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特表2023-517939オーロラAキナーゼの分解のためのタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】オーロラAキナーゼの分解のためのタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20230420BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230420BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20230420BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 401/04 20060101ALN20230420BHJP
   C07D 487/04 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
A61K47/54
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/454
A61K31/55
A61P43/00 105
C07D401/04
C07D487/04 150
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554480
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2021056048
(87)【国際公開番号】W WO2021180787
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】20162690.0
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】510232393
【氏名又は名称】ユリウス・マクシミリアンス-ウニヴェルジテート・ヴュルツブルク
【氏名又は名称原語表記】Julius Maximilians-Universitaet Wuerzburg
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,エルマー
(72)【発明者】
【氏名】アイラース,マルティン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C063
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB08
4C050CC10
4C050DD10
4C050EE03
4C050FF01
4C050GG02
4C050GG03
4C050GG04
4C050HH01
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC11
4C063DD07
4C063EE01
4C076AA95
4C076CC41
4C076CC42
4C076DD33
4C076DD39
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF34
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086BC22
4C086CB11
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、哺乳動物の細胞におけるオーロラAキナーゼの分解のためのタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)またはその薬学的許容し得る塩に関し、PROTACは、化学構造AAB-L-E3Bを有し、式中AABは、オーロラAについての結合ユニットであり、Lは、リンカーであり、およびE3Bは、E3ユビキチンリガーゼセレブロンについての結合ユニットであり、ここでE3Bは、サリドマイドの構造、またはその類似体レナリドマイド、ポマリドミド、およびアプレミラストのうちの1つの構造を含み、ここでLは、アルキルエーテル残基もしくはポリアルキルエーテル残基、または少なくとも1つのC-C結合がC=C二重結合によって置き換えられているアルキルエーテル残基もしくはポリアルキルエーテル残基を含むか、あるいはこれからなり、ポリアルキルエーテル残基は、少なくとも2つのエーテル基、または1個のO原子がS原子によって置き換えられているかもしくは一部のO原子がS原子によって置き換えられている少なくとも2つのエーテル基を有し、あるいは、ここでLは、アルキルチオエーテル残基もしくはポリアルキルチオエーテル残基、または少なくとも1つのC-C結合がC=C二重結合によって置き換えられているアルキルチオエーテル残基もしくはポリアルキルチオエーテル残基を含むか、あるいはこれからなり、ポリアルキルチオエーテル残基は、少なくとも2つのチオエーテル基を有し、ここでLは、AABおよびE3Bを、5~13個の続いて配置される原子を有する原子鎖を介して連結し、ここでリンカーをAABおよびE3Bと連結する官能基の原子は、該鎖の一部とはみなされない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の細胞におけるオーロラAキナーゼの分解のためのタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)またはその薬学的許容し得る塩であって、そのPROTACは、化学構造AAB-L-E3Bを有し、
式中AABは、オーロラAについての結合ユニットであり、Lは、リンカーであり、およびE3Bは、E3ユビキチンリガーゼセレブロンについての結合ユニットであり、
ここでE3Bは、サリドマイドの構造、またはその類似体レナリドマイド、ポマリドミド、およびアプレミラストのうちの1つの構造を含み、
ここでLは、アルキルエーテル残基もしくはポリアルキルエーテル残基、または少なくとも1つのC-C結合がC=C二重結合によって置き換えられているアルキルエーテル残基もしくはポリアルキルエーテル残基を含むか、あるいはこれからなり、そのポリアルキルエーテル残基は、少なくとも2つのエーテル基、または1個のO原子がS原子によって置き換えられているかもしくは一部のO原子(複数)がS原子(複数)によって置き換えられている少なくとも2つのエーテル基であり、あるいは、
ここでLは、アルキルチオエーテル残基もしくはポリアルキルチオエーテル残基、または少なくとも1つのC-C結合がC=C二重結合によって置き換えられているアルキルチオエーテル残基もしくはポリアルキルチオエーテル残基を含むか、あるいはこれからなり、そのポリアルキルチオエーテル残基は、少なくとも2つのチオエーテル基を有し、
ここでアルキルエーテル残基、ポリアルキルエーテル残基、アルキルチオエーテル残基、またはポリアルキルチオエーテル残基は、少なくとも1つの位置にて、アミノ基、ヒドロキシル基、またはカルボニル基によって任意に置換されており、
ここでLは、AABおよびE3Bを、5~13個の続いて配置される原子を有する原子鎖を介して連結し、ここでリンカーをAABおよびE3Bと連結する官能基の原子は、該鎖の一部とはみなされず、ここで官能基は、-NH-、-COO-、-CONH-、-CSO-、および-COS-から選択される、前記PROTAC。
【請求項2】
Lは、アミド結合A、とりわけペプチド結合Aを介して、AABに結合されているか、および/または、Lは、アミド結合B、とりわけペプチド結合Bを介して、E3Bに結合されている、請求項1に記載のPROTAC。
【請求項3】
アミド結合AのH原子は、アルキル残基A、とりわけメチル残基Aまたはエチル残基Aによって、置換されているか、および/または、アミド結合BのH原子は、アルキル残基B、とりわけメチル残基Bまたはエチル残基Bによって、置換されている、請求項2に記載のPROTAC。
【請求項4】
Lは、少なくとも2個のO原子か、少なくとも2個のS原子か、または少なくとも1個のO原子および少なくとも1個のS原子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のPROTAC。
【請求項5】
Lは、直鎖状の分子残基であり、および/または該原子鎖は、6~13個の続いて配置される原子、とりわけ6~10個の続いて配置される原子を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のPROTAC。
【請求項6】
Lは、以下の部分:
-CH-CH-O-CH-CH-および
-CH-(CH-O-CH-CH
のいずれかである、請求項1~5のいずれか一項に記載のPROTAC。
【請求項7】
AABは、アリセルチブの構造、(3-クロロ-2-フルオロフェニル)[4-[[6-(2-チアゾリルアミノ)-2-ピリジニル]メチル]-1-ピペラジニル]-メタノン(MK-8745)または1-[4-({4-[(5-シクロペンチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピリミジン-2-イル}アミノ)フェニル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]尿素(CD532)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のPROTAC。
【請求項8】
AABは、アリセルチブの構造を含み、これは、アリセルチブのカルボキシ基およびLのアミノ基から形成されるペプチド結合を介して、Lに結合される、請求項7に記載のPROTAC。
【請求項9】
PROTACは、以下の化合物のいずれかである、請求項1~8のいずれか一項に記載のPROTAC:
【化1】
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のPROTACを合成するための方法であって、
2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸(化合物a)
【化2】

が、非プロトン性溶媒に溶解され、
(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)またはトリメチルアミンと、構造「NH-アルキルエーテル残基-NH-アミン保護基」、「NH-ポリアルキルエーテル残基-NH-アミン保護基」、「NH-アルキルチオエーテル残基-NH-アミン保護基」、または「NH-ポリアルキルチオエーテル残基-NH-アミン保護基」を有するリンカー前駆体との添加がそれに続き、ならびに、
さらに、中間体産物をもたらすインキュベーションがそれに続き、
次いで前記中間体産物が脱保護されて、化合物b
【化3】

がもたらされ、
ここでポリアルキルエーテル残基は、少なくとも2つのエーテル基、または少なくとも1個のO原子がS原子によって置き換えられている少なくとも2つのエーテル基を有し、およびポリアルキルチオエーテル残基は、少なくとも2個のS原子を有し、
ここでアルキルエーテル残基、ポリアルキルエーテル残基、アルキルチオエーテル残基、またはポリアルキルチオエーテル残基は、5~13個の続いて配置される原子を有する原子鎖を有し、
ここでアルキルエーテル残基、ポリアルキルエーテル残基、アルキルチオエーテル残基、またはポリアルキルチオエーテル残基の、直鎖状の原子配列はいずれも、17個の原子数を超えず、
ここで化合物bが、非プロトン性溶媒に溶解され、(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)、アリセルチブ、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)またはトリメチルアミンの添加がそれに続き、およびさらにインキュベーションがそれに続き、化合物c
【化4】

がもたらされる、前記方法。
【請求項11】
溶媒は、極性溶媒、とりわけジメチルホルムアミド(DMF)であり、および/または、アミン保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リンカー前駆体は、以下の化合物1および2:
1.NH-CH-CH-O-CH-CH-NH-Boc
2.NH-CH-(CH-O-CH-CH-NH-Boc
のいずれかである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
人または別の哺乳動物のがんの処置における使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載のPROTAC。
【請求項14】
がんは、白血病、神経芽細胞腫、肝細胞癌、または骨肉腫である、請求項13に記載のPROTAC。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーロラAキナーゼの分解のためのタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)またはその薬学的許容し得る塩に関する。PROTACは、化学構造AAB-L-E3Bを有し、ここで、AABは、オーロラAキナーゼについての結合ユニットであり、Lは、連結ユニットであり、およびE3Bは、E3ユビキチンリガーゼセレブロンについての結合ユニットである。
【背景技術】
【0002】
US2019/0210996A1は、式「標的タンパク質バインダー-リンカー-セレブロンバインダー」の化合物またはその薬学的許容し得る塩を開示し、式中、標的タンパク質は、数個のキナーゼのうちの1つ、とりわけ、オーロラAキナーゼである。リンカーは、最も短い長さで4~20個の原子である、化学的なリンカー基である。それは、1個以上の炭素原子が-O-、-NH-、-N(CH3)-、-CO-、ピペリジン、ピペラジン、ピリミジンおよびピリジンから独立して選択される基によって置き換えられている、4~20個の炭素原子の直鎖アルキレン基であってもよい。セレブロン結合部分は、サリドマイド、ポマリドミドまたはレナリドマイドであってもよい。US2019/0210996A1はさらに、治療的に有効な量の化合物またはその薬学的許容し得る塩を、それを必要とするヒトに投与することを含む、標的タンパク質を変性させる方法を開示する。
【0003】
WO2018/098280A1は、式(標的リガンド)-(リンカー)-(デグロン)の二機能性化合物を開示し、式中、標的リガンドは、1以上のタンパク質キナーゼに結合することができ;リンカーは、標的リガンドおよびデグロンに共有結合的に結合する基であり;およびデグロンは、ユビキチンリガーゼに結合することができる。多くの実行可能な標的リガンド、リンカーおよびデグロンは、文献において言及されている。
WO2017/201449A1から、抗体-PROTAC抱合体は、知られている。PROTACは、タンパク質結合基に共有結合的に結合されたリンカーに共有結合的に結合されたE3リガーゼ結合基を含む。E3リガーゼ結合基は、セレブロンを含む基から選択されるE3リガーゼを結合する基であってもよい。
【0004】
E3リガーゼ結合基は、とりわけ、サリドマイド、レナリドマイドおよびポマリドミドを含む群から選択されてもよい。タンパク質結合基は、多数の他のタンパク質の中でオーロラAを結合する基であってもよい。
【0005】
Wang, Y. et al., Acta Pharm Sin B, 2020, 10(2), pages 207-238は、PROTACおよび他のストラテジーによるタンパク質の分解に関する。それは、リンカーおよびE3ユビキチンリガーゼセレブロンについての結合ユニットを含むセレブロンをベースとしたPROTACを開示し、その結合ユニットは、サリドマイド、レナリドマイドまたはポマリドミドであってもよい。
【発明の概要】
【0006】
本発明によって解決されるべき課題は、代替のPROTAC、そのPROTACを合成するための方法、および、医療処置における使用のための該PROTACを提供することである。
【0007】
課題は、請求項1、10、および13の特徴によって解決される。本発明の態様は、請求項2~9、11、12および14の主題である。
【0008】
本発明に従って、哺乳動物の細胞においてオーロラAキナーゼの分解のためのタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)または該PROTACの薬学的に許容し得る塩が、提供される。PROTACは、化学構造AAB-L-E3Bを有し、式中、AABは、オーロラAキナーゼについての結合ユニットであり、Lは、リンカーであり、およびE3Bは、E3ユビキチンリガーゼセレブロンについての結合ユニットであり、式中、E3Bは、サリドマイドの構造またはその類似体のレナリドマイド、ポマリドミド、およびアプレミラストの構造を含む。サリドマイドまたは該類似体の1つの構造を含むために、サリドマイドまたは類似体は、2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸(化合物a):
【化1】

におけるように、Lへのカップリングを促進するカップリング部分にカップリングされてもよい。
【0009】
Lは、アルキルエーテル残基またはポリアルキルエーテル残基、または1つ以上のC-C結合がC=C二重結合によって置き換えられている、アルキルエーテル残基またはポリアルキルエーテル残基を含むかまたはこれからなり、ポリアルキルエーテル残基は、少なくとも2のエーテル基を有し、ここで、1個のO原子は、S原子によって置き換えられているか、または、Oの一部は、S原子によって置き換えられている。代替的に、Lは、アルキルチオエーテル残基またはポリアルキルチオエーテル残基、または1つ以上のC-C結合がC=C二重結合によって置き換えられている、アルキルチオエーテル残基またはポリアルキルチオエーテル残基を含むまたはこれからなることが可能であり、ここで、ポリアルキルチオエーテル残基は、少なくとも2のチオエーテル基を有する。
【0010】
Lは、5~13個の続いて配置される原子を有する原子鎖を介して、AABおよびE3Bを連結し、ここで、リンカーをAABおよびE3Bと連結する官能基の原子は、該鎖の一部とみなされない。このことは、アルキルエーテル残基、ポリアルキルエーテル残基、1つ以上のC-C結合がC=C二重結合によって置き換えられている、アルキルエーテル残基またはポリアルキルエーテル残基、アルキルチオエーテル残基、ポリアルキルチオエーテル残基、または1つ以上のC-C結合がC=C二重結合によって置き換えられている、アルキルチオエーテル残基またはポリアルキルチオエーテル残基の原子の直鎖状配列のいずれもが、13個の原子数を超えないことを意味する。
【0011】
この直鎖状配列は、AABをE3Bと直接連結する原子配列よりも長い原子配列であってもい。リンカーをAABおよびE3Bと連結する官能基は、-NH-、-COO-、-CONH-、-CSO-または-COS-から選択される。
【0012】
本発明の本発明者らは、リンカーの長さは、PROTACの機能に不可欠であることを認識している。さらに、彼らは、エーテル基(単数または複数)またはチオエーテル基(単数または複数)によって提供される親水性は、PROTACとしての機能に重要であることを認識している。さらにまた、彼らは、セレブロン以外の、別のE3ユビキチンリガーゼについての結合ユニット(例えば、フォンヒッペル・リンドウ腫瘍サプレッサー(VHL))が、機能的なPROTACを結果として生じないことを認識している。本発明者らは、本発明に従うPROTACにおける特定のリンカーを用いて達成される、セレブロンとオーロラAとの間の特定の空間的関係が、PROTACによるオーロラAの欠乏を引き起こすのに重要であると推定する。
【0013】
Lは、-CH-CH-O-CH-CH-または-CH-(CH-O-CH-CH-であってもよい。
【0014】
結合研究において、本発明者らは、本発明に従うPROTACは、オーロラAに結合できるが、リンカーが短く、および、5個のみの続いて配置される原子鎖を介してAABおよびE3Bを連結するときに、結合は低減されることを見出した。さらに、本発明者らは、本発明に従うPROTACは、本発明に従うPROTACで処置した細胞において、オーロラA-E3ユビキチンリガーゼ複合体を形成できること、および、このPROTACは、該PROTACで処置した細胞において、オーロラAのほとんど完全な分解を達成できることを見出した。分解は、ヒト白血病細胞株のリンパ芽級およびヒト神経芽細胞腫、肝細胞癌および骨肉腫細胞株の細胞において観察された。さらにまた、PROTACによるオーロラAの欠乏は、がん細胞株のすべての試験細胞において、アポトーシスを誘導することが観察された。
【0015】
Lは、アミド結合A、とりわけペプチド結合Aを介して、AABに結合されてもよい。代替的にまたは加えて、Lは、アミド結合B、とりわけペプチド結合Bを介して、E3Bに結合されてもよい。「A」および「B」とのアミド結合およびペプチド結合の種類は、LのAABへの結合とLのE3Bへの結合との間の区別のためのみに選択されている。しかしながら、アミド結合Aそれ自体は、アミド結合Bそれ自体と同一であってもよく、および、ペプチド結合Aそれ自体は、ペプチド結合Bそれ自体と同一であってもよい。E3Bは、レナリドマイドまたはポマリドミドの構造を含んでいる場合、Lは、レナリドマイドまたはポマリドミドのアミノ基の使用により、この構造に結合されてもよい。
【0016】
アミド結合AのH原子は、アルキル残基A、とりわけメチル残基Aまたはエチル残基Aによって置換されてもよい。代替的にまたは加えて、アミド結合BのH原子は、アルキル残基B、とりわけメチル残基Bまたはエチル残基Bによって置換されてもよい。これは、分解(とりわけ加水分解による)に対してPROTACのアミド結合(単数または複数)を安定化する。上述のとおり、「A」および「B」を有するメチル残基およびエチル残基の種類は、アミド結合Aにおける、および、アミド結合Bにおける残基の分類のためのみに選択されるが、メチル残基Aおよびメチル残基Bの構造ならびにエチル残基Aおよびエチル残基Bの構造は、同一である。
【0017】
本発明の1つの態様において、Lは、少なくとも2個のO原子、少なくとも2個のS原子または少なくとも1個のO原子および少なくとも1個のS原子を含む。これにより、1個のみのO原子または1個のみのS原子を含むPROTACのそれよりも高い親水性を結果として生じる。より高い親水性は、オーロラAキナーゼの分解に関するPROTACの効率を改善するようである。さらにまた、Lが、直鎖状分子残基であるとき、および/または、該原子鎖が、6~13個の続いて配置される原子、とりわけ6~12個の続いて配置される原子、とりわけ6~11個の続いて配置される原子、とりわけ6~10個の続いて配置される原子を有するときに、効率は、改善するようである。
【0018】
C=C二重結合による1以上のC-C結合の置き換えは、リンカーの硬性を増加させる。
【0019】
1つの態様において、リンカーLのアルキルエーテル残基、ポリアルキルエーテル残基、アルキルチオエーテル残基またはポリアルキルチオエーテル残基は、少なくとも1つの位置でアミノ基、ヒドロキシル基またはカルボニル基によって置換されている。これらの基は、オーロラAおよびセレブロンとPROTACとの複合体を安定化するようである。
【0020】
AABは、アリセルチブの構造、(3-クロロ-2-フルオロフェニル)[4-[[6-(2-チアゾリルアミノ)-2-ピリジニル]メチル]-1-ピペラジニル]-メタノン(MK-8745)または1-[4-({4-[(5-シクロペンチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピリミジン-2-イル}アミノ)フェニル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]尿素(CD532)を含んでいてもよい。
【0021】
AABがアリセルチブの構造を含むとき、この構造は、アリセルチブのカルボキシ基およびLのアミノ基から形成されるペプチド結合を介して、Lに結合されてもよい。
【0022】
特定の態様において、PROTACは、以下の化合物のいずれかである:
【化2】
【0023】
本発明はさらに、PROTACを合成するための方法に関し、ここで、2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸(化合物a)
【化3】

は、非プロトン性、とりわけ有機溶媒中、とりわけ保護ガス雰囲気下で溶解され、これに続き(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)またはトリメチルアミン、ならびに構造「NH2-アルキルエーテル残基-NH-アミン保護基」、「NH2-ポリアルキルエーテル残基-NH-アミン保護基」、「NH2-アルキルチオエーテル残基-NH-アミン保護基」または「NH2-ポリアルキルチオエーテル残基-NH-アミン保護基」を有するリンカー前駆体が添加され、および、これにさらにインキュベーションが続き、中間代謝物(次いで脱保護されて化合物b
【化4】
【0024】
を結果として生じる)を結果として生じ、ここで、ポリアルキルエーテル残基は、少なくとも2のエーテル基、または少なくとも1個のO原子がS原子によって置き換えられている少なくとも2のエーテル基を有し、および、ポリアルキルチオエーテル残基は、少なくとも2個のS原子を有し、ここで、アルキルエーテル残基、ポリアルキルエーテル残基、アルキルチオエーテル残基、またはポリアルキルチオエーテル残基は、5~17個、とりわけ6~13個、とりわけ6個~10個の続いて配置される原子を有する原子鎖を有し、ここで、アルキルエーテル残基、ポリアルキルエーテル残基、アルキルチオエーテル残基、またはポリアルキルチオエーテル残基の直鎖状の原子の配列はいずれも、17個の原子数を超えず、ここで、化合物bは、非プロトン性、とりわけ有機溶媒中に、とりわけ保護ガス雰囲気下で溶解され、これに続き、(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)、アリセルチブおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)またはトリメチルアミンが添加され、および、これにインキュベーションがさらに続き、化合物c
【化5】

を結果として生じる。
【0025】
2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸は、Remillard, D. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, pages 5738 to 5743に関する“Supporting Information”において記載されるように合成されてもよい。保護ガスは、アルゴンまたは窒素であってもよい。第一および第二のインキュベーションの間のpH値は、12より高いようにチェックされてもよく、および、もしそれが12よりも高くないとき、12より高い値に調整されてもよい。溶媒は、極性溶媒、とりわけジメチルホルムアミド(DMF)であってもよい。溶媒は、その比誘電率が15より高いときに、極性とみなされる。
【0026】
アミン保護基は、ter-ブチルオキシカルボニル(Boc)であってもよい。
リンカー前駆体は、以下の化合物1および2のいずれかであってもよい:
1.NH-CH-CH-O-CH-CH-NH-Boc
2.NH-CH-(CH-O-CH-CH-NH-Boc
【0027】
脱保護は、当該技術分野において知られているとおり、例えば、中間代謝物を精製することによって、および、中間代謝物を酸性条件に移すことによって、とりわけ、ジクロロメタンおよびトリフルオロ酢酸の混合物中にそれを溶解することによって、達成してもよい。
【0028】
本発明はさらに、人または別の哺乳動物のがんの処置における使用のための本発明に従うPROTACに関する。がんは、白血病、神経芽細胞腫、肝細胞癌または骨肉腫であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の態様:
図1図1は、サリドマイド部分を有する化合物JB158、JB159、JB169、JB170、JB171の、ならびに、VHLリガンドを有する化合物JB160、JB161の、一般的な合成を図示的に示し、これらの化合物は、様々な(ポリ)エチレングリコール(PEG)および脂肪族リンカーによって、アリセルチブに連結されている。
図2図2は、ヒト白血病細胞株MV4-11の細胞からの内在性オーロラAの免疫ブロットおよび定量化を示し、これらの細胞は、各場合において、単回用量の化合物JB158、JB160、JB161、JB169、JB170、JB159およびJB171で、1μMの濃度で処置された。ビンクリンは、免疫ブロットにおいてローディング対照として機能した。
【0030】
図3図3は、MV4-11未処置細胞、ならびに、様々な濃度のJB170(上のパネル)およびJB158(下のパネル)で、ならびに、抱合されていないアリセルチブ(uA)で6時間処置した、ローディング対照としてビンクリンを用いる、細胞からの内在性オーロラAの免疫ブロットを示す。
図4図4は、様々な濃度のJB170(上のパネル)およびJB158 (下のパネル)で、ならびに、抱合されていないアリセルチブ(uA)で6時間処置した、ローディング対照としてビンクリンを用いる、ヒト骨髄腫細胞株U2OSの細胞からの内在性オーロラAの免疫ブロットを示す。
【0031】
図5図5は、様々な濃度のJB170(上のパネル)およびJB158(下のパネル)で、ならびに、抱合されていないアリセルチブ(uA)で6時間処置した、ローディング対照としてビンクリンを用いる、ヒト肝細胞癌細胞株HLEの細胞からの内在性オーロラAの免疫ブロットを示す。
図6図6は、JB170で0.1μMの濃度で指し示された期間処置した、ローディング対照としてビンクリンを用いる、ヒト神経芽細胞腫細胞株IMR5の細胞からの内在性オーロラの免疫ブロットを示す。
【0032】
図7図7は、JB158で0.1μMの濃度で指し示された期間処置した、ローディング対照としてビンクリンを用いる、HLE細胞の細胞からの内在性オーロラAの免疫ブロットを示す。
図8図8は、1μM JB170で処置したMV4-11細胞の細胞生存率を示す棒図表である。
【0033】
図9図9は、0.5μM JB170で処置し、およびアネキシンについて染色し、およびヨウ化プロピジウム(PI)で処置したMV4-11細胞のアポトーシスを示す図表であり、ここで、初期(アネキシン+、PI-)および後期(アネキシン+、PI+)アポトーシス細胞の量は、FACSによって分析した。
図10図10は、ドキシサイクリン(Dox(オーロラAT217D))とともにインキュベーションした際の、オーロラAT217Dを発現するIMR5細胞(EtOH)およびIMR5細胞のアポトーシスを示す図表であり、これらの細胞は、0.5μM JB170で72時間処置し、アネキシンについて染色され、および、ヨウ化プロピジウムで染色され、FACSによって分析された。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明者らは、図1に図示的に示されるとおり、様々な(ポリ)エチレングリコール(PEG)または脂肪族リンカーを介して、セレブロン結合部分としてのサリドマイドに、または、VHL結合部分としてのHIF1由来ペプチド模倣物に、アリセルチブを連結することによって、オーロラA標的キメラ分解剤(degrader)を合成した。
【0035】
詳細には、合成は、以下のように実施された:
別様に述べられない限り、すべての反応は、室温(RT)にて実施された。化合物の構造および純度は、HPLC、質量分析およびNMRによって確認された。
【0036】
サリドマイド誘導体-リンカーのカップリングのために、サリドマイド誘導体2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)酢酸(化合物a)(310mg、0.93mmol、1.0eq)を、5ml DMF中にアルゴン下で溶解し、およびHATU(418mg、1.02mmol、1.1eq)およびDIPEA(324μl、1.86mmol、2.0eq)を添加した。
【0037】
RTにて15分の撹拌後、2mlDMF中の夫々のリンカー1~5の溶液(1.12mmol、1.2eq)を添加し、および、反応混合物を終夜撹拌した。混合物を、分離漏斗に移し、および水(20ml)および酢酸エチル(30ml)で抽出した。層を分離し、および、水性層を、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を併せて、MgSO上で乾燥し、および濃縮した。残渣を、DCM/MeOH、95:5を使用するフラッシュクロマトグラフィー(FC)で精製した。その結果得られる中間代謝物を、無色油として得た。中間代謝物を、DCMおよびトリフルオロ酢酸(6ml、40vol.%)の混合物中に溶解した。30分後、溶媒を減圧下で除去し、脱保護されたサリドマイド-リンカー中間体をTFA塩(c~g)として得た。反応は、以下の反応スキームで説明される:
【化6】
【0038】
中間体c N-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)-2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)アセトアミド(Th-PEG1-NH2)は、2ステップ(第一 71%、第二 97%)にわたり、全収率69%(339mg、0.93mmol)で得られた。
【0039】
中間体d N-(3-(2-(2-(3-アミノプロポキシ)エトキシ)エトキシ)プロピル)-2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)アセトアミド(Th-PEG3-NH2)は、2ステップ(第一 60%、第二 95%)にわたり、全収率57%(285mg、0.53mmol)で得られた。
【0040】
中間体e N-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチル)-2-((2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)オキシ)アセトアミド(Th-PEG2-NH)は、2ステップ(第一 75%、第二 97%)にわたり、全収率73%(316mg、0.68mmol)で得られた。
【0041】
中間体f N-(3-アミノプロピル)-2-[[2-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジニル)-2,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソ-1H-イソインドール-4-イル]オキシ]アセトアミドは、2ステップ(第一 63%、第二 95%)にわたり、全収率60%(233mg、0.60mmol)で得られた。
【0042】
中間体g N-(5-アミノペンチル)-2-[[2-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジニル)-2,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソ-1H-イソインドール-4-イル]オキシ]アセトアミドは、2ステップ(第一 60%、第二 88%)にわたり、全収率53%(206mg、0.50mmol)で得られた。
【0043】
VHL-リガンド-リンカーのカップリングのために、VHLリガンド化合物b(92mg、0.214mmol、1.0eq)を、アルゴン下で、フラスコ(A)中の6ml DMFに溶解した(反応混合物(A))。夫々のリンカー6~7(0.236mmol、1.1eq)およびHATU(92mg、0.241mmol、1.1eq)を、アルゴン雰囲気下、別のフラスコ(B)中の6ml DMFに溶解した(反応混合物(B))。両方のフラスコを、0℃に冷却した。DIPEA(117μl、0.65mmol、4.0eq)をフラスコ(A)に添加し、0.12ml(117μl、0.65mmol、4eq)をフラスコ(B)に添加した。氷浴から取り出し、および、両方の溶液を、20分撹拌し、次いでフラスコ(B)からの溶液を、フラスコ(A)に移し、および反応混合物を終夜撹拌した。
【0044】
オレンジ色の混合物を、分離漏斗に移し、およびブラインを添加した。層を分離し、および、水性層を、DCMで5回抽出した。有機層を併せて、MgSO上で乾燥させ、濾過し、および減圧下で濃縮した。残存する残渣を、FC(DCM/MeOH、100:0-95:5)で精製した。その結果得られる中間代謝物を、無色油として得た。中間代謝物を、DCMに溶解し、および、トリフルオロ酢酸(10vol.%)を添加した。30分後、溶媒を減圧下で除去し、脱保護されたVHL-リガンド-リンカー中間体を、遊離のTFA塩として得た(h~i)。反応は、以下の反応スキームにおいて説明される:
【化7】
【0045】
中間体h L-プロリンアミド、N-[3-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]-1-オキソプロピル]-3-メチル-L-バリル-4-ヒドロキシ-N-[[4-(4-メチル-5-チアゾリル)フェニル]メチル]-(4R) (VHL-PEG2-NH))を、2ステップ(第一 61%、第二 97%)にわたり、全収率59%(75mg、0.13mmol)で得た。
【0046】
中間体i N-[3-[2,2[2-アミノエトキシ-(2-アミノエトキシ)]エトキシ]-1-オキソプロピル]-3-メチル-L-バリル-4-ヒドロキシ-N-[[4-(4-メチル-5-チアゾリル)フェニル]メチル]-(4R)(VHL-PEG4-NH)を、2ステップ(第一 51%、第二 98%)にわたり、全収率52%(75mg、0.11mmol)で得た。
【0047】
中間体のカップリングのために、化合物c~g(サリドマイド誘導体)およびh~i(VHL-リガンド)、0.02mmol(1.0eq)を、1.5mlDMFに溶解した。HBTU(7.6mg、0.02mmol、1.0eq)を添加した。溶解後、アリセルチブ(10mg、0.02mmol、1.0eq)を添加し、これに続きDIPEA(14μl、0.08mmol、4.0eq)を添加した。pHは、より多くの等価物DIPEAを添加することによって、8~10に調整した。反応混合物は、終夜撹拌した。溶媒は、SpeedVac濃縮器を使用して除去した。残基は、精製し、および分取および分析HPLCを介して特徴づけた。すべての反応は、JB170を除き、10mgアリセルチブを用いて行った。この化合物は、最初に5mgおよび次いで50mgのアリセルチブを用いて合成された。反応は、以下の反応スキームにおいて説明される:
【化8】
【0048】
JB158サリドマイド-PEG3-アリセルチブは、白色固体として収率90%(17mg、0.018mmol)で得られた。
【0049】
JB159サリドマイド-(CH-アリセルチブは、白色固体として収率70%(12mg、0.013mmol)で得られた。
JB160VHL-PEG2-アリセルチブは、白色固体として、収率43%(9mg、0.008mmol)で得られた。
JB161VHL-PEG4-アリセルチブは、白色固体として、収率62%(14mg、0.012mmol)で得られた。
【0050】
JB169サリドマイド-(CH-アリセルチブは、白色固体として収率61%(11mg、0.012mmol)で得られた。
JB170サリドマイド-PEG2-アリセルチブは、白色固体として収率48%(9mg、0.009mmol)で得られた。
JB171サリドマイド-PEG1-アリセルチブは、白色固体として収率 75%(13mg 0,014mmol)で得られた。
【0051】
産生能のあるオーロラA-E3リガーゼ複合体の形成
合成された分子のどれが、オーロラA-E3リガーゼ複合体の形成を媒介し、内在性オーロラAの分解を結果として生じるかを試験するために、白血病細胞株MV4-11の細胞を、0.1μMサリドマイドをベースとしたPROTAC JB158、JB160、JB161、JB169またはJB170で、または、1μM VHL-リガンドをベースとしたPROTAC JB159またはJB171で、夫々の化合物の単回用量で処置した。次いで、細胞は、プロテアーゼおよびホスファターゼインヒビター(シグマ)を含有するRIPA溶解緩衝剤(50mM HEPES pH7.9、140mM NaCl、1mM EDTA、1%トリトンX-100、0.1%SDS、0.1%デオキシコール酸ナトリウム)中に溶解し、20分、4℃でヘッドオーバーテールでインキュベートした。ライセートは、遠心分離によって透明化した。タンパク質定量化は、BCAアッセイを使用して行い、および、等量のタンパク質を、ビストリス-PAGEによって分離し、および、PVDF膜(Millipore)に移した。膜を、TBS-T(20mMトリス/HCl、pH 7.5、150mM NaCl、および0.1%(v/v)Tween20)中に溶解した5%(w/v)脱脂粉乳で、RTで1時間ブロッキングし、および次いで、一次抗体とともに終夜4℃でインキュベートした。
【0052】
可視化は、HRP標識二次抗体を用いて行い、および、化学発光HRP基質 (Millipore)をLAS3000またはLAS4000 Mini(Fuji)において使用して検出した。シグナルは、ImageJ(version 1.52q)またはImage Studio Lite(LI-COR Biosciences, Version 5.2.5)を使用して定量化した。
【0053】
図2の上部は、オーロラAの免疫ブロットを示す。ビンクリンを、ローディング対照として使用した。図2の下部の棒図表は、対照細胞のオーロラAレベルと比較した、分解剤処置の際の細胞内オーロラAレベルを示す。エラーバーは、4つの生物学的な複製実験の標準偏差を表す。
【0054】
VHLリガンドをベースとした分解剤JB160およびJB161のいずれもオーロラAの定常レベルを低減しなかったが、サリドマイドをベースとした分解剤JB158は、オーロラAタンパク質レベルの62%の低減を結果として生じ、およびサリドマイドをベースとした分解剤JB170は、69%の低減を結果として生じた。最も強いオーロラA分解を結果として生じるこれらの2つの分解剤において、サリドマイドの構造とアリセルチブの構造との間の連結は、2つ(JB170)または3つ(JB158)エチレングリコール部分を有するリンカーによって提供される。両方の化合物は、JB158またはJB170での処置の約3時間後にその最大に達するオーロラAレベルの迅速な減少に繋がった。
【0055】
内在性オーロラAの分解
細胞株MV4-11、U2OSおよびHLEの細胞を、指し示された濃度の化合物JB170またはJB158ならびに抱合されていないアリセルチブ(uA)で6時間処置した。さらなる実験において、細胞株IMR5およびHLEの細胞を、0.1μMの化合物JB170で指し示された期間処置した。その後、細胞を、プロテアーゼおよびホスファターゼインヒビター(シグマ)を含有する、RIPA溶解緩衝剤(50mM HEPES pH7.9、140mM NaCl、1mM EDTA、1%トリトンX-100、0.1%SDS、0.1%デオキシコール酸ナトリウム)中で溶解し、および、20分間、4℃でヘッドオーバーテイルでインキュベートした。得られた細胞ライセートのさらなる処理および免疫ブロッティングを、上に記載のとおり実施した。JB170(上のパネル)およびJB158(下のパネル)で処置した細胞株MV4-11、U2OSおよびHLEの細胞についての結果は、図3~5に示す。0.1μMのJB170で指し示された期間処置した細胞についての結果を、細胞株IMR5の細胞について図6に、および、細胞株HLEの細胞について図7に示す。
【0056】
図3上パネルに従って、オーロラAレベルは、MV4-11細胞において10nM JB170の濃度で既に有意に減少し、および、ほとんど完全な分解は、100nMおよび1μMにおいて観察された。他の分解剤/PROTACと一致して、オーロラA欠乏活性の逆転が、高濃度のJB170において観察された。この現象は、「フック効果」と呼ばれ、および、3元複合体形成に依存する分解剤分子について予測される。
【0057】
1μMの抱合されていないアリセルチブは、オーロラAレベルを減少させなかったが、それらの標的の活性状態を安定化するタイプ1キナーゼインヒビターについて頻繁に観察されるように、有意な増加を誘導した。図3下パネルにおいて示されるのと同様の結果が、JB158およびU2OS細胞(JB170を用いる図4下パネルおよびJB158を用いる下パネル)およびHLE細胞(JB170を用いる図5上パネル、およびJB158を用いる下パネル)で得られた。フック効果が可視化する欠乏および濃度の程度は、潜在的にセレブロンおよびオーロラAの異なる細胞内濃度に起因して、細胞株間で有意に変化した。
【0058】
図6および7は、内在性オーロラAの最大限の分解が、3~6時間後に既に、IMR5細胞およびHLE細胞において生じたことを示す。
【0059】
本発明に従うPROTACによって引き起こされる細胞死
がん細胞生存に対するJB170媒介性のオーロラAの欠乏効果を決定するために、MV4-11細胞を、JB170で処置して、および、レサズリンのレゾルフィンへの細胞内還元を測定して、アラマーブルーアッセイを介する細胞生存率を査定した。アラマーブルーアッセイについて、ウェル当たり6000個の MV4-11細胞を、96ウェルプレートに播種し、および、1μM JB170で様々な時点について処置した(24時間毎にリフレッシュした)。アラマーブルーアッセイ(Thermo Fisher Scientific)は、製造業者の指示に従って、HS細胞生存率試薬を使用して実施した。蛍光は、Tecan Infinite-200において蛍光励起波長550nmおよび放射波長600nmを使用して測定した。72時間後、生存細胞は、対照細胞と比較して、JB170によって32%まで低減された(図8)。
【0060】
ドキシサイクリンとともにインキュベートした際にオーロラAT217Dを発現するMV4-11細胞およびIMR5細胞およびIMR5細胞を、0.5μM JB170で処置した。アネキシン-PI FACSのために、細胞が培養された培地を、細胞と併せた。細胞は、氷冷のPBSで1回洗浄し、2μlのアネキシンV/パシフィックブルー染料を含む、100μlアネキシンV結合緩衝剤(10mM HEPES pH7.4、140mM NaCl、2.5mM CaCl)中で再懸濁し、15分間、暗中室温にてインキュベートした。ヨウ化プロピジウムを含む、400μlアネキシンV結合緩衝剤(18.5μM)を添加して、および、試料は、分析まで、冷蔵して暗中で貯蔵した。FACS実験は、BD FACSCanto IIフローサイトメーターに基づいて実施し、および、分析は、BD FACSDIVAソフトウェアおよびFlowJo(version 8.8.6)を使用して行った。結果は、図9および10に示す。
【0061】
図9は、JB170が、経時的に、培養物中のアポトーシス細胞の画分を増大させ、72時間後にアネキシン陽性MV4-11細胞の56%に達したことを示す。
オーロラAT217Dは、オーロラAの機能的突然変異体である。IMR5細胞は、エタノールとともにインキュベーションする際ではなく(対照EtOH)、ドキシサイクリンとともにインキュベーションする際に(Dox)、オーロラAT217Dを発現する。オーロラAT217Dのアリセルチブ類似体MLN8054に対する親和性は、オーロラAのその類似体に対する親和性と比較して、約8倍低減する。
【0062】
図10は、オーロラAT217Dの発現が、IMR5細胞におけるJB170によって誘導されるアポトーシスの誘導を完全に復帰させたことを示し、JB170誘導アポトーシスは、オーロラAの欠乏によって排他的に引き起こされることを指し示す。
実験は、がん細胞の、本発明に従うPROTACへの暴露により、これらの細胞においてアポトーシスおよび細胞傷害性の強力な誘導を結果として生じたことを示す。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】