(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ローラーハース炉におけるセラミックローラーの取り付け
(51)【国際特許分類】
F27B 9/30 20060101AFI20230420BHJP
F27B 9/24 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
F27B9/30
F27B9/24 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554808
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2021055835
(87)【国際公開番号】W WO2021180672
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】102020107036.5
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】315015977
【氏名又は名称】シュヴァルツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナデラー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ライナルツ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4K050
【Fターム(参考)】
4K050AA01
4K050BA02
4K050CG05
(57)【要約】
ローラーハース炉(1)にセラミックローラー(2)を取り付けるためのスリーブ(3)であって、スリーブ(3)はセラミックローラー(2)の1つの端部(5)のための受け部(4)を有し、受け部(4)は外壁(6)で囲まれており、外壁(6)は、軸方向において、胴部分(7)と、胴部分に位置する緊締部分(8)とを有し、胴部分(7)における外壁(6)の壁厚(d)は、胴部分(7)の近傍よりも小さく、緊締部分(8)における受け部(4)の断面積は、緊締部分(8)の近傍よりも小さい。高温であっても、スリーブ(3)によって、ローラーハース炉(1)にセラミックローラー(2)を特に確実に収容することができる。これを実現するために、スリーブ(3)は、緊締部分(8)において、製造時に断面積が小さくされる。軸方向においてスリーブ(3)がセラミックローラー(2)の端部(5)に押し付けられると、緊締部分(8)において断面積が小さくなっていることにより弾性力が生じ、この弾性力によってスリーブ(3)がセラミックローラー(2)に保持される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラーハース炉(1)にセラミックローラー(2)を取り付けるためのスリーブ(3)であって、
該スリーブ(3)は、前記セラミックローラー(2)の1つの端部(5)のための受け部(4)を有し、
前記受け部(4)は、外壁(6)で囲まれており、
前記外壁(6)は、軸方向において、胴部分(7)と、該胴部分に位置する緊締部分(8)とを有し、
前記胴部分(7)における前記外壁(6)の壁厚(d)は、前記胴部分(7)の近傍よりも小さく、
前記緊締部分(8)における前記受け部(4)の断面積は、前記緊締部分(8)の近傍よりも小さい、
スリーブ。
【請求項2】
請求項1に記載のスリーブ(3)であって、
前記胴部分(7)における前記外壁(6)の前記壁厚(d)は、前記胴部分(7)の近傍における前記外壁(6)の前記壁厚(d)の20~60%である、
スリーブ。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載のスリーブ(3)であって、
前記緊締部分(8)における前記受け部(4)の前記断面積は、前記緊締部分(8)の近傍に比べて0.03~0.3%小さい、
スリーブ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のスリーブ(3)であって、
前記緊締部分(8)の軸方向広がり(l
K)は、前記胴部分(7)の軸方向広がり(l
T)の少なくとも70%である、
スリーブ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のスリーブ(3)であって、
前記胴部分(7)は、前記受け部(4)の軸方向広がり(l
A)の40~80%の範囲の軸方向広がり(l
T)を有する、
スリーブ。
【請求項6】
ローラーハース炉(1)用のセラミックローラー(2)と、前記ローラーハース炉(1)に前記セラミックローラー(2)を取り付けるためのスリーブ(3)とを有するセットであって、
前記スリーブ(3)は、前記セラミックローラー(2)の1つの端部(5)のための受け部(4)を有し、
前記受け部(4)は、外壁(6)で囲まれており、
前記外壁(6)は、軸方向において、胴部分(7)と、該胴部分に位置する緊締部分(8)とを有し、
前記胴部分(7)における前記外壁(6)の壁厚(d)は、前記胴部分(7)の近傍よりも小さく、
前記受け部(4)の断面積は、前記緊締部分(8)のみにおいて、前記セラミックローラー(2)の前記端部(5)における断面積よりも小さい、
セット。
【請求項7】
ローラーハース炉(1)用のセラミックローラー(2)にスリーブ(3)を設置する方法であって、
前記ローラーハース炉(1)に前記セラミックローラー(2)を取り付けるための前記スリーブ(3)が形成され、
前記スリーブ(3)は、前記セラミックローラー(2)の1つの端部(5)のための受け部(4)を有し、
前記受け部(4)は外壁(6)で囲まれており、
前記外壁(6)は、軸方向において、胴部分(7)を有し、
前記胴部分(7)における前記外壁(6)の壁厚(d)は、前記胴部分(7)の近傍よりも小さく、
前記方法は、
a)前記胴部分(7)に位置する緊締部分(8)において前記スリーブ(3)を径方向に圧迫するステップであって、
前記外壁(6)の少なくとも3箇所にて、それぞれ径方向内側に向く力が前記外壁(6)に作用する、ステップと、
b)軸方向において、前記セラミックローラー(2)の前記端部(5)に前記スリーブ(3)を押し付けるステップと
を含む方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の前記スリーブ(3)がステップa)後に形成される、
方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の方法であって、
前記緊締部分(8)における前記受け部(4)の前記断面積は、ステップb)により、前記セラミックローラー(2)の前記端部(5)の前記断面積よりも小さくなる、
方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の方法であって、
前記スリーブ(3)は、ステップb)において少なくとも3つの圧着具(9)により圧迫され、
該圧着具は各々、
周方向において、前記外壁(6)の10~60度の角度領域にわたって延在しているか、又は、
軸方向において、前記外壁(6)の前記胴部分(7)の少なくとも80%にわたって延在しているか、又は、
その両方である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラーハース炉にセラミックローラーを取り付けるためのスリーブに関し、ローラーハース炉用セラミックローラーと前述のスリーブとのセットに関し、且つ、前述のスリーブをセラミックローラーに設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品をローラーハース炉で加熱すること、特に鋼製の部品をローラーハース炉で加熱することが知られている。このために、多数のローラを介してローラーハース炉内を部品を移動させることができる。ローラーハース炉内の高温に耐えることができるように、ローラは、セラミック製であることが多い。
【0003】
ローラーハース炉のローラを取り付けるための様々な選択肢があることが知られている。セラミック製のローラと鋼製の取り付け要素との間の接続は、問題になることが多い。鋼はセラミックよりもかなり高い熱膨張率を有することから、外からセラミック上に金属スリーブが載置されると、このようなローラーハース炉システムの高い動作温度では、圧力嵌めの余剰が減少する。結果として予荷重が低減し、それによりドライブトルクを伝達する能力が弱まる。
【0004】
本発明の目的は、記載した先行技術に依拠して、高温であっても、ローラーハース炉にセラミックローラーを十分な圧力嵌めで取り付けることができるスリーブを提供することである。更に、このようなスリーブとセラミックローラーとから成るセット、及び、このようなスリーブをセラミックローラーに設置する方法を提示するものとする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的は、独立請求項の事項により達成される。従属請求項は、更なる有利な展開を特定するものである。請求項及び本明細書において提示する特徴は、技術的に有意な態様で互いに組み合わせることができる。
【0006】
本発明によれば、ローラーハース炉にセラミックローラーを取り付けるためのスリーブが提示する。スリーブはセラミックローラーの1つの端部のための受け部を有し、受け部は外壁で囲まれている。外壁は、軸方向において、胴部分と、胴部分に位置する緊締部分とを有する。胴部分における外壁の壁厚は、胴部分の近傍よりも小さく、緊締部分における受け部の断面積は、緊締部分の近傍よりも小さい。
【0007】
スリーブは、ローラーハース炉にセラミックローラーを取り付けるように設計され且つ構成されている。セラミックローラーは、好ましくは、多くのセラミックローラーのうちの1つであり、これらのセラミックローラーは、ローラーハース炉に配置され且つローラーハース炉を通過させて部品を搬送することの意図したものである。ローラーハース炉により、プレス焼き入れ用等に部品を熱処理することができ、特に鋼製の部品を熱処理することができる。ローラーハース炉は、好ましくは、部品を熱処理するように設計されており、特に自動車用の部品の熱処理用に設計されている。
【0008】
セラミックローラーは、複数のスリーブのうちの2つを介してローラーハース炉に収容することができる。セラミックローラーは、好ましくは、その端部の両方にて、対応するスリーブを介して収容される。これらの2つのスリーブは、同一の設計であることが好ましい。セラミックローラーを取り付けるために、セラミックローラーの両端部が、対応するスリーブの受け部に挿入される。動作中は、スリーブは、セラミックローラーに圧力嵌めで接続されている。スリーブは、好ましくは、六角嵌合等を介して、駆動兼収容装置に形状接続される。スリーブに接続された駆動兼収容装置の一部は、駆動兼収容装置の残余の部分に回転可能に保持されている。この残余の部分は動かない。このように、スリーブは、一方の側にある駆動兼収容装置と、他方の側にあるセラミックローラーとの間にあるアダプタである。従って、スリーブにより、セラミックローラーに接続部ができ、これを介して、セラミックローラーと駆動兼収容装置とを接続することができる。
【0009】
スリーブを説明するために、外壁の2つの軸方向部分、即ち、胴部分及び緊締部分が定められる。緊締部分は、胴部分の内側に位置する。このことは、緊締部分が、胴部分を越えて一方の側に突出しておらず又はいずれの側にも突出しておらず、且つ、胴部分と一致しないことを意味する。胴部分及び緊締部分に加えて、外壁は、更なる軸方向部分を有することが好ましい。胴部分が受け部の端面から離れていることが特に好適である。胴部分及び緊締部分は、下に記載する条件により定められる。更に言えば、胴部分及び緊締部分は上記のように定めることは必須ではない。特に、異なる部分を胴部分として定めること、又は、異なる部分を緊締部分として定めること、又は、その両方が可能である。1つの部分を胴部分として定めることができ且つ1つの部分を緊締部分として定めることができればよい。これらの部分を出来得る別のやり方で割り当てることは重要ではない。
【0010】
胴部分は、胴部分における外壁の壁厚が胴部分の近傍に比べて小さいことにより定められている。このことは、胴部分において外壁の壁厚が小さくなっていることを意味する。胴部分における外壁の壁厚は一定であることが好適であるが、そうでなくてもよい。必須ではないが、胴部分の外側においても外壁の壁厚が一定であることが好適である。ここで両方の記載における「一定」という語は、軸方向に沿って見たときに壁厚が変わらないことを指す。
【0011】
胴部分が軸方向において定められることから、「胴部分の近傍」とは、外壁の部分であって且つ軸方向において胴部分に隣接する部分を意味するものと理解されるべきである。これらの部分においても、外壁の壁厚は一定でなくてもよい。胴部分の縁部における外壁の壁厚は、実質的には、「胴部分の近傍」の外壁の壁厚である。これらの縁部は、胴部分の一部とは見なされない。
【0012】
壁厚は、周方向に見たときに一定であることが好ましく、このことは、特に外壁全体に当てはまる。周方向において壁厚にばらつきがありうる場合には、外壁の任意の軸方向部分を胴部分と見なすことができる。この胴部分については、この部分における外壁の壁厚がこの部分の近傍に比べて小さいという条件が、外壁の周囲の少なくとも一部にわたって満たされている。胴部分における外壁の壁厚が胴部分の近傍に比べて小さいという条件は、胴部分において外壁の周囲全体にわたって満たされていることが好ましい。軸方向部分が考慮されることから、「この部分の近傍」も軸方向において定められている。従って、周方向において、対応する場所にある部分の近傍のみが重要である。
【0013】
胴部分において、外壁の壁厚は、0.5~1.0mmの範囲内にあることが好ましい。胴部分の近傍では、外壁の壁厚は、1~2mmの範囲内にあることが好ましい。
【0014】
緊締部分は、緊締部分における受け部の断面積が緊締部分の近傍に比べて小さいことにより定められている。受け部の断面積は、受け部の軸に対して垂直に見たときの受け部の二次元的広がりの面積を示す。受け部は、外壁で囲まれてた空間である。従って、受け部の断面積は、外壁の軸に対して垂直に見たときに外壁の内側により区切られる面積である。緊締部分における受け部の断面積が緊締部分の近傍に比べて小さいということは、緊締部分において受け部の断面積が小さくなっていることを意味する。緊締部分における受け部の断面積が一定であることが好適であるが、そうでなくてもよい。必須ではないが、緊締部分の外側においても受け部の断面積が一定であることが好ましい。ここで両方の記載における「一定」という語は、軸方向に沿って見たときに断面積が変わらないことを指す。
【0015】
緊締部分が軸方向において定められることから、「緊締部分の近傍」とは、外壁の部分であって且つ軸方向において緊締部分に隣接する部分を意味するものと理解されるべきである。これらの部分においても、受け部の断面積は一定でなくてもよい。緊締部分の縁部における受け部の断面積は、実質的には、「緊締部分の近傍」の受け部の断面積である。これらの縁部は、緊締部分の一部とは見なされない。
【0016】
受け部が円筒形である場合、緊締部分内の受け部の直径は、緊締部分の近傍に比べて小さい。ただし、受け部が厳密に円筒形であることは必須ではない。少なくとも緊締部分において、受け部は円筒形状に対して変形していることが一層好ましい。この可能性を強調するために、このような変形した受け部には、直径という語(数学的定義によればこれは円形断面を指す)を使用しない。代わりに、外壁の内側と外壁の軸との距離を考慮するものとする。受け部が円筒形である場合は、この距離はその半径に対応する。緊締部分における受け部の断面積が緊締部分の近傍に比べて小さいことは、特に、緊締部分における外壁の内側と外壁の軸との間の距離が緊締部分の近傍に比べて小さいことにより実現することができる。
【0017】
外壁の内側と外壁の軸との間の距離は、周方向に見たときに一定でなくてもよい。こうして、外壁は、回転対称形状ではなくなりうる。周方向において外壁の内側と外壁の軸との間の距離にばらつきがある場合には、外壁の内側と外壁の軸との間の距離がその近傍に比べて小さい、外壁の任意の軸方向部分を、緊締部分と見なすことができる。中央は、外壁の軸に対して垂直な平面を指す。緊締部分における外壁の内側と外壁の軸との間の距離が緊締部分の近傍に比べて小さいという条件は、緊締部分において外壁の周囲全体にわたって満たされていることが好ましい。軸方向部分が考慮されることから、「この部分の近傍」も軸方向において定められている。従って、周方向において、対応する場所にある部分の近傍のみが重要である。
【0018】
緊締部分の近傍において、外壁の内側と外壁の軸との距離は、24~100mmの範囲内にあることが好ましい。緊締部分における外壁の内側と外壁の軸との間の距離は、緊締部分の近傍に比べて0.15~1.00mm小さいことが好ましい。従って、外壁は、比較的わずかに変形すれば十分である。
【0019】
高温であっても、スリーブによって、ローラーハース炉にセラミックローラーを特に確実に収容することができる。スリーブの製造中に緊締部分を塑性変形させることにより、緊締部分における断面積が小さくなる。スリーブの組み立て中に、この断面積は、緊締部分における外壁の内側と外壁の軸との間の最小距離がセラミックローラーの最終的な断面積に対応するように、弾性的に広げられる。セラミックローラーとスリーブとの間に生じる径方向の力が高いため、ドライブトルクがスリーブを介してセラミックローラーに圧力嵌めの態様で伝達することができる。径方向の力は、セラミックローラーが耐えるべき値以下であることが好適である。高温であり且つスリーブ及びセラミックローラーの熱膨張率が異なることに起因して余剰が減少するにもかかわらず、スリーブの前述の設計に起因する径方向の力は、スリーブとセラミックローラーとの間の圧力嵌めにとって十分に高いということが分かった。緊締部分の弾力性は、いかなる動作状態においても、緊締部分の永久変形、即ち塑性変形がないように設計されていることが好ましい。
【0020】
外壁は、好ましくは周方向において閉じている。このことは、少なくとも軸方向部分、特に、少なくとも胴部分又は緊締部分又はその両方に当てはまる。外壁は、特に好ましくは完全に閉じている。端面にある開口部は、外壁内の開口部ではない。特に、外壁は軸方向の溝を持たない。このような構成により実現できるばね効果によってセラミックローラー及びスリーブの広がりの差異を補償するために、この構成が提供されることがあり得る。しかし、この設計ではスリーブの剛性がかなり制限されることから、この設計では、必要となる予荷重を非常に限られた範囲でしか維持できない。このような構成であることから、特に胴部分及び緊締部分があることから、前述のような溝は不要である。それ結果、溝を省略することができ、従ってスリーブの安定性及びセラミックローラーへの接続性が向上する。更に、溝を製造する必要がなく、この点で製造ステップが省略されるため、製造が簡素化される。
【0021】
スリーブの好適な実施形態において、胴部分における外壁の壁厚は、胴部分の近傍における外壁の壁厚の20~60%である。
【0022】
低減された壁厚の前述の利点が実現可能であること、且つ、胴部分において外壁が十分に安定することが分かった。
【0023】
スリーブの更なる好適な実施形態において、緊締部分における受け部の断面積は、緊締部分の近傍に比べて0.03~0.3%小さい。
【0024】
低減された断面積の前述の利点が実現可能であること、且つ、セラミックローラーを損傷することなくスリーブをセラミックローラーへと押し付けることができることが分かった。
【0025】
スリーブの更なる好適な実施形態において、緊締部分の軸方向広がりは、胴部分の軸方向広がりの少なくとも70%である。
【0026】
特に、緊締部分の軸方向広がりは胴部分の軸方向広がりの70%~90%の間であることが好適である。
【0027】
スリーブの更なる好適な実施形態において、胴部分は、受け部の軸方向広がりの40~80%の範囲の軸方向広がりを有する。
【0028】
低減された壁厚の前述の利点が実現可能であること、且つ、外壁が十分に安定することが分かった。
【0029】
本発明の更なる態様として、ローラーハース炉用のセラミックローラーと、ローラーハース炉にセラミックローラーを取り付けるためのスリーブとを有するセットを提示する。スリーブは、セラミックローラーの1つの端部のための受け部を有し、受け部は外壁で囲まれている。外壁は、軸方向において、胴部分と、胴部分に位置する緊締部分とを有する。胴部分における外壁の壁厚は、胴部分の近傍よりも小さく、受け部の断面積は、緊締部分のみにおいて、セラミックローラーの端部における断面積よりも小さい。
【0030】
前述のスリーブの特別な利点及び設計の特徴は、このセットに適用及び転用することができ、その逆も同様である。このセットのスリーブは、好ましくは上述のスリーブと同様に設計されている。スリーブは、セットにおいては、セラミックローラーに押し付けられてはいない。そうではありながら、スリーブは、セラミックローラーに押し付けられることを意図されており、そのように設計されている。好ましくは、セットは、2つのスリーブを備える。この場合、これらのスリーブのうちの一方をセラミックローラーの各端部に押し付けることができる。
【0031】
このように、受け部の断面積が緊締部分のみにおいてセラミックローラーの端部の断面積よりも小さいことから、緊締部分における受け部の断面積は、緊締部分の近傍よりも小さい。セラミックローラーの端部の断面積とは、セラミックローラーの端部にてセラミックローラーの軸に対して垂直に見たときの、セラミックローラーの外側を覆う面積である。セラミックローラーの端部は、セラミックローラーの一部であり且つスリーブにより収容される部分である。端部にてセラミックローラーの断面積が一定ではない場合、平均値が重要である。従って、緊締部分の外側では、受け部の断面積は、セラミックローラーの端部の断面積以上となる。スリーブがセラミックローラーへと押し付けられると、スリーブは、特に緊締部分を介して、セラミックローラーに保持される。これは緊締接続であり、緊締部分という語を説明するものである。
【0032】
本発明の更なる態様として、ローラーハース炉用セラミックローラーにスリーブを設置する方法を提示する。スリーブは、ローラーハース炉にセラミックローラーを取り付けるように設計されており、スリーブはセラミックローラーの1つの端部のための受け部を有し、受け部は外壁で囲まれており、外壁は軸方向において胴部分を有し、胴部分における外壁の壁厚は胴部分の近傍よりも小さく、本方法は、
a)胴部分に位置する緊締部分においてスリーブを径方向に圧迫するステップであって、外壁の少なくとも3箇所にて、それぞれ径方向内側に向く力が外壁に作用する、ステップと、
b)軸方向において、セラミックローラーの端部にスリーブを押し付けるステップと
を含む。
【0033】
前述のスリーブ及びセットの特別な利点及び設計の特徴は、本方法に適用及び転用することができ、その逆も同様である。前述のスリーブ、特に前述のセットのスリーブは、好ましくは本方法のステップa)によって得られる。ステップa)によれば、スリーブは、前述のスリーブのように、特に、前述のセットのスリーブのように設計されていることが好ましい。本方法のステップb)は、前述のスリーブを用いて、特に、前述のセットを用いて適宜実行することができる。ステップb)は、好ましくは、軸方向においてセラミックローラーの端部にスリーブを押し付けるための装置を用いて実行される。軸方向に圧迫するのに必要な力を加えるために、この装置は好ましくは油圧ドライブを有する。本方法は、好ましくは、対応するスリーブをセラミックローラーの各端部に押し付けることにより、各セラミックローラーに対して2回実行される。
【0034】
本方法の好適な実施形態において、緊締部分における受け部の断面積は、ステップb)により、セラミックローラーの端部の断面積よりも小さくなる。
【0035】
従って、受け部は、初めはセラミックローラーの端部の断面積以上の断面積を有する。受け部の断面積は、受け部全体にわたって一定であることが好ましい。特に、受け部の断面は、受け部全体にわたって円形であることが好ましい。同じことがローラの端部に当てはまる。緊締部分における受け部の断面積は、ステップa)において径方向に圧迫することによって小さくなり、これにより、セラミックローラーの端部の断面積よりも小さくなる。ただし、緊締部分の外側では、受け部の断面積は、セラミックローラーの端部の断面積以上のままとある。
【0036】
本方法の更なる好適な実施形態において、スリーブはステップb)において少なくとも3つの圧着具(Pressbacke)により圧迫され、これらの圧着具は各々、周方向において、外壁の10~60度の角度領域にわたって延在しているか、又は、軸方向において外壁の胴部分の少なくとも80%にわたって延在しているか、又は、その両方である。
【0037】
厳密に3つの圧着具が使用されることが好ましい。圧着具の各々により、径方向内側に向力を外壁に及ぼすことができる。圧着具は、好ましくは外壁に適合するような形状にされている。外壁は、外壁の周囲にわたって好ましくは均等に配分した状態で配置される圧着具により、円筒形状等から変形される。
【0038】
スリーブは、好ましくはステップb)において少なくとも3つの圧着具により圧迫される。これらの圧着具は各々、周方向において、外壁の10~60度の角度領域にわたって延在しており、且つ、軸方向において、外壁の胴部分の少なくとも80%にわたって延在している。
【0039】
以下で、図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図面は特に好適な実施形態を示すが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明にしたがって、2つのスリーブに収容されたセラミックローラーを有するローラーハース炉の略断面図である。
【
図6】圧着具により径方向に圧迫する前のスリーブの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、多数のセラミックローラー2を備えたローラーハース炉1を示しており、これらのセラミックローラーのうちの1つを見ることができる。セラミックローラー2は、その端部5の両方において、本発明による対応するスリーブ3を介して、対応する(提示されたもののみ)駆動兼収容装置10に接続されおり、このとき、スリーブ3を越しに収容される。
図1において、
図2に拡大して示す部分を点線で示している。
【0042】
図2において、セラミックローラー2の端部がスリーブ3の受け部4に収容されていることが分かる。受け部4は、外壁6で囲まれている。ここでは、受け部を、内側半径及び外側半径を一定にして簡素化して示す。セラミックローラー2とスリーブ3との間には、隙間が描かれているが、この隙間は図説ためのみのものである。実際には、セラミックローラーは、周方向において、外壁6の少なくとも一部と接触している。
図2には、駆動兼収容装置10をも示す。
【0043】
図3は、セラミックローラー2に取り付ける前の、
図1及び
図2のスリーブ3の詳細且つ実寸大の断面図である。
図3では、受け部4が外壁6で囲まれており、この外壁6は、軸方向において、胴部分7と、胴部分に位置する緊締部分8とを有することが分かる。外壁6の壁厚dは、胴部分7の近傍よりも胴部分7のほうが小さい。受け部4の断面積は、緊締部分8の近傍よりも緊締部分8のほうが小さい。ただし、この差は小さいため、
図3の図においては認識できない。本発明による方法のステップa)によって、断面積を低減することが達成された。この後は、スリーブ3は緊締部分8において径方向に圧迫されており、外壁6の少なくとも3箇所にて、それぞれ径方向内側に向く力が外壁6に作用する。
【0044】
本発明による方法のステップb)により、
図1及び
図2のローラーハース炉1でスリーブ3を使用するために、セラミックローラー2にスリーブ3を設置することができる。このために、スリーブ3は、軸方向において、セラミックローラー2の端部5に押し付けられ、こうして、セラミックローラー2に圧力嵌めで接続される。
【0045】
また、胴部分7の軸方向広がりlT、及び、緊締部分8の軸方向広がりlKを示す。更に、受け部4の軸方向広がりlAを示す。
【0046】
更に、六角穴11があることが分かる。この六角穴を介して、スリーブ3は、駆動兼収容装置10に形状接続することができる。
【0047】
図4は、
図2及び
図3に示すスリーブ3の側面図である。
図5は、このスリーブ3の断面図である。
【0048】
図6は、ステップb)において径方向に圧迫する前のスリーブ3の一部の断面図である。径方向に圧迫することにより、図示した状態のスリーブ3から
図2~
図5のスリーブ3を得ることができる。径方向に圧迫される前は、外壁6は円筒形状を有する。外壁6は、径方向に圧迫されることにより僅かに変形する。R
i,1及びR
i,2は、外壁6の内側と外壁6の軸(
図6の細部図の外側に位置する)との間の距離を2つ表している。更に、R
aは、外壁6の外側と外壁6の軸(
図6の細部図の外側に位置する)との間の距離を表している。図に示す径方向に圧迫する前の状況においては、R
i,1=R
i,2が成り立つ。径方向に圧迫することは、他にもあるが圧着具9により行うことができる。圧迫することは、少なくとも3つの圧着具により行われることが好ましい。これらの圧着具は、図に示した圧着具9のように設計されており、スリーブ3の周囲にわたって均等に配置される。径方向に圧迫することに起因して、R
i,2は、圧着具9の配置のため、R
i,1よりも強く影響を受ける。径方向に圧迫している間、壁厚は変わらないままである。
【0049】
高温であっても、スリーブ3によって、ローラーハース炉1にセラミックローラー2を特に確実に収容することができる。これを実現するために、スリーブ3は、緊締部分8において、製造時に断面積が小さくされる。軸方向においてスリーブ3がセラミックローラー2の端部5に押し付けられると、緊締部分8において断面積が小さくなっていることにより弾性力が生じ、この弾性力によってスリーブ3がセラミックローラー2に保持される。
【符号の説明】
【0050】
1 ローラーハース炉
2 セラミックローラー
3 スリーブ
4 受け部
5 端部
6 外壁
7 胴部分
8 緊締部分
9 圧着具
10 駆動兼収容装置
11 六角穴
d 壁厚
lT 胴部分の軸方向広がり
lK 緊締部分の軸方向広がり
lA 受け部の軸方向広がり
Ri,1 径方向に圧迫する前の内部距離
Ri,2 径方向に圧迫する前の内部距離
Ra 径方向に圧迫する前の外側距離
【国際調査報告】