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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】偏向性の遠位端を有する医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
A61M25/092
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555747
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 US2021021313
(87)【国際公開番号】W WO2021188314
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】16/820,616
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】レイマン,テッド ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ノースロップ,クレイ ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】グリテーロ,ジェイソン イエイン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB31
4C267BB40
4C267BB42
4C267BB52
4C267BB63
4C267CC08
4C267EE03
4C267EE05
4C267GG22
4C267GG24
4C267GG32
4C267HH08
4C267HH11
4C267HH17
(57)【要約】
医療機器であって、近位端と、遠位端と、近位端および遠位端の間に延びる本体とを有する細長部材を含む。細長部材の少なくとも第1の部分は、形状記憶材料から作られた第1のセグメントと、非形状記憶材料から作られた第2のセグメントとを含み、第1の部分は細長部材の遠位部分であり、細長部材の遠位部分の第1のセグメントおよび第2のセグメントは、それぞれの長手方向の側面に沿って互いに固定され、第1のセグメントは、長さの変化を受けて細長部材の遠位部分を曲げるように構成されている。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器であって、
近位端と、遠位端と、前記近位端および遠位端の間に延在する本体とを有する細長部材とを具え、
前記細長部材の少なくとも第1の部分は、形状記憶材料から作られた第1のセグメントと、非形状記憶材料から作られた第2のセグメントとを含み、前記第1の部分は前記細長部材の遠位部分であり、
前記細長部材の遠位部分の第1のセグメントおよび第2のセグメントは、それぞれの長手方向の側面に沿って互いに固定されており、
前記第1のセグメントは、長さの変化を受けて前記細長部材の遠位部分を曲げるように構成されていることを特徴とする医療機器。
【請求項2】
前記第1のセグメントは、体温より高い前記第1のセグメントの温度の上昇に応答して長さを変化させるように構成される、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記温度は体温より少なくとも華氏10度高い、請求項1または2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記第1のセグメントの形状記憶材料が形状記憶ニチノールを含み、前記第2のセグメントの非形状記憶材料が非形状記憶ニチノールを含む、請求項1~3のいずれかに記載の医療機器。
【請求項5】
前記細長部材が前記遠位部分の近位側の第2の部分を含み、当該第2の部分が前記遠位部分とは異なる材料から作られる、請求項1~3のいずれかに記載の医療機器。
【請求項6】
前記第2の部分がステンレス鋼または非形状記憶ニチノールから作られ、前記遠位部分が形状記憶ニチノールから作られる、請求項5に記載の医療機器。
【請求項7】
前記細長部材の少なくとも遠位部分の周りに配置されたジャケットまたはスロット付きチューブをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の医療機器。
【請求項8】
前記細長部材の遠位部分に結合されたマーカーをさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の医療機器。
【請求項9】
医療機器であって、
近位端と、遠位端と、前記近位端および遠位端の間に延在する本体とを有する細長部材を含み、
前記細長部材の少なくとも第1の部分は、第1のセグメントおよび第2のセグメントとを含み、前記第1の部分は前記細長部材の遠位部分であり、
前記細長部材の遠位部分の第1のセグメントおよび第2のセグメントは、それぞれの長手方向の側面に沿って互いに固定され、
前記第1のセグメントは、体温よりも高い温度に応答して長さの変化を受けるように構成され、前記第2のセグメントは、温度に応答した長さの変化がゼロであるか、または第1のセグメントと比較して長さの変化が小さくなるように構成されていることを特徴とする医療機器。
【請求項10】
前記温度が体温よりも少なくとも華氏10度高い、請求項9に記載の医療機器。
【請求項11】
前記第1のセグメントは、前記長さの変化を受けて、前記細長部材の遠位部分を曲げるように構成されている、請求項9または10に記載の医療機器。
【請求項12】
前記第1のセグメントが形状記憶材料を含み、前記第2のセグメントが非形状記憶材料を含む、請求項9~11のいずれかに記載の医療機器。
【請求項13】
前記第1のセグメントの形状記憶材料が形状記憶ニチノールを含み、前記第2のセグメントの非形状記憶材料が非形状記憶ニチノールを含む、請求項12に記載の医療機器。
【請求項14】
前記細長部材が遠位部分の近位側に第2の部分を含み、当該細長部材の第2の部分と前記遠位部分は異なる材料から作製される、請求項9~13のいずれかに記載の医療機器。
【請求項15】
前記第2の部分がステンレス鋼を含み、前記遠位部分がニチノールを含む、請求項14に記載の医療機器。
【請求項16】
前記細長部材の第2の部分が非形状記憶ニチノールを含み、前記細長部材の遠位部分の第1のセグメントが形状記憶ニチノールを含む、請求項14に記載の医療機器。
【請求項17】
前記細長部材の少なくとも遠位部分の周りに配置されたジャケットまたはスロット付きチューブをさらに含む、請求項9~16のいずれかに記載の医療機器。
【請求項18】
前記細長部材の遠位部分に連結されたマーカーをさらに含む、請求項9~17のいずれかに記載の医療機器。
【請求項19】
請求項1に記載の医療機器を含む医療処置システムであって、前記細長部材に結合されたエネルギー源をさらに含み、前記エネルギー源が前記細長部材に電流を供給して、前記細長部材の遠位部分の温度を上昇させるように構成されていることを特徴とする医療処置システム。
【請求項20】
ユーザが前記エネルギー源からの電流を調整して、前記細長部材の遠位部分の曲げの曲率に対応する変化を及ぼせるように構成されたユーザインターフェースをさらに含む、請求項19に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の分野は医療機器に関し、より具体的には、医療機器用の偏向性のガイドワイヤ、プッシュワイヤ、および送達ワイヤ、ならびにそのようなガイドワイヤ、プッシュワイヤ、および送達ワイヤを有する医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ステント、ステントグラフト、フローダイバータ、動脈瘤閉塞装置、大静脈フィルタなどの血管内インプラントの使用は、多くの種類の血管疾患を治療するための有効な方法になっている。一般に、適切な血管内埋込型デバイスが患者の血管系に挿入され、送達システムを使用して血管系を通って標的の移植部位までナビゲートされる。
【0003】
低侵襲性送達システムは、カテーテル、プッシュワイヤまたは送達ワイヤなどを含み、ガイドワイヤを介して患者の血管系に経皮的に導入される。患者の標的部位にアクセスするために一般的に使用される血管アプリケーションでは、鼠径部近くの大腿動脈の切開部を通してガイドワイヤを挿入し、標的部位に到達するまでガイドワイヤを前進させる。次に、カテーテルの開いた遠位端が標的部位に配置されるまで、カテーテルをガイドワイヤ上で前進させる。カテーテルの遠位端を標的部位に配置すると同時に、または配置した後に、血管内インプラントが、プッシュワイヤまたは送達ワイヤを介してカテーテルを通して進められる。
【0004】
神経血管などの特定のアプリケーションでは、ガイドワイヤ、プッシュワイヤ、および送達ワイヤは、脳内の比較的脆弱な血管内の移動を含む、曲がりくねった複雑な血管系をナビゲートする必要があり、しばしば方向を変えたり、折り返すことさえ必要となる。したがって、これらのワイヤ(すなわち、ガイドワイヤ、プッシュワイヤ、および送達ワイヤ)は、脳血管系および末梢血管系などの血管系をうまくナビゲートするために、適切な柔軟性、よじれ抵抗、押し込み性、およびトルク性を有するべきである。これらのワイヤの適切な柔軟性とよじれ抵抗により、ワイヤが破損したり永久に変形したりすることなく、比較的きつい曲げを通過することができる。さらに、これらのワイヤの近位端にかかる力を遠位端に伝達して、適切な押し込み性(軸方向の剛性)とトルク性(回転)を得る必要がある。これらの機能をバランスよく実現ることが非常に望ましい。例えば、ガイドワイヤ、プッシュワイヤおよび/または送達ワイヤは、血管系を通るナビゲーションを実現するために、十分な柔軟性、よじれ抵抗、押し出し性、およびトルク性を提供するのに適した可変剛性部(例えば、編組、コイルなどの選択的な補強材を有する材料の可変比率)を含んでもよい。
【0005】
さらに、特定のアプリケーションでは、ガイドワイヤ、プッシュワイヤ、および/または送達ワイヤの遠位端が、血管を通るナビゲーション中に、および/または血管内の標的部位に近づくときに、偏向または屈曲するように構成されることが望ましく、これによって標的部位へのアクセスが可能になる場合がある。いくつかのガイドワイヤ、プッシュワイヤ、および/または送達ワイヤは、血管系の特定のきつい曲がりに到達するために、予め曲げられた遠位端を有する。しかしながら、これらの予め曲げられたワイヤは、ワイヤのナビゲーションおよび前進中に、特に曲がりくねった複雑な血管系、および分岐した血管壁、動脈瘤、およびその他の解剖学的特徴において、血管の内壁に不注意に衝突し、引っ掛かり、および/または擦ってしまう可能性がある。このようなナビゲーションの難しさは、医療処置の実行に必要な時間を望ましくないほど増加させ、血管の外傷または損傷のリスクをさらに増加させる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
医療機器において、近位端と、遠位端と、近位端および遠位端の間に延在する本体とを有する細長部材を含み、細長部材の少なくとも第1の部分は、形状記憶材料で作られた第1のセグメントと、非形状記憶材料で作られた第2のセグメントとを含み、第1の部分は細長部材の遠位部分であり、細長部材の遠位部分の第1のセグメントおよび第2のセグメントは、それぞれの長手方向の側面に沿って互いに固定されており、第1のセグメントは、長さの変化を受けて細長部材の遠位部分を曲げるように構成されている。
【0007】
任意選択で、第1のセグメントは、体温より高い温度に応答して長さを変えるように構成される。
【0008】
任意選択で、前記温度は体温より少なくとも華氏10度高い。
【0009】
任意選択で、医療機器は、細長部材に結合されたエネルギー源をさらに含み、エネルギー源は、細長部材に電流を供給して細長部材の遠位部分の温度を上昇させるように構成される。
【0010】
任意選択で、医療機器は、ユーザがエネルギー源からの電流を調整して、細長部材の遠位部分の曲げの曲率に対応する変化を及ぼせるように構成されたユーザインターフェースをさらに含む。
【0011】
任意選択で、第1のセグメントの形状記憶材料は、形状記憶ニチノールを含む。
【0012】
任意選択で、第2のセグメントの非形状記憶材料は、非形状記憶ニチノールを含む。
【0013】
任意選択で、細長部材は、遠位部分の近位にある第2の部分を含む。
【0014】
任意選択で、細長部材の第2の部分と遠位部分は、異なる材料から作られる。
【0015】
任意選択で、第2の部分はステンレス鋼を含み、遠位部分はニチノールを含む。
【0016】
任意選択で、細長部材の第2の部分は非形状記憶ニチノールを含み、細長部材の遠位部分の第1のセグメントは形状記憶ニチノールを含む。
【0017】
任意選択で、医療機器は、細長部材に連結されたコイルをさらに含む。
【0018】
任意選択で、医療機器は、細長部材の少なくとも遠位部分の周りに配置されたジャケットまたはスロット付きチューブをさらに含む。
【0019】
任意選択で、医療機器は、細長部材の遠位部分に結合されたマーカーをさらに含む。
【0020】
医療機器において、近位端と、遠位端と、近位端および遠位端の間に延在する本体とを有する細長部材を含み、細長部材の少なくとも第1の部分は、第1のセグメントおよび第2のセグメントを含み、第1の部分は細長部材の遠位部分であり、細長部材の遠位部分の第1のセグメントおよび第2のセグメントは、それぞれの長手方向の側面に沿って互いに固定され、第1のセグメントは、体温よりも高い温度に応答して長さの変化を受けるように構成され、第2のセグメントは、温度に応答した長さの変化がゼロであるか、または第1のセグメントと比較して長さの変化が小さくなるように構成される。
【0021】
任意選択で、前記温度は体温より少なくとも華氏10度高い。
【0022】
任意選択で、第1のセグメントは、長さの変化を受けて細長部材の遠位部分を曲げるように構成される。
【0023】
任意選択で、医療機器は、細長部材に連結されたエネルギー源をさらに含み、エネルギー源は、細長部材に電流を送達して細長部材の遠位部分の温度を上昇させるように構成される。
【0024】
任意選択で、医療機器は、ユーザがエネルギー源からの電流を調整して、細長部材の遠位部分の曲げの曲率に対応する変化を及ぼせるように構成されたユーザインターフェースをさらに含む。
【0025】
任意選択で、第1のセグメントは形状記憶材料を含み、第2のセグメントは非形状記憶材料を含む。
【0026】
任意選択で、第1セグメントの形状記憶材料は形状記憶ニチノールを含み、第2セグメントの非形状記憶材料は非形状記憶ニチノールを含む。
【0027】
任意選択で、細長部材は、遠位部分の近位にある第2の部分を含む。
【0028】
任意選択で、細長部材の第2の部分と遠位部分は、異なる材料から作られる。
【0029】
任意選択で、第2の部分はステンレス鋼を含み、遠位部分はニチノールを含む。
【0030】
任意選択で、細長部材の第2の部分は非形状記憶ニチノールを含み、細長部材の遠位部分の第1のセグメントは形状記憶ニチノールを含む。
【0031】
任意選択で、医療機器は、細長部材に連結されたコイルをさらに含む。
【0032】
任意選択で、医療機器は、細長部材の少なくとも遠位部分の周りに配置されたジャケットまたはスロット付きチューブをさらに含む。
【0033】
任意選択で、医療機器は、細長部材の遠位部分に結合されたマーカーをさらに含む。
【0034】
他のおよびさらなる態様および特徴は、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図面は、実施形態の設計および有用性を示しており、同様の要素は共通の参照番号によって参照されている。これらの図面は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。上記および他の利点と目的がどのように得られるかをよりよく理解するために、添付の図面に示されている実施形態のより具体的な説明がなされる。これらの図面は、例示的な実施形態のみを示しており、したがって特許請求の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
図1図1A~1Bは、分岐血管系に導入されるガイドワイヤの断面図である。
図2図2A~2Bは、分岐血管系に導入される別のガイドワイヤの断面図である。
図3図3は、インプラントを送達するためのカテーテルを有する医療機器を示す図である。
図4図4A~4Bは、ガイドワイヤの一実施例を示し、特にガイドワイヤの遠位セグメントを示す図である。
図5図5は、図4A~4Bのガイドワイヤの断面図であり、特に、ガイドワイヤの遠位端部分が分岐血管系に導入されている状態を示す。
図6図6は、図4A~4Bのガイドワイヤの断面図であり、特に、ガイドワイヤの遠位端部分が分岐血管系に導入されている状態を示す。
図7図7は、医療機器の異なる実施形態の断面図である。
図8図8は、医療機器の異なる実施形態の断面図である。
図9図9は、医療機器の異なる実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、図面を参照しながら様々な実施形態について説明する。図面は必ずし縮尺通りではなく、同様の構造または機能の要素は、図面全体を通して同様の参照番号で表されている。また、図面は、実施形態の説明を容易にすることのみを意図しており、特許請求される発明の網羅的な説明として、または添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ定義されるその範囲の制限として意図されていないことを理解されたい。
【0037】
さらに、図示されたそれぞれの実施形態は、図示された特徴のすべてを有する必要はない。また、特定の実施形態に関連して説明された態様または利点は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、図示されていなくても、または明示的に説明されていなくても、任意の他の実施形態で実施することができる。
【0038】
以下の定義された用語については、特許請求の範囲または本明細書の他の箇所で異なる定義が与えられていない限り、これらの定義が適用されるものとする。
【0039】
本明細書では、すべての数値は、明示的に示されているかどうかにかかわらず、用語「約」によって修飾されるものとする。「約」という用語は、一般に、当業者が列挙された値と同等であると考える(すなわち、同じ機能または結果を有する)数の範囲を意味する。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に丸められた数値が含まれる場合がある。
【0040】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内のすべての数値を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
【0041】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が明確に異なる場合を除き、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「または」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、一般に「および/または」を含む意味で使用される。
【0042】
図1A~1Bは、遠位端34を有するガイドワイヤ30を使用して分岐血管系10にアクセスする方法を示す。ガイドワイヤ30の遠位セグメント(遠位端34を含む)は、形状記憶特性を有する単一材料(例えば、ニチノール)で構成され、熱的または電気的に活性化することができる。分岐血管系10は、主血管20と、第1の血管枝22と、第2の血管枝26と、第1の枝22と第2の枝26との間の分岐角24とを含む。ガイドワイヤ30は、主血管20を通って前進し、第1の血管枝22内の標的部位にアクセスするように操作される。ガイドワイヤ30は、主血管20内を摺動することによって抵抗が最小の経路に沿って前進し、これは第2の血管枝26へのアクセスに有利に働く(図1A)。主治医は、ガイドワイヤ30を所望の第1の血管枝22内に操縦するために修正措置を講じることができるが、場合によっては、ガイドワイヤ30の遠位端34が依然として分岐角24に引っ掛かり、ぶつかることがある(図1B)。これは、単一材料のガイドワイヤが、活性温度(オーステナイト仕上げ温度など)未満で動作する場合、ニチノールの極端な延性により、遠位セグメントが偏向されると形状保持が不十分になることがあるためである。ガイドワイヤ30の遠位端34が分岐角24に衝突すると、血管、特に比較的脆弱な神経血管を損傷する可能性がある。これにより、ガイドワイヤ30を所望の第1の血管枝22の方へ操作しようとする試みが何回か失敗した場合、医療処置の時間が増加する可能性もある。
【0043】
いくつかの場合、ガイドワイヤは、特定の血管を通るナビゲーションを支援するために、予め曲げられた遠位セグメントを有することができる。しかしながら、そのようなガイドワイヤは、意図せずに血管に外傷を与える可能性がある。さらなる例として、図2A~2Bは、分岐血管系10にアクセスする方法を示し、この方法は、予め曲げられた遠位セグメント44を有するガイドワイヤ40の使用を含む。ガイドワイヤ40が所望の第1の血管枝22の方へ操縦しようとしたときに、分岐血管系10の幾何学的形状に起因して、ガイドワイヤ40が意図しない第2の血管枝26にアクセスしようとする場合がある。その結果、ガイドワイヤ40の予め曲げられた遠位セグメント44は、血管20の内壁21に引っ掛かって外傷を引き起こす可能性があり(図2A)、および/または分岐角24に引っ掛かって外傷を引き起こす可能性がある(図2B)。図2Bに示すように、予め曲げられた遠位セグメント44が分岐角24に衝突した後に、遠位セグメント44をさらに遠位に前進させようとすると、遠位セグメント44を近位端の方へ偏向させ、血管への外傷のリスクをさらに増加させる可能性がある。
【0044】
図3は、いくつかの実施形態によるインプラント送達システム100を示す。インプラント送達システム100は、細長シース110と、細長シース110内にスライド可能に配置された細長管状部材120と、細長シース110内にスライド可能に配置されたガイドワイヤ(またはワイヤ)500とを含む。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ500は、患者の血管にアクセスするように構成される。他の実施形態では、ガイドワイヤ500は、インプラント(図示せず)を送達するように構成され得る。そのような場合、ガイドワイヤ500は、送達ワイヤまたはプッシュワイヤとして機能し得る。
【0045】
細長部材120は管状構成を有し、例えば、シース、カテーテル、マイクロカテーテル等の形態をとることができる。細長部材120は、近位端130と、遠位端160と、近位端130および遠位端160の間で細長部材120を通って延びる管腔170とを有する。細長部材120の近位端130は、インプラント送達システム100の使用時に患者の体外に留まってオペレータがアクセス可能であり、一方で細長部材120の遠位端160は、血管系の遠隔位置に到達するサイズおよび寸法を有する。細長部材120は、細長部材120の遠位端160が標的部位に配置されるまで、ガイドワイヤ500(その例は、図4A~4Bを参照して説明される)上を前進する。細長部材120の遠位端160が標的部位に配置されると同時またはその後に、血管内インプラントが、ガイドワイヤ500を介して細長部材120を通して進められてもよい。
【0046】
図3に示すように、インプラント送達システム100は、ガイドワイヤ500(図4A)の近位端に連結されたハンドル400も含む。インプラント送達システム100のハンドル400は、ユーザ(例えば、医師、技術者など)がガイドワイヤ500の曲げを制御できるように構成されたユーザインターフェース420を含む。ユーザインターフェース420は、ハンドル400に実装されたものとして示されているが、他の実施形態では、ユーザインターフェース420は、ハンドル400とは別個のデバイスとして実装されてもよい。例えば、他の実施形態では、ユーザインターフェース420は、電気信号および/または無線周波数信号を生成できるコンピュータまたは任意の電子デバイス(例えば、携帯電話、タブレットなど)であり得る。ユーザインターフェース420は、インプラント送達システム100の構成要素(例えば、ガイドワイヤ500)に電流を送達するように構成された、電気コントローラや電源などを含むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース420は、1つまたは複数の物理的なボタン、ノブ、スイッチなどである1つまたは複数の制御装置を含むことができる。他の実施形態では、1つまたは複数の制御装置は、ユーザがガイドワイヤ500を曲げるためにガイドワイヤ500を選択的に作動させることができるように構成されたグラフィック要素を有するタッチスクリーンであってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、ハンドル400はまた、任意で細長部材120の近位端130および/または細長シース110の近位端113に連結されてもよい。そのような場合、ユーザインターフェース420が、ユーザが細長部材120および/または細長シース110の曲げを制御できるようにしてもよい。細長部材120および/または細長シース110は、ユーザインターフェース420によって提供される張力に応じて作動可能な、それによって細長部材120および/または細長シース110を曲げるための作動要素(例えばステアリングワイヤ)を含むことができる。ユーザインターフェース420は、ユーザがステアリングワイヤに張力を加えることができるようにするための1つまたは複数のコントロールを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコントロールは、1つまたは複数の物理的なボタン、ノブ、スイッチなどであり得る。他の実施形態では、1つまたは複数のコントロールは、ユーザが細長部材120および/または細長シース110の作動要素を作動させられるように構成されたグラフィック要素を有するタッチスクリーンであってもよい。
【0048】
他の実施形態では、細長部材120および/または細長シース110はステアリングワイヤを含まなくてもよい。そのような場合、細長部材120および/または細長シース110の曲げは、ガイドワイヤ500によって制御され得る。
【0049】
さらなる実施形態では、送達システム100は、シース110および/または細長部材120を含まなくてもよい。
【0050】
さらに、他の実施形態では、システム100はインプラント送達システムでなくてもよい。代わりに、システム100は、他のタイプの医療機器、または他のタイプの医療機器のコンポーネントであってもよい。例えば、ガイドワイヤ500を有するシステム100は、薬物送達システム、生検システム、エネルギー源を含む治療システムなどの一部であってもよい。
【0051】
図4A~4Bは、いくつかの実施形態によるガイドワイヤ500を示す。図に示すように、ガイドワイヤ500は、近位端510と、遠位端512と、近位端510および遠位端512の間に延びる本体515とを含む。ガイドワイヤ500は、遠位端512を有する遠位部分520も含む。ガイドワイヤ500はまた、室温および/または体温で(曲がった構成と比較して)比較的真っ直ぐであるが、外力を受けたときに柔軟に曲がる線形構成を有する。ガイドワイヤ500は、近位部分での高い剛性から、本体515に沿って徐々に剛性を下げながら、遠位部分520に沿って低い剛性へと至る可変剛性部分をさらに含む。このような構成により、ガイドワイヤ500に血管系を通るナビゲーションのための十分な柔軟性、耐座屈性、押し出し性、トルク性を与えることができる。代替として、ガイドワイヤ500の可変剛性部分は、段階的ではなく個別的であってもよい。例えば、遠位端512よりも近位端510に近いガイドワイヤ500の第1の部分が第1の剛性を有し、第1の部分より遠位にあるガイドワイヤ500の第2の部分が第2の剛性を有し、第2の部分より遠位にあるガイドワイヤ500の第3の部分が第3の剛性を有し得る。第3の部分は遠位部分520であり得る。第1の剛性が第2の剛性より高くてもよく、第2の剛性が第1の剛性より高くてもよい。
【0052】
本明細書で使用する「体温」という用語は、華氏95~107度の温度範囲、より好ましくは華氏96~100度の温度範囲、より好ましくは華氏97~99度までの温度範囲のような、温度範囲を指し得ることに留意されたい。また、本明細書で使用される「室温」という用語は、体温とは異なる任意の温度を指し得る。例えば、室温は、体温よりも低い任意の温度であり得る。いくつかの実施形態では、室温は、体温より少なくとも華氏10度低い温度、または体温より少なくとも華氏20度低い任意の温度であり得る。
【0053】
図4A~4Bに示されるように、ガイドワイヤ500の遠位部分520は、第1のセグメント522と第2のセグメント524とを含み、第1のセグメント522は第2のセグメント524に結合されている。ガイドワイヤ500の遠位部分520は、任意選択で、放射線不透過性マーカー525を含んでもよい。ガイドワイヤ500の遠位部分520の第1のセグメント522は、温度変化に反応して比較的直線的な構成からより曲線的な構成に変化するように構成され、一方で第2のセグメント524は温度変化に依存しない。第1のセグメント522が、温度変化に応じてその比較的直線的な構成からその形状を変化させるとき、第1のセグメント522は、それに沿って第2のセグメント524を変位または移動させ、それによってガイドワイヤ500の遠位部分520の遠位端512が、図4Bの破線に表されるように偏向する(これについては後に詳述する)。図示の実施形態では、第1のセグメント522は、温度変化に反応して収縮するように構成されている。そのような場合、第1のセグメント522の収縮により、ガイドワイヤ500の遠位部分520が第1のセグメント522の側に向かう方向に曲がる。他の実施形態では、第1のセグメント522は、温度変化に応じて伸長するように構成される。そのような場合、第1のセグメント522の伸長により、ガイドワイヤ500の遠位部分520が第2のセグメント524の側に向かう方向に曲がる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ500の遠位部分520の第1のセグメント522は形状記憶ニチノールで構成され、ガイドワイヤ500の遠位部分520の第2のセグメント524は非形状記憶ニチノールで構成される。他の実施形態では、第1のセグメント522は、形状記憶金属、形状記憶合金などの他の形状記憶材料から作られてもよい。また、他の実施形態では、第2のセグメント524は、非形状記憶金属、非形状記憶合金などの他の非形状記憶材料から作られてもよい。遠位部分520の第1のセグメント522および第2のセグメント524は、ガイドワイヤ500の長手方向軸に沿った1つまたは複数の点において、はんだ、接着剤、レーザースポット溶接などの適切な技術によって固定的に取り付けられる(例えば、積層される)。
【0055】
いくつかの実施形態では、遠位部分520の第1のセグメント522は、ガイドワイヤ500の遠位部分520を偏向させるために熱電気的に作動されるように構成される。図示の実施形態では、第1のセグメント522は、活性化温度を超えて加熱されると短くなる(例えば、短縮する)ように熱機械的に処理されている。第2のセグメント524は形状記憶挙動を有さず、したがってガイドワイヤ500の遠位部分520が活性化温度を超えて加熱されると、第1のセグメント522は短縮する一方で、第2のセグメント524はその長さを保持する。第2のセグメント524に対する第1のセグメント522の短縮により、ガイドワイヤ500の遠位部分520が曲がる。第1のセグメント522の短縮/収縮は、図4Bの破線で表されるように、ガイドワイヤ500の遠位部分520の偏向を生じさせる。
【0056】
いくつかの実施形態では、活性化温度はオーステナイト終了温度(AF)であり得る。本明細書で使用されるオーステナイト終了温度(「Af」)という用語は、金属合金(例えば、ニチノール)などの材料の加熱時にマルテンサイトからオーステナイトへの変態が完了する温度である。材料が完全にマルテンサイトであり、加熱されると、オーステナイト開始温度(As)でオーステナイトが形成され始め、オーステナイト終了温度(Af)で終了する。
【0057】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ500の遠位部分520の加熱は、ハンドル400でユーザインターフェース420(図4A)を介してガイドワイヤ500に電流を流すことによって実現することができる。遠位部分520を形成する材料の抵抗率が、ユーザインターフェース420での電力変調で制御可能な加熱を生じさせる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ500の遠位部分520の作動が血液接触に対する安全限界を超える加熱を必要としないように、第1のセグメント522のAf温度は体温よりわずかに上回るように選択することができる。そのようにすると、ガイドワイヤ500の遠位部分520は、電流がガイドワイヤ500に印加されて第1のセグメント522のAf温度が体温よりわずかに上昇するまで、ガイドワイヤの保管中や前進中に偏向することがない。
【0058】
遠位部分520の第1のセグメント522および第2のセグメント524を積層構成で結合することにより、ガイドワイヤ500の遠位部分520は、実質的に短い第1のセグメント522で大きな偏向を達成できることに留意されたい。ガイドワイヤ500の遠位部分520の偏向量は、第1のセグメント522および第2のセグメント524の特性差、および/またはガイドワイヤ500の遠位部分520に供給される電流量によって支配される。いくつかの実施形態では、非形状記憶型の第2のセグメント524は、ガイドワイヤ500の遠位部分520の成形性(shapeability)および機能性も提供するために、独立して調整および/または選択された機械的特性を有し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ500の遠位部分520の第1のセグメント522の長さは、5mm~15mm、または5mm~20mm、または5mm~3,400mm(例えば、およそガイドワイヤの全長)であり得る。第2のセグメント524は、第1のセグメント522より短くてもよく、第1のセグメント522と同じ長さでもよく、第1のセグメント522より長くてもよい。
【0060】
ガイドワイヤ500の遠位部分520の偏向は、第1のセグメント522の熱作動係数と第2のセグメント524の非熱作動係数との間の差の大きさによって生じる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ500の遠位部分520の熱/電気的作動は、温度範囲の比較的小さな変化(例えば、華氏5度以上、華氏10度以上、華氏15°以上など)で、4パーセント以上(>4%)の短縮/収縮または長さ変化の差を生じさせ、小さな温度変化で遠位部分520の大きな偏向を達成することができる。いくつかのケースでは、ガイドワイヤ500の遠位部分520の達成可能な最も狭い曲率半径は、0.05インチ(例えば、0.05インチ+/-0.02インチ)の範囲である。他の場合では、ガイドワイヤ500の遠位部分520の曲率半径は、0.1インチ、0.2インチ、0.4インチ、0.6インチなど(±0.05インチ)のように、より高くてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ500の遠位部分520の偏向角は、ガイドワイヤ500に印加される熱/電流変調によって制御され得る。電流は、電流がガイドワイヤ500から患者の組織を通ってリターンパッドまでの電流回路を完成させるモノポーラ技術を用いるか、または電流リターン経路がガイドワイヤ500に沿ってユーザインターフェース420の電気コントローラに戻るバイポーラ技術を用いて適用され得る。また、いくつかの実施形態では、遠位部分520の湾曲曲率は、ハンドル400のコントロールを使用して選択的に調整することができる。当該コントロールを操作して、ガイドワイヤ500の遠位部分520に印加される電流の量を変更してもよい。1つの操作モードでは、電流量を増加させると、ガイドワイヤ500の遠位部分520における湾曲曲率を増加させることができる。別の操作モードでは、電流量を減少させると、ガイドワイヤ500の遠位部分520における湾曲曲率を減少させることができる。
【0062】
さらに、いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ500の遠位部分520を形成する材料(例えば、ニチノール)において所望のレベルの弾性および成形性を達成するようにアニーリングパラメータを調整することができる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ500の遠位部分520は、第2のセグメント524が成形可能(shapeable)であって標準的な成形可能なガイドワイヤ先端を保持できるが、それでもガイドワイヤ500の遠位部分520が熱電気的に作動する第1のセグメント522を有し必要に応じて遠位部分520を能動的に偏向できるように、第2のセグメント524を半アニール状態または部分的アニール状態に熱処理することができる。そのような場合、ガイドワイヤ500のある使用時には能動的偏向(例えば、ガイドワイヤ500への電流または熱の適用)は必要ない場合があるが、別の使用時にはより困難で蛇行した血管系を通してガイドワイヤ500をナビゲートするのに能動的偏向を用いることができる。
【0063】
図5~6は、ガイドワイヤ500を使用して分岐血管系10にアクセスする方法を示す。分岐血管系10は、主血管20と、第1血管枝22と、第2血管枝26と、第1血管枝22と第2の血管枝26間の分岐角24とを含む。遠位部分520を有するガイドワイヤ500が主血管20を通して進められ、第1の血管枝22内の標的部位にアクセスするように操縦される。
【0064】
ガイドワイヤ500が患者の体内を進められるとき、ユーザはユーザインターフェース420を操作して、ガイドワイヤ500が所望の方法で曲がるように作動させることができる。既知の画像化技術およびガイドワイヤ500の遠位端512に配置されたマーカー525の支援により、ユーザは主血管20内のガイドワイヤ500の遠位部分520の位置を特定することができる(図5)。遠位部分520の曲げが必要とユーザが判断した場合、ユーザはユーザインターフェース420を操作してガイドワイヤ500の遠位部分520に熱または電流を加えて、形状記憶材料で構成された第1のセグメント522を熱的または電気的に作動させ、ガイドワイヤ500の遠位部分520が所望の第1の血管枝22の方へ偏向させる(図6)。このガイドワイヤ500の遠位部分520の偏向を達成するために、角度「Φ」によって例示されるように、ガイドワイヤ500の細長本体の長手方向軸に対する遠位部分520の角度は、約5~約60度またはそれ以上の範囲であり得る。
【0065】
上記に例示したように、遠位部分520の曲げは、ガイドワイヤ500の遠位端512が患者内部の通路(例えば、血管)に沿って異なる曲率で操縦されることを可能にする。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ本体515は、その長手方向軸を中心に回転して、異なる曲げ平面で曲げが発生するようにしてもよい。また、いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ500の曲げの程度(例えば、曲率、角度など)は、ユーザインターフェース420によって提供される熱や電流の大きさを変えることによって調整されてもよい。
【0066】
ガイドワイヤ500の遠位端512が患者の体内に望ましく位置付けられた後、次に図3の細長部材120および/またはシース110がガイドワイヤ500上を進められ、患者を診断および/または治療するための医療処置に利用することができる。例えば、細長部材120および/またはシース110を使用して、物質(例えば、薬物、医薬、造影剤、生理食塩水など)の送達、デバイス(例えば、インプラント、組織切開器、撮像スコープ、治療エネルギー源など)の配備、または異なる実施形態では他の機能を実行することができる。
【0067】
ガイドワイヤ500は図4A~4Bの例に限定されず、ガイドワイヤ500は、他の実施形態では他の構成を有してもよいことに留意されたい。他の実施形態では、ガイドワイヤ500は、結合されてガイドワイヤ500の遠位部分520を形成する2より多い遠位セグメントを含んでもよい。例えば、他の実施形態では、遠位部分520が、ガイドワイヤ500の遠位部分520を形成するために積層されて結合される3つの遠位セグメントを有してもよい。他の実施形態では、ガイドワイヤ500は、ガイドワイヤ500の長手方向軸に沿って、外側ジャケット、スリーブ、補強セグメント、コイル、放射線不透過性コーティング、マーカーなどの他の構成要素を含んでもよい。
【0068】
他の実施形態では、ワイヤ500は、ガイドワイヤではなく、プッシュワイヤまたは送達ワイヤであってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、ワイヤ500は、遠位部分520と比較して、より剛性の近位部分を有し得る。より剛性の近位部分は、ワイヤ500の全長の少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも80%であり得る。また、いくつかの実施形態では、ワイヤ500は、遠位部分520の近位にある近位部分を有することができ、この近位部分は、ステンレス鋼、ニチノール、コバルトクロム合金(例えば、MP35N合金)、その他の合金、またはそれらの組み合わせから作製することができる。
【0070】
他の実施形態では、ワイヤ500は、近位部分に沿ってステンレス鋼(または他の剛性合金)で形成され、遠位部分520にニチノールを有することができる。
【0071】
他の実施形態では、ワイヤ500はハイブリッドコアを含むことができる。例えば、遠位部分520より近位の本体515の部分は、ワイヤ500により剛性の近位部分を提供するために、ニチノールおよび別の材料(例えば、ステンレス鋼)から作製され得る。
【0072】
さらなる実施形態では、ワイヤ500は、ワイヤ500の全長に延びるニチノールセグメントを有することができる。そのような場合、ニチノールコアの1以上の部分を熱処理して、本明細書の説明と同様に、形状記憶特性を提供することができる。
【0073】
さらなる実施形態では、ワイヤ500は、複雑なガイドワイヤ、シース、カテーテルなど、様々な細長い医療機器のコアワイヤまたはバックボーンとして機能することができる。ワイヤ500のコンパクトなサイズは、他の性能特性(トルク伝達、剛性、先端成形性など)に影響を与えることなく、コアワイヤとしてシース、カテーテルなどに組み込むことを可能にする。
【0074】
図7A~9は、本明細書に記載のワイヤ500を組み込んだ医療機器の異なる例を示す。図7A~9のワイヤ500は、ワイヤ500の近位端(図示せず)および/または本体515から遠位端512に向かって直径が減少(すなわち、テーパ)している。ワイヤ500のテーパリングは、(図7Aに示すように)長手方向軸550に沿ってワイヤ500の直径の減少が一定であってもよく、または(図8~9に示すように)テーパリングセクション間の明確な遷移を有してもよく、あるいはそれらの組合せであってもよい。
【0075】
図7Aを参照すると、医療機器580は、ワイヤ500と、ワイヤ500の遠位部分520の少なくとも一部の周りに配置された外側ジャケット700とを含む。外側ジャケット700は、任意の管状部材であってもよく、金属やポリマーなどの任意の適切な材料から作られてもよい。いくつかの実施形態では、外側ジャケット700はニチノールから作られ得る。詳細な図7Bから理解されるように、外側ジャケット700は、柔軟性を高めるために複数のスロットおよび/または開口部を有する。非限定的な例として、外側ジャケット700は、スロット付きハイポチューブ、コイル状スリーブ、タングステン充填ポリマースリーブ、またはそれらの組み合わせを用いて実装され得る。医療機器580は、ワイヤ500の遠位部分520の周りに配置され、ワイヤ500の遠位部分520と外側ジャケット700との間に同心状に配置されたコイル720をさらに含むことができる。このコイル720は、放射線不透過性材料および/またはプラチナタングステンで作られ得る。医療機器580は、ワイヤ500の遠位部分520に結合された鈍い非外傷性先端600をさらに含む。
【0076】
図8は、ワイヤ500と、ワイヤ500の少なくとも遠位部分520の周りに同心状に配置された外側ジャケット800とを有する別の医療機器580を示す。外側ジャケット800は、適切なポリマー材料から構成される。他の実施形態では、外側ジャケット800は他の材料から作られてもよい。医療機器580は、ワイヤ500の遠位部分520に結合された鈍い非外傷性先端600をさらに含む。
【0077】
図9は、ワイヤ500と、ワイヤ500の少なくとも遠位部分520の周りに同心状に配置されたコイル900とを有する別の医療機器580を示す。図に示すように、コイル900の近位端920はワイヤ500の本体515に固定され、コイル900の遠位端940はワイヤ500の遠位部分520に固定される。この固定は、接着剤、溶接、機械的コネクタ、融着などを使用して達成され得る。医療機器580は、ワイヤ500の遠位部分520に結合された鈍い非外傷性先端600をさらに含む。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A-4B】
【図
図5
図6
図7A-7B】
図8
図9
【国際調査報告】