(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】壊し得るシールが付いたポーチ
(51)【国際特許分類】
B65B 29/10 20060101AFI20230420BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20230420BHJP
B65D 81/32 20060101ALI20230420BHJP
B65D 83/08 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B65B29/10
A61J1/10 333C
B65D81/32 D
B65D83/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555618
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 US2021022560
(87)【国際公開番号】W WO2021188533
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516083298
【氏名又は名称】ベルテック アソシエイツ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VELTEK ASSOCIATES, INC.
【住所又は居所原語表記】15 Lee Boulevard, Malvern, Pennsylvania 19355 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】バレストリ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルタート アーサー エル.
【テーマコード(参考)】
3E013
3E014
4C047
【Fターム(参考)】
3E013AB05
3E013AC13
3E013AD36
3E013AE12
3E013AF17
3E013AF29
3E014LA02
4C047AA13
4C047BB04
4C047BB13
4C047BB19
4C047BB28
(57)【要約】
ワイプポーチは、第1の化学物質を収容する第1のコンパートメントと、第2の化学物質を収容する第2のコンパートメントと、乾燥ワイプを収容する第3のコンパートメントとを有する。第1のカップリングアセンブリ(第1の壊すことができるシール)は、第1のコンパートメントと第2のコンパートメントとを結合し、第1のコンパートメントが第2のコンパートメントと連通しない閉じた構成と、第1のコンパートメントが第2のコンパートメントと連通する開いた構成とを有する。第2のカップリングアセンブリ(第2の壊すことができるシール)は、第2のコンパートメントと第3のコンパートメントとを結合し、第2のコンパートメントが第3のコンパートメントと連通しない閉じた構成と、第2のコンパートメントが第3のコンパートメントと連通する開いた構成とを有する。使用するときは、第1の壊すことができるシールを破り、第1のコンパートメント内の漂白剤と第2のコンパートメント内のWFIとを混合する。次に、ユーザは、第2の壊すことができるシールを破って、第3のコンパートメント内のワイプを第1および第2のコンパートメントからの漂白剤/WFIの混合物で浸潤させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の化学物質を収容する第1のコンパートメントと、
第2の化学物質を収容する第2のコンパートメントと、
乾燥ワイプを収容する第3のコンパートメントと、
前記第1のコンパートメントと前記第2のコンパートメントとを結合する第1のカップリングアセンブリであって、前記第1のコンパートメントが前記第2のコンパートメントと連通しない閉じた構成と、前記第1のコンパートメントが前記第2のコンパートメントと連通する開いた構成とを含む第1のカップリングアセンブリと、
前記第2のコンパートメントと前記第3のコンパートメントとを結合する第2のカップリングアセンブリであって、前記第2のコンパートメントが前記第3のコンパートメントと連通しない閉じた構成と、前記第2のコンパートメントが前記第3のコンパートメントと連通する開いた構成とを含む第2のカップリングアセンブリとを有するワイプポーチ。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1および/または前記第2のコンパートメントに結合された少なくとも一方向の充填弁をさらに有する、ポーチ。
【請求項3】
請求項2において、
前記少なくとも一方向の充填弁は、液体が前記第1および/または前記第2のコンパートメントから漏れるのを防止しながら、前記第1および/または前記第2のコンパートメントに前記液体が充填されるように構成されている、ポーチ。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1、第2のコンパートメントに結合された第1の一方向充填弁と、前記第2のコンパートメントに結合された第2の一方向充填弁とをさらに有する、ポーチ。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の一方向充填弁は、ある液体が前記第1のコンパートメントから逃げるのを防止しながら、前記第1のコンパートメントにその液体が充填されるように構成され、前記第2の一方向充填弁は、ある液体が前記第2のコンパートメントから逃げるのを防止しながら、前記第2のコンパートメントにその液体が充填されるように構成されている、ポーチ。
【請求項6】
請求項1において、
前記第1および前記第2のカップリングアセンブリは、それぞれ、壊れやすいシールを含む、ポーチ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記第1のカップリングアセンブリは、前記第2のカップリングアセンブリよりも弱く、それによって、前記第1のカップリングアセンブリは、前記第2のカップリングアセンブリを開かずに開かれ、前記第1の化学物質と前記第2の化学物質とが連通する、ポーチ。
【請求項8】
第1の化学物質を収容する第1のコンパートメントと、第2の化学物質を収容する第2のコンパートメントと、乾燥ワイプを収容する第3のコンパートメントと、前記第1のコンパートメントと前記第2のコンパートメントとを選択的に結合するための第1のカップリングアセンブリと、前記第2のコンパートメントと前記第3のコンパートメントとを選択的に結合するための第2のカップリングアセンブリとを有するポーチの使用方法であって、
前記第1のカップリングアセンブリを、前記第1のコンパートメントが前記第2のコンパートメントと連通しない、閉じた構成に維持することと
前記第2のカップリングアセンブリを、前記第2のコンパートメントが前記第3のコンパートメントと連通しない、閉じた構成に維持することと、
前記第1のカップリングアセンブリを壊して、前記第1のカップリングアセンブリを、前記第1のコンパートメントが前記第2のコンパートメントと連通して前記第1および前記第2の化学物質が混合される、開かれた構成にすることと、
前記第2のカップリングアセンブリを壊して、前記第2のカップリングアセンブリを、前記第2のコンパートメントが前記第3のコンパートメントと連通して前記第1および前記第2の化学物質を混合したもので前記ワイプが浸潤された状態にする、開かれた構成にすることとを有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2020年3月16日に出願された米国仮出願番号62/990,220号および2020年9月11日に出願された米国仮出願番号63/077,313号の利益を主張し、その全体が本開示に参照によって組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、クリーンルーム環境において、失活(不活性化)、汚染除去、および消毒または洗浄に使用される払拭キット(拭き取りキット、ワイプキット)、ならびにその準備と使用の方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
清浄な環境または制御された環境とは、製品の粒子および微生物による汚染を防ぐために設計され、維持され、制御される空間である。清浄な環境には、クリーンルームおよび清浄な作業スペース(フード付きのワークスペースなど)が含まれ、これらは以下においてクリーンルームと総称される。クリーンルームは、幾つかの例としては、医薬、バイオテクノロジー、およびヘルスケア産業などにおける製造施設ならびに医学的研究および処理施設で使用するために最も一般的に設計されている。滅菌クリーンルーム環境は、国際標準化機構(「ISO:International Organization of Standardization」)のクリーンルーム基準を含むさまざまな分類方式に従って分類することができ、最高レベルの滅菌はISO1クリーンルームであり、通常の大気環境(滅菌なし)はISO9に分類される。
【0004】
クリーンルーム内で使用される特定の化学組成物は、例えば、フェノール、クリーナー、第四級アンモニウム、過酢酸のような殺菌性の消毒剤、ならびに過酢酸、漂白剤および過酸化水素のような種々の殺胞子剤を含む。殺菌剤および殺胞子剤は、クリーンルーム内でクリーンルームの表面を消毒(殺菌)するために使用される。ヘルスケア業界などの特定のクリーンルーム環境では、表面が特定の有害な薬物に曝される可能性がある。このような状況では、クリーンルーム内の技術者およびその他の労働者に対する職業上の暴露リスク、ならびにクリーンルーム内で作成されている製品や化学物質に対するリスクを低減するために、作業面の有害な薬剤を不活性化して汚染除去できる化学物質が必要とされる。有害薬物に暴露された表面の不活性化、除染および消毒/洗浄の方法は、米国薬局方協定(USP:U.S. Pharmacopeial Convention)に示されたUSP<800>およびUSP<797>に示された要件を満たさなければならない。クリーンルーム滅菌の従来の方法は、有害な薬物を十分に不活性化(失活)するのではなく、代わりに、影響を受けた表面の周りに単に薬剤を広げるものであるため、この目的には不適合である。一方、有害物質を不活性化する可能性のある製品は、ISO5に分類されるクリーンルーム内での使用には適していない。
【0005】
さらに、普通では無菌ではない化学的組成物は、汚染の危険性を避けるためにクリーンルームに入る前に滅菌する必要がある。このような組成物は、クリーンルーム内で、フィルターでろ過することによって滅菌してもよく、クリーンルームに入る前に滅菌してもよい。
【0006】
クリーンルームの外側の組成物を滅菌するために、集められた組成物を照射により最終滅菌してもよく、無菌処理してもよい。組成物を最終照射殺菌するために、組成物は容器に入れられ、二重に袋詰めされ、さらに、ライナー付きカートンに入れられる。次いで、カートン全体が放射線によって最終滅菌される。組成物を最終照射殺菌するための手順は、例えば、Vellutatoに付与された米国特許第6,123,900号で説明されており、それに開示された内容は参照され、本出願に組み込まれる。しかしながら、クリーンルームで使用される化学物質の中には、その化学的な構成と構造のために照射することができないものがある。例えば、クリーンルーム内で有害な薬剤を不活性化し、汚染除去するために使用される特定の化学物質は、照射することができない。このため、そのような化学物質をクリーンルーム環境に持ち込むには問題が生じ、滅菌プロセスも複雑になる。
【0007】
本発明は、クリーンルーム内の滅菌表面からの有害薬剤の不活性化、汚染除去、および消毒/洗浄を改善する不活性化ワイプキットに関するものである。本発明の不活性化ワイプキットは、クリーンルーム環境の外部で放射線照射でき、クリーンルームへ、より効率的に移送および導入できる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様は、1つまたは複数の脆弱な(壊すことができる、壊しやすい)シールによって分離された複数のコンパートメント(区画、区域)を備えたワイプポーチ(拭き取り用のポーチ(容器))を用いることである。このワイプポーチは、乾燥ワイプを含む第1のコンパートメントと、一方向充填弁が連結された第2のコンパートメントと、第1のコンパートメントと第2のコンパートメントとを連結(結合)するカップリングアセンブリ(連結アセンブリ、壊すことができる脆弱なシールなど)とを有してもよい。閉じた構成では、第1のコンパートメントは、第2のコンパートメントと連通(例えば、空気または液体が)しない。開いた構成では、第1のコンパートメントは第2のコンパートメントと連通する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明、およびそれに付随する多くの利点は、添付の図面を勘案して以下の詳細な説明を参照することにより得られ、さらに、より容易に理解されるであろう。
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による不活性化ワイプキットの正面斜視図である。
【0011】
【
図2】本発明の一実施形態による、一方向弁を有する不活性化ワイプキットの第1のポーチの正面平面図である。
【0012】
【0013】
【
図4】本発明の一実施形態による不活性化ワイプキットを準備(作成)する方法のステップを概説するフローチャートである。
【0014】
【
図5】本発明の一実施形態による不活性化ワイプキットを使用する方法のステップを概説するフローチャートである。
【0015】
【
図6】本発明の別の実施形態によるポーチの斜視図であり、第1および第2の袋層の間の縦方向に側壁を有するものである。
【0016】
【
図7】第1および第2の袋層の縦方向および横方向が、側壁を持たずに、互いに直接ヒートシールされているポーチの斜視図である。
【0017】
【
図8】3つのコンパートメントを有する本発明の一実施形態に係るポーチの正面図である。
【0018】
【0019】
【
図10】大きさの異なる3つのコンパートメントを有するポーチである。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【
図15】2つのコンパートメントを有する本発明の他の実施形態を示す図である。
【詳細な説明】
【0025】
図1を参照すると、不活性化ワイプキット(失活払拭キット、不活性化拭き取りキット、deactivation wipe kit)100が示されている。本明細書ではしばしば用いるが、「拭き取りキット(拭き取り用のキット、払拭キット、ワイプキット)」という用語は、不活性化ワイプキット100を指すために使用される。一実施形態では、ワイプキット100は、3つのポーチ(袋、袋状の容器、パウチ、pouches)102、104、106を含む。これらのポーチの各々には、クリーンルーム環境で有害な薬物を不活性化(失活)および汚染除去し、作業面(作業台、調製台、調製面、調合面)を消毒するために使用される異なる化学物質に浸潤した(浸された、飽和した)1枚のワイプ(拭き取り材、払拭材)が含まれる。使用する際は、技術者は、ポーチ102、104、106のそれぞれから各ワイプを取り出して順番に汚染された作業面に用いる、すなわち、第1のポーチ102内のワイプが最初に使用され、第2のポーチ104内のワイプが2番目に使用され、第3のポーチ106内のワイプが最後に使用される。このように使用されると、不活性化ワイプキット100は、米国薬局方協定(USP)によって定められているUSP<800>およびUSP<797>により規定されているように、ISO5クリーンルームなどの滅菌調製物(滅菌製剤)を調合するための作業環境から、ほとんどの有害な薬物を不活性化し、汚染除去し、滅菌/洗浄する。
【0026】
一実施形態では、第1のポーチ102は、5.25%次亜塩素酸塩溶液、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(例えば、ペンシルベニア州マルバーンのベルテックアソシエイツ社から市販されているHYPO-CHLOR(登録商標))に浸潤したワイプ(払拭材)を含む。この組成物は、有害な1つまたは複数の薬物を不活性化する主要な(最初の)作用物質である。これは、調製用(作業用)の表面上に存在し得る潜在的な活性化薬物を不活性化するとともに、次に取り扱う人のために、その表面を安全に、また汚染除去された状態とし、有害な薬物(医療施設における取り扱い)に関するUSP<800>とともに、患者保護プロトコルの滅菌製剤の調合に関するUSP<797>を遵守した製剤の調合を確実に行えるようにする。次亜塩素酸ナトリウムの使用が好ましいが、有害な薬物を不活性化させることが知られている任意の化学薬品を、第1のポーチ102のワイプを浸潤させるために用いてもよく、そのような化学薬品は、過マンガン酸カリウムおよびアルカリ性過マンガン酸カリウムを含み、これらに限定されない。
【0027】
第2のポーチ104は、2%チオ硫酸溶液、例えば、チオ硫酸ナトリウムなど(例えば、ベルテックアソシエイツ社から市販されているTHIO-WIPE(商標))に浸潤したワイプを含む。好ましい実施形態において、チオ硫酸ナトリウムはUSPグレードである。この組成物は、処理された作業面から次亜塩素酸塩溶液残留物を除去するために使用される。チオ硫酸塩は、表面に残った腐食性物質である次亜塩素酸塩を中和して、その表面の構造を維持し損傷を防止する。また、その表面を除染する機能も果たす。チオ硫酸ナトリウムが好ましいが、次亜塩素酸塩で処理された作業面の汚染を除去し、これを中和することができることが知られている任意の化学薬品を使用することができる。このように、チオ硫酸ナトリウム溶液は、次亜塩素酸ナトリウム溶液および以前に不活性化した有害な薬物を洗浄し、汚染除去し、中和する。これにより、滅菌調合用の装置の全寿命を向上させ、USP<797>およびUSP<800>に継続して準拠させることができる。
【0028】
第3のポーチ106は、消毒剤(殺菌剤)として機能する70%のイソプロピルアルコール(IPA)(例えば、ベルテックアソシエイツ社から市販されているALCOH-WIPE(登録商標))に浸潤されたワイプを含む。好ましい実施形態において、IPAはUSPグレードである。このワイプ(拭き取り材)は、処理された面をさらに洗浄して消毒し、作業者の安全のために、その面を元の状態に戻す。IPAが好ましいが、作業表面を洗浄および消毒することが知られている任意の化学薬品を使用することができ、それらは、滅菌水あるいは既知の殺菌剤、例えば、フェノール、クワット(quats)、ペルオキシ酢酸(POAA)およびH2O2などを含み、これらに限定されない。したがって、IPAは、調合または調製用の面の上に存在する汚染物質に対しさらなる措置を行うことにより、その面をさらに保護する。作業面を不活性化後、滅菌された製品を調製するための重要な制御された作業環境を維持するためには、追加の消毒が必要である。
【0029】
ポーチ102、104、106の各々に使用される3つの化学薬品はすべて、注射用蒸留水(WFI)が配合されていてもよく、0.2ミクロンでろ過されてもよい。表面が3枚のワイプすべてで完全に処理されると、表面はその本来の組成(状態)に戻ることができる。
【0030】
ポーチ102、104、106に含まれるワイプの各々は、好ましくは、清潔であり、良好な吸収特性を有し、良好な表面被覆性を備えるように設計された、不織性(不織布)で、剥離し難い素材で形成される。ワイプ(拭き取り材、払拭材)は、低剥離特性が優れているべきであり、ワイプからの繊維が容易には剥がれないようにして、クリーンルームの作業面の汚染を防止しなければならない。一実施形態では、第1のポーチ102のワイプは100%ポリプロピレンで形成され、第2のポーチ104および第3のポーチ106内のワイプは100%ポリエステルで形成される。この実施形態では、各ワイプの材料は、ポーチ102、104、106のそれぞれに入れられる特定の化学物質と適合するように選択される。これらの材料の各々は織物状(布状)のワイプであって、強く、低剥離性能が優れており、制御された環境で使用できるとともに、それが浸されている化学物質に適合性のあるものである。一実施形態では、ワイプは、約9インチ×12インチのサイズであり、約6平方フィートの面積の表面を処理することができる。
【0031】
一実施形態では、第1のポーチ102のためのワイプは、150(6ミル)の白色ポリエチレンに結合されるALOXコーティングを有する48ゲージのポリエステル、162XL-4019である。この特定の基材は、活性次亜塩素酸塩を保持できるが、他の適切なワイプを用いてもよい。さらに、このワイプの材料は、有機材料に曝されることによって生じる次亜塩素酸塩に関連する劣化および不安定性を最小にできる。一実施形態では、各ポーチ102、104、106に1枚のワイプが用意されているが、1枚以上のワイプが、ポーチ102、104、106のいずれかまたはすべてに用意されてもよい。
【0032】
ポーチ102、104、106自体は、これらのワイプに対応して柔軟なパッケージング構造となるように設計されている。ポーチ102、104、106は、好ましくは、水分、空気および光に対するバリア(障壁)となる材料で形成され、耐薬品性に優れており、放射線による照射中でも、クリーンルーム内で、最終的に棚に格納されているときでも、その構造的完全性を維持できるものであることが望ましい。一実施形態では、各ポーチ102、104、106は、コーティングされたポリエステル、低密度ポリエチレン、アルミニウム箔、ヒドロキシプロピルセルロースおよび/または鎖状低密度ポリエチレンの複数層からなる多層構造で形成される。例えば、ポーチ102、104、106は、本明細書に添付され、参照により本明細書に組み込まれる、グレンロイ社(Glenroy Inc.)のExpressWeb EFS174であってもよい。多層構造を採用した場合、これらの材料は気密性および液密性で密封でき、化学的耐性に優れているものである(というのは、最終製品の安定性は光、酸素および有機物の影響を受け得るからである)。それらはまた、各化学物質中の活性剤を維持し、貯蔵寿命を延ばすのに役立つものである。ポーチ102、104、106の各々は、好ましくは、
図2の第1のポーチ102に示されるようなノッチまたは切り取り線(ミシン目)212を含むものである。ノッチ212は、ポーチ102、104、106の側面に形成することができるので、ユーザは、ノッチ212の場所でポーチの側面を引っ張ることによってポーチ102、104、106を破いて開けることができる。したがって、使用時に、技術者は、ポーチを切り取り線に沿って引っ張ってポーチ102、104、106を破いて開き、そこに収容された浸潤済みのワイプにアクセスできる。
【0033】
不活性化ワイプ布キット100をクリーンルームに導入するためには、それ(およびその内蔵物)を最初に滅菌しなければならない。一実施形態では、不活性化ワイプキット100の複数のパーツを照射して、汚染物質を、制御された環境に導入しないようにする。第2のポーチ104および第3のポーチ106は化学物質を含み、それらは、本明細書に記載の方法などによって、最終放射線殺菌されてもよい。したがって、組み立てられたポーチ104、106が、既知の最終放射線滅菌を受けてもよい。しかしながら、第1のポーチ102は、最終放射線滅菌ができない化学物質(すなわち、次亜塩素酸ナトリウム)を含む。第1のポーチ102は、第2のポーチ104および第3のポーチ106とは異なり、第1のポーチ102が滅菌された後に薬品が添加されるように構成される。
【0034】
図2に示すように、第1のポーチ102は、一方の端部210に一方向弁208が配置された設計となっており、ポーチ102はワイプ209を含む。この弁208は、
図3A-
図3Eにより詳細に示されているが、流体を一方向にのみ通過させることができる。このため、第1のポーチ102は乾燥ワイプのみを含んだ状態で、第2のポーチ104および第3のポーチ106(それぞれはワイプおよびそれぞれの化学物質を含む)と共に、最終放射線滅菌を行ってもよい。その後、ポーチ102、104、106がクリーンルームに移されたときに、第1のポーチ102は、一方向弁208を介して滅菌された次亜塩素酸塩溶液によって無菌状態で満たされてもよく、中に含まれる乾燥ワイプを浸潤させてもよい。滅菌された次亜塩素酸塩溶液は、当業者により適宜決定される任意の濃度であってもよい。例えば、濃度5.25%の次亜塩素酸塩を使用できる。この段階で、不活性化ワイプキット100はクリーンルーム内で使用できる準備が完全に整う。キット用のワイプは、典型的には3”×4”、4”×6”、9”×9”、9”×12”または12”×12”のいずれかなどの、従来の既知のサイズのものでよい。
【0035】
不活性化ワイプキット100を作成(用意)するプロセスは、
図4のフローチャートに概説されている。各ポーチ102、104、106は、順番に作成されてもよく、異なる技術者によって同時に作成されてもよい。したがって、ステップ400、402、404は、順次、または同時に実行してもよい。以下でより詳細に説明するように、各ステップにおいて、上記の化学物質および材料が用いられる。
【0036】
ステップ400では、乾燥した、ワイプ材料を第1のポーチ102に入れて密閉封止し、第1の密封または封止された容器またはポーチを形成する。この段階では、第1のポーチ102には化学物質は入れられない。第1の溶液、例えば、チオ硫酸塩溶液(例えばTHIO-WIPE(TM))で浸潤されたワイプを第2のポーチ104の中に入れ、密閉封止して第2の密閉または封止された容器またはポーチを形成する(ステップ402)。第2の溶液、例えば(濃度)70%のIPA(例えば、ALCOH-WIPE(登録商標))で浸潤されたワイプを第3のポーチ106の中に入れ、密閉封止して第3の密閉または封止された容器またはポーチを形成する(ステップ404)。ステップ406で、ポーチ102、104、106の各々は気密封止されそれぞれのポーチの内容物は覆われた状態となる。一実施形態では、密閉封止は、ヒートシール(熱融着)のように、ポーチ102、104、106を液密および気密に封止するものである。ステップ406のヒートシールは別個のステップとして示されているが、ステップ400、402、404の各充填プロセスの一部であってもよい。
【0037】
ステップ408において、第1、第2および第3の密封されたポーチ102、104、106がそれぞれ、放射線滅菌の準備のために集められる(組み立てられる)。ステップ410において、第1、第2および第3の密封されたポーチ102、104、106が1つずつ集められて一緒になり、第1のプラスチックバッグなどの第1の容器に入れられ、次いで第1のプラスチックバッグは密閉封止されて、第1の密閉または封止されたポーチエンクロージャが形成される。他の例としては、第1の封止されたポーチエンクロージャは、第2のプラスチックバッグなどの第2の容器に入れられ、第2のプラスチックバッグは、密閉封止されて第2の密閉または封止されたポーチエンクロージャが形成されてもよい。一実施形態では、第1および第2のプラスチックバッグは、ヒートシールされたポリエチレンバッグである。次いで、第2の(または第1の)封止されたポーチエンクロージャは、プラスチックライナーバッグ(例えば、ポリエチレンバッグ)に入れられ、ライナーバッグは閉じた後に箱または他の容器に入れられたものである。ステップ412において、ライナーが閉じられると(結ばれたり、ファスナー(紐)によって閉じられると)、それが入った箱が閉じられて封止されたパッケージが形成される。ステップ414において、その箱およびその内容物(内蔵物)は、既知の技術および装置を用いて最終放射線滅菌が施され、滅菌のための放射線照射装置に搬送されてもよく、滅菌され、封止された容器が形成される。放射線照射により、複数の容器および複数の内容物、すなわち、上記の複数のプラスチックバッグ、ワイプ、ポーチ、溶液を含めて滅菌される。
【0038】
これらの照射された箱(殺菌され封止された容器)は、その後、清浄な環境(クリーンな環境)に移され、殺菌され封止されたポーチエンクロージャが、プラスチックライナーバッグから取り出される。ステップ416において、滅菌された第1、第2および第3の密閉されたポーチが、最も内側の封止されたプラスチックバッグから取り出される。この時点で、第2の密封されたポーチ104および第3の密封されたポーチ106は、使用可能である。しかしながら、第1の密封されたポーチ102は、不活性化用の化学物質で満たされなければならない。一実施形態では、ステップ418において、クリーンルーム内で、一方向弁208を介して第1の密封されたポーチ102に滅菌次亜塩素酸塩溶液を無菌的に充填する。この段階で、第1のポーチ102が溶液で満たされると、溶液でポーチ102内の乾燥したワイプ(払拭材)が浸潤され、それによって浸潤した、次亜塩素酸塩ワイプの用意が整う。弁208は、その設計上、自動的に密閉できるが、他の適切な設計の弁を設けてもよい。
【0039】
弁208が閉じると、第1の密閉されたポーチ102は、第1の密閉または封止され、充填されたポーチとなり、使用の準備が整う。他の例としては、第1の密封され、充填されたポーチ102は、プラスチックバッグなどの第1の容器にさらに密封されていてもよく、さらに、プラスチックバッグなどの第2の容器に連続的に密閉封止されて、第1の、または第2の充填されたポーチエンクロージャを形成してもよい。第1の密閉され、充填されたポーチ102(または第1/第2の充填されたポーチエンクロージャ)の使用の準備が整うと、放射線照射された第2の密封ポーチ104の1つと、放射線照射された第3の密封ポーチ106の1つとを合わせることにより、不活性化ワイプキット100が形成される。他の例としては、不活性化ワイプキット100は、第1の容器(例えば、ポリエチレンバッグ)に気密にヒートシールされていてもよく、さらに、プラスチックバッグなどの第2の容器(例えば、ポリエチレンバッグ)に、連続的に気密にヒートシールされていてもよい。複数の拭き取りキット100を、プラスチックライナーを有するカートンに一緒に入れておいてもよい。プラスチックライナーは閉じることができ(結んで閉じたり、ファスナー(紐)により)、箱を閉じることにより最終的に閉じられたパッケージを形成できる。その後、その箱を顧客で使用するために出荷することができる。
【0040】
不活性化ワイプキット100を作成(準備)する別のプロセスも実施可能である。乾燥、拭き取りの物質(材料)を第1のポーチ102内に入れること(ステップ400)は、第2のポーチ104内にチオ硫酸塩で浸潤したワイプを入れる(ステップ402)前、その間、またはその後に、さらに、IPAで浸潤したワイプを第3のポーチ106内に入れる(ステップ404)前、その間、またはその後に、実施してもよい。同様に、第2のポーチ104にチオ硫酸塩で浸潤したワイプを入れること(ステップ402)および第3のポーチ106にIPAで浸潤したワイプを入れること(ステップ404)は、他のポーチの作成に関して任意の順序で行うことができ、ただし、それらが同じ箱に一緒にパッケージされるのであれば、3つのポーチ102、104、および106のすべてが、ヒートシールのステップの前に準備される。一方、放射線照射された第2および第3のポーチは、第1の最終ポーチとは別個の箱に一緒にパッケージングされてもよい。
【0041】
さらに、ポーチ102、104、106を放射線殺菌するために、他の適切な技術を利用してもよい。例えば、複数のポーチ102、104および/または106は、同じまたは異なる個々の第1の(および任意で第2の)プラスチックバッグに入れてヒートシールしてもよい。一実施形態では、それぞれが密閉されたポーチ102、104、106は個々に一重/二重に袋詰めされてもよく(すなわち、第1のプラスチックバッグ(および任意でさらに第2のプラスチックバッグ)に入れてヒートシールして、第1、第2、および第3の密閉されたポーチに対してそれぞれ封止された第1および第2のエンクロージャを設け)、次にカートンライナーおよび箱に入れて滅菌することができる。別の実施形態では、複数の第1の密閉されたポーチ102を、1つの第1のバッグに入れて一緒にヒートシールして第1のエンクロージャを形成し、複数の第2の密閉されたポーチ104を1つの第2のバッグに入れてヒートシールして第2のエンクロージャを形成し、複数の第3の密閉されたポーチ106を1つの第3のバッグでヒートシールして第3のエンクロージャを形成し、さらに、第1、第2および第3のエンクロージャをライナーおよび箱に入れて同時に放射線照射してもよい。
【0042】
さらに、複数の第1の密閉されたポーチ102は、個々に一重/二重に袋詰めして第1の箱に入れることができ、複数の第2の密閉されたポーチ104は、個々に一重/二重に袋詰めして第2の箱に入れることができ、さらに、複数の第3のポーチ106は、個々に一重/二重に袋詰めして第3の箱に入れてもよい。あるいは、複数の第1の密閉されたポーチエンクロージャを放射線照射のために1つの第1の箱に入れ、複数の第2および第3のポーチエンクロージャを放射線照射のために1つの第2の箱に一緒に入れてもよい。さらに、第1および第2の容器は、ポーチ(パウチ)などの任意の適切な容器であってもよく、第1、第2および第3のポーチ102、104、106は、任意の適切な容器であってもよい。
【0043】
このように、エンドユーザは、複数のキットを有する単一の箱を受け取ることができ、各キットは、第1、第2および第3の滅菌され、密閉されたポーチを有する。不活性化ワイプキット100の使用方法は、
図5に概説されている。箱が客先に到着すると、箱および箱のライナーが開かれる(例えば、クリーンルームまたは一時的保管場所(ステージングエリア)で)。1つのキット100が使用のために箱から取り出され、クリーンルームに持ち込まれてもよい。ヒートシールされたバッグが開かれ、ポーチ102、104、106が取り出される。ステップ500に示すように、第1のポーチ102が開かれ(例えば、切り取り線212を引き裂くことによって)、次亜塩素酸塩が浸潤したワイプが取り出される。次いで、ステップ502において、有害な1つまたは複数の薬剤を不活性化するために、汚染された作業面(調製面、調製台)を、そのワイプを用いて拭き取る。次に、ステップ504において、第2のポーチ104が開封され、チオ硫酸塩が浸潤したワイプが取り出される。次に、ステップ506において、表面の汚染を除去し、表面上に依然として存在し得る次亜塩素酸塩残留物を除去するために、次亜塩素酸塩が浸潤したワイプで処理されたばかりの作業面を、そのワイプを用いて拭き取る。次に、ステップ508において、第3のポーチ106が開封され、IPAが浸潤したワイプが取り出される。最後に、ステップ510において、そのワイプが作業面を拭き取るために用いられ、その面を消毒および清掃し、技術者または作業者が安全に使用できるようにする。各ワイプを、その面に対して連続して使用すると、存在する有害な薬物がすべて不活性化され(失活され)、汚染除去され、その面は消毒され、さらに、技術者が安全に使用できるようになる。
【0044】
説明したように、本発明の範囲内において、本発明が幾つかの異なる形態をとることは明らかである。第1、第2および第3のポーチは、個別に一重/二重に袋詰め可能である(すなわち、第1のポーチおよび、それに続いて第2のポーチに密閉封止され得る)。または、第2および第3のポーチは、放射線照射およびエンドユーザへの納入のために、一緒に一重/二重に袋詰めすることができ、二重袋詰めした第1の充填済みのポーチエンクロージャと1つの箱に合わせて収納してもよく、または一重/二重に袋詰めした第1の充填されたポーチエンクロージャとは別に箱詰めされてもよい。本発明の精神および範囲内でさらに他の変形が可能である。例えば、エンドユーザは、複数の第1の滅菌され、封止されたポーチを有する第1の箱と、および複数の第2および第3の滅菌され、封止されたポーチを有する第2の箱とを受け取ることができる。さらに、本発明には、それぞれが異なる溶液を有する3つのポーチを用いることが記載されているが、2つまたは4つ以上の、他の適切な数のポーチおよび溶液を用いたものであってもよい。
【0045】
例えば、本発明のさらなる例示的な非限定的実施例が、
図6および
図7に示されている。ここでは、代替的な実施形態である第1のポーチ250が示されている。ポーチ250は、2つのポリエチレン層270、272を有し、これらは縁(端、端部)で(
図7に示す例では、互いに直接、または、
図6に示す例では、それらの間の側壁を介して)ヒートシール(溶着)され、その間に内部空間274が画定されている。このポーチは、実質的に長方形であり、2つの長手方向(縦方向)の側面と、長手方向の側面に実質的に直交する2つの横方向の側面とを有する。中央に、横方向のカップリングアセンブリ(連結アセンブリ、結合アセンブリ、連結体)、例えば、壊すことができる(壊すことが容易な、壊れやすい、脆弱性の、壊れやすい)シール260が設けられており、第1のコンパートメント(第1の区画、領域)252と第2のコンパートメント(第2の区画、領域)254とを形成している。第1のコンパートメント252は、第1の層270a、第2の層272aおよびそれらの間の内部空間274aを有し、第2のコンパートメント254は、第1の層270a、第2の層272aおよびそれらの間の内部空間274bを有する。壊れやすいシール260は、横方向の側面に実質的に平行であり、ポーチ250の全幅に亘って延びている。第1および第2のコンパートメント252、254は液体に対し完全に漏れないようになっており、液体が第1のコンパートメント252から第2のコンパートメント254へ、またはその逆へとは流れない。
【0046】
作る際、ポーチ250は、層270、272を、それらの2つの長手方向の側面に沿って(
図7に示す例では、互いに直接、または、
図6に示す例では、それらの間の側壁を介して)ヒートシールし、次いで、脆性性のヒートシール260を適用することによって形成される。そして、乾燥ワイパー256が第2のコンパートメント254の内部空間274bに配置され、底部横方向の縁(側辺)がヒートシールされて、ワイパー256が第2のコンパートメント254内に完全に囲われる。レーザースコア(レーザーによる切れ目)262は、第2のコンパートメント254の少なくとも一部に沿って形成してもよく、ここでは、ポーチ250の全幅に亘って横方向に延びるように示されている。さらに、弁258が上部横方向の縁(側辺)に配置され、2つの層270、272の上部横方向の縁(側辺)全体が第1のコンパートメント252の上部に弁258を挟みこむようにヒートシールされる。その後、ポーチ250全体が照射により滅菌される。
【0047】
この時点で、弁258を介して第1のコンパートメント252の内部空間に液体が充填される。一実施形態では、液体は、漂白剤のような殺菌剤であり、この液体は濾過され、クリーンルーム内で第1のコンパートメント252に無菌的に充填される。そして、ポーチ250は、梱包され、使用するために、クリーンルームへ配送されるが、例えば、2枚のポリエチレン袋に連続して二重で袋詰めされ、プラスチックライナーに入れられ、その後、配送のための段ボール箱に入れられる。
【0048】
壊せる(壊し得る、破くことができる)脆弱性のシール260は、外周のヒートシールよりも弱い。壊せるシール260は、例えば、より低い熱で接合することによって形成することができる。ワイパー256を使用するときは、ユーザは外側のパッケージを開封する。次いで、ユーザは、第1および/または第2のコンパートメント252、254を押圧し、これにより、脆弱性のシール260は壊される(破られる)。第1および第2のコンパートメント252、254の内部空間274a、274bは、その後、互いに流体的に通じ(連通し)、シール260が破られることにより、第1のコンパートメント252から第2のコンパートメントに液体が放出され、第2のコンパートメントの1つまたは複数のワイパー256と接触する。壊せる(脆弱性の)シール260は、ポーチ250を形成する外側のプラスチック層を弱めることはなく、ポーチ250は耐液性を有し、ポーチ250から液体が漏れることはない。液体がワイパー256によって吸収されると、ユーザは、レーザースコア262に沿って第2のコンパートメント254を開く。そして、ユーザは、クリーンルームで使用するために、湿潤したワイパー256を内部空間274から取り出す。
【0049】
このようにして、液体は、ワイパー256が使用される直前までワイパー256と接触しない、これは、そうしないと液体(例えば漂白剤)がワイパー256を劣化させる可能性があるので重要である。これにより、製品の保存期間が延びる。さらに、ポーチ250は、任意の適切な方法で形成することができるが、壊せるヒートシール260、スコア(切れ目)262、および2つの長手方向のシールは、ワイパー256を導入する前に形成し、これらの処理により、ワイパー256が不用意に一緒にシールされたり、または損傷を受けることがないようにすることができる。しかしながら、別の実施形態では、底部横方向の縁および2つの長手方向の縁は、ヒートシールされてもよい。次いで、ワイパー256は、ポーチ250内に配置され、脆弱性のヒートシール260および上部横方向のヒートシールを施してもよい。本発明の別の実施形態では、ワイパー256は、2つの層270、272の間に配置され、次いで、脆弱性のシール260と、長手方向(縦方向)の縁(側辺)、および上部と底部の横方向の縁(側辺)に沿った部分を含めてヒートシールして全てのシールを同時に形成してもよい。
【0050】
図6の2つのコンパートメント252、254を備えた(双袋の)ポーチ250は、
図1~5に基づき記載されたシステムおよび方法において、第2のポーチ104および第3のポーチ106と共に使用することができる。例えば、乾燥ワイパー256を有するポーチ250は、第2のポーチ104および第3のポーチ106と共に照射することができる。しかしながら、
図6の2つのコンパートメントを備えたポーチ250は、また、それ自体が別個の有用性を有し、他の適切な用途で使用することができ、第2および第3のポーチ104、106と一緒に使用しなくてもよい。例えば、ポーチ250は、単一(一種類)のワイパーのみが必要な場合には、単独で使用することができる。
【0051】
本発明は、壊せる脆弱性のシール260によって区切られた2つのコンパートメント252、254を有するポーチ250として示され、説明されていることに、さらに留意されたい。2つのコンパートメント252、254は、互いに直に取り付けられ、かつ、壊すことができるシール260によって分離されているため、シール260が開かれるとコンパートメント252および254は互いに液体が連通する状態になる。本発明の精神および範囲内で、例えば、弁または他の接続装置またはカップリングアセンブリを使用することによって、2つのコンパートメントは、脆弱性のシールを使用することなく、他の方法で互いに連通可能に配置することができることに留意すべきである。
【0052】
さらに、脆弱性のシール260は、ポーチ250の全幅にわたり延びているように示されていることに留意されたい。脆弱性のシール260は、全幅にわたり延びていなくてもよい。例えば、シール260の一部は、第1のコンパートメント252を、第2のコンパートメント254から永久的に分離する完全なヒートシールとすることができ、シール260の一部を脆弱性のシールとして開放可能とし、第1のコンパートメント252から第2のコンパートメント254に、液体を放出するようにしてもよい。
【0053】
さらに、
図7に示すように、脆弱性のシール260は、第1の層270を、平坦な第2の層272に直接封止し、2つの層270、272がシール部で一緒になるようにしてもよい。したがって、第1の層270は、その間に他の材料が配置されることなく、第2の層272に直接封止される。このようにして、シール260は、第1のコンパートメント252と第2のコンパートメント254との間にテーパー状の領域を形成する。シール260は、適当な厚みを備えていてもよく、線またはピンチポイントを形成するような小さいものであってもよく、平坦な領域を形成するように広いものであってもよい。一実施形態では、シール260は約0.3125インチの厚さを有してもよく、第1のコンパートメントは約5.3125インチの長さを有してもよく、第2のコンパートメントは約6.375インチの長さを有してもよく、ポーチは幅約4.5インチ全長約12インチであってもよい。第1のコンパートメントには、約30mLの液体または溶液を収納することができ、第2のコンパートメントには、1つまたは複数の折り畳まれた12×12の織られた(ニットの)ワイパーを収納することができる。さらに、シール260は、図示のように直線状である必要はなく、曲線状などの他の形状であってもよい。本発明の別の実施形態では、第1のコンパートメント252は、第2のコンパートメント254と同じサイズであってもよく、異なるサイズであってもよく、第2のコンパートメント254よりも小さくても大きくてもよい。第1および第2のコンパートメントは、全体が正方形または長方形であってもよく、または他の適切なサイズおよび形状であってもよい。
【0054】
前述のように、
図7に、第1および第2の層270、272の長手方向の側辺が、互いに直接ヒートシールされていることが示されている。そして、
図6には、ポーチ250は、第1のコンパートメント252および/または第2のコンパートメント254に対して、第1の層270および第2の層272の長手方向(縦方向)の側辺の間に延びる側壁を有することが示されている。側壁は、層270、272が長手方向の側辺で分離することを可能にし、それにより、コンパートメント252、254内に、より多くの液体、物質または製品を保持することができる。側壁は、第1および第2の層270、272にヒートシールされている。例えば、側壁は、第1の層270に結合する第1の長手方向の側辺と、第2の層272に結合する第2の長手方向の側辺とを有する、実質的に長方形であり、部分的に、または、楕円状にテーパー状であってもよい。ポーチ250の各長手方向の側面に1つの側壁があり、中央が脆弱性のシール260によってシールされていてもよく、第1のコンパートメント252用の1つの側面と第2のコンパートメント254用の1つの側面との2つの長手方向の側面を備えていてもよい。製造する際、これらの側面は、層270、272に対し、側面(側壁)の各長手方向の側辺を一回でヒートシールする単一のヒートシール処理、または、最初に第1の長手方向の側辺にヒートシールし、次に第2の長手方向の側辺にヒートシールする重複ヒートシール処理で、ヒートシール可能である。
【0055】
さらに別の実施形態では、ポーチ内に2つ以上の液密の(液が漏れない)コンパートメントを定義するために、追加で、横方向に脆弱性のシールを設けてもよい。例えば、第1のコンパートメントは第1の製品(例えば、乾燥ワイプ)、液体または物質を収容し(含み)、第2のコンパートメントは第2の製品、液体または物質を収容し(含み)、第3のコンパートメントは第3の製品、液体または物質を収容する(含む)。これらのコンパートメントは、脆弱性のシールが破られたときに、それらがすべて互いに連通する(繋がる、流通する)ように配置されてもよいし、第1のコンパートメントと第2のコンパートメントとの間に第2のコンパートメントが配置され、第1のコンパートメントと第3のコンパートメントとが第2のコンパートメントのみと連通する(繋がる、流通する)ように配置されてもよい。そして、複数の脆弱性のシールは、異なる複数の破断点を有していてもよく、別々に破断されてもよく例えば、第1の脆弱性のシールが、第1のコンパートメントから第2のコンパートメントに内容物を放出するために破断され、次いで、第2の脆弱性のシールが、第1および第2のコンパートメントから第3のコンパートメントに内容物を放出するために破断されるようにしてもよい。
【0056】
図8~9を参照すると、本発明の一実施形態が示されている。ポーチ(パウチ、袋)300は、第1の層301と第2の層303とによって形成されたポーチ本体310を有する。ポーチ300は、外周のシールと内側のシールとを有する。外周のシールは、長手方向(縦方向)および横方向の側面にあり、第1の長手方向の側辺(側面)または側壁305と、第2の長手方向の側辺(側面)または側壁307と、上端または上壁309と、下端または下壁311とを形成し、ポーチ300の外周を規定する。ポーチは実質的に長方形の形状であり、それによって、上端および底端309、311は、第1および第2の長手方向の側面305、307に対して横方向で直交している。
【0057】
内側のシールはカップリングアセンブリ(結合アセンブリ、連結アッセンブリ、連結体)であり、内側の横方向のシール313および内側のコンパートメントのシール315を含む。内側横方向のシール313は、第1の長手方向(縦方向)の側面305から第2の長手方向の側面313まで、ポーチ300の全幅を横方向(横断するよう)に延びている。内側横方向のシール313は、ポーチの下端311よりもポーチの上端309に近い。内側横方向のシール313は、ポーチの上端309および下端311に実質的に平行である。内側のコンパートメントのシール315は、内側横方向のシール313のほぼ中央からポーチの上端309まで、長手方向の側面305、307と実質的に平行に延びており、したがって、第3のコンパートメント340が第1および第2のコンパートメント320、330よりも長くなる。
【0058】
複数の内側のシールおよび複数の外周のシールは、共にポーチ300の様々な内部コンパートメントを形成する。図示の実施形態では、複数の内側のシールは、第1の内部空間を有する第1のコンパートメント(区画、領域)320と、第2の内部空間を有する第2のコンパートメント330と、第3の内部空間を有する第3のコンパートメント340とを形成している。第1のコンパートメント320は、第1の内部空間に漂白剤などの第1の化学物質を保持し、第1の長手方向のシール、上端のシール、内側横方向のシール313、および内側のコンパートメントのシール315によって画定される。第2のコンパートメント330は、第2の内部空間にWFIなどの第2の化学物質を保持する。このように、第1および第2の化学物質は、製造、輸送および保管中に互いに分離された状態に保たれ、使用直前に一緒にする(混ぜる、組み合わせる)ことができ、使用前の化学物質の劣化を回避し、保存期間を増加させることが可能である。
【0059】
図示された実施形態では、内側のコンパートメントのシール315は、内側横方向のシール313および上端309の中心にあり、第1および第2のコンパートメント320、330の大きさが等しくなる。しかしながら、内側のコンパートメントのシール315は、一方の長手方向の側面305、307に近い位置に形成してもよく、第1および第2のコンパートメント320、330が異なるサイズを有してもよい。さらに、追加のコンパートメントを画定する他の内部シールを設けることができる。そして、コンパートメント320、330、340が側面を接するように並んで配置されている例が示されているが、コンパートメントは完全に他のコンパートメントの中に形成することができる。内側のシール313、315は互いに接触して示されているが、シールは任意の適切な位置に形成することができ、互いに接触する必要はない。このように、コンパートメントの構成は多種多様である。
【0060】
さらに示すように、第1のポートまたは弁(バルブ)312が、第1のコンパートメント320に設けられ、第2のポートまたは弁(バルブ)314が、第2のコンパートメント330に設けられている。これらの弁312、314は一方向であり、第1および第2のコンパートメント320、330の第1および第2の内部空間に液体が充填されることを可能にする。弁312、314はポーチの上端309に示されているが、これらの弁は、ポーチの前面(すなわち、第1の層301に形成されている)および/または後面(すなわち、第2の層303に形成されている)のいずれかなど他の場所に設けることができる。
【0061】
第1および第2のシール315、313は、それらが別々に破壊され得る(壊れる、破れる)ように構成することが可能であり、例えば、第1のシール315は、第2のシール313を破壊することなく破壊することが可能である。例えば、第1のシール315は、第2のシール313よりも弱くすることができる。あるいは、第1のシール315は、第2のシール313から十分に離れて、および/または第2のシール313に対して異なる角度で(斜めに)配置することができる。したがって、ユーザは、ポーチ本体310のそれぞれのシール315、313に隣接する部分を掴んで、第2のシール313を破らずに第1のシール315を選択的に破ることが可能であり、第1のコンパートメント320に収容された漂白剤を第2のコンパートメント330に収容されたWFIと合体させ(組み合わせ)、漂白剤とWFIとを相互に混合できる。次いで、ユーザは、その後、第2のシール313を破って、乾燥ワイプ302に、漂白剤およびWFIが合体した(混ぜ合わさった)ものを放出することができる。
【0062】
第3のコンパートメント340は、第3の内部空間においてワイパー(拭き取り布、ふき取り材)302などの品物(製品)を保持する。コンパートメント320、330、340は、液密であり、互いに分離されている。このようにして、第3のコンパートメント340は、第1および第2のコンパートメント320、330内の液体から分離された状態に保たれるので、製造、輸送および保管中にワイプは乾燥した状態に保持される。液体は、使用直前に混合されて乾燥したワイプ(拭き取り材、ふき取り布)302に供給される(導入される)ことで、ワイプ302の劣化を回避し、保存期間を長くすることができる。ポーチ310を使用するときは、内側のシール313、315を開いて、ワイプ302を第1および第2のコンパートメント320、330に収容された液体で浸潤させて、クリーンルーム環境において危険な薬物を不活性化および/または除染し、作業面を消毒することが可能である。ポーチおよびコンパートメントのそれぞれの側面または端部のいくつかまたは全部は、壁で構成されてもよいことに留意されたい。
【0063】
第3のコンパートメント340には、取り出し口またはカバー304が設けられており、使用するときに(使用の準備ができた)ワイプ302を取り外すことができる。
図8、
図9に示す実施形態では、カバー304はプレスアンドシールカバー(圧着されたカバー)である。開口部308が、第3のコンパートメント340の上側の層301に形成されている。カバー304は、開口部308より大きく、開口部308の上および周囲を覆うようになっている。カバー304は開口用のタブ(アクセスタブ)306を含み、ユーザによって開かれ、その後、閉じられて再密封することができる。したがって、ユーザがワイプを取り出すとき、ユーザは、アクセスタブ306を剥がすことによって第3のコンパートメント340を開き、浸潤したワイプ302を露出させる。次に、ユーザは、開口部308から、アクセスタブが開いた部分を通してワイプ302を引っ張ることによって所望の数のワイプを取り出し、さらに、アクセスタブ306を所定の位置に押し戻すことにより第3のコンパートメント340を密閉することができる。
【0064】
異なる実施形態では、ピールアンドシールカバー(引きはがしタイプの密閉用のカバー)304は提供されなくてもよい。その代わりに、ユーザは、第3のコンパートメント340の側面342にノッチ(切れ目)またはミシン目を設けることによってワイプ302にアクセスすることができる。ノッチは、第3のコンパートメント340の側面342に形成することができるので、ユーザは、ノッチのところでポーチの側面を引っ張ることによって第3のコンパートメント340を引き裂くことができる。したがって、使用中、技術者は、ミシン目に沿ってポーチを引っ張ることで、ポーチの2つの層を引き裂くことができ、その中に収容された浸潤したワイプにアクセスすることができる。
【0065】
したがって、第1のコンパートメント320は、内側横方向のシール313によって形成された底部側または端部321と、ポーチの第1の長手方向の側辺305の一部によって形成された第1の長手方向の側辺322と、ポーチ上端309の一部によって形成された上側または端部323と、内側のコンパートメント(内側の区画)のシール315によって形成された第2の長手方向の側辺324とを備えている。さらに示すように、内側のコンパートメントシール315は、ユーザがシール315にある程度の圧力を加えると開くように構成されたバーストシール(破裂するシール)またはフランジブルシール(脆弱性のシール、破壊可能なシール)として形成することができる。壊すことができるシールは、内側のコンパートメントのシール315全体であってもよく、または、示されているように、内側のコンパートメントのシール315の一部分のみを壊すことが出来るシールで構成されていてもよい。内側のコンパートメントのシール315は、第2の長手方向の側壁324の全体を形成してもよく、または図示のように、第2の長手方向の側壁324の一部分のみを形成してもよい。
【0066】
第2のコンパートメント330は、内側のコンパートメントのシール315によって形成された底部または端部331と、内側のコンパートメントのシール315によって形成された第1の長手方向の側辺332と、上端309の一部によって形成された上端または端部333と、ポーチの第2の長手方向の側辺307の一部によって形成された第2の長手方向の側辺334とを有している。第3のコンパートメント340は、ポーチの底部の端部311である底部または端部341と、ポーチの第1の長手方向の側面305の一部によって形成された第1の長手方向の側面342と、内側横方向のシール313によって形成された上端または側面343と、ポーチの第2の長手方向の側面307の一部によって形成された第2の長手方向の側面344とを有している。したがって、ポーチの第1の側面305は、第1および第3のコンパートメント320、340の第1の長手方向の側面322、342を形成し、ポーチの第2の長手方向の側面307は、第2および第3のコンパートメント330、340の第1の長手方向の側面334、344を形成している。そして、ポーチの上端309は、第1および第2のコンパートメント320、330の上端323、333を形成している。内側横方向のシール313は、底部331の全体を形成することができるが、図示のように底部331の一部のみを形成することもできる。
【0067】
ポーチ300をクリーンルームに導入(搬入)するためには、まずポーチ300(およびその内容物)を滅菌する必要がある。一実施形態では、ポーチ300の一部(複数の部分または部品)は、環境に汚染物質を導入しないように照射される。ワイプ302と第2のコンパートメント330内のWFIは、本明細書に記載の方法などによって、最終的に照射滅菌されてもよい。このように、ポーチ310は、公知の末端照射滅菌を受けてもよい。しかしながら、第1のコンパートメント320は、化学物質(すなわち、漂白剤)を収容するために最終の照射滅菌はできない。このように、ポーチ310は、第3のコンパートメント340内のワイプ302が滅菌された後に、第1のコンパートメント320内に(および任意には、第2のコンパートメント330内のWFIも)化学物質を添加できるように構成される。
【0068】
ポーチ300は、第1および第2のコンパートメント320、330の各々の上端323、333にそれぞれ配置された第1および第2の一方向弁312、314を備えるように設計されている。この弁312、314は、それを介して流体を一方向にのみ移送することができる。したがって、第3のコンパートメント340に乾燥ワイプ302のみを入れた状態で、あるいは、さらに、第2のコンパートメント330にWFIを収容した状態のポーチ300は、最終の照射滅菌を受けることができる。その後、ポーチ300をクリーンルームに移送した後に、第1のコンパートメント320に第1の一方向弁208を介して滅菌漂白剤を無菌的に充填し、そこに収容された乾燥ワイプを浸潤させるようにしてもよい。滅菌漂白剤溶液は、当業者に適していると判断される任意の濃度であってよい。この時点で、ポーチ300は、クリーンルームで使用するための完全な準備が整う。組み込むためのワイプは、従来の既知のサイズのものでよく、例えば、3インチ×4インチ、4インチ×6インチ、9インチ×9インチ、9インチ×12インチまたは12インチ×12インチのいずれかなどである。
【0069】
ここでは、ポーチ300を準備する工程を概説する。ステップは、順次または同時に実行することができる。以下により詳細に説明するように、各ステップは、上述した化学物質および材料を利用する。ポーチ本体310の層(レイヤー)301、303は、左側面322、342、右側面334、344、上部323、333および底部341、並びに内壁321、324、331に、それぞれ沿って気密にヒートシールされ、ポーチのそれぞれの側面およびコンパートメントを形成する。第1および第2のポート312、314は、第1および第2のコンパートメント320、330の上端323、333にそれぞれ一体的に封止されている。そして、第1および第2のバーストシール315、313は、ポーチ本体310に形成される。
【0070】
この段階で、第3のコンパートメント340の右側344には開口345が設けられており、乾燥ワイプ(乾燥した拭き取り材)302を第3のコンパートメント340に入れることができる。その後、第3のコンパートメント340の右側は密閉封止されて、密閉または封止された第3のコンパートメントを形成する。この時点で、ポーチ300内には化学物質が存在しない。任意選択的に、WFIは、この時点で第2のポート314を介して第2のコンパートメントに充填することができる。次いで、密封されたポーチ310は、照射滅菌の準備のために組み立てられる。例えば、ポーチ300を第1のプラスチックバッグに入れ、第1のプラスチックバッグを密閉封止して、第1の密閉または封止されたポーチエンクロージャを形成することができる。任意選択で、第1の密閉されたポーチエンクロージャは、第2のプラスチックバッグなどの第2の容器に入れることができ、第2のプラスチックバッグは、次に密閉封止されて、第2の密閉または封止されたポーチエンクロージャを形成する。一実施形態では、第1および第2のプラスチックバッグは、ヒートシールされるポリエチレンバッグである。次に、第2(または第1)の密閉されたポーチエンクロージャは、プラスチックライナーバッグ(例えば、ポリエチレンバッグ)に入れられ、このライナーは閉じられて箱または他の容器に入れられる。次いで、ライナーは、(結ばれることによって、またはファスナー(tie)によって)閉じられ、箱は、閉じたパッケージを形成するために閉じられる。その後、箱および封入された内容物は、公知の技術および装置を用いて末端照射滅菌され、滅菌のために照射器に出荷され、滅菌された密閉容器が形成され得る。照射により、容器とその内容物(プラスチックバッグ、ワイプ、ポーチ、溶液を含む)が滅菌される。
【0071】
照射された箱(殺菌され封止された容器)は、その後、清浄な環境に移され、殺菌され封止されたポーチエンクロージャが、プラスチックライナーバッグから取り出される。続いて、滅菌済みポーチ300を最内部の密閉されたプラスチックバッグから取り出す。このとき、クリーンルーム内において、一方向弁312を介して第1のコンパートメント320に漂白剤(Bleach)が無菌的に充填される。また、第2のコンパートメント330にそれまでWFIが充填されていない場合は、この時点で第2のポート314を介して充填することができる。これらの弁312、314は、その設計上、自動的に密閉できるが、他の適切な設計の弁を設けてもよい。
【0072】
弁312、314が閉じられると、ポーチ300は、密閉または封止され、充填されたポーチを形成し、その後、いつでも使用可能になる。オプションとして、ポーチ300は、第1の容器に密封封止され、さらに、オプションとして、第2の容器に連続して密封封止されてもよく、それらの容器は、プラスチックまたはポリエチレンバッグなどであって、第1の(および第2の)第1の充填ポーチエンクロージャを形成してもよい。複数のワイプポーチ300は、次に、プラスチックライナーを有するカートンの中に一緒に入れられる。プラスチックライナーは、(結ばれることによって、またはファスナー(tie)によってなど)閉じられることができ、箱は閉じられて、最終的な閉じたパッケージを形成する。その後、箱は、使用するために顧客に出荷することができる。
【0073】
また、ポーチ300を準備する、異なる工程を行うこともできる。例えば、ヒートシールおよびバーストシールは、任意の順序で実行することができる。さらに、ポーチ300を照射滅菌するために、他の適切な技術を利用できることがさらに理解されよう。例えば、複数のポーチ300は、同じまたは異なる個々の第1の(および任意に第2の)プラスチックバッグに入れてヒートシールすることができる。一実施形態では、各ポーチ300は、個別にシングル/ダブルバッグ(すなわち、第1、第2および第3の閉じたポーチのためのそれぞれの第1および第2の密閉されたエンクロージャを形成するために第1のプラスチックバッグ(および任意に連続する第2のプラスチックバッグ)に入れてヒートシールされ)、次にカートンライナーと箱中に入れられ滅菌されることが可能である。
【0074】
ここで、ポーチ300の使用方法を概説する。箱が顧客に到着したら、箱と箱のライナーを開封する(例えば、クリーンルームまたは一時的保管場所(ステージングエリア)で)。次に、ポーチ300を使用するために箱から取り出して、クリーンルームに持ち込むことができる。ヒートシールされた袋は開封され、ポーチ300が取り出される。次に、ユーザは、第1および第2のコンパートメント320、330の間の第1のバーストシール315を破り、漂白剤をWFIに導入する。漂白剤とWFIが混合されると、ユーザは、第2および第3のコンパートメント330、340の間の第2のバーストシール313を破り、漂白剤/WFI混合物をワイプ302に導く。ワイプ302が混合された漂白剤およびWFIで浸されると、ユーザは第3のコンパートメント340を開き(例えば、アクセスタブ306を開くかまたはミシン目を裂くことによって)、希釈された漂白剤が浸潤したワイプが取り出される。次に、このワイプは、汚染された作業面に適用され、危険な1つまたは複数の薬物を洗浄(クリーンに)する。
【0075】
第1、第2、および第3のコンパートメント320、330、340は、外周のシールおよび内側のシールの全てを含めて完全に液密であり、液体が第1のコンパートメント320から第2のコンパートメント330に、またはその逆に通過したり、他にもポーチ300から漏れたりできないようになっている。そして、液体は、第1および第2のコンパートメント320、330のいずれからも第3のコンパートメント340に入ることはできない。
【0076】
バーストシール315、313は、長手方向の側面305、307および上部と底部309、311の外周のヒートシールより壊れやすく、脆弱である。脆弱性のシール315、313は、例えば、より低い熱で接着することによって形成することができ、第1のバーストシール315は、第2のバーストシール313よりも低い熱で接着することにより、第1のバーストシールが第2のバーストシールよりも弱くなるようにすることができる。ワイパー302を使用するときは、ユーザは外包を開封する。次に、ユーザは、第1および/または第2のコンパートメント320、330を押圧し、これにより、第1の脆弱性のシール315が破断される。これにより、第1および第2のコンパートメント320、330の内部空間は互いに液体が連通する状態となり、それによって、シール315を破ると、第1のコンパートメント320から第2のコンパートメント330に液体が放出されて第2のコンパートメント330の液体に接触する。
【0077】
次に、ユーザは、第2または第3のコンパートメント330、340を押圧し、これにより、第2の脆弱性のシール313が破壊される。第2および第3のコンパートメント330、340の内部空間は互いに液体が連通する状態になり、それによってシール313を破ると、第1および第2のコンパートメント320、330からの液体が放出されて第3のコンパートメント340のワイパーと接触する。脆弱性の(壊すことが可能な)シール315、313は、ポーチ310を形成する外側プラスチック層を弱めないので、ポーチ310は防液性であり、ポーチ310の外に液体が漏れることはない。液体がワイパー302に吸収されると、ユーザは、プレスシールカバー304で第3のコンパートメント340を開く。その後、ユーザは、クリーンルームで使用するために、濡れたワイパー302を内部空間から取り出す。
【0078】
このようにして、液体は、ワイパー302が使用される直前までワイパー302と接触せず、これは、液体(漂白剤など)がさもなければワイパー302を劣化させ得る場合に重要である。これにより、製品の貯蔵寿命を延長する。さらに、ポーチ300は、任意の適切な方法で形成することができるが、ワイパー302が不注意にそれらの操作のいずれかに巻き込まれたり、さもなければ損傷を受けたりしないように、脆弱性のヒートシール315、313、および外周のシールは、ワイパー302の導入に先立って行うことができることに留意されたい。しかしながら、別の実施形態では、底部横方向および2つの長手方向の側面は、ヒートシールすることができる。次いで、ワイパー302を第3のコンパートメント340内に配置し、脆弱性のヒートシール315、313および上部横方向のヒートシールを適用することができる。本発明の別の実施形態では、ワイパー302を2つのプラスチック層の間に配置し、次いで、脆弱性のシールを含め、長手方向の側面と上部および底部横方向の側面に沿ったヒートシールを含む全てのシールを同時に形成してもよい。
【0079】
本発明は、脆弱性のシール315、313によって分離されたコンパートメント320、330、340を有するポーチ300として示され、説明されていることにさらに留意されたい。コンパートメント320、330、340は、互いに直接取り付けられ、脆弱性のシール315、313によって分離されているので、シール315、313が開かれたときにコンパートメント320、330、340は互いに液体が流通(連通)するようになる。コンパートメントは、例えば、弁または他の接続装置またはカップリングアセンブリ(結合アセンブリ)を使用するなどにより、本発明の精神および範囲内で、脆弱性のシールを使用せずに他の方法で互いに連通するように配置できることに留意されたい。
【0080】
さらに、第1および第2のコンパートメント320、330の両方がポート312、314を有することが示されているが、それらのコンパートメントのうちの1つだけがポートを有するものであってもよい。例えば、第2のコンパートメント330はWFIを収容するので、照射滅菌されてもよい。一実施形態では、コンパートメントが形成される際にWFIを第2のコンパートメント330に充填してもよく、ポートの必要はなく、乾燥ワイプ302が照射滅菌されるのと同時にWFIを照射滅菌することが可能である。第1のポート312を使用して、照射滅菌できない漂白剤を第1のコンパートメント320に無菌的に充填することができる。
【0081】
さらに、第1および第2のコンパートメントの間に脆弱性のシール315が配置され、第1および第3のコンパートメントの間には脆弱性のシールが存在しないことに留意されたい。むしろ、第1および第2のコンパートメント間のシール313は、使用中に破断せず、使用中にそのままで、破断しないままである。このようにして、第1および第2のコンパートメント内の化学物質は、第3のコンパートメント内のワイプ302に導入される前に一緒に混合されることができる。さらに、第1および第3のコンパートメント320、340の間には、直接的な液体流の連絡はない。むしろ、第1のコンパートメント320内の液体は、最初に第2のコンパートメント330を流れることなく第3のコンパートメント340に到達することができない。最も劣化しやすい化学物質である漂白剤は、第2の脆弱性のシール313が第1の脆弱性のシール315と同時にまたはその前に破断した場合、ワイプ302を劣化させないように、第1のコンパートメント320に収容される。
【0082】
さらに、第1の層301と第2の層303とは、その間に配置される他の材料なしに直接シールされる。このようにして、脆弱性のシール315、313は、コンパートメント320、330、340の間にテーパー状の領域を形成する。シール315、313は適切な厚みを備えていればよく、たとえば、線またはピンチポイントを形成する程度に小さいか、または平坦化された領域を形成するために広いかなどであってもよい。一実施形態では、ポーチ300は、13.5インチの長さ、および11.81インチの幅を有することができ、第1のコンパートメントは、約5インチの長さを有することができ、第3のコンパートメントは、約8.5インチの長さを有することができる。第1および第2のコンパートメントは、それぞれ約170mLの液体または溶液を保持することができ、第3のコンパートメントは、1つまたは複数の折り畳まれた12×12のニットワイパーを保持することができる。さらに、シールは、図示のように直線状である必要はなく、曲線状など他の形状を有することができる。本発明の別の実施形態では、第1のコンパートメントは、第2のコンパートメントと同じサイズであってもよく、異なるサイズであってもよく、例えば、第2のコンパートメントより小さくてもよく、大きくてもよい。第1、第2および第3のコンパートメントは、概して正方形または長方形であるが、または他の適切なサイズおよび形状を有することができる。
【0083】
図10~
図14は、本発明の別の例示的な実施形態を示す。ここでは、2つの上部コンパートメントが異なるサイズを有することが示されている。左上のコンパートメントは右上のコンパートメントより大きいが、下のコンパートメントより小さい。左上と右上のコンパートメントは同じ高さを有するが、左のコンパートメントは右のコンパートメントより広い。これは、例えば、左のコンパートメントが注射用蒸留水(water for injection,WFI)などの希釈液体を保持し、右のコンパートメントが漂白剤などの濃縮物を保持してもよい。一実施形態では、
図14に示されるサイズおよび寸法である。使うときは、ユーザはポーチを左上隅から巻く(ロールする)。それによって、左上のコンパートメント内の液体が右に向かって押し出され、また、左上のコンパートメント内の圧力が増加する。その圧力は、最終的に2つの上部コンパートメントの間の壊すことができる、またはバースト性のシールが破れるまで高くなり、WFIが濃縮液に放出される。
【0084】
したがって、それらの液体は、ポーチを押すことによって一緒に混合される。それらが十分に混合されると、ユーザは、右上のコンパートメントと下のコンパートメントとの間のバーストシールが破れて混合組成物が下のコンパートメントに放出されるまで、ポーチを左上隅から、または上から巻く(ロールする)ことができる。混合組成物は、次に、ワイパーに接触し、浸潤させる。次いで、ワイパーは、上側のアクセスタブ306を開くことによって取り出すことができる。
図10~
図14は、一例の実施形態であり、これらのコンパートメントは、他の相対的なサイズ、形状および寸法であってもよく、任意の数のコンパートメントを設けることができる。
【0085】
図15は、ポーチの他の実施形態を示す図である。ここで、ポーチは、
図6、7の実施形態と同様である。タブ(爪、短い辺)382、384が、2つの長手方向の側面307の各々から内側に延びている。内部のバーストシールは、2つのタブ382、384の間で横方向に延び、2つのタブ382、384の内方の先端に接続する。タブ382、384は、バーストシール380がほぼポーチの全幅を延びるように、タブ382、384が、比較的短く、バーストシール380よりも実質的に短くてもよく、シールが破裂すると上部コンパートメントから下部コンパートメントに移動する液体が妨げられないようになっていてもよい。しかしながら、他の実施形態では、タブ382、384はより長くてもよく、タブ382、384がバーストシール380であってもよい。
【0086】
図15のポーチは、
図6、7のように、ワイプを取り除くためのティアラインまたはスコア262を含まない。その代わりに、ピールアンドシールタイプの開口カバー304(
図8のカバー304と同様)が設けられる。また、
図8の開口部345は設けられていない。その代わりに、右側の長手方向の側面307は連続しており、ヒートシールされ、下端311は層301、303の間に開口し、ワイプが底部コンパートメント内に入れられるとヒートシールされる。
【0087】
最後に、本明細書および特許請求の範囲では、平行、直線、曲線、長方形、垂直、および平面などの複数の幾何学的または関係性の用語が使用されていることに留意されたい。また、明細書および特許請求の範囲では、上部、底部、縁(側辺)、縦方向(長手方向)、横方向、内部などの複数の方向性または位置決めの用語などが使用されている。それらの用語は、図示された実施形態に基づく説明を容易にするための便宜上のものに過ぎない。それらの用語は、本発明を限定することを意図するものではない。したがって、本発明が、それらの幾何学的な用語、関係性の用語、方向性の用語、または位置決めの用語を使用せずに、他の方法で記述し得ることは理解できるであろう。さらに、幾何学的な用語や関係性の用語は正確ではない場合がある。例えば、壁は、互いに正確に垂直または平行でなくても、例えば、表面の粗さや製造時に許容される公差などのために、実質的に垂直または平行であるとみなされる場合がある。そして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の適切な幾何学的形状および関係性が設けられてもよい。
【0088】
本発明は、その特定の形態および実施形態に関連して記載されているが、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、上述したもの以外の様々な変更が可能であることが理解されよう。例えば、すべて添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内で、同等の要素を、具体的に図示および記載されたものと置換することができ、特定の特徴は他の特徴から独立して使用することができ、ある場合には、要素の特定の位置が逆にされてもよいし、介在されてもよい。
【国際調査報告】