(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ROR2をターゲティングする、親和性成熟ヒト化結合性ドメイン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230420BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230420BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230420BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230420BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230420BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20230420BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20230420BHJP
C12N 5/0787 20100101ALI20230420BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230420BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230420BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230420BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230420BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230420BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20230420BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230420BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/0786
C12N5/0784
C12N5/0787
A61K39/395 N
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
C12Q1/02
C07K19/00
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554892
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021056349
(87)【国際公開番号】W WO2021180929
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518098047
【氏名又は名称】ユリウス-マクシミリアン-ウニヴェルシテート・ヴュルツブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・フデチェク
(72)【発明者】
【氏名】ユストゥス・ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・エス・ゴイデル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・レーダー
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B065AA90X
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4H045AA10
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4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ROR2抗原に特異的なターゲティングドメインが、親和性成熟し、かつ/又はヒト化された、二重特異性抗体及びキメラ抗原受容体(CAR)等の抗体及びその誘導体に関する。本発明は、特に、がん治療における、それらの使用のための、前記抗体及び誘導体をコードする核酸及びベクター、それらを含有する細胞及び医薬組成物を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖可変ドメインと、重鎖可変ドメインとを含み、重鎖可変ドメインが、配列番号23、配列番号24、及び配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含み、前記CDR3配列が、配列番号36のアミノ酸配列を有さない、ヒトROR2に結合することが可能な抗体、又はヒトROR2に結合することが可能なその誘導体。
【請求項2】
重鎖可変ドメインが、配列番号24、及び配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項3】
重鎖可変ドメインが、配列番号24のアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項4】
重鎖可変ドメインが、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、及び配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項5】
重鎖可変ドメインが、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、及び配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項6】
重鎖可変ドメインが、配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、請求項4に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項7】
軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3配列、又は配列番号43のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR3配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項8】
軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3配列、又は配列番号43のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR3配列を含む、請求項7に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項9】
軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、請求項7に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項10】
重鎖可変ドメインが、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号45のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項11】
重鎖可変ドメインが、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号45のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を含む、請求項10に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項12】
重鎖可変ドメインが、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2配列を含む、請求項10に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項13】
軽鎖可変ドメインが、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号41のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項14】
軽鎖可変ドメインが、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号41のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を含む、請求項13に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項15】
軽鎖可変ドメインが、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1配列を含む、請求項13に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項16】
軽鎖可変ドメインが、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号42のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項17】
軽鎖可変ドメインが、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号42のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を含む、請求項16に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項18】
軽鎖可変ドメインが、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2配列を含む、請求項16に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項19】
重鎖可変ドメインが、配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号44のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項20】
重鎖可変ドメインが、配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号44のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を含む、請求項19に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項21】
重鎖可変ドメインが、配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1配列を含む、請求項19に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項22】
表面プラズモン共鳴測定により決定して、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインとを含む、対応する抗体又は誘導体より高度の親和性で、ヒトROR2に結合することが可能である、請求項1から3及び5から21のいずれか一項に記載の抗体又は誘導体。
【請求項23】
(i)重鎖可変ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、又は(ii)重鎖可変ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は(iii)重鎖可変ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項24】
ヒト化抗体又はその誘導体である、請求項1から23のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項25】
(ii)重鎖可変ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は(iii)重鎖可変ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項26】
二重特異性抗体又はその誘導体である、請求項1から25のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項27】
二重特異性抗体又はその誘導体がまた、ヒトCD3に結合することが可能でもある、請求項26に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項28】
抗体の誘導体である、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項29】
抗体断片である、請求項28に記載の誘導体。
【請求項30】
前記抗体断片が、Fab又は二重特異性scFv-Fcである、請求項29に記載の誘導体。
【請求項31】
CARである、請求項28に記載の誘導体。
【請求項32】
ユニバーサルCARのためのアダプターを含む、請求項28に記載の誘導体。
【請求項33】
請求項1から32のいずれか一項に記載の抗体又は誘導体をコードする核酸。
【請求項34】
mRNAである、請求項33に記載の核酸。
【請求項35】
DNAである、請求項33に記載の核酸。
【請求項36】
DNAが、ミニサークルDNA又はプラスミドDNAである、請求項35に記載の核酸。
【請求項37】
請求項31に記載のCARを含む組換え免疫細胞、及び/又は請求項31に記載のCARをコードする、請求項33から36のいずれか一項に記載の核酸を含む組換え免疫細胞。
【請求項38】
前記免疫細胞が、CD8+キラーT細胞、CD4+ヘルパーT細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、メモリーステムセルT細胞、インバリアントT細胞、NKT細胞、サイトカイン誘導キラーT細胞、g/d T細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、又は顆粒球である、請求項37に記載の組換え免疫細胞。
【請求項39】
前記免疫細胞が、T細胞である、請求項37又は38に記載の組換え免疫細胞。
【請求項40】
(i)請求項1から30又は32のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体;
(ii)請求項31に記載のCARをコードする、請求項33から36のいずれか一項に記載の核酸;
(iii)請求項37から39のいずれか一項に記載の組換え免疫細胞;又は
(iv)(i)と(ii)との組合せ、(i)と(iii)との組合せ、若しくは(i)~(iii)の組合せ
を含む医薬組成物。
【請求項41】
がんの処置における使用のための、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
がんが、ROR2を発現するがんである、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
がんが、血液がんである、請求項41又は42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
がんが、固形がんである、請求項41又は42に記載の医薬組成物。
【請求項45】
がんが、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膵臓がん、肉腫、神経膠芽腫、及び乳癌からなる群から選択される、請求項41から44のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
化合物が、
(i)請求項1から30又は32のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体;
(ii)請求項31に記載のCARをコードする、請求項33から36のいずれか一項に記載の核酸;
(iii)請求項37から39のいずれか一項に記載の組換え免疫細胞;又は
(iv)(i)と(ii)との組合せ、(i)と(iii)との組合せ、若しくは(i)~(iii)の組合せ
である、がんの診断のための化合物の使用。
【請求項47】
化合物が、
(i)請求項1から30又は32のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体;
(ii)請求項31に記載のCARをコードする、請求項33から36のいずれか一項に記載の核酸;
(iii)請求項37から39のいずれか一項に記載の組換え免疫細胞;又は
(iv)(i)と(ii)との組合せ、(i)と(iii)との組合せ、若しくは(i)~(iii)の組合せ
である、がんの、治療に対する感受性を決定するための化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ROR2抗原に特異的な、親和性成熟しかつ/又はヒト化されたターゲティングドメインを有する、二重特異性抗体及びキメラ抗原受容体(CAR)等の抗体及びその誘導体に関する。本発明は、特に、がん治療における、それらの使用のための、前記抗体及び誘導体をコードする核酸及びベクター、それらを含有する細胞及び医薬組成物を包含する。
【背景技術】
【0002】
CAR-T細胞
腫瘍関連抗原に特異的なT細胞受容体又はキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子改変T細胞の養子移入は、がん治療に効果的なモダリティーとして新興しつつある[1~5]。CARは、腫瘍細胞表面分子に特異的なモノクローナル抗体(mAb)の単鎖可変断片(scFV)を、膜貫通ドメイン、1つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達分子、及びCD3ζへと連結することにより構築されることが最も多い合成受容体である[6~8]。CAR改変T細胞は、腫瘍細胞の非MHC拘束認識を付与し、B細胞系統拘束CD19分子に特異的なCARで改変された自家T細胞による処置の後の、B細胞悪性腫瘍を伴う患者において、持続性の応答が報告されている。これらの患者における主な毒性は、腫瘍の溶解、サイトカインの放出、及び正常Bリンパ球の枯渇の遷延に関するものであった[1~3、5、9]。
【0003】
がん治療のための新規の標的としてのROR2:
モノクローナル抗体(mAb)は、がん免疫療法のために広く使用されており、約30の抗体ベースのがん治療が、FDA承認され、市販されている[10]。新たな適切ながん抗原の同定が稀であることは、mAb療法に適する適応及び患者を制約している。がん細胞上におけるそれらの過剰発現のために、受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、がん抗原としての、それらの全般的適性を実証している。
【0004】
未だにFDAで承認されたmAbによりターゲティングされていない、1つのRTKが、胚発生時に発現されるが、生後組織内では緊密に下方調節されるROR2(受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体2)である[11~13]。多数の固形悪性腫瘍及び血液悪性腫瘍が、ROR2を発現することが示されていることは、抗体ベースのがん治療のための標的としての、その適性を示唆する[14]。
【0005】
近年、本発明者らは、ROR2を、がん免疫療法のための候補物質として提起した。ROR2は、胚発生時に発現され、神経及び骨格の発生のために、重要な役割を果たす。そのリガンドであるWNT5Aと会合すると、WNTシグナル伝達経路に関与し、胚発生時において、遊走及び分化を調節すると共に、細胞の極性化を容易にすることが示されている[15~18]。
【0006】
マウス[19]及びヒト[20、21]では、出生後に、大幅に下方調節されるが、ROR2は、腎細胞腺癌及び乳がんのサブセット等の固形悪性腫瘍、並びに多発性骨髄腫[22~25]等の血液悪性腫瘍を含む、いくつかのがん[14、15]において、過剰発現される。抗体ベースのがん治療がFDAで承認されず、市販もされていない固形悪性腫瘍のうち、注目すべき適応は、ROR2の過剰発現が、骨肉腫、平滑筋肉腫、及び消化管間質腫瘍(GIST)において見出された、肉腫である[21、26]。多数の研究は、ROR2の発現が、迅速な疾患進行、腫瘍の浸潤、及び転移と相関することを示し、したがって、ROR2は、有望ながん標的及びがんバイオマーカーである[24、27、28]。
【0007】
近年、ROR2ターゲティングキャンペーンが、前臨床的検討から、臨床的検討へと移行した(NCT03504488、NCT03393936、NCT03960060)が、これは、ROR2の、抗体ベースのがん治療のための候補抗原としての適性及び魅力を強調している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kabat E.A.、Wu,T.T.、Perry,H.、Gottesman,K.、及びFoeller,C.(1991)「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、NIH刊行物第91-3242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、当技術分野では、このような治療において使用されうる、より効果的ながん治療及びより効果的な治療剤が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、とりわけ、公知の抗ROR2抗体XBR2-401の親和性成熟ヒト化結合性ドメイン、並びに二重特異性抗体(bi-mAb)、及びCAR等の抗体誘導体、及びCAR操作T細胞の構築のためのその使用に関する。例えば、XBR2-401抗体の記載については、全ての目的で、参照によりその全体において組み込まれる参考文献[29、30]を参照されたい。本発明におけるbi-mAb及びCARは、親である、ウサギXBR2-401結合性ドメインと比較して、高度の結合親和性及び/又は高度の「ヒト性」を有する。本発明に従い、これらのbi-mAb、CAR、及びCAR操作T細胞は、患者における臨床使用において、ウサギ(XBR2-401)結合性ドメインと対比して、高度の効能及び/又は低度の免疫原性を呈することが予測される。
【0012】
ヒトROR2のクリングルドメイン(ROR2-Kr)をターゲティングする、新たな親和性成熟ヒト化モノクローナル抗体(mAb)を、ROR2-Krと複合体化した、scFvフォーマットのXBR2-401の、未公開の共結晶構造に基づき、先行技術によるウサギmAbであるXBR2-401[29、30]から開発した。共結晶構造は、相互作用についての分子的描像をもたらし、パラトープ(抗体の抗原結合性部位)及びエピトープ(抗原の抗体結合性部位)の両方を、高解像度(1.2Å)で規定した。驚くべきことに、パラトープ/エピトープ界面についての分子的描像は、重鎖の第3の相補性決定領域(HCDR3)の、エピトープとの相互作用における空隙を明らかにした。本発明者らは、このギャップは、HCDR3配列の短い連なりにおいて、アミノ酸残基を付加し置き換えることにより充填されうると推論した。本発明者らは、このようにすれば、親和性を増大させ、XBR2-401の特異性を維持することを提起した。こうして、XBR2-401のHCDR3の短い連なりを、長さの変動、すなわち、0、1つ、及び2つのさらなるランダム化位置の組み入れを含む、アミノ酸残基のランダム化にかけた。その後、ファージディスプレイ技術により、ヒトROR2への結合について、ライブラリーを選択した。この合理的デザインと、in vitro進化戦略との組合せは、HCDR3配列が、アミノ酸配列の組成及び長さの両方に関して、mAbであるXBR2-401から逸脱する、新たなmAbのパネルをもたらした。表面プラズモン共鳴及び細胞マイクロアレイ技術による後続の解析は、それぞれ、特異性を失わずに、意図された親和性の増大がもたらされることを確認した。合理的デザインにより、XBR2-401-X3.12と称される、新たなmAbのうちの1つをヒト化して、XBR2-401-hX3.12.5及びXBR2-401-hX3.12.6をもたらした。後者の、ROR2-Krとの、再度の共結晶化は、空隙の閉止による、パラトープと、エピトープとの、意図された、より緊密な相互作用を明らかにした。まとめると、本発明において主張される、新たなmAbをもたらした、本発明者らの驚くべき知見は、先行技術としては利用可能でない、詳密な新データ(ROR2-Krと複合体化したXBR2-401についての、X線結晶構造解析による構造)の取得と解析に基づいたものであった。本発明の教示についての根拠、例えば、パラトープ-エピトープ間相互作用における、特定の空隙の充填は、ROR2-Krとの複合体におけるXBR2-401-hX3.12.6についての、X線結晶構造解析による構造により確認された。
【0013】
本発明に従い、親和性成熟は、当技術分野で公知である、任意の方法により実行されうる。非限定例として述べると、XBR2-401の、VHドメイン及びVLドメインの親和性成熟は、規定された相補性決定領域の、ランダム突然変異誘発により実施された。
【0014】
本発明に従い、ヒト化は、当技術分野で公知である、任意の方法により実行されうる。非限定例として述べると、モノクローナル抗体である、X3.12の、VHドメイン及びVLドメインのヒト化は、ELISA、フローサイトメトリー、及び表面プラズモン共鳴を介する、ROR2標的に対する、最良の結合剤の、CDRグラフティング及びスクリーニングにより実施された。
【0015】
本発明に従い、CAR T細胞等のCARを発現する、組換え哺乳動物細胞は、抗ROR2モノクローナル抗体である、X3.12、hX3.12.5、及びhX3.12.6の抗ROR2結合性ドメインが、親和性成熟し、かつ/又はヒト化されたCARを発現するように作製されうる。
【0016】
ROR2特異的CARの親和性成熟及びヒト化は、非ヒト化ROR2特異的CARに依存する、公知の臨床法と異なる。本発明者らは、驚くべきことに、親和性成熟ROR2特異的CARが、それらの非親和性成熟対応物より高度の機能性を有することを示した。
【0017】
更に、本発明者らは、驚くべきことに、有利な機能的特性を示す、ヒト化親和性成熟ROR2 bi-mAbが、本発明に従い作製されうることを示した。
【0018】
したがって、本発明は、以下の好ましい実施形態を提供する:
1.軽鎖可変ドメインと、重鎖可変ドメインとを含み、重鎖可変ドメインが、配列番号23、配列番号24、及び配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含み、前記CDR3配列が、配列番号36のアミノ酸配列を有さない、ヒトROR2に結合することが可能な抗体、又はヒトROR2に結合することが可能なその誘導体。
2.重鎖可変ドメインが、配列番号24、及び配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、項目1に記載の抗体又はその誘導体。
3.重鎖可変ドメインが、配列番号24のアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、項目1又は2に記載の抗体又はその誘導体。
4.重鎖可変ドメインが、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、及び配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、項目1又は2に記載の抗体又はその誘導体。
5.重鎖可変ドメインが、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、及び配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、項目1又は2に記載の抗体又はその誘導体。
6.重鎖可変ドメインが、配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、項目4に記載の抗体又はその誘導体。
7.軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3配列、又は配列番号43のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR3配列を含む、項目1から6のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
8.軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3配列、又は配列番号43のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR3配列を含む、項目7に記載の抗体又はその誘導体。
9.軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、項目7に記載の抗体又はその誘導体。
10.重鎖可変ドメインが、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号45のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を含む、項目1から9のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
11.重鎖可変ドメインが、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号45のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を含む、項目10に記載の抗体又はその誘導体。
12.重鎖可変ドメインが、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2配列を含む、項目10に記載の抗体又はその誘導体。
13.軽鎖可変ドメインが、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号41のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を含む、項目1から12のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
14.軽鎖可変ドメインが、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号41のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を含む、項目13に記載の抗体又はその誘導体。
15.軽鎖可変ドメインが、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1配列を含む、項目13に記載の抗体又はその誘導体。
16.軽鎖可変ドメインが、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号42のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を含む、項目1から15のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
17.軽鎖可変ドメインが、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号42のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を含む、項目16に記載の抗体又はその誘導体。
18.軽鎖可変ドメインが、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2配列を含む、項目16に記載の抗体又はその誘導体。
19.重鎖可変ドメインが、配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号44のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を含む、項目1から18のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
20.重鎖可変ドメインが、配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号44のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を含む、項目19に記載の抗体又はその誘導体。
21.重鎖可変ドメインが、配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1配列を含む、項目19に記載の抗体又はその誘導体。
22.表面プラズモン共鳴測定により決定して、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインとを含む、対応する抗体又は誘導体より高度の親和性で、ヒトROR2に結合することが可能である、項目1から3及び5から21のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
23.(i)重鎖可変ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、又は(ii)重鎖可変ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は(iii)重鎖可変ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、項目1から22のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
24.ヒト化抗体又はその誘導体である、項目1から23のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
25.(ii)重鎖可変ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は(iii)重鎖可変ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、項目1から24のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
26.二重特異性抗体又はその誘導体である、項目1から25のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
27.二重特異性抗体又はその誘導体がまた、ヒトCD3に結合することが可能でもある、項目26に記載の抗体又はその誘導体。
28.抗体の誘導体である、項目1から27のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
29.抗体断片である、項目28に記載の誘導体。
30.前記抗体断片が、Fab又は二重特異性scFv-Fcである、項目29に記載の誘導体。
31.CARである、項目28に記載の誘導体。
32.ユニバーサルCARのためのアダプターを含む、項目28に記載の誘導体。
33.項目1から32のいずれか一項に記載の抗体又は誘導体をコードする核酸。
34.mRNAである、項目33に記載の核酸。
35.DNAである、項目33に記載の核酸。
36.DNAが、ミニサークルDNA又はプラスミドDNAである、項目35に記載の核酸。
37.項目31に記載のCARを含む組換え免疫細胞、及び/又は項目31に記載のCARをコードする、項目33から36のいずれか一項に記載の核酸を含む組換え免疫細胞。
38.CD8+キラーT細胞、CD4+ヘルパーT細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、メモリーステムセルT細胞、インバリアントT細胞、NKT細胞、サイトカイン誘導キラーT細胞、g/d T細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、又は顆粒球である、項目37に記載の組換え免疫細胞。
39.T細胞である、項目37又は38に記載の組換え免疫細胞。
40.(i)項目1から30又は32のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体;
(ii)項目31に記載のCARをコードする、項目33から36のいずれか一項に記載の核酸;
(iii)項目37から39のいずれか一項に記載の組換え免疫細胞;又は
(iv)(i)と(ii)との組合せ、(i)と(iii)との組合せ、若しくは(i)~(iii)の組合せ
を含む医薬組成物。
41.がんの処置における使用のための、項目40に記載の医薬組成物。
42.がんが、ROR2を発現するがんである、項目41に記載の使用のための医薬組成物。
43.がんが、血液がんである、項目41又は42に記載の使用のための医薬組成物。
44.がんが、固形がんである、項目41又は42に記載の使用のための医薬組成物。
45.がんが、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膵臓がん、肉腫、神経膠芽腫、及び乳癌からなる群から選択される、項目41から44のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
46.化合物が、
(i)項目1から30又は32のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体;
(ii)項目31に記載のCARをコードする、項目33から36のいずれか一項に記載の核酸;
(iii)項目37から39のいずれか一項に記載の組換え免疫細胞;又は
(iv)(i)と(ii)との組合せ、(i)と(iii)との組合せ、若しくは(i)~(iii)の組合せ
である、がんの診断のための化合物の使用。
47.化合物が、
(i)項目1から30又は32のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体;
(ii)項目31に記載のCARをコードする、項目33から36のいずれか一項に記載の核酸;
(iii)項目37から39のいずれか一項に記載の組換え免疫細胞;又は
(iv)(i)と(ii)との組合せ、(i)と(iii)との組合せ、若しくは(i)~(iii)の組合せ
である、がんの、治療に対する感受性を決定するための化合物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】親XBR2-401のVH配列及びVL配列のアミノ酸配列、並びに完全401×V9-bi-mAbのコード配列を示す図である。 親である、XBR2-401 VH及びXBR2-401 VLのアミノ酸配列である。
【
図1B】親XBR2-401のVH配列及びVL配列のアミノ酸配列、並びに完全401×V9-bi-mAbのコード配列を示す図である。 N末端からC末端の順序で表された、401×V9 bi-mAbの完全アミノ酸配列である。
【
図1C】親XBR2-401のVH配列及びVL配列のアミノ酸配列、並びに完全401×V9-bi-mAbのコード配列を示す図である。 N末端からC末端の順序で表された、401 CARの完全アミノ酸配列である。アステリスクは、アミノ酸配列の末端を表示することに注意されたい。
【
図2A】親和性成熟X3.12のVH配列及びVL配列のアミノ酸配列、及び完全X3.12CARのコード配列を示す図である。 親和性成熟X3.12のVHアミノ酸配列及びVLアミノ酸配列である。
【
図2B】親和性成熟X3.12のVH配列及びVL配列のアミノ酸配列、及び完全X3.12CARのコード配列を示す図である。 N末端からC末端の順序で表された、X3.12×V9 bi-mAbの完全アミノ酸配列である。アステリスクは、アミノ酸配列の末端を表示することに注意されたい。
【
図2C】親和性成熟X3.12のVH配列及びVL配列のアミノ酸配列、及び完全X3.12CARのコード配列を示す図である。 N末端からC末端の順序で表された、X3.12 CARの完全アミノ酸配列である。アステリスクは、アミノ酸配列の末端を表示することに注意されたい。
【
図3A】ヒト化hX3.12.5のVH配列及びVL配列、完全hX3.12.5 bi-mAb配列のアミノ酸配列、並びに完全hX3.12.5 CARのコード配列を示す図である。 親和性成熟ヒト化hX3.12.5のVHアミノ酸配列及びVLアミノ酸配列である。
【
図3B】ヒト化hX3.12.5のVH配列及びVL配列、完全hX3.12.5 bi-mAb配列のアミノ酸配列、並びに完全hX3.12.5 CARのコード配列を示す図である。 N末端からC末端の順序で表された、hX3.12.5×V9 bi-mAbの完全アミノ酸配列である。
【
図3C】ヒト化hX3.12.5のVH配列及びVL配列、完全hX3.12.5 bi-mAb配列のアミノ酸配列、並びに完全hX3.12.5 CARのコード配列を示す図である。 N末端からC末端の順序で表された、hX3.12.5 CARの完全アミノ酸配列である。アステリスクは、アミノ酸配列の末端を表示することに注意されたい。
【
図4A】ヒト化hX3.12.6のVH配列及びVL配列、完全hX3.12.6 bi-mAb配列のアミノ酸配列、並びに完全hX3.12.6 CARのコード配列を示す図である。 親和性成熟ヒト化hX3.12.6のVHアミノ酸配列及びVLアミノ酸配列である。
【
図4B】ヒト化hX3.12.6のVH配列及びVL配列、完全hX3.12.6 bi-mAb配列のアミノ酸配列、並びに完全hX3.12.6 CARのコード配列を示す図である。 N末端からC末端の順序で表された、hX3.12.6×V9 bi-mAbの完全アミノ酸配列である。
【
図4C】ヒト化hX3.12.6のVH配列及びVL配列、完全hX3.12.6 bi-mAb配列のアミノ酸配列、並びに完全hX3.12.6 CARのコード配列を示す図である。 N末端からC末端の順序で表された、hX3.12.6 CARの完全アミノ酸配列である。アステリスクは、アミノ酸配列の末端を表示することに注意されたい。
【
図5】hROR2-Krと複合体化した、親mAbである401、及び親和性成熟ヒト化mAbであるhX3.12.6の結晶構造を示す図である。(A) (上)hROR2-Kr(塗りつぶし)と複合体化したscFvである401(VHリボン及びVLリボン)の結晶構造は、1.2Åの解像度における、X線結晶構造解析(PDB ID:6OSH)により決定した。右側の複合体は、LCDR3及びHCDR3の、エピトープとの相互作用を可視化するため、90°回転させられている。(下)401:hROR2-Kr複合体の拡大画像は、HCDR3の残基である、Trp96が、hROR2-Krの骨格残基である、His348と、3.4Åの距離で、弱く水素結合すること(点線)を明らかにする。(B) (上)hROR2-Krと複合体化した、親和性成熟したヒト化scFvであるhX3.12.6(VH(黒)及びVL(ライトグレー))の、1.4Åの解像度における結晶構造(PDB ID:6OSV)である。(下)hX3.12.6:hROR2-Kr複合体の拡大画像は、HCDR3の残基である、Trp98の、hROR2-Krの骨格残基である、His348及びHis349のそれぞれとの、水素結合(左点線)(2.8Å)及びπ-π/π-カチオン結合(右点線)(4.2Å)の増大を明らかにする。重鎖可変ドメイン(V
H)が、暗色で示されるのに対し、軽鎖可変ドメイン(V
L)は、明色で示される。
【
図6】401:hROR2-Krと、hX3.12.6:hROR2-Krとの複合体、及び非結合hROR2-Krについての結晶構造パラメータの表を示す図である。
【
図7】結晶構造を使用して決定される、hROR2-Krと、401又はhX3.12.6との残基間相互作用についての表を示す図である。
【
図8】401:hROR2-Kr、hX3.12.6:hROR2-Kr、及びR11:hROR1-Krの、結晶構造、エピトープ、及びクリングルドメインの比較を示す図である。(A) エピトープが、抗ROR2 mAbと、抗ROR1 mAbとの間で比較されうる、視覚的描示である。暗色及び明色は、それぞれ、V
Hドメイン及びV
Lドメインを表示する。ROR2クリングルドメイン及びROR1クリングルドメインを、それぞれ、ダークオレンジ及びライトオレンジで示す。401:hROR2-Kr複合体と、hX3.12.6:hROR2-Kr複合体との間のCα位置全体のrmsdは、0.474Åであることが見出された。(B) 左から右へと、ROR2の共結晶化クリングルドメインと、ROR1の共結晶化クリングルドメインとの比較:結晶化401:hROR2-Kr複合体に基づくhROR2-Krの結晶構造である。401のエピトープを、暗色グレーでマーキングする。結晶化R11:hROR1-Kr複合体に基づく、hROR1-Krの結晶構造である。R11のエピトープを、ライトグレーでマーキングする。非結合hROR2-Kr(ライトグレー)と、401:hROR2-Kr複合体に由来するhROR2-Kr(ダークグレー)との重合せである。Cα位置のrmsdは、0.383Åであった。酢酸イオンは、塩架橋/水素結合間の混合相互作用を介して、非結合hROR2-KrのArg385と結合している。(C) マウス、ヒト、及びサルの、ROR2クリングルドメイン及びROR1クリングルドメインのアミノ酸配列のアライメントである(hROR2について、uniprot.orgによる番号付けである)。401及びR11のエピトープを含む残基をマーキングする。
図7に含有されるTable Iに列挙されていない、hROR2-Krエピトープの残基は、ファンデルワールス相互作用を介して、401及びhX3.12.6と相互作用する。
【
図9】集中型ランダム化HCDR3ファージライブラリーの構築を描示する表を示す図である。
【
図10】上位12位までのHCDR3親和性成熟抗ROR2クローンの反応速度データについての表を示す図である。
【
図11】親和性成熟ヒト化バリアントのV
L及びV
Hのアミノ酸配列のアライメントを示す図である。4つのフレームワーク領域(FWR)、及び3つのCDRの位置を指し示す。番号は、一文字コードで示された、可変ドメイン残基についての、Kabat番号付けを指す。下線を付された残基は、元のウサギ残基へと復帰変異させた。ドットは、V
L1又はV
H1に照らしたアライメントにおける、同一な残基を表す。CDR残基を、太字で示す。(上)V
L1 FWRは、ヒト生殖細胞系列であるIGKV1-NL1
*01に由来し;V
L1 CDRは、X3.12からグラフトされる。V
L2のアミノ酸配列は、V
L1と同じであるが、ヒト生殖細胞系列から、X3.12の元のウサギ残基への、7つの復帰変異を伴う。(下)V
H1 FWR及びV
H2 FWRは、それぞれ、ヒト生殖細胞系列である、IGHV3-66
*03及びIGHV3-48
*03に由来し、それらのCDRは、X3.12からグラフトされる。V
H3及びV
H4は、FWR残基を、ヒト生殖細胞系列から、X3.12の元のウサギ残基へと復帰変異させることにより、V
H1及びV
H2から変動する。
【
図12】ヒト化抗ROR2 mAbについての反応速度データの表を示す図である。
【
図13】フローサイトメトリーによる、親和性成熟ヒト化mAbについての解析を示す図である。(A) ヒトROR2(アロタイプThr245)を安定的にトランスフェクトされたHEK 293F細胞を、表示の親Fab、親和性成熟Fab、及びヒト化Fabに続き、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトF(ab')2 pAbにより染色した。モックトランスフェクトHEK 293F細胞を、陰性対照として用いた。Fabはまた、T47D(ROR2+、ROR1-)細胞系、786-O(ROR2+、ROR1+)細胞系、及びMDA-MB-231(ROR2-、ROR1+)細胞系に対しても調べた。ヒト化抗ヒトCD3 Fab v9、及び二次抗体単独(「バックグラウンド」)を、さらなる陰性対照として用いた。(B) Fabから、scFv-Fcへのその転換の後、hX3.12.6に続き、Alexa Fluor 647コンジュゲートロバ抗ヒトF(ab')2 pAbを使用して、786-O細胞系、T47D細胞系、及びMDA-MB-231細胞系を染色した。二次抗体単独を、陰性対照として用いた。(C) hX3.12.6 scFv-Fcに続き、ヒトROR2(アロタイプThr245)又はマウスROR2を安定的にトランスフェクトされたHEK 293F細胞を染色するために、Alexa Fluor 647コンジュゲートロバ抗ヒトF(ab')2 pAbを使用するフローサイトメトリーである。モックトランスフェクトHEK 293F細胞、及び二次抗体単独(「バックグラウンド」)を、陰性対照として用いた。全てのイベントを、最頻値に照らして正規化した。
【
図14】SPRによる、親和性成熟ヒト化mAbについての解析を示す図である。(A) ファージディスプレイにより集中型突然変異誘発ライブラリーから選択された、上位12位までのキメラウサギ/ヒト抗ヒトROR2 FabについてのBiacore X100センサーグラムが示される。(B) ヒト化抗ヒトROR2 FabについてのBiacore X100センサーグラムが示される。マウス抗ヒトFcγ mAbを固定化したCM5チップを使用して、Fc-hROR2を捕捉した。Fabを、5つの異なる濃度(キメラFabについて、200、100、50、25、及び12.5nMとし、ヒト化Fabについて、100nMとする)で注射した。1:1の結合についての反応速度パラメータ(k
on及びk
off)及び熱力学パラメータ(K
D=k
off/k
on)を計算し、それぞれ、
図10及び
図12に示される、Table III及びTable IVに集成した。
【
図15】ヒト化Fabの融点及び融解曲線を示す図である。(A) 表示のFabの融点である。誤差バーは、三連の平均の標準偏差(平均値±SD)を表す。(B) LightCycler 480タンパク質融解プロトコールを使用して、融点を決定した。各Fabについて、三連の曲線を示す。Fabの融解は、99℃まで測定した。
【
図16】細胞マイクロアレイ技術による、親和性成熟ヒト化mAbであるhX3.12.6の特異性についての解析を示す図である。 Retrogenix社製のカスタムの細胞マイクロアレイ技術を使用して、scFv-FcフォーマットのmAb hX3.12.6を、ヒトHEK 293細胞の表面において発現された、5647例のヒト細胞膜タンパク質に対してスクリーニングした。(A) Retrogenix社製のカスタムの細胞マイクロアレイにおける、約300例のヒト細胞膜タンパク質についての、ZsGreen1のスポッティングパターンの画像である。マイクロアレイにはまた、非トランスフェクトHEK293Fも、対照として組み入れた。(B) ヒト化scFv-Fc xh3.12.6を、20μg/mLでスクリーニングし、AlexaFluor 647コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG Fcγ pAbを使用して視覚化した。FcγRIIαは、Fcの結合に起因する非特異的ヒットであると予測される。(C) リツキシマブバイオシミラー(1μg/mL)を、対照としてスクリーニングし、二連で配置された、5647例のヒト抗原に対する、20μg/mLのhX3.12.6 scFv-Fcが、ROR2を、唯一の特異的ヒットとして明らかにした、事後スクリーンについての概要である。
【
図17】ROR2×CD3 biAbの活性を示す図である。(A) 対照である、ROR1×CD3及びCD19×CD3 biAb(全て、ヘテロ二量体scFv-Fcフォーマットである)を伴う、表示のROR2×CD3 biAbを、Alexa Fluor 647コンジュゲートロバ抗ヒトF(ab')2 pAbと共に使用して、ROR2及びCD3への特異的結合を確認するように、786-O細胞、MDA-MB-231細胞、及びJurkat-T Lucia細胞を染色した。二次抗体単独(「バックグラウンド」)を、陰性対照として用いた。(B) ヒト化され、親和性成熟したmAb、及び親mAbに基づく、ROR2×CD3 biAbのパネルを、ROR1×CD3 biAb(全て、ヘテロ二量体scFv-Fcフォーマットである)、及びT細胞エンゲージングアームを伴わない単一特異性陰性対照と比較した。表示範囲のbiAb濃度、及びエフェクター:標的細胞比を10:1として、ex vivoにおいて拡大されたT細胞を伴うインキュベーションの16時間後における、細胞系列786-O(ROR2+、ROR1+)及びMDA-MB-231(ROR2+、ROR1-)の特異的溶解がプロットされる。(C) T細胞の活性化は、フローサイトメトリーにより決定される、CD69+ T細胞の百分率、及びELISAにより決定される、サイトカインIFN-γの放出として測定した。平均値±SDとして示される、独立の三連に基づき、一元ANOVAを使用して、ROR2×CD3(又はROR1×CD3)biAbと、単一特異性scFv-Fcである陰性対照との有意差について解析した(
****、p<0.0001)。
【
図18】親和性成熟ヒト化Fabの精製、及びROR2×CD3 biAbの精製を示す図である。(A) KappaSelectカラム上及びIMACカラム上のタンデム精製の後、表示のFabを、SDS-PAGE及びクーマシーブルー染色により解析した。非還元条件下(約50kDa)及び還元条件下(約25kDa)で、予測されるバンドが見られた。(B) ヘテロ二量体scFv-Fcフォーマットである、プロテインA精製biAb(及び単一特異性scFv-Fcである陰性対照)を、予測された、約100kDaにおける非還元バンド、及び約50kDaにおける還元バンドを示す、SDS-PAGE及びクーマシーブルー染色により確認した。(C) プロテインA精製biAbについての、SEC溶出プロファイルである。約13mLにおける主要ピークが、単分散性biAbであるのに対し、約11mLにおける副次ピークは、高分子量凝集物を含有する。
図9に示された活性アッセイは、タンデムプロテインA及びSECによる、biAbの精製に基づく。
【
図19】上から下へと、以下を示す図である:IgG1フォーマットは、天然では、定常領域(グレー)と、抗原に結合する、2つのN末端可変領域(V
H及びV
L)とを含有する二量体として見出される。Fabは、V
Hドメイン、C
H1ドメイン、V
Lドメイン、及びC
Lドメインだけからなる。scFv-Fcフォーマットは、Fcドメインを含有するが、C
Lドメイン及びC
H1ドメインを伴わない。V
Hと、V
Lとは、ポリペプチドリンカーを介して融合される。scFv-Fc上では、いずれの可変領域も同一である。二重特異性scFv-Fcフォーマットは、2つの異なる鎖の間で、二量体が形成されることを可能とし、2つの異なる可変領域の組合せを可能とするように、KIH(knobs-into-holes)変異を伴うFcを含有する。単一特異性scFv-Fcフォーマットは、二重特異性scFv-Fcフォーマットに対する対照として用いられる。
【
図20】フローサイトメトリーにより、がん細胞系のROR2発現を示す図である。 hX3.12.5×h38C2 DVD抗体を、AF647と、共有結合的にコンジュゲートさせ、T-47D(乳がん)、786-O(腎細胞癌)、U266(多発性骨髄腫)、及びMDA-MB231(乳がん)を含む、様々ながん細胞系におけるROR2の発現パターンについて解析するのに使用した。
【
図21】EGFRt形質導入マーカーを使用する、CAR-T細胞のエンリッチメント及び検出を示す図である。 X3.12 CARをコードするレンチウイルスベクターを、ヒトCD4+ T細胞又はヒトCD8+ T細胞へと形質導入し、その後、形質導入マーカーである、切断型上皮増殖因子受容体(EGFRt)を使用する磁気活性化細胞分取(MACS)により、CARを発現する細胞についてエンリッチした。EGFRtのコード配列(CDS)を、2Aリボソームスキッピング配列により、CARのCDSへと連結し、EGFRtの発現を、CAR発現についてのサロゲートマーカーとして使用することができる。(A) MACSによるEGFRtのエンリッチメントの後における、EGFRt陽性CD4+ T細胞の頻度を裏付けるフローサイトメトリープロットである。(B) MACSによるEGFRtのエンリッチメントの後における、EGFRt陽性CD8+ T細胞の頻度を裏付けるフローサイトメトリープロットである。
【
図22】X3.12 CARを発現するCD8+ T細胞の細胞溶解活性を示す図である。 ROR2特異的CARである、親和性成熟X3.12を発現する、初代ヒトCD8+ T細胞の、ROR2陽性標的細胞に対する細胞溶解活性である。MDA-MB-231は、陰性対照として使用された、ROR2陰性ヒト乳がん細胞系である。 T-47D(乳がん)、786-O(腎細胞癌)、及びU266(多発性骨髄腫)は、ROR2を内因的に発現する、確立されたがん細胞系である。ホタル(ホタル(P.pyralis))ルシフェラーゼを安定的に発現するように、全ての標的細胞系を操作した。標的細胞の特異的溶解は、150μg/mlの最終濃度までの、ルシフェリンの添加後における、発光シグナルの強度に基づき計算した。
【
図23】X3.12ベースのROR2特異的CARを発現するT細胞のサイトカイン分泌を示す図である。 X3.12 CARを発現するCD4+ CAR-T細胞、又はCD8+ CAR-T細胞を、ROR2陽性標的細胞と共に、4:1のE:T比で共培養した。エフェクターサイトカインである、IL-2及びIFN-γの濃度は、共培養の24時間後における、細胞培養物上清中のELISAにより測定した。ROR2陽性標的細胞(T-47D、786-O、及びU266)並びにMDA-MB-231に対する、比較サイトカイン分泌を、n=3の独立ドナーに由来するCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞について示す。
【
図24】X3.12 CARを発現するT細胞の増殖を示す図である。 4:1のE:T比における、照射ROR2陽性標的細胞による刺激後における、CD4+ ROR2特異的CAR-T細胞の増殖である。外因性サイトカインは、培養培地へと添加せず、刺激の72時間後において、CFSE色素希釈液により、T細胞増殖を評価した。 ROR2陽性(T-47D、786-O、及びU266)標的細胞、又はROR2陰性標的細胞に対する、X3.12 ROR2特異的CAR-T細胞についての、CFSEフローサイトメトリーヒストグラムである。グレーの塗りつぶし曲線は、対照T細胞(非形質導入T細胞)を表す。
【
図25A】EGFRt形質導入マーカーを使用する、CARノックインT細胞のエンリッチメント及び検出を示す図である。 ヒトCD4+ T細胞又はヒトCD8+ T細胞に、hTRAC特異的sgRNA/spCas9リボヌクレオタンパク質(RNP)、及びXBR2-401又はX3.12 CARをコードするカセットを含有する相同性依存性修復鋳型(HDRT)を共電気穿孔した。形質導入マーカーである、切断型上皮増殖因子受容体(EGFRt)を使用する磁気活性化細胞分取(MACS)により、CARノックインT細胞をエンリッチした。EGFRtのコード配列(CDS)を、2Aリボソームスキッピング配列により、CARのCDSへと連結し、EGFRtの発現を、CAR発現についてのサロゲートマーカーとして使用することができる。T細胞受容体及びCD3は、細胞表面へと共シャトリングされる。こうして、CD3陰性は、TRAC-KO T細胞及びノックインT細胞を検出するのに使用されうる。 MACSによるEGFRtのエンリッチメントの後における、EGFRt陽性CD4+ T細胞の頻度を裏付けるフローサイトメトリープロットである。CARノックインT細胞のCD3陰性は、隣接するヒストグラムにおいて表される。
【
図25B】EGFRt形質導入マーカーを使用する、CARノックインT細胞のエンリッチメント及び検出を示す図である。 ヒトCD4+ T細胞又はヒトCD8+ T細胞に、hTRAC特異的sgRNA/spCas9リボヌクレオタンパク質(RNP)、及びXBR2-401又はX3.12 CARをコードするカセットを含有する相同性依存性修復鋳型(HDRT)を共電気穿孔した。形質導入マーカーである、切断型表皮増殖因子受容体(EGFRt)を使用する磁気活性化細胞分取(MACS)により、CARノックインT細胞をエンリッチした。EGFRtのコード配列(CDS)を、2Aリボソームスキッピング配列により、CARのCDSへと連結し、EGFRtの発現を、CAR発現についてのサロゲートマーカーとして使用することができる。T細胞受容体及びCD3は、細胞表面へと共シャトリングされる。こうして、CD3陰性は、TRAC-KO T細胞及びノックインT細胞を検出するのに使用されうる。 MACSによるEGFRtのエンリッチメントの後における、EGFRt陽性CD8+ T細胞の頻度を裏付けるフローサイトメトリープロットである。CARノックインT細胞のCD3陰性は、隣接するヒストグラムにおいて表される。
【
図26A】ROR2 CARノックインCD8+ T細胞の細胞溶解活性を示す図である。 T細胞受容体遺伝子座プロモーターの制御下で、ROR2陽性標的細胞に対する、XBR2-401 CAR又は親和性成熟X3.12 CARを発現する、初代ヒトCD8+ T細胞の細胞溶解活性である。MDA-MB-231は、陰性対照として使用された、ROR2陰性ヒト乳がん細胞系である。T-47D(乳がん)、786-O(腎細胞癌)、及びU266(多発性骨髄腫)は、ROR2を内因的に発現する、確立されたがん細胞系である。ホタルルシフェラーゼを安定的に発現するように、全ての標的細胞系を操作した。標的細胞の特異的溶解は、150μg/mlの最終濃度までの、ルシフェリンの添加後における、発光シグナルの強度に基づき計算した(データは、独立ドナーのn=3を表す)。
【
図26B】ROR2 CARノックインCD8+ T細胞の細胞溶解活性を示す図である。 様々なROR2陽性標的細胞(T-47D、786-O、U266)に対する、ROR2特異的CAR-T細胞の、抗原依存性細胞溶解活性についての組合せデータである。ROR2陰性MDA-MB231細胞を、陰性対照として使用した(E:T比=1:1、t=24時間後、n=3である)。
【
図26C】ROR2 CARノックインCD8+ T細胞の細胞溶解活性を示す図である。 xCELLigenceプラットフォームを使用する、内因性T細胞受容体プロモーターの制御下で、ROR2陽性786-O細胞に対する、XBR2-401 ROR2特異的CAR又はX3.12 ROR2特異的CARを発現する、初代ヒトCD8+ T細胞の細胞溶解活性である。生存接着性腫瘍細胞の数量と直接相関する、正規化細胞指数を、時間経過にわたり測定し、プロットした(データは、独立ドナーのn=2を表す)。
【
図27】XBR2-401ベースのROR2特異的CARノックインT細胞又はX3.12ベースのROR2特異的CARノックインT細胞のサイトカイン分泌を示す図である。 XBR2-401 CAR又はX3.12 CARを発現する、CD4+ CAR-T細胞、又はCD8+ CAR-T細胞を、ROR2陽性標的細胞と共に、4:1のE:T比で共培養した。エフェクターサイトカインである、IL-2及びIFN-γの濃度は、共培養の24時間後における、細胞培養物上清中のELISAにより測定した。ROR2陽性標的細胞(T-47D、786-O、及びU266)並びにMDA-MB-231に対する、比較サイトカイン分泌を、n=3の独立ドナーに由来するCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞について示す。
【
図28】XBR2-401ベースのROR2特異的CARノックインT細胞又はX3.12ベースのROR2特異的CARノックインT細胞の増殖を示す図である。 4:1のE:T比における、照射ROR2陽性標的細胞による刺激の後における、CD8+ ROR2特異的CAR-T細胞の増殖である。外因性サイトカインは、培養培地へと添加せず、刺激の72時間後において、CFSE色素希釈液により、T細胞増殖を評価した。ROR2陽性(T-47D、786-O、及びU266)標的細胞、又はROR2陰性標的細胞に対する、XBR2-401(点線)又はX3.12(実線)による、ROR2特異的CAR-T細胞についての、CFSEフローサイトメトリーヒストグラムである。グレーの塗りつぶし曲線は、XBR2-401 CARについての培地対照を表す。
【
図29A】ROR2 CAR-T細胞の作出、検出、及びエンリッチメントを示す図である。 X3.12 CAR、hX3.12.5 CAR、又はhX3.12.6 CARをコードするレンチウイルスベクターを、ヒトCD4+ T細胞又はヒトCD8+ T細胞へと形質導入し、その後、形質導入マーカーである、切断型表皮増殖因子受容体(EGFRt)を使用する磁気活性化細胞分取(MACS)により、CARを発現する細胞についてエンリッチした。EGFRtのコード配列(CDS)を、2Aリボソームスキッピング配列により、CARのCDSへと連結し、EGFRtの発現を、CAR発現についてのサロゲートマーカーとして使用することができる。 MACSによるEGFRtのエンリッチメントの後における、EGFRt陽性CD4+ T細胞の頻度を裏付けるフローサイトメトリープロットである。
【
図29B】ROR2 CAR-T細胞の作出、検出、及びエンリッチメントを示す図である。 X3.12 CAR、hX3.12.5 CAR、又はhX3.12.6 CARをコードするレンチウイルスベクターを、ヒトCD4+ T細胞又はヒトCD8+ T細胞へと形質導入し、その後、形質導入マーカーである、切断型表皮増殖因子受容体(EGFRt)を使用する磁気活性化細胞分取(MACS)により、CARを発現する細胞についてエンリッチした。EGFRtのコード配列(CDS)を、2Aリボソームスキッピング配列により、CARのCDSへと連結し、EGFRtの発現を、CAR発現についてのサロゲートマーカーとして使用することができる。 MACSによるEGFRtのエンリッチメントの後における、EGFRt陽性CD8+ T細胞の頻度を裏付けるフローサイトメトリープロットである。
【
図30A】ヒト化ROR2 CAR-T細胞の細胞溶解活性を示す図である。 ROR2陽性標的細胞に対する、X3.12ベースのCAR、hX3.12.5ベースのCAR、又はhX3.12.6ベースのCARを発現する、初代ヒトCD8+ T細胞の細胞溶解活性である。OPM-2は、陰性対照として使用された、ROR2陰性ヒト多発性骨髄腫細胞系である。T-47D(乳がん)、786-O(腎細胞癌)、及びU266(多発性骨髄腫)は、ROR2を内因的に発現する、確立されたがん細胞系である。ホタルルシフェラーゼを安定的に発現するように、全ての標的細胞系を操作した。標的細胞の特異的溶解は、150μg/mlの最終濃度までの、ルシフェリンの添加後における、発光シグナルの強度に基づき計算した(データは、独立ドナーのn=3を表す)。
【
図30B】ヒト化ROR2 CAR-T細胞の細胞溶解活性を示す図である。 様々なROR2陽性標的細胞(T-47D、786-O、U266)に対する、X3.12ベースのCAR-T細胞、hX3.12.5ベースのCAR-T細胞、又はhX3.12.6ベースのCAR-T細胞の、抗原依存性細胞溶解活性についての組合せデータである。ROR2陰性OPM-2細胞を、陰性対照として使用した(E:T比=5:1、t=6時間後、n=3である)。統計学的解析は、反復測定値に対するANOVA、及びダネット多重比較検定による、対応のある比較(n.s.:非有意、
*=p<0.05、
**=p<0.01、
***、p<0.001である)に基づく。
【
図31】OPM-2細胞系における、ROR2発現についてのフローサイトメトリー解析を示す図である。 hX3.12.6×h38C2 DVD抗体を、AF647と、共有結合的にコンジュゲートさせ、様々なOPM-2細胞(多発性骨髄腫細胞)におけるROR2の発現パターンについて解析するのに使用した。
【
図32】X3.12ベースのROR2特異的CAR T細胞、hX3.12.5ベースのROR2特異的CAR T細胞、及びhX3.12.6ベースのROR2特異的CAR T細胞のサイトカイン分泌を示す図である。 X3.12ベースのCAR、hX3.12.5ベースのCAR、又はhX3.12.6ベースのCARを発現する、CD4+ CAR-T細胞、又はCD8+ CAR-T細胞を、ROR2陽性標的細胞と共に、4:1のE:T比で共培養した。エフェクターサイトカインであるIFN-γの濃度は、共培養の24時間後における、細胞培養物上清中のELISAにより測定した。ROR2陽性標的細胞(T-47D、786-O、及びU266)並びにMDA-MB-231に対する、比較サイトカイン分泌を、n=3の独立ドナーに由来するCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞について示す。統計学的解析は、反復測定値に対するANOVA、及びダネット多重比較検定による、対応のある比較(n.s.:非有意、
*=p<0.05、
**=p<0.01、
***、p<0.001である)に基づく。
【
図33】ROR2 CAR-T細胞の増殖を示す図である。 4:1のE:T比における、照射ROR2陽性標的細胞又は照射ROR2陰性標的細胞による刺激の後における、CD4+ X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞、CD4+ hX3.12.5ベースのROR2特異的CAR-T細胞、又はCD4+ hX3.12.6ベースのROR2特異的CAR-T細胞、及びCD8+ X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞、CD8+ hX3.12.5ベースのROR2特異的CAR-T細胞、又はCD8+ hX3.12.6ベースのROR2特異的CAR-T細胞の抗原依存性増殖である。外因性サイトカインは、培養培地へと添加せず、刺激の72時間後において、CFSE色素希釈液により、T細胞増殖を評価した。少なくとも1回の細胞分裂を経た細胞画分は、抗原依存性増殖を定量するための尺度として計算した(独立ドナーのn=3)。統計学的解析は、反復測定値に対するANOVA、及びダネット多重比較検定による、対応のある比較(n.s.:非有意、
*=p<0.05、
**=p<0.01、
***、p<0.001である)に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で別段に規定されない限り、本明細書で使用される、全ての技術用語及び学術用語は、遺伝子治療、免疫学、生化学、遺伝学、及び分子生物学の分野における当業者により、一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0021】
本明細書で記載される方法及び材料と同様又は同等である、全ての方法及び材料を、本発明の実施又は試験でも使用しうるが、本明細書では、適切な方法及び材料について記載される。本明細書で引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、全ての目的で、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。本明細書で言及される参考文献は、記載末尾における参考文献リスト内の、それぞれの参考文献を指す、角カッコ内の参考文献番号により(例えば、「[31]」又は「参考文献[31]」として)指し示される。齟齬が生じる場合は、定義を含め、本明細書が、引用される参考文献に対して優先されるものとする。更に、材料、方法、及び例は、例示的なものであるに過ぎず、そうでないことが指定されない限りにおいて、限定的であることは意図されない。
【0022】
非ヒト由来の抗体は、当技術分野で公知の方法を介する、CDRグラフティングによりヒト化されうる。ヒト化は、結合性ドメインの、ヒト抗体の結合性ドメインに対する相同性(すなわち、ヒト性)を増大させ、ヒトにおける、ヒト化抗体の免疫原性の潜在的可能性を低減し、これは、ヒト患者における安全性及び治療適用プロファイルを改善することが予測される。他方、抗体ヒト化は、ヒト化抗体の、その抗原に対する結合親和性の低減を伴うことが多く、親和性成熟を要求することが多い(全ての目的で、参照によりその全体において組み込まれる、参考文献[31]を参照されたい)。
【0023】
また、CARのターゲティングドメインを作出するための、ヒト化抗体断片の使用は、標的抗原への結合に関する、CARの性能の低下、及びCARを発現する細胞のエフェクター機能の誘発を結果としてもたらしうることも経験されている。
【0024】
本発明では、本発明者らは、エピトープ及びパラトープに関する、未公開のタンパク質結晶構造データを使用して、既存の抗ROR2抗体(ウサギ抗体;全ての目的で、参照によりその全体において組み込まれる、WO2017/127702A1)の、合理的デザインベースの親和性成熟を展開した。新規の結合剤を、ファージディスプレイライブラリーから単離し、in vitroにおいて特徴付けた。表面プラズモン共鳴は、結合親和性の10倍の増大を明らかにした(Kd=0.7nM)。
【0025】
最も強力なクローンを選択し、抗体のヒト化を実施した。親和性成熟ヒト化クローン(hX3.12.5及びhX3.12.6)を、in vitroにおいて、再度検証したところ、これは、親和性成熟クローン(X3.12)と比較して、結合親和性のわずかな低下(それぞれ、Kd=2.6nM及びKd=3.8nM)を示した。細胞マイクロアレイ技術を使用して、抗原特異性を検証したが、これに加えて、これらの知見は、タンパク質X線結晶構造解析も確認した。
【0026】
本発明者らは、成熟ヒト化クローン並びに親抗体について、ROR2×CD3 bi-mAbを作出した。全てのクローンは、細胞溶解アッセイにより決定して、強力な抗原特異的抗腫瘍効能を示した。加えて、hX3.12.5×CD3 bi-mAbは、CD69の発現レベル及びIFN-γの分泌により決定して、T細胞の、有意により強力な活性化を示した。
【0027】
本発明者らはまた、親抗体クローン及び親和性成熟抗体クローンを使用して、第2世代のROR2 CAR-T細胞も作出し、in vitroにおいて、機能的な特徴付けを実施した。略述すると、いずれの抗体変化形も、抗原依存性細胞溶解、サイトカイン分泌、及び増殖により決定して、強力な抗腫瘍効能を示す。用量制限条件下で、親和性成熟抗体に由来するCARは、親クローンを凌駕した。
【0028】
本発明に従う「組換え哺乳動物細胞」は、本明細書で規定される、任意の細胞でありうる。好ましくは、組換え哺乳動物細胞は、分離細胞である。本発明に従う組換え哺乳動物細胞は、公知の薬学的基準に従い作製されうる。例えば、組換え哺乳動物細胞は、ヒトへの投与のために製剤化されうる。
【0029】
本発明に従う「CAR」は、任意の可能な形態でありうる。好ましい実施形態では、CARは、単離形態で存在する。別の好ましい実施形態では、本発明に従うCAR、又はCARをコードする核酸は、組成物中に存在しうる。組成物は、医薬組成物でありうる。
【0030】
本発明は、Fab又は他の抗体断片により制御される、切替え型CAR T細胞を含む。このような種類の切替え型CAR T細胞の例については、[64~67]において記載されている。これは、ユニバーサルCARが結合する分子であるアダプターを、ROR2を認識するFab又は他の抗体断片へと連結することにより達成されうる。アダプターが投与される場合、このような切替え型CAR-T細胞は、ROR2を発現するがん細胞だけをターゲティングし、死滅させることができる。これは、[67]に例示されている通り、CAR T細胞の、滴定可能であり、かつ可逆的な制御を可能とする。切替え型CAR-Tプラットフォームはまた、異なるアダプターの、同時的投与又は逐次的投与も許容する。異なるアダプターは、同じ抗原をターゲティングする場合もあり、異なる抗原をターゲティングする場合もあり、例えば、ROR2及びさらなる抗原をターゲティングしうる。多重アダプターの使用は、標的細胞の異種性及びがんにおける耐性に対抗するように、CAR-T療法を、モノクローナル認識から、ポリクローナル認識へと効果的に進化させうるであろう。したがって、本発明の好ましい実施形態では、本発明に従う、ヒトROR2に結合することが可能な抗体誘導体は、ユニバーサルCARのためのアダプターを含む誘導体でありうる。当業者により、このような誘導体は、ROR2特異性を、ユニバーサルCARへと付与することが可能であることが理解されるであろう。
【0031】
本発明に従う配列の配列アライメントは、当技術分野で公知である、適切なアライメントパラメータを使用して、適切なアルゴリズムにより実施され、好ましくは、BLASTアルゴリズム(参考文献[32、33]を参照されたい)を使用して実施される。
【0032】
「KD」という用語又は「KD値」は、当技術分野で公知の平衡解離定数に関する。本発明の文脈では、これらの用語は、ROR2に結合することが可能な抗体又はその誘導体(例えば、CAR T細胞又は抗体)の、目的の抗原(すなわち、ROR2)に対する平衡解離定数に関しうる。平衡解離定数は、複合体(例えば、抗原-ターゲティング剤複合体)が、その成分(例えば、抗原及びターゲティング剤)へと、可逆的に解離する傾向についての尺度である。当技術分野では、KD値を決定する方法が公知である。好ましくは、KD値は、表面プラズモン共鳴測定により決定される。
【0033】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、目的の抗原に特異的に結合することが可能な、任意の機能的抗体を指す。特に限定せずに述べると、抗体という用語は、ニワトリ等の鳥類、並びにマウス、ヤギ、非ヒト霊長動物、及びヒト等の哺乳動物を含む、任意の適切な供給源種に由来する抗体を包含する。好ましくは、抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体である。ヒト化抗体は、ヒト配列と、目的の抗原(例えば、ROR2)への結合特異性を付与する、非ヒト配列の副次的部分とを含有する抗体である。抗体は、好ましくは、当技術分野で周知の方法により調製されうるモノクローナル抗体である。抗体という用語は、アイソタイプ抗体である、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4、IgE、IgA、IgM、又はIgDを包含する。抗体という用語は、単量体抗体(IgD、IgE、IgG等)、又はオリゴマー抗体(IgA又はIgM等)を包含する。抗体という用語はまた、(特に限定せずに述べると)単離抗体及び遺伝子操作抗体、例えば、キメラ抗体若しくは二重特異性抗体等の改変抗体、又は抗がん薬若しくは細胞傷害性薬等の薬物との抗体コンジュゲートも包含する。本発明に従う、ROR2に結合することが可能な二重特異性抗体は、CD3×ROR2 BiTE(Bi-specific T-cell engager)又はDART(dual-affinity re-targeting proteins)等のT細胞エンゲージャーでありうる。本明細書で記載される、「抗体」(例えば、モノクローナル抗体)又は「その誘導体」は、異なる分子へと連結されている場合がある。例えば、抗体へと連結されうる分子は、他のタンパク質(例えば、他の抗体)、分子標識(例えば、蛍光標識、発光標識、有色標識、又は放射性分子標識)、医薬剤、及び/又は毒性剤である。抗体又は抗原結合性部分は、直接(例えば、2つのタンパク質の間の融合体の形態で)連結される場合もあり、リンカー分子(例えば、当技術分野で公知である、任意の適切な種類の化学的リンカー)を介して連結される場合もある。
【0034】
抗体誘導体、又は本明細書で使用される、ROR2に結合することが可能な抗体の誘導体は、ROR2抗原に特異的に結合する抗体の能力を保持する抗体の部分を含む。この能力は、例えば、当技術分野で公知の方法を介して、抗原への特異的結合について、抗体と競合する、抗原結合性部分の能力を決定することにより決定されうる。特に限定せずに述べると、抗体誘導体は、組換えDNA法、及び抗体の化学的断片化又は酵素的断片化による調製を含む、当技術分野で公知である、任意の適切な方法により作製されうる。抗体誘導体は、Fab断片、F(ab')断片、F(ab')2断片、単鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体、ダイアボディー、又は抗原に特異的に結合する抗体の能力を保持する、抗体の他の任意の部分でありうる断片でありうる。本発明の抗体誘導体はまた、キメラ抗原受容体(CAR)でもありうる。
【0035】
本発明との関連で使用される、それらの可変ドメイン及びそれらのCDR配列を含む、抗体又はその誘導体についての用語法は、Kabatによる番号付けに従う。Kabatによる番号付けについては、Kabat E.A.、Wu,T.T.、Perry,H.、Gottesman,K.、及びFoeller,C.(1991)「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、NIH刊行物第91-3242号(参考文献[68])において記載されている。
【0036】
本発明に従う、「がんの処置」又は「がんを処置すること」又は「がん治療」又は「がん免疫療法」等の用語は、治療処置を指す。治療処置が作用するのかどうかについての評価は、例えば、処置が、処置された、1例又は複数例の患者における、がんの増殖を阻害するのかどうかを評価することによりなされうる。好ましくは、阻害は、当技術分野で公知である、適切な統計学的検定により評価される通り、統計学的に有意である。がん増殖の阻害は、本発明に従い処置された患者の群におけるがん増殖を、非処置患者の対照群と比較することにより評価される場合もあり、当技術分野の標準的がん処置+本発明に従う処置を施される患者の群を、当技術分野の標準的がん処置だけを施される患者による対照群と比較することにより評価される場合もある。がん増殖の阻害について評価するための、このような研究は、十分な統計学的検定力を伴う臨床研究、例えば、二重盲検化研究、ランダム化研究について許容される基準に従いデザインされる。「がんを処置すること」という用語は、がん増殖が、部分的に阻害される場合(すなわち、患者におけるがん増殖が、患者の対照群と比較して遅延させられる場合)における、がん増殖の阻害、がん増殖が完全に阻害される場合(すなわち、患者におけるがん増殖が停止させられる場合)の阻害、及びがん増殖が反転させられる(すなわち、がんが退縮する)場合の阻害を含む。治療処置が作用するのかどうかについての評価は、がん進行についての公知の臨床指標に基づきなされうる。固形腫瘍を形成しない、血液がんの文脈では、がん増殖は、がん細胞の計数に基づく方法等、公知の方法により評価されうる。
【0037】
本発明に従うがんの処置は、患者において、さらなる治療利益又は二次的治療利益もまた生じることを除外しない。
【0038】
本発明に従うがんの処置は、第1選択治療の場合もあり、第2選択治療の場合もあり、第3選択治療の場合もあり、第4選択治療の場合もある。処置はまた、第4選択治療の先の治療でもありうる。当技術分野では、これらの用語の意味が公知であり、US National Cancer Instituteにより一般に使用される用語法に従う。
【0039】
本明細書で使用される「~に結合することが可能」という用語は、結合させられる分子(例えば、ROR2)と複合体を形成する能力を指す。結合は、典型的に、イオン結合、水素結合、及びファンデルワールス力等の分子間力により、非共有結合的に生じ、典型的に可逆的である。当技術分野では、結合能力を決定する、多様な方法及びアッセイが公知である。結合は、通例、高親和性による結合であり、この場合、KD値により測定される親和性は、好ましくは、1μM未満、より好ましくは、50nM未満、なおより好ましくは、10nM未満、なおより好ましくは、7nM未満、なおより好ましくは、5nM未満、なおより好ましくは、1nM未満、又は0.1nM~1nMの範囲である。
【0040】
例えば、本発明に従う抗体又はその誘導体は、ROR2に結合することが可能であり、この場合、KD値により測定される、ROR2に対する親和性は、好ましくは、50nM未満、より好ましくは、10nM未満、なおより好ましくは、7nM未満、なおより好ましくは、5nM未満、なおより好ましくは、1nM未満、又は0.1nM~1nMの範囲である。本発明に従う医薬組成物は、医薬組成物の調製についての公知の基準に従い調製される。例えば、組成物は、それらが、適切に保管され、投与されうる方式で調製される。すなわち、組成物は、例えば、担体、賦形剤、又は安定化剤等、薬学的に許容される成分を含有しうる。このような薬学的に許容される成分は、医薬組成物を、患者へと投与する場合に使用される量では、毒性ではない。医薬組成物へと添加される、許容可能な医薬成分は、活性薬剤(例えば、ROR2に結合することが可能な抗体又はその誘導体、又は本発明に従う組換え細胞、又は本発明に従う核酸)の化学的性質、医薬組成物の、特定の意図された使用、及び投与経路に基づき選択されうる。本発明に従い、組成物は、ヒトへの投与のために適することが理解される。
【0041】
本明細書では、薬学的に許容される担体は、当技術分野で公知の通りに使用されうる。本明細書で使用される、「薬学的に許容される」という用語は、米国連邦政府若しくは州政府の規制機関により承認されていること、又は哺乳動物における使用のためであり、より特定すると、ヒトにおける使用のために、米国薬局方、欧州薬局方、若しくは一般に認識された他の薬局方において列挙されていることを意味する。薬学的に許容される担体は、生理食塩液、緩衝生理食塩液、デキストロース、水、グリセロール、滅菌等張性水性緩衝液、及びこれらの組合せを含むがこれらに限定されない。製剤は、投与方式に適するように、適切に適合させられることが理解されるであろう。
【0042】
本発明に従い使用される「プラスミド」は、本発明における使用に適する、当技術分野で公知である、任意の種類のプラスミドでありうる。例えば、プラスミドは、ナノプラスミドでありうる。
【0043】
本明細書で使用される、「~を含むこと」又は「~を含む」等の用語の各出現は、任意選択で、「~からなること」又は「~からなる」で置き換えられうる。
【0044】
更に好ましい実施形態
好ましい態様では、本発明は、軽鎖可変ドメインと、重鎖可変ドメインとを含み、重鎖可変ドメインが、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、及び配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、ヒトROR2に結合することが可能な抗体、又はヒトROR2に結合することが可能なその誘導体を包含する。
【0045】
別の態様では、本発明は、
図1Bに示されたアミノ酸配列により規定されるノブ変異を伴うscFv-Fcを含み、かつ、
図1Bに示されたアミノ酸配列により規定されるホール変異を伴うscFv-Fcを含む二重特異性抗体を包含する。
【0046】
別の好ましい態様では、本発明は、
図2Bに示されたアミノ酸配列により規定されるノブ変異を伴うscFv-Fcを含み、かつ、
図2Bに示されたアミノ酸配列により規定されるホール変異を伴うscFv-Fcを含む二重特異性抗体を包含する。
【0047】
別の好ましい態様では、本発明は、
図3Bに示されたアミノ酸配列により規定されるノブ変異を伴うscFv-Fcを含み、かつ、
図3Bに示されたアミノ酸配列により規定されるホール変異を伴うscFv-Fcを含む二重特異性抗体を包含する。
【0048】
別の態様では、本発明は、
図1Cに示されたアミノ酸配列により規定されるCARを包含する。
【0049】
別の好ましい態様では、本発明は、
図2Cに示されたアミノ酸配列により規定されるCARを包含する。
【0050】
別の好ましい態様では、本発明は、
図3Cに示されたアミノ酸配列により規定されるCARを包含する。
【0051】
本発明の他の全ての実施形態に従い、本発明に従う抗体及びその誘導体は、好ましくは、ヒトROR2のクリングルドメインに結合することが可能である。
【0052】
上記の態様及び実施形態のうちの、更に好ましい実施形態では、抗体又はその誘導体は、本明細書で記載される、本発明の他の特色のうちのいずれかを有しうる。抗体又はその誘導体は、例えば、本明細書で記載されるがんの処置において使用されうる、医薬組成物又はCARの一部でありうる。同様に、本発明はまた、例えば、ウイルスベクター等のベクターの形態にある、本発明の上記の態様の抗体又はその誘導体をコードする核酸、及びこのような核酸を含む医薬組成物も包含する。
【0053】
配列
本明細書で言及される配列は、以下の通りである:
【0054】
アミノ酸配列は、そうでないことが指し示されない限りにおいて、N末端からC末端の順序の、標準的な一文字式のアミノ酸コードを使用して指し示される。核酸配列は、そうでないことが指し示されない限りにおいて、5'から3'の順序の、標準的な核酸コードを使用して指し示される。
【0055】
アミノ酸配列:
>XBR2-401 VH配列(配列番号1):
【0056】
【0057】
>XBR2-401 VL配列(配列番号2):
【0058】
【0059】
>X3.12 VH配列(配列番号3):
【0060】
【0061】
>X3.12 VL配列(配列番号4):
【0062】
【0063】
>hX3.12.5 VH配列(配列番号5):
【0064】
【0065】
>hX3.12.5 VL配列(配列番号6):
【0066】
【0067】
>hX3.12.6 VH配列(配列番号7):
【0068】
【0069】
4(GS)×3リンカー(配列番号8):GGGGSGGGGSGGGGS
【0070】
ヒンジ、CH2(非グリコシル化変異)、及びCH3(N297A)(配列番号9):
【0071】
【0072】
V9 scFV重鎖可変ドメイン(VH)(配列番号10):
【0073】
【0074】
(G4S)×3リンカー(配列番号11):SSGGGGSGGGGSGGGGS
【0075】
V9 scFV軽鎖可変ドメイン(VL)(配列番号12):
【0076】
【0077】
ヒンジ、CH2(非グリコシル化変異)、及びCH3(N297A)(配列番号13):
【0078】
【0079】
GMCSFシグナルペプチド(配列番号14):MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP
【0080】
図8による、ヒトROR1の部分アミノ酸配列(配列番号15):FKSD
【0081】
図8による、ヒトROR1の、さらなる部分アミノ酸配列(配列番号51):TFTALR
【0082】
IgG4ヒンジ(配列番号16):ESKYGPPCPPCP
【0083】
CD28膜貫通ドメイン(配列番号17):MFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV
【0084】
CD3ζシグナル伝達ドメイン(配列番号18):
【0085】
【0086】
T2Aリボソームスキッピング配列(配列番号19):LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR
【0087】
EGFRt(配列番号20):
【0088】
【0089】
ヒトIg重鎖シグナルペプチド(配列番号21):MDWTWRILFLVAAATGAHS
【0090】
ヒトROR2の部分アミノ酸配列(配列番号22):
【0091】
【0092】
図9によるHCDR3配列(配列番号23):DXXSLNI
(Xは、任意の天然に存在するアミノ酸から選択されうるアミノ酸であることに注意されたい)
【0093】
図9によるHCDR3配列(配列番号24):DXXXSLNI
(Xは、任意の天然に存在するアミノ酸から選択されうるアミノ酸であることに注意されたい)
【0094】
図9によるHCDR3配列(配列番号25):DXXXXSLNI
(Xは、任意の天然に存在するアミノ酸から選択されうるアミノ酸であることに注意されたい)
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
図11によるHCDR1配列(配列番号44):
SYGVT
【0132】
【0133】
【0134】
図11によるHCDR3配列(配列番号52):
DDRWSLNI
【0135】
図11による、VhX3.12及びVh401の部分アミノ酸配列(配列番号53):
QSVK
【0136】
図11による、Vh3、VhX3.12、及びVh401の部分アミノ酸配列(配列番号54):
NTNE
【0137】
核酸配列:
STOPプライマー(配列番号46):ACCTATTTCTGTGCGAGGATTGTAATCCCTTAACATCTGGGGACCA
【0138】
Unirevプライマー(配列番号47):ATCTCTCGCACAGAAATAGGT
【0139】
X2プライマー(配列番号48):ACCTATTTCTGTGCGAGAGATNNKNNKTCCCTTAACATCTGGGGACCA
【0140】
X3プライマー(配列番号49):
ACCTATTTCTGTGCGAGAGATNNKNNKNNKTCCCTTAACATCTGGGGACCA
【0141】
X4プライマー(配列番号50):
ACCTATTTCTGTGCGAGAGATNNKNNKNNKNNKTCCCTTAACATCTGGGGACCA
【実施例】
【0142】
本発明は、以下の非限定例により例示される:
【0143】
(実施例1)
ウサギ抗ヒトROR2モノクローナル抗体の、治療的有用性のための、親和性成熟、ヒト化、及び共結晶化
材料及び方法:
細胞系及び初代細胞
乳がん細胞系である、MDA-MB-231及びT47Dは、ATCC社から購入し、DMEM(Thermo Fisher Scientific社製)、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific社製)、及び10%(v/v)のFBS(BioFluid Technologies社製)中で増殖させた。腎細胞腺がん細胞系である786-O(NCI-60パネル細胞系は、The Scripps Research Institute's Cell-Based High-Throughput Screening Coreから得た)を、RPMI 1640(Thermo Fisher Scientific社製)、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific社製)、及び10%(v/v)のFBS(BioFluid Technologies社製)中で増殖させた。ヒトROR2(Thr245アロタイプ)、マウスROR2、及びモックベクターを安定的にトランスフェクトされたHEK 293F細胞については、既に公表された[29]。同じ研究は、mAbである401が、ヒトROR2のfrizzledドメイン(hROR2-Fz)内の一塩基多型(SNP;rs10820900)から生じる、ROR2のアロタイプである、Thr245アロタイプ及びAla245アロタイプの両方に結合することを示した。ヒトPBMCは、AllCells社から購入し、5%(v/v)のoff-the-clot human AB serum(Gemini Bio-Products社製)、及び100U/mLのIL-2(Cell Sciences)を伴うX-VIVO 20培地(Lonza社製)中で培養した。既に記載されている通り[34]に、Dynabeads ClinExVivo CD3/CD28(Thermo Fisher Scientific社製)を使用することにより、初代T細胞を、PBMCから拡大した。Jurkat-T Lucia NFATレポーター細胞系は、InvivoGen社から購入し、100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを伴うRPMI 1640(ATCC社改変型)培地中で培養し、隔代の継代のために、10%(v/v)のFBS(BioFluid Tech.社);100μg/mLのzeocin(InvivoGen社製)を添加した。
【0144】
hROR2-Krとの複合体における、401及びhX3.12.6の結晶化及び構造決定
クローニング、発現、及び精製:Fabである401、FabであるhX3.12.6、及び全長ヒトROR2(クローンID:40146553;GE Healthcare Dharmacon社製)をコードするDNA断片を、各々、PCRにより増幅して、対応するscFvフォーマット(VH-3×(GGGGS)-VL)、及びヒトROR2のクリングルドメイン(hROR2-Kr)を創出した。hROR2-KrをコードするPCR産物を、大腸菌(E.coli)シャペロン/ジスルフィドイソメラーゼ(DsbC)を共発現するように改変された、pET15b発現ベクター(Novagen社製)[35]へとクローニングして、トロンビン切断型N末端ヘキサ-ヒスチジンタグを伴うhROR2-Krを発現する、pET15b-hROR2-Kr-DsbCを創出した。それらの固有のリボソーム結合性部位を含有する、scFvコードPCR産物を、hROR2-KrとDsbCとの間に挿入し、pET15b-hROR2-Kr-scFv 401-DsbC、及びpET15b-hROR2-Kr-scFv hX3.12.6-DsbCをもたらした。Rosetta-gami2(DE3)株の大腸菌(Novagen社製)を、3つの発現プラスミドの各々により形質転換した。形質転換された大腸菌を、アンピシリン、テトラサイクリン、及びクロラムフェニコールを含有するLB培地中、37℃で、230rpmの攪拌を伴い増殖させた。細胞密度が、0.6のOD595に達したら、0.3mMのイソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)により、タンパク質の発現を誘導した。細胞を、20℃で、更に18時間にわたり増殖させた。
【0145】
タンパク質の精製:細菌ペレットを、超音波処理用緩衝液(20mMのHEPES、pH8.0、500mMのNaCl、15mMのイミダゾール、10%(v/v)のグリセロール)中に再懸濁させ、氷水浴中で超音波処理し、53,300×gで、25分間にわたり遠心分離した。上清を、カスタム充填式10mL HIS-Selectカラム(Sigma-Aldrich社製)にロードし、超音波処理用緩衝液で洗浄した。結合したタンパク質を、15mM~500mMのイミダゾールによる直線勾配で溶出させた。溶出させたタンパク質を、トロンビン(Sigma-Aldrich社製)により、4℃で、一晩にわたり処理して、hROR2-KrにおけるN末端ヘキサ-ヒスチジンタグを除去した。切断されたタンパク質を、50mMのNaCl、10mMのHEPES、pH7.4で平衡化させた、Superdex 200 26/60カラム(GE Healthcare社製)上で、更に精製した。
【0146】
結晶化及び構造決定:1.5μLの14mg/mLのタンパク質、及び等容量の0.1Mの三塩基性クエン酸ナトリウム二水和物、15%(w/v)のポリエチレングリコール3350を含有する沈殿剤を使用する、室温(RT)における蒸気拡散により、scFv401:hROR2-Kr複合体の結晶を増殖させたところ、2日以内に、十分に増殖した。hROR2-Krは、2μLの14mg/mLのタンパク質を、0.2Mの酢酸リチウム、20%(w/v)のPEG 3350を含有する、1μLの沈殿剤と共に使用する、RTにおける蒸気拡散において、クラスター化結晶をもたらした。結晶クラスターを、クラッシュし、3:1のタンパク質:沈殿剤比で平衡化させた液滴へと播種して、単結晶を得た。scFv hX3.12.6:hROR2-Kr複合体の結晶を、1.5μLの3mg/mLのタンパク質、及び等容量の10mMのMgCl
2六水和物、5mMの塩化ニッケル(II)六水和物、0.1MのNa-HEPES pH7.0、13%(w/v)のPEG 4000を含有する沈殿剤を使用する、RTにおける蒸気拡散により増殖させた。過剰量の母液を除去した後、ナイロンループを使用して、液体窒素中で、結晶を瞬時凍結させた。ブラッグ間隔を、1.1Åに設定した、scFv401:hROR2-Kr及びhROR2-Krの両方についての回折データセットは、Advanced Photon Source(APS)beamline LS-CAT 21-ID-F synchrotron facility(Argonne National Laboratory)のRayonix MX300検出器において回収した。ブラッグ間隔を、1.3Åに設定した、scFvであるhX3.12.6:hROR2-Krについての回折データセットは、Advanced Light Source(ALS)beamline 5.0.2 synchrotron facility(Lawrence Berkeley National Laboratory)のPILATUS3 S 6M検出器において回収した。データセットは、XDSを、処理エンジンとして使用する、autoPROCで処理した[36]。構造は、PDB ID:6BA5(scFvR11:hROR1-Kr)[34]を、検索モデルとして、PHASER[37]を使用する、分子置換法により解明した。結晶構造解析の精密化は、PHENIX version 1.14を使用して実施した[38]。手作業による構造の再構築及び補正は、Cootにより行った[39]。データ処理統計及び精密化統計を示す(
図6)。PyMOLを使用して、分子画像(
図5A、
図5B、及び
図8A、
図8B)を創出した[40]。PDBePISAを使用して、相互作用界面を解析した[41、42]。構造の検証は、MolProbityにより実行した[43]。
【0147】
親和性成熟
ライブラリーの作出:401の停止変異体は、親である401によるライブラリーの夾雑を回避するように、センスプライマーであるSTOP、及びアンチセンスプライマーであるunirevを用いた重複伸長PCRを使用して作出した。続いて、NNKコドンにより、HCDR3をランダム化させ、伸長させるように、2つのランダム化コドン(X2)を、HCDR3の残基96及び97に配置し、さらなるランダム化コドン(X3)を、残基97のすぐ下流に配置し、2つのさらなるランダム化コドン(X4)を、残基97のすぐ下流に配置した、3つの異なるライブラリーを作出した。これらのバリアントは、NNK変性センスプライマーであるX2、X3、又はX4を、アンチセンスプライマーであるunirevと併せて活用する重複伸長PCRにより作出した。最終構築物を、既に記載されている通り、フランキングプライマーであるC-5'SFIVL及びc-3'sfivhと共に、ファージミドであるpC3Cへとクローニングした[29]。プライマー配列:STOP:5'-ACCTATTTCTGTGCGAGGATTGTAATCCCTTAACATCTGGGGACCA-3';unirev:5'-ATCTCTCGCACAGAAATAGGT-3';X2:5'-ACCTATTTCTGTGCGAGAGATNNKNNKTCCCTTAACATCTGGGGACCA-3';X3:5'-ACCTATTTCTGTGCGAGAGATNNKNNKNNKTCCCTTAACATCTGGGGACCA-3';X4:5'-ACCTATTTCTGTGCGAGAGATNNKNNKNNKNNKTCCCTTAACATCTGGGGACCA-3'である。
【0148】
ライブラリーの選択:ファージディスプレイによる、ウサギ/ヒトキメラFabの選択のための公表プロトコール[44]に従い、3つの異なるパニング手法を検討したが、ここで、第1の手法は、96ウェルELISAプレート(Costar 3690;Corning社製)上の固定化のための、25μLのPBS中に、1μgのhROR2-Fc[29]、ブロッキングのための、PBS中に3%(w/v)のBSAを使用する、常套的な表面パニング(3ラウンド)、及びPBS(TPBS)中に0.05%(v/v)のTween 20を使用する、10回にわたる洗浄工程であった。第2の手法は、上記の通りに固定化され、ブロッキングされた、100ngのhROR2-Fcを使用する、表面競合パニング(常套的表面パニングの第2ラウンドを使用して、1ラウンドを行った)に続く、10倍モル過剰量の親Fabである401を伴う、2時間にわたるプレインキュベーション、及びTPBSによる、15回にわたる洗浄工程であった。第3の手法は、2分の1減少量のビオチニル化[44]hROR2-Fc(PBS中に100~6.25ng)を使用する溶液競合パニング(5ラウンド)、多様な濃度のhROR2-Fcに対する、10倍モル過剰量の親Fabである401とのプレインキュベーションであった。各ステップにおいて、ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズ(Dynabeads MyOne Streptavidin C1;Thermo Fisher Scientific社製)による捕捉、100mMのグリシン-HCl(pH2.2)を使用する酸溶出、パニングラウンド2、3、及びパニングラウンド4、5(すなわち、間欠的再増幅を伴わない)と、厳密性を増大させる洗浄工程(PBS中に0.05%(v/v)~0.5%(v/v)のTween 20)とのカップリングが行われた。公表プロトコール[44]を使用して、固定化hROR2-Fcを使用するFab ELISAにより、最終アウトプットコロニーをスクリーニングし、DNAシーケンシングにより、陽性クローンのHCDR3を決定した。
【0149】
ヒト化
X3.12のヒト化は、IgBlast(www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を使用して、IMGTの、IGHV及びIGKVについての、哺乳動物:ヒト(ヒト(Homo sapiens))リンク(www.imgt.org/IMGTrepertoire/Proteins/)を使用して決定された、最小量の多型を伴う、最も近縁のヒト生殖細胞系列を見出すことにより行った。合理的変異[45]を様々な程度で実施して、ROR2に対する親和性を保持するのに必要な変異を決定した。
【0150】
Fabのクローニング、発現、及び精製
選択された、全てのFab変異体を、改変を伴うが、記載されている[29]通りにクローニングした。略述すると、Fab変異体を、細菌発現ベクターであるpET11a[46]へとクローニングし、これにより、大腸菌Rosetta(DE3)株(EMD Millipore社製)を形質転換させ、1mLのHiTrap Kappa Select HPカラムに続き、AKTA FPLC測定器(全て、GE Healthcare社製)を伴う1mLのHisTrap HPカラムを使用して、培養物上清から、タンデム精製した。(1mLのHisTrap HPカラムだけを使用して、上位12位までのウサギ/ヒトキメラ抗ヒトFabを精製した)。タンパク質の純度は、SDS-PAGE、クーマシーブルー染色により解析し、A280における吸光度を使用して、精製Fab変異体の濃度を決定した。
【0151】
表面プラズモン共鳴
精製抗ROR2 Fab変異体の、ROR2への結合についての反応速度パラメータ及び熱力学パラメータは、既に記載されている通り[29]、Biacore試薬及びBiacoreソフトウェア(GE Healthcare社製)を使用するBiacore X100測定器上で実施されるSPRの使用により測定した。略述すると、hROR2-Fc抗原を捕捉するために、CM5センサーチップに、マウス抗ヒトIgG CH2 mAbを固定化した。センサーチップの再生を確認するように、最高濃度を測定した後で、各Fab変異体を、100nMの1倍濃度HBS-EP+ランニング緩衝液により希釈し、1倍濃度のHBS-EP+ランニング緩衝液を使用して、2倍に更に希釈して、最低濃度の反復を伴う、合計5つの希釈液を作製した。
【0152】
熱安定性アッセイ
タンパク質を融解させるために、LightCycler 480 Instrument Quick Guide(Roche社製)に記載されている工程に従った。親Fabである401を、1mg/mLで使用し、かつ、Quick Guideにおいて示唆されているOptimization Table 1を使用して、最適条件を決定した。解析のために、Roche Protein Meltingソフトウェアを使用した。最適条件は、0.5μLの1mg/mLのFab、1.0μLのSYPRO Orange Dyeの100倍濃度原液、8.50μLのダルベッコPBS(DPBS)を要求した。全てのFabを、これらの条件下、三連で調べた。
【0153】
Retrogenix社による細胞マイクロアレイ
カスタムのプレスクリーン、完全スクリーン、及び事後スクリーンは、既に記載されている通り、Retrogenix社により実行された[29、47]。
【0154】
機能性研究
ROR2×CD3二重特異性抗体の作製:ヘテロ二量体非グリコシル化scFv-FcフォーマットのROR2×CD3 biAbのクローニング、発現、及び精製は、既に記載されている[48]、改変を伴うプロトコールに従った。略述すると、scFvをコードする配列は、N末端において、シグナルペプチドをコードする配列を含有するgBlocks(Integrated DNA Technologies社製)として合成した。ヒトIgG1の、ヒンジドメイン並びに重鎖定常ドメインであるCH2及びCH3をコードする配列を組み入れるように、重複伸長PCRを使用した。既に記載されている、KIH(knobs-into-holes)変異[49]を、それぞれ、CD3 scFv-ヒンジ-CH2-CH3コード配列、及びROR2 scFv-ヒンジ-CH2-CH3コード配列に組み入れた。CH2内の非グリコシル化変異であるN297Aを、いずれの配列にも組み入れた。次いで、KpnI制限部位及びXhoI制限部位を使用して、これらのscFv-Fcコード配列を、哺乳動物用発現ベクターであるpCEP4へと挿入した。検証のためのDNAシーケンシング(Eton Bioscience社製)に続き、ポリエチレンイミン(PEI;Polysciences社製)を使用して、8%CO2及び湿度100%の雰囲気において、150mLのFreeStyle培地(Thermo Fisher Scientific社製)中、37℃で、振盪して培養された、1mL当たり細胞3×106個のHEK 293F細胞(Thermo Fisher Scientific社製)に、プラスミドをトランスフェクトした。6~12時間後、さらなる150mLのFreeStyle培地を添加した。3日後に、上清を回収するのに続き、1mL HiTrap ProteinA HPカラム(GE Healthcare社製)を、AKTA FPLC測定器(GE Healthcare社製)と共に使用する濾過及び精製を行うのに続き、水に続き、DPBSで平衡化させた、Superdex 200 10/300 GLカラム(GE Healthcare Life Sciences社製)を使用する、サイズ除外クロマトグラフィーを行った。収量は、典型的に、約5~10mg/Lであった。biAbの純度は、SDS-PAGEに続く、クーマシーブルー染色により確認し、A280における吸光度により定量した。
【0155】
フローサイトメトリー:標的細胞1×105個の染色は、標準法と同様に、かつ、既に記載されている通りに[29、34]、100μLのサイトメトリー緩衝液(1%(w/v)のBSA、及び0.1%(w/v)のアジドナトリウムを補充したPBS)中に、5μg/mLのFab又はbiAbにより行った。洗浄の後、細胞を、100μLフローサイトメトリー緩衝液中における、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG F(ab')2断片特異的pAb又はAlexa Fluor 647コンジュゲートロバ抗ヤギIgG(H+L)pAb(いずれも、Jackson ImmunoResearch社製のF(ab')2フォーマット)の、1:1,000希釈液と共に、氷上で、1時間にわたりインキュベートした。Alexa Fluor 647コンジュゲートマウス抗ヒトCD69 mAbは、BioLegend社から購入した。細胞を、FACSCanto測定器(BD Biosciences社製)、及びFlowJo解析用ソフトウェア(Tree Star社製)を使用して解析した。
【0156】
in vitroにおける細胞傷害作用アッセイ及びT細胞活性化アッセイ:細胞傷害作用は、製造元のプロトコール、及び若干の改変を伴う、既刊の刊行物[48]に従い、CytoTox-Glo(Promega社製)を使用することにより測定した。健常ドナーPBMCから拡大された初代T細胞を、エフェクター細胞として使用し、786-O細胞又はMDA-MB-231細胞を、10:1のエフェクター対標的細胞比で、標的細胞として使用した。細胞を、5%(v/v)のoff-the-clot human AB serumを伴う、X-VIVO 20培地(Lonza社製)中でインキュベートした。まず、標的細胞(2×104)を、biAbと共にインキュベートしてから、96ウェル組織培養プレートのウェル1つ当たり最終容量100μL中のエフェクター細胞(2×105)を添加するのに続き、37℃で16時間にわたるインキュベーションを行った。2ng/mL~1μg/mLの濃度範囲のbiAbを使用した。プレートを遠心分離し、50μLの上清を、ウェル1つ当たり25μLのCytoTox-Glo試薬を含有する、96ウェル透明底白色壁プレート(Costar 3610;Corning社製)へと移した。RTで、15分間にわたるインキュベーションの後、SoftMax Proソフトウェアを発光に設定した、SpectraMax M5測定器を使用して、プレートを読み取った。ELISA Ready-SET-Go! Reagentプロトコール(eBioscience社製)に従い、かつての研究による、さらなる上清を、20倍に希釈し、ヒトIFN-γ ELISAを使用した。
【0157】
結果:
ヒトROR2クリングルドメインとの複合体におけるmAb XBR2-401の結晶化
本発明者らは、ナイーブウサギ抗体ライブラリーから選択された、12のウサギ/ヒトキメラFabのパネルを、ヒトROR2への結合について、既に報告した[29]。これらのうち、Fabフォーマット及びIgG1フォーマットのmAb XBR2-401(「401」)(
図19)は、ROR2のクリングルドメイン(hROR2-Kr)に特異的であり、ヒトオーソログ及びマウスオーソログの両方を認識するが、その最も近縁の類縁体である、ROR1は認識しないことが示された[29]。401のパラトープ及びエピトープを規定するために、本発明者らは、X線結晶構造解析を使用して、hROR2-Kr(
図6)(Protein Data Bank ID(PDB):6OSH)との複合体におけるscFv(
図19)フォーマットの401の構造を、1.2Åの解像度で解明した(
図5A)。結晶は、非対称単位内に、1つの複合体を含有した。15アミノ酸のscFvリンカーを除き、結晶内の全ての残基は、十分に解像された。401と、hROR2-Krとの間の、埋まっている表面積は、720Å
2であり、それぞれ、401及びhROR2-Krの総表面積のうちの、7.0%及び15.9%を含んだ。ファンデルワールス接触点は、401のHCDR2及びLCDR3により占められた。とりわけ、LCDR3に由来するAla95(Kabatによる番号付け)は、hROR2-Krループのうちの、3つ、5つ、及び6つの残基[50]である、Leu350、Pro368、Gln371、Trp376、Phe378、及びMet386により創出される、浅い疎水性ポケット内に収まっていた。他方、hROR2-Krに由来する、ループ3のHis349は、CDRにより形成される、主要なポケットへと突出し、LCDR1のAsp32への塩架橋をもたらした(
図7)。界面はまた、HCDR2及びLCDR1に由来する残基が優勢である、多数の直接的な、及び水媒介性である水素結合による相互作用(
図7)も含有した。エピトープ認識に深く関与する、HCDR2及びLCDR3に由来する残基と比較して、HCDR3に由来するTrp96(Kabatによる番号付け)は、His348との、最適未満の水素結合、及びπ-π結合を形成する潜在的可能性を伴う、His349とのファンデルワールス相互作用を介して、hROR2-Krとの限定的な相互作用をもたらした(
図5A)。この観察は、HCDR3の、クリングルドメインへの結合を最適化する機会をもたらした。
【0158】
hROR2-Krと、hROR1-Krとは、58%のアミノ酸配列同一性を共有する[11]。401により認識される、hROR2-Krのエピトープ残基を、R11:hROR1-Kr認識を媒介するエピトープ残基[34]と比較したところ、残基の重複は見出されなかった(
図8)。この観察は、hROR2-Krと、hROR1-Krとの相同なアミノ酸配列にもかかわらず、401と、R11との間で、なぜ交差反応性が見られないのかを説明する。401:hROR2-Kr複合体に由来するクリングルドメインに結合した抗体と、R11:hROR1-Kr複合体に由来するクリングルドメインに結合した抗体とを比較したところ、Cα位置の平均二乗偏差(rmsd)が、0.695Åであると見出されたことは、2つのKrドメインの、高度に保存的な三次構造を顕示する。
【0159】
本発明者らはまた、抗体が結合していないhROR2-Krの構造も結晶化させ、1.1Åの解像度で解明した(
図8B右)。非結合hROR2-Kr構造の、401結合hROR2-Krに対するrmsdが、0.383Åであったことは、座標間のごくわずかな差違を顕示する。とりわけ、非結合hROR2-Kr構造では、Arg385は、結晶化溶液に由来する酢酸と、塩架橋/水素結合の混合相互作用を形成した(
図8B右)。401:hROR2-Kr複合体の結晶構造では、他のクリングルドメイン内のカノニカルのリシン結合性部位(LBS)[51]と重複する結合性部位は、401により部分的に結合対象とされた。非結合hROR2-Kr構造の、401結合hROR2-Krへの重合せは、結合した酢酸イオンのために、ループ5内の小さなシフト(
図8B右)を示した。
【0160】
全体として、本発明者らによる、ROR2エピトープと、ROR1エピトープとの間に重複が見られないという知見は、401のHCDR3の、hROR2-Krへの結合が最適未満であるという知見と共に、in vitroにおける親和性成熟のための機会を明らかにした。
【0161】
ファージディスプレイを介する親和性成熟
0、1つ、又は2つのさらなるランダム化残基(
図9)による、401 HCDR3の残基96及び97(Kabatによる番号付け;
図11)における、集中型突然変異誘発を行うために、ファージディスプレイライブラリーを構築した。401:hROR2-Krの共結晶構造は、hROR2と、HCDR3との間で、長鎖成熟HCDR3により充填される可能性があり、mAbの親和性を改善しうる空隙を描示したため、さらなるランダム化位置を検討した。hROR2-Fc間結合の選択を、3つの方式:表面選択、表面競合選択、及び溶液競合パニングによる選択(「実験手順」を参照されたい)で実施した。いずれの競合パニングプロトコールも、解離速度定数(k
off)が低値であるFab、したがって、親和性が高度であるFabに対して選択圧を加えた。3つの組合せライブラリーから、144のクローンを選択し、ELISAを介して、ROR2への結合、及び上清からのFabの発現について解析した。吸光度比(hROR2への結合の、発現に対する比)が最高度である、上位12位までのクローンを精製した。表面プラズモン共鳴(SPR)、熱力学パラメータ(K
D)、及び反応速度パラメータ(k
on及びk
off)を使用して、hROR2との相互作用を決定した。X3ライブラリーから得られたクローンである、XBR2-401-X3.12(「X3.12」)は、最高度の親和性(K
D=0.7nM)(
図10、
図14A)を明らかにしたが、これは、401から、少なくとも5倍の改善であった。X3.12のHCDR3配列は、2つの残基位置において、401と異なり、1残基長く、HCDR3配列を、DWTSLNIから、DDRWSLNIへと変化させる(
図10)。親和性成熟X3.12の治療的妥当性をより大きくするための、次の工程は、ヒト化を用いることであった。
【0162】
CDRグラフティングによるヒト化
親和性成熟ウサギ/ヒトキメラX3.12 Fabのヒト化を、3つの主要な工程で実施した。第1に、IgBlast(オンラインツールについては、「実験手順」を参照されたい)を使用して、X3.12の可変軽鎖(V
L)アミノ酸配列及び可変重鎖(V
H)アミノ酸配列に対する、最も近い同一性を伴うヒト生殖細胞系列を同定した。次いで、IMGTレパートリーを参照して、多型が>3である生殖細胞系列を除外した。X3.12に対するアミノ酸配列同一性が最高度であり、多型の数を最小とする、ヒト生殖細胞系列は、X3.12の重鎖及び軽鎖のそれぞれと、54.3%、54.8%、及び65.6%同一である、重鎖生殖細胞系列である、IGHV3-66
*03、IGHV3-48
*03、及び軽鎖生殖細胞系列である、IGKV1-NL1
*01であった。第2に、Kabatによる番号付けを使用して決定された、X3.12に由来するCDRを、これらの3つのフレームワーク配列へとグラフトした(
図11;V
L1、V
H1、V
H2)。第3に、親和性を保存することが決定された残基[45]は、ヒト生殖細胞系列残基から、元のウサギ残基へと復帰変異させた。CDRグラフティング及び合理的復帰変異から構成される、これら3つの工程から、4つの重鎖変異体(V
H1-V
H4)及び2つの軽鎖変異体(V
L1、V
L2)を形成した(
図11)。ヒト同一性百分率を決定するために、IMGT/DomainGapAlignツールを使用して、これらのヒト化鎖を、ヒト生殖細胞系列抗体配列についてのIMGTデータベースと比較した。V
L1、V
L2、及びV
H1-V
H4のヒト同一性は、それぞれ、88.6%
*、87.1%、86.6%、87.8%、73.5%
*、及び80.4%
*であった[表示中星印(
*)付きの百分率は、IMGT DomainGapAlign上の最初の「ヒット」が、ヒトではなかったことを指し示す]。WHO基準は、抗体が、ヒト化抗体であると考えられるためには、ヒト同一性が、85%を上回ると共に、IMGT DomainGapAlignツール上の最初の「ヒット」が、ヒトでなければならないことを言明している[52]。重鎖Fabと軽鎖Fabとの全ての組合せを、pET11a変異体へとクローニングし[46]、大腸菌Rosetta株内で発現させるのに続き、ELISAを介して、Fabの発現及びhROR2への結合を定量して、非結合性クローンを除外した。残りのクローンである、hX3.12.5、hX3.12.6、hX3.12.7、及びhX3.12.8も、X3.12と比較して、高度の結合対発現比を有した。これらの変異体の、ヒト生殖細胞系列に対する、全体の同一性パーセントは、それぞれ、87%、87%、80%、及び84%であり、全ての変異体は、V
L2を利用した(
図12)。したがって、WHO基準により、hX3.12.5及びhX3.12.6が、ヒト化mAbであると考えられるのに対し、hX3.12.7及びhX3.12.8は、キメラmAbであると考えられる。
【0163】
親和性成熟ヒト化Fabの特徴付け
発現及び精製(
図18A)の後、SPRにより、hX3.12.5、hX3.12.6、hX3.12.7、及びhX3.12.8の親和性を、それぞれ、2.6nM、3.8nM、1.4nM、及び5.2nMであると決定した(
図12、
図14B)。先に進み、本発明者らは、最高度のヒト同一性を有する一方、hROR2に対する、ナノモル単位の親和性を保持するので、hX3.12.5 Fab及びhX3.12.6 Fabに焦点を絞った。裏書きとなるフローサイトメトリーデータは、hX3.12.5及びhX3.12.6が、hROR2-Thr245アロタイプを、安定的に過剰発現するHEK 293F細胞に結合する[29]一方、ある程度のROR2を発現する、モックトランスフェクトHEK 293F対照細胞系への結合は最小限であることを示した(
図13A)。hX3.12.6のフレームワーク領域と、親である401のCDR配列とを含有するFabを作出し、参照のために組み入れた(h401.6:16nMの親和性;
図12)。クローンである、hX3.12.5及びhX3.12.6もまた、乳がん細胞系T47D(ROR2+、ROR1-)及び腎細胞腺がん細胞系786-O(ROR2+、ROR1+)には結合したが、乳がん細胞系MDA231(ROR2-、ROR1+)には結合しなかった(
図13A)。それらの融点を測定するように、LightCycler 480を使用して、ヒト化Fabの熱安定性に取り組んだ。ウサギ/ヒトキメラFabである、X3.12及び401は、h401.6と共に、ヒト化Fabである、hX3.12.5及びhX3.12.6より、わずかに高度の熱安定性を呈した(
図15)。親和性成熟ヒト化Fabの融点は、既に報告されたFabの融点と同様であり、それらが安定であることを示唆する[53、54]。
【0164】
hX3.12.6の、ROR2に対する特異性について調べるため、Fabを、まず、IgG1様フォーマットである、scFv-Fcへと転換した。このフォーマットは、V
LとV
Hとの間の(Gly
4Ser)
3リンカーを活用し、ヒトIgG1 Fc断片へと融合された、2つのscFv(
図19)を含有する。hX3.12.6 scFv-Fcを、786-O、T47D、及びMDA-MB-231に対してスクリーニングし、既に記載されている通り、MDA-MB-231を除き、全ての細胞系が、ROR2+であることを確認した(
図13B)。本発明者らはまた、hX3.12.6の、既に記載されている通り[29]、HEK 293上で安定的に発現されたマウスROR2との交差反応性も確認した(
図13C)。本発明者らが、親mAbであり、ウサギ/ヒトキメラIgG1フォーマットの、XBR2-401について行ったのと同様に[29]、hX3.12.6 scFv-Fcを、ヒトHEK 293細胞の表面上に発現され、16枚のスライド上に、二連で配置された、5,647例のヒト細胞膜タンパク質(すなわち、ヒト細胞表面抗原)に対してスクリーニングした[47]。ヒト細胞表面抗原の発現(
図16A)と相関する、ZsGreen1のスポッティングパターンを、ヒトROR2を含有するスライド(
図16B)について示す。hX3.12.6 scFv-Fcによるスクリーンにおいて同定された、唯一の特異的相互作用が、ROR2であった(
図16B、
図16C)ことは、親和性成熟も、ヒト化も、親mAbの高特異性を減少させなかったことを確認する。
【0165】
次に、hX3.12.6 scFvを、hROR2-Krと共に共結晶化させ、その構造を、1.4Åの解像度で決定した(
図5B、
図6)。hX3.12.6と、hROR2-Krとの複合体の構造は、親和性成熟HCDR3を、親HCDR3と比較する、特に、hROR2-Krと共に形成されるπ-π相互作用(
図5B、
図7)を比較することを可能とした。401と同様に、hX3.12.6においても、Ala95は、hROR2-Kr内に埋まり、軽鎖のAsp32と、hROR2-Krとの間の塩架橋もまた保持された。401:hROR2-Kr内に存在する、全ての水素結合相互作用及びファンデルワールス接触点は、Asp96及びArg97を含む、親和性成熟に起因する、HCDR3の変化を除き、hX3.12.6:hROR2-Kr複合体内で、インタクトなままであった。これらの2つの残基は、hROR2-Krと、直接には相互作用しないが、hROR2-Krに接触するTrp98を適正に位置づける一助となる。hX3.12.6内のTrp98は、hROR2-Krとの相互作用を、更に改善し、HCDR3ループの先端部に配置された、401のTrp96から最適化されている(
図5A、
図5B)。401の場合と異なり、Trp98の側鎖は、hROR2-KrのHis348の骨格酸素との水素結合相互作用を最適とした。Trp98の側鎖もまた、hROR2-KrのHis349との、π-π/π-カチオン間相互作用の幾何学的特徴を提示した(
図5B下、
図7)。それらのそれぞれの共結晶構造内の、401と、hX3.12.6との間のrmsdが、0.446Åであると見出されたことは、構造間の差違が微細であることを示唆する(
図8A)。401又はhX3.12.6と複合体化した結晶化クリングルドメインが、0.279Åのrmsdを有したことは、2つのクリングルドメインの間に、関連する変化が見られないことを指し示す。まとめると、これらの知見は、本発明者らによる、親和性成熟の合理的デザインが、ROR2への結合の向上において、極めて重要であることを確認した。
【0166】
ROR2×CD3二重特異性抗体の作出及び特徴付け
親和性成熟ヒト化抗体の機能性を決定するために、hX3.12.6を、ROR2×CD3 biAbへと転換し、プロテインA及びSECにより精製した(
図19、
図18B及び
図18C)。本発明者らは、本発明者らが、ROR1×CD3及びCD19×CD3 biAbについて既に報告した、同じヘテロ二量体/非グリコシル化scFv-Fcフォーマットを使用した[34、48]。これは、C
H2ドメインにおける非グリコシル化変異であるN297Aを、C
H3ドメインにおけるKIH(knobs-into-holes)変異、具体的には、C
H3におけるノブ変異であるS354C及びT366W、並びにC
H3におけるホール変異であるY349C、T366S、L368A、及びY407Vと組み合わせることにより行った[49、55、56]。抗CD3アームについては、十分に規定された、親和性成熟ヒト化抗ヒトCD3 mAb v9を使用した[57]。BiAbは、786-O及びJurkat-T Lucia(CD3+)には結合するが、MDA-MB-231には結合しないことを確認した(
図17A)。抗CD3/抗CD28ビーズ及びIL-2の添加により、in vitroにおいて、2つの異なる健常ドナー末梢血単核細胞(PBMC)から、初代T細胞を拡大した。次に、拡大された初代T細胞による、in vitroにおけるbiAb媒介標的依存性細胞傷害作用について検討した。3つのROR2×CD3 biAb;401×v9、hX3.12.6×v9、及びhX3.12.5×v9、並びに陽性対照biAb ROR1×CD3 biAb XBR1-402×v9(402×v9)について、それぞれ、0.19、0.21、0.15、及び0.25μg/mL(1.9nM、2.1nM、1.5nM、及び2.5nM)(
図17B)のEC
50値による、786-O細胞の特異的溶解が見られた。単一特異性hX3.12.6 scFv-Fcを、陰性対照として使用した。これらのbiAbが、786-O細胞上のROR2及びCD3への結合を介して、特異的に殺滅することを確認するために、本発明者らは、ROR2-/ROR1+細胞系である、MDA-MB-231について調べ、全てのROR2×CD3 biAbが、1μg/mLまで不活性であることを見出した(
図17B)。陽性対照である、ROR1×CD3 biAbは、MDA-MB-231細胞上のROR1へのその結合に起因して、予測される特異的細胞溶解を実際に示した。T細胞の早期活性化についての、公知のマーカーである、抗CD69 mAbを使用するフローサイトメトリーにより、T細胞の活性化を定量した。T細胞と共に、0.2μg/mLでインキュベートされた、ヒト化biAbである、hX3.12.6×v9、hX3.12.5×v9、及び親である401×v9は、786-Oの存在下、50%を超えるT細胞上で、CD69を上方調節したが、MDA-MB-231細胞の存在下では、そうでなかった(
図17C)。陰性対照であるhX3.12.6 scFv-Fcは、CD69の上方調節を顕示しなかった。1型サイトカインであるIFN-γの放出を、ELISAにより評価したところ、全てのROR2×CD3 biAbは、ROR2+標的細胞の存在下では、サイトカインの放出を引き起こしたが、ROR2-標的細胞の存在下では、サイトカインの放出を引き起こさなかった(
図17C)。既に示されている[34]通り、R11×v9は、ROR1+標的細胞の存在下で、同等なサイトカインの放出を引き起こした。
【0167】
(実施例2)
ターゲティングドメインを親和性成熟したROR2特異的CAR改変ヒトCD8+ T細胞及びROR2特異的CAR改変ヒトCD4+ T細胞の調製及びこれについての機能試験
材料及び方法:
ヒト対象
血液試料は、Institutional Review Board of the University of Wuerzburg(Universitaetsklinikum Wuerzburg、UKW)により承認された研究プロトコールに参加するように、説明同意文書を提出した健常ドナーから得た。Ficoll-Hypaque(Sigma社、St.Louis、MO製)上の遠心分離により、末梢血単核細胞(PBMC)を分離した。
【0168】
細胞系
293T細胞系、MDA-MB231細胞系、T-47D細胞系、786-O細胞系、及びU266細胞系は、American Type Culture Collection社から得た。ルシフェラーゼを発現する細胞系は、レンチウイルスによる、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)遺伝子の、上述の細胞系への形質導入により導出した。細胞を、それぞれ、10%のウシ胎仔血清、及び100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補充されたダルベッコ改変イーグル培地、又は10%のウシ胎仔血清、及び100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを補充されたRPMI-1640培地中において培養した。
【0169】
細胞系表現型解析
腫瘍細胞系を、AF647コンジュゲートhX3.12.5×h38C2 DVD抗体、又はマッチさせたアイソタイプ対照で染色した。生細胞/死細胞の弁別のために、製造元により指示される通りに、7-AAD(BD Biosciences社製)による染色を実施した。フロー解析は、FACS Canto II(BD社製)上で行い、FlowJoソフトウェア(Treestar、Ashland、OR)を使用して、データを解析した。
【0170】
免疫表現型解析
PBMC及びT細胞系を、以下:CD3、CD4、CD8、及びマッチさせたアイソタイプ対照のコンジュゲートmAb(BD Biosciences社、San Jose、CA製)のうちの1つ又は複数で染色した。形質導入されたT細胞系を、AF647コンジュゲート抗EGFR抗体(ImClone Systems Incorporated社、Branchburg、NJ製)で染色した。生細胞/死細胞の弁別のために、製造元により指示される通りに、7-AAD(BD Biosciences社製)による染色を実施した。フロー解析は、FACS Canto II(BD社製)上で行い、FlowJoソフトウェア(FlowJo LLC、Ashland、OR)を使用して、データを解析した。
【0171】
レンチウイルスベクターの構築、レンチウイルスの調製、及びCAR-T細胞の作出
ROR2特異的CARを、最適のスペーサー、及びCD28共刺激ドメイン又は4-1BB共刺激ドメインと共に含有する、epHIV7レンチウイルスベクターの構築については、記載されている(全ての目的で、参照によりその全体において組み込まれる、参考文献[58、59]を参照されたい)。全てのCAR構築物は、CARの下流において、切断型表皮増殖因子受容体(EGFRt;また、tEGFRとしても公知である)(全ての目的で、参照によりその全体において組み込まれる、参考文献[60]を参照されたい)をコードした。遺伝子は、T2Aリボソームスキップエレメントにより連結された。
【0172】
CAR/EGFRt及びffluc/eGFPをコードするレンチウイルスの上清は、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech社、Mountain View、CA製)を使用して、レンチウイルスベクタープラスミド、並びにパッケージングベクターである、pCHGP-2、pCMV-Rev2、及びpCMV-Gの各々を共トランスフェクトされた293T細胞内で産生された。培地は、トランスフェクションの16時間後に交換し、レンチウイルスは、72時間後に回収した。CAR-T細胞は、記載されている[61]通りに作出した。略述すると、CD8+バルクT細胞又はCD4+バルクT細胞を、健常ドナーのPBMCから分取し、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies社製)で活性化させ、レンチウイルス上清により形質導入した。レンチウイルスによる形質導入を、2日目に、スピノキュレーションを介して実施し、T細胞を、10%のヒト血清、GlutaMAX(Life Technologies社製)、100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン、及び50U/mLのIL-2を伴うRPMI-1640中で繁殖させた。トリパンブルー染色を、実施して、生存可能T細胞を定量した。拡大の後、EGFRt+ T細胞を、磁気活性化細胞分取によりエンリッチし、CD3特異的Okt3抗体、並びに照射同種PBMC及びEBV-LCLフィーダー細胞を伴う多クローン的刺激により拡大した。
【0173】
細胞傷害作用アッセイ、サイトカイン分泌アッセイ、及びCFSE増殖アッセイ
ホタルルシフェラーゼを安定的に発現する標的細胞を、ウェル1つ当たり細胞5×103個の三連で、エフェクター対標的(E:T)比が多様なエフェクターT細胞と共にインキュベートした。標的細胞及びT細胞を含有するウェル内の発光シグナルの低下は、照度計(Tecan社製)を使用して測定した。特異的溶解は、TCR媒介細胞溶解を補正するように、それぞれのE:Tで、非形質導入T細胞を使用する標準式を使用して計算した。
【0174】
サイトカイン分泌についての解析のために、5×104個のT細胞を、三連ウェル内に、標的細胞と共に、4:1の比で播種し、24時間のインキュベーションの後に採取された上清中において、ELISA(Biolegend社製)により、IFN-γ及びIL-2を測定した。
【0175】
増殖解析のために、5×104個のT細胞を、0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen社製)で標識し、洗浄し、三連ウェル内の、外因性サイトカインを伴わないCTL培地中に、致死的線量で照射された標的細胞と共に、4:1の比で播種した。インキュベーションの72時間後、細胞を、抗CD3 mAb又は抗CD4 mAb又は抗CD8 mAb及び7-AADで標識して、死細胞を、解析から除外した。試料を、フローサイトメトリーにより解析し、生T細胞の細胞分裂を、CFSE希釈法により評価した。
【0176】
結果
ROR2 CAR-T細胞の作出、検出、及びエンリッチメント
Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離により、健常ドナーに由来するPBMCを分離し、MACSを使用して、この細胞集団から、バルクのCD4+ヒトT細胞又はCD8+ヒトT細胞を抽出した。分離の直後、T細胞を、CD3/28 Dynabeadsにより、2日間にわたり活性化させ、次いで、スピノキュレーションにより、X3.12ベースのROR2特異的CARをコードするレンチウイルスベクターを、3の感染多重度(MOI)で形質導入した。Dynabeadsを、形質導入の4日後に除去し、10日目に、T細胞を、ビオチニル化モノクローナルαEGFR抗体による標識付け、及び抗ビオチンマイクロビーズによるMACSを介して、EGFRt陽性細胞についてエンリッチした。エンリッチメントの後、EGFRt陽性画分は、再現可能な形で、全細胞のうちの90%を超える細胞を占めた(
図21A及び
図21B)。
【0177】
ROR2 CAR-T細胞の細胞溶解活性
X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞を、上記で記載した通りに作出し、それらの細胞溶解活性を、ROR2陽性であり、fflucを発現する標的細胞系である、T-47D、786-O、及びU266に対する、24時間細胞傷害作用アッセイにおいて評価した(
図20を参照されたい)。ROR2陰性MDA-MB-231対照に対する特異的溶解は、検出されなかった。アッセイは、n=3である、独立の健常ドナーについて、同じ条件下で反復した(
図22)。
【0178】
ROR2 CAR-T細胞のROR2特異的活性化後における、エフェクターサイトカインの分泌
CD4+ X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞、又はCD8+ X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞を、上記で記載した通りに作出し、ROR2を発現する標的細胞系と共に、4:1のE:T比で、24時間にわたり共培養した。インキュベーションの後、細胞培養物上清を回収し、ELISAにより、エフェクターサイトカインである、IL-2及びIFN-γの存在について解析した。対照として、細胞を、ROR2陰性MDA-MB231細胞と共に、又は標的細胞の非存在下(培地対照)で共培養した。目的のエフェクターサイトカインを産生する、CAR-T細胞の全般的能力を制御するために、細胞を、プロテインキナーゼC(PKC)/NF-κB活性化因子である12-ミリスチン酸13-酢酸フォルボール(PMA)、及びCa2+イオノフォアであるイオノマイシンの組合せで、多クローン的に刺激した。アッセイ手順を、n=3である無関連の健常ドナーについて反復し、測定されたサイトカイン濃度を、群ごとの解析(
図23)のために使用した。
【0179】
X3.12ベースのROR2特異的CAR T細胞は、抗原依存性のサイトカイン分泌プロファイルを示した。加えて、サイトカイン分泌レベルは、標的細胞上のROR2発現レベルと相関し、786-O及びU266が、最高度のサイトカイン分泌レベルを示した。一般に、CD4+ T細胞は、CD8+ T細胞より高量のIL-2及びIFN-γを分泌した。IFN-γは、もっぱら、ROR2陽性標的又はPMA/Ionoを含む試料中に検出され、平均濃度は、400~1000pg/mL(CD4+ T細胞)、及び200~500pg/mL(CD8+ T細胞)の範囲であった。IL-2もまた、もっぱら、ROR2陽性標的細胞を含む試料中に検出され、平均濃度は、300~1000pg/ml(CD4+ T細胞)、及び150~300pg/mL(CD8+ T細胞)の範囲であった。
【0180】
ROR2 CAR-T細胞の増殖
CD4+ X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞、又はCD8+ X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞を、記載される通りに作出し、CFSEで標識し、外因性サイトカインの非存在下、致死的線量で照射された、ROR2を発現する標的細胞系と共に、4:1のE:T比で、72時間にわたり共培養した。インキュベーション時間の後、T細胞を回収し、フローサイトメトリーにより、CFSE希釈液について解析した。陰性対照として、CAR-T細胞を、ROR2陰性MDA-MB-231細胞又は培地と共に共培養し、陽性対照として、50UI/mlのIL-2の存在下で共培養した。
【0181】
ROR2陰性MDA-MB-231及び培地単独は、T細胞の増殖を引き起こさなかった。しかし、ROR2陽性標的細胞に対する、X3.12ベースのROR2特異的CAR T細胞について、抗原依存性CAR-T細胞の、高度な増殖が観察された(
図24)。これらの知見は、検出されたROR2 CAR-T細胞の増殖が、ROR2陽性細胞による刺激に応答して、CARにより媒介されたことを裏付ける。
【0182】
(実施例3)
XBR2-401由来のROR2特異的CARノックインT細胞と、X3.12由来のROR2特異的CARノックインT細胞との機能的差違についての詳細な解析
材料及び方法:
ヒト対象
血液試料は、Institutional Review Board of the University of Wuerzburg(Universitaetsklinikum Wuerzburg、UKW)により承認された研究プロトコールに参加するように、説明同意文書を提出した健常ドナーから得た。Ficoll-Hypaque(Sigma社、St.Louis、MO製)上の遠心分離により、末梢血単核細胞(PBMC)を分離した。
【0183】
細胞系
293T細胞系、MDA-MB231細胞系、T-47D細胞系、786-O細胞系、及びU266細胞系は、American Type Culture Collection社から得た。ルシフェラーゼを発現する細胞系は、レンチウイルスによる、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)遺伝子の、上述の細胞系への形質導入により導出した。細胞を、それぞれ、10%のウシ胎仔血清、及び100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補充されたダルベッコ改変イーグル培地、又は10%のウシ胎仔血清、及び100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを補充されたRPMI-1640培地中において培養した。
【0184】
CARノックインT細胞の作出、エンリッチメント、及び拡大
目的の遺伝子の、初代ヒトT細胞のT細胞受容体遺伝子座への、ウイルスフリーノックインについては、最近記載されている(全ての目的で、参照によりその全体において組み込まれる[62])。全てのCAR構築物は、CARの下流において、切断型表皮増殖因子受容体(EGFRt;また、tEGFRとしても公知である)(全ての目的で、参照によりその全体において組み込まれる、参考文献[60]を参照されたい)をコードした。遺伝子は、T2Aリボソームスキップエレメントにより連結された。
【0185】
ヒトT細胞受容体遺伝子座アルファ鎖(TRAC)、CARのCDS、及びEGFRtに対する、2つの相同性配列を含有するHDR鋳型を、カスタム合成により作出し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。CARノックインT細胞は、記載されている[62]通りに作出した。略述すると、CD8+バルクT細胞又はCD4+バルクT細胞を、健常ドナーのPBMCから分取し、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies社製)で活性化させた。3日目に、ウイルスフリーのCARノックインを、hTRAC特異的sgRNA/spCas9リボヌクレオタンパク質(RNP)、及びXBR2-401又はX3.12 CARをコードするカセットを含有する相同性依存性修復鋳型(HDRT)の共電気穿孔により実施した。T細胞を、10%のヒト血清、GlutaMAX(Life Technologies社製)、100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン、及び50U/mLのIL-2を伴うRPMI-1640中で繁殖させた。トリパンブルー染色を、実施して、生存可能T細胞を定量した。拡大の後、EGFRt+ T細胞を、磁気活性化細胞分取によりエンリッチし、致死的線量で照射されたROR2陽性U266フィーダー細胞を伴う多クローン的刺激により拡大した。
【0186】
細胞傷害作用アッセイ、サイトカイン分泌アッセイ、及びCFSE増殖アッセイ
ホタルルシフェラーゼを安定的に発現する標的細胞を、ウェル1つ当たり細胞5×103個の三連で、エフェクター対標的(E:T)比が多様なエフェクターT細胞と共にインキュベートした。標的細胞及びT細胞を含有するウェル内の発光シグナルの低下は、照度計(Tecan社製)を使用して測定した。特異的溶解は、データを正規化するために、TRAC KO T細胞を、それぞれのE:Tで使用し、標準式を使用して計算した。
【0187】
サイトカイン分泌についての解析のために、5×104個のT細胞を、三連ウェル内に、標的細胞と共に、4:1の比で播種し、24時間のインキュベーションの後に採取された上清中において、ELISA(Biolegend社製)により、IFN-γ及びIL-2を測定した。
【0188】
増殖解析のために、5×104個のT細胞を、0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen社製)で標識し、洗浄し、三連ウェル内の、外因性サイトカインを伴わないCTL培地中に、致死的線量で照射された標的細胞と共に、4:1の比で播種した。インキュベーションの72時間後、細胞を、抗CD3 mAb又は抗CD4 mAb又は抗CD8 mAb及び7-AADで標識して、死細胞を、解析から除外した。試料を、フローサイトメトリーにより解析し、生T細胞の細胞分裂を、CFSE希釈法により評価した。
【0189】
xCELLigence殺滅アッセイのために、接着性腫瘍細胞を播種し、16時間にわたり接着させ、CAR-T細胞と共に、1:10のE:T比で、三連においてインキュベートした。インピーダンス値は、15分間隔で、>96時間にわたり測定した。
【0190】
結果
ROR2 CARノックインT細胞の作出、検出、及びエンリッチメント
結合親和性(
図10を参照されたい)の、CARの機能性に対する影響を、制御条件下で検討するために、本発明者らは、CARのhTRAC遺伝子座ノックインを用いることに決めた。この手法は、複数のCARのT細胞ゲノムへの挿入による利益の追加をなくすことで、結合親和性の、CAR-T細胞の機能性に対する影響を、ゲノム内の、単一CARコピーの存在下において検討することを可能とした。
【0191】
Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離により、健常ドナーに由来するPBMCを分離し、MACSを使用して、この細胞集団から、バルクのCD4+ヒトT細胞又はCD8+ヒトT細胞を抽出した。分離の直後、T細胞を、CD3/28 Dynabeadsにより、2日間にわたり活性化させ、CARのノックインを、既に記載されている通りに実施した。Dynabeadsを、ノックインの4日後に除去し、10日目に、T細胞を、ビオチニル化モノクローナルαEGFR抗体による標識付け、及び抗ビオチンマイクロビーズによるMACSを介して、EGFRt陽性細胞についてエンリッチした。エンリッチメントの後、EGFRt陽性画分中のROR2-CARノックインT細胞は、再現可能な形で、約75~85%であった。しかし、蛍光強度中央値(MFI)が、レンチウイルスにより作出されたROR2 CAR-T細胞と比較して、著明に低値であったことは、TRAC遺伝子座への組込み時における、CAR発現パターンの、より緊密な制御を指し示す(
図21、
図25A、及び
図25B)。ヒトT細胞において、CD3及びTCRは、一体に、細胞表面へと送達される。TCRの非存在下では、CD3が、細胞表面上にもはや存在しないこともまた、CD3を、TCRのノックアウト効率に適するサロゲートマーカーにする(
図25A及び
図25B、右図を参照されたい)。
【0192】
ROR2 CAR-T細胞の細胞溶解活性
CAR-T細胞を、上記で記載した通りに作出し、それらの細胞溶解活性を、ROR2陽性であり、fflucを発現する標的細胞系である、T-47D、786-O、及びU266に対する、24時間細胞傷害作用アッセイにおいて評価した(
図20)。ROR2陰性MDA-MB-231対照に対する特異的溶解は、検出されなかった。X3.12ベースのCARノックインT細胞は、この状況下において、一貫して、XBR2-401ベースのCAR T細胞を凌駕した(
図26A)。アッセイは、n=3である、独立の健常ドナーについて、同じ条件下で反復した(
図26B)。
【0193】
加えて、xCELLigenceプラットフォームを利用して、CAR結合親和性の、CAR-T細胞の機能性に対する効果を、より詳細に検討した。細胞に対してチャレンジを行うために、本発明者らは、低E:T比(1:10)を用いることに決めた。驚くべきことに、XBR2-401ベースのCARノックインT細胞が、これらの条件下で、786-O腫瘍の増殖を制御することができなかったのに対し、X3.12ベースのCARノックインT細胞は、786-O細胞を、効率的に根絶した(
図26C)。
【0194】
ROR2 CAR-T細胞のROR2特異的活性化後における、エフェクターサイトカインの分泌
CD4+ CAR-T細胞、又はCD8+ CAR-T細胞を、上記で記載した通りに作出し、致死的線量で照射された、ROR2を発現する標的細胞系と共に、4:1のE:T比で、24時間にわたり共培養した。インキュベーションの後、細胞培養物上清を回収し、ELISAにより、エフェクターサイトカインである、IL-2及びIFN-γの存在について解析した。対照として、細胞を、ROR2陰性MDA-MB231細胞と共に、又は標的細胞の非存在下(培地対照)で共培養した。目的のエフェクターサイトカインを産生する、CAR-T細胞の全般的能力を制御するために、細胞を、プロテインキナーゼC(PKC)/NF-κB活性化因子である12-ミリスチン酸13-酢酸フォルボール(PMA)、及びCa2+イオノフォアであるイオノマイシンの組合せで、多クローン的に刺激した。アッセイ手順を、最大でn=3である、無関連の健常T細胞ドナーについて反復し、測定されたサイトカイン濃度を、群ごとの解析(
図27)のために使用した。
【0195】
IFN-γ及びIL-2のいずれも、もっぱら、ROR2陽性標的細胞を含む試料中で検出された。ここでもまた、サイトカイン分泌は、抗原発現レベルに、高度に依存し(
図20を参照されたい)、786-O及びU266が、最高度のサイトカイン分泌を誘導した。結合剤の高親和性と、高サイトカイン分泌との全般的相関は、特に、抗原発現が低度である標的細胞(U266)、及び極めて低度である標的細胞(T-47D)について成り立った。この効果は、T-47D細胞について、特に、明らかであった。XBR2-401ベースのCARノックインT細胞により分泌されたサイトカインのレベルが、バックグラウンドをわずかに上回るに過ぎなかったのに対し、X3.12ベースのCARノックインT細胞は、300~1200pg/mLのIL-2、及び300~2000pg/mLのIFN-γを、一貫して分泌した。
【0196】
ROR2 CAR-T細胞の増殖
CD4+ CAR-T細胞、又はCD8+ CAR-T細胞を、記載される通りに作出し、CFSEで標識し、外因性サイトカインの非存在下、致死的線量で照射された、ROR2を発現する標的細胞系と共に、4:1のE:T比で、72時間にわたり共培養した。インキュベーション時間の後、T細胞を回収し、フローサイトメトリーにより、CFSE希釈液について解析した。陰性対照として、CAR-T細胞を、ROR2陰性MDA-MB-231細胞又は培地と共に共培養し、陽性対照として、50UI/mlのIL-2の存在下で共培養した。
【0197】
ROR2陰性MDA-MB-231及び培地単独は、2つのCARのうちのいずれかを発現するT細胞の増殖を引き起こさなかった。しかし、ROR2陽性標的細胞を使用したところ、それらのそれぞれのCARを介して、CAR-T細胞の活性化がなされると、抗原依存性細胞の、高度な増殖が観察された(
図28)。これらの知見は、検出されたROR2 CAR-T細胞の増殖が、ROR2陽性細胞による刺激に応答して、CARにより媒介されたことを裏付ける。全ての場合に、X3.12ベースのCARノックインT細胞は、ROR2陽性腫瘍細胞に対する、XBR2-401ベースのCARノックインT細胞より高度の増殖を示した。
【0198】
結論
まとめると、本発明者らの知見は、X3.12ベースのCARノックインT細胞の、XBR2-401ベースのCARノックインT細胞に対する優越性を強調する。X3.12ベースのCARノックインT細胞は、全てのアッセイにおいて、一貫して、XBR2-401ベースのCARノックインT細胞を凌駕した。
【0199】
本発明者らのデータは、X3.12の親和性の増大が、CAR-T細胞による処置後における腫瘍の再発の、最大の原因であることが報告されている、抗原発現が低度である状況においても、CAR T細胞に、さらなる利点をもたらすことを指し示す。
【0200】
(実施例4)
ヒト化ROR2 CARについての機能的検証
材料及び方法:
ヒト対象
血液試料は、Institutional Review Board of the University of Wuerzburg(Universitaetsklinikum Wuerzburg、UKW)により承認された研究プロトコールに参加するように、説明同意文書を提出した健常ドナーから得た。Ficoll-Hypaque(Sigma社、St.Louis、MO製)上の遠心分離により、末梢血単核細胞(PBMC)を分離した。
【0201】
細胞系
HEK-293T細胞系、T-47D細胞系、786-O細胞系、及びU266細胞系は、American Type Culture Collection社から得た。OPM-2細胞は、DSMZから得た。ルシフェラーゼを発現する細胞系は、レンチウイルスによる、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)遺伝子の、上述の細胞系への形質導入により導出した。細胞を、それぞれ、10%のウシ胎仔血清、及び100U/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補充されたダルベッコ改変イーグル培地、又は10%のウシ胎仔血清、及び100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを補充されたRPMI-1640培地中において培養した。
【0202】
レンチウイルスベクターの構築、レンチウイルスの調製、及びCAR-T細胞の作出
ROR2特異的CARを、最適のスペーサー、及びcd28共刺激ドメイン又は4-1BB共刺激ドメインと共に含有する、epHIV7レンチウイルスベクターの構築については、記載されている(全ての目的で、参照によりその全体において組み込まれる、参考文献[58、59]を参照されたい)。全てのCAR構築物は、CARの下流において、切断型表皮増殖因子受容体(EGFRt;また、tEGFRとしても公知である)(全ての目的で、参照によりその全体において組み込まれる、参考文献[60]を参照されたい)をコードした。遺伝子は、T2Aリボソームスキップエレメントにより連結された。
【0203】
CAR/EGFRt及びffluc/eGFPをコードするレンチウイルスの上清は、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech社、Mountain View、CA製)を使用して、レンチウイルスベクタープラスミド、並びにパッケージングベクターである、pCHGP-2、pCMV-Rev2、及びpCMV-Gの各々を共トランスフェクトされた293T細胞内で産生された。培地は、トランスフェクションの16時間後に交換し、レンチウイルスは、72時間後に回収した。CAR-T細胞は、記載されている[61]通りに作出した。略述すると、CD8+バルクT細胞又はCD4+バルクT細胞を、健常ドナーのPBMCから分取し、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies社製)で活性化させ、レンチウイルス上清により形質導入した。レンチウイルスによる形質導入を、2日目に、スピノキュレーションを介して実施し、T細胞を、10%のヒト血清、GlutaMAX(Life Technologies社製)、100U/mLのペニシリン-ストレプトマイシン、及び50U/mLのIL-2を伴うRPMI-1640中で繁殖させた。トリパンブルー染色を、実施して、生存可能T細胞を定量した。拡大の後、EGFRt+ T細胞を、磁気活性化細胞分取によりエンリッチし、CD3特異的Okt3抗体、並びに照射同種PBMC及びEBV-LCLフィーダー細胞を伴う多クローン的刺激により拡大した。
【0204】
細胞傷害作用アッセイ、サイトカイン分泌アッセイ、及びCFSE増殖アッセイ
ホタルルシフェラーゼを安定的に発現する標的細胞を、ウェル1つ当たり細胞5×103個の三連で、エフェクター対標的(E:T)比が多様なエフェクターT細胞と共にインキュベートした。標的細胞及びT細胞を含有するウェル内の発光シグナルの低下は、照度計(Tecan社製)を使用して測定した。特異的溶解は、TCR媒介細胞溶解を補正するように、それぞれのE:Tで、非形質導入T細胞を使用する標準式を使用して計算した。逐次的殺滅アッセイのために、T細胞に、24時間ごとに、規定されたE:T比で、採取したての腫瘍細胞に対して再びチャレンジを行った。
【0205】
サイトカイン分泌についての解析のために、5×104個のT細胞を、三連ウェル内に、標的細胞と共に、4:1の比で播種し、24時間のインキュベーションの後に採取された上清中において、ELISA(Biolegend社製)により、IFN-γを測定した。
【0206】
増殖解析のために、5×104個のT細胞を、0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen社製)で標識し、洗浄し、三連ウェル内の、外因性サイトカインを伴わないCTL培地中に、致死的線量で照射された標的細胞と共に、4:1の比で播種した。インキュベーションの72時間後、細胞を、抗CD3 mAb又は抗CD4 mAb又は抗CD8 mAb及び7-AADで標識して、死細胞を、解析から除外した。試料を、フローサイトメトリーにより解析し、生T細胞の細胞分裂を、CFSE希釈法により評価した。増殖指数、拡大指数、及び任意のそれぞれの回数の細胞分裂を経た細胞の割合は、FlowJo(Tree Star社製)を使用して抽出した。
【0207】
結果
ROR2 CAR-T細胞の作出、検出、及びエンリッチメント
Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離により、健常ドナーに由来するPBMCを分離し、MACSを使用して、この細胞集団から、バルクのCD4+ヒトT細胞又はCD8+ヒトT細胞を抽出した。分離の直後、T細胞を、CD3/28 Dynabeadsにより、1日間にわたり活性化させ、次いで、スピノキュレーションにより、X3.12ベースのROR2特異的CAR、hX3.12.5ベースのROR2特異的CAR、又はhX3.12.6ベースのROR2特異的CARをコードするレンチウイルスベクターを、3の感染多重度(MOI)で形質導入した。Dynabeadsを、形質導入の4日後に除去し、10日目に、T細胞を、ビオチニル化モノクローナルαEGFR抗体による標識付け、及び抗ビオチンマイクロビーズを使用するMACSを介して、EGFRt陽性細胞についてエンリッチした。エンリッチメントの後、EGFRt陽性画分は、再現可能な形で、全細胞のうちの89%を超える細胞を占めた(
図29A及び
図29B)。
【0208】
ヒト化ROR2 CAR-T細胞の細胞溶解活性
CAR-T細胞を、上記で記載した通りに作出し、それらの細胞溶解活性を、ROR2陽性であり、fflucを発現する標的細胞系である、T-47D、786-O、及びU266、並びにROR2陰性OPM-2細胞に対する、24時間細胞傷害作用アッセイにおいて評価した(
図30Aを参照されたい)。アッセイは、n=3である、独立の健常ドナーについて、同じ条件下で反復した(
図30B)。hX3.12.5が、X3.12由来CAR-T細胞及びhX3.12.6由来CAR-T細胞の両方と比較した、細胞溶解活性の低減を示したことは、biAbフォーマットのhX3.12.5及びhX3.12.6を利用した、かつての研究と符合した。この効果は、抗原発現が低度である状況(T-47D)においてより顕著であり、中程度の抗原密度(786-O)及び高度の抗原密度(U-266)の存在下で低下した。ROR2陰性OPM-2対照に対する特異的溶解は、検出されなかった(
図31)。統計学的解析は、反復測定値に対するANOVA、及びダネット多重比較検定による、対応のある比較(n.s.:非有意、
*=p<0.05、
**=p<0.01、
***、p<0.001である)に基づく。
【0209】
ROR2 CAR-T細胞のROR2特異的活性化後における、エフェクターサイトカインの分泌
CD4+ X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞、CD4+ hX3.12.5ベースのROR2特異的CAR-T細胞、及びCD4+ hX3.12.6ベースのROR2特異的CAR-T細胞、又はCD8+ X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞、CD8+ hX3.12.5ベースのROR2特異的CAR-T細胞、及びCD8+ hX3.12.6ベースのROR2特異的CAR-T細胞を、上記で記載した通りに作出し、ROR2を発現する標的細胞系と共に、4:1のE:T比で、24時間にわたり共培養した。インキュベーションの後、細胞培養物上清を回収し、ELISAにより、エフェクターサイトカインであるIFN-γの存在について解析した。対照として、細胞を、ROR2陰性OPM-2細胞と共に、又は標的細胞の非存在下(培地対照)で共培養した。目的のエフェクターサイトカインを産生する、CAR-T細胞の全般的能力を制御するために、細胞を、プロテインキナーゼC(PKC)/NF-κB活性化因子である12-ミリスチン酸13-酢酸フォルボール(PMA)、及びCa2+イオノフォアであるイオノマイシンの組合せで、多クローン的に刺激した。アッセイ手順を、n=3である無関連の健常ドナーについて反復し、測定されたサイトカイン濃度を、群ごとの解析(
図32)のために使用した。
【0210】
3つのROR2特異的CAR T細胞バリアントは、全て、抗原依存性のサイトカイン分泌プロファイルを示した。サイトカイン分泌レベルが、抗原発現レベルにより影響を受けた程度は、細胞溶解による影響より低度であった。一般に、CD4+ T細胞は、CD8+ T細胞より高量のIFN-γを分泌した。IFN-γは、もっぱら、ROR2陽性標的又はPMA/Ionoを含む試料中に検出され、平均濃度は、600~2200pg/mL(CD4+ T細胞)、及び100~1200pg/mL(CD8+ T細胞)の範囲であった。hX3.12.5ベースのROR2特異的CAR T細胞は、CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞のいずれにおいても、より低量のIFN-γ分泌をもたらした。X3.12ベースのCAR T細胞及びhX3.12.6ベースのCAR T細胞について、IFN-γ分泌の統計学的有意差は見出すことができなかった。統計学的解析は、反復測定値に対するANOVA、及びダネット多重比較検定による、対応のある比較(n.s.:非有意、*=p<0.05、**=p<0.01、***、p<0.001である)に基づく。
【0211】
ROR2 CAR-T細胞の増殖
CD4+ X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞、又はCD8+ X3.12ベースのROR2特異的CAR-T細胞を、記載される通りに作出し、CFSEで標識し、外因性サイトカインの非存在下、致死的線量で照射された、ROR2陽性標的細胞系と共に、4:1のE:T比で、72時間にわたり共培養した。インキュベーション時間の後、T細胞を回収し、フローサイトメトリーにより、CFSE希釈液について解析した。陰性対照として、CAR-T細胞を、ROR2陰性OPM-2細胞又は培地と共に共培養し、陽性対照として、50UI/mlのIL-2の存在下で共培養した。
【0212】
ROR2陰性OPM-2及び培地単独は、T細胞の増殖を引き起こさなかった。しかし、ROR2陽性標的細胞に対する、3つのROR2特異的CAR T細胞全てについて、抗原依存性CAR-T細胞の、高度な増殖が観察された(
図33)。増殖レベルが、抗原発現レベル(T-47D<786-O<U-266)に依存したことは、細胞溶解アッセイから得られたデータと符合した。全ての発現レベルにおいて、CAR T細胞の増殖の、顕著に異なる差違が検出され、X3.12ベースのCAR T細胞及びhX3.12.6ベースのCAR T細胞は、hX3.12.5由来のCAR T細胞を凌駕した。hX3.12.5ベースのCAR T細胞が、X3.12ベースのCAR T細胞、及びhX3.12.6ベースのCAR T細胞ほど高度に増殖しなかったことは、かつての知見と符合したが、X3.12ベースのCARと、hX3.12.6ベースのCARと間で、抗原依存性T細胞の増殖の、統計学的有意差は見出されなかった。統計学的解析は、反復測定値に対するANOVA、及びダネット多重比較検定による、対応のある比較(n.s.:非有意、
*=p<0.05、
**=p<0.01、
***、p<0.001である)に基づく。これらの知見は、検出されたROR2 CAR-T細胞の増殖が、ROR2陽性細胞による刺激に応答して、CARにより媒介されたことを裏付ける。
【0213】
結論
まとめると、本発明者らの知見は、結合剤のヒト化は、作出されたCAR T細胞の効力に影響を及ぼし、元の結合剤の効力と同等な効力は、最適の結合剤のヒト化により有利に達成されうることを示す。この解析において、本発明者らは、ヒト化hX3.12.6由来のCAR-T細胞が、抗原依存性細胞溶解、サイトカイン分泌、及び増殖に関して、親クローン(X3.12)に基づくCAR-T細胞と、少なくとも同等に強力であることを示すことができたのに対し、hX3.12.5ベースのROR2 CAR-T細胞は、細胞溶解、サイトカイン分泌、及び増殖の低減を示した。加えて、本発明者らのデータは、hX3.12.5に対する、hX3.12.6及びX3.12の優越性が、CAR-T細胞による処置後における腫瘍の再発の大きな理由であることが報告されている、抗原発現が低度である状況において、特に、有益でありうることを指し示す。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明に従う抗体及び誘導体は、医薬品及び診断用製品の製造についての公知の基準に従う、例えば、本明細書で規定される使用のための(例えば、本明細書で規定されるがんを処置するための)製品として産業的に製造及び販売されうる。したがって、本発明は、産業的に、適用可能である。
【0215】
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66. Y. Cao, D. T. Rodgers, J. Du, I. Ahmad, E. N. Hampton, J. S. Ma, M. Mazagova, S. H. Choi, H. Y. Yun, H. Xiao, P. Yang, X. Luo, R. K. Lim, H. M. Pugh, F. Wang, S. A. Kazane, T. M. Wright, C. H. Kim, P. G. Schultz, T. S. Young, Angew Chem Int Ed Engl 2016, 55, 7520-7524.
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【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖可変ドメインと、重鎖可変ドメインとを含み、重鎖可変ドメインが、配列番号23、配列番号24、及び配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含み、前記CDR3配列が、配列番号36のアミノ酸配列を有さない、ヒトROR2に結合することが可能な抗体、又はヒトROR2に結合することが可能なその誘導体。
【請求項2】
重鎖可変ドメインが、配列番号24、及び配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を
含み、任意選択で、重鎖可変ドメインが、配列番号24のアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項3】
重鎖可変ドメインが、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、及び配列番号38からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項4】
重鎖可変ドメインが、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、及び配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を
含み、任意選択で、重鎖可変ドメインが、配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項5】
軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3配列、又は配列番号43のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR3配列を
含み、任意選択で、軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3配列、又は配列番号43のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR3配列を含み、任意選択で、軽鎖可変ドメインが、配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項6】
重鎖可変ドメインが、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号45のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を
含み、任意選択で、重鎖可変ドメインが、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号45のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を含み、任意選択で、重鎖可変ドメインが、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2配列を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項7】
軽鎖可変ドメインが、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号41のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を
含み、任意選択で、軽鎖可変ドメインが、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号41のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を含み、任意選択で、軽鎖可変ドメインが、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1配列を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項8】
軽鎖可変ドメインが、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号42のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を
含み、任意選択で、軽鎖可変ドメインが、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2配列、又は配列番号42のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR2配列を含み、任意選択で、軽鎖可変ドメインが、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2配列を含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項9】
重鎖可変ドメインが、配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号44のアミノ酸配列と、2つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を
含み、任意選択で、重鎖可変ドメインが、配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1配列、又は配列番号44のアミノ酸配列と、1つを超えないアミノ酸残基異なるCDR1配列を含み、任意選択で、重鎖可変ドメインが、配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1配列を含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項10】
表面プラズモン共鳴測定により決定して、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインと、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインとを含む、対応する抗体又は誘導体より高度の親和性で、ヒトROR2に結合することが可能である、請求項1
、2及び
4から
9のいずれか一項に記載の抗体又は誘導体。
【請求項11】
(i)重鎖可変ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、又は(ii)重鎖可変ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は(iii)重鎖可変ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含み、
任意選択で、ヒト化抗体又はその誘導体である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項12】
(ii)重鎖可変ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、又は(iii)重鎖可変ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1から
11のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項13】
二重特異性抗体又はその誘導体で
あり、二重特異性抗体又はその誘導体がまた、任意選択で、ヒトCD3に結合することが可能でもある、請求項1から
12のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項14】
抗体の誘導体で
あり、誘導体が、任意選択で、
(a)Fab又は二重特異性scFv-Fcである抗体断片、
(b)CAR、又は
(c)ユニバーサルCARのためのアダプターを含む誘導体
である、請求項1から
13のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか一項に記載の抗体又は誘導体をコードする核酸。
【請求項16】
mRNA
又はDNAで
あり、DNAが、任意選択で、ミニサークルDNA又はプラスミドDNAである、請求項
15に記載の核酸。
【請求項17】
請求項
14(b)に記載のCARを含む組換え免疫細胞、及び/又は請求項
14(b)に記載のCARをコードする、請求項
15又は16に記載の核酸を含む組換え免疫細胞。
【請求項18】
前記免疫細胞が、CD8+キラーT細胞、CD4+ヘルパーT細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、メモリーステムセルT細胞、インバリアントT細胞、NKT細胞、サイトカイン誘導キラーT細胞、g/d T細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、又は顆粒球である、請求項
17に記載の組換え免疫細胞。
【請求項19】
前記免疫細胞が、T細胞である、請求項
17又は
18に記載の組換え免疫細胞。
【請求項20】
(i)請求項
14(a)又は
14(c)に記載の抗体又はその誘導体;
(ii)請求項
14(b)に記載のCARをコードする、請求項
15又は16に記載の核酸;
(iii)請求項
17から
19のいずれか一項に記載の組換え免疫細胞;又は
(iv)(i)と(ii)との組合せ、(i)と(iii)との組合せ、若しくは(i)~(iii)の組合せ
を含む医薬組成物。
【請求項21】
がんの処置における使用のための、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
がんが、ROR2を発現するがんで
あり、任意選択で、血液がん又は固形がんである、請求項
21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
がんが、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膵臓がん、肉腫、神経膠芽腫、及び乳癌からなる群から選択される、請求項
21又は22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
化合物が、
(i)請求項1から
13、14(a)又は
14(c)のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体;
(ii)請求項
14(b)に記載のCARをコードする、請求項
15又は16に記載の核酸;
(iii)請求項
17から
19のいずれか一項に記載の組換え免疫細胞;又は
(iv)(i)と(ii)との組合せ、(i)と(iii)との組合せ、若しくは(i)~(iii)の組合せ
である、がんの診断のための化合物の使用。
【請求項25】
化合物が、
(i)請求項1から
13、14(a)又は
14(c)のいずれか一項に記載の抗体又はその誘導体;
(ii)請求項
14(b)に記載のCARをコードする、請求項
15又は16に記載の核酸;
(iii)請求項
17から
19のいずれか一項に記載の組換え免疫細胞;又は
(iv)(i)と(ii)との組合せ、(i)と(iii)との組合せ、若しくは(i)~(iii)の組合せ
である、がんの、治療に対する感受性を決定するための化合物の使用。
【国際調査報告】