(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】脂肪吸引組織処理
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
A61M1/00 130
A61M1/00 161
A61M1/00 170
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554466
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 IB2021051910
(87)【国際公開番号】W WO2021181243
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512021667
【氏名又は名称】アルマ レーザーズ エルティディ.
【氏名又は名称原語表記】ALMA LASERS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】エフラート,アロン
(72)【発明者】
【氏名】グラフィ-コーヘン,メイタル
(72)【発明者】
【氏名】ブレンナー-ラヴィ,ハニト
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA26
4C077BB10
4C077CC07
4C077DD11
4C077DD19
4C077DD21
4C077EE04
4C077KK11
4C077KK25
(57)【要約】
脂肪吸引フィルターキャニスタ内で採取された脂肪吸引組織を機械的に処理することを含む脂肪吸引組織を処理するための方法及び装置を開示する。いくつかの実施形態では、前記装置は、脂肪吸引組織を機械的に処理するための脂肪吸引組織処理ユニットを含む脂肪吸引装置である。前記機械的処理は、その中の脂肪細胞を実質的に破裂させることなく、脂肪吸引組織中の脂肪組織片の平均サイズを減少させる。いくつかの実施形態において、結果として得られる機械的に処理された脂肪吸引組織は、改良された自己脂肪移植(AFT)を実施するのに適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニューレを通して生体内脂肪組織を脂肪吸引組織として身体から採取し、採取した脂肪組織の少なくとも一部を脂肪吸引装置と機能的に関連する脂肪吸引フィルターキャニスタに移すことによって脂肪吸引を行うように構成された脂肪吸引装置であって、
起動されると、前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタ内に含まれる脂肪吸引組織を機械的に処理するように構成された脂肪吸引処理ユニットを備え、前記機械的処理は、脂肪吸引組織中の脂肪細胞を実質的に破裂させずに脂肪組織片の平均サイズを縮小する脂肪吸引装置。
【請求項2】
前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタにその真空ポートを介して取り付け可能な脂肪吸引真空モジュールをさらに備え、
前記脂肪吸引真空モジュールは、脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付けられて作動したとき、前記脂肪吸引フィルターキャニスタ及びそれに機能的に関連付けられた脂肪吸引プローブを通して脂肪吸引を行うよう構成され、それにより、取り付けられたフィルターキャニスタのフィルターライナ内に採取した脂肪組織を捕らえることができるようにした請求項1に記載の脂肪吸引装置。
【請求項3】
脂肪吸引フィルターキャニスタが前記脂肪吸引真空モジュールに取り付けられている間、前記吸引装置に機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物を機械的に処理するために前記脂肪吸引処理ユニットの起動を可能にするように構成される請求項2記載の脂肪吸引装置。
【請求項4】
前記脂肪吸引真空モジュールは、さらに、前記脂肪吸引装置に機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの容器から液体を除去する液体排出モジュールとして機能するように構成されている、請求項2から3のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項5】
前記脂肪吸引真空モジュールとは異なる流体排出モジュールを備え、前記流体排出モジュールは、その排出ポートを介して前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付け可能であり、前記流体排出モジュールは、そのような脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付けられたとき、該取り付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの容器から液体を除去するよう構成された請求項2から4のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項6】
脂肪吸引カニューレに取り付け可能な遠位端と、その吸引入口を通して前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付け可能な近位端と、を有する脂肪吸引プローブをさらに備え、前記脂肪吸引プローブは、取り付けられた脂肪吸引カニューレを介して採取した脂肪吸引物を、取り付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの容器に導くように構成された請求項1から5のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項7】
前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタにそのアクセスポートを介して取り付け可能であり、取り付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの容器内に液体の量を追加するように構成された洗浄モジュールをさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項8】
前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる脂肪吸引組織を自動的に処理するように構成されたコントローラをさらに備え、前記自動処理は、前記脂肪吸引組織処理ユニット、前記液体排出モジュール、および前記洗浄モジュールを、所望の順序で所望の時間だけ起動させることを含む請求項7に記載の脂肪吸引装置。
【請求項9】
前記脂肪吸引組織処理ユニットは、渦流混合ユニットを備え、前記渦流混合ユニットは、起動されると、前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに渦誘導運動を生成して加えるように構成され、前記渦誘導運動は、前記脂肪吸引組織を機械的に処理するのに有効である請求項1から8のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項10】
前記渦流混合ユニットは、前記渦流混合ユニットが起動されたときに、前記渦流混合ユニットによって生成された少なくとも一部の渦誘導運動を、前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに伝達する係合部材を含む請求項9に記載の脂肪吸引装置。
【請求項11】
前記渦流混合ユニットは、前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの少なくとも一部を少なくとも部分的に包囲するように構成された係合部材を含む請求項9から10のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項12】
前記渦流混合ユニットは、起動されたとき、前記脂肪吸引装置に機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物を1000rpm以下で渦流混合するように構成されている請求項9から11のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項13】
前記脂肪吸引処理ユニットは、振動ユニットを備え、前記振動ユニットは、起動されると、前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタ内に含まれる脂肪吸引組織に振動を生成して加えるように構成され、前記振動は前記脂肪吸引組織を機械的に処理するのに有効である請求項1から12のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項14】
前記振動は20kHz未満の周波数を有する請求項13に記載の脂肪吸引装置。
【請求項15】
前記振動ユニットは、前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナによって囲まれた容積内に配置されるように構成された少なくとも1つの音波送信プローブを含む請求項13から14のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項16】
前記振動ユニットは、前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナと物理的に関連付けられるように構成された音波発信器を備え、起動されると、前記音波発信器が物理的に関連付けられた前記フィルターライナを振動させる請求項13から14のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項17】
前記脂肪吸引処理ユニットは、
前記脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナによって囲まれた容積内に配置されるように構成された機械的混合部品と、
前記容積内に含まれる脂肪吸引組織を前記機械的混合部品に対して移動させて前記脂肪吸引組織を機械的に混合し、前記脂肪吸引組織を機械的に処理するのに有効な機械的混合を行うよう構成された混合モータと、
を含む請求項1から16のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項18】
前記混合モータは、前記機械的混合構成部品の前記脂肪吸引フィルターキャニスタに対する相対運動が、前記脂肪吸引フィルターキャニスタの長手方向軸と平行に移動するように構成される請求項17に記載の脂肪吸引装置。
【請求項19】
前記混合モータは、前記脂肪吸引フィルターキャニスタの容器に対して前記フィルターライナを、前記脂肪吸引キャニスタの長手方向軸に平行な軸の周りに回転させるように構成されている請求項17に記載の脂肪吸引装置。
【請求項20】
前記混合モータは、前記フィルターライナとは別の機械的混合構成部品を回転させるように構成され、前記機械的混合構成部品は内部容積内に配置される請求項17に記載の脂肪吸引装置。
【請求項21】
レーザ支援脂肪吸引装置、超音波支援脂肪吸引装置、およびRF支援脂肪吸引装置からなる群から選択される、請求項1から20のいずれか一項に記載の脂肪吸引装置。
【請求項22】
脂肪吸引組織を処理する方法であって、
a.患者から採取された脂肪吸引組織を脂肪吸引フィルターキャニスタ内で受け取るステップと、
b.前記ステップ「a」に続いて、前記脂肪吸引フィルターキャニスタ内で前記脂肪吸引組織を機械的に処理して前記脂肪吸引組織を混合し、前記機械的処理は、その中の脂肪細胞の破裂なしに前記脂肪吸引組織の脂肪組織片の平均サイズを縮小するステップと、
c.前記ステップ「b」に続いて、前記機械的処理によって前記脂肪吸引組織から放出された流体を前記脂肪吸引フィルターキャニスタから排出し、それによって前記脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる処理された脂肪吸引組織を提供するステップと、
を含む方法。
【請求項23】
前記機械的処理が、渦流混合、振動、および機械的混合からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記機械的処理が、前記脂肪吸引組織の採取から60分以内に行われる、請求項22から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記機械的処理の前および/またはその間に、ある容量の水溶液を前記脂肪吸引フィルターキャニスタに添加する請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記機械的処理が、1000rpm以下で行われる渦流混合である、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記機械的処理は、30分以下行われる渦流混合である、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記脂肪吸引フィルターキャニスタは、前記機械的処理の間、流体排出モジュールと機能的に関連付けられた状態にある、請求項22から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記排出処理ステップ「c」に続いて、前記脂肪吸引組織を自己脂肪移植(AFT)装置に移送することをさら含む、請求項22から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記機械的処理ステップ「b」の適用の後、および前記脂肪吸引組織を前記AFT装置に移送する前に、前記脂肪吸引フィルターキャニスタ内の前記脂肪吸引組織が洗浄されない請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記脂肪吸引フィルターキャニスタ内の前記脂肪吸引組織は、前記機械的処理ステップ「b」の後、および前記脂肪吸引組織を前記AFT装置に移送する前に、遠心分離されない、請求項22から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記脂肪吸引組織は、レーザ支援脂肪吸引、超音波支援脂肪吸引、及びRF支援脂肪吸引からなる群から選択される方法を用いて患者から採取された請求項22から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ステップ「c」に続いて、
d.前記脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる前記脂肪吸引組織に追加の機械的処理を施して前記脂肪吸引組織を混合し、前記追加の機械的処理は、前記脂肪吸引組織中の脂肪細胞を実質的に破裂させずに前記脂肪組織片の平均サイズを縮小することをさらに含む請求項22から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記機械的処理ステップ「d」の前記追加の適用に続いて、前記脂肪吸引組織を自己脂肪移植(AFT)装置に移送することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ステップ「d」に続いて、
e.前記追加の機械的処理の結果、前記脂肪吸引組織から放出された流体をSVF流体として分離することをさらに含む、請求項33から34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月9日に出願された米国仮特許出願US62/986,806、及び2020年5月28日に出願された英国特許出願GB2008023.0から優先権を獲得し、これらの両方は、ここに十分示されるかのように参照によって含まれている。
【0002】
本発明は、いくつかの実施形態において、美容及び/又は医学の分野に関し、より詳細には、脂肪吸引組織を処理するための方法及び装置に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
脂肪吸引は、皮下脂肪組織の一部が、カニューレを介した吸引によって脂肪吸引組織として患者の身体の一部から採取される、審美的体型形成のためのよく知られた方法である。典型的には、吸引は、水性チューメセント溶液による潅流を同時に伴う。
採取された脂肪吸引組織は、血液やチューメセント溶液を含む廃液と共に脂肪組織を備えている。
【0004】
[自己脂肪移植(AFT)]
採取された脂肪吸引組織は、しばしば自己脂肪移植(AFT)に使用される。AFTでは、採取した脂肪吸引組織から廃液が除去され、残りの脂肪吸引組織は水系洗浄液で1回以上洗浄され、主に脂肪組織片からなる清浄な脂肪吸引組織を残す。この清浄な脂肪吸引組織は、ある場合にはそのまま、またある場合には、脂肪組織片のサイズを小さくするために清浄な脂肪吸引組織を2つの連結したシリンジ間で往復移動させることによって行う均質化ステップの後に、身体の一部に注入される。
【0005】
[間質血管細胞群(SVF)]
少なくとも一部の採取された脂肪吸引組織を処理して、再生医療、創傷治癒(例えば、放射線治療後の創傷治癒)、変形性関節症の治療、および自己免疫疾患(例えば、強皮症、苔癬硬症)の治療などの様々な目的に有用な脂肪由来間質細胞(ASCs)を含む間質血管細胞群(SVF)を製造することが認められるようになった。このため、一定量の脂肪吸引組織(通常は清浄な脂肪吸引組織)を(酵素的および/または機械的に)処理して脂肪組織を崩壊させ、組織内に存在するASC等を放出させる。分解された脂肪組織は遠心分離され、SVFペレットとして遠心分離容器の底に沈む無傷のASCsから軽い脂肪の残骸が分離される。このSVFペレットを水溶液に懸濁し、ASCsを夾雑物から分離し、再度遠心分離を行い、精製SVFペレットを得る。精製されたSVFペレットは、水溶液に懸濁され、そのまま治療的に使用することができる。好ましくは、精製されたSVFペレットは、ASCを生存させながら非ASCを排除する培地で培養される。十分な培養時間(通常数日)の後、このようにして精製されたASCsを治療に用いることができる。
【0006】
[AFTの改良のための濃縮脂肪吸引組織]
上記したようなAFTの課題の1つは、移植された脂肪組織のかなりの部分が吸収されることである。このような吸収は、悪い審美的結果につながり、所望の審美的効果を得るためにAFT処置を複数回繰り返すことがしばしば必要とされる。
【0007】
そこで、体内に注入する前にSVFやASCsを添加して濃縮した脂肪吸引組織を使用することで、より優れたAFTを実施できることが分かっている。この優れた脂肪吸引組織を通常の方法で体内に移植すると、脂肪の吸収が抑えられ、移植した脂肪の保持力が高まる。
【0008】
一般的な改良型AFT法では、体形成形のために脂肪吸引によって比較的大量の脂肪吸引組織が採取される(~1000ml)。採取された脂肪吸引組織の少量(典型的には~100ml)は、SVFペレットを得るために処理され、典型的には処理された脂肪吸引組織の~1%w/wとなる。SVF、またはそこから単離されたASCsは、未処理の清浄な脂肪吸引組織の量(典型的には100ml、任意に上記したように均質化される)に加えられ、次に改良型AFTに用いられる濃縮脂肪吸引組織が提供される。濃縮の結果、改良型AFTは、非濃縮脂肪吸引組織を使用するAFTよりも成功し、より良い結果を提供する。
脂肪吸引組織を処理する公知の方法よりも1つ以上の利点を有するAFTに使用できる脂肪吸引組織を処理する簡単な方法を見出すことは有用であろう。
【発明の概要】
【0009】
本明細書における本発明のいくつかの実施形態は、いくつかの実施形態ではAFTに適するように、いくつかの実施形態ではSVFを作るために、脂肪吸引組織を処理するための方法および装置に関するものである。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脂肪吸引組織を処理する方法であって、
a.患者から採取された脂肪吸引組織を脂肪吸引フィルターキャニスタ内で受け取ること;
b.「a」に続いて、脂肪吸引フィルターキャニスタ内で脂肪吸引組織を機械的に処理(いくつかの実施形態では、渦流混合)して脂肪吸引組織を混合し、該機械的処理は、脂肪吸引組織中の脂肪細胞片の平均サイズを、実質的にその中で破裂させずに減少させ;
c.「b」に続いて、前記機械的処理によって脂肪吸引組織から放出された流体を脂肪吸引フィルターキャニスタ流体から排出し、
それによって脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる処理された脂肪吸引組織を提供するステップを含む。
【0010】
本明細書で使用される場合、「機械的処理」とは、脂肪吸引組織が脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナに対して相対的に移動させられること、脂肪吸引組織中の脂肪組織片の平均サイズが減少するように脂肪吸引組織中の脂肪組織片を分解するのに十分な動作、であることを意味する。いくつかの実施形態では、脂肪組織片の平均サイズは、元の50%に、元の25%に、さらには元の10%に減少される。
【0011】
本明細書で使用される場合、「その中の脂肪細胞を実質的に破裂させずに」とは、脂肪吸引組織中の脂肪細胞の少なくとも90%、少なくとも95%、さらには少なくとも98%が機械的処理の結果として破裂されないことを意味する。
【0012】
いくつかの実施形態では、「b」は、「a」が完了したときにのみ開始する、すなわち、機械的処理(「b」)を開始する前に、所望の採取された脂肪吸引組織を全て受け取る(「a」)。代替的に、いくつかの実施形態では、機械的処理(「b」)は、少なくともいくつかの採取された脂肪吸引組織が受け取られたとき(「a」)に開始される。その結果、そのような代替の実施形態では、機械的処理は、いくつかの採取された脂肪吸引組織の受領と同時に実行される。
【0013】
脂肪組織片の平均サイズを減少させるが、脂肪細胞の実質的な破裂を回避するのに十分穏やかな機械的処理の任意の適切な態様が、本明細書の教示を実施する際に使用され得る。いくつかの実施形態では、機械的処理は、キャニスタ内の脂肪吸着物を渦流混合すること;キャニスタ内の脂肪吸着物を振動させること;及びキャニスタ内の脂肪吸着物を機械的に混合することからなる群から選択される。特に好ましいのは、高品質の処理済み脂肪吸引組織を提供することが実験的に示されており、現在、より容易に無菌状態を保つことができると考えられており、実施が容易な渦流混合である。
【0014】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脂肪吸引組織を処理する方法も提供され、それは、
a.患者から採取された脂肪吸引組織を脂肪吸引フィルターキャニスタで受け取ること;b.「a」に続いて、脂肪吸引フィルターキャニスタ内で脂肪吸引組織を渦流混合して脂肪吸引組織を混合すること;および
c.「b」に続いて、渦流混合によって脂肪吸引組織から放出された流体を脂肪吸引フィルターキャニスタから排出すること;
を含み、それによって脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる処理された脂肪吸引組織を提供することである。
【0015】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、脂肪吸引組織を処理する方法も提供され、それは、
a.患者から採取された脂肪吸引組織を脂肪吸引フィルターキャニスタ内に受け取ること;
b.「a」に続いて、脂肪吸引フィルターキャニスタ内で脂肪吸引組織を振動させて脂肪吸引組織を混合すること;および
c.「b」に続いて、振動によって脂肪吸引組織から放出された流体を脂肪吸引フィルターキャニスタから排出すること;
を含み、それによって脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる処理された脂肪吸引組織を提供することである。
【0016】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、脂肪吸引組織を処理する方法も提供され、それは、
a.患者から採取された脂肪吸引組織を脂肪吸引フィルターキャニスタ内に受け取ること;
b.「a」に続いて、脂肪吸引フィルターキャニスタ内で脂肪吸引組織を機械的に混合して、脂肪吸引組織を混合すること;および
c.「b」に続いて、機械的混合によって脂肪吸引組織から放出された流体を脂肪吸引フィルターキャニスタから排出すること:
を含み、それによって脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる処理された脂肪吸引組織を提供することである。
【0017】
いくつかの実施形態では、渦流混合などの機械的処理は、脂肪吸引組織の採取から60分以内に適用される。
【0018】
いくつかの実施形態では、渦流混合などの機械的処理の前及び/又は間に、一容量の水溶液が脂肪吸引フィルターキャニスタに加えられる。
【0019】
いくつかの実施形態では、機械的処理は、3000rpm以下、さらには1000rpm以下で行われる渦流混合である。
いくつかの実施形態では、機械的処理は、30分以下行われる渦流混合である。
いくつかの実施形態では、機械的処理は、60秒以上行われる渦流混合である。
【0020】
いくつかの実施形態において、脂肪吸引フィルターキャニスタは、機械的処理の間、流体排出モジュールと機能的に関連付けられた状態にあり、すなわち、機械的処理を行うために、既に接続されている流体排出モジュールを切断する必要がない。
いくつかの実施形態では、流体排出モジュールは、脂肪吸引真空モジュールの構成部品である。
【0021】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織を処理する方法は、廃液処理の「c」に続いて、脂肪吸引組織を自己脂肪移植(AFT)装置に移送することをさらに備える。いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織を処理する方法は、移送された脂肪吸引組織を、AFT装置を使用して患者に移植することをさらに含む。あるいは、いくつかの実施形態において、移送された脂肪吸引組織を移植するステップは、外科的治療の方法であり、特許請求の範囲外である。
【0022】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引フィルターキャニスタ内の脂肪吸引組織は、渦流混合などの機械的処理「b」に続いて、及びAFT装置への脂肪吸引組織の移送の前に洗浄されない。
【0023】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引フィルターキャニスタ内の脂肪吸引組織は、渦流混合などの機械的処理「b」に続いて、及びAFT装置への脂肪吸引組織の移送の前に、遠心分離されない。
いくつかの実施形態では、脂肪吸引キャニスタフィルタは、50ml以上10,000ml以下の容積を有する。
いくつかの実施形態では、脂肪吸引フィルターキャニスタに受け取られる採取された脂肪吸引組織の量は、50ml以上10,000ml以下である。
【0024】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織は、レーザ支援脂肪吸引、超音波支援脂肪吸引、及びRF支援脂肪吸引からなる群から選択される方法を用いて患者から採取された。
【0025】
いくつかの実施形態では、レーザ支援脂肪吸引は、800~1600nmの範囲内のレーザ波長、及びいくつかの実施形態では1400~1500nmの範囲内のレーザ波長を用いて実施された。
いくつかの実施形態では、レーザ支援脂肪吸引は、放射状に照射する光ファイバを用いて実行された。
【0026】
任意の適切なサイズを有する任意の適切なカニューレが、本明細書の教示を実施する際に使用されてもよく、いくつかの実施形態において、脂肪吸引組織は、少なくとも2mmかつ5mm以下の内径を有するカニューレを使用して採取された。
【0027】
任意の適切な吸引圧が、脂肪吸引組織を採取するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織は、少なくとも20kPかつ98kP以下の吸引圧を使用して採取された。
【0028】
いくつかの実施形態では、本方法は、d.「c」に続いて、脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる脂肪吸引組織に追加の機械的処理(渦流混合又は上記した他の選択肢など)を適用して脂肪吸引組織を混合し、追加の機械的処理は、脂肪吸引組織中の脂肪細胞片の平均サイズをその中の脂質細胞を実質的に破裂せずに減少させることをさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、本方法は、追加の機械的処理「d」に続いて、脂肪吸引組織を自己脂肪移植(AFT)装置に移送することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、AFT装置を使用して、移植された脂肪吸引組織を患者に移植することをさらに含む。あるいは、いくつかの実施形態において、移送された脂肪吸引組織を移植するステップは、外科的治療の方法であり、特許請求の範囲外である。いくつかの実施形態では、その方法は、e.「d」に続いて、追加の機械的処理の結果として脂肪吸引組織から放出された流体をSVF流体として単離することをさらに含む。
【0030】
本方法の実施形態は、任意の適切な装置又は装置の組合せを用いて実施することができる。いくつかの好ましい実施形態では、本方法は、本明細書の教示に従った脂肪吸引装置を用いて実施される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、いくつかの実施形態において、本明細書の教示による方法の実施形態を実施するために特に適している脂肪吸引装置も提供される。
【0032】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、カニューレを介して脂肪吸引組織として身体から脂肪組織を採取し、採取した脂肪組織の少なくとも一部を脂肪吸引装置と機能的に関連する脂肪吸引フィルターキャニスタに移送する(優先権書類では「輸送」とも呼ばれる)ことによって脂肪吸引を行うように構成された脂肪吸引装置が提供され、この装置は、脂肪吸引処理ユニットを備え、
【0033】
該脂肪吸引処理ユニットは、起動されると、該脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタ内に含まれる脂肪吸引組織を機械的に処理するように構成され、該機械的処理は、実質的にその中の脂肪細胞の破裂なしに脂肪組織片の平均サイズを減少させる、任意の1つの理論に拘束されることを望むことなく、そのような穏やかな機械的処理は、移植されたときに使用のためにアクセス可能な形態で様々な非因子(例えば、SVF)を含む比較的均質な処理済み脂肪吸引組織を生成すると現在信じられている。
【0034】
いくつかの実施形態において、脂肪吸引装置は、その真空ポートを介して脂肪吸引装置と機能的に関連付けられる脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付け可能な脂肪吸引真空モジュールをさらに備え、該脂肪吸引真空モジュールは、脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付けられて起動されると、脂肪吸引フィルターキャニスタを介して、およびそれと機能的に関連付けられる脂肪吸引プローブを介して脂肪吸引を行うよう構成され、それによって、採取された脂肪組織(すなわち、脂肪吸引の結果として採取される脂肪組織)を、付属のフィルターキャニスタのフィルターライナ内に捕捉することを可能にする。いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置は、脂肪吸引フィルターキャニスタが脂肪吸引真空モジュールに取り付けられている間に、脂肪吸引装置に機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物を機械的に処理するために脂肪吸引処理ユニットの起動を可能にするように構成される。
【0035】
いくつかの実施形態において、脂肪吸引装置は、脂肪吸引真空モジュールとは異なる流体排出モジュールを備え、流体排出モジュールは、その排出ポートを介して脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付け可能であり、流体排出モジュールは、かかる脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付けられて作動したとき、取り付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの容器から液体を除去するように構成される。いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置は、脂肪吸引フィルターキャニスタが前記流体排出モジュールに取り付けられている間に、脂肪吸引装置に機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物を機械的に処理するように脂肪吸引処理ユニットを作動させる。
【0036】
いくつかの実施形態において、脂肪吸引装置は、脂肪吸引カニューレに取り付け可能な遠位端と、その吸引入口を通して脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付け可能な近位端とを有する脂肪吸引プローブをさらに備え、前記脂肪吸引プローブは、付属の脂肪吸引カニューレを介して採取された脂肪吸引物を、プローブの遠位端からプローブの近位端を通して、付属の脂肪吸引フィルターキャニスタの容器に導くように構成されている。いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置は、脂肪吸引フィルターキャニスタが脂肪吸引プローブに取り付けられている間に、脂肪吸引装置と機能的に関連する脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物を機械的に処理するように脂肪吸引処理ユニットを作動させるように構成される。
【0037】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置は、そのアクセスポートを介して脂肪吸引装置に機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付け可能な洗浄モジュールをさらに備え、該洗浄モジュールは、取り付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの容器にある量の液体(例えば、洗浄液)、好ましくは計量した液体を加えるように構成さている。いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置は、脂肪吸引フィルターキャニスタが洗浄モジュールに取り付けられている間に、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物を機械的に処理するように脂肪吸引処理ユニットを作動させるように構成される。
【0038】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置は、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる脂肪吸引組織を自動的に処理するように構成されたコントローラをさらに備え、その自動的処理は、脂肪吸引組織処理ユニット、液体排出モジュール、及び/又は洗浄モジュールの起動を、所望の順序で、所望の持続時間行うことを含んでいる。いくつかの実施形態では、コントローラは、3つのユニット/モジュールのうちの1つだけを作動させるように構成される。いくつかの実施形態では、コントローラは、3つのユニット/モジュールのうちの2つだけを作動させるように構成される。いくつかの実施形態では、コントローラは、3つのユニット/モジュールの全てを作動させるように構成される。
【0039】
いくつかの実施形態において、脂肪吸引装置は、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタをさらに備え、該脂肪吸引フィルターキャニスタは、容器;長手方向軸、キャニスタ真空ポート(好ましくは、脂肪吸引真空モジュールに取り付けられる);容器を密閉するためのキャップ;キャニスタ吸引口(好ましくは、脂肪吸引プローブの近位端に取り付けられる);アクセスポート(好ましくは、洗浄モジュールに取り付けられる);および容器内で内部容積を規定するフィルターライナを備え、フィルターキャニスタは、キャニスタ吸の引入口を介して脂肪吸引プローブに取り付けられ、真空ポートを介して脂肪吸引真空モジュールに取り付けられたとき、脂肪吸引真空モジュールの起動により、脂肪吸引プローブを介して脂肪吸引を実施し、フィルターライナ内に(すなわち、 フィルターライナによって規定される内部容積内に)採取された脂肪組織を捕捉できるように構成される。いくつかの実施形態では、脂肪吸引フィルターキャニスタは、液体排出モジュールに取り付け可能な(好ましくはそれに取り付けられた)排出ポートをさらに備え、該排出ポートは、フィルターライナの外側で容器に保持された液体の除去を可能にする。いくつかの実施形態では、排出ポートは、キャニスタ真空ポートである。代替的に、いくつかの実施形態では、排出ポートは、キャニスタ真空ポートとは異なる構成部品である。フィルターキャニスタは、任意の適切なサイズ、例えば、以下に記載されるようなサイズである。
【0040】
[渦流混合ユニット]
いくつかの好ましい実施形態では、脂肪吸引組織処理ユニットは、渦流混合ユニットを備え、該渦流混合ユニットは、起動されると、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに渦誘導運動を生成して加えるように構成され、該渦誘導運動は、フィルターキャニスタの内部容積に含まれる脂肪吸引組織を機械的に処理するのに有効である。
【0041】
いくつかの実施形態では、渦流混合ユニットは、渦流混合ユニットが起動されたときに、渦流混合ユニットによって生成された少なくとも一部の渦誘導運動を、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに伝達する係合部材を含んでいる。
【0042】
いくつかの実施形態において、渦流混合ユニットは、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられたフィルターキャニスタの底部が渦流混合ユニット上に載るように構成される。そのような実施形態は、
図2A、2B及び2Cに示されている。
【0043】
いくつかのそのような実施形態では、渦流混合ユニットは、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられたフィルターキャニスタの平らな底部が載る平らな上面を含む。そのような実施形態は、
図2Aおよび
図2Bに示されている。いくつかのそのような実施形態において、平坦な上面は、渦流混合ユニットの係合構成部品の上面によって規定される。このような実施形態は、
図2Aに示されている。
【0044】
いくつかのそのような実施形態では、係合部品は、平坦な上面上に載っているフィルターキャニスタの底部を少なくとも部分的に取り囲む。そのような実施形態は、
図2Bに示されている。
【0045】
いくつかのそのような実施形態において、渦流混合ユニットは、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの非平坦な底部が載る非平坦上面を含み、該非平坦上面は、フィルターキャニスタの底部の少なくとも一部を取り囲んでいる。このような実施形態は、
図2Cに示されている。
【0046】
いくつかの実施形態では、渦流混合ユニットは、起動されると、3000rpm以下、2000rpm以下、1000rpm以下、及びいくつかの実施形態ではさらに700rpm以下で、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物を渦流混合するように構成される。いくつかの実施形態では、渦流混合ユニットは、起動されると、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物を60rpm以上、いくつかの実施形態では100rpm以上で渦流混合するように構成される。
【0047】
いくつかの実施形態では、渦流混合ユニット及び/又は脂肪吸引装置のコントローラは、30分以下、20分以下、10分以下、さらには7分以下の間、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物の渦流混合を可能にするように構成される。
【0048】
いくつかの実施形態では、渦流混合ユニット及び/又はコントローラは、30秒以上、さらには60秒以上の間、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物の渦流混合を可能にするように構成される。
【0049】
[振動ユニット]
いくつかの実施形態において、脂肪吸引組織処理ユニットは、振動ユニットを備え、該振動ユニットは、起動されると、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内部容積に含まれる脂肪吸引組織に対して振動を生成して適用し、振動は、脂肪吸引組織を機械的に処理するのに効果的になるように構成される。
【0050】
いくつかの実施形態において、振動ユニットは、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナによって規定された内部容積内に配置されるように構成された少なくとも一つの音波発信器プローブを備える。そのような実施形態では、使用中、プローブは、少なくとも部分的に脂肪吸引組織に浸漬される。そのような実施形態は、
図3A及び
図3Bに示されている。
【0051】
いくつかの実施形態では、振動ユニットは、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナと物理的に関連付けられるように構成された音波発信器を備え、起動されると、前記音波発信器が物理的に関連付けられたフィルターライナを振動させるようになっている。振動するフィルターライナは、前記音波発信器からの振動を、そこに保持された脂肪吸引組織に伝達する。このような実施形態は、
図3Cに示されている。
【0052】
いくつかのそのような実施形態において、音波発信器は、脂肪吸引フィルターキャニスタの構成部品であり、脂肪吸引装置は、例えば、電気コネクタを含み、本明細書の教示に従って脂肪吸引キャニスタの音波発信器の操作を可能にするように構成されていることに留意することが重要である。
【0053】
[機械的混合]
いくつかの実施形態では、脂肪吸引処理ユニットは、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナによって規定された内部容積内に配置されるように構成された機械的混合構成部品と、
【0054】
容積内に含まれる脂肪吸引組織に対して機械的混合構成部品を移動させ、それによって脂肪吸引組織を機械的に混合する、脂肪吸引組織の機械的処理に有効な混合モータと、
を備える。
【0055】
いくつかの実施形態では、混合モータは、脂肪吸引フィルターキャニスタに対する機械的混合構成部品の相対運動が、脂肪吸引フィルターキャニスタの長手方向軸に平行な移動することからなるか、又はなるように構成される。そのような実施形態は、
図4A、
図4B及び
図4Cに示されている。いくつかのそのような実施形態では、フィルターキャニスタは、長手方向軸に平行に移動される(
図4B)。加えて又は代替的に、いくつかのそのような実施形態では、機械的混合構成部品は、長手方向軸に対して平行に移動される(
図4C)。いくつかのそのような実施形態では、機械的混合構成部品は、透過性プランジャ(
図4A)などの流量制限障壁からなる、またはそれである。いくつかのそのような実施形態では、流量制限障壁などの機械的混合構成部品は、フィルターキャニスタの構成部品である。いくつかのそのような実施形態では、流量制限障壁などの機械的混合構成部品は、フィルターキャニスタの構成部品ではない。
【0056】
代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、混合モータは、脂肪吸引フィルターキャニスタの容器に対してフィルターライナを、脂肪吸引キャニスタの長手方向軸に平行な軸の周りで回転させるように構成される。そのような実施形態は、
図4D及び
図4Eに示されている。いくつかのそのような実施形態では、機械的混合構成部品は、フィルターライナの内面に貼付され、フィルターライナと共に回転する内部容積に突出する混合要素を備える(
図4D及び
図4E)。加えて又は代替的に、いくつかの実施形態では、機械的混合構成部品は、フィルターライナと共に回転しない混合要素を備える(
図4E)。
【0057】
代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、混合モータは、内部容積の内部に位置するフィルターライナとは別個の機械的混合構成部品を回転させるように構成される。そのような実施形態は、
図4F、
図4G及び
図4Hに示されている。機械的混合構成部品の任意の適切なタイプ、又はタイプの組み合わせ、例えば、インペラ(
図4F)、プロペラ(
図4G)及びパドル(
図4H)からなる群から選択される1つ又は複数の構成部品である。いくつかのそのような実施形態では、機械的混合構成部品は、フィルターキャニスタの構成部品である。いくつかのそのような実施形態では、機械的混合構成部品は、フィルターキャニスタの構成部品ではない。
【0058】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置は、レーザ支援脂肪吸引装置;超音波支援脂肪吸引装置;及びRF支援脂肪吸引装置からなる群から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態において、脂肪吸引装置は、脂肪吸引中に800nmと1600nmの範囲内の波長を有するレーザ光で脂肪組織を照射するように構成された、レーザ支援脂肪吸引装置である。いくつかの実施形態では、レーザ波長は、1400nm~1500nm、1450~1490nm、さらには1460~1480nmの範囲内であり、例えば、いくつかの市販のレーザ補助脂肪吸引装置で使用されるような1470nmのレーザ波長である。
いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置は、半径方向に照射する光ファイバを使用して脂肪吸引を行うように構成された、レーザ支援脂肪吸引装置である。
【0060】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置は、少なくとも2mmかつ5mm以下の内径を有するカニューレを介して脂肪吸引組織を採取するように構成されている。
いくつかの実施形態において、脂肪吸引装置は、少なくとも20kPかつ98kP以下の吸引圧を加えるように構成される。
【0061】
[本明細書の教示の脂肪吸引フィルターキャニスタ]
いくつかの実施形態において、本明細書の教示は、本明細書の教示による脂肪吸引フィルターキャニスタを使用して実施される。
【0062】
本明細書の教示のいくつかの実施形態の一態様によれば、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられる脂肪吸引フィルターキャニスタが提供され、該脂肪吸引フィルターキャニスタは、長手方向軸を有する容器;脂肪吸引装置の脂肪吸引真空モジュールと機能的に関連付けられるキャニスタ真空ポート;容器を密封して閉じるためのキャップ;脂肪吸引プローブの近位端に取り付け可能なキャニスタ吸引入口;および容器内に内部容積を規定するフィルターライナを備え、該フィルターキャニスタは、キャニスタ吸引入口を通して脂肪吸引プローブに取り付けられ、真空ポートを通して脂肪吸引真空モジュールに取り付けられたとき、取り付けられた脂肪吸引真空モジュールの起動によって脂肪吸引プローブを通して脂肪吸引が行われ、フィルターライナによって規定された内部容積に採取した脂肪組織を捕捉することができるように構成されている。
【0063】
脂肪吸引フィルターキャニスタはさらに以下の少なくとも一つを含む。
i.内側容積内に位置する音波発信器プローブであって、該プローブは、起動されたときに(その起動が、内側容積内に保持された脂肪吸引組織の機械的処理につながるように)10kHz以下の音響周波数で振動するように構成される、
ii.内側容積内に突き出たシースであって、該シースは、(プローブが振動するよう起動されるとき、振動がシースを通り、内部容積内に保持された脂肪吸引組織の機械的処理につながるように)音波発信器プローブを受け入れるように構成される、
iii.フィルターライナと物理的に関連付けられた音波発信器であって、該音波発信器は、起動されたときに(その起動が、内部容積内に保持された脂肪吸引組織の機械的処理につながるように)フィルターライナを10kHz以下の音響周波数で振動させるように構成される。
iv.内部容積内に位置する機械的混合構成部品であって、該機械的混合構成部品は、混合モータと機能的に関連し、混合モータが作動したときに、内部容積に含まれる脂肪吸着液に対して相対的に移動し、(そのような相対的運動は、容積に保持された脂肪吸着液の機械的処理につながるように)ように構成される。
【0064】
いくつかの実施形態では、機械的混合構成部品は、長手方向軸に平行な成分である、またはそれを含む運動ベクトルで動くように構成される(例えば、機械的混合構成部品は、部分透過性プランジャなどの流量制限障壁である、またはそれからなる)。
【0065】
いくつかの実施形態では、機械的混合構成部品は、容器に対して回転するように構成される(例えば、機械的混合構成部品は、プロペラ、インペラ又はパドルであるか、又はフィルターライナが回転するように構成される)。
【図面の簡単な説明】
【0066】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図を参照して本明細書で説明される。図とともに説明することにより、当業者であれば、本発明のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかが明らかとなる。図は、例示的な説明のためのものであり、本発明の基本的な理解に必要な以上に詳細に実施形態の構造的な詳細を示すことは試みられていない。明確にするために、図に示されたいくつかのオブジェクトは、縮尺通りではない。
【
図1】本明細書の教示を実施するのに有用な脂肪吸引フィルターキャニスタの一実施形態の概略図である。
【
図2A】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の概略図であり、装置は、レーザ支援脂肪吸引ユニット及び渦流混合ユニットを含んでいる。
【
図2B】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の概略図であり、装置は、レーザ支援脂肪吸引ユニット及び渦流混合ユニットを含んでいる。
【
図2C】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の概略図であり、装置は、レーザ支援脂肪吸引ユニット及び渦流混合ユニットを含んでいる。
【
図2D】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の概略図であり、装置は、レーザ支援脂肪吸引ユニット及び渦流混合ユニットを含んでいる。
【
図3A】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は振動ユニットを含んでいる。
【
図3B】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は振動ユニットを含んでいる。
【
図3C】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は振動ユニットを含んでいる。
【
図4A】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は機械的混合用に構成されたものである。
【
図4B】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は機械的混合用に構成されたものである。
【
図4C】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は機械的混合用に構成されたものである。
【
図4D】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は機械的混合用に構成されたものである。
【
図4E】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は機械的混合用に構成されたものである。
【
図4F】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は機械的混合用に構成されたものである。
【
図4G】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は機械的混合用に構成されたものである。
【
図4H】本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、装置は機械的混合用に構成されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本明細書における本発明のいくつかの実施形態は、いくつかの実施形態ではAFT(自己脂肪移植)に適するように、いくつかの実施形態ではSVF(間質血管因子)を作るために、脂肪吸引組織を処理する方法及び装置に関する。
【0068】
本発明の教示の原理、用途および実施は、添付の説明および図を参照することにより、よりよく理解され得る。本明細書に提示された説明および図を熟読すれば、当業者は、過度の努力または実験なしに本発明の教示を実施することが可能である。図において、同様の参照数字は、全体を通して同様の部品を指す。
【0069】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が必ずしも本明細書に記載された構成および/または方法の詳細および配置に限定されないことが理解されよう。本発明は、他の実施形態、または様々な方法で実施または実行することが可能である。本明細書で使用される語句及び用語は、説明のためのものであり、限定的なものと見なすべきではない。
【0070】
当技術分野で知られているように、脂肪吸引組織を構成する脂肪組織を含む組織は、例えば、肉挽き器(US5,731,199)、穴あきやすり(WO2016/097960)、穿孔による脂肪の強制的な処理(WO2017/180076、WO2019/125324)、「フードプロセッサ」としての高速回転刃の使用(WO2016/199149)など多くの方法で機械的に処理することが可能である。
【0071】
発明者らは、当該技術を研究し、実験を行った結果、脂肪吸引組織の機械的処理は、3つの別個の効果の組み合わせを有すると考えることができると結論付けた。
【0072】
3つの効果のうちの1つ目は、脂肪吸引組織の均質化であり、脂肪組織片のサイズを小さくして、AFT処置中に、より容易かつより正確に注入することができる生存脂肪細胞を含む、より流動的な脂肪吸引組織を生成し、改善された美容結果を提供することである。
【0073】
3つの効果のうちの2つ目は、脂肪組織を損傷し、脂肪吸引組織中の脂肪細胞を破裂させ、細胞/組織片ならびにホルモンおよび他の要因を含む炎症促進物質および毒性物質のような有害要因の生成および/または放出をもたらすことである。本発明者らは、このような有害な因子が、炎症および移植された脂肪の移植後の吸収を含む既知のAFT処置の課題および複雑な問題に大きく寄与していると考えている。
【0074】
3つの効果のうちの3つ目は、脂肪組織から有益な因子が放出されることである。有益な因子に、治療効果を持つことでよく知られているSVFを構成する幹細胞などを含む。序文で述べたように、機械的または酵素的処理の後、有益な因子はそのまま治療用に、または改良されたAFTを実施するために単離することができる。
当技術分野では、3つの効果は、それぞれ特定の用途のために、分離して考慮される。
【0075】
AFTの場合、脂肪吸引組織の適度な均質化は、AFT中に小さな針を用いてより正確に患者に移され得る、より流動性の高い脂肪吸引組織を生成するために行われる。また、AFTに使用する脂肪吸引組織は、均質化の有無にかかわらず、有害因子を除去するために洗浄液で厳重に繰り返し洗浄される。
【0076】
採取した脂肪吸引組織からSVFまたは単離ASCを提供することが望まれる場合、脂肪吸引組織は、最大量のASCが組織から放出されることが保証されるように脂肪組織および脂肪細胞を完全に破壊するために激しく処理され、次いで、有害因子を除去して治療上有用なSVFまたはASCを生成するために(遠心分離、洗浄液での洗浄および培養を含む)広範囲な精製が行われる。上述したように、そのような精製されたSVF / ASCsの1つの用途は、AFTを改善するために脂肪吸引組織を濃縮することである。
【0077】
本発明者らは、これら3つの効果のバランスを取り、明らかに濃縮された脂肪吸引組織を得る、脂肪吸引組織を処理する方法を発見し、現在開示している。具体的には、本発明者らは、採取された脂肪吸引組織を穏やかに機械的に処理して、有益な因子で明らかに濃縮されているが、有害な因子はあるとしてもほとんどない脂肪吸引組織を生成することが可能であることを発見した。いくつかの実施形態では、その方法は、例えば、AFT後の炎症の量の低減及び移植脂肪の吸収の低減の一方又は両方によって、処理された脂肪吸引組織を使用して行われるAFTの成功を増大させる処理された脂肪吸引組織をもたらす。本方法は、レーザ支援脂肪吸引法などの穏やかな脂肪吸引法を用いて採取された脂肪吸引組織に使用するのに格別に好適である。さらに、本発明者らは、本方法のいくつかの実施形態が、臨床環境において、ほとんど人間の介入なしにAFTを無菌的に調製することを可能にすることを見出した。
【0078】
いくつかの実施形態において、本方法は、いくつかの既知の方法よりも迅速であり、美容又は治療クリニックでの1セッションに適した比較的短い時間で脂肪吸引組織の採取、処理及びその後の改良されたAFTを可能にする。いくつかの実施形態では、採取からAFTまでの時間が短いと、AFTの成功をさらに高めることができる移植された組織に対するストレスが減少すると考えられている。
【0079】
いくつかの実施形態において、本方法は、汚染をより容易に防止する方法で実行され、炎症、さらには敗血症の可能性を低減したより安全なAFTを可能にし、顧客満足度を高め、本方法を実施するクリニックに対する責任を低減させることができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、本方法は、時間に追われている人や専門的な実験技術者ではない人、例えば看護師や本方法を実践するクリニックの助手でも容易に行うことができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも部分的に自動化することが容易であり、人員に求められる作業負荷を低減し、いくつかの実施形態では、専門的な実験技術者ではない人が行う場合であっても、結果の再現性及び一貫性を改善することができる。
【0082】
[脂肪吸引組織の処理方法]
本明細書の教示のいくつかの実施形態の態様によれば、脂肪吸引組織を処理する方法であって、
a.脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる患者から採取された脂肪吸引組織を受け取り、
b.「a」に続いて、脂肪吸引フィルターキャニスタ内で脂肪吸引組織を機械的に処理(いくつかの実施形態では、渦流混合)して脂肪吸引組織を混合し、該機械的処理は、その中の脂肪細胞を実質的に破裂させずに脂肪吸引組織中の脂肪組織片の平均サイズを減少させ、および
c.「b」に続いて、機械的処理によって脂肪吸引組織から放出された流体を脂肪吸引フィルターキャニスタ流体から排出し、
それによって脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる処理された脂肪吸引組織を提供することを含む。
【0083】
脂肪吸引フィルターキャニスタ内に脂肪吸引組織を受け取ること
「a」において、患者から採取された脂肪吸引組織は、脂肪吸引フィルターキャニスタに受け取られる。好ましくは、脂肪吸引フィルターキャニスタは、使い捨ての滅菌脂肪吸引フィルターキャニスタである。Bemis(登録商標)Health Care(TM), Sheboygan Falls, WI, USAからのContour(TM)キャニスタ、またはTulip(登録商標) Medical Instruments, San Diego, CA, USAからのTissue-Trans(登録商標) Filtron Unitなどの市販の脂肪吸引フィルターキャニスタを含む、任意の適切な脂肪吸引フィルターキャニスタが使用可能である。いくつかの実施形態では、脂肪吸引フィルターキャニスタは、本明細書の教示に従った脂肪吸引フィルターキャニスタである。
【0084】
例示的な脂肪吸引フィルターキャニスタ10は、
図1において断面で概略的に示されている。脂肪吸引フィルターキャニスタ10は、容器12、長手方向軸13、キャニスタ真空ポート14、および容器12を密閉的に閉鎖するキャップ16を含む。キャップ16を貫通して、キャニスタ吸引口18と、密封可能なアクセスポート20とがある。容器12の内部に保持されているのは、(フィルタ孔を有し、典型的には100マイクロメートルから1000マイクロメートルの間の)内部容積23を規定するフィルターライナ22である。密封可能なアクセスポート20は、任意に閉鎖され、容器12への汚染および空気の侵入を防止するが、可逆的に開放され、材料(例えば、洗浄液)の添加または材料(例えば、フィルターライナ22に保持された脂肪吸引組織のサンプル)の除去を可能にすることが可能な開口部である。
【0085】
使用のために(
図2A~2Dを参照)、キャニスタ10は、キャニスタ10をフィルターキャニスタホルダ25に保持し、キャニスタ真空ポート14を脂肪吸引装置24の脂肪吸引真空モジュール26に接続し、キャニスタ吸引口18を、遠位端に脂肪吸引カニューレ30がある脂肪吸引プローブ28に接続することによって脂肪吸引装置24と機能的に関連づけされる。
【0086】
真空モジュール26は作動され、カニューレ30の脂肪吸引入口で吸引を生成する。カニューレ30が生体内の脂肪組織と接触すると、脂肪組織が体内からカニューレ30に引き込まれ、脂肪吸引組織としてキャニスタ10に移送される。脂肪組織は、フィルターライナ22の内部容積23に捕捉され、一方、血液及び膨潤液のような液体廃棄物は、フィルターライナ22のフィルタ孔を通過して真空モジュール26に除去され、典型的には、廃棄される。その結果、10のような脂肪吸引フィルターキャニスタに受け取られた脂肪吸引組織は、本質的に脂肪組織からなり、血液及び/又はチューメセント溶液のような液体廃棄物を比較的含まない。
【0087】
脂肪吸引組織の機械的処理
上述したように、「b」において、脂肪吸引フィルターキャニスタ内の脂肪吸引組織は、脂肪吸引組織を混合するために機械的に処理される(いくつかの実施形態において、渦流混合される)。機械的処理は、その中の脂肪細胞を実質的に破裂させることなく、脂肪吸引組織中の脂肪組織片の平均サイズを減少させる。上述のように、脂肪組織片を分解するのに十分であるが、脂肪細胞の実質的な破裂を避けるのに十分穏やかである機械的処理の任意の適切な方法が、本明細書の教示を実施する際に使用され得る。いくつかの実施形態では、機械的混合は、キャニスタ内の脂肪吸着物を渦流混合すること;キャニスタ内の脂肪吸着物を振動させること;及びキャニスタ内の脂肪吸着物を機械的に混合することからなる群から選択される。
【0088】
簡潔かつ明瞭にするために、以下の説明では、機械的処理が渦流混合である実施形態について説明する。この説明は、他の機械的処理の方法にも準用される。
「b」において、渦流混合は、脂肪吸引フィルターキャニスタ内に保持されている脂肪吸引組織に適用され、それによって、脂肪吸引組織を渦流混合させる。任意の適切な方法及び/又は装置が、脂肪吸引組織の渦流混合に使用され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、渦流混合は、フィルターキャニスタ容器の底部が載っている渦流混合ユニットによるものである。
図2A、2B及び2Cは、フィルターキャニスタ10の容器の底部が載っている渦流混合ユニット32を有する実施形態を示している。
【0090】
代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、渦流混合は、フィルターキャニスタの容器の少なくとも一部を少なくとも部分的に包囲する渦流混合ユニットによるものである。
図2B、2C及び2Dは、フィルターキャニスタ10の少なくとも一部を少なくとも部分的に包囲する渦流混合ユニット32を有する実施形態を示している
図2、3及び4B~4Hは、キャニスタ10の底部と示された装置の部品、例えば、混合ユニット32の間に隙間があるように示されていることに注意することが重要である この隙間は、明瞭さのために示されており、実際には、キャニスタが部品に物理的に接触している。
【0091】
当業者に知られているように、渦流混合ユニットは、流体が保持される容器(例えば、脂肪吸引組織が保持されるフィルターキャニスタ)に対して動きを生成し適用するユニットであり、適用された動きは、流体の渦の形成を誘発し、渦は流体を混合するのに有効である。いくつかの実施形態では、本明細書の教示を実施するために使用される渦流混合ユニットは、渦流混合ユニットが起動されたときに、渦流混合ユニットによって生成される渦誘導運動の少なくとも一部をフィルターキャニスタホルダによって保持されるフィルターキャニスタに伝達する係合部材を含む。
【0092】
図2Aでは、フィルターキャニスタ10の平坦な底部34が渦流混合ユニット32の平坦な上面36上に載っている様子が示されている。
図2Aには、渦流混合ユニット32の平坦な上面36が、その係合部品であるゴムマット38の上面によって規定されている。渦流混合ユニット32が作動すると、渦撹拌誘発運動は係合部品であるゴムマット38を通じてフィルターキャニスタ10へ伝達される。いくつかの同様の実施形態では、係合部品がゴムとは異なる物質、例えばプラスチックまたはシリコンから作られている。
【0093】
図2Bでは、フィルターキャニスタ10の平坦な底部34が渦流混合ユニット32の平坦な上面36上に載り、渦流混合ユニット32の係合部品であるゴムリング40がフィルターキャニスタ10の底部を取り囲んでいる様子が示されている。渦流混合ユニット32が作動すると、渦撹拌誘発運動は、特に係合部品であるゴムリング40によってフィルターキャニスタ10に伝達される。
図2Bでは、係合部品であるゴムリング40がフィルターキャニスタ10の底部全体を完全に取り囲んでいる。いくつかの同様の実施形態において、係合部品は、フィルターキャニスタの底部の一部分だけを取り囲んでおり、例えば、不完全なリングである。いくつかの同様の実施形態において、係合部品は、ゴムとは異なる材料、例えば、プラスチック、シリコン又は金属で作られている。
【0094】
図2Cでは、フィルターキャニスタ10の非平坦(円錐)底部42が渦流混合ユニット32の非平坦上面44上に載っている様子が示されている。フィルターキャニスタ10が載っていると共にフィルターキャニスタ10の底部を包囲する渦流混合ユニット32の非平坦上面44は、渦流混合ユニット32の係合部品を構成する。
図2Cに示された装置の渦流混合ユニット32が作動したとき、渦撹拌誘導運動は、特に、係合部品である非平坦上面44を介してフィルターキャニスタ10に伝達される。係合部品として非平坦底部を有するこのような実施形態には、追加の係合部品、例えば、
図2Cに示されている実施形態には追加の係合部品としてゴムリング40も設けられている。
図2Cに示されたものと同様のいくつかの実施形態は、排他的な係合構成部品として非平坦な底部を有する。
【0095】
図2Dでは、フィルターキャニスタ10の平坦な底部34が平坦な支持棚46の滑らかな表面上に載っている様子が示されている。
図2Dに示された渦流混合ユニット32の係合部品は、フィルターキャニスタ10の側面を取り囲むゴムで裏打ちされたリング48である。渦流混合ユニット32が作動したとき、渦撹拌誘導運動は、係合部材であるゴムで裏打ちされたリング48によって、フィルターキャニスタ10にその側面を介して伝達される。
図2Dでは、係合部品であるゴムで裏打ちされたリング18がフィルターキャニスタ10の側面を完全に取り囲んでいる。いくつかの同様の実施形態において、係合部材は、フィルターキャニスタの一部分だけを取り囲み、例えば、不完全なリングである。いくつかの同様の実施形態において、係合部品は、ゴムで裏打ちされたリングとは異なる材料、例えば、プラスチック、シリコン又は金属で裏打ちされたリング又はプラスチック、ゴム、シリコン又は金属で作られた裏打ちされていないリングで作られている。
【0096】
渦流混合などの機械的処理は、脂肪吸引フィルターキャニスタ内で行われるので、処理のためにフィルターキャニスタから脂肪吸引組織を移送する必要がないため、実施形態によっては、実際の採取と同時に及び/又は実際の採取が完了したすぐ直後に、無菌状態で脂肪吸引組織の処理を行うことが可能である。いかなる理論にも拘束されることを望むことなく、採取と同時に及び/又はその採取後すぐに脂肪吸引組織を機械的に処理することが有利であると考えられる。迅速な処理は採取した脂肪組織に対する少ないストレスにつながるという仮説が現在立てられている。したがって、いくつかの実施形態では、機械的処理は、脂肪吸引組織の採取から60分以内に開始される。いくつかの実施形態では、機械的処理は、45分以内、30分以内、15分以内、10分以内、5分以内、1分以内、30秒以内、5秒以内、さらには脂肪吸引組織の採取と同時に実行される。
【0097】
いくつかの実施形態では、渦流混合などの機械的処理は、脂肪吸引フィルターキャニスタ内に追加の材料を加えることなく脂肪吸引組織に適用される。いくつかの代替の実施形態では、機械的処理の適用前及び/又は適用中に、ある容量の水溶液が(例えば、アクセスポート20又は他の適切な構成部品を介して)脂肪吸引フィルターキャニスタに添加される。いくつかの実施形態(渦流混合のいくつかの実施形態など)において、水溶液の添加は、機械的処理の効果を増大させ、その結果を改善することが見出されている。そのような実施形態では、水溶液は、好ましくは無菌である。いくつかのそのような実施形態では、水溶液は等張である。好適な水溶液の例には、PBS(リン酸緩衝液)、生理食塩水、リンゲル液が含まれる。添加される場合、水溶液の量は任意の好適な量であり、いくつかの実施形態では、フィルターキャニスタに含まれる脂肪吸引組織の体積の100%以下、80%以下、60%以下、さらには50%以下である。いくつかの実施形態では、添加される水溶液の量は、フィルターキャニスタの容器の特性に少なくとも部分的に依存し、添加される水溶液の量は、脂肪吸引組織の約30%以上、約50%以上、さらには約65%以下がフィルターキャニスタに添加される水溶液のレベル以下であるような量である。好ましいそのような実施形態では、排液「c」の間に、添加された水溶液も脂肪吸引フィルターキャニスタから排出される。
【0098】
機械的処理のパラメータ
機械的処理のパラメータは、所望の効果を達成する任意の適切なパラメータである。機械的処理は、脂肪吸引組織中の脂質組織片を十分に崩壊させ、組織から相当量の有益な因子を放出させるが、相当量の有害因子が放出され、及び/又は相当数の脂肪細胞が損傷を受けるほど集中的に行わないことが望ましい。
【0099】
いくつかの実施形態では、渦流混合は、3000rpm以下で行われる。いくつかの実施形態では、渦流混合は、1000rpm以下、800rpm以下、さらには700rpm以下で実施される。つまり、いくつかの実施形態では、渦流混合は、60rpm以上、さらには100rpm以下で実行される。
【0100】
一般に、渦流混合の持続時間は、好ましくは、時間を節約するためにできるだけ短く、それによって脂肪吸引組織を処理するために使用される装置を効率的に使用するが、相当量の有益な因子が組織から放出されるように十分に長いことが望まれる。いくつかの実施形態では、渦流混合は、30分以下、20分以下、10分以下、さらには7分以下の時間行われる。いくつかの実施形態では、渦流混合は、30秒以上、さらには60秒以下の間行われる。
【0101】
放出された流体の排出
「c」では、機械的処理に続いて、機械的処理の結果として脂肪吸引組織から放出された流体は、脂肪吸引フィルターキャニスタから除去される。その放出された流体は、機械的処理によって脂肪吸引組織から放出された有害な因子、ならびに血液および/またはチューメセント溶液の残骸、および存在すれば、機械的処理を補助するために加えられた水性溶液を含む。重要なことは、フィルターライナ(
図1の22)に捕捉されたままであるものは、有益な因子でいくらか濃縮されているAFTに適した清浄な脂肪組織であることである。渦流混合などの機械的処理は、フィルターキャニスタに保持された脂肪組織片を穏やかに分解し、通常SVFの構成部品とみなされる有益な因子を放出するという仮説が現在考えられている。さらに、渦流混合などの機械的処理は、脂肪吸引組織を処理する既知の方法の間に放出されるよりも少ない有害因子の生成および/または放出をもたらすように十分に穏やかであることが明らかである。渦流混合などの機械的処理は、フィルターライナを通過した有害因子(以前に存在したか、機械的処理の結果として放出されたかにかかわらず)の少なくとも一部を除去するのにも有効である。
【0102】
いくつかの実施形態では、放出された流体を排出するために、フィルターキャニスタは、脂肪吸引装置の脂肪吸引真空モジュール(
図2Aの22)から取り外され、脂肪吸引組織を含むフィルターキャニスタは、機械的処理及び/又は放出された流体を排出するために別の場所へ移動される。例えば、いくつかの実施形態では、フィルターキャニスタは、脂肪吸引装置の脂肪吸引真空モジュールから取り外され、機械的処理のために、例えば、渦流混合のための渦流ミキサに、所望の機械的処理装置に移動させられる。そのような実施形態では、フィルターキャニスタ内の脂肪吸引組織を機械的に処理するために、任意の適切な装置及び機構を使用してもよく、いくつかの実施形態では、
図2A~2D、3A~3C及び4A~4Hに示されたものに類似する装置及び/又は機構を使用することができる。
【0103】
いくつかのそのような実施形態では、渦流混合などの機械的処理の間、フィルターキャニスタは、脂肪吸引装置の脂肪吸引真空モジュールなどの流体排出機構に取り付けられていない(すなわち、「取り付けられている」が形容詞である)。そのような実施形態では、機械的処理に続いて、脂肪吸引組織を含むフィルターキャニスタは、脂肪吸引組織から放出された流体を排出するために流体排出機構に再装着され、例えば、脂肪吸引装置の脂肪吸引真空モジュールに再装着される。
【0104】
好ましい実施形態では、脂肪吸引フィルターキャニスタは、機械的処理の間、流体排出機構に取り付けられる(すなわち、「取り付けられる」は形容詞である)。いくつかのそのような実施形態では、機械的処理の間、フィルターキャニスタは、脂肪吸引装置の脂肪吸引真空モジュールでない流体排出機構に取り付けられる。好ましい実施形態では、フィルターキャニスタは、流体排出機構として機能するように、脂肪吸引装置の脂肪吸引真空モジュールに接続されたままである。そのような実施形態において、機械的処理の結果として脂肪吸引組織から放出された流体を排出することは、好ましくは、脂肪吸引真空モジュールを作動させることによって行われる。
【0105】
機械的に処理された脂肪組織を用いたAFT
いくつかの実施形態では、本方法は、排出「c」に続いて、フィルターキャニスタから自己脂肪移植(AFT)装置に脂肪吸引組織を移送することを更に含む。AFT装置は、生きている患者に脂肪を移植するために使用される任意の装置又は装置の構成部品であり、例えば、シリンジ又はシリンジバレルが挙げられる。いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織は、直接、すなわち、フィルターキャニスタからAFT装置に移送される。いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織は、間接的に、例えば、フィルターキャニスタから容器に、及び容器からAFT装置に移送される。例えば、いくつかの実施形態では、シリンジ56(脂肪移植装置又は容器などのAFT装置として)を開放アクセスポート20を通して挿入し、渦流混合脂肪組織を除去する。
【0106】
いくつかの実施形態において、本方法は、AFT装置を用いて、脂肪吸引組織を生きている患者に、好ましくは脂肪組織が採取されたのと同じ患者に(自己に)移植することをさらに含む。いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織を生きている患者に移植することは、請求された発明の一部ではない。
【0107】
機械的に処理された脂肪組織の洗浄
上述のように、機械的処理の結果として、流体が脂肪吸引組織から放出され、フィルターライナ(
図1の22)を通過してフィルターキャニスタ10の容器(
図1の12)内に集まる。放出された流体は、機械的処理の結果として脂肪吸引組織から放出された有害物質、並びに血液及び/又はチューメセント溶液の残骸を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織「b」の機械的処理に続いて、好ましくは流体の排出「c」にも続いて(行われる場合)、しかし渦流混合脂肪吸引組織をAFT装置に移送する前に、本方法はさらに、洗浄溶液(例えば、生理食塩水、リンゲル液、PBS)をフィルターキャニスタに加え、通常の方法で、例えば、脂肪吸引真空モジュールまたはいくつかの実施形態では別個の排出モジュールなどの流体排出機構を作動させることにより、容器から排出することを含む。このような洗浄は、脂肪吸引組織から有害物質の少なくとも一部を除去するのに役立つ。このような洗浄液は、好ましくは、無菌及び/又は等張である。
【0109】
いくつかの好ましい実施形態では、脂肪吸引組織[b]の機械的処理に続いて、好ましくは流体の排出「c」にも続いて(行われる場合)、しかし機械的に処理された脂肪吸引組織をAFT装置に移す前に、脂肪吸引フィルターキャニスタ内の機械的に処理された脂肪吸引組織は、洗浄されない。加えて又は代替的に、いくつかの好ましい実施形態では、脂肪吸引組織の機械的処理「b」に続いて、好ましくは流体の排出「c」にも続いて(行われる場合)、しかし機械的に処理された脂肪吸引組織をAFT装置に移送する前に、脂肪吸引フィルターキャニスタ内の機械的に処理された脂肪吸引組織は遠心分離されない。洗浄ステップ及び/又は遠心分離ステップを有しないことは、特に、脂肪吸引組織を処理するために使用される装置を簡素化し、洗浄液を提供する必要性をなくし、処分される必要がある生物学的廃棄物の量を減らすことによって、時間及びコストを節約することを含む多数の利点を有している。驚くべきことに、本明細書の教示に従って機械的に処理された非洗浄/非遠心分離の脂肪吸引組織を用いて実施されたAFTの実施形態は、非常に成功している。この成功は、機械的処理によって、脂肪吸引組織に残る十分な有益な材料が放出され、脂肪吸引組織が濃縮されることを示している。並行して、十分な有害物質が、AFTのための脂肪吸引組織の品質を実質的に低下させないように、脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルタを通して脂肪吸引組織から除去される。
【0110】
フィルターキャニスタの容積と処理される脂肪吸引組織の量
当技術分野における通常の技術を有する者は、脂肪吸引組織を処理する受け入れられた先行技術の方法において、改良されたAFTは、必然的に、100ml前後の低容量の濃縮脂肪組織でのみ実行されることを認識している。これは、脂肪吸引組織の一部を激しく機械的及び/又は酵素的に処理し、続いて遠心分離して1グラムのSVFペレットを製造することを含む脂肪組織を濃縮するためのSVFの製造が複雑であることの結果である。その後、製造されたSVFペレットは、洗浄され、続いて、それによって濃縮され、改良されたAFTのために使用される比較的少量の脂肪組織(典型的には約100ml)に加えられる。
【0111】
本明細書の教示によれば、脂肪吸引フィルターキャニスタ内に含まれる任意の所望量の脂肪吸引組織は、渦流混合などの機械処理の適用によって処理されて、脂肪吸引フィルターキャニスタの容積および患者から採取される脂肪組織の量によってのみ制限されて、濃縮脂肪吸引組織を製造することが可能である。
【0112】
したがって、いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織を含む脂肪吸引フィルターキャニスタは、50ml以上10リットル以下、さらには5リットル以下の容積を有する。いくつかの実施形態では、脂肪吸引フィルターキャニスタは、50ml以上100ml以下の容積を有する小型、100ml以上500ml以下の容積を有する中型、500ml以上1リットル以下の容積を有する大型、及び1リットル以下の容積を有する超大型からなる群から選択される。
【0113】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる受け取った採取された脂肪吸引組織の量は、50ml以上10リットル以下である。いくつかの実施形態では、脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる受け取った採取された脂肪吸引組織の量は、50ml以上100ml以下、100ml以上500ml以下、500ml以上1リットル以下、さらには1リットル以上からなる群から選択される。
【0114】
酵素処理
序文で述べたように、脂肪組織から幹細胞などを放出するために、外部の酵素の添加によって脂肪吸引組織を処理することが知られている。本明細書の教示の好ましい実施形態では、採取時から、脂肪吸引組織から放出された流体の排出「c」、及び該当する場合、脂肪吸引組織のAFT装置への移送まで、外部酵素は脂肪吸引組織に添加されない。いくつかのそのような好ましい実施形態では、脂肪吸引組織は「a」の前から「b」の直後を及び「c」の前まで、任意の外部酵素との接触がない。いくつかのそのような好ましい実施形態では、脂肪吸引組織は、「a」の前から「c」の直後まで、いかなる外部酵素との接触もない。いくつかのそのような好ましい実施形態では、脂肪吸引組織は、脂肪吸引フィルターキャニスタに脂肪吸引組織が含まれている限り、いかなる外部酵素とも接触していない。
【0115】
脂肪吸引
本明細書の方法の教示は、採取した脂肪吸引組織の穏やかな機械的処理が、脂肪吸引フィルターキャニスタ内で採取した脂肪吸引組織を処理し、改善されたAFTのための濃縮脂肪吸引組織を得ることを可能にするという発見に基づいている。
【0116】
本明細書の教示による処理方法は、高品質の脂肪吸引組織、すなわち、血液などの廃棄物が少なく、死んだまたは損傷した脂肪細胞(脂肪細胞ともいう)が少なく、外傷を受けた脂肪細胞が少なくなる、比較的少ない外傷で穏やかに採取された脂肪吸引組織と共に使用するのに格別適していると現在信じられている。いかなる理論にも拘束されることなく、そのような穏やかに採取された脂肪吸引組織は、より少ない有害因子を含むと考えられている。したがって、いくつかの実施形態では、受け取った脂肪吸引組織は、穏やかな脂肪吸引方法及び/又は装置を使用して採取された脂肪吸引組織である。
いくつかの実施形態では、穏やかな脂肪吸引方法は超音波支援脂肪吸引であり、脂肪吸引は超音波支援脂肪吸引装置を用いて行われた。
いくつかの実施形態では、穏やかな脂肪吸引方法は、無線周波数(RF)支援脂肪吸引であり、脂肪吸引は、RF支援脂肪吸引装置を用いて実施された。
いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織は、少なくとも2mm、5mm以下の内径を有するカニューレを使用して採取された。
いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織は、少なくとも20kPであり、98kP以下の吸引圧を使用して採取された。
【0117】
本方法のいくつかの実施形態では、受け取った脂肪吸引組織は、
図2A~2Dに示されているように、レーザ支援脂肪吸引装置を使用して患者から採取される。いくつかのそのような実施形態では、レーザ支援脂肪吸引は、800~1600nm、1400~1500nm、1450~1490nm、さらには1460~1480nmの範囲内のレーザ波長、例えばAlma Lasers(イスラエル、シーザリア)によるLipoLife(登録商標)などのいくつかの市販のレーザ支援脂肪吸引装置で使用されている1470nmのレーザ波長を用いて実施される。いくつかのそのような実施形態では、レーザ支援脂肪吸引は、Alma LasersによるLipoLife(登録商標)などのいくつかの市販のレーザ支援脂肪吸引装置で使用されるような放射状照射光ファイバを使用して実行される。
【0118】
いかなる理論にも拘束されることを望むことなく、現在、特に上記の波長および/または放射状照射光ファイバを使用するレーザ支援脂肪吸引は、他の脂肪吸引方法よりも非常に優しく、有害因子の発生が少ないと考えられている。
【0119】
脂肪吸引組織の追加処理
上述のように、機械的処理「b」又は放出された流体の排出「c」に続いて、脂肪吸引フィルターキャニスタ内の処理された脂肪吸引組織は、典型的には、その後の洗浄ステップを伴う又は伴わないAFTにおける使用の準備が整っている。
【0120】
とはいえ、いくつかの例では、「c」に続いて、処理された脂肪吸引組織は、いくつかのタイプのAFTに対して十分に流動性がなく、典型的には、処理された脂肪吸引組織が比較的大きな脂肪組織片を比較的大きな割合で含むことを示している。さらに、ある実施態様では、AFTのために脂肪吸引組織を濃縮するため、または他の治療目的のために、使用のためのSVFを追加的または代替的に製造することが望まれる。
【0121】
本発明者らは、排出「c」に続いて脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる脂肪吸引組織をさらに処理し、AFT及び/又はSVFに適したより流動的な脂肪吸引組織をもたらすことが可能であることを見いだした。したがって、いくつかの実施形態では、その方法は、
d.「c」に続いて、脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる脂肪吸引組織に渦流混合などの追加の機械的処理を適用して脂肪吸引組織を混合し、該追加の機械的処理は、脂肪吸引組織中の脂肪細胞片の平均サイズをその中の脂肪細胞を大幅に破裂させずに縮小すること、をさらに備える。
【0122】
(採取に続く時間、脂肪吸引フィルターキャニスタへの追加の材料の添加又は無添加、機械的処理が行われる強度、機械的処理が行われる期間を含む)追加の機械的処理のパラメータは、「b」の渦流混合について(及び他の機械的処理方法について本明細書に)上述したとおりであり、簡潔さの理由から、再び記載されない。
【0123】
いくつかの実施形態では、追加の機械的処理「d」は、脂肪吸引フィルターキャニスタの全内容物に対して「c」に続いて実行される。いくつかの代替実施形態では、「c」に続いて、脂肪吸引フィルターキャニスタから脂肪吸引組織の一部が除去され、脂肪吸引フィルターキャニスタに残っている脂肪吸引組織に対してのみ、追加の機械的処理が実行される。いくつかの実施形態では、「b」の機械的処理の種類は、「d」の機械的処理の種類と異なる。簡略化のために、好ましい実施形態では、「b」における機械的処理の種類は、「d」における機械的処理の種類と同じである。
【0124】
流体脂肪吸引組織
「d」に続いて、脂肪吸引組織の追加の機械的処理は、脂肪吸引組織をより流動的にし、したがって、いくつかの実施形態において、身体のより細かい領域におけるAFTまたは身体のより細かい定義のために適していることが見出されている。現在、追加の機械的処理は、脂肪吸引組織を構成する脂肪組織片の平均サイズを減少させると考えられている。また、比較的少数の有害な因子が放出される一方で、追加の有益な因子が放出されるため、脂肪吸引組織は、改良型AFTで使用するために濃縮されると考えられる。
【0125】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、追加の機械的処理「d」に続いて、脂肪吸引組織を自己脂肪移植(AFT)装置に移送することをさらに含む。いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織は、直接、すなわち、フィルターキャニスタからAFT装置に移送される。いくつかの実施形態では、脂肪吸引組織は、間接的に、例えば、フィルターキャニスタから容器に、及び容器からAFT装置に移送される。いくつかの実施形態において、本方法は、AFT装置を使用して、脂肪吸引組織を生きている患者、好ましくは脂肪組織が採取されたのと同じ患者に(すなわち、自己に)移植することをさらに含む。
【0126】
間質血管因子
第1の機械的処理「b」と同様に、追加の機械的処理「d」は、脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナを通過する流体を放出する。この流体は、SVFペレットを作るために通常の方法で集めて濃縮することができる幹細胞などの有益な因子が濃縮されていることが判明している。
【0127】
したがって、いくつかの実施形態では、その方法はさらに、
e.追加の機械的処理「d」に続いて、追加の機械的処理に起因して脂肪吸引組織から放出された流体をSVF流体として分離することを含んでいる。
【0128】
いくつかの実施形態では、SVF流体は、SVFペレットを作るために処理される。いくつかのそのような実施形態において、そのような処理は、SVF流体を遠心分離容器に入れることと、遠心分離容器内でSVF流体を遠心分離して遠心分離容器の底にSVFペレットをもたらすこととを含む。SVFペレットは、通常の方法で使用することができ、例えば、注射治療薬として流体中に懸濁されるか、または本明細書の教示に従って処理された脂肪吸引組織を含む、AFTのために脂肪組織を濃縮するために脂肪組織/脂肪吸引組織に添加される。
【0129】
本方法を実施するための装置
本明細書の教示による方法の実施形態は、本明細書で議論したように、適切な装置又は装置の組合せを用いて実施することができる。いくつかの実施形態は、上記の
図2A~
図2Dを参照して説明した装置24、または
図3A~
図3Cもしくは
図4A~
図4Hに示された装置など、本明細書の教示による脂肪吸引装置を使用して実施するのが好ましい。いくつかの実施形態では、そのような脂肪吸引装置は、実質的に、脂肪吸引を行うために構成された脂肪吸引装置24であり、その装置は、脂肪吸引組織処理ユニットとして渦巻き混合ユニット(例えば。32は
図2A~2Dに示されている)を備え、該渦流混合ユニットは、起動されると、本明細書の教示による方法の1つ以上の実施形態を実施するために、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタにある強度及び持続時間で渦誘導運動を生成し適用するように構成される。そのような渦誘導運動は、脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物における渦の形成を誘導し、それによって、脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物を渦流混合させる。
【0130】
上述したように、このような装置の実施形態は、
脂肪吸引を行うために当技術分野で知られているような脂肪吸引真空モジュールであって、いくつかの実施形態では、渦流混合の結果として脂肪吸引組織から放出される液体などの脂肪吸引フィルターキャニスタからの液体を除去するための液体排出モジュールとして機能することができるものと;
渦流混合の結果として脂肪吸引組織から放出される液体などの脂肪吸引フィルターキャニスタから液体を除去するための脂肪吸引真空モジュールと異なる液体排出モジュールと;
脂肪吸引カニューレに取り付け可能な遠位端と、その吸引入口を介して脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付け可能な近位端を有し、前記遠位端から前記近位端を通って脂肪吸引カニューレを介して採取した脂肪吸引組織を、付属の脂肪吸引フィルターキャニスタの容器内に導くよう構成された脂肪吸引プローブと;
そのアクセスポートを介して脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに取り付け可能な洗浄モジュールであって、ある量の液体(例えば、洗浄液)を、付属の脂肪吸引フィルターキャニスタの容器に入れるように構成された(好ましくは、計量された量の液体)洗浄モジュールと;
脂肪吸引装置に機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタに含まれる脂肪吸引組織を(好ましくは、本明細書の教示による方法の実施形態に従って)自動的に処理するように構成されたコントローラであって、該自動的処理は、渦流混合ユニットの起動を含み、流体排出モジュール(流体排出モジュールが脂肪吸引真空モジュールと同じであるいくつかの実施形態、および流体排出モジュールが脂肪吸引真空モジュールと異なる他の実施形態において)および洗浄モジュールを所望の順序で、好ましくは本明細書の教示の一実施形態に従って、起動するコントローラと;
のうちの1つ以上を含むことができる。当技術分野における通常の技術を有する者は、本明細書を熟読することにより、発明的な努力なしに前記コントローラを実装することができる。典型的には、該コントローラは、コンピュータ(カスタムまたは汎用目的、例えば、脂肪吸引を行うために脂肪吸引装置を操作するコントローラとしても機能するコンピュータ)上の(ソフトウェア、ハードウェアおよび/またはファームウェアで実装される)モジュールに対する一連のコマンド、種々の制御モジュールに対する通信装置およびプロトコル、ならびにいくつかの実施形態では、スイッチ、ソレノイドおよびロボットアームなどの電気および/または電気機械部品として実装される。
【0131】
図2Aに示された脂肪吸引装置24は、コントローラ50と洗浄モジュール52を含む 脂肪吸引真空モジュール26は、流体排出モジュールとしても機能するように構成される。
【0132】
振動による機械的処理
上述のように、いくつかの実施形態において、本方法は、機械的処理が振動である場合に実施される。
同様に、いくつかの実施形態では、本明細書の教示による装置の脂肪吸引組織処理ユニットは、振動ユニット(渦流混合ユニットの代わりに、または渦流混合ユニットに加えて)を備え、振動ユニットは、起動されると、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタ内に含まれる脂肪吸引組織に振動を生成して適用し、振動は、脂肪吸引組織を機械的に処理するのに効果的であるよう構成される。
【0133】
適用される振動は、脂肪細胞を実質的に破裂させることなく、機械的処理の所望のバランスを達成するために、任意の適切な周波数および強度である。当業者であれば、過度な実験をすることなく、所望の効果を達成するために適切な周波数及び強度を決定することができる。
【0134】
20kHzより高い超音波周波数を有する振動は、対外細胞溶解を引き起こすことが当業者に知られている。したがって、いくつかの実施形態では、印加される振動は、20kHz未満、10kHz未満、さらには5kHz未満の周波数を有する。好適な周波数を発生させるための好適な装置には、市販の低周波音波トランスデューサ、例えば、Sensor Technology Ltd. (カナダ、オンタリオ州コリングウッド)から入手可能である。
【0135】
いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置の振動ユニット及び/又はコントローラは、30分以下、20分以下、10分以下、さらには7分以下の期間、脂肪吸引装置と機能的に関連する脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物の振動を可能にするように構成される。
【0136】
いくつかの実施形態では、振動ユニット及び/又はコントローラは、30秒以上、さらには60秒以下の期間、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物の振動を可能にするように構成される。
【0137】
図3A~3Cは、機械的処理が振動である本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略を示しており、脂肪吸引装置58は、脂肪吸引組織処理ユニットとして振動ユニット60を含んでいる。
[音波発信器プローブ]
【0138】
いくつかの実施形態では、振動ユニットは、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナによって囲まれた容積の内部に配置されるように構成された少なくとも1つの音波送信器プローブを含む。音波治療の技術分野において知られているように、音波発信器プローブは、振動を生成し、その振動を媒体、例えば、本明細書の教示による脂肪吸引組織に伝達する装置である。そのような実施形態では、使用中、プローブは、脂肪吸引組織中に少なくとも部分的に浸漬される。
【0139】
いくつかの実施形態では、振動ユニットは、単一の音波発信器プローブを含んでいる。単一の発信器プローブの利点は、単純であることである。
図3Aには、装置58と機能的に関連するフィルターキャニスタ10が断面で示されている。 キャニスタ10の内部容積23内に位置する細長い音波発信器プローブ62は、容積23が脂肪吸引組織などの流体を含むとき、プローブ62がそこに浸漬されるように配置されている。音波発信器プローブ62は、ケーブル64を介して装置58のコントローラ(示されていない)と機能的に関連付けられている。必要なとき、コントローラは、プローブ62が本明細書の教示に従って容積23に含まれる脂肪吸引組織を処理するための振動を生成するように、必要な持続時間の間必要な電力を供給する。
【0140】
いくつかの実施形態では、振動は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、さらには少なくとも4つの音波発信器プローブを備える。2つ以上の音波プローブの利点は、プローブの振動によって引き起こされる機械的処理が、脂肪吸引組織の体積全体に、より効果的に分散されることである。いくつかの実施形態では、音波発信器プローブの1つ又はそれ以上は細長い。
図3Bでは、装置58に機能的に関連するフィルターキャニスタ10が示されている。
図3Bに示された装置58は、
図3Aに示されたものと同じであるが、2つの細長い音波発信器プローブ62a及び62bを含む。
【0141】
いくつかのそのような実施形態では、音波発信器プローブの一部または全部は、脂肪吸引フィルターキャニスタの構成部品であり、脂肪吸引装置は、例えば電気コネクタを含み、本明細書の教示に従った脂肪吸引キャニスタの音波発信器プローブの動作を可能にするよう構成される。代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、音波発信器プローブの一部又は全部が、脂肪吸引装置の構成部品である。
【0142】
いくつかの実施形態では、プローブは、プローブと脂肪吸引組織との非滅菌接触を防ぐために使用するためのシースのようなカバーで覆われている。いくつかの実施形態では、プローブの少なくとも外側の部分は、使用後に廃棄される。
【0143】
[振動フィルターライナ]
いくつかの実施形態において、振動ユニットは、活性化されると、前記音波発信器が物理的に関連付けられたフィルターライナを振動させるように、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナと物理的に関連付けられるように構成された音波発信器を備える。そのような実施形態において、振動するフィルターライナは、音波発信器からの振動を、そこに保持された脂肪吸引組織に伝達する。そのような実施形態では、フィルターライナの少なくとも一部は、医療グレードの金属またはポリエステルなどの医療グレードのプラスチックなどの音波振動を伝達する材料で作られている。いくつかのそのような実施形態では、音波発信器は、脂肪吸引フィルターキャニスタの構成部品であり、脂肪吸引装置は、例えば、電気コネクタを含み、本明細書の教示に従って脂肪吸引キャニスタの音波発信器の動作を可能にするように構成される。代替的に、いくつかのそのような実施形態において、音波発信器は装置の構成部品であり、脂肪吸引フィルターキャニスタは別個の構成部品であり、両者は、送信機とフィルターライナとの可逆的な音波嵌合を可能にするように構成される。
【0144】
図3Cでは、装置58に機能的に関連付けられたフィルターキャニスタ10が示されている。キャニスタ10のフィルターライナ22に機能的に関連付けられた音波発信器66は、ケーブル64を介して装置58のコントローラ(示されていない)に機能的に関連付けられたものである。必要なとき、コントローラは、送信機66が、フィルターライナ22によって容積23に含まれる脂肪吸引組織に伝達されて脂肪吸引組織を処理する振動を生成するように、必要な持続時間の間、必要な電力を提供する。
いくつかの実施形態では、音波発信器66は、コネクタ68を介してフィルターライナ22と可逆的に結合される装置58の構成部品である。
【0145】
いくつかの代替の実施形態では、音波発信器66は、コネクタ70を介するケーブル64を介して装置58と可逆的に結合されるキャニスタ10の構成部品である。
【0146】
機械的混合
上述のように、いくつかの実施形態において、本方法は、機械的処理が機械的混合である場合に実施される。
同様に、いくつかの実施形態において、本明細書の教示による装置の脂肪吸引組織処理ユニットは、
脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタのフィルターライナによって囲まれた容積内に位置付けられるように構成された機械的混合構成部品と、
容器内に含まれる脂肪吸引組織を機械的混合構成部品に対して移動させて脂肪吸引組織を機械的に混合するように構成され、脂肪吸引組織を機械的に処理するのに有効な機械的混合である混合モータと、
を備える。
【0147】
図4A~4Hは、本明細書の教示による方法の実施形態を実施するのに有用な装置の実施形態の構成部品の概略図であり、該装置は、機械的混合のために構成される。
[並進混合構成部品]
【0148】
いくつかの実施形態では、混合モータは、脂肪吸引フィルターキャニスタに対する機械的混合構成部品の相対運動が、脂肪吸引フィルターキャニスタの長手方向軸に対して平行に並進するように構成される。いくつかの実施形態では、フィルターキャニスタは、長手方向軸と平行に移動する。加えて又は代替的に、いくつかの実施形態では、機械的混合構成部品は、長手方向軸に平行に移動される。
【0149】
いくつかのそのような実施形態では、混合構成部品は、流量制限障壁であり、すなわち、混合構成部品は、そこを通る脂肪吸引組織の流れに対する部分的な障壁を構成している。混合構成部品に対するキャニスタの並進の結果、フィルターライナの内部容積に含まれる脂肪吸引組織は、制限されて増加した圧力、脂肪吸引組織を機械的に処理するのに有効である脂肪吸引組織の機械的混合をもたらす流れで、混合構成部品を通過し、及び/又はそれと並んで(混合構成部品とフィルターライナの間を)通過する。
【0150】
いくつかのそのような実施形態では、流量制限障壁は、部分的に透過性のプランジャを備えているか、または部分的に透過性のプランジャである。本明細書で使用されるように、部分透過性プランジャは、長手方向軸に平行な小さな寸法と、長手方向軸に垂直な大きな寸法とを有する、部分透過性、すなわち、フィルターライナの内部容積に含まれる脂肪吸引組織がプランジャを通過すること又はプランジャと並んで(プランジャとフィルターライナ自体との間を)通過することができるよう構成された流動制限障壁である。部分透過性のプランジャは、不透過性のプランジャ、すなわち、流体がそこを通過すること又は並んで通過することを許容しない従来技術のシリンジの構成部品と対比される。
【0151】
いくつかの実施形態では、長手方向軸13に垂直な寸法における部分透過性プランジャの外形は丸く、例えば、
図4A-1の上からの断面におけるプランジャ66aは、並進中に脂肪吸引組織がプランジャ66aの縁とライナ22の内壁との間の空間を通過するようにライナ22の内径より小さい直径を有する固体薄板である。
【0152】
いくつかの実施形態では、長手方向軸13に垂直な寸法におけるプランジャの外形は、ギザギザを付けられており、例えば
図4A-2の上からの断面における花形プランジャ66b、並進中に脂肪吸引組織がくぼみの間の空間を通ってミシン目を通るようなミシン目のある花形プレートである。
【0153】
いくつかの実施形態では、長手方向軸13に垂直な寸法におけるプランジャの外形は、
図4A-1のプランジャ66aなどのライナの内壁の外形と同じである。
【0154】
いくつかの実施形態では、長手方向軸13に垂直な寸法におけるプランジャの外径は、
図4A-1のプランジャ66b又は
図4A-3の上からの断面におけるプランジャ66cなどのライナの内壁の外形と異なる。
【0155】
いくつかの実施形態では、プランジャは、
図4A-1のプランジャ66aまたは
図4A-3のプランジャ66cのように、そこを通る脂肪吸引組織の通過を可能にする間隙を欠いている。
【0156】
いくつかの実施形態では、プランジャは、
図4A-2の穴あきプランジャ66bまたは
図4A-4のメッシュプランジャ66dのように穴があいており、脂肪吸引組織は、フレンチプレスに類似する方法でプランジャ66dの一部を構成するメッシュ67を通過することが可能である。
【0157】
相対的並進運動の速度は、任意の適切な速度であり、典型的には、混合成分の特性に依存し、例えば、より制限的な障壁はよりゆっくりと移動され、より制限的ではない障壁はより速く移動される。いくつかの好ましい実施形態では、速度は1mm/秒から10cm/秒の間である。いくつかの実施形態では、装置(例えば、コントローラ)は、移動が一方向(例えば、上から下へ又は下から上へ)に1回だけ実行されるように構成される。いくつかの代替の実施形態では、移動は少なくとも2回実行される(例えば、上から下へそして上へ戻る、または下から上へそして下へ戻る)。
【0158】
図4Bでは、フィルターキャニスタ10と機能的に関連付けられた脂肪吸引装置68が示されている。フィルターライナ22によって規定された内部容積23の内部には、透水性プランジャ66と、長手方向軸13と平行で装置68に固定された剛性直線支持バー70とを含む機械的混合部品が配置されている。混合モータ72は、容積23内の脂肪吸引組織が混合され、それによって機械的に処理されるようにプランジャ66を通過及び/又は通過させられるように、部分透過性のプランジャ66及びバー70が動かない間にフィルターキャニスタ10を軸13と平行に動かすように構成されている。
【0159】
図4Cでは、装置68に類似した脂肪吸引装置74が示されている。装置74において、フィルターキャニスタ10は、装置74に対して所定の位置に固定され、混合モータ72は、部分的に透過するプランジャ66及び剛性直線支持バー70を長手方向軸13と平行に移動するように構成される。
【0160】
[回転するフィルターライナ混合部材]
並進混合の代わりに又は追加的に、いくつかの実施形態では、混合モータは、脂肪吸引フィルターキャニスタの長手方向軸に平行な軸の周りで、フィルターライナを脂肪吸引フィルターキャニスタの容器に対して回転させるように構成されている。いくつかのそのような実施形態において、機械的混合構成部品は、フィルターライナの内面から内部容積に突出する混合要素を備え、該混合要素はフィルターライナと一緒に回転する。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態において、機械的混合構成部品は、フィルターライナと一緒に回転しない混合要素を備える。
【0161】
図4Dでは、フィルターキャニスタ10と機能的に関連付けられた脂肪吸引装置76が示されており、フィルターキャニスタ10は概略断面図で示されている。電気混合モータ72は、起動されると、フィルターライナ22の上部内縁にある整合歯車歯80と係合する歯車78を介してフィルターライナ22を回転させるように構成される。フィルターライナ22の内面から内部容積23に突出しているのは、3mm厚の硬質ポリエチレンパドルの混合要素82である。混合モータ72が作動すると、フィルターライナ22および混合要素82は、軸13の周りで一緒に回転し、混合し、それによって、容積23内に含まれる脂肪吸引組織を機械的に処理する。
【0162】
図4Eでは、装置76に類似した脂肪吸引装置84が示されている。内部容積23の内部で、フィルターキャニスタ10のキャップに固定的に取り付けられているのは、(3mm厚のポリエチレンの)ステータパドル86である。装置84の混合モータ72の動作は、装置76の動作と同様であるが、ステータパドル86の存在により、脂肪吸引組織の機械的処理の効率が向上する。
【0163】
[回転混合構成部品]
並進混合及び/又は回転フィルターライナと代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、混合モータは、フィルターライナの内部容積内に位置するフィルターライナとは別の機械的混合構成部品を回転させるように構成され、典型的には、脂肪吸引フィルターキャニスタの長手方向軸に垂直な平面内での回転であるが必ずしもそうでなくてもよい。
フィルターライナとは別の機械的混合構成部品の任意の適切なタイプ又はタイプの組み合わせが使用されてもよい。
【0164】
いくつかの実施形態では、機械的混合構成部品は、インペラを備える。いくつかの実施形態では、インペラは、半径流インペラである。あるいは、いくつかの実施形態では、インペラは、軸流インペラである。
図4Fでは、フィルターキャニスタ10と機能的に関連付けられた脂肪吸引装置88が示されており、フィルターキャニスタ10は、概略的な側断面で示されている。電気混合モータ72は、起動されると、軸92を介してインペラ90を回転させ、容積23に含まれる脂肪吸引組織を混合し、それによって機械的に処理するように構成される。
【0165】
代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、機械的混合構成部品は、内部容積23に含まれる脂肪吸引組織のような流体を軸方向に駆動する機械的混合構成部品であるプロペラを備える。
図4Gでは、フィルターキャニスタ10と機能的に関連付けられた脂肪吸引装置94が示されており、フィルターキャニスタ10は、概略的な側断面で示されている。電気混合モータ72は、起動されると、軸92を介してプロペラ96を回転させ、容積23内に含まれる脂肪吸引組織を混合し、それによって機械的に処理するように構成される。
【0166】
代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、機械的混合構成部品は、パドルを備え、内部容積23に含まれる脂肪吸引組織のような流体を回転軸の接線方向に駆動する平面を有する機械的混合構成部品である。
図4Hでは、フィルターキャニスタ10と機能的に関連付けられた脂肪吸引装置98が示されており、フィルターキャニスタ10は、概略的な側断面で示されている。電気混合モータ72は、起動されると、軸92を介して(3mm厚のポリエチレンの)パドル100を回転させ、混合し、それによって容積23に含まれる脂肪吸引組織を機械的に処理するように構成される。
【0167】
機械的混合構成部品(例えば、回転フィルターライナおよびまたはフィルターライナとは別の回転混合構成部品)を有する実施形態では、機械的混合構成部品が回転される速度および持続時間は、任意の適切な値である。いくつかの実施形態では、機械的混合ユニット及び/又はコントローラは、10分以下、5分以下、1分以下、さらには1分以下の期間、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物を機械的に混合できるよう構成される。さらに、いくつかの実施形態では、機械的混合ユニット及び/又はコントローラは、10秒以上、さらには15秒以上の期間、脂肪吸引装置と機能的に関連付けられた脂肪吸引フィルターキャニスタの内容物の機械的混合を可能にするように構成される。いくつかの好ましい実施形態では、機械的混合部材の回転速度は、960rpm未満、480rpm未満、240rpm未満、更には120rpm未満である。
【0168】
いくつかのそのような実施形態において、混合モータおよび機械的混合構成部品全体(例えば、プランジャおよびハンドル)は、脂肪吸引装置の構成部品である。
【0169】
いくつかのそのような実施形態において、混合モータ及び機械的混合構成部品の一部(例えば、ハンドル)は、脂肪吸引装置の構成部品であり、機械的混合構成部品の一部(例えば、プランジャ)は、フィルターキャニスタの一部である。
【0170】
いくつかのそのような実施形態では、混合モータは、脂肪吸引装置の構成部品であり、機械的混合構成部品(例えば、プランジャ及びハンドル)の全体は、フィルターキャニスタの構成部品である。
【0171】
いくつかのそのような実施形態では、混合モータ及び機械的混合構成部品全体(例えば、プランジャ及びハンドル)は、フィルターキャニスタの構成部品である。いくつかのそのような実施形態では、脂肪吸引装置は、混合モータを動作させるための動力(例えば、電力)を供給する。あるいは、いくつかのそのような実施形態では、電気モータを作動させる動力は、脂肪吸引装置とは異なる供給源から提供される。
いくつかの実施形態において、脂肪吸引装置は、2つ以上のタイプの混合構成部品を含む。
【0172】
本明細書の教示は、任意のタイプの脂肪吸引および脂肪吸引装置を用いて有利に実施され得るが、より穏やかな脂肪吸引装置を用いて有利に実施される。
例えば、いくつかの実施形態において、
図2Aに示された脂肪吸引装置24は、超音波支援脂肪吸引装置であり、構成部品54は、脂肪吸引を受けている脂肪組織に超音波エネルギーを適用するために必要な構成部品のいくつかを含む超音波モジュールである。
【0173】
例えば、いくつかの実施形態において、
図2Aに示された脂肪吸引装置24は、RF支援脂肪吸引装置であり、構成部品54は、脂肪吸引を受けている脂肪組織に高周波エネルギーを適用するために必要な構成部品のいくつかを含むRFモジュールである。
【0174】
例えば、いくつかの実施形態において、
図2Aに示された脂肪吸引装置24は、レーザ支援脂肪吸引装置であり、構成部品54は、脂肪吸引を受けている脂肪組織にレーザエネルギーを適用するために必要な構成部品のいくつかを含むレーザモジュールである。例えば、いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置は、Alma Lasersによる改良型LipoLife(登録商標)レーザ支援脂肪吸引装置である。
【0175】
同様に、いくつかの実施形態では、脂肪吸引装置58(
図3A~3C)、
図4Bに示された装置68、
図4Cに示された装置74、
図4Dに示された装置76、
図4Eに示された装置84、装置88(
図4F)、装置94(
図4G)又は装置98(
図4H)のいずれか1つが、超音波支援脂肪吸引装置、RF支援脂肪吸引装置又はレーザ支援脂肪吸引装置のいずれか1つである。
【0176】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先する。
【0177】
本明細書で使用される場合、用語「備える」、「含む」、「有する」及びその文法的変形は、記載された特徴、整数、ステップ又は構成部品を特定するものとみなされるが、1以上の追加の特徴、整数、ステップ、構成部品又はそれらの群の追加を排除するものではない。
【0178】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」及び「an」は、文脈上明確に指示されない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ又はそれ以上」の意味を有する。
本明細書で使用される場合、数値が用語「約」によって先行される場合、用語「約」は、±10%を示すことを意図している。
【0179】
本明細書で使用される場合、「A及び/又はB」という形式のフレーズは、(A)、(B)又は(A及びB)からなる群からの選択を意味する。本明細書で使用される場合、「A、B及びCの少なくとも1つ」という形式のフレーズは、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)又は(A及びB及びC)から成る群からの選択を意味する。
【0180】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で記載されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されることもできることが理解される。逆に、簡潔さのために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴はまた、別々に、または任意の好適なサブコンビネーションで、または本発明の任意の他の説明された実施形態において好適なように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明された特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしで動作不能である場合を除き、それらの実施形態の本質的な特徴とみなされるべきではない。
【0181】
本発明は、その特定の実施形態と関連して説明されてきたが、多くの代替案、修正および変形が当業者にとって明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るそのような代替案、修正および変形をすべて包含することが意図される。
【0182】
本願における任意の文献の引用または特定は、かかる文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されないものとする。
本明細書では、明細書の理解を容易にするために節見出しを使用しており、これは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
【国際調査報告】