IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロレアルの特許一覧

特表2023-518043酸化剤組成物及びUV可視放射を用いてケラチン繊維を脱色するための方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】酸化剤組成物及びUV可視放射を用いてケラチン繊維を脱色するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20230420BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/23 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q5/08
A61K8/22
A61K8/24
A61K8/20
A61K8/41
A61K8/23
A61K8/25
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555684
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(85)【翻訳文提出日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2021056841
(87)【国際公開番号】W WO2021185920
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】2002598
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ギャバン・ヴィック
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・オソラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティン・ルクス
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ウッドランド
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB012
4C083AB081
4C083AB271
4C083AB281
4C083AB311
4C083AB312
4C083AB321
4C083AB331
4C083AB332
4C083AB351
4C083AB352
4C083AB371
4C083AB372
4C083AB411
4C083AB412
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC271
4C083AC272
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC521
4C083AC532
4C083AC541
4C083AC581
4C083BB21
4C083BB43
4C083CC35
4C083DD06
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD28
4C083EE07
4C083EE27
4C083FF05
(57)【要約】
本発明は、ケラチン繊維、特に、毛髪などのヒトのケラチン繊維を脱色するための方法であって、前記繊維に、過酸化水素及びモル質量が40g/molを超える非過酸化物アンモニウム塩を含む酸化剤組成物を適用するステップと、前記酸化剤組成物を適用した後に、前記繊維に200~800nmの範囲の波長を有し、フルエンスが1~5000J/cmの範囲にあるUV-可視放射を照射するステップと、を含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトのケラチン繊維を脱色するための方法であって:
(i)前記繊維に、
- モル質量が40g/molを超える少なくとも1種の非過酸化物アンモニウム塩と;
- 過酸化水素と;
- 任意選択的に、モル質量が40g/molを超える前記非過酸化物アンモニウム塩とは異なる、少なくとも1種のアルカリ剤と;
を含む酸化剤組成物を適用するステップであって;
前記酸化剤組成物のpHは7.5以上である、ステップと;
(ii)前記繊維に、波長が200~800nmの範囲にあり、フルエンスが1~5000J/cmの範囲にあるUV可視放射を、前記組成物を適用した後に照射するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記照射ステップは、1又は複数の光源、より詳細には、発光ダイオード(LED)又は有機発光ダイオード(OLED)から選択される1又は複数の発光源を用いて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ケラチン繊維は、前記酸化剤組成物で処理された後、1~60分間の範囲の時間、特に1~30分間の範囲の時間、より優先的には1~20分間の範囲の時間、より良好には1~5分間の範囲の時間照射される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記UV可視放射の波長は、280~700nmの範囲、好ましくは350~500nmの範囲にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記UV可視放射は、フルエンスが1~2000J/cmの範囲、好ましくは10~1000J/cmの範囲、特に20~800J/cmの範囲にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非過酸化物アンモニウム塩は、酸性、中性、又はアルカリ性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非過酸化物アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、乳酸アンモニウム、酢酸アンモニウムから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非過酸化物アンモニウム塩は、無機アンモニウム塩である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非過酸化物アンモニウム塩は、酸性非過酸化物無機アンモニウム塩から、好ましくは塩化アンモニウム及び硫酸アンモニウムから選択され、より良好には塩化アンモニウムである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非過酸化物アンモニウム塩は、アルカリ性非過酸化物無機アンモニウム塩から、好ましくは炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムから選択され、より良好には炭酸アンモニウムである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤組成物は、モル質量が40g/molを超える1種又は複数種の非過酸化物アンモニウム塩を、前記酸化剤組成物の総質量に対し、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%の範囲の総量で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
モル質量が40g/molを超える前記非過酸化物アンモニウム塩とは異なる前記アルカリ剤は、アンモニア水、有機アミン、特に、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノロールなどのアルカノールアミン、アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(メタ)ケイ酸塩、特に(メタ)ケイ酸ナトリウム、アルギニン、グリシンナトリウム、又はグリシンカリウム、並びにこれらの混合物から、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属(メタ)ケイ酸塩から、より良好には(メタ)ケイ酸ナトリウムから選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化剤組成物は、モル質量が40g/molを超える前記非過酸化物アンモニウム塩とは異なる1種又は複数種のアルカリ剤を、前記酸化剤組成物の総質量に対し、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.2質量%~15質量%、より好ましくは0.3質量%~10質量%の範囲の総量で含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化剤組成物中の過酸化水素の総含有量は、前記酸化剤組成物の総質量に対し、0.5質量%~12質量%、好ましくは1質量%~10質量%、より好ましくは3質量%~9質量%の間で変化する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化剤組成物は、前記組成物の総質量に対し、過酸化塩を5質量%未満、好ましくは過酸化塩を3%未満、より好ましくは過酸化塩を1%未満含み、より良好には過酸化塩を含まないことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化剤組成物は、好ましくは直接染料及び酸化染料から選択される1種又は複数種の染毛料を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記酸化剤組成物のpHは、7.5~12、好ましくは8~11、より良好には9~10.5である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記酸化剤組成物を適用するステップi)の前に、ステップi)において前記毛髪に適用するための前記酸化剤組成物を得るために、モル質量が40g/molを超える少なくとも1種の非過酸化物アンモニウム塩と、任意選択的に、モル質量が40g/molを超える前記非過酸化物アンモニウム塩とは異なる少なくとも1種のアルカリ剤とを含む第1組成物(A)を、過酸化水素を含む第2組成物(B)と、任意選択的に、モル質量が40g/molを超える前記非過酸化物アンモニウム塩とは異なる少なくとも1種のアルカリ剤を含む第3組成物と混合する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1組成物(A)は無水である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2組成物(B)は水性である、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記ケラチン繊維照射ステップの後に前記酸化剤組成物を濯ぎ落とすことを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトのケラチン繊維を脱色するための方法であって、前記繊維に酸化剤組成物を適用するステップと、続いて前記繊維に、波長が200~800nmの範囲にあり、フルエンスが1~5000J/cmの範囲にあるUV可視放射を照射するステップと、を含む、方法に関する。
【0002】
本発明は、毛髪脱色の技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトのケラチン繊維の脱色又は明色化は、「メラニン」色素を酸化し、それによってこの色素を分解して、部分的に又は完全に除去することにより行われる。
【0004】
一般に、ヒトのケラチン繊維を明色化又は脱色するための方法は、少なくとも1種の酸化剤を含む水性組成物を、ほとんどの場合はアルカリ性pH条件下に適用することから構成される。この酸化剤の役割は、特に、ケラチン繊維のメラニンを分解することにあり、その結果として(存在する酸化剤の性質に応じて程度の差はあるが)、繊維が明色化される。したがって、比較的穏やかな明色化を行う場合、酸化剤として過酸化水素を用いるのが一般的である。より強力な明色化が望まれる場合は、過酸化水素の存在下に、過酸化塩、例えば過硫酸塩が通常使用される。
【0005】
先行技術に記載されている明色化方法は、通常、実施にかなり長い時間を要することが分かっているステップを含むという欠点を有する。例えば、明色化方法は、50分間に及ぶこともある酸化剤組成物の放置ステップを含む場合もあり、普通はここに、前記組成物の適用に関連する所要時間も必然的に追加される。換言すれば、このような明色化方法に使用される組成物の適用及び放置にかなり長い時間を要することが分かっており、被施術者及び/又はヘアスタイリストがその使用を面倒に感じることもある。
【0006】
このような明色化方法はまた、アルカリ剤及び/又は酸化剤等の活性物質をかなり高い濃度で含有する組成物を使用しているため、こうした方法の費用が高額になり得るという欠点も有している。
【0007】
更に、標準的な明色化方法は、ケラチン繊維を脱色する際に自然の色合いを変化させてしまうという欠点を有し、通常、その結果として、地色が魅力に欠けるオレンジ色がかった外観を呈することになる。そのため、自然の色合いをより保ったままケラチン繊維を明色化する方法の開発が求められている。
【0008】
更に、光源を使用する脱色方法は先行技術から既に知られている。
【0009】
実際、(特許文献1)には、レーザー又はフラッシュランプを用いた照射ステップを含む脱色方法が記載されている。
【0010】
これに関連し、(特許文献2)には、光増感剤を0.5質量%~5質量%を含む組成物及び水素ラジカルを放出することができる組成物を使用する光化学的脱色方法が記載されている。
【0011】
(特許文献3)には、200~600nmの範囲の波長を有するUV放射を用いるか又は特定の照射装置を用いて照射を行うステップを用いる染色又は脱色方法が記載されている。
【0012】
これらの文書には、特定の範囲のフルエンスを有するUV可視放射を照射するステップを用いる有効な脱色方法は記載されていない。
【0013】
(特許文献4)には、化学的酸化剤を含む組成物及び効果が改善されたUV可視放射を照射するステップを用いる脱色又は染色方法が記載されている。
【0014】
それでも尚、既存の脱色方法を更に改善することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4792341号明細書
【特許文献2】国際公開第91/06279号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/048473号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2015/165949号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、上に述べた欠点を有しない、即ち、より短い時間で実施され、自然の色合い及びケラチン繊維の健全性を損なわないことが可能である、ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトのケラチン繊維を脱色するための方法を開発することが本当に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は本発明により達成される。その主題は、特に、ケラチン繊維、特に毛髪等のヒトのケラチン繊維を脱色するための方法であって:
i)前記繊維に、
- モル質量が40g/molを超える少なくとも1種の非過酸化物(non-peroxygenated)アンモニウム塩と;
- 過酸化水素と;
- 任意選択的に、モル質量が40g/molを超える非過酸化物アンモニウム塩とは異なる、少なくとも1種のアルカリ剤と;を含む酸化剤組成物を適用するステップであって;
酸化剤組成物のpHは7.5以上である、ステップと;
ii)前記繊維に、波長が200~800nmの範囲にあり、フルエンスが1~5000J/cmの範囲にあるUV可視放射を、前記組成物を適用した後に照射するステップと;を含む方法にある。
【0018】
換言すれば、本発明による方法は、モル質量が40g/molを超える1種又は複数種の非過酸化物アンモニウム塩と、過酸化水素と、任意選択的に、モル質量が40g/molを超える非過酸化物アンモニウム塩とは異なるアルカリ剤と、を含む、pHが7.5以上である組成物を適用するステップと、繊維を上に述べたように照射するステップと、を用いることによって成果を挙げている。
【0019】
本発明による脱色方法の照射ステップにより、ケラチン繊維を有効に明色化するために必要な酸化剤組成物の放置時間を有利に短縮するか又は省くことさえ可能になる。その場合、総処理時間を、酸化剤組成物をケラチン繊維に適用する時間及び繊維の照射時間に相当する時間とすることができる。
【0020】
その結果、本発明による方法によってケラチン繊維の処理時間を短縮することが可能になり、実施がより容易になる。
【0021】
有利には、照射ステップは、本発明による方法の効率を高める発光源を用いて行われる。
【0022】
更に、本発明による方法により、明色化作用を向上させながら、先行技術の明色化方法よりもケラチン繊維の自然な色合いを損なわないことが可能になる。事実、本発明による明色化方法を用いて処理されたケラチン繊維は、先行技術による明色化方法で処理された繊維のように、明色化された地色がオレンジ色がかっていないことに注目されたい。
【0023】
換言すれば、本発明による明色化方法によって、より自然で美しい色合いを得ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の他の特徴及び利点は以下の記載及び実施例を読むことによって一層明らかになるであろう。
【0025】
以下の文書において、特記されない限り、ある範囲の境界値はその範囲内に含まれる。
【0026】
「少なくとも1の」という表現は、「1又は複数の」という表現と均等である。
【0027】
本発明による方法により処理されるヒトのケラチン繊維は、好ましくは毛髪である。
【0028】
先に示したように、本発明による脱色方法は、酸化剤組成物をケラチン繊維に適用するステップi)を含む。
【0029】
酸化剤組成物
酸化剤組成物は、過酸化水素を含む。
【0030】
過酸化水素は、酸化剤組成物中に、酸化剤組成物の総質量に対し、0.5質量%~12質量%、好ましくは1質量%~10質量%、より好ましくは3質量%~9質量%の範囲の総含有量で存在することができる。
【0031】
更に酸化剤組成物は、モル質量が40g/molを超える少なくとも1種の非過酸化物アンモニウム塩も含む。
【0032】
「アンモニウム塩」という用語は、その構造内に少なくとも1個のアンモニウム系陽イオン及び無機又は有機酸から誘導された陰イオンを含む任意の無機又は有機化合物を意味する。
【0033】
「非過酸化物アンモニウム塩」という用語は、-O-O-結合を含まない任意のアンモニウム塩を意味する。
【0034】
非過酸化物アンモニウム塩は、特に、過炭酸アンモニウム、過ホウ酸アンモニウム、又は過硫酸アンモニウムとは異なる。
【0035】
このアンモニウム塩は、水酸化アンモニウムとは異なる。
【0036】
このアンモニウム塩は、無機アンモニウム塩であっても有機アンモニウム塩であってもよい。
【0037】
「無機塩」という用語は、その構造内に1個を超える炭素原子を含まない塩を意味する。
【0038】
無機アンモニウム塩は、酸性、アルカリ性、又は中性であってもよい。
【0039】
「酸性塩(acid salt)」という用語は、水中に5%含まれる場合、25℃でpHが6.5未満となる塩を意味する。
【0040】
「アルカリ性塩」という用語は、水中に5%含まれる場合、25℃でpHが7.5を超える塩を意味する。
【0041】
「中性塩」という用語は、水中に5%含まれる場合、25℃でpHが6.5~7.5の範囲となる塩を意味する。
【0042】
モル質量が40g/molを超える非過酸化物無機アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムから選択することができる。
【0043】
有機アンモニウム塩は、乳酸アンモニウム、酢酸アンモニウムから選択することができる。
【0044】
好ましくは、モル質量が40g/molを超える非過酸化物アンモニウム塩は無機アンモニウム塩である。
【0045】
第1の変形形態によれば、非過酸化物アンモニウム塩は、酸性の非過酸化物無機アンモニウム塩から選択される。
【0046】
酸性の非過酸化物型アンモニウム塩は、好ましくは、塩化アンモニウム及び硫酸アンモニウムから選択される。第1の変形形態によれば、酸性無機アンモニウム塩は、好ましくは塩化アンモニウムである。
【0047】
第2の変形形態によれば、非過酸化物アンモニウム塩は、アルカリ性の非過酸化物無機アンモニウム塩から選択される。このアルカリ性無機アンモニウム塩は、好ましくは、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムから選択される。この第2の変形形態によれば、アルカリ性無機塩は炭酸アンモニウムである。
【0048】
好ましくは、モル質量が40g/molを超える非過酸化物アンモニウム塩は、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、及び炭酸水素アンモニウムから選択される。
【0049】
非過酸化物アンモニウム塩は、酸化剤組成物中に、酸化剤組成物の総質量に対し、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%の範囲の総量で存在することができる。
【0050】
更に酸化剤組成物は、モル質量が40g/molを超える非過酸化物アンモニウム塩とは異なるアルカリ剤も含むことができる。
【0051】
「アルカリ剤」という用語は、それが存在する組成物のpHを上昇させるための任意の剤を意味する。
【0052】
これは無機物であっても有機物であってもよい。
【0053】
より詳細には、本発明の酸化剤組成物に使用することができるアルカリ剤は:
a)アンモニア水、
b)有機アミン、例えば、モノ-、ジ-、及びトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、並びに2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどのアルカノールアミンに加えてこれらの誘導体、
c)オキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化エチレンジアミン、
d)無機又は有機水酸化物、
e)メタケイ酸ナトリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩、
f)アミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸、例えば、アルギニン、グリシン、リジン、オルニチン、シトルリン、及びヒスチジン、又はこれらのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属塩、
g)特に、一級アミン、二級アミン、若しくは三級アミン、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の、炭酸塩及び炭酸水素塩、
h)次式(III):
【化1】
(式中、Xは、1個又は複数個のヒドロキシル又はC~Cで任意選択的に置換された直鎖又は分岐C~Cアルキレン基、より良好にはC~Cアルキル基であり;Rx、Ry、Rz、及びRtは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はC~Cアルキル基、C~Cヒドロキシアルキル基、若しくはC~Cアミノアルキル基を表す)で表される化合物から選択することができる。
【0054】
このような式(III)の化合物の例として、1,3-ジアミノプロパン及び1,3-ジアミノ-2-プロパノールを挙げることができる。
【0055】
無機又は有機水酸化物は、好ましくは、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、遷移金属の水酸化物、例えば、元素周期表のIII、IV、V、及びVI族からの金属の水酸化物、ランタニド又はアクチニドの水酸化物、及び水酸化グアニジニウムから選択される。
【0056】
水酸化物はその場で形成することもでき、例えば、水酸化グアニジンは、水酸化カルシウムを炭酸グアニジンと反応させることにより形成される。
【0057】
好ましいアルカリ剤は、特に、アンモニア水、有機アミン、特に、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノロールなどのアルカノールアミン、アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の(メタ)ケイ酸塩、特に(メタ)ケイ酸ナトリウム、アルギニン、グリシンナトリウム、又はグリシンカリウム、並びにこれらの混合物から選択される。
【0058】
好ましくは、アルカリ剤は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(メタ)ケイ酸塩から選択される。より好ましくは、アルカリ剤は、(メタ)ケイ酸ナトリウムから選択される。
【0059】
アルカリ剤が存在する場合、その総含有量は、酸化剤組成物の総質量に対し0.1質量%~20質量%、好ましくは0.2質量%~15質量%、より好ましくは0.3質量%~10質量%を占める。
【0060】
一変形形態によれば、酸化剤組成物は、過酸化水素と、好ましくは炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムから選択され、より好ましくは炭酸アンモニウムから選択される少なくとも1種のアルカリ性非過酸化物無機アンモニウム塩と、を含む。
【0061】
この変形形態によれば、酸化剤組成物はまた、モル質量が40g/molを超える非過酸化物アンモニウム塩とは異なるアルカリ剤を必ずしも含まない。
【0062】
好ましくは、酸化剤組成物は、過酸化塩を、組成物の総質量に対し5質量%未満、好ましくは過酸化塩を3%未満、より好ましくは過酸化塩を1%未満含む。より好ましくは、酸化剤組成物は過酸化塩を含まない。
【0063】
酸化剤組成物は、好ましくは、直接染料及び酸化染料から選択される1種又は複数種の染毛料を含むことができる。
【0064】
酸化剤組成物は水性である。
【0065】
酸化剤組成物は、水を、酸化剤組成物の総質量に対し20質量%~70質量%の範囲、好ましくは30質量%~60質量%の範囲の量で含む。
【0066】
酸化剤組成物のpHは、好ましくは7.5~12の間、好ましくは8~11の間、より良好には9~10.5の間にある。
【0067】
酸化剤組成物は、様々な形態、例えば、溶液、エマルジョン、又はゲルとすることができる。
【0068】
酸化剤組成物は、少なくとも2種の組成物を混合することにより得ることができる。
【0069】
具体的には、酸化剤組成物は、モル質量が40g/molを超える少なくとも1種の非過酸化物アンモニウム塩と、任意選択的な、非過酸化物アンモニウム塩とは異なる少なくとも1種のアルカリ剤とを含む組成物(A)を、過酸化水素を含む組成物(B)と、任意選択的に、モル質量が40g/molを超える非過酸化物アンモニウム塩とは異なる少なくとも1種のアルカリ剤を含む第3の組成物とを混合することによって得ることができる。
【0070】
組成物(A)は、好ましくは無水である。
【0071】
本発明の目的に関する「無水組成物」という用語は、水含有量が5質量%未満、好ましくは2質量%未満である組成物及び/又は追加された水を一切含まない組成物、即ち、本発明による組成物中に存在し得る水が、より具体的には、塩の結晶水などの結合水であるか若しくは本発明による組成物の製造に使用された出発物質により吸収された微量の水であることを意味する。
【0072】
組成物(B)は、好ましくは水性である。
【0073】
更に酸化剤組成物、組成物(A)、及び組成物(B)は、1種又は複数種の補助剤、例えば、溶媒、脂肪質物質、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性若しくは両イオン性ポリマー、又はこれらの混合物、アニオン性、非イオン性、カチオン性、及び/又は両性界面活性剤、無機増粘剤、特に、粘土又はタルク等のフィラー、有機増粘剤、特に、アニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性会合性高分子増粘剤、顔料、酸化防止剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、香料、分散剤、皮膜形成剤、セラミド、保存剤、不透明化剤、ふけ防止剤、脱毛防止剤も含むことができる。
【0074】
照射ステップ
上に示したように、本発明による方法は、前記組成物を適用した後のケラチン繊維に、200~800nmの範囲の波長を有するUV可視放射を1~5000J/cmの範囲のフルエンスで照射するステップを含む。
【0075】
好ましくは、照射源から放出される放射のエネルギーの90%は200~800nmの間にある。より好ましくは、照射源から放出される放射のエネルギーの95%は200~800nmの間にある。
【0076】
本発明の好ましい一変形形態において、光源は、「単色」放射、即ち、所与の波長を中心とし、放出されるエネルギーの分散が前記波長に対し±10ナノメートルと非常に狭い放射を放出する。
【0077】
好ましくは、UV可視放射の波長は280~700nmの範囲にあり、特に350~500nmの範囲にある。
【0078】
より詳細には、UV可視放射の波長は、385nm、405nm、又は455nm(±10ナノメートル)である。
【0079】
UV可視放射のフルエンスは、1~5000J/cmの範囲、好ましくは1~2000J/cmの範囲、特に10~1000J/cmの範囲、より詳細には20~800J/cmの範囲にある。
【0080】
有利には、本発明による方法の照射ステップは、1又は複数の光源、好ましくは1又は複数の発光源を用いて実施される。
【0081】
より有利には、UV可視放射は、1又は複数の発光ダイオード(LED)又は有機発光ダイオード(OLED)等の発光素子から構成される1又は複数の発光源から放出される。
【0082】
発光源は、発光ダイオード(LED)又は有機発光ダイオード(OLED)から選択することができる。
【0083】
換言すれば、照射ステップは、1又は複数の発光源を用いて実施され、それによって本発明の方法の処理時間を有効に短縮することが可能になる。
【0084】
好ましくは、照射源は、1又は複数の発光ダイオードから構成することができる。
【0085】
更にダイオードは、小型化が容易であり、且つエネルギーが高いという利点を有する。ダイオードはまた、所与のフルエンスを得るための照射時間を短縮することも可能にする。
【0086】
特に、本発明の方法に使用される照射源は、仏国特許出願第1903781号明細書に記載されている、毛束に沿って移動させることができる挟み具に支持されている。
【0087】
UV可視放射は、連続であってもよいし、又は0.001~1000Hzの範囲、好ましくは0.01~100Hzの範囲のパルス周波数を有するパルスであってもよい。
【0088】
本発明の一変形形態において、照射源が放出する放射の被処理基材上の放射照度は、1~50W/cmの間で変化する。
【0089】
好ましくは、酸化剤組成物で処理した後のケラチン繊維は、60分未満の時間照射される。特に、照射時間は、1~60分間、より好ましくは1~30分間、より好ましくは1~20分間、特に1~5分間の範囲の間で変化する。
【0090】
照射源は、毛束に沿って1回又は複数回連続して移動させることができる。
【0091】
好ましくは、酸化剤組成物をケラチン繊維に適用した後、照射ステップを行う前に、フィルム又は包材などの補助具(accessory)をケラチン繊維上に配置することができる。
【0092】
この補助具は、その上に酸化剤組成物が適用されたケラチン繊維を封じ込めることができるものとすることができる。
【0093】
好ましくは、補助具は、照射波長に対し透明である。
【0094】
好ましくは、照射ステップの前に酸化剤組成物をケラチン繊維上に放置する時間は、30分未満、好ましくは10分未満、より好ましくは5分未満とすることができる。
【0095】
好ましくは、照射ステップは、酸化剤組成物をケラチン繊維上に適用した直後に実施される。
【0096】
「直後」という表現は、組成物の適用が終了してから又はケラチン繊維にフィルム若しくは包材などの補助具を配置してから5分未満を意味すると理解される。換言すれば、ケラチン繊維上に酸化剤組成物を放置する時間は必要ない。
【0097】
好ましくは、本発明による方法はまた、照射ステップの後に酸化剤組成物を濯ぐステップも含む。
【0098】
本発明の一変形形態によれば、酸化剤組成物をケラチン繊維表面の一部に適用した後、第2ステップで、表面の前記一部又は全部に上に定義したUV可視放射を照射する。
【0099】
本発明の他の変形形態によれば、酸化剤組成物をケラチン繊維の表面全体に適用した後、第2ステップで、表面全体に上に定義したUV可視放射を照射する。
【0100】
本発明の第3の変形形態によれば、酸化剤組成物をケラチン繊維の表面全体に適用した後、第2ステップで、前記表面の一部(この表面の一部は予め定めることができる)に上に定義したUV可視放射を照射する。
【0101】
このような実施形態により、ケラチン繊維表面に明色化されたパターンを作り出すことが可能になる。
【0102】
本発明はまた、ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトのケラチン繊維を脱色するための方法であって:
- pHが7.5以上の酸化剤組成物を得るために、モル質量が40g/molを超える少なくとも1種の非過酸化物アンモニウム塩と、任意選択的に、モル質量が40g/molを超える非過酸化物アンモニウム塩とは異なる少なくとも1種のアルカリ剤とを含む第1組成物(A)を、過酸化水素を含む第2組成物(B)と、任意選択的に、モル質量が40g/molを超える非過酸化物アンモニウム塩とは異なる少なくとも1種のアルカリ剤を含む第3組成物と、混合することと;次いで
- 酸化剤組成物を前記繊維に適用することと;次いで
- 前記繊維に、波長が200~800nmの範囲にあり、フルエンスが1~5000J/cmの範囲にあるUV可視放射を照射するステップと、を含む方法に関する。
【0103】
以下の実施例は本発明を説明する役割を果たすものであって、その性質を限定するものではない。
【0104】
以下の実施例に使用するケラチン繊維は、トーンレベル4(TL4)の毛髪であり、これは栗色(chestnut brown)の毛束に相当する。
【0105】
「トーンレベル」という概念は、自然の色合いを区分することに基づいており、各色合いを1つのトーンとし、その前後に隣接する色合いと分けている。この定義及び自然の色合いの区分はプロのヘアスタイリストによく知られており、書籍「Sciences des traitements capillaires(Hair treatment science)」、Charles Zviak著、1988、Masson刊、pp.215及び278に記載されている。
【0106】
トーンレベルは1(黒)から10(非常に明るいブロンド)までの段階に分けられており、1単位が1つのトーンレベルに相当し、数字が大きいほど色合いが明るくなる。
【実施例
【0107】
実施例1
A.供試組成物
以下に示す組成物を次の表に示す成分から調製した。量は活性物質の質量百分率として表す。
【0108】
【表1】
【0109】
粉末形態にあるこれらの組成物を、次に示す過酸化水素を含む水性組成物と1+3(A+B)の比で混合する。
【0110】
【表2】
【0111】
B.発光源
数個の青色発光ダイオード(LED)から構成されるように組み立てられた青色LEDアレイを使用する。青色光の中心波長は405nmである。
【0112】
この機器は、18cmの表面積を照射するのに十分な、適切に取り付けられた発光ダイオードから構成される。この光源から、フルエンスの合計が1~5000J/cmとなるように照射(deliver)を行う。毛束の一部分を照射し、毛束全体に送達されるフルエンスが等しくなるように、光源を周期的に動かす。
【0113】
C.手順
得られた様々な混合物を、トーンレベルTL4の毛束に、毛束1グラム当たり混合物10グラムの割合で適用し、これらを照射波長に対し透明な包材で包む。
【0114】
各毛束を、フルエンスが80J/cmとなるように、405ナノメートルの波長で160秒間照射する。毛束全体を一度に照射しないように、光源を毛束に沿って周期的に移動させる。
【0115】
毛束を濯いだ後、シャンプーで洗浄する。
【0116】
D.結果
毛束の色の明度Lを、Minolta Spectrophotometer CM2600D測色計を用いて測定する。
【0117】
本発明による方法を用いて処理を行う前及び後の毛束の色の明度の変化ΔLを次式に従い算出する:ΔL=L-L (Lは処理後の測定値を表し、L は処理前の測定値を表す)。
【0118】
ΔLの値が高いほど処理前後の色の差が大きく、本例においては、束がより脱色されている。
【0119】
結果を次の表1に示す。
【0120】
【表3】
【0121】
本発明による方法により毛束を効果的に脱色することが可能であることが認められる。
【0122】
実施例2
A.供試組成物
次に示す酸化剤組成物を調製する。その量を活性物質の質量百分率で表す。
【0123】
【表4】
【0124】
この2種の組成物のアンモニウム源のモル量は等しい。
【0125】
B.発光源
実施例1と同じ発光源を使用する。
【0126】
C.手順
組成物(C)及び(C1)を、それぞれ、トーンレベルTL4の毛束に、毛束1グラム当たり10グラムの割合で適用し、これらを照射波長に対し透明な包材で包む。
【0127】
各毛束を、フルエンスが80J/cmとなるように、405ナノメートルの波長で160秒間照射する。一度に毛束全体を照射しないように、光源を毛束に沿って周期的に移動させる。
【0128】
毛束を濯いだ後、シャンプーで洗浄する。
【0129】
D.結果:色合いの比較
毛束の色をMinolta Spectrophotometer CM2600D測色計を用いてCIE L*a*b*系で評価した。このL系の3つのパラメータは、それぞれ、明度(L)、緑/赤色軸(a)、及び青/黄色軸(b)を意味する。
【0130】
この表には、未処理の毛束(TL4)、本発明による方法により処理された毛束(TL4)、及び組成物(C1)を用いた比較方法により処理された毛束(TL4)の測色パラメータL、a、及びbを示す。
【0131】
【表5】
【0132】
使用した活性剤の量が等しい場合、本発明による方法は、比較方法よりも良好な脱色を達成することが認められる。
【0133】
実施例3
A.供試組成物
実施例1の組成物(A8)及び(B)を使用する。
【0134】
B.発光源
実施例1と同じ発光源を使用する。
【0135】
C.手順
1)方法1
酸化剤組成物を得るために、組成物(A8)及び(B)を1:3の比で混合する。次いで、酸化剤組成物を栗色の毛束(TL4)に、毛束1グラム当たり酸化剤組成物10グラムの割合で適用する。次いで毛束を照射波長に対し透明な包材で包み、直ちにフルエンスが80J/cmとなるように160秒間照射する。次いで毛束を濯ぐ。
【0136】
2)方法2(過酸化塩(persalt)を使用する従来の脱色方法)
L’Oreal Professionnelからの「Infinie Platine Low odor」の名称を有する組成物を、30-volumeの酸化剤(L’Oreal ProfessionnelからのDeveloppeur Oxydant Creme 30 volumes)と1:1.5の比で混合する。この混合物から得られた組成物を、栗色の毛束(TL4)に、毛束1グラム当たり酸化剤組成物10グラムの割合で適用する。組成物を毛束上に33℃で40分間放置する。次いで毛束を濯ぐ。
【0137】
D.結果:色合いの比較
毛束の色をMinolta Spectrophotometer CM2600D測色計を用いてCIE L系で評価した。このL系の3つのパラメータは、それぞれ、明度(L)、緑/赤色軸(a)、及び青/黄色軸(b)を意味する。
【0138】
次の表に、未処理の毛束(TL4)、先行技術による方法(方法2)により処理された毛束、及び本発明による方法(方法1)により処理された毛束の測色パラメータL、a、及びbを示す。また、Δa及びΔbの値は、それぞれ、未処理の毛束のa 及び脱色された毛束のaから求められる値並びに未処理の毛束のb 及び脱色された毛束のbから求められる値である。
【0139】
【表6】
【0140】
(L)に関する脱色の程度が等しい場合、本発明による脱色方法(方法1)は、明色化された地色を黄色/オレンジ色がかった色にすることなく、先行技術の方法よりも自然なトーンレベルに忠実に明色化することが認められる。
【0141】
実際、本発明による方法を用いて得られたa値及びb値は、先行技術を用いた方法により得られたa値及びb値よりも、未処理のTL4の毛束の初期値であるa 及びb から離れていない。したがって、方法2を用いて脱色した毛束は、本発明による方法を用いて脱色した毛束よりも赤味(a)及び黄味(b)が強い。
【0142】
実施例4
A.供試組成物
次に示す酸化剤組成物を調製する。その量を活性物質の質量百分率で表す。
【0143】
【表7】
【0144】
2種の組成物のアンモニウム源のモル量は等しい。
【0145】
B.発光源
実施例1と同じ発光源を使用する。
【0146】
C.手順
組成物(D)及び(D1)を、それぞれ、トーンレベルTL4の毛束に毛束1グラム当たり10グラムの割合で適用し、これらを照射波長に対し透明な包材で包む。
【0147】
各毛束を、フルエンスが80J/cmとなるように、405ナノメートルの波長で160秒間照射する。一度に毛束全体を照射しないように、光源を毛束に沿って周期的に移動させる。
【0148】
毛束を濯いだ後、シャンプーで洗浄する。
【0149】
D.結果:色合いの比較
毛束の色をMinolta Spectrophotometer CM2600D測色計を用いてCIE L系で評価した。このL系の3つのパラメータは、それぞれ、明度(L)、緑/赤色軸(a)、及び青/黄色軸(b)を意味する。
【0150】
この表には、未処理の毛束(TL4)、組成物(D)を用いて本発明による方法により処理された毛束(TL4)、及び組成物(D1)を用いて比較方法により処理された毛束(TL4)の測色パラメータL、a、及びbを示す。
【0151】
【表8】
【0152】
使用した活性剤の量が等しい場合、本発明による方法は、比較方法よりも良好な脱色を達成することが認められる。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトのケラチン繊維を脱色するための方法であって:
(i)前記繊維に、
- モル質量が40g/molを超える少なくとも1種の非過酸化物アンモニウム塩と;
- 過酸化水素と;
- 任意選択的に、モル質量が40g/molを超える前記非過酸化物アンモニウム塩とは異なる、少なくとも1種のアルカリ剤と;
を含む酸化剤組成物を適用するステップであって;
前記酸化剤組成物のpHは7.5以上である、ステップと;
(ii)前記繊維に、波長が200~800nmの範囲、好ましくは280~700nmの範囲、より良好には350~500nmの範囲にあり、フルエンスが1~5000J/cmの範囲、好ましくは1~2000J/cm の範囲、より良好には10~1000J/cm の範囲、特に20~800J/cm の範囲にあるUV可視放射を、前記組成物を適用した後に照射するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記照射ステップは、1又は複数の光源、より詳細には、発光ダイオード(LED)又は有機発光ダイオード(OLED)から選択される1又は複数の発光源を用いて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ケラチン繊維は、前記酸化剤組成物で処理された後、1~60分間の範囲の時間、特に1~30分間の範囲の時間、より優先的には1~20分間の範囲の時間、より良好には1~5分間の範囲の時間照射される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非過酸化物アンモニウム塩は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、乳酸アンモニウム、酢酸アンモニウムから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非過酸化物アンモニウム塩は、無機アンモニウム塩である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非過酸化物アンモニウム塩は、酸性非過酸化物無機アンモニウム塩から、好ましくは塩化アンモニウム及び硫酸アンモニウムから選択され、より良好には塩化アンモニウムである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非過酸化物アンモニウム塩は、アルカリ性非過酸化物無機アンモニウム塩から、好ましくは炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムから選択され、より良好には炭酸アンモニウムである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤組成物は、モル質量が40g/molを超える1種又は複数種の非過酸化物アンモニウム塩を、前記酸化剤組成物の総質量に対し、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%の範囲の総量で含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
モル質量が40g/molを超える前記非過酸化物アンモニウム塩とは異なる前記アルカリ剤は、アンモニア水、有機アミン、特に、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノロールなどのアルカノールアミン、アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(メタ)ケイ酸塩、特に(メタ)ケイ酸ナトリウム、アルギニン、グリシンナトリウム、又はグリシンカリウム、並びにこれらの混合物から、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属(メタ)ケイ酸塩から、より良好には(メタ)ケイ酸ナトリウムから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤組成物は、モル質量が40g/molを超える前記非過酸化物アンモニウム塩とは異なる1種又は複数種のアルカリ剤を、前記酸化剤組成物の総質量に対し、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.2質量%~15質量%、より好ましくは0.3質量%~10質量%の範囲の総量で含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤組成物中の過酸化水素の総含有量は、前記酸化剤組成物の総質量に対し、0.5質量%~12質量%、好ましくは1質量%~10質量%、より好ましくは3質量%~9質量%の間で変化する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化剤組成物は、前記組成物の総質量に対し、過酸化塩を5質量%未満、好ましくは過酸化塩を3%未満、より好ましくは過酸化塩を1%未満含み、より良好には過酸化塩を含まないことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化剤組成物は、好ましくは直接染料及び酸化染料から選択される1種又は複数種の染毛料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化剤組成物のpHは、7.5~12、好ましくは8~11、より良好には9~10.5である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化剤組成物を適用するステップi)の前に、ステップi)において前記毛髪に適用するための前記酸化剤組成物を得るために、モル質量が40g/molを超える少なくとも1種の非過酸化物アンモニウム塩と、任意選択的に、モル質量が40g/molを超える前記非過酸化物アンモニウム塩とは異なる少なくとも1種のアルカリ剤とを含む第1組成物(A)を、過酸化水素を含む第2組成物(B)と、任意選択的に、モル質量が40g/molを超える前記非過酸化物アンモニウム塩とは異なる少なくとも1種のアルカリ剤を含む第3組成物と混合する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ケラチン繊維照射ステップの後に前記酸化剤組成物を濯ぎ落とすことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】