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特表2023-517957貫通可能膜を伴うフロースルー電気化学セル電極
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  • 特表-貫通可能膜を伴うフロースルー電気化学セル電極 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】貫通可能膜を伴うフロースルー電気化学セル電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20230420BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230420BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230420BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20230420BHJP
   H01M 4/74 20060101ALI20230420BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/80 C
H01M4/74 C
H01M4/24 J
H01M4/86 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554532
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 US2021022001
(87)【国際公開番号】W WO2021183826
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/988,632
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521393959
【氏名又は名称】シンクレア, ポール リンカーン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, ポール リンカーン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H018
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017AS10
5H017CC05
5H017CC25
5H017CC28
5H017EE01
5H017HH02
5H018AA08
5H018BB06
5H018BB11
5H018BB12
5H018DD01
5H018DD03
5H018EE02
5H018EE06
5H018EE17
5H018HH04
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA14
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB11
5H050CB16
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA04
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA02
5H050FA13
5H050HA09
(57)【要約】
本開示は、高気孔率金属電流コレクタと、金属電流コレクタを囲繞する活性材料と、活性材料を囲繞する自己支持型合成膜材料とを含む、フロースルー再充電可能電気化学セルのための多孔質電極を提供する。本開示はさらに、複数の電気化学セルと、閉ループと、ポンプとを含む、フロースルー再充電可能バッテリを含む。金属電流コレクタは、金属発泡体を備える。金属電流コレクタは、織金網を備える。合成膜は、活性材料を完全にコーティングする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極であって、
高気孔率金属電流コレクタと、
前記金属電流コレクタをコーティングする活性材料と、
前記活性材料をコーティングする自己支持型合成膜と
を備える、電極。
【請求項2】
前記金属電流コレクタは、金属発泡体を備える、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記金属電流コレクタは、織金網を備える、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記合成膜は、前記活性材料を完全にコーティングする、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記合成膜は、ポリマー樹脂を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記ポリマー樹脂は、半結晶性ポリオレフィン、ポリオキシメチレン、アイソタクチックポリ(4-メチル-1-ペンテン)、およびその組み合わせから成る群から選択される、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記合成膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその組み合わせから成る群から選択される、ポリマーを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項8】
前記合成膜は、エチレンプロピレンジエンモノマーゴムを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項9】
前記合成膜は、グラフトポリマーを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記合成膜は、ポリビニリデンフルオライドを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記合成膜は、フッ素重合体エラストマを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項12】
前記高気孔率金属電流コレクタは、80%~90%の気孔率を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項13】
カソードであって、
高気孔率金属電流コレクタと、
前記金属電流コレクタをコーティングするカソード活性材料と、
前記カソード活性材料をコーティングする自己支持型合成膜と
を備える、カソード。
【請求項14】
前記金属電流コレクタは、金属発泡体を備える、請求項13に記載のカソード。
【請求項15】
前記金属電流コレクタは、織金網を備える、請求項13に記載のカソード。
【請求項16】
前記合成膜は、前記カソード活性材料を完全にコーティングする、請求項13に記載のカソード。
【請求項17】
前記合成膜は、ポリマー樹脂を含む、請求項13に記載のカソード。
【請求項18】
前記ポリマー樹脂は、半結晶性ポリオレフィン、ポリオキシメチレン、アイソタクチックポリ(4-メチル-1-ペンテン)、およびその組み合わせから成る群から選択される、請求項17に記載のカソード。
【請求項19】
前記合成膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその組み合わせから成る群から選択される、ポリマーを含む、請求項13に記載のカソード。
【請求項20】
前記合成膜は、エチレンプロピレンジエンモノマーゴムを含む、請求項13に記載のカソード。
【請求項21】
前記合成膜は、グラフトポリマーを含む、請求項13に記載のカソード。
【請求項22】
前記合成膜は、ポリビニリデンフルオライドを含む、請求項13に記載のカソード。
【請求項23】
前記合成膜は、フッ素重合体エラストマを含む、請求項13に記載のカソード。
【請求項24】
前記高気孔率金属電流コレクタは、80%~90%の気孔率を有する、請求項13に記載のカソード。
【請求項25】
アノードであって、
高気孔率金属電流コレクタと、
前記金属電流コレクタをコーティングするアノード活性材料と、
前記アノード活性材料をコーティングする自己支持型合成膜と
を備える、アノード。
【請求項26】
前記金属電流コレクタは、金属発泡体を備える、請求項25に記載のアノード。
【請求項27】
前記金属電流コレクタは、織金網を備える、請求項25に記載のアノード。
【請求項28】
前記合成膜は、前記アノード活性材料を完全にコーティングする、請求項25に記載のアノード。
【請求項29】
前記合成膜は、ポリマー樹脂を含む、請求項25に記載のアノード。
【請求項30】
前記ポリマー樹脂は、半結晶性ポリオレフィン、ポリオキシメチレン、アイソタクチックポリ(4-メチル-1-ペンテン)、およびその組み合わせから成る群から選択される、請求項29に記載のアノード。
【請求項31】
前記合成膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその組み合わせから成る群から選択される、ポリマーを含む、請求項25に記載のアノード。
【請求項32】
前記合成膜は、エチレンプロピレンジエンモノマーゴムを含む、請求項25に記載のアノード。
【請求項33】
前記合成膜は、グラフトポリマーを含む、請求項25に記載のアノード。
【請求項34】
前記合成膜は、ポリビニリデンフルオライドを含む、請求項25に記載のアノード。
【請求項35】
前記合成膜は、フッ素重合体エラストマを含む、請求項25に記載のアノード。
【請求項36】
前記高気孔率金属電流コレクタは、80%~90%の気孔率を有する、請求項25に記載のアノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、参照することによって全体として本明細書に組み込まれる、以下の米国仮出願:2020年3月12日に出願され、「FLOW-THROUGH ELECTROCHEMICAL CELL ELECTRODE WITH PERMEABLE MEMBRANE」と題された、米国仮出願第62/849,632号の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、概して、再充電可能電気化学セルに関し、特に、フロースルー電気化学セルのための電極に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
電気化学セルは、2つの電極(アノードおよびカソード)と、電解質とを有する。電極は、電子的に活性および化学的に活性の両方である、活性材料と称される材料を含む。アノードおよびカソード内の活性材料は、イオン、典型的には、電気化学セルの作業イオンと称されるカチオン(陽イオン)である、同一のイオンを獲得および損失することができる。電解質は、作業イオンを伝導させるが、電子絶縁体である。結果として、アノード活性材料とカソード活性材料との間の電子の任意の移動が、アノードおよびカソードの両方と電子的に接触している外部回路を通して生じなければならない。典型的には、アノード活性材料、カソード活性材料、または両方は、電気化学セルの循環に先立って、作業イオンを含有する。
【0004】
再充電可能電気化学セルまたは再充電可能バッテリは、典型的には、「リチウムイオンバッテリ」、「水素イオンバッテリ」等の識別につながる、その作業イオンに基づくタイプによって識別される。
【0005】
循環の間に、電解質が、電気化学セルの内側で作業イオンを伝導させる一方、電子は、外部回路を通して移動する。電子は、放電の間に外部エネルギー入力を要求することなく流動する傾向があり、電気化学セル内に貯蔵されたエネルギーが、例えば、デバイスに給電することを可能にする。充電の間に、外部エネルギー供給部が、典型的には、作業イオンの流動を逆行させ、電気化学セル内のエネルギー供給部からのエネルギーを貯蔵して、電子を反対方向に流動させるために使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要約)
本開示は、高気孔率金属電流コレクタと、金属電流コレクタを囲繞する活性材料と、活性材料を囲繞する自己支持型合成膜材料とを含む、フロースルー再充電可能電気化学セルのための電極を提供する。
【0007】
電極はさらに、明確に相互排他的ではない限り、任意の組み合わせで相互と、かつ本明細書に開示される他の特徴と組み合わせられ得る、以下の特徴を含んでもよい。
【0008】
i.高気孔率金属電流コレクタは、金属発泡体であり得る。
【0009】
ii.高気孔率金属電流コレクタは、織金網であり得る。
【0010】
iii.合成膜は、活性材料を完全にコーティングし得る。
【0011】
iv.合成膜は、ポリマーを含み得る。
【0012】
v.合成膜は、ポリマー樹脂を含み得る。
【0013】
vi.合成膜は、半結晶性ポリオレフィンを含み得る。
【0014】
vii.合成膜は、ポリオキシメチレンを含み得る。
【0015】
viii.合成膜は、アイソタクチックポリ(4-メチル-1-ペンテン)を含み得る。
【0016】
ix.合成膜は、エチレンプロピレンジエンモノマーゴムを含み得る。
【0017】
x.合成膜は、ポリエチレンを含み得る。
【0018】
xi.合成膜は、ポリプロピレンを含み得る。
【0019】
xii.合成膜は、グラフトポリマーを含み得る。
【0020】
xiii.合成膜は、ポリエチレンから成り得る。
【0021】
xiv.合成膜は、ポリプロピレンから成り得る。
【0022】
xv.合成膜は、ポリビニリデンフルオライドを含み得る。
【0023】
xvi.合成膜は、フッ素重合体エラストマを含み得る。
【0024】
xvii.金属電流コレクタは、80~90%の気孔率を有し得る。
【0025】
xviii.活性材料は、カソード活性材料であり得る。
【0026】
xix.活性材料は、アノード活性材料であり得る。
【0027】
本開示は、高気孔率金属電流コレクタと、金属電流コレクタを囲繞するカソード活性材料と、カソード活性材料を囲繞する自己支持型合成膜材料とを含む、フロースルー再充電可能電気化学セルのためのカソードを提供する。
【0028】
電極はさらに、明確に相互排他的ではない限り、任意の組み合わせで相互と、かつ本明細書に開示される他の特徴と組み合わせられ得る、以下の特徴を含んでもよい。
【0029】
i.高気孔率金属電流コレクタは、金属発泡体であり得る。
【0030】
ii.高気孔率金属電流コレクタは、織金網であり得る。
【0031】
iii.合成膜は、活性材料を完全にコーティングし得る。
【0032】
iv.合成膜は、ポリマーを含み得る。
【0033】
v.合成膜は、ポリマー樹脂を含み得る。
【0034】
vi.合成膜は、半結晶性ポリオレフィンを含み得る。
【0035】
vii.合成膜は、ポリオキシメチレンを含み得る。
【0036】
viii.合成膜は、アイソタクチックポリ(4-メチル-1-ペンテン)を含み得る。
【0037】
ix.合成膜は、エチレンプロピレンジエンモノマーゴムを含み得る。
【0038】
x.合成膜は、ポリエチレンを含み得る。
【0039】
xi.合成膜は、ポリプロピレンを含み得る。
【0040】
xii.合成膜は、グラフトポリマーを含み得る。
【0041】
xiii.合成膜は、ポリエチレンから成り得る。
xiv.合成膜は、ポリプロピレンから成り得る。
xv.合成膜は、ポリビニリデンフルオライドを含み得る。
【0042】
xvi.合成膜は、フッ素重合体エラストマを含み得る。
【0043】
xvii.金属電流コレクタは、80~90%の気孔率を有し得る。
【0044】
本開示は、高気孔率金属電流コレクタと、金属電流コレクタを囲繞する活性材料と、アノード活性材料を囲繞する自己支持型合成膜材料とを含む、フロースルー再充電可能電気化学セルのためのアノードを提供する。
【0045】
アノードはさらに、明確に相互排他的ではない限り、任意の組み合わせで相互と、かつ本明細書に開示される他の特徴と組み合わせられ得る、以下の特徴を含んでもよい。
【0046】
i.高気孔率金属電流コレクタは、金属発泡体であり得る。
【0047】
ii.高気孔率金属電流コレクタは、織金網であり得る。
【0048】
iii.合成膜は、活性材料を完全にコーティングし得る。
【0049】
iv.合成膜は、ポリマーを含み得る。
【0050】
v.合成膜は、ポリマー樹脂を含み得る。
【0051】
vi.合成膜は、半結晶性ポリオレフィンを含み得る。
【0052】
vii.合成膜は、ポリオキシメチレンを含み得る。
【0053】
viii.合成膜は、アイソタクチックポリ(4-メチル-1-ペンテン)を含み得る。
【0054】
ix.合成膜は、エチレンプロピレンジエンモノマーゴムを含み得る。
【0055】
x.合成膜は、ポリエチレンを含み得る。
【0056】
xi.合成膜は、ポリプロピレンを含み得る。
【0057】
xii.合成膜は、グラフトポリマーを含み得る。
【0058】
xiii.合成膜は、ポリエチレンから成り得る。
xiv.合成膜は、ポリプロピレンから成り得る。
xv.合成膜は、ポリビニリデンフルオライドを含み得る。
【0059】
xvi.合成膜は、フッ素重合体エラストマを含み得る。
【0060】
xvii.金属電流コレクタは、80~90%の気孔率を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本開示の実施形態が、必ずしも一定の縮尺ではない添付図を参照して、さらに詳細に一例として説明される。
図1A図1Aは、放電の間のフロースルー再充電可能電気化学セルの断面概略図である。
【0062】
図1B図1Bは、充電の間の図1Aのフロースルー再充電可能電気化学セルの断面概略図である。
【0063】
図2A図2Aは、織金網電極のワイヤの断面概略図である。
【0064】
図2B図2Bは、膨張後の織金網電極のワイヤの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
(詳細な説明)
本開示は、再充電可能電気化学セルのための貫通可能膜を伴う電極に関する。
【0066】
再充電可能電気化学セルは、少なくとも1つの充電/放電サイクルを受け得る、デバイスである。用語「バッテリ」および「電気化学セル」は、時として、同義的に使用される、または異なる文脈で特定の意味を与えられる。用語「電気化学セル」は、1つのアノードと、1つのカソードと、電解質とを含む、デバイスを説明するために本開示で使用される。用語「バッテリ」は、複数の電気化学セルを含有するデバイスを説明するために本開示で使用される。
【0067】
本開示の電気化学セルは、多孔質カソードおよびアノードと、流体流を可能にするセパレータと、電気化学セルを通して流体電解質を循環させるためのポンプとを有してもよい。作業イオンは、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、またはカリウムイオン(K)等のアルカリ金属イオン、水素イオン(H)、もしくはヒドロキシルイオン(OH)であってもよい。
【0068】
ここで図1Aおよび1Bを参照すると、電気化学セル100は、コンテナ110に収納される、カソード102と、アノード104と、電解質106と、電子的絶縁セパレータ108とを含む。カソード102およびアノード104を通して電解質106の流動を促進するために、コンテナ110は、ポンプ112を含む、閉ループ114に流体的に接続される。
【0069】
図1Aおよび1Bに図示されるように、電気化学セルは、電極およびセパレータ108が、外部回路136を通す以外に、アノード104とカソード102との間の電子接触を防止することに役立つために、セパレータ108が、アノード104とカソード102との間に位置するスタックに配列されるように、構成される。閉ループ114は、流体電解質が、閉ループ114からコンテナ110に進入し、アノード104、セパレータ108、およびカソード102のスタックを通して流動し、次いで、コンテナ110から出て閉ループ114に再進入するように、コンテナ110に接続される。図1Aおよび1Bに図示されるように、閉ループ114は、スタックの反対側でコンテナ110に接続されるが、他の構成も、流体がスタックを通して流動する限り可能である。
【0070】
図1Aおよび1Bに図示される電気化学セル100は、セパレータ108を含有するが、代替電気化学セルには、セパレータが欠如し得る。例えば、カソード102およびアノード104は、それらが電子的に接触しないように、電気化学セル100内のコンテナ110または別の非セパレータ構造への取付によって定位置で保持されてもよい。セパレータが欠けている、そのような構成は、セパレータによって遮断される樹枝状結晶の形成に起因して、多くの従来の電気化学セルでは機能しない場合があるが、電気化学セル100を通した流体電解質の流動は、フロースルーセルではなく、セパレータを不必要にする、類似電気化学セルと比較して、樹枝状結晶形成を防止または実質的に減少させ得る。
【0071】
電気化学セル100が、円筒形コンテナ100とともに図示されるが、直方体、立方体、または貨幣形等の他のコンテナ形状も、可能である。コンテナ100は、電気化学セル100の循環の間に形成される化学物質を含む、電気化学セル100内で見出される流体電解質または他の化学物質による分解に抵抗することが可能である、任意の好適な材料を含んでもよい。好適な材料はまた、充電および放電の間に、または電気化学セル100の予想寿命にわたって、電気化学セル100の形状を維持することも可能であり得る。好適な材料は、鋼鉄、ガラス、瀝青化合物、セラミック材料、およびポリマーを含む。コンテナ110は、例えば、分解耐性内層またはコーティングを伴う金属外層等の複数の材料を含んでもよい。
【0072】
閉ループ114は、コンテナ100と同一の材料または異なる材料を含んでもよい。閉ループ114は、電気化学セル100の循環の間に形成される化学物質を含む、電気化学セル100内で見出される流体電解質または他の化学物質による分解に抵抗することが可能である、任意の好適な材料を含んでもよい。好適な材料はまた、電気化学セル100の予想寿命にわたって圧潰を伴わずに断面形状等の形状を維持することも可能であり得る。好適な材料は、鋼鉄、ガラス、瀝青化合物、セラミック材料、およびポリマーを含む。閉ループ114は、例えば、分解耐性内層を伴う金属外層等の複数の材料を含んでもよい。閉ループ114は、可撓性または剛直性であり得る。
【0073】
閉ループ114内のポンプ112は、閉ループ114およびコンテナ110内の電極を通して流体電解質106を流動させるため、かつ充電の間に1つの方向および放電の間に反対方向に流動を引き起こすように可逆的にさせるために十分な任意のポンプであってもよい。ポンプ112は、図示されるような容積式ポンプ、蠕動ポンプ、回転翼型ポンプ、またはプログレッシブキャビティポンプであってもよい。ポンプ112は、図示されるように、閉ループ114の流体流通路内に位置してもよい、または蠕動ポンプ等の外部ポンプであってもよい。ポンプ112は、固定流率または可変流率において動作してもよい。
【0074】
閉ループ114内の流率が、電極を通した線形流率または電極を通した体積流率として、測定されてもよい。理論的線形流率が、2つの電極の間で異なる場合、より低い線形流率が、電極を通した実際の線形流率を決定付けるであろう。線形流率は、ポンプ112、および流体電解質106への電極ならびにセパレータ(存在する場合)の透過性等のいくつかの要因によって決定付けられ得る。一般に、蠕動ポンプまたは回転翼型ポンプは、中程度の電力要件を伴って低いまたは中程度の流率を提供することができる。プログレッシブキャビティポンプは、より高い電力要件を伴ってより高い流率を提供することができる。それらのより高い電力要件に起因して、プログレッシブパワーポンプは、グリッド貯蔵および他の電気公共事業用途内等の大型定常バッテリ内または船用バッテリ内のフロースルー電気化学セルで使用するためにより好適であり得る。
【0075】
ポンプ112は、電気化学セル100の充電、放電、または両方の間に、外部電力供給源によって給電されてもよい。特に、ポンプ112は、充電の間に充電器144等の同一の外部エネルギー供給部によって給電されてもよい。ポンプ112は、放電の間に電気化学セル100自体によって給電されてもよい。ポンプ112は、特に、閉ループ114内にある場合、電気化学セル100が外部回路136を通した場合を除いて放電することができないように、電子的絶縁構成要素を含んでもよい。ポンプ112はまた、電解質の短い区分を物理的に単離し、それによって、閉ループ114に沿った可能性として考えられる電子回路を物理的に妨害する、蠕動ポンプ等の容積型ポンプであってもよい。ポンプ112が、閉ループ114の流体流通路内に位置する場合、ポンプ112は、電気化学セル100の循環の間に形成される化学物質を含む、電気化学セル100内で見出される流体電解質または他の化学物質による分解に抵抗することが可能な材料を含む、もしくはそれでコーティングされてもよい。
【0076】
図1A、1Bは、単一のポンプ112を伴って図示されるが、複数のポンプが、存在し得る。例えば、複数の電気化学セルを含有するバッテリは、特に、多数の電気化学セルが存在する、または各セルの透過性が高くない場合、流体電解質の流動を維持するように、電気化学セルもしくは電気化学セルのセットの間にポンプを含有してもよい。複数のポンプ112が、それらが同期したままであることに役立つように1つのモータによって、または複数のモータによって駆動されてもよい。
【0077】
セパレータ108は、膜を通して作業イオンの通過および流体電解質106の流動を可能にする、透過性膜であってもよい。セパレータ108は、織繊維、不織繊維、ポリマーフィルム、セラミック、および自然発生物質を含んでもよい。不織繊維は、綿、ナイロン、ポリエステル繊維、紙、およびガラス繊維を含んでもよい。ポリエステルフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリ塩化ビニルフィルムを含んでもよい。自然発生物質は、ゴム、アスベスト、および木材を含んでもよい。セパレータ108は、厚さ10μm~5,000μm、厚さ10μm~1,000μm、厚さ10μm~500μm、厚さ10μm~100μm、または厚さ20μm~70μmであってもよく、より薄いセパレータが、多くの電気化学セル100で最も有用である。
【0078】
カソード102は、多孔質カソードであってもよい。カソード102は、流体電解質に対して透過性である、金属発泡体等のカソード高気孔率金属電流コレクタを含んでもよい。カソード高気孔率金属電流コレクタは、電子伝導体であり、カソード活性材料と外部電子回路との間で流動するために、電子のための経路を提供する。カソード高気孔率金属電流コレクタはまた、概して、カソード活性材料のための機械的支持を提供する。好適な高気孔率金属発泡体は、Ni、Fe、Cu、およびAl発泡体を含む。カソード高気孔率金属電流コレクタの気孔率は、40%~90%または40%~99%等、40%を上回り得る。特に、気孔率は、80%~90%であってもよい。多孔性質はまた、流体電解質106がカソード102を通して流動することも可能にする。
【0079】
カソード高気孔率金属電流コレクタは、カソード活性材料でコーティングされてもよい。特に、カソード高気孔率金属電流コレクタの細孔表面が、カソード活性材料でコーティングされてもよい。カソード活性材料でコーティングした後、カソード102は、依然として、5%~50%、10%~50%、および20%~50%等の少なくとも5%、少なくとも10%、または少なくとも20%の気孔率、もしくは設定された線形または体積流率において流体電解質106の流動を可能にするために十分な気孔率を維持し得る。
【0080】
カソード活性材料は、カソード活性材料の周囲に貫通可能合成膜を形成するために、合成膜材料でコーティングされてもよい。貫通可能合成膜は、カソード活性材料に対して構造的支持を提供し得る。貫通可能合成膜は、カソード高気孔率金属電流コレクタ上に、定位置でカソード活性材料を保持することによって、カソード活性材料の分解を阻止し得る。例示的膜材料、膜を形成する方法、および膜構造が、下記により詳細に議論される。
【0081】
アノード104は、多孔質アノードであってもよい。例えば、アノード104は、流体電解質に対して透過性である、高気孔率金属発泡体等のアノード高気孔率金属電流コレクタを含んでもよい。アノード高気孔率金属電流コレクタは、電子伝導体であり、アノード活性材料と外部電子回路との間で流動するために、電子のための経路を提供する。アノード高気孔率金属電流コレクタはまた、概して、アノード活性材料のための機械的支持を提供する。好適な高気孔率金属発泡体は、Ni、Fe、Cu、およびAl発泡体を含む。アノード高気孔率金属電流コレクタの気孔率は、40%~90%または40%~99%等、40%を上回り得る。特に、気孔率は、80%~90%であってもよい。多孔性質はまた、流体電解質106がアノード104を通して流動することも可能にする。
【0082】
アノード高気孔率金属電流コレクタは、アノード活性材料でコーティングされてもよい。特に、アノード高気孔率金属電流コレクタの細孔表面が、アノード活性材料でコーティングされてもよい。アノード活性材料でコーティングした後、アノード104は、依然として、5%~50%、10%~50%、および20%~50%等の少なくとも5%、少なくとも10%、または少なくとも20%の気孔率、もしくは設定された線形または体積流率において流体電解質106の流動を可能にするために十分な気孔率を維持し得る。
【0083】
アノード活性材料は、アノード活性材料の周囲に貫通可能合成膜を形成するために、合成膜材料でコーティングされてもよい。貫通可能合成膜は、アノード活性材料に対して構造的支持を提供し得る。貫通可能合成膜は、アノード高気孔率金属電流コレクタ上に、定位置でアノード活性材料を保持することによって、アノード活性材料の分解を阻止し得る。例示的膜材料、膜を形成する方法、および膜構造が、下記により詳細に議論される。
【0084】
従来の電気化学セルおよびバッテリでは、カソードおよびアノード、特に、電気化学セル循環の間のカソードおよびアノード活性材料の膨張ならびに物理的歪曲が、電気化学セルに存在する、活性材料および他の電子伝導性材料の間の断絶等の電気化学セルへの物理的損傷を引き起こし得る。体積の変更はまた、電極自体の歪曲、ならびに電極から離れて落下し得る、ばらばらの粉末への活性材料の分解を結果としてもたらし得る。これは、複数のサイクルにわたって性能低下を引き起こす。例えば、電気化学セルは、複数のサイクルにわたって容量の減少を被り得る。
【0085】
一般に、活性材料の体積を最大限にすることによって、セルのエネルギー密度を最大限にし、電極の単位体積あたりの可動イオンの最大量を吸収または解放するように、材料を設計することもまた、望ましい。活性材料の体積の膨張および収縮は、著しくあり得、最小5%から最高50%までに及び得る。現在の先行技術において、いくつかのリチウムイオンセル内で使用されるような、シリコンアノード材料は、例えば、非常に高い体積の変更を有し、複数のサイクルにわたって性能低下を被る。
【0086】
図1Aは、活性材料がアルカリ金属イオン活性材料であるときの放電の間の電気化学セル100を図示する。流体電解質106は、方向120に回転する容積式ポンプ112によって、方向118に圧送される。電子が、電気化学セル100によって給電されているデバイス等の電気負荷138を通して、外部回路136に沿って方向122に伝導される。作業イオン、本実施例ではリチウムイオンが、アノード104とカソード102との間で方向124に伝導される。アノード104内の電気化学反応が、アノード活性材料からリチウムイオンを解放する一方、カソード102内の電気化学反応は、カソード活性材料内のリチウムイオンを捕捉する。
【0087】
図1Bは、活性材料がアルカリ金属イオン活性材料であるときの充電の間の電気化学セル100を図示する。流体電解質106は、方向126に回転する容積式ポンプ112によって、反対方向118である方向128に圧送される。電子が、外部電源に接続され得る充電器144を通して外部回路136に沿って方向130に伝導される。作業イオン、本実施例ではリチウムイオンが、アノード104とカソード102との間で、反対方向124である方向134に伝導される。カソード102内の電気化学反応が、カソード活性材料からリチウムイオンを解放する一方、アノード104内の電気化学反応は、アノード活性材料内のリチウムイオンを捕捉する。
【0088】
方向124にもあるアノード104およびカソード102を通した流体電解質106の流動、または方向134にもあるカソード102およびアノード104を通した流体電解質106の流動は、アノード104、カソード102、または典型的には両方の中の作業イオンの有効イオン移動度を拡大し、より高い率における流動が、さらなる影響を及ぼす。一方または両方の電極内のより高い作業イオン移動度が、充電、放電、または典型的には両方の間に、電解質における抵抗損を低減させ得る。
【0089】
(貫通可能合成膜)
活性材料は、貫通可能合成膜によって被着されてもよい。膜は、膜材料から作製されてもよい。膜は、活性材料の表面全体に被着し得る。膜は、機械的に強力であるが、電極と電解質との間のイオンの自由な伝導を可能にし得る。このタイプの膜もまた、「半貫通可能」として説明され、ある規定されたイオン種のみが、膜材料を横断することができることを意味し得る。例えば、いくつかの膜は、水素イオン(すなわち、陽子)が通過することを可能にし得るが、ヒドロキシルイオンは通過することができない。膜は、セパレータ内で使用するための当該技術において公知であるものと同一のタイプおよび厚さから作製されてもよい。
【0090】
膜は、「自己支持型」であってもよい。自己支持型膜は、活性材料のための支持を提供する、膜である。自己支持型膜は、活性材料が、充電または放電中に膨張または収縮するときでさえ、活性材料との接触を維持する。自己支持型膜は、活性材料とともに、膨張および収縮し得る。
【0091】
膜は、液体溶剤中で膜材料を溶解し、結果として、電極を含侵させ得る、低粘度液体をもたらすことによって、活性材料上に形成されてもよい。溶剤は、次いで、乾燥および加熱することによって除去され、活性材料上に膜材料を堆積し、膜を形成し得る。溶液中の膜材料の濃度は、膜の最終的な厚さを判定するために使用され得る。厚さは、0.01~10ミクロンの範囲内であってもよい。
【0092】
膜材料は、ポリマー樹脂であってもよい。ポリマー樹脂は、それらが、重合後も、可撓性および弾力性を維持するため、使用される。例示的ポリマー樹脂は、限定ではないが、半結晶性ポリオレフィンと、ポリオキシメチレンと、アイソタクチックポリ(4-メチル-1-ペンテン)とを含み得る。ポリエチレン-ポリプロピレン、ポリスチレン-ポリプロピレン、ポリ(エチレンテレフタレート)-ポリプロピレン混成体、および超高分子量ポリエチレン等、その中で、少なくとも1つのポリマーが結晶構造を有する、非相溶性ポリマーの混成体もまた、使用されてもよい。
【0093】
ポリマー樹脂は、湿式法を使用して、活性材料上に堆積されてもよい。湿式法は、混合、加熱、含侵、および添加剤除去のステップを含む。ポリマー樹脂は、最初に、パラフィンオイル、酸化防止剤、および代用粉末等の他の添加剤と混合され得る。混合物は、次いで、加熱され、均質な溶液を生産し得る。加熱された溶液は、電極の空孔内に噴射され、活性材料をコーティングするゲル状のフィルムを作製し、次いで、乾燥および硬化され得る。真空含侵法もまた、完全なコーティングを阻止し得る、電極の空孔内のエアポケットの可能性を排除するために使用されてもよい。代用添加剤は、次いで、揮発性溶剤を用いて除去され、微孔性フィルムコーティングを形成し得る。
【0094】
湿式法はまた、結晶性および非結晶性ポリマーの両方に対して好適であり得る。いくつかのポリマーは、それらが熱くなりすぎるとき、セル動作を停止する等の好都合な機械的性質を膜上に付与し得る。膜材料としての使用に適切なポリマーは、半結晶性構造を伴うポリオレフィンベースの材料を含み得る。半結晶性構造を伴うポリオレフィン材料は、限定ではないが、ポリエチレンと、ポリプロピレンと、ポリエチレン-ポリプロピレン等のその混成体とを含み得る。
【0095】
膜材料はまた、グラフトポリマーを含んでもよい。例えば、マイクロ多孔質ポリ(メチルメタクリレート)グラフト化およびシロキサングラフト化ポリエチレンが、膜材料であってもよい。これらのグラフトポリマーは、従来のポリエチレンと比較して、好都合な表面形態構造および電気化学的な性質を実証し得る。別の実施例では、ポリトリフェニルアミン(PTPAn)変性材料は、電気活性であり、これは、可逆的過充電保護を提供し得る。さらなる別の実施例では、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)ナノ繊維ウェブが、伝導性および寸法安定性を改良するために、膜材料として使用されてもよい。
【0096】
膜を形成する方法はまた、溶液ベースの処理および水性乳剤重合を含んでもよい。溶液ベースの処理では、典型的な有機溶剤は、限定ではないが、ジメチルホルムアミドおよびブタノンを含んでもよい。水性乳剤重合では、フルオロ界面活性剤ペルフルオロノナン酸が、モノマーを可溶性にすることによって、加工助剤として負イオンの形態で使用されてもよい。本プロセスは、PVDFを活性材料の表面上に同時に堆積させ、PVDFを重合するために使用され、膜を形成することができる。
【0097】
PVDF膜はまた、微粉の形態であり得る活性材料を機械的に安定化するために使用されてもよい。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中の質量1~2%PVDFの溶液は、金属発泡体電流コレクタを含侵させるために使用され得るスラリを形成するために、活性材料粉末と混合されてもよく、またカーボンブラック、炭素ナノ繊維、または金属粉末等の導電性添加剤と混合されてもよい。NMPは、次いで、蒸発され、複合電極を形成し得る。PVDFは、使用される電極電位の範囲を上回って化学的に不活性であり、共通の電解質と化学的に反応しないため、使用されてもよい。
【0098】
PVDFはまた、化学的改質に対する高い抵抗を伴う熱可塑性材料であるため、使用されてもよい。これは、強酸、弱酸、イオン食塩水、ハロゲン化合物、炭化水素、芳香族溶剤、脂肪族溶剤、酸化剤、および弱塩基と相溶性がある。しかしながら、それは、強塩基、エステル、およびケトンと化学的感受性を呈する。
【0099】
Viton、フルオロエラストマー等の合成ゴムもまた、膜材料であってもよい。合成ゴムは弾性であり、大きな体積の膨張を呈する活性材料のための膜として使用されてもよい。Vitonフルオロエラストマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびビニリデンフルオライド(VDFまたはVF2)のコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、ビニリデンフルオライド(VDF)、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、ならびにペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)含有コポリマーから成る族である。最も一般的なグレードのフッ素含有量は、66~70%の間で変動する。
【0100】
Vitonは、概して、濃縮無機酸および塩基と相溶性がある。それは、ほとんどの炭化水素に対する耐性がある。それは、アセトン、メチルエチルケトン、および酢酸エチルに可溶であるため、それらの溶剤はそれぞれ、Vitonを活性材料上に堆積するために使用され、以前に説明されたような湿式法を使用して膜を形成し得る。
【0101】
フルオロビニルメチルシロキサンゴム(FVMQ)は、KOH電解質を使用するNiMHセルのための膜材料として使用されてもよい。FVMQは、概して、強アルカリ性溶液に対する耐性が非常に高い。FVMQは、ケトンに可溶であるため、ケトンは、FVMQを活性材料上に堆積するための溶剤として使用され、以前に説明されたような湿式法を使用して膜を形成し得る。
【0102】
(貫通可能膜を伴う電極の設計)
膜は、自己支持型であり、充電および放電の繰り返されるサイクルの下、電極から取り外される可能性が低くあり得る。例えば、金属電流コレクタが、金属発泡体である場合、活性材料は、発泡体の各ウェブを囲繞し得る。次いで、膜もまた、発泡体の各ウェブを囲繞し、閉ループを形成し得る。閉ループは、金属電流コレクタからの膜の取外を阻止し得る。
【0103】
織金網電極はまた、充電および放電の多くのサイクルを通して機械的完全性を留保する膜のコーティングに適している。
【0104】
図2Aは、織金網電極のワイヤ200の断面図である。金属電流コレクタ210は、ワイヤ200のコアを形成し、活性材料220は、金属電流コレクタ210を囲繞する。膜230は、活性材料220を囲繞し、膜230の取外を阻止する閉ループを形成する。
【0105】
図2Bは、充電または放電から結果として生じる付加的な活性材料が堆積した後の織金網電極のワイヤ200の断面図である。金属電流コレクタ210を囲繞する活性材料220の量は、図2A内のものよりも多く、膜230は、活性材料220の膨張を収容するために伸展している。膜230の伸展部は、活性材料220を金属電流コレクタ210上に定位置で保つ。
【0106】
膨張は、例えば、リチウムイオンが、活性材料内に介在しているとき、充電プロセスの間に、リチウムイオンセルのアノード内で使用される活性材料内で起こる。膜は、そこから取り外されることなく、活性材料の体積を増加させ、電極の完全性を増加させながら膨張し得る。
【0107】
図2Aおよび2Bは、織金網電流コレクタを含む、多孔質電極を示すが、多孔質電極は、異なる形態の電流コレクタを有してもよい。例えば、多孔質電極は、金属発泡体電流コレクタを含んでもよい。金属発泡体電流コレクタは、80~90%の気孔率を有してもよい。同様に、多孔質電極は、3D印刷された金属電流コレクタを含んでもよい。
【0108】
カソード活性材料と、アノード活性材料と、電解質との組み合わせは、作業イオンが、電子化学セルが機能することを可能にする電気化学反応に関与し得るように、公知の電子化学セル原理に基づいてもよい。例えば、アノードおよびカソードは、所与の理論電圧を生じさせ得、電解質は、所与の電圧において安定的であることが期待される電解質であり得る。
【0109】
(実施例)
以下の実施例が、本発明の原理および具体的側面をさらに例証するように提供される。それらは、本発明の全ての側面の範疇全体を包含することを意図しておらず、そのように解釈されるべきではない。
【0110】
(実施例1:ニッケル金属水素化物(NiMH)セル電極)
貫通可能膜を伴う多孔質電極は、図2Aおよび2Bに図示されるように構築されてもよい。
【0111】
最初に、金属電流コレクタは、1インチあたり110個の空孔(PPI)の空孔密度を有するニッケル発泡体シートから作製される。ニッケル発泡体シート内の典型的な空孔サイズは、10パーセンタイルにおける100μm~90パーセンタイルにおける500μmまで及び、最も一般的なサイズは、50パーセンタイルにおける230μmである。ニッケル金属は、50μm~150μmまでの範囲のワイヤ直径を伴う細かいランダムメッシュを形成する。
【0112】
金属電流コレクタは、次いで、電解質が通過することを可能にするために容認可能な開かれた体積を維持しながらも、電極の所与の体積における活性材料の体積を最大限にするために、22μm~74μmの厚さに活性材料で均一にコーティングされる。
【0113】
次いで、活性材料が、固形鋳物材料を粉末に粉砕することによって作製される。結果として生じる粉末は、ある範囲の粒子サイズを有する。粉末は、次いで、徐々により目の細かい篩のカスケードを通して通過し、粉末をサイズ間隔に分類する。粉末は、粉末を収集する篩のメッシュサイズに従って分類される。例えば、400本のワイヤ/インチのメッシュ(すなわち、400メッシュ)を伴う篩によって収集される粉末は、「+400」として分類される。「-400+600」と等級化される粉末は、22μm~38μmの粒子サイズ範囲を有する一方、「-200+400」と等級化されるより粗い粉末は、38μm~74μmの範囲を有する。本実施例では、-400+600および-200+400の両方が、使用されてもよい。所与のサイズ範囲を使用することは、金属発泡体上に堆積される、活性材料の固定され、かつ予測可能である、最終的な厚さを結果としてもたらし得る。
【0114】
粉末は、次いで、重量比2%~20%PVA/水の割合で蒸留された水の中で、ポリビニルアルコール(PVA)の溶液と混合される。PVAは、磁性攪拌ロッドを用いて混合物を持続的に攪拌しながら、PVAを90℃の水に添加することによって溶解され、次いで、1時間にわたって、PVAが溶液内で溶解することを可能にする。活性材料を金属電流コレクタ上に堆積させるために、金属電流コレクタは、混合物内に降下され、ゆっくりと引き抜かれた後、空気乾燥が続く。0.005~5μmの範囲内の非常に細かい粒子サイズの黒鉛粉末および/または純ニッケル粉末が、活性材料とニッケル発泡体との間の良好な電気接触を支援するために、PVA/水溶液に添加されてもよい。
【0115】
金属電流コレクタが活性材料でコーティングされた後、活性材料は、膜でコーティングされる。未硬化または部分的に硬化されたエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴムの溶液は、蒸発したPERCを回収するために取り付けられた凝縮装置を用いて、密閉されたフラスコ内で、1~2時間にわたって、60℃まで加熱しながら、ペルクロロエチレン(PERC)中で溶解される。溶液は、重量比1~10%のEPDM/PERCであり、これは、最終的な膜の厚さを制御するように調節され得る。EPDMゴムは、非重合の形態で取得され、好適な加硫剤または硬化剤と混合されてもよい。
【0116】
電極は、ゴムを硬化させるために、1~5時間にわたって、150~200℃の温度で強制空気対流オーブン内に設置される前に、EPDM溶液に浸され、空気乾燥される。ゴム溶液の濃度に応じて、電解質溶液内の活性イオンが通過することを可能にしながら機械的に安定的である0.05μm~5μmの間の膜厚が、形成されてもよい。EPDMゴムは、NiMH電解質内で典型的に使用される高アルカリ性水溶液によって影響を受けることはない。
【0117】
(実施例2:貫通可能膜の測定)
膜の品質は、コーティングされていないニッケル発泡体の対電極を用いて、1NのKOH水溶液中に2.5cm×5cmのサイズのサンプル電極を浸漬することによって検査されてもよい。活性材料を伴う電極の複素インピーダンスを測定するために、多周波数LCRメータを用いて両方の電極に接触がなされる。一実施例では、6.25cmの活性電極面積に対して、100μFの範囲内の低Q容量性インピーダンスが測定される。本容量は、100Hz~10KHzの周波数範囲にわたって比較的一定であり、ゴム膜が、等価電子回路の支配的構成要素であることを証明する一方、測定された並列抵抗インピーダンスは、溶液中のイオンが膜を容易に横断することができることを示す。
【0118】
本明細書に与えられる詳細は、NiMHタイプのセルの設計および構築に関連するが、異なる化学現象に本発明を適合させるために、材料および方法の変形例が、請求された発明から逸脱することなく使用されてもよい。
【0119】
上記に開示される主題は、制限的ではなく、例証的と見なされるものであり、添付の請求項は、本開示の真の精神および範囲内に該当する、全てのそのような修正、向上、ならびに他の実施形態を網羅することを意図している。したがって、法によって可能にされる最大の程度に、本開示の範囲は、以下の請求項およびそれらの均等物の最も広義の許容解釈によって判定されるものであり、前述の詳細な説明によって制限または限定されないものとする。
図1A
図1B
図2A
図2B
【国際調査報告】