mmのディスク)の試験面積および0.5kPaの印加圧力で方法Aを使用して決定される。
【0125】
さらに、有利には、ベール4、5の目付は、0.2g/m~20g/mの範囲内である。
【0126】
一方向ウェブ2とベール4、5との結合は、不連続な様式で、例えば特定のポイントまたはゾーンでのみ実行することができるが、好ましくは、連続として分類されるウェブの表面全体にわたって延在する結合で実行される。
【0127】
一方向ウェブ2と2つのベール4、5との結合は、有利には、特許出願WO2010/046609に記載されている方法または出願WO2010/061114に記載されている方法のうちの1つに従って実行される。これらの文献または本発明の例に記載されているような連続生産機械およびラインを使用することができる。本発明の範囲内で、特に混合S/Z一方向ウェブが使用される場合、該結合から生じる強化材料を電動搬送システムまたは装置に通すことによって、一方向強化ウェブの各面に存在する不織布材料を連続的に組み合わせることによって強化材料を製造することが可能である。そのような装置は、例えば、1つ以上の駆動ローラによって駆動されるコンベアベルトであり、一方向ウェブが2つの不織布材料間に配置された後に強化材料が循環し、不織布材料へのその適用を確実にする。
【0128】
さらに、一方向ウェブは、例えば、エポキシ接着剤、ポリウレタン接着剤、熱硬化性接着剤、重合性モノマー系接着剤、構造アクリル接着剤または修飾アクリル接着剤、およびホットメルト接着剤から選択される接着剤層によって2つのウェブに接着することができる。しかしながら、結合は、通常、例えば一方向ウェブとプライとの間の結合を確実にする熱圧縮工程中に、加熱されたベールのホットタック特性によって達成される。この工程は、プライの熱可塑性繊維の軟化をもたらし、冷却後に一方向ウェブをベールに結合させることを可能にする。加熱および圧力の条件は、ベールの材料ならびにそれらの厚みに適合される。熱圧縮工程は、通常、Tfベール-15℃~Tfベール+60℃の範囲の温度(Tfベールはウェブの溶融温度を示す)および0.1MPa~0.6MPaの圧力下で一方向ウェブの表面全体にわたって行われる。したがって、1~10の範囲の結合前後のベールの圧縮比を達成することができる。一方向炭素ウェブ2上にベールを積層する工程は、強化材料1の最終的な厚みを正確に制御するためにも不可欠である。実際に、温度および圧力の条件に応じて、特に積層中に、強化材料の各側に存在するベールの厚みを修正し、したがって調整することが可能である。
【0129】
本発明による強化材料は、一方向ウェブの各面に積層された熱可塑性ベールの存在により、取扱いが容易である。この構造はまた、一方向ウェブの繊維に平行ではない方向、特に横方向または斜め方向に、特にほつれなく切断することを容易にする。
【0130】
本発明による強化材料1は、可撓性であり、巻き取り可能である。強化材料1は、炭素糸の利用可能な長さに対応する大きい長さで製造することができる。製造後、プリフォームおよび部品のその後の製造に使用される前に、強化材料1は通常、スプールを中心にしてロールの形態で巻かれる。
【0131】
複合部品を製造するために、本発明による強化材料(プライとも呼ばれる)のスタックまたはドレープが製造される。従来の様式では、本発明による強化材料は、製造される部品、プライ、スタックまたはプリフォームの製造のために、所望のサイズに切断される。スタックでは、強化材料のいくつかのプライが互いに積み重ねられる。
【0132】
強化材料が所望の部品を製造するのに十分な幅がある場合、および部品がわずかに複雑である場合に、プライは、本発明による単一の強化材料から作製することができる。しかし、より多くの場合、大きな部品または複雑な部品の場合、プライは、所望の部品を製造するのに必要な表面全体を覆うように並置された本発明による強化材料1の集合体から作製される。この場合、強化材料の正確な配置が必要となる。自動化方法では、強化材料を搬送して適用するための装置は、強化材料が搬送され輸送される1つ以上のガイド部材またはガイドを備える。このようなガイド部材またはガイドを備えた適用ヘッドを備える装置は、特に、国際公開第2006/092514号および欧州特許第2376276号に記載されている。Coriolis Composites SASU(フランス、ケヴァン、コンドルセ通り56530)、MTorres Disenos Industriales SAU(スペイン、ナバラ州トーレス・デ・エロルツ)、ElectroImpact Inc(合衆国ワシントン州ムキルテオ98275)、Mikrosam DOO(マケドニア、プリレプ7500)もそのような装置を提供する。本発明の範囲内で、混合S/Z一方向ウェブ、特に本発明の範囲内でより正確に記載されるもののうちの1つを含む本発明による強化材料1をセンタリングすることにより、より正確な配置がもたらされ、したがって、適用中の間隙、重なり、しわ、または波形などの欠陥のリスクが低減されることが分かった。したがって、混合S/Z一方向ウェブ、特に本発明の範囲内でより正確に記載されるもののうちの1つを含む、本発明による強化材料1を用いて製造された部品は、特に満足のいくものである。
【0133】
さらに、複合部品を製造するために、いくつかのプライが互いに重ねられてプライのスタックが製造される。したがって、強化材料1の不完全性は各プライで再現され、したがってスタックで強調される。したがって、やはり、より均質で再現可能な特性を有する混合S/Z一方向ウェブを含む本発明による強化材料1が特に有利である。結果として得られるスタックでは、プライは一般に、プライの少なくとも2つの一方向ウェブが異なる方向に配向されるように配置される。1つのプライから別のプライまで、すべての一方向ウェブまたはそれらの一部のみが異なる方向を有してもよく、他は同一の方向を有してもよい。好ましい配向は、製造される部品の主軸と0°、+45°または-45°(+135°にも相当する)、および+90°の角度を成す方向にあることが最も多い。部品の主軸は一般に部品の最大軸であり、0°はこの軸と統合される。例えば、折畳みの配向を選択することによって、疑似等方性、対称性、または配向性のスタックを作成することが可能である。疑似等方性積層の例として、積層は、45°/0°/135°/90°、または90°/135°/0°/45°の角度を有してもよい。対称積層の例には、0°/90°/0°、または45°/135°/45°が含まれる。部品を製造するのに必要な樹脂を添加する前に、特に各プライを添加した後の数点で温度および真空下で予備成形または溶着する中間工程によって、スタック内でプライを互いに接合し、それによってプリフォームを製造することが可能である。特に、2~300プライ、特に16~100プライの集合体を検討することができる。
【0134】
有利には、スタックは、縫製、または編物によって互いに接合されるのではなく、スタック内に存在するベールのポリマー特性、特に熱可塑性特性により生成される溶着体によって接合される。この目的のために、加熱/冷却操作は、スタックの表面全体にわたって、またはスタックの表面の少なくとも特定のゾーンにおいて実行される。加熱は、ベールを溶融させ、または少なくとも軟化させる。ベールの熱可塑性特性を用いるこのような結合は、特に波形、微小亀裂、およびその後に得られる複合部品の機械的特性の低下の問題などの縫い糸または編み糸の存在のすべての欠点を回避するため、有利である。
【0135】
積層は、各プライを一度に1つずつ追加し、各プライを追加した後に接合することによって達成することができる。一つの例は、特許出願の国際公開第2014/076433号および国際公開第2014/191667号に記載されているような自動プライ適用である。また、例えば平坦に適用されたプライから成形されたプリフォームを得るために、適用されたプライを(プライを一度に1つずつ事前に加熱することによって、または加熱せずに)全体的に再び加熱することができる。次いで、当業者は、所定の温度および圧力(例えば、真空またはプレスシステム)を適用して、熱間成形のための従来の手段を使用することができる。特に、本発明による強化材料の適用は、例えば、上記文献の国際公開第2014/076433A1号または国際公開第2014/191667号に記載されているように、AFP(自動繊維積層)またはATL(自動テープレイアップ)という略語で知られる方法に従って、それを適用するために適用面に垂直な圧力を加えながら連続的に行うことができる。
【0136】
複合部品を製造するために、次いで、熱硬化性もしくは熱可塑性型の樹脂もしくはマトリックス、または熱硬化性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物が、例えば射出によって、プライを含む金型内に追加され(樹脂トランスファー成形法)、または注入によって追加される(プライの厚みを介して:液体樹脂注入法または樹脂フィルム注入法)。好ましくない実施形態によれば、積層前に、使用される金型の形状に連続的に適用された各プライにローラまたはブラシによる手動コーティング/含浸を行うことも可能である。
【0137】
使用されるマトリックスは、熱硬化性もしくは熱可塑性型のもの、または熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物である。射出される樹脂は、例えば、以下の熱硬化性ポリマー:エポキシド、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール類、ポリイミドおよびビスマレイミドから選択される。
【0138】
次いで、熱処理工程後に複合部品が得られる。特に、複合部品は、一般に、検討されるポリマーの従来の硬化サイクルによって、すなわち、これらのポリマーの供給業者によって推奨され、かつ当業者に知られている熱処理を行うことによって得られる。所望の部品を硬化させるこの工程は、所定の温度および圧力下の明確なサイクルに従って重合/架橋し、続いて冷却することによって実施される。処理サイクル中に加えられる圧力は、真空注入の場合には低く、RTM金型への射出の場合にはより高い。
【0139】
上述の積層および結合方法はまた、複合部品の製造用の熱硬化性樹脂と結合されるように意図された任意の種類の強化材料で実施することができ、複合部品は、各面において、熱可塑性繊維のベールと、特に本特許出願の特許請求の範囲で定義されたもの以外の強化材料と結合された炭素繊維の一方向ウェブから作製される。実際、使用される一方向ベールおよびウェブに関係なく、そのような積層体は、ドレープ性および透過性の点で有利である。無論、好ましくは、強化材料は、真空注入によって高い繊維体積率(FVR)の達成を可能にすることを考えると、厚みおよび目付に関して、本発明の範囲内に記載されたものに適合する。
【0140】
以下の例は、本発明を説明するために提供されるが、限定することを意図するものではない。
【0141】
第1の一連の試験を実施して、以下の表3に示すデータを得た。
【0142】
パートA
【0143】
【表3】
【0144】
上記の表3において、試験された強化材料1は、各側でベールと結合した一方向強化ウェブを含む。
【0145】
一方向強化ウェブには、米国コネチカット州スタンフォードのHEXCEL Corporationによって販売されている12K中間弾性率(IM)炭素糸を使用した。材料1~3は、このような無撚の炭素強化糸を用いている。材料4~12は、上記で説明したように個々に撚られた炭素強化糸(撚糸)を有する本発明の強化材料である。材料13~18は、本発明によって想定されるよりも大きな撚りを有する撚糸で作られた強化材料であり、材料が製造段階または取扱い段階もしくは適用段階のいずれかで分離し、したがって使用不可能になるため、作製することができない。
【0146】
不織布材料から選択されるポリマー繊維の層には、Protechnicによって販売されている4g/mのコポリアミド不織布1R8 D04を使用した。特許出願国際公開第2010/046609号に従って、ベールを炭素強化糸の一方向ウェブと結合させた。より正確には、本発明による強化材料1は、出願の国際公開第2010/061114号に記載され、図19を参照して以下に記載されるような機械およびパラメータを使用して生産ラインで製造された。
【0147】
所望の撚りの炭素糸3は、クリール40に取り付けられた炭素糸の対応するスプール30から巻き出され、コーム50を通過し、ガイドローラ60、コーム70、およびガイドバー80aによって機械軸に供給された。
【0148】
炭素糸3は、加熱バー90によって予熱された後、一方向ウェブ2の所望の炭素目付になるように拡開バー80bおよび加熱バー100によって拡開された。ベールロール13aおよび13bは、張力なしで巻き出され、自由に回転する非電動ロール14a、14b、14c、14dと加熱されたバー12a、12bとの間に固定された連続ベルト15aおよび15bによって搬送された。
【0149】
ベール4および5は、炭素糸3と接触する前にゾーン11aおよび11bで予熱され、空隙が制御された2つの加熱されたバー12aおよび12bの各側に積層された。カレンダ16は、冷却することができ、次いで、各面にベールを有する一方向ウェブに圧力を加えて、テープの形態の強化材料1を製造する。偏向ローラ18は、強化材料1を、モータ駆動巻取りトリオ19を備える牽引システムに向け直し、次いで巻取り装置20に向け直して、このように形成された強化材料1のロールを形成することを可能にする。
【0150】
この生産ラインでは、ベルトは電動式ではなく、強化糸自体によって引っ張られることに留意されたい。
【0151】
さらに、出願の国際公開第2010/061114号に説明され、その図8に提示されているように、テープの形態で提示されている本発明のいくつかの強化材料を同時に製造した。形成される一方向ウェブを形成する各炭素撚糸は、予め製造される選択された撚糸のロールから引き出された。所望する幅の一方向ウェブを、選択された数の糸と平行に作製し、各一方向ウェブの間に十分な空間を残して間隔をあけて配置した。様々な一方向ウェブ2および間隙を覆う単一の不織布材料(ベール4および5に対応する)は、したがって、すべての一方向ウェブ2とそれらの各面上で結合した。不織布材料は、ウェブに積層された後、形成された各一方向ウェブ間で加熱された切断要素によって切断され、したがって、本発明による様々な強化材料が得られ、これらは並んで製造された。縁部に沿って各一方向ウェブ間の切断を行うことができるように、各一方向ウェブ間の間隙は0.5mm~2mmの範囲内であり、連続的かつ並行して製造された様々な強化材料が得られた。
【0152】
1)真空厚み:
【0153】
複雑な形状または厚いプリフォームの自動適用中、可能な限り膨潤しない材料を有すること、したがって複合部品の最終厚みに近い適用された材料厚みを有することが重要である。実際、材料が有意なオーバーラン、したがって積層体の製造後の最終厚みよりもはるかに高い厚みを呈する場合、部品に重大な欠陥が存在する。欠陥は主に過剰な長さに起因し、しわを生成する。これは当業者には受け入れられない。この特性を特徴付けるために、プリフォームの厚みは、真空下に配置する前後の自動適用後に測定される。
【0154】
図12に例示するように、対称的な疑似等方性積層を有する、より正確には[+45/0/-45/90]3sドレープを有する200×200mmのプリフォームPが形成された。プリフォームPは、プレート上に載置される。FANUCロボットおよびHEIDENHAIN/ST3077 LVDTプローブを使用して厚みを測定した。プローブの先端は、直径50mmの円形キーである。プローブは、P1~P5の5点でプリフォームの厚みを測定し、これによりプリフォームの平均厚み値を得ることができる。測定は、xが50mm、yが50mmごとに行う。
【0155】
次いで、真空バッグおよびポンプを使用して、プリフォームを真空下(15mbar未満の残留圧力)に置く。次いで、集合体の厚みが測定され、消耗品の厚みが差し引かれて、真空下のプリフォームの厚みが得られる。
【0156】
次いで、真空下の厚みに対する非真空下の厚みの比を算出する。この比が高いほど、真空下の厚みと比較して非真空下の厚みが大きくなり、最終部品に欠陥を有するリスクが大きくなる。目標は、この比率を最小化することである。
【0157】
以下の表4は、材料2~12の理論厚み(真空下の厚み)で割った厚み(非真空下の厚み)の比をまとめている。
【0158】
【表4】
【0159】
先行技術の材料2および3と比較して、本発明による材料4~12は、真空下の厚みに対する非真空下の厚みの比の最小化を可能にする。したがって、本発明の発明内容は、オーバーランの低減を可能にする。
【0160】
2)自動分注の品質に及ぼす撚りの影響。
【0161】
自動化されたプリフォーム適用工程は、プリフォームに欠陥を生じさせないことが不可欠である。強化糸の構造は、適用の質に影響を及ぼす可能性がある。したがって、強化糸の撚りが適用後のプリフォームの質に影響を及ぼすか否かを決定する必要がある。
【0162】
より正確には、強化糸の撚りは、いわゆる「せん断」現象に影響を及ぼし得る。強化材料(一方向ウェブ2およびベール4、5)を重ね合わせてレイアップする際に、レイアップ時のロボットヘッドの圧力や動きにより、次のプライの真下に位置するプライの強化糸がせん断に供される。このせん断は、レイアップの初期部分で最も優勢である。いくつかのプライが適用されると、このプライ内せん断は増大する可能性があり、その結果、プリフォームの厚みが局所的に増加し、欠陥(しわ、ほつれ、層間剥離など)が出現し、プリフォームの質が低下する。
【0163】
撚り強化糸を用いて工業式自動プライ適用試験を行った。Coriolis 16 プライ1/4インチAFPヘッドおよび12kwレーザー型加熱手段を備えたCoriolis C1ロボットを使用してレイアップを行った。この特定の場合には、16個のウェブのうちの8個のみが同時に、並んで適用された。従う加熱則を以下の表5に記載する。
【0164】
【表5】
【0165】
サクションテーブル上に、撚り強化糸からなるプライを0°で連続的にドレープし、500mm(0°方向)×150mmのプリフォームを形成した。矢印Fによって表されるレイダウン方向に従って行われる強化糸敷設の開始は、常にプリフォーム上の同じ場所(図13の長方形ゾーンZ1)に位置する。したがって、研究された厚みは、このゾーンZ1に位置していた。
【0166】
各プライのドレープ後、プリフォームのレイアップ開始(ゾーンZ1内の点P’1,P’2,P’3)の領域における厚み測定を、罫引、アルミニウムバーから作製された支持体、および厚み測定時にプリフォームに加えられた0.02バールの圧力を示す1kgの重量によって行った。測定中、厚み測定装置は常に同じ場所に位置する。この厚み測定装置は、各プライの適用後、ロボットが通過し、次いで適用後に再配置されることを可能にするために取り除かれる。プリフォームの質が不十分であると判断された場合、ドレープは停止する。
【0167】
本発明による材料4および8(表3)を、比較材料2および3とそれぞれ比較した。
【0168】
図14および図15は、比較材料3および本発明による材料8(図14)、ならびに比較材料2および本発明による材料4(図15)について適用されたプライの数の関数としてのオーバーランの変化を示す。
【0169】
なお、オーバーランは、適用されたプライの数Xに対するXの適用されたプライを有するプリフォームの総厚の比として定義される。
【0170】
オーバーラン(mm)=プリフォームの総厚(mm)/適用されたプライの数。
【0171】
これは、プライの平均厚みの指標を与え、したがってオーバーラン現象を数量化することを可能にする。膨張現象を最大にするために、0°で延在する一方向ウェブを用いて強化材料のスタックが作製される。
【0172】
図14および図15に示すように、適用されたプライの数の関数としてのプライ当たりの厚みの変化は、撚り強化糸(それぞれ本発明の材料8または4)では、微穿孔法(それぞれ比較材料3または2)よりも小さい。撚り強化糸を用いた結果は、先行技術による無撚で微穿孔された強化糸を有する同等の材料と比較して、適用後のオーバーランの減少およびプリフォームのより良好な品質を実証する。
【0173】
3)強化材料の横方向透過性に及ぼす撚りの影響:
【0174】
本発明が、従来技術による微穿孔の強化材料を用いて得られるものと同レベルの強化材料の横方向透過性を維持することを検証することが重要である。これは、流体が繊維材料を通過する能力として定義することができる。これはmで測定される。以下の表6に示す値は、さらなる詳細について参照され得る、2009年10月16日にEcole Nationale Superieure des Mines de Saint Etienneで支持されたRomain Nunezによる「Problematique de la mesure de la permeabilite transverse de preformes fibreuses pour la fabrication de structures composites」[Measuring the transverse permeability of fibrous preforms for the manufacture of composite structures]と題する論文に記載されている装置および測定技術を用いて測定された。
【0175】
特に、測定は、2つの同一円筒形チャンバを使用して試験中に試料の厚みを監視することによって行われ、「レーストラッキング」(透過性が測定される材料に隣接したまたは材料の「側面」の流体の通過)の影響を低減することを可能にする。使用される流体は水であり、圧力は1バール+/-0,01バールである。直径270mmのプリフォームを、対称的な疑似等方性積層、[+45/0/135/90]S、8プライに従って作製した。
【0176】
以下の表6は、比較材料1、2、および3、ならびに本発明による材料4~12(表3参照)で、50%、55%、および60%の繊維体積率(FVR)について測定された横方向透過率値を列挙している。各材料につき異なる繊維体積率を有する3つの試料について見出された表6の横方向透過率値を図16に要約する。
【0177】
【表6】
【0178】
すべての強化糸が1メートル当たり8ターンまたは1メートル当たり10ターンのいずれかで撚られている場合、本発明による材料(材料4および5)の横方向透過率は、研究された3つの体積率について、比較微穿孔材料(比較材料2)の横方向透過率と同等である。撚りの選択は、力価および糸のフィラメント数に依存する。異なる撚りは、異なる力価およびフィラメント数を有する糸について同様の結果をもたらし得る。
【0179】
280g/mの炭素繊維目付では、強化糸をメートル当たり10ターンで撚ることにより、従来技術による微穿孔材料よりも良好な平均横方向透過率が得られるようである。
【0180】
1メートル当たりのターン数が減少するにつれて(材料4および5と比較した材料6、ならびに材料8と比較した材料9)、材料の横方向透過率は低くなる。しかし、微穿孔のない比較材料(比較材料1)よりも高いままである。
【0181】
撚り強化糸の数が少ないほど、1m当たりのターン数が多くても(材料7)、(材料4と比較して)横方向透過率が低下する。強化糸を撚り、横方向透過率を向上させるためには、個々の撚り強化糸の1m当たりのターン数を増やそうとするよりも、すべての強化糸を撚り合わせる方が効果的である。
【0182】
4)複合材の機械的特性に及ぼす強化糸の撚りの効果:
【0183】
炭素目付に適した積層順序からなる430mm×430mmのプリフォームを射出金型内に加圧下で配置した。プリフォームを囲む既知の厚みのフレームを使用して、所望の繊維体積比(FVR)を達成した。参照HexFlow RTM6として、HEXCEL Corporation、米国コネチカット州スタンフォードによって販売されているエポキシ樹脂を、プレス内で120℃に維持されたプリフォームを通して2バール下、80℃で射出した。プレスによって加えられた圧力は5.5バールであった。プリフォームを充填し、樹脂が金型から出た後、出口管を閉じ、硬化サイクルを開始した(180℃へと3℃/分、続いて180℃で2時間後硬化、5℃/分で冷却)。
【0184】
次いで、試験片を適切なサイズに切断して、以下の表7に要約されている開孔(OHC)圧縮試験および固体板(UNC)圧縮試験を行った。
【0185】
【表7】
【0186】
試験は、本発明による8つの強化材料4~11ならびに比較材料2および3を用いて行った(表3)。開孔圧縮(OHC)試験の結果を以下の表8に示す。
【0187】
【表8】
【0188】
従来技術では、炭素目付が機械的結果に影響を及ぼし得ることが知られている。一般に、炭素重量が高いほど、機械的圧縮特性が低くなる傾向がある。本出願では、結果を炭素重量と比較する。
【0189】
目付が210g/mの場合、開孔圧縮試験(OHC)について比較材料と本発明による材料との間に差異はない。280g/mの目付についても同じ結論を引き出すことができる。350g/mの目付では、微穿孔材料と比較することは不可能であり、これは実現可能でないためである。
【0190】
固体板(UNC)についての圧縮試験の結果を以下の表9に示す。
【0191】
(欠落)
【0192】
【表9】
【0193】
表9の結果により、開孔試験に関して同じ結論を引き出すことが可能である。
【0194】
5)横方向電気伝導率に及ぼす強化糸の撚りの影響:
【0195】
335mm×335mmのプリフォームは、強化プライで構成され、その数は炭素強化糸の目付に依存する。積層順序は[0/90]nsであり、nsは、3mmの最終厚みおよび60%の繊維体積を有するパネルを得るために、炭素強化糸の目付に応じた整数である。次いで、プリフォームを所定の圧力下で射出金型に入れた。機械的圧縮試験(上記の段落4を参照)と同じ方法で、複合強化材料/RTM6のパネルを射出法(圧縮板と同じパラメータ)によって形成した。
【0196】
ウォータージェットカッターを使用して、パネル全体に均一に分布した24個の40mm×40mmの試験片を予め切断した。次に、予備切断パネルの両面に対してサンドブラスティングで炭素繊維を露出させた。次に、パネルの前面および背面を処理して、電気アークプロセスによって導電性金属、典型的にはスズおよび亜鉛の層を適用した。金属の適用は、サンドブラスティングまたはサンディングによって試料フィールドから除去することができる。この導電性金属の適用は、試料と測定機器との間の低い接触抵抗を可能にする。次いで、個々の試料をパネルから切り出した。
【0197】
電流および電圧を変えることができる電源(TTi EL302Pプログラム可能な30V/2A電源、Thurlby Thandar Instruments、英国ケンブリッジ)を使用して抵抗を決定した。試料は電源の2つの電極と接触していた。これらの電極をクランプによって接触させた。電極が互いにまたは他の金属と接触しないことを確実にするように注意しなければならない。1Aの電流を印加し、電圧計/オーム計に接続された他の2つの電極によって抵抗を測定した。試験は、測定される各試料に対して行った。次いで、試料の寸法および以下の式を使用して抵抗値から導電率値を算出した。
【0198】
抵抗率(オーム.m)=抵抗(オーム)×面積(m)/厚み(m)
【0199】
導電率(S/m)=1/抵抗率
【0200】
比較材料2ならびに本発明による材料4および5を用いて横方向電気伝導率試験を行った(表3)。試験結果を以下の表10に示す。
【0201】
【表10】
【0202】
比較材料2ならびに本発明による材料4および5は、同じ繊維目付を有する。本発明による材料4の平均横方向電気伝導率は、従来技術に従って微穿孔された比較材料2の平均横方向電気伝導率よりも高い。強化糸を撚ることにより、強化材料の横方向電気伝導率が向上する。
【0203】
(欠落)
【0204】
パートB
【0205】
実施された第二の一連の試験結果を以下の表11に示す。得られた材料は、比較材料27を除いて微穿孔されなかった。
【0206】
【表11】
【0207】
本発明による強化材料の製造
【0208】
これらの試験は、工業規模の生産の要件を満たす新しい生産ラインで行われ、これは、生産ラインの停止およびラインの構成要素の摩耗を減らす目的でより速い生産速度だけでなく、より高い安全性も必要とする。このような速度の増加はまた、ラインの全体的な慣性も増加させ、ラインの様々なポイント/ローラ、したがって特にベルトを駆動するのに必要な力で材料のより多くの摩擦事象を生成する。その結果、図19に関連して前述した製造ラインは、連続ベルト15aおよび15bの電動化を導入することによって改変された。ベルト15aおよび15bは、ローラ14aおよび14cによって互いに独立してモータ駆動され、ローラ14bおよび14dは自由に回転したままであった。
【0209】
この生産速度の増加は、すべて同じ種類のS撚りまたはZ撚りを有する撚り強化糸を使用して、糸間の間隙、重なり、または波形などの欠陥の存在を最小限に抑えた一方向ウェブの生産において遭遇する困難を強調している。実際、コームまたはガイドローラの使用にもかかわらず、強化糸の軌道は完全に制御されておらず、欠陥の外観をもたらす。本発明の範囲内で提案されるように、混合S/Z一方向ウェブを使用することによって、これらのリスクを最小化または回避することさえできる。
【0210】
この工業規模の生産ラインでは、いくつかの材料19が並行して製造されたため、より高い生産速度であった。
【0211】
第1の一連の試験と同様に、テープの形態の本発明によるいくつかの強化材料を同時に製造した。
【0212】
同様に、いくつかの材料20およびいくつかの材料21を並行して製造した。得られた材料20および21は、材料19と比較して、特に縁部でより規則的であることが分かった。実際、糸の整列の品質は、材料20および21の場合、一方向ウェブの形成中により良好であった。その結果、並んで製造された2つの一方向ウェブ間の距離がより規則的であり、それによって、形成された2つの一方向ウェブ間で、その2つの面に積層された2つのベールを切断することが容易になった。
【0213】
材料22および23、ならびに24および25についても同様の観察を行った。S撚糸のみの材料22の場合、一連のSZSZSZ糸を使用した材料23の場合よりも、しわ、糸間の間隙または重なり、および縁部の不規則性などの欠陥が多く観察された。同様に、Z撚り糸のみを含む材料24の場合、一連のSSZZSS糸を使用した材料25の場合よりも、しわ、糸間の間隙または重なり、縁部の不規則性などのより多くの欠陥が観察された。
【0214】
さらに、7本のS撚糸、5本のZ撚糸、次いで6本のS撚糸の配列を有する18本の糸を含む材料26の場合、前述の方法による一方向ウェブの形成は、図18に示すような一方向ウェブをもたらした。この図から分かるように、7本のS撚糸/5本のZ撚糸の接合部に顕著な間隙があり、これはウェブの全長に沿って1mm超幅の連続的な間隙が生じることで品質欠陥を構成する。Z撚糸群は右方に、S撚糸群は左方に引き出されている。この結果、不満足な連続間隙が生じる。この順序は、S撚糸およびZ撚糸の数に関してよりバランスがとれた一方向ウェブをもたらし、糸間間隙のリスクの減少に起因してより大きな被覆を有する、本発明に即して与えられる混合S/Z一方向ウェブの定義P1、P2、I1およびI2に対応していない。
【0215】
したがって、本発明の範囲内で、ガイド装置もしくはコームの使用にもかかわらず、同じ撚りを有するか、または本発明の範囲内で与えられる混合S/Z一方向ウェブについての定義P1、P2、I1、およびI2に対応しない構成を有する撚り強化糸を用いた一方向ウェブの形成中に、強化糸の軌道に偏向現象があることが観察された。これらの現象は3本以下の糸しかない一方向ウェブでは起こらない。本発明の範囲内で提案された混合S/Z一方向ウェブの使用は、3本超の糸からなる一方向ウェブの問題を解決する。
【0216】
さらに、偏向現象は、製造された強化材料の幅の増加と共に悪化した。この問題は、7mmを超え、さらには12mmを超える製造幅ではさらに顕著である。本発明の範囲内で提案された混合一方向S/Zウェブで解決される強化糸の偏向のリスクは、使用される製造方法、すなわち、複数の強化材料が並行して製造されるか否かにかかわらず生じる。実際、偏向現象が発生すると、本発明による材料の適用中に問題を引き起こし、不十分な位置決めにつながる。
【0217】
本発明による強化材料の自動適用
【0218】
材料19~25は、適用面に適用される前に、材料が循環するガイド溝からなるガイドを備える自動適用装置によって適用された。このガイドにより、ウェブが確実に装置の適用ヘッドの出口に適切に位置決めされることが可能になり、それにより、図17の左側部分に提示された写真に見られるように、適用ヘッドが強化材料の軌道および適用面上での位置決めを良好に制御することを可能にする。図17に示すように、材料の評価では、接合適用を得るために、材料19の一連の平行な試験片(SSSS)を隣り合って適用することによって、平坦な表面上に適用を行った。材料20(SZZS)および材料21(SZSZ)についても同じ手順に従った。これらの最後の2つの材料により、適用はより良好に制御され、その結果、適用面上の間隙および波形が減少する。ガイド溝内の材料の挙動を観察することにより、材料19(SSSS)の不適切なセンタリングが発生し、それによって溝の縁部の一方に当接するが、材料20および21は溝内におよびその2つの縁部上で支持されて非常に良好にセンタリングされていることに留意されたい。
【0219】
最初に、材料22および23について、第2に、材料24および25について同じ知見が観察された。S撚糸のみを含む材料22の場合、一連のSZSZSZ糸を使用する材料23の使用と比較して、適用はそれほど良好ではない。同様に、Z型糸のみを含む材料24の場合、一連のSSZZSS糸を使用した材料25の場合よりも多くの間隙が観察された。表12は、材料24および25の適用の場合に、定規で測定した、2つの試験片間で得られた平均間隙幅を示す。
【0220】
【表12】
【0221】
S撚糸およびZ撚糸の両方からなるSSZZSSウェブの使用は、得られる一方向ウェブにおいて強化糸のないゾーンの明確な減少をもたらすことは明らかである。
試験片の数8 適用8 平均間隙(mm)0.1mm 1.5mm
【0222】
本発明による材料の性能
【0223】
本発明による材料の性能を、パートAに記載の方法に従って評価した。
【0224】
一方向ウェブがS撚糸またはZ撚糸のみからなるか否か、または一方向ウェブがS撚糸およびZ撚糸の両方からなるか否かにかかわらず、本発明に即して提案された撚糸を使用する利点は、非真空厚みに対する真空厚みの比の減少、オーバーランの減少、材料の横方向透過性の改善、および材料の横方向電気伝導性の改善に関して保持される。
【0225】
製造された強化材料の欠陥が減少するため、機械的性能は非常に良好である。
【0226】
得られた結果を以下の表13に示す。
【0227】
(欠落)
【0228】
【表13】
【0229】
比較の微穿孔材料27と比較して、S撚糸およびZ撚糸の両方からなる一方向ウェブのオーバーラン性能は、改善される。これにより、材料が、同方向に撚られた一連の糸からなる一方向ウェブであっても、S撚糸とZ撚糸との混合物からなる一方向ウェブであっても、オーバーラン性能が向上する。得られた結果を以下の表14に示す。
【0230】
【表14】
【0231】
また、本発明の材料23について横方向透過性能を測定し、比較材料27の横方向透過性能と比較し、以下の表15に示す。2つの材料について、得られた横方向透過率は同等である。
【0232】
【表15】
【0233】
本発明による材料23についても横方向の電気伝導率性能を測定し、以下の表16に示す。
【0234】
【表16】
【0235】
本発明による材料23は、比較材料2と比較して良好な電気特性を提供する。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】