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特表2023-518088マルチセンサバイオメトリック情報監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】マルチセンサバイオメトリック情報監視装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20230420BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20230420BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230420BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230420BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A61B5/022 B
A61B5/1455
A61B5/11
A61B5/022 400A
A61B5/022 400L
A61B5/00 102A
A61B5/01 100
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556655
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 IB2021052285
(87)【国際公開番号】W WO2021186390
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】62/991,239
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
2.ANDROID
3.WINDOWS
4.UNIX
5.Linux
(71)【出願人】
【識別番号】521458797
【氏名又は名称】42 ヘルス センサー ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シェルドン ロバート スタンレー
(72)【発明者】
【氏名】ローチ ダニエル エドワード
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA08
4C017AA12
4C017AA16
4C017AA20
4C017AB08
4C017AC02
4C017AC06
4C017AC12
4C017AD01
4C017BB12
4C017BC11
4C017BC23
4C017BD05
4C017DD07
4C017DD11
4C017FF05
4C017FF17
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX04
4C038VA04
4C038VB03
4C117XA01
4C117XB01
4C117XB04
4C117XB11
4C117XC15
4C117XD09
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE23
4C117XE26
4C117XE27
4C117XE37
4C117XE52
4C117XE62
4C117XE64
4C117XR02
(57)【要約】
使用者の血液のバイオメトリック情報を監視するための第一装置であって、この第一装置はクリップを含み、このクリップは、使用者の身体の一部を解放可能に受容するように適合された2つの側面部材を備えた基部を含む。マルチセンサは、2つの側面部材のうちの1つに取り付けられる。プランジャに動作可能に連結されたモータを精密制御することにより、センサは、応答から血圧、心拍数、酸素飽和度、温度、体動のうちの少なくとも1つを監視する。別の装置はハウジングを含み、このハウジングは、永電磁石、バッテリ、プロセッサ、及び無線送信器を含む。電流が永電磁石のコイルを通過すると、キャップは、ハウジングに磁気で結合されることにより、ハウジングとキャップとの間で使用者の組織の一部を圧迫する。組織に加えられる圧迫力を変化させることにより、この装置は、応答からの血圧及び心拍数のうちの少なくとも1つを監視する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者のバイオメトリック情報を監視するための装置であって、
2つの側面部材を備えた基部を有するクリップであって、前記2つの側面部材はその間に前記使用者の組織の一部を解放可能に受容するように適合される、前記クリップと、
前記2つの側面部材のうちの1つに取り付けられるマルチセンサと、
プランジャに動作可能に連結されるモータと、
メモリに格納されたコンピュータ実行可能命令を実行するプロセッサと、
を含み、
前記モータは応答を測定するために経時的に前記組織の前記一部に加えられるひずみを変化させるように前記プロセッサによって操作可能に制御され、
前記マルチセンサは前記応答から血圧、心拍数、酸素飽和度、温度、体動のうちの少なくとも1つを監視する、前記装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、既知の力及び圧力で耳の動脈流を閉塞させるように前記モータ及び前記プランジャに指令し、
収縮期圧及び拡張期圧は、前記応答から決定される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、信号波形の一次微分の局所的最小値に関連する前記信号波形の局所的最大値を検出することによって心拍数を決定する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
データストレージをさらに含み、
前記マルチセンサは、前記データストレージに記録される心電図(ECG)信号を検出する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記マルチセンサはサーミスタを含み、
前記サーミスタは、使用者の頭皮の温度を検出するために前記装置のケーシング内に埋め込まれる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記マルチセンサは、透過光か反射光かいずれかを使用して動脈血酸素飽和度を測定するために、二波長送信器及びフォトダイオード受光器をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記マルチセンサは、前記使用者の活動に対して較正される加速度計を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記使用者の前記組織の前記一部を周期的に解放するように前記モータに指令する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記マルチセンサは、前記装置が取り付けられる前記使用者を連続的に監視する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
経時的に前記ひずみを変化させることは、固定周波数またはランダム周波数でひずみ速度及びひずみ振動を変化させることを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記クリップの粘弾性効果を考慮して前記モータを制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記変化に対する組織の応答を測定することにより、前記使用者の体内の血管の弾性特性が決定される、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記使用者の体内でのプロセスの相互関係を説明する生理学的コンテキストに従って命令を実行する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
使用者のバイオメトリック情報を監視するための装置であって、
永電磁石、バッテリ、プロセッサ、及び無線送信器を含むハウジングと、
キャップであって、電流が前記永電磁石のコイルを通過すると、前記キャップが前記ハウジングに磁気で結合されることにより、前記ハウジングと前記キャップとの間で前記使用者の組織の一部を圧迫する、前記キャップと、
を含み、
前記組織に加えられる圧迫力は、前記キャップに加えられた磁場強度を変化させて前記組織の応答を測定するように前記プロセッサによって操作可能に制御され、
前記装置は前記応答からの血圧及び心拍数のうちの少なくとも1つを監視する、前記装置。
【請求項15】
前記永電磁石に印加されるパルス幅を変化させ、組織全体の圧迫応力を変化させることにより、血圧が決定される、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記パルス幅は、典型的には10~100マイクロ秒の間で変化する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセッサは、信号波形の一次微分の局所的最小値に関連する前記信号波形の局所的最大値を検出することによって心拍数を決定する、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記応答から酸素飽和度、温度、体動のうちの少なくとも1つを監視するマルチセンサをさらに含む、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記マルチセンサはサーミスタを含み、
前記サーミスタは、使用者の頭皮の温度を検出するために前記ハウジング内に埋め込まれる、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記マルチセンサは、透過光か反射光かいずれかを使用して動脈血酸素飽和度を測定するために、二波長送信器及びフォトダイオード受光器をさらに含む、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記マルチセンサは、前記使用者の活動に対して較正される加速度計を含む、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記プロセッサは、前記使用者の前記組織の前記一部を周期的に解放するように前記永電磁石に指令する、請求項14に記載の装置。
【請求項23】
前記磁場強度を経時的に変化させることにより、前記使用者の体内の血管の弾性特性が測定される、請求項14に記載の装置。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記使用者の体内でのプロセスの相互関係を説明する生理学的コンテキストに従って命令を実行する、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、生理学的監視装置に関し、特に、ウェアラブルマルチセンサ血圧監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
失神または高血圧を経験している患者を診断するまたは監視するために、医師は患者の血圧(BP)データを必要とする。診療所での予約中に医師が行う測定では、読み取り時の患者の血圧のみが捕捉され、通常の1日を通した血圧における一過性の変化は検出されない。多くの場合、医師は、一度の読み取りでは不十分なため、長期間にわたり収集されたBPデータを要求する。通常、これらのデータは、携帯型血圧(BP)モニタを使用して24時間にわたり収集される。
【0003】
標準的な携帯型BPモニタは自動膨張式カフからなり、この自動膨張式カフは、空気供給チューブによって監視装置に連結され、診断期間中、使用者の腕に装着される。これらのモニタは、装着が面倒で、1日のうち約15~30分おきに血圧を測定するために自動的に膨張して、使用者の腕を圧迫するため、通常の活動を妨げる。カフが膨張して読み取りを行っているときに、使用者が可能であれば、動きを制限して座ることが推奨されている。不都合なことに、使用者は、膨張するカフで周期的に中断される場合、通常の1日を過ごすことができない。さらに、指定された時間間隔で測定が行われているため、収集されるデータは連続した中断のないデータストリームではなく、一連の個々の測定値であることで、患者の監視期間中の完全な血圧データを正確に提供しない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は安価で、ウェアラブルで、快適で、ロバストな装置を対象とし、この装置は、血圧、心拍数、酸素飽和度、温度、体動、及び時間を連続的か半連続的かいずれかで直接かつ正確に測定し、これを、インターネットまたはその他の通信インフラストラクチャとインタラクトする基地局に送信する。
【0005】
本開示の一態様によれば、使用者のバイオメトリック情報を監視するための装置は、2つの側面部材を備えた基部を有するクリップであって、これら2つの側面部材はその間に使用者の組織の一部を解放可能に受容するように適合される、クリップと、これら2つの側面部材のうちの1つに取り付けられたマルチセンサと、プランジャに動作可能に連結されたモータと、メモリに格納されたコンピュータ実行可能命令を実行するプロセッサとを含む。モータは応答を測定するために経時的に組織の一部に加えられるひずみを変化させるようにプロセッサによって操作可能に制御される。マルチセンサは、応答から血圧、心拍数、酸素飽和度、温度、体動のうちの少なくとも1つを監視する。
【0006】
本開示の別の態様によれば、使用者のバイオメトリック情報を監視するための装置はハウジングを含み、このハウジングは、永電磁石、バッテリ、プロセッサ、及び無線送信器を含む。組織の1つの側面上にあるキャップは、組織のもう1つの側面上にあるハウジングに磁気で結合され、プログラムされたアンペア数及び持続時間のDC電流が永電磁石のコイルを通過すると、この横方向の磁気結合強度がプログラムによって変化することで、ハウジングとキャップとの間で使用者の組織の一部を可変圧迫できる。組織に加えられる圧迫力は、キャップに加えられた磁場強度を変化させて組織の応答を測定するようにプロセッサによって操作可能に制御される。装置は、その応答から血圧及び心拍数のうちの少なくとも1つを監視する。
【0007】
本開示の他の態様及び特徴は、添付の図面と併せて本開示の具体的な態様に関する以下の説明を検討することにより、当業者には明らかになるであろう。
【0008】
本開示の態様を示す図面において、同様の参照文字は各図の対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】使用者の耳の一部にクリップで留められた使用者のバイオメトリック情報を監視するための装置の側面図である。
図2図1の装置の斜視図である。
図3図1の装置で使用者の血圧を監視するための制御システムのブロック図である。
図4】A、B、C及びDは、図1の装置の例示的な実装の図を示す。
図5】使用者の耳の一部にクリップで留められた使用者のバイオメトリック情報を監視するための別の装置の側面図である。
図6図5の装置の斜視図である。
図7図5の装置で使用者の血圧を監視するための制御システムのブロック図である。
図8】閉塞圧がある場合とない場合の脈拍の輪郭を示す。
図9】Finapresセンサ(上)及びマグネットセンサ(下)からの同時シーケンスの比較を示す。
図10】3人の健常被験者でのアームカフ及びセンサの圧力の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
序文
医療情報へのアクセスは、コミュニティで簡単に取得され、コンテキスト化され、パーソナライズされ、患者によって所有される必要がある。本開示は、これを、血圧、酸素飽和度、温度、及び/または体動などであるがこれらに限定されない、バイオメトリック情報を監視する小型で、ポータブルな、経皮的で、連続してアクティブな装置を開示することによって達成する。この装置は、そのサイズ(約1.5x1.5x2.5cm及び10gm)と、少なくとも24時間連続してサンプリングして、拍動ごとのBP、心拍数センシング、及び中断のない使用を提供する能力とにより、ユニークである。この装置は、携帯型血圧モニタリング(ABPM)及び家庭BPモニタリングの両方に、そして研究ツールとしても便利な代替物を提供する。装置は、バッテリ駆動であり、無線接続を介してデータを送信して、スマートフォンまたはパーソナルコンピュータなどに表示する。
【0011】
ここで図1及び2を参照すると、使用者の心拍数、酸素飽和度、温度、体動などのバイオメトリック情報を監視するための例示的な装置10が示されている。装置10は、使用者の耳8の一部にクリップで留められることが好ましい。耳介(目に見える外耳の大部分)の利点は、それが頸動脈及び心臓に近いこと、それが手首などに比べて物理的に安定であること、及びそれを両側から圧迫する能力を含む。装置10は、ドライブハウジング50に回転可能に連結されたクリップ20を含む。クリップ20は、ギャップ30内に使用者の耳8の一部を受容するように適合されている。マルチセンサ34は、取り付けられると、例えば動脈の脈動波形及び他のバイオメトリック情報などを測定する。ドライブハウジング50内のモータ60は、以下に説明されるように、プランジャ62に動作可能に連結される。装置10は、耳8にクリップで留められて示されているが、非限定的な例として、指など、両側から同様の圧迫性を有する使用者の身体の他の部位にクリップで留められるように適合され得ることが理解されよう。
【0012】
信号の前処理及び装置10への/装置10から基地局への外部送信は、低電力無線送信器、例えば、ブルートゥース、NFC、または他の無線通信技術を使用することによって達成される。基地局は、装置10から情報を受信することができる任意のAndroid、Apple、またはMicrosoft PCデバイスであり得る。無線送信器は、外部で同期されることができる高精度クロックを含むことが好ましい。さらに、装置10から基地局に送信された情報は、他のユーティリティ、クラウドなどにエクスポート可能である。ソフトウェア開発キットは、測定値にアクセスするためのソフトウェアを第三者らが開発することを可能にする。
【0013】
図には示されていないが、装置10は、多数のセンサ、計算信号前処理、及び通信伝送の電力需要を満たすために、少なくとも63mAhの容量を有する小型で充電可能なバッテリを含む。装置10は、基地局に連続してか不連続でかいずれかで送信することができ、代替として、少なくとも24時間のバイオメトリック情報を記録することができるフラッシュRAMを含むことができる。
【0014】
長期間の快適さを提供するために、クリップ20によって生じるギャップ30は、耳の組織自体が蓄積した代謝物などを取り除くことができるように、10~20分ごとに解放されてもよい。装置10がモータ60による精密制御を有するため、モータ制御を使用して、耳の組織にわたりクリップ20を急速に締めたり緩めたりすることによって、耳の組織を「ポンピング」することができる。これにより、長期間の快適さが向上するうえ、組織が代謝物に覆い尽くされるのを防ぐことで、組織の「新鮮さ」が保たれる(つまり、組織の自然な状態にできるだけ近づける)。これは、クリップ20内の血管組織、特に血管壁の弾性が血圧波形の生成における役割を果たすことから好ましい。
【0015】
上記に加えて、装置10がリアルタイムでモータ60の精密制御を提供するので、予めプログラムされたひずみプロトコル(すなわち、時間の関数としてひずみを変化させる)が適用されることができる。ひずみプロトコルを制御することにより、任意の数の周波数でのひずみ振動、またはランダムなひずみでさえも、耳の血管床全体に系統的に適用されることができる。これにより、装置10は「アクティブ」センサになることができる。「アクティブ」とは、装置10が能動的に組織を機械的に刺激していること、そして力センサを使用して組織応答を測定していることを意味する。したがって、装置10は、動脈の弾性特性をインテロゲートすることができる。例えば、ひずみ振動の周波数を変化させることを適用すると、組織が各周波数でどのように応答するかがわかる。したがって、イヤーバイス内の動脈床の「弾性」のスペクトルを生成することができる。測定された「弾性」は、疾患状態または薬理学的介入の関数としてテストされ、血管挙動のまったく新しいタイプの微小測定を提供することができる。さらに、モータ制御は、ポリマークリップの粘弾性効果(すなわち、応力緩和及びポリマーメモリ)を補償する。
【0016】
ここで図3を参照すると、装置10は制御システム200を含む。プロセッサ70は、処理回路220と、マシン命令を格納するメモリ222とを含み、これらのマシン命令は、処理回路220によって実行されると、処理回路220に本明細書に記載の操作及び方法のうちの1つ以上を実行させる。処理回路220は、命令、データ、またはコンピュータアドレスの一時的なストレージのためにキャッシュメモリユニットを任意選択で含むことができる。制御システム200は、マルチセンサ34から受信した波形測定値を含む複数のエントリを格納するように動作可能な任意の従来型のデータストレージ226をさらに含む。処理回路220が波形測定値を血圧データなどに変換する命令を含んでもよく、またはマルチセンサ34から受信した生データが、データストレージ226内に格納されてもよいし、リモートプロセッサによって血圧データにさらに処理されてもよいことが理解されよう。調整可能な圧力パッドを周期的に伸縮させるようにモータ60が処理回路220によって制御される状態で、マルチセンサ34及び処理回路220に動力が供給される。また、制御システム200は、上述のように、処理回路220と基地局230などの外部システムとの間の通信を提供するために、無線送信器、イーサネットアダプタ、USB接続などのような入出力インタフェース224を含む。
【0017】
より一般的には、特許請求の範囲を含む本明細書において、「処理回路」という用語は、他のタイプのマイクロプロセッシング回路、マイクロコントローラ、他の集積回路、他のタイプの回路もしくは回路の組み合わせ、論理ゲートもしくはゲートアレイ、または任意の種類のプログラマブルデバイスを、例えば、単独でか、同じ位置にあるまたは互いからリモートにある他のそれらのような装置との組み合わせでかいずれかで含む(これらに限定されない)、本明細書に記載の機能を実行することができる任意のタイプの装置または装置の組み合わせを広く包含することを意図するものである。追加のタイプの処理回路(複数可)は、本明細書を検討すれば当業者には明らかであり、それらのような他のタイプの処理回路(複数可)のいずれかの置換は、本明細書に添付された特許請求の範囲によって定義されている本開示の範囲から逸脱しないとみなされる。さまざまな態様では、処理回路220は、シングルチップ、マルチプルチップ、及び/または1つ以上の集積回路及びプリント回路基板を含む他の電気部品として実装されることができる。
【0018】
処理回路(複数可)220が本開示のさまざまな態様、態様、特徴などを実行するための命令を含むコンピュータコードは、メモリ222に常駐することができる。さまざまな態様では、処理回路220は、シングルチップ、マルチプルチップ、及び/または1つ以上の集積回路及びプリント回路基板を含む他の電気部品として実装されることができる。処理回路220は、適切なオペレーティングシステムとともに、コンピュータコード形式で命令を実行し、データを生成して使用するように動作することができる。限定ではなく一例として、オペレーティングシステムは、他の適切なオペレーティングシステムの中でも、Windowsベース、Macベース、またはUnixもしくはLinuxベースであってもよい。オペレーティングシステムは一般に周知されているため、本明細書ではさらに詳細に説明されない。
【0019】
メモリ222は、読み出し専用メモリ(ROM)及び/またはランダムアクセスメモリ(RAM)を有する、さまざまな有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を含むことができる。当該技術分野で周知されているように、ROMはデータ及び命令を処理回路220に一方向に転送するように機能し、通常、RAMはデータ及び命令を双方向方式で転送するために使用される。本明細書に開示されるさまざまな態様では、RAMはコンピュータプログラム命令を含み、これらのコンピュータプログラム命令は、処理回路220によって実行されると、処理回路220に以下でより詳細に説明されているプログラム命令を実行させる。より一般的には、本明細書で使用される「メモリ」という用語は、1つ以上の記憶媒体を包含し、一般に、コンピュータコード(例えば、ソフトウェア及び/またはファームウェア)と、制御システム200によって使用されるデータとを格納する場所を提供する。それは、例えば、処理回路220にプログラム命令を提供することができる、電子、光、磁気、または任意の他のストレージもしくは伝送装置を含むことができる。さらに、メモリ222は、フロッピーディスク、CD-ROM、DVD、磁気ディスク、メモリチップ、ASIC、FPGA、EEPROM、EPROM、フラッシュメモリ、光媒体、または処理回路220がコンピュータプログラミング言語で命令を読み出すことができる任意の他の適切なメモリを含むことができる。
【0020】
図4A~4Dは、装置10の作業実装の一例を示す。この例は、圧力プランジャのアライメント、装置の物理的な安定化、イヤークリップ機能、及び接着剤の基材などの工学技術の詳細を組み込む。
【0021】
図5及び6は、使用者の心拍数、酸素飽和度、温度、体動などのバイオメトリック情報を測定するための装置の別の例示的な実装を示す。装置100は、永電磁石(EPM)114、プロセッサ116、充電式バッテリ118、及び無線送信器(図示せず)を収容するハウジング112を含む。ハウジング112は、使用者の耳の後ろに配置されており、使用者の耳の外面上に位置しているキャップ120(例えば、希土類元素(REE)磁石または鋼/鉄キャップ)に磁気で結合されている。キャップ120は、装置100に一体化されており、耳組織にわたるEPM磁場構成における対称性により自動調心する。したがって、装置100は、可動部分のないモニタリングソリューションを提供する。動作中、永電磁石114によって加えられる組織全体の圧迫力は、EPM114内のコイルを通るパルス幅(したがって最大電流)を設定することによって制御されることにより、耳組織にわたるEPM磁場を所望の圧迫力に構成する。EPMはプログラム可能な静磁場を使用して、耳組織にわたる力(したがって圧迫)を発生する。この磁場は、ハウジング及びキャップの磁性部品を結合し、この磁場の強度は、脈動及び非脈動の動脈血圧によって発生する力に応答して自然に変化する。したがって、この脈動の磁場のいくつかの態様を測定するホール効果トランスデューサ(HET)は、耳組織にわたり変化する力(及び圧迫)の較正可能なプロキシを提供する。これにより、結合する磁場の強度が既知の力(及び圧迫)に対応するため、設計に応力トランスデューサが不要になる。磁気で自動調心するキャップにより、ハウジング/キャップのジオメトリがあらゆる組織の厚さ全体で一貫性を保つため、力のサロゲートの磁場の忠実度が確保される。
【0022】
装置10と同様に、信号の前処理及び装置100への/装置100から基地局への外部送信は、低電力無線送信器、例えば、ブルートゥース、NFC、または他の無線通信技術を使用することによって達成される。基地局は、装置100から情報を受信することができる任意のAndroid、Apple、またはMicrosoft PCデバイスであり得る。装置100は、基地局に連続してか不連続でかいずれかで送信することができ、代替として、少なくとも24時間のバイオメトリック情報を記録することができるフラッシュRAMを含む。
【0023】
長期間の快適さを提供するために、EPM114によって発生した磁場の強度は、耳組織自体が蓄積した代謝物などを取り除くことができるように、10~20分ごとに低下することができる。装置100は、磁場強度を緩和し得る、または強化し得る他のプログラムされた力/圧力プロトコルを有してもよい。
【0024】
ここで図7を参照すると、装置100は、装置10と同様の制御システム200を含む。図7では、既に上述された同様の構成要素は繰り返されない。プロセッサ116は、処理回路220とマシン命令を格納するメモリ222とを含み、これらのマシン命令は、処理回路220によって実行されると、処理回路220に本明細書に記載の操作及び方法のうちの1つ以上を実行させる。装置100の処理回路は、磁場を変化させることによりキャップ120をEPM114に結合する力/圧力プロトコルを提供するようにプログラムされ得る。これらのプロトコルは、EPMコイルに供給される電流を変化させることによって達成される。
【0025】
マルチセンサ34
マルチセンサ34は、血圧、酸素飽和度、温度、及び/または体動のうちの1つ以上に関連するデータを取得し得る。マルチセンサは、装置10か装置100かいずれかの内に複数のセンサを含んでもよい。血圧センシングは、圧力波形を連続的に取得し、それらを不連続に妥当性確認し、MEMS力センサまたは磁気センサによって取得された情報に基づいている。心拍数は、波形解析から正確に検出される。酸素飽和度、温度、高精度な時間、体位及び体動は、商用オフザシェルフ(COTS)または改造された機器を使用して取得される。装置10のいくつかの実装では、センサ面とプランジャバイス面の残りの部分とが同一平面上にあるように、センサがプランジャ62に取り付けられることができる。
【0026】
本明細書に記載されたすべての実装に関して、センサが感知機能を達成するために装置10または装置100のどこにでも取り付けられ得ることを理解されたい。例えば、磁場の強度を測定するホール効果トランスデューサ(HET)は、REE磁石の近辺で、かつ永電磁石114の鋼/鉄構成要素の近くで飽和する可能性がある。これらの超高感度装置の飽和を避けるために、HETは、通常、組織にまたがる高磁場から離して取り付けられることができる。さらに、HETSは、磁場強度が弱くなり、HETを飽和させない位置に、同軸から外して取り付けられることができる。磁場強度が装置10または装置100内の異なる位置で最初に経験的に決定されることができるので、これらの非飽和位置は、組織を横切る真の磁場強度(及び力)のプロキシとして使用されることができる。
【0027】
血圧モニタリング
血圧の正確かつ継続的な測定は、頸動脈波形に似ている連続波形から導出される。信号は、好ましくは安定しており、適度にノイズがなく、無関係な信号が混入しておらず、それらの導出された収縮期及び拡張期の血圧推定値は、モデル化されるのではなく、妥当性確認されることができる。装置10を使用する1つの実装では、マルチセンサ34は、この目的のためにモータ60及びプランジャ62を利用することができる。例えば、COTS小型ギヤボックスモータ及びウォームギヤは、既知の力及び圧力で耳の動脈流動を閉塞させる直交に取り付けられたプランジャを駆動する。これにより、収縮期圧及び拡張期圧の計算が可能になる。それは腕血圧のカフに相当するものである。
【0028】
装置100を使用する別の実装では、マルチセンサ34は、BPセンシング及び妥当性確認の両方のために、永電磁石(EPM)114及びキャップ120の組み合わせを含むことができる。上述のように、これは永久磁石の形態であり、この中では、固有保磁力の低い永久磁石の周りにコイル状の電磁石が埋め込まれる。永久磁石の磁場は、電流の短パルスによって反転する。この磁場の反転により、永電磁石構造体内の磁束が経路変更される。EPM構成は、この経路変更された磁束を使用して、高磁場状態と低磁場状態との間でラッチすることができる(永電磁石ジオメトリに基づいて)。
【0029】
電流パルス幅を10~100マイクロ秒で変化させると、ラッチ状態の所望の力を変化させることができるため、磁力のコンピュータ制御による電子変調が可能になる。必要な変数は、さまざまな永久磁石のサイズ及び磁気特性、磁石面の面積、永電磁石周囲のワイヤコイルの境界面距離及び数、コイルを流れる瞬時電流、ならびに電流パルス幅を含む。市販のREE磁石は必要なテスラ及び力を発生させ、バッテリは変調状態をラッチするために必要な短い電流パルスを発生させるのに必要な電力を有する。動脈の脈動中に発生して測定される力は、COTS小型力センサ(EPMなど)を使用して測定され、アナログ力はCOTSアナログ-デジタルコンバータを使用してデジタル化される。信号は、例えば臨床分析のために、無線送信器によって基地局に通信される。
【0030】
EPMでは、ホール効果トランスデューサ(HET)を使用して、組織全体で、かつREE磁石、EPM、または鋼(もしくは鉄)である同軸磁性部品間での磁場の強度を検出することができる。同軸磁性部品が自動調心であり、耳の前側の磁性部品(磁石または鋼/鉄)が耳の後ろの磁性部品(磁石または鋼/鉄)の近接場磁場特性とそれ自体のアライメントを取ることで、それらとともに、自動調心型同軸磁場が生じる。HETは、この同軸磁場の任意の部分を測定することができ、そのジオメトリが既知であるため、組織を横切る磁場の強度が正確に推定され、経験的に妥当性確認されることができることで、この磁場強度のHET推定値を使用して、組織全体の力を推定することができる。他の潜在的なEPMジオメトリは組織全体で同軸ではない場合があるが、磁場の近くのいずれかの箇所に配置されたHETを同様の方法で使用して、組織全体の磁場の強度及び力を推定することができる。
【0031】
血圧信号を妥当性確認することは、好ましくは中心動脈圧に近い良好な信号、低い信号対ノイズ、収縮期及び拡張期の決定、ならびに既知の加えられた圧力に対するそれらの応答の測定を含む。装置10は、手首などの物理的に活動的なベッドと比較して、耳などの相対的に物理的に安定したベッドを使用することによって、信号ノイズを最小にする。装置10は、外部ノイズが容易に混入する信号を回避し、信号としての光源を除外する。装置10は、脈波伝播間隔などのモデル化された二次推定値ではなく、圧力を直接記録する。装置10は、一過性で臨床的に意味のある変化を検出するために連続的に記録し、一回拍出量及び全身血管抵抗の二次推定値を可能にする高い忠実度を有する必要がある。最後に、装置10は、中心動脈圧の近似推定値を提供するために、可能な限り大動脈基部に近接している。
【0032】
耳に取り付けられたEMPセンサは、これらの基準を満たしている。これは、外部混入のないクリーンな信号であり、使用者が動いている間(例えば、しゃがんだり歩いたりしている間)にクリーンな信号を提供する。EMPは、中心波形によく似ている波形上に明確に識別可能な重複切痕を有し、モデル化された二次推定値としてではなく、直接BPを測定する。EMPは連続したBP波形を記録する。収縮期及び拡張期は、一時的に局所化された最大値及び最小値として簡単に検出される。収縮期BPは、プランジャの力の増加に応じた信号の閉塞によって推定される。これは、最初に直線的に増加するバックグラウンド信号を減算し、次に残差信号の一次導関数の最小値を決定することによって検出される。残差信号の一次導関数の最大値は、最大拍動性または拡張期を定義する。これらの前処理計算は、装置10内の処理回路によって実行される。
【0033】
心拍数モニタリング
心拍数は、パルスごとのピークBPの時間の拍動間隔から推定されることができる。これは、信号の一次微分の局所的最小値に関連する波形信号の局所的最大値のタイミングとして検出される。信号の忠実度が高いため、装置10は、対応するECG信号の20ms以内で順調に拍動間隔を検出する。あるいは、マルチセンサ34は、ECG記録による心拍数推定値を提供することができる。ECG記録は、許容可能なノイズのために少なくとも5~10mmのベクトル二極間距離を好ましくは必要とする。BP信号から10%の誤差推定値を満たすということは、平均して50~100msの誤差の公差を意味する。BP心拍数の導出はこの公差を大幅に超えており、20msの精度で心拍数の推定値をもたらす。
【0034】
温度モニタリング
マルチセンサ34は、例えば±0.1℃の精度を有するサーミスタとしての温度センサを含んでもよい。サーミスタが頭皮に隣接するケーシングの一部に埋め込まれることができると、耳介温度よりも深部体温に近い温度推定値が提供されることができる。いくつかの実装では、無線送信器は温度を測定することができる。他の実装では、非接触サーモパイルが温度を測定する場合がある。
【0035】
酸素飽和度モニタリング
マルチセンサ34は酸素飽和度センサを含むことができ、この酸素飽和度センサは、透過光か反射光かいずれかに対する二波長送信器及びフォトダイオード受光器を用いて動脈の酸素飽和度を測定する。血流及び飽和に対する圧迫の影響を回避するために、装置10は、耳介の後ろに向けられたそのシェル内に反射フォトダイオード受光器を含むことができる。これにより、安定した記録が提供される。最適な位置決めは、経験的な調整によって決定される場合がある。適切な超小型で安価な酸素飽和度センサは、COTSコンポーネントとして入手できる。
【0036】
モーションセンシング
理解されるように、装着性は、サイズ、快適さ、外観、重量、構成要素の複雑さ、皮膚への付着における安定性、及び睡眠を妨げないことの間に妥協を伴う。これらの問題に費用対効果の高い方法で対処するために、マルチセンサ34は、入手できるCOTSの超小型モーションセンサを含むことができる。これらは、正確なバイオメトリック情報を提供するために、人間の活動に対して較正が行われている。加速度計は、ピエゾ抵抗か容量結合型MEMS技術かいずれかに基づいた三軸加速度計として提供され得る。出力は処理のために無線送信器/マイクロコントローラに送信される。加速度計は内側シェルの表面に添着されることができ、その信号を、立ち上がっているまたは倒れているなどの垂直方向の動き、方向性のない一般的な身体活動(例えば、食器を洗っているなど)、及び歩いているまたは走っているなどの水平方向の動きを表す出力に変換する。いくつかの実装では、信号は、ブルートゥースを介して基地局に送信されることができてから、最終処理のためにコンピュータに送信されることができる。
【0037】
使用事例
装置10を使用して、一意の自発的な生理学的コンテキスト現象(例えば、失神)、及びプログラムされスクリプト化された生理学的状態からの動的変数におけるわずかな変化を検出して測定し得る。体内のすべての随意及び不随意プロセスは、互いに強く結びついている。例えば、血圧の動的変数を考えてみる。被験者が呼吸すると、負及び正の機械的胸腔内空気圧が発生することで、BPが直接的かつ機械的に影響を受ける。これらの機械的効果が動脈の圧受容器細胞によって即時に検出されると、拡張か収縮かいずれかの神経反受容器反射メッセージが動脈及び静脈に送信されることが原因で、BPが変化する。肺の神経伸展受容器は、心拍数及びBPなどを制御する神経調節性反射を開始する。
【0038】
すべてのプロセスは他の多くのプロセスと結びつけられており、それらはすべて独自の周期性またはインパルス応答関数を有する。それらのように結びつくメカニズムは、神経学的、生化学的(例えば、糖及びO2、CO2)、ホルモン、機械的、電場及び電流、磁場、ならびに心理的意志を含むが、これらに限定されない。さらに、これらのプロセスは、心拍数の迷走神経制御に関する場合と同じ神経路を利用し得る。多くの場合、脳の自律神経制御中枢内にプロセスの階層が存在する。これは、マイクロプロセッサでの割り込みの階層に類似しており、この階層は、多くの動的生理変数の発現に非線形に影響することができる。
【0039】
したがって、生物の動的な性質を考慮すると、装置10は、ファームウェアが再現できる正確なユーザ定義の生理学的コンテキストを認識する場合にのみ、「アクティブ」測定を行うように動作することができる。これにより、測定に対する交絡の影響が軽減され、より意味のある測定になる。例えば、装置10によって取得された動的変数において抽出された特徴から、ごくわずかな変化を決定することができる。機械学習(ML)と人工知能(AI)は、連続した信号などから抽出されたさまざまな特徴のそれらの重み付けを調整する「ニューラルネットワーク」に主に基づいているため、下流の分析に有益である。したがって、交絡の影響を軽減させるあらゆる試みは、ML及びAIが健康産業を前進させるのに役立つ。
【0040】
装置10は、生理学的コンテキストを作成するために日常活動の使用を含む単純な時限プロトコルに従う被験者によって使用され得る。例えば、被験者が毎日または毎時間同じプロトコルを実行する場合、装置10は、薬物または治療のわずかな効果をテストすることができる。生理学的コンテキストを繰り返すことで、薬物または治療がプロトコル内の非交絡測定にどのように影響しているかが判断される。別の例では、被験者が病中にスクリプト化されたプロトコルを実行する場合、分析のためにAI及びMLシステムにデータを提供することで、将来の深刻な問題の早期兆候が検出されることができる。その後、医師は、不可逆的な不全モードが発生する前に、それ以外の場合には被験者が風邪またはインフルエンザウイルスによって微小なストレスを受けていない間に、身体のさらなる弱体化を治療で阻止し、防ぐことができる。
【0041】
上記に加えて、装置10がリアルタイムでモータの精密制御を提供するので、予めプログラムされたひずみプロトコル(すなわち、時間の関数としてひずみを変化させること)が適用されることができる。ひずみの速度及び方向を制御することにより、装置は、耳血管床全体での、任意の数の周波数でのひずみ振動、またはランダムなひずみなどのプロトコルを作成することができる。これにより、装置10は「アクティブ」センサであることができる。「アクティブ」とは、装置10が能動的に組織を機械的に刺激していること、そして力/磁気センサを使用して組織応答を測定していることを意味する。したがって、装置10は、動脈の弾性特性をインテロゲートすることができる。例えば、ひずみ振動の周波数を変化させることを適用すると、組織が各周波数でどのように応答するかがわかる。したがって、イヤーバイス内の動脈床の「弾性」のスペクトルを生成することができる。測定された「弾性」は、疾患状態または薬理学的介入の関数としてテストされ、血管挙動のまったく新しいタイプの微小測定を提供することができる。
【0042】
モータ制御により、被験者が自然発症の失神を有することがわかっている場合、装置10は、その連続した動作モードのために自然発症の失神を捕捉することができる。被験者が失神した場合、装置10は、BPの圧力における低下を検出し、モータ駆動型クリップが血管床を刺激して、被験者が失神していないときと比較して、失神中のマイクロプログラムされた刺激応答に測定可能な差異があるかどうかを確認する。これが交絡因子のない最良の測定を可能にするために、これらのマイクロプログラムされた刺激応答は、それ以外は同様の生理学的コンテキストで実行される。この場合、このコンテキストは、1)動脈の圧受容器反射のBP最小位相中に(動脈コンプライアンスが最小であることがわかっているとき)、2)動脈BPが低いときの拡張期の終わり近くに、そして3)再度、動脈BPが低いときの呼吸の終了時に定義されることができる。したがって、マイクロプログラムされた刺激応答が失神中のこのまったく同じ生理学的コンテキストで測定され、失神中以外のまったく同じ生理学的コンテキストでマイクロプログラムされた多くの刺激応答と比較される場合、失神中に何らかの動的弾性特性が確かに異なるかどうかが決定されることができる。換言すれば、リアルタイムで、装置10は、失神中でも非失神中でも、同じ正確な生理学的コンテキストでマイクロプログラムされた刺激応答を実行することによって、すべての潜在的な交絡因子を除去することができる(失神が唯一の独立変数である)。装置10は、正確に定義された生理学的コンテキストにおいて、マイクロプログラムされたリアルタイムの刺激応答を実行するようにプログラムされることができる。これにより、交絡因子が減少することで、より交絡のない測定値が得られる。これらはすべて、装置のファームウェアでセットアップされることができる。したがって、マイクロプログラムされた刺激応答は、最小限に交絡した測定値をリアルタイムで取得するための一意の方法である。
【0043】
テスト及び妥当性確認
連続BP装置の構成要素は、連続的に取得されたBP波形をBP推定値に変換することができるように、既知の圧力で動脈床を周期的に圧迫して閉塞させる機能である。装置10は、耳介の厚さ内でミクロンレベルの変動として波形を検出する。マルチセンサ34は、既知の力の範囲で圧力の推定を可能にするコマンドに従い耳を圧迫することによって、これらの変動を検出する。圧迫中の収縮期BP及び拡張期BPにアノテートするために、波形の脈圧が描写される。拡張期BPが最小の力から導出されると、測定された波形の脈圧での低下が引き起こされ、収縮期BPが最小の力から導出されると、測定された波形での有意な脈圧が無効になる。これらは、較正するBP波形上のベンチマーク位置を提供する。図5は、閉塞圧がある場合とない場合の脈拍の輪郭を示す。
【0044】
別の基準は、Finapresと比較して、装置10が単純で周知の生理学的手技に正確に応答する能力である。耳介BPとFinapres BPとの応答は、20人の同意した被験者でのペース調整された呼吸、等尺性脚伸展、しゃがむことと立つこと、及びValsalva法と比較されることができる。これらの応答は、標準線形相関法と比較されることができる。指先BP法が臨床研究における拍動ごとのBP測定の実用的な方法であるため、Finapresの指先BP波形が使用されてもよい。これらは、多くの生理学研究グループにおいて重要な科学技術である。代替手段は、動脈内カテーテル法であるが、これは侵襲的であり、多くの環境では実用的ではない。図6は、Finapresセンサ(上)、及びマグネットセンサ(下)の初期バージョンからの同時シーケンスの比較を示す。
【0045】
アームカフの上腕BPは、装置の耳介BPと比較されることができる。アームカフのBPは、ほとんどの大規模な疫学及び臨床試験の標準的なBP法であることから使用される。アームカフのBPは、末梢血管床からの反射波形がスーパーインポーズされるため、通常大動脈BPよりも高く、その差異は若い被験者ほど大きくなる。中心の収縮期BPと橈側の収縮期BPとの間の差異は、7~15mm Hgの範囲内である。Alphaプロトタイプを用いて、耳介BPとアームカフBPとの間の変換関数が導出される。これら2つの方法を同時に用いて、105人の成人を性別及び年齢別に7つの10年単位で均等に分布させ、診察室BPを使用して、BPが推定される。年齢、性別、及び体重という変数を含む、2つの方法の間の変換関係が導出される。図7は、3人の健常被験者でのアームカフ及びセンサの圧力の比較を示す。
【0046】
Italianプロトコルを使用した傾斜テーブル検査では、指先カフ及び耳介BP装置から同時に拍動ごとのBPが推定される。200Hzでサンプリングされた100回の連続した拍動の波形信号は、デジタルで収集され、同期され、オフラインで分析される。2つの分析が行われることができると、i)収縮期BPと拡張期BPが拍動ごとに相関され、ii)波形形状が5msごとに取られた測定値と相関される。これらのデータでは両方とも、耳介及び指先のBP、ならびにそれらの波形を比較する。これらのデータは、耳介BP波形から一回拍出量を推定するモデルのテストに使用される。
【0047】
装置内の固有ノイズ(いわゆる電子部品の1/fノイズ)、組織-装置境界面でのノイズ、及び外部から混入するノイズという3つのノイズソースがある。装置からのBP波形は光入力を使用しない。これにより、周囲の照明における変化による外部からのノイズが最小になる。1つの実装では、装置10を耳に固定するために、滅菌された交換可能な発泡接着剤付きストリップを使用することができる。これにより、滅菌状態が確保され、被験者の動きなどに関連する組織-装置ノイズが減少する。
【0048】
装置10は、組織/装置境界面のノイズ、現実的な極端な温度への耐性、浸水、及び経時的な安定性についてテストされることができる。装置10は、信号を検出するのに必要な圧力によって耳介に固定され、圧力は20~30mm Hgの範囲内であり得る。これは、使用者にはほとんど知覚できない。信号/ノイズは、段階的な運動負荷試験、サイクリング、軽いランニング、及び2段の階段の上り下りの間に測定される。装置に対する極端な温度の影響は、装置を30分間+50C及び-40Cで保管してから、そのBP推定値をアームカフBPと比較することで評価される。使用者に対する極端な温度の影響は、-25CのAlbertaの冬の天候、及び42Cのホットヨガスタジオ内で測定中にテストされる。どちらも使用者にとって適切な環境である。
【0049】
浸水に対する安定性は、もう1つの設計上の考慮事項である。汗及び水に対する安定性は、水及び別に普通の生理食塩水で耳を湿らせてから、そのBP推定値をアームカフの測定値と比較することで評価されることができる。4、8、及び24時間にわたる信号安定性は、BPを周期的に妥当性確認し、推定されたBPを妥当性確認されたBPと比較するようにプログラムされた装置10を用いて、10人の被験者のそれぞれにテストされ得る。BPは、装置による耳介動脈床の閉塞の妥当性確認ステップの直前と直後に比較される。4時間のグループでは、装置は30分ごとに妥当性確認するようにプログラムされ、信号が安定している場合、8時間及び24時間のグループでは妥当性確認間の間隔が長くなる。これらの研究については、CalgaryのConjoint Health Research Ethics Boardから既に承認が得られている。
【0050】
結論
したがって、本開示は装置及びシステムを説明し、これらの装置及びシステムは、以下の、
・温度、血圧、末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)、及び脈拍数を直接測定すること、または間接的に決定すること、
・結果を無線で基地局に送信すること、
・基地局には商用オフザシェルフ(COTS)機器(タブレットなど)を使用すること、
・基地局からネットワーク化されたコンピュータに測定値を送信すること、
・第三者らが測定値にアクセスするためのソフトウェアを開発することを可能にする、ソフトウェア開発キット(SDK)を含むこと、
・眠っている間に装着できること、
・早歩き(約5kph)と同等の強度での患者の運動に耐えること、
・運動の発生及び強度を感知して報告すること、
・日常生活用防水であること、
・同期可能なリアルタイムクロックを有すること、
・タイムスタンプ付き測定値を有すること、及び/または
・1回の充電で24時間持続すること、
のうちの1つまたは複数を実行することができる。
【0051】
本開示の特定の態様が説明され図示されてきたが、それらのような態様は、本開示の例示に過ぎず、添付の特許請求の範囲に従って解釈される本開示を限定するものではないと考えられるべきである。
図1
図2
図3
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図7
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図10
【国際調査報告】