IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】全固体二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20230420BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20230420BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20230420BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230420BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230420BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/133
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554369
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 KR2021001985
(87)【国際公開番号】W WO2021182762
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0029166
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503447036
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】セウォン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スンキュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直毅
(72)【発明者】
【氏名】藤木 聡
(72)【発明者】
【氏名】辻村 知之
(72)【発明者】
【氏名】ヒョクジョ・グウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュシク・キム
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL06
5H029AM12
5H029CJ03
5H029CJ15
5H029CJ28
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ15
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB07
5H050DA03
5H050EA06
5H050FA02
5H050GA03
5H050GA27
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA15
(57)【要約】
正極と、負極と、正極と負極との間に配された固体電解質層と、を含み、該負極は、負極集電体と、該負極集電体に接触し、第1金属を含む第1負極活物質層と、該第1負極活物質層と固体電解質層との間に配され、炭素系活物質を含む第2負極活物質層と、該第2負極活物質層と固体電解質層との間に配され、第2負極活物質層と固体電解質層との接触を遮断するように配された接触層と、を含み、該接触層は、第2金属を含み、第1負極活物質層の厚みより薄い厚みを有する全固体二次電池である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に配された固体電解質層を含む全固体二次電池であり、
前記負極は、
負極集電体と、
前記負極集電体に接触し、第1金属を含む第1負極活物質層と、
前記第1負極活物質層と前記固体電解質層との間に配され、炭素系活物質を含む第2負極活物質層と、
前記第2負極活物質層と前記固体電解質層との間に配され、前記第2負極活物質層と前記固体電解質層との接触を防止するように配された接触層と、を含み、
前記接触層は、第2金属を含み、前記第1負極活物質層の厚みより薄い厚みを有する、全固体二次電池。
【請求項2】
前記第1金属は、リチウム金属またはリチウム合金を含み、
前記第2金属は、リチウム金属またはリチウム合金を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項3】
前記第1金属と前記第2金属とが同一である、請求項2に記載の全固体二次電池。
【請求項4】
前記接触層の厚みは、前記第1負極活物質層の厚みの20%以下である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項5】
前記接触層の厚みは、1nm~1μmである、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項6】
前記接触層の厚みは、前記第2負極活物質層の厚みより薄い、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項7】
前記接触層は、炭素系物質を含まない、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項8】
充電/放電サイクル過程において、前記第1負極活物質層の体積変化率は、前記接触層の体積変化率より大きい、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項9】
充電/放電サイクル過程において、前記第2負極活物質層の体積変化率は、前記接触層の体積変化率より大きい、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項10】
充電後状態の前記接触層の体積は、放電後状態の前記接触層の体積の1.5倍~20倍である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項11】
充電後状態の前記第1負極活物質層の体積は、放電後状態の前記第1負極活物質層の体積の1.5倍~500倍である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項12】
充電後状態の前記第2負極活物質層の体積は、放電後状態の前記第2負極活物質層の体積より大きく、
充電後状態の前記第2負極活物質層の体積は、放電後状態の前記第2負極活物質層の体積の2倍以下である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項13】
前記固体電解質層は、酸化物系固体電解質を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項14】
正極層を提供する段階と、
負極層を提供する段階と、
固体電解質層を提供する段階と、
前記固体電解質層の一面に負極層を接合する段階と、
前記固体電解質層の他面に正極層を接合する段階と、を含み、
前記負極層を提供する段階は、
第1基板上に配されたリチウム金属またはリチウム合金を含む第1層と、第2基板上に配された炭素系活物質を含む第2層と、を配する段階と、
前記第1層と前記第2層とが対向するように配し、前記第1基板と前記第2基板とが近くなるように、所定以上の圧力で加圧する段階と、を含み、
前記第1基板と前記第2基板とを加圧する過程において、
前記第2基板と前記第2層との間に、リチウム金属またはリチウム合金を含む第3層が形成され、前記第3層は、前記第1層の厚みより薄い厚みを有する、全固体二次電池の製造方法。
【請求項15】
前記第2層は、リチウムと合金が可能な金属を含み、
前記第1基板と前記第2基板とを加圧する段階において、
前記第1層及び前記第3層において、リチウムと合金が可能な前記金属は、リチウムと合金を形成する、請求項14に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項16】
前記負極層を提供する段階においては、
前記第3層が形成された後、前記第2基板を除去する段階をさらに含む、請求項14に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項17】
前記第1基板と前記第2基板とを加圧する段階において、加えられる圧力は、150Mpa~1,000Mpaである、請求項14に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項18】
第1基板上に配されたリチウム金属またはリチウム合金を含む第1層と、第2基板上に配された炭素系活物質を含む第2層と、を提供する段階と、
前記第1層と前記第2層とが対向するように配し、前記第1基板と前記第2基板とが近くなるように、所定以上の圧力で加圧する段階と、を含み、
前記第1基板と前記第2基板とを加圧する段階においては、
前記第2基板と前記第2層との間に、リチウム金属またはリチウム合金を含む第3層が形成され、前記第3層は、前記第1層の厚みより薄い厚みを有する、全固体二次電池の負極層の製造方法。
【請求項19】
前記第2層は、リチウムと合金が可能な金属を含み、
前記第1基板と前記第2基板とを加圧する段階において、
前記第1層及び前記第3層において、リチウムと合金が可能な前記金属は、リチウムと合金を形成する、請求項18に記載の全固体二次電池の負極層の製造方法。
【請求項20】
前記第3層が形成された後、前記第2基板を除去する段階をさらに含み、
前記第1基板と前記第2基板とを加圧する段階において加えられる圧力は、150Mpa~1,000Mpaである、請求項18に記載の全固体二次電池の負極層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、産業上の要求により、エネルギー密度と安全性とが高い電池が開発されている。例えば、リチウムイオン電池は、情報関連機器、通信機器分野だけではなく、自動車分野においても、実用化されている。該自動車分野においては、特に、リチウムイオン電池の安全性が重要視される。
【0003】
現在市販されているリチウムイオン電池は、可燃性有機溶媒を含み、電解液が含まれているために、短絡が生じた場合、該有機溶媒の過熱及び火災の可能性がある。それに対し、電解液の代わりに、固体電解質を含む全固体二次電池が提案されている。
【0004】
全固体二次電池は、可燃性有機溶媒を使用しないことにより、短絡が生じても、火災や爆発が生じる可能性を大きく低下させることができる。従って、そのような全固体電池は、電解液を使用するリチウムイオン電池に比べ、大きく安全性を高めることができる。
【0005】
そのような全固体二次電池のエネルギー密度を高めるために、負極活物質として、リチウムを使用することができる。例えば、該リチウムの容量密度(単位質量当たり容量)は、(負極活物質として折々使用される)黒鉛の容量密度より10倍大きい。従って、負極活物質としてリチウムを使用し、全固体二次電池を薄型化させながら、出力を高めることができる。
【0006】
ただし、短絡が生じる可能性が低い改善された全固体二次電池に対する要求が出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の一態様においては、固体電解質のクラック形成を防止しながらも、負極層と固体電解質との界面抵抗を低減させることができる全固体二次電池及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様による全固体二次電池は、
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に配された固体電解質層を含み、
前記負極は、
負極集電体と、
前記負極集電体に接触し、第1金属を含む第1負極活物質層と、
前記第1負極活物質層と前記固体電解質層との間に配され、炭素系活物質を含む第2負極活物質層と、
前記第2負極活物質層と前記固体電解質層との間に配され、前記第2負極活物質層と前記固体電解質層との接触を防止するように配された接触層と、を含み、
前記接触層は、第2金属を含み、前記第1負極活物質層の厚みより薄い厚みを有しうる。
【0009】
前記第1金属は、リチウム金属またはリチウム合金を含み、前記第2金属は、リチウム金属またはリチウム合金を含むものでもある。
前記第1金属と前記第2金属とが同一でもある。
【0010】
前記接触層の厚みは、前記第1負極活物質層の厚みの20%以下でもある。
前記接触層の厚みは、1nm~1μmでもある。
前記接触層の厚みは、前記第2負極活物質層の厚みよりも薄い。
【0011】
充電/放電サイクル過程において、前記第1負極活物質層の体積変化率は、前記接触層の体積変化率よりも大きい。
【0012】
充電/放電サイクル過程において、前記第2負極活物質層の体積変化率は、前記接触層の体積変化率よりも大きい。
【0013】
充電後状態の前記接触層の体積は、放電後状態の前記接触層の体積の1.5倍~20倍でもある。
【0014】
充電後状態の前記第1負極活物質層の体積は、放電後状態の前記第1負極活物質層の体積の1.5倍~500倍でもある。
【0015】
充電後状態の前記第2負極活物質層の体積は、放電後状態の前記第2負極活物質層の体積より大きく、充電後状態の前記第2負極活物質層の体積は、放電後状態の前記第2負極活物質層の体積の2倍以下でもある。
前記固体電解質層は、酸化物系固体電解質を含むものでもある。
【0016】
一態様による全固体二次電池の製造方法は、
正極層を提供する段階と、
負極層を提供する段階と、
固体電解質層を提供する段階と、
前記固体電解質層の一面に負極層を接合する段階と、
前記固体電解質層の他面に正極層を接合する段階と、を含み、
前記負極層を提供する段階は、
第1基板上に配されたリチウム金属またはリチウム合金を含む第1層と、第2基板上に配された炭素系活物質を含む第2層と、を配する段階と、
前記第1層と前記第2層とが対向するように配し、前記第1基板と前記第2基板とが近くなるように、所定以上の圧力で加圧する段階と、を含み、
前記第1基板と前記第2基板とを加圧する過程において、
前記第2基板と前記第2層との間に、リチウム金属またはリチウム合金を含む第3層が形成され、前記第3層は、前記第1層の厚みより薄い厚みを有しうる。
【0017】
前記第2層は、リチウムと合金が可能な金属を含み、前記第1基板と前記第2基板とを加圧する段階において、前記第1層及び前記第3層において、リチウムと合金が可能な前記金属は、リチウムと合金を形成することができる。
【0018】
前記負極層を提供する段階においては、前記第3層が形成された後、前記第2基板を除去する段階をさらに含むものでもある。
【0019】
前記第1基板と前記第2基板とを加圧する段階において、加えられる圧力は、150Mpa~1,000Mpaでもある。
【0020】
他の実施例による全固体二次電池の負極層の製造方法は、
第1基板上に配されたリチウム金属またはリチウム合金を含む第1層と、第2基板上に配された炭素系活物質を含む第2層と、を準備する段階と、
前記第1層と前記第2層とが対向するように配し、前記第1基板と前記第2基板とが近くなるように、所定以上の圧力で加圧する段階と、を含み、
前記第1基板と前記第2基板とを加圧する段階においては、
前記第2基板と前記第2層との間に、リチウム金属またはリチウム合金を含み、前記第1層の厚みより薄い第3層が形成されうる。
【0021】
前記第2層は、リチウムと合金が可能な金属を含み、前記第1基板と前記第2基板とを加圧する段階において、前記第1層及び前記第3層において、前記金属は、リチウムと合金を形成することができる。
【0022】
前記第3層が形成された後、前記第2基板を除去することができる。
【0023】
前記第1基板と前記第2基板とを加圧する段階において、加えられる圧力は、150Mpa以上でもある。
【発明の効果】
【0024】
本実施例による全固体二次電池及びその製造方法は、固体電解質のクラックを防止しながらも、負極層と固体電解質との界面抵抗を低減させることができる。
【0025】
開示の特定実施例の前記、並びに他の側面、特徴及び利点は、添付図面と共に、以下の説明からさらに明らかになる:
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施例による全固体二次電池について説明するための断面図である。
図2図1の負極層について説明するための断面図である。
図3】一実施例による全固体二次電池の負極層の充電について説明するための断面図である。
図4】一実施例による全固体二次電池の負極層の放電について説明するための断面図である。
図5A】一実施例による負極層の充電後の断面SEM(scanning electron microscope)イメージである。
図5B】一実施例による負極層の放電後の断面SEM(scanning electron microscope)イメージである。
図6A】接触層と第2負極活物質層との周辺を示す図5AのSEM(scanning electron microscope)イメージの拡大図面である。
図6B】接触層と第2負極活物質層との周辺を示す図5BのSEM(scanning electron microscope)イメージの拡大図面である。
図7A】負極層を製造する方法の実施例の図面である。
図7B】負極層を製造する方法の実施例の図面である。
図7C】負極層を製造する方法の実施例の図面である。
図7D】負極層を製造する方法の実施例の図面である。
図8】一実施例による負極層を示す写真である。
図9】比較例による負極層を示す断面図である。
図10】比較例による負極層を示す写真である。
図11】一実施例による負極層の断面SEM(scanning electron microscope)イメージである。
図12図11の一部を拡大したイメージである。
図13図12の一部を拡大したイメージである。
図14】比較例1,2及び実施例1のインピーダンス測定結果を示す虚数インピーダンス(Z”:ohm/cm)対実際インピーダンス(Z’:ohm/cm)のナイキストプロットである。
図15図14の一部を拡大した図面である。
図16】比較例1による負極層を含む全固体二次電池の充放電カーブを示す電位(volts vs Li/Li)対面積容量(mAh/cm)のグラフである。
図17】比較例21による負極層を含む全固体二次電池の充放電カーブを示す電位(volts vs Li/Li)対面積容量(mAh/cm)のグラフである。
図18】実施例1による負極層を含む全固体二次電池の充放電カーブを示す電位(volts vs Li/Li)対面積容量(mAh/cm)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において、実施例について詳細に参照するが、その例は、添付図面に図示されている。それと係わり、本実施例は、異なる形態を有し、ここで説明する説明に限定されるものであると解釈されるものではない。従って、実施例は、単に様態について説明するために、図面を参照し、以下で説明されるであろう。
【0028】
一要素が他要素の「上」にあることと言及されるとき、それは、他要素上に直接にもあるか、あるいはその間に介在要素が存在しうるということを理解するであろう。対照的に、一要素が他要素の「真上」にあることに言及されるとき、中間要素が存在しない。
【0029】
用語である「第1」、「第2」、「第3」というものは、多様な要素、構成要素、領域、層及び/またはセクションについて説明するために、本明細書で使用されうるが、そのような要素、構成要素、領域、層及び/またはセクションは、そのような用語に制限されるものではない。そのような用語は、1つの要素、構成要素、領域、層またはセクションを、他の要素、構成要素、領域、層またはセクションと区別することのみに使用される。従って、以下で論議される第1の「要素」、「構成要素」、「領域」、「層」または「セクション」は、本明細書の教示をはずれずに、第2の「要素」、「構成要素」、「領域」、「層」または「セクション」とも称される。
【0030】
本明細書で使用された用語は、単に特定実施例について説明するために使用されたものであり、限定する意図ではない。本明細書に使用されているように、「a」、「an」、「the」及び「少なくとも一つ」は、量の制限を示すものではなく、文脈において、明白に取り立てて示されない限り、単数及び複数をいずれも含むと意図される。例えば、「要素」は、文脈で明確に取り立てて指示しない限り、「少なくとも1つの要素」と同一意味を有する。「または」は、「及び/または」を意味する。本明細書に使用されているように、用語「及び/または」は、1以上の関連する羅列された項目の任意及び全ての組み合わせを含む。「少なくとも以下のうち一つ」というような表現は、要素リストの前へ来るとき、要素の全体リストを修飾し、リストの個別要素を修飾するものではない。本明細書で使用されるとき、「含む」及び/または「含むところの」、または「包含する」及び/または「包含するところの」という用語は、言及された特徴、領域、整数、段階、動作、要素の存在を明示するということがさらに理解されるであろう。「及び/または」は、構成要素を含むが、1以上の他の特徴、領域、整数、段階、作業、要素、構成要素、及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。
【0031】
「下(beneath)」、「下側(below)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」のような空間的に相対的な用語は、1つの要素、または他の要素に係わる特性の関係について説明しやすく説明するために、ここで使用されうる。または、空間的に相対的な用語は、図面に図示された方向に追加して使用中または作動中である装置の他の方向を含むように意図されていると理解されるであろう。例えば、図面の装置が逆さまになった場合、他の要素または特徴の「下(beneath)」または「下側(below)」と説明された要素は、他の要素または特徴の「上(above)」を向くようにもなる。従って、例示的な用語「下側(below)」は、上下の方向をいずれも含むものでもある。装置は、異なっても配向され(90°、または他の配向にも回転される)、ここに使用された空間的に相対的な指示子は、そのように解釈される。
【0032】
本明細書に使用された「約」または「ほぼ」は、言及された値を含み、当該測定、及び該測定に関連する誤差を考慮し、当業者が決定した特定値につき、許容可能な偏差範囲内を意味する。特定数量(すなわち、測定システムの限界)。例えば、「約」は、1以上の標準偏差以内、または明示された値の±30%、±20%、±10%または5%の以内を意味しうる。
【0033】
取り立てて定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的、科学的な用語含む)は、本開示が属する技術分野において当業者に、一般的に理解されるところと同一意味を有する。また、一般的に使用される事前に定義されたような用語は、関連技術及び本開示内容の脈絡において、その意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、理想的な意味に解釈されるか、あるいはここに明示上に定義されない限り、過度に形式的な意味に解釈されるものではないと理解されるであろう。
【0034】
例示的な実施例は、理想的な実施例の概略図である断面図を参照し、本明細書で説明される。例えば、製造技術及び/または許容誤差の結果として、例示の形態において、変形が予想される。ここに説明された実施例は、ここに説明された領域の特定形状に制限されると解釈されるものではなく、例えば、製造過程で生じる形状の偏差を含むものでもある。例えば、平らであると例示されたり説明されたりする領域は、一般的に、粗く、かつ/あるいは非線形である特徴を有しうる。また、例示された鋭い角度は、丸くもある。従って、図面に例示された領域は、本質的に図式的であり、その形状は、領域の正確な形状を例示するためでもなく、本願特許請求の範囲を制限するためでもない。
【0035】
以下、添付された図面を参照し、一実施例による全固体二次電池、ここに使用される負極層、及びその製造方法について詳細に説明する。図面において、同一参照符号は、同一構成要素を指し、各構成要素の大きさや厚みは、説明の便宜のために誇張され得る。なお、以下で説明される実施例は、単に例示的なものに過ぎず、そのような実施例から、多様な変形が可能である。
【0036】
電解質として固体電解質を使用し、負極活物質としてリチウムを含む全固体二次電池においては、充電過程において、リチウム金属が固体電解質表面に不均一に蒸着され、それは、固体電解質のクラックを誘導しうる。該固体電解質のクラックは、全固体二次電池の短絡(short circuit)をもたらしうる。本実施例は、負極活物質層と固体電解質層との間に金属を含む薄い接触層を含み、クラック発生及び短絡発生を最小化させた全固体二次電池を提供する。
【0037】
図1は、一実施例による全固体二次電池1について説明するための断面図であり、図2は、図1において、負極層20について説明するための断面図である。図3及び図4は、全固体二次電池1の負極層20の充電及び放電の効果について説明するための図面である。
【0038】
図1及び図2を参照すれば、一実施例による全固体二次電池1は、電解質として、固体電解質を含む二次電池である。一例として、全固体二次電池1は、リチウムイオンが、正極層10と負極層20との間を移動するいわゆる全固体リチウムイオン二次電池でもある。
【0039】
全固体二次電池1は、正極層10(正極とも言う)、固体電解質層30、負極層20(負極とも言う)を具備する。
【0040】
(正極層)
正極層10は、正極集電体11及び正極活物質層12を含む。
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)、それらの合金、またはそれらの組み合わせを含む板状体(plate)またはホイル(foil)でもある。正極集電体11は、省略可能である。
【0041】
正極活物質層12は、例えば、正極活物質を含む。
該正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵したり(absorb)及び放出したり(desorb)することができる正極活物質である。該正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケル酸化物(lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、リチウムマンガン酸化物(lithium manganate)、リン酸鉄リチウム(lithium iron phosphate)、またはそれらの組み合わせのようなリチウム遷移金属酸化物;硫化ニッケル;硫化銅;硫化リチウム;酸化鉄;酸化バナジウム(vanadium oxide)、あるいはそれらの組み合わせなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、正極活物質に適する物質であるならば、いずれも可能である。該正極活物質は、それぞれ単独、それらの組み合わせ、例えば、2種以上の混合物である。
【0042】
リチウム遷移金属酸化物は、例えば、Li1-bB’(前記化学式で、0.90≦≦a≦1及び0≦b≦0.5である);Li1-bB’2-c(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bB’4-c(前記化学式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoB’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cCoB’2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cCoB’2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMnB’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cMnB’2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMnB’2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMnGeO(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiI’O;LiNiVO;Li3-f(PO(0≦f≦2);Li3-fFe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか一つで表される化合物である。そのような化合物において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。
【0043】
そのような化合物表面にコーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、前述の化合物と、コーティング層が付加された化合物との混合物の使用も可能である。そのような化合物は、前述の化合物のうちからも選択される。該コーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのうち少なくとも一つを含むものでもある。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。該コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの組み合わせが挙げられる。該コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内において選択される。該コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング法、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野の当業者に十分に理解されうる内容であるので、詳細な説明は、省略する。
【0044】
該正極活物質は、例えば、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含むリチウム遷移金属酸化物を含む。「層状岩塩型構造」との用語は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に、酸素原子層と金属原子層とが相互に規則的に配列され、それにより、それぞれの原子層が二次元平面を形成している構造である。「立方晶岩塩型構造」との用語は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を示し、具体的には、陽イオン及び陰イオンがそれぞれ形成する面心立方格子(FCC:face-centered cubic lattice)が、互いに単位格子(unit lattice)のリッジ(ridge)の1/2ほどずれて配された構造を示す。そのような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNiCoAl(NCA)またはLiNiCoMn(NCM)(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)のような三元系リチウム遷移金属酸化物である。該正極活物質が、層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体二次電池1のエネルギー密度及び熱安定性がさらに向上される。
【0045】
該正極活物質は、前述のように、被覆層を含むものでもある。該被覆層は、全固体二次電池1の正極活物質の被覆層として公知されているものであるならば、いずれでもよく、制限されるものではない。該被覆層は、例えば、LiO-ZrOなどである。
【0046】
該正極活物質が、例えば、NCAまたはNCMのような三元系リチウム遷移金属酸化物として、ニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池1の容量密度を上昇させ、充電状態において、正極活物質の金属溶出の低減が可能である。結果として、全固体二次電池1の充電状態におけるサイクル特性が向上される。
【0047】
該正極活物質の形状は、例えば、真球形、楕円球形のような粒子形状である。該正極活物質の粒径は、特別に制限されるものではなく、全固体二次電池1の正極活物質に適する範囲である。正極層10の正極活物質の含量も、特別に制限されるものではなく、従来の全固体二次電池1の正極層10に適する範囲である。
【0048】
正極層10は、前述の正極活物質以外に、例えば、導電剤、バインダ、フィラ(filler)、分散剤、イオン導電助剤のような添加剤をさらに含むことが可能である。そのような導電剤は、例えば、黒鉛、カーボンブラック(CB:carbon black)、アセチレンブラック(AB:acetylene black)、ケッチェンブラック(KB:ketjen black)、炭素ファイバ、金属粉末、またはそれらの組み合わせである。該バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、またはそれらの組み合わせである。正極層10に配合可能なコーティング剤、分散剤、イオン導電助剤などとしては、固体二次電池の電極使用に適する材料でもある。
【0049】
正極層10は、固体電解質をさらに含むことが可能である。正極層10に含まれた固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質と類似しているか、あるいは異なっている。該固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30の部分を参照する。
【0050】
正極層10に含まれた固体電解質は、例えば、硫化物系(例:硫化物を含む)固体電解質である。該硫化物系固体電解質は、固体電解質層30の硫化物系固体電解質としても使用される。
【0051】
他のところとしては、正極層10は、例えば、液体電解質に含浸されうる。該液体電解質は、リチウム塩と、イオン性液体と高分子イオン性液体とのうち1以上と、を含むものでもある。該液体電解質は、不揮発性でもある。該イオン性液体は、常温以下の融点を有しており、イオンだけによって構成される常温において、液体状態の塩、または常温溶融塩を言う。該イオン性液体は、a)アンモニウム系、ピロリジニウム系、ピリジニウム系、ピリミジニウム系、イミダゾリウム系、ピペリジニウム系、ピラゾリウム系、オキサゾリウム系、ピリダジニウム系、ホスホニウム系、ソルホニウム系、トリアゾリウム系、及びその組み合わせのうちから選択された陽イオンと、b)BF-、PF-、AsF-、SbF-、AlCl-、HSO-、ClO-、CHSO-、CFCO-、Cl-、Br-、I-、BF-、SO-、CFSO-、(FSON-、(CSON-、(CSO)(CFSO)N-及び(CFSON-のうちから選択された陰イオンと、を含む化合物のうちから選択された一つである。該イオン性液体は、例えば、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(3-トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、またはそれらの組み合わせによってなる群から選択された1以上である。高分子イオン性液体は、a)アンモニウム系、ピロリジニウム系、ピリジニウム系、ピリミジニウム系、イミダゾリウム系、ピペリジニウム系、ピラゾリウム系、オキサゾリウム系、ピリダジニウム系、ホスホニウム系、ソルホニウム系、トリアゾリウム系、またはその組み合わせのうちから選択された陽イオンと、b)BF-、PF-、AsF-、SbF-、AlCl-、HSO-、ClO-、CHSO-、CFCO-、(CFSON-、(FSON-、Cl-、Br-、I-、SO-、CFSO-、(CSON-、(CSO)(CFSO)N-、NO-、AlCl-、(CFSOC-、(CFPF-、(CFPF-、(CF)4PF-、(CFPF-、(CFP-、SFCFSO-、SFCHFCFSO-、CFCF(CFCO-、CFSOCH-、(SFC-、(O(CF(CFO)PO-、またはその組み合わせのうちから選択された陰イオンと、を含む反復単位を含むものでもある。該リチウム塩は、リチウム塩に適する材質でもあり、制限されるものではない。該リチウム塩は、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(FSON、LiCSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO2)(C2y+1SO)(ただし、x及びyは、自然数である)、LiCl、LiI、またはそれらの組み合わせである。該液体電解質が含むリチウム塩の濃度は、約0.1Mないし約5M、または約0.05Mないし約4.0M、または約0.1Mないし約3.0M、または約0.5Mないし約2.0M、または約0.5Mないし約1.5Mでもある。正極層10に含浸される液体電解質の含量は、液体電解質を含まない正極活物質層12 100重量部につき、0ないし100重量部、0ないし50重量部、0ないし30重量部、0ないし20重量部、0ないし10重量部、または0ないし5重量部である。
【0052】
(固体電解質層)
固体電解質層30は、正極層10と負極層20との間に配される。固体電解質層30は、固体電解質を含む。
【0053】
該固体電解質は、例えば、酸化物系(例えば、酸素を含む)無機質固体電解質でもある。該酸化物系固体電解質は、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0<x<2、0≦y<3)、BaTiO、Pb(Zr、Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)(O≦x<1、O≦y<1)、PB(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、HfO、SrTiO、SnO、CeO、NaO、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiO、LiPO、LiTi(PO(0<x<2、0<y<3)、LiAlTi(PO(0<x<2、0<y<1、0<z<3)、Li1+x+y(Al、Ga)(Ti、Ge)2-xSi3-y12(0≦x≦10≦y≦1)、LiLaTiO(0<x<2、0<y<3)、LiO、LiOH、LiCO、LiAlO、LiO-Al-SiO-P-TiO-GeO、Li3+xLa12(Mは、Te、NbまたはZrであり、xは、1ないし10の整数である)、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。該固体電解質は、焼結法などによって作製される。
【0054】
該酸化物系固体電解質は、例えば、LiLaZr12(LLZO)及びLi3+xLaZr2-a12(M dope LLZO;Mは、Ga、W、Nb、TaまたはAlであり、xは、1ないし10の整数である)のうちから選択されたガーネット系(garnet-type)固体電解質である。
【0055】
他のところとしては、固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質でもある。硫化物系固体電解質は、例えば、LiS-P、LiS-P-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(m、nは、整数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(p、qは、整数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのうち一つである)、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)、及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。該硫化物系固体電解質は、例えば、LiS、Pのような出発原料を、溶融急冷法や機械的ミリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。また、そのような処理後、熱処理を行うことができる。該硫化物系固体電解質は、非晶質でもあり、結晶質でもあり、それらが混合された状態でもある。
該硫化物系固体電解質は、例えば、構成元素として、硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含むものでもある。例えば、該硫化物系固体電解質は、LiS-Pを含む材料でもある。該硫化物系固体電解質材料として、LiS-Pを含むものを利用する場合、LiSとPとの混合モル比は、例えば、LiS:P=50:50ないし90:10ほどの範囲である。
【0056】
該硫化物系固体電解質は、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)またはLi7-xPS6-x(0≦x≦2)、あるいはそれらの組み合わせを含むアルジロダイト型(argyrodite-type)の化合物でもある。特に、固体電解質が含む硫化物系固体電解質は、LiPSCl、LiPSBr、LiPSI、またはそれらの組み合わせを含むアルジロダイト型の化合物でもある。
【0057】
固体電解質層30は、例えば、バインダをさらに含む。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるものではなく、バインダとして使用されるために適切なものであるならば、いずれも可能である。固体電解質層30のバインダは、正極層及び/または負極層のバインダと同種でもあり、異なってもいる。
【0058】
(負極層)
図1及び図2を参照すれば、負極層20は、負極集電体21、負極活物質層22及び接触層23を含む。
【0059】
全固体二次電池1の充電過程において、負極層20は、図3から分かるように、体積が増大しうる。全固体二次電池1の放電過程において、負極層20は、図4から分かるように、体積が低減しうる。
【0060】
負極集電体21は、例えば、リチウムと反応しない材料、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料によっても構成される。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、電極集電体として使用されるものであるならば、いずれも可能である。負極集電体21は、前述のうち、1種、2種以上の金属の合金または被覆材料を含むものでもある。負極集電体21は、例えば、板状またはホイルの形態である。
【0061】
負極活物質層22は、第1負極活物質層221と第2負極活物質層222とを含む。
第1負極活物質層221は、負極集電体21上に配され、第1金属を含むものでもある。第1負極活物質層221は、第1金属層でもある。該第1金属は、リチウム金属またはリチウム合金を含む。従って、第1負極活物質層221は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層であるので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。
【0062】
該リチウム金属は、金属リチウムでもあり、リチウム(Li)を含み、リチウムと合金可能な金属を含まない金属である。該リチウム合金は、例えば、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金、またはそれらの組み合わせでもあるが、それらに限定されるものではなく、リチウム合金として使用するのに適する材料であるならば、いずれも可能である。第1負極活物質層221は、リチウム合金またはリチウム金属のうち一つを含むものでもあるか、あるいはさまざまな種類の合金の組み合わせを含むものでもある。第1負極活物質層221の厚みt1は、10μm以上でもある。例えば、第1負極活物質層221の厚みt1は、10μmないし1,000μm、10μmないし500μm、10μmないし200μm、10μmないし150μm、10μmないし100μm、または10μmないし50μmである。第1負極活物質層221の厚みt1が過度に薄ければ、第1負極活物質層221によるリチウム貯蔵庫の役割を遂行し難い。第1負極活物質層221の厚みt1が過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増大し、サイクル特性がかえって低下する可能性がある。
【0063】
第1負極活物質層221は、負極集電体21と第2負極活物質層222との間に配される。全固体二次電池1の充電により、第1負極活物質層221にリチウムが析出され、析出されたリチウムにより、第1負極活物質層221の体積または厚みが増大する。
【0064】
充電後状態の第1負極活物質層221の体積は、放電後状態の第1負極活物質層221の体積の150%ないし5,000%でもある。充電後状態の第1負極活物質層221の厚みは、放電後状態の第1負極活物質層221の厚みの150%ないし5,000%でもある。
【0065】
充放電過程(例:充電/放電サイクル)において、第1負極活物質層221の体積変化率は、接触層23の体積変化率よりも大きい。該充放電過程において、第1負極活物質層221の体積変化率は、第2負極活物質層222の体積変化率よりも大きい。該充放電過程において、第1負極活物質層221の厚み変化率は、接触層23の厚み変化率よりも大きい。該充放電過程において、第1負極活物質層221の厚み変化率は、第2負極活物質層222の厚み変化率よりも大きい。
【0066】
第2負極活物質層222は、第1負極活物質層221と固体電解質層30との間に配され、炭素系(例:炭素含む)活物質を含む。
【0067】
該炭素系活物質として、非晶質炭素(amorphous carbon)を含むものでもある。非晶質炭素では、例えば、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック(FB:furnace black)、ケッチェンブラック(KB)、グラフェン(graphene)、炭素ナノチューブ、炭素ナノファイバ、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、非晶質炭素に分類されるものであるならば、いずれも可能である。
【0068】
第2負極活物質層222は、負極活物質として、金属または半金属を含むものでもある。ここで、「半金属」は、B、Si、Ge、As、Sb、Te、またはそれらの組み合わせを意味する。
【0069】
金属または半金属の負極活物質は、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、またはそれらの組み合わせを含むが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、リチウムと合金または化合物を形成する金属負極活物質または半金属負極活物質として使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0070】
第2負極活物質層222は、炭素系活物質、金属または半金属の負極活物質を含む負極活物質を含むか、あるいは炭素系負極活物質と、金属または半金属の負極活物質との組み合わせを含む。例えば、第2負極活物質層222は、非晶質炭素のみを含むか、あるいはインジウム(In)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、またはそれらの組み合わせを含む。他のところとしては、第2負極活物質層222は、非晶質炭素と、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、またはそれらの組み合わせと、を含む金属または半金属の複合体を含む。該非晶質炭素と、金属(例:銀)または半金属との複合体の複合化比率は、重量比として、例えば、10:1ないし1:2、5:1ないし1:1、または4:1ないし2:1であるが、必ずしもそのような範囲に限定されるものではなく、要求される全固体二次電池1の特性により、当業者によっても決定される。第2負極活物質層222がそのような組成を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上される。
【0071】
第2負極活物質層222が含む負極活物質は、例えば、非晶質炭素の第1粒子と、金属または半金属の第2粒子との混合物を含む。該混合物は、第1粒子と第2粒子との分散液を含んで構成されるか、あるいは本質的に構成されうる。他の例としては、該混合物は、バインダをさらに含むものでもあり、該バインダにより、第1粒子と第2粒子とが物理的に結着される。該金属または該半金属は、例えば、例えば、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、マグネシウム(Mg)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、あるいはそれらの組み合わせを含む。該金属または該半金属は、半導体でもある。該第2粒子の含量は、混合物の総重量を基準に、8ないし60重量%、10ないし50重量%、15ないし40重量%、または20ないし30重量%である。該第2粒子がそのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上される。
【0072】
第2負極活物質層222の厚みt2は、例えば、10nmないし10μm、100nmないし10μm、200nmないし10μm、300nmないし10μm、400nmないし10μm、500nmないし10μm、1μmないし10μm、1μmないし9μm、1μmnmないし8μm、2μmないし7μm、または3μmないし7μmである。第2負極活物質層222がそのような範囲の厚みを有することにより、全固体二次電池1の短絡が抑制され、サイクル特性が向上される。
【0073】
第2負極活物質層222の厚みt2は、第1負極活物質層221の厚みt1よりも薄い。第2負極活物質層222の厚みt2は、第1負極活物質層221の厚みt1の1/2よりも薄い。第2負極活物質層222の厚みt2は、第1負極活物質層221の厚みt1の20%よりも薄い。
【0074】
第2負極活物質層222が炭素系活物質を含むことにより、第2負極活物質層222は、第1負極活物質層221の体積変化により、体積が変化する特性を有しうる。例えば、充電過程において、第1負極活物質層221が膨脹するとき、そのような第1負極活物質の体積膨脹を吸収して緩和させることができる。
【0075】
第2負極活物質層222は、炭素系活物質を含むことにより、内部に空きスペース(void or pore)を含むものでもある。放電後状態の第2負極活物質層222は、内部に生成された空きスペースを含むものでもある。充電過程において、第2負極活物質層222の空きスペースにリチウムが充填され、それを介し、第1負極活物質層221の体積膨脹を緩和させることができることになる。第1負極活物質層221の体積膨脹を緩和させることにより、負極層20が固体電解質層30に印加する圧力が減り、固体電解質層30の短絡現象を遅延させることができる。
【0076】
充電後状態の第2負極活物質層222の体積は、放電後状態の第2負極活物質層222の体積よりも大きい。充電後状態の第2負極活物質層222の体積は、放電後状態の第2負極活物質層222の体積の2倍以下でもある。充電後状態の第2負極活物質層222の厚みt21は、放電後状態の第2負極活物質層222の厚みt22よりも厚い。充電後状態の第2負極活物質層222の厚みt21は、放電後状態の第2負極活物質層222の厚みt22の2倍以下でもある。
【0077】
前述のように、第2負極活物質層222は、炭素系活物質を含む場合、第1負極活物質層221の体積膨脹を緩和させる特性を有する一方、固体電解質層30との界面接着力に劣るという特性を有する。それにより、第2負極活物質層222が、固体電解質層30に直接接触するように配される場合、負極層20と固体電解質層30との界面抵抗が大きくなるという問題が生じる。
【0078】
そのような点を考慮し、一実施例による全固体二次電池1の負極層20は、第2負極活物質層222と固体電解質層30との間に配された接触層23を含む。
【0079】
接触層23の少なくとも一部は、第2負極活物質層222と固体電解質層30との間に配され、固体電解質層30に直接接触する。接触層23が、固体電解質層30に直接接触することにより、第2負極活物質層222が固体電解質層30に直接接触することを遮断することができる。接触層23は、第2負極活物質層222と固体電解質層30との間に配され、負極活物質層と固体電解質層30との接触を防止するように配される。それにより、接触改善層23は、負極層20と固体電解質層30との界面接着力を向上させることができる。
【0080】
接触層23と固体電解質層30との界面抵抗は、所定以下でもある。例えば、接触層23と固体電解質層30との界面抵抗は、500ohm・cmよりも小さく、400ohm・cmよりも小さく、300ohm・cmよりも小さい。例えば、接触層23と固体電解質層30との界面抵抗は、200ohm・cmよりも小さい。
【0081】
接触層23は、固体電解質層30との界面抵抗が、第2負極活物質層222と固体電解質層30との界面抵抗より小さい。例えば、接触層23と固体電解質層30との界面抵抗は、第2負極活物質層222と固体電解質層30との界面抵抗の10%(1/10)よりも小さい。例えば、第2負極活物質層222を固体電解質層30に直接接触させたとき、それら間の界面抵抗が2,000ohm・cmより大きい場合、接触層23を固体電解質層30に直接接触させたとき、それら間の界面抵抗が200ohm・cmよりも小さい。
【0082】
接触層23は、リチウム金属またはリチウム合金を含む第2金属を含むものでもある。ここで、接触層23は、第2金属層でもある。第2金属は、リチウム金属またはリチウム合金を含む。
【0083】
リチウム金属とは、金属リチウムを指し、すなわち、リチウムによって構成されるものであり、リチウムと合金可能な金属を含まない。
【0084】
リチウム合金は、リチウムと、リチウムと合金が可能な金属と、を含む。該リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウム合金として適切な材料であるならば、いずれも可能である。
【0085】
接触層23は、リチウム合金のうち一つ、またはリチウム金属を含むものでもあるか、あるいはさまざまな種類の合金の組み合わせを含むものでもある。
【0086】
該第2金属は、第1金属の材質と同一材質でもある。ただし、該第2金属の材質は、それらに限定されるものではなく、第1金属の材質と異なりもする。
【0087】
接触層23は、例えば、炭素系材料を含まないものでもある。接触層23は、例えば、黒鉛、カーボンブラックのような炭素系活物質、炭素ナノファイバのような炭素系導電材のような炭素系材料を含まないものでもある。接触層23は、例えば、バインダのような有機材料を含まないものでもある。接触層23は、例えば、金属、半金属、またはそれらの合金によってなる金属層を含むものでもある。接触層23が金属層であり、炭素系材料を含まないために、炭素系材料及び/または有機材料による充放電過程(充放電サイクル)における副反応が防止される。
【0088】
また、接触層23は、第2金属層を含み、炭素系材料を含まないために、炭素系活物質を含む第2負極活物質層222に比べ、固体電解質層30と接着力にすぐれる界面を形成する。
【0089】
接触層23は、第2金属を含むために、充電過程において、固体電解質層30を介して流入されたリチウムイオンが迅速に拡散するように誘導する。それにより、固体電解質層30の表面が不規則であり、リチウムイオンが局所的に集中され、固体電解質層に流入されても、接触層23を介する迅速な拡散現象を利用し、負極層20全体に等しく分布させることができる。
【0090】
充電過程において、接触層23は、第1負極活物質層221において、第1金属の量に比べ、金属、例えば、リチウム金属またはリチウム合金が析出される量が少ないようにも構成される。
【0091】
接触層23の厚みt3は、所定厚み以下でもある。例えば、接触層23の厚みt3は、1μm以下でもある。例えば、接触層23の厚みt3は、0.5μm以下でもある。例えば、接触層23の厚みt3は、0.1μm以下でもある。ただし、接触層23の厚みt3が過度に薄い場合、第2負極活物質層222が、固体電解質層30に直接接触する本来の目的を達成し難くなる点を考慮し、接触層23の厚みt3は、1nm以上でもある。接触層23の厚みは、1nm~1μm、または1nm~500nm、または1nm~100nm、または1nm~50nmでもある。接触層23の厚みは、均一でもあり、不均一でもある。ここで、接触層23の厚みt3が均一ではない場合、接触層23の厚みt3は、接触層23の平均厚みと定義する。
【0092】
接触層23の厚みt3は、第1負極活物質層221の厚みt1より薄い。例えば、放電後状態の接触層23の厚みt31は、放電後状態の第1負極活物質層221の厚みt12よりも薄い。放電後状態の第1負極活物質層221の厚みt12が10μmを超えるとき、放電後状態の接触層23の厚みt32は、1μm以下でもある。
【0093】
接触層23の厚みt3は、第1負極活物質層221の厚みt1の20%(1/5)以下でもある。接触層23の厚みt3は、第1負極活物質層221の厚みt1の10%(1/10)以下でもある。接触層23の厚みt3は、第1負極活物質層221の厚みt1の5%(1/20)以下でもある。
【0094】
放電後状態の接触層23の厚みt32は、放電後状態の第1負極活物質層221の厚みt12の20%(1/5)以下でもある。放電後状態の接触層23の厚みt32は、放電後状態の第1負極活物質層221の厚みt12の10%(1/10)以下でもある。放電後状態の接触層23の厚みt32は、放電後状態の第1負極活物質層221の厚みt12の5%(1/20)以下でもある。
【0095】
充電後状態の接触層23の厚みt31は、充電後状態の第1負極活物質層221の厚みt11の10%(1/10)以下でもある。充電後状態の接触層23の厚みt31は、充電後状態の第1負極活物質層221の厚みt11の5%(1/20)以下でもある。充電後状態の接触層23の厚みt31は、充電後状態の第1負極活物質層221の厚みt11の2.5%(1/40)以下でもある。
【0096】
そのように、接触層23の厚みt3が所定厚み以下になるようにし、第1負極活物質層221の厚みt1を接触層23の厚みより厚く設計することにより、全固体二次電池1の充電過程において、接触層23において、金属が析出される量を減らし、第1負極活物質層221において、金属が析出されるように誘導することができる。
【0097】
もし接触層23の厚みt3が所定サイズより厚い場合、充電過程において、接触層23において、局所的に析出されるリチウム金属が増大しうる。それは、固体電解質層30にクラックを誘発しうる。
【0098】
特に、固体電解質層30が硫化物固体電解質に比べ、硬質である酸化物固体電解質を含む場合、接触層23に局所的に析出されるリチウム金属により、固体電解質層30にクラックが生じてしまい、そのようなクラックを介し、リチウム金属が固体電解質30を貫通する問題が生じうる。固体電解質層30におけるリチウム金属の貫通は、ショートを誘発し、全固体二次電池1の安定性を低下させてしまう。
【0099】
また、接触層23に局所的に析出されるリチウム金属により、反復的な充放電過程において、接触層23と固体電解質層30との間に空きスペースが形成され、接触層23と固体電解質層30との接触面積が低減され、それは、全固体二次電池1の過電圧につながってしまう。
【0100】
しかしながら、一実施例による全固体二次電池1においては、第1負極活物質層221において、金属が析出されるようにすることにより、接触層23において析出されるリチウム金属の量を最小化させることができる。それを介し、全固体二次電池1のショート及び過電圧を防止することができる。
【0101】
充電過程において、接触層23で析出されるリチウムの量を最小化させることにより、充放電過程において、接触層23の体積変化率が小さく示される。
【0102】
例えば、充電後状態の接触層23の体積は、放電後状態の接触層23の体積の150%以下でもある。充電後状態の接触層23の体積は、放電後状態の接触層23の体積の140%以下でもある。充電後状態の接触層23の体積は、放電後状態の接触層23の体積の130%以下でもある。
【0103】
例えば、充放電過程において、接触層23の体積変化率は、第1負極活物質層221の体積変化率よりも小さい。充放電過程において、接触層23の体積変化率は、第1負極活物質層221の体積変化率の約70%以下でもある。充放電過程において、接触層23の体積変化率は、第1負極活物質層221の体積変化率の約60%以下でもある。接触層23の体積変化率は、第1負極活物質層221の体積変化率の約5%~約70%であるか、接触層23の体積変化率は、第1負極活物質層221の体積変化率の約10%~約60%であるか、あるいは接触層23の体積変化率は、第1負極活物質層221の体積変化率の約10%~約50%でもある。
【0104】
接触層23の第2金属は、第1負極活物質層221の第1金属と同一でもある。例えば、該第2金属及び該第1金属は、いずれもリチウム金属でもある。例えば、該第2金属及び該第1金属は、いずれもリチウム合金であり、リチウムと合金を形成する金属が同一でもある。
【0105】
ただし、該第2金属は、必ずしも該第1金属と同一である必要はなく、製造方法または要件などによっても異なる。
【0106】
図5A及び図5Bは、一実施例による負極層20の充電後の断面SEM(scanning electron microscope)と、放電後の断面SEMであり、図6A及び図6Bは、図5A及び図5Bそれぞれの接触層23と第2負極活物質層222との周辺を拡大した断面SEMである。
【0107】
図5A及び図5Bを参照すれば、充電後状態の第1負極活物質層221の厚みt11は、およそ32μm~34μmであり、放電後状態の第1負極活物質層221の厚みt12は、およそ17μm~18μmと示される。
【0108】
それに対して、図6A及び図6Bを参照すれば、充電後状態の第2負極活物質層222の厚みt21は、5μm~6μmであり、放電後状態の第2負極活物質層222の厚みt22も5μm~6μmと示される。また、充電後状態の接触層23の厚みt31は、0.5μm~1.5μmであり、放電後状態の接触層23の厚みt32も、0.5μm~1.5μmと示される。
【0109】
それにより、一実施例による負極層20は、充放電過程において、接触層23の厚み変化率と、第2負極活物質層222の厚み変化率とのそれぞれが、第1負極活物質層221の厚み変化率に比べ、小さく示された点を確認することができる。
【0110】
一実施例による全固体二次電池1の製造方法は、負極層20を提供する段階と、負極層20を固体電解質層30の一面上に配する段階と、固体電解質層30の他面上に正極層10を配する段階と、を含む。
【0111】
(負極層20の製造)
図7Aないし図7Dは、負極層20を製造する方法について説明するための図面である。
図7Aを参照すれば、第1基板100上に形成された第1層321を準備する。
【0112】
第1層321は、金属層を含むものでもある。該金属層は、リチウム金属、リチウム合金、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。該リチウム合金は、例えば、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに限定されるものではなく、リチウム合金として適切な材料であるならば、いずれも可能である。
【0113】
第1層321は、リチウム合金またはリチウム金属によってなるか、あるいはリチウム合金の組み合わせによってもなる。
【0114】
第1層321の厚みは、1μmないし1,000μm、1μmないし500μm、1μmないし200μm、1μmないし150μm、1μmないし100μm、または1μmないし50μmである。
【0115】
第1基板100は、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料によって構成される。第1基板100を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、それらの合金、またはそれらの組み合わせを含むが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、電極集電体として機能することができるものであるならば、いずれも可能である。第1基板100は、前述の金属のうち1種によって構成されるか、あるいは2種以上の金属の合金または被覆材料によっても構成される。第1基板100は、例えば、板状またはホイルの形態である。第1基板100は、負極集電体21でもある。
【0116】
第2層322は、第2基板上に配される。
第2層322は、炭素系活物質を含むものでもある。該炭素系活物質の例として、非晶質炭素を含むものでもある。該非晶質炭素としては、例えば、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック(FB)、ケッチェンブラック(KB)、グラフェン、炭素ナノチューブ、炭素ナノファイバ、またはそれらの組み合わせを含むが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、非晶質炭素に分類されるものであるならば、いずれも可能である。
第2層322は、リチウムと合金が可能な金属をさらに含むものでもある。リチウムと合金が可能な金属として、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。ただし、それらに限定されるのはなく、リチウムと合金が可能な金属として使用されるものであるならば、いずれも可能である。第2層322において、リチウムと合金可能な金属は、省略されうる。
【0117】
第2層322を第2基板200上に形成するために、炭素系活物質、リチウムと合金可能な金属、バインダなどを混合し、スラリーを製造した後、第2基板200上に均一に塗布し、乾燥させることができる。第2層322は、第2負極活物質層222の前駆体としても機能することができる。
【0118】
第2基板200は、例えば、リチウムと反応しない材料、すなわち、リチウムと合金及び化合物をいずれも形成しない材料によっても構成される。第2基板200は、500MPa以上の所定強度を有する材質を含むものでもある。例えば、第2基板200の材質は、ステンレススチールを含むものでもある。ただし、第2基板200の材質は、それに限定されるものではなく、リチウムと反応しない材料、例えば、銅(Cu)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。第2基板200は、例えば、板状またはホイルの形態である。
【0119】
図7Bを参照すれば、第1層321と第2層322とが互いに対向するように配された後、所定の圧力で、第1基板100と第2基板200とを加圧することができる。
【0120】
例えば、加圧プレート1001,1002により、第1基板100と第2基板200とが加圧されうる。加圧プレート1001,1002は、所定の圧力でもって、第1基板100及び第2基板200を加圧するために、所定強度を有する材質でもある。例えば、加圧プレート1001,1002の材質は、ステンレススチールでもある。ただし、加圧プレート1001,1002の材質は、それに限定されるものではない。
【0121】
加圧により、第1層321と第2層322とが密着されて組み立てられる。
加圧は、例えば、ロール加圧(roll press)、一軸加圧(uni-axial pressing)、平板加圧(flat press)、温間等方圧加圧(WIP:warm isotactic pressing)、冷間静水圧加圧(CIP:cold isotactic pressing)などでもあるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、適切な加圧であるならば、いずれも可能である。
【0122】
加圧時に加えられる圧力は、例えば、150MPa以上でもある。加圧時に加えられる圧力は、例えば、250MPa以上でもある。加圧時に加えられる圧力は、例えば、1,000MPa以下でもある。加圧時に加えられる圧力は、例えば、150MPa~1,000MPaであるか、250MPa~1,000MPaであるか、あるいは250MPa~750MPaでもある。
【0123】
圧力が加えられる時間は、10分以内、8分以内、5分以内、1分以内または30秒以内でもある。例えば、圧力が加えられる時間は、5ミリ秒(ms)ないし10分(min)、1秒ないし7分、または30秒ないし7分でもある。例えば、圧力が加えられる時間は、2分ないし7分でもある。
【0124】
加圧は、例えば、常温においても行われる。例えば、該加圧は、15℃ないし25℃においても行われる。ただし、加圧温度は、必ずしもそれらに限定されるものではなく、25℃ないし90℃でもあるか、あるいは100℃以上の高温でもある。
【0125】
図7Cを参照すれば、第1層321と第2層322とが所定以上の圧力で加圧される過程において、第1層321に含まれた金属層と同一材質を有する第3層である接触層23が第2基板200と第2層322との間に形成される。理論にとらわれることなく、接触層23の形成は、第1層321の一部が、第2層322を介して移動された結果として理解される。
【0126】
第1層321がリチウム金属を含み、第2層322がリチウムと合金が可能な金属を含む場合、加圧される過程において、第2層322に含まれた金属は、第1層321及び接触層23のリチウムと反応し、合金層を形成することができる。それにより、第1層321は、リチウム合金を含む第1負極活物質層221になり、接触層23は、リチウム合金を含む接触層23にもなる。
【0127】
もし第2層322にリチウムと合金可能な金属が含まれていない場合、第1層321は、リチウム金属を含む第1負極活物質層221になり、接触層23は、リチウム金属を含む接触層23にもなる。
【0128】
なお、第1層321と第2層322とが所定以上の圧力で加圧される過程において、第1層321に含まれたリチウムの一部が、第2層322に注入されうる。それにより、第2層322は、炭素系活物質とリチウムを含む第2負極活物質層222にもなる。
【0129】
図7Dを参照すれば、第2基板200を除去することにより、第1基板100上に、第1負極活物質層221、第2負極活物質層222及び接触層23が順次に積層された負極層20が提供されうる。
【0130】
図8は、一実施例による負極層20を示す写真である。図8を参照すれば、前述のように、第1層321と第2層322とが所定の圧力で加圧された後、第2基板200を除去した結果、表面色が炭素系活物質を含む第2負極活物質層222の色相である黒色ではない他色が示されていることを確認することができる。それにより、第2負極活物質層222の上部に、相対的に明るい色を有する接触層23が形成された点を確認することができる。
【0131】
もし負極層20の製造段階において、第1層321と第2層322とが所定の圧力、例えば、150Mpaより低い圧力で加圧した後、第2基板200を除去する場合、図9のように、負極層20は、第1層321と第2層322とが接着された構造を有するのみである。それにより、負極層20の表面色は、図10のように、炭素系活物質を含む第2負極活物質層222の色相である黒色が示されることを確認することができる。
【0132】
図11ないし図13は、前述のような製造方法を介して製造された負極層20の断面SEMイメージである。図12は、図11の一部を拡大したイメージであり、図13は、図12の一部を拡大したイメージである。
【0133】
図11ないし図13を参照すれば、前述のような製造過程を介して、第1負極活物質層221の厚みより薄い接触層23が、第2負極活物質層222上に形成された点を確認することができる。
【0134】
(正極層の製造)
正極活物質層12を構成する材料である正極活物質、バインダなどを、非極性溶媒に添加し、スラリー(slurry)を製造する。製造されたスラリーを、正極集電体11上に塗布して乾燥させる。得られた積層体を加圧し、正極層10を製造する。該加圧は、例えば、ロール加圧、平板加圧、静水圧を利用した加圧などでもあるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、使用される加圧であるならば、いずれも可能である。加圧工程は、省略されもする。正極活物質層12を構成する材料の混合物を、ペレット(pellet)形態に圧密化成形するか、あるいはシート形態に広げる(成形)ことにより、正極層10を作製する。そのような方法によって正極層10を作製する場合、正極集電体11は、省略されうる。他のところとしては、正極層10は、電解液に含浸させて使用することができる。
【0135】
(固体電解質層の製造)
酸化物系固体電解質を含む固体電解質層30は、例えば、酸化物系固体電解質材料の前駆体を熱処理して製造する。
【0136】
該酸化物系固体電解質は、化学量論的量に前駆体を接触させ、混合物を形成し、該混合物を熱処理することによっても製造される。該接触は、例えば、ボールミリングのようなミリング、または粉砕を含むものでもある。化学量論的組成で混合した前駆体の混合物は、酸化性雰囲気で一次熱処理し、該一次熱処理結果物を準備することができる。該一次熱処理は、1,000℃未満の温度範囲において、1時間ないし36時間行われる。該一次熱処理結果物は、粉砕されうる。該一次熱処理結果物の粉砕は、乾式または湿式によっても行われる。該湿式粉砕は、例えば、メタノールのような溶媒と、該一次熱処理結果物とを混合した後、ボールミルなどにより、0.5時間ないし10時間ミリングすることによっても行われる。該乾式粉砕は、溶媒なしに、ボールミルなどにより、該一次熱処理結果物をミリングするによっても行われる。粉砕された一次熱処理結果物の粒径は、0.1μmないし10μm、または0.1μmないし5μmでもある。粉砕された一次熱処理結果物は、乾燥される。粉砕された一次熱処理結果物は、バインダ溶液と混合し、ペレット形態に成形されるか、あるいは単に、1トンないし10トンの圧力でもって圧延され(press)、ペレット形態にも成形される。
【0137】
該ペレットは、1,000℃未満の温度において、1時間ないし36時間二次熱処理されうる。該二次熱処理により、焼結物である固体電解質層30が得られる。該二次熱処理は、例えば、550℃ないし1,000℃で行われうる。該二次熱処理時間は、1時間ないし36時間である。焼結物を得るために、該二次熱処理温度は、一次熱処理温度に比べてさらに高い。例えば、該二次熱処理温度は、一次熱処理温度に比べ、10℃以上、20℃以上、30℃以上、または50℃以上さらに高いのである。該ペレットは、酸化性雰囲気及び還元性雰囲気、またはそれらの組み合わせで二次熱処理することができる。該二次熱処理は、a)酸化性雰囲気、b)還元性雰囲気、またはc)酸化性雰囲気及び還元性雰囲気で遂行されうる。
【0138】
硫化物系固体電解質を含む固体電解質層30は、例えば、硫化物系固体電解質材料によって形成された固体電解質によって製造する。
【0139】
該硫化物系固体電解質は、例えば、溶融急冷法や機械的ミリング法などにより、出発原料を処理するが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、硫化物系固体電解質の製造方法として使用されるものであるならば、いずれも可能である。例えば、溶融急冷法を使用する場合、LiS、Pのような出発原料を所定量混合し、ペレット状にした後、それを真空状態において、所定の反応温度で反応させた後、急冷させ、硫化物系固体電解質材料を製造する。LiSやPの混合物の反応温度は、例えば、約400℃ないし1,000℃、または約800℃ないし900℃である。該反応時間は、例えば、0.1時間ないし12時間、または1時間ないし12時間である。反応物の急冷温度は、10℃以下、または0℃以下であり、急冷速度は1℃/secないし10,000℃/sec、または1℃/secないし1,000℃/secである。例えば、機械的ミリング法を使用する場合、ボールミルなどを利用し、例えば、LiS、Pのような出発原料を撹拌させて反応させることにより、硫化物系固体電解質材料を製造する。機械的ミリング法の撹拌速度及び撹拌時間は、特別に限定されていないが、該撹拌速度が速いほど、硫化物系固体電解質材料の生成速度が速くなり、撹拌時間が長いほど、硫化物系固体電解質材料への原料転換率が高くなる。次に、溶融急冷法、機械的ミリング法などによって得られた混合原料を、所定温度で熱処理した後、粉砕し、粒子形状の固体電解質を製造する。該固体電解質がガラス転移特性を有する場合、熱処理により、非晶質から結晶質に変わることが可能である。
【0140】
そのような方法によって得られた固体電解質を、例えば、エアロゾル蒸着(aerosol deposition)法、コールドスプレー(cold spray)法、スパッタリング法のような当業者に知られた成膜法を利用して蒸着することにより、固体電解質層30を製造する。他のところとしては、固体電解質層30は、固体電解質粒子単体を加圧して作製することができる。他のところとしては、固体電解質層30は、固体電解質と、溶媒、バインダを混合し、塗布して乾燥させて加圧し、固体電解質層30を作製することができる。
【0141】
(全固体二次電池の製造)
前述の方法で作製した負極層20、正極層10、固体電解質層30を準備し、正極層10と負極層20とが固体電解質層30を挟むように積層して加圧することにより、全固体二次電池1を作製する。
【0142】
例えば、負極層20の接触層23が、固体電解質層30の一面に対向するように配した後、負極層20と固体電解質層30とを所定の圧力で加圧し、負極層20を固体電解質層30の一面に接合する。
【0143】
該加圧は、例えば、ロール加圧、一軸加圧、平板加圧(flat press)、温間等方圧加圧(WIP)、冷間静水圧加圧(CIP)などでもあるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野において使用される加圧であるならば、いずれも可能である。加圧時に加えられる圧力は、例えば、50MPaないし750MPa、または100MPaないし700MPaである。圧力が加えられる時間は、5秒ないし5分である。該加圧は、例えば、常温ないし90℃以下の温度、20ないし90℃の温度で行われる。他のところとしては、該加圧が100℃以上の高温で行われる。
【0144】
次に、負極層20が配された固体電解質層30の表面と異なる(例:反対)他面に、正極層10を配し、所定圧力で加圧し、正極層10を固体電解質層30の他面に接合する。
【0145】
該加圧は、例えば、ロール加圧、一軸加圧、平板加圧、温間等方圧加圧(WIP)、冷間静水圧加圧(CIP)などでもあるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野において使用される加圧であるならば、いずれも可能である。加圧時に加えられる圧力は、例えば、50MPaないし750MPa、または100MPaないし700MPaである。圧力が加えられる時間は、5秒ないし5分である。該加圧は、例えば、常温ないし90℃以下の温度、20ないし90℃の温度で行われる。他のところとしては、該加圧が100℃以上の高温で行われる。
【0146】
以上で説明された全固体二次電池1の構成及び作製方法は、本実施形態の一例であり、構成部材及び作製手続きなどを適切に変更することができる。該加圧は、省略されうる。
【0147】
以下の実施例及び比較例を介し、本創意的思想がさらに体的に説明される。ただし、該実施例は、本創意的思想を例示するためのものであるのみ、それらだけにより、本創意的思想の範囲が限定されるものではない。
【0148】
比較例1:単一のリチウム金属層によって構成された負極層
(固体電解質層/負極層積層体の製造)
厚み350μmのLLZO(Li6.5LaZr1.5Ta0.512)ペレットを準備した。LLZOペレットの一面上に、10μm厚の銅(Cu)ホイルに、厚み20μmのリチウム(Li)金属がコーティングされた負極層を配し、冷間静水圧法(CIP)で25℃で250MPaを印加し、固体電解質層/負極層積層体を準備した。
【0149】
(正極層製造)
正極活物質として、LiNi0.8Co0.15Mn0.05(NCM)を準備した。また、バインダとして、ポリテトラフルオロエチレン(デュポン社製テフロン(登録商標)バインダ)を準備した。また、導電助剤として、カーボンナノファイバ(CNF)を準備した。その次に、そのような材料を、正極活物質:導電助剤:バインダ=100:2:1の質量比で混合した。該混合物をシート形態に延伸し、正極活物質シートを作製した。そして、該正極活物質シートを、18μm厚のアルミニウムホイルによってなる正極集電体に圧着することにより、正極層を作製した。
【0150】
作製された正極層の正極活物質層を、イオン性液体であるPyr13FSI(N-プロピル-N-メチル-ピロリジニウムビス(フロオロスルホニル)イミド)に、LiFSI2.0Mが溶解された電解液に含浸させた。
【0151】
(全固体二次電池の製造)
SUS(stainless steel)キャップ中に、イオン性液体電解液に含浸された正極活物質層が上端を向くように正極層を配した。正極活物質層上に、固体電解質層が配されるように、固体電解質層/負極層積層体を配し、密封し、全固体二次電池を製造した。
【0152】
正極層と負極層は、絶縁体で絶縁させた。正極集電体と負極集電体との一部を、密封された電池外部に突出させ、正極層端子及び負極層端子として使用した。
【0153】
比較例2(リチウム合金層と炭素金属複合層によって構成された負極層)
(固体電解質層/負極層積層体の製造)
厚み350μmのLLZO(Li6.5LaZr1.5Ta0.512)ペレットを準備した。
10μm厚のSUS304ホイルに、厚み10μmの炭素活物質と銀(Ag)とを含む炭素複合層がコーティングされた第1負極層を準備した。
【0154】
第1負極層がLLZOペレットの一面に対向するように配し、冷間静水圧法(CIP)で25℃で250MPaを印加し、第1負極層をLLZOペレットに付着させた後、SUS304ステンレスホイルを除去し、固体電解質層/第1負極層を準備した。
【0155】
固体電解質層/第1負極層上に、10μm厚の銅(Cu)ホイルに、厚み20μmのリチウム(Li)金属がコーティングされた第2負極層を配し、冷間静水圧法(CIP)で25℃で100MPaを印加し、固体電解質層/負極層積層体を準備した。
【0156】
(正極層及び全固体二次電池の製造)
前述のところで製造された固体電解質層/負極層積層体を使用したことを除いては、比較例1と同一方法で、正極層及び全固体二次電池を製造した。
【0157】
実施例1(リチウム合金層、炭素層、リチウム合金層によって構成された負極層)
(固体電解質層/負極層積層体の製造)
導電材として使用されるカーボンブラックと、リチウムと合金を形成することができる銀(Ag)ナノ粒子と、をバインダと混合し、スラリーを製造した後、ステンレススチールホイル(第2基板)上に均一に塗布して乾燥させる。それを介し、負極層の前駆体電極(第2層)を製造する。別途に、負極集電体(第1基板)上に配されたリチウム金属電極(第1層)を準備する。
【0158】
製造された前駆体電極とリチウム金属電極とが互いに対向するように配した後、冷間静水圧法(CIP)で25℃で250MPaを印加し、前駆体電極とリチウム金属電極とを接合する。
【0159】
該接合過程において、前駆体電極とステンレススチールホイルとの間に、Li-Ag合金層(接触層)が形成され、リチウム金属電極は、Li-Ag合金層(第1負極活物質層)に変わることになる。また、前駆体電極は、炭素系活物質とリチウムとを含む炭素層(第2負極活物質層)に変わることになる。
【0160】
その後、ステンレススチールホイルを除去し、負極集電体上に、厚み20μmのLi-Ag合金層、厚み5.5μmの炭素層、厚み0.5μmのLi-Ag合金層が順次に積層された負極層を準備した。
【0161】
厚み350μmのLLZO(Li6.5LaZr1.5Ta0.512)ペレットを準備した。
LLZOペレットの一面上に、厚み0.5μmのLi-Ag合金層が対向するように負極層を配し、冷間静水圧法(CIP)で25℃で250MPaを印加し、負極層をLLZOペレットに付着させ、固体電解質層/負極層積層体を準備した。
【0162】
(正極層及び全固体二次電池の製造)
前述のところで製造された固体電解質層/負極層積層体を使用したことを除いては、比較例1と同一方法で、正極層及び全固体二次電池を製造した。
【0163】
評価例1:界面抵抗評価
比較例1,2と実施例1とで製造されたフルセルにつき、界面抵抗をそれぞれ測定した。
比較例1,2及び実施例1で製造されたフルセルにつき、インピーダンス分析機(Solartron 1400A/1455A impedance analyzer)を使用し、2プローブ(probe)法でもって、ペレットのインピーダンスを測定した。周波数範囲は、0.1Hzないし1MHz、振幅電圧は、10mVであった。
【0164】
空気雰囲気の25℃で測定した。インピーダンス測定結果に係わるナイキストプロット(nyquist plot)を図14及び図15に示す。
【0165】
図14及び図15を参照すれば、固体電解質層に炭素層が直接接触する負極層を有する構造(比較例2)においては、界面抵抗が2,000 ohm・cmより大きく示されたが、固体電解質層にリチウム金属層が接触するか、あるいはリチウム合金層が接触する負極層を有する構造(比較例1、実施例1)においては、界面抵抗が2,000 ohm・cmより小さく示される。
【0166】
評価例2:充放電試験
比較例1,2及び実施例1で製造された全固体二次電池の充放電特性を、次の充放電試験によって評価した。該充放電試験は、全固体二次電池の高電流密度状態の駆動特性を確認するために、60℃条件において、電流密度を変更させながら充放電を進めた。
【0167】
図16のように、単一のリチウム金属層によって構成された負極層を有する構造(比較例1)においては、1.0mA/cmで短絡が生じ、図17のように、固体電解質層に炭素層が直接接触する負極層を有する構造(比較例2)においては、0.9mA/cmで短絡が生じた。
【0168】
それに反し、図18のように、多層構造を有するものの、固体電解質層に薄いLi-Ag合金層が接触する構造(実施例1)においては、1.8mA/cmまで短絡現象なしに安定した駆動が可能であった。
【0169】
そのような結果を介し、負極層が多層構造を有するものの、固体電解質層に薄い金属層が接触する構造においては、充放電中に生じる体積変化を緩和させることができ、高電流密度において、電流が局所的に集中することを低減させ、全固体二次電池の短絡が防止されたものと判断されうる。
【0170】
以上、本発明の理解の一助とするために、全固体二次電池、及びそれを製造する方法に係わる例示的な実施例が説明され、添付図面に図示された。しかしながら、そのような実施例は、単に本発明を例示するためのものであるのみ、それらを制限するものではないという点が理解されなければならないであろう。本発明は、図示されて説明された説明に限られるものではないという点が理解されなければならないであろう。それは、多様な他の変形が、本技術分野において当業者によってなされるからである。
【符号の説明】
【0171】
1 全固体二次電池
10 正極層
11 正極集電体
12 正極活物質層
20 負極層
21 負極集電体
22 負極活物質層
23 接触層
30 固体電解質層
100 第1基板
200 第2基板
221 第1負極活物質層
222 第2負極活物質層
321 第1層
322 第2層
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】